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1959-09-08 第32回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月八日(火曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————   委員異動 八月十九日委員北村暢辞任につき、 その補欠として村尾重雄君を議長にお いて指名した。 本日委員小柳勇辞任につき、その補 欠として藤原道子君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 武徳君    理事            高野 一夫君            吉武 恵市君            阿具根 登君            木下 友敬君    委員            鹿島 俊雄君            勝俣  稔君            紅露 みつ君            佐藤 芳男君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉君            片岡 文重君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            藤原 道子君            村尾 重雄君            常岡 一郎君   国務大臣    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    厚生省公衆衛生    局環境衛生部長 聖成  稔君    厚生省医務局長 川上 六馬君    厚生省児童局長 大山  正君    厚生省保険局長 太宰 博邦君    厚生省年金局長 小山進次郎君   —————————————  本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (青少年の問題に関する件)  (食品衛生関係の問題と堆肥舎の問  題に関する件)  (臨時医療制度調査会の問題に関す  る件)  (八月中における台風の被害状況報  告に関する件)  (診療報酬の問題に関する件)  (国、公立組合立病院都市集中  と私的医療機関の育成問題に関する  件)  (国民年金積立金の運用及び国民年  金の普及宣伝の実状に関する件)  (新潟県高田国立病院看護婦の出産  制限問題に関する件)  (高知県中村市国保直営八束診療所  の偽医師事件及び僻地における医師  の充足状況に関する件)  (中央社会保険医療協議会のその後  の処置に関する件)  (社会保険診療報酬に対する租税特  別措置法に関する件)  (医療金融公庫設置の問題に関する  件)  (水俣市に発生した奇病の問題に関  する件)   —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それではただいまから委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。八月十九日付をもって北村暢君が辞任いたしましてその補欠として村尾重雄君が選任されましたことを報告いたします。   —————————————
  3. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは社会保障制度に関する調査の一環として一般厚生行政に関する件を議題といたします。  まず、高野委員からの質疑の要求のございまする三番目の青少年の問題についてこれをまず議題とします。
  4. 高野一夫

    高野一夫君 きょうは御質問がたくさんあるようですから、私は予定しておりました質問のうちのまた二、三に限りまして、きわめて簡単に申し上げたいと思います。あとは他日の機会に譲りたいと思います。青少年問題についてですが、この間も実はわれわれ調査団で岡山その他の教護院等を視察して回ったのでありますが、最近全国教護院収容されている者がどれくらい男女合せてあるか、さらに実際もっと収容しなければならない数がさらにあふれているかどうか、あるいは十分収容し切れているかどうか。それが一つと、それから各公立教護院において男女一緒収容しているわけですが、国立の方は一つ女子教護院ができたわけだけれども、この公立教護院男女別々に隔離するということについて、何か厚生省、考えられて各県にいろいろ相談でもされたこともありますかどうか、一応それを伺っておきます。
  5. 大山正

    説明員大山正君) ただいま御質問のありました教護院の現在の収容力でありますが、現在ございます教護院は、国立が一カ所、都道府県並びに指定都市公立が五十三カ所、私立が二カ所、計五十六カ所の施設がございまして、この収容定員は五千八百人ということに相なっております。これで足りるかという御質問でございますが、私どもといたしましては十分でない、かように考えております。現在、私どもの方の関係児童相談所全国相談に参っておりまする非行関係相談が年に四万七千件ほどに上っております。そのうち施設収容する必要のある者はそのうちの一部になるわけでございますが、それにいたしましても現在の五千八百人の収容力では十分でない、かように考えております。来年度におきまして、私どもも若干の収容力の増を実現したい、かように考えておりますが、今後ともこの増加につきまして努力したいと考えております。  次に、教護院における男女収容の問題でございますが、ただいまお話にもありました通り、本年度予算におきまして女子教護院を設立することをお認めいただいておりますので、本年度中に建設をいたしまして来年度から業務を開始するということになりまして、国立では男子の教護院女子教護院が別に作られることになるのであります。これは国立教護院におきましては、特に程度の重い者を収容する建前になっておりますため、とうてい男女同一の建物内では収容することができませんので、かような措置をとったわけでございます。  お尋ねのありました公立教護院につきまして、男女を現在は一緒収容しておりますが、これを将来分けるかどうかということにつきましては、現在教護院関係の職員の間でもいろいろ検討がなされておりますが、やはりある程度程度の軽い者につきましては一緒収容して教護するのがかえって適当ではないかというような意見もございますので、なおこの問題につきましては、私どももさらに検討して参りたい、かように考えております。
  6. 高野一夫

    高野一夫君 意見がありますが、まあ時間の都合で他日に譲って、一応実情の聴取だけにとどめておきます。  ついては、青少年対策はだいぶやかましくいわれている、当然やらなきゃならぬのでありますが、青少年対策所管が各省に分れている、文部省でもやる、厚生省教護関係児童相談をやる、法務省検察関係でやる、裁判所家庭裁判所関係でやると、こういうことで特に法務省関係裁判所関係はそういう非行少年実態調査に本式に乗り出そうとしているやに聞いております。これは青少年対策を大所高所からやる場合には、そういう一連のすべての結びつきを考えて対策を根本的に立てなければいくまいと思うのでありまするが、ただいまの児童相談所相談にくる五万件近くのもの、あるいは教護院収容するようなもの、こういうものについて厚生省が各都道府県を督励されて実態調査をされて、そういう少年カードといいますか、そういうものを作り上げておくことが私は対策を考える根本の必要なデータになるのじゃないかと思うのでありますが、そういうことをおやりになっているかどうか、もしやっていないとすれば、今後そういう計画でもないものかどうかをちょっと伺っておきたい。
  7. 大山正

    説明員大山正君) 厚生省におきましてこの教護院を出ましたあとで、かつて教護院教護を受けた者がどうなっておるかという調査は目下いたしております。国立武蔵野学院につきましてはかつてこの調査をやった経験がございまして、国立武蔵野学院を退院しました後に五年を経過した者千三百七十五名について調べましたところ、そのうちの五三%の児童がその後全く過ちなく過しておるという結果が出ておるのでございます。このような調査を現在公立の各教護院につきましても行なっておりますので、来年の二月ごろにはその調査の結果が現われるというようになっております。  次に、児童相談所相談に参りました約五万件近くのものにつきまして調査表を十分整備しておくようにというお話でございますが、まことにごもっともな点でございまして私どもの方といたしましては、五年ほど前にこの総合的な調査をやった例がございますが、さらに最近の実態にかんがみまして、もう一度そのような調査をやりまして実態を明らかにしたい、かように考えております。
  8. 高野一夫

    高野一夫君 それじゃ厚生省にはっきり一つ要望をしておきまするが、法務省少年院あるいは鑑別所それから裁判所家庭裁判所と、そういう方面の調査をやる、これは実態調査の材料がなければ対策も立てられぬわけであります。その前に大事なのは、厚生省所管をしている教護関係あるいは児童相談関係の問題であろうと思いますから、これは全国都道府県を督励されて五年に一ぺんとか、三年に一ぺんでなくして毎回々々常にその問題が起ったたんびにそういう青少年カードを作るというか、実際調査の表を作って、そうして法務省裁判所、あるいは労働省、文部省等と常に連携をとって対策にそごのないようにしていただきたい、それは特に厚生省が音頭をとられることが一番適切ではないかと思うので、この点を強く要望しておきます。  次の問題について……。
  9. 片岡文重

    片岡文重君 議事進行と、今の関連質問をかねてちょっとすみません。今の御質問大へんいい私は御質問だと思うのですが、そこできょうは大臣は出られるのですか、出られないのですか。
  10. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記を落して。    〔速記中止
  11. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起して。
  12. 片岡文重

    片岡文重君 今の高野委員の御質問は、大へん私はけっこうな御質問であり、全く御趣旨について同感なんですが、こういう問題は、やはり局長や課長の関係の方々が熱心にやっておって下さることは十分私ども承知しておりますけれども、それだけではまだやはり不十分ということは少し言い過ぎるかもしれませんけれども、とにかく政府が本腰を入れてやらなければならない問題であると私は考えるわけであります。しかし、問題が何といっても派手な問題でもありませんし、目を浴びる問題でもありませんから、とかく陰にかくれて、予算の面についても、政策の面についても、陰に回りがちになりますから、こういう問題のあります場合には、ぜひ一つ大臣が直接御出席になって、来ておっていただきたい。そうして本腰を入れてやっていただきたい。特に、先ほど委員長からの御説明もございましたから、了承はいたしますけれども、この今日、明日の二日にわたって委員会が開かれるというのは、突如としてきまったわけではないのでありまして、相当前からこれはきまっておって、大臣も十分御了承のはずですから、でき得るなら、むしろ閣議の時間を繰り下げるなり繰り上げるなりしていただいても、私はやはり委員会には出席していただきたい。そういう点は、今後は委員長からも要望していただいて、特にこういう派手ではないが、力を入れてやっていただかなければならない問題には、ぜひ大臣が御出席されるようにお取り計らいを願いたい、こういうことです。  もう一つ関連して、はなはだ恐縮ですが、今うっかりしておって、私聞き落したかもしれませんが、御質問の中に、もしあったならなにですが、ないとすれば、教護院その他鑑別所等における青少年取扱いの問題、それから待遇の問題、それは食事とか寝具、休憩施設等はもちろんのこと、指導方法等があまりに過酷で、逃げ出したり、あるいはまた、あまり緩慢で逃げ出されたり、また、かえってそういう同種類の子供たち一緒収容いたしますから、あまり程度の進んでおらなかった子供たちを、かえって悪くさせるような例もあるやに聞いております。今の武蔵野学院の生徒の例も、これは五年経過でもって、無過失者千何百人とかとおっしゃっておりましたが、これは一体全収容児童の何パーセントぐらいに当っておるか。おおむね調査されたものがないというお話でしたが、この武蔵野学院だけについても、この千数百名というのは、五年経過の無過失者ということで御調査になっておられるようですが、ならば、再度過失を犯しておる、あるいはさらに悪くなったと思われる、こういう子供たちについて調査をされておられるかどうか、その点がわかったらちょっと教えていただきたい。
  13. 大山正

    説明員大山正君) ただいま教護院等におきまする児童取扱いにつきまして、いろいろ御指摘をいただきました点は、私どもも十分注意いたしまして、今後とも児童取扱いに遺漏のないようにいたしたいと思います。御質問のありました武蔵野学院におきまする教護の結果の統計でございますが、先ほど申し上げましたのは、武蔵野学院におきまして、昭和二十九年の九月一日現在の退院生千三百七十五名につきまして調査した結果によりますと、退院した後、五カ年間におきまして非行のなかった者が五三%でございます。それから軽い程度非行がありました者が一七%、少年院、刑務所または精神病院収容された者が三〇%という結果が出ておりまして、結局武蔵野単院におきまして教護せられました児童のうち、約半数が改善されたということを示しておるのでございます。御承知のように、武蔵野学院は、一番重い程度教護児童収容している施設でこういう改善率を上げておるのでございますが、これより軽い程度児童収容しておる他の公私立教護院におきましては、さらに改善率は上回っておると、かように考えておるのでございます。なお、この詳細につきましては、今調査しておりますので、今年中にその結果が現われる、かように考えております。
  14. 片岡文重

    片岡文重君 関連質問ですから、またの機会にあらためていたしたいと思います。私はきょうはこれで終ります。
  15. 高野一夫

    高野一夫君 私の質問に対する片岡委員の御注意は、まことに私自身、非常に同感なんでありまして、ただし、この問題についての詳細を知るためには、厚生省だけではだめであって、少年院鑑別所所管している法務省、それから家庭裁判所所管している最高裁の関係者に一度この社労委員会に全員出席してもらって、そうしてあらためて青少年問題の根本的の調査対策についての論議を進める機会を作っていただきたい、こう思っております。  そこで、きょうは実情だけを少し伺うことにとどめたい。
  16. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは青少年の問題につきましては、この程度にいたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  17. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 次に、食品衛生関係事項及び堆肥舎の問題について御質疑をお願いいたします。
  18. 高野一夫

    高野一夫君 これもいろいろ質疑の問題を考えておったんですが、一時点に限って、しぼって質疑いたします。  一昨年でありましたか、食品衛生法改正をいたしましたが、そのときに、重要飲食物厚生大臣指定をして、その指定した業態に対しては、食品衛生管理者を置いて、製造あるいは取扱い販売等の厳密な監督をさせる、こういうことに相なったのでありますが、どういう業態がその後厚生大臣によって指定されたかどうか、それを一つ伺っておきたい。
  19. 聖成稔

    説明員聖成稔君) 食品衛生法改正によりまして食品衛生管理者を置くことになりました業種は、現在食品添加物並びに、ミルク製造業者ということに相なっておりまして、さらに問題になっておりますのは、これを拡大いたしまして、カン詰製造業あるいは水産冷凍食品製造業というようなものに拡大する必要があるのではないかというような御意見もございまするので、この点につきましていろいろ検討いたしております。
  20. 高野一夫

    高野一夫君 当時、当委員会の総意をもって、業種指定を相当拡大するように要望をしておったはずなんです。たとえば今指定されたもののほかに、しょうゆみそ、あるいはビスケットその他のお菓子類製造、こういうような、不良と贋造品のしばしば出るような業態は当然指定をして、そうして十分に製造販売管理をしてもらいたいということを当時要望したのでございます。ところが、たとえばこの業態については、それは農林大臣所管になっている、この業態は、アルコール関係大蔵省所管になっているということで、なかなか一方の方は指定してもらいたくない、厚生省指定したいということで、調整がとれないので、今後時間をかけて十分調整をするという当時の……あなた方は関係があったのだが、当時の部長局長あるいは大臣説明を聞いておったわけなんです。その後、たとえばしょうゆの速醸、みその速醸につきましても、そういうものを指定して監督を厳重にする、あるいはアルコール飲料についてのもの、あるいはジュース、清涼飲料水、そういうものについて指定すべく農林省あるいは大蔵省あたりと折衝された事実があるかどうか、折衝されてもどうしても向うがいやだと応じないで話がまとまらないのかどうか、その辺の様子を一つ伺いたい。場合によっては、当委員会はさらにこの問題について深く掘り下げて、農林省大蔵省を呼んで質問をしなければならぬかもしれないと思っている。
  21. 聖成稔

    説明員聖成稔君) ただいま御指摘の問題につきましては、何分食品衛生管理者という制度が一昨年の法律改正によりまして初めて設けられた制度でございますので、私どもといたしましては、これらの法令に基く資格あるいは現実にどのようにしてこれを置かせるかというような問題につきまして、つまり現行の制度を徹底いたすということに法律改正以来努力をいたしまして、先ほど申し上げましたように、非常に広範にわたり添加物並びに、ミルク関係の製品即製造業につきましてこれが徹底に努力中でございまして、ただいま高野先生から御指摘しょうゆみそ等の問題につきましては、次の段階におきまして、先ほど申し上げたような他のカン詰製造業あるいは水産冷凍業等と関連いたしまして考慮いたしたいという方針でございます。現在のところは、農林省あるいは大蔵省当局と折衝いたしておりません。
  22. 高野一夫

    高野一夫君 これは厚生省関係が試験した結果でも、しょうゆの速醸その他について毒物が入ってきたりいろいろしているので、私どもは重大に考えておるわけですが、これはいずれ大臣にも話をいたしまして、できるだけ大臣飲食物については指定をしてもらうべく努力を続けてもらいたいと思うのです。  次に、食品衛生関係でもう一つ伺いたいことは、この衛生法改正するときに問題になった不良飲食物あるいは贋造飲食物、これは衛生法改正した後にだいぶよくなっているかどうか。われわれが承知している限りでは、相かわらず不良の食べていけないたくあん、ビスケットあるいは燻製、アイスクリーム、そういうものが相かわらず贋造品が横行しているやに見受けます。この点について私は衛生法改正後、多少そういうものが減ったのか、相かわらず減らないのか、その辺についての実情だけ伺っておきたい。
  23. 聖成稔

    説明員聖成稔君) ただいま御指摘不良食品の問題につきまして、昨年、昭和三十三年十二月から本年の初頭にかけまして、全国的に一斉の調査をいたしまして、その概略の数字を申し上げますと、その収去検査の結果によりますると八万一千九百五件の検査をいたしまして、そのうちから三千百四十七件が不良である。不良食品検出率は全食品につきまして三・八%となっております。すなわち魚介類及びその加工については一万七千八百五十四件のうち、不良食品が六百八十一件で、不良率三・八%、菓子類にありましては、一万四千七百二十七件中五百四十四件で、不良率は三・六%、清涼飲料水につきましては、二万六千七百九十円件中七百九十四件が不良で、不良率としては二・九%という結果が出たわけであります。なお、不良の内容につきましては、たとえば菓子類にありましては、不良五百四十四件中細菌学的に不良というものが百八十七件、不良の全体の率の約三五%、化学的に不良のものが二百十件で約三八%、標示等の違反が百四十七件で約二七%、特に目立ちましたのは、化学的不良の内容でございますが、ローダミンB使用が八十七件、オーラミン使用が十七件といった工合に、許可外色素使用したものが百三十七件に上ったのであります。そこで法律改正以前の昭和二十四年から二十八年にわたりまして、東京都下において調査をいたしました菓子類のただいま申し上げました許可外色素使用状況と比較いたしますと、ローダミン検出率におきましては、法改正以前に比較いたしま参してローダミン検出率が六〇・六%、オーラミン検出が二六・八%という工合に低下をいたしておるのでございます。ここ数年間に不良食品検出率は改善されているように、かように考えているわけであります。また、アイスクリームについてこれを法改正前と後の成果を比較いたしますと、改正前におきまして不合格であったもの、それが細菌数による不合格が三五%、大腸菌によるものが四五%でありましたが、昨年の結果はそれぞれ三〇%並びに四一%という工合に低下いたしておりまして、改善されつつあるのじゃないかと考えておりますが、なお、今後とも収去検査を大いに励行いたしまして、不良食品の一掃に努力いたしたい、かように考えております。
  24. 高野一夫

    高野一夫君 その不良飲食物は、物が悪いということだけでなくて、原料をわざとごまかして、たとえばビスケットを作る、アイスクリームを作る、そういうものも入っているわけですか。
  25. 聖成稔

