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1959-07-03 第32回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年七月三日(金曜日)    午後三時六分開会   —————————————   委員長異動 本日木暮武太夫委員長辞任につき、 その補欠として小林英三君を議院にお いて委員長に選任した。   委員異動 七月二日委員羽生三七君辞任につき、 その補欠として佐多忠隆君を議長にお いて指名した。 本日委員加藤武徳辞任につき、その 補欠として金丸冨夫君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り    委員長     小林 英三君    理事            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            亀田 得治君            鈴木  強君            千田  正君            杉山 昌作君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            木暮武太夫君            斎藤  昇君            重政 庸徳君            下條 康麿君            杉原 荒太君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            村松 久義君            湯澤三千男君            吉武 恵市君            米田 正文君            天田 勝正君            木村禧八郎君            久保  等君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            千葉  信君            藤田  進君            藤原 道子君            松永 忠二君            大和 与一君            辻  政信君            原島 宏治君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    労 働 大 臣 松野 頼三君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    内閣官房長官  椎名悦三郎君    法制局長官   林  修三君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選予算執行状況に関する調査の件  (予算執行状況に関する件)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  この機会にちょっとごあいさつ申し上げますが、今回、はからずも委員長の職をけがすに至りましたので、まことにふなれな者でございますが、できるだけ公平に委員長として運営して参りたいと思いますから、何分のお引き回しをお願いいたしたいと思います。   —————————————
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) まず、委員変更につきまして御報告をいたします。羽生三七君及び加藤武徳君が辞任をいたし、佐多忠隆君及び金丸冨夫君がそれぞれ補欠選任せられました。   —————————————
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 理事辞任につきましてお諮りをいたします。堀木鎌三君から理事辞任したい旨の申し出がございます。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議はないものと認めます。よってさように決定をいたしました。  次に、理事互選につきましてお諮りをいたします。ただいま欠員となっておりまする二名の理事互選を行いたいと存じますが、互選は、先例に従いまして、委員長指名にお願いいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないようでございます。それでは理事館哲二君を指名いたします。  残り一名につきましては、追って指名をいたしたいと存じます。   —————————————
  7. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算執行状況に関する調査を議題といたします。  議事に入ります前に、委員長及び理事打合会決定につきまして御報告を申し上げます。本日の質疑時間は総計百六十五分といたしまして、各会派の割当は、自由民主党六十分、社会党六十分、無所属クラブ二十分、緑風会十五分、共産党十分といたします。発言順序につきましては、慣例に従いまして、社会党自由民主党無所属クラブ緑風会共産党順序といたしまして、以下これを繰り返すことにいたします。以上でございます。  委員長は、右の理事会決定に基きまして委員会の運営を行いたいと存じますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議はないものと認めます。  それではこれより質疑に入りたい一存じます。
  9. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まず、安保条約改定の問題についてお尋ねをいたしますが、第一に総理並びに外務大臣お尋ねをしたいのは、一体、現在の安保条約はどういうことを目的にしているとお考えになっているのか、そして現在の安保条約改定は、どういう方向改定しょうとしておられるのか、その方向、その両者を、一応まず最初に明確にしていただきたいと思います。
  10. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現行安保条約は、御承知のように平和条約締結と同時に結ばれたものでありまして、それは、言うまでもなく当時の日本事情から申しますというと、従来占領下にあった日本が、占領が終止いたしましてここに平和条約によるところの政治的独立が認められるわけでありますけれども、全然国の防衛態勢のない状態にあったわけでございます。この当時のこの国際情勢から見て、日本を全然無防備状態に置くことは、日本の安全を確保するゆえんでないという趣旨のもとに、日本の安全を保障するためをもってアメリカとの間にこの条約が結れば、日本の安全をアメリカの力によって保障するという態勢ができたわけでございます。そういう情勢のもとに結ばれた安保条約規定が、日本の全然無防備であった当時の事情から、われわれが国情国力に応じてわれわれの自衛態勢を持つに至りまして、また同時に日本国力が充実し、日本国際的地位が高まったことにかんがみて、今日からこの条項を見ますというと、いかにも独立国として日本立場というものが、いわゆる自主的な立場というものが認められておらない状態になっておることは御承知通りでございます。私どもは、この占領が終って安保態勢のもとにアメリカが駐留してきておる状態は、言うまでもなく占領下の進駐軍の立場とは違うわけでございますが、その権利義務を定めた行政協定内容等を見ましても、また、今申しましたような安保条約そのもの規定を見ましても、日本独立日本自主性を認める点において非常にわれわれ遺憾とする点が多いのでございます。今日になって考えますというと、われわれは、とにかくその後において国力国情において自衛の組織を持っており、また日本国際的地位の高まり、国力の充実してきておる状況にかんがみて、この安保条約をできるだけ対等な、また日本の自主的な立場を明らかにするよう、この規定を持つことにすべきである。また、こういう意味において日本アメリカとの間におけるところのこの条約を再検討して、日本が他から侵略されないということについては、第一義的に日本自衛隊その他の力によってこれを防衛するが、不当な侵略が行われるということを未然に防ぐためには、足らざるところをアメリカとの協力によりまして、アメリカの力によってこれを補充して日本の安全を保障していく、この必要は、依然として私どもは今の国際情勢のもとにおいてもある。しこうして現行安保条約の不合理を改めるということが、この根本考えでございまして、そのうちおもな事項につきましては、すでに所信表明におきましても明らかにいたしておるような線に沿うて折衝を進めてきておる次第でございます。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 外務大臣はどうお考えですか。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約改定の基本的な考え方につきましては、ただいま総理が申された通りでありまして、その方針に従いまして、私ども現実折衝の衝に当っておるわけでございます。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私が現行安保条約目的を特にお尋ねをしたのは、その一つは、今、総理もお述べになりましたように、日本の安全を望むということが一つの第一の目的であるが、同時に第二の目的は、極東の平和を守るという目的がある。その二つ目的を持っていたと思うのですが……。で、この二つ目的が今度の改定においてどういうふうに変っていくとお考えになっているのか、その点をもう少しはっきりしていただきたいと思うことが第一、それと、安保条約改定方向を特に私がお聞きしたのは、現在の安保条約改定は、あるいは基地貸与協定であり、あるいは駐留協定であると思うのでありますが、これが新たに改変をされるときに、どういう方向変更をする、どういう性格変革が行われるというふうにお考えになっているのか、その点をもう少し明瞭にしていただきたいという意味の質問でありますから、その点を一つ明瞭にしていただきたいと思います。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま佐多議員の御指摘のありましたように、今回の安保条約改定に当りましては、現行安保条約と見合いながらやっておるわけでございまして、現行安保条約を基礎にしてそれの改定を企てておることはむろんであります。そこで、むろん日本の安全と平和ということは、やはり極東が安全であって、紛争のないということが望ましいことは、これはむろんだと思います。また、日本自身が何か他国から侵略され、従って日本の平和と安全が破壊されるというような状況は、極東の事態においても好ましくないのではないかと、そう考えられるわけであります。しかしながら、安保条約そのもの根本的な考え方、ことに今回の改定では、日本を守る、日本他国から侵略されることを守るということが、今言ったような原則からいいましても、あるいは日本自衛の上からいいましても必要である場合に、アメリカ共同目的アメリカ援助を得るということが当然だと思うのであります。そのての意味において、現在の安保条約の設定は、そういう方針にのっとってやっておるわけでございます。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本の安全をわれわれが希求をしている、しかもその日本の安全が、同時に極東の安全であるということは、今、外務大臣お話し通りでありますが、もう一つ極東の平和を守るという大きな目的安保条約には課せられておる、同時に、今度新しく作り変えられた新条約でも、この点はさらに明瞭になっておるし、むしろこっちの方がより大きな任務になっている。これは後ほど改定内容についていろいろ質疑をする場合に明瞭にしておきたいと思いますが、しかるに、われわれの見解によれば、極東の平和を守ることが必ずしも日本の平和、安全を守ることではない場合がたくさんある。むしろ極東の平和を守るという名のもとに行われるアメリカ軍事行動によって、日本の安全が破壊をされる、日本が好まざる戦争に巻き込まれるという場合が非常に多いことが現在の極東情勢から考えられる。それらの点をどのようにお考えになって今度の改定考えておられるのか、その点を特に明示していただきたいと思うのであります。  なお、改定方向の問題でありますが、先ほども申しましたように、これは基地貸与協定あるいは駐留協定から、相互防衛条約への転換であり、非常に大きな質的な転換をしておるということをわれわれは考えなければならないと思うのでありますが、この点を総理外務大臣はどのようにお考えになっているのか、明瞭にしていただきたい。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私ども改定根本考え方は、形式的には新しい条約を締結するという形式をとるつもりでおりますが、現在あるところの安保条約の不合理な点を改めていく、そうして日本の負うところの義務は、もちろん憲法範囲内であり、現行のこの安保条約以上に出でないということを前提として大体考えられておるわけでございます。しかして現在の安保条約日本の安全を保障するということと、極東の平和を維持するという二つ目的を持っておることは御指摘通りであります。この両者関係は、きわめて相関的な関係があることも御承知通りでございます。今回の改定におきましても、私はそういう点において根本的な変化があるものとは考えておりません。また、改定内容について御質疑があれば、具体的にお答えを申し上げますけれども条約そのもの根本的な本質が変ってくるとは私ども考えておりません。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 交渉に当りまして現行安保条約を土台にして改定していくことはむろんでありまして、私どもは、そういう意味において作業をいたしております。根本的態度としてそうだと思います。われわれ外交を扱っておりまして、世界の平和を希求しておりますことは当然でありまして、日本外交が平和な世界を現出することに努力することは当然だと思います。それぞれそうした意図を持っておる国が、世界の平和を念願しながら、自分の周辺も平和であることを希望することは当然だと思います。ただ、佐多委員の御指摘のように、議論になるかと思いますけれども、必ずしもアメリカ極東の平和を特に撹乱しているというような場合が非常に多いのだというふうには、われわれ考えておらぬのでありまして、やはりアメリカ自由主義国指導者として、相当の大国として、やはりそういう意味においては、平和を希求しながら問題を処理していくものであろうと私ども考えております。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私も、必ずしもアメリカ極東の平和を撹乱しているとは思いません。しかし、アメリカ極東の安全を望むという名目のもとに起す行動が、必ずしも日本に影響を及ぼすときに、日本の安全と平和を守るものでない、その両者はおのおの違った面である。その点を十分にお考えにならなければ、大した問題になってくるのだということを私は申し上げようとしておる。それらの点は、後ほど内容的にもっとお尋ねをするときに明確にしたいと思いますが、ただ、総理もあるいは外務大臣も、今度の改定はそんなに本質的な改定でないのだということを言っておられるが、これはごまかしもはなはだしいと思うのです。今度の改定は、言わずと知れた基地貸与協定あるいは駐留協定から相互防衛条約に変ってきている、非常に大きな質的な変化をしてきておる。これが日本アメリカとの間の軍事的な結びつきを強化して、日本アメリカとの軍事同盟方向を明瞭にさし示している。しかも、総理が言われたように、そういう意味でこれは日米の新時代を画するものである。日米の新時代を画するものであると総理が言われたのは、そういう本質的な質的な変化を含んでいるからこそ、一つの新時代を画するものだと言われたに相違ないと思う。それを今ごろになってそこをぼかしてみたり、大したことでないと言われるならば、もし、それを認識しないで善意でそういうことを言っておられるならば、あまりにも認識不足である。もし、そういうことはわかりきっていて言われるならば、あまりにも悪意に満ちた弁解にすぎないと私は言わざるを得ないのであります。私は、このような相互防衛条約への方向軍事同盟への方向は、現在の世界情勢極東情勢あるいは日本の置かれた現在の地位からいって、この方向時代錯誤もはなはだしいと言わざるを得ないと思うのであります。それらの点をどうお考えになるか。この安保条約が結ばれたのは、申すまでもなく朝鮮動乱のときであります。そのときにはあるいは戦略的な意味があったかもしれない。そのときですら私たちはそれが危険であるということをやかましく申しましたが、その後の現在の状況から見れば、世界緊張緩和方向に移っておる。そうして話し合い方向に逐次進んでおる。そういうときに、これらの方向に逆行してこういうことをなさる。だから私はこれを時代錯誤だと言う。外務大臣は、そういう大局的な世界情勢なり、あるいは日本の戦略的な地位なりというようなことを、もっと政治家的に、大局的に判断をしてこれをおやりにならずに、ただ二、三の条項を技術的に、条約的に変えればいいということで出発をしてこられたから、こういう袋小路に追い込まれて、今や重大な危局に直面をしておると思うのですが、これらの点を総理並びに外務大臣はどうお考えになりますか。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、この国際的な緊張緩和方向に向いておるという現実国際情勢の分析は、必ずしも佐多君と同じような考えを持っておらないのであります。これを緩和しなければいかぬ、また緩和方向にわわれが努力すべきであるということについては、人後に落ちないという考えを持っておりますが、しかし現実のことは、最近行われたジュネーヴの外相会談考え方に現われておる両者考え方から見ましても、根本的にこれは緩和方向にあるということは言えないと思う。また、日本を取り巻いておるところのこの情勢考えましても、中ソの間の条約というものは厳然として存在をしておる。また、日本を取り巻いておるところの軍事情勢というようなものについて、これが緩和方向にいっているというような事実はないのでございます。こういう際に、日本の安全を守るということのためには、日本日本の力でもって他から侵略をされない、また、侵略をされた場合においては、われわれはこれを実力をもって排除して、そうして日本の安全を守る、こういう態勢をとって、日本が他から侵されない状態を作っておくことが必要であろう。その場合に、一国だけの、日本の力だけでこれをなし得ない場合に、同じような考えを持っており、お互いが信頼し、協力関係にあるところの国の力を借りて、その援助のもとにわれわれが安全態勢をとる、われわれは理想として国際連合にそうした世界的な安全確保の機構が実際にでき上ることを望み、また、そういうものが動き出すということになれば、もちろんそういう必要はないのでございますが、その間における現状から見まするというと、やはり私は日本の力で日本の安全を守り得ない点を、他の力を借りて日本の安全を守るということは必要であり、また、それをできるだけ合理的な、また日本発言権や、日本自主性というものが十分にとりいれられた形において、そういう条約を作ることはむしろ必要である、かように考えております。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 自主性が果して回復されているかどうか、双務性を新たに獲得をしたということが、日本にとってどういう意味を持つか、これらの点については後ほどもっといろいろお尋ねをしたいと思いますから、そのときに譲りますが、ただ、今、総理も言っておられるように、自国だけではこれを守り得ないから相互援助し合う相互防衛態勢に変えていくのだ、あるいはそれをより確立するのだということは、今の御説明でも非常にはっきりしたと思う。そうであれば、私がさっきから言っておるように、これは非常な性格変更をしているものだ。しかも、そのために日本アメリカとの軍事的な結びつきが非常に強化をされたということに意味がある。ところが、私たちはむしろ安保条約なるものは、それを作ったときに、すでに暫定的なものとして考えていた。従って、目標は解消をさるべきものだし、廃棄をされなければならないものだと私たちは思う。それは内容的に言えば、駐留軍の撤退あるいは軍事基地の撤廃、少くとも日本を回る地域において核武装をしない、これを明瞭に規定をする、これらの問題がむしろ論議をされて、そうしてそれに至る過程を具体的にどうやればいいかという問題が、今の時点においては論議をされなければならない問題だと私たちは思う。しかるに、あなた方は全くその反対の方向をとっておられるとしか思われないのですが、そういう安保条約暫定性の問題なり、あるいはむしろ廃棄しなければならないということを、あなた方はどういうふうにお考えになりますか。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんわれわれといたしまして、ただいま総理の言われましたように、日本他国侵略から守る、日本の力の不足なところはアメリカからの援助を請うということはやらなければならぬことだと思います。ただしかし、今回の交渉に当りましても、日本憲法範囲内ということをたびたび申しているのであります。従って、いわゆる相互的な意味においてアメリカの領土を守るとか、そういうようなことを規定しているのではないのであります。現在の日本にあります防衛力不足というものを、万一の場合にアメリカによって補っていくという形なのでありますから、いわゆる相互的な防衛あるいは軍事同盟というような、世間でいわれているような問題ではないとわれわれは考えているわけであります。むろん佐多氏がお話のありましたように、われわれといたしましても、今日の国際情勢下におきまして、日本の安全を守るにはいかなる方法をとるのがいいかということは、これは考慮して参らなければなりませんけれども、われわれの結論といたしましては、やはり現行安保条約を改正して、そうして他国からの侵略に対しては、やはり日本自衛力ができるだけ発動するが、その補いとしては、やはりアメリカ協力を求めるということが必要であろうというふうに、現実立場を省みまして、私ども結論に達していることを申し上げさしていただきたいと思います。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ただいまのお答えによると、集団防衛あるいは共同防衛というような問題が、大したことでないのだというようなお話でありますが、それらの問題がいかに重要な内容を持っているか、いかに先ほどから私が申しておりますように、条約性格変更を本質的にやっているか、従って、それがいかに大きな憲法違反をなしているかということは、後ほどさらにいろいろお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に、安保条約改定内容の全体にわたって、一体どういうことを改定をしようとしておられるのか、あちらこちらで断片的にはお話しになっておられるけれども、その改定内容が全般的にどうも明瞭でありませんので、ここであらためて全般的に改定内容を、まず簡単でよろしゅうございますから、明らかにしていただきたいと思います。
  23. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 改定に当りましての問題の所在点というのは、過去におきましても衆参両院外務委員会もしくは予算委員会等相当論議を尽された点だと思うのであります。それらの点について、われわれもアメリカ側にいろいろ日本考え方として問題を提起しながら話し合いをいたしております。ただ、お話のありましたように、われわれはこうした条約を作って参ります前提として、日本の持っております憲法範囲内ということは、厳にこれを主張いたしておりますので、それを通して参ることは当然だと思います。また、問題になっております核兵器の問題、あるいは日本基地作戦基地として使う場合には事前に協議をしていく、また、条約地域の問題につきましては、どの程度まで条約地域とするかということは重要な問題でありましたけれども、一般的な世論の趨勢その他から見まして、われわれは、現在施政下にある地域ということが一番適当ではないかという考えのもとに交渉をいたしているわけでございます。その他条約年限等につきまして、われわれは四囲の状況から見まして、十年が適当ではないかという、長い条約関係もございます。あるいはそうでない年限の方法もございますけれども、現在におきましては十年程度が適当だと考えております。そのほか、こうした問題を両国間で結ぶにつきましては、やはり一般的な友好関係というものが増進されていくという立場において結ばれるわけでありますから、経済、文化等の面において協力関係が基盤にあるということも当然だと思います。なお、アメリカのバンデンバーグ決議の取扱い等につきましても、その精神的な面においては、われわれもそういう面の日本憲法の制約下における意味におきまして、義務づけられない形におきましては、それに同感し得るのでありますから、その点においてこれらのものを書き加えていくというようなことを主眼といたしておるようなわけであります。以上のような点を総合いたしまして、われわれは条約交渉をやっている次第でございます。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 交渉の経緯あるいは交渉妥結の時期等については、後ほどさらに詳しく御説明を願いたいと思いますが、その前に、改定内容についての大綱を今お話になりましたが、昨年の九月二十七日UPI電として大綱なるものが一応報ぜられた。それからことしの五月四日の毎日新聞にも、藤山案として一つの要綱が掲げられております。両者それぞれ十カ条から成って、その内容もほぼ類似のものであります。さらに一週間くらい前に、同じような内容のものを朝日新聞は要綱にまとめて記述をしておる。なお六月二十七日には読売新聞が十カ条から成る新安保条約の草案なるものを非常にはっきり記述し、発表をいたしております。私はこれからいろいろ論議をさらに続けて参りますが、これらに現われたもの、特に読売の新安保条約の草案なるものは、大体こういうものだと考えていいのかどうか、まずその点について外務大臣の御答弁を求めます。(「大きい声でやって下さい」と呼ぶ者あり)
  25. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) はい。問題点につきましては、交渉のことでありますから、今日まで相当論議を尽してきております。しかし、まだ最終草案の確定の段階に至っておりませんから、草案なる形でもってわれわれがまとめておるわけではございません。新聞紙上等にいろいろそのときどきに出ておりますこの点は、私ども議会等の論議を通じまして、相当問題点については議論をいたしております。ずいぶんお前は秘密にやっているのではないかという御非難もありますけれども、かなりまあ私どもとしては普通の条約締結と違って、問題点については論議もし、あるいは論争をしたようなこともありますので、新聞記者諸君も、ある程度それらの点についてはわかっておるのではないかと思います。しかし、それ自体が最終的草案ではございません。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 最終的草案ではないけれども、大体において今まで論議をされたものを結論づけられたようなものであるから、これで大体そう大きな間違いはないのだろうというふうなお答えだったと思いますので、私はそういう前提のもとにお尋ねをいたします。  まず第一点、防衛力に関する協力関係あるいは共同防衛問題については、「締約国は、この条約目的を一層効果的に達成をするため、自国の憲法規定に従い、自助および相互援助により、単独でもしくは協力して、武力攻撃に対抗するための能力を維持しかつ発展させる。」という規定があります。さらにまた、「各締約国は、日本施政下にある領域において、いずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和および安全を危くするものと認め、自国の憲法上の規定と手続に従って、共通の危険に対処するため行動することを約束する。」と、こういう規定になっております。大体今交渉をされて妥結をしつつある改定内容の一、二がこういうものだと了承してよろしゅうございますか。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん字句等の点につきまして、今お話通りだと必ずしも現在申し上げかねます。が、しかしながら、改定方向として、そういうような点について話し合いをいたしておりますことは事実でございます。
  28. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 内容的に、大体においてこれをお認めになったというのであるならば、私がさっきから申し上げておるように、これはまごうかたなき相互防衛条約である。従って、こういうところに日本は踏み切ったということを意味しておると思うのであります。しかも、これは文字通りに「自助及び相互援助により、単独でもしくは協力して、武力攻撃に対抗する」と、これはバンデンバーグ決議を基礎にしていることは明瞭であると思います。なるほど文句には、「自国の憲法規定に従い、」とかあるいは「憲法上の規定と手続に従って、」とかいうような文句をいわれておりますけれども、これはただ文句を掲げただけであって、これ自体は明らかに憲法違反である。これはあなた方が非常に気にして、日本国民に非常な手柄をしたように吹聴をしておられる片務性を双務性に変える、アメリカ防衛義務を負わすということをやらされた半面において、日本が同じように防衛義務を負うと、協力して武力攻撃に対抗をするということを明瞭に規定をしたものであると思う。そういう意味において、バンデンバーグ決議を軸としておる。従って、これは、米比、米台、米韓相互防衛条約と本質的に変らないものだというふうに考えなければならないだろうし、そこからも憲法違反であることは明瞭であると思います。同僚曾祢委員が、この点は本会議の質問においてはっきり指摘したところでありますが、それに対する総理の、あるいは外務大臣お答えは、何ら内容的なお答えになっていない。あらためてこの点を明瞭に憲法違反では絶対にないのだということの理由を明示をしていただきたい。総理並びに外務大臣にこれをお願いいたします。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) バンデンバーグ決議の趣旨をとり入れたアメリカと他の国との条約は、御承知通りいろいろございます。そうしてその書いてある条約の文句も必ずしも同一でないことも御承知通りであります。わが国におきましては、特にこの防衛力というものは、あくまでも憲法の九条の反面の解釈としての自衛権の範囲内に限らるべきものであることは、これは言うを待たないのであります。従いまして、他の条約等において見られない、特に憲法範囲内である、憲法規定に従うというこの条項を入れましたことは、入れるべきであるということは、そこにあるわけでございます。そうして従来も日本が、この日本自衛力を増進するのについて、国情国力に応じてこれを増強するという国防の基本方針をきめてきておりますが、その方針は少しも動かないのであります。それは単独にこの自衛力を増進する場合もありますし、またアメリカ援助のもとにわれわれが自衛力を増強して参るということもすでに行なっておることでございまして、そういう範囲内におけることであり、また、この条約のいわゆる条約区域なるものが日本の施政権を行なっておる範囲内に限るというつもりでございまして、従って、それは本来日本自衛隊が、そこに対する侵略があった場合において、当然われわれとしてはこの侵略に対して自衛隊の本義から見てこれも防衛する、そういう侵略を認めない、排除するということをわれわれは考えておるわけでございまして、その範囲を逸脱するものでないこともこれも明らかである、そういう意味におきまして、私どもはこれをもって憲法の違反であるというようなことは絶対に考えておらないのであります。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のようにバンデンバーグ決議というものは、アメリカ協力をして参ります場合に、協力の相手国が自分の自衛すらする努力をしないというような国と協力関係に入るということは、それはできないじゃないかというのが、バンデンバーグ決議の趣旨だと思っております。われわれ日本におきましても、自衛力範囲内におきましては若干ずつ自衛隊について充実をしてきているわけであります。条約について日本アメリカから強要されてそれをやるというのではございません。お互いがやはり自分の国を守るだけの決意と準備がない国とは、こういう条約が作れないというのがアメリカの、バンデンバーグ決議の本質的な趣意だと思います。従って、それぞれ結びます場合に、それらの国の国情に応じてその表現方法なり、内容なりが違って参りますことは当然でございまして、われわれとしては、日本の持っております憲法範囲内においてそれらのことをやって参るので、条約義務づけられるというようなことは、これによって起ってこないと考えておるのであります。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 お二人の答弁は何ら答弁になっていないと思うのであります。この両条ーーこれは一つは第三条であり、一つは第五条であるといっておりますが、この両条によって、明らかに集団的防衛能力の増強を約束をし、さらに相手方側からの攻撃に対して共同に対抗をする、あるいは共通の危険に対処して共同行動をするということを、ここでは明瞭に規定をしておられるので、条約によって日本はそれを強要されたことになっていることは明瞭であります。しかもそれが憲法違反であるということ、憲法違反の事項を条約によって強要されておるということになっておるのでありますから、私はこれは非常に重大な点であると思いますが、この点はどうもあまり明答をされませんし、この問題だけにかかわっていたのでは時間がありませんから、これはいずれ後の他の機会に譲ります。  次に、事前協議の問題でありますか、これは伝えられるところによると、交換公文として、条約の中でなくして、交換公文として、合衆国軍隊が日本の施設及び区域を日本防衛目的以外に使用する場合及び合衆国軍隊の配備並びに装備についての重要な変更が行われる場合については、それぞれ日本政府と協議することとするということをいっておられます。これは大体こういうものを規定をされると考えていいのか、それともこれは本条文の中でなくて交換公文としてやられる、こういう形式をとられるということももうすでにきまっているのかどうか、その点の御答弁を願います。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議というものは、今回の条約改定に当りましてはいろいろな問題がございます。ただいま御指摘になりましたような海外基地からの海外作戦行動の場合、もしくは配備、装備の場合というものは、当然事前協議にしてもらわなければならぬのであります。それは強く主張をいたしております。その点が交換公文になるか、本条約になるかということでありますが、この種の問題は交換公文になった方が適当であろうかとも考えます。しかし、交換公文であろうと条約であろうと、その効力において差異ないことは御承知通りであります。
  33. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それなら、条約に明記されればいい。交換公文にわざわざはずされた……、交換公文と条約は違いないと言われる。私たちもそうでなければならないと思う。しかるに、過去においてあなた方政府は、これは交換公文だから批准を必要としないのだと言って、ほおかぶりをして通られたじゃないですか。そういう事例が明瞭であります。そのときには違うと言って、今度は違わないと言われる。それが三百代言。そういうことで国会が通るとなめておられますか。
  34. 林修三

