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1959-07-02 第32回国会 衆議院 農林水産委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十四年六月二十二日)(月 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の 通りである。    委員長 松浦周太郎君    理事 大野 市郎君 理事 吉川 久衛君    理事 丹羽 兵助君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 石田 宥全君    理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    秋山 利恭君       五十嵐吉藏君    今井  耕君       大森 玉木君    加藤常太郎君       金丸  信君    倉成  正君       佐藤洋之助君    笹山茂太郎君       田口長治郎君    高石幸三郎君       綱島 正興君    内藤  隆君       永田 亮一君    二階堂 進君       濱地 文平君    松岡嘉兵衛君       三和 精一君    八木 徹雄君       保岡 武久君    足鹿  覺君       角屋堅次郎君    神田 大作君       久保田 豊君    栗林 三郎君       實川 清之君    中澤 茂一君       中村 時雄君    西村 関一君       日野 吉夫君    松浦 定義君     ――――――――――――― 六月三十日  松浦周太郎委員長辞任につき、その補欠とし  て吉川久衛君が議院において委員長選任され  た。     ――――――――――――― 昭和三十四年七月二日(木曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 田口長治郎君 理事 永田 亮一君    理事 丹羽 兵助君 理事 野原 正勝君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 石田 宥全君 理事 日野 吉夫君       安倍晋太郎君    今井  耕君       金丸  信君    倉成  正君       笹山茂太郎君    高石幸三郎君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       松岡嘉兵衛君    三和 精一君       八木 徹雄君    保岡 武久君       山下 春江君    足鹿  覺君       角屋堅次郎君    神田 大作君       實川 清之君    中澤 茂一君       中村 時雄君    芳賀  貢君       松浦 定義君  出席国務大臣         農 林 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         農林政務次官  小枝 一雄君         農林政務次官  大野 市郎君  委員外出席者         議     員 石坂  繁君         農林事務官         (大臣官房長) 斎藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      須賀 賢二君         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    小林 誠一君         農 林 技 官         (農林経済局企         業市場課長)  鈴木 一美君         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    太田 康二君         食糧庁長官   渡部 伍良君         農林事務官         (食糧庁総務部         企画課長)   大和田啓気君         日本専売公社総         裁       松隈 秀雄君         日本専売公社理         事         (生産部長)  駿河 義雄君         日本専売公社生         産部生産課長  榎園 光雄君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 六月二十四日  委員五十嵐吉藏辞任につき、その補欠として  中馬辰猪君が議長指名委員選任された。 同月三十日  委員大野市郎君、大森玉木君、佐藤洋之助君、  内藤隆君及び濱地文平辞任につき、その補欠  として山下春江君、早川崇君、野原正勝君、松  田鐵藏君及び坂田英一君が議長指名委員に  選任された。 七月二日  委員二階堂進君及び山下春江辞任につき、そ  の補欠として金子岩三君及び天野光晴君が議長  の指名委員選任された。 同日  理事大野市郎君六月三十日委員辞任につき、そ  の補欠として野原正勝君が理事に当選した。 同日  理事吉川久衛君六月三十日理事辞任につき、そ  の補欠として田口長治郎君が理事に当選した。 同日  理事助川良平君六月十五日委員辞任につき、そ  の補欠として永田亮一君が理事に当選した。 同日  理事芳賀貢君同日理事辞任につき、その補欠と  して日野吉夫君が理事に当選した。     ――――――――――――― 六月二十二日  農家負債整理資金融通特別措置法案芳賀貢君  外十名提出、第三十一回国会衆法第二号)  飼料需給安定法の一部を改正する法律案芳賀  貢君外十三名提出、第三十一回国会衆法第四一  号)  農産物価格安定法の一部を改正する法律案(芳  賀貢君外十三名提出、第三十一回国会衆法第四  二号)  水産業改良助長法案赤路友藏君外十七名提  出、第三十一回国会衆法第四五号)  漁業協同組合整備特別措置法案赤路友藏君外  十七名提出、第三十一回国会衆法第四六号)  てん菜生産振興臨時措置法の一部を改正する法  律案芳賀貢君外二十名提出、第三十一回国会  衆法第四七号)  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(栗原  俊夫君外十六名提出、第三十一回国会衆法第五  五号)  養鶏振興法案内閣提出、第三十一回国会閣法  第一八五号) 同月三十日  てんぐさ人工栽培に関する請願神近市子君紹  介)(第七号)  韓国によるだ捕漁船損害補償に関する請願(  上林榮吉紹介)(第一五号)  黒糖価格安定等に関する請願上林榮吉君  紹介)(第一六号)  同(保岡武久紹介)(第一七号) 七月一日  漁業権等補償紛争の処理に関する請願竹山祐  太郎紹介)(第四四号)  解放農地現状調査等に関する請願山本勝市  君紹介)(第四五号)  新潟県に農林漁業金融公庫支店設置に関する請  願(石田宥全君紹介)(第五三号)  農業関係法令農民農業者改正請願(佐  野憲治紹介)(第五五号)  鹿屋市に国立亜熱帯植物試験場設置に関する請  願(二階堂進紹介)(第七〇号)  鹿屋市に国立竹林試験場設置に関する請願(二  階堂進紹介)(第七一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月一日  黒糖の価格安定に関する陳情書  (第三二号)  農業基本法制定に関する陳情書  (第四二号)  同  (第四三号)  農業法人法制化促進に関する陳情書  (第四五号)  昭和三十四年産米価算定等に関す  る陳情書  (第四六号)  昭和三十四年生産者米価及び予約減税措置廃止  反対に関する陳情書  (第四七号)  農林漁業基本政策確立に関する陳情書  (第四八号)  蚕糸業長期安定対策に関する陳情書  (第四九号)  ひよう害対策に関する陳情書  (第五〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  農林水産業振興に関する件(生産者米価問題  及び農林水産物貨物の運賃問題)  農林漁業災害に関する件(雹害問題)      ――――◇―――――
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  今回はからずも私は本委員会委員長選任されました。申し上げますまでもなく、今日の日本農業はきわめてむずかしい段階に入って参りました。本委員会の使命もきわめて重大であることを私どもは痛感をいたしている次第でございます。この際、私のごとき経験の乏しい者が、浅学非才の者がこの要職に当ることは、まことに心もとないのでございますが、幸いにいたしまして、私は、本委員会委員各位とは、長きは十年に余り、短かきも一年余にわたりまして格別の御懇情と御支援をいただいて参った者でございます。今後とも皆様方の格別なる、旧に変りない御支援、御鞭撻を賜わりまして、この重責を果すことができますように、心からお願い申し上げまして、就任のごあいさつといたします。(拍手)     —————————————
  3. 吉川久衛

    吉川委員長 理事選任及び補欠選任の件につきましてお諮りいたします。すなわち、理事芳賀貢君より辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  ただいまの辞任、並びに委員異動に伴いまして、現在理事が四名欠員となっております。理事補欠選任に関しましては委員長において指名いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めます。よって、理事田口長治郎君、永田亮一君、野原正勝君、日野吉夫君を指名いたします。     —————————————
  6. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、国政調査承認要求に関する件につきましてお諮りいたします。今会期中におきましても、農林水産業の種々の重要問題の調査をなすため、議長国政に関する調査承認を要求いたしたいと存じます。調査を行う事項は、前国会通り、  一、農林水産業振興に関する事項  二、農林水産物に関する事項  三、農林水産業団体に関する事項  四、農林水産金融に関する事項  五、農林漁業災害に関する事項、以上の各事項とし、調査の目的及び方法期間等につきましては委員長に御一任願い、議長承認要求書提出いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 吉川久衛

    吉川委員長 前政務次官石坂繁君より発言を求められております。この際これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  石坂繁君。
  10. 石坂繁

    石坂繁君 ただいま委員長から特別の御許可を得ましたので、この際一言あいさつを申し上げます。  私は、過去一年余り農林政務次官といたしまして皆様方に大へんお世話になって参りましたが、去る六月三十日退職することになり、昨日事務引き継ぎ等も完了いたしました次第でございます。この間、私といたしましては誠意をもって努力いたしましたつもりではありますけれども微力皆さん方の御期待に沿うことのできなかったことを今日はなはだじくじたる思いをいたしております。しかしながら、皆さん方の与えられました御好意に対しましては深く感謝いたしております。  なお、私の後任といたされましては、経験の深い、また練達小枝大野御両君を得ましたので、私ははなはだ力強く感じておりまするが、なおまた、当農林水産委員会といたしましては、これまた新委員長として練達吉川君を迎え、委員方々いずれも堪能有為方々の整然たる陣容でございまして、これまたはなはだ喜んでおりまするとともに、力強く感じております。  この後も、私といたしましてはなお日本農政のために微力を尽したい所存でございますので、この上ながら一そうのお引き回しをお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  11. 吉川久衛

    吉川委員長 福田農林大臣より農政に関する所信の表明を承わりたいと思います。福田農林大臣
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 先般の内閣改造に当りまして、私、全くはからずも農林大臣の席を汚すことに相なりまして、責任の重きを痛感いたしております。私も農家生れでございまして、農家に育ち、また選挙地盤大かた農村地帯でございます。農村の状況はある程度存じておりまするが、事農政につきましては全くのしろうとでございまして、当委員会皆さんからいろいろ御教示、御鞭撻をいただきまして、私の職責を尽さしていただきたい。  今基本方針というような委員長からのお話でございまするが、どうか一つひとえに御鞭撻賜わらんことをお願いいたしまして、ごあいさつといたします。(拍手
  13. 吉川久衛

  14. 大野市郎

    大野政府委員 今回農林政務次官就任をいたしましたので、一言あいさつをさせていただきたく存じます。  私は、皆様委員会方々とはごじっこんにしていただいておりますので、委員会運営その他につきましても、さだめし皆様のお力強い御援護によって私ども職責が全うできまするように御配慮いただけることと実は喜んでおりますので、その意味で、われわれとしましては、全力を尽していたしたいと思う次第でございます。私ははからずも就任いたしたのではございませんので、当委員会に志願をいたしまして、猛運動の結果就任をさせていただきましたので、誠心誠意農政の進展を通じまして国政の最も有効な発展をはかりたいという気持であります。  微力非才でありますが、事情十分ごしんしゃくの上御協力をいただきまするよう、お願いをいたします。(拍手
  15. 吉川久衛

  16. 小枝一雄

    小枝政府委員 お許しを得まして一言あいさつを申し上げたいと存じます。  私は、従来農林委員会所属をいたしまして多年皆さんの御懇情をいただきましたが、ちょうど昨年から委員会所属が変りまして、すっかり一年ばかりごぶさたをいたしておりました。今回はからずも農林政務次官就任をいたしまして、今後一そうの皆さんの御厄介になることになりました。日本農政の重大なときに当りまして全力を尽して努力をいたすつもりでございますが、委員各位並びに関係各位の一そうの御指導、御鞭撻を得なければとうていその職責を全うすることが困難であると考えるものでございまして、どうぞこの上とも皆さんの御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げまして、簡単でございますが、ごあいさつにかえる次第でございます。(拍手)     —————————————
  17. 吉川久衛

    吉川委員長 農林水産業振興に関する件につきまして調査を進めます。  生産者米価問題について質疑の通告があります。順次これを許します。足鹿覺君。
  18. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま農林大臣から御就任あいさつを当委員会として拝聴したわけですが、農家生れであり、かつ選挙区も農村であるから農民の味方として御努力になるやの御決意の一端を拝聴しまして、私ども大いに今後を期待いたしておる次第であります。  いろいろお尋ねをいたしたい農政基本問題等もございますが、本日は主として生産者米価の問題について二、三お尋ねをしてみたいと思うのであります。  昭和三十四年産米価決定期を控えまして、先般来米価審議会も開かれておるのでありますが、農業団体は、統一要求米価といたしまして、生産費及び所得補償方式に基いて算出をし、一万一千二百二十五円を決定いたしたわけであります。一方、農林省は、米価審議会昭和三十年以来毎年米価算定方式について生産費及び所得補償方式を採用すべきことを答申して参ったにもかかわらず、昨年まではパリティ方式を中心に米価算定をされて今日に至っておるのであります。この点につきましては、私は、二十六日の本会議の席上におきまして、われわれの考え方なり、政府案についての若干の批判を試みたわけでありますが、きょうは委員会でありますので、少しくその内容について大臣の御所信を承わりたいと思うのであります。  前の三浦農林大臣が本年産米価算定に当っては生産費及び所得補償方式を大幅に採用したい旨の公式言明をしばしば行われたことは御存じの通りでありますし、また、二十六日の本会議におきまして福田農林大臣もこのことを御言明になっておったのであります。われわれはまだ政府最終決定を見ることができませんので、その結果をここで云々することはどうかと思いますが、われわれの現在推定しております政府態度については、私どもとしては、その成り行きに対して期待を持つことはできないのではないか、非常な心配も持っておるのであります。農林当局は、しばしば、当委員会あるいは委員懇談会等において、生産費計算によって米価算定する方式につきまして、膨大な作業の結果を報告せられまして、生産費方式を採用する場合における問題点を提示されまして、その採用についての非常に難点のあることを指摘されました。そして、今年に入りましてから、統計学的な理論づけともいうべき米の生産費分析資料ほか数部にわたる膨大な資料を作成されまして、農林省考え方、特に農業団体の主張するバルクライン方式について反論を試みておられるのであります。また、去る六月十一日、当委員会において米価問題について参考人から意見を聴取いたしたのでありますが、その際、農業団体代表者は、ごぞって、バルクライン方式八〇%を貫けという主張を強く述べられたのであります。また、学識経験者等は、その専門的な立場におきまして、平均生産費のみによって算出する方式について反対するとともに、また、農業団体の主張する従前からのいわゆる単純バルクライン方式といいますか、その方式についても、不確定で、米価算定のための理論的な方式とは断定しがたい旨の見解を表明された方々もあったのであります。このようにいろいろな御意見が出ておるのでありますが、以上のような情勢と、経緯と、そしてその背景によりまして、農林省はその後閣議決定をされまして、そうして米価審議会に備えられたのでありますが、麦価のみを諮問せられまして、突如、あまり先例のない長期にわたる米価審議会を休憩せられて、今日に至っておるようでありますが、米価審議会を休まれて今日に至るまでの大体の経過なり考え方について、まず最初に農林大臣の御所見を承わっておきたいと思うのであります。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 お答えいたします。  申し上げるまでもなく、米価決定につきましては米価審議会の議を経るということになっておる次第でございます。そこで、米価審議会を、私どもといたしましては、当初、二十五日に開催いたしまして、そして二十五日、六日と麦の方をやっていただきまして、さらに引き続いて七、八、九と三日間くらいな予定で米の方の御審議をお願いするという心組みでおった次第でございます。さような日程のもとに、まず麦につきましては、二十五日から予定通り審議が開始されまして、これにつきましては大体賛成であるという御答申を得ましたので、これを政府原案のように閣議決定をいたした次第です。ところが、それと前後いたしまして、ただいま御指摘のように、米の生産費計算するのにバルクライン方式をとるべしというような御意見も出てきております。それのもとといたしましては、生産費そのもの計算におきまして、いろいろの御意見が各方面から出ておるような次第でございます。さようなことを私承わってみますると、なお私どもが当初考えました生産費計算におきまして若干これは考える余地があるのではないかとも考えた次第でございます。そういう検討の時間を持ちたい。それから、さらに、算定方式とは別でございまするが、今年度の米価決定に当りましては、従来農家売り渡し予約をなしたものに対しまして減税措置を臨時的にとってきたのでございますが、これを本年は廃止をいたしまして、そのかわり、全売り渡し農家に対しまして、この廃止によって国家収入がふえる、その同じ額を均分で米価に加算をしようという考え方を打ち出した次第でございます。それに対しましてまたいろいろな御意見があり、伺ってみますると、その御意見の中にもなかなかこれはそのまま放置できないという性質のものもある次第でございます。さようなこともあわせ考えまして、これは、新しい方式を採用し、しかも税制の改正をするというのでございまするから、十分皆様納得をお願いするようできるだけ努力をいたしまして、そうして最終的な決定をいたした方がよかろうという見地に立ちまして、大幅の米価審議会の延期をお願いいたしまして、ただいまのところでは、七日に再開をいたしまして、七、八、九、十と十日くらいには審議会の結論をお願いしたい、かような気持でおる次第であります。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 今日までの経過から見まして、ただいま大臣も申されましたように、算定方式内容について考えてみなければならない点があるやに思う、こう率直に述べられたことは、私はけっこうだろうと思います。やはり、多くの世論なり、また国会意見等を十分取り入れられまして、そして非は非として改められていくことが、私は、今までの米価決定経緯から見まして、本年は特に重大な生産費所得補償方式というとにもかくにも新たなる方式を採用された建前から見ましても、正しい態度ではないかと考えておるのであります。そこで、その内容の問題につきましては、自家労賃あるいは地代、利子等評価の問題、あるいは都市と農村との物価差評価等につきましても、相当農業団体側との間にも意見の相違が見られたのでありますし、見解の変った点があったのでありますが、当初、今までの例を破られて、食糧庁当局農業団体側と事前にいろいろと検討を加えられたやに聞いておりますが、新しく就任された農林大臣は、米価決定する一つ共通土俵をまず農業団体なり農民団体なりの間に持つということに努力をされて、そしてその共通土俵の中から出た意見の差については、これを調整していく、こういうことでないと、こういう画期的な制度の切りかえの際におきまして、農業団体農業団体、あなた方はあなた方で、別個な農家を対象とし、別個な方式によって一つ統計を出し、そして出てきたものを調整しようとしましても、それはなかなか容易ではないと思うのであります。たとえば、われわれが計算をしたものにつきましても、あとで誤まりを発見してみましても、数千の戸表を一々これを訂正するということはできますまい。政府といえども、重大な誤謬をあとになって気がついて、これを是正しようと思っても、純粋な統計的な立場に立って出た戸表そのものを変えたり、あるいは応急修正するということは、これは統計上の良識によって許されることではありません。従って、まずこの生産費所得補償方式を打ち立てていくその基礎を政府なり農業団体なり農民団体なりであらかじめ十分に話し合って、その資料をとっていくその基盤が共通のものであるというふうに私は努力してほしかったと思うのです。現在まで御努力なさらなかったとは申しませんが、少くとも、食糧庁食糧庁として独自の立場農業団体は従来からの長い間の立場経験等を通じて、おのおのの立場から出てきたものを、これを突き合せようとしても、なかなかそこには根本的なものが出てくるのでありまして、そういう点について、政府は、従来の生産費パリティ方式を改めて所得補償生産費補償に踏み切った以上は、今私が指摘しましたような、そういう立場において、今後この米価算定の基本的なものをここにすみやかに整備確立していくことが私は必要ではないかと思います。具体的な問題に入る前において、この点についての大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  21. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの足鹿さんの御意見、私、まことにもっともだと思います。今までも相当、農業団体資料食糧庁資料というものは、彼此相対照いたしまして、これができる限りどこに差があるかというような点の解明について努力しておるようでありますが、やはり、政府のきめるその案というものが、特に生産者団体皆さんから御納得を得なければ、これが運営の上に非常に支障があるわけでございますから、そういう方向で努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員 この考え方については全く同感との御答弁がありましたので、あとに残された問題はバルク・ライン生産費の求め方です。これは、先日も申し上げ、ただいまも申し上げたわけでありますが、政府は、バルクライン方式というものを廃して、平均生産費、三十一年から三十三年をもとにいたしまして、これに、需給事情を勘案した、係数を出し、平均生産費にこの比率をかけて基本米価九千七百円という試算をされておるのでありますが、この九千七百円は、先日も私本会議で申しましたように、昨年と一厘一毛狂っておらぬ。少くとも新しい生産費所得補償方式を出されていくならば、その結果が昨年より上回るかあるいは下回るか、それは良心に従って行なった結果でありまして、これを一つの政治的配慮とかあるいは諸般の事情を勘案してどう直すかということは政策上の問題でありましょう。しかるに、去年と基本米価において一厘一毛の差異のないものがここに現われてきたということにつきまして、私どもは問題なきを得ないと思っておるのであります。私、米価審議会におりませんのでわかりませんが、具体的に、平均生産費に調整係数をかけないで出されたものは何ぼでありますか。
  23. 渡部伍良

