○武内説明員 ただいまの御
質問に対しましてお答え申し上げます。このキャリバー三〇の実包につきましての御批難の要旨は、三点あると思います。その
一つは材料費の購入の見積もりが高いということ、その次は労務費の見積もり、それから第三は償却費の中に工具の修理工場の償却を入れる。こういう三点になっておるわけであります。もちろん会計検査院の御指摘につきましても、検査院のお
考えによっていろいろ見方がありますので、一がいにどうということは言えないと思うのでありますが、私の方は実際に物を調達いたしまする実施官庁といたしまして、当時の実情からいたしまして、この方法によるよりしかたがなかった。また、よるということが必ずしも不適当ではない、というふうに
考えたということで御回答申し上げておるわけであります。
まず第一に、材料費の見方が高い。こういうことにつきまして、こまかくなりますけれ
ども申し上げますと、このキャリバー三〇の実包を作ります際に、材料費のとり方といたしまして、板から薬莢を作ります場合と棒材から薬莢を作ります場合と二つの方法があるのであります。そうして、これは御承知のように、旭大隈と東洋精機という二つの会社で作っておるのでありまして、材料費だけについて
考えますると、棒材からだんだん打ち抜いていって薬莢みたいな形を作るのと、板材を白きねで締めて作るのと、二つ方法がありまして、旭大隈の方はすべて板材から作っていく。東洋精機の方は、約八〇%くらいは板材から薬莢を作っていきますけれ
ども、約二〇%は棒材の方から押していく。それはマニュウランというフンスの機械からやっていくわけであります。その二社を相手に
指名競争をやったわけであります。そうしますと、確かに板材の方が値段が高いのであります。棒材の方が安いのであります。しかしながら、たま全体を
考えますと、加工費と材料費と合わさって価格の
基礎をなすものでございまして、板材の方は確かに値段は高うございますけれ
ども、加工費が安いのでございます。それから棒材から形を成形していきます場合には、工程が多くなりますので加工費が高くなるのであります。従いまして、材料費のみをとらえまして申されますとそういうふうになりますけれ
ども、加工費プラス材料費という面で
考えますと、むしろ板材から作った方がわれわれの
計算では安くつくようなところで、材料費のみからは
考えられないということがわれわれの第一点に対するお答えでございます。
それから第二点は、加工数でございますけれ
ども、本件の場合におきまして、このキャリバー三〇の実包を旧米軍から注文を
受けておりましたのは東洋精機だけでございます。旭大隈の方は実際に
受けたことはないのであります。従いまして、原価
計算をいたします場合におきましてはこの東洋精機を中心にいたしまして
考えて、旭大隅の方は補助的に
考えて
計算したという実情であります。そういたしますと、東洋精機の方は、原価
計算上私の方に提出を求めた
資料あるいは現地に行きまして調べた
資料によりますと、会社が長い歴史を持たないせいか、原価
計算上のレートと申しますか、賃率を出しますについての材料が不十分であります。すなわち労務費は労務費で大福帳式に整理してあるのであります。何人かかったというふうになっておりますけれ
ども、原価
計算をやりますについては、直接工と間接工というものが分けてないので、レートが
計算できないのであります。すなわち運搬工は間接費であります。直接に物を作るのは直接工であります。それを合わして一時間当たりの賃率が出るのであります。従いまして、原価構成的に分けることができないものですから、実際要った労務費というものを、これはかつて米軍から四千万発を注文しておりますから、その全体の金額を出しまして、それは大福帳から探せますから、それに基づきまして、今度発注いたすのが約二千万発でありますから、それを比例
計算して出しておるというようなわけであります。会計検査院の方は、機械に当たって何人の工員がつくのが合理的であるというふうなところから、それを全体に締めくくりまして、工数を出しておるわけであります。この方法も、もちろんございます。ございますけれ
ども、それは実際にそれだけの工員がいないわけでありまして、これは
一つの想定に基いて合理的に
計算なさるということであります。われわれの方は、実際に四千万発
受けたときの労務費全体は幾らであったか、そうすると、それは実際の数字であります。われわれは実施官庁でありますから、実際の数字に基づきまして
計算するのがいいんじゃないかということで、われわれの方は
計算した数字でございます。
それから、第三点の減価償却費の中に工具修理工場の償却費を入れるのはいけない。こういう御指摘でございますけれ
ども、これは工具修理工場でございますから、生産工場のごとく一〇〇%は稼働しておらないのであります。工具の修理が出たたびごとに修理する。こういったような工場の一
部分であります。しかし、これはいかなる工場におきましても、修理工場の償却費というものを原価の中に入れるのは原価
計算上の常識でございまして、そういう方式でわれわれは原価
計算をしてやっておるわけでございます。こういうことを申し上げております。
現実に、この三十二年のたまの、本件の契約につきましては、相当原価
計算がシビアーでございまして、両社ともこれを
受けられないということを非常に強く言ったのでございます。しかし、われわれの方の
計算でいきますと、この千九百万発くらいのたまは一社でできるじゃないかというところで、
計算のベースには二千万発というものを一社で
受けられるといった
基礎に基づいて
計算しておりますものですから、価格の固定費的のものは相当シビアーになっておるのであります。従いまして、この実績を調べますと、両社とも赤字を出しております。この旭大隈につきましては六百九十万余り、東洋精機につきましては千六百五十万くらいの赤字を出しておりまして、この赤字はわれわれの原価
計算の際において予想できる数字でありまして、両社がどうしても
受けないというのであれば、個別原価
計算をやって、おのおのの受注量に応じた原価
計算をやるのでありますが、両社がそれで
受けたものでありますから、この契約をいたしたのであります。従いまして、三十三年度の契約につきましては、単価も三十二年よりは、実績が出ておりますから、それに基づいて幾らか上げて契約したというようなわけでありまして、これ以上安い値段で契約するということは実際無理だったのでございます。現に三十三年度の契約においては、なれというファクターは出ておりますけれ
ども、にもかかわらず、たまの発注量はほとんど同じくらいの数量の際に、単価はより高く買っておる実情でございます。これは会計検査院の御指摘のような見方もございますけれ
ども、実施官庁といたしてはこれ以下に買うということは無理である。また、原価
計算も、一社が全発注を
受けるという想定のもとに原価
計算してありますものですから、シビアーな
計算になっておるということであります。また結果におきましても、赤字が出ておる。従って、この
程度でやむを得なかったのじゃないか、かような見解であります。