○松隈
説明員 これはわが国の地理的と申しますか、あるいは気候的な特殊事情によるのでありまして、外国の塩は岩塩もしくは天日製塩であります。岩塩というのは、掘り起せばそれで塩がとれる。それから、天日製塩にいたしましても、近海塩と申しますると小兵、台湾等であります。それから遠海塩にいたしまするとエジプト、ソマリランド、アテンといったようなところでありますが、これらの天日塩は、気候の
関係で温度が高く、乾燥しており、雨季を除きまして、普通のときは海水を砂浜にまけばそこで簡単に結晶してしまう。それをかき集めればそれで塩になるという状態でございますが、わが国の製塩にありましては、塩で塩を結晶までさせるというには、温度と湿度の
関係で非常な困難を伴います。それから、二、三日うちに雨が降るということになれは、固まりかけた塩がまた流れてしまう。こういうようなことで、どうしても能率上は、塩田、つまり戸外においてはある程度の濃度までしかしげられない。それを取り込んで、最後の段階においては石炭なり電力なりを使って、煎熬という言葉を使っておりますが、煮詰めて結晶させる。そこに非常に高い燃料費並びに人件費を伴いまするので、先ほど申し上げたような大きな値段の開きになるのであります。従来、外堀もかなり高い時代もありましたけれ
ども、先ほど申し上げましたように、塩そのもののコストは非常に安いので、もっぱら外塩の値段を左右するのは運賃によっておったわけであります。ところが、御
承知の
通り、最近の海運界の事情というものは、非常な競争で、運賃が非常に下っております。従って、近海塩はもちろんのこと、遠海塩といえ
ども運賃の比率が非常にノミナルなものにたってきておりますので、とうてい現状では
日本の内地塩というものが外塩と競争できない。これは宿命でありまするが、しかしできるだけこれを近づけていく。こういう
努力は必要でありますので、今回地業整備をするに当りましては、塩業整備の目標といたしまして、
昭和三十七
年度に白塩の収納価格をトン当り一万円とする、その後はさらに漸次
引き下げていくという、こういう目標を掲げまして、それで引き合うような塩業者は塩業を続けていくことを認めよう。そういう引き合うかどうかということは、合理化
計画書というものを塩業者に作らせて、それの提出を求めて、塩業整備
審議会という
機関がございますが、その
機関が合理化
計画書を診断いたしまして、その判断に基いて、これは引き合うような専業であるというならば残るけれ
ども、もし引き合わないと認めれば康正を勧告する。廃止をしたものについては一定の基準に従って補償金を出す、こういうことにしております。そうしますれば、三十七
年度には、塩価は今一万二千円のものが、一万円になっていく。その後も下っていく。その下る状態に耐え得るというような塩業者が残る。そして、その後もなお合理化を続けるということになって参れは、かなり国際価格に近づいて参ると思うのであります。
それから将来の製塩の問題といたしましては、さらに新しい製塩
方法であるところのイオン交換樹脂膜法というものがだんだん研究が進みまして、実施の段階に入ろうといたしております。現在、イオン交換樹脂膜法による製塩コストは、まだ中間工業試験を経ておりませんから、確実にはつかみにくいのでありますけれ
ども、一部の者の試算によりますと、トン当り七千円程度にはできる。こういうようなことも言っておりますので、将来はそういう新技術の導入によりまして、内地塩の価格を
引き下げて、漸次国際価格に近づける、こういうことの可能性も考えられるわけであります。
そういう新技術を導入するについても、これを受け入れる側の塩業者の企業の基盤が固まっておらなければ、そういう新規投資ということもなかなかむずかしいので、基盤のしっかりした塩業者に残ってもらいたい。そういうことのためにも、将来の塩価を示して、それに引き合うような経営
計画ができるかどうかという合理化
計画書というものを出してもらって、この際残って塩業を続けるか、あるいは廃止申請をして補償金をもらうかということの、塩業者の自主的判断を願う段階に目下ありまして、すでに廃止申請をいたしてきておるものもございます。それから、合理化
計画書もだんだんに出ておりまして、それを
審議して残るものと廃止するものとえり分けると申しますか、決定をだんだんにやる。そして来年三月末までに
整理の目鼻をつけたい。これが目下
公社で
計画しておりまする塩業整備の大体の模様であります。