    ○渡部説明員 食糧庁で今試算をいたしておりますのは、三十一、三十二、三十三年の平均生産費—それは、その年の都市の製造業全平均の労賃で自家労賃評価がえする、あるいは物価はその年の物価で見る、あるいはまた資本利子、地代というようなものは私の方で算定基準を出しておりますもので一坪価がえをいたしまして、三十一、三十二、三十三年の平均生産費を出しまして、それに、そのおのおのの年の手取り平均価格との比率を求めまして、その三ヵ年の比率の平均を、三十四年産米の労賃その他を評価がえいたしました平均生産費というものにかけるのでございます。従いまして、お話の調整係数をかけられますもとの平均生産費は七千九百二十五円になっておりますが、これは、三十一年、三十二年、三十三年の農林省で調べた平均生産費がございます。その中の労賃なり資本利子、地代等を、今度は三十四年産米であるべき生産費というものを想定するわけでございますから、賃金は最近の一年間の賃金、これは統計上の問題でございまして、三十三年一月から十二月までの賃金がとれますから、それをとります。それから物価は三十四年の一月から五月の肥料代とかいろいろなものの平均価格を出しまして、それで組みかえまして、三十四年の労貨なり物価を評価がえしたものの平均が七千九百二十五円、これに調整係数をかけて九千七百円というものを出したわけでございます。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 調整係数をかけないものは七千九百二十五円という低いものになっておるのでありますが、その調整係数をかけるということは、私は一つの政策的なものだと思うのです。たとえば、前三ヵ年平均に近づけるため、それを割らないためというような、そこに一つの政策的なものを持っておると思うのです。従って、農業団体の主張するバルクライン方式につきましての問題は、八〇にするか八五にするか、あるいは七五にするかということは、私はあくまでも政策的な立場においてまず決定すべきものだと思うのです。これが政治じゃないかと思うのです。少くともあなた方が調整係数というものを出して、それを平均の生産費の七千九百二十五円に乗じて九千七百円というものを出されたことも、それは何ら一つの約束なりあるいは根拠なり規定に基いたものではないのです。一定の米価水準を保とうという一つの意図に基いて政策的にきめられたものだと私は思います。それを否定されるものは何ものもないと思います。そこで、農業団体の主張しておりますのは、生産費の低い方から高い方へ順々に農家を並べて、全体の七七・五%から八二・五%までの五%の幅の中に落ちる農家を求めて、これを農家生産費の平均としてとっておるのであります。しかし、この計算方法によりますと、八〇%バルク・ライン生産費には、年により石当り数百円の変動が出てくる、また、前年に比較して平均生産費が上っているのに、逆にバルク・ライン生産費は下るといった振れの生ずることも事実でありましょう。従って、本来の生産費自体の変動の実態をつかむというのでありまするならばともかくとして、生産費米価算定の基準として用いようとする場合には、以上のようなバルク・ライン生産費の不安定性はそのまま年々に統制米価の不安定性となって現われてくるのでありまして、生産者はもちろん、国民経済的にもはなはだ好ましくない影響を与えておるという難点があることはわれわれもわかるのであります。そこで、なぜ八〇%のところに線を引くかという根拠が明確を欠いておることはわれわれ自身も認めます。従って、農林省は、そのものに対して、数百万円の経費をかけて、八〇%バルクライン方式が一定の法則性を持っておらぬという資料を作られることよりも、まず、何十%の農家をこの方式によってカバーしていくのかということに力を入れるべきではなかったかと思うのです。あなた方の本年のやり方というものは、農業団体が従来からの経緯を見て懸命に力説しておるところの八〇%バルクライン方式そのものを、法則性がないという立場においてこれを粉砕されようとしたところに、私はあなた方が大きなあやまちを犯しておるのではないかと思うわけであります。従って、さきに述べましたように、八〇%バルク・ラインにいくか、八五にいくか、九〇にいくかということは、あくまでも政府は、米価政策の基本として、一方においては理論構成、一方においては政策の立場にあって、日本の米作農家の何十%を保障するのか、こういう基本的なものについて検討を加えて、その後において—一つバルクライン方式の理論性あるいはその法則性というものは、学者において、大体最近は新しい学説によってその法則性はあるということを一様に認められておるのでありまして、この間の本委員会における参考人の中にもその説があったことは御案内の通りであります。一つ平均生産費を出して、これに調整係数を乗じていくということが政策的なものであるならば、当然全農家の何十%—すべてをすべてというわけにはなりますまい、少くとも八〇%あるいは八五%というものを、その米価を保障していくのだ、こういう一つの政策的なものを踏み切っていくことが、大臣としての決断ある、この米価問題に対するところの基本的な態度一つではないかと私は考えるのであります。この点につきまして大臣の御所見はいかがでありましょうか、この際承わっておきたいと思います。
  25. 福田赳夫

    福田国務大臣 生産費所得補償方式内容といたしまして、従来各方面から言われておるものにはバルクライン方式というものがあることは、私も承知しております。三十年来生産費所得補償方式をとれということを米価審議会の方でも申しておる次第でございまして、ただ、それがどういう内容方式にするかということがなかなかむずかしいので、昨年までついに実現ができなかったのです。昨年から一年、農林省におきまして鋭意検討いたしまして、ただいま政府与党間で調整しておる問題の議題といたしまして提供しておるような案が出てきたようなわけであります。バルクライン方式につきましては、事務当局でも各方面の意見を慎重に伺っております。大方の農政学者は、これはなかなかそう簡単に採用できない考え方ではあるまいかということを申しておるというふうに私は伺っております。それから、理論的に考えてみまして、七五といい、あるいは八〇といい、八五というが、そのバルク・ラインそのものに一つの固定した何か性格があるかというと、その性格というものは発見しがたいわけであります。ただ単に上の方から数えて何番目だというところに一つの政治的線を引く、こういうことでございまして、米価算定方式として他にいい方式がなければ格別でございまするが、あればその方によるべきものではないかというふうに考える次第でございます。生産費々々々と申しますれば、普通常識的に、平均生産費、これがすぐびんと頭にくるというのでございましょうが、私ども考え方は、農業団体バルク・ラインによって計算いたしました生産費をずばりそのまま裸生産費にしようという考え方と実は違うのです。平均生産費を出しまして、それをそのまま裸生産費と見ないわけです。それに、経済の諸情勢、需給関係なんかも取り入れた数値を考慮いたしまして、そうして求める基本米価というものを算出しよう、こういう考え方になっておるわけでございまして、ただいまのところ、私どもは、いろいろ御意見もあり、これを検討いたしましたが、バルクライン方式よりは平均生産費をもとにした方式の方がより合理的である、こういうふうに考えております。これは政治的考慮と理論的考慮と両々相待つべしというお話でございまするが、しかし、米価審議会というようなりっぱな審議会もありまして、これに縦横から御審議を願うというようなことで、私どもといたしましては、とにかく筋が通った説明ができるという方式でなければならぬわけじゃないか。もちろん政治的考慮というものを全然加味しないのだというわけではございませんけれども、理論的に私どもがただいま納得し得る方式と申しますると、平均生産費方式である、こういうように考えておる次第であります。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 依然として大臣バルクライン方式について明確な態度を示されないわけでありまするが、少くとも現在、閣議なり、あるいは政府与党間なり、あるいは国会の論議なり、一般世論にかんがみられまして検討されるというのであるならば—何でもとにかく一文でも一銭でも多くなればいい、それで糊塗しようというようにわれわれは見受けますが、もちろん、少いより多いのを好むのは、何ら変ったことはございません、その通りでありますが、しかし、先ほどからも申し上げましたように、本年の米価決定の一番中心は、生産費所得補償方式というものを採用したというところに一つの大きなことしの意義があるわけです。従って、その内容について、政府が、米審を延長される間に、さらに学界の意見とか各界の意見を調整して、少くとも去年と同じ九千七百円というものがそのものぴたりで合ってくるような基本米価算定されたことに対して、いま少し謙虚に率直に考え直される必要があるのではないかということを私は言っておるのであります。でないと、とにかく加算やいろいろなもので一応その格好さえつけば、何とか国会もそのうちに閉会になるだろう、米価審議会も終るだろう、こういう安易な考え方ではないと思いますが、少くとも、そういう点については、おのおのがほんとうに大きな画期的なことしの米価の意義を考えたときには、将来の日本農業の問題あるいは国民経済の面から考えて、がっちりしたものに少くともこれを前進させていかなければならぬと思うのです。そういう点から、ただいま農林大臣バルク・ラインの法則性について非常に疑問があるということを言われ、また、学界にもそういう意見があるということを言われましたが、私も学界にそういう意見のあることを承知いたしておりますが、しかし、それと異なった意見を持っておる者のあることも大臣は御存じでありましょう。そこで、大体バルク・ラインの問題については政策的な範疇に属するものだということを私はただいまも述べましたが、その後の、一応八〇なら八〇にきめた後において、一つの法則性を見出すことが絶対に不可能かというと、そうではないのです。現在の学界にあっても、その後における法則性というものについては、新しい学界の相当権威ある意見が出ておるのです。御参考までに申し上げてみまするならば、バルクライン方式の問題についてでありますが、この方法は、簡単に言いますと、米の生産費が正規分布という一定の型をなしておる点に着目をして、この前提のもとに、統計学の理論を応用して、調査農家全体から算出される生産費と、同じ全調査農家から算出される標準偏差とによりまして、直接的に八〇%バルク・ライン生産費算定しようとするものでありますが、この場合、年ごとの数字を基礎とすることによりまして起きてきます偶然的な変動を除去していくためには、標準偏差はこれをなるべく固定化することが望ましいので、過去数ヵ年の移動平均を用い、または平均生産費についても年々の変動を平均化する意味で移動平均を用いることとしておるのであります。この方式によりますと、五〇%バルク・ライン農家群というような全体の一部を計算の対象とする必要がなくなってくるのでありまして、調査がそれを目的として設計されておる平均生産費を用いる点から言っても、バルク・ライン生産費計算方法は著しく改善されるわけである、こういう意見を学界においても述べられておるのであります。まだこれは十分に固定化したものではないでしょう。少くとも、こういう点については、もっと大臣は、事務当局の言いなりにならないで—事務当局は、御用学者というか、政府の意図に沿うような者のもとに、この画期的な作業についてバルク・ラインそのものを紛砕していこうというきわめて冷たい態度をとっておられますが、食糧庁長官はにやにや笑って聞いておられますが、笑いごとではないのです。ほんとうにあなた方のことしとられた態度は、政府米価決定方針をして重大なるあやまちを犯させようとしておる。少くとも、この問題に対しては、もっと謙虚に各界の意見を聴取して、そうしてあやまちなきを期すべきだと思うのです。何のためのそれでは生産費所得補償方式だとおくめんもなく言えますか。看板をやめて、今まで通り方式をとって、そして昨年の基本米価を出すために苦労したのだと正直に言うべきではないですか。もっともらしく大看板を掲げてこのような態度に出られておるということは、私はどうしても理解することができません。  いろいろと申し上げたいことはございますが、とにかく、昭和三十四年産米価問題につきまして、バルクライン方式を中心に私は今まで述べてきたわけでありますが、本年産米価算定に当って、算定パリティ方式から生産費方式に移行したとはいえ、全然その実体が伴っておらない。生産費方式を採用の場合の個々の問題、すなわち、自家労賃評価、地代、利子のとり方、あるいは都市、農村物価差評価等につきましては、立場により見解の相違があり、しかも遺憾ながらこの諸点については甲論乙駁切りがないのであります。従って、これらの諸点につきましては、論議を尽して、未解決の問題は未解決の問題としてさらに検討すべきものではないか。一般に与えておる印象は、これが生産費・所得方式なりというふうにあなた方も宣伝し、一般の方でもそういうふうに理解されるということは、われわれは生産費所得補償方式を三十年以来—当時私も米価審議会におりましたが、数ヵ年間学界を動員して作り上げた方式は、そのような甘ったるいものではないのです。そういう点について、もう少し謙虚な立場に立たれていくことが、私は本年の米価決定の基本的な態度ではないかと思います。  大臣に最後に伺っておきたいと思うのでありますが、そういう点から、今朝の新聞紙等を見ますと、予約減税の問題をめぐって加算額を増加してこの際を一応切り抜けようという考え方に移っておるような報道が行われておりまするが、その点について、新聞報道は全然誤まりでありますか。加算で乗り切っていかれようとするのか、基本米価について正しいものを求めようという態度の上から少くともこれに対してさらに反省と再検討を加えられていこうという結果が、数百円の動きとなって現われようとしておるのか。その点について、結論を得ておられないならば、その結論は伺おうとはいたしませんが、少くとも謙虚な態度をもってこの委員会を通じて広く政府態度を明らかにしていただきたいと思います。
  27. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま伺いました御意見につきましては、その足鹿委員のお気持といたしましては、私もさような気持でおります。バルク・ラインをとるかどうかという問題は、これはなかなか重大問題でおりまして、私も、ただいまの段階といたしまして、また、ただいまの調査資料では、このバルク・ラインというものをとるわけにはいかぬというふうな考えを持っておるところでございますが、これは、ただ単にそういうふうにこれを捨ててしまうというふうな考えは持っておりません。なおお説のように謙虚に検討をいたしてみたい、こういうふうに考えております。  また、減税問題に関連して加算をふやすということが新聞に出ておるということでございますが、たしか読売新聞に、福田農相はこういうふうな意図であるというふうに伝えていることをさしてのお話だと思います。私は、ただいま、減税問題に関連して、こういうことをああしようというような具体的な考えを持っておりません。まあ新聞社の想像で書かれたのではあるまいかというふうに考えております。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 まだ他にありますが、同僚議員の質疑もあるようですし、私は一応この際…。またあとで時間がありましたら…。
  29. 中澤茂一

    中澤委員 関連して……。  今足鹿委員がいろいろ言われたが、この生産費所得補償方式という、根底の所得補償方式というものを農林大臣はどう考えておられるか。所得補償方式という基本観念が一体どこにあるのですか、それを一つ伺いたい。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 生産費を償い、それから、正常というか、普通の所得を償うに足る米価、こういうことでございます。具体的には、過去三ヵ年間の平均生産費というものを計算いたしまして、それに必要な要素をなしておる労銀を都市の労銀に置きかえるということでその考えを具現する、こういうことでございます。
  31. 中澤茂一

    中澤委員 生産費を償うということは、それは確かに一つだが、しかし、再生産を保障するというところに所得補償方式の大きな意味があるのです。それと同時に、現在農業基本法やその他で問題になっておるところの、要するに工業と農業との所得均衡理論、こういうものが加味されたのが所得補償方式だと思うのです。これは、このごろ大槻さんがここへ参考人として来られて言った議論の中にそれがはっきり出ておるのです。そうすると、所得補償方式をやるには、一定米作農家の所得を補償してやるというところに所得補償方式の根底があるのです。そうするならば、バルク・ライン八〇というその数字をとってやるということは、少くともその八、九〇%の範囲に含まれた限界生産費の再生産を保障する所得を農民に補償してやろうということに根本的な考え方があるのです。だから、バルク・ラインそのものをこの際とらないということになれば、これは所得補償方式という言葉は抹殺しなければならぬと思うのです。どう考えますか。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、抹殺するという結論まで出てこないと思うのです。それは、ただいま申し上げましたように、都市の労銀というものに勘案いたしまして生産費の要素としておるという点が一つあるわけです。それから、さらに、出ました都市労銀換算の平均生産費に、需給状況等を考慮いたしまして、そうして、今私どもが調整案として出しておる原案には一・二五、二割五分増しにいたしておるわけでございます。この二割五分増しというその増し分の中には、再生産を確保するという趣旨も含まれるわけでございます。まあ農業団体のやり方とは違いますが、生産費並びに所得補償方式というものを取り入れた案だというふうに申し上げて差しつかえない、こういうふうに思っております。
  33. 中澤茂一

    中澤委員 大臣、それは詭弁ですよ。所得を補償するということは、大きく言えば、要するに、農業と工業との所得較差があまりにも大き過ぎる。これは今後の日本農政の基本問題だ。だから、それに対して、一定の所得を農民に補償してやろう。これは確かに政策的な意味が多分に含まれておる。そこで、バルク・ラインの不安定性というものを大和田君がここで二時間も説明したが、しかし、所得を補償してやるという政策的な意味も含まれているバルク・ラインなんです。だから、そのバルク・ラインを今度の米価算定でとらないということになれば、所得補償方式ということは言えないのです。これは言えないと言っていい。生産費方式一本だと思う。だから、現在出しておる調整係数なんというこんなものだって、政策的なものでしょう。とにかく、安い予算米価九千七百円に、ここで何とか上へ押し上げていかなければならぬ。それには調整係数という新らしい考え方を出して、九千七百円を押しつけていごうという考え方じゃないのですか。だから、バルクライン方式にしろ、今度の計算方式の調整方式にしろ、調整係数にしろ、要するにこれは政策的なものですよ。ただ、その政策的なものを、予算米価にどうやって押っつけるかということで、あとで理屈をくっけているだけじゃないですか。だから、政策的なものなら、大臣が少くとも一万円以上の基本米価というものを保障してやろうという考えを持つならば、そこにまた一つの政策的な理屈は幾らでもくっつきますよ。だから、そういう面において、大臣はそういうことをおっしゃるけれども、それはへ理屈ですよ。私に言わしたら、そんなへ理屈よりも、とにかくおれにまかせろ、一万円以上は確保してやるんだ、こうはっきり言った方が、われわれもすっきりするし、みんな喜ぶですよ。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも中澤さんのお話を承わっておりますと、九千七百円というのを出して、それを逆算したんだろう、こういうふうなお言葉でございますが、そうじゃないのです。これはただいま申し上げましたような理論構成からたまたまそういうふうになつた、そうお考えいただきたいと思います。  それから、バルク・ラインをとらなければ再生産費が含まれない、—私は直ちにそういう議論になるまいというふうに考えます。しかし、とにかく再生産ということを考えることは重要でございますから、私どもが今調整案として出しておる原案にもそういう思想を織り込んでおるんだというふうに御理解願えないものでしょうかどうか。(笑声)
  35. 中澤茂一

