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1959-11-16 第33回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十六日(月曜日)     午後一時三十六分開議  出席委員    委員長 小澤 佐重喜君    理事 岩本 信行君 理事 菅家 喜六君    理事 佐々木盛雄君 理事 椎熊 三郎君    理事 床次 徳二君 理事 松本 七郎君    理事 森島 守人君       池田正之輔君    石坂  繁君       加藤 精三君    北澤 直吉君       福家 俊一君    森下 國男君       岡田 春夫君    田中 稔男君       帆足  計君    穗積 七郎君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 十一月十六日  委員賀屋興宣君辞任につき、その補欠として加  藤精三君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関  する協定締結について承認を求めるの件(条  約第二号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件及び日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定締結について承認を求めるの件、右両件を一括議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告があります。順次これを許します。森島守人君。
  3. 森島守人

    森島委員 私はベトナム賠償問題に関連しまして一般的な質問を行ないたいと存じますが、これに入るに先立ちまして、先般来の外務当局答弁その他から考えましても、外務当局としては非常に準備が不十分だ、むしろ国会軽視しておるという傾向が非常に顕著でございますので、この点につきまして一言触れてみたいと存じておるのでございます。  穗積委員がさきに賠償実施状況について資料提供要求しておりますが、これにつきましては小田部賠償部長が、多少ひまは食うかもしらぬが、なるべく早く御提出いたしますということを申しておるのでございます。なお一昨日でございましたか、政府からお出しになりました賠償資料なるものは、きわめてずさんきわまるもの——私はいずれこの点につきましてもあとで触れるわけでございますが、この点に関連しましてもう一つ藤山さんの慎重なる考慮を促したい問題があるのでございます。と申しますのは、藤山さんは参議院においても衆議院においても、本会議はもとより委員会におきまして、安保条約関連して協議というのは同意を含んでおる、協議コンサルトだ、国際慣例と申しますか、従来の慣行に基づいて協議とやったのだという御答弁を終始一貫されております。これについては外務省としても前例がすでにおありのことと私は存じております。しかし私の調査いたしました結果によりますと、必ずしも前例協議ということで一貫しておりません。これはベトナム賠償問題より多少らち外に触れるかと思いますけれども、重要な点でありますから私はあとでちょっと触れたいと思っております。  そこで七月十一日の外務委員会と記憶しておりますが、外務委員会におきまして、私は藤山さんのいわゆる慣例によってやったということにつきまして、資料提供要求しておるのでございます。もう御承知通り四カ月以上たちます。私は別に意地悪するつもりではないのです。そこで私はその間何回も外務省事務当局に対して非公式に御提出を願ったのでありますが、今日まで出ておりません。このような態度は国会審議を無視する最もよい例であると思っております。これに対しまして藤山さんの御所見を伺いたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとしては、できるだけ国会の御審議の便宜になりますように資料を出すということは当然でございまして、出せる限りのものは出すようにいたしたいと思います。従って今御要求のものも条約局長から出すことにいたしておりますので、さよう御了承願いたいと思います。
  5. 森島守人

    森島委員 今後は藤山さんの今の御答弁によって、責任をもって資料をお出しになるということでございましたから、外務当局勉強ぶりを見るということにいたして差しつかえありませんね。四カ月間も、私の注意が、何回も非公式にやっておるにもかかわらず、安保条約審議する上において最も重要なる資料と私は存じておりますが、これについて今日までお出しにならなかったという点についてはいかがお考えになるか、この点を私はお聞きしておる。外務省の怠慢と言うべきものだと私は思うのです。こういうことをやっているからこそ今度のベトナム賠償問題の審議なんかに入らぬのは当然であります。本質に入る前にすべての資料をお出しにならなければ、本質審議は困難だということを確信している。その点について四カ月もうっちゃっておいて、これで国会軽視でないか、この点を明確にしていただきたい。今後の審議状況にも関係いたしますので、この点について再度藤山外相の御所見を承りたい。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 森島委員も御承知のように、いろいろな外交資料で出せるものと出せないものとがございます。出せる限りのものはできるだけすみやかに出すように事務当局を督励しましてやって参りたいと思います。今日までそういう事態がありましたことはまことに遺憾でありまして、今後はできるだけすみやかに出せるものは出したいと存じております。
  7. 森島守人

    森島委員 私の要求しておりますのは、そうむずかしい資料ではないのです。そのときにも、資料をお集めになる上において相当の時間がかかるでしょう、だからそう急ぎませんが、必ずお出し願いたいということを私は要求しておいた。しかし四カ月も出ないというのはあまり無責任だと思うので、外務省事務当局に対しても大臣としてのお立場から厳重なる御注意を促していただきたいということにいたします。  そこで私は与党の委員からおしかりを受けるかもしれませんけれども、先ほど御了解をいただいておきましたので、資料提出と、それからもう一つ外務省国会軽視の点に関連しまして今の資料について一言いたしたいと思うのであります。  藤山さんは先ほど申しました通り、終始一貫協議拒否権を含むのだ、そうしてその前例もあるのだ、国際慣例でやっておるということをおっしゃっておられる。私の調べました範囲では藤山さんの答弁は必ずしも正確でない。これをくつがえす材料があります。この材料も別に調査を要するとかなんとかいう材料じゃない。すでに公刊されておる。その材料一つだけ今申し上げまして、一般国際情勢をお伺いする際に詳しくこの問題に入って論議をいたしたいと私は存じておるのであります。その第一の例は、アメリカ合衆国と大韓民国との間の相互防衛条約、一九五三年十月一日にワシントンで調印された。この条約第二条をごらんになりますとはっきり出ております。「締約国はいずれか一方の締約国政治的独立または安全保障が外部からの武力攻撃によって侵されていると両国のいずれかが認めるときはいつでも協議するものとする。」ここは協議でございます。それに続きまして、「締約国はこの条約を実施し、及びその目的を達成するため単独に及び共同して自助及び相互援助により武力攻撃を阻止するための適当な手段を維持しかつ発展させ並びに協議合意とによる適当な措置をとるものとする」ということで、藤山さんはコンサルト協議であって、コンサルトのほかにアグリーという字を使った例はない、使う必要はないのだということをおっしゃっておられますが、この一例だけを見ましても、コンサルトアグリー協議並びに合意という点が明文にはっきりあります。これでも藤山さんは従来の慣行による協議だけで十分なのだという説を依然として固執されますか、どうですか。この点をお聞きしたいと思います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 米韓条約の第二条にそういう言葉が使ってあることは私も承知いたしておりますが、ほとんどそれは例外的なものだと思っているわけでありまして、私も今回協議という字を使いますのにあたりまして、むろん協議が成立することのためには合意が必要だということの上に立っておりまして、われわれとしては従来の協議に対する解釈を少し進めて参ればそれで適当だ、そう考えているわけであります。
  9. 森島守人

    森島委員 この問題は本日の議案と直接に関係がございませんので、いずれ適当な機会を得まして一般国際情勢審議する場合に、詳しく藤山さんに一つ質問をしてみたい、こう存じておりますから、これは留保いたします。  ところでもう一つこれに関連してお聞きしたいのは、藤山さんは十二日に外国から帰ってきた三木武夫氏とお会いになっております。これは新聞ニュースがそう伝えております。その席において三木武夫氏は、極東方面に対するアメリカ軍の出動と、それから核兵器の持ち込みについてはどうしても政治的観点からいって同意を必要とする、拒否権を含むことが必要であるという意見を述べられたと新聞に伝えられております。これに対して藤山さんは、拒否権を含むということに対して別に御異議がなかったようであります。この点につきましてもこの際一言だけお聞きしたいと思うのですが、すでに安保条約は成文化される段階に入りましたかどうか。入る場合においては依然としてコンサルト一字でおやりになりますかどうかという点を念のためにお聞きしておきたい。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お尋ねの点は、先般三木武夫氏が帰ってこられて、三木武夫氏がフルシチョフあるいはドイツのアデナウアー首相等各国それぞれの要人に会ってこられておりますので、私は歓迎かたがたそれらの印象と意見等を聞きますことは適当だと思いまして会ったわけでございます。特に安保条約の問題で会ったわけではございませんが、その席上三木氏から今のような安保条約について若干のお話がございました。私としては、現在協議というものは、協議が成立するためには合意が必要なんであって、そうじゃなければ協議は成立しないのだ、その前提のもとに立っておるという話をいたしただけでありまして、新聞紙上に出ておりますような詳しいいろいろな話、特にその問題について話をしたわけではなかったわけでございます。
  11. 森島守人

    森島委員 新聞の切り抜きを私持ってきておりませんが、多分読売だと思います。これにはアメリカ側話し合いをするような口吻があなたの応答の中に出ておりますが、これはいかがお考えでございますか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、現在そういうような協議というものの基礎の上に立ちながら話し合いをしているということを申し上げたわけでありまして、それ以上にこれから何か特殊な協議、相談をするとかあるいは何か文書にどうするとかいうことを申し上げたわけではございません。
  13. 森島守人

    森島委員 ではこの程度でやめまして、いずれ一般情勢をお伺いする場合に留保いたしておきます。
  14. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際せんだって岡田君、穗積君から要望がありまして再調査をいたしました返事が参ったそうでありますから、一応その報告を先に聞くことにいたします。藤山外務大臣
  15. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般の委員会におきましてさらに久保田大使に対して再調査をしろということでございましたので、外務省としましては久保田氏に再調査を命じたわけでございます。先方政府は、サンフンシスコ平和会議等トラン・ヴァン・フー氏はバオダイ帝により正式な権限を与えられ、かつ同会議でそれが認められたのであると回答するにとどまった旨の報告を十三日午後に受領いたしております。それから他方十三日にフランス大使から到着いたしました報告によりますと、在仏日本大使館員フー氏の自宅を訪れ、直接確かめたところ、同氏の語ったところによりますと次のように述べておられます。「コーチシナ植民地地位から解放された一九四九年三月八日のフランスベトナム協定成立以後は、コーチシナを含めてベトナム独立国となり、従って自分はそれ以来ベトナム人になったわけである、問題の桑港会議には自分——ちょっとフランス語ですからなんですが、ナショナリテ・ベトナミエヌベトナム国籍と記載したベトナム外交旅券を持って出席した。」こういう返事でございます。
  16. 小澤佐重喜

