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1959-07-07 第32回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年七月七日(火曜日)     午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君       池田 清志君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    細田 義安君       八木 徹雄君    柳谷清三郎君       亘  四郎君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    中村 英男君       八木 一男君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         労 働 大 臣 松野 頼三君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁行政局         公務員課長)  今枝 信雄君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (医務局次長) 堀岡 吉次君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         労働事務官         (大臣官房労働         福祉事業団監理         官)      猿渡 信一君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君         労働事務官         (職業安定局職         業訓練部長)  有馬 元治君         労 働 技 官         (職業安定局職         業訓練部技能検         定課長)    青島 賢司君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 七月七日  委員古川丈吉君、山下春江君及び吉川兼光君辞  任につき、その補欠として細田義安君、八木徹  雄君及び栗原俊夫君が議長指名委員選任  された。 同日  委員細田義安君、八木徹雄君及び栗原俊夫君辞  任につき、その補欠として古川丈吉君、山下春  江君及び吉川兼光君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますのでこれを許します。栗原俊夫君。
  3. 栗原俊夫

    栗原委員 らい対策につきまして、二、三大臣並びに関係局長にお伺いしたいと思います。  実は先般群馬県の草津にあります栗生楽泉園へ参りまして、ここにおられます患者皆さんや勤めておる医療担当皆さんといろいろ話し合った中からこの質問になるわけでございまして、一つ明快にあたたかい答弁をしていただきたい、かように考えます。  まず第一に、行っていろいろ伺ってみますと、患者諸君世間から取り残されているというような非常なひがみを持っておることを感じました。たまたま今年は、らい救済対策の五十年記念とやらいうようなことも聞きましたし、またりっぱなあたたかい厚生大臣も迎えた機会に、ぜひとも、らい対策の根本的、抜本的な対策一つ立ててもらいたい、こういうことが患者諸君並びに関係しておる諸君の希望であります。そこでまず第一に大臣にお伺いしたいことは、患者諸君あるいはすでに菌がなくなったといわれておる諸君が非常なひがみを持っておるのでありますが、根本的に、らい関係しておる人たちは、患者並びに全快者を含めて、憲法において認められておる平等な取扱いを受けなければならぬ、こう考えておるのだけれども、現実に今日はそうでないような考え方を持っておる。このらい関係する人たちに対する基本的な人権についての大臣考え方をまず伺っておきたい、かように考えます。
  4. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 まことに御説の通りでございまして、私もその御趣旨には全く賛成いたしております。昭和二十八年らい予防法の改正以来、逐年無菌患者がふえて参りまして、漸次復帰いたさせておるのであります。昭和三十二年かにおきましても七十人ないし九十人程度に及んでおるような次第でございまするが、現在医学的な要請と兼ねまして、またらいの方々に対しましてのいろいな職業補導その他を施しまして、できるだけすみやかに御要請におこたえいたし、そしてまた人権尊重の意味からも平等な生活を均霑せしめるよう努力いたしたい、かように考えております。
  5. 栗原俊夫

    栗原委員 らい関係した人たちの話をいろいろ聞いてみますと、今日までのらい対策というものが、まず原則的にはどうも隔離というような考え方の上に立っておる。もちろん建前とすれば、完全治癒した全快者社会復帰ができるという建前にはなっておるようであるけれども、現実にはなかなかそういかぬ。そしてまた患者諸君もなおった人たちも実際にはそういうことにはなるけれども、具体的に一般社会受け入れについては、なかなか容易でないということは承知しております。だからといってこれをほっておくことはやはりよろしくない。全快者一般社会に復帰できるような条件を一日も早く作り上げていくこと、しかしそういうことができない人たちに対して、園内において完全に全快した人たちをどう扱うか、このことが当面問題になる。本来完全に全快したならば社会に復帰できるのだけれども、実際には復帰できない。具体的には園内に残っている。園内にいるのだけれども、完全に全快している者をどういう取扱いをしてくれるか、ここが問題なんです。もっと具体的に申し上げますと、園内にいる限りはやはり患者扱いをするのか、完全に全快した者は、全快してたまたま社会へは直ちには戻っていけないから、いわゆる一般健康人並み園内待遇してもらえないか、こういうことが基本的な問題になって、なかなか大きな論議になっておるようでありますけれども、これに対する基本的な考え方一つお聞きしたい。
  6. 堀岡吉次

    堀岡説明員 私からお答え申し上げます。  らい療養所は私から申すまでもなく、らい患者を収容しまして、これの治療に当るところでございます。らい療養所におきましては、患者として取り扱うということがそもそもの建前でございます。そこでお話無菌患者と申しますか、全快患者と申しますか、この点は私医者でありませんので、あるいは間違っておるかもしれませんが、実はばい菌の培養という問題が今日全世界の医学をもってしましても、いまだ達成できないということから、非常にむずかしい問題でございますが、しかしながら現在の医学の大体の常識をもちまして、これならば社会復帰をさしてもいいじゃなかろうかというところの判断でもって患者を退所せしめるわけでございます。そこで患者の退所に当りましては、長い間療養所におりましたので、いわばしゃばと隔離いたしておりましたので、その間すぐさま復帰いたしましても、実は復帰いたしました者自身が、世間の荒波と戦うというところに非常に困難を感じるという実情がございます。そこで先生御案内の通り療養所におきましては、そのときに備えましていろいろな職業能力を与え、かねて医療上の要請と合せまして作業療法を行いまして、それらの能力を取得せしめるようにしておるわけであります。この点につきましては、もちろんわれわれとしましても、現段階でもって十分だということは決して考えておりません。何かもっといいものはないかというふうなことでいろいろ考えております。たとえば最近もこんなことを考えておりまして、それは非常に語学のすぐれた人がおりまして、そういう人にラジオ放送その他で語学の練習をさせる。これは人によっては非常に効果がございまして、世間では英語だとかなんとかいうのは割合できますが、特殊な国の言葉でございますとなかなかできる人が少いというふうなものもございます。そこでそういう能力を取得いたしまして、退所いたしますと相当な需要があるのじゃないか。これは人によってでございますので、全部にできるものではございませんが、そういうようなことも考えてみておるのでございます。そういうような何かいい方法がありますれば、医学的な要請と両々相待ちまして先生のおっしゃるような患者状況でありますならば、すべからく療養所におる必要はないということになりますならば、そういう方面をもっともっと開拓するようにいたしたい。ただ療養所におります間は、これは建前といたしましても患者を取り扱っておるところでございますので、これを全然健康人で何もないのだということでその取扱いをすることは、現段階ではいささか考慮を要する問題ではなかろうかというふうに考えております。
  7. 栗原俊夫

    栗原委員 お話を聞いて現状のありさまはよくわかりました。しかし実際の地元の要求は、らい対策医療中心にして、ほんとうに病人だけを患者として扱え、こういう段階にきたのではないか、こういうことを強く叫んでおるわけです。従って現に菌のある者はこれは療養対象にする。完全になおった者はなおった人間として取り扱ってもらいたい。しかし社会復帰と口では言っても、なかなか実際には、らい患者がなおったからといって世の中に出てきてすぐあたたかく迎えられるという状況にはほど遠い、そのことも彼らはよく知っております。従ってこういう全快した人たち患者ではない。全快すれば完全人であるけれども、社会ではすぐ受け入れられない実態にある、これをどう取り扱うかという、らいに対するいま一段高い対策を何とか考えられないか、こういうことを要求しておるわけであります。率直に言えば、なぜこんな問題が特に大きく出たかというと、先般草津綿打ち作業をやっておって、しかもこれが過ってでありましょうけれども、引きずり込まれてなくなった。しかしやはり患者扱いであって、労働基準法対象にも何もなっていない、こういうことでまことにつらい立場に立つ、こういうことで社会復帰のできる完全に快癒した人たちは、そこにはおるけれども、やはり患者としてではなくて、一般社会人としてやっていけるような、つまり快癒後の、全快後のらい対策、従ってらいの既往症の対策、こういうものが立てられないか、こういうことを強く要求しておるわけなんですが、これらに対して具体的な、いま一歩進んだ考え方はないものでしょうか。
  8. 堀岡吉次

    堀岡説明員 先生お話の点は、私どもとしまして、実際のらい療養所運営に当っておる者としまして非常によくわかるのです。はっきりしたところができますならば、たとえば現在らい療養所の中で先生ごらん通り、実はらい患者に所内のいろいろの作業をやらせておるという点がございます。それらと相待ちまして、一体としての療養所運営をやっておるわけであります。ところが事柄のいかんによりますと、率直に申し上げますと、患者でなしに、職員作業すべき分野が相当あるわけであります。これらの点も現在事務的でありますが、明年度予算編成考究を現在いたしておるところでありますので、それらの作業の内容を分析しまして、そういうものでやり得るものがあれば、そういう方向に進むのも一つ方法ではなかろうか。そうしてその間にだんだんなれてくるということで、療養所内部言葉で言いますと、しゃばへ帰るといいますが、そういう方面対策についても現在いろいろ考究中でございます。ただくどいようでありますが、私申し上げましたのは、療養所というのは一応患者を取り扱うということで、予算もそういうふうな国会の御承認を受けておりますので、この建前をにわかにくずすということは、これは相当根本的に考えまして後に腹をきめませんと、何分にも医学上非常に問題がいろいろある分野でございますので、その点は先生の御趣意を体しまして、十分これから研究いたしていきたい、かように考えております。
  9. 栗原俊夫

    栗原委員 これは大臣からお答えを願いたいのですが、ただいま局長からもお話のありました通り、現在の療養所患者対象にしている、しかしその患者の中に全快した社会復帰のできるような状況になった人たちも多々おる。お話によれば七十人から九十人程度社会復帰をしておるというけれども、復帰できる可能性のある実態を持った人が、実際にはできない、こういう人たち受け入れるたまり、先ほどの言葉をかりて言えば、しゃばへいく一つのかけ橋のようなものができないか、こういうことを強く考えるわけであります。療養中心のものが今の療養所であって、療養所でなおった人をしゃばへ送り出す途中の一つの池を作る。そこにはただ単に患者としての作業という形の取扱い方でなくて、一人前の取扱い労働基準法に基いた仕事のできる中間的な社会というと言葉が悪いかもしれぬけれども、そういうものの考え方はできないか。らい対策としてこのあたりで大きな曲り角へ来ておると思うので、一つ一番ふん切って、五十年の記念事業にもちなんで、踏み切る時期ではないか、こういうような考え方があるわけですが、これに対する大臣のお考えをお聞きしたい。
  10. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは当然早急にそういうような対策を、受け入れ態勢を確立するよう諸準備を進めていきたいと思います。
  11. 栗原俊夫

    栗原委員 そこで、現在そういう立場にある人たちの話を聞いてみますと、草津立場をとってみても、無菌だと医者立場らいわれている人たちが大体四〇%くらいおる、こういうのです。これは一方聞きでありますから、皆さん立場からさらに御調査も必要だと思いますけれども、こういう人たちがどういうことをやっておるかというと、先ほど局長からもお話のあったように、内部作業に携わっておる。問題はこの労賃の問題なんです。これが一日二十円見当だ、こういうのです。患者としての取扱いを受けておるから、宿舎費も要りますまい。食糧費も要りますまい。それからその他いろいろ慰安費と称するようなものが月に五百円給与されておる。その上で働くのだからというようなことで与えるのでしょうが、一日二十円見当ではこれはお話にならぬ。そこで、あの人たちもきわめてささやかな要求を言っておるのです。せめて百六十円程度にしてもらえまいか、六百円くれというのではございません、一日二十円を六十円程度に引き上げてはもらえまいか、こういうことを言っておるのですが、これらに対してぜひとも次の予算編成に当っては取り上げて、これからあと幾つかお願いしますけれども、一つ考えてやっていただきたい、こう思うのですが、一つ非常に明るい見通しをあの人たちが持てるような答弁をぜひ積極的にお願いしたい、こう思います。
  12. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは当然予算措置等ともにらみ合せまして、そうしてやはり一人前の人としてのそうした報酬というようなものを考えなけそばならない、かように考えております。
  13. 栗原俊夫

    栗原委員 時間もございませんので、先を急ぎますが、それはらい予防に対する療養全快した人の問題で、全快した人たちの問題についてお願いしたわけですが、いま一つは、医療を積極的にやる、こういう面で、らいというものが非常に特殊なものであるために、医局員補充に非常に困っておる、こういうことを言っておるわけです。現に草津におきましては、定員十五名のところ十二名しかおらぬで、三名は欠員になっておって、なかなか補充ができない。しかも普通の結核療養所等に勤めておれば、結核療養に二十年なら二十年勤めたということが、もし個人的な開業をする場合には一つの箔になる。ところが、らい患者を二十年見ました、三十年見ましたということは、個人開業をするときには、むしろじゃまにこそなれ、ちっとも箔づけにならない、こういうようなこと等もあり、さればといって特別な手当があれば、一つ行ってみようということも起るだろうけれども、そういうことも今の建前ではなさそうである。こういうことで、特にこれらの医療に心を傾けるならば、らい患者をみとりするこの人たちには、そのらいを扱うということについての特別な給与措置というものがぜひとも考えられなければならぬのではないか、こういうことであり、またいま一つには、家族環境子弟教育にまことに工合の悪いところにどこも置いてある。こういうことも、やはり研究心があっても、なおかつ子弟教育のことを思うと、どうも身は行きた、けれども行けないという条件にもあり、その他いろいろの考慮を払って、医局諸君が好んで飛びついていくほどというわけにはいかぬでも、ここへも行けるような条件というものを具備さしてくれることが、らい対策医療の面における根本的なまず第一歩ではないか、こういうことがいわれるわけですが、これに対するお考えはいかがでございましょう。
  14. 堀岡吉次

    堀岡説明員 お説の通りらい患者の一番要求しておりますのは、自分の治療に当ってくれるお医者さんが十分ある、そうしてそれが十分な近代医学要請に沿った治療を与えてくれるということでございます。そこで御指摘のありました医者が不足しておるではないかということはお説の通りでありまして、われわれとしてはまことに申しわけない次第でございます。鋭意充足に努めておりますが、ところによるわけでありまして、たたとえば東京の近間の多摩全生園になりますと、医者定員はそろっておる。ところが、今お話子弟教育等の問題がございまして、遠くになりますと、その欠員の率が高くなっておるということはお説の通りでございます。この点につきましては、お話子弟教育の施設、そういうものの便宜を与えるということにつきましては、ただいまお話の点でわれわれとしては非常に参考になる点が多々あると思います。これから十分考究したいと思います。  なお現在、俸給につきましては、六号俸調整号俸を出しておりますが、それだけでは解決はとてもできないのでありまして、今後はらい療養所に勤務する医者を根本から育て上げて、ある程度大学に在学中からそこへ関係づけるといいますか、そういう方向でも考えて、将来医者充足に努めたい、かように存じております。
  15. 栗原俊夫

    栗原委員 これは単にそういう面だけでなくて、一般的な予算から言いましても、どうもひがみではなくて、やはり日の当らぬ場所というような実際が多々あるように行ってみると思われるのです。たとえて申しますと、定員常勤職員関係でありますが、草津においては、現在二十三名の常勤職員がおるけれども、調整のときには、がえって定員職員を六名も常勤に落さなければ、どうしても予算の割り振りができないというような状態に陥った、こういうようなことを言っておる。そんなばかなことはあるまいと言ったのですが、調整の額が高いので、どうもこういうことになったのだ、こういう説明をしておるのですが、これらはあるいは私の聞き違いかもしれませんけれども、とにもかくにも人件の予算というものが非常に苦しい、こういうようなことも言っております。  さらにいま一つ、特に盲人関係諸君から要求されることは、少しこまかくなるのですが、こういう特にほかに全く楽しみも何もないというような人たちのことですから、心にかけてやっていただきたいことは、盲人諸君盲導標について、今昔を出す設備がしてあるけれども、こういうことをいま少しくやるように単独の予算を持っていただきたい。こういうようなことなどは、一般社会考えると、まるで話にならぬようなことであるけれども、実際あそこにいる人たちにとってみると重大な問題になるらしいのです。特にまた身体障害者諸費というようなものがあると聞いておりますが、草津では三十万円割り振られておる、こういうような話をしておりました。しかし、それらについても、義足等に優先的に配分されて、一般の人からいうと、そんなものは棒切れを拾ってもいいじゃないかということで、盲杖、こういうようなものも全然渡らぬというようなことで、ほんとうに金が全くないために、非常にわずかな金のことで苦労しておるらしいのです。結核家族にとかく冷たい目で見られるかもしれませんが、らいということになれば家族から全く切り離されたような形になって、従って金は外からなかなか入ってこない。実際与えられるだけで、それが足らぬということになれば、それで完全に足らぬ、こういうことになるので、でき得る限り予算についてめんどうを見てやっていただきたいということと、特にこれは一般論でなくて、草津についてお願いしたいことなんですが、草津寒冷地帯だというのです。寝具とか毛布とか被服費とか、こういうものが一般平均予算配分ではどうにもこれはやり切れぬ、こういうことを強く訴えておりました。従って、他の療養所予算の三〇%くらいはぜひとも寒冷地の処置として次の予算では配慮していただきたい。こういうことを特に強く訴えておりましたので、これらについて一つお心がまえを伺わせていただきたいと思います。
  16. 堀岡吉次

    堀岡説明員 御指摘盲人の問題は、前々から私らも非常に心を痛めておりまして、本三十四年度の予算で初めて若干の経費が計上されまして、幾らか秋眉を開いたというところであります。御指摘通りであります。ただその金額が非常に軽少でありますので、これは今後大いに増額に努めたいと思います。  それから盲人患者の特異な点につきましては御指摘通りでありまして、なかなか世間ではおわかりにくい問題でありますので、予算折衝に当りますわれわれとしては、今後さらにさらにこの点は大方の理解を得まして、予算の十分いきますように努力いたしたいと思います。  それから草津寒冷地の問題でありますが、そういう点を考えてやっておったつもりでありますが、現地御視察の上の御指摘でございますので、今後はこの点につきましてさらに考究いたしたいと思います。
  17. 栗原俊夫

    栗原委員 それから先ほどちょっと一日二十円云々という問題とからんで、慰安金というのですか、この金額が五百円とかいう話を聞いておるわけですが、この問題と、今度十一月から実施される年金との関係で、やはりいろいろ問題を言うておるわけです。どうも片一方が五百円で、しかも働いてやっても日額二十円というのですが、その辺の計算が私もよく正確にはわかり切らずに帰ってきたわけなんです。こういうような問題と年金との関係で、隣のうちと隣のうちというような関係が、まことにどうも調子の悪い関係になってくる事態が起る懸念がある。従って年金はまことにけっこうなんだが、年金をまず与えてもらうことと、年金が実施されたら、年金がこの園内のお互の平和を乱さぬような配慮をし、その他の人の収入にも十分考慮してもらいたい、こういうことを強く要求しておりました。この点、一つ配慮を願いたいと思います。  いま一点は、このことは人類愛から出ておるのですが、第三国人取扱いの問題についてです。草津には韓国の人がだいぶんおるらしいのですが、この人たち待遇の面でまことに窮地に陥っておる、こういうことを言っておったのですが、果して事実かどうかわかりませんが、もしあの現地人たちが言うようであるならば、らいというものにさいなまれ、その上ほんとうにわずかな、ただ生きるための程度の中で、国籍によって差別待遇を受けるようなことがあってはならぬので、これらについて国籍を越えて人類愛立場からめんどうを見てやってくれるように、こういう強い要望がありました。  いま一つは、これはここで特に議論するわけではございませんけれども、特に患者の中からの強い要望の声として一つ心にとめておいてもらいたいことは、選挙法に関する問題なんです。らい療養所の中には、選挙が始まるというと中で演説はできない、こういう建前になっている。かきのまわりに来てラッパで呼びかけるのだけれども、何としても広過ぎてこれが行き届かぬ。自由に聞きに行ける立場に置かれて、なおかつ聞きに行かぬのならけっこうだけれども、聞きたいけれども聞ける段取りがつかない、こういうことでは、われわれも有権者として参加するのにうまくないから、一つ何とか選挙が始まつたならば、園内でも街頭演説にははいれるような配慮をしてもらいたい、こういうような要求をしている。これは必ずしもここの問題ではなくて選挙法の問題にもなるのですけれども、一つ配慮を願いたいと思います。なおこれについてお考えがありましたならば、一つお答えを願って私の質問を終ります。
  18. 堀岡吉次

    堀岡説明員 御指摘の障害年金の問題でございますが、これは国民年金建前から、障害年金はこれこれの障害に該当する者にやるということでございますので、それからはずれました人間との間のアンバランス、これはやむを得ぬことでございます。それができ上った後における園内の、先生おっしゃいましたが、その点については実はわれわれも苦慮いたしております。かといって、にわかにそれをこうする、ああするというわけには参りません。これは国民年金という制度ができました際の、日本国内あらゆる方面における一つの制度というふうに観念上は割り切っておりますが、具体的にはそうもいきませんので、どうしたらいいか実は考究中でございます。  それから第三国人の問題は、別にそのことによって取扱いをどうこうするということは考えておりません。これは患者として取り扱っております。ただ、先ほど御指摘のありました障害年金の問題でございますが、これは完全に第三国人にはいかない、日本国民にしかいかない、これは当然でございます。それ以外の問題は、私どもは現在何も特段にどうということはやっておりません。  それから選挙法の問題は、これは全く選挙法の問題ですから、公けの席を選挙に利用するということになると、これはわれわれとしては何と申しわけしてよいやらわかりませんので、何か便法があれば考えるとして、現在のところはちょっとにわかにお答えいたしかねますので、よろしく御了承願います。
  19. 八田貞義

    ○八田委員 関連して御質問を申し上げます。今、らい問題についての話がありましたが、日本のらい対策は、やはりらい予防法によって隔離消滅というような対策がとられておる。ただいま答弁の中にありましたように、社会復帰の数が七十二人から九十人くらいあるということが言われているのですが、これくらいの少数の社会復帰で、これは何年から何年までの社会復帰でございますか。
  20. 堀岡吉次

    堀岡説明員 先ほど大臣から七十ないし九十人程度と申しましたのは、大体最近の年間平均の人数でございます。
  21. 八田貞義

    ○八田委員 年間平均といたしますと、こういう人がだんだんふえていくんだろうと思いますが、こうした社会復帰の人は自分から職を見つけて社会復帰したのか、あるいは厚生省あたりがそういった社会復帰のための努力をされた結果、こういうふうなことになったのか、あるいはまた社会復帰の現状は、一体どういうところに社会復帰されて、そして生活を立てておるか、この点一つお知らせ願いたいと思います。
  22. 堀岡吉次

    堀岡説明員 この復帰の、何といいますかプロセスのお尋ねでありますが、患者状況が大体社会復帰してもよろしいという判断は、これは医者がいたします。そこで行く場所があるかどうか、これが第一番でございます。大体自分のうちへ帰るというのが多くのケースでございます。そのほか、そういうところがなくても、たとえばこれの援護団体であります藤楓協会等があっせんをいたしまして、資金の貸付、あるいは全然それとわからないようなところにおける職場を見つけまして、そういうところにあっせんするというふうなのが多いようでございます。
  23. 八田貞義

    ○八田委員 大臣にちょっとお願いしたいのですが、この社会復帰の状態がまことに受け入れ態勢として不十分な状態がある。この点、今らい予防法によってらい対策が作られておるのですけれども、しかしこのらい対策社会復帰という現実がある以上、その受け入れ態勢というものをはっきりしておかなければならぬわけです。そうでなくて、幾ら無菌患者がふえたからといって、受け入れ態勢がなければ、社会復帰というものは伸びていかないわけなんです。この点大臣として今後らい対策をどういうふうにしてやっていかれるか、らい予防法だけで患者対策を進めていくんじゃなくして、らい患者を正しく社会人として復帰できるような態勢というものを作っていく必要がある。この点についての大臣としての対策一つお伺いしたい。
  24. 堀岡吉次

    堀岡説明員 先生のお尋ねの点につきましては、先ほどもちょっと大臣、他の御質問のときにお答えになりましたが、一般社会受け入れ態勢の問題、これが根本問題なのでありまして、その不十分な点は御指摘通りであります。今後この面では大いに努力したいと思います。これは単にらい予防法だけの問題で片がつくとは私どもは考えておりません。従いまして、根本的に申しますと一般社会の理解が大前提と考えますが、この点については大々的に努力していきたいと思います。御案内の通りらい療養所の中では、いわゆる常識的に見ても社会復帰が可能な患者は毎年七十ないし九十という具体的にはっきりした人数以上におるわけです。この点は別に確定いたしませんが、その点については、そういう諸般の前提が成熟いたしませんと、今にわかにそれだけでよろしいというふうには割り切れませんので、今後この点はらい予防法のワク内のみならず、一般社会受け入れ態勢の確立ということに努力したい、かように考えております。
  25. 八田貞義