    中澤委員 関連だから、関連質問をあまりやっておるといかぬから、最後に一点。  大臣、こういうことを考えないものか。とにかく、毎年々々だめなんだ。予算米価がきまっておる。そうすると、役人とすれば、食糧庁長官以下、どうやって予算米価に合わせるかということで理屈をつける。これは毎年々々きまった慣例なんだ。、だから、そういうことはむだだと思う。むしろ米価審議会の時期がいけないんだ。私に言わしたら、本年からいま一回十月の終りか十一月の初めに米価審議会を開いて、予算編成の過程でこの議論をみっしりやって、そうしてその予算米価の中へ完全に織り込む。生産費所得補償方式によるところの米価を織り込んでないから、結果は、最後はこういうことに毎年なっておる。そこで、大臣、最後にただしておくが、十月の末か十一月の予算編成時期にいま一度米価審議会を開いて、根本的に—本年の問題は、農業団体の調整案にもわれわれはいろいろ疑義を持っておる。それから政府のやっておることは全然インチキだと思っておる。だから、十月の末から十一月、予算編成前においていま一度米価審議会を招集して、政府側も今のバルク・ラインの理論的根拠あるいは生産費所得補償方式の根拠、それから農業団体側もそれまでに徹底的に検討して、それを十一月末までにつき合わせる、そうして予算編成の中にその基本方式によるところの米価を織り込んでいく、こういう方式が私は正しいと思う。特にあなたは大蔵省出身で、農林委員会期待するところは、福田氏が農相になれば予算が大体一〇%ぐらいふえるだろうということを期待しておる。米価は基本問題だから、その一〇%ふえるだろう分を予算米価の中に入れていくという、一つあなたの腕のいいところを見してもらいたい。だから、十一月ごろ米審を開く意思ありやいなやということをここで明らかにしていただきたい。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのところ、生産費所得補償方式を取り入れたと称しております私どものこの案ですね、これにつきましては、なおさらに検討する問題が多々あるというふうに思っております。米価審議会でも終りますれば、食糧庁は直ちにこの検討にかかり、そうして、米価審議会といわず、各方面の御意見を伺いまして、適正なこの方式というのを皆さんの御納得の上に早くきめていきたい、こういう考え方を持っておるということを申し上げておきます。
  37. 中澤茂一

    中澤委員 だから、その考えはわかったから、予算編成の前に米価審議会を—農業団体はまだこの原案に疑義があるのです。いろいろこまかく検討してみたら、政府案の方も予算米価を押しつけるためにいろいやっておるんです。だから、それまでにいろいろみんなが検討検討を重ねて、そうして十一月ごろ米価審議会を開く意思があなたにあるかないかということを聞いておるのです。予算編成前に…。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 大へん含蓄のあるお話なんですが、私も十分考えてみます。
  39. 吉川久衛

  40. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣農政担当上の所信については、いずれ機会を見てお尋ねするごとにして、きょうは当面の二、三の問題についてお尋ねします。  第一点は、先日の二十六日の衆議院本会議で、同僚の足鹿委員の質問に答えて、農林大臣は大へんおもしろいことを言っておられる。第一点は所得均衡論です。農業と他産業との所得均衡を政策上どう持っていくかという点に対しては、あなたは、これは数量と価格の問題である、数量の問題についてはいわゆる農業の生産性の向上を通じて所得の向上をはかっていきたいということで、ただ、価格の問題についてはあなたは全然触れていないのです。価格の問題については所得形成の要素ではあるけれども経済全般にわたり重大な影響があるので簡単に結論を出すことはできないとおっしゃっている。ですから、価格政策を通じて農業の所得均衡をはかろうとする意欲は全然ないのではないかというような疑問をまずわれわれは持ったわけです。この点についてはどうなんですか、数量の面だけを通じて日本経済の中におけるいわゆる経済の均衡を特に農業の面を通じてはかろうとする、そういう具体的な意図があれば明らかにしてもらいたい。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 一般論といたしまして、農家の所得を上げる、農家の生活を向上するということを考えますと、結局、生産が多くなってその結果所得が多くなる、また、その所得を使う生活環境というものが楽になるということだろうと思います。この間私申し上げましたのは、しかしながら問題の要点は生産性の向上というところにあるので、ここに全力を尽してみたいのだということを申し上げ、なおそれだけではとてもこの問題は解決できないから、その際には農村の次三男という問題の改善ということに大きく努力してみたいということを申し上げたわけです。価格につきましては、その際申し上げましたように、これは経済全局に非常に影響のあることは、これは御了解願えると思うのです。この政策を主軸とするとかこれにたよるというようなことは、これは、私は、行き過ぎというか邪道というか、そういうふうに考えておるわけなんです。表見上の所得が上りましても、その実質所得が低下する、貨幣価値が下ってくるのだというようなことでは、これは意味をなさぬことになります。さような趣旨を申し上げたわけであります。
  42. 芳賀貢

    芳賀委員 答弁は簡略でいいのですが、問題は、価格政策を全然無視して、あなたはむしろ価格面から逃避しているのです。農業の所得均衡というものは生産の向上だけで達成できないのですよ。もちろん生産拡大ということは大事ですが、その面だけにウエートを置いた場合においては、むしろ価格の低下、農産物の価格の中に占めるいわゆる農家自家労賃の報酬額というものはむしろ低下するような結果さえ招くわけなんです。ですから、やはりあなたの言われた生産と価格の面が両々相待った農業の所得向上というものが期せられなければならないわけです。価格面からあなたは逃避している。そうなると、やはり依然として今後の福田農政は低米価主義を忠実に堅持するのではないか、こういう疑問が生ずるわけです。ですから、価格政策の面について、従来通りの方針を踏襲して岸内閣の方向に忠実に従っていかれるかどうか、その点なんです。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が申し上げましたのは、一般論としてそういうことだというのです。個々の農産物価格をどうするかという問題になりますと、いろいろ困難な問題があると思うのです。あるいは、生産性を向上するということを私は強調しましたが、このためにその価格はどういうふうにしていくのかということも問題が起りましょうし、いろいろな問題が起ってくるだろうと思います。これは個々の農産物資につきまして検討すべき問題で、一般的には、この価格というものによって所得向上をはかるというような考え方は、私はこれは邪道じゃあるまいかというふうに考えておる次第であります。
  44. 芳賀貢

    芳賀委員 その点は、あなたが説明するまでもなく、たとえば本年度の米価農林当局案を見ても、全く前年同様の据え置きということになると、口には生産費及び所得補償方式を唱えても、実質的には従来通り何も変りがないということになると、これはやはり低米価の方針で、農民に苛酷な労働だけをしいて、生産が高まれば日本経済は成長するのだということに帰納すると思うのです。だから、この際に、やはり農産物の低価格主義でいくのならいくということをあなたの方針として明らかにしてもらえば、われわれもそれに対応する考えがある。その点を明確にしてもらいたい。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、個々の物資につきましてそれぞれ必要な検討を加えてきめるべきものであって、一がいには、くぎづけとか、引き下げとか、あるいは引き上げということは、私は言い切れない、かように思います。
  46. 芳賀貢

    芳賀委員 なお、事例をあげると、これは、先般二十五日に米価審議会が開かれて、二十六日に答申が出まして、三十日の閣議で正式に麦の買い上げ価格を決定された。その閣議の席上においても農林大臣は、本年度の麦価の標準価格はむしろ高過ぎる、農政担当のあなたがそういうような発言をなされたごとく新聞は一部伝えておるわけです。こういう一例をあげても、あなたの考え方というものは、全く農産物に対しては価格の大幅な是正を行なってその中で農家の所得の向上を確保してやるという考えがないのじゃないですか。その点はどうなんですか。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 何か新聞でごらんになったというのですが、これは見間違いじゃないですか。あるいは新聞の書き間違いかもしれませんが、その席上、ざっくばらんに申し上げて、逆ざや税象が出ておるじゃないか、これは是正すべきじゃないかという意見が出たことは一つあります。私といたしましては、さような逆ざやというものは、終局においては好ましくない形であるけれども、現状としてはやむを得ないだろう、—なお、パリティ計算から言えば麦のパリティは下っております。下っておりますから、昨年に比べてやや低位にきめるのがパリティ方式である、しかしながら、諸般の事情を考慮して前年度と同額に据え置くべきであるという、あなたの今申したのとは反対の話をしておるのだということを申し添えておきます。
  48. 芳賀貢

    芳賀委員 次に申し上げたい点は、これはやはり二十六日の本会議足鹿委員に対する答弁なんですが、足鹿君が予約減税の問題に触れたのです。ところが、あなたは、これは当然減税廃止論の上に立っておられるのですが、予約減税を廃止するということではこれは社会党の賛成を得られることになると思う、こういうような答弁をされておるのです。この真意はちょっと解釈に苦しむのです。この予約減税を廃止して農家が不利益をこうむるということに対しては社会党は賛成と思う、これはどういう真意があったのですか。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 社会党の方では、わが党の農政を批判いたしまして、三割農政、三割農政と言っているということを私は伺っております。当面の減税につきましては、昭和三十年に設けられた制度でございますが、当時の農家の所得税納税額は百億円以上あったのです。今日は、それが十五億円になってきて、納税農家は非常に減っておる次第でございます。従って、当時予約を奨励するというような意味をもちまして設けられました減税制度というものは、その意味の大半を完了しているのじゃないか、そういう意味がなくなってきているのじゃあるまいかというふうに考える次第でございます。そこで、それは本年度の予算の編成の際にそういうふうな措置をいたしたのでございまするが、減税は廃止いたします。しかし、廃止によって政府に増収になる額が出てくるわけでございます。るから、その同じ額を全供出農家に均分して米価の中に加えていこうというふうな措置をとることにいたしたわけです。今私たちが党それから政府の中で調整している原案は、閣議できめ予算に盛り込んだその線をもとにしておるわけでございます。それで、それは結局こういうのです。よく調べてみますると、減税廃止をいたしまして、そしてその減税廃止によってふえました国家収入二十三億円を平均に売り渡し農家にばらまくということになりますと、石七十五円になるのですが、その七十五円を米価に加算し、それから、減税を廃した場合に全農家の損得工合はどういうふうになるかというと、それによりまして得をする農家は七八%、それから損をする農家が二二%になるのです。それから、ことしは扶養控除の引き上げなんかの減税が別途行われておりますので、三十三年度の税引き後の農家の手取りと、それから三十四年度のそういう措置をいたしました後の農家の税引き手取りとを比べてみますると、手取りが減少する農家が一・七%あるわけでございます。そういうふうに、この措置の影響は、少数の人に不満がいって、そして全売り渡し農家に七十五円という利益がいくのであるから、これはまあ大多数の人の満足を得られるという趣旨において、社会党の皆さんにおかれましても御納得がいけるのではあるまいか、こういう趣旨を申し上げた次第でございます。
  50. 芳賀貢

    芳賀委員 そこらにものの判断の誤りがあるのですよ。この減税措置の問題もあなたの今言われたのは、これは昭和三十年からだということを言われたのですが、そうじゃないのですよ。米に対する減税措置というのは昭和二十六年産米からこの制度ができておることは大体御承知だと思うのです。そういう歴史的な経緯というものを全く伏せておいて、三十年以降予約制度になってからこの減税措置が講ぜられたのだということを、米価と混淆してあなたの方では宣伝されておるわけです。それで、昭和二十六年産米から二十九年産米までの間は、これは、たとえば超過供出奨励金、早期供出奨励金、あるいは供出完遂奨励金ですね、各種の奨励金をすべて非課税措置を講じたのです。それがずっと続いてきたのです。三十年になってやっと事前売り渡し制度というものができて、その機会に従来の奨励金制度というものを一本化して米価に繰り込むというようなことにしたことも、これはもう勉強されておると思うのです。従って、その二十六年から二十九年産米までにとられたいわゆる減税措置と、三十年以降における減税措置というものを一貫性を持たせて考えなければいけないと思うのです。従って、三十年から一石について一千四百円分を非課税分にするというこの算定の根拠ですね。当時は、予約奨励金というものを、予約分については一石二百円加算するという前提の上に立ったわけです。そうして、その二百円については、百円分は予約奨励金という名前で米価の方へつける、あとの百円分については免税措置を通じて実際の手取り米価を百円高めるようにする。それを実現するためには、一石について五百円分を非課税にすることによって、それで百円の手取り増になるという算定ですね。そうして、さらに、二十六年から二十九年までの各種の奨励金に対する非課税の実績というものを八百円と見て、そうすると八百円と五百円で千三百円ですね。そのほかさらに予約奨励金の百円もあわせて非課税にするということで、石当り一千四百円を特例措置を設けて三十年から今日まで非課税ということにしてきておるのです。ですから、今政府が宣伝しておる七十五円だけ奨励金に加算すればいいではないかというのは、当時の二百円の予約格差の百円分というのを奨励金に戻した場合を考えた場合においては、これは非課税分の五百円と相当するわけです。ですから、全体の減税措置経緯の中から今回の減税措置廃止するかどうかという理論が展開されなければいけないと思うのですよ。今政府の言われておるようなそういうやり方では、もう生産農家納得しないのです。ですから、ここに大きな間違いがあるということをこの際是認されて、もう少し良心的な謙虚な態度でこの問題を検討する必要があると思うが、大臣のお考えはどうですか。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 本年度の予算をきめる際に、ただいま申し上げましたようなきめ方をいたしたわけなのでありますが、それはそれといたしまして一つの一貫した理論を持っておると私は思うのです。ただいまも申し上げましたように、とにかく予約奨励の意味のものでございますが、その予約奨励という意味から言いますと、もう納税農家自体が非常に少くなってきておるのでございまして、その少い農家だけに奨励をして、その他の特に数の多い農家には奨励を何もしないでいいではないか、こういう議論にもなってきますので、私は、閣議でそういう決定をし予算がそういうふうにできておるということは、一貫した理論があるというふうに考えております。しかし、一面におきまして、この措置をいたしますと、ただいま申し上げましたように、二二%の人はこの改正の結果損がいく、また一・七%の人は昨年に比べても実収手取りが減るというようなことも出てくるわけでございまして、減税々々という大きな趨勢の世の中に、一部に増税になる人も出てくるのも、これは政治のあり方としてどうかという感じも持っている次第であります。ただいまその間の調整をどういうふうにいたしますかということについて考えておる最中でございます。
  52. 芳賀貢

    芳賀委員 ここで特に指摘しておきたい点は、二十六年以来予約減税という問題は政策上の意味も含まっておると思うのですよ。これはやはり国が食管法という制度を設けて有権的に米の集荷を行なっておるわけです。従って、食糧の確保、この制度の順調な遂行をはかるためには、やはり一つの集荷上の施策というものを設けて、そして生産農民に協力してもらうための一つの方法として、このような措置が減税の形でとられてきたわけですね。これをただ何のことなしに全廃すということになると、もう生産農家に協力してもらわなくても米はひとりでに確保されるから心配ない、そういうような安易感の上に立って廃止論が出てくるとすれば、これは大きな問題があると思うのです。もう一つ大臣廃止には理論的な一貫性があると言うが、これは、昭和二十六年当初から大蔵当局や自治庁当局は盛んにこれに対して反対論を展開しておったのです。その思想を旧大蔵官僚であるあなたは踏襲されておるわけですね。そういう考え方が現在農林省の内部にもびまんして、農林官僚が大蔵官僚に忠勤を励むような、そういう、対等の立場を捨てて、いかにもこういう免税措置というものは富農政策だから廃止した方がいい、こういうように模様が変ってきたわけすね。だから、われわれとしては、これは一貫性がない、便宜的な考えであるということを強く指摘したいと思う。福田さんも今度は農林大臣就任されて日本農政を担当する立場の上に立たれるのでありますから、世間では、いよいよ大蔵官僚が農林省へ乗り込んできたから、もうこれで農林省は大蔵省の出先になったのじゃないか、こういうような危惧を持っておる有識者が相当多いわけです。この点をこの際農林大臣立場で明確にしてもらう必要があると思うのですが、いかがですか。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 米価に限らず、すべて農林大臣として考えております。
  54. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、本年度の米価審議会ですね。御承知の通り、二十六日に開会して、二十六日に麦の答申が行われて、その後開店休業の形なんです。これは今までの米価審議会を見ると異例なことなんですね。十日間も休会をしておる。しかも、農林省米価原案というものがもう出て、それを持ちながら米審に対して政府米価の諮問をすることができない。連日のように与党と話し合いをしておるようでありますが、これは、一体、農林大臣米価審議会というものをどういうふうに理解されておるのか、その点をお尋ねしたい。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 米価審議会は、米麦価を決定する上におきまして、私どもが最もその御意見を尊重する機構であるというふうに考えておる次第であります。しかし、米価審議会に付議する案件が、付議したあとでいろいろとやかくと議論があっても困るのであります。私どもといたしましては、確信を持った案をもって臨みたいということで、しばらく延期をお願いしておる次第であります。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、もう最終的なものをきめて、形式的に米審に諮問され、いかなる答申が出ようとも、与党との間に話し合いがついた原案というものはこれを強行する、そういう前提の上に立って、現在与党との間において話し合いを進めておられるのですか。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 そうじゃないのです。そうじゃなくて、とにかく、ずさんな案が出たのでは困るのでありますから、とにかく、政府といたしましては、最上の案という案を提案したい、こういうふうに考えております。それに対して米価審議会の方で御意見があれば、これはもとより十分尊重しなければならぬ筋合いのものでありまして、もうそれで押し通すのだというような固まった考えは持っておりません。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、約一年もかかって農林省が苦労したと言っておるのですが、その科学的な良心的な農林当局案のどういうところに大まかに言ってずさんな点があるのですか。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 最近いろいろ各方面から承わりまして、一つは、ただいまお話しの税の問題について農林当局から政府与党方面に出しておる案でいいかどうかという点を私考えております。それから、さらに、生産費内容につきまして、なお多少検討する余地があるのではあるまいかというようなことで、これまた検討いたしておる、こういうことであります。
  60. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、その点について具体的にお尋ねしたいと思いますが、与党との間に問題になっておる点としても、これは大まかに言って大体われわれとしても察知できるのですが、第一点は、生産費の問題にしても、これは、農林省案と、たとえば社会党が支持しておる農業団体側の案とは相当根本的な食い違いを見せておるわけであります。従って、第一の点は、農林省当局案が生産費については平均生産費をとっておる、農業団体の方ではこれはバルク・ライン生産費をとっておる、こういう点は与党との話し合いの場合においても当然問題になってくる点であるとわれわれは考えておるわけです。もう一つの点は、都市と農村の労賃均衡の場合におきましても、農林当局の原案は全都市の製造工業の全規模の平均労賃に都市と農村物価差を乗じて農家自家労賃を算出しておりますが、農業団体の側においては五人以上規模の製造工業の平均賃金というところを基礎にしておるわけです。生産費の問題についてはこの二点が相当大きな問題として論議されておると思いますが、その内容はどうなっておりますか。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点について議論があることは事実でございます。しかし、これは今非常にデリケートな段階でありまして、その話し合いの内容がどういうふうになっておるかということはちょっと申し上げられないのでありますが、御了承願います。
  62. 芳賀貢