    小澤委員長 関連質問といたしまして、松本七郎君。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 今の御報告の、ベトナム国籍を取得したという返事ですが、最後の方がちょっとはっきりしなかったのですが……。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の報告の前段は、ベトナム政府からの回答でございます。  それから、大使館員フー氏の自宅を訪れて確かめたところ、「コーチシナ植民地地位から解放された一九四九年三月八日のフランスベトナム協定成立以後は、コーチシナを含めてベトナム独立国となり、従って自分はそれ以来ベトナム人になったわけである、問題の桑港会議には自分ナショナリテ・ベトナミエヌベトナム国籍と記載したベトナム外交旅券をもって出席した。」こういうことです。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで外務大臣はそれをどういうふうに解釈されるか。そのフランスを通じた今の返事に基づいて、トラン——これはチャンがほんとうなんだそうです、TRはCHと発音するのだそうですが、チャンヴァン・フーは、それでは、以前から主張されておったように、ベトナム国籍を持っておる、従って二重国籍である、こういう解釈をされるか、その点どうですか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通り二重国籍解釈いたします。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、この国籍問題でもう少しはっきりさせておきたいと思うのは、ベトナムの今の国籍選択実情から言うと、二重国籍は持てないはずです。だからはっきりベトナムという国籍を持ち、またフランス国籍を持っているということは、これはどうしても考えられないのです。というのは、フランス国籍を取得するためにはベトナム人としての権利義務を一切放棄しなければならぬ。今までの実情からしても、一切そういう過程でフランス国籍は取得しているのです。ですからベトナム国籍をまた取り戻すためにはフランス国籍を捨てなければならぬし、フランス国籍を持つためにはベトナム国籍を持つことができない建前なのです。それが二重国籍を持てるという根拠は一体どこにあるかという点が依然としてはっきりしないのですが、この点御説明願いたい。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一九五五年に国籍法ができるまでの経過としてこういうふうに了解されるわけなんです。その以前に、フーは、今条約局長から御説明いたしますけれども、フランス市民権を持っておったということも明らかであります。
  23. 高橋通敏

    高橋政府委員 補足させていただきます。  一九四八、九年の独立によりまして当然ベトナム国籍を取得した、伴いまして従来シトワイヤン・フランセ、フランス国籍も持っておりましたので、その時点から二重国籍というふうになった、こういうふうに観念しております。ただ、そのような二重国籍の問題が起こりますので、それを解決しなければならないというので、一九五五年にフランスベトナム間で国籍に関する協定ができまして、それによってこの二重国籍を解決した、従いまして当時においてはまさしく二重国籍であった、このように観念いたします。
  24. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは、チャンヴァン・フーの現在の国籍はどうなんです。
  25. 高橋通敏

    高橋政府委員 現在の国籍は、この一九五五年の国籍法によってどちらを選択したかということによって決定するわけでございます。
  26. 松本七郎

    松本(七)委員 だから、いずれを選択しているのですかと聞いておるのです。
  27. 高橋通敏

    高橋政府委員 その点は、一九五五年の国籍法によって選択権を彼は行使することが妨げられていたわけでございます。従いまして、そういうような事実問題でございますので、それからいいますれば、現在はフランス国籍にとどまっている、このように考えております。
  28. 松本七郎

    松本(七)委員 そうでしょう。現在はフランス国籍であって、ベトナム国籍はないということなんでしょう。
  29. 高橋通敏

    高橋政府委員 これは実はトラン・ヴァン・フー自身言明によるわけでございますが、本来なれば一九五五年の国籍法選択手続をしなければならぬわけでございます。ところが、それができなかった。いろんな事情で妨げられておりましたので、できなかったわけでございます。従いまして、そういうできなかった場合には、この法律によってどういうふうになりますか、それは法律適用云々によりますが、現在においては、もし、できないという不可抗力の事態考えの外におけば、フランス国籍である、こういうように考えております。そのように本人言明しておるようであります。
  30. 松本七郎

    松本(七)委員 それは本人言明も大切であるけれども、これは調べればわかることなんです。現在彼はパリに居住登録しておるはずです。その居住登録国籍は一体何になっておるか、これを調べればすぐわかる。一体この点はどうなっておるのですか。
  31. 高橋通敏

    高橋政府委員 彼自身はそのような事情によりまして、一九五五年の国籍法適用、これによる行動をとることができなかった、こういうふうな事態になっているわけでございます。従いまして、当時はやはり二重国籍であった。そこで二重国籍を一九五五年にどうふうに整理するか、こういうことでその国籍法適用を受けて、その手続をしますればいずれかどちらかにきまったわけでございます。そこで、その選択ができなかったわけでございますから、自動的にフランス国籍が残っておる、こういうことです。
  32. 松本七郎

    松本(七)委員 選択ができなかったから、当時は二重国籍だとあなたは言われた。そうじゃない。選択ができなかったから、フランス国籍だけです。それでそのまま今日にきておるわけでしょう。そうでしょう。そうすると、二重国籍という事実はいつあったかということになる。そういうことはあり得ないのです。選択ができないんだから……。だからずっと終始一貫フランス国籍できておるということであって、二重国籍であったという事実はちっとも出てこないのです。一体どっからそれが出てきますか。今のベトナム戸籍法からいっても二重国籍にはなり得ない建前になっておるのですから、当然二重国籍というものはあり得ないはずです。本人が、自分選択の自由がなかった、従って、フランス国籍であったということを一度はっきり新聞でも報道されておりますね。そのあとベトナムの方の国籍は単なるデ・ファクト、事実上のものだということを本人も言っておる。だから法的には二重国籍ということは今までも一度もあり得なかったということがこれではっきりしたと解するほかないと思う。
  33. 高橋通敏

    高橋政府委員 ただいまの点は、一九五五年の国籍法が成立発効して以後の問題でございます。従いまして、一九四八年に独立をいたしまして、一九五五年までの期間がございます。その期間は、国際法上二重国籍であると見ざるを得ない、このように考えております。
  34. 松本七郎

    松本(七)委員 戸籍法がないんだから、法的にはベトナム国籍というのはあり得ないのじゃないですか。デ・ファクトの問題であって、法的な問題じゃないのですから、そこのところは全然法的な根拠はないのだから……。
  35. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国籍法がない以上は、デ・ファクト、事実が国際通念として認められるわけでございまして、二重国籍だといって差しつかえないと考えております。
  36. 松本七郎

    松本(七)委員 これはベトナムの場合、フランス国籍を持つためにはもちろんベトナム人としての権利義務をすべて放棄しなければならぬし、それからフランスの兵役の義務にも服さなければならぬ。それからベトナム人はすべてもちろん写真のついた戸籍証明書というものを持っているわけですね。そういうものを持った事実があるかどうかということが、二重国籍であったかどうかの唯一の証拠になると私は思う。戸籍法のできる前の単なるデ・ファクトの、この事実だけでは、私は二重国籍であったという法的な根拠は何ら出てこないと思うのです。そういう点についてまだまだこれには問題が残りますけれども、きょうは関連ですからこの程度で置いておきたいと思いますけれども、今後もう少しベトナム人フランス国籍を取得するための条件等について質問したいと思いますから、この点なお調査をしていただくことを要求しておきます。
  37. 森島守人

    森島委員 私質問を続行いたしますが、一昨日外務当局からお出しになりました資料というものはきわめてずさんであるということを申し上げました。そのほかに岡田委員予算委員会において資料提出要求いたしましたが、その資料なるものは、日本各国に与えた戦争損害に対して、日本が一体どういうふうに見積もっておるかということの資料でございまして、外務省から出たのは——各国外務省へ正式に提出したものかどうかも私疑っているのですけれども、各国出し資料だけであって、いかにも片手落ちでございます。しかも藤山外務大臣は、岡田委員資料要求に対して、多少不正確である、非常に困難はありますけれどもお出ししましょうということで応諾されておる。外務省から出ましたただいまの資料は、私は不十分であると思うのでございます。日本側の見積もりというものに関する資料もお出しにならなければ、今後の審議は私は困難だと思いますので、この点御所感を承りたい。
  38. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 せんだって提出いたしましたのは、要求国の方から出したものでございます。非常に簡単なものが原文でございまして、それの要らぬところを取りました要点だけをあげたものでございます。これに対しまして、わが方が向うの損害をどういうふうに評価したかということはやっておりません。と申しますのは、これは事実上は外務省としては考えておりますけれども、そういう書類は表に出しておりません。従来ともビルマの場合、インドネシアの場合、フィリピンの場合も、そういうことはなしでもって賠償協定は御承認を願っております。なぜそういうものを出さぬかと申しますと、それが出ますと、たとえばビルマは三十億といっている、日本側はこれを何億と査定したか、そうなりますと、ビルマ日本が査定した何割をもらったかということになるのであります。そうなりますと、フィリピンが八十億といっている、これを日本幾らに査定したか、そうするとその比率が違うのじゃないかという問題が出ます。インドネシアにつきましても同様でございますから、日本政府としましては、向こうの要求額をどう査定するということは表には言えないということになるわけでございます。
  39. 森島守人