    政府委員(林修三君) これは結局その交換公文なり、条約内容の問題と関連しておると思うわけです。交換公文で国会の承認を得なかったというようなものは、これはおそらく行政府同士の、全く行政的な事項についての交換文書であるものについて、そういう取扱いをした例は、これは多々ございます。しかし今度の場合は、かりに交換公文になりましても、これはおそらく条約と不可分の、一体をなすものとして扱われるでございましょうし、当然に国会の承認の対象になるものとわれわれは了解しております。この点については、本条文と何ら差異はないと考えております。
  35. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもそういうことで、文理解釈で時間をとっていたのでは、大事な問題が論議されませんので、これはいずれ正式にやるときに、あらためてやりますが、ただ、それでは内容的にお尋ねをいたしますが、今のような事前協議をすれば、核武装をやらないというようなことが、あるいは日本の都合の悪い場合には領域外出動をやらせないというようなことが、実質上できる、従って拒否権、あるいは同意権ははっきり持っているのだ、はっきり拒否権を行使することができるし、拒否権を行使されるならば、アメリカはそういうことができなくなるのだということが明瞭に約束づけられているかどうか、その点を明示していただきたい。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもといたしましては、協議でありますから、当然協議に当りまして、日本の意思とアメリカの意思とが合致しないことがございます。日本がノーと言う場合、その場合には拒否権があると考えております。
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 問題は、かりに形式的に拒否権があった場合に、拒否すれば、その出動をやめさせる、あるいは核装備をやめさせることができると確言をされますか。
  38. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私はノーと言いました場合には、アメリカが必ずそれに応じてくれる、それ自体が拒否権であるということを考えております。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、核武装についてお尋ねをいたしますが、一九五七年の七月でしたか八月だと思いますが、ソ連で大陸間弾道弾が完成をしたとき、ダレスは核武装による集団防衛構想なるものを新しく組み立てて、しかも日独に核武装をさせる。さらに日独の核工業能力の育成援助をやるということを言明をいたした。そういう言明がある。少くともアメリカ側はそういう気持を持っておる。そういう気持で私は極東の、日本のいろいろな問題を考えておると思うのですが、それは後ほど、もっと戦略論をやるときに詳しくお尋ねをしたいと思いますが、そういう状況のもとにおいても、はっきり核持ち込みを禁止し得るとお考えになりますか。政策としては核持ち込みは絶対に禁止するんだということは総理自身も言っておられる。従って、それならば条約に明記されたらどうですか。総理大臣、どうお考えですか。
  40. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来、安保条約におきまして、御承知通り、全然こういう問題に関して日本側の意思を表明する機会がなかったことは御承知通りであります。私どもはしかしながら、日本基地の使用——日本防衛のため以外に使用する場合、あるいは装備につきまして、特に核兵器の装備というような問題に関して、日本の意思いかんにかかわらずこれが持ち込まれたり、あるいは使用されるということは、従来といえども非常に現行安保条約の欠陥として考えてきたことであります。私はその点に関して、今回の改正において少くともこれを事前に協議して、協議が調わない場合におきましては日本はあくまでも反対をし、アメリカはこれによってそういう行動ができないということにしなければならぬと考えて、これらを協議事項にすることにいたしたのでございます。そうして、核武装のことにつきましては、日本自衛隊自身も核武装はしないし、また外国の軍隊にも核兵器の持ち込みは認めない、というのが私の政治上の考えでございます。そういうことを協議事項にすることによって実現を確保して参りたい、かように思うわけであります。
  41. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも、何ら質問に対する答えになっておりませんが、時間が経過しますので問題を次に移しますが、この条約先ほど申しましたように、日本の施政権下にある地域に限定をされておる。従って、沖縄、小笠原が条約区域に入らないのはもちろんのこと、防衛区域にも入っていないということになります。このように考えていいのかどうか。もしそうだとすると、米比、米台、米韓相互防衛条約では条約区域であり、しかも防衛区域になっておる。他国ではそういうふうになっておるのに、沖繩、小笠原が日本からは全く見捨てられている。潜在主権を持っておるというようなことで、日本の領土であり、日本の国民であるということをごまかしに言っておられたが、今やこれは日本とは無関係であるということがあまりにも明瞭になっておると思うのです。もしそうだとすれば、沖縄、小笠原に対しては、アメリカ侵略をし、アメリカがこれを占領をしておる、しかもアメリカ日本の領土を強奪しておるといって過言でないと思うのでありますが、これらの点をあなた方はどうお考えになりますか。
  42. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約地域の問題につきましては、ずいぶん長い間各方面で論議があった次第でございます。従いましてわれわれもその論議も十分耳にして参ったわけでありますけれども、現在の状況下において沖縄、小笠原を本条約地域に入れない方が適当であろうかというのは大体多くの世論じゃないかと私どもも推察いたしておったわけでありまして、そういう意味におきまして、今回の改定交渉に当りましても、沖縄、小笠原を含まない施政権下にある地域ということが適当であろうかと思います。そのこと自体が沖縄をアメリカが強奪をしあるいは侵略したということは私は言えないのではないかと、こう考えております。
  43. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 総理はどうですか。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在御承知通り、沖縄、小笠原についてはアメリカが一切の施政権を持っております。日本はこの地域に対してはいわゆる潜在主権を持つというに過ぎないのであります。しかしそこに住んでおるものが、住民が日本人であることは今御指摘通りであります。私どもはこの施政権の返還を求めて、そうして完全なる日本の施政権がここに及ぶということを念願をし、それの実現についてはあらゆる機会に努力をいたして参っておるのですが、いまだその目的を達し得ないということは、国民とともに非常に遺憾に考えておることでございます。しこうして、そういう施政権をアメリカが持っております以上は、ここに対する防衛義務アメリカが当然負担をして、そうしてこれの安全を保障すべき私は義務を持っておるものだと考えます。こういう意味において、アメリカにおいてこれを防衛するということにまかすほかに、今日施政権を持たないわれわれとしては、これはいかんともしがたいことであろう、かように考えております。
  45. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私は別な立場から、沖繩、小笠原を条約区域に入れてはならないし、防衛区域であってはならないということは考えます。しかしこれは新しい安保条約そのものが廃棄されなければならない悪いものだという観点に立っておるからそういうことを主張をしておる。そこで、もしそういうふうにあなた方が条約の中に入れないあるいは防衛区域の中に入れないとおっしゃるのならば、これに対して無関心でない、あるいはこれを放棄したものでないとおっしゃるのならば、その理由づけとしては、祖国復帰の要求を強力に主張をされなければならない。返還の要求をされなければならない。あるいは少くとも原水爆基地化になることに対しては反対をし、これを要求をされなければならない。日本の領土はそうでなければならぬと、将来も核武装はいたしませんということを総理は言っておられるのであるから、日本の領土であり、日本の国民であるこれらの土地、国民の願いは考えられなければならないのじゃないか。昨日の七月二日の琉球立法院は次のような決議をいたしております。「原水爆基地化反対。沖縄が原水爆基地化されることは、単に沖繩住民の不幸であるばかりでなく、平和と安全を願う全人類の意思に反する。いかなる理由があるにせよ、沖縄の原水爆基地化に絶対反対する。祖国復帰。過去十五年、沖縄は祖国日本から切離され、アメリカの統治におかれてきた。この措置は沖縄住民の意思に反する。アメリカは国連憲章の「いかなる民族もその意に反して他民族の支配を受けることがない」の精神をすみやかに具現し、沖縄の早期祖国復帰実現を要請する。」これは二、三の人たちが、あるいは少数の人たちが主張をしたのではなくて、琉球立法院が全会一致をもって決議したものであります。このような決議を背景にして、総理外務大臣はこれをどう処置しようとされるのか、私たちがこれまでこの両条項をしばしば要求をしたときに、あなた方は、私たち考えております、いろいろ努力をしておりますということを繰り返し言われたが、具体的にそれではどういう努力をこの問題についてやられたのか、一ぺんも私たちは残念ながらその具体的な努力を聞いたことがない。今度新安保条約をこういう形において結ばれるならば、沖縄、小笠原を絶対に放棄していないという事実を、あなた方のその言い方を、事実をもって、実践をもって示していただかなければ、あなた方の主張なり言明は単なる言いのがれにすぎないということになると思うのですが、総理外務大臣はどうお考えになりますか。
  46. 小林英三

    委員長小林英三君) なお、佐多君に申し上げますが、あなたの持ち時間は終了いたしました。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは最も明瞭な事実は、私が一昨年アメリカをたずねましたとにき、その問題に関して、アイゼンハワー大統領及びダレス国務長官と、私は日本国民のこの要望を実現するために話し合いをいたしたのでございますが、そうしてその際に、アメリカ側が、日本がいわゆる潜在主権を持っておるということに関しては、これをやはり確認をいたしております。しかし現在のこの極東情勢においては、アメリカはこれを日本に施政権を返還することはできない、しかしその間において琉球の住民の福祉とそうして幸福のために努力をするということを認めたわけでございまして、われわれはさらに、一括してこれが返されないとしても、部分的にでもこれがされるようにあるいは戸籍の方の問題や土地に関する争いのありました当時におきましても同様な主張はし、また一部でもこの措置が実現されるという方向に進むことを努力をしてきており、すでにこの戸籍の面やその他におきましては、日本の主張を認めさしてきておる、と、決してこれを切り離すとかあるいはこれに対する日本の主張を放棄するというようなことは絶対にないのみならず、私はさらにこの安保条約改定におきましても、やはり日本側の主張としてこれの条約区域のいかんにかかわらず、これらの地域における従来の日本の主張というものは少しも変っておらないということにつきましては、アメリカ側に十分了承をさしており、また将来これが復帰した場合におきましては、条約区域に当然入ってくるような考え方のもとにこれの交渉をしておるということでございます。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもといたしましても、むろんただいま述べられました総理方針に従いまして、この問題がかりに安保条約の区域に入りません場合でも、これは安保条約の問題とは別個の問題でもありますし、また別個に扱って、常時外交ルートを通じまして、アメリカ側にその意見を申し述べ、また沖繩住民の希望を伝え、そしてわれわれの意欲を示して参ることが必要であることは申すまでもないのであります。そうした努力を私どもとして惜しむわけでは毛頭ございませんし、今後ともできるだけそういう努力を続けて参りたいと考えておる次第でございます。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 時間がありませんので最後に一点だけ。今後の資疑の展開の準備になりますので、特にこの点だけは今国会において御答弁を願いたいと思うのですが、一つは、今の問題に関連をしますので、一体沖繩、小笠原の戦略的な意義をどのようにお考えになっているのか、ここにおける戦力の配備の状況がどういうものであるというふうに認識を持っておられるか、これは防衛庁長官にお尋ねをいたします。さらにもっと一般的に言って、一体アメリカ極東戦略における日本の役割をどのように考えておられるのか、今アメリカではしきりと日本のミサイルの整備、核兵器の処理、小型核兵器の導入というような問題がいろいろ論議されているが、これをどのようにお考えになっているか、伊能防衛庁長官はミサイルの国産、ミサイル部隊を設置しなければならぬ、そういう方向にあるということも言われた、あるいは今井防衛庁次官が先だって渡米をされ、米軍当局と協議をされたというその協議の主題となったものは、防衛庁の第二次防衛力整備計画、一九六〇年から六五年に至る第二次計画であったと言われておる。この計画では、核兵器の進歩に伴う日米共同防衛体制の再整備を目的として云々と書いてある、しかも航空部隊にはナイキ、ボマーク、サイドワインダー等を整備をする、そしてこれは局地核戦争が日本中心にあり得る、それを仮想して日本の今後の防衛力整備計画をやらなければならないということが問題になって、そういう計画が行われ、進められつつあるとアメリカからは伝えられてきております。これらの実情は、あるいは大綱は、方向はどうなっているのか、防衛庁長官に御説明を願っておきたい。
  50. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ただいまアメリカ側の情報として御指摘がありましたが、今井次官あるいは防衛庁内におきまして御指摘のような計画は持っておりません。今第二次防衛計画は策定検討中でありますが、戦闘機等におきまして、有人機にかわるミサイルの研究開発ということの検討はいたしておりますが、核兵器によって武装するとか、あるいはアメリカと核兵器の問題で共同の武装、あるいは作戦方法をとる、こういうことは全然今のところ考えておりません。    〔「関連質問」と呼ぶ者あり〕
  51. 小林英三

    委員長小林英三君) 千田正君(「ちょっと答弁残しておる」「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  52. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 沖縄の戦略基地、戦略体制ということにつきましては、これはアメリカ軍のことでありますので、よく承知しておりませんが、海軍あるいは飛行機の基地として非常に重要な地位を占めておる。今核兵器の持ち込みはしてない、こういうふうに聞いております。
  53. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ただいまの最後の言明は、私言明として、しかと記憶をいたしておきますから、今後問題にいたします。
  54. 小林英三

    委員長小林英三君) 佐多君の資疑は終了いたしました。(「関連質問」と呼ぶ者あり)次に千田正君。(亀田得治君「関連質問出ているじゃないか、一つくらい許せよ、さっきから言っているんだ」と述ぶ)
  55. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは鈴木強君に一問許します。
  56. 鈴木強

    ○鈴木強君 議事進行について一言委員長にお願いしておきます。われわれは従来の慣習として委員質疑に対して関連的に質問は許されておりました。われわれは議事進行上質問者の終了するまではじっと聞いておって、なおかつ不明確の場合にはお聞きしようと思いまして私は手をあげたのです。委員長はさっきのあいさつにもありましたように、できるだけ公平にやるということでありますが、私は絶対にこれは公平にやってもらいたいと思いますし、議事進行についてはそういう配意をしていただいて、一つ認めていただきたいと思います。  それでこの安保条約改定の問題は今国民の一大関心事になっておるわけであります。この論争は長いこと国会でやって参りましたが、もうすでに改定するという最終的な結論に到達したような状態において、一年も前のような不明確な答弁をされておる。私は特に今の質疑を聞いておりまして非常に重大な問題は、核兵器の持ち込み、日本のいわゆる装備の問題、それと海外派兵の問題等、きわめて重要な問題がすべてお聞きしますと協議事項に移されているような状況にある。われわれはこの点についてはできるだけ条約の中に明確にして、少くともこういう場合とこういう場合は海外派兵はかりにあり得るとするならばする、その他の場合については断じてやらない。核兵器については断じて持たない、こういう明確な改定をしていただきたいというのが国民の念願だと私は思います。日米間の力関係におい協議するということにもし移されたとするならば、やはり今藤山外務大臣は非常に自信のある御答弁をなされております。ノーと言えばこれはできるのだ、こういうお話でありますから、そうであるならばどうして本条約改定の中にこれが入らないのか。アメリカの力によって押しまくられてどうも言えないというなら、そのことをはっきり国会を通じて国民に言っていただきたい。藤山外務大臣お話ですと、そういうときにはやれるんだということでありますから、どうしてその点が本条約改定の中に入らないのですか。できないとすればどういう理由なのか、これだけは一つ明確にぜひ私はしていただきたいと思います。特に核兵器の問題につきましては、岸総理大臣の強い御信念として政治的に絶対に持ち込ませない、こういうことを何回も言っておられますが、前予算委員会質疑の中では、憲法上はこれを否定できない、否定していない、現在の憲法は。そういうところまではっきり言われておりますので、ますますわれわれ国民としては今度の改定の中でこの核兵器の問題については明確にしていただきたいというのが念願であります。だからこれらの問題について岸総理と藤山外務大臣の私は御所見を国民の立場に立って一つ伺っておきたいと思います。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 海外派兵という言葉がございましたが、これはもちろんいわゆる問題になっておる日本自衛隊の海外派兵という問題ではなかろうかと思います。要するに基地にいる米軍が日本以外に出動するというような場合である。それから装備、配備についての重要事項については今回協議事項にするということにしたいといこうとを私は申し上げておるのであります。その点に関しての今の御意見並びに御質問でございますが、御承知のように現在は全然そういうことについて現在の安保条約のもとにおきましては根拠がないのでございます。従ってそういう核兵器の持ち込みは認めないのだという議論なり声明を私がいたしましても、一体条約上それはどこに根拠があるのだ、今岸総理がそう言っておっても、それよりも意思を無視して入れるということは現行安保条約においては一方的にできるのじゃないかという……この安保条約についてはできるのじゃないかという議論が従来行われてきたのであります。私はその不安を除くためには少くとも事前に日本の意思を聞き、日本がこれを拒否できる、私が言明をいたしておるように。私はあくまでも核武装もしないし、核兵器の持ち込みは認めないということを声明しており、それを裏づけることができるような条約上の根拠を協議において実況しよう、(「拒否権はあるのか」と呼ぶ者あり)もちろん私は拒否権はあると思います。ただ事前通告ということとは違うのでありまして、協議をするという、外務大臣が申しておるように、協議の場合において協議が調わないといえば、イエスという場合もあるだろうし、ノーという場合もあるということを申しておる、それが拒否権であると思います。従ってその場合にあるいはこちらがノーと言っても持ってきたらどうするのだという議論が昨日の国会で、衆議院でありましたが、私は条約を両国は誠実に守るという、この信頼の上に立っておるわけでございまして、条約違反ということが行われるのだということを前提とは考えないのであります。こういう意味において協議にすることによって私の従来からの主張を貫きたい、こう考えているわけであります。
  58. 鈴木強

