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1959-08-11 第32回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年八月十一日(火曜日)委員長指名 で次の通り小委員を追加選任した。  甘味資源に関する調査小委員       今井  耕君    倉成  正君       足鹿  覺君    中澤 茂一昭和三十四年八月十一日(火曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 野原 正勝君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 石田 宥全君    理事 日野 吉夫君       安倍晋太郎君    簡牛 凡夫君       高石幸三郎君    早川  崇君       松岡嘉兵衛君    八木 徹雄君       足鹿  覺君    角屋堅次郎君       實川 清之君    田中織之進君       多賀谷真稔君    中澤 茂一君       芳賀  貢君    松浦 定義君  出席国務大臣         農 林 大 臣 福田 赳夫君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君  委員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 大島 寛一君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議官)  福山 芳次君         公正取引委員会         委員      中村  清君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      小沼  亨君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         企業課長)   江夏美千穗君         総理府事務官         (自治庁財政局         財政課長)   細郷 道一君         大蔵事務官         (主計官)   相澤 英之君         農林政務次官  小枝 一雄君         農林政務次官  大野 市郎君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      須賀 賢二君         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    小林 誠一君         農林事務官         (農地局参事         官)      正井 保之君         農林事務官         (農地局管理部         長)      庄野五一郎君         農林事務官        (振興局長)   増田  盛君         農 林 技 官         (振興局園芸特         産課長)    西村 周一君         水産庁長官   奥原日出男君         通商産業事務官         (軽工業局無機         化学課長)   岡嶋 楢文君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      山内 公猷君         海上保安庁次長 和田  勇君         海上保安官         (海上保安庁警         備救難部参事         官)      竹中  薫君         海上保安官   小川 誠六君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         専  門  員 岩隈  博君 八月十一日  委員三和精一君、久保田豊君及び栗林三郎君辞  任につき、その補欠として促進君、多賀谷真稔  君及び田中織之進君が議長指名委員選任  された。 同日  委員簡牛凡夫君、田中織之進君及び多賀谷真稔  君辞任につき、その補欠として三和精一君、栗  林三郎君及び久保田豊君が議長指名委員に  選任された。 本日の会議に付した案件  小委員追加選任に関する件  農林漁業災害に関する件(昭和三十四年七月の  豪雨等による農林漁業被害対策問題)  農林水産業振興に関する件(紀淡海峡の火薬  投棄による漁業被害問題、亜麻の問題及び農林  水産物の貨物運賃問題)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  農林漁業災害に関する件につきまして調査を進めます。  まず農林省当局より七月の豪雨による山口県及び北九州地方被害並びに第六号台風による被害実情について報告を聴取することといたします。齋藤官房長
  3. 齋藤誠

    齋藤説明員 それでは、お手元に配付してございます七月豪雨による被害概況につきまして、概略申し上げたいと存じます。  七月の豪雨につきましては、梅雨前線が七月に入りまして北上いたしまして、東北、北陸地方豪雨があったのでありますが、その後、太平洋の高気圧が後退いたしましために、南下いたしまして、七月の七日には、九州南部に停滞いたすというふうな状況を呈して、その地方に雨がだんだん多くなって参ったのでありますが、その後も揚子江上流の低気圧の東進で前線が活発化し、九州北部、山陰に非常な豪雨をもたらしたというのが七月における豪雨状況でございます。  被害概況でございますが、現在までに判明したところによりますと、府県報告によりますと、農地関係で四十一億、林野関係で二十一億、水産関係で四千万円、被害は合せて約六十二億円という額に相なっておるのであります。  具体的な各種類別被害につきましては、お手元に表が出ておりますけれども、ごく概略かいつまんで申し上げますと、農地及び農業用施設関係被害は三十六府県に及びまして、この被害額は今申し上げました通り約四十一億円であります。そのうち特に被害の多かったのは、福岡県が約九億二千万円、次いで山口県が五億六千万円、宮崎新潟県が五億円、あと富山昂根、広畠、佐賀長崎が各一億から二億円に近い被害と相なっております。  林野関係被害でございますが、民有林関係では二十七府県から被害報告がありまして、それによりますと総額約二十一億円と相なっておりまして、そのうち、やはり福岡県が五億七千万円で最も被害が大きく、次いで富山県二億、秋田新潟、長野、宮崎各県が一億円というふうな状況に相なっております。  水産関係施設被害といたしましては、北海道ほか八県から報告がございまして、その総額は四千万円となっております。  さらに、農作物被害状況でございますが、これは統計調査事務所からの報告でございますが、それによりますると、被害は、田畑の冠水、流失、埋没によるものが大部分でございまして、その地域は二十六府県にわたっておるのでございます。特に被害のひどかったのは、宮城、秋田新潟山口福岡佐賀長崎の諸県が大きくなっております。被害総額といたしましては約十二億と相なっておりまして、そのうち、水稲が約十一億円と、大部分に相なっておるのでございます。  われわれといたしましては、局地的な被害激尽な地に対しましては、さっそく担当官、係官を派遣いたしまして現地状況把握に努めて参った次第でございます。  なお、台風六号における被害概況でございますが、今次の台風第六号は、八月八日に鹿児島県に上陸いたしまして、次いで北東に進み、四国南岸紀伊半島南部より東海、南関東を経て、九日に鹿島灘に抜けたのでございますが、今回の台風は、中心が大きくて、比較的に進度もおそく風も弱かったというような状況で、山沿い地帯におきましては相当の降雨量があったようでございますが、現在までの農作物被害状況について申しますならば、早期栽培における倒伏であるとか、普通災害における葉の裂傷であるとかいったような被害が大部分でありまして、冠水面積といたしましては大体二万四千町歩という程度に相なっております。  それ以外の農地関係施設災害状況でございますが、現在までに判明いたしましたところでは、約四億程度被害になっておるというのが状況でございます。それ以外の治山、林道関係施設災害につきましても、山地帯において相当豪雨を見た状況から見ますと、今後被害量が相当程度現われてくるのではなかろうかと考えるのでありますが、現在この施設被害状況につきましては調査中の段階に相なっておる次第でございます。  非常に簡単でございますが、被害概況は以上のような次第であります。
  4. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、質疑の通告がありますので、これを許します。簡牛凡夫君
  5. 簡牛凡夫

    簡牛委員 ただいま、農林省の御報告によりますと、七月の豪雨における被害が全国三十六府県にわたって、実に農林水産業だけでも六十二億の多額に上っておるということでございますが、この七月の水害九州各県、山口県などの実情を伺ってみますと、十三、十四日の両日にわたってきわめて激しい豪雨がございまして、今度のこの災害の特質は、地域はごく小地域でございますけれども、その被害を受けましたところは実に深刻な打撃をこうむっておるのでございます。先ほど被害府県からの陳情も伺いましたように、全く財政能力の乏しい町村が非常に大きな損害をこうむっておりまして、一般にごく局所的な豪雨でありましたので、大きい河川などの被害は少くて、ごく小さな河川、あるいは名もない水路などが無数に決壊をいたしております。また、各地に山くずれなどを起しまして、そのために多くの小災害を起したのでございます。そういうようなごく限られた地域のしかも深刻な被害でございますので、大きい都市などには少くて、貧弱な町村にこの災害が起っております。そういうようなことで、陳情にもございますように、これが対策としては、ぜひ国の力でもってこの窮状を救っていただく以外には道がない始末でございますので、先ほども要望いたしておりますように、第一には、ぜひとも伊豆災害適用されましたと同様の法律を制定して助成の手を伸べていただきたいということを切にお願い申し上げたいのでございますが、これに対しましても多少いろいろ問題があろうと存じますが、当局の御所信を伺いたいと思います。  なお、次には、天災法適用していただきたいという要望でございますが、これに対してどういうような御所見をお持ちでございますか。また、自作農維持創設資金融資ワクを追加していただきたいということにつきましても御所見を伺いたいと思います。
  6. 大野市郎

    大野説明員 七月の豪雨並びに台風六号の被害につきましては、詳細判明いたしておりまする段階のものを御説明申し上げたわけでございますが、ただいま、特に七月の豪雨の結果が小災害が非常に多いという実情陳情を受け、またそういう報告を受けておりますので、この点に対しましては、ちようど一年前の伊豆災害のときに、査定標準実情に即しまするように緩和ができておりますので、その実例をやはり今回も査定標準に取り入れてもらうようにいたしたいと思っております。そのときの査定標準は、五十メートル以内の小災害を従来は一つ施設ごとに計算し、五十メートル以上離れておる災害は別々にいたしたのでありますが、これが実際上は小災害を救う道にはほど遠かったものでありますから、伊豆のときの形は、農地あるいは農業施設あるいは堰堤というようなものが五十メートル以内に関連して破壊をせられたような場合には、一括しまして十万円以上になった場合には災害として拾っておりますので、そういうような実例を今回も取り入れまして、できるだけ小災害をたくさん拾い上げることができますようにいたす段取りになっておりますので、さように御了解をいただきたいと思います。  それから、天災法の問題につきましては、ただいまのところでは、実は、農作物被害状況が、大へん被害は土地々々によりましては多いのでございますけれども、全国的な規模の上におきまして天災法発動ができますかどうか、ただいまのところまだ検討中でございますので、善処をいたしたいと思いますが、この点はさように御了承をいただきたいと思います。
  7. 簡牛凡夫

    簡牛委員 ただいま政務次官から御答弁をいただきまして、いろいろ御配慮をいただいておることは大へん感謝を申し上げる次第であります。今度の災害伊豆災害の場合と少し異なった点は、一つ水路とか河川とかいうようなものでつながったところは、このワクで広げていただくことによって救われると思いますが、今度は非常に各所に大小のがけくずれを起しております。それが非常に大きな被害の数に上っております。これを同様なことで何か一つ拾い上げていただくことを御考慮を願いたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  8. 大野市郎

    大野説明員 御承知のように、小災害の問題につきましては、十万円以下の査定を受けました場合に分担が異なるのでございますが、実際上、国の手で査定をいたしまするにも、人間の頭数の上からいきましても、一時に小災害の方まで手が回りかねるのが事務上の実態でございまして、その関係で十万円というふうな線を引いてやらざるを得ない行政措置でございますが、ただいまのがけくずれなどの点でも、先ほど申し述べた原則を準用いたしまして、できるだけ拾えるところは拾う、べきであると思いますが、がけくずれの状況がどのようでありますか、局部災害でございまするから、これは実態をよく調査をしていただきまして、善処をいたしたいと思います。
  9. 簡牛凡夫

    簡牛委員 そのような御方針で、ぜひ国の援助の手を伸べていただきたいということをお願い申し上げておきます。何と申しましても、先ほどからお話し申し上げますように、全く負担能力を持ちません町村が想像に絶する被害をこうむっておるようでございますので、よく実態を御調査下さいまして、何分の御援助措置をお願い申し上げたいと思います。  なお、先ほど天災法適用につきましては、問題があるようでございますけれども、被害農家融資の道を考えていただきますという非常な急を要することでございますので、この点につきましてもなお一段の御工夫を下さいまするようにお願いを申し上げたいと思います。
  10. 大野市郎

    大野説明員 天災法の問題につきましてはなお善処をさせていただきたいと思いますが、なお、御心配の、自作農維持資金の方の問題は、一応割り当てたワクの中で操作もしておいていただいておりますけれども、そのほかに、災害のための取り置き分がございますので、これは実情に応じまして弾力性があるわけでございますから、その点も十分御相談をいたしまして、現実困窮農家の急場を救うように処置をいたしたいと思っております。
  11. 吉川久衛

  12. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政務次官は、簡牛委員の質問に答えて、伊豆災害と同じように扱っておる、こういうようなお話をなさいました。しかし、伊豆災害の場合には、これは伊豆災害だけではありませんが、昭和三十三年の六月から七月にかけての災害全般でありますけれども、これは起債特例法が出ている。それに対して、議会側の意向として、農地における小規模災害復旧元利償還の規定が挿入されて国会を通過したことは御存じの通りであります。でありますから、伊豆災害とは異なった処置がなされることに現実になるわけです。昭和三十三年の災害と同じようになされなければならぬと思うのですが、その点どうして区別をされてお離しになっているのか、お伺いいたします。
  13. 齋藤誠

    齋藤説明員 ただいま小災害につきましての政務次官から御答弁がありましたことにつきまして、補足して、われわれ事務当局考えております考え方を申し上げて御了解いただきたいと思います。  今次の災害におきまして非常に小災害が多かったということは、御指摘通り、われわれも県当局の方から聞いておるわけであります。もっとも、現在までわかりました四十一億の被害につきましては、目下全力をあげて現地査定を実行いたしておる段階でございますので、その調査の結果によりまして小災害がどの程度に発生したかというようなことにつきまして至急に調査を進めて参りたい。なおまた、昨年度における小災害状況につきましても、実は現在調査をいたしておるような状況であります。昨年度の伊豆災害に関連いたしまして、当時伊豆地方におきましては非常に小災害が多くて、これが町村財政に根本的な負担をかけるというふうな状況でございました。従いまして、一面においては、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置法高率補助改正をいたすという恒久的な措置をとりますと同時に、起債についての特例を認めまして、小災害に対する措置といたしたのであります。なお、その際、先ほど政務次官からお話がありましたように、できるだけ、十万円によってという一応のあれがありますけれども、運用面におきましては暫定法対象になり得るような措置をとって参る、たとえば、普通河川でありますならば、それを農業水路と見て、連続的な一つの行為と見て取り上げるとかいうような運用上の措置につきましては、今後とも継続してやっていく、こういう方針農地局ではとっておるのでございます。従いまして、問題は今次の災害伊豆災害との状況がどうであるかということでございますけれども、その当時から見ますならば、暫定法における高率補助の問題、これは今後も適用される、また、運用面におきましては、伊豆災害におきますと同様に暫定法適用運用上できるだけ広げて運用して参りたい、こういう考えをとっておるわけでございます。  そこで、具体的な起債方法いかんということになりますと、これは立法の問題でもございますが、御承知のように、昨年度の伊豆被害は百三十八億、一月—七月までの災害を含めますと、実に昨年度は農地関係被害も百八十六億というふうな多額被害を生じたのであります。現在までの被害は、先ほど申し上げましたような四十一億という被害でございまして、今後の八月以後における台風シーズンに伴っての被害がどのようになるかということでございますが、われわれとしましては、これを、現在までに判明した被害の中において一体小規模災害がどのようにあるかということをまずもって調べて参る、暫定法対象になり得べきものはどんどんと現地査定を進めるということのほかに、小災害になるものについては、どのような状況にあるかという実情把握についてすみやかに取り進めて参りたいということでございますが、今申しましたような昨年度の百八十六億の被害伊豆地方におきましては八月以降の被害が百三十八億という被害に対して、現在までに四十一億という被害でございますから、おのずから小災害につきましても昨年度に比べれば——比較することはいかがかと考えますけれども、まずもって状況を調べてみる必要がある。そういたしますと、本年度にかりにそのような方法をとるということになりますと、今後こういう小災害についての恒久的な措置というようなこともあわせて検討しないと、これだけについての方法ということにつきましては、なおいろいろ議論のあるところではなかろうかというふうにも考えられるのであります。従いまして、現在までのわれわれの考えとしましては、昨年度の暫定法改正、並びに今次の災害に対する暫定法運用における取扱い等によって、できるだけ現地の小災害を救済して参りたい、その後における一つ措置につきましては、今申しましたような被害実態をまず把握し、さらにまた、伊豆災害と比べれば比較的被害の少い現在の場合にどう対処するかということは、今後のこれらに対する措置をどう取り扱うかということと関連して検討しなければならないのじゃないかというのが、現在までの事務当局の率直な経緯でございます。
  14. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 災害は忘れたころにやってくる、こう言われておるのですが、しかし、それは地震の場合なら確かに忘れたころやつてくるということもありますけれども、今日のこの台風あるいはまた豪雨による災害は年中行事のようにやってきておる。でありますから、私は、臨時立法をそのときどきにするというものの考え方はあやまちであると思う。すなわち、そうしなければならぬという情勢を作ったところに今日の政治のあり方の問題があると思う。大きな災害といいましても、被害総額の問題じやなくして、その被害が、被害を受けた側の家計なりあるいは町村なり県なりに与える財政影響いかんというのが問題になるのだと思うのです。逆の理論で言えば、全国的に全部やられたのだから、共同に被害を受けたのだから、こういうことにもなる。その被害の額が大きいということで論議するのは、私は政治として聞違っておると思う。被宵を受けた側の、対象の側の家計に与える影響であるとか、あるいは市町村財政に与える影響であるとか、県の財政に与える影響であるとかいうことで、補助金の率が高率になるかあるいは低率になるか、こういう判断をされなければならぬと思うのです。この点を今まで放置されておったところに問題があるのじゃないか。でありますから、天災法の問題だって同じことである。天災法適用について、「国民経済に与える影響」というのはあなた方どういうように判断されておるか、まずそれからお伺いいたしたい。
  15. 齋藤誠

    齋藤説明員 天災法発動条件いかんということでございますが、ただいまお話の中にありましたように、われわれも、何も被害総額ということだけで問題を取り上げるとかいうことではないのでありましてそれぞれの被害程度あるいは種類によりまして、たとえば凍霜害、ひよう害、水害、干害、それぞれの被害種類によってやはり問題を考えていかなければならないというのは御指摘通りであろうと思うのであります。ただ、その際において、用が取り上げるのか、県が取り上げるのか、あるいは地方が取り上げるのか、そのいずれが取り上げることの方がより合理的であるかということもあわせて考えて参る必要があろうと思うのであります。たとえば、小災害の問題につきましては、先ほど政務次官からもお話がございましたように、十万円以下のきわめて小規模の災害につきまして、これを中央の手におきまして一々現地査定をやるようなことが技術的に果して合理的であるかどうか、あるいはそれは町村としてやった方がよろしいかどうか、さらにまた、特定の地域において発生した災害につきましては、当然その県の対策として講ずべきではないかというものもあろうかと思うのであります。そこで、御指摘になりました天災法の従来の発動経緯から見ますと、発動されておる金額は被害額として大体四十億程度になるというものが現在まで発動されているという状況でございます。ただし、本年のひょう害につきましては、過去に例のない二十二億という被害額を出しております。これまでのひょう害被害の一番最高は十三億であったのでございますが、ことしのひょう害は二十三億というような激甚な被害を見ておりますので、これは今回、天災法発動をいたしてその適用をすることにいたしたのであります。
  16. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 起債の問題につきましては後ほど質問いたしますけれども、今天災法適用お話がありましたが、天災法適用対象というのは、結局組合または被害農漁民であります。天災法というものがその資金の融通について被害農民対象としておるのですから、被害農民のその経済に及ぼす影響を主として考えられればいいのであります。なるほどそれだけを行うならば、あるいはなかなか国財政も持たないだろうという点がありまして、「国民経済に及ぼす影響」ということが書いてあるけれども、その天災法適用それ自身は個人に貸す問題であります。私は、基本的な法律の精神から言うならば、なるほど、国民経済に及ぼす影響が大であるということは、これはある一定の制限条項ではありますけれども、法律基本というものがかような被害農民対象としておるのですから、その範囲において国民経済影響というものが割合に軽く考えられていいのじゃないかと思う。私は、法律基本によって国民経済に及ぼす影響というのが違うと思うのです。そのことを一つ御考慮願いたいと思う。たとえば、労働関係法の中に緊急調整というのがある。ストライキが国民経済に及ぼす影響が大なる場合は緊急調整を発動するということがある。しかし、これは、憲法で労働基本権が与えられておるのですから、その精神にのっとっていくならば、国民経済に与える影響というのは、この制限規定というものはシビアに解さなければならぬと思う。しかし、この天災法というものは被害農漁民対象として金を貸してやるということをいたすのですから、その金を貸してやるということは、国民経済に与える影響が大であろうと小であろうと、被害農民についてはこれは同じである。でありますから、私は、そういう精神でこれを運用されるならば、今度の災害というのは当然天災法適用を受けてしかるべきだと考えるわけです。額の問題じゃないと思うのです。法律の精神がそうなんですから、国に財政の余裕があるならばこれを緩和して法解釈をされ運用されるのが適当であると思います。政務次官はこれについてどういうお考えであるか、まずお聞かせを願いたいと思います。
  17. 大野市郎

    大野説明員 天災法発動の条件につきましては、毎回部内で論議が行われ、また政府内でいろいろ折衝するのでございます。農林省の立場といたしましては、御説の通りでありまして、被害農漁村民の生活の問題が切実な問題でございますので、この要求をいたすのでございますが、多賀谷委員からもお読み上げの通りに、法の規定に「国民経済に及ぼす影響」という文句が最初に出ておりますので、農林省の立場では農民の生活ということはすぐにぴんとくるのでありますが、政府の部内においては、特に大蔵省筋からの見解が非常に厳格でありまして、国民経済に及ぼす影響と局地災害というものとの解釈の違いで、非常に折衝に苦しんでいる状況でございます。従いまして、私どもが一、二の実例で携わった経験から申しましても、この問題は抽象的に書かれてありまするだけに非常に毎回苦しむのであります。     〔委員長退席、石田(宥)委員長代理着席〕 ただ常識的に金額では割り切れないのでありますけれども、四十億くらいの金額があった場合には、ほんとうに全国の三十数府県に及ぼすような——今回も三十数府県ではございますけれども、大きい金額である、常識的にこのくらいでということで、きめ手がございません。でありますから、天災法発動の条件の解釈が政府部内で決定いたしますときに、いかように裁定すべきかということで、実は私なども一、二の実例を扱って疑問を持ってきております。ただ、毎回の形で、凍霜害の場合、二十四億前後ありましたが、幸い農林省側の主張が貫かれまして、初めてその線まで金額のタブーが切られたという実例が出ましたので、願わくはお説のごとく額によらずに被害種類によって方法を講ずべきものだという考え方でじり押しに線を広げていくようにいたしておるわけでありまして、きめ手がないわけでありますので、この点は御賢察をいただきたいと思います。
  18. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっと関連……。  どうも、政務次官答弁齋藤官房長答弁も、聞いておりますと、被害金額にこだわらないということを強調しつつ、被害金額にこだわっておると思う。今政務次官は、毎回こういう小災害対策については苦しんでいるのだと言った。ということは、こういう事態が起ったときに、いつもそのつどそのつど苦しんでおる。するならば、こういうものに対する基本的な対策というものは当然政府当局では立っていなければならぬ。立てることが当然だと思う。それを今日まで苦しい苦しいと言いながら放擲しておったということは、それは政府の怠慢ではないか。怠慢でないと言えますか。当りまえだと言うのですか。
  19. 大野市郎

    大野説明員 これは、行政をやりますときに、御承知のごとく、各省いろいろ事務折衝がございます。法の解釈は法文にありまする内容をそれぞれ主張いたしますので、被害種類によることである、あるいは額は大体これくらいというふうな、折衝に当っての大体の筋道というのは従来あたったわけなんです。その筋道に対して、農林省側では、もっとこれは緩和して深刻な局地災害を救うべきであるという主張を毎回続けておるのであります。ですから、無定見で方針も何もなくて苦しむというのでございませんで、一応四十億前後の金額と考えて、局地災害考えながら、被害種類考えながらいこうという原則はあるのであります。ですから、その幅をどこまで持っていくかという取扱いの問題でございますから、私は、一がいに無方針の政府の怠慢というおしかりはごかんべんを願いたいと思います。
  20. 赤路友藏

    赤路委員 関連だから、あまりやるのはおかしいと思うから、やらないんだが、今政務次官の言ったように、きょうこのごろこうした問題が起ったのではないのです。毎回々々行われておるのですよ。当然考えなければならぬと私は思う。  それから、もう一点は、これは対象農家が問題なのです。全体の金額が問題ではないのです。対象農家の被害実態の深さというもの、大きさというものが問題なのです。それを今多賀谷委員は質問で言っておるわけです。私は、もう少し率直に、被害を受けた被害農民の立場というものに立って政府は考えてもらいたいと思う。それだ汁です。
  21. 大野市郎

    大野説明員 農林省当局といたしましては、ただいまのお説に全く同感でございます。ただ、経済影響という問題が大きなワクとして出ますために、その方の解釈の上で、この点、私が、表現はどうかと思いますが、苦慮をしておるのでございます。なお、この点に対しては、御指摘の趣旨を体しまして、部内をさらに固めるつもりでございますから、御了承をいただきたいと思います。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政務次官政治力に待つわけでありますけれども、大臣にも一つお伝え願いたいと思います。とにかく、抽象的に国民経済影響ということを論ずべきではないと思うのです。これは被害対象が農家であり、農家に資金を融通するので、その農家の被害の深刻度というものを考えてやるのが、ものの考え方としてはほんとうなのです。でありますから、そういう法律なのですから、その法の精神からいくならば、国民経済に与える影響というものは、なるほど書いてありますけれども、それほど私はこれは厳格な条件にはならぬと思う。その押し方が足らぬというなら、それは役所の努力が足らぬ。大蔵省をそのくらい説得できないようなことなら、それは努力が足らぬ。でありますから、私は、その点を一つ押してもらいたいと思う。何か、また台風が来ればそれを一緒にすれば天災法適用になるというものの考え方が間違いだと思うのです。現在の被害の深刻さというものを考えていただきたいと思う。ここに書いてあります「天災による被害が著しくかつ」というのは、「かつ」という並立的な言葉は何も同等に見る必要はないのです。被害がその農家に甚大であれば、当然、その法律の精神からいくならば、それはかなりラフな影響国民経済に与えると解釈してよろしい。法の解釈というものはそういうように解釈すべきであると私は考える。でありますから、一つ御努力願いたいと思うわけであります。これについては、本来ならば私は大臣に来て答弁していただきたいと思うのですけれども、本日は出席されておりませんから残念ですけれども、一つ政務次官の力によってぜひ解決していただきたい、適用になるようにしていただきたい、こういうように感ずるのであります。  そこで、先ほど小規模災害の問題でありますけれども、小規模災害につきましても、国において実際調査しその復旧をすることができないからという事務的な理由だけでは、取扱いを別にするという根拠はないと私は思うのです。先ほどお話しになっておりますのは、小規模災害というのは十万円以下であるから国で一々やるというわけにもいかないからというので、取扱いの差別の根拠にされておると思いますけれども、これは技術の問題でありますから、幾らでもそれを補う方法はあると思うのです。要は、そのことを理由に、十万円以下と十万円以上を非常な差別をされておる。たとえば、かりに三割二分災害に対する国庫補助があるといたしますと、三分の一についてはその起債を認め、さらにその起債の九五%は交付税の中で基準財政需要額と見るわけでしょう。すると実際は九八・九%くらいになるわけですね。国が実際それだけ出してやることになる。ところが、小規模災害については国庫補助を全然見ない。そうして起債を見る。その起債も補助災害の九五%の三割です。二八・五%程度しか見ないわけですね。一体なぜかような差をつける必要があるのか。しかも、この市町村というのは非常に甚大な影響を受けておる。今度の災害の市町村というのは、二十八年の災害のときも被害を受けた市町村です。やっと復旧が本年終るか終ったかというところなのであります。それが今度また災害を受けた。でありますから、当然私は十万円以下のものについても政府で考慮されるべきが至当ではないかと思うのです。これについてどういうようにお考えですか、お聞かせ願いたい。
  23. 齋藤誠

