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説明員(磯崎叡君) ただいまの御
質問についてお答えを申し上げますが、ちょっとその前に、運賃制度調査会の
お話が出ましたので、運賃制度調査会の設立——簡単な経過だけちょっと申し上げましてお答えいたしたいと思います。
この運賃制度調査会は、鉄道の運賃、あるいはもろもろの旅客、貸物の運賃制度につきましての、最近の飛行機とか自動車等の発達の
現状にかんがみまして、新しい鉄道の運賃制度がいかにあるべきかということを検討いたすために、一昨
昭和三十二年の秋にできたものでありまして、この会長は原安三郎氏で、
委員は二十五名おられます。
ただいま先生のおっしゃいました
通り、この中で
教育関係の方といたしましては、東大の紺野先生、拓殖大学の高橋先生、大阪市立大学の富永先生、それから全国高等
学校長協会会長の両角英運先生と、これらの方々が直接
教育に御関係になってる方々でございます。そのほかは
新聞あるいは私の方の関係の、運輸関係の人あるいは国鉄労働組合の顧問、そういったいわゆる学識経験者にお集まりを願った
委員会でございまして、過般七月の上旬まで約八十何回かの会合を旅客及び貨物運賃の双方について開かれました結果、一応の答申を出されたわけでございます。なお、まだこの運賃制度調査会は継続されておりまして目下貨物運賃の詳細の点について現在なお検討中でございまして、多分来月の下旬くらいまではかかるのではないか。最終的な全部の答申が完了いたしますのはあとまだ二カ月くらいかかるのではないか、こういうふうに考えられております。この中でいろいろ問題がございまして、今申しました
通り、貨物運賃、旅客運賃の全般にわたる問題でございましてその中の旅客運賃の問題のうちの
一つとして、運賃の割引の問題が
議題になったわけでございます。運賃の割引と申しましても実はたくさんと申しますか、いろいろございまして、例をあげて御説明申し上げますと、身体障害者の割引あるいは被救護者の割引あるいは戦死軍人遺族の割引、それから今
お話の学生の割引、それから傷痍軍人の、これは割引でなしに運賃の免除、無賃乗車の問題、これは一〇〇%割引ということになりますが、いろいろこういう割引がございます。これらのことについていろいろ検討されたわけでございまして、この中で金額的に一番大きいのは今
お話しの学生の割引でございまして、年額割引の額といたしましては、約二十八億の額に上っております。すなわち学生の割引は
昭和二十三年にその当時まで二割でございました。国有鉄道創設以来と申しますか、古くから二割で割引いたしておりましたのを
昭和二十三年の八月に五割に一挙に引き上げまして、この制度は御
承知の
通り学生の休暇の際に帰省するための、家に帰るための旅行の援助というような趣旨でもって創設されたものでございます。これらをどうするか。この学生に対する特殊な優遇措置をどうするか、と同時にこれと並びまして、国鉄は現在の経営
状態と申しますか、
財政状態と申しますか、これらと関連して、これらの割引をどう調整するかというようなことについていろいろな
議論が戦わされました。今どの方がどういう
議論をされたかということを申し上げるだけの実は速記録を持って参りませんでしたが、大体の審議経過だけを御説明申し上げます。
学生の割引が今申した
通り帰省旅行というものの援助の方法として創設された趣旨にかんがみまして、まず割引を適用する期間、すなわち現在は通年と申しまして一年じゅう学生の任意の時期にいつでもこの割引証をもらえることになっております。この期間をある程度休暇ということと関連して制限するということも考えられるのではないかということも種々
議論になりました。また旅行の目的、すなわち遊びに行くとか、あるいはそういった種類のものは学生なるがゆえに特別な恩典は与えられるべきでない、この制度の趣旨から申しますれば休暇中の帰省あるいは広く広げても
学校の研究旅行といったような学生の旅行の目的、それが学生なるがゆえにある程度の援助を必要とするという学生なるがゆえのある程度の旅行目的というものも考えるべきでないかという建前から、旅行の目的でもって制限することができないであろうかという問題、あるいは割引率、現在の半額という大幅な割引の率を調整する方法でもってできないか、おおむねその三つの案について各
委員からいろいろ論議されたわけでございます。しかし、いろいろこれは数回にわたって論議されました結果、第一の割引の適用期間で制限するということは、現在の
学校の制度は必ずしも三学期制度をとっていない、二学期制度の
学校もあるといったような、
