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1959-09-08 第32回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月八日(火曜日)     午後二時五分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 田口長治郎君 理事 永田 亮一君    理事 丹羽 兵助君 理事 本名  武君    理事 石田 宥全君 理事 日野 吉夫君       安倍晋太郎君    天野 光晴君       秋山 利恭君    今井  耕君       金丸  信君    坂田 英一君       笹山茂太郎君    高石幸三郎君       田邉 國男君    中馬 辰猪君       松岡嘉兵衛君    三田村武夫君       足鹿  覺君    角屋堅次郎君       神田 大作君    實川 清之君       中澤 茂一君    中村 時雄君       西村 力弥君    芳賀  貢君       北條 秀一君    松浦 定義君  出席国務大臣         農 林 大 臣 福田 赳夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   相澤 英之君         農林政務次官  大野 市郎君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         一部長)    諌山 忠幸君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         一部買入課長) 田中  勉君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      茅野 一男君         農林事務官         (水産庁漁港部         長)      林  眞治君         建設事務官         (河川局次長) 曾田  忠君         建 設 技 官         (河川局防災課         長)      畑谷 正實君         建 設 技 官         (道路局長)  佐藤 寛政君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 九月八日  委員和精一君、八木徹雄君及び中村時雄君辞  任につき、その補欠として田邉國男君、三田村  武夫君及び西村力弥君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員西村力弥君辞任につき、その補欠として中  村時雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  派遣委員より報告聴取の件  農林漁業災害に関する件(台風第七号等による  農林漁業災害問題)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  農林漁業災害に関する件につきまして調査を進めます。  この際、台風第七号等による農林漁業災害実情調査するため先般派遣いたしました派遣委員より報告を聴取することといたします。  第一班の本名武君。
  3. 本名武