    説明員聖成稔君) そういうものも含んでおります。
  26. 高野一夫

    高野一夫君 私は最近のいろいろな飲食物による中毒といいますか、そのほかいろいろな問題が起ることが新聞に絶えないのでありますが、せっかく食品衛生法改正したのでありますから、不良飲食物贋造飲食物の取締りは、十分一つ徹底させていただきたい。なおまた、衛生法改正して、それでもなお不備があるならば、あらためて当委員会においても検討を加えなければなるまいと思うのでありますが、これは長くなりますから、きょうはやめます。それだけであと管理者の問題は、私はやめます。あと大臣が来てから……。
  27. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは食品衛生関係の問題につきましては、この程度にとどめます。   ━━━━━━━━━━━━━
  28. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 次に……。  ちょっと速記を落して。    〔速記中止
  29. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起して下さい。  次の議事に入る前に、委員異動を報告いたします。本日付をもって小柳勇君が辞任いたしまして、その補欠として藤原道子君が選任されましたことを御報告いたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  30. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは臨時医療制度調査会の問題について御質疑をお願いいたします。
  31. 高野一夫

    高野一夫君 医務局長に伺いますが、臨時医療制度調査会というのは、前の通常国会厚生省設置法まで改正をして、時限的の調査会としてこれを置いて、日本の医療制度のあり方、特に医療法改正ということを目標にして検討を進めることに相なっておったはずなんでありますが、その後一向この調査会が発足したことを聞かないのであります。どういうふうになっておりますか、伺いたい。
  32. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 医療制度調査会所管は官房でございますけれども、非常に関係が深いもので、いろいろ協力いたしておりますので、私からお答えをさしていただきたいと思います。  いつまでにこれを開くかということはまだきまっておらないわけでありますけれども目下人選などをいたしまして、なるべく早くこれを開きたいという努力をいたしているわけでございます。
  33. 高野一夫

    高野一夫君 法律改正をいたして実施いたしましてから、すでにまる五カ月余りになってきている。その間、法律改正までしてできた調査会が、いまだに委員の任命もなく、一向その討議に入らないということでは、これは私はよくないことだと思うのであります。どこかに何らかの欠陥、事情がなければ、こういうことにならぬと思うので、それで厚生省も、まあ首脳者がひんぴんとして大臣はじめおかわりになっているので、いろいろな引き継ぎその他障害もあったことと思うのでありますが、過去五カ月余りできなかったことはやむを得ないといたしまして、今後できるだけ大臣を中心にして、早く人選を済まされて、医療法改正問題の討議に移られるように、特に強く要望しておきます。
  34. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  35. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは速記を起して下さい。  暫時休憩いたします。    午前十一時十五分休憩    —————・—————    午後一時二十九分開会
  36. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 午前に引き続いて会議を開きます。  初めに、八月の台風並びに豪雨による災害について、厚生大臣から報告をしたいとの申し出がございますので、これを許可いたします。
  37. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 先般の台風第七号並びに八月二十八日の集中豪雨に関する状況はお手元に配付してある資料の通りでございます。人的被害二千八百七十八名、家屋被害十八万二千戸に及び、被害地域は一府十一県でありまして、特に山梨県は県下全域が被害をこうむっております。災害救助法を適用いたしました市町村は百四十八となっております。  厚生省といたしましては、災害発生と同時に、被害激甚の地方に係官を派遣いたし、被害状況の調査及び救助の実地指導に当らせたのであります。日赤及びキリスト教団体よりの救援物資、自衛隊の協力等に関しましては資料の通りでございます。  応急救助は府県市町村が消防、警察等関係機関の協力のもとに万全の措置をとりましたが、罹災地の実情に応じてたき出し、飲料水の供給、被服、毛布、学用品等についての支給期間を大幅に延長するとともに、仮設住宅設置の戸数につきましても、基準外の承認を与える措置をとりました。  伝染病対策は、各県に防疫指導官を派遣いたしまして活動に努めた結果、幸いことなきを得た次第でございます。  災害救助地の国庫補助につきましては、台風七号関係は一億二千万円の概算を交付いたし、集中豪雨関係は目下手続中でございます。  厚生省関係施設、水道、医療衛生施設、社会事業施設等の被害は百八十七件、約四千三百万円でありまして、復旧費については目下予備費の支出等について折衝中でございます。以上でございます。
  38. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまの厚生大臣の御報告に対しまして質疑がございますか。あれば御発言願います。——それでは質疑もないようでありますから、次の質疑に移りたいと思います。   ━━━━━━━━━━━━━
  39. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 木下委員から診療報酬の問題についての通告がございます。御質疑をお願いいたします。
  40. 木下友敬

    ○木下友敬君 診療報酬の問題では大臣とじっくり御相談をしたいと思っていたのですが、非常にお忙しいようですから、簡単に質問をいたします。そこで大臣においては、普通の答弁用語でなくて、直截な御返事を願いたいと思います。きわめて簡単にお願いしたいと思います。  第一にお尋ねしたいのは、甲乙二表の問題ですが、あれは大臣はどうですか、今のところ、甲乙二表はあのままで二本建てでいくというようなお考えですか。あるいは一本にするようなお考えになっていますか。それともまだ研究してみないと二木建てでいくのか、一本でまとめるのか、まだそこまで考えがまとまっていないというようなところなのか、そこを一つお聞かせを願いたい。
  41. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) ざっくばらんに申し上げます。これは橋本厚生大臣以来の厚生省の既定方針でございまするので、その方向で研究をいたすつもりでございまするが、しかし、何分にもこれが実施いたしましてまだようやく十カ月になったばかりでございまするので、この甲表、乙表につきましての問題につきましては、いろいろ問題があるようでございますので、この問題点につきましては、今資料を集めまして検討を命じ、そしていろいろと今後の問題につきましてすみやかにその方向に私ども参りたいと、かように考えております。
  42. 木下友敬

    ○木下友敬君 そうすると、橋本さんなどの考えを受け継いでというような意味に解釈すれば、やはり甲乙二表でなくして、一本化する気がまえだ、そういうつもりだというように理解していいですね。
  43. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 橋本さん以来そういうような方針でございましたけれども、私の時代となりましてもやはり甲表、乙表についてのいろいろの意見が聞かれるのでございまするので、この際やはり一本の方向でまとめて研究をいたしてみたい、まとまるように研究いたしてみた胸と、かように考えております。
  44. 木下友敬

    ○木下友敬君 そうしますと、私ども一つの診療行為について、二つの報酬の様式があるということは不合理だということは最初から思っていたのですが、昨年の十月から開始されて、大方一年になっているわけです。一年という月日は短かいといえば短かい。もう一年にもなるといえば一年にもなる、長いようにもなりますが、ここで一年経過して、甲乙二表を何とかまとめなければならないというような、これはおそらく世論だろうと思うのです。二つではいけないというのは世論ではないかと思うのですが、そういうまとめなければいけないものをなぜ初めから甲乙二表を厚生省は出したかということについては、私らは納得がいかない。で、当時は渡邊さん大臣ではなかったけれども、後任の大臣として、そういう一年たつかたたないうちに一本化しなければならないという問題を大きく含むようなこの甲乙二表を、なぜ厚生省があわてて採用したかということについての大臣の御判断を伺っておきたい。
  45. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) その当時におきましては、いろいろないきさつや過程のあったことと思いまするが、私どもは過去にさかのぼらず、過去のことじゃなくして、今後の問題であろうと思いまするので、その点につきましては、私どもは甲表、乙表の一本化をすみやかに実現したい、こういう方針でございます。
  46. 木下友敬

    ○木下友敬君 非常に逃げを打った答弁ですが、私はやっぱり厚生省があの当時急いで甲乙二表を採用したことは非常にミスだと思う。一年たたないうちにこれを一本化せなければならぬような問題が起るのに、大急ぎで甲乙二表というものを採用して、この診療報酬の体系に大きな混乱を来たしたということについては、私は厚生当局は責任を感じてもらわなければならない。将来こういうような問題を取り上げるときはそうあわてないで、一つじっくり考えて、半年や一年で文句の起るようなことを企てないようにしてもらいたいと思う。もちろん、これはしかし一年たたない前、当時から甲表に不賛成だという声もあり、また、乙表に不賛成だという声もたくさんございまして、それを押し切って厚生省がやったわけですが、現在乙表を採用しておるのが全医療機関の九一%、これは大多数というよりも絶対多数が乙表を採用しておるということでございます。過去のことでなくして、この現在九一%を占めておるというこの現状というものは、なぜ九一%の医療機関が乙表を占めておるかということに対するこの現実、現在の問題について、大臣の判断はどういうふうに御判断になっておりますか。
  47. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 先ほども申し上げました通り、いろいろな御意見もありますので、その御意見を私は尊重いたしておるつもりでございます。
  48. 木下友敬

    ○木下友敬君 そうじゃない。尊重じゃないのですよ。この診療機関の九一%は乙表を採用しておる。そうすると、一〇〇のうち九一が乙表を採用しておると。甲を採用しているものは一〇〇のうち九しか甲を採用しておるものはないというこの現実は、なぜ九一%というものが乙表を採用しておるかということについての判断ですね、その理由の判断は一体どういうふうに大臣は下しておられるか。
  49. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 民主的に、皆さんの御意見も非常に尊重して私はいたすつもりではございまするが、しかし、先ほども申し上げました通り、各種の意見というものがありましてやはりそういうような意見というものを取り入れまして甲表、乙表が、乙表に近いものか甲表に近いものか、この点につきましては十分に検討をいたしておりますが、今発表の段階ではございません。
  50. 木下友敬

    ○木下友敬君 そうじゃないのですよ。私がお尋ねしておるのは、人の意見じゃなくて、あなたがなぜ九一%ものたくさんの診療機関、絶対多数の診療機関が乙表をなぜ選んだのだろうか、そのことですよ。これはもし大臣どうしてもお答えできなければ補佐の方からでも、なぜ九一%もの診療機関が乙表を採用したかということについて判断がないわけはないのですよ。何とか厚生省としてはこの事実の判断を下しているはずだから、それを一つ助け船を出してもらいたい。
  51. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 便宜私からお答えいたします。確かに現在の医療機関の数で申しますれば九〇%余のものが乙表をとっている。まあこれは御案内の通り、甲表をとるか乙表をとるかは各医療機関の選択にまかせているわけであります。医療機関が自分のところの医業の現実に合せてみたり、あるいはそのほかにもいろいろな事情があると思います。いろいろな事情で、結論として乙表をとるものは乙表をとり、甲表をとるものは甲表をとると、こういうことであろうと思うのであります。今、その乙表をとることの理由はどうこうということは、やはりそれぞれの機関がそういう決断を下しますについてのいろいろないきさつというものもあろうと思いますので、私どもはそれを今一ぺんにどういうあれであるというふうに申し上げることもいかがかと思います。しかし、この甲表、乙表という問題につきましては、御承知の通り、医療の診療方式という面を通じまして、医療の保障が推進していくという方向でもって厚生省が考えた面でございます。それにつきましては、まあなかなか従来のいろんな関係がございまして、そのいい点、悪い点というものもなかなかにはそれとは判断できない面もあるわけであります。私どもといたしましては、そういうものも一度、二度のもので直ちに甲表が悪い制度である、どうであるかというふうなことではなしに、なおしばらくそういうものの内容というものが漸次医療機関の方々にも御了解いただいて、まあそういうふうな推移を見ながら、また、それについてその間にいろんな御批判も出てくるだろう、そういう御批判というものもそういう間に承わって、そしていつの日にかはさらによりよい支払制度を作りたい、こういうふうに考えているわけであります。
  52. 木下友敬

    ○木下友敬君 私は初めから時間がないと言われるから、直截に質問したことに直截にお答え願いたい。答えようということであるが、あなたが補佐しても一つも私の質問に答えていない。九一%もの医療機関が乙表を採用しているという事実がこれはもう十カ月前からわかっている。なぜ厚生省は、甲表をあれだけ推進したのに、なぜ九一%もの医療機関がそれにそっぽを向いて乙表をとったかということについては、何らかの判断があるはずだが、それはどうですかということには全然お答えがない。今のお答えも、ただ右を回ったり左を回ったり、一つもこちらの質問に答えていない。あなたは判断を述べておられるのではなくして、これからの問題として考えよう、これに対して対処する方法はどうかと尋ねておるのではないのです。一体なぜ乙表がかくも多数に採用されておるか、あるいは圧力があって乙表をとれと言われたのがきいたのか、あるいは乙表の方がもちがいいから乙表をとったのだと判断を下されるのか、それを聞いているのです。何もそれについて御意見がないなら無責任だというわけです。
  53. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 先ほど木下委員に対して申し上げましたけれども、私は民主的な意見の尊重ということを申したことで、そういう点で一つ御了解を願いたいと、かように思っております。
  54. 木下友敬

    ○木下友敬君 わからんですよ。民主的な意見の尊重じゃなくして、現実に、そんな抽象的な言葉じゃなくして、九一%というものが乙表をとっている理由はどこにあるだろうかということに何か御判断がないか、なければないでいいのですよ。そういうことについて一つも考えていない。なぜ厚生省が甲表というものをあれほど一生懸命作ったのに乙表にみんないっただろうかということについて何か御研究なり御討議をなさっていないことはないはずと思います。なければないでもいいと思います。
  55. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 先ほど申しましたように、甲表、乙表につきましては、各方面の意見を今、目下集めつつあるところでございまするので、その点もうちょっと、ここに結論めいた発言はもうちょっと御猶予願いたいと、かように思います。
  56. 木下友敬

    ○木下友敬君 これは大臣じゃなくして、あなた、私の言うたことに答えて下さい。結論的なものを聞こうというのじゃないのですよ。現実について何か判断を持っているのか、それとも判断を持っていないのか、判断を持つ意欲があるかないか、それをぱっと一ぺんに答えて下さい。
  57. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) ちょっと先ほどのは長くなったかもしれませんが、これはいろんな点が考えられますので、私どもが、この理由だということでそれで全部律し切ることはできないと思います。しかし、言えますことは、どういう場合におきましても、新しい制度というものはそれが浸透するまではやっぱり時間はかかるものである、よかれあしかれ。われわれは、従来からやりきたったものはまあ一応安心なものでございますから、そういうような面も一つにはあろうかと、そのほかにもいろいろそれぞれの機関が甲か乙かをおとりになったのにはいろんな要素を考慮に入れられたことであろうと、それを一がいには言えませんが、そういうような感じを今持っている次第であります。
  58. 木下友敬

    ○木下友敬君 どうも厚生省というのはたくさんのお役人がおって研究をし、仕事をしておられるけれども、どうもほんとうのことはわかっていらっしゃらない。貧しい私どもが調べた結果について私の方から一つかわって御説明をしておきます。  これは、私は、昭和三十四年の一月基金本部から発表された資料に基くものですが、昭和三十三年五月と十月との診療報酬を比較した資料が発表されたのです。これは同一医療機関について同じ医療機関について旧診療報酬(五月)と新診療報酬(十月)とを比較してどれだけ増減があったかを示した統計資料なんです。この統計には時期的の誤差の問題もございますけれども、ほかにも統計学的にまたいろいろな難点もございますけれども、ともかく全体的な傾向を知るためには直接の比較としては妥当なものと私どもは考えて、この基金本部からの発表を採用してお話を申すわけです。  基金の調査の結果は、今すぐ表を持って参ってお配りしますけれども、まだ間に合いませんから、言葉で申し上げてあとで資料を差し上げることにしますが、基金調査の結果はあとで差し上げる第一表の通りでございます。すなわち、入院につきましては、甲表の増加率は乙表より上回っておりますけれども、外来では甲表は病院、診療所ともに乙表より下回るばかりか逆に減収となっておるのです。しかし、これはいわゆる算術平均でございますから、内容をより正確に知るためには個々の増減がどのような形で分布しているかを見る必要がございます。  そこで、第(1)図、第(4)図をごらんただきますが、これは旧診療報酬をゼロ線といたした場合の甲表、乙表それぞれの増減について都道府県を単位にとった度数分布を示す図でございます。甲表の病院、これは第(1)図でごらんいただくとわかりますが、これは入院の分は全部が確実にプラスとなっております。最低四%から最高二六%の増を示しておりますが、外来の分は全体の傾向として大半が減収となり、最低が一四%のマイナスとなっておるのです。つまり、甲表病院では入院はすべて増収だけれども、外来はほとんど減収という特異な傾向を示している。そこで、今度は乙表病院を表の第(2)図でごらんいただきますと、入院の分は九〇%以上が増収となり、最高は二二%のもの、約五%のものは減収となっております。外来も同様に九〇%近くのものがプラスで、最高は一八%の増収を示しておるのです。このように乙表病院では甲表病院と違って入院、外来ともに均等にプラスとなり、安定した姿を示しておるのです。甲表診療所、これは第(3)図でごらんいただきますが、これは入院、外来とも、その増減は全く不安定で、著しい混乱状態を示している、大幅にふえるものがある半面におきましては、はなはだしい減収を示すものもございます。大勢としては全体的に減収の傾向を示しておる。これに引き比べまして、乙表の診療所、第(4)図でございますが、これは入院、外来ともに九五%のものが増収を示し、甲表診療所の混乱状態とは対照的に、安定した姿を見せておる。以上申しましたことで御理解いただけるかと思うのですが、乙表の方が安定しておる、甲表の方は非常に増したところもあるが、非常に減収になったところもあるというので、非常に不安定な状態にあるということなんです。このことは非常に大事なことでございまして、ある報道機関などでは、乙表が九一%もあるというのは日本医師会がその会の職制をもって統制したというようなことをいっておるものもございましたが、これは全くの間違いでございまして、収入のことでございますから、どんなに医師会がいいましても、収入の減ることに賛成する人はございません。私どもはやはり乙の方が利潤が幾らか出て、よりいいから取ったと考えておりますが、厚生省はこういう点についてどういうような見解を下されるか、きょうお尋ねしましたが、言を左右にしてその点には全然触れておられない、これは非常に遺憾なことだけれども、まあこの委員会というものは一つざっくばらんで、私が最初申し上げましたように御相談申し上げたいと思っておったというのですから、よりよい厚生行政をやっていくためには、われわれの言うことも一つ考えに入れるというつもりで、野党のわれわれが言えばいつも虚を突かれるとか、欠点をさらけ出すために、われわれが発言しているようにお考えにならないで、われわれの言うことも一つ採用していくところがあれば採用していくというようなつもりで、ざっくばらんのところを一つほんとうは言ってもらいたいのです。実際私が申しましたように、あとでお配り申しますように、ほんとうに乙表の方が実績において安定した成果を収めておるということを私はあらためて見直してもらいたい、こういうことを申し上げておきます。これ以上の問題についてはお尋ねしましてもお答えがないようでございますから……。そこであらためてお尋ねしますが、以上私が申しましたことに少しヒントを求められてお答えが願いたいのです。それでは一体あの点数の改正があった結果、あれは八・五%増すという意図でやられた改正でございましたが、ほんとうに八・五%増したかどうか、これは一般医師の場合とそれから歯科医師の場合とどういう結果になっておるか、これはもうわかっておるはずです。基金でも統計は出ておるのですから、これから調べていくというのではなくして、現実に八・五%増した、あるいはそれ以上増した、これは一般と歯科医師に分けて御答弁願いたい。
  59. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 八・五%果して増になったかどうかということでございますが、これは先ほどお示しになったように、基金の、その前の年と比較の表などからいたしますならば、全体としてやはり八・五%ぐらいの増収にはなっておるのであります。ただし、私どもといたしましては、そういうことでは少し不正確ではないかと申しますのは、御承知の通り、医療の行為というものがやはり前の場合とあとの場合でもすでに変っております。正確にある一つの医療行為をつかまえて申しましても、それを前の点数でやり、それをあるいはあとの点数に当てはめただけでは私は正確なものは出ない、しかしながら、そういうことをいたしますと、それではどうにもならぬということにも相なることになりますので、まあさほど詰め切った形でなくても、何か一つ見当をつけるくらいのものは出してみたいというので、先般来少し調査をしておりますが、結果はまだちょっと出ておりませんですが、これは近いうちに出るかと思います。出ましたらさっそく御披露もいたしたいと思っております。本日のところは、ちょっとまだそろっていないようでございます。
  60. 木下友敬