    ○八田委員 そういった考え方を持っておられるならば、計画をお作りになって、そして社会復帰者を正しく迎えるというような、結核におけるアフター・ケアー施設みたいなものを設けていく必要があると思う。もう一つは、無菌状態——完全無菌というふうに解釈されがちですが、これが非常に問題になるのは、らい患者になりますと発汗作用がとまってしまう。発汗作用が一番大切なんです。汗をかくことができないというような生理機能の変化がらい病の場合に必ず起ってくるわけです。これは無菌状態になっても発汗作用の復活ということはないわけです。発汗作用を何とかしてなおそうということで、最近日本医大の丸山教授が発汗療法についての研究をやって、実際に全生園において効果をあげておるわけです。ところがこういった研究に対して厚生省は何ら関心がないのか、あるいは関心を示されても、それに対して援助の手が全然伸びていないわけです。こういったらい研究に対して最も必要な発汗作用の復活という研究は非常に大切な問題でございます。こういった問題は大臣にも頭の中に入れておいていただいて、こういう研究に対して育成の方法を講ずる。これは単に無菌になったから社会復帰はいいのだという、そう簡単なものじゃないわけです。やはり社会復帰をする以上は、働いたならば汗をかくというような生理機能の復活が一番大切でございますから、こういった研究に対して実態に基いて対処されまして、非常に有益な研究ならば厚生省は進んでこれに対して援助を与える、こういった点に御配慮をいただきたいと思うのです。その点について大臣のお答えを願いたい。
  26. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 八田さんの専門的な御意見につきましては傾聴に値するものがあると思います。できるだけそういうことにつきまして研究いたしてみたいと存じます。
  27. 永山忠則

    永山委員長 滝井君。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣はあとで御用件があるそうでございますから、三十分ばかりまとめてやりますから一つ簡単に要領よくお答えを願いたいと思います。  七月の三日の社会労働委員会で、大臣の重点的な、基本的な政策については九月まで一つ待たしていただきましょうということで、それを待って大臣の方針をお聞きかせ願いたいと思います。そこで当面の問題をお聞きしたいのですが、四日に事務当局の意見は聞かせていただきました。従ってきょうは時間がございませんから、結論のところだけを大臣にお答え願いたいと思うのです。きょうはおそらく事務当局からいろいろもうお聞きになって出て下さったものと思いますので、おもな点だけを質問しますから、要領よくお答えを願いたいと思います。  御存じの通り、今非常に問題になっております中央社会保険医療協議会の委員の任期が、半数が七月の九日に切れることは、この前御指摘した通りです。それに対しましては大臣は、主管官庁としての厳然たる態度で、各方面の意見を十分聞いて、話し合いの場所を作っていきたい、こうおっしゃったわけです。まあそれはおいておいて、もう一つ社会保険審議会という機関、これがやはり同じように七月九日に任期が切れるわけです。この方は大臣ももうすでに御存じだと思いますが、公益代表として医師が入っているわけです。ところがこの社会保険審議会というのは社会保険事業運営に関する事項を審議するところなんです。もっと打ち砕いて言えば、いわば法律を主として審議するところなんです。従って中央社会保険医療協議会とうらはらの関係にあるわけです。これがやはり七月九日に任期が切れる。もう一つ、前の国会で、多分四月八日であったと記憶いたしますが、臨時医療制度調査会というものが成立をしているわけです。この委員も二十名以内か三十名以内で任命をしなければならぬ時期がきているわけです。これを任命しなければならぬ。この委員の任期は二カ年とワクがきめられているわけでありまして、すみやかにこの人事を発足せしめなければならぬ。こういう三つの当面する問題があるわけです。一体大臣はこの三つのものをどういう工合におやりになるのか、これをこの際一つ明らかにしておいていただきたい。
  29. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 医療制度調査会につきましてはできるだけすみやかに発足いたしたいと存じております。中央社会保険医療協議会の運営等につきましては、これは今新聞等に、いろいろ問題になっておりまして、日本医師会が委員の任命を断わるとかなんとかいろいろ言っておりますが、私どもはできるだけ医療行政の全般的な完全な運営のもとにおいてこれをせしめるよう、われわれは最善の努力をいたしまして、話し合いの場を作るべき目下努力中でございます。社会保険審議会につきましても、同様、やはりこれら三協議会、審議会、調査会がうらはらの問題でございますから、同様な趣旨に基きまして目下努力をいたしておるような次第でございます。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 三つとも目下努力中だそうでございますが、問題は中央社会保険医療協議会一つが行き詰まっておりますと、他の二つの医療制度調査会の方も社会保険審議会の方も進まない情勢にあるわけです。しかし三つはやはり同時に委員を任命しなければならぬという事態に直面しているわけです。従ってこれらの三つのものの任命ができないということは、厚生行政全般が非常に大きな停滞を来たすことになるわけです。これは明らかです。従って何かここに大臣としては——もう七月の九日といえば、きょうは七日ですから二日しかありませんから、何かここに打開の糸口を——こういう方法でやるのだというその打開の糸口は見出しておられるのではないかと思うのですが、何か打開の糸口をお持ちですか。
  31. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 糸口というて具体的にどうというあれはございませんけれども、今各方面のいろいろな方々の意見を伺いまして、できるだけ一点にしぼりまして、早急にこれを結論づけたい、こういうふうに努力をいたしております。事務当局等も連日のごとくこれが心痛努力をいたしておるような状況でございます。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 この問題はすでに昨年の六月以来懸案の事項なんです。そしてだらだらとやってきております。私が特にこの問題で大臣にお願いをいたしたいのは、やはり解決をしようとするならば、二、三日徹夜をやるくらいの覚悟でやってもらいたいということです。これはだらだらとやれば、また往生ぎわの悪いようなことになる可能性があるのですから、そういう点だけきょうは申し述べておきたいと思います。  次には厚生省の顧問というのがあるのです。これを坂田さんがやめぎわになりましてから、医療保障五人委員会というものの任期が切れて、そして何か一つ日本の医療の根本的な改革についての報告みたいなものを出しました。そこで五人委員会の任期が終ると、そのあとに顧問を任命した。これは大臣御存じだと思いますが、四人おるのです。長沼さん、小河さん、植村さん、三好さん、こういうように地方行政の権威や新聞界の長老や財界の長老、大蔵省の長老というような人を任命しておるわけです。ところが厚生省というところが今直面をして壁にぶち当っておるのは一体何で困っておるのかというと、医療行政で困っておるのです。医療行政で困っておる厚生省が療養担当者の顧問を一人二人くらいこの中へ加えてもいいのじゃないかというのが私の意見なんです。ところが今まで厚生省は、いわば橋本寛敏先生のような方はお加えになったけれども、ほんとうに第一線に立って、大衆とともに自転車に乗って往診をして、泥まみれになって大衆の医療を推進しておるような人は任命したためしがないのです。何かこの際厚生行政というものを大きく、何と申しますか、大衆、国民の中に窓を開こうとするならば、やはり野に遺賢なからしめるというのですか、そういうものをやってみることが一つ方法じゃないかと思うのです。そういうことがまた今閉ざされておるとびらを打開していく一つの糸口になるようにも思うのです。厚生省顧問についても、そういう、もっと野にある声をしかも療養担当者の中から聞く意思があるかどうかということです。
  33. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御説ごもっともでございます。私はこの顧問の方々につきましては、植村さんを除く三名の方とはみな懇意にしておりまするので、できるだけ厚生大臣並びに事務当局に対しまして、世間の批判というものが一体どうなっておるか、あるいはどういうふうな御意見をお持ちであるか、こういうことを随時教えていただく、こういうような、深く軽くというとおかしいのですけれども、そういうような気持であるのでございまして、そして将来にわたりまして各界の野の遺賢というものに、いろいろやはり厚生省を離れた立場において厚生行政を批判していただく、こういうような気持におきまして、厚生省顧問、こういうことでございます。もちろんこの医療行政につきまして、学識経験の方々も一応の顧問の候補ということも考えられないことはございませんけれども、現在これはまだ一名欠員になっておることは、私どもが事務当局その他と検討いたしましてこれは早急に結論を得て補充をいたしたいと思っておりますけれども、今別に具体的にどうということはきまっておりません。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 具体的にきまっていないので、一つ今まで厚生省の事務当局なり大臣がやらなかったことを、政党人出身のあなたがやってみるということも一つ方向じゃないかと思うのです。こういうことがやはり厚生行政が今まで行き詰まった大きな原因になっておるのですよ。まあ持ってくる顧問は大きな税金のかからない、アメリカ資本の入っておるような病院の院長さんというようなものも持っていき方としては一つ方向です。しかしやはり今一番問題になって行き詰まっておるのはどういうようなものかということを考えるときには、やはり人事にそういう一つの打開の道を打つということも私は一つの大きな厚生行政としては進歩的な方向になるのじゃないかという感じがするのです。この点は一つ政党出身の大臣としてお考えになる意思があるかどうかをもう一ぺんお伺いしたいと思います。
  35. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御意見を尊重いたしまして、いろいろ研究してみたいと思います。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひ一つそうしていただきたいと思います。  次にこれは事務当局に質問した結果、大体の結論を得たので、大臣の最後の締めくくりの答弁を実はいただきたいのですが、先般の医療協議会で結核治療指針の改正が行われた。これは七月一日から実施をされるものとわれわれは期待をしておりました。ところがこれは事務的な隘路のために七月一日実施ができないということがわかった。その事務的な隘路は一体どこにあるのだ、それを一つ一つお尋ねしてみました。この改正のために年間予算でしますと、二十四億の金が要るのだ。ところが現在の政府管掌の健康保険や国民健康保険や船員保険、日雇保険というもの、いわゆる保険局関係のものは、これは予算はまかない得ます。では問題になるのは生活保護だが、生活保護はよろしいかと言ったら、生活保護も大体事務的には大丈夫でございますという結論になったのです。この前結論がはっきりしなかったのは国立療養所関係だったのです。きょうは医務局の方は見えておりますから、医務局の方から——結核治療指針の改正が行われた場合に、国立療養所関係は大丈夫ですか。
  37. 堀岡吉次

    堀岡説明員 療養所予算は、結核治療指針の改正を行いますと医療費が数億円かかって参ります。この分は治療指針というけっこうなことが断行されますならば、それがかりに医療費の方でどうなりましょうとも、最終的には足りなければこれは予備費の支出となる、もう一つば歳入が上るわけですから、それに見返りまして、適当な機会がありますならば直し得るということで大体いけるのではないか、こう考えております。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、健康保険関係が大丈夫だ、それから国立療養所が大丈夫、生活保護関係医療が大丈夫だ、そうなりますと、公衆衛生局、これは前から大丈夫だ、こうおっしゃっておる、隘路はないということになりまして、では八月一日から実施大丈夫か、こう念を押しましたが、八月一日から大丈夫だという答弁はないのです。しかし八月一日は多分大丈夫でしょう、こういうことなんです。これは八月一日大丈夫かどうか、一つ大臣から御答弁願いたい。
  39. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 まことにその通りでございまして、本日八月一日から施行するように告示をいたしました。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 ようやく八月一日告示が出ましたので、全国の八十万の結核患者は旱天の慈雨として喜んでおるだろうと思います。厚生省と日本医師会、日本医師会と病院協会が道路のまん中でけんかをしておる、一つ道路の端の方でけんかをしてくれ、こういうことで、この問題を中心にしてといわれましたが、まずまず道路のまん中のけんかはなくなったようでございます。みんな道路の端でこそこそとやるけんかなら、これは仲裁が入ればまとまる情勢が出ると思いますから、一つ大臣、八月一日実施を契機としてがんばってもらいたいと思います。  次には、昭和三十六年四月一日からいよいよ皆保険になるわけです。皆保険になった場合に、日本の保険医の姿は一体どういう姿になるかということです。これを一つ大臣の構想をお聞かせ願いたいと思うのです。
  41. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 それはまだ私も来たばかりで、そういう先々のことにつきましては、いまだ遺憾ながら結論が出ておりませんけれども、幸いに近く発足いたされまするところの医療制度調査会等におきまして、この問題について十分に討議をいたしまして、できるだけ早く見通しをつけさせてみたいと思っております。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 実は医療制度調査会は二年で答申をするだけであって、具体的なことでは実施のすぐのものができるというわけではないのです。ところが現実に着々と皆保険の行政というものが進んで、そうして三十五年度末にはそれが完成することになるわけです。そうすると完成した瞬間における姿というものは一体どうなるかということは、全国の療養担当者に今から厚生省が明白に示しておかぬと、非常に不安が起ってくるわけです。これは今ここで大臣にそれを示せということは無理でございましょうから、一つ秋の重点的な施策までに、こういう姿になるだろう、その場合にその保険医の所属する日本歯科医師会とか日本薬剤師会、あるいは日本医師会といったようなものは、一体どういう役割を演ずるものになるのか、これは今の自由開業医の諸君や保険医が一緒になって所属しているものとは幾分違ったものになるのではないかという感じがしておるのです。そういう点もあわせて、一つ大臣の二年後の未来像を教えてもらいたいと思うのです。これを秋までに一つ大臣の、何と申しますか、宿題では非常に失礼に当りますから、構想をまとめる一つの参考に私の質問意見として申し上げておきますので、どうか一つまとめていただきたいと思います。  次には、甲乙二表というものが今の社会保険の診療報酬の点数表にはあるわけです。これがまた実に日本の大衆にも迷惑を及ぼし、日本の療養担当者にも迷惑を及ぼし、同時に日本病院協会、日本医師会の争いのもとになったものなんです。このもとはだれがまいたのかというと、厚生省がまいております。これは刈り取らなければいけない。橋本厚生大臣は、これをすみやかに一本化するということを言明をされたのです。刈り取ると言われてからすでに十カ月の年月が経過した。で、先日、一体いつ一本化するのだと言ったら、事務当局はどう言ったかというと、まず条件と零囲気ができておりません、こう言うのです。条件と零囲気ができておりませんからいつとは言えません、こういうことなんです。ところが今大臣が中央社会保険医療協議会の人事問題をうまくまとめようとするならば、その原因というものを除去しなければなかなかまとまらぬ。原因はここにある。従ってここにおける態度、この甲乙二表を一体どう処理するかという大臣の基本的な腹がまえと態度がきまれば、私はこの難局の打開というものはここからも一つの糸口として出てくると思うのです。これに対して一体どういうお考え大臣はお持ちなのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  43. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 皆保険の達成も近い今日、国民医療にふさわしいところの診療報酬というものは、これはあなた方がお述べになられるように、どうしても一本化ということが私どもも必要であると認めておることは、橋本厚生大臣時代に言明された通りでございます。しかし何しろ十カ月たったままの今日でございますので、これを改むべく努力するにもなかなか容易なことではございませんが、しかしその方向におきまして、私どもは研究を進めておるような次第でございます。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 実は曽田医務局長時代の、昭和二十七年の三月と十月の基礎調査というのが、日本の医療実態調査としては画期的なものです。おそらく日本の厚生行政に特筆大書していい調査ではなかったかと思うのです。それ以外に、あれほどのりっぱなといっては幾分言い過ぎかもしれませんが、あれくらい調査というものはそうないのですよ。なかなかないのです。そこで資料といえば、昭和二年に健康保険が実施をされ、昭和十三年に国民健康保険が実施をされて、相当厚生省にはあるはずです。それをいかに科学的に合理的に分析をし、配列をしてこの点数表を作るかという問題なんです。だからその作ろうという意欲の問題なんです。そしてその作る意欲というものが、いかに厚生省以外の医学界等の衆知を非常にうまく合理的に結集できるかということにかかっておるのです。むしろ資料がないということよりか、それをいかにまとめるかという、そのまとめ方の問題というものが、今私は一番大事なところではないかと思う。そうしてまとめてみて不足なら、不足のところは、やはりみんなで調査をすればできることなんです。こういう問題も、すみやかにすみやかにという言葉のあやでごまかしながらいくということは、いけないことだと思うのです。従って、これは大臣、でき得べくんば、大臣の任期中には、この問題というものはやり上げる、いわば渡邊厚生大臣の重点的に打ち込むところの施策というものは、診療報酬を合理的な科学的な学術的な基礎に立ったものを作り上げるというのが、これが自分の大臣任期中における重点だ、こう私は言ってもらいたいと思うのです。これはここを大臣やれば歴史に残ります。どうですか大臣、これをあなたの任期中に一つ完成しようという御言明ができませんか。
  45. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 お説拝聴いたします。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひ一つそういうようにする心がまえでこの問題に取り組んでいただきたいと思います。  次には、健康保険の財政の問題です。政府は私たちに、八・五%のワクの拡大が行われたときに、いわゆる被保険者についても料率を引き下げるんだということを言いました。私は料率の引き下げは反対でございました。料率の引き下げをやるならば、まず特に初診あるいは入院関係の一部負担の軽減をはかるべきであるという主張が、私なんかの主張でございました。社会党もそういう主張をいたしました。ところが政府の方は、いや、料率をこの際下げますということを、掘木さんが厚生大臣の時代に、これは言明しておる。ところが掘木さんから、橋本さんから、坂田さんから、あなたと四代かわったけれども、音さたがない。これはすでに昭和三十三年度においても、四十八億の健康保険の黒字です。現在百八十億の剰余金ができております。少くとも一部負担金を軽減をすることと、医療内容の向上のためにこれを使うべきだというのがわれわれの主張だったが、政府はしゃにむに料率の引き下げ、こう言った。そのしゃにむに言った政府が音さたがないというのは、一体どういうことであるか、いかなる理由に基くのか、渡邊厚生大臣の見解を承わりたい。
  47. 太宰博邦

    ○太宰説明員 便宜私から御答弁申し上げます。保険財政が最近好転して参ったということで、保険の財政にも、お話のように、大体三十三年度の決算はまだ出ておりませんが、百八十億くらいの剰余金ができるということでございます。かような点からいたしまして、三十四年度予算におきまして保険の料率を現行千分の六十五から千分の二ほどを引き下げることが可能であろうかということで予算を組ましたことは御承知の通りでありますが、その後最近のここ二月、三月、四月という月の状況を見て参りますと、ちょっと私どもが予想しておりませんような実績が出て参っておりますので、当初の予定では六月分から引き下げる予定でありましたが、なお慎重を期してここ数カ月ほどの経緯を見たい、こういうことに現在なっております。  料率の引き下げよりも一部負担の軽減をはかるべきではないか、あるいは医療内容の向上をはかるべきではないか、こういうお話でございます。私は御意見としてはまことに敬意を表すべき御意見であろうと思いますが、ただ何分にも現在の政府管掌の健康保険の料率が、通常の状態において千分の六十でありますものを、数年前の財政の窮迫しました時代に、これを緊急分として千分の五を加味して千分の六十五という満度に今なっておるわけであります。その辺で全然ゆとりがないというような点からいたしまして、政府といたしましては一応そういう面から料率の引き下げというものを考えたわけであります。その他の点につきましてもできるだけの努力はいたす所存でありますが、やはりこの際は、料率の引き下げの方が先ではなかろうか、こういう見解のもとに考えておったわけであります。  なお百八十億ほどの保険の剰余が現在過年度分としてございますけれども、これがあるからといって、今後それをそのまま食うつもりで料率を引き下げることを断行するということもいかがであろうかというので、先ほど申し上げましたように今年度分は今年度分として、赤を生じないようになお二、三カ月後の推移を見たい、こういうことをいたした次第であります。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 私がなぜ料率の引き下げに反対をするかと申しますと、千分の二というものが全部労働者にいく分じゃない、千分の一はいわば事業主が軽減をされ、千分の一は労働者が軽減をせられるのです。現在の日本経済の推移の状態を見ると、海運と石炭は不況に悩んでおります。しかしその他の産業というものは全部上昇しつつあるわけです。昔のように資本主義の恐慌というようなものはそう深刻な状態が起らない情勢が出てきつつある。そういうことも一つ社会党の伸び悩みの原因ということにもなっておるのですが、とにかくそういうことなんです。従って私は、ここに千分の一というものは事業主側を恩典に浴せしめる必要は実はないと思う。これは保険料を下げればどうしても事業主にいくことになる。利潤の方にいくことになる。従って私はどうしてもこの際、患者大衆に恩恵が浴するところの——いわゆる病気という、日本の貧困の一番大きな原因、生活保護を受けるに至った原因の六割というものは疾病だ。だとすれば疾病になったときにその貧困を防ぐというところに厚生省は重点を置き政策をとらなければならない。こういう小さなところにも、厚生行政がもっと高い見地から、日本の二重構造からくる貧困を防ごうとする見地がないのです。こういう千分の二を事業主にも、勤労者にも両方を恩典に浴させるという制度の方向にすぐ打ち出すということは、——日本の貧困を防ごうというならば、大きな原因は病気だから、病気のときに金銭の支出が少くなる方向に政策の重点がいかなければならないと思うのです。従って私は入院料にかけたあの三十円の一部負担や四十六円の初診料を百円を限度にまで引き上げた、そういうものを下げる。同時に医療内容の向上をはかっていく。たとえば結核治療指針の改訂なんかもまっ先に金をつぎ込んでいくという、こういう政策が私はとられなければならないと思うのです。どうもあなた方にはそこらの分析が足らぬ感じがしますよ。そういう点で私は、この際思い切ってわれわれに約束をした通り六月から、むしろ料率を引き下げるよりか、今言った一部負担を軽減する方向に持っていくべきだと思うのです。六月は過ぎましたから何なら八月からでもよろしいと思う。そこらあたり一つ政策転換をおやりになる意思はありませんか。
  49. 太宰博邦

    ○太宰説明員 私ども料率引き下げを考えます場合に、格別事業主の立場を重視してやったわけでは毛頭ございません。ただ御指摘のように料率を下げますれば、現在半々でございますから、下ることになりますが、まあそれはそれとして、先ほど申し上げましたような理由で、政府といたしましては何分にも保険料率が緊急の満度まできておる、これをそのま恒常化していくという腹がまえがあるならば別でございまするが、今日の段階においてはやはりそのままにしておくということは、あと行政運営にゆとりをなくすことに相なりますので、今日のところでは先ほど申し上げた趣旨で考えておる次第であります。  なお一部負担軽減についても、これは前々から御意見も十分拝聴しておりまするが、遺憾ならが今日の段階においては政府としてはその一部負担をやめるということは考えておらぬわけであります。これを合理化するもっとよい方法があれば、これは研究するにやぶさかではないのであります。  なお医療内容の向上につきましても御指摘のように、結核治療指針の改訂について数億の増額でございますが、これも何とかしてふんばっていこうというふうに、それぞれの面についてはできるだけの手当をいたしたつもりでございます。遺憾ながら料率の引き下げのどちらを先にするかについては、御意見は御意見としてこの際は承わらしていただくだけにとどめたいと思います。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 千分の一引き下げることによって、現在の受診率から見てどのくらい収入減になりますか。
  51. 太宰博邦

    ○太宰説明員 ちょっと記憶が違うかもしれませんが、十一億か十億くらいかと存じております。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしまするならば、千分の一で年間十一億の収入減だということになりますと、いかなる情勢の変化があればいかなる条件が生まれ、いかなる情勢の変化があればあなた方は数カ月延ばした料率の引き下げを断行する腹ですか。その条件一つお示しを願いたい。これは下げるという約束ですからね。
  53. 太宰博邦

    ○太宰説明員 料率を六月から引き下げることを一応見送りました理由は、支出面におきまして本年の二月以降三月、四月と医療費の実績をとってみますると、これが当初私どもが予定しておりました分よりも上回っておりました。それから収入の面につきましても四月分の平均標準報酬月額の実績をとってみますると、これから年間の平均標準報酬月額を推算いたしますると、予算において見込んでおりました額よりも下回るということが予想せられるわけでございます。もし今後ともこういう傾向が引き続き継続するといたしますると、収入の面においては予定より少くなり、支出の面においては予定よりも多くなるというわけでございますので、これはなかなか当初予定しておった保険の料率の引き下げということも困難になるかと思います。それが幸いにして一時的現象であるということでございまするならば、これは実施の時期が若干ずれただけでもって実行に移すことが可能になろうかと思うのでございます。ただいまのところではどうもそのどちらに属するかということがちょっと見きわめがつかないわけでございますので、私どもといたしましてなお数カ月ほどその推移を見たい、こういうことでございます。
  54. 滝井義高

    ○滝井委員 今まで五者泣き、五者五悦ということが言われたのです。政府は一番先に喜んで三十億出しておったものを、二十億引き揚げて十億にしてしまった。療養担当者は八・五%かどうかわからぬがしたわけです。ところがわれわれの方の被保険者大衆に対しては、何もしないということはおかしいのです。約束したことを実行しない。政府だけは先に三十億のうち十億だけにしてしまった。それならばあなた方は、こういうものの収入が減少をして支出が増加するというならば、政府の方に三十億出してもらわなければいかぬと思うのです。それをほおかぶりをしておって、今度はどうも収入と支出のバランスが合わないからもう君らだけはだめだということは、これは行政の片手落ちというものなんです。この点あなたは保険局長としてどうお考えになるのですか。
  55. 太宰博邦

