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1959-12-09 第33回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月九日(水曜日)     午後一時四十九分開議  出席委員    委員長 村瀬 宣親君    理事 西村 英一君 理事 平野 三郎君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 岡本 隆一君       秋田 大助君    天野 公義君       木倉和一郎君    小平 久雄君       細田 義安君    辻原 弘市君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 中曽根康弘君  出席政府委員         科学技術政務次         官       横山 フク君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         大蔵政務次官  奧村又十郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 吉岡 英一君  委員外出席者         科学技術会議議         員       内海 清温君         科学技術会議議         員       梶井  剛君         科学技術事務次         官       篠原  登君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    久田 太郎君         総理府技官         (科学技術庁計         画局科学調査         官)      手束 羔一君         総理府技官         (科学技術庁振         興局長)    鈴江 康平君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         文部事務官         (大学学術局庶         務課長)    蒲生 芳郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件  科学技術会議答申に関する件      ————◇—————
  2. 村瀬宣親

    村瀬委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  本日は、先般科学技術会議が、昭和三十五年度における科学技術振興重点方策についての答申を行なったのでありますが、本件に関しまして中曽根国務大臣より説明を聴取し、質疑を行ないたいと存じます。中曽根国務大臣
  3. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先般、科学技術会議設置法によりまして、九月四日に内閣総理大臣から科学技術会議に対して、昭和三十五年度における科学技術振興重点方策について諮問がありました。科学技術会議におきましては、この諮問に対して鋭意調査を進め、特に本年度杉野目北大学長を団長とする海外調査団外国に派遣いたしまして、日本と国情の類似しておるヨーロッパ諸国の実情をつぶさに調査していただき、また、各省関係部局を招致いたしまして、各省並びに文部省方面の希望あるいは現在の条件等を精査し、さらに科学技術会議におきましては、十年後を目標とする科学技術政策基本政策について総理大臣から第一号の諮問を受けておりますが、これとの関連並びに経済計画、十カ年計画等との関連等考慮いたしまして、さらに日本学術会議との連絡部会も開きまして、学術会議方面意見も徴した結果、最後答申されましたのがお手元にある答申であります。  この答申趣旨は、最近の国際競争の激甚な情勢及び国民所得を倍増しようという国家意図等から考えてみると、経済計画の根幹に科学技術振興ということが取り入れられなければ、これは不可能であるという考えから、科学技術政策国家政策中枢に据え入れて、そして所期目的を達せんという基本的な考えに立っておるのであります。  そこで、昭和三十五年度の具体的な方策として、四つの大きな柱を確立いたしました。第一は、基礎的科学技術振興。二ページにございます。それから第二は、四ページにございます科学技術者養成処遇改善、それから第三は、民間における科学技術活動育成。第四は、特別指定研究等推進であります。  まず、第一の基礎的科学技術振興という問題につきましては、国産技術を確立していくということがやはりわれわれの目標中枢でなければならぬ、国産技術を確立して、外国に対する支払いをなるたけ少なくしていくというためには、豊かな科学の土壌がつちかわれていなければできない、それと同時に、各国との共同態勢を確立しなければならない、こういう観点から、基礎的科学技術を重要視して、ここに相当な国家の力を注がなければ、もはや列国に立ちおくれるのみならず、国際競争落後者になるおそれがあるという考え方で一貫したのであります。  そこで大学研究実態、それから各省庁研究機関実態等を勘案して、このように著しくおくれているわが国の人員並びに施設の状況を、すみやかに昭和三十五年度をスタートとして回復しなければならないという考えのもとに、具体的方策として、第一に、大学教育及び研究機能充実ということをあげました。「国立大学について教官研究費をすみやかに戦前水準に引上げるため、昭和三十五年度においても所要の増額を考慮するとともに、科学研究費の増加をはかる。また教育および研究施設設備近代化推進し、あわせて教育研究要員充足をはかる。なお、国立以外の大学教育および研究施設設備改善についても必要に応じて助成をおこなう。」この意味は読んだ通りでございますが、特に教官研究費科学研究費及び設備並びに研究要員充足という点が強調せられておるのであります。そこで、私立大学公立大学においても、同じように所要助成を行なう必要があるということを強調したのであります。  第二に、各省庁関係研究機関整備充実、「各省庁関係研究機関理化学研究所を含む。)の施設設備近代化推進するとともに、研究内容充実についても考慮を加える。」最近におきまする発達から見ますと、各省庁関係研究機関施設設備の中には、著しく劣悪なものもございます。そこで、この事態に適応するために、さらに充実改善を加える必要がある、特に理化学研究所は、本委員会の絶大なる御関心のもとに総合研究所として最近発足したのでありまして、総合研究所としての所期目的を達するためにも、三十五年度において相当重点を入れて充実させる必要があるということを考えたのであります。  次に、科学技術者養成処遇改善につきましては、現在、すでに科学技術者の深刻な不足日本は襲われております。また、大学や各省庁関係研究機関においても優秀な科学技術者不足し、また、機械、電気、冶金、化学、物理等理工学部門においては特にその現象が著しく、大学院博士課程への進学者のごときは、定員の半数程度にとどまっておる。従いまして、昭和三十五年度においては、すでに科学技術会議が策定してやっております人材養成十カ年計画開始前提として、次の施策を行なう必要があるということを確認いたしました。  第一は、理工系学生増員計画完遂であります。現在実施しております八千人増員三ヵ年計画最終年次として、国公私立を通じ約二千人の増員をまず行なう必要がある。  第二に、大学教官研究公務員処遇改善であります。「大学教官および研究公務員給与改善、その他研究能率向上方途について考慮する。」日本におきます大学教官給与水準というものは、外国に比べてはなはだしく劣悪でありまして、生活を維持するだけで一ぱいでありまして、研究を進めるというところまでは、とても至っておりません。戦前におきまして、たとえば、帝大の総長といわれる人は大審院院長と同じ格の給与を受けておりましたが、戦後におきましては、大学の旧帝大学長クラスが地方裁判所の中堅裁判官以下の給与を受けているという状態であります。従いまして、大学教官の待遇を改善する、そのほか、各省庁関係研究公務員給与改善を行ない、また、たとえば、研究職手当というような、研究者に独得に必要とするような研究能率向上方途について考慮するということをうたっておるのであります。研究者のためには学会の経費も要りますし、図書を購入する経費も要りますし、共同研究をやるための経費も要りますし、研究委員会を結成する費用も要ります。そういうような点については、一般事務系統の職員のほかに、別途の考慮をする必要があるということを重ねて強調いたしておるのであります。  次に、民間における科学技術活動育成であります。国家自分で請負ってやりまする科学技術活動には限界があります。しかし、民間につきましては、戦後において研究活動は非常に旺盛になって参りました。そこで、税制面における配慮を加え、税制のコックを若干ある方向にゆるめてやれば、百億、二百億の膨大な資金が研究のために民間に流れる可能性は十分あります。そこで、国家自分財政投融資その他を行なわなくとも、税制面考慮によって日本科学技術を著しく前進せしめるという可能性が十分ありますから、税制一般について大いに考慮を加えてほしいということであります。現在、税制調査会において審議が行なわれておりますが、科学技術関係についてもすみやかに検討を加えて、適切な措置を講じていただきたいと思っております。  なお、委託費補助金等につきましても、やはり国家が広い視野に立って必要なる研究推進していくためには、委託費補助金というものは有効に活用されておるのでありまして、この面についても政策を前進せしめる必要があります。また、科学技術研究、情報、普及顕彰等の部面において、民間PRが著しくまだ弱体でありますので、特別の団体を作る等、その他いろんな考慮によりまして、民間啓蒙普及等の仕事を推進していきたいと思うのであります。  そこで、具体的な施策といたしましては、科学技術関係税制上の措置研究設備等減価償却の取り扱い、これは任意償却制度にするという考え方であります。第二は、研究施設研究費等に対する寄付金損金繰り入れ、第三は、科学技術関係賞金所得に対する非課税措置適用等について、現行制度の一そうの弾力的運営に配慮するとともに——これらのことは法律改正を要せずして、行政措置でできるものでありますから、弾力的運営によって大福にこれを拡充するということであります。さらに「科学技術振興に資する税制改善合理化についても検討をおこなう。」これは研究のための積立金であるとか、あるいは新しく開発してきた国産技術に対する免税であるとか、あるいは国内において特許権を譲渡する場合における所得半額免税外国に対して行なっておりまするのを国内にも適用する等の——これは法律改正を要することでありますが、これらについても検討を行なうということであります。  次に、科学技術関係委託費補助金等措置であります。「研究助成については、各省庁施策のうちとくに前記の目的に添うものにつき考慮する。なお、科学技術普及啓発事業流動研究員制度等運営国際学術交流に関する事業等について留意する。」先ほど申し上げましたように、強力な民間団体育成して、それによって普及啓発事業等を行なわせる、あるいは国際交流に関する事業を活発に行なうということも非常に緊要なのでありまして、特にこの点について強調したのであります。  その四は、特別指定研究等推進であります。特別指定研究を行なえという声は、久しい間当委員会における御主張でありましたが、これが科学技術会議答申の中にいよいよ前進して実現してきたのであります。すなわち「研究の成果が多くの分野に応用され、わが国産業構造にとくに大きな変革を与える要因となるもの」、たとえば、核融合というようなものはそうでありましょうし、あるいは電子のような問題もそうであります。第二は、「国際協力を必要とし、わが国国家的見地から直ちに参加する必要があると認められるもの」、たとえば、宇宙科学技術であるとか、台風防災科学であるとか、こういうことは国際協力前提として、また、わが国国際的発言権を確保する必要からも、日本準備態勢を早く整える必要があるのであります。第三は、大きな人的物的損失をもたらす災害疾病等基本的対策として、すみやかにその研究の達成が望まれるもの」、すなわち、ガンであるとか、あるいは災害であるとかいうようなものであります。以上のようなものであって、「総合的な大規模研究が未着手または萌芽期状態にあるものについては、これを特別指定研究として指定し、関係方面努力を重点的に結集して特別の推進措置を講ずる必要があると認められる。」こういうものであります。  最近、調査団の報告によりましても、イギリスにおいても、フランスにおいても、イタリアにおいても、ドイツにおきましても、このような特別指定研究、ある場所では重要な研究促進等もやっておりますが、それを実施しております。大体各国でやっておるのは、宇宙科学技術、あるいは原子炉核融合、あるいはガン、あるいは海洋、こういうような問題がひとしく取り上げられておるようであります。「また、最近における研究活動の傾向よりみて、研究上緊急に発生する事態にそなえるため、研究調整をさらに効果あらしめる措置考慮すべきである。」すなわち、これは調整費ということを考えておりまして、年度の経過途中にある発明が出てきた、これをほうっておくと外国に行ってしまって、外国でデベロップされて、それが日本にまた返ってくるというようなおそれのあるものもあります。たとえば、エサキ・ダイオードというものが昨年年度の途中で出て参りましたが、これを至急お金をつけてやって電子計算機にまで発達させるということに非常に時間を要する、時間が問題になってくるような研究が非常に多くなってきたのであります。こういうために特別の調整費を設けておいて、その過程において調整することができるように、緊急に発生する事態に備えることができるようにするという考慮をすベきであるというのが、含みとして、この中にあるのであります。  「よって昭和三十五年度においては、つぎの施策を実施する必要がある。」ということで、特別指定研究指定とその推進でありますが、指定といたしまして、台風防災科学技術宇宙科学技術基礎電子工学核融合海洋科学技術、対ガン科学技術の六部門を指定し、なお、研究調整をさらに効果あらしめる調整費等措置考慮する、なお、必要に応じては、たとえばガンであるとか、あるいは基礎電子工学とか、そういう問題については、必要に応じて研究所の新設についても検討する、こういうことであります。  以上がこの答申の大綱でございまして、十二月二日の本会議におきまして満場一致これが採択され、内閣総理大臣から、この答申を尊重して政策を実施するという意見の開陳があったのであります。  以上で御説明を終わることにいたします。
  4. 村瀬宣親

    村瀬委員長 これにて説明聴取は終わりました。  ちょっと速記をやめて。     〔速記中止
  5. 村瀬宣親

    村瀬委員長 速記を始めて。久田計百画局長
  6. 久田太郎

    久田説明員 それではお手元に差し上げました「昭和三十五年度科学技術振興重点方策に関する各省庁資料」につきまして、簡単に御説明申し上げます。  これは各省庁で来年度予算として要求するために作りました資料を、科学技術庁計画局で一応取りまとめたものでございます。  第一ページに「最近五ヵ年間における教官研究費推移と今後の充実計画」、これがここに提出してございます。この資料は、答申本文の三ページにございます「大学教育および研究機能充実」というところに対応するものでございます。  その次の二ページに、同じく文部省資料としまして、「科学研究費推移」が出されておりますが、これも同じく、今の本文に対応するものでございまして、この備考欄にございますように、日本学術会議勧告の二十六億円というものにまで増額したいという計画のものでございます。  次に三ページに参りまして、同じく文部省資料でございますが、「昭和三十五年度大学施設設備近代化に要する経費」、これも同じく三ページの「大学教育および研究機能充実」に対応するものでございます。  次の四ページに参りまして、「教育研究要員充実」、これはやはり前項に対応するものでございまして、研究要員及び教育要員不足充足するという計画のものでございます。  次に五ページに参りまして、「各省庁関係試験研究機関設備施設五ヵ年計画総括表」、これは各省庁からこの計画を提出してもらいまして、科学技術庁で取りまとめた資料でございまして、答申本文の四ページの最初のところにございます「各省庁関係研究機関整備充実」というものに関連したものでございまして、これは理化学研究所も包含しておりまして、この資料の五ページの下の方に、参考としまして、特殊法人理化学研究所拡充計画が提出されております。  次に六ページに参りまして、これは各省庁試験研究機関研究関係庁費不足しておりまして、これの充実計画でございます。これも同じく四ページの最初の「各省庁関係研究機関整備充実」の施策の中に織り込まれる資料となっております。これは科学技術庁で取りまとめたものでございます。  次に七ページに参りまして、文部省の「理工系学生増員計画」、これは本文の五ページの四行目に「理工系学生増員計画完遂」というのがございますが、過去三ヵ年計画で八千人増員する計画が進んでおりまして、来年度において、最終年次として二千人増員するという資料でございます。  八ページ、「大学教官処遇改善について」、文部省資料でございます。これは本文の五ページの中ほどに(2)としまして、「大学教官研究公務員処遇改善」という施策が出ておりますが、それに対応する大学教官処遇改善資料でございます。  同じく十ページに、科学技術庁資料としまして、これは各省庁の「研究公務員処遇改善について」の資料でございまして、研究職手当問題等をこの中にうたっております。  十二ページは、同じく科学技術庁資料でございまして、「科学技術に関する税制検討すべき措置」ということで、六項目出ております。これは、本文の六ページの下の方に(1)としまして、「科学技術関係税制上の措置」という施策が打ち出されておりますが、これに対応しておりまして、このうちの2、3、6は、すでに若干の税制的な措置が行なわれておりますが、これを、さらに弾力的に運営することによって、さらに効果を上げよう、同時に、1、試験研究準備金制度の創設、それから4、5、等につきましては、さらに新しい措置として検討をするという内容本文の方はなっております。  それから十五ページに参りまして、科学技術庁資料としまして、「昭和三十五年度科学技術振興予算研究助成費等概算要求額総括表」ということでございまして、このような予算が現在要求されておるわけでございます。これは本文の七ページ(2)の「科学技術関係委託費補助金等措置」の各項目の対応となる参考資料でございます。  次に十六ページへ参りまして、同じく科学技術庁資料でありまして、「全日本科学技術振興財団仮称)について」、これは本文の中の七ページ、先ほど申しました(2)の中で「なお、科学技術普及啓発事業」というのがうたわれておりますが、これの具体的な施策としまして、全日本科学技術振興財団仮称)を設立するという趣旨説明資料でございます。  十七ページへ参りまして、文部省資料としまして、「日本学術振興会について」、これも、同じく先ほどの七ページの(2)に該当するものでありまして、流動研究員制度等運営、あるいは国際学術交流等事業を活発化するための日本学術振興会についての資料でございます。  十九ページは、科学技術庁資料でございまして、「特別指定研究所経費」でございます。本文の八ページの最後に、「特別指定研究指定とその推進」というところで、六つ特別指定研究指定されておりますが、その六つのテーマにつきまして、それぞれ現在各省庁におきまして概算要求をいたしております数字、並びに二十ページの最後に7としまして、研究調整に必要な経費十三億円を加えまして、総額七十五億六千三百万円という数字が提出されております。  なお、最後に、二十一ページに、同じく科学技術庁資料としまして、「研究調整に必要な経費設定目的運営方針」、これは研究調整に必要な経費をどのような運営方針で、どういう目的でやっていくかということを一応説明した資料でございます。  以上で説明を終わります。
  7. 村瀬宣親

