○早立
参考人 私は
全国石炭鉱業労働組合の中央執
行委員の早立であります。私は本日、今日の
日本の
石炭産業の
不況がわれわれ
炭鉱労働者の生活にどのようにしわ寄せをされてきておるかという点について、いささか申し述べて、続いて私
ども全
炭鉱が今日の
炭鉱危機を打開して、
長期的安定化の方向を確立するためにどうすべきであるかという点について、考えておる点を若干申し述べてみたいと思います。
先ほど来述べられておりますように、今日
日本の
炭鉱はかつてない
不況に逢着をいたしておるわけでありますが、その結果
労働者の労働条件、生活の面に数々のしわ寄せをなされてきておるのであります。まず第一番に休山、廃山による離職者関係についてながめてみますと、
石炭局の指定
炭鉱統計に基いてみましても、
昭和三十三年度中に休山、廃山した
炭鉱の数は全国で整備
事業団の買い上げ
炭鉱の三十五
炭鉱を含めて百六十五
炭鉱に上っておるのであります。その中で新しく再開したところの
炭鉱の八十四鉱を相殺いたしましても、結局年度間に八十一
炭鉱が減少をしておるわけであります。従ってまたこれに伴って
炭鉱労働者は、実働労務者数についてみますと、昨年中に
大手炭鉱においては約二千人、
中小炭鉱においては約一万三千人、合計して約一万五千人が減少をしてきておるのであります。これらを今日の失業保険の受給状態から見ますと、本年四月の失業保険受給者の実
人員についてみますと、
炭鉱の場合には実に一万八千七百九十一人となっておるのであります。これは全国の失業保険受給者の実
人員の中では約五%程度であるかもしれませんけれ
ども、それぞれ
炭鉱の所在する地区における比率を見ますと、大体その地区の
失業者の失業保険受給者の五〇%ないし六〇%を
炭鉱における
失業者が占めておるという状態になっておるわけであります。
さらに賃金の不払い状況についてながめてみますと、
炭鉱の場合には最近一、二年間ずっと全
産業中で賃金の不払い金額並びにその発生件数等が最高位を占めてきておるわけでありますが、特に昨年九月以降は不払い金額がずっと毎月一億円以上を数えて参りまして、本年の二月には不払い金額が一億三千七百万円、その発生件数は
事業場数にしてみまして百十二件、またその対象
労働者は一万九百三十八人となっておるのであります。しかもこれが五月、六月にかけて特に
中小炭鉱関係においては非常に資金繰りが逼迫しておる傾向がありますので、この賃金不払いの発生件数も最近においては急激に増大しておることが考えられるのであります。
そのほか先ほど炭労の
古賀さんからも申し上げられましたように、大手、中小を問わず幾つかの
炭鉱においては、今日の
不況の中においてそれぞれ
企業整備が打ち出され、実施をされ、それによるところの
人員整理を含んだところのいろいろな問題を生じてきておるわけでありますが、特にその中から賃金面について取り上げてみますと、最近
炭鉱労働者の基準外の賃金が非常に削減されてきておる傾向があるわけであります。これは
不況に伴うところの
生産制限等から
生産費が高騰をしておる、従ってそういう面について極力経費を節約しようとするところの
経営者の意図と、さらにまた実際に
生産制限によって作業量が減ってきておる、従って残業をする必要がないという状態が、ある職場においては出てきておる、そういうような
要素の中かち、今日超過労働を含むところの基準外の賃金が削減されてきまして、そういう問題を含めて
炭鉱労働者の月収は、つい最近賃金引き上げを行なったにかかわらず、手取り月収が減退してくるというような傾向を生じてきておるのであります。しかもこのことも今日まだ五月、六月分等の数字については明確に集約がなされておりませんけれ
ども、各
炭鉱において起きておりますところの諸現象から考えますならば、これが五月、六月、七月にかけて非常にその傾向が強くなってきておるということが考えられるのであります。
もう一点、私は
炭鉱の期末手当の問題について申し上げたいと思うのですが、今日夏期の期末手当については各
産業において、すでにいち早く妥結をしてそれぞれ収得をしておる状態だと考えます。しかるにかかわらず私
ども炭鉱労働者の場合には、今日やっと要求書を提出して、これから交渉をして何とか期末手当を獲得したいという段階にあるわけであります。ところが今日自由
労働者の期末手当等については年々
