○
小林(進)
委員 ここ数年どうも
労働省の
労働行政が、
労働省設置法第一条にうたわれております
労働者に対する
サービス機関としての趣旨を逸脱いたしまして、むしろ
労働者を
圧迫する警察的な
立場をおとりになっているのではないかというような感じをわれわれはしばしば受けるのでありますが、ともかく
労働盾が
反動化されつつあることだけは、もう
世間一般周知の事実であります。そういうような
労働本省の
反動化といいますか、右寄りの形が全般的に普及いたしましたその結果は、
全国各地において
労働諸
法規違反の
行為がたくさん起きておるのでございまして、私はその
一つの例としてまことに黙過することのできない
事例を持っておりますので、その例をここで
一つ申し上げまして、
労働大臣並びに
関係局長のこれに対する明確な御判断をお聞きしておきたいと思うのであります。
その
事例と申し上げますのは、東京都千代田区有楽町一丁目十三番地に本社を持っております
電気化学工業株式会社の
青海電化工場に起っております
不当労働行為についてお伺いいたしたいのであります。
新潟県の
青海町というところに
工場がございまして、約四千名の
工員を有する
会社でございまして、
セメント、
石灰窒素等を主たる製品とする
会社でございます。その
会社において、
労働組合と
会社が
一体になって
労働者に不当な
労働行為を行なっておる。あるいは町政の壟断をし、
独占禁止法に
違反するような疑わしい
行為をも行い、
労働者の信条の自由、
基本権の自由、
政治活動の自由も
会社と
労働組合が
一体になって奪っておる。
会社の利益のために町の
政治までもその
会社が支配をいたしておりまして、
自治権の自由をも剥奪しておる。特に
選挙の
干渉、それから
勤労課等が
労働者を一々呼び出しまして、
選挙運動あるいは
選挙干渉を露骨に行なっておるという事実、あるいはまた
会社の
社宅係等が
労働組合員の
私的生活までも
監視をしたり、尾行しておる、こういう事実が露骨に行われており、
工員相互、
組合員相互の
密告等の制度も
会社によって招来をせられて、まことに
徳川時代を思わせるような
暗黒政治でありまするが、これが今日
松野労働大臣の
労働行政のもとにわが日本で今日現在行われておるという事実でございまして、こういう問題の
発生を申し上げますると、少し話がくどくなりまするけれども、問題を正しく理解していただくために、その
事件の
発生を申し上げたいと思うのであります。
終戦後長い間にわたってこの
工場において行われておりましたこういうような事実がそもそも今日明らかになった問題の
発生は、この
青海の町に
昭和三十三年、昨年以来
明星セメント株式会社が新設さるるために
工場の
敷地を物色した、こういうことから始まっておるのでございまして、この
青海町は石灰石が無尽蔵にあるのでございますが、
青海電化と
明星セメント会社の間に用地の買収をめぐり見苦しい争いが昨年来生じて参りました。これについて、大
青海町を建設するためにはどしどし新設の
工場を誘致した方がよろしいではないか、
明星セメント会社もこれは設立さした方がよろしいという派と、やはり
青海電化だけを守って、他の
工場の進出を妨害すべきであるという派が二つに分れたのでありまして、
農地委員会はもちろんでございまするが、この
青海町並びに近郷に住んでおりまする者は、親戚、縁者、骨肉の間にも二派に分れて相争うというふうな
状態が起きてきたのであります。その
状態の中にあって、
青海電化の
労働組合は昨年の五月二十八日に
大会を持ちまして、
大会で
企業防衛、
生活権擁護という名のもとに、ここで全く
労使一体となりまして、
明星会社の設立に反対をするという決議を行いました。そして活動を開始いたしたのでございます。それに至るまでの
青海電化の
労働組合の
訴えは、これはもちろんもう
労働省でもお調べになっておりますから、
内容はよく御存じのはずと思いまするけれども、
職場内においては
労働組合に発言の自由もない、尾行や
監視が
日常茶飯事のように行われている、こういう
会社の実態であります。これはもうお知りでございましょうから、私は詳しく説明することは避けますが、そういうふうな中にいよいよ
大会の決議が行われたのでございます。やがて数カ月を経過いたしまして、昨年の十二月ごろでございますが、所在不明の
