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1959-09-21 第32回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十四年九月二十一日(月曜日)
委員長
の指 名で、次の
通り小委員
及び小
委員長
を選任した。
閉会
中
審査小委員
大石
武一
君 大坪 保雄君
大橋
武夫
君
亀山
孝一
君 齋藤
邦吉
君
田中
正巳
君
田邉
國男
君 中山 マサ君
永山
忠則
君
八田
貞義
君 藤本 捨助君
古川
丈吉
君
柳谷清三郎
君
山下
春江
君 亘 四郎君
伊藤よし子
君
大原
亨君 岡本 隆一君
小林
進君
五島
虎雄
君 多
賀谷真稔
君
滝井
義高
君 堤
ツルヨ
君
中村
英男
君
八木
一男君
閉会
中
審査小委員長
永山
忠則
君
——
——
——
——
—————————————
昭和
三十四年九月二十一日(月曜日) 午前十一時三十三分
開議
出席委員
委員長
永山
忠則
君
理事
大石
武一
君
理事
田中
正巳
君
理事
八田
貞義
君
理事
小林
進君
理事
五島
虎雄
君
理事
滝井
義高
君
赤澤
正道
君
大橋
武夫
君
鍛冶
良作
君
亀山
孝一
君
椎熊
三郎
君
田邉
國男
君
古川
丈吉
君
山下
春江
君
伊藤よし子
君
池田
禎治
君
大原
亨君 多
賀谷真稔
君 堤
ツルヨ
君
中村
英男
君
出席国務大臣
労 働 大 臣
松野
頼三君
委員外
の
出席者
人事院事務官
(
職員局職員課
長) 村上 達雄君
大蔵事務官
(
主計官
) 岩尾 一君 厚 生 技 官 (
公衆衛生局保
健所課長
) 田波 幸雄君
通商産業事務官
(
石炭局長
) 樋詰
誠明君
労働事務官
(
労政局長
)
亀井
光君
労働基準監督官
(
労働基準局
長) 堀 秀夫君
労働事務官
(
婦人少年局
長) 谷野 せつ君
労働事務官
(
職業安定局
長) 百田 正弘君
日本国有鉄道常
務理事
吾孫子
豐君
日本国有鉄道参
与 (
自動車局長
) 高倉 一雄君 専 門 員 川井
章知
君
—————————————
八月十二日
委員池田清志
君
辞任
につき、その
補欠
として大
倉三郎
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員大倉三郎
君
辞任
につき、その
補欠
として池
田清志
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 九月十一日
委員田邉國男
君
辞任
につき、その
補欠
として加
藤常太郎
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員加藤常太郎
君
辞任
につき、その
補欠
として
田邉國男
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月二十一日
委員倉石忠雄
君、
藏内修治
君、
重政誠之
君及び
河野正
君
辞任
につき、その
補欠
として
赤澤正道
君、
鍛冶良作
君、
椎熊三郎
君及び
池田禎治
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員赤澤正道
君、
鍛冶良作
君、
椎熊三郎
君及び
池田禎治
君
辞任
につき、その
補欠
として
倉石忠
雄君、
藏内修治
君、
重政誠之
君及び
河野正
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
閉会
中
審査小委員会設置
並びに小
委員
及び小委
員長選任
に関する件
労働関係
の
基本施策
に関する件
——
——
◇—
——
——
永山忠則
1
○
永山
委員長
これより
会議
を開きます。
労働関係
の
基本施策
に関する件について
調査
を進めます。
発言
の通告がありますので、これを許します。
小林進
君。
小林進
2
○
小林
(進)
委員
ここ数年どうも
労働省
の
労働行政
が、
労働省設置法
第一条にうたわれております
労働者
に対する
サービス機関
としての趣旨を逸脱いたしまして、むしろ
労働者
を
圧迫
する警察的な
立場
をおとりになっているのではないかというような感じをわれわれはしばしば受けるのでありますが、ともかく
労働盾
が
反動化
されつつあることだけは、もう
世間一般周知
の事実であります。そういうような
労働本省
の
反動化
といいますか、右寄りの形が全般的に普及いたしましたその結果は、
全国各地
において
労働
諸
法規違反
の
行為
がたくさん起きておるのでございまして、私はその
一つ
の例としてまことに黙過することのできない
事例
を持っておりますので、その例をここで
一つ
申し上げまして、
労働大臣
並びに
関係局長
のこれに対する明確な御
判断
をお聞きしておきたいと思うのであります。 その
事例
と申し上げますのは、東京都千代田区有楽町一丁目十三番地に本社を持っております
電気化学工業株式会社
の
青海電化工場
に起っております
不当労働行為
についてお伺いいたしたいのであります。
新潟
県の
青海
町というところに
工場
がございまして、約四千名の
工員
を有する
会社
でございまして、
セメント
、
石灰窒素等
を主たる製品とする
会社
でございます。その
会社
において、
労働組合
と
会社
が
一体
になって
労働者
に不当な
労働行為
を行なっておる。あるいは
町政
の壟断をし、
独占禁止法
に
違反
するような疑わしい
行為
をも行い、
労働者
の信条の自由、
基本権
の自由、
政治活動
の自由も
会社
と
労働組合
が
一体
になって奪っておる。
会社
の利益のために町の
政治
までもその
会社
が支配をいたしておりまして、
自治権
の自由をも剥奪しておる。特に
選挙
の
干渉
、それから
勤労課等
が
労働者
を一々呼び出しまして、
選挙運動
あるいは
選挙干渉
を露骨に行なっておるという事実、あるいはまた
会社
の
社宅係等
が
労働組合員
の
私的生活
までも
監視
をしたり、尾行しておる、こういう事実が露骨に行われており、
工員相互
、
組合員相互
の
密告等
の制度も
会社
によって招来をせられて、まことに
徳川時代
を思わせるような
暗黒政治
でありまするが、これが今日
松野労働大臣
の
労働行政
のもとにわが
日本
で今日現在行われておるという事実でございまして、こういう問題の
発生
を申し上げますると、少し話がくどくなりまするけれども、問題を正しく理解していただくために、その
事件
の
発生
を申し上げたいと思うのであります。 終戦後長い間にわたってこの
工場
において行われておりましたこういうような事実がそもそも今日明らかになった問題の
発生
は、この
青海
の町に
昭和
三十三年、昨年以来
明星セメント株式会社
が
新設
さるるために
工場
の
敷地
を物色した、こういうことから始まっておるのでございまして、この
青海
町は石灰石が無尽蔵にあるのでございますが、
青海電化
と
明星セメント会社
の間に
用地
の
買収
をめぐり見苦しい
争い
が昨年来生じて参りました。これについて、大
青海
町を建設するためにはどしどし
新設
の
工場
を誘致した方がよろしいではないか、
明星セメント会社
もこれは設立さした方がよろしいという派と、やはり
青海電化
だけを守って、他の
工場
の進出を妨害すべきであるという派が
二つ
に分れたのでありまして、
農地委員会
はもちろんでございまするが、この
青海
町並びに近郷に住んでおりまする者は、
親戚
、縁者、骨肉の間にも二派に分れて相争うというふうな
状態
が起きてきたのであります。その
状態
の中にあって、
青海電化
の
労働組合
は昨年の五月二十八日に
大会
を持ちまして、
大会
で
企業防衛
、
生活権擁護
という名のもとに、ここで全く
労使一体
となりまして、
明星会社
の設立に
反対
をするという
決議
を行いました。そして
活動
を開始いたしたのでございます。それに至るまでの
青海電化
の
労働組合
の
訴え
は、これはもちろんもう
労働省
でもお調べになっておりますから、
内容
はよく御存じのはずと思いまするけれども、
職場
内においては
労働組合
に
発言
の自由もない、尾行や
監視
が
日常茶飯事
のように行われている、こういう
会社
の実態であります。これはもうお知りでございましょうから、私は詳しく説明することは避けますが、そういうふうな中にいよいよ
大会
の
決議
が行われたのでございます。やがて数カ月を
経過
いたしまして、昨年の十二月ごろでございますが、所在不明の
電化従業員革新同盟
と称する
名義付
の
ビラ
が
工場
内にばらまかれた。これは
組合
の
大会
の決定を誹謗しているような文章で貫かれた
ビラ
でございます。そこで労組の
中央委員会
で
調査委員会
というものが
設置
をされました。越えて三十四年の三月十日
——従業員
の疑心暗鬼がますますどうも強くなって
会社
が暗くなって参りました。そうでございましょう。
大会
を誹謗するような所在不明の
ビラ
がまかれていよいよ
職場
の中が暗くなったのでございます。そこで今申し上げました三十四年三月十日に
職場
を明るくする会というものが少数の
労働組合員
によって作られたのであります。その
職場
を明るくする会というのは、
明星
問題や
選挙
には全然
関係
しないということを確認しながら、ただ
職場
を明るくするということを目的に設けられた。そういたしますと、四月十八日に
労働組合
の
中央委員会
が設けられて、
調査委員会
の
報告
に基いて翌十九日
懲罰委員会
にこの
職場
を明るくする会の
組合員
を付しまして、翌四月二十日に
中央委員会
は挙手の採決で、
統制違反者
として
職場
を明るくする会に
関係
をいたしました幹部を
権利停止
一年ないしは半年間の
処分
に付したのでございます。ちょうどこの四月の二十日は
県会議員
の
選挙
が行われている最中でごさいましたし、続いて
町会議員
の
選挙
が行われました。この
青海電化
からも
町会議員
や
町長
に多数立候補いたしておりまするので、
選挙
の最中ではあり、これはこのままにしておったのでありますが、ようやく
選挙
も済みました六月の三日に、今度は
会社側
の方で、
職場
を明るくする会は
明星派
、すなわち
明星セメント派
の策謀に踊らされたものであり、これに乗ぜられたものであって、これは
会社
の
経営方針
に反するものであるとして抜き打ち的に
懲戒処分
を発表いたしたのでございます。ここにまず
一つ
お伺いしたい問題があるのでございます。その結果、
懲戒
、
解雇
になった者が一名であります。それから
出勤停止
十日間加える
減給
十分の一が二名で、この
減給
一割は無期限でございます。次に
減給
一割が四名、これは一カ月であります。計七名の
処分
が
会社側
によって発表せられたのであります。以上の
処分
につきまして、六名の者は
懲戒処分無効確認
の
訴え
を提起し、
新潟地方裁判所
において目下係争中でございます。しかるにこれに対して
組合
は、今度は越えて八月の四日、こういう
裁判
で争うがごときは改悛の情なき者とみなさなければならないとして、右の六名を
除名
にしてしまったのであります。すなわち
組合規約
四十九条、五十条
違反
、こういうことなのだそうでございまして、これを
除名
にしてしまった。そういたしますと、今度は
会社
は
組合
に呼吸を合せまして、
会社
と
組合
との
労働協約
第十条、
会社側
は
組合
から
除名
された者を
解雇
する、ただし
会社
が不当と認めた者はこの限りではない云々のこういう
協約
に基いて、
懲戒者
六名を八月の八日付をもって
解雇
してしまったのであります。ここで
解雇
を受けた者は
権利保全
の仮
処分
の
訴え
を起している。これが現在までの事実の真相でございますが、われわれがこの問題を
調査
していきますうちにいろいろの
不当弾圧
の、不正な事実のあることをわれわれは明らかにすることができたのであります。 第一番目に、
会社
と
労働組合
の
役員
が
一つ
になって、全く
労働組合法
に
違反
する
行為
のない者を
処分
している、こういう事実をまず明らかにいたしました。
会社
は、最初は
会社
の
経営方針
に
違反
をするという
理由
でこれを
懲戒
に処したのでありますが、次にはこれをあらためて
ユニオン
・
ショップ
を建前にして
処分
をしておるのでありますが、この
処分
の仕方に
一貫性
がないのであります。こういうことを
労働省
は
一体
どういうふうにお
考え
になっているか。ともかくこの
会社側
の
懲戒
には、具体的にどんな
行為
をしたからそれがいわゆる
解雇
に値するというふうなことが少しも書いてない。そこで、ここは
糸魚川
の
労働基準監督署
の管轄になっておりますので、
労働者側
はその
監督署
に
訴え
て出た。ところが
基準署
でも具体的な
理由
がわからないので、何度も
会社
に
問い合せ
をしている。
一体
何でこれを首にしたのかという
問い合せ
をしておるのでありますが、ここは私よくわかりませんけれども、大体いつもなら何か即日署長から、
解雇
に値するという
認定書
の出されるのが通例のようでございますが、これは
皆さん方
の方が専門でございますから、お聞きしたいのでございますが、そういうふうになっているのだそうでございます。ところがこの
事件
に関する限りは十日以上もたつが
認定
がおりない。
会社
から出た
申請書
が宙に浮いている。そうしてこんな
政治的含み
のあるものはどうも
糸魚川
の
監督署
でもって処置できないということで
新潟
の
基準局
にこの問題が送付せられておるということでございます。この問題も私は
基準局長
にお伺いしたいと思うのでありますが、こういうことについて、
一体
こんな事実があるかどうか。われわれの情報では、どうも
基準局
では認可をされなかったので、
会社
の方ではまた
方針
を変えて、今度は
解雇手当
を出して
処分
をした、こういうようなことを聞いております。なおこの町は
町会議員
が二十六名おりますけれども、この二十六名の
過半数
の十四名が
会社
の
部長
、
課長クラス
が占めている。
町長
もまたこの
青海電化
から出ているということでございます。このために
選挙
の
投票
は、全部じゃありませんが、怪しげだと思うやつはみんな
組合員
に
署名捺印
までもさして
投票
せしめているということでありますが、
一体
こういう事実があるかないか。なおしかしこういうことが
一体
許されることかどうか、お伺いしたいのでございます。他の
候補者
がそこに
演説
に行きますと、聞かせない。そういうようなことは
一体
会社
として許さるべきかどうか。これはもうわが党の
候補者
はみんな経験していることでございまして、聞かせないのであります。立ちどまって
演説
なんか聞いていると、これは処罰に値する
行為
だということで、聞かせない。これは決して
社会党
だけじゃない、
自民党
も同じでございます。
自民党
、
社会党とも
に、
会社側
の推薦せざる
候補者
の
演説
を聞くことは相ならぬということで聞かせない。どうもこういうことが公然と行われていることを、
労働省
は今まで
——
だんだんお伺いいたしますけれども、まさかお知りにならないということは私はないと思うのでございますが、私があまり自説を言っているようでは悪いから、ここに私は資料を一部持っております。時間もありませんので簡単に一、二の
事例
を申し上げてお伺いいたします。
一つ
は
選挙運動
に関する
事例
であります。これは、
青海工場
の
電気工作係
をしておる
小川金明
さんという人の
公述書
でございます。これによりますと「
工場
の
部課長級
から
町議会議員
の
候補予定者
を十四名を立て、
議員
の
過半数
をとって
明星セメント反対
を一切に押し切ろうと
選挙運動
に狂奔し
従業員
は勿論
家族票
まで調べて
投票
を強要し甚だしきものは
捺印
までとるという
有様
である。
上役
からは白眼視され周囲からは常に警戒されているということは実に不愉快なことである。然し
自分
の
生活
のことを
考え
れば、反抗も出来ず本日まで我慢してきた。
自分
は
会社
には絶対に協力するのだといっても信用せず、最近ではいよいよその度を増し
同僚
が「君が若し本当に
電化
に協力するならば
投票
を棄権し
入場券
を持って来い、それによって君が協力したかどうかはっきりする」とまで言うようになった。」こういうようなことで、これは
選挙干渉
の
一つ
の
事例
でございます。 中には、
当局側
の
圧迫
で
気違い
になったという
事例
がございます。これを
一つ
簡単に申し上げますると、元
青海電化工員
の
八木ユキエ
さんという二十一才の御
婦人
が気が狂っちまった。大へんなことであります。「
昭和
三十三年三月
電気化学工業株式会社青海工場
第二
工場用地
として
土地
を提供しました。その時の
条件
として同年七月、四女
ユキエ
が同
工場工員
に採用されました。
昭和
三十三年六月
明星セメント株式会社
の
工場敷地
として、
土地
の
売買契約
をしました。
電化
の
従業員
の
小野清一郎
、
山崎健太郎
、
八木正義
、
八木良雅
、元
電化従業員
で
親戚
の
水沼徹等
が代々連日連夜来宅し「
電化
の
従業員
でありながら、
明星
に
土地
を売ったのは怪しからぬ、
明星
との
契約
を破り
電化
と
契約
せよ」と迫られました。そのために仕事も出来ず夜もねむれない
有様
でした。「
電化
に勤めていながら協力しなければためにならないぞ」とか「
会社
を首になるぞ」とかおどかされ、
ユキエ
は気が狂ってしまいました。家の者にも誰にも物も言わず、室に閉じこもって外に出ず医者に見て貰うよう色々すすめても一言もしゃべらず聞き入れません。」「三十三年十月末
会社
から
解雇
されました。今では少し落ちついたようですが、又重くなっては困るので親類の人も近ずかないことにしています。」これは
気違い
になってしまった。 それからこれは
政党役員
になったので
圧迫
されたという
事例
であります。同じく
青海工場
の
経理課
の
松沢衛
という人でございますが、これは
自民党
の支部の
青年部長
になったので
圧迫
を受けた
事例
でございます。これは長いのでありますけれども、こういうことも書いてある。「町内に五百名にのぼるといわれる
監視員
が配置され、まるでソ連のゲー・ぺー・ウー的な組織が完備されているのです。たまたま昨春以来
自民党青年部
の
結成
に努力し、時あたかも
衆議院議員
の
選挙等
もあり、これを機会に準備を進めて参りましたが、前述の通り
明星
問題が出てからこの件は、
工場誘致賛成派
の差金で動いているものだ、と云うような
見方
をされるようになりました。」「
青年部結成
の問題が
電化社
の
上層部
に知れると早速、
池田勤労係長
は私を
勤労
二階
応接室
へ呼ばり「
自民党青年部
の
結成
の
運動
は、反
電化的行為
であり
工場誘致賛成派
である。君も来年は昇格する順番になっているので
会社
に忠誠を尽くさないと、君の
立場
が不利になるから君の
立場
を悪くしないように、こちらでお
膳立
をするから
会社
に協力してもらいたい」
等目
の前に餌をぶらさげられて協力方要請された」こういうことを言っておるのでございます。 なお次は、今度は細君の教職を剥奪をするという脅迫が行われているのでございまして、これは
工員
の
八木
四之吉という人でございますが、これに対して
会社側
はこういうことを言っている。「それは君一人だけならよいが
奥さん
が学校へ勤めていることだし、今
勤務評定
というものもある。
奥さん
の方へもひびいて行って
勤務評定
に引掛けられて首になる様な事があれば大変だから
奥さん
の事も
考え
てやってもらいたい。それからまた別に行をあらためて、「それは
電化
が今の
青海
の
教育委員会並
に町制をぎうじっているから簡単に
考え
ているが」いつでも首を切ろうと思えば首を切ることもできるのだということを
考え
ておかなければだめだ、こういうようなことも言われておるのでございます。 なお次の
事例
といたしましては、
社宅
内における
封書収集
の件、これは同じ
敷地
の中に
工員
の
社宅
がございますが、その
社宅
へ参ります
個人あて
の
封書
を集めてやる。中に何が書いてあるのかな、開いてみなさいなどということを言われている。これは一々御説明申し上げると時間がありませんが、こういう
事例
もございますし、なおこういう
状態
でございますから、
役員立候補
に対する
干渉
などというものは
日常茶飯事
のように行われている。これは
昭和
三十四年の五月十一日でございますが、高尾という
係長
が
伊藤
君という
工員
に、「
伊藤
君
中央委員
に出るな、何も言わずに」、
伊藤
が「何ゆえですか」と聞くと、「君が出れば
職場
が暗くなる」こういうようなことで、
みな役
につくことを
当局側
はやめさしたりしておるのでございます。 なお次の
事例
といたしましては、妻への
迫害
というのがございまして、これは
青海
町
大字須沢
の
松沢ミツエ
という方です。この方は
昭和
二十年の四月
電気化学工業株式会社青海工場
の
工員
として入社し、
庶務課
の
タイプ係
として勤務いたしました。
タイプ
三級の資格があります。それが「
昭和
三十三年十月、
夫松沢衛
が
自民党青海
町
青年部長
に就任し、その党が
工場誘致賛成派
だということで、
会社
の
上役
から
迫害
を受けるようになりました。ついに
昭和
三十四年一月十九日に
中村係長
から講堂と第三
会議室
の
掃除
を命ぜられました。昨年十月以来
同僚
からは
村八分
にされ、今また
掃除婦
にまで落され、くやし涙にくれました。がまんし切れず、二十日から欠勤しました。」こういうわけであります。
タイプ係
をやめさせられまして、とうとう
掃除婦
にまで転落をして、
同僚
から話もされない、
村八分
にされてしまった。こういうことが行われておるのでございます。これが
自民党
の
青年部長
になったからということです。こういう例をあげていると枚挙にいとまがございませんが、これが
現実
に今行われているという状況でございますが、
大臣
並びに
労政局長
、
基準局長
のそれぞれのお
考え
をお伺いいたしたいと存じます。
松野頼三
3
○
松野国務大臣
明星セメント
と
電気化学
の問題は、長い間
敷地買収
問題をめぐりまして相当深刻な
両者
の
争い
がございました。一部のものは
経済事案
でございますので、公取で、不
公正取引
ではないか、あるいは不公正な
競争
ではないかという疑いで、たしかこれは
電気化学
及び
明星セメント両者
から
関係
の
事例
をすでに聴取しておる段階だと私は承知しております。
内容
はやはり今日の
セメント業界
における
過当競争
という意味で、一部は
工場誘致
を
反対
する、一部は当然必要だというわけで
工場新設
をする。
敷地
の
内容
を見ましても、まことにぶちのような
敷地買収
が今日行われておると私は承知しております。これは
見方
は経済的問題でございますので、
労働大臣
として是非を議論するわけには参りません。なお
小林委員
のおっしゃった大部分のものは
選挙
の問題のように
考え
ます。これは当然
選挙法
の問題というのが一応外面的の問題になりましょう。ただ
労働省
として関与いたしますことは、
職務
を利用して不当な
差別待遇
をする、あるいは
職務
を利用して
職務
以外の
命令権限
を行使する、その結果その
待遇
及び
労働条件
を差別するという場合には、これは
労働法
によりまして
労働大臣
の
所管
になるわけであります。ただいまいろいろな
事例
をおっしゃいましたけれども、その一点だけは
労働省
として関与しなければならぬ問題だと私は
考え
ております。 なおもう
一つ
、ただいまの六人の方は、ただいま
裁判
中のようでありますから、
裁判
の結論が出なければ、具体的な
事例
を私はとやかく言うわけには参りません。従って
現実
にこの問題の詳細なことはまだ私は
報告
を受けておりません。ただいま
小林委員
の非常に明細な
報告
で非常に傾聴すべきことだと思いましたが、
現実
には私は受けておりませんので、
所管
の
局長
からその問題についてお答えいたさせます。
亀井光
4
○
亀井説明員
青海電化
の
工場
の
労使関係
を主体としますいろいろな問題につきまして、私らも地元の
新潟
県から
報告
が参っております。
小林先生
の言われましたいろいろな
事例
、
政治
的ないろいろな問題とかあるいは
職場
における職制の
圧迫
とかいろいろな
事件
につきましては、実は具体的な
報告
は受けておりません。ただ
事件
の
経過
、
処分
問題、こういうものを中心としました
経過
につきましては
報告
を受けております。問題は
組合内部
の
統制違反
であるかどうかという問題が
一つ
大きな問題であります。それとまた
会社
が
ユニオン
・
ショップ条項
をもってそれを
解雇
した、この
二つ
が
労使関係
としては大きな問題になるのじゃないか。具体的には今
大臣
から御答弁申し上げましたように、
裁判
所の問題になっておりますので、私らからそれに対する具体的な
判断
を申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように思います。
組合
のいろいろな
手続
を見ますと、合法的な
手続
をもちまして
除名
あるいは
権利停止
というような処置がとられたようでございます。また
会社
としましては、
労働協約
の第十条に基きます
ユニオン
・
ショップ条項
というものをもってその
除名
されました者を
解雇
しておるというふうな事実だけをとってみますと、一応その筋としましては合法的なものではないか、ただ問題が具体的な事実の
判断
になりますと、これは
裁判
所で目下
判断
をされておることで、それ以上のことは差し控えさせていただきます。
堀秀夫
5
○堀説明員 ただいま御質問のありました件のうち、基準法二十条
関係
の
解雇
問題につきましては、
労働基準監督署
において所掌しておる問題でございますので、私からお答え申し上げます。 この
青海電化
の山岸利春という警備員に対します
懲戒
解雇
の
認定
申請は六月に
糸魚川
の
労働基準監督署
に提出されて参りました。この二十条というのは、先生御承知のように、使用者が
労働者
を
解雇
しようとする場合においては三十日前に予告をしなければならない。それから予告をしないで即時
解雇
する場合においては三十日分の賃金を支払わなければならないという条文でございます。ただし天災地変等の場合、それから
労働者
の責めに帰すべき事由があるような場合において
監督署
の
認定
を受けた場合にはこの限りでない、こういうことになっておるのでございます。そこでこの二十条の即時
解雇
をやってよいかどうか、この
認定
につきましては、われわれ
労働
基準監督機関といたしましては、大体
解雇
する場合においては原則的には一月前に予告するか、一月分の賃金を払うというのが原則でありまして、これに反して即時
解雇
を行うというような場合には、
労働者
を一日もその
職場
に置いておくことができないというような客観的
理由
がなければ認めない、こういう
方針
で今日まできております。そこでこの六月に出て参りました
解雇
の
認定
の中には、いろいろ規律を乱したとか、上長の指揮を聞かなかったとか、その他いろいろなことがありましたが、その事実が必ずしも具体的に書いてなかったわけでございます。従いまして、
申請書
は出て参ったのでありますが、
監督署
ではもう少し具体的な事実をほしい、こういうことで
調査
をしておったわけでございます。そのうちに八月六日になりまして、
会社側
からこの除外
認定
の申請は取り下げる、こういう通告がございました。それと同時に除外
認定
の申請は取り下げて、八月までの賃金、休業手当は支払う。それから同時に一月分の
解雇
予告手当は支払うということで、これは供託をしたということの連絡がございました。従いまして、われわれの方からいたしますると、基準法二十条の問題に関する限り取り下げがありまして、八月六日に、それまでの賃金、休業手当、それから
解雇
予告手当、これらが供託されて
解雇
があったということに承知しておりますので、基準法の二十条の問題ではない、このように
考え
ている次第でございます。
小林進
6
○
小林
(進)
委員
私はまず
大臣
にお伺いいたしたいということは、今も申し上げましたように、そういう公取に
違反
するかどうか疑わしい
工場
——
私は
明星セメント
と
関係
ありませんけれども、そういう誘地の問題や
土地
買収
の問題に経営者が
労働組合
を利用して、そうしてどうもそういう
反対
運動
にせき立たせることが、これはいわゆる
職務
以外の仕事を強要している
行為
