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藤山国務大臣 御
承知のように、今回の
賠償は、
南ベトナムをわれわれとしては全
ベトナムの
代表として認めておるわけであります。従って、
南北を通じての
損害であるということは、前提として申し上げておきたいと存じます。
そこで、従来の
賠償の
経緯から見ましても、一応膨大な
要求と申しますか、
損害があったということをそれぞれの国からは言って参るのでありまして、
インドネシアは百七十億万ドルというようなことを一応言うわけでございます。従いまして、むろんそういうような
要求額をわれわれ頭に置いてやるわけではないのでありまして、われわれとしては、そういう問題についてはできるだけ
一つの
考え方を持っていかなければならぬこと申すまでもございません。が、しかし、同時に、
損害の
査定ということは非常に困難でありまして、
物的損害にいたしましても、
現実に
査定ということは非常にむずかしい問題がございます。また、
人的損害にいたしましても、その数等について正確な
数字を収集するということはほとんど不可能なことであるわけです。まして、
サンフランシスコ平和条約にありますように、精神的な点までも考えあわせていかなければならぬといたしますと、むろん、われわれがどの
程度の
金額がまず合理的なものであるかということを
損害額から見出していくということは、
相当困難なことなんでありまして、従って、われわれとしては、一応そういうことを
念頭には置きますけれども、しかし、
日本の
財政事情もございますし、そういう
賠償の性質として、ぜひとも払って償いをいたしませんければなりませんけれども、しかし、同時に、
日本の今日の現状から言いまして、できるだけ少ない
金額を払っていかなければならぬし、
向こう側にも満足してもらわなければならぬ。そうして、誠意を尽してその点で
話し合いをするというのが従来の
賠償交渉の普通の
過程でございます。従って、われわれといたしまして、できるだけ少ない
金額から
話し合いをいたしていくことは、
交渉でありますから当然であります。従って、
最初に
話し合いをしていきますときの
金額が、それで適当だという
金額であることは、
交渉でございますからむろんございません。
現実といたしまして、
先方は二億五千万ドルという
要求額を出して参ったのでありますが、しかし、そういう
金額を払うことが適当だとはわれわれ考えておりません。また、他の例から見ましても、適当であろうとも思っておりません。従って、まず、
向こうの
考え方を十分聞きました上で
交渉を開始して、逐次いろいろな
状況を
話し合いの上で歩み寄っていくというのが、今日までの
賠償の
交渉の
経過でございます。しかも、それは
ベトナムにかかわらず、他の
賠償についてもそういうような行き方で行っておるわけであります。でありますから、初めからどの
程度の
金額が一番妥当なんだ、
損害に対して、言う
数字は
各人各様の見方があろうと思います。が、しかし、今申し上げたように、積算をいたして参ります基礎というものが必ずしもはっきりいたしておりませんので、諸般の情勢を勘案しながら
交渉を続けていく。従って、ある場合にはそれが非常に長い
交渉になっていくという
経過をたどってきておるわけでありまして、大筋において
交渉の
方針というものはそういうものであるということを私から申し上げ、また、細部につきましてはそれぞれ
政府委員より答弁をいたさせます。