    本名委員 私は、第一班を代表いたしまして、長野県及び山梨県下における台風第七号等による農林水産業被害について調査概要を御報告いたします。  本調査班に参加せられました委員は、私のほか實川清之委員中澤委員の三人でありまして、八月二十六日から二十八日までの三日間にわたり長野県及び山梨県を調査し、また金丸信委員現地参加として山梨県下を一行とともに調査されたのであります。  本災害をもたらした台風第七号は、八月十二日に硫黄島に発生し、海上を時速三十キロ以上で本土に接近して、十四日未明駿河湾に上陸、その後は時速六十キロという超スピードで山梨県及び長野県を通過して日本海に抜けたものであります。この台風が発生し、本土に近接するに従い、本土に停滞していた前線が活発化し、十二日から断続的豪雨をもたらし、引き続いて十四日の台風とともにさらに猛烈な豪雨に変り、ところにより四百ミリ以上の雨量を記録し、また瞬間最大風速四十数メートルという烈風を伴う、まれに見る悪性の台風であったのであります。  山梨県及び長野県は、台風の中心が通過した県だけに、その被害はまことに激甚で、かつて見ない深刻なものがあったのでありまして、その被害は、長野県に総額二百億円以上を、山梨県に二百三十四億四千万円を与え、農林水産業被害は、長野県で百十八億六千万円、そのうち、水稲は二十五億九千万円、果樹十六億六千万円、雑穀工芸作物等畑作物二十億円、農地農業用施設十三億三千万円、林地崩壊林道等林業施設二十九億四千万円、水産関係一億五千万円、畜産関係二億七千万円等となっており、被害地域は、南北佐久、小県、東筑摩諏訪の各郡が特に激甚被害を受けていたのであります。  山梨県の農林水産業被害は百二十八億二千万円で、林地崩壊の四十七億三千万円を初め、林道その他の林業用施設あわせて林業被害は六十七億七千万円となっており、農地及び農業用施設で三十一億円、農作物は、果樹の十三億円、水稲及び雑穀の七億円等二十二億円、蚕糸関係四億円、開拓関係一億四千万円がおもなものとなっておるのであります。被害は全県下に発生し、市町村の多くは災害救助法が発動されるという大きな被害を受けており、特に釜無川、塩川、笛吹川の本・支流及びこれにそそぐ沢が被害甚大であったのであります。  この被害実情について本調査の日程の順序に従って御説明申し上げますと、最初の二十六日は、軽井沢から調査を開始し、岩村田町、中込町、臼田町、海瀬を経て海尻まで南佐久郡を広く調査したのであります。この海尻までの間における被害で特に目立ったのは風倒木で、道路沿いに立ち並ぶ百年をゆうにこえていると思われる大木が裂け、折れ、根こそぎ倒れて、付近の民家、神社八幡等を押しつぶし、また道路におおいかぶさりしているさまは、当時の風速のいかに強かったかを物語っていたのであります。沿線の水田被害も大きく、特に海尻においては一カ所の水田埋没三十ヘクタールがあり、この埋没土は八ケ岳から流出した硫黄分を多量に含んでおり、排土の作業の上に客土をせねばならぬという非常にめんどうな復旧事業が必要とされるもののようであります。  次に、小県郡東部町に参ったのであります。ここは全国の七〇%を生産する長野県のその七〇%を生産するというクルミの産地であって、一万六千本のクルミの木は一本残らず倒伏し、折損を受けており、これが対策として、一カ月以内に木を起し施肥を行えば枯死を免れるのではないかと必死の作業を続けていたのでありますが、たとい枯死を免れたとしても、その収穫は三年から五年の間は半減以下とのことで、今後の生活資金の入手に苦慮していたのであります。二十七日は長野市周辺を回り、リンゴ被害について調査したのでありますが、強風に果実は傷つき、商品価値を落し、その減収についての対策として、クルミとともにリンゴ共済制度早期確立が望まれていたのであります。  次に、東筑摩郡明科町に参り、会田川沿い被害地調査いたしたのであります。会田町においては、中央に流れる幅二メートル足らずの小川が、十四日の豪雨のとき川の上流木材土砂流水をせきとめ、ダムを作り、これが破れて一挙に幅五十メートル以上の激流となって町の中央に流れ落ち、町家を破壊、水浸しとし、十日後の今日でも片づけられない悲惨な状態にあったのであります。また、この川の上流道路が幅十数メートルにわたって決壊し、いまだ交通がとだえているため、上流農家二百戸は果実蔬菜類の搬出ができず、災害を受けた上に現在でも蔬菜類を腐敗させているという間接的な被害を受けつつあるのでありまして、緊急な交通路の確保が待たれていたのであります。ここからは、遠くアルプス連峰が一望に見渡せるのでありますが、常は美しい連山が、山の中腹辺に山くずれ、地すべり等を起し、谷といわず、尾根といわず、赤はだをむき出し、多数の傷跡を残し、痛々しい遠望を見せておったのであります。また、近くに見る山々は風害木が一面に広がり、茶褐色に変化しており、台風の山林に与えた被害の大きかったことがよく見られたのであります。  次に、松本市に参り、松本市及び四賀村等被害激甚地実情を聞き、諏訪市に入ったのであります。いずれの市町村激甚地中激甚地で、被害額標準税収入の四、五倍にも達しているとのことでありまして、農地等早期査定完了高額補助による復旧事業を早急に着手するとともに、復旧事業市町村負担分等については、市町村財政の逼迫の現状からして、特別起債の発行を認められるよう強く要望していたのであります。  次に、山梨県に入り、最初に韮崎市を調査したのであります。県下最も大きな被害を出した釜無川決壊による農業被害を見たのでありますが、何しろ、韮崎市は、市内の河川はことごとくはんらん被害を出し、総被害額は実に四億五千万円といわれていたのであります。釜無川沿いでは、堤防決壊数キロに及び、付近住宅水田等を流失、埋没し、見渡す限り河床と化し、住宅地耕地と旧河床はいまだ区別がつかない現状に置かれ、わずかに流失を免れた家屋も、天井に届くほどの土砂に埋まっていたのでありまして、このような家屋宅地等土砂の排除については思い切った国の援助がとらるべきであると痛感いたしたのであります。  次に、円野町において潅漑用水取り入れ口等災害状況調査しつつ、県下最大激甚被害地である武同時に参ったのであります。町の東側には本流の釜無川、北側には支流大武川が流れており、本災害により、大武川の右岸は四千五百メートル、左岸は三千メートルの決壊を起し、わずか六、七十メートルの川幅が六百メートル以上に広がり、町の中央を通っていた商店街を一のみにし、町の北部一帯住宅を完全に流失し、河床と化し、その跡には直径三メートルにも及ぶ岩石が無数にころがっていたのであります。この大被害の原因は、豪雨のため、町の南方六キロにある駒ケ岳の中腹の花崗岩石が千二百ヘクタールにわたって山くずれを起し、この土砂立木等の流出は直径三メートル余の岩石とともに山津波となって大武川堤防決壊し、耕地家屋を押しつぶし、または押し流しながら武同時に達したのであって、津波襲来瞬時にしてこの惨事となったものであります。このため大武川の両岸の耕地はことごとく流出、埋没し、大きな岩石のみが当時の惨状をそのままに残し、また、残骸をわずかにとどめる農家にはいまだ人影もないありさまであったのであります。  次に、白州町に足を延ばし、耕地等被害調査し、さらに、その上流にある水田の全部を失った大坊部落調査を進めたのでありますが、まことに気の毒にたえぬものがあったのであります。  次は、災害地で最も交通回復がおくれ、やっと調査班到着の二、三日前に開通したという道なき道を通って山深くに入ったところにある芦安村に参ったのであります。この村は険峻なる山に囲まれた村で、川のはんらん堤防を流失し、山から山までをすべて河床に化し、田畑はほとんど流失していたのであります。また、林道壊滅状態にあり、いまだ復旧の見通しはなく、山仕事すらできない悲壮な現実に置かれていたのであります。  このように、われわれが耕地、特に水田被害調査して参ったのでありますが、調査地はもちろん、全県下にわたって潅漑用水路被害を受け、用に立たない状態にあり、せっかく台風被害を免れたわずかの水稲も、やがて水不足を来たし、旱魃現象で枯死するものと推測され、その面積は被害から免れた水田の八〇%にも及ぶといわれていたのでありまして、早急な水確保措置がとられることを切に要望していたし、われわれも痛感したところであります。  次に、リンゴブドウ産地石和町と甲府市甲運地区及び開拓地に参ったのであります。この地は風速四、五十メートルの強風に長時間さらされていたため、リンゴは大半落下し、傷つき、その利用方法もなく、ただ木の根元に拾い集めて腐るのを待っていたのであります。また、ブドウは、その支柱が折れ、たながこわれ、地にたたきつけられたため、果実は傷を負い、取り入れを目前に控えて、商品価値を失い、日の過ぐるにつれてしぼみ行くブドウ園をながめながらぼう然としていたのであります。この利用方法については、いまだ良質とはいえないまでも醸造に使用できるものもありますが、醸造の許可が得られず、その対策に苦慮していたのであります。  最後に、開拓者陳情を受けたのでありますが、開拓地は、山の斜面にある関係で、風当りも強く、家屋農舎等はほとんど全壊、半壊となり、新たに建てかえが必要であるとのことで、特に家屋、個人の農業用施設等の国の援助を要望していたのであります。  以上簡単でありますが調査地実情について申し上げました。  次に、各地の要望について一括申し上げておきたいと存じます。  一、農地農林水産業施設については、高率補助適用をされたい。  一、小災害については、起債の特例により復旧事業国庫援助を願いたい。  一、農家及び宅地の堆積土砂の排除について国の助成を願いたい。  一、潅漑用水確保のために使用した揚水機の購入、賃借り等について国の助成を願いた   い。  一、開拓農家及び一般農家個人施設についても国の助成を願いたい。  一、施設災害復旧はできるだけ単年度に、農地早期に完成し、来年の植付までに間に   合うようにしてもらいたい。  一、天災法資金貸付は、既貸付金償還延納利子補給等措置を講じてほしい。  一、自作農維持資金増額貸付を願いたい。  一、果樹植栽及び生活資金等については、長期、低利の資金政府資金で貸してほし   い。  一、農薬、肥料または種苗等について国の補助を願いたい。  一、国有林野からの林産物の安売りを願いたい。  一、救農土木事業について格別の考慮を願いたい。 等であります。  以上報告を終ります。
  4. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、第二班、角屋堅次郎君。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 第二班は、当委員会より吉川委員長及び神田委員建設委員会より井原、中島の各委員が参加し、小西、貝森両調査員が随行して、三重、岐阜、静岡三県を調査いたしました。  以下本調査班に同行いたしました私から、便宜順次その概要を申し上げますが、各県からの要望事項は共通のものが多いので最後に一括してつけ加えます。  八月二十六日早暁出発、途中三重県当局より概況説明を受けました。同県においては、台風六号に引き続き連日各地に豪雨がありましたところへ、八月十三日夕刻より襲来した台風第七号の集中豪雨は、一時間最高九十五・三ミリに及ぶ驚異的な降雨量であって、ついに揖斐川支流を初め各河川は各所で堤防決壊はんらんし、大被害を続出したのであります。八月二十五日までに判明せる被害総額は実に四十二億七千万円、このうち、農産物八億円、耕地五億円、林業関係四億四千万円、畜産一千万円、開拓関係二千万円、水産関係一億二千万円であります。  われわれはまず被害激甚地の桑名郡多度町に至り、堤防決壊水田湛水の惨状を視察いたしました。この地は、揖斐川多度川、肱江川の三川に接しており、揖斐川の逆流水により堤防決壊したため、一望二百五十ヘクタールの整然たる美田に冠水し、住民は身をもって一側の堤防上に逃れたるも、耕地はその後浸水十日以上にわたり、昨年を上回る豊作の期待もむなしく、収穫皆無の状態となったのであります。住宅も、洗い流されて壁は落ち、わずかに骨格を残すのみでありまして、住民は今後の台風を恐れて十月までは堤防上の仮小屋に雨露をしのぐ見込みのよしでありました。同地は二十八年にも同一災害をこうむったとのことでありまして、将来の抜本的防災対策としては、揖斐川多度川、肱江川の合流点付近大樋門を新設し、揖斐川逆流水の影響を皆無にすること、二、多度川、肱江川の上流にダムを新設して出水量を調整することが企図されておりました。  次いで安芸郡安濃村のため池決壊現場に参りました。この山間のため池は、古老もそのできたときを知らず、決壊も初めてとのことでありました。それより夜暗をついて津市内旧櫛形村の堤防決壊水田埋没状態を見聞いたしました。翌二十七日は県庁において記者会見を行いたる後、鈴鹿市内の旧栄村、旧天名村、旧国府村各地の堤防決壊水田埋没の状況を順次視察し、地元代表者の陳情を聞くとともに、雄々しく復旧に精進する人々の姿に接し、大いに意を強くいたしました。  同県における今回の台風の特色としては、風を伴わずして雨量がきわめて多く、山間部に小災害が続出したことがあげられておりましたが、この間にあっても、完備せるダム、防災ため池によって難を免れた実例のあることは注目すべきことと存じます。  これより岐阜県に向い、県境千本松において治水神社にもうで、この地方の治水に一身をささげたる先人の労苦をしのぶとともに、その加護を祈りました。  次いで養老町根古地に至り、決壊せる堤防の仮締め切り作業の状況と耕地並びに部落に湛水の惨状を見、一驚を喫しました。同地の状態は前記の多度町の姿の規模をさらに大きくしたものでありまして、八月十二日から十四日にわたって襲来した西南濃地帯集中豪雨は、その降水量五百ないし六百ミリに及び、揖斐川牧田川の増水を来たし、ついに十三日夜半、牧田川堤防約百五十メートルの決壊となり、多芸輪中養老養老町の大部分と海津郡南濃町の一部)において、農耕地二千五百ヘクタールの浸水を見るに至ったのであります。この地域は殊特ケースでありまして、元来長良、木曽、揖斐川沖積地低湿地帯堤防によって守られ、排水機を常備しておるのであって、今回のごとく堤防決壊により浸水したときは、まず決壊個所を修復して後内部の排水をするのほかなく、当時八月末完了を目標に昼夜兼行にて遠方よりサンド・ポンプ、トラック等により土砂を運搬して仮締め切り工事を行なっておりました。見渡す限りの浸水地域はなお湛水して、水稲はもとより、特産物のハスも腐敗全滅し、家屋も著しく損壊し、食糧、家財等の亡失多く、住民はなお避難を続けており、地元指導者耕地早期復旧と人心の安定にもっぱら腐心しておりました。しかして、南濃町及び養老町にて陳情を受けましたが、一、復旧についての国の大幅の援助、二、飯米として政府米の来年収穫期までの貸与、——同県では罹災者食糧対策として県下農家に対し一戸一升ずつの救援米供出運動を展開しているとのことであります。三、決壊個所付近決壊により生じたる約三ヘクタールにわたる水深十メートルの池沼は、堤防の保全上きわめて危険であるので、これの埋め立て復旧堤防の直接保全のための工事とともに建設省にて行われたいこと、四、土地改良のいまだ不十分のところとて、この機会に就労の便をも与える事業実施等を切々として訴えられました。  さらに、荒崎、大垣市等を歴訪し、被害水稲も各種観察いたしましたが、冠水せるものは二日後に汚水を洗滌したるものも完全なる結実が危ぶまれておりました。  こえて二十八日、岐阜県当局よりの説明によりますると、八月十二、十三、十四日にわたり揖斐川流域の西濃及び南濃地方を襲った集中豪雨は猛威をふるい、その被害激甚をきわめ、被災地は、揖斐、長良、木曽の三大川の合流地帯であって、古来輪中として発達した穀倉地帯であり、水田農業が主体であって、耕地冠水被害による住民の焦燥不安はきわめて深刻であり、八月二十四日までに判明した被害額は五十三億円、うち、農林水産関係は、農地八千万円、農業用施設四億九千万円、農畜水産物等十三億一千万円、山林関係三億二千万円、合せて二十二億円に達し、台風期を目前にして急速なる対策措置が待望されておりました。かてて加えて、八月二十六日、東濃、中濃も集中豪雨に見舞われ、土木農林関係等に六億円余の災害が発生し、特に公共施設の損害が著しいとのことでありました。  次いで静岡県に参りました。同県は、上陸した最大風速四十五メートル、最大雨量五百二十三ミリの暴風雨を伴った台風第七号と、引き続き八月三十六日県の中部並びに西部地方を襲った最大雨量四百ミリに達する大豪雨とにより、農林水産業被害として、農作物九億九千万円、農地農業施設六億三千万円、水産関係二億三千万円、林業関係四億円、総額二十二億円余の損害をこうむったのであります。同県は、昨年の狩野川台風により伊豆地方が壊滅的大災害に見舞われ、その復興途上において再び全県にわたる痛手を受けたわけであります。  われわれは、二十九日、まず焼津市防潮堤を視察いたしました。当市海岸は千三百メートルの防潮堤により市街地がささえられておりますが、この防潮堤は築造後すでに五十年を経過した老朽堤であり、かつ、当初百メートルも突出しておった前面の海岸が、長年月の間に海岸が侵食され、現在は波浪が直接本堤に激突するため若干の補修を行いながらも、毎年台風により部分的決壊を見るので、根本的対策の必要を痛感し、堤防内部調査を求めておった矢先、当市としては比較的平穏であった台風第七号により一部に大空洞と亀裂を生じ、波は絶えず底部を洗っており、きわめて危険の状態が明らかとなったので、この際災いを転じて福となすよう、一日も早く全長の復旧補強工事の施行を要望しておりました。  次いで藤枝、島田、金谷より沼津に至る間の被災地を歴訪いたしましたが、堤防決壊等により耕地住宅等土砂が流入堆積し、家屋果樹が損傷倒伏する等、どこも惨たんたるありさまでありました。  各県を視察して痛惑いたしましたことは、今次の台風が、集中豪雨により山間の無名の小河川はんらんし、各所に小災害をもたらしたことでありまして、これら小災害処置対策と小河川の改修並びに関連砂防工事はまことにおろそかにできないことであります。  終りに、各県の要望事項を集約いたしますと次の通りであります。  一、被災地団体に対する財政措置事項。   (一) 本年度地方交付税のうち特別交付税の配分についての格別の配慮。   (二) 土木、治山、耕地災害復旧所要財源中、県負担分全額起債措置。   (三) 市町村分起債特別交付税許可配分について、罹災地町村に対する特別措置。  二、土木耕地、林野、水産等公共事業関係緊急復旧措置事項。   (一) 直轄公共施設復旧工事緊急施行。   (二) 道路、橋梁、林道等公共施設国庫補助事業対象となるものにつき、緊急査定による早期着工。なお、輪中地区排水機応急復旧についての特別措置。   (三) 復旧工事費地元負担軽減のための高率補助適用。   (四) 国庫補助対象事業については、再災害防止のため、初年度における大幅実施措置。   (五) 復旧事業費効率化恒久対策を考慮し、関連事業拡大措置。   (六) 土木耕地、林野、水産等関係施設において、国庫負担対象とならない小災害が多発しているが、大災害の誘因となるおそれがあるので、その復旧について国庫負担対象とする措置。   (七) 国の一部負担にかかる災害復旧事業の三カ年完全実施と、原形復旧にとどめず改良工事の承認。   (八) 漁港施設復旧費早期査定補助額の増大。   (九) 治山事業を拡充し、崩壊地復旧公共施設災害復旧に準じ計画的復旧をはかる措置。   (一〇) 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の適用による次の施設復旧に対する補助。(イ)農地農業用施設、(ロ)林道、(ハ)農林水産物倉庫、(ニ)農林水産業用生産資材倉庫、(ホ)農林水産物加工施設、(ヘ)共同作業所、(ト)養殖施設、(チ)ワサビ育成施設、(リ)集乳所、(ヌ)農事放送施設。  三、金融に関する事項。   (一) すみやかに天災法に基く融資と貸付対象種目の拡大(ビニールハウス適用)。   (二) 農林漁業金融公庫法に基く農林漁業資金の資金ワクの拡大、早期貸付、対象種目の拡大(畜舎に鶏舎、豚舎を、製茶施設に建物を認める)、貸付最高限度の引き上げ(温室、製茶施設等二十万円を四十万円に)、部落の被害共同利用施設(集荷所、作業所等)に共同利用施設災害復旧)資金の部落転貸措置適用承認、利子補給措置。   (三) 自作農維持創設資金の貸付ワクの拡大と早期貸付。   (四) 開拓融資保証法によって貸し付けの営農振興資金及び開拓者資金の年賦償還の延期。   (五) 農地農業用施設復旧所要つなぎ資金として運用部資金または農林漁業金融公庫等の低利資金の優先貸付。   (六) 被災開拓地の入植営農施設に対する補助並びに融資についての特別措置。   (七) 既往の貸付金の条件緩和措置天災法資金の償還期限の延長、農林漁業資金の利率の引き下げ、据置期間及び償還期限の延長等)。   (八) 罹災者に対する生業資金として農林中央金庫、農林漁業金融公庫等への貸出資金ワクの増配及び復旧資金に低利融資ワクの拡大措置。  四、その他の事項。   (一) 農業共済金の仮払いの早期実施。   (二) 予約売り渡し米の減額補正、前渡金の返納猶予、利子の免除、昨年の伊豆災害により現在実施中の延納米穀代金の延納期限の延長。   (三) 罹災者に対する租税の減免、徴収猶予。   (四) 政府管理の家畜飼料の安価放出。   (五) 被害農作物に対する病虫害防除薬剤費、県市町村有共同防除施設費(動力噴霧機、動力撒粉機購入費)、樹勢回復用肥料購入費、種苗、被災地における畜舎の消毒、家畜の伝染病予防注射所要経費、部落農業共同施設の設置、果樹だな等園地造成、柑橘貯蔵庫等に対する助成措置。   (六) 農家家屋被害の甚大にかんがみ、これが復興に対し国有林材の低額払い下げの特別措置。   (七) 早期に適切なる応急処置をなし得るよう、国より弾力的運営のできる見舞金の交付。  以上をもって報告を終ります。
  6. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、第三班北條秀一君。
  7. 北條秀一