    ○太宰説明員 政府が一応保険に対するテコ入れとして三十億のものを含んでおりましたのを、昨年度から十億にいたしました。これは御指摘通りでございます。これは当時の保険財政が好転いたしましたためにそういう措置をとったわけでございまするが、その当時申し上げましたごとく、もし保険財政が悪化するようなことになりますれば、私といたしましては当然これはまた、三十億がいいかどうか存じませんが、政府としては前の話の通りに、これはさらに三十億なり何なりの国庫負担をもう一ぺん考えるべきだろうと私は存ずるのであります。従いまして先ほど申し上げましたように、この保険財政が今後数カ月の推移を見ました結果どうなるかによりましては、私どもといたしましてさような点を真剣に考えねばならぬ、かように考えておる次第でございます。
  56. 滝井義高

    ○滝井委員 結核治療指針その他が改訂になって、新しく治療のワクが拡大をされれば、ますます保険経済が好転をするという客観的な情勢はないのです。すでに日本の労働者の賃金というものは、経済の好況にもかかわらず大して上らないで、頭打ちの状態がだんだん濃厚に出てきているということはもう御存じの通りです。だからこそ人事院に総評その他が押しかけなければならぬという事態が起ってきておる。今もう少し日本経済と健康保険の財政とを密接に結びつけて、詳細な分析をして、次会でけっこうでございますから、一体いつごろに、どういう条件が出たら引き下げが可能なのか、もう少し科学的に説明して下さい。きょうはどうもあとに用事があるらしくて、数字その他も非常におざなりな答弁をしておるのです。どうも渡邊厚生大臣になって以来、厚生省の答弁も、大臣答弁を初めとして誠意がないのです。お粗末です。これでは、昭和四十年に爆発的な危機がくるというこの日本の状態を克服していく厚生省のスタッフとしては、率直に言ってとてもだめなんです。やはりもうちょっと勉強をしてもらいたいと思います。  次に、国民年金の事務機構について簡単に伺います。  定員法が御存じの通り流れておりましたために、おそらくやりくりをして事務機構が発足をしたのだと思います。ところが現在私は七十才以上の人をつかまえて、あなた方、年金をいただけることを知っておりますかと言うと、知っている人はほとんどない。村や町へ行って聞いてみますと、何かそんなことを新聞で見たけれども、いつからもらえますかということなんです。ところがこれは十一月から、少くとも老齢年金は七十才以上に条件に合う人はもらえることになるのです。小山さんの方では定員法の関係でなかなか事務がやりにくかったと思いますが、福祉年金の裁定請求書というものを市町村に出さなければならぬと思うのです。もう何年も実施した遺族扶助料でさえも、まだなかなか書類をきちっと出して、それを取りに来ることを知らないというか、やらない人が相当おると聞いているのです。いわんやこういう多くの所得制限その他のついているものを、まんべんなく書類を出して調べてもらって、もらうようにするためには、各個人とも戸籍謄本をとったり何かして相当金が要るわけです。ある程度その条件等がわかっておれば、おれはもらえないから出す必要はない、こういうことも言えるわけですが、すれすれの人はそうはいかぬ。こういう、いわゆる福祉年金の裁定請求書等の提出の方法に関する情宣というか、周知徹底というか、そういうことはどういう方法でやられているのか、また今どういう状態で進行しつつあるのかお聞きいたしたい。
  57. 小山進次郎

    ○小山説明員 ことごとく滝井先生のおっしゃるようなことでございまして、私どもも準備の進め方について現在非常に苦慮しているところでございます。大体今日までの進め方を概略申し上げますと、五月の初めに各県に国民年金課を一応作りました。しかしこれは何分にもいろいろの事情がありまして、課長とそれから幹部職員四、五名程度をもって構成するというような仕組みであったわけでございます。その後本省の方におきましても、法律施行のために必要な政令、省令、あるいは施行の通達、さらにまたただいま仰せになりましたように、所得制限の関係から参りますいろいろなむずかしい仕組みがございまして、そういうようなものを固めるのに五月一ぱいを要したわけでございます。六月に入りましてから、やっとその辺をまとめまして、六月の中旬から下旬にかけまして全国的に各府県の幹部要員の教育をいたしまして、これは済みました。七月に入りましてからもうぼつぼつ始めているわけでありますが、県におきまして市町村の担当者を集めつつ、目下教育にかかっているというような状況でございます。この教育もなかなかむずかしい問題がたくさんございまして、おそらく市町村の諸君が市町村の住民に正しく間違いのない扱いを伝えてくれるためには二回くらいは繰り返しをしなければなるまい、かように考えております。こういうような事情でございますので、ややおくれてきておりますが、大体軌道に乗って動き出して参っておりますので、八月に入りますならば全国的に担当市町村に浸透し始め、九月の初めからこの結果、申請書を間違いなく出してもらえるようにということで目下努力をしているというような状況であります。
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 これで終りますが、できるだけこの事務機構の末端に当る市町村に対して、財政的、事務的な負担がかからないようにしないと、末端は財政的にもそう豊かじゃないのですから、かえってそのことがこういう年金の恩恵を受ける七十才以上の御老人方にしわ寄せされてくるわけなんです。不親切であったり、金をもらえないでそういう仕事をさせられるので困るという不満があるということは確実なんです。市町村長みんな、あれではどうも末端機構をわれわれやれませんよ、こういう意見が非常に強いのです。早早のときで、非常に御苦労されると思いますが、予算その他も来年度から十分要求せられまして、がんばっていただくことを希望して質問を終ります。
  59. 永山忠則

    永山委員長 午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十六分開議
  60. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  労働並びに厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許します。小林進君。
  61. 小林進

    ○小林(進)委員 まだ大臣がお見えになりませんので、労働大臣が見えられましたら同じ質問をいま一度繰り返すようになるかもしれませんが、その点あらかじめ御了承をいただきたいと思います。  技能検定の問題について関係政府委員にお尋ねをいたしたいのでありまするが、技能検定の実施に関する答申が、中央職業訓練審議会会長内田俊一氏の名前で、たしかきのう答申があったはずでございますが、この答申に対しまして、労働大臣は一体これをどう処理せられるお考えであるか、労働省のこれに対する取扱い方をお尋ねしたいと思います。大臣がお見えになっておりませんから、かわって局長からお答えを願いたいと思います。
  62. 百田正弘

    ○百田説明員 ただいま御質問の技能検定の実施に関する答申につきましては、昨年職業訓練法が制定になりまして、昨年の九月に、労働大臣から職業訓練法において新たに創設されました技能検定の実施につきましての諮問をいたしたわけであります。その後、訓練審議会におきまして、約一年にわたりまして非常に慎重に御審議下さいまして、本年の六月二十九日の審議会におきまして答申案を決定いたしました。今お話しのように、きのう大臣に対して、内田会長並びに各公労使、三者委員の代表立ち会いの上に答申の御説明があったわけであります。これに対しまして大臣からは、十分に御趣旨を尊重いたしまして善処いたします、こういう回答をなされたわけでございます。
  63. 小林進

    ○小林(進)委員 答申案に対しては、その趣旨を尊重するという大臣の御答弁があったということでございまするが、巷間伝うるところによれば、この答申を労働省では陰に陽に促進をされて、できれば七月一日あたりまでにこの答申が出てくることを要望をせられて、答申を待って何か十月の一日からでも政令公布の上に検定実施を行われるというふうな予定のコースがちゃんきでき上っているのじゃないか、こういうことが伝えられておるのでございますが、それが単なる風評の程度なのか、あるいはその通りにおやりになる意向であるのかどうか、その点を一つお聞きしておきたい。
  64. 百田正弘

    ○百田説明員 これは昨年職業訓練法が当委員会で審議されましたときにもそうした御議論があったように聞いておるのでございますが、技能検定はその当時におきましても、三十三年度においてはこれを準備の期間とする、実際の検定は三十四年度以降にするというようなことで政府側で答弁しております。ただ技能検定を具体的にやっていきます場合に、非常にむずかしい問題がいろいろございます関係上、特に職業訓練審議会におきまして技能検定部会という部会を作りまして、佐々木博士を部会長にいたしまして、過去約一年間にわたって十分な御検討を経てきたわけでございますが、われわれといたしましてはもちろん非常にむずかしい問題でございますし、しかもそれにつきましてどんな結論でもいいから早く出してもらいたいというようなことで、その部会あるいは審議会に対しまして、われわれがどうこう言うというような問題ではなくて、非常に技術的な専門的な問題でございますので、各委員の方々の十分な御審議をお願いしたような次第でございます。
  65. 小林進

    ○小林(進)委員 そういたしますと、この十月とか、今年度中に政令を公布してこの検定を実施するというお考えはないのでありますか、いま一回その点を明確にお聞かせ願いたい。
  66. 百田正弘

    ○百田説明員 職業訓練法が昨年できまして、技能検定に関することが法律には書いてございますけれども、それでは技能検定をどのようにして実施するかということは当然政令で定めなけそばならないわけでございます。それらの点もあわせてこれが技能検定部会における大きな問題であったわけあります。このたび答申を得ましたので、それらにつきましては関係政令を制定していって、これが周知徹底をはかっていくということはきわめて重要なことであろうというふうに考えております。  なお労働省自体といたしましてはこの秋以降に第一次試験、来年の春以降に第二次試験というような予定で準備を進めておる次第であります。
  67. 小林進

    ○小林(進)委員 その、ことしの秋以降に技能検定の第一次試験をおやりになるという、そういう計画をお持ちになっているということが、実は重大問題なのでございまして、この技能検定の実施に対しましてはそれぞれ労働者の代表の団体から一つ延期してもらいたいという多くの申入書が労働大臣のところへ参っておるはずでございますが、局長は一体それをごらんになっておるかどうか、お伺いいたします。
  68. 百田正弘

    ○百田説明員 今の点につきましては私も承知いたしております。そこで今度の答申にもございますように、技能検定の基本的な態度といたしましては、技能検定の実施に当っては、常に学識経験者、技術系統、技能系統の専門家の意見を徴して、周到な準備のもとに漸次技能検定を実施する職種及び地域の範囲を拡大すべきである、こういうことになっております。と申しますのは、これは全部一ぺんにやられるものではないのでありまして、準備のできたものから漸次やっていき、常に意見を聞いて改善していけばいいじゃないか、これが審議会の一般的な意見であったわけでございます。そういうことでわれわれもその点につきましては慎重を期しておる次第でございますが、特に今申し上げました、最初に実施していこうというものにつきましては、昨年の秋以来審議会の委員の方々の御指導その他の御援助のもとにテスト検定というものもやって、委員さん方もこの結果につきましても十分御検討の上、まずこういうところから始めていこう、こういうふうになった次第でございます。
  69. 小林進

    ○小林(進)委員 なるほどこの答申には、そういう技能検定の実施に当っては、常に学識経験者、技術系統及び技能系統の専門家の意見を徹して、周到な準備のもとに漸次技能検定を実施する職種及び地域の範囲を拡大すべきである云々の言葉がございますが、問題は、ことしの秋からおやりになるということに労働者側は非常に不安を持っておるのでございます。この法律は、昨年の七月一日に公布せられて、本年はまだ七月七日、一年しか経過をしておりません。しかも、これによって労働者の技能が検定せられるということは、深く考えてみますと、これは労働者の生活権の問題である。これは自分の労働力の格づけの問題でありますから、賃金にも響いてくる問題である。あるいはまた馘首に響いてくるかもしれない。人間の差をつけられる問題でもありまするし、影響するところは実に甚大なのであります。この甚大な問題を労働省の方では、準備のできたところから逐次やっていこう、しかも設備もまだ完備していない、訓練の資料も完備していないという状態の中に、こういう技能の検定だけを急がれる理由は一体どこにあるのか、われわれは非常に疑問なのであります。しかも先ほどから申し上げましたように、昭和三十四年の六月十六日には労働福祉中央協議会が、これは構成団体は総評、全労、新産別、全造船外四十三団体、こういう労働者の団体が、これを延期してもらわなければならない、こういう項目を具体的に六項目にわたって羅列いたしまして、労働大臣倉石忠雄殿、あるいは中央職業訓練審議会会長内田俊一殿といって、申入書を送っておる。なお続いて六月三十日には、新しく労働大臣に就任せられた松野頼三氏に対して、日本労働組合総評議会の議長の太田薫さんが三百五十万組織労働者を代表いたしまして、これもまた検定を延期していただきたい、これも延期をしてもらわなければならぬところの八つの具体的な項目を羅列して政府側に申し入れをしておる。なお、六月二十七日には、全日本建築士会会長竹内芳太郎氏が、会員一万名の二級建築士を代表して、同じくやはり労働大臣に対して申し入れをしております。こういうふうに羅列せられておる理由は非常に具体的であります。こういう具体的な問題に対して、一体労働大臣、労働省は親切に回答を与えられたのですか。回答をやっていないじゃないか。回答をおやりになりましたか。回答をやらないで、ことしの秋から逐次これを実施いたしますという既成事実をちゃんと作り上げておいて、順次予定のコースにこれを進められていくがごときは、どうもちっとも親切さがない。われわれを納得せしめるものがない。いま一回明快なお答えを願いたいと思います。
  70. 百田正弘

    ○百田説明員 御承知の通り、この技能検定制度の実施ということは、実は以前から要望されておった問題でございます。それが昨年ようやく職業訓練法でこの制度の制定を見たわけであります。今お話の御意見につきましては、六月十六日技能検定部会におきましても、その点は御説明がございました。その点につきまして、検定部会でも御審議があったわけであります。さらに引き続いてこの訓練審議会におきましても、二日間にわたってそれらの点について、この答申を出すに当って、これらの意見を十分に審議されたわけでございまして、こういう答申が出た次第であります。
  71. 小林進

    ○小林(進)委員 それで今もお話通り、六月十六日にいわゆる検定部会をお開きになりまして、六月十七日に審議会の総会をお開きになった。その席上において、労働者側の方からこれを延期するように、その矛盾を非常に理論的に追及されて、そこでとうとう結論は出なかったのです。ところが越えて次の六月十九日の総会においては、いわゆる傍聴人を排除いたしまして、審議委員だけで秘密会議をやった。この民主主義が行われて十数年経過いたしましたわが日本において、どこの審議会といえども、傍聴人を排除して秘密会で事をやった審議会があるということは、寡聞にして私は聞いたことがない。そして傍聴人まで排除して、そこでいわゆる多数決できめられた。言いわけに少数意見というものを付して、労働大臣に答申をするというふうなことをおやりになっているのであります。こういう非民主的なやり方、しかもその陰にはちゃんと労働省が糸を引いて、労働省が傍聴人をカットして、そして秘密会に持ち込むようにという作為のもとにおやりになっておるということは、これはみんな知っております。労働者の利益を守るべき労働省が、そういう労働者の賃金から、生活から、身分にまで関するような重大な問題を決定するところの審議会において、広く世論を喚起するとか、人の意見を聞き入れるとかいうような態度を捨てて、秘密会議のままにしてこれを決定するなどということは、非民主的もはなはだしいではありませんか。今御承知のように、米価審議会などというものが行われているけれども、これほどうるさい審議委員はない。われわれも議院運営委員会で、あらゆる審議委員の内容調査を全部やっておりますけれども、審議委員の中で米価審議会の審議委員ほど、世論の多い、うるさい審議委員はないだろう。しかしこの審議委員といえども、傍聴禁止ということはやりませんよ。去年あたりは農林大臣が、米価審議会に出るときに監禁されるというようなことがあっても、なおかつ民主的な原則にのっとって、民主的なルールに従って、公開の上でやっておる。ことしもちゃんとその原則にのっとってやっております。ただあまり傍聴人が多くては審議にこたえるから、なるべく傍聴人の少いところでやろうというので、霞山会館なんかでやっていますけれども、しかし傍聴の要求があれば入れるだけ入れようということで、狭い中で二十人も三十人も傍聴人を入れて、そして公開の席上でちゃんと審議している。そういう傍聴人を通じて世論を出し、また傍聴人を通じて世論をキャッチしようという、そういうルールがちゃんと行われておるにもかかわらず、労働者の利益を守り、労働者を保護する、労働者のサービス機関である、最も民主的であるべき労働省が指導権を握って、そういう審議会を秘密裏にして、そして勝手にきめて答申をしているというようなあり方は、一体正しいのですか。こういう答申を一体労働省は正しいものとしてお受けになる気持はあるのですか。一つお伺いしたいと思います。
  72. 百田正弘

    ○百田説明員 ただいまのお話の第一の点で、傍聴云々というお話でございますが、公開とするか非公開とするかは、議長がその会議運営上必要とせられる見解に従ってきめられるべきものであると思います。私どもがとやかく申し上げるべきではないと思います。  なお、ただいまの御意見の中に、職業訓練法が実施されてから一年くらいであるから、技能検定の実施は時期尚早ではないかという御意見がございました。技能検定と職業訓練はむろん密接な関係はございますけれども、わが国の職業訓練制度は職業訓練法で始まったものではないのでございまして、すでに戦前、昭和十四、五年ごろから、現在の公共職業訓練と称するものは職業補導、戦後は職業安定法に基く職業補導、それから現在の事業内職業訓練は技能者養成制度として、戦前にも、あるいはまた戦後は基準法に基いて、今日まで非常な発達を遂げてきたわけでございまして、すでに戦後だけでも、現在まで、公共職業訓練においては三十万、事業内で八万一千というような訓練生を出しているわけでございます。従って技能検定という目的が、他のいろいろな試験制度と違いまして、あるいは安全でありますとか、あるいは公安でありますとか、そうした特別の目的を持って、同時に就業制限を伴うようなものと違いまして、技能労働者の技術の向上とその地位の向上をはかる目的で出たものでございますので、こういうものはできるだけ早く実施していった方がいいじゃないか、その過程におきまして、十分これを改善していくことが必要ではないかというふうに私は考えます。
  73. 小林進

    ○小林(進)委員 秘密会を開いたことは、会長が独断の意思に基いてやったことで、労働省は関知しないというような、そういう官僚的な答弁は、私どもはいただきかねる。あなた方はいつでもそういうことでみな責任を回避するようにおやりになるけれども、そこまでいきますと、審議委員の選択からの問題が出てきますよ。自分たちの都合のいいような行政官の古手ばかり持ってきて、これを学識経験者と称して、まるで労働省のひもつきの審議委員を出しているじゃありませんか。だからそういうやり方から議論していかなければならない。そんなことではなしに、率直にものを言いなさい。一体あなた方はこの審議会を陰でどのようにあやつっておるか。そういうような答弁をおっしゃるなら、われわれは言わなくてもいいことを、だんだん声を大きくして質問しなければならぬのであります。しかも技能を向上するとか安全にするとかおっしゃるけれども、この検定をおやりになると、今まで平穏無事に生活していた、技能と労働を提供して生活のかてにしていた者の中で、一級技能士と二級技能士とそれから無資格技能士と三つの階級が出てくるわけです。そういう人間が今まで十五年なり二十年なり働いてきたものを、そういう一片の規則によって、一体正しい格づけができるとあなた方はお考えになっておりますか。それは一級技能士はいいでしょう。その人は当然高額の賃金をもらうし、社会的には技能士の名誉を得ることになりましょうし、あるいは生活も安定することになりましょうが、あなた方が設けたこの法律に基いて資格を与えられない、落第した者は一体どうなるのですか。それはともすれば生活が剥奪されるのじゃありませんか。賃金格差が設けられるのじゃありませんか。あるいは名誉も失墜するのじゃありませんか。そういうことが当然予想されるが、あなた方はそういうことを一体どう防止しようとお考えになっているのか。それを防いで、そういう不幸な被害者を救済するような万全の策を講ぜられておりますか。単に技能さえ進めばよろしい、技術さえ向上すればよろしい、オートメーションの世の中だから、それに適応するようなりっぱは技能者を養成すればいいとおっしゃるかもしれませんが、その陰には非常な犠牲者が生まれてくる。完全雇用も最低賃金法も実施せられていて、格差をつけられても被害者が生じないというような社会環境ができ上っておるなら、われわれも喜んで賛成いたします。何もそういう社会情勢ができ上っていない中に、きちっと三段階でもって人間が自分の技能に差をつけられたら、一体無資格者はどうするのですか、これを一体どう救済されるのですか、一つお尋ねいたしたい。
  74. 百田正弘

    ○百田説明員 技能検定は先ほど申し上げた通り、技能水準の向上と同時に、技能者の地位の向上というものを一つの目的といたしておるわけでございます。そこでおっしゃる通りに、技能の優秀な人は、社会的な評価として、これは国家的な検定といたしまして一級となりあるいは二級となるということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、何ら職業制限その他を伴うものではございません。そうした自分の技能が社会的に評価されるということは、この制度の一つの大きな効果ではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
  75. 小林進

    ○小林(進)委員 私の申し上げているのは、これからいわゆる職業訓練法というものが作り上げられて一つの規定を設けて、あるいは三年なり二年なり、何か答申案には一年だとか、ともかくそれから実地期間が二年なり三年なりあって、合計五年の期間を経過して修了した者をあらためて技能検定をやって、そこで二級技能士の資格を与える、これは私は、問題はおのずから別だと思うのです。今までちゃんと七年なり十年なり十五年なり技能を身につけて、社会的評価もそれに基いていて、平安に職業についている者を、これをあらためて——これは寝耳に水だ。何もPR活動をしていないじゃありませんか。われわれ方々歩いていますけれども、こんなおそろしい職業訓練法などというものは今まで考えられたことはありませんよ。あなた方、一年たってやったと言いますが、一年間何をやっていたかわからない。それをやられる者の身になって考えていただかなければならない。言葉をかえて言えば、職業訓練法に基いて、この法律が昨年の七月一日に実施せられた、そしてこの制度ができ上って、この法律に基いて訓練が開始せられた後の、答申案に基く五年後、最低五年の後において、その訓練修了者を技能検定されるというのであるならば、別に問題はない。過去数年、十数年平穏無事に職業としてやってきた者、その道でもはや専門化している者を、あなたたちが勝手に法律を作って、新しい制度の試験を受けさして、お前は今までやってきたけれども、その試験を受けないから無能力者だ、お前は二等技能士だ、お前は一等だ、こういうふうにやられる者は一体どうなるか。一等技能士の名誉を与えられる者の陰には、いわゆる無資格者として、今までの経験がゼロにされるような危険もあるじゃないですか。職業を奪われる危険もあるじゃないですか。三段階に分けられるのです。みんな今まで社会的にも、給与の面においても、経済の面においても対等の待遇を受けていた、いわゆる既存の技術者ですよ。既存の技術者がここで三段階に分けられて、いわゆる自分の技能に格差をつけられて痛めつけられるというふうなことは、実に気の毒でもあるし、そういう者に対する救済の規定が一つもないじゃないか。そういうことを、PR活動もしなければ、労働者側の理解も納得もないうちに、労働省の方で一方的にそれを強制せられるということははなはだ非民主的である。だからそんな法律は行うべきではない。延期して、今は両者の意思の疎通をはかる重大な時期ではないか、こう私は申し上げておる。これを一体どうお考えになるのですか。
  76. 百田正弘

    ○百田説明員 この答申にもございますように、二級の技能程度の基準と申しますのは、いわゆる下級の熟練工、一級と申しますのは上級の熟練工というようなことで大体の基準をきめてあるわけであります。従いまして、現在すでに働いておられる方、そういう人たちのためにこそ、その人たちが長年働いて得た技能、身につけた技能が相当練磨されておるということを社会的にも評価さしていく、それによって地位の向上がはかられていくということが望ましいと思うのです。さらにまたもう一つ申し上げますれば、一級を何人、二級を何人とかいう数で制限するものでも何でもないわけなのです。  それから御心配の点は、特にそれで落ちたらどうか、試験の上手なやつが通って、試験の下手なやつが落ちるという御議論もあるかもしれません。そこでわれわれの方で今度答申にも書いてございますように、これはあくまでも技能が中心になっております。従いましてこの第一次試験であるところの学科試験あるいは実技試験の基本的な要素というものは、この第二次の実技試験をするに必要な程度というようなことで、実技試験にきわめて重きを置いておるわけです。しかも実技試験におきましては試験の上手、下手というよりも、こういうものを作るのだという問題をあらかじめ公示するというようなことになっておりまして、試験の上手、下手によって上った下ったというようなことはない。その人の平素の技能がそのまま検定できるように、特に留意いたしてある次第でございます。
  77. 小林進