    ○鈴木強君 それでは一点だけにしぼりますが、ノーという場合にはこれは持ち込めないというならば、ただ単に条約のうちに、あるいはあなたの方ではどうするか知りませんが、そういう文句を書くとしますね。その場合に日本が協議が調わない場合ですね。協議が成立しない場合にはこれはやらないのだということが入るのですか。そうすれば拒否権の点がある程度明確になりますけれども、ただ単にこういう場合に協議するということであれば、これはもう実際問題として、戦いがかりに不幸にして始まったという場合に、日本が多少いやだと言っても強引に出てこいということになってしまって、いわゆる力関係に押しまくられてしまう危険性が出てくると思う。だからそういう点を日本がはっきりと拒否権を持つことができるのだということになればいいと思うのですね。もしかりにそういう協議があったとしてもそういうことが入るのですか。協議するだけですか。
  59. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は従来の条約や、こういう交換公文等において事前協議ということの用語は、これは協議が調わないときにおいては成立しないことであると考えております。それでは具体的にどういうふうに用語として書くかという問題に関しましては、なお条約の従来の文句もございましょうし、十分研究を要する点もあろうかと思いますが、私どもはさように考えて、協議事項として考えているということを明瞭に申し上げておきます。
  60. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは、(亀田得治君「関連質問」と述ぶ)それは関連質問の関連質問だから、次の機会に一つお願いします。(亀田得治君「委員長、そんな、許せよ、疑問が出ているのだから」と述ぶ)次の機会に……。(鈴木強君「少し強引ですよ。そんなことは認めなさいよ。今まで木暮委員長にしても、泉山委員長にしても、非常にそういう点は(発言する者多し)委員長、それは横暴ですよ。もう少し議事運営を公平にやって下さい」と述ぶ)いや、私は鈴木君に申し上げますが、鈴木君は関連質問でありますから発言を許可したわけです。亀田君のは鈴木君の関連質問に対するさらに関連質問だから……(亀田得治君「いや、佐多君に対する関連なんです」と述ぶ)時間に制限がありますから、それは次の機会に願います。(鈴木強君「疑問があることは許しなさいよ。大事なことじゃないですか」と述べ、亀田得治君「佐多君に対する関連質問なんですよ。大事なことは許しなさいよ」と述べその他発言する者多し)ただいま亀田君から、関連質問ということで御質問がありましたが委員長は、鈴木君の関連質問として御遠慮願ったわけでありますが、今聞きますというと、佐多君に対する関連質問ということでありますから、そこで一問だけ質問を許します。
  61. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほど佐多委員から、協議事項の問題について、総理並びに外務大臣に質問がありましたが、両方から答弁があったわけですが、実際の直接アメリカ側交渉されておるのは外務大臣で、お二人の答弁を聞いておると、多少私はニュアンスを感ずる。非常に大事なところです。協議をして、そして日本側が断わる。その場合に、アメリカは押し切ってやれないと私は思う——こういうふうにあなたははっきり「私は思う。」と、そう加えられた。岸総理の方は、もう少しその点が、少し強くおっしゃっておる。おそらく、アメリカ側と直接交渉されておる外務大臣が感じ、その点を強く実は見なきゃならぬと考えておる。これはだれでも疑問を持っておる。が、私の質問、まあ一点だけですから、同時に申し上げますがね、これは文理的に解釈しても、協議事項というものは、協議なんです。それは協議であっても、その問題によって、それが広くも狭くも、多少ほかの意味も含めて解釈をできるような場合もあります。しかし、協議自体と、こう出てきた場合には、あくまでもこれは協議なんです。あくまでも承認事項とは違う。だから、この点も、みんなが疑問を差しはさんでいる最大の理由です。皆さんの答弁にそれが現われておるし、言葉自体にもこれは疑問を持つ根拠がある。そこで、質問でございますがね、一体、外務大臣が何べんもマッカーサー大使などと会って、この点は何回もこれを突っ込んだ検討をおやりになっていると思う。で、われわれ国会なり、日本側でもこれだけ問題になっているのですから、これをどういうふうに解釈するかということは、何回もおやりになっていると思う。ところが、あなたの品からは、どこで聞いたって、「私は思う。」ということなんです。日本側が断わったらそれはできないんですということを、一体マッカーサー大使があなたにはっきり言っておるですか、言っておらぬのですか、その点だけをはっきり言って下さい。ほかの説明は要りませんよ。あなたと同じ解釈であるということをマッカーサー大使があなたにおっしゃったことがあるのか、ないのか。おっしゃったとすれば、それは何回の交渉の際にそういう点がはっきりされておるのか、それを一つ明確にしてほしい。私は一回でございますから、それを基礎にしていずれまたあらためてお伺いをしたい。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議でありますから、協議が調わない場合に——日本がノーと言った場合、この問題に対しましてですね、ノーと言った場合に、協議が調わない。それをアメリカ側がやることは、条約に違反することだというのです。協議事項であるから、従って私は、拒否権がありますし、アメリカ側もそう理解しておると思います。
  63. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、やはり答弁が違うでしょう。私の間に対する答えじゃない。マッカーサーがそう言うておるかということを私は聞いておる。はっきり言いなさい。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その通りマッカーサーも考えております。
  65. 亀田得治

    ○亀田得治君 いつの交渉の際に、そういうことを言明されたのですか。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この交渉は、初めから協議の問題について話し合いをしております。ですから、いつとは申し上げかねますけれども、もちろん、協議であります以上、そういう前提の上に立って話し合いをいたしておるのでありまして、マッカーサー大使もそれは承知いたしております。   —————————————
  67. 千田正

    ○千田正君 このたびの第三十二回の国会は、参議院の選挙の後に、いわゆる参議院の構成を中心としまして開催されておりますところの国会でありますので、この参議院の選挙を通じまして、あるいはその前に行われた地方選挙を通じまして、日本の国民の考え方並びに政府あるいは政党の考え方に非常にズレが来ておるという世論が強く行われておる点につきまして、私は、この際、自民党の総裁として、かつまた内閣の首班としまして、はっきり今後の政治の行き方に対して、お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず第一に、本年は選挙の年だと称せられて、地方選挙が次から次に行われました。その結果、新聞等によって発表されますところを見まするというと、非常に選挙違反が出ておる。六月二日現在におきましても、地方選挙の行われた後に摘発された件数は二万五千百七十八件、四万四千七百三十八人という膨大なる選挙違反が摘発されておるのであります。前回に比べまして、件数においては三割二分の増加、人員においては四割の増加、このように選挙違反が次から次へと出てくるということは、これは非常に日本の民主政治に対する国民の感覚が薄れてきておるのじゃないか、あるいは政治、政党に対するところの信頼の度が非常に薄れてきておるのじゃないかという点を、私は深く憂えるのでありまして、特に、このたびの参議院の選挙の結果現われて参りましたところの投票の数は、わずかに五八%という、かつてない選挙の結果であります。そうして、棄権者の数は実に二千二百万人。私はこのことを見まして、それをさらに将来の日本の国民の生活並びに政治の上に反映することを考えますると、まことにはだえにアワを生ぜざるを得ないのでありまして、総理は常に、われわれ国民に対して、民主政治の確立のためには二大政党が理想である、同時に、民主主義の確立のためにはきれいな選挙をやろう、公明な選挙をやらなければならないとーー御承知通り、昭和二十七年以来公明選挙をうたい、かつまた政府もそれに対して一億円の支出をして、各地方自治団体その他の手を通じて、全国民に向ってこの公明選挙をうたい、そのPR運動を続けてきておるのであります。ところが、残念ながら、本年の選挙の結果を見るというと、決してきれいな選挙ではない。どこからもきれいな選挙が行われたという報告をわれわれは聞いたこともないし、新聞紙上、あるいはラジオやテレビを通じましても、今度の選挙はまことに国民の期待を裏切った選挙であるという声が非常に強い。これに対して、一大政党の総裁であり、政府の最高責任者でありますところの総理大臣は、今後日本民主政治の確立のために、また国民の信頼をつなぐためにはどういう所信をもって対処していかれるかということを、この際明確にお答えを願いたいと思うのであります。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 民主政治の確立のために、公明にしてきれいな選挙が行われることを確保していかなければならんということは、これは私だけでなしに、国民がひとしく願っておるところでありましょうにもかかわらず、いろいろ選挙に際して選挙違反、それも相当悪質の選挙違反がなお跡を絶たないということは、私は非常に遺憾だと考えます。もちろん、私は民主政治の本体である、中核である国会政治というものをりっぱに完成していくためには、二大政党が適当であるという考えを、従来からいだいておるものでございます。しかし、現在の自由民主党やあるいは社会党が、私が考えておる二大政党としてすべて望ましい形であるとは、これは断言できないのでありまして、両政党とも、選挙を通じて国民の批判に対して謙虚に反省をして、そして努力をしていかなければならんと思います。しかし、選挙の問題を取り上げて考えてみますというと、私は今回の選挙、地方また参議院の通常選挙を通じてわれわれが経験したこと、またいろいろな選挙違反の事実等が、これは法に違反し、選挙違反があります以上は、厳正にこれを検挙して、そうしてこれに対して将来を戒めるような処置をとらなければならんことは、言うを待ちません。この選挙法自体をさらにそういう体験に基き、将来の公明な選挙を確保するためにどういうふうに、あるいは制度の上においてあるいは運営の上においてこれを改善し、改正していくことが適当であるかどうかということについて、各方面の有識者を集めて、一つ根本的に検討して、何とか公明な選挙を確保するような方向に向って、われわれの努力を実現していきたい、かように今考えてる次第でございます。
  69. 千田正

    ○千田正君 ただいま首相は現われてきた結果、いわゆる選挙違反、その他いわゆる選挙法の改正、いろいろの点について所信を述べられましたが、実は現実の問題としまして、本日も社会党羽生議員がこの参議院の運営の点について、まことに警告に値すべき、またわれわれとして主張しなければならない参議院の立場を主張しておられましたが、あなたは自由民主党の総裁として、特に今申されたような所信を持っておられるとするならば、おそらく参議院の運営というものに対しましても、憲法上あるいは国会法上に置かれたところの二院制度の自主性というもの、参議院の尊厳というもの、こういうものに対しても、あなたの政党に対しての十分なる指導なり、抑制を働かすべきではないか、私はそう思うのであります。たとえば議長、副議長の党籍離脱の問題、あるいは常任委員長の問題等、過去のよい慣習が、大多数を得たからというて、次から次へと破れていく、こわされていく。その結果、あなたが企図しておるような公明選挙への道、あるいは民主主義への理想の道というものが、この国会の運営の場においてすでにくずされていくということを現実に見ましたとき、私はあなたのお考えになっておることは非常なけっこうなことであるが、足元からくずれていくのじゃないか、こういうようなことを、国民の一人として悲しむものでありまして、参議院としてなさなければならない機能、そして置かれたところの厳粛なる憲法下におけるところの参議院の運営に対して、総理大臣並びに一党の総裁としての岸首相のお考えを、さらに明確にお伺いしたいと思うのであります。
  70. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二院制度のもとにおける参議院というものの使命を考えてみまするというと、これはいろいろな点において現在の参議院のあり方についてわれわれも反省をし、考えていかなければならぬ問題が幾多あると思います。  本日羽生議員の御意見も、私はそういう意味において傾聴をしたのでございます。ただ選挙によって、一般的選挙によって議員が選ばれるということでありますというと、二大政党下においての選挙である以上、どうしてもこの政党に属した議員が衆議院と参議院おのおのに選び出されるということは、当然であろうと思います。政党も漸次組織化されて、地方にそれぞれの組織を持ち、その組織を通じて選挙運動が行われていくという形から申しますというと、いわゆる参議院が政党化すということについても、参議院の使命から見ていろいろな批判があり、われわれも考えなければならない点もございますが、私は選挙制度で議員が選ばれる以上、二大政党の力がだんだんでき、組織が地方的に完備してくるというと、それを中心に出てくる議員が多数を占めるという現実を否認できないと思います。しかしながら、そういう形においてこれが衆議院と同様な政党活動をそのままにやるとするならば、両院制度の意義はなくなるわけであります。また、それがかりに衆議院で多数党をもっておるものが参議院では少数党であったというようなことであるというと、また政党活動だけで考えるというと、実際政治が連行できないという結果も予想できるのであります。そういう意味から申しますと、参議院はできるだけその自主性を認めて、参議院におけるところの両院制度というものの本義に徹して運営もされ、あるいは議事が行われていくということが望ましいと私は思います。社会党も多分そうであると思いますが、自由民主党におきましても、そういう意味において、実はいろいろな政党として統一した行動をすべきことはございますけれども、参議院におけるところの議事運営やその他政策的な考え方ということにつきましても、やはり党が政調会を持ち、あるいは議会運営の委員長等の委員を持っておりますが、参議院にはやはり独立したそういうものを持って、できるだけ参議院の自主性と独自な立場から、参議院の両院制度というものの真義を生かしていくように持っていかなければならない。かように考慮いたしておるのでございます。いろいろなこの問題に対しまして今おあげになりました議長、副議長の党籍離脱の問題に関しましては、昨年私が鈴木委員長と話し合って、そうして衆議院はその話し合い通り実現し、参議院においてもそれが同様趣旨において実現されることが、両党首とも望ましい。しかし同時に参議院には参議院の特殊の考えがあるからして、ただこの二人のここの申し合せでもって、その通りを参議院に実現するということについては、これはやはり参議院の立場考えなければならないという意味において、参議院の自主性というものについての保留をいたしたのも、実はそういう意味であったのでございます。しかし、私は決してわれわれが多数党を取ったからどうする、高姿勢ですべてのものをわれわれの思う通りにするというような考えは、そういう意味において持っておりません。ただ私は、従来非常に実は残念に思っておりますことは、どうも国会が衆議院といわず、参議院といわず、本来の法律案やあるいは議案そのものについての意見が衝突し、あるいは意見についての論議が時間的に非常に長くかかり、また、その議論を尽す上においていろいろな不十分な点があるから、会期の延長をするとかどうとかいうような問題、つまり議案そのものについての内容的の審査については、私は各人が言論の自由によってできるだけ言論を尽してもらいたい。ただ、議会運営の面からいって、あるいはその委員会等の運営の面から、政党の間に意見を異にして争うというような事態のために、せっかくの審議ができないというような結果が従来起っておったことは、非常に遺憾だと思います。その結果、あるいは中間報告をとって、どうかしてその案を成立させたいというような関係から、そういうような事態が出てきたことも遺憾であると思います。なるべくそういうことのないように、しかも、論議については十分に尽していくというふうな体制を確立することが望ましい。こういうふうに私は従来とも考えてきておるのであります。参議院のあり方についての両院制度の問題、また国会運営の問題については、そういうような考えでおります。
  71. 千田正

    ○千田正君 私は首相に特に要望しておりますのは、政党あっての国民じゃなくて、国民あっての政党であるということ、政党だけが日本のことを考えているのじゃないということを、十分一つ考えていただきたいということを特に要望いたします。  そこで、時間もありませんから一、二点だけきわめて簡単にお尋ねいたしますが、お答えは十分いただきたいと思います。一つは、今度この十一日に、総理は海外に旅行される、先般も本会議で御声明になられたようでありますが、旅行の目的はいろいろあるでしょうが、親善その他たくさんあるでしょうが、最大の首相としての目標は、何に置いてあられるかということを一つお答え願いたい。  それからそれとは全然違った点でありますが、時間がないのではなはだあれですけれども、最近犯罪が非常にふえておる。ことに青少年、ハイ・ティーンからロー・ティーンに向って末広がりの状況のもとに犯罪がふえてきておる。この犯罪に対する防止の方法は、いろいろあるでしょうが、ことに凶悪犯罪が野放しになっているという感じも、深く国民に与えております。そういう問題についての今後の対処方針等をこの際承わっておきたいと思います。  それから外務大臣にもう一点、これは最近の例の北鮮帰還の問題をめぐりまして、また李承晩ラインの問題等が錯綜して参りまして、先般九州のまき網協会の会長で、自民党の代議士さんが会長になっておるところのこのまき網協会が武装した船を李承晩ラインに持っていって、自分らの操業権を守るんだ。どうしても政府は頼りにならない。何とかしてわれわれの力で、韓国政府が暴力を持ってきたならば、われわれもそれに対して暴力をもって戦っていくんだ。こういうもとに実行しようという計画が新聞等において出ております。これは非常に重大な問題でありますので、将来の日韓問題あるいは北鮮帰還の問題を眼のあたりにしてこの問題の解決にも当らなくちゃならない外務大臣としてのこれに対する方針についてお伺いしておきたい。  この三点だけ首相並びに外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私十一日に出まして、一ヵ月ヨーロッパ及び中南米の諸国を回るという計画を発表してこれを実行したいと思っております。最近、これらの国々との友好関係から諸国の総理その他の要路の人々が日本をたずねてきた連中も少くないし、またその意味において日本総理もぜひたずねるようにという招待も従来受けておるのでございます。しかし、私は今回決意をいたしましたのは、ヨーロッパ諸国においては、特にイギリスを中心としてイギリスの首脳部と国際情勢について隔意のない話し合いをし、そうして正確に最近の国際情勢の動向についての認識を深め、同時にお互いが世界平和のために協力してゆく道を見出すところの話し合いをしたいというのが主眼でございます。同時に、ヨーロッパにおきましては、御承知のようにヨーロッパ共同市場の問題がございまして、経済的にも政治的にも、ヨーロッパ大陸におけるところのいろいろな動きがございます。これに対応して、日本の将来の経済的活動の上におきましても、われわれは非常に考えなきゃならない幾多の問題がございます。こういうことについての実情を正確に把握し、一国の首脳がそれらの問題に関してどういう意図を持っておるかというようなことについても隔意なき話をしてみたい、こう思っております。  中南米諸国におきましては、御承知通り、すでにたくさんの日本人の移民が多年これらの地において非常な活動をいたしており、その国の繁栄のために協力をしておる。また、それに対してこれらの国々の人が非常な感謝と期待を持っておる。また同時に、これらの国々はまだいわゆる経済的に見ましても開発がおくれておる地域でございますので、しかも、将来性を持っておる地域でございます。これらに対する日本人の過去における移民の諸君の活動状況を見、その将来について考えると同時に、これらの国々における貿易あるいは経済協力の道を一つ具体的に見出して、そうしてこれらの国々との関係を一そう緊密にし、日本人自体の将来の発展にも資していきたい、かように考えております。  凶悪犯罪のふえたこと、ことに青少年の問題、また、最近におきましてはハイ・ティーンではなしにロー・ティーンの連中が、そういうような凶悪犯罪にも関係を持っておるという事態があちこちに出てきたことは、私もまことに憂慮にたえないところでございます。これは一方においてはやはり学校、家庭、職場を通じてこれらの青少年の諸君がそういうふうなことに陥らないような環境を作ることが、これは私は非常に必要だと思います。そういうことを考えると同時に、現在そういうよりもさらに一歩進んで、すでにそういうことの一歩手前の状況の連中も町に相当あるのが現状でございます。従ってそういう者に対していわゆる補導のことを、従来もやっておりますが、一そう強化して、学校及び職場や家庭と連絡をとってこれらの者の補導についても、これを一そう強化して参りたい、かように思っております。同時にこういう犯罪がいろいろな出版物やあるいは映画、テレビ等に刺激されておるところも私は少くないと思う。これらについても、そういう方面に関係のある人々の注意を喚起して、これらの青少年を守っていきたい、こういうような点をいろいろと考えておりますが、何分にもこの問題は、原因が多岐であり、結局禍根は社会にあるとでもいわなければならぬ状態でございますから、そういう点についても私は一そう一つ留意していきたい、かように思っております。
  73. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まき網業者の団体が自衛的な方法をとるというような決議をされたこと等は新聞紙上で知りましたが、その後、代表の方々がおいでになりまして、そうしてその決議並びに陳情というものをお伺いいたしたわけであります。今日、日韓間の問題として日本の漁船の拿捕、不法拿捕ということはまことに遺憾な事実でありまして、これらに対する十分な政府として警戒と手当をいたさなければならぬことはむろんであります。そういう点について、引き続き拿捕が行われておりますので、まき網業者の方方としては、たまりかねて自衛的な手段をとろうというような御決議をされたことと思います。その際私は、皆さん方のそういう立場に対しては、われわれも十分理解をいたしますから、関係官庁と連絡をいたしまして、皆さん方の御希望は十分お伝えしまして、ただし、御決議のような点は、やはり将来の日韓の間の交渉というものにも関係いたしてきますので、自衛的に皆さん方が武装するというような問題については、よほど慎重に考慮をしていただかなければ適当ではないのではないか、それだけまた、政府が一方では皆さん方の保護、その他につきまして十分な政治をする必要があるだろうということを申し上げまして、皆さん方がなるべくそういう行動に出ないように、同時にまた、出ないためには、政府としても、十分私ども関係官庁と連絡をしながら、そういうことについて万全の対策を講じていきたいということを申し上げたのでありまして、大体私としてはそういうふうに考え、また、そういうふうに申し上げた次第であります。
  74. 千田正

    ○千田正君 藤山外相にもう一点お伺いしたいのは、そういう問題が朝鮮半島と日本との間のあの漁場に行われておる。それで私は、一方、広く目を転じまして、昨年の八月以降、日中間において結ばれておった民間のいわゆる漁業協約というようなものを再開して、そういう危険な場所でやれなかったならば、歓迎しておるような場所で漁獲をやるような転換方法も一つ考える必要があるんじゃないか。いろいろな面においてなかなか岸内閣としては日中貿易の再開、あるいはその他の問題についてはちゅうちょ逡巡されておるようでありますが、現実の日中間の漁業問題等に対しては、私はそう忌避する必要はないから、むしろ李承晩ライン等において危険を冒してまでやるよりも、話し合いで漁獲のできる漁場においてはどんどん進めるべきじゃないかと思いますが、藤山外相としてのお考えはどうでありますか、お伺いしておきたいと思います。
  75. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 漁業に関する日本と中共との民間協定というものは円満に行われておったわけでございまして、それが昨年ああいう事態のもとに断絶されましたことは、われわれも遺憾だと思っております。むろん日本と中共とのこの種の漁業協定によりまして、日本の漁業者の漁撈の便宜をはかっていきますことは当然やらなければならぬことであります。このこと自体が日中関係の全般にも関係いたしております。従って、われわれといたしましては、できるだけ日中貿易の再開、その他そういう問題についても、本年春以来の議会に申し上げておりますように、われわれとしても時期が参ったときには、積極的にそれらのものを打開するという方針考えでおるわけでございます。
  76. 小林英三

