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参考人(
木下一雄君) 本年八月、
全国都道府県委員長協議会におきましては
臨時総会を開きまして、
昭和三十五年度
文教予算等につきまして
政府に御
要望申し上げますこと等を取りきめました次第でございます。その中に、
学校運営の
正常化と
管理指導体制の充実について、という
項目がございまして、その項の中にただいま今日の議題にもなっております
教職員団体の
専従職員及びその
構成等につきましての項がございます次第でございます。その点につきまして
全国の
教育委員長協議会におきまして考えました案としましたことを、骨子を御
説明申し上げたいと思うのでございますが、なおこの件につきましては、
全国都道府県教育長協議会におきまして、それぞれ各
部会に分れまして
教育の問題につきまして
部会を持っておりまして、その面から十分
事務的その他からその
部会におきまして
研究調査されまして、それにおきまして
原案ができました。その
原案をもとにいたしまして、私
ども委員長協議会としてこれを認めたものでございまして、この
原案の作成につきましては
十分教育長協議会の
部会におきまして
検討されたものでございますので、私が
委員長協議会としてまとめましたものにつきまして御
説明申し上げますとともに、私に次ぎまして、
全国教育長協議会の
幹事長である
東京都の
本島教育長より、さらに私の話を補いまして御
説明申し上げることをお許しいただきたいと思うのでございます。
私
どもはこの
学校運営の
正常化という
立場におきまして、どこまでも
教職員の
教育の
実績を上げるということにつきまして、
中心にこの問題が考えられて参ったのでございます。私
ども公務員といたしましても、公務の執行を確保するという建前のもとに、
教職員の場合は、
十分教育の
実績を上げるということの点につきまして考慮しました。その結果といたしまして、現在の
専従職員、これは認められたものでございますけれ
ども、その点につきましてこれは考えなければならぬという、いろいろの点が出て参ったのでございます。
その、まず
一つは、
期間の問題でございます。その次は数の問題でございます。
まず
専従教職員の
期間並びに数ということにつきまして
検討をいたしました次第でございます。その他なお二、三点がございますが、私は主としてこの面から申し上げたいと思うのでございます。
この
教職員が
専従者といたしまして、
長期にわたりまして
教育の
現場を離れますということは、これは今日の
教育の進んでいきます状況から考えまして、
教育の上に、特に
専従者自身の上に非常な私は困ることが起ってくるのではないかと思うのであります。たとえば今日は
道徳教育というようなことが、これは新しく時間も特設されまして、その
内容等も
十分検討をして、新しい
時代に備えました
道徳教育を進めていかなければならないというようなことでございますが、すでに
東京とか、あるいは
全国を通じまして、
教育内容等につきましてはそれぞれ
教育者の間におきまして、
現場において熱心な
研究会が持たれまして、私
どもかような
研究会にときどき参加しておるのでございますが、その
内容等の
研究につきましては、実に新しい
時代の
道徳教育にふさわしいような
研究が積み重ねられていっておるのであります。かようなことが一年積み重ねられ、二年積み重ねられ、三年積み重ねられしていくことによりまして、
道徳教育の真価は上ってくると思うのでございます。かような点につきましても、
教育専従者として、一年、二年、三年でなく、さらに
長期にわたりまして
専従であるということは、
教育の
現場にありまして
教育のことをさように
研究しておる者と比較いたしまして、そこに大きな差ができてくるということは当然であると思うのであります。三年あるいは四年、五年という、あるいはもっと
長期にわたりまして
現場を離れておるということと、一年、二年、三年ずっと
研究を積み重ねていった者と、これを比べますと、非常なそこに相違が起ってくるのであります。全部がさような積み上げていく中におきまして、その間数年
ブランクにしておきまして、
現場にかりに帰ったといたしましても、その間の
教育のすでに進んでおるということの実態と比べまして、
現場に復帰いたしましたときに非常に困難なことではないかと思うのであります。もとよりこの点につきましては、自分らも
教壇に復帰すれば、直ちにさような、長い
閥現場にいた者と負けないようにやるということを言っておる者もあるようでございますけれ
ども、私
どもは今日の
教育の日々進歩していくという点からいいましたならば、研修を続けておる者には全くかなわないと思うのであります。これは
ひとり道徳教育の問題ばかりでなく、
理科教育にいたしましても、
理科教育にいろいろ使われますものも、
初等教育は
初等教育、
中等教育は
中等教育におきまして、それぞれ新しく進みました今日の科学を反映いたしましてのいろいろの施設もあると思うのであります。これも数年の
長期にわたりまして
ブランクにいたしておきますことは、これは復帰いたしました後に非常な差しつかえが起るのではないかというふうに考えます。あるいは
視聴覚教育の
一つを取り上げましても、今日
視聴覚教育が日々進んでおるというのに、この間数年の間、全然それに触れないで、
教壇に復帰いたしました場合に、まことにこれらの人は困るのではないかということは、明らかにこれは考えられることであります。
次に、数の点につきまして申し上げたいと思うのでございますが、これはすでに国の
文教施策の中におきましても、
すし詰め学級解消ということで、すでに
政府におかれましても、五カ年の計画でもって、これが
