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1959-11-17 第33回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十七日(火曜日)     午後三時二十六分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 岩本 信行君 理事 菅家 喜六君    理事 佐々木盛雄君 理事 椎熊 三郎君    理事 床次 徳二君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君 理事 森島 守人君       池田正之輔君    石坂  繁君       加藤 精三君    野田 武夫君       福家 俊一君    森下 國男君       岡田 春夫君    柏  正男君       勝間田清一君    帆足  計君       穗積 七郎君    堤 ツルヨ君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  日本国ヴィェトナム共和国との間の借款に関  する協定締結について承認を求めるの件(条  約第二号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国ヴィェトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件及び日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定締結について承認を求めるの件、以上両件を一括議題とし、質疑を行ないます。質疑の通告があります。これを順次許します。堤ツルヨ君。
  3. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は当委員会で、私たち社会クラブ立場から初めて質問をいたすのでございます。初めて質問をいたします今日の段階に至って、当委員会をいろいろと検討してみますと、実は私たち国会対策委員会に対して正式に政府与党自民党から申し入れがございまして、二十一日ごろにはこの法律を通過させたい、こういう御希望が正式に伝えられております。日本社会党に対しても正式に意思表示があったようであります。審議に入ってから相当日数もついえておりますし、参議院もあることであり、しかも国民が三百近くの議席を与えるところの自民党内閣が、すでに海の外に出て調印をしていらっしゃいましたことでございますから、できるならば私たちは御協力を申し上げたい、こういう気持で今日まで臨んできたのでございます。けれども尊重しなければならないのは、この賠償を払うところの国民立場でございます。国民立場から見まして、自分たちの税金が納得のいく方法で払われるということが一番大事だと思うのでございます。従って私たちはこの観点から終始質疑応答を聞いて参りましたけれども、どうも単なる日本社会党の戦術とかなんとかいう問題を別にしまして、私は国民の目から見て政府の御答弁があまりにも不十分であるということを痛感いたします。  私は、きょうははっきり申し上げますが、大体において次に申し上げる三つ観点から見て、私たちが大よそ納得がいくならば賛成したいと思うのです。その三つ観点からと申しますると、いろいろと問題はございますけれども、一番先にこの賠償算定根拠国民の前に納得のいく根拠であるならば御賛成申し上げる。それからもう一つは、非常に困難な問題でございまして、南北ベトナムに分かれておりますこの現実の上に立って、これはむずかしい処置でございますが、このむずかしい処置をしなければならない日本政府立場として、国民の目から見て絶対に全ベトナムに対する賠償になるのだという確信が政府から示されるならば、これも私は賛成申し上げたいと思う。それからもう一つ、私たちが非常に懸念をいたしておりますことは、これが承認されましたならば、おそらく今までの北ベトナムとの貿易が非常に停滞してしまって、あるいは中断されてしまって、これに連なって生活を立てておりまするところの人たちがこうむる影響が大きい。従って北ベトナムとのこれが調印完了しますことによって、今後北ベトナムとの貿易がどうなるかということについての確たる御答弁があり——大体、はたに問題がございますけれども、この三つ観点から見て大体私たちを了承さして下さるならば、国際信義の点もございますから、できるだけ御協力申し上げたいと思っておるのでございます。  ところが、この三つの問題の一番先に申し上げました算定根拠、この問題が今日までのいろいろな質疑応答を通じて明確になっておりません。これは昨日の委員会森島守人委員政府に御質問になりましたように、私も関連をして申し上げましたように、私たち手元にいただきました単なるベトナム側の一方的な要求であるところの報告書と申しますか、何と申しますか、簡単なメモ程度のものを私どもにお示しいただいて、きのうはこの要求書を根底にして、どういうふうに算定したんだということの質問を申し上げましたけれども、まだちょっとはっきりいたしておりません。そこで今この「ヴィエトナムの提出せる生産及び貿易に関する損害資料を基礎として、一九四四年九月—一九四五年八月の生産及び貿易の減少による損失額を試算すれば次のとおり。」であるというのと、それからもう一つ資料をいただきました。きのうのような簡単な言葉ではわかりませんので、私たち要求した資料をここにいただいたのだと思います。私は、すでに立ちましてからいただいたのでございますから、もちろん読んでおる時間がございません。従って私が  一番に申し上げました算定根拠が明確になれば御賛成申し上げると言うておるのですから、どうぞのらりくらりといいかげんな答弁でなしに、きょうは  一つ、もういよいよ私たち国会議員としても言質をいただいて、お通しになりたいならお通しになりたいで、やはりだんだん締めくくりに持っていかなければなりませんので、一ついただきました資料を、政府から口で資料に基づいて御説明をいただいて、そしてまずその算定根拠の問題を、一つできたらともに片づけさしてもらいたいと思いますので、そういうふうにお願いいたしたいと思います。
  4. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 最初にお断わり申し上げますことは、先方も資料が不足と申しておりますし、私の方も戦争でいろいろな資料がなくなっておりますので、両方とも不完全な資料に立って検討いたしておるということでございます。ただし不完全な資料ではございますが、ここに一例として差し上げてあるわけでございまして、こうした一例としての資料を見ましても、鶏三羽に二百億というふうなものではないということが、おわかりいただければいいんじゃないかというふうな意味でこれを差し上げているわけでございます。  最もわかりやすい例をとりますれば、この輸送というものが米軍の爆撃によって、海上も陸上も主要交通機関というものは断たれた。要するに南北輸送が途絶しました。その結果としまして、南からは北に大体常時十万ないし十五万トンの船が行っておるわけでありますが、これが行かなくなった。その他不作もございましたでしょう。日本軍が調達をしたということで、北では餓死者が出ております。それから南におきましては、今度は北から石炭がこないというふうなことで、電力、火力発電に困るというふうなことが出たわけでございます。また日本軍は三月九日の作戦以後は、その残されたあらゆる運輸手段というものを徴発して軍用にいたしております。そこで一般経済、民需の関係というものはほとんど物が動かない。経済が完全に麻痺したというふうな現象を呈しておるのであります。そういう結果として非常に大きな経済上の苦痛を与えておるわけでございます。たとえばそれらの一例をとりますと、米にいたしましても、平年ならば大体白米にいたしまして百四十万トンくらいのものを海外に出しておったわけでございます。これを値段にいたしましてトン当たり百十ドルといたしますれば、大体一億五千万ドルくらいの米が出ておったわけであります。これが終戦の年になりますと、わずかに五万トン以下しか出ておりません。ここの数字はもみでございますから、これを白米に換算いたしますと、六割五分くらいにとるわけでございます。そういたしますと、たとえば米にいたしましても一億五千万ドルのうち、戦争がなければ、南部サイゴン以南デルタ地帯が米の主要な生産地でありますから、そこでもって農民に一億五千万ドルくらいの収入が入ったわけでありますが、それが戦争のために全然出ておらぬというふうな結果を来たしております。もちろん日本軍としましては、進駐以来ずっと大体七十万トンくらいの米を買っております。最後の年にどれくらいの米を買いましたか、はっきりした数字がございませんが、七十万トン買ったといたしましても、残りの八十万トンというものは、あるいは売れないということを見越して生産をしなかったか、あるいは生産をしましてもこれが売れないで持ち腐れになったかというふうなことで、少なくともその一億五千万ドルの半分くらいの損害南部農民が負っておるわけでございます。またゴムが出ておりますが、ゴムは平年産が大体七万トン弱でありまして、これは全部海外に売っておったわけであります。最後の年を見ますと、わずか十トンしか出ておりません。日本軍も多少は買ったかもしれませんが、こうしたゴムトン当たり八百ドルと見ましても、五千六百万ドルというゴム収入戦争がなければあったはずであります。そうしたものが戦争のためにこのゴム関係者のふところに入っておらぬ、ごく一例をあげましてもそういう数字が出てくるのでありまして、われわれはその他の資料がございませんが、資料があったといたしまして、いろいろな損害算定いたしまして、これが大きな数字になります。結局ベトナム側としましては、六年もかかって交渉した結果、三千九百万ドルの純賠償が、大きな損失額に対して何割にしかならぬということになりますれば、ベトナム側は不満を抱くでありましょうし、また実際問題としましても、そういう数字は出ないのでありますが、いずれにいたしましても、鶏三羽というふうなものではないのでありまして、南部だけの例をとりましても、そういう大きな損害があったということをおわかりいただきたいと思うわけであります。
  5. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これは委員会の前に前もって、私の手元にいただいたのではございませんし、私の方の国会対策といたしましても、これはもう一度みんなで検討をいたしますから、それではちょっと今いただいたこの算定根拠の問題は、今の伊關さんの答弁では、南の方の米だけを例にあげられましたけれども、私はやはりこの損害全体は、おもにたとえば石炭、亜鉛、錫、鉄鉱、マッチ、セメント、こういうものをあげられておりますけれども、一向に北と南との場所もあげられておりませんし、こまかく検討さしていただきまして、私以外の質問者がもう一度私のクラブから質問に立たせていただくことになっておりますから、これは一つ慎重に検討をしてから、次の質問者に譲ることにさしていただきます。  そこで、次に私は藤山外務大臣質問をいたします。それは何かと申しますと、私が二番目に申し上げました南北ベトナムに分かれておりまするこの困難な状態の上に立って、日本地球の上でただ一つベトナムに対して賠償を払うという現実的な立場に置かれておるむずかしい問題でございます。今までの質問を承っておりますると、現実の問題、法的な問題、いろいろ怪しげな問答が取りかわされておりまして、ときには蜃気楼のごとく、現われたりなくなったりいたします。たとえば日本人が旅行いたしますときに、北ベトナム方面に行くときには、北ベトナム認めたごときパスポートをお作りになっておる。それから今度の賠償になりますと、北というものは全然無視して消えてなくなっちゃって、南との賠償交渉をおやりになる。ですから私に言わせれば、岸内閣蜃気楼のように、時には北ベトナムを出してきたり引っ込めたりというところの、実に得手勝手なものの考え方をしていらっしゃるように思うのでございます。そこでそういう観点に立って、私は一つ——トラン・ヴァン・フー氏の国籍問題が日本社会党から出されております。これには私は今触れないといたしまして、サンフランシスコ平和条約が一体有効であったか無効であったかという問題ですね。これは国籍のいかんを問わず、信任状さえあれば正当な代表だ、こういわれておるのでございますから、かりに政府の御解釈通りとして、私はサンフランシスコ平和条約を無効だという主張は、社会党と少し見解を異にいたしますので、一応横に置きまして、それではこのサンフランシスコ平和条約締結のとき、ベトナム代表としてきたところの代表は南の代表であったとお考えですか、または北の代表であったとお考えか、または全ベトナム代表してきたのだ、こういう見解をとられるか、その三つのうちどれだとお思いになっておるか、もう一度はっきりしていただきたい。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように南のベトナムが、成立の過程からいいまして、全ベトナム代表するものであるということをわれわれは認めておるわけでございます。従ってサンフランシスコ条約に出席して、ベトナム共和国——当時はバオダイでごさいましたけれども代表するものはベトナム国代表している、南北代表している、こう考えております。