であります。これは私は
不当労働行為
ではないかというふうに解釈をするのでありまするけれども、この点をどのように解釈されるか。 いま
一つ
は、やはり
労働組合
が
会社
と
一体
となって、それは何とかいうスローガンを掲げて、
企業防衛
、
生活権擁護
というような、これはスローガンとしては
労働組合
の持ちそうなスローガンでありますけれども、
会社
と
一体
となって、
会社
の利益を擁護するという、こういう
組合
運動
は、
一体
組合
として正しいのかどうか。それは
労働者
が自由の意思に基いて
会社
の企業を守ることもいいでしょうけれども、
労働組合
としては、私は何か別の名前で、別の目的ならよろしいでしょうけれども、
組合
というものはやはり労使相対決していくところに、私は
組合
の本来の意味があると思うのですが、こういう問題は
一体
どうか、
一つ
解釈をお伺いしたいと思います。 それからいま
一つ
は、これは
大臣
にもお伺いしたいのでありますけれども、私ども一生懸命で研究中でありますから、決してきょうこれで私は下るわけじゃございません。われわれはもっとこの問題は大きく取り上げて、戦いの第一弾を放ったにすぎないのでありますから、
一つ
われわれもまだ研究が足りませんからなんでありますが、これは
糸魚川
の、そういう下部、末端の公務員、行政官を誹謗するようで悪いのでありますが、真意はそこにあるのじゃありませんから、誤解のないように願いたいのですけれども、あまり
青海電化
の中の監督を十分におやりにならない。これは私が直接聞いたのではありませんけれども、これはいろいろな問題があります。これはどこへ視察
調査
に行っても、どうも職員が足りないので
会社
の監督を十分にできないということは、どこへ実情
調査
に行っても言われるところであります。手がなくて行けなかったのだろうと思いますけれども、何しろ大きな
工場
にはそういう不当な
労働行為
があると私どもは
考え
ませんので、ついどうも手抜きをいたしましたというようなことを話をしておられたということを言われた。ところがこの
青海電化
には、実際われわれの知っている範囲でも、けがをして働き得ないようなものが、百三十数件の事故を起している。手をけがしたり足をけがしたりしたけれども、
会社
がやはり無傷で、けがでもないというと
労働省
の何というか、表彰だかをもらえるということで休みの者も出てこい出てこいということを言われる。
会社
の体裁を作るためにそういう足をけがしたり、手をけがしたりした者がみんな無理に
会社
へ出勤しているというのです。こういうなまなましい事実が幾つもある。そういうことを、これは私が直接
調査
に行ったのじゃない。今月の終りに
一つ
拝見に参りますけれども、われわれの仲間がそういうことを聞いている。そういうわけで、まさかそんなひどいことが行われているとは思いませんでしたけれども、何しろ大
工場
ですから、
労働
管理が十分いっていると思って、つい手抜きをしたという言いわけがあったということですが、そういう真相が
一体
あったのか、お知りになっておるのか、以上大体お伺いいたします。
松野頼三
7
○
松野国務大臣
労働組合法
及び
労働関係
法の趣旨といたしまして、常に使用者と対決をしろ、一緒になってはいけないということではなく、
組合
は使用者と対等の地位に立つ、これが
労働組合法
の趣旨だと
考え
ております。一緒になってはいけないとか争わなければいけないという問題ではなしに、ともに
日本
経済の発展に寄与するという目的については労使ともに一致しなければならないという一致の場面もあります。従って今回の問題も、その
事例
にとらわれるわけではありませんが、私がかねてから拝聴しておりますことは、
電気化学
の
青海工場
の
従業員
というものはほとんどその
青海工場
の近くにおられるか、または所有地を、個人の財産をお持ちの方です。その個人の財産を、一方
明星セメント
は個々に
買収
の承諾を得るというわけで、個人の財産をめぐって両社の間で
買収
及び被
買収
という問題が起っているということであります。ただそれが
組合
運動
として行われているかどうかということとは別個の問題である。個人財産を売ることに賛成するかしないかということが、両
会社
間の農地
買収
の問題についての今日の問題点であります。これをいかなる方法で阻止するか、これをいかなる方法で抱き込むか、これは両社ともに非常に大きな長い
争い
でありまして、片一方がいいとか片一方が悪いということではなしに、そういう
争い
が非常に激化しているという意味で、結局
会社
の身分を拘束する、いわば向うへ売ればお前を首切るぞという話もございましょうし、逆にお前がこれを売ってくれればおれの方に雇うぞという問題も、両々あると私は聞いております。 従ってこれは個人の財産という問題は別として、
争い
が非常に激しいものだと思いますが、
労働組合
としてこれを取り上げるか取り上げないかということは
労働協約
には特に明記してないように私は聞いております。あとは
組合員
の自主的な問題あるいは
組合員相互
の問題あるいは
会社
の社員という
立場
で、
会社
の利害をどの程度まで拘束するかという問題に帰するのではないか。その点の
認定
がなかなかむずかしい問題でありますから、どういう言葉を吐いたか、どういう
圧迫
を加えたか、あるいは
労働組合
に対してどういう
干渉
をしたかというその
事例
できまるのではないか。従って、いろいろな証拠物件が私のところに来ておりませんのでわかりませんが、それは
裁判
所で判定される、各種の証人を呼び、資料を読み、証拠を調べながらどういうことをやったかということはわかると思いますが、今日即断をいたしかねるという
立場
で、
労働省
としても非常に関心は持っておりますけれども、私どもが立ち入ってその
職務
の権限というものを発動するわけには参りませんので、
裁判
所で今やっておられるという判例を待つ以外に私たちはなかろうかと
考え
ております。
堀秀夫
8
○堀説明員
青海電化
の基準法二十条に関する
解雇
問題につきましては、先ほど私が御答弁申し上げましたように、
報告
を受けております。その他の問題につきましては、これは私も大
工場
、中小
工場
の区別なく、その地におけるところの重点的な産業については監督を行なって基準法の条章を確保するということが当然われわれのなすべき仕事である、かように
考え
ておる次第でございます。
青海電化
につきましてもその意味におきまして、
糸魚川
監督署
において監督は実施していると思いまするが、なお先生お話のような事実がもしありとすれば、問題はあるように思います。この点はよく
調査
をするように現地に連絡いたしたいと
考え
ます。
小林進
9
○
小林
(進)
委員
この問題はなかなか、きょう一日お伺いしてそれで解決する問題でもございませんし、特に
一つ
の
会社
がその町の
町長
並びに
町会議員
の
過半数
を占めて、町の行政を壟断するなどということも、これは全く地方自治法を作るまではおそらく政府も国会も予測しなかった新しいケースだと思うのでございまして、こういう問題はきょうも実は自治庁の長官にでも来ていただいてお伺いしたい点でございましたが、どうも
手続
が不備でそこに至りません。 [
永山
委員長
退席、
五島
委員長
代理着席〕 それは別にいたしましても、私が先ほど
事例
として申し上げました
労働組合
に対する
会社
、経営者の
選挙干渉
から、
政党役員
になったがために住いの
圧迫
をするとかあるいは
役員
に立つことを阻止するとかという、こういうあらゆる
事例
は、私は
労働省
、
労働大臣
としても決して等閑に付していただいてはならない問題だと思いまするし、今申し上げました
労働
基準監督局の監督に関する多くの問題もまだ残されておりまするので、以上の点は
一つ
われわれもこれから
調査
いたしますが、
労働省
におきましても私が申し上げました点は
一つ
速記録などで明確にお調へおき願いたいと思います。この次またあらためて私はお伺いいたしたいと思いまするから、書面で回答をいただければさらに幸いと思います。 以上をもちまして私の質問を終ります。
五島虎雄
10
○
五島
委員長
代理 次に多
賀谷真稔
君。
多賀谷真稔
11
○多賀谷
委員
現在、炭鉱の危機が非常に叫ばれ、毎日の新聞にその炭鉱離職者についての救済対策の欠如が言われ、そうして民間においては黒い羽根
運動
が展開されて、これが愛情ある多数の協力によって展開をされておるような
状態
であります。 福岡県が出しました炭鉱離職者の
生活
実態というパンフレットを見ましても、その見出しだけをわれわれが拾い読みいたしましても、たとえば貧乏子だくさんという問題が掲げられておる。あるいはまた教育が虫ばまれているという見出しが出されております。さらに、
生活
保護率が全国平均の二十倍であるという数字を掲げております。さらにまたこんな収入で生きているということを書いて、そうしてその悲惨な
生活
状態
を書いております。さらにまた、食ったり食わなかったり、こういう見出しがあって、ほとんど米を食っている者が少く、米といっても大半は加州米ないし外米である、そうして三食食っておる者は少くて、二食であるということを報じております。さらにまただんだん家具がその部屋から消えていっておるという
状態
も掲げております。畳の上にも雨が降るという見出しがあって、青空部落というものがあるということを書いておるようでございます。さらに、貧民病が広がっているという見出しのところには、いわゆる貧民窟特有の皮膚炎、結膜炎、トラホーム等の伝染病には住民の大多数がかかっている、これは栄養不良による皮膚の抵抗力の減退と、不潔な皮膚と、治療しないままにほっておくということが重大な原因である、こういうように報じております。さらに借金もできなくなってと、こういう見出しも見えております。さらに、ボタ山の陰にあえぐ人々という見出しで、ボタを拾って一家七人で
生活
しておる、こういうことも書いております。あるいは、あすは何を食べたらよいのか、こういう見出しのところもございますし、また無灯火部落のことも書いております。単に炭鉱離職者だけでなしに商店も
生活
保護を受けておるという実態も書いております。あるいはまた集団的な
生活
保護法の適用者がおる、こういうことも報じております。さらにしょうゆ御飯におかずなし、こういうテーマで取り上げておるところもございますし、
組合
運動
に手を出すなという中小企業の
労使関係
をうたった点もございます。さらに賃金は未払いで、現金の支給がなくて、そうして八人で、一日麦一キロ、こういう配給しかない、こういうことを報じてもおりますし、ボロ鯨の肉という見出しでその
生活
の実態を
訴え
ております。こういうように非常な悲惨な
生活
の実態を現出しておるわけでありますけれども、
池田
通産
大臣
も当初は、石炭については勉強させていただいております、こういうことでございまして、われわれもそれを正直に受け取っておりましたけれども、いまだ数カ月たつのに何らの石炭政策に対しての通産
大臣
としての、また通産省としての御意見発表がありません。 〔
五島
委員長
代理退席、
田中
(正)
委員長
代理着席〕 ここの
局長
等が各地において新聞談話等で話しておりますけれども、それも最近では箝口令がしかれて、通産省としてはまだ何らの意思表示及び見解の発表をしてないということを蚕ねて
大臣
がおっしゃっておるような現状であります。これは私たちが推測いたしますと、貧乏人は麦を食え、あるいは中小企業の一人や二人は死んでもいいという、やはり
池田
さん本来の経済政策の現われではないかと思うのです。おそらく通産省が石炭政策の発表をなさるころにはもうつぶれていく、炭鉱はほとんどつぶれてしまい、首切られる
労働者
は首を切られて、そのあとに石炭政策の発表が行われるのではないか、こういうことを私たちは憂慮しておるのであります。ところがそれにまねてか、
松野労働大臣
の方から一向総合的な失業対策という問題についての発表もされないし、その実施も行われていない。
大臣
は就任のときの所信表明において、われわれは失対事業よりも雇用事業だということを盛んに強調されておったわけでありますが、雇用対策どころか、失対についても私たちは何らまだ見るべきものがない、かように
考え
ておるわけであります。そこで社会不安がだんだんひどくなって参りますし、私は率直に言って、米騒動というような事態も起らないとも限らない、こういう
状態
になりつつあるということを非常に心配しておるわけです。現在農家等において作っておる蔬菜等を平気で持っていく、農家の人々がおっても平気だそうです、そういうような実態になっておる、食えないのだからしようがないじゃないかという、非常に気持もすさんだ
状態
になっておる、こういうことを聞いております。ですからこのままでいきますと私は大へんな事態を生ずると思いますし、また市町村においても現在の失対のワクあるいは
条件
ではとうていその負担にたえ得ませんから、ワクの増大ということもあまり
考え
られていない、こういう現状であります。そこで私は、岸内閣が
日本
経済の異常な躍進に小おどりして所得倍増論を唱えておるわけですけれども、わずか五万や六万の失業者の救済ができないということは、率直に言って
政治
の貧困だと思う。毎年九十万人からの雇用が増大をしている中で、炭鉱離職者のわずか五、六万の失業者の救済ができない。しかも手をこまねいてじんぜん日を送っておる、一方においては、一主婦の叫びから黒い羽根
運動
が展開をされておる、こういうことは私たち
政治
家として非常に恥かしい気持にならざるを得ない、こういうように
考え
るわけですが、
大臣
はこれについてどういう御所見を持っておられるか。さらにまた先般の参議院の社会
労働
委員
会では、新聞によりますと、石炭産業の中で離職者を吸収するんだということを言われておる。この真意ははっきりわかりませんけれども、こういった
考え
方を持っておられるならば、これは精神はともかくとして、現状を全く無視された、石炭の実態を知られない議論ではないかと
考え
るわけです。これらの点についてます所見を承わりたいと思います。
松野頼三
12
○
松野国務大臣
石炭の離職者につきましては、私がいろいろな
会議
で、あるいはいろいろな方にお話をいたしました。その第一としては、経済政策というものを確立することが石炭の雇用者にとっての一番の安定策である。第二番目には、石炭産業が今日不況だからといってみな失業者にされては困る。今日の石炭産業にしても、一般の公務員にしても、産業というものには五%前後の自然減耗がおのずから出てくる。従って、そういう意味に
考え
るならば、石炭産業の自然減耗というものと今回の離職者と有無相通ずるためにも、石炭産業そのものの雇用の増大に大いに努力してもらわなければならないということを第一段階に話しました。もちろん今日、三十万という多数の者がすべて今の石炭の産業構造の中で生きていくことはなかなかむずかしいだろう、従って、それ以上に出た場合において、政府としては他の産業にこれを吸収することが一番いいんだ。緊急あるいは臨時的なものよりも常用的雇用を求めることが
労働大臣
としては当然なことだという話で、次に他の産業についての雇用の道を開きたい。しかし、その過程においてある程度のものは緊急失対事業を臨時的にやらなければなるまい、実はこういう三段がまえの話を私はいたしました。
労働大臣
としては緊急失対ばかりをふやせばいいというわけには当然参りませんので、あらゆる面において雇用の増大をはかってもらいたいということでそういう話を私はいたしたわけであります。三十万の全部を石炭産業の中で常用雇用として抱えろというのは、今日の石炭の実情ではむずかしいと私は
考え
ております。のみならず政府としてもある程度の整備計画をきめまして買い上げ問題を数年やっておって、ことしも延長してくれという陳情がある時期でありますから
——
石炭が斜陽産業だということは私も認めておるわけであります。ただその斜陽的産業をどの程度までで食いとめて、今後石炭産業としての安定した地位を確保するかということを産業政策として明らかにしなければならない。長い目で見ますと、雇用者及び
労働者
が不安だという意味で、産業政策の確立を願いたい、実はこういうふうな順序を追って話をしたわけであります。その中の
一つ
が大きく出たわけで、特に私が誤解を招くような言葉を話したわけではございません。 今日の緊急な離職者の問題は、何と申しましてもその地方に事業を興すということを
考え
なければなるまい。ことに石炭地帯というのは集中しておりまして、石炭産業によって中小企業が栄え、野菜屋が栄え、酒屋が栄えるというふうに、すべてのものが石炭中心に興っておるのでありますから、石炭がつぶれれば、雇用者だけにあらずしてその周囲のことも
考え
なければならないと
考え
まして、その地方に事業を興すことにまず思いをいたすということで、先週予備金で決定しました二億円というのは、これは主として石炭地帯の鉱害復旧という恒久事業を興し、これに相当数の雇用者を吸収してもらいたいというのできめたわけであります。これだけではもちろん足りませんので、あくまで他の産業に転業を認めるという意味で、公営職業紹介というものを始めまして、石炭の離職者をぜひ関西地方においても雇用者として優先的に御協力願いたいということで、実は私も公営職業紹介の一端をになって、先週関西にも話に参りました。これはすでに各所において
事例
がございます。あるところでは災害復旧の河川改修に石炭の方に働いていただいたところが、非常によく働いていただいた。しかも、今日いまだにその雇用が継続しておるという
事例
もございます。石炭の方は何と申しましても長い間筋肉
労働
としては鍛え上げた方でありますから、他の筋肉
労働者
に比べれば優秀な
労働
力を持った方だという観点から、ぜひ
一つ
離職者を優先的に各産業にお願いをしておるわけであります。従って、石炭産業だけでやれとおっ離した意味では毛頭ありません。そのほかに特に他の産業に就職されるにつきましては、手に仕事を持たれることが非常に有利なことだという意味で、職業訓練というものを始めまして、田川、飯塚、直方とか、いわゆる今日の石炭の問題の地区を中心にした職業訓練所というものを、早期に覚えていただくように設けたいというのが先般の予備金の決定であります。従って、私はいたずらにじんぜん日を送っておるわけではございません。今日予算と私に与えられた権限は最大限に利用いたしまして、そうして石炭の集中的失業者に集中的な予算の配分をしておるわけであります。第三・四半期におきましてももちろん、失対事業という予算があるならばこれを福岡を中心に配分いたしたい。福岡の知事及び市長方からの陳情によりますと、やはり地元負担金がなかなか膨大になるので、これだけでは実は吸収できないという話もございまして、先般閣議の席上で自治庁の長官にも依頼をいたしました。自治庁長官も今の予算で可能な最大限までは地方財政の裏づけをするという確約も得ておりますので、今回の措置は十分この予算で消化できると私は信じて、より以上の失対とかあるいはすべての予算を石炭の問題の地帯に集中的に今日配分をしておるわけであります。 なお、石炭という問題はなかなか長い問題でありますし、また大事な基本産業であるだけに、その対策も緊急だけで間に合うと思っておりません。将来長い目で
考え
るならば、相当大きな政府の力が働かなければできない。
現実
の実情につきましては、一番悲惨な田川、直方、三池の三地区に政務次官を派遣しまして、飾られた視察にあらずして、ほんとうの姿をつい先週見てきていただきました。もちろん炭鉱の方、家族の方、子供の方みんなに直接話をして、一番悲惨なところを
赤澤
政務次官に約三日間見てもらいました。その
報告
も伺いますと、私たちはこの問題はそうそう簡単に片づく問題と
考え
ておりません。これはおそらく
労働省
としてはことしの一番大きな問題の焦点に掲げておるわけであります。政府部内では全部一致した意見が出ないから、私は言葉を濁すかもしれませんが、私に与えられた範囲においては最大限にやっておるつもりであります。もちろん今日の予算の点、すべての足りないところは、今日の私の能力及び私の権限では手が届かなくて残念でありますけれども、精神としては今日はこの問題を最大の焦点として
考え
ております。
多賀谷真稔
13
○多賀谷
委員
大臣
の石炭産業に吸収するという意味は、精神はわかるわけですが、
現実
問題として果してそれが可能であるかどうかという点について私はかなり疑問があると思うのです。それでこの点について、今実際自然減耗で、どんどん募集をしておるというような
状態
と
考え
られておるのかどうか、あるいはまた、時間もありませんから議事を簡略に進める意味において申し上げたいと思いますが、当日の参議院社会
労働
委員
会では、まず石炭産業の中で配置転換や他社への吸収をはかるべきだ、近く
労働省
から警告を発したい、こういう新聞の記事でありますが、見解が述べられた、こういうふうに書いてございますが、これはその事実はその通りであるかどうか、またこのお気持はどういうお気持か、これをお聞かせ願いたい。
松野頼三
14
○
松野国務大臣
その警告という言葉が少し、私は警告という言葉を申し上げた意思はございませんし、おそらく速記録を取り寄せてみますると、警告ということはなかろうと思います。ただその中で私の念頭にありましたことは、中小の炭鉱について退職金も払わない、給料も払わないで追っ放してしまうというふうなものは、
労働
基準法から
考え
ても、何らかのこれは措置をしなければなるまいという話が、あるいは警告という言葉になったか、そういうふうに新聞社の方がお聞きになったかもしれませんが、そういうことと関連して御答弁をいたしました。それは中小で退職金も払わない、俸給も払わない、いつの間にか何だか雇用なのか非雇用なのかわからなくなってしまという中小の炭鉱もあるのだという話のときに、それは非常に困ったことだ、やはり雇用
契約
を持って、
労働
基準法もあるのですから、それについては
労働省
としては何らかやっていかなければなるまいという意味で、あるいはそのときに警告とい言葉を言ったかどうか知りませんが、大企業の内部において、すべて石炭の雇用を吸収しろ、しからざれば警告するという話じゃありませんでした。そういう趣旨じゃありませんでした。それは質問者の方にも
二つ
の問題があったわけであります。従って今日やはり石炭業者そのものの中におきましても、非常に連帯的な大きな動きが起きておりまして、ただ
一つ
の炭鉱だけを焦点にするわけにはいかない。石炭協会内部におきましても、最近は相当相互的な横の動きがあって、ある程度私の趣旨に沿うような方向に今日いっておると私は拝聴しております。もちろんまだ結論は出ておりません。従って石炭産業お互い同士、おれはよその
会社
だから知らないということでなしに、お互い全部
——
もちろん全部が悪いのですが、悪い度合いが違う。非常に悪い石炭もあれば、ある程度経済
状態
がいい石炭もあるのですから、いいところはそういう悪いところをある程度雇用面においては助けなければ無理じゃないかという意味を私は申し上げたのであります。そう四角四面にどの
会社
、どの
会社
といことは差し控えますけれども、そういう気持を私は今でも持っております。ただ警告の話は多少違っておりまして、中小企業では俸給も払わない、雇用も少い、退職金も払っていない、そういううやむやな問題については、何らか私の方でもその場合にはその問題を処理しなければなるまいという
二つ
の問題がありまして、ただしかしその新聞紙面は少し私は違っておると思うのです。私もさっそく実は速記録を取り寄せて調べましたけれども、そういう趣旨ではございません。
多賀谷真稔
15
○多賀谷
委員
実は今
大臣
は、経営者内部でも連帯的な動きがある、これを雇用の面にも及ぼしたい、こういう御意向のようでした。私は非常にけっこうだと思うのです。現在一般炭の山と原料炭の山では非常に
状態
が違いまして、原料炭の山はむしろ増産態勢に入ってきておる。ある山のごときは、かなり大手でございますが、日曜に出勤をして、
一つ
公休返上をして増産をしてくれぬかという申し入れもあったという事実、
組合
の方はそれをけっておりますけれども、そういう動きすらあるのですから、私はそれはできない相談ではないと思う。ですからそれは
大臣
がそういうお気持であるならば、私は率直にそのお気持を披瀝されて、そういう御指導をなされば、私は決して不可能ではないと思うのですが、業界の方にもそういう御指導をなされるつもりであるか、ただ
委員
会だけでお話しになってもどうにもならないのでありまして、業界の方にそういう指導をなされるつもりであるか、また政府としてもそういうお
考え
であるか、お聞かせ願いたい。
松野頼三
16
○
松野国務大臣
業界に指導という言葉が
——
言葉は指導かどうか知りませんが、業界のその当事者の方、私のところに会いに来られる方には、みんな今のような気持を申し上げております。ただ業界の
大会
とか、そういう意味ではございません。私のところに来られる方はみな同じような話で、お互い相互産業という意味で石炭の雇用問題は御解決願いたい、また新しい雇用をなされる意味においても、ある意味においては熟練工なんです。石炭の過去における経歴者、その意味においても
労働条件
、
労働
力というのは上質のものが得られるじゃないかというふうな場合は、事ごとに、事あるたびに私は実は申しておりますが、私が命令を発動するという権限が果して私にあるかどうか、それにまた私が雇用の強制をするわけには参りません。その言葉はうまくないかもしれませんが、私に与えられた範囲においては最大限に、また私の方の
労働省
の
局長
、事務当局を通じまして、同じような趣旨で今日やっております。
多賀谷真稔
17
○多賀谷
委員
私は、いつも政府の政策として発表され、また
大臣
がこういう
委員
会でそういうお話をされる以上は、かなり積極的にやってもらわなければ困ると思う。ただ相談に来る人にそういう意を伝える程度では、私は実際問題として行われないだろうと思う。
現実
そういう方向に残念ながら雇用問題はいっておりません。ある
会社
でも、A、B、Cと炭鉱があれば、Aという炭鉱は老朽山である、あるいは一般炭の山である、そうすると、BCに移動することを好まないのです。それはなぜかというと、若い
労働
力を雇ってきた方がいいから、同じ
会社
内部でも
現実
はそういう
状態
なんです。ましてや他社の者を
自分
のところでかかえるというようなことは、今の石炭経営者の頭ではやり得ないし、やらないだろうと思う。ですからこれはいやしくも
大臣
が
委員
会でその政策の一環として、大きな柱として言われる以上は、それの指導をしていただかなければ私は効果がないと思う。言われてもほとんど実際行われないだろうと思います。
松野頼三
18
○
松野国務大臣
私としてももちろんそのような方向に指導もいたしますし、私の権能がある限りやります。同時にこれは
組合内部
におきましても、いろいろな議論があるかと私も実は拝聴しておるわけであります。やはりみんな今日非常に隆盛な産業とはいえませんから、おのずから
組合内部
においても新しい雇用ということは、お互いの
労働条件
、あるいは企業の採算ということも、それは
組合
も非常によく研究しておられるでありましょうし、私は、一々この
組合
はいい、この
組合
は悪い、この
会社
はいい、この
会社
は悪いと個々に言うならば、これはある程度可能、不可能が出て参りましょうが、石炭業者すべて一律に私が申し上げますには、おのずから私の言葉、私の働きというものもそういう場面に局限されるということも仕方がなかろう、全部に私が政策的にやるということは、強制雇用を私が権限でやるというわけには参りません。私の気持としては、私が苦労したのは離職者のことであります。一人でも離職者を少くしてくれ、この気持は、あらゆる機会に私は
自分
の気持を貫いて参りたい、それには石炭業お互い横の連絡も
考え
ていただきたいというのが当然じゃなかろうかと思っておりまして、今後も御注意に従って、私のでき得る限りあるいは私の
職務
、権能のある限りその問題を進めて参りたい、また私でできなければ他の閣僚の方にもお手伝いしていただいて、同じ方向に進んで参りたい、こう
考え
ております。
多賀谷真稔
19
○多賀谷
委員
今離職者対策をいかにするかという大きな問題の前に、私はその離職者の出ることを防ぐということが最大だと思います。ですからこれを積極的に
一つ
おやりになっていただきたい。私は、
組合内部
に問題がある、こう言われますけれども、
組合内部
は問題ないと思います。それは、そういう話は一回もない。ことに同じような大きな組織を
組合
は持っているのだし、その組織内で動かすということになれば、喜んで
組合
は引き受けるわけです。それでなくて、あるいはそういうことは万々ないでしょうけれども、新しい別個の
労働
力を入れるという場合においては、あるいは
組合
はそれについてかなり長期計画を出すとか、将来についての保障をせよ、こういう問題が起るかもしれませんけれども、今他社に働いている同じ炭鉱
労働者
を
自分
の
会社