電化従業員革新同盟と称する
名義付の
ビラが
工場内にばらまかれた。これは
組合の
大会の決定を誹謗しているような文章で貫かれた
ビラでございます。そこで労組の
中央委員会で
調査委員会というものが
設置をされました。越えて三十四年の三月十日
——従業員の疑心暗鬼がますますどうも強くなって
会社が暗くなって参りました。そうでございましょう。
大会を誹謗するような所在不明の
ビラがまかれていよいよ
職場の中が暗くなったのでございます。そこで今申し上げました三十四年三月十日に
職場を明るくする会というものが少数の
労働組合員によって作られたのであります。その
職場を明るくする会というのは、
明星問題や
選挙には全然
関係しないということを確認しながら、ただ
職場を明るくするということを目的に設けられた。そういたしますと、四月十八日に
労働組合の
中央委員会が設けられて、
調査委員会の
報告に基いて翌十九日
懲罰委員会にこの
職場を明るくする会の
組合員を付しまして、翌四月二十日に
中央委員会は挙手の採決で、
統制違反者として
職場を明るくする会に
関係をいたしました幹部を
権利停止一年ないしは半年間の
処分に付したのでございます。ちょうどこの四月の二十日は
県会議員の
選挙が行われている最中でごさいましたし、続いて
町会議員の
選挙が行われました。この
青海電化からも
町会議員や町長に多数立候補いたしておりまするので、
選挙の最中ではあり、これはこのままにしておったのでありますが、ようやく
選挙も済みました六月の三日に、今度は
会社側の方で、
職場を明るくする会は
明星派、すなわち
明星セメント派の策謀に踊らされたものであり、これに乗ぜられたものであって、これは
会社の
経営方針に反するものであるとして抜き打ち的に
懲戒処分を発表いたしたのでございます。ここにまず
一つお伺いしたい問題があるのでございます。その結果、
懲戒、
解雇になった者が一名であります。それから
出勤停止十日間加える
減給十分の一が二名で、この
減給一割は無期限でございます。次に
減給一割が四名、これは一カ月であります。計七名の
処分が
会社側によって発表せられたのであります。以上の
処分につきまして、六名の者は
懲戒処分無効確認の
訴えを提起し、
新潟地方裁判所において目下係争中でございます。しかるにこれに対して
組合は、今度は越えて八月の四日、こういう
裁判で争うがごときは改悛の情なき者とみなさなければならないとして、右の六名を
除名にしてしまったのであります。すなわち
組合規約四十九条、五十条
違反、こういうことなのだそうでございまして、これを
除名にしてしまった。そういたしますと、今度は
会社は
組合に呼吸を合せまして、
会社と
組合との
労働協約第十条、
会社側は
組合から
除名された者を
解雇する、ただし
会社が不当と認めた者はこの限りではない云々のこういう協約に基いて、
懲戒者六名を八月の八日付をもって
解雇してしまったのであります。ここで
解雇を受けた者は
権利保全の仮
処分の
訴えを起している。これが現在までの事実の真相でございますが、われわれがこの問題を調査していきますうちにいろいろの
不当弾圧の、不正な事実のあることをわれわれは明らかにすることができたのであります。
第一番目に、
会社と
労働組合の役員が
一つになって、全く
労働組合法に
違反する
行為のない者を
処分している、こういう事実をまず明らかにいたしました。
会社は、最初は
会社の
経営方針に
違反をするという理由でこれを
懲戒に処したのでありますが、次にはこれをあらためて
ユニオン・
ショップを建前にして
処分をしておるのでありますが、この
処分の仕方に
一貫性がないのであります。こういうことを
労働省は
一体どういうふうにお考えになっているか。ともかくこの
会社側の
懲戒には、具体的にどんな
行為をしたからそれがいわゆる
解雇に値するというふうなことが少しも書いてない。そこで、ここは
糸魚川の
労働基準監督署の管轄になっておりますので、
労働者側はその
監督署に
訴えて出た。ところが
基準署でも具体的な理由がわからないので、何度も
会社に
問い合せをしている。
一体何でこれを首にしたのかという
問い合せをしておるのでありますが、ここは私よくわかりませんけれども、大体いつもなら何か即日署長から、