    齋藤説明員 先ほどお答えしたことを繰り返して恐縮でありますが、われわれといたしましては、十万円以下の小災害につきまして、十万円以上の災害におけると同じような方法で技術的に査定をやるということにつきましては、かえって効率が悪くて、そのことによって災害の復興もおくれるというようなこともありますので、何らかの形においてこれが復旧を見るような援助をすることは否定するものではないのでありますが、国がみずからそこまで出て、十万円以上の災害におけると同じような方法現地査定を一々やり、そうしてそれに基いて補助金を出すというようなことについては、おのずから規模を考えてやるべきではないかという意味で申し上げたのであります。しからば、十万円以下の災害についてはどういうふうな方法でやるのが一番よろしいかということになりますけれども、先般の伊豆におけるような非常に被害の甚大な地帯で、しかも町村財政にも著しく負担をかけるというような状態に対しましては、ああいうような方法がとられたのでありますが、それも一つ方法でありましょう。また、今多賀谷委員お話がありましたような、一般の起債の中で交付税で見るというような方法もあるいは一つ方法であるかもわかりません。しかし、あるいはまた、農林漁業金融公庫の低利融資で見るということも一つ方法であるかもわかりません。いずれにいたしましても、私の申し上げましたのは、十万円以下の小災害は個所数が非常に多くなりますけれども、それについて一々大蔵省の財務局と現地査定を打ち合せてやるというようなことによって国がそこまで対象に取り上げるべきかどうか、これはかえって効率を阻害することになるのじゃないかということを申し上げたのであります。  なお、一般的に、国でやる事業あるいは県でやる事業、あるいは市町村でやる事業、それぞれどういうふうに判断するかということについては、いろいろ問題がありますけれども、やはり、ある特定の地域における小災害というようなものにつきましては、今言いましたような技術的な効率というようなこともあわせ考えまして、地方それぞれで解決していくというような方法がかえって現実に即した方法ではないか。また、現にそのような方法復旧を見つつあるところも多々あるわけであります。そういうような考えをとっております。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二十八年災害のときには附則の改正をやりました。そうして本法の中に入れて国が補助をするという形を出しました。これについては、先ほど能率が悪いというようなお話もありましたが、その後、昭和三十三年のときは、これは市町村に責任を持たせて、その起債を許して、その起債のある限度について元利償還をするに相当すべき補給金を出すわけです。昭和三十三年にやった方法ならば、国が乗り出してやる必要はないのだから、あなたの言う御心配は解消すると思うのです。私は、先ほど地方交付税の例を出しましたが、何も財政需要額の中に入れて見るべきだという議論をしたわけではございません。ただ、それほど差があるのだ、こういうことを言ったのでありまして、その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  そこで、私は、国が現地調査をして一々やるということがむずかしいということであるならば、ものは簡単だと思う。でありますから、そのことならば、この前の伊豆災害で行われましたような立法にすればいい。しかも、すでに農地小規模災害等の復旧については、こうすべきであるという国会の意思が出ておるのですから、私は、政府みずからこういった法案を今度も出されるべきではないか、かように思うのですが、その点政務次官はどういうようにお考えですか。
  25. 大野市郎

    大野説明員 先ほど申し述べましたように、小災害実態調査がまだ全部集まっておりませんので、小災害調査を急がせるわけでございますが、それらの実態を勘案いたしまして、先ほど事務当局考えとしましてはお聞き下さいました通りに、それらのものを待ってい二いろと相談をしたいというふうな事務の進行状況でございますために、伊豆特例のような特例法の審議、それらの点に対しては、国会の開会の期日の問題もございますので、いつどうするという事柄の言明はただいま避けさしていただきますが、それらの実態把握によりまして善処さしていただきたいと思います。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 すでに、恒久立法ではありませんでしたが、臨時立法の形でも、起債特例によって農地等の小規模災害についての元利補給という国会の意思が現われております。二十八年の災害のときは本法の附則において改正をした例もある。私は、単に今度の災害が規模が小さかったとか大きかったという全体的な問題でなくて、その町村に与えた影響あるいはまたその被害農家に与えた影響考えられて、立法の方向に進んでいただきたいと思うのです。小規模災害全体はあなたの方で出ていないかもしれませんけれども、農林関係小規模災害につきましては、私が承知しておる限りでも、先ほど福岡県の農政部長からお話がありましたように、北崎村という六百三十万円程度標準税収入しかない町村において、小規模災害だけで、しかも農地関係小規模災害だけで千七百万円からある。しかもこの町村は二十八年の災害復旧がやっと終ったという状態でありますから、私は、農家もまたその町村も立ち上ることは不可能ではないかと思うのです。でありますから、その例は幾多ございますけれども、小規模災害農地問題については、もう立法的に一応解決のめどが出ておるのですから、政府さえその腹であるならば、国会では容易に受け入れる態勢にありますし、また財政当局も納得し得るものがあると思うのです。一つ格段の御努力をお願いいたしたいと思います。答弁を最後にして下さい。
  27. 大野市郎

    大野説明員 先ほども申し述べました通り実態把握いたしまして善処をさせていただきます。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 もう一つ、実は、屋敷内に流入する土砂の問題ですが、これは必ずしも農林関係とまでは言えませんけれども、今度の被害の農家において、屋敷内に土砂が堆積した、その堆積土砂の排除というのが非常に困難であるし、また莫大な費用がかかっておるのが現実なわけです。そこで、そういった宅地内に堆積した土砂の問題については、実は昭和二十八年の災害のときには臨時立法がありましたけれども、その後そういった法律がありません。そこで、現在のところはどうにもならないのでありますけれども、考え方としては、この問題はやはりその農家並びにその受けました被害者にとりましては非常に大きな負担になりますから、何とか考える必要が将来あるのではないだろうか、こういうことを考えるわけです。これについて、事務当局でもよろしいのですが、どういう考えをお持ちでしょうか、お聞かせ願いたい。
  29. 齋藤誠

    齋藤説明員 お話がありましたように、二十八年の災害におきましては、排除に関する特殊な措置をとるということにいたしたのでありますが、伊豆災害の場合におきましても、この措置をとる必要はなかった。たとえば、農地でありますと、その上に一般的な土砂がかかり、それを排除してさらに農地復旧をやるということでもって初めから農地復旧が可能であるということで、排除に関する措置を特別にとらなかったのでありますが、これは主として市街地等における排除が中心になろうと思いますので、私の方で言えば、農地にそういうふうな事態が生じた場合に農林省では考えるということになるわけでありますが、一般的に言えば、建設省でどのようにそれを考えるかということになろうかと思うのであります。現在私の方では特にその問題については考えておりません。
  30. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 所管外のようですから申し上げませんけれども、やはり農家に今度の場合非常に多いわけです。ですから、そのことが農地復旧農業施設復旧に入るかどうかという点はなかなか困難があるのではないかと思いますが、しかし、そういった場合も何とか運用でおやりになるつもりであるか、この点をお聞かせ願いたい。
  31. 齋藤誠

    齋藤説明員 農業施設にはちょっと入り得ないと思いますけれども、なお係の方と検討さしていただきます。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、すでに宅地というものについては単に私有物であるという考えをだんだんかえてきてもいい時期が来ておるのではないか、こういうように考えるわけです。首をかしげておられますけれども、これはすでに日本の法律に出てきておる。宅地の復旧補助金を出しておるという臨時立法があるわけですね。しかもその立法は長く続いておる。それはどういうことかというと、炭鉱なんかの採掘による鉱害の場合に、家屋は私有物ですから復旧補助金は出しませんけれども、宅地が下ったということについて復旧をする場合には、これは補助金を出しておる。そのものの考え方は、すでに宅地というものは純然たる私有物件から一歩前進しておるという姿を現わしておる。これは私は今後研究されてしかるべきではないかと思うのですが、これは建設省にも関係いたしますから、これ以上言いませんけれども、そういう点はやはり今後の農家経済にも被害の場合に及ぼす影響が甚大でありますから、十分御考慮願いたいと思います。  そこで、自治庁にお尋ねいたしたいのですが、三十三年のときに起債特例に関する法律を出されたわけですが、今次の災害については特例を出す意思があるのかないのか、これをお聞かせ願いたい。
  33. 細郷道一

    細郷説明員 ただいま農林省側からもお答えがありましたように、被害実態についての把握がまだ不十分でございますので、そこまで対策として決定をいたしておりません。
  34. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、先ほど補助事業とそれから単独事業の場合の扱い方が非常に差があるということを強調したわけでありますが、それについて地方公共団体の財政を預かっておられるあなた方はどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。
  35. 細郷道一

    細郷説明員 御指摘のように、災害が起りますれば、地方団体の財政の面からは、まずそのための各種の対策費が歳出として上ります。また、被害関係者の税の減免等による歳入の減というものが上るわけであります。それらに対しましては、一般法としましては、特別交付税において、そういった場合に災害の規模に応じて一定の割合の額を交付する、また、公共的な施設の災害復旧につきましては国から補助金が出、その地方負担に対して起債措置をする、こういう一般的な考え方をとっておるわけであります。それ以外の特殊な場合につきましては、それぞれその実情に応じた措置考えるというのが従来のいき方であったわけであります。この場合に、地方財政という点から見ました場合には、原則としては、地方団体が維持管理すべき施設の災害復旧についてその財政負担を負うというのが原則的な考え方であろうと思います。従ってそういう意味から申しますと、個人の私有財産あるいは私有物件というものの復旧について、必ずしも直ちに地方団体がすべてこの財政負担をしょうべきかどうかということについては、そのときどきに応じた考え方があってしかるべきではないだろうか、私どもはそう考えておるわけであります。  今お尋ねのございました、公共的な施設について補助を受けるものと受けないものとの間に財政的な差があるじゃないかという点でございますが、御指摘通りに、その公共的なものについて国庫の負担を受けて行なった事業については、国庫負担並びに地方負担に対する起債、それに対する交付税の財政需要算入、こういったような一連の措置によって、それぞれの地方団体財政をまかなっておるわけであります。国籍の負担金を受けないで行うような公共的施設の災害復旧につきましては、その地方負担について一定割合の起債が許可される。そうしてその起債についての償還を財政需要に算入していく。その場合の財政需要に算入される率は、御指摘のように、一般の場合、公共の場合に比して三割ということになっておるわけであります。この三割を上げるべきかいかがかということも、かなり議論のある点であります。私どももいろいろ考えてはおるのでありますが、一般的に申しますと、なぜこういう差をつけておるかといった場合に対して、国庫の補助を受けて行います事業につきましては、国の各地方団体を通ずる一定の基準による査定ということが行われておりますので、その復旧事業の取り上げ方について一定の平等な基準がある、こういうふうに考えられるのであります。国庫の負担金を受けないで行われますものにつきましては、それぞれ地方団体ごとの考え方に左右される点が大きいわけでありますので、そういった点の上取り上げ方についても、あるいは復旧事業の内容につきましても差異があるということが考えられるわけであります。  いま一つには、そういった単独の災害復旧事業を地方団体が行います場合にば、その財源について必ずしもすべてが起債によるわけでございません。一部には一般財源を投入するということもございますし、一部には受益者からの負担金を徴取することもあるわけでありまして、その財源の割合というものが各団体によってまちまちであるわけであります。そういったようなことを考慮いたしまして、起債財政需要の算入については、公共の場合よりも差をつけていいのではないだろうか、こういったような考え方に立っておるわけであります。
  36. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 公共の場合、すなわち補助事業の場合には、その起債が九五%を見るということになりますと、実際は九五%よりも以上ですね。これは補助金がある。その補助金の残りの大きさによって、その残りの九五%ですから、町村負担というものは一%か二%という程度になるわけです。ところが、十万円以下の事業というのは、逆に補助金はない。起債で見る。その起債も公共事業の九五%の三割であるということですから、私は、あまりにも差があり過ぎるんじゃないだろうか、こういうように考えるわけです。市町村が維持管理をすべきものについては全部市町村で見るという建前なら別です。しかし、市町村が維持管理すべきものであっても、十万円以上の被害については国が見るというのですから、非常な差異を生じてくる。今度のような小規模災害の無数に起った市町村は非常に迷惑をすると思うのです。私は、ものの考え方は、被害対象である市町村財政収入額なら財政収入額の何割をこえた被害については見るという方が、理論としては筋が通るんじゃないか。しかも実際は非常な差を生じておる。こういうことについて、財政当局としては、この問題はしょっちゅう起る問題でありますが、依然として放置されておりますけれども、その理由がわからないのです。なぜあなた方の方では改正立法を出されないのか、これをお聞かせ願いたい。
  37. 細郷道一

    細郷説明員 補助を受けて事業を行います場合に、補助金と交付税の算入される財政需要とを足しますと、御指摘のような計算になると思います。ただ、私どもとしましては、地方交付税は地方団体の共有の財源であるという考え方に立っておりまして、国庫の負担金で国からもらうものと別個のものと観念いたしておるわけであります。従いまして、災害の規模によって国が負担をすべきものについては国が負担をいたしますが、残りの地方負担部分については、各団体を通じた一つの平等の尺度で計算していく。その場合に、起債を認めていけば九五%を算入するという考え方に立っておるわけであります。交付税というものは、あくまでも、国からの補助金のようなものではなくして、地方団体の共有財源であるという考え方に立っておりますので、今御指摘のような計算は、実は、私どもの考え方からいたしますと、必ずしもその通りにはならないんじゃないかというふうにも思っておるわけであります。  なお、そういう原則的な考え方のもとに立ってやっておるわけでありますが、十万円で切ることがいいか、あるいは十五万円で切ることがいいかといったような問題がございますが、原則は、御承知のように、土木については十五万円、十万円、農地については今十万円という線が出ておるわけであります。これはそれぞれのときの災害に応じて考え方は随時動いていいものじゃないだろうかと思っております。  なお、財政収入との関係でこの算入率を考えるべきだというお話がございましたが、御承知のように、災害土木法でも、農地復旧法でも、それぞれ被害の度会いに応じて国庫負担率が動くようになっておりますので、間接的に地方団体の方の負担については調整がとれておる、こういうふうに一応考えます。
  38. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 十万円以上の場合は確かにその通りです。ところが、今は小規模災害の話をしておる。小規模災害については、幾らその災害総額が多くても、その率が変るわけではないし、問題にならないでしょう。ですから、小規模災害についてもやはり同じような考え方適用すべきじゃないか、こういうことを私は言っておるわけです。まあ、課長ですから、立法のことまではお話しにならないかもしれませんけれども、私は、事務当局としてこの矛盾をどうして感じないのだろうかという疑問を持つわけですね。あなた方事務当局としては、その被害町村が十万円以上の工事が非常に多かった、小規模災害が少かったという場合と、小規模災害が非常に多かった町村と格段の相違が出る、この矛盾をお感じにならないかと思うのです。だから、私は、事務当局としてはこういったことに対する案があってしかるべきだと思うのです。依然としてこういうままに放置して、国会の臨時立法を待つという態度は、私は怠慢だと思うのです。すべからく事務当局としては早く案を出して国会に提出されるべきが至当ではないか、こういうように申し上げておるわけですが、どういうようにお考えですか。
  39. 細郷道一

    細郷説明員 単独と申しますか、要するに、国の負担を受けられない小規模の災害が、団体によって割合がいろいろ違うのじゃないかというのが御指摘の点だろうと思います。小規模の方が非常に多い場合、あるいは少い場合、一般的に土木で申しますれば、御承知のように、単独の災害復旧の割合は公共の災害復旧の割合に大体比例をいたしております。ただ、農地のような場合でありますと、農地面積等の関係があっていろいろ差があるわけでありますから、その部分については国庫負担の限度額を上下するというような考え方もとられるのじゃないかと思います。ただ、その場合は、あくまでもそのときどきの災害の型によって判断をすべきじゃないか、こういうふうに思っております。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 課長は頭がいいから、私の質問のいいところだけをとって答弁をされておりますけれども、私はそういうようには聞いていないのです。なるほど、公共事業の場合であるならば、補助事業の場合と単独事業は、大体補助事業の場合の何割を小規模災害と見て単独事業にし、その起債を認めておる、こういうことを言われておるのだろうと思う。しかし、この三割、厳格に言いますと二八・五%の率は一つも変らない。ですから、この率が変りませんので、市町村に与える影響というものは明らかにアンバランスになる。そのことは、何も市町村財政関係なく、率が一定しておるというところにアンバランスを生じてくる。災害の多寡にかかわらず二八・五%を適用されるというところにアンバランスがあるのじゃないか、こういうことを言っておるのです。それは、公共事業と単独事業の区分というものを比較的に一定されておるということ自体も、私は、妥当ではない、親切なやり方ではないと思う。ただ事務的に煩項にた、えないからやっておるので、これは全く不公平な状態で、不平等をかもし出しておる、むしろこういうふうにさえ考えるわけでありますけれども、とにかく、今起っております災害は、町村、県に与える影響が非常に舞大ですから、むしろ地方財政当局もこの問題の改正には積極的に乗り出していたかきたいと思うのです。毎回々々災害があるたびに臨時立法をするなんというような、こういう権威のないことはないと思う。しかも災害は年中行事のようにやってくるのですから、少くともそういう予想される災害に対しては十分対処し得る法律が必要である。大声な災害であるならば大きな災害のように率を上げればいい。そのことが一向に解決を見ていないということを私は非常に残念に考えますが、また次の機会に、大臣がお見えになった機会に再度質問をさしていただきたい。本日はこれをもって留保したいと思います。
  41. 石田宥全

    ○石田(宥)委員長代理 農林水産業振興に関する件につきまして調査を進めます。  紀淡海峡における火薬の投棄問題及び密漁船の問題等につきまして質疑の通告があります。この際これを許します。   早川 宗君。     〔石田(宥)委員長代理退席、委員   長着席〕
  42. 早川崇

    ○早川委員 それでは紀伊水道の火薬投棄の問題について御質問いたします。  最初に、現地調査に政府当局が行っていただきまして、感謝しておるのですが、その調査結果につきまして簡単に御報告いただきたいと思います。
  43. 奥原日出男

    ○奥原説明員 各省にまたがる事項でありますけれども、便宜私から取りまとめて簡単に御報告を申し上げたいと存じます。  参加いたしましたのは、通産省、海上保安庁、海上自衛隊、厚生省及び水産庁及び県であります。  火薬投棄に至る経緯、これは通産省及び海上保安庁で分担し、火薬の散布状況、これは現地調査によって結論を出す、火薬の化学的、物理的な状況、これは通産省において調査をし、漁業に対する影響等の問題は水産庁が調査をする、食品衛生に関する影響、これは厚生省が分担する、こういうふうな分担をもちまして、七月の十三日から十九日の一週間、現地調査団が参った次第でございます。  そこで、明らかになりましたまず事実関係から申し上げたいと存ずるのでありますが、二月に兵庫県が国土開発会社の西鳥工場の立ち入り検査を行いましたところ、多数の爆発物件が不完全な管理のもとにあることを発見いたしまして、保安庁、県警と連絡の結果、その保安措置を勧告いたしたのでございます。そこで、国土開発株式会社は中国化薬株式会社と作業契約を結びまして、利用可能なものはこれを瀬戸内海にあります別な工場に移しますとともに、利用不可能なものは海中に投棄する、こういうことに相なったのでございます。中国化薬株式会社は二隻の船を用船をいたしたのでありますが、用船に当りましては、用船契約自体は文書になっておらないのでございますが、投棄場所を室戸岬と潮ノ岬の中間の地点にするという指示をいたしておるのであります。同時に、監督者といたしまして、国土開発株式会社及び中国化薬株式会社よりそれぞれ社員が乗船をして、四月一日に姫路港に向つたのでございます。姫路港におきまして、海上保安庁の分室におきまして、保安庁の担当者及び県の工業課あるいは県警等の方々が出られた席におきまして担当当局の從心懸もあったと思うのでありますが、中国化薬株式会社の現場責任者から船長に対してこれが投棄をする場所は室戸岬と潮ノ岬の中間にするのだということを、そこではっきりと指示をした、こういうことであるのでございます。  四月一日に姫路港を出まして、紀淡海峡を越しまして、淡路の由良港の南方十キロの地点に参りましたときに、これらの二隻の船が投棄を始めたのでございます。これに対して乗り組んでおりました中国化薬株式会社の社員の言によれば、船員が無断で投棄を始めたのでこれを制止したが、船員はどうしても聞き入れなかった、こういう事実があるのでございます。  ところで、調査官が現地で打ち合せの後に、十六、十七の両日掃海をいたしたのでございます。地元の小型底びき船を五隻使いまして、二日間に延べ十隻で掃海をするとともに、保安庁の巡視船二隻、県の取締船二隻もこれに参加いたしたのでありますが、二日間において延べ五十四回の掃海をいたしました際に、火薬が二十二個引き揚げられた。で、火薬が引き揚げられますれば、それと一緒に揚って参ります魚は、火薬の箱がいたんでおれば、直ちに黄色く汚染する、すぐ黄色くならないものも、しばらく時間がたてばまつ黄色になる、こういうふうな事実がはっきりとそこで確認されたのでございます。  今までの調査によりますれば、大体火薬千六百箱くらい、それから砲弾も相当そこに捨ててあるのでありますが、砲弾の方は今回の掃海では引き揚げられませんでした。火薬については、従来引き揚げられたもの等を見ますれば、やはりまだ海中に残りの八百箱くらいは依然として残っておるのではないか、かように考えられるのでございます。  そこで、これは内閣の審議室が中心になりまして、関係各省のとりまとめをお願いをいたしておるのでございます。そこで、目下これに対しまするいろいろな調査及び今後の対策につきましての打ち合せをいたしておるのでございますが、現段階におきましては、まだ具体的なこれが対策についての結論は出ておらない次第でございます。
  44. 早川崇

    ○早川委員 ただいまの八百個は、八千個の間違いじゃないですか。
  45. 奥原日出男

    ○奥原説明員 八百個でございます。
  46. 早川崇

    ○早川委員 ただいまの御報告によりますと、中国化薬会社はそれでは責任がない、民事上も管理者としての責任がないということになりますと、用船いたしました船長の責任になるわけですが、その点はどう認定されたわけですか。
  47. 奥原日出男

    ○奥原説明員 民事上の責任の問題になりますれば、実は、私にいたしましても、あるいは他の行政局におきましても、有権的なお返事はいたしかねると思うのであります。これは裁判所の問題になるのでありますが、しかし、われわれの法律的な道義からもってすれば、中国化薬株式会社及び国土開発株式会社はともに民事上の責任を当然負うべきである、かように考えるのであります。中国化薬株式会社は現に三百五十万円の見舞金を関係の漁民に交付しております。こういう事実が現にすでにある次第でございます。
  48. 早川崇

    ○早川委員 そこで、私のお伺いしたいのは、五月以来すでに三カ月たっておるのでございますが、現実に漁具の被害、汚染漁獲高、合せまして七百万円近い被害が集計いたしまして出ておるわけでございます。それに対して、現地調査の結果、これは防衛庁当局なりあるいは保安当局なりで当然掃海すべきものである。会社の民事責任を云々しておりますと、五年、十年の歳月がかかるのでございます。その間このように一般の公海の資源である漁類なり漁具の被害が毎月累積いたしますと、一般の零細漁民というものは手を上げて餓死を待つより仕方がない、こういう状態に追い込まれるのですが、私のお伺いしたいのは、そういう状況下において政府当局としてはどういう判断をされるべきものであるか。例をあげて申しますと、ある川で上の方で非常に毒薬を流した、魚類はどんどん死んだ、民事責任はどうかと裁判しておる間に、下の漁業をやる者とかなんとかは食えなくなる、こういうことを放置していいかどうかという問題だと私は思うのです。この点についてなお検討中で結論がないというのは、はなはだ僕も遺憾に思うのでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  49. 奥原日出男

    ○奥原説明員 政府といたしましてのお返事ということに相なれば、関係各省それぞれの話し合いがとりまとまりまして、政府のあるレベルにおいて御決定をいただかなければ、決定したというお返事を申し上げるわけに参りませんので、そういう意味でそういう言葉を使った次第でございますが、本件の場合は、民事上の責任を負うべき相手方は、これはもちろん有権的な返事は裁判所以外にはできないのでございますけれども、私は、比較的われわれの法律的な合理性の上においてははっきりしておる、かように考えるのでございます。ただ、それはそれで明らかにし、かつそれは徹底的に追及さるべきである、かように考えるのでございます。しかし、その問題はそれといたしまして、いずれにしましても、水産庁当局といたしましては、結局関係の漁民を漁場に帰すということが一番大事なことであります。まあ漁ができないで生活が困っておれば生活扶助の問題もございますけれども、それでは決して彼らに対する解決策には相ならないわけであります。そういう意味におきまして、できるだけ早くこの海域が掃海をされて、そうしてそこで漁業ができるような結果ができるように、そういう方角に向って努力をいたしつつあり、かつまた今後ともそれを達成したい、かようなことをわれわれといたしましては考慮いたしておる次第でございます。
  50. 早川崇

    ○早川委員 大蔵当局に御質問をいたしますが、ただいま、水産庁長官は、漁師が現実にすみやかに漁業が安全にできるようにいたしたい、こういう御決意を申されたのですが、大蔵当局は、その掃海費用云々につきまして、私の推算によりますと、全部を掃海するとなると大体九千九百七十八万円という和歌山県当局の数字が出ておるのでございますけれども、民事責任云々は別にいたしまして、同時に、訴訟をやって五年、十年かかって会社が負担しなければならぬという場合には、これはそれを国庫に回収してもいいと思うのですが、要は、差し迫った問題で、紀州災害のときに、沈木処理という、沈木が流れまして網がひけないという場合に全額国庫で沈木を処理した実績がございます。漁民にとってはまことに不届きな船長の過失のために天災にひとしい害を受けておるわけであります。こういった点について大蔵当局がその支出の面で降路になっているということはないものでしょうか、お答え願います。
  51. 相澤英之

    ○相澤説明員 前任の主計官の高木君が過労のために倒れまして、私つい最近かわったので、本件も数日前に農林省から聞いたというわけであります。そこで、十分部内においても打ち合せをして御答弁できないのを遺憾に思いますが、内々相談いたしておりますところで見解を申しますと、本件につきましては、とにかくその原因となったことをだれがやったかということははっきりしている。従いまして、どうもほかの、たとえば銚子沖のイペリットの問題とか、別府のイペリットの問題とか、いろいろ前例がございますが、そういう国がかつてやった行為に基くもの、あるいはだれがやったかわからない、そのために責任が追及できないといったような場合と本件は違うのではないか。従いまして、これはあくまで和歌山の漁業協同組合とそれから国土開発株式会社ないし中国化薬株式会社との関係で解決すべき問題だ、国あるいは県は仲介ないしあっせんをすることはあっても、そのためにこれに補助するとか、あるいはかわってやるとかいうことを考えるのはちょっと筋が通らないんじゃないかというような考え方でおるわけです。ただ、まだ保安庁あるいは水産庁等から、どれだけ金がかかるので、このうちどれだけを国が見てくれとかいうような具体的な話は実は聞いておらない段階でございます。ただいまのところで申しますと、そのような段階であります。
  52. 早川崇