向上を示して参りまして、これを東京都の自由
労働者の今年度の夏期手当についてみれば、いろいろなものを一切含めて大体一人平均三千円か四千円程度になっておると考えられます。しかるにかかわらず
炭鉱の、特に
中小炭鉱の場合にはこれよりもはるかに下回るわずかに一千円あるいは二千円という酒肴料程度の期末手当しか支給できないような
炭鉱が
中小炭鉱の中に少からずあるということであります。私
どもはそういう事実に対して心から残念に悲しく感じておる次第であります。ところで、そういう
石炭不況が、しからば何によって生じてきたかという問題でありますが、この点について現象的に見ますならば、すなわち経済活動の沈滞や豊水によるところの
石炭需要消費の減少あるいは
輸入エネルギーとの競合、あるいはまた
貯炭の増大と出炭制限、さらにまた高
炭価というような問題が重要な要因としてあげられてくると思います。しかしながらその根源について探ってみますならば、何といっても
政府の
石炭政策に対する貧困、さらに
経営者の営利主義によるところの行き詰まり、また新
エネルギーの出現というような問題につき当ってくると思うのであります。そうして結局
エネルギーの
消費構造の変革に対応してよい
石炭を安く、豊富に、安定的に供給するというところの
石炭産業発展の根本的な条件を実現するという
考え方に
石炭関係者が徹して、必要な努力を払ってくるということがなされてこなかったということが言えると思うのであります。従って私
どもは今日の
石炭産業の
不況を打開して将来にわたって
長期的な安定と発展の方向を確立するためには、まず何といっても、この
石炭産業発展の根本条件であるところのよい
石炭を安く、豊富に、そして安定的に供給するという
考え方に、
政府関係者も含めたところの
石炭関係者全体がそういう
考え方に徹して、その上に立って次のような諸方策を実行に移すべきであろうと考えるのであります。
その第一は、当然のことでありますが、
政府においては
長期経済
計画の中において総合
エネルギー政策を樹立して、その完全遂行について責任態勢をしくべきであろうと考えるのであります。すでに過般
政府において策定をいたしました
昭和五十年七千二百万トンという
石炭の
長期生産計画は、
昭和五十年度における総合
エネルギーの総量を
石炭換算して二億六千万トンというふうに計算をしまして、その中における国内炭の供給量を七千二百万トン程度に引き上げるという
考え方のもとに策定されたと思うのであります。しかしながらその
計画の中においてもすでに
昭和五十年度における総
エネルギーの中における国内炭の地位はきわめて低く、むしろこれは重油を初めとするところの
輸入エネルギーの、総
エネルギー中において占める比率は、その約五〇%になっておったと思うのであります。そういう中で立てられたところの
長期計画でありましたが、それすらも今日すでに実施第一年度において大きく
計画にそごを来たしておるという点は申し上げるまでもないと思うのであります。
さらにまた必要なことは、今日すでに策定されたそういう
長期生産計画の遂行に当って、
政府並びに業者は
計画を立てただけの話であって、その遂行に当って
政府みずからが責任ある態勢をしくということがなされてこなかったと思うのであります。たとえば三十三年度において非常に
計画そごを来たし、その結果いろいろの問題を呼び起した際に、これに対する必要なる保護
政策、必要なる調整策等が
政府において当然なされなければならなかったと思うのであります。そういう点がなかったところに問題があると思うのでありまして、私
どもは今回そのような点についてのいろいろな反省を含めた中から、新たな角度から総合
エネルギー政策を樹立して、その
政策の遂行に当っては
政府が責任ある態勢をしくべきであろうということを考えるのであります。同時にまたその
政策の樹立に当っては、先ほど申し上げましたように将来に対してみましても、総
エネルギーの
需要の拡大に対して国内炭の地位というものは比較的低い状態にあるわけでありますから、努めて岡内炭の地位を高めていくという方向をとらるべきであると考えるのであります。同時にそのためには重油を初めとする
輸入エネルギーに対しては、国内資源を活用するという建前の中かろ
輸入エネルギーを極力規制していって、国内炭の
生産を拡大し、