    森島委員 外交折衝のことですから、いろいろかけひきはございましょう。しかし私、岡田委員の求めておるのは、日本軍各国に与えた損害幾らに見積もっているかということで、外交折衝上におけるかけひきとは関係ございません。客観的な資料に基づいて、政府としてはビルマにはどれほど損害を与えた、あるいはフィリピンにはどれほど与えた、インドネシアにはどれほど与えたということについて日本側だけの資料がなければならぬ。私は、この資料なしで御交渉になったのなら、これまでの外交交渉というものはきわめてずさんなものである、こう批評せざるを得ないと思う。これは常識のある人なら大体わかると思う。
  40. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 その点につきましては、外務省だけとしましては大体どういうものだという判定はいたしておりますが、これは表に出せないわけでございます。
  41. 森島守人

    森島委員 すでに岸首相も、東南アジアに対する賠償の問題はベトナムさえ済めば済むのだと言っている。むろん先にさかのぼってビルマ関係はございましょう。しかし外務省が持っておられるというなら、その資料——私は査定を幾らにしたとかいうことはまだ要求しておりません。ただ、向こうが出してきた損害に対して、その損害日本においてはこれくらいに見ておるという資料が出なければ、比較も何もできぬじゃございませんか。その資料岡田君が求めておる。藤山さんは外務大臣として、不正確かもしれないけれども資料はお出しするということを確約しておられる。外務大臣のこの資料提出の応諾について、事務当局がこれを左右する、これは越権の行為です。外務大臣としては依然お出しになるものと私は確信しております。この点に関する藤山外務大臣の御所見を伺いたい。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外務省外交交渉上の資料につきまして、私は出せるものは出す、出せないものは出せないということを前提としてすべて申し上げておるわけでありまして、今局長の言いましたように、適当でないわけでありますから出さない、今すぐには提出できないと思います。
  43. 森島守人

    森島委員 それじゃ藤山さんのお約束は違う。どれくらい損害を与えたと日本の方で見積もっておるか、それは出すということをおっしゃっておる。その点については私は、あくまでこの資料要求をしなければこの問題に対する本質的な審議に入れないと思っておりますが、いかがでございますか。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 毎回申し上げておりますように、出せるものは出しますし、御要求がありましても出せないものはやむを得ぬことだと思うのであります。むろんわれわれとして、交渉にあたりましていろいろな観点から要求を削減していくということは考えておりますし、またそれらの問題についていろいろ調査し、なにをして参らなければならぬことは当然でありますけれども、今局長が申し上げたように、いろいろ他国との関係もございますので、提出が必ずしも適当だとは考えておりません。
  45. 森島守人

    森島委員 私速記録を読みますが、藤山さんははっきりお出しになるということを約束しておられる。岡田委員質問に対しまして藤山さんは——これは日本損害の見積もりの問題で、交渉上の査定の問題とは全然別個の問題であります。これに対して「こちらの乏しい材料も集めながらも、そういう点について一応の調査はいたしておるわけであります。しかしそれが正確なものだということにはとうていいかないことは、岡田議員も御了承いただけることだと思います。従って何かそういう状態の数字を出せということならば出すことができるかと思いますけれども、正確な数字を出すということは非常に困難なことだということは御了承願いたいと思います。」こう答弁しております。また岡田委員が「それではベトナム戦争損害を初め、各国戦争損害についての調査はできるだけ早くお出しになる、こういうように了解してよろしゅうございますか。」と重ねて質問をいたしております。これに対しまして藤山外務大臣はきわめて明確に「できるだけ早く出すことにいたします。」こういう明確な答弁をやっておられる。これでは予算委員会における答弁外務委員会における今の御答弁とは根本的に食い違っておる。(「損害の説明をしているよ」と呼ぶ者あり)していませんよ。床次さんが言ってもしていません。この数字は床次委員外務委員会において求めておられたようであります。そこで私は、今外務事務当局の御答弁いかんは別といたしましても、大臣としては一度予算委員会で明確に出すということをお約束になったものをなるべく早くお出しになっていただきたい。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来御説明申し上げておりますように、外務省の文書で、むろん出せるものと出せないものとあります。出せるものにつきましてはできるだけ準備をして出すことは当然のことだと思います。われわれとして、どの程度日本の軍隊による損害があったかということを出すことは非常に調査困難でございまして、その点につきましては、私もはっきり申し上げております通り、出てこないと思います。同時にまたそのこと自体が先ほどお話のような賠償の比例というものに関連して参るわけでありますから、今日の段階では出すことは困難ではないかと思っております。
  47. 森島守人

    森島委員 私は今の御答弁に不満足です。一応この点に関する質疑は留保いたしまして、時間の関係上先へ急ぎたいと思いますが、外務省のお出しになりました資料を見ますと、「ヴィエトナムの主張する戦争損害及び苦痛」というのが出ております。これはただいま伊關局長からお話があったと思いますが、相当簡単なものではあるが、これは全文ではないということですね。これを見ますと、はたしてこれについては外務省としての批評めいたものが出ております。たとえば向こうではこう言っておるがこうだというようなことですが、これは先方から出た正確な資料と認めて差しつかえありませんか。
  48. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ここにあげております数字は先方が出した数字そのものでございます。ただ先方の出したものの中にはもう少し詳しい数字が——貿易などは毎年の分をずっとあげております。そういう点があるだけでございまして、結論的にはこの通りであります。
  49. 森島守人

    森島委員 私はこの点に関連しまして藤山外務大臣に再確認を求めておきたいことがあるのであります。藤山外務大臣は、インドシナが戦争に入ったのは一九四四年の八月何日という答弁外務委員会においても予算委員会においてもしておられる。戦争のあった時期はわずか一年である。従って、その以前の損害は入っていないんだ、賠償の中に入ってないんだということを御答弁になっております。私はこの点を再度確認いたしたいと思います。
  50. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 前回御答弁申し上げていると思いますけれども、われわれは戦争の時期を一九四四年八月二十五日から終戦日までのほぼ一年間と考えておりますが、その間明号作戦、イ号作戦等もございましたし、相当の損害があったということはわれわれも認めざるを得ないと思います。
  51. 森島守人

    森島委員 それでは今回の賠償額というものは、その一年間における損害に対する賠償と理解するのが当然だと思いますが、この点再度御確認願いたい。
  52. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りわれわれも考えております。
  53. 森島守人

    森島委員 そこで私がお伺いしたいのは——第一にあげますと非常にずさんです。これは外務省の責任でない、向こうの出してきたものだとおっしゃるでしょうが、私はこれに対しても外務省としていかなる査定をしたかという点を伺わなければ、先の質問には進み得ない。第一、見てごらんなさい。これは「資料も不足し不可能であるので、生産及び貿易並びにインフレーションというようにこれをその結果の面で捉えて、次のように主張している。」これは外務省のこれに対する注釈ですね。だからこれは正しい向こうの資料じゃないと思う。この点だけでも向こうが直接出したものじゃないということが立証される。その次に「人的な面」ということで出ておりますが、「一九四五年の飢餓により、百万人以上の餓死者を生じた。一人当り千ドルを要求して十億ドルとなる。」これはそのまま向こうの要求でございましょう。さらに進んで「物的な面」といたしまして、「生産」と「貿易」と「通貨」の三項目に分けております。そして「生産」の面では、これは(a)(b)(c)に分けております。この資料をよくお読み下さい。(a)が鉱業生産、これを見ますと、石炭の生産の減少額として算定しておるのは一九三九年から一九四五年までの生産減少額を出しております。こういったものに対して、一体日本側としていかにこれを査定すると申しますか、日本側では一体どう見ておるか。この資料がなければ——向こうの出し資料は六年も七年もの間のものを累計したものを出しております。しかし藤山さんの答弁が正確だと私は信じますが、たった一年間戦争があっただけにかかわらず、石炭については六、七年間の分を損害として要求しておるではありませんか。これは一体いかに説明されるか。
  54. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 先方が出しましたものは、こういうふうに四〇年から四五年までのものを出しておるわけであります。インドネシアにつきましては四六年のものを含めて出しております。それに対しまして私の方は、そういうふうな意味の事務的な検討はいたしておりまして、この最後の一年間にこれを直すとどれくらいになるかと申しますと、石炭につきましてはこの七百万トンのうち二九・八%、亜鉛につきましては最後の一年間の損害が八五・八%、錫につきましては三〇・三%、鉄鋼につきましては二二・〇%、マッチにつきましては三九・五%、セメントは三〇・九%になる、こういうふうな検討は事務的にはいたしております。こういう意味の資料でございましたならばここで申し上げますが、われわれとしまして、向こうが出しましたものに対しまして、いろいろ民間の話を聞いたりして、たとえば餓死者百万と申しましても、外務省としてはこれは三十万くらいに踏んでおるというくらいの意味の資料はあるのでございます。
  55. 森島守人