    委員長小林英三君) 千田君の質疑  は終了いたしました。   —————————————
  77. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は杉山昌作君。
  78. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 私は、自由民主党社会党とのいわゆる二大政党の対立下における政治の運営について首相の所見を承わりたいと思ったのですが、ただいま千田君の御質問の中に私の伺いたい点もありましたので、それらは省略いたしまして、重複しない点だけ、しかもこれが重要な点と思いますので、お伺いいたしたいと存じます。先年、左と右の社会党が統一された、続いて自由党と民主党が合同されたということで、いわゆる二大政党の対立というふうなことがあたかも民主政治のキャッチフレーズのごとくに言われた。そのために、ごく短かい間に二大政党対立ということが、実はわれわれとしては好んでいないような方面にまでもすっかり行きわたっている。たとえば政党の対立というふうなことは、これは中央政治、特に衆議院の段階においてこそあってしかるべきだが、参議院ではそういうものがない方がほんとうだというふうにわれわれは考えているのですが、その参議院におきましても、先ほどお話があったような二大政党対立だと、それから参議院というのは中央政治でない、地方の政治、府県、市町村、特に市町村というような、国民のほんとうの日常の、学校の問題だ、下水の問題だというようなことをやるので、政策が保守だの、進歩だのと全然関係のない、ほんとうに国民の日常生活のお世話をするということがその本務でなければならないところにおいても、やはりそこの長、あるいは議員の諸君がそれぞれ自民党である、あるいは社会党であるというふうに色分けをする。色分けされた結果は、選挙においても非常に熾烈な競争が行われるのみでなく、その後の各般のことが政争に類したようなことが行われる。非常に地方の自治の円滑な運行を私は害しているとまで思うのですが、それほどまでにいわゆる二大政党の対立ということが今日常識といいましょうか、なっている。そこで、一体、岸首相は、自由民主党の総裁としてもこの二大政党の対立下における政治の運営ということは、一体どういうふうに御理解なさっているのか。われわれ初めに二大政党対立の政治というふうなことを聞いたときには、今のというか、イギリスあたりの保守党と労働党との政党の対立、あのやり方が民主政治の運営として一番いいんだというふうに理解をし、また、そういうふうなことを考えてきたわけですが、岸首相としてはやはりそういうふうなお考えでこの二大政党対立下における運営をされていこう、あるいはやってきたということでございましょうか。まずそれを初めに承わりたいと思います。
  79. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二大政党が国会政治を運営していく上において私は望ましい形だと従来も考えてきておりますし、今日もそう思っておるのであります。しかし、それが直ちに現在の日本におけるところの自民党と社会党との対立の形においてこれが理想的な状態であり、望ましい状態にきているのだと、こうは私は考えておりません。私の念願は、やはりイギリスにおけるところの国会政治の長い間の歴史を持っており、また、日本のこの憲法の制定なり、あるいは国会政治の上において模範になっておりますこのイギリスの制度というようなものを考えてみまするというと、何とかしてイギリスの保守党と労働党というような形にまでこの二大政党が発達していき、育て上っていかなければならない、また、育て上げていくように自分も努力しなければならない、かように考えておるわけでございます。
  80. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 私がひそかに心配をしておると同じようなことをやはり岸首相もお考えのようでして、私も実は同感なのであります。われわれが初めに二大政党を考えたときには、お示しの通りにイギリスのような例というようなことだった。しかし、現実のわが国の自由民主党社会党とはもうそうなっていないのです。第一に両党の力は伯仲していないのです。二大政党の運営をやろうと思えば政権を交互に取るということでございましょうから、力がまず伯仲していなければならない。そして片方が少しでも油断をし、片方が少しでも勉強をするということがあれば取ってかわるということでなければならないのでございますが、今日では十と五というような力の関係であります。また、その考え方におきましても、先般来国会の議論を拝聴しておりましても、日本を一体どう持っていくのだという非常に重要な問題につきまして平行線とまでは申し上げかねますけれども、非常に隔たりのあるようにわれわれは間にいて拝聴しております。従って、こういうところにおきましていわゆる二大政党対立ということはこれはむしろ破滅を来たすのではないか。極端な言い方をすれば、両方の政党が交互に政権を取るというやり方でなしに、一方の政党が他方の政党を折伏してしまうということにまでいかなければ解決がつかないのじゃないか。これは非常に私は最近気づかっておりますが、しかし、これは国会内におきますいろいろなやり方、先ほど千田君からもお話がありましたし、また、午前の本会議では羽生君からもお話がありましたが、そういう国会内の問題だけではなしに、国会外におきましてもあらゆる問題、特に日本で一番その中心になるような日本外交路線はどうするのだとか、自衛力を増強するとかしないとか、あるいは次代をになう国民の教化訓育をどういうふうな方向で持っていくか、あるいは日本の経済を振興させる一番中心である生産性の増強をどうするのだというような非常に重要な問題におきまして、やはり世間におきましてもほとんど正反対のことが言われ、また、それがいろんな形で示されているのです。一方が右と言えばすぐ左と言うような風潮さえも現われておるような状態であります。結局これは私は、ただいま岸首相も御心配のようでありましたいわゆる二大政党の対立ということがイギリスのようなことになっていない日本で、あまり二大政党の対立ということを考え過ぎているのじゃないか。従って、これは対立でなく対決なんだというふうなことにまでなっていることが、こういうふうなことになってきているのじゃないかと思います。これにつきましては、自由民主党の総裁である岸総理だけに私は申し上げるのではなく、やはり社会党の方でもそういうようなことをお考えいただかなければならないと思いますけれども、しかし、現に多数党であり、また、政府を持っておられる岸首相といたしましては、十分に一つこれをお考え願いたい。ところが、今日までのところを拝見いたしておりますと、先年アメリカから帰るときに非常な勢いで社会党と対決するのだという言葉をハワイでおっしゃったと伝えられている。また、今度の選挙後におきます国会の運営についての問題も、先ほど千田君が言われたようなことが何か非常に対決するのだ、勝った勢いで相手を折伏せざればやまぬというような意気込みであるやにわれわれは印象つけられておりますので、そういうことになるのは、ほんとうの二大政党対立下の政治を円滑にやっていくゆえんでないと思います。先ほどの話でよくわかりましたが、今後もわれわれはそういうふうなことで、やはり第一党であり、政府を持っているのでございますから、一段の御留意を願いたいと思います。その他の点も実はありましたが、千田君のお話で、私の質問は半分終っておりますので、私はこれだけで終りといたします。
  81. 小林英三

    委員長小林英三君) 杉山君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  82. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は岩間正男君。
  83. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表いたしまして、ただいま問題になっております安保改定をめぐる二、三の問題について質問したいと思うのです。  第一に、この安保改定につきましてこれの必要だというのは、他国侵略から日本を守るためだということをしばしば首相も外相も言われているのでありますが、今世界情勢を見まして、ことにアジアの情勢の中で、かような一体この条件があるのかどうか、侵略すると言いますが、一体だれが侵略するのか。この前の本会議におきまして自民党の大谷君はソビエトあるいは中共が侵略するのだ、こういうことを盛んに言ったのでありますが、そういうふうに外相やあるいは首相は考えておられるのかどうか、この侵略問題をまず明らかにしてほしいと思うのです。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日、国際情勢の中におきまして世界の人がみな平和を念願していることはむろんでございますけれども、今日の時代必ずしもまだ世界の全域にわたりまして紛争がないわけではございませんし、それが武力による侵略の形態をとっているような形に見えるところもございます。従って、日本の国民の将来の安全というものをになって参りますわれわれといたしましては、できるだけそうした場合のあったときの対策を考えておきますことも必要であろうと考えている次第でございます。
  85. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 具体的に今どこが日本侵略するかというようなことにつきましては、これはわれわれの申し上げるべきことではない。われわれはやはり日本国民、また日本国土の安全、他から侵略されないという態勢をとるためにおきましては、世界国際情勢から見て、やはり日本もそれだけの備えをしておくことが必要である、これが自衛の本義であり、また安全保障の本義であると、かように思っております。
  86. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は具体的に大谷君の例をあげまして、そういうふうに同じ自民党として考えておられるのか、たとえば中国やソ連が侵略する危険があると、こういうふうに言ったわけですが、こういう点はどうですか。
  87. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いろいろの見方があるだろうと思います。現に日本を取り巻いている諸地域におけるいろいろの兵力の配備等から、あるいはそういうふうな想像をする向きもあろうと思いますが、政府として安全保障を考えておるなににつきましては、そういう具体的なことを前提としているのではないということを申し上げておきます。
  88. 岩間正男

    ○岩間正男君 そのような具体的な問題でなくて、抽象的な問題で安保条約を作り、さらにこれを改正するということになると、これは重大問題だと思うのです。昨日の衆議院の予算委員会で、加藤勘十氏の質問に対して、総理は、中ソの侵略という事実は、これは今考えられない。しかし、間接侵略、冷戦というようなものがある。こういうものに対しても備えなくちゃならぬということを答えられたのでありますけれども、やはり今度の安保改定の問題をめぐって、このようなことがはっきり一つ理由になっているのですか、どうですか。この点明らかにしていただきたいと思います。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は従来安保条約現行安保条約の問題に関して、社会党の方々やあるいは共産党の諸君とも見解を異にするのではないかと思いますが、現在の安保条約日本の戦後今日まで十年近くの間において、日本が、国民が平和的に、他から安全を脅かされることなしに、日本の復興を遂げてきたことについて、安保条約というものが相当の貢献をしたものであるという前提に立っているのでございます。従ってそういう前提から見て、現行安保条約というものを廃棄しろという考え方には私どもは賛成をしないのであります。しかも、現行安保条約が持っている幾多の欠陥というものを合理的に改めることは、日本国民の多数の要望であると、これを実現したいというのが安保改定のわれわれの念願でございます。
  90. 岩間正男

    ○岩間正男君 私の質問に対して答えていただきたいのですが、私は昨日の加藤勘十氏の質問に対する答弁で、今の冷戦云々というような問題も一つのこれは問題になっている、こういうことをあげておられた。そういう事実を指摘しているのですが、こういう事態はどうなんですか。
  91. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自衛隊の目的は言うまでもなく、直接または間接の侵略に対して、日本の国を守り、日本国民を守るということにあるのであります。そうして世界の現状を見まするというと、私が一昨年アメリカに参りましたときに、アイゼンハワー大統領との共同コミュニケの中に、国際共産主義の脅威は決して衰えておらないということについて意見が一致したということを申し上げているのであります。私は世界のこの二大陣営の間の緊張緩和されることを念願しておりますが、事実はなかなかこの両者考え方根本は、ちっとも近づいておらないことが、外相会議等においてもまだそういう状況であり、従ってその間においていろいろ冷戦と称せられ、いわゆるこの他の国々に対して自分たちの主張を浸透せしめ、これによって自分たち目的を達しようとしている動きというものは、私は依然としてあるという見解の上に立っております。そういうことに対しても日本の安全を保障する意味から申しますというと、われわれはその態勢をとる必要がある、かように思っております。ただ安保条約において、そういう間接の侵略に対してアメリカの軍隊の力を借りるとか、何とかいう問題はおのずから別の問題でございます。
  92. 岩間正男

    ○岩間正男君 今答弁されたそのことが非常に私は重大だと思うのです。安保改定の必要の中に、ともすると国際共産主義の侵略があるのだ、これに対してやはり対決しなければならない、こういうことが非常に今まで言われ、また盛んにこれが宣伝されておると思うのです。しかし、そういうことで安保改定に対して国民の、今非常にこれに対する反対のいろいろな戦いが起っております。国民の下からのこれに対する世論というものは盛り上っておると思うのであります。さらにまた日本の現在の情勢に対しまして、あくまで原爆戦争を拒否する、日本基地化に反対する、このために平和をもって戦う、こういう運動に対して、実はともすると、この運動が赤の運動だ、これは共産主義の運動だ、こういうことを盛んに宣伝する、そうしてこれを理由として、御承知のように大衆行動が起りますというと、すでにもう事前からこれは警察を出してくる。多くの警察を出して参りまして、これを弾圧するということがやられてきておると思うのであります。私はこの事態が非常に重大だと思う。むしろこの安保改定というような、これによって日米共同態勢を強化する、このことによって実は日本の平和を守る人たち、さらに労働者、国民生活を守るこの人たちに対する非常に大きな弾圧が一方で行われておるんじゃないか、むしろ安保改定一つのねらいの中にははっきりそのようなものがあるんじゃないか、私はこの政府のいわば国際共産主義の侵略に対抗するのだということを宣伝し、赤に対する対抗のためだということで、この現在行われておる、いわゆる政府のPRに対しまして、実にこの意図するところが全くそこにある。こういうふうに考えざるを得ないのでありますが、この点一体、岸総理はどう考えておられますか。
  93. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は安保改定に関する国民の世論がいろいろと反対の議論もあり、賛成の議論もあり、十分に安保改定の問題の意義並びにその内容等を国民によく理解してもらって、そうしてその協力のもとにこれを実現しようとするのでありまして、私は反対する勢力に対して警察力をもってこれを弾圧するというようなことは考えておりません。ただこの問題が日本の安全を保障し、平和を守るために必要な制度であり、また国際情勢というものの正しい認識の上に立って国民にこれに協力をしてもらうことを念願をしておるわけでございます。
  94. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまの総理の答弁は事実を知らないと思う。これは、国会から一歩出てごらんなさい。この前、六月二十五日に国民の安保改定に対する反対の戦い、集会がございました。これに対して、すでに警官がどのような一体態勢をとったか、その後さらに農民や労働者の米価改訂に対する戦い、あるいは安保改定反対の戦い、これに対しまして現に私たちはその足元で、あそこのチャペル・センターのところで警官が何をやったかということを見ているわけです。従って、今のように国民のこのような反対の戦いに対しては何もしない、十分に論議を戦わせると言っておられますが、事実は全く反するのであります。総理は一体この現実を知っておられるのかどうか、あなたの意図でないとするならば、このような警官のやり方に対しまして、あなたは当然これを中止させなければならないと思う。十分にこの改定の問題は国民の世論に従って堂々と、この世論によって十分に論議させるという態勢をむしろ政府としてはとらなければならないと思うのでありますが、非常に現実とはものすごく違うと思います。この点についてはっきりした見解を聞かしてもらいたい。
  95. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いろいろな大衆運動がややもするというと、いろいろな逸脱した行為が従来あることは、国民運動その他におきましてもそのために平和な一般市民が迷惑するような事態があってはならぬのでありまして、そういう意味においてこういう場合において、私は相当に警察が警戒するというような、そうして逸脱して、そうして一般の人に迷惑をかけるような事態が起らないようにすることは警察本来のこの任務から当然であろうと思います。従って具体的の事例につきましては、その際に警察官の行き過ぎがあったかどうかというような問題に関しましては、十分注意すべきことは当然でありますけれども、そういうこの事態を全然放置しておけという議論には私はならないと、かように思います。
  96. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは逸脱するということになりますか。安保改定のやり方、このやり方の中には政府が非常に不徹底なところがある。PRについても現に言われているのでありまして、そうしてまたこれが国民に徹底していない。しかも一方では、岸総理の、実はもうヨーロッパに行く前に調印したいとかなんとかということを盛んに政府では、一方ではPRをやっているかどうかわかりませんが、宣伝しております。こういうことになれば、むしろ逸脱しているのは政府の方ではないか。これに対して、国民の反対する側が世論を結集して私は意思表示をするのは、当然これは民主主義の立場から当りまえだと思うのです。これに対して、警官を出して押えるということがすでにこれは政府の弾圧の意図である、こういうふうに考えざるを得ないのでありますが、こういう矛盾についてはっきりとおっしゃって下さい。
  97. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お答え申し上げましたように、私はそういう大衆運動については、行き過ぎがあり、逸脱がないように、警官としてもこれが処置をするということは当然の職責であるが、またその際にややともすると、従来ありましたような警官の行き過ぎ等があれば、これは政府として十分に注意をして、そういうことのないようにしていきたい。決して私は、国民がそういう意思表示をすることを弾圧した覚えもございませんし、そういう意図はございません。
  98. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、今後この安保改定に対する国民の反対運動というものは、当然なものとして認めるということをここで確認してようございますか。
  99. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 合法的なそういうことは当然認められることは、これは当然でございます。
  100. 岩間正男

    ○岩間正男君 警官のこれに対する不当な、ああいう態勢はどう思いますか。
  101. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど申し上げているように、私は警官が不当なことをする場合においては、これはよくわれわれの方で注意して、そういうことのないようにすべきことは当然であります。しかし、当然なことは私は考えていいんじゃないかと、こう思います。
  102. 岩間正男

    ○岩間正男君 民族の運命を決定するような重大な安保改定の問題について国民が黙っているのこそ不思議なんです。当然立ち上ってこれに対して意思表示をすることが当りまえ。これに対して、なぜ事前にあのように警官を集団的に配置して圧力を加え、そうしてあれに対して絶えず干渉がましいことをやらせる。あれは正しいのか。私は断じてこれは正しいとは思わないのです。逸脱していると言うけれども、逸脱なんかしていない。逸脱しているのはむしろ政府のやり方ではないかと私は考えます。こういうことに対してはっきりお答えをいただきたい。私が聞きたいのは、ああいうことは今後やらせないのだ。自由にやりなさい。国民の世論を徹底的に表明するためにいろいろな行動をするのは当然これは保障すべきだと私は考えますが、この点についてはっきりお答え願いたい。
  103. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げているように、いろいろなこういう運動やその他の集まりが従来逸脱した事例もございますので、そういうことを未然に防止し、そうして平和のうちに、一般の人にも迷惑をかけないようにこれらの国民がその意思を表示したり、あるいはその意思を政府やその他の要路にこれを伝える、もしくは要望するというようなことは、これは当然でございます。その場合において、私は事態の行き過ぎやその他の混乱を生ぜしめないために予防的に警官が行動をするということは、これは当然のことであります。こう思います。
  104. 岩間正男

    ○岩間正男君 六月二十五日に国民の運動がありましたときに、政府ではそれに対策委員会を作るということを聞いております。この内容はどういうものか、具体的に示してもらいたい。それから、よく逸脱ということを口実にして、警職法を出してみたり勤評に対するいろいろな不当な弾圧が事実行われてきたと思うのです。これと関連して、岸総理はあくまで警職法は出すのだ、こういうことを言っておられる。私はこれは非常に重大な問題だと思うのでありますが、あなたの御意見は一体どうなのか。あるいはまた安保改定とからんで参りまして、軍機保護法のようなもの、秘密保護法のようなもの、これは当然立法するたくらみを持っておられると思う。こういう点について明らかにしてもらいたい。この三つの問題。
  105. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 警職法の問題につきましては、私はそういう警職法のような改正をしなければならない事態がまだまだ全然なくなっておらない、かように思っております。従ってこれについて適当な改正をすることにつきましては、やはりその必要があると思います。ただその改正の内容やあるいは改正をするに至るこの手続、その他、国民の協力というような問題に関しましては、十分に慎重にこれを取り扱っていきたいと考えております。軍機保護法の問題に関しましては、安保条約から当然そういうものを考えるということではございませんで、これは別個の観点からこの検討をして参りたいと、かように考えております。それは、軍機の問題もその一つでございますし、また国家の最高の機密がやはり今日の国際情勢その他から見まするというと、国際的ないろいろな諜報機関等に利用されて、その国の不利になるような事態をそのまま放置しておくということは、私は、独立国とし、またその国の安全と将来の発展を期する上からいうと望ましくない。ただこの問題は皮を過ぎたりあるいは規定内容が適当でなかったり、あるいは運営がその当を得なかった場合においては、憲法の言論の自由やその他の自由権の侵害になるおそれも多分にあることでございますから、軽々に立法すべきものでないことは言うを待ちません。十分慎重に検討をした上において、結論を得たならば、国会の御審議を仰ぐようにしたいと、かように思っております。
  106. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は非常に二つの問題は重大だと思います。もっとも三つ質問したのですが、一つ抜けておりましたけれどもね、対策委員会の問題、これはお答えいただけますか。
  107. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お話のような対策委員会というものは、政府内に作ってはおりません。
  108. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほどの、警職法をまだ出すのだという考えを捨てておられない、これは私は非常に重大だと思う。この前の警職法の経緯、あれがたな上げになりました経緯を考えてみるときに、国民のこれに対する非常に大きな、もう、かつてない、歴史上かつてないような大きな反撃があった、そうしてあなたはよろめいたと思うのですね。私は、当然、ああいう立場から考えるならば、警職法はこれはやめなければならないと思う。私は、そういう意味では、国民の世論に対してあなた自身が、あのような非常なこれは目算違いをやったこのことから考え、世論にかんがみ、当然私は警職法は出さないと言明するのが当然だと思う。ところがあなたは、少しもそういう事実についてこれは考えておられないのですね。私は、改悛の情がないと思うのですよ。この点、私は絶対納得することができないのです。それは、軍機保護法の問題にしましても、これは非常に重大な今後日本憲法との関連におきまして関連を持つ問題です。今のような説明では納得することはできないのでありますが、この二つの問題についてもう一度御答弁を願いたい。
  109. 小林英三

    委員長小林英三君) ちょっと岩間君に御注意を申し上げますが、あなたの持ち時間は終了いたしました。
  110. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 警職法の問題につきましては、御承知通り国家公安委員会においてその必要を認め立案されたものでございます。しかし、その提案やあるいは国会審議の過程におきまして非常な反対を受け、これを審議することができなくなったのでございますが、その後において私は、この当時、批判的であったいろいろな方面の意見もいろいろと聞いております。しかしながら、それはあの内容のうちにおいては、やはり、必要な部分がある、あるいはその制定はやはり必要であるというふうな良識ある人々の議論も各方面において相当強いのでございます。また社会の実相を見ますと、やはり警察官の本来の職務執行の上から、現在の法制の上においては足らざるものがあるというようなこの事態も全然なくなったわけではございません。従って私は慎重な考慮なり、あるいは今申しますような十分な検討をして、国民の理解を得るような案を得て、これを制定したいということを申しておるのでありまして、この前の案そのままをああいう方式において再び提案するというようなことを考えておるわけではございません。この意味において当時の国民の声に対しましても私は謙虚に耳を傾けて、そうしてそれらの問題を処理したいと考えております。  それから軍事保護法の問題にしましても、あるいは秘密保護法と申しますか、そういう問題に関しましても、先ほど申しましたような考えでもって私は検討していき、そうして成案を得た上において国会に提案する。その場合においても、やはり各方面の正当なこれに対する理解と、御協力がなければならぬことでありますから、十分そういうことについても、過般の警職法審議についてわれわれが考えなければならなかった諸点を思い合せて十分慎重に考えて参りたい、こう思っております。
  111. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、時間がもう経過いたしております。
  112. 岩間正男

