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1959-07-06 第32回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年七月六日(月曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀本 宜実君    理事            櫻井 志郎君            仲原 善一君           小笠原二三男君            戸叶  武君            森 八三一君    委員            秋山俊一郎君            石谷 憲男君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            重政 庸徳君            高橋  衛君            藤野 繁雄君            東   隆君            北村  暢君            清澤 俊英君            小林 孝平君            棚橋 小虎君            中田 吉雄君            千田  正君            北條 雋八君   国務大臣    農 林 大 臣 福田 赳夫君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林政務次官  小枝 一雄君    農林省農地局長 伊東 正義君    水産庁次長   西村健次郎君    通商産業省軽工    業局長     森  誓夫君    海上保安庁次長 和田  勇君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選農林水産政策に関する調査の件  (農林水産基本政策に関する件)  (昭和三十四年産米価等に関する  件)  (紀伊水道における爆薬による漁業  被害に関する件)  (農業法人に関する件)  (農地地盤沈下に関する件)   —————————————
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  最初に、理事補欠互選についてお諮りをいたします。  私の委員長就任に伴い理事が一名欠員になっておりますので、その補欠互選を行いたいと存じますが、その方法は、成規の手続を省略いたしまして、便宜、委員長から指名いたしたいと存しますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議がないようでございますので、理事仲原善一君を指名いたしたいと存じます。   —————————————
  4. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) まず、農林大出の御所信伺いたいと存じます。
  5. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の所信をというお話でございますが、御承知通り農林行政の対象はきわめて広範なものでございまして農林大臣ほやほやの私といたしまして、具体的な施策について、まだ申し上げる段階に立ち至っておらないのです。それらにつきましては今後に譲ることといたしまして、きょうは、農林行政一般に関する私の考え方を申し述べさしていただきたい、かように存ずる次第でございます。  申し上げるまでもなく、わが国農林漁業国民経済の中に占める地位、また、その役割はきわめて重大であり、今後特に経済発展のための安定的要因としてのその重要性はますます大きいものと考えるのであります。この意味農林漁業の健全な発展を促進し、その生産性向上所得増大を通じて農山漁家生活向上をはかり、あわせて国民経済の安定的な成長に寄与するということは、農林漁業政策基本的目標であると信じている次第でございます。従いまして、これに関連いたしまする従前の重点的諸施策はさらにこれを推し進めて参るべきことは当然と考えております。農林漁業のよって立つ生産基盤をつちかうとともに、経営健全化近代化を推進し、商品生産の進展に応じて市場の拡大、需給及び価格の安定並びに流通機構整備等につきまして積極的な措置を講ずるなど適切な対策をとり、農政上誤まりなきを期して参りたいという所存でございます。  また同時に、現下の農林漁業をめぐる国内、国外の経済の動向を洞察いたしますると、経済成長との関連において新たな配慮を要する問題が生じつつあるやに考えるのであります。すなわち、戦後のわが国経済復興は世界の驚異ともされるほど目ざましいものであり、その基盤として農林漁業農地改革漁業制度改革等中心農山漁村経済的、社会的民主化とともに、技術の進歩に伴う生産力増大によって国民経済発展に大きい寄与をして参ったのでありますが、戦後の復興過程がすでに終った近年におきましては、農林漁業と他産業との発展の不均衡、なかんずく、生産性の開きは相当大きくなってきておるように思うのでございます。今後、国民経済の健全な拡大発展を長期にわたって持続していくに当り、これと歩調を合せた農林漁業発展を期することは容易ではないと考えるのでございますが、私といたしましては、伸びゆく国民経済の中におきまして、農林漁業産業的確立をはかっていくことを農政の基調として各般施策検討し、逐次実施に移して参りたいと存ずるのであります。これがためには生産性向上が不可欠の要件であると考えるのでございますが、もとより、農林漁業内部のみにおいてこれを解決しがたい問題も多々あるのでございまして、国民経済全般にわたる各般の有効な施策と相待ちまして、経済拡大過程の中で解決すべきものであると、そういう考えを持っている次第でございます。たとえば、今日農政運用上きわめて困難な問題になっている二、三男対策、そういうものも農林漁業内部において取り上げるばかりでなく、経済全体の発展の中で解決する、そういう考えでこれに臨もうという考えでございます。今般、総理府に農林漁業基本問題調査会が設置せられましたのも、このような内外の諸情勢に対処するためのものでございまして、この際、新たな角度から経営価格等農林漁業上の諸問題や、これらと関連する雇用、貿易等国民経済の諸問題にわたって総合的に調査審議を願い、もって農林漁業に関する政策基本的確立をはかりたいと、そう考えたからであります。  最後に、今日農林漁業発展国民経済といよいよ密接な関連を持って参りましたので、これに関する内外経済政策を一体的に推進する必要性を痛感するものでありますが、私としては特に国際的関連の深い水産問題はもちろんのこと、貿易経済技術協力等につきましても、農林水産施策にも留意しながら適切な措置を講じて参りたい、かように考えている次第でございす。  以上きわめて簡単でございますが、私の考え方の大要を申し上げた次第でございます。何とぞ御了承のほどをお願い申し上げます。
  6. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 福田農林大臣に対する質疑の向きは、順次御質疑を願いたいと存じます。
  7. 清澤俊英

    清澤俊英君 時間が非常にありませんので、ごく簡単に要点だけをお伺いしたいと思いますが、ただいま一番問題になっておりますのは、米価審議会中心にしました米価問題並びに予約減税廃止に対する存続の問題だと思うのであります。そこで、昨日来の新聞等を拝見しますと、政府におかれましては大体予約減税は存続する、こういう態度を明らかにせられたように新聞承知しておりますが、この点を、まずこの委員会でその決定を鮮明していただきたい。もしそれであるならば、その通り鮮明にしていただきたいということが一つ。その次に、なお米価につきましては、総額において一万三百四十円というやつを一万三百六十円ぐらいに増額せられるような新聞を拝見しておりますが、かりにそうだとしますと、約二十円の増額になりますが、実質においては、予約減税が存続せられるとしますと、七十五円という均分加算が、これはたぶん取れるのじゃないかと思います。そうしますと、九十五円という増額になりますので、その九十五円を出しますには、いろいろの計算において、基本米価においてふやされるのか、あるいは聞きまするように、十円の荷作りの包装代の引き上げというような一時的な方法をもって、この額をふやされるおつもりなのか、それらの点をもし閣議等決定せられておりますならば、詳細にお伺いいたしたいと考えております。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 清澤さんのお話のように、今米価で問題にされておりますのは、税の問題と、それから米価の額をどうするか、この二つでございます。税の問題につきましては、本年度の予算におきまして、今まで政府売り渡し奨励する意味をもちまして、臨時減税いたしておりましたのを、この際廃止しようということがきまっておりますので、その線に従いまして、農林省が作成いたしました案を、政府並びに与党と相談をして原案といたしまして提出している次第でございます。それにつきましていろいろ議論があるわけでございますが、その議論要点考えてみますると、減税減税という、まあ世の中におきまして、この臨時措置廃止することによって、一部ではあるけれども、増税になる方が出てくるのだ、それは政治的な感覚からみていかがなものであろうかということに帰着するようであります。そういうようなことでありますので、農林省原案として提出いたしました予約減税廃止という方向は、すでに昭和三十四年度の予算でも決定された筋であり、また同時に、この措置によって浮くところの財源を全部売り渡し農家にこれを均分して米価の中に含めて加算しよう、こういう考えでありますので、売り渡し奨励策としてこれは一つの大きな考え方だとは考えるのでございますが、さような政治的な感覚考えますと、この際、これを原案通り最終決定をすべきかどうかということについては、検討の余地があるというように考えている次第でございます。ただいままだ最終決定は見ておりませんが、この廃止問題はきょうあたり政府としての最終的決定を得たいと思いますが、根本的に練り直すということにいたしたいと思います。  それから米価の問題につきましては、与党の方からある程度原案よりこれを増額したらどうかという意見が出されておるのでございます。私といたしましては、筋の通った考え方である必要があるのと、ただ天下りに幾ら増額せい、こういうような行き方は、私といたしましては、なかなか困難であるが、なお、いろいろのことが言われておりますので、それらを検討してみるというふうに申している次第でございます。これも、きょう政府与党といたしましての最終的な結論を得たいというふうに考えているわけであります。  それで明日米価審議会を開くわけでありますが、明日、きめたものを付議し、最終的な政府決定はその審議結論を見た上できめたい、かように考えているのであります。
  9. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは非常な生産農家に対しましては重大な問題でありますので、これはよくおわかりのことだと思いますが、まあここで予約減税の当否を議論し、あるいは米価算定上の個個の基本的な問題を議論してみましても、一時間や二時間で御承知通り片づかぬと思いますので、従いまして、そのこまかいことは、あとにいずれ機会を見まして決定しましてでも……。われわれは今、大臣の言われた考え方による減税もしくは米価決定に対しては非常に不満がある。その議論は別の機会に残しまして、本日お伺いしたいことは、それと関連いたしまして、大体政府は今の米の買い上げを、いわゆる統制を存続する本気の意思があるのかどうか、これをまずはっきりしてもらいたい。何かしますと予約減税廃止するとかなんとかいうような線、あるいはこのたびの米価決定等に対しまして問題になっているのは、やみ米とだんだん近づけるというような政治米価になっていることに間違いないのであります。これは議論したら切りがありませんからきょうは議論しませんが、そこに考えられることは、将来において統制を撤廃するんじゃないか、こういう危惧が常に生産者大衆の中には動いているのであります。だから、これは議論でなくて、確定したる政府態度でありますから、はっきりと一つ統制は、今まで何べんもお伺いしている通り、継続していくならば継続していくと、こうお答えをお願いしたい。  それから第二番目には、こういったいろいろ議論になりまするところの米価対策と、農家におきまするところの生活の安定並びに経営の安定といいますか、こういうものを中心にしました、農業の安定を中心にしました価格政策をどういう関連基本的に考えておられるのか、大体、日本の大部分の農家水田中心にしてやっていることは皆さん承知通りだと思います。従いまして、米価価格安定という線におきまして、基本的にどうお考えになっているのか、これはもう非常な重要な問題だと思いますので、この二点を明確にしていただきたい。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 米の集荷配給制度、これを廃止する考えはありません。  それから価格政策をどういうふうに持っていくかというお話でございまするが、私は、農林漁業の事業に参加されている方々の所得が充実され、しかも、その所得を使いまして生計を営み、その生計水準向上するということが、ただいまも申し上げましたように、農林政策中心課題であるというふうに考えておる次第でございますが、これは何といたしましても一番問題になるのは生産性向上という問題だろうと思います。農林漁業生産性向上する、これに主軸を置き、そうして同時にまた、農村生活水準を改善するための生活環境整備、これは農村水道が津々浦々引けるようにいたしたい、また農村に生まれる子供の就学につきましては、機会均等ということが与えられたい、またさらには、医療制度も完備いたしまして病気になった場合も差しつかえないとか、あるいは保育所の問題でありますとか、いろいろありまするが、そういうあらゆる国政の分野を通じまして農村生活環境を改善する、これは非常に重要な問題だと思います。ただ所得増加要因としての価格につきましては、価格政策というものが国の経済全体に及ぼす影響ということを十分に考えなければならない、こういうふうに考えておるのでございまして、やはりこれは経済の伸展の速度等関連いたしまして弾力的に慎重に考えていかなければならないというふうに考えております。
  11. 清澤俊英

    清澤俊英君 そこで、最近四カ年の豊作だ、これは天候を克服して農民努力による豊作であることは、最近間違いない一つ議論として成立していると思う。ということは、終戦後土地が解放せられた上に立った農民が、不満ながら主要農産物でありまするものに対して価格安定策を講じられておりますることが農民生産性向上を来たし、そうして最近のいわゆる四カ年豊作━━これは平年作であろうと思う━━というところまで持っていったのだろう、こう思うのであります。そういうことを考えまするならば、米価等はもっと慎重な考え方をもって農民にその意欲を発揮させることが私は生産性向上の大なるものじゃないか。幾ら政府がけつをたたいてみましても、私はそう大した問題にならないと思う。今までの農民の心理は、農林省の方で普及員等がわあわあ言ってみましても、結局、あれは役人の言うことであって、われわれ田のまん中に立っている者にはあれは通用しない指導である、こういう形のものがみずから進んで最近は試験場に行って自分でもっていろいろのものを研究して、そうして普及員と相協力して増産を考える、こういう形に変ってきているのは、これは経済力がついたからである。そうしてみまするならば、私は十分それにまかなうような、農民の納得する価格をお出し下さることが正当だと思う。ところが、そうやってかりに米価が上りますと、直ちにこれが全部、何か米が上れば賃金が上る、賃金が上れば物価にはね返ってくるのだから、悪循環をしている、こういうような御議論をなさるのをいろいろ学者などから聞きますが、私はそれほどひどく主食が、この総主食がそれほどはね返るものじゃないのじゃないかと、こう思われます。ということは、農民生活が上り、一般生活水準が上ったからといって、それに比例して米は食われません。かえってそういうものが上れば上るだけ他の副食物などが中心になって、米の量は減るのじゃないか、だんだんと。これは大臣などもよく御経験になることであろうと思う。宴会などに行って山ほどこちそうを食べられたら御飯なんか食べられない。だんだん生活水準が上って、そういうものに転換して参りますならば、私はかえって主食は減っていくのじゃないか。限度があると思うのです。だから、生活水準の上っただけ全部、労働者賃金が上っただけ全部それが、米の値が上っただけ全部賃金にはね返っていくということは考えられない。これが私は農産物の一番の悩みだろうと思うのです。何かはかにそういうことを言っておった学者もありましたが、こうしてみますならば悪循環による米価を押えるなどということは私はちょっと考えられない。ただ食管会計の赤字が出ているからということでそれを押えて他の方に回そうということが中心考えられているのじゃないか。ほんとうに先ほど言われるような、大臣の言われるような 生産性向上さして、そうしていろいろな方法をとって農家をよくする、こういう考えであるならば、いま少し農民が叫んでおりまする━━ただ私は欲ばかりではないと思う。実際の生活を見まするならば、欲ばかりではないと思う。そういうことでよくお考え下すって、この問題はもっと慎重に私は取り計らわれるべきが正当だと思います。その点どうお考えになりますか。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ農村所得を増加するために価格政策でやれという議論になりますと、私はそうじゃなくて生産性で行くべきであるというふうにお答えせざるを得ないのであります。ただ米のように統制下の物資の価格が不当に安くて、その生産意欲を減殺するというような現象があっては困ると思う。そういうようないろいろなことも考えながら、ことしは米価算定の方式を変えてみた。平均生産費というものを出してみまして、それに二割五分増しという調整係数を乗じて得た結果をもって米の収買価格にしようというふうにいたしたわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、それについてまだいろいろ御意見等もありますので、ただいま最終結論につきましては調整中でございまするが、まあそういうふうに、お話の趣旨ですね、生産意欲を減退させるようなことがあってはならぬというようなことは十分頭に置いてやっていくつもりであります。
  13. 清澤俊英

