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1959-09-01 第32回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月一日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 岩本 信行君 理事 佐々木盛雄君    理事 床次 徳二君 理事 松本 七郎君    理事 森島 守人君       愛知 揆一君    賀屋 興宣君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       櫻内 義雄君    椎熊 三郎君       千葉 三郎君    野田 武夫君       森下 國雄君    大西 正道君       田中 稔男君    成田 知巳君       帆足  計君    穗積 七郎君       八百板 正君    和田 博雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  委員外出席者         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 九月一日  委員山村治郎君、賀屋興宣君及び高田富之君  辞任につき、その補欠として千葉三郎君、福家  俊一君及び成田知巳君が議長の指名委員に選  任された。 同日  委員千葉三郎君及び成田知巳辞任につき、そ  の補欠として山村治郎君及び高田富之君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関して調査を進めます。この際、内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。岸内閣総理大臣
  3. 岸信介

    岸国務大臣 過般、私、諸外国を歴訪いたして帰りましたので、その御報告を申し上げたいと思います。  私は去る七月十一日羽田を出発以来、一カ月にわたり英国ドイツオーストリアイタリアバチカンフランスブラジルアルゼンチン、チリー、ペルー及びメキシコの十一カ国を訪問して、八月十一日帰国いたしました。これら諸国は御承知のごとく、いずれもわが国と緊密な友好関係にあり、ことに近年において彼我の国交は、政治経済文化等の各分野においてますます緊密の度を加えるに至っております。これら諸国訪問して、それぞれの政府首脳者意見交換を行い、各国発展状況を親しく見聞することは、かねてからの私の念願でありましたが、他方、昨年来これら諸国から相前後して懇篤な招待を受けておりましたので、ここに訪問を決意し、これを実現する機会を得ましたことは、私の最も欣快とするところであります。  私の今回の訪問は、まず英国から始まったのでありますが、時あたかも東西外相会議ジュネーブにおいて開催せられ、両陣営間の緊張緩和への努力が行われておりましたときに当り、マクミラン首相初め政府要路者と当面の重要国際問題及び日英両国友好関係促進について隔意なき意見交換し得ましたことはまことに意義深いものがありました。  その際私は、日本国民がひとしく重大な関心を持っている問題として中共問題を取り上げ意見交換を行なったのでありますが、私からマクミラン首相に対して、わが国政治的には現在の段階において中共承認する意図は持っていないが、経済的な提携は極力推進したいと考えている旨を述べましたところ、同首相は終始熱心に傾聴するとともに、本問題に関する英国立場を説明し、日本態度日本立場からすればよく理解し得るところであるとの態度を示されました。  その他、英国政府首脳部との会談は、軍縮問題、中近東問題、後進国開発問題、欧州共同市場問題等に及び、今後のわが国の施策上きわめて参考となる点が多かったのでありますが、特にかねてより両国間の懸案となっていた英国ガット三十五条援用の撤回については、私より早急実現方を強く要望しましたのに対して、先方は、日本希望は了察できるが、英国としては困難な事情もあるので、すでに進行中の通商航海条約交渉との関連においてさらに検討を進めたいとの好意的な発言がありました。  今回の訪英に当り英国政府の誠意ある歓待を受けましたことは、私の衷心より欣幸とするところでありますが、私個人の見聞及び新聞論調等から判断いたしますと、日本に対する英国民の感情と認識は、戦争直後の一時期に比すれば著しく好転したことを感知いたしました。かかる好伝のゆえんを考えまするに、近来政治及び経済の両分野における安定の増大とともに日本の地位か国際的に著しく向上した結果、英国朝野に、日本経済的には英国競争相手たる面も少くないが、大局的には自由陣営を強化するため日本との協力関係を一そう緊密にする必要かあるとの認識が逐次高まったためと推察されるのであります。東西陣営接触点たるヨーロッパにおいて英国世界平和のために果してでいる現実的な役割に思いをいたしますならば、わが国としては今後一そう同国との協力関係増進することが重要であると考えるのであります。  ヨーロッパ大陸におきましては、ドイツオーストリアイタリアバチカン及びフランスの五カ国を訪問いたしました。  これら諸国のうち、ドイツイタリアフランスの三国は、北大西洋条約機構、すなわちNATOの有力なメンバーであり、欧州大陸における自由諸国の中核として国際政局の上に重要な役割を演じていることは御承知通りであります。  これら三国におきましては、まずドイツにおいてホイス大統領アデナウアー首相及びエアハルト副首相経済相に、イタリアにおきましてはグロンキ大統頑セーニ首相及びペラ外相に、またフランスにおきましてはドゴール大統領及びドブレ首相にそれぞれ会見いたしました。  これら会見におきましては、折しもジュネーブにおいて開催中であった四国外相表儀をめぐる東西関係の見通しを初め、欧州政局の諸問題について種種忌憚なき話し合いを行い、三国首脳からきわあて示唆に富む見解を聴取することができました。これら会談を通じて得ました印象では、三国は個々の外交政策の上においてそれぞれ若干ニュアンスの相違はあっても、対ソ外交基本方針においてはその理念を一にし、よく団結の実をあげているように見受けられました。  アジア情勢につきましては、中共問題に関するわが国態度を説明し、中ソ関係の将来について意見交換を行なったほか、後進国開発問題についても討議を行いました。この点につきまして、私は未開発諸国に対する援助の問題は現下における最も重要な問題の一つであること、またかかる援助各国か個々別々にではなく自由諸国が共同して統一的に行う必要があることを強調いたしましたところ、三国首脳はいずれも同感の意を表しました。  またこれら三国は、石炭鉄鋼共同体、基同市場ユーラトム等欧州共同体の加盟国であり、いわゆる欧州統合化動きを強力に推進しつつあることは御承知通りであります。このような欧州経済統合化とそれによる繁栄は、それ自体としては歓迎さるべき性質のものであることは言うまでもありませんが、これによって日本その他地域外諸国に対する通商上の差別待遇が強められるという結果になるならば、これは世界貿易自由化大勢に反し、域外諸国に対し不当な損害を与えるものと言わなければなりません。私は、かかる見地から三国政府首脳者に対し、共同市場の運営に当っては、それが排他的性格のものとならないよう慎重な考慮を払うことを要望いたしましたところ、各国首脳は、いずれもわが国立場を十分了解する旨を述べるとともに、欧州における経済統合目的はかかる排他的性格のものではないことを言明した次第であります。  次にオーストリアは、上述の三国と異なり、中立の立場をとりながらも、他方また西欧的伝統を維持しておりますことは御承知通りでありまして、同国政府首脳者との会談は、かかる同国特殊性を反映してきわめて興味深いものでありました。また同国シェルフ大統領及びラープ首相は、ともに近年わが国訪問された経緯があり、日墺関係は最近著しく緊密の度を加えておるのでありますが、今回の訪問に際しては、かかる友好関係を今後さらに強化するための方途について種々意見交換を行いました。  なおオーストリアフランスとは、御承知のごとくわが国に対してガット第三十五条を援用しており、このためわが国からこれら両国向けの輸出は著しい制約をこうむっておりますので、私は両国政府首脳者に対して右の援用を撤回するよう強く要請いたしました。その結果、両国とも本問題について十分好意的検討を行うべき旨を約しましたことは、さきにそれぞれの共同声明によって明らかにされた通りであります。  次にバチカンにおきましては、法王ヨバネス二十三世に謁見いたしました。歴代法王が戦後日本の当面している諸問題に深い関心を寄せられ、ことに移民問題について多大の理解援助を与えられていることは御承知通りでありますが、右の謁見に際しては法王より進んで移民問題に言及せられ、法王庁としては今後ともこの問題につき協力を惜しまたいであろうと述べられたのであります。  私は、今回の訪欧に当り、戦後の復興期を完全に終って、今や安定した繁栄を謳歌しつつある欧州の実情を目のあたりにしてまことに感銘深く、また共同市場を初めとする欧州統合動きがきわめて底強いものであることを痛感した次第であります。  また直接ヨーロッパ指導者の口から東西緊張緩和のためあらゆる手段方策を尽す反面、東西対立の冷厳なる現実を直視し、安易な考え方に陥ることなく自由諸国団結を固めることの肝要なゆえんを聞いた次第であります。  欧州諸国訪問の旅を終えて、七月二十四日ブラジルのリオに到着いたしましたが、ブラジルにおいてはクビチェック大統領ネグロン・デ・リマ外務大臣通商貿易拡大移住促進文化交流増進につき会談いたしますとともに、かねてから懸案となっているクビチェック大統領訪日につきその実現方を申し入れましたところ、大統領はその好意を謝し、万難を排して訪日を実現したいとの希望の表明がありました。会談内容は、七月二十七日署名いたしましたクビチェック大統領との共同宣言にうたわれているところでありますが、現行の貿易及び支払い取りきめが、両国問通商貿易拡大目的に沿わないので、新しい角度から新取りきめを締結することの必要性について意見が一致いたしましたほか、現在交渉中の移住協定及び文化協定の締結を促進することについても、合意が成立した次第であります。  ブラジル滞在中、目下建設中の首都ブラジリアを視察いたしましたが、世紀の新偉業とも言うべき大事業が着々進行いたしておりました。また在留邦人の多数居住するサンパウロを訪問いたし、短時間ではありましたが、在留邦人活動状況を視察いたし、また親しく懇談する機会を得たのであります。私は、在留邦人一同ブラジル経済発展のために重要かつ積極的な役割を果しており、ブラジル社会からその勤勉と誠実とを高く評価されていることを知り、まことに心強く感じた次第であります。  次いで、二十八日アルゼンチン訪問いたし、フロンディシ大統領及びタボアダ外務大臣と懇談いたしましたが、大統領より、同国経済開発促進のため外国資本の導入を歓迎しており、工業国たるわが国からの企業進出に多くを期待したいとの意向が表明されましたので、私といたしましては、同国との経済関係緊密化のため、今後の協力とその具体的方法につき検討いたすべき旨を約しました。また私より、移住増進に関するわが国希望を述べましたのに対し、先方よりは、具体的植民計画があれば、現在の移住ワクをさらに拡大する用意がある旨の好意的回答に接したのであります。  その後チリを訪問いたし、アレサンドリ大統領ヴェルガラ外務大臣会談いたしたのでありますが、私は、最近の日チ経済関係が、鉄、銅山の開発漁業提携等により著しく強化されて、新段階に入っておりますことについて、認識を新たにすることができました。