    ○北條委員 私は、高石幸三郎君とともに第三班を形成いたしまして、京都、滋賀、福井におきます台風第七号の被害調査に参ったのであります。  私どもは八月二十六日から三十日の五日間にわたってそれらの被害地域をつぶさに調査いたしたのでありますが、私どもとともに、建設常任委員会からも係が派遣されて、それぞれ担当に従い、特別な任務のもとに、災害地調査をいたして帰ったのであります。  このたびの災害は、先ほど第一班、二班によって報告をされたのでありますから、詳しく申し述べる必要はないかと存じますが、特に、今回の災害は、台風第六号の通過いたしましたあと引き続いて八月十二日昼ごろから各地に非常に大きな雨が降りました。それに加えて台風第七号が襲来したために、十五日の朝までに雨量は平地で三百ミリ、山間部では四百ミリから六百ミリに達しておるのであります。従って、各中小河川は大はんらんをし、随所の堤防決壊し、民家の流失浸水とともに、農林水産関係に対して昭和二十八年の第十三号台風災害以上の被害を与えております。  本班は、京都、滋賀、福井の順で災害地調査をして参りましたが、各府県当局が水害復旧のために昼夜を分たず努力されているありさまを見まして感銘を深くいたしましたが、同時に、各地元の要請にこたえてこの際国家は最大限の救援を与うべきことを痛感して帰ったのであります。  各府県被害を概観いたしますと、京都におきましては、十市町十一地区に災害救助法の発動が適用され、その被害総額は五十億円をこえ、罹災者は十八万五千余名、死傷者が四十四名、被害家屋三万一千余戸、農林水産関係被害額三十億三千七百万円、その内訓は、農地被害一万一千ヘクタール、水田六億二千百万円、畑地三億円、農業施設四億一千八百万円、林道一億五千万円、山くずれ四億一千八百万円、林産物九千二百万円、水産三千万円、畜産一千五百万円の被害であります。  滋賀県では、災害救助法の発動されたのが二町であります。罹災者は八万八千余名、被害総額五十億円をこえ、死傷者二十三名、被害家屋二万一千余戸、農林水産関係十七億三千九百万円、その内訳は、農地一千二十九町歩、九千七百万円、農業施設三億一千一百万円、林業三億四千三百万円、農作物十億二千八百万円、畜産一千一百万円、開拓二千三百万円、水産二千一百万円の被害であります。  福井県における災害救助法の発動は二市四町でありまして、罹災者は六万五千余名であります。被害総額四十七億円をこえ、死傷者九名、被害家屋一万五千余戸、農林水産関係被害二十五億七千五百万円、その内訳は、農地二万七千ヘクタール、水田十三億五千七百万円、畑地一千万円、農業倉庫四百万円、農業施設五千二百万円、林業五億八千五百万円、水産六百万円の被害であります。  これらのうちおもなる被害について特に注意して調査いたしました点を申し上げますと、京都府の場合、巨椋池の干拓水田七百町歩のごときは、昔池であったところを干拓して開田したところでありますから、土地が非常に低く、そのため、周囲に降った豪雨がこの低地に流れ込み、深さ一・六メートルにも達する滞水を宇治川巨椋堰排水場の十三台のポンプで昼夜全能力を発揮して運転排水したが、宇治川の腹水一七・二五メートルに達していたためポンプ能力が低下し、七百町歩の水田は泥水のまま四日間にわたって没しておったのであります。ただいまここに四日間の冠水につかっておった水稲を三種類持参しましたが、このように、全く生長がとまり、泥わらだけになって枯れ、収穫皆無という実情であります。二日間くらいの冠水で免れた水稲でも、このように、幼穂形成の時期に当りましたので、出穂不全のものが相当にあるのであります。また、主程の穂が死滅したため、分けつして、これなどは幼枝の出たものが大部分でありますが、すでに生育不能であります。それでも現在農民が懸命になって薬剤散布をして病虫害防除に努力しておりますが、果して農民諸君の努力が徒労に終らなければいいがと神かけて祈っている次第であります。また、早生種の水稲は、このように発芽して、これまた飼料程度の収穫しか得られないありさまでありまして、平均四割の減収見込みとされております。これまた収穂してみないとわからないのが実情であります。  次に、滋賀県の場合でありますが、山間部においては最高五百八十ミリに達する未曽有の雨量となり、ために各河川はんらんし、それが一度に琵琶湖に流れ込み、琵琶湖の警戒水位を一メートル突破いたしまして、明治二十九年以来の最高水位を記録しているのであります。危険水位三十センチをこえることになればそうなるのでありますが、その際において湖岸ははんらんし、住宅及び農地に侵水し、非常な被害を与えることは当然でありますが、この琵琶湖の水位調節の重大な役目を果しております南郷洗堰の開閉に関しましては、利害を相違する湖岸関係者と下流に大阪などの大都市を控えております関係がございまして、開閉の時期は非常に問題でございますが、特に下流三河川合流地点の流水状況の判断と琵琶湖水位の高水位を防止して湖岸被害を最小限度に食いとめる考慮が十分に払われなければならぬことは言うまでもありませんが、十五日間の長期の冠水によってこうむる湖岸被害の多大なる犠牲を見のがすことはできないのであります。  また、福井県の場合でありますが、昭和二十八年災害復旧工事施行した個所が再び災害を受け、前回よりもさらに大きな災害を受けておるということであります。すなわち、足羽川の安波賀地籍の堤防決壊がその一例であります。やっと復旧した三町五反の水田が二年目の稲作をことごとく流失し、再び川原と化したことは、原形復旧工事にとどまる災害誘発の実例ではないかと考えられるのであります。  また、日野川堤防決壊により七百町歩の水田を一瞬にして冠水せしめ、清水町住民九百五十名を孤立せしめましたことは、この堤防がいかに弱かったか、昭和二十八年の災害のときに十分わかっておったのでありますが、これらの改良復旧工事についてもっと配慮する必要があるわけであります。  また、被害の特徴としましては、道路決壊、橋の流失にて交通が途絶して奥地に入ることができす十分な調査ができなかったのでありますが、奥地林道、農道が各所において決壊流失し、また山くずれが多く、小災害が無数にありまして、各河川は言えば満身創痍というありさまであります。従って、小災害補助対象の限度を小額に切り下げて地方公共団体の財政的負担の軽減をはかるか、特にこの場合の地方起債については特別の考慮を払う必要があるわけであります。  最後に、各府県から農林水産関係要望事項がございましたので、これを要約して申し上げます。  一、被害激甚地農家に対しては、所得税の減免措置を講ずることはもとより、収入皆無となる農家の生計の道を講じてもらいたい。  二、被害激甚地農家に対しては営農資金貸付を急いでもらいたい。  三、被害農家に対しては既貸付金の償還期の大幅な延長を講じてもらいたい。  四、自作農維持創設資金貸付ワクの増額を講じてもらいたい。  五、被害農家に対して、共同利用施設、畜舎、倉庫、炭がま等の復旧に要した経費について補助の道を講じてもらいたい。  六、被害激甚地区の農家に対しては、農薬、種子及び種苗購入、施肥、畜舎消毒及び炭疽病予防注射、冠水の排水等に要した経費について補助の道を講じてもらいたい。  七、高率補助の特例を被害激甚地適用し、小災害についても公共災害として補助対象にしてもらいたい。  八、予約申し込み概算金返納期日の延期、概算金返納利子の軽減措置を願いたい。  九、罹災農家の保有米流失に対しては、政府米の加配措置を願いたい。  一〇、農業共済金の早期前払いを願いたい。  一一、災害査定についてはすみやかに実施されるとともに、国庫補助金の割当を早急に願いたい。  一二、原形復旧にとどまらず各事業改良を加えて施行するよう災害関連事業費の増額を願いたい。  一三、特別交付税の大幅な交付方を願いたい。  一四、地方起債の特別承認方を願いたい。  一五、国民金融公庫、農林漁業金融公庫、住宅金融公庫等の災害融資を急いでもらいたい。  以上が調査地における国に対する要望事項のあらましであります。  以上でございますが、この際特に付言しておきたいことは各県が共通して要請いたしておりますことは、今回の災害にかんがみて国は特別な立法措置ないしは予算措置等を講ずるために早急に臨時国会を開いてもらいたいという要望でありまして、このことにつきましては、国会においても政府においても国民の要望にこたえるように措置すべきじゃなかろうかということを付言する次第であります。
  8. 吉川久衛

