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1959-10-07 第32回国会 衆議院 建設委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十月七日(水曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 羽田武嗣郎君    理事 井原 岸高君 理事 木村 守江君    理事 二階堂 進君 理事 堀川 恭平君    理事 南  好雄君 理事 中島  巖君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    川崎末五郎君       島村 一郎君    砂原  格君       徳安 實藏君    橋本 正之君       服部 安司君    廣瀬 正雄君       松澤 雄藏君    石川 次夫君       兒玉 末男君    東海林 稔君       塚本 三郎君    西村 力弥君       武藤 武雄君  出席国務大臣         建 設 大 臣 村上  勇君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         農 林 技 官         (農地局建設部         開墾建設課長) 小松 義郎君         建設政務次官  大沢 雄一君         建設事務官         (大臣官房長) 鬼丸 勝之君         建設事務官         (計画局長)  關盛 吉雄君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君         住宅金融公庫総         裁       鈴木 敬一君         建設事務官         (道路局次長) 前田 光嘉君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 九月十一日  委員兒玉末男辞任につき、その補欠として栗  林三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として兒  玉末男君が議長指名委員に選任された。 十月七日  委員山中日露史辞任につき、その補欠として  西村力弥君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として山  中日露史君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  災害対策に関する件  派遣委員より報告聴取      ————◇—————
  2. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 これより会議を開きます。  災害対策に関する件につき調査を進めます。この際、河川局長等より発言を求められておりますので、これを許します。山本河川局長
  3. 山本三郎

    山本説明員 お手元に差し上げてあります刷りものによりまして、台風十五号による被害の現在までにわかっておる状況を御報告申し上げます。  これは、先ほどからもいろいろお話がございましたように、まだ被害の実情のわからぬようなところもございますので、さらに増大するものというふうに考えておりますが、現在の状況を御説明申し上げます。順次この刷りものに従いまして御説明申し上げます。  第一は気象の概況でございますが、これはすでに御承知のことでございますが、今回の台風室戸台風枕崎台風に匹敵するものであるといわれておりますが、範囲の広いことにおきましては室戸台風枕崎台風にもずっとまさっておるというふうに気象庁では申しておるわけでございます。従いまして、被害が非常に広範にわたったのでございます。  以下公共土木施設被害概況を御説明申し上げます。第一番目は直轄部分でございますが、第三の公共土木施設被害概況の中に、(1)といたしまして直轄という部分がございますが、まず各河川出水状況が書いてございまして、東北地方におきましては、これらの四河川におきまして警戒水位を突破する水が出ております。それから関東におきましては、ここに書いてあります六河川におきまして警戒水位を突破いたしたのでございますが、特に富士川におきまして、七号台風災害を受けたところがございましたために、その応急復旧個所が一ヵ所やはりやられておるわけでございます。それから北陸におきましても、ほとんど全部の直轄河川警戒水位を突破しておる状況でございますが、この部分におきましては、信濃川の上流におきまして、一ヵ所まだ改修のできておらないところが破堤しておるというような状況でございます。最もひどい惨害を受けましたのは中部地方でございまして、揖斐川長良川牧田川等を含みまする木曽川水系におきまして、ここに書いてありますような出水を見たわけであります。木曽川本流におきましては、計画高水位よりも少かったわけでありますが、揖斐川におきましては、ここに書いてございますように、岡島という上流の地帯におきましてほとんど計画水位に近い水位、今尾という地点におきましても計画水位にほとんど近いという水位を現出しております。それから牧田川の島江というところにおきましては、計画高水位を五十センチ近く突破いたしております。これは七号台風よりも約五十センチ高い水位になっております。そのためと、海岸高潮並びに波浪に伴いまして、木曽川揖斐川長良川の河口におきまして大惨害を見たわけでございまして、被害状況のところに書いてございますように、堤防の破れてなくなった延長が八・四キロ、それから堤防のいたんだのが二十キロというふうな状況に相なっておりまして、このため三重県の桑名市、長島町、木曽岬村全市町村が浸水いたしたわけでございます。これらはいずれも主として高潮波浪によるものでございます。また次は、牧田川の根古地の堤防におきましても、緊急応急復旧いたしました堤防の取りつけのもとの堤防部分からこわれ始めまして、応急復旧した堤防もついに再び惨害を受けたというような状況でございます。それから矢作川、大井川、天龍川、安倍川等におきましても、警戒水位を突破する出水を見ております。  次は、近畿地区でございますが、近畿地区におきましても、直轄河川におきまして非常な出水を見ておるわけでございまして、この表でごらんいただきますように、淀川におきましては、計画高水位を三十数センチ越しております。それから紀ノ川におきましても計画水位を越しておる。それから由良川、円山川、九頭竜川等におきましても、いずれも計画水位を突破いたし、あるいはそれに近い出水を見ておるわけでございます。  それから中国におきましては、鳥取県の天神川、天代川筋におきまして相当出水を見ておりまして、堤防護岸等相当被害を生じておる次第でございます。  次は、補助災害と申しまして、各府県及び市町村の施行する災害状況でございますが、ここに書いてありますように、四十府県災害が発生しておるわけでございまして、四国におきましては高知県、愛媛県、香川県、徳島県の四県全部いずれも被害を受けておりますが、これらにつきましては、あとで示しますように、いずれも被害額といたしましては、そう大きなものではございません。  それから中国に参りまして、岡山県、島根県、鳥取県に被害が発生しているわけでございまして、先ほど知事さんからお話がございましたように、鳥取県におきましては、昭和九年以来の被害が発生しておるわけでございます。それから広島県におきましても、豊田郡に被害が発生しております。  それから近畿地区に参りまして、和歌山奈良兵庫、大阪、京都滋賀、福井、いずれの県も被害が発生しておりまして、特にひどいと申しますのは、和歌山県、それから奈良県、兵庫県、京都滋賀の各県にわたっておりまして、これらの地区におきましてはいずれも大小河川がはんらんいたしますし、さらに重要な幹線道路も痛められておりまして、奈良県のごときは、いまだに奥地の災害状況がわからないというふうな状況でございます。  次に、東海地方でございますが、三重県、愛知県、岐阜県は、今回の災害中心地でございまして、いずれも河川出水はもちろん、愛知県、三重県におきましては、海岸堤防がこの前の十三号台風でやられた以外の部分におきまして、非常なる破堤を見たわけでございまして、いまだに水が引かないというような非常なる被害を受けておるわけでございます。  それから北陸地方におきましても、石川富山等被害が発生しておりますし、また七号台風でやられました長野山梨等におきましても、長野等におきましては、前回の地域と違った地域被害が発生しております。また山梨県におきましては、やはりこの前被害を受けました釜無川水系におきまして、相当被害が生じておるという状況でございます。  その他新潟県、神奈川県、東京都、千葉、埼玉、群馬、以下栃木、茨城、福島、山形、秋田、宮城、岩手、青森というふうに、九州地区を除くほとんど全国被害が発生しておるような状況でございます。  次に、特に被害激甚個所でございました愛知三重被害激甚個所の図面がございますが、これは、主として海岸地区浸水状況と、それから海岸被害激甚個所をバツじるしで書いてあります。それから高潮に伴いまして、内陸に入っております河川も同時にやられておるわけでございますが、河川の特に被害の激甚であった地域のしるしでございます。これでごらんいただきますように、名古屋市、それから海部郡の地方、それから三重県の城南、四日市、鈴鹿市等におきまして、非常な高潮被害を受けたわけでございます。  これらの被害状況によりまして、公共土木施設に非常な被害を受けたわけでございますが、直轄で扱うべきものの河川におきまして、北海道開発局分も含めまして四十三億八千三百万円余りに相なっております。次は直轄砂防施設におきまして三千四十万円の被害、それから直轄道路におきまして九千百六十万円、次は補助の、府県並びに市町村の施行すべき公共土木施設被害額が四百四十八億二千四百四十八万一千円ということに相なっておりまして、二十億以上に達する県が岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、鳥取県というふうでございまして、十億以上の県もそれに続きまして相当あるわけでございます。特に愛知県の八十七億、三重県の七十億等につきましては、今後調査の進むに従いまして、さらに増大していきはせぬかというふうに考えられます。また兵庫奈良県等におきましても、さらに調査の進むに従いまして増大しはせぬかというふうに報告されております。  以上直轄補助公共土木施設被害額を合計いたしますと、四百九十三億二千九百万円余りに相なりまして、本年になりましてからの公共土木施設被害額は、十五号台風と合せまして、それまでの被害が千九十億円に達しております。その内訳といたしましては、直轄が八十五億五千三百万円、補助の分が千四億五千万円余りに相なっております。  それから国道被害状況につきましては、いずれ道路局の方から御説明いただくことにいたしたいと思います。それから建物、都市施設災害につきましても、それぞれ関係当局から御説明いただくことにいたしまして、九番の応急措置につきまして、簡単に御説明を申し上げたいと思います。  まず第一に九月二十七日に建設省に大臣本部長といたします十五号台風災害復旧促進本部を設置いたしました。次は、九月二十八日になりまして災害状況把握及び復旧工法指導に当らせるために、被害の激甚でありました愛知三重岐阜滋賀京都奈良和歌山兵庫及び鳥取の各府県にそれぞれ係官を派遣いたしまして、工法指導等をいたされました。次は、大臣は九月三十九日より愛知三重及び岐阜の各県、それから政務次官は二十八日から滋賀京都奈良和歌山及び兵庫の各府県被害状況視察のために、関係官を帯同して現地に行かれました。次は九月二十九日に中部日本災害対策本部が開設せられまして、富樫技監ほか関係官を派遣いたしました。それから十月二日には事務次官が本部付として同本部に参られました。また大臣も、災害対策本部が設置いたされましてからそこに詰められまして、いろいろと御指揮をされたわけでございます。  それから応援の問題でございますが、東北関東北陸中国四国及び九州の各地方建設局から、中部地方建設局の行う災害復旧事業応援係官を派遣することといたしました。それから各県の応援の問題でございますが、愛知県及び滋賀県知事からの要請によりまして、災害復旧事業の設計の技術要員といたしまして、愛知県に十二名、滋賀県に十二名をそれぞれ災害の非常に少かった他府県から応援派遣するように手配をいたしました。  次は緊急復旧措置でございます。まず公共土木施設関係でございますが、被害の激甚な府県については、先ほど申し上げましたように、査定官を直ちに現地に派遣いたしまして、復旧実地指導を行わせるとともに、準備の完了次第、緊急査定を行います。その他の府県についても、早期査定を実施する予定でございます。  それから災害復旧のための国庫負担金早期支出をはかる準備をいたしておりますし、また当面の復旧資金として、要請に応じまして、つなぎ融資のあっせんを行うことにいたしました。すでにつなぎ融資相当程度出ておる事情でございます。  それから直轄河川災害でございます。主として木曽川下流部復旧のためでございますが、とりあえず完全破堤した木曽川揖斐長良の三川と、牧田川堤防復旧費といたしまして、予備費より五億円を支出して緊急工事を行うほか、次期出水に際して危険のおそれの大きい富士川ほか十河川被災個所については、既定経費から一億二百万余円を支出いたしまして、緊急工事を行うことにいたしております。  それから災害復旧のための機械の問題でございますが、伊勢湾海岸被害につきましては、木曽川及び海部海岸、これは愛知県でございますが、海部海岸堤防等締め切り工事早期に完了しなければならぬということで、全国ポンプ船を持っております業者の絶大なる協力を得まして、総数三十隻、合計いたしますと一万八千七百九十馬力でございますが、そのポンプ船手配を完了いたしまして、続々現地に到着いたしております。  それから海岸堤防復旧計画を樹立するために、基礎調査土木学会を通じて海岸工学権威者に依頼しておりまして、ただいま現地を見てもらっております。これは今回の台風によりまして、どういうふうな水位がどの地点に来たかということと、あるいは、はかることのできなかった地点潮位等を推定するために、こういうことを頼んだわけでございまして、計画等をいたすわけではございません。  それから次は道路関係でございますが、一級国道不通個所については、少くとも一車線の交通を可能にするために、復旧工事促進するとともに、迂回路による交通の確保をはかるように処置しております。  以上、河川局関係被害概況と、ただいままでとりました処置につきまして、御報告を申し上げた次第でございます。
  4. 前田光嘉