    森島委員 今の御答弁は、少し早くおしゃべりになったので、私一々メモをとることもできませんでしたが、私ははっきり了解しかねるのです。しかし、一九三九年から四五年までの生産減少額といっておりますが、今何%に見積もったというのは、最後の一年間の生産額に対して見積もったのであるか、あるいはこの六、七年間の全数量に対しておやりになったのか、この点も明らかにしたいと思いますし、現に今あなたおっしゃったじゃないですか。査定は、藤山さんはいろいろ各国とのつり合い等もあるので出せないのだ——あなたは一々比べて今査定まで出しておるじゃないですか。査定をやる以上は、日本の見積もった損害額がどれくらいになるかということを日本で数字を求めなければならぬ。それでなければ査定も何もできぬじゃないですか。
  56. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、たとえば先方が二十億といい、これを日本が三億とか五億とか、こういうふうな結論は申し上げられない、こう申し上げたわけであります。こういうふうに出ました数字につきまして——こういうように五年分が出ております。これを最後の一年に直してみるとどうなるかというふうな研究はいたしておるということでございます。
  57. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ちょっと関連。ただいま伊關さん御説明になりましたけれども、あなたのお出しになったそういうものは、あちらの一方的な要求と比較して、日本政府はこういう根拠に基づいて、こういう検討をして、こういう数字を出して、これを賠償の算定根拠としたという説明が国会でなされなくて、何のための国会ですか。あなたこんな墨汁で消したようなものを出してきて——私はこれをやろうと思ったのをちょうど触れられましたから関連してあれしますが、それについては今お出しになった二二%というようなものは、あるいは足して六年間の六で割ったのか。どういうふうにして二二%を出したか、わからないじゃないですか。それを一つ徹底的にはっきりしないと、それはほかの問題と違って算定根拠が不明確であるということが、ベトナム賠償を認めるか認めないかの大きなポイントとなっているから、一つこれは私たちが聞いておって与党の方もおわかりにならぬといかぬと思いますから、はっきりしていただきたいと思います。
  58. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ただいまの数字は決して五で割ったわけではございません。ただし月別統計がございませんから、一九四四年は八月二十五日以降でございますから、一九四四年につきましては向こうの損害の三分の一をとりました。一九四五年につきましては終戦が八月でありますから、三分の二をとる、こういうふうに平均月別の数字をとっております。この向こうがあげております数字は、フランス政府が作りました統計をもとにしてあげておるわけでございまして、先方もいろいろとこちらが損害要求を出せ、損害の総額を出せと申しましたときに、資料がない。これは確かに戦争中でありまして、日本軍の持っておりましたものは全部焼却か破棄しておりましょうし、先方もその後いろいろと国内が乱れておりますので資料がないということでありまして、われわれは先方がよこしました資料とか当時の関係者から話を聞いたりしまして、国会にまとめて提出しますには非常に不完全なものしかないわけでございます。これが実情でございます。
  59. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 国会にまとめて出すような算定の数字的なはっきりしたものがないというようないいかげんなものの上に立って、あちらへ聞いたりこちらへ聞いたりしてそれをまとめて作り上げたものを国会で通そうとしているのですか。そこで私はとにかくこれはこの数字を、今一九四四年八月からの御計算がありましたが、それは額の問題と非常に関係してくるのですから……。     〔発言する者多し〕
  60. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  61. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そんな横車を押してもだめですよ。私は反対のための反対をしているのじゃないのですよ。個人的に言ってみましょうか。私が借金した場合にでも、そんなはっきりした借金してない分まで返せないでしょう。     〔「借金とは違うよ」と呼ぶ者あり〕
  62. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 委員長静かにさせて下さい。
  63. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御静粛に願います。
  64. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これは今質問に立っていらっしゃる森島さんがお取り上げになりましたけれども、もらった資料は全部不思議だと思っているのです。こんないいかげんなものはないと思うのす。だから審議を進めていく途上において数字的算定根拠をはっきりしてもらわないと前へ進みません。ですから伊關さんの、そういう人をばかにしたような答弁ではいかぬと思うのです。だからもっと書類にして私たちが目を通してわかるように理路整然たるものをお出しなさい。それなら払うことに賛成しますよ、理路整然としておるなら。よろしいか。(「理路整然としている」と呼ぶ者あり)理路整然としてない。そんな算術というものがありますか。
  65. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 この先方が出しました数字はフランスの統計に基づいたものでございまして、これ以外の品目については統計がない、こう言っておるのであります。そういたしまして、これらの数字につきまして向こうは五年分を出しておりますから、それを最後の一年を出すのにどうしたかということでございましたから、それは月別平均のものを出して、それを足したものだということを申し上げてあるのでありまして、これ以上の方法はないと思います。
  66. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、各項目にわたってここに出していらっしゃるのと、日本の算定なさった比較表とを一つ書類で出して下さい。私は頭が悪いからあなたの一口の答弁じゃはっきりわかりません。それをつまびらかにちゃんと出していらっしゃい。出せるでしょう伊關さん。
  67. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 この品目につきましては私が申し上げましたように、こういう計算をいたしますと、これだけのパーセンテージが出ております。しごく簡単なものでございますが、これならいつでもお出しいたします。
  68. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私はあくまでも数字を出していただきたいと思うのです。よろしいか日本側のものですよ。そこでなぜこういうことを申し上げるかというと、あとに参考のためにフィリピンビルマインドネシア三つついておる。その三つついて、もうすでに済んだ国々、これとの比較検討があるわけです。私が要求するのは、今のベトナムだけじゃなしに、インドネシアビルマフィリピン、この三つを出していただいて、なぜビルマが、ベトナムがこれだけもらうなら少ないと言い出したかということを研究したわけです。どうぞこれをはっきりしていただきたい。
  69. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ベトナムにつきましては、ただいま御説明しましたようなものがございます。こういう簡単なものがございます。前の三国につきましてはおそらくそういうふうにはっきり計算したものはないのじゃないかと思っております。
  70. 森島守人

    森島委員 非常に不正確な資料で御交渉をお始めになった。それだから七年も八年もかかるということもこれに起因しておると私は思うのです。私は賠償問題全体に関して外務当局の御苦心のあるところもわからぬわけじゃない。ことにサンフランシスコ条約第十四条を見ますと、一方において損害及び苦痛に対して賠償を支払うということは日本は承諾しております。しかしいわゆるこの損害を全部日本が払うということになったら日本の国は立っていきません。そんなことも条約には認めております。しかしその問題と、いかに査定してどうやったかという問題とは別個でなければならぬ。(「そんなことをしたら交渉にならぬ」と呼ぶ者あり)交渉にならぬということはありません。もし公表できないなら外務委員会の秘密会でも開きまして、その秘密会の席上であなたが今公表できないと言った資料をお出しにならなければ審議は進まぬと思う。秘密会にお出しになることに対して外務大臣の御所見をお伺いしたい。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま御答弁しておりますように、この賠償に関する交渉というものは、今御説明のありましたようにサンフランシスコ条約十四条に基礎を置いておりまして、物的損害と精神的な苦痛というものに対する賠償を両面から考えて参るわけであります。従いましてわれわれとしては、その交渉に当たって当然その両面を考えて参らなければならぬと同時に、日本の経済力から言いましても、交渉自体はできるだけ少額の部分から始めて参りますことは当然なことだと思います。そうして話し合いでこれらのものをどういうふうに片づけていくかということに相なるわけでございます。むろん当局としていろいろな算定はいたしておりますけれども、各国との関係もありまして、それを一々公表するわけに参らぬ場合も外交上ございますので、そういう点は御了承を願わなければならぬかと思います。従いましてそういうふうにお考えを願いたい、こう思っております。
  72. 森島守人

    森島委員 藤山さんは質問の要点をはずしておられます。私は今言ったように公表ができなければ、少数の秘密会においてこれを発表されることができるかできぬかということをお尋ねしておるのです。この点に対しては、国会を信頼せられる以上、秘密会で発表できぬという理由は、私は了解するに苦しむのです。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これらの問題については、むろんできるだけ御審議の便宜をはかりますことはわれわれとしても当然だと思います。しかしながらやはり外交上の問題につきましてはいろいろ問題がございますので、御説のように秘密会であるからとしても必ずしも全部言えるか言えないかということ肝問題があろうかと思いますけれども、それらの点については十分われわれとしても研究をする必要があると思っております。
  74. 森島守人

    森島委員 秘密会の点については明確な御答弁がありませんので、私は外交交渉のことに関連して。(発言する者多し)やかましい。
  75. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  76. 森島守人

    森島委員 外交交渉関連しまして公表のできぬ部門はあるかもしれません。私も了解することは困難じゃないということは申し上げておきます。しかし一方において損害がどれだけだった、日本が血税の中からこれくらいの金を払うのだということになりますれば、国民の税金負担の問題等についても大きな関係を持ってくる。この点のみからいいましても、やはり国民の疑惑を解いて初めて、国民が納得して税金が出せるように、賠償が払えるようにしなければならぬというので、国民の立場からいたしましたならば、私は秘密会で発表されるということは、当然外務省としてとられてしかるべき措置だと私は信じておる。この点について再度一つ御態度を明らかにしていただきたい。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもといたしましては、外交の交渉のことでございますから、全部が全部必ずしも事こまかに申し上げられない点があろうと思います。しかし議会の方の秘密会の御要求がございますれば、そこに付することは当然だと思います。
  78. 森島守人

    森島委員 それでは私は時間の関係もありますので先へ急ぎます。鉱業生産についても今申した通りでございますが、(b)の製造業についても同様でございます。(c)の農業についても同様でございます。しこうしてこれら全部については生産量がどれほど減ったということは向こうの数字が出ております。これを六年か何かに割って、そしてその何分の一、何パーセントというものをおそらく日本の査定としてお出しになったものと思いますが、この各項目については金額の記載が一つもありません。この点はどうされたのですか。
  79. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 金額は時価というもので考えるわけでございまして、私どもの方は一応の計算はいたしております。もちろん米といいましても、日本の米で見るわけではなくて向こうの米の値段、向こうでわかるものは向こうの値段、わからぬものは日本の値段というふうに一応の計算はいたしております。
  80. 森島守人