    吉川委員長 以上をもちまして派遣委員報告を終りました。     —————————————
  9. 吉川久衛

    吉川委員長 この際参考人決定につきましてお諮りいたします。すなわち、テンサイ生産の振興に関する問題について、来たる九月十日午前十時より参考人より意見を聴取することとし、その人選につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。     午後二時四十九分休憩      ————◇—————     午後三時三分開議
  11. 吉川久衛

    吉川委員長 会議を再開いたします。  台風第七号等による農林漁業災害対策に関する質疑に入ります。  田口長治郎君。
  12. 田口長治郎

    ○田口委員 今年の七月の九州北部及び八月の本州中部における災害でございますが、総額五百億円に達するということで、私も九州北部の災害地を見て参ったのでございますが、被害を受けた農民は、あぜんとして、どうなるか、こういうような気持で、仕事も手につかないような状態であるのでございます。かかる状態から考えまして、国は、一日も早くこの災害復旧の方針を示されて、そうして着手をし、完成する、こういうことに努力をしてもらわなければならないと思うのでございますが、国会におきましてもまた、政府とよく協調をいたしまして、一日も早く復旧するように懸命の努力をする必要があると思うのでございます。  そこで、私は、建設大臣、農林大臣、自治庁長官等に質問事項があるのでございますが、本日は農林大臣の分だけを質問をいたしまして、あとの分は明日に譲りたいと思うのであります。  災害地を回りましてたびたび私どもが感じますことは、まず、被害農民に対して金をどうして供給するか、この問題と、災害をどうして一日も早く復旧するか、この二つの問題に尽きるように考えるのでございます。  第一の被害農民に対しまして金をどうして供給するかという問題でございますが、これは、農民に対しましては何としても天災法適用を早くしてもらわなければならぬのと、第二に、自作農創設維持資金をできるだけ潤沢に供給してもらう問題、第三の問題といたしまして、農業共済の概算払いについて一日も早く処置をしてもらう、それから、個人のいろいろな施設があるのでございますが、この個人施設復旧ということにつきまして、主務大臣の指定する農林漁業金融公庫の資金をできるだけ供給してもらう問題、こういうようなことと同時に、今までの災害では、災害地復旧というものに被害を受けた農民を優先的に使う、こういうことが非常に必要のようでございまして、飯米がないとか何だとかいうことでございますけれども、そういうものを借りて食べるということになりますと、これは将来やっぱり返さなければならぬことになるのでございますから、結局、災害地におきましては労働力がどれだけあっても足りない状態でございますから、被害農民を優先的に災害復旧に従事させる、雇用する、こういうような処置をとられる必要があるのでございまして、このことに関しましては、一つ農林大臣から各地方長官に対しましてそういう指導を徹底的にやるような通牒をぜひやっていただきたいのでございます。  それから、次の問題といたしまして、天災融資法の場合いつも困りますことは、この指定が非常におくれる、こういうことでございますから、天災融資の問題に対しましては指定を一日も早くしていただきたい、こういうことを考える次第でございますが、今回の被害に対しまして指定がいつごろになるか、大よその見通しだけでもお伺いいたしたいのでございます。
  13. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまの田口委員の御質問、まことにごもっともな話ばかりでございまして、共済金の概算払いは大急ぎでやっておる最中でございます。  それから、さらに、天災融資法、それから自作農資金、また、施設災害につきましては公庫の資金というふうに考えております。  また、お話のように、救農土木的考えを実行いたして参る、そのことについて地方長官に指示するようにという御意見でありますが、これはもう当然地方長官と緊密な連絡をとってやらなければならぬことでございます。  また、天災融資法の指定時期いかんというお話でありますが、これはもうごく最近、近日中に準備が整いますので、指定の段階に近日相なる、かように御了承願いたいと思います。
  14. 田口長治郎

    ○田口委員 指定の期日が早急にできるということでございますからけっこうでございますが、ぜひ一つ督励して早くやっていただきたいのでございます。  第二の問題といたしまして、自作農創設資金の問題でございますが、御承知の通りに、この資金は非常に希望の多い資金でございます。今年の予算といたしましては百億でございますが、とうてい百億程度では需要を満たすことができない、こういうような状態でございまして、百億のうちには当然に災害用の自作農創設資金、こういうようなものも予定しておられると思うのでございますけれども、従来農林省がお考えなされておることは、普通の配分を終った残りのいわゆる残高を災害に振り向けられて、大体年々百億あるいは予備費の六億、この程度でおさめてしまうというような方針のようでございまして、このワク以上に自作農創設資金が予備費その他で追加されたような例はないのでございます。実際に被害状態がワク内でおさまればけっこうでございますけれども、どうかいたしますと、少々無理でもワク内におさめる、こういうような方向にいっておられるのではないかという今までのワク内のおさめ方でございますが、今回話を聞きますと、まだ二十二億が残っておる、まず二十二億を使う、そうしてこれで足りなければ予備の六億を使ってということでございますが、そこでとまらないで、それでも足らないときは、やはり勇敢にそれ以上のものをぜひ出していただきたい、こう考えるのでございますが、その点大臣はどうお考えでございますか。
  15. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話の通りの心組みであります。
  16. 田口長治郎

    ○田口委員 それから、自作農創設維持資金につきまして農林省にぜひ研究していただきたいと思っておりますことは、この資金は標準農家対象にして融資ができるようになっておりますから、大きな農家も小さな農家も、せっかくの制度でありながらどうも借りられない、こういうようなことでございますが、災害を受けた場合は、中農家も大農家も小農家も同じ状態になるのでございまして、いろいろな事業計画その他からそういう結果になると思うのですけれども、何か災害のときだけは特別の便法でも講ぜられて、小さい農家も大きな農家もこの恩恵に浴する、こういうような処置ができなければならぬと思うのでございます。現状におきましては中農家だけがいろいろな事業計画その他から借りられるようになっております。この問題は災害時に非常に困る問題でありますから、これは一つ農林省としてぜひ御研究を願って、大中小だれも借りられるような道を開いていただきたいと考える次第でございますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
  17. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ごもっともなお話でございますので、その方向で検討いたします。
  18. 田口長治郎

    ○田口委員 第三の問題といたしまして、農業共済の概算払いの問題でありますが、これは役所のためにおくれるのではないということをよく承知しております。結局、県段階における共済連合会等が急いで書類をあげてくれば、農林省としては早く処置できると思うのでございますが、どうも、えてして、いわゆる査定力がおそいといいますか、何といいますか、府県で非常に書類がおそくなっておりまして、せっかくの概算払いということも非常におくれてしまうというのが普通でございますが、一つは農林省から関係の県の段階の団体に対しまして上から督促をしてもらう、こういうことで、少し急ぐ方法を講じてもらったら非常にけっこうだと思うのですが、いかがですか。
  19. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これはもとより取り急ぐ方向で全力を尽しておりますが、なおこの上とも努力をいたしたいと思っております。
  20. 田口長治郎