また同国首脳との話し合いにおきまして、今後一そう両国協力関係を強化することに意見の一致を見た次第であります。  次いで、八月二日ペルーを訪れて、プラード大統領及びベルトラン首相会談いたしましたが、その際私より、在留邦人に対する同国政府のあたたかい保護と指導とにつき感謝の意を表しました後、わが国といたしましては、今後とも同国との通商、特に経済協力促進し得る旨を述べたのであります。また、かねて話し合いを進めておりました同国大統領本邦招待につき申し入れを行いましたが、同大統領は、なるべく近い機会わが国招待を受けたいとの意向を示されました。私はペルー滞在中、同国在留日系人活動状況に親しく接する機会を得たのでありますが、これらの人々が、戦時、戦後を通ずる幾多の困難の時期を経て、雄々しく立ち上り、現在ペルー社会の一員としてはなばなしく活躍している姿を目のあたりにいたしましたことに、意を強くした次第であります。  右に引き続き、八月五日メキシコ訪問の上、マテオス大統領及びテーリョ外務大臣会見いたしました。この際私より、日墨両国間の片貿易現状を是正するため、わが国産品買付増大方を要望いたし、かつ、わが国同国に対して資本技術を提供する用意がある旨を述べましたところ、先方は、両国経済提携促進するがため、本年中にもわが国に対し経済ミッションを派遣したいとの意向を表明いたしました。よって、本件につきましては、わが方の在メキシコ大使をして、今後さらにメキシコ政府と密接なる連絡をとらしめ、これが実現方努力いたすことといたしました。  私はメキシコ訪問を終えました後、ロスアンゼルス、ホノルルを経て帰国いたしたのであります。  今回私が訪問いたしましたこれら中南米諸国を慨観いたしまするに、これらの国々はいずれも新興の意気に燃えて、新しい国作り経済開発に懸命の努力を払っておるのでありますが、同時に、これに要する資本技術との不足に悩んでいる現状でありまして、これがため工業先進国としてのわが国に対する期待も大であります。よって、わが国といたしましても、でき得る限りこれら諸国経済建設に対する協力を進めるべきであることを痛感いたした次第であります。  同時にまた、これらの国におきまして、わが国移住者努力が高く評価されておりますのみならず、今後の移住につきましても好意的の国が多いことにかんがみまして、わが国といたしましては、移住促進につきさらに一そう努力すべき時期に到達していることを、強く感じた次第であります。  以上、私の御報告を終ります。(拍手)
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 質疑の通告があります。順次これを許します。松本七郎君。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 長い期間にわたる外国旅行は、まことに御苦労様でございました。ただいまその御報告を伺ったわけでございまするが、その御苦労に比して、果してそれにふさわしいだけの成果があったかどうか、これについては、すでに世評もかなり厳しく迎えておるようでございます。私どもの見るところでも、今度の外国旅行が、果して今日の国際情勢の急速なる進展、時勢の流れによく合ったものであったかどうかという点については、疑いなきを得ないわけであります。ただいま御報告のあった具体的な問題についても、今後いろいろな審議を続けていかなければならぬと思うのでございまするが、第一に私どもが少し明確にお伺いしておきたいと思いまするのは、ただいまの報告の中にも自由主義諸国団結という言葉が述べられております。それから総理が帰られて方々で談話発表をされた中にも、今までは日米二国間の立易に立って進めておられた安保にしろすべての関係が、これからは自由主義陣営立場に立って対処したい、こういうことをしばしば言っておられる。この言明というものは果して具体的にどのような方向を示すものであろうか、この点もう少しはっきり御説明を願いたいのでございます。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 今日国際大勢が、いわゆる共産主義陣営自由主義陣営との二つに分れて、そうして東西の間に緊張が高まっておるということは御承知通りであります。しかしてこの緊張を緩和するためにあらゆる努力がなされており、また今後なされなければならぬと思います。私はこの意味において、あらゆる会談であるとか、あるいは個人的な会見、率直な意見交換お互い認識を深め、お互いの間の不信を除去するような努力を、今後あらゆる面において続けていかなければならぬことは、言うを待たないのであります。しかし、その根底における、いわゆる共産主義考え方自由主義を奉じておる考え方は、私は根本的の考え方を異にしておると思います。私どもはあくまでも自由主義立場をとり、国の繁栄及び国民の真の福祉というものは、その国民の自由とそうしてその総意を十分認める、個人の人格の尊厳を認めるところにあり、われわれの政治的の理念もそこにあるわけでありますから、そういう立場においての自由主義考え方をわれわれはずっと一貫してとってきておることは、御承知通りであります。またそれが真の民主主義によるところの国の繁栄の道であると私は確信をいたしておるわけであります。この共産主義自由主義立場が共存でき、お互い立場を尊重し合って共存し、そうして平和を作り上げるというのが、今の世界大勢であろうと私は思う。またそういうふうに話し合い等が行われていかなければならぬことは言うを待たないのであります。しかしその間において、常に共産陣営国々はやはり相団結して、その主張であり、その信じておるところの共産主義理念に立って、あくまでも自由主義立場対立をしており、また自由主義立場は今言ったような考え方において相協力して、そうして話し合いをしていくというのが私は世界大勢であり、またそうなければならぬと思う。今日のこの情勢から、直ちに自由主義あるいは共産主義国々がばらばらに交渉し、折衝して緊張が緩和するものではないのでありまして、従ってそういう意味において自由主義国々がしっかりと理解を深め、信頼を深め、協力関係を強くして、そうして共産主義の国と交渉もし、話し合いもして、そうして共存の道を見出していくというのが私は今日の状況における世界平和を作り上げる道である、かように考えておるわけでありまして、この意味において、西欧諸国が多少の意見相違があるにかかわらず、ソ連を中心として共産主義陣営との交渉においては、一致団結して、そうして話し合いに応じ、この緊張を緩和していこう、こういう努力がなされておる。こういう際でございますから、われわれとしてはあくまでもさっき言ったような理念に立って、自由主義諸国との関係を——従来も緊密にいっておりますが、さらにこれを強化していく必要、があるということを痛感しておるのであります。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 そうしますと具体的な問題で言えば、日米安全保障条約改定の問題にしても、今日までは日米間の条約としての取り組み方をしておった。しかし今後はNATOとの関係なり、あるいはこれは当初総理自身が考えられておった構想であろうと思いますが、はっきり日米共同防衛という考え方が打ち出されておって、それがだんだん変転していって共同防衛という考え方が薄らいできた。今回外国旅行をされた結果、自由主義陣営団結ということが、自由主義考え方に基いてもっと団結を強化していくという立場に立つならば、当然当初に考えられておったように、日米共同防衛という考え方を強く打ち出そうというふうに総理考え方か変ってきたのかどうか、この点をもう少し今の基本的な立場と関連して明確にしておいていただきたい。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 日米安保条約の問題は、言うまでもなく日本アメリカとの条約でございまして、日本が他から侵略をされないという態勢を作るために、アメリカ日本協力して、そして日本の安全を保障するというのがその根本考え方であることは言うを待たないわけでございます。決してNATOであるとか、あるいはSEATOであるとかというものの一部ではないことは、これは言うを待たないのであります。ただ根本理念として、私は先ほど自由主義国の間の団結、そして共産主義国の間の団結は、共産主義国においてとっておるけれども自由主義諸国共産主義諸国との間の緊張話し合いその他の方法によって緩和して、そうして共存していくということによる平和を作り上げていかなければならないということを申し上げましたが、その理念一つの現われとして、やはり日米協力して日本の安全を保障するということは、私は望ましいことであり、また、それが日本が、もちろん侵すということもしませんし、侵されないということになるならば、これによって世界の平和を増進することに役立つゆえんである、かように考えておるわけであります。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 この問題については後ほど安保条約改定内容に具体的に入ったときにもう少し御質問をしたいと思いまするが、いま一つただいまの御報告に関連してお伺いしておきたいのは、イギリスマクミラン首相との会見の模様を再度、正式にここで御報告になったわけでございますが、御承知のように、イギリスでは、マクミランが、岸さんの中国に対する静観主義、非承認政策を支持したような言明をしたということが事実であるとするならば、これは現在のマクミラン政府がとっている政策と相反することを述べたことになるというので、英国労働党真相究明に乗り出しておるわけでございます。もしマクミラン首相外電に伝わったような、岸総理に対し、そのようなことは言っておらないということが事実だとするならば、これはひとり岸総理の名誉に関するばかりではなしに、日本政府の権威、日本外交政策に大きな影響があると思いますから、この真相というものはもう一度はっきりさせておかなければならない。英国労働党もこの真相究明には乗り出しておりますから、やがてはっきりすると思いますが、まず岸さんが最初の御報告では、自分から中国に対する考え方を述べて、それに対してマクミラン首相が返事をしたというふうになっております。ある外電によりますと、マクミラン首相はかなりはっきりと、労働党中国承認したけれども、もし自分がやればこれは承認しないであろうというようなことまで言ったというふうに伝えておるところもあるのであります。ですから、この際発言の順序として、マクミラン言明内容をもう少しはっきり御説明願いたいと思います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど私はマクミラン首相中共問題について話し合ったいきさつについて荒筋の御報告を申し上げました。言うまでもなく、こういう会談におきまして話しておる内容をしさいに発表するということは、お互い外交慎しまなければならぬ問題でございます。ただ中共問題というものは、御承知通り日本国民も非常に関心を持っておる問題であり、また日本報道機関等におきましても、私がイギリスを訪ねる前において、中共という問題が必ず談話の重要な一つの題目になるたろうということを予想して、帰って参りました場合におきましても、その問題に関する質問というものは相当熱心に聞かれたわけでございますが、私は両首脳会談についての内容は、ある程度お互い話し合いで外部に発表する以外のことはやはり慎しむべきものであるという考え方と、同時に日本国民かこの問題に関して非常に関心を持っておる。従ってこれを全然触れずに、ただ形式的にそういうものだから両首脳会談は言うわけにはいかぬというふうにそっけなく答えるべきものでもないから、ある程度において私がこの問題を述べたことは、当時の新聞で御承知通りてあります。  