    森島委員 私はあとに一括して資料提出をまた求めたいと思いますが、この資料の出ぬ限り審議が困難であることは、委員長においてもとくとお認めのところだと思います。  その次に(ロ)の貿易の点は、四〇年から四五年になっております。これも先ほどの御説明で五年間を一年間に割った大体と見ればいいかと思いますが、通貨の問題がございますが、通貨の問題は一九三九年から一九四五年のインドシナ銀行の発行通貨量云々として、これが二億六千九百五十万から二十三億六千五百十万と八〇〇%に増加したということで、この損害日本に求めてきております。これは私はおそらくフランスとの間で解決済みの特別円の問題じゃないか、こう思いますが、これはどうでございますが。
  81. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 私たちは、その通貨の問題で向こうがいっておりますから、それをその通り受け取るというふうな考え方はいたしておりません。この資料は向こうが出したものでありますが、向こうも完全なものがない。損害の一例を示すという意味において出してきたわけであります。そういう意味においてごらん願いたいと思うのであります。貿易につきましても、たとえばこれは一九二五年から三九年の指数を一〇〇としまして、それから見てどれだけに減った、ここに出ておりますが、詳しいもので見ますと、たとえば一九二五年から三九年を一〇〇といたしますと、一九三九年は一六三というふうな指数が出ております。これが一九四四年には二四、四五年には三になったということをいっております。これはここには出しておりませんで、向こうの言いました総計の損害だけを書き上げておりますけれども、一例としてこういう数字を向こうが出しておりまして、われわれも一例としてこういうものをごらん願いたい。全体につきましてはないわけでございます。一例としてあげたものについてもこういう数字がある。たとえば米にいたしますと平常時は大体二百万トン以上のものを輸出しておった。それが終戦の年になると六万八千トンしか出ておらぬ。その前の年は七十四万トンしか出なかったというふうな数字も出ております。そういうふうにそのころの大体の情勢を判断する資料というふうに考えております。
  82. 森島守人

    森島委員 ただいまの御説明によりますと通貨を一例にあげておる。しかし日本では通貨の問題は考慮に入れていないんだ、こうおっしゃっておられる。日本で考慮に入れていないものをこういうふうにお出しになりますから、なおさら混淆してくると私は思う。しかしこれには全部出ていない。それが不正確ならば、これは損害の査定のときには入っていないんだということを明確にしていただければ、この点の疑問も解けたと思う。一方においては向こうの出しました損害について、調査が困難だとかいう御批判の文字を掲げておきながら、この重要な貿易や通貨に対しては、何ら触れておらない。そういうところでもこの資料というものは非常に不正確であると思いますので、(「先方のものを出した」と呼ぶ者あり。)先方のものを出しても不正確である。しかしこれに対する日本の査定なんかが出れば、初めて向こうの損害幾らに査定したということがはっきりする。その査定した日本の額が、他国に比較いたしまして適当であるかいなかという点が明らかになってくる次第である。そうしなければまたビルマのように、あとになって再検討を求めてくるという事態もあるのですから、これは日本の査定の基礎になる。今あなたは二〇%とか三〇%とかおっしゃいましたが、これは伊關さん限りのおとりはからいであるか、あるいは政府いかなる資料に基づいて二〇%に査定して、それが正しいという見込みをつけたか。そういう点をはっきりされていただきたい。
  83. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 私は、私限りとか政府とか申し上げておるのではなくて、この数字を、最後の十二カ月を出せばこういうふうな数になるといっただけでありまして、それからこういう研究を幾らいたしましても、これが査定ということにはならないのでありまして、ごく一部の資料しか出ていませんから、このごく一部のあるものでもって、全般を御推察願いたいという意味において出しておるわけであります。
  84. 森島守人

    森島委員 それじゃ私伺いますが、賠償交渉において政府のとられます態度はなるべく少なくしたい、これはもっともです。これはだれも了解しておる。了解困難じゃありません。しかしこれらの点については、一方において向こうの要求する金額を出しておきながら、大部分のものについては数字だけをあげておって、向こうの金額を出していない。向こうの資料としてはきわめて不正確だ、こういわざるを得ない。外務省当局としても交渉の途上においてこれらの点を十分につかれたと思いますけれども、この金額を一体どう見積もっておるか、この点を一つ資料としてお出し願いたい。
  85. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 向こうのあげました数字というものは、生産の方につきましては、数字だけでありまして金額は出しておりません。貿易につきましては、結果的に得べかりし利益がこれだけ失われているというので、九億なんぼという数字を出しております。向こうは生産と貿易をどう見ますか、これは非常にむずかしい問題だと思います。これはダブっても困りますし、いずれにしましても向こうは生産面、貿易面それから通貨面、合わせて十億ドルということを言っておるわけであります。
  86. 森島守人

    森島委員 それでは私もう一つ伺いますが、石炭や亜鉛や錫や鉄鋼、マッチ、セメント、サイゴン、ショロン地区精米所の数とか、いろいろこまかいものをあげております。これらに対して、ただいま伊關局長から何%に見積もったとかいうお話がございますが、これを何%に見積もったならば一体どれほどの金額になったかという点について、資料をお出しになることはできませんか。
  87. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 この金額は向こうは出しておりませんから、現在の時価でもって、物によりましては日本の価格、あるいは先方の時価がわかっておるものは先方の時価で、一応の計算はいたしております。これは向こうの出した数字ではございません。われわれが事務的に、これだけの数量が減っておれば、この六品目についてみましてもこれくらいになるという、参考用に一応はじいてみた数字でございます。
  88. 森島守人

    森島委員 そこで、それだから岡田君が、日本側において見積もった損害題が幾らになるかという数字の提出を求めておる。これに対しまして、(「それは膨大なものだよ」と呼ぶ者あり)膨大か何かは別個だ。そこでこれに対して藤山さんは、でき得る限り数字を出しましょう、こうおっしゃっておる。その査定をした数字をお出しにならなければ、私は正確なる支払い額をきめるという段取りには進み得ないと思う。その過程を明らかにしていただかない限り、これは審議ができぬじゃないですか。
  89. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 先ほどから申し上げておりますように、こういう数字からは材料が不備であって、全体の損害額は出ないのであります。また、たとい出ましても、日本が査定しました数字は公表できない。外交交渉のほかの国との関係もありますからあまり出したくないという考えがございますし、また数字がございませんから、全体の損害というような完全なものは出ないのでありまして、向こうが出しておるものにつきましては、その一端からもって大体の傾向を判断するという程度だということを申し上げておるわけであります。
  90. 森島守人

    森島委員 それではこの点につきましては質問を留保いたしまして、さらに進んでフィリピンの問題に移りたいと思います。  フィリピンの主張せる戦争損害という資料が出ております。これはずさんどころか、どうしてこんなものを受け取られたか、私は理由を解するに非常に苦しむのです。項目をあげただけです。内訳としまして、(a)フィリピン通貨及び金準備を含む財産の物質的損害とあります。(1)は道路及び公共事業、(2)は農業、(3)は国立、州立、市立諸施設、企業、(4)は公立、専門学校、大学図書館、(5)は公私家屋、建築物、(6)が政府企業、(7)が海上陸上輸送設備、施設、(8)が工業、商業、財産、(9)が金、銀、通貨の損失による直接戦争損害、個人、民間銀行より徴収したものも含む、(10)は大洋及び沿岸海運、(11)は前記の項目に含まれない他の損害、(b)としまして、日本政府及び軍隊により徴発された物品及び役務、(c)が人命の喪失、これがフィリピンとの賠償交渉をおやりになったときの、先方から出た基礎資料と了解してよろしゅうございますか。金額が一つもございません。
  91. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 これは先方が出したままだそうでございます。
  92. 森島守人

    森島委員 それでは一つ伺いますが、大ざっぱな数字に基づいて外交が行なわれるということは、ある程度私も了解はいたします。しかしこんなものを基礎にしてフィリピン賠償交渉をおやりになったといたしますならば、あまりに国民を無視したことで、私はこの点は了解できません。外務省として今後こういうふうな交渉があったときには——私はあとから触れますけれども、このような不正確な資料に基づいて交渉をおやりになる場合が出てくるかもしれない。その賠償交渉全体に対する政府の心がまえと申しますか、あるいは態度といいますか、このような不正確な資料を基礎にして——これは資料ということはできません。項目をあげただけにすぎぬ。(「向うの文書だよ」と呼ぶ者あり)向こうの文書だって、これを基礎にして交渉したということを言っておる。私はこういうふうな資料を基礎して御交渉をお始めになったのかどうかということも伺いたい。
  93. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん賠償せられますときに、今お話のように、向こう側からこういうような損害があったということを言って参ると思います。その場合に、向こうの書類は非常に不正確である。あるいは、非常に膨大なものを出してくるという疑いもございましょうし、あるいは、膨大でありますれば不正確なものもあろうと思います。むろん賠償というのは、今日までの交渉の過程におきましても、日本が過去においてその国でいろいろ迷惑をかけたことに対して、できるだけ償って参らなければならぬわけであります。しかし、同時に、日本の財政金融の状態を十分加味して参らなければならぬのでありまして、従って向こうの数字を出さしてそれを根拠とすることが適当の場合もありましょうし、むしろ不適当の場合もあるのではないかと思うのでありまして、賠償交渉のごとき交渉はできるだけ日本の財政金融事情を見合いながら、少額——と申してはおかしいかもしれませんが、少額から交渉を始めていくのが、外交交渉の普通と思います。膨大なものを出されてそれに対してどうするということは、場合によって触れない方が適当な場合もあろうかと存ずるわけであります。
  94. 森島守人