    ○田口委員 第四の問題といたしまして、農地農業施設というものは、当然に現在の制度でうまく復旧ができると思うのでありますが、個人の持っておるいろいろな施設、これは農林漁業金融公庫の主務大臣の指定するものを対象にした融資よりほかに方法がないと思うのであります。そこで、この場合にぜひお考え願いたいことは、どうかいたしますと、この対象にする施設の種類というものが落ちておりまして、それで恩恵にあずからない、融資ができないということがたびたびあるのでございますから、今回の災害でも、どういう個人施設に融資するかというその施設の種類について十分御研究下さいまして、落ちないような御配慮を願いたいということと、いま一つは、この融資では原則として一口二十万円程度になっておるのでございますが、これは、災害では果樹園地帯が相当多いという関係からいたしまして、二十万円ではとうてい追いつかないという事情が各所にあるようでございます。もっとも、この主務大臣指定の分も、時によってはといいますか、必要な場合は百万円まで融資ができるという道もあるそうでありますから、御配慮によりましては二十万円と限定しないで相当多額な金額まで融資ができると思うのでございますが、この問題に関しましては、特に今回の災害果樹地帯という関係で、従来の二十万円程度のものでは追いつかない部分がありますから、こういうものに対しましては一つ金額を必要程度に増してもらう、こういうことをぜひ御配慮願いたいと思うのでございますが、よく農林省内におきまして御研究下さいまして、その点一つ含んでいただきたいのでございます。  それから、この果樹の場合の植栽だとか、あるいは保育だとか、こういうような問題に対しましては、ちょっと考えまして、農林漁業金融公庫の資金はどうも無理でないか、かように考えるわけでございます。今日の果樹の重要性から考えまして、私どもといたしましても、どうしても果樹振興法という法律を作って思い切った指導奨励の道を講じなければならぬ、こう考えておりますから、この法律ができましたら、この植栽あるいは保育というような問題が包含されると思うのでございますけれども、これは今度の災害にはとうてい間に合わないのでございます。そこで、私どもといたしましては、天災法で一応この金をまかなっておいて、そして果樹振興法ができました際はこれに切りかえることができないかどうか。結局、果樹振興法がねらっておる資金というものは低利長期の資金でございますが、天災法の場合に短期であることが非常に困ることでございますから、何か法律の中にそのことをうたったらいいかどうか、まだ研究してみなければならぬと思うのでございますけれども、今この振興法でこの金をまかなうということはどうしても無理でございますから、もし農林漁業金融公庫でまかなえぬとすれば、これは結局天災法で一時融資して、そして法律ができた場合にきりかえる、こういうようなことが一番筋道が立つと思うのでございます。この点もぜひお考えを願いたいと思うのでございます。
  21. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 果樹は、今回被害の中心地帯に相当ございまして、被害もまことに激甚のようでございます。その対策といたしましても特に考慮しなければならぬというふうに考えておりまするが、ただいまその施設被害につきましては公庫の災害復旧資金を融資することを考えておる次第でございます。また、そのうち特定の施設につきましては、たとえば、施設というよりは、広い意味の施設ですが、苗木だとか、肥料だとか、あるいは植栽のための雇用労賃というようなお話の点につきましては貸付対象になっておらないのでございますが、さようなものにつきましては、ただいまお話もありましたが、天災融資法に基きまする資金の貸し出しをただいま考えておるわけであります。その跡始末といたしまして果樹振興法というような御構想でございまするが、果樹振興法につきましては、ただいま農林省におきましても検討中でございます。皆さんとよく相談をいたしまして成案を得たい、かように考えておる次第であります。
  22. 田口長治郎

    ○田口委員 大体被害農民に対する金の問題について今まで触れた次第でございますが、第二の問題といたしまして、一日も早く復旧しよう、この問題でございますが、この問題に対しまして、一番大事なことは、査定を早くしていただきたい、こういうことでございます。緊急査定現状におきまして大体各地ともに終っておりますか、あるいは今まだ終っていないような地方もあるのでございますか、この緊急査定のお答えをぜひ聞きたいのであります。
  23. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 査定につきましては、ただいま鋭意やっておりますが、もうできたというふうに承わっておる地方もあります。これは、あるいはきょうとかあしたとか、私どもの方へ御報告があろうというふうに考えております。なお、自余の地方につきましても、できるだけ御趣旨に沿って全体が早く完了するように、かように考えております。
  24. 田口長治郎

    ○田口委員 この復旧最初はとにかく査定にあるのでございますから、これは一つぜひ急いでいただきたいのでございます。  第二に、この復旧に当りまして、従来大蔵省あるいは会計検査院方面では原形復旧ということに非常にこだわっておったわけでございますが、ここ二、三年、このからがある程度破れまして、関連工事関連事業として、ある程度改良事業も加味する、こういうような方向にいっております。しかしながら、このわずかの関連というようなことで復旧をいたしましても、またすぐこわれてしまうということが現状であるのでございまして、私どもは、どうしてもこの災害復旧というものは効用復旧でなければいかぬ。役に立つ復旧でなければいかぬし、また災害を繰り返すような復旧ではいけない、こう考えるのでございますから、この関連事業費を、百分の七だとかなんとかいうようなそういうけちな金額でなしに、一つ相当増額をされまして、ほんとうに効用復旧ができるような処置を講じなければ、これはいつまで繰り返してもあとからあとからと災害が続くのじゃないか、こう考えるのでございます。いろいろ大蔵省との関係もありましょうけれども、大臣としては、原形復旧のからをようやく破ったのでございますから、今度は効用復旧ということに勇敢に進んでもらいたい、こう考える次第でございますが、この点につきましてはどうお考えでございますか。
  25. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 現在の法制のもとにおきまして、関連というような意味合いにおきましても、改良を含めた意味の復旧を相当手広くやっておるわけでございます。しかし、これが解釈の面でどうも効用復旧というような御趣旨に沿わない場合も出てくるような状況があるのでございまして、その際の措置をどうするか。国家的に見て、私は、こういう際に災害に関連のない部分なんかも含めまして復旧をやるというようなことが意味が重いということが多々あるのではないかというふうに考えまして、ただいま、検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  26. 田口長治郎

    ○田口委員 一どきに完全なる効用復旧ということはできませんでしょうけれども、その方向に沿うて一つ努力をしていただきたいのでございます。  それから、次に問題になりますことは、いつの災害にでもつきまとうのでございますが、小災害の問題であるのでございます。今度の災害で現地を見てみますと、河川改修を下流の方からずっと上流に向ってやっておる、それで、上流はまだ改修ができないで、下流だけが改修ができておる、こういうような事情からでございますか、改修のできたところは、まあ例外的に災害をこうむったところもありますけれども、比較的に少いのでございまして、上流地帯の河川改修のない部分災害、こういうようなところが非常に多いのでございます。従来、私どもは、かりに十万円以上と十万円以下とに分けます際に、十万円以上の災害に対しまして十万円以下の災害というものは一割程度見ておけばいいんじゃないか、こう考えておったところが、今度の災害では、村によりましては、三〇%、四〇%、あるいは五〇%にも達するというような小災害が非常に激甚であるのでございます。今の状態河川改修等をやっていきますと、日本の農地農業施設災害はむしろこの小災害ということが普通の状態になってくるのでないか、こういうふうにも考えられるくらいに小災害が非常に多くなっておるのでございます。御承知の通りに、小災害復旧ということにつきましてはいろいろ問題がありまして、あるときは起債特例を出し、あるときは三万円まで切り下げてやっておる、あるときは水系によって関連をさしてまとめてやる、こういうようなことをやっておるのでございますが、小災害が日本の災害の常態になるとすれば、小災害に対する復旧の方式をどうしてもはっきりときめて、そうして災害ごとに小災害で騒がれるというようなことがないような、そういうような処置を講じたいと思うのでございます。根本問題はあとでいろいろ樹立するといたしまして、今回の問題に対しましては、やはりどうしても狩野川の災害と同じような起債特例と、そうして少くとも災害地間の距離をある程度長くする、こういうような問題だけは今回の災害でこの小災害の問題はそこまで解決していただきたい、こう考える次第でございますが、この点に対しまして、大臣はどうお考えでございますか、御答弁願いたいと思います。
  27. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 小災害は、災害が小さいけれども、その復旧というような意味合いにおきましてきわめて重大問題であるということはまことにお話の通りでございます。二十八年にはその小災害に対しまして補助を行う範囲をそこまで拡張するというやり方をいたしましたが、なかなかいい成績でなかったというようなことにもかんがみまして、昨年の伊豆災害に当りましては、地方団体に起債をしていただきまして、地方団体から資金を放出するという方式をとり、それに対して政府が元利の補給をいたした次第でございます。今回の災害につきましても、小災害は非常に被害が多いのでございまして、地方団体に一つお願いをいたしまして起債をいたす、その跡始末につきましては政府におきましてその元利を補給するというふうな昨年度式のやり方というものを考えておる次第でございます。これも近日閣議において正式に決定いたしたい、かように考えております。
  28. 田口長治郎

    ○田口委員 大体私の総括的な質問をこれで終りたいと思いますが、建設大臣と自治庁長官の質問だけ保留しておきます。
  29. 吉川久衛

    吉川委員長 中澤茂一君。
  30. 中澤茂一

    中澤委員 今回の七号台風について、岸総理、あなた、村上建設大臣、三人が本県と被害甚大な山梨県を御視察になられました。まことに御苦労さまでございました。ただ、御視察になっただけでは意味がないのであります。そこで、この視察の過程においていろいろ記者会見をされておられる。特にあなたがこの中でおっしゃっておることを全部誠意を持っておやりになれば大体間に合うのです。そこで、どういうことをおっしゃっておるのか。これは新聞記事で、あなたが違うなどと言われますと私困りますから、一応あなたのおっしゃったことをここで再確認しておきたい。  その第一は、天災法の発動は目下手続中で、九月初めに発動できるだろう、同法によると融資ワクは被害調査が最終的にまとまってからきめるが、必要な分は出すつもりだ、また、自作農維持創設資金の融資も、同資金に相当の余裕があるので十分出したい、これがまず第一。間違いありませんね。
  31. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 間違いなし。
  32. 中澤茂一