    村瀬委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止
  8. 村瀬宣親

    村瀬委員長 速記を始めて。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。前田正男君。
  9. 前田正男

    前田(正)委員 ただいま政府の方から、科学技術会議答申につきまして御説明を伺いました。答申案にありました通り、現下のわが国の事情から見まして、また、将来十カ年計画という長期の経済計画を樹立する上において、その根本となるのは科学技術対策であると思うのであります。本日伺いましたこの答申は、まことに時宜を得たものであると私ども考えるのでありますが、問題は、これを実施するにあたりましては、三十五年度予算編成その他において、政府としては確固たる信念をもって、これを実施に具体化しなければならぬと思うのであります。そういう意味におきまして、われわれが科学技術会議設置法を審議するにあたりましても、単に科学技術会議というものが会議として一つの答申を出しただけで、それが実施されないという会議になっては意味がない、こういう点から、議長には総理大臣、それから科学技術庁長官を初め文部大臣大蔵大臣というふうな、これを政府施策として実施するに必要な大臣の方は議員として列席していただきますと同時に、わが国最高科学技術学識経験の方に特にお願いいたしまして議員になっていただきまして、わが国最高科学技術意見政府施策に反映するように、われわれは立法にあたって努力したつもりであります。幸いにいたしまして、政府の強い決意と、また、最高学識経験者の権威によりましてこのりっぱな答申案ができたのでありますから、これを実現するというかたい決意がなければ、これから私たちが質問いたしましても意味のないことだと思うのであります。それにつきまして、まず科学技術庁長官及び大蔵当局から、これに対する信念をお伺いいたしたいと思うのであります。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 科学技術庁といたしましては、法律趣旨にもありますように、科学技術会議答申内閣総理大臣においてこれを尊重しなければならないとありまして、政府としては尊重する義務を負うと思います。内容につきましては、いずれ予算編成のときに大蔵省といろいろ御相談申し上げることになると思いますが、全面的にこれを採用するように努力をいたしたいと思います。
  11. 奧村又十郎

    奥村政府委員 お答え申し上げます。科学技術会議答申につきましては、これは基本的には、大蔵当局十分趣旨を尊重して、この目的が実現できるように予算的な措置もできるだけ配慮いたしたい、かように存じております。ただ、この答申のできますときには、一応大蔵省の中でも相談がありましたが、大蔵大臣がこの答申案のできる際に発言しておりますように、科学技術会議が特に昭和三十五年度科学技術振興予算要求を直接打ち出すということについて、その会議議員の一員である大蔵大臣が無条件で賛成して、それで予算措置が縛られるという形はいかがなものか、気持は変わりませんけれども、やはり、これは会議の性格、また大蔵大臣の立場からいたしまして、率直に申し上げることは申し上げて、そして全体としては、できるだけこの答申を尊重して予算措置をいたしたい、かような趣旨でありましたので、御了承願いたいと思います。
  12. 前田正男

    前田(正)委員 今の大蔵政務次官のお話で、そういうふうな趣旨があるから、科学技術会議の中におきましていろいろと大蔵当局の立場も述べられて答申案が修正されて、そうして答申のできるまでの間に時間がかかったとわれわれは聞いておるのでありますけれども、その結果、この答申案というものについては、大蔵大臣としては議員としても賛成しておられる、大蔵当局も了承しておられる、従って、この答申については大蔵省はこれを実現すべく努力すべきだろうと私は思うのでありますが、どうでしょうか。
  13. 奧村又十郎

    奥村政府委員 趣旨としては賛成でありまして、ほかに、この科学技術振興財団と申しますか、こういうものの会合にも、科学技術庁長官からも要請がありまして私も大蔵大臣にかわって出まして、できるだけ実現するようにはかりたいという趣旨で今発言をいたしております。精神においては、長官と何ら変わりはございません。
  14. 前田正男

    前田(正)委員 それでは具体的な問題について、少しくこの答申内容についてお聞きをいたしたいと思うのであります。まず最初に、答申の第一項目の表題になっております基礎的科学技術振興ですが、この基礎的科学技術振興というものの具体的内容は、これで見ますと、大学教育及び研究機能充実と各省庁関係研究機関整備充実ということが具体案になっておるようでありますけれども、基礎的科学技術というものは大体どういうものをいわれるのか。この文章を読んでおりますと、日本科学技術全体の基礎となるところのすべての諸施策を全体としてレベル・アップしていこう、そういうふうに感じられるのでありますが、基礎的科学技術というものはどういうものを意味するのか、その点について、一つどなたからでもけっこうですから、お聞かせ願いたい。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この第一章にあります基礎的科学技術振興の具体的施策として、大学並びに各省庁関係研究機関整備充実という両方が入っておることでわかりますように、日本科学技術振興せしむる上に、その基盤となるべき研究基礎的科学技術と定義したのであります。すなわち、大学研究だけが基礎的科学技術ではない。各省庁の応用研究等におきましても、やはり日本科学技術振興の基盤となるべきもの、土台、素地となるべきものは幾らもあるのでございまして、いわゆる理論研究と実用研究が結びついて、それが日本科学技術振興させる基盤となるということは幾らもあります。そういう意味において、大学がやっておる理論研究や、大学研究だけを基礎的研究というのでなくして、もっと広い意味における国民経済全般を考えて、科学技術振興の基盤となる研究を総称して基礎的科学技術と定義したのであります。
  16. 前田正男

    前田(正)委員 そこで、その具体的な中におきまして、教官研究費、それから科学研究費、こういうものについては、今までも不十分であります。けれども、逐次増加してきておるようでありますが、三十五年度は、この答申を機会に、画期的に増額をしてもらわなければならぬと思うのであります。その中でも、非常におくれておると思いますのは、大学研究施設設備近代化ということであります。これは、ここにも「近代化推進し、」と、こういうふうなことが書いてありますけれども、その内容等については、すでに議論も出尽くしておるのでありますから、これを推進することになれば、もちろん大蔵省の方で思い切って予算措置をしなければならぬと思うのでありますけれども、この点に対して、大蔵政務次官はどういうふうにお考えになっておられるか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  17. 奧村又十郎

    奥村政府委員 この科学技術会議答申趣旨を早急に実現いたしますために、科学技術庁から大蔵省の方へ、それぞれ具体的な方針を立て、それに基づく予算要求を出して、ただいま大蔵省の方といろいろ事前に折衝、また検討を重ねておるのでございます。  そこで、これらの一つ一つの項目について今どう考えるかということでございますが、概括して申し上げますと、主として新規の要求項目が多いのでございます。大体継続の、当然見積もるべき経費は比較的早く作業が終わるのでありますが、新規の分はおくれて、全体の予算規模を固める際にきめる、こういうことでありますので、新規要求の個々の問題については、まだ私といたしましてはっきりした方針を申し上げる段階でありませんので、御了承願いたいと思います。
  18. 前田正男

    前田(正)委員 この科学技術というものは、振興していくことになりますと、継続的なものも相当ございますけれども、大体新規のものが多いのではないかと思う。この答申の中に現われておるものも、相当具体的に新しい施策のものが多いと思うので、特に長期計画に対応して立てておる以上は、そこに科学技術の当然の基本的な性格があると思いますので、一つこの答申趣旨に賛成であるということでしたら、大蔵省もその趣旨に賛成する意味において、新規の点についても十分に考慮してもらいたいと思うのです。  次に、答申の中でちょっと意味のわかりにくいのがあります。四ページの「各省庁関係研究機関整備充実」のところで、「研究内容充実についても考慮を加える。」と書いてあるのですが、これはどういう考慮を加えるのですか。考慮というのはどういう考慮であるか、これを一つお聞かせ願いたい。あいまいな言葉で、どうもはっきりしないのですが、どういう内容であるか、はっきりお聞かせ願いたいと思います。
  19. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あとで大蔵省からもお答えがあると思いますが、研究内容充実と申しますと、これは研究所研究機関の庁舎等の経費についても考慮を加えてやるという意味であります。一面においては施設設備近代化ということが非常に重要であり、特に理化学研究所のような場合は、三木長官のときからマクスプランク・インスティチュートと同じような構想をもって日本でも理化学研究所充実していこうということでスタートしたのでありまして、ようやく第一歩を印し始めたわけであります。ことしは第二年目に当たりますので、理研の充実強化ということは国策の継続的事業として取り上げなければならぬと思うのでありますが、この理研を含めて、庁費というものについても——単に設備についてだけではなくて、研究推進していく上についてのいろいろな費用が要る。たとえば、書籍を買うとか、外国といろいろ交流するとか、あるいは研究委員会研究所の内部に作るとか、あるいは学会にいろいろ論文を出すとか、あるいはそのほか光熱費その他もございます。こういう問題についても考慮を加えるということです。
  20. 前田正男

    前田(正)委員 考慮を加えるということは、要するに、この研究内容充実について十分な予算的の処置をする、増額する、そういう意味ですか。具体的に考慮を加える。ただ考えるだけでは話にならないので、研究内容充実について、特別に政府として、あるいは学術会議として考慮を加えるということは、要するに、もっと十分な予算をつけてやるとか、あるいはそれらについてもっと振興方策を具体的に考えるとか、そういう意味ですか。考慮を加えるという意味がよくわからないのです。大蔵省の方からもこのときに出席しておられたと思うのでありますが、大蔵省は、考慮を加えるということは、どういうことを考えておられるのですか。来年度予算においては従来の予算より増額してやろう、こういう意味ですか、考慮を加えるということは。
  21. 奧村又十郎

    奥村政府委員 内容の点については、これは関係省庁から具体的に予算の額とともにこの項目を要求して参りまして、大蔵省の方は、ただそれらの要求を全体としてどの程度予算の規模に合わせて調整するかということで査定をいたしますので、内容については、これは各省庁の方でお聞きをいただきたいと思います。
  22. 前田正男

    前田(正)委員 その内容の方はけっこうなんですけれども、考慮を加えるという意味は、要するに、大蔵省は従来においても予算の査定をされるのは本来の任務ですから、各省庁から出てきた予算を査定するという、単に予算査定をするという意味なのか、考慮を加えるという以上は、われわれ常識的に聞けば、充実することについて一段と大蔵省予算的にふやしてやろうとか、要求を認めてやろう、こういうふうにわれわれ常識的にこの文書を読むととれるのですけれども、そういう意味でしょうか。そういうふうにわれわれは解釈していいのかどうか、そういうことなんです。
  23. 奧村又十郎

    奥村政府委員 率直に申しまして、この個々の字句の問題よりも、全体といたしまして非常に画期的な科学技術振興目的としておるように存ずるのであります。しかも、先ほど申し上げたように新規の要求が多いといたしますと、これは大蔵大臣が出まして御答弁申し上げる方がよろしいかと思いますが、私の考えから申し上げますと、これは科学技術庁長官が閣議において、予算編成の方針の中の大きな項目として一つ大きく取り上げていただいて、大蔵省もそれに順応するというふうにさせていただくのが最も妥当な行き方ではなかろうか、かように存ずる次第であります。
  24. 前田正男

    前田(正)委員 その点については、それでは、とにかく、われわれから見れば研究内容充実について考慮をするという意味でありますから、特別に従来の予算査定よりもっとあたたかい気持を持って、一つこの研究内容充実について政府としても——大蔵省も出席しておられるのですから、大蔵省としても、なるべく一つあたたかい気持を持って、できるだけ充実の点について考えてやろう、こういうふうに良識的に解釈することにいたします。  その次の問題は、人材の確保のためにいろいろ具体的な案が書いてあるのでありますが、これは今までもやってこられたことでありますし、また、ぜひ引き続いて充実してやっていただかなければならぬと思いますけれども、「その他研究能率向上方途について考慮する。」というのが五ページに書いてあります。先ほど科学技術庁長官からは、研究手当その他のことを考えておるのだ、こういうことでございました。私たちも、研究手当というものについては前から具体的に考えてきておるのでありますけれども、この際、ここに書いてある「人材を確保するため処遇改善その他必要な措置について考慮を払わねばならない。」こういうふうに科学技術会議としては認めておって、その他研究能率向上方途ということになれば、いろいろと方策もあるでしょうが、研究手当なんか、確かにその一つの行き方だと思います。従来とも、それは具体的な意見が述べられていながら、これが実現しなかったのでありますけれども、現在、人材の確保という点においては、やはり何といっても研究者の待遇の改善という点が一番大事でありまして、この答申に書いてある通りであります。だから、やはり普通のやり方だけでは、どうしても待遇改善にならないと思うのであります。その他の新しい研究能率向上の方法を考えてもらわなければならぬ。それにはやはり、研究手当と今、大臣の御説明がありましたが、最も適しておると思うのでありますが、この点についてはいかにお考えになっておられるか。これは今に始まったことではなく、二、三年来大蔵省ともわれわれいろいろと話し合ったこともあるのですが、今度はもう具体的に取り上げて十分に研究済みだと思いますので、いかがお考えになっておられるか、一つ大蔵省の御意見を伺いたいと思います。
  25. 奧村又十郎