    前田説明員 一級国道被害状況を御説明申し上げます。資料の十六ページをごらん願います。十六ページには、一級国道のうち指定区間につきまして、被害状況が書いてございます。指定区間は、国において維持、管理、災害復旧の責任を持っておる区間でございます。  まず三島市—名古屋市間におきましても、岡崎市におきまして土砂崩壊がございました。これは交通可能であります。最もはなはだしいのは、名古屋市内及び四日市市に至る区間でございまして、そこには橋梁流失道路流失と書いてございますか、現在におきましては名古屋におきましては、名古屋熱田から日光川に至る間については相当冠水しております。しかし交通を一日も早く通すために、一部道路に土のうを築いて水を排して、干潮の際には通れるようにという努力をいたしております。しかしながら、この日光川から尾張大橋に至る区間につきましては、現在なお冠水中でございまして、干潮におきましても、水が道路の上八十センチくらい、満潮時になりますと一・五メートルくらいになるようでございますので、これは簡単には復旧できません。いずれ水の引く方法、あるいは現在の水の状況におきましても、この道路をいかにして通すかという点につきまして目下検討を加えております。それから尾張大橋から伊勢大橋の間、長島地区におきましては橋梁流出いたしましたが、現在自衛隊におきましてそこに仮橋を作っておられますので、その仮橋ができ次第、その間は交通が可能かと思っております。そのほか、二十一号線におきましても、岐阜—大垣市間におきまして、あるいは長良大橋の右岸、揖斐川橋の左岸におきまして路面崩壊がございました。しかしながら、これはいずれも交通が可能でございまして、現在復旧工事を急いでおりますけれども、一応自動車交通がとぎれております。そのほか、十七号線、十八号線、二号線、二十四号線にも若干の被害がございましたが、いずれも交通支障はございません。  その次の十七ページに指定区間外一級国道被害状況が書いてございます。東京都から甲府市に至る二十号国道におきましても被害かございました。特に甲府市と芳野市の間におきまして、先般の災害個所においてまた災害がございました。これは現在交通不能でございまして、目下迂回路によって交通をいたしております。そのほか、十九号線あるいは二十一号線その他におきまして、冠水あるいは橋架流出等被害がございまして、現在交通不能の個所は、その資料の下の方に書いてございます四十二号線の熊野市における個所と、鳥取県の気高町及び岩美町におきましては、橋梁流出のためにまだ交通支障があるようでございます。いずれも目下緊急復旧工事をいたしております。  以上国道被害状況を御説明申し上げました。
  5. 稗田治

    稗田説明員 十五号台風住宅災害について申し上げます。  資料の十八ページでございますが、これは十月六日現在の被害個所数でございます。最後の統計のところにございますように、全壊が三万二千二百六十三、流出が三千八百四十六、合せまして三万六千百九。そのほかに全焼が二十八といったような滅失戸数でございます。半壊におきましては九万五千三百六十二というような戸数に上っておるわけでございます。なお愛知地区におきましては、冠水いたしておる地区におきまして、まだ若干調査不能の地区がございます。従いまして、なお滅失戸数の数字は、これを若干上回ってくるのではないかという状態でございます。  これに対する対策でございますが、二十一ページにございますように、住宅金融公庫によります災害復興住宅融資でございますが、御承知のように建設につきましては、内地は一戸当り三十万円、北海道は一戸当り四十六万円まででございますが、なお補修につきましては、内地は一戸当り十五万円まででございます。そのほか整地費あるいは土地の取得費等につきましては、五万円、三万円という程度貸付を行う建前でございますが、愛知三重及び岐阜等被害の最も激しかった地域におきましては、十月一日から相談所を開設いたしまして、大体十月十日から貸付の申し込みを受け付ける準備をしておるわけでございます。開設いたしました融資相談所の数は、今回の災害で六百九個所すでに開設しておるわけでございます。その大部分は、今の愛知三重岐阜のところに集中しておるわけでございます。それからほかの地区におきましては、すでに十月一日から十五号台風につきましては受付を始めてございます。以上が住宅金融公庫によります災害復興住宅融資対策でございますが、なおこれの資金につきましては、従来の規定のワクでは多少足りませんので、これについては所要の措置を講じたいというように考えておるわけでございます。  なお災害公営住宅建設でございますが、これは滅失戸数の三割を限度といたしまして、当該市町村建設を行うという場合には国が補助をすることになっておるわけでございます。それで、目下これにつきましては、各被害地公共団体をいろいろ指導をして打ち合せ中でございます。これの促進も、十分努力いたしたいというふうに考えておるわけでございます。  以上、簡単でございますけれども、住宅被害並びに対策について申し上げました。
  6. 關盛吉雄

    關盛説明員 都市施設被害概況でございますが、お手元資料の十九ページに簡単にしたためております。今回の災害によりまして、都市施設被害を受けております関係地方といたしましては、愛知県外七県の地域にわたっておりますが、今日までそれの施設被害復旧に要する経費といたしましては、五億二千六百万円程度が見積られております。ただし、これはまだ調査不能の個所がきわめて多いのでございますので、全体の復旧総額といたしましては、さらに増大するものと思われます。  なおこの都市施設被害といたしまして対象に入っておりますのは、公共下水道あるいは都市下水路、その他都市公園等でありますが、なお市街地の中に堆積いたしました土砂排土に要する経費部分も入っております。なおこれにつきましては、さらに被害の激甚な地方に対しまして係官を派遣いたしまして、目下調査を進めております。
  7. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 続いて、去る四日より三日間にわたりまして、愛知岐阜両県の台風災害現地調査をして参りました派遣委員より、報告を聴取することにいたします。逢澤寛君。
  8. 逢澤寛

    逢澤委員 先般の十五号台風に対する本院の申し合せによりまして、私ども一行は、建設委員会からは羽田委員長中島委員、さらに私、農林関係からお二人等々が、去る九月二十六日の本邦を襲いました台風十五号につきまして調査をいたしました。その報告をこれから簡単に申し上げたいと存じます。  この台風は、全国各地に甚大な被害を引き起したのでありますが、特にその中心である東海地方のうち愛知岐阜の両県につきまして、四日から昨日まで三日間、建設農林連合視察調査いたしました結果につき御報告を申し上げます。  この台風は二十六日未明、中心示度が九百三十ミリバール、中心付近最大風速六十メートルという強大さをもって紀伊半島潮ノ岬と白浜の中間に上陸し、半島中央部を抜けて北陸に出たのでありまして、台風の右側に当る両県は甚大な被害を受け、特に伊勢湾は、このために異常な高潮となり、名古屋港で三メートル九十に達し、しかも風速は二十八年の台風をはるかに上回るものであったため、伊勢湾北部に大きな被害を与えたのであります。すなわち伊勢湾北部海岸堤並びに木曽、長良揖斐の三川を初め、名古屋市南部を流るる庄内川、日光川、筏川等河川堤は、いずれも全く原形を失う程度に破堤し、海水はとうとうとして市内に流入、視察当時ですら港区、南区、海部郡各町村は全部海中になり、東海道線も笠寺駅を過ぎるころから熱田に至る間の両側は一面の水で、遭難者鉄道線路両側に避難しているという悲惨な状況であります。  第一日は、南区、港区から一号国道をトラックで、干潮時を利用し、水をかき分けて、海部郡蟹江町の入口まで辛うじて参りましたが、国道上の水深は、今なお膝を没するほどであります。しかも干満の差により潮流をなし、満潮時はもちろん国道交通不能となるのであります。従って国道一号による三重県との交通は、全く途絶し、国鉄、近鉄等不通で、三重桑名市の一部は、全く孤立している状態であります。海部郡は、荘園制度以来豪族が海を開拓したもので、平均海面下百センチメートル程度地域であります。被害激甚でありますが、特に悲惨なのは、同郡鍋田干拓地で、本年初めて干拓が完成し、入植者が苦心の稲作をしたのでありますが、この入植者二百五十六名中百十九名が死亡し、家屋も全滅したという次第であります。  第二日は、知多半島の上野町、横須賀町、半田市の視察を行いました。これらの地方も、徳川時代からの干拓地がほとんど全部海中に没したのを目撃いたしました。愛知県下の被害は、死者二千六百三十五名、行方不明七百六十八名、負傷者六千九百六十八名、また家屋は、全壊流失二万一千六十三戸、半壊六万七千七百三十九戸、公共土木被害は、百六十億九千五百余万円と報告されておりますが、もちろんこれは正確なものでありません。ただいま応急工事に懸命でありまして、すみやかに河川海岸堤の破堤個所の仮締め切りを完成することに努力をしております。政府は、中部日本災害対策本部を設けまして、建設省も次官技監以下幹部を出張せしめて応援、ただいま各地よりサンド・ポンプを回送して、仮工事の完成を急いでおりますが、今後なお数十日を要するという次第であります。  岐阜県では、芥見の長良川決壊個所揖斐川牧田川との合流地点、根固地における状況視察いたしました。根固地は、七号台風直前の八月十三日の集中豪雨によりまして決壊した同一個所が、応急復旧工事の完成にもかかわらず、残念ながら今回の水位が前より三十センチメートルばかり高かったために、全体に水が堤防を溢流しまして、ついに応急復旧個所が再び決壊したのであります。ために養老町南郷町の輪中の耕地二千五百町歩が一面の大湖水と化し、今なお湛水しておる惨状であります。ここもただいま仮締め切りを行い、次いで排水ポンプで排水する方針で、応急工事に懸命の努力をいたされております。岐阜県下の被害は、死者七十八名、行方不明二十六名、負傷者一千百四十八名、住家被害は、全壊流出三千四百三十二戸、半壊七千五百七十七戸、公共土木被害は、十八億七千九百余万円に上ると報告されております。  今回の災害につきましては、新聞紙上でも種々論議されていますが、一口に申せば異常なる風速高潮であったということになりますが、やはりこれに対応する用意に欠くるところがあったのではないという点に反省検討を要する問題があると考えられます。すなわち伊勢湾は自然災害がないと安心して、工業地帯の建設干拓を進めていたこと、海岸堤は、二十八災以後に作ったものは十分その任を果した観がありますが、海岸堤と河口部の河川堤との接続部分に欠陥があり決壊していること、干拓地堤防はあまりにも脆弱であり、工法技術の上においても研究を要する点があること等のことが痛感されたのであります。  最後に、両県の要望事項中建設関係について申し上げますと、愛知県では、  一、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の特例に関する法律を制定し、特に事業についてはその十分の九を国庫において負担するものとすること。なお工事中にさらに災害の加重されることを防ぐため、昭和三十五年度までに竣工せしめること。  二、海岸堤防の応急締め切り費は全額国庫負担とせられたい。  三、小災害に対し国庫負担の対象限度を引き下げ、かつ全額起債を認められたいこと。  四、公営住宅災害復旧費について経費の四分の三を国庫補助とし、他は全額起債をもって充当するよう特別措置をはかられたい。  五、災害公営住宅の構造規格を第二種簡易耐火構造二階建とするよう配慮願いたい。  六、住宅金融公庫融資ワクを大幅に増加願いたい。 等でありました。また岐阜県では、  一、災害復旧工事については二十八災並みの高率国庫負担の立法化をお願いする。  二、査定を早急に実施されるとともに、事業費の早期配分を願いたい。  三、水防資材について昨年同様国庫補助の配分を願い、かつ被災水防倉庫について国庫補助をお願いする。  四、無線設備の拡充強化をお願いする。  五、緊急砂防について早期決定され、一日も早く着工できるようお願いする。  六、災害公営住宅建設を希望する市町村に対し、早期割当並びに要望通りのワクの確保をお願いする。  七、被災住宅復旧については住宅金融公庫融資早期借り入れについて配慮をお願いする。  八、既設公営住宅災害復旧について国庫補助をお願いする。  九、救農土木事業を起されたい。というのがその主要なものであります。  以上をもって簡単でありますが御報告を終ります。
  9. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 質疑の通告がありますから順次これを許します。  二階堂進委員
  10. 二階堂進