  7. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 全ベトナム代表するという答弁でないと、今までの政府の御答弁と逢ってくるわけですから、大体そうお答えになるだろうと私は思っておりましたけれども、私たちサンフランシスコ条約調印したベトナム代表南ベトナム代表だと思うのです。確かに今御答弁になった全ベトナムと解釈してよろしゅうございますね。それではお聞きをいたしますが、サンフランシスコ条約は一九五一年の九月八日に調印されております。その当時すでにベトナムにおきましては、不幸にして南北に分かれておるのです。まっ二つに分かれておった。このように分断されておったばかりでなく、一九五〇年、ですから五一年のサンフランシスコ条約より大体一年もっと前です、一九五〇年の一月から二月の末にかけて、中共、ソビエト、朝鮮民主主義共和国、チェコ、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、アルバニア、ユーゴースラビアの諸国が調印前にベトナム民主共和国、つまり北ベトナム承認しておるのであります。ゆえに、サンフランシスコ平和条約調印したベトナム代表というのは南のみを代表したものであったと解釈いたしますが、こういう現実があったのです。それでも藤山さんは全ベトナムとおっしゃるのでございましょうか。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その点は御意見と相違することになろうと思いますけれども、われわれとしては、当時承認をしておりました多数の国がございます、それと同じ見解でありまして、ベトナム国が当然全域代表しているという国際認識のもとにやっておりますことはむろんでございます。
  9. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は北ベトナム側に立ってものを言っておらないのです。現実サンフランシスコ平和条約以前に分かれておって、地球の上にはすでにこれを認めておる国があったのです。あなたはいつも四十九ヵ国と十ヵ国ということをおっしゃいますけれども、人間の頭数からいったら、私まだ綿密に検討しておりませんけれども、逆に北ベトナム承認する頭数の方が多いかもしれませんよ。そして南側の資料ばかりでなしに北側の資料から持ってきたときに、どういうものが出てくるか。これはまたはたの委員がお触れになると思いますから私は差し控えますけれども、まあ藤山さんはそうおっしゃいました。それじゃもう一つ聞きますが、政府は当時も現在も事実上二つ政府ベトナム国土にあるということを認めないのですか。サンフランシスコ条約調印した当時も、それから今日の現在も事実上ベトナム国土には二つ政府があるということを認めないのですか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 南ベトナム施政権の及ばないところは若干あるわけでございますけれども、われわれは南の方を正統政府として、全ベトナム代表するものと認めておるわけでございます。
  11. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 いや、公平な第三者の立場から見ますと、南がかいらい政権であるならば北もある種のかいらい政権であるということがいえるのです。それをすっきりおっしゃってしまうと胸がすっきりするかと思うのですけれども、それをおっしゃらないで南ばかりの肩をお持ちになるから変になる。私は公平な立場から申し上げておる。たとえばこの間も例にとられましたが、台湾問題はどうするのですか。私たち台湾問題、わずか六百九十万の民を支配する蒋政権ではあるけれども、これがあるという現実地球の上に認めないわけにはいかないという観点に立って、台湾問題の処理は、中共国際連合の上にのせて、そして中共との統一をはかっていかなければならぬ現実の問題として私たち台湾問題を取り上げておる。アメリカと非常にお親しい岸内閣、ことに藤山さんはそれじゃ台湾蒋政権中共政権支配の及ばないところの台湾というものをやっぱり北ベトナム並みに挟殺して考えていらっしゃいますか。これをちょっと比較をしていただきたい。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本は今日華条約によりまして台湾というものを認めております。ですから抹殺はいたしておりません。むろん南ベトナム北ベトナムという関係におきまして、われわれとしては歴史的過程からいいましても、南ベトナム正統ベトナム全域代表する政府だ、こう考えております。しかし先ほど申し上げましたように、むろん施政権の及んでいないところがございます。それがいわゆる北ベトナムであるということも実はございます。しかしながらそれかといって、われわれが南を正統政府として認め、全ベトナム代表するものと認めて差しつかえないと考えております。
  13. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 やっぱり外交権を持っていらっしゃる政府は筋を通してもらわないと困る。今おっしゃいましたように、台湾政府に対して法的にも事実の面からも認めていらっしゃるならば、幾ら都合が悪くても、思想を異にするからといって、北ベトナムを無視するということが許されるかどうか、私はこれは非常に大切な問題だと思います。ことに私が今例をあげました台湾中共の問題は、中共は六億、台湾は六百九十万、これだけ人口の開きがあるところの小さな政権でも、日本は一人前に今のところ相手にしていらっしゃるじゃないですか。これと同じ調子でいくならば、この賠償という現実の前に立って、北ベトナムに対してこのような態度で国民納得すると思われるか。この間からいろいろ質疑をされ、政府お答えになりました。その答弁国民は大体了承しておると思われますか、北ベトナムを無視した今の政府の行き方で国民は大体了承しておると思われますか、それとも、いやこんなことじゃやっぱり国民承知すまいと思っていらっしゃいますか、その辺あなたのはだの感じを一度聞かしていただきたい。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 どちらを正統政府かと見ますことは、歴史的発展過程からおのずからそれぞれの国がきめていくわけでありまして、むろん統治をされていないという現状に立って、施政権の及ばないところはあろうと思います。がしかしながらそれかといって各国それぞれその国の歴史的発展過程から見まして、どの国を正統政府として代表すべきものかということはきめていくと思うのであります。私どもといたしましてはその議論はやはり国民納得してもらえると考えております。
  15. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 藤山さん、毎日の新聞をごらんになっておりますか、あなたが御答弁になった国会審議の。私は公平に見てこの北ベトナムを無視した南ベトナムだけを対象とした政府賠償の方式、賠償のあり方については、国民納得しておらないと思う。事実上ベトナムには二つ政権があるということを認めなければどうしても済まない段階賠償という問題はきておるというのが、日本政府立場だと私は思うのです。世界各国一般が法的に認めておるからとか、また現実にはどうだとか、いろいろな言葉がかわされておりますけれども、私たち日本立場といたしましては、賠償を払うというところの現実的な立場に立たされておるのでございますから、法的に認めるということを、よしや百歩譲って認めないという藤山さんの言葉を取り入れるといたしましても、立場はあくまでも現実に立たなければならぬ。そういたしますと二つ政権があるという現実、この二つの上に立って賠償というものがなされなければ、全ベトナムに対する賠償ということに私はならないと思う。都合のいいときには法的といい、都合の悪いときには現実的にといって逃げるということは、賠償という現実の前に立って許されないと思いますが、この点いかがでございますか。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは先ほど来申し上げておりますように、法的にも南に払うことが至当だと思っております。同時に事実問題としても今回全ベトナム代表する政府としてわれわれは北の損害をも算定し、また将来北にもこれが及ぶものとして事実上賠償の実行を考えておるわけなんでありまして、その意味からいえば事実問題も無視しておるわけではない。これがベトナム国民に対する賠償だという観点に立っておるわけであります。
  17. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 北の支配が南に及ばないで、南の支配が北に及ばないということは、与党の方だって私はお認めになると思う。しかし国際的には正統政府一つしかなく、その一つを四十九ヵ国が認めているから南ベトナム政府正統だと言われますけれども立場を変えて共産主義陣営からいうならば十ヵ国が認めておる北ベトナム政府こそ正統政府だ、こういうふうに私は言えると思うのでございますが、まあきらいでしょうけれども、かりに藤山さんが共産主義者立場にあられるといたしますならば、あなたが北の共産主義陣営においでになる思想の持ち主だとしたときに、十ヵ国が認めておるこの北ベトナム政府は、向こうから言わせると正統政府だ。こういう主張が成り立つと思いますが、どうですか。それをお認めになりますか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 共産主義方面からはそうだと思いますが、残念ながら四十九対十ではこれは困ったなあと考えております。
  19. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 現在南ベトナム政府の事実上権力の及ぶ範囲は十七度以南ベトナム領土であることは明瞭な事実でございます。また一方北ベトナム政府統治力は、十七度以北のベトナム領土であることは明瞭でございますが、お認めになりますか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 争いがありましてジュネーブ協定でもって休戦線を引いておりますから、その範囲内において一応きめられておるというふうには認めます。