    ○木下友敬君 今のは何パーセントぐらい増加したか、どうなったか、その変化を調べた結果が数日のうちに出るというのですか。
  61. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 近いうちでございますけれども、そういうことでございます。
  62. 木下友敬

    ○木下友敬君 それはぜひ一つ早く知らしてもらいたい。そうして特に一般医師の場合と、甲表を採用した歯科医師の場合と━━。私どもの聞くところによりますと、また、見るところによりますと、今あなたは大へんえらく、八・五%は増加したというような御意見でありましたが、これは不日御訂正を願わなければならぬたとだと思うから、あるいは今でもいいから一つぼかしておいた方がいいことはないか、私らが調べたのでは、大体五・四%ぐらいしか上っていないという平均値を持っておりますが、八・五%まで上っていない。歯科の場合には、これはまだ私もしっかりしたものを持ちませんけれども、もう少し上っておるというように思っております。今のあなたの八・五%大体上っているということは、私は根拠が薄弱じゃないかという気がするのですが、これはあとでもいいから、もう少しそういうところはぼかしてもらいた。そうでないと、あとでうそを言ったということで……ぼかしてもらっていいですよ。
  63. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 全体ですよ。
  64. 木下友敬

    ○木下友敬君 第一私はこの際、その点数表をどういうふうにされるかまだ腹がきまってないようですが、これは前々からこの委員会でも再々言われたことでございますが、甲表というものは、あれは実際に新医療費体系のときから、動作時間標準法ですか、たとえば工場の職工さんが金づちを振り上げて、そうして焼けた金属を打って伸ばす。それにどれくらい時間がかかる、そういうような産業方面の動作時間標準法、あれを医療の方に持ってきて、たとえば耳の中を掃除するときには綿をどのくらい、何ミリつけて、そうして耳を掃除する時間が何分かかるかということをストップ・ウォッチで計って、そうしてあれを作ったのが甲表の基礎、これはよく御存じの通り、全く医療とああいう工場労働と同じ方法で考えて作られたのがあの表ですから、私どもは初めからこれはほんとうの、医学を判定する、医学の診療、医学に対する、医術に対する診療報酬の根拠としての作業の仕方ではない、学術的な根拠はないということを申しておりました。このことは、これからも一つ考えておいてもらいたいと同時に、乙表ではあの改正の場合に八・五ということを考えたものですから、四・七とか八・二とかというような、あのコンマ以下がたくさんございまして、事務上非常に困っておる。日本の保険で一番困っているのは事務の煩瑣ということでございまして、これは大臣はほんとうに考えていただかないと、事務の煩瑣ということは、診療行為を非常に粗雑にする、事務の方に気を取られて診療行為はほったらかす。大病院は事務は別でございますけれども、一般の医者では、これは事務も医者がやらなければならぬのですから、事務をできるだけ簡素にするということは実際の問題としてもっと考えてもらいたい。ただ聞きのがして、ああいうことも言っておったというのでなくて、ほんとうにこれは、たとえば簡単に申しますれば、用紙を一つ使うにも色分けにするということにしただけでも、事務はきわめて簡単になる。そういうことまで考えて、一つもしあなた方に早晩甲乙二表についてお考えがまとまる時期があれば、同時に事務の簡素化ということも一つ考えてもらいたい。  次に私は、診療報酬の地域差ということをお尋ねしておきたい。地域差と申しますのは、東京のようなところと、それからたとえば新潟のようなところ、こういう地域によって甲乙の差がある。甲地区、乙地区の差がございます。そうすると、甲表乙表があり、地域差がございますから、四通り診療報酬がある。これは私、非常に今の時代に不合理だと思うのです。これは何とかして、この地域差というものは、もはや撤廃する時期じゃないか、こういうふうに考えております。ここに総理府の統計局の表を私、持ってきておりますが、物価の指数が出ております。これは三十二年の平均でございますが、東京都を一〇〇とした場合、横浜は九二・二、名古屋は九八・八、京都は九九・二、大阪は九九・一、こういうふうになっておりますが、この九九・二、九八・八という、こういうところは、やはり甲地区に数えられておりますけれども、その程度のものは全国でたくさんございます。小さい都市で、たとえば和歌山でございますとか、奈良でございますとか、山口でございますとか、あるいは富山でございますとか、こういうところは、横浜や名古屋、あるいは京都と同じ物価なんです。それだのに、そういうところは乙地区であって、六大都市という名前だけで甲地区にあげられておる。これは非常に私はこういう点数というものは、経済的基礎の上に作られておるということを基礎に考えると、これは誤まりだと、もう今はそういう事実がはっきりしている以上は、甲地区とか乙地区ということは考えないで、統一していくのがほんとうじゃないかと私どもは考えておる。私ども以前は物価の高いところはこれを甲地区に持っていく、今のように全部どこでも一列にするという主張じゃなくして、やはり物価の高いところは甲地区にして、高いにもかかわらず低いところに置かれているものは甲地区に繰り上げるべきだという主張をしたこともございますけれども、今のように物価が割合に平均して、これはおそらく交通の発達とかいろいろなことで物価というものはあまり差がないようになってきた今日においては、やはり甲地区、乙地区というものをいつまでもそれにしがみついているという考え方は改められなければならぬ時期に到達しているのじゃないかと思うのですが、これはどうですか、一つ将来大いに研究してというような御返事ですか。
  65. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) これは先般来いろいろと省内でも議論もございまして、将来は当然にこれは廃止いたしたいと、かような方向に進んでおります。
  66. 木下友敬

    ○木下友敬君 まだ少し聞きたいところがありますけれども、非常にお急ぎのようですから、私は本日はこれで打ち切ります。どうぞ今申し上げましたことを取り上げて、本気で一つ考えていただきたいと思うのですよ。逃げ口上言ったりなんかしないで……。
  67. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 逃げ口上じゃないです。
  68. 木下友敬

    ○木下友敬君 ほんとうにまじめにお互いに助け合って円満にいくという方向をとらなければ、非常にこんがらがってきている問題でございますから、一つ正直にやっていただきたいと考えております。
  69. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 一つお力を大いにお借りしなければならぬこともあるかもしれませんが、どうぞその節はよろしくお願いします。   ━━━━━━━━━━━━━
  70. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは診療報酬の問題につきましてはこの程度にいたしまして、次に谷口委員から国、公立組合立病院都市集中と、私的医療機関の育成問題について通告がございます。御質疑をお願いします。
  71. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 私から一、二お伺いしておきたいと思います。  まず第一番に、国立あるいは公立組合立病院なるものが都心に非常に集中して参りまして、しかも医療が充実しておるところにひどくそういうやつが入り込んで参りまして、たとえば、一例でございますが、熊本市では大学病院もございますし、公立病院その他があるし、その上に非現業共済組合の病院があるのです。その非現業共済組合の病院というのは、普通の健康保険の診療報酬よりかずっと安くしてやっておる、従って、その周囲の開業医者は、最近では夜間に急患でもあったときに患者が来る、あるいは日曜祭日のみに来るというようなふうで、ほとんど医業らしい医業はできぬような状態です。しかもその組合病院が、今度は二億からの資本を下して、なお大きい病院にさせようというようなふうなことになってやっておりますために、地方の、その周囲の開業医者は今後どういうようなふうにして生活をするかということを非常に心配しております。従って、都市、しかも医療機関の充実したところには、ぜひ一日も早くそういうようなふうの国、公立病院、組合立病院などが新たに新築するとか、増築するとかいうことのできぬようにするように、一つ大臣もお考えを向けてしていただけば非常にけっこうと思いますが、いかがなものでしょうか。
  72. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) この問題もしばしば私ども最近耳にすることでありまして、すでに省議等におきましても、医療機関適正配置、都市集中排除といったような、こういうことから、できるだけこれは適正な配置の線に沿いましてこれを改めていきたい、指導をしていきたいと、かように考えております。
  73. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 ぜひそういうような方面にやっていただきたいと思います。  次に、医療なるものの本体から申しますと、これは医者と患者の信用関係でございます。しかも医療はあらゆるどこの場所でも、また、いつの時間にでもできることが必要でありますために、開業医者が各地に散在しておるということは、医療を完全に行う上においてきわめて必要であると思われておるのでございます。ところが、最近は、ただいまのような事例もありますように、また、各所にいろいろ公的機関が充実して、充実よりか乱設されてきますために、開業医はもう先の見込みがだんだんなくなってきております。従って、最近の若い開業医者に聞きますと、これまでと違いまして、なぜ自分は医者になったろうか、あるいは今後は自分の子供だけは医者にしたくないというような悲観的の考えを持っておる者も出てきております。これは何と申しましても日本の医療制度、特に医療費の低い結果であると思われるのですが、これを救済する上において、あるいは開業医者の方面に何か低利しかも長期の金融方面の措置をしてやるとか、あるいは多くの開業医者がまとまって一つの病院を作ろうというような場合にも、これに特に力を入れてやるとかいうような方面に一つぜひ厚生省としてはやっていただきたい、そうせぬと、昔は医療は公私両団体からやるといっておったのに、最近は私はだんだんなくなってしまうということで、医者がこの方面に対する将来を非常に悲観して参っておりますから、この点に対して大臣が特にそういう方面に意を向けて何とかしてやろうということをここではっきりとおっしゃっていただきたい。
  74. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 国民皆保険ということになりまして、何か開業医が将来医療の国営というようなワクの中にはめられていくのではないかというような不安な気持も一部に抱いておるようでございまするので、われわれはそうした方面につきまして、できるだけの理解と対策を講じていきたいと、かように考えております。それで明年度におきましては、まずやはり先ほどから申し上げました診療制度の問題なんかにつきましても関連することであろうと思いますが、開業医にも近代医療施設というものを施させてやりたい、それにはやはり心電図の一つやレントゲンの一つくらいをやはり貸し与えるというような形で、そういう金融機関というものは、今中小企業金融公庫からみな融資を仰いでおるようでございまするが、これはなかなか容易じゃありませんので、低利長期にわたるところの金融のために医療金融公庫というようなものを作ってみたらどうか、こういうことで、現在その準備中でございます。
  75. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 それでけっこうでございます。   ━━━━━━━━━━━━━
  76. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは医療機関の谷口委員の御質問はこの程度にいたしまして、次に移りたいと思うのであります。  坂本委員から三項目についての御質疑の通告がございます。  まず第一に、新潟県高田国立病院看護婦の出産制限問題について御質疑をお願いいたします。
  77. 坂本昭

    ○坂本昭君 ちょっとお断わりしておきますけれども大臣の時間の御都合などもあって、三番目の国民年金の方を実は先にしていただきたいと思います。それから次に、高田病院、それからにせ医師事件ということにしていただきたいと思います。
  78. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは順序を変えまして、国民年金積立金の運用及び国民年金の普及宣伝実情について御質疑をお願いいたします。
  79. 坂本昭

    ○坂本昭君 まず大臣にお伺いしたいのですが、ちょうど八月が国民年金の周知徹底月間ということで、私もその一翼をかつぎまして、八月まる一ぱい私の郷里高知県をすみずみまで国民年金の普及徹底のために歩いて参りました。そうしますと、ポスターが二種類ございます。ところが、ただポスターが張ってあるだけで、各市町村の一般の住民のところまで徹底されておらないのです。むしろ私が行っていろいろな話をすることで、たとえば老齢福祉年金の問題など、初めて知ったというようなことで、私はこれは少し宣伝料をもらわなくちゃいかぬと思っておるのですが、特に各市町村の方に対しては予算的な措置がほとんど行われていない。従って、積極的にどうこうしようという段階に行っていない。もちろん九月一日から受付をするということにはこれは新聞がどんどん書いておりますけれども、周知徹底のための予算が市町村へ行っていないということ、こういう一つの事実がある。それからさらに、だんだんと身体障害者あたりが福祉年金をもらおうとするとなると、診断を受けなくちゃいかぬ、その診断についても医師会の方は何百円とかいう規定を流している。また、厚生省の方はこれは無料で扱わなくちゃいかぬというようなことを宮公立関係について流しておる。そういう面の事務的なことでもまだ一貫されたものがない。それからまた、あと、これはどういうふうな格好で支払っていくか、そういうことについてもまだ十分な扱いができていない。それへもってきてちょうど行政管理庁が今まですでに厚生省でやっている厚生年金保険について勧告をしております。まず厚生年金保険の台帳記録などに大きな欠陥がある、こういうふうにもう昭和十七年以来約十七、八年ですか、そういう歴史のある、かつ一千万人という厚生年金保険についてもまだ事務的にうまくできていない。さらに今度は十一月からのは無拠出ですけれども、再来年からは拠出が始まると三千五、六百万人が対象になる。こういう中でその年金事務というものが末端の組織まで徹底していないということを私は非常に心配するのであります。その点について、大臣としてまさに十一月一日から発足するこの国民年金の無拠出年金について、その事務的な処理をどういうふうに各地方自治団体に対して推進をしておられるか。その点をお伺いしたい。
  80. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 坂本議員の御質疑通り、実にこのPR活動というものは予算上非常に乏しい、これはその通りでございます。しかし、現在及ばずながら。パンフレットやあるいは県の民生部あるいは国民年金課を通しまして、市町村長その他そうした関係民生委員等の方面に対しまして、これを盛んに流させておるわけでございますけれども、やはりその地方々々におきまして徹底しているところと徹底してないところがある。これは大いに私どもも痛感いたしておるところでございますので、いろいろパンフレットその他等も配付いたしておりまするけれども、まだまだ足りない、こういうことでありますので、これは御趣旨の線に沿いまして、今後一そう努力をいたしたいと思います。
  81. 坂本昭

    ○坂本昭君 今。パンフレットを流しておられるというのですが、一体そのパンフレットなどは枚数から、部数から、値段からきまっているはずなんで、私はその。パンフレットを見たことが実はありません。それは各市町村の福祉事務所には来ているでしょう。しかし、それはパンフレットというよりも施行規則の類だと思うのですね。一般の人に対する啓蒙のために。パンフレットを一体どの程度出しておられるか。それからもう一つ、各いろいろな地方差があると言われるのですけれども、一体それはどうしてそういう地方差が出てくるのでしょうか。私はそんなことはあり得ないと思う。私はむしろ厚生省がこの国民年金を施行するのに事務的な怠慢を犯しているのじゃないか。非常にその点で憂慮にたえない。
  82. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 坂本先生仰せのように、全般的に多少おくれがちの傾向がありますことは私どもも感じております。しかし、大体九月一日以降の全国の状況をながめておりますと、私どもとしては、大体これならばいけるというふうに考えたのでございます。今日までの概況を申し上げますと、法律が制定されましてから政令とか、あるいは省令とか、もしくは各種の施行上の通達をきめるということに予想以上の時間をとられまして、その点ややおくれがちでございまして、当初五月の上旬から徹底して行おうとしておりました都道府県の職員の教育訓練など、いろいろな事情で都道府県の職員を充足しかねるような事情、あるいは本省の職員を充足しかねるような事情、そういうようなことが突発的に出て参りましたので、これが一カ月以上おくれまして、やっと六月の中旬くらいにそれが終った。七月に入りましてから市町村の職員の教育訓練を始めるというようなことにいたしたわけなんでありますが、これは一応予想はしておったことでありますけれども、やってみますと、どうも一回ではどうしても事が足りない。大体各県におきまして二回くらいやりました関係上、七月とおそいところでは八月の上旬くらいまでかかる、こういうような事情がありましたので、八月の初めから市町村内としてのPRを始めるという予定が全般的に少しずれがちであった、こういうような傾向があったのであります。それから市町村段階でのPRの際に、先ほどお話のように、市町村の費用が十分でないために行き届かない事情があるという御指摘があったのでありますが、これはある地方においては、私ども指摘のような事情であったことを認めざるを得ないのでございます。今年度国民年金の事務費は、無拠出に対する事務費でもありました関係上、この種のものは元来市町村あるいは都道府県においても相当負担をして行う性質のものであろうと、こういうような意見がかなり強かったために、十分の事務費が組まれておりません。従って、市町村によりまして、積極的に若干の費用の持ち出しをするということでやってくれたところは非常に徹底がよく、そうでないところはとかくおくれがちである、こういうふうなことでございます。全国的に見まして、この傾向は、市町村にそういうような差等がありますと同じように、実は県の段階にも若干の差等があるのでございます。現在、私どもとしては、県の進み方を見まして、特におくれているようなところに重点を置きまして指導を加えておるところでありますが、大体取り返しをしておるようであります。なお、パンフレット等についてのお話もありましたが、現在まで国が直接作っておりまするのは、市町村の事務職員が仕事を取り扱う際に必要とする。パンフレットを国で作る。このために、そのほかのポスター等含めまして、全体の費用の半分程度を国で使いまして、残りの半分強を都道府県に配賦をいたしまして、都道府県のそれぞれの創意工夫をもとといたしまして、県民に対するチラシあるいはビラ等を作ってもらっておるのであります。先ほど申し上げましたような事情で、費用が若干不足しておりまするので、県によってはさらに県で適当に金を組んで、独自の立場でビラを作るというようなことをしてくれたところもあるようでありますが、そういうことで、各県各様の方法をもちまして市町村民に対するビラを配るなり、あるいは町村によりましては回覧板を回すというようなことでやっている、こういうことでございますので、現在のところでは、この無拠出の福祉年金についての申請は若干おくれがちでありましたけれども、まず大体取り返せた、かように言えるような状況であると思っております。
  83. 坂本昭