    清澤俊英君 それじゃ、私の時間はないようですからこれで一応やめますが、余りましたらまた……。
  14. 東隆

    東隆君 私は、この際、日本甘味政策関連をして、テンサイの問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、この前の国会で、ビート耕作関連をした法案が四つ出ておりますが、その際、政府の方ではテンサイ振興措置についていろいろお考えになった。そうしてそのときに、私どもは、北海道ビート耕作を進めていくためには、テンサイ糖業発展させるためには、どうしても基本はやはりテンサイを耕作する方面に重点を置いていかなければいかぬ。そうしてそのあと工場を作るというような、そういう考え方にならなければならぬ、こういうふうに理解をいたしておったわけであります。ところが、ビート・ブームの関係かどうかわかりませんが、非常にたくさんの工場が入り込んで、そうしていろいろ問題を起したわけで、北見の方においても、もうすでにそういう結果が現われておるのにかかわらず、今度は十勝の方面にその再現をまた始めよう、こういうような形でいろいろなことが行われて、さきの三浦農林大臣の退職まぎわに工場の設置の方針をきめるとかきめないとか、こういうようなことでだいぶもめたようでありますが、農林大臣は、工場新設導入についてどういうふうにお考えになっておるか、それをお聞きいたしたい。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ビートの問題につきましては、まったく私はただいま白紙でございまして、この米の問題でも済みましたならば少し検討を始めなければならぬというふうに考えておる段階です。しかし、前々から私は、ビートは大いにこれを日本でやらなければいかぬという考えを持っておるものでございまして、一億ドルも甘味料輸入しておる。しかも、その輸入先キューバが主である。しかも、そのキューバには日本見返りの品物がほとんど出ないというようなことは日本経済構造から見まして、はなはだ不利益であり、また不自然である、こういうような感じから、イギリスやあるいは西ドイツやイタリアのように、日本においても甘味テンサイ糖によって自給するというところまでいくべきであるということを議論として持っております。ことしの予算の編成に当りましても、私が主張いたしまして、それで関税消費税改正をやって、そうしてこのビートが育ちいくような環境を作ろうということをきめたようないきさつもあるくらいで、私は、農林大臣になった以上は、甘味ビート北海道のみならず、暖地におきましてもこれを育成するというために、あらゆる努力を払っていきたいというふうに考えております。ただ、お話の、北海道の現実の問題につきましては、まだ全然白紙の状態でありまするので、まあこれから皆さんの御意見も承わりながら、ただいまも申し上げましたような線を実現できるような最善の方策いかんということを結論づけていきたい、かように考えております。
  16. 東隆

    東隆君 私は関税消費税の問題について、農林大臣幹事長の時に約束をされたのだと、こういうお話でありますが、実は私はもう一歩進んで消費税廃止すべきであったろうと思う。それは日本砂糖消費税は、台湾から砂糖が全部入っておった時分にあの消費税を作り、しかも、消費税見返りというような形でもって、実は北海道ビート奨励その他はまかなわれていく、こういうような計画が、これは大正の中ごろですかにそういう方針確立をしておったわけです。ところが、戦後に台湾外国になりまして、従って、砂糖というものについては、これは全部外国から入る、こんな形になったのでありますから、私は国内における消費税を全廃してそして、関税一本にする、これがこれから日本ビート糖業発展させるために、これは重要な私は機会であったろうと思う。従って、焦げつき消費税を残したのは、私は、これはやはり砂糖輸入をして精製糖をやる方面の人のことをお考えになっておるから、ああいうような形が出たろうと思う。しかも、当時お考えになった外糖が値段がもうこれ以上下らない、底をつかないと、こういうふうに言われておったにかかわらず、現在は相当安くなっておるはずで、そういうようなことになって、あの作った四つの法案というものは根本的にもう基本がくずれておる、そういうような形で日本甘味政策というものが今置かれておる、こういうふうに考えておるわけです。従って、私はもう少し農林大臣はこの問題についてお考えを強くしていただきたい、こう思うわけであります。それは含水炭素を外国から輸入するということは、これは日本農民の私は恥であろうと思う。そんなような意味で、どうしても国内でもって生産をする、こういう態勢を作り上げていかなきゃならぬ。そのために私は、単にビートの問題だけでなくて、澱粉の問題もあわせて考えなきゃならない、それと関連をして外国から入ってくるものに相当なチェックをしなければならぬ、こういう問題が当然起きてくる。そういうような関係でこの問題を大きく取り上げて一つ考えを願いたいと思います。  そこで、私はこれに関連をしてお伺いをしますが、例の結晶ブドウ糖の問題ですね、これに関連をして新聞に出ておったのでありますが、味の素がコンプロ会社と連係をとって外資導入をして結晶ブドウ糖をやる、こういうようなことが出ておりましたが、これは農林漁業金融公庫法律改正に実は多少関連があると思う。それで、できるだけ私は結晶ブドウ糖のごときは農林漁業団体がこれに関係をして精製をする、こういうような態勢を作り上げるのがいい、こういう考え方を私は持っております。ところが、あの形でもって外資導入してやる、こういうような態勢を作り上げることになりますると、それは私どもの考えておることと非常に違ったものになりますし、また、あの法律の改正によって資金を融通するという道も開かれるわけであります。だから、農林省は、この際ああいうような問題に対して阻止をする方法、あるいはまた農林漁業金融公庫から資金の融通をするということはもってのほかである。そういうことがあるとすれば、私はそういうような点について農林大臣にどういうふうにお考えになっておるかお聞きしたい。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) また甘味一般につきましてはお話のように自給を目標にいたしまして、私も鋭意努力して参りたいと思います。  今、具体的な問題で味の素のお話がございましたが、私まだ話も事務当局から聞いておりません。聞いておりませんが、農林漁業金融公庫はもとよりこれは農林漁業団体が主たるその融資対象でございます。例外といたしまして一般の会社にも融資をいたしますることがありますが、そういう大企業に金を貸すというようなことになりますと、あの政策とも関連いたしまして問題があろうかと思います。これは慎重に一つ考えていきたいというふうに考ております。
  18. 東隆

    東隆君 農林漁業金融公庫法の改正をやりまして、そうして産業資本の方面にも結晶ブドウ糖工場を設立するときには融資をする、そういうように法律の改正をされておりますから、その点は十分にお考え置きを願いたいと思います。  そこで私は、この甘味政策については、農林大臣は米の問題が片づいたらすぐ手をつけていきたい、こういうお話でありますから、十分に一つ検討をしてりっぱなものを作り上げていただき、法律の改正等も一つやっていただきたい、こう考えております。  次に私は、これは北海道関係した問題でありますが、この前の国会で、例の寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法という法律ができて資金の融通の道が開かれた。われわれはこの法律とあわせて北海道農家の負債を整理しなければ北海道の畑作の振興というものが容易にできないような状態にある。ことに年々の冷害、凶作というようなことによって負債が重加されておるために、いかに生産方面に資金を融通をしようといたしましても、もう首ったけ借金をしておるためにその金は入っていかない、こういうような関係で二つの法案を用意して、そうしてこれの実現を一生懸命にやったわけでありますけれども、その経営改善の方の特別措置だけどうやら通ったわけであります。そこで、依然として問題が残っておるのは、北海道の畑作農家の借金をどうするか、こういう問題なんです。これについては自作農創設維持資金を融資することによってその目的を達する、こういうようなことも言われておるわけであります。ところが、この自作農創設維持資金のワクは御承知のように確定したものでありませんから、従って、その額は年々違ったものでありますし、計画的に負債の整理というようなこともできませんし、せっかく法律はできたけれども、なかなか法律を有効に使うことはできない、こういうのが実情でありますし、また、その資金の融通その他についての非常にむずかしい手続がとられるようになった。だから、これも容易ならざる形になっておりますが、両者あわせて簡素にやっていくためにいろいろなことを考えていかなければならぬ。そういうような点について、今後北海道の問題について農林大臣はどういうふうにお考えを進められるか、その点一つお聞きをしておきたいと思うわけであります。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大きく言いますれば、北海道には内地の人口をもっともっと吸収するような施策がなければならぬというふうに考えるわけでございます。その吸収と申しましても、北海道は農林水産業でございますから、そういう方面施策は特別の配慮を加えなければならぬというふうに考えております。お話の負債の整理の問題につきましては、北海道も問題であり、また同時に、全国の開拓農民ということも問題になっておるわけであります。やはり農家が立ち直るための自主的な努力、これを助成するというふうな意味合いにおいて事を考えなければならぬと思いまするが、その考え方からいうと、自作農創設維持資金ですね、これは農家にとって非常に有利な諸条件を備えておるわけでございます。それで、ただお話のように手続が非常にめんどうくさい、時間がかかる、農家の人にはなかなかこれをさばき切れないというような問題があります。私、農林大臣に着任いたしましてすぐこの自作農創設維持資金の手続を思い切って簡素化するということを考えたらどうかということで、事務当局が検討を始めておりまするが、これが解決されるということになりますれば、ただいま申し上げましたような諸問題の解決には、ただいまの諸制度の中では一番お役に立ち得るのではないかというふうに考えております。
  20. 東隆

    東隆君 自作農創設維持資金以外に何か負債整理についての資金ワクあるいは特別な法律、そういうようなものについてお考えがございませんか。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私もまだ新米でありましてそういう検討を経ておりませんが、なお検討いたしてみたいと思っております。
  22. 東隆

    東隆君 今の手続その他を簡易化するという点についてお考えになっておるのはこの点は非常にいいと思うのですが、私は同時に、これの基本的な書類その他を作るのは、かかって改良普及員にこれがみんな押しつけられている。従って、この問題を改良普及員がやるとなりますると、農業方面の指導なんというものはほとんどできなくなってしまうのではないか、従って、私はこのところまで入り込んで、経営まで改良普及員が入り込むことは非常にいいことだと、こう考えておりますが、それには人数が非常に少いのであります。そこで、その法律に関連して特別に一つ改良普及員の増加ですね、こういったようなものを考えなければ、これはやはり画龍点睛を欠くもんだと、こういうふうに考えるわけであります。それで単に手続を簡易化するということだけではなくて、ほんとうの意味農家経営が成り立って負債の償還ができ、経営を拡充していくことができる、こういう形にするためには手続を簡易化すると同時に、指導的な役割を果すものとして充実していかなければならぬ、その面を考えないでは私は意味をなさぬと思うのです。その点一つどういうふうにお考えですか。
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 改良普及員につきましては、いろいろ意見もあるわけです。毎年普及員の制度をどうするかということが話題になるぐらいいろいろ問題はあるのです。しかし私は、常々この改良普及員農家経営改善上尽しておる役割というのは、これは非常に大きいのだというふうに考えまして、いつも改良普及員の強化ということにつきましては、努力をして参っておるものでございますが、なお、ただいまお話のような問題に関連いたしましてどういうふうになりますか、まあ考えております。
  24. 東隆

    東隆君 とびとびになるようですけれども、自作農創設維持資金の貸出の額は最高が二十万円ぐらいになっております。これでは、実のところを申し上げますと、北海道の一戸当りの負債額は三十万あるいはそれ以上に相当あるわけであります。従って、このワクを広げていかんければ当然目的を達しないと、これによってある程度のものを肩がわりすることによって初めて寒地畑作営農改善の措置による資金融通が入ってくる、これと関連をさすことによってでなければ救われない農家というものは、これはもういつまでたっても放擲される、そんな形になるわけです。だから、この資金の融通を受けるものは上部のものに限られるこんなことにもなろうかと思います。今特別な方法がない場合には、自作農創設維持資金の貸出のワクを大きくするとともに一定のワクを北海道に向ける、それから個人に貸付する額、それは二十万円の限度を私はやはりもう五割もふやさんければ、三十万程度まで広げていかなければ目的を達しないと、そういう点について十分に一つ可能なように大臣の取り計らいを願いたい。その気持をお伺いいたしたい。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自作農創設維持資金のワクが二十万円になっているのを、それを拡大をすべしというようなお話でございます。これは政府資金が財源になっている関係上、まあ多多ますます弁ずでありますが、おのずから一定の総ワクの制限というものがあるのです。一方におきまして、私がただいま申し上げましたように、手続でも簡素化するというようなことになると、全国から相当多数の人がこの制度を利用したいというふうな傾向もあろうかと思います。ですから、ワクが多ければ勢い利用者全体の数が制限されるというようなことにもなりますので、ここでそういたしますというお答えは私はいたしかねます。ただこの制度の運営全体といたしまして、また特に北海道ですね、私もかねがね重大視いたしております次第もありますので、北海道の問題をどうするかというようなことをあらためて一つ検討してみるということにいたします。
  26. 東隆

    東隆君 はなはだ何ですか、今のワクの問題の拡大ですね、これは私はどうしてもお考えを願いたいと思うのです。というのは、災害が起きますと、そちらの方面に相当な金が流れていくのです。従って、自作農創設維持資金は今負債の整理に使われているのでなくて、かえって災害の方面に流れていって、そうしてそれの方の対策をやっている。これは緊急な問題ですからいたし方ないと思うのですけれども、しかし、それでは計画的に負債の償還をやって、そうして経営確立していこうという、こういうのがみんなこわれてしまうのです。そこで、もう一つ進んで負債整理に関連をするところのものをはっきりと一つ法律を制定するなり、その他の方法によって確立をしていただきたい、こういうことなんです。これは一つ大臣の新しい立場から急速に進めていただきたいと、こう要望いたします。
  27. 千田正