    ○二階堂委員 今次災害が空前の被害を、ほとんど九州の一部を除いて日本全国の各地に及ぼしておるのでありまして、おそらく地域の範囲の広いこと、あるいは災害救助法を適用した町村の数の多いこと、あるいはまた尊い人命を数千、あるいはそれに上回る以上の人命を犠牲にしたことなどから考えてみましても、昭和二十八年災害以上のものであると私どもは推察をいたしておるのであります。従いまして、これが復旧、復興の対策並びに今後における治水、あるいは災害復旧の根本対策については、建設大臣もその責任の衝にあられましていろいろと御苦心をされておることと思うのであります。本日建設大臣に対しまして、罹災者の人たちが真剣に政府やあるいは与党であるわれわれ、あるいは社会党に対して要望いたしておりまする問題も、これは述べれば限りがないのでありますが、重点的な問題の二、三につきまして、大臣の所見でなく、私は決意をお伺いいたしてみたいと思うのであります。質疑の通告者も非常に多いようでありますので、私は、こまかい議論はあとに譲るといたしまして、重点的に、かつ簡単に私の考えを申し述べて所見をお伺いいたしたいと思うのであります。  御承知のように、今回のようなこの日本の各地における大河川、あるいは小河川の水害、あるいはまた三十数メートルから四十四、五メートルという風速による被害、それに加えて中、東海地区等に見られるがごとき高潮被害、この三者が一体となって、それぞれの地域に尽大な被害を及ぼしたのであります。私は、これらの被害はいろいろと先ほど数字をもって説明され、いろいろな方法で陳情もいたされましたが、私はそういう数字を聞いて、なるほど非常に被害が大きいと一般の人も考えるでありましょうが、少くとも今回のような災害に対処するためには、そうした数字等を聞いて考えて対策を練るというようなことでは、とうてい間に合わないと私は考えるのであります。実際被害をこうむった被害地大臣もおいでになりまして、そうして被害者の方々から悲痛な訴えを聞いておられるのであります。現地を見て、そうして住むに家のない、あるいは家族を失って取り残された遺族、あるいは生活の根拠、農地その他一切の根拠を失った被害者、そういう人たちの身になって、政府におかれてもできるだけ早くこれらの復旧対策を真剣に考えられることが、私は当然であろうかと思うのであります。これらに対処せられまして、さっそく中京地区には災害対策本部を設けられ、あるいは大臣みずからも被害地に何回となくお出かけになって、そうして実情を見、また罹災者の意見を聞いていろいろと対策に専念せられておるわけであります。政府は、ようやく災害補正を提出するということをきめられたようであります。いろいろとこの対策についてはお考えがあろうかと思うのでありますが、要は、こうした広い範囲にわたり、しかも空前の被害を与え、しかもまた尊い人の命、数十あるいはそれ以上の人の命を失ったような災害であります。私は、石川県あるいは静岡、山梨長野そのほかの災害地も見て回りましたが、土地を失ったり、あるいは住む家を失った人、多数おりますが、これらのものは、時間と物と金を与えれば、いつの日にか私は復旧ができると思っております。昨年狩野川の台風のときも、私は現地に参りました。なおまたこの災害復旧対策特別立法等につきまして、私も努力をいたしましたが、一年たった今日、現地に行ってみますと、見違えるような復興をいたしております。これらのようなものは、先ほど申し上げましたように、金と資材と時間をかしさえすれば復興ができる。しかしながら、失われた数千あるいはそれ以上に上る人命というものは、永遠にこれは償いがつかないものであります。私はこうした人たちの心情、取り残された遺族の方々の思い、こういうものを真剣に考えて、従来とってこられたようなこの災害復旧対策なり、あるいは治山治水の対策というものを飛び越えて、非常な決意をもって国土の保全と申しますか、この災害によって二千数百億、三千億年間に失われております。この災害から日本の国民の生命を守り、財産を守り、国土を守るという決意をもって、今回こそは大臣がこれらの復興、復旧対策に当られるということが、私はまずもって大臣としての心がまえでなければならぬと思いますが、今回の災害にかんがみて、今後の国土を守る対策についての大臣の御決意を私は承わりたいと思うのであります。単なる考えじゃなしに、大臣の決意を私は承わりたいと思います。
  11. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。今回の伊勢湾台風が、全く天災とは申しながら、多くの人命を失いましたことは、二階堂委員御指摘の通り、まことに遺憾千万であります。われわれはこの災害復旧に抜本的な施策を施しまして、将来かようなことのないように、むしろ災い転じて福となるような施策をして復旧をいたしたいと思います。しかし施設復旧については、いかようにでも人知を尽してこれの完璧を期すことができますが、しかしながら失われた多くの犠牲者は再びかえらない、かようなことを考えますと、かような犠牲者を一人も出さないような処置をすることが、国土保全に当るわれわれとしての重大な責任であろうと思っておる次第であります。従いまして、これらの人たちを慰めるためにも、今後かようなことのないように、むしろ災いを転じて福となすような、かつて九州災害の、あの二十八年の大災害の完璧に近い復旧を私は想起いたしまして、今回もかような見事な復旧によりまして、これらの償いをいたしたい、かように思っておる次第であります。
  12. 二階堂進

    ○二階堂委員 いろいろと申し上げたいことはございますが、時間の関係もございますので、私は簡潔にお尋ねいたします。  この災害復旧対策は、第一に地元の罹災者、あるいは罹災者に対する復興復旧対策の任に当っておられる知事なりあるいは地元の町村長、これらの人たちに安心を与えるという措置を政府がおとりになることが第一だと思っております。そして第二には、急を要する問題が多いのであります。もとより今回の災害は、非常に広い地域にわたっております。しかもこの仕事をなす量というものが、莫大な量に上っておりますので、これを一カ月や二カ月、あるいは一年や二年で完全に復興をさせるということが困難なことは、私は承知をいたしております。しかしながら何と申しましても、東海地区のように、高潮のために町全体が水びたしになり、あるいは町全体が流失してしまったようなところには、何としてでも早く政府が復旧や復興の施策を施さなければならぬと思っております。なおまた住宅等を失って住むに家のない人がたくさんおる。こういう人たちには、早く住む家を提供するという、実際具体的な仕事をば政府が敏速にやらなければならぬと考えるのであります。私はそういう見地からいたしまして、政府はいろいろ閣議をお開きになって、いろいろな臨時的な措置なりを講じて発表されておられるわけでございますが、簡単に結論から申し上げますと、もとより災害に対する補正予算を提出するということは、きのういよいよきまって発表されたようでございますが、これはもう当然なことであります。おそきに失したうらみがあると申し上げても、私は過言ではございません。が、また、いろいろなこの復旧に必要な地元負担の問題であるとか、住宅対策であるとか、いろいろなことをこまぎれ的にお考えになって施策を講じておられるようなうらみがあるやに私は感ずるのでございます。この際、これは建設大臣一人の責任ではございませんが、内閣全体の責任で当られなければならぬ問題でございますが、第一次の補正予算をとりあえず組むということは、政府として決意をされたのではございますが、もう一つ、昭和二十八年度災害にいろいろとこまかな復旧に対する公共土木、農地、住宅復興、全般にわたり復旧の法律を制定いたしておることは、当時災害復旧の特別委員長に当られた現建設大臣としては、よく御承知のことだと思うのでございますが、こういうような当時とられた法律をそのまま適用するのだという政府の決意を、機関を通じて関係各県罹災民に対して早く表明されることが、地元の復旧関係に協力いたし、真剣に努力をいたしておりまする地元民に安心感を与えることではなかろうかと私は思うのであります。われわれの周囲におきましていろんな委員会を開いて、国としてはああもやれ、こうもやれ、こういう法律を作れ、こういう措置をとれ、こういうことを繰り返しておるよりも、まず責任を持って災害復旧に当っておられる政府が補正予算を組み、昭和二十八年度災害に適用したすべての法律を今回の災害にも適用する。もとより財政の力にも限度があることは承知いたしております。また地域もある程度責任を持って指定される必要があろうかと思いますが、政府が責任を持ってこういうような決意を表明されることが、地元民をして安心させることであり、また復興工事に献身的な、それこそ日夜を分たず血の出るような努力を続けておられる町村長、あるいは知事、その他関係の各罹災民の要望にこたえるゆえんではないかと考えるのでございます。そういうような決意を、閣議を通じて表明されることが第一ではなかろうかということを考えるのでございますが、閣僚の一人として、そういうようなお考えはないかどうか。この点について大臣のお考えを承わりたいと思います。
  13. 村上勇

