○
加藤(勘)
委員 その点
外務大臣がはっきりここで言明されましたから、われわれもそのような期待を持ってそのときを見守っておろうと思います。
それからいろいろまだこまかい点についてはございますけれども、もう時間が過ぎておるそうでありますから、そのような点はやめまして最後に
日本の
安全保障の問題に関する私どもの見解を明らかにして、これに対する
岸総理の所見をお伺いしたいと思います。
私どもは、先ほど来私がしばしば申し上げましたように、現在の
安保条約が
日本の
安全保障を保ち、平和の上に役立ってきた、こういう
岸総理の見解でありますけれども、われわれはこれがために
日本は非常な不自由な窮屈な
立場に置かされてきたということを
考えるものでありまして、その
考え方、見方はいずれにしましても、この
条約が非常に不合理なものである。今日こそ当然一九五一年当時と客観的な
国際情勢も
主体的条件も変ってきておるから、
政府においては現在の
安保条約を母体としてこれをどういうように
改定するかという主として形式的手続の点と、さっき言うような
内容の
変化とを求めて新しい
条約を結ぼうとされておる。私どもはこういう不合理な、非条理な、どこから見てもいびつきわまる
条約は、当然一度廃棄されて、そして
日本は
日本の自由な
立場に立って、
独立国としてどうやって
安全保障を保っていくかという道について検討、考究すべきである。こういう
考え方を持っておるのでありますが、もとより現在の
安保条約は、廃棄等については期限が定められていない。従ってこの廃棄をなし得る場合は、両国
政府が合意に達して
国際連合が十分な機能を果し得られるようになって初めてこの
条約が必要でなくなるということ以外にはないわけであります。しかし現在の
国際情勢と
日本の
主体的条件等を正直に
アメリカと話し合って、
日本はこの
安保条約ではもう
日本の安全を保つ道ではない。だから一ぺん今後あらためて
アメリカと約束をするか、どういう道をとるかということは
日本が裸になって
考えてみたい。だから一応この
条約については御破算にしようではないか、こういうことを申し出たとしまするならば、
アメリカはそのことについて反対するかもしれぬと私は思います。反対しても
日本が、一たび一方の
政府がそういう意思を
表明すれば、私は事実上この
条約の効力というものを非常に減退せしめることになると思います。そういうことが
考えられますから、急いで現在のいびつな非合理な
条約を基礎として
改定案を
考えるのではなくして、これは一応このままにしておいて廃棄する手続についてどういう
交渉をするとか、あるいはその後にどういう案がいいのか、あるいはこの
条約を基礎としてまたもう一ぺん
改定するのがよいのか、そういうことをもう少しく慎重に検討するという上からいって、この
条約の
改定を一応中止すべきではないかというこが
一つ。
それから私どもの
日本国家の安全をはかる道としては、自民党の方々から言わせればそれは社会党の単なる観念論であるという非難をされておりますけれども、われわれは観念論とは思わない。
ほんとうに太平洋の平和を保とうとするならば太平洋に面して国をなす
日本、
アメリカ、中国、ソビエト、これらの
国々が手を結んでバンドン
会議の十ケ条の平和憲章に基いてあらためて新しい形の不可侵
条約を結ぶならば、これが私は一番
日本がいずれの
陣営にも属さないで、平和を保ち得られる道だと信ずるものであります。ただそのときに現在ソビエトとは
平和条約も結ばれていない。北京
政府とは台湾
政府の
関係があって、全然
国際的にも
承認されていない。
日本がこれをすぐ
条約の相手とするというようなことはできることではない、こういう御
意見が生まれてくると思いますが、もちろんわれわれは今の日中
関係あるいは日ソ
関係をそのままにしておいて、すぐに今言う四ケ国なりあるいはその他のビルマでもセイロンでも、今度新しくできたマラヤあるいはシンガポール、これらの
諸国でも、すべて
ほんとうにそういう集団的な不可侵
条約に参加し得られる
国々があるならば、参加してもらってもけっこうですが、今の
関係においてはそれは事実上できない。われわれもできぬごとをよく知っております。それならばそのできるうに