  21. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 もう一ぺんはっきり答えていただきたい。十七度を限界として、北ベトナム南ベトナムとの統治力支配権というものは南北にはっきり分かれておる。従って南へは北の支配力が、北へは南の支配力がいかないということははっきり認めるとか認めないとか一言でよろしいから、その通りだとこう言っていただきたい。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通りジュネーブ休戦協定というものは、政治的あるいは領土的境界線ではございません。従いまして統治力をそれ以上に伸ばすか伸ばさないかという問題をきめた問題ではないわけであります。でありますから一応そういう軍事休戦線として、そういうことが行なわれておるのでありまして、そういう意味において休戦線というものが認められておるというふうに考えております。
  23. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 はっきり答えることが都合が悪いと思うのか、あまりはっきりお答えになりませんけれども、これははっきりいたしております。十七度を限界線として北と南はお互いに統治力支配が及ばないのです。前にも述べました通りサンフランシスコ条約調印当時もこの状態であったことは事実です。サンフランシスコ条約日本調印しました当時にも、この十七度を限界線として、二つ政府があったことは事実なんです。それなら南の権力を持つ代表調印したサンフランシスコ条約の効力は、南ベトナムにしか及ばないと私は思うのですが、この理屈どうお考えになりますか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、歴史的な過程において南ベトナム国が形成されておりまして、それは全ベトナム政府としてサンフランシスコに出席をして調印をいたしておるわけであります。従ってわれわれといたしましては、今申し上げたような結論を常に申し上げておるわけであります。
  25. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 藤山外務大臣は、不思議に思うことは、このベトナム問題に対しては一貫して言葉が非常にはっきりしないことなんです。これは一つはっきり言っていただかないと次から次へ押していけないわけです。十七度をはさんでお互いに権力が及ばなかった南北ベトナムというものは、事実なんです。従ってその支配権が及んでおらない部分までをも、サンフランシスコ条約調印した南ベトナム代表が権利を持っておるということは、これはあり得ないことなんです。従って私はこの南ベトナム代表を全ベトナム代表とみなすことは、支配権統治力がお互いに及ばないのですから、非常に矛盾があるということ、これは矛盾があるということをお考えになりませんか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時サンフランシスコに出ましたときに統治権の及んでおるとか及んでいないとかいうことを別にしまして、全ベトナム代表として出席いたしておるわけであります。サンフランシスコ条約会議にはソ連も出ておりまして、別段特に反対もいたしておりません。そういう事実から見ましても、全ベトナム代表者として出たということは当然だと私ども考えておるわけであります。
  27. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ジュネーブ協定の中にも、また藤山さんが出席されたバンドン会議でも、南北ベトナムは統一すべしと宣言されております。そこで統一すべしという言葉は、現にベトナム南北に事実上分かれておるということに基づいて言える言葉でございます。これが分かれておらなかったら、こういうことを言う必要はないわけなんです。現に分かれておるのでございますから、私は南ベトナム代表は全ベトナム代表していると主張しても、実際は北ベトナムがこれを受け入れないことは明々白々だと思うのです。このことはことしの六月二十七日付、私たちの国会の衆参両院正副議長にあてられた要望書でも明快に述べられております。これでも外務大臣は、サンフランシスコ条約の効力は全ベトナムに及ぶと考えておられるのか。この要望書ではこう書いてあります。この協定調印を結ぶにあたって、日本政府サンフランシスコ平和条約第十四条をたてにとり、日本南ベトナム当局のみを承認し、彼らを全ベトナム代表者とみなすと表明しました。この主張の法的根拠は全然成り立ちません。ベトナム人民は長い間サンフランシスコ会議及びその平和条約をかたく反駁してきました。ベトナムの全人民がフランス植民主義者とアメリカ干渉主義者に抵抗戦を行ないつつあったそのときに、フランス植民主義者によって設けられたかいらい政権調印したこの条約は、いかなる点から見てもベトナム人民を拘束することはできません。現在ベトナム人民は、さらに進んで南ベトナムベトナム全国をあるいはベトナムの全人民を代表する資格があるものとして認めることはできません。こういうふうにこの要望書に書いてございます。このように北ベトナムははっきりサンフランシスコ条約を否定しておるのでございます。これでもまだ平和条約に基づく賠償南北ベトナムに対して行なうものであると言われますか。一方的に独善的に解釈してこれが通るかどうか。この要望書と私の言います主張とどうでございますか。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは独善的に解釈いたしておるわけではないのでありまして、先ほど来申し上げておりますような歴史的事実なりあるいは国際間の南ベトナム認めております状況、あるいはまたサンフランシスコ平和条約に出て調印したというその事実なり、それらの面からして全ベトナム代表するものと日本認めますことは、当然のことではないかとわれわれは存じております。
  29. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は個人の場合でも、国家間のことでも合意の上で両方が確認したものでなければ通らないと思います。例をとって申し上げますと、私が藤山さんに十万円の借金をしたといたします。あなたはお金持ちですから私が借りた方にいたします。そのときに私はやっとのことでお金をこしらえてあなたに返すことができた。けれども、借りたときにあなたの方では、当然利子も支払ってくるものだ、実業家の認識としてそれが常識と思っていらっしゃった。ところが私の方は貧乏な人間ですから、利子ぐらいは藤山さんはかんにんしてくれると思っておった。返しに行ったところ、両方の思いが違って、利子を払えという藤山さんの方と利子は払わなくてもいいという私の意見が衝突して話がまとまらなかった。こういうときに、一本とってなかったならば、藤山さんは私から利子をとることはできないと思う。それと同じように、北ベトナムが了承をしないところの全ベトナム代表者という一方的な解釈は、断じて人種のいかんを問わず、国籍のいかんを問わず、これを通す人はないと思うのですが、いかがでございますか。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私と堤さんの利子の問題は、ちょっとはっきりこの例に当てはまるかどうかわかりませんが、今日までわれわれが再三申し上げておりますように、日本として南ベトナムを正当な全ベトナム代表する政府として認めておる歴史的な上においても、あるいはまた国際的な環境の上に立った承認国その他の数から申しましても、あるいはサンフランシスコ条約に出て、そうして南だけの調印をしたということには考えられない事実から見ましても、私どもはやはり全ベトナム代表する政府としてあるということは考えざるを得ない。従って賠償にあたりましても全ベトナム代表するものとしてその算定考え、またそれに対して将来全ベトナムに及ぶような方法によってできるだけ賠償をやっていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  31. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 藤山外務大臣は大臣になられる前には資本家、財閥としてずいぶんお金もうけの上手な人だと思っておりました。(「今でもそうだよ」と呼ぶ者あり)今もそうだと思いますが、巨額な富をこしらえた資本家にしてはどうも話のわからぬお人だと思います。私は感心いたしております。私ならばそういう話で相手と商売ができるとは思わない。商売と同じように、政治の問題も、国際上の取引も私は同じだと思うのでございますが、これは百も承知の上で藤山さんがとぼけていらっしゃるという解釈を私は今のところさせておいていただきたいと思います。わざととぼけていらっしゃるのです。  そこで私は過日衆議院の本会議でもまたこの委員会でも質問をしたことでございますが、政府は今回南ベトナム政府に対して賠償金を支払うわけでございますが、これまでの答弁によりますと、将来南北の統一したとき再び賠償を請求されることはないと思うと述べておられます。これは政府の一方的な見解です。将来再び賠償を請求されることはないと思っているというのでございます。私たち納税者は、二重払いしないと思いますでは不安でございまして、思うではなしに、二重払いにはならないというはっきりした答えをいただかなければならないのでございますが、いかがでございますか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ジュネーブ会議でもありますように、選挙を通じて一つ政府ができる、それが統一という言葉で申しますか、何という言葉で申したら適当かわかりませんが、一つ政府が成立すると思います。その政府は当然今日の賠償協定を引き継いで参るわけでありますが、その場合におきましてサンフランシスコ条約によっての請求権というものは引き継がれており、またそれによって支払われた賠償というものが実効をおさめているわけでありますから、その限りにおいてベトナムの新しい政府から何らかの要求が起こるということは、考えられないわけでございます。
  33. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 考えられないわけで、そう思っているという政府は一方的に独善的な解釈をして、再び請求を受けないということにしていらっしゃる。それも思うとしか言えないわけです。藤山さんがこういうふうにして一方的に自分の都合のいい解釈を国民に押しつける、そうしてそう思っているのだから、もう一度あらためて請求されることはないだろう、こういうところでぼかしてこの賠償を何とかして国会を通そう、こういうような御意図があるやに思います。  そこで次に問題を移しますが、アジア諸国の自主独立は藤山さんの常日ごろからの口ぐせでございます。私たちが冷静に判断をいたしますならば、南ベトナムが自由主義陣営のかいらい政権なら、先ほど申しましたように北ベトナム共産主義陣営のかいらい政権であると第三者は言うと思います。日本政府は、現実北ベトナム統治しているホー・チミン政府についてどのような見解を持っておられるか。今まで南ベトナムばかり私たち質問して参りましたけれども、これを無視していらっしゃるところのホー・チミン政府に対して、北ベトナム政府に対して、政府がどういう見解を持っていらっしゃるかということは、まだお聞きしたことはございませんので、一つその点も政府の御見解を承りたいと思います。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 南ベトナム政府がかいらい政権だ、それだから何か合法政府ではないのだというような御意見が前々からあったようでありますけれども、われわれは合法政府であって、しかも自由主義陣営と仲のいいということ自体がその合法性を否定するゆえんにはならぬと思います。むろん言葉意味からいいますと、あるいは北の政府がどういう立場にあるか、お話のように北ベトナムがどういうふうにあるかといえば、むろん共産陣営の影響を受けた政府——それをかいらい政府と呼ぶのが適当であるのか、どうであるのかは別といたしまして、そういう影響を受けました一つの地方的な交戦状態にある団体があるということは、事実であることは申すまでもございません。われわれといたしましてはやはり正統政府というものは南ベトナム政府であって、しかもそれがかいらい政権といわれますけれども、かいらい政権というものは非合法の政府だということはないのでございまして、それは自由主義陣営と仲のいい政府だということがあっても一向差しつかえない。それをもし共産主義陣営の方からかいらい政府と呼ぶならば呼んでも差しつかえないでしょうけれども、そのこと自体が非合法政府だということにはならぬ、こう思っております。