    奥村政府委員 大学教官とか研究公務員処遇改善等をどうするかというお尋ねでございますが、こういう公務員あるいは準公務員という方々の給与などにつきましては、どうしても一般公務員の給与のべースというものを無視するわけには参りませんので、私の記憶で申しますと、過去四年間は、公務員等の給与につきましては人事院勧告を完全実施するという基本的態度で参っておる次第で、来年度予算におきましても、ことしの七月に人事院が勧告いたしました、いわゆる中だるみ是正とか、そういった人事院勧告をまず優先的に実施するということを考えております。しかし、それでは不十分で、特に科学技術関係大学教官研究公務員にどうするかということでありますが、同じ大学でもって科学技術だけの関係者に特別の手当を出すとか、特別な処遇をするということになります場合に、ほかへの影響を考えますと、なかなか踏み切りにくい。私、実は初めて大蔵省部内に入りまして予算編成に携わってみますると、ほかへの影響ということを断ち切って、それだけを特別に上げるということがいかにむずかしいかということを身にしみて感じておるので、実はただいまその点などに非常に苦慮しておるということを申し上げて、御了察願いたいと思う次第でございます。
  26. 前田正男

    前田(正)委員 その点は、今の大蔵政務次官のおっしゃる通りでありますから、大学教官とか、研究公務員等の特別の研究職のべースを一段と引き上げるために特別の俸給制度を特別立法したらどうか。これは人事院の総裁もこの前委員会におきまして、そういうふうに研究の方が実際に民間の方がベースが高いですから、官公吏の研究者とか大学の教官などは実際に確保することは困難なんです。ある程度民間に近づけるためには、どうしても特別立法をされたらいいのじゃないかということを言われたことがあるんです。しかし、今大蔵政務次官のおっしゃったことはわかっておるから、特別にこれだけを上げてやろう、大学の教官なんかは裁判官、検事と同じような格にして、特別にベースを上げることを考えられなければならぬと思うのですけれども、しかし、そこまで一ぺんになかなか困難であるから、そこで、他に及ぼす影響の少ないもの、たとえば、特殊に研究者諸君が実際に研究のために図書を買ったり、あるいは学会に参加したりして金がよけい要る、そういう実務を見て、そこで研究手当というようなところで話をつけるのが一番他に及ぼす影響も少なくて、しかもいいんじゃないか、こういうので、これは数年来の話なんです。今に始まったことじゃない。しかし、こういうふうに、せっかく答申にも書いておられることでありますから、ぜひ十分に御考慮を願いたい、こう思うのであります。  それからその次に、「税制面その他に特別の配慮を加える必要がある。」こういうことを書いておられまして、これは私は、まことに賛成なんであります。これは大蔵大臣がこの会議に出席せられまして、特別の配慮を加える必要がある——五ページに書いてあるのでありますが、そういうことを議員としてでありますけれども、大蔵大臣が了承されたということは、私は実は一段の進歩だと思って非常に喜んでおるのであります。それでありますから、それに準じるような処置を講じてもらわなければならぬと思うのであります。そこで、その具体的な問題は、七ページに書いてあります通り現行制度弾力的運営に配意するとともに、税制改善合理化について検討を行なうということでありますけれども、この税制改善合理化についての具体的な意見というものは、すでにある程度出尽くしておるのです。これまた数年来の問題です。しかも、民間とわれわれ関係の政治の者とは意見が一致しているものがあるわけです。それは、要するに、研究に対する積立準備金制度を設けるかどうか、これが経済団体の方の全面的な意見であるし、われわれもぜひそれはやらなければいけない、こういうことだ。これは税制面から見て特別の配慮を加えなければできないわけです。通常の税制考え方ではできない。だから、やはり特別の配慮のもとに、問題になっておるところの試験研究準備金制度というものをこの際根本的に考えてもらいたいと思うのであります。これは、こういうふうに世の中の景気の好不況というときには、ぜひやらなければならないことであって、私今度の答申の中で、実は不満に思っておるものの一つは、こういうふうに世間で議論もされ、そうして相当私たちの間においても議論されてきたものを、ただ税制改善合理化というふうな、あいまいな言葉で書かないで、もっと具体的に、研究準備金制度を作る、こういうふうに答申して、はっきり書いたらいいのではないか、今から検討するというよりは、すでに検討はし尽くされておって、政府としては、やるかやらないか、会議としては、この制度が必要であるか、必要でないかということをきめるべき段階ではないかと思うのです。これから検討をするというほどのものではないと思うのであります。私は、この点について、一つ画期的な考慮を払ってもらわなければならないと思うのであります。大体、今まで私たちが経験してきた範囲では、この準備金制度に対して異論を唱えておられるのは大蔵省だけのように思うのでありますけれども、大蔵大臣も出席されて、特別の配慮をしよう、こういうことでありますから、今回は賛成していただけるものと思うのでありますが、大蔵政務次官、いかがでありましょうか。
  27. 奧村又十郎

    奥村政府委員 私は、大蔵政務次官を拝命する以前は、ずっと大蔵委員会に所属しておったのでありますが、その間、中曽根長官初め前田委員その他各位から、特にこの科学技術振興のために税制上の優遇措置をとれという非常に強い御意見で、逐次税制がその御趣旨に沿うように改正されて、私個人の印象では、かなり現在は科学技術関係の税の面における措置は優遇されておると考えております。そこで、ただいまのお尋ねは、もう一歩進めて、研究準備金というような制度を置いたらどうか、こういうお言葉でございます。今申し上げるように、大体税制上の考えられる優遇措置は一わたり実現されましたので、それ以上は、今度はいわゆる研究準備金の設置ということに相なるのでございますが、これは御承知の通り、将来予想される研究費相当部分を法人の益金等から留保して、率直に言えば、これを一応損金処分にして留保しておく、こういうことであります。現に、研究費を使用した分は、これはみな損金に落ちますが、これは制度上から申しますと、研究費全部が損金であるかどうか。その研究費というものは決してむだにならず、それが将来において利益を生み出すもとになっていくので、厳密な税法上からいくと、研究費全部を損金に落とすということもいかがかと思うくらいでありますが、今度は将来の予想される研究費相当分を利益から控除して保留していくという制度が具体的に実施可能かどうか、こう考えますと、一体、それぞれの企業にとってどの程度のものが準備金として積まるべきであるか、これがよほどはっきりしたものがありませんと乱に流れて、結局、それだけが課税されないということでありますので、まあ、使っただけの研究費は全部損金に落とすならば、それ以上将来不確定な研究費をあらかじめ積んでおいて、これは免税措置にするということについては、まだそこまでは大蔵省としては踏み切りにくいと考えております。
  28. 前田正男

    前田(正)委員 今、将来の未確定だとかなんとかいう話ですけれども、準備金制度を作ってもいいということになれば、乱に流れないように、将来の研究費に対する積み立てのワクとか、そういったことは、具体的に皆さん大蔵省の方が納得するような方法で——何も民間研究者にしても、この研究費でどうこうしよう、余分に積み立てようとか、その金を流用しようとか、そんなつまらぬことは考えていないと思うのです。しかし、根本的に積み立てることを賛成されるかどうかということです。賛成されるならば、皆さんの御満足のいくような点において積み立てていくことは幾らでもできると思うのです。けれども、今までの問題は、準備金制度というものを作ることについて、大蔵省は、税制の根本体制が狂うことになるから反対だ、こういうようなお話をしてこられたから、われわれは、この際ここで、税制面の特別な、画期的な配慮を加える必要があるということを大蔵大臣も認められたんだから、根本的に一つ研究費を積み立てるという基本をまず御了承願って、それではどういう方法でこれからやったら、皆さんも、税制上もその他も満足がいくかということは、具体的に民間意見も聞いてきめていただきたいと思います。僕の聞きたいところは、根本的に、積み立てるということについて賛成をされるかどうかということなのです。
  29. 奧村又十郎

    奥村政府委員 この利益の一部を研究準備金として留保するという制度は、税制のほかの面にもいろいろ波及することもありますので、ただいまのところ、基本的に大蔵省として実施する考えはございません。しかし、全体といたしまして、何らか科学技術振興に一段と配慮をということでありますならば、全体のうちで何とかできることと——税制の面で申しますと、さしづめ問題になろうかと思いますのは、かりに、科学技術振興財団を作る、これに対しては各関係企業から寄付金とか、いろんなものも持ち出されるということになれば、これは御承知の通り寄付金に対する免税措置とかいうふうなことも税制上の措置としてあろうかと思いますので、そういった面もできるだけの考慮を払って参りたい、かように存ずるわけであります。
  30. 前田正男

    前田(正)委員 今のお話で、非常にあたたかい考慮をしていただくということは、われわれも大へんありがたいと思っておりますが、それでは特別の配慮にならぬと私は思っております。それは、従来の配慮に対して、あたたかい同情を持った見方で、特別な配慮をという言葉であるからには、特別な新しい処置を考えなければならぬと思います。それで、特別な新しい処置ということになれば、大蔵省とその他と意見の対立しておる一番大きな問題は、この問題だけなのです。あとは話し合いでできるような問題がおもなのです。ここで一つ根本的に考え直してもらいたい。私は、答申にも、こんな検討をするということでなしに、具体的に、準備金制度をやるということを書くべきでなかったかと思っておるのですが、一つその点、もう少し考えていただきたいと思うのです。  さらに次の問題ですが、この答申の中で、私は大蔵省の方にも——われわれとしても当然だと思うことでありますが、この税制の面について、そういう特別の考慮をしていただくかわりに、ここに書いてあるように、委託金、補助金等については、その対象というものを明らかにして、そうしてそれを推進する、私はこれは非常に賛成だと思うのであります。実は、この点については、従来多少ルーズに流れておるのじゃないかと私は思っておるのですが、やはり委託金、補助金というものはどんなところへも出すということじゃなしに、税制面については、民間の活動というものについて政府は特別なあたたかい考慮をしてやる、しかし、政府から委託費とか補助費とかいったものを出すのは、もう少し範囲を限定して、そのかわりに必要なものは出してやる、こういうことでないと、税制面も相当優遇を受け、あるいはまた、会社の事業収入としても相当の余力がありながら、ここに書いてあるような項目にもそう適応しないのに補助金をもらうというようなケースがあっては、これは私は、国費としても十分な効果が上がらないと思う。だから政府が、適切な民間科学技術振興をしよう、育成をしようというお考えならば、私は、どちらかというと、税制面だとか、そういう方面においてあたたかい考慮を加えてやっていただくかわりに、委託費、補助費等について、その使途とか範囲とか厳格にするかわりに、必要なものにはたくさんつけてやる方がいいんじゃないか。今度はここにも書いておられるように、補助金等についてもその方途を明確にされようというのは、非常にけっこうだと思っております。そういう点については、一般的には補助金をもっとふやせというのが普通でしょうが、私たちは、いやしくも科学技術というものですから、非合理的な考え方で、ただ金をよこせということはよろしくないと思います。だから、税制等で優遇してもらうにおいては、一方においては賛成である。しかし、一方、正しい支出、必要なところへうんと出すというふうにしてもらった方がいいんじゃないかと思うのです。  それから、先ほど来、科学技術普及啓発の問題について、長官の方からも科学技術財団の説明がございました。それに対して奥村政務次官からも、その設立について非常にあたたかい同情を賜わるような話もありましたし、また、税制面についても考慮してやろうという、私たちとしても非常にうれしいことであります。この財団もいよいよ設立になるようなことがきょうの新聞にも出ておるのでありますが、その経過と大体の見通しを長官からお聞かせ願うとともに、この財団は、本来ならば、当然政府の力でも十分にやらなければならぬ仕事を、先ほど来申します通り、単に民間政府の補助と優遇だけでやっておるというのではなしに、科学技術振興をはかるために、自分たちの力だけでもこういう財団を設けて、そうしてこれの普及啓発に努めようというのでありますから、当然、政府もこれに協力する意味におきまして補助金等も出してやってもらわなければならぬと思うのであります。そういう意味におきまして、最近の財団の動きと、これに対する補助金等のことに対しまして、大蔵政務次官長官の双方の御答弁をお願いします。
  31. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外務省には情報文化局というのがございますが、これは、国民に対する外交のPRあるいは外国に対するPRの意味で、ああいう局があるのであります。しかし、国民に対する科学技術普及啓発の重要度というものは、決して外交問題に関するPRに劣るものではなく、もっと重要性が今日の日本から見ればあると思います。なぜならば、国民所得を増大していくには科学技術の革新による以外にないのでありますから、直接の富を増す上においても、国民の直接のウエル・フェアに関係してきておる。そういう点から見て、科学技術庁の情報宣伝局というようなものが当然あるべきなんです。しかし、役所仕事でそういうことをやることは、どうも不能率になりやすい。そこで、民間の資金を動員して、民間の方の創意工夫によってPRをやっていただこう、こういう趣旨で、民間団体としてそのようなものを育成しようという方針を確立したわけであります。この件につきましては、衆議院、参議院の各位の相当な御尽力があり、また、財界方面の非常な御協力もありまして、約二年間にわたって準備行為をやってきたわけであります。そうして大体機が熟しまして、ことしの夏に、もうそろそろ踏み切るべき時期であるということになりました。そこで、これは全日本を統一して行なう必要があると考えまして、大阪方面にも参り、また、名古屋方面にも参りまして、その調整を遂げて、両財界からも心から賛成していただきまして、大体日本全国一本にそういう普及団体ができる可能性ができました。そこで岸内閣総理大臣は、大阪、名古屋を含めた関係の財界人を官邸にお集めになって、これを御依頼になったわけです。財界側からも、欣然としてこれに応じようというお答えがありまして、自来、石川一郎氏、あるいは池田亀三郎氏、あるいは植村甲午郎氏等を中心にしてこの計画が進められて参りまして、累次にわたる会議があり、大体仕事の範囲もきまりました。仕事の範囲といたしましては、科学技術振興政策に関する調査と献策、それから第二は、科学技術団体の活動の総合調整と援助、これは十三団体以下非常に多くの団体がございますが、その企画の中枢となって、それを総合調整しようということであります。たとえば、発明については発明協会というものがありますが、もし、発明のいろいろな行事をやる場合には、発明協会主催、後援日本科学技術財団と、こういう形になって、単に発明のみならず、科学技術全般に関する企画と調整を各団体についてやっていこうという中枢団体、参謀本部を作るということであります。その次は、大学及び官公立の試験研究機関と産業界との連携、技術的な提携を行なわせる機関、それから科学技術普及宣伝、啓発活動を行なう、それから科学技術会館を設置しよう、東京の都心に近代科学博物館というような、シカゴやドイツ、イギリスにあるような近代科学技術のミュージアムを作って、日本にある優秀な機械や何かも優秀な会社から出品させて、そうして、地方から高等学校や中学生の旅行が来れば必ずそこを見ていくというような、そういう機関を作ろう、そういう意味で、目的もきめまして、昨日経団連の常任理事会におきまして満場一致でこれの設立に協力をするということを決定いたしまして、科学技術庁にその旨の返事がございました。これで財界側の本格的態勢は整ったものと思いまして、約十億円を目途に基金を集めるようであります。その仕事は経団連が中心になってやってもらうことに手配も整えまして、当庁からは、朝日調査官を派遣しまして、その御援助を申し上げるという態勢を整えて、あとは大蔵省から補助金をもらうだけになったのであります。  それから、先ほどの前田委員の御質問の中で関係することがございますので一、二申し上げますと、研究公務員大学教官の問題は、先ほど奥村大蔵政務次官のお話にもちょっとありましたように、人事院の勧告がございます。そうして、政府の方といたしましては、来年から一般公務員は四%、それから研究公務員は特別に七%にふやすという勧告が出ておりまして、大蔵省当局でも、できるだけその線に沿ってやるという意図でございますが、この研究公務員七%という線は、ぜひとも確保していただかなければならないと思っております。その上に研究能率を向上する方途——われわれとしては研究職手当ということを考えておりますが、大蔵当局としても、その線に沿っていただきたいと実は思っておるのであります。  それから、その次の問題で、税制という問題が今ございましたが、弾力的運営検討と、二つ言葉が出ておるわけであります。弾力的運営の項の中で減価償却の取り扱い問題がございますが、これは、現在の取り扱いというものは非常に後退した取り扱いをしておる。前は任意償却が認められておったわけであります。研究設備のようなものは、会社の能力に応じて、全部償却できるものはさせてもいいじゃないか、任意償却制度をこの前は認めておったのを、去年の改正でありましたか、これをそうでない一般と同じ扱いにしたのでありまして、これは後退であります。従って、減価償却の問題は、すみやかに前のよい方向へこれを回復する必要があると思うのであります。それから、研究のための寄付金損金繰り入れも今は認めておりますが、実際の運用として、いろいろ手続がこまかかったり、現実的にはなかなか適用されにくい。そこで、大学とか、あるいは特別の研究所とか、そういう公益的な団体等については、一般的に寄付金は損金に繰り入れるというふうに、個別的に指定してもらったらいいと思うのです。そうでないと、そのたびごとにやるということでは、寄付金をやる方でも、一体免税になるかどうかわからぬというような状態で、なかなか金を出さない。重役会や株主総会においても、当社はこれだけの利益があるから出してもいいと言っても、大蔵省の方はどうかという懸念があるものですから出さない場合がある。ですから、個別的に、これこれのものは当然損金に繰り入れることができるという措置をあらかじめ明示してくれればいいと思っております。  それから留保につきましては、今お話がございましたが、これはぜひ実現したいと思っておるのであります。
  32. 奧村又十郎