    芳賀委員 これはしいてお尋ねするわけではないのですが、福田さんの場合はこつ然と農林大臣になったわけではないのです。前歴は前幹事長です。その前は党の政調会長ですから、与党自民党の政策面に対しては相当強力な発言権を持ち、また、その地位につかれておったわけです。ですから、やはり、与党と政府間における折衝とか話し合いをするような場合においても、重点になる点がどこであるかということは、それを持たれて話し合いを進められておると思うのです。ですから、これらの点についてもしも問題がなくて、生産費の点についてはやはり基本価格九千七百円でいいということに与党の方も了承しておるとすれば、これは全く政府も自民党も依然として低米価主義であるということが態度として察知できるわけです。ですから、判断の参考資料として、この二点については論争されておるかおらぬかという程度だけでもお答え願いたいと思います。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 方式の問題ですね、それから、方式は別として、手取り額、—手取り額と申しますと、そのもとになる基本米価ですが、米価が一体どのくらいがいいだろうかというような問題、それから減税制度の問題、この三つが主たる相談の内容でございます。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、今触れられた予約減税の問題ですが、これもやはり与党の中でもまじめに論議している人もあると思うわけです。われわれの予約減税を廃止してならないという根拠を一応申し上げておくと、第一は、この予約減税によって非常に不利益をこうむる米作農家の階層は専業農家層であるということは、大臣も御承知の通りだと思うのです。これらの米作専業農家の階層というものが不利益をこうむるといわれる農家の主体をなしているということは、非常に重大な点だと思うのです。特に日本農業の憂うべき傾向から言うと、毎年のように六百万農家の中で専業農家の階層が激減しておるということなんです。現在においては、おそらく全農家の三五%程度が専業農家であって、あとの六五%はいわゆる第一種兼業、第二種兼業農家ということになってきておるわけです。ですから、今後の日本農政の展開上から見ても、毎年のように激減の傾向を示しておる日本の専業農家階層の保護育成、これを政策を通じてどうするかということが非常に大事な点だと思うのです。専業の農業経営を通じて生活ができないというようなことになると、これは自然兼業に移行しなければならぬわけですから、これらの専業農家層を、政府は間違った判断の上に立って、これが上層階層であるとかあるいは富農層であるというような規定を下しておるが、これは規定づけが全く間違っておるとわれわれは考えておるわけです。ですから、一番不利益をこうむり、一番大切にしなければならぬ米の専業農家層に対してこの免税の不利益というものが及ぼす影響というものをどういうように考えるかという点です。  第二の問題は、言うまでもなく、農家政府に米を売り渡す販売数量の主要なる部面を担当しているのは、これらの不利益をこうむる農家ということは、これは大臣も御承知の通りです。今全体の販売農家の二二%程度が農林省、大蔵省、自治庁の調査によっても不利益をこうむるということを言われましたが、これはわれわれとして調査内容に大きな疑問を持っておるわけです。そういう疑問のある調査資料に基いても、それだけの農家というものは明らかに不利益をこうむっておる。しかもそれは販売農家の主体をなす階層において特にはなはだしい。石数にして一千万石以上に及ぶわけです。だから、これらの販売農家の主体をなす階層に対してどう考えるかという点です。  それから、第三の点は、不利益をこうむると言われる農家のほとんどは、たとえば北海道、東北、北陸等のいわゆる米作の単作地帯、寒冷地帯の農家が最も不利益をこうむるわけです。これらの地域は、言うまでもなく寒冷単作地帯ですから、あくまでも宿命的に米作に依存しなければならぬというように運命づけられておるわけです。こういうような単作地帯の農業振興あるいはこれらの地域の農家所得の向上というものを考える場合において、免税廃止によってむしろ増税になり手取り米価が減少するというような傾向がいささかでも出るということは、これは全く好ましいことではないわけです。当然これらの問題もやはり検討問題点になると思うわけです。  もう一点は、これらの単作寒冷地帯は災害の影響を非常に受けやすいわけです。最近は幸いにして豊作が続いておりますが、過去数ヵ年の経緯を見ると、これらの単作地帯は相当大きな冷害、凶作等を何年かごとにこうむっておるわけです。ですから、これを平均化した場合においては、耕作反別が、たとえば一町以上、一町五反以上というような、経営面積の上から見ると上位に位しておりますけれども、実際の実質所得の面においては不安定の要素が多分に残っておる、こういうことになっておるわけです。  ですから、免税問題を与党と政府の間に検討される場合においても、必然的に、私が指摘したこれらの四点等を今後の農政を通じてどうやるか、米価問題を通じてどうするかということになってしかるべきと私は考えておりますが、こういう点は真剣に論議されておるかどうか、その点をお尋ねします。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度の措置によりまして富農が損をするのだからいいじゃないかというような御議論をする人があります。私はそういうふうには考えていないのです。損をする階層と申しましても、これは所得で言いますればわずかに五十万円とか六十万円とかいう程度のものでございまして、これを私どもは富農だから損していいんだというふうには考えておりません。大体の傾向といたしましては、扶養控除の特典を受けない階層というものが今度の措置によって損をするという傾向にあるようでございます。しかしながら、ただいまお話しのように、この関係から二二%といいあるいは一・七%という不満を持つ階層が出てくるということは、私は政治としてはよほど考えなければならぬというふうに考えておりますので、その間どういうふうな調整をいたしますか、考えておる最中でございます。お話しの点も頭に置きまして検討したいと思います。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 この点についてもう一点大臣並びに農林当局の諸君に申しておきたいことは、一体、政府農家階層の上層階層と言われる—農林省や大蔵省、自治庁の資料によっても、大体一町五反以上の経営面積を持った農家が上層階層というようなことをこの調査の中で説明していますが、これを所得階層に分類してみると、日本の稲作農家の大体主体をなす戸数から言うと、五反から一町の耕作の階層が大体中心をなして、それ以上、それ以下に区分できると思うのです。これは、政府の十七府県の資料によって、米作の中心地帯といわれておる新潟県に例をとっても、たとえば一町から一町五反の水田耕作の場合、一体農業所得がどのくらいになっているかというと、これは二十六万五千円ということになっておるのです。それから、それ以上のたとえば一町五反から二町の階層の場合においては、同じ新潟県の調査地域においては、これは農業所得が三十一万七千円です。それから、さらに二町以上の階層の場合は、新潟県の調査地域においては四十一万円、この四十一万円の場合は、扶養家族が八・五人平均になって、政府売り渡した石数が五十四石余ということになっておるわけです。ですから、政府が言う二町以上の耕作農家がいわゆる富農階層であるとしても、わずかに農業所得の面については四十万円をちょっと上回る程度です。おそらくこの二町経営の農家は経営主を含めて専従者が三名を下回るようなことは絶対にないと思うのです。これは、一名当てに分配しても、一専業農家の専従者はわずかに十三万円くらいの所得の分配にしかあずかっていない。こういうことになっておるわけです。ですから、農林省あるいは政府が富農層と言うのは、資本主義経済下におけるいわゆる資本家の仲間としての富農階層というような解釈とは全く違うという、そういう認識の調整をやっておいてもらわないと大へんな間違いが生まれるのです。こういうような経営の上層農階層の場合においても、農家の専従者の一人当りの農業所得というものはいかに低位に置かれておるかということが政府調査資料をもっても明らかに立証されておるわけです。しかも、これらの上層農家だけを守るというような免税措置は妥当でない、全廃すべきであるというようなことになると、一体、政府の考えは、専業農家層をどの程度の所得水準で抑圧しようというような意図を持っておるかということをもお聞きしなければならぬことになるわけです。非常にこれは大事な点であると思いますので、大臣就任早々でありますが これらの政府並びに農林省内部における誤まりを是正させるために大いに指揮をとるべきであると思いますが、いかがですか。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 専業農家の所得を抑圧するのだというような考え方は毛頭持っておりませんし、そういう考え方農林省内にあるということは、私は信じがたいと思います。専業農家の経営改善ということにつきましてはさらに努力をいたす所存でございます。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、米価審議会の再開の日取りは何日になっていますか。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 七日に再開いたしまして、七、八、九、十の四日間御審議をお願いしたいと思います。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 米審に対しては、大臣が言われた通り、また同僚委員各位も言われた通り、食管制度の中における米審の任務、存在価値も十分認識されて、あくまでも米審の意向を尊重するという謙虚な態度で、すみやかに政府原案を作成され、そして米審を通じて十分な論議に期待をかけていきたいと思います。ただ、この際お尋ねしたい点は、たとえば先般の麦価の決定等の経緯を見ても、同じ食管制度の中において麦価の決定は法律の示すところに従ってあくまでもパリティ方式でいかなければならない、それから、米価の場合においては、今度は形だけではありますけれども生産費所得補償方式を大幅に採用して価格決定を行うということになると、同じ制度の中において麦並びに米に対する算定の理論的根拠が非常に異なるという不統一な現象が生まれてくるわけです。ですから、これは、水田農家といわず、畑作農家といわず、政府が買い上げる米麦あるいは農産物の価格決定を行うような場合においては、あくまでも米価決定の方針を基礎にしてすべてにこれを及ぼすというようなことに改善すべきであると思います。また、特に麦価の算定等に対して不合理な点については、当然食管法の内容改正等を行う必要があると思いますが、大臣としてはどう考えますか。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 麦の価格は決定されたばかりでございますが、麦の価格の決定方式と、それから米の方式とは違っておるわけであります。しかし、米の農業産業における地位、またさらに外国の麦の生産費の状況ということを考えますと、今直ちに麦の価格決定方式というものを米の方式に持っていくということはなかなか困難な事情があるのではないかというふうに考えている次第であります。しかし、麦の価格決定方式につきましても、不合理な点がありますれば、なお検討し、米価審議会の御意見等も伺いまして、できる限り努力はいたしていくつもりであります。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、食管制度の検討については後刻に譲って、最後にお尋ねしておきたい点は、農林大臣就任されて早々、速急に農業災害補償制度の改正を意図しておるというような表明をされたのですが、これは時間もありませんので十分深くお尋ねする気持はありませんが、大体大まかに言って、改正されようとする場合、大筋をどこに求めて改正されるか、その点をお尋ねしておきます。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もまだ詳しい検討はしておりませんが、この制度自体にあれだけ国で金を使っているのだけれども、どうもそれほど農家方々に喜んでいただけないという風潮があるようでございます。あれだけの金を使ってする制度としての効果から考えまして、どうもどこかに欠陥がありはしないかというふうに考えておるわけであります。過日省内でこの問題をそういう点から検討しようということにして調査会みたいなものを作ったのでありますが、多少腹がきまりました上は、また皆さんからもいろいろ御意見を承わりまして、できる限りいい制度にして、喜んでいただきたい、かように考えております。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題は、農林委員会においても、ちょうど昭和二十八年以来農災制度の根本改正の問題を取り上げて今日に及んでいるわけですが、たまたま昭和三十年に一部改正が行われたけれども、これも決して根本的な改正までには至っていないわけです。ですから、農業災害補償制度の根本改正という問題は、当面した重大な問題として、大臣がそこに思いをいたして当初からこれに取り組むという熱意に対しては、われわれとしては一つ期待を持っているわけです。これは非常に大事な問題ですが、ただ、最近の政府の傾向は、何か新しい問題が生れると、すぐ調査会を設置して一年か二年検討して結論を得てからということを言われております。一体、歴代の政府は、政権担当の長期の間に政策に対する勉強とか立案とかいうものをほとんどやっていないと思うのです。しかも、与党である自民党の内部においてもそうだと思うのです。天下を取ってから今度は政府部内にようやく調査会を設けて、国費を消耗して調査検討して結論が出てから初めて制度改正をやるというようなことでは、これはまことにけしからぬと思うのです。福田さんもかつて政調会長、幹事長をやられたのだし、大政党である自民党は、一体、政権担当の過程においても、党の内部において諸般の政策を立案するというような、そういう機構が全くないのかどうか、参考までにお尋ねしておきます。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもの属しております自由民主党におきましては、政務調査会というものがあります。さらに、政務調査会の付属機関といたしまして政策審議会というものもありまして、政策審議会で重要なる政策の審議立案を行うということになっているわけです。それを執行するのが政務調査会であり、その会長が責任者であるということでございます。なお、政務調査会長の下部には、いろいろな再度の、たとえば米の問題につきましては農産物価格対策特別委員会とか、あるいは外交につきましては外交調査会でありますとか、あるいは地方制度につきましてはそういう委員会だとか、いろいろ膨大な機構があり、それぞれ調査員もおりまして、政策につきましては常に研さんを怠らずやっている次第でございますが、しかし、なかなかむずかしい問題がございまして、これが意見の調整に相当手間のかかることがあることは御了察願いたいと思います。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 自民党は、ただ党の政調会だけが選挙目当ての選挙中だけの政策を作って、政権担当の中においては何ら使いものになるような政策がないというようなことで、そのたびに、農業基本法の調査とか、すべて調査々々で逃げている。あなたの場合もおそらく一年か一年余でまた交代されるわけだと思いますが、調査会が結論を出さない前に農災制度の根本改正ができないで退任されるようなことでは、まことに遺憾千万なことにもなると思うので、早期に根本改正をやる場合は一体どういうようにやるのだというような構想を大まかにでも当委員会に明らかにしてもらえば、委員会においてもそうそうたる同僚諸君がいるのですから、多年の懸案である根本改正に対してはわれわれとしても協力したい。  最後にもう一点お尋ねしたい点は、農林大臣は、米価問題が終れば次にはビート工場の問題に取り組むということを言われておるのです。この点についてはきょうは私も深く質問する意思はありませんが、実は先般の当委員会の甘味資源に関する小委員会においてこの問題が取り上げられて、当時三浦前農林大臣は北海道における三社三工場の建設の早期決定を急いでおるというその態度に対して、中澤委員初め同僚各位の強い指摘を受けて、一応この問題が白紙に戻ったことは農林大臣も御承知の通りだと思います。従って、米価問題が終ればビート工場の問題に取り組むということを言われておりますが、再び農林大臣が火中のクリを拾うような御意思があるかどうか、そういう点を老婆心ながらお尋ねしておきたいと思います。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 火中のクリというのは一体どんなクリか、よく承知いたしませんが、私は、とにかく、甘味を一億ドルも輸入し、しかもその輸入先はキューバがおもだというような実態は、日本の経済構造として好ましくないのだ、そういうために税制の改正をいたしまして、そして大いにビートを振興し、イタリアあるいは西ドイツ同様、行く行くは完全自給まで持っていくべきだという論者でございまして、この正月そういう措置をとりましたのも、私どもが主張いたしてそういうふうにいたしたのです。でありますから、このビートの問題につきましては、大筋はできるだけ早くきめまして、そしてこれを農家の方もまた製糖業者も熱意をもって早く実行に移すという態勢が一日も早くできることが望ましい、こういうふうに考えておる次第でございまするが、ただいまお話しのようないきさつについては、まだ私全然承知しておりません。当面の懸案が済みましたならば、白紙で再検討いたしまして、ただいま申し上げたような趣旨に沿っていきたい、こういうふうな気持でおります。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 いずれ適当な機会にまたお尋ねすることにして、これで私の質問を終ります。
  79. 吉川久衛

    吉川委員長 日野君。芳賀君に関連して一間だけ…。
  80. 日野吉夫

    日野委員 答弁が満足いけば一問だけでもけっこうですが場…。  けさこの間の約束の調査資料が出たので、これは十分見る時間はありませんが、農林省の原案はだいぶ先にきまっている。この調査資料を基礎にして、これを十分参考にして農林省の原案をきめられたのかどうか、この点は非常に重大だと思います。この調査予約減税を廃止して七十五円を追加した場合の利害得失を中心に調査したものであるが、この結果は、これでもって得をするのは、一万二百六十八戸の調査農家中八千七戸で、これは割合にすれば七八%、調査町村からすれば十七ヵ町村のうち十五ヵ町村、損をする方は、二千二百六十一戸で二二%、町村から言えば十七分の二、こういう調査の結果であります。米作面積の階層別に見ると、芳賀君からもいろいろ意見が言われておるけれども、一町五反歩以上の予約者は全体の八%だ、あとのそれ未満は九二%だという全国的の平均を出しているが、この調査は非常に危険な調査だと僕は思う。芳賀君からも追及されているから、僕もあまり多くは言いませんけれども、地域的な関係が一つも考慮されてない。米作農家は、東北と新潟、北陸三県を合せたところで調べてみると、予約集荷量の半分を供出しておるわけである。これは年々そうなんです。そういう米作地帯が、全国平均に数字を出されるとこういうことになる。芳賀君が言われるように、そんなら一町五反以上の農家を全部富農層と見るかということについては、非常に問題がある。大臣は本会議の答弁で農家所得の増高と均衡を考えているということを言っておられるが、これは昭和二十六年以降予約減税をずっとやってきているのと同一精神です。これは、大体米価が安いから、米価の安い分を生産費を補償するために追加する意味でやって、これが昭和二十六年からずっと今日まで続いているとするならば、これはまさに臨時措置でやっているからということで見るだけではいかぬ。やっぱり一つの既得権だ。もうすでに米作農民が既得権として持っているものを剥奪して所得均衡をはかろうという考え方は、重大なことじゃないか。将来農民の所得均衡をはかろうという御趣旨に賛成ですが、こういう既得権を剥奪して、そして均衡をとるからこれでいいのだというような考え方であったならば、これは農政を誤まるものだと言わなければならないのであります。われわれは十分に精査してみたわけじゃない。今配られた資料ですから。この資料から見ると、調査はきわめて不十分である。それなら、今の米作地帯を中心にこの調査をやってごらんなさい。この数字とはなはだしく相違したものが出る。予約集荷量が集荷されなければ、配給が混乱するのである。既得権を剥奪された農家は、やっぱり予約に対する意欲がなくなる。これは国の集荷配給の計画が乱れるのです。農林大臣として、そういうことは許されない。そういう面から、既得権に対する考え方が、これはわずかだから取り上げても差しつかえがないという一つ考え方であるのか。こうすることによって収穫に大きな影響が来る。富農層だとあなたたちが見ているのは専業の米作農家なんです。この諸君がどうも所得が減って減税が廃止されたという一つ気持を持った場合、集荷の上に及ぼす影響はどうなるかということ。これらのことに対して農林大臣のお考えを一応聞いておきたい。この調査もどう考えておられるか、われわれは何か一つの結論を引っぱり出すための無理な調査のように考えられるのだが、これをどう思っているのか、一応その点を聞いておきたい。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 この減税制度は、整理統合されて今日の形になりました三十年ごろ、とにかく納税農家というのは百億円以上の所得税を納めるような状態だったのが、今日十五億というのですから、その納税農家が非常に減少しているということは容易に御想像できるのじゃないかというふうに考えます。さようなこともあるわけでございますが、一体、今度この税を廃止するということにいたした場合に、今日の状態においてどういう影響があるであろうかということを調べたのが、ただいまお手元に配られてある資料なんです。これは農林省、大蔵省、自治庁の三省で共同して約ニヵ月くらいにわたって調べたわけでございまするが、全国二十一府県を当初考えたのですが、いろいろ事情がありまして、二、三県がなくなりまして、十七、八県の、とにかく通常な都市、農村につきまして調べを行なったわけでございまして、大勢がこういう大勢であるということを見る上におきましては、まあそんなところの資料じゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。ただ、ただいま日野さんのお話しのように、こういう減税という世の中に増税になる人が出てくるというのも、政治的に見まして私ども感心をいたしません。そういうようなことも考えながら、ただいまどういうふうにすべきかということを頭をひねっておる最中でございます。
  82. 日野吉夫

    日野委員 そういうお考えであるとすれば、今ごく簡単に既得権ということを言ったのですが、僕はやっぱり既得権と解すべきであろうと思うので、もしそういう考えであれば、所得均衡のために、農業基本法なり、別途法律をもって均衡をはかるべきものであって、一片の行政措置で、税制改革ということでそういう既得権剥奪のようなことは、大臣としてはやるべきでないのでないか。既得権については法律によらずしてこれを剥奪することができないので、それは、富農であろうと、ごく少数であろうと、現実に損をする者が出るという一つの認定であれば、そういう別途措置を講ずべきで、こういう米価決定の場合のように簡単な手続でやるべきものではないとわれわれは考えているのでございますが、基本的な一つ考え方として大臣はどう考えられるか、そこを明確にしてもらいたい。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 基本的な考え方といたしまして、時に増税があり、時に減税がある、これは既得権論争と関係は私はないと思います。ただ、いろいろ権衡上の問題とか、あるいは政治的感触の問題とか、いろいろあります。いろいろありますから、さようなことから、既得権的な考え方というようなことをする場合もあり得るわけでございますが、建前といたしまして、既得権だとか、だからこれは憲法に抵触するのだとか、そういうふうには考えておりません。
  84. 日野吉夫