    ○小林(進)委員 私は答申案の中のいわゆる「職業訓練終了者以外の者」の項目を申し上げておるのです。「学校教育法による高等学校において技能検定職種に関する学科を修め卒業した者で、その後二年以上の実務経験を有するもの」あるいは「技能検定職種に関し、七年以上の実務経験を有する者」をいわゆる二級の受験資格者とする、この七年以上の実務経験を有する者があなた方の今言われる学科実務の試験に必ず及第すると保証し得られますか。今も言うように、そのほかに一体技能の検定それ自身も、あなた方が机の上で考えられている技術と、ほんとうに大工なら大工の実務を通じてこの人が能力があるかないかということが一致するとお考えになること自体が実に官僚的思い上りだと思う。大工のことは大工しか知りませんよ。学識経験者が知っておるのじゃないのです。そんなのは専門家といったところで、これらはなりわいの業なんです。こまかく刻んでいったら何百種類あるかわからない。それぞれの人の持つ独自の技能が何百種類にも分れているようなものを、少数の学識経験者や専門家でその人の格づけができるというところに大きな間違いがある。そういうところは答申書もうまく逃げている。こういうことを言っております。「職業訓練職種のうち、客観的に技能程度の判定を行うことが困難と認められるもの、技能の内容が比較的単純なもの等についてはこれを除外し」としてあります。客観的に技能程度の判定を行うことは困難というのは、私は考えようによってはみな困難だと思う。その困難なるものをあなた方が官僚的な権力の上にあぐらをかいて、この方法は何でもよい、この十月から実施して経験を通じながら、最初は間違ってもいい、検査をやっているうちに、ほんとうのものができ上ってくるだろうなどという実にあいまい模糊たるやり方、自信のないやり方をあえて強制をしている。そしてその人たちがいわゆる二級士なら七年以上、一級士なら十三年ですか、ともかくこつこつと経験をして、その人たちが人の知らないところで積み重ねてきた苦労をしろうとが判断して格づけしようという——しろうとという言葉はあるいは語弊があるかもしれませんけれども、そういうことを何らのPRもなしに、そして労働者側の納得も得ないで、話し合いもしないで一方的にこれを強制するということは、権力の上に乗っかった非民主的なやり方だ。私が申し上げるまでもなく、皆さんの方が専門家だから、外国だってそういう例は、それはあるでしょうけれども、二十年、三十年の長い問の経験を積み重ねた上で、そういう技能検定というものが行われているわけです。日本なんかも、あなたはさっきおっしゃったが、戦後日本においても技能者養成については、労働基準法の中にあるものに基いて、三十万だか八万だかを教育したなんて言っておりますけれども、そんなことを言われるなら、私の方でも反駁しますよ。それほどほんとうに力を入れてやったか。今ここであなた方がそんな大きなことを言われるけれども、完全な教育なんかちっともしていないじゃありませんか。おざなりでやってきただけだ。そんなおざなりなやり方をもってきて、ここで唐突として、しかも労働者側の非常に不安定な、動揺している中でそれを強制するようなことはおやめになったらどうですかということを申し上げておる。一体これでどうして公平な検定ができるのか、お伺いしたい。
  78. 百田正弘

    ○百田説明員 この検定のもとになりました検定の内容につきましても、これは御承知の通りわれわれが官僚的にこれをつけたというようなことではございませんので、委員の方々の中には、会長は工業大学の前の学長の内田先生、そのほかに慶応大学の佐々木博士、東大の鳳博士、三島博士というような斯界の権威者が全部入っておられる。具体的な検定に至りましては、それぞれここに書いてございますように専門の技術者、技能者という方々によってやっていくわけでございます。なおその学科試験のことにつきまして、先ほど七年もたったやつがそんな学科試験ができるかというお話でございましたが、これは具体的な例につきましてお話し申し上げますと、御了解いただけるのじゃないかと思いますので、職業訓練部長からその点ちょっと説明いたさせます。
  79. 有馬元治

    ○有馬説明員 小林先生の御意見で、技能検定が非常にむずかしいということはわれわれも十分承知しておりますが、この技能検定は、先ほど申し上げております通り、各界の専門家からなる専門調査委員会でもって職種別にこまかい具体的な基準を作りまして、それに基いて技能の検定委員が試験問題を作成し、採点し、合否の判定をするという仕組みになっておりまして、われわれ行政事務を担当する者が試験に関与するということはないような仕組みになっております。従いまして、われわれにできるかという御質問でございますが、われわれ事務当局の者が試験をやるのではなくて、試験の執行事務はやりますが、検定事務そのものは、問題の作成から採点、合否の判定まで試験官である検定委員がこれに当る。これは各界の専門家が、特に産業界の第一線にある技術屋さん、それから熟練工の先輩である技能系統の専門家、こういう人が当るわけでございまして、わが国の現状を見ますと、これらの専門家が技能の判定をするということが最も妥当であるという考え方で検定委員の制度を仕組んであるわけでございます。  それから従来のいわゆるたたき上げと申しますか、経験一本できた方々が、腕には自信があっても学科に弱い、こういう御意見はずいぶんこの検定部会でも繰り返された議論でございます。それに対してどういう学科を出題するか、またどういう採点の方法をするか、この点も委員会では十分検討された上で、学科試験問題がいわゆる学校の入学試験問題のような傾向をたどることのないように、実務をやっておれば必ず解けるというふうな問題を出そう、そういう基準を考えて学科の基準も作ってあるわけであります。それからさらに、新しい制度でありますから、最初のすべり出しの時期におきましては、なるほどPRの足りない点もありましょうし、また多少の摩擦もあるだろうと思います。従いまして、この施行政令におきましては、答申にありますように、おおむね八年間の暫定期間を置きまして、その間には先輩たちの熟練工等はぶっつけ一級が受けられる、こういう暫定措置を講じてあります。その暫定措置の期間には、われわれ運用の心持としましては、できるだけたやすい学科を出してテストをしよう、こういうような心組みで運用していくつもりでありますので、今までの既成の熟練工が非常に不利であるというふうな御懸念は解消されるのではないかと思います。
  80. 小林進

    ○小林(進)委員 私は何も労働省の皆様方が、技能検定委員をおやりになるなどというようなことを質問した覚えはない。それは私も職業訓練法の法律を見ておりますし、第二十九条には「労働大臣は、第二十五条第三項の実技試験及び学科試験をつかさどらせるため、専門の技能又は知識を有する者のうちから、技能検定委員を任命するものとする。」これは今おっしゃった条項の通りなんで、やはりあなた方が検定委員をやるとは思いませんけれども、ただその専門の検定委員の任命それ自体に危険性があるということです。またあなた方が大工さんなら大工さんの中に、その検定委員たるべき資格者を選び出して、一方的に大工さんの技術に甲乙あるいは無資格者の差別をつけらしめる。それが公平にやり得るということをおっしゃる、その考え方自体が、実に官僚的な権力支配の思い上った考え方である、こういうことを申し上げておるのでありまして、そういうような答弁はいただきかねる。少くとも検定委員なり検定の方法というものは、検定を受ける側の労働者の納得、あるいは承認、話し合いの上で行わなければ、決して完全なものはでき上らないし、その運営も円滑にいかないということを申し上げておる。だから私は最終的にそれに反対しようというのではない。いま少しPR活動を続け、話し合いの活動を続け、同じ答申案を作るにもそういう秘密会議のような形にしないで、いま少し親切に納得づくの上で、試験を受ける者の立場に立ってものを仕上げていくという、そういう形がとれないかということを私はあなた方に申し上げている。  それからい一つ考えとして、特に私は言いたいことは、これから訓練を受ける者はいいですよ。この職業訓練法によって、訓練の成績がいいか悪いか、その訓練の結果を、技能検定を経て、そして訓練の成績を試験するというそのやり方に、私は決して反対をしているのではないのですよ。その訓練法による訓練を経ないので、今日ちゃんとりっぱな技能者として世間に通用している者を、あらためてここで検定をして、その中で一級、二級、無資格の三段階に階級別の差をつけて、そして既得権を剥奪する。資格を取られた者は既得権の剥奪ですよ。そういう剥奪をするようなことを、取られる側の労働者と何も話し合いしないで一方的にやることは、何といっても非民主的だと思う。だからもし言葉を変えてこれを言えば、既得権はそのままよろしい。七年以上たった者は無試験でちゃんと二級の免状はやる、あるいは一級の年数を持っている者は無条件で全部労働大臣の一級技能士の証書をやる、新しく訓練を経ている者は、今も言うようにこの訓練法に基いて試験をする、こういうことをおやりになる気はありませんか。それならばまた話は別であります。
  81. 百田正弘

    ○百田説明員 この検定を受ける受けないは任意でございますので、これを強制するというようなことはないわけでございます。  それからここに書いてあるのは受験資格でありますが、受験資格を有する者については、大体七年もおやりになっておる、あるいはここの一級のあれを持っておられる方はその程度の技能を持っておられるのではないか。従いましてそういう方々が受験されても、大体通られるのではないかと思いますが、そういうふうな社会的評価が国家によって裏づけされるということは、これは好ましいことじゃないかと考えます。
  82. 小林進

    ○小林(進)委員 あなた方はそういう残酷なことをおっしゃるけれども、任意だったらいやなものは受けなくてもいいといっても、受けた者と受けない者と社会的評価と身分関係、俸給関係が全部変ってくるじゃありませんか。しかも会社によっては、それは一つの労務管理の対策として、あなたは検定を受けていらっしゃい、こういうことを一体経営者の側から言われたらどうしますか、任意だから行っても行かなくてもよろしいと言っても、その会社内部において必ず差別を設けられます。しかも行って検定を受けてきて、一級の検定を受けた者はその会社内部においてはやはり優遇されるであろうし、二級の検定を受けた者は二級だけの待遇しか受けられないだろうし、重役に言われていやいやながらも検定を受けたけれども、不幸にして試験が受からなかった者はその会社内部からやはり虐待される、そういう状態に落ちてくることは私は明らかだと思う。私はそういうことにおいて、あなた方の考え方にはどうしても労働者を守ろうという、労働者の側に立って労働者の生活を守っていこうとか便宜をはかっていこうという考え方がないのであって、いつでもどうも資本家側、経営者側の立場しか考えていないというふうにしかわれわれはとれない。先ほどからも局長は、多年これが要望されていると言われたが、私はこの言葉を非常に重視しているのです。だれが一体要望したのですか。だれが一体こういう職業訓練法をつけて既得権の技能者に差別をつけることを要望したのですか、一つお聞かせを願いたい。
  83. 百田正弘

    ○百田説明員 これはいやしくもわが国の技能者養成その他に関係ある人の間には非常に長いこと——技能者は従来単に学歴とかなんとかということがわが国においてはとかく尊重されがちであった。ほんとうに腕でたたき上げてきた人が社会的の地位が低いといったような現実がなくはなかった。そういうことで、やはりそうした方々に国家的な検定をすることによってそういう人に誇りを持たせ、同時にまたその地位を向上さしていく。社会的の地位を向上さしていくということは、われわれいやしくも技能者養成にかつて携わっておった人たちその他から、これは相当強く要望されておったところでございます。
  84. 大原亨

    ○大原委員 関連して。それではなぜ急ぐのですか。なぜ急いでやるのですか。建築士にしろあるいは各団体にしろ、今言われたように非常に了解していない点があり、理解していない点があるのに非常に急いでいる。なぜ急ぐのですか。その急ぐ理由を言って下さい。
  85. 有馬元治

    ○有馬説明員 これは先ほど局長からもお話がありました通り、昨年の訓練法を上程する過程におきまして、この三十四年度から検定の部分は実施をする、こういう方針をその当時立てておったわけでございます。ところが審議会の審議状況がなかなかわれわれが最初予定した通りにはいきませんで、結局三月ずれになって七月から実施しよう、こういうことに落ちついたわけでございます。その間、先ほど非民主的な審議をやったというふうな御指摘がありましたが、これは議事録その他で御参照いただけばわかると思いますが、部会等の審議は非常にわれわれの予想以上に慎重な審議をやっております。それで土建総連を初め関係団体は非常に反対をしておることも承知しておりますが、われわれこれだけの技能の検定をやろうという大問題と取っ組む以上は、われわれみずからの手で実際に受験者層にぶっつかりましてトライアルを去年の十一月から数回にわたってやっておるわけでございます。今日の段階におきましても各府県はそれをやっております。今日まで延べ四百人を越しておると思いますが、これだけの各種の段階の熟練工諸子に対してわれわれが想定した問題点を把握するためにトライアルをやったわけであります。そうして直接第一線の受験者層並びにこれを使っておる第一線の職長クラスあるいは工場の課長クラス、こういった連中の率直な批判と意見を聞いて、それをわれわれは参考にして検定を実施して差しつかえない、やれるという自信が出てきましたので、われわれは実施に踏み切ったわけでございます。一部にいろいろと御批判があり、反対の動きがあるということは十分承知しておりますが、現実に第一線の職場においてトライアルをやった尊い経験によってその実施に踏み切ったわけであります。
  86. 大原亨

    ○大原委員 これは一部では、法律が技能検定について昭和三十四年度から実施されるというふうになっておって、予算があるから、予算を使うためにやるのだという人がおるが、それはどうですか。
  87. 有馬元治

    ○有馬説明員 予算は御承知のように予算の性質から申しまして必ず執行しなければならない性質のものでございませんので、実態が時期尚早というふうに認められれば、それは予算に組んだから使うということはないと思います。
  88. 大原亨

    ○大原委員 十分PRされておりませんが、どんな実益があるのです。一級技能士になり二級技能士になった人はどういう実益があるのですか、抽象的なことでなくて具体的に言って下さい。
  89. 有馬元治

    ○有馬説明員 抽象的には先ほど局長お話になりました通り、地位の向上ということになるわけでございますが、これを具体的に申しますと、地位の向上には企業の内部における処遇の問題と、それから社会的な地位の向上と二つあると思います。企業の内部における処遇の問題は、賃金の問題、あるいは昇進、職制上の処遇の問題、いろいろあると思いますが、これは現在企業自由の建前から申しまして、検定に通ったから賃金は幾ら幾らでなければならないというふうな、何といいますか統制的といいますか、標準的なものを考えておるわけではございませんので、これは各企業がそれぞれ検定に合格し、技能の優秀な者をそれぞれ賃金の面でもあるいは職制の上でも処遇を改善していっていただければそれでいいかと思います。それからさらにわれわれとしましては、できるだけ検定に合格し、技能の優秀な者が賃金もよくなる、処遇もよくなるということを期待しておりますので、この点については間接的には行政指導が行い得ると思いますが、直接的な指導は差し控えて参りたいと思います。さらに社会的な地位の向上の問題でありますが、これは皆さん方御承知の通り、日本の社会風潮というものはホワイト・カラーの優先あるいは学歴の偏重ということが積み重なって、熟練工が浮び上らないということになっておりますので、これは検定制度を実施することによって、もちろんこれだけでは解決しないと思いますが、やはり熟練工が自信を持って、誇りを持って自分の腕を発揮できるような社会にしていくべきである、こういう考え方で検定を実施するわけであります。
  90. 大原亨

    ○大原委員 関係団体、たとえば労働団体あるいは建築士等、そういう団体でも絶対反対と言っておるのではないのです。これをスムーズにやる条件が整っていないのに、予算を消費するためかどうかしらない、お役所仕事かどうかしらないが、無理やりにやろうとするから問題になるのです。一部、私が言ったことについて今あなたが答弁したから繰り返しませんけれども、絶対に反対でないのです。そこで今実益云々と言われたのですが、こういう心配があるのです。今まで試験をやる、技能検定をやる種目については五種類あげてあるが、たとえば大工さんにしましても左官屋さんにしましても板金工にしましても、大体そういう職種を選ぶ人は、俗に言うと、まあ本を読んだり勉強したりするのは頭が痛いという人が多い。そういうことでは頭が痛いけれども、しかも一方においては器用なわけなんです。そういう人が何年間もかかって一流の技術をみがいておる人があるのです。それをそういうふうにお役所仕事で技能検定で、一級、二級というふうなことをやろうとするから、そういうことについて非常に不安を持っておるのです。それをあなたらが、お前たちのためを考えてやるんだということを一方的に観念的に押しつけながら、しかも十分納得のいかない形においてやる。これは大臣に判断してもらいたい点ですが、そういうところに政治的な問題がある。だからそういう問題を解消する保証がありますか。
  91. 有馬元治

    ○有馬説明員 大原先生は、大工は腕には自信があるけれども、頭はあまり自信がないというふうな御意見でありましたが、私ども実際のトライアルをやりまして感じましたことは、トライアルの学科の問題について百点満点をとった職種は大工だけしかございません。従って、大工さんなるがゆえに学科に弱いということは言えないのじゃないか。もちろんわれわれの出題にもよりますけれども、大工さんなるがゆえに学科に弱いということは言えないのじゃないか。これはわれわれのトライアルの実証上そういう結果が出ておりますので、そういう観念的な御批判だけでは納得しかねます。
  92. 大原亨

    ○大原委員 試験をやりますと、試験はたった一日か二日の試験ですよ。高等学校を出たような若い人が成績が非常によくて、さっと通って一級ぐらいになって、長年技術をみがいて、そうしてりっぱな体験を持っておる人が社会的に非常に気おくれがするような立場になる、そういうことについて一番心配があるのです。だからその心配を解消するようなそういう方法がありますか。試験のやり方とか、その他PRとか理解の程度においてありますか。
  93. 有馬元治

    ○有馬説明員 これは今御指摘のような学校出がいい成績をとったということではなくて、むしろ現場の長年の経験者がいい成績をとっておるというふうな実績もございます。そこで先ほども申しました通り、先輩格の熟練工がこの検定制度をうまく利用できるように、暫定措置の八年間におきましては、先輩格の熟練工にはぶっつけ一級の検定が受けられる期間を設けまして、しかもその期間においては、学科等について、できるだけ実情に合ったような試験をやって参りたい。これを全然やめてしまうということは考えておりませんけれども、実情に合ったような学科の出題を考えて参りたい、かように思っております。
  94. 大原亨

    ○大原委員 おのずから学科についても程度があるのですが、どういう程度で、どういうふうなものをやるのですか。抽象的じゃわからぬから、若干具体的に言って下さい。
  95. 有馬元治

    ○有馬説明員 これは私から答弁すると、専門家じゃないものですからあれですが、あとで検定課長が見えておりますから、この前やりましたトライアルの学科問題その他詳しく後刻専門家から説明いたします。
  96. 大原亨

    ○大原委員 その点はそれで、それではちょっと今の問題をかえまして、大臣がお見えになりましたから、小林委員の質問がありますけれども、私は今技能検定の質問をいたしております。大臣は政党人だし苦労人だから、まだお若いようですが、よく御理解いただけると思うのですが、技能検定で皆さん非常に心配しているのです。これはお役人さんが、予算はできたし課もできたから、それでやるんじゃないだろうかと心配を持っておるのです。というのはどういうことかというと、大工さんでも板金工でも、手工業はもちろんですけれども、いろんなそういう技能検定の対象になっておる人は、今日までいろいろと苦労して、試験とか勉強は不得手だけれども、器用だということで非常に腕をみがいてきたのです。それに対しまして、一日か二日でまことに簡単に検定をやりまして、一級、二級というような格づけをいたしますと、学校をちょっと出たとか、若くて馬力のある、記憶力のあるような人がさっと試験を通っていって、せっかく趣旨はその技能者の地位を向上する、こういうようなことを言うのだけれども、そういうことが非常に形式的に流れて、そうして実際にはそういうふうに技能検定が不備なために、あるいは職業訓練がまだ始まったばかりで、一期の三年も過ぎていないのです。職業訓練の上に技能検定をやるという、そういう安心したコースでなしに、やるためにやるような気がするのです。そういう理解が非常に不足いたしまして、私は絶対反対しているのじゃないのです。やり方について、あるいはやる時期について非常に問題があるのじゃないか。しかも社会的に仕事の種類からいって問題があるのじゃないか。こういうことについて非常に心配している。職業訓練をやって、その次に技能検定をやるというのであれば職業訓練でおのずから技能検定の内容あるいは相場というものもわかる。常識も通ってくる。しかも職業訓練が始まったばかりで、しかもわずかの人しか職業訓練を受けてないときに技能検定だけをやるというふうなことは、これは非常に問題じゃないか。大臣、一緒に申し上げておきますが、建設省所管の大工の場合だったら建築士の試験があるのです。しかも二千円出して今度は技能検定を受ける。手数料が二千円になっている。そうすると受ける方は、建設省関係の建築士の試験であるの、やれ今度は労働省の技能検定であるの、検定料は要るの、これによって自分の社会的な地位や身分や、いろいろな給与の面、待遇の面の標準がきまるのだという、こういうたくさんの荷物を背負うて、一時に急いで納得できないようにやるということは、そういう手工業の特殊性から考えてみても、非常に不安を与えるのじゃないか。趣旨はよろしいけれども、そういう条件が整うていないときにこういうことを強行いたしますと——むしろ一つの制度には長所はあるのです。必ず長所、ねらいはある。しかしながら弊害が出てくる。物事というものはそういうものであって、生かすものも殺すのも、やはり長所を生かして、いい制度のいい点を生かすことができればいい。しかしながら、これは技能検定のねらっていることを生かすことができないのじゃないか。建設省関係考えてみても、金の面を考えてみても、受ける者は一人、しかも手工業という特殊事情もあって、今日の技術やその他について順応しなければ、今の社会においては生きていかれない。一生懸命長年生きてきた人が学科試験をやられ、あるいは技能検定をやられるというようなことで、公式的な一日か二日の試験で自分の地位が不安定になったり左右されるということは、もう少し慎重に考えてもらいたい。他の問題とも総合的に考えてもらいたい。受ける方は一つじゃないか。こういうふうに心配いたしておるのでありますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  97. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今回の技能検定は、御承知のように、この前の国会で与野党一致で通りまして、それに従って技能検定をやる、もちろんこれは訓練と検定と二つの要素を含んでおることは当然であります。ただこの問題は少しも強制権というものはありません。やはり、制度の最初ですから、いろいろ御意見もあり、御不安もあるかもしれません。しかし終局的に訓練と検定という二つのものは、どちらも実は長い意味においてだれも反対はないものだ、ただやる方法と時期の問題はある。ことしやるよりもう少しゆっくりやれ、こういう御意見があることは私も承知しております。従って今回審議会というのを開きまして、この審議会の意見を尊重するという立場を政府はとって、この前の通常国会以来今日までその審議会において十分議を練っていただき、実は昨日私この答申を正式にいただいたわけであります。その内田会長の答申の中にも、少数意見、多数意見それからいわゆる答申の本文と、この三つの意見がありましたが、いろい内容において多少の意見の相違はございましたが、だれもこの問題について反対はなかったようであります。ただ問題は、これは任意でありますから、御本人が受けるとか受けないとかいうことは少しも束縛するものではない。また地域的、企業別にこれは受けない方がよろしいという方は、その御本人の特殊事情によって受けなくてもけっこうであります。ただある程度検定を希望されている方もあるのですから、そういう方の道を閉ざすことは法律の趣旨からいっても、答申の趣旨からいってもよろしくない。希望されている方には道を開くという善意の道もあるし、あるいは受けたくないという方を無理に受けさせようという強制権もございません。これは企業そのものの中において数年間も訓練を実際やっておられる会社が例をあげればたくさんあるわけです。ただこういうものは、社内の訓練で自分の企業内にだけ通用する技術ではせっかくの技術修得もよろしくない。今回は広い意味で技能検定を受けさせてやりたい。また受けたいという方があることも事実であります。一番問題になりますものに板金とか大工さんというものがあることも承知しております。今日板金技術もだんだん変ってきておって、昔のたたき大工や板金とは違い、非常に科学的に機械によって相当なものができておるから、おのずから能力の違うこともあるわけです。従って技術が前進するに従ってやはりこういうものの検定の内容とか方法もそれは将来は変りましょうが、第一回でありますから、とにかく検定をやろう、そして学科試験、実地試験も特に今までのように無理な内容をやるつもりは私はございません。他面学科は自分はよく知らないが、腕に自信がある、一ぺんこれは受けてみようという方は、学科よりも技術の実際の訓練と試験を重点に置けばいいことであって、同じように十八才の方も五十才の方も試験ですから画一的にやりますけれども、おのずからそこに内容の実情に沿うようにこの試験の方法を今後きめればいい。これは私はできることだと思う。ここは社会労働委員会でありますが、実は各省にこういう技術検定をやるときはいろいろ心配がありました。床屋さんのときも私は確かに承知しておりますが、いろいろあった。また建設省関係として、この問題について労働省がやるには早いじゃないかという意見がないとは言いません。しかしそれは片一方はいわゆる建築士であって、私の方は労働省における技術訓練の検定であって、何らそこに摩擦が起るという考えは私は持っておりません。また労働省内において相当長い間訓練をやった歴史もございます、正式に訓練という名前がつかないにしても、いわゆる職業指導とか補導とかいう名前で訓練をやってから現実に八年くらいたっておりますし、その卒業者の方も何万という方がおります。受けたいという方もおられるのです。しかしあくまでも受けたくない、必要ないという方はお受けにならないでいい。ただこの法律ができたものを、それによって芽をつむこともよろしくないというので、ことに先般も各種団体の方が来られたときに私はお話をした。私の組合では一人も受ける者はいません、それなら受けないでも仕方がないじゃないか、しかし受ける人の道を私たちが閉ざすことはよろしくない、ことに今回の答申の中にはすみやかにということが特に書いてありますから、すみやかに私どもやるのであって、強制権は絶対ありません。ある場合には旅費、日当をよこせという方もありますが、旅費、日当をやってこの試験に対して政府が教唆というとおかしいですが、ある程度強制権を誘導したという非難を受けてもいけません。従ってこれは個人の負担によってやるのですから、なお任意性ということは強調できるのじゃなかろうか、こういう感じで、なるべく経費を安く今後やりたいと存じております。この問題によって特に悪平等が起るとか悪弊が起るということは私たちの意図したところでは毛頭ありません。昨日の懇々と審議会の会長からお話を伺いましたが、大体において審議会の方も急いでやるということには一致しております。ただ試験の科目、内容、技術的にどういう方を試験官にするかということは多少異論はございましょう。最初のことでございますから、私どもも試験官には不公平のないように、またそういう適材の人が得られるかどうか、実は今から苦労しておりますが、そういう最適の方を選んで、そうしてこれをやりたいというお話を昨日もしまして、いろいろ促進させておるわけであります。
  98. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣がおいでにならない前に私の言わんとする問題はるる局長、部長に申し上げましたし、時間も差し迫っておりますので、同じことを繰り返すことはやめますが、ただわれわれの質問の趣旨は、もはや労働省では既定の事実に基いてことしの秋から第一次の試験を実施する計画だとおっしゃるから、それをおやめになったらどうですかということで質問を申し上げておるわけです。たまたま今大臣の御答弁の中に——さすが大臣である、局長や部長と少し変った絵をかいておられる。試験の学科あるいは試験官、検定委員その他についてもまだ十分なものが得られるかどうかわからない、そういうことも大いに研究してみなければかからないわけなんです。われわれが先ほどから言っておるのは、検定委員といっても、実際に学識経験のある者、専門家といっても、それがほんとうにりっぱな専門家であり得るかどうか、これも問題です。それから設備の問題でも完全にできていないじゃないですか。訓練所の設備もできていない。資料が集まっていますか。それからこの第十五条で都道府県知事は云々といっておるけれども、都道府県でそういう場所や区域を一体提供するところがありますか。そういうような都合の悪いところは一つもおやりにならないで、しゃにむにでも検定だけはやってしまおう、そういう天下り的、権力主義的なことをおやりになるのが間違いだから、いま小し試験を受ける側に立って労働者の意見も尊重して話し合うという弾力ある方法をおとりになったらどうかということを申し上げておるのでありますが、まあしかし演説の場所ではございませんから、私の言い分は別にしまして、大臣がお見えになっておりますから、私は大臣にお聞きしたい。今方法は任意だとおっしゃいましたけれども、その任意に基いて試験を受ける者と受けない者があることによって、完全雇用も最低賃金法も実施せられていない今日のわが国の情勢から——今の政府の業者間協定というような最低賃金法は、われわれ実際の最低賃金法でないという方針でありますから、実際にはないという観点に立って、この職業訓練法に基くところの技能検定が行われることによって賃金と雇用と労務管理の面で悪い結果が一体現われてこないという確信を大臣はお持ちになっておるかどうか。私どもは必ず悪い面が出てくると思う。それが第一点。  第二点は、この技能検定によって労働者の中に一級、二級及び無級という三階級が生まれてくる。これは技能訓練を受け、正式の訓練を受けた訓練終了者の中からそういう資格が出てくるのを決して言うのではない。今平穏無事に技能者として世間に通用しておる人、しかも生活が安定しており、社会的な地位も安定しておるその人たちの中で、突如としてこういう技能検定をやることによって、こういう三つの階級が作られることによって、むしろこれは資格者が雇用の場所を失う、あるいは高給をもらっていた者がそれを失う、そういう逆の結果が生まれてくることになると思いますが、大臣は生まれてこないという確信をお持ちになっておるか。一級技能士が幅をきかして職制の上の地位を占める、無資格者または二級の技能労働者は失業と低賃金の不安にさらされる、こういう問題が出てこないとあなたは一体どこに裏づけをお持ちになっておるか。  第三番目は、これは賃金と職制との関係です。これは日経連なんか、御承知のように生活給から技能給へということを盛んにやっておりまして、何とか技能給、能率給をやろうというわけで、ここに政府がこういうふうにいいことをおやりになるから、日経連としては非常にその点は工合がいいでしょうけれども、今も言うように無資格者は当然賃金の差別を生じて、いわゆる基本的生活賃金というものに不安を生じてくる。生活給から技能給へというコースでずっと進んでいくという結果が現われてくるとわれわれは確信するが、一体大臣はこの点をどのようにお考えになっているか。労働者はこういう面に非常に不安を持っているけれども、その不安は絶対にないと確信しておるかどうか。  第四番目は、その意味において、今の既存の技能を持っている、いわゆる訓練所を経ざる一般の技能者は、もう既得権を持っているんだから、その既得権者に無資格級を与えたり二級の資格を与えるということは、一方には一つの権利の、既得権の剥奪という形が現われてくるから、そういう人々には全部無条件に、経験年数だけによって一級、二級の技能士の証書を与えるという大乗的なお考えがあるかないか、この点を一つお伺いいたしたい。  と申しまして、私は結論を申しますが、はっきり反対でございます。絶対にこれをやる以上あくまでわれわれは闘います。その点をお含みの上慎重御答弁をお願いいたしたいと思います。
  99. 松野頼三