    奥村政府委員 ただいま中曽根長官からは大へん積極的な、気前のいいお話がございました。実は私も、大蔵政務次官になる前はその通り考えておりましたが、財政当局になりますると、なかなか税法は税法のなにがありまして——しかし、基本的にはっきり私が申し上げられることは、今までにできた科学技術振興のための税法上の優遇措置を後退させるというようなことは絶対考えておりません。ただ、これ以上のことについては一つ一つよほど検討を要する、こういう趣旨でありまして、先ほど科学技術振興財団につきまして大蔵省は今度補助金をどうするかということですが、幸い中曽根長官のただいまの御答弁によりますと、すでに十億円の寄付金が確保できるということで、私も大へん心強く思っておりますので、まずそれを確保していただく。それがためには、この寄付金は限度を越えますと、御承知のように課税されますので、法人に課税されて、課税されたあとを寄付金にするのでは、寄付される方も非常に苦痛でありましょうから、これはできるだけ免税措置をとりたい。従って、補助金の方は、まあ十億円ができまして、具体的に仕事が始まりましたときに、また一つ検討されていただきたいと存じます。  なお、研究費等についての免税措置は、個々に許可を要するのでありますが、これを、あらかじめ一定の基準をもって許可を要しないという制度にしたらいい、こういう御趣旨でございますけれども、ただいまの税法の規定では許可が要るので、中曽根大臣の御趣旨通りでありますと、税法を相当大幅に改正しなければならぬ、こういうところに実はかなり難点がありますので、大へん渋い御答弁で恐縮でありますが、中曽根大臣大蔵大臣になられたときには、こういうお話をなさるに違いないと思いますので、あしからず御了承を願いたいと思います。
  33. 前田正男

    前田(正)委員 今の税法上の問題は、先ほど私もその点ちょっと気づいたのですが、あまり政務次官にも気の毒だからと思って、実は質問を差し控えたのでありますけれども、政務次官は、科学技術の税法は後退しないで、だんだんとよくなってきた、今もそういうお話をしておられたけれども、実際はそうじゃないのです。しかし、今ここに弾力的な運営をするというふうに書いてあるから、実は、あえて言わなかったのですけれども、本年の法人税法の施行規則の改正によりまして、研究、試験専用の機械設備等は、任意償却であったのが任意償却にならない、こういうような考え方に変わっておるのでありまして、多少後退しておるところがあるのです。しかし、それは弾力的に運営するというのだから、もう少し政府運営の仕方をお考え願えるのではないかと思っておりますけれども、しかし、寄付金指定等も今の大蔵大臣指定する機関ということになっておるのですから、あらかじめ大蔵大臣が個々に指定しないで、たとえば、民法の第三十四条の法人だとか、学校法人だとか、政府出資の特殊法人、こういうように指定しておけば、政府出資の特殊法人ができたときには、自動的に入ってくる。私は、そこのところのやり方もあるのではないかと思います。政府出資の特殊法人ということになれば、国会が立法しなければ政府出資の特殊法人というものはできませんよ。どれでもこれでもというわけにいきません。ですから、そういうふうな指定の仕方をやっていただいたら、税法の改正をしてもやっていける道もあるのじゃないかと思います。だから、その辺をよく御研究願って、「弾力的運営」と書いてあるから、弾力的にお取り扱いを願いたいと思うのです。  それから、今の財団の問題は、これは設立のときにも御出席をされてというように政務次官は自分で言っておられたと思いますけれども、科学技術の財団の設立のときには特別に考慮すると言っておられた。税法上の考慮はもちろんけっこうですが、当然仕事の内容に公共的な仕事があるのですから、それについて政府助成するということにならなければ、第一、金を集めるといったって、金が集まって助成するでは、金が集まってきませんよ。そのくらいのことは、政務次官も長らく政治をやっておられるから、おそらくおわかりだと思う。金が集まったら助成する、そんなことで金が集まるとは私は考えられない。それは出資されて、あたたかい考慮をすると言われたが、その内容はきまってから検討されるという、あいまいなもんじゃ仕方がないでしょう。しかし、いろいろ内容検討されて、当然公共的な内容の仕事があれば、それを政府助成される、それは当然だと思うのです。その他の問題においても、これはでき上がらなければ助成しない、そういう考え方のものではならないと私は思うのです。だから、金を出資されるときには、もちろん財団は設立されていなければなりません。出資されるまでには財団はできておらなければなりませんけれども、予算措置として計上されるにあたって、財団が十億の金を集めてなければ来年度予算措置考慮できない、そんなことは私はないと思う。金が集まってなければ財団はできないでしょう。財団の内容というものについてもう少し御研究願って、その点は、政務次官のお言葉の通り、もう少しあたたかい考慮を払ってもらわなければならないんじゃないか、こう思うのです。  それから、最後のページのところについてちょっとお聞きしたいのです。今度新たに特別指定研究ということをされるということは、われわれがかねて言うてきたことなんであります。ところが、その答申の中に「研究調整をさらに効果あらしめる措置考慮する。」という、実にあいまいな言葉が書いてあるのですが、私としては、実に不明瞭なことだと思う。特別指定研究推進するということは、もう前から唱えられ、昨年もたな上げ資金の問題においてこれを書いて、そうして調整費として特別研究費をつける、それは科学技術会議というものを設置したまた一つの理由になっておって、その調整費科学技術会議において配分その他をする、ただ、特別に金を積んでおいてやるというわけでなしに、それの配分等の問題については科学技術会議がやるというので、科学技術会議を作るまた一つの理由にもなったわけなんです。これだけが理由でありませんけれども……。そういうように、具体的に問題は検討し尽くされ、議論し尽くされて、昨年はたな上げ資金の中にも科学技術振興という字を特別に入れて書いてあった。結局、取りくずしはしませんでしたけれども、予算上には書いたわけです。そういう経過のある金なんです。だから、一つこういうあいまいなことを言わないで、特別指定研究というものを推進するなら、その調整費として特別研究費というものを出す。これはたしか二十億のうち七億は電子工学に回されて、十三億です。電子工学を入れれば二十億ですけれども、これは、われわれが昨年のときにも二十億という話を、たな上げ資金から取り下げるということで具体的にやった問題なんですから、これはもう少し具体的にしていただきたい。従って、措置考慮すべきであるというのですから、できないことはないけれども、具体的なこの調整書というものを、特別研究費というものをこの際三十五年度から設けて、この特別指定研究推進をはかる、こういう意味だと私は解釈しておるのですけれども、これについて、一つ科学技術庁長官大蔵政務次官から、解釈を統一した御見解をおのおのお述べ願いたいと思います。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほどの答弁に関連しまして、全日本科学技術振興財団補助金の件でありますが、財界方面にも政府も力を入れて非常に協力する、補助金の方も政府の方で考えてくれているようだ、だから、財界の方も大いに気ばってやってくれということを申しておるのでありまして、やはり、政府関係補助金が出ないというと、財界の意欲も減殺して、あるいは設立もむずかしくなるかもしれないと思いますので、この点は、われわれも大いに戒心しなければならぬと思っております。この調整費の件は、最近の科学技術の進歩は日進月歩というのじゃなくて、日進時歩とか、日進秒歩とかいわれる工合に進んでおる情勢で、年度の経過の途中で思わざる発明が出たり、あるいは、ある点では非常に力を入れなければならぬという点が出てきております。先ほど御説明申し上げましたように、エサキ・ダイオードというものが発明されますと、外国ではすぐ目をつけて、優秀な電子計算機を作ってこれを世界に売り出しておる、そういうことは、案外日本というのはぼやぼやしておる国であります。そういう場合に、緊急の調整費をもってその方面の力を結集して、日本国産技術をさらに成果あらしめるいろいろな機器を作る、そういう緊急態勢に備える費用がどうしても要るわけであります。あるいは核融合にいたしましても、外国研究は一年間には非常に進んでおるのですから、日本もそれに追いつくためには、新しい措置年度の途中でやらなければならぬという場合も出てきます。その場合に、次の年を待っておったのでは、外国と比べて一年おくれる、歴年で今一年おくれることは、あとに至っては十年以上おくれるという結果が出てくるわけであります。そういうわけで、農林省においては、農林技術会議でそういう調整金、予備金を持っておりまして、緊急につけ加えることができるようになっております。それと同じように、国全体の科学技術についても、国家のどこかでそういう留保金を持っておって、緊急に調整する必要があると思うのであります。科学技術庁並びに科学技術会議ができましたのは、そういう点にもかんがみて実はできたと、今のお話の通りわれわれも考えております。従いまして、今度の答申の中で、そういう調整費という考え方は、最重要ポイントの一つであるとわれわれは考えておりまして、ぜひともこれを来年度予算に実現いたしたいと思っております。
  35. 奧村又十郎

    奥村政府委員 ただいまの研究調整費と申しますか、年度の中途において緊急に必要な研究費が要る、こういうお話で、日進月歩どころか、非常な時代の進運に応じまして、いわゆる調整費というものの必要な趣旨はよくわかりますが、しかし、各省ごとにこのような、当初予算において使途が具体的に明確でないものを計上するということは、今までいたしておりません。農林省の方にそういったものがあるとただいま中曽根大臣のお話でありますが、私は、それはまだ存じておりません。おそらく、やはりあらかじめ予想されるものを計上しておるのじゃないかと思います。もし、年度の途中にそういう緊急な研究の費用が要るとするならば、国の一般会計の中に予備費が相当組んでありますので、それを緊急に支出することができるわけでありますので、この点については、実は大蔵省においてもいろいろ検討しておりますが、この際、踏み切って調整費を置くということにはなかなか決断できません。最後大蔵大臣の判断になるわけでありますが、今のところは、そういう事情でございます。  それから、あとの昨年、一昨年において税法の取り扱いにおいて後退したという疑念がありまして、お尋ねがありましたについては、これはかなり技術的なこまかい問題でありますので、担当の主税局の税制第一課長から御答弁をいたさせます。
  36. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 試験研究費の取り扱いについて、税制上後退があったのじゃないかというお話でございます。おそらく、こういうことを言っているのじゃないかと思います。昭和二十六年に企業合理化促進法によりまして、御承知の通り試験研究機械の特別償却の制度ができ上がりました。その以前の取り扱いにおきましては、いろいろな取り扱いがあったわけでございまして、その中に、専用機械について損に見るというようなことが実施の段階において行われた。しかし、二十六年の企業合理化促進法によります特別償却ができた際に、完全にこれに乗りかえられた。本来、通達におきまして、資本支出であるものを損金に扱えということは、実際問題として、税法の解釈の問題としてできないわけであります。そういう取り扱いがたまたま行なわれましたので、それでは試験研究の促進の見地から、先ほど申し上げました特別償却制度を設け、それによって乗りかえられたと私どもは思っております。  それから奥村政務次官もおっしゃいましたように、試験研究費につきまして、これは将来の収益を生む費用でございます。これは一時損金にはならない、本来繰り延べ費用だということで、今回の政令では、一応本文におきましては繰り延べ費用にいたしておるのでございます。従いまして、使用収益を見積もりまして、適当な期間に見積もり償却するということになるわけでございますが、科学研究費の現状におきまして、政令の趣旨から、附則におきまして、これは依然として一時の損金だ、こういうふうな扱いをいたしております。  もう一つ、専用機械につきましては、今申し上げましたようなことで、どういうふうにしたらいいかということは、国税長官の特別承認の制度が減価償却にもありますので、それによって弾力的運用をはかれば、今言ったような御心配の点はないのじゃなかろうか、かように私は思っております。この点は、私は後退というふうな気持は全然持っておりません。非常に技術的な点でありますし、沿革も伴っておりますので、私ども前田委員にいろいろ御教示を願いましたので御承知かと思いましたが、念のために申し上げた次第でございます。
  37. 前田正男