    ○岩間正男君 もうこれだけで終ります。  今のようなお話があったのですが、とにかく最近の警職法の問題から続きまして、安保改定の、今当面する問題に対する政府の態度、岸総理あるいは藤山外相その他の閣僚諸君が国会で声明しておることと現実は非常に違う。私はこういう体制の中に非常に重大な問題を実は含んでおると思うのであります。そうして一方では依然として警職法は再提出するのだ、いろいろそれについては何とか民主的な運営をやるのだ、骨子を変えるのだと言っておりますけれども、やはりその意思は依然として変えていない。また、軍機保護法の制定についても考えておられる。このような安保改定にからまるところの一連のやり方、私はここにこそ憲法に違反し、そうして現在進めておる政府の意図がはっきりしておると思うのであります。私はこんなことでは日本の安全保障ということは断じてこれは望まれないのじゃないかと思います。私は何といいましても今の情勢考えますときに、われわれが堅持し、掲げてきたところのこの中立政策だけが真に日本の安全を保障するところの具体的な措置だと思うのです。岸総理は過般の国会の本会議におけるわが党の野坂議員の質問に対して、あなたは中立政策というものはこれは理想だ、現実ではないということを言った。しかしながら、今のこの世界情勢考え、アジアの情勢考え、さらにとうとうとして盛んになりつつあるところの平和共存の体制の中で考えまして、日本の真の安全保障は、このようなアメリカの原子戦略体制の中にはっきり歩調を合せ、そうしてより一そう日米の協調を緊密にするというおそるべき体制の中には私は断じてない。平和共存の政策に立つ中立政策こそが真の日本の安全を私はかちとる道であると思います。しかもこの中立政策の根源、よってくるところは非常に私は遠いとところにあると思う。第一に、まず考えてみますというと、ポツダム宣言をわれわれが受諾したときにこの中立の立場に立った。そうしてまた世界の人たちもこれを期待し、日本国民も世界に誓ったところのものが、まさにこの中立の政策でなかったかと思う。この性格をはっきり具体的に表わしたのが日本の平和憲法であると思います。平和憲法によってこれは保障されている。それだけじゃない、情勢を見るとき、どうです、最近のソビエト外相の日本の中立に関するところのいろいろな声明、あるいは中国の陳毅外相の声明等によっても明らかなように、今や世界情勢ははっきりこの中立政策を支持し、これを具体的に実現するところの条件ができつつあると思うのです。
  113. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、簡単に……。
  114. 岩間正男

    ○岩間正男君 ところが、こういう問題に対して今まで岸総理はあらゆる場合に、これは、中立政策というものは、日本現実に合わないと言っている。しかし、平和憲法を真に守るのだと言っておるあなたの立場、平和憲法によって選ばれたところの総理大臣、しかも安保改定に際してさえこれは平和憲法範囲内でやると言わざるを得ない。これは実際はみ出しておることは先ほど佐多委員の質問ではっきりしている。それから平和憲法とバンデンバーグの決議の中には、根本的に相いれざる矛盾がある、そういうことをやっておる。
  115. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、簡単に……。
  116. 岩間正男