解雇に値するという
認定書の出されるのが通例のようでございますが、これは
皆さん方の方が専門でございますから、お聞きしたいのでございますが、そういうふうになっているのだそうでございます。ところがこの
事件に関する限りは十日以上もたつが認定がおりない。
会社から出た
申請書が宙に浮いている。そうしてこんな
政治的含みのあるものはどうも
糸魚川の
監督署でもって処置できないということで
新潟の
基準局にこの問題が送付せられておるということでございます。この問題も私は
基準局長にお伺いしたいと思うのでありますが、こういうことについて、
一体こんな事実があるかどうか。われわれの情報では、どうも
基準局では認可をされなかったので、
会社の方ではまた方針を変えて、今度は
解雇手当を出して
処分をした、こういうようなことを聞いております。なおこの町は
町会議員が二十六名おりますけれども、この二十六名の
過半数の十四名が
会社の部長、
課長クラスが占めている。町長もまたこの
青海電化から出ているということでございます。このために
選挙の
投票は、全部じゃありませんが、怪しげだと思うやつはみんな
組合員に
署名捺印までもさして
投票せしめているということでありますが、
一体こういう事実があるかないか。なおしかしこういうことが
一体許されることかどうか、お伺いしたいのでございます。他の
候補者がそこに
演説に行きますと、聞かせない。そういうようなことは
一体会社として許さるべきかどうか。これはもうわが党の
候補者はみんな経験していることでございまして、聞かせないのであります。立ちどまって
演説なんか聞いていると、これは処罰に値する
行為だということで、聞かせない。これは決して
社会党だけじゃない、
自民党も同じでございます。
自民党、
社会党ともに、
会社側の推薦せざる
候補者の
演説を聞くことは相ならぬということで聞かせない。どうもこういうことが公然と行われていることを、
労働省は今まで——だんだんお伺いいたしますけれども、まさかお知りにならないということは私はないと思うのでございますが、私があまり自説を言っているようでは悪いから、ここに私は資料を一部持っております。時間もありませんので簡単に一、二の
事例を申し上げてお伺いいたします。
一つは
選挙運動に関する
事例であります。これは、
青海工場の
電気工作係をしておる
小川金明さんという人の
公述書でございます。これによりますと「
工場の
部課長級から
町議会議員の
候補予定者を十四名を立て、
議員の
過半数をとって
明星セメント反対を一切に押し切ろうと
選挙運動に狂奔し
従業員は勿論
家族票まで調べて
投票を強要し甚だしきものは捺印までとるという有様である。上役からは白眼視され周囲からは常に警戒されているということは実に不愉快なことである。然し自分の生活のことを考えれば、反抗も出来ず本日まで我慢してきた。自分は
会社には絶対に協力するのだといっても信用せず、最近ではいよいよその度を増し
同僚が「君が若し本当に
電化に協力するならば
投票を棄権し
入場券を持って来い、それによって君が協力したかどうかはっきりする」とまで言うようになった。」こういうようなことで、これは
選挙干渉の
一つの
事例でございます。
中には、
当局側の
圧迫で
気違いになったという
事例がございます。これを
一つ簡単に申し上げますると、元
青海電化工員の
八木ユキエさんという二十一才の御婦人が気が狂っちまった。大へんなことであります。「
昭和三十三年三月
電気化学工業株式会社青海工場第二
工場用地として
土地を提供しました。その時の条件として同年七月、四女
ユキエが同
工場工員に採用されました。
昭和三十三年六月
明星セメント株式会社の
工場敷地として、
土地の
売買契約をしました。
電化の
従業員の
小野清一郎、
山崎健太郎、
八木正義、
八木良雅、元
電化従業員で親戚の
水沼徹等が代々連日連夜来宅し「
電化の
従業員でありながら、
明星に
土地を売ったのは怪しからぬ、
明星との契約を破り
電化と契約せよ」と迫られました。そのために仕事も出来ず夜もねむれない有様でした。「
電化に勤めていながら協力しなければためにならないぞ」とか「
会社を首になるぞ」とかおどかされ、
ユキエは気が狂ってしまいました。家の者にも誰にも物も言わず、室に閉じこもって外に出ず医者に見て貰うよう色々すすめても一言もしゃべらず聞き入れません。」「三十三年十月末