    ○松野国務大臣 小林さんの今の御意見、よく拝聴しましたが、それは逆に考えていただいて、これを何もしなかったならば、全技能者はいわゆる無給技能者で、地位の向上とかあるいは同一賃金という、いわゆる賃金のべースアップというとおかしいですが、雇用条件の向上ということは何も手がかりがない。ほとんどこれは放任されてしまう。私は実は逆に考えてこのままほっといていいか。どちらかというと、せっかくの技能を修得した者が、一方的ないわゆるあてがい扶持賃金で、向上の余地もなければ前進もできないという、そういう立場になりはしないか。それならば、ここに技能者という一つの足がかりと基準を与えれば、より以上労働市場における間口が広がる、と同時に、一つの賃金に対する特殊的な上昇が望める。労働条件も、すべての場合にいい条件で雇用契約が結ばれる、こういう実は逆な意味で、もしほっておいたならば非常に低迷した賃金のままに、幾ら技能があろうとなかろうと放任されるのじゃなかろうか。それではやはり技術の向上もなければ、労働者の福祉も向上しない、そういう意味で、こういう考え方からまず手がかりをつけて、一つの資格を持つならそれを相当に優遇もされるだろう、こういう実は足がかりをここに求めたというのが、労働大臣としてのねらいであります。従ってこれは基本的に、小林さんは絶対反対じゃないのですから、ここはいいと思います。  その次の問題ですが。これによって、じゃ差ができた。差ができた者が、級を得た者はいいが、得られなかった者が今度は無理な低賃金に据え置かれるんじゃなかろうか。まさか今日賃金カットするようなことはないにしても、片一方は上昇する片一方は上らないというふうな差をつけられはせぬかというお話であります。これが全国一律に強制的なものならば、確かにおっしゃるように強制的で、受けなければならない、受けなかった者は落第だ、こういう判決をすれば、おっしゃるようにそういう危険性がある、合格者と不合格者というものが歴然と出てくる、そのために賃金の格差というのが、不当に片一方が圧迫されるという心配が私はあると思いますが、任意制という意味はそういう意味じゃないのだというのが、その本義じゃなかろうか。  第三番目の、生活給から能率給へという一部の会社の宣伝に乗っているんじゃないかというお話ですが、私は今日賃金をいろいろ研究してみましたが、能率給ばかりを主張する会社というものも、今日なかなか日本ではそれはとり得られません。なぜかといえば、そんなことをしてどんどん生産性を向上すれば能率給は上るんだ——無制限に、無限大に上るということは、会社経営者もそれはできないことだ。従って、幾ら能率給を叫ぶ方でも、必ず生活給とかあるいは経済事情、左右の関係とかいうものを加味した上に能率給というのを主張される方がないとは言いません。しかし私はこの問題は、何も技術訓練の免状をもらったから急に能率が上がるんだというような、逆な計算はここには出てこないだろう。ただ訓練と検定によって、腕に技術が覚えられるということによって、より以上よい生産ができる、より以上いい品物ができる、品質の向上に、生産面に確かに役立ちましょう。同時に、これはある程度労働条件の改善に役立ちましょう。しかし直ちに能率給に結びつけられるというふうなことは直接的に出てこない、私はそう考えております。もちろんいい仕事をする、より以上完全な品物を作る、そういう方向には、技術訓練が役立ち、検定が役立ちましょうが、これが直ちにノルマの引き上げの一つのケースになるんだというような訓練と検定じゃございません。板金にしましても、旋盤にしましても、技術の向上、品質の向上ということが今回の重点でありまして、何分間に幾つ作れとかいう、そういうノルマ的に、牛馬のように働かせようという検定でもなければ、訓練でもございません。その意味で、これが直ちに能率給に結びつき、あるいは能率給一本の、かつての一番いやな落し穴に陥るんだという一方の御心配には、直接的には何ら関係はない。そういう意味で、任意制というところにある御心配が、大部分問題が解決するのじゃなかろうか、こう考えております。
  100. 大原亨

    ○大原委員 最後に一つ、これはやはり受ける方にいろいろと不安があるわけです。特に建前らいうても、絶対反対しているわけじゃないが、職業訓練を繰り返して、大体近代的な技能の経験なり知識の内容はどういうことかということがわかった者に並行してやるということがいいのじゃないか。もう一つは、たとえば大工さんの場合だったら、建設省に建築士というような試験制度があるのですよ。そういう関係調整しないと、たとえば二千円も出して——一日か二日か知らぬが、二千円の試験料なんか、ずいぶんいい値ですね。労働省は予算の足らぬのをこれで補うつもりかどうか知らぬが、ずいぶんいい値です。そういう建築士の試験もあるし、そういう試験との調整をしながら、受ける方の身になって、そうして時期を選んでやる、そういう答申案の処理の仕方について、最後に一つ大臣の御見解をお聞きしたい。
  101. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今の建築士との調整におきまして、もちろん建築士というのは主として机の上の製図とか、そういうものが建築士の試験の大きな焦点になっております。私の方は実地の方を主にしているわけで、今建築士の免状を持っている方は学科の方は免除して、実地だけの試験で通りますから、長い間大工さんをやっておられた方は、実地だけでいいわけです。従って相当の経験があるならば、試験によって不安を起されるようなことは毛頭ございません。それから二千円が高いか安いか、これはいろいろありますが、大体普通の学校の試験よりも、今度は実地でやりますので、それだけにいろいろな材料を使い、機械を動かして実際やるのですから、二千円が高い、安い——私も安いとは申しませんけれども、諸般のことを考えるならば、これはある程度仕方がなかろうか。特にこれは強制する意味じゃないので、二千円では高過ぎる、受けるのはまだ早いというなら、来年受けていただいてもいいのであって、私どもの方は謙虚な気持で、そういう希望者に道を開きたいという、どちらかというと非常に自粛した気持で、特に受けなさい、受けなさいと宣伝をしたり、受けないとだめですよ、そういうことはやりません。こういう道がありますよという程度で、非常に自粛した気持で本年は実施いたしますので、どうぞ御協力をお願いいたします。
  102. 小林進

    ○小林(進)委員 時間もありませんが、大臣の今までの答弁ではことごとく、とてもわれわれは了承するわけには参りません。これはあくまでもやはり大臣の方で考え直していただいて、いま少し労働者側の気持を受け入れたり、世間の納得するような方法でやっていただかなければならない。これはわれわれの希望です。どうかわれわれの希望に大臣の御協力を切にお願いをいたしまして、次の問題に移りたいと思います。これはまた後日を期して再び大臣の啓蒙をやりたいと思いますが、きょうは時間がありませんから、これで終りにいたします。  次に、これは地方問題ではございますが、われわれは地方問題と解しているのではございません。実に今後われわれ革新勢力の民主運動を阻止する重大な問題であるとわれわれも解し、われわれの所属している社会党もかくのごとく解釈いたしておりますがゆえに、あえて労働大臣にお伺いいたすのであります。ほかでもございません、去る二十五日の安保改定の統一行動というものをわれわれ社会党が労働組合と一緒に行いました。そのわれわれの運動の一環といたしまして、新潟県の県職組もこれをやったのでありますが、それがたまたま一時間の遅刻戦術を行なったということに対しまして、新潟県庁の経営者側は地方公務員法、地方公営企業労働関係法違反であるといって、去る七月一日にこの県職員組合の執行委員長に対しまして停職三カ月、それから副執行委員長並びに書記長に対して停職二カ月、それから執行委員、組織共闘部長、並びに執行委員であり教宣部長に停職一カ月、こういう処分を行なったのであります。ところがこの処分を行いました者の中には、当日は全然その県庁のあたりにもいなかった、出席もしていない、三十里か四十里のかなたにいたというような人までも処分をせられている。こういう結果が現われておるのでございまして、これはどうも政治的処罰であって、われわれ民主運動の将来を見越しての組合に対する弾圧ではないか、かように解釈をいたしておるのでありますが、こういう事案を労働省当局は一体御存じになっておるかどうか、そしてこれをどのように解釈をしておいでになるかどうか、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  103. 松野頼三

    ○松野国務大臣 実は私も報告を受けておりませんので、ただいま書類を拝見したばかりで、これは労政局長からお答えさせたいと思います。
  104. 亀井光

    ○亀井説明員 実は私どももけさほど書類が新潟から参りまして承知した次第でございます。内容の事実認定の問題につきましては、私ども現場におつたわけでもございませんし、どういう事情のもとに行われたかどうかということは言えないのでございますが、一般論として申し上げますと、時間内におきまして職場大会を行なったということは、地方公務員法の三十五条に職務に専念しなければならない義務、こういった義務が一つございますのと、また三十七条で争議行為等の禁止の規定がございます。従って、やはり公務員がきめられました執務時間内におきまして職務に専念するという義務がまず第一にあるわけでございます。そこでその執務時間内において上司の許可を得ずしてそういう争議行為類似の行動があったということが、一般論的にいいますれば、これはやはり地方公務員法違反だということは言えるのではないかと思います。ただ具体的に新潟の事件はどうだというふうに御質問がございましても、私、文書上の報告だけでございまして、その場に立ち会ていっませんので、どういう事情のもとにおいてそういう執務時間内における職場大会が行われたか、あるいはその態様がどうであるか、あるいはどれくらいの時間行われたかというふうないろいろな条件を判断いたしませんければ結論が出ないと思いますが、一般論としてはただいま申し上げた通りであります。
  105. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこれから労働省もその事実は大いに調査をして研究をしていただきたいと思うのでございますが、私がここで一般論としてお伺いいたしたいのは、一時間食い込みましてピケを張ったけれども、そのピケを破って入ろうとする者が一人もなかったし、またそれを阻止した覚えもないということが一つです。しかし問題はそこではなくして、地方公務員法違反だとおっしゃったが、地方公務員法の第三十七条は「職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して」云々ということでありまして、職員の行動があるいは非合法であったとか法律に違反しておるとかいう場合に処分をされておる。ところがこのたびの新潟の事例におきましては、その処罰を受けた者はピケにも参画をしていなければ、争議にも全然参画をしていない。はなはだしいのは、副委員長のごときは三十里も四十里もかなたにいて当日は欠席をしておる。職員としていささかも違法行為に参画して出ていない者が、いわゆる委員長だ、副委員長だ、書記長だ、共闘部長だというその職制のゆえに処罰をされておるというこの事実、すなわちこの事実は地公法に該当するのではなくて、やはり責任罰といいますか政治罰といいますか、これは組合の弾圧以外の何ものでもない。現場にもいない、ピケにも参画していない者を処罰したというこのこと自体は労働法規の解釈からいっても、地公法の解釈からいっても、これは不当な一つの処分ではないかとわれわれは法律上解釈せられるが、一体労働省側の見解はどうであるか、こういうことをお伺いしたいのであります、
  106. 亀井光

    ○亀井説明員 処罰されました者が現実職員であるのかあるいは専従者であるのか、そういう点、実は報告がございません。はっきりわかりませんが、もしかりに専従者といたしましても三十七条の後段に「又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」ということで、いわゆる教唆扇動につきましては、これは職員のみならずほかの第三者も罰せられるという建前になっておるのでございます。具体的な事実としてどういう実情にあったのか、先ほど来申しますようにわかりませんので、新潟事件そのものについて私判断を下せませんが、一般論としてはそういう場合におきましてもこの三十七条の後段に違反する場合があり得るということは言えると思います。
  107. 小林進

    ○小林(進)委員 ただいまおっしゃるように、教唆扇動の事実などというものはどこで一体認定をされるのか、これは認定問題としては非常にむずかしい。時間がありませんから私は後日を期していま一度繰り返したいと思いますが、どうもこの問題は認定のいかんを軽視いたしまして、委員長だ、副委員長だというだけの政治的処罰であるということが明白だ。こういうような委員長なるがゆえに、副委員長なるがゆえに、その事実の認定もしないで、教喚扇動なんという事実の認定を行うことは困難ですよ。それをこうやって処罰をしているところに政治的弾圧がうかがえる。だからこういうようなことは、労働省といたしましても厳重に一つ事実を調査していただきまして、そして一つ的確な判断をしていただきたい。  いま一つ私はあなたにお伺いしたいのでありますが、その二十五日に行われる統一行動の前日に、県庁の総務部長が県内のラジオを通じて、県庁職員各位に告ぐる、労働組合の言うことは聞くな、労働組合の言うことは聞かないで、明日の統一行動には参画するな、こういうことを盛んに放送した。一体、経営者あるいは管理者と称せられる者が、労働組合の言うことを聞くなということは、これは組合に対する不当干渉であるとわれわれは考えるが、労政局長は一体これをどういうふうに解釈せられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  108. 亀井光

    ○亀井説明員 今の具体的な事実は別といたしまして、一般論としまして、やはり当局者といたしましては正常な業務を運営する責任というものが、いわゆる県の当局者としてはあるわけでございます。従って地方公務員法に違反するような行為が行われそうなというふうな場合におきまして、そういうふうな事態を察知して、そうして職員に対して地方公務員法違反の行為に出ないように、そうして正常な県の行政事務を執行するようにということの注意を喚起いたしますることは、これ自体は何ら違法ではないと私は考えております。(小林(進)委員「組合の言うことは聞くなということはどうですか」と呼ぶ)具体的に、組合の言うことを聞くなとか、具体的な問題になりますと、いろいろ問題がありましょうが、そういう表現をいたしましたかどうか存じませんが、ともかくも職員に対してそういう注意をいたしますることは、当局者として私は当然の責務だというふうに考えます。
  109. 小林進

    ○小林(進)委員 自治庁の方お見えになっておりますか。
  110. 永山忠則

    永山委員長 自治庁は課長が来るそうです。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 自治庁がいらっしゃったら、また質問を繰り返すことにいたしまして、特に労働省にお伺いしておきたいのでありまするけれども、従来もこの新潟県庁のこのような問題は、これは終戦後から今日まで職場大会やら、こういうような組合員の集会というものがしばしば行われておる。もはやこれは慣例化している事実です。それが最近急激に違法問題だとかあるいは法律違反とかいうようなことで、わずかなことでこういう処分が行われておる。特に新潟の問題なんかは、これは一つの推定になりまするけれども、ワン・マンといわれる県知事が現在不在中であって、これはソビエトの旅行を続けてまだ帰ってこない。その留守中において、そのあとを担当する副知事が責任者として馘首を行なったのでありますけれども、伝うるところによると、実際にやった馘首の元凶は、自治庁から天下りに配置せられている総務部長がこれをやったのである、こういうことになっているのでありまするが、どうも自治庁もお見えになっておりませんから真相はわかりませんけれども、自治庁あたりがやはり統一的な指令を飛ばしておいて、そうして労働省あたりもその謀議の中に参画をせられて、全国統一行動——最近はどうも経営者の方や管理者の方が、こういう組織的あるいは統一行動をよくおやりになりますので、統一的組織的行動をもって労働組合の民主的なる運動を弾圧せられる、わずかな違法性をついて弾圧せられる、こういう傾向が顕著になってきているのでありまするが、そういう統一謀議が労働省とか自治庁その他の各省等において行われているかどうか。笑いごとではありません。われわれには大へんな問題でありますから、正直に一つ諸般の事情をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  112. 亀井光

    ○亀井説明員 ただいま小林先生からの御質問につきましては、私の方で各省とそういう具体的な問題につきまして統一的な打ち合せをし、あるいは統一的な方針でものを処理するというふうなことはございません。ただお話の中にございましたように、従来労働組合はとかく非合法な行為を積み重ねることによって合法化しているという動きがあったわけでございます。従いまして一昨年の九月、これは三公社五現業の職員組合員でございますか労働組合に対しまして、いわゆる公労法上の争議行為の限界につきまして政府としてはっきりした解釈を立てまして、それによって各省統一した方針のもとに争議行為の限界というものを処理していくということがございましたことはすでに御承知の通りでございますが、特に個々の問題につきまして具体的に各省と打ち合せて、歩調を合せて処置して参るというようなことはやったことはございません。
  113. 小林進

    ○小林(進)委員 これは労働省側にお願いいたしておきます。どうかいま一度詳しく御調査をしていただきます。地公法三十七条の法律規定とは全く別個の、組合の幹部なるがゆえにという政治的責任罪が行われている。これはわれわれは不当労働行為であると解釈している。こういうような前例が行われていると、今後の革新的組織運動に重大な障害を起すから、われわれはどうしてもこの問題を処理いたしまして、白紙に返さずんばやまじという決意に燃えておりまするので、どうかわれわれの解釈が間違っておるかどうか、労働省の方も事実の認定をされて、いま一度明確な御回答をお願いいたします。  回答をお願いいたしておきまして、労働省の方の質問を終りといたしますが、自治庁がお見えになっておりますから……。時間がなくて困っておりますが、新潟県で新潟の二十五日の統一行動に対して、七月一日新潟県庁で非合法処分をおやりになった。どうもこの処分をおやりになった元凶は自治庁から天下り的に新潟県の総務部長に就任せられた吉浦某という、これがやった行為じゃないか、こういうふうに推測される点が多いのでありまするけれども、自治庁は一体こういう馘首、こういう処罰をすることに対して、事前にこの問題の謀議にあずかっていたかどうか、あるいは指示をされたかどうか、あるいは事後承諾を与えられたかどうか。その自治庁と新潟県との関係をつまびらかにお聞かせを願いたい、こういうことでございます。
  114. 今枝信雄

    ○今枝説明員 自治庁と県、地方公共団体との関係につきましてお尋ねがございましたが、地方公務員制度に関しましては、自治庁の権限は地方公務員法の第五十九条に定められております。「自治庁は、地方公共団体の人事行政がこの法律によって確立される地方公務員制度の原則に沿って運営されるように協力し、及び技術的助言をすることができる。」こういう規定がございまして、場合によりましては、いろいろと技術的な助言を申し上げることもざいます。しかしただいまお尋ねの件につきましては、実は内容を私の方も全然承知をしておりませんので、どういうことでございましたか、特にお話のような点について新潟県当局と相談したということはございません。
  115. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたは公務員課長ですから、まだ課長としてお聞きになっていないかもしれませんけれども、どうもこの問題については相当自治庁が的確な指令を出しておいでになるのではないか、そうわれわれの方には推定さるべき例証もあるのであります。時間もありませんので、私はこれで質問は終りますが、しかし今組合の三役が首を切られた、しかもその争議に参画もしない、ピケにも入っていない、こういうものが、組合の幹部なるがゆえにという形で、五人も処罰をされておるのでありまするが、そういうことを全然お知りにならないとすれば、自治庁としては怠慢過ぎる。助言ないしは協力をする上級官庁の関係にありながら、知らぬとすれば怠慢でありまするし、あるいはまたその謀議の中に参画して全国的にそういう指令を出しているとするならば、まさに内務省復活の危険性があります。われわれは将来民主運動をする上に大いにおそれなくちゃならぬのであります。  課長要求してもわかりませんから、お帰りになりまして、自治庁長官なり責任者とよく御相談賜わりまして、偽わりのない回答を書面で私のところにお寄せ願いたい。その書面の回答をいただきまして、また後日私の質問をいたしたいと思います。本日はこれをもって終ることにいたします。
  116. 永山忠則