    ○村上国務大臣 昭和二十八年の前古未曽有の大災害当時、特別立法を作って、これによってあの当時の大災害復旧した。従って今回の災害についても、これらの立法を適用する意思はないかという御質疑でありますが、これはすでに先般、名古屋における災害対策本部におきまして、岸総理みずから記者会見におきましても、特別立法を制定するということをはっきり言明いたしております。従いまして、私といたしましても、この抜本的な復旧をして、今後再びかかることのないように、恒久復旧の完璧を期すためにはどうしても何らかの特別立法をやる必要がある、かように思っております。しかしそれはどういう程度に、あの当時のどの特別立法を適用するかという点につきましては、政府部内におきましても、目下それぞれ研究いたしておる次第でございます。いずれにいたしましても、国会の審議を経なければ特別立法は適用できませんので、臨時国会までには相当具体化して参ると思っております。
  14. 二階堂進

    ○二階堂委員 大臣のお言葉は、私よくわかるのであります。岸総理も現地に行かれまして、特別立法をすることを御発言になっております。しかしながら、今大臣がお述べになりましたように、その問題は内容の点であります。どういうような特別立法をされるのか。これは現地を回ってみましても、たとえば町村長なりあるいは知事なりは真剣になってこの対策をやろう、復旧を急ごうというような決意を持っております。当然のことであります。しかしながら、やってみて一体国がどの程度補助してくれるのか、どの程度起債を認めてくれるのか、こういうようなことについて非常な懸念を持っておる。一生懸命に協力しようという気持を、それによって阻害されておるようなうらみがあるということを、現地を見て私は痛切に感じて参りました。もとよりこの特別立法は、国会の議決を経なければ適用されないことは、私もよく承知をいたしております。しかしながら、少くとも内閣が責任を持って、昭和二十八年に適用した法律をそのまま適用しても足らない点が住宅対策等についてはあると思っております。そのまま適用しても、私はまだ不十分であるとさえ考えておる。またそういうような決意をされて法律もできておるのでございますから、国会にその法律を全部かけられても、私は、社会党といえども、共産党といえども、反対する議員は一人もないと思っております。問題は、私は政府の決意いかんにかかっておると思うのです。国会の御審議を願って、そして起債の特例の法律を認めるなり、あるいは公共土木等の災害に対する措置をもう少し改良するなり、いろんなことをお考えになっていることはよくわかるのでありますが、繰り返して申し上げてくどいようでありますけれども、そういうような政府としての決意を表明されることが、地元罹災者に安心を与え、しかもまた復旧当局の責任に立っておられる町村長やあるいは県知事、その他いろんな方々に対して思い切って協力のできるような態勢を促進すると申しますか、勢いづける、元気づけるということにもなろうかと思っております。今後検討をして特別立法をやるのだというようなことでは、私はなまぬるいと思っております。災害復旧対策は、急を要することが多いのであります。これは、現地を親しく見られて、大臣みずからが痛切にお考えになっておることと思うのでありますが、私は、そういうような決意をこの際されることが必要ではなかろうかと考えて、くどいようでありますが、大臣にお尋ねをいたしておるのでございますので、どうか一つ党をあげてのそういう決意を——私はきのうも党の対策委員会に出まして、決意を述べておきました。私どもの党をあげて、そういうような要望は、四十何県に上る罹災地各住民の一致した希望であろうかと考えておりますが、そういうような要望にこたえるような施策をやることが、国民に対する政治の信頼感をますます増すゆえんでもあるし、また当然政府がやらなければならない措置ではなかろうかと、私はほんとうに考えるから、くどいようでございますが、こういうことを繰り返して今申し上げておるのであります。  次に私がお尋ねをいたしたい点は、第七号の災害対策について、大臣も、今回は今までにない決意を持って治水山の対策に当るのだ、治山治水の特別会計が昨年度から問題になっておりますが、この制度もぜひともやるのだという決意を披瀝されております。私は、今回のような災害を受けたからお考えになっておるということではなかろうと思っております。このことは、ぜひとも一つ貫いていかれたいと思うのでありますが、なおまた今回の災害にかんがみましても、小さな河川が非常にはんらんを来たして、そのためにいわゆる民家あるいは農地、その他耕地すべてのものが非常な被害をこうむっておることは、ここ数年来の災害の特徴ではなかろうかと思っております。従って昨年度から、長規模河川等の対策にスズメの涙ほどの予算をもって、全国の五十二、三本の小さな河川工事を始めているが、そういうことではとうてい間に合わないという現実に直面いたしておるのでありますが、こういうような河川水系の被害に対する決意というものは、今議論になっております。治山治水五ヵ年計画の予算は、三千数百億というようなことで議論になっておりますが、そういうような数字をもって議論をしておる時期ではないと考えております。思い切ってこの治水治山特別会計を設置されて、なおまた小規模の災害水系の防災対策につきましても、相当な思い切った措置をしていただかなければならないと考えております。これらにつきましては、どうせ衆議院におきましても参議院におきましても、災害特別委員会というようなものが設置されると私は考えるのでございますが、そういうような委員会におきましても、同じ議論が繰り返されてくると私は思うのであります。こういうような議論を繰り返して、昨年以来やっておりますと、常に問題になるのはこの財政の問題である、国家の財源に限度がある、あるいは特別会計を設けることは、財政法上成り立たないのだ、あるいは三千数百億が議論になっておる。私は、そういうような数字や法規でもって議論を繰り返しておったのでは、先ほど来申し上げておりますように、抜本的な対策はとうてい樹立困難であると考える。従って、このことについては、大臣一人の責任じゃありませんが、内閣全体の責任において、一つ悔いを再び繰り返さないように、しかもこういう災害以上の災害が日本のどこの地域に再び襲来しないと断言できないのでございますから、そういうことをお考えになって、決意を持って一つ当っていただきたい。これは私の強い希望を申し上げて、大臣のお答えは、時間の関係もございますので、省略さしていただきます。  なお私は、各地を回ってみて、一番大きな問題は、もとより東海地区の排水の工事を急ぐこと、あるいは護岸堤防を早く作るということは、これは言うを待ちません。私は当然お急ぎにならなければならぬことと思っております。それについては、非常な苦心を大臣もなされておることをじきじきに承わっておりますが、なかなかこれらの工事は、非常に大きな工事でございまして、時間もかかることでございましょうが、そのほかにもう一つ緊急を要する問題は、住宅対策の問題であろうかと思っております。これは、先ほど住宅局長の方から、全壊一万何千戸というような報告がございましたが、私はもう少しこまかく数字を検討いたしますならば、それ以上になるものがあろうかと思っております。全壊と役所が名づけておりますものは、まさしく全壊戸数をそのまま考えておると思っております。半壊にいたしましても、あるいは一部破損をした家屋でありましても、今回住宅災害を受けた人たちは、みんな資力の弱い貧乏人であります。従って持っている家が、ちょっと強い三、四十メートルの風が吹けばぶちこわれるような家であります。全壊が一万数千戸というような数字になっておりますが、たとい半壊にいたしましても、どうしても取りこわして家を建て直さなければ住むに危険な家がある。そういうものをも全壊と見なして、住宅復旧を考えるべきだと思っております。事務官僚、査定官現地に参って、この家は全壊だ、この家は半壊だ、あるいはこの家は何割被害だというような調査をいたしておりますが、それは単なる事務的な一つのものさしに沿った数字が結果に現われるよりほか方法はない。ところが今申し上げましたように、半壊や、たとい一部破壊にしても、あの零細な貧乏な農家の家を見て下さい、全壊と同様に考えていかなければならない家がたくさんある。そういう家も含めるならば、一万数千戸はおろか、二万、三万と全壊と見なさるべき住宅が数多く出てくると思っております。この住宅の復興対策については、地元の人が非常な苦心をいたしております。私もかつて鹿児島で、自分の村で三百数十戸が半壊、倒壊したことがございました。そのときに、私は住宅対策について気狂いのようになってこの復興対策を政府当局にも、あるいは自治庁にも、住宅金融公庫の総裁にもお出ましを願って、いろいろ議論したことがございます。そして災害住宅の金融公庫のワクを十億ばかりもらうようになりました。そうしてまた貸し出しの方法についても、個人が申し込みをすると、金融機関があなたは担保能力がない、保証人が足らないといって金を貸さない。そういうことでは、せっかく国が住宅金融公庫の中に十億円のワクを設けても、実際に現物や金が罹災者の手元に届かない。そういうことではいけないというので、非常に事務局は反対をいたしましたが、自治体の長、町村が債務保証をすれば金を貸し付けてやるような道を、行政的に開いていただきましたが、法律の改正まではいかなかった。ところが実際住宅対策は、そういう大まかな法律だけでは間に合わない。要は住宅の復興対策は、資材と金が罹災者の手元に届くということが第一に考えられなければなりません。そのような考え方で地元を回って見ましても、仮設住宅はとりあえず何戸かできておる。これにも問題がある。仮設住宅の取扱いについても、将来やはり災害救助法を改正するなりして、そうして特に災害関係については、住宅対策は一本にしぼって、建設省なら建設省が責任を持って当られるということが、これは将来に残された問題でありますが、大事でなかろうかと思っておる。そういうような問題については、将来御検討されると思っておりますが、この十億円のワクをもってしては、とうていこれは間に合わぬと私は思っております。現在手元のこのワクが二十何億か、昨年度からの金が残っておるということを聞いておりますが、正確な数字は私はわかりません。しかしながら、少くとも今申し上げましたようなこの一万数千尺、ないしそれ以上に上るようなこの住家の復旧のために、金融機関に金を申し込んだ場合に、おそらく百億以上の融資のワクがなければ間に合わないと私は思っております。もとよりこのワクを増大されることは当然であり、また考えておられると思うのでありますが、問題は、先ほどから申し上げておりますように、具体的に金と物とが罹災者に届くという措置を考えてやっていただきたい。そのためには、やはり金融機関に対しても、政府の責任において、もう少し協力をさせるように厳重な指示をしていただきたい。これは、法律によりますと、担保がどうとか、保証人がどうとか載っております。そういうことを乗り越えて、一つ行政的にそういう措置をとっていただきまして、そうしてどうしても貧乏のために担保がない、保証人ができないというような者は、これは法律の改正等もやむを得ません。改正して、国が最後のめんどうを見るというようなお考えを持たれることが必要かと私は考えておりますが、こういう点について、大臣のお考えを承わりたい。
  15. 村上勇