    ○千田正君 先ほどから農林大臣からお話を承わりましたが、所信の問題としてはちょっとばく然としておりますので、これはいずれ時間を十分かけて、それぞれお尋ねいたしたいと思います。  先ほどお述べになりましたうちで、国内的な問題として非常に私は関係の深い問題は、二、三男対策の問題、この二、三男対策は、先般来農林大臣が就任早々、ラジオやあるいはテレビでお話しになっておられましたが、いわゆる農業法人の組織というような問題に対する考え方と、ある程度うらはらの問題が出てくる。もう一つは、国内における開拓行政というものを改定しなければ、二、三男の対策ができないじゃないか。それで農林省管轄の問題としましては、国外に対する農業振興の一環としての海外移住の問題、国内においては、二、三男を吸収すべきところの開拓行政の改定の問題、それに対応しまして、農業法人の組織に対する新たなる観点を持たなけば、二、三男対策という問題の解決はできないじゃないかと私は思う。この点を一つ伺いしたいと思います。特に私はお尋ねいたしたいと思うのは、開拓問題は、今やデッドロックに乗り上げておる。国営の機械開墾その他について、新たな二、三男を吸収しようという対策はけっこうでありますけれども、さらに終戦後、大量に入りましたところの引揚者やあるいは軍人等の祖国に帰ってきた人たちを吸収した開拓行政というものは、まさにデッドロックに乗り上げておる。かてて加えて、山間あるいは不毛の地に入ったこの種の人たちは、年々生ずる冷害あるいは旱害もしくは凍霜害あるいは幾多の苦難の中にあえいでいながら、なおかつ、当時の、十年前に借りたところの借金さえも返し得ないということこの実情を見ましたときに、次の対策としての二、三男のいわゆる吸収対策というものは、今までのようなやり方ではとうていだめだ、新しく開拓に対するところの政策を打ち出さなければならない、こういう点もあると思いますので、大臣所信を一応、この点を承わっておきたい。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ農村でふえていきまする人口をどういうふうに処置するかという問題は、これは農政の非常に大きな問題だろうというふうに考えるわけであります。それで、そういうことから申しますると、まあ新しい土地を造成いたしまして、そこに入植をするというようなことももとより考えられるし、また海外に天地を求めるということも考えられる次第でございまするが、それはそれとして大いにやらなければならぬというふうに考えております。ただ今までの開拓につきましては、お話のようになかなかこれの実績がうまくいってないというものも相当多い次第でございまして、まあこれらの開拓農家が、今度は逆に、開拓地からまた他の部門にこれを転換しなければならぬというような問題も出てきておるようでございます。私といたしましても、開拓というものはなかなか重要な問題であるので、白紙一つ十分検討いたしまして、適切なる対策を立てたいと、こういうふうに考えております。
  29. 千田正

    ○千田正君 時間がないからなかなか……、このことは相当あと機会を得て一つお尋ねをいたしたいと思います。そこで、国内におけるところのこの農業問題の、農業団体の再編成という問題ですね、いわゆる地方行政の改革等によって、いろいろ吸収して大きな市町村ができた。そのために、単一農協というもののあり方というものは再検討しなければならないところにきておるのじゃないか。かてて加えて、農林中金の金融方式というものは、弱体の協同組合には貸さない、こういうような行き方をしておりまするというと、単一農協の貧しいところは、いつまでたっても立ち上れない。これは農業の根本方針として、中金その他を置いた理由にはならないと思うのであります。ということは、一応のレベルに、水準にまで農業協同組合なり、あるいは農家経済なりを持っていこうという一つのアイデアのもとに、金融政策の一環として中央金庫等を置いたとすれば、この貧しいものがある一定の限度まで育成強化するまで考えてやるのが親心じゃないかと思うし、農林金庫のやるべき仕事じゃないかと思う。その点については、農林大臣はどういうふうにお考えになっておられるか。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日本農業協同組合という組織は、これは世界でも珍しく整備発展された制度であるというふうに、私は重大視いたしておる次第でございます。農林行政を進める上におきましても、唇歯輔車というか、表裏一体と申しまするか、そういう関係でいって初めて農政がうまくいくのだという考えを持っておる次第です。町村合併の結果これを町村合併の線に沿って統合すべきかどうかという点につきましては、私は、旧各部落にありまする農業協同組合が統合されて強化されるという形が望ましいと思います。しかし、各部落々々には、それ相当のいろいろ特殊な事情もありまするから、これを押しつけるというようなわけにはこれは参らぬと思いまするが、しかし、方向といたしましては、その方がまあ望ましい形であるという感じを持っております。
  31. 千田正

    ○千田正君 水産問題についてお伺いいたしますが、御承知通り最近の漁業問題は、国際的な問題になってきておる。終戦後における日本の水産業の発達は、相当目ざましいものがあったにもかかわらず、最近の国際情勢からいいまするというと、各国から締め出しになっておる。これは私が申し上げるまでもありません。たとえば李承晩ラインの問題にしろ、あるいはアラフラ海の問題にしろ、北洋漁業の問題にしろ、あるいは日米カ漁業問題にしろ、ことごとくが日本漁業の伸展すべきところを阻まれておる。特にわれわれは重大な問題といたしまして、ここに農林大臣所信を明らかにしていただきたいのは、いわゆる北洋漁業の問題、これは本年は昨年よりも一応縮められた格好でただいま操業中であります。しかし、将来とも、これはソ連との間にいろいろな協定を結ばなければならない。しかし、だんだん年を追うに従って圧縮されてきているということは、実際である。これは単に漁業という問題じゃなくして、日本のいわゆる伸張すべきところの国力の萎縮ということになってきます。単なる漁業問題じゃない、日本の力というものが圧迫されてきておるという現実に対して、単に北洋漁業が魚がとれないからというばかりじゃない、日本の権力の圧縮ということになってきますと、私はこれは重大な問題であると思う。そこで、昨年はソ連においてこの協定を結ぶときには、国をあげて、国の世論が背景となって行った、赤城さんを初め、政府当局が。当時の農林大臣であった赤城さん初め行きましたが、本年はホームグランドであるところのこの東京で行われた。東京で実際ソ連と日本との間に漁業問題が討議されておるにかかわらず、この農林水産委員会等においては、全議員はどういくかというのでかたずを飲んで、われわれとしてはいかにしてこの問題を解決するかという熱意に燃えていながら、水産当局のわれわれに対する報告は、単に一片のいわゆるお座なりの新聞その他に報告した抜粋にすぎなかったということは、これはどういうことか。私は、農林当局と単なる業者との間の協定だけではないと思う。日本国民の真の声というものは、国会を通じて反映するはずである。しかしながら、国会に対するところのものは単なる報告でおさまっておる。こういうことであるから、日本の景気というものは常に圧縮されてきておる。私は、来年度再び行われるであろうというこの日ソ漁業問題、北洋の権益の問題に対しては、この際、新たに就任された農林大臣は確固たる考えをもって臨んでいただきたいと同時に、われわれ農林水産委員に対してどういう考えを持っておられるかということに対して、一言所信を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日本漁業、特に北洋漁業の問題は、非常に重大なる国家的問題であることはお話通りであります。来年の特に日ソ交渉というようなことを考えますると、お話通り、国民的背景をもってソ連と交渉しなきゃならぬというふうに考える次第です。特に、農林水産常任委員会皆さんには超党派で一つ御鞭撻を願わなきゃならぬというふうに考えまするし、私もお願いができるような仕組みというか、段取りというものを考えてみるということを申し上げておきます。
  33. 千田正

    ○千田正君 もう一つ、現実に今起きておるところの問題につきましては、日韓の間に横たわるところの李承晩ラインと称する、いわゆる一方的宣言によって引かれたところのラインに向って日本漁業が進出できない。九州におけるところのまき網の協同組合の会長が指導して、今の自民党の代議士の金子君ですか、指導して、日本政府の処置にはあきたらない、われわれ水産漁業家はこのままでは倒れてしまう以外にはない、生命を賭しても自衛態勢をとらなくちゃならないというので、船を二そう雇って、それに対して防衛態勢を整えて、設備を整えて、もし接触した場合においてはからだぐるみいわゆる韓国の軍艦にぶつかっていこうと、非常に一触即発の危険な状況に置かれておるのでありますが、これに対してはどういうふうに考え農林大臣は処置していこうとされておりますか、その点を明らかにしていただきたい。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 李ライン近辺の漁場が非常に難局に立っておる、これは北鮮帰還問題と重大な関連があるわけなんであります。いずれにいたしましても、北鮮問題に反対いたしました韓国政府が、ああいう最近における措置をとってきておる次第でございまするが、現地におきましては、それに対してお話のように自衛措置をとりたいというようなお話もあります。これに対しまして、私どもといたしましては、韓国との問題、まあ北鮮の措置とも関連をいたしておる問題ではありまするが、しかし、本筋の日韓交渉というものはなるべく一刻も早く軌道に乗せて、そしてこの李ライン問題も解決していきたい。また、これは解決できるという確信を持ってやっているわけであります。この考え方に対しまして、あまりに刺激的な態勢もとることはできないのです。現地からは、自衛手段として武器も持ち込めというようなことを言う人もあります。また、自衛隊の警備艦を出動させろというような御意見もありまするが、ただいま私どもといたしましては、国際的なそういう角度から、先般予算措置したのでありまするが、出漁する船に対しまして無線装置をつけるというようなこともいたしております。これが全部に行き渡っておりませんが、これをもう少し広範に行き渡らせるというようなこと、これ、なかなか有効な手段なようです。なおまた、当方の監視船を増派するというようなことも考えなきゃならぬかというふうに考えておる次第でございまするが、ただいまはあまり国際的な関係を刺激するのは大局上適切でない段階でありますので、そういうこれにかわる措置いかんということで、関係各省との間で相談を進めておる最中であります。
  35. 千田正