中共問題に関しては、まず私からこの日本立場及びわが党がとっておる考え方につきまして詳細に述べて、イギリスはこれに対して承認をしておる立場にありますから、おのずからイギリス見解というものが、われわれとはまた違った角度からいろいろな見解があろうと考えまして、これに対するイギリス側の意見を聞いたわけであります。これに対しましては先ほど報告を申し上げました通りマクミランとしてのこのイギリス側の意見なり、イギリスがとってきておる従来の政策というものを述べるに際しまして、日本が、私がるる述べましたわが党の政策、わが党がとっておる考え方というものは、日本立場として十分了解できるという態度を私は示されたのであります。そのことを当時ある程度新聞等に述べたことが、私が述べたこととは違ったように外電その他がこれを向うに報じたために、あるいは労働党質問書となって現われたわけでありまして、私はこの点に関してマクミラン首相もしくはイギリス政府に対していろいろな迷惑をかけるということがあってはならぬと考えまして、当時の事情をイギリス側にも詳細に報告しておるというのが、この問題に関する一切のあれでございます。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 私どもから考えると、一国の総理なり政府首脳が、果して相手国、訪問された日本政府首相に対して、ほんとうに日本のためになるような外交政策というものを吐露するだろうか、これはそう簡単にはやらないことなんですね。ましてや老獪なイギリス政府が、ほんとうに日本の利益になる中国政策というものを、自分の方から岸さんに対して述べるということはまずないと考えなければならたい。そういうときに、あなたの方から先に自分中国に対してこういう政策をとっておるのだ、こう言われれば、相手の首相もまあお追従、相づちを打って、そうだ、そうだ、けっこうだ、こうやって事を済ませる可能性が多いと思う。果して今反省して考えてごらんになって、マクミラン首相があなたの中国政策というものを心からこれが正しいと思ってそういう発言をされたのか、あるいはあなたの説明に対して相づちを打った程度であったか、こういうふうに判断をされておるのか、その点を、これは岸政府中国政策そのものに今後影響することですから一つはっきり聞いておきたい。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 御承知通りイギリス承認をいたしておりますけれども、国連の加盟の問題については従来反対の態度をとってきております。また事実として承認はしておるけれども、正式の大使を交換しておらない、これは意見ではなくして事実でありますから、そういう事実から考えまして、私日本立場、すなわち日本国民政府との問に平和条約が結ばれ、大使を交換し、承認をしておるというの現実の関係国際連合においてはイギリスがとっておる態度と同じような態度を従来とってきておるというようなことから考えまして、マクミラン首相が私に対して、日本立場としてのわれわれのとっておる政策というものがよく了解できるという態度を示されたことは、私は決してその場限りの追従や、あるいは今お話のような意図から言われておるものだとは、実は今日においても考えておりません。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 国際情勢は最近急に進展しつつある中で、自民党の中での石橋さんのような有力な方が中国訪問するというような事態まで発展してきておる。そういう情勢を考えますると、今総理の言われるように、マクミラン言明というものがほんとうに日本立場に立って、日本の利益になるという真意を吐露したといたしますならば、一方日中の関係の今日の進展状況とにらみ合して考えた場合に、藤山外相はこの石橋さんの訪中を、個人的に行かれることはけっこうだが、時期としては問題だ、時期が不適当だというようなことを言っておられる。しかしわれわれから考えるならば、マクミラン言明が、あれが真実であったとするならば、むしろ今日の世界情勢、日中の関係発展等から考えた場合に、岸さんが英国訪問されたことの方がむしろ時期的にはまずかったのじゃないか。今日のようにこれほど急速にアジアにおいても情勢か変化しようとしているときに、ただ自由主義陣営団結という考え方だけで方々回られて、しかもイギリスでああいうふうな会見をされて、今までの静観主義あるいは不承認政策というものの裏づけを英国総理大臣から得たというようなことは、むしろ時期的に非常にまずかった。むしろもう少し情勢が進展した後に、日本の既定方針、今後の進むべき道を向うさんに納得させるというような時期を選ぶべきではなかったか。結果から言えばそういうふうな情勢の進展だと思うのですが、この点についてはどうお考えですか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 私ども静観主義というものをとっており、今政治的に承認するという段階でないということを申しておりますのは、決して中国を敵視したり、あるいはこれとの一切の交流関係を拒否しているというものでないことは御承知通りでございます。私ども貿易や、経済的な、技術的な交流であるとか、あるいは文化的交流というようなことは、これはあくまでも進めていきたい。しかし今日の現状からすれば、日本の置かれておる各種の情勢、あるいは国際情勢の上から、この中共政府というものを承認するという段階でないというのが私ども考え方でありまして、一切中共との間には交際をしない、あるいは親善関係を持たないとか、一切の関係を拒否するというようなことが静観主義でないことは、私がしばしば国会において申し上げておる通りであります。従って私は石橋君がそういうやはり、昨日も私と会見して、その考え方は私どもが考えておると同じように、わが自由民主党の政策の線に沿うて、とにかく一切の関係が途絶しておる中国日本との関係貿易やあるいは文化の交流等を盛んにして、そうして打開の道を作っていこうという考え方でございますから、決して私どもが従来考えておるにとと、また私がイギリスに行って話したことと、また石橋君の訪中というようなことが何かそこに矛盾しており、何かのそこに食い違いがあるというふうに考えられることは、私は考える方が間違っておるのじゃないか、かように思っております。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 石橋さんの考え方は日中の間は単なる共存だけでなしに、相助け合い、協力する関係を打ち立てるべきだ、非常に積極的な意欲が見えるのですが、それでは石橋さんが行かれても、もちろん石橋さんは経済的な話し合いばかりでなしに、政治的な話し合いもざっくばらんにされるおつもりのようでございまするが、岸さんとしては、あるいは政府としては、この石橋さんが政治的な問題についても意見交換をされることに賛成されるのですか。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 今お話の政治的問題について意見交換するという内容が、どういうことを意味しているか、ちょっと私は不明でありますけれども、昨日私と石橋君とは、今度の訪中問題について報告があり、また個人で行かれるわけでありますけれども、わが自由民主党の長老でもございますので、わが党のとっておる政策、方針の外に出て何かの話し合いをするということは石橋君はしないということをはっきり答えておりますから、今お話の政治的の問題についての話し合い——もちろん経済、文化だけでなしにあるいは哲学の問題もある、人生観の問題もあるだろう、そういう意味において広い意味政治的な問題の話が出るということも考えられますけれども政治的の話し合いをするということが承認問題について何か一歩進めるというような意味であるならば、そういう考え方は石橋君は持っておらないということを明らかにしております。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 政府が今までとにかく政治経済を分離して考えておる、そういう政策をとっておるのですから、この際石橋さんが幾ら個人の資格であっても、行かれて全般的な話し合いをされるということになれば、当然政府政治経済分離の政策に関連してくる問題が起ると思う。そういう場合に石橋さんは個人の資格で行ったのだから、これは全然関係がないのだという立場をとられるのか。あるいは今日の世界情勢なり中国、アジアの状況下にかんがみて、これを機会に、しからば石橋さんが帰ってきた後には今度は政府間同士の話し合いでもそういうところにまで発展させることもあり得るというふうな含みを持って、政府は石橋さんの訪中を援助されるお気持があるのかどうか、こういうことは非常に大事な点だ。その点は少しはっきりお聞きしたい。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 従来の政治経済を分離して考えるという考え方は、わが党とし、わが内閣としては現在の国際情勢の上からいうと、当然そういうことをとるほかはない、こう確信をいたしておりますので、いわゆるわれわれの政治経済を分けるということは、いわゆる中共政府というものを正統政府として承認して、これとの間に正常なる外交関係を開くということでありますから、そういうことは現在の状況においてはすべきでないという考え方はわれわれ一貫して持っておりますから、石橋君が帰ってきて、すぐそれでもってどうだということは決してわれわれ考えておりません。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 次に安保問題に移りたいと思いまするが、この安保改定の問題については、外務大臣の言明によりますともう大体でき上っておる、こういうふうにお話をされておる、今までの外相のPR活動を見ておりますと、きまったものを説明しておられる、きまったものについての説明会が方々で持たれておるようですが、これならば事務官でできることだ。こういうふうに国論がかなり沸騰して非常に重要な問題である以上は、まだきまっておらないうちによく国民意見を広範に聞くという態度が、私は政府としては必要であると思うのですが、この点はすでにきまってしまったというならばいたし方ないことですが、今後の処置として調印前にやはりすみやかに最終案というものを公表して、そして広く国民の批判を仰ぐという態度がこれから最も必要ではなかろうかと思いますが、この点総理のお考えはいかがですか。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 まだ調印をされておりませんし、内容がどう決定しておるかということは、私は藤山外相がそういう説明を各地においてしておるとは承知いたしておりません。ただ交渉の衝に当り両方の意向が大体こういうところにあるという、また政府としてはこういう方向でもって話をまとめていきたいというような点について話をして、あるいはこれに対する批判を求め、あるいはまたこれに対する理解を深めることを努力しておるのでありまして、決してこうきまっておるから、これを何でもかんでものめというふうに話をしておるとは承知いたしておりません。  また調印前に全部条約案文を発表しろというお話でありますが、そういうことは従来の外交の慣例からいってもないことであります。しかし私は日本国民が重大なる関心を持ち、またわれわれ政府として重大な問題として国民にあらかじめ理解を深め、あるいはそれに対する国民の世論を聞かなければならぬような問題については、先ほど来外務大臣も各地においていろいろ話をしておりますし、またその他あらゆる面においてわれわれは努力していかなければならぬと思いますけれども、今お話のように調印前にすべてのものを発表するというようなことは考えておりません。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 内容について二、三お伺いしたいと思います。この前の委員会のときだったと思いますが、今度の改定条約では集団的な自衛権に基くのではなしに、日米両国がそれぞれ個別的な自衛権に基いて共同の防衛に当る、こういう御説明がなされておるのですが、その後の記者会見その他のお話を聞いておりますと、どうもこの点はっきりした統一解釈が出ておらないように思います。この際政府の統一解釈をはっきりお示し願いたい。