  35. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 現実北ベトナム支配しているところのホー・チミン軍の権力というものはお認めになるのですね。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 北においてそういう団体を代表して、そしてホー・チミンというのが力を尽くしているということは、先ほどから申しているように、事実としてそういう南の施政権が及ばないところがあるということは、認めているわけであります。
  37. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、ホー・チミンというところの権力者は民間団体ですか。それとも、何か全国に支部がある連合会の本部なんですか。それとも政府なんですか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それは政府という言葉にとらわれることはいかがかと思うのでありまして、たとえばアルジェリアの問題でもFLNを政府認めるか認めないかということは、これは非常な問題があるところだと思います。むろんそれを支持する人たち政府認めるということもございましょう。しかしわれわれとしては先ほど来申し上げておりますように、南ベトナムの方が正統政府だということを認めておるわけなんでありまして、その見地から申しますれば、北ベトナムのホー・チミンがはたして政府とまではっきり言えるか言えないかということは別個の問題だと思います。
  39. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私たちが判断するところでは、容共左派が観念的に自由民主主義国をきらうのと同じように、岸内閣は観念的に共産主義陣営を敵視していらっしゃるのです。ですからオープンに北と南に公平な分析をなされば、こんなにしつこく私、突っつかないのです。けれども事を曲げて、筋を曲げてまで南には正統性をつけるけれども思想の違うところの共産主義陣営に対してはものも言わない、敵視するんだというあり方をなさるから、よけいお立場が悪くなる。両方に対してオープンな立場でものをおっしゃったらもっと事は処理しやすいのです。どうでしょう、両方に対して五分と五分で公平にものを言うということをここで断言しなさい。そうでないと国民納得できないのです。ものを言うくらい損はしないでしょう。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは特に敵視しているとかきらっているとかいうことでないのでありまして、現実歴史的過程から見まして南の方が合法政府だということを認めておるということを申し上げておるわけであります。
  41. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 共産主義と民主主義陣営とに対してあなたが公平に、五分と五分に分析なさったからといって、あなたが共産党寄りなどというばかなことをだれも考えないのでありまして、これは正しい解釈をなさった方が、私は国民納得しやすいと思う。そこでアジア諸国の自主独立を唱えるなら、この賠償についても——ホー・チミン政府現実に政治力を有しておるのです。ですからこれに対しても何らかの形で話し合いの場を持つべきではないか、私はかように考えるのでございます。思想は違うし、南ベトナム政府を国際法上の正統政府として日本政府認めておるんだけれども、しかし、諸般のむずかしい事情の上に立って、賠償を払うということを考えたときには、ホー・チミン政府に対してもやはり一応の話し合いや了解を取りつけておかなければならぬということを考えるのが当然のあり方だと私は思うが、岸内閣藤山さんは、このことについて今まで一度でもお考えになったことがあるかないか、そこをお聞きしたい。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私、別に共産国家をきらっておるわけでもございませんし、忌避しておるわけでもございません。できるだけ友好的な立場をとっていきたいとは考えております。が、しかし、今回の場合はそういう問題とは別でありまして、われわれとしてはサンフランシスコ平和条約調印国として、その十四条の義務を完全に履行して参らなければならぬ。しかも、平和条約調印国としての南ベトナムは全ベトナム代表する政府として歴史的にも認められておる事実がありますので、これと話をすることは当然だと思います。また、それによって将来全ベトナムが統一されればなおさらのこと、全ベトナムに対する賠償の支払いになるという観点をとっております。単に自分の好ききらいなり、虫ずが走るという意味で申し上げたり、あるいはこういうことを言ったら共産主義者に見られるのではないかということを考えておるわけではございません。
  43. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 一度もお考えになったことがないようでございますが、賠償協定の交渉過程において、北ベトナムの方から何らかの間接あるいは直接の態度の表明が日本政府に対してあったかなかったか。私が先ほどお尋ねしたのは、日本政府の側から北ベトナムに対して話し合いの場を持たなければいかぬということを考えなかったかということを聞いたのですが、今度は逆に、向うの方から、北ベトナムの方から直接でもよろしいし間接でもよろしいから、何か態度の表明がなかったか、また調印政府に対して何らの意思表示北ベトナムがしておらないかどうか、このことをちょっとお尋ねしておきたい。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日まで特に北ベトナムから何らの交渉もございませんし、何らの意思表示もないように思っております。むろん北ベトナムとして、いろいろ新聞紙上に報ずるところによれば、ニュー・デリーでもって、賠償を放棄する、あるいはいろいろなことを言っておるのを読んだことはございますけれども、直接われわれに対しての連絡は何もございません。
  45. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 向こうからもなかった、それからこちらからも話し合いの場を持とうとも考えなかった、こういうお答えでございますが、ことしの六月二十七日付の先ほど私が読みました衆参両院の正副議長にあてられた要望書がありますが、その要望書にこういうふうに書いてございます。ベトナム民主共和国国会常任委員会議長トン・ドックタンからの衆参議長あての要望書、その南ベトナム賠償協定についてという見出しで一番先にこういうことが書いてございます。閣下、一九五六年八月に日本政府南ベトナム当局との間にベトナム戦争賠償の交渉が始まってから約三年、ベトナム民主共和国の人民及び政府は、幾たびかこの問題に関して自己の主張を表明して参りました。こういうふうに言っております。これを読みますと、自分たち主張を幾たびか三年間やってきた、こう言われておる。今、知らなかったとおっしゃいますけれども、幾たびか表明してきたというふうに書いてある、この正副議長あての文書に対して、今私が読み上げましたが、どう思われますか。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほども申し上げましたように、たとえばニュー・デリーでもって何か新聞会見のときに、賠償は放棄するのだというようなことを言われたとか、そういうような程度の新聞報道は読んでおりますけれども、直接何らのアプローチはございません。
  47. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 こういうふうに書かれておるのですし、知って知らぬふりをするということもありますから、一応次に私はこの要望書は重要な意味があると思うのです。その点について質問をいたしますが、この要望書の中でこういうことが書いてある。ベトナム現実の事態を考慮し、またベトナム人の正当な意思に基づきわが人民の主張は次の通りに要約されます。ベトナムに対する日本戦争賠償支払いは、ベトナム全体に関する問題である。次に、この問題に関して日本政府が行なった南ベトナムとの一方的な交渉はジュネーブ協定の精神及び国際法に反し、かつベトナム現実の事態に一致しないがゆえに無効である。次に、ジュネーブ協定が規定する通り南ベトナム当局は、ベトナムに対する戦争賠償に関してベトナム全人民を代表して日本政府と交渉する資格を持たない。次に、ベトナム人民共和国の人民及び政府は、日本政府南ベトナム当局に対する戦争賠償支払いが、日本及びベトナム両人民の利益を害するものと考える。以上の根拠に基づきベトナム人民は過去、現在を問わずベトナム人全体が深く関心する問題である戦争賠償に関する日本政府南ベトナム当局との一方的な交渉に、幾たびか繰り返し抗議を表明してきました。こう書いてある。幾たびか繰り返し抗議をしたと明確に述べてあるのでございますが、それでもなお明確に日本政府に対して何の意思表示もなかったとお答えになりますか。もう一度念を押します。
  48. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれにあてて何らの意思表示はありませんでした。
  49. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それではまた要望書のあとの方でこういうことを書いております。  このような事態にかんがみ、ベトナム人民及びベトナム民主共和国国会を代表してわれわれは一九五九年五月十三日の日本政府南ベトナム当局との間の戦争賠償協定認めない旨を表明します。こういうふうに書いてある。この賠償協定を国をあげて否定しておるわけなんです。政府は今日まで、今批准を求めている協定は、全ベトナムに対するものだと述べてこられました。これは一方的な見解で、北ベトナム主張と著しく異なっておるということは、再三再四つついてきましたが、このようにはっきりいたしております。この日本政府の思惑と北ベトナムの思惑の違いをどう処理なさいますか、その点をお聞きいたしたいと思います。
  50. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としましては今お読み上げになりましたものは、ごく最近と申しますか、十日かそこらの前に何か議長を呼んで聞くというようなことで、何事かということで、そういうものが来ておるということを知ったのでありまして、それまでわれわれは何も知っておりません。むろんわれわれは南ベトナムサンフランシスコ調印国として、その代表者としてやっておるわけでありますから、従ってそういう意味におきましてわれわれはそれを通して参ればいいわけです。その思惑ということを知ってはおらないわけであります。