    永山委員長 滝井君。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもなかなか大臣方が多忙なためにうまく継続して質問ができぬので非常に残念ですが、実は、大臣も就任後の事務引き継ぎでおそらく一番先にお聞きになっておるだろうと思いますが、中小企業の労働争議に暴力団が入る傾向が最近非常に多くなったということです。同時に、その入った暴力団に対して警察権力が手をこまぬいて見ておるという状態です。たとえば総評あるいは日教組その他が何かやると直ちに警察権力が発動されてくる。しかし経営者側が使った暴力団に対しては何ら積極的に出ないというのが今の警察権の実情です。これは民主的な労働政策の推進の上に、あるいは労働大臣の言うあたたかい人間関係の成長の上に非常に大きな妨げになっておるということです。たとえばメトロ交通の争議においても暴力団が入りました。それから高村建材の場合においてもそうです。それから成光電機、光和工業、高山精密、千葉食品、滝野川タクシー、もうあげたら切りがないです。争議に対して使用者が暴力団を雇い入れて、そして暴力行為に出ておる例が非常に多くなっております。一体この傾向を大臣はどうお考えになっておるのか、そしてこれを一体どういう工合に防止をする方針をお持ちなのか、これをお聞かせ願いたいと思うのです。と申しますのは、大臣は就任の冒頭に、「私は労働問題の特徴はそれがすべて人間関係の問題であるということだと思います。従って労使の関係におきましては、そのときどきの現象に変化がありましても、その底には相互に常に変らぬ理解と信頼がなければならないと考えるものであります。」「土俵を守るという好ましい傾向が一そう助長されるように、関係者の特段の努力を期待」云々と述べておられるわけです。この大臣の就任の第一声というものは、まさにそれを実践する上に、客観的な情勢というものは非常に違った状態にあります。これはやはりこの違った状態を直すことが、大臣のこの第一声を実践することになると思うのです。そういう意味で、使用者が暴力団を使う、これを一体どう考えておるか、しかもそれをどう防止するのか、それに対する大臣の所見を伺いたいと思います。
  118. 松野頼三

    ○松野国務大臣 労働組合というものは、争議行為及びあらゆる場合において暴力を使ってならないという暴力否定のことが、労働組合法の第一条にも明記してあります。従って、組合においてはいかなる争議行為にしてもあくまで暴力を使っちゃならないと同時に、使用者の方も反面において当然これに対抗するだけの対等な信義を守らなければならないというのが、私は労働大臣として共通な広場及び土俵だと信じております。ことに暴力団という、暴力そのものというふうな感じのものが介入するということは、よほど避けなければならないと私は実は考えております。ただ個々の問題につきましては、あるいは組合の方において非常な圧迫的、暴力的行為があったから、自分の方は当然正当な防衛だという議論があるかもしれません。しかしそれは実は私の方の労働組合及び労働争議の範囲の外にあるものでありまして、いわゆる傷害とか器物破損とかいう刑法そのものの問題は、これは労働大臣としての今日の話としてはあくまで例外であります。労働大臣はあくまで労働争議と労働組合運動を守り、また正常な姿にそれを持っていくことが私の非常に大きな努力の目標であります。ただ個々の問題になって参りますと、これは労働省所管にあらずして、警察庁そのものがいかなる要請によって、いかなる空気といかなる条件のもとに介入したかということは、これは警察庁でなければ、私の方ではわかりませんので、労働大臣としてはあくまで組合にも暴力否定があると同時に、その反面使用者の方も暴力を使うことは労働組合の問題については避けてもらいたいということを私は強く要望するわけで、最近特に大企業の場合は、一時はそういう傾向がございましたが、だんだんお互い同士自粛し、一つの進歩のもとに、大企業における暴力行為というのは労使ともに非常に少くなって参りました。その反面、最近中小企業にぼつぼつそういう傾向が現われておることはまことに残念なことであると私は存じます。もちろんこれは両方ともに理解をしていただく、両方ともに労働争議というものの限度を越さないという良識と体験を持たなければならないという意味で、労働大臣としてはあくまでそういう見解から、こういうものが早くなくなるように、またともに一つの限界を越えないように、同じ土俵の上に立つように、お互い同士生産基盤と生活の基盤をぶち割らないように、そういうことを私は常々考えているわけでございますが、滝井委員の御質問の個々の問題については、私が直接監査するとか検査するとか、実情を調べるというものではございませんで、警察庁でありあるいは地方労働委員会でこの問題を取り上げておることでありますから、私が直接介入するわけにはまだ参りませんが、総体的にともにこの暴力行為は、私は非常に大きな破壊を招くことだという考えで、最近中小企業に多いのはまことに残念に考えております。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 中小企業における労働争議に対して暴力行為が多いことは大臣もお認めになりました。労働省としてはそれを防止する具体的な対策をいかに講じておられるのか、これを一つ説明願いたい、
  120. 亀井光

    ○亀井説明員 この問題につきまする基本的な考え方は、ただいま労働大臣から御答弁があった通りであります。具体的にしからばそういうことが未然に防げるような行政措置というものをいかにわれわれがとっておるかという御質問だと考えますが、問題は結局労働教育という一語に尽くるのではないかと思います。労働教育というものは労働組合員に対するあるいは労働者に対する教育という面とともに、使用者に対しまする教育がまた他面あるわけでございます。そこで最近におきまする御指摘のごとき中小企業におけるそういういろいろな事例につきましては、われわれも非常に憂慮をいたしておりまして、われわれの行政の機構を通じまして、個々の具体的な問題についての処理ということよりも、もっと広い意味の、基盤としての暴力の排除ということにつきましては、労働教育を通じまして現在努力をいたしております。しかし決してわれわれは現在の努力で十分だというふうに考えていないのでございまして、さらにあらゆる角度、特に日本労働協会も発足いたしまして、着々とその仕事を行なっておりますので、一面行政の系統を通じましての労働教育の面からこの面の是正をはかっていきますとともに、他面日本労働協会を通じましての啓蒙活動に努力して参りたい、かように考えております。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 特に重点を置いて日本労働協会あたりで中小企業の事業主の教育を今やっておりますか。
  122. 亀井光

    ○亀井説明員 近く中小企業の労使に対しまして重点を置いた週間というか、期間を設けまして、そこで発行いたしております機関紙あるいはラジオその他を通じましてやるよう今計画をいたしております。近く実行されると思います。
  123. 滝井義高

    ○滝井委員 中小企業の争議における暴力行為が典型的に現われたのが、このメトロ交通の問題でございます。これはすでにわれわれも社会党として現地調査に参りましたし、自由民主党の方も極秘か何か知りませんが調査いたしております。あなた方も現地に行かれたはずでございます。おそらくこれは大臣にも御報告になっておると思いますが、昔から、大野伴睦さんじゃないけれども、夜討ち朝がけという言葉がありました。国会でも抜き打ち解散をやるのは夜うち朝がけだとおっしゃいましたが、まさにメトロの問題は朝がけなんです。未明の四時ないし五時ごろに寝込を襲って、寝ておる運転手の諸君を寝室の中に外からくぎづけをして詰め込んでしまう、こういう形が一体ロックアウトですか、あれのことをロックアウトいいますか。
  124. 亀井光

    ○亀井説明員 ロックアウトの態様につきましてはいろいろございますが、一般論から申しますと、その職場を閉鎖するのが一般的な概念でございます。メトロタクシーの場合には、その事業場の中に労働組合の方も相当おられたようでございまして、従って完全なロックアウトが必ずしも実行できなかったという面があるようでございます。御質問のようにあれがロックアウトかどうかということにつきましては、ちょっと御答弁いたしかねます。
  125. 滝井義高

    ○滝井委員 日本における労政の最高権威である亀井労政局長みずからが、会社のやった行為はロックアウトかどうか疑問があるという明白な意思表示をされました。われわれも現地に行ってみまして、まさにあれはロックアウトといえるかどうかということを非常に疑問だと思いました。しかもなお会社はそれをロックアウトだとっておる。その際くぎを打って内部にカン詰状態にする、出てきた者には今度は暴力を用いておる。しかもそればかりでなくて、運転手の諸君の重要な生産の手段ともなるべき自動車のタイヤにくぎを刺してパンクをさせるばかりじゃなくて、ネームプレートを全部とってしまっておるということなんです。今あなたは何人もということをおっしゃった。何人もあのネーム・プレートをはがすことはできないことになっておる。小林君の、副委員長はどこか三十里も四十里も遠くにおったのだが、何人も教唆扇動というような、こういう何人もに当るわけです。ロックアウトを宣言をして、組合員を寝室の中に閉じ込めて、出てくるやつは暴力で負傷さして、自動車はパンクをさして、ネーム。プレートをとる。私は今閉じ込めたところだけを申しましたが、一体これはロックアウトといえますか、ここまで具体的にくればはっきり答えてもらいたいと思うのです。中正な労政局長として私どもはきょうは明快に御答弁を願いたい。これは抽象論ではございません。きわめて具体的な問題でございますから、日本の最高権威として、権威の名において御答弁を願いたい。
  126. 亀井光

    ○亀井説明員 ロックアウトというのは、御承知のようにその要件としましては事業場を閉鎖することが完全に各労働者に伝達され、この要件で実は法律的に足りるのでございます。あとの態様はいろいろございます。その閉鎖された事業場の中に労働組合員がおる場合もございましょう。あるいは完全に外に撤去さした後にロックアウトがかけられる場合もございましょう。いろいろ態様があるわけでございまして、今御指摘のような問題は、いわばそういう暴力行為の起っておりまする事態、今のメトロの事態というのは労働争議以前のものだというふうにわれわれは考えております。特に道路運送車両法に違反しましてネーム・プレートを勝手に取りはずしたというようなこと、これは別な法律に違反をするというような事実もあるようでありまして、この点私所管ではございませんので、確実に違反であるかどうかということは判断いたしかねまするが、法律の条文を見て参りますと、そういう点もあるのではないか。従って、現にその面の調査も警察において進められておるということを考え合せますると、現在の事態は労働争議以前の問題だというふうに私は考えざるを得ないわけでございます。
  127. 滝井義高

    ○滝井委員 松野大臣、お聞きの通りこういう形なんですよ。とにかく争議以前の姿です。従って、今名答弁をいただきましたように争議以前の状態でございますが、そうしますと、組合員は今あなたがおっしゃったように就業中の者もあるわけです。夜中に帰ってくるわけですから、全体的に言えば就業中です。就業中に一方的に不法にナンバー・プレートを持っていく、タイヤにくぎを刺して全部パンクさしてしまう。ナンバー・プレートをとられたら乗れないのです。そうしますと、これは不法に就業不能にさせられたのですから、組合員は会社に対して当然賃金の請求権があるわけです。それはそう認めて差しつかえありませんか。
  128. 亀井光

    ○亀井説明員 会社側の出しましたロックアウトというものが法律的に正しいものであるかどうかということでその問題が出てくるだろうと思います。組合員がいわば経営者の支配下にありまする車といいますか、それを勝手に使用するということはおそらく許されないことでございます。従って、今営業が行われておる、あるいは争議後営業が行われておる——かつて大阪方面に八十何台ですか車を連ねまして勝手に経営者の車を持ち出したというようなことにつきましては、仮処分の決定で、それが不法な占拠であるというような決定がなされております。そういうふうなことから考えますると、ロックアウトの法律上の正当性の問題と、あるいはその経営者の支配下にありまする自動車を組合員がその許可を得ずして使用する、そういうようないろいろな事実関係とをからみ合せまして、今の賃金債権があるかどうかということは決定されなければなりませんので、それらの点につきまして、私がここで正確な結論を申し上げることは遠慮さしていただきたいと思います。
  129. 滝井義高

    ○滝井委員 この問題は、具体的に見ても、賃金を支払わなくてもよろしいという結論は今の答弁からはすぐに出てこないのではないかと私は思うのです。大阪まで組合の諸君が自動車を連ねて行かなければならなかったという、そのやむにやまれぬ気持、まずその気持の起った原因を探求する必要があると思うのです。  このメトロという会社は基準局で相当の注意を受けた過去の実績をお持ちだと思うのですが、これはお聞きになっておりませんか。
  130. 亀井光

    ○亀井説明員 聞いておりません。
  131. 滝井義高

    ○滝井委員 実はこの会社は四カ年間賃上げをやっていないのです。監督官庁がタクシー経営者に対して、神風問題等あらゆる面から見て、運転手に対しては十三勤務を指令しておる。二十六日です。ところがここは十四勤務で二十八日になっておる。これはみんなが賃金が安いために十四勤務をせざるを得ない形に追い込まれてしまっておるわけです。こういう事実がある。監督官庁は十三勤務を指令をしておるにもかかわらず、十四勤務をやっておるという状態、しかもメトロの経営者は一日三百六十五キロ走行制限を無視してどんどん走らしておるのです。そういう状態であったために、労働条件の改善をやれという官庁の指令があったにもかかわらず無視したために、就業停止の処分さえも受けたものがあるわけです。二十五台も受けておるのです。四年間べース・アップやっていない。従って組合としては、これはもう東京では、どうにもならぬというので、大阪の本社に行かざるを得ないという形なんです。しかも会社から出している——おそらく自由民主党のあなた方の手にも入っておりはせぬかと思うのですが、会社から出しているパンフレットをごらんになると、ロックアウトから、また人夫も、全部計画的ですよ。全部計画的に書いていましたよ。これは証拠を見せろというのなら、ありますからお見せいたします。ネーム・プレートを取るのも、人夫を雇うのも、しかも未明に決行することも、全部計画的にやられておるのです。朝がけはどこかの参謀本部があってそして計画的にやられて、幹部は全部逃げてしまっておるのです。そして警察は今言ったように何人も教唆、扇動した者は一網打尽に引っくくるのが日本の今の警察ですよ。ところが社長とか、都自協と申しますか、いわば日経連の代表みたいな、交通の代表みたいのが引っ張られて調べられたかというと、そんなことはない。調べられていない。私たちは原宿の警察署に行って渡部という警視か警視正の署長にも会いましたが、全然やっていない。こういうように警察権の発動自体が労働運動に対して、労働組合のやったことは非常に深刻苛烈にいくけれども、経営者のやることにはきわめて放漫、寛大であるということです。こういう行政が日本の警察行政に行われ、日本の労働行政に行われておるならば、もはや日本には民主主義はない。ファッショ以外にないのです。こういう点はやはり松野労働大臣なりあなた方がからだを張って阻止をして、ほんとうにあたたかいヒューマン・リレーションを作る以外にないと思うのです。ところが労働省当局はそれをやっていない。今こういう状態があるにもかかわらず、依然としてあれは放置されたままなのです。ようやく国会で取り上げられ、社会党が言ったがために、きょうこのごろになって経営者がのこのこ出てきて話そうとしている。社会党があそこを調査すると決定したら、経営者も一番先にあそこに来ていなければならぬはずです。ところがあそこにはだれも来ていない。大きな建物と何十台の自動車をほっぽり出して経営者はだれもそこにいないなんという、こんなばかなことはないです。こういう状態をそのまま放置することは許されないと思うのです。労政当局あるいは基準局は会社自身を呼んで、そして注意するところはきっちりと注意する。それから警察権に対しては、あなた方も不公平のない、手落ちのないような発動を要請しなければならぬです。これがいわば中立の立場にあり、労働者を保護する労働省の任務でなくちゃならぬと私は思うのです。そういうことは違反を重ねておるのに、そのまま放置をして、そしてこれは五月の三十日に行われて、もう六月も終ってやがて七月の中ごろになろうとする現在までそのままほうっておくということはないと思うのです。もう少し警察あたりも積極的にやらなければ、署長なんかてんであいまいもこたる態度です。こういうことではいけないと思うのです。  あと渡邊厚生大臣も見えて八木さんの質問もあります。私はあと労災病院の問題もありますので、この問題はこれ以上やりませんが、こういう問題に対してもっと峻厳に、片手落ちのないような労働行政をやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  132. 松野頼三

    ○松野国務大臣 そういう気持で私もやりたいと思いますが、この問題については都労委、地労委に申請があり、あっせんがあるいは進んでいるかと思いますが、でき得れば両者ともに地労委において同じ土俵の上で話をしていただきたい。一方が拒否したり逃げたりすることは許されない、こう考えて、その方向で円満に、そういうことのないように、今後の労働問題を解決していきたいと考えております。     〔「警視総監に注意しろ」と呼ぶ者あり〕
  133. 滝井義高

    ○滝井委員 今警視総監に注意しろという話がありましたけれども、これは亀井さん、神の気持になって、今の警察権の発動の姿を見ればおわかりだと思うのです。私が言うまでもなく、あなたは頭を縦に振られておるからそうお思いになっておるのです。僕ら客観的に見ても非常に片手落ちのところがある。そういう点について、閣議等においても警察権の発動の公平化について、特に労働争議については公平にやるように、一つ松野さんから要請をしてもらいたいと思いますがどうですか。
  134. 松野頼三

    ○松野国務大臣 御趣旨のように、今後労働争議に暴力が入らないように円満にやることに一そう努力をいたします。     —————————————
  135. 永山忠則

    永山委員長 次に厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑を継続いたします。通告がありますのでこれを許します。八木一男君。
  136. 八木一男

    八木(一男)委員 渡邊厚生大臣にはお忙しいところを無理をしていただいて非常にありがたいと思います。厚生大臣、大へんお待たせをして恐縮でありますが、非常に大切なところでございますので、どうか時間を十分さいていただいて聞いていただきたいと思います。  まず厚生大臣に対して、厚生行政一般について御質問申し上げたいことがあるわけでございますが、委員会の方の時間もおそくなりましたし、滝井さんの御質問もありますから、国民年金の問題に限って御質問申し上げたいと思います。  国民年金制度につきましては、これは終戦後の社会保障の完成をもって福祉国家を作るとか貧乏をなくするという意味で、非常に重大な問題であるわけでございますが、このような世の中の動きに従って、ことしの四月に国民年金法が一応でき上ったわけでございます。その国民年金法の審議に当りまして、政府が提出されました国民年金法が、非常に内容が乏しいとか、組み立てが不合理であるとか、抜けておる点が非常に多いとか、そういう論議が非常に多くかわされたわけでございます。このときに、時の担当者であられました坂田厚生大臣並びにこの問題をおもに政府部内で進められました時の年金準備事務局長、現小山年金局長の御答弁、あるいは総理大臣が特に御出席になっての御答弁の中に、総体的にいえることは、その中に非常に欠陥がある、不十分であることは認める、しかしこれをとにかく発足させたい、不完全な点は将来ともに改めていってよいものに育て上げていきたいというような態度に一貫をしておられたわけでございます。その意味で、新しく就任されました渡邊厚生大臣が、その政府の方針をはっきりと把握せられまして、御在任中にぐんぐんと国民年金がよくなるように推進をしていただきたいと思うのでございますが、それにつきまして厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  137. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 国民年金制につきましては、私どもといたしましても、発足早々でありますので、なかなか皆さん方から見られるといろいろな欠陥があるということを聞いております。これは経済の成長発展あるいは年金制度の現在の充実性と相待ちまして、徐々にその欠陥を訂正していきたい、かように考えております。
  138. 八木一男

    八木(一男)委員 今厚生大臣が経済の発展という言葉をお使いになりました。この国民年金の内容が非常に乏しいものになりましたことは、財政上の支出その他に制約された点がほとんど全部の原因であります。そのときに将来の経済の発展によって変えていくという御答弁があったわけでございまするが、経済の方につきましては、御承知の通りこの国民年金制を審議しておったときの経済の見通しと現在の見通しは大きく変っているわけであります。国民年金制を審議していたときには、平均経済伸張率が非常に落ちていたときでございまして、五・五%くらいになるだろうというふうなことで論議をせられたわけでございまするが、現在は非常に明るくなりまして、七%以上に来年度はなるのじゃないか、さらに八というくらいのところまでいくのじゃないかというふうな見通しまで急速に立つようになって参りました。そうなりますると、政府自体の御意見としても、政府自体のお立場としても、この年金法をさらに急速にただいまからよくされるというお立場があるはずだと思うのです。総理大臣厚生大臣や、そのときにいろいろ御答弁願いました大蔵大臣や労働大臣や、そういう方々の御答弁をそのまま受け取りますると、さらに急速に発展させる時期に達したと思う。その意味で、これを発足までに早くよく変えられることを推進されるのが渡邊さんの御責任であろうと思いまするが、それについての御決心を承わりたいと思います。
  139. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 拠出制の面などにつきましていろいろ過去におきまして御指摘があったということを聞いておりますので、そういう点におきまして特に考慮いたしたいと思っております。
  140. 八木一男

    八木(一男)委員 この前の年金の論議の中では、この政府の現在成立しました国民年金法を作られる根底は、社会保障制度審議会の答申をもとにして、そこの中にいろいの考え方を別に入れられましてきめられたという御答弁がありましたし、事実その通りでございます。ところが社会保障制度審議会の答申というものは、経済伸張率を二%と、非常に低く押えて出された答申でございます。それ自体が間違いであるということを強く私どもは指摘いたしました。ですからあの時点においては政府案ははるかに高めなければいけないということは私は申しました。それに対して政府の方は、そういうこともあるというような顔をしながらも、もう法案がきまって予算が通っているということで、それを防ぐのにきゅうきゅうとしておられた。ところが来年度以降においては予算は新しく編成されるわけでございますから、そこでこの前の経済の成長率の時点においてもこれを高めなければならない、しかも現在経済成長が非常にうまくいっておる、伸びる形勢にあるということになれば、二段三段にこの内容を即時高められなければならない時点に達しているわけです。そういうことを厚生大臣は十分御承知でありまするが、そういう意味で、この次の通常国会においてさらに成立した国民年金をよくするというように推進をしていただきたいと思いまするが、それについての御答弁をお願いいたします。
  141. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 お説ごもっともでございまして、できるだけすみやかなる機会に、今直ちに次の国会ということは、いろいろ資料その他の関係におきましてそれが算定されるものが出るかどうか、これはまだ検討中でございまするが、これはお説の通りできるだけ早い機会におきましてこれを実行に移していきたい、法制化していきたい、かように存じます。
  142. 八木一男

    八木(一男)委員 大へんけっこうな厚生大臣の熱心な御抱負の御開陳を承わりまして、非常に力強く存じますが、それをぐんぐん進めていただきたいと思います。  その点で一つ申し上げておきたいと思いまするが、さらに大蔵大臣等に対して厚生大臣が主張をせられる場合の論点といたしまして、私どもの考え方一つ聞いておいていただきたいと思います。  国民年金法はその第一条に、「日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、」ということが明らかに書いてございます。日本国憲法第二十五条、すなわち健康で文化的な生活を全国民に保障する条項であります。ところが政府の国民年金法の拠出年金の方は、六十五才から一番多い人が月二千五百円の老齢保障年金をもらうということ、これが完成するのが四十五年後であります。そうなりますと、三千円という年金が健康で文化的な生活を保障するというものとは今現在の時点においても言えないということは、厚生大臣お認めになると思う。四十五年後に完成するものが、その間に経済が伸張する、国民生活は上るべきであります。そういうことを考えると、とんでもない低い数字であるということをお認め願えると思う。  次に月三千五百円という金額、これは全部保険料を完納した場合であります。従って今五十才であって、ちょっと入って年限が切れたという方はしようがないとしても、今二十才であって、それから四十年間たった、五年後にもらうというときに、その四十年間の間にいろいろと失職をしたり、あるいはこれはおもに農村あるいは零細企業者に関係の国民年金でございまするから、凶作があったりそれからあるいは商売が不振であったり、そういうことで年金保険料が納められない場合には、たとえば四十年のうち二十五年しか納められない場合には、この金額が月に二千円に下る、十年しか納められないときには月に千円に下る、それ以下の場合には年金がもらえないという組み立てになっておる。これでは一番多いところでも健康で文化的な生活は維持できない。その中段、下段あるいは全然もらえない人にはとんでもないことになる。そういうような内容でございまするから、これはどんなに引き上げられても引き上げ過ぎということはない。ただ今までなかったものがぽっとできたから、ばかに国庫財政の支出がふえたように見えて、いきなり思い切ったことをやったように思っておられるような向きもありますけれども、そうではない。今までやることがあまりにおそきに失したので、今やったわけでありますけれども、そのやったものは非常に少いものであって、あの時点においても少いものが今度経済が伸張したものですから、思い切ってふやさなければならない、そういうようなことで大蔵大臣に猛烈な勢いで当っていただいて、そして内容を高めていただきたい。それについてのお考えを承わりたいと思います。
  143. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 当然そういう経済の変動あるいはその人の個人の事情等によっていろいろな場合が出て参りましょうけれども、月三千五百円という拠出制の最高額につきましても、国民所得、生活水準の向上等いろいろ勘案しました場合におきましては、当然これを引き上げなければならない、かように基本的な考えに立っております。
  144. 八木一男