    ○岩間正男君 こういう体制の中で、私は当然今までの日本の敗戦後における経過を考え、ポツダム宣言の精神を考え、そして日本が歩んできた道を考え世界現実考えるときに、はっきり私は中立政策に立って、そうして現在のようなこの安保改定のやり方に対して徹底的に、私は国民の念願するこの平和への念願、平和なくして真に国民の生活もないし、そのためには中立を守ること、中立なくしてまた真の独立もあり得ないという、一つの大きな、むしろ重大な今決意をしなければならないところのこの政策に対して明確にすべきだと思うのでありますが、この中立問題について、今までどのような研究をされたか。これに対するあなたの見解はどうなのか。これは聞いております。聞いておりますけれども、この中立政策というものを非常に簡単にあなたはお考えになっていらっしゃるのじゃないかと思います。研究も足りないのじゃないか。世界現実にあえてこれは目をつぶっておられるのじゃないかと私は考えます。こういう点から、これはどのようにこういう問題について今まで対処されてきたか。私は今まで出された中立は単なる念仏であるというような形でもって答弁された、あの答弁には絶対承服することはできないのでありまして、この点について明確にあなたの考えをここで述べていただきたいと思います。外務大臣にもお聞きします。
  117. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる中立政策という内容においていろいろな内容ーー私は一様ではないと思うのであります。特に岩間君の属しておられる共産党の言われる中立主義というものにつきましては、今例におあげになりましたが、ソ連や中共が現に日本の中立政策ということに対して非常な強い声明をしております。けれども、私はソ連や中共みずからが中立政策をとっておるものではないと思います。それがわれわれに中立政策を一体何の形において呼びかけておるか、あるいはまた現に中立政策をとることを声明をしておる共産圏の中におけるユーゴやあるいはハンガリー等に対して、ソ連がどういう政策をとっておったかというような事例を、われわれはまざまざと目の前に見せられております。そういう国際の現実に立って中立政策ということをいうことは、要するに私どもが従来とってきておるところの自由主義国との提携を断って、そして私は、共産主義の立場をとられるならば当然でありましょうが、共産圏の国々と手を握った形におけるこの政策をとるべしだということ、それは共産党としてはそういう主張もされるのでありましょうが、われわれはそれに対しては断然反対をしておるのでございます。また、社会党の諸君の言われておる中立政策という内容につきましても、私はいろいろの点について疑問を持っておりますが、現在の日本立場としては、もちろん世界の平和を念願するものであります。われわれの安保条約というものも決して攻撃的な内容を持つものではございません。あくまでも防御的な、われわれが侵略をされない、こういう立場に立っての安全保障を考える体制というものが、決して日本を破滅に持ち込むものではなくして、むしろ日本の繁栄と日本の国民の平和の私は基礎であるという信念に立っております。また、中立政策をとっておる世界の国々の状態を見ましても、やはり、それはその国の置かれておる状態、これが非常に問題である。日本のごとき工業力を持ち、また人口を持っておる、またこういう地理的立場にあるものが、一体今日の国際の現実から見て、中立であるということによって安全保障ができるというふうなことは、私はあまりにも国際の現実とかけ隔たっておる考えであるかように考えております。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 ポツダム宣言との関連は……。ポツダム宣言は、これは自由主義諸国が入ってきめたものですよ、あなたの言われる。これがはっきり中立を指向した。従って、あなたの言うことは非常におかしいと思うのです。この点について答弁漏れがありますから、このポツダム宣言との関連を明らかにしていただきたい。
  119. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はあくまで、今申し上げたことが、日本立場から見ましても、国際の現実から見ましても、実際に合っている形であり、またポツダム宣言の趣旨も、こういう日本の置かれておるような状態において、今日唱えられておるような中立政策をとるべきことを示唆しておるものではない、かように考えます。
  120. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  121. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、木村禧八郎君。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、岸首相の所信表明に関する質疑を行うに当りまして、まず最初に確認しておきたいことがあるのです。  今回の所信表明におきましては、従来岸首相がしばしば声明あるいは公約して参りましたいわゆる三悪追放の問題が全然触れられてない。特に国民が非常に期待したであろう貧乏追放の問題、そういう点については全然触れられてないのです。これはどういうお考えで触れられていないのか。もう内閣改造をやったから、前のことはほおかぶりで知らぬ、そういうものではないと思うのです。やはり政策的には、同じ内閣が続くのならば、それには連続的な責任というものがあるのでありまして、この点について、どういうわけでお触れにならないか、一応最初この点について確認しておきまして、それから質問に入りたいと思います。
  123. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 三悪追放の問題につきましては、しばしば私が声明いたしました後においても、国会等において私の所信を明らかにいたして参っておるのでございますが、これは、私が政局を担当し、政治をやっていく上におけるところの根本的の理念でございます。念願でございます。あるいは悲願と申してもよいかと思います。あくまでもこのことは、私はあらゆる面において努力をして参っており、また今後も続けて参るつもりでございます。これを所信の中に申し述べなかったからといって、これを忘れたわけでもございませんし、またそれを等閑に付しておるわけでは絶対にございません。  また、貧乏追放の問題についての問題でございますが、この問題も、結局私は貧乏を追放するためには、やはり日本の経済を繁栄にし、国民の所得をふやしていって、国民生活を向上していく、雇用問題を解決していく、同時に社会保障制度を拡充することによってこれをなくするところのことに努力して参りたいということを申しておりますし、またそれに向って努力をいたしておるわけでございます。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは確認しておきます。実際はそうなっておらないのです。これはあとで具体的に御質問いたしたいと思いますが、たとえば賃金格差がひどくなったり、それから今の生活保護で実際生活できるかどうか、そういうボーダー・ライン階級も多くなっておりますし、不完全の失業者も多くなっておりますし、実際はそうなっていないのですが、その公約は依然として堅持しているのだという確認がありましたから、それを前提にして一つ質問をして参りたいと思います。私は、質問の焦点をしぼりまして、二つの点について御質問いたしたいと思います。その第一は、この所信表明につきまして、安保条約、新しい安保条約日本の財政経済、国民生活との関連についてまず第一に伺いたい。第二は、最近新聞雑誌等で非常に評判になっておりますいわゆる所得倍増論、十カ年計画ですか、そういう問題、いわゆる長期計画と、それから通産大臣がよく言われている賃金二倍論、そういう問題について御質問いたしたいと思うのです。  まず最初に、新条約です。これは岸総理は、はっきり所信表明の中で新条約と呼んでおります。新しい条約であります。単なる改定ではございません。岸首相みずから新条約という言葉を使っております。先ほど佐多委員の質問に対しまして、そう性格は変らぬようなお話がありましたが、新条約という名前で呼んでおります。はっきり私は性格が変ってきていると思います。片務協定から双務協定、アメリカ防衛する義務が出て参るのでありまして、ただそれは軍事的に防衛するだけでなく、財政経済の面からも義務が出て参ります。いわゆる新条約の第三条に、いわゆる防衛能力、いわゆるデフェンス・キャパシティの問題ですね。そういう問題をはっきり明記されておるのでありまして、これは、日本の財政経済、国民生活に重大な影響が及んでくると思いますので、そういう点も明らかにされなければ、国民に対してこの新条約の意義を納得させるように政府が説明すると言いますけれども、これは説明してないと思う。そういう点まで触れまして、よく国民に納得させなければなりません。そういう点から、まず最初に、現在の安保条約が、日本の財政経済、国民経済に具体的にどういう影響を及ぼしているかという点からお伺いいたしたい。それが今度の新条約によってどういうふうな影響をもたらすか、日本の財政経済、国民生活にどういう変化をもたらすか、この点を明らかにしていただきたい。  そこでまず、今の安保条約が、現在日本の財政経済、国民生活に具体的にどういう影響を及ぼしているか、この点、国民にわかりいいように御説明願いたい。国民は知っていないです。こういうことを実際に知っていないです。いかに今の安保条約が、日本の財政経済、国民生活に大きな、また悪い影響を及ぼしているかということを知らないのですよ。また知らせないようにしてきているのです。行政協定ども国会で十分審議させなかった。ですから、国民がこういう情勢を、事情をよく知らない。そういう上に立ってこの新条約を問題にしても、これは不親切であります。まずこの点について、総理大臣、それから大蔵大臣あるいは外務大臣も、この新条約を結ぶに当りまして、そういう点からもお考えにならなければならない。もし、そういう点について十分留意されていないとすれば、これは怠慢であります。わかりやすく国民に、今の安保条約によってこういう国民の生活に具体的影響が現われているのだということをまず御説明願いたいと思います。
  125. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在の日本防衛力をどういうふうにしていくかということについては、国防会議におきまして、その基本方針をきめております。そして、現実防衛力の増強については、国情国力に応じてこれを漸増するということを申して、これが国民生活に対して強い圧迫になったり、あるいは民生の向上を妨げることがないように、国情国力考えつつ漸増して参っております。その数的根拠等につきましては、大蔵大臣その他からお答え申し上げます。
  126. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国民所得に対するわが国の防衛費は、二十八年当時は二二%、また、そのとぎの総予算に対しましては一二%を占めております。それが三十三年になりますと、国民総所得に対しては一七、総予算に対しましては一一・一と、また三十四年、ことしの予算の編成に際しましては、国民総所得に対しては一・七、総予算に対しては一〇・八というように、二十七、八年当初に比べますと、防衛費は総体といたしまして漸減の方向をたどっております。わが国の自衛力は、ただいま総理からもお話があったと思いますが、国力、経済力の範囲において防衛力を漸増するという基本方針を立てておる次第でございます。
  127. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の安保条約の効果につきましては、御議論もあったと思いますが、総理先ほど言われましたように、日本がこの困難な終戦後の時代にありまして、平和裏に産業、経済の活動ができるということによりまして、日本の経済が拡大して参り、そうして国民生活にも好影響を与えてきているという点は、これは私は見のがせない点だと思っております。むろん、現在の安保条約におきまして、防衛分担金等の問題もございますので、その点において財政上に若干の負担をかけて参ってきていること事実だと思います。そういう点について、私は安保条約全体が、日本の経済あるいは財政の上に、安定した基礎の上にやられたということに効果があったんではないかと思います。
  128. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は大体、ただいま政府が現在の安保条約日本の財政、経済、国民生活に及ぼしている影響についての理解、判断がいかに浅薄なものであるかということがはっきりわかりました。これで一体国民にわかりますか、こんなことで。私は、単に予算における防衛費の割合とか国民所得の割合、そういうことを聞いてるんじゃないのです。私は、時間がございませんから、これはもう一日かかっても議論をしなきゃならぬ点だと思うのですが、たとえば防衛費でも、三十四年度の予算一千五百億でしょう。ところが、社会保障費は千四百億でしょう。そうして税金が高い高いと言いながら、申告納税全体で幾らですか、六百億ですよ。申告納税の二倍半のものを防衛庁で使っているのです。それが中小業者や国民生活にどういう影響を及ぼしているか、それが社会保障費にどういう影響を及ぼしているか、それによって今、まだ、生活に困っている人がたくさんいるのですよ。私は、岸首相が貧乏追放特にその政策を放棄してないと言いますけれども、一体今の生活保護費で生活できますかどうか、この点ちょっと伺っておきたい。総理大臣に伺っておきたい。これは重要であります。貧乏追放を言われた総理大臣に。
  129. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 生活保護費の額につきましても、われわれは実情にかんがみてこれが増額についても十分検討して努力して参っております。私は、大体においてこの額は最低のものではございましょうけれども、国家の現状からやむを得ない額であると、かように考えております。(「貧乏人は死んでもいいのか」と呼ぶ者あり)
  130. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは厚生大臣に伺いたいのですが、これは最低やむを得ないと言いますが、生活保護費ですよ。生存保護費じゃありませんよ。存在保護費じゃありませんよ。生活保護費です。憲法二十五条には何と書いてありますか、よく御存じの通り、私がもしこれで生活できるならば一カ月の献立表をここで見していただきたい。大都市、東京甲地で二千円で一体一カ月の三度々々の献立表をどうして作りますか、これを具体的に見していただきたい、そういうことができるか、できるなら。(「厚生白書ではだめだと書いてある」と呼ぶ者あり)
  131. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) ただいまの生活保護費といたしましては、現在の最低基準によるところのものをできるだけこれを裏づけをいたして予算に計上しておるような次第でございます。現在のわれわれの厚生省予算は、ただいま御指摘通り、千四百億ということに相なっております。漸次これは増額をたどりまして、昭和三十三年度におきましては一千七十二億、(「そんなことを聞いておるのじゃない」と呼ぶ者あり)昭和四十四年度におきましては一千三百五億でありまして、約二百三十億の増加をたどっておるのであります。ただ低家賃、あるいはまた失業対策費等々も入れまして、そうして特に生活保護費に対しましては、逐次、増額の一途をたどっておるのでございますけれども、財政上の基準からいたしまして、最低の生活ができるところの基準によって私どもはこれを今まかなっておるような状況でございます。(「うそ言いなさい」「あなたの一日の小づかいにも足りないでしょう」と呼ぶ者あり)
  132. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんな無責任な官僚的な答弁では国民が満足いたしません。すでにこの資料もございます。そんな場当りにここだけで答弁すればいいというものじゃない。生活保護を受けなければならぬ人がどんなに苦しんでおるか、実際あなた行ってごらんなさい、そんなものじゃないのです。ジェット機を作る金がありながら、まだまだ国民に苦しくてもう生活できない人がたくさんいるのです。そういうことが今の安保条約のもとで行われており、それがやっぱり影響しているのですよ。それだけじゃないのです。安保条約日本の財政経済の影響はそれだけじゃありません。財政についてあまり触れていますと時間がございませんから、安保条約日本の財政経済、国民生活の影響いかんという質問に対して、防衛費が予算の中に占める比率とか、国民生活の比率、そんな程度しか理解していない。情ない。それで安保条約を新しく改定しようとする、改定したあとにおいてどういう影響が出てくるかということについて、これではほとんど無知ではないかと思うのです。非常に遺憾なんですが、予備知識としてこれは国民にやはり知らせる義務があるのですよ。まだもう少し、現在の安保条約はどういうふうに日本の財政経済、国民生活に影響を及ぼすかという点についてもう少し、御迷惑でしょうが、ちょっとテストみたいになってはなはだ恐縮ですが、伺いたい。たとえば、これは外務大臣よく御存じーーこれはよく知ってなきゃならないのです、今後の折衝に当りましても。行政協定に基く国内立法がございますね、それによってどれだけ日本の経済が影響を受けておりますか。たとえば漁業制限に関する特別立法があるでしょう。土地等の使用等に関するあれがあるでしょう。国有財産の使用に関する特別立法、これは無償で提供するのです、アメリカに。今の関税に関する特例法、それによってアメリカさんのこの払い下げ物資が税関の保税倉庫を通ぜすにどんどん出ておる。御徒町のマーケットを御存じでしょう。取り締れないですよ。ほんとうなら保税倉庫でやらなければならないでしょう。あれを放任しているのですよ。そういう影響とか、あるいはまた、あらゆる面について、たとえば租税につきましても、あるいはまた道路運送法でも、あるいは水先法につきましても、電波法につきましても、日本国民の持っていない特権をアメリカ電はみな持っているのです。占領中に持っていた特権を国内法において認めているのです。それによって日本の経済が非常な、先ほど外務大臣は、好影響をもたらした。これが好影響でありましょうか。前に岡崎外務大臣に私は質問したことがある。安保条約によって、平和条約によって日本独立した、こういうお話がございましたから、それじゃ、どうして独立したと質問いたしましたところ、占領アメリカ軍は日本の国内立法に従わなかったけれども、講和条約の後においては、日本の国内立法に従うから独立したのだ、漁業制限に関する国内立法にアメリカが従うことが独立したことになりますか。こういう影響が出ているのです。あるいはまた調達に関することも御存じの通りです。どんな国でも直接調達のところはないですよ、間接調達が原則でしょう。そういう日本の経済に広範にマイナス面がたくさんあるのです。それはプラスの面がまた数えられる、プラスとマイナスを比較して検討される人がありましょうが、マイナス面が多い。さらに貿易面はどうですか。日中貿易は安保条約のやはり影響によって途絶しているのですよ。これだけ大きい影響があるのですよ。それを防衛費の中に、国民所得の中に、あるいは予算の中に何パーセント防衛費が占めるということだけをもってこれが影響だということ、その程度の理解なんです。さらにまた、国民生活につきましては、あるいは独禁法でしょう、独禁法の制定もこの影響なんです。あるいは警職法とか勤評とか、そういう問題もやっぱりこれと決して関連がないとは言えないのです。そういう点について広範な影響があるのですよ、日本は。こういう意味からいって経済的にも非常に大きな制約を受けておる。これで一体独立しておると言われるのですか。もし、今度の新条約日本アメリカと対等の立場において日本自主性を確立するというならば、こういう経済問題におけるマイナスの面、これまでもなくしようとする努力をしなければならないのですよ。そういう意味において今の安保条約日本の財政・経済、国民生活にどういう影響を及ぼしておるかということをよく具体的に検討して、その上に立って新条約考えなければ全く意味がないと思うのです。単なる条約上の条文解釈も重要でありますが、それと同時に、こういう面についても十分私は関心を持たなければ全く意味がないと思う。総理大臣にこの点につきましてお伺いしたい。  それから大蔵大臣も単に財政だけでなく、あるいはまた外務大臣、通産大臣につきましても、これは経済閣僚の方々みんな十分関心を持っていただかなければならぬ問題でありまして、御所見を伺いたいと思います。
  133. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お話しになっておるように、外国の軍隊を日本に駐留せしめておるごとから生ずるいろいろな問題があると思います。私は、根本の問題として日本の安全、日本を他から侵略されず、そういう安心感の上に立って平和的に国民が生活をし、経済のなにを営んでいくというためには、現在の国際情勢からいうと、やはり自分の国の力に相応した防衛力を持って、そうして国の安全をはかっていかなければならない。それが自力だけではできない場合に、他国援助によってこれを守っていくということもこの現状から見るとやむを得ないことだ、そうすると外国の軍隊が駐留するということを認めざるを得ないのでありまして、それが駐留することによって、ある程度の特権を持つということは、今の国際慣行から申しましてもやむを得ないことであると思います。それをなるべく最小限度にとどめるようにすることがこれは望ましいことであり、あるいは、そういう意味において行政協定等についても、われわれは今回の安保条約改定に伴って両国の間で交渉する次第でございます。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大へん簡単なお尋ねでありましたので、大へん的がはずれたようで申しわけございませんでした。しかし、しばしば言われておりますことは、独立国家として防衛費というか、国防費というものが総予算あるいは国民所得に対してどういう率を占めるか、これはしばしば言われるところでありますし、木村さんは専門でいらっしゃるから、これだけの数字を申し上げてだんだん減ってきておるということを申しますれば、おそらくわが国の防衛費のあり方ということにも御理解がいただけるだろうと思ったのでございます。ことに申し上げたいのは、独立国家といたしましていろいろなさなければならないことが幾つもございます。私どもはこの防衛費は国力あるいは経済力の範囲においてこれを維持する、また漸増するという基本方針を立てて独立国家の安全を確保するという基本方針をきめております。また各方面に、ただいま御指摘になりましたような福祉国家建設のための予算にいたしましても、あるいは産業開発の面における各種の予算にいたしましても、それぞれ漸増いたしております。これらと合せて必要な経費を計上いたしております。いずれの項目にいたしましても、これで十分だというものではございません。予算編成の際に私どもがいつも頭を悩ましますものは、財政を、あるいは経済をこれで一体どうまかなうかという、そういう観点に立って予算の編成をいたしているのでございます。いろいろ御批判はあることだろうと思いますが、今日の経済力なり財政力から申しまして、まず適正な予算が編成された、かように考えております。また、ただいま行政協定の面についていろいろの問題があるではないかということを御指摘になりました。これらの点については、外務大臣からお話をすることだと思いますが、私どももこの行政協定については、今回の安保条約改定という際に、十分わが方の主張も相手方と交渉するという考え方でおるのでございます。
  135. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御指摘のようにアメリカの軍隊が日本におりますごとによって、その軍隊は日本を平和に守ってくれるという意味ではありますけれども、いろいろな便宜供与その他の制約が行われておるということはお話通りであります。全体としての経済活動が十分に平和裏に行われるということのためには、ある程度やむを得ないこともあるかと思います。まあ戦後の日本の立ち直りに当りまして、そういう意味において経済的に影響が起ってこなかったとは私ども考えておりません。しかし、今回の安保条約改定に当りましても、もとよりわれわれといたしましては、直接、今御指摘のような問題に関連しております。取扱い等につきましては、できるだけやはり改善をして参ることが適当であると思っておりますので、従って、各条にわたりまして関係各省とも協力いたしながら、それらのものについてもできるだけ合理的に改善をはかっていくように努力をいたして参りまして、そうしたマイナスの面をなるべく消していかなければならないと思って努力をいたしておるようなわけであります。以上のようなことでありますから、影響が絶無だと私申し切っておるわけではございません。
  136. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 特に私に対して御質問がございましたからお答えいたしまするが、私は木村さんとは出発点が違っているのであります。われわれは自分の国をできるだけわれわれの力で守りたい、しかし、それが今の状況ではできないから、アメリカ日本の国を守ってもらおう、そうしてわれわれもできるだけその方向に近寄ろうとしておるのであります。あなた方は中立無防備主義ですから、防衛費は一文もないといった方がいいというお考えでございましょうが、われわれの国は自由主義の国で独立国でございます。だから私は、大東亜戦争当時、軍備に関する予算が全体の予算の七割六分を占めたことがございます。しかし、大東亜戦争にならなかった普通の時だって、日本の軍備というものは予算に対して四割程度をずっとやっておったのであります。また現在の世界状況を見ましても、独立国家で日本くらい防衛費に使う金の少い国はないのでございます。だから、私はこの防衛費が非常に少いから社会保障費がだんだんふえていくし、そうしてまた軍人恩給等もふやしていけたのであります。だから、私は多くを望みませんが、日本が自分の国を守ろうとする立場からいくのならば、まだ世界の国々に対しましたら私はよほど少いと思います。また共産国の総予算に対する軍事費をお考えいただいたらわかるでございましょう。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで御答弁を伺っていますと、安保条約を通じての防衛というものに対しての考え方が、なるほど今、池田通産大臣からもお話がありましたが、非常に違っていることが明らかになりました。見解の相違ではないのです。事実認識が違っているのです。今の平和条約と同時に安保条約ができました。そうして今の平和条約なり安保条約は、客観的にいってどういう状況でどういう意義をもって結ばれたか、これに対する事実認識が違うのです。今、大蔵大臣も申されましたが、自分の国は自分で守るのだから、そうして防衛費も負担する、しかし、足りないからアメリカにも守ってもらおう、こういうのでしょう。そうじゃないのですよ。日本独立しておりません、実質的には行政協定を通じていろいろな制約があるのですから。独立してないから、岸総理が対等の立場でもっとこれを、日本自主性を強めようということは、独立してないことを認めていることなんです。それは平和条約なり安保条約を結ぶに至ったのは、アメリカ日本は反共の防衛基地にしたいという望みから駐留したのでしょう。そうしてそれとの代償において日本の支配階級がマッカーサー元帥のもとで行なった民主的政策を逆転さしてもらおう、いわゆる失地回復というのですね、民主政策によって特権をとられたのです。そうして官僚、地主、大資本、そういうものが特権をとられたから、そこで、講和を機会にしてアメリカ日本軍事基地として提供するかわりに、日本独立を売り渡すかわりに、代償として、また大資本家が労働者を昔のような低賃金や労働強化で搾取することのできる神聖なる権利を回復しようという、そうして独禁法を改正し、中小業者もまた圧迫する、そういう資本家の考えから取引さして行われたのだという、これは私の意見ではない、これは有名なヘッセル・テールトマソです。一九五一年六月「ネーション」という雑誌に書いております。これはイギリスの人です。非常に客観的に日本の講和の意義、安保条約の意義をはっきり説明しているのです。その後の情勢はその通りです。アメリカ日本に対する基地政策は強化されてきている。それと同時に、日本のいわゆる逆コースの政策がどんどん行われてきている。ですから、結局日本予算の中で何パーセント、何パーセントと言われましたが、日本をほんとうに守る防衛費ならば足りないでしょう。私も足りないと思うのです。もしよその国が侵略してくるならこんな防備じゃ足りません。しかし、客観的に見て、今までの歴史的経過から見て、日本防衛日本防衛じゃないのです、アメリカ防衛なんです。だから、反共々々と言ってダレス理論に基いて、真空理論を展開して、共産主義国が日本に攻めてくる、攻めてくると恐怖心を起させて、そうしてアメリカ防衛のために、われわれ国民の税金をたくさん取り上げて、アメリカのために防衛させているのでしょう、お金持ちのために。これは私は客観的な事実じゃないかと思うのです、これは。それはこういう表現は不愉快でしょう。おそらく不愉快でしょう。私もこういう表現をしたくないのですけれども、やはり客観的に見る必要があると思うのです。こういう実態を国民によく知らせなければ、日本の真の独立は私はできないと思うのです。さっき池田通産大臣は、木村さんは何ら日本が危険に陥っても防衛しなくてもいいと言ったと言われましたが、私はそんな考えは持っていない。今の日本防衛は、日本防衛じゃあないじゃないですか、日本の歴史的経過から見て明らかです。そういうふうに客観的に見なければいけないと思うのです。そういう点から私は質問しているのであります。ですから、防衛費は国民所得の何パーセントとか、あるいは予算の何パーセントを占めるということについては、私は意見があるのです。パーセンテージが低いからというのじゃない。国民生活との関係において比較しなければだめですよ。税金だってそうでしょう。池田通産大臣ーー前の大蔵大臣よく御存じですよ。国民所得に占める税金の割合が少いから軽いというものではありませんよ。国民生活水準、国民所得の水準を相手に考えなければ、そんな機械的に考え防衛費を論じられたのでは迷惑ですよ。国民の生活の実態に合わないのですから、そういうふうに、これは大蔵省でもちゃんと統計が出ておりまして、機械的に、前に防衛庁が三%よこせと言ったときに、そういうものじゃないという資料があるのです。そんな機械的なパーセンテージばかりじゃないというのがちゃんとございますよ。私はそれを見て御質問しているわけですけれどもね。ですから、やはり真剣にそういう点が考えられる必要があるのじゃないかと思います。  時間がたちますので、次に、今の安保条約の財政経済、国民生活に及ぼす影響をもっと具体的に真剣に考えていただきたい。そうして日本の国民、日本民族としては真剣にこれは考える必要がある。そこで今度は、新条約を結んだ場合にどういう影響が起るか。まず第一に、私は防衛計画が変ってくると思います。新条約の三条によりまして、佐多議員指摘されましたが、今度は新しい防衛能力を発展させなければならない義務が出てくるでしょう。今のMSA協定にも軍事義務というものがあります。ミリタリー・オブリゲーションがあります。今度はディフェンシィブ・キャパシティー防衛能力を強化する義務が出てくる。そうすれば防衛計画が変ってきます。今の防衛計画ではアメリカ防衛する能力が不足ですから当然変ってきます。もう作業しているはずだと思います。そして新条約防衛計画との関連、それからその防衛計画によるところの防衛予算の見通しですね、これは作業していなければ怠慢です。作業してなければならぬはずです、防衛計画の。それから財政につきましても、この点につきましてお伺いいたしたいと思います。
  138. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように現在の安保条約におきましても、日本防衛力が漸増されることを期待されておるわけであります。(木村禧八郎君「期待じゃないですよ、義務でしょう」と述ぶ)今度安保条約改定になりますが、日本防衛力はやはり日本自体の、先ほど総理の言われました通り国力国情に対応した防衛力を、それに対応して漸増することに相なっておることはこれは当然であると思います。また、足らない点等につきましては、現在におきましても、有償無償の援助は受けておりますけれども根本方針としては、日本国力国情に適応した防衛力の漸増ということに相なるわけであります。防衛計画、国防計画等につきましては、第二次の計画は策定中でありますが、安保条約改定によって、特にその改定を、強化するといいますか、というような意図ではありませんで、従来の方針に基いて現在策定中であります。
  139. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) きょうこの委員会におきまして、新安保条約のわが国の防衛範囲と申しますか、そういう事柄は、総理並びに外務大臣からしばしば他の質問者にお答えした通りでございます。今回の新安保条約の構想といたしましても、わが国の防衛範囲は少しも拡大されてはおらないのであります。またその点から、今回の安保条約改定をいたしましても、これがわが国の防衛力を急に強化すると、こういうような事態は起らないのであります。在来の基本的な考え方をわが国としては貫く考え方でございます。
  140. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、何というのですか、私はまあ内情を知りませんから、確証がありませんから、反論するわけにいきませんが、そんななまやさしいものじゃないと思うのです。この新しい軍事同盟です、双互防衛同盟を結ぶに当りまして、アメリカ側が、そんなことで承知しますか。私は、ちゃんとアメリカの戦略の一環としての日本防衛能力というもののそういう作業、そういうものがなされているはずであります。そうでなければ、三条によるこの規定というものは意味がないのですよ。やってなければ、向うでちゃんとやっていて、あとで押しつけてくるのかもしれません、それがなかったら。そんな抽象論じゃない、もっと具体的にこれを考えなければならないと思うのです。そうすれば、今後の日本の財政経済あるいは国民生活に重大な影響を受けます。たとえばミサイルの国産をするだけです、防衛生産に関する予算なり金融なり大きな影響が出てくるのですよ。新条約日本の財政経済、国民生活に対する影響を、どうしてこれをもっと作業してないのですか。また、そういう点について、われわれに対する説明は、まるでこれはもう愚弄していますよ。そんなもんじゃないと思うのです。まず具体的に裏づけがなければならぬはずであります。おそらく三十五年度の予算ですか、五年度の予算に、きっと出てくるに違いないし、今あまりそういう点が国民にはっきりわかってくると、国民にそれではこれに反対しなければならぬというような考えが起ってくるといけないので、前の行政協定のときのように、なるべく実情を、ほんとうのことを知らさないように努めているのではないか。もしそうでないとしましたら、私は怠慢だと思うのです。怠慢ですよ。そんなことで新条約を結ぶとしたら怠慢だと思います。また防衛分担金百十一億、三十四年度の予算ありますが、これがなくなる、行政協定の二十五条のb項がなくなる、百十一億なくなったところで、防衛能力の増強の義務が出て参りますから、グラマン機のように一機三億四千万円もするならば、それが三ヵ年三百機作らなければならないとなれば、一千億でしょう。百十一億の防衛分担金がなくなって国民の負担が軽くなるということはあり得ない。そういう点について十分に、お互いに日本民族でありますよ。お互いに同胞であるのです。どうしてお互いの福祉に関係する重大な問題について、もっと計数的な、具体的な説明ができないのですか。総理大臣、こういう点についてもし作業をしておられないとしましたら、今後やはりそういう点、経済面につきましても、十分にこれは検討される必要があると思うのです。これは私は決して影響がないとは言えないと思います。財政経済、防衛生産との関係、それが金融にも影響が及んで参ります。それから勢いこれは社会保障費関係その他にも影響が出て参るのでありますから、新条約日本の財政経済、国民生活に対する影響いかん、そういうものに対して作業を早くされる必要があります。そうして国民に明らかにして、それを見て、国民が、なるほど、これなら新条約によってわれわれが楽になるか、新条約によってわれわれの生活が苦しくなるか、判定の基準が出るのでありまして、こういうことこそPRですね。よく国民にわかりやすく理解させる必要があると思うのでありますが、総理大臣の御所見を伺いたい。
  141. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 木村さんと前提において一つの食い違いがあるのでありますが、今度の安保条約改定することによって、われわれは従来持っておる防衛計画というものを変えるという考え方は全然持っておらないのであります。また、そういう義務は、はっきりとわれわれはそういう新しい義務を負うものではないのであります。何かこれがアメリカの軍事体制なり、あるいはそういうものに引き込まれて、日本防衛義務なり防衛努力というものが非常に増大するという前提で御議論になっておりますが、そういうことではないということを申し上げるならば……。従来のわれわれは国防会議できめておる計画をそのまま推進していくつもりでございます。それ以上の義務を負うのではございません。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 では、いずれこれはだんだん予算編成の過程においてはっきりしてくると思います。また、そういう過程において具体的に御質問いたしたいと思います。  それから次に、時間がなくなりましたので、次の質問に移りたいと思います。それは、岸総理が所得倍増論、あるいは長期十カ年計画についてお話をされておりますが、これはほんとうにおやりになる意思があるかどうか。これは単に選挙の宣伝、あるいは十年後においてはもう総理は政権を担当されないから、十年先のことはその責任を持つ必要がないというのでーーまさかそういうようなお考えでこういうことをお述べになっているのではないと思うのですけれども、どういう動機で、今五カ年計画がまだ未完成のうちに十カ年計画ということをここに特にこれを御主張になりましたか。その動機についてお伺いいたしたいと思います。
  143. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在私どもが新経済五カ年計画に基いて、年々六・五%の成長率のもとに日本の経済を拡大していこうという計画を立てて、これに沿うていろいろな施策をしておることは御承知通りだと思います。経済の問題でございますから、年々のことにつきましては、そういう計画をしておりましても、計画通りにいかないという面があります。しかしながら、日本の経済の長い流れを見まするというと、大体そういう線に沿うて日本の経済が伸びてきておるということはこれを認めてよかろうと思います。特に一昨年のこの緊急対策、一時の非常な過度の成長の後に反動的に来たいろいろな問題を調整するための調整期を経て、日本経済が安定した基盤においていろいろとわれわれが予想しておるよりもなお堅実な歩みをもって成長しておるような情勢にございます。さらに国際の情勢等も、いろいろと見方はございましょうが、大体において堅実な将来の見通しを持ち得るような状況でございます。われわれは、従来の六・五%の成長率をもっての、経済の成長をもっていたしましても、十年には、もちろん倍にはなりませんけれども、倍に、そう遠くない数字を持ち得るという、数字的には計算ができるわけであります。  さらに計算をしてみまするというと、十年の計画で倍にするには、年々七・二%の数字の成長率を考えれば、数字的には一応このつじつまが、そういうふうに合うのでございます。私はやはり国民が一つの希望と、そして努力の目標として一つの計画を持ち、われわれは自由経済主義をとっておりますから、むろん計画経済とは違いますけれども一つの目標なり、一つの基準、計画というものの方向に向って、努力を集中していくということが望ましいと思うのでありまして、特に最近のこの産業界の事情を見ますというと、科学技術の非常な大きな変革も行われてきておりますし、こういうものを取り入れた経済の前途を考えますというと、私はもう少し、従来持っておる五カ年計画よりも、もう少し目標を大きくして、そうしてあらゆる政策を総合的に行い、努力するならば、われわれが念願しておるような国民所得を倍加するということが、倍増するということが、十年をもってできるのではないかという考えのもとに、そういう目標を与えて、専門的な各部局なり、あるいはいろいろな機能を動員して、その計画を検討せしめておるのが現在の状態でございます。  従いまして、それは日本経済の力や、あるいはその後におけるいろいろな各般の情勢変化、またわれわれが希望しておる国民生活の向上や、あるいは雇用問題の解決のためには、ぜひそういう目標に向って、あらゆる努力を集中していきたい、これが私の考えでございます。
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの話でわかりましたが、これは計画じゃない、目標なんですね、努力目標なんです。いかにも計画であるように言いますから、何か、非常に国民に、今にでもこの実現する錯覚を与えておるのですけれども、もし計画で、ほんとうにおやりになるならば、もっとそういう場合に、雇用はどうなるか、あるいはまた賃金の格差はどうなるか、国民の生活水準はどうなるか、そういうことを、やはりもっと具体的に作業をしなければならないと思うのですが、努力目標であると、それならばわかるのです。それは努力目標なら幾らでもできるのです。  しかし努力目標にしても、七・二%は、これは困難じゃないですか。最近二十カ年計画の作業1をこれは新聞に出ておりましたが、あれから見ましても七・二%は、私は困難だと思いますし、そればかりではなく、この間、こういう興味ある資料が公安調査庁から発表されておるのです。それは一九五〇年代の、ソ連の年平均が約八%の成長率、これに比べてアメリカは約三%である、この点が、ソ連側の最大の宣伝材料になっている。しかしソ連でも、経済規模の拡大に伴って経済成長率漸減の原則は免れないようだ。ソ連でも、あの計画経済をやっておるところでも、やはり成長率の漸減の原則は免れない、これは、公安調査庁の発表ですよ。ですから七・二%、これを十カ年続けることによって二倍ということは、これは努力目標としても、これは少し私は問題があるんじゃないかと思います。その点は少し、これは、それこそソ連政府の宣伝材料ではなくて、自民党政府の宣伝材料ではないか、こういうように思いますが、その点は、いかがなものでしょうか。
  145. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど申し上げましたように、私自身の考えは、これを目標として、今雇用の関係や国民生活水準がどうなるか、あるいは各種産業の関係が、どういうふうになるか、それについての財政計画は、どういうふうな裏づけをしなければならないか、あるいは国際収支の関係、外貨の関係は、どうなるかというようなものを総合的に、今の目標をもった実現性のある計画を、政府の部内の各方面を動員して検討させ、そして計画を立てたいというのが、私の考えでございます。  従って、その結論として、あるいはそれが無理である、こういう点において非常な無理であるという結論が出るか、あるいはそうじゃなしに、もう少し早くその目的は、こうすれば達するのだというふうな結論になりますか、とにかく私としては、少くとも十年間に、国民所得を倍増するという目標のもとに、あらゆることを総合して、合理的に検討をし、具体的な計画を樹立して、これのために必要な政策を推進していきたい、かように考えておるわけでございます。
  146. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君、時間が参りました。
  147. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、あとなるたけ端折って、ちょっとお許しを願いたいと思います。  目標と言われたり、計画と言われたりいたしておりますが、まあ計画でも目標でも、達成する御意思がある、御熱意がある、それは非常にけっこうだと思う。  それじゃ、かりに七・二%の成長率、これが持続できるとしましても、まだ前提条件が必要であると思うのです。それで時間がございませんから。その前提条件について、その第一に、これは基本的な問題になると思うのですが、今の資本主義の経済のもとで、そういうことができるかどうか、いわゆる自主調整というものによってできるのかどうか、これは基本的な問題ですが、この点、御所見を一つ伺っておきたいと思います。  それから第二に、日本の経済、外交、政治に、自主性がなければ、これは達成できないと思うのですね。たとえば外資依存に立って、外国の借款に、より非常にたよっておれば、それが成立しないときには、だめですよ。そういうような経済の主導権あるいは自主性というものがなければ、これは達成できない。この点について、自主性について、どの程度考えられておるか。  それから、これまで一般的に、ことに吉田内閣のもとでは、計画は赤である、計画というと共産主義である、こういうふうに言われたものです。従って一般的に、計画に対する嫌悪感というものがあるようです、保守の方には。こういう点について、やはり単なる努力目標というならいいのですが、ほんとうにこれを実施するとなると、計画当局の意思というものが非常に大切になると思う、計画当局の意思がですね。この点について、十分な意思が固まっており、徹底させることができるかどうか。  それから、日本は、海外依存度が非常に大きいのです。特に、そうして日本では、この経済自立を、あるいは十カ年計画をやる場合には、どうしても輸出の問題が大きいウエートを持ってくると思う。そのときに、いわゆる日本の輸出は、限界供給者としての立場がありますので、アメリカに非常に依存している日本の経済では、アメリカの景気変動をこうむる。そういうことでいいのかどうか。もっと安定した市場、景気変動のない安定した市場、そういうものとのやはり経済交易を、全部切りかえることは、実際問題としては困難でしょうが、そのウエートを景気変動のない安定市場との関連を考えなければいけないと思う。  そして、もしこれをほんとうに実現させるならば、佐藤大蔵大臣にお伺いしたいのですが、来年度の予算に、これは織り込まれるのか、実施計画も、これをお示し願いたいと思います。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、経済成長と申しますか、国民所得倍増について、総理からお答えがございました。御承知のように、ただいまの長期経済五カ年計画では、年成長率六・五%を見ておる。これだと十一年で倍増する、国民所得が。そういう計算になります。  そこで、この一、二年、両三年と申しますか、その間のわが国の経済の状態は、御指摘のように不振の状況にございまして、しかしながら昨年来、経済は立ち直って参りました。そこで私ども、ことに私自身について、非常に慎重論だという言われ方をいたしておりますが、私どもの経済の成長の目標と申しますか、これは安定した基盤のもとにおいて、できるだけ高度の経済成長ということを実現するように努力していく、そうして福祉国家建設と申しますか、あるいは雇用の増大をはかっていく、これが経済成長の私どもの理想とするところのものでございます。  そこで、いわゆる安定性を阻害するような成長、これは、私どもも反対でありますからーーインフレが起る、そして通貨価値が変動する、あるいはまた国際収支がアンバランスになる、それが通貨価値に変動を与えるーーこういうことがあってはならないのであります。その点で、安定、健全な成長ということを特に申しておるわけであります。  ところで、昨年の暮以来、上向いて参りました経済自身が今日たどっております姿は、私ども考えるような安定した基盤に立って、国際収支も改善され、同時にまた物価等の点から見ましても、通貨価値は維持されている。こういうことで今日当面しております経済情勢は、私どもとしては、まずまず考え通りに進んでおるやに実は見受けるのであります。ことに最近における鉱工業の生産指数の伸びであるとか、あるいは既設の設備の操業度が、もうすでに七六%をこすところまで参っておりますが、それらのことなど考えて参りますと、この際に、先ほど来、総理からお話しいたしましたような、さらにこの六・五%という成長率を、もう少し上げることは可能ではないか。そういう意味で、その作業を関係庁で一つやってみよう、その場合に、ただいま木村さんが御指摘になりましたように、いろいろ考えなければならない問題があるのであります。ことに全体の経済から見まして、非常に先進国であるアメリカやイギリス等の経済成長率は三%を割るとか、あるいは三%に近いとか、こういうものでございますが、後進国におきましては、経済成長率は、いかにも高い。公安調査庁の先ほど意見を発表なさいましたが、そういうことが、実は言えると思うのであります。私どもは、この通貨価値を安定した面においての経済成長が、どういう意味で可能であるか、それが御指摘になりますような雇用の面だとか、あるいは産業の面におきましても、どういう点に力を入れて参るかということ、あるいは財政的に、これをささえ得るかどうか、財政計画ももちろんでございます。そういう場合に、お話しになりましたような、どこまでも自由経済主義を貫いて、民間を指導するだけで十分なのか、いわゆる自主調整だけで、これができるのか、こういうような点が、一つ疑問として参るわけであります。これまた調査の対象として、こういう点を取り上げて参るつもりであります。  私ども、この計画自身について、かつて自由党以来、計画経済というものに、いかにも反対であるかのようなただいまの表現がございましたが、一つの指標を持つことは、当然であります。しかし計画経済が同時に統制経済、こういう意味で、また重点産業に対する統制経済、特別な産業を育成すると、こういうような計画経済については、私どもは賛成いたさないのであります。ただいま総理も、そういう意味で、自由経済の線において、これを育成していくということを申しておるわけでございます。そこで、いわゆる統制経済に陥らない、こういう意味においての指導なり、また民間の協力、これは強く私どもも要望するところでございます。  さらにまた資金の確保の面において、自主性がなけりゃならないということを言われましたが、ただいま私が説明いたしますように、成長率を高めた場合に、それが財政的に、財政計画としても無理のかからないような方法で、これを実現し得るかどうか、これは私どもの作業の対象であることも申すまでもないところであります。経済の海外依存度についても、もちろん私ども考えなければならないことでありますし、一面輸出の振興ということも、当然でございますが、国民生活の向上、内容を豊富にするということを考えて参りますと、ひとり輸出ばかりによる経済の強化というだけのものではないだろうと思います。こういう面では、貿易の輸入、輸出、その状況なり、あるいはまた国民生活を向上するための国民所得の倍増論でございますから、そういう意味においての各方面にわたっての調査、これを各関係省の調査を経済企画庁が中心になって十分遂げたい、また遂げる決意でおるわけであります。  そこで来年度の予算等について、どういう数字が出るかということでございますが、まだ三十四年度の予算を実施いたしまして、わずかな期間しか経過しておりません。そこで経済の問題は、過去半年ばかりの経過が順調に進んだと申しましても、今後の推移等も、十分考えて参らなければなりません。国内においての経済変動ばかりじゃなく、国際的経済変動も、多分に影響をこうむる今日の状況でございますが、それらについての見通しは、もう少し時間をかしていただきたい。また詳細なデータを各方面から取って参る。そうして私どもが、そのデータに基いて無理のかからない、言いかえますならば、通貨価値を維持しつつ、かような国民所得倍増、これが達成可能なりやいなや、これは十分また検討してみたいという考え方でございます。従いまして来年度の予算におきまして、それまでに、ただいま申すような倍増計画を樹立することができますなら、もちろんその予算編成に当りましても、それを編成の際、そういう計画を考慮に入れて編成すべきことは当然でございます。今日、企画庁を中心にしての調査研究でありますが、なかなか各般にわたる非常に膨大なものでございますから、非常な短かい期間に、この計画についての検討を終り得るかどうか、まことに、私ども心配をいたしております。  しかし岸内閣といたしまして、特に国民所得倍増論ということを打ち出して、関係各省もこれに積極的協力をするということでございますので、今しばらく、この作業の経過を、やはり社会党の皆さんたちからも、御支援を賜わりたいと、かように私どもお願いをする次第であります。
  149. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君に申し上げますが、持ち時間は、相当超過しておりますので、時間の関係もありますから、あともう一人、辻君がおられますが、休憩をいたさないでやりたいと思いますから、これで御遠慮願いたいと思います。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単にいたしますから、まあこれで一つ、ただいま……。
  151. 小林英三

