○北條
委員 私は、
高石幸三郎君とともに第三班を形成いたしまして、京都、滋賀、福井におきます
台風第七号の
被害調査に参ったのであります。
私どもは八月二十六日から三十日の五日間にわたってそれらの
被害地域をつぶさに
調査いたしたのでありますが、私どもとともに、建設常任
委員会からも係が派遣されて、それぞれ担当に従い、特別な任務のもとに、
災害地の
調査をいたして帰ったのであります。
このたびの
災害は、先ほど第一班、二班によって
報告をされたのでありますから、詳しく申し述べる必要はないかと存じますが、特に、今回の
災害は、
台風第六号の通過いたしましたあと引き続いて八月十二日昼ごろから
各地に非常に大きな雨が降りました。それに加えて
台風第七号が襲来したために、十五日の朝までに
雨量は平地で三百ミリ、
山間部では四百ミリから六百ミリに達しておるのであります。従って、各中小
河川は大
はんらんをし、随所の
堤防が
決壊し、民家の
流失、
浸水とともに、
農林水産関係に対して昭和二十八年の第十三号
台風災害以上の
被害を与えております。
本班は、京都、滋賀、福井の順で
災害地の
調査をして参りましたが、各府県
当局が水害
復旧のために昼夜を分たず努力されているありさまを見まして感銘を深くいたしましたが、同時に、
各地元の要請にこたえてこの際国家は最大限の救援を与うべきことを痛感して帰ったのであります。
各府県
被害を概観いたしますと、京都におきましては、十市町十一地区に
災害救助法の発動が
適用され、その
被害総額は五十億円をこえ、
罹災者は十八万五千余名、死傷者が四十四名、
被害家屋三万一千余戸、
農林水産関係被害額三十億三千七百万円、その内訓は、
農地被害一万一千ヘクタール、
水田六億二千百万円、畑地三億円、
農業施設四億一千八百万円、
林道一億五千万円、山くずれ四億一千八百万円、林産物九千二百万円、水産三千万円、
畜産一千五百万円の
被害であります。
滋賀県では、
災害救助法の発動されたのが二町であります。
罹災者は八万八千余名、
被害総額五十億円をこえ、死傷者二十三名、
被害家屋二万一千余戸、
農林水産関係十七億三千九百万円、その内訳は、
農地一千二十九町歩、九千七百万円、
農業施設三億一千一百万円、林業三億四千三百万円、
農作物十億二千八百万円、
畜産一千一百万円、開拓二千三百万円、水産二千一百万円の
被害であります。
福井県における
災害救助法の発動は二市四町でありまして、
罹災者は六万五千余名であります。
被害総額四十七億円をこえ、死傷者九名、
被害家屋一万五千余戸、
農林水産関係被害二十五億七千五百万円、その内訳は、
農地二万七千ヘクタール、
水田十三億五千七百万円、畑地一千万円、農業倉庫四百万円、
農業施設五千二百万円、林業五億八千五百万円、水産六百万円の
被害であります。
これらのうちおもなる
被害について特に注意して
調査いたしました点を申し上げますと、京都府の場合、巨椋池の干拓
水田七百町歩のごときは、昔池であったところを干拓して開田したところでありますから、土地が非常に低く、そのため、周囲に降った
豪雨がこの低地に流れ込み、深さ一・六メートルにも達する滞水を宇治川巨椋堰
排水場の十三台のポンプで昼夜全能力を発揮して運転
排水したが、宇治川の腹水一七・二五メートルに達していたためポンプ能力が低下し、七百町歩の
水田は泥水のまま四日間にわたって没しておったのであります。ただいまここに四日間の冠水につかっておった
水稲を三種類持参しましたが、このように、全く生長がとまり、泥わらだけになって枯れ、
収穫皆無という
実情であります。二日間くらいの冠水で免れた
水稲でも、このように、幼穂形成の時期に当りましたので、出穂不全のものが相当にあるのであります。また、主程の穂が死滅したため、分けつして、これなどは幼枝の出たものが大
部分でありますが、すでに生育不能であります。それでも現在農民が懸命になって薬剤散布をして病虫害防除に努力しておりますが、果して農民諸君の努力が徒労に終らなければいいがと神かけて祈っている次第であります。また、早生種の
水稲は、このように発芽して、これまた飼料程度の
収穫しか得られないありさまでありまして、平均四割の減収見込みとされております。これまた収穂してみないとわからないのが
実情であります。
次に、滋賀県の場合でありますが、
山間部においては最高五百八十ミリに達する未曽有の