    八木(一男)委員 その次に、年金制度につきましては、金額の問題と始まる年令の問題が大きく関連をいたしております。金額が幾ら多くても、おそくしかもらえないのでは、その人にとって少しになる、政府案の方は六十五才開始ということになっております。六十五才は非常におそきに失すると私どもは思っております。それについてのいろいろの論議はありましたけれども、結局政府の拠出年金は、今四十才や五十才の人がすぐ入って、それで六十五才になったらもらえるという部分はあるわけであります。そうなりますと、現在の時点において、六十才が適当であるか六十五才が適当であるかという問題が一つございます。それから完成した将来において、六十才が適当であるか六十五才が適当であるかという問題もあるわけであります。二つあるわけであります。現在または近い将来の方の問題では、日本人の老齢になる年限は早い。往々にして間違った学者は欧米諸国と比較いたしますけれども、日本の人は今まで非常に苦労をしておりましたから老衰するのが早い。そういうことを考えますると、現在や近い将来の人は早く始まらなければならない。ヨーロッパでたとい六十五であっても、六十で始めなければならない要件がある。しかもそのヨーロッパにおいて六十から始まっているところがたくさんあるわけです。そういう意味で早く始めなければならない。今度は将来の問題になります。将来の問題になると、日本人の体位が向上しておりますから、そんなに早く老衰はしないかもしれません。しかしそのときには別な要件が出てくるわけです。将来の問題は、いろいろなものが進歩しまして、工業も商業も、あるいは農業もオートメーション化が進むということになりますから、非常に人間の労働が少くて済むということになる。そこで年取った人が働けば若い人は働き場がなくなる。しかし年取った人は、老齢保障で安心して暮す。そうして若い人全部が生産に従事して、その能率的なオートメーションになった農業をやり、あるいは工業をやり、商業をやるということになると、将来はそういうような労働力の構成の問題から、当然年齢を下げて、六十でも少いかもしれません。あるいは五十五からもう休んでもらわなければ、ほかの人が働けないという事態がくるかもしれない。そういう意味で、将来の問題としても下げなければならない。現在、将来ともに、両方の理由で六十五才という開始年齢ではおそい。それを下げなければならないという要件がある。それを下げれば結局同じ金額でも給付が上るということになる。政府側の案がその六十五にとどまったのには、給付が上れば国庫負担が要るということからブレーキがかかっておる。そのブレーキがかかる要件が経済伸張その他で解けてきた。そういう意味で六十五才開始年齢を下げるというような御努力が必要だろうと思う。その点についての御意見を伺いたいと思います。
  145. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 まことにじゅんじゅんとしての御議論でございますが、いろいろなその当時における資料に基きまして六十五才あるいは七十才というような算定が出たことであろうと思いまするので、今直ちにここにおきまして私の方針というものはなかなか簡単に変えるようなわけにいきませんが、しかしその御趣旨をよく拝聴いたしまして、その方向で一応も二応も検討させていただきたいと思います。
  146. 八木一男

    八木(一男)委員 今おっしゃったような御趣旨で一つぜひ進めていただきたいと思います。  そこでその問題になりますと、国庫負担が多くなるという問題になる。今積立金方式を政府の方はとっておられます。保険料を積み立てて、自分のものは自分で用意する。また国庫負担もその年に出しておいて、積み立てその年代で用意していこうということになっているわけです。それはある意味で、完全にその用意をしておこうという意味では決して悪いとは言い切れないことですけれども、ほんとうの制度の上から見れば、そういうことをしては大きくならない。今の年寄りにはただの年金をあげなければならない。われわれは親孝行をしなければならない。そうして積立金方式とすると、保険料は自分が出して、自分の時代に税金で払って、国庫負担を出して積み立てておいても、自分たちの時代で金をまかなって将来の用にしなければならない。親孝行もすれば、自分の将来は子供に見てもらわないで自分たちだけでやろうということになる。そうなれば今働いている人は二重負担になる。親孝行もやるが、自分たちの用意もするのだということ。子供たちにも親孝行をしてもらおう、子供たちは孫に親孝行をしてもらえばいいというふうに、ずっとインター・ジェネレーションの年金制度を作れば、そういう問題は非常に楽になる。これは非常に小むずかしい問題でございますから、また厚生大臣は小山さんや何かと論議を戦わして御研究を願いたいと思いますが、これを財政的に政府が一生懸命出すと同時に、さらにこういう方法によってもっとたくさん出せる方法があるわけです。そういう方法一つ検討していただきたいと思います。ただしそれを逆用してもらっては困ります。政府が出すものをそういうふうに固定して出したら、これは逆用になります。こういうときには断じて承知はいたしません。出すものはどんどんふやす。それをさらに大きくするためにそういうものを使うというように使ってもらわないと、りっぱな方法も、これは薬になったり毒薬になったりしますので、決して毒薬の方には使わないで、薬の方にそういう制度を使うように御検討願いたいということを申し上げておきたいと思いますが、それについて御検討願いたいと思います。  その次に、もっと具体的な問題に移ります。政府の方の拠出年金は非常に間違っていると私どもが思いますのは、社会保険主義という立場に立っておる。私どもが提出しました社会党の年金は、社会保障主義というものに立っております。似たような言葉でございますが、それが非常に違うわけでございます。その理由はこういうことであります。たとえばさっき申し上げましたように、政府の方の年金は、全部払った場合に六十五歳で三千五百円になる、二十年しか払わなければ二千円になる、十年では千円、九年以下ではなしになる、そういうことになります。そうなると、払えなかったという人は、農場の収穫が少かったり、商売が不振であったり、そういうことで払えない、生活が苦しい人であります。生活が苦しい人が年寄りになったら、一番年金が必要なわけです。金持ちの人より一番年金が必要なわけです。そういう人々の年金が少くなったり、もらえなくなったりするということでは、年金の意味は、もうほとんどなくなるわけでありますが、そういう組立てに立っておる。そういう組み立ては、今までの保険会社のような組み立てに立っておるわけです。保険料をたくさん払った人が、満期保険金をたくさんもらえる。それを年金払いによってもらえば、たくさんの年金が入るということになる。これではほんとう社会保障ではないのです。金持ちが自分のことで合理的に用意するということにすぎない。社会保障というものはそういうものではなしに、ほんとう年金が必要な人が年金がもらえるようにならなければいけないわけです。政府の方でも、少しはそういう点は加味してございまして、国庫負担の点だけがそういう点です。国庫負担は、一般の累進税の税金からかける。それが三分の一国庫負担になってきている。その部分だけは社会保障面だ。ところがそれ以外の組み立てはそうではない。そういうことは、ほんとう年金制度とは言えないわけであります。今度保険料の方で見ますと、社会党でわれわれ考えましたのは、均等割、収入割、所得割というものの三つの制度から考えたのであります。ところが政府案の方は、一律に最初は月百五十円、あとは月百円という年金保険料をとっております。そうすると、住友吉左衛門という人でも百五十円しか払わなくていい、百円しか払わなくていいが、いわゆるボーダー・ラインの人もそれだけ払わなければならない。払えなければそれだけ年金が減ってくるということになってくるわけです。いささかそこに免除制度を作っておいでになりますが、しかしそれは完全なものではございません。でございますから、結局年金を強制保険でとるのに、そういうふうな金持ちも貧乏人も同じようにしかとれない。そうして払えなければ年金は減るというところに、社会保険主義の悪い点が出ている。私どもは、保険料を払える人にたくさん払ってもらったらいいのではないかと思います。私どもは、保険料という形式は法律的にいけないというので、年金税という言葉に変えましたけれども、とにかく保険料に当る負担を払える人にはたくさん払ってもらって、払えない人には少しでいい。そして今度払うときには、必要の度がありますから同じように払うという考え方をとっているわけです。二重に私どもの方は社会保障主義である。政府案の方は社会保険主義である。社会保険主義は当りまえだと言われれば、これは社会保障を語る資格はございません。社会保障というのは、今までの財産権の問題だけで考えているのではなしに、ほんとうに国の政治が悪いために健康で文化的な生活ができない人を、少しでもそれに近づけるためにやるわけですから、そういう作用をしなければ社会保障はでき上らない。ところが社会保障のほんとうの真打ちといわれる年金制度において、こういう社会保険主義の味の方がはるかに多い。社会保障主義の味の方が少いという点に非常に問題がある。そういう組み立てについてさらに検討されて、社会保障の方に前進されるようにしていただきたいと思います。それについての大臣の御所見を伺いたい。
  147. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 この年金制度は、社会保障というところの基本的な観念から出発しておるものと私は思います。それでありますから、やはりそういった思想のもとにおいて現在の欠陥を修正しながら、所得の多い者からはやはり多く出させる、こういった方向に努力いたしたいと思います。
  148. 八木一男

    八木(一男)委員 次に時間もありませんから、こまかい点は次の臨時国会なりほかのときにどんどんと申し上げることにいたしまして、特殊な問題ですけれども、一つ大事な問題を申し上げたいと思います。  この拠出制の年金の中で、入れてもらえない人があるわけです。それは労働者であります。労働者には労働者年金があり、ほかの公的年金がある者は入れないということになっておる。これは労働者年金をもっと高めて国民年金と通算できるようにしなければいけないと思いますが、それはひとまずおきまして、労働者の配偶者が強制適用にはなっていない。初めは入っておらないけれども、いろいろ論議がありましたので任意適用ということをされました。任意適用ということであれば、入りたい人が入るんだからいいじゃないかというお考えが普通に浮ぶようでございますけれども、そうではないのであります。任意適用と申しますものは非常にまずいことになります。今の日本の女性は男女同権ではありますけれども、非常につつましい家庭的な婦人なんです。まず家庭では子供のことを先に考える。それから御主人のことを考えるという、いわゆる醇風美俗がまだ依然として残っておるわけです。そこで任意適用になれば、奧さんの方の国民年金保険料をだんなさんから出してもらうわけです。そのときにだんなさんが無理解な人であって、こんなものはおれが生きているから大丈夫だと言われればそれで黙ってしまう。そう言われなくても、毎日の家計が忙しくて、教育費に金が要れば自分の将来のことは忘れてしまう。子供の学用品を買う方に金を回してしまうということになる。よほど理解のある御主人が指導的に、入らなければいかぬのだ、金を渡すからちゃんと払っておけと言わない限り入らないということになる。ところが労働者の配偶者の方々がお年寄りになった場合には、国民年金と称してその人にはないわけです。そうなると、その人の老齢の保障ができないということになる。これはどうしても強制適用にしなければいけないと思う。特に今の任意適用というものがありますが、だんなさんが理解があって任意適用に入っても不利なんです。この中には、保険料が払えない人は免除するという規定が一つあります。免除をしてもある程度効果が上るように少しなっている。それが任意適用のときにはしてもらえなくなる。それで非常に不利なんです。国民公平の原則から全くはずれておるわけです。この任意適用というものを、労働者の配偶者は国民年金に少くとも強制適用にするということは絶対に必要であって、これに反対する理由はない。少くともこれくらいは次の三十六年四月に発足するまでに法を改正して、誤まったスタートから始まらないように、そういう人たちが平等に恩恵を受けられるようにしていただきたいと思いますが、それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  149. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 お説の通り考えて参りたいと思います。
  150. 八木一男

    八木(一男)委員 労働者の年金のことについて申し上げます。先ほど松野さんがおられるときに一問だけそれを申し上げておきたかったのですけれども、松野さんには別の機会に申し上げます。  大体労働省が社会保険のことについて厚生省とともに組んで推進するということはあんまりやっておらない。それで労働省にはかねがね憤慨しているのですけれども、これは別な機会に労働省にハッパをかけますが、厚生省自体でも推進していただきたいのです。  厚生年金保険法が改正されるというような事態になっておるけれども、厚生省の、この間そのままになりました法案の内容を見ますと、現在の内容から二割くらい上るという程度です。それで国庫負担は一割五分のまま据え置きということになっております。ところが年金というものは労働者の方が必要なんです。全国民に必要ですけれども、完全なもの、今の貨幣価値で月三万円くらいずつもらえるというようなことであれば全国民同じでもいいです。しかし不完全な場合にはどっちが必要かというと、労働者の方がより必要なのです。というのは、労働者は賃金だけです。老齢になって勤めるのをやめると収入源が全然なくなるわけです。ところが農家の場合には、熟田を持っておれば、たとえば六十六になって働いてもある程度の収穫は上げられる。御商売でも、繁盛しておる店があればある程度の収入は得られるわけです。そういう意味で、年金が不完全な場合においては、労働者の方がより年金が必要だという事情がある。そういう意味で労働者年金の方が早く発達していたわけです。そこで全国民に年金をしなければならないという決意をされて国民年金をスタートされたのはいいのですけれども、国民年金の内容が月三千五百円というのでは貧弱なものです。そうなれば当然労働者の今までの貧弱なものをバランスを合わして上げていかなければならない。それがほったらかしになっておる。厚生年金を上げようとすれば、厚生年金の今までの過程として、ちょっとずつつけようというルートに従ったに過ぎない、二割にしかすぎない、これではお話にならない。今まで片方がゼロで片方が三千円ちょっとの平均だった。今度こっちが三千五百円になればこっちが四千五百円か五千円くらいにならないと、そういう特別な事情がある、年金が特に必要であるという状態がカバーできない。しかも国民年金には実質三分の一の国庫負担があるわけです。労働者の厚生年金は一割五分しかない。全国民公平の原則でいくと、やはり国庫負担の率を上げて労働者の厚生年金を高めるということが必要なわけです。そういう点について非常に不熱心なわけです。厚生省の方に不熱心と言って失礼ですけれども、とにかく国民年金という今まで大穴があいていたところを埋めることに夢中になって、片方の方に調整をする努力が少かった。これは今後ことしの課題で、厚生年金の国庫負担を一割五分よりももっと多くして高めるという努力が必要だろうと思う。そういう点についての御意見を伺いたいと思います。
  151. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 現在継続審議になっておりまする法案を一応片づけまして、それからこの問題に入っていきたいと思います。
  152. 八木一男

    八木(一男)委員 継続審議になっている法案は、厚生年金の点が不十分でいけませんが、それ以上にいけないことは、船員保険法等の一部改正案というようなインチキな名前で厚生年金保険法、失業保険法、日雇労働者健康保険法、一緒にごたごたにして出す。あれには厚生省は非常に御迷惑だったはずです。厚生省はほかのところのそんな迷惑をかぶる必要はないのです。労働省の方から頼まれて失業保険の国庫負担が三分の一か四分の一に切り下げられるような、そういうインチキな法案と一緒ごたごたにしたら、これはわれわれは黙っておりません。あんな法律はそのまま通る法律じゃないということを厚生大臣よく覚えておいていただきたいと思います。あんなものは分離して厚生年金保険というものでお出しになる必要があります。それから厚生年金保険の改正案としては、現在のを片づけてからではもうおそいのです。国民年金保険が三十六年四月に始まるわけです。それに並べなければならぬ。少くとも給付の限度は別として、一割五分しか労働者の方にはもらえない。それも一割五分でもいいのです。給付が国民年金金額の倍になって七千円になれば、一割五分でも結局実質は同じようなことになります。給付をぐんと上げれば実質上それだけでもいいです。しかし給付を半分上げたなら国庫負担の方も半分くらい上げなければバランスがとれない。そういう問題で片方不公平が今行われようとしておるときですから、それが一年半後にでき上る、それまでに、不公平にしておいて、ぼかんぼかんとたたかれて直すよりも、りっぱな厚生行政だった、ちゃんとバランスが合ってスタートが一緒だったというふうに直される必要があると思う。そういう意味で、この厚生年金保険法の改正案を今から直ちに御用意になって、インチキ法案とは切り離して、それをよくなさる必要があると思うのです。これらについての御答弁を願いたい。
  153. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 特に研究いたすように努力してみましょう。
  154. 八木一男

    八木(一男)委員 これは厚生年金について非常な御努力を願いたいと思うのです。それからインチキ法案の方はよほどお気をつけにならないと、厚生大臣は大けがしますよ。労働省の方のわがままのために大けがをする、そういうことにならないようにお願いします。  労働者年金と国民年金とを申し上げましたから、次に今度は通算という問題があるわけです。通算という問題は御承知の通り、たとえば厚生年金では二十年間働かないと年金にならない。その前は脱退手当金というものしかもらえない。脱退手当金というものは使用者分から入ってくる保険料の部分、国庫負担の分が自分の方にこなくて、自分のかけた保険料にちょっと利息をつけたくらいの貧弱なものしかくれない。それでおさらばだということになる。そうなれば不幸な人たちが一番不幸になる。職場を途中で変えなければならないときは、首を切られたとか病気をしてだめになったとか、どうしても事情で遠くに引っ越さなければならないとか、そういう不幸な事情によるわけです。不幸な人が自分の老齢保障がそこでぶった切られてしまう。そういうような非常に間違った制度にでき上っておる。今までの年金制度全部間違っています。これを変えなければいけないということは学者の全部認めるところであって、政府も認めておられるのです。そういうようなことを変えるために、まず第一に職場が変ったときには完全通算する。これは厚生年金考え方だけではなくて、公的機関の中と私的機関の中でも通算する。それから国民年金ですが、たとえば労働者から農家になった、農家から労働者になった、それから商売人になった、そういうような日本国民の中の完全な通算をやるというところまでいかないと、不幸な人がますます不幸になってしまうということになる。そういう通算は絶対にしなければならない問題とされておる。この年金の審議中にも、そういう問題を進めますということを明らかに坂田厚生大臣から言われておるわけです。それをおくれないように急速にりっぱな方法で進めていただきたいと思います。それについての御答弁を願います。
  155. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 この点につきましては事務当局からよく承わっております。通算制を将来できるだけ早い機会に法律化していかなければならぬと思います。事務的にはどういうようなことになるか知りませんけれども、通算をやらなければいけない、こういうことになっております。
  156. 八木一男

    八木(一男)委員 これは本委員会の附帯決議で、発足までにやらなければいかぬということになっておる。三十六年四月一日までに大急ぎでやらないと——早ければ早いほどいいわけですから、別にぎりぎりになされる必要はありません。次の通常国会にりっぱな通算制を出して、坂田さんは形式を作ったけれども、渡邊さんは通算のりっぱなものを作ったというようなものを、一つ次の通常国会に出していただきたいと思いまするが、それについての御意見を伺いたい。
  157. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 できるだけ早くこれは準備をいたしてみたいと思います。何分よろしくお願いいたします。
  158. 八木一男

    八木(一男)委員 それではまだまだ申し上げたいことはありますが、省略しまして、今度は無拠出の方の年金の問題を申し上げます。  今福祉年金という名前にかわりましたが、いわゆる提出されたときには援護年金という名前だった。福祉年金の方で非常にいろんなことがあるわけです。まず老齢福祉年金の方で申し上げますると、配遇者所得制限という、大体国民の方々が、あるということを全然知らない奇妙きてれつな制限がある。それについてどうお考えになるか。
  159. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 事務当局からお答えいたします。
  160. 八木一男

    八木(一男)委員 じゃ質問をし直します。説明を省略しましたので、大体個人の所得によって制限をするというのと、所帯の所得によって制限をするということが普通考えられておるわけです。そのほかに政府の作ったのは、配偶者が所得があったら、だんなさんに所得があればその奥さんはもらえないというのがある。三段がまえの制限なんです。これはこむずかしいから次にしましてこういう問題で、実際上年金がもらえない人が非常に多くて、農村あたりではもらえると思って楽しみにしておったら、これにひっかかってしまってもらえないということで、政府は猛烈な不信をこうむり、自民党は選挙で非常にマイナスになるだろうと思います。その点については、後日また詳しく申し上げますけれども、御検討になって、こういうインチキな所得制限ははずすように御努力を願いたいと思いますが、これについて御答弁を願います。
  161. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 できるだけ御趣旨の線に沿いまして検討してみたいと思います。
  162. 八木一男

    八木(一男)委員 次に母子福祉年金と傷害福祉年金という点です。これが非常に少いのです。実はお年寄りに年金を差し上げるということはいいことです。いいことですけれども、五十万円の所得のお年寄りにも差し上げる、五十万円あれば一応生活ができる方です。そういう方にも年金を差し上げるのは大事ですけれども、それに比較いたしまして、子供さんをたくさんかかえられて生活しておる母子家庭は千円しかもらえない。お母さんと子供さんと、三、四人で暮さなければならぬ。片一方のお年寄りは五十万円の所得があって、むすこさんがちゃんと孝行しています。一応親孝行しているといえるところなんです。片一方は千円で、お母さんと子供が三人ぐらい暮さなければならぬ。そのくらいバランスがはずれているわけです。おまけに十三万円以上所得がある人は一文ももらえないことになっておる。所得制限が非常にきびしいわけです。そういうことではほんとうの母子家庭は失望すると思いますので、それを早く直されなければいけないと思います。それについて今度とにかく十二月から始まって、もらえるのが二月ですから、それにできるだけ間に合うように、こういう母子年金の少い点をふやしていただきたい。制限の要件が過酷なのを緩和していただきたいと思いますが、それについての御意見を伺いたいと思います。
  163. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これも御趣旨の線に沿いまして検討中でございます。
  164. 八木一男

    八木(一男)委員 さらに母子年金で、特にここで附帯決議のついた問題がある。準母子家庭というのには一文もいかないことになっておる。収入がたとい五万円とか六万円とか三万円とかいうような、十三万円以下の場合でもいかない。準母子家庭というのは、おばあさんがいて小さなお孫さんがいる。若い夫婦が二人とも死んでしまったという場合である。お母さんと子供の家庭よりも気の毒である。そういう年収十三万円以下で、母子家庭の要件に合う家庭でも、これは千円どころか五百円も一文もやらない、そういうふうにでき上っておるわけです。それから両親が死んでしまって、十六、七のねえさんが、弟、妹をたくさんかかえて、母親がわりに一生懸命働いておる。そういう場合にも年金はやらない。非常に過酷な年金になっておる。年金の必要度が一番多い人にやらないようになっておる。少いようになっておる。これではてんでひっくり返っておるわけです。そういう点で準母子家庭に対して母子年金を上げるべしということは、委員会全体の空気だったわけです。公聴会でも、社会党推薦の公述人はもちろんですけれども、自民党推薦の公述人も口をそろえてそれは出すべきである。委員会でも満場一致で決議されておる。ですからこれは絶対にだれが何といっても上げるのだという御返事を即時いただきたいと思います。
  165. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 即時御返答申し上げたいところでありまするけれども、財政当局と特に懇談折衝いたしまして、そのような措置は当然早く構ぜられなければならない、かように存じております。
  166. 八木一男

    八木(一男)委員 次に傷害援護年金であります。こいつはまたもっとひどい。傷害年金は一級の者しか上げないことになっておる。一級というのは両手だめだ、両足だめだ、両眼だめだというような場合であって、片足だめでもう片足がちょっとだめだというような場合には、一文もくれないことになっている。これは五十万円の家庭のお年寄りよりもずっと大へんです。自分が奧さんをもらわないで、子供さんを作らないでいたって、自分一人暮らすのだって大へんです。それが一級には千五百円で、これでももちろん足りないのですけれども、二級以下には一文もつかない。そういうことでは、そういう方々に基本的人権である結婚とか子供を作るとかいうことをやめさせるということになる。そういう二級や三級は一級と比較して少いということはあり得ますけれど、大体一級が少いのですから、一級をふやしてそういう人たちにもっとたくさん上げなければいけませんけれども、二級とか三級までにその範囲を広めるということが絶対必要なわけです。それについての厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  167. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 この問題についても、先般事務当局にも事務引き継ぎ等において伺ったのでありますけれども、結論といいますか、見通しはまだ立っていないという状況でございます。
  168. 八木一男

    八木(一男)委員 事務当局はそうでしょう。だけれども事務当局はある程度、努力は足りないと言えるけれども、事務当局としては一生懸命努力しているわけです。その事務当局の努力がいかないのは大蔵省の無理解なんです。それを突破するのは厚生大臣のお役員だろうと思うのです。事務当局も不完全な案を出してたたかれたくはない。もっと完全にしたい。ところが大蔵大臣は聞かない。大自由民主党の中の政調会の大蔵省一色のガリガリ亡者のわけのわからない幹部がいるということが壁になっておる。それを渡邊さんに突き破っていただかなければ、幾ら精鋭な事務当局がやっても突き破れない。それが政党人である国務大臣の責任であるわけです。その点で渡邊さんに突き破っていただけるかどうかということです。
  169. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 ますます御鞭撻されて大いに責任を感じておりますが、一つできるだけ考慮させていただきます。
  170. 八木一男