    委員長小林英三君) まだ発言を許しておりません。木村君、発言を許しておりません。
  152. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に、もう一つだけ……。
  153. 小林英三

    委員長小林英三君) 御高見、大へん長いようですから……。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に、重要なことが一つ残っておりますから……。
  155. 小林英三

    委員長小林英三君) それじゃ、きわめて簡単に。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま大蔵大臣より、大へん詳細な御答弁をいただきましたが、結局問題は、財政の裏づけが最後は基本になると思う。ですから、大蔵省がどの程度本腰を入れるかということに最後にはなると思うのです。経済企画庁はいろんなプランを立てるにすぎない、といっては失礼かもしれませんが実際はそうです。財政的裏づけが実際できるかどうか。だからそれで大蔵大臣にその決意を伺ったのですが、そうしたら当然来年度の予算にもうその芽が出てこなければ、十カ年計画ですから、なりませんし、そうして財政的裏づけができると同時に、ただ目標達成だけじゃなく、問題はその内容ですよ、いわゆる賃金格差とか生活格差、所得の格差、最近はそういう貧富の差、そういうものがひどくなっておること。それから雇用の問題、これも新しい労働力を吸収するだけではなくて、現在の不完全就労者ーーいわゆる日雇いとかあるいは臨時工とか、そういう不完全就労者をどうして就労させるかという雇用計画、これがこれまでの計画ではみんなオミットされておるのです。新規の労働力だけの計画しかないのです。いつまでたってもニコヨンはニコヨン、臨時工は臨時工なんです。ですから計画を織り込むときにはこういう計画を織り込まなければだめです。それは社会党の計画でなければ実際はだめだと思います。そういう点に立ってみますと、実際はわれわれももちろんそういう計画を具体的に立てますけれども、対決をして参りたいと思います。政策をもって。しかしそれはただ努力目標というだけではないので、自主計画を立てるといってもいろんなやはり問題はございますので、自民党さんも社会党の政策に近づいてそれを代弁するというのならそれでもけっこうですが、私はそういう点について非常に問題があると思います。あまり、国民にただ宣伝するだけでなく、実際に所得二倍にする決意があるなら、その実施計画なりそれから財政的裏づけまでも明らかにされたい。  それから最後に池田通産大臣に伺いたいのですが、非常におそくなって恐縮でございましたが、池田通産大臣が賃金二倍論を唱えております。一般に賃金二倍論と所得二倍論を混同しておられるようですが、していない方もおられるかもしれませんが、これは別だと思うのです、全く違うと思うのです。それで池田通産大臣の賃金二倍論と、岸総理の所得二倍論はどういう関連があるのか、それを聞きたい。単なる言葉じりじゃないと思うのです。内容に大へん違いがあるのです。賃金を二倍にするには所得をどれだけしたらいいか、それは非常に内容的に違います。そこであの所得二倍論と賃金二倍論との関連性です。  それからもう一つは、もし賃金が上った場合、たとえば炭鉱における賃金が上った場合、コストに上った賃金が加えられますから、当然炭価は上ると思うのです。これまで池田通産大臣はそれを生産性向上において吸収できるというお話です。しかしそんな簡単にいくものかどうか。物価に対するはね返り、こういうものが非常にこの影響が大きいのでありまして、そんな簡単に全部生産性向上で吸収できるという問題じゃないのです。この点が第二点。  第三点は、一体だれの賃金が上るのですか。今所得の再分配なり賃金の問題につきましては、賃金格差が非常にひどくなっておるという点にあるのです。所得分配が非常に不均衡になっておる。特にシャウプ勧告の昭和二十五年以後、経済企画庁の経済白書によりますと、特に貧富の差、所得の不均衡が非常にひどくなっておる。単に賃金を二倍にする、所得を二倍にするということだけが大切じゃないと思うのです。貧富の差、所得の不均衡、賃金の格差の不均衡、こういうものを直しつつ賃金を上げなければいけないのでして、何だか非常に安易にこういうことが宣伝されておりますが、その三点について最後にお伺いしたいと思うのです。
  157. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。私の賃金二倍論が即所得二倍論でございます。従って、広島における講演におきましても、農家、中小企業の方々の所得も二倍にすべきであるということをつけ加えております。所得二倍論と同じとお考えいただきたいと思います。しこうして生産性の向上だけではできないじゃないか、それは全部がいろいろな原因があるのであります。私は、ちょっとあなたの先ほどの質問で異論のあることは、それはスターリンが七年間で所得を八割増しました、こう言っております。今度の計画で、しかし、過去の実績を私申し上ぎるのでございまするが、あなたと十年くらい前に議論したあのころの(「スターリンか」と呼ぶ者あり)ソ連でございますーーあのころの状態と比べますと、昭和二十四年の国民総生産と今の総生産とを比べますと、いわゆる三兆円あまりのものが十兆円をこえております。きょうの新聞では十兆七千億円といっておりますが、これだけ国民総生産がふえております。従って、一人当りの所得もふえておる。あの当時三万四千でございましたのが九万五千、これは朝鮮事変で物価の上り等がありますから調整しなければなりませんが、昭和二十六年から三十一年までとりましても、六年間に大体八割増しになっているのであります。私は、こういう結果から考えまして、生産性を向上し、そうしていろいろな、物資を増産して、増産せられたものを、今お話のように、低所得者の俸給を上げて、大衆に消費してもらうことが生産増強の母である、こういう考えで言っているのであります。(「うまいことを言う」と呼ぶ者あり)私は、今までの何が、ちょうど日本の経済の復興が農地改革によって、農民の所得が一時ずっと上ったということが日本経済復興の一つの原因であるということは万人の認めているところであります。従いまして、全体の所得を早く二倍にする、もちろん大蔵大臣の今言われたことは全部私は賛成でございますが、あえてつけ加えて申し上げることは、生産を伸ばしていってそうして大衆にこの生産物を使ってもらう、これが所得二倍論あるいは月給二倍論のもとでございます。もちろん国際収支を考えなければなりません。われわれはここまで発展したこの日本の経済を考えてみますと、無一物のところから賠償あるいはオープン・アカウントの焦げつき債権等を三、四億抜かし、あるいはまた為替銀行の方への貸付金の数億ドルを抜かしてなおかつ十億七千万ドル、あるいは今月末において十一億ドルになろうとしている、この日本人のまれに見るいい頭この日本人の努力があれば、私は十年たたぬうちにやってみたいという念願で、国民とともにやっていこうと決意いたしているのであります。私は、これは統制経済、共産圏のような特殊の社会が特殊の生産を伸ばすということだけではいかない。国民全体の消費を見合いながら国際収支を黒字にして、そうして生産を伸ばしていけばできないことじゃないと考えているのであります。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これで終りますが、今のは私はおかしいと思うんです。総所得の倍増と個々の所得の倍増が同じだ、全く同じだということはおかしいと思いますけれども、時間がありませんからこれはまた……。あまり池田通産大臣、同じだということを言われますと笑われますからね。これはもう少し検討されて御答弁願いたいと思います。時間が参りましたから……。
  159. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君の質疑は終了いたしました。
  160. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連。
  161. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に。
  162. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連で申しわけないんですが、ちょっと安保改定自衛隊の長期計画に対して、岸総理のお考え方と赤城防衛庁長官との御見解の中に食い違いがあると思いますから明確にしたいと思うんです。岸総理は、木村委員の質問に答えて、現行防衛計画、これを推進していく、従って安保改定に伴って自衛隊の計画を変更する意思はない、こういうふうに明確に答弁されました。赤城長官の方は、現在長期計画について検討しておると、もちろん結論的にはこれが影響をするとは言ってない。しかしその辺のニュアンスがどうも食い違いがありますから、この点は一つ明確にしていただきたい。  それから今の所得二倍論と賃金二倍論との問題でありますが、私は、この国会の本会議で岸総理相当確信に満ちて十カ年計画を発表された、ですからこれはけっこうなことであります。しかしそれには相当の、党としてもまた政府としても周到な準備と配慮を加えて、国民の前に私は公表したものだと思っておったのでありますが、先ほどの岸総理の御答弁を聞いておりますと、まだこれから検討していくのだと、こういうふうな非常におぼつかない御答弁をしておるわけでありますが、少くとも一国の総理として、また内閣の総理大臣として、ああいう御所見を発表するには、もう少しコンクリートしたお考え方を持って、国民の前にこういう所信を発表することが、私は至当ではないかと存ずるのであります。しかし御答弁を聞いて、これからどうなるかわからぬが、池田さんのような威勢のいいことを言う人もありますけれどもが、これが閣内の統一した意見になっておるのかどうなのか、そういう点が、非常に私は、自民党の立場に立っても、あまりにも無責任のような公党の立場であるような気がします。ですからそういう点をもう一回明確にしてもらいたい。  それからさっき亀田委員の質問で、委員長が打ち切られましたので、不明確になっていますから、もう一回藤山さんに伺いますが……。
  163. 小林英三

    委員長小林英三君) 鈴木君、関連質問だけにして下さい。先ほどというようなのじゃなしに、今の問題で……
  164. 鈴木強

    ○鈴木強君 それでさっき一番重大な核武装の問題とか装備の問題とか、海外派兵の問題とか一切これは協議をすると、協議が成立しないときには、これは拒否権の発動になるということを言われておるわけです。藤山さんもそのことについて、多少総理と違うようでありますが、そういうアメリカとの交渉の過程において、少くとも、私は多少ひっ込んだような論になるわけでありますが、そういう会議において、議事録の確認等は現実問題としておやりになっておるのでございましょうか。そういうような公表をされたことが、そういうことが、将来のあなたの所信を貫く立場に立った場合に、重要な一つのファクターになるということであれば、それも一つの方法かと思います。私はこの点を明確にしていただきたい。  それからもう一つは、安保改定の時期でありますが、本会議において、池田通産大臣は、かなり慎重論を唱えておったようでありますが、国民はかなり煮詰まってきて、あるいは来たるべき臨時国会なりあるいは通常国会にこの批准を求めるのではないか、こういうような考え方をしておると思いますが、そうしますと、われわれここで今短かい会期を終えるわけでありますが、大体この改定の時期をどのように今お考えになって交渉を進めておるわけであるか、これは明確に、見通しでありますから、慎重論もあるようでありますし困難もあると思いますが、外務大臣として、今担当され衝に当っておられる方として、どうお考えですか。この点をぜひこの機会にお聞かせいただきたい。  それからこれはよけいなことですけれども、新委員長を私信頼をしております。委員会の運営については信頼をしておりますが、やはり委員会には従来の慣行等もございまして、委員長もおかわりになったばかりですから、多少従来のことについてお知りにならぬ点もあると思いますから、私はそう無理は言いませんけれども、やはり短かい時間で、今はまだ七時です、九時になっておればこういうことは言いませんが、まだ七時、われわれは九時までも十時半までもやったことがございまして、やはり会期をきょう一日残しておるわけでありますが、できるだけ多少の関連質問等は生かして取り上げていただいて、そうしてやることが、私はこの国会の正常化に通ずることであるし、われわれ社会党のように数が少いと、強引にやられてしまうと、少数意見も発表できないわけでありますから、ぜひこれは委員長におかれましてもその点は含んでいただいて、われわれの最小限度の発言は許していただくように特に一つお願いしておきます。
  165. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長は、関連質問に対しましては発言を許可する方針でありますが、今鈴木君おっしゃったような、先ほどの木村君に対する直後の関連質問でなしに、前にさかのぼってやられるような関連質問は許さないかもしれません。
  166. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど私は、防衛計画の基本方針について、変更はないということを申し上げたのであります。防衛長官が申しました長期計画について検討中だということは、実は現在持っております防衛計画の根本方針は、先ほど申した通り国力あるいは国情に応じて変動する、それについて具体的にどういうふうな計画を作るかということについては、三十三年から三十五年までを何とした、一部は三十七年までのものもございますが、これは第一次の防衛計画として具体的に作っております。しかしそれに続いての第二次の長期計画というものを検討しているということでございまして、これは別に安保条約改定がなるとか、それを前提としてではございませんで、従来からの方針、三十三年ないし五年に引き続いての何として、従来とも国防会議並びに防衛庁で検討しているということでございます。その点についての矛盾はないと思います。  それから第二の長期経済計画、いわゆる国民所得を倍増するという目標のもとに、この長期の計画を立ててこれが実施に当りたい、ということを私は述べたのでございまして、そうしてそれに対する作業を関係各庁に向って命じ、そうしてそれについてのあらゆる努力を現在やっているわけです。こうして私がそういう計画を持ち、その計画を樹立したいということについては、閣議において、そういうことが可能かどうかということについて、相当いろいろな意見の交換をして、そういうことは可能だ、むしろ十年よりももう少し短かくできるのではないかという議論すらあったのでありまして、十年でそういうことをすることは非常な不合理であり、あるいはそういうことはとうてい不可能なことであるというような、閣議の席においても議論はございませんでした。それを目下検討しており、具体的に先ほどの御質問にもありましたような点も、十分取り入れて具体化し、できれば私の願いは、来年度の予算編成に第一年度として踏み出すような財政計画を打ち立てていく、かような実施計画を立てる、こういう考えでございます。
  167. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ただいま総理の答弁の通りでありますが、なお私の言葉が足らなかった点があると思いますので御答弁申し上げます。  現在の安保条約においても、日本防衛態勢の強化ということは期待されておる、しかし期待されておるが、今度の安保条約改定に当っては、対等の立場でありますから、安保条約改定されたからといって、それはアメリカ側から強制されたり義務づけられるということはあり得ない。そこで日本防衛態勢というものは、日本の自主的な立場からこれは立てていくべきものだ。そこで安保条約改定になったからといって、この防衛計画を急に変えなくちゃならぬという立場ではなくて、すでに第一次の防衛計画は立っております。ただいま第二次計画を策定中であります。それは前からの、安保条約改定いかんにかかわらず、防衛整備態勢の充実をしたいということは、これは改定のいかんにかかわらず方針は持っております。しかしこれも国力国情に応じて財政計画を立てていく、こういう国防会議の基本方針にのっとって、その制約のもとにやるべきことである、そういう点で今計画を設定中であります。こういう事情でありますので、総理の話と食い違っておりません。御了承願います。
  168. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほどの協議事項の問題でございますけれども、表現がまずかったか存じませんが、協議であります以上、われわれは両者が合意をしません場合には、当然それは行われないことになるので、拒否権と同じ考え方になり得るわけです。その意味において私はそういう考えを持っておる。持っておるだけではけしからぬというお話がありましたが、マッカーサー大使も同じようなことを考えて、協議という問題を取り扱っておりますので、協議によりまして、拒否権があるということは、われわれ両者の間で話し合っておりまして、確認できると思います。(「会議録はあるのですか、それを聞いておるのです」と呼ぶ者あり)それから話し合いにつきまして、一々むろん速記はとっておりません。こういう交渉でありますから。従ってそういう点につきまして、いろいろの議事についてはメモもとっております。そういうようなことで、前の会議の状況その他を慎重に検討しながらやっております。ただ速記はとっておりません。そういうことで、最終的には、いろいろ会談において重要な事項につきましては議事録等ができることになろうかと思います。現在の段階において今申し上げたような状況で進行しておるわけでございます。  それから締結の時期ということでございます。私は、この交渉に入ります前、相当、なるべく早い時期、何月何日ごろということを言っておりました。これはできるだけ交渉を促進し、できるだけ各省との関連のある事項もございますので、事務的にも進めていく上においては、そういうことをやって参らなければならない。しかしながら、いよいよ交渉に入って参りますれば、これは相手方との交渉でありまして、こちらの言ったことをすぐ応諾することでもございませんし、向うの言ったことをすぐ応諾することでもございません。従って交渉の時期がいつ最終的にきまるかということは、はなはだ言いにくいことになりますので、私もあまりそれを強くこのごろは言っておらぬのでございます。しかし現在まで、申し上げましたように、十回ほどの交渉を重ねてきておりまして、大体そういうような問題点については話し合いができつつありますので、これから草案を作り、また草案を作りますれば、一字一句等の問題についても相当検討して参らなければなりませんで、私自身、交渉の当事者としてはできるだけ早くやって参りたい、こう思っておりますけれども、現在の場合におきまして、いつごろ最終的調印ができるかということは、断定的に申し上げることはむずかしいと存じておりますが、今あれしております経過から見まして、そんなに、来年までかかるというようなことはないではないかとむろん考えます。   —————————————
  169. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻政信君。
  170. 辻政信

    ○辻政信君 持ち時間がわずかに十分でありますので、要点をごく簡単にお伺いいたします。  第一点は、戦闘機種の決定に当りまして、自民党の内部にも政府の中にも意見が対立し、またその間に民間人が入り、あるいは利権屋が暗躍しておるという醜態は、国民に政治優先という意味よりも、利権優先という疑いを抱かしております。この点について岸さんはいかなる責任を感じ、またいかにしてその疑惑を解こうとなさるか、それをお伺いいたします。
  171. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 次期戦闘機種の決定の問題につきましては、昨年の四月の国防会議におきまして、グラマン機に内定をいたしまして、その後このいろいろの点を検討いたして参ったのでございます。国会におきましても、これに対していろいろな論議が行われてきたのでありますが、私どもは、この決定に関連して、何か汚職であるとかあるいは不当なことが行われたとは絶対に考えておりません。ただこれを内定した当時におきましては、御承知通り、まだグラマン機も、これと同時に検討されておりますロッキードにいたしましても、あるいはノースロップにいたしましても、その他の機種にいたしましても、実際は多量に生産されておる段階でなかったので、まだほんとうに試験機が、完全な試験を終ったというわけでもなかった。従って内定をし、決定をしておらないのでありまして、それはなお不明確な数字や、あるいはただ理論的の数字等を、実際につきもう少し正確なものにした上において決定するという態度をとったわけでございます。ところが、その後ロッキードにつきましてはこれが量産され、アメリカの空軍がこれを採用し、あるいはまた後に西ドイツがこれを採用したというようなことがはっきりされております。また、ロッキードは量産をされて、そういうふうな数百機も実際に生産され、これが飛んでおるということから見まして、従来不明確であったところの数字等につきましても、いろいろな数字につきましても明確なものが出るようになったのでございます。従ってなお、この明確になった数字によりますというと、とにかくロッキードの持っておる非常な高性能、すなわち上昇力についてのスピードが非常に早いと同時に、その安定度と申しますか、エンジンがとまった場合におけるところの沈下速度が非常に大きい、いわゆる安定度が非常に悪いけれども、目標としておる迎撃機としての機能とする上昇力については、非常に、他のものがとうてい追随を許さないような状況であるというような点、あるいはまたこの価格の点につきましても相当に明確なものが出てきておる。それからまたこれを国内で生産する場合において、生産の準備期間等につきましても、相当明確なものが出てきておりまして、グラマン機を内定した当時とは事情がそういう点において非常に変ってきておる。ここで私どもは、国防会議において、従来グラマン機を内定したということを白紙に返して、さらにこれらの問題については、現地に専門のパイロットやその他の連中を派遣して、実際の何について、その機能やその他の安定度や操縦性等についても、実際について一つ、ドイツがやったような調査団を出してこれを検討し、そうしてその結果に基いて公平にきめると、こういう態度をとることが、最もこの問題を処理することについて国民の疑惑を解き、そうして正しい決定ができるゆえんであろう、かように考えて、過般の国防会議においてそういう趣旨の決定をいたしたわけでございます。
  172. 辻政信