  51. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連。今藤山外務大臣の話を伺いますと、衆議院議長に来たその書簡をごらんになったという話ですか、それは事実でございますか。
  52. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まだそういうものが来たということをわれわれは伺っただけでありまして、内容について今お話のあったような点を聞いておるだけでございます。
  53. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこら辺が重要なんですが、内容をごらんになったのでございましょう。直接にごらんになったかどうか知らぬが、一応その要旨は御存じなんでございましょう。
  54. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 直接には知っておりません。
  55. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、堤さんのお話は十日前に知っておったがという答弁は違うのでございますか。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 十日ほど前に、ここでもって衆議院議長を呼んでどうとかいう話がありましたので、そういうことは何事かということで、われわれ衆議院議長にそういう手紙が来てたんだということを知ったわけでございます。
  57. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは委員長に伺っておきますが、その衆議院議長あての書簡については、われわれ国会議員としてこれはぜひ配付をしてもらいたいということを再三要求をしているわけです。これは予算委員会においても行なっているわけです。しかもこの書簡は、私の聞いている限りにおいては向こう側の国会で決議をしたものが来ているので、従ってわれわれは衆議院議長にあてられた書簡というのは単に議長個人に来たのではなくて、国会を代表する議長に対して来ている。そうすると当然われわれ国会議員に対して配付される権利があるとわれわれ考えているのだが、この点の処理はどういうようになっておりますか。
  58. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この問題につきましては過日穗積君からの要望がありましたから議長と相談しましたが、その結果を理事会で相談しました結果、あなたの方の理事もこの扱いについては御賛成をいたしておりますから、あなたの方の理事の諸君からお聞き下さい。
  59. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それはおかしい。外務委員会での扱いとして、きのうわざわざ留保をつけているはずだ。これはもともと問題は議運で扱った問題だから、外務委員会も同時に穗積委員から要求した。それの扱いについて委員長からの報告は一応了承しているけれども、もともとは——今のお話では全部が了承しているというお話だった。そうではない。外務委員会の扱いとしては確かに承りました、このことを私も国会対策委員会に報告します、ただしこの問題はもともと議運で問題になった点であるから、それをどうわれわれが判断するかは、まだ了承はできないということは、きのうちゃんと留保として申し上げているはずです。その点を岡田委員に対して、全委員に対してはっきりさしていただきたい。誤解を招く。
  60. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 あなたのお話しした通りの打ち合わせです。しかし岡田君は議運の問題を私に聞かれても答弁ができませんから、それは議運の委員長にお聞きを願います。
  61. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 議長が、議長にもらった手紙だから個人でもらったとお思いになったらこれは大へんな間違いでございまして、私たちは、国会議員全体の代表としての議長がおもらいになった手紙ですから、国会を代表して、来た直後に日本政府にこれをはっきりとおっしゃるのが議長の任務だと思いますが、これは十日前にしか知らされなかったと外務大臣がお答えになっておるのでございますから、この問題につきましてはまた議運なりこの理事会を通じて善処するように問題をこれらの処理については残しておきたい。  そこで、私と藤山外務大臣とが質疑応答をしたわけでございますが、この質疑応答を通じての解釈は、私と藤山さん二人の独善的な解釈でなしに、これを聞いている第三者がどう受け取るかが問題でございますから、私はこれ以上大臣をつつがないことにいたしますけれども北ベトナムの意思を無視して南ベトナムだけに賠償を支払うという日本政府のあやまちは、はっきりとここにいたしておきたいと思います。政府は一方的、独善的観測によって賠償協定を批准しようとしていますが、後日になって観測に誤りがあったとき、納税者の前にいかなる責任をとるか、きょうは一つその点をはっきりしていただきたいと思います。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 誤りがないと思っておりますので、そういうことを考えておりません。
  63. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 誤りがないと思っておりますのでということでございました。私は誤りがすでにここにあると思っておりますからはっきり申し上げておきます。私たちは再び賠償要求を受けることがないという証拠を見せてもらわなければ、これは信用できないのでございます。しかしこの点について政府北ベトナム政府から何らの了解も得ているところの様子もないし、またほかに何も証拠を持っておられないように思いますから、今日までの答弁によれば国際慣行がそうであるからと言われますけれども、今度のことは少しケースが違います。すなわち事実上の戦争の及ぼしたところの害は、北ベトナムが受けておるのでございます。きょういただきましたこの資料につきましても、はなはだ不思議に思いますのには、大体どの地区に何の被害が多かったというような場所はちっとも書いてない。何回おっしゃいましても実質に北の損害がほとんどであって、南はほとんどなかったということが、あまり国会ではっきりすると困るので、逃げる一つの方便としてわざと被害を受けた場所などが書いてないんだ、私はこういうふうに解釈しておりますが、これは北ベトナムが受けた戦争被害であるということは非常にはっきりいたしております。先ほども大臣みずから鶏三羽二百億と言っておられましたけれども、この北は明らかに、今まで私が申しましたように賠償権を留保するということを宣言しておるのであります。留保するということは——よろしゅうございますか、いつの日にか再び要求するということにほかならないと私は解釈いたします。それはいかがでございますか。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもサンフランシスコ条約調印しました。そうしてその十四条に対する義務の履行をいたしておるわけでありまして、その限りにおいて要求されるとは思っておりません。
  65. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 あなたは思っておられなくても、いろいろの資料を通して私がはっきりしましたように、北は一九五六年八月の二十五日に声明をいたしております。それから今申しましたように、われわれ国会議員全体ともいうべきところの向こうの国会の決議に等しいものが、両院議長にあてられてきております。こういうものを見ますときに、いつの日か無視された北が独自の立場に立ってもう一度要求してくるということは、非常にはっきりしておる。この協定によって南ベトナム政府賠償を支払ったと仮定しましても、北は南部の人口約千二百万をしのぐのでありまして、北ベトナムは千三百五十万、この千三百五十万の人々には何らの恩恵は及ばないと私は考えます。しかも、何度も述べますように、事実上は形態の異なる二つ政権ベトナム領土に現存する以上、私たちが支払った賠償が北に恩恵が分けられるということは、私は想像ができないのでございます。この点藤山さん、いかがでございますか。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとしては先ほど来申し上げておりますように、全ベトナム損害または全ベトナムに対する合法政府としての立場から南ベトナムに対して支払いをいたしておるわけであります。従いましてこの賠償ができまして、それからできる果実というものは、全ベトナムの利益になるというふうに確信をいたしております。     〔発言する者あり〕
  67. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 委員長与党委員の方は、私まじめに質問しているのにひやかしなさるんです。これは、了解がいかないからやけのかんぱちで言っていらっしゃるのはわかっている。こういう態度は私はふまじめだと思うんです。どうぞお静かに。
  68. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 それはひやかすということは与党も野党もいけません。どうぞ御静粛に願います。
  69. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私はどう考えても北に恩恵が及ぶとは考えられません。政府の解釈によりますと、南ベトナム政府を通じて支払いは全ベトナム国民大衆に対する賠償支払いと見なし得るということでございますが、十七度線以北に対して何らの政治力のない南ベトナム政府がどうして北の国民に恩恵を分け与えることができるか、これははなはだ不可思議に思うのですが、国務大臣、この点いかがでございますか。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは全ベトナム代表する政府として全ベトナムのために賠償協定締結いたしておるわけであります。ことに水力発電その他のものができました将来、そうした果実が全ベトナムに影響を与えるとわれわれは考えております。むろんジュネーブ協定にもありますように、統一がされた場合にはなおさらのことだと思います。
  71. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 この場をのがれるためにそういう勝手なことを言っていらっしゃるのでしょうが、これらの諸点を考えてみますときに、私は納税者、日本国民があなたの御答弁に対して百歩、いや百歩といわず千歩、おっと万歩かもしれませんが、万歩引き下がって、この際政府主張認めるとしても、最低限日本政府は今後いかなる形の要求があっても再び賠償金を支払わないということを明確にしないと納得できないと思います。一応あいまいな答弁であり、いろいろな疑点はあるけれども譲ろう、そうして支払うことを認めよう、こういうことを考えたといたしましても、最低限国民が望むものは、今後いかなるところの北ベトナムから要求が出されても、日本は再び賠償を支払うことがないのだというところのその明確な政府答弁がないことには、二重払いの懸念はとれないわけであります。政府は今日以後賠償を払いましたならば、いかなる形のものであってのベトナム賠償要求に対して応じないということをここではっきり言えますか、言えたら言って下さい。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、今回の賠償協定でもってサンフランシスコ条約賠償義務を完全に果たすわけでありますから、払うことはございません。