    ○坂本昭君 今のだけでなくて、例の診断書料の問題それから支払いの窓口の問題、事務的にどういう構想でやるか。
  84. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 支払いの問題は、すでに法律できまっておりまするように、十一月から裁定にかかりますが、裁定が完了いたしますというと、国民年金証書という手帳式の証書を都道府県が市町村を通じまして受給権者にお渡しをいたします。受給権者はそれを持ちまして三月にもよりの郵便局にかねて御自分がこの郵便局から支払いを受けたいということで届出をしておりました郵便局から支払を受ける、かようなことになっております。特にその際に、あらためて通知を受けなくとも、三月になってそれを持って行けばちょうど預金をおろすような気持で金の支払いを受けることができる、かようにいたしております。  それから診断書の問題につきましては、先ほどお話がありましたように、この種のものについては健康保険の点数がきまっていないという関係がありまして、従来いろいろの扱いが行なわれておるようであります。慣行料金として相当多額の費用をとっていたという事例もあるようでありますし、また、公平に見まして、実態によってはそのことに対して十分の理由があるというものがあるのであります。ただ、何分にも福祉年金の受給者は実際上そう余裕のある人々ではありませんで、なるべく金がかからないようにしていきたい。しかし、人によっては、くめんのつく人もあり得る。従って従来からとっておりました方針である診断上を発行してもらう医療機関は特定の医療機関にしないで、どの医療機関でもよろしい、開業医を含めましてどの医療機関でもよろしいという方針は堅持して参りたい。ただし、人によっては安い金でないとどうも困るという人もこれは十分あり得る。そういう人々の便宜のために、たとえば、社会事業関係の病院でありまするとか、あるいは社会保険関係の病院でありまするとか、国立病院でありまするとか、もしくは身体障害者の更生指導所というような系統のところにおきましては、無料または低額でそれを行なっていくようにすると、こういうような便宜の措置を講じているわけであります。なお、私、東京都内の提出状況を視察をして回りました際に、この問題について特に注意をして申請書を出した人々に聞いてみますと、実際問題としては、開業医に書いてもらって、しかも、開業医の方が、いや、これはもう無料でけっこうです、ということで済ましていただいている者がどうも思いのほか多いようでございます。
  85. 坂本昭

    ○坂本昭君 思いのほか多いって、今さら局長そんなことを言われたら困るんですよ。今度の対象になるのは無拠出の人で、そうして大体老齢福祉年金の対象の人は、年所得十三万以下の、まあいわば低所得層の人なんですからね。ですから、大体払えないに近い人が多いんですからね。私は、最初からそのことをおもんぱかって、医務局なりから医師会に相談して、特に今度の福祉年金については特別な措置をはかってもらいたい、そういうふうな連絡をしたらいいと思うんですね。そういう点の考慮というものが、厚生省にはないんですね。年金は年金の方だけでしか考えない。東京都の場合、ただで書いて下さる、それはもう対象になる人が貧困な人ですから、お医者さんはおそらく取りにくいと思うんですね。その辺のことをもう少し、まあこれは交渉は年金局でなくてむしろ医務局あたりの方がいいと思うんですね。そうすれば、医務局の顔も立つし、また、医師会とのうまい連絡の足がかりもつくと思う。そういう点のどうも海外交渉がきわめてまずいですね。  それから今もう一つある問題は、支払窓口は郵便局と言っていますけれども、郵便局は知りませんよ、みんな。ことに、再来年から始まるところの拠出年金、スタンプ制度による拠出年金を全部郵便局で扱うというようなことを一体厚生大臣は郵政大臣に話したことがあるんですか。これだけのことを扱うことになれば、これはもう郵政省の定員をふやさないと、大へんなことになりますよ。
  86. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 前段の支払の点については、これは郵政省が伝えているはずであります。また、法律にもそう書いてございますし、まだ日にちがあるのであるいは一部の地方の郵便局で知らなかったという事実はおそらくおっしゃる通りだと思いますけれども、これは十分徹底をするはずでございます。  それから、国民年金印紙をどうするかという問題につきましては、私どもなお時間をかけて検討いたしたいと思っております。果して郵便局というルートだけがいいのか、あるいは現在市町村側から強く要望が出ておりますように、保険料の徴収の第一次的な責任を自分たちに負わせるのであるならば、この国民年金の印紙の取扱いも自分たちにやらすべきであると、こういう非常に強い要望が出ております。技術的にいろいろむずかしい点があるので、私ども研究はしておりますが、なお、これは一つ時間をかけて研究をいたしたい。もし、郵政系統で扱ってもらうということになるとすれば、これは当然お話しのように、それに応ずる手当は必要になると思っております。
  87. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の渉外関係のことで厚生大臣に心がまえだけ一つ伺っておきたいと想うんですがね。非常に厚生事業というものが万般に関係を持ってきておるので、今のような郵政省との関係も、日本医師会との関係も、結局これは責任は局長でなくてやはり私は大臣だと思う。前に堀木さんの大臣のときにも、どうも厚生省のオーケストラというのはコンダクターが下手だ、それぞれ一流のバイオリニストや、それからピアノをひいたり、いろいろする人はおるけれども、うまく全部まとめてない。それで医師会とけんかしたり、いろいろな現象が出てくる。そういう点で今の郵政省と相談してあるというのですけれども、これは郵政省の業務をふやすことになりますし、それからまた、今のような診断書については、日本医師会との交渉も必要だと思うので、厚生大臣としてそういう渉外関係を私はどういうふうなおつもりでやっていかれるか、ことにけさ医療制度調査会の問題が出ていましたけれども、これらについての医務局長の答えがありましたが、一番の難問題は、やはりそういう渉外関係がうまくいってないということですね。このことについて一つ大臣の心がまえを伺っておきたいと思います。
  88. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 私も事務当局からの報告によりまするというと、郵政当局とはあらゆる面におきまして連絡をとり、そしてまた、法律的な内容におきましてもこれは緊密な法規が制定されておる、こういうことでありますが、まだ渉外関係が、まあもう少し足りないと、こういうことであれば、御指摘通り、私といたしましてもまあ閣議あるいはその他におきまして、あらゆる関係部面におきましてたとえば自治庁もそうでありましようし、それから厚生省、郵政省といったような間におきましてこの問題の早期な取扱いですね、普及、徹底する意味におきましても、何らか具体的な措置について意見を交換することによってやってみたいと思います。
  89. 坂本昭

    ○坂本昭君 先ほど局長はいろいろな年金の推進について地方差があるということの説明の中で、理解のある市町村では、市町村の費用を持ち出すことによって、かなりうまくやっておるというようなことを説明されて、まああたかも、聞いておれば市町村の持ち出しを奨励しているというふうにも受け取れないこともなかったのですが、これは現在国民健康保険でさえも各地方自治体では非常に困っているのですよ。二割五分の調整交付金を含めたあの二割五分の国庫補助金もさることながら、事務費の方はどこも非常に足りなくて困っている。それへもってきて今度の国民年金で事務的な面で大きな負担をかけるということは、これは国民年金という名前は非常にいいのだけれども、実際やるのは政府の責任じゃなくて市町村の責任だ、そういうふうな結果をもたらして地方自治団体の財政がいよいよ逼迫するのじゃないか、これは特に厚生省としての責任だと思います。だから市町村の持ち出しを奨励をするというふうな、説明によってその地方差のうまく行われている所、うまく行われていない所、そういうふうな説明をされるのは、これは非常に地方自治団体として迷惑しごくだと思います。何かこれについて大臣として、ことに来年度予算折衝に当ってどういうお考えを持っておられますか。
  90. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 私どもの方といたしまして、国民年金事務員といいまするか、約四千五百人ばかりの要求をやっております。その他臨時職員その他を入れますと相当のものになりますが、こういうことはただいまも申し上げましたように、地方団体に非常に迷惑をかける。ですから自治庁、郵政省、あるいは私どもの方と━━私どもが中心になりまして次官会議なんかででも、今後のどういうふうな点について、もっと緊密に連絡をとらせなければならぬか、こういうことを一つ相談してみましょう、ちょっと生ぬるいかもしれませんけれども
  91. 坂本昭

    ○坂本昭君 ただ、相談するだけじゃいけませんよ。大臣責任を持って推進していただかなきゃ。
  92. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 相談ということは、具体的な措置を立てるということでございまするから、まあやわらかにそういうふうに発言したわけでございますが。
  93. 坂本昭

    ○坂本昭君 やわらかな発言がやわらかな結果になってしまったのじゃどうもならぬですから。
  94. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) そんなことありませんよ。
  95. 坂本昭

    ○坂本昭君 次に、先ほど行政管理庁から出た厚生年金保険の台帳記録などに欠陥があるということ、これまたこれだけでお尋ねしたいと思うのですけれども、こうした過去の厚生省としての非常な貴重な経験というものを今後どういうふうに生かしていくつもりですか。これは同時に厚生年金保険の事務的な扱いにも私は関連してくると思いますが、これはむしろ局長にお伺いしましょう。
  96. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 厚生年金の記録の問題について、ただいま仰せのような問題のありますことは、これはもう二年来省内でも深刻に悩んでおった問題でございまして、まあこの問題のむずかしさは、何と申しますか、とにかく単純に外国で一番進んだという制度のまねをしただけでは片づかない問題がたくさんあるという点でございます。それで今までパンチ・カード・システムというのが世界ではどこの国でも進んだ国で行われているというので、わが国もそれにならって数年前から台帳の仕組みをそういう仕組みに移したのでございますけれども、年金の仕組みの相違その他パンチ・カード・システムにのせる前提までのどうも仕事の段階なりあるいは事務の運び方というものがまだまだ日本では外国ほど十分に合理化されていない。それからまた、実際上、このパンチ・カードを使ってみるというと、どうも思いのほかよけいな枚数が要る。こういうようなことが現在当面している問題でございまして、現在厚生年金の被保険者は約一千百万足らずおりますが、これだけの処理でも、おそらく五年ぐらいたつと手一ぱいになる。いわんや今後被用者はぐんぐんふえて参りますから、そういうような事情からいたしまして、現在の仕組みをあまり変えないでいこうとするならば、どうしても磁気テープの方式に移さざるを得ない。このようなことで現在研究をし、およそそういう方向での結論を出しつつ現在そのために必要な機械化の準備を進めていっているというのが厚生年金の現状でございます。これを一体国民年金の場合にどう反省して、どのように利用していくかという問題でございますが、国民年金の場合は、量から申しますと厚生年金の少くとも三倍以上になる。対象からみまして三千五百万、最盛時には記録の保有台数からいえば、大体六千万を保有しておらなくちゃならぬというようでございます。中身は厚生年金よりもやや簡単ではございますが、とにかく、量が圧倒的に多い。それから将来どういう通算方式を行うかのやり方にもよりますけれども、まあ向うに行ったりこっちに来たりという出入りの関係がありますと、方式そのものはあまり違えるわけにはいかない。こういうような事情からもう今日の段階でハンド・ライティングのやり方で事が処理できるということは私ども全然考えてはおりませんが、同じ機械化をするにしても、どうも単純にアメリカのまねあるいはその他の国のまねをするというだけでは行き詰まってしまうおそれがある。さりとて、世界で一番進んだ機械、まだ試験段階からやっと実用化に入ったというような人工頭脳を相当備えるというようなことを前提にした記録処理の方式を考えるのも、これは国のこの種の仕事の処理としては少し足場がゆらいでくるおそれもあるような気がします。まあこういうようなことで、まことに申しわけない話でございますが、今日までのところ、私どもまだこの方式でならばいける、これが一番よいという結論は出しかねているのでございます。幸いにして国民年金の場合には、記録による裁定をしなければならぬ時期は、国民年金手帳の仕組みから見まして、なお四、五年先に延ばし得る状況なんでありますので、明年からはもう一回、一つ日本の国内の既往のやり方はもちろんのこと、外国のやり方についても十分に調査をいたしまして、一年半ぐらいの間に研究をして結論を出して、それからそれに基いた千画を進めていく、かようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  97. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の厚生年金とそれから拠出制の国民年金との関係お話があったわけですけれども、問題は三十六年度から実施するという拠出制の年金の方法ですね。で今のような格好のことで、具体的に国民の協力を得なければならぬ。それには国民年金というものを国民が理解しなければならぬ。そういう格好の中において、そういうのんびりしたことでいいんですかね。私どもそういう印象を受けたのですが。
  98. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 先生のおっしゃるお気持はよくわかるのでありますけれども、国民との関係におきましては、今日どういうわけで年金制度が必要であるかどうか、あるいはおよその仕組みはどうかというだけでは、どうも問題が片づかぬ時期になりつつあるわけであります。それならば、実際のこの問題はどうするのだということを固めておかないといかぬ、こういう段階でございます。そういう事情からいたしまして、今日では、拠出制の年金制度を実施に移すために必要な問題がまだまだ六つか七つ残っております。それをせっせと固めてそうして明年十一月一日から適用事務が始まりますので、明年その時期の前には、これはもう今年とは全然規模を異にした徹底的なPRを行なっていくというふうにいたしたい、こういう考えで現在は残された問題、いわば宿題とでも申すべきものを一つ一つ片づけるための検討を行いたい、こういうような事情でございます。
  99. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その残された宿題にはたくさんの問題があると思います。ここで議論いたしましたように。私は深くは触れませんけれども、しかし、どうも無拠出の年金の徹底の問題、あわせて拠出制の年金の問題について、無拠出の問題が手が足らないからか何か知らないけれども、この年金を実施していこうという心がまえからいったら、拠出制の年金なんかはもう今時分は馬力を上げて、三十六年度から実施するというようにうんと取り組んでいなければならぬときじゃないかと、私はそう思う。だけれども、そういう点がさっきの質疑を聞いておりますと、非常に欠けていやせぬかという感じを受けるのですね。だから私たちの国民年金というのは、何といっても、今後福祉国家として医療制度と年金制度が柱になる一この柱になる問題として見ているわけです。だから、今のようなことでよいかという考え方、そういう議論はたくさんあるのですけれども、法律できまったのですから、しかし、その意を体してやはり厚生省というのは社会保障の二本の柱である一つの年金制度というものについて、もっともっと事務的に足らなければ予算をとつて、そういう工合にして大がかりにもっと熱意をもって取り組んでもらわなければ困るという私たちは強い意見を持っているのです。
  100. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 大へんありがたい御激励をいただいているわけでございますが、私どもそういう気持でなければならぬと思っております。ただ、私申し上げたことは、もうおっしゃるように、法律がきまり、今実施の段階になっているわけでございます。私ども実施に当る者としては、この問題はどうなるのだ、これはどうさばくのだということをきめることが、何といっても、いろいろ周囲の人々に理解をし、動いていただきますためにも必要なわけでございます。簡単な問題一つとって考えてみましても、無拠出の年金制度都道府県の本庁と、それから市町村の段階に、それも今年は恒久的な組織でなくて、臨時的にいわば九月から十一月ぐらいまでの間を集中的にさばいてもらう。臨時の組み立てを市町村にしてもらうという程度でやれるわけでありますから、それで済むわけでありますが、恒久的な拠出ということになるととてもそうは参らぬわけであります。どうしても中間段階として社会保険出張所なりあるいはそこの人間を整備していく。同じく市町村段階でも、これはもう今年とは違いますから、国は十分に必要なる事務費を負担し、専任の職員をそれぞれ市町村の規模に応じて国の負担でもってもらうようにしなくちゃいかぬ。そうすると、それは一体どういうところに社会保険出張所を配置し、どういう人間をそれに備えていく。市町村には各規模別にどういう人間をもっていく。それを何月からやっていく。こういうような問題が、六つか七つの問題のうちの一つでございますが、そういうようなことを固めなくちゃいかぬ。そういうような意味でそのことを固めることに今全力をあげているわけでございます。お説のように、おそらく問題を単に今年の無拠出だけに限って考えますならば、もっと一つそれに全力をあげたらいい、こういうこともあるわけでございますが、全体の配置からいいまして、正直のところ、私どもは局の持っております力の半分を当面の無拠出の処理に向け、あと半分をもっぱらその準備の促進に向けている。こういうような事情になっているわけでございます。
  101. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、小山局長は今日まで非常に熱心におやりになっていることについて私は敬意を表しているのです。だから局長自身が非常な熱意をもって努力をしておられても、国民全体を対象にして新たにこういう組織を、法律に基いて具体的な措置をするわけなんですから、私はそれに応じた機構組織、そういう活動というものが出てくるのにはこの裏づけをしなければならないと思う。そういう意味で私は厚生省としては、大臣に申し上げておきたいのですが、積極的にこの問題と取り組んでもらいたい、どうも議論がちょっと前の方にいきましたけれども、坂本委員との間で。私も地方で見ておりますけれども、無拠出の問題、今現場では、無拠出の問題ですけれども、取り組み方や宣伝や理解の仕方について、予算や事務的な機構云々という御説明がありましたけれども、少し足らないような気がする。それとあわせて三十六年から実施しなければならぬという膨大な課題を前に置きながら、熱意が足らぬ。そういう点を私は最大限の配慮を、予算の面からもあらゆる面からも、努力していただきたい、ということを希望申し上げておきたいと思います。
  102. 坂本昭