需要を拡大し、国内炭の総
エネルギー中に占める地位を高めていくべきであろうと考えるのであります。さらにそういう
長期総合
エネルギー政策の中において、
石炭政策についての
長期的な
計画を確立するということは、今日の
炭鉱労働者の精神面に大きな影響を及ぼしてくると思うのであります。今日
石炭問題については各方正面についていろいろと問題が取り上げられて参りまして、しかもその中において
石炭の前途に対して非常に悲観的な論調が強く流れてきているのであります。その結果今日
炭鉱で働く
労働者は、
炭鉱の将来について非常に暗い感じに襲われてきて、沈滞した気分に襲われてきていることを否定できないと思うのでありますが、そういう際に
政府において責任ある総合
エネルギー政策——その中における
石炭の
長期生産需給政策というものが確立されていきますならば、そういう
炭鉱労働者の暗い気持を一掃して、
生産性の
向上に向って努力をしていくという気分転換を求める上に、大いに役に立つのではないかとも考えられるのであります。
次に第二番目に
石炭産業の近代化を進めるという問題でありますが、これは今申し上げた総合
エネルギー政策との関連において、
中小炭鉱、
大手炭鉱を含めた総入目的
計画的な近代化の推進の
計画画が立てられ、推進されていかなければならないと考えます。特にこの近代化の推進に当っては、単に
石炭の
生産面についてだけの問題ではなくして
流通面についても、たとえば
山元発電の超高圧送電とか、あるいは先ほど来も
意見が出ましたが、山元の
完全ガス化とパイプ輸送というような問題を含めた
流通面にわたっても近代化を推進する必要があろうと思います。同時にまたこの推進に当って先ほど炭労の
古賀さんからも申し上げられましたように、鉱業法の改正という問題を含めて今日の鉱区の開放、調整、さらにまた新たなる鉱業権付与についての基準の引き上げというような問題についても、当然検討されていかなければならないと思います。同時に私
どもが申し上げたいことは、この
炭鉱近代化の推進に当って、
労働者に犠牲をしいるようなことがないように配慮されていかなければならないと思うのであります。そう申し上げましても実際にはやはり近代化の推進に当って老衰
炭鉱が消されていくという問題が出てくるわけでありまして、おのずからそこにやむを得ない
失業者が出て来ざるを得ないと考えるのであります。従ってそういう面については
政府の責任のもとに、適切なる
失業者の
雇用政策を確立していただきたいと考えます。その一つの例として合日職業安定法に基いて
職業訓練が法制化されておりますけれ
ども、これは期間として一年間でありますし、そういう一年間という
長期間の訓練を受けることは、
炭鉱労働者の場合にはなかなかむずかしい
要素もありますし、実際的には今日この職業安定法に基くところの
職業訓練機関において、
炭鉱労働者が実際に
職業転換についての技術の講習を受けるというようなことがなかなかしがたいような実情にあるわけであります。また実際に現在この訓練機関に通っておる者の姿を見ても、
炭鉱労働者ではなくして、これは新しく新制中学等を出た者が多くここに来ているというような実情にあろうと思う。従って私
どもは
炭鉱労働者の必然的に出てくるところの
失業者に対する
雇用対策については、今日あるような安定法に基くところの法制化された
職業訓練法ではなくて、それとは別個に、
炭鉱労働者に対する独自の
職業訓練機関を設置すべきであろうと考えるのであります。とりあえずその問題については、比較的
炭鉱老衰化の傾向の強い福岡県の筑豊地区、あるいは福島、茨城両県における常磐地区等において直ちに総合的な
職業訓練機関を設けて、場合によってはこれに参加する者に
政府において生活援助の手を差し伸べつつ、新たな
職業転換の方法を講じるというようにしていただきたいと思うわけであります。先ほどどなたかの
意見にも出ましたが、
失業者に対する
雇用政策として、地域における
公共事業を起すということ、新たな
産業を誘致するというような問題があげられておりますけれ
ども、そういうことと同時に、そういう新たな
産業に
炭鉱労働者が転換できるような用意をしていく、そういうような方法を講じていくということが必要であろうと思うのです。そのことがいわゆる
炭鉱についての独自な