に入れるということについて
組合
が
反対
するということは私はないと思う。ただ
大臣
が頭の中でそういうことがありはしないだろうか、こういうように
考え
られて頭のよさを示された点については、そういう感じもないことはないでしょうけれども、
現実
はない、私はこういうふうに思います。 そこで
一つ
努力していただきたいと思いますが、今でも募集をしておる炭鉱がある。こういう不況のときでも募集しておるのは今でもあるのです。ところがそれは、先ほど警告という問題が出たと思いますけれども、とにかくその炭鉱に行きますと、その炭鉱は三カ月ぐらい賃金が未払いなんですね。ですからそこの炭鉱に入坑しましても、三カ月後にならなくちゃ賃金をもらえない。そこで募集をしておるものですから行くわけですね。そうして働いておるうちに、これは賃金は三カ月後だそうだというので、一週間ほど働いたらやめてしまう。そのことをいいことにして、
現実
には営業を続けておるのですよ。はなはだしきは、そういう炭鉱に職業安定所がそのあっせんをしたということもあります。現在私は、今の段階では実はまだそのことは聞いておりませんが、三十年にはそういう例が非常に出たわけです。しかし私は今の段階で職業安定所があっせんをしたということは聞きませんけれども、そういう形態で賃金を払わないで使っておるという
状態
が
現実
にある。ですから、こういうものについては私は、それこそ警告をすべきであるし、また
基準局
や安定所を通じて、そういうところについては重大な処置をとっていただきたい、こういうように
考え
るのです。この点について……。
堀秀夫
20
○堀説明員 最近の不況の状況が原因になりまして、中小炭鉱におきまして賃金の不払いを生じつつあるところが出てきているということは、御指摘の通り事実でございます。これはただいま
大臣
が御指摘になりましたように、政府として総合的な対策をとって、その一環として解決さるべき問題であると思いますが、われわれ基準監督機関の側といたしましても、やはり賃金はあらゆるものに優先して払われることが必要である、こういう観点から、不払いの場合に、その支払い計画を提出させて、これをなるべく解消させるという方向で、監督機関としては努力を続けております。 なお安定所との
関係
でございますが、最近におきまして、このような状況にかんがみまして、
監督署
、安定所等との間に常駐の連絡の
会議
等も設けまして、この
関係
につきまして今のお話のような不合理がないようにいたして参りたい、このように
考え
る次第であります。
多賀谷真稔
21
○多賀谷
委員
賃金が払えないものですから、主食だけを一かた働けば幾らとくれるわけです。それに対して
労働組合
の方は憤りを感じて、中には坑内で倒れた人もある、そこで
組合
を作ってそれに対抗しようとした、ところがその
組合
を作った連中を
解雇
をして、新しい
労働
力を持ってきた、賃金も払わないで、新しい
労働
力を持ってきて、
社宅
を追い出そうとした
事件
がある。これは名前は申し上げませんが、現地に聞かれれば十分おわかりです。こういうようなひどい炭鉱があるのですから、
一つ
十分厳重に取り締ってもらいたい、私はこういうように
考え
ます。 そこでもとへ返りまして、先ほど
大臣
は、その地域において、すなわち不況地域において事業を興すということが肝要である、こうおっしゃいました。私はこれは非常にいいことだと思うのです。ビヴァリッジも、
労働者
をして、新しい仕事を求めて彼らの家庭を去らしめるよりも、
労働者
のところへ仕事を持ってくる方が一そうすぐれておる、こういうことを言っておる。ところが、その地方に事業を興すということは非常に大きな命題で、よかったのですが、お話しになった実際のことはみみっちく、鉱害復旧事業と、こうおっしゃいましたから、私は非常に期待がはずれたわけです。
大臣
のテーマは、不況地域に事業を興すのだ、こうおっしゃいましたから、これはかなりいい構想で、かつての英国の特定地域の改良法案とか、あるいは最近の工業配置法案とか、あるいはアメリカの不況地域再開発法案、こういう構想ではないか、こういうことで期待をしましたところが、出された問題は鉱害復旧、そして大体国の費用が二億円、地元負担が一億七千万円で、二千五百人ほど使うという、こういうえらいみみっちいお話で、いささかがっかりしたわけです。そこで地方に事業を興すというものの
考え
方、不況地域に新しい事業を興す、これは政府が相当の努力をしなければできないと思います。英国やあるいはアメリカのように、現在かなり完全雇用であると言われておりますところでも、地域的な失業者は非常に出ておる。
労働
力の移動ができない。こういうことについて、法律を作ったりその他の措置によってやっておるわけですが、これについては、
大臣
はどういうふうにお
考え
ですか。
松野頼三
22
○
松野国務大臣
鉱害復旧を先般閣議決定しましたのが、これがまず第一段目のロケットであります。それから第二段は、この年末までに、もちろんこの予備金で間に合わないというときには、さらにこれに継続して問題を解決していこう、実は最終的に三段目が、来年から、九州にはいわゆる九州地方開発促進法という法律もあり、地域的に開発法というのがありますから、それにあわせて、失業者の吸収も必要でありましょうが、その事業そのものも、やはりその地方に有効な事業を行うことが都合よかろうというので、それが実は最終的な三段目のロケットになるわけでありますが、私が申しますのは、その三つを含めて申し上げたわけで、鉱害復旧だけでいいという意味では毛頭ございません。さしあたり本年の予算内でできる、あるいは本年予算の計画の中に鉱害復旧が入っておりましたから、これを進めて雇用者を吸収しようという意味でありまして、もちろん大きな事業計画といえば、本年の予算ではとても間に合いませんので、三十五年度予算の編成に着手しておりますから、地方開発計画とあわせて、雇用計画をその地方に進めて、その事業を興そう、さしあたり北九州で申しますれば、鉱害復旧も必要でありましょう、河川改修も必要でありましょう、道路もありましょうし、港湾もありましょうから、そういう恒久的な大きな公共事業を北九州及び集中的な平や北海道に持って参りたい、こういうのが実はすでに石炭対策としての私の構想の中に入って、各省にもただいま連絡しているわけであります。従って鉱害復旧だけが、恒久産業あるいは地元産業の開発ではありませんので、さしあたりこの第一段の緊急対策として、鉱害復旧と職業訓練と広域職業紹介というものをやったが、これが最終ではございません。本年予算あるいは本年の可能な限度という中で、緊急対策の中でやったわけであります。その辺は、どうぞ
一つ
私の説明が足らなかったところはあらためてつけ加えさせていただいて、御了解願いたいと思います。
多賀谷真稔
23
○多賀谷
委員
そこで
労働
力の慢性的な過剰地帯ですね。これについて新しい産業を起すように政府で援助する、こういうものの
考え
方はないのですか。今各国で行われているのは、新しい産業の誘致、古い産業から新しい産業へ
労働
力を移動さす、こういうことが非常に問題になっている。しかも
労働
力の移動というのは、政府がかなりやりましても、あまりうまくいかない。ですから、どうしてもその地元で吸収しなければならぬ、吸収する産業を興さなければならぬということが言われているわけです。これについては、どういうお
考え
ですか。鉱害復旧なんか逃げないから、そうしてこれは恒久的な事業といいましても、
大臣
も御存じでそういうことをお話しになっただろうと思いますが、効果のある事業ではありますけれども、そういう産業ではないし、そうしていわば補償的なものですから、これは当然やっていただかなければならぬと思いますし、またすぐ効力の現われるものですからけっこうですけれども、そういう他の新しい産業を誘致する、それに政府が援助する、こういうものの
考え
方はないのですか。
松野頼三
24
○
松野国務大臣
今回たまたま政府が長期の経済計画等の策定をするということでありますし、私の方の
労働省
としても、長期経済計画に合せた
労働
雇用の長期計画をただいま省内で準備しています。これはもちろん多賀谷さんおっしゃるように、雇用の長期的な安定をはかる意味で、もちろん
日本
全部の総合的な雇用であると同時に、地域的な積立がなければ、
日本
の総合雇用対策というものは立たないのではなかろうか、こう
考え
て、地域的及び産業別に分けまして、長期経済計画に合せる雇用の長期計画というのをただいま策定いたしております。その基礎は、あくまで地域的なものと産業的なものとかみ合せて、その地方にどういう産業が起るか、これにはどの程度の雇用が吸収できるかということを合せながら産業計画と合せていくことが、一番安定したものではなかろうかというので、目下そういう方向に
労働省
のすべての
労働
経済を集中的に検討しておりまして、いずれ
皆さん方
に御発表できる機会もあるかと存じます。まだそこまで策定は全部完了しておりませんけれども、方向は多賀谷さんの御指摘のように、地域的な雇用というものをまず焦点に
考え
て参りたい。なおある程度雇用の移動ということも
考え
なければならない。ある程度
考え
なければ、これはいきなり雇用のところに全部産業を持ってきてという
——
産業立地
条件
も
考え
なければならないし、その雇用の移動のために必要があるならば、ある程度の失業保険法あるいは失業保険の中に、転業資金とか移動資金というようなものを
考え
合せながら、雇用の移動の方を
考え
ていかなければならない。この
二つ
を実はあわせ今度の経済計画の中に入れたいと
考え
ておるわけで、今日まだそうこまかいことまで御説明できませんけれども、私の方向は多賀谷さん御指摘のような方向にぜひ
日本
の雇用政策というものを確立して参りたい、こう
考え
ております。
多賀谷真稔
25
○多賀谷
委員
日本
の雇用問題というのは、不完全就労の問題もありますけれども、やはり地域的な
労働
力過剰地域ができてきておるという点は、私は非常に問題であると思う。ことに炭鉱地帯とか、駐留軍がおりました地域というのは、そういうことが言われるわけです。ですからこれは、私は
労働省
あたりで積極的にこういった方向で努力していただかなければ、通産省あたりになりますと、効果のよい、能率のよいというところに
工場
を集中する、こういうことに重点がどうしてもいきますから、
労働省
あたりでこういう問題はやっていただきたい、かように思うわけであります。しかし
大臣
のお話ですと、ぼかして私の言う方向だとおっしゃいましたけれども、えらく抽象的なお話をされますが、不況地域再開発法のようなものを
考え
られておるかどうか、こういうことも的確に御言明願いたいと思うのです。その方向でというようなことでは満足できないのです。
松野頼三
26
○
松野国務大臣
さしあたり今日は、私のみならず政府全般として、炭鉱の離職者というのはいわゆる雇用問題の焦点でありますから、この方向については今日すでに着手いたして、そうして地方の炭鉱労務者及び離職者対策というものは集中的にその地方開発の中に入れて、今日政府は前進しておりますが、その他の地域はどうかと言われますと、まだ今日産業政策及び長期計画がきまりませんと、どういう産業が今後発展するか、どういうふうに輸出入の貿易との関連があるのか、まあいろいろございます。そのほかにもう
一つ
はっきりいたしましたのが、実は農林
大臣
がたびたび話しておられます農業の過剰人口の問題も相当長期的な不完全雇用でありますので、これを完全雇用の中に吸収して参りたい。産業構造を見ましても、
日本
は第一次産業の農業が非常に多い。諸外国の中でも、一番とは言いませんけれども、インドあたりはもっと多いのですが、近代的な国家の中では
日本
はまだ四二%ぐらい農業に雇用者が集中しておるということは、農業政策の
圧迫
にもなりましょうし、また不完全雇用者というような者を常に農村にかかえるということも、これはよいことでありません。この一環として農林省で二、三男対策、私の方では農村の不完全就労の吸収という
立場
でこの対策を来年度予算の中に組み入れたい。実は両省では一致しておりますので、これも
一つ
地域的な対策の
一つ
として私たちは発表しても間違いないのじゃなかろうか、こういうふうに
考え
て、いろいろな場面を
考え
ながら今日まで検討しております。
多賀谷真稔
27
○多賀谷
委員
私は不況地域の再開発法とも言うべき、あるいは工業配置法とも言うべきものの
考え
方は、残念ながらいかに炭鉱離職者対策に集中をしておるといっても、今の政府の
考え
方から見出すわけにはいかないのです。あまり農業の所得の格差の話をしておりますと時間がないものですから略しますけれども、どうもそういう
考え
方を残念ながら現在の政策の中でも見出すことができない、こういうように
考え
るわけです。 そこで私は続いて質問をしたいと思いますが、職業訓練といいましても、問題は日当だと私は思うのです。率直に言いましても、職業訓練をするといっても手当をやらなければ
生活
できないのです。ここに私は問題があると思うわけです。ですからこの問題を解決をしなければ、いかに職業訓練所を設けても意味がないと思う。なるほど若い
労働
力ですと、私は職業訓練というのは非常に意味があると思う。ところが問題は、今三十才から四十才あるいは四十五才というのは中年です。少くも三十才から四十才の人間を対象にして職業訓練をしなければならぬ。これはみな世帯主です。この世帯主を対象にして職業訓練をしなければならぬということになりますと、
一体
日当やその他の問題はどうするのか、これはできません。いかに職業訓練所を作りましても、若い
労働
力なら来ますけれども、世帯主は来たくても来れない。これは
一体
どういうふうにお
考え
であるか、これをお聞かせ願いたい。ベルギーでは、やはり
日本
と同じように、一万九千名からの炭鉱離職者が出るという。そこでベルギーでは六カ月間訓練をする、その六カ月間職業訓練をする間に、やはり一律に
日本
の金で二万円程度の金をやっておるのです。ドイツは御存じのように、石油の関税をさらに増加しまして、その関税の額が三億マルクといいますから二百五、六十億ですか、この金額をもって転業資金とかあるいはその他の職業についた場合、所得の少い場合に当面の所得補償あるいは失業手当、こういうものを出すことにしておる。ところが
日本
ではいくら職業訓練所を作っても、私はその手当の問題を解決してやらなければだめだと思うのですが、それについてどういうお
考え
ですか。
松野頼三
28
○
松野国務大臣
ただいまの失業保険法は、もちろん勤続年数によりますけれども、大体平均しますと、六カ月ということが失業保険の限度であります。職業訓練の場合になりますと、あるものは八カ月、あるものは一年、もちろん四カ月という短期のものもございますけれども、大体失業保険の六カ月の限度内では職業訓練所に入りましても
生活
ができない、従って途中で退所するかあるいは最初から入らないという傾向がございますので、職業訓練所に入った場合には、ある程度失業保険法の運用あるいは一部の改正ということが出てこなければできないのじゃなかろうか。またもう
一つ
は、かねてから御心配いただいております、つい先般来
皆さん方
から非常な強い御意見が出ました登録失業者につきましても、職業訓練ということに希望があって入所したいという方がありますならば、これもやはりある程度日給、手当というものを与えながら漸進的に雇用の道を広げるという方法も
考え
なければならないと存じますが、これは臨時失業対策法の、法律そのものの問題がありますので、これはいずれ
皆さん方
に法律の問題として御相談しなければ、私がここで独断的にこれを改正するとか、大丈夫だとか言えませんけれども、そういうこともあわせ
考え
てやらなければ多賀谷さん御指摘のようにできないかと存じます。ベルギーと同じように
日本
もやれることを総合的に
考え
ておりますので、まだその発表まで参りませんけれども、非常にいろいろなことをおっしゃいましたけれども、そのうちの一、二のものは私の
所管
外のものもございますので、近いうちに
関係
大臣
と諮りまして、おっしゃるような趣旨のように私はぜひ努力して参りたい、こう
考え
ております。具体的に何だと言われますと、私の
所管
外の話で困りますけれども、ただいまおっしゃった中にも、非常に傾聴すべきものもあるし、私ども実は
考え
ているものもあります。しかしこれは私の口から言うと多少影響がよけいなところに出てしかられますけれども、しかしおっしゃるような方向に段階的に私は進めて参りたいと思います。一、二のものは
関係
各省に連絡をしているわけです。まだ結論が出ませんので、私は今日ここで明言ができませんけれども、おっしゃるようなことを
関係
各省に連絡しております。失業と訓練と、もう
一つ
は離職者に対する対策という中におきまして、総合的に
考え
なければならぬものも私はあると存じます。
多賀谷真稔
29
○多賀谷
委員
失業保険の一部を改正するというのはどういうことなんですか。その失業保険中に訓練を受けさすというのですか。それとも延長するというのですか。それとも切れた人はどうするのですか、そういう点を
一つ
明確に御答弁願います。
松野頼三
30
○
松野国務大臣
第一は、失業になったらすぐに入所ということを
考え
ていただきたい。もちろん時間的にずれがありましょうから、その位置とその方向がきまるならば、切れたあとでも職業訓練所に入所中の者について失業保険の継続的支給という
考え
であります。切れてしまったものが今から入るんだというのではおそ過ぎるから、できればなるべく失業保険中に訓練を受けてもらいたい。入ってから切れた場合には失業保険というものを伸縮させることが一番妥当ではないか、そういう
考え
であります。もちろんこれを全面的に吸収できるかどうか、保険経済の問題もありますので、ある程度私は失業保険法の改正ということで、この問題を解決することが一番妥当じゃなかろうか、こう
考え
ております。
多賀谷真稔
31
○多賀谷
委員
それは今からの人はけっこうです。私はそうしていただきたいと思う。ところが今現在あそこに何万の人間が停滞をしているわけです。これを他の産業に吸収する、これがまず第一先ですよ。今からの人も必要だけれども、今までの人が必要ですよ。ですからこれについて、訓練手当といえばちょっと名前は必ずしも妥当でないかもしれませんけれども、その手当をやらなければ意味がないですね。ですから今後の対策としては、私はそれができればかなり職業訓練が徹底すると思いますが、問題は今停滞をしておる失業者をどうするか、これについてはどうですか。
松野頼三
32
○
松野国務大臣
ただいま、これは福岡の例をとりますと、すでに失業保険の切れた方、あるいは失業保険の継続中の方、あるいは今後離職者となられる予想数、三つの段階が今停滞の中にあるわけであります。もちろんどれをどうだというわけに参りませんけれども、できれば失業保険の受給中の方がこの対策の対象となることが一番妥当じゃなかろうか。将来離職者というものは私たちは
考え
ておりません。さしあたり今日失業保険の継続中で、そうして新しい職業について訓練を得たいという方をまず優先的にやるべきじゃなかろうか。もちろん、実は今北九州を調べますと、離職者のある方は、
自分
で自営をやりたいという方も出ております。従って離職者がすべて再雇用というわけには、年令的にそれは違います。そういうものを勘案して
考え
まして、失業保険の受給者でさらに新雇用に求めたい、職業訓練もやりたいという方が今日の一番切実な問題じゃなかろうか。古い人をほうっておいていいというわけじゃありませんけれども、古い方は古い方なりに相当自営業に転業された方も
——
古いほど転業が多いのです。新しいほど就職希望が多いのです。統計を調べて参りますと、やはりことし離職されてただいま保険の継続中で、新しい道を求めたいという方が、今日実は非常に切実な中核体をなしておると思いますので、そういう者を対象にやって参りたい。古い人はいいのだというわけじゃありません。古い方は古いなりにおのずから自営その他のパーセンテージが上になっております。一番大事な問題は失業保険受給中の方で、将来の転業及び
生活
の面を心配されておる方が統計的に一番多いのですから、それを対象に
考え
て参りたいと今日念頭に
考え
ておるわけです。きめたわけじゃありませんが、どれが一番いいかということはもちろん今から検討いたしますが、私個人の念頭からいうとそういう
報告
を受けておりますので、ここを中心にやればいいと
考え
ております。
多賀谷真稔
33
○多賀谷
委員
しかし私は今失業保険を受けておる人、これはけっこうだと思うのですが、問題は失業保険の切れた人も
現実
は、
労働
力が古いという意味じゃないのですから、ただ早く
解雇
されて政策が間に合わなかったということですからね。その人たちだってほとんど再雇用を希望しておると私は思います。そうしてことに拾い仕事といいまして、臨時の仕事がなくなってきた。ですから結局訓練を受けて再雇用をしてもらいたい、こういう希望が相当強いと思うんですよ。ですから私は失業保険でその再訓練をする、こういうことはよろしいと思うのですが、このアイデアを
一つ
延ばして、今離職をしておる者を再訓練する場合に、やはり訓練手当というものを出す方を
考え
ていただきたいということですね。これをしなければ
労働
力の移動というものは非常に困難だと私は思うのです。 それからもう
一つ
、転業の話をされましたね。これは自営業だと思うんです。私は転業についても第一に、訓練と言えるかどうかわかりませんが、その職業についての補導が必要じゃないか。これはどのくらいかかるかわかりませんけれども、やはり補導が必要じゃないか。それからそれについては転業資金というものを見てやる必要がある。この点についてはどういうようにお
考え
ですか。
松野頼三
34
○
松野国務大臣
過去におきましては転業資金というような問題も非常に手抜かりな問題が大へんございました。大体を言いますと、退職金というのが転業資金に当てはまるのが、一般の健全な産業ではそうなるべきものだと私は
考え
ております。今回石炭のような場合、特別な経済不況に見舞われて、しかも非常に多数の場合ということになれば、これは
会社
ももちろんその責任の一端を負わなければなりますまいし、政府もただ安閑としているわけにはいきますまいから、おのずから新しい政策として考慮すべき問題だとは
考え
ておりますが、ただ私が今日ここでどうだと言うには、まだ各省間の意見が一致しておりません。
多賀谷真稔
35
○多賀谷
委員
労働省
としてはどういうつもりですか。
松野頼三
36
○
松野国務大臣
会社
としては責任を負うべきものだ、政府としてもこれについては何らかの手助けをするべきものだ、ここにどういう機関を作るのか、あるいは新しいファンドを作るのか、いろいろな構想が出てくるかもしれませんが、そういうことを相勘案してこの問題を検討しなければなりません。健全な企業ならば退職金というものは当然転業資金に当てはまるべきものであります。ただ退職金も出せない、あるいは俸給も遅配だというような、こういう特別な
立場
に立った、しかも相当社会的に影響のある産業という意味ならば、これは政府も何らかの対策を
考え
るということが妥当ではなかろうかと
考え
ておりますが、まだ私一人の口から言うわけにも参りませんので、私自身は何らかそういうものも構想の中に描いております。
多賀谷真稔
37
○多賀谷
委員
かなり退職金のもらえるような炭鉱の場合は非常にいいのですが、こういう炭鉱は大体買い上げの対象にならぬのですね。
現実
に今必要とされているという場合には、買い上げの対象としての離職者の場合はそういう
状態
にはないと思うのですね。一例を申し上げますが、筑豊炭田に加茂炭鉱という炭鉱がある。この炭鉱は買い上げられまして、事業団が支払った金額が三千六百万円ある。ところが鉱害の補償があります。これは
大臣
御存じのように鉱害復旧による補償でありますが、その復旧分が千六百九十三万、さらに打ち切り分というのがありまして、これが大体二千万、そこでその事業団が支払った金額から鉱害の分だけは優先的に差し引きますから、マイナスの九十一万円、こういう
状態
になっております。ですから
労働者
の債権は全然もらえない。
労働者
の債権が幾らあるかと言いますと、ざっと二千万円あるのです。二千四十三万円の
労働者
の債権がある。
従業員
が三百三十人くらいですから、一人七万円近い賃金債権があるのです。一銭ももらえないのですね。
現実
はこういう事態なんですよ。賃金優先支払いどころか退職金も何ももらえないのですよ。一銭ももらえない。賃金ももらえないのです。こういう
現実
なんですね。未払い賃金ももらえない。さらにまた退職金ももらえない。この炭鉱は割合に古い炭鉱ですから、十五年、十六年勤めた人がある。この連中が
一つ
も退職金をもらえない。こういう
状態
が
現実
に起っておる。ですから退職金で転業をしたり移動をしたらいいというが、
現実
には今の筑豊炭田、あるいは常磐炭鉱あるいは北松炭田あるいは宇部炭田の一部において行われている炭鉱買い上げによる離職者という問題は、こういう悲惨な
現実
にある、こういうことを
考え
ていただきたいと思います。ですからこれを対象に対策というものが練られるべきではないか、こういうように
考え
るわけですが、これについてどうですか。
松野頼三
38
○
松野国務大臣
炭鉱買い上げは、おのずからそこの資産及び埋蔵量によって買い上げ料というものがきまるのですから、その経済的法律と今日の
労働法
と必ずしも一致しないところが、御指摘のようなところが出てくるのじゃなかろうか。しかしすべてが何もかもこの通りの状況だとはいえませんので、やはりある程度の資産
内容
がいいものは、もちろんすべてがゼロになってしまうというわけではありません。もちろん退職金というものが含まれてこれを買い上げるという規定になっているのです。少くとも退職金及びそういうものが含まれて計算され、一応そこの買い上げ価格というものに入るわけです。ただその
会社
が非常に不良だったために、そういう他の債務の方が優先するということは、これはあるかもしれません。全然その退職金というものを払わないのだという基準で、買い上げの合理化法というものができているわけじゃございません。たまたまその
会社
の炭鉱はほかに優先的債務が多かったからとうとうもらえなかったという
事例
がおそらく御指摘の鉱山にはあるかと思いますが、全部が全部だというわけじゃありません。おのずからやはり退職金というものを勘案して合理化法というものが買い上げ価格の決定の
一つ
の基準にはなっていると聞いております。しかしおっしゃいました加茂炭鉱の
事例
については、
基準局
の方でよく調べて私の方からもう一度御答弁するか存じませんが、ただいま加茂炭鉱のことについては私は聞いておりません。
多賀谷真稔
39
○多賀谷
委員
大臣
、
現実
に鉱害復旧費を除いたら全然
労働者
に払う金額がないといった場合に、どうされますか。この炭鉱は去年の八月に大体買い上げの折衝をしておる。そして
労働者
は去年の八月に首切っておる。もちろん失業保険をもらいました。しかし
労働者
の方は債権がありますから、どうせいずれ払ってくれるだろうと思って待っておった。失業保険も全部切れておるのです。そうして
自分
で期待をしておった、長い間坑内で働いた賃金というものはもらえない。こういう場合において、
大臣
が
労働者
であったらどうしますか。
現実
これはどう処理したらいいですか。
堀秀夫
40
○堀説明員 これは石炭合理化法制定の際に問題になったところでございます。そこでただいまお話の
事例
については私も今初めて伺いますので、これはさっそく
調査
いたしたいと思います。合理化法の三十三条、三十四条等によりまして、いろいろその
関係
の規定がございます。また賃金につきましては三十四条といたしまして事業団が代位弁済するというようなこともあるわけです。この点は合理化のための事業団の事業の
一つ
でございまして、通産省の方でその監督はしておるわけでございまするが、
現実
にただいまお話のような
事例
がありましたことは初めて伺いましたので、この点は通産省と連絡いたしまして
調査
いたしたいと思います。
多賀谷真稔
41
○多賀谷
委員
全く法律はあっても適用されないのです。代位弁済するといいましても、代位弁済する資金がないのです。これはどうにもならないのですよ。しかしこういった事案は幾らでもあるのです。ですから退職金なんかまるまるもらったというのはほとんどないのです。こういう
状態
である。こういうことを
一つ
考え
て、これについて私は何らか賃金債権の優先をして、それを見合いに政府でも代位弁済をするという方向を
考え
られなければ
——
これはまだ
労働者
に知らしてないのです。知らしますとこれは大騒動が起るのです。私はこの写しをもらってきたのですが、おそろしくて話ができないのです。これをもらうためにこの
労働者
は一年間待っていたのです。ですからこういった問題を今後どう扱うか、今後多く出てくると思うのです。ですから私はそういった
労働者