    日野委員 これは論争になりますし、一問だけの約束だから、あと残しておきます。
  85. 吉川久衛

  86. 神田大作

    神田委員 大臣と同僚委員の質疑を聞いておりますと、どうも農民が今度の米価に対しまして強く要望しておる生産費及び所得補償方式によるところの農民の明るい希望が何ら解決されていない、そういうことに対しまして明快な答弁がなされていないように私は思われるのでありますけれども、これは、先ほど足鹿委員並びに芳賀委員からも質問があったように、生産費及び所得補償方式というものに対する農林当局考え方、それから今後の算定方式にその考え方が完全に現われておるかというと、非常にこれはごまかされておるのであります。この点に対しまして、生産費及び所得補償方式というものは、今度の算定米価には実際面において採用されておらないということをはっきり大臣がここで言えば、これはそういうことでもって農林当局がそういう考え方であるならば、そういう考え方に対しまして、それらのごまかしに対しまして、農民として農民なりの、農林当局のそういうごまかしに対する一つの憤り、あるいはそれに対する正しい要求というものを突きつけることができますけれども生産費及び所得補償方式をやるようなことを言って、実質的にはそれを受け入れておらないということは、重大な大臣の責任であると思うのでありますけれども、この点に関して、あなたは責任者としてどうお考えになっておりますか。
  87. 福田赳夫

    福田国務大臣 従来のパリティ方式では、物価の動向というものが米価には、織り込まれておりますけれども、その生産費なり所得とその米価とがいかなる関係にあるかということが明らかに、されていないわけであります。今回の私どもが与党、政府各方面と調整のために出した試案におきましては、そういう生産費と所得との関係はどういうふうになるかということを明らかにしております。ただ、出た結果が、それがそういう方式をとったら相当上るのではないかという御期待に沿い得なかったことは、御期待にそむくような結果にはなりますが、しかし、答えを出して逆算をいたしておるわけではないのです。申し上げておりまする通りの理論構成によって、筋書き通りに正直に出しておるというわけであります。
  88. 神田大作

    神田委員 それが一番大事なことだと思う。あなたたちは、答えを出しておいて、それに合わせるようにいわゆる方式を作ったというようにわれわれは見ざるを得ないのです。大体、生産費及び所得補償方式におけるところの、われわれが米価審議会やそのほかのあらゆる機会において主張いたしました大きな問題点は、いわゆる都市との労賃の問題にいたしましても、あらゆる労働者の賃金の平均をとっているというような、そういうような算定の仕方、あるいはまた、資本構成におけるところの算定の仕方、あるいはまた、三ヵ年の生産費を出して、それにいわゆる調整係数というものをかけたというようなことは、これは何ら科学的な生産費及び所得補償方式に準拠しておらない。それは、いわゆる米価を据え置きにしようという考えのもとに、あなたたちが技術的にうまく作り上げたものであ掲というようにわれわ事は考えざるを得ないのでありまして、ここにこの農民の大きな不満が出ているわけでありますから、これが解明されない限り、農民米価に対する大きな不満というものは解消できない。これを解消せずして、米作農家納得させて、そうして完全な予約制度を維持することは非常に困難であろうと思うのでありますけれども、この点に対してどうお考えになりますか。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 申し上げておりまするように、農業団体の言うようにバルク・ライン生産方式というのをとりますれば御満足だ、こういうことになると思うのでございますが、これは、先ほどから申し上げておるように、私どもとしても、これはなかなかその合理性というものを発見するのに苦しむわけであります。バルクライン方式というものは、生産者の立場に立って米価を引き上げようというその考え方だけから見ますれば、これはそういう考え方も政治的にできるわけでございますが、しかし、一方に消費者もあり、また経済全体というものの中における米価ということも考えなければならぬということになりますると、やはり、私は、平均生産費というものを基本として、これに需給の経済の実情というものを織り込むという、私どもが今出しておる方式以外に道はないんじゃないかというふうに今思うわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、生産費計算としてバルクライン方式をとるということにつきましても、なおこれはどういう基礎資料が要るかというような基本的な問題があるので、そういう問題なんかも含めまして、慎重に一つ検討はしてみたいと考えております。
  90. 神田大作

    神田委員 これは、バルクライン方式というものは、やはり生産費及び所得補償方式における大きな中軸だと思うのです。これをとらないで、いわゆる生産費及び所得補償方式をとったんだというように、そういうようなことを表現することは、私は非常に間違った表現の仕方を農民諸君に植え付けさせることであると思うのでありまして、もう何年この問題が論議されているかわかりませんけれども、もう米価審議会等においても何年となく八〇%バルクライン方式を採用すべしという結論があったにもかかわらず、今日それに対して、適切な資料がないとか、自信がないとかいうようなことは、これはもう当局の怠慢です。そういう意味合いにおいて、私は、ごまかしである、こう言わざるを得ないと思うのです。この問題を議論すると時間がたちますが、私は、こういう点についてもっと真剣に、生産費及び所得補償方式をとるならとるように、ちゃんとした、確固とした考えのもとに政府は論拠を立てて、そうしてやっていかなくちゃならぬのに、今日うやむやのうちにごまかしておるというようなことに対しましては、われわれは承知することができない。これは、私は、大臣が今後農民立場に立って、この方式をとるならとる、それに対して確固たる資料をもってちゃんと納得のいくようにやっていく、そうすれば、農民も、生産費及び所得補償方式がこうだということになれば納得するのでありますけれども、現在のような方式であっては、これは納得できない、こういうように思うのであります。  また、この予約減税の問題につきましても、私は、予約制度というものがある限り、予約減税制度というものは、予約制度を守る上におきましても非常に大事なことだと思う。今日やみにどんどん流れておりますけれども予約減税制度がなくなると、私はやはりやみに流れる数量というものがぐんとふえてくると思う。結局、そうなりますと、今の予約制度というものは崩壊して、食糧政策の基本がくずれて、いわゆるなしくずし統制撤廃に追い込まれると私は思うのでありますけれども、こういう点に対してはどうお考えになりますか。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 税につきましては、先ほども申し上げました通り、いろいろ問題がありますので、ただいま検討中でございますが、ただ、私どもが党、政府、各方面に出しました案ですね、その中では、減税措置廃止しっぱなしというのではないのです。そのかわり、減税を廃止したことによって国家収入がふえる額だけを、売り渡し予約した農家全部に還元しよう、こういうのでありまして、別の形の奨励措置がついておる、こういうわけでありますから、その利害につきましては、私は、あるいはそういう広い範囲の利益を与えるという考えをとった方が有効ではあるまいかというふうにも考えておるわけであります。
  92. 神田大作

    神田委員 これは非常に大事な問題だと思うのですが、広い範囲にとるといいますけれども、今七十五円を米価にプラスするといいますけれども米価そのものを完全に生産費及び所得補償方式によって算定すれば、何もそういうプラスをする必要はない。これは、米価米価でもってきちんときめるべきであって、予約制度をとっている以上、いわゆるそういうような予約を奨励する意味において、多量に予約する農家に対しまして特典を与えていくというのが、私は予約減税をした大きな意義であろうと思うのです。そういう意味合いにおきまして、大臣は一般的にそれを均等させると言っておりますけれども、この問題は、住民税やあるいは健康保険税、いろいろの問題を考えますと、これは数字から言いましても七十五円でもって全部均等されるものではない、こういうようにも考えますし、制度そのものの根本的な意義が間違っておるのじゃないかと私は思う。この制度を廃止するということは、予約制度を維持する意味合いにおいて非常に大事なものであるということを認識してもらいたいと思います。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのお話、この制度を存続するということが予約を獲得する上において有効な手段であったということは、私も理解できます。しかし、有効の度合が前に比べまして今日非常に減っているのだということを申し上げておるのでございまして、その価値の減った制度にかえて、新しく有効な別の手段を設けるというのが、今回の農林省の原案になっておるわけです。しかし、諸般の御意見も伺いまして、ただいま検討をしておるところでございますから、さよう御了承願います。
  94. 神田大作

    神田委員 次に、もち米の加算金を減らすというような原案を持っておると聞いておりますけれども、われわれは、畑作振興上、陸稲の加算金並びにもち米の加算金というものは従来通り据え置くべきであるという主張を与野党ともに今日までやってきたのでありますけれども、今日、陸稲並びにもち米の加算金に対しましては、当局はどのような考えを持っておられるか、お尋ねします。
  95. 渡部伍良

    ○渡部説明員 こまかい点でありますので、私からお答え申し上げます。  御承知のように、もち米加算金は、終戦後の食生活の潤いをつけるために、もちの特配というふうな関係から、四百五十円の加算金がついておるわけであります。しかし、最近におきましては、もち米は、実は政府ではもてあましておるのでございまして、ことしの正月に六日分の特配をいたしましたが、半分しか買っていただけません。皇太子殿下の御結婚式のときにも特配いたしましたが、これもそういう状態。それから、五月のお節句にもいたしましたが、やはりそういう状態でございます。従いまして、食生活あるいは主食生活上の緊要度が減ってきている、こういう関係からいきますと、もはやもち米についてそういう終戦直後の特別の奨励策を講ずる時代は過ぎ去っておる、これはもち米を作っていただかなくとも普通のお米を作っていただけばいいわけでございますから、普通のお米と同じ待遇にしたらいい、こういうふうに考えております。ただし、これは、ことしの処置といたしましては、米価審議会が米の植付以降になりましたので、急激に変化を与えることは生産者に対して期待権を裏切ることになる、当初の予想を裏切ることになりますから、ただいまの原案では、漸進的にもち米加算を減していきたい、従いまして、三十四年産米につきましては、四百五十円を三百七十円程度にいたしたい、こういうふうに思っております。  陸稲につきましても、これはやはり特用米でございますが、これもなかなか買っていただけないのでございます。しかし、陸稲につきましては、御指摘のように、畑作地帯のこれにかわる作物というものについてもなかなか発見が困難でございますから、陸稲と水稲との区別をつける、こういうことはいたしません。ただ、もち米につきましては水陸稲を通じて同様の扱いにいたしたいというふうに思います。
  96. 神田大作

    神田委員 これは畑作農家にとりましては非常に重大な問題です。特に大臣の出身地である群馬、それから茨城、栃木、熊本というような畑作地帯におきましては、もち米の加算金を低くするということは、結局問題は、陸稲のもちである。御承知の通り、陸稲の場合は、生産費は水稲に比して非常に高い。生産費及び所得補償方式をとるならば、かえって高く買わなくちゃならぬ、こういうような現状になっておる。現在多量の外米を輸入しておって、食糧の自給ができないわが国において、畑作を振興して、これらの食糧の自給をはかるためには、たとい多少の犠牲を払っても、これらを奨励しなければならぬという立場に立っておるのでありますからして、そういう意味合いからいたしましても、私は、陸稲もちの加算金の引下げは、いわゆる畑作振興の上から、主として陸もちに犠牲をしいるわけで、今度の措置は絶対畑作農家としては承認できない問題でありますが、この点に対しまして大臣はどうお考えになりますか。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 なおよく研究してみます。
  98. 神田大作

    神田委員 食糧庁長官はもち米が余っておると言いますが、なるほど余っておるでしょう。しかし、一体外国からどれだけもち米を輸入しておるか。ついでに、これはあとで終ってからでもけっこうですから、外米の輸入状況、輸入先、そういう詳細な資料提出すると同時に、現在において一体もち米をどの位外国から輸入しているか、お答え願います。
  99. 渡部伍良

    ○渡部説明員 詳細な資料あとで差し上げますが、もち米は、三十四年度ではタイ国の一万トンあまり、それだけでございます。
  100. 神田大作

    神田委員 もち米は余っておると言いながら、外国から多量のもち米を輸入して内地の畑作農家を圧迫するというような、そういう農政はあり得ないわけです。そういう意味においても私は今度の値下げは承服できないと同時に、植付前にそれを農民に知らしたならばとにかく、四百五十円の加算金がつくものとしてもうすでに植付けた今日において、今度のこの措置をとるということに対しましては、農民は承服できない。そういう意味においてもわれわれは再考を促したいと思います。
  101. 渡部伍良

    ○渡部説明員 この問題は、先ほどの通常国会で、たしか足鹿委員でしたか、芳賀委員の御質問のありましたとき、もち米加算につきましては引下げを考慮するということを本委員会でお答えをいたしております。そのとき額は申し上げませんでしたが、考慮しておるということは申し上げております。
  102. 神田大作

    神田委員 一つ大臣にぜひこの点を—あなたの県でもこれは非常な問題になっております。直接よく大臣もわかっておると思いますから、御考慮を願いたい。  それから、概算金の問題でありますが、この概算金を差し引く場合に、今までは、初めに出荷した金額から全部概算金を差し引いたのでありますけれども、この制度を何か改めるというようなことでありますけれども、私たちは、概算金のいわゆる精算は、これは出荷数量に応じて一俵二千円なら二千円を差し引くべきである。こういうように考えておるのでありますけれども、この制度をどのようにお考えになっておりますか、お尋ねいたします。
  103. 渡部伍良

    ○渡部説明員 今年の方針といたしましては、九月二十一日までに政府売り渡していただくものにつきましては石当り五千円を引くことにいたします。一俵当り二千円です。従来の制度は、概算金全部を完済しなければいかぬということであります。簡単に言いますと、大体半額は農家にお払いする、こういうことであります。
  104. 神田大作

    神田委員 それは東北、北海道あるいは北陸等の米作地帯を除くというように聞いておりますけれども、これはまことに不公平であろうと私は思うのでありますが、一歩前進であるから、そういうふうに改正することはけっこうでありますけれども、できれば、私は出荷俵数に応じてその都度差し引くべきである、こういうように考えるのであります。この点についてどうですか。
  105. 渡部伍良

    ○渡部説明員 私どももそういう方針でいろいろ団体等と協議したのでありますが、むしろ団体の方で、まとまって出るといたしましても、そういうめんどうなことはやめてくれ、こういう御要求がございましたので、そういうふうにしたのであります。
  106. 吉川久衛

  107. 中澤茂一

    中澤委員 六日から予約して概算払い、それは一体、この米価審議会の方は何か七日に諮問して十日にとさっき大臣が言ったけれども、その間の措置はどうなのですか。
  108. 渡部伍良

    ○渡部説明員 予約概算金石当り二千円は、この委員会その他からも、米価審議会で本米価がきまらぬでも、仮価格をきめて、そのうちの概算金を払え、こういうふうな御意見がございましたので、私の方では、米価はいずれにしろ米価審議会できまる、それまでにはきまりませんけれども、きまらぬ先でも概算金は払おうということで、政令を改正いたしまして、あす閣議決定していただいて、六日からお払いする、石当り二千円の概算金を払う、こういう手続を進めております。
  109. 中澤茂一

    中澤委員 どうも政府のやることはペテンじみている。六日からそれをやるということで、この一つの根拠は、これは閣議決定すればいいのか、それをまず聞きたいと思う。概算金二千円、六日から予約を払う、その根拠が一点と、何か、今、団体側の方の歩調も、少し早く概算金をもらわないと利息がだいぶ大きい、だから至急米価をその辺で早く折り合いをつけた方がいいのではないかという意見もぼつぼつ団体側の意見として出るらしいのだね。だから、何かそれともひっからましたようなあれだが、一体、払う根拠は、米価審議会で本米価決定するまで払えないのか、それとも、六日からすぐ払ってくれるというなら、閣議決定すれば払えるのか、その手続上の根拠だね。それは閣議決定すればすぐ払えるものか、その根拠を明らかにしてもらいたい。
  110. 渡部伍良

    ○渡部説明員 これは、政令で、三十四年産米の買付をするという政令を出します。それに基いて、予約をすれば概算金を払う。このことは、二千円は閣議決定でよろしい。
  111. 吉川久衛

    吉川委員長 午後二時半より再開することとし、これにて休憩いたします。     午後一時二十九分休憩      ————◇—————     午後三時二十八分開議
  112. 吉川久衛

    吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林漁業災害に関する件につきまして調査を進めます。  ひょう害による農作物の被害について質疑の通告がありますので、これを許します。神田大作君。
  113. 神田大作

    神田委員 農林大臣が来ましてから今回のひょう害に対する全般的な質問をしたいと思いますが、ただいま専売公社の総裁がおられるので、タバコに関する災害についてまずお尋ね申し上げたいと思います。  今回のひょう害によるタバコ関係の災害は、全国でどのくらいになっておるか、お尋ねいたします。
  114. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 ただいままでに調べましたところによりますると、被害のありました府県は、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木の五県になっておりまして、被害面積の総額は二千三百六十八ヘクタール、損害の見込額が約四億九千六百万円程度であるということがわかっております。     〔委員長退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕
  115. 神田大作

    神田委員 これらの被害に対しまして、公社は今までにどのような措置をとられたか、お尋ねします。
  116. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 公社といたしましては、さっそく、現地の技術者、それから耕作指導委員を災害地に派遣をいたし、また、そういう人員の不足のときには短期の臨時の指導員を雇い入れまして、それらの者をして災害地を見回らせまして、災害農家に対しまする適切な指導を行う、すなわち、収穫皆無になって今後耕作を続けても見込みがないものと、それから、脇芽を出すとかその他の方法によれば結局収穫をあげ得て相当の葉タバコの収量をあげられる、そういうものとに分けまして、そして災害の善後策を講じ、なお、災害のありましたような土地につきましては、病虫害が発生しまして他の災害のない土地にまで被害を及ぼすようなことがございますと大へんでありますから、病害予防の共同の措置を講ずる、それから土寄せをするとかあるいは追肥をやる、こういうことの指導をいたしました。なお、このことは、公社の技術者あるいは耕作指導員が指導いたしますとともに、現地のタバコ耕作組合と密接な連絡をとりまして、耕作組合の方で必要に応じて肥料とかあるいは農薬を買って支給する、こういうふうなことで、その間協同いたしまして善後措置に当って参ってきておる、こういう状態でございます。
  117. 神田大作

    神田委員 ただいま聞きますと、それは単なる耕作指導のようでありますが、今回のひょう害の災害地を私も数回にわたって視察いたしまして、その深度が深く、耕作農民が非常に大きな打撃をこうむって、ところによりましては農民がもう生産する意欲を失って惨たんたるものをわれわれは見てきたのでありますけれども、これらの耕作農民に対しまして、単なる耕作指導というようなことだけでは、たばこ産地の育成にはならぬ、こういうように考えているのでありますけれども、公社は、この際思い切って、このような非常に甚大な被害をこうむった人たちに対しまして物質的な何らかの手を打つべきである、こういうように考えるのでありますけれども、そのようなことに対しましてどうお考えになっておりますか。
  118. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 今回のひょう害を受けました耕作農民に対しましてはまことにお気の毒でありまして、またその被害の程度が非常に激しいものであったということは御指摘の通りであります。公社といたしましては深く同情いたすのでありますが、物質的な援助と申しますると、一番手っ取り早いのは見舞金、こういうようなことに相なると思いまするが、どうも、直接耕作農民に見舞金を出すというようなことは、現在の制度なりあるいは予算の建前から言うと非常に困難であるというので、まだその方法は講じておりません。
  119. 神田大作

    神田委員 普通の作物に対するひょう害に対しましては、これらの災害者に対しまして樹勢回復のための施肥、あるいはまた薬剤による防除、あるいはまたそれに対する多大なる労力等に対しまして、国が、できれば府県が、適切なる補助をし、そしてこれら農家に対しまして再生産の意欲を起させておるのでありますけれども、タバコの場合には何らこれらの手が打たれておらない。非常に私は遺憾であると思うのでありまますけれども、ただ単にそれらのことは予算上に措置がないというようなことでは、これは済まされないことであると思うのでありますけれども、この点に対しましてどうお考えになりますか。
  120. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 県によりましては、緊急措置といたしまして、肥料代の補助あるいは農薬代の補助というような措置を講じたところがありますが、お話のように、この場合においては葉タバコが除外されておるのです。これを公社としては遺憾に思っておるわけでありますが、公社といたしますれば、先ほどお話いたしましたように、組合員がある程度活動をいたしまして追肥を施すとかあるいは農薬を散布するとかいうようなことをいたしておりますので、一応その面での措置は講じてありますので、あとは、その耕作組合が立てかえて払っておるこの費用を補助してあげる、こういうことができれば一つの方法だと思いますが、それの財源といたしましては組合交付金という予算があるのでありますが、この予算があまり多くない。通常の組合費の補助としても十分でないというので予算の要求がございまして、本年度わずかではありますが増額を認められたというような状態であります。それの中から回すということを考えるのでありますが、たださえ少い組合交付金をそちらに回してしまうと、一般の組合交付金が減るということによる組合側の不平もまたございますので、これを回すにつきましては、大蔵省との話し合いをつけて、あとでその金を埋めてもらう、こういう見通しなしにはちょっと踏み切りかねる、こういう次第であります。従って、今回のひょう害に対して国が何らかの措置に出る、肥料代を補助するとかあるいは農薬代を補助するというような措置をとるようになりますれば、こちらは直接ではなく耕作組合を通じてその費用の一部を負担するという形でありますけれども、そういう費用を出してもらうという話がつきやすいのではないか、かように考えて、今その時期を見計らっておるという次第であります。
  121. 神田大作