解消に努められておることを伺っておりますのでありますが、これもまた大きな
教育の問題であります。ここに私
どもは
教育の
実績を上げていくということのために、かような
教育の場における
教育規模の
適正化ということを考えて参ります。この
教育規模の
適正化ということを考えまして、これを二つの方面から考えますと、
一つは
学級規模の問題になります。この
学級規模の問題につきましては、一
学級五十人以下ということで進んで、だんだんと国の
予算も進められてくるようでありますが、もう
一つの問題といたしまして、一
学級の
教員定数の問題であります。この
教員定数の問題は、やはりこの
学級規模の
適正化とともに考えて参らなければならないものでございます。ところが、この
教員定数を確保するという
問題一つにいたしましても、実はこれは困離な問題があるわけでございます。もちろんこれは
予算の面からも、たとえば
東京都におきまして、小
学校の
教員の
定数が一、三一でございますけれ
ども、これをかりに一・三二にするということになりますと、
予算措置は相当なものになりまして〇・〇一を増すということさえなかなかむずかしいのであります。また、
東京都の現状から考えまして、
東京都におきましては、来年度におきまして
中学校の
生徒が七万人ふえることになっておるのであります。その七万人につきましてこれをいかにして収容するか、千人の
中学校を七十こしらえなければ来年度の
中学校の七万人の
生徒の増加に対しては、これを適当にするわけにいかないのであります。かようなことになって参りますと、この
現場におきましての
教員を確保するということは、
教育の
実績を上げるにおきまして、一人でも実は重要な問題になって参るのであります。
東京都におきましては、
教員定数の中に
専従者も含めておるのでございますが、これは含めておきます。そのほか
指導主事等も含まれて参りますが、やはりこれを含めておきませんと、教職に、
現場に復帰いたしましたときに困ることになって参ります。どうしてもこれは含めておく。ただいまのような次第でございますので、一人の問題が実にこれは重要な
教員の担当する分量になってくるのであります。従いましてさような
意味からいたしまして、
専従者の数と申しますのは、
教育の
実績を上げる
現場の面からいいますと、一人でもこれは
現場に確保しておきたいというのが、今日の
児童生徒数の激変する時期におきまして重要なことなのであります。
東京都におきまして小
中学校の一
学校の
規模は、大体二十三
学級ないし二十四
学級を平均とするのでございますけれ
ども、その二十三
学級の
学校におきまして一年の
職員の増減…これは定員を一人増すということは容易なことではございません。その一人の存在ということが実にこれは重要なことになってくるのであります。ということから考え及びまして、おそらくこれは
全国の
学校の場合におきまして通じて考えられることでありまして、
ひとり東京都の点から申し上げるのではないのでありますが、具体的な事実に立脚いたしまして
東京の例をあげて申し上げた次第でございます。
さようなことからしまして、
教育委員長協議会におきましては、この案を作りますときには、
教職員組合結成当時の
労働協約等によりまして、その構成する
組合員およそ千人につき一人という形にいたしました次第でございます。要するにこれらのことは、すべて私
どもは
教育の
実績を上げるという面から考えて、この
専従の問題にまで考え及びましたものでございます。私
どもがかようなことを
委員長協議会として発表いたしましたときに、一方からは、これは
組合運動に対する不当な弾圧であるとか、あるいは
政治的意図を持ってするものであるとか、いろいろその間におきまして批評を伺ったような次第でございますけれ
ども、私
どもの考えておりますことは、
教育の
実績を上げる
現場の点からかようなことが痛切に考えられて参りましたものでございます。なお、この点は本年初めてさようなことが考えられたのではございませんので、昨年の三十四年度の
文教予算その他の
措置等におきまして、
全国教育委員長協議会がいろいろの問題を取り上げましたときにも、この問題は痛切の問題として私
どもに考えられ、昨年の
要望の中にもこれが入っておる次第でございます。なおしかしながら、この問題はいろいろの点から考えなければならないことでございまして、
教育公務員以外の全部の
公務員に
関係する問題でもございますし、これまた
ILO条約第八十七
号等の
批准に関する
答申を拝見いたしましても、あるいはそれに伴います
労働問題懇談会の小
委員会のいろいろの御
報告を
伺いましても、さような点につきましては十分これは
研究しなければならない。たとえ
教育の
実績を
上ぐるという点から考えられましても、これを
正常化のためにさようなことについて具体的に考えるという場合におきましては、
関係するところが多いものでありますから、その点につきましては
教育委員長協議会といたしましても、十分この点に
検討をされるよう、
政府に対しましてその対策を
一つお考えいただきたいという
要望をしたものでございます。しかし、
ILO条約の
答申並びにそれに対する
懇談の
報告等を
伺いましても、これは
業務の正常な
運営ということから考えるべきであり、また
行政事務に従事する
公務員の
立場というものも考える必要があるというようなことがこの
報告の中にも書かれてあるようでございますので、この点は
一つ教育委員長協議会といたしましては、いろいろなことを勘案されまして、
政府に善処の
方法をお願いいたしましたような次第でございます。
教育委員長協議会といたしまして、
専従問題を取り上げました
趣旨は、かような次第でございます。