    中澤委員 第二には、十万以下の小災害復旧個人の小災害復旧も含めて地方団体の起債によって行いたい、市町村に責任を持ってもらうわけだが、この起債の元利償還は特別交付税ではなく国で補助することになろう、このため立法措置は償還時期までに行いたい、——これは立法措置を行うということを言明しておるわけですね。  それから、その次には、被災農家で飯米確保もできない者には配給価格より安く飯米を配給するよう立法措置したい、——これも立法措置ですね。  それからまた、被災農家の予約前渡金の返済については好意的に考慮する、——この好意的の意味は、またあとで質疑でもって、どういうふうにやるかということを聞きますが、その次におっしゃっていることはこれはこの前段に岸総理が言ったことをあなたが受けておるわけです。岸総理はどういうことを言っておるかというと、——今回の災害は特に果樹園芸の風害がひどかった。山梨県のブドウ長野県のリンゴ果樹園芸の災害がひどかった。それに対して岸総理は、長野県では果樹被害が大きいようだ、果樹被害農家の比重の増大と関連して共済制度を恒久的に考慮する必要がある、これを岸総理が言っているわけです。要するに果樹の共済をこれから恒久的にやろうということを総理は言明しておるわけですね。それをあなたが受けて、その次に言っているわけです。果樹災害については、天災法自作農維持資金による融資のほか、施設復旧などのため農林漁業金融公庫からの融資措置を行う、また適当な助成も行いたい、果樹共済制度については全国の果樹栽培者の意向を聞いて研究する、——これは岸総理もあなたも果樹の共済については研究してやるということをここではっきり言っているわけです。  それから、その次にあなたが言っていることは、国有林の風倒木は極力復旧の目的に沿うよう使用する、たとえば地方団体に価格を安くして払い下げるとか、個人に年賦払いで払い下げることも考えている、——個人に年賦払いも考えていらっしゃるのですね。また風倒木整理に被害者に参加してもらうなど救農的な考慮もしたい、これだけのことをあなたと岸総理——まあ総理はほんとうはぜひきょう出てもらって、このほか総理の発言に対していろいろお聞きしておかなければならぬ問題があるのですが、きょうは都合が悪いというから、いずれまた他日に岸さんのおいでを願ってじっくり検討したいと思いますが、本日はほんとうは全大臣に出てもらっていろいろ根本的な問題を検討したかった。それには、厚生大臣も必要ですし、建設大臣、全大臣が参加してもらって、根本的にこの災害対策について考える必要がある。今のようなことを連年繰り返して、われわれも連年休会中にこういう問題を論議しているというのでなくして、もっと根本的な方策を政府は持たなければならぬのじゃないか、こういう点を私は考える。それにはきょうは農林大臣しかおりませんからよしますが、そこで、われわれは、災害のあとで実は二日間小委員会を開いて、現行法の不備な点、立法措置を要する点、そういうものを本日午前中まで検討したわけです。それについてきょう専門委員室で作ったものをお持ちになっているかと思いますが、この順序で質問していきますから……。
  33. 吉川久衛

    吉川委員長 中澤君に申し上げますが、大臣は四時からやむを得ざる用事があるそうでございますので、その点お含みの上でお願いいたします。
  34. 中澤茂一

    中澤委員 この点、どうせ質疑は一時間や二時間や三時間ではとても終りませんけれども、時間一ぱいまで質問することにいたします。ただし、あなたが実のある答弁をしてくれれば、これは大体二十分ぐらいで片づきます。われわれが小委員会でまとめたこの案を、よろしい、全部おれがのんだ、こういうことになれば、もう五分でもいいのです。しかし、なかなかあなた一人ではのめない問題もあるので、必要に応じて徐々に問題を検討していきたいと思います。  ます第一に、先ほど田口さんもちょっと質問しておられましたが、現在の法律の中においては原形復旧を原則としており、防災的な施設については復旧事業予算の八%、一般的な施設についてはその五〇%の範囲内で災害関連事業を認めているが、これを次のように改める必要があるのじゃないかというのが小委員会の一つの結論であります。それは、第一に、行政上及び予算上災害関連助成事業費を別途計上する必要があるのじゃないか、そして復旧事業予算と同額までの改良事業を認めていかなければならぬのじゃないか、こういうことなんです。この現在の関連助成事業費として認めておるものに対して、一つ別途な考え方が必要じゃないか、これに対してはどうですか。
  35. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほど田口委員の御質問にもお答え申し上げました通り、ただいまの制度で、効率主義というか、金の使い方という見地から見まして、果して適当であるかどうかという点につきましては、なお検討してみたいと思っております。ことしの予算はそうはいっておりませんが、来年の予算には改良のための予算も要求しようというので、そういうふうな申し入れを大蔵省に対していたしております。
  36. 中澤茂一

    中澤委員 それについて、承わるところによると、建設省においてはこういう一つの方式がもはや打ち立てられて実際実施されておるというのです。だから、建設省がそういう方式でやっておる以上、当然農林省においても建設省と同様な方式というものをこの際打ち立てる必要があるのじゃないか。小委員会としては、原形復旧主義を改良復旧主義に改める、まずこの大原則が前提でありますが、その前に、やはり、関連事業は、別途ワクというか、特別計上額が必要ではないか。それに対して、農林大臣として、そういう方向で強力に進めるという意思があるのですかないのですか。
  37. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 さような方向で努力しようと思っております。
  38. 中澤茂一

    中澤委員 それでは、第二の問題に移りますが、一つの施設について、災害にかかった個所が五十メートル以内の間隔で連続しているものにかかる工事は一カ所とみなすことに現在はなっておる。しかしながら、これは法律を改正して百メートル以内に改める必要があるのじゃないかというのが小委員会の結論です。現在その小災害にひっかかるのを百メートル以上に改めると、大体七〇から七五%くらいまでが小災害の中に入ってくるのじゃないか。現在の状況においては、大体五十メートル以内だと六〇%くらいにとどまっておる。だから、これを百メートルに改めて、小災害を七〇から七五%までこれで救済する必要があるのじゃないか。これももちろん百メートルに改めるので法律改正ですが、いかがですか。
  39. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま五十メートルということになっておるわけでございますが、先ほども申し上げましたが、私どもは小災害につきましては地方団体に起債をさせるということを考えておるのです。そういうことになると、この問題の趣きもやや変ってくるのではあるまいかというふうに考えておりますが、なお、五十メートルでほんとうに救い切れないかどうかという点はよく検討してみたいと考えております。
  40. 中澤茂一

    中澤委員 それは、事務当局、課長さんたちや何かに来てもらって、きょう午前中まで三日間にわたっていろいろ検討したのですが、それは、あなたが御研究にならなくても、現在の五十メートルだと大体六〇%以内、これを百メートルにすると七〇ないし七五%まで救えるということは事務当局がはっきり言っておるのです。だから、これは法律改正ですから、結局大臣がおやりになる意思があるのかどうかということがやはり問題なのですが、あなたはそういうふうに努力なさるつもりか、それとも今の五十メートル基準で六〇%程度でとどまっておるのが妥当であるとお考えになるのか。
  41. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 小災害に関しまする地方団体を通ずる救済措置、これとの関連もありますので、あわせて検討してみたい、こういうふうに考えております。
  42. 中澤茂一

    中澤委員 今回の災害は、私も長野は御案内申し上げ、山梨県は私も行ってつふさに見ましたが、非常に局部的にひどいということは大臣も視察になってよく御承知の通りです。さっき田口さんが六号台風の九州の問題を出しましたが、これも承わると小災害が非常に多い。この小災害の問題はいつもいつもこの委員会で問題になっておるのですが、これに対しては抜本的に考える必要がある。今回の災害はそういう局部的にひどいのであるから、二十八年災害と同じようにこれを三万円まで引き下げる必要があるのではないか。ところが、三万円まで引き下げると、査定能力の問題とかいろいろな問題があるわけなのです。だから、そういう面も勘案するならば、若干譲歩したとして、今回の災害においては五万円まで引き下げてやろう、こういうことが大多数の小委員の皆さんの意見でもあったわけですが、これに対してはどうですか。今回の災害は、二十八災のときよりか若干上りますが、一つ五万円まで引き下げようということはいかがですか。
  43. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 補助対象額を引き下げてやっていくという行き方は、二十八年災害でやり方としてどうも適切じゃないんじゃあるまいかという大体の結論を私どもは持っておるわけです。それで、むしろ同じ結果になるわけでございますれば、補助対象額の引き下げでなくて、地方団体が起債をいたしまして、そこから復旧資金を出す、その地方団体の元利につきまして政府がこれを補給する、この方式がむしろ適切ではあるまいか、さように考えております。
  44. 中澤茂一

    中澤委員 大臣はそう言って逃げられますが、それならば、この昭和三十三年七月、八月及び九月の風水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例等に関する法律、これの基準が問題なんです。あなたも御承知のように、この基準というものは、復旧工事費が一千万以上になる被害市町村のうち、小災害復旧に充てるため農地は五〇%、農林水産業施設は六五%に相当する額の範囲内で計算した合計額が、五大市にあっては一千万、人口三十万以上の市は五百万、人口十万未満の市は二百万、その他の市町村は百万円をこえる市町村について起債を認めるとなっているでしょう。あなたはそうおっしゃるけれども、これではまらなくなってくるのです。あなたがそういうふうにおっしゃるならば、この基準を、一千万を五百万に引き下げ、五百万を三百万に引き下げ、百万を五十万に引き下げるというふうに、この基準額を引き下げなければ当ってこないのです。これで縛られてしまうのですよ。そんならば、起債を認めるのなら、この法律改正をするという御意思があるのですか。一市町村において百万以上の小災害にならなければ適用しないということになれば、これはなかなか問題ですが、これでひっかからないために小災害が問題になってくる。だから、あなたがそうおっしゃるならば、この額を全面的に引き下げるというお考えなら理論は一貫しています。これを引き下げるということがなければ一つもそれは理論が一貫していません。こっちの法律改正をやる、だからこっちはそれで一つ起債でおまかせ願いたい、そのかわりこの基準の引き下げをやりましょうということをはっきり言明して下さい。
  45. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは去年の地方債の起債の特例に関する法律の規定に書いてあるわけです。お話のようにこれで制限的条項であるというふうにはなっておるわけでございますが、これが、法律全体といたしまして、ただいま、どういうふうにいたしますか、検討いたしまして結論を得たい。しかし、やる方式といたしましては、補助金でこまごまやるよりは、一括して市町村にお願いするという方法が実際的であり、また効率的である、かように考えておるわけであります。
  46. 中澤茂一