    前田(正)委員 今の政務次官、課長の御答弁のようならば後退しないのですけれども、そういうふうに弾力的に運用してもらいたいという私の考えなんです。しかし、それは弾力的に運営されなければ後退という現象になってくるのじゃないか、こう思うので、それは今の政務次官、課長の言うように弾力的に運用して後退しないようにするということならば、今お話のありました通り現行制度でやれるのですから、そういうふうに後退しないように、どちらかといえば前進するように、お願いしたいと思っているのです。  問題は調整費のことですけれども、調整費は、今、政務次官が言われたように、大蔵省としても踏み切れない、こういう例があるのだといういろいろのお話をしておりましたが、こんなことは、実はたくさん議論を尽くされているのですよ。これは一省の調整費じゃありません。一省についてこういうものがついておるという例じゃないのです。これは、この前もそういうことでありましたけれども、一応科学技術庁予算としてはつきます。けれども、科学技術庁研究機関だけのものじゃなしに、大学のものも、一般研究のものも、民間の補助の各省のものも、みんな含めた調整費という考え方なんです。そこで、それにはどうしても科学技術会議というような機関がなければできないじゃないかということでやっておるわけなんです。それで、そういう各省にわたる総合調整費みたいなものは、経済企画庁に国土開発の調整費というものがついておるのです。各省にわたるものがついておるのですよ。そういうものがついておりまして、各省にわたるものは——各省といっても、これは総理府の外局の庁ですから、そこへつけて、科学技術会議できめて、使うときにそれを各省に振りかえるわけです。だから、大蔵省の予備金に入るようなものと、性格上は実際問題として同じものなんです。それを科学技術会議で取り扱って振りかえていこう、ただし、所管は科学技術庁の所管にしていこうということで、あなたの御趣旨と同じような趣旨のものを作ろうというわけです。しかも、それは前例があるわけです。それで、こういう科学技術振興という大事なときに、そういう前例もあるし、性質からいっても当然のものであるし、それがために科学技術会議というものがあるのだから、去年の予算のたな上げ資金の中に科学技術費というものを強力に推し進めたために——たな上げ資金は調整費であるかどうかは別にして、あの中に科学技術費というものを大蔵省の承認を得て入れられたわけです。そういう歴史もあるし、ぜひ、この調整費についてはよく考えていただきたい、こう思っておるわけです。  最後に、学識経験者の方がお見えになっておりますので、お伺いします。こういうふうなけっこうな答申を作られたということは、私ども学識経験の高い識見に対して敬意を表するのですが、ただ一つ、私はお伺いしてお教えを願いたいと思うのです。こういう将来の長期の日本の大発展のために、まず来年度の第一歩から、基本的な、抜本的な施策をやらなければ、とうてい将来の日本の発展というものはできない、こういうことで、強くこういう答申をされたと思うのでありますが、ただ、こういう答申をしていきますと、この通りもし実現していくと、十年後には所得も倍増するであろうし、その他、日本の経済、社会生活の全面にわたって非常に変化をしてくると思うのです。その科学技術の変化というものは、いわゆる技術革新と社会的にいわれておるのでありますけれども、この技術革新というものは、どういうふうに社会、国民全体に影響を与えていくであろうかということも、科学技術のこういう計画を立てられる面から検討される必要があるのではないか、こう思うのです。そういう点がこの答申の中にあるのか、ないのか、よくわかりませんけれども、一つの題目として、将来、技術革新というものが進んでいった社会のあり方というものについて、科学技術がいかなる影響を与えていくべきであるか、あるいは、どういうような影響を与えるであろうかということを、やはりこの抜本的な施策の第一歩を踏み出すと同時に、基本的にこういう問題も研究していく必要があるのじゃないか。単に科学技術のレベル・アップだけでなく、どういう影響があるかということを、同時に科学技術的な面から検討していく必要があるのではないか、こう思うのですが、その点について、一つ学識経験の方からお聞かせを願いたい、こう思っておるのです。
  38. 梶井剛

    ○梶井説明員 今、世界の各国科学技術振興に対しては非常な努力を払っております。その目的は、もちろん米ソの関係が緊張しておるという点にもありますけれども、しかし、どこの国も、その国の国運の将来の消長が、科学技術の進歩にかかっているという認識を強く持っておりますために、科学技術振興をやっておるわけであります。従って、私どもは、日本も将来の国運が科学技術振興にかかっておるという考えのもとに、この科学技術振興に非常に力を入れなければならぬと信じております。科学技術振興がだんだん進んでいきますことが、単に日本の国ばかりでなく、ひいては世界全体の人類に対して裨益すると同時に、また、平和確立の上においても非常に必要なことじゃないだろうか、そういうふうに考えます。  日本国だけのことで考えますと、科学技術の進歩というものは、経済の発展を非常に促します。従って、もし日本科学技術振興において欧米の各国よりもおくれたならば、日本はいわゆる後進国になってしまう。後進国になることによって、日本国民はむしろ欧米各国の国民よりも不幸な立場に追いやられるというような感じを持ちます。科学技術各国におきましてもだんだん進歩して参りますと、要するに、社会生活におきまして、国民の所得がそれによって増すということが一つであります。それから第二には、従来、人間が筋肉労働あるいは頭脳労働によって労苦しておりますのが、科学技術の進歩によってさような労働が比較的軽減されるだろう、軽減されることによって、むしろその国民としましては、一日に働く時間が自然に短縮されてくるような状況になってくる、そういうふうになりますと、所得はふえて参りまして、そうして勤労時間が少なくなってきますと、国民の精神的な教養であるとか、その他を十分に向上せしむる余地ができてくるのでありまして、ただ朝から晩まであくせくと働くことのみをもってやっていくというような国民よりも、はるかに文化的な向上を来たすだろう、そういう考えのもとに、われわれは科学技術振興をやらなくちゃならないというふうに感じておるわけであります。しかし、具体的にこれが十年たったらどうなるかということになりますと、今後十年に対する方策を立てて、これを政府御自身が実行に移されなかったならば、単に絵に描いたもちにすぎない。そういう意味におきまして、今後国会の皆さん方におきましても政府と御努力下さいまして、ぜひとも具体的な方策を実行に移すことによって日本国民の幸福を増進し、世界の平和を確立されるように、切にお願いする次第であります。
  39. 村瀬宣親

    村瀬委員長 辻原弘市君。
  40. 辻原弘市

    ○辻原委員 一、二点お伺いをいたします。最初に、この答申案を拝見いたしますと、書かれておりますことは、私どもの平素考えておりますことと全く同感でありますが、いささか、全般的に受ける印象を感じたまま申しますと、それぞれ列挙されている問題は、現在わが国科学技術振興にとってきわめて重大なものばかりでありますけれども、これをいかにして具体的な問題として行政の中、あるいは政治の面で実行していくかという点に対する具体的な方策という点については、なおはっきりしたものが、どうもこの面だけではうかがえないのであります。そういう意味合いにおきまして、今後科学技術会議においてそれぞれ検討され、また、各省との調整をされて深く突っ込んでいって、そうして具体的な問題を取り上げていただくだろうという期待を持っておるのであります。その中で、第一項に掲げてあります基礎的な科学技術振興という問題について、これは、それぞれ私どもも従来文部省なり、あるいはその他、関係政府の方々からは承るのでありますが、科学技術会議に参加をせられた、また、多年技術者としての豊富な経験を持っておられる議員の方々が一体どういうような具体策を持って今後進められようとしておるかという点について、こういう機会でありますから、承っておきたいと思うのでございます。  申し上げるまでもなく、諸外国の例を見ましても、やはりそれぞれ専門的な研究機関、あるいは専門的な科学教育という問題で、国民全体のスタンダードというものを引き上げるための基礎的な科学教育というものを体系的、継続的に積み上げていかなければ決して科学の進歩というものはあり得ないということは、最近のアメリカにしても、あるいはソ連にしても、その科学の燗熟期がどういう時代からこれが起こってきているかということを考えてみれば明らかだと思います。わが国においても、私どもの記憶によりましても、たとえば、学校教育の面においては、十年を一つの週期にして科学教育振興ということが歴史的に見て叫ばれておるのです。ところが、はたしてそれだけの基礎的科学、たとえていえば、国民自体が科学的にものを考える、論理的にものを考える、いわゆる合理的に物事を積み上げていくといったような、ほんとうに基礎となるそういった一つの科学教育というものが、在来の科学教育において目的が達成せられておるかというと、もちろん、これは日本国民の国民性ということでもあるだろうと思いますけれども、必ずしも諸外国のそれに比して基礎的なものが積み上げられておるとは考えられない。ある分野における科学技術水準というものは非常に高いと思います。しかし、ほんとうに国民全般として考えてみた場合には、必ずしもそうだとは考えられない。そこに私は、科学教育という実際の学校教育を中心としたところの教育の中における科学的な視野、あるいは基礎的なそういった教育ということについての教育上の問題があるのではなかろうかということを感じるわけです。ここに若干の事柄が載せられておりますが、概括的にそういう面についての御所見がおありになりますならば、一つお聞かせを願いたいと思います。
  41. 梶井剛

    ○梶井説明員 ただいまのお尋ねにありました通り科学技術振興は、まず第一に人の問題であります。でありますからして、教育科学技術振興に対して一つの目標を持ってやられてない限り、国民全体の科学する心というものができないと思います。そういう意味において、現在、日本教育制度と欧米の教育制度と比較いたしますと、日本がややおくれているという感じがいたします。これは悪い例でありますけれども、ソ連の小学校、中学校、高等学校、大学というような教育制度につきましては、第一次大戦後の共産革命によりまして、一九一九年に研究を始めました。そうして約十年後の一九二八年に教育制度が確立しまして、その後、その教育制度によって積極的にやられておるのであります。小学校は六年でありまして、そうして、四年生から科学技術教育を施します。また、その教育を施されるばかりでなくて、実際の現場と申しますか、工場あるいは農場というようなところで実習さえもするようになっております。そういう指導をまた専門にする先生がありまして、国民全般が科学技術というものに対する認識を持ち、また、そういうことに対する知識、経験を持ってくるのであります。ことに高等学校から大学に入学する学生のごときに至っては、高等学校卒業後、二年間実習をした者が優先的に大学に入れられるというほど、特典が与えられておる。そういうわけでありますから、直ちにわれわれソ連の教育そのものを日本に取り入れろという意味ではありませんけれども、現在の日本教育制度では、科学技術のような問題は、ただ単に社会科の中で一部やられておるという程度で、きわめて力が弱いというような状態になっております。また、そういうような教育制度を採用しようといたしますと、ソ連も同様でありますが、まず、先生の教育から始まっております。決して教育制度そのものだけでは成立するものではなくて、それを教えるところの先生そのものが科学技術の知識をある程度持ってない限り、子供あるいは中学生を十分指導できないのであります。そういう意味におきまして、日本科学技術振興は、まず教育の方から積極的にやっていただいて、将来十年、十五年、二十年という先においてその花が咲いてくるのではないだろうかというように考えておるわけであります。
  42. 辻原弘市

    ○辻原委員 日本教育そのものが、諸外国に比してその基礎においておくれておるということは、全く私どもも同感であります。考えてみますと、日本の場合も、科学技術にはかなり力を入れて、そうして教育の面においても相当研究を積んできておるのでありますけれども、それが、同じような状態が繰り返し繰り返し行なわれるばかりで、先刻申し上げましたように、ほんとうに国民が実際の科学的な、基礎的な知識というものを個々に持つという段階には今日至っておらない。そういうことを反省してみますと、特に学校教育における科学教育という分野でながめて見ました場合、どういう時代に、どういう時期に科学教育が高く取り上げられたかといいますと、私の記憶によりますと、たとえば、戦時中においては基礎的科学教育振興しなければならぬというので、たしか橋田文相の時代と思いますが、いわゆる科学する心という言葉が巷間もてはやされて、非常に科学教育が盛んになった。ところが、その時代の背景といえば、いわゆる戦時体制というところに今度は科学教育が結びついていった。従って、私は、日本の場合に、そういう軍事的な意味において必要とされる時代は、国も、それから社会も、その必要を痛感して教育面においてそれを取り上げていったが、さてそれが平時になると、どうも真剣に科学教育という問題が取り上げられない、こういうところに、私は一つの大きな問題があったんじゃないかと思う。幸い、今回の答申案が、いわゆる国民生活を向上せしめる、その目的の基礎には科学技術振興がなければならぬ、こう規定をしておることは、私は非常にいいと思います。いいというのははなはだ失礼な言い分でありますが、まさに、私は、日本の従来の科学教育の取り上げ方から申しましたならば、それとはやや趣の違った方向に取り上げていくということは、これは当然でありますけれども、私は、時代を振り返ってみますれば、やはり見方によっては、このことがほんとうに実践されるならば、画期的な、いわゆる科学教育の方向だと思うのです。そういう意味で、これを恒常的に取り上げられて、初めて、いわゆる科学に対して何ら揣摩憶測することもなく、いろいろな政治的諸条件、あるいはそのときの社会的諸条件、こういうものと絶えず結びついて、そうして、それがある場合には軍事的問題ともからみ合って、逆に、それが長い目で見た場合の科学の進歩をはばんでおるというようなことが、こういう方向からは生まれてこないのではないか。従って、まず出発をする場合、やはり将来の方向をつけて、常にそういう平和的な方向において科学技術教育というものを取り上げていくというところに、今後日本科学の進歩発達という面において明るい希望が持たれる。一たびそれがその時代の単なる要請に基づいて結びつく場合には、決して科学は大きく進歩しない。今までの取り上げられ方が、どうもそういう方向にあったがために、やはり原子力、それがまた核兵器、それがまた戦争、こういうふうに結びついていく。国民の危惧する心が科学の進歩をはばんでおる。従って、少なくとも、今後わが国において取り上げられる方向というものは、国民にそうした危惧を与えない立場、これを基礎として、科学技術会議あるいは科学技術庁それぞれにおいて、それを根本のルールとして——当然のことでありますけれども、それを常にはずさない方向において科学技術振興を取り上げていただきたいということを、私はこいねがうわけであります。  一、二、こまかい問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、特に大学における科学技術者養成という面で私どもがかねがね主張しておりますことは、どうも日本の今までの技術者に対する見方が、法文系の卒業生に対する見方よりも一般に社会的な取り扱いがどうも下に置かれたというような観点から、国立その他公立の場合はさておきまして、私学等においては、この科学教育に携わる、いわゆる技術者の養成ということに、どちらかといえばあまり力を注いでいなかったうらみがある。ですから、今日においても年間の卒業生の比率を見ますと、問題にならない。最近、国公立におきましては、それがやや政策的に是正をせられてきておりますけれども、しかし、全体の卒業生の数から見ますと、国公立の数というものはきわめて限定をせられております。やはり、いわゆる科学技術者不足を告げておる。そういうことでは、今度は、次の時代の科学技術者養成するためには何といっても悪循環があるわけですから、学問の最高の府といわれる大学においては、それが少なくとも半々くらいまでにはいくような形にこの大学制度というものを考えていかなくちゃならない。そういう点について、これはもちろん文部当局等の考え方もありますけれども、やはり、国全体の大きな問題としてこれを考えてもらわなければならぬと思うのでありますが、どういうような具体策でこれが解決できるものであるかどうか、そういう点について何か感じられておる点がおありになりますならば、この機会に一つ承りたいと思います。
  43. 梶井剛

