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説明員(
斎藤誠君) それでは、私から
台風第十五号による
農林水産関係の
被害の
概況につきまして御
報告申し上げたいと思います。
台風十五号による特に
激甚地でありました東海三県につきましては、先ほど
櫻井先生からも御
報告がありましたので、私からはごくその
概要を
説明するにとどめたいと思います。
台風第十五号は、御
承知のように
マリアナ群島に九月の二十一日に発生いたしたものでございまして、
中心気圧が八百九十五ミリバール、
最大風速七十五メートルという非常な超
大型台風でございまして二十六日に
潮岬と白浜町の
中心地点に
上陸いたしたのでございますが、この
台風十五号は、
上陸後におきましても、一向に勢力が衰えないで、瞬間
風速は舞鶴の五十一メートルを最高といたしまして、三十メートル以上に達した所はほとんど全
府県にわたっておりまして、その結果、一部の
地方におきましては
豪雨等も伴いまして、
高潮による
干拓地、
海岸堤防の
決壊あるいは
河川堤防の
決壊あるいは特に
漁港、
漁船、
養殖施設等の
損傷が加わりまして、非常な大きな
損害を与えたわけでございまして、田畑につきましても、百万
町歩の
損傷面積を出しておるという
報告に相なっております。
全体の
被害量といたしましては、
府県の
報告によりますと、
農作物関係を除きましても約七百億円と相なっておりまして、そのうち、いわゆる
暫定法あるいは
公共負担法等に基く
農地、
農業施設あるいは
林野施設あるいは
漁港等の、
つまり国の
法律に基いて当然
災害復旧をやるべき
施設関係の
損害だけでも七百億円うち、約半分の三百五十五億ということに相なっておるのであります。
それを具体的に申し上げますと、別表の表がありますので、詳細は省略いたしますが、
農地、
農業施設関係では約二百十五億、そのうち、今回は
干拓等の
直轄事業が
相当ございますので、それが五十三億を含めまして二百十五億円という
被害になっております。これは三十九
都道府県から
報告のあったものでございまして、その最も大きかったのは、申すまでもなく三県でありまして、
愛知県、
三重県、
鳥取県、
岐阜県、京都府、
奈良、
滋賀、
山梨、
福井等の各県が特に
被害が大きいということになっております。
それから
林野関係でございますが、このうち林地の新しく崩壊したものあるいは治山、
林道施設の
被害額が百十二億ということに相なっておりましてこれに
国有林あるいは林産物あるいは
林業関係の
共同施設を含めますと三百八億ということに相なっております。三十三
都道府県からの
報告のうち、
愛知県が八十二億、
岐阜県、
三重県がおのおの四十七億、
奈良、
山梨、長野、兵庫、
和歌山、
滋賀、
鳥取等の県が
被害の特に顕著な県となっております。大体は
農地林野関係につきましては、ほとんど同じ県が七
号台風において被事を受けたところが再び受けたというところも
相当ございまして、そういう面から一そう
被害を大きくしたという点が顕著でございます。
水産関係では、
漁港関係が二十九億、それに
漁港以外の
漁船、漁具あるいは
共同利用施設、
養殖施設等の
被害を入れますと、百三十三億ということに相なっております。今度の
台風が
豪雨台風のための
高潮等の
関係で、特に
水産関係、
漁港、
干拓あるいは
水産関係に非常な大きな
被害を及ぼしたことも
一つの特色でございまして、そういう意味から
三重県のごときは、一県だけで八十五億円、しかも、
真珠関係の
被害が特に激甚でございまして、次いで小
漁船等の
被害が特に顧著であったようでございます。次いで
愛知県、
和歌山県等も
水産関係の
被害が大きく出ております。
なおまた、
愛知県は一番
被害を受けたところでございますが、御
承知のように、
愛知県は非常な
畜産の盛んなところでございまして、その
関係で特に
被害のひどかった
愛知県
南部におきましては、
畜産の
被害が、鶏についてみますと八十五万羽、豚が六千頭、このうち
愛知だけでも六十五万羽程度が集中して
被害を受けたというふうな
関係でございまして、
畜産関係の
被害が今回は約三十二億円という十三
