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国務大臣(
佐藤榮作君)
先ほど来、経済成長と申しますか、国民所得倍増について、
総理から
お答えがございました。御
承知のように、ただいまの長期経済五カ年計画では、年成長率六・五%を見ておる。これだと十一年で倍増する、国民所得が。そういう計算になります。
そこで、この一、二年、両三年と申しますか、その間のわが国の経済の
状態は、御
指摘のように不振の
状況にございまして、しかしながら昨年来、経済は立ち直って参りました。そこで私
ども、ことに私自身について、非常に慎重論だという言われ方をいたしておりますが、私
どもの経済の成長の目標と申しますか、これは安定した基盤のもとにおいて、できるだけ高度の経済成長ということを実現するように努力していく、そうして福祉国家建設と申しますか、あるいは雇用の増大をはかっていく、これが経済成長の私
どもの理想とするところのものでございます。
そこで、いわゆる安定性を阻害するような成長、これは、私
どもも反対でありますからーーインフレが起る、そして通貨価値が変動する、あるいはまた国際収支がアンバランスになる、それが通貨価値に変動を与えるーーこういうことがあってはならないのであります。その点で、安定、健全な成長ということを特に申しておるわけであります。
ところで、昨年の暮以来、上向いて参りました経済自身が今日たどっております姿は、私
どもが
考えるような安定した基盤に立って、国際収支も改善され、同時にまた物価等の点から見ましても、通貨価値は維持されている。こういうことで今日当面しております経済
情勢は、私
どもとしては、まずまず
考えた
通りに進んでおるやに実は見受けるのであります。ことに最近における鉱工業の生産指数の伸びであるとか、あるいは既設の設備の操業度が、もうすでに七六%をこすところまで参っておりますが、それらのことなど
考えて参りますと、この際に、
先ほど来、
総理から
お話しいたしましたような、さらにこの六・五%という成長率を、もう少し上げることは可能ではないか。そういう
意味で、その作業を
関係庁で
一つやってみよう、その場合に、ただいま木村さんが御
指摘になりましたように、いろいろ
考えなければならない問題があるのであります。ことに全体の経済から見まして、非常に先進国である
アメリカやイギリス等の経済成長率は三%を割るとか、あるいは三%に近いとか、こういうものでございますが、後進国におきましては、経済成長率は、いかにも高い。公安
調査庁の
先ほど意見を発表なさいましたが、そういうことが、実は言えると思うのであります。私
どもは、この通貨価値を安定した面においての経済成長が、どういう
意味で可能であるか、それが御
指摘になりますような雇用の面だとか、あるいは産業の面におきましても、どういう点に力を入れて参るかということ、あるいは財政的に、これをささえ得るかどうか、財政計画ももちろんでございます。そういう場合に、
お話しになりましたような、どこまでも自由経済主義を貫いて、民間を指導するだけで十分なのか、いわゆる自主調整だけで、これができるのか、こういうような点が、
一つ疑問として参るわけであります。これまた
調査の対象として、こういう点を取り上げて参るつもりであります。
私
ども、この計画自身について、かつて自由党以来、計画経済というものに、いかにも反対であるかのようなただいまの表現がございましたが、
一つの指標を持つことは、当然であります。しかし計画経済が同時に統制経済、こういう
意味で、また重点産業に対する統制経済、特別な産業を育成すると、こういうような計画経済については、私
どもは賛成いたさないのであります。ただいま
総理も、そういう
意味で、自由経済の線において、これを育成していくということを申しておるわけでございます。そこで、いわゆる統制経済に陥らない、こういう
意味においての指導なり、また民間の
協力、これは強く私
どもも要望するところでございます。
さらにまた資金の確保の面において、
自主性がなけりゃならないということを言われましたが、ただいま私が説明いたしますように、成長率を高めた場合に、それが財政的に、財政計画としても無理のかからないような方法で、これを実現し得るかどうか、これは私
どもの作業の対象であることも申すまでもないところであります。経済の海外依存度についても、もちろん私
ども考えなければならないことでありますし、一面輸出の振興ということも、当然でございますが、国民生活の向上、
内容を豊富にするということを
考えて参りますと、ひとり輸出ばかりによる経済の強化というだけのものではないだろうと思います。こういう面では、貿易の輸入、輸出、その
状況なり、あるいはまた国民生活を向上するための国民所得の倍増論でございますから、そういう
意味においての各方面にわたっての
調査、これを各
関係省の
調査を経済企画庁が中心になって十分遂げたい、また遂げる決意でおるわけであります。
そこで来年度の
予算等について、どういう数字が出るかということでございますが、まだ三十四年度の
予算を実施いたしまして、わずかな期間しか経過しておりません。そこで経済の問題は、過去半年ばかりの経過が順調に進んだと申しましても、今後の推移等も、十分
考えて参らなければなりません。国内においての経済変動ばかりじゃなく、国際的経済変動も、多分に影響をこうむる今日の
状況でございますが、それらについての見通しは、もう少し時間をかしていただきたい。また詳細なデータを各方面から取って参る。そうして私
どもが、そのデータに基いて無理のかからない、言いかえますならば、通貨価値を維持しつつ、かような国民所得倍増、これが達成可能なりやいなや、これは十分また検討してみたいという
考え方でございます。従いまして来年度の
予算におきまして、それまでに、ただいま申すような倍増計画を樹立することができますなら、もちろんその
予算編成に当りましても、それを編成の際、そういう計画を考慮に入れて編成すべきことは当然でございます。今日、企画庁を中心にしての
調査研究でありますが、なかなか各般にわたる非常に膨大なものでございますから、非常な短かい期間に、この計画についての検討を終り得るかどうか、まことに、私
ども心配をいたしております。
しかし岸内閣といたしまして、特に国民所得倍増論ということを打ち出して、
関係各省もこれに積極的
協力をするということでございますので、今しばらく、この作業の経過を、やはり
社会党の皆さん
たちからも、御支援を賜わりたいと、かように私
どもお願いをする次第であります。