    ○坂本昭君 今藤田委員からの激励を非常にありがたいと局長言っておられましたけれども、私は国会が済んでから、六、七十回この年金の話をして回っています。ところが、ある地域では、この拠出年金に対しては非常な反発が強いのですよ。一体こういう法律をいつだれが通したというのです。私は反対したのだけれども、通ってしまったのだ。かなりこれはふたをあけると国民の反対が強い。ことに国民健康保険と同時実施でしょう。だから一戸平均七、八千円ぐらいの負担になる見通しがある。ですから、よほど大臣としても局長としても今から拠出年金については国民の同意を得ていかないというと非常な困難が私はあると思う。特に今度のこの無拠出のものでも、最近の新聞の報ずるところでは、農村で老齢年金の失格者が非常に続出する。名義だけの所得で結局年額十三万円以上になるということで、せっかく七十 のじいさんが楽しみにしておったところが、いろんな田畑の所有だとかあるいは収入が全部そのおじいさんに名義がなっている。そうすると、名義だけの所得で年間十三万円以上だということで、みんな失格になる。そういう例を、これは山形県の例ですけれども、これは局長もおそらくお読みになったと思うんですけれども、こういうふうな点が出てくると、農村の人たちが無拠出に対しても非常に支持をしなくなる。ということは、さらに今度の拠出年金に対して私は重大な影響を与えるんじゃないか。この点は、実際に地方を回って年金制度の話をした場合に訴えられる国民の声です。だから、そういう点ではあまり安易な気持でおっていただいては困ると思うんです。特に、この農村で老齢年金の失格者がどうも続出しそうだということについて、厚生省としてどんなふうなお考えを持っておられますか。
  103. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 先ほど来、非常な御激励をいただきながら何となく沈痛なものの申し方をしておりますが、実は前途に控えているそういう困難が絶えず私を押えつけているからでございましておっしゃるように、百円、百五十円という保険料を単純に全部から取っていけるかどうか、これはもう制度の初めから悩んでおった問題でございます。従って現状においてこれをやっていこうとすれば、どうしても過渡的に相当相手方の実態に応じて免除の措置を弾力的にやっていかなくちゃならぬということになるわけであります。それから、同じ免除を行いますについても、単純に全額を免除するというだけの方法でいいのか、あるいは、もう少しそこに技術的に許すならば工夫する余地はないかという問題が、いよいよ保険料の徴収を開始するということになるとすればどうしても解決をしなけりゃならぬものとしてあるわけでございます。こういう問題については、六月から発足をいたしました国民年金審議会で目下研究しているところでございます。何とか一つ、来年の七月ぐらいまでにはその点についてこれでいけば不十分ながらやれると思います。ということを確信をもって申し上げられるようにまとめたい、かように考えているわけでございます。  それから、後段にお話しになりました問題は、これは実を申しますと、制度の立案のときからあった問題でございます。現在所得税に老齢者控除という制度がありますために、農村において、実際上はもう世帯主じゃない、名目上の財産の名義人であるだけであり、おそらく農業という事業から見てももう決して事業の主宰者でない人が、名目上主宰者であり、あるいは所得者であるということで届出をしておられる。これはいろいろの事情がありますけれども、まあ一つは、死ぬまで一つ財産を握っておきたい、こういう気持と、もう一つは、申しにくいことでありますが、老齢者控除という税法上の恩典を何とかして事実を多少曲げても一つ受けていきたい、こういうような考え方なのでございます。こういうものをどうするかということが、制度の立案の際にもずいぶんと論議されたわけでありますが、農村方面の有識者などの意見も、そういう世代間の交代というものを促進していくということが、これが年金制度の意義なんだから、過渡的に出てきてもそれはまあやむを得まい、実際上はそうは多くないであろう、というような皆さんの判定であったのであります。実は、ことしになりましてから、私、ある地方に出かけまして、ある事実を発見してがく然としたのであります。ある町でありますが、そこへ行って実際について調べてみますというと、その町の老齢者である男の農民の約半分近くがどうもこの特典を利用しておられる、結果的にはこれは全部アウトにならざるを得ないわけであります。もし、これが全国的な傾向であるとすれば、たとえば、どんなに正しい交通規則でありましても、国民の半分が違反をするような交通規則であるとすれば、しばらくの間、規則の方で遠慮しなければならぬという事実にならざるを得ないと同じような問題がこれにも起り得るというので、内々一つ全国について調べてみましたら、これはこういう事実を発見いたしました。これは県全部が同じ傾向を示しておるというような県は一つもございません。県内で非常に激しい町村と、全然そういうことがない町村がございます。ならしてみますというと、大体国が見ておりました該当者よりも、このために該当するものが加わってやや上回る程度。従って、全国的な問題ではないというふうに判断しても大体間違いないだろうという程度の事実を現在つかんでおるわけであります。さしあたり、それじゃ一体現実の問題をどうするかということでありますが、ただいま申し上げましたように、これは昨年以来いろいろ実は折に触れて考えもし、研究もした問題でありますけれども、お気の毒ではあるけれども、どうも今年度はいたし方ない、ただし、そういう方々にぜひ知ってもらいたいと思いますことは、こういう方々が明年度から年金を受けるために財産を護る必要は決してないということであります。財産は御自分のままにしておかれてけっこうであります。国税庁からも通達が出ておりまして、子供が三十以上程度であり、実際上、子供が農業を主宰しておる、こういうような実態であるならば、その子供が本来、所得税法における実質課税の原則に従って所得税を納めるべき人なんだ、父親がそういう届出をしておることは間違いなんだ、ほんとうをいえば、税法上の問題として間違いを正すべきものなんだという趣旨の通達も出ておりますので、そういうことで一つ逐次軌道に乗せていきたい。大へん長くなりましたが、そういう事情でございます。
  104. 坂本昭

    ○坂本昭君 時間の都合で次の問題をお伺いいたします。それは積立金の問題ですが、これはすでに厚生年金の積立金がありますが、さらに国民年金の積立金について、先般の国会が終った直後、厚生省からは大蔵省に対して、あるいは世論に対して相当働きかけをいたしております。私どもも、前坂田厚生大臣の考えをわれわれは支持して、この積立金は厚生大臣の責任において使っていけるように、つまり、今の法律にある大蔵省の資金運用部の資金として財政投融資の原資にするということについては反対である、そういう意見を申し上げてきましたが、一体このことについて、これから約一年半厚生大臣として政治的にどういうふうに具体的な努力と戦いをされるおつもりか、これはぜひ伺っておきたい。
  105. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) この七月から発足いたしました有沢広巳さんの国民年金審議会におきまして非常に検討いたしております。私どもといたしましては、明年七月ぐらいまでには結論を出していただきたい、こういうことでありまするけれども、しかし、問題はやはりこの財政当局で、いわゆる資金運用部の資金を握っておる大蔵省の考え方というものに対しまして、われわれは今までもいろいろと打診をしたり、あるいはまた、事務当局なんかに対しまして、厚生省のある程度の自主運営を全部よこせといっても、それはできるかどうかわかりませんけれども、自主運営ということについて一つ何とか考えてみてくれぬか、こういうことを今具体的折衝を一方においてやっております。幸いにいたしまして坂本委員から、そういう坂田さん時代からその方針を賜わっておるということはまことにわれわれは意を強うするものであります。どうかその線に沿いまして一般世論を喚起させていただきまして、私どもも、できたならばこれは厚生省の自主運営でできるだけの大きな発言者を持たしていただきたい。かように考えております。
  106. 坂本昭

    ○坂本昭君 渡邊厚生大臣、それほんとうにできますか。この間の審議会のときには、大蔵大臣は絶対に厚生省には譲らぬと、資金運用部資金の資原としてこの最初の原案の通りに絶対にやるということを確言しているんですよ。それからまた、総理大臣も、自分もその大蔵大臣の方針の通りに進む。私はこの間うちずっと一般の人に話しをするときには、こういうふうなことに使われる年金だから、だから気をつけてもらわぬといかぬぞということを特に私は注意した。そうすると、みんなはそれはいかぬと、それはもう払わぬと。だから坂田厚生大臣は、この積立金で保育園や病院やいろいろなものを建てたいとなかなかいいことを言っておられたのですけれども、なかなか大蔵大臣は意思強固ですよ。で、佐藤大蔵大臣に、厚生大臣個人としてどこまで政治的に戦かっていかれるおつもりか。それを聞いておかぬというと、私もこれから演説するときに国民年金のあまりちょうちんを持つわけにはいかぬです。
  107. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 今まことに私の実力を試験されておるような結果でございますが、なかなかこれは容易ならぬことであろうと思います。容易ならぬことであろうと思いますけれども、できるだけの最大の努力をいたしまして幸い世論並びにわが党並びに社会党の方々もあげて支持しておって下さいまするので、できたならば私はできるだけ、どの点まで━━先ほど申しましたように、どの程度まで発言力を持てるようになるか、こういうことを危惧しながら最大の努力をいたしたい。まあ自分の決意の一端だけを御披露申し上げた次第でございます。
  108. 坂本昭

    ○坂本昭君 この年金の問題、これで打ち切りますが、大臣あまり危惧してやるようなことであったらやめてもらわなければならぬかもしれませんが、これはよほど腹を据えてやっていただきたいと思います。  次に、国立高田病院の看護婦の出産制限の問題についてお伺いいたします。
  109. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) どうでしょうか、次の問題も一括してやった方がいいでしょうか。別々にされますか。
  110. 坂本昭

    ○坂本昭君 やっぱり分けたらいいと思います。
  111. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それじゃ第一の問題から……。
  112. 坂本昭

    ○坂本昭君 第一の問題、これは新聞やいろいろな問題で有名になりましたので、こまかいことについてはこの際時間もありませんからお尋ねしませんが、まず大臣に、国立病院における看護婦の妊娠制限というものを厚生大臣として一体どうお考えになられますか。
  113. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) まあ責任を回避するわけじゃございませんけれども、私はあとでこれを伺いましてまことにびっくりしたわけでございまするし、また、事務当局にも聞いてみましたところが、そういうような指示を出したことはない。で、産休問題に対してはあの後いろいろと政治問題、社会問題化しておるので、できるだけ病院運営の上において支障のないような予算措置を講じて現在やっておるわけでございますので、その点は今後も万遺漏なきような対策予算面においてやっていきたいと、かように考えております。
  114. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は大臣に、一体なぜこういうことが起ったか、これはどういうふうにお考えになりますか。まさか厚生省が、看護婦になったら妊娠を制限しなくちゃいかぬというふうな、そういう通達を出すはずは、それは考えられませんけれども、どういう問題でこれは起ってきたというふうに大臣は考えられますか。
  115. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) そう追及されますというと私もちょっとそれは困りますが……。
  116. 坂本昭

    ○坂本昭君 それは困るでしょう。
  117. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 産児制限は、四年に一回産めとか何とかいうようなこういうことは厚生省は何も考えていなかったらしい。あなたの御質問の御要点に結局触れてくる問題というものは、やはり、職員の定員の不足というものを将来どういうふうに考えられるか、こういうことだろうと思うのですが、私どもはやはり、その病院に適応した職員の充足は今後もやっていきたい、かように予算面において考えてもおりますし、これを法律化したらどうか、こういう問題もございまするけれども、まだ財政面におきまして、今は看護婦さんの問題でございまするけれども、これは法律化するということになりまするというとなかなか隣組が、われもわれもというようにそういう種類のものが続出して参りまするというと、なかなか財政当局が困難じゃなかろうか、かように考えておりまするが、できるだけ将来はそういう方向に向っていきたい、とにかく今のところは、予算面でとりあえず遺憾なき充足を期していきたい、こういうことに結論を持っているわけです。
  118. 坂本昭

    ○坂本昭君 大臣も━━私はかえってこれはしろうとの方がいいと思うのです、大臣はなかなかセンスがよくて、前の委員会のときから感心しているのですけれども、こういう事件が起ったのは確かに定員不足なんですよ。看護婦が足りないということなんですね。一体国立病院あるいは国立の療養所、いえば国の模範となるべき医療機関における看護婦の定員というものは一体いかにあるべきか、私はそういう点が今度のことを非常に社会的にまた看護の面で社会一般に訴えた好個の実例であると思うのです。今産休予備定員の方の立法化のことを大臣は言っておられたのですけれども、その前に、一体看護婦の数はどの程度病院にあればいいか、私は、それについてどういうお考えを持っておられるか、それを一つ承わりたい。
  119. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 一応病院にいたしましても、療養所にいたしましても、大体医療法できめておりまする線は少くとも守っていきたい。そのほかに国立病院といたしましては、入院について、一般疾病は四人に一人、これは医療法の基準ですが、そのほかに外来一日当り三十人に一人とか、あるいはセンターを設けております場合にはさらに一人を加える。それから手術件数が多いところにおきましてはそれに応じて加算をいたしますとか、小児病床には特に二十八人に一人加算するというような考慮をいたしております、それから療養所は、医療法の線では御承知の通り六人に一人ということでございますが、そのほか入院、外科、カリエス、小児、重症患者のときには四人に一人、それから直達手術の合併、検査につきましては一人から六人加算するというふうに医療法の線よりも少し上回っている、そういう基準で看護婦の定員を配置いたしておるわけであります。最近は、この三十四年の二月の調査をもとにして見たのですが……。
  120. 坂本昭

    ○坂本昭君 ちょっと議事進行。実は時間の関係がありますので、今までのことはプリントにして、国立病院、国立療養所でどういう基準でやっているかということを資料として一つ出していただきたいと思います。ことに最近訓令の改訂を行われまして、かなりこまかい変化ができている。一体私の聞きたいのは、そういう現実じゃないのですよ。だからその点は、大臣が非常にセンスがいいというのです。大臣が、つまり、不足している、だからこういうことが起るのだと……。私の方では、それじゃ一体どういう不足な数かというのです。あなたの言われるのは不足しない数じゃないですよ。不足していない数ならば今の高田病院における事件は起らないはずで、やはり不足しておる。従って、あなたの今言われた四対一だとか、センターの場合一人加えるとか、手術の場合加算するとか、これの私はむしろ根拠を聞きたい。それだけやったらほんとうに看護婦さんは足りて十二分の看護ができているかどうか。私はそういう点を、今度出していただいたプリントを基礎にして次の委員会一つ横付さしていただきたいと思う。その前に、私は大臣に、むしろ日本の現実というものは、今医務局長国立病院は四人に一人の看護婦だと言いました。これは医療法にはそう書いてある。ところが、国立病院、療養所の場合には、特例として、その除外例の対象になっている。そして少し前に、例の一類看護、二類看護、三類看護という非常にこまかい問題が出されてきたのですけれども、これは医療法の、つまり医務局所管の問題として出されたのではなくて、保険局の点数の加算の問題から出されてきている。そういう点ではむしろ今のあなたの御説明あとまで聞いておったらよかったかもしれませんが、私は保険局長に聞きたい。一類看護、二類看護、三類看護ということをきめた一体根拠はどこにありますか。保険局長から御説明聞きたい。さらにそのことについて医療法的な医務局の立場で、それを支持する根拠がどこにあるかということを、医務局長、それから看護の責任者の方も来ておられますので、看護の責任者として、それで非常によろしいと考えておられるかどうか。
  121. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 最初に私の方からお答えいたします。保険の方では、やはり一類看護、二類看護、三類看護というようなその看護婦の配置状況いかんによりまして、そこの診療報酬というものを加算いたしております。その根拠は今ちょっと私記憶は十分ではございませんが、たしかやはり一つには筋の問題もありますし、また同時に、特に今置かれている現実というものを基礎にしてまあ妥当な線を出しているというようなことであります。
  122. 川上六馬

    説明員川上六馬君) これは大体日本の現状から一応そういうような分類がなされておるのでありまして、むろん多々ますます弁ずでありますけれども、やはり病院を経営する上において、あまりたくさんの看護婦を置くということは事実上むずかしいというような問題から、たとえば結核は五人に一人、あるいは精神は六人に一人置くというようなことになっておりますが、必ずしもこれで十分とは考えておりません。
  123. 坂本昭

    ○坂本昭君 医務局長は看護婦の数は多々ますます弁ずなんて、そんなことを言っておったら笑われますよ。やはり医療法に定められた四対一という根拠は、たしか占領当時の、あの当時の看護婦の実数と、日本のベッドの実数がちょうど四対一であった。それから来て私は今日に至ったものと実は理解しております。今後、大体厚生省は多々ますます弁ずならば、さらにもっとよい看護をしようとするならば、もっと看護婦の数をふやすべきです。ところが、厚生省自体が国立病院、療養所で養成している准看並びに一般看護婦の養成も逐年減っております。これは一体どういうことのためにこういうことをしておられるか、私は非常に疑問に思う。今の四対一というものが、理論的な根拠はあるのですか。日本の病人というものはその程度の看護でよろしいというような、一つの何かけじめでもあるのですか。
  124. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 今申されましたように、そういう実態によってこういう比率を出したというように私は聞いておりますわけです。
  125. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうすると、そういう実態の中から今の一類看護、二類看護、三類看護というものはできてきた。ところが、そういう実態の中から、看護婦は妊娠の制限をせざるを得ない。それからまた、今まで制限をしてきたけれども、なおかつ、患者に対するサービスとしては、私は十分なサービスができてきていないと思う。じゃあ、今のような段階における看護の責任は、一体、各国立医療機関の施設にあるのですか、それとも厚生大臣にあるのですか。これは一つ大臣に伺いたい。一体だれが責任者ですか。
  126. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 国立病院である以上は、その責任はもちろん厚生大臣にございます。ただ、その事務の執行上において、やはり適種適病院におきまして、いろいろな事情が違う場合があって、一類看護、二類看護、三類看護というような場合が生じたのであろうと思っておりますが、それでも、その責任は、当然帰するところは私にあると、かように考えております。
  127. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうすれば、現在、国立病院、療養所において、今はちょうど看護婦の問題を取り上げておりますけれども、看護婦の数というものは、福祉国家を作り上げるために、患者に対するよいサービスをするために、現在では足りると思っておられますか、足りないと思っておられますか。
  128. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) その国立病院によりまして、いろいろ実態調査をしてみないというと、ちょっと把握できないんじゃないかと思うのです。
  129. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうすると、実態調査をやれば、十分足りている病院もあり得る、また、足りていない病院もあり得ると、まあそういうことなんですね。
  130. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) そういうことでございます。
  131. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうすると、先ほど、産休の予備定員の立法化については、大体その方向へ持っていきたいと言っておられましたが、従来までは人夫賃で支払ってきているのです。お産のため休む場合、労働基準法に従って、産前産後各六週間の休みを取っている。その間は、人夫賃で今までそれを補ってきました。ところが、それによって、前の医務局長は、十分なことができておると、繰り返し一昨年から言ってきたのです。ところが、実際にこの高田病院の実例を見ますというと、妊娠制限をやって、そういう中でつまり病院の看護というものが行われてきている。私は、こういう点では、今ごろになって実態調査をやるのは、ずい分おそい話だと思うのです。むしろ、今までの、たとえば三十三年度の産休者に対する代替要員の補充状況というものは、ことしの二月に医務局から出してもらっているのですが、その時は、国立病院では百四十六名なんですね。実際、これは、ほんとうのところはもっとたくさん希望を出していると思うのですけれども、高田病院の場合に、今までこの産休のために代替要員の申請があったのですか、なかったのですか。医務局長に伺いたい。
  132. 川上六馬

    説明員川上六馬君) その当時は、代替要員の用意が予算措置はございませんと思います。たぶん出ていなかったと思います。
  133. 坂本昭

    ○坂本昭君 いやそんなことはないですよ。
  134. 川上六馬

    説明員川上六馬君) いや最近は御承知のように、三十二年度から代替要員の措置をいたしまして、三十三年、三十四年におきましては━━三十二年の最初は少し予算が窮屈でありましたものですから、多少欠けるところはあったのですが、三十三年、三十四年度におきましては、申請通り承認をいたしております。
  135. 坂本昭

    ○坂本昭君 それでは高田病院からは申請があったのですか、なかったのですか。
  136. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 三十二年が三件出ておりまして、三十三年に二件、申請通りに承認をいたしております。
  137. 坂本昭

    ○坂本昭君 間違いないですね。
  138. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 間違いありません。
  139. 坂本昭

    ○坂本昭君 ちょっと私の聞いたのと違っているんですがね。
  140. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 失礼しました。三十三年に二件申請をいたしておりますが、そのあとまた辞退をいたしております。
  141. 坂本昭