府県からの
報告がございます。
なお、そのほかに
蚕糸関係におきましても、十一億円という
被害が出ております。
全体といたしました
農作物の
被害の
概況でございますが、これは
統計調査事務所で調べましたものでございまして、その
中間報告によりますると、
被害の総
面積は約百五万
町歩である、
被害の総量は百二万トン、約
被害見込金額三百億円と相なっております。このうち、
被害のやはり大きいのは、風の
関係で、倒伏がその過半を占めておるような
状況でございまして、次いで
冠浸水田、
潮水害等が見られるのであります。水稲以外におきましては、果樹、
蔬菜等が特に顕著に
被害を示しておるようでございます。
台風十五号におけるあらましの
被害の
金額についての
概況を御
説明いたしたのでございます。
農林省といたしましては、このような最近にない
被害の深刻さを日増しに加えているという
状況にかんがみまして、これに対する何をおいても
応急の
措置をとるべきであるということで万全を期した次第でございますが、特に
被害の最も激甚な三県
——愛知、
三重、
岐阜等につきましては、内閣における
中部地方の
災害対策本部が設けられたことに応じまして、
農林省におきましても中央はもとよりでございますが、
名古屋におきましては、
農林省関係の
連絡事務所を設けまして、
大臣初め両
政務次官、
事務次官及び
関係局長が相次いで
現地の
視察に参ると同時に、
応急措置の
指導に当っておるところでございまして、現在は
事務次官が
現地にとどまって、
応急指導の指示を与えているという
状況に相なっております。
まず、
応急措置として考えられる第一点は、
食糧の
関係でございます。
食糧につきましては、幸いこの三県につきまして
米麦、主食に関する限りは十分の
保有量を持っている、
在庫量を持っているという
関係で何らの不安はないのでございますけれども、御
承知のように、
名古屋南部あるいは
三重県の
長良川沿岸の
干拓地におきましては今もって
水没の
状況にあるという
関係で、煮たきにも困るということもありまして、かつてない
乾パンの
応急手配をいたしたのでございます。
名古屋、
愛知県に対しましては四百二十万食、
三重県に対しては四十六万食の
乾パンを
応急手配いたしたのでございまして、これらの
乾パンは、ほとんど全国にわたりまして、北は北海道から南は福岡に至るまで、各所の
手持量を総動員して
愛知県に投入するという
措置をとったのでございます。
政府の
手持ちのほか、
自衛隊の
手持ちのもの、また
輸送につきましても、陸上、海上の
輸送のほか、
米軍の飛行機の
活用等によりましてこの必要な
乾パンの
食糧の投入をはかった次第でございまして、現在ではこの四百二十万食あるいは
三重県の四十六万食はそれぞれもう
現地に到着いたして
手配を完了いたしたものでございます。
次に、米の問題でございますが、米につきましては、先ほど申しましたように、全体としては、たとえば
名古屋についてみますると、五十七日くらいの
在庫量を持っておりまして、何らの
食糧についての不安はないのでございますが、当面の
罹災者に対する
応急たき
出し等につきましては、随時、必要に応じて目下行われておるわけでありまして、それに必要な
食糧についての
手配は万全を期しておるところでございます。なおまた、今回の
水害地におきましては、米はありましても
搗精能力がないというふうな
関係で、近県から
手配をするというふうなことが起ったのでございますが、これも今日におきましては、大体白米の
緊急手配をやりました現在におきましては、再び
搗精能力も回復したようでございましたので、その点も一応
事態は改善を見たと考えられます。なお、三県につきましては、特に
水害地におきましてやみ米の高騰というふうなことも見られましたので、特に三県の全消費者を対象といたしまして五日分の米の特配という
措置をも
決定いたしましてこれが配給を行なった次第でございます。このほか
愛知県下における製粉工場等の
手持ちにつきましても、在庫品は
相当ございますので、要求に応じては、需要に応じて随時緊急
措置を講ずるような
手配をもあわせてとった次第でございます。
食糧の
