○中曽根国務
大臣 この
委員会は
臨時に作られた
委員会でございまして、今年度の年度末までの間に答申をするということになっております。それで、総合的な、
政府としてとるべき施策を、この
委員会によって答申してもらおうと思っております。その総合的な大きな幾つかの
方針を、今度は
政府といたしまして、
各省が分担してこれを受け持ってもらうように、
科学技術庁として閣議に
報告してそして閣議でこれを取り上げてもらって、来年度以降やってもらうように実はしたいと思っております。
それで、どういう項目が大事な点であるかということを考えてみますと、今、
西村先生が
お話しになりました、
台風に対する恒久的な
対策というものが、やはり一番大事であるように思います。恒久的な
対策として、まずとらえるのは、
台風の生態
研究の問題であります。この点につきましては、実は今度の
補正予算でもさっそく始めたいと思いまして大蔵省に交渉したのでございますが、気象
研究所というのが今
気象庁にございます。この気象
研究所の中に
台風の
関係の仕事をやった人がまだ四、五人しかいないわけです。そこで、
台風研究部というものを作って、
相当な人間を配置しながら、実験と理論的
研究をやっていくようにしたいと思います。この点につきましては、楢橋運輸
大臣とも完全に今提携がとれまして、運輸
大臣も非常に力を入れてくれておりまして、来年度
予算でこの
台風研究部を新設する、そうして、中に四つのセクションを設ける
予定で、その第一、第二セクションは理論的な
研究、第三、第四セクションは実験
研究をする、そういう
方針で進めております。実験
研究の中には、人工降雨の
研究とか、それから、たとえば、飛行機につきましては、今遷音速風洞なんかできておりますが、
台風につきましても大きな水槽のようなものを作って、それにいろんな変化を与えて、そうして水蒸気がどういうふうに巻いていくかとか、蒸発がどの程度吸収して行なわれるかとか、地球の自転がどういうふうにそれに
影響を及ぼすであろうかとか、そういうものを、小型の実験装置を作りまして
研究していくようにいたしたいと思っております。
それから、もう
一つ大事な点は、
日本の
資料のみならず、アメリカその他の国におきましても
相当進んでおりますので、共同
研究を進めていきたい。具体的にはアメリカのハリケーンが対象でありますが、あるいは豪州の、今やっておる人工降雨等も非常に参考になると思いまして、これらの国々とも協力してやれるように、外交交渉を通じて、実は国際的協力をやりたいと思っております。
それから、このようにして
台風の生態
研究とこれに対する
対策を、
研究部というものを作って長期的に、
予算も経営化してずっと続けてやっていくようにして発足いたしたいと思っておりますが、
台風について一番大事な点は、今度の
経験にかんがみて、
数値予報をするということだと思うのです。だから、
高潮にいたしましても、単に
高潮がくるというだけではだめで、東京湾については四メートル、五メートルの
高潮になるかもしれない、大阪湾については四メートルから六メートルの
高潮になるかもしれない、そういうふうに、メートルということが非常に大事なんです。
堤防が五メートルなら、四メートルないし六メートルの
高潮のおそれがあるというならば、六メートルくればオーバー・フローするのはあたりまえでありまして、ほうっておいても人間は逃げ出す。その
数値予報ができなかったというところに、今度の
災害の原因があると思います。そこで、測候所あるいは管区気象台の人員を
強化して、そうして
数値予報ができるような体制を整えるということ、それに必要な器材を
整備するということ、それから住民に対してその
数値予報の結果を刻々伝達して、いろいろな
措置をとらせる
防災気象官といいますか、そういうものを重要なところには配置して、ラジオあるいは地方団体とも連絡して、人的
災害を少なくともこれによって防止するという
措置をとりたいと思っております。これらも来年度の
運輸省予算として要求して驚ります。われわれはこれを強くバツク・アップいたしたいと思っております。
それから、もう
一つ大事な点は、各地域ごとに
災害の予想図というものを作らせたいと思っております。これについては、たとえば、大阪湾、あるいは
伊勢湾、あるいは木曽川――大体ポイントは見当ついております。そこで、できましたら航空写真をまずとる、
整備する、そうして、その航空写真と実測等も勘案して、この川はどのくらいな雨が降る場合には、こういうふうに流域がくる、なお、高台はここにあるから、ここは安全だろう、そういうように、各地域ごとにあらかじめ
防災訓練ができるような
防災地図を作っておく、これは、すぐは間に合わないかもしれませんが、五年
計画ぐらいでそういう重要なところの地形を航空写真でとっておいて、そうして
防災地図を作って、どの村はどこべ避難したらよろしいか、あるいは何々学校は木造を今度は鉄筋に変えたらいい、そういうようなところまで現地指導ができるような
資料を
整備いたしたいと思っております。これは建設省の仕事でありますが、この点につきましても、建設省と連絡をとってやって参りたいと思います。
いろいろ考えておることもございますが、人命を損傷しないということが第一、それから第二には、今までのような不合理な
経験を何回も繰り返すことのないように、物的
措置を講ずるということ、そういう点を中心にいたしまして、永続的な
措置を講じていきたいと思っております。