    ○早川委員 それはちょっと水産庁長官の御意見なり所見と違う。そういう考え方では、漁場を五年、十年ほっておいてもいいかということになる。現実にそこに赤インキで書いているように、毒を持った投下物があるために天然資源が漁獲できないということを五年、十年ほっておいてもいい、こういうことですか。僕はそういう問題じゃないと思うんですよ。これは単なる商取引による個人のあれという問題じゃない。そういう無責任なことを言われますと非常に困る。政府は、政府全体としての判断で、これはむしろ政治的判断だから、政務次官もおられますが、われわれは、民事裁判は民事裁判でいいから、それはやって、さしあたって漁場に出漁できるような態勢にするのは国家の責任ですよ。ですから、そういう点で少し食い違っているように思うのですが、どうですか。
  53. 相澤英之

    ○相澤説明員 前に申しましたことを繰り返すことになりますが、私どものただいまの見解といたしましては、とにかく、原因を作ったものははっきりしており、責任が全然どこにあるかわからないという状態とは違うのでありまして、その点につきましては、これはあくまで漁業組合と当該関係会社との問題になるかと思います。ただ、その場合に、現実にそういう投下物をどういうふうに処理するかという問題になるのでありますが、一番望ましいのは、こういった会社に資力がありまして、直ちにこれを実行できるということになればよいわけであります。金額の点につきましても、今早川先生が言われた九千九百万というのは私初耳でございますが、七、八百万という数字もありますし、あるいは二千万くらいの数字もありますので、ちょっとはっきりしないのでありますが、私どもの印象ですと、一千万とか、その程度のものでありますれば、これはこういった会社に全然能力がないといった問題ではないではないか、こういうような印象を受けているわけであります。
  54. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっと……。  主計官はこの問題が発生して委員会で問題になったときのことをお知りにならないですね。それで今答弁しているが、あなたは火薬類取締法を調べてみましたか。
  55. 相澤英之

    ○相澤説明員 みました。
  56. 赤路友藏

    赤路委員 調べて、あれに欠陥がないと思いますか、どうです。
  57. 相澤英之

    ○相澤説明員 火薬類取締法を昨日調べてみました。規定の二十七条を正確に記憶しておりませんが、火薬の廃棄をする場合、その処分の方法とか場所について、これは監督官庁の許可を得なければならない。第二項に持っていきまして、ただし、火薬の製造を許可されている事業所についてはその限りではない、となっております。
  58. 赤路友藏

    赤路委員 あなたは法律家だろうから、言うまでもないと思うのだが、それで、火薬類取締法でいくと、あなたの言うように、これは許可制でもない、届け出でよい。そうして運搬証明を出すわけですね。運搬証明を出したら指定された場所に捨てるということになっているが、今度の場合は指定された場所に捨てていない。だから、責任の所在は投棄した会社にある、こういう見解である。ところが、この火薬を海中に投棄して被害を及ぼした場合、これは法律に何にも書いてない。火薬を投棄してそれによって被害が及ぶということをこの法律を作ったときは考えなかった。ところが、現実にこういう問題が起き、これ一件ではない。それを私は言いたい。すでに前にもあるのだ。そうすると、これは法律の欠陥ではないかと言うのです。これは国会にも責任がある。しかし、政府にも責任がある。法律の欠陥であるとするならば——火薬を海中へ投棄して被害が何ぼどこに及ぼうとも差しつかえないという見解の上に立つのならば別です。そうではないでしょう。これが国民に被害を及ぼすということであるならば、この被害を排除する考慮が必要になる。それがなされていなかった。今まで事件が起らなかったから気がつかなかった。ところが、すでにそうした事件が起っている。すでに昨年豊後水道で行われておる。少しケースは違う。ケースは違うが、同じような事件が起っている。そのために、高知県は五千万、愛媛県は四千万、合せて九千万の金が不漁対策として出されている。こういうような実情考えると、このことは単に投棄したものの責任だということだけではいけないということをこの前にも言ったわけです。法律に欠陥がある。法律に欠陥があり、法律に盲点があるとするならば、政府は当然その書任を感ずるのがあたり前ではないか。政府の責任において、これは何とか早く、今水産庁長官が言ったように掃海するということを考えなければならぬ、これは当然だと私は思う。それが政治だと思う。それがまた政府の責任だとも思うわけです。前に捨てた豊後水道の事件、これも中国化薬がやった。これはいささかケースは違うが、前にもやったという前歴のあるものに慎重を欠いた。これに認可を与えたということは、これは兵庫県知事でありましょう。前にやったのは広島県知事。慎重を欠いておるということは、これはやはり何といっても行政の責任なんです。だから、今早川委員から言われたように、民事的なものは民事的なものとしてあるでしょう、しかし、当面、そういうように行政庁の道義的に慎重を欠いた行動、それから法律上からくる欠陥、これを考えたならば、政府は当然これに対して何らかの措置をとってやるというのが当りまえではないですか。あなたは単にその法律の文面だけにこだわっている。もちろん、法治国でありますから、法律は絶対のものですよ。しかし、その法律に欠陥があって国民に迷惑を及ぼしたということであるならば、政府は責任を持ってやってやるというのが当然だと思う。どうです。
  59. 相澤英之

    ○相澤説明員 火薬取締法に欠陥があるかないか、どういう点で問題があるかという点につきましては、私ちょっと取締法を調べてございませんからあれですが、ただ、私が今まで承知している範囲ですと、海中へ投下する場合には、沿岸から八キロ以上、水深二百メートル以上のところでなければいかぬ。そこで、本件も、その場所について海上保安庁に相談をした結果、潮ノ岬と室戸岬を結ぶ線の中間ぐらいのところに捨てた方がいいだろうというような話がありました。そこで、私たちとしますと、その場所に捨ててさえいれば問題がないわけです。そういう場所に行って捨てなかったために起った問題ならば、その捨てなかったということで起したその会社にやはり責任があるんじゃないか。だから、そのために起る被害というものは、当然その原因を起した者が負担するのが当り前じゃないか、こういうふうに考えておったので、国としては費用を持つというようなところまでちょっといかないんじゃないかという印象なんですが……。
  60. 赤路友藏

    赤路委員 今のあなたの言っていることは、あなたの見解としてはわかるんですよ。私の言っているのは、それを言っているんじゃない。あなたの見解が間違っているということを私は言っていないんだ。そういうことでなくして、法律に欠陥がある。本来、この火薬取締法を作るときは、先ほどから言うように、こういう被害があろうなどということはおよそ考慮の中に入っていなかったと思う。ところが、事態はそうなってきた。今度はあの陸岸から八キロ、水深二百メートル、これ自体を検討しなければならぬということにもなりましょう。それと同時に、これだけ被害を及ぼす事件が起ってくれば、当然単なる業者まかせのそういうような投棄の仕方でなしに、監督官庁がどこにあるかわからぬが、海上保安庁なりあるいは認可したところの者が乗って、それを確認するというような、最終までの責任というものは当然出てこなければならぬ。こういう面で法律に欠陥があった。これは何もあなたを責めているんじゃない。あなたの言うことはわかるんだ。あなたの今の見解が間違っていると言っているんじゃない。法律にそういう欠陥があったから、従ってこういう事態が起ってきたということも一つの大きなファクターなんですよ。それを私は言っている。だから、今これをなんとかかんとか言ってやってみても、当面困るのは漁民なんです。ここでわれわれが審議をする、あるいはここで論戦をする、官庁の諸君にも現場を調査してもらって、そうして慎重に審議をしてもらっておる。審議してくれることはいい。二年なり三年なりおやりになればいい。ところが、現場のこれに関係する漁民は、そう審議してもらっておったんでは、審議々々で日が暮れたんじゃ飯が食えません。立場が違う。だから、私たちは言っている。私はあなたを攻撃するんじゃない。あなたが考えている法律的な見解というものは、それはそれで私は認める。認めるが、こういう事態があるんだということを大蔵省の主計官としては腹の中に入れておいてもらいたいということなんです。それだけです。
  61. 田中織之進

    ○田中(織)委員 関連して……。  七月三日に私もこの問題で質問を申し上げ、そのときには水産庁の方は次長が出られた。その意味で、長官はそのときの事情を御存じないのでありますが、ここで相澤主計官をわれわれがとっちめておっても話が進まないのです。それで、政府を代表して椎名官房長官が七月三日の委員会で最終的に答弁された点を私一度読んでみますから、この点に基いて、政府としては調査の結果どういう対策を講ぜられ、それが進んでおるかどうかということを一つお答え願いたいと思います。椎名さんがこういうふうにお答えになっております。これは速記録です。「だんだんのお話を承わりまして、まことにこれを捨てておけぬ重大なる問題があるということを感得いたした次第であります。これに対する対策といたしましては、ただいまお話しのように、審議室において関係各省のそれぞれのエキスパートを集めて至急研究をした結果、これはいずれにいたしましても現地についてよく調査をして、その上で迅速なる措置を講ずべきであるという結論に到達しておるようであります。お説のごとく、これは一日もゆるがせにすることのできない重大なる問題であると考えますので、私も、これをなるべく早くといったようなことではなしに、きわめて速急に派遣をして調査をいたしまして、掃海、あるいは漁業者の生活保障に関連して何らかの経済的な援助方法をもすみやかに発見するということに進めたいと考えます。」、このようにきわめて責任のある答弁をされている。「一日も早く掃海をしなければならぬということはまことにごもっともでございまして、派遣の政府職員の選考につきましても、多分に掃海という技術的な問題に対する見当もつけ得る人間を入れまして、その手順を一日も早く進めたい、かように考えております。」、これが椎名官房長官の御答弁で、七月三日、われわれがこの問題をいろいろな角度から政府側に追及をいたしました結果、政府の責任ある答弁としてこのように答弁されておるのであります。この答弁に基きまして、まず現地調査が行われたことは、先ほど水産庁長官から述べられたような状況であります。二日間で合計十隻の船で二十二個引き揚げておる。従って、箱のくずれているものは、同時に揚る魚がすでに黄色く変色しておる、そうでないものもしばらくおいておくと変色するというような状況にある、こういうようなことから、ここに官房長官のかわりとして大島審議室長が見えられているということでありますから、先ほど水産庁長官が述べられました現地調査の結果、審議室としてはどういう結論を出されているのか、この点をはっきりここで述べていただきたいと思います。  なお、参考までに申し上げておきますけれども、一番最後に吉川委員長から、「官房長官に私から申し上げますが、今田口委員からも申されましたような事情でございますので、審議室で出されました結論をすみやかに一つ実施していただきまして、そうしてその結果を本委員会に御報告願えるようにお取り計らいをお願い申し上げておきます。」、これは官房長官もおられ、水産庁長官以外の関係の政府委員の出ておるところで委員長からそういうように申し渡されておるのです。従って、きのうからこの委員会を現地の漁業者等がどんなに待ちわびておるかということも考えていただきたい。この点については、今さら、投棄したところの民事の責任で会社が損害の賠償をする、そんな議論をしている段階ではない。政府の責任ある官房長官が国会においてこれだけ答弁をした。それに基いて具体的にどういうような施策が進められようとしておるかということを、われわれが関係者にかわって、国民にかわって政府当局から承わるのがこの委員会なのですから、もっとはっきりしたことを言って下さい。
  62. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。ただいま、先回の当委員会における官房長官の答弁を引用されまして、審議室としてどういう結論であるかという御趣旨の質問でございましたが、先般、ただいま御引用になりました答弁にもありますように、当委員会が終りまして即刻調査の打ち合せをやりまして、先ほど水産庁長官から御説明しましたように、非常に全力をあげて、早いスピードで現地調査をやったわけであります。調査の結果につきましては、先ほど長官からすでに御説明のあった通りでございますので、その点私からあらためて申し上げる必要もなかろうかと存じまするが、その調査団が帰って参りましてから、何回にもわたりましてこれはかなり専門的、技術的な要素を持ったものでございますので、会合いたしまして、結果を持ち寄りまして検討をしたわけでございます。率直に申しまして、投棄されました火薬が今後どういう状態になるであろうかというような点も、種類のあることでございますので、検討しなければならぬ点があるわけでございますが、そういう点が今後掃海等につきましての具体的な見通しをつけるために若干検討を必要とする面があるということが専門の立場から発見されたような点もございまして、そういう点はもちろん急いでおりますが、目下馬力をかけてそれぞれ調査と申しますか見当をつけるように進めておる段階でございます。  さて、それはそれといたしまして、どういう結論かという点を急がなければならないことも先般の官房長官の答弁通りでございますので、私ども審議室といたしましては、各省々々にまたがる事柄でありますから、各省々々の調整役をいたしまして、それに基いて適切な結論を出す、こういう立場でございます。少し横道になりましたが、そういう意味合いにおきまして、一刻も早く結論を出したいという努力を今なお続けておる状況でございます。調査団が帰って参りましたのは七月の下旬でございまして、その後今申し上げたような打ち合せ連絡を引き続きやっております。水産庁長官から先ほど答弁のあったような意向も伺い、どういう点をどうすべきか、こういう点を検討しております。これが現状でございます。
  63. 早川崇

    ○早川委員 最後に私一言だけ希望を申し述べておきたいのですが、沿岸漁民は、一般の国民と違いまして、失業保険もない、健康保険もない、ほんとうに最低の生活をやっている階級なんです。国家の援護というものはほとんどない。私は非常に気の毒な階級だと思っておるわけですが、たまたまこういう問題において、私は漁民は非常に純粋だと思うのです。国家にこれによって損害を受けた補償を要求しているのではない。最初は要求していましたが、これは会社に要求すべきなんだ、しかし早く掃海をやってもらいたい、自衛隊も保安庁も掃海隊はあるのだからと、漁民も非常に素朴に考えておるわけなんです。掃海を一ヵ月、二ヵ月ほうっておけば、ますます累積していく。民事裁判は民事裁判として、先ほど水産庁長官は非常にいいことを言われたと思う。漁場の確保ということでこの問題を取り上げて、最小限すみやかに掃海をやる。現実にああいうように赤インキの記してある紀淡海峡の場所から有害な火薬類がなくなるということ。金額は問いませんけれども、官房長官が責任を持ってあれほど言明されておるのですから、現在国民層の中で最低の生活に苦しんでおる漁民に対して、国家があたたかい立場からすみやかに掃海をやる。なおその費用が云々ということなら、民事裁判を五年、十年とやって会社から掃海費用を取ってもいいじゃないですか。要は、そういう温情ある措置を政府としてすみやかにやってもらいたい。私は漁民にかわって一言希望を申し述べておきたいと思います。それに対して見解を一つお聞かせ願いたいと思います。
  64. 大島寛一

    ○大島説明員 ただいまの御質問につきましては、水産庁からお答えになりましたのも、ただいまの早川先生の御質問に沿ったお考えであろうかと存ずる次第でございまして、そういう点を含めまして、政府として統一した結論をどうするかという点を検討しておるという状態でございます。
  65. 吉川久衛

  66. 赤路友藏

    赤路委員 審議室長にちょっとお尋ねしますが、今あなたの早川氏に対する答弁の中で、現在投棄しておる火薬を放置しておくとどういうふうに変化するかというようなことを検討中であると言いましたが、そうですが。もう一ぺん確認しておきます。
  67. 大島寛一

    ○大島説明員 そういう見通しにつきましても、なお若干具体的に検討中の点がある次第でございます。
  68. 赤路友藏

    赤路委員 火薬を今放置しているのですね。その火薬にはいろいろな種類がある、だから、この火薬をそのままほうっておけばどういうふうに変化するかというような見通しですか。その見通しというのは一体何ですか。
  69. 福山芳次

    ○福山説明員 専門的な事柄にわたりますので、かわってお答えいたします。  赤路先生の御質問の内容の通りに、火薬の成分が非常に複雑でございますので、ばく然とは大体火薬だということは言われておるのですが、その内容がはっきりしないものですから、ただいまのところ研究所に依頼等をいたしまして分析をしております。そうして、現在の状態なり、当該地の潮流の状態、そういう状態で火薬がすみやかに——たとえばカーリットのような場合には相当短期間に流失をしてしまう。現にけさなどの報告によりますと、そういうものは流失したと認められまして、ほとんど心配ない。ところがその他のものにつきましては、あるものは相当変化しておる状態にありますし、またほとんど変化していないものもあるというような状態で、今後の推移というものに比較的つかみがたい問題がある、そういう問題についてまだだめ押しをする問題が若干残っているということを申し上げたわけであります。
  70. 赤路友藏

    赤路委員 あなたの考え方はおかしいと思う。それは研究するのはいいと思う。ところが、あれだけの海区で、これは溶解してしまって関係のないもの、これはなお溶解しないものと、見分けがっきますか。どうして見分けるのですか。理論的にそういうことを考えるのは悪いとは言いませんけれども、あの海中へ捨てたものを、これは溶解します、これはピクリン酸系統でございますと、どうして見分けがっきますか。私はつかないと思う。この事態へきて、見分け方について、これはほうっておいても影響はありませんといって、一つ一つ拾っていけますか。ばかなことを言うにもほどがあると思う。いかがですか。
  71. 大島寛一

    ○大島説明員 ただいま福山審議官から御説明いたしましたのは、一つ一つ見分けをするという意味合いではございませんで、先般来当委員会におきましても掃海をするようにという御要望も出ておりますので、そういう点につきましての具体的な結論を早く得ますために、一つ一つがどうなっているかということではなくて、どういう状況になるであろうかということをすみやかにつかみたい、こういう意味合いから、ただいま福山審議官が御説明いたしましたような点をなお一歩突っ込む必要があると考えてやっておる次第でございます。
  72. 赤路友藏

    赤路委員 私が言ったのは、理論ではなく、実際上の問題として、あの六十から七十のところへずっと流しておるものを一つ一つ見分けがっくものではないということなんです。あなたたちの立場から言うとそういうこともあろうが、見分けがつかないのだから、結局全部掃海するということになる。それは検討してもらうこともいいですが、今度の場合はその一点にしか立てないと思うのです。それを、検討しますというので慎重にやられていていつまでかかりますか。もうそのことは言いませんが、水産庁長官も当初説明しておったような具体的対策の結論は、一体いつ出るのですか。
  73. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。速急にやりたいと思っております。
  74. 赤路友藏

    赤路委員 速急といったって、期間はない。鈍行もあれば特急もあるんだから……。いつでも、速急とか、考慮しますとか、努力します、善処しますというのがあなたたちの言葉です。そうじゃない。今そんななまやさしい状態にあるのなら、私はこうやかましく言わない。私は今度ほど官庁の諸君があの問題が起って早くさっと調査に行ったのはめずらしいと思っているのです。その面では私は感謝している。そのあとで私は出ていって現地を調べてきているのです。これは国会が費用がないというものだから自費を使って私は行って調べてきた。問題はそういうのんきなことを言っていられる事態じゃないのですよ。とにかく一日も早く掃海すべきです。落しておる事実はみんな認めておるはずです。個数がどうか、これは別問題だ、これからこの問題も私は質問しますが、個数の問題じゃない。落ちておるという事実を今度調査に行ってちゃんと確認してきているのです。これはそのままほっておけないのです。だから、掃海するということをきめさえすればいい。腹一つで解決つく問題です。大蔵省の主計官にもさいぜんから言っておるから、だいぶ腹ができたと思うのですが、そういうことを私は言っておるのです。政府がこれを掃海するということをきめさえすれば、あとは、どういう方法で、どの程度の金額でやるかということしか残らないのです。そうしてやってこそ問題は解消するし、漁民も安心する。現に調査に行った人たちは、あすこで調査のときに、一本釣の諸君が県庁へ押しかけてすわり込みをかけたということを承知しているはずなんです。ここは三百六十隻の船の唯一の漁場です。そして一箱でもそれに入ると、全部魚はだめになる。掃海できないから、これらが仕方なしによそへ行ってよそを荒らすという事態が出てきている。これをこのままほっておけば暴力事件が起りますよ。傷害事件が発生しますよ。そのときの責任は一体だれがとるか。こういう現地の切実な姿というものを、もう少し真剣になって考えてやってもらわなければ困るのだ。私が先ほど毒言をはいたように、慎重に審議してもらうこともけっこうだが、しかし、官庁の諸君はみんな月給をもらっているんだからいいけれども、現地の漁民はそうじゃないのですから、いつまでものんべんだらりんとこれをやられたのでは困る。これはもう少し明確に腹をきめてもらいたい。きめられなければ官房長官に来てもらいます。官房長官でいけなければ、総理も帰ってきたはずだから、総理も出てきてもらいたい。
  75. 大島寛一

    ○大島説明員 調査も、ただいまお話のありましたように、関係各省協力一致して非常に急いでやった次第であります。その結果の結論を出す点におきましては、私どもとしても全力をあげて急いでおる状況でございます。その点重々御了承いただきたいと思います。なお、私どもといたしましては、さらに急いでやることを申し上げておきたいと思います。ただ、実行問題といたしまして、先ほど来大蔵省からの答弁もあったような点が関連いたしますので、そこらの点につきましては、政府として結論を急ぐにしても、現状においてはそこまで申し上げるまでに至っていないということを、重ねて御了承いただきたいと思います。
  76. 赤路友藏

    赤路委員 これからすみやかにやるという話です。だから、私も、何もあなたたち関係官庁の諸君が行って、そして何もしていないということを言っているわけじゃないですよ。それは金のかかる問題だから、今の大蔵省との関係もあるでしょう。しかし、これからすみやかにと言っても限度がある。  そこで、ここで一点だけあなたに聞いておきますが、掃海しなければならぬと思うのか、掃海しなくてもいいと思っているのか、この一点を一つ返事をしてもらいたい。
  77. 大島寛一

    ○大島説明員 私の方の審議室としては、これは各省の意見の調整をするところでございますので、私の方だけの立場で申し上げるわけにはいかないのでありまして、掃海の方法、だれがやるか、どういう手だてでやるかというような点は、お互いに研究しなければならぬ点だと考えております。
  78. 赤路友藏

    赤路委員 今、各省にわたっておるから、調査に行ったのも各省から行ったのだから、それで意見の調整中だという。それでは、掃海しなくてもいいという意見が出ているのですか。どこから出ておりますか、言って下さい。もし掃海しないでもいいという意見が出ておるなら、私はその人の意見を聞いてみようと思う。ここに各省の関係者を呼んでいるはずだ。どうです。
  79. 大島寛一

    ○大島説明員 掃海しなくてもいいという意見を述べているところは、関係各省の中にはございません。
  80. 赤路友藏

    赤路委員 それでは掃海するということなんです。関係各省が寄って、掃海しなくてもいいという意見が出ていないということであれば、これは掃海するということなんですよ。だから、まず掃海するという腹をきめろというのです。あなたがここできめられなければ、だれでもいい、答弁のできる最高責任者に来てもらいたい。官房長官が出てくるか、岸さんも帰ってきたのだから、岸さんに来てもらいたい。私は無理を言っておるのじゃないですよ。これは無理だと思いますか。私は当然のことを言っておるのです。掃海しなくともよろしいという意見がなければ、これは掃海するということです。だから、掃海するという立場の上に立って処理していかなければならぬ。それすらもできぬというのでは、これは驚くべきことだと思う。
  81. 大島寛一

    ○大島説明員 掃海しなくてもよろしいという意見がないことは、今御説明した通りでございますが、さて掃海をするということにいたしますと、一体だれがどういう方法で、またどこが負担してやるべきかというような問題があるわけでございます。そういう点について、御承知のように調査団が帰って参ったのは比較的最近でございますので、早速その調査を検討しながら相談をしている途中でございます。
  82. 赤路友藏

    赤路委員 今の説明では、掃海することになると費用がかかる、ところが、大蔵省の言っておるようなああいう意見もあるから、これはあなたの方で調整するということが一点、それから、一体どこがこの責任官庁になるかということ。これはみな逃げるのだから……。だから、この二点が一つの焦点になってそれで苦慮している、こう私は善意に解釈いたします。善意に解釈いたしますが、先ほどから私が言うように、いつまでもそういうことでこの事態を延ばされていけば、現地の漁民はたまらぬですよ。この現実の姿というものをもっとはっきり握ってもらわなければならぬ。この点だけは私は強く言っておきたい。  あとまだ文句を言いたいような人がたくさんいるらしいから、角度を変えてちょっと私長官に聞きますが、長官の説明の中に、火薬八百個くらい残っているということがあったですね。この確認といいますか、これの基礎はどこから出てきたのですか。
  83. 奥原日出男

    ○奥原説明員 投棄いたします際に兵庫県庁に対しまして輸送届を出しておるのであります。それとともに、姫路に回航をいたしまして、先ほど申し上げましたような打合せ会があったのでございますが、その際に、危険物船舶運送及び貯蔵親則、これは運輸省令でございますが、その規則に基きます検査を受けて合格をしている。そして危険物検査証を受けておるのでございます。その数字をここに申し上げますと、第二福神丸、九十九トンの船でございますが、その積載物件が、カーリツト二百八十箱、ロケット用火薬百かます、砲爆弾等、これはいろいろな口に分れておりますが、六千九百四十一個、それから三百三十かます、二百二十箱。それから、もう一つ、須佐丸、四十四トンの船でございますが、これはTNT及び種類不明の火薬百六十箱及び五十一かます、さらに、ミックスいたしました火薬を千三十三箱、これだけ積載をしておったのでございましてその中で砲弾は実は今度は一つも揚りませんでした。砲弾がどういうふうな状態で海底にあるかというようなことはいろいろ問題があろうと存じますが、その他の火薬の箱数等を申し上げますれば、大体千六百箱くらいになるのでございます。その中で六百八十三個は今までに引き揚げられており、その一部は中国化薬の工場にさらに運ばれ、一部は保安庁の船あるいは特に用船した船によりまして海上深く投下されている、こういう状況でございます。
  84. 赤路友藏

    赤路委員 一部は海上投棄をした、一部は元に返したというお話でしたが、まだ各漁協の船が出ていって火薬を揚げてきたものはそれぞれの母港の広いところに積み重ねている。これは現地に行った人は見てきたはずです。積み重ねて、しかも乾燥すると自然発火のおそれがあるというので、一人つきっきりで水をぶっかけているのですよ。こういう事実を承知しておりますか。
  85. 奥原日出男

    ○奥原説明員 そこまでこまかく質問されると私も全く困るのでありますが、とにかく、六百八十三個につきましては、五月二十六日に、二百七十一箱、これは岡山県の化薬会社に運搬しております。六月十七日に、二百二十一個、これは海上自衛隊の掃海艇二隻によって北緯三十三度三十三分、東経亘二十四度五十五分の海中に投棄されております。七月三日に、九十三箱、これは第三紀州丸で大体同じ地点に投棄いたしております。これはおそらくは用船した船であろうと思います。それから、七月二十八日に自衛隊が海中投棄を八十八箱いたしておるのであります。総計六百八十三箱、それぞれ処分をされておるのでございます。私の承知しておる限りでは、この最後の自衛隊の海中投棄によりまして現地に積み重なっている火薬は、先日揚りましたものも含めまして、ほとんどないのじゃないか、こんなふうに考えております。
  86. 赤路友藏