    森島委員 今お話のことはよくわかります。これはだれでもわかることだと思います。それだからこそ、アメリカの賠償問題に関する方針が変わってきた。結局ダレスさんが東南アジア等を歴訪して、その意向を聞いた上でサンフランシスコ条約の第十四条というものができ上がった、私はこう思っておる。私は藤山さんのおっしゃったそのことに、ちっとも反対しようと思いません。しかしながら、こういう家が焼けたんだ、橋がこわれたんだ、人が死んだんだというだけの資料を向こうが出してきた。向こうの出したことは、日本に批判の余地はないかもしれない。しかし、これを基礎にして日本がどう査定をしたか、損害幾らに見積ったか。たとえば今回の問題ですと、百万人の人が死んだというのは、藤山さんは二十万と査定した、あるいは三十万とやったということを、はっきり予算委員会でおっしゃっている。二十万と査定し三十万と査定することは、これは数字からいっても十万の開きがある。これは相当不正確なものだと思います。しかしこれは、当時の戦争の発生しておる状況において調べることは困難だという事情は、了解するに苦しむものじゃございません。このような不正確な、何ら数字的の基礎のない、一片の紙みたいなものをよこして、それを基礎にして交渉を始めるというのは、あまりに不見識だ。そこでフィリピンから出たその後にも、これに対して日本がさらに資料提出フィリピン要求せられたことがあるかないか。これは当然外務省としておとりになるべき措置だと思う。何らの措置もとらないで、これですぐ交渉に入ったのですか。
  95. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 私の知っております限りでは——またよく調べましてあるいは訂正いたすかもしれませんが、私はそれほど詳しい資料要求しておるとは思いません。大体当時の常識におきまして相当大きな損害を与えている。向こうは八十億と言っております。もちろん八十億とは思わないにいたしましても、こちらで最後にきまりました五億五千万というような数字よりはずっと大きな損害を与えておるということは、むしろ常識であったのではないかと思います。そうしてまた詳しい資料要求いたしまして、向こうがそれを出してくる。それでどんどん調べていきますれば、どうしても数字は大きくなるわけでありまして、向こうが大きい数字を出し、こっちが低い数字を出して、折れ合ったものが出ているわけであります。その結果を常識的に見まして、与えた損害よりもずっと大きいもので、それのごく一部をやったということは、常識的にみんなわかっておったのじゃないか、こう考えております。
  96. 森島守人

    森島委員 今お話しになりましたことは、全体としては私も了解に苦しむものではありません。戦争状態が発生している。しかし、同時に、今のベトナムだとかあるいはビルマだとか、インドネシア等については向こうから資料が出ております。数字が出ております。完全な数字でないかもしれぬが、とにかく一応の数字は出ておる。しかし、フィリピンに関する限りにおいては全く白紙ですね。この白紙に対して日本がどう要求したか、これは外交上の交渉の都合もあって言えぬ、こうおっしゃっています。しかし、正確な数字が出たか出ないかはわからぬけれども、数字は向こうから出たということは、今伊關さんも肯定しておられたようですが、それが間違いなかったら向こうのお出しになった数字を資料として御提出願いたい。
  97. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ただいま私が申し上げましたのは総額八十億ドルということを向うが申しております。そのうちで交渉の経緯におきまして、ほんとうの物的損害、建物とか橋梁とか道路とか、そういうものが約十億ドルで、人命その他の経済的な損害、無形の損害といいますか、財的損害と人的損害が七十億ドルというようなことを交渉の経緯で一度申しております。ですからそれを出せとおっしゃいましても、今申し上げた通りで、ほんとうのものがこわれたのが十億、それ以外の財産、戦費とかいわゆる人命の損害が合わせて七十億ドル、これだけでございます。
  98. 森島守人

    森島委員 それでは私は質問を続行する都合からフィリピンのやつはその程度にしておきますが、ビルマも出ている。ビルマのやつは私も割合良心的だと思う。ビルマ政府の対米覚書というのと、ビルマ政府の議会調書というのと、それからビルマ内務大臣の議会答弁というやつが一括してここに出ております。それで戦争の物的損害、それから人的損害等も一括して出したものだと思いますが、ビルマ損害は三十五億ドルとなっており、これは限られた資料によって作成されたもので、実際の損害は百億ドル以上であるというのがここに出ておりますが、これは私は割合良心的なものだと思います。フィリピンインドネシア等の資料に至りましては、私はきわめて不完全なものだと思う。一言申し上げておきたいのは、外務当局がたとえば秘密で御交渉になって公表ができぬとおっしゃいます点も、私は了解に苦しむものではありませんが、少なくとも日本側としても向こうが十言ってきた。これを一に値切る上においては、日本側としても資料がなければ、ただ空白にこういうことをやれるものじゃない。そういうことをやっておれば、向うを説得するのにはひまがかかる。そうして七年や八年賠償に費やしたのもこういうふうな点に基因するところが多いかと私は存じますが、この際日本側の物的損害に対する査定でもよろしいし、損害額でもこれは私はある程度あるはずだと思う。藤山さんがいかに否定されましても、これはあくまで予算委員会において藤山さんの岡田委員に与えられました答弁を信頼して、資料をお出し願うものだと私は信じております。この点につきまして再度藤山さんの御意見を伺いたい。
  99. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 常に申し上げておりますように、出せる限りの資料は、むろん御審議の便利のためにお出しいたします。外交交渉上必ずしも調査の上不適当だと思うものについては、出せない場合があろうかと思います。その点は御了承願いたいと思います。
  100. 森島守人

    森島委員 それは主義上の原則論を今おっしゃらぬでも、これは三才の子供だってわかるはずです。しかし私が要求しているのは、現実に今度の問題に関連しまして、出せないか出せるか、出せるものがあったら出し、出せぬものがあったら出さぬというのはだれでもわかっております。これは出せるか出せぬかということを、一応はっきりこの問題に限定しまして、各国別にお出しになるのであるかどうか。予算委員会におけるあなたの御誓約、お約束をすっかり根本からくつがえすのであるかどうかという点を御質問いたします。
  101. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんわれわれとしては出せるものは出しますし、出せないものは出せないし、ことに外交上調査して、出せないものにつきましては、あらためて出せないということを申し上げなければならぬかと思います。原則として出せますものは出すということは、むろん申し上げておりますが、出せないものにつきましては出さないということを申し上げるほかございません。
  102. 森島守人

    森島委員 私が申し上げておるのは、それならば初めから予算委員会でそういう御態度をおとりになればいい。はっきりお約束しておきながら、今になって出せぬというのでは、私はベトナム賠償に関する審議をこれ以上続けることはできないと思う。速記録にはっきり載っておる。(「これじゃ質問なんかできない、やめよう」と呼び、その他発言する者、離席する者多し)そこで私はもう一度、誤解があると困りますから、岡田君の質問藤山さんのこれに対する答弁を、速記録に基づいて読み上げますから、この点は間違いのないようにやって下さい。長いですから省略しておきますけれども、岡田君は「御承知のようにずいぶん戦争損害賠償額との間に疑惑、いろいろな話が出て、政府はおそらく今度のベトナム賠償を機会に各国に与えた戦争損害というものを調査していると思うのですが、」これは私注釈を加えますが、今になってフィリピンだとかほかの国の損害調査するというようなことは、それは政府として怠慢といわなければならぬ。これは政府がやったとは言いませんが、こういうふうな態度じゃいかぬと思う。私は、当時においてしっかりした資料を持っておらなければならぬ、こう思うのですが……。(「今聞くのはおかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)それだから私は今注釈を加えておるのだ。「この戦争損害というものを出してもらわない限りにおいて——われわれが国会審議をする場合においても、ベトナム賠償がはたして妥当なものであるかどうかということは、ベトナムに与えた戦争の損害、これに比べて妥当かどうか。それからインドネシアあるいはビルマフィリピン、これらに与えた戦争損害と比べてベトナム賠償が妥当であるかどうか。こういう資料がない限りにおいてわれわれは審議はできないのですが、これは当然第二次世界戦争中に日本の国が与えた各国別の戦争の損害というものは外務省にあるはずでありますけれども、これを予算委員会に御提出を願いたい。そうでなければわれわれは審議を進めるわけにはいかない。なぜならば、血税、二百億円の税金をわれわれが出すのが妥当であるかどうかということを判断するのですから、予算委員会に御提出を願いたい。この点はいかがでございますか。」こう岡田君が聞いております。それに対して、これは間違うといけませんから、藤山さんの答弁を全部読みましょう。「戦争損害につきましては、各国それぞれ違っておりまして、物的あるいは精神的、人的損害というようないろいろな種類の損害があるわけでありまして、これらの問題につきましては調査が非常に困難であることむろんであります。物的損害にいたしましても、はたしてどの程度損害があったのか。また人的損害についても、その人数等についても現実には調査が非常に困難でございます。また精神的苦痛というものに対する何と申しますか、推計というものも非常に困難な点がございます。しかしむろんそういう困難の中においても、われわれといたしましても、できるだけ先方側の要求も聞きながら、こちらの乏しい材料も集めながらも、そういう点について一応の調査はいたしておるわけであります。」調査をやっておると、これは認めておる。「しかしそれが正確なものだということにはとうていいかないことは岡田議員も御了承いただけることだと思います。従って何かそういう状態の数字を出せということならば出すことができるかと思いますけれども、正確な数字を出すということは非常に困難なことだということは御了承願いたいと思います。」、この点において困難ではあるし、それから正確な数字は出せぬかもしれぬけれども、一応の調査はしているから資料は出すということをはっきりお約束になっておる。それから岡田君はそれに対して、「適当であるかどうかということは、これはわれわれとしても判断することですから。その資料はお出しになるのですか。お出しになってもいいというような御意見ですが、お出しいただけますか。」と、重ねて質問をいたしておる。これに対して藤山外務大臣は、「今、ベトナム関係については、出すように先般も御要求がありましたので、出すように準備を進めております。」、準備はしておる。日本側が外国に与えた損害に対して、準備を進めている。出せるものは出すと言っている。出すように準備をしている。「また他の国について必要があれば、御要求に従ってできる限りのことはいたしてみたいと思います。」こう言っている。これは出すということを前提としている。あるものを出さぬということではない。(「全然出していないじゃないか」と呼ぶ者あり)それから私たちは資料として正確なものを要求している。これに次いで岡田君はさらに質問をしている。「それではべトナムの戦争損害を初め、各国戦争損害についての調査はできるだけ早くお出しになる、こういうように了解してよろしゅうございますか。」、と問いましたのに対して藤山外務大臣は、「できるだけ早く出すことにいたします。」、こう明快に御答弁になっておる。それで今まで出すのがおくれておるから、早く出してくれということなんです。私はここで一括して申しますと、不完全ではありますが、外国から出たものはここで資料としてお出しになっておる。これは資料としてきわめて不完全である。しかし同時に岡田君が主眼点を置いたのは、日本側資料をお出し下さいということです。これに対して藤山さんは、できるだけは出すということをきょう御答弁になりましたけれども、この際には、なるべく早く出す、何ら条件はつけておらぬのです。その資料をお出し願いたい。もう一つ加えて、日本側いかに査定したかということは、今それは出せぬということでございますが、これは日本側いかに査定したかということは、秘密会ででも御説明を願いたい。これに対して外務大臣から明確なる答弁を伺いたいと思います。
  103. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その予算委員会において御答弁申し上げておりますように、出せるものと出せないものとございますし、不完全なものもございます。ことに他の既存のインドネシアであるとか、フィリピンであるとか、ビルマでありますとか、そういうものを出すことは私は困難だと思います。むろん今度のベトナム賠償審議にあたって、不完全でありましても、若干のものが全然出せないとは申しませんし、今伊關局長も御説明いたしております。従って御満足のいくようなものが出せるとも私は思っておりません。しかしながらその程度のもので出すものがあれば、必要があれば出すようにいたしたいと思います。むろんこれらについて十分われわれとしては御満足がいくかどうかということは、これはわかりません。ですけれども、また出せないものも中にはあろうかと思います。しかし出せる範囲のものについては出すということをさっきから申し上げておるのでありまして、重ねて同じことを申し上げるわけであります。
  104. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これは森島君、こうしたらどうですか。大体要求の趣旨は今お読みになってわかっておりますから、そこでその書類のうちでどういう書類があるか、書類がないものは出せない、そのあるうちで秘密で出せないものはこれだけ、出せるものはこれだけというものがあればいいんでしょう。
  105. 森島守人