を対象の政策を組んでもらいたい、かように思うわけです。そこで、転業資金も将来においては政府として貸すようになるわけですか。
松野頼三
42
○
松野国務大臣
非常な不況な産業として石炭というものも整備する以上は、何らかの形でこの問題も解決しなければなるまい。ただいま多賀谷
委員
の御指摘のような
事例
がますます出てくるならば、当然そういうものも対象として
考え
ねばなるまい。ただしこれはあくまで経営者も普段からの経理上の問題としてある程度の負担をしなければならない。退職金はすべて政府が持つんだというので、非常に野放図な経理をやられてはたまりません。何らかのブレーキをかけまして、政府としてもこれに手伝いをしていきたいというのが今後の問題です。過去のいろいろの不合理な問題がおそらく
——
ただいまのお話を聞きますと、私も実は心配になってきたわけで、その
事例
は初めてお聞きするわけです。そういうことも各省とも関連がございますので、よく検討して
考え
て参りたい。おっしゃるように何らかの形で
——
賃金優先ということを
労働省
ではかねてから
考え
ておりますけれども、民法の改正か何かないとなかなかできない。民法の改正になりますと、やはり企業内の債権債務あるいは融資、金融いろいろな面に関連して参りますので、
労働省
だけの法律改正じゃございませんけれども、これはかねてから
労働省
が主張しておる賃金の最優先、もちろん優先の方には入っておりますけれども、まだ優先がもう
一つ
先にあるものですから、順序がほんとうの最優先の言葉通りになっておらない。
労働省
としてはあくまで最優先という気持はかねてから変っていません。しかしこれは民法の規定の改正がないとできないものですから、
労働省
だけであるいは
労働大臣
だけでこれをするとかせぬとか言えませんけれども、私の方は賃金の最優先、ことに賃金という
労働者
の債権を守るためには必要だと思っておりますけれども、これは政府部内の関連省ともまだ調整が済んでおりません。そういうものも私は必要のような感じを抱いております。
多賀谷真稔
43
○多賀谷
委員
第二の問題は、私は住宅の問題だと思います。
昭和
初年の不況のときは、炭鉱から追い出されますと、その離職した人はほとんど炭鉱地帯を去っていったそうです。ですから人口も減る。小学校の子供も減ったそうです。ところが今日はそういう
状態
にないわけです。結局
一つ
は職業を見つけることが困難であるということと、もう
一つ
はやはり住宅である。住宅問題というのが一番大きな深刻な問題ではないかと思うのです。ことに今炭鉱に住んでおる人々は、親子三代にわたって住んでおるという。それは昔は筑豊やその他の炭田にはいなかったかもしれない、あるいは鹿児島や宮崎やその他の地区から集まったかもしれないけれども、もう親子三代、代々炭鉱に
労働者
として働いておるという人たちは、移転先がないわけです。もう
一つ
は、終戦後食糧と住宅を与えるということで人を集めたわけです。ですから引揚者等の方が非常に多いわけです。ですから食糧と住宅を与えるということで人を集めたものですから住宅のない人が集まっておる。ですからこれを移動さすということになりますと、どうしても住宅という問題を解決してやらなければならない、こういうふうに
考え
るわけです。そこで聞くところによりますと、パイプ住宅のような話もありますけれども、私は家族と別居をして職業を求めても、これは家庭の悲劇を増すだけだ。最初のうちは仕送りはしておりますけれども、そのうちに仕送りが途絶える、こういうようなことにもなるわけです。そこで私は住宅政策というものは災害対策のような
考え
方をなさったらどうかと思うのです。災害のときには、第二種公営住宅は三分の二国が補助してやるわけです。三分の一はその地方公共団体で見ておるわけです。ですから私は災害時における公営住宅的な
考え
をもって政策を進められたらどうか、こういうように
考え
るわけですが、この点どうですか。
百田正弘
44
○百田説明員 今御質問の住宅の問題につきましては、炭鉱地域における離職者を移動するという観点から、お話のあったように家族ともどもということになると絶対に必要なことだと思います。さしあたりの措置といたしましては、工事現場の飯場の建設ないしは簡易住宅の建設というようなこと、また今お話の出ましたパイプ住宅というようなこともわれわれはぜひやっていきたいと思いますが、家族の住宅ということになりますと、やはり
一つ
は一般住宅対策ということと結合してやる必要があろうかと思います。計画的にどこに何人ということが可能であります場合におきましても、これを直ちに建設して云々ということは非常に困難であります。従いましてわれわれといたしまして今
考え
ておりますことは、
一つ
は駐留軍対策のときに実施いたしましたように、さしあたり第一段階としてはその
職場
の飯場なりそこの住宅というものに入ってもらう、現在やっておりますのは、そういう形でやっております。ところが都市地域におきましての場合には、駐留軍の場合のように、一定の住宅の見つかるまでのたまりといったようなものを駐留軍については日吉に建設いたしております。ああいったようなものを
考え
まして、第二段階の措置といたしまして、そうしたものが非常に多くなった場合に、今お話しになったような第二種公営住宅との結合ないしは失業保険、福祉事業による住宅対策といったようなものを
考え
ていきたいと思います。あらかじめ住宅と
職場
をここに幾らということを予定することは非常に困難な状況にありますために、われわれといたしましてはそういう準備だけは進めておるわけであります。
多賀谷真稔
45
○多賀谷
委員
これはやっぱり住宅問題を解決してやらなければ、
労働
力の移動というのは非常に困難だと思うのです。これは率直に申しまして一種の災害ですから、災害のときには国が三分の二見るわけですし、あとの三分の一をその地域の市町村に見させるというのが困難ならば、別な方法で今問題になっておる炭鉱の援護協会でも何でもけっこうですから、それが負担する。こういう構想を持って住宅問題の解決をしなければ、幾ら政策を口で言ってみても、やはり不況地域において
労働者
が停滞をして、慢性的な
労働
力過剰の地域が出てくると思う。これは解消できない。ですから住宅問題については、
労働省
で真剣に
考え
ていただきたい、かように思うわけです。
田中正巳
46
○
田中
(正)
委員長
代理 午後二時まで休憩いたします。 午後一時三十二分休憩
——
——
◇—
——
——
午後二時十四分
開議
永山忠則
47
○
永山
委員長
休憩前に引き続いて
会議
を開きます。 質疑を続行いたします。多
賀谷真稔
君。
多賀谷真稔
48
○多賀谷
委員
次に私は公共事業の失業者の吸収率についてお尋ねいたしたいと思うのです。今度鉱害復旧事業として三億七千万円の予備金支出があったわけでございますけれども、これをしさいに検討すると、二千五百名の就労をするというけれども、実際は、今度の三億七千万円で失業者就労人員が増加した分というのは千七百名ではないか。それが、従来の失業者の吸収率が農地においては一三%から二四%に上ることにして、それによって約七百八十名の増を見て、そして二千五百名という数字が出ておると思うのです。果して鉱害復旧のような特殊的な事業において吸収率が上るかどうかというのには私は非常に疑問を持っておるわけですけれども、これについてどういうようにお
考え
ですか。
百田正弘
49
○百田説明員 御指摘のようなことはあろうかと思います。公共事業自体につきましても、現在吸収率をきめておりますが、従来の石炭離職者の吸収につきましても、いろんな事情からいたしまして必ずしも十分にいってなかったということは確かに事実でございます。しかしながら、一方において相当な国費を出しながら、片一方においてそういう仕事があるのに吸収をしないということは不適当でございます。やはり、われわれは、新しく予算を追加支出すると同時に、従来の十分にとった吸収そのものも、もう少し行政措置によって強力にやっていく必要があるのではないかということは一般公共事業についても
考え
ておるわけであります。鉱害復旧事業におきましても、これは通産省でいろいろとその具体的な吸収の見通し等もつけられたわけでございます。それに基きまして、そういう趣旨のもとにやったわけでございます。全部が全部従来の率による新規吸収というわけではございません。
多賀谷真稔
50
○多賀谷
委員
私は、従来の事業を継続していくのでなくて、新しい事業としてならば吸収率を上げるということも
考え
られるわけですが、今までの事業の継続分について吸収率を上げているわけですね。ですから、今まで働いている人はやめていかなければならぬという
状態
になるんですよ、今の吸収率の上げ方というものが。増加分についてのみ吸収率を上げておればそういうことはありませんけれども、そうではなくて、すでに上期から施行している事業について吸収率を上げているのですから、実際としては、私は、七百八十数名の人間というのは吸収できないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。これについては、二千五百名という数字があげられておりますから、私は、
一つ
責任を持ってこの二千五百名の吸収をしてもらいたい、こういうふうに
考え
ます。 それから、公共事業全般について
労働者
の吸収率が非常に悪いのでありますけれども、私が
労働者
と申し上げますのは職業安定所あっせんの
労働者
の意味でございますが、これについてはどういうような処置をお
考え
になっておるのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
百田正弘
51
○百田説明員 安定所の紹介する失業者の吸収率が公共事業において悪いという問題については、
一つ
には、地理的な問題、あるいは
労働者
の能力がこれに適合しない、あるいはその他の問題もあるかと思いますが、
労働省
といたしましては、まず第一に、本年の四月に決定いたしました措置に基きましても、どうしてもここまでは吸収してもらわなければ困るということで、今度の対策もあわせまして強力にやっていきたい。そのためには、地域的に遠隔地に就労させなければならぬという問題につきましては、たとえば輸送費の問題あるいは簡易な飯場の問題といったものをあわせて
考え
ていく必要がございますので、これに対する措置は、不十分ではございますが本年度においてもいたしてあるような次第でございます。しかしながら、単なるかけ声だけではだめでございますので、下半期において新しく事業が拡大する面も相当ございますので、仰せの通り、今までやっておった分についてはそれをさらにということは困難ですが、拡大する分につきましては、そういうふうな措置をあわせ講じまして、最善の努力をいたしたい、こういうように
考え
ております。
多賀谷真稔
52
○多賀谷
委員
大体、今公共事業全般として安定所あっせんの失業者の吸収率はどのくらいになっておりますか。
百田正弘
53
○百田説明員 ただいま詳細な資料は持っておりませんが、御承知のように、市部、郡部によって違っておりますし、技術者とか有技能者とかいった
立場
でも違っております。われわれの期待するところよりもはるかに下回っておりまして、平均が六〇%としますと、二、三〇%、こういうような程度であります。これは主として地理的な
関係
であります。
多賀谷真稔
54
○多賀谷
委員
実は、役所によりますと、こういうことを言ったらどうかと思いますが、事後承認というような形で、あるいは失業者であるからというので入れた場合もありますし、統計というものは必ずしも正確ではありませんけれども、私はこの際、百万円なら百万円の費用単位の
労働者
の吸収率を、熟練、未熟練と分けて
一つ
出してもらいたい。たとえば、河川なら幾ら、港湾なら幾らという表があると思いますから、これを出していただきたい。それからさらに、事業別の、職業安定所あっせんの失業者の吸収率を
一つ
至急に出していただきたい。これをお願いしておきます。 それから、今まで非常に問題になりましたのは、政府が出しました失業対策事業というのが、結局、絵にかいたもちどころか、むしろ非常に欺瞞的なものであったというのが、今まで合理化法案のときでも問題になったわけですね。国鉄も見えておりますけれども、問題になっておりますのは、いつでも例に引き出されますのは、川崎—油須原線です。合理化法案が出ましたときに、川崎—油須原線という鉄道の
新設
が失業対策事業として大きくクローズ・アップしたわけです。そのときに西田
労働大臣
は、ピーク時には三千名使うということを国会で答弁されたのですが、実際には現在三名しか使っていない。それはお茶くみ三名というんですが、失業者は三名しか使っていないのですよ。結局よそから
労働者
を雇ってきて請け負いがやっておるという実情です。これは
労働省
にその責任の大半があるのです。実は、
労働省
の方で失対の予算を組んで鉄道の方へ移管するというお話があったのです。ところが、そのことが後においては結局国鉄独自の予算ということになったものですから、国鉄の方でも、そういう経緯がありますから、失業者の吸収ということについてはあまり
考え
なくてもいいという線が出ておるのではないかと思うのですが、こういうことのないように
一つ
努力していただきたい、かように思います。 次には狭義の失対事業でございますが、これを
一つ
全額国庫負担をされたらどうかと思うわけです。これは、法律ができておって、第九条に、「失業対策事業は、国が、自らの費用で、又は地方公共団体等が、国庫から全部若しくは一部の補助を受けて、実施する。」、みずからの費用で、全額持ってもいいという建前になっておるんですから、この法律があるにかかわらず、今まで全額持った例がないというのは非常に遺憾に思うのです。失業者の
発生
状態
の平均以上出ております地域については全額国庫で負担する、こういう
考え
を持たれていないかどうか、これをお聞かせ願いたい。
松野頼三
55
○
松野国務大臣
今日でもある程度高率適用というワクでやっており、三分の二か五分の四までの適用ということは、地方財政を勘案してその趣旨に沿ってやったものだと存じます。もちろん、全国で府県で約五つ適用をしております。市でももちろん今日まで相当数高率適用しておりますが、全額国庫負担というような
考え
は、まだ今日私は持っておりません。なぜかと申しますと、事業主体が、国が事業主体になるよりも、市町村が事業主体でやることが、その町村に当てはまった必要な仕事をするのに適するのじゃなかろうか。もちろん、大きなものから小さいものとございますけれども、その地理及び必要の度合いを一番よく知っておる県及び市町村が事業主体になって
自分
の県内及び行政区域内の仕事をすることの方が能率的に妥当だと
考え
て、政府が全部やるところまではいっておりませんが、補助率の適用の引き上げということは、今日でも高率適用が
考え
られて実行しておるわけです。それと同時に、緊急な場合及び非常な場合には、市町村にその財源の裏づけをするということを今日でもやっておるわけで、国が直接やるということは、事業主体そのものに問題もございますし、果して国の責任でその事業を選ぶかということもございますし、そういうようなことで、今日は事業主体は地方団体が妥当じゃなかろうかというふうに
考え
ております。
多賀谷真稔
56
○多賀谷
委員
実は、失対法は、国がみずからの費用でという場合と、地方公共団体が国家から全部補助を受けてということも書いてある。ですから、事業主体は、私は今まで通り公共団体でいいと思うのです。ですから、全部補助を出してという、こういう適用をされたらどうか、こういうことを言っておりますし、また、ある限度以上やった分について全額国庫負担でされたらどうか、こういうことを言っておるわけです。なるほど高率補助がございますけれども、
現実
の問題は、福岡県で例をとりますと、福岡県はあります。ところが、市に例をとりますと、大牟田、田川、直方程度で、あとは高率補助の適用は受けられません。鞍手町のごときも、やりたくても高率補助の適用を受けられないというのは、そのほかにシビヤーな
条件
があるわけです。ですから、町村としては、どんなにやりたくても、高率補助の適用を受けておる事業をやるという
状態
には財政上立ち至っていない。ですから、かなり財政が豊かなところはいいのですけれども、豊かでない市町村は高率補助の適用を直接受けられない、こういう
状態
になっておることを
一つ
考え
ていただきたい、こういうふうにも
考え
るわけです。
百田正弘
57
○百田説明員 失対の補助の問題につきましては、お話のように、法文上は第九条におきましてそういうふうになっております。いかなる場合に高率補助をするかということになってくるわけです。現在、福岡県におきましては、お話のように、三十三年度において約二千万円の高率補助適用追加分を出したわけでございます。失対の財源といたしましては、
大臣
からもお話がありましたように、普通交付税について相当程度市町村の財源を見ておるわけであります。それと同時に、高率補助制度におきましては、基準財政需要額に比較いたしまして一定率以上の失対事業の負担をしておるというところにつきましては、現在そのこえる部分につきまして高率補助をいたしておるというようなことになっております。お話のように、県におきましては今のような
状態
でございますが、筑豊地区におきましては、現在たしか直方地区、他の地区におきましては大牟田市がこの適用になっておるわけであります。われわれといたしましても、この高率補助制度のやり方自体につきまして検討を加えておるわけでございまして、特に今回のように多数の人が筑豊地区に出る、一地方の財政では相当困難であるというような問題もございますし、福岡県では全額補助にしてほしいということでございますので、その財政状況について、自治庁
——
われわれもそれに重大な関心を持っておりまして、われわれはまず高率補助をしてもらいたいということで現在内部で相談いたしております。現在自治庁が責任を持って福岡県の財政についての検討をしておるというような段階であります。
多賀谷真稔
58
○多賀谷
委員
問題は、町村あたりで失対をやりたい、しかも高率補助を受けたいというのが受けられないという実態。これは八十名という限度があって、八十名以上をしなければならない。ところが、八十名以上やる余裕は町村としてはないのです。こういう貧弱町村がある。そこで、問題は、八十名をこえなければできないことになっていて、結局四十名か五十名に終ってしまっておるから、そこでその高率補助の適用を受けられない、こういう実態なんです。これも
一つ
考え
ていただきたい、かように思っております。 次に、例のマル石の復活です。結局、炭鉱離職者の場合は、現在の日雇い登録という制度の特例を設けていただきたい、こういう
考え
方。これは、合理化法案のときに、今までの日雇い登録
労働者
というのは一世帯から一人、こういう原則があったけれども、これは不適当であるというので、全員炭鉱離職者は日雇いの登録ができるという制度ができておったのですが、現在なくなっております。そこで、現在の抽出
調査
でございますけれども、たとえば福岡県の抽出
調査
によりますと、大体、
生活
保護法の適用を受けておる人で、稼働
労働
力があるのが八七%いて、そうして
労働
力のないのが一三%という現状で
生活
保護を受けておるというのです。八七%も稼働
労働
力があって
生活
保護を受けなければならぬというのは、これは私は
労働省
の責任だと思うのです。厚生省としてはよく見てやっておるわけです。八七%も稼働
労働
力があって、それが
生活
保護法の適用を受けなければならぬというこの実態は、私は
労働省
の責任は大きいと思うのです。しかも、そのうち、
労働
力が一世帯二人ある場合が二四%、一世帯三人ある場合が七%という数字が出ておるのです。ですから、少くとも三一%の人は、あなたの方の失対登録の今までの
条件
でいきますと一人しかできないというわけです。三一%は全然恩恵を一人しか受けられない、こういうことになりますから、このマル石制度の復活ということをぜひやっていただきたい、かように
考え
るわけです。
百田正弘
59
○百田説明員 この点につきましては、いつかもこの
委員
会で御答弁申し上げたと思いますが、そういうふうに
考え
たいと思っております。ただ、先ほど
大臣
からお話がございましたように、石炭離職者につきましては、一般失対で吸収していくということは適当ではないんじゃないか、従って、何か、今の適格の基準の問題につきましても、補助率につきましても、あるいはまた資材費等の
関係
につきましても、やはり特別にここに
考え
ていく必要があるのじゃないかというふうに事務当局としては
考え
ておるわけでありまして、これらの点につきまして政府部内で目下研究
調査
中であります。
多賀谷真稔
60
○多賀谷
委員
一体
いつやるのですか。私はこの質問をしたのは一年ほど前だと思うのです。そして、あなたは、やりっますと、こうっいうことでした。ですけれども、今まで相当の期間がたっておるにもかかわらず全然行われてないのです。これは簡単なことなんですよ。
昭和
三十年の合理化法案が出ますときには、全員失対事業にもいけるようにしますということで出発したのです。そのうちになくなったわけです。それで、この復活というのは、それほ公共事業の問題もあるでしょう。公共的な産業への吸収もあっるでしょう。しかし、こういう簡単なことがなぜできないのか、非常に不思議に思うのです。
百田正弘
61
○百田説明員 石炭離職者について今の形のままでやりますことは、一般に対するいろいろな影響、ほかにも波及することにもなりますし、これを全部やるということになりますと、これは非常にむずかしい問題になって参りますので、われわれは、できればこれを区別してやっていきたい、こういうふうに
考え
ておりますために現在まで実施しておりませんが、早急にそういうふうな
考え
方で実施したいという気持は持っております。
多賀谷真稔
62
○多賀谷
委員
これは初めて行うものではなくて、すでに
昭和
三十年の合理化法案が通過する際にそういう言明をされた。そういう制度があったわけです。その制度があったのに、勝手にあなたの方で取り消された。ですから、この復活というものは、私たちから言うならば、
昭和
三十年の合理化法案が通過したときの
条件
を守ってもらいたい、こういうことです。こんな簡単なことをなぜ遷延しておられるのか、私は非常に理解に苦しむわけです。 さらに、
大臣
に申し上げたいのは、今までいろいろ承わったのですが、問題は、私は可及的すみやかにやらなければだめだと思うのです。これが問題だと思うのです。来年度の予算というのは、なるほど今予算折衝をされておりますけれども、四月一日から出発する問題じゃないと思うのです。少くともこの十月ごろからやらなければ間に合わない問題ですよ。一方においてはどんどん買い上げは進捗しております。さらに、買い上げもすでに締め切った量以上に申請が出ておる。こういう
状態
の中で、しかも大手では首切りが起っておる。早く対策を樹立しなければならないと思う。来年の予算までに緊急にやる仕事があると思う。
一体
いつから出発されるのか、総合対策というのはいつ出せるのか、これを御明示願いたい。
松野頼三
63
○
松野国務大臣
応急対策としては、さっそく三十四年度の失対費用につきましては緊急に他の調整を繰り合せて集中的に石炭の離職地域に持って参ります。なお、つい先週決定しました予備金支出もすみやかにこれは実行いたしますから、九月、十月、おそらく十月中には予算の消化が全部できると思っております。もちろん、中には建築という問題がありますから、建築のものは多少時間がかかるかもしれませんが、現在できるいわゆる鉱害あるいは公益事業というのは、さっそく十月中にはその効果が現われると思っております。従って、可及的にということは、私も実は可及的にと思っております。この成果が十月、十一月には出てて参りまししょう。その成果を見て、さらに足らないところを補って今年は参りたい。従って、すべて来年の予算にゆだねるということではございません。緊急対策はすでに予備金支出によって十月、十一月に成果を上げる。その結果を見て、十一月、十二月はさらに新しい予算あるいは予備費の問題も出て参りましょう。また緊急な対策を続ける。いわゆる恒久ということは第三段目に出て参りますが、これは三十五年予算でなければ見通しと成果というものは出て参りません。三十五年予算は政府は年内にきめるという
方針
を立てておりますが、部内で固まらなければ予算計上にはならないかと存じます。従って、臨時対策も恒久対策もともに一応年内にきまらなければ来年の四月に間に合いませんので、年内に臨時的なものも恒久的なものも、ともにきめなければならないということになっております。
多賀谷真稔
64
○多賀谷
委員
さらに申し上げたいのは財源の問題ですが、財源の問題については、私は、その利益を受ける人々がかなり負担をすべきであると率直に思うわけです。利益を受ける人々というのは、残った炭鉱の人々もそうでしょうし、あるいは重油の問題もあると思うのです。また重油を使う側の問題もあると思うのです。ですから、そういった利益を受ける人々の負担並びに政府の補助金と相待ってこれを行うべきである、こういうように
考え
る。
昭和
三十六年度以降の合理化法案の財源が御存じのように
昭和
四十二年まで残っておる。これの使い方についていろいろ論議をされておるわけですが、こういった財源もやはり総合的に有効に使うように研究をしてもらいたい、かように要望をしておきます。 次に私はベンゾール中毒問題についてお聞かせ願いたいと思います。最近の新聞に毎日のように職業病たるベンゾール中毒の問題が出ない日はないくらい出ております。それから、ラジオの国民の声として朝七時前に行われております投書欄の声も、非常にこの問題を取り上げておる。結局、
一体
政府並びに
政治
家は何をしているか、一口に言いますとこういうことですね。ですから、われわれとしては、この対策に万全を期さなければならない、こういうように
考え
るわけです。 そこで、時間もありませんのであまり深くは聞きませんけれども、ベンゾール入りののりというものについて、
一体
従来どういうような処置をとってきたのか、こういうことを一点お聞かせ願いたいと思います。 さらに、ベンゾールのりあるいはベンゾールそのものを使っておる雇用
関係
にある
労働者
、すなわち
工場
等についてはどういう処置をされておるのか、それから、今問題になっております家内
労働者
といいますか、雇用
関係
にない
労働者
についてはどういうような対策をとられつつあるのか、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
堀秀夫
65
○堀説明員 ベンゼンにつきましては、これを常時使っておりますると、あるいは白血球の減少であるとか、あるいは頭痛、目まいから、さらにいろいろ局所の障害を起すというような重篤の症状を来たすものでありまして、これの予防につきましては、まず第一に、
労働
基準法の適用対象である事業場につきましては、この一年以来
労働基準局
における職業病予防対策の最重点をここに置きまして、各地の
基準局
、
監督署
をして監督指導さしておるところであります。 これにつきましては、第一に、環境測定を実施いたしまして、ベンゼンを使用しておる事業場について、果してベンゼンの有害ガスがどの程度にあるのかという測定をいたしまして、これが一定限度以上ある環境におきましては、環境の改善のため、あるいは通風あるいは換気施設というようなものの整備を行わせておるところでございます。それから、第二番目に、ベンゼンを使う作業に従事しております
労働者
につきましては、健康診断を励行して、その早期発見に努めるということを実行したわけでございます。それから、第三番目に、原料であるベンゼン、特にベンゼンのり等につきましては、 この中に含まれておりまする毒性がどの程度であるかということをはっきりさせるために、なるべくこれに対して表示を行わせるということ、それから、できれば、ベンゼンのり等につきましては、これにかわる代替品を使用させる、こういうことを中心に指導をしてきたところでございます。 しかして、特に最近東京都内において問題になりました、ベンゼンのりを使っておる方々が職業病を誘発するという問題につきましては、基準法の適用
労働者
だけでなしに、基準法の適用のない家内
労働者
も非常にあるわけでございます。そこで、
労働省
といたしましては、このような事態にかんがみまして、ベンゼンのりを使用する小規模事業場の
労働者
、それから家内工業の従事者を対象といたしまして、
労働
環境改善のための巡回指導を実施するということにいたしまして、実はこの十六日から毎日実施しておりまして、ただいまも実施しておる状況でございます。その環境指導におきましては、一方において東京都衛生局において健康診断のための巡回検診を行なっておられますが、これと対応いたしまして行うものでございまして、
内容
は、
労働
環境の測定を行う、それから、
労働
環境改善のための技術指導を行う、それからさらに、現在使用しておりますゴムのりの
内容
の分析を行う、あるいはその他
労働