    赤路委員 とんでもない話です。現にあるのだから。僕が行って、水をひっかけているのをこの目で見てきたのだから、これはあるのですよ。そういう考え方はいけない。もっと現地実態をつかんでください。  それから、通産省の火薬関係の方は来ておりますか。——火薬類取締法第十一条に貯蔵規定があるが、廃棄火薬についてはどうしているか。
  87. 岡嶋楢文

    ○岡嶋説明員 ただいまの海中から揚りました火薬につきましては、水分を含んでおりますと火薬としての性能はございません。爆発とか、そういう危険はございません。特に、ニトロ化合物、そういう関係の火薬につきましては、乾燥いたしますとやはり火薬の性能を復元いたして参る、こういう性質がございますので、先ほどおっしゃるように、危険なものにつきましては水をかけて、危険な性質をなくしよう、こういうことをやっております。
  88. 赤路友藏

    赤路委員 今の課長の話によると、そういうような危険性のあるものについて水をかけておるという話なんだね。ところが、この火薬類取締法の十一条を見ると貯蔵規定がある。かなり厳重な貯蔵規定を規定しているわけです。そういうような水をかけなければ危険であるというようなものが揚ってきて、水をかけているのだが、それの貯蔵の責任者がない。だれもこれの貯蔵の責任を持たない。だから、あの海域で操業している、たとえば雑賀崎にしても、田ノ浦にしても、大崎にしても、あるいは箕島にしても、それぞれの船がわずかずつ揚げてきて、それぞれの港の広場べ揚げて水をひっかけているのですよ。一体どこが責任ある貯蔵をするのですか。県ですか。
  89. 岡嶋楢文

    ○岡嶋説明員 水がかかっておりますと、ぬれておりますと火薬の性質がございません。これは非常に理屈っぽくなりますが、これは火薬類でないわけであります。そういうようなわけで、ただ、乾燥するという危険もございますので、それにつきましては和歌山県の火薬類取締り担当課が厳重に取り締らなければならぬのでありまして、県庁の担当課が責任があるのであります。その監督のもとに中国化薬の社員がその管理をしておる、こういうことで、十分火薬の法規に照らしまして厳重な保管監督をしております。
  90. 赤路友藏

    赤路委員 君はどうも変なことを言うのですね。先ほど軽工業局長が、課長がおるから、専門屋だから、私は用件があるから許してくれと言うので、帰ってもらったんだが、君の答弁を聞いておると、君のところは何も責任がないようなことを言っているね。この火薬の取締りの責任官庁はあんたのところなんだね。通産省なんだよ。しかもそういう事態が現地で起っているのですね。現地で起っておりつつ、のある保管は、どこに一体責任があって、どうしてやるのか。だから、現地では、やむを得ないから、揚げてきたものは広場へ置いて、一人つけて水をひっかけておるのだ。ロケット弾なんか揚ってくると、ロケット関係のものが揚ってくると、上へ揚げたらどうにもならぬというので、ひもをつけて海の中に入れて、流れないようにひもを陸へくくりつけているのですよ。こういう現実をあなたは知っているのですか。あなたのところが責任官庁だぜ。少くともこういうような現状にあれば、責任官庁としてもっと責任のあるこれに対する措置というものを考えてもらわなければならぬのに、全然そんなことをしていない。
  91. 岡嶋楢文

    ○岡嶋説明員 揚りましたものにつきましては、中国化薬が貯蔵の責任を持ちまして先ほど申しましたような危険のないような措置をしているわけであります。それにつきまして、和歌山県庁としては、火薬品取締りの直接の官庁として、十分危険のないような監督をさしているわけであります。
  92. 赤路友藏

    赤路委員 君の言うのは、それは責任回避だよ。率直に私に言わせれば、責任回避だ。もっと親切にこれは扱わなければいかぬ。しかも、火薬というのは万一の場合があったら危険性がある。万一の場合でなく、現にすでに現実にこれのために負傷をして病院べ入っておる者があるんだぜ。何と君たちは考えているんだ。そういうような考え方で今度のこの問題を処理しようとするから、どこもここも責任回避の態度に出るわけだ。そうじゃないか。もっと、君、現地の状態というものを認識してもらわなければ困る。もう一ぺんみんなでそれぞれの揚げておる漁協べ行って現実の姿を見て下さい。私は船に乗って現場を見た。まる一日かかって調査をしてきているんだ。こういうことでは私は困ると思う。今も言う通りなんです。  まあ、どこもここもこういう状態ですからね。だから、どうしてもこれは審議室で速急に結論を出して、直ちにこれに対する実践をやってもらおう。ほんとうにやってもらわなければならぬ。議論をしているところではない。われわれが今ここで議論をしておったって、現地では飯の食い上げだといってびいびい言っているのですよ。少しはこういう実態を私は知ってもらいたいと思う。政治にしても行政にしても、いろいろ理屈はある、理論もある、しかし、国民が現実に泣いておるとするならば、それを一日も早くよりよき姿にするのが、これがほんとうの政治であり、行政だと私は思うんだ。この点を私はぜひ考えてもらいたい。このことだけを私は要求しておきます。
  93. 吉川久衛

    吉川委員長 田中君。
  94. 田中織之進

    ○田中(織)委員 だんだん時間も過ぎておるので、お互いやはり十二時には飯を食うということもあるので、飯を食わないということは事人権に関する問題ですが、しかし、この問題は、私は先ほど来の政府側の答弁を伺っておって、あなたたちはきわめて無責任だと思う。もう一つ、私がこの間の七月三日の委員会の中で一番根本的に触れた点は、ちょうど海上保安庁の和田次長がおられるわけですけれども、問題は、指定場所にこの火薬を投棄しなかったというところにこの問題の発生があるわけなんです。しかし、今和田さんもお聞きになったように、漁民が海中から引き揚げて参りましたものが、あるいはこの間調査官が参りましたときに五隻の船で引き揚げたものが、たとえば田ノ浦の埠頭に引き揚げて置いておるわけです。水に浸っておる間はいいけれども、軽工業局の課長も言われるように、乾燥してくると発火する危険がある。そこで、水をぶっかけている。しかし、その水をぶっかけたやつは、引き揚げたやつは、投棄した会社は中国化薬だからそこが当然管理すべきだ、それを取締り官庁としての和歌山県がやらせるべきだ、そんな形のものでは私はないと思うのです。最初海上保安庁が中に入って、中国化薬という前科者の会社にこの国土開発の火薬の投棄を請け負わせた、それだから、当然やはり、こういうような火薬法に基いて、事故が起るとかあるいはそういうようなことを監視する立場のものが海上保安庁なんです。当然海上保安庁が、海上保安庁として指定した場所に投棄するかどうかということまで何らかの形において責任を持たなければならぬことは、この間私がいろいろ追及しました結果、和田さんもその点を認められておるのです。「先ほどお答えいたしましたように、われわれ海上保安庁の職務といたしましては、最終的に投棄する場所まで同行すべきであったにもかかわりませず、船が少い、他の業務が忙しいということにかまけて、船を出さなかったことは申しわけないと思っておりますが」、こういうようにはっきり答弁されているのです。大蔵省の主計官も聞いておいてもらいたいと思う。海上保安庁はやはり政府機関ですよ。政府機関が、投棄する場所までの、いわゆる事故の発生その他の防止という見地から見ても十分責任を果しておらぬというところに、指定場所に行くまでの間に勝手に投棄したというところにこの問題が発生してきている。従って、これは、行政の責任において掃海をするということは当然の常識であって、もしそれがわからないということであれば、諸君はよほど頭が悪いと思う。問題は、中国化薬が、運送を引き受けた会社が民事責任があるというような問題以前に、行政官庁として、火薬取締りの見地から、市場に売れないような廃棄すべき火薬というものは一定の深度の海中に投棄するという規定があるから、それに基いてやったのであるけれども、指定の場所まで持っていかなかったというところに問題が起ったならば、当然行政の責任においてそれを安全な状態に引き揚げて、それを危険のないところに投棄するなり、何らかの処置をとるということは、これは行政の作用としてもやらなければならぬ問題であるということは当然のことであると思います。その点については、ここに幸いわれわれの同僚の大野政務次官もおられるわけでありますが、大野政務次官なり水産庁長官なり、これは漁民に関係する問題ですから、奥原さん、あなたの直接の関係です。それから、官房長官のきょうは代理だと言われている大島君、あなたから、その点について、これは行政の責任であるのかないのか、この点をはっきり答えてもらいたい。
  95. 大野市郎

    大野説明員 水産庁が主管をいたしておりまする漁民の生活の問題でありまするから、終始一貫いたしまして、一日も早く掃海をせよという要求を出しておるのでありまして、ただいまのお話通りに、調整をとる問題の一つとして、費用の出どころが問題になっておるのも、まことに事実でございます。私どもは、今の田中委員の御発言の行政の責任の問題に対しては、反論として、法律の内容に、届出制であって、ついていけというようなことは書いてないというようなへ理屈論もあったのであります。われわれも納得はできないので、何としても早く掃海をせんければならぬから、最後に費用の出どころに対して民事訴訟その他によって追及するところがあるとするならば、それはそれで、とにかく当面掃海を早急にせよという主張をいたしておりまして、現実にその要求を続けておるのでありますが、先ほどから何度か繰り返しております通りに、費用の出どころがきまらないと担当省がきまらないというふうな、行政技術の末端の問題でつっかかっておりますので、われわれは部内で非常に憤慨をしておるわけでございます。やはり、私が総理大臣でございませんから、とてもはっきりできないので残念でございますが、官房長官が前回あんなに明確に立場を鮮明にしておりますので、この際、もちろん、部内としましては、私どもも大蔵省に対して調査室だけの問題でなくて折衝いたしておるのでありますが、相澤主計官の言われる主張が大蔵省を今もってがんこに固めておる状況でございます。われわれとしては、この問題を一日も早く打開せねばならぬという努力はしておりますが、実情は、官房長官の言明をわれわれ部内においてもあくまでもたてにとって断行するように迫っておるのであります。ただ、行政上の責任という問題になりますと、先ほど申しましたような反論が一部にございまして、それだけでは解決がつかない問題がまだございます。本日の赤裸々な熱烈な委員各位の御主張というものを政府委員各位も十分傾聴いたしておりますので、私は必ず成果があがると思います。きょう出ております政府委員は、いずれもそういう工合でまちまちでありまして、決定権を持っておりませんために、決定権のありまする政府委員も、先ほどの名前では官房長官もございますので、どうかそういう趣旨で解決のために委員会の御審議を促進していただくことを私も望みます。
  96. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大野政務次官答弁で、農林当局としての基本的な態度はやや明確になりましたので、私、委員長に、ぜひこの間の委員会に出た責任者としての官房長官の出席を願いたいと思うのですが、きょうはどういう都合なのか、委員部を通じて事情をお調べ願いたいと思うのです。  それから、奥原長官に私お願いしておきたいのでありますが、先ほど赤路委員の質問に対しましては、投棄した火薬類と見られるようなものは大体揚っているのではないか、こういうような言葉にとられた。私は言葉じりをつかまえるわけではございませんけれども、投棄した火薬、砲弾というようなものは全部で九千何個ある。そのうちで、あなたのおっしゃったように、六百八十三個でございますか、それは、関係の漁民なり、この間調査団が参りましたときに引き揚げたことは、これも事実でございます。従って、九千何百個から六百八十個を引いた差し引き八千何がしのものがなお海中にあるのである。揚ったものが果して火薬であるのか、あるいは千百幾らという爆薬類なのか、あるいは砲弾なのか、その点は、箱が原型のままのものもありますし、重量のものでありますから、箱のくずれたものもあるということで、その点は確認をできない。従って、砲弾類にいたしましても、底びきの漁業者といたしましては網を破られるもとになるわけであります。海底に残っておるものを全部引き揚げなければならぬという観点に立って、今後の対策を立ててもらわなければならないということをまず申し上げておきたい。  それから、先ほど引き揚げた火薬が現に田ノ浦、雑賀崎、大崎、辰ケ浜というような各漁港の埠頭に、網にひっかかって参りましたものは揚っておるわけであります。自衛隊の手で捨てていただいたものもあります。現に田ノ浦の埠頭に引き揚げておった二十何箱というものは、乾燥して参りますと発火の危険があるということで、専任の者を置いて水をかけた。ところが、子供たちは、そういう水をかけた非常に危険な汚濁した海水であるということを知らないものですから、暑いことですから、その埠頭のそばで二十何人泳いだところが、一斉に皮膚がただれてきた。一体、そういう場合、その海水に入ったことによって純心な子供たちがやけどを負うたということについての責任をだれが負うか。しりを持っていくところがなくて、実際、子供を持つ親たちも、それから水をかけたり何かしておるところの漁業組合の諸君だって当惑しておるというのが現実の事態である。そこの場所につい三週間ほど前に調査団が行ったときにも、二十何箱揚ておりますが、漁業は操業ができません。従いましてその地域上りも南下していくわけです。そういう関係から、先ほど赤路君が言われたように、日ノ岬方面の一本釣の各業者の間に非常な摩擦が起りましてまさに血の雨が降ろうとしておるという深刻な問題が実は起ってきておるわけです。その意味で、責任のない立場の人を相手に幾ら議論したって始らぬということになると思うのでありますけれども、大島さんにお答えを願いたい。やはりこれは水産庁の立場から見れば掃海をしてもらわなければならぬ。これは漁民保護の見地から見てもはっきり結論が出ておる。そうすれば、問題はどこから一体金を出すかということについての次の段階の話し合いになっていくと思う。関係の六日の間で官房長官を中心にして話をまとめてもらうということよりほかにこの問題の解決は私はないと思うのでありますが、審議室として、各省で、これは大蔵省の審議官が民事だから民間の会社で損害を補償したらいいだろうという議論の段階ではなくて、これは、海上保安庁から、おれの方が指定場所までついていかなかったからこういうことになったのだ、国会の速記録の十に、投棄について十分責任を果しておらないということを認めれば、やはり海上保安庁の長官を通じて官房長官にその意見を具申して、また、水産庁は、今大野次官が言われましたように、沿岸漁民の漁場の確保という見地から、その点は一つやってもらいたい。そういう観点で具体的に掃海をする。その掃海のために必要な金は政府関係でどこから出すかということについて、官房長官を中心にして関係大臣の間の意見をまとめてもらうようなことよりほかに、私はこれの解決は一歩も進まないと思うのでありますが、そういうところまで、各省の意見を調整しておる審議室長として、官房長官に進言をし、官房長官をしてそういうふうに動いてもらうようにあなたは官房長官を補佐しなければならぬ立場にあると思うのでありますが、そこまでやってもらえるかどうか、この際お答えを願いたい。
  97. 大島寛一

    ○大島説明員 私に対する御質問の点につきましてお答えいたします。  本日の当委員会における御質問、御審議の状況等を含めまして、つぶさに官房長官に御報告をいたすこと、もとよりでございますが、同時に、政府部内の取りまとめのために私どもとしまして努力することはもちろん当然でございますが、上司にも申し上げたいと考える次第でございます。  行政責任があるかないかという御質問も、最初の点で私に対する御質問としてお触れになりましたが、この点につきましては、先般来各省庁からそれぞれ御答弁した通りと心得ております。従いまして、政府の責任であるという意味ではないことであると思いまするけれども、事が事でございまするので、先ほど私からも申し上げましたような意味合いにおきまして、掃海をする必要はないと言っている役所はないわけでございます。しかしながら、その掃海をどういう方法で、一体だれが経費を負担するかというような点は、これは具体的に詰めなければならない問題でございますので、今申し上げたような意味におきまして、御報告をいたすとともに、措置いたしたいと私ども考えておる次第でございます。
  98. 田中織之進

    ○田中(織)委員 どうでしょうか、先ほどの官房長官の御出席は。——まだ交渉中ですか。  そこで、今の大島さんの答弁では、私実際に不満足なんですけれども、結論は、私が申し上げているように、掃海をしなければならぬということ。そういうことになると、これは、現在のような状態で、家族を入れますると何万という国民に非常な迷惑をかけておる。物質的な問題だけではなくて、生命、健康にまで害を及ぼすような事態が発生しているということに対して、それを取り除くために国民の血税が使われないという論拠は、私はどこにもないと思うのです。従ってこれは、内閣所管の予備費から金を出すか、あるいはその他の方法というものが当然あってしかるべきだと私は思うのです。そういう方向へ向いて、官房長官がそういう形で閣内の意見を取りまとめてもらうという以外に、私は解決はないと思うのです。そこで、具体的な問題といたしましては、実は、この間の七月三日のときにも、椎名官房長官がおられるところで、われわれ発言した関係委員を代表いたしまして、自民党の田口長治郎君から、やはりこの引き揚げの問題は、海上保安庁にはこういう掃海艇はないというが、海上自衛隊には掃海艇があるので、これは自衛隊を使ってやろうと思えばできないことはないということも、この間の委員会で明確になっているのです。現に陸上自衛隊等が戸塚の奥で森林開発公団の林道建設等に行動しておるという事例があるのでありまするから、私は、海上自衛隊の掃海艇が出動するということが一番早道の問題だと思うのでありまするけれども、そういうようなことについても、内閣審議室として特に海上自衛隊との間に話を進めておるのかどうかということもお伺いしたい。  それから、そういう政府機関による直接の掃海作業ができないということになれば、田口君が申し上げましたように、現在掃海がされないために非常に困っておる関係漁民の生活の補償も事実上できることになるのでありまするから、これは和歌山県の当局からも先般調査団等にも要請をいたしておるところでありますが、この間、田口君からも委員会の総意として申し上げましたように、関係漁民にこれを掃海させる、そのための費用が、直接掃海の費用といたしまして六千六百万円、その掃海に使いまする底びき網等の漁網等の損失関係、これはやはり当然考えてやってもらわなければなりませんので、そういうような器具の損耗等による補償関係が三千三百万で、合計いたしまして九千九百万円ばかりの金がかかるわけでありまするが、こういう一つの具体的な形で、沿岸の漁民が、そういう費用を見てくれるならば自分たちでどんなにしてもこれを取り除かなければならぬというような具体的な意見も提示されておると思うのです。田口君も委員会で椎名官房長官に質問されたあとにおいてこういう点の具体的な一つの掃海の提案をなされておるのでありまするが、その点については、現在関係各省の間で具体的に取り上げられて一つ方法としてどうするかというようなことまで審議せられておるのかどうか、この点を一つ最後に伺っておきたいと思います。
  99. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。  第一点は、政府機関の中で自衛隊に掃海の能力があるという先般の答弁に関連いたしまして、そういう点も各省のお話し合いの中に入っておるかというお尋ねと了解いたしました。私ども調査団の参ります前後を通じまして、自衛隊の者にも、代表のしかるべき者に、打ち合せの際には常時参加してもらっておるわけであります。  第二点は、掃海の方法としまして、実際に漁民の方々に掃海の実務と申しますか実際を担当してもらいまして、それをあとでどうするかという点が考慮されておるかどうか、こういう御趣旨の御質問と了解いたしましたが、掃海の具体的な方法、並びにだれがやるか、だれが経費を負担するかというような問題を討議いたしております中に、当然そういう考え方一つ考え方としては考慮の対象にされておる状況でございます。
  100. 中澤茂一

    中澤委員 関連して……。  今聞くと、どこかに揚ったのに水をかけているというのですが、これは明らかに、私は、火薬として陸上に揚った以上、通産省の責任で保管しなければならぬものだと思う。なぜそれを水をかけてそんなところに置くのか、通産省から答弁を願いたい。
  101. 岡嶋楢文

    ○岡嶋説明員 実は、引き揚げました火薬につきましては、ぬれている間は火薬の性能がございませんのでというわけなんですが、万一の危険をおもんぱかりまして、先ほど申し上げましたように、中国化薬の社員がこれを保管しておるわけです。それをさらに、和歌山県の火薬の担当者がおりまして、そもが正しく法令通りに貯蔵されておるかどうかという点を厳重に監督いたしておるわけであります。従いまして、出国化薬の社員、また和歌山県の方で十分保安上の支障のないように管理をいたしておるわけであります。
  102. 中澤茂一

    中澤委員 なぜそこに積んでおかたければならぬのですか。それの処置というものを先に考えねばいかぬじゃないですか。それを遠い沖合いに持っていって沈めるとかなんとか、その方沖が技術的にできないのですか。
  103. 岡嶋楢文

    ○岡嶋説明員 ただいま、七月の二十七日までに揚りましたものにつきましては、たとえば自衛隊の船で海中投棄する、そういうことをすでにやっておるわけです。なお、必要なものにつきまして、もよりの火薬庫に運ぶように現在和歌山県の方でやっておるわけです。ごく少量でございますと、火薬庫に必ずしも貯蔵しなくてもいい、そういうふうなことになっておりまして、場所柄を考えまして、和歌山県の方で保安上支障のないように十分監督をいたしておるわけであります。
  104. 中澤茂一

    中澤委員 あなたは課長だから、こんな大問題をあなたを相手にして話したところがだめなんです。だけれども、そういう考え方自体が典型的な役人の考え方です。こういう大事件になっている問題は、あなたが直接現地なりなんなりに飛んでいって、こうしろああしろと指揮すべきじゃないですか。子供が海水で泳いだらみんな皮膚がただれてきた、そういう危険なことを放置しておく。そして、質問すれば、それは水分のあるうちは火薬でないからおれの方じゃないと言う。では、水分のあるうちは火薬でなければ何ですか。
  105. 岡嶋楢文

    ○岡嶋説明員 水分のあるうちは単なる化学薬品でございますが、われわれは、これが万一乾燥度の上りました場合に火薬になるという性質を十分考えまして、その火薬になり得るという考えで十分保安上の監督をさしておるわけであります。なお、現地調査のときには、和歌山県の方に厳重に、その保安上の監督をしっかりするように、調査官が参りましたときに申しております。
  106. 中澤茂一

    中澤委員 これは掃海が技術的にできるのですかできないのですか。技術的に不可能なのか、それとも、金の出し場がないからやらぬというのか、その辺は審議室長と海上保安庁で答弁して下さい。あるいはさっきの奥原さんの話を聞くと、もう大体揚ったからいいんじゃないかというふうに聞いたのですよ。だから。奥原さんが本音をはいてもうほったらかそうというのが審議室の本音なのか。これは掃海しなければいかぬというなら、技術的に掃海が不可能なのかどうか、可能であるとすれば、幾ら予算を出せばそれができるのか。この点を、海上保安庁と、奥原さんと、それから審議室で答弁して下さい。
  107. 和田勇

    ○和田説明員 火薬類は比較的簡単に掃海ができますが、砲弾類は非常にむずかしいということでございます。
  108. 中澤茂一

    中澤委員 砲弾というものは、私はしろうとでわからぬが、害があるものかないものか。それから、掃海するときひっかからない砲弾をそのまま放っておいて、それは魚類に害があるのかないのか、奥原さん、いかがですか。
  109. 奥原日出男

    ○奥原説明員 私も専門的な知識を欠いておることは皆さんよく御承知通りでありますが、箱状の状態にあります火薬は明らかに魚類に対して非常に有害であります。ただ、砲弾の中にはめ込まれて、そして海中におきましてもそのままじっとしている、こういう状態のものがどういう影響があるかということにつきましては、私もここではっきりしたことを申し上げかねるのであります。ただ、掃海を今回五十四回にわたってやりましたときには、砲弾は一つも揚っておりません。全部火薬でございます。ということは、砲弾は海底の土中に埋没したというふうに考えられるのじゃないかと思うのでありますが、これはもう少し精査してみなければわからない、かように考える次第でございます。  なお、立ち上りましたついでに一言お断わりいたしておきますが、私は、底に沈んだ火薬は揚ってしまったからもう揚げなくてもいいということは一言半句も申しておらないわけでございまして、千六百個ばかりの箱状の火薬が海底に捨てられた、その中で六百八十三個が揚げられて、それぞれさらに沖に沈められ、あるいはさらに別なところで処理されておる、しかし、まだその差額だけの多数の火薬が箱の状態で海底に沈んでおるわけでありますから、これをどうするかということにつきましては、先ほど申し上げましたような見解をもちまして努力をしておる次第でございます。
  110. 吉川久衛

    吉川委員長 福山審議官、技術的な問題について……。
  111. 福山芳次

    ○福山説明員 奥原長官が申されましたことを敷衍いたしますが、先ほど来、砲爆弾の問題と、それから箱——主として木箱に入れられておる火薬の問題が混淆されて問題になっておるようでございますが、今まで私の方で聞きました地元の方々の話によりましても、砲爆弾の漁業に対する影響という問題については、まだ全然聞いておりません。聞いておりますところは、火薬の箱詰めになっておるもの、あるいはかます詰めになっておるものがどういうふうな害を及ぼすか、あるいは、今回の調査団の調査によりましても、大体どういう地域にどういう撒布状態で、どの程度海の底をかけばどの程度のものが揚るかということは、火薬についてはかなりの程度で判明しだわけでありますが、砲爆弾につきましては、水産庁長官も申されましたように、おそらくは相当泥深いところでありますから、泥中に埋没しておるのではないかというふうに想像しております。
  112. 吉川久衛

    吉川委員長 砲爆弾が有害であるかないか……。
  113. 福山芳次

    ○福山説明員 そのことにつきましては、砲爆弾はかなり厚い金属の中に包まれておりますので、おそらく、相当長期にわたりますと、金属が腐食いたしまして、中の火薬類が水中に溶け出す。これは、おそらく、一ぺんに腐食するわけでございませんので、きわめて徐々に溶け出すと思われますから、相当長い将来にわたっては影響があることも考えられますが、きわめて近い将来におきましては、その問題については害がないのではないかというふうに現在のところ考えております。ただ、特定の漁法によりますと、あるいは砲爆弾が害になるということも考えられますけれども、ただいままでのところでは、具体的にこの漁法については問題になっておりません。
  114. 中澤茂一

    中澤委員 われわれはしろうとでわからぬが、常識的に考えて、砲爆弾は長期のことは別として害はないと思われるということですが、操業上にどうですか。漁業状態は私にはわからぬが、網びきで操業をやる場合には、砲爆弾によってその網が破れるとか破れないとかいう問題は、奥原長官、残っておりませんか。
  115. 奥原日出男

    ○奥原説明員 網をひきました場合には、砲爆弾は絹の中には入らないようでございます。ただ、マンガで海底をかくというような場合に、あるいは砲爆弾がひっかかってくる、そのために漁具が損傷するというようなことがこれから起るのではないかというようなこともわれわれ懸念しておるのでございますが、これはまだその漁期でございませんので……。
  116. 中澤茂一

    中澤委員 魚のことは全然しろうとですが、普通の網をずっとひくというのじゃなくて、そのひっかき回すという操業方法があるのですか。
  117. 奥原日出男

    ○奥原説明員 けた網と称します網で海底をひいて魚をとるというようなのは、単なる小型底びき以上に、海底にありますものをキャッチする力が強いわけであります。その際にどういうことが起るかということについては、まだこれからの問題だと思います。
  118. 中澤茂一

