○
田中(彰)
委員 防衛
長官に
お尋ねいたします。今、会計検査院から指摘されましたこの総額をちょっと見ましても、やはり相当大きな総額になっております。防衛庁の批難事項というものは、毎年この
決算委員会でも相当取り上げまして、非常に厳重にいろいろと
質疑をするのでございますが、これが減る傾向がなく、かえってふえていく。しかも、
一つがみな何千万円とかいうような大きなものになっている点を見ましたときに、なんと
長官がおっしゃっても、考えられても、防衛庁のやることが非常にずさんである。こういう点だけは、もうここにおられる
委員の諸君も認めておられるでしょうが、
国民もひとしく防衛庁に対して非難の声をあげておる。この批難事項の問題については、各
委員からいろいろ研究をされて、これから
質疑もございます。
それで、私はこの批難事項について
お尋ねする前に、このたび非常に問題になっておりましたロッキード決定についてでありますが、これを
お尋ねしたいと思います。
長官も、官房
長官時代に当
委員会へ来られていろいろと御
説明もあり、また御答弁もされたり、いろいろ論議になったのでございます。われわれ
決算委員会が、このグラマンという飛行機がこの世に存在しておらない。あったとしても、古い艦載機に古いエンジンをつけて、それを飛ばしてみる。今度は、その古い艦載機を改良して、これにロッキードについているエンジンをつけてやればこういう飛行機になるんだという予想、すなわち図面上の戦闘機にしかすぎなかったということを指摘いたしましたが、防衛庁からあらゆる、いろいろな専門家が来られて、ああでもない、こうでもないという議論があり、また五大新聞などは、できてもおらない、ありもしないものを、これがグラマン戦闘機であるというようなことを写真に載せまして、その能力あるいは機能というようなものを堂々と掲げ、また防衛庁でも、北海道の博覧会あるいはまた三越で行われました戦闘機に関する博覧会等には、できておらない飛行機の写真を掲げられて、これが今度わが日本で買うことに決定した戦闘機であるというようなことを発表され、そして写真が出ておる。これなどに対して
質問をしたときに、まことに遺憾であった。だれか下の者が間違えて
出したのであろう、というような
説明をされておるにもかかわらず、その日の新聞を見れば、グラマンというものはやはり、りっぱにあって、ロッキード以上の安全性を持ち、また攻撃力においても、すべてにおいて優秀なんだというようなことが出ておったのであります。
しかし、善は勝つと申しましょうか、
決算委員会がいかに正しい調査をしたと申しましょうか、結論においてはグラマンというものが、われわれの予想した
通り完全なものがなかった。聞くところによると、これはアメリカの相当なところから入っておるニュースでありますから間違いございませんが、源田空将がアメリカに行ったとき、向こうの空軍の方では、あなたの方ではグラマンとロッキードが
国会においても非常に問題になっておる、けれど、令度調査に来られたが、グラマンというものは実際はあなた方が思っておられるような完全なものじゃない。一台どうやら今エンジンをつけたから、飛ばしてみたければ飛ばしてみられるが、一台しかできておらない。それも完全なものではない。世界の各国どこでも一機も買っておらない。アメリカの空軍も採用しておらない。こういうものをお買いになっていっても、分担金も出ないし、アメリカの空軍でもこれを保障したり、お勧めするわけにいかない。まだその他にいろいろな戦闘機があるから、それをよくごらんになった方がよいでしょう。そうして、世界各国で採用しておる、アメリカの空軍でも採用しておる、現在あなた方が乗ってもみられるりっぱなものをお買いになった方がいい、というような話をしたということも事実である。
そうして、その結果ロッキードというものにきまった。ところが、国防会議も夜やられたのか、いつやられたのか知りませんが、さっとやられて、決定した。しかし、ロッキードは二年も二年半も前から研究をされておったので、別に源田空将がおいでにならなくとも、この
決算委員会が、いろいろな資料で御
説明を申し上げた
通り、少しも変わっておらない。グラマンにおいても変わっておらない。わざわざ