  22. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の安保条約におきまして、当然アメリカと防衛の体制をともにしていくことはその通りでございますけれども、ただ今お話のありましたように、日本アメリカとは法制上の違いもあります。従ってわれわれとしても日本が侵略をされましたときに、日本自体が自身の防衛をするということは当然のことであります。同時にアメリカ条約日本の防衛に対して協力をしていくということでありまして、お互い話し合いをしながらそれぞれの立場において共同に動作をしていくということであります。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 国際憲章でもちゃんと集団的自衛権あるいは個別的自衛権ということが規定されておる。いやしくも条約を結んで——今のはこういうふうにお互いが行動するんだという説明であって、その基礎になっておるところの自衛権は集団的自衛権なのか個別的自衛権なのか、こういうことを聞いておるのです。この前の外務委員会でも外務大臣ははっきり個別的自衛権なのだ、こう言われたじゃありませんか。だからその点それでいいのか、それが政府の統一解釈と承わっていいのか、どうなのですか。そこのところを確認したいわけです。
  24. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろんただいま申し上げたことが、それぞれの国が個別的自衛権を発動する、むろん集団的という形においてあるいは単一司令官のもとに行動するということはできません。従って個別的な自衛権の発動です。しかしながらこの自衛権の発動を共同してやるという意味においては、国連憲章の集団安全保障の体制に沿っておるものと思っております。
  25. 松本七郎

    松本(七)委員 体制は集団安全保障の体制であって、その自衛権はこの前から外務大臣が言われるように個別的自衛権なのだ、こう解釈していいのですね。
  26. 高橋通敏

    ○高橋説明員 法律的問題でございますので、まず法律的の点につきまして私からちょっと申し上げたいと思いますが、国際連合憲章の上からは、日本アメリカも当然集団的自衛権を持っておる。しかし今度の条約におきましては、第一にそれぞれの個別的な自衛権に基くところの行動を第一の主眼といたしております。しかしながらアメリカ日本における行動は、アメリカの自衛権のみならず、やはりアメリカの集団的な自衛権に基いて行動するということになろうかと思っております。ただ日本の場合は集団的自衛権と申しましても、やはり自衛権でございますから、個別的また集団的という言葉がありますが、やはり自衛権であります以上、日本の自衛権は憲法上の制限に従って行われるということになります。従いましてこれは集団的自衛権をどういうふうに解釈するかという、解釈の問題でございますが、たとえば集団的自衛権は、相手国の権利が侵害された場合にこれに援助におもむく。おもに海外に援助におもむくというふうに解されております。これが一般的な集団自衛権の実体的な解釈たと思いますが、そのような意味における日本国側における集団自衛権は、われわれはないものである、こういうふうに考えております。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 国連憲章五十一条には個別的並びに集団的というふうに使い分けて書いてある。しかし国連におけるこれの解釈は、今あなたの言われたような実体的な解釈よりも、むしろ一国で自衛権が発動する場合は、これは個別的自衛権の発動です。二国間にまたがってやる場合は、これはすべて集団的自衛権というふうに解釈されておる。従って日本アメリカ条約を結んでやる以上は、これは当然集団的自衛権としての行動がなされるのであって、その行動範囲というものはもちろんそれぞれの憲法の制約は受けるでしょう。けれども、この国連憲章に基いて、わざわざ国連憲章の関係を今度の条約では明らかにするんだ、しかも国連憲章五十一条までもこの中に引用しているのです。それほどはっきりここに関係を結ぶなら、当然その行動の基礎になるところの自衛権は集団的自衛権が基礎になっておる、こう解釈するのが当然ではないかと思うんですが、どうですか。
  28. 高橋通敏

    ○高橋説明員 ただいまの点でございますが、個別的自衛権は各国が個々別別に行使するわけでございます。これはもう御承知通りでございます。それから集団的自衛権というのは、これも一般的解釈によりますと、個々の国々が行動するときに、その全体を見て一つの集団的自衛権というふうに解する解釈は現在一般的には行われていない、そういう解釈はないように考えております。集団的であります場合も、その集団的自衛権を行使する国は一つ、その国が集団的自衛権と称する権利を行使し、またこちらの国もそういう権利を行使するということでございまして、やはり集団的自衛権と申しましても、行使する主体は一つの国、その国が行使するということに解釈されていると考えております。
  29. 松本七郎

    松本(七)委員 もちろん行使をする場合は個々の国が行使するのですが、それが認められるものは二国間で条約を結んだ以上は集団的自衛権か根拠になって、その行使は、個々の国がなされる。これが国際連合における通説、普通の定義なんです。これについてはもっと詳細に、また別の外務委員会で論議を重ねたいと思います。  ところで、その自衛権の解釈はどうとるといたしましても、政府がかねがねから言っておるように、事前協議ということ、これがこの自衛権との関連においてほんとうはとらえられなければならないと思いまするが、外務大臣がこの前からしきりに言われたように、個別的自衛権に基いてやるということになると、バンデンバーグ決議の趣旨にも反してくるのではないか。バンデンバーグ決議は明らかに集団的自衛、集団的自衛権をもとにしたところの共同防衛ということが根本精神なんですから、こういう点にも今後問題が出てくるんではなかろうかと思います。  ところでもう一つ問題になるのは、極東の平和、安全のためにアメリカ軍が出動する。これに対して日本協力をしなければならぬということになるわけですが、この規定が一体国連憲章五十一条に違反しないかどうか。御承知のように国連憲章五十一条では、武力攻撃があった場合に、この自衛権の発動ができることになっておるわけです。ところが極東の平和というようなばく然とした理由のためにアメリカ軍が出動すること自体を認めることが、すでに国連憲章五十一条違反じゃないか。この点はどうなんですか。
  30. 高橋通敏

    ○高橋説明員 国連憲章の解釈でございますので、ちょっと私から事前に申し上げたいと思いますが、五十一条は武力政撃があった場合に自衛権として発動するわけてございます。従いまして、極東の平和、安全のために行動する場合におきましても、その行動がもし武力の行使という行動でございますれば、必ず武力攻撃が相手から加えられなければいけない。すなわち自衛権の行使でなければいけない、こういうふうに考えております。そのようにお互い加盟国でございますから、国連憲章五十一条のみならず、国連憲章全般の規制を受けるわけでございますから、それによって解釈をすべきではないかと思います。
  31. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、日本はまだ攻撃を受けておらないが、極東の安全のためにアメリカ軍が出動を必要だという判断をした場合には、現に日本の基地が攻撃を受けなければアメリカ軍の出動はできないという解釈ですか、今のは。
  32. 高橋通敏

    ○高橋説明員 日本の場合はもちろんでございますが、極東におきましてアメリカに対してある武力攻撃が行われました場合に初めて米国は自己の武力を行使する。武力を使うのは、自己に対する極東における武力攻撃がなければいかぬというふうに考えております。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 極東におけるアメリカに対する武力攻撃とは、どこで起ることを予想されますか。極東におけるアメリカの領土はどこを今意味しておるのですか。これは極東の範囲にも関係してくる。
  34. 高橋通敏

    ○高橋説明員 純粋な法律問題としてお答えいたします。アメリカの極東における領土は、もちろんアメリカの艦船、航空機、軍隊、すべてのアメリカの国家権力に対して武力攻撃が加えられる場合におきましては、これはやはりアメリカの自己の自衛権を行使していいと思います。武力行動を起していいということになると思います。
  35. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣にお伺いしますが、今の国連憲章五十一条は、国連憲章の中でも最も不備とされておる条項です。行動を起すことを規定しておるけれども、行動を起した、しかし安保理事会でもってこの行動は不適当だ、こう判断した場合には、すでに起っておる行動をやめさせる力がない。一体それほど国連憲章の不備とされておる五十一条を持ってきて、しかも極東の安全のためにアメリカ軍が出動できるような道を開いて、これを一体いざというときにはどうやって阻止しようというのですか。これが事前協議で果して阻止できると今でもお考えかどうか、この点をお伺いしたい。