    中澤委員 これは常識論ですが、ひっかき回してとるという場合には、砲爆弾の信管などは抜いてあるだろうが、爆発の危険ということも予測できるわけです。そうなると、これはどっちにしても引き揚げなければならぬ問題だと思うのです。  そこで、海上保安庁に伺いますが、そういう引っかき回す網でひいたときも完全にかからないような掃海ということは、技術的に一体可能なものですか不可能なものですか。
  119. 和田勇

    ○和田説明員 今お尋ねの御趣旨が少し私にははっきりいたしませんが、砲弾類は多分泥砂の中にもぐり込んでおります。従ってこれを掃海いたしますのには、非常な金をかければできないことはないという見通しでございます。
  120. 中澤茂一

    中澤委員 そうすれば、もじったやつは、第二の問題として、さしあたって引き揚げた実績から、今後掃海するにはどのくらいの期間とどのくらいな費用があればそれは一体可能なのか。これは技術的な問題から御答弁願いたい。政治的な問題は政治問題であとで話し合いをすればいいことですから、技術的な問題から、どのくらいの期間とどのくらいの費用があれば、ここに塗った地域の掃海が可能であるか、承わりたい。
  121. 和田勇

    ○和田説明員 その点に関しましては、現地調査に参りました小川保安官から御説明いたしたい、かように考えております。
  122. 小川誠六

    ○小川説明員 御説明申し上げます。  これは、私あまり専門家じゃないのでございますが、かりにあそこにあります赤い海面を掃海する区域と仮定いたします。この区域は大体調査のときに散布状況から推してきめた区域でございます。この区域は、長さが三十キロ、幅が六キロでございます。面積にいたしますと百八十平方キロございます。この区域からまず火薬だけ揚げるよのとして掃海するならば、この問題調査いたしましたように現地の底びき網漁船を使いまして掃海するということで一応作業計画を立ててみたのでありますが、この底びき網といいますのは、幅が約五メートルほどございます。これを八トンから十五トンくらいの漁船で東から西、西から東というふうにあの赤い海面を掃海させるわけでございます。大体一日に三回掃海するわけでございます。東から西へ一回、西から東へ一回、また戻る、大体三回、時間にしますと七時間半、こういうふうにして掃海をいたしますと、この海面を全部やるのには一隻でやれば二千五百日かかる予定でございます。結局二千五百隻が要るわけでございます。というのは、結局、掃海の有効幅といいますのは、底びき網をひく場合には四メートルくらいになります。それで、一日一隻で〇・〇七二平方キロメートル、これだけしかできない。ですから、全部をくまなく掃海するということになりますと、かりに一日五十隻使うとすれば、五十日で全部できる計画になっております。  この費用でございますが、網の損害とかそういうことは全然考えずに、ただ掃海するという費用だけ計算いたしまして、一日のチャーター料を一万円と仮定いたしますと、五十隻で五十万円、五十日でございますから二千五百万円で掃海できます。それから、揚げた火薬は毎日沖へ持っていって深いところへ捨てるということで、別に運搬船を百トン程度の船を雇いまして、これは一日のチャーター料三万円と仮定しますと、五十日でございますから百五十万円、合計二千六百五十万円あればこの海面をくまなく掃海できる、こういうふうに計算いたしたわけでございます。
  123. 中澤茂一

    中澤委員 いま一点伺いますが、そういう民間のものにまかせずに、海上自衛隊——相当国民の血税を食つて批判も浴びているわけですが、こういうときくらい海上自衛隊にさつと十日くらいでさらってしまう船はないんですか。
  124. 小川誠六

    ○小川説明員 そのことは、きょうは海上自衛隊からお見えになっておりませんし、よくわかりません。大分でもイペリット弾の掃海をやりました。そのときにも海上自衛隊が監督してやりまして、実際は底びき船を民間から雇つてやつた、こういうように思っております。
  125. 中澤茂一

    中澤委員 海上自衛隊はどう言っておる。そういう船があって、おれの方の船でさらえば幾日で幾らでできるという数字は出たのですか。
  126. 大島寛一

    ○大島説明員 海上自衛隊から聞いておるところによりますと、自分でやる船なりそういう施設は自衛隊自身としては持っていないそうでございます。
  127. 中澤茂一

    中澤委員 では、問題の大体の結論は出たと思う。大体二千六百五十万円さえかければできるということです。期間もはっきりした。  そこで、委員長に申しますが、ほんとうは本日は大蔵大臣と——これはやはり政治問題ですから、ここにお集まりの皆さんに聞いたつてケリのつく問題ではない。だから、もし午後の時間が若干でも本委員会運営の上にとれるならば、やはり大蔵大臣——根本的な火薬管理の責任は通産大臣だということは明らかです。——かつての委員会の経過は法律上責任はないような形になっておりますが。だから、大蔵大臣、通産大臣がもし本日の委員会へ許せたら時間をかしてもらいたい。もし許さなければ、次回の委員会に大蔵大臣と通産大臣を呼んで、そしてこの二千六百五十万円を大蔵大臣が出すか出さないか、この問題にしぼつていけば、この問題は解決すると思う。それを希望して、やめます。
  128. 吉川久衛

    吉川委員長 田中君。
  129. 田中織之進

    ○田中(織)委員 先ほど福山審議官が、砲弾は何か新しい砲弾が投棄されておるような前提に立ってだから、当面の問題ではないけれども、長いこと海中にあって金属部分が腐食してくると、だいぶ火薬類の被害が出てこないとも限らぬ、こういうような答弁をされたのですが、この問題は、そういう使いものになるような火薬を捨てておるのではないのです。もっと有効に町へ売れるようなものは国土開発で抜いて売つておる。また、現に貯蔵しておる分もある。しかし、そういう金にかわらない部分を何とか安上りに捨ててしまおう、こういうことで、前科者の中国化薬を海上保安庁があっせんしたとかしないとか言われておるけれども、やってきた。従って、現に和歌山県の雑賀崎などに引き揚げられておるやつには、砲弾でも、金属部分がぼろぼろになって、まだ信管の抜いてないやつもある。そこに火薬が残つておるから、乾燥してくるといつ爆発する危険があるかもわからぬ、こういうことで、現地では処理に困っておる。従って、今小川保安官の方でも言われましたけれども、火薬だけ揚げるとすれば——砲弾はまるつきり新しいまだ腐食してないものは何も中国化薬に頼んで捨てないのです。もう金属部分も腐食して、その火薬を抜いたりして、使用にたえないものを指定の海上に捨てるということであった。それは、あるものはかますに入っておるし、あるものは木箱に入って出てきておる。従って、先ほどからくどいことを申し上げるようですけれども、火薬は何箱で、それは六百八十個引き揚げているから、それでもう引き揚げることは要らないんだというような考え方は根本的に間違つているということです。砲弾そのものは九千何発あるんだから、その砲弾がちゃんと原形を備えているものも中にはあるでしようけれども、腐食して使用にたえないものだから、その海上にピリクン酸なんかと一緒に捨てておるのです。福山さんが現地調査に行かれた調査官であるかどうか私はよくわかりませんが、現にここに和歌山の関係の漁業組合の職員、県の水産課長が見えておられますけれども、雑賀崎などに引き揚げてあるものについてはまた信管が入っている。従って、それが発火をすれば爆発の危険もある。こういうことで処理に困っておるという実情なんですから、われわれも軍隊の経験はありませんけれども、見学に行ったときにあったような、今でも発射できるような砲弾を海上に捨てておるということであれば、そんなものは底びき網にひつかかってこないということも考えられるかもしれないが、そんなものでないということを根本的に認識を改めてもらつて、中国化薬、国土開発を通じて捨てたという個数くらいのものは、一つ残らずということは技術的には不可能かもしれませんけれども、あらかた引き揚げてしまうということを目標にした形でやらなければならぬ。あとの、何日、一隻の船でやるならば二千五百日かかるというような計算は、九千何個引き揚げるという計算の上に立っておられるものだと思いますけれども、福山審議官の言われる点はどうもそういう錯覚を起させる危険がある。現に、投棄されておる砲弾、爆薬、火薬類というものは、現状がそういう実情にあるということをこの際はっきり申し上げておきたいと思います。
  130. 吉川久衛

    吉川委員長 発言者の諸君に伺いますが、政府委員の言われる個数と質問者の個数との間の相違の問題についてはもう御納得でございますか。——よろしいですか。  田中委員からの御要請でございました官房長官は、ただいま閣議の最中でございますので、ここへ出席してもらうわけにいきませんでした。  政府委員の皆さんの答弁を伺つておりますと、非常に法律の番兵的な、きわめて冷たい消極的な態度で、そのために非常に審議に時間がかかりました。午前中に終るこの会議がもう午後二時半を過ぎました。まことに遺憾でございますけれども、こういう点は今後もう少し反省をしてもらう機会を考えなければと私は痛切に感じたものでございます。大島審議室長は関係機関の連絡をとられる程度考えておいでのようでございますけれども、これは、各機関に関連をしております場合には、内閣でこれを取りまとめる、単なる調整だけではなくて、取りまとめて、そこでこうあるべきだという一つの結論を官房長官に進言すべきものであると私は考えます。その趣旨にのっとりまして官房長官に御連絡を要請をしておきます。  この問題の取扱い方につきましては、午後再開直前に理事会を開きまして、他に理事会に付する案件もございまするので、それと同時に一つ御相談を願いたいと思っております。  それでは、質疑はこの程度にとどめまして、午後三時二十分より再開することとして、これにて休憩いたします。     午後二時三十五分休憩      ————◇—————     午後三時四十八分開議
  131. 吉川久衛

    吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十四年七月の豪雨による災害対策について、自由民主党並びに日本社会党提案にかかわる決議を行いたい旨の申し出があります。この際発言を許します。簡牛凡夫君
  132. 簡牛凡夫

    簡牛委員 私は、自由民主党並びに日本社会党を代表いたしまして、昭和三十四年七月の豪雨等による農林漁業被害対策に関する決議案を提出いたしたいと思います。  案文を朗読いたします。    昭和三十四年七月の豪雨等による農林漁業被害対策に関する件   過ぐる七月上旬から中旬にかけて、福岡山口宮崎新潟富山、島根、長崎佐賀、広島の各県を初め、三十七府県を襲った豪雨は、農地、農業用及び林業用の諸施設又は水稲等に甚大なる損害を与え、被害農林漁業者に深刻な影響をもたらしている。   よって政府は本災害に対し左記事項をすみやかに実施し、もって農林漁業生産力の確保の農山漁家の経営の安定にいかんなきを期すべきである。      記  一、農地及び農林水産業施設の災害復旧事業については、小災害が激増している実情にかんがみ、狩野川台風等の先例の趣旨に則り被害実態に即応して、すみやかに特別措置を講ずること。    なお、農地等の小災害対策について恒久策を確立するよう努めること。  二、被害農林漁業者に対し、すみやかに被害実態把握し「天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法」を適用し、経営資金の貸付を行なうとともに、共済金の仮払、概算払等の措置を講ずること。  三、被害農家が必要とする自作農維持創設資金については、貸付枠を拡大しすみやかに貸付を行なうこと。    なお、本年六月における九州地方等の干害による農作物被害等についても、昨年の例にならい適切なる措置を講ずるものとする。  右決議する。   昭和三十四年八月十一日      衆議院農林水産委員会  この提案の趣旨弁明は、午前中質問の形で申し上げましたので、省略さしていただきます。
  133. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、多賀谷真稔君。
  134. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、自由民主党並びに社会党を代表して、ただいま提案をされました決議案文について賛成の意を表するものでございます。このたびの災害が三十七府県に及び、さらにその被害はことに局所的にきわめて深刻かつ甚大な影響を与えておるのでございます。なかんずく、これらの災害地は、昭和二十八年度の災害被害を受けた地域でありまして、いまだその傷がいえておらない今日において、再びかような災害に見舞われたということに対しましては、政府においても十分なこれに対する援護処置が必要ではないかと考えるのであります。その意味において、この決議は時宜に適した適切な決議であると考えております。ことに、農地等の小規模災害におきましては、過般伊豆災害等の昭和三十三年七月、八月及び九月の風水害による被害を受けた地方公共団体の起債特例に関する法律によりまして、小災害につきましてもその起債の元利補給の制度が認められておりますので、こういった処置をする必要があると思うのであります。その他、天災法適用並びに自作農維持創設資金融資ワクの拡大、あるいは早害等の処置につきましても、適切な決議であると、賛意を表する次第でございます。
  135. 吉川久衛

    吉川委員長 それでは、お諮りいたします。ただいまの昭和三十四年七月の豪雨による農林漁業被害対策に関する件を本委員会の決議とするに賛成の諸君の御起立を求めます。     [総員起立]
  136. 吉川久衛

    吉川委員長 起立総員。よって右決議するに決しました。  この際、ただいまの決議に対する政府当局の所信を求めます。大野政務次官
  137. 大野市郎

    大野説明員 ただいま農林水産委員会におかれまして七月の災害に対します御決議をいただきましたが、ただいままで判明いたしました状況によりましても局地災害が非常に激しいものでございますので、このたびの御決議に対しましては、格段配慮をいたしまして、決議を尊重申し上げますとともに、善処をいたす所存でございます。
  138. 吉川久衛

    吉川委員長 なお、お諮りいたします。すなわち、ただいまの決議の関係方面への参考送付等の手続に関しましては委員長に御一任願いたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めてさように決定いたします。
  140. 吉川久衛

    吉川委員長 特殊農産物、なかんずく亜麻の問題について質疑の通告があります。この際これを許します。芳賀貢君。
  141. 芳賀貢

    ○芳賀委員 公取委員会にお尋ねいたしますが、今般帝国製麻並びに中央繊維の両者が合併を目的として公取委員会に合併の申請書を七月二十五日に提出したことをわれわれは承知したわけでありますが、この点に対しまして、まず第一に公取側から、両者の合併の趣旨、目的並びにこれに対する公取委員会としての審理の方針等について概括の御説明を伺いたいと思います。
  142. 中村清

    ○中村説明員 本日は、佐藤公取委員長が病気引きこもり中でございますので、私かわりましてお答え申し上げたいと思います。  帝国製麻と中央繊維との合併につきましては、去る七日二十日独禁法第十五条第二項によります合併届出書を受理いたしました。現在、法第十五条第一項第一号、第二号に該当するかいなや、すなわち、当該合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるやいなや、また、当該合併が不公正な取引方法によるものであるかどうか、こういう点につきまして慎重に審理中であるのでございます。届出受理の日から三十日を経過するまでは合併をしてはならない旨の独禁法の規定もあるわけでございます。この問題については、三十日を経過するまでに審判開始を決定するやいなやについて慎重なる審理をいたすわけでありまして、すでに四回ばかり委員会を開いておりますが、なお、ただいまお尋ねのありました合併の趣旨その他につきましては、事務経済部長より詳細にお答えをいたさせたいと思います。
  143. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、中村委員にお尋ねしますが、公取委員会としては七月一日に北海道におもむきまして、この両者の合併問題に連関する調査を行われたというふうに私たちは承知しておるわけでありますが、この七月一日に行われました委員会の調査というものは、両会社が合併の申請を出した問題と関連して現地調査を行われたと思うわけです。そうなりますと、この申請が出された事前の調査となるわけでありますが、この事前調査と今回の合併の申請に対する関連性というものはどのようなことになりますか。
  144. 中村清

    ○中村説明員 実は、届出書を受理いたしますと三十日以内に委員会が審判開始決定をするやいなや決定するわけでございますが、届出書を受理いたしますれば、どちらかにきめなければならぬ。あるいは審判開始決定をいたしまして合併が認められないことになるおそれがあるわけであります。会社の方におきましても慎重に公取の意向などを見ておつたと思います。私どもの方といたしましても、よく調査をする必要がありますので、その受理を見るまでにできるだけ調査をいたしたい、こういう考えであるのであります。その間に別に何の事情もあるわけではないのであります。
  145. 芳賀貢

    ○芳賀委員 お尋ねしますが、この中央繊維並びに帝国製麻は、これはかつて集中排除法によって分割された歴史を持っているわけです。従って、これらの会社が合併するということは、かつて集中排除法によって分割された会社がまた復活して集中度を高めるというようなことになると思うのです。そういうような歴史的な経緯にかんがみまして、委員会としてはどのような点に重点を置かれて調査を進めておられるか、その点はいかがですか。
  146. 中村清

    ○中村説明員 ただいま御質問のありました点は、まことにその通りであります。もとより、この問題を処理するにつきましては、そういう過去の沿革というようなものは十分考慮いたすのでありますが、その後におきまする経済情勢の変化、特に競争繊維の向上というようなこともございますので、それらの点もあわせまして新事態に処するには何が最も適当であるか、どういう結論が最も妥当であるかということについて検討しております。
  147. 芳賀貢

    ○芳賀委員 まだ委員会として結論をお出しになっておられないので、結論的なことをお尋ねすることはできぬと思うのですが、まず常識的に考えられることは、特に亜麻製造の分野、亜麻の商品生産、あるいはまたチョ麻の製品生産、これらの分野においては、両社が合併することによって取引分野における集中の度合いが相当高度のものになるのではないか、われわれはその点を心配しているわけです。それで、あらかじめの御調査は北海道等においてもなさったと思うのですが、この両社の合併によって、亜麻あるいはチョ麻等の、こういう亜麻繊維の製造並びにその取引の分野等においてどのような変化が生じ、集中率がどの程度に高まるか、たとえば同業者間における影響というのはどういうふうになるかという点は、あらかじめ御調査になっておると思いますので、その点を具体的に示してもらいたい。
  148. 中村清

    ○中村説明員 その点につきましては、実は私どもも調査の眼目であるのであります。事数字にわたりまするから、事務局の者からお答えいたさせます。
  149. 小沼亨

    ○小沼説明員 御質問のありました亜麻の分野でございますが、現在まで調べました範囲では、総計いたしまして、二社の数字を合せますと全亜麻繊維の四五%になる。ところが、それを、競合品であります合成繊維、こういうものと合せまして考えますと、平均しまして九%という率になっております。現在までの調査ではこういうことになっております。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の方の調査によると、亜麻の分野においては約八二%、それから、亜麻並びにチョ麻を含めた総体の分野においては五九%というようなことになっております。今小沼さんの言われた点とだいぶ大きな開きがあるのですが、これはどういうことでそういうふうな開きが出ておるのですか。
  151. 小沼亨

    ○小沼説明員 ただいまの四五%というのは、亜麻とチョ麻を合せまして考えた場合であります。申し落しましたが、亜麻だけでは八〇%ということに相なります。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特に、せつかく調査に行かれた北海道は、亜麻の生産の主要なる地域になっておりますね。従って、北海道においては、この両社の合併によって亜麻生産の八三%が集中される、こういうことになるわけですが、こういうことになると、これは、独禁法に照らした場合において、当然過度の取引分野における集中というようなことになるのではないかと思う。こういう点に対しては、特に慎重な配慮をされて、あらゆる部面に対する検討調査が進められておると思いますが、現段階においてはどの程度にこれらの問題についてどのような方面に調査が行われておるか。
  153. 小沼亨

    ○小沼説明員 北海道で、二社の亜麻の買い取りが大体八〇%、あと日本繊維が二〇%ということは調査して存じておりますが、これがどういう影響を持つかということにつきましては、いろいろ生産者の農民同盟からの意見がありますし、また、北海道生産農協でありますか、ここからも意見が出ておりまして、それらを参照しながらやつております。ただ、合併の場合には、独禁法上、買い取り競争の制限ということは一応合併の第十五条では適用されない、売手競争の場合だけをさしておりますので、単に形式からだけ言いますと、一応買い取りの問題は別の問題ということになっております。ただ、しかし、それは形式の問題で、実際に買い取りをする場合に、三社が合併したらどういう影響を持つかということについては、なお委員会で慎重に検討しております。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今言われた買手分野における競争の部面は独禁法から除去されておるというようなお話もありましたが、私も法律の専門家ではないが、常識的な範囲で申し上げますが、これは、昭和二十八年の独禁法の改正以来、この買手分野における競争等においても、やはり独禁法の適用は当然すべきである、こういう有力な解釈とか意見が高まつておるということについては、これは中村委員も御承知だと思うのです。ですから、これは、もう断定して、買い取り分野における競争の問題はこれは独禁法とは別の分野であるという確定的な解釈には到達していないと思う。到達していないとすれば、やはり、この合併によっていわゆる耕作農民に与える影響というものは決して軽視することができないと思う。従って、これらの問題についても、これは除外事項であるということではなくて、やはり今度の審査等の中に重要な一つの部門として取り上げて調査を進められる、べきと思いますが、どうですか。
  155. 中村清

    ○中村説明員 この問題につきましては、実は議論はもちろんあるわけでございまして、学説もありますが、多数の説は、明文の通り、合併については買い取り競争の分野では問題にしないということになっておるのでございます。しかしながら、北海道におきましては重大な問題でもありまするので、実質的にはいろいろと考慮いたして検討いたしておるわけであります。法文的に申しますれば、ただいまのところは、明文の通り、買い取り競争は合併については適用がない、こういう態度で進んでおります。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、たとえば公取委員会の中のある委員におかれても、今中村委員が言われた買い取りの分野における問題については、これはやはり独禁法外の問題ではないという見解を公けに表明しておる委員もあるわけです。そのことは御存じだと思うわけです。ですから、全体の委員の見解が不一致のような問題については、これは当然これを除外して調査を進めるということは不適当であるとわれわれは考える。ですから、この点については、当委員会を通じて、特に耕作農民に与える合併からの影響、不利益、そういう点についてはやはり重要視して調査をするという答弁をされる必要があるのじゃないかと思うわけですが、どうでしょうか。
  157. 中村清

    ○中村説明員 法律問題になりますと、委員委員長以下五人おりますのが、それぞれ意見の違うこともあるわけです。この問題につきましても、先ほどから申しますようにいろいろ意見のある人もあるわけでありますが、しかしながら、合併を認めないということにつきましては、つまり、審判開始決定をするということにつきましては相当の強力な理由も要るわけであります。それらの点も考えまして検討中であるわけであります。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから、先ほどの説明によりますと、亜麻の分野においてはほとんど全体の五〇%、六〇%、そういう集中度が高まる、しかし、合成繊維との関係を見た場合には一〇%程度であるというお話がありましたが、これはどういうような関係があるというような解釈に立っているのですか。合成繊維と亜麻繊維との競争関係というものは、これが全く類似のものであって、合成繊維も亜麻繊維と競争分野の中に当然あるものとして考えておりますか。
  159. 小沼亨

    ○小沼説明員 一応、非常に有力な競争品であるということで、現在あわせて考慮すべきではないかということも考えられております。それで、たとえば、かりに品目別に見ますと、ホースでございます。これは消防用のホースでございますが、これは、先ほど申しました合成繊維を合わした総合的の一〇%のうちでも、ホースだけを見ますと四七%になる。合成繊維と麻を合せまして四七%になるのでございますが、実態を調べてみますと、ホースの大部分は消防庁で買うわけでありますが、消防庁で、指名入札なり、購入方法として大体半々で買っておられるというような点、しかも、合成繊維でホースを作っておる会社が三社ほどございますが、その一社で年間四万五千トンを作っておる。それから、合併するとした場合の両社で四万六千トンを作っておるということ。それから、価格の推移その他を見まして、実態的には麻製品と合成製品とがもう同じ数量買われておるというような点はやはり考慮すべきではないか。それぞれ品目別に見ますと比率はいろいろございますが、そういうことで、品質的に非常に有力で、しかも多量生産でぐんぐんのしてくる合成繊維を全然無視して、麻だけで考えることがいいかどうかというような点も、なお委員会で検討しておる次第でございます。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これはやはり大事な問題だと思うのです。この合成繊維を合せて九%だからこれは過度の集中にならぬというようなことになれば、これは当然合併を認めるという重大な論拠になると思うのです。だから、こういうふうに解釈を非常に拡大していけば、これはすべて合併可能というような一つの前例を作ることになるのじゃないですか。たとえば、ビール会社の合併が行われるというような場合に、これはほかにも日本酒とかウイスキーがあるが、そういうアルコール類全体の分野において何%にしかならぬから大したことはない、そういうような論も成り立つわけです。そういう非常にばく然とした抽象的な運用をするようにいつごろから方針が変ったのですか。
  161. 小沼亨

    ○小沼説明員 やはりケース・バイ・ケースでございまして、たとえば日本酒の場合に清酒と合成酒がどうかというようないろいろな問題と、麻の場合の合成繊維と麻との関係、これは、必ずしも、こういう場合にはこうだとか、それから、こういう場合には今後競争入札をあわせて考えるということで、はっきり委員会で方針をきめられたということはございませんで、やはり今後起るその場合々々の実態を見まして、当然競争品も考えなければ独占になるかどうかという判断をするのに非常に不合理ではないかという場合には合せ考えるし、合せ考えることがまた非常に不合理な場合には考えないということで、その場合によって非常に違うのではないか。公取委員会で競争品を合せて考えるというような方針がはっきりきまったわけではありません。ただ、この両社の場合には、以前に、昭和三十年ですか、非公式に陳情がありまして、一度委員会へ諮られておったのでございますが、そのころはまだ合成繊維の伸びがそれほどでないということで、これを合成繊維もあるからということで合併を取り上げるのは時期尚早だというような非公式な事例はございました。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、お尋ねしますが、この両会社は現在不況カルテルを結成して、たとえば昭和三十一年には帝麻、中繊を合せて五社で不況カルテルを結成しておる。三十三年にさらにそのほかに八社が参加して、現在十三社ということになっておる。このカルテルに参加しておる会社の中で特に有力な二社が合併するということになりますと、この不況カルテルというものは結果的にどういうことになるか、その点はいかがですか。
  163. 小沼亨

    ○小沼説明員 現在の不況カルテルは、九月三十日まで十三社の不況カルテルが継続しておるわけであります。それからあとさらに申請されるかどうかということはまだ明らかでございません。十三社でカルテルを結びます場合と、これは一つ一つの品目に当ってみないとわかりませんが、二社の場合では、若干数量的にも違って参りますし、二社の合併では実質的な制限にならなくても、十三社のものを合せると実質的な制限になるということで、なお合併した後に新しい会社も加わって不況カルテルをやる必要があるということならば申請がありましょうし、また、公取もその事態によって検討するということになるのではないかと思います。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 このカルテルの効果は公取ではどういうように見ておられますか。現段階においてどういうような成果をあげておるか。
  165. 小沼亨

    ○小沼説明員 昭和三十年以来四回繰り返しておるのでございますが、麻だけの制限をやって、これは生産数量の制限でございますが、やはり効果がないということで、依然として採算的に独禁法のいう平均生産費を下回るという事態でございます。従いまして、カルテル参加各社の経営も非常に悪いというのが現状でございます。不況カルテルの効果というものは、早急に平均生産費を上回って採算がとれるという状況には現在達していないと思うということでございます。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、カルテル結成において、たとえば北海道においては昭和三十二年ごろから亜麻の原料価格が相当引き下っております。昨年もこれは原料価格が下げられておるわけです。これはカルテルの一つ影響だと思うのです。こういうことが生産者の方にしわ寄せされてそうしてその会社の経営が持続されなければならぬということになると、非常に問題があると思うのです。私たちの資料によると、たとえば会社の年鑑等によると、最近、中繊にしても帝麻にしても、非常に経営内容というものが好転しておる。特に自衛隊の被服方面に対する需要等が相当拡大して、大体八分くらいの配当を行うようになって、将来に対しては明るい見通しが持てるというような、そういう判断も行われておるわけです。そうなると、今小沼さんが言ったように、このカルテルというものは何らの成果をあげなかったということではないんですね。そういう方向に向っておる場合において、今両会社があえて合併をしなければならぬという理由ですね、それはどうにあるのですか。
  167. 小沼亨

