○片岡
文重君
労働大臣にちょっと申し上げたいんだけれども、どうも
松野労政というのは、私は
あとさきのことを少しやる
傾向があるんじゃないかと、大へん失礼だけれども、考えます。この前の
委員会で取り上げられました国家公務員等の専従者に対する所見発表の問題にいたしましても、もっと
労働大臣としてはさしあたってやらなければならない重要な問題があるのにもかかわらず、どうも時流の先をゆくというんですか、フット・ライトを浴びるようなことばかり考えておられるんじゃないか、こういうじみな行政をあずかっておられる
大臣としてはもっとやはり影響の及ぼす点を深く私は考えていただかなければいかぬと思うわけです。今のこの問題についても、先ほど
有馬部長の
お話では、
職業訓練の内容も非常にまちまちである、区々である、国で始めたものは日が浅い、しかし、日清戦争直後から始まっておるという古い経験もあると言われた。しかし、
歴史が古いから必ずしも優秀であるというわけでもなかろうし、この
技能者の技術水準を高めるということが目的であるなら、むしろ国であると私であると、あるいは地方団体であるとを問わず。その
職業訓練の内容を統一して
向上せしめるところに
政府はまず第一段の努力を私は払うべきだと思うんです。で、各企業所における
技能者の素質を
向上させるということがまず第一段のねらいであるなら、そういう施設やそういう具体的の方法が完全にとられた上に立って、どの
程度の水準に達しておるのかということでの任意的なテストを試みるというのであるならば、これはわからぬこともないでしょう、
労働者諸君にとっても不安はないわけです。ところが、今
職業訓練というものの設けられておるのは大企業に限られておるのであり、
中小企業というよりもむしろ零細企業の共同出資によるようなものは、なるほどあるにはあっても数は少いわけです。こういうところで出てくる
労働者の数というものは全般の
労働者の数から見ればきわめて少いわけです。だから、おそらく国で統一した試験を行なって、それらの
技能検定をしようとされるのでしょうけれども、そういう水準を引き上げることに対する努力を——目ざましい成果を上げるような努力をあんまりされないで、何かこう画一的に
労働省の権限を広めてゆく、これには役立つでしょう、しかし、
労働者諸君にとっての職場内における不安、これは試験を受けることの不安じゃないんですよ、むしろ職場の中における
労働者の
労務管理上受ける不安です。これは何といっても払拭するわけには私はいかないと思う。ですから、ここで問題になるのは、こういう
労務管理上におけるいろいろな取扱い上の不安、これはいかに
政府が使用者に対してそういう
労務管理に使ってはいけないというようなことを言われても、これは
労務管理者の立場になれば、使用者の立場になれば当然これは使います。これはおそらく
大臣が使用者になってもお使いになる、便利ですからね。第一そういうレッテルを張った方が、たとえば定期昇給
一つ考えてみても、百パーセントに昇給
資金がなかった場合には、そのうちの八割なり七割なり五割の者が昇給する場合に、平等な勤務成績であったら、一体どれをとるかということになれば、こういう
技能検定に通っておる者を当然とるでしょう、そういうところに不安が私は大きくあると思うんです。そういう危険の方が多くて、一体これによってどの
程度労働者諸君が利益を受けるのかということになると、ちょうど学生時代の点取り虫がいい成績をとって卒業して、社会に出ても、必ずしもその卒業成績順には社会に貢献していくというわけにはいかぬと思う、そういう実際に仕事をすることよりも、受験の要領だけに熟達しておる者の方が先に合格してゆく、こういう危険性もあるわけです。どう考えてみたってこれを早急にやらなければならない理論にはなってこない。むしろそれよりも一般の
労働者諸君に高い技術水準を与えられるような
方向に、むしろ企業内における
職業訓練所を持たないところにはもっと
政府が補助をしてやらせるならば、国の職業補導所を広げるならば、そういう技術を早く与えて
雇用等の問題を解決するような
方向に私は持っていくべきだ、そういう努力に
労働省の方としてはむしろ全精力を傾けるべきじゃないか、こう私は考える。本日官報にすでに公示されたということにこだわっておるようですが、
職業訓練法をこのような
方向に使うことに
労働省が力を入れておるとすれば、われわれとしては、少くとも昨年通した
職業訓練法に対して重大な修正を加えなければなりません。改訂を加えなければならない。早ければこの通常国会等において私たちは
改正案を出したいと思う。特にこの省令や政令の内容等についてはわれわれはほとんど関知しておりません。これの審議のないことをいいことにしてこういうことをやられるのでは、私たちとしてもう一ぺんこの問題に
根本的に検討してみる必要がある。どうしてもこの
改正案を考えなければならないと思いますから、この際、
一つ試験期日を延ばすなり、できればこの際一応見送るということにいま一度
大臣の御考慮をいただきたいと思うのです。