○辻
委員 総理に対しまして二つお伺いをいたします。時間の効率上続けて参ります。
第一は、天災への恒久的な安全
対策と中部
地区の復興総合計画について御所見を承りたいと存じます。
御承知の
通り、
名古屋地方は、長年の間ほとんど
災害らしい
災害にも見舞われずに、いわば自然の脅威に対しましては泰平にならされて参ったのでございます。従いまして、今度の
台風襲来につきましては、正直のところ、官民ともに気にゆるみのあったことは争われぬ事実でございます。天災か人災かと、よくいわれておりますが、この限りにおきましては、とにかく
名古屋だけでも二千人近くの尊い犠牲者を出したことを考えますと、人災の様相少なからざるものがあったことを、私どもは深く反省をいたしておるわけでございます。そこで、
災害ずれと言うといけませんが、とにかく、今まで
災害というものになれておりません。これが一ぺんにして、あのような痛い目に徹底的にやられたのでありますから、反射作用と申しますか、逆に、今度は天災地変に対しますところの恐怖の心理が、病的にまで実は
名古屋あたりでは高まっておるわけでございます。何と申しますか、あつものにこりてなますを吹く、こういった
気持が非常に多いのでございます。
名古屋は何と申しましても、中部経済圏の
中心といたしまして、また、
日本の産業、国力の推進力として自他ともに許しておるわけでありまするが、この
名古屋が、将来の
災害におびえる余り、もし、ここで縮んでしまうようなことがあっては、それこそ大へんだと思うのであります。元気を出せといわれてみたところで、来年も、また豪雨や風のしゅんになったら、どういうことになるだろうということになりますると、つい気おくれがしてしまう、それではいけない。それには、まずこの天災に対するところの絶対不敗の態勢というものを、
政府がまっ先にお立てをいただかなければならぬ。そうして、
住民に絶対不敗の信念を持たしていただいて、安心して復興発展のために精進せよ、こう先頭に立っていただかなければならぬと思うのでございます。そこで、中部
日本の産業・経済の発展は、何と申しましても、
名古屋港と今度やられました
南部の工業地帯、これの
復旧整備、それから伊勢湾工業地帯の完備、これが第一でございます。ここにその重点があるわけでございます。ですから
名古屋港の管理組合、これは全国にも例が少ないのでありますが、
愛知県と
名古屋が一緒になりまして経営をいたしておるわけであります。この管理組合におきましては、いち早く雄大なる構想を
発表いたしたわけでございます。その一部につきましては、先ほど運輸大臣からも、横山
委員の質問に対しましてお答えがあったようでございまして、大いに御共鳴をいただきました。御共鳴と申しまするか、運輸省自体におきましても、すでにそういう雄大な計画をお立てになっておったものとも存じまするが、非常に、打てば響くという
気持を受け取りまして、喜んでおるわけでございます。しかし、それにいたしましても、あの雄大な計画ということになりますると、やはり干拓地の問題もございますが、
海岸堤防、河川
堤防あるいは木材の貯木場、一切を含むわけでございまするから、ともすればセクト主義といわれておりまする点を、こういうときにこそ解消して、
ほんとうに総合的な立場に立ちまして、これを作り上げていただかなければならぬと私は思うのであります。これはほんの一例でございまするが、こういう
一つの雄大なるところの構想を、少しでも、早くお立てをいただくという意味におきましても、しばしば議員
諸君からも、また、地元からも要望いたしておりまする、中部
地区の復興につきまして総合的な計画を立てていただくために、復興庁と申しまするか、そうしたものを
一つお作りをいただきたいということでございます。これは、総理からも、それについてはよく考えようという御答弁はいただいておるようでございまするが、どうか
一つ積極的に、これまた
ほんとうに地元の燃え立っておりまするところの
気持に相呼応されまして、寸時も早くこうしたものをお設けをいただきまして、積極的に復興の
対策、恒久安全
対策にお進みをいただきたいと思うのでありまするが、これにつきましてのお考えをいただきたいと思います。
なお、もう
一つ続けて参ります。いま
一つは、先ほど来盛んに出ておりまするところの激甚地の指定の問題でございます。実は、横山
委員から、
愛知県、
名古屋市という個有名詞をあげましてお尋ねをいたしたのに対しまして、大蔵大臣のお答えがございました。無理かもわかりませんが、私は、読めよ、悟れよといったお
気持が多分にあったように思うのであります。耳よりの話と申しまするよりも、当然の話なのでありまして、むしろ、
政府が正道に立ち戻ったといったような
気持で、多少愁眉を開いたわけでありまするが、しかし、最後的に確定いたしまするまでは、枕を高くするわけには参らないのでございます。討ちてしやまんという言葉がありましたが、あくまで、私たち、聞きてしやまんというのが被災地の
気持でございまするから、それには
都市災害の実態というものを
一つよくつかんでいただきたいと思うのです。まだ総理は、
ほんとうにおわかりになっておらぬと思います。午前中にもお話がございましたし、また、先ほど三田村
委員との
質疑応答にもございましたが、この公共
被害と民間
被害の比率でございます。なるほど、公共
被害一に対しまして四くらいになっておりましょう。私も一応調べてみました。たとえば、
愛知県の場合におきましては、公共
被害と民間
被害の割合が二倍八分。これは、
名古屋市を除きまして、東海三県でございます。それから
三重県の場合、これは三倍になっております。岐阜県は約五倍半、三県平均いたしましても三倍八分、四倍とはなりません。おそらく、全国平均いたしましてもそうでございましょう。ところが、
名古屋市と、いうような大
都市――と言うと、えろう聞こえまするが、とにかく、関東大震災がありましてから、これだけの
都市がこんなにやられたということは初めてなのでございまするから、こういうことは御存じないと思うのでありまするが、
名古屋市の場合におきまする公共
被害と民間
被害の比率というものは大へんなものでございます。
愛知県の総
被害高三千百三十億円のうちで、
名古屋は約一千二百三十億円でございます。全体的に言いますると四割弱でございまするが、これを今内訳をいたしてみますると、
名古屋市におきましては、公共
被害額が七十億円でございます。これに対しまして、民間
被害は千百六十億円、十七倍になっているのです。今まで、平均四倍というのが、この
名古屋市の場合においては十七倍になっておるのでございます。ですから、いかに大
都市の
被害というものが民間に多くしわ寄せをされておるかということは、これでもっておわかりをいただけると思います。地方団体の台所というものは、みんな
住民のふところ工合で成り立っておるのでございます。
名古屋市は健全財政をうたわれて参ったのでございまするが、その市民がこういう大きな
被害を受けておるのでありまするから、一体どういうことになっていくかということは、お察しをいただけると思います。ですから、やっぱり過去にとらわれてはいけない。これだけの大きな
都市の
災害というものは、新しい
事態でございます。ですから、この点をよくお考えをいただきまして、ただ公共
被害だとか、あるいは健全財政だから標準税収入がどうとかいうことだけで比べていただきました日には、
名古屋市などは浮かぶ瀬がございません。どうか
一つ、この点をこの上ともお考えをいただきまして、大蔵大臣からも、また私に対しまして、何とか
一つ御返事だけでも――やぼな心配はするなとか、簡単でけっこうですから、お答えをいただきたいと思いまするが、とりあえず総理にお尋ねをいたします。