努力をする。たとえばソビエトとの
関係におきましては、自民党の鳩山内閣のときに、鳩山さんがあの不自由なからだでソビエトまで行かれて、日ソ国交回復のために
努力をされて、
平和条約とまではいかなかったけれども、両国の共同宣言によって
戦争終結の宣言が発せられ、そこで国交が回復をした。当然私は―鳩山内閣のあとを受けた石橋内閣は中断しましたが、今の
岸内閣はその鳩山内閣当時の
努力を受けて、日ソの
平和条約が
締結されるような
方向に
努力をされるべきである。北方の領土の問題がかれこれ言われております。よく世間で言うことは、社会党やその他は、沖縄、小笠原のことは問題にするが、北の方の領土の問題は一向問題にしないではないか、こういうことが言われておりますが、現在ソビエトと
日本とは、まだ
平和条約は結ばれていない。ほとんど鳩山内閣だけで中断されてしまっておる。こんなときにどうして北方の領土の問題が問題として日程に上ってくるか。小笠原や沖縄の問題は具体的に
安保条約というものが日程に上っておるから、これらの領土の問題が問題として提起されておるわけであります。もし日ソ
平和条約の
締結のために、
岸内閣が積極的な
努力をされるというならば、その
努力の過程において当然北の方における領土の問題も明確になるであろう。われわれは
サンフランシスコ平和条約における領土放棄の条項がそのときにどういうように適用されるか。今沖縄の問題でも
ほんとうは
アメリカは
国際信義に反しておる。当然
アメリカは
国際連合に、
アメリカを唯一の施政権者として信託統治に付されるべき義務を持っておるわけであります。ところがそれは一向義務として履行されていない。あたかも
アメリカの領土のごとくに平気で一切軍事施設が行われておる。これは別問題としまして、とにかくそういうように
安保条約が具体的な日程に上っておるから、西南の領土の問題は問題となっておりますが、私は
岸内閣が鳩山内閣のあとを受けて、日ソ
平和条約の
締結のために、積極的な
努力をされるというその
努力の方法と、それから中国の問題でありますが、この中国の問題についても、いろいろ見方はありましょう。
意見もありましょう。だが現実の問題としては、せっかく
貿易が行われようとしかかってきたときに、一昨年岸さんが
アメリカに行ってああいう先ほど読んだような宣言、すなわち共同宣言が発せられて、それでついに
貿易までも途絶してしまったということで、今日はほとんど全部が中断の形になってしまっておる。しかも岸さんはしばしば決して中国を敵視するのではない、こう言っておられるが、相手方からは
岸内閣が中国を敵視しておる政策をとっておると認められるような
態度が見える。こういうことは非常に遺憾なことでありまして、もし
岸内閣が日ソ
平和条約の
締結のために積極的な
努力をすると同様な
努力、日中国交回復のために
努力をされて、
平和条約をすぐ結ぶことができなければ、あるいは両国の共同宣言によってソビエトの場合と同様に国交回復への道はあるわけであります。そういう
努力をされるそのことこそが、太平洋面における集団地域
安全保障―今でも日米だけでもこれは集団
安全保障ということがいわれるでしょうけれども、そうではなく、一方の
陣営に偏することなく、両方の
陣営に超然として積極的な中立の
立場から、いずれの側にもそうすることが、私は米ソを中心とする
国際間の緊張を緩和する上においても、
日本は役立つことができると思う。そういう役割を果すことこそが、
日本民族に与えられたる
一つの大きな使命ではないかと思う。そういう点で、そういう
努力をされるならば、私はその
努力自身が四カ国の不侵略集団
条約を可能にせしむる道であると思うのであります。これは見解の相違ということになってしまえばそれまででありますけれども、少くとも私は、日ソ
平和条約の
締結のために、日中国交回復のために、積極的な
努力がなされるということが、社会党の
考えておる中立政策というものが単なる観念論でないということを立証するものであると
考えるわけであります。この点についての岸さんのお
考え方はどうであるか、これをはっきり聞かせてもらいたいと思います。