雨量となり、ために各
河川は
はんらんし、それが一度に琵琶湖に流れ込み、琵琶湖の警戒水位を一メートル突破いたしまして、明治二十九年以来の最高水位を記録しているのであります。危険水位三十センチをこえることになればそうなるのでありますが、その際において湖岸は
はんらんし、
住宅及び
農地に侵水し、非常な
被害を与えることは当然でありますが、この琵琶湖の水位調節の重大な役目を果しております南郷洗堰の開閉に関しましては、利害を相違する湖岸
関係者と下流に大阪などの大都市を控えております
関係がございまして、開閉の時期は非常に問題でございますが、特に下流三
河川合流地点の
流水状況の判断と琵琶湖水位の高水位を防止して湖岸
被害を最小限度に食いとめる考慮が十分に払われなければならぬことは言うまでもありませんが、十五日間の長期の冠水によってこうむる湖岸
被害の多大なる犠牲を見のがすことはできないのであります。
また、福井県の場合でありますが、昭和二十八年
災害復旧工事を
施行した個所が再び
災害を受け、前回よりもさらに大きな
災害を受けておるということであります。すなわち、足羽川の安波賀地籍の
堤防の
決壊がその一例であります。やっと
復旧した三町五反の
水田が二年目の稲作をことごとく
流失し、再び川原と化したことは、原形
復旧工事にとどまる
災害誘発の実例ではないかと考えられるのであります。
また、日野川
堤防決壊により七百町歩の
水田を一瞬にして冠水せしめ、清水町
住民九百五十名を孤立せしめましたことは、この
堤防がいかに弱かったか、昭和二十八年の
災害のときに十分わかっておったのでありますが、これらの改良
復旧工事についてもっと配慮する必要があるわけであります。
また、
被害の特徴としましては、
道路の
決壊、橋の
流失にて
交通が途絶して奥地に入ることができす十分な
調査ができなかったのでありますが、奥地
林道、農道が
各所において
決壊、
流失し、また山くずれが多く、小
災害が無数にありまして、各
河川は言えば満身創痍というありさまであります。従って、小
災害補助対象の限度を小額に切り下げて
地方公共団体の財政的
負担の軽減をはかるか、特にこの場合の
地方の
起債については特別の考慮を払う必要があるわけであります。
最後に、各府県から
農林水産関係要望事項がございましたので、これを要約して申し上げます。
一、
被害激甚地の
農家に対しては、所得税の減免
措置を講ずることはもとより、収入皆無となる
農家の生計の道を講じてもらいたい。
二、
被害激甚地の
農家に対しては営農
資金の
貸付を急いでもらいたい。
三、
被害農家に対しては
既貸付金の償還期の大幅な延長を講じてもらいたい。
四、自作農維持創設
資金の
貸付ワクの増額を講じてもらいたい。
五、
被害農家に対して、共同利用
施設、畜舎、倉庫、炭がま等の
復旧に要した経費について
補助の道を講じてもらいたい。
六、
被害激甚地区の
農家に対しては、農薬、種子及び種苗購入、施肥、畜舎消毒及び炭疽病予防注射、冠水の
排水等に要した経費について
補助の道を講じてもらいたい。
七、
高率補助の特例を
被害激甚地に
適用し、小
災害についても公共
災害として
補助の
対象にしてもらいたい。
八、予約申し込み概算金返納期日の延期、概算金返納利子の軽減
措置を願いたい。
九、罹災
農家の保有米
流失に対しては、
政府米の加配
措置を願いたい。
一〇、農業共済金の
早期前払いを願いたい。
一一、
災害査定についてはすみやかに実施されるとともに、国庫
補助金の割当を早急に願いたい。
一二、
原形復旧にとどまらず各
事業改良を加えて
施行するよう
災害関連事業費の増額を願いたい。
一三、
特別交付税の大幅な交付方を願いたい。
一四、
地方起債の特別承認方を願いたい。
一五、国民
金融公庫、
農林漁業金融公庫、
住宅金融公庫等の
災害融資を急いでもらいたい。
以上が
調査地における国に対する
要望事項のあらましであります。
以上でございますが、この際特に付言しておきたいことは各県が共通して要請いたしておりますことは、今回の
災害にかんがみて国は特別な立法
措置ないしは予算
措置等を講ずるために早急に臨時国会を開いてもらいたいという
要望でありまして、このことにつきましては、国会においても政府においても国民の
要望にこたえるように
措置すべきじゃなかろうかということを付言する次第であります。