  73. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 絶対に払わないということを国民におっしゃったわけでございますから、一つ間違いないようにお願いします。政府南北ベトナムが統一した場合という解釈を盛んに使われておりますが、それでは今払わないとおっしゃいましたが、今度はその払わないとおっしゃった政府お答えをもとにして、もう一つ聞かせていただきたいと思います。南北ベトナムが統一した場合ということを仮定して盛んに今まで使っていらっしゃるわけですが、南北ベトナムの統一について政府はどういう見通しを持っておいでになるのか。盛んに、統一されたときには、一緒になったときにはということを仮定しておっしゃっておるのですが、具体的にこの統一についてどんな見通しを持っていらっしゃいますか。
  74. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通りジュネーブ会議後二年、一九五六年六月でありましたか、ロンドンにイギリスとソ連と同時にジュネーブ会議の議長が集まりまして、現状においてはジュネーブ会議の決定を遂行されることは非常に困難であるという見通しのもとに関係国に通知したこともございます。そういう状況でございますから、現状においてすぐそういうことが実現するということは困難ではないかというふうに見ております。
  75. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 現状においてはそんなに早く統一される見通しがないと思っておる。大体二年くらいだとか、十年くらいだとかいうことは、日本政府としては今おっしゃられないだろうと思います。それでジュネーブ協定は今おっしゃったように平和的な南北統一を求めておりますが、この精神は今もお答えになったように十分尊重されるもの、こういうふうに解釈を今の御答弁からいたしますが、ジュネーブ精神は十分尊重なさいますね。
  76. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとしては、むろんジュネーブ精神というものはできるだけ尊重して参りたいということは当然のことだと思います。
  77. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 日本政府が尊重なさるのですか。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本は御承知のようにジュネーブ協定の当事国ではございません。しかしながらやはり平和ができ上がりますことは望ましいことでございます。そういう統一でも行なわれるということについては望ましいことだと考えております。
  79. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 もちろんジュネーブ協定の精神は尊重しなければなりません。そこでその協定最後の宣言にこういうことが書いてあります。ベトナムの政治的諸問題の解決は独立、統一及び領土の保全の諸原則の上に立って行なわるべきであるとしております。今回の賠償問題について、政府が冷静にこの宣言を吟味しますれば、みずからの今回の賠償協定にはいろいろと不穏当な点があるということが出てくると思います。今おっしゃいましたように、ジュネーブ協定の精神を尊重するのならば、このような形の賠償というものは、非常にジュネーブ精神に対して不穏当だと私は思いますが、この点いかがでございますか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、戦争損害を与えました国に対して、一日も早く賠償を払ってその責任を果たすことは当然のことだと思います。そのこと自体、全ベトナムの人のための幸福になることでありますから、ジュネーブ精神に反することはございません。
  81. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 サンフランシスコ平和条約十四条の私たちの責任、これはわかりますけれども、私が今申しましたジュネーブ協定の精神というものは、すなわち今から私たち賠償問題というものを割り出してみますると、やはり統一後に賠償を行なう方がよいということは、だれが見ても常識でございます。それからこの賠償を支払うことによって、南北の対立を激化させる、これは私が簡単に勝手に一人合点で言っておるのでなしに、南と賠償協定を結ぼうとするところの日本政府並びに南に対して北ベトナム見解というものが、先ほどから私が申しましたように、はっきり出しております以上は、非常に南北ベトナムの間には気まずいものが生まれて参る。これは外務大臣はお逃げになりますけれども、南がもらったって北は何にも恩恵に浴さないというのが北の人の言い分でございまして、支配権の違うところの二つ政府が、おのおの別個に世帯を持っておりますので、隣の世帯に入ったって、うちの世帯に入ってこないというのが偽わらざるところなんです。従ってこういうところから来たしますところの南北の対立、これはそうでなくても思想的に対立しております南北ベトナムの対立をさらに激化させるところの原因にこの賠償がなるのでございます。それからまた南北の交戦状態を膠着させてしまって、南ベトナムあるいは北ベトナムどちらか一方の軍事力を増大することになり、統一するという方向には逆行してしまって、ますますこの二つが分かれて固定化するような原因をこの賠償を中心として私は作るようになると思います。それからラオスに対するところの北ベトナムの侵略も、ここ二、三日云えられております。それからアメリカ軍のICA、経済協力によって辛うじて南ベトナム経済力と申しますか、国民経済が成り立っておるということもはっきりいたしておりますと同時に、なお軍事力を増大いたしております。南ベトナムには日々絶えないところのアメリカからの援助が行なわれる、こういうことになりますると、北と南とに対しましては、軍事力を増大しつつあるという現実を見ますときに、日本が支払いますところの賠償が、私は何と弁明してみても、軍事力を増強するところの一つの助けになるという解釈を——北は北で、南は南で、お互いに反対の方になされるならば、そういう見方がなされると思います。こういう点で私はどう見ても、ジュネーブ精神というものを尊重するという政府言葉と実際にやりつつあることとは、反対のことがなされておるということをはっきりしておかなければならないと思います。藤山さんは、私はジュネーブ精神を尊重するのだ。しかしやることはジュネーブ精神に反したようなことをやっておるのだということを、はっきりここで証明なさっておるように思いますから、御反省願わなければならないと思います。  次に、藤山外務大臣にお尋ねいたしますが、あなたは一九五五年のバンドン会議に高碕達之助氏とともに日本代表として出席して、南北のすみやかなる統一を願い、統一ベトナムの国連加盟を支持するという宣言を承認してきたはずであります。あなたは今外務大臣となられて、日本の外交の最高責任者として、国際信義の上に日本の自主独立を確立しなければならない立場におられます。そのあなたが、四年前参加して決定されたアジアの平和を求めようとするバンドン会議の決議を無視されるのか、単にベトナム賠償のみの問題でなく、日本がアジアの一員として、アジア諸国との共存共栄を願うならば、アジア諸国の願いであるところのベトナム統一に水をさすような行為は、断じて行なってはならぬのでございます。外務大臣はこの点についていかがお考えになりますか、私ははっきりしていただきたいと思うのでございます。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんわれわれとしては先ほど来申し上げておりますようにできるだけ一日も早く統一ができますことが望ましいことは申すまでもありません。ただ一方において、先ほども申し上げましたように、なかなか統一ができないのだというような、ロンドンにおきますイギリスとソ連との議長国の話し合いもございます。そうでありますれば、他面われわれとしてはサンフランシスコ条約の義務というものをできるだけ早く実行して参ることも必要なのでございます。そういう意味におきましては、サンフランシスコ条約の履行というものを、われわれが認めております代表者に支払うことも当然のことだと考えておりますので、そのことを冷静に考えていただきますれば、それがじゃまになろうとは私ども考えておりません。
  83. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そういうふうに御言明になりまするけれども、実際に日本政府南ベトナム賠償協定を結んだあとに、南ベトナムがサイゴン放送で、われこそは正統政府であるということ、これをたてにとりまして、自分たちこそ正統政府であるということを放送しております。これが非常に北ベトナムを誹謗して、感情的に両方がなるような原因になったと言われておりますが、南北の対立を深刻化させてはならないというのが、私たちの取るべき道であると思うのでございますが、日本政府協定をお結びになってから、大きな顔をして北ベトナムに圧迫を加えるような発言を南政府がしておるということに対しまして、責任をお感じにならないものかどうか、この点伺っておきたいと思います。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは初めから申し上げておりますように、南ベトナム政府を合法政府として全ベトナム代表するものと認めておるわけでございます。その上に立って、できるだけ早くそうした統一ができることを望んでおるわけでございます。その意味においては、少しも変わった態度をとっておるわけではございません。
  85. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 日本政府賠償協定を結ぶことによって、南北間に感情的な対立を起こさしておるということについて責任を感じないような外務大臣では、日本国民は了としないということをつけ加えておきたいと思います。  それから今日まで政府は、賠償南北ベトナムが統一してから行なうべきだとの意見に対して、南北の統一がいつ行なわれるか見通しもない、それまで待つわけにはいかないとしてこの協定を進められたのでございます。現在ベトナムは自由主義陣営と共産主義陣営の極地点の様相を示して対立を続けております。不幸にして私たちの望むところとは逆に、このままの状態で固定化してしまう事態も、十分予想し得るのでございます。不幸にしてどうしても統一ができないで、このまま固定してしまうこともあるんじゃないかという懸念は、多分に私はあると思います。将来南北の両政府が両方ながら独立して、世界は両国を承認し、わが国も世界の大勢に従ってそれにならうときが来ないとも限らないと思います。これは外務省でもお調べいただきたいと思いますけれども、現に南北政府認めておりますのに、たしかパキスタンがあると思います。南ベトナムだけしか認めないと言っておりますけれども現実の上に立って両方とも認めておる国というのは、パキスタンのほかにもあると思いますから、一応調べてもらいたいと思います。こういうふうに、私が今申しましたように、願わないことではあるけれども、北も南もどうしても統一できないという不幸な事態が起こらないとは限らない。この二つがお互いに一つの国として独立して、世界はこの現実の上に立って北も南も一つの国として承認し、今と違って日本政府も世界の大勢に従ってそれにならうときが来ないとも限らないと私は思います。そのような事態が起こったときに、当然再び賠償の問題が起こってくると私は思います。南ベトナムはこの賠償協定で一切済むといたしましても、現在その請求権を保留している北ベトナムはそのときになって賠償要求するであろうということは、火を見るよりも明らかでございます。政府も統一はむずかしいと言われるのでございますけれども、このような事態に至ったときの賠償問題の取り扱いについてお考えがおありでしょうか。一切払わないとおっしゃいましたけれども、固定化してしまって、北が独立し、南が独立して一つずつに分かれたときには、私は再度の要求が必ず北から生まれてくると思います。これに対してどういうふうにお考えになるか、お答えを願いたいと思います。
