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横山委員 私は、先般の
委員会で、
政府側に御検討をお願いしておきました中小企業
金融につきまして、根本的な改善並びに具体的な改善、それぞれ私の
意見を含めて、この際
政府にただしたいと思うわけであります。多少根本論に触れますので、時間がかかります。承われば大臣はその間御用事があるということでありますが、前段の根本論が終りますまでは、ぜひ大臣の御在席をお願いしたいと思うのであります。
まず、現状についてでありますが、中小企業
金融というものは常に新しい問題でありまして、景気がよかろうと悪かろうと、いつもわれわれの話題となり、われわれの問題になります。この現状を
一つ制度の面からながめてみますと、先般、私は、この中小企業
金融というものは、言うならば戦国的
状況にあるというふうに断定をいたしました。
たとえば、
一つ一つの弊害をとってみますと、相互銀行に関して言うならば、相互掛金業務による弊害というものは、中小企業が一体幾ら借りているのか、幾らの利息であるのか、さっぱりわからない。従って、中小企業
金融の果すべき経営に対する役割というものが行われていない。いわんや相互銀行はこのごろは預金業務の方が大宗を占めておる。相互銀行の本来の任務というものは変りつつある。この点は銀行大会において
佐藤大蔵大臣みずから指摘になったところであります。
信用金庫はどうだろうか。信用金庫は今共同組織の観念は稀薄になってしまった、本来の信用金庫の組合
精神というものは影が薄れておる、こういうふうに断じたら誤まりだろうか。またそういうふうにいわれておる。人から組織に移るべきだと信用金庫ではいわれているが、その近代化は杳として進まない。
信用組合はどうであろうか。信用組合は
政府の監督下にない。これは県の監督下にあるのでありますから、県政のいかんに左右されて、勝手にこれができ上ったり、政治的に利用されたりしてしまっておる。信用金庫と信用組合との業務の調整は一体どうなっておるのか。これが、先般の中間答申においても、ついに
政府としてはこれに対して解決を与えることなく、じんぜん日を空しうしておる。
不動産銀行はどうであろうか。本
委員会において不動産銀行について
審議をいたしましたときの立法の
精神からいうならば、今日の不動産銀行の
金融状態は言語道断である。たしか平均六百万円から七百万円の貨し出しをしておる。これを称してわれわれが本
委員会で立案をした中小企業
金融といえるであろうかどうか。コストが高過ぎるということで、まとまったところに貸すのに狂奔して、中小企業
金融の本来の仕事をしていない。
信用保証協会はどうであろうか。信用保証協会は、保証しなくてもいいところにどんどん保証して、保証しなければならぬところに保証をしていない。こういうふうに断定したら、どういう反論があるであろうか。私はそう断定してはばからないのであります。信用保証協会というものが、ボーダー・ラインの辺ないしはその下の人に保証をして、初めて本来の効果があるのにかかわらず、信用保証協会発足まぎわにして健全な経営ということに中心が置かれるの余り、保証しなくてもいいところに保証しておる。事もあろうに国民
金融公庫や中小企業
金融公庫に対して保証協会が保証するということは、一体いかなる立場にあろうとも論理的に認められないにかかわらず、これが正々堂々と行われるということに対して、
政府は何ら発言していない。またとめようとしていない。
商工中金はどうであろうか。これまた、妙な言い方でありますが、組合で借りたら九分六厘で、個人で商工中金の金を借りたら九分三厘である。組合を通じて借りたら高くて、個人で借りたら安いということは、一体論理的に許されるであろうか。今日の商工中金についても数々の問題がまだある。
中小企業
金融公庫はどうであろうか。これは直貸しを始めたのは多とすべきでありますが、直貸しを申し込んだら、三カ月も四カ月も、ひどいのは五カ月もかかる。これが
政府の行なっている
金融であろうか。
金融というものは一体どういうものであろうか。少くとも、大銀行が大会社に対する
金融ならいざ知らず、中小企業
金融について三カ月、五カ月もかかるというばかげたことで、これが
政府機関の
金融、しかも中小企業の
金融といえるであろうか。
国民
金融公庫はどうであろうか。国民
金融公庫は、申し込みの平均は六十万といわれておるのでありますが、しかしながら、実際借り出しておるのは、
全国平均でたしか二十三万、
都市平均で二十七万であります。しかも、この潜在的な国民
金融公庫の要望を勘定したならば、これは全く九牛の一毛でしかない。
このように、今日の中小企業
金融の実態を
考えてみますと、一体
政府は中小企業
金融の機構について何を
考えておるのか、疑
わしい限りであると私は思う。
しからば、
金融の行われている実態はどうであろうか。これも、早い話が、景気の一番上昇した場合、景気の一番下降した場合の特徴点をつかまえてみるとよろしい。かつて、私は、前任者池田勇人大臣のときに、大蔵
委員会相こぞって、神武以来の不景気になったときに、約三百五十億の資金投入を、国民
金融公庫、中小企業
金融公庫あるいは商工中金に投入したことがある。われわれは、少くとも与野党こぞって大臣と相談して三百五十億にしたのであるから、ある程度選挙区に帰って多少は話はできるものと確信を持っておった。ところが、いざふたをあけてみると、一体どういう結果が起ったであろうか。中小企業向け融資の増減
状況は、三十一年度が五千五百六十二億、それに対して三十二年度は二千九百四十三億、驚くべき激減をもたらし、
全国銀行が大企業向けに貸し出したものと対比いたしますと、三十一年度が六千六百二億、三十二年度に至っては七千七百七十億を大銀行は大企業向けに貸しておる。どんなにわれわれが中小企業