    ○千田正君 時間もあまりありませんから、最後に二点だけしぼってお尋ねいたします。  第一点は、国際捕鯨条約に、今日本政府代表として水産庁長官が参加しております。国際捕鯨条約における一時は脱退をいわれ、また本日は参加、こういう状況になっておりますが、この国際条約における脱退しようとした経緯と、さらに再びこれに参加して、新たなる継続をするというこの結論に立ち至った点を説明していただきたいと同時に、将来どうするか、この問題。もう一点は、北洋漁業あるいはその他において圧縮されてくるというと、当然国内において漁業整備しなければならない。整備しようとするというと、結局その船あるいは漁業者は沿岸漁業にしわ寄せになってくる。北洋でとれなくなれば、結局沿岸に帰ってくる。戦後における当初の政府方針としましては、おそらく自由党内閣、自民党内閣、今日に至るまで、沿岸漁業で食えなくなったら遠洋に行け、遠洋で食えなくなったらもう南極、極洋に行ってやってこい、こういうかけ声とともに進んでいるのが、圧縮された今日、遮断されたような状況における漁場においては、とれない。そうすれば、当然これは沿岸漁業に向って戻ってくる。そうしますと、沿岸漁民の圧迫になってくる。やがて整理されるであろう、あるいは新たなる観点において統合されるであろうというようなこの漁業等に対しては、水産庁としては当然考えなければならない。農林大臣’としまして、そういうふうに現在の国際漁場に締め出しを食っておるところの漁業に対して、これを整備しなければならない場合においては、沿岸に戻らせずに、さらに一歩前進して、あなたのおっしゃる通り、いわゆる漁業振興の立場に立って、海外への移住と同じように海外に漁場を求めて、アフリカもあります、東南アジアもあります、あるいはオーストラリア、ニュージランド、中米、南米へと、新たなる角度において進出するところのアイデアをもって、それに対して政府は十分なる施策を施すだけの考えを持っておるかどうか。それでもなければこの漁業問題は解決しない、私はそう断言してもはばからないと思いますが、この点はどうお考えになりますか。それに対してお答えをいただきたいと思います。
  36. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 第一の国際捕鯨条約でございまするが、この条約に対しましては、本年の一月に、わが国といたしましてはノルウエー、オランダ等が脱退通告をいたしたのに関連いたしまして、わが国もこれを脱退するという通告をいたしたのです。ただし、日本といたしましては、この捕鯨条約が円満な見通しがつくという際におきましては、さらにこの脱退通告を取り消すことがあるという条件付だったわけです。そこで、ロンドンで捕鯨会議が開催されまして、日本からも水産庁長官その他業界の専門家もこれに参加いたしたような次第でございまするが、六月の末に至りまして、ノルウエー、オランダの脱退ということは決定的になった次第です。しかし、これが脱退いたしましても、残余の国々の間におきまして捕鯨を実行するという上について、日本がかねがね主張いたしておりました禁漁区における出漁、この問題は差しつかえないということに見通しがつき、また、一部鯨の出漁期の繰り上げということを日本側は主張しておったのでありますが、これも差しつかえないということにもなりましたので、日本側といたしましては、従来の日本の立場を守るための筋を通す完全な見通しになりました関係上、六月三十日に至りまして、さきに通告いたしました脱退通告を取り消すと、こういうことに相なった次第でございます。これで当面の問題は無事順調に処置できると考えております。しかし、国際捕鯨ということは、鯨資源の関係というようなことにも関連いたしまして、将来いろいろ困難な問題も出てくる形勢のようでございます。私といたしましては、日本の立場を守りながら、また漁族資源の確保ということにも寄与しつつ、最善の方策をとりたいとかように考えておる次第でございます。  なお、北洋における日本の漁獲高がだんだん減ってきて、今年は八万五千トンというところまで下ったことにも関連いたしまして、船団の再編成問題、また転換問題、そういうことが起ってくる趨勢でございます。それに対しましては、私どもといたしまして、そういう転換なり、また再編成を、政府として援助協力をいたすという線を打ち出しております。ただ、その転換が、マグロでありますとか、カツオでありますとか、在来の業界を圧迫するというような傾向の転換になりますということにつきましては、またなかなか困難な問題もありますので、慎重にその転換方法につきましては検討していきたい。特に、今、千田さんからお話しのように、新しい漁場に対しましてその血路を求めなければならぬということにつきましては、全く同感でありまして、私も最善を尽してこの方向を推し進めてみたいと、かように考えております。
  37. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 予約減税については、清澤委員の質問に対しても、また新聞紙上でも、練り直しということになっておるようですが、なぜ農民団体からあのような強い抵抗があったか、その背景、どういうふうにこれを理解しておられるかということについて、お伺いしたいと思います。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 減税廃止というものに対しまして、いろいろの御意見が出ております。しかし、私どもがそれを受け取って再検討するのだというふうにしました気持を申し上げますると、減税廃止というのは、一つの筋の通った議論ではあるようには思うのです。思いますけれども、今、戦後日に年に国民の生活が安定しつつある近年の傾向といたしましては、租税負担の軽減という政策がとられておりまして、現に本年度のごときも、扶養控除の引き上げなんかによりまして、低額所得層の税負担の軽減というものが大きく進められておるわけです。そういう際に、臨時特例というようなことで、一部ではありまするが、私だけは税負担がふえるのだというような人が出てくるということは、大きな政治的感度の問題からいたしましていかがであろうかと、こういうことを中心にいたしましております。
  39. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そういうのも、政府の計算では二〇%程度ですか影響を受けるというのですが、一番大きな百姓の受けている感覚は、中央地方を通じて二十三億程度ですが、ところが、他産業との関連において、租税特別措置で、自然増収等を含めていえば、おそらく九百億もあるでしょう。そういうものに対してはまだ手をつけていない。特に政府の出された経済白書等を見ても、最初、産業復興経済復興のテコとして、最初に補助金、それから租税特別措置、財政投融資というふうに変ってきている。政府の白書自身が、もう租税特別措置のような一千億近いものは、目的を達したから、大いに整理をすべきだ、こういうことを白書自身が強くうたっておるわけです。若干、昨年度整理されたのですが、私は、やはりそれに対する自然増収を含めば、おそらく九百億はあるかと思いますが、わずかそれなんだということが、私たちが農民団体から受けた強い印象なんで、これはやはりもっともなことだと思う。特に、特別、政府がそれによって糊塗するのではないかということを言われておるのですが、たとえば地方税におきまして、地方財政が困難な際に、政府の財政負担をせずに、財政調整をするために入場税と遊興飲食税を国に取り上げて、そうしてそれを人口に比例して配分するという方式をとられて、実際その被害を受ける県は五、六の富裕府県、あと全部の県ですが、ついに政府は入場税だけを引き上げて遊興飲食税はすることができなかった。私は、地方財政を団体相互間で自まかないさせる、こういう富裕府県かち取り上げて貧弱府県に配分して財政難を克服させるというときに受けた抵抗と、非常に似ていると思う。私はやはり、他産業に対しては一千億近い特別措置をまだ残しながら、たださえ農林予算はめった切りされて減っているのに、何だ、こういうことが、二〇%程度の影響を受ける農家の政治力の強さ等もあるでしょうが、やはり私はそこにあると思う。ですから、そういう他産業の租税特判措置の全面的な再検討というようなことと関連されれば、私はよかったと思うのですが、これも、しかし、すなおに大臣が世論に、農民団体の意向に耳を傾けられつつあるやに思われることはけっこうですが、私はそういうふうに見ておるわけであります。特に福田大臣は記者団会見で、本日も、国民経済的なワクの中で農業問題を解決すると言われておるのですが、こういう問題もやはり他産業との関連でやられるべきだというふうに私は見ているわけであります。ただ、ここで問題になります点は、佐藤大蔵大臣が強くこれを主張しておられて、世論に抗しがたく、しぶしぶ承認して、そのことは私は佐藤さんのその感じが今度は基本米価にはね返って、それをできるだけ抑制するというふうに今度は態度が変ってくるのではないかという点を懸念するわけなんです。  そこで、お伺いしたい点は、政府はバルク・ラインの方式は学者等の意見を拝聴されたりしてとらぬと言われているのですが、一体政府がきめられようとする米価で供出農家のどの辺までを拡大生産できるような資本蓄積を許して、そうして農業を国際的な産業として対抗できるようなそういう資本蓄積ができるように、一体どの辺まで本日の閣議できめ、明日ですか、諮問されようとする米価では、どの辺までの農家生産費を、所得を保証されようとするか、バルク・ラインをとられるかどうか、その辺を。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはまだ最終的に政府原案をきめておりませんから、どの辺というはっきりしたことは申し上げられません。しかし、農林省がただいま政府与党調整原案として出しております案によりますと、いわゆるバルク・ラインから見ますと七五ないし八〇パーセントまでのものを包含するということでありまして、かりにただいまの原案を若干修正されることがあるとすれば、八〇程度を包含するということに相なるかと存じております。
  41. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうしますと、まあその程度を保証するというので、基本米価を修正されていくわけだと思うのですが、一体基本米価の構成要素ではどのような点が問題になりますのですか。調整係数ですか、資本利子ですか、そういう点を……。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今考えておりますのは、バルク・ライン方式はとらないということにつきましては、そういうふうに考えております。それから、農林省政府各部局に出しております原案の算定方式、すなわち前三カ年の平均生産費を算出いたしまして、その中に含まれておりまする自家労銀を都市労銀に換算いたしまして、それに二割五分という調整増しをいたしましてやるというこの方式自体につきましては、これも変更する考えはただいま持っておりません。おりませんが、この方式自体によって得られた結果の米価を、農林省の計算によりますると、生産費の調査によりましてバルク・ラインを引いてみるというと、ただいま申し上げましたように、まあ七五から八〇の間になる、こういうことでございます。
  43. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 七〇から八〇というのでは、あまり幅が広いように思いますが……。
  44. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 七五からです。
  45. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 大体バルク・ラインが五%違えば、石当り百円程度影響すると思うのですが、七五から八〇までも保証できますか、大体。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいままだ最終的な結論を出しておりませんものですから、幾らというふうに申し上げかねますが、大体の見当を申し上げておる次第でございます。
  47. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それから、調整係数はいじらないということでしたが、そうですか。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 調整係数基本的に直す考えは持っておりません。ただ、生産費の構成要素においていろいろ数字が検討されておりまするが、もし、たとえば資本利子というような問題につきまして、これは変えた方がよかろうというようなことになりますれば、その結果調整されることはあると思います。
  49. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 資本利子なんですが、あまりにも農業団体なんかの要請実際の資本利子と政府が計算の基礎にしておられるのとずいぶん開きがあるのですが、これはやはり一つの問題点となると思うのですが、これはいかがですか。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまそういう意見も頭に置きながら、検討中であります。
  51. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 やがて今明日には政府態度がきまると思うのですが、いずれにしましても、たとえばカリフォルニアから入ってくる米と、政府のきめられる、農業団体の低い低いという米価とでも、相当、二千円以上の開きがあるわけなんです。こういうことがまあ無限大に続き得るかどうか。ですから、そういう点では、農家生産費、所得を保証しながら、同時に国際競争にたえるような、さきに言われた生産性を高めて、国際的な競争力も高いし、同時に生産費と所得が保証されるというような、やはり別個な農政との関連で、この問題はやらねばいけないと思うんですが、いつまでたっても今のような形では、毎年われわれが見ますところ、農林省の米作農家の競争力を高めるような予算措置というものはないわけなんです。ですから、米価をできるだけ高く上げて、そうして資本の蓄積も許して、それを再投資して国際競争にたえるようにする以外にない。それをやるか。どうして、国際物価との開きを、現実にはあるが、それを認めながら、同時にそれをなしくずしながらやってゆく、そこらは福田農政の大きな問題になると思うんですが、一体それはどうでしょうか。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはお説の通り、そこいらが農政の一番むずかしい点かと思うんです。私といたしましては、価格政策というよりは、生産性向上という点につきまして全力を尽して努力してみたい、こういうふうに考えております。
  53. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そこで、それともっと大きく関連すると思うんですが、これからやがて予算の編成期を……。ほんとうに新大臣農政を織り込まれる大きな問題なんです。ところが、日本農業が大きな転換期に来ているといわれながら、それに対するはっきりした方向がまだ打ち出されていない。しかも、さきにも言われたように、所信でも表明されましたように、基本調査をやられる。まあたくさんの学識経験者等が委嘱されていますが、その結論の出るのはなかなか先だと思う。しかし、同時に、来年度予算というものはそういう新しい方向を目ざすことに間に合わぬと、実際福田大臣は岸さんと同じようなそつのない答弁をされるが、農政としてあとから振り返ってみると、あまり画期的な布石がなされなんだと、こういうおそれがあると思うんですが、基本調査と来年度予算との関連をどうされるか。これは非常に差し迫った、やはり大きな抱負を持って臨んでおられる大臣として、非常に重要なポイントじゃないかと思うんですが、それはどうです。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 農業政策におきまして他の諸政策と非常に違う点は、その効果がすぐ出てこない。なかなか、リンゴの木を植えましても、これは十五年かかるとか、まあ単年作のものでございましてもとにかく一年はかかる、そういうようなことから考えますると、これはよほどある長期的な見通しというものを持って、その線に乗っかって逐次堅実に歩んでゆくということでなければならぬと思うんです。どうも目先の諸現象にとらわれ過ぎた傾向になるということであっては、私はこれは農政の本資を見失うところがありはしまいかというような感じがしてならないのであります。そういうような意味からいたしまして、今度は農林漁業基本政策というものを、一つのこれは鉄則というか、そういうものともいうべきものを打ち出したい。それを遠くにながめながら逐次ゆくわけでございまするが、今基本問題調査会の構想はまあ二年というふうになっております。お話のように、二年といえば、今年の予算をどうするかという問題もあるわけでございます。そこはその動向をもにらみ合せながらで、できる限りのことをやるというほかはなかろうかと思います。
  55. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連。今ちょうどいい話が出ましたが、先日農民団体が大臣に陳情した際にこういうことを言うたのがありましたね。われわれの米価を計算せられるとき、ただ労働力七十五日で計算されては問題だと。農民は七十五日で食べれという話かと。これは非常に今の問題と関連していると思うんです。大臣みずからが農業はすぐ効果は求められないと言うがごとく、七十五日じゃないと思うんです。これはどういう計算で七十五日が出るか知りませんが、こまかくいえば、七十五日じゃないと思うんです。こういう点は一つ、率直な農民が会見して言う言葉、今リンゴの木一本で御説明になったように十五年かかる、十五年の間の努力というものはなかなか計算に出ない。これは十分考えていただかぬと、ここに非常な差が出ると思う。これだけ一つ
  56. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 米価の算定の資料のとり方とか、それから計算のやり方とか、そういうものにつきましては、各方面からの御意見を承わっておるわけでございます。しかし、今年の方針といたしましては、先ほど申し上げましたようなものをとりまするが、ただ、今後生産者側の意見、消費者側の意見、いろいろ聞きまして、そして納得のいく米価というものを編み出していきたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、必要に応じてはまた米価審議会をこの秋にお願いしまして、新しい方式を一つ検討してもらいたいということもいたそうかというふうに考えております。
  57. 森八三一

    ○森八三一君 先刻、中田委員から来年度予算の問題に触れて御質問がありましたので、それに関連して一点だけお伺いをいたしたいと思います。  それは、大臣から御就任になりました気持の表明があったのですが、まだ具体的な内容がありませんので、お話中心として質疑いたしますのにはきわめて不十分ですけれども、詳細な問題は他日に譲りますが、改造後における内閣の新しい方針として、所得の倍増論がいたされております。三日の日の本院の予算委員会におきましては、この問題が論議の中心にもなったかと思っております。池田通産大臣のおっしゃる月給二倍論と、総理のおっしゃる国民所得倍増論とは、理念的に私は相当の違いがあるだろうと思っておりましたが、御答弁では全く同様であるということでありますので、一応同様と考えてよろしいと思いますが、そこで、来年度予算を編成することに取り組んでいかれます新大臣として、国民の人口から申しますれば、六対四あるいはそれ以上の農民比率が占められていると思います。ところが、その所得は八対二あるいはそれ以下であるというような現状である。こういうような現状の上に立って新内閣の方針として、特に総理大臣昭和三十五年度の予算にできるだけ国民所得倍増論の実施に必要な予算を盛り込むということを予算委員会ではお答えになっているのですが、その方針に準拠して農林施策をお進めになる場合、これにどういうように取り組んでいかれるかという一点であります。  単純計算から申しますれば、四割八分の農民が、二割の国民所得を持っておる、それを倍にするということのようにも聞えるのでありますが、それでは大臣所信で表明されました他産業との所得がきわめて不均衡である、これを是正しなければならないということとは、ほど遠い結果に相なる。これをどういうように一つ解決するという方針でいかれるのか、その基本的な方針。この三十五年度の予算にその方針を織り込むとおっしゃる限りは、農林予算の中にもこのことが具現されなければならない。このことを一体どうするか、この基本観念だけをお伺いいたしたい。
  58. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 農村の問題というのは、私は、所得倍増とか国民経済の規模がそういうようにふえている、拡大されるということがなければ、解決できないと思うのです。所得倍増計画というのは、農林問題を解決する上からいっても、ぜひ必要なことであるという考えを持っております。結局、しかし、国民経済がそういうふうに伸びるという際におきましては、鉱工業生産の面において大幅に伸びて、農林生産の面においてはそれと歩調を合せた伸び方をしないというふうに考えます。その間の均衡というのは、その所得を分け前をする人が鉱工業方面には多くなり、農業方面では少くなるというところに求めるほかはないのであります。まあ、そういう角度の観察というか、考え方によって、初めて私はこの農村のむずかしい問題というものは解決されると思います。もとより、農村生産性向上し、農業生産を高めるということは、これは必要であります。しかしながら、同時に、農村におる人が収入を得る道というものも考えなくちゃならぬし、また農村で過剰で、農村家庭の負担になっている人が他の産業方面において活躍し、所得を得るということも考えなくちゃいかぬ。いろいろ考えまして、所得倍増という計画がなければ農村は救われないんだというふうな観念を持っているわけです。  さて、しかしてまた、農村所得向上し、またこれが均等に伸びていきましても、私は農村問題というのは解決されないと思う。それは都市と比べまして、生活環境というものが非常に私は農村はおくれていると思う。この生活環境というものは、農村に重きを置いて整備する。これは農林省施策ばかりでありません。国家各省全体の施策の中に横たわっている問題でございまするが、そういう問題にも頭を置いて考えなければいけない。私は、三十四年度予算の編成に当りましては、農林省プロパーの予算におきまして、特に生産性を高めるという問題には大いに重点を置いて努力をいたしまするが、同時に、各省において農村環境整備するという面にも意を配っていきたい、かような基本的な考え方でございます。
  59. 森八三一