  86. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど御回答申し上げましたように、サンフランシスコ条約調印国としての責任をわれわれは完全に果たしておるのでございますから、そういうことからくる賠償責任というものはございません。
  87. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣はもう少し全体に聞こえるように大きな声をお出しいただきたいと思います。あなたがそうおっしゃいましても、おのおのが独立して、おのおのを公平に世界が認めざるを得ないというような大勢になったときには、日本でもこれを対等に認めなければならぬということになってくると思います。そのときに、統一をされるであろうということを見越して、国際上の慣行に従って南ベトナムに払った賠償南北統一したものに引き継がれると解釈したのと違った結果が生まれてくるのでありますから、違った結果が生まれてきたときには、私が先ほど申しました再度の要求というものがあるから、しかも相手であるところの北ベトナムは請求権を保留すると言っているのでございますから、そういう藤山さんの無責任な答弁では国民納得しないと思います。自民党の方はこういうふうにしてごまかしたいでしょうけれども国民はごまかせません。     〔発言する者多し〕
  88. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 静粛に願います。
  89. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 固定化して二つに分かれてしまったときにはどうなるか、これはもう少し責任のある答弁をなさらないと私は済まないと思います。
  90. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれはサンフランシスコ条約十四条によります賠償責任を全ベトナム代表する政府として今回払うのでありますから、サンフランシスコ条約上の責任というものはこれで解決できると思います。
  91. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 この請求ができないというようなヤジもございますけれども、しかし請求権を保留すると言って実際に損害をこうむった北ベトナムが残る以上、こういうことは法的な問題は別として、国際信義の上から北ベトナムを無視するというような外交はあり得ないと思いますから、この点は一つ速記録にはっきり残しておきたいと思います。  それから国際情勢に従ってこれを承認する際としない場合と出て参りますが、こちらは、この南北の対立が固定してきたから、賠償要求があったとき、それがいかなる形であるにもせよそれはしないとおっしゃいますが、日本政府は今回の賠償を全ベトナムに支払ったものとして、要求がこない、こういうふうに考えておるとおっしゃるのでございますけれども、逆に積極的にこれを拒否して、再び払わないというところの宣言を、協定を結ぶにあたって日本政府がしておく必要があると私は思いますが、いかがでございますか。
  92. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれはあくまでも、先ほど来申しておりますように統一ができることを希望いたしております。従って二つの国になるというような仮定の上に立って問題を論ずることは適当でないと思うのであります。そういうような事態が起きましたときには、またそのときで考えますけれどもサンフランシスコ条約十四条の問題はこれで解決いたしております。
  93. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 サンフランシスコ調印に出たところの南ベトナムだけを対象にして考えて事が済むというのは、大へんな間違いでございまして、北ベトナムというものがあるわけなんです。固定化するか統一できるかわからないという不安が現にあるわけでございまして、この固定化した場合という仮定の場合を想定して答えはできないと、吉田さんみたようなお答えがあったように思いますが、しかし先の見通しがはっきりと立って、絶対に払わなくてもよいというその証拠が国民の前にはっきりしないと、私はどうしても国民納得しないと思います。従って私は、藤山さんが、絶対に私たちはこれでサンフランシスコの責任を果たしたのであって、全ベトナムに対する賠償を全部支払ってしまったのであるから、今後はいかなる人たち要求があっても受け付けないというところの宣言をしてから調印するのでなければならないと思いますが、これをする必要があるとお考えになるか、ないとお考えになるか。
  94. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が繰り返し申し上げておりますように、サンフランシスコ条約の義務をこれで果たしたのだということを申しておりますこと自体が、その通りなことであろうと思っております。
  95. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 サンフランシスコ条約で、南ベトナムに払ったら、条約の中にある日本の責任は完全に果たせるんだということは、しきりに与党の議員がおっしゃっておりますけれども、そういう法律的な解釈とは別個に、北ベトナムというものを無視して通らない政治問題が現実にあるということに目をつぶって政府与党もこの場をごまかそうとするならば、この協定承認は国会でされないであろうことを私ははっきり申し上げておきたいと思います。  それではこの問題は、私の質問として不満足なところは他のクラブ委員質問をするといたしまして、その次に私はもう少し時間をいただいて質問をいたしたいと思います。それは私が当初に申し上げましたいわゆるたくさんの影響がございますけれども、その種々あります影響のうち日本ベトナムとの貿易の点についてでございます。現在日本南北ベトナム貿易を行なってきたのは周知の通りでございます。この貿易の健全なる育成は私たちの最も望むところであります。今日までの政府の御答弁によりますと、賠償協定締結後といえども何ら南北とも貿易上に支障がないとのお話が、本会議の私の質問になされました。事実そうであればけっこうでございますが、この点一つ数字をもってお答えをいただきたいと思います。
  96. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 お答えいたします。今の数字はわが国と北ベトナム貿易通関統計で調べてみますと、昭和三十二年の一月から十二月までは、わが国の輸出が二千ドル、わが国の輸入が百二十六万ドルになっております。それから翌年の昭和三十三年一月から十二月までは、わが国からの輸出は百四十四万ドルございまして、わが国の輸入が六百八十八万ドルになっております。それから賠償協定ができましたことしになりまして、ことしの一月から七月までの数字を見てみますと、わが国の輸出は今まで二百七万ドルになっておりますし、わが国の輸入が四百十九万ドルになっております。
  97. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは今ちょっとお早かったのでもう一度あとから見せていただきたいと思いますが、概略を伺いますが、南ベトナム北ベトナムですね。この貿易の額は日本にとってどちらが有利であるか。すなわち日本から輸出する額、輸入する額において、こちらがたくさん買うてもらう方がよいお得意で、日本の少ない方がよいお得意だと思いますが、北と南に分けて、数字の上から北と南とどちらが日本にとってよい相手国でございますか。
  98. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 今までの輸出実績を申し上げますと、今北の方はお答えいたしましたが、南の方は同じく通関統計で申しまして、昭和三十二年におきましては、南ベトナムに対するわが国の輸出が五千七百六万ドルで、輸入が五百十六万ドルでございます。それから昭和三十三年はわが国からベトナムに対する輸出は三千九百五十三万ドルで、わが国の輸入は百二十五万ドルでございます。またことしに入りましてから、これは九月までの数字で、今北ベトナムの場合は一月から七月までの数字でございましたが、そこまではわが国からの輸出は三千九百四十九万ドル、わが国の輸入は百九十五万ドルであります。
  99. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今数字をお示しになりましたが、私が調べたところでは北について申しますと、一九五六年には三十三万八千五百ドルが日本側からいって輸入、輸出が三十八万九千二百ドル。それから同じように一九五六年について言いますと、南の方は輸入が二万八千五百ドル、それから輸出が、五千七百万ドル。それから一九五七年について北の方を言いますと、輸入が四百二十一万三千三百ドル、輸出が三十八万六千八百ドル、こういうことになっております。それから南について言いますと、三百八十八万五千ドルが輸入でございまして、五百九十一万六千三百ドルが輸出。一九五八年について言いますと、輸入が三百六十七万六千八百ドル、それから輸出が四百七十万ドル。それから南について言いますと、輸入が百二十五万九千ドル、輸出が三千三百五十三万五千ドル。それから一九五九年について申しますと、輸入が二百四十一万三千ドル、輸出が百七十一万九千百ドル、南について言いますと、百五十二万六千ドルが輸入で、輸出が二百十八万七千五百ドル、こういうふうになっておりまして、数字の上から言いますと、概して私は北ベトナムの方が日本のお客様としては有利なように思うのでございますが、そちらの見解はいかがでございますか。
  100. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 ただいまお読みになりました数字がどの数字であるかわかりませんが、私のは通関統計でございまして、それから貿易の際にはよく日銀の為替統計というものが使われております。ところが日銀の為替統計におきましては、ことしの五月になるまでは北と南を分けないで計上をしておりました。私のは通関統計で申し上げたので、為替統計と通関統計の数字は異なることもございますが、しかし、北と南に分ける際には通関統計でやった方が正しいのではないかと思っております。