  36. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国連憲章の規定によりまして、むろんアメリカは、自国が侵略をされる、あるいは攻撃をされるというような場合にしかアメリカは出動しないと思います。アメリカは攻撃を開始しないと思います。あるいは防御もしないという言葉の方が適当かと思います。しかし同時に、そういう行動を起しましたときに、国連憲章に従いまして安保理事会に提訴する問題になって、その承認を得るということは、これまた当然のことだと思います。そういう事態が起りましたときに、日本の基地からそれが飛び出すというような場合には、当然われわれとしては事前協議をしてもらわなければ困るわけです。その事前協議によりまして、日本が拒否されるか拒否されないか、そういう問題について判断をした上で拒否する場合もあり賛成する場合もあろうと思います。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 総理に伺っておきたいのですが、外務省では、最初協議事項に、いわゆる拒否権といいますか、アメリカと協議して日本の同意がなければアメリカ軍は外に出ることができないし、あるいは核武装することもできない。こういうふうなつもりで同意という言葉を入れておるわけです。ところがアメリカ側は、この同意、アグリーメントを削除することを要求して、今の最終案では同意という言葉がない。そのこと一つ見ても、アメリカ政府がいかにこの協議を骨抜きのものにしようとしておることの一つの例であると思う。  それからもう一つは、交換公文にこれがされる。交換公文にされるということはアメリカ関係だと政府はいっておられるけれども、ここが問題です。アメリカにおいては、交換公文は行政府の責任においてこれは実行できる。ところが条約文は国会の批准が要る。もしもこの協議条項を国会にかけて審議をすれば、この協議というのが単なる日本の気休め程度のもので、実際には拒否権はないんだということがここに暴露されることをアメリカはおそれ、そういうためにこれをわざわざ交換公文でやろうとしておる。それから常識的に考えましても、今度の安保改定基本方針は、米国に日本を防衛する義務を負わせようというのが一つの中心点になっておる、それで平等にするのだということがあなた方の言い分なんです。そうだとすれば、一方で防衛義務を負わせる、アメリカ側からいえば防衛義務を負って、それで極東の平和、安全のためには今出動することが必要だ、これが日本の安危にもかかわるのだ、こういう判断をアメリカはやった。日本がかりに、いやまだその時期にあらず、こう判断して協議をやっても、防衛義務を負わしておきながら、その大事な問題について意見が違うからまだ出動するなということが果して言えるかどうか。防衛のために必要な武器においても、アメリカは防衛のためには核兵器が絶対に必要だ、こういう立場をとる、日本政府は防衛の義務だけは負わせながら、一方では核兵器は困る、こういう注文をつけることが果してできるかどうか。こういう周囲の事情を考えてみますると、この事前協議ということは、結局はこれは気休め程度、たた話し合い程度だけでもせめてしたいということにすぎないのではないか。本心であなた方はこの事前協議で意見の不一致になった場合に、アメリカ軍の行動を阻止できると今でもお考えになっておるのかどうか、この点を総理から明確にしていただきたい。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 協議事項にこれらの幾つかの問題を取り上げてアメリカ交渉する場合におきまして、アメリカ側におきましても日本側の意向を無視してこれらのことをすることは、この安保条約の精神からいっても適当でない、あくまでも日本意見を尊重して、この重要な問題に関してあらかじめ事前に協議するという話し合いをずっとしておるわけでありまして、私は今日までの交渉において、外務大臣から報告を聞いておるところによりましても、アメリカ側において日本の意思を無視して、日本の同意を得ずに、意見が一致せずにそうしてこれを押し切るということをするというようなことはアメリカはしないという意味において、協議事項が設けられており、そういう交渉が進められておるという報告を聞いておりまして、今日まで私も数回マッカーサー大使とも会っておりますが、それらの点におきまして十分に日本がこれを協議事項にし、事前に日本の意思を聞き、日本の意思を無視してこれらの行動をしないというために、これらの協議事項を作るという趣旨については、アメリカ側においても十分に了承しておることと私は承知いたしております。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 私どもからすれば、かりに条約の中に同意という言葉が入っておってもそれは安心できないと思うのです。ましてや同意という言葉が削られ、アグリーメントが削られて、単なるコンサルテーションになった、こういう事情から考えてみても、何らかただ協議をすれば日本の意思は無視はすまい、こういうことではとても安心できないのです。何らかそういう同意という言葉がはっきりさせられるか、せめてアメリカ軍に対して日本がある程度の管理権を持つというような点が出てくれば、あるいはもう少しは検討する余地もあろうかと思いまするが、一体アメリカ軍に対する日本の管理権はどうなんです、あるのか、ないのか。
  40. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカ軍に対する日本の管理権というものはございません。われわれは協議をしました以上、協議がととのうことのある場合もありましょうし、またない場含もありましょう。協議がととのわなければ当然アメリカ日本の意思を無視してはやらぬと確信しております。
  41. 松本七郎

    松本(七)委員 時間が参りましたので、少し項目別にお伺いしますから、簡単に総理から御答弁願いたい。  今度の条約改定案の中に、施政権下にある領域という言葉が使ってあります。これは政府の説明によりますと、当然将来沖縄の施政権が返還された場合には、これも条約の適用区域に入るのだ、こういうことを言っておられるのですが、これは今施政権のないところが将来入れば、条約の適用区域になるのは当然なことなんであって、問題は今度の改定交渉の間において、沖縄の施政権返還ということが何らか交換公文なりそういった文書でもって明らかにされたのかどうか。されておらないとすれば、今後そういう点を特別の文書で明らかにされるお気持があるのか。  それからこれと関連して、施政権の返還の前提になることは、何といって潜在主権だと思います。ところが潜在主権ということは、これはできました、あのアメリカ側の打ち出した当時のいきさつから考えても、当時吉田さんが向うに行ってこのことを言い出してこれが打ち出された、従ってこの大事な沖縄の施政権返還の問題をこの条約改定交渉の間に話される以上は、当然再度沖縄の潜在主権が日本にあるということをアメリカ側に再確認しておく必要かあると思います。この確認をとられたのかどうかという点です。  それからもう一つは、期限を十年にしたということについてでございまするが、これば条約期限十年間、今までの政府の説明では、これが長からず短かからずちょうどいいだろう、こういう説明しかなされておらない、ところが自民党の中にもこれでは長過ぎる、三年にしろという意見もあるし、あるいは短か過ぎるから二十年にしろという意見さえある、どうして八年ではいけない、十二年ではいけない、十年でなければならないかという根拠がきわめてあいまいなんです。一昨年岸さんがアメリカに行かれたときに、ダレスに対して五年間という説を出されたことがある、そういう点から考えてみても、もう少し国民が納得するような十年の根拠というものを明らかにしてもらわなければならぬ。特に今日のように重要な極東の平和問題でも、河野さんあたりからずいふん異論が出ておる、期限の問題でも異論が出ておる、社会党は全面的にこれは条約そのものに反対というような重要な問題について、しかも国際情勢の進展は急速度に進んでおる、こういうときに十年間もこれで縛るということは、これは何としても常識としては長過ぎるということを国民が考えるということは当然です。そこでただ大体これくらいでよかろうということでなしに、もう少しはっきりした根拠はないものか。たとえばアメリカ側が主張したところをあなた御存じかどうか知らないが、アメリカ側はNATOの期限があと十年で終る、これと一致させたいというのが十年の一つの根拠だ、アメリカの主張の、そういう点を考慮して十年にされたのか、それともほかに何か根拠があるか、そういう点をもう少しはっきりさせていただきたい。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄の施政権返還の周題につきましては、これはこの安保条約の問題いかんにかかわらず、われわれの終始一貫主張しておることであります。先年私がアメリカに参りまして、アイクとの間の話し合いにおきましても、今お話しの潜在的主権を日本が持っておるという趣旨のことを共同声明のあれでもって再確認させております。これははっきりした責任のある共同声明を出しておることでございまして、私はこの点に関しては何らの疑いを持っておりません。ただこの交渉中に何か沖縄の返還問題について交渉するかということにつきましては、私はこの安保条約と沖縄の返還問題というものは、これは直接の関係があるわけではないのでありまして、このいかんにかかわらず、われわれは機会あるごとに、またいろいろな情勢の変化に応じてこれが実現をはかりたい、またその方法等につきましても、全面的なこの施政権の返還というような、ただ一本調子の話し合いだけでなしに、あるいは部分的にあるいは実質的にこの事実を積み重ねていくというようないろいろな方法があると思います。これらのことにつきましては、あらゆる機会に今後も努力していかなければならぬ問題であると思います。  また条約の期限の問題につきましていろいろな議論がありますことは、今御指摘のあった通りであります。私はこの十年という期間が絶対的に十年でなければならぬとか、あるいは十二年ではいかぬとか八年ではいかぬということを理論的に説明しろといっても、そういうことはできないと思います。私はこういう状態のもとに、国際情勢の見通しと——よく国際情勢が非常に急変しているから、これを十年は長過ぎるじゃないかという議論が一部にございます。しかしわれわれは、日本の進むべき道として、先ほど来申し上げているように、自由主義立場を堅持しており、日米協力ということが日本繁栄を来たす根拠であるという考え方に立っておりまして、従って、こういう安全保障条約というようなある程度の安定した形を作るという意味から申しますと、あまりに短かいということは、その安定性を欠くことになると思います。従って、十年ということは常識的に見て妥当な線じゃないか、かように考えております。
  43. 松本七郎

    松本(七)委員 アイクとフルシチヨフの相互訪問というような事態も進んでおるし、それから自民党自身で、すでに先ほどから問題になるような中国訪問も行われるし、世界情勢はかなり進んでおる。日本の国内の問題としても、御承知のように、伊達判決のような非常に重要な判決も出ておる。しかも国論は、全面的反対、促進と相対立しておる。自民党の中にさえ、有力な反対意見というものが台頭してきている。こういう情勢を考えれば、当然民主的な政治家の扱い方としては、この重大な交渉をここで打ち切り、そうして情勢の変化を待つというような態度をとるか、あるいは少くとも東京地裁で出た伊達判決の結末がつくまで待つ、やはりアメリカ軍それ自体の今後の発展をきめようとするのですから、それに関係する重要な判決が、一応の段階であるにしても出ておる以上は、その結末がつくまでは、アメリカ軍と日本関係を進展させないようにとどめるということは、当然なことだと思う。そういうふうに一応少なくとも当分静観するというか、あるいはそれをなお既定方針通りにやられようというなら、この際やはり衆議院を解散して直接民意に問うというような態度をとられなければならないと思う。その点に対する所信を最後にお伺いしておきたい。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 党内におきまして、これに対する批判あるいは十分にまだ理解しない向きがあるという点に関しましては、これは私が自民党の総裁として党の意見をまとめ、また党内のそういう理解の十分でない者に十分理解せしめて、党をあげてこれに対する一致した行動をとることは、私が自民党総裁としての責任においてやる考えでございます。また日米交渉の問題は、御承知通り昨年来、またこれの経過は数年前から、実は安保条約の不平等性を直して、そうして十分に日本の安全を保障し、同時に日本国際的地位や、あるいは国内における自衛力というようなものを現状に即応したものに改めるということは、私どもは一貫して従来アメリカ交渉してきておる点でございまして、これを中途にしてやめるというようなことは毛頭考えてもおりませんし、またよくフルシチョフとアイクとの相互訪問によって世界情勢が一変するような議論がございますが、これは識者のとらないところであることは言うを待たぬと思う。