    ○坂本昭君 申請をして、また辞退をして、結局だから人夫賃はやってないということですね。
  142. 川上六馬

    説明員川上六馬君) そういうことでございます。
  143. 坂本昭

    ○坂本昭君 結局、そういう結果に基いて、看護婦の側では妊娠制限をせざるを得なかったということですね。そうじゃないですか、大臣
  144. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) さあ、そこまではちょっとまあ聞いておりませんが……。
  145. 坂本昭

    ○坂本昭君 これは厚生大臣、一度施設を見て下さい。先ほど来ておられた藤原道子委員は、東京の国立第一病院に入院して、腹部の手術をやった、そのときに東京第一病院でさえも、夜中に看護婦さんはたった一人しかいない、一人で走り回っている、非常に気の毒だ、また自分としてもあんな一人では非常にたよりなく思ったということを、だいぶ前の委員会で、みずから入院をして、そういう体験を語られた。藤原さんは御承知の通り、看護婦出身の経歴もあるのです。そういう点で、今日の日本の、特に国立医療関係で━━これは看護力だけではありません。いろいろな人が足りないんです。足りないところへ持ってきて、なおまた新しい訓令定員でその数を減らしていこうとしている。私は一体何のためにこういうことをしているのか。患者さんに対してサービスするならば、多々ますます弁ずる方がいいですね。ところが、どんどん減らしていって、結局人件費を節約して、特に国立病院は特別会計制をやっております。特別会計制のために、どうしてもある程度収入をあげなくちゃならぬ。私はそういうことのしわ寄せが、この国立病院や、あるいは国立病院に働いている人たちに私はきていると思う、そういうふうに考えざるを得ないわけです。特別会計制との関連において、厚生大臣、この国立医療の実態を改善されるお考えございませんか。
  146. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) なかなかむずかしい問題でありまして、この問題は今のところ、ちょっと私ははっきりとここで申し上げることが、今のところちょっとできません。
  147. 坂本昭

    ○坂本昭君 いや、その改善する……。
  148. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 改善はいたしますが、特別会計制度にするかしないかということは、ずいぶん私ども、この国立結核療養所の最近の問題なんかに端を発しまして大蔵省当局なんかといろいろ話し合っているわけなんです。なかなか簡単に委員会で、これは特別会計を廃止するとか、特別会計を持続するとかいうことは、そう簡単にここで今急に、私のこの意見として申し上げかねるんです。
  149. 坂本昭

    ○坂本昭君 私が今お尋ねしているのは、まあ何年間もやってきたところの、特別会計制をやってきたところの国立病院について、看護婦のこの妊娠を制限するというところまで人件費の節約をやっている。この国立病院の実態というものは、こういう特別会計制のために人件費にしわ寄せせざるを得ない。その結果、国立病院に勤める看護婦さんは赤ちゃんを作ることができない、そういうことになっているのではないか。だからこういう特別会計制というものはよくないのじゃないか。国立病院について━━少くとも国立病院であるからには、国民に対して模範的なサービスをすべき機関だと、私はそう思う。でなければ、一体国立という意味は全然なくなると思うのです。国立病院の使命の点から、私は営利主義が国立病院の目的ではないと思う。まあそういう点で特別会計制をまず国立病院について改める御意図はありませんかを伺っているのです。
  150. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) まだその━━たまたま高田病院に端を発したと、こういうことでございまするから、私のまあ不勉強からはっきり申し上げかねるのかもしれませんけれども実態調査をもう少ししてからでないというと、果して看護婦がほんとうに━━これが先ほども申しましたように、足りておるところと、足りていないところとある。結核療養所なんかの問題につきましても、病床があいてきておるというようなところにおきましては、看護婦も十分であるというようなことも考えられるのでございまして、今のところ明確にここで、その方針も……。もうちょっと研究させていただきたいと思います。
  151. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと議事進行についてお願いですが、御承知のように、あとまだ質問者が二人、数点残っておるわけです。そこで坂本委員の持ち時間もすでに二倍以上経過しているわけなんで、できるだけ簡潔な質問と、スマートな御答弁をお願いいたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  152. 坂本昭

    ○坂本昭君 それでは、ただいまの実態調査というのは、いつまでに、どういう計画のもとに行われますか。
  153. 川上六馬

    説明員川上六馬君) ちょっと高田病院の事情を申し上げたいと存じますが、実は高田病院のこの入院、外来は、年を追って減っておりましてそのために定員が自然に削減せられたわけでありまして、しかし、高田病院が特に定員が少いということはないのでありまして、まあ大臣は先ほど、一応実態調査をするということを申されましたけれども、先ほど私申し上げる途中になりまして話を切ったわけでありますが、それは国立病院の三十四年の二月の現在の調査によりますというと、一般病院につきましては、患者三・七人に看護婦一人、それから病院の結核病棟につきましては、ちょうど五人に一人、それから精神病棟につきましては、四・八人に一人というような結果になっております。それから結核療養所につきましては、五・三人に一人ということになっておりまして、先ほど申しました医療法の基準から見ますというと、だいぶいいわけでございます。  それから先ほど、高田病院は相当赤字で、そのためにいろいろと定員も少くなったとか、あるいは整備ができなかったのじゃないかというような意味の御質問があったかと思いまするが、それは、なるほど高田病院は、毎年、昭和三十年度から最近まで、五百万円、ないしは七百万円くらいの、実は赤字を出しておるわけであります。しかし、それにもかかわりませず、私の方は最近は相当の医療機械を設備いたしております。なお、本年度はこの炊事場の改善でありますとか、看護婦の単位が今小さいものでありますから、そういうことで看護婦の能率が悪いというようなことも考えられまして、病棟を本年は改修いたしまして、そこに患者をある程度まとめまして、看護婦が働きやすいようにしようというふうに考えております。決して特改であるから特にこういうことになったというようなふうには考えていないわけであります。また、私としましては、国立病院は非常に建物は粗末でありますけれども、診療は非常にまじめにやっておりまして、それが国立病院の信条だというふうに考えて常々そういうふうに申しておるわけであります。
  154. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうもはなはだ不得要領ですが、医療保護の基準よりも高田病院がよろしいというふうな……。
  155. 川上六馬

    説明員川上六馬君) そういう意味でなく、今一般的な話をいたしたわけであります、国立病院、療養所全体につきまして。今申しました比率はですね。
  156. 坂本昭

    ○坂本昭君 私はだから一番最初にさかのぼって、四人に一人という基準ができてきた根拠、それで十分なサービスができるという根拠、特に日本の場合それでよくて、たとえばアメリカやイギリスや西ドイツ、そういう国々ではどうなっているか。私はそういうことの調査をなさっておられないと思うのです、あなた方は。いかがですか。
  157. 川上六馬

    説明員川上六馬君) それは不十分でありまして、今後調査をいたしたいと思います。
  158. 坂本昭

    ○坂本昭君 それではそうした諸外国━━福祉国家としての組織が日本より発達した国々がわれわれよりも看護の基準がいい、あるいは病院の定員の内容国立病院、療養所よりもいい、そういう場合には当然日本の場合についても改善される御用意がありますか。
  159. 川上六馬

    説明員川上六馬君) これは先ほども申しましたように、医療経済の問題があると思います。私は一昨年アメリカ、ヨーロッパに参りまして、少し病院を見て参ったわけでありますけれども、必ずしもそう外国の看護体制が日本よりもすべてすぐれているというふうには私は感じなかったわけでありまして、ことにアメリカあたりの病院につきまして見ますというと、かなり無資格者をたくさん使っておるという所もありますし、しかし、だんだん医療の内容が高度化して参りますから、そういう面では看護婦の手がだんだん必要になってくると思います。そういうことについては、今後国としても考えていかなければならぬというふうに存じておるわけであります。
  160. 坂本昭

    ○坂本昭君 それはなるほどアメリカはいろいろな施設やオートメーション化などできておりますから、人手を借りない点がずいぶんある。それから日本の一番最初にできた医療法の四人対一人という当時はこれは占領下であって、その後アメリカはわれわれに三交代制というものをかなり強く勧めました。従って、現在はこの高田病院でもそうです。三交代制というものを行なっている。従って、ベッドに働いている看護婦の数というものははるかにまた減ってきているわけです。そういう実態医務局長はほんとうに知っておられるのですか。私はきょうは時間がないのでございますから、もう一ぺんこの点について、厚生大臣はもう少し実態調査をされると言われますが、全国の今のこの産休の代替要員の補充状況についても、ただいまの説明のあったことと現実とはだいぶん食い違いがあると思います。もう一ぺんさらに調べていただきたい。  それからさらに、外国の病院における看護婦の数、もちろんアメリカあたりではナース・アッテンダントいろいろありますね。そういう者の数と働き、それから機械化されている状態、そういったものをさらにお調べの上、これだけで一つ一ぺんゆっくり討論してみたいと思います。そうしないと、この高田病院の問題というのは単なる高田病院一つの問題じゃなくて、日本の国立病院、療養所の問題であり、さらに日本の医療制度の中における看護婦というものの占める大事な問題だと思います。私はそういう意味で今質問して参ったのです。どうかそういう点で、これはあとへ次の問題に残していただきたい。そうしてあなたの方で先ほどのこの資料を出していただきたい。特に今度訓令改訂をされたときに何については何人、たとえば病理検査については何人というようないろいろな根拠を持って出しておられる。私の方で厚生省に幾ら尋ねてもその根拠を出さない。ぜひこの際出していただきたい。これは出していただけますか。
  161. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 坂本君に申し上げますが、資料の要求は委員長を通じてということが建前になっているようでありまして、ただいまの御発言は便宜上委員長をお通じになったものと了解いたします。  それではただいまの坂本君の資料の請求は、極力誠意を持って御調製願いたい、かようにお計らいを願います。
  162. 坂本昭

    ○坂本昭君 極力というのは少し私は厳格にしていただきたい。なかなか厚生省は非常に今まで資料を出さないのです。  厚生大臣あともう一つあります。にせ医師の問題でする
  163. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記をとめて。    〔速記中止
  164. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは速記を起して下さい。産休問題はこの程度にいたしまして、次に移りたいと思うのであります。   ━━━━━━━━━━━━━
  165. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 高知県中村市立八束東中筋療養所のにせ医師事件並びに僻地における医師充足状況について御質疑をいただきます。
  166. 坂本昭

    ○坂本昭君 これは実はミス・プリントがありまして、中村市立じゃなくて、中村市国保の八束直営診療所であります。これについて実はこまかい御説明の前に私の方からちょっと申し上げますが、この診療所の所長、この診療所並びにもう一カ所の診療所をニカ所兼任した医師が約三カ月間数百人の患者を診察して、多いときには一日五、六十人にも達したようであります。死亡診断書も四通ほど書いております。ところが、それがわかってみたところが、前科二犯の全然医者のことなど何も知らないにせ医者であったということが実はわかってきて、そしてこのにせ医者を推薦したのが、県の国保の団体連合会のあっせんによって行われたのです。最近になってにせ医者だということがわかって、この中村の市では市民大会を開いて市当局に補償の要求をして、実はその四人死んでそのうち二人はどうも死因がおかしいというようなことがある。あるいは注射を受けたところがあとびっこになったということで補償要求のところまでいっていますが、そのこまかい点については、また別に御調査をいただきたいと思います。  私はこの際、特にお伺いしておきたいのは、再来年度の国民健康保険の全面実施に伴い特にこの市と言われるようなところでは少くとも診療所医師は置かなきゃならない。ところが、その医師を得ることが非常に困難なために健康保険の連合会ともあろうものがあっせんしてにせ医師を数カ月間も使っていた。一体この責任はだれになるかということなんです。これをまず第一に伺っておきたい。これは医務局長と保険局長と両方に関係があると思います。
  167. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 便宜私の方で御答弁いたします。ただいまの件は、実は私も昨日ちょっと聞いたわけでありまして、びっくりしておるわけであります。内容はただいま坂本委員お話のような筋のようでございます。ただ私どもが昨日聞きましたところでは、このにせ医師でございますか、これを県の国保団体連合会の職員が中村市にあっせんした。これはおそらく中村市の方でお話のように、お医さんを探していたのだろうと思います。そのときに電話であっせん紹介いたしまして、ただし本人の身元が不明であるから調査の上採用されたらいいだろうということを言ったよしであります。中村市の方でその点の調査不十分のまま採用して七月の中旬から勤務した、こういうことに聞いておるわけであります。この辺は実は非常に事の判断をいたします場合に微妙なところで、国保団体連合会の職員がプライベートの立場で言ったのか、あるいはその公的な立場で言ったのか、あるいは中村市からそういうことを依頼を受けておって、そしてそういう立場でやったのか、それからただいま申し上げましたように、電話であっせんをした際に身元の関係調査して下さいと言ったというのでございますが、これがどのように伝わっておるかというふうなことは詳細を調べてみませんと、どちらにどうということはまだ言いかねるのであります。さっそく県の方のそういうようなものを含めて詳細調査するように今いたしております。
  168. 坂本昭

    ○坂本昭君 一番私が心配するのは、国民皆保険を再来年から強制実施をしようという中で、一体この無医地区をどういうふうにして具体的になくしていこうとするのか。これはむしろ医務局の所管だろうと思うのですが、一体医務局ではどういうおつもりでおられるのか、具体的な方法を一つお聞きいたしたい。
  169. 川上六馬

    説明員川上六馬君) かねて御承知のように、僻地の医療対策を私の方で担当いたしておるわけでありますが、大体診療所を置くべきであるというふうに考えております。僻地の無医地区は約二百五十くらいあるわけであります。それに対しまして、従来親病院から出張診療所を出すというようなやり方でもってやっておりまして、本年度のその計画をやりますと、それが百二十五カ所ばかり本年できるという予定になっております。将来さらに年々さような診療所を設けて参りまして、そして一応現在僻地として目標にいたしておりますのは二百三十七でございますが、三十七年度までにやりとげたいと考えております。ただやっておりますと、親元病院にあまり負担をかけておりますために、あまり歓迎されないという面がありまして、また現在の補助が少な過ぎまして、親元病院の負担がかなり重いというようなこと、それからそれに派遣いたしますところの医師が非常に不足をいたしております。そういうことでこの補助金を増していこうという考え方、それから派遣医師を養成するため、従来保健所がやっておりましたと同じような貸費制度を作ってやって医師の不足を補いたいと、こういう大体考え方をもって来年度予算の中に要求をいたしておるわけであります。
  170. 坂本昭

    ○坂本昭君 三十七年度末までに無医地区をなくすという計画では、国民皆保険の三十六年度からの開始にはとても間に合わないと思うのです。医者の足らないところでは国民皆保険を強制実施するということになると、今の医務局の計画と保険局の計画とえらく食い違っておりませんか。保険局長どういうお考えですか。
  171. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) ただいま医務局長お話は医務局の担当しております僻地の関係について申し上げたと思います。もちろんこの問題は、私どもの方、国民皆保険の一応責任を持っておりまするので、そこの地区に医療を提供する医療機関というものを設けにゃならぬことは私どもも真剣に考えておる問題でございます。医務局の方は僻地の方から片づけていただく、私の方はできるだけ国民健康保険の実施のための医療機関というような方面からこれを押していく。両方からはさみ撃ちみたいな格好になります。私の方といたしますればこれから保険を実施するというような地域は、従来いろいろな事情でなかなか実施が困難であった地域でございます。その困難でありました理由の一つとしては、やはり開業医の方々もなかなかそこには来てくれない。そこで、まあ医療機関として直診というようなものを考えるといたしました場合におきましても、そこのお医者さんがなかなか出られない。十万円とか何とかいうようなこともちょっと聞くのでございますが、相当高いお礼を出して、なおかつ、まあインターンを終った程度の方々に来てもらっている。それほどそういうような場所には喜んで勤務していただくわけには参らない。まあ二、三年の間には逃げてしまうというようなことで、これが一つの大きな苦労の種にもなっておろうかと考えるのであります。そこで私の方といたしましては、直営診療所の設備についての国庫補助の道を従来から開いておるのでございます。一つこの点につきまして、皆保険が三十六年の四月までにはできる、原則としてやるということになっておりますので、ここ一、二年の間に強力にこれを展開いたしまして、そして指導も加えまして、そういう地域にできるだけ医療機関を設けるようにいたしたい。その医療機関の設けます規格等につきましては、ただ何でもそこに建物を作ればそれでいいという筋でもございませんので、その各立地条件を十分に検討いたしまして、まああるところでは診療所を設けるということになりましょう。また、ところによりましては、あるいはどうしても診療所一つ設けるというわけにはいかない。隣りの村と共同で設けて、まあ巡回診療のようなことでやっていく。急救患者のある場合には急救車で処置をするというような、やはり不十分ではありまするが、そういうようなことからまず手を触れていかなければいけない。まあそれでも手を加えなければならないというような地域はある。その地域々々の実態に応じますものを私の方で急速に進めて参りたい。また、そこのお医者さんなりにつきましても、先ほども申し上げましたように、ただその保険者だけにまかせておきましたのでは今日なかなかお医者さんが得られないと思いますので、これはただ金を積んだからといってお医者さんが必ずしも来る問題でもなかろうかと思います。そういう面につきましては私どもとしてもなお検討いたしまして、ただいま検討中でございまするが、まあたとえて申しますれば国立病院とか、あるいは公立病院、あるいは私営の病院というようなところで協力を求められる病院からお医者さんを派遣━━まあこれは親病院ということにもなりましょうが、それに対してこちらの方でその参ったお医者さんにもお礼をするし、また、病院にもお礼をするというようなことで、お医者さんも二年、三年と長くそこにいてほしいのでありますけれども、それもまあ実際問題としていろんな事情で困難であるということでありまするならば、まあかりにこれが一月、二月、三月という短期間でありまするならば、まあちょっと長い旅行をするくらいのつもりでそこに行ってもらうこともある。それから次にまた交代するというような、従来の保険者に対する指導も十分でなかった面もありまして、なかなか得られない点につきましてはさらに工夫をこらしてこれを求めていくという、そういうようないろんなことを考えて医療の数少い、不足を解消して参りたい。これと医務局の方でやっていただいております。僻地の方からやっていく。両方はさみ撃ちのような格好でやって参りたい、かように考えておる次第であります。
  172. 坂本昭