環境改善と一般健康についての相談に応ずるということを現在無料で実施しつつあるわけでございます。 このようにいたしまして、家内
労働者
につきましても
労働
基準法の適用事業場に準じまして今後指導を強力に行う
方針
でございますが、これと並びまして、やはり問題は、これは通産省との
関係
もございますが、ベンゼンの多量に含有されておるのりを使用するところに問題があるというふうにわれわれも感じております。そこで、これにつきましては、東京都におきましては主要メーカーを最近集めましてベンゼンのりにかわるべき適当な、毒性の少い接着剤を使わせるように呼びかけて指導を行なっているわけでございまするが、これは実施されている場合もありまするし、あるいは、そのような指導を受けてレッテルを張りかえたが、やはり毒性のあるものが出回っておるというような声も耳にしておりますので、これにつきましては、巡回指導その他を通じまして、現在使っておりまするいろいろなのり製品がございまするが、これを回収しておりますので、その
内容
の分析をなるべく早く行いたい、このように
考え
ております。その結果を得ましてさらに第二段の措置を
考え
てみたい、このように思っている次第でございます。 それから、健康診断の結果起ります、要するに療養を要するというような症状の方々につきましては、基準法の適用事業につきましては、労災保険によりまして、あるいは基準法そのものによりまして、使用者に療養させるということをやらせるわけでございますが、家内
労働者
については、これは遺憾ながら現在ではこのような法的根拠がありません。そこで、これにつきましては、厚生省と連絡いたしまして、医療保護を弾力的に実施してもらうということでお願いをしてありまするが、厚生省におきましても、この医療保護を弾力的に行う問題につきましては、今いろいろ実施方法を検討しておられまして、近く実施に移されると聞き及んでおります。 それから、以上のようなことが応急の対策でございまするが、やはり、私は、今後におきまして、問題は、この家内
労働者
につきましても法的規制を行うような根本的な対策も
考え
られると思うのでございまして、この問題につきましては、この秋のうちに、学識経験者その他
関係
者にお集まり願いまして、家内
労働
の問題について
調査
及び法制等の問題について検討を行う
調査
会をなるべくすみやかに発足を願いまして、この恒久的な問題については御審議をわずらわし、その結果を待ってさらに抜本的な対策を立てる、このように
考え
ておるのでございます。
多賀谷真稔
66
○多賀谷
委員
このベンゾール慢性中毒というのは、放射線障害による血液病に似た症状を呈する、こういうことが医学雑誌に書いてあります。そうして、ベンゾールは骨髄を冒し再生不能性貧血を起すのであるが、患者の顔色が悪いこと、皮膚に斑点ができること、頭痛、食欲不振などを
訴え
てくる、白血球及び血小板の減少が著しい、赤血球もまた減少する、こういうことが書いてある。そうすると、結局治療というものは輸血なんですが、これは非常に費用がかさむと
考え
るんですが、
一体
補償問題については厚生省の医療保護という弾力的扱いをしてもらうということで足りるのでしょうか。
堀秀夫
67
○堀説明員 先ほど申し上げましたように、
労働
基準法もしくは労災保険の適用を取ける
従業員
につきましてはこれは労災の面によって療養のため必要な措置をなさなければならない、このように
考え
ます。その
方針
で今後も処してもらいたい、このように
考え
ます。 それから、家内
労働者
については、先ほど御説明をいたしましたように、現在その根拠法規がありません。従いまして、応急対策としては、厚生省に対して医療保護の弾力的適用を求めるという
方針
で、厚生省に検討をお願いしておる段階でございます。恒久問題としては、家内
労働法
問題を
調査
審議することによりまして、将来あらゆる問題をひっくるめた総合的対策の樹立を検討しなければならない、このように
考え
ておるわけでございます。
多賀谷真稔
68
○多賀谷
委員
問題はやはり将来の家内
労働法
の問題ですが、私は、法律を作る前に、現在の労災法の適用を受けさしたらどうか、こういうように思うわけです。たしか、けい肺の場合も、一人親方といって、雇用
関係
にない
労働者
の適用を受けさせた便宜的処置があったと思うのですが、このベンゾール中毒の場合もそういう適用を受けさせたらどうですかね。
堀秀夫
69
○堀説明員 けい肺の場合につきまして、石工等についてそのようないわゆる
組合
を作らせて擬制を行うというような措置をとった例もございます。ただ、家内
労働者
についてこの擬制を行なって労災保険料を納めさせるということになりますと、やはり保険料の分担というような問題が生じてくるわけでございます。これらの問題もありまするし、また、石工等の場合と違いまして、家内
労働者
は、御承知のように現在全国で大体八十数万存在するのではないか、このように伺っておりますが、これらと関連いたしまして法律的にいろいろな問題を生ずると思います。現状では、この問題について検討はいたしまするが、非常な困難を伴うと思います。従いまして、現状におきましては、やはり、基準法その他に基く法的な保障が得られないものにつきましては医療保障を弾力的に行う、この方法が最も手っ取り早い方法であろう、このように思います。
多賀谷真稔
70
○多賀谷
委員
その問題はちょっとあとにしまして、大体空気中の恕限度はどのくらいですか。
堀秀夫
71
○堀説明員 空気中の恕限度は、実はここ数年前までは百PPMというものを恕限度にしておったのでありますが、百PPM以下でありましても、やはりこれを長期に使っておりますとこのベンゼン中毒症状を起すというような
事例
が
報告
されておりますので、実はこの一年来は百PPMを大体二十五PPMくらいに下げるというところに目標を置いて指導を行なっておるところでございます。
多賀谷真稔
72
○多賀谷
委員
普通の
工場
にはこういう中毒症状は起っていませんか。
堀秀夫
73
○堀説明員 普通の
工場
におきまして最も徹底的にこれを行うためには、局所吸引排出装置というような装置を行いますると、この恕限度ははるかに下回るわけでございます。問題は、このような装置を行う資力がないような小企業及び家内
労働者
にあると
考え
るわけでございます。これにつきましては、通風、換気を励行することによって、空気中に含まれておるベンゼンのガスを相当減少させることができるわけでございますが、やはり、これを常時行うというような点についてはなかなか励行も期しがたいと
考え
られるわけでございます。中にはよく励行しておるところもございますが、やはりこれは、根本には、
一つ
はベンゼンというものの毒性に対する労使双方の理解をさらに深めていくPR
活動
が必要ではないかと思っているわけでございます。従いまして、そのPRを強化させることによって、今のようなことを、いろいろ苦しい面もありまするが励行していただくということをまず第一に行わなければならないと思うわけであります。しかし、それと同時に、やはりベンゼンのりのうちに含まれておりまするベンゼンの量というものを減らす、そうして比較的通風、換気の悪いような環境におきましても今のような恕限度を上回るようなことのないように環境を改善していくことが必要ではないか、それと同時に、材料を改善していくことが必要ではないかと思うわけでございます。この面につきましては、ただいま、メーカーに対しまして、ベンゾールにかわる代替品を使ってはどうかということを強く指導しておるわけでございます。これと同時に、現在の実施状況について巡回指導その他を利用いたしまして
内容
の分析その他を現存行なっておりまするので、これらの成果をにらみ合せた上で、必要とあらばさらにもう少し強い規制を
考え
ていきたい、このように思っているわけでございます。
多賀谷真稔
74
○多賀谷
委員
各国の法制を見ますと、最低賃金法の出る前に主として家内
労働法
というのが出て、家内
労働者
の低賃金を規制するという面から最低賃金法はむしろ出発しておるようでございます。その中で、西ドイツ法なんかを見ますと、連邦政府は議会の承認を経て従業者の生命、健康、風紀に対し重大な危険を伴う家内
労働
を法律、命令によって禁止することができる、こういう規定を設けておる。私は、環境を変えるといいましても、環境指導というのはどうしても限度があると思うのです。
工場
あたりでも資力のないものはできないというくらいですから、ましてや、内職とか、専業にいたしましてもそういう形で行われておる場合に、環境を変えるといいましても、私は不可能ではないかと思う。あるいはまた、そういう仕事は
自分
の家庭でしないで、どこかのいわば寄り場というものを別に作りまして、そこでやるかというような問題も起るでしょうけれども、実際問題としてはこれはあまり成果を見ないのじゃないか。そこで問題は、ゴムのりの使用禁止、あるいは、使用禁止という点までできなければ、家内
労働
に出すことの禁止、どっちかを選ばなければならぬと思うのです。収入の面はありますけれども、これは別に
考え
なければならない問題として、事人命に関する問題を扱う場合に、単に収入がいいからということだけでは済まないと思うのです。ですから、これについてはどういうようにお
考え
ですか。
堀秀夫
75
○堀説明員 実は、ベンゼンのりの問題につきまして、私どもも、これを使っておられます実際の主婦の方その他にもお会いしていろいろ御懇談を申し上げたのでありますが、率直に申し上げまして、これにつきまして私どもが最も頭を悩まされる問題は、その会見の際におきましても、主婦の方は、これを禁止するというようなことによりましてわれわれの
職場
をなくなすということは絶対にやってもらっては困る、こういう非常な切実な叫びをなされたのでございます。しかしながら、この点につきましては、ただいまお話しのように、これを常時使っておりますと非常に重篤な職業病を起すというようなことになると思います。ただいまのような、
職場
をなくさないということと、今のような、毒性を持つ材料をいかに措置していくかという、この
二つ
の面から考慮しなければならない、そこにわれわれの最も頭を悩ましておる問題があるわけであります。 そこで、現在の措置といたしましては、まず第一段といたしまして、メーカーに対しまして、ベンゾールを含むのりは使用を行わないで、かわりののりを使ってもらいたいということを現在呼びかけて指導しておるわけであります。そこで、果してこれらの措置が円滑に行われておるかどうかという問題につきましては、先ほども申し上げましたように、巡回指導その他によって、現地に参りまして、現存使われておるのりの分析その他をやりつつあるわけであります。これらをにらみ合せまして、ただいまのような根本にある
職場
を奪わないということとからみ合せながら、これにかわる代替品を使わせていくという方向に向って検討を行いたい、このように
考え
ます。
多賀谷真稔
76
○多賀谷
委員
トロールを入れてベンゼンのかわりにするというお話もありますけれども、実際はベンゼンの方が早くかわくから能率がいいわけでしょう。だから、これは実際問題としては私はできないのじゃないかと思うのです。できないというのは、従業者も毒性を知っておりながらベンゼンの方が能率が上るからそちらを選ぶ、こういう方向に行きはしないかと思うのです。ですから、ベンゾール入りののりは全然製造しないのだ、ここまで踏み切らなければ今のことはできないと思います。これは
一体
どちらの方向へ行っておるのですか。
堀秀夫
77
○堀説明員 ベンゾールの入ったのりを製造しないということは望ましいことであると思います。そこで、これらの問題について目下通産省ともいろいろ協議をしておりまして、現在のわれわれの呼びかけは、ベンゾールの入ったのりは作らないで、かわりのものを配給してもらいたいということをメーカーに呼びかけております。そこで、この第一段の措置が果してうまく行われるかどうかということとにらみ合せながら、しからば、その次に、これだけでも工合が悪いときには、さらに、ただいま言われましたあるいは使用を禁止するというような法的措置を講ずることも必要になってくるかもしれませんが、問題は、これを一気に禁止することによりまして
職場
を奪うということが起きないよう代替品を使わしていく、そのかわりに、その裏づけとして、ベンゾールの入ったのりは製造しないように、こういうことを目標にして現在指導を行いつつあるわけでありまして、この実施状況をもう少し分析してみまして、必要とあれば第二段の措置も検討してみたい、このように
考え
ております。
多賀谷真稔
78
○多賀谷
委員
ベンゾール入りのゴムのりの使用禁止ということはできるのですか。まず技術的にできるのですか。それから、能率を非常に阻害するのですか。また法律上はどうなんですか。
堀秀夫
79
○堀説明員 実は、ベンゾールのりを使わないで他の代替品を使うということになりますと、能率は確かに悪くなります。そこにまた
一つ
の問題があります。しかしながら、能率は落ちても、このベンゾールのりを常時使っておることによって生ずる悲惨な
状態
というものを
考え
ますならば、やはり若干の能率の低下は忍ばなければならない。そこで、代替品を使うように指導していきたいと
考え
ておるわけであります。 それから、その次に、法律的にどうかという問題でありますが、法律的には、
労働
基準法の適用事業場につきましては、安全衛生規則その他によりましていろいろな規制を行うことは
考え
られます。しかし、家内
労働
も含めてどういうふうに処置していくかということになりますと、法律的にもいろいろな問題があります。ベンゾールそのものは、のりを別にいたしますれば、たとえば御承知のように塗装
関係
の事業であるとか、その他各
工場
、事業場において現在広く使用されておりますので、ベンゾールそのものを禁止するということは、これはできないことでございます。従いまして、しからばベンゾールを含めたのりを製造するという場合にこれを禁止することができるかどうかという問題になるわけでございますが、これは技術的にいろいろむずかしい問題があるわけであります。これらの問題も総合いたしまして、技術的、法律的にいろいろな困難がありますが、われわれといたしましては、まずメーカーに対しまして、ベンゾールのりは配給しないで、かわりになるようなのりを配給してもらいたいということを呼びかけておりますので、この成果を見定めながら、今のいろいろな技術的困難あるいは法律的困難がありますが、第二段の対策が必要ならばさらに検討して参りたい、このような予定で現在指導を行なっておるわけであります。
多賀谷真稔
80
○多賀谷
委員
これは、のりだけでなくて、塗料なんかの被害は出てないですか。
堀秀夫
81
○堀説明員 のりでございませんで、ヘンゼンそのものを使うことによって、やはり密閉された環境においてこれを使用する場合に中毒を起したというような
事例
はあります。これは
労働
基準法に基く安全衛生規則その他によって現在も指導を強力に行なっております。それに反すれば基準法
違反
になりますので、基準法の適用のある
工場
、事業場においては、防護基準等を設けて、これに従わせていくということによって防止をなし得るものと
考え
ております。
滝井義高
82
○
滝井
委員
関連して。あとで私も少しベンゾールのりのことを聞きたいのですが、今ちょうど私の聞きたいと思う問題に触れておりますからお尋ねしておきたいのですが、業者の方に代替品を使わせるということを盛んにおっしゃっておるのです。ところが、その代替品だといって持ってきたものを使ったならば、また中毒が起ったという例があるわけです。そこで、今度はそれをどこかで分析をしてもらいたいというので大学その他に持っていきつつあるわけです。ところが、これがなかなか簡単に分析がいかないというような問題が出てきておるらしいのですよ。こういう点は、やはり
労働省
の方で、そういう代替品が出たならば、通産省と十分協議されて、これは大丈夫だということで、
労働省
なり通産省の検印を押して使わせるようにしなければいかぬのではないかと思うのです。そうしないと、代替品を使え使えというので、これは代替品だといって商人が持ってきた、使ってみたらやはり依然としてベンゼンが入っているのだ、こういうことではちょっと困ると思うのです。そこで、何かわれわれの
調査
した
——
京都だったか兵庫だったか、そういう問題がありまして、
婦人
少年室の方で、さてどこかの研究所に持っていってやってもらいたいのだが、これはなかなかすぐにはできないのだと言われて困っているという話を聞いたのです。こういう点は、やはりある程度
労働省
なり通産省なりが責任を持たぬと、さいぜんあなたが言われたように、ヘップ・サンダルを張るのにベンゼンなら非常に乾燥がいい、代用品にしたら乾燥が悪くて三割なり四割の能率の損になる、こういう問題があるわけです。ですから、やはりその点賃金の問題にも関連するし、代替品をやらせるならば、ある程席あなたの方で責任を持つ、どこかの官庁で責任を持つというふうにしなければいけないのですが、そういう点はどうですか。
堀秀夫
83
○堀説明員 ただいまのお説はまことにごもっともでありまして、われわれとしてもその方向で検討しておるわけでございます。問題は、その使用される場所が家内
労働
という非常に発見しにくい環境にあるということであります。そこで、われわれといたしましては、今のレッテルを張るというような方法は今後ぜひやらせたい、このように思っておりまするが、それと並びまして、先ほど申し上げましたように、現在行いつつある巡回指導等におきまして、各現場で使用されているのりを回収いたしまして、この
内容
を分析するという作業を現在やっておるわけでございます。 それから、これを大学等に持っていってもなかなか時間がかかるというような声も聞いておりますので、
労働省
付属の
労働
衛生研究所にもこの作業を頼んでいたしております。現在回収いたしましたベンゾールのり等をこの
労働
衛生研究所等においても分析する作業を進めたい、このように
考え
ておるわけでございます。
五島虎雄
84
○
五島
委員
関連して。家内
労働法
の問題が出たわけですけれども、ずっと前の国会からこの家内
労働法
の問題が非常に重点的に抽出されつつあるわけでありますけれども、家内
労働法
というその法の中に包含せらるべき人員は、まだ
労働省
ではつまびらかになっていないのではないかと思う。その
調査
した結果は大体推定四十七、八万人だというふうにいわれておるわけですけれども、まだその正確なところは明らかでないというような答弁でした。ところが、このベンゾール
関係
の、印刷物、あるいは今のケミカル、シューズとか、あるいはビニールの靴、これら中小零細企業を取り巻く家内
労働者
がどのくらい全国におるかというようなことの推定はどうでしょう。 それから、今
基準局長
が説明されたように、東京都内は十六日からもうすでに行われているらしいのですけれども、二十二日までですか、一週間の間にこれをやるのだというのですが、こういう把握しがたいところの家内
労働者
の実情
調査
が一週間でできるかどうかということです。そうして、東京都だけではなくて、関西あたり、特に
滝井
さんやここの
永山
委員長
や、その他藤本
委員
などが兵庫県に
調査
に来られて、そのときは
滝井
さんが言われたように
婦人
少年室長も来られたわけです。それから県の衛生部も来られて、このベンゾールの問題に話が入ったわけですけれども、なかなか把握ができないのだ。そうして、さいぜん言われたように、これを措置するのは非常にむずかしい。それから、五十名以上の
職場
には衛生管理者があるけれども、五十名以下は何か一年について一人に五百円ばかり業者が出すのだ、ですから五十名以下の零細企業ではなかなか金を出して
従業員
の健康診断などはできない。そこで
労働基準局
としてはこれに、積極的にこれをやれというわけにはいかぬ。それからまた、業者は金を出すのがきらいだし、
従業員
は病気を発見されるのが困る、病気を発見されたら直ちに失業というような問題になっていく、そういうような立地
条件
があるから、非常に問題が困難だ。しかもそれ以下の家庭で
奥さん
たちが、これは
婦人
少年室にも
関係
があるでしょうけれども、
奥さん
たちが
生活
の足しにこれをやっておられる。そうして知らず知らずの間に中毒をしていかれる。そして特に兵庫県はゴム産業が特異産業になるわけです。ところが
労働省
では東京地区を一週間やって、そうして第二段の措置をとるのだと言われるけれども、東京都を
調査
されて、
調査
の結果ベンゾールがどれだけ含まれるか、そういう傾向だけを見るために、全国の趨勢を見るために東京都内だけをやっておられるのか、あるいは全国的にそれを指令して、もうすでに死んだ人もあるらしいのですけれども、そういうような全国的な配慮はされないのかどうかという問題、それを非常に雑駁ですけれども、お願いします。
堀秀夫
85
○堀説明員 全国の家内
労働者
につきましては、
労働基準局
あるいは
婦人少年局
等におきまして、これは大体大まかな
調査
でございますが、数の把握等はいたしております。これはこの前にも申し上げたと思いますが、大体世帯数で四十数万、それから
労働者
の数にいたしますと、約八十万程度と思います。しかしこれにつきましては、まだ詳細にもう少し業種別に掘り下げました
調査
を行いませんと、その概要がつかめませんので、引き続きましてその
内容
をもう少し掘り下げた
調査
を実施したいと
考え
まして、現在これを検討しておるわけでございます。 なおその中でベンゼン
関係
を使っておるのが何人かというお話でございますが、
基準局
の
調査
では、全国的な
調査
がベンゼンという工合に限定して出ておりません。たとえばこの家内
労働
世帯につきましては、皮革、ゴム製品等の製造業となっておる世帯の数が約三万五千ぐらいでございますが、その中でどの程度がベンゼンに該当するかというような
調査
がございません。なお
婦人少年局
の方でもしございましたならば後刻御答弁があると思いますが、大体以上のような状況でございます。 それからただいま実施しております東京の巡回指導は、これはあくまでも第一段の措置でございまして、この第一段の措置状況を見定めた上で、さらに同じようなことを実施する、あるいはまた趣きを変えました方法でこれを改善して実施するということも検討したいと
考え
ております。同様に、たとえば大阪であるとか兵庫であるとかいうような、御指摘のようなこの
関係
の業態が集まっておりますような地区におきましては、東京と同様なことを、これはサービス的に実施いたしたいと
考え
ておるわけでございます。
多賀谷真稔
86
○多賀谷
委員
私は基準法の適用される
工場
と、基準法は実際は適用されるけれども、監督できないような家内工業といいますか、零細工業の場合、それから雇用
関係
にない、いわゆる家内
労働者
の場合とを区別してこの問題を扱うと、私は
職場
を失うと思うのです。ですからベンゾールというのがそんなに有害になり、ことにベンゾールのゴムによってそれだけの非常な患者が出ておるという場合なら、私はむしろベンゾールののりを全面的に禁止したらいいと思うのです。それによって若干コストが高くなるということは、これは全国民が負担をすればいいのであって、若干コストが高くなってもやむを得ないと思うのです。ですからのりについてはベンゾールを入れない、こういうことを私はむしろ行うべきであって、
工場
なら管理がいいからいい、あるいはそれは家内
労働
に出したら環境が悪いからできない、こういうことをしますと、
職場
を失うという
状態
になると思うのです。ですからこの点は私はむしろ取扱いとしては一般の
工場
もこれは遠慮してもらいたい、こういうように進められていったらどうかと思うのですが、その方向に行っているわけですか。
堀秀夫
87
○堀説明員 今後の問題として、第一段の措置は、われわれも先ほど申し上げた通りでございます。ただいまのような有力な御意見もわれわれは拝聴しております。この問題につきましては、通産当局ともさらに検討いたしまして、またわれわれの行なっております巡回指導等におけるこののりの分析等の成果も近いうちに出て参ると思いますので、それらの問題もからみ合せて、ただいまのような有力な御意見もありまするので、通産省と十分協議いたしまして、今後の問題をさらに検討していきたいと
考え
ます。
多賀谷真稔
88
○多賀谷
委員
次に家内
労働法
ですが、賃金は最低賃金の関連事項として若干家内工賃というのは出ましたけれども、衛生環境の面、
労働者
保護の面から、家内
労働法
というものを作られる意思があるかどうか、これは
大臣
からお聞かせ願いたい。
松野頼三
89
○
松野国務大臣
家内
労働
の実態把握といたしまして、家内
労働
は主として、かりにこの問題で私が焦点と
考え
ますのは、やはり安全と衛生面を家内
労働
としては保護法的な意味で包含をいたしたい、こう
考え
ております。もちろん一番大事なものは賃金でありますが、家内
労働
の保護法に賃金まで加えるよりも、今日最低賃金法という法律が通りましたし、これに準拠して家内
労働
も適用ができますので、一応私が今日
考え
ております家内
労働
というものは、安全、衛生面の主として保護的な意味で、安全の保護、衛生の保護という観点から家内
労働法
を検討をいたしたいという意味で、学識経験者に依頼をいたしたいと
考え
ております。
多賀谷真稔
90
○多賀谷
委員
さらにその場合、今の労災的な補償面ですね、これは加えられる必要があると思うのですが、これはどういうふうにお
考え
ですか。
松野頼三
91
○
松野国務大臣
もちろん労災的補償というのが安全と衛生の保護でありますから、これはおのずから今日の労災保険法、直ちにそれを適用ということになるかどうかそれはわかりませんが、いずれにしましても使用者というのもありますし、政府としては国民の衛生及び安全の管理もございますので、そういう観点からこの問題を解決すべきものだというので、その具体的構想はいずれ学識経験者の御答申を得て私は実行したいと思いますけれども、私の
考え
は、おっしゃるように衛生も……(多賀谷
委員
「補償も入るのですね。」と呼ぶ)補償、衛生それから安全というものの保護を主体としてやるべきだと
考え
ております。
多賀谷真稔
92
○多賀谷
委員
できるだけ早くこの問題を解決していただきたいと思いますし、また現状の問題については私は早急に手を打っていただきたいと思います。 それからこれに関連してヘップ・サンダル工
組合
というのが何か協同
組合
に対しての団体交渉の申し入れをしたけれども、雇用
関係
にないというので拒否されたということを新聞で見たのですけれども、
一体
労働省
ではどういうようにこれをお
考え
になっておるのか。
労働組合法
の
労働者
というものは、これは雇用
関係
がなくても
労働組合
ができる、われわれはこういうふうに
考え
ておったのですが、どうですか。
亀井光
93
○
亀井説明員
具体的な今の問題、私らもまだ十分地方からの
報告
も受けておりませんので、ここで御答弁申し上げるわけにはいきません。まあ
労働組合法
にいいます
労働組合
というものは、やはり使用者との
関係
におきまして、
労使関係
というものを前提としての
労働組合
というふうにわれわれは解釈しております。
多賀谷真稔
94
○多賀谷
委員
しかし
解雇
された者でも
労働組合
というものはできるでしょう。
亀井光
95
○
亀井説明員
そういう具体的な問題ではなくて、全体が雇用
関係
にない者が
組合
を作った場合に、使用者との間にどういう
関係
になるかというところまでは
労働組合法
はいっておりません。ただ個々の企業の中で、その企業以外の者が含まれる、あるいは企業から
解雇
された者が含まれる、こういう場合におきましては当然
労働組合法
は予定されておるのでありまして、ただ全体として
労働者
が使用従属
関係
にない場合には予定してないということを申し上げたわけであります。
多賀谷真稔
96
○多賀谷
委員
労働
基準法は確かに雇用
関係
を前提にしているのですが
労働組合法
というのは必ずしもそうではないでしょう。基準法とでは、同じ
労働者
の定義が違うと私は思うのですがね。
組合
法の場合はそうでしょう。ですからこの場合にも、法律的にいうと、当然団体交渉ができる、こう解釈すべきじゃないですか。
亀井光
97
○
亀井説明員
もちろん
労働者
の定義は同じでございます。
労働
の対象として賃金を得ている者、これは
労働組合法
でも何ら変りはないのです。
労働者
という観念は、そういう意味です。だた
労働組合法
制定の当初の精神としましてはそういうものは予定してなかったということを私は申し上げたのでございます。それからそういうものが
組合
法から排除されるかといいますと、そういうものを禁止する規定は
組合
法にはないわけです。それは結社の自由という
一つ
の観念から出てきまする
考え
方としてそういうものはあり得る、存在は認めるというだけにすぎないのです。
多賀谷真稔
98
○多賀谷
委員
具体的にはどうなんですか。
亀井光