    ○森八三一君 きわめて抽象的で、私、まだ大臣の気持もはっきり今のお答えではわかりません。いずれ、この問題は基本的な問題でありますので、時間をかけて十分論議を尽さなければならぬと思いますが、お話の問題、農村問題は、農林水産業だけをプロパーに考えていくだけでは解決しないということはわかりますが、その所得倍増論ということを実施をするというのですが、その場合に、大体二〇%もございません農民所得というものを倍にするということなのか、他産業との不均衡を是正しながらその上に倍するというのか、その辺をどう扱われるのか。予算を編成するのに一体的な問題なので、大臣所信を伺っておかぬと、われわれは今後具体的に出てくる農林施策というものを審議する場合に戸惑ってしまう、こうなると思うのですが、均衡した上に倍するということでなければ私は本物じゃないと思うが、そうお考えになって三十五年度予算の編成に取り組んでいただける、こう了承してよろしゅうございますか。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 倍増々々というのは、これは日本全体の生産水準が倍になる、こういうことなんですね。その場合におきまして農林漁業生産というものを検討してみませんとよくわかりませんけれども、おそらく倍には私はなりますまいと思います。大へん下ると思います。しかし、農村生活される方の所得が、これは倍になるということは絶対必要である、そのための均衡をはからなければならぬ、こういう問題でございます。
  61. 森八三一

    ○森八三一君 私の申し上げているのは、現状の所得を倍にするのか、都市農村の不均衡を是正した結果を倍するのかというところが、非常に問題があると思う。私は、現に農村環境が非常に悪い、改めることが当然だと思いますが、そういう結果に相なっているゆえんのものは、農民所得が非常に低いというところにこれは基因していると思うのです。農民所得が都市産業と同様の賃金水準に置かれているのかということから、所得がございますれば、これは農村人といえども現在のようにきわめて不完備の環境のもとに満足しているわけじゃないのですから、当然自己の力で意識的に改善しているはずです。こういう結果になっていることは、農民所得が非常に低いという結果なんですから、これを増してやらなければいかぬと思うのです。それが基本的な問題だと思う。その問題を解決せずして農林政策は私はないのじゃないか、こう考えるのでございますが、そういうことを考えつつ、さらに倍増するということでなければならぬと思うのです。そういうふうに三十五年度予算には取り組んでいただけると私は了承したいのですが、それでようございますか。
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ予算とおっしゃいますが、予算とこの考え方とは非常に高度の関係はありません。これは考え方の問題でありまして、まあ総理大臣予算でこれを実現するのだという気持は、まあ金融政策上あるいは財政投融資の計画上、そういう二倍を目途としてということは、これをかりに十年とすれば、七・二%の増産ということになりますが、それを頭に置いて、予算のみならず、他の方面施策がおもでございますが、そういう問題を実施していきたい、こういうふうなことを申し上げておるのではあるまいかというふうに存じます。ともかく、今、森さんのおっしゃることは、大いに増産をするのかということと、それから均衡をはかるのかということでありまするが、その両者をやるということを今日は申し上げておるわけであります。
  63. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) それでは、もう時間も来たようでございますので、大臣に対する質疑はこの程度で本日は打ち切りたい、かように存じます。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  64. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をつけて。  それでは、昭和三十四年度産米価について、決議案を提出いたしたいと存じます。  議決案を朗読いたします。    昭和三十四年産米価等に関し、政府は、次の通り措置すべきである。    一、昭和三十四年産米の基本価格は、生産者の要求する「生産費及び所得補償方式」の趣旨に真に合致するものとたらしめること。    二、予約減税を引き続き実施すること。    三、生産費及び所得補償方式の完全なる確立を資するため、資料の整備等につき速やかに必要なる予算措置を講ずること。  右決議をする。   昭和三十四年七月六日       参議院農林水産委員会  以上であります。  右の決議案を当委員会の決議とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議がないと認めます。そのように決定いたします。  また、この決議は、内閣官房長官、農林大臣及び大蔵大臣に送付して、善処を求めることにいたします。
  66. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま米価に関しまして御決議をいただきましたが、御趣旨のほどはよくわかりました。御趣旨の線で慎重に検討いたしまして善処いたしたいと思います。
  67. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ここでしばらく休憩して、午後一時半から再開をいたします。    午後零時十五分休憩    —————・—————    午後一時四十九分開会
  68. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 委員会を再開いたします。  石谷委員の御要求によりまして紀伊水道における爆薬による漁業被害の件を議題にいたします。石谷委員の御発言を願います。  なお、本日政府からおいでになっておりまする方は水産庁次長海上保安庁次長でございます。
  69. 石谷憲男

    ○石谷憲男君 ただいま議議になりました件につきましては、一昨々日の当委員会におきましても、関係県の当局者から詳細にわたりまして陳情がありましたので、煩を避けたいと思うのでございまするが、事件の経緯は、本年の四月二日に国土開発株式会社なるものの所有いたしまする火薬を中国火薬株式会社という会社が請け負いまして、これを指定海面に捨てないで途中の紀伊水道の海面に捨てたということから起っておる問題でございます。まあ御承知のように、この紀伊水道は全国でも有数な小型漁船の底びき網の漁場でありまして、たまたまこの地域が五月から八月の主漁場に相なるということで、初めて五月に入って網を入れてこういう事態のあることが確認をされた、こういう経緯に相なっておるわけでございます。そのために漁獲されますものはいずれも汚染されておる、そこで他の地域で漁業をやろうといたしますると、水揚げは半減するというような状況で、関係の漁民が非常に大きな損害をこうむっておる、かたがた漁具の損傷なり、あるいは引き上げましたこの爆薬に触れるというと、人体にもさまざまな障害が起るというようなことで、大へん地方的な問題として騒がれておる問題であるわけであります。すでに数回にわたりまして関係漁民は和歌山県庁にも陳情いたしておるけれどもなかなからちがあかない、今日までのところ、この中国火薬が内輪の措置といたしまして、一船当り一万円の見舞金を出したという程度で問題が今日に至っておる、すみやかに投棄された火薬類の引き上げを行わないというと、こういう事態の解決にならぬばかりでなく、まんぜん日を送ることによって、その被害は次第に大きくなって参る、かたがた爆薬投棄に基く損害に対しても何らかの補償、救済の措置を国が率先講じてもらわなければなかなか関係者だけではやっていけないというような趣旨の問題に相なっておるわけでございます。聞くところによりますというと、この問題につきましては関係する機関が非常に多いということから、内閣審議室が中心になって関係するものを集めて具体的な処理方策を研究中ということを聞いておるわけでございまするが、すでに水産庁ではこの問題について十二分に御承知のことと思いまするので、それらの今後の処置について、今日までどういう経過、どういうふうな今後の見通しになっておるか、一応詳細承わりたいと思います。
  70. 西村健次郎

    説明員西村健次郎君) お答えいたします。事件の概要はただいま石谷委員の大体おっしゃった通でございまして、私ども連絡がありましたのは、五月二十日に和歌山県の経済部次長が参って、今お話のありましたような内容の話を持って参ったわけでございます。私どものところで、そのとき検討いたしましたところ、これは本件の、国土開発でございますか、あるいは中国火薬でございますか、その行為は明らかに火薬類取締法令に違反した行為である、運搬届について指示された区域外、投棄してはいけない区域へ投棄してしまったということが原因でありまして、明らかに不当な行為である、従いましてこれは法律的に見ますと、中国火薬なり国土開発は当然補償、賠償の義務があるという事件でありまするから、第一義的には当事者間において十分なる補償なり原状回復の処置をとらすべく努力する必要があるのじゃないか、こういうことは申しておきましたけれども、しかしその後、いろいろ聞くところによりますと、現実にこれらの会社は賠償能力がない、従いまして、民事事件とは申しますものの、現実に関係漁民がこのために非常なる困窮を訴えておるということは事実であります。ところが、一方このような事件につきまして、果してどこの役所に所管があるか必ずしも明確でない点もあるように考えられます。しかしながら、われわれといたしましては、やはり漁民を守らなければならないという見地から、一刻もほっておけませんので、内閣審議室の方に、私の方からお願いしまして、どこの所管かわからなくっても、ともかく問題解決に乗り出さなければならないということで、内閣審議室に関係各官庁に集まっていただきまして、いろいろ協議しました結果、ただいまのところ、何はともあれ、やはり現場をよく調査いたしまして、事実の関係をはっきりさせる、それが漁業にどのような影響を及ぼすかということを調べる必要がある。私のただいま聞きましたところによりますと、審議室のあっせんと申しますか、審議室が中心になりまして、来週の月曜に、関係各省からなります調査団を現地に派遣するということにきまっております。私どもとしまして、その調査の結果によりまして、なお今後の対策について、関係各省の協力をお願いするなり、できるだけのことをいたしたいと、こう思っております。
  71. 石谷憲男

    ○石谷憲男君 聞くところによりまするというと、中国火薬という会社は、ただ紀伊水道の海域に、初めて指定海域以外の所に投げ捨てたということではなくて、高知県と愛媛県のちょうど県境に当る瀬戸内海の入口の宿毛湾にも同様なことをやったことがあるというようなことも実は聞いておるわけであります。陸上におきまして火薬の授受あるいは転移というような場合におきましては、ずいぶんやかましいことが言われ、非常にめんどうな手続等も必要としておるようでございまするが、確かにこれは捨てる海域を指定したことは指定したでございましょうが、確実にそこに捨てられたかどうかということにつきまして、一体責任のある措置について何がしか欠けておるような点があるように思うわけであります。ただこれは、紀伊水道の当面の問題のみならず、今後においてもしばしばの機会に同じようなケースの問題が起り得る、こういったことにつきましては、一体どういうふうにお考えですか。
  72. 西村健次郎

    説明員西村健次郎君) この中国火薬という会社は、実は今お話のありましたように、昨年問題になりました愛媛県の宿毛湾沖における火薬投棄ということにつきましても、同様の問題を起しておるわけでございます。事件の内容は多少違いますけれども、要するにこの二つの事件を関連して考えます場合におきまして、これは政府部内のことでございまするけれども、私どもといたしましては、やはり火薬類取締法令の施行という点について、私ども水産を担当する官庁としてはもう少し考えていただかなければならない点があるのではないか。これは御承知と思いますけれども、火薬類取締法第二十七条によりまして、この運搬なりについての技術上の基準は省令に委任されております。従って省令によって、いわば通産大臣の権限によってこの技術的な解決の道というのが講ぜられるであろうというふうに考えられるわけであります。しかしなお一面、この二十七条違反につきましては、五万円の罰金だけであるというような問題もございますけれども、ともかく私どもとしまして、このような行為によって何ら火薬類産業関係がない漁民が被害を受けるということは、これはとうてい容認しがたいことでありますので、水産庁といたしましては、通産省に対しまして、火薬類取締法のこの面についての再検討をお願いしたいということを正式に要望いたしておきまして、その内容、技術的なものにつきましては、これは私どもの所管の方でございませんので、具体的に申し上げるわけに参りませんが、ともかく私どもとしましては、こういうことがたびたび繰り返されるということでは、沿岸漁民もたまったものではありませんので、今後再びこういうことのないようにしていただきたいと、こういう強い希望を表明しておるわけでございます。
  73. 石谷憲男

    ○石谷憲男君 まあ明らかにこれは関係者の火薬類取締法の違反でございまするから、第一次的な賠償責任というものは関係会社が持たなければならぬことは当然なことと思うわけでございますが、おそらくこれらの会社には実質的な賠償能力というものはないじゃないかということもいわれておるようでございます。そこで、一体、何と申しましても、この海域の早急な掃海をいたしまして、投棄された火薬類の引き上げをするということが緊急な問題じゃないか。特にこの海域に関係いたしておりまする漁民はいずれも零細なものである。千数百名にも及んでおるということでございまするから、事態は一刻も猶予できないというように考えるわけでございます。ただいま説明によりまして、これから調査をして、その上で具体的な話し合いをつけるのだというようなことでございまするけれども、まあ関係するところが多いだけに、えてして責任のなすり合いになる。なかなか、調査々々で日が暮れるということになりやすい案件のようにも思うわけでございます。何と申しましても、従いまして、この漁業の、関係漁民の主管官庁はあくまでも水産庁でございまするから、よほど水産庁がこの種の問題につきまして積極的に、しかもタイムリーに問題を片づけるというお考えをお持ちになって推進をされないというと、ついに、何と申しまするか、うやむやのうちに事柄が終らざるを得ないということになる危険が非常にあると思うのであります。この辺のことにつきまして、水産庁の御所見を伺いたいと思います。
  74. 西村健次郎

    説明員西村健次郎君) 今、石谷委員の仰せの通りの心配をまあ私どもも実は持っておりましたので、水産庁がこの問題で漁民の保護のために単独でいろいろ問題を方々へ持って参っておりますが、現実の問題として、なかなか事が運ばないということで、内閣審議室の方に関係各省に集まっていただいて、問題を、ともかくどこの省がこの関係どうだということでなしに、問題の解決に努めて参りたい、こういう意味で、審議室を中心に仕事を進めていただいておるわけでございます。私どもといたしましては、私どもでできるだけのことは、もうあらゆる可能性をつかまえてやって参りたい。それから現地の調査というものは、これは行って見ないと率直に申し上げてわからないと思いますけれども、海のことでいろいろ困難もあるかと思いますけれども、ただ私どもとしまして、現実に調査員がただ海岸に行って見てもしようがないので、これ日もありませんので、和歌山県当局とお話いたしまして、県の調査船を出す、あるいは場合によって漁船を使うというようなことについて和歌山県の当局とすでに口頭では話し合いついておりますので、月曜に出発しましたら、必ずやその調査は円滑に私は進むだろうと、こういうふうに思っております。
  75. 石谷憲男