    森島委員 それを今三項目にわたって私が要求しました。これに対して政府がもしお出しになれぬなら、これは仕方がない。
  106. 小澤佐重喜

    小澤委員長 それはわかっておるから、私の方で政府要求するから……。
  107. 森島守人

    森島委員 それを今要求したのです。それで私はもう一つ申し上げますと、戦争中においても日本の陸軍報道部の発表だとかあるいは海軍報道部の発表だとか大本営発表だとか、この戦争における敵の損害はこれだけだ、これは非常に過大な見積もりをしておると思いますけれども、日本自身で間違っておるかどうかは別としても、そんなものをどんどん出しておる。そういう材料も私はおありだろうと思います。そうすれば、日本がどの程度損害を与えたかということもわかると思います。
  108. 小澤佐重喜

    小澤委員長 わかりました。そこで政府の方に委員長として要求しますが、ただいま要求のうちで書類のあるもの、ないもの、あるもののうちで出せるもの、秘密で出せないもの、これが今すぐ返事ができれば返事してもらうし、もしきょうすぐ返事ができなければあしたにでも調べて返事してもらう、それでいいですね。
  109. 森島守人

    森島委員 今そのお答えがありますか。
  110. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ベトナムにつきましては、先ほど御説明いたしましたような、われわれの研究しましたものがお出しできます。他の三国につきましては、お出しするようなものはほとんどなかろうと思いますが、もう一度探してみます。
  111. 森島守人

    森島委員 それじゃ今の通りにお計らい願いたい。またその資料を見まして、あるいは要求するものが出るかもしれません。再度要求する件だけは留保しておきます。
  112. 小澤佐重喜

    小澤委員長 その次に進んで下さい。
  113. 森島守人

    森島委員 それじゃ私、賠償問題全般に関しまして、質問を始めてみたいと思います。賠償問題の経過等につきましては、時間の関係もございますので詳しくは私は申しません。しかし一つ私は指摘したいことは、アメリカは実物賠償ということを初め言っておった。しかるにダレスさんが先ほど申しました通り列国を回って、そこで列国にも日本に対する賠償請求の要望があるということで、結局のところ日本にサンフランシスコ講和条約第十四条という規定ができたわけです。それに対する日本政府のこれまでとってきました態度を概論いたしますと、私は交渉の過程としてはきわめて不満足である。これは賠償問題というものは、大体講和条約のうちではっきりきむべきものである。しかるにアメリカが方針を変えて、ダレスさんが列国の要求に応じてこういう結果になったのです。そこでこのサンフランシスコ講和条約に基づく賠償要求のほかに、いろいろな賠償要求してきた国もあったと思います。その点について私は、交戦国と同盟国と中立国との三国に分けて、どういうふうに賠償交渉の過程がなっておるかということをお聞きしたい。第一に東南アジア諸国の問題、これはすでに解決したところもございますが、もし問題が残っておりますればその経過を御説明願いたい。
  114. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御質問の要点があまりはっきりしておりませんけれども、東南アジアに関しましては御承知通りビルマフィリピンインドネシアベトナム。ラオス、カンボジアはこれを放棄したわけであります。以上であります。
  115. 森島守人

    森島委員 再度お伺いしますが、ビルマの問題はいかがなっておりますか。
  116. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ビルマは御承知通り賠償条約の中に再検討条項がございます。従って本年春その再検討条項によりましてインドネシア及びフィリピンとの関連において再検討をしてもらいたいという申し込みがあったわけであります。
  117. 森島守人

    森島委員 これに対する政府のこれまでおとりになった態度等はいかがなっておりますか。
  118. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府としましてはインドネシアフィリピンと比較いたしまして、ビルマ賠償というものは、今日きまっております賠償が適当でないとは考えておりませんので、その旨を説明をいたしておるわけであります。
  119. 森島守人

    森島委員 ビルマの再検討要求が出ましたのは、なるほど今御説明がありました通りフィリピンインドネシア賠償が済んだ後でございます。ベトナムには関係がないとおっしゃいますが、今後も交渉継続中ですから、初めは二国を基礎としてきたかもしれませんが、ベトナム賠償等もこれに関連しまして将来論議の的になることがあり得るのじゃないかというふうに信じておるのでございます。こういうふうな点からも、私たちは賠償問題の交渉に対して関心を持っておるのですが、この点は全然関係がないという御返答でございますか。
  120. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 少なくも現在まで日本に申し入れておりますビルマは、フィリピン及びインドネシア賠償と対照してこれを申し出ておるわけでございまして、会議の席上でもベトナムに関しての比較を言っておりません。従って私どもといたしまして当然ベトナムは出てこないものだ、かように考えております。
  121. 森島守人

    森島委員 それに関連しまして外務省内に何か委員会ができて、向こうからは大使だとかあるいは賠償官が出てこの問題の検討に当たっておるというふうに私は了解しておりますが、その通り間違いありませんですか。
  122. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 委員会というのではありませんで、先方は大使とそれから賠償担当官と館員一名、三名が出まして、私の方は私と賠償部長と、それから大蔵、通産から係官が一名ずつ出まして、予備交渉というものをいたしております。
  123. 森島守人

    森島委員 もしできますればその予備交渉の内容等についてもこの際御説明を願えますれば、賠償問題全体を取り扱う上において便宜だと存じますので、この点御説明を願いたいと存じます。
  124. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 予備交渉の内容は一切発表しないというふうに先方と打ち合わせをしております。
  125. 森島守人

    森島委員 それではその点はいたし方ございません。  もう一つ私がお伺いしたいのは、サンフランシスコ平和条約第十四条に基づいて賠償要求してくる国は、今お話になりました国だけでございますか。
  126. 高橋通敏

    高橋政府委員 そのように考えております。
  127. 森島守人

    森島委員 それではこの規定を見ますと、日本国は、現在の領域が日本軍隊によって占領された——日本軍の占領ということが賠償の前提になっております。これはもう御説明するまでもないと思います。しかし私の記憶によりますと、ほかにも欧米の国の間において、領土が占領されたという国が幾国かあります。この点はどうなっておりますか。
  128. 高橋通敏

    高橋政府委員 どの国もそのような要求をまだ受けておりません。
  129. 森島守人

    森島委員 私が了解しておるところによりますと、非公式ながらポルトガル政府は何らか要求したことがある。ポルトガルとの間の国交回復は何年だったか私記憶しておりませんが、相当おくれている。その間国交はマッカーサー司令部の命令によって断絶しておりました。しかしこの国交回復をするためには賠償問題が片づかねばならないというのが、ポルトガル政府の終始一貫してとってきた政策であったというふうに記憶しておる。私が申し上げますれば、豪州の前面にあるチモール島は、半分はオランダ領、半分はポルトガル領、このポルトガル領を日本の軍隊が無通告で占領しておった。この占領に関連して日本との間で交戦状態が起こり、あるいは国交が断絶に至ったというふうなことが戦争当時に非常に憂慮されて、そうして人的損害も非常に大きなものを与えておると思いますが、この要求が公式にはなかったかもしれませんが、非公式にあったかないか、今後の見通しはどうなっておるかという点を御説明願いたい。
  130. 高橋通敏

    高橋政府委員 ただいまの点、その前に、ポルトガルは連合国でございませんから、平和条約第十四条の問題とは関係がないということでございます。
  131. 森島守人

    森島委員 十四条に関係ある、なし、これはあなたの説が正しいかもしれませんが、しかし現実に占領して損害を与えておるということで、損害賠償の請求権は持っておることに私は了解しております。そうして外務省に記録はないらしいのです。私はないことも知っておる。その当時の外務省に対して損害賠償の問題が非公式であったとはいえ要求があったということは、間違いのない事実なんです。その交渉の経過がどうなっておるか私はこの際明らかにしていただきたいと思う。
  132. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 公式にも非公式にも、そういう交渉があったということを私は聞いておりません。従って私といたしましてはそういう要求があろうとは考えておりません。
  133. 森島守人