99
○
亀井説明員
組合
法上の
労働組合
を作りまして、果してそのものの法律的な効果というものがすぐ出てくるかどうか、すなわち使用者という
一つ
の対象がないために、出てくるかどうかという問題は別問題としまして、結社の自由に基く
組合
を作る、これはできるわけであります。
多賀谷真稔
100
○多賀谷
委員
そうしますと、今の
組合
法上の
組合
を作れるわけですか、作れぬわけですか。
亀井光
101
○
亀井説明員
法律上効果が出てこないのではないかというのであります。というのは、使用者としての相手方がいないという意味でございます。
多賀谷真稔
102
○多賀谷
委員
使用者がいない、こういう意味ですか。
組合
法上の
組合
は作れるけれども使用者がいないから、
労働組合法
上の大部分の規定は適用できない、こういう意味ですか。
亀井光
103
○
亀井説明員
ですから、さっき申し上げましたように、
組合
を作りましても法律的な、
労働組合法
でいういろんな保護の規定というものの相手方がいないという意味で、作っても効果がない、法律上の効果がないということであります。
多賀谷真稔
104
○多賀谷
委員
組合
法上の
組合
はできるわけですね。作れるわけですね。
亀井光
105
○
亀井説明員
組合
法上正確にいろんな保護の規定を前提とした
組合
としての
組合
は作れない。というのは、
労働組合法
といいますのは、憲法二十八条に基く結社の自由の
一つ
の具体化の法律としましていろんな保護規定が作られております。その保護規定の対象となる
組合
としてはこれは無理ではないかという意味でございます。
多賀谷真稔
106
○多賀谷
委員
そうしますと、二条
組合
はできるのですか。
亀井光
107
○
亀井説明員
ですから、ここにございますように、「
労働者
が主体となって自主的に
労働条件
の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる」云々とございます。この
労働条件
の維持改善ということは、結局相手方のあることでございます。使用従属というものを前提としての
考え
方、先ほど申し上げましたように、
労働組合法
制定の基礎は、そういうものを前提としての
考え
方、従ってこのあらゆる条項をごらんいただきましてもおわかりになりますように、こういう前提で
労働組合法
というものは制定されておるわけであります。従ってそういう単なる結社の自由によって作られる団体というのは、これは自由でございましょう。ただ
労働法
でいいまする、そういう
労働法
で保護されておる、保護を対象としまするそういう
労働組合
というものは、今申しますように使用従属
関係
のない
組合
は無理であるということを申し上げたわけであります。
多賀谷真稔
108
○多賀谷
委員
労働
委員
会に提訴すれば受けつけますか。
亀井光
109
○
亀井説明員
これは資格審査の問題にかかって参りまするので、おそらく第二条の解釈からいってなかなかむずかしい問題があるのではないかと思います。
多賀谷真稔
110
○多賀谷
委員
しかし雇用
関係
が切れておる場合も実際受けつけておるでしょう。雇用
関係
が切れておる者だけの
組合
でも、実際は
労働
委員
会は受けつけてやっておるでしょう。
亀井光
111
○
亀井説明員
これはいろいろな問題、たとえば
不当労働行為
その他の問題につきましては、あるいはそういう場合もございましょうが、
労働条件
そのものについて、たとえば調整の
手続
その他を利用するというふうなことは、これは雇用
関係
が切れておりますからあり得ないわけであります。
不当労働行為
の権利
関係
というものは、雇用
関係
が切れようが切れまいが、やはりそこに原状回復という問題も出てきましょうし、あるいは過去におけるいろんな使用者の責任という問題も出てきましょうし、それは当然出てくるものと
考え
ます。
多賀谷真稔
112
○多賀谷
委員
どうも明確でないのですが、今起っておる場合の問題というものは、やはり都労委としてそう厳格に言わないで、何らかの形であっせんをされてしかるべきだと思うのです。それについてどういうようにお
考え
ですか。
亀井光
113
○
亀井説明員
都労委で今問題になっておりますので、具体的に私がここで意見を申し上げることもいかがかと思います。問題は、いろいろなそういう紛争の事実の
認定
の問題でございます。都労委が、その事実の
認定
をどういうふうに
判断
するかということできまって参るわけであります。問題は、そういう紛争がどういう場で解決されるか、あるいは都労委が正式にはそういうものは受理し得ない、そういう場合におきましても、あるいは別な角度から、社会的な問題でありますから、それに対して勧告あるいは何らかの措置をとるということはあり得る。ただ部労委が具体的に意見をきめていない状況でありますので、今ここで私からそれについてお答えするということは差し控えたいと思います。
多賀谷真稔
114
○多賀谷
委員
むしろ私は、こういった問題は、なるほど
労使関係
といえば
労使関係
ですけれども、
労働省
としての指導をされてしかるべきではないかと思うのです。
考え
方が違えば別ですけれども、私はそういうように
考え
るわけであります。そこでこの問題は、その後の進展を見てまた質問をいたしたいと思います。 次に、私は
労働大臣
に一言だけお聞きいたしたいのですが、これは九月十一日の閣僚懇談会で、全逓労組に対して二百五十円というのを支給しないで全特定と全郵政について支給するということがきまったやに聞いておる。これは新聞に翌日出ておりましたが、これはどうしてそういうような
状態
になったのか、これをお聞かせ願いたい。と申しますのは、寺尾郵政
大臣
は、さきに参議院の方を通じて、全逓にも支給するということを言われておるのです。ですから、それがなぜこういうように変ってきたのか、これは私は大きな問題だと思いますが、一言これをお聞かせ願いたい。
松野頼三
115
○
松野国務大臣
九月十一日かどうか、私も正確に記憶いたしませんが、郵政
大臣
が、仲裁の裁定を実行したい、それには全特定の二百五十円は仲裁裁定が出ている、団交もほぼ済んだ、支給をしたい、こういうお話がありましたから、それは、仲裁はなるべくすみやかに実施していただくことが精神でありますからけっこうでございましょうという話をしたように私は記憶しておりますが、その後郵政
大臣
から、全逓については仲裁が出ておらない、これは今回の問題として一緒に解決もできないようだという話がありまして、主管
大臣
でございませんから私も詳細なことはわかりませんが、そういう
報告
を受けて、私もそれを了承したような記憶を持っておりますが、いきさつはそういうもので、私の方が主管ではございませんので、郵政
大臣
からそういう話を拝聴したというだけであります。
多賀谷真稔
116
○多賀谷
委員
主管ではないと言われますけれども、公労法上の主管は
労働省
ですね。あなたの方ですよ。ですから、問題は、公労法上に起きた問題ですから、支払いは実際には郵政
大臣
がやるでしょうけれども、それは当然あなたの方の主管、といえば問題がありますが、当然関連のある問題だ、かように思うわけです。そこで結局は四条三項を履行してないということから問題は発しておる。ただそういたしますと、四条三項そのものが、これは議論はありますけれども、九十八号条約に
違反
するという問題が起っておる、そうして九十八号の第二条に
違反
をしておるのだということが、適用
委員
会の専門家
会議
で指摘をされた。しかも単に団体交渉だけでなくて、実際賃金の面にもこれが差別的取扱いになるということになりますと、私はますますその条約
違反
の問題が大きくなると思うのです。これは
一体
どういうようにお
考え
ですか。私は、寺尾郵政
大臣
がさきに四月にはこれは全逓にも出すということを言っておきながら、今度は全逓には出さない、こういうふうに変言をするというところに問題があると思う。恣意的に政府の
考え
方
一つ
によってぐらぐら変るような性格のものじゃないと思うのです。この点についてどういうようにお
考え
ですか。
松野頼三
117
○
松野国務大臣
九十八号は団体交渉権の問題ですが、九十八号の
違反
ということは指摘もされておりませんし、政府はいまだに九十八号
違反
だとは思っておりません。もちろん議論が国際的にあればそれは御自由でありますが、今のところ何ら九十八号の問題は議論はございません。四月に寺尾郵政
大臣
が何と御答弁になったか、ちょっとただいま速記録が手元にございませんし、そのときの引き継ぎも何もございませんでした。なおこの問題を
差別待遇
といいますけれども、これは団体交渉及び仲裁裁定という公労協の基本の法律によって
手続
をするのでありまして、特にだれを
差別待遇
するのだとかどうするとかいうことはあり得ない。同時にそれは各企業体別によって賃金構成が違っておりますから、仲裁裁定そのものでも、裁定が必ずしも各企業体同一に裁定が出るものではございませんし、各企業体ごとに裁定というものは出るものでありますから、裁定が出たたびにその裁定を忠実に守ることが今日公労協及び
労働大臣
、政府に課せられた使命でありますから、それを忠実にやる以外に今日はなかろう、こう
考え
ておりまして、特に
差別待遇
ということは、その問題とは別個の問題だ。団交及び仲裁できまる問題はその仲裁及び団交の結論が一番公平なものだ、こう解釈する以外に、仲裁そのものを批判するのは私としては少し話が前後するのではなかろうか、こう
考え
ております。
多賀谷真稔
118
○多賀谷
委員
ですから一方仲裁裁定ができないのですね。それは団交を拒否をしているからです。問題はやはり団交を拒否しているというところから出ておるのですね。結論的に言いますと、やはり差別的取扱いになるのですね、いかに文理解釈をしましても……。そうすると一方は仲裁裁定が出されておる。ですから予算の移流用ができるということになれば、あなたの方は補正予算でも組んで全逓にはやれるのですか。当然
労働大臣
としては移流用が予算総則によってできないということになれば補正予算を組まれるのか、これは当然お確かめになったと思うのですが、どうですか。
松野頼三
119
○
松野国務大臣
差別待遇
というわけじゃありません。団体交渉権を回復されれば、それは当然団体交渉権によって仲裁ができるのでありますから、そういう前提だからどうだという意味ではなしに、違法
組合
で団体交渉権というものはない。また団体交渉ができないという
立場
がお互いにあるわけでありまして、そのほかに差別という意味は毛頭ないと私は
考え
ております。
多賀谷真稔
120
○多賀谷
委員
しかし
現実
にはもらう方ともらわない方と出るのですから、これはどう
考え
ても差別的な取扱いと
考え
ざるを得ないのです。形式論としては仲裁が出ていないから予算総則で移流用ができない、こうお話しになるだろうと思う。しかしそれは
政治
じゃないと思うのです。移流用ができなければ、一方は補正予算を組んで当然次の臨時国会に出すという処置が初めてなされて、相待って
労使関係
というものがうまくいくわけですね。それを一方においては閣僚懇談会でおきめにならないで、一方だけ仲裁裁定が出ているから出そう、こういうことでは片手落ちじゃないか、こういうことです。しかも違法
組合
であると言われましたけれども、私は非常に問題があると思うのです。九十八号条約の問題は議論になっていない、こうおっしゃいますけれども、議論になっておりますし、その条文を指摘されておる、これについてはどういうようにお
考え
ですか。あとの方はよいですが、前段だけでけっこうです。
松野頼三
121
○
松野国務大臣
九十八号の問題について疑義が出た、あるいはある程度適用
違反
ですか、そういうものが出たという話は聞いておりますけれども、結論的にこれが違法だとか、あるいはこれがどうだとかということは最終的には出ておらない。
経過
的にはその問題が出たということは承知しておりますけれども、最後の結論においてはこれが違法だという結論は少しも出ておらないという結論だけを実は申し上げたわけで、あえて、仲裁裁定が出たものはすみやかに出していただきたい、これはもう当然なことでありますから、その実行をするということですからけっこうですと承わっただけであります。特に私の方では、予算の
内容
まで関与しているわけではございませんので、あるいは全逓についてどういう処置をとるか、これは主管
大臣
のお話を拝聴してから私の返事をしなければならぬ、こう
考え
ております。
多賀谷真稔
122
○多賀谷
委員
公労法の担当はあなたでしょう。公労法の運営から出てきている問題でしょう。ですから当然あなたとしては、この全逓の問題については、どう扱うかという質問があってしかるべきでしょう。また閣僚懇談会としてもやはりそのことを検討しなければならぬわけでしょう。それを言っておるわけですよ。
松野頼三
123
○
松野国務大臣
すみやかに正常なる運営をされて、そうして団交権を回復されて、そうして仲裁の実行をしてもらう、これが一番正しい道で、今これを私がいろいろ言えば
組合
干渉
になる。ですから私としては差し控えなければならぬことでありますから、願わくばそういう平等な
立場
でお互い話していけるような形になりたいと希望しておりますけれども、これ以上私が
組合
に
干渉
がましいことを言うこともよしあしですから、
組合
の自主的な
判断
と、そうして私たちは法律を守る以外にないのですから、与えられた法律を守るということ以外しか今日ただいまは言えないのではないかと私は
考え
ております。
多賀谷真稔
124
○多賀谷
委員
そうすると補正予算において、全逓労組の仲裁裁定に見合うべき二百五十円を支給するということは現在
考え
ていない、こういうことなんですね。
松野頼三
125
○
松野国務大臣
二百五十円支給する仲裁も出ておりませんし、果してそれが可能なように予算が組んであるかどうか、私も全逓及び郵政省の予算の
内容
を知りませんので、私は予算の金額の
内容
までは関与しておりませんし、今日もいまだに存じておりません。
多賀谷真稔
126
○多賀谷
委員
そうしますと、予算処置はしないということなんですか。
松野頼三
127
○
松野国務大臣
郵政
大臣
がどういう御
判断
をなさるか、予算のことですから主管
大臣
に御
判断
願うことを第一にして、その以後に私にまた御相談があれば御返事をしなければならぬ、私としては郵政省の予算を組んであるとか、組んでないとか、移流用するとかせぬとか言う権限もありませんし、そういうことも知っておりません。
多賀谷真稔
128
○多賀谷
委員
私は次の機会に法制
局長
官に来ていただいて、公労法上の四条三項の問題を中心にして、九十八号に
違反
するかどうかということについての法制局としての言明を願いたいと思う。これはILOの側で指摘をされたということについて、われわれは国内法を立法した
立場
から非常に関心を持たなければならぬと思う。これがわれわれの独自の見解において果して
違反
しておるかどうかということは研究をしなければならぬと、かように
考え
るわけです。よその方から、これは条約に
違反
しているんだと言われているのですから、少くともわれわれ立法府におる者としては、これに対してほんとうに
違反
しておるかどうかということの研究をする必要がある。ですからこのことについて次の機会に、来月でけっこうですから、法制
局長
官に来ていただいて、現在の段階において政府はどう
考え
ているかという言明を願いたい、かように
考え
ます。
永山忠則
129
○
永山
委員長
大原
君。
大原亨
130
○
大原
委員
最初に
労働大臣
にお尋ねするのですが、今多賀谷
委員
の方から全逓の問題がありました。私はこれから国鉄の
労働
政策の問題、若干営業上の問題もありますが、それから教組の専従問題について、簡潔に質問したいと思うのです。
労働大臣
は国鉄の総裁とか、文部
大臣
とか、郵政
大臣
とか、そういういわば使用者側ですね、
労働
運動
における使用者側当局ですね、そういうものに対しては
労働法
上も
設置
法上も、第三者の
立場
にあって、まあそれは内面はどうか知りません、資本家の結びつきがあるかどうか知りませんけれども、第三者の
立場
に立って、そうして正しい労使の慣行を作る、こういうことについて大きな責任を持っておられると思う。今の御答弁を聞いておりまして、私は国鉄の問題、専従の問題について質問をいたします前提として、
労働大臣
の
立場
について
一つ
御見解をお聞かせいただきたい。
松野頼三
131
○
松野国務大臣
もちろん労使間のよき慣行を作り、
労働者
の権利と利益というものを私どもは守るべき
立場
にある。そしてよき慣行を作るということが私に与えられた行政上の使命だと
考え
ております。
大原亨
132
○
大原
委員
きょうは国鉄総裁お見えになりませんか。
吾孫子豐
133
○
吾孫子
説明員 国鉄総裁はちょっと都合がございましたので、私が代理で参りました。
大原亨
134
○
大原
委員
端的にお尋ねいたしますが、これは国鉄の広島の地本を中心とする
不当労働行為
の問題なんですけれども、国鉄の当局は
労働
政策と営業政策とからませて、経営合理化の施策として作業所を閉鎖したりあるいは継続したりする、第二
組合
だから継続する、第一
組合
の者ががんばっておるから閉鎖する、こういうふうな御
方針
をおとりになっておるのですかどうですか、その点についてお伺いいたします。
吾孫子豐
135
○
吾孫子
説明員 国鉄は今いろいろな意味で経営の建て直しをしなければならぬ時期になっておりますので、いろいろな政策を次から次へととっておりますが、そのことと労組に対する取扱い方というようなものは別に
考え
ております。お尋ねのように結びつけては
考え
ておりません。
大原亨
136
○
大原
委員
もう
一つ
お尋ねいたしますが、たとえば職員の人事について、君を転勤させる、もし国労を脱退したならば転勤させない、あるいは臨時職員の昇格を、第二
組合
に入れば昇格させるけれども、させない、そういうふうな
方針
で人事をおやりになっていますか。
吾孫子豐
137
○
吾孫子
説明員 お尋ねのような政策はとっておらないはずでございます。
大原亨
138
○
大原
委員
もしそういうふうな政策を具体的にとっておるということで労使の慣行がじゅうりんされたり、感情的になったり、あるいはいろいろな問題が
発生
したり、そういう事実があるとすれば、私が事実を指摘しましたらどうされますか。
吾孫子豐
139
○
吾孫子
説明員
労使関係
の問題というのは時としていろいろ感情的な問題がそこにからまってくることもございますので、地方ではそのようなことからいろいろ問題があるかのごとく思われるような場合もないとは申せませんけれども、私どもはふだんも厳重に注意をいたしておりますので、そのような事実はないはずでございます。
大原亨
140
○
大原
委員
昭和
三十四年二月十二日大島自動車営業所弘田助役は安下庄派出所におもむき、所員四、五名に対し経営合理化の施策として同派出所を廃止し全員本所に引き揚げることになるであろう、君たちが国鉄
労働組合
にいたのでは阻止することはできないが、職能ならば当局も協力的なので善処できるから、将来のことも
考え
て職能
労働組合
に加入した方がよろしい、こういうふうに勧誘している事実があります。 もう
一つ
は「
昭和
三十三年十一月の末ごろ大島自動車営業所運転士西川喜昭が運転事故(脱出事故)を惹起したが、その事故処理に当って自動車事務所運転事故係課員一級花本政一(当時は
組合員
、現在海田市営業所助役)は路面陥落として処理し、本人の責任事故にしないことを
条件
として国労脱退と職能加入を勧誘した。その西川運転士が、海田市自動車営業所に転勤を希望し、自動車事務所人事課員米川貢に申し述べたところ、国労にいる限り転勤させることはできないと脅迫し、国労脱退と職能加入を勧誘した。」 「
昭和
三十四年一月十七日夜、秋吉自動車営業所長茶谷可夫は、自動車事務所岡田車両
係長
、奥永運転
係長
とともに宮野温泉で飲酒し、その席上に国労
組合員
数名を招致し、その席上、営業係小田福美に対して、所長が国労脱退を勧誘した。 秋吉自動車営業所浦山助役は、臨時職員に対して、職能に加入した順序で職員として採用すると言明し、これは自動車事務所人事係の
方針
であると言明し勧誘した。」こういうふうに事実をあげられておって、私も一部はいろいろ
調査
いたしましたけれども十分
調査
いたしておりませんが、これについて今原則的なことをあなたは否定なさったのだけれども、この点についてどういうふうにお
考え
ですか。
吾孫子豐
141
○
吾孫子
説明員 先ほども申し上げましたように、国鉄の現在の経営
状態
を改善いたしますために、これは自動車のみに限らずいろいろ業務機関の整理統合というようなことをいたさなければなりませんので、そういうような処置をあちこちでとっております。その際に
労働条件
にこれがいろいろ影響を及ぼすというような場合にはもちろん団体交渉もいたしますが、単なる管理運営上の業務機関の配置その他をどうするかというようなことについては、これは本来から申しますといわゆる団体交渉の対象ではないということになっておりますので、しいて団体交渉はしないでもよろしいという建前をとっておりますけれども、しかしこういうようなことについてはできるだけ
従業員
の皆さんの理解を得るということも必要でございますので、お話のような業務機関の整理とか統合とかいうようなことが起りますような場合には、できるだけ事前に話をさせるようにいたしております。その話の間であるいは誤解を生ずるようなおそれのある言動があったかもしれませんけれども、いやしくも
不当労働行為
というような疑いを受けるようなことのないようにということは、常々注意をいたしております。ただいまいろいろ御指摘ございましたが、それらの
一つ
一つ
の事実については私どもも詳しいことはただいまのところまだ承知いたしておりませんが、そのような法の禁じておるような
行為
を管理者側の者がいたすことは万々ないはずであるというように確信いたしております。
大原亨
142
○
大原
委員
「
昭和
三十四年七月十二日、横川自動車営業所柏村運転係は川本自動車営業所に助勤中、鈴木清の引っ越しのためトラックの借用で横川自動車営業所に帰所し、用品倉庫北側を通行中、
田中
所長と出会ったので、用件を申し述べたところ、所長
田中
は、鈴木は知らぬが話によっては貸してもよいと述べ、柏村はいつまで国鉄
労働組合
にいるのだ、国労にいたのでは将来損をする、仲よくするため職能に加入せよと述べた。柏村本人は、助勤の済んだ後に
考え
させてくれと言ったが、所長
田中
は、川本営業所は全員国労だが、心配するな、おれが引き受ける、昇給も落され損をしているが、そのことも職能に入れば
考え
てやる。家族のことも
考え
て私の言うことを聞けと、国労脱退と職能加入を説得し、かたわらに立っていた助役武良敬喜及び第二
組合
幹部押尾に手で合図をして、脱退届と職能加入の用紙を提出させ記入させた。」こういうふうに事実があげられておるのでありますけれども、先ほど私が指摘いたしました事実と、そういうものが営業政策と
労働
政策、人事その他の管理が混乱をいたしまして、そういうふうになりましたならば、
職場
の態勢あるいは仕事をする態勢というものが利用者に対して決してサービスする態勢にならない。そういうことが混乱をして感情的に
職場
の対立を起して、事故をたくさん起すとか、事故の原因になったりいたしまして、私は決して国鉄が国民に奉仕するような、サービスできるような態勢にならぬ、こう思うのです。
労働大臣
もそういう点についてはお願いしたいのですけれども、労使の慣行というものは一々の局面を見て感情的に取り上げたり、
政治
的に取り上げないで、長い目で見ていかなければならない。そうして
労働
運動
には規則があるのですから、それを踏みはずしておればどこかに私は蹉跌が出てくると思うのです。そういう点は少くとも錯誤を犯しながらも発展していくものである。そういう点において、営業を労務政策に直ちに取り入れて、第二
組合
に加盟した者がおったならば出世さしてやる、そういう感情的な人事面にわたるような不公平な取扱いをするということは、公共企業体としていわゆる半ば国の責任で運営しておるそういう機関が、こういうふうな労務政策の範を他のそういう企業体に示すというふうなことはけしからぬと思うのですが、その点はどうですか。もう一回重ねて事実をあげましたので、あなたの御所見を伺いたい。
吾孫子豐
143
○
吾孫子
説明員 ただいま御指摘のございました事実が、果してその通りであったかどうか、ただいまのところ私もわかっておりませんけれども、根本的な
考え
方につきましては先生の言われる通りでございまして、ただ私どもとしましては、国鉄の
経営方針
なり営業政策というようなものは、十分に
従業員
の諸君に理解していただくということは必要であると思いますので、現場の管理者としてはいろいろな機会あるごとにそういうような話はいたしておるかと思いますが、それが範囲が逸脱して
組合
の組織に介入するようなことを言ったりするというようなことは、厳に私どもも戒めておる次第でございます。ただしかし、いやしくもそのような
——
それが事実そのままでないにいたしましても、外からごらんになった際に、何かそういうような不当なことが行われておるんではないかというようなお疑いを受けるだけでも、まことに遺憾なことと存じますので、今までも注意はいたしておりましたが、今後もなお一そうそういうようなことのないように注意をいたしたい、さように
考え
ております。
大原亨
144
○
大原
委員
簡単にもう
一つ
例を申し上げますと、第二
組合
の
発生
している各営業所においては、忘年会と称し、あるいは花見と称し、新年宴会と称して、
組合員
を集めては酒食を提供して所長、助役がこういう工作を行なっておる。これは具体的に事実をあげますと時間がかかりますから申し上げませんけれども、そういうふうにやっておる。そういう事実があるのです。それから超過勤務手当については、第二
組合
に対しては架空に支払って、国労対策費として処理しておる。こういう例も指摘されておる。これは
組合員
、
労働者
が指摘しておるのですから、これは実際にそういうことを実施したと同じような影響があるのです。作業上、心理上、仕事をする上においてそういうことがあったわけです。超過勤務手当とかあるいは資材費なんかをそういう労務対策に使うというようなことは、あなたの方は許しているのですか。
吾孫子豐
145
○
吾孫子
説明員
職場
でもっていろいろな会合があるということは、これは第二
組合
と呼ばれております職能労連に限らず、国鉄全体を見ました場合には、国鉄労組の方でも、あるいはまた動力車労組の方でも、それぞれ現場でいろいろな会合をやっておることはあろうと思います。従いまして、第二
組合
だけに限ってそういうことが行われているということはまずないと思うのでございます。それから超勤手当を国労の対策費に使うというようなお話が今ございましたけれども、そういうようなことはもちろん私どもとして認めるべき筋合いのものでもございませんし、そういうようなことは許さない
方針
でおる次第でございます。
大原亨
146
○
大原
委員
私は国鉄の中の慣行はわからないのですが、たとえば助役の超勤手当を架空につけて賃金を稔出して臨時人夫に支出したり、あるいはこういう労務対策費に支出する、そういうことは慣行上許しているのですか。私は時間がないから具体的な例はあげませんが、そういう例があるのです。
吾孫子豐
147
○
吾孫子
説明員 そういうようなことは許しておりません。ただ広島でそういうことが事実ございましたときに、一回でございますけれどもそういうことがわかりましたので、直ちに
処分
をいたしております。
大原亨
148
○
大原
委員
時間もありませんので、事実に基いて簡潔に労務対策と営業政策について指摘いたしたのです。それでたとえば課長とか所長とか
係長
とかいう人は、当局が出した
方針
が、労務対策と営業対策は末端へいったらくっつくもんだから、
自分
の保身のためにこういうことをやるのですよ。やって点数を上げるのだ。これでは国鉄の経営自体が乱脈をきわめるということになる。これでは民衆のために奉仕するとかサービスするとかいうことはできないことになる。正常な労使の慣行を作るというようなことは、これはそういう好きとかきらいとか思想とかいうことをこえて、
労働
運動
発展の法則があるのだから、それについて一々主観的な
判断
を当局がやって、それによって
職場
を混乱に陥れたり、不正が公然と行われたり、そういうことは許されないと思う。私は具体的な事実をあげましたけれども、他にもまだたくさんそういう事実があります。私は次の機会にはもう少し新しい事実をあげます。私があげた事実について
調査
をしていただいて、これに対するもう少し責任のある
——
あなたは原則的なことを言われたけれども、責任のある見解を表明してもらいたい。たとえば超勤手当をほかの方にもやっておるというようなことが、こんなことが公然と行われておるのだったら大へんです。