    ○辻政信君 この問題について、政界に疑惑を巻き起した一つの原因は、アメリカのメーカーがあまりにもやっきになった売り込みに策動したという事実であります。ちょっと度はずれた、血迷った売り込み合戦であります。こういうふうにアメリカのメーカーが、それほどまでに売り込みを競争するその原因が那辺にあるとお考えになるか。
  173. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これはいろいろなことが想像されております。しかし、これはアメリカのそういう会社、この飛行機だけではなしに、コマーシャルの旅客機につきましても相当な売り込みが、激しい競争があるようであります。アメリカのコマーシャリズムの私は行き過ぎではないか、それが一番大きな原因じゃないかと思います。あるいはさらに一部の人々が、想像されておるように、有人機というものの将来性がないから、従ってこれに対して非常な何をするというふうな見方もあるようでありますが、しかし有人機の生命につきましては、現にドイツその他の何におきましても、やはりこれを採用いたしておりますし、アメリカ自体におきましてもこれをやはり相当持っておりますし、また有人機でなければならない、ミサイルの発達した後においても有人機の存在というものを全然無視のできないいろいろな基調もありますので、そういうことが主たる原因というよりも、むしろ私はアメリカのコマーシャリズムの行き過ぎである、かように考えております。
  174. 辻政信

    ○辻政信君 それも一つの理屈でございましょうが、私は、一部の意見としてではなしに、アメリカ軍が大体ミサイル重点に切りかえてきた。従いまして戦闘機のメーカーは失業のおそれが出て参りました。これは詳しいことは申し上げません。死活の問題として販路を日本に求めようとする、その活躍が激しくなった、こう見るのであります。  総理にお伺いしますが、現在問題になっておるこのグラマンとかロッキードの戦闘機は寿命が何年くらいであるとお考えになっておりますか。
  175. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 寿命とおっしゃると……。
  176. 辻政信

    ○辻政信君 性能がだんだん低くなって、役に立たなくなって参ります。
  177. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それはいろんな技術の発達や何か関連のあることでありまして、私自身、正確に何年くらいということを前提とするということは考えておりませんが、専門家の意見をお伺いする必要があると思っております。
  178. 辻政信

    ○辻政信君 今まで現われました戦闘機は大体一、二年で更新しております。今度のやつは多少もつだろうと思われるが少くとも三、四年たったら、もはやこれは第一線機としての価値がなくなる、こう見られているのであります。しかるに政府は一千億円の金を突っ込んで、そうしてアメリカと契約をして、二百機を整備されようとしてるが、それが国産してでき上って、ほんとうに使えるのは、四、五年先になります。その四、五年先までグラマンとかロッキードが第一線機として保ち得るということは、これは常識では考えられない。そうなった場合に、国民の税金一千億円というものが、つぶしのきかない戦闘機の国産に投ぜられるという結果を予想されるかどうか。
  179. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん国防会議におきましても、そういう観点についての論議もいたして参っておりますが、しかし国防当局の見解によれば、今辻委員言われるような、三、四年後にこれが役に立たないとか、あるいはいろいろ機能として取るに足らないというふうなことになるとは、むろん考えてておらないのであります。もちろん飛行機のことでありますし、非常にこういう方面におけるところの技術の発達というものは激しいのでありまして、私もこれができ上って長く、永久にこれがいいのだとかいうような考え方は持っておりませんけれども、今日の見通しからいけば、これを日本において生産することによって航空機工業の基礎を作り、さらに将来必要があるならば、それを基礎にして伸展していくというふうに考えるべきではないか、かように考えております。
  180. 辻政信

    ○辻政信君 スピードがおそいと言われますが、現実にグラマンが内定して一年間のうちに捨てなければならぬ、これは明らかにスピードが早いということを証明している。この理論でいきますというと、現在作ろうとする優秀機は、三、四年たったら私はおそらく使いものにならない、こういうものになると思うのであります。戦闘機というやつはつぶしがききません。それをよくごらんになって、総理のやられることは、その飛行機の安全性がどうであるとか、その価格がどうであるというけちな問題じゃない。この世界の非常なスピードの早い軍事情勢を見通して、一千億円がむだ金にならぬように、大所高所から御決定になるのが総理の責任で、調査団を派遣して、パイロットをやるのは、これは小さな問題であります。もはやその時期じゃないと思う。私は世界情勢を見まして、しみじみと感ずることは、グラマンもロッキードも全部御破算にされて、その一千億円の金をもって、四、五年後に起るであろう軍事情勢に即応するために、ミサイルの研究開発と同時に、また放射能に対して全国民を守るという研究、それにこそ使う場合において一千億が生きてくる、こう思いますが、いかがでありましょうか。
  181. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申し上げましたように、今日の状況から見て将来を見通して、今お話のように有人機というものが意味をなさなくなって、ミサイルに全部かわるというふうに私どもは見ることは適当でないんじゃないか。現にやはり滞空といいますか、ある程度空中にとどまって、そうしていろいろなことをすることがこれは必要であり、またいろいろ偵察、その他の機能というようなものは、ミサイルだけではこれは達せられないのでありまして、従ってどこにおいても有人機というものの機能、また効用というものは、やはり今日のところにおいてはこれは相当まだ続くものである、かような国防会議の見解でございます。
  182. 辻政信

    ○辻政信君 工業力のおくれた日本が先進国に追いつきますためには、途中の階段をピックアップして抜かなければなりません。将来起るであろうという目標をとらえて、途中の段階を省かぬというと、いつまでたっても落伍したものに追随をするという結果になる。それを見きわめるのが総理の大きな使命であります。これをごらんになったことありますか。
  183. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 何ですか……
  184. 辻政信

    ○辻政信君 それは西ドイツで作っております。西ドイツにおきましては、防衛の研究の重点を、放射能に対する民間防衛、全国民を放射能に対してどう守るか、これに年々二百八十億円の予算を組んでおりました。赤十字を中心として科学者を集めて徹底したことをやっております。これは五千万のドイツ人に一人残らず首にかけさせておる、子供もおとなも全部です。これは放射能の乾板です。この乾板を現像しますというと、致死量であるか、あるいは治療すればなおるのか、無害であるかということが直ちに出る。これに基いて国民収容医療の設備をふだんから真剣にやっておる。岸さんに一番お願いしなければならぬことは、戦闘機を作ることもいいのであるが、万一放射能によって九千万の国民が被害を受けたときに、それをいかにして救うかという研究を、現在の日本のどこにだれがやっているか。これはアメリカはやっております。ドイツは真剣です。日本のどこにだれがやっているか、これをお伺いしたい。これに一千億円使っても国民は文句を言わぬです。古ぼけた戦闘機に使うなら……。でありますから、私が言うのは、調査団の派遣なんかやめてしまう、そんな結論を待つ必要はない。もう少し達観をされて、防衛の重点を、九千万の国民を放射能に対していかに守るかということを真剣に御研究をいただきたいのであります。これは真剣に申し上げます。いかがでありますか。
  185. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これはわれわれは、実は核武装もいたしませんし、その核兵器で何をするところの任務とは事情が違っておりますが、しかし、原子力の平和的利用というものは、もちろん考えなければなりませんし、また、あらゆる面において放射能の研究ということは、これは平和的の見地からも考えなきゃならぬ問題でございますから、いろいろとその方面の研究も実はいたしておりますけれども、今辻委員の言われるような意味において、今日日本がそういう研究をいたしてはおらないのでございます。しかし放射能自体に対するいろいろな研究はいたしておりますという状態でございます。
  186. 辻政信

    ○辻政信君 私は、それははなはだ怠慢だと思います。防衛庁があり、総理がおられて、戦争をやらなくてもかぶるそれに対して、だれが責任をもって国民を守るか、これが防衛の主体であります。来年度の予算には、そのことを十分にお忘れがないように念を押しておきます。  次いで安保条約日米協力は、大ざっぱに見まして、軍事的には緩和方向をとり、経済的には強化される方向をたどるだろう。その例は、陸軍は全部日本から撤退をしていく、海軍も横須賀からハワイに下ろうとしておる。空軍も沖縄からグアム、ミッドウエーに後退をしようとしておる。これは軍事的な結合が緩和される方向をたどっておる。これに反して経済的な関係は、通商貿易においてより密接にしなければならないのであります。現行安保条約というものが締結されたときには、朝鮮事変のまつ最中であり、国際緊張が極度に達したときにやられておる。現在のアジアの情勢は、当時から比べると緩和をしております。そういう情勢にかかわらず、現在やろうとする改正案が逆をとっておる。軍事的に強化をして、経済的には通商貿易の障壁を破ろうとする努力が、外務大臣総理大臣も足りないんじゃないか、こういう感じを持ちますが、いかがでございますか。
  187. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度のわれわれが考えておる改定条約のうちには、経済的な意味における協力を一そう強化するような規定も置きたいと考えております。ただ具体的に見ますというと、今辻委員の御指摘のように、日米間においての防衛状況につきましては、いろいろ好ましくない状況がございます。にもかかわらず、総額においてはふえておりますが、これが障壁が取り除かれるならば、なお一そうふえる緊密なる関係があると思います。この障壁を取るためには、やはり日本内地において考えなければならぬーー自粛しなければならぬとか、いろいろいわゆるオーダリーマーケッティングのことを考える必要もあります。こういう点に関しましては、私どもも現在までいろいろな努力を続けてきておりますし、将来もそういう意味における努力を続けて参りたいと、かように考えております。
  188. 辻政信

    ○辻政信君 有効期限を十年とされた根拠を外務大臣にお伺いします。
  189. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもは、現行安保条約改定して参ります場合に、現行安保条約に期限がございません。従って、期限をつけて参らなければならぬことは、改定において当然なことだと思います。で、期限につきましては、いろいろの御議論がございます。二十年、三十年という御議論の方もありますし、あるいはその他の方法によって期限を決定する方がいいという、いろいろの御議論もございます。私どもは、現在の安保条約改定する場合におきまして、今の国際情勢をながめてみまして、必ずしも、現在の国際情勢が、みんながやはり平和を希求しておりますけれども、しかし、やはり安定はしておらぬ状況でありまして、局地的にも紛争の起る原因もあり、また起っておる状態でもあるわけであります。また一方、国連等におきまして軍縮会議が開かれましても、必ずしも、御承知のように、これが遅々として進んで参っておらぬ状況も、われわれは見ざるを得ないのであります。また、核実験禁止のジュネーヴ会議につきましても、みな禁止の意欲は持っておるようでございますけれども、なかなか方法論その他について、この会議も、御承知のように、昨年以来と申しますか、非常に長い時期をかけておるわけであります。そういうことでありますから、われわれといたしまして、やはり国際情勢の安定ということを考えてみますと、そう短期に非常な安定した状況にはならぬかと考えられるわけであります。むろん、兵器の進歩発達とか、あるいはそれに伴いましていろいろな国際情勢変化というものも考えられるとは思いますけれども、しかし、現在のそういうような状況から判断いたしますと、まず十年くらいが適当ではないかということを考えた次第でございます。
  190. 辻政信

    ○辻政信君 今の御説明を聞きまして、非常に大きな盲点が一つあると思います。この盲点というのは何か、科学の進歩に伴って、軍事の情勢、体制が非常なスピードでもって変って参りますが、アメリカが三、四年以内に空軍中心からミサイル中心の戦略に切りかえるといたしますと、アメリカの太平洋における戦略が根本的に変ってくる。どういうふうに変るか、赤城防衛庁長官。
  191. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) まだ戦略の研究をしておりませんので、答弁を差し控えさせていただきます。
  192. 辻政信

    ○辻政信君 これは単なる戦略の技術じゃない。常識であります。岸総理にお伺いいたします。どういうふうに変りますか、国防会議の議長としてお答え願いたいと思います。
  193. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、そういう事態になってきますというと、いろいろな変化があることは想像できますけれどもアメリカの戦略を私自身がこういうふうに変るというふうに申し上げることは、適当でないと思います。(「共同防衛すると言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  194. 辻政信

    ○辻政信君 やりは四畳半では使えない。やはり、広間でなければいけません。ミサイル中心になりますと、現在の防衛線が一歩後退して、アラスカ、アリューシャン、ハワイ、ミッドウエー、グアムの線に後退します。そうして、日本列島というものはレーダー基地の性格を持ってくる。こうなってきますと、沖縄、小笠原の軍事的価値というものが非常な変化をもたらす。そこに施政権返還の問題がからまってくることを、藤山外務大臣はお忘れになってはいけないのであります。現在は空軍中心でありますから、どんなにわめいても、沖縄、小笠原の施政権を返さない。しかし、三、四年後に戦略体制の変化が来ると、日本に返ってくる。従って、そのときに、基地とともに行政権も完全に日本に取り返すチャンスが出てくる。このチャンスが割合に早いということを見通すならば、十年の年期をこの条約にきめるということはまずい。日本のせっかくとろうとする時期を、十年先にお預けするということになる。いかに思われますか。
  195. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま辻委員の御指摘になりましたようなことが、あるいは私ども考えておる盲点であるかもしれませんが、軍事戦略その他については、われわれも非常に多忙をいたしておりますので、あるいは御指摘のような点があるかもしれません。しかし、そういうようなお話がございまして、沖縄が返ってきます場合には、当然今度の安保条約では、日本の施政権下に入りますれば、今度の安保条約範囲内になることは間違いないと思うのでありまして、そういうことは、われわれ、辻議員が三年たてばということは、非常にうれしいあれでありまして、われわれとしてもそういうことを覚悟して参らなければならぬと思っております。
  196. 辻政信

    ○辻政信君 そのときには、単なる適用地域変更するだけの変更じゃない。日本本土及び沖縄、小笠原における軍事基地が後退する。だから、日本日本人で戦術的に守るという事態が予見される。従いまして、それを前提とした安保条約というものは内容的に別個なものになる。でありますから、これをお急ぎなさるなという議論がそこから出てくる。  岸総理にお伺いしますが、これを批准なさるのはこの秋でありますか。それはちょうど朝鮮人の帰還問題に関連をして日韓の紛争が激化をしておる。そのときに、この条約を出して、安保条約賛成、反対で国論を両分させて、同時にそういう重大な問題をこの秋に控えて、一体政治はよいと思うか、悪いと思うか、どうでありますか。
  197. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の批准の時期につきましては、先ほど外務大臣お答え申し上げましたように、今日からいつだということをまだ予定するには早いと思います。しかし、いつであるにせよ、こういう問題に関して国論が分裂し、非常なその点において国内的な混乱等が生ずるということは、政治上適当でないことは、言うを待ちません。従って、私は、この安保条約に対する国民の理解と真の協力を求めるように、あらゆる努力をしていく考えであります。
  198. 辻政信

    ○辻政信君 私は、自民党を首切られたが、自民党を愛する点において、国を愛する点において、変りはない。ほんとうにあなたに申し上げます。今急がないで、少くとも二、三年お待ちになるということを、国内情勢、軍事の変化国際情勢変化考えて、国の運命に関するがゆえに、私を除名したあなたにほんとうに真心から御忠告するが、それを素直にお受けになる御意思はありませんか。
  199. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 辻君の私に対する誠意をこめてのお言葉に対しましては、私自身非常に素直にこれはもちろん拝聴をいたします。ただ、この安保条約の問題につきましては、これは辻委員のお考えと私の考えとが根本においてまだ違っております。すなわち、私は、今お話のような点も、それは将来において起ってくるかもしれないけれども、現在に即して、やはりこの不合理な安保条約を合理的なものにすることは適当であり、またそうしなければならぬと私は考えております。
  200. 辻政信

    ○辻政信君 では、少々反対が起ろうが、混乱が起ろうが、警職法のように途中で腰を抜かさずに、いかなることがあってもやり抜くという御決意ですか。
  201. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどから申し上げておるように、私は、国民の理解とその支持のもとに、ぜひこれを実現したいという考えでございます。
  202. 辻政信

    ○辻政信君 次は、政界の浄化について二、三点申し上げます。  私は過去五回の選挙を体験いたしましたが、今度の選挙ほど金に汚された選挙は経験したことがありません。また、悪質な個人攻撃の怪文書が公然と大量に流がされたことも初めてであります。一般若苑のマダムの物語」——恥かしい話でありますが、これは明瞭に有田さんを妨害する怪文書である。また私個人は——個人のことを申して恐縮ですが、「元参謀辻政信を裸にする」という、こういうパンフレットが大量に、党の全国の組織に、旧軍関係の諸団体に、遺家族に、自衛隊に、徹底的にばらまかれておる。私は選挙を終って調査をいたしました。誰がこれを書き、どこで印刷し、そしてだれが金を出したかつかんでおります。つかんでおりますが、この席上では申し上げない。これは私も自民党におった男です。その意味において申し上げない。ただ総理に申し上げることは、こういうことがほんとうにやられておるのですから、民主主義を冒涜することはこれ以上大なるものはない。真剣になって将来こういうことのないように改めていただきたいのであります。私個人の問題は別問題です。それだけをよく一つお願いしておきます。
  203. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 選挙の点につきまして、今回の選挙において、いろいろと目をそむけるような事態があったことを私も痛感をいたしておりまして、これがゆえに、公明なる選挙をするためにどういうふうに現在の選挙法を改正もし、あるいは運営の点等について、どうしたらいいかということを広く有識者の意見を聞いて、真剣にこの問題をやりたいと思います。買収というようなことが許されないことは言うを待ちませんが、同時に文書をもってのずいぶん誹謗したりあるいはいろいろな妨害をするというような事態であるとかいうようなことにつきましては、十分に一つ将来そういうことの根を絶つような、私は選挙の制度なり、運営の方針というものを確立する必要がある、かように思っております。
  204. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻君時間が参りましたが……。
  205. 辻政信

    ○辻政信君 あと二、三分お願いします。  ちょっと失礼なことをお伺いしますが、岸総理は、昨年山口県で公明選挙を御自身おやりになりましたか。
  206. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、私の選挙につきましては、決して今おあげになりましたような不当な、不公明なことはいたしておらないつもりであります。
  207. 辻政信

    ○辻政信君 あなたは山口県二区の法定選挙費は幾らになっておりますか、あなたの選挙区。
  208. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これははなはだ何でありますが、選挙事務長でないと、私正確に記憶いたしておりません。
  209. 辻政信

    ○辻政信君 六十五万二千二百円であります。これでほんとうにおやりになったと思うかどうか。私は過去五回やって参りました。自分でやらずに人にやれということはできませんよ、これは。今選挙が乱れ、政界が乱れているのは、最高の指導者がみずから範を示さない。まことに苦しいことを言いますが、ほんとうはそうです。あなたも真剣になってやればできます。このことで票は減ってもいいから公明選挙をやりなさい。それを一人が踏み切ればできるのです。総理がそれを見逃すことでは、いかに選挙法を改めてもできない。私はまことに残念に思う。  最後に一言大蔵大臣に佐藤さんをやられた理由、それはいかがですか。
  210. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは私内閣を組織する際に、党内においてできるだけ適材適所に置くという見地から人物の選考をいたして各大臣を任命いたした次第でございます。
  211. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻君もう時間がきております。
  212. 辻政信

    ○辻政信君 一つだけでいいです。
  213. 小林英三

    委員長小林英三君) もう一点だけ……。
  214. 辻政信

    ○辻政信君 地方自治法の百六十九条、そごに親族の就職禁止として、県知事または市町村長がその近親者を出納長または収入役にしてはならないと、こう書いてあります。この立法精神は何か。汚職を防止するための立法精神であります。国政の全般に通ずるものであります。佐藤さんがりっぱな人であるということはわかっております。わかっておるが、地方の市町村長にこれを要求しながら、総理がその法の精神を無視して、自治法をまじめにやれと言えますか、いかがでございますか。
  215. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は国務大臣、各大臣の責任及び行動というものにつきましては、各この下級官庁等の関係とはおのずから、——責任とはおのずから別だ、全責任をもって行うことでございますから、この自治法のことによって、そのままこれを内閣の制度にもやるということとは違っております。すなわち都道府県の出納長と県知事の関係と、私はこの内閣における総理大臣と大蔵大臣の関係は、これは違う、こう思います。
  216. 辻政信

    ○辻政信君 もう一点だけ。ただいまのお答えを聞いてはなはだ私は不思議に思います。党内に人材がないというわけではない。池田さんも、それから一萬田さんも、福田さんもたくさんおる。人材がないというわけではない。佐藤さんが私は悪いとは言わない。個人としてりっぱな方である。問題はこういうことを規定した立法の精神というものが、権力の座にすわっておるものが肉親に金庫を握らせてはいけない。この鉄則を掲げた立法です。まさか総理大臣がそういうことをやろうとは思っていないから、大臣の任命について書いてないだけです。おそらく世界の政治史においてこういう人事をやったのは、失礼ですが、あなたと蒋介石だけです。蒋介石はなぜ敗れたか、私は終戦後重慶に入っていって見てきた。敗れた原因は、蒋介石は国民党の総裁であります。そして政治と党と軍隊と警察を握っておる。その義兄の宋子文を財政部長にして、蒋一家で国の政治と軍事と経済を握って、そこに汚職が生まれてきた。骨の髄までくさって、軍隊を持ちながら、党を握りながら、共産党に負けた原因がある。私は決してこれは私情を差しはさんで申し上げておりません。あの蒋介石の負けたのをこの目で見てきて、日本に帰ってきて、しみじみ見たのがこれなんです。保守党を愛するがゆえに、岸さんを思えばこそ言うのです。これではいけません。あまりに行き過ぎであります。無理はいけません。国民は直感的にこの人事はいかぬと思う。これは私は決して侮辱するわけではございません。どうか答弁は求めませんが、現在の行き方を見ておるというと、権力を握り、多数をたのんで横暴をやる、正しい民の声が通じない。その結果が、警職法をいかに改正しても、とうとうとして下の方は共産党に取られるという結果であります。それを恐れる、自分で見ておりますから、今度の選挙で自民党が勝ったのはうれしいが、これは自民党だけの力ではない。社会党がエラーをやるから、そのエラーによって保守党は勝つておる。しかも保守党の汚職が共産党を培養するという因果関係であります。その点をどうか虚心たんかいに、無礼な言とせずに、静かに胸に手をあてられて反省なさいますことを質問の最後に申し上げまして、御答弁を求めずに私の質問を終ります。
  217. 小林英三

    委員長小林英三君) 以上をもちまして、質疑通告者の質疑は全部終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十八分散会