関係は以上申しましたような
応急的な
措置をとることにいたしました。
次に
復旧用材でございます。今回の
水害に伴いまして、さしあたりは、各種の水防資材、さらには
応急仮設住宅、さらには今後の一般住宅用の
復旧用材としての木材の需要量は
相当の量になろうかと考えられるのでありますが、
農林省としましても、一面におきましては、風倒木が全国で約五百万石
——民材を含めると一千万石といわれておりますが
——生じ、他方におきましては、ちょうど取材期でもあるというふうなことも考えましてこれらに必要な需要量につきましては、
国有林として供給し得べきものにつきましてはあらゆる努力をいたしたい、民材の不足する限りにおいては民有林からの供給をいたしたいということで、
名古屋、長野、東京の三局分で約十万石その他の前橋、大阪、高知、熊本等の四局において約十万石、まあ二十万石の供給はできるという
手配をいたしておるのでございまして、そのうち現に必要なものにつきまして、
名古屋局管内から逐次必要な水防資材あるいは
応急仮設住宅資材等について供給をいたしておる次第でございます。なお一面、木材につきましては、
現地における
相当価格が騰貴するおそれもあるということに備えまして、木材業者の団体等にも話しかけまして協力を得まして適当な直販所を設けるとか、あるいは自粛価格を設けるとかいうような
措置をとらせることにいたしたのでありますが、
政府の
国有林の払い下げにつきましても、
応急仮設用住宅であるとか、あるいは当面の水防資材等につきましては減額で払い下げる
措置をとりますほか、それ以外の一般の
復旧用資材につきましても、できるだけ木材価格の安定をはかるという意味で、
災害直前の価格によって払い下げをし、それに措いて各木材業者が適切な協定価格を設けて配給するというような
措置を講じた次第でございます。
第三の
応急措置といたしましては、人間の
食糧に対応する家畜の
食糧でございますが、これにつきましては先ほど申しましたように、
愛知県は非常な
畜産地帯である、同時に、配合飼料につきましては、大体全国の三分の一もあそこで生産しているというような
状況でございますので、これらの供給が円滑を欠くということになりますと、いろいろ罹災農家に対する影響は大きいのでありますので、さしあたりの
措置といたしましては、
政府所有のふすまを緊急に
輸送いたしまして、そうして
政府輸送のもとに罹災農家に対しては安く行き渡るような
手配をとるということをいたしたのでございますが、そのほかにも
相当政府所有の麦が
水害等の
関係で事故麦を生じておりますが、これらの事故麦につきましては、さしあたり七千トンという目安で、やはり罹災農家に対して飼料用として売却するという
措置を講ずることにいたしております。それ以外の今後における需要量に対しましては、
愛知県では約三万トンといわれておりますが、これは関東あるいは阪神
地区から必要な援助
輸送を行う。また、
名古屋港における港の荷上げ能力も大体回復する目鼻もつきましたので、これについては緊急配船をして飼料の輸入陸揚げを行うというような
措置あるいはまた配合飼料工場等の操業回復等と相待ちまして、大体、今におきましては飼料の需給はほぼ安定を見る見通しを立てることができるようになりましたし、われわれといたしましても、引き続きそういうことに留意いたして、万全の
措置を講じたいと考えておる次第でございます。
第四は、各種の金融の
応急措置でございます。その
一つは、共済金の仮払い及び概算払いの
措置でございます。これにつきましては、
現地におきまして三県と打ち合せたわけでございますが、仮渡しの
措置で大体行なう、そして、それに必要な資金に不足を生ずる場合においては、共済基金からの資金の融通
措置によって行いたいということで、これらの敏速な実行をはかるようにいたしたのでございます。特に家畜等につきましては、なかなか今度の場合の
流失、斃死等の数が多数に上っておりますけれども、一々死体確認ということも困難な
事態でありますので、特に家畜の共済金の支払い等につきましては、簡易、便宜の
方法をとりまして、警察官なり、あるいは
市町村長が証明さえすれば、すぐにも仮渡しが行なえるというような、そういう簡易
措置をとることにいたしたのでございまする