労働大臣
はそういうことを許してもよろしいのか、こういうことになってしまう。人事管理とかその他全般、総合的に労務管理に集中してやるというようなことは間違いです。営業政策は営業政策、労務政策は労務政策でおやりになったらよろしい。
組合
がどうこうというような問題じゃない。事実こういうような不当なことがあるから私は指摘している。こういうことはどういう
立場
に立とうが正しい労使の慣行じゃない。これは非常に大きな疑問を残す。歴史的な疑問を残す。そういうことになっては取り返しがつかないので、そういう点で私は厳重に警告しておきます。次の機会に国鉄総裁に出てもらってこの問題については質問を継続いたすことを保留しておきます。こういう事実をお聞きになりまして、
労働大臣
どうですか、御所見をお聞かせ下さい。
松野頼三
149
○
松野国務大臣
労働組合法
の第七条に
不当労働行為
というものが明確にされておりますから、使用者が特に金銭をもって
組合
に
干渉
するとかあるいは切りくずしをするとかいうことは厳に禁止されておる問題であります。またただいまの質疑で明快でございませんが、そういう
事例
があればもちろん
不当労働行為
だと私は思います。
大原亨
150
○
大原
委員
労働大臣
は、郵政
大臣
でも文部
大臣
でもあるいは国鉄総裁でも、やっぱり当局なんですから、同じようにいつも近い
関係
ですからびしびしと是正してもらわなければいかぬ。そういう御決意おありですか。
松野頼三
151
○
松野国務大臣
今の話は実はきょう初めてお聞きしたのです。今話を聞いていて、もしそういう事実があれば大へんだと思っておるので、いずれ国鉄の方から事実の
内容
の
報告
があると思いますが、私はぴしぴしやるつもりでおります。
大原亨
152
○
大原
委員
専従の問題を簡潔に
労働大臣
にお聞きしますが、教職員の専従問題が、きょうは文部
大臣
がちょうど都合が悪くて見えておらぬらしいのですけれども、全国の教育長
会議
で
決議
されたという。これはいろいろ聞けば文部省あたりから火が出ている、こういうふうなことなんですけれども、しかしそれは
政治
のことですから、いろいろあるでしょう。そういう点からいろいろ発展をいたしました。それでこの問題は非常に広範な問題を含んでいる。条例でやるか、法律で一般的にやるか、個別的にやるか、全面的にやるか、あるいはどの範囲をどういうふうに制限をするか、ILO条約との
関係
はどうするのか、たくさんあるのですけれども、たとえば文部
大臣
の談話はもちろん勝手に言ってもよろしい。しかしながら、文部
大臣
の談話とかあるいは
労働大臣
の談話とかでいろいろ
立場
やニュアンスが違いまして、やはりいろいろな方面でいろいろに受け取られておる。従って、
労働大臣
としては、これは非常に大きな問題でもありますので、やはり統一した見解をまとめてもらって指導してもらうことが必要ではないか、こう思うのですけれども、
労働大臣
の御所見はいかがですか。
松野頼三
153
○
松野国務大臣
おっしゃるように、そういうふうな感じも私は持っております。同時にこれは私の主管外に少しぴしびしやり過ぎていろいろ波乱を巻き起しておりますが、これは少し私の方がぴしぴしやり過ぎた
一つ
の例であります。実は私の主管というわけでありませんで、たまたま発表は内閣の官房長官が発表しましたが、それは主として閣議の席上でやりましたから、国務
大臣
という意味で、おっしゃるように統一的見解というものを政府が立てるべきじゃないか、私は実はそういうふうな感じを持っております。しかし、具体的にどういうふうに統一するかということはまだこれからの問題で、実はどういうふうになるかということは各省に関連の深いことで、
労働省
だけでこれが結論が出るものじゃありません。従って、私もこういう問題は大事な問題でありますから、各省共通の
立場
で、公平な
立場
で、一省に甘くなったり一省にからくなったりしちやいけない。公平な国家公務員及びその運営を期したいという、私は気持を持っておりますが、ただいま各省間でまだ連絡が済んでおりませんので、もちろん結論が出ておりません。
大原亨
154
○
大原
委員
たとえばある県だけで条例でやるとか、あるいはある
関係
職だけで、たとえば教職員なら教職員だけでやるとか、あるいはここはやってここはやらぬとか、そういうふうなまちまちな形で
——
憲法の問題については、ILOの団結権の問題についてはまた日をあらためて御質問いたしたいと思いますが、こういうばらばらな形でなさるべきじゃない。こういう
労働
問題についてはそう
考え
ますけれども、
労働大臣
の御所見はいかがですか。
松野頼三
155
○
松野国務大臣
私としてはやはり平等な
立場
で、平等な範囲でやりたい、こう
考え
ております。しかし、おのずから地方自治になれば自治庁長官の御意向もありましょうし、文部省については文部
大臣
の御意向もありましょうから、まだそういうものは調整しておりませんので、政府で統一見解というわけに参りませんが、
労働大臣
としてはやはり同じような
立場
でやられることが望ましいと私は
考え
ております。
大原亨
156
○
大原
委員
人事院の人見えておりますね。私はある常任
委員
会の人事院総裁の御答弁を聞いたのですが、これは人事院の見解だと思うのだが、大体公共企業体
労働関係
法とか、公務員法における
労働関係
の問題、
労働
運動
に対する規制の問題は、歴史的には憲法で保障されておったのですけれども、政令二〇一号その他ずっと計画的に出て参りましたが、しかし憲法はやはり基本法として生きておる。それは幾ら公共性を持った経営体であっても、たとえばイギリスだったら社会主義政策が、ずっと国営の
方針
なんかが各分野に進んでおる。そういうようなものを一々規制を加えておるかというと、公務員はもちろん、そういう現業の
関係
まで加えていない。もしいろいろな規制を加えるという場合には、別のたとえば人事院を作るとか
——
人事院は政府の政策で危なくなっておるから、淺井総裁ははっきりしたことをよう言わなかったと思うが、人事院の制度を作るとか仲裁裁定の制度を作るとか、そういうことで団体交渉を制限したりあるいは団体行動権を制限した場合には保護するようにできておる。そういう原則があるから言いのがれができておる。もちろん今のような現状では憲法
違反
であるけれども、そういう
関係
で発達しておる。そういう点については、人事院は人事院規則で専従制限をする。国家公務員、これは教職員も国家公務員の中に入っておる。そういう均衡上の公平な取扱いの原則から言えば、地方教職員の問題も同じです。そういう点から言えば、
労働
基本権
に関する憲法の規定と、そういうものから、これは国際的のILO条約の八十七号にも規定してあるけれども、そういう点を明確にして、そうして人事院ははっきりそうした見解を示すべきである。そうでなければ、第三者機関としての存続の値打は全然ない、こういうふうに思うのだが、人事院の総裁の答弁は非常にあいまいでしたけれども、人事院の見解はどうなんですか。
村上達雄
157
○村上説明員 これは憲法で団結権が一応保障されておりますが、国家公務員の場合には、やはり公務の特殊性、こういうものがありまして、国家公務員法の一条を見ますと、ここでは公務の民主的かつ能率的な運営を国民に保障する義務が国家公務員にあるわけです。そうしますと、そういう公務の民主的かつ能率的運営を保障しなければならない職員の
一つ
の団体的な
活動
というものは、そういった面において若干の制約を受けるのはやむを得ないんじゃないか、こういうように
考え
ております。
大原亨
158
○
大原
委員
だから人事院とかあるいは仲裁裁定とかいう制度を設けたのだけれども、仲裁裁定は最近は尊重するという
方針
を政府はきめておるけれども、今まで五回も六回もやっていなかった。人事院自体もそうじゃないですか。人事院はいろいろな物価の変動その他に応じて勧告することになっている。それが自主的な機能を失っておるではないか、失っていないんだったらそれでよろしいけれども。だから
労働
基本権
というのは、やはり公共の福祉とかいわゆる公共性という問題でこれは制限を受けるといっても、
労働
基本権
自体の
内容
というものは、
労働者
の権限の保護というものは一貫して不動のものなんだ。近代法ではほとんど基礎になっているのだ。だからそれをしも侵害されるようなそういう
状態
を看過されるということは、これは憲法の趣旨からいっても、あるいはそういう特別法ができた趣旨からいっても不当じゃないか。それについては人事院としては、この答弁を見てみると、人事院総裁は国務
大臣
の補佐的な役割で国会に出ておるのだから、
大臣
の答弁の領域を侵さぬということを言っておるけれども、そんなことを言ってはだめだ。そういう自主性のないことでは、正当な労使の慣行なんかできませんよ。これはどういうことなんですか。憲法といわゆる教職員や地方公務員の団結権、これには
関係
があるかないか。その点人事院の見解を聞かしていただきたい。
村上達雄
159
○村上説明員 今人事院の場合は、一般職の国家公務員を対象にしておりますが、ここで
考え
方ということについて申し上げることはちょっとできかねるんじゃないかと思います。
大原亨
160
○
大原
委員
それは国家公務員や、それから国家公務員である国立学校の職員、そういうものについては、やはり人事院規則で規制しているのです。だからその例に従ってやはり地方はやるのです。地方人事
委員
会というものがあって、ちゃんとみな密接な連絡をとって指導しているのです。それを大体逸脱しないのです。やはり均等に扱えとか公平に扱えの原則はあるのです。
待遇
上でも権利の上でも
労働
慣行でもそうです。そういうものからおのずから出てくる。だからそういうことで逃げちゃだめです。所見を
一つ
伺わしてもらいたい。
村上達雄
161
○村上説明員 これは専従の問題について申し上げますと、やはり法の第一条に入って参りますが、これは国家公務員のよるべきといいますか、根本基準、こういったものを一応打ち出しておりますが、その中に公務員の福祉及びその利益を増進するような保障というようなものも一応そこに打ち出しております。そういったところから、やはり公務員につきましても、どういいますか、公務員の利益とか福祉、こういったものは一応尊重されなければならない、こういうようなことは法の一条でうたっております。
大原亨
162
○
大原
委員
今の答弁はまことに不満ですけれども、また別の機会にあらためて質問したいと思います。
労働大臣
に最後に御質問いたします。最初に御質問いたしましたが、こういう労使の慣行というものは、やはり原則を踏みはずしてはいけないし、そうして現行の憲法の趣旨もあることだし、そういう面から
考え
てみまして、やはりだれかがどこかでごそごそとやって、しかも感情的に取り上げられた、
政治
的に取り上げられた、そういう印象でやるということはこれはいけないことである。これは直接労使の当事者がそういう問題についてやり方を誤まる場合があっても、
労働大臣
としてはそれらの問題を同じ閣内、同じ政党出身ではあるけれども、やはり
労働大臣
の
職務
に従って、正しい労使の慣行に乗せていく、こういう面から、そういう点についてははっきりした見解を持って臨んでもらいたい。そういうことが
日本
全体の
——
部分的にはいろいろ問題はあるけれども、全体のそういう
労働
問題に対する正しい
考え
を進めて、恣意的な感情的なこういう
労働
問題の取扱いにならぬように対処しなければならぬ、そういう点で、きょうは各方面から御質問したいと思って用意をいたしておきましたが、時間の
関係
上、最後に
労働大臣
の御所信をお伺いいたしまして終りたいと思います。
松野頼三
163
○
松野国務大臣
労働大臣
としては、やはりよき
労働
慣行というものを積み立てながら、
一つ
一つ
を明確にしながら進んでいくことが一番
労働
問題は正しいことだ、いたずらに法律をいじくってみましても、それがよき慣行に合わなければ実行できない、同時に法律がある以上、その法律に従ってよき慣行を作って参りたい、両々相待ってこの問題は解決すべきだ、一時的なものとか、目の前のものにとらわれず、やはり過去を見ながら、将来を見ながら、よき慣行に従って進みたい、私はこう
考え
ております。
大原亨
164
○
大原
委員
ただ
一つ
、この専従問題を地方で条例やその他簡単に作って、ここに
一つ
の大きな問題が起きるというようなことになれば、これは大きくは憲法の問題にも
関係
すると思うし、この点についてはきょうは時間が短かかったので、十分こちらの所見を述べて究明できませんでしたが、その点は
一つ
十分御注意いただいて、慎重の上にも慎重を期してもらいたいということを要望いたしまして、私の質問を終ります。
永山忠則
165
○
永山
委員長
滝井
義高
君。
滝井義高
166
○
滝井
委員
ベンゾールの中毒の問題と炭鉱失業者の住宅の問題だけ、時間がありませんから簡単に二点質問をしたいと思います。 まず第一のベンゾールの中毒の問題ですが、これはさいぜんから同志の多賀谷君がるる御質問をいたしました。私は重複しないように一、二の点についてお尋ねしたいと思います。 最近、国政
調査
で京都や大阪や兵庫に行く機会を得ました。今末端の
労働関係
の各機関が非常に精力的にやられておるのは、大きくいって四つあるようでございます。
一つ
は産業災害をどうして防止をするかということです。
二つ
は最低賃金制度を具体的にどういう工合に実施していこうかという問題が第二にあるようでありまして、第三番目は、全産業に週休制を打ち立てたい。四番目が、女子年少
労働
の保護ということが、当面末端の
労働行政
を扱っておる官庁の精力的にやっておられることであるということを見て、非常に心強く感じたのですが、特にその中で四番目の女子年少
労働
の問題です。
労働省
の末端機構の中で
——
婦人少年局
長お帰りになったようでございますが、この
婦人
少年室というのがあるのだが、どうも三人か四人で、独立の役所を持たないのです。しかも独立の役所を持たないばかりでなく、この役所は機動力がない。室長さんあたりがこつこつ足でかせいでいくか、電車で行くという姿であることがわかったわけです。ところが今一番問題になっておるこのベンゾールの中毒というものは、家内
労働
に実に多いということなんです。これはもちろん
労働基準局
も精力的にやっていただかなければならぬが、何といっても零細な五人未満の家内
労働
にこれが多いということになると、
婦人
少年室の
活動
というものがやはりこういうところに注がれなければならぬ。ところがそれが機動力がないし、人数も少い、独立の官庁も持たない、どこか
基準局
のすみに間借りをしておるという姿なんです。私はやはり
日本
においては九千万の国民の中で半数は
婦人
だ、しかも有権者でするなら二百万人以上
婦人
が多いのだ、こういうことから
考え
、最近における
日本
の雇用の
状態
を見ると、非常に
婦人
が伸びておる。一年に約五十万ずつくらい
婦人
の雇用が伸びておる。こういうことになると、
日本
の今後の
労働
問題というものは非常に大きなところにも出るが、こういう弱小のところに出ていく。しかもそれが中小企業の
労働
争議というものが非常に先鋭化しておるけれども、その争議さえもやれないところのかよわい層というものが、いわば大海に現われた氷山の露頭は上にあるが、その下にもっと争議もやれないかよわい層があるということなんです。こういう点から
考え
て、まず
婦人
少年室のあり方について、
松野
労政というものが再検討をする必要があると思うが、
労働大臣
、予算編成期を前にしてどうお
考え
になっておるかということ、まずこれを
一つ
お尋ねしておきたい。
松野頼三
167
○
松野国務大臣
婦人少年局
というのは、
日本
の行政官庁では
労働省
がただ
一つ
といっていいくらい
婦人
問題を取り扱っておるわけでありますが、開設以来歴史が浅いために、必ずしも他の省ほどはなばなしい拡充は進めておりません。しかし、大なり小なり毎年々々予算の拡充を進めておりますが、ことに三十五年度の予算におきましては、
婦人少年局
の予算というものは相当大幅な拡充を
労働省
でつい先般決定いたしました。いろいろな場面に
婦人
少年の問題が出て参りますが、
考え
てみれば、だんだん
婦人
の
労働
力というものの質の向上、あるいは年限も長期化する、ある程度定着した
労働
力になりつつあるというのが今日の
日本
の雇用
関係
の大きな特徴になって参りましたので、今までの臨時的な
労働
力という
考え
から恒久的な、しかも相当技能的な
労働
に
婦人
労働
が前進してくるということを
考え
ながら、もちろん職業訓練の中にも
婦人
というものの場面を広げていく、できるならば
婦人
の職業訓練所という専門のものも来年度予算には計上したいというふうな計画を進めておりますが、先ほど御指摘のベンゾールの問題も、主としてこれは、家族
労働
といえば
婦人
が対象になって参ります。あらゆる面において
婦人
少年の働く場面はふえなければならない。今日はほとんど
労働基準局
の一室を借りまして、
婦人
少年室というのが各所に駐在をしておりますが、この二人、三人の定員ではとてもできませんので、今日は非常に理解のある方も出て参りまして、
婦人
少年の民間の志願による相談員、あるいはいろんな場面を御相談していただくような機構も大都会には出て参りまして、行政的な拡充をすることも当然でありますが、こういう理解の上に行政の拡充を進めていくことが一番いいのじゃなかろうか、こう
考え
て、来年度の予算においても、実は省内におきまして、
婦人
少年の問題は相当画期的な大幅のものを計上するように、すでに大蔵省には予算要求をいたしました。
滝井義高
168
○
滝井
委員
実は今民間のこういう
婦人
少年問題に非常に関心の深い方の御協力というお話がありました。なるほどこれは協助員というようなものができております。二十人か三十人いらっしゃるようでありますが、何せ手当が年俸千円なんです。しかも
婦人
少年室自身が電話料がないというわけなんです。たとえば市外に電話をかけようと思っても、さて三十円の電話料をどうしようか、こういう悩みを持っておるらしい。でははがきで、こういうことになるらしい。だんだんしておると、その五円のはがきの通信費もなくなる、こういうことらしいのです。こういうことでは年々五十万以上増加をしている、特に第三次産業を中心として最近は製造業にも増加を始めているのですが、そういう
婦人
年少の
労働
問題というものがクローズ・アップされている段階で、こういうことでは私はどうにもならぬと思うのです。協助員は協助員で、民生
委員
とか指導員とか、そういう人もたった千円くらい、月千円だったと存じますが、こういう点、やはり今私は
労働省
の
一つ
の盲点になっているのは
婦人
少年の問題だと思うのです。
婦人
少年の問題をもう少しやはり積極的に推進をしてもらう必要があると思うのです。そこで私は、あとで石炭の問題もあるので、岩尾さんと田代さんに来ていただきたいと思ったが、岩尾さんだけお見えになっておるのですが、岩尾さんは
労働省
と厚生省の担当ですが、実は今お聞きの通り、
婦人
少年室の問題、年々五十万人をこえる
婦人
労働者
が最近ふえておるのです。ところが、この
婦人
少年室は
基準局
に間借りをしておる。行ってみますと、定員が三人か四人です。
日本
の人口の半分は女性なんです。しかもこの女性が、今われわれが問題にしようとするベンゾールの中毒その他にかかっておる一番対象者なんです。あるいは鉛の中毒だってそうです。そうしますと、なるほどわれわれオリンピックも必要です。オリンピックも必要だけれども、その前にわれわれはやらなければならぬところがあるということなんです。オリンピックで莫大な金を使う余裕があるならば、まず
日本
の
婦人
を救うためにその金を回してもらいたいということをむしろ言いたいくらいの気持があるのです。そういうと、まあオリンピックはオリンピックなんだからというけれども、国民の財布から出る金は
一つ
なんです。
一つ
のがま口から出ていくのですから、
一体
大蔵省としてはこの
婦人
少年室のあり方というものをどうお
考え
になっているのかということです。わずかの、スズメの涙ほどの予算をやって、通信費も電話料もないということでは大へんだと思うんです。しかも
日本
の産業というものが、特に輸出産業、玩具あるいは検温器、あるいはもっといえば、アメリカに行くこうもりがさの骨というようなものは、やはり家内
労働
を中心に仕組まれてきておるわけです。そうすると、その一番安い三銭か五銭の費用でやっておるというものについて、私はやはりもう少し思い切った予算を出して、そして確立する必要があると思うのですが、あなたの方は
一体
どうお
考え
になっているのか。実は
局長
に来てもらいたかったのですが、
局長
は予算の何かあるというので岩尾さんに来てもらったのですが、それをどうお
考え
になっているのか、大蔵省自身のお
考え
もこの際お伺いしておきたいのです。
岩尾一
169
○岩尾説明員 実は私今回かわりまして担当いたしまして、昨年の経緯はよく存じ上げておりません。今後の問題につきましては、いろいろ先生のお話もございますし、
労働省
の方からもいろいろな話を聞いておりますので、よく検討いたしたいと思います。ただ全体何といいましても、いろいろな点で要求も出ておりますし、すべてを満足させるということはできかねますので、その辺はよく検討したいと思います。
滝井義高
170
○
滝井
委員
岩尾さんは鳩山さんとかわられてからあまり日にちもたっていないので、ここでどうだということはなかなか例年の事情もよくおわかりにならぬと思いますので、それ以上言いませんが、とにかく
婦人
少年室というものが冷遇をされているということだけは
一つ
御記憶になっておいていただきたいと思うのです。 そこで問題は、私は最近実はベンゾールの中毒らしい一人の女性を私の国で見たわけです。だんだん調べてみますと。大阪に行っておったわけです。いなかに療養に帰ってきているわけです。非常な激しい、再生不能の貧血なんです。原因はわからない。大阪に行って何をしておったといっても、なかなか言わない。いや、私は女中さんみたいな工合に働いておりました、こういうわけなんです。ところがそれが非常に激しい貧血なんです。だんだん調べてみると、どうもやはりビニールの袋張りか何かの、ビニール加
工場
か何かに働いておったような見当がつけられた。そこで私は、これはと思って興味を持ち始めて見ているうちに、がぜん新聞にベンゾール中毒問題が浮び上ってきた。こういうように今や家事使用人として行ったものが、いつの間にか家事使用人ではなくて、その家庭でベンゾールの袋張りをやっておるという事態も起りつつある。そうして病気になればみないなかに帰っておる。そうするといなかの医者は、これは簡単な肝臓か何かの障害の貧血だろう、こういうことで片づけてしまう。実はベンゾールがサンダル靴その他に使われ始めたのは去年じゃない、三年くらい前から使われ始めている。従って中毒というものは、どんどん使えば半年かそこらで起ってくるわけです。しかも明らかに潜伏
状態
が見えてくる。潜在性の貧血
状態
が現われてくる。専門家が見たらわかるはずなんです。ところが今から三年前に使われたものが、今日になってそれが社会、
政治
の日程に上るのは、今まで
一体
それらの中毒患者はどうしておったのだという問題も同時に起ってくる。こういう問題について、最近家事使用人の
調査
等も
婦人
少年室でやられておると聞いておりますが、そういうベンゾールの中毒の問題が、
婦人
少年室等で
一体
三年前ごろから使用されておったのに話題に上らなかったかどうかという点です。こういう点、
婦人
少年室の方で御答弁あれば
一つ
お示し願いたいと思います。
谷野せつ
171
○谷野説明員
婦人少年局
におきましては、かねてから家内
労働者
の問題につきまして
調査
を実施いたしておりまして、今日まで大体
調査
を三段階に分けていたしたのでございますが、大体におきまして
労働条件
に主体を置いて
調査
をいたしておりましたために、三回の
調査
の過程におきましては、ビニール、サンダルのベンゾール中毒につきまして被害者があるということを発見できなかったのでございます。大へん申しわけないのでございますが、新聞の発表によりまして初めて承知いたしましてびっくりいたしましたわけでございます。
滝井義高
172
○
滝井
委員
実はあなたの方の末端の機関でも
調査
をやられておるのです。これは京都でございましたか、私聞いたのですが、特殊の健康診断を八百人についてやった。ところがその八百人の中の三割三分がベンゾール中毒の異常者であった。五百四十人について
調査
したところが百二十七人が鉛中毒のおそれのある異常者であった。こういうことを
基準局
等ではっきり指摘しておるわけです。
婦人
少年室長さんの
報告
でも、ベンゾール中毒が内職
婦人
に出ておる。特にセロハンの袋張りというところに出ておるのだというお話も聞いたのです。けい肺は多分一一%くらいです。新聞等によってもベンゾールの中毒は二割五分くらいになっておる。けい肺よりも多いわけです。これに潜在性のベンゾール中毒患者を加えますとはるかに多いものになると思う。こういう事態が起って参りますと、もはや
労働省
だけではこれはどうにもならぬです。従って各県における厚生省医務局
所管
の衛生部を動員して、保健所とお宅の方の
基準局
の末端、そして
婦人
少年室、これらの三者ないし四者が協力をしながらこの問題の大々的な予防
運動
を起す以外にもはやこれはとてもやれぬと思う。しかもサンダルの製造その他は相当第三国人等もやられておる。そしてそれが零細な家内
労働
にクモの網のように分たれているということになると、これはしゃくし定木の行政ではなかなか把握が困難です。従って当然
婦人
少年室における協助員、それから保健所、開業医、それからあなたの方の基準
監督署
、これらのものが
一体
になってこのベンゾールの惨禍を防ぐという方向に持っていかなければ、一たび貧血を起して重態になってくれば、
生活
保護だ何だといって医療扶助をやるのだといっても、先ほどの多賀谷君に対するあなたたちの答弁のように、断然やりますといって弾力的に医療扶助をやってくれればいいが、それはなかなかやれない。これが長期の治療を必要とし、しかも輸血を中心とした治療になってくるとますます困難になり、原子病と同じになってしまう。鉄は熱いうちに打てと申しますが、今のように世論がベンゾールについて盛り上ったときにすみやかに対策を講ずる、そして別に法律は安全衛生を中心とした家内
労働者
に、
松野労働大臣
が言われるようにやってもらわなければなりません。しかし、この法律は臨時国会から通常国会にかけてすぐにうまくいけばいいが、予算の
関係
その他もあって簡単にいかぬという場合もあり得ないとも限らないと思う。従ってその前にまず病気の実態を把握して、潜伏者が
一体
どのくらいあるのだ、明らかに治療を要する者はどのくらいあるのだということを把握したならば、それに対する具体的の数字の上に立って、
生活
保護をどうする、医療扶助をどうする、それから他に何か方法があれば国が金を出してやるならやる、こういうことが具体的に立法措置の中に盛り込まれてこなければならぬと思うのです。そういう点で、もはやこれは
労働省
だけの仕事でなくて、当然厚生省にも呼びかけて、政府全体としてすみやかにやってもらわなければならない。しかもこれは内職をしている
婦人
だけの問題ではない。すでにその内職をしておる場所に住んでおるかわいい子供に及んでおる。子供の問題というのは外に出てこない。この子は大かた母親の栄養が悪いから貧血するのだろう、あるいは人工栄養だからだろう、こういう形で発見されないままに放置されておる。従ってこの問題についてはそういう総合的な施策を政府としてすみやかにやる必要があると思いますが、あなた方の一省だけではなくて、厚生省その他通産省等にも呼びかけてやる御意思があるかどうか。
松野頼三
173
○
松野国務大臣
滝井
さんのおっしゃるように、これは
労働省
だけの問題としては解決ができない。ただ
労働省
は
労働省
の
立場
で最善を尽します。同時に、つい先般もお話ししました巡回相談というものに東京都の衛生局の非常な御協力をいただいて、ただいま正確な病状といったものの統計を出しているわけであります。もちろん厚生省には医療扶助のみならず、医務局及びすべての衛生機関の御協力を願いたい。
労働省
は
基準局
及び
婦人少年局
または労災病院等、すべての関連が深いものでありますから、今日その方向に努力しておりますが、さしあたり東京都は東京都の衛生局が今日われわれのこの気持に即して現地において巡回相談として統計と病状の審査をやっていただいておる。私の方もできるだけやりますが、やはりこれは全部の関連が深いことでありますから、その方向に私も各省
大臣
の御協力を仰ぎたい、こう
考え
ております。
滝井義高
174
○
滝井
委員
ぜひすみやかにそういう形をとっていただきまして、潜伏性のベンゾール中毒者に対しても、軽いうちに適切な措置をとっていただくように要望いたしておきます。 次は炭鉱