    中澤委員 それはさっきの御答弁でわかっているのです。だから、こっちの法律を法律改正をやって額を引き下げて、そして適用範囲を拡大していくというのなら話はわかるのです。そんならそれでいいのです。別にそれが悪いのじゃないのです。そうすると、このワクで縛られているために、小災害市町村がみんなひっかからなくて困っているわけです。だから、このワクの引き下げをやるというのなら、それでけっこうなんです。それをやっていただくならそれで申し分ありません。しかし、片方でそういうワクをはめておいて、起債だけ認めるといっても、ひっかからなければ何にもならぬでしょう。そういうことじゃないでしょうか。だから、こっちの法律を改正して、この総額のワクを引き下げましょう、市町村の場合は五十万円まで認めましょうということになれば、これはそれで私はいいと思うのです。だから、そういうふうに法律改正をなさる意思があるのかないのか。
  47. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その細部の点につきましては、私一人では答弁できません。なお相談の上答弁いたします。
  48. 中澤茂一

    中澤委員 で、この問題は、岸総理にも出ていただきまして、この法律改正をやるかやらないかは一つ全大臣に出ていただきまして再び検討することにいたしましょう。  それから、この問題と関連して、被害の著しい市町村の指定基準というものが非常に厳密過ぎる、どうしても指定基準を緩和してもらわぬ限り、なかなかこれに対してはひっかかってこない、こういう問題も具体的に出ているわけです。そこで、さしあたり行政措置をして、——臨時国会は開かないと岸総理も長野で言明しているわけですから、それについて、あらためて、昭和三十四年台風第七号等により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律というようなものをお作りになる意思があるかどうか。こういうものをお作りにならぬとすると、今言った問題というものは解決しないわけです。さもなければこういう法律を作って特別な措置をする、こういうことか、今言ったこの法律の改正をやるか、いずれかの道をとらなければ、現行のままでは小災害は救われないというのが現状なんです。だから、これに対する指定基準の緩和と、それからそういう特別立法をお考えになっておるのかなっておらないのか。
  49. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 法律の適用につきましては、もとよりこれは立法事項でございますからお願いをする、こういうふうに考えております。
  50. 中澤茂一

    中澤委員 ちょっと事務局に伺いますが、この指定基準というものは一体どういう細目の上に指定をしておるのですか。
  51. 伊東正義

    ○伊東説明員 昨年小災害を取り上げまして起債の特例をやりましたときは、指定しましたのは、復旧事業費が、三万円以上の事業費の合計、これは十万円以上も全部入れまして、要するに復旧事業費が全部で一千万円以上になるという市町村をとったわけであります。というのは、実は、二十八災の場合の実例を調べたのでございますが、これはそういう小災害のあるような市町村被害復旧額がその当時大体九百万円になっておりました。大体このくらいの基準で拾えばおそらく入ってくるだろうということで一千万円というものを指定したわけでございます。
  52. 中澤茂一

    中澤委員 この前事務局の課長さんかだれか来て小委員会でいろいろ聞いたが、さっき言った百メートルの問題ですね。これを法律改正して延長した場合、大体七〇%から七五%くらい入るだろうということをどなたか言っておったのですが、その点はどうなんですか。
  53. 伊東正義

    ○伊東説明員 私、小委員会には出ませんでしたが、五十メートルを百メートルにした場合に何十%までいくかという問題でございますが、これは、私の方の課長が出ておりましたので、その席であるいは六十なり七十という数字を申し上げましたならば、大体私もその程度でいくんだろうというふうに思っております。
  54. 中澤茂一

    中澤委員 それでは、もとへ戻しますが、指定基準の緩和について、これは現地査定の問題ですから、現地と査定官との間にはいろいろ問題があるのです。これを若干被害激甚な地帯に対しては緩和していこう、基準は基準でよろしいが、しかし取扱い上若干緩和していこうというお考えはありますか。
  55. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、ただいまお話しの行政官と農家の間に意見が食い違っておるんだというふうな実情について詳細を存じませんが、とにかく、三十四年地方債の起債の特例の法律を出しますので、その一環でございますから、その一環の問題としてお答え申し上げます。
  56. 中澤茂一

    中澤委員 それでは次の問題に移りましょう。いろいろ小委員会で検討した中で大体行政措置でできるものとして解決した問題もあるのです。それは、たとえばワサビの問題がある。その災害復旧は例の伊豆災を適用する、これは行政措置でやれましょう。それから、「かんがい用水確保のため被害農業者が共同して設置した施設のうち、河川の仮締切り、水路及び井戸の掘さく並びに揚水機の賃借等に要した経費は、応急復旧事業費として暫定措置法の適用を受けるものとする。」、この中で問題になったのは井戸の掘さくです。これは、山梨県に行った場合、井戸を掘らなければ、川があまり深くなってしまって、揚水ができないという個所がある。そういう地帯の井戸の掘さくについては暫定措置法で適用していこう、そういうことも行政措置で一応できるということが事務局の方から言われておる。これは大臣も一応確認をしておいていただきたい。  その次には、農業協同組合等の所有する共同利用施設災害復旧事業に対する現行補助率は二〇%であるが、これを法律改正して五〇%にしてくれという要求が非常に多い。特に、長野県の場合、非常に単位農協がやられておる。大臣も視察してわかったでしょうが、長野県では経営共済というものを農協が自主的にやっておる。しかしながら、今二千八百万ばかりある経営共済を総ざらいして払ってもこれは間に合わない。被害額で約六千万ぐらいに上る。これはどうしても補助率の引き上げをやってもらわない限りはどうにもならぬというのが現況なんであります。これは、先ほど午前の小委員会で官房長が、大体、二〇%というけれども、大蔵省の考え方としては、そういう事業主体に一体補助するのはおかしいというのが基本的な考え方だ、こういうことを言われておる。じゃ大蔵省にお伺いしますが、これは大臣が来てからと思っておったが、せっかく相澤主計官がおいでになっているのだから、一つくらいお伺いしておかないとあなたの立場もないと思ってお伺いしておきますが、根本的な考え方そのものはどうなんですか。事業主体に補助を出すべきではないという根本的な考え方はどうなんですか。
  57. 相澤英之

    ○相澤説明員 共同利用施設災害復旧事業の予算は、私は直接の担当でございませんので、出がけに宮崎主計官とその点について相談して参りましたが、これは、もともと、今お話がございましたように、こういう協同組合の利用施設災害復旧等について補助しない形になっておったのが、昭和二十八年以来ですか、補助対象になりまして、二〇%の補助率でやるということになっております。従いまして、考え方の基本には、今中澤委員のお話がありました通りの考え方があるわけであります。
  58. 中澤茂一

    中澤委員 それはちょっと話がおかしいじゃないですか。事業主体に補助すべからずという基本的な考え方があるなら、なぜ二〇%出したのですか。二〇%というものが、その考え方がどこかで破綻を来たしたから二〇%になったのでしょう。どうなんですか。
  59. 相澤英之

    ○相澤説明員 ざっくばらんに申しますと、まだ気持にそういうことはあるわけであります。ただ、二〇%の補助というのは、諸般の情勢上こういうことも認めることになったということであります。多少筋が通らぬこともありますけれども……。
  60. 中澤茂一

    中澤委員 それじゃ、基本的な考え方というものは、どうなんです相澤さん、くずれたということなんでしょう、二〇%というものを出したということは。事業主体に補助すべからずという基本線がくずれたから二〇%出たのでしょう。そうなると、これは明らかに事情による原則の変更を大蔵省は認めておるということじゃないですか。どうです。認めておるということなら、この法律によると、農協の施設だけは二〇%、あとは漁業六五、一般林道五〇、奥地林道六五、林地六五、農地が五〇、農業施設が六五、全部五 ○以上になっているのですよ。協同組合施設だけ二〇というのは、一体法律の建前から言ってアンバランスじゃないですか。どうですか。
  61. 相澤英之

    ○相澤説明員 農地というような個人の財産、あるいは共同利用施設のごとき協同組合の所有する財産の被害物件につきまして補助するかどうか、補助した場合に補助率をどうするかという問題は、これは私のような農林関係のしろうとがここで申し上げるにしましては非常にむずかしい問題が多いと思います。ただ、考え方としましては、やはり、林道とかそういうような施設につきましては、農業共同利用施設のようにいわば収益的な考え方がとれない、従いまして、こういったものにつきましては、補助するにいたしましても共同利用施設よりも高い補助率をとる、それじゃ農地と共同利用施設についてはどうかということになりますと、これはやはり、農地という個人の持っております施設災害復旧については、なかなか融資を仰ぐにいたしましても困難がありますし、その点で組合が持っております共同利用施設などとはおのずから違うところがあるのじゃなかろうかというふうに考えておるわけであります。ただ、農地やその他が五割以上の場合になぜ共同利用施設だけが二割でなくちゃならぬか、二というのはどこから出てきたかということになりますと、私は当時やっていたわけではないのでありますが、大体その辺のところでほかのものと——補助率の問題は、二十がいいか三十がいいかということになりますと、一つの尺度があってはかるという問題でないと思いますので、この点は非常に説明として困難だと思うのでありますが、さように考えております。
  62. 中澤茂一