    森島委員 外務大臣はこれは事実御承知ないのだ。おそらく外務大臣は私の前任者の時代だといってお逃げになると思った。まあ正直にお答えになったので、私はこれ以上追及はいたしませんが、ポルトガルとの間に問題があることは間違いない。事務当局の方において何らか資料でもございますか。
  134. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 私の知っておる限りでは何もございません。
  135. 森島守人

    森島委員 それはアジア局長の所管ではない、欧亜局長でなければ。条約局長どうですか、御承知ありますか、ありませんか。
  136. 高橋通敏

    高橋政府委員 承知いたしておりません。
  137. 森島守人

    森島委員 それでは次会に欧亜局長の出席を求めまして、この点を明らかにいたしたいと思います。それはもし要求でもきますとまた賠償問題が新たに起きる。これは要求してこなければ大へんけっこうだと思います。(「どうしてそんな日本の不利益なことまで言うのだ」と呼ぶ者あり)不利益とおっしゃるが、あなたが寝た子を起こして中国のことまでおっしゃるから……。  次にお伺いしたいのは、スペインからは何か要求がありましたか。
  138. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、スペインからそういうような交渉があったことを承知しておりません。
  139. 高橋通敏

    高橋政府委員 ただいまのスペインの点は、スペインから要求が参りまして、この点は解決済みでございます。ただしこれは賠償とかそういう問題とは全然無関係でございますから、その点を申し上げます。
  140. 森島守人

    森島委員 スペインの点は、今明快に御答弁になりましたので明らかになりました。そこでタイ国はどうなっていましょう。
  141. 高橋通敏

    高橋政府委員 これも連合国ではありませんから、別個の協定で解決いたしております。
  142. 森島守人

    森島委員 続いてお尋ねいたしますが、英国の関係はどうなっておりますか。——それでは私正確に申し上げますが、賠償と申しましても、これは戦前のものもございます。サンフランシスコの講和条約関連したものもございます。大東亜戦争継続中、数カ年間日本が上海その他を実際占領しておりまして、莫大な損害を英国に与えておる。これについては長年イギリスから要求がございまして、私の了解しておるところによりますと、岸さんがイギリスに行く前に解決をしたいということで、いろいろ外務省があせったというふうに私は了解しております。サンフランシスコの賠償問題じゃないこのイギリスの賠償関係はどうなっておりますか。
  143. 高橋通敏

    高橋政府委員 ただいま交渉中でございます。ただ賠償とは別問題でございます。その点は申し上げておきます。
  144. 森島守人

    森島委員 これは賠償と別問題だと私も今はっきりあなたに言っている。講和条約に基づく賠償とその他の賠償があることは、はっきり私は申し上げておる。講和条約関係がなくても、イギリスとの間で実際上の賠償がある。これに基づいて日本の対外支払いに大きな額が加わることもあり得る。私はその点を言っておる。それからアメリカに対するガリオア、イロアの関係はどうなっておりますか。
  145. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカのガリオア、イロアに対しては賠償ではないと思うのであります。アメリカ側としてはこれをドイツ的に考えてもらいたいということは言っておりますけれども、まだ交渉の過程ではございません。
  146. 森島守人

    森島委員 それなら大蔵大臣の出席を求めて——大蔵大臣は前回アメリカへ行かれましたときに、この問題をアメリカ政府交渉されたという事実がありますので、私は大蔵大臣の出席を次会に求めたいと思います。委員長においてしかるべく御善処あらんことを要望いたします。(「賠償関係ないじゃないか。」と呼ぶ者あり)関係がある、対外支払いがある。
  147. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  148. 森島守人

    森島委員 オランダの関係はさっき御説明がありましたね。オランダでも特別の問題があったと思いますが、これはどうなっておりましょうか。
  149. 高橋通敏

    高橋政府委員 これは別の協定で解決いたしております。
  150. 森島守人

    森島委員 それでは旧同盟国関係で何らか対外支払いを必要とするような事態がありますかどうか。
  151. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは賠償ではございません。旧正金関係の問題ではないかと思います。
  152. 森島守人

    森島委員 そこで私が何ゆえにこういうふうな質問をしておるかということを申し上げれば、与党の委員諸君ももうおわかりになると思う。私たちは日本の外国に対するこういうふうな債務の支払い能力の限度というものがなければならぬ。この支払問題に関連しまして、対外支払いの限度を年どのくらいの金額に御算定になっておるか、この点をお聞きしたい。これもおそらく大蔵大臣でないと答弁ができぬかもしれません。これは賠償関連してやっておる。私は初めから関連してやっておる。もし御答弁ができませんようでしたら、次会に大蔵大臣からでも答弁を求めたいと思います。
  153. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんこれらの対外債務を支払いますのは、大蔵当局としても一つ考え方を持っておられると思います。しかしこれらの問題解決に当たっては日本の財政経済の力もございます。従って要求する方からいいましても、外貨事情がよくなってくればよけい要求する、またそれよりもできるだけ減らしていかなければならぬということでありまして、大体その時期における大蔵当局の腹積もりはございましょうけれども、それは固定したものではないと考えます。
  154. 森島守人

    森島委員 私がこういう質問をいたしますのは、別に他意あるわけでない。日本にいろいろ外国から要求がくる。これに応じて払わなければならぬという金が出てきましょう。その総額を一体幾らに見積もったのが日本の財政状態等に勘案いたしまして適当であるかどうか。この点に私も関連しましてベトナムの問題をどう考えるかということを考究したいので、御質問した。この点については与党の委員諸君からおほめ願わなければならぬ。そこで私がお尋ねしたいのは、これは私からしいて質問しない方がいい。中共の関係です。しかし中共の問題についてはすでに佐々木委員から御質問があった。私はこの際質問を控える方が正しいというふうに信じておりましたけれども、与党から寝た子を起こすような御質問があったので、私はその佐々木君の質問に対する藤山外務大臣答弁は、これはどうかと思う。この際もう少しゆとりのある御答弁をこの席上でおやりになっておく方が、中国との関係を将来円滑に進める上において有効じゃないかと思う。私は、おそらく政府としてはいずれおそかれ早かれ中共問題とまっ正面に取り組むべき時期が必ず来るということを確信しておる。そのときにじゃまにならぬような御答弁をやっていただかぬと、これは超党派的な問題としまして、私は日本国全体に重大な関心があると思うものでございます。その点について一つ……(「ベトナム賠償関係あるか」と呼ぶ者あり)佐々木君から出したものだ。この点について私はお伺いしたいのですが、これはあまり佐々木君の質問いかがわしいと思う。外務大臣答弁もどうかと思う。これは国家的見地から見て私は非常に遺憾に思う。(「自分質問をやれ」と呼ぶ者あり)自分質問を今からやりますよ。これは重要な問題です。そこで私は藤山さんの答弁が問題なんです。佐々木君の質問はこれを引き出したわけです。藤山さんの答弁は……(「いかがわしい質問とは何だ」「取り消してもらいたい」と呼ぶ者あり)取り消さぬ、取り消す必要はない。中国の関係におきましては賠償が放棄されておるということを考えております、とこう言っておる。それからその次は中共との関係におきましては現在日華条約によりまして台湾との間に話し合いがついておりますので、中共から要求されることはないと考える、こういう御答弁なんですが、これは私は多少ゆとりのある御答弁を伺ったらどうかと思う。何らか御所見がありましたらこの機会に明らかにしておいていただきたい。
  155. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日華条約によりまして賠償が放棄されておることは事実でございます。従ってその点について御答弁を申し上げたわけでございます。
  156. 森島守人

    森島委員 それではお伺いいたしますが、ベトナムとの関係において、あなた方は南ベトナムは北ベトナムをも代表するというお立場をとっておられる。これは議論のいかんは別ですが、そういう態度をとっておられます。私たちはこれを肯定いたしませんけれども、中共の関係いかがでございますか。日華条約と申しましても、領域については限定されている。私はきょう条約を持ってきませんでしたけれども、中共の関係においては、台湾または事実上その後に台湾政府の支配下に入ったと申しますか、はっきりした文句を私は覚えておりませんが、支配下に入った領域だけに日華条約というものは適用されるのだというのが、私は正当な解釈じゃないかと存じておるのでございます。
  157. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまも御答弁申し上げました通り、日華条約に関する限り放棄されていると思っております。
  158. 森島守人

    森島委員 日華条約を離れまして、事実問題が起きてくることがあるかもしれない。そのときの態度につきましては、私ここで明確に答弁を求めることはいたしませんが、私はむしろサンフランシスコ条約に関する限りにおいて請求権が出てこないというふうにお考えになったらどうかと思いますが……。
  159. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日華条約は、サンフランシスコ条約に基づいておるわけでありまして、私の今申し上げた通りであります。
  160. 森島守人

    森島委員 全体の問題につきまして大体私の質問は終りましたので、私の要求いたしました資料は正しくお出し願いたいことを御要求いたしまして、私の質問を打ち切ります。
  161. 小澤佐重喜

    小澤委員長 外務大臣の出席時間がなお一時間ほどありますが、本日質疑の申し出がなければやむを得ず閉会するほかないのですが、きょうはないのですね。
  162. 松本七郎

    松本(七)委員 質疑の通告があるのですが、所用で予定の時間に帰ってくるはずの田中君がまだ戻ってきておりませんし、資料要求もしておるし、その資料が出そろうまで森島さんの質問は留保しなければなりませんので、きょうはこれで散会して下さい。
  163. 小澤佐重喜

    小澤委員長 資料の問題は本日請求なすったのですから、これはきょう請求してきょう出せということは無理なんですけれども、田中さんの事情があるとすれば、きょうは社会党の申し出通り散会することにいたしまして、次会は明十七日午後一時三十分より閉会することといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十七分散会