    ○石谷憲男君 水産庁当局もお認めのように、やはり各省にまたがるという問題であるだけに、なかなかその結論の出し方ということにつきまして問題があるじゃないか、こういう御懸念もあるようでございまするが、それだけにやはり水産庁はよほど腰を入れて、自分が中心になってこの問題を解決するのだ、推進するのだという決心をはっきり表明をしていただきまして、少くともすみやかに関係漁民のこういった不安な状況、現にこうむっておるさまざまな被害というものを取り除ける措置を徹底して講じていただきたい、かように考えるわけでございまするが、一つその重大なる決意のほどを御披瀝いただきまするようにお願いいたします。
  76. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 通商産業省軽工業局長が出席されておりますから、お知らせしておきます。
  77. 西村健次郎

    説明員西村健次郎君) ただいま私申し上げましたように、私どもとしましては、やはりあくまでも漁民を救済しなくちゃいけない。その実現に向ってともかくあらゆる手段を講じて参りたい。それにはやはり関係各省、まあ率直に申し上げて皆逃げ腰になられちゃ困るものですから、私どもとしてはできるだけまあ話し合ってやりたいと思っております。
  78. 石谷憲男

    ○石谷憲男君 まあその関係各省というのが多いだけに、御心配の通り逃げ腰になるわけです。それだけにやはり水産庁は決心をきめて、逃げ腰にならぬように、ほかの連中を引っぱり回すというだけのことをやらなければ、結局私はうやむやになってしまうのじゃないか。こういう心配があるように思うわけです。その点をぜひとも水産庁は自分の問題としてお取り上げになってお考えいただくようにお願いしたい、かように思うわけでございます。
  79. 千田正

    ○千田正君 関連して。今、石谷委員からの質問に対して水産庁からの答弁がありました。これは水産庁としては、漁民の保護という立場で述べられておりますが、さらにきょう各省から見えておりますので、海上保安庁としては、海域の取締りの立場から、こういう問題の発生に対してどう考えておられるか、どういうふうに今後処置するか、この問題と、通産省から見えておられるようですが、通産省としては火薬の製造並びに火薬の原料品等の不要な場合においての破棄、あるいは処置等に対してはどういう指示をしており、また監督しておるか、この点を両官庁の代表者からはっきりと答弁を伺いたいと思います。
  80. 和田勇

    説明員(和田勇君) 海上保安庁といたしましては、今回の紀伊水道に火薬類を投棄いたしましたときに、現場の監督者の指定海面に投棄するということが間違いなく行われるというふうに考えまして、巡視船を同行いたさなかったのでありまするが、こういったことにつきましては、今後は火薬類その他の危険物につきましては、必ず巡視船を同行させまして、指定の区域に投棄させるように、遺憾なく監督いたしたいと思います。
  81. 森誓夫

    説明員(森誓夫君) 通産省の軽工業局長でありますが、通産省としましては、火薬類取締法にこういう火薬の破棄をすべき場合の取締りについて規定がございますが、その規定を確実に実行するということによりまして、自今こういう第三者に被害を与えるということのないようにいたしたいと思うのであります。火薬類の取締法では、その二十七条に、その火薬を遺棄する場合に━━廃棄といいますか、その場合の技術上の基準がきめられております。省令できまっております。それに従って処置しなければならないということになっております。で、海中にこういう火薬を捨てるような場合には、省令できめられておりまする基準によりますと、水深が二百メーター以上なければならない、あるいは海岸から八キロ以上離れていなければならない、そういうふうな一つの場所についての規定があるのでありまして、その通りにやってもらえればよかったのでございますが、それが実行されなかったというために、今回のようなまことに遺憾な事態が起きたのでございますが、通産省としましては、自今こういう規定を確実に励行できるように特に海上に捨てるような場合には、どうしてもこれは海上保安庁の御協力をお願いいたさなければならないと存ずるわけでございますが、そういう関係庁に十分御協力を願いまして、この規定が今後確実に守られるように十分注意をして参りたいというふうに考えております。
  82. 千田正

    ○千田正君 今のお話によりますと、海上保安庁としては、当然巡視船が監視の立場に立ってそれを廃棄させるという立場をとられ、通産省としては、おのおのの規定に従って、たとえば水深三百メートル以上の所に捨てさせるということになっておるのだが、実際は三十メーター、四十メーターという、最も魚族の回遊する所に捨てられたので今度の問題が起きておる。最後に、私はこうなるというと、災害を受けた被害者はどこへ一体責任を追及するのかという問題なんですよ。対象となるべきところは、あるいは小さい会社だとすれば、これは補償も十分にできない。しかしながら、漁民の損害は甚大である。各官庁としては十分に調査並びに監督が行き届いておらなかった、こういうことになるわけでありまして、漁民としてはかかりどころがない。結局一千万やその程度では実際の損害にはどれほどの補償にもならない。ここに問題が起きておるのでありまして、この点は幸いに政務次官が見えておりますから、こうした現実の問題が起きてきた、そうして水産庁としては漁民保護の立場からこれはあくまで調査して、その結論によって追及しなければならないという段階にきておる、その製造販売の会社は資本金も少いし、とても漁民の要求には応じかねる、またそのよってきたる原因を遠く探ってみるというと、通産省の十分な監督規定を守らなかった会社であり、かつまた廃棄に関しては海上保安庁が十分注意しなければならなかったにもかかわらずその注意がなかった、いろいろな問題がここにあって、漁民としては、わずかな資本金のその会社を相手取ってやっても十分な補償も得られないし、また次の段階の確約さえも十分取りつけられない、こういう現実の問題であります。政務次官としては、この問題に対してはどういう考えを持っておられるか、この際お答え願いたいと思います。
  83. 小枝一雄

    説明員(小枝一雄君) ただいま先生から御質問になりました問題、私も非常にこれは遺憾な問題だと考えております。今後わが国の漁民を保護いたしまして、その安全をはかるということは当然な責任でもありますし、ちょうど今回の問題につきましては、各省庁からそれぞれ調査団を派遣することにいたしております。十分に調査を早く遂げまして、その上で遺憾のない措置を講じたい、かように考えておる次第であります。
  84. 千田正

    ○千田正君 これはあれですね。漁民がこの間ここへ陳情されたときも、とうてい相手の会社は十分な支払い能力がない、さらに要求するとその会社自体がつぶれるだろう、それほどのことをしてまで要求してもどうかと思うが、損害は非常に大きい、だからどうかして政府の方で、この賠償は別としましても、何らかにおいて漁民の損害をカバーしてもらいたい、こういう陳情をこの委員会が受けておったわけであります。でありますから、調査の結果においては、おそらく政府の方において、何らかのこの問題の損害はカバーして、漁民が安心して漁撈に従事するような方途を結論的には見出さなくちゃならぬ、そのときには単なる水産庁だけの問題でいいかどうか、非常にそこに疑問がありますので、あらかじめわれわれは━━幸いにして政務次官がお見えになっておりますから、政府当局としては総合的判断のもとに、単なる農林省だけの問題でなくして、十分に金融その他についても考慮して、この問題の解釈に当ってもらいたいということを特に要望いたします。
  85. 小枝一雄

    説明員(小枝一雄君) ただいまお述べになりましたような私どもも考えを持っております。ただ、水産庁のみならず、関係方面とも十分協議を遂げまして善処いたしたいと考えております。
  86. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 関連質問でありますが、今の海上保安庁の次長のお答えの中に、自今こうした問題を起さないように十分善処するというお答えがあったのでありますが、その前に、西村次長のお話に、この中国火薬が前にも土佐ですか、高知県でこうした事犯を犯したことがある。その際にそれぞれの所管官庁で、こうしたことを二度とやらないようにという処置を講ぜられたかどうかということ。講ぜられたとすれば、どういう処置を講ぜられたか、それが第一点であります。  それからいま一つは、中国火薬がそうした事件に対して弁償能力がないというお話でありましたが、弁償能力がなくてこうした事件を二度も起した。そうしてそのつどだれかが肩がわりして弁償するというようなことが、たとえば国がそうしたことに対してある措置をとるというようなことがあったとすれば、二度あったことがまた三度あるというような危険性もないでもないと思うのであります。中国火薬の弁償能力がないということに対して、何らか調査をなさったかどうかということ、その二つをお答えいただきたいと思います。
  87. 和田勇

    説明員(和田勇君) ただいまの櫻井先生のお尋ねに対しましてお答えいたします。  本年の二月十七日に兵庫県の方、県の保安課の方が、私どもの方の、神戸に第五管区本部というのがございますが、その本部に参りまして、西島火薬の処理についてお話がございました。そこで、私どもの方では、一昨年の八月に、ただいまお話の、宿毛沖の投棄事件の例がありましたので、投棄については、十分間違いのないようにしてほしいということを伝えてございます。さらに二十三日には国土開発の社長を呼びまして、投棄火薬類につきましては、火薬類取締法施行規則六十七条第一項の規定を厳守するように指示いたしております。さらに三月の三十一日に西島工場の事務所におきまして、当庁の神戸に保安部がございますが、その保安部の者、県の方、それから県の警察、中国火薬の第一作業課長という人々によりまして、この処理作業の要領を打ち合せいたしまして、その際に当庁といたしましては、中国火薬の第一作業課長に対しまして、投棄海面について絶対間違いのないように重ねて厳重な指示を与えているのでございます。ただ、まことに遺憾のことは、私どもの方の船艇が十分でございませんので、この投棄いたしました船に同行しなかったという点がまことに遺憾な点でございます。
  88. 西村健次郎

    説明員西村健次郎君) 第二の御質問の点でございますが、賠償能力がない━━私実は先ほどそう断定的に申したつもりはないのでございまして、聞くところによりますと、そう賠償能力もないという程度で、私の言う意味は、もちろん民事責任がありますのですから、賠償能力がどの程度であろうが、会社が非常に困窮しようが、この問題、これは賠償責任はあくまで追及すべき性質のもので、これは民事事件です。ただ現実に巷間いわれておりますように、賠償能力がない場合において━━おそらくこれはないのじゃないかと、私はいろいろ諸方面から聞きますとそういう印象を受けるのであります。その場合において救われないのは漁民である、こういう意味で申し上げたのでありまして、私の方として投棄者を賠償能力がないと断定したわけではございません。その点誤解のないように願います。
  89. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連してちょっと聞きますが、この火薬の投棄について、いろいろ取締りの規則がどうなっているか詳しいことはわかりません。わかりませんが、海上保安庁は非常に謙遜に出ておられる。だがしかし、こういう処置をとるのだと、こういうことに通産省でなっておりましても、こうしろとこう幾ら言いましてもやらないから問題になる。だから、ここの結果は、そういう場合には一応通産省に通知でもして、そして通産省がこういうことがあるからというので海上保安庁等に通知をして、その投棄の責任は海上保安庁にあるのかどうかと、こういうことなんです、私の聞くのは。だから、その法規はどうなっておるのか。始終こういう問題で、なお農林次官に、これは、こういう問題は一つ十分調べてもらわなければならぬ。ということは、先般東京湾において重油を流されている。いろいろ調べると、これはもうはっきりと流した人間もわかるのであります。ところが、三段階にわたる請負をやって、最後の人間がもうどうにもできない、第三国人であるから。これはもう盗人に追い銭でどうにもできないというので泣き寝入りしたことがある。そういう結果になることが起きたら、農林水産というものは大きな災害になるのだから、いろいろ取締り規則があるからといっても、こんな抜け穴のあるような取締り規則だったらどこかにまた問題が起きる。だからこしらえた上からにはそういうような抜け穴のないような一つ方法を私はやっていかなければ事故の防止というものはできないと思う。私はその法規は詳しくわかりませんが、おそらくあなたの方ではこういうふうにしていただける手がないか。あなたのところでそういう投棄をするとき届出をして、あなたのところからは必ず保安庁に通達する。それで責任ははっきりするのですよ。だれが責任者かわからないということはないだろうと思う。それをしなかった場合には、保安庁としては、こういう所へ棄てちゃいかぬということはわかっているが、いつの間にか知らぬ間にぽいと棄てられたものは幾ら保安庁が目をさかさまにしましてもこれはできる問題ではない。こういう、何かしらん今の役所の規則は抜け穴がちょいちょいと出ている。簡単に抜け穴が作られちゃ、起きたあとで、あの重油の問題のときだが何億円の損害。何としても出ない。犯人がわかっていても一銭でももらえない。こういうばかげたことは、何べんもあるのですから、一つ農林省としてはきちんと調べて、そして関係者に対して、ことに水産関係というのは多いのですから、あれだってそのままでしょう。私は少くともあの問題を水産庁が本気に考えておられるとするならば、請負等をやる場合は、元請人が責任をもってそれを監視して、こういうことをさせない。そういうものがあった場合には、元請人がこの全体の損害を負担するというようなぐらいの契約をきちんと立ったものでなければ効力は発しないぐらいに、そういうものをきちんと作っておけばああいう問題は起きないと思います。多分調べてごらんなさい、必ず私は抜けてあると思う。何べんしたって同じことをやって、同じことを言うておる結果になる。この点に対して大臣の代理で一つはっきり返事をしていただきたいと思います。
  90. 小枝一雄

    説明員(小枝一雄君) ただいま清澤委員から御指摘になりましたように、この種の問題は起りますというと、その波及するところがなかなか深刻でございます。こういう問題をしばしば繰り返すということは漁業政策の上からいいましてもはなはだ残念なことでございますので、ただいま御指摘のように、これを未然に防ぐということが一番根本の問題だろうと思います。そういう問題をいかにしてこれを防止するか。また遺憾ではありまするけれども、そういう問題が起ったときにも、これをどういうふうにしてその損害を最小限度にとどめる、あるいは賠償の責任を明確にいたしまして最悪の場合でもこれを補償するとかいうような根本的の問題につきましては、一つ十分各種の方面から検討いたしまして善処いたすつもりでございます。
  91. 東隆