    ○村上国務大臣 ただいまの二階堂委員の御指摘になりました二つの点は、私と全く同じ意見だろうと思います。私も現地にかけつけて参りまして、まず何としてもあの水浸し状態になっておるところを一刻も早く、たとい一時間でも早く除かなければならない。これが一つの災害復旧の重点であると同時に、住居を与えなければいかぬ。どういう方法をしてでも、住居を一刻も早く与えるということ。この二つが重点であるということを考えまして、それらの対策に苦慮いたした次第であります。幸いにして食糧あるいは衣料等につきましては、事欠くことはない現状でありますので、ただこの二つの点を、建設省所管といたしましては十分考慮に入れまして、それに対するあらゆる対策を練って参ったのであります。ポンプ船も、一万八千九百という馬力のポンプ船を集めることもできました。この点については、おそきに失するじゃないかという御意見もありますけれども、私どもの経験から申しましても、またわれわれのいろいろな角度からの検討からこれを見ましても、これは全く最大限ではないかと思っております。住居の問題については、災害応急の住居は、御承知のように厚生省の所管でありますが、厚生省所管の問題につきましても、先般名古屋対策本部におきまして、三〇%のワクをもう一〇%上げるというので、これは四〇%にワクを引き上上げたのであります。なお建設省所管の公営住宅、あるいはまた金融公庫等の貸付のワクにつきましても目下検討いたしておりますが、ともかくもこの融資資金につきましては、ただいま御指摘のありましたように、私どもといたしましても、百億くらいのワクの増大をはからなければならないということは十分考慮に入れておる次第であります。なお公営住宅につきましては、ただいま十億程度ではということでございましたが、われわれもとうてい十億や十五億ではこの状態を救うことはできませんので、臨時国会の補正予算の要求には、十分これらを検討いたしまして、被害者の立場に立って万遺憾なきを期して参りたい、かように思っておる次第であります。
  16. 二階堂進

    ○二階堂委員 私は長野山梨方面を回ってみましたが、相当な住家の被害です。ところが資材がなかなか手元に行き届いておらない。政府は、いち早く東海地区には、通産省の方から資材の手当をしてもらったように伺っております。これは、非常にけっこうな措置であったと思っておりますが、罹災地を回ってみましても、トタン一枚が普通の値段より大体五十円ないし八十円も値上りしております。この値上りも、日に激しくなるような空気を私は察知してきたのであります。県庁にも寄りまして、知事さんの方から、政府に対し資材の応急な確保をお願いされたらどうか、すでにやっておるというお話でもありました。ところがなかなか近いところの東京方面から資材の入手が困難で、大阪方面にその手配をしておるというようなことであった。私は先ほどから申し上げておりますように、物と金と、たとえばくぎにしましてもトタンにしましても、そういうものは早く現地に届くということが第一であります。そうして金の裏づけができると、住居をなくした人は、自分の自力によってでも、あるいは親戚の加勢を待ってでも早く建てようとする意欲は、これは当然なことであります。すぐできるのであります。ところが物がない、金がない。従ってそういう人たちは、自分の手持ちの農地を国が買い上げてくれ、そうして金を貸してくれ、自作農資金山梨県が一億何千万か、あるいは長野県が一億数千万か、とりあえずきたとはみな聞いておる。ところが実際被害農民の手元にその金が行き届いていない。全部とは申しませんが、金がない。従って、自分が持っておる土地、あるいは残された土地を政府が買ってくれて、そうして金をもらいたい、こういうようなことが実情であります。私は、昨日の党の委員会において申し上げたのでありますが、政府がもっと何とか処置をして、そういう資材を県あたりに責任を持たして、そうしてトタンなりくぎなり、あるいはそういう木材なり、そういうものをもう少し手っとり早く現地に送る方法を講じてもらいたい、そういうことは私はできないはずはないと思っております。それがなかなかおくれてきておる。ですから、そういうことも一つとくとお考えになりまして、閣議において大臣が特にそういうことを主張されまして、すでに通産省あたり、あるいは林野庁あたりに、木材その他の資材については手配をいたしておるとは聞いておりますが、それが、繰り返して言うようでございますが、現地の罹災者の手元にどうして早く届くかということが大事でございますので、輸送機関の問題等、すべて一人々々の罹災者の手元に物や金が届くということをするにはどうすればいいかということを具体的にお考えになって、その措置を政府の責任においておやりになることが、私は第一でなかろうかと思います。そういう措置を一つぜひともとっていただきたいということを、私は特に大臣にお願いを申し上げておきます。  なおまた、私は毎年のことでございますが、この家屋対策については、私のところも常にこういうことで悩んでおりますが、私は一昨年以来、昨年も繰り返した議論でございますが、やはり自衛隊等に組み立ての住宅というもの、資材というもの、設備というものを常備させておいて、そうしてこういう家屋被害が甚大な場合には、早急に施設部隊等を通じて、その組み立ての住宅を適地に何百戸なり何千戸なり建てて、一応そこに罹災民を入れておいて、そうしてあと公庫の住宅なり仮設住宅なり、あるいは金融公庫を通じて融資を受けて、住宅を建てさせるなりの方法を講じて下さった方が、私は一番いいと思っております。ぜひともこれから先は、そういうような措置を一つお考えになって下さるように私はお願いを申し上げておきたいのでございますが、こういうことに対して、重ねて大臣のお考えを承わりたいと思います。
  17. 村上勇

    ○村上国務大臣 ただいま住宅の問題について関連して、金が早く被害者の手に入るようにという御意見、ごもっともでございます。住宅につきましては、全国に六百九カ所の相談所を設けまして、それぞれ滅失した被害者と相談して、これの対策を講じておるはずでありますが、もし遺憾な点があれば、なお調査の上よく機宜に適した処置をとりたいと思っております。  それから建築資材とか、あるいはまたその他の資材につきましては、これはあの台風の翌々日すでに通産大臣からの閣議における報告では、現地に向けて亜鉛鉄板五百トン、あるいはくぎ千五百たるとかいうようにすぐ発送した。同時に逐次これらの点については何ら不安がないはずでありますので、それぞれ関係各省において手配をするということでありまして、昨日対策本部の石原副本部長の発表によりますと、現地における物価、あるいは資材等も今日あの直後の一日、二日のような状態ではない、もとに復しておるということでありますし、また農林大臣からは、木材の確保については、営林署のその原木については、被害県に対しては、公共施設に対して大体五割引きで渡す、それから一般につきましては、いわゆる災害前の値段で提供するというような力強い発表もありましたので、私はこれを信じて、かような点について絶対に不安のないように今後もやっていただきたい、かように思っております。いろいろな点についてもしも遺憾な点がありますならば、十分検討調査した上で、適宜これに処して参りたい、かように思っております。
  18. 二階堂進

    ○二階堂委員 住宅相談所を六百何カ所か設けていろいろやっておられる、これは長野県あたりは非常に適切な措置をとって、いろいろよくめんどうを見ておやりであります。しかしながら、先ほどから申し上げますように、今回の倒壊家屋の犠牲者は、貧乏な人が多いのであります。百姓の方々が多い。町村がかりに債務保証をしましても、法律の建前は、保証人がどうとか担保がどうとかということになっておりますので、金融機関の窓口に行きますと、もう一人担保人を持ってこいとか、保証人を持ってこい、あるいは担保能力はどうとかというようなことで、なかなか金が借りられないと言っております。私は、町村の名前は忘れましたが、山梨県であったか、どこか五十件ばかり町村長が債務保証を持っていったところが、金融機関が受け付けずに、たった一件しか認めてくれなかったというところもある、そういうような実情であります。金融機関等についても、大蔵大臣等から銀行局を通じて、地元の金融機関がもう少しこういう場合には協力をするように、厳重な達しをしていただきたい。こういう場合ですから、貧乏人ですから、担保能力もなければ、だれが保証人に喜んでなるやつがおりますか。町村長が責任を持って保証するのですから、あるいは長野県あたりは県知事がみずから保証をするという形をとっておる。そういうような場合には、建前はそうなっておるというお考えかもわかりませんが、現地においては実際にそういうような実情であるということを私は申し上げておる。ですからそういうような、どうしてもいけぬものは、あとは国がめんどうを見ればいいわけでありますから、あるいは法律の改正が必要であれば、どうせ臨時国会あるいは通常国会等において法律の改正をすればいい。問題は、家が倒れて住む家がない、あるいは天井を取られて、雨の中に畳を敷いてもずぶぬれである、そういうような人たちの措置が、いろいろ相談所を何ヵ所設けたとか、あるいは適切な措置をとっておるというようなことですけれども、私は実際そこまで手が届いていないというこの実情を申し上げておるのであります。実情に沿ったような措置をおとりになるということが、私は内閣においての責任でなかろうかと思っております。あとの負担等の問題については、これは臨時国会において、法律の改正の必要があればすればいいことでありますから、そういうようなことを一つ早くやるようにやっていただきたい。どうですか、大臣
  19. 村上勇

    ○村上国務大臣 これは、もうただいまの御意見の通りですが、私の方としては、町村が保証をすれば、決して個人の保証がなくても町村保証でけっこうなんですが、けっこうというよりも、それくらいの措置はとっておると忠言けれども、町村長がそういうことをするのが困るということでありまして、これは、詳細については、私間違いがあってはいかぬので、補足を住宅局長にいたさせます。
  20. 稗田治

    稗田説明員 災害復興住宅の場合、公共団体が債務保証をいたした場合には、保証人は省略することができるようになっておるわけでございますけれども、今回の罹災を受けましたところの地方公共団体の長の方で、保証をするには、ぜひ個人の保証人をつけてくれなければ、地方公共団体として全部保証をするということは困難だという市町村側の保証の条件と申しますか、希望で、やむを得ず個人の保証をつけておるという状況でございます。  それからなお実際に手元貸付の金が行っておるかどうかという実情でございますが、契約の進捗状況を申し上げますと、この前の七号台風でございますと、建設するというので最初に認定書の発行になるのでございますが、それが約二千五百でございます。それから補修をいたしたいというので、そういう認定書をもらって貸付の希望を持っておるものが四千五百でございまして、すでに貸付承認になっておりますのが、これは九月末の報告でございますが、建設で七百七戸ほどでございます。それから補修で二千戸ほど契約をすることになっておるわけでございます。それで、それの総額は、ざっと見まして七号台風で三億七千万円ほどに契約総額がすでになっております。その金につきましては、その工事の工程の進み工合、あるいは市町村の保証の場合は六割出るというようなことで、すでに金は出ておるわけでございます。
  21. 二階堂進