労働
の問題でございますが、多賀谷君がいろいろ触れましたので、二十分の約束でございますから、簡単に住宅問題だけをお尋ねしたいのですが、実は現在石炭鉱業の合理化によって買い上げられた炭鉱の
労働者
には移動資金というものがつくわけです。あれは多分一万円か一万五千円の移動資金がついたと思います。それが第一次は五月の十五日から八月の十四日までの三カ月間だったと思います。一応期限が……。そういう張り紙が一応買い上げられた山には出ておったと思います。しかし実際はあれは六カ月間ですから、もう少しあると思います。そこで御存じかどうかわかりませんが、石炭鉱業の合理化によりますと、全部の炭住を買い上げるとは限りません。現在移動資金をもらえる対象
労働者
というものは、炭住の買い上げられた
労働者
だけがその移動資金の対象になるわけです。そうすると、山は買い上げられたけれども、炭住が買い上げられないと移動資金の対象にならない。そこで山は賢い上げられたが、炭住が買い上げられなかったという労務者は移動資金も何ももらえないので、炭住に定着せざるを得ないのです。これについて、なぜ移動資金をやらないのかということです。炭住が買い上げられなかった労務者になぜ移動資金をやらないのか、この点に対する政府の見解を伺いたい。
百田正弘
175
○百田説明員 ただいまの御質問の点は、例の石炭鉱業整備事業団におきましてそういう特別の措置をとったわけでございます。そこで一般的に申し上げますと、失業保険の受給期間中におきましては、他の地域に就職のために移転するという場合には御承知のように移転費の支給があるわけであります。現在石炭鉱業整備事業団のやっておりますものでは、今申し上げたような
方針
でやっておるわけであります。もちろんこれでは不十分でございますし、先ほどから
大臣
よりお話がございましたように、今後当該地域で就職することが非常に困難だ。従って、できるだけ他地域に就職をさせるように、現在積極的に努力はいたしております。それらの点につきましては、現在において不備な点もございますので、さらにこれを拡充するような方法も
考え
る必要があるということで、内々検討はいたしております。ただいままで約四、五百のものについての移動につきまして、これは出かせぎでございますけれども、大体は就職したところでその旅費のめんどうを見るといったようなことになっております。そして、それをもらうためには、県等でいろいろめんどうを見た
事例
もございますが、さらにこれが相当大量になって、しかも各地に積極的に就職を勧奨するということになりますと、今申し上げましたようなことだけでは不備でございますので、この点につきましての補う対策はいろいろ検討をしなければならぬ、こういうふうに
考え
ております。
滝井義高
176
○
滝井
委員
もう火は燃えておるわけですから、この燃えておる火を消さなければならぬわけです。炭住を整備事業団が買い上げる
条件
というのは、まずAという炭鉱が買い上げられたならば、そのAという炭鉱に働いておった労務者が、その炭住の中に全部入っておらなければ、この炭住は買い上げないわけです。ところが、これはその石炭鉱業合理化法の盲点なんですが、合理化法というのは、御存じの通りAならAという鉱業権者が、
自分
の鉱区を全部一括して買い上げてもらわないのです。最近はこれを四つか五つに分断をして買い上げてもらうわけです。そうして買い上げてもらった隣の鉱区に、すぐまた新しく鉱区を掘ってしまう。掘って、そこに労務者が要るので、今度それを
自分
のかつて使っておった労務者を
自分
の新しい炭鉱に使うわけです。そうすると整備事業団がこれを買い上げようとすると、そこに入っている労務者は買い上げた鉱区の労務者ではなくなるわけです。違った人が入っておるわけです。従ってこれは買い上げないということになる。買い上げた炭鉱の労務者でなければだめだ。ところが鉱区を分割したのですから、別な労務者が入っておるから買い上げない、こういうことになる。すなわちこれは鉱業権者がみずから別な鉱区を設定して炭鉱を開いたために、善意の労務者というものは、炭住が買い上げの対象にならないために移動資金がもらえぬ、こういう事態が起ってきておるわけです。これは全く労務者には罪はないのです。政府が移動資金を出すというのは、その炭住から、労務者にどこかに出ていってもらうために出すのでしょう。しかもあれは、百五十キロか何か、遠方に行けば行くほど金がよけいにつくのです。どうもこういう政策をおとりになっておるのには僕は
反対
なんですが、もし労務政策が、炭鉱労務者をとにかく四散させる
——
労務政策として、あなた方が散らばしてしまうためにとったということを私聞いたのです。私は
反対
だといって怒ったのですが、そういう理論でいくとするならば、買い上げられなかった炭住の労務者も、移動するならば当然これはやるべきです。ところがこれをやっていない。これをやらないと労務者は動けないから、いつまでもそこにおるということになる。これはどうですか。当然私は、山が買い上げられたならば、そこに労務者がおっても仕方がないから移動資金を出すのだという理論からいけば、炭住は買い上げられなくても出してもいいんだということになる。居住権がなくなるんですから……。
百田正弘
177
○百田説明員 ただいまのお説はごもっともでございますが、このさしあたりの
——
さしあたりと申しますか、この制度は、本年の始めから石炭鉱業百万トン追加買い上げのときに、整備事業団としてこういうあれをおとりになったわけでございまして、その目的といたしますところは、やはりその行い得る事業の範囲ということは、おのずから整備事業団の目的に制約されることは当然でございます。離職者対策として、今申し上げました
一つ
の職業の転換対策としてやるというものにつきましては、これのみに依存するということは困難でございますので、先ほど私が申し上げたような措置を今後検討するということが必要ではなかろうか、こう思います。
滝井義高
178
○
滝井
委員
実は問題は、今あなたがおっしゃるように、整備事業団の仕事としてこれをおやりになる。
一体
その金はどこから出たのかということなんです。移動資金のお金は
——
離職金も同じですが、整備事業団が出す。そのお金はどこから出たのか、それは御存じありませんか。
百田正弘
179
○百田説明員 これについて私も詳細は存じませんが、石炭鉱業権者の納付金から出たものということであります。
滝井義高
180
○
滝井
委員
私もおそらく、開発銀行の九分の利子を六分五厘に負けて、その二分五厘の利ざやと、トン当り二十円の納付金が寄ってできているものだと思うのです。そうしますと、問題はここにあるのです。こういう石炭業者の出した金で国が労務政策をやろうとすると、間違いが起る。現在整備事業団というものはそれだけの金しかない。非常にきゅうくつなんです。だから、将来これを労務政策として遂行しようとせられるならば、私は別個に、一般会計の中から労務政策費としてそういう移動資金その他は
——
国が国策によって移動せしめるのだし、国策によって炭鉱を買い上げるのですから、国が当然一般会計からそういう移動資金というものをきちっと整備事業団にあてがうべきだと思う。そうしますと、一視同仁、買い上げられようと買い上げられまいと、炭鉱が買い上げられさえすれば、その炭住から移動していく人にはみんな金が出ていく。それが現在ないところに問題があるわけです。整備事業団というものはいわば赤字を出してはいかぬというので、非常にシビヤーな会計のやりくりをやっておるわけです。きょうは
主計官
がおらぬのですが、こういう点をもう少しはっきりさしてもらいたいと思うのです。
——
石炭局長
、ちようどいいところにお見えになったのですが、今炭住を買い上げられなかったものには移動資金がいかぬわけですが、移動資金の金というものは
一体
どこから出ておるんだ、こういうことで、納付金と開発銀行の利ざやでやるんだ、こういうことですね。そうしますと、事業団の運営はその金でやるので非常にきつくなっておる。
労働者
を移動させるということ、あるいは炭鉱を買い上げるというようなことは国策でやったんだから、この際国がそういう移動資金とかいうようなものは出すべきだという主張なんです。あなたの方はそれをどうお
考え
になるかということですね。実は大蔵省の田代
主計官
に聞きたいと思ったのですが、今いらしておらぬので、あなたの方から御見解を承わっておきたい。
樋詰誠明
181
○樋詰説明員 ただいまの
滝井
先生のお話は、こういう石炭がエネルギー政策の中で方向転換せざるを得なくなった過渡期における離職者というものを、できるだけ分散させるといったような場合の費用については、事業団に買い上げられなかったものも含めて、国の方で直接見るべきでないかという御趣旨のようでございますが、実はわれわれも事務的には、ぜひそういうことをやることによって初めて今後の石炭政策を進め得るのじゃないかと
考え
まして、現在予算を要求いたしておるわけでございます。しかしこれが最終的にどうなるかということにつきましては、これからさらに折衝しなければならぬと思いますが、われわれといたしましては、とにかく全力を尽してわれわれの希望が達成されるように、今後努力していきたいと
考え
ております。
滝井義高
182
○
滝井
委員
岩尾さんも出ておりますが、これは労務政策に
関係
があるので、同じことがずっと出てきますから……。今の移動資金は、通産省としては事務的には国で見るようにさしたい、こういうことでございますから、
労働省
もぜひ御協力になっていただきたいと思うのです。 今のは買い上げなかった場合ですが、今度は炭住を買い上げた場合には、なるほどその労務者が移転をすれば移動資金がつくことになりますが、この買い上げた場合に四つの場合があるわけです。まず
一つ
は、すでにその炭住を
自分
の所有にしてしまった人がおります。これが
一つ
。それから二番目は、金があったら今から買おうかなと思っておる人がおります。それから全然買えないという人が住んでおります。そういう三つのものは、まだ移動するか移動しないかの意思が未決定です。しかしこれから私はもう買い上げになったら移動しますという人もおるわけです。こういう四つの場合がある。一番最後の買い上げになって移動する人は、これは文句ございません。移動資金がもらえるわけです。ところがまず第一番の炭住を
自分
の金で買い上げた人、これには
一体
移動資金をやるのかやらないのかというと、現在はやらないのです。そうすると、政策というものは炭鉱と縁がなくなれば移動資金をやるわけですよ。ところが炭住を
自分
で買い上げた人はもう炭鉱と縁が切れておるわけです。なるほどそこの炭鉱の
土地
にはおるかもしれぬ。炭鉱は政府が買い上げて、炭住は
滝井
義高
なら
滝井
義高
が買い上げたのですから、私は炭鉱とはもう縁が切れたわけです。縁が切れたということは移動したと結果は同じです。当然これには私は移動資金を出すべきだと思うのです。ところが現在出されていないのです。この点は
一体
どう
考え
るかということです。これは移動したと結果は同じです。迷惑をかけていない。
樋詰誠明
183
○樋詰説明員 御承知のように事業団の現在の財政は納付金と、それから二分五厘の金利の免除、この
二つ
だけで現在予定しております山を買うということと、それから
現実
に炭住を明け渡して出ていっていただくということで一万五千円払うというところが、現在ほぼ予算的に一ぱい一ぱいになっております。そこで現在のままの姿で、すでに買っていただいた人にまで迷惑をかけてないのだから、立ちのいたも同じじゃないかということで、一万五千円を払えという御主張をいただきましても、今すぐここでごもっともですというふうには申し上げかねると御返事するよりしようがないと思います。
滝井義高
184
○
滝井
委員
それは
差別待遇
になるわけです。同じ炭鉱
労働者
で、出ていった人にはやるのだ。しかし家を買ったら出ていったと同じでしょう。すなわち整備事業団の家におらなくなったという点については同じです。整備事業団の家におるからこそ困るので、だから
一つ
出ていって下さい、出ていった人には一万五千円上げましょう、こういうことです。炭住は一万五千円より安買える。一万五千円あったら二棟買える。だから
自分
で家を買い上げたのですから、結果は整備事業団に迷惑をかけてないわけです。そうするとその人が一万五千円をもらって出ていきます。出ていって、その一万五千円であとで炭住を買いましょう。買ってまた四、五日して帰ってくることは可能です。それを防ぐ方法はないはずです。百五十キロも出ていけば二万円くらいになるのだから、出ていって、そして別の人に頼んであとの家を買うてもらう、買うてもらってまた十日くらいして帰ってきたらいい。これは脱法
行為
になるかもしらぬけれども、
現実
にはそれは可能です。そういう脱法
行為
をさせないためにも、買い上げた人には一万五千円なら一万五千円をおやりになることが必要じゃないか。それが公平ですよ。それがそうできないならば、その次の第二の問題も同じような結果になってくる。第二の問題は今から買おうとしておる。これはどういうものかというと、移動資金をもらって出ていきます。出ていって買ったらいい。整備事業団は安く売るのですよ。十万円しておったものが今一万五千円、二万円で鶏小屋なんかに売られておる。だから
自分
が買う必要はない。だれかの名義で買ってもらって、四、五日して入ったらいい。そうすると移動資金がもらえるのです。こういう矛盾のある政策が出てきておる。それならば炭住をただでやるか、移動資金を一万五千円やるか、どちらか選択しなさいという政策を出した方が合理的だと思うのです。そういう政策が合理的ならば、買うた人にも一万五千円やらざるを得ない。そうでなければ労務政策は立たない。なぜならば、一棟の
社宅
の中には金を持っておる人もおります。それから全然金のない
生活
保護の人もおるのです。炭住は五軒住まいの長屋です。そうすると一軒が激しく暴風雨か何かで屋根がこわれて雨漏りが始まります。これは整備事業団の炭住だから扱うことができない。ところがこれがその人の所有になると、みんな上っていって修理してしまう。しかし他人の所有だから上って修理ができない。だから青空会といって、天井をのぞく会ができておる。
生活
保護で修理を市に申請して補修費を出してもらいたいといっても、補修ができないで困っております。こういう実態があるわけです。それじゃ全部売ってくれませんか、よろしい、安く売りましょう、こういうことなんです。しかし君らが出ていったら一万五千円やるぞ、こういうことです。ただでやるか、一万五千円をやるか、どっちかを選びなさいといった方が政策としては親切であり
現実
的なんです。こういう政策がとられていないのです。しゃくし定木に、出ていかなければ金をやらぬ、こういうことです。しかも三カ月以内に期限を切っておる。私はこんなばかな労務政策というか移動政策はないと思う。これは底が抜けておるのですよ。労務者というものは一たび家を持てば、必ず熱心に仕事を探してどこかにつくようになります。家がないから浮草のようになる。家を持てばそこにブタも飼おうし鶏も飼おうし、植木鉢もいじる。こういう形で安心立命の地を得るようになる。山の中の三軒家のワラぶきであっても根がはえてくる。根がはえて、ここでは食えぬなと思ったらそこで一万五千円で売ったらいい。一万五千円持ってどこかに引っ越していかなければならない。引っ越しの金はきちっとできる。どうせ価値のない炭鉱を政府は納付金と開発銀行の金を出して、四千万も五千万もかけて買い上げておる。そうすれば山が終る店じまいのときに、未払い賃金をかかえてどこに行っていいかわからない労務者に、家一軒くらいやってもいいでしょう。終戦後
日本
の建設に、産業の生産に尽してきた労務者に家一軒ぐらいやりましょうといって、何ぼ保守党ががんこで血も涙もない政策だって、このくらいの政策を出してもいいと思う。それをやらない。だから私はそれを主張しておるわけです。移動する者には金をやってもよろしい。しかし移動もしない、家をほしいという者には家を金のかわりにやりなさい。これは簡単なことですよ。今炭住を買い上げられたものを見てもわずかなものです。それから全然買い上げにならぬものについては、これは、これは家を無料でやるわけにいかぬから、移動資金だけやって出てもらう、こういう
現実
的な政策をおとりにならぬと、しゃくし定木に三カ月以内に出ていった者には一万五千円やるんだ、これだけであとはだめだということでは
現実
に即応していない。だから
現実
に買いなさい、買おうというが、さて
生活
保護者なんかどうするか、足並みがそろわない。それならば無料でおやりになった方がいい。そうして無料でおやりになった分の穴が整備事業団にあくならば、その部分は政府が補てんをしていく。私は、まず当面炭鉱の対策としてとられなければならぬものはこれだと思う。そして住居が安定をしたならば、その次の段階で緊急対策としてとられなければならぬものは、鉱害復旧の繰り上げとか、あるいは公共事業だ、こういうことになる。住宅を安定してないところで仕事をしたってだめです。浮き腰立って、いつ電気が切られるか、いつ水道が切られるか、いつ出ていけと言われるかわからないというので、みんな戦々きょうきょうです。だから、われわれはこの前樋詰さんのところに行って、少くとも当分の間は強硬な炭住の追い立ての政策はとらぬ、こういうことにして下さいとお願いして、今そういうことになっている。なっているけれども、これは整備事業団が困っている。いつ
一体
先生見通しをつけてくれますかと困っているわけです。そこで私は特にきょうはこの問題を取り上げたんですが、すみやかに
一つ
、山は買い上げるが、炭住は買い上げない場合でも移動資金はやる。それから買い上げた場合に、炭住を無料でやる場合には移動資金は出ません、出ていく場合には移動資金は出ます、どちらでも御自由にお選びなさい。これの方が簡単でわかりやすく合理的ですよ。どうですか、こういう政策はとれませんか。そして、その分については、整備事業団に金がないならば、こんな大政策を遂行するんですから、今年度末、すなわち来年の三月三十一日までには二万七千五百人の炭鉱失業者が当然出てくるということがあなた方の予想です。筑豊炭田では一万一千以上出ます。しかも今年は百万トン、来年また二百万トン追加するということになれば、筑豊炭田で三万、四万出ますよ。そうしてその人たちが炭住を一万五千円でおっぽり出されて、その金を持って、どこかわからない農家の納屋か何かにちょっとおる。また追い立てを食うということで、これはジプシーの民です。故郷に帰ろうたって、帰るところがない。そういう
日本
人を作ることは私はいかぬと思う。だからやはり私はまず住居を与えて、安定さして、そしてじっくり
一体
今後の
自分
の
生活
の道をどうするかということを
考え
させる。
考え
がついたら、それを売ったらいい。買手は幾らもおりますよ。だからそういう点を
一つ
この際積極的に私は
考え
ていただきたいと思うのです。ちょうど予算編成期ですから、今あなた方が政策を打ち出さなければ間に合わない。どうですか、この点。
百田正弘
185
○百田説明員 ただいまの
滝井
先生の御意見、非常に傾聴に値するものがあると思いますが、われわれが先ほども申し上げましたのは、
一つ
は集団的に失業者が同一地域に
発生
するというような場合に、先ほど
大臣
から話がありましたように、あるいは多賀谷先生から話もありましたように、その地域の開発ということは、産業転換の問題として非常に重要な問題になるわけですが、直ちにこれが実施に移されるわけのものじゃないわけです。従いまして、できるだけ他に適当な就職口がある、あるいは他産業に転換の機会があるという場合には、積極的にこの方面にあっせんをする。その場合におきまして、そこに移動する場合に資金がない、旅費がないというようなことのために、せっかくのそうした就職口が得られないことがないようにという見地から、受け入れ先における、あるいは住宅の問題あるいは行く場合の資金の問題等につきまして、現行の制度でいけるか、あるいはこれに不備な点がある場合には、それを補足的にさらに拡張して
考え
ていかなければならぬ、こういう問題を検討しなければならぬということで、申し上げた次第でございます。 と同時に、今お話しになりましたこの整備事業団が移動資金をやるということは、
一つ
の炭住政策と申すのもおかしいのでございますが、そうした問題でございます。整備事業団としてはやはりそういうものを買って、できるだけ早くこれを
処分
するといいますか、そういう必要性があることからして、こういう制度を作ったわけであります。おのずからそこには
滝井
先生のおっしゃるように、これのみをもって労務政策のすべてに奉仕し得るものではないということは、われわれも承知いたしております。そういう意味合いからいたしまして、われわれは先ほど申し上げた意味を含めまして、政府部内におきましてこの問題についてそれぞれ案を出し合って検討しているような段階にあるのでございます。
滝井義高
186
○
滝井
委員
その点は、こういう説明をしたら一番わかりやすいと思う。整備事業団は炭住を買い上げた。だからこれを早く明け渡してもらいたいために、そういう移動資金を出す。移動資金を一人一万五千円出せば、五棟あれば七万五千円になる。だから、七万五千円以下、一棟一万円以下でやるのですから、これは結果的には整備事業団としては得なんですよ。一棟一万五千円ですから、五人
労働者
がいれば七万五千円払わなければならぬものが、一万円で払い下げているから、出ていったあとは一万円で片づく。差し引き六万五千円のもうけになる。これは簡単な算術ですよ。ぼくらが幾ら説明しても、あなた方はがんこだからわからない。そういう行政ではいかぬのです。弾力ある行政をとりなさい。出たい人には一万五千円やる、おりたい人には炭住を上げなさい。これで一万五千円あれば一棟全部
自分
のものになってしまう。そういう点をよく御検討になっていただきたい。買うときは鉱業権者からは十八万円も出して買っている。ところが今度払い下げるときは鶏小屋ですよ。みな倉庫を建てるために買っております。そのときは一万円かせいぜい二万五千円くらいにしか買っていない。だから労務者に払い下げるときにはもっと安くしたらいい。ただ問題は、
土地
なんです。炭住は大して問題ではない。
土地
をどうするかという問題が出てくる。
土地
だけは、たとえば地方自治体に払い下げるときには、炭住の評価をゼロにして、
土地
代を高くして、
土地
だけをやれば、ただでやったことになる。帳面の力は、炭住はそのとき一万円にして、
土地
を四万円、全部で五万円と価額評価をしておけば、会計検査その他はきちっと通りますよ。そこらあたりをもう少しあなた方御研究になってこの政策というものはやる必要があると思うんです。そうしなければ、労務者に一万五千円くらいやって、遠い所に出ていけといっても無理ですよ。静岡県へ行ったけれども、行ってみたら、みなだめだといって帰ってきている。最近はそうでもないようでありますが。だから住宅をとにかく当面与える、与えてその上で仕事をどうするかということを
考え
てやる方が私は先決だと思うのです。これは今どうするという御即答はできないと思いますが、しかし大事な予算編成期ですから、そのくらいのお金は政府は当然出すべきだと思うのです。炭鉱業者には開発銀行の金を貸して炭住を作らしたのでありますから、今の段階では労務者にただでやっていいですよ。長い間炭鉱の中で搾取された労務者に、炭鉱が終るときにはのしをつけて国が家くらいはやるという、こういう政策は
社会党
ならすでにやっている。なんぼ
自民党
でもそれくらいのことはやれると思う。あなた方がそれを言いさえすれば、
自民党
でもやりますよ。ぜひ
一つ
そういうように実現をしていただきたいと思う。
松野
さんがおらぬようになってしまったけれども、おれば、
松野
さんの最後の締めくくりの答弁を得たいと思ったのですが、どうですか、あなた方はそれをやる意思がありますか。これは半年以上前から主張していて通らない。私は労務者には、当然そうなるものだと理解をして、炭住は無料でもらえるか、それとも一万五千円か、どっちか自由選択だということを説明しておった。樋詰さんにもそういう主張をしておったんですが、それでそうなるかと思ったら、今度公示というか整備事業団で出した公告を見ると、そうなっていない。五月十五日から八月の十四日までに出た人にのみ一万五千円上げます、こうなっている。私はこれは一番大事な点だと思う。はなはだしい鉱業権者は、未払い賃金のかわりに炭住においている。たとえば未払い賃金が五千円あったとすると、一カ月三百円だから、君は一年五カ月おることができる、こういうことをしている。そういうものはやはり私は全部無料でやるべきだと思う。たくさんな未払い賃金があって、もらえない、多賀谷君の言うように、加茂炭鉱のようなものはこれからざらに出てきますよ。この点どうもはっきりした御答弁をいただけぬようでありますが、最後に
一つ
御答弁をいただいて、ここで要望をして打ち切っておきたいと思います。
樋詰誠明
187
○樋詰説明員 先生の御意見、一々ごもっともでございますが、最後にお話のございましたたとえば借地をしているのもございます。そういうところのものはこれはとにかく事業団としても早く炭住を
処分
して、さら地にして元の地主に返す、そうでないといつまでたっても地代を払わなければいかぬという問題もございますし、それからこの一万五千円の移動資金というものは、これは先生よく成り立ちを御存じのように、私は前に国会でこういう趣旨を申し上げたときにも、産炭地帯にいつまでも居着いておられるということは非常に職を探すのにむずかしかろうということで、むしろ産炭地帯から移動される方に差し上げたいということを申し上げたこともあったわけであります。ただしそのときに、産炭地帯というのはどこまでをいうのか、五十キロか百キロかいろいろむずかしい問題もあります。たとえば九州から出なければいけないのかというようなことで、非常に段階が引きにくいという問題もございましたから、結局は事業団として買い上げた炭住を早く
処分
したいということを片っ方に目的として持っているために、炭住をあけていただいた方にということになったわけでありますが、これが結果的にいろいろな問題を起している点は御承知の通りでありまして、われわれもこれで労務者に対する対策が十分だというふうには思っておりません。これにつきましては先ほど百田
局長
からも申し上げましたように、石炭鉱業全体についての対策というものは、
関係
各省が集まりましていろいろと相談している最中でありますので、できるだけわれわれ事務当局としては不合理のないような線で問題を解決する方向に努力していきたい、こう思っておりますが、事務当局として責任を持ってどうこうということが申し上げられない点は御了承いただきたいと思います。
滝井義高
188
○
滝井
委員
大蔵省の岩尾さん、今お聞きの通りでございます。この炭住に住んでおる
労働者
に対する移動資金というのは整備事業団の金でやっておるわけです。これは当然国の労務政策としてやるのですから、国が一般会計からやはり出すべきだと私は思うのです。そういう点で今
労働
、通産両省はお宅の方に要求したいと言っておるのですから、
一つ
十分実情把握の上御検討願いたいと思います。以上で終ります。
—————————————
永山忠則
189
○
永山
委員長
この際小
委員
会
設置
についてお諮りいたします。
閉会
中審査案件の審査のため、小
委員
二十五名よりなる
閉会
中
審査小委員
会を
設置
いたしたいと存じますが御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
永山忠則
190
○
永山
委員長
御異議なしと認め、そのように決します。 なお、小
委員
及び小
委員長
の選任につきましては
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
永山忠則
191
○
永山
委員長
御異議なしと認めます。 それでは小
委員
は
大石
武一
君 大坪 保雄君
大橋
武夫
君
亀山
孝一
君 齋藤
邦吉
君
田中
正巳
君
田邉
國男
君 中山 マサ君
八田
貞義
君 藤本 捨助君
古川
丈吉
君
柳谷清三郎
君
山下
春江
君 亘 四郎君
伊藤よし子
君
大原
亨君 岡本 隆一君
小林
進君
五島
虎雄
君 多
賀谷真稔
君
滝井
義高
君 堤
ツルヨ
君
中村
英男
君
八木
一男君及び私とし、小
委員長
には
委員長
の私が当ります。 なお、小
委員
辞任
の申し出及び小
委員
に欠員を生じました場合の
補欠
選任につきましても
委員長
に御一任を願っておきたいと存じます。御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
永山忠則
192
○
永山
委員長
御異議なしと認め、さように決しました。 次会は明二十二日午前十時十分より
理事
会、十時二十分より
委員
会、十時三十分より
閉会
中
審査小委員
会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後五時十五分散会