  101. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が問題にいたしたいと思うのは、北ベトナムとの貿易なんです。なぜかというと、南と協定を結ぶことによって北ベトナムは事実この五月から無協定に入っておる。協定を結びまして実際取引するはずになっておったものが、実は向こうの方で立ち往生しておるという現場の状態です。そこで私は北ベトナムとの貿易について問題にしたいのでございますが、先日の当委員会の御答弁によりますと、ことしの一月から六月のわが国が輸入したものは二百二十四万三千ドル、輸出は百七十万九千ドル、こう答えられております。これも一年の計算でございまして、倍にすれば昨年より成績がいい、こういうふうに藤山外務大臣は言われたのでありますが、事態の変化は、ことしの五月十三日の調印をなさった以降に起こったことが問題なのでございます。今あなたは一月から七月まで、こうごまかされましたけれども、一月から五月までは協定を結んでまともに民間の人たちがやっておられたのでございますから、これは問題ないといたしましても、五月十三日から今日までの状態を調べてみませんと、北ベトナムとの貿易というものがどうなっておるかということは実際に出てこないのであって、今年の一月から六月までのものを二倍にすれば、今年の末のものが出る、こういういいかげんな答えをしてもこれはごまかしでございます。この五月十三日を契機として北ベトナムは態度を硬化したといわれておるのでございます。ですから今年の一月から六月までを二倍するなどという簡単な算数では、今後の調印後の北ベトナムとの貿易数字は生まれてこないと思います。(「政府はそう言っていない」と呼ぶ者あり)そう言ったのよ。政府は言いのがれのために、二倍されておるのではないかと私は解釈をいたしますが、本年の一月以降六月までと同じように貿易額が予想されておったのでございますけれども、情勢が変わって参りまして、この五月以降というもは芳ばしくない情勢になっております。ですから、今年の五月十三日以降の北ベトナムとの貿易の状態を数字的に明確にあげて、五月十三日後といえどもちっとも貿易は停滞しておらないのであって、この間本委員会において藤山外務大臣が答えられたように、ますます上昇の線をたどっておるというような、よい結果が生まれておるか。五月十三日以降をこの委員会でお示しになって、貿易に影響がないのだという証拠を見せていただきたいと思うわけでございます。
  102. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 二つ数字を申し上げます。二つとも通関統計でございますが、まず四月から六月までの北ベトナムヘの輸出は五十万ドルでございます。それから七月から九月までの輸出は百六十五万ドルでございます。  それからもう一つ数字を申し上げますが、こちらは円になっておりますが、これは六月の数字を申しますと一千八百万円でございます。それから七月の数字を申しますと一億九千万円でございます。それから八月の数字を申し上げますと二億九千万円でございます。それから九月の数字を申し上げますと一億三百万円でございます。それで前の数字と比べてみましても、そう下がっていないということがわかると思います。
  103. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいまちょっとおっしゃっていただきましたけれども、一年、二年前のところを月別に比較できるように、今おっしゃったのを資料にしてお出しいただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  104. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 資料にしてお出しいたします。
  105. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私勝手でございますけれども、だいぶ疲れましたし、それから外務大臣も五時を過ぎてお気の毒でございますから、私の方の時間はまた後日社会党の方からいただけるそうでございますから、きょうはこの辺で打ち切りまして、この資料をいただくところから引き続いてまた私の方で時間をいただきたいと思います。
  106. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 穗積七郎君。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 資料要求しておきたいと思いますから、委員長から政府の方へよろしくお取り計らいをいただきたいと思います。それは一九五五年以後のアメリカの南ベトナムに対する経済並びに軍事援助の額と内容、それから同時に、同年以後南ベトナムにおける軍事強化の内容、たとえば軍隊あるいは軍隊の養成機関あるいはまた軍需生産施設の増強、それから道路、港湾並びに軍事的強化を目的とした他国との協定、そういうものを一切含みます資料を参考資料としていただきたいと思うのです。それが第一点。  それからもう一つは、委員長に対する要望ですが、先ほど問題になりました北ベトナムの国会議長から日本の衆参両院議長にあてました要望書の取り扱いについてでございます。これは私がこの前、それの公表並びに妥当なる取り扱い方について国会議員として委員長を通じて議長に要望されることをお願いいたした、それに対しまして、先ほどお話がありましたように、委員長からは当委員会理事諸君にのみその内容を報告した。そしてそれだけに終わっておるわけです。その取り扱いについては、私がこの前要望いたしましたのは趣旨が違うのでございます。と申しますのは、この問題は現在審議中であり、重要なベトナム賠償問題に関連をした非常にタイミングの合った重要な要望書でございますから、これを直ちに議長から外務大臣また首相、政府にその事実を明らかにして、そしてその要望書の内容を正確に、首相並びに少なくとも外務大臣はこれを読まれて、今審議しておりますベトナム賠償の方針に対して参考にすべき重要な外交文書であると思いますから、委員長を通じて当委員会における要望として議長に御伝達をいただきたい。同時にお願いをいたしたいと思いますことは、この問題は議長自身といたしましても……。(「議長は適切だと思って行動したのだから」と呼ぶ者あり)議長自身といたしましても、政府にそのことを参考資料として伝達するだけでなくて、議長にあてた文書というのは、先ほど岡田君からも話がありましたように、議長個人に対しての私信ではないのでありまして、国会全体を相手にした文書であるとわれわれは考えます。従ってこれに対します取り扱いとして、ただ要求のあった当該委員会理事諸君にその文書の内容を示すだけでなくて、この文書をもととしてそれに対してどういう結論であるか、その内容は後に衆議院、参議院ともに検討するとして、少なくとも日本の国会として信ずるところのある返書をこの際送ることが、今問題になって審議中の内容から見ても適当であると思いますので、議長自身の返書、これを中心にして至急討議されて返書を送られるようにわれわれは要望したいと思いますから、それをどうか委員長を通じて議長に御伝達いただきたいと思います。この資料要求とそれから向こうのこちらの議長あての文書に対するこちら側の取り扱い、この二点を要望いたしておきたいと思います。
  108. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 第一段の問題で政府資料要求がわかりましたか。よく聞いて下さい。
  109. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 よくわかりましたが、他国の軍事秘密も含まれておりますのでおそらく提出できないと思います。
  110. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 なお十分調べてできるものだけ出して下さい。  それから第二段の問題ですか、これは私個人として穗積君の意見を一応伝えましょう、円満にいく意味において。しかしこれは委員会の決議ではございませんから、それがどういう効果があるかということは、議長自身が判断すると思います。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 もう一ぺん資料について、ただいまアジア局長からまことに誠意のない、いわば不まじめな御答弁がありましたが、軍事秘密に関する……。(「反対、々々」と呼ぶ者あり)秘密のみに関するものではありません。先ほど私が言いましたように、アメリカ側から行なわれておる経済的、軍事的援助の内容並びにそれがどのようにベトナム国内において消化されて、そうしてかの国の軍事秘密に関せざる調査資料というものはあり得ると思うのです。(「そんなことは日本政府関係がない」と呼ぶ者あり)あり得ると思うのです。すべてを拒否されるということは私は納得がいかないので、重ねてお願いをいたしておきます。
  112. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 だから、この問題はできないものを要望してもできないのですから、わからぬものを要望してもないのです。ないものを要望しても出せないのです。そういう意味で……。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 わからぬとおっしゃいますが……。
  114. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 わかる範囲で、出せる範囲で出してくれ……。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 アメリカの国会は、対外軍事援助、経済援助を公表しておりますよ。しかも極東の部分として、どの国どの国へどういうふうに援助するかということは、これは秘密も何もないのです。     〔「日本政府と何の関係もない」と呼ぶ者あり〕
  116. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 もういいじゃありませんか、とにかく出せるものは出す……。
  117. 穗積七郎

    穗積委員 いかがですか。
  118. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 責任を持った資料になるかどうか知りませんが、ICAの経済援助の数字でもって発表されておるものもあると思いますし、私の方で調べたものもございます。これが日本政府資料でございませんから、責任を持った資料になるかどうか別問題でございますが、発表されたものは……。(「ICAの内訳を出せ」と呼ぶ者あり)その内訳は向こうが出しておりません。それから、それがどう使われたか、軍事的にどう使われておるかという点は、われわれはとうていわかりません。ICAの経済援助の総額くらいがようやくわかる、こういうことであります。
  119. 穗積七郎

    穗積委員 それでは防衛庁は、ソビエト側の兵力増強あるいは配置等については、これは報告の形式は別として調査しておりますね、調査しているのです。それが内政干渉というのですか。それはどこで調査してもいい、調査機関は政府としてですから……。
  120. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 それは穗積君、いいじゃありませんか、出せるものはできるだけ努力して出すと言うんだから。
  121. 穗積七郎

    穗積委員 これはなぜ言うかというと、今度の賠償の実施が、かの国ベトナムの軍事強化の、軍事的性格を持っておるか、持っておらぬかという参考資料としてわれわれは聞いておるのです。当然のことです。従って他の国の軍事に関するもの、あるいは他国の国内における軍需工場、軍需産業の育成方針、これらが全部わからぬなんというでたらめなことは、あり得べからざることですよ。その取り扱い方については別ですよ。そんなことはあり得ません。そういうことで、一体外交政策なり貿易政策なりあるいはまた防衛政策というものが立つはずがないと思うんですよ。それは遁辞ですよ。そういうふうに考えますから、委員長におかれても委員会の権威において、正当なる要求は、たとい野党のものであろうとも、当然これは取り次いでいただくべき性質のものだと私は信じます。
  122. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次会は、明十八日午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十四分散会