    ○二階堂委員 そういう数字は、私はよく承わって了承をいたしますが、問題は、こういう場合ですから、町村長の証明ぐらいで金を出してやらなければいかぬのですよ。それは、法律の建前は、保証人がどうとかなっておりますが、私は、少くとも長野県あたりは、非常に町村長がよく債務保証をしておる。ところが銀行の窓口に行くと、あなたはどうも担保能力がないから、もう一人保証人を持ってこい、こういうのです。そこで行き詰まっておる。これは、金融公庫の総裁もおりますが、国民金融公庫の方では、長野県あたりではよく相談に乗ってもらっておる。しかし問題は、今申しますように資材が届かない、金が届かないということで、住宅復旧がおくれてきておる。もう十六号台風で雨です。私たちのところは雨なんです。雨の中でしょんぼり住む家もないという人がおるのです。そういう人に対して、一体政府はどういう措置を考えておるか。金のワクが少ければワクをふやしてもらえばいい。あるいは町村長なり知事が保証をするならば、あとの問題については、われわれ国会において議論をして、法律の改正をすればいいことであります。こういうときに保証人がないとか金がないとかいうことを言っておったのでは、これは災害に対する政治にはなりません。私どもは、少くとも国会において議論をする以上、そういう法律の不備があるならば、その不備は、災害の臨時国会も開かれるのでありますから、国会を通じて法律の改正をするなり、あるいは政府が財政負担すべきものはさせる、そういう措置をとらなければいかぬ。問題は、早く金とか物とかが罹災者に届く、その協力態勢を早く作ってもらいたい、それは政府の責任においておやりなされなければならぬことだと思っております。私は、ここでいろいろこまかいことで聞きたいことはございますけれども、私は罹災民の立場に立って、ほんとうのことを申し上げておるのですから、どうか一つその措置を早くとっていただきたい。繰り返し繰り返し私はわが党の委員会においても申し上げております。よくいろいろなことをやっておられますが、なかなかそこまでいっておらぬ。先ほどの数字は、おそらく第七号台風の処置のことであると思う。十五号台風はこれからどんどん出ますよ。これが一ヵ月も二ヵ月も、また六ヵ月も一年もの長い間がたって、ようやく金が貸し出せるということでは間に合わないのであります。ですから、災害のときでありますから、どうか一つそういうことをお考えになって処置をしていただきたい、これは、私が特に申し上げておきたいことであります。  なおもう一、二点お尋ねして、まだあとにおられますから終りたいと思いますが、問題は、その工事の進め方です。たとえば河川の改修の工事、あるいは緊急に必要なところの工事の進め方、これは、個所にしましても大へん莫大な数に上っておる。人命に関係のあるような個所で、早急に復旧しなければならぬところもあります。これは、現在の査定官の能力とか、あるいは現在の建設工事の能力とか、あるいは金の能力とか、工事の限度にもこれは限りがあるわけです。こういうような四十県にも上るところの罹災地から、ここもやってくれ、あそこもやってくれ、東海地区の水没地帯の工事は、もちろんのことであります。急がなければならぬところもある。そういうような個所を一体どういうふうにして、二・三・五なり五・三・二なりの割合で復旧工事におかかりになる方針か、私は非常にむずかしいと思う。一々罹災地からの陳情を聞いて、それをどこもかしこもといってはこれはできません。もちろん年数はかかるでしょうが、特に人命が危険にさらされているような個所、あるいは部落、町等の、また来るかもしれない水のために危険にさらされるような個所、これは、今災害によって決壊した個所はもちろんでありますが、そういうことが事前に予測されているような個所も、当然仕事にかからなければならぬ。こういうようなことをお考えになりますと、どこから手をつけていいのか、どういうふうにしてこの仕事を促進すべきかということにつきましては、きわめて計画的な深い配慮がなされなければいかぬ。もとよりそれには金の裏づけが必要でありましょう。私は、こういうことはここでお尋ねをして、お答えをいただきたいとは思いませんが、そういうことについても、一つ十分お考えになって対処していただきたい。特に急がなければならない、しかもここは部落が、人命が危険にまたさらされるというような個所があるならば、そういうところは、今東海地区に活動して感謝されております自衛隊の力をフルに一つ使っていただきたい、しかも長期にわたって建設工事には協力をさせるべきだ。そしてまた地元の建設業者なりにいろいろと協力してもらって、予算措置を講じて工事にかかっていただかなければならぬと思っております。こういうようなお考えも具体的に早急に一つおきめになって、進めていただかなければ大へんなことになる。災害が進むというと、もう建設省にはたくさんの陳情がくるでしょう。あそこもやってくれ、ここもやってくれ、そういうような個所を、一々陳情を聞いて、あすこもここもといってもそれは限度がある。ですから、そういうような措置については十分一つ深い配慮を払って、そうしてあらゆるものを、たとえば施設部隊等の力をも長期にわたって、これは金の裏づけも必要でありましょうが、おやりにならぬというと、また来年の六月ごろには、大へんな災害がきた、陳情を受けたがそれはできていなかったということでは、大へんな政治問題になる。今ですら、地方を回ってみても、政治に対する不信の声がちらほら出ておる。私はこういうことを毎年憂えておりますが、今回の災害について特に憂えておりますから、この点について、一つ建設大臣も十分御検討の上計画を進めるように、一つ御配慮を願いたい、かように私はお願いだけを申し上げまして、別に大臣、当局の答弁は私は要りません。  なお、もう一つ最後に申し上げたいことは、査定の問題でありますが、これも私は、現場の写真等によって一応の応急の査定を終えていただきたい。もちろん、緊急に査定官を派遣して、ある程度のいろいろな査定の方法はお考えになって措置をしておられるのでございますが、たとえば学校等の災害個所を見てみましたが、やや傾いた校舎を査定官が来て、これは全壊と認めがたいと言っておる。なるほど全壊でありません。実際見て全壊でないのだから、全壊でないという主張は私は正しいと思う。しかしながら、そういう学校の校舎に、しからば生徒を入れて授業ができるかというと、できない。そういうような場合に、先ほど申し上げましたような住宅の場合も、全壊とみなさなければ復旧ができない、建て直すことができないというような個所相当ある。あるいは人命に危険のあるような破壊した個所相当あるが、そういう個所も、一々大蔵省も建設省も自治庁も立ち会って査定して、そうして本工事にかかるということは、時間がかかる。六カ月、一年かかる。そういうことも至るところに見られます。これは非常にひどい災害で、手不足のところもあります、また法規がそうなっておればやむを得ないと申されますが、それも一つの理屈でありましょう。理屈は通さなければなりませんが、理屈の命ずるままにすべてが行動しておったのでは、人命に再び大へんな災害を受けることになる。こういうようなことについても、十分一つ思い切った措置をとっていただいて、そうしてそれの跡始末は、国会においてわれわれが政府と一体になってやらなければならぬ。そういうようなことを一つ講じていただきたい。  なおまた、最後に大臣に申し上げますが、私は二十八年の災害のときにも現地に参りまして、いろいろ心配されておる実情を見て、いろいろな特別立法をしていただいた。今回の災害にかんがみても、どうしても私は治水治山の抜本的な対策、あるいは住宅対策、ありとあらゆる農業、土木、その他公共施設、すべてに関係のある災害復旧については、非常な決意をもって、繰り返して申し上げますが、お当りにならなければなりませんが、問題はやはり財政の問題になってくる。金がないとかいろいろなことで、大蔵省当局と大へんな議論になることは、火を見るよりも明らかであります。たとえば、治水費三千五百億にしましても、大蔵省は、ここに主計官も見えておりますが、三千五百億では問題にならぬという見解です。大蔵省は、国の財政を守るのも国を守るという考え方でありましょう。私は理屈はわかるのです。ただしかし、理屈を繰り返しておったのでは、こういう災害対策になりません。また年々国土の二千数百億、三千億という大へんなものを失っていく。しかも現実に取り返しのつかない人命を四千名も五千名も、あるいは一万名も失うこともあるかもしれません。失われた人命は永久に帰って参りません。こういうようなことを思うならば、私は何としてでもこの治水対策災害復旧対策というものは、ほんとうにいろいろな理屈を超越して、政府は腹をきめて当るということが第一であります。もし財源がないならば、自衛隊の漸増計画もできておりますが、私はやはりそういうような計画等も一時アメリカの了解を受け、国際関係にも重大な問題がありますが、しかしこういうときには国土を守ることも、自分の国を守ることも同じでありますから、少くとも五百億なり一千億なりというものをさいて、こういうような復旧を急いで、そうして国民に安心を与えて、災害の復興、国土の保全に当らせるということが私は大事なことではなかろうかと考えております。これは、私はできないことを八百長的に大臣に質問しておるのではございません。私は真剣にそういうことを考えておる。昨年も同僚の瀬戸山君がそういうことを述べられて、大事なことだという答弁であったけれども、そういうような決意に踏み切らない。私は何もわれわれが主張しておるところの、国際関係に対処するところのいろいろな問題、あるいは防衛力の問題、これは私は当然であろうと思っておりますが、二口目には金がない、財政に限度があるという抵抗を予算のときにも大蔵省当局から受ける。財源の点についてはいろいろな点について、たとえば仮設住宅についても、あるいは工事の進め方についても、むだのあるところもありましょう。しかしそういうむだのところはなるべく節約していただいて、そうして今申し上げましたようなところに重点的に金を回していただくということも当然であります。相当な無理もある、むだもあると思っております。そういうことも深く反省されまして、なるたけの金を集めて、こういう場合に使うという態勢をやはり検討していただきたいが、二口目には何百億という金がない、財源がないといわれるならば、私はやはり防衛関係に使っておる費用を一時繰り延べてでも、国土の復旧のために、人命を守るために使うというような決意があるべきが当然だと考えております。私は、決してこのことは八百長内に申し上げておるのではない。二口目には財源がないという抵抗を受ける。それに対して私どもは、むだを省いてこういう金を使うということも当然でありますが、そういうことまでもお考えになって対処せられるという決意があってしかるべきだ。これが、私はこの災害を通じて日本の全国民が感じておる考え方ではないかと思っております。私は、何も防衛力を否定するものではありません。自衛隊の増強を否定する考えもありません。私は、この点は社会党の左派の方々と考えを異にします。(笑声)笑い事ではない。私はそういうようないいかげんな気持で、いろいろなことをひやかし半分で言っておられる方もありますけれども、そうではない。私は真剣にこういう意見を申し上げておる。どうか一つ大臣の決意を促して、いろいろこまかいことについて申し上げたいこともありますが、本日はこれにて私の質問を終えたいと思います。
  22. 村上勇

    ○村上国務大臣 ただいまの御意見、御要望でありますが、建設省といたしましては、治水費の要望は最小限度のものでありまして、これもまたわれわれとしましても、国の財政等も十分念頭に入れて要望いたしておるのでありますから、今回の災害がなくとも、私は少くとも必要最小限度の国土保全のための治水事業費はどうしてもこれを強く要望し、また必ずこれらの私どもの要望は聞いてもらう、また聞かしていかなければならないと思います。大蔵省が金を出さないから災害があったのだというような、そんな安易な考えで私は建設行政をあずかるつもりはございません。従いまして、十分国の財政を考えながら、どの金を持ってくるかしりませんが、私どもの必要最小限度のこの程度の金は、私は資金は何としても確保しなければ、年々歳々かようなことを繰り返すようなことがあっては一大事でありますので、十分その御趣旨に沿って参りたいと思っております。何とぞこの上とも御協力のほどを切にお願い申し上げます。
  23. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 中島巖君。
  24. 中島巖