職業訓練機関設置という問題であろうと考えるのであります。
次に、第三番目には、
石炭産業における
産業民主主義を確立して、
炭鉱の社会化を漸進的に進めていくという問題であります。これは
炭鉱における労使が、それぞれ従来のあり方について検討を加え、あるいはまた反省すべき点については反省をした中から労使の民主的な協力態勢というものをしいて、それを土台にした上に立っての
産業民主主義を確立して、それを通じて初めて
炭鉱における課題である
生産性の
向上ということの実現も期せられていくと思うのであります。同時にまた、そういうこととともに、
石炭産業の今日の
経営のあり方を漸次協同化をしていって、さらにまた、それに対する
政府関係の監督と指導権というものを漸次強化をしていって、そういうことを通じて社会化の方向に漸進的に進んでいく必要があろうと考えるのであります。
以上申し上げました三点は、
石炭産業の
長期的な発展のための、安定のための基本的な問題であろうと思いますけれ
ども、それとともに、私
どもは今日の
炭鉱の危機を直ちに打開をしていくための応急的な
措置として、次のような三、四点を考えておるわけであります。
その第一は、何といっても
政府の管掌、
政府の責任のもとにおいて
石炭需給調節の機構を確立するという問題であります。今日、
石炭業界においては大手十八社によって新
昭和石炭が設立されて、百万トンの
貯炭買い上げが
目標とされておるようでございますけれ
ども、今日の
貯炭の実情から見れば百万トン程度の買い上げは、全く焼け石に水であって、どうしてもあと二百万トンないし三百万トンの
貯炭に対して何らかの
措置を講じなければならないと考えるのであります。そういう面について、ある場合には
政府の資金によってその
貯炭を買い上げる、さらにまた、電力と
石炭との協同
貯炭等について、
政府の適切なる指導のもとにこれを推進するようにしていただきたいと思うのであります。
電力関係については、三十三年度については
計画の一千三百万トンをはるかに割って、
石炭の場合は年間九百三、四十万トン程度であったと思うのでありますが、結局このことは、言い直してみるならば、昨年の豊水によって電力関係においては年間三百五十万トン、金額にして約百五十億ないし百八十億円程度燃料費が節約されたということが言えると思います。その反面において、
石炭産業はそのことによって今日非常なる窮地に陥っているということになるわけであります。そういう点も十分御勘案の上、
政府において適切なる御指導をなされるならば、電力と
石炭におけるところの
長期的な
需給の調節機関の設立というものは、さほど困難な問題ではないと考えるのであります。
次に、第二番目に重油の規制という問題でありますが、今日、
重油ボイラー規制法の廃止という声が、各方面においてかなり強く出て参ってきておると思うのであります。しかしながら、私
どもは、やはり国内資源を活用して、国の外貨の
負担を軽減するという基本的な立場を貫いて、その立場のもとに、この重油
消費規制法については、いましばらく、存続をしてもらいたいと考えるのであります。同時にまた、今日この法律があるにもかかわらず、
石炭使用分野がかなり重油に食われてきておるという現状から考えるならば、より以上、重油の輸入と
消費の規制を行なっていかなければならないと考えます。特に、電力関係において重油の混焼率が問題となるのでありますが、
昭和三十一年ごろまでは
火力発電所における重油の混焼率はたしか一一%程度であったと考えるのであります。それが今日では実質的には二五%から三〇%近くになっておるのではないかと想像されます。すなわち、昨年度においては
火力発電における重油の混焼率は
計画に対して一七%といわれておりましたけれ
ども、これは千三百万トンの
計画に対してであって、実際には豊水のために燃料の
消費が減少し、その減少した部分がすべて
石炭にかぶせられてきたという点から考えるならば、実際の使用面においては一七%ではなくして二五ないし三〇%に混焼率が高まってきておるということがいえると思うのであります。そういう面について、電力関係においても十分、もう少し問題を理解していただき、さらに
政府の指導のもとに、こういう面についての規制を強化して、
石炭の増納という方法をとられる必要があろうと考えるのであります。
第三番目に、