    ○小沼説明員 これは、会社の合併の趣旨でございますが、会社側から出しておる理由としましては、分割されて非常に小さくなった、麻会社はいずれも非常に小さい会社になっておる、その経過途中において東洋繊維の倒産のような問題がございましたが、更生会社になりましたが、こういうようなケースになった、それから、小党分立であるために、競争勢力が多く、いずれも不安になっておる、それから、不況カルテルを実施していましたけれども、業界の安定が得られない、四年間も不況カルテルを実施したのに、生産数量を制限した分だけ合成繊維に食われておる、従って、少くともこの二社が合併したところで繊維会社としては非常に小さい、——十二億程度の会社でございます。たとえばレーヨン、倉レとか、そういったものから比較しても三分の一程度の会社にしかならない、それから、合併によりまして、従来卸売面でいろいろ重複しておった特約店等の過当競争がなくなる、そういった販売面が非常に合理的になる、それから、重複設備を調整することによって生産数量等が適当に調節されるというような点を、会社側としては理由書にあげております。
  168. 芳賀貢

    ○芳賀委員 実は、きょうはあまり時間がないので、できるだけ私も簡潔に質問しますが、この会社の合併の理由が、合理化と多角化ということを一つの理由にしておるようですが、合併に、よって合理化が進むということになった場合、積極的な面と消極的な面が出てくる。たとえば、合併することによって、一部においては工場の閉鎖をする、そういうことも当然これは出てくる。今まで両会社は北海道等においても数度にわたって企業の縮小をやってきておることは御存じの通りなんです。ですから、そういう場合においては、たとえば従業員に対する圧迫あるいは原料耕作者の生産農民に対する経済的な圧迫、こういうものは当然付随して出てくる問題だと思うわけです。こういう点に対しては、たとえば従業員のこれに対する意向、生産者のこれに対する意向とか、あるいは同業者の意向であるとか、あるいは消費者側のこれに対する意向であるとか、そういうものは総合的に重要な点として調査して判断をされる問題ではないかと思うのですが、こういう点に対しては、北海道等に調査に行かれてどういうような調査の結果を得てこられたか、具体的な点について伺いたい。
  169. 中村清

    ○中村説明員 ただいまお尋ねのありました諸点につきまして、私どもは今検討中でございます。もとより私どもは労働関係所管の役所でないのでありますけれども、農民に対する影響あるいは工場の従業員に対する影響というものももとより無視するわけではない。あらゆる角度から総合してやっておるわけでございますが、今どういう結果になっておるか、今どういう進行状況にあるかということは、今申し上げることは残念ながらできないのであります。ただ、芳賀先生のおっしゃった点について慎重に検討いたしておるということで御了承願いたい。
  170. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題については、すでに御承知通り、たとえば北海道の生産者の団体、たとえば農民同盟からも意見が出ておる。それから、従業員であるところの両社の労働組合からも合併に対しては反対の要請が公取の方に提出されておると思う。ですから、問題は、今まで隠密裏にこの問題を取り扱っておられるようにわれわれは見ているわけです。そうなると、これが消費者に対する影響とか、各方面からの影響というものは明確に反映してこないと思うのです。ですから、隠密裏にやられるということもいいが、やはり一つの社会的な反響がどうであるかということも適当な範囲においては打診させるような方法もとる必要があると思う。それには、たとえば公聴会を開くとか、そういうものを持たれて、各利害関係のそれぞれの部面から適切な意見の開陳等を求めてそれらのものも総合的な判断の資料として調査を進めて、必要があれば当然審判の開催等を行うというような点に行くべきだとわれわれは考えるんですが、いかがでしょうか。
  171. 中村清

    ○中村説明員 ただいま、隠密裏に調査をしているというお言葉がございましたが、私どもは決して隠密裏にしているのでないのでございます。ただ、審議の経過は発表いたしておりませんけれども、それぞれ、関連の産業の方、あるいは官庁方面、あるいは一般の方の御意向等はできるだけ尊重して参りたい。もうすでに意見をちょうだいしているところもありますし、また照会を発しておるところもあるのでございますが、決して隠密裏にやるというわけではございません。ただ、公聴会を開くことがよろしいかどうか、開かなければいかぬか、これについてはまだ委員会といたしましては態度を決定いたしておりません。しかしながら、一般の方の御意見も十分拝聴するという態度は持っているわけであります。それをもって御了承いただきたいと思います。
  172. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、農林省にお尋ねしますが、振興局長は来ておりますか。
  173. 吉川久衛

    吉川委員長 特産課長が来ております。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは政務次官にお尋ねしますが、こまごましたものは特産課長に補足してもらってもいいのでありますが、両社の合併問題について、農林省は公取の方から何らかの連絡を受けているかどうか、いかがですか。
  175. 西村周一

    ○西村説明員 先般公取の方から私の方へ意見を聞きに参られました。
  176. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どんなふうな意見ですか。
  177. 西村周一

    ○西村説明員 生産農民に対してこの二社の合併がどういうふうな影響を及ぼすかということについて質問に来られたのです。私の方の考え方といたしましては、先生も御承知のように、北海道の亜麻経営というのは、価格決定に際しましては、生産連、それから農民同盟、その他生産者の代表の者が、毎年二月に団体交渉を行なって価格決定をしているわけです。二社の合併によって売契価格に直接どうこうというようなことはないじゃないかという考え方をしているわけであります。従いまして、合併をするかしないか、これは私の方の関与した問題ではないけれども、売契価格についてはそれほど影響はないのじゃないかという回答をしているわけであります。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は、課長は自信を持ったようなことを言われるが、先ほど言ったように、不況カルテルの影響によってさえも生産者価格が引き下げになっているのですよ。今度は、両社が合併した場合、北海道においては両社の合併によって取引がほとんど独占化されてしまうのです。その点はわかるでしょう。そうなると、今まで以上に会社側の一方的な立場から原料価格の圧迫というものが当然来るということは、冷静に考えれば予想されることなのです。そういうことを排除するために独禁法というものはあるのです。それが、農林省の立場で、心配はない、影響はないという論拠というのは、ちょっと変じゃないかと思うのです。政務次官、どうお考えになるのですか。会社だけがうまくもうかれば、農民にしわ寄せが来るのはかまわぬ、そういう農林省方針であれば、また質問をしなければならぬ。
  179. 大野市郎

    大野説明員 まだ就任間がないものでございますために、大切な問題でありましたが、農林省が、ただいま特産課長が申しましたような工合で、影響はないと思うという答申を出したことに対しまして実は、まことに恐縮でございますが、私承知しておらなかったものでございますから、その点に対しての見解は保留をさしていただきます。ただ、公取の問題になりますまでの、特に亜麻に対して八割も買手が一本になるということは、通例の形から見ましても芳賀委員御心配のようなことは一応考えられると思いますので、私も、その点でどこまでの相談をしたのか、今実は部内のことでありますが特産課長に聞いたような状況でございますので、この点大臣はどういう見解を持たれましたか、確かめてございませんので、その点だけ保留さしていただきます。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、大野さんに申しておきますが、もしもこれが一課長とか係官だけの判断でそれが農林省の正式な意見であるというようなものが公取の方に正式に受け取られておるとすれば、これは後刻重大な問題となるのです。従って、この点については、大臣とも相談されて、十分精査されたい。特に北海道の場合には亜麻栽培というものは御承知通り畑地の農業経営上重要な作物になっておるのです。たとえば亜麻にクローバーを混播して、そうして酪農を発展させて地方の増進をはかるとか、ただ投機的な採算上亜麻を作るとか作らぬとかいう問題よりも、経営上の基本的な問題として北海道においては亜麻栽培というものが重大な要素となっておるのですから、これは当然、農林省としても今までは奨励もしておるし、奨励する以上は、やはり適当な価格の維持ということは当然これは付随する問題ですから、この点については農林省の見解をあらためて十分検討されて、しかる後に農林大臣を通じて公取委員会の方に正式な意見を述べるようにしてもらいたい。その意見の内容については後刻当委員会に参考資料として御提示を願いたいと思いますが、いかがですか。
  181. 大野市郎

    大野説明員 さよう取り計らいたいと思います。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、中村さんにお尋ねしますが、この帝国製麻、中央繊維の資本構成を見ると、いずれも主要な株主が相通じておるわけです。この点は調査されておるのですか。帝国製麻の場合は、一番大きな株主は富士銀行であります。富士銀行というのはかっての安田銀行ですね。それから、株主の大きい順から言うと、第一が富士銀行、第二が安田火災、一つ飛んで第四に安田生命ということになって帝国製麻はほとんど安田系列のいわゆる金融機構が主要な株主ということになっているのです。それから、中央繊維の場合においても、株主の第一がやはり富士銀行です。それから、第三位が安田火災、第四位が安田生命ということになって、これは内容が大体同じなんです。そうすると、この両会社はいずれも富士銀行を中心としたいわゆる金融機関が実態的にはこの両社の方向を決定するような一つの力を持っておるわけです。こういう点は、たとえば独禁法の十一条、十三条、十四条等と照らした場合においても、金融機関の株式会社に対する支配というものは、ある程度制限、排除されなければならぬということにもなっておると思うのでありますが、こういう点に対しても、今度の合併の動きというものは、一体主要な動きがどこから出発しているかということを十分御検討願いたいと思います。主要なる株主の意思によって株式会社というものは方向がきまることは言うまでもありませんが、この両会社がいずれも安田系の金融機関が中心となって今まで運用されておった。従って、今度の合併の意思というものも、おそらくこの大株主等が中心となった意思によってこの合併の方向がきまっておるということになると、これらの問題はやはり独禁法上から見て問題なしとは言えないと思うのです。この点に対する調査が進んでおるかどうか、いかがでしょう。
  183. 中村清

    ○中村説明員 御指摘の点は私どもも調査をいたしております。何分にもこの両社は分離のときの事情が事情でありましたから、株主も同系統のものであることは、これは自然の結果であろうかと思いますが、金融機関の非常な支配力によります弊害というようなことにつきましては、常々私ども注意をいたしておるわけであります。しかしながら、たとい同系統と申しましても、それぞれ金融機関といたしまして、あるいは銀行、あるいは保険会社、あるいは信託銀行、そういうふうに会社が違いますので、たとえば一〇%以上の株を持ってはならぬということになってはおりましても、それでは総合してどうかということの規定はないわけであります。現行法ではこれを法律的にどうこう言うことはできないわけであります。ただ、実質的の点を注意をして参りたい、かように考えております。
  184. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は、亜麻繊維とそれから合繊の競争の分野というものを総合して判断して考える、それから、この株主の金融機関の持株の制限等については総合して考えることはうまくないということになると、問題によってそういう傾向は合併なら合併を容易にさせるようなことを是認するような結論になってくるわけです。この点は全く同列とは言えないかもしれぬが、かつて、北海道における乳業の雪印とかクロバーと北海道の信連との間における持ち株の問題とか役員兼職の禁止規定等で、これは独禁法違法で公取が処理された事例もあるわけですね。こういうことは北海道の農民はみんな関心を持っておるわけです。だから、こういう点についても十分誤まりのないような判断をしていただきたい。また、かつて公取委員会が違反事実として指摘された埼玉銀行の繭の取引分野に対する金融支配の問題等も、公取は独禁法違反として処断しておる事例もあるわけです。こういう点は専門の委員会の方で十分遺漏なくやられると思いますが、単に、資本の小さい両会社の合併であるからして大したことはないだろう、公聴会も開く必要もないし、審判も開始する必要はない、三十日たてば自然に合併が効力を発生する、そういうことでなくて、今中村委員や小沼さんが言われたように、各方面べの影響というものを十分考えて、しかも最近独禁法が全く骨抜きになって威力を失っておるというような痛烈な批判を受けているときでありますから、その意味においても十分慎重な態度をとると同時に、この問題を通じて、生産農民と会社との関係、会社と消費者との関係、あるいは会社と従業員との関係等も十分対象にして、積極的な調査を進められたいというふうに私は希望いたしておりますが、どうでしょう。
  185. 中村清

    ○中村説明員 別に私どもはこの合併を非常に軽視いたしておるということはないのでございますが、経済情勢の変化によりまして、別に私どもの方針の変更というわけではなく、諸般の情勢を考えてそのときそのときに最も適合いたしました決定をいたすわけでございます。せっかく今慎重に審議中でありますので、その点を御了承いただきたいと思います。
  186. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長から時間がないと注意を受けましたので、最後に一点だけお尋ねしますが、今後調査を進めていく途上に、先ほど言われた通り、利害関係を持つ者、たとえば反対意向を表明しておる労働組合とか、北海道の生産者団体である農民同盟とか、あるいは消費者側の意見、そういうものは当然公取として十分正式に意見が委員会に反映できるような機会を持たれると思いますが、その点はいかがですか。そういうことをしないでやっていくか、当然これは重要な問題として取り上げて調査対象にしていくか。
  187. 中村清

    ○中村説明員 関係の会社の従業員の方々の御意見、あるいは生産者農民の方の御意見、あるいは北海道庁、農林省等の御意見、いずれも伺いまして、最善の決定をいたしたい、かように考えております。すでにもう従業費の方の御意見等も承わっているのもあるわけであります。ただ、先ほど申し上げました通り、労働問題の所管の役所ではございませんし、特に、まだ買い取り競争の問題につきましてもいろいろの意見もあるわけでありますので、一番大きな問題はやはり商品の販売市場における取引分野の自主的制限、こういうことに重点を置きましてなお関係の方々の御意見も承わりまして善処いたしたい、かように考えております。
  188. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点ですが、これは独禁法の第一条に明確になっておるのです。いわゆる雇用あるいは生産や消費の分野においても国民経済全体を通じて健全な発展を達成するため、そういうことがやはり法律の目的の中にも包括されておるわけです。だから、これは労働問題と私ども考えていないが、当然会社と最も不可分の関係にある従業員との関係、そういうものを、これは労働問題だから切り離すということにはならぬと思う。ですから、そういう点に対しても、ただあれは反対だこれは賛成だというように単純に反対、賛成だけで片づけるのではなくて、やはり反対の中には傾聴すべき反対の理由もあると思いますし、賛成の中にも軽視できないものがあると思いますから、そういう点を手落ちなく取り上げてやってもらいたいということなんです。
  189. 中村清

    ○中村説明員 承知いたしました。その点は私ども実は同感でございます。ただ、労働問題、完全雇用というようなことはわれわれも目標といたすのでありますが、独禁法の第一条はいわば大きな理想を掲げておるわけでございまして、直接には労働問題の所管の役所ではないと申し上げたわけでございます。もちろん、御指摘の点は考慮いたし、また、買い取りの場合の競争の問題につきましても、どうか一つ満足できるような方向に運行されることを常に考えてやっておるわけであります。その点、結論を申し上げることのできないのははなはだ残念でありますが、慎重に審議中であるということだけ御了承願いたいと思います。
  190. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長に申し上げますが、きょうは時間の都合で私の質問はこの程度にして、今後の推移等については委員会で一つ十分重大な関心を持つと同時に、次の機会にさらに発展の経緯等について質問したいと思います。従って、残余の質問は保留して、きょうはこれで終ります。
  191. 吉川久衛

    吉川委員長 芳賀君の申し出を了承いたします。  関連質問の要求があります。許します。松浦定義君。
  192. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 ただいま芳賀君からいろいろ質問がありまして、大体政府並びに公取関係の内容は明確になったのですが、私はただ一点だけお伺いしておきたい。  先ほど産課長お話しになりましたように、大体価格の点についてはあまり心配がない、こういうお話を聞いて非常に心配しておるわけであります。と申し上げますことは、従来から三会社あるわけですが、その三会社のうち一番有力であった帝麻、あるいは中繊、日繊という、その団体交渉をする場合に、やはりどうしても大きい会社の方の力がある程度基準になって価格が決定されて参ったのであります。でありますから、今度それが一本になってしまうということになれば、当然団体交渉は明らかに対立するわけであります。地理的条件とかなんとかいうものは全然ないわけであります。特に、寒地農業の確立という意味で、亜麻とビートが北海道の特産物として今日までやってきたわけです。そこで、私は、むしろ、今亜麻を合併しなければならぬような情勢に置いたという政府の今日までの施策が、亜麻に対してあまりにも冷淡であったのじゃないか、こういうように言うわけです。そうでなかったら、何もせっかく終戦後のときに分れたものがどうしてもこの際一緒にならなければならぬというわけのものではないと思う。そういう点については、政府としては、全然責任がない、あるいはまた、十分尽したんだけれども会社なり農民の協力がなかったというようにお考えになって、今度の合併について積極的な反対というふうには聞いておりませんので、今の考え方では、何だかその合併に賛成だったというふうにしか受け取られないが、そういう点については、亜麻耕作、亜麻事業に対して、農林当局としては十分意を尽してきて、それでもなおかつ今日こういうことになったということなのかどうか、その点をちょっとお聞きいたしたいと思います。
  193. 西村周一

    ○西村説明員 亜麻は北海道におきます重要な産物であることは、私たちも十分認識しておるところであります。ただいままで私たちの方でやって参りましたのは、原採種圃によって新しい品種を更新してやっていくということに努力いたしておるわけであります。幸いにいたしまして、一昨年あたりからウイラーという新しい品種を入れまして、それによりまして最近非常に反当収量がふえてきた、そういうことによって、今まで投げやり的に作っておりました農家というものがだんだんなくなって参りまして、亜麻が経営の中へだんだん入り込んできたというふうに考えておるわけであります。今後ともそういった試験研究方面のことを努力いたしまして、北海道の亜麻栽培というものをもっとしっかりしたものに育てていきたいと思っております。
  194. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 主管の課の特産課の意向としては私はわかるのですけれども、今までの予算のつけ方とか奨励の仕方から言えば、農林省全体からいく寒地農業という面についての施策というものは、やはり今日両会社が合併しなければならないような形に追い込まれたのではないか、こういうことも一応うかがわれるわけなんです。しかし、私どもは、原則として、これからの北海道、あるいはそれに関連するような地帯においては、この亜麻事業というものはどうしてもやめることはできないと思う。であるから、今までのやり方についてもし十分でないというのであるならば、これからのやり方についてそれを直すということによって、必ずしも合併を必要としないと私は思うのです。であるから、もうこれ以上のことをやらないというのであれば、それは合併しても結果的には同じである。ただ、先ほど言ったように、合併して団体交渉的に問題を解決する場合には、やはり耕作農民としては今までより非常に窮屈な中でこの耕作をやらなければならぬ。この最も対照的な問題としてビート工場の問題がある。もしそうだとするならば、ビート工場も何もそんなにたくさん工場を作る必要はない。しかしビートは別だというならこれは別でありますけれども、農民にしてみれば、同じ土地を使ってやるのですから、ビートを作る農民も亜麻を作る農民も同じなんです。であるとすれば、やはり政府としては同じようなやり方をやるべきである。そういう点については、政府の考え方が相当変っておるからこそ、ビートにはそういう熱意があるが、亜麻には熱意がない。従って、せっかく終戦後ああした苦しみの中からお互いに分離したにもかかわらず、さらにまた合併しなければならぬ。そのことが、会社と、あるいはまた政府、さらにまた耕作農民と、それを指導する農業団体との、この四つの中でいろいろ問題が複雑になってきておると思う。お話を聞きますと、公取の方では、札幌段階で御調査になったときには、農業団体の意向、あるいは政府の意向はお聞きになったかもしれないが、ほんとうに亜麻を作っておる農民の意見というものはお聞きになっておられない。むしろ、公取委が来られるという連絡を聞いて探したがわからなかったという事実さえあるのですから、先ほど芳賀委員の御指摘のように、今度はゆっくり考えて、農民の意見を聞いて、その上に立って、この問題をどうするかということをおやりになると私は思うのですが、ぜひ一つそういう形でお願いしたい。亜麻耕作がこれからも発展するということになるならば、今公取やあるいは農林省考えておられるように、そう簡単に、これは申請があったから許可したらよかろうということで、これからの亜麻を作る農民が納得しないということになるならば、会社が合併したことによってかえって会社は苦しくなる。これは毎年耕作反別は減って参ります。この耕作反別を減らさないということは農林省の施策いかんにあると私は思うので、会社がいかに努力しましても、耕作農民が、それでは作りましょう、やめましょうということにはならないと思うのです。でありますから、やはりこれに対しては、もっと積極的な、予算措置は当然でありますけれども、寒地農業、特に特産物としての亜麻については、これはもうほかのものがどんどん発展してきたから必要でないというなら別でありますが、少くともそうでありますならば、寒地農業を今日まで指導せられた農林省当局としては、これからの指導はまた別な考え方で、農民が納得するような指導をしていただかなければならぬ、このように考えておるわけであります。  どうぞ、そういう意味合いで、この点は十分御研究願うことを要求いたしまして、私の関連質問を終ります。
  195. 吉川久衛

    吉川委員長 芳い君に申し上げます。あなたの資料要求の発言を許します。
  196. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にちょっと伺いますが、実は、昨年以来、北海道を中心として、雑穀、豆類、澱粉等の農業協同組合が中心になったいわゆる自主共販が進んで、相当な成果をあげております。これは単に国内だけの自主共販だけで究極の目的を達することはできないのです。なぜかというと、これは輸入競合の問題とからんでおる。従って、昨年以来、農林省においても、当委員会の意向を尊重して、たとえば農産物の輸入、特に豆類等の輸入については厳重に規制して、必要不可欠の最小限度のものは当然国民生活上輸入しなければならぬが、少くとも業界の利益のためにみだりに輸入許可をするようなことがあってはならぬという方針で今日まで進んでおるのですが、しかし、現実の問題は、依然として相当量の雑豆等が輸入されておる。これは非常に巧妙な方法で輸入が行われておるということをわれわれは発見したわけです。従ってこの際お尋ねしたい点は、現在まで雑豆の輸入については、一つは、求償貿易といいますか、いわゆるバーター方式による貿易、それから外貨の特別割当による輸入方式の二つをとっておるのですが、現在の輸入状態というものはどういうようなことになっておるか、まずこの点の御説明を願いたい。
  197. 須賀賢二

    ○須賀説明員 雑豆の輸入につきましては、これは、芳賀委員から御指摘がありましたように、今日の価格に対しまする影響等十分考慮をして措置をいたしておるわけであります。当面の問題は、本年上期の雑豆の輸入数量をいかように取りきめるかということでございますが、これは、ことしの輸入計画を組みました際におきましては二万トン程度の輸入を行うことを一応予定をいたしたのでございます。しかし、その後の状況等から見まして、できる限りその数量を調整して参りたいという考え方をもちまして、先般関係省間におきまして協議をいたしました結果、本年度の上期の輸入につきましては、当初の計画の約半分、一万トンといたしたいと考えておるわけであります。そのほかに、リンク輸出によりまして輸出をいたしましたものにつきまして、その見合いの分が一万五千トン程度輸入計画に計上せられることになると考えておるのでありますが、その両者を合せましたものを目下のところ輸入数量と考えておるわけであります。
  198. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、資料要求をしたい点は、結局、特別外貨割当とバーター貿易による二つの制度によって輸入が行われておる、ですから、それぞれの特別外貨割当とバーター方式によるところの輸入がどういう形で行われたかという内容をここでぜひ資料として出してもらいたい。これは通関によってわかるわけでありますが、特にこのバーター方式の場合は禁止品目が明らかになっておるわけです。それと同時に除外品目があるわけですが、禁止から除外されている品目は、特にこれは大部分が中共産のアズキとかソラマメ、エンドウ、それからイラン原産のソラマメ、こういうものは認められておる。それがさらに改正されて昭和三十二年の十月から雑豆という品目が入って、三十三年の五月からは、アズキ、ソラマメ、エンドウ、ササゲ、イラン産のソラマメ、三十四年の四月には、アズキ、ソラマメ、エンドウ、イラン産ソラマメ、こういうふうに、除外されたり、また拡大されたりしたものがあるが、現在中共貿易がとだえておる中において、この除外品目であるところの中共の原産地証明をつけた雑豆等が相当量次々に輸入されておる。これは非常に奇異な現象だと思います。従って、これらの点については、当然農林省や通産省においても注意されておると思うのですが、この内容をよく調べないと、どういう形で入ってきておるかということがわからないのですね。これを正確にするためには、どうしても政府から資料としてぜひ出してもらいたいと思います。これは資料を作成してお出しになれますかどうですか。輸入制度別、特割とバーター制による制度別、相手先がどこであるか、輸入数量はどうであったか、その品目はどうなっておるか、そういう点に対する資料をぜひ出してもらいたいと思う。
  199. 須賀賢二

    ○須賀説明員 中共からバーター貿易によりまして入っておりまする豆につきましては、今年に入りましてからも現在までの通関数量は約二万トンをこえておるようでございます。なおその後成約の数量等もかなりあるようでございまして、私どもといたしましてもその動向は十分注意をいたしております。  ただいま御要求のありました資料は、通産省と十分連絡いたしまして、できる限り努めましてお出しするようにいたしたいと思います。
  200. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ちょっと、大臣がおられるから、注意を喚起するために言っておきますが、中共産の原産地証明がついておるということは、必ずしも中共で生産された雑豆とかそういう農産物が来ておるというのではないのです。たとえば、アメリカであるとか、エチオピアであるとか、北鮮であるとか、中共以外で生産された雑豆等について中共の原産地証明が付せられて、それによって堂々と大手を振って通関しておるわけです。ここに問題があるのです。中共との間においては貿易がとだえておるから、当然これは中共の産物が入ってこないことはわかるが、これは一つの盲点なんです。原産地証明がついておれば堂々と入ってこれるというような盲点がある。これを利用して相当量の雑豆等が非常に巧妙な方法で入っておる。これがはっきりしないと、形式的な資料だけいただいても何も価値がないのです。その点を含んで完全なる資料をぜひ出してもらいたい。
  201. 吉川久衛