    中島(巖)委員 要点をつまんで、ごく短かくいたしたいと思いますので、御了承願いたいと思います。  この災害に対しまして政府のいろいろな立法措置、予算その他についてお伺いしたいと思うのであります。それ以前に、今回の災害をこういうような大きなものにせずに、もっと最小限度に食いとめる措置があったのではないか、こういうように私は考えるわけであります。昨日まで、私三日間にわたってあの地方視察をいたして参ったのでありますが、実に惨たんたるものです。現在においてすら、先ほど愛知県の東京事務所長が言われましたように、災害の後十日以上もたっておりますのに、まだ水びたしになっておる家が九万四千戸、大体推定いたしまして三十何万という人があの水の中に現在生活をしておる状態である。ところが、これは名古屋ばかりではなくいたしまして、大阪の淀川水系におけるところの堤防の問題も、当委員会におきまして何回か陳情を受けておるわけであります。また東京の江東区におけるところの堤防の問題も、何回か陳情を受けておるわけであります。もし一たび今度のような台風が大阪を見舞い、東京に見舞ったといたしますれば、あの数倍あるいは十数倍に上る被害が必ずあるわけであります。従いまして、政府は常時、こういうような台風のあった場合は、いかなる処置をするかということを考えておらなければならぬ、その予防態勢を作るべきだと思うのです。たとえば今回の台風におけるところの名古屋の防災工事を、おとといでありますか、見て参りましたけれども、現在の愛知の一番緊急な防災方法といたしましては、国道一級一号線、名古屋の中川から四日市に向っておる線でありますが、この線に土のうを積み上げて、そしてこれによって第一次の排水を行う、これが一番の方法だ。こういうことで自衛隊その他の協力を得まして、これを堤防にして排水の設備をいたしておったわけであります。これがもしもこういうような災害を予想いたしまして、五十センチなり一メートルなりこの国道を上げて作ってありますれば、直ちに排水にかかって、現在のような状態になっておらぬ。こういうことがはっきりと言い得る。従いまして、政府がこういうような災害に対しまして常日ごろの考え方が、役所の別々の考えでもって何ら統一したところの見解がなくて、予防措置が講じられておらなかった。極端に言いますれば、これは政府の怠慢によってこの被害を甚大にした。こういうように私は考えるのでありますが、大臣はいかなる御所見であるか承わりたい。
  25. 村上勇

    ○村上国務大臣 今回の台風が政府の怠慢によって発生したものではないということは、私ははっきり断言できます。先ほどの陳情でも申しておりましたように、六十メートル以上の強い風が吹き、しかもそれが高潮とマッチして非常に最悪な事態が幾つか重なっての、全く天災的な大不祥事でありまして、これが政府の怠慢というようなことに言及することについては、私はその点についてのお答えはできません。ただ国道の一号線を何ゆえにもう少し高いところを通さなかったかという点につきましては、技術的な問題でありますので、政府委員をして答弁をいたさせます。
  26. 山本三郎

    山本説明員 ただいまの、道路のかさ上げをいたしまして、その上流部の排水を早くしょうというお話でございますが、現在考えてやっておりますのは、旧東海道をかさ上げいたしまして、そしてその上の排水をはかろうということでございまして、現在使っておる一号線ではございませんで、旧東海道の方をそういう処置をしておるわけでございます。この旧東海道につきましては、すでに一級国道ができておりますので、国道としては使用していない分でございます。
  27. 中島巖

    中島(巖)委員 ちょっと極端になったかもしれませんが、ただいま申し上げましたように、大阪においても東京においても、あれだけの台風がくるとあれ以上の災害を起すのであるから、防災ということを常に考えて、国道であろうとその他の面であろうと、そういう処置を常日ごろからとらねばならぬ。それがとれてなかったのではないか。従いまして、これは台風被害であるけれども、この災害は、そういうふうな処置にしておればもっと減少したのではないか、こういうふうに私考えるわけでありまして、この点はすでに大阪の淀川にいたしましても、東京の江東地区におきましても、再三の陳情を受けておるのでありますから、今後注意してその方向に向っていただきたい、こういうことを政府に対しまして勧告いたすわけであります。そこで、とにかく現在三十数万の者が水の中につかっておりまして、排泄物のたれ流しなんです。従いまして、赤痢や伝染病の出るのは当然だと思うのです。災害をこうむって十数日にもなってこういう状態ということは、ちょっと文明国では見られないと、こう私考えるわけなんです。新聞を見ますと、このごろ総理も名古屋に行きまして、金には糸目をつけずにこの災害復旧をするということを新聞記者会見で発表されております。今各地の情報を入れますと、まだこれが五十日、六十日を要する、こういうような話を聞いておるのでありますけれども、これが大体八〇%なり九〇%なり排水ができて、たとい災害の完全復旧でなくても、排水ができるという見通しはいつごろになるであろうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  28. 山本三郎

    山本説明員 現在のところの見通しの問題でございますが、主として今湛水をしておりますのは、名古屋とそれからその西部の海部地区と申しますか、蟹江の付近と、それからさらに西へ参りまして木曽岬の地区と、それから長島三重県に参りまして鈴鹿あるいは鍋田地区、それらの地区に分けまして、大体の予定は、愛知県の庄内川以東の部分につきましては、大体の締め切りが、一番おそいもので十月の九日ないし十日ということになっておりまして、締め切りが終りますれば直ちにポンプをかけますので、このポンプの準備もいたしておりますので、締め切りが終りますならば、四、五日で排水ができるだろというふうに考えられております。それからその西の地区海部海岸に囲まれる地区でございますが、この地区は、海岸堤防なり河川堤防が非常に被害を受けておりますので、全力を注ぎまして、全国からポンプ船を動員いたしましてやっておるわけでありますが、これらを全力をあげましても、十一月の中旬までかかるということでございまして、これは従来の経験によりますと、とてもできそうもないと考えられるものを、それだけに繰り上げてやろうということで全力を注いでおるわけであります。それから木曽岬並びに長島地区でございますが、これが一番困難な地区でございまして、たとえば堤防の切れ個所も十数個所に及んでおりますし、それに必要な土の量にいたしましても、百万立方米以上の土が要るということになっておりますので、しかも交通運搬等の問題で非常に苦労をいたすわけでございまして、これにつきましても全能力をあげてやるわけでございますが、現在の予定といたしましては、十一月の末までかかるというふうな報告に相なっております。それから三重県の方面におきましては、一番おくれるのが川越というところでございますが、これが十月の二十日ごろであるというふうに報告されておりまして、これは中部災害対策本部におきまして各県へ督励をいたしますし、それからまた各業者の応援を得まして極力促進をいたしておるわけでありますが、ただいまの予定は、非常に困難な予定ではございますけれども、さらに努力をいたしまして、一日も早く締め切ろうということで努力をいたしておるわけでございます。
  29. 中島巖

    中島(巖)委員 それから今度の災害にかんがみまして、国土計画に大きな修正を加えるときがきたのじゃないかと私考えるのです。聞くところによりますと、通産省その他によって工業用地の確保のために、海岸埋め立てをする公団を設置するというような話を聞いておるのですが、これはとんでもない話だと私考えるわけなんです。  そこで、大臣並びに河川局長にお伺いいたしますが、今回の災害地をつぶさに回ってみたのでありますが、この災害地のおそらく七、八〇%は干拓地だ。かつて海面を埋めたところだ。名古屋においてもしかり。知多半島の半田に行きますと、二百八十五名の死者が出て、陥没して流れてしまったところがある。そこへ行って土地の者に聞いてみると、今は知らないけれども、明治初年ごろ干拓したところであって、山方新田と呼ばれておった、こう言うのです。従いまして、この災害地方が何十%ぐらい干拓地であったかということをお調べになったことがあるかどうか。大体の予想でもいいから、これは河川局長でよろしいが、お伺いしたいと思います。  また大臣も、この状態を見まして、今後の干拓あるいは海岸の埋め立てなどに関する国土計画に対して再検討する御意思があるかどうか、この二つの点をお伺いいたしたいと思います。
  30. 山本三郎

    山本説明員 今回の浸水の地域が、干拓によって造成されたものではないかというお尋ねでございますが、全体の面積の何割くらいという的確な資料はございませんが、今まで調査をいたしましたところによりますと、現在は一級国道が通っておりますが、それから南の地区は、三百年以来干拓々逐次やってきた土地であるということはわかっております。現在の浸水の何割程度に当るかということは、今後調べて、浸水の地域干拓の的確な資料を求めないとわからぬと思いますが、大体のところは、愛知県の内部におきましては、現在の国道の辺から南は干拓地ではないかというふうに考えられております。
  31. 村上勇

    ○村上国務大臣 今後の干拓あるいは海面埋め立てについて再検討する必要があるのじゃないかという御質問でありますが、これは、もう私どもといたしましても、新しく埋め立てをするところを十分浸水のおそれのないようにすれば、従来造成されているところがくぼ地になって、そこへ海水が入った場合になかなかその排水が困難であるというような個所相当ありますので、いわゆる自然に逆らって干拓をやる、また土地を造成する場合には、十分にその立地条件を検討いたしまして、そういう憂いのないようなところでなければ、どこでもやたらに干拓をしていくというようなことについては十分検討して参らなければならないと思っております。
  32. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで、時間もだいぶおくれておりますので、ごく簡単に二、三の質問をさらに続行いたしたいと思いますが、先ほど二階堂委員からの質問に対しまして、やや具体的な大臣から答弁があったわけでありますが、最近大臣も非常に答弁上手になりまして、のらりくらりとしておって、なかなかはっきりしたことを言われないのでありますけれども、われわれも失言を追及するというような考えはなくして、今後いかにしてこの災害を完全復旧をするか、こういう立場でおるわけであります。  そこで具体的な質問に入りますけれども、今回の災害は、愛知県におきましても二千百数十億というような数字を出しておりますけれども、これは住宅部門が非常に大きいウエートを占めておる。その他の地区に行きますれば、河川あるいは道路なんかの問題よりやはり住宅の問題が非常に大きいのです。そこで、先ほど大臣は、この災害住宅融資資金に対しまして、ある数字をお話しになったわけでありますけれども、住宅金融公庫の総裁も見えておられますので、現在の融資額がどの程度住宅金融公庫にはあるのであるか。それからもう一つの点は、この十五号台風によるところの資金と申しますか、民間から要求する額の推定というようなものも、おそらくまとまっておるのじゃないかと思います。これも見込みでいいのですが、住宅金融公庫からお考えを伺いたい、かように思うわけであります。
  33. 鈴木敬一