    神田委員 大臣には時間の制限があるようでありますから、総裁に対する質問はあと回しにいたしまして、大臣に質問したいと思います。  今度の数県にわたるひょう害によりまして非常な災害を受けておられるのですが、これらの災害に対しまして、われわれは、天災融資法を適用して、これらの災害農家に対しまして融資の道を開くように再々要望しておりましたが、この点に対しましていかなる処置をとっておられるか、お伺いいたします。
  122. 福田赳夫

    福田国務大臣 天災融資法につきましては、調査が完了いたしましたので、これを発動することにいたしました。明日その旨を閣議決定をいたしたい、かように考えております。
  123. 神田大作

    神田委員 その内容を今少し詳細に御説明を願いたい。
  124. 斎藤誠

    ○斎藤説明員 事務的なことですから私から答弁いたします。  先般本委員会で被害の概況をほぼ御説明いたしたと思いますが、その後被害が確定いたしまして、現在のところでわかっておりますのは、合計いたしまして約二十三億でございます。そのうちおもな被害といたしましては、麦類の五億五千万、果樹の六億八千万、工芸作物の六億等でございます。従来の被害に比べまして今回のひょう害は非常な被害であったことがここで判明いたしたわけでございます。従来の降ひょうの例で見ますと、三十年に十三億というのが被害額として出ておるのであります。そういうことでございますが、天災法の発動ということにつきましては、従来まで出た例でありますと、大体四十億をこえるような被害に対して出て参ったのでございます。先ほど農林大臣からお話がございましたように、今回のひょう害は非常に広範囲にわたり額も大きいということで、発動するということにいたしまして、あしたの閣議できめて、近く実施する予定でございます。  内容につきましては、御承知の通り天災法を発動いたしますとその発動すべき対象をきめるわけでございますが、それは五月下旬並びに六月上旬、中旬の降ひょうを対象とするということにいたしております。融資総額としましては三億円ということで一応われわれの方では考えておりますが、大体各県の御要望等を聞いてみまして、この金額で十分まかない得るもの、かように考えております。  なお、今回の貸出しの期間でございますが、これは三十五年の三月三十一日までということにいたしております。  それから経営資金の貸付の限度でございますが、御承知のように、天災法を発動する場合における被害者に対しましては、特別の被害者、つまり被害の額が三割以上の被害で、その人の年収の一割以上を占める場合、五割以上を占める場合におきましては、それぞれ天災法融資の条件が異なるわけでございます。そのうち三分五厘の適用を受ける特に被害甚大な農家に対しましては、貸付限度といたしまして七万円、果樹栽培者については十万円、それ以外の一般の被害農業者に対しては五万円、果樹栽培者については八万円ということに一応いたしております。なお、今回の降ひょうを受けました被害者につきましては、従来天災法の融資を受けておった被害者もございますので、つまり重複被害者につきましては貸付の限度をそれぞれ拡大しまして、特別被害者の場合は十二万円、そのうち果樹栽培者の場合は十五万円、一般の被害農業者の場合は十万円ということにいたしております。  それから、償還期限の問題でございますが、これは現在のところ一応二年以内、果樹栽培者につきましては金額も多いということで三年以内ということにいたしております。  大体現在考えております天災法による内容は、ただいまのようなことでございます。
  125. 神田大作

    神田委員 詳細な質問はあと回しにいたしまして、大臣お尋ねいたしますが、これは大臣もよくおわかりになっておることと思うのですが、群馬県が非常な災害地になっております。ひょう害の特徴といたしましては、災害が一ところに集中するのでありますから、それに見舞われた農家というものは徹底的な打撃を受けるのであります。私が見て参りましたある部落のごときは、部落の農作物がほとんど全滅、特に蔬菜地帯でありまして、今蔬菜の出荷の最中に全部たたかれて、農家の収入がほとんどなくなっている、そういうような状態になっております。現金収入を得るために部落がこぞって北海道方面に出かせぎに行かなくちゃならぬ、そういう悲惨な状態になっておりますが、こういうような農家に対しまして現金収入の道を講ずるために、私は、災害地に対しまして土木救済事業を施すべきである、こう思うのでありますけれども大臣はどうお考えになりますか、お伺いいたします。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回のひょう害は地域的に限られておりますが、そのひょう害の地域が非常に深刻な打撃をこうむっているということはお話の通りのようでございます。従いまして、今度の災害には共済概算金の前払いをいたします。これはもちろんでありますが、そのほか自作農資金の貸し出しもいたすし、さらに、ただいま申し上げましたように、天災融資法の発動もいたすというふうに考えているわけでありますが、特に運営上困るというような事態がありますれば、その他のお話しのいろいろ行政上の措置、あらゆることをいたしまして農村の復興の援助をいたす、かように考えております。
  127. 神田大作

    神田委員 一番困るのは、あすの生活をするための生活資金を得るということで、これが非常に大事なことであります。私は過般伊豆の災害地を見て参りましたけれども、伊豆の災害地も非常に甚大でありましたが、あの災害地に対しましてあれだけの事業が短期間に行われた、しかも比較的復興いたしまして農民がもう田植えをするというような状態になったのは、やはり農民が災害を受けながらも復興事業に従事されたということ。ところが、ひょう害の場合は、作物が徹底的にたたかれて、現金収入の道を断たれているので、農民に生産意欲が上っておらないというようなことからして、私は、こういうひょう害の激甚地に対しましては、現金収入を得るための、災害を救済をするための事業を特に興してやるべきだと思う。この点どうお考えになりますか。
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 災害地の具体的な状況によりましては格段のことを考えなければならぬと思います。これは、農林政策というよりは、広く国の地方行政の施策もありますし、建設行政あるいは厚生行政、いろいろなものに関連いたしますので、特にひどくて村の再建上困るというようなことがありますれば、考慮してみるつもりでおります。
  129. 神田大作

    神田委員 天災融資法を適用されたことは非常にけっこうなことであると思う。私はこの天災融資法の法律にも欠陥があると思うので、これらは後刻検討していただきたいと思うのであります。しかしながら、これは天災融資法だけでは救済できないのでありまして、大臣も言われたように、自作農創設資金あるいは農業改良資金の貸付とかあるいはそれの延期、こういう問題についても適切なる手を打ってもらわなければならぬと思うのであります。しかしながら、いずれもこれらの政府の資金というものは貸付に非常な手間を要する。急場に間に合わない。半年もかかってから金が来たところで、これはもうありがたみがない。こういう意味合いにおきまして、速急に簡易に農民のふところに現金が入るような、そういう方法を特にとって、自作農創設資金の貸付、農業改良資金の貸付、あるいはこれが払い込みの延期、そういうような手を打ってもらいたいと思うのでありますが、この点に対しましてどうお考えになりますか。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 お説の通り農林省といわず政府金融各方面におきまして手続が非常に煩雑であるという考えを持っております。過日も事務当局に対しまして自作農創設資金の貸し出しの手続簡素化ということを検討するように命じてあるわけでございますが、今回まだその手続の改正というところまではなっておりません。おりませんが、運営上できるだけ早くこれはしなければならぬというふうに督励いたしております。
  131. 神田大作

    神田委員 そのことはいつでもこういう問題が起きたときに強く要望しておるのでありますけれども、実際においてはなかなか現地においては適切にいっておらない場合が多いようでありますから、大臣から特にこの点は強調して、すみやかに災害者に現金が渡るように督励を願いたい。  なお、今度のひょう害に対しまして、樹勢回復のための肥料、あるいは病虫害防除のための農薬、あるいは代替作物のための種苗、こういう莫大な資金を農民は要しておるのでありますけれども、過般の凍霜害の場合には、これらに対しまして補助金が交付されておったのでありますが、今回のひょう害に対しましてはさような手が打たれておらないと思うのであります。これに対してどうお考えになりますか。
  132. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはいろいろ検討もいたしてみたのでございます。しかし、この種の災害に対しまして、過去においてそういう補助政策をとった前例もありませんし、大体、天災融資法まで発動してやるのでございます。それから、自作農創設資金も、これは非常に条件等は有利なものでございますし、そういうこともいたしますので、大体この程度で農家の復興はできるんじゃないかという考えでおるのであります。
  133. 神田大作

    神田委員 総額においては、なるほど二十何億とかいわれておりますが、これはわれわれの報告を受けているのと多少違うようでありますけれども、とにかく二十数億の被害があったということは、非常にこれは甚大なものです。あのようなひょう害における惨状を私は生まれて初めて見ましたけれども、これは容易ならざることでありますから、総額において大したことはないというようなことでこれを片づけるべきものではないと思う。     〔丹羽(兵)委員長代理退席、委員長着席〕  過般の凍霜害の場合は補助金を出しておったのでありますし、ところによってはそれ以上の惨害を今回は受けておるのであります。これは、たとえば群馬県、栃木県、茨城県というところに対しまして、県でそれを処置しろと言ったところで、苦しい地方財政のもとにおいてこれを処理することは容易ならざることであります。このことは一つ再考を促したい、ぜひこの点は再検討を願いたい、こういうように思いますが、いかがですか。
  134. 福田赳夫

    福田国務大臣 ごもっともなお話でございますが、たとえば群馬県のごときは、県でお話のような趣旨のいろいろな対策のための支出をしております。そして、今私は自治庁長官にも話しておるのでございますが、そういうような際の負担の増加に対しまして、交付金の配分上特別の処置をとれぬかということを話しておる次第でございますが、大体今申し上げましたような諸施策で、私も十分事情は承知しておりますが、まあがまん願わなければならぬか、こういうふうに考えておる次第であります。
  135. 神田大作

    神田委員 大臣はそういうことを言うと群馬へ帰って非常にしかられることになるかと思うのでありますが、これは、もう自治庁との話し合いがついて、そうして交付金がそれだけ増額になるというなら、それも一つの方法であろうと思う。しかしながら、そうでなくて、今の苦しい地方財政の中から、これらの対策を県自体にやれと言ったところで、非常に無理な話だと思う。これはやはり、ああいう群馬、茨城、栃木のような甚大な災害に対しましては、これは例があるのだから、国が当然実施すべきである。それができなければ、交付金においてそれを見込むということをはっきりと自治庁と話し合いをつけて処理をすべきである、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  136. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点、ただいま申しましたように話し中でございますから、しばらく御猶予願います。
  137. 神田大作

    神田委員 次に、税金対策でありますけれども、所得税あるいは住民税その他の税金等につきまして、これら災害地の農民は非常に困窮をしております。こういうふうな税対策につきまして、いかなる処置をとっておるか、お尋ねします。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 税につきましては、従来被害甚大な災害の際の前例に準じまして十分対処する方針のもとに、諸般の指示をいたしております。
  139. 斎藤誠

    ○斎藤説明員 ただいま税金の関係のお話がございましたけれども大臣のお話がありました指示によりまして、国税庁ともさっそく話しまして、六月三十日付で国税庁からは、今回の被害者に対しましても凍霜害の例に準じて減額等の措置をとりあえずとるようにという通達を出しておりますので、大体凍霜害における場合と同じような措置を現地の方においてはとっていただける、かように考えております。
  140. 神田大作

    神田委員 大臣に最後に一言だけお尋ねしますが、今度のひょう害を見ましても、これは単に天災融資法等の法律だけでは救済できない特殊な災害でありますので、これら常時ひょう害地帯に対する臨時措置法というような法律を作って、これらの甚大なる被害者に対しまして救済の手を差し延べていただきたいと思うのでありますが、こういうような単独立法を作ってこれを救済するというようなことをわれわれは痛切に今回考えておるのでありますが、大臣はどのように考えておられますか。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 災害に対する法制といたしましては、相当完備したものがあるわけでございます。ひょう害だけが特別なもんだというわけではなくて、たとえば凍霜害にいたしましても、深度が非常に深いのだということもありまするし、風水害にいたしましてもそういうことがあります。そういうところに対しましては法の運用上善処し得る、こういうふうに考えておりますので、ひょう害だけ特別な立法というのはいかがかと思っております。
  142. 神田大作

    神田委員 これは法の運用でやれるということでございますけれども、今度の天災融資法の適用に対しましてもだいぶ論議がかわされておるようでございまして、このようなことだけでは、私はこれが救済はできない。これは、現地に行ってよくそれらの災害農家の実情を見れば、これは特別な処置を講じなければならぬということをわれわれは痛切に感じておるのでありますから、大臣もこれらに対しまして一つよく御検討を願いたい。  なお、大臣が時間がないようでありますし、ほかの同僚の質問があるようでありますから、私は大臣に対する質問は以上にいたしまして、なお、このひょう害に関するその他の関係各省に対する質問を保留いたしまして、一時質問を中止いたします。
  143. 吉川久衛

    吉川委員長 ひょう害による農産物の被害についての自余の質疑はあと回しにいたします。     —————————————
  144. 吉川久衛

    吉川委員長 農作物の貨物運賃改訂問題について質疑の通告がありますので、これを許します。中澤茂一君。
  145. 中澤茂一

    中澤委員 今神田君の質問に関連して大臣一言申し上げておきますが、かつて、群馬県においては、農民のために戦ったわれわれ農林委員の同志がおったのであります。金子与重郎君が農民のためにほんとうに死にもの狂いの戦いをやった。ついに金子君もなくなられた。このごろなくなられた五十嵐君も党農林部長としてあなたの幹事長時代相当あなたに食い下ったのです。ところが、群馬からは今両氏がなくなったあと農民のためにほんとうに戦っていくという、どこまでも推し進めていくという同志が群馬では今いないわけです。そこで、そのあとを継がれるのは、私はあなたに期待したい。そうだとするならば、たとえば今のひょう害の問題一つにしても、これは、昭和二十八年の大冷害にわれわれが当委員会で立てた政策の、いつもそのうちの三つか四つをとってやっておるだけだ。災害に対する対策というものは、農林大臣としてあなたがもっと根本的に立て直さなければいかぬ。いつも天災融資法は額が足らぬとかそういう言葉を言っておるようじゃだめです。そういう点についてあなたに一つ関連して要望しておきます。  そこで、農林連賃の問題ですが、何かあなたも時間がないそうですから、実は磯崎さんに来てもらっておるのですが、公共割引の廃止、これもあなたが幹事長時代相当代議士諸公からお聞きになっておることと思う。これは、昨年、公共割引を廃止するというので、当委員会に総裁以下来ていただきまして、論議の末、一ヵ年延長ということになった。ところが、いよいよこの七月一日から実施するという段階になって、当委員会ではこのごろ農林、運輸、総裁、大臣全部出てもらいましていろいろ検討した結果、新聞の発表によるとニヵ月延長する、こういうことになっておるが、これはもはや事務局の問題じゃなくして、これは政治の問題でなければならぬということを三浦農林大臣にも申し上げたのです。一体、この公共政策割引というものは、米価の問題で出た減税の問題と同じように、一つの既得権というか、日本の経済安定の一つの大きな運賃の基礎をなしておる問題だと思うのです。これを今廃止すると言えば、いろいろな面において非常に大きな波紋が起きるわけです。同時に、われわれ一番問題にするのは、この農作物百十品目の運賃というものは、ほとんど生産者にかぶってきている運賃なんです。消費者にかぶっている運賃じゃないところに問題がある。ところが、農林生産物というものは、あなたも御承知のように、ぎりぎりなんだ。ちょっと運賃に食い込めば、もはや生産費割れをしてしまう。たとえば、一例を申し上げれば、私の方の、お宅の方に近い軽井沢のハクサイがそうなんです。とにかく、東京市場の値下りを知れば、秋になればハクサイ全部腐らしておる。合わないのです。運賃をかけて売る値段が引き合わなくなってくる。そういうような問題で公共政策割引というものが現在までとられておるわけです。ところが、いろいろこのごろ検討し、営業局長、副総裁等の御意見を聞いてみると、これはもはやどうしても国鉄の現在の独立企業体の。プロダクションからいけば何とかこれは改訂しなければならぬと言う。そこで、これはどうしても政治の問題として考えなければいかぬ。すなわち、公共政策割引をやめて運賃増になるのが二十二、三億と言われておる。その中で、実際のいろいろな面から差引をしていけば、おそらく大体七、八億見当じゃないか。七、八億のものを一般会計から負担すれば、公共政策割引というものをそのまま維持できる可能性があると私は思う。これは、今農業団体からあらゆるものが猛烈にこれは困るという陳情をやって、あなたもお受けになっているはずです。そこで、これは結局、農林大臣が、ほんとうに真剣に公共政策割引を維持するために、年間約七、八億を一般会計から負担するという方式を考えるならば、これは可能である。だから、一つ今後あなたにそういう折衝をしてもらって、公共政策割引を残していこうという考え方を持ってもらいたい。それについてあなたの御所見を伺って、あとの質問をいたします。
  146. 福田赳夫

    福田国務大臣 公共政策につきまして国鉄がやっておる割引を国鉄当局としてやめたいという気持は私もよくわかります。しかし、今お話しのように、その結果与える影響ということになりますと、特に木材だとかそういうものは甚大な影響があるのでございますから、私も着任早々でこまかいことを検討しておりませんが、そういう影響等も考えて、急激に広い影響があるということにならないように、できる限り努力をしたい、かように考えます。
  147. 中澤茂一

    中澤委員 あなたは時間がないようですが、磯崎さんにまだ経過はお聞きしないのですが、ニヵ月延長ということを新聞で見ている。そうすると、九月一日からは、これを廃止していこうという基本的な考え方は依然として変らないと思うのです。だから、その二ヵ月以内に政治的折衝をあなたが中心になっておやりになって、大蔵省、運輸大臣、国鉄総裁、この四者が話し合って、大体私の勘で七億か八億くらい一般会計で見れば、公共政策割引は現状維持のままいけると思うのです。だから、それに対して、一つやってみよう、大蔵省の隠し財源をたたき出させよう、—あなたは大蔵省でよく御存知ですから、そういうことをやる意思があるのかないのか。
  148. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ、一般会計からそういう政策のために特に繰り入れてやるということでなくて、やるならばやはり国鉄がサービス機関としてやるということじゃないかと思いますが、まあいずれこれは政治折衝ということでございましょうから、私は、ただいま申し上げましたような考えでできるだけ努力をしてみたい、こういう考えでおります。
  149. 中澤茂一