    ○梶井説明員 このたび諮問第一号に対する十ヵ年計画を作るにあたりましても、五つの専門部会を設けまして、そのうちの一つに、人材養成という部門がございますし従って、この十ヵ年計画において、将来の科学技術の進歩に十分対応できるような人材を養成する具体的な案ができることと思っております。しかし、科学技術の人材を養成するということは、われわれが感じますのには、まず、大学それ自身にだけでも四ヵ年の課程があります。でありまするからして、人を入れまして、そうして卒業するまでに四年かかり、しかも、その人が社会に出まして実際にいろいろな体験をして、一人前の科学技術者になるのには約十年を要するわけであります。でありまするから、人材養成というものが科学技術の一番先鋒になって進んでいかない限り、ほんとうの科学技術振興というものはできないわけであります。今日におきましても、文部省がすでに三ヵ年計画で八千人の科学技術の学生を増員しようとしておられるのでありますが、ただ、この八千人で間に合うか間に合わぬかということに対しては、いささか自分らも疑問を持っております。もっともっと大ぜいの学生を必要とするのじゃないか。その例は、欧米の例を見ましても、ソ連は、現在文化系統と科学系統の学生の比が三対七になっております。ですからして、文科系統が三であって、科学系統が七というわけであります。アメリカは文科系統が七であって、科学系統が三であります。それから日本は、大体文科系統が八であって、理科系統が二だ、こういわれておるのでありまするが、新しく大学ができるのを見ますると、多くは事務系統の学生がふえてくるのでありまして、現状におきましては八・五対一・五というような比率になっておるのじゃないだろうか。こういうことは、もちろん国立大学におきましては極力科学技術の人々を増員するように努めておられますけれども、科学技術の学生を養成するのには文科系統の学生を養成するよりも数倍の経費を要するものでありますから、そういうことを私立大学にやってもらうためには、よほど政府が補助されないと、進んでそういうふうなことがやってもらえない。そういうようなことにつきましても、今後の十ヵ年計画において十分具体的な案を作って、公私立を問わず、相当人数を養成し得るようにしていかなければならぬのではないかと思います。  もう一つ、具体的な例をきょう伺いましたのでお話いたしますが、この中に、重要研究として宇宙科学研究をするということになっております。ところが日本において宇宙科学、すなわちロケット、このロケットの講座を希望する理科系の学生が、東大においてはたった一名であります。しかるにソ連におきましては、ロケットの研究をする大学生の数が五万人だそうであります。これは糸川教授がそう言っておられたので、私が具体的に調べたのじゃありませんが、それほど格段な差があるのであります。しかし、また、それは政治形態が違っておりますから、そのままこれを日本に移すというわけにもいきませんけれども、将来の宇宙研究というものは、非常な地球上以外のところに発展していくわけでありますから、従って、これは将来の非常に遠い問題でありまするけれども、それほど先見の明をもって人の養成をするということが非常に必要であるというふうに感じておるわけであります。
  44. 辻原弘市

    ○辻原委員 お話の点、全く同感であります。三ヵ年計画による、主として国立の八千人増員をもってして今日の技術者の需要に追いつくかどうか、私は、これはそれぞれの就職状況等を当たる必要もないものだと思うのです。この程度では、日本国内の今日の需要にすら追いつきかねる現状でございます。問題は、やはり、われわれが国際協調の面において、特に後進地域との連絡、提携、あるいは交流、こういった点での重要な問題は、たとえば、東南アジアにしても、インドにしても、ビルマ等々にしても、私どもがかねがね聞くことは、やはり、日本との提携の場合に最も望んでおるのは、いわゆる技術者の派遣であり、技術者の技術的な面における協力、それこそ平和的な形における国際協調、これがあずかって将来の日本の発展に大きな力となる、こういうふうに考えるのでありますから、その需要に応ぜられないという日本状態は、これは一面において科学が非常に進歩しておるけれども、しかし、実際においては非常に幅の狭い進歩の方向をたどっていくのじゃないか。こういう意味合いにおいて、少なくとも、中堅以上の科学技術者養成ということにおいて、今日の日本のやっている制度にはかなり大きな欠陥がある、こういうことを考える。特に、私どももかねがね、少なくとも政府がやっている国立大学についての、いわゆる文科と理科系との比率というものは、これは考えるべきである、改むべきである、こういう主張をして、ようやく一昨年あたりからこれを取り上げて増員計画をやっておりますが、それは先ほど言いましたように、国立大学だけである。日本の場合には、諸外国に比しても劣らない、いわゆる私学の発達を見ている今日でありますから、私学の問題をそのままにして、大学における科学教育振興というものはあり得ないと思う。それをいかにして充実されるかという問題。これはお話のように、個々の私学の経営者の方々の意見を徴してみても明らかであるが、何といっても、科学技術をやるということになれば、理工科系というものはこれはずいぶん金を食う、とうていその負担に耐えられない。従って、最も便宜的な方法としては、文科をどんどんふやす。しかも、最近一般教育熱が盛んでありまするから、進学率は非常にいい。だから、それを収容するのに手っとり早い文科系にいく。これでは、私は、政策も何もないじゃないかと思う。これを、少なくとも国立においても、また公立においても、私学においても、それぞれ均衡のとれた科学教育というもの、技術者養成というものをやるならば、この私学に対するお話のような助成制度というものが必要になってくるのじゃないか。現在やっている、いわゆる単なる私学に対する理工教育助成という程度のものをもってしては、とうていこれは新しく理工科系の学科を設ける、その研究施設を作るといったようなことにはほど遠いのじゃないか、ここにこそ抜本的に検討する問題が存在するのではないかと思うのです。従来、どうもその一面だけが——大学の技術者の卒業生が少ない、そうすると、国立大学だけはそれを変えてたくさん入れていく。ところが、片一方、氷山の下のように、見えないところに隠れているのが私学の問題です。こうした点は、なかなか文部省一省だけでもってはなしおわせられない大きな問題であると思う。私学の自主性というような問題とあわせ考えて、いかに私学にこの科学振興の問題をほんとうに着実にやっていただくかという点が、科学技術会議等におかれましても幸い専門部会が設けられておるようでありまするから、今後積極的に財界等の協力を求めてやるべき問題ではないかと私は思います。この点は、もちろん科学技術会議等の問題でありますが、直ちにまた助成の問題にも結びつきますので、技術庁の長官あるいは奥村政務次官等、政府としてこういう問題についてどうお考えになるか、どう対処されていこうとするか、これは科学教育という問題だけじゃなしに、全般の科学技術振興という立場から取り上げて一つお考えを承りたいと思います。
  45. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 科学技術振興には、二つの部面があると思います。一つは、独創的な研究を引き出していくということ、ここに割合に基礎的な部面が大いに働くと思います。この独創的な研究を引き出すということは、自由なる個人が、手探りで未知の世界へ行って拾い出してくるものだろうと思います。従いまして、この分野においては非常な自由が要求される。それから、それを拾い出して、つかみ出してきたものを応用化し、デベロップするのは組織と集団の力だろうと思います。そこには国家と集団というものが相当入っていかなければデベロップしない。ソ連という国は、デベロップというものを個人の力と集団の力で伸ばすという点に非常に組織的に力を入れているのではないかと思います。アメリカは多種多様の個人的の研究に手を染めてやっておるというのが実情ではないかと思います。両方が相ともども進んだ国が科学技術が進むと思います。われわれはそういう考えをもちまして、しかし、一番大事なのは基礎的研究ですから、ここでも第一には基礎的研究をあげまして、以下、特別指定研究等に進んだわけでありまして、そういう考えをもって今後とも努力をして参りたいと思います。
  46. 奧村又十郎

    奥村政府委員 ただいま科学技術会議の梶井議員からの御答弁に、科学技術振興には、まずもって人材の養成である、これには最短期間の十年もかかるのだ、こういうお言葉を承りまして、私もまことにごもっともなお説と痛感した次第であります。政府としても、この方へまだまだ力を入れなければなりませんが、ただいまお話の通り、文科系統と違いまして、理工科系は学生一人当たりの経費につきましても相当多額を要するということで、なかなか困難な点もございます。そこで、来年はただいまの八千名増員の三ヵ年計画最終年次になるわけでありまして、科学技術庁の方からも予算の裏づけについていろいろお話がございますので、国立としては来年あと千名増員、公立で二百五名、それから私立で三千四百六十五名、こういうことになっております。これをどのように予算的に裏づけするかということについてただいま検討いたしておる次第であります。できるだけ善処いたしたいと考えております。
  47. 辻原弘市

    ○辻原委員 先刻も比率についての諸外国等の例が梶井議員から御発表になりました。私の記憶するところによりましても、国立の場合には、文科と理科との比率はさして大きな差異はありません。ところが、問題は私学で、その差異があまりにも大きいために、全体の比率が、今お話のように、八対二がさらに下回っておるというような現状にあるわけです。従いまして、いわゆる中級以上の技術者あるいは科学研究者養成するという立場に立つならば、これは国立という形だけにとらわれず、いわゆる学制全体として、この問題をどうするのだということに考えを及ぼしていただかなくちゃならぬと思います。私は、前からそういう意見を申し上げましたところ、主としてそれが具体的に現われて参っておりますのは、やはり国立ないしは若干の部分における公立しかその影響が現われておりません。私学の場合には、その大学の一つの特殊な事情に基づいて増員されるものは——既設のものは別でありますが、新しく理工科系を設置し、ないしは理工科の学生の募集を増員されたということは非常に依然として少ない。従いまして、今、大蔵政務次官から、鋭意検討され、やはり五ヵ年計画が終わった後もこれを検討されていくというお話でありますが、そうした場合に、一つ私学に対する助成という形において、私学もそれぞれ理工科に対する研究施設及び学生の募集が可能になるような何らかの方法を御研究願いたいということを、この問題については御要望いたしておきたいと思います。  それから、若干こまかい点になりますが、この答申案の中にも載せられており、ことに戦後非常に問題としてやかましくいわれてきました大学における研究費の問題であります。一体、研究費というのはどういう概念規定に基づくものか、これすらもはっきりせられておらないようであります。いわゆる通俗的に研究費といえば、研究助成費あるいは個人の研究に対する奨励費等々、これはいろいろあるわけでありますが、この大学に関する研究費というのは、ある場合においては、そうした科学技術に携わる先生方の、教授の方々のいわゆる待遇改善といいますか、そういう面について考えられる場合もあるし、それから、純粋にそれがその研究のための経費として、それぞれ工場の中で、あるいは研究室の中で費やされる経費の場合もありましょうし、また、一面、場合によれば常識的に、大学なら大学の経営費等とおぼしきものの中に研究費が突っ込まれておるというふうに、大学において使われる研究費というものが、どうもはっきりいたしておらないのであります。ですから、私は、まずそういう点についてはっきりする必要があるのじゃないかと思う。それから、いま一つは、講座研究費あるいは教官研究費といわれるものについても、実際年々若干の増額は見ておるが、それを使っておる教授なり、あるいは研究室、あるいは大学等におけるそれ自体、画期的によくなったというような話も聞かない。一体その原因はどこにあるか。大学一般の経営費が、戦前のように大学は独立採算というか、あるいは大学として一括された予算でもってまかなう場合においては、それがはっきり研究費として別途に支出されるなら、それだけは研究費として生きますけれども、今日、それぞれの所要経費も、研究費も同じように国からそのつど、そのつど出されておるというようなところに、研究費が研究費として実際に役立っていない面もあるのだ、こういうところをやはり財政の運用上からも一応検討してみるべき問題じゃなかろうかということを考えるわけでありますが、来年度研究費については、この科学技術会議答申案にも、やはり大幅に教官研究費は増額しなければならぬということが載っております。私は、それが有効に使用されるように、この辺のところを明確にしていただきたいと思っております。その点については、一つ奥村さんから承っておきたいと思います。
  48. 奧村又十郎

    奥村政府委員 この研究費なるものは、お説の通り予算の技術からいきますと、これを査定いたしますのは非常にむずかしい仕事でありますので、本日は担当の主計官が出まして御答弁申し上げるのが、いいのではなかろうかと思いますが、ちょうど事情がありましてきょうは参っておりませんので、まことに恐縮でございます。御趣旨通り非常にむずかしい問題で、これに対してどのように妥当な予算をつけるか、そうして、実際に効果のあるようにやっていくかということについては、本日といたしましては今の御意見を十分承って、一つ役所へ帰って研究いたしまして、また後日御答弁さしていただきたいと思います。
  49. 辻原弘市

    ○辻原委員 次に、ちょっと私若干の意見——今も意見を申したわけでありますが、希望を述べさせていただきたいと思います。科学技術者の、特に待遇、処遇の向上ということもきわめて重要な問題でありますし、すでに人事院もそのことについての勧告を発表しております。従って、そういう一般処遇改善という給与それ自体の中で、その地位の向上をはかっていくということがきわめて重要な問題だ。ぜひこれは実現をしていただきたいと思います。そういう点から考えてみますと、従来は、いわゆる研究公務員といわれる方々の処遇については、若干の研究費用を出しておるのだというようなことで、いわゆる研究というものと処遇改善というものをごっちゃにして考えられておるといったようなきらいが、私はあったと思うのであります。それではいけない。だから、その処遇改善は、少なくともその給与それ自体のベースないしは特殊な手当等において問題を解決する、研究費というものが、少なくとも、純粋にそれがその研究のために十全に役立つという形において支出される、こういうふうでなければいけない。もう一つの関連の問題は、大学あるいは研究所でありますと、その点はかなり分明だと思うのでありますが、大学ともなれば、いわゆる科学技術研究ということと別に、大学自体の維持、管理、こういうこともあるだろうと思います。光熱費が、これがやはり研究の場合にも使われるが、研究以外の、実際の学校その他にも使われるということになりますと、一体光熱費とか、あるいは水道料とか、こういったものは研究費に入るものか、管理費に入るものか、非常にこれはまぎらわしい点であります。どうも今までの答弁を聞いてみますと、大学全体の維持管理費として当然計上、また当然支出されなければならぬものが、いわゆる研究費というものの中から支出される、実際には直接の研究には役立っていない。だから、私は、研究費を増額されるという場合においては、まず分明にして、そうして維持管理費は維持管理費として、不足分があれば適正にこれの増額をはかる、せっかく増額した研究費がそれによって食われるというようなことのないように十分な配慮をしていただかなければならぬと思います。そういう点で、事務の改善だの維持管理経費等、いろいろな問題をごっちゃにして、どうも実際に使われる場合には、常識的に研究費というものの考え方に立って、この金は使えない、有効に役立たないというふうなきらいが今後起こらないように、一つこういう際に十分御研究をお願いいたしたいと思います。こういうふうに思うのです。担当の主計官がお見えにならぬようでありますから、実情をお伺いするわけにいきませんけれども、大体大ざっぱにいいまして、そういう実情にあるのじゃないかと私も考えております。十分大蔵省においても研究を願いたいと思います。  それから、時間がだんだんございませんので、先ほど前田さんも触れられておりますが、税制上の問題で、ここには「研究費等に対する寄付金損金繰り入れ」、ということがある。これは非常に私は重要な問題だと思うのでありますが、同時に、各企業の中における研究費の取り扱い、この問題について、税制上現実にどう取り扱っておるのかということについて少しくお尋ねいたしておきたいと思うのであります。それは、大企業の中における企業内の研究施設、あるいは研究に対する意欲、これは非常に旺盛であります。ところが、中小企業における研究というものは非常におくれているのじゃないか。日本産業構造から見ましても、やはり企業の技術革新の育成というものがなければ、全般的な産業の発展向上というものは非常に期待薄しとだれもが考えるわけであります。ところが、その一つの問題を考えてみますと、中小企業では常に大企業におぶさっていると申しますか、現実において資本力も乏しいという点から、技術的な革新向上ということについての配慮というものが、企業それ自体も、国の政策としても、存外薄いんじゃないかと私は思うのです。ところが最近、やはりそういう識者も中小企業の中にはかなりありまして、一つ中小企業は中小企業として大企業に準じて、おくれをとらないように研究を進めていきたい。ところがその場合に、税制上、研究費というものが必ずしも損金算入をそう認められておらない。ここに、やりにくいのだという声を聞くわけでありますが、私は、企業収益としても比較的利益率の少ない中小企業等においては、ほんとうに技術革新という立場に立って努力をしようというところには、運用上相当配慮をしてしかるべきではないか、こういうように思うのでありますが、その点、一体現状はどうでありますか、また、どの辺のところまで実際の損金算入をお認めなすっていらっしゃるのでありますか、承っておきたい。
  50. 奧村又十郎