    ○鈴木説明員 ただいま住宅金融公庫におきましては、地すべり関連住宅貸付ということとあわせまして、災害復興住宅貸付とともに一昨年度、昨年度、今年度それぞれ十億円ずつ予算づけをしてもらっておる次第でございます。幸いに一昨年度と昨年度は、割と住宅災害が少かったせいか、貸付額がわずかで済んだわけであります。それで、年々いただいた十億円の残額を事業計画として積み立ててあるような形になっておりまして、ただいまのところ、その意味におきましての余裕資金が約二十数億と考えてよろしいと思います。今回の十五号台風によります全壊、流失、一部被災がございましたが、その滅失住宅総数は約三万戸前後に当ると思います。そのほかに半壊等の戸数もございますので、先ほどからお話もございましたが、全壊、流失戸数に対しましては、希望がありまして、償還能力がありと認めます場合において、七号台風以来の実績を申しますと、被害戸数総額の約四〇%前後の希望ではなかろうかと推定しておるわけであります。大体それより以上に非常に希望がございますのは、補修費を希望される向きでありまして、これは大体において、被害金額に直しまして二〇%程度以上の被害のありました住宅に対しまして補修の希望を認めて、一戸当り四万円ないし十五万円程度貸付をすることにしております。一面、建設の方は、一戸当り基準が三十万円程度貸し付けることにしておりまして、かれこれ所要総額が、もちろん確信のある推定もまだむずかしい次第でございますが、現金とあり合せまして、差引災害復興住宅だけで六、七十億は少くも要るのではなかろうか。それと、もう一つ災害に際しまして、普通の住宅金融公庫の個人住宅貸付方式に準じまして、特別にワクを災害地に割り当てまして貸す特別貸付という方法をとっております。これは、毎回の大小の災害についてさようでございますが、今回は、まだその希望の見積りを立てることは少し早過ぎるかと思いますけれども、この個人住宅の特別貸付の方式と、それから今度の愛知県、三重県等の場合におきましては、工場が災害を受けた。工場の従事員の職員の住宅にぜひ貸してくれろ、こういうような希望が幾らか出ておりまするし、その方も考え合さなければならぬかと思いますので、かれこれ総額は、ただいままだ確信のある数字を申し上げる段階に至っておりませんし、関係の向きと交渉中でございますので、画然たる数字は申し上げにくいのでありまするが、大体先ほどの御答弁にもありましたように、かれこれ合せまして百億近い数字をわれわれとしては熱望しておるような次第でございます。さよう御承知を願いたいと思います。
  34. 中島巖

    中島(巖)委員 ただいま大体金融公庫の総裁からお話も承わってわかったわけですが、実はおとといでありますか、愛知県庁におきましての陳情によりますと、愛知県だけで全壊家屋が一万九千余戸、それから半壊家屋が六万八千ぐらいだというような話を聞きまして、それも、まだ現在水没中のものについては調査は完了しておらない。従ってこれ以上ふえる見込みだ。愛知県のみにおきましても五、六十億が必要ではないか、こういうような話を聞いてきたわけであります。  そこで、まず質問の第一点といたしまして、これは住宅局長でけっこうでありますが、大体の各地からの報告の集計によってどのくらいな戸数、金額になるかという点。  いま一点は、大臣にお伺いいたしたいのでありますが、先ほど二階堂委員への答弁によって、百億くらいというような具体的な数字をお漏らし願って、非常に私ども気丈夫になったわけであります。これは、別に予算措置をしなくても、建設大臣と大蔵大臣との話し合いでできるものと思うのでありますけれども、大体百億の予算措置ができるというように了承していいのであるか、その点、念が入るようでありますけれども、お伺いしたいと思います。  いま一点お伺いいたしたいことは、第二種の災害住宅、これは予算の関係で、おそらく法律上の立法措置が要るのじゃないかと考えるわけですが、これも非常に各所で要望されておるわけで、本年度のあの戸数及び金額ではとうていその何十分の一にも足りぬものであります。従いまして、これに対しましては、来たるべき臨時国会において補正予算を出される考えであるかどうか、補正予算を出されるといたしましたら、何戸くらいを予定されておるものであるか、その点、大臣より御答弁を賜りたい、かように考えておるわけであります。
  35. 村上勇

    ○村上国務大臣 ただいまの百億くらいと申しましたのは、今鈴木住宅公団総裁の話にもありましたように、大体公庫の今次災害における貸付住宅を申しておるのであります。これと別に、いわゆる公営住宅については、滅失家屋の大体三割程度、これは都道府県要請によりまして、三分の二の助成を国がすることになっております。これの原資につきましては、どうしても補正予算に組んでもらわなければならないと思っておりますので、その数字は、滅失家屋が大体三万六千あるといたしますと、それの三割程度のものは予算を組んで、そしてそれの三分の二の助成をするということになっております。
  36. 稗田治

    稗田説明員 住宅金融公庫災害復興住宅の希望戸数でございますけれども、まだ全国からそういった具体的な数字は報告が参っておらないのでございます。ただ従来からの風水害の場合の実際の貸付の申し込みの希望戸数といったようなものから大体推定いたしまして、先ほど総裁の申されましたように、全壊戸数の約四割は新築の申し込みをしてくるであろう。それから半壊の七割程度は補修資金貸付を申し込んでくるのではないか、そういうように推定をいたして、先ほど申し上げましたように、百億近い額が要るのではないかと考えておるわけでございます。
  37. 中島巖

    中島(巖)委員 それからこれはこまかい話ですが、住宅金融公庫総裁が見えておるので一言お尋ねしておきます。この前の七号台風のとき、私長野県なのですが、長野県の取扱いなどにつきましては、役所のやった仕事としては非常に評判がいいのです。そこでお尋ねするのは、前橋の支所が所管だとかいうのですが、あんな不便なところに行かずに、東京にあったらいいと思うのですが、これはどういう所管関係になっておりますか、ちょっとお伺いしたいと思う。
  38. 鈴木敬一

    ○鈴木説明員 私の方の支所の所管といたしましては、長野県は北関東支所、前橋の支所の管轄に相なっております。長野県は、御承知のようになかなか広範な面積を持っておられまするし、ことに交通機関から申しまして、比較的西の方などのごときは非常に距離も遠くなりますので、今回の非常措置としまして当分の間、たとえば伊那谷のごとき地方におきましては、あるいは木曽谷にもと思っておりますが、当分支所の吏員に対しては公庫からも応援に参ることになっておりますが、そういう公庫の職員をある期間特に滞在させまして、所在の市町村が受付審査窓口になる場合も、金融機関が受付審査の窓口になる場合も、双方に対しまして最終の貸付決定は、公庫の職員が現場においてするというようなことに取り計らうことにいたしております。これは、今までの災害復興住宅の貸し付けの場合、たとえば昨年の狩野川台風の場合のごときも、さような取り扱いで実施いたしましたので、今回もさよう取り計らって、申込者に対し、また関係機関に対し御迷惑を少くしたい、かように考えておる次第でございます。
  39. 中島巖

    中島(巖)委員 今総裁からお話がありましたけれども、ああいう非常な不便の地で、ことに長野県は七号台風関係がありまして、ほとんど大部分地方公共団体で保証して準備の進んでおるような状態でありますから、ぜひ係官も駐在さして、至急まとめていただきたい、こういうようにお願いしておくわけであります。  そこで、農林省の方が見えておるようでありますので、これは非常な重大な問題で、近く臨時国会が開催されますので、私も農林委員会の方へ参りまして、大臣と直接質疑応答を重ねたい、こう考えておる問題でありますが、実は今回の災害によりまして、愛知県の海部郡の突端にある鍋田干拓というのがほとんど壊滅いたしたわけであります。それで、私の郡からも四十何戸か、百数十名行っておるのでありますが、半分以上死んでおります。そして、それらは波に洗われてしまって、住宅は影も形もなくて、洋々たる波の底へ沈んでおるというのが現在の状態なんです。ところが、この鍋田干拓に対しましては、政府といたしまして非常に奨励しまして、何個所に何名、何個所に何名というような割当をして連れていったわけなんです。従いまして、かつての戦争当時の政府の責任などとは違いまして、戦争後ここ数年前において行なった政府の処置でありまして、従って、これは政府の責任において何らか善処すべき問題である、こういうように私は考えるのです。なくなった人はもちろんでありますけれども、十年近い辛苦をいたしまして、そして資本も持って入ってそういうような壊滅状態になって、これから生きる道を失っておるたくさんの人がある。それに対して農林当局は、何らかの協議をしたことがあるか、あるいはそういうような処置に対して、会議でも開いたことがあるか、それらの事情をこの際お伺いして、もしそういうような相談なり、あるいは会議なりを持ったとすれば、現在災害にあって無一物になっておる諸君も非常に力づけられる、こういうように考えるので、この点お尋ねするわけであります。
  40. 小松義郎

    ○小松説明員 ただいまの鍋田の問題でございますが、私は開墾建設課長といたしまして、鍋田の建設工事を担当いたしておるものでございます。今回の災害によりまして、入植者が百数十名も行方不明者を出しました。生存者も、現地に残っておられる方が相当多数おいでになるわけでありますが、これにつきまして農林省内では、農地局におきましてこの対策について数度会議が行われております。ただいままでに決定いたしました方針といたしましては、この残存される方々を、仮設のものではございますが、とりあえず宿舎を建設いたしまして、そこに収容いたす。それからこれはまだ大蔵折衝が残っておりますが、農林省の方針といたしましては、できる限りこれを早急に復旧いたしまして、もしできることならば来年、再来年から作付ができるところまで持っていきたい。それからまたその建設工事費等によります労銀の収入、そういった面も極力ごめんどうを見たい、そういうふうに考えております。
  41. 中島巖

    中島(巖)委員 あなたにいろいろ申し上げてもしかたがありませんので、また農林委員会におきまして政府の責任を追及することにいたしまして、これでやめることにいたします。村上建設大臣が官僚でなくて、きっすいの政党人でこの大災害建設大臣になっておられることを、私どもは非常に心を強くして嘱望いたしておるわけであります。  時間もだいぶおそくなりましたので、私の質問はこれで打ち切ることにいたしますけれども、これは私たちだけでなく、おそらく与党の諸君も、村上大臣に非常な期待をかけておることと思いますので、ぜひ一つ努力されて、災害復旧を一日もすみやかにされんことを希望します。私の質問を終ります。
  42. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 本日午後二時から愛知県、三重県等における今回の台風災害の映画が別館講堂でありますから、委員各位にはぜひごらんをいただきますように、この際お知らせをいたします。  本日はこの程度にとどめ、次会は明八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時十八分散会