会社から
解雇されました。今では少し落ちついたようですが、又重くなっては困るので親類の人も近ずかないことにしています。」これは
気違いになってしまった。
それからこれは
政党役員になったので
圧迫されたという
事例であります。同じく
青海工場の
経理課の
松沢衛という人でございますが、これは
自民党の支部の
青年部長になったので
圧迫を受けた
事例でございます。これは長いのでありますけれども、こういうことも書いてある。「町内に五百名にのぼるといわれる
監視員が配置され、まるでソ連のゲー・ぺー・ウー的な組織が完備されているのです。たまたま昨春以来
自民党青年部の
結成に努力し、時あたかも
衆議院議員の
選挙等もあり、これを機会に準備を進めて参りましたが、前述の通り
明星問題が出てからこの件は、
工場誘致賛成派の差金で動いているものだ、と云うような見方をされるようになりました。」「
青年部結成の問題が
電化社の
上層部に知れると早速、
池田勤労係長は私を
勤労二階
応接室へ呼ばり「
自民党青年部の
結成の運動は、反
電化的行為であり
工場誘致賛成派である。君も来年は昇格する順番になっているので
会社に忠誠を尽くさないと、君の
立場が不利になるから君の
立場を悪くしないように、こちらでお膳立をするから
会社に協力してもらいたい」
等目の前に餌をぶらさげられて協力方要請された」こういうことを言っておるのでございます。
なお次は、今度は細君の教職を剥奪をするという脅迫が行われているのでございまして、これは
工員の
八木四之吉という人でございますが、これに対して
会社側はこういうことを言っている。「それは君一人だけならよいが
奥さんが学校へ勤めていることだし、今
勤務評定というものもある。
奥さんの方へもひびいて行って
勤務評定に引掛けられて首になる様な事があれば大変だから
奥さんの事も考えてやってもらいたい。それからまた別に行をあらためて、「それは
電化が今の
青海の
教育委員会並に町制をぎうじっているから簡単に考えているが」いつでも首を切ろうと思えば首を切ることもできるのだということを考えておかなければだめだ、こういうようなことも言われておるのでございます。
なお次の
事例といたしましては、
社宅内における
封書収集の件、これは同じ
敷地の中に
工員の
社宅がございますが、その
社宅へ参ります
個人あての封書を集めてやる。中に何が書いてあるのかな、開いてみなさいなどということを言われている。これは一々御説明申し上げると時間がありませんが、こういう
事例もございますし、なおこういう
状態でございますから、
役員立候補に対する
干渉などというものは
日常茶飯事のように行われている。これは
昭和三十四年の五月十一日でございますが、高尾という係長が
伊藤君という
工員に、「
伊藤君
中央委員に出るな、何も言わずに」、
伊藤が「何ゆえですか」と聞くと、「君が出れば
職場が暗くなる」こういうようなことで、
みな役につくことを
当局側はやめさしたりしておるのでございます。
なお次の
事例といたしましては、妻への迫害というのがございまして、これは
青海町
大字須沢の
松沢ミツエという方です。この方は
昭和二十年の四月
電気化学工業株式会社青海工場の
工員として入社し、
庶務課の
タイプ係として勤務いたしました。
タイプ三級の資格があります。それが「
昭和三十三年十月、
夫松沢衛が
自民党青海町
青年部長に就任し、その党が
工場誘致賛成派だということで、
会社の上役から迫害を受けるようになりました。ついに
昭和三十四年一月十九日に
中村係長から講堂と第三
会議室の掃除を命ぜられました。昨年十月以来
同僚からは
村八分にされ、今また
掃除婦にまで落され、くやし涙にくれました。がまんし切れず、二十日から欠勤しました。」こういうわけであります。
タイプ係をやめさせられまして、とうとう
掃除婦にまで転落をして、
同僚から話もされない、
村八分にされてしまった。こういうことが行われておるのでございます。これが
自民党の
青年部長になったからということです。こういう例をあげていると枚挙にいとまがございませんが、これが
現実に今行われているという状況でございますが、
大臣並びに
労政局長、
基準局長のそれぞれのお考えをお伺いいたしたいと存じます。