私は、あくまでも東西の間の緊張は、話し合いによってこれを緩和していかなければならない。そのために両首脳が互いに訪問するということは、けっこうなことだ。しかしその話し合いの背後において、それではみんな丸腰になって、すべてこの日本の国の安全やあるいは重大な利益も放棄して話し合いをするというような、一足飛びにいくというような情勢がくると考えることは、これはもう私は、何人も良識ある人はそういうことは考えておらないと思う。あくまでもやはり先ほど申し上げているように、自由主義国自由主義国として十分に団結して、意向を取りまとめてアイクがソ連に話をする。共産主義の方の国は、自由主義の国とはや、や違って、ソ連の指導力というものが非常に強いわけでありますから、いわゆる共産主義国の間の団結というものは、ソ連が一方的にできるかもしれませんが、自由主義国の間におきましては、そういう意味において、互いの協力と、そうして団結を背後の力として話し合いをして、そうして共存の平和を作り上げようというのが話し合い情勢でございますから、そういう情勢を考えてみますと、日本が、当然日本の安全のために他から侵されないというこの情勢を、できるだけ合理的な基準において定めるということは、私は、当然にやるべきことである、またそれが決して国際情勢に何ら逆行するというような問題ではないのでありまして、その意味において、従来から取り来たっておる方針に基いての日米交渉は続け、またその結論を得るならば、適当ななるべく早い機会に批准を求めるという考えでございます。その前に解散してこれを民意に問うというようなことは、私は、現在のところ考えておりません。
  45. 小澤佐重喜

  46. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は、社会党の立場とは基本的に考え方を異にいたしております。従って、岸総理の海外訪問一ヵ月間の成果は、ただいまの報告を承わっただけでも実に十分なものがあったと私は考えております。さような立場から、私は少し社会党と違った立場から、岸総理の所信を外遊とも関連せしめて承わりたいと思うのであります。  社会党の今のお話によりますと、フルシチョフとアイゼンハワーとの相互訪問交換ということによって、一度に世界の雪解けが訪れようとしておるのだというふうな前提に立って、いわば非常に甘い国際情勢認識の上に立って、日本の進むべき外交路線を決定しようというようなお考えのようであります。しかし私たちは、総理が今重ね重ね御指摘になったように、もとより両陣営話し合いによって平和を招来しようという考え方に対しましては、われわれ世界人類ことごとくがこれを待望するところではありますけれども、さりとて、それによって一ぺんに世界の平和が訪れるとも考えません。いな米ソ間の相互の深刻な対立の底流というものは、依然として解消するものであるとは考えておりません。かような見地から考えましたならば、先ほど総理が御指摘になりましたように、いよいよもって自由陣営を強化する。ヨーロッパにおきましても、イギリス等との関係において、総理はそのことを非常に痛感された。またNATO団結の姿を見て、総理も感ずるところがあったというようなお話でありますが、私は、そういうふうな自由陣営の強化こそが、この世界平和をもたらすゆえんであるのだ、そういう強い信念に立って今後の外交を進めなければならぬということを、今度の外遊の成果として痛切にお考えになったと考えるわけであります。さような観点から考えると、私は、今回の日本安保条約改定の問題も、アイク、フルシチョフの相互訪問によって安保条約改定が要らなくなったのではないか、見送るべきではないかというような考えではなくて、逆にますますもってこの安保条約改定によって、日本の独立と極東の平和を保たなければならぬ、それこそが世界平和に通ずる道であるのだというかたい信念にお立ちになったのではなかろうかと思います。かような点に関しまして、ますますこの安保条約改定が必要であるということに対する総理の御所信をまず承わっておきたいと思います。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 御意見にもございましたように、また私がヨーロッパ訪問報告の中にも申し上げておりますように、自由主義国の間の団結を固めていくということ自体、これが今日のこの世界東西陣営の間における話し合いを、何らかの成果をもたらすためにも、そうでなければならぬし、またそういうふうな団結をはかっていくことが、世界の平和を作り出すゆえんであるというお考えにつきましては、私、全然、同感でありまして、ことにヨーロッパ諸国においてそういう考え方は主要各国首脳部が一致して考えている。従って私がこの日米安保条約というものをただ日米の間の協力という——もちろん条約でありますから権利義務を負うものは日米の間でありますけれども、その根底をなすものは、やはり自由主義陣営協力して侵さず侵されずという態勢をとって、そうして東西話し合いに貢献し、世界の平和を作り上げる上に寄与するという意義を持っておるものであると思います。従って安保条約改定の問題は、先ほど来申し上げておるように、私は現下の世界情勢からいうと、一日も早くこれをなし遂げて、そうして自由主義陣営の間の団結を固めて、お互い協力して世界の平和を作り上げていくということに進んでいかなければならぬと思っております。アイクとフルシチョフの相互訪問等によって世界のこういう大勢根本的に変るというふうな考えは、私は間違いであると思う。従って従来の考え通り進んでいかなければならぬ、かように思っております。
  48. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 安保条約改定に臨む御所信を承わって、私たちは大いに意を強うするわけでありますが、この安保条約改定するということに二つの大きな柱があるように私は考えます。  まず一つには、従来の不平等なものを直して、日米が対等の立場に立つのだという、つまり日本の自主性を確立するということが一つの眼目でもございます。しかしもう一つの眼目とは、先刻来私も強調し、総理もおっしゃっておられまするように、この日米関係、広く言うならば自由陣営、この日米関係を一段と強化していくということに私は今度の安保条約改定の相当大きな部分が占められるべきではなかろうか、かように考えるわけであります。この二つの目的というものが、考え方によりますと、その二つを非常に極論いたしますと、全く相反する二つの対立したものとも考えられるわけでありまするけれども、たとえて申しますと、先刻来社会党の方からお話になっておりました事前協議という項目の中に集中的にこれは表現されておると思います。すなわちアメリカが極東の平和のために事前協議をしようというときには、日本はいつでもこれを断わるのだ、頭から断わるということを前提として、そうして果してこれで断われるかどうかというようなことから論を進めていかれておるようでありまするが、私たちは元来新しい安保条約改定の精神から言うならば、その相互協議の結論というものは必然的に双方の合意ができ、もう言わずしてこれは一致すべきものである、そういう前提に立つべきものであると考えている。むしろ私たちは条約根本精神というものはいつでも協議できるのだというように考えるべきではなくして、日米が共同して日本の平和を守ろう、ここに重点を置くべきものではなかろうかと考えまするし、また先刻来協議と言ったところが、日本は万一の場合にいやだと言う、ノーと言うことができないのではないかというようなことを強調されておったようでありますが、協議ということは、御承知のように日本の民法の中におきましても、たとえば協議離婚というような場合におきましても、協議というものは勝手にやれるべきではなくて、双方の同意の上に初めて協議が成り立つわけでありますから、従ってさような必配は私は少しもなかろうと考えるのでありますが、ややもすると今度の条約改正の真意というものは日本の自主性を高めるということをあまりに強調する結果、いつでもアメリカの要求したものを片っ端からけ飛ばしてしまうというような考え方もあるようでありますが、私はむしろ日米双方が協力して、そうして日本とアジアの安全に当るのだという考え方に重点を置くべきものではなかろうかとも考えるのであります。また同時に今申しまするこの二つの考え方というものが相反するものではなくして、これは二つの柱の上に安保条約というものが成り立つことが可能である、かように考えるわけでありまするが、いかがな御所信でありまするか。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりましたように、安保条約改正の根本には、日本の自主性を高め、日本の独立国としての立場なりあるいは日本の自主的な立場というものを十分尊重するように改めていきたい、現在の安保条約というものが非常にアメリカ一方的、すべてのことがアメリカが独断でできるというような形になっておることを改める点に一方主眼があるわけであります。しかし日米の間の協力関係ということはどうなるかという問題でございますが、現にこの改定問題について、この現行の条約を作られたダレス氏と、藤山君との昨年の交渉の際にもダレス長官がみずから言っているように、条約というものが真にその効果を発揮するためには、両国に十分の理解と信頼と協力がなければ、どういう条文を作ったってその意味はない、あるいはアメリカの今度の言い方を見ると、日本一方的の——現在何かアメリカ一方的だといえば、今度の改定の要項の点は日本一方的というアメリカ側から見る見解もあるかもしれません。日米が真に理解し信頼し、その上に協力するということがあってこそ初めて安保条約の意義を達するのであるから、日本の自主的な考え方もまた日本立場から、日本国民の感情から必要であることは、アメリカ側においては従来、喜ばないことであってもある程度これを認めていくことが安保条約の真の目的を達するゆえんだということを強調されたと聞いておりますが、全く今佐々木委員のお話のように、安保条約を貫いている日米協力を強化するということは、この条約改正のやはり大きな眼目であると思います。