    奥村政府委員 ただいまお尋ねの中小企業に属する企業の試験研究費の取り扱いについてでございますが、御懸念になるようなことが、あるいは間々あるのではなかろうかと実は私も懸念しておるので、そのようなことのないように、できるだけ指導いたしたいと思っておるのであります。なぜかと申しますと、試験研究費というものは、先ほどずっと話が出たと思いますが、特に一時的な費用として幾ら試験研究に使っても、それを全額使用したときの損金として処分する。これは実は企業のほかの経費に比べますと、税法上からいえば非常に恩恵的な制度なんです。というのは、一時多額な研究費を企業が支出しても、はたしてこれが全部が損かどうか、将来その試験研究が実って、それによって企業が非常に収益をあげるということがあるので、本来は、これは一部損金に見て、あとの部分は将来支払うべき経費と見て、いわゆる繰り延べという処置をするのでありますが、しかし、試験研究を促進する意味において、特に恩恵的にこういう制度をいたしたのであります。ところが、いざ、実施となりますと、どの分までが試験研究費としてこの恩恵を受けるかどうかということになると判定がむずかしいので、中小企業などにおきましては、特にこの税制について非常に明るい方がおられれば、この恩恵を十分活用していただけるのですけれども、中には、しぼった解釈で税務署の方で一方的にやられることもあり得るのでありまして、そういうことのないように指導いたしたいと思います。また、皆さんにおかれましても、そういうことがありましたら、法の趣旨をよく徹底していただきますように、お願い申し上げます。  それから、その前にお尋ねのありました研究公務員処遇につきましては、先ほど前田委員にもちょっと申し上げましたが、人事院の勧告によりまして、七彩給与費を改善しようという勧告が出ておりますので、それを実施に移すべく、ただいま予算編成において考慮中であります。ただ、本来いえば、個人的に、この分は研究費ですとお渡しできるような金を多少とも見積もれれば一番実情に即するかと思いますが、大蔵省の今までの予算編成のやり方としては、個人的に研究費を打ち切って幾らとお渡しするようなことは従来いたしておりません。従って、この研究のための備品とか、あるいは研究のための薬品とか、そういう材料費などは見てあるわけでありますが、その点、一般企業の試験研究のような大まかな予算の計上というのはなかなかやりにくいので、その点は今後研究してみたいと思います。
  51. 辻原弘市

    ○辻原委員 今の点について、もうちょっと申し上げます。最初お答えをいただきました税制の問題なんですが、実際に私の知る範囲では、かなり窮屈に査定をされて、本来、これは税金のことでありますから、税務当局はできるだけ便乗されないようにということで厳密にやられるのが通例だと思いますけれども、研究費などについては、大部分の中小企業等で、熱心なところは相当出しておる。ところが、それが全部認められていない。結局、その企業内の研究者研究意欲を喪失するという例は私も知っているわけなんです。そういうことでありますから、従来の中小企業における研究態勢という既成の概念を若干はずしていただかないと、最近の、たとえば、電気事業なら電気事業というものを取り上げてみますと、これはほんとうに日に月に進歩しておるわけですから、中小企業といえども研究していかないと、国内的にも、また、国際的な競争場裏においても、とうてい立ち向かっていけない。たとえばテレビ一つ取り上げても、大企業はセット自体についてはやるけれども、実際、部品というものは中小企業がやっているわけです。そうすると、結局部品が優秀でなければ国際的にも競争できない。個々の部品はだれが持っておる、これは中小企業担当だということになれば、その中小企業内での研究ということは、これはごく一例でありますけれども、やはり大企業に比して劣らぬ重要性を持ってきておる。従いまして、それらの点について税制考慮されれば、やはりそれらの企業の中における技術革新というものはかなり意欲をもって推進されていく、こういうように考える次第です。  第二にありました研究公務員処遇の問題で、七%の本給増ということなんですが、これは相当前から研究公務員の性格が論争されて、たとえば、一般公務員であれば週四十四時間なら四十四時間というものを基礎にして、そうして一日にそれを割り振って、たとえば、五時なら五時以降は超過勤務ということで、かなり事務系統、デスク・ワークは、そういうところは比較的はっきり運営しやすい。しかし、事、研究ということになると、それは時間的に考えても、また、その仕事のボリウムから考えてみても多少差異がある。そういうところに、その職務の特異性というものに立脚をした給与制度、また手当というようなものを考慮すべきじゃなかろうか、こういうふうに考えられて今日にきておるわけでして、人事院が勧告をいたしました七%増だけでも実現できればけっこうでありますが、さらに、今後もそれだけにとどまらず、もう少し研究をすべき問題があるのじゃないか、私はこういうように考える次第でございます。  時間もだんだんたって参りましたので、以上の質問やら要望やらをいたしまして、終わりといたします。
  52. 岡良一

    ○岡委員 きょうは、梶井さんもお見えになりましたし、科学技術振興について掘り下げて御意見も聞かしてもらいたいと思いましたが、時間もたちましたので、私は、ごく基本的な問題の若干だけをお尋ねいたします。  そこで、その前に、ぜひ一つ科学技術会議として資料の御提出をお願いしておきます。  第一は、アメリカ、イギリス、西ドイツ、ソビエト、それに日本における科学技術振興のために計上された予算、それのその国々の総予算との比率、これを、できたら一九五一年からわれわれの把握し得る年度まで、八年まででも、七年までのものでもお願いいたします。  それから、先ほど梶井さんから御指摘があったようでございますが、これも、やはりソビエトとアメリカにおける理工関係の技術者の年次別卒業者と申しますか、課程修了者と申しますか、これが、聞くところによればアメリカも当初は自然科学が七であったものが、五、六年の間に三になったというふうなことも聞いております。逆に、ソビエトは三が七になったというふうなことも聞いておりますので、こういう数字を、何と申しましても人の問題でございますから、ぜひお願いをいたしたいと思います。  それから、科学技術、特に自然科学方面における奨学金制度というものがあちこちの国で実施されているやに聞いておりますので、そういう制度がございましたら、ぜひ御調査の上、資料として御提出願います。  それから、御答申にも指摘されておりますので、この点、数字をもってお願いいたしたいことは、一九五一年から五八年までに外国に支払われたロイアルティ、ノー・ハウ等の支払い金額並びに日本外国に売った技術料の総額、これを年次的にお願いをいたします。  それから、先般各国科学技術調査に行かれましたその報告書ができておりますれば、これも御提出を願います。  それから、諸外国の例を見ますと、たとえば、英国における戦争中のレーダーや、あるいはガス・タービンの民間における共同研究政府によって非常に推進されておる。これがテレビとかジェットとなっておるようでありますが、民間における共同研究というようなものについての英国の技術の資料を御調査の上、御発表を願いたいと思います。  それから西ドイツは、先ほど中曽根長官からも御指摘になったマクスプランク協会のほかに、最近技術開発公社というものが設けられ、連邦政府がイニシアチブをとっておるようにも聞いておりますので、そういう制度なり、あるいは運営実態資料としてお願いいたします。  それからもう一つは、アメリカにも、やはり似たような機構で、いわゆる民間の中小企業の委託研究専門の会社が幾つもございます。こういう会社の機構なり組織なり運営実態なりについて、お調べ願えるだけの資料をぜひ一つ委員会に御提出を願いたいと思います。  そこで、私は、ごく根本的な問題で梶井さんと内海さんに——ほかの方々は国会にいつでもお出ましを願えるので、お二人にお伺いをいたしたいと思います。  今度のこの諮問第二号に対する答申案は、諮問第一号の十ヵ年計画とどういう関連があるのでございますか。たとえば、その第一年度の一環と理解していいのか、まず、この点を御答弁願います。
  53. 梶井剛

    ○梶井説明員 十ヵ年計画につきましては、来年の六月までに成案を得たいという方針のもとに着々今日やっております。従って、十ヵ年計画の第一年度は三十六年度から始まるというわけでありまして、三十五年度予算はその第一年度ではないのであります。ただ、われわれの考え方としましては、十年の方策を立てるために時間がかかりますから、来年を空費しないように、来年度におきましても、それの前提として、多少でも一歩前進することを希望する意味において苦心したわけであります。  それから、先ほどお答えするときに、私が言葉を言い間違えたために、今のお尋ねの中にちょっと誤解がありましたので訂正いたしますが、アメリカが理科系統が七であったのが今日では三になったという意味ではありませんでして、アメリカは文科系統が七でありまして、理科系統が三である、こういう意味でありますから、ちょっと間違いを訂正しておきます。     —————————————
  54. 村瀬宣親

    村瀬委員長 この際、前田正男君より発言を求められておりますので、これを許します。前田正男君。
  55. 前田正男

    前田(正)委員 この際、私は科学技術会議答申に関しまして、当委員会といたしまして、本日の質疑その他からいたしましても、次のような決議をすることが非常に適当であると考えますので、決議案文を朗読いたしまして、皆さんの御賛成を得たいと思うのであります。    科学技術会議答申に関する件   わが国国民所得の増大を図り、国際競争場裡における優位を確保するため、科学技術振興が必須の条件となりつつある現下の趨勢に鑑み、政府は、昭和三十五年度予算編成に当り、科学技術会議諮問第二号に対する答申を尊重し全面的に之が実施を図るべきである。   右決議する。 以上の案文でございます。  科学技術会議設置法にも、この答申を尊重すると書いてあるのでありますけれども、実際の予算編成にあたりまして、この答申が実現するように尊重してもらいたい、そうして、政府としてもすみやかにわが国科学技術の発展をはかり、わが国の国民生活の向上に努力する、こういうふうにしてもらいたいと思いまして、決議することを動議といたしまして提案いたしたいと思うのであります。
  56. 村瀬宣親

    村瀬委員長 お諮りいたします。  ただいまの前田正男君の御発言の通り科学技術会議答申に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、ただいまの決議に対する政府の御意見があれば伺います。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいまの御決議の趣旨を体しまして、予算編成にあたり、全面的に答申が尊重され、実施されるように努力をいたす所存でございます。
  59. 奧村又十郎

    奥村政府委員 ただいまの決議に対しましては、できるだけ趣旨に沿うように努力いたしたいと存じますので、帰りまして大蔵大臣にもこの趣旨をよく伝え、善処いたしたいと思います。
  60. 村瀬宣親

    村瀬委員長 なお、ただいまの決議につきましては、関係当局へ参考送付いたしたいと存じますが、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  62. 村瀬宣親

    村瀬委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち、コールダーホール改良型原子炉の安全性及び経済性の問題について、来たる十二月十一日、立命館大学経済学部教授、日本学術会議会員第三部副部長、原子力問題委員会幹事小椋広勝君、立教大学理学部教授、日本学術会議放射線影響調査特別委員会委員、原子力特別委員会委員田島英三君、京都大学工学部教授、日本学術会議会員、原子力問題委員会委員堀尾正雄君、東京大学教授、日本学術会議原子力特別委員会幹事向坊隆君、理化学研究所主任研究員、日本学術会議原子力特別委員会原子炉安全小委員会委員長岩瀬栄一君、以上五名の諸君を参考人と決定し、意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の出頭の日時等に変更の必要が生じたときの処置につきましては、委員長に御一任を願いたいと思います。御了承を願います      ————◇—————
  64. 村瀬宣親

    村瀬委員長 岡良一君。
  65. 岡良一

    ○岡委員 梶井さんのおっしゃったことを私は何も取り違えたわけではないのです。ただ、アメリカは文献によりますと、一九五〇年の理工系と法文系の卒業生の比率が、理工系が七で、むしろ法文系が三である。ところがそれがだんだん逆になって、二年くらい前には七、三になったということなので、私もその数字の経緯を知りたいと思いまして、さっき資料を要求したのです。そこで、根本的な問題として、三、四点だけ簡潔にお尋ねしたいと思います。  一つは、私ども、この委員会で満場一致で、与野党とも科学技術会議の設置に賛意を表したわけでございます。ただ、私どもその当時から心配しておったことは、科学技術会議が、いわば下部の研究者の意向というものを反映するように運営されるかどうか。なるほど、学術会議の議長がその委員になられるということになっておりますけれども、事実上として、下部の声が十分に反映し得るかどうかという点を私どもは気づかうものでございます。その点について、現在の運営上、率直な皆さんの御意見を聞かしていただきたいと思います。     〔委員長退席、前田(正)委員長代   理着席〕
  66. 内海清温

    内海説明員 学術会議の意思が科学技術会議に十分に透徹しないのではないかというような御質問だったと思いますが、私ども、そうは考えておりません。特に科学技術会議の中に日本学術会議連絡部会というものを設けまして、その部会長に日本学術会議の会長である兼重君がなっております。そしてその部会の委員には、日本学術会議の九人の各部会長が委員になっております。ですから、日本学術会議の意思はその窓口を通して十分に連絡がとれると思います。今御心配のような点は全然ないと思います。
  67. 岡良一