    中澤委員 それは例のないことなら私はそんなに執拗に申しませんよ。現に、厚生省ががんばりまして、傷痍軍人の運賃問題というものはちゃんと負担をしておるのです。だから、これは例のないことじゃないのです。あなたに何も新例を開いてもらいたいとお願いしておるのじゃないのです。厚生省が突っ張って、傷痍軍人やああいう気の毒な方々の運賃割引をちゃんとやっているのですから、例のないことを申し上げているのではなくて、あなたがやろうと思えばできることなんです。そうしなければ、あとニヵ月、九月一日から公共割引の廃止というのは、国鉄に言わせるならば既定事実のようになっているのです。先ごろ総裁初め皆さんにおいで願っていろいろ検討したが、とにかく国がそういう面で見てくれるならばわれわれの方では考慮の余地があるが、一般会計で見てくれるということでなければもう考慮の余地がないというぎりぎりのところにきておるのです。それを、七月一日からやってしまうというのを、当委員会で取り上げて、一応、資料の整備ができないので、資料整備の期間としてニヵ月向うへ延びたわけなんですね。だから、そのニヵ月の間に政治的な話し合いをあなたにしてもらいたい。そうして、それをどれだけ見るか。これからなら、下半期だから、おそらくわずか二、三億。こんなものを出せないはずはないと思うのです。少くともその程度のものを出せば、今年度の公共政策割引はそのまま維持できるということなんです。どうでしょう、一つおやりになりませんか。
  150. 福田赳夫

    福田国務大臣 よく勉強してみます。
  151. 中澤茂一

    中澤委員 これは、いずれまた、あなたは時間がないというから、磯崎さんからこまかい問題を聞いて、今後の問題を検討しますが、猶予期間はニヵ月しかないのです。だから、もしこのままいくならば、九月一日から、公共政策割引は廃止ということはもう既定の事実なんです。だから、その間に話を進めてくれなければだめなんです。そのニヵ月という期間に、そういう話し合いを進めていただく御意思があるかないかというところなんです。努力をすると言っても、これは期限付努力なんです。ただのんべんだらりと努力するというのではいけない。このままいけばもう九月一日から廃止になってしまう。だから、九月一日までに、夏で非常に暑くて御苦労ですが、お話を進めてもらう意思があるかないかということなんです。
  152. 福田赳夫

    福田国務大臣 ニヵ月という話は私承知しておりませんが、しかし、いずれにいたしましても、これを改正する際には、私どもにも相談があるわけですから、その相談を通じまして一つやりたい、こう申し上げておるわけであります。ちゃんと間に合うようにいたします。
  153. 中澤茂一

    中澤委員 大臣、それがおかしい。相談があなたの方にあるはずがないのです。これは農林水産物の運賃百十品目の問題なんです。だから、あなたが主体になって、そうしてこれは一つこうしていこうじゃないかということでないと、国鉄から相談が来るのをおれは待っているというのでは、これはもう考え方が違う。あなたが主体になって、関係閣僚や国鉄総裁と、農林水産物だけはこうしてもらいたいということを打ち出さないと、国鉄や大蔵省からそういうふうにした方がいいだろうと言ってくるので待っているという考え方はおかしい。だから、あなたが主体になってニヵ月間にお話をお進めになる御意思があるかどうかということなんです。
  154. 福田赳夫

    福田国務大臣 もちろんそういうつもりでおります。
  155. 中澤茂一

    中澤委員 このごろ当委員会で問題になったことで、その後資料の不足その他でこういう二ヵ月延期ということを新聞で拝見したのです。それが事実であるかどうかということが一点。それから、いま一点、その経過について、今後の見通しとして、事務的に一体どういうふうにいつごろ整っていくかという問題。このごろの委員会では、資料不足その他があったのでしょうが、一応二ヵ月の期間がここであったということは、今後政治的な話し合いを当委員会としても推し進めさせるためには、これは非常に時間的余裕を与えてもらった。そういう点については、国鉄側だと今同僚委員からひやかされたが、感謝している。しかし、今後の見通し、経過、そういうものについて一応局長から御報告を願いたい。
  156. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 国鉄運賃の問題につきまして前からいろいろ御心配をいただきまして、六月の十一日に当委員会で私から中間的な御報告を申し上げましたが、そのときに申し上げました通り、当時私の手元にいただきました農林省と通産省からの膨大な資料を約二週間ばかりかかりまして、一応全部目を通しまして、いろいろ私の方で検討いたしましたが、大へん申し上げにくいことでございますが、資料の中には、いろいろ私の方といたしましても必ずしも数字的に納得できないもの、あるいは精粗趣きの違うもの、その他非常にさまざまでございまして、それに対しましてほとんど全品目につきましていろいろ疑義が出て参りました。その疑義を全部一表にいたしまして、これは膨大な資料でございますが、六月二十五日ごろにやっと私の方の農林省資料に対する疑義を取りまとめまして、それを農林省に、それについてお答え願わない限り、この問題を軽々に私どもの判断だけで処置するということは必ずしも適当でないというふうに判断いたしましたために、いろいろ農林省とも相談いたしまして、何とか初め一月ぐらいの間に検討いたしたいというふうなことも申し上げましたが、いろいろ品目も多いし、また、農林本省だけで調整できないもの、たとえば地方庁その他にいろいろ照会しなければならないというようなものもおありになるようでございます。また、通産省につきましても同じような問題がございまして、いろいろ私の方でも幹部と相談いたしました結果、ニヵ月間の猶予期日を限って、八月末日までこれを現在のまま延期することにいたしました。この点につきましては、前六月十一日の委員会で、中澤先生から、もしお前の腕が悪くて事務的に間に合わなかったらどうするかという御質問がございましたが、そのときはそのまま延長いたしますということを申し上げましたが、その通り、六月二十六日付の私の方の公報の二百二十五号という公示をもって、八月末日まで延期することといたしまして、即日官報にも掲載いたしましたが、その後私の方で取りまとめました資料農林省の方に持ち込みまして、私の方といたしましては七月十日までに農林省からぜひ御回答いただきたいということを申し添えて、現在農林省に私の方の質疑関係の全般的な資料を差し上げてございます。私の方といたしましては、農林省が七月十日までにその資料検討された上御回答いただけるものという確信を持っております。それを七月十日までにいただけますれば、大体八月中旬ごろまでには極力農林経済局長と私との間に事務的な折衝を進めまして、最終的な問題といたしましてはあるいは運輸、農林大臣等にもいろいろ御折衝願った上で、できれば、八月中旬までには、この問題を一応きめて参りたいというふうに考えております。従いまして、今、この問題が進みますか進みませんか、非常に申し上げにくいのですが、一にかかって農林省の方がどのような資料を私の方に下さるかということでもって、検討を進めたいというふうに考えております。
  157. 中澤茂一

    中澤委員 経済局長、どうです。その資料というものは大へんな資料で、とても七月や八月には、間に合わないという資料ですかどうです。
  158. 須賀賢二

    ○須賀説明員 ただいま国鉄御当局から御説明がありましたように、過般私どもから提出をいたしました資料につきまして、さらに補足資料を詳細にわたりまして御要求を受けております。私の方では、御要求がありました直後、関係局並びに関係団体を招集いたしまして、その資料に対する整備の方針を検討いたしたのでございます。これは、御要求になっております資料の詳細を御紹介申し上げますとある程度御了解いただけると思っておりますが、なかなか膨大なものでございまして、十日までに全部をそろえまして提出ができるかどうかは、けさほども関係団体と協議をいたしましたが、ただいまの時点におきましては十分のめどはまだつきかねております。従いまして、私どもといたしましては、国鉄御当局が今回の公共割引制度の存廃につきまして、具体的な計数的資料としてしさいに御検討をなさるという方針に対しましては、できる限りの協力をいたすことはもちろんでございますが、資料の収集等につきましても、事柄によりましてはおのずから能力にも限度があります問題でございますので、個々の品目につきまして具体的に国鉄当局と資料の整備そのこと自体につきまして十分に今日から打ち合せをいたしたいと考えておるわけでございます。そのような方針で資料の御要求に対しては、われわれの方で準備をいたしております。
  159. 中澤茂一

    中澤委員 その資料の要求の内容というものは、相当綿密な、しかも膨大なものでしょう。そうすると、七月十日と言われても、やはり今のあなたの御答弁を聞いてもなかなか間に合わない。まあそれは、夏で暑いことでもあるし、あんまり急ぐ必要もない。あまりずさんな資料をあなたの方で出しては、その資料が基礎になって直ちに各品目運賃が決定してくるのですから、あなたの方でずさんきわまる資料を出したのでは、今度は品目によっての運賃差がまた問題になってくる。品目に直ちに影響するのだから、七月十日などと言わずに、ことし一ぱいぐらいかけてゆっくりおやりになったらいいと思う。そのくらい膨大な資料ですから、七月十日には間に合わないようですが、どうですか。
  160. 須賀賢二

    ○須賀説明員 私の考えておりますこの資料調製の考え方は先ほど申し上げました通りでございますが、非常に膨大ではございますけれども、われわれとしては全力をあげて整備をして参るつもりでございまして、資料の御要求が非常に大きいから相当時間がかかる、従って資料の調製について時間的見通しをもつことは困難であるというような考え方はいたしておらないわけであります。できませんものははっきりできないということでお断わりをしなければならないものも中にはあるかもしれません。数字にわたりますもので全体の状況が把握しかねますものは、部分的な資料でごかんべんをいただくというような性質のものもあるかと思います。個々に十分打ち合せをいたしまして、われわれの方の能力を精一ぱい出しまして、できます限度で資料の整備はできるだけ早く努めたい、さように考えておるわけであります。
  161. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 実は、私、手元に、農林省から提出されました資料を私の方の形式で全部統一いたしました資料と、それから農林省に対してさらに私の方で要求いたしました資料を持ってきておりますが、まあこの程度のものでございまして、前回の資料は一応農林省としては一ヵ月半かかって調査された資料であります。それに対して一種の数字的な補足をお願いしているというような意味でございまして、根本問題に触れたような問題はそれほどございません。ただ、農林省資料の中でいろいろ主管の局が違っておりますので、一局でおっしゃっていることと、原則的に見て違った問題も相当ございます。また、おっしゃっている事柄の中には、当然これは私どもの方の営業割引で考えてしかるべきだというような問題も実はあるのでございます。割引しているために国鉄に出荷してやっているのだ、トラックに転移する。あるいは船に転移するのをやめて、割引のあるために鉄道に出荷しておる。こういうような資料もございます。そういたしますと、これほど輸送力がないのに鉄道は割引までしてよその荷物をとっているのではないかということも実は言われておりまして、そういった、公共政策割引でないということを裏からおっしゃっているような資料もございます。それらについてもいろいろ疑義を伺いませんと、紙の上に表われましたものだけではいろいろ誤解があると思います。私どもとしては、いろいろな問題について個別的に具体的な御質問をしているわけでございます。それほど長時間を要するものではないというふうに考えております。
  162. 中澤茂一

    中澤委員 このあと、ひょう害がありますから、やめますが、その資料を当委員会一つ提出してもらいたい。当委員会は、七日から十日、十一日と委員会を開くというけさの理事会のあれもありますから、資料一つ出してもらいたい。  それと同時に、経済局長に申し上げておきますが、これはあなたの方の資料が直ちに一品目の値上げの問題にからんでくるのですから、そうすると、それがあとになって問題になる可能性が多分にあるのですね。だから、その資料というものは、あなたの方でも全力をあげて、それは綿密しさいに調査をしないと、ずさんきわまるものを出しておると、おそらく、運輸省の方では、今の御答弁を聞いても、ある意味における推定でやると思うんですね。推定でそれをやられた場合、非常にあと農林省から出た資料というものが問題になってくると思う。だから、そういう点について、もっと綿密に—これはほんとうに時間の問題じゃないのです。一品目ごとに運賃差が出てくるということになると、実際な問題になってくるのですから、何も七月十日なんというそんな時間は問題じゃないのです。もうしさいに綿密に、地方庁に照会するものは全部照会して、そうしてほんとうに綿密な資料をあなたの方から出さなければならないと私は思うのです。ですから、そういう点について、雑駁きわまるいいかげんなものを出さずに、各品目ごとに、価格形成から、及ぼす影響その他いろいろな問題について、根本的に調査をしてもらいたい。それで時間がかかるのは、冗談じゃなくて十二月末までかかったって、これは仕方がないと思うのです。ですから、そういう点については私は最後にあなたに要望しておきます。この問題は、先ほど申したように、これはもう事務当局の問題じゃなくして政治問題ですから、いずれ国鉄総裁、運輸大臣農林大臣、大蔵大臣、全大臣に出ていただきまして、当委員会で休会中でもこの問題は討議する計画でおりますから、十分その点も含んで一つ事務的にお進めをしていただくということを申し上げて、私の質問を終りたいと思います。
  163. 吉川久衛

    吉川委員長 磯崎営業局長に私からお尋ねをいたしますが、国鉄の経営の安定を期するために根本的な総合的な検討をやる、従って、低利資金等の導入によるとか、その他の具体的な積極的施策をお考えであるのかどうなのか。そういう問題とあわせて、農産物の貨物運賃の問題もどうすべきかということに影響があると思いますので、その辺をこの際うかがっておきたいと思います。
  164. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの委員長の御質問は、実に私どもにとりまして重大な問題でございますので、私が一担当者としてあるいはお答えするのは適当でないかと思いますが、一応私の知っておる限りをお答え申し上げます。  私の方といたしましては、昭和三十二年以来五ヵ年計画を作りまして、そうして毎年約千億程度の新規投資を含めまして、着々と旅客、貨物全般の経営改善に努力いたしております。さらに、閑散線区等につきましては、極力これを合理化するという方法によりまして、赤字を少くするというような消極的な努力もいたしております。しかしながら、全般といたしましての鉄道の今の、なんと申しますか、交通事情における鉄道の生命と申しますか、そういったものにつきましては、やはり大きな流れというものがございます。たとえば旅客で申しますれば、定期のお客さんはどんどんふえるが、定期外のお客さんはあまりふえないといったようなこともございます。あるいは貨物につきましても、それと同じような、似たような現象がある。こういう状況は、やはり全般としての傾向としてはあると思います。また、私の方といたしましては、今までの運賃問題が、いろいろ不合理と申しますか、単に一律にベース・アップ的なやり方をしておりました。それらにつきましても、それらの間の矛盾、不合理、不均衡等の是正もしなければならないというふうに考えております。これらにつきましては、別途いずれ時を得まして、これはもう国鉄運賃全般の問題でございますので、十分国会の御審議を経た上で、鉄道の財政がいかにあるべきか、あるいは鉄道運賃の全般がいかにあるべきかということを御審議いただきます機会は、あるいは一年あるいは二年後に必ず出て参ると思います。そういった経営全般の問題及び設備の改善等につきましては、今あらゆる努力をいたしまして諸般の施策をやっている最中でございます。
  165. 中澤茂一

    中澤委員 大野政務次官就任早々に申し上げておきますが、この問題はあなたも御承知のように、当委員会でずっと論議されていた。このごろの論議で二月延びたわけです。農林大臣は、さっきの答弁を聞いていても、これは何とかしなければならぬという考えがあることは感じられるのです。そして、新政務次官として、少なくともこの問題を、どこまでも農林大臣のしりをたたいて—これは農林省が中心にならなければだめな問題なんです。相談あるのを待っているということでなくして、これは政治的にこうしようという基本方針を党並びに農林省として出していただいて、そうしてこれをどこまでも二月の間に—これはどうしても私はやはり七、八億のものを一般会計から負担さして存続させるという方法が一番よいと思うのですよ。だから、そういうことについて、あなたも一つ農林大臣を大いに補佐してこれだけはやるという御答弁を一つお伺いしたいと思います。
  166. 大野市郎

    大野政府委員 ただいまの御注意でございますが、私も昨日までは当委員会所属しておりまして、この問題に対しては非常に関心を持っておりました。従いまして、部内におりまして、この農産物の運賃の負担状況というものが非常に大きい影響力を及ぼし、価格の関係あるいは需給関係にまで影響を及ぼすほど値段がつり上ると困るということはよく了解しておりますので、当委員会におりました当時にも、農林省は何をぐずぐずしておるのかという感じは実は同様持っておりましたので、この問題に対して聞かれたら答えを出すなどというそういう態度はとらないように、大臣を督促を申し上げるつもりでおります。     —————————————
  167. 吉川久衛

    吉川委員長 ひょう害に対する質疑を続行いたします。神田大作君。
  168. 神田大作

    神田委員 先ほど総裁の答弁でございますが、いわゆる、予算がないから、少いからやれないというような、そういう消極的な答弁でありますが、     〔委員長退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕 毎年、ひょう害なり、凍霜害なり、水害なりというような災害はあるわけでありますから、私は、それを見込んで予算というものはできておるのだ、もしなければ予備金からでも何でも支出してこういう緊急事態には対処すべきだと思います。農林大臣も先ほど申した通り、普通作物に対しましては地方団体において適切なる措置をする、こう言っておりますからして、ひとり葉タバコだけが取り残されておるということであっては、これは葉タバコの産地といたしましては承服できないことでありますから、その点をはっきりと腹を据えた答弁をいただきたい、こう思います。
  169. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 農家の罹災に対してすべて見舞金とか補助金を出すべきかどうかという一般論になって参りますと、これはなかなか議論のあるところでございまして、一応罹災補償制度というものを作りまして、これで通常の災害に対する救済方法は備わっておる、こういうふうに考えておるわけであります。それ以上の災害になった場合においても、先ほど申し上げましたように、耕作組合というようなものがありまするので、それの活動と相待って、公社が場合によってこの費用の一部を補助する、こういうような制度があれば、現在の制度としては一応備わっておるのじゃないか。ただ、今度のような災害の場合において、さらに国がもっと広く一般的に補助金を出すとこういうような政策をとって参るということになれば、公社においても、たとえ予算の科目はないといたしましても科目設定をし、予算を流用する、こういう話を大蔵省に持ち込む、そういう場合において国も特別な事情に顧みて補助金支出をする、こういうような考えがあれば、公社のその要求も受け入れられるわけでありまするから、そういう国の政策とも歩調を合せつつ、一般の場合には、現在ある制度あるいは建前、こういうものによっていくほかはない、かように考えております。
  170. 神田大作

    神田委員 国が補助金を出せば公社も出せるというようなことでありますが、今大臣の答弁のごとく、地方交付金というような、そういう方法によって、これは結局は罹災者にそういう補助金が出ることになっている。これは、もし地方交付金を増額しないということになれば、これは大へんなことなんだ。たとえば一村が今度のひょう害によって全滅しておる。これは、町民税も住民税もあるいはその他固定資産税も、これは相当あがってこない。地方自治体の運営がとまってしまうのでありますからして、あるいはこれらの農民に対して町村あるいは県は相当の補助金を出しておるのでありますからして、これに見返るやはり交付金というものがないとすれば、これは大へんなことなんだ。これは当然自治庁との交渉によって—これは予算支出が足りぬと私は思う。また、そうしなければならぬ、そういう立場になっておるのでありますからして、これは、公社としては、いわゆる葉タバコというのは、契約裁培、どこへも売ってはならぬ、あるいはまたどれだけは必ず作らなくちゃならぬということで、これはどうもこういうものは途中でやめるというわけにはいかない保証されておる作物でありますから、公社としては公社独自の立場に立ってこれは育成しなければならぬと思う。そうしなければタバコ耕作者の再生産を維持していくことはできないと思うのでありますからして、そういう観点に立って、私は、独自な立場に立って専売事業としての葉タバコに対しましてもっと思いやりのある災害に対する対策を立てたらどうか、こう申しておるのであります。その点について…。
  171. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 先ほど、府県が今回のひょう害に対して特別な措置を講じた場合において自治庁の方が交付金で跡始末というか、言葉は少し悪いか知りませんが、めんどうを見るかどうかという問題でありますが、それは、特別交付金の配分において特にそういう柱を立てて、配分をその方面に厚くするという考え方であるのか、あるいは特別交付金の額自体を予算的に増額してやるのか、その辺は、非常にあいまいと申しますか、まだはっきりしていない点であります。かりに交付金の額を増額して、そうして今回の府県の支出に対する穴埋めをする、こういうような予算増額的な措置を政府がとる、こういうような事態でありますれば、公社の方といたしましては、さしあたり応急的な必要な金は耕作組合の方で出しておるのでありますからして、それをあとから補充してあげればいい。これに対しては耕作組合の交付金という予算があるのでありますから、その額から立てかえておいて、あとで埋めればいいということは、ちょうど特別交付金の増額というようなこともある意味において見合いになる、こういうわけでありますので、国の措置ともよく照し合わせて善処をいたしたいと考えております。
  172. 神田大作