  50. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 以上のような観点に立ちまするならば、私は極東の平和ということに対して、十分日米間の事前協議の対象となるのは当然のことである、かように考える。しかも事前協議をした結果、それが日本の海外出兵に連なるわけではなくして、日本の防衛区域というものは、別に日本の施政下にある地域ということが規定されているわけでありますから、平和の問題を相談し合ったからといって、立ちどころにそれが日本の海外出兵になったり、あるいは再軍備などに連なるという問題ではないと思います。そこでしかしながら私はこのアジア、極東の平和ということは、全然日本が考える必要がない、こういうふうな説もあるわけでありますが、今日の私たちの国際間の通念といたしまして、極東の平和のないところに日本の平和があろうとは、私たちは夢にも考えることはできないわけであります。中にはこういう極東の平和というものが事前協議の対象になるとするからいけない、日本日本だけのことを考えればよいのだというような説もあるようであります。私はこれに対する総理の御所信を承わりたいと思いまする。が、やはり極東の安全があって日本の安全もあり得るのだ。しかし極東の平和が非常な危殆に瀕したというような場合におきましては、お互いに相談し合うということはもとより当然のことであるから、そのような極東の平和というものを削ってしまうという御意思は毛頭お持ちでなかろうと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約の主眼が日本の安全を保障するということにあることは、日米安保条約の大きな眼目でございます。しこうして同時に日本に駐留しておるアメリカの軍隊が極東の平和と安全のために出動できるということをこの条約の中に書くわけでございますが、これは今お話の通り日本の安全ということと、日本立場からだけこれを見てみまするというと、日本の安全というものが、極東において戦火が広まってくると安全や平和が害されるというような事態を、そのままに放任して日本の安全が保てるものでないことは、これは言うを待たないのであります。世界各地におけるところの情勢を見ましても、そのことは近くにおいて一つの戦争的あるいは侵略的な行為が行われたというときにおきまして、これに隣接するところの国の安全が非常に危殆に瀕するということは、当然考えなければならぬことであります。従って今度の条約において、極東の安全と平和という項目が入りましても、私は日本のためにこれは非常に害になる規定ではなくして、むしろ日本の安全を保障するためには望ましいことである。ただその場合に、日本が全然知らずに、また日本意向を無視してそういう事態が発生するということは、自主独立の国としては望ましくないことでありますから、これを協議事項にする。またこれに対して、日本はあくまでも憲法の範囲内において行動や義務を制限されることは当然でありますから、いかなる理由がありましても、極東にそういう事態が起りましても、日本日本の領域を出て、そうして海外に派兵するというような事態は絶対に起らないのであります。その点はつけ加えて申し上げます。
  52. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に条約の適用区域に関連しての問題でありますが、わが党の中にも沖縄、小笠原を条約の適用区域の中に含めるべきではなかろうかと御主張なさる向きもあるようであります。しかしながら、元来、言うなれば独立国としてその国の領土に対して防衛の責任を持つことは当然のことでございます。しかしながら不幸にして今日は日本の全領土に日本の主権が及んでいないというような現実の事態を考えますならば、沖縄、小笠原のみをこの防衛区域の中に含めるとなると、北方の領土はどうするかという問題も起ってくるわけでありますし、また憲法の制約もあるわけでありますから、今日の段階におきまして沖縄、小笠原をこの条約の適用区域とすることには非常な難点があるということは私も了承いたします。  ただ一つ、この際総理にお願いいたしておきたいことは、私も先般沖縄に行って、見て参りましたが、御承知通り終戦末期におきましては全島民の血と肉の犠牲において本土防衛のために尽したところでもありまして、ここに日本人が九十万人も住んでおるわけであります。これらの人々が万一の場合におきまして日本から海外派兵することによってこれを助けるということはあり得ないことでありまするが、万一外敵の侵略が起ったというときにおきまして、今日の米台条約、米比条約あるいは米韓の間に行われておりまするそれぞれの相互防衛条約によりましたならば、朝鮮人や台湾人やフィリピン人までもが、九十万人のわが国民を防衛に行ってくれるわけであります。さようなときにわれわれといたしましては、出兵以外になし得る日本人としてのいろいろな方策もあろうと思います。たとえば向うには終戦の末期まで日本から一ぱいの輸送船も迎えにこなかった。婦女子たちも玉砕し、記念碑も立っておるようなわけであります。従いまして、万一そういう危殆に瀕した場合におきましては、輸送船を送って疎開をさせるとか、あるいは医薬品を送るとか、あるいは食糧を送るというようなことによって、日本人としての同胞愛をささげることはできるじゃなかろうかと思います。それらの点につきましては十分総理の方におきましてもお考えを願って、日本人としての同胞に対するなし得る限りのことをやってやるというような措置を講じていただきたいと思うのですが、これに対する御所信を承わっておきたいと思います。
  53. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄、小笠原島における住民に対する非常に同情のある佐々木委員の御質問でございますが、これは当然日本政府としてあらゆる面において、そういう最悪の事態に処する場合におきましてはあらゆる援助をし、あらゆる方法によってこれらの住民の危険を除き、生活を確保するというようなことについてあらゆる手段をとるべきことは当然でございます。これらにつきましては十分政府としても強力にその援助方法を講ずる考えでございます。
  54. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に、先刻来社会党から鋭く追及されておりました条約の期限の問題でありますが、これは先ほど総理の御答弁がありましたので私は私見の一端だけを申し上げまして、御質問はいたしませんが、これは他の国際条約を見ましても、たとえばNATOが二十カ年の期限、ブラッセルの条約が五十年あるいは共産陣営における中ソ軍事同盟が三十年、ワルシャワが無期限というようなことを考えますならば、他の国際間のつり合いにおいて十年というものは決して長過ぎるものであるとも私たちは考えておるわけではございません。しかも今度の安保条約改定に当りましては、この期限を十カ年ときめると同時に、その中におきまして、国際連合の中において日本の安全を保障するような態勢ができたときにおいては、いつでもこの条約は終了するというような交渉が進められているようであります。従いまして私は、この十年間という期限を付することがきわめて不当なものであるとは考えていないということだけをつけ加えて申し上げておきます。  私はかような見地から考えますると、このわが党の見解も、政府とわれわれとのものの考え方もそんなに大きな開きがあるものとは思いません。国を思うあまり、いろいろな御意見もあるかとも思いますけれども、基本的に話をしますると、大体話はわかってきたように思うわけであります。そこで私は、今わが党内部において非常に意見対立があるかのごとき印象を与えていることはまことに残念に思うわけでありますが、総理としては、国民にPRするに際し、まずわが党の意見をまとめなければ仕方がない。従って私は、総理も所信があるだろうと思いますが、きわめてすみやかな機会に、国民に訴えるに当っては、少くともわが党、政府見解を一本にする必要があると思う。総理はこの重大性にかんがみて積極的に乗り出していただきたい、かように考えるわけでありますが、いかがでありますか。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 お話の通りこの問題は、今や、根本的に言うと共産国と自由主義国との間の一つの問題であるような様相すら国内においても呈してきております。先ほども申したように、私は日本繁栄日本の安全のためには、自由主義国の一員として自由主義国との間の団結を強めていくことが必要であり、またその中核をなすところの日米協力ということが絶対に必要であるという信念に立っております。従いまして、この安保条約の問題につきましても、党内においてのいろいろな議論を外から言っておりますけれども、なるほど一部において多少安保条約内容の一部についての議論もあります。しかしそれは安保条約の本体に関して意見がまとまらぬというような、たとえば社会党の言っておるように安保条約の廃棄であるとか、全面的反対論があるように誤解をされておりますが、決してそういう問題ではございませんで、一部分の意見の調整といいますかあるいは理解が十分にいっていないというようなことのために、党内において議論があるわけでありますが、民主政党としては私はこういうことはある程度議論を尽すことが適当であり、またいろいろな議論のあることは当然であろうと思うのであります。しかし、もはやこの段階にきてこれをいつまでも放置しておくということは適当でない。すみやかに党内の意見を調整し、また反対のごとき言動のあることに対しまして、党の総裁として十分私も責任を持って党内を取りまとめることに全力をあげて、そして国民に十分な理解を得るように努力をいたして参りたい、かように思っております。
  56. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に先ほど松本君からもお話があったようでありますが、調印前に条約内容を示せというようなお話でありましたが、私は外交交渉の途中において条約の全文を示すということはでき得ないことだと思います。ただこの間もある新聞に世論調査が出ておりましたが、また私たちが各地を回って社会党の方とともに安保条約の問題でいろいろ意見を開陳いたしましても、知らないという人がほとんど大多数のようであります。新聞社の世論調査によりますと四〇%以上がわからぬというようなことです。これでは困りますので、一つこういう点につきましては、できるだけ外交はやはり国民とともに進むのだという観点に立ちまして、要点だけは、少くとも条約に盛られるような点だけは適当な機会に適当な方法によってできるだけ知らして、そうして国民に十分徹底させるという措置をとっていただきたいことを一つお願いを申し上げておく次第であります。  次に、私は中共問題に関連をして一つ承わっておくわけでありまするが、これは先ほどの総理マクミラン首相との会談の経過を承わりまして、このマクミラン総理に意思表示をいたしたことをも大体私も想像いたしまして、わが日本中共政策は決して間違ったものではないということを、私たちは考えるわけであります。つまり中共承認の問題とか、国連参加の問題等につきましては、にわかにフルシチョフやアイゼンハワーの訪問があったからといって、これは変えるべきものでない、かように考えるわけであります。そこで今までは中共は政経不可分論というものを強く主張いたしました。また日本の反対党である社会党も強くこれを主張されております。すなわち日米関係を解消するとか、安保条約を解消するとか、日本国民政府との関係を断交するとか、そうすることによって中共承認をする。さようなことが前提となって日本中共との貿易再開や経済関係を復活していこう。こういうふうなことを従来主張してきておったわけでありまするが、しかしながら私たちはさような必要がない。日本は依然として従来の方針を続けていくのだという今の総理の御説明であったと考えます。  かようなときにおきまして、近く石橋さんも中国訪問されるそうであります。あるいは松村さんもそのうちに中共に行かれるというようなうわさも聞いておるわけでありまするが、この御両氏とも社会党とは異なった観点に立っておられるわけでありまするから、両氏が中共へ行って祖国日本政府を、日中一緒になって打倒しよ)というふうな、そういう声明を出そうとされるような非常識な方ではありませんので、この点については安心しておりまするが、既存の条約というものは十分承認した上に立っての日本中共との国交の再開をはかっていきたい。かようなお考えでありますから、私はけっこうであると思いまするが、きのうの総理との会談におきましては、総理から別に大した意思表示もなさっていないようでありますが、しかしながら私は十分な見識を持たれた方でありまするから、安心をし、信頼をして石橋さんを送りたいと考えまするけれども、しかしながら時も時でありまするし、私は社会党のように今一番絶好のチャンスであると私たちは考えておりません。