    ○岡委員 下部の研究者の声が反映されておらぬのではないかときめつけておるのではないのです。ややもすると、科学技術会議とか社会保障制度審議会とかいろいろ作りましても、これがおえら方たちのお集まりで、役所の作った作文がするするとトンネル機関のように通っていくということでは困る。それには、先ほども申しましたように、何といってもこれから伸びていく若い世代の科学者の声というものを十分運営の上に摂取できるような方向に御努力を願いたい、こういうことを申し上げたわけでございます。  それから、これは、特に私ども社会党といたしましては、日本科学技術振興の基本的な命題であると信じておる点でございますが、第一点は、御存じのように、戦争は発明の母である、こういうような言葉が言われておったことがございます。しかし、平和国家として再出発した日本では、平和な科学技術振興の実施でなければならない、こういう基本的な立場、心組みにおいて、日本科学技術振興というものは進められなければならない。従って、日本科学技術というものは絶対に非軍事的な性格を持ち、非軍事的な目標を追求するものでなければならぬ、この原則が、科学技術会議のいわゆる総合計画においても、その底を貫く大方針の一つでなければならぬ、こう私は信じておるのでございますが、この点についてのお所見をお聞かせ願いたい。
  68. 内海清温

    内海説明員 戦争は発明の母であるということわざは、初めて聞いたのでありますが、私どもが知っておりますこれに似た言葉は、必要は発明の母であるというふうに聞いております。それはさておきまして、ただいま戦争目的にこの科学技術会議が偏向しないようにという御心配があったようですが、私どもも全然同感でございまして、決してそういう方向にいくものでないということを私どもはかたく信じ、かつ、さように運営していきたいと思っております。
  69. 岡良一

    ○岡委員 そこで、具体的に、重点計画として宇宙開発ということを取り上げられたと思います。非常に穏健な憲法学者、たとえば佐々木惣一博士の御所論を見ましても、日本における自衛隊の自衛行動は軍事行動であると言われておる。そのことの是非は別として憲法解釈として、自衛行動はやはり軍事行動である。そこで、かりに宇宙開発を進めていく、それにはロケットの研究推進しなければならない。ところがロケットの推進が、またいわゆる軍事的にも、平和的にも用いられるものであることは申し上げるまでもありません。そこで、かりにある大学の教授の主宰する研究所があるといたしましょう。この研究所科学技術会議が軍事的目的を排除するという建前で、ここに補助金をつぎ込むといみします。ところが、この研究所は、防衛庁からも補助金をいただいておる。科学技術会議補助金と防衛庁の補助金研究が進められておる。そして、たとえば富士精密なら富士精密という同一のメーカーによって試作され、実験されておるということになりますと、せっかくの非軍事的な宇宙開発というものが、少なくとも、憲法解釈上は軍事行動であるといわれておる以上、軍事的な研究に役立つという結果になるわけでございます。私は、そういうことがあってはならぬと思うのでございますが、この点についての御見解はどうでございましょう。
  70. 内海清温

    内海説明員 このロケット宇宙科単の研究は、戦争につながる場合もあるかもしれません。しかしながら、私どもが今考えております宇宙科学研究は、戦争に役立つという目的考えておるのではありません。純粋な科学技術の立場でこれを振興していきたいという考えでございます。ただ、一つの研究が平和産業にも役立つが、軍事的にも、使い方によっては役立つということもありましょう。私どもは平和産業に役立つという目標でやっておりますが、たまたまそれがある国の軍事目的に利用されることがないとは断じ切れないかと思います。そういう意味で、私どもは、これは下手をやると軍事目的に使われるおそれがあるから、この研究をやらない、そのために一般科学技術水準を上げることができないというようなことはやるべきものじゃないと考えております。それからもう一つ、今ロケットの研究に防衛庁から補助ですか、金が出ているというお話でございましたが、それは私どもは実は存じませんので、これに関しては長官あたりから御答弁をお願いした方がいいと思います。
  71. 岡良一

    ○岡委員 いや、いいです。私は、防衛庁から補助金が出ているかどうか、委託研究はされておるようでございますが、従って、いわゆる糸川さんの方のカッパー何号というロケットのノズルなんかは、完全に防衛庁のものも、それから平和目的といわれておるものも同じものだ。ロケットはノズルが生命だと思うのです。そういうような状態がありますので、せっかく科学技術会議が重点計画として宇宙開発を取り上げ、ここに格別の優先的予算措置を講じながら、それが軍事目的に転用されるというようなことがあったのでは、私ども承服ができないということを申し上げておるわけでございまして、具体的な点は、いずれ中曽根さんその他とゆっくりお話ししたいと思います。  それから第二の問題でございます。科学技術と申せば釈迦に説法でございますが、何と申しましても真理を探求する、自然界の真理の法則を人間の英知が追求します。そこでつかみとった英知を応用化し、工業化しながら実用化しまして、世のために活用するということでしょう。そうしてみれば、真理というものには世界観の相違、政治体制の相違というものはないと思うのです。真理は国境を越えた一つのものでなければならない。そこで、この真理を追求し、真理を基礎にして科学技術を発展させようとする日本科学技術政策というものは、第二の根本的な方針といたしましては、これは現在における東の陣営と西の陣営というものを越えたあらゆる国々と、必要とあらば思い切って交流をはかりながら向こうの成果を摂取しつつ、わが国科学技術振興させる、こういう方針が必要だ。特に核融合が今取り上げられておる。御存じの通り核融合については、先般もアメリカのマゴーン原子力委員長がモスクワに行かれ、向こうの原子力関係責任者との話し合いの結果、国際原子力機関を通じて原子力発電、核融合、原子力船等については情報の交換をやろうじゃないかというコミュニケが出ております。アメリカとソビエトでさえが核融合という、いわば太陽エネルギーを人工的に持とうというような大きな目標に対して研究共同でやろうとしている。してみれば、谷間にあり、また水準のおくれた日本とすれば、大国でさえも、先進国でさえも、そういう態勢に進んでいこうとするのであるから、いずれの国に対しても大いに交流をやり、その結果を摂取するという方針でなければならない。真理は国境を越えたものである。これに基づく科学技術振興は、政治体制や世界観の相違というものを越えたものとしてその振興政策を進めなければならぬ、こう私は思っておるわけですが、この点についての御所見はいかがですか。
  72. 内海清温

    内海説明員 科学に国境なしということは全く同感でございます。従って、科学技術振興のために先進国に学ぶべきことは学ばなければならぬのであります。それに対しては、どの国の科学だから入れないとかいうことは全然考えておりません。私個人の意見として申し上げますが、全然考えておりません。学ぶべきところはどこの国からでも学ぶべきだと思っております。
  73. 岡良一

    ○岡委員 第三番目に、私は、やはりこの人間の英知の、いわば結実として、科学技術振興というものは資本の利益に奉仕すべきものではないと思うのです。やはり全国民の福祉のために、国家経済の繁栄のために役立つものでなければならない。一部の資本の利益に奉仕するというような偏向は絶対につつしまなければならないと私は思います。この点についての御所見を伺いたい。
  74. 梶井剛

    ○梶井説明員 科学技術研究の成果につきましては、これは原則的には公開さるべきものであります。ただ、その研究したところでは相当な経費を投じておりまするから、その経費に対する代償としまして、いわゆる特許料というものをもらって他に公開するという制度をやっておるわけでありまして、現在におきましても、特許申請をして、それの譲渡を受けるということを諸外国の間でさえやっておるのでありますから、国内間においても同様のことができ得るわけであります。
  75. 岡良一

    ○岡委員 御答弁は、私のお尋ねしておる点をはっきりと御返事願えなかったようでございますが、具体的な例を申しましょう。私は、ここに資料をいただいております。重点方策に関する各省庁資料でございますが、これは科学技術庁の次官でも、計画局長でもけっこうですけれども、試験研究準備金制度の創設というようなことがうたわれておる。これについては、先ほど来いろいろな質疑応答もございました。試験研究準備金制度というものを創設すると、減税額は大体どのくらいになりますか。
  76. 久田太郎

    久田説明員 お答え申し上げます。これは、やり方によりましていろいろな数字が出て参りますが……。
  77. 岡良一

    ○岡委員 最高と最低だけでけっこうです。
  78. 久田太郎

    久田説明員 これは減税という意味でなく、繰り延べになるわけでございますが、大体年間三百五十億円の四〇%ぐらいが繰り延べになるという計算になります。
  79. 岡良一

    ○岡委員 直接の減税ではないとしても、実質上の減税のようなことになるものと私は理解しておるわけでありますが、そこで、こういう問題を、先ほど申し上げましたように、科学技術振興というものがやはり全国民の福祉、国全体の経済の繁栄に役立たしめるという立場から考えますと、現在の日本の情勢では、こういう制度に私は疑義を持つのです。と申しますのは、資料があったらお答えを願いたいのですが、民間における研究投資額は、最近における統計数字は幾らでございますか。それから、たとえば、民間の鉱工業事業場において自己の研究所を持っておる事業場はどれだけございますか。そうして、資本金一億以上の民間事業場で、自己の研究所を持ったものが、その中で何十パーセントで、何ヵ所ございますか。こういう数字は今ちょっとむずかしいでしょうから、あとで出していただけばようございますが、ただ、私が推定をいたしますところでは、試験研究準備金制度を持てるというのは大経営に限られていると私は思う。そうしてみれば、中小経営というものは科学技術の進歩の恩典に何ら浴さない結果になる。従いまして、私が先ほど申しましたように、全国家経済の繁栄に貢献するという立場から言うと、非常な偏向を示してくるということになるわけです。いわば、日本の経済の二重体質ということがよくいわれ、体質改善ということがいわれておりますが、こういう制度はかえって二重構造を激化する。いわば、科学技術振興に名をかりながら、脱税の隠れみのにさえもなる可能性があるわけです。ここに問題があろうと私は思う。私は、内海さん、あるいは梶井さんにお尋ねするが、そういうことがあってはならないと思うのです。むしろ中小企業事業場は、数でいえば日本の全事業場の九〇%をこえ、しかも、従業員もそのほとんど九〇%をこえておるでしょう。しかも、賃金の較差は一方の一〇〇に対して現在五三というふうに、とにかく技術水準において劣り、従って、そこに働く者の賃金において劣る。これがこういう制度でもって、大経営がどんどん実質的な免税の伴う形で研究活動推進されていきますると、ますますこの落差が激しくなって、そこに働く労働者の生活水準というものも相対的には低下せざるを得ない。これでは日本科学技術振興というものは、結局一部資本の利益に奉仕する結果になるので、こういうことがあってはならないと思うのです。これは、これからの会議の、特に民間議員の皆さんに、十分に目をあけて、そういうことのないように努力していただかなければならぬポイントだと思います。その御決意を両議員からお答え願いたい。
  80. 梶井剛

    ○梶井説明員 日本の工業の特徴は、中小企業の数が非常に多いということであります。また、中小企業に基盤を置いて工業が発達してきた歴史的発展過程にあるわけです。しかし、われわれが自分の体験から考えますると、日本の中小企業は同種の生産をする会社の数があまりにも多いのであります。しかも、その一つの製品ばかりでなくて、大企業と同じように、あらゆるものを作ろうとする努力をするのであります。これでは、中小企業は大企業と資本的に格段な差がありまするから、とうてい競争に耐えないことは明らかであります。やはりだんだん工業が発達して参るに従いまして、中小企業というものが専門工場になって参りまして、そして大企業はその専門工場を育てて、専門工場の作ったものを使って生産を上げるというような、工業の構造を変えないといけないのではないかというふうに感じます。私が自分の体験から申しますると、最近、電電公社におきまして中小企業の人を一つの協同組合組織にいたしました。協同組合組織にしませんと、第一には、発注と同時にある程度の前渡金というものを出しますが、小さな会社でありますと、直ちにそれを担保にしてあっちこっちから金を借りてくる、あるいはまた、契約そのものによって将来もらう金というものをすぐ担保にするというようなことになりますので、非常に前渡金その他をやることに困難を感じたのでありますが、十社が同じものを作っておるならば、それを協同組合にいたしますと、銀行も信用して協同組合に金を貸しますし、また、電電公社も前渡金をやるという制度にいたしまして、また同時に、その十の会社がお互いに共同研究いたします。そうして協力して進歩をはかりました結果、これらの協同組合に入りました中小企業というものは、非常に業績が好転して参りました。そういうことから見まして、ただいたずらに中小企業が中小企業同士でしのぎを削って競争していくというだけでは、働く人々の賃金を上げることもできないし、製品の性能も上がらないというようになって参りまするから、やはり日本の製造工業の構造というものを、ある程度協同組合組織にすることが必要なのじゃないかと思います。そうすると、研究態勢共同でありまするから各分担金でやる、そして、その成果をお互いがみな受けてやることができます。ことに専門工場の形になりまするから、そういう協同組合で作りましたものは優秀なものができまして、大企業が高い賃金でやるよりも、中小企業でやったものがかえって安くできるということになりまして、中小企業の存立の意義が十分にそこに現われて参るようなわけであります。これは、われわれ科学技術会議の者ばかりでなく、要するに、通産省の一つの工業全体の振興政策として御研究を願わなくてはならぬものだろうというふうに思っております。
  81. 岡良一

    ○岡委員 私は、通産省に関連する部分は部分として、科学技術会議として、この研究推進するためにいろいろな税金関係の優遇をしたい、こういう御趣旨が盛られておりますので、私は、ただその点については、こういう恩典を中小企業の技術水準向上にも役立てるにはどうしたらいいかということが現在の大きな課題ではないか、この点について御考慮を願いたいと思います。  そこで、私は一つの案を持っておるわけなのです。それは、日立も東芝も大いに研究をやってもらうためにはどんどん資金を出してもらう、けっこうでしょう。だから研究法人を作る、親会社の研究所は、独立した収支決算の別な法人とする、この法人についてできるだけ税金関係の優遇措置を講ずる、そこで、今梶井さんのお説のように、中小企業には、ある特定の技術分野における共同研究をやる共同研究法人を作らせる、これにも税金の減免をはかってやり、大企業並みにやらしていく、もちろん、設備近代化等においておくれていましたら、これには特別な補助金助成金も必要でしょう。そういう形で、大企業の脱税の隠れみのにならないように、はっきり親会社から経理を独立した研究法人を作る、これに対してはどんどん監査をしながら税金の減免をやる、中小企業は共同研究法人で特定の技術を税金の減免を受けながら育成する、こういう研究法人というものの設立にいろいろ問題があるようですが、私は、これは中小企業にも大企業にも均霑する税金関係を通じての科学技術振興のための一つの大きな方法ではないか、こう考えております。こういう点は、また皆さんの方でよく専門家等と御研究いただきたいと思うわけですが、希望として申し述べた次第です。
  82. 内海清温

    内海説明員 全く私も同感でございますから、そういうふうに考えていきたいと思います。
  83. 前田正男

    前田委員長代理 それでは、本日はこの程度にいたしまして、次会は来たる十一日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十分散会