学校の学期制度の関係から申しまして非常にむずかしいのではないか、ことに後ほど申し上げます、この
学校の中には各種
学校と申しまして非常にいろいろな技芸その他を教える
学校も相当入っております。こういう
学校になりますと、必ずしも
一般の
学校と違った学期制度をとっておる
学校もあるということでもって、そういった適用される学生の立場から申しましても、適用の期間を制限するということは実際問題として非常にむずかしいのではないかということでもってこれは実現が不可能であるということでもって
議論は一応打ち切ったわけでございます。次の、目的でもって制限するということも種々論議されました。これは、ことに
学校関係の方々から、もちろん単に学生がスキーに行くとかスケートに行くとか、そういう遊びについて学生なるがゆえに、同年のほかの青年より特別の待遇を受ける必要はないと思うが、遠方から来ておる留学の
生徒が家に帰る、いわゆるこの割引の設立の目的の趣旨、帰省の建前、あるいは
学校が一緒になりまして集団的に旅行すると申しますか、いわゆる学生なるがゆえの研究旅行、こういったものにつきましては当然これは考えてやるべきだという
お話もございました。しかし、これもいろいろ
議論し、やはり各種
学校の問題になって参りますと、この目的ということが必ずしも明確にならないという点もございますし、また同じ研究と申しましても、大学の場合の研究の目的と高等
学校の場合の研究の目的とはおのずから違って、ただ一律に研究という
言葉でもって全部をカバーするには少し無理があるというようなことからいたしまして、この研究目的、帰省目的というだけでもって制限してその他を使わせないということもこれは無理ではないかということでもって、この点も
議論が打ち切りになりました。結局最終的に残りましたのは、きわめて技術的な問題になりますが、割引率をどういうふうに調整するか、その調整の方法としていかなる方法が最も妥当であるかということについていろいろ検討されたわけでございまして、現在の学生の割引の方法は、これはきわめて技術的な問題で恐縮でございますが、現在学生が百キロ以下の旅行の場合にはこれは割引をいたしておりません。すなわち学生が、小田原へ行くとか、あるいは近間の百キロ以内の所に行く場合には割引をいたしておりませんが、百一キロをこえますと、そこから割引が始まるわけでございます。百一キロをこえますととたんにもとの一キロから割引する、こういう非常にむずかしい制度になっております。ですから逆に申しますと、五十六キロのところの運賃の方が百一キロの運賃より高くなる。具体的に申しますれば小田原まで旅行する学生は小田原までの普通の切符を買うよりも熱海までの学割を出して熱海までの切符を買った方が安い、こういうことになるわけでございます。そういう非常に運賃制度上も不合理であるし、また社会的に常識的に見ておかしい、その点を是正すべきではないかということでもって一応の結論としては、今の制度をそのまま残しまして百キロまではやはり割引しない、百一キロをこえたならばそのこえた分について今までと同じように五割の割引をする、こういうことにいたしますと、先ほどのこの学割の趣旨、たとえば遠距離の学生、遠距離から東京なり大阪へ留学している学生になりますと、この改革による影響は非常に少い。しかし、近間の旅行する学生、すなわち近間の百キロから二百キロぐらいまで旅行する学生には多少の影響はあるが、遠くの帰省という目的からいえば割合に影響は少い。そういう趣旨でもって一応の案といたしましては遠距離となるに従って影響は軽微となる、そういう方法をとるべきではないか。非常にこまかい点で恐縮でございますが、そういうような
議論がさまざまされました結果、一応のこの答申といたしましては百キロまでは今まで
通り割引しない、百一キロをこえた分については五割の割引をする、そうして旅行の目的あるいは旅行の期間ということについての制限はしない、こういうような答申が出て参ったわけでございます。
これと関連いたしまして、これは高等
学校の校長協会の会長から非常に強く言われた点でございますが、実は現在割引証、すなわち学生が割引を請求する場合には
学校から割引証という紙をもらいまして、その割引証を私の方の出札の窓口に提示いたしまして、それでもって私の方で五割の割引をした切符を売ることになっておりますが、その割引証の
配付が非常に高等
学校の
生徒については少い、場合によってはほとんど
配付がないという強い御
要望がございましたことは事実でございます。すなわち現在の割引証の
配付の方法についてもう少し学生間に公平を期するような
配付をしてほしい。若干と申しますか、大学尊重、大学ばかりが学割の恩典を受けて、当然受けるべき資格のある高等
学校の