    中澤委員 これはとてもあなたに聞いてあなたから御答弁を求めても満足がいかないのはわかっておるが、いずれ大蔵大臣に出ていただきまして根本論から少しやってみなければいけないですが、農林大臣はどう考えているのですか。
  63. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは、私も、二〇%がどこから生まれてきたかということは承知いたしませんが、想像するに、大蔵省と皆さんと、補助すべきである、あるいはこれは事業団体であるから補助はできないのだ、これを補助すると中小企業団体のいろいろな設備との関連がどうかというようなことでやった結果、妥協でこういう二〇%というものが出てきておると思うのであります。農協につきましては、上部団体等もありまして、資金の方におきましては事を欠かぬとは思いますが、二〇%という補助率が突如としてここに出てくるのはきわめて異例なことでもありますので、よく検討してみます。
  64. 中澤茂一

    中澤委員 検討しなくても、あなたとしては、他の災害の法律から言って全然均衡がとれていない、当然これは最低の農地の五〇%まで引き上げるべきだという答弁を私はお願いしておるので、検討はけっこうですが、五〇%まで引き上げて農地とのバランスをとらぬと法律の建前から言っておかしいが、どうですか。
  65. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは、暫定法ができましたときいろいろそういういきさつがあって、おそらく妥協ということだったのじゃないかと思うのですが、皆さんも御承知の通り、この暫定法はずいぶんもんでできた法律でございます。さようなことで、暫定法がどういういきさつでこういうふうになったのかというようなこともよく調べたりいたしまして結論を出したいと思います。
  66. 中澤茂一

    中澤委員 それは、めった食い下るようだが、やはり結論を出さなければいけない。事実、今年の七号台風によって——先ほど長野県の状況を申し上げたのですが、経営共済を自主的にやっておって、農協中央会が音頭をとって、各単協が集まってやっており、これに対して、県も、これはいい方式だというので補助金を年に四百万円出しておる。もし災害があったとき農協の建物も補助しなければならぬ、いい方式だというので、県も毎年四百万円ずつ経営共済に対して助成しておるのですよ。それでもなお間に合わぬのです。今次の災害は約六千万現在あるのに、二千八百万くらいしかない。こういう大きな災害が今後も必ず来ると予想しなければならない。経営共済がないところがもしこういう災害を受けたならば、えらいことです。どうにも単協は立ち上れない。倉庫の屋根から事務所の屋根からみんな吹っ飛んだところをあなたも見たでしょう。上高井郡の仁礼村などの農協は潰滅状況です。こういうものがあっても、なおかつ困難なんです。補助率を引き上げて、各県が自主的に経営共済をやっていくならば、相当大きな災害があっても不振農協などが立ち上っていけるという体制ができるわけです。これはあなたの一存にもいかぬ、大蔵大臣と話をしなければあなたの一存でもいかぬだろうが、とにかくあなたの考え方としては引き上げるために努力をするという御答弁をいただきたい。
  67. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 よく政府部内において検討いたします。
  68. 中澤茂一

    中澤委員 この問題は大蔵大臣といま一度話をしましょう。  それから、その次は開拓問題なんですが、山梨県なんかに行っても実に悲惨な陳情を受けているわけなんです。この開拓地におけるところの農舎、畜舎、共同利用施設等については暫定措置法の適用上これを農業用施設とみなすよう同法の改正を行なったらどうかというのが小委員全部の意見です。どうですか、これは法律改正をやって、農舎、畜舎、共同利用施設、これらについて農業施設とみなすというふうな法律改正をやろうというお考えですか、どうでしょうか。
  69. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 開拓者が今日の農業の中におきまして非常に困窮した立場にあるということは、私も重大なる関心を持っておる次第でございます。今後農林省におきましては開拓地の営農安定という面には最大の努力を傾けていきたい、かような考えを持っております。さようなところにこういう災害が出てきたので、まことにこれはお気の毒な次第であるというふうに考えておるのでございまして、できる限りの措置をいたしたい、さような考えでおります。現在の法律によりましても、住宅災害につきましてはいろいろの制度があるわけでございまするが、今お話しの農舎、畜舎などにつきましては補助の問題はありませんので、私は早急に融資の方をやっていきたいと思います。融資後の処置につきましては、これは来年度の予算の一環といたしまして、何とかして開拓農民が安定するように一貫した施策をとりたい、かような考えを持っております。
  70. 中澤茂一

    中澤委員 日本の開拓政策は終戦後全部失敗に終った。その国の開拓政策の失敗に終ったものを今は全部開拓民にしわ寄せをしておるのです。その後やられておるところの国営開墾というものは非常な成績をあげておる。ことしの北海道のパイロット・フアーム、あるいは昨年の青森の上北開墾、あるいは八郎潟干拓、こういうものをずっと見ておるが、これは成功しておる。成功する可能性は八割あると見ていい。ところが、その前の開拓政策というものは全部失敗しておる。その失敗の犠牲になっているのが今の開拓者なんです。だから、こういう災害にあえば何としても立ち上ることができないのです。だから、どうしてもこれに対しては、今の農舎や畜舎や共同利用施設暫定措置法の適用の中に入れることが絶対に必要である。それがまた国の当然の義務であると思う。国の政策の失敗がこういう結論を出しておるのですから、この点については十分政府間で意見調整して、できるならばこの暫定措置法の改正を行なって入れてもらいたい。それはあなたも最善の努力をして検討すると言うから、この程度にしておきましょう。  その次には、開拓地災害住宅復旧のための補助は、入植後五年以内の者、または初期入植者で粗収入二十三万以下の者、あるいは特別振興組合員に限定されておる。この基準によれば大部分の被災開拓者は該当しないのです。だから、それに対して大部分を救済し得るよう条件の緩和をはかったらどうか。特にこの中で一番問題になるのは、やはり、入植後五年、それから粗収入二十三万、このワクが一番問題なんです。粗収入二十三万でしょう。これなどは、どんな——どんなと言っては語弊があるかもしれないが、ある程度零細開拓農でも粗収入二十三万なんか現在あるのですから、そうするとほとんどこのワクにひっかかって適用を受けないのです。だから、これは条件緩和をしなければだめだ。これは政令事項ですから、あなたが、よし、じゃあやってやりましょう、粗収入五十万まで引き上げましよう、五年をもっと延ばしてあげましようと腹をきめれば、今ここできまっちゃうのです。このくらいはいかがでしょうか、一つぐらいきめたら……。
  71. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは、ただいま申し上げました開拓者対策問題の一環としまして、熱意を持って善処いたしたいと考えております。
  72. 中澤茂一

    中澤委員 熱意とか、最大の努力とか、そういう形容詞はやめましょう。私も、実のある質問をして、抽象論で演説をぶっておるのではなくて、一つ一つあなたの考え方をあれしておる。これは行政措置できまることなんだから、きょう省議を開けばあしたきまってしまう。何億というお金を出せということじゃない。この点一つどうですか、行政措置でおやりになったら。当分の間、お気の毒だがという形容詞は抜きにしましょう。
  73. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは省議ではきまらないのです。政府としてきめなければならぬ問題ですから、ただいま政府部内においてどういうふうにするかを相談中である、さよう御了承を願います。
  74. 中澤茂一

    中澤委員 これは政令事項だから省議できまるのじゃないんですか。
  75. 伊東正義

    ○伊東説明員 これは補助要綱に基いてやっておりまして、今申されました、粗収入をどういうところに持っていくか、あるいは五年以内という問題、あるいは新開拓者の問題、こういうもの全般にわたって非常に関係がありますから、大蔵省と事務的に話し合いをしなければなりませんので、農林省だけでなく、今大蔵省と相談をしておるところであります。
  76. 中澤茂一

    中澤委員 相澤さん、あなたの方と関連があるというのですが、どうですか。あなたもおいでになったら一つぐらい……。
  77. 相澤英之

    ○相澤説明員 開拓者住宅災害復旧に関しまして従来の補助の基準をさらに緩和してほしいというお話は農林省から承わっております。ただ、どの程度にこれを緩和すべきかという点の具体的な案につきましては、今後農林省のお話を聞きまして相談したい、かように存じております。
  78. 中澤茂一

    中澤委員 農林省の事務局は、大蔵省と折衝しておるが、一体どの程度まで緩和しようと考えておりますか。
  79. 伊東正義

    ○伊東説明員 私の方では、大体、二十三万では今おっしゃいましたようにひっかかるものが出てきますので、内地で四十万、北海道で六十万というようにすればかなりの開拓者も救えるのじゃないかということで大蔵省と話し合うつもりでおります。考え方は大体そういうことであります。
  80. 中澤茂一

    中澤委員 どうですか、相澤さん、あなたが担当主計官だから、あなたがのむと言えばある程度いけるのじゃないか。内地の四十万、北海道の六十万、あなたの意見はどうですか。
  81. 相澤英之

    ○相澤説明員 私がうんと言いましても、なかなかきまるものではありません。農林省から具体的な案がありましたら、内部的にも十分相談したい、かように存じております。
  82. 中澤茂一

    中澤委員 あとまだ問題が山積しておるのですが、大臣に最後に申し上げておきたいのですが、お帰りだというから、ほんとうはこんなことで解放したくないけれども、あまり人権侵害をしてもいかぬから解放しますが、あしたも質問を続行しますから、少しこれを勉強して、これはどうするということをきめてきて下さい。さもないと、最初あなたが長野県でこんな大きいことばかり言っても、これでは人をばかにしたというもので、開拓の一つの問題でもまだケリがついてないのはどうかと思う。少くとも現地を視察してお気の毒だと思ったら、こうやってやろうと言ったことは正直に実行してやらなければ、ますます政治に対する不信を国民に抱かせるもとなんです。だから、これはとっぴなことは聞きませんから、ちゃんと今晩これを御勉強なすって、これをこうする、これをこうするというような腹をきめてきて御答弁願えれば、こんなものは一時間くらいで片づいてしまう。どうかその点は特に希望しておきます。
  83. 吉川久衛

    吉川委員長 農林大臣はやむを得ない事情で中座をされます。他の関係大臣もお見えにならなければ質疑を続けても意味がないと思いますので、明九日午前十時より開会して質疑を続行することとして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十一分散会