○島清君 私は、今
局長が御答弁になりましたように、
沖繩の方で何がしかの利益になるのではないかという見通しをお
持ちでありますならば、
日本側においては若干の不利益があろうとも、私はこの
自由貿易港の設定について
日本としては援助する
建前から協力をすべきだ、こういう工合に考えます。しかしながら、私はこの
自由貿易港を設定したからといって、
沖繩側の方に利益になるというようなデータをまだ
持ち合せておりません。と申し
上げますのは、あれがドルの切りかえと同時にその
自由貿易港の設定が発表されたということと、それからこれは最近の
新聞――今月の
新聞でございますが、それによりますというと、「
自由貿易地域関心が薄い?」という見出しで、「経済局照会に反応なし」、短かいですからちょっと記事を読んでみますと、「経済局では、来月一日の
自由貿易地域発足をまえに、地元米琉実業人五百人にたいし質問状を送り、事業
計画などをきいたが、締切り日の十五日はすぎたというのに、十九日現在でわずか二件しか回答がとどいてない。それも、その
会社(うち外人一)の事業内容からして「
沖繩に
自由貿易地域を設定する必要がない」というもので、当局ではその非協力ぶりに頭をかかえている。」、こういうふうに
新聞は報じているのであります。
沖繩の方が利益になるというならば、利益に敏感な実業人が、五百人にもその質問状を発してわずか二件しか回答を寄さぬということは私はあり得ないと思うのです。
そこで私は、多分にこれは
沖繩の人々にも利益にならないだろう、こういうような考え方に基いてそこで貿易
地域のその設定は要らないんだというような結論を出しているのではないか、こういう工合に考えるわけでございます。そこで、そういったような、
沖繩の住民諸君があまり関心を寄せてないような問題に、法律まで作ってそでそれを促進しようということの意図れを、われわれが勘ぐります場合に、何か
日本が戦争に勝利をいたしまして、多くの占領
地域を持っておりました場合でも、軍とよからぬ商人が結託をいたしまして、そうしてずいぶん不純な利益をほしいままにした事例を、私たちは数少くなく
承知しているわけでございます。何かそういうような意図のもとで、住民の意思とは別個な形で進められているといたしますならば、私はその利する者は
沖繩住民にあらずして、
沖繩を占領する、その権力にくっついている一部の不良な人々を利するのみではなかろうか、こういう工合に思うわけでございます。
沖繩の金融
状況を私
どもしろうとが眺めます場合に、中央銀行の役目を果しております琉球銀行の、その株の五一%は軍が持っております。そしてその五一%にものをいわせまして、琉球経済を金融の面からアメリカ軍は自由自在に支配をしております。ところが、ドルの切りかえが完了いたしましてから、アメリカの市中銀行がもう
沖繩の方で業務を開始をいたしております。それとこれとをながめまする場合に、もしそれ、かりにアメリカの国籍を持つ人が、ないしアメリカの国籍を持つ不良な商人と結託をいたしまする第三国人が、そういう軍権力者と意思を通じまして
沖繩住民の意思を無視をいたしまして、この
自由貿易港の設定が行われて、そして運営がされるということになりますというと、何か
局長さんがおっしゃいまする、
沖繩のために何がしかの利益になるのではないかということが、私はないような気がいたすわけでございます。そこで私がおそれますのは、私は、
沖繩のパイン産業を育成しなければならぬという考え方から、先般、
局長には、立場上、非常にお許しを願わなきゃならぬというような、きつい言葉をもって私はあなたに質問をし、激励をし、そしてお願いもしたわけでございますが、それは
沖繩は、講和条約の第三条によりますというと、いずれは
日本の方に返ってくる。で、返って参りました場合に、基地経済を離れた
沖繩の諸君が、基地を離れても生活のできるためには、そういう産業を育成しなければならぬのではないか。その産業というのが、また
日本にも数少い希少な物資であるといたしますならば、
日本政府も、政府の方針として大いに援助してしかるべきではないかという
建前をとっておったわけでございますが、今回は、それが
発展をして参りますというと、たとえば双眼鏡にいたしましても、ミシンにいたしましても、またトランジスタにいたしましても、これは組み立て式になっておるのでありますから、部品を持っていって組み立てて、どんどんアメリカ人の手によってアメリカ市場の方に運ばれるということになりますというと、私たちはこの双眼鏡あるいはミシンの例のあの過当競争にこりましてそしてあるいは
日本の憲法に抵触するような疑いがあるのではないかと思われるような、軽機械の輸出の振興に関する法律と、こういうものを制定したばかりでございます。そうなりますというと、
沖繩の方でこの組み立て式の商品をどんどん持っていきますというと、まあアメリカ市場において、こういったような、せっかく憲法に抵触をするのではないかという疑いを持つような法律すら一われわれは中小
企業者を保護し、
日本の貿易の振興をはからなければならぬという
建前で法律を制定したにかかわらず、そうすると、同一のような品物がアメリカの方に出ていくということになりまするというと、一面においては
日本商品と競合し、そして市場の方で競争する姿が出てくるわけであります。しかもその競争をいたしまして、その競争いたしました
日本商品が負けて、それからメイド・イン・オキナワに市場を支配されましても、その益するところが
沖繩県民であるとするならば、私はこの際、
沖繩県がああいう状態であるからというので、
局長が同情しておられるような立場で、それもまたよろしかろうと思うのです。しかしながら、その扱いまするのは
沖繩県民ではなくして、アメリカ人であり、あるいはそれらと結託するところの、よからぬところの商人であるとするなら、私は大
へんなゆゆしい問題をはらんでおると思うのです。
そこでもし
沖繩の
自由貿易港、これに協力するということになりますというと、これは
日本の方が協力しないと、なかなかそれは作ってみても、運営の面においてうまくいくはずはございません。売られるのは私はアメリカの市場であると断定して間違いないのではないかと思います。たとえば
日本の品などを東南アジアの方に出しましても、ドルがございませんから焦げついてしまう。だから結局輸出も不振になるという形でございます。また売ってすぐドルを持ってこれるような
地域だといたしますというと、
沖繩とアメリカの特殊な
事情からいたしまして、アメリカ市場ということになるわけでございまするからして、で、私はその
発展するところ、
沖繩と
日本との
関係も非常にまずい形になるのではないかと思います。
私たちは、
日本の政治家といたしまして、
沖繩八十万県民が祖国に帰りたいという気持に対しまして、謙虚な立場からほんとうに帰ってもらわなければならないという気持を持っておるのです。そうであるといたしまするならば、それは貿易の面から、経済の面からいたしましても、
沖繩と
日本との間の溝を埋めて、そしてこの覚書にもございます
通り、もう外国扱いなどをしないようにするという状態を作り出すことが、私たちはその
沖繩の特殊
事情によりよく報いるゆえんだと考えるのです。ところが、今私が例で申し
上げたように、
日本でも過当競争で、それは法律まで制定をしてそれを押えているというものが、
沖繩の方で部品を持っていって組全てられて持っていかれたということになりますというと、それは松尾さんも黙ってはいないと思うのです。やはり
沖繩の方にいく商品については、この覚書より以上の厳重な私は規制をしなければならないと思うのです。そうなりますというと、何人も利益をしないような、
自由貿易港を制定したがゆえに、そして
日本と
沖繩との間によりよく物の流通に壁を作って、そうしてよりよく溝を深めていくということは、将来
沖繩が
日本に帰ってこなければならぬという運命からいたしましても、ますます私はその実情を遠のかせていくのではないか、そういうような気がするわけなんで、それを私は憂えるわけなんですが、その点については松尾
局長さんどういうふうにお考えでございましょうかな。