生徒にはほとんどその恩典がないというような点が小松と申される前の
委員からも、また現在の両角
委員からも相当強く主張されたわけでございます。と申しますことは、現在この学生割引証と申しますのは大体どのくらい出ておるかということになるわけでございます。現在私の方からは約一千五百万枚を
文部省に作ってお渡しいたしております。
文部省はそれを直轄
学校は多分直接に、それから府県の
学校は府県の
教育委員会を経てと存じますが、
文部省の手でもってこれを各
学校に
配付されておるというふうに承わっています。この約千五百万枚のうち
現実に学生がこれを使いますものは実は約九百万枚でございます。すなわち約六百万枚が何らかの形で使用されていない。これはなぜはっきりするかと申しますと、先ほど申しました
通り、学生の割引を使います場合には必ず出札の窓口に学生の割引証と申しますのを提示いたしますので、その割引証は私の方の運賃が五割になりますので、それを私の方のいわゆる事後審査の機関でもって審査をいたしまして運賃の不正がないかという審査をいたしますので、その証拠書類として必ず全部まとまって東京へ戻って参ります、その戻って参ります枚数が全体で約九百万枚でございます。従って六百万枚が何らかの形、すなわち学生がまず
学校からもらって使わないという
状況が
一つあります、それから
学校が何と申しますか、あとへとっておくというような形でもって学生に
配付し切らなかったということもあるかと存じます。あるいは府県の
教育委員会等でそれをある程度保留されているということもあるかとも存じますが、割引証は現物はここに持参しましたが、こういうようなものでございます。その割引証が千五百万枚のうち約九百万枚しか返っていないというのが
現状でございます。私
どもといたしましては、
文部省から毎
年度末その残りの枚数、すなわち翌
年度に対します必要枚数を
文部省から伺いまして、それを調製いたしまして、そして
文部省にお渡しするということで、今
年度もすでに四百万枚実は七月末にお渡しいたしておるわけでございます。結局これらの未
配付の問題をぜひ解決してもらいたい、解決してほしいという強い御
要望がございましたので、ただいま申し上げました答申と関連いたしまして、結論の
一つといたしまして学生の割引証については
配付方の改正を行なって、学生
生徒に対して必要な枚数が行き渡るようにすべきである、こういう答申が今申しました技術的な答申のあとについておりました。ここでもって主として高等
学校の先生方の御
意見が明らかにされておるわけでございます。そのほか私
どもといたしましては、実は直接各
学校から相当割引証がわれわれの手に入らないということをずいぶん承わっております。また非常に申しわけございませんが、たとえば私の親戚の子供あたりからもどうしても学割を
学校でくれないのだ、おかしいじゃないかということを個人的にずいぶん聞くことがございますが、私
どもといたしましては
文部省から御
要求の枚数をそのまま印刷して差し上げておる以上、そういうことはあり得ないと実は思っておるわけでございますが、その点については何らかの方法で私
どもといたしましては
文部省にもう少し不便のないようにこの
配付をお願いしたいということはお願いしているわけでございます。すなわち今までの使用の平均率は約千五百万枚のうち九百万枚、約七〇%以下、六八%ぐらいしか学生が使ってないという
現状でございます。なおこれは割引証のことになりますが、
文部省も一応
学校別に分けまして
基準を作っておられます。大体使用の実績から申しますと、私の方で回収いたしました九百万枚を詳細に検討いたしますと、大学生が大体平均七・五枚、それから高等
学校の
生徒が一枚、それから中
学校の
生徒が〇・三枚、それから各種
学校が一枚、こういう程度の実績、これは三十三
年度の一人当りの使用実績でございます。すなわち学生数と学割証の数の比率が今申しましたような数字でございます。そういう条件になっておりまして、私
どもといたしましてもこの
配付につきましては、もう少し
文部省といろいろ御相談いたさなければならぬと考えております。こういう答申が出まして実は今申しました
通り、運賃制度調査会の答申はまだ貨物の最終的な答申が出ておりませんのでございます。ただこの答申の結末に、この答申の中でたくさんいろいろ言ったことがあるが、この点についてはできることはどんどんやっていけ、そして国鉄の経営
状態が少しでも困らないような形でもって実現を期していけという
要望もついておりますので、私
どもといたしましては、この答申を中心といたしまして現在どうやってこれを具体的に実現するかということを目下検討中でございます。