    八木(一男)委員 さらに一級や二級の障害でも内科障害は入らない。たとえば白血病で助かる方法はない、死ぬにきまっているという場合でも、障害年金が一文も入らない。結核が悪くて肺の四分の三とってしまって肺活量が九百くらいしかない、風をひけば死ぬのだ、肺炎でほかの抗生物質がきくまでに首を締められた格好で死んでしまう、そういうひどい人が入っていない。これについてはいささか事務当局も無理解です。ほかの点ではほめてもいいのですが……。これはそうなると限界がわからない、限界がわからないから入れられないという。限界がわかろうがわかるまいが、ともかくそういう一番気の毒でどうしても年金を上げなければならない人がいるのです。わかっただけでも入れればいいのです。わからないという、そういうのは株式会社の社長の言うことであって、社会保障をやる人が言うべきことではない。それが限界がわかって全部入っても、その人に千五百円上げたってまだ足りない。その限界の人が千五百円もらっても足りないのです。それを限界がわからないとか、判定がつかないとか、すっかり直ったら元にもどるかもしれないというようなことを御用学者のお医者さんが言う。ところが肺を四分の三とってしまったら、幾らほかのことをやっても機能は回復しない。そういうのがあるのに、内科障害は、今は障害の状態だけれども、あとは何かやったら直るかもしれない、そんなものに年金をやったら大へんだという、実にわけのわからない考え方がある。自分の金だけきちっと守って、人には一文もやるまいという高利貸しの考え方に立っている。そういう考え方に使嗾された御用医学者が、その人の理屈を立てるために一生懸命やるというのが中にはいるのです。そういう御用医学者が、回復するかもしれないからということを言うのです。そういうことは断じて排して、とにかく絶対に必要な白血病とか、肺を四分の三とったとか、こういうのはどんなことがあっても機能は回復しない、そういう人には年金をやらないというのです。何も仕事はできない、ちょっと動くと死んでしまう、そういう人です。両足のない人よりもっとひどいのです。そういう者に一文も障害年金を上げないという内容になっている。ここの委員会の論議では、保守党の方も絶対にいかぬ、満場一致でそれをやらなければいけないという決議をしたわけです。その点を渡邊さん、少くとも内科障害に、外科障害と同じだけのものをやるというふうにしていただかなければ困ると思うのです。その点についての渡邊さんの御意見を伺いたい。
  171. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 ますます御説ごもっともな点ばかりを御教示を賜わるようでありますが、よくとくと研究いたしまして、私の力がどの程度まで及ぶかどうか。私だけの問題だけじゃございませんので、先ほども申し上げましたような財政当局との折衝におきましても、あるいは国会の意思というものを尊重いたしまして、できるだけその方向に努力いたしたいと思っております。
  172. 八木一男

    八木(一男)委員 それでは最後に一番大事なことを——最後といっても二、三回往復になりますが、問題としては最後です。実は政府案の中で一番欠陥のある問題は、今までのもう一つ先があったのです。実はあのままの法律ですと、生活保護を受けておられる家庭に援護年金——今法律が変りまして、福祉年金が一文もいかないということになった。一番極端な場合ですと、八十三のおじいさんが、子供さんも孫もなくして、三つか四つのひ孫をおじいさんが腰を曲げて育てている。そのおじいさんは目が見えない、足がだめだ、そういう場合でも一文もいかないことになっているとんでもない。十倍くらい、百倍くらいあげてもいい要件を備えている人にも、実際上は一文もいかないという内容だ。そういうひどい内容なので追及をしましたら、これはさっそく厚生省もお気づきになったわけです。小山さんなんかも前からちょっと気がついておられた。坂田さんもびっくりぎょうてんされて、それはとんでもないと、即時坂田さんの方から積極的に言われたわけです。それで直します。ところが、そこで坂田さんの御誠意はわかったけれども、まだ大蔵省というやっかいなしろものがいるので心配して追及すると、そういうことは完全にやれるかどうかすぐ返事ができないというひ弱い状態だった。そこで結局坂田さんに誠意はあってもわけのわからないやつが通る世の中ではいけないということになって、一番最高責任者である内閣総理大臣の岸さんに来ていただきまして、その問題を追及いたしました。岸さんももっともだということになって、老齢福祉年金、母子福祉年金、障害福祉年金、そういうものは生活保護を受けておられる方でも、受けておられない人と同様に、同じ金額が入るというようにします。厚生省の生活保護の加算制度をそういうふうに完全にいたします。時期もずらしません、福祉年金の出発と同時にそれができるようにいたしますということを、はっきりと内閣総理大臣が、ここにおられる滝井さんの質問にも言われましたし、私の質問に対する答弁でも言われたわけです。各新聞紙にも報道されましたことが全部入っていますからあとでお目にかけますが、そういうことになっているわけです。それで非常な大事件だったのですけれども、それで一応解決がついた、これはもちろん御報告を受けて御承知になっておられると思いますが、これがもし厚生省の御準備がおくれて、一月もずれるようなことがあったら大へんなんです。ですから、即時準備を進めておられると思いますし、もう準備も完了しておらなければいけないと思うのですが、完了しているかどうか、一つ伺いたいと思います。
  173. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 加算制度について、非常に準備を進めておるようでございます。それでありますし、この点は総理大臣が言明された通り信じておよろしいのじゃないか、かように存じております。もちろん私も関係事務当局を大いに鞭撻いたしまして、この点につきまして、お説の通りできるだけ早い機会にこの制度を確立いたしたい、かように存じております。
  174. 八木一男

    八木(一男)委員 坂田さんのときに申し上げたのですが、そのときはそれをやられましたからあれでしたけれども、とにかくそれをほんとうは法律にうたっていただきたい。それを法律でなくとも、とにかく実際にあるからというようなことで、何か与党の方か政府の方で、国民年金法案の一言一句をいじらないようにというワクがはまっていたようです。それで泣くように言われるわけです。ところが一応通ったのですから、今度はワクははずれますから、即時厚生省のやり得る方法で、やられると同時に、一番早い機会にこれを法律化していただきませんと、坂田さんのような渡邊さんのような、熱心な厚生大臣でなくて、とにかく猛烈な高利貸みたいな厚生大臣が出てきますと、告示というようなことや何かだと、国民がぼんやりしておる間にまたそれを値切ったり何かしないとも限りませんから、ここではっきりと一つ法律を制定するように御努力を願いたいと思います。
  175. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 事務当局といたしましては、今のところ行政的な措置で一日も早く告示したい、法制化するのはその次の段階じゃなかろうかと思います。
  176. 八木一男

    八木(一男)委員 行政的措置というのは省令ですか。
  177. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 次官通達です。
  178. 八木一男

    八木(一男)委員 行政上の問題は勉強不足で私はよくわからないのですけれども、行政上の措置で一番完全な方法は何ですか。
  179. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは閣議決定もあります。それから省令もございますし、次官通達もございますし、それらのようなものが行政措置であります。
  180. 八木一男

    八木(一男)委員 当分の間行政的措置ということであれば、法律を出そうというお考え厚生大臣ですから、行政措置としても一番強力な方法を即時おとりなって、法律化するということはできるだけ至急にやっていただかなければならないと思います。行政的措置でも次官通達はあまり強力な方じゃないと思うのです。一番強い方法をとっていただきたいと思いますが、それについて……。
  181. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 行政措置というものは、やはり強力なる運営の仕方だと思いますから、その点は御心配ないと思います。
  182. 八木一男

    八木(一男)委員 御心配ないということじゃなしに、できるだけ強力な——厚生大臣におなりになってからまだ日が浅いのですが、大体事務局は国民年金についてはなかなか熱心なんですけれども、やはり事務局の方でもイージー・ゴーイングなところがあると思う。強力な方だとめんどうくさいという点がある。だから私が言うから大丈夫ですよというようなことを言われても、それでは困ると思う。大臣の方のお考えで、一番強力な行政措置をとれ、法律化を急げということを先に言っていただきたいと思いますが、それについて……。
  183. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 大いに検討いたしまして努力いたすことにいたします。
  184. 八木一男

    八木(一男)委員 それでは滝井さんの御質問もありますし、まだまだこの十倍くらい私は申し上げたいのですが、厚生大臣の今の御答弁は、大体において満足な御答弁をしていただきました。だから厚生大臣にその通りほんとうに実行していただきたいと思います。この問題については、大蔵省等のいろいろな抵抗があっても、それは無理解による抵抗だろうと思う。与党の方にも熱心な方がおります。野党も熱心になっている。世論も全部支持しておるというようなところですから、そういう無理解な点は厚生大臣が解明し、それでもきかないときは厚生大臣の職をなげうっても内閣がひっくりかえるような騒ぎが起っても、それを通すというような覚悟でやっていただきたいと思いますが、それについての御決心を明確にお聞かせ願いたいと思います。
  185. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 なかなか微力な者でございまして、今日大役を拝命いたしまして、できるだけ国会の意思を尊重いたしまして、立法府の命令というものに対しまして、いかにして行政府に対しましてこれを反映せしめるか。これは私といたしまして、できるだけ慎重に、かつまた皆様方の御意思を尊重いたしまして、努力をいたすつもりでございます。
  186. 八木一男

    八木(一男)委員 最後に、できるだけ慎重にとおっしゃいましたけれども、慎重にということはおそくなるということにもなるわけです。研究は一生懸命に研究されたらいいのですけれども、慎重に研究されることを急速にやられて、そして実現は急速にやられる、強力にやられるという御答弁を願いたいと思います。私の申し上げたと同じお気持であろうと思いますが、それについて同じだと答えていただきたいと思います。
  187. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 私も来た早々でございまして、あなた方に何でもかんでもオーケ—、オーケーというようなことで、最初は非常に人気はよかったが、あとであのやろう、こんなことを言ったと言われるようなことがあってもいけませんので、それで皆様方の御期待にそわないようなことになっちゃいかぬから慎重というわけでございまして、そういう意味の慎重でございます。できるだけ諸般の情勢というものを勘案いたしまして、私なりに努力いたします。     —————————————
  188. 永山忠則

    永山委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑を行います。滝井義高君。
  189. 滝井義高

    ○滝井委員 再々質問の途中で中断されたので工合が悪いのですが、同じように労働問題です。  三十二年の五月二十日に法律百二十六号で労働福祉事業団法というものができたわけです。これによりまして、労働者災害補償保険の保険施設と、失業保険の福祉施設というようなものが一括をされて、この事業団の運営に入ったわけです。この事業団の第一の目的は、労働者の福祉の増進にあることはもちろんですが、その福祉の増進をするに当っては、それらの施設や設備を能率的に運営をする、こういうことになっておるわけです。一体全国何十億かのこの財産の運営がうまくいっておるかどうかという点でございますが、この点一つ簡明率直にお答え願いたいと思います。
  190. 猿渡信一

    ○猿渡説明員 事業団の業務の監督を担当いたしておる者でございます。ただいまの御質問にお答えいたします。  事業団が発足いたしまして、御指摘のような目的を持ってこれが設立され出たわけでありますが、事業団といたしましては、諸規程を整備いたしまして従来以上にその効果をあげたいということで努力をいたしておるわけでございます。業務の運営といたしましては、御承知のように理事長以下、理事、監事というような役員を持っておるわけでございます。理事会において大綱を決定して、各施設長あてに直接いろいろ指示をいたしておるわけでございます。さらにまた業務の運営につきましては、国会の附帯決議にもございました労使双方から参与を委嘱いたしまして、これが運営に参画していただいておるわけでございます。そうした労使の意向も十分織り込んで、この業務の運営に反映さしておるわけであります。現在といたしましては、理事機関といたしましてはできるだけの努力をいたしておる、法律の命じております能率的な運営をはかるということに努力いたしておるわけでございます。
  191. 滝井義高

    ○滝井委員 三十二年に労働福祉事業団ができますときに、私はある程度内面的にも立ち入っていろいろの問題を聞いたことがあるのですが、当時労働省の所管にあるその労災病院におきましては、就業規則も実はできていなかったのです。現在、職員の労働条件あるいは病院の設備などが、労災の患者治療に適切なものになって運営をせられておるかどうか、労働条件の面から、病院の施設設備の面から、そういう状態ができておるかどうか御説明願いたいと思います。
  192. 猿渡信一

    ○猿渡説明員 従業員についての就業規則の問題につきましては、団が発足いたしまして、直ちに労働基準法に基く就業規則を制定いたしまして、その中に従業員のいろいろな福利、待遇等についていろいろ定めをなしておるわけでございまして、現在完全な就業規則のもとに業務運営が行われておるわけでございます。それから施設設備の点につきましては、これは御承知のように、労災特別会計から出資金を受けまして、病院を建設して参るわけでございますので、その労働者災害補償保険の関係者のためにできるだけの運用をいたしておるわけでございますが、医療法等に基きます基準看護、基準給食、基準寝具等については、これを完全実施いたしたいということでせっかく努力いたしておるわけでございまして、現在基準看護基準給食につきましては、二十二病院全部がこれを実施しておるわけでございます。今後さらに基準寝具についても、全部これを完全実施したいということで努力中でございます。さらに新しい病院管理というような建前らいたしまして、ハウス・キーパーとかあるいはケース・ワーカー等を設けまして、患者の処遇に遺漏のないようにいたしておるわけでございまして、従来事業団発足前の状態よりできるだけ少しでも向上して参りたいということで、いろいろな努力をいたしておるわけでございます。設備等につきましても、予算の都合というようなこともございますが、できるだけ近代的な建築と機械器具を整備して、労働者の保護に遺憾のないようにいたしたいという努力を続けておるわけでございます。
  193. 滝井義高

    ○滝井委員 四月から名実ともに福祉事業団のかつての労災病院は独立採算制をとることになっております。もちろん前も大体独立採算制の形態はとっておりましたが、今度ははっきりした独立採算制をとることになったと思いますが、その病院が赤字になったというときには、どういう工合な方法で赤字を補てんしますか。
  194. 村上茂利

    ○村上説明員 労災病院の運営につきましては、労災保険特別会計におきましても深甚な関心を払っておるところでありますが、ただいま御指摘の、収支の面におきまして赤字が出た場合どうするかという点につきましては、労災保険特別会計におきましては、未完成病院を対象といたしまして赤字が出ることが予想されますので、その分につきましては、交付金を交付いたしまして、それによって処理しよう、こういう考えでございます。
  195. 滝井義高

    ○滝井委員 完成病院に赤字が出ることもあり得るわけなんです。その場合の処置はどういうふうになさいますか。
  196. 村上茂利

    ○村上説明員 具体的な収支の状況を見て参りますと、完成病院につきましては、赤字の出る病院もございますけれども、一方においては黒字の出る病院もあるわけでございます。従いまして、完成病院全体といたしましては、おおむね収支が相償っておるというような状態にございます。そういった現実の姿を見まして、労災保険特別会計といたしましては、さしあたり未完成病院についてのみ交付金問題を考慮する、あとは完成病院の経理を一方においてすることによってまかない得る、こういうふうに考えておる次第であります。
  197. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、病院というものが、それは真の意味の独立採算制ではないわけですね。いわゆる病院で収入が多ければ、多かったものは本部にプールするし、収入が少ければプールしたものからもらえる、こういうことになるわけであって、従って、そのために不当にそこの病院の職員が圧迫を受けたり、待遇を下げられるというようなことはないわけなんですね。
  198. 村上茂利

    ○村上説明員 滝井先生御承知のように、病院個々の事情にいって見ますと、立地条件が悪かったり、あるいは御承知のような特殊な病院がございます。たとえばけい肺病院でございますとか、そういう特殊な病院がございますので、個々の病院の独立採算ということを徹底いたしますには、かなり無理な事情がございますので、事業団といたしましては、一本に経理するという建前で、そういったやむを得ない赤字の病院についても適正にこれを見て参りたい、こういう考え運営をいたしておるような状況でございます。
  199. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、事業団全体の決算というものは赤字ですか、黒字ですか。
  200. 村上茂利

    ○村上説明員 事業団全体と申しますか、今私が答弁申し上げたいと存じますのは、労災保険の病院会計だけについて申し上げますと、三十三年度の収支見込み。これは完全に決算を完了いたしておりませんけれども、現在のところ黒字の見込みでございます。その金額が何千万円になるか、確定はまだいたしておりませんけれども、交付金の交付などという要素もございますけれども、五千万円程度は黒字になるのではなかろうかというふうに見込んでございます。
  201. 滝井義高

    ○滝井委員 失業保険の施設の運営費その他も加えた事業団本部の決算は、やはり黒ですか。
  202. 猿渡信一

    ○猿渡説明員 ただいま三十三年度の決算を集計中でございまして、まだ報告が出て参っておらないわけでございますが、御承知のように失業保険勘定の方は、これは政府の交付金に相当頼っておるわけでございまして、そうしたような関係もございまして、非常な黒字が出るというわけには参らぬかと思いますのですが、これはただいまちょっと手先に数字がございませんので、後ほど決算見込みの数字をお届けいたしたいと思います。
  203. 滝井義高

    ○滝井委員 何か私の聞くところでは、二百万か三百万の穴があいているというようなことも聞いておるわけです。そこで、それに関連しまして、長崎の労災病院に、七百八十万円ばかりの公金の行方不明という事件が起っておるわけです。それで私が特に経理問題に集中をしてお聞きをするのは、こういう場合の穴埋めは一体どういう方法で行うのかということなんです。と申しますのは、さいぜんもちょっと触れたように、一応病院というものは独立採算制をとる、しかし最終的には本部にそれぞれ黒字、赤字の病院の収入をプールしてやるにしても、とてもこれは問題があるわけなんです。新聞その他で見ますと七百八十万円くらいの公金が行方不明だ、しかもだんだん調べてみますと、三十四年度になってそれだけのものが消えたのじゃなくて、三十二年ごろから百六万とか九万七千とか七十五万とかいうように、年度によっていろいろ違うようでありますが、ずっと手元現金が行方不明になり、これが累積して今年になって七百八十万程度になった、こういう形が出てきておるわけです。われわれも普通の病院を見ても、なかなか未収金というものは相当あります。入るだろうと思っておっても、それが最終的には未収金になるということは病院の会計には非常にありがちなことなんです。しかもこういう経理担当者が直接その金を着服するというか、遊興費に使うというか、そういう場合が多いのですが、そういうことになった場合に病院のようなところはなかなかわかりにくいのです。こういう問題の処理の仕方について一体どういう工合にお考えになっているのか、これは今後こういう公的な医療機関をわれわれが見る場合に非常に大事な点だと思うのです。そういう点に対する監督者の立場にある基準局なりの考え方を簡単に御説明願いたいと思うのです。
  204. 村上茂利

    ○村上説明員 この点につきましては、問題はこのように考えたら適当ではなかろうかというふうに事務的には検討いたしておるところでございます。それは、こういう不正行為をいたしました個人に対しましては、その不正に消費いたしました金額に対しましては返還せしめるという関係一つ出てきておるわけでございます。この問題と、今御指摘の診療費の未収とは一応関係のないことでございますので、経理上は未収のものは未収として明らかにし、一方においては事業団に対しまして不当な損害を与えた不正行為者に対しましてその返還を求める、こういうことで臨まなければならないというふうに考えております。ただ事実問題として本人に支払い能力がない場合に、この問題は一種の焦げつき債権と申しますか、債権者側からこの金額を返還せしめるといたしましても、なかなか返還が困難なので、相当長期間を要するという関係にございます。しかし一応経理面におきましてはそういった関係はせつ然と判別いたしまして処理するのが適当ではなかろうか、こういうふうに考えております。  なお御質問の中に交付金を不正、不当に使用したというお話がございますが、実はいわゆる交付金につきましては、労働省といたしましては未完成病院全体に対しまして交付金を交付するという建前をとっておりまして、特別に長崎病院について幾ら、こういう取扱いはいたしておらないわけでございます。従いまして、事業団本部から個々の病院に配付いたします金額は、それぞれの交付金的なものもございますれば病院収入によるところのお金もあるわけでございまして、交付金そのものについて不正な使用をしたという関係はちょっと出てこないのでございます。いずれにしましても、相当な金額につきまして不正消費があったという点ははなはだ遺憾でございますが、こういうことのないように十分注意いたしまして、今後とも処理して参りたい、かように思う次第でございます。
  205. 滝井義高

    ○滝井委員 これらの病院の事業団本部からの監督状態、これは一年に一回や二回は生活保護だって健康保険だって、みなそれぞれ監査みたいなものがあるわけです。従ってこれは本部としても、三十二年七月一日から実際に動き始めたわけですが、それ以来三十二年、三十三年、三十四年と足かけ三年ですから、当然もう一、二回はおやりになっておるはずです。ところがわからなかった、こういうことです。この手元現金から、どういう工合いにやられてそういう不正な金が出ていっておるかというと、これは健康保険の掛金や所得税なんですね。そうしますと、健康保険のこれは——ほんとうはきょうは私医務局と保険局を呼びたいところですが、これは健康保険の掛金というものが入っていないわけです。長崎労災病院のある社会保険の出張所には入っていないわけです。そこらからもお互いに官庁関係ですから、連絡がなければならぬわけです。ところがそれもそのままにしておる。所得税は国ですから労災病院が所得税を滞納するわけがない。ところがそれがから繰りされておる。こういうお互いの官庁同士の一番大事な財源がそういうふうにから繰りされておってもわからなかったということは、これが民間の会社と官庁の間ならば問題はあると思いますけれども、こういう公けの官庁同士あるいは官庁類似のものとの間のやりとりというものが、三十二年以来毎年百万円以上の金がどこかにいっておるというのがわからない、こういう機構が私は一つの問題じゃないかと思います。こういう点は、おそらくあなた方も何か魔がさした問題じゃなかったかと思うのです。しかし監査というものは本省もやるだろうし、本部もやっておると思いますが、その点はどうなっておるのですか。
  206. 猿渡信一

    ○猿渡説明員 事業団といたしましては数回にわたりまして指導的な意味の調査あるいは監査も行なっておったわけでございますが、これは言いわけみたいになりまして非常に恐縮でございますが、手口が非常に巧妙でございまして、事務局長あるいは上司の会計課長等の私印を偽造して決裁書類を作る、あるいは支払い銀行の引き出しの書類を会計課長の留守中に何枚も作っておいて、それで引き出すというような、とうてい想像できないような方法をやっておりましたために、監督機関といたしましてもこの期間わからなかったという点がございました。しかしそういうことがあるといたしましても、やはり監督上の責任は免れないわけでございまして、これを機会に本部といたしましては各病院に対して手口の詳細を通知いたしまして、今後一そう会計あるいは庶務課というようなそれぞれの機構が牽制組織をとりまして、一人にこういう金銭出納の仕事をまかせないように、どこかで牽制されるというようなことを励行するように、厳重に注意いたしておるわけでありますが、今後再びこうした事故が起らないように、できるだけ一生懸命やりたいというふうに考えておるわけであります。
  207. 滝井義高

    ○滝井委員 事業団全体として、特殊の金を公金その他でもらう以外は、やはり病院の施設の収入によって独立採算的にまかなっていくんですから、そのかせいだ血と汗の結晶である収入というものに対する管理、監督というか、それは非常に厳重でなくちゃならぬと思うのです。実は最近における病院の状態、これは労災病院だけに限りませんが、たとえば精神病院あたりを見ても、その病院本来の経営というものが、利潤追求の経営に変りつつあるということです。そしてそこの病院で幅をきかせる者は、いわゆる医師という技術者、病院長という管理者ではなくして、事務屋が幅をきかせるという傾向が非常に出てきた。たとえばおたくの方の病院でいえば事務局長ですか、あるいは普通の法人的な病院でいえば理事長というんですか、もうこういう傾向が一番典型的に現われておるのは精神病院です。最近は精神病院が金もうけの対象になるというような悪い傾向さへ出ようとしておるのですが、そういう点、やはりこういう事件が、発足後わずかに二年そこそこしかたたないのに起るということについては、私は事業団の事務機構について、もう一回気持を新たにして検討してみる必要があろうと思うのであります。それは、長い間労働基準監督局とかあるいは職業安定所長とかいうような、労働行政に携わって、そうして日々忙しい仕事をしておった人たちが、今度は病院という比較的環境のいい、閑職といっては語弊がありますけれども、あまり仕事をしなくてもいいような事務局長というようなポストにつきますと、どうも昔の張りが抜けて、監督その他もルーズになるという傾向が出るのです。それは、あなた方が全国の労災病院においでになってみるとわかる。医員の諸君というものはたくさんの患者をかかえて、朝から晩まで飛び回っておるけれども、事務機構というものはごう然としてその上にあぐらをかいておる、といえば語弊があるが、まあ極端な言い方をすればそういう傾向がある。こういう点に反省がなされなければ、たえず、何年か置きにこういう問題が起ることは明らかです。そういう点はぜひ一つ反省をしていただきたいし、十分検討していただきたいと思うのです。この前、労災病院の診療報酬の問題等も検討してもらうことをお願いしておきましたが、これはそう急ぎませんから、八月か九月になってからまた質問さしていただきたいと思いますが、とりあえずこういう問題が起っておる。われわれとして党としても、非常におそくなってお気の毒ではありましたが、今後こういうあやまちが、再びより大きな規模で繰り返されないように、特に質問をさしていただいたわけです。どうか一つ事務機構の再検討を、二年の実績を見てやっていただきたい、こういうことをお願いいたしたいと思いますが、どうでしょうか。
  208. 猿渡信一

    ○猿渡説明員 この問題を契機といたしまして、事業団本部といたしましても十分戒心、反省いたしておるわけでありまして、さらにただいまお話の点を事業団当局とも十分相談いたしましてできるだけそうした方向で検討さしていただきたいと存じます。労働省といたしましても、再びこうしたあやまちを起さないように、万全の措置を講じたいと存じております。
  209. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後六時十六分散会