    吉川委員長 経済局長、いいですか。
  202. 須賀賢二

    ○須賀説明員 通産省とよく協議いたしまして資料をお出しいたしたいと思います。
  203. 吉川久衛

    吉川委員長 コンニャクの価格問題についての質疑を続行いたします。中澤茂一君。
  204. 中澤茂一

    中澤委員 きのう大臣がいなかったので事務当局といろいろ検討したのですが、これはとても大臣がいなければ話がつかぬ問題だということで、きょうまで質問を保留したわけです。  そこで、振興局長は、豊作であったということ、いろいろ値下りの条件をあげて、それによって在庫の持ち越しが増加したこと、流通経済が混乱していること、すなわち共販体制の確立がなされてないということ、そういうふうないろいろな理由をあげておるが、自分が責任になる理由は一つもあげてない。そこで、この暴落の根拠になった要因というものはどこにあるかと言えば、昭和三十二年の二百九十トンの輸入にこの暴落の根拠があるのです。それは、明らかに、統計資料を見ても、昭和三十二年の五月には二十万円まで暴騰した。これは私も正しい価格だとは思っていない。しかし、それを契機に輸入をしたことから、この表にあるように暴落を続けて、ただいまは、四万二千円から若干はね上りましたが、四万七千円程度でとまっておる。これは明らかに、私は振興局長にも申し上げましたが、そういうたぐいの要因ももちろん認めるが、根本的にはこの二百九十トンの輸入のときから始まっておるということが、この統計資料に明らかに出ておる。だから、これは農林省が責任がないとは私は言わさせない。まあその責任問題はもはやよすということにいたしまして、結局これに対してあなたがどういう方策をとろうとしておるか、まず伺います。
  205. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、コンニャクにつきましては、生産が非常に過剰になってきておるのではあるまいかと思います。振興局長からもいろいろ申し上げたことと思いまするが、そういうことの結果、農産物によく見られる供給の過多という現象があるのではあるまいかというふうに観察をいたしております。それで、これは今中澤さんが外産の輸入をした問題が何か責任があるようなお話でありましたが、まあ外産の輸入、これは阻止をいたしたわけです。その阻止いたしました結果コンニャクの価格は非常に上ってきたことは御承知通りであります。そういうことに刺激されましたという事情も私は大いに手伝っておると思いますが、コンニャクの生産がふえてきた、こういうようなことが、ただいま申し上げました過剰の一つの原因ではあるまいかというふうな見方をいたしておるわけなんです。そういうような状況でありまするから、私は、コンニャク問題の対策としては、需給を一つうまくあんばいする方法考えなければいかぬのじゃないか、さようなことで、先般来農林省に主要生産県の代表者に御参集願いまして、生産調整の方法というようなことでいろいろ御検討を願っておるわけなんです。これがどうしてもこの問題の根本的な解決策である、かように私は考えておるわけでございます。  しかし、当面の問題というものがあるわけでございまして、この当面の問題に対しましては、当面の対策が必要である、さようなことから——あなたの長野県の方なんかはだいぶ共販の体制なんかはしっかりしておるようであります。しかし、一つの県がしっかりしておりましても、弱体な地方がありますると、その弱体な方面の影響も受ける、こういうようなこともあり、私は群馬県ですから、あなたの方よりもっと特産県なんであります。コンニャクの問題は中澤さんより以上にもっと頭の痛い問題であります。さようなことで考えておりますが、群馬県あたりのこの機構の整備しない方面におきましては、まず共販体制を強化して参りたいという感じを私は持っております。と申しますのは、コンニャクの値段が二十万円から四、五万円に下ったといいますけれども、この市中の末端消費価格というものはそう下っていないわけなんです。そういうようなことから観察いたしますると、どうも流通機構という中にこの問題の大きな混乱の原因がひそんでおるのではあるまいかというふうにまあ私は考えるわけなんです。  さようなことから、根本的には、需給調整を政府も農家の方も一緒になって全国的にいたしたい。それから、当面の対策といたしましては、共販体制を一つ整備してそうして、それに対しましては政府もできる限りのあっせん、御援助をするという方向でこの問題を処理していきたい、かように考えておる次第でございます。
  206. 吉川久衛

    吉川委員長 中澤君、まことに残念でございますが、あなたの質疑は一つ保留を願います。
  207. 吉川久衛

    吉川委員長 運輸大臣がやむを得ない用務がありまして五時半までということであります。そこで、農林水産物の貨物運賃問題についてこれを先に調査を続行することにいたします。  野原正勝君。
  208. 野原正勝

    ○野原委員 私は、農林水産物に対する貨物運賃、特に遠距離公共政策割引の問題に関しまして、特に運輸大臣にお伺いをいたします。  と申すことは、すでに御承知だと存じまするが、農林水産物の鉄道運賃というものは、これは非常に農林水産物の価格の形成を支配しておるわけです。遠距離から持って参りますものに対して特別に政策的な公共割引を実施しておるのでありますが、もしこれを変更して率を下げるとかないしはこれを廃止するということになりますると、今日そういう割引制度がありましても、北海道であるとかあるいは九州であるとかいう遠距離の地帯の農林業は非常に苦しんでおる実態であるにかかわらず、そういった制度がもし廃止される、あるいは割引率が少くなったということになりますると、そういった地帯におきまする農林水産業というものは根底から破壊されるような事態が起って参る、私どもはそれを非常に心配しておるのであります。すでにこの委員会で、この問題につきましてはしばしばいろいろな意見がありまして、国鉄当局等の意見も聞きました。国鉄が運賃体系の合理化をやりたい、また国鉄そのものの合理化も必要である、また経営も非常に苦しいというような実態もよく承わったのでありますが、今回の運賃制度改正というものは、十河総裁から聞きましても、これは決して国鉄が苦しいからこういった制度を改正するというのではなくて、赤字を埋めようとする考えでもない、要するに、いろいろな不合理があるからそれを直したいというので、委員会を設けて諮問機関としていろいろやっておられる。そのこと自体は、私どもは別に反対する理由もありませんし、けっこうなことだと考えておるのでありますが、ただ、聞くところによりますると、どうも結局遠距離の割引制度、政策割引というふうなものがじゃまになる存在というか、そういう制度をこの際とってしまいたいというような目途を持っていろいろ考えておられるというように聞いておるわけです。それではどうも大変なことになる。実は、全国の農林水産関係の方々が非常に心配されて、連日東京に詰めかけておってこの際あくまでもこの制度は存続をしてもらいたいという、非常に強い農林水産業界の全体の要望でございます。国鉄の経営が苦しいという点、それに対しましては別な面から国鉄の経営の合理化を考えていただきたい。また、いろいろな国鉄を経営するについての財政的な観点から政府がいろんな面で協力をすることはもとより当然であろうと思います。むしろ、今まで国鉄に対して十分な措置をとっていないために、苦しまぎれに今度の運賃改正という一つの合理化の美名のもとに万一にも農林水産業を苦しめるような結果が生ずるなら、これは断じて許すわけに参らぬと私どもは考えておる。そういう点から、一つ運輸大臣のこの問題に対するお考えをまずお伺いしたい。
  209. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 今野原委員の御質問は、私も実は先般北海道及び九州等に視察に参りまして現地において非常な陳情を受けたのであります。御存じのごとく、この特別割引の賃率の問題は、本年六月三十日をもちまして終了することになっておったのを、六月の二十六日に国鉄総裁の処置によりまして二カ月間延期した、八月三十一日でこの問題が決定的な段階に追い込まれておるということは御存じの通りであります。従って、期日もありませんので、非常に各方面の御心配になっておることもよく存じておりますが、御存じのごとく、本件の処理は実は国鉄総裁の権限事項になっておりまして、運輸大臣といたしましては、国鉄の運賃割引は特殊なものを除いてできるだけ整理することが運賃体系上並びに国鉄経営上望ましいということを指示しておる関係もあるのであります。ただ、この問題は、非常に物価体系あるいは農林水産物の公共性という建前から見れば及ぼす影響も重要でありますから、国鉄当局並びに農林当局との間にいろいろと緊密に運賃の率等の問題について協議をされておる段階でありまして運輸大臣といたしましては、今御指摘のありましたように、国鉄が経営の合理化で独立採算的立場をとるべしという建前と、一方には公共的な建前からこういうような割引等を国鉄自体に負担せしめるという公共性との間に、二律背反的な立場に国鉄が立っておる。従って基本的に国鉄というものに一体どういう性格を持たせどういう立場をとらせるかということは、政府全体として根本的に考えなければならない問題であると私は思うのでありまして、従って、午前中でありましたか、参議院におきましても経企長官並びに福田農林大臣等といろいろと協議しまして、急速に政府におきまして、経済閣僚懇談会も開き、かつまたそういう全般的な問題を取り上げて、でき得ればこの問題の取扱いにつきまして八月三十一日を目途として何とか一つ政府全体としてこの問題の考え方をきめようということを話しておるような次第であります。運輸大臣といたしましては、今申し上げましたような立場等もありますので、農林大臣ともいろいろと協議を申し上げたい、こういうように存じておる次第であります。
  210. 野原正勝

    ○野原委員 楢橋運輸大臣が問題の所在を明確につかんでおられることに対しまして敬意を表しますが、大臣のお話にもございましたように、国鉄は国家機関であり、そしてまたこれは当然国民全体のものであると同時に、国家公益的な経営をやってもらわなければならない事業であります。従って、赤字であるとかないとかいう問題については、それがりっぱに責任をもって経営をしておられ、合理化もやっておられてそれでもなおかつ赤字が出るいうことになれば、その赤字の穴はいろいろな面で埋めてやらなければならないことは当然なことであります。たとえば食管特別会計が赤字を出せば一般財源から繰り入れておる。これは当然やっておられることなんでありまして国有鉄道であるがゆえに、お前のところはあくまでも独立採算でやれ、運賃は上げてはならぬということを押しつけておったのでは、国有鉄道といえども容易でないわけであります。国の産業の中で一番大きな、いわば今日の日本の産業を支配しているとも言えるような大きな産業であり大事な国有鉄道をこの際一つ十分考えてやっていいと思う。あまりめんどうを見ないから苦しまぎれに妙なことをやるというようなことがもしあったら、これはまことに大へんなことになると私は考えておる。実は、私は、きょうは時間がありませんから質問しませんが、この委員会において十河総裁に、国有鉄道の性格論、そしてまた国有鉄道をわれわれはいかにしてりっぱな国鉄としての経営を願うか、それに対しては財政融資その他の面でも十分めんどうを見てやるということを、私どもはすでにそのことを指摘して、積極的に協力しよう、ただし、苦しいからといってその苦しさのしわを農村に持ってきてもらっては困るそうでなくても農村は困っておる、ましてや、北海道あるいは東北、九州、中国、四国というような遠距離の地帯の産業がわずかに支えられているのは、これは遠距離の公共割引制度があるからこそどうにかこうにかやっておる、この唯一の頼みの綱であるところのそうした政策がこの際打ち切られることは困るということを申し上げている。しかも、この一番大事な政策が国鉄総裁にまかしてある、だから運輸大臣はその問題については直接の責任者として困っておるというようなことですが、どうも運輸大臣は非常に豪放な卓見を持った方でありますから、楢橋運輸大臣には特にこの際御決断をお願いしたいのであります。この際、委任事項ではあるかもしれませんが、やはり、国の政治の重要な問題を単に国鉄総裁だけにまかしておくわけには参らぬと私は思う。この際運輸大臣が責任を持って、いかなる措置を講じても、断じて岸内閣の内部で閣僚懇談会なりあるいは閣議なりで十分この問題を検討されて、責任を持って善処していただきたい。また、福田農林大臣はこの間までは党の幹事長です。党をたばねておった方でありますから、いよいよこれが農政を担当された第一歩であります。この農政担当の第一歩に当って、もしも万一これが通らぬということになりますと、まことに残念ながら福田農林大臣はもう落第ということになる。こういうことを申し上げてはまことに失礼でありますけれども、いわばこれは福田先生に対する何と申しますか一つの大きな問題だと思う。しかし、考えてみると、このくらいまた簡単なことはない。承わるところによると、国鉄のこの運賃割引の問題でいろいろな議論があるが、せんじつめていくと、わずか二十億足らずの金だそうであります。大した金じゃない。その金が赤字になるとかならぬとかいうことを心配されて、こういう運賃割引をやめるとかなんとかいうことであります。まことにたわいもない、政府全体の予算から見ればわずかな金で済むわけであります。そういうことが話し合いでつけられないのであったら、まことにナンセンスであります。私どもはあまりこまかいことは申し上げませんが、とにかく、この際、何とか国鉄も立つように、農村もこれ以上苦しめるようなことはしてもらいたくない。この点において重ねて楢橋運輸大臣並びに福田農林大臣の御決意を承わりたいと存じます。
  211. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 国鉄に対して非常に御理解あるお言葉をいただきまして、まことに感謝にたえません。私も、運輸大臣として国鉄の監督の立場におる者といたしまして、国鉄が一体どういう性格を持っていくべきか、少くとも公共のために国鉄が非常に大きな犠牲を見なければならぬというものを国家が放置して、これの独立採算を強要するということは矛盾でありますから、先般も、北海道に参りましてから、たとえば新線の開設をやるのについて北海道全体の国鉄は約五十億近くの赤字を出しておる、それになお新設をするということは、国鉄としては独立採算の立場からいけばとうてい困難であるけれども、北海道開発という大きな国家目的のためには、やはりそれを乗り越えて国鉄がやらなければならぬ、その場合に国家は一体国鉄に対してどうするかということを根本的に考えてやらなければ、今御指摘のありましたような、つまり二律背反と申しますか、そういう段階に追い込まれる、こういうことですから、この現われております国鉄の農林物資に対する遠距離の運賃の逓減の問題にいたしましても、二十億という問題でありますけれども、これは国鉄全体につながる一つの大きな課題であります。従って、午前中におきまして、私が提案といっては失礼でありますけれども、経済企画庁長官並びに福田農林大臣にも御相談を申し上げまして、この二つの問題、一つは今御指摘のありました国鉄をどうするかという基本的な問題、同時に、今差し迫っております八月三十一日までにこの問題を政府として一体どう片づけるかという問題と取り組んで、一つこの問題の解決に全力をあげようということを申しておるのでありましてそういう点で一つできるだけ——失礼ですが、これは監督官庁だから、国鉄がやっても知らぬということを申し上げるのではないのです。少くともそういうような一方に農民全体の人たちに大きな影響を与える公共性を持った問題を、国鉄総裁だけの独善においてこれを八月三十一日に、われわれの意見の調整のまだないうちに断行するというようなことは、私は差し控えさせたい、こういうように実は考えておる次第であります。
  212. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま運輸大臣からお話がありました通り、政府といたしましては、十分意見の調整をいたしまして国鉄で独走することはないようにいたすつもりでおります。私は、農林省をお預かりしておる立場におきまして、今とにかく公共割引というようなことで農産物資の価格の一つの秩序ができておる、この秩序に急に非常な変革ができるというようなことでは、これは大へんな問題になると思いますから、さようなことを考慮に入れまして、当委員会でも御決議があったようなこともよく承知しておりますから、そういうことも十分頭に置きまして善処をする考えであります。
  213. 野原正勝

    ○野原委員 この際あまりこまかなことは申し上げませんが、当委員会が前回におきましてもこの問題について決議をしております。本日も後刻その決議をすることになっておりますが、前回、国鉄当局と、当時は永野運輸大臣でありましたが、永野運輸大臣との間に私はここでいろいろと質疑をかわしたのでありますが、その際に特に申し上げておきましたことは、国有鉄道がその合理化をはかり、また運賃のいろんな合理化をはかって新しい体系を作ることに対しては、われわれは決して反対するものではない、ただし、その場合であっても、農林水産業のような、いわば原始産業であり弱小産業であり中小企業であるというようなものについては、そのことが運賃の値上げを来たしてはならない、もし、多少でこぼこを直す、アンバランスを多少調整するということで多少の変更があったとしても、それがきわめて微細なものであるならばこれはやむを得ないにしても、大きな影響が生ずるようなことがあっては絶対にやってはならぬと思うということを特に私は申し上げたところが、永野運輸大臣も十河総裁も、その点は十分わきまえておりますということを繰り返してここで私に答弁された。また、この運賃の問題等につきましては、当然重要な国の産業全体にわたる、国民生活全体にわたる大きな問題であるから、これは当然国会に対して承認を求めるというような措置をとる必要があろうと申しましたところが、運輸大臣も、国会に諮って、決して国会を無視することはいたしませんと、はっきり申されております。ところが、今回の国鉄の考え方を見ておりますと、突如として六月末まででこれを打ち切る、これを二カ月延長する、八月三十一日まではいい、ところが、最近になりましてから、今月の初めに、これは明年昭和三十四年の会計年度末までは存続する、つまり三十五年の三月三十一日までは存続する、率に対してはこの際大体半分くらいに割引率を変えるのだというような、国会に対して一言も、もちろん当委員会に対して何らの了承を求めることもなしに、一方的に農林省その他関係方面にその国鉄の案なるものを示しておる。こういうことをやっておるわけです。このことが、先ほど楢橋運輸大臣のお話にもあったように、一応国鉄側にまかしておる事項だということで、委任された事項だから自分たちが何をやろうと勝手だというような、万一にもそういう考え方があっては、まことに不届きなものだ。  私は、この際、十河総裁が国鉄総裁として再任になったことに対しては個人としては敬意を表しており、りっぱにやってもらいたいと考えておりますが、もし国会を軽視したり、こういう重要問題をあなたが一人で勝手にやるということがあったならば、私は断じて拒否いたします。この際十河総裁がどういう考え方を持っておられるか、一応この辺でまたあなたのお考えを確認しておきたい。
  214. 吉川久衛

    吉川委員長 その前に、運輸大臣はもう時間が参りましたので、中澤茂一君。
  215. 中澤茂一

    中澤委員 ただ経済企画庁長官と農林大臣と私と話をしたということでこの問題は解決つきません。きょう大蔵大臣を呼び出すのがほんとうだった。そうすれば解決がつく。そのことは、結局国鉄側の腹は数回の委員会において大体わかった。これを何とかカバーする道を政府が考えてくれるならば大体やめてもよろしいというところに来ておる。そこで、問題は、これは政治の問題になってきておる。政治の問題になってきておるので、この前農林大臣に聞いたところが、それは大きな影響があるから、それは農林省としては困るという御答弁をされておるわけです。そこで、それじゃ一般会計からこの分を下半期分として三億ないし三億五千万の負担をすればいいということなんです。これは傷痍軍人の例はあるがほかに例はない。事実、独立プロダクションとして法律で規定されておる以上、やっていいかどうかの問題があるが、これは私は追い詰めても問題にならぬと思う。そこで、次にどういう政治的な手があるかといえば、建設資金の増額があると思う。国鉄に建設資金を増額してやるからやめないかということは、一応筋が通ると思う。いま一点は利子補給の道がある。もちろんこれも予算関係ですから、今すぐというわけにいかないが、それじゃ来年度予算でこうするから一応やめろ、こういう二つの道がある。私きょう調べさしてみたのですが、現在どのくらい借入金があるかというと、運用資金ワクは二百六十五億あるが、一銭も借りてない。一般公募のワクが二百四十億ある。このうちで九十七億が公募されておる。大体の数字です。その他、建設その他で百五億のワクに対して、受益者の応募というものが十一億七千万、それから縁故というものが四億、合せて十五億七千万。一般会計の短期借入れが、百七十億のワクに対して現在八十億あるわけです。この一般会計の短期借入れは運転資金ですから、これに対しての利子補給ということは、常に変動しておるから、総ワクにかけない限り困難だと思うのです。そこで、かけるとするならば、この九十七億の公募債の問題と、それから十五億七千万の受益者、縁故のこの二つを合せて百二億というものに対して大体それに見合う利子補給の方法考えるならば、これさえやるならば、これで問題は解決するのです。だから、大蔵大臣と農林大臣と運輸大臣が話し合うならば、この問題は今晩にも解決するということなんです。これに対して、運輸大臣、農林大臣、どうお考えですか。
  216. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 中澤委員の御指摘通り、この問題はもう全く政治問題であると私も思うのです。従いまして私が最初申し上げたのは、経企長官と農林大臣と私というのではなくして、経済閣僚懇談会を一つ開いてもらって——御存じのごとく経済閣僚懇談会には運輸大臣は入っていない。これは実際言うとおかしいと思っているのですが、だけれども、これは割り込むつもりですが、そういうことで、従って、大蔵大臣もそれは当然にやるのですが、これは菅野経企長官が主宰者となりまして、この問題をつまり掘り下げてやろう、御指摘のような御意見等も一つ大いに参考にいたしましてこの問題に取り組みたいと思っておるのでありまして実際に国鉄をどうするか、これは実際言うと国鉄に対して責めても無理なところがあるのです。国鉄はできるだけ運賃体系を整備して独立的な立場をとれという基本的原則があるのですから、そういう点もありますから、この点は今申し上げましたような線に沿うて一つ取り組みたいと思っておりますから、御了承願います。
  217. 中澤茂一

    中澤委員 取り組むと言うが、結局あなたの腹がまえの問題ですよ。あなたの腹がまえとして、このいずれの方法をとるのが妥当だと思いますか。建設資金の増額でカバーするという問題をとるのか、利子補給という問題でいくか、これは、あなたの運輸大臣としての個人的な考え方からして、このいずれの方法でカバーするのが一番筋が通り、一番妥当だとお考えですか。
  218. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 私もまだその問題については実は深く研究しておりませんから、今ここでどちらをとってどうするということは申し上げられませんが、やはり、大蔵大臣及びことに農林大臣——この問題は、御存じのごとく、昨年から、農林省と国鉄との間に、この扱うべき貨物についてのいろいろな運賃の査定の問題、あるいは物価に及ぼす影響等の問題で今まで協議されてきておるところの問題等もありまして、私、運輸大臣になりましてから実はこれにぶつかりまして一番壁に当ったのは、今申し上げましたように、国鉄を生かすためには一体政府はどうしたらいいかという大きな問題にぶつかっておるものですから、その問題については一つまた研究さしてもらいます。
  219. 中澤茂一

    中澤委員 国鉄の基本論をやるならば、われわれにも全委員に意見がある。しかし、そんな基本論ではなく、さしあたって、あと十五日で実施するかしないかのこの問題だけなんです。基本論のことは別にして、何としてでもこれは阻止しようというお考えがあるか。一応取りやめさして、少くとも来年の三月までは、その間に予算折衝の過程でこの問題は解決して、一応来年の年度末までは延ばすという基本的なお考えがあるのか、場合によればこれはやむを得ないというお考えであるのか、どっちなんです。
  220. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 運輸大臣といたしましては、国鉄の合理化という一つの重大な線がありまして、国鉄は独立採算的にいけという運賃体系等の問題もありますから、私の考えといたしましては、国鉄の少くとも二十億のものをカバーするという場合におきまして、やはり、農林大臣等と話をつけ、大蔵大臣等とも話をつけまして、この国鉄の立場等をよく説明してそこに何らか国家的な措置を講じてもらうということに努力する以外には私の立場としては実はないと思うのでありますが、ただ、私は、農林物資というものの及ぼす公共性というものを十分参酌してこの問題については実は取り組みたいという考え方を持っているということを申し上げます。
  221. 中澤茂一

    中澤委員 取り細みたいじゃない。最善の努力を尽すというお考えがあるのか。その程度のお考えがないとするならば、これはおかしいと思う。
  222. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 私は最善の努力をする考えを持っております。
  223. 吉川久衛

    吉川委員長 芳賀君。
  224. 芳賀貢

    ○芳賀委員 運輸大臣にお尋ねいたしますが、第一点は、現在国鉄は運賃審議会を通じて運賃の賃率改訂の作業を進めております。当然これが答申された場合国会に等級表を出して承認を求めるという手順になると思う。これを前提にして国鉄の方では公共政策割引を早期に廃止したいというのが今までの一貫した主張であった。これが関連がないということはないと思う。従って、関連があるとすれば、今後の賃率改訂がどうなるかという具体案ができるまでの間は、みだりに公共政策割引制度だけを切り離して廃止するとか変更すべき問題ではないと私は考えているのですが、その点に対する運輸大臣の見解を伺いたいのが第一点。  第二点は、先ほど運輸大臣は、この問題は国鉄総裁にまかした権限の範囲であるからということを言っているが、就任早々で不勉強であるということは認めますが、この点は運賃全体の問題を国鉄総裁の権限にまかせたのではないでしよう。これは、国鉄運賃法の第八条によると、国鉄収入の総体に影響を及ぼさない軽微な範囲内における運賃や料金の操作というものは総裁にまかせるとなっておる。その範囲でこれはやっているのですよ。総体に影響のない範囲、従って国鉄の方では、いわゆる不減収、不増収の原則の上に立ってやる。それで、公共政策割引というものは、農林水産物に対しては年額約二十二億円程度の少額で、この程度であれば増収、減収に影響のない範囲でありますよ。だから、経営が困難であるから廃止するという理由は成り立たない。増収、減収に影響のない範囲を総裁にまかせて、それで公共政策割引というものを第一条の目的に沿ってやっているわけです。だから、これが経営上支障があるということには断じてならないのですよ。この範囲のことだけを総裁にまかせてあるのであって、経営上に影響のない範囲でやっているならば、これは存続しても何らの支障はない。  この二点について、監督の立場にある運輸大臣は明確な理解を持って進まなければ、答弁だけうまいことを言っても、これは何ら力を持たないということになる。この二点に対して楢橋さんはどういう見解を持っておりますか。
  225. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 これは暫定割引でありまして、運賃体系とは別のものとして国鉄総裁の権限で割引したものであります。今おっしゃいましたような国鉄全体の収支から言えば、この運賃改訂というものは国鉄総裁の権限でなし得べきものである、こういう見解をとっております。
  226. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、この国鉄の旅客並びに貨物の運賃を入れると年収約三千億ということになる。三千億に対して、運賃法第八条に基く運用がされれば、農林水産物が二十二億円ですから、これは〇・八%じゃないですか。この程度のことを継続できるとかできないとか、そういう問題ではないと思うのです。先ほどから野原委員との問答があったが、今ごろになって政府与党と政府間において理解に苦しむような問答がやりとりされるということは、これは全く理解に苦しむわけです。大政党の与党の自民党は、当然、八月末で期限が切れるわけですから、政調等を通じて党の方針を明らかにして、政府との間において何らかの解決点が出ていなければならぬと思うのですが、単に農林委員会の出先だけでがんがん騒いでも、党全体が一体どういう考えでこれを処理しようとしておるのか、党と閣僚間における話し合いはどの程度まで進行しておるか、この点は運輸大臣並びに農林大臣から明らかにしてもらいたい。
  227. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 自民党におきましてもこの問題はきわめて重大な問題と考えております。さようなことで、各部会におきましてこの問題を検討しております。なお、最高の機関である政策審議会におきましても、両三日じゆうに最後の考えをまとめるというふうにいっておる次第でございます。皆さんの御意見も承わり、かつ自由民主党のさような考え方も承わり、そういうことを経た上、経済閣僚懇談会において意見の調整をしていく、かような段取りになっておる次第でございます。
  228. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に運輸大臣にお尋ねしますが、運輸大臣は国鉄の運用に対して監督権と指示権を持っているわけです。従って今月末でこの期限が切れるのです。ですから、これに対して運輸大臣の権限においていかなる監督と指導を行なってこの問題を解決するか、もうすでに見通しというものを持っていなければならぬ、腹がまえができておらなければならぬからして、その点だけを私はお尋ねしておきます。
  229. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 さいぜんから申し上げますように、八月三十一日を目途としてこの問題を解決するように全力を尽すということを申し上げます。
  230. 中澤茂一