    東隆君 今、政務次官がお答えになったのでありますが、私は省庁でお調べになった結果、やはり賠償能力がない。こういうことになりますと泣き寝入りをしなければならぬ。そこで国が出すかあるいは別なものが出すか、こういうことになろうと思うのでありますが、その場合に、私はやはり、何といいますか、国土開発株式会社というのは、これは名前は国土開発株式会社ですけれども、一体何のために砲弾を持ったりあるいはロケット用の火薬、こんなものを所有しているのですか。これは私は問題があると思う。国土開発株式会社という名前でこんなものを持っておりますのは少しおかしいと思うのですが、私は軍需火薬を製造しているのではないかとも考えますけれども、そうだとすると、もし火薬を製造しているのだとすると、やはりいろいろ自衛隊なんかとの関連もできてきたり、いろいろな問題もあろうと思うのですが、あるいは戦争中のものを利益を将来得ようとして貯蔵をしておったかもしれません。いろいろな問題があろうと思うのですが、その辺の点はおわかりになりませんか。
  92. 森誓夫

    説明員(森誓夫君) 国土開発株式会社につきまして、ただいま名前と実体とが非常に違うようであるという御指摘がありましたが、今日までわれわれの調査いたしましたところでは御指摘の通りでございまして、この会社は大体海中に廃棄されておりまする火薬を引き上げて、それから解撤と普通言っておりますが、そこから火薬を抜き出して、その火薬を一般産業火薬を製造しておるところへ売るのが大体の主たる仕事でございまして、なお一部自分のところでもその解撤して取り出した火薬を原料にして産業用火薬を作っておるというのもやっております。大体そういうふうなことがおもな仕事でございまして、国土開発という名前から予想されるような、非常に大きい、国土を開発するという、そういうほんとうの意味のことはやっていないようでございます。
  93. 東隆

    東隆君 今のお答えによりますと、この国土開発株式会社というのは、名前は表面はあざむいてそうして中身は違うのだと、こういうことになりますが、私はその辺のところがだいぶこれに関係をして問題があろうと思う。はっきりとそういう方面を御承知の上でやると、どういうことになるかというと、ここはもう自分の利益にならないものを、これは清掃作業と称する言葉を使っているのですが、何か陳情書では非常に意味が違ってくるので、西島工場の清掃作業をこういうふうにして、なかなか陳情書の文書から見ても中身ははっきりしていないのです。それで、その辺のところをはっきりさして、そして責任を、単に捨てることを請け負った中国火薬株式会社、これも私は実のところ言うと、名前はこちらの方がかえってやるのが至当なのであって、国土開発株式会社というのは、これは実は違った中身のことをやっておる、こういうふうに解釈をいたしますと、これはどうも全然違う仕事をやってきておる。しかも、先ほどからお話しになっておるように、この中国火薬株式会社は、前科者になっておる。こんなふうに考えてくると、この二つの会社というのは、これは何かぐるになって、そうして仕事をやっておるようにも考えられるのです。それで、その間のいろいろな何というのですか、契約だの何だのそういうようなものは、合法的に逃げられるような体制を作って、そうして自分たちの会社がもうければいい、そういうような考え方でもって八方悪く解釈をすれば、損害が起きた責任を免れるような体制でやっておる、こういうふうにも考えられてくるわけです。従って、この二つの会社の中身は十分に調査をされて、そうしてこういうインチキな国土開発株式会社を私は征伐してもらった方がいい、こういうふうに考えるわけです。そういう意味で私は今度の調査一つ厳重にやっていただきたいと、こう思うのです。
  94. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) この件は、この程度にいたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  95. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、農業法人の件を議題といたします。  この件について、まず問題の経過、現状及び今後の方針等について農林当局の説明を求めます。
  96. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 農業法人の問題でございますが、あるいはお手元に差し上げてあると思うのでございますが、資料といたしまして、共同経営及び農業法人の実態報告というものをお届けいたしたのでございますが、これは私の方で各府県に照会いたしまして、報告のこない県が二つございますが、四十四県から、報告が参りました。これを集計いたしましたものを一応委員会の方にお配りしてございます。ごらんになりますと、農業法人二百三十九、共同経営が三十八というような報告でございます。これは先般国税庁当局で六百あれは五十くらいでございましたかの数字を出されたことがございます。これとかなり数字が違うのでございますが、違います大きな原因は、われわれ考えまするに、一つは国税庁の方に入っております分で、農地自体を使用収益しないというような蚕種関係の会社でありますとか、あるいは畜産の市乳関係の法人等が実は県から報告が来ておりません。その二つの大きなものが落ちておりまして、実は数が違っておりますのが一番大きな原因ではなかろうかというふうにわれわれ考えております。しかし、報告がありましたのは、これは実は最低の数でございまして、おそらくまだもっと報告漏れというものがあるだろうというふうには考えておるのでありますが、これはまたもう少し時間をかけまして調査をしてみたいというふうに考えております。調査しました数は、案外少く出ております。このほかに共同作業等も取ったのでございますが、これは最も典型的な事例だけを報告してもらいたいというようなことで、これは数は掲げてございません。これをごらんになりますとおわかりのように、報告が参りました農業法人の中で一番多いのは、業種別に見ますと、普通作物、果樹というようなもので大体七割を占めております。このほかにおそらく今後出て来ます大きなものは、酪農とか、土地を使用してこういう法人形態を考えていくというようなことになりますと、酪農等も将来の問題としては出てくるだろうというふうに考えますが、今まで報告がありましたおもなるものが普通作物、果樹でございます。  それから組織別に見ますと、これも七割、大半のものが有限会社になっております。やかましかった鳥取、島根の農業法人の問題がございますが、あれもほとんど有限会社でございましたが、全国的に見ても有限会社が七割を占めているというふうな格好になっております。次が株式会社というような形でございます。  それから、いつごろできたのかということに対しましては、大部分が農地改革後という報告になっております。従前ありました法人は、小作地は全部買収になりますし、自作地につきましても、これは分割しますと、生産に非常に支障を来たすとかいうふうな場合、あるいは小作地を分割しますと、そのほかに、その法人の農業経営に非常に支障を来たすというような場合を除きまして、ごく例外を除きまして、ほとんど小作地、自作地の買収をいたしましたので、改革前のものはごくわずかでございまして、できましたのは農地改革後が大部分でございます。  また持っております法人の権利の内容でございますが、これもここにございますように、賃借権が大部分でございます。賃借権とその他の使用収益権がこれは大部分になっております。  それから農地法上やかましい許可の問題でございますが、これは許可のあるなしを見ますと、ほとんど大部分が許可がない、全部で許可を要しますものが二百二十五あるのでございますが、そのうち、許可のあるのは十五だけ、それも九つは前の農地法以前の許可であります。農地法によって許可したものは六件で、そのほかは許可がないというふうな形になっております。  それから、これもよくやかましくいわれます共同経営の問題でございますが、報告のありましたものの大部分は共同経営の形で、二戸一法人、これも七割くらいが一戸一法人という形のものでございます。  それから経営面積別に見ますと、これは一町ないし三町という、若干内地の平均耕作面積より比べてみますと、これより高いところのものの法人が多くなっております。二百五十二というものを取りました中で、百三十二は一町から三町というような比較的経営面積の割合大きなような、大きいといいますか、平均規模よりは大きい面積のものに多いというような事例が出ております。共同経営につきましては、これはほとんどわずか三十八の報告でございますので、特にこれで傾向として見られるというような形のものはまだ実は出ておりません。やはり普通作物なり果樹に多いというふうな形で出ておりますが、これも、たとえば経営面積ならどの辺に特徴があるというようなこともあまり見られませんで、これは数がまだ少のうございますので、これについては傾向としてどうだというふうなところまでには実はまだなっておりません。これはわれわれが県に照会いたしまして調べました実態でございますが、先ほど申し上げますように、非常に数が少のうございますので、この点につきましては、国税庁との関係もありますし、もう少し時間をかけて、また再調査をしてみたいというふうに考えております。  それから、農業法人に関しましての考え方でございますが、これは先般の国会においていろいろ問題もあり、衆議院の農林水産委員会では決議までありまして、なるべく早くこの問題を法制化するように、ただし、その場合でも、現在の農地法の体系、そういうものに大きな変革を与えないで立法するようにという趣旨の決議がございました。また税金の問題につきましては、なるべく早く税の問題も改正するように、その間は農業法人の課税を認めるように、という趣旨のものがございました。農林省としまして、農業法人に対する考え方でございますが、これは当然、今度できます基本問題調査会等においても論議される問題であろうとは予想いたしておりますが、われわれとしましては、もう少し早い機会にこれについて結論を得たいということで、実は今検討をいたしております。ただ、現在あります農業法人について、これをどう考えるかという問題と、将来どうしたらいいかということと二つに分けて考えてみたいと思うのでありますが、現在の法体系のもとで、今申し上げましたような株式会社なり有限会社という形の法人が望ましいものかどうかということでございますが、われわれの見解といたしましては、現在の農地法というものを頭に置きまして考えました場合に、現在の商法なり、あるいは有限会社法でできました法人では、私どもは、やはり農地法が、一番心配しております過去の農地制度の方へまた逆戻りしていくような弊害が出てくるのじゃないかということを実はわれわれ一番心配しております。土地兼併の問題等、あるいは小作料統制に違反する問題でございますとか、あるいは不在地主の問題でございますとか、今の会社法、商法なり有限会社法の会社そのものを、そのまま認めていくということになりますと、今申し上げましたような心配点を防ぐことが、どうも法律上はむずかしい、非常に不当な結果が出てくるのじゃないかという考えを持ちまして、実は先般徳島にできました農業法人等につきましては、再議命令等も実は出しまして、しかし、われわれとしましては、国会の決議もございますし、この農業法人については、積極的な態度で法の整備もしていくと、検討するというようなこともつけ加えまして、実は再議命令を出しました。これにつきましては、実は現場に行きまして、いろいろ懇談いたしました結果、農業委員会で賃貸借の許可の決議をしておりましたのを、申請人が申請を取り下げるというようなことで、徳島の問題は、私ども円満に話し合いがついたのじゃないかというふうに考えております。しかしその際、私どもが現場に行きまして申しましたことは、先ほど申しましたような将来の問題としては、この問題は、一つ農林省としては積極的に取り上げていきますということを明言いたしております。それでわれわれとしましても、これは農業法人が成立いたしますれば、いろいろな前提条件があろうかと思われます。経済上の問題その他いろいろの前提条件はあろうかと思いますが、われわれの態度は、そういう条件が備わって、あるいは一戸一法人でありましょうとも、数戸共同した法人でありましょうとも、新しい経営発展の可能性といいますか、芽といいますか、そういうものが出てきているのであれば、それに対しては窓をあけようじゃないかという態度で、これは何とか早い機会農業法人に関しますところの立法措置、それに伴いまして、それに関係ある農地法の改正というようなことも、なるべく早い機会結論を得まして、御審議願うようなことにしたいということで、今検討いたしております。この問題は、実は農地局が農地法の関係がありましたので、今までいろいろお取り扱いいたしておりますが、実は、農林省内部におきましても、これは一農地局だけの問題でなく、各局だいぶ関係もございますので、官房等でも取りまとめて、早急にこの問題の結論を出そうじゃないかというようなことも、中で相談いたしておりますのが今までの現状でございます。
  97. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまの御説明に対しまして、御質疑の向きは御質疑を願いたいと思います。
  98. 東隆

    東隆君 私は農林省の方で口を開いてできるようにするという、こういうお考えですが、それはあくまで会社としての法人についてお考えなんですか、その点。
  99. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) これは、実はまだ農林省といたしまして、結論的にこうだということまでは、実は申し上げる段階には至っておりません。至っておりませんが、われわれ農地局といたしまして、中で検討いたしておるのでございますが、実は今の商法上の会社なり有限会社という、資本というものを中心にした会社制度というものを考えていきます前に、これが農地法と果してなじめます形の法人かどうかということを検討してみまして、先ほど申し上げました土地兼併の問題とか、小作料統制の問題とか、あるいは不在地主の問題というものをなるべく防いでいこう、その上に立っての法人というものを考えてみますと、今の会社法の法人とか有限会社法の法人、そういう機能といいますか、特徴というものはほとんど殺されてくるというような形に、私はなるのじゃなかろうかというふうに考えております。それで、今の農地法を頭に置いて考えます場合には、会社法による会社とかという形では、やはり無理じゃないか、何か新しい、といいまして、これは協同組合そのものでも、私はなかなかこれはむずかしい問題があるのじゃないかというふうに考えておりますが、やはりしかし、性質としましては、組合的な、組合的という言葉で何でございますが、組合形態のような新しい、そうして最も簡易にできるというような組織を考える必要があるのじゃないかというのが、われわれが今中でいろいろ研究しております段階で出てくる強い議論でございます。
  100. 東隆

    東隆君 私は会社による、農業法人は、特に私は将来禍根を残すと思うのです。そこで今、農業協同組合法によっては無理だと、こういうようなお話もございましたが、私は農業協同組合法の中の非出資の農業協同組合、あの非出資の農業協同組合の事業を拡充して、その中に生産的な事業を中に入れることによって、私は農業協同組合法をきわめて簡単に改正をすることによって目的を達するのじゃないか、こういう考え方を持っているのです。今のままでありますと、農業協同組合そのものは、その事業の中に生産をやる、組合員が生産をやる形のものですね、そういうような形の、組合員としての段階ですね、における生産的な仕事は、ちょっとやれないような━━だから非出資の、農業協同組合がやり得るところの事業の中に、生産的な事業がやれるのだというような条項を一つ入れることによって、私は可能じゃないか、まあそういう解釈をしているのですが、この方面一つ農業協同組合の関係と、経済的のものとの関係ですね、農地局は十分に一つ調節をとって、そうしてやれることならば、農業協同組合法によってやれる体制を作ることによってできた法人と常に協同組合と取引をし、そうして十分に目的を達することができる、こういうふうに考えますので、そっちの方面一つ十分に研究をしていただいて、単に農地中心にして、農地法のデッドロックにぶつかって、そしてこれを中止されたのでは、大へん迷惑だと思う。だから、この機会に法人を作り上げることによって農業近代化を進めるような体制ができるものを作り上げていただきたいと思うのですが、その点を一つお願いを申し上げておきます。
  101. 戸叶武