    ○坂本昭君 最後に一つ、保険局長説明は一応いいのだけれども、実際とはだいぶ食い違っていると思うのですよ。これはたとえば親病院としての国立病院がその任務を果しているかどうか、ちっとも果していません。むしろ無医地区からどんどん引き揚げてしまって、予算的にもまた実際的にも、定員の面においても引き揚げて国立病院はその実を果しておらない。それからさらに医師の獲得の問題については、この間埼玉県で監査を受けた直後に、保険医が自殺をしている事件がある、実に私は痛ましい事件だと思うのですよ。ちゃんと資格を持った保険医が手きびしい、どんな監査か内容はよく知っていませんが、とにかく手きびしい監査を受けて、そのために自殺をしている。そういう保険医が一方にあるかと思うと、一方ではにせ医師が横行している。こういうちゃらんぽらんな日本の医療制度は、私はだれが作ったかと思うのです。少くとも医務局、保険局、当面する国民皆保険を迎える直前の両局としては、もっと具体的に積極的に協力していただきたい。特に日本医師会との対立関係など、これは日医と保険局、また、日医と医務局、今度の医師会の医師に対する再教育の予算の問題についてもしょっちゅうけんかをしている、私はこういう大きな矛盾を持っておったのでは、日本の医療保障というものは成功できないと思います。特に今の保険医が自殺をしたり、その半面ににせ医師が横行したりする、一体これは最後の私の何といいますか、質問にもならぬかしれませんが、保険局長並びに医務局長にこういうことで一体日本のこれで医療制度がよいかと、それだけ伺って、もうこれでやめます。
  173. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 今御指摘のような点は、ぜひ改善をしていかなければならぬというふうに考えておるのでありますが、御承知のように、医療制度調査会というものが近々発足することになっておりますので、そういうところで一つ日本の医療制度のあり方というものを十分検討していただきまして、今後改善をはかっていきたいというように考えておるわけであります。
  174. 坂本昭

    ○坂本昭君 医務局の所管にすべきですよ、医務局の所管にならないところが、大体厚生省はいかぬ。
  175. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) まあ高知県のにせ医師というような問題は、実は私ども役人生活を長くやっていて初めて出っ食わしたようなことで、そうざらに起きることでもないので、ただもう先ほど御指摘のように、こういうようなことになりますゆえんのものを考えてみますると、こういう医師の不足している地区に対して私どもがもっと力をかしてやって、そうしてまあそう不自然な形でなしに、お医者さんが獲得できるようなものを国としても考えてやらなければいかぬということを考えておる。それからちょっと御指摘あった埼玉の件については時間の関係もございまして、ここで申し上げるわけに参りませんが、これは確かに監査をした数日後に自殺をされたことで、そういうことは非常に何だか自分たちのあれに関連があるようにも感じたのですが、まあ実情をちょっと調べてみますると、決して心配するような無理なあれを、監査をしていることでもなさそうでありますが、これはまあいずれあとで申し上げる機会もあろうと思いますが、そういうことであります。それから全体の問題につきましては皆保険下の医療問題ということで、これはまあ医療機関の病院、診療所の機能の問題とかいうことから始まりまして、問題は専門医制度の問題もございましょうし、これに伴いまして今ちょっとお話出たように、行政機構の問題もあると思います。これはもう非常に大きな根本的な問題であると思います。医務局長からただいま答弁されましたように、厚生省としても医療制度調査会でも御審議いただく予定にし、また、私どもも事務的にもどんどん勉強していって効率的な運営がなされるようにしなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  176. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 以上で坂本委員質疑を終了することにいたしまして、次に鹿島委員から四点につきましての御質疑がございますが、最後の問題は辞退願うことにいたしまして、一、中央社会保険医療協議会のその後の処置について一、社会保険診療報酬租税特別法の処置について、一、医療金融公庫設置の問題について以上三件につきまして逐次御質疑を願いたいと思います。
  177. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 第一の中央社会保険医療協議会の問題につきましては、特に大臣の御所信を承わりたかったのでありますけれども、やむを得ませんので、所管局長の方からお答えを願います。  現在の状況は、まことに憂慮すべき現状でありまして、このままこの医療協議会の状況を放置しておきますると、すべての社会保険運営の上にこれが反映するであろうということは、これは火を見るよりも明らかでありまして、この措置を一日も早くしていただかなければならぬということが、全医療担当者側のひとしき意見だろうと思うのであります。従いまして、これを早く何らかの措置を厚生当局もとられ、歴代の大臣がこれに当りましてもできない、うまくいかないというようなことで投げておられるような向きも少しく見られるのであります。中には、少しく冷やしてから、時間をけみしてからというような御意見もあるようでありますが、それではますます日退月歩をたどるものと考えるのであります。従いまして、これをそのままに推移することが重大であるという前提に立った以上は、一日も早く、一部の委員不参加のような状況を早く脱却しなければならぬと考えます。こういう中で非常に残念なことは、三十二年十一月から、約一年七カ月目で、ようやく六月十九日に開催されましたが、肝心の日本医師会側の委員が欠席のままで、不参加のままで結核の治療方針、治療指針というようなものが審議されたのであります。これは、この内容から見ましても非常に重大であります。従って、こういうことが行われましたために、ますます激化の方向をたどるということになったと思うのでありますが、今後この審議会に付議いたします事項は相当ございまして、今後かような状況下において審議会を開くかどうかということにつきまして、まず第一に所管局長にお伺いしたいと思います。
  178. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) もう鹿島委員は、問題のいきさつもよく御承知でありますので、くどくど申し上げませんが、審議会は、お話のような事情で、今日は中絶しております。特に七月の九日付をもって、さらにまあ問題になりましたグループと、次のグループの委員の方々の任期が切れております。これの任命は厚生大臣として今いたしておりません。従いまして、ただいまのところは、医療協議会は成立していないというふうに申し上げざるを得ないと思います。この理由は、やはり御指摘のように、何とかして日本医師会との関係を早く解決いたしたいということであります。ただ、それにはいろいろ条件なり、また、やり方なども考えなければなりませんが、少くともその間において、また、医師会をいらだたせるようなことは避けたいということで、七月九日付でまた、医師会にお願いするというようなことになりました場合、当然医師会においてその推薦を拒否するというようなことが私どもに察知されたものでありますから、そういうことならば、むしろ少し避けた方がいいというような格好であります。従いまして、この点につきまする問題が、解決と申しますか、委員の任命ができておらないわけでありますから、審議会は今日は開くわけには参りません。また、この審議会を強引に開くかどうかというようなことでございますが、これは今日の段階におきましては、私どもは何も事を好むものではございませんので、ことに新しく渡邊大臣を迎えたことでありますので、大臣にもいろいろ政治力を期待もいたし、また、私どもも誠意を傾けて、早く常道に復したい、こういう気持でおります。
  179. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 まあ大体局長のお考えはわかりましたが、問題は、この医療協議会は、設置法によって、半年に一度は開かなければならないというふうに規制されております。また、ほかに審議を要する相当な重要本項があるわけであります。この協議会が成立しないために、これらの問題がすべてたな上げになってしまう。すでに一年七カ月にわたって麻痺状態を続けております。私の手元にも、相当に早期開催の要求がきております。私の耳に入っておりまする重要な付議事項につきましても、ちょっと申し上げますると、点数表の合理化であるとか、あるいは寒冷地におきまする点数加算であるとか、あるいは一部の甲地区復帰等の問題、あるいは治療指針の改正、中には歯科補綴におきまする差額負担制度の実施というようなことが多く叫ばれております。これをすでに一年四カ月以上にわたってたな上げの形でありますので、この辺で何とかこれをしてもらわなければならぬ。もしこの医療協議会が不成立である場合には、もちろんこの協議会は諮問機関でありますので、従って、大臣の権限によって決せられるすべての事柄につきましては、この際特別の取扱いをされたい。これを要求したいというような意見もあるわけであります。しかし、私は、このせっかく設置されております医療協議会というものを無視し、審議可決してそういったことが行われることは、また逆に、将来厚生当局が一方的に事を取り運ぶというようなことの前例を開くというようなことも考えられまして、これを押えておるような状況なんであります。いつごろこれが成立するめどがつくかということが大きな問題だろうと思います。大体三代の大臣が、どうにも手がつけられぬ。こういうことになって参りますると、そういう不満がついに爆発してくる。これではほとんど厚生行政の重要な部分は麻痺してくる。むしろその意味においての責任問題が起る、かように考えております。従って、早急にこれを解決をつける。これにはやはり日本医師会対病院協会その他からだけでなく、現在医療関係七団体対立というようなことにまで発展しております。そういった面を十分考慮せられまして、大臣みずからが誠意を傾けてその衝に当っていただくならば、何とか私はなるんじゃないか。今回これを放置いたしますれば、この医療協議会というものは廃止した方がいいという意見すら出てくるんじゃないかと考えるのであります。その点を重ねて一つ御所信を承わって善処をお願いしたいと思います。
  180. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 法律上、まあ医療協議会は、何か理由がない限りは、半年に一回開く、そういう条文はともかくといたしまして、私どもできるだけこれを早く解決したいと思っておりますが、御承知のように、相当ぐるぐるもんで参りました問題でございましてこれをドンピシャリというふうに、すぐ直すということも、事実問題としてできないわけであります。むしろそこに、これを解決するからには、今後もう再びこういうようなことのないように、まあ多少時間がかかっても、皆が納得することにして、意見の相違はどこにもあるわけであります。こういう格好でもって話し合う機会もない、こういうことが一番いかぬことでございますので、多少の時間がかかりましても、そういう意味の抜本的解決をいたした。それには先ほど申し上げましたように、大臣も非常に責任を感じておられまして、機会あるたびに、何らかの手を打とうとされております。これは今日まだ私ども伺ってもおりませんけれども大臣として非常に常日ごろから思っておられる問題でございますので、なおもう少しこれは時間をかしていただきたい、かように申し上げたいと思うわけであります。
  181. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまの御答弁は、ごもっともな御答弁だと思っておりまするが、問題は、すぐ目前に控えております医療制度調査会、これらも当然この問題に関連してくると思うんです。その医療制度調査会の方は、二カ年以内の時限的なもので、早急に根本的に対策を立てなければならぬ。こういう問題にも波及してくるし、また、今のところ、こういった現状と申しまするか、もう立場の対立がすべてに反映して、国保の医療契約にまで波及しております。従って、一部には国保の辞退あるいはそれを中央団体が市へ復帰する状況にすら発展しておりますので、一日も早くやらないとますますやりにくくなる。従って大臣みずからが、理屈でなく乗り出して、すっきりといたしたい、かようなことを特にお願いいたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  182. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) では次に移っていただきます。
  183. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 次に、社会保険診療報酬に対しまする租税特措置法の問題でありますが、この税制措置は御承知の通り、かつて昭和二十六年に単価の不適正に基因いたしましてきめられたのであります。自来保険医に与えられたこれが唯一の優遇の方策として続けられて参りました。われわれもたびたび医療担当者から陳情も受けておりますが、この租税特措置法そのものが税の体系上非常にまずい。従って、これを廃止するというような事柄が毎年関係審議会によって審議されまして、そのつど厚生省におきましては非常に協力をしてこれを温存して参りました。本年度は特に一部医療報酬が引き上げられて八・五%上げられたために、これは適正化されたのであります。従って、これを廃止するというような機運もあるというように聞いております。そこで私はこれははっきり申し上げておきたいことは、この八・五%引き上げというものは果して診療報酬の適正化であるかどうかということがどうも疑問に思われる。私はむしろこの社会保険の法的性格を見まして、これを非課税の線に持っていってもいいのではないかというような個人の私見も持っております。とにかく適正化に至るまでは、この法律によって保険医の不満を何とか緩和してきた、こういういきさつもありました。しかも、その金額構成につきましても大体十三億程度でありまして、保険医一人当りに還元いたしますと年額一万円足らず、こういったようなものは単価の適正化から見ますると、ほんとうに微々たるものです。これによってとうてい保険医は満足しておらぬはずであります。ただ優遇の一つの道としてこれを非常に望み、また、今日に至っております。従って、これは単に税の体系上の問題でなく、すでにこれは社会保険診療報酬の不適正による大きな政治的な問題であります。従って、税そのものから考えますると、非常に不合理なものでありますということがいわれるのでありますが、立法当初のいきさつから見ましても、四党共同提案で成立を見ております。今のところ保険医の立場、感情というものは決して満足なものではないし、また、医療報酬につきましても、約七分の一程度の引き上げにとどまっておりますので、この措置法につきましては、特に医療担当者の保険医の優遇という点を考えあわせまして、厚生省みずからが当然これを保存、保護していかなければいけない、かように考えるのであります。そうでありませんと思わざるまた問題が起り得るということも危惧されるのでありまして、将来の保険行政運営上の関連を持ちますので、特に保険局長の所信と御意見を承わりたいと思います。
  184. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) お話のように、特別措置というものは、税制の専門家の間になるべく廃止したいという意見があります。それは筋があると思います。ただし、お話のように、私どもの方の関係ではこの特別措置があることを前提として八・五%に引き上げた経験もございまして今これを廃止するということにつきましては、私の方からももうすでに昨年以来関係当局にその旨を申し入れてございますが、厚生省としても廃止するということにつきましてはにわかに賛成いたしがたい、こういう態度で今後とも参りたいと思っております。
  185. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまの局長の御答弁で満足でありますが、かつて橋本厚生大臣は、この八・五%医療報酬の引き上げの際に二八%の租税特措置法をにらみ合せた、含めた上の措置であるとはっきり言っております。これを承わりましてなおこれを御確認の上で一つ強力に御推進されたらいいんじゃないか、かように考えます。   ━━━━━━━━━━━━━
  186. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは次の金融公庫の問題に入りたいと思います。
  187. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 この医療金融公庫につきましては、昭和二十六年にやはり単価の暫定措置をきめたその際のこれは公約として、医療担当者側が成立を望んでおるものです。自来毎年これが論議されるのでありまして、また、ときには予算計上も行われたのでありますが、毎年これは流れてしまいました。しかしながら、その間設置をすることについての可否については、ほとんど賛成である。しかしながら、そういうような状況があるのにもかかわりませず、毎年これが流れてしまう、これは非常に遺憾であります。特に医療金融公庫の設置の期待というものは、医療担当者の利益をはかるというよりも、その施設の改善であるとか、あるいは無医村における施設の設置であるとか、機械の進歩によります陳腐化の改善であるとか、むしろこれは医療そのものの効果に大きな影響があるのであります。医療担当者側においては、そういったものの改善はどうしてもやらなければならぬというものでありますが、残念ながら今のような診療報酬においては、この改善もできない状態であります。従って、医療効果におきましても、はなはだしく私は不適正なものがあるのじゃないかと思うのであります。従って、そういう前提に立ちますると、これは医療の充実、それにつながるものであります。従って、医療担当者側の金融の利益をはかるための金融ということにはならない。むしろそういう要素が大きい。従って、もっと強く押していただきたいと思うのであります。特に厚生省は、これを率先して御運動になっていることもよく承知しておりますが、いよいよ予算措置の最終段階になりますると、どうも他の事業と見合って、これをどうもやめてしまうというような節も見受けられるのであります。少し腰が弱いのであります。どうしてもこれはことしやっていただきませんと、これは保険医に対する大きな公約違反になる。現在の保険単価というものは、診療報酬というものは、こういった公約のもとに了承してきているわけでありますから、どうしてもこれはやらなければいけないと思います。また、これがない場合、他の機関によって金融を受けられるのじゃないかという御意見もあるようでありますが、国民金融公庫とか、あるいは中小企業金融公庫におきましては、利率も九分六厘、またこの償還期限も三年ないし五年というような短期間でありまして、とうてい医療施設の改善といったことに向かないのであります。また、この融資につきましても優先度が非常に悪くてあと回しになってくる。また極端な担保主義であって、むしろそういう面の金融は、真にこの医療機関が必要とするような面に向かないのであります。他の事業に流用するような線に利用されるということでありまして、どうしてもこれは医療金融公庫自体を設置しませんと、医療担当者の目的は達せられないのであります。従って、どうか本年度は特に党におきましても、これをみずから認め、これを強く押すというような線を出していただいておりますが、医療担当者側が非常に喜んでおるようであります。問題は、厚生省当局がもっと強い信念でこれを扱っていただきませんと、また、前年度と同様な形になってしまう、そういうことを私は憂うるものであります。今の本年度の状態も、出資総額から見まして、全医療担当者の要望をとうていこれは充足するものではありません。しかし、設置することはどうしても必要でありますから、この出資あるいは資本金につきましては論じないのであります。利率等も六分五厘になっておりますから、本来ならば住宅金融公庫並みに五分五厘程度の低率にしてほしいという意見もあるようでありますから、そういうことはこの段階においては、これを設置せしめるということの意欲がどうしてもほしいと思います。局長一つ御所信を承わりたいと思います。
  188. 川上六馬

    説明員川上六馬君) ただいまのお説のように、国民皆保険に伴いまして私的な医療機関を助成するということは、私は非常に大事だと思います。さきに厚生大臣も申しましたように、ぜひとも来年度におきましてこの設置をはかりたいというふうに存じておるわけであります。特に皆様の格別な御援助をいただきたいと思います。
  189. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 大体これにつきましては、もう医療担当者側でも強力に毎年やっておるというような状況であって、にもかかわらず、これらが流れる。先般もちょっとここで関係者に聞いてみますと、どうも自信がないようなことをちょっと漏らされた、そんなことではとうてい成立しないのです。特に既設金融機関等はこういうことも一々反対である要素も相当ありますし、従って、もう必要性を認めたそのものがどうしても成立しないというのは、厚生省みずからのもっと強くこれに対する援助というものは、どうしても必要なものなんです。医療内容の改善、充足ということに重点を置いた線で、医療担当者の優遇というようなことを一つここでやっていただかないと、またこれは流れてしまう公算が相当大きいのです。従って、どうか一つこれももっと強く押していただかなきゃならぬ、しかも先ほど申し上げたように、これは政府が医療担当者に公約している問題なんです。昭和二十六年以来公約をして、いまだに成立しないということであります。重ねて一つぜひやっていただきたいと思います。
  190. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは鹿島委員からの御質疑はこの程度にいたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  191. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 次に、阿具根委員から、四つの問題についての質疑の通告がございますが、御承知のように、だいぶ時間も経過いたしましたので、本日は第二、第三、第四の質疑については御辞退願うことにいたしまして第一の水俣市に発生した奇病の問題についての御質疑をお願いしたいと思います。
  192. 阿具根登