    神田委員 タバコの災害補償の制度でありますが、これは、いわゆる一筆災害補償という制度ではなしに、一耕作者当りの災害補償ということになっておりますので、たとえば三ヵ所にタバコを作っておる、ニヵ所は災害にあわないが、一ヵ所が災害にあった、その場合に、片方は全滅しても片方のニヵ所の成績がよくて、いわゆる三割以上の災害にならなかったという場合には、この農家は災害補優をもらうことができないというような結果になる。それで、われわれは、これを一筆単位の災害補償にすべきである、そういうような強い要望を持っておるのでありますけれども、この点に対してはどのような考えをもっておられますか。
  173. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 罹災補償につきましては、御指摘のように現在は農家単位になっておりまするが、これを土地一筆限りに改めた方がいいかどうかという点であります。これについては公社でも検討はいたしておるのでありまするが、やはり、個々の場合で、農家単位の方が耕作者にとって有利な場合もあれば、あるいは一筆限りで査定を受けた方が有利な場合もありまして、一がいに一筆限りに直した方が耕作農民にとって有利であるとも限らないわけであります。そうしますと、大体罹災補償を認めておる趣旨ということが那辺にあるか、そこからやはり問題は考えなければならないのでありまして、農家といたしまして、罹災によりまして所得が減り、葉タバコ耕作意欲が落ちる、こういうようなことになりますと、葉タバコの生産を確保することが困難である。そこに立法の趣旨があるといたしますれば、やはり、農家としての葉タバコからの収入が全体として幾ら減ったであろうか、そしてその程度が非常にひどいということであれば、これを補償して、生産意欲をなくなさないようにしていくということがいいのではないか。また、こまかい問題になりますけれども、一筆限りというようなことになりますと、前三ヵ年の平均収納代金を算出するというようなことについてもかな、り手続がめんどうである、こういうような欠点もございまするので、現在のところは現行の方がいいのではないかというのが一応の公社の考えでございます。
  174. 神田大作

    神田委員 農家単位の補償と一筆単位の補償が、農家単位の補償の方が有利な場合があるというような総裁はお答えになっておりますが、私らの考えでは、農家単位の方が有利であるという結論は出てこない。災害にあえば、災害に対して当然災害補償というものは交付されるものであって、その個人の努力によってその災害がカバーされて災害補償金がもらえないということになりますれば、これは非常に不利な立場になるのでありますから、その議論は、私は、一筆単位の方が農家にとっては当然であるし、また公平である、農家単位であってはこれは非常に概略的であり不利益である、こういうように考えるのでありますが、その点、いかがですか。
  175. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 これは必要があれば資料として作ってお目にかけた方がいいと思うのでありますが、やはり、数筆に分れておりまして、その被害を受ける程度がばらばらである、こういうような場合において、三筆なり、四筆なりの土地に分れておって、うっすら被害を受けたという場合、それから、ある筆は収穫皆無に近い被害を受けたけれども、他の筆は全然被害を受けない、また、平均三ヵ年よりも成績がよかったというような、いろいろな組み合せが考えられますので、その組み合せというものをいろいろに想像して考えてみますと、私が先ほど申し上げましたように、必ずしも一筆限りが耕作農家にとって得とも出て参らないので、その点は、抽象的に申し上げるよりも、もし必要があれば資料として提出して御審議をお願いしてもいいと思います。
  176. 神田大作

    神田委員 全国のタバコ耕作者が、これは公社へも相当陳情が行っているだろうと思うが、今度の災害ばかりじゃなしに、そのような農家単位災害補償に対する弊害があるということを指摘しておる。これは耕作組合自体もこれに対しまして陳情しておるわけでありますから、そのような資料があれば、それはぜひいただいて、われわれの方も検討いたしましょう。しかし、私たちの今までの研究と調査の上においては、これは一筆単位の方が農家に適切な災害補償であるというような結論を私は持っておる。そういう意味合いにおいて、一つこの点についてはぜひ御検討を願いたい、こう思うのであります。いかがでございましょうか。
  177. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 たばこ耕作組合の方においてそういう御希望があるということでありますれば、組合の幹部の方と密接な連絡をとりつつありますから、よくその御意見を伺って、公社でも今後研究することにいたしたいと思います。
  178. 神田大作

    神田委員 先ほど大臣が農薬やあるいは肥料あるいは種苗に対する助成に対しましてはっきりとした答弁をしていかなかったのでありますけれども、事務当局としてはこの問題についてはどのように考えておられるか、お尋ねします。
  179. 斎藤誠

    ○斎藤説明員 今回のひょう害に伴いまして、リンゴの果樹が相当損傷したというようなことで、農薬の必要があるとか、あるいは樹勢回復用の肥料をさらに施す必要があるとか、あるいは蔬菜種子の購入費についての助成をしてもらいたいというような御希望もありましたので、われわれの方におきましても、振興局担当官も現地に出向きまして、いろいろ調査もいたしましたわけであります。現在まで調べたところによりまして、先ほどから大臣も、一般論としましては従来ひょう害だけにつきまして天災法を発動したこともないし、また格別の措置もしたことはないというふうに申し上げたのであります。実際の被害の状況についてのいろいろの融資関係以外の助成措置についても検討はいたしたのでございますけれども、結局、これらの助成措置をかりにとるといたしましても、非常に零細な助成金になるというようなことで、県庁あたりからのそういう要望について話し合いました結果におきましても、むしろ、そういうような助成よりも、大幅な融資措置ということが当面農家として最も希望するところであるというような御意見も伺っておりますので、われわれとしましては、共済金の仮払いであるとか、あるいは自作農維持資金の融通であるとか、あるいは天災法の発動であるとかいうようなことで現在のところできるだけ措置していきたい、こういうことで考えておるわけでございます。  なお、それ以外におきまして、先ほど農林大臣から話がありましたように、地方交付税のこれに伴う措置等につきましては、引き続き自治庁の方と交渉を続けていきたいということで考えておりますが、税あるいは行政上の運用でできる救済措置等につきましては、たとえば国有林の造林事業等について参画してもらうというような方法によって措置して参りたい、かように考えております。
  180. 神田大作

    神田委員 零細な補助であるというが、私は、零細な補助でなく、大幅な補助金を出すべきだと思う。ジェット機に四億五千万円もむだな金を使っておって、多くの農民が災害によって打ちひしがれておるのに、スズメの涙のような金をくれと私は言うのじゃない。これらに対して、やはり再生産を確保するために、また農民の生活を守ってやるために、こういうときこそ農林省当局がやはり大幅な補助金を支出するように努力すべきである。ところが、当局自体がそういうことに対してさじを投げておるようなことでは、どうにもならぬ話だと思う。あなたたちはやはり農民立場に立って考えなければならぬのでありますが、その点について私は再考を促しておきたいと思うが、いかがですか。
  181. 斎藤誠

    ○斎藤説明員 お話の点はごもっともな点でございまして、われわれも災害に対しましては常にそういうつもりで対処して参っておるつもりでございますが、やはり、従来の凍霜害の例とか、いろいろそういう場合における基準もございますので、そういった場合を今回の場合に当てはめて検討いたすというのも、やはりわれわれとしては一つの判断の基準にならざるを得ないわけであります。そういうことで、現在の措置としましては、先ほど申し上げましたような措置で、大体各県とのお話し合いの上では御了解願えるのではないか、かように考えております。
  182. 神田大作

    神田委員 その点については、われわれはあくまでも大幅な補助金をこの甚大な深刻な災害を受けた農家に対しまして交付すべきであるということを強く要求いたします。同時に、その資金の問題でありますけれども、特に果樹栽培農家は、この前も指摘いたしました通り、一年だけの災害じゃなく、この樹勢回復のために二年あるいは三年、ひどくやられたところは五年、この果樹回復のためにはかかる。そういうときに、天災融資法に基いても三年の償還年限であるということでは、とうてい不可能なことでありますので、この点についてはどのような考慮を払っておられるか、お尋ねします。
  183. 斎藤誠

    ○斎藤説明員 その点は、先般の凍霜害の例、あるいはその以外の災害におきます場合につきましても、たびたび当委員会におきまして御質疑があったところでございますが、特別に果樹の方は金額もたくさんにするというようなことで、融資限度を通常の場合よりも三万円もふやすというようなことも考えまして、通常の場合は償還期限も二年であるのを、特に一年延ばして三年ということにいたしておるわけでございます。大体これまでの相当ひどい災害の場合におきましてもほぼ三年で従来やっておりまして、特別の支障がないという状況でありましたので、われわれは一応今回も三年ということにいたしたわけでございます。
  184. 神田大作

    神田委員 これは三年で特別の障害がない、こう言われるが、とんでもない話です。農家経営などというものは、とても二年や三年で回復すべきものじゃない。商行為と違うのでありまして、一年かからなければできない作物、しかも災害によっては三年も四年も回復ができない果樹園に対しましては、そのような安易な考えではとうてい救済することができない。必ずここに資金の延期の問題が起きると思う。ですから、この点について一つ検討をいたしてもらいたい、こういうふうに考えるのでありますが、御回答願います。
  185. 斎藤誠

    ○斎藤説明員 この期間につきましては、法律上は最長五年以内ということになっておりますので、災害の実情におきましては、われわれももちろん検討いたしてみたいと思いますけれども、今回の場合におきましても、おそらく、そういうような農家につきましては、相当ひどい被害を受け、かつまた農業経営上も相当支障を来たすような農家の場合もあろうかと思います。そういうことも考えまして、当委員会におきましてこの降ひょう災害に対する決議がありました翌日、さっそく各県に対しまして、自作農維持資金の融通をもあわせて今回の災害対策にとってもらうことという措置を講じたわけであります。かような被害農家に対しましては、自作農資金でありますと、二十万円、かつ五年据え置きの二十年ということになっておりますので、そういう措置等もあわせて、実際がどうであるかということも検討してみる必要があるかと思います。
  186. 神田大作

    神田委員 どうも、この融資償還年限については、法律の最高限度の五年まで、これは一つ考慮してもらいたい。特に今回の災害は深度が非常にひどいのでありまして、一年や二年で回復するはずがないのでありますから、この点は皆さんも十分認識しておると思いますからして、法律の許す範囲内において最高限度これを活用してもらいたい、こういうように考えます。この点再度御答弁願います。
  187. 斎藤誠

    ○斎藤説明員 ただいま申し上げましたように、検討は、もちろん災害の実情に合うようにいたさねばならぬのは当然でありますので、検討してみたいと思いますけれども、ただ、一般論ということでなしに、今具体的の群馬県の被害激甚地におきまして自作農資金も融通を受けるというような農家も相当あると思います。  そういうような資金操作等も考えて見た上において、なおかつ三年ではとうてい償還ができないかどうか。自作農資金をかみ合せて、そこは融通を受けるというような方法もあり得ると思います。従いまして、われわれは一般論として言っておるのでありまして、その災害の実情に応じたようなこともあわせて検討させていただきたいと思います。
  188. 神田大作

    神田委員 天災融資法に基く特別指定地というのが指定されることができるのでありますけれども、今度のひょう害によりましては、夏作であるから、いわゆる一年の農家収入の半分に達しないというような、そういう見方をする向きもあるようでありますが、しかしながら、果樹あるいは蔬菜地帯等、特殊地帯におきましては、これは一年の総収入の半数以上になると思うのでありますが、この点について特別指定地を設置する考えがあるかどうか、お尋ねします。
  189. 斎藤誠

    ○斎藤説明員 特別被害農業者あるいはその地域指定につきましては、一般的には今回の被害は米を前にした裏作の被害というのが大部ではないかと思います。特に麦等につきましてはそうじゃないかと思います。しかし、今お話しになりましたように、果樹専業地域というようなところにつきましては、これは表、裏ということのない主作でありますので、相当の被害激甚地もあろうかと思います。従いまして、われわれといたしましては、もちろん、この法律にもありますように、さっそく各県に照会し、調査をいたしまして、そういう地域につきましては指定をいたすということにいたしいたと考えております。
  190. 神田大作

    神田委員 総裁にお尋ねしますが、われわれが災害地を視察いたしまして、あるいはまたたくさんの人たちが災害地に参りまして、いろいろと被害者にお見舞を申し上げるのでありますけれども、私は、こういう言葉をよく聞く。みんな見てくれるのは来て見てくれるけれども、一体何をしてくれる、何もしてくれないじゃないか、ただあの不十分な災害補償があるだけだ、しかもそれは、収納をいたしましてから、前三ヵ年平均の、しかも二分の一の災害補償であって、こういうような薄い対策ではわれわれはとうてい納得しない、かえって来てくれない方がいいというような声を、われわれは往々にして聞くのでありますが、そのように、タバコ耕作者というものは、災害にあうたびに、非常な公社に対しまして一つの何といいますか親心を求めておるにもかかわらず、それらの親心がいつでも発揮されておらないということに対しまして大きな不満を持っておるようであります。これは、先ほどのいわゆる病虫害あるいは種苗あるいは樹勢回復その他のいろいろな施策に対して、今まで公社は何ら手を打っておらないことに対する不満であると思うのでありますが、この点に対して、実情をよく御調査の上、ぜひこれらの耕作者に対しまして適切なる手を打ってもらいたい、それがいわゆるタバコ産地の育成になることであり、また一つには専売事業として当然公社が負うべき責務である、こういように私は考えておるわけですが、この点に対しまして、総裁はどのようにお考えになっておりますか。
  191. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 被害のありました直後におきまして、公社の技術者なりあるいは耕作指導員が現地に臨みまして被害の応急措置について指導を行ったということは、先ほども申し上げた通りであります。ただ、その際に、手みやげと申しますか、あるいは見舞金というようなものがすぐに持っていければ、その点非常に工合がいいと思いまするが、公社というような形態をとっており、それから、一応予算制度がある現状においては、なかなか思う通りに参らないわけであります。しかも、被害農民の方は被害にぼう然としておる。天を恨み人を恨むというような、ついそういう気持にもなるものですから、現物の伴わない耕作の事後指導方法なんかについては、どうしても、手ぬるい、親心がない、こういう恨みごとが出るのもある程度やむを得ない、その心持はわからないわけではないと思います。将来そういう一般災害に対して公社でどういう措置をとったらいいか、それから、羅災補償の制度につきましても、現在の制度で十分であるか、ことに農業災害保険との関係においていずれが有利かということについても議論がございますが、こういう点については今後公社でも検討を進めて参りたいと思っております。
  192. 神田大作

    神田委員 政務次官にお尋ねしますが、政務次官も私と一緒にあの激甚な災害を視察されまして現状はよくわかっておるわけでありますが、現在のひょう害に対する対策というものは、金を貸してやるだけだ、こういうことだけに終るようなうらみが多いようでありますけれども、私は、こういうことだけではあのような激甚地の農家を救済することはとうていできないと思うのであります。これに対しまして、補助金の問題、あるいは税金の問題、あるいは地方交付税の問題その他公共事業の実施の問題、こういう問題について、あなたは実地に災害地をごらんになって切実にお考えになっているだろうと思いますからして、これらの災害地に対しまして、あたたかい思いやりをどのような具体的な有効な手段によってこれを実施していただくか、あなたの考えを一つ御披瀝願いたいと思います。
  193. 大野市郎

    大野政府委員 ただいまの神田委員の御質問でございますが、災害地の実情は御一緒に参りましてつぶさに見て参りましたので、たとえば果樹園の災害につきましては、現地を見ない農林省内部の役人では同情の程度が違うんじゃないかと思います。ただ、その問題としましては、先ほど官房長から話のありましたように、長い五年の法律の許す融資金の限度もありますので、そういう問題で、三年などと区切らないで、広く幅をとるようにいたさねばならぬと私は思っております。ただ、具体的にその災害復旧の施策に対してどれとどれをどう実行するかということにっしては、就任わずか一日でございますので、相談を受けておりませんが、しかし、私、当時は団長として参りました手前もございますから、これは天災法の適用があすの閣議できまるところまでは運びましたので、誠心誠意現場の喜んでくれますような措置をいたすことを、机上の空論でなく、現実に推進をいたしたいと思うのでございますから、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  194. 神田大作

    神田委員 総裁にお尋ねしますが、これは災害とは違いますけれども、総裁がこの前この委員会においでにならなかったときに生産部長お尋ねしたのでありますが、これは責任者でありませんから確たる答弁は得られませんでしたが、やはり、葉タバコ耕作者にとりまして一番関心を持ちまた強い要求を持っておるのは収納価格の問題でございます。これは午前中米価に対しましてわれわれも大臣にいろいろと質問申し上げたのでありますけれども、今日、生産費並びに所得補償方式によって生産農家の所得を守ってやろうというような、こういう観点に立って検討されておるのでありますが、収納代金の決定に当りましてはどのような考えをもってこのタバコ耕作者の再生産を守り所得を補償する考えでおられるか、この点をお尋ね申し上げます。
  195. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 葉タバコの収納価格の方式は、たばこ専売法の規定するところでありまして、生産費一つ要素になっておりますけれども、他の物価、経済事情、需給関係その他も考慮しまして、なお、たばこ耕作者に適正な利潤を与えると、こういうような書き方をいたしてあります。そういう法律のもとに昨年も収納価格の審議をいたしたのでありますが、一応パリティ方式によりまして、さらに米、麦、繭、甘藷等との調整方法を考え、それから需給関係、それから輸出なんかも込めまして、そういういろいろな経済事情を調査の上決定いたしたのであります。今回米につきましては生産費を補償するというような方式に切かえられつつあるように伺っておりまするが、各種農産物はそれぞれの農産物の置かれた立場によってやはり価格というものにきまって参る、かように考えます。米のような国民の主食品であり、農家の耕作の中心をなしておる、こういうような場合と、たばこのような嗜好品という場合と同じ方式がいいかどうかということについても、まだ結論を得ておりません。それから、葉タバコの収納価格のようなものは、あまり年によって価格算定方式が違いまして大幅な変動をすることも、これはタバコ耕作安定の面から言って考えなければならないことであります。今年の収納価格を決定いたしまするのは、今年の十二月初めごろだと思うのでありまして、それまでの間に期間がありますから検討はいたしまするけれども、必ずしも、米と同じ方式によった方がいい、こういう結論にはまだ達しておりません。
  196. 神田大作

    神田委員 この問題は、時日もまだあるようでありますから、一つ決定前に、当委員会も農産物価格に対しまして大きな関心を持っておるのでありますから、資料提出をお願いしたい。同時に、私は、いわゆる十年前の物価を基準としたようなそういうパリティ方式がもうすでにいろいろの意味において不適格である、こういうようにわれわれは考える。特にタバコ価格が去年は〇・四六%値下げをされた。ほかのいろいろの農産物価格が上っておるにもかかわらず、タバコの収納価格が引き下げられておるというような、そういうことに対しまして農民は大きな不満を持つのでありますからして、この点について、われわれも後刻慎重に検討してみたいと思うのであります。タバコがだいぶ最近余っておるので、減反を指示し、一方においては価格の引下げをする、他方においては専売益金の増額をやっておるというような、そういう一連の、耕作者に不利益になる、国家の徴税機関化しておるような、こういう公社のやり方に対しまして大きく反省をしてもらいたいと思うのであります。この問題は後刻検討したいと思います。  資料提出だけ本日はお願いいたしまして、本日の質問を終りたいと思います。
  197. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員長代理 明三日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会をそれぞれ開会することにして、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十二分散会