金融に、商工中金に、国民
金融公庫に、相互銀行に行って目先の資金量を投下いたしましても、結果というものはこういう結果にしかならないということは、根本的に資金の調整について
考えるべきところがありはしないか、こういうことが
考えられる。一体なぜこういうような結果が起るのであろうか。
政府が、ないしは私
どもが対策をするに当って、中小企業
金融の特質というものを正確に把握しておるであろうかどうかということを、私
どもはこの際
考えなければならぬと思う。
そこで、中小企業
金融の主体的条件と申しますか、それらを銀行側なりあるいは中小企業側に立って
考えますと、貸付や割引の手数は大小にかかわらずみんな一緒だから、小口の貸付が多くなれば、口数がどうしてもふえる。人件費ないしはその他の費用がかかるばかりである。融資に当っては信用調査をしなければならぬので、調査料が高くなる。保証や保険をつけなければならぬ。回収不能の場合に、大企業に比べたら延滞や貸し倒れの率が非常に多い。担保物件の処分も、大企業の担保と違ってスムーズにはいかぬ。客観的条件は、大企業に比べて収益率が少く、自己資本が少くて、借り入れ依存が多くて、金繰りに追われておる。預金歩どまりも起る。大企業のように系列融資もできない。送金を通ずる為替銀行も少い。また銀行は従業員預金にはあまり多く期待できない。こんなことは今に始まったことではない。中小企業
金融の本来的なものなんです。しかし、この本来的なものということもわれわれ承知しながら、今日中小企業
金融をしなければならぬということは、中小企業
金融対策というものは、目先のものでなくて、根本的なものがなければ解決にはならぬ、というふうに私
どもは
考えるわけです。
以上、
金融機関の現状と、それからその中小企業
金融に流れる金の行きどころと、中小企業
金融の実態というものを
考えますときに、私は、少くとも
政府が今日中小企業
金融対策としておることは、これはもう根本的な立場、根本的なものの
考えというものがなく、そのときそのときに追われておるというふうにしか私の目には映らないのです。この聞こういう点を一、二披瀝して、この際
政府が中小企業
金融の根本的な対策を次会の
委員会に
説明をしてほしい、また私が提案をする具体的な点について
説明をしてほしい、
意見を言ってほしい、こういうふうに申しました。そこで、きょうは、その根本的な問題と具体的な二点に分けて、
政府の意向をただしたいと思う。
まず、根本的な対策ということで
政府の
意見を
伺いたいのは、
一つは、昔と違って、銀行というのはつぶれないという自信を持っておるということです。どんなに悪いことをしても、どんなにまずいことがあっても、
政府はひそかに怒るけれ
ども、おれのところはつぶせぬ、銀行は連帯観念があってつぶれない、預金者保護という天下の錦の御旗があってつぶれないという、うぬぼれと自信が銀行に横溢しておる。少くとも中小企業が銀行に行って金を借りるということとは、恩恵的に金を借りるのでなくて、やはり商取引であるのに、頭をぺこぺこ下げて借りていくというのが今日の状態である。その秘密性、つぶれないというようなうぬぼれ、そのものの
考え方を変えさせる
方法はないであろうか。これが、抽象的ではありますけれ
ども、
一つの根本的な問題であります。
それから、第二番目には、先般も、政務次官が大蔵
委員でありました当時、相互銀行を土台にして鋭く
銀行局長に迫まられたことがありましたが、あの相互銀行が悪い、ここが悪い、ここをこうしろといったところで、これは百年河清を待つような気がするわけであります。少くとも、この際、この中小企業
金融のモデルというか、そういうものを中小企業の前にとっくりと据えて、これを見なさい、これを見て他に当りなさい。というふうに、モデルを見せる必要がありはしないか。これは、さしあたり今の問題としては、国民
金融公庫、中小企業
金融公庫が言い得られるのでありますが、本来そういう役割をしていない。この際それらを飛躍的に改革強化して、そうして、今の補完機構というものから、指導機構、中心機構、中小企業
金融の王座に据えていくという
考え方はできないものであろうか。こういう中小企業
金融のモデルをしっかりと根をはやさして、これを競争させるという
考え方が第二点であります。
第三番目は、ちょっと先ほ
ども申しましたけれ
ども、相互銀行なり、あるいは信用金庫なり、そのほかの諸
金融機関、中小企業
金融公庫だって、国民
金融公庫だってそうでありますが、発足当時のその設立のときの
考え方、
国会がこれを設立し、
政府がこれを設立したときの
考え方と現状とは、明らかに違っておるということであります。変貌をしておる。その変貌をしておる姿をもう一度正しく把握する必要がないか。だれが
考えても、この銀行は、この機関はこういうふうに進めなければならぬのだときまっておるならばきまっておるらしく、道筋を明らかにしたならばどうだろうか。情勢の変化に応じた
法律改正をなさる必要はないか。
第四番目に、日銀法の改正が
議論されています。私は日銀法にだけ限定をするつもりはありませんが、現行法にいたしましても、何にいたしましても、私
どもがよく言いますように、資金の流れを総合的にとらえる。
政府資金、民間資金、全部を総合的にとらえて、そしてその総合的にとらえた中から中小企業
金融に流れる道筋をはっきりさし、どのくらい流していくかということをつかまえる総合的にやる
方法はないものか。
大きく言いますと、私は根本的な問題としてこの四点を主張したいわけです。その具体案についてはさらに
議論が幾らもあるわけでありますが、さしあたりすぐに具体案を出してもいかがかと思いますから、以上の点を含めて、中小企業
金融についての
政府の根本的なものの
考え方並びに改善案をこの際承わりたいのです。