    ○阿具根登君 水俣奇病の問題につきましては、本委員会でも再三取り上げられたものでございますが、最近の新聞を見てみますと、さらに一、二発生をしておる、こういうことが言われておるし、委員会からは特に現地視察まで昨年は行って、そうしてつぶさに状況を調査して参ったものでございます。ところが、最近の新聞では、日窒水俣工場の廃液、無機水銀によるこれは中毒である、こういうことが発表されておる。ところが、工場側の医師の方からはそれに反対をされておる。その反対の理由の一つは、こういう工場は日本各地にたくさんあるが、そういうところから発生しておらないのに、水俣だけが発生したというのは理由にならない、こういうことが言われておるようであります。ところが、私どもが承知している水俣は、あれは湾内であって、そしてあの廃液というものは海底によどんでいる、ちっとも外海に出ていかない、そこであの湾内に泳いでおる魚そのものが非常に弱ってしまって、子供が小さい網ですくうことができるくらいに弱っている魚が大部分だ、もしもこの工場側の言うように、よその工場の廃液では何も出ておらないじゃないかというようなことが肯定されるとするならば、私が一番こわいと思いますのは、そういう有毒を含んだものを食った魚介類が、それがおそらく水俣のようにその場に遊泳しておるのではなくて、各地にこれはもう逃げ回っている。そういうものを知らずに各地の人が食っている。水俣の奇病を最初見られた方は、おそらくこれは脳膜炎だと、こういう診断をほとんどされておったと、こういうことも聞いております。しろうとの私どもが見るならば、脳膜炎とどこが違うだろうかというくらいにわからない。最近そういう非常に脳膜炎に類似した病気が蔓延している。極端なことを言うならば、そういうところで、毒素を持った魚を、とんでもないところの人がそれを食って、体質の弱い人がそういう病状を起すのじゃないか、こういうことまで思われるわけなんです。ところが、六年にもなって、まだ政府としてのこれに対するはっきりした見解を出しておられない。一体政府は、どういうこれに対する研究を今までされたか、熊本医大にまかせきりであるのか、あるいは工場側の医者にまかせきりであるのか、その点について、一つ御答弁願いたいと思います。
  193. 聖成稔

    説明員聖成稔君) ただいままでにこの水俣病の原因究明につきましてとって参りました経過を、簡単に御報告申し上げたいと思います。  本病は昭和三十年に多発いたしました当初は、ただいま阿具根先生もおっしゃいましたように、非常にこの脳症状の強い病気でございましたので、何か日本脳災類似の疾患ではなかろうかということで、国立公衆衛生院の松田疫学部長を中心にいたしまして、これに厚生科学研究班の主任として研究費をお出ししまして、以来御検討を現地の熊本に連絡をとりながらやっていただいていたのです。幾ばくもなくいたしまして、これがさような疫患ではなく、水俣湾に棲息しております魚介類を摂取することによって起る一種の食中毒であるということが明らかになって参りましたので、引き続いてその魚が有毒化いたしまする原因物質の究明ということについて、いろいろ御研究を願ったのでありますが、昨年に至りまして、タリウム、セレンマンガンといったような物質が疑わしいということが、中間報告的に報告があったのでありますが、どうも決定的にこれが原因である、しかもそれが現地にございまする日窒の工場の廃液と、直接の因果関係を断定することが困難でございまして、昨年当委員会からも御視察に現地へお出かけになり、私どももお供さしていただいたのでありますが、以来、新たにいろいろ検討いたしました結果、現地の魚介類が原因であるということが一応明らかになっております。以上現地に主体をおきました、そうして中央とも関連のある研究態勢を調えまして、どうしてもこれが原因を明らかにいたさなければならぬ、かような決意のもとに、従来はもっぱら厚生科学研究費にたよっておりましたものを、特に行政調査費といたしまして、昨年秋予備金から、本病原因究明のために、百万円の支出をやってもらいました。同時に、食品衛生法に基く食品衛生調査会というものがございますので、この食品衛生調査会意見も聞きまして、この食品衛生調査会に水俣病特別部会というものを設けていただきまして、この特別部会の部会長には、当時熊本大学の学長であられました鰐淵先生になっていただきまして、さらに本病発生以来、それまでの研究が、主として医学の面に限定されておりましたのを、さらに広げまして、化学あるいは地質学あるいは水産学あるいは潮流学、こういったような関係の方々にもそのメンバーに入っていただきまして、以来一そうこの研究態勢を進めていただいて参っておるのであります。ただいま阿具根先生御指摘になりましたように、最近に至りまして熊本大学で……、もちろん熊本大学の方々が多数この水俣病特別部会の委員としてお入りをいただいておるわけでございますが、熊本大学におきまして、どうも有機水銀が疑わしいのではないかというような御発表が現地でありまして、これが契機となりまして、いろいろまた現地でトラブルが起りましたというようなことも私は承知いたしておるのでございますが、私どもも来月上旬に、現地に置かれております水俣病特別部会の鰐淵学長その他必要な方に御上京を願いまして、先ほど私が申しました東京にございます食品衛生調査会の常任委員会、技術部会、水産食品部会、これらの合同会議を開きまして、そこに現地から見えました鰐淵部会長の有機水銀説あるいはまた、その他の、その後の現地における研究の経過を御報告いただきまして、そうして食品衛生調査会としてさらに今後いかなる方向でやっていくかといったようなことにつきまして、十分御検討を願うというような態勢にいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、一昨年は一名も発生が幸いにしてなかったのでありますが、昨年に三名、また、本年に入りましてから五名という工合に患者が続発しておることにつきましては、私どもは非常に憂慮いたしまして、一日も早くこの原因を究明いたしまして、それによって今後かような事件がまた他の場所で絶対に起らないように、そうしてまた、水俣におけるこの問題につきましても、市民の非常な不安を解消し、あるいはまた、漁民の生活の問題にも非常にこの問題が重大な影響を持っておりますので、何と申しましてもこの原因究明を徹底的にやらなくちゃいけないと思います。それにはもちろん工場側でも一生懸命やっておりますからお互いの研究成果というものも聞いてみることにしておりまするし、また、熊本大学の研究成果も聞くことにいたしておりまするし、また、東京におきましても必要な研究を国立の衛生試験所、あいるは予防衛生研究所等においても、現地から材料を送ってもらってやっておるような状況でございます。あらゆる機関を総動員いたしましても、従来とかくこの種の食中毒事件というものは最終的な原因がはっきりつかめないままにうやむやになってしまうというようなケースも非常に多いのでございますから、今度は何としてもこの原因究明をいたさなければならぬ、こういう決意でやっておる次第でございます。
  194. 阿具根登

    ○阿具根登君 科学者の調査に私どもが口ばしをはさむわけではございませんが、それではこの奇病が発生する以前はどうであったか。私どもは常識でもう少し調査しなければならぬと思うのです。私が現地に行って聞いた範囲内では、あの水は今出しておる水俣の湾口ではなくて、反対側に最初廃液を流しておった。ところが、その途中に池がある。その池に廃液が浸透して池のドジョウまで死んでしまった、フナの子もドジョウの子もみんな死んでしまった。だから、こういうところへ流してもらっては困るといって反対されて今の所に流すようになったと、こういうことなんです。そうすると、その水からその毒が出ておるということは常識でははっきり言える。今までなかったのになぜそれじゃ水俣でそんなことをやるか、こういうことになってくるわけであります。常識的に必ずこの廃液の中だということが私は言えると思う。それの科学の立証を待っておる。ところが、実際私どもが現地に行って、非常に苦しんでおる方々の話を聞いてみると、また、会社から莫大な金が出るだろう、そうして私たちのこの不幸というものは救われるでありましょう、こういうようなすてばち的なことを、非常に投げやり的な、もう悲観したことを聞くわけなんです。それを裏づけるようにいろいろな情報が入ってくる。新聞等で見てみましてもわかるように、一億七千万の年間予算のうちの五三%、一億以上がこの会社の税金でまかなわれている。この会社がなくなれば、うちの市は倒れるのだ、こういうやつが盛んに流れてきている。こういう政治的配慮があるのじゃないか、こういうことを私どもは考えざるを得ないわけなんです。そうでなかったなら、これに対して対策はとうに考えられねばできないし、あるいは今度漁村との話し合いでも、一億円の要求を三千五百万円ということで話し合いができたようでございますが、今まで会社が応じなかったのを、なぜ三千五百万円出すようになったか。会社側も自分の廃液だということを知っていると思うのです。だから、私は三千五百万円の金でも出したと思うのです。そうするならば、その漁民の方々が納得されたとするならば、それはそれでいいのですが、実際自分の子供が、自分の親が二十八名死んでおる。生きておる人は、ごらんになった方はわかるのですが、私どもが見ても、完全なる白痴です。治ることのできない完全なる白痴です。そうして子供でさえも立つことも、はうこともできない、こういう現状なんです。そういう人の損害、あるいはそういう人たちの今後の生活を一体だれが見るのか。私はその点が一つと、いつまでもこういうような格好で、五年も六年も放置されておるならば、私は日本の沿岸にそういう有毒素が次々に流されておる。先ほど言うように、幸いにそれが荒波で流れているからいいけれども、どこかによどんだ場合には、必ずこういう病人が出てくる。そういうことにいかなくても、非常にそういう被害を私は人間のからだに与えているのではないか、これを非常におそれるのです。そうするならば、まず原因の調査が大切だけれども、常識的に考えて、こういう結果になってきたのは、この廃液がこの海に、この湾に捨てられるように、なってからだから、まずこれを捨てるな、あるいはどこかにためてみようとか、そうしてそれをその上で調査でも十分にされる、そのくらいなことは会社としてすべきです。今時分になって四千万円で浄水するとか何とか言っておりますが、そんなものじゃないと私は思うのですよ。だから、非常に政治的な配慮がうしろに行われているじゃないか。これは中央が云々というわけじゃないのですよ。あの小さい町で、その予算の大部分を握っておる会社からの相当な圧力がかかっておるのじゃないか。だから、漁民や、あるいはそういう病気にかかった方々の家族は、口を開けば、皆さんが何ぼお調べ下さっても会社は膨大な資金網を持っておりますから、私たちを助けてもらうことはできぬでしょう、こういう情ないことを言っておるわけなんです。だから、その点についてどういうふうにお考えになっておるのか。この起ってきた原因と現象とその前の現実というものをしっかり把握してやられておることであるか。あまりにも科学にたより過ぎて人命を投げやりにされておる、私はかように思うのですがね。
  195. 聖成稔

    説明員聖成稔君) 御案内だと存じますが、本院が多発いたしましたのは三十一年、このときに四十三名の患者が発生いたしまして、先ほど私が申し上げたように、初めてこれが問題になったわけであります。そこで当時直ちに熊本県衛生部におきまして調査をしてもらいましたところが、二十八年に一名、二十九年に十二名、三十年に九名というような患者があることが三十一年の多発の結果として、さかのぼってわかったわけでございます。従いまして、こういう問題が、いわゆる現地で水俣病と言っておりますような疾患があるということがわかりましたのは、三十一年ということになるわけでございます。従いまして、その点はまあ阿具根先生御指摘のように、すでに本病が発生してから六年にもなっておるという点につきましては、一応三十一年からわかった問題として御了承いただきたいのであります。そこで、ただいま先生も御指摘になりましたように、水俣市というものと水俣の日窒工場というものはきわめて関連の深いものであるということは、私も承知をいたしておるつもりでございます。しかしながら、この原因究明という問題につきましては、少くとも私どもは、他からも、もうあれは工場の廃液にきまっておるじゃないか、きまっておるものをなぜそうだということを断定しないのだというようなおしかりを受けましたこともままございます。しかし、私ばかりでなく、こうした問題の原因究明にたずさわっておる方々が断定的な意見がまだまとまらないわけです。いろいろな説が行われてまとまらないという段階で、これはいわば容疑者であるかもしれませんが、それをかりに犯人と断定いたすということになりますると、やはり十分な研究の成果を得なければならないということは私いたすべきことであろうと思うのであります。現地におきましても、私ども聞いておるところでは、かなり現地の一部の学者にはこれはもう水銀に間違いない。これは日窒の廃液と関連ありということをきわめて決定的におっしゃっておられる方もあるようであります。その辺、先ほど申し上げたように、現地の責任者であります鰐淵先生に御上京を願いまして、いろいろ報告を願い、われわれだけでなく、東京にあります資源調査会委員の方々にも一緒に聞いていただきましてはっきりいたしたい。私も何とか一日も早く結論を出して、先ほども申し上げるように、いろいろな対策、あるいはまた、水俣市民の不安を解消するというようにいたしたいのであります。もう断定ができるのに、いたずらにじんぜんとしていろいろなことを考慮して結論を出さぬというようなことは絶対にございませんから、さように御了承いただきたいと思います。
  196. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は科学者じゃないからそれを疑っておるわけではない。しかし、事人命に関するならば、その前に政治的な手を何を打ったかということを聞いておるわけです。少くともあの廃液が流されるまではそういう病気はなかったわけです。これはお調べになればわかる。なかったわけです。そうするならば、その廃液が出てきて、しかも無機質の水銀がその原因だというような疑いが大きい。これは疑うことのできない全部の疑いなんです。そうして、その疑いで会社を罰するとか何とかというのは次の問題であって、その疑いを除くためにはその廃液を一カ所に集めるとか、あるいは浄化をさせるとか、いろいろな方法を政治的にとれなかったか、なぜとれないかということを言っているわけです。原因がわからぬから、そういう疑いのあるやつをずっと海に流しておれば、ますますそういう病人がふえてくるのだ。みんな水俣市の人はこわいから食わない。食ったらみななるので、ほかのところでは知らずに食うからなるでしょうよ。漁師だって目の前に魚がものすごくたくさんおるのですから、それをとって、自分のところで食わぬでもよそにもっていくとか、自分の生活のためにはどんなことをやるかわからぬ。そういう疑いのあるものは、罰する前にまず処置をしなければならない。そういうものは流す前にどっかに沈澱させるとか何とかいう政治的な方法はとれないのか。そうしなければ、科学者が結論を出すまで何年でも待っておれば、そうすれば人間はばかになって死んでいくというような奇病が━━明らかに奇病だ、二年も三年も、しかも、そこだけでできておるものだということがわかっておれば、そういう政治的な手がなぜ打てないのかということを言っておるのだ。私は科学者でない。会社が悪いのだから会社をやめろとか、そういうことを言っておるのではない。おそらく常識のある人ならば、これは日窒の廃液に違いないと言っているに違いない。科学者じゃないから、どこがどうなって、無機質の水銀を魚が食って有機質になって脳細胞をこわすのだ、そんなことは言えません。それは科学者が調べることです。しかし、そういうおそろしい疑いのあるものならば、それは避けなければならない。避けるためには、相手を罰する前に、もっといい政治的な考慮を払わなければいけないのではないか。もし来られて、ここで意見を聞かれてそうだという断定ができるならばいいのだけれども、今までの新聞や経過から見まして断定できませんよ。会社はおそらくそうなったならば、莫大な損害賠償を払わなければならぬ。二十八人も人間を殺しておるのですから。七十何人も病気になって、あとはみなばかになっておる。莫大な損害を払わなければいかぬ。あるいは作業を中止しなければいかぬ。もちろんそうなれば中止しなければいけませんよ。だから、会社はまたそれに対する科学的な反論をうんと持ってくるでしょう。そうしたら科学者の調査だけでもまたこれは相当かかると思うのです。その間一体どうなるのか、水俣は。また、水俣だけでなくて、周辺の住民はどれだけの恐怖を感じているか、こういう問題をただ科学者の結論が出るまでということでは、あまりに政治性がなさ過ぎる、こういう考え方です。だからそういう考え方であるかどうか。
  197. 聖成稔

    説明員聖成稔君) 最近において水銀説が流布されるまでは、こういうことが言われますまでは、確かに初めから、この事件が起りましてから、先生が御指摘のように、日窒工場の廃液が怪しいということはどなたも考えられた問題なのであります。ただ問題が非常にむずかしい問題であるだけに、今先生がお話になるような直ちに除害施設を作れと申しましても、除害施設を作らせるだけの根拠がない。法的にも根拠はございませんし、また、学問的にも原因をつかんでいないでこういうものをやれと申しましても、これもまた非常に実際問題としてむずかしい問題だ。しかしながら、最近において第一には水銀説という新しい説が出てきた。それから最近また水俣の鮮魚組合が、水俣の漁民がとった魚は、たとえどこでとった魚でもこれは販売しないということを、結局各家庭が魚を買わないために鮮魚組合としてはやむを得ずそういう措置を水俣の漁業組合に対してやって、それが契機になりまして、今日先生御存じかと思いますが、漁民が工場に押しかけた、その結果が先ほど御指摘になったように、そうして三千五百万円の補償金で一応手を打っておるというような経過もずっと聞いておるのであります。私は三千五百万円という話を聞きましたときに、これは工場側が水俣病の原因は自分のところに責任ありということを認めたのかどうかということを直ちに調査いたしたのであります。これはそれは認めていない。しかし、現実の問題として、工場の廃液によって水俣川が汚染しておるということによって漁民に被害を与えておるから、その補償というようなことで三千五百万円を出すということについて水俣市長あっせんのもとに話がついたというようなことも聞いているわけでございます。そういうような事実から、最近はだいぶ情勢が変っておりますので、確かに先生お話のように、一応決定的にはなっていないけれども、この工場廃液につきまして何らかの措置をとらせる、幸いにして、昨年、公共用水域の水質の保全に関する法律、いわゆる水質汚濁防止法ですか、それから工場排水等の規制に関する法律、こういうような法律も、本年から実施になっております。こういうようなことをいたしまして、工場側に対してとりあえず除害施設を作らせるという措置をとろうということを今検討して、きのうもちょうど熊本県の知事も私のところに見えましたので、いろいろそういったようなことを御相談いたした次第であります。情勢がそういうふうにだいぶ変って参りましたので、私どももそういうふうに考えております。
  198. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまのお話ではそういうことをやってみたいというようなことでございますから、そうじゃなくてやらせる、やらせるべきだ、やるべきです。二十八名もの人が死んで、あとの人はばかになっている。これはお互いに見てきて事実なんですよ。だから、罪人としてきめつけるということじゃなくて、そういう危険なものはやはり危険なものとしての処置はすべきだと私は思うのです。だから、一つ断固たるそういう態度をとっていただかぬと、住民の方々も、それは表面では言っておらない。表面では言い切れない人が多い。しかし、実際個々に当ってみなさい。これはもう政治的な何がありまして私どもじゃどうもできませんということを涙を流して訴えておりますよ。だから、一つこの問題はおそらく近いうちに結論は出ると思いますが、今のままでは私は熊本医大が結論を出しても、日窒は、はいそうですといって無条件に降伏する、無条件に認めるということはないのではなかろうか。今日まで調査されておるのは、おそらくそうじゃないという根拠に立って調査されておると私は思うのです。そういう違った立場に立って調査をされておるとするならば、なかなかきまらぬのじゃなかろうか、そうすればまず住民を安心させるために、そういうおそれのあるものは事前に処理をしていただく、こういう態度で、もう少し住民の安心のいくような施策をしていただきたい。  以上希望を申し上げておきます。
  199. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、本日の委員会は、この程度で終了いたします。  これで散会いたします。    午後四時五十一分散会