経費をつかっておいでにならなくともいいものを、向こうにおいでになった。ほかの飛行機でもお買いになるとか、また研究においでになったのか知りませんが、ロッキードにきまるものならば別においでにならなくてもよかった。それを今度行かれて、きめてこられて、そうして国防会議はちょこちょこっとやってしまった。
今度これだけの大きなものを作るには、ロッキードであった場合は、やはりロッキードと長い間技術提携をしておるところの川崎航空というものがある。それからグラマンにきまった場合は、グラマンを製造しようとして政府からたくさんの金を借り、そうして研究をして、あるいは技術屋をアメリカに渡米までさして研究しておったのだから、これは新三菱重工業がやるのが当然だ。しかし、これはどっちがやられてもけっこうです。けっこうですが、これだけの莫大な大きな
金額のものを作らせるのに、見積書を出さしてみたり、いろいろ研究されてみたり、いろいろな方法を調べてみて、これなら安い、これなら安全だというようなことを確かめられて、作るところをきめられるのが当然であるのにかかわらず、そういうことをなさらない。新三菱重工業が主であって、川崎航空が従である。これにきまった。値段はわからない。まるでグラマンの幽霊機をきめられたような態度です。値段がわからない。われわれが自転車を一台買うにしても、物置を
一つ作るにしても、図面を見るとか、写真を見るとか、現物を見るとか、これが幾らでできるとか、高いとか安いとか、だれにさしたらいいかとか、少し大きな家になれば、大工の二人や三人に見積もりさして、だれが信用あって、だれがこれを作るのにいいかというようなことをお考えになって、きめられるのがあたりまえであると思う。常識なんです。ところが、こんな何千億というものを作るのに、そういうことをおきめにならない。
長官が新聞で言われたことが事実とすれば、値段はわからない。しかし、新三菱が主で、川崎航空が従だ。こういうような、非常に簡単なすべてのお
取り扱いをなさるから、今、会計検査院から指摘されたような事項がたくさん出てくる。
私が申し上げるまでもなく、
長官が御存じなんです。このロッキードが、非常に値段が上がっている。われわれ
決算委員会がこれを取り上げたときに七十七万ドル、いろいろなものをつけて八十三万ドルぐらいならできるという見積書が出ておった。グラマンの方はもっと高かった。ところが、今度きめられたら、非常にこれは高い。高い理由は、われわれ公平に考えて、西ドイツが買ったところが、非常にロッキードの中に改良しなければならぬところがあったので、改良した。そういうようなものをまねしたり、いろいろなレーダーをつけたり、防衛庁が考えられたようないろいろなものをつければ、多少高くなるでしょう。さればといって、そんなに高くならない。高くなる原因の大半を私らが調べてみると、新三菱重工業で作れば高くなる。どうしてかと申しますと、ロッキードを作る場合、技術提携がないから。川崎航空が作る場合は、ロッキードを岐阜で作っております。水上機とか、いろいろなものを作っている。それだから、ロッキードに対するいろいろな機械設備、その他技師も、ロッキードの技師が岐阜県に百人近く入っているはずであります。ところが、新三菱がこれを主になって作るということになると、そういう提携がない。どっちかというと、今までのかたきのようなものです。かたきでもないでしょうが、反対のような立場にある工場がそれを作るんだから、設備等は全部やはりロッキードを作るように変えなければならない。そこへ技術者が一人もない。それだから、やはり百名近くの技術者を、グラマンを作るこの会社に連れてこなければならない。こういう
経費も非常によけいかかる。
労働賃金がこの
決算委員会に出ておった。その
労働賃金が出ておったときに、われわれ見たときには、川崎航空は一時間七百五十円、新三菱重工業が一千二十円、
労働賃金でもこれだけ違う。設備を新たにしなければならぬから、うんと金がかかる。技師も新たに招聘しなければならぬから、金がかかる。そうして、今まで何ら提携のないものが、急に提携するのだから、これは精神的のつながりと申しましょうか、いろいろなものにおいて、やはり非常に困難な点が多少出てくる。これは
人間だから、どんなにあれしても、一人や二人の
人間ではなくて、たくさんの