    中澤委員 ちょっと……。  あなた、実情を御存じなのですか。もはや二十前後の品目はもうやるという国鉄側は腹をきめているのですよ。当委員会で先日も数回にわたってこの問題を論議しているのだが、もう国鉄は腹をきめているのですよ。だから、これは政治問題だから、あなたに出てきてもらって、そうして、あなたの監督と指示権を発動してもらって、あと二、三週間しかないこの問題を一挙にここに解決してもらいたいというのです。御存じなのですか、その事情を。国鉄はもう腹をきめている。九月一日からやるという答弁なのです。
  231. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 もちろん国鉄としては三十一日に断行するという考えを持っていると思うのですが、今申し上げましたような及ぼす影響の大きい等を勘案しまして、申し上げましたように、経済閣僚懇談会等を開き、そして、これは政治問題化しておるのだから、単に事務的なことではなくして、大蔵大臣なりあるいは農林大臣なり経企長官なりとよく相談をいたしましてこの問題を善処するという態勢を今とっておるということを申し上げておきます。
  232. 吉川久衛

    吉川委員長 運輸大臣に申し上げますが、時間が参りましたからもうお引き取りいただきますが、本委員会は、お聞き及びの通り、本件に関しては重大なる決意を持っているような状態でございます。こういう事情を十分一つお含みの上で御善処をお願いいたします。
  233. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 それでは、その趣旨に従ってできるだけ善処いたしますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  234. 吉川久衛

    吉川委員長 野原正勝委員の質問に対する十河総裁の答弁を求めます。
  235. 十河信二

    ○十河説明員 私は決してこの問題を固執しようとは思っておりません。皆さんの御意見を十分に伺いまして、そうして、独走することなく、政府当局とも十分御相談をいたしまして事を進めて参りたいと思っております。今後もそういうふうに努めたいと思っております。その点は御了承願いたいと思います。
  236. 吉川久衛

    吉川委員長 野原君。
  237. 野原正勝

    ○野原委員 先般中村常務理事に御出席をいただきまして、そうしてこの問題についていろいろ懇談したことがありますが、その際私申し上げておいたのですが、この際国鉄はむしろ率直に国鉄が苦しいなら苦しい事情を国会にぶちまけた方がよろしい、そうしてわれわれに相談してもらいたい、われわれは決して運賃問題を云々するからといって国鉄をいじめようなんて思っておるわけではないのです。むしろ国鉄をりっぱにやってもらいたい、いやが上にもりっぱな経営をしていただいて、世界無比のりっぱな成績をあげておられるこの国鉄がますます日本の産業経済発展のための原動力として大いにやってもらいたいということを期待しておる。その期待をしておればこそいろいろ文句を言うのです。決して、国鉄にいやがらせをしたり、単なる運賃問題だけで文句を言おうと思っておりません。従って、われわれ国会多数の者はほとんど国鉄の経営については積極的に協力しようという決意を持っておる。そういう決意を持っておるのだから、ここでわずかな金を増収しようなどというようなそういう了見はやめた方がむしろお得だろう、二十億はかりの赤字が出ようとか、そういうことをお考えにならずに、この際むしろ国家財政のふところの中に飛び込んで、大いに新線の建設もやれば合理化もやってもらう、あるいはまた、不便な地区にはガソリン・カーもどんどん回してもらって、大いに国民生活の安定と発展に役立って、愛される国鉄になってもらいたい、そうするには金が要るだろう、その金は国会が国家の財政の中から国鉄に対して協力していくというような親身な立場でやっていこうじゃないか、だから、あなた方の方は、今ここで国民から恨まれろようなつまらないことをやるな、私はそう申し上げたのです。まさに、今回の運賃改訂、特に遠離距公共割引というものは、国鉄が怨嗟の的になるかならないかという分れ道でございます。そういう点を総裁わかっておられると思いますけれども、私は、この際、この政策割引を廃止するというようなことをして多数の農山漁村の人たちに心配をかけ、あるいは迷惑をかけて非常に生活を窮乏に追いやるようなことはやめて、別な面から国鉄はりっぱに再建され合理化されて発展されることを念願しておるわけです。従って、そういう点からも、むしろこういう問題が起きたことは国鉄を今後正常な姿で発展させる絶好のチャンスであると私は思う。われわれ農林委員会が国鉄問題を非常に熱を持っておって大へん心配しておるゆえんのものは、実にかかって農山漁村の方々のあの切実な気持がわかっておって、黙っておられないからこう申し上げておるわけですが、同時にまた、国鉄や運輸省といろいろ運賃問題を論議しておる過程において、国鉄の置かれておる立場の理解もまた同時に進んだわけであります。従って、積極的に協力しようという気分に今なっておるわけですから、この際はむしろ進んで国会に協力を求めるような態度でいっていただきたい。そういう点から、できるなら今日この席で総裁から公共割引については運輸大臣の意向もわかり政府の意向もわかったのだからこの際は取りやめるというくらいのことが聞ければまことに幸いなことだと思ったのですが、そこまではあるいは立場上言えないかもしれない。しかし、どういうお考えをもってこれから国鉄を経営されるか、大事な国の機関を預かっておられる総裁のお立場から、この問題に対するあなたのほんとうの気持ちを一度聞かせていただきたい。
  238. 十河信二

    ○十河説明員 ただいまの御意見はまことにありがたい御意見であります。私どもも、国鉄の苦しい状況を今後皆さんに訴えまして、さらに皆さんの力強い御支援をお願い申し上げたいと存じます。今日国鉄は非常に大きな危機に直面しつつある。先年この農林水産物の特別割引の問題が起りましたのは、運賃値上げをお願いしたときから起ったのであります。その運賃値上げによる増収も、経済界の状況から、あるいは国鉄が独占時代であったときはもう過ぎて非常に激しい競争に打ちかたなければならぬという新しい局面にぶつかりまして、それで非常に大きな困難に遭遇しております。今日では、収支ほとんど償わない、まあとんとんの境目なんです。一歩悪化すればこれからは赤字が出るというふうな追い詰められた場面にぶつかっておるのであります。そこで、私は、あらゆる面で合理化をいたしまして、たとえば二十億、ちっぽけな金だというお話でありますが、十億、二十億の金、それをできるだけあらゆる面で合理化をいたしまして、そして国鉄の財政の立て直しをしたい。そういうみずからの努力をしてからでなければ、政府にお願いしても政府はなかなか聞いてくれない、先刻楢橋運輸大臣から北海道の建設のお話がありましたが、建設費の国家の出資、あるいは利子補給ということもたびたび審議会で決議をせられたのでありますが、財政の事情その他諸般の事情によって遺憾ながら今日まで実施されていないような状態であります。今までは国鉄が独占企業でありまして多少ゆとりがあった。従って、そういう場合に乗り切るだけの余力がありました。今日は、さっき申し上げまするように、競争機関は自由にお客や荷物を選ぶことができる、国鉄はその自由は持たないということで、いいもうかる荷物は全部そちらの方へ取られて、もうからない荷物だけ国鉄に残るというふうな状況になって参りました。従って、もうそういうゆとりがなくなってしまいまして、貧すれば鈍するというか、それで皆さんの御意見に反したことをお願いしなければならぬような立場に立ち至ったのであります。それで、今度も半分は一つ政府の方で保証してもらいたい。皆さんのお話もまことにごもっともでありますが、半分だけはそういうふうにしてもらいたいというふうな案を立てたような次第であります。どうか、国鉄の窮状を御憐察下さいまして私どもの意中を御察し願いたいと思います。
  239. 吉川久衛

  240. 中澤茂一

    中澤委員 時間がないそうですから、この一点について農林大臣の見解をただしておきます。  あなたは、六月二十二日の当委員会で、私の質問に対して、いずれ農林省に相談があるはずだ、相談があったときはこれに対してやる、ちゃんと八月三十一日に間に合うようにいたしますという答弁をしている。それで、あなたは仕事に非常に熱心だというが、六月二十二日から八月十一日まで、また当委員会が取り上げるまで、この問題を解決してないということは、あまり御熱心じゃないという証拠だと思うのです。五十日間何をしていらしたか知らぬが、忙しいのはわかりますが、もはや十日、十五日に迫った問題です。農林大臣としては、断固この問題を拒否するぐらいの言明は、この間サボっていたおかわりとしても出てもいいと思うのですが、どうでしょうか。
  241. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほども申し上げました通り、この問題につきましては、国鉄の方で八月一ぱいまでに結論を出してもらいたいということを言っているわけです。さようなこともありますので、私ども政府間におきまして最後の意見調整をすることになっているのです。八月一ぱいを目途といたしましてその最終結論を出す、かように御了承願います。
  242. 中澤茂一

    中澤委員 いま一度確かめておきますが、最終結論は経済閣僚云々ということを楢橋運輸大臣が言っておられたが、あなたは幹事長で相当威力をふるった人なんだから、電話一本で間に合うのだから、この日経済閣僚懇談会をやれ、運輸大臣を入れろ、それはある程度できると思うのです。とにかく三十一日ぎりぎりという日が来ているのですから、何日を目途としてそれをあなたがおやりになるかによって、当委員会もまたすぐ再開しなければならぬという事態も理事会できめなければならぬ。だから、何日ごろまでを目途としてやるかという期日を切ってもらいたい。最終期日はもうきまっているのだから。
  243. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 金曜日に閣僚懇談会をやります。そこで結論が出ればそれでいいわけですが、出なければ、しばしばやりまして、八月一ぱいにはちゃんと間に合わすようにいたします。
  244. 吉川久衛

    吉川委員長 芳賀君。
  245. 芳賀貢

    ○芳賀委員 資料の問題ですが、きのうの委員会において委員長が確認して要求した資料の中に、国鉄が現在立案しておる、十品目を除外して他品目についてはこれを二分の一にする、これも当然資料として出すということが確認されておったにもかかわらず、出ておらないのです。出ておらないということは、この資料は全く磯崎営業局長個人の私案であって、国鉄としてはまだ当委員会に資料として出すまでの性質のものでない、値しないということで、資料として提出しなかったのかどうか、その点を委員長を通じて明らかにしておく必要がある。
  246. 吉川久衛

    吉川委員長 磯崎局長にお尋ねをいたしますが、ただいま芳賀委員のお尋ねがあったように、芳賀委員の言われるような資料の提出方を求めたはずでありますが、それが出てこないところを見ますと、まだそれは資料として提出する段階に立ち至っていなかったものと了解してよろしいのでございますか。
  247. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 昨日の資料の点につきまして、実は大へんおそくなって申しわけないのでございますが、今までできたものだけを今お手元にお届けしらわけでございます。その中で、具体的な品目についての新しい割引率がないというお話だと存じます。その点につきましては、実は、昨日は、個々の品目のことよりも、全体の方針なり、どういう形でやったか、また財政状態がどうだといういきさつ、並びに、お前のところで検討する方針を持ってこい、こういうふうに伺ったのであります。現在、私の方は、すでに昨日申し上げました通り農林省事務折衝の段階に入っております。その入っておりますときに私の方で一案を提示いたしております。もしその一案につきまして御要望がございますれば、私どもとしてはもちろん提出いたします。
  248. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは速記をお調べになればわかることなんですが、正確に要求資料を委員長が確認して、磯崎さんに要求されたわけなんです。従って、これは全く磯崎個人の私案であるとすれば、私は別に要求はしないのですが、当委員会は今月はもう予定から言うと開会できないようなことにもなっております。もしそういうものを国鉄案として持っておる、それを中心にして農林省と話し合いを進めるということであれば、これは当然委員会を継続して調査しなければならぬということになる。ですから、この機会にその点は明らかにしてもらいたいというのが一点。  もう一点は、農林大臣と総裁にお尋ねしますが、当委員会におけるしばしばの当局との質疑の中においては、公共政策割引の問題については、国鉄当局農林当局との間における話し合いをつけて、しかる後実行に移すということになっておる。そうすると、今後の問題は農林大臣と国鉄総裁との間における話し合いによっていかようかの解決を見るということに当然なる。これは大臣が経済局長にまかしておいた程度ではものにならぬですよ。従って、この際あなたが陣頭に立って、十河さんと政治的な意味も含めてこれは話し合いをつける、そういうことにしてもらわぬと、この問題のわれわれの期待に沿った解決は絶対にできないと思う。ですから、その点はもう両巨頭の話し合いの段階です。だから、農林大臣と国鉄総裁がさしで話し合いをつける、そういうことをぜひこの機会に言明していただきたい。
  249. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは、私どもとすると、国鉄の総裁とさしで話し合う問題であるとは考えておらないのです。国鉄総裁にも御参加願いたいと思っておりますが、政府全体といたしまして態度をきめたい、こういうふうに考えております。
  250. 吉川久衛

    吉川委員長 農林水産物の貨物運賃問題につきまして、自由民主党並びに日本社会党共同にかかわる本委員会の決議を行いたいとの申し出があります。この際発言を許します。野原正勝君。
  251. 野原正勝

    ○野原委員 私は、自由民主党並びに日本社会党を代表いたしまして、農林水産物国鉄運賃の公共政策割引の存続に関する件の決議をいたしたいと存じます。  ただいまから案文を読み上げます。    農林水産物国鉄運賃の公共政策割引の存続に関する件   本委員会は、農林水産物に対する公共政策割引の廃止の措置農林水産業に与える重大な影響にかんがみ、累次にわたり、引続き今後もこれを存続すべき旨の決議を行い、国鉄側の善処を要請したにもかかわらず、今尚、九月以降におけるその廃止乃至は縮減を一方的に強行する意図を放棄せず、全国の農山漁民に対し容易ならざる衝撃を与えつつあることは、甚だいかんとするところであるよって、政府並びに国鉄は、国鉄の有する公共的使命にかんがみ、すみやかに公共政策割引の現状どおりの存続方針を決定し、所要の措置を講ずべきである。   右決議する。    昭和三十四年八月十一日       衆議院農林水産委員会  以上でございます。あえてこの説明は省略いたします。
  252. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、中澤茂一君。
  253. 中澤茂一

    中澤委員 今の自由民主党、日本社会党共同提案の決議案に対して私は賛意を表するものでございます。  簡単に申しますと、国鉄の立場は数次の委員会で明らかになっておるのであります。これに対して政府側が何らかの処置をしてくれるならば、すなわち、建設の資金の増額とか、利子補給の方途さえとってくれれば、これは公共政策割引を維持してもいいのだということは明らかになっておる。そこで、これに対して政府が必ず八月三十一日までにそのような政策的な問題を解決するということは、運輸大臣、農林大臣の御発言で大体のめどはついたわけでありますから、それについて日本社会党を代表いたしまして一言賛成の意を表しておきます。
  254. 吉川久衛

    吉川委員長 お諮りいたします。ただいま提案の農林水産物国鉄運賃の公共政策割引の存続に関する件を本委員会の決議とするに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔総員起立〕
  255. 吉川久衛

    吉川委員長 起立総員。よって、右決議するに決しました。  次に、ただいまの決議に対する政府並びに国鉄当局所見を求めます。  福田農林大臣。
  256. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま御決議をいただきましたから、御決議の趣旨を尊重いたしまして政府間の調整をいたしたいと思います。
  257. 吉川久衛

    吉川委員長 十河国鉄総裁。
  258. 十河信二

    ○十河説明員 政府御当局とも十分協議をいたしまして、善処いたしたいと思います。
  259. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、お諮りいたします。ただいまの決議に関する関係当局への参考送付等の手続に関しましては委員長に御一任願いたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  260. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めて、さよう決定いたします。
  261. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、コンニャク価格の問題に関する質疑を続行いたします。中澤茂一君。
  262. 中澤茂一

    中澤委員 どうも農林大臣とコンニャク問答みたいになる危険があるのですが、ただ、先ほどあなたが御答弁の範囲のことでは、これは共販体制にも乗りません。ああいう抽象的な御答弁では乗りません。一体共販体制に乗せる方法を具体的にどうお考えなのか。
  263. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 たとえば、私も群馬県のコンニャク業者の代表の人といろいろ相談をしておるわけです。結局これは農業協同組合に委託販売——購買といいますかをお願いしなければならぬかとも思うわけでございます。そういう際に資金が要るというような向きがありますれば、これは系統機関もありますから、私どもとしてもこれをお願いしまして側面の御援助、御加勢ということに努めていきたい、こういうことを考えておるわけであります。
  264. 中澤茂一

    中澤委員 その考えはいいのですが、しからば具体的に政策的にどう処置するか。それが案が立たぬ限り、ただ共販体制に乗せたいという抽象論ではだめなんです。だから、それに対して具体的に農林省がどういう裏づけをしてやるかということが現実の問題なんです。それについて何かお考えがあるか。
  265. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは、融資面でしょうね。融資面を通じまして具体的にはあっせん、そういうことで援助する、こういうことだと思います。
  266. 中澤茂一

    中澤委員 これは融資面ばかりでは不可能じゃないか。このごろ振興局長にも言ったことですが、特産物の価格安定の根本論を考え段階に来ておるのじゃないか。それには、やはり、蚕繭事業団を作ったような、ああいう方式で、今後畑作振興を大いに進めなければならぬのですから、特定な、あまり価格変動をして農民に大きな影響を与える作物を、もし価格安定法の中に入れられないとすれば、これはやはり調整機関方式以外にないと私は思うのです。それには、やはり、特産物の種類を限定して、そうして蚕繭事業団のような、政府が十億なり二十億出して、保証を五倍なり六倍つけてやる、そうして、こういうコンニャクのような二十万が四万になったというような価格変動というものは何としても政治的に押えなければならぬと思うのです。だから、そういう根本論は、あなたも時間がないからよしますが、私がここで申し上げたいのは、この二百九十トンの輸入というものが、統計を見ると、やはり大きな暴落の要因になっております。それは毎月々々下って四万まで来ている。ですから、このとき出たところの差益金というものは、あなたも御承知のように四千万から四千六百万ぐらいの間にある。これは三十四年度の一般会計に入っておる。これはあなたが大蔵省と御折衝されるときに一つの非常に有力な材料だと思います。何もこれを全部はき出せという意味じゃない。その一部を何らか利子補給というような形で具体的なものとして考えられないかということなんです。そうすることによって初めてこの農協の共販体制もできる。一番問題を起しておるのは、わしらの県じゃないのです。あなたのところが一番問題を起しておる。群馬県がもし完全な共販委託体制をとったらこんな問題は一つも起らない。農民の自主的な力でちゃんと解決してしまう。しかもあなたの選挙区が一番問題を起している。村の名前は言いませんが、そういうことでしょう。あなたはよく知っているはずなんです。だから、それに対して共販体制へ乗せるには、私の考えでは、とにかく農協に委託共販に乗せたものに関して金融の措置と利子補給の道を講じてやる、これで完全に共販体制に乗ります。その辺までは踏み切れないですか、どうです。
  267. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 あなたも御承知のように、これは私の選挙区ですから大問題なんです。ですから、これはなかなか容易ならざる問題だというふうに考えまして、頭を痛めておるわけでございます。しかし、考え方としては、今あなたは外産を輸入したときの差益のことを申されましたが、外産の輸入問題につきましては、私は逆の考えを持っています。あれは、外産をとめたものですから価格が非常に暴騰した、暴騰したものですから生産がふえてきておる、そういうことが今日生産過剰様相のコンニャク問題を惹起しているというふうに観察をいたしておるわけです。根本は需給の調整というところにあろうかと思うので、そういうところを頭に置きながら、主要生産県の皆さんと話し合って、そして、この需給問題を一体どうするんだ、こういうことで根本的には一つきめ手を作っていかなければならぬ、こういう考えです。しかし、当面さしあたりの問題としてどうかという問題がありますが、これはやはり金融で援助していく必要があろうというふうに考えております。その際、四千万円が国の収入になっておるわけだからそれを引き当てといたしまして利子補給をしたらどうだという話もありますが、これは価格の回復ができますればすべての問題は解消するわけです。さようなこともありまして、私は、まず共販という姿勢を農家が整えることが先決であり、それを助成する意味の融資考えるということで当面臨みたいと考えております。しかし、これは私の知っている範囲内におきましても非常に大きな問題でございますから、そういうような態勢において事態の推移を見てみたい、こういう考えであります。
  268. 中澤茂一

    中澤委員 あなたの考えがまだ利子補給まで踏み切れないとすれば、これは仕方ないが、このまま四万円台でずっと横ばいしていくとなると、これは考えなければならぬと思うのです。事実、生産費というものは十四万、これは若干高いかもしれませんが、生産費の計算は十四万というのが出ておるのです。だから、私は、当初のあなたのおっしゃったのは、見解の相違だと言えばこれは議論しません。議論しませんが、対策の方は急がなければいかぬから、それについて、では、融資という場合、あなたは具体的にどういう融資考えておりますか。
  269. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 系統機関にお願いをするほかは今のところないと思いますが、これはお願いするつもりでおります。それから、そういう形で事態の推移を見る。これはもうその対策を十分考えていかなければならぬ問題でありますから、それでほうっておきっぱなしということはない。そういう形で一つ推移を見ていこう。それから、利子補給だとか、いろいろお話がありますが、そういうものはいろいろ頭に置きながら臨んでいこう、こういうわけです。
  270. 中澤茂一

    中澤委員 だから、融資だけで見るとおっしゃるが、これはただ群馬だけのことを考えちゃいかぬと思うのです。群馬では、農協にやっておるのは委託販売じゃない。ここに問題があったのです。群馬では金貸しなんです。農協があら粉を引き取って担保金融をやっておる。だれでも、金を借りてしまった以上、よそへ売り場を見つけても、値段が下って自分が損するものだから、農民は農協へ一つもあら粉を買いに行かないわけです。この損害は、農協の人に聞けば、約一億前後あるというのです。現在の相場のまま高騰しなければ、またあら粉がすぐ出てくるでしょう。そうすると、この農協の赤字約一億というものは大問題だと思うのです。それに対して、あなたは融資をすると言う。融資をするには、今の系統金融の高金利融資では効果はありません。それはただ農協の一時の危機を融資によって救ってやるというだけで、農協自体その一億前後の赤字を解消しなければどうにもならぬと思うのです。だから、その高金利のものをどうにか低金利にして何とかしてやるということだけはどうしてもやらなければ、これは仏を作っても魂を入れずになってしまうと思う。やはり利子補給をやらなければ、今の系統金融の高金利のものではとてもどうにもならぬと思うのです。その辺はどうですか。
  271. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは価格の問題ですから、この価格が、最近は五万五千円くらいになっておりますか、これも価格が回復いたしますればこの問題は一挙に解決するわけであります。そういうようなことを頭に置きながら事態の推移を見る、こういう考えでおります。
  272. 中澤茂一

    中澤委員 どうも私はそれでは満足しませんが、それは、あら粉が九月から出てきたら、また下ると私は見ておるのです。現在これがいろいろ国会で問題になり、あなたの群馬の郷里に帰っていろいろ言明したことが、これはどうも農林省で大臣ががっちり腹をきめてやられたら困るというようなところからの若干の上昇というものはやはり考えられると思うのです。これはその人の見方による。私はそう見ておる。九月になってあら粉が出てきたらまた暴落すると見ておる。結局この四万円台から五万円台の間をいつも今度は動いていくんじゃないか、こういうような観測を私はしておる。だから、これは、共販体制に乗せる件についても、もう少し強力な政策をとられなくちゃだめだと思うのです。そこまではあなた考えていませんか。ただ価格の推移を見るというだけでは、これは処理つきません。あとになって、しまったと言わないように、今から目をつけておくのです。私は、やはり、利子補給までしてやる、しかもこの差益の問題があるのですから、大蔵省とは非常に話がしいいと思うのです。それは、あなたが一番大蔵省のことをよく知っておるのだから、ここで何とかして全体的な価格の安定をはからなければいかぬ。どうでしょう。
  273. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは、価格の安定をはかるべしということにつきましては私も同意見です。しかし、方法は、やはり共販の体制を整えることであると思います。それは、末端の消費価格というものは少しも下っていないわけです。ということは、コンニャクのあらゆる段階の流通機構というものに不備がある、こういうふうに考えるわけです。この問題が解決いたしますれば相当改善の効果がある、かように私は見ておるわけであります。でありまするから、共販体制を整備する、こういうことを考えておるし、また、これを推し進めておるわけであります。そのための政府の御協力は申し上げる。そういう態勢で推移を見る。見るが、しかし、これをほうっておくということじゃないということは先ほどから申し上げております。いろいろ注意をしながら見ておる、こういうことであります。
  274. 中澤茂一

    中澤委員 最後に言っておきますが、推移を見るのもいいでしょうが、その推移を見て融資面というだけでは、私はあなたと見解を異にする。これは、やはり、また九月のあら粉が出れば下る。これはもう九月もじきですから、あなたの見通しが正しかったか私の見通しが正しかったかは、わずかの期間でわかるのです。私は、やはりここでもう一歩踏み切らなければだめだということを私の見解として最後に念を押しておきます。  それから、いま一点、あなたは流通機構の不備があるという非常に大きな課題で言っておりますが、これは共販体制の問題ばかりじゃないと思うのです。いろいろ製造屋の問題、卸問屋の在庫の問題価格の人為的操作の問題、そういうものに対して断固たるメスを加えられるなら、これは私はまたいけると思う。一つ考え方だと思う。ところが、それはあなたの立場としてはなかなか不可能だと私は見る。そうなると、やはり、その反面に、どうしても利子補給まで踏み切っていくということを考えなければ、これは再びあら粉が出てきてからまたあわてて利子補給をやっても間に合いませんよ。今度また下る、——下るといっても限界はありますが、下り始めてからあわてて利子補給をやろうといっても、間に合いませんよ。今度はそれこそ本年度のものが出れば明らかに生産過剰の状態が出てきてしまうのですから、そのときになって利子補給といっても間に合わぬのです。去年、繭の問題で、私は三浦農林大臣に、前からさんざん、今やらなければだめじゃないかと言ったのに、ああいう大混乱を起した。あれと同じ原因を作るものだと思う。きょうはこれで最後といたしますが、あなたはあら粉の出る前に利子補給まで踏み切るという方向でいった方が、私は賢明な政治だと考えておるのです。だから、その点は見解の相違でいいです。いいですが、ほんとうはそこまで踏み切ってもらいたいということを特に最後に要望して、まだほかに問題は山のようにありますが、いずれこの価格の推移を見た結果、またあなたにおいでを願って、どっちの見解が正しかったか明らかにしますから、きょうはこれで質疑を終ります。
  275. 吉川久衛

    吉川委員長 本日議題に供することになっておりました愛知用水公団の事業問題に関する足鹿委員の質疑は、時間の関係上、次回劈頭にこれを行うことにし、本日は取りやめることといたします。  なお、次回の委員会は、特別の事情のない限り、九月十日に開会する予定でありますので、あらかじめ御了承を願っておきます。
  276. 中澤茂一

    中澤委員 最後に今の問題で一つ念をついておきますが、国鉄運賃の問題は、これこそいま少し推移を見て、もしどうしても現在の二十品目前後の公共政策割引にメスを加えるという段階ならば、九月十日といわずに、月末までにいま一回農林委員会を緊急招集されんことをこの際特に望んでおきます。
  277. 吉川久衛

    吉川委員長 先刻の質疑の中にも、同僚委員の中にそのような御意見のあることを伺っておりますので、善処いたします。     —————————————
  278. 吉川久衛

    吉川委員長 この際お諮りいたします。すなわち、さきに設置いたしました甘味資源に関する調査小委員会の委員を四名増員いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  279. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定し、甘味資源に関する小委員の人数は十五名とすることにし、小委員の氏名は委員長において公報で指名いたすことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十七分散会