それから、金融の
措置でございます。第一は、
天災融資法の
関係でござざいますが、
天災融資法につきましては、十日にほぼ
被害額が確定いたしますので、これに基きまして、即刻手続をとることにいたしておりますが、それまでの間におきましても、系統金融機関からは、後ほど申し上げますような
措置によりまして、系統金融機関からどんどんつなぎ
融資をするということにいたさしておる次第でございます。また同じような意味で、
天災法から出ます経営資金のほかに、今回は個人
施設の
被害が
相当出ておるわけでございます。
共同施設の
被害も出ておりますが、各農家の個人
施設の
被害も
相当出ておるのでございます。これは農林漁業金融公庫から
融資するということにいたしておりまするけれども、これらの受付につきましては、
天災法の発動を待つまでもなく、即刻受付するようにということで、目下
関係の県につきましては、それぞれそういう指示のもとに行われておると考えておる次第でございます。
それから、やはり農業経営資金なり
施設資金なりに至る前におきまして、それぞれ農家におきましては、立ち上りの資金といたしまして、自作農資金に対する
要望が非常に強いわけでございます。これに対しましては、いわゆる自作農創設資金全体のワクを、今日の
災害に対応して補正する
措置を講ずる必要があると思うのでありますけれども、さしあたり
愛知、
三重、
岐阜の三県につきましては、約五億五千万円の県に対しては内渡し
措置をとるということにいたした次第でございます。そのほか国民金融公庫とか、あるいは住宅金融公庫とか、あるいは中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等につきましても、
現地で、各地の
対策本部、あるいはそれぞれの金融機関の担当官等との話し合いのもとにおきましては、そういう
要望があれば、われわれとしてもできるだけの融通
措置を講じたいという話し合いを
現地でいたして参ったような次第でございますので、特に農家住宅等につきましては、もちろん住宅金融公庫等から
融資の道が今後行われることに相なるわけでございます。
それから、言い落しましたが、これまでの
応急措置の最も大きな
一つの仕事といたしましては、
農地関係の各種の
応急復旧工事があるわけでございます。先ほど
櫻井委員からも御
説明なり御
報告がありましたように、
名古屋南部、海部郡、あるいは
木曾川、揖斐川等の沿岸における
干拓地等の
堤防の
応急仮設工事、さらには海部郡南郡、
北部を通ずる湛水地域における排水問題、これらは一刻を争う問題でありますので、
現地におきましても、
関係の局あるいは中部
対策本部等におきましても、たびたびこれらにつきましての協議をいたしたのでありますが、
農林省といたしましても、
応急復旧工事については直ちに着手するという建前で、必要なポンプの
手配、あるいはその一部につきましては、すでに予備費等の要求もいたして閣議で
決定したものもあるわけでございますが、これらの詳細は
農地局から
関係の方も来ておりますので、御質問によってまた御
説明することにいたしまして、
応急復旧工事についてのそれぞれの
手配と、それに必要な準備
措置を完了いたして現在に至っている次第でございます。
そのうち、特に申し上げておきたいと思います点は、衣浦あるいは碧南、鍋田等の
干拓地等につきましては、
農林省が直轄工事として仮締め切りを行う。それ以外の平坂、大津島あるいは幡豆等の海岸
災害につきましては、県が責任をもって行うということで、それぞれの準備をいたしているのであります。その際におきまして、
農林省関係の
応急復旧工事につきましては、早いものは十月末、おそいものにつきましても年内には
復旧工事は完了するということで準備を進めているような
状況でございます。
大体
応急対策を
中心に
概況を申し上げたのでございますが、それ以外の
応急対策につきまして、つまり、今後の
復旧対策に対する立法
関係あるいは予算
関係等の全般的な
対策につきましては、今、党なり、あるいは
政府部内においていろいろと検討をいたしておるところでございますので、一応
応急対策についての御
報告で
説明を終らせていただきたいと考えます。