需要の拡大、開拓を行うという問題でありますが、そのためには、すでにいろいろ
政府関係においても取り上げておりますところの
石炭の協同販売機構の確立、そういうものを通じての
消費者単価の値下げ、あるいはまた各
炭鉱におけるところの労使の民主的な協力を通じての
生産性の
向上という問題を通じて、単価の
引き下げをはかる。そういうような
石炭関係におけるもろもろの努力を続けるとともに、そういうことを通じて
石炭の
需要分野というものを、どんどん拡大していくようにしなければならないと思います。同時にまた、新たな
石炭の利用分野を作るために、
石炭化学研究所の創設というような問題も当然必要となってくるわけであります。
さらに、最後に、
炭鉱における離職者に対する
雇用対策の問題ですが、これは先ほ
ども申し上げましたように、各
石炭所在地域におけるところの
公共事業あるいは新たな
産業の誘発ということを行うと同時に、これに対して対応できるような形に、
炭鉱労働者の
職業転換のための必要なる機関を設置するという問題であります。こういうことを直ちに実施をしていくことによって、今後やむを得ず起るところの
炭鉱の
失業者を新しい
職業に転換させるようにしなければならないと思います。今日、
石炭工業整備
事業団あるいは
中小炭鉱業者の一部においては非能率
炭鉱を二百万トンないし四百万トンさらに買い上げを増大すべきであるというような傾向があると承わっておるのでありますが、私
どもは、今日まで
石炭鉱業整備事業団の非能率
炭鉱の買い上げという問題が、
日本の
炭鉱の能率の引き上げというようなものを通じて非常に貢献してきているという事実は、すなおに認めるものであります。しかしながら、必要なことは、非常に劣悪な条件にあり、低能率にあるところの
炭鉱労働者といえ
ども、今日そこにおいて働かなければ行き場所がない状態にあるという問題であります。従ってこういう面について
雇用対策の万全を期するということが、まず買い上げに当っての
前提条件でなければならないと考えるのであります。先般の百万トン買い上げ、この増大に伴った
合理化法の改正に当っては、私
ども炭鉱労働組合側からは買い上げ額の増大については、まず
雇用対策について
政府が責任ある
対策を講ずるべきであるということを条件にして提出いたしました。しかしながら、これらについてはわずかに移動資金、平均賃金の一カ月分の限度でこれを支給するというようなことでもってごまかされてしまったわけであります。私
どもは、そういうような問題ではなくして、もっと根本的に
職業の転換をはかり、
失業者の
雇用をはかるという面について誠意をもって努力をしていただきたいと考えるわけであります。
以上申し上げたような
意見については、別にことさら新らしい
考え方ではなくて、すでに
石炭関係の各方面においていろいろな形で取り上げられてきている
考え方であろうと思うのであります。ただそういうようなすでに各方面で取り上げられたところのこの
考え方、この
意見が今日実行されておらないというところに問題があろうと思うのであります。私
どもは昨年募れ以来、今日の
石炭危機を打開するために、
炭鉱経営者の団体と労働組合との間で、
炭鉱危機突破のための労使協議会を設置いたしました。そうしてこの中において
不況から生じる
労働面についてはそれぞれ合理的にこれを解決するための話し合いというものを続けて参りました。同時にまた危機を打開するための
政策的な問題についていろいろと
経営者団体に
意見を提出し、その実行を求めて参ってきたわけであります。しかしながら今日振り返ってみると、前者のいわゆる個々の
企業における労働関係の問題については、この労使協議会の話し合いによってかなり円滑に、合理的に処理されたところの一面があるのでありますけれ
ども、事危機打開のための
政策的な問題の実行の面については、われわれがいかにこれを主張しても、今日の
石炭業者のひより見的な、非常に利己的な態度から、今日までこれが取り上げられず、実行されなかったという点を非常に残念に感じておる次第であります。従って私
どもはこういう点についての
経営者の反省と、さらにまた
政府の指導と監督というような問題を通じて、一つ今まで申し上げたような
意見を実行に移し、そのことを通じて
石炭産業の危機を打開し、早期安定の方向を確立して参りたいと存ずる次第であります。以上です。