人間のつながりであるから、出てくる。そうなれば、値段が高くなる。作る時期がおくれる。うまくいかない。こういうようなことになるのを御
承知で、新三菱重工業におきめになったのか。それとも、何かどうしても新三菱重工業にきめなければならないいわれがあったのか。
もう
一つ。これは私、調べてみて非常に驚いたのですが、たとえば新三菱重工業が主になって、川崎が従になった。だから、たとえば三、七になる。主の新三菱重工業が七で、従の川崎が三をやる。一〇のものは七、三だというように割り出すのではなくて、主になるところがあらゆる機械とか何とかを購入してしまって、仕事の
金額からいうと九をやってしまって、
労働賃金に近いようなものだけの三を割り当てられるから、その
金額のバランスは、一〇のものならば片方は九で、片方は一しかない。こういうような問題もある。そこで、これに対する御答弁を願いたい。
もう
一つは、これは重大なことなんですが、国防会議でこれがきまると、即時に通産省の小出という重工業
局長から川崎航空に電話がかかって、あした出てこい。出て行くと、即時に新三菱重工業と話し合いをしろ。話し合いとおっしゃられても、長い間、川崎航空とロッキードとは技術提携もございますので、新三菱重工業と話し合いをするには、ちょっと時間をいただきたい。そうすると、この小出
局長は、君たちがわれわれの命令を聞かないというなら、これから防衛庁の仕事とか、そういうものは川崎航空にはさせない、といって一喝をしておる内幕がある。
もう
一つ。防衛庁の航空機課長の馬場という人だ。この人がやはり川崎航空を呼び
出して、これは電話ですが、早くきめなさい。きめないとロッキードがだめになるぞ、というようなことを言って、やはりおどしみたようなことをやっておる。
そこで、ロッキード社のハルという人が、これは社長だそうですが、
長官に会われた。そう性急なことを言われても、なかなかうまくいかない。やはり川崎とは長い間、いろいろな技術提携をしておるから、御命令
通り新三菱重工業とやるにしても、信義とか、今までのつながりがあるから、なかなかうまくいかない。もし、どうしてもそういう軽卒なことをやれとおっしゃるならば、仕事の
関係がうまくいかないといかないから、いかなければロッキードをお断わり下さってもけっこうだ、というような話もしたということが伝わってきておる。こういうことが事実であるとすると、ほんとうにこの日本の大切な戦闘機を買うときに、いつ何どきでも、こういう政治的ないろいろなつながりがある。
これは財界の一部、政界の元老の一部から聞いた話ですから、私はほんとうと思っておりませんけれ
ども、新三菱重工業の重役が、われわれは、グラマンにきまって、やるつもりで相当の金をかけて、設備もし、研究もした。しかし、グラマンというものは
決算委員会にあばかれて、だめになったが、今度どの戦闘機にきまっても、きまったものは必ず新三菱重工業が製造できるようにちゃんときまっておるから、そういう心配はないさ。仕事の切れるような心配はない。グラマンというのは、新三菱重工業の仕事を減らさぬようにするために生まれてきたものであるから、どっちにきまってもそうだ、というようなことをしゃべっておるということが、うわさされております。これは私、本気にはしておりません。しておりませんが、そういうようなことが事実であるし、そういううわさが流布されておる。
そういうことになりますと、せっかく研究なさって、そうしてわれわれもずいぶんあらゆるところからいじめられ、たたかれ、悪口を言われ、ここで努力しておきめになったら、また戦闘機にきずがつく。われわれからすれば、戦闘機なんというものは、できたものを十機か二十機買って御研究をなさってもいいんだという考えを持っていたのですが、しかし、防衛の
関係上いろいろなことをされたんでしょうが、されたならば、
国民から
疑惑を持たれないような、すっきりしたやり方をおやりにならないと、防衛庁の将来性とか、いろいろな問題に非常に影響してくる、こう私は考えております。
今、申し上げましたことについて、
長官から
一つ詳しく、いつも
長官は簡単に、ぽんと答弁されて逃げられますが、いずれ通産大臣や国防会議の
議長、その他いろいろな方を呼び
出して、聞かなければならぬので、どうか
一つ、
長官から、よくみんなが納得のいくように御答弁を願いたい。