いな中共側はどういう意図でもって、しきりにわが保守陣営に対して、保守陣営の有力者に対して呼びかけをしてくるかということの中共側の真意も考えなければならない、かように考えるわけでありますから、私は私個人といたしましても行かれる方の十分なる御自重ということもお願いをしなければならぬ。かように考えておるようなわけであります。  申すまでもなく、今日中共というものは貿易政策においてもかなり見込み違いで行き詰まっております。また人民公社というものの行き過ぎから農業政策も大失敗をいたしておることは、皆さんも御承知通りであります。かようなときに当って、中共側から進んで日本に申し出をしてくるということにつきましては、私は日本の考えているほど甘いものではない。向うとしては何らかの考え方があるのだ、かように考えざるを得ないわけでありまして、向うから言ってきたということも、いわば岸さんの主張しておられました静観政策、しばらく静観しようという静観政策の成果、結果としてその通りこれが現実に現われて、やがて中共側から日本にそういう話し合いが持ってこられたものではなかろうかと考えるわけであります。しかしまんまと向う側の野望に乗せられるということは危険なことでありますし、国民政府におきましてもすでにその危険性のあることも指摘をいたしておるようなわけであります。そこで社会党の諸君やあるいは中共政府の従来とってきた方針というものは、日本安保条約改定という方向と日中の国交回復と申しますか、日中間の貿易の再開というようなこととは相反する二つのものである。従って社会党の御主張などは、日米安保条約をやめてしまって、そうして日中間の国交回復をはかるという御主張でありますが、私はそうではなくして、日米安全保障条約改定ということと、それから日中の国交回復というものは両立し得るのだ、また二つが両立しないならば、日本がその一方を選ぶということはできないのだ。従って両立するという原則の上に立っての中共政策があるのだという考え方を堅持すべきであると思うのでありますが、総理の御見解はいかがでありますか。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 日本が戦後今日まで国力を回復し、経済の復興がなり、国民生活も向上してきておる。いわゆる国力が充実したということが、日本国際的地位を高める一番の根拠になっていることは御承知通りでありますが、それがどうしてできたのかということを考えてみますと、私はわれわれが戦後一貫して自由主義立場を堅持しており、またアメリカとの関係を緊密にして、日米協力の上に立ってきたということが非常に大きな力になっていることは、これは何人といえども、この現実を否認することはできないと思います。こういう際にこの関係を、日米を離反して、日米協力関係を弱めていくというようなことは、私は日本としてとるべき道ではない、こう確信いたしております。従ってその意味において先ほど来お話がありましたように、私は安保条約改定という問題も、日米理解と信頼とを深めていく一つの道であり、従ってこれをなし遂げるということが絶対に必要であると思います。しかし私どもはどの国をも仮想敵国であるとかあるいは敵国呼ばわりをするような立場はとっておらぬのであります。共産主義国といえどもあるいはソ連その他の国々といえども、われわれは国交を正常化しております。最近ハンガリー、ブルガリア、あるいはルーマニア等に対しましても国交を回復してきております。こういう意味において共産主義国を敵視しておるものではないことは言うを待たないのであります。ただ中共日本との関係におきましては、あるいは国民政府関係があり、また国連におけるところの関係があり、こういう国際情勢の上に立って、今すぐこれを承認し、これと外交関係を開くということは、これは現実の問題としてはできないことである。従って経済やあるいは文化の面においてわれわれが交流を盛んにしていって、両方の理解を深めて、お互い立場を尊重し合うという立場に立って、そうして国際情勢のいろいろな変化に応じて、将来の問題として政治関係というものは考えていくべきものであるというのが、私ども考え方でございます。私はこの考え方においてこの日米協力関係、これをちっとも弱めたり離反したりすることなくして、日中間の貿易やあるいは文化の交流をし、将来の国際情勢の変化と相待って、これとの親善関係を深めていくということは決して矛盾したことではなしに、両立さしていくようにしなければならぬ、それを今の政治経済と不可分で、直ちに承認をするとかあるいは現在存在しておるところの条約を廃棄するとかいうような事柄を条件としてでなければ交流ができないという立場こそと私は二者択一的なこの立場を堅持して、そうしていわゆる共存共栄の立場を私は無視するものである、かように思っているわけであります。従って今回の石橋氏やその他の人々の訪中という問題におきましても、こういう自民党の既存の考え方の基礎の上に両国の誤解を解き、理解を深めていくという上から見ますと、有力な人が行かれるということはけっこうなことである。しかし同時にいろいろな政治的意図があるやに想像する向きもありますから、両氏とも十分に自重してもらうことは当然でございまして、また両氏とも今までの政治生活から見ましても、決して一部に懸念されているような、向う側に利用されて、そうして日本の利益を害するとかあるいは日本のためにならないような結果になるということは、万々ないものと私は確信をいたしております。
  58. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後に私は、これを申し上げまして結論といたしたいと思います。  安保条約改定ということは、これはまさに岸内閣にとっての特筆大書すべき歴史的な重大事であるのみならず、日本の将来の国運を左右する重大な問題である、かような見地に立ちまして、岸総理はきぜんたる態度をもって、心中深く期するところがあって対処せられると私は考えるわけでありますが、しかし一面、なるべくこれは国民の支持を得なければならぬ。無理押しをするような印象をなるべく与えるべきではない。しかし今までのところ、私たちがどのように言葉を尽し、どのような態度をもってこの反対陣営に向って呼びかけましても、おそらくはわれわれの主張を聞いてはくれなかろうと思います。思いますけれども、私たちはやはりこの外交というものはできますならば、挙国一致、党派をこえた国家の重大問題として考えなければならぬ。かような観点に立ちまして、この条約がいよいよ最終的な段階を迎えましたならば、私は岸総理から、わが党の総裁として、あるいは総理として反対党の党首であるところの鈴木茂三郎さんにも、われわれの意のあるところはこういうことを考えておるのだから、君たちも協力してくれないかという両党首会談というようなことも、たといその結論がむだであっても、当然そういう段階をとるべきではなかろうか、かように考えますことが一点。これに対する総理の御所信を承わりたいことが一点と、もう一点は、今日まで主として藤山外務大臣とマッカーサー大使との間に非常に熱心な折衡が続けられて文句のないところのりっぱな草案ができつつあるやに承わっておりますが、これまた私は最後の段階を迎えました場合におきましては、国民の要望や——あるいは場合によっては国民の不安もある、そういうことから考えまして、なるべく国民の要望というものも条約の中に生かしていかなければならぬ。さような措置をとる上からいって、藤山さんとマッカーサーとの段階が終ったあとにおきまして、いよいよ最後の仕上げの段階になったときにおきましては、一面国内におきまして反対党の党首であるところの鈴木さんと隔意なき懇談をしてもらうということと、同時に私は、場合によっては総理がワシントンを訪問されて、ハーター国務長官なりあるいはアイゼンハワーなどと合ってでも、これを最後の仕上げをするときには万全の措置をとれば、国民が見てもそれほどまでにやったのだからという国民考え方もやはりおのずから出てくるのではなかろうかと思います。従って、ややともすれば決して無理押しするわけでもなく、十分審議の時間をかけて条約内容はなるたけ国民に知らせてやってきたつもりではおりますが、現実の問題としては今もってやはり無理押しをするというような考え方を与えていないわけでもないのです。従いまして、以上申しましたような岸・鈴木会談というようなことや、場合によってはワシントンに乗り込んでいって、国民の要望をぶら下げていって、そうして最後の折衝をするというようなことまでをも私はお考えになる必要がありはせぬか。いな、そういう措置をとらわれることを、この条約の重大性にかんがみ、またこの条約のできるだけ円満な国会通過、批准の円満なる遂行ということから考えて、私はそういうことを希望いたすわけでありますが、これに対する政府の御所信と、それから先刻申し上げましたように、私はきわめて重大なる内容を盛った条約にかんがみまして、たとえば反対党などにおきましては、院外の暴力を行使するというようなことを現に放言をしておる向きもあるようであります。また院の内部におきましても、きわめて非合法なる議事の妨害であるとか、あるいは場合によっては審議権の放棄というような議会政治を否認するような、あるいはむしろ軽視する、じゅうりんするようなことを言っておる向きもあるようであります。先刻来解散というような説もありましたが、このことはすでにわが党といたしましては、安保条約改定ということは、過ぐる選挙におきましてもわれわれは国民の前に掲げて、そうして信任を受けてできた内閣でありますから、この安保条約改定を、今さら国民に解散の手段によって世論を聞くということは少しも必要はなかろうと思う。要は岸総理のきぜんたる態度と、そうしてそのためにはこれを遂行する十分なるところの措置をおとりになって、国民の納得のいくような措置をおとりになることが必要ではなかろうかと考えますから、以上申したあなたと反対党首との会談アメリカ行きの問題、ないしこれに臨まれるあなたの御決意のほどを承わりまして、私の質問をやめておきます。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約改定の問題は、私数年にわたってこの問題と取り組んできておるのであります。最初にアメリカに、当時の重光外相と一緒に参りましてダレスと会ったときにこういう話が持ち出されておる。その後私とアイゼンハワー大統領との会談におきましても、また昨年は私の意見を持って、藤山外相がダレス国務長官とお話をしておるというふうに、数年にわたって国民の願望であるこの安保条約を、公正、妥当かつ日本の自主的な立易を十分に認めた条約改定するという考えのもとに、あらゆる面から研究もし、あらゆる面から努力をいたして参っております。しこうして、ようやくこの安保条約改定の問題も、大体において大筋において、最後の段階というふうなところまできております。しかしこの問題が国民の一部におきまして非常な反対があり、また国民の大多数がまだ十分に理解をしておらないというような事態から見まして、この問題を成立せしめるために、私としては全力をあげてこれらの障害を克服して進んで参らなければならないと思うのであります。この考え方に対しましては、反対党の社会党では反対であろうと思いますけれども、私自身は、日本国民繁栄とその福祉のためには、日米の間におけるところの関係を強化することが必要であります。またいかなる国の政治におきましても、政治を担当する以上は、国民が安全感を持って、そうしておのおのの生業についていくことが、その福祉と国民生活の水準を上げるゆえんでありますから、こういう意味から申しますと、安保条約改定ということは、これは岸内閣に課せられた最も大きな使命の一つだと私は考えております。そういう意味において、私自身があるいは党内におきましても、また党外におきましても、責任を