    戸叶武君 それに関連してですが、横井時敬さんあたりの大農主義か小農主義かという素朴な農政論議の段階と違って、今西ドイツでもこのような同じような問題に当面しているのは、小規模な農業経営よりも、大規模な農業経営の方が能率が上る、それを通じて近代化をはからなければならないというのが、小農主義的なライン沿岸における農業保護政策と違った形で、新しい農家所得増大生産性向上というのを目ざして、ハノーバーあたりではそういうモデル農業が随所で行われて、そうしてそこには責任者があって、それがリーダーとなって政府から委任を受けて、公共的な経営の実験をやっておりますが、日本においても当然これは、今のところでは政府負担の軽減を目ざして防衛的に立ち上ったが、もっと農家所得増大というものを目ざして、私はこの問題が前進してくると思うのですが、そのときに今農林省で心配したような、一つは旧来の農地法に対する制約の問題があって、土地の兼併や何かの問題を阻止しようという一つの問題があると同時に、もう一つは共同経営の形式によって前進するのには、どういう体制が望ましいかという、いろいろな試みがなされなくちゃならない。それには机上プランでなくて、外国においてもそういう実験がなされておるのだから、私は農政の上における間違いは、机上プランでやって、割合に実験を通じて、そうして具体的な事実の上に農政の前進の試みをするというようなことが少し足りないじゃないかと思います。そういうような問題はどういうふうに考えておりますか。
  102. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 御質問の点でございますが、われわれも単に頭の中といいますか、机上プランでこの法人の問題等は考えては間違いを起すというふうな点は、全然御質問と同感でございます。先ほどちょっと御説明いたしたところでありますが、われわれといたしましては、日本で今どういうような法人があるか、どういうような共同経営があるのかということの実態調査を実は県から報告を取ってしたのでございますが、われわれはその中から出ている傾向といいますか、今見ますと、今のところではまだ一戸一法人という形のものが多い。共同経営というものは非常に少い形で出ております。しかしそれじゃ一戸一法人だけでこの問題を考えていくかといいますと、これもそれではよくいわれます経営規模の拡大でございますとか、それを通ずる経営発展というようなことは、ほとんど期待できませんので、一戸一法人というのは、私どもそこへ参ります前提じゃないか、というような実は考えを持っております。それで、今後考えていくものとしましては、一戸一法人も当然考えますが、小農といいますか、零細経営の零細性というものをある程度触決していく一つの形としての共同化というようなことが今後取り上げられていくのじゃなかろうかというような考えを持ちまして、もう少しこの共同経営等につきましては、実態を調査いたしました上で、時間をかしていただきまして、どういう形の法人が一番いいのかという結論を出していきたいというふうに思っております。
  103. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 全く知識がないのでわかりませんが、調査の報告を見ますると、株式会社、有限会社、合資会社と分れておりますが、調査を実際にされたんですか。まだ途中でございますか。
  104. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 今お手元にお配りしましたのは、実は様式をきめまして県に照会いたしまして、県から参りましたこれは回答書を集めたのでございます。
  105. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 日本農業がここまで進んで参りますと、非常に分化したといいますか、ということになろうと思いますが、私の心配は、日本農民考え方から申しますると、単なる脱税をしたんでは困る、真に、農業がここまで進歩すれば非常にいいことではございますが、たとえて申し上げますれば、北海道のような大地積を持っておりまして、それでこれがほんとうの株式になりあるいは有限会社になりますとやっていけるという面も考えられるわけでございますが、そうでないと単なる脱税を目的でやっておりゃせぬかというきらいが相当あると思う。株式会社になりますと、全財産をあげて価格に見積って株式に出す、また合資にしてもそうでございましょうが、そういう方面が非常に困難であり、日本農業者自体が実に、個人根性の非常に強いものでございます。そこで協同組合の話がございましたが、協同組合すらうまくいってないのが現状でございます。でございまするから、これがうまくいくようなら、日本の協同組合は今でも世界一といわれておりますが、まだまだ、世界一を通り越して、そうして非常な進歩になると思っております。でございまするから、私はいろいろお話もけっこうでございまするが、進めてもらうこともけっこうでございまするが、調査も十分してもらわなければならぬと思いますが、もし事実ならば双手をあげて賛成をし、そこまで日本農業が飛躍いたしますれば、だいぶあらゆる面で進歩いたしまするので、これが実際に間違いのない、農地法も阻害しないし、また真に発展すればいいと思うのですが、不思議なことには農地法の趣旨というものを改正しませんと、農地というものは株式出資にしなければならぬと思うので、今の農地法は非常に困った部面がございまして、やがてはこれを改正してもらうようにならなければならぬと考えておりますが、今のままでもしやっておれば違法だと思います。でございますから、その点も十分お調べになって万遺憾のないように、できましたら、われわれは、希望通りの真の株式会社また真の共同作業がどんどん行われますと、日本の伝統に持っております農業の個人主義というものは全く抹殺されて、そうして進んでくるのでありまするから、この点は非常に賛成いたしまするが、どうぞ調査を十分にして、遺憾のないようなことになって法律ができると思いまするから、その点は御迷惑でも万遺憾のないような、ほんとうに実質ともに株式会社なりあるいは有限会社なり協同組合なりというものができますようになりますことをお願い申し上げておきます。
  106. 北村暢

    ○北村暢君 この問題は非常に世論をわかした問題なんですが、ただ私は内容等についてきょうは質問いたしませんが、これの、今検討しておると言われるんだが、法案臨時国会または通常国会に間に合って出すようなことになるのかどうか。今検討しておる農業問題の基本問題調査会そういうところとの関係で、早急にことしあたり結論が出るのか出ないのか、法案としてことし出すのか出さぬのか。この点を伺いたい。
  107. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 御質問でございますが、われわれといたしましては、この問題は調査会等でも当然問題になると思いますが、農地局としましては、省内でもそういう主張をしておるのでございますが、二年間検討して、その間に結論を出すというんじゃなくて、この問題については、できれば今年中に結論を出したいということで、調査会にもお願いしようじゃないか、また、中でもそういうつもりで、タイミングを考え検討しようじゃないかということを言っております。徳島の現場へ行きましても、できれば通常国会までに法案整備もしたいというような意味のことを言っております。でありますから、私はそういうつもりで一つ早急に検討したいという態度でございます。
  108. 清澤俊英

    清澤俊英君 この際考えていただくことは、個人の法人化が非常に強くなった、これは当然税金の問題が中心だろうと思うんです。そこで、税金の問題で考えられるのは、耕地ではどうかということは、はっきり私はわかりませんが、これは水田等ではしばしば私は言うんですが、大体農作物には自然の条件が伴っている、この支配力というものは非常に強いと思うんですが、そういう場合をまず前提として考えまするとき、自然条件の悪い所はまず収穫が少いと、こう見る、これも常識だと思うんです。従いまして、そういう所ほど手間がかかるんです。従いまして、所得と実際の経費というものは逆比例しておる。これの税制上の取扱いに対しては、このギャップを全部抹殺せられておる。そこに私は税制上の非常な実際上の不満が爆発して出ているんじゃないかと思う。私の申し上げておることがわかりますか。自然の条件が悪ければ、収穫が悪いということは前提として考えられる。そういう場所ほど手間がかかる。だから、普通の資本主義生産における、機械生産等の場合のように、いろいろな労力をかければ、所得増大するという正比例的なものでなく、逆比例していく、こういうアンバランスを持っておる。しかるに、税制上の所得計算においては、その労働力というものを計算していない、ここに中心になった重大な問題がありますので、従いまして、この問題を解決すると一緒に、そういうものの起きてきた理由としまして、この重大な税制上の欠陥に対しても、一つ検討を願いたいので付加してお願いします。
  109. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 本件はこの程度にいたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  110. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 清澤委員の御要求によりまして、地盤沈下の件を議題といたします。清澤委員の御発言を願います。
  111. 清澤俊英

    清澤俊英君 時間もだいぶ過ぎましたので、至って簡単に済ましますから……。  これは農地局長よくご存じだろうと思いますが、新潟の地盤沈下、まああの地方が非常な湛水地帯でありましたのが、終戦後用排水の改良によりまして、乾田化しつつあることは御承知通りであります。ところが、大河津の分水によりまして、新潟県はありがたいことに大きな洪水というものを最近は感じない、こういう非常に利点を受けました。従いまして、分水以降の、以北ですかの下流地帯におきまして土砂が多く積りまして、そうして現在ありまする農業施設を全部このままにしておけば、約五十億くらいの経費をかけて直さなければならぬというので、河状整理を農林省も力を入れて建設省との間において進めておられることは御承知通りであります。そういう地帯で年に何十センチという驚くべき数字をもちまして耕地が、また地盤が下ってきておる、こういうことで昨年あたりから、現に東洋一といわれておるところの栗ノ木川の揚水能力が三分の一低下しておる。そうして非常な湛水が見込まれる。今年のごときは、少くとも二十五ミリの雨が降ったならば、数日間の湛水を見るであろう、こういうような状態になっおります。従いましてこれは耕地だけの問題でなく、工場地帯、護岸あるいは住宅地、こういうような問題を中心にして、地盤沈下の問題が非常に取り上げられて、そして昨年度としましても、臨時応急施設として五億数千万円の金が出ていると思うのです。その中に農業施設等に対しまするところの金というものがどれだけついているのか。まず、これをお伺いしたい。そして栗ノ木川のごときは現に三分の一の揚水機能を失った、こういう点にかかわらず、これに対してはどのくらいの予算がついているのか、こういうことをまず農地局長にお伺いしておきたい。
  112. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 私の方の関係地盤沈下につきましては、三十三年度、四年度とも調査費でございます。三十三年度におきましては、これは昨年度でございますが、八月に新潟の地盤沈下に対しまする応急措置ということを実はいたしました。そのときも、農地関係してどの程度一体地盤沈下しているのだろう、どういう原因だろうかということにつきまして、調査がまだ非常にございませんので、それで一つ、ほかの方は、たとえば港湾でございますとか、あるいは都市下水でございますとかいうものにつきましては、また市街地で非常に沈下しておりまして、これに応急措置をしませんと、非常な問題になる所につきましては、企画庁を中心に実は応急対策が三十三年とられました。そのとき、農地につきましては予備費から二百万円、それから農林省予算を流用いたしまして百万円出して、三百万円で実は調査を始めました。それから三十四年度につきましては、農林省ではやはり地盤沈下の状況を、調査を継続していくということで七百八十五万円という予算をとりまして現在調査中でございます。これは浅井戸をこれから掘りましたりして、調査をやる段階になっております。今までわかっております所では亀田郷が中心でございますが、二十センチ、ないし多い所は五十センチくらい沈下している所もございます。非常に調査範囲が広うございますことと、もう一つ、原因探求のために、農業関係はまだ応急施設ということでなくて、調査ということでやっておりますが、今御質問がございました栗ノ木川等の問題は、最近実は大体事情がわかって参りました。それは今おっしゃいましたように、そこにあります従来のポンプ一台で四トンでございますかの能力がミトンくらいに下っている。四分の一くらい能力が下ったということがわかってきております。  それからもう一つ、用水路、排水路、特に網川原の、あすこの水路につきまして、かなりはんらんなどの被害などが出てきております。農林省としましてはまず応急対策としましては、この栗ノ木川の排水機、それから今の網川原の水路改修につきまして、なるべく早い機会に大蔵省と話しまして応急対策はとりたい。その余につきましては、もう少し調査した上で対策を立てるというような考え方で最近はやっております。
  113. 清澤俊英

    清澤俊英君 それでもう報告はあったかと思いますが、先日の雨ですね、今月に入りまして三日間降りました雨で、松ケ崎浜などという所はもうほとんど湛水しまして、舟でまだ往来している。おそらく収穫はことしは不可能だろうと思います。もとから低いところへまた地盤が下って、そこへ雨がたまったのですから、どうにもできないというような非常事態を起しておりますので、従いまして、先般来お願いしているように、栗ノ大川の問題は、これは農林次官、一つ本腰でやっていただきたいです。新潟県からあなたと同僚の大野君も出ておりますから、この間も行って、私はだいぶよく言ってきたのですけれども、これは第二予備金でもなんでも出して年内に直していただきたいと、こういうことを要望して、私よりは農地局長の方がよく存じておりますから、これ以上申し上げません。  従いまして、私はここで、皆さんの御賛同を得て、一つ決議をちょうだいしたいと、こう思うのであります。ということは、何と申しましても、工場地帯であり、港湾問題であり、住宅の問題でありますので、その方に精力が集中せられて、三十二年度から、二年度、三年度、四年度と応急措置費はついているのです。ただいまお伺いしたように、農村の方は、これから調査費が三百万円だの、七百万円だのという、そのうちに田の方は埋まって、また収穫が皆無になる。東洋一を誇ります排水機が四分の一の能力を失っているのに、これをほったらかしているので、また何千町歩が収穫皆無もしくは収穫半減ということになる。これはどうかといったら、ぼうばくたる農地というものに対する認識が薄れがちでありますので、従いまして、農林省は、この決議をわれわれ出して、農林省皆さん方ががんばられる基礎を一つ作りたいと、こう思いますので、はなはだ僭越でありますけれども、提案の原案一つ朗読させていただきたいと思います。    地盤沈下に対し農地及び農業施設の保全に関する件(案)   従来、地盤沈下対策は、工場、住宅或いは護岸対策にかたより、農地及び農業施設の保全に対しては甚だなおざりにされまことに遺憾とするところである。   よろしく政府は、地盤沈下対策として、農地及び農業施設の保全に関して万全の措置を講じ、遺漏なからしむべきである。  右決議する。   昭和三十四年七月六日       参議院農林水産委員会  どうぞ一つお願いいたします。
  114. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまの清澤委員の御提案にかかる決議案を当委員会の決議とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないものと認め、そのように決定いたします。  この件について、小枝農林政務次官から政府の見解を伺いたいと存じます。
  116. 小枝一雄

    説明員(小枝一雄君) ただいま当委員会において御決議になりました問題は、きわめて重要な問題であると存じますので、すみやかに調査その他必要なる措置を講じまして、皆さんの御要望にこたえるよう善処をいたしたいと存じます。
  117. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 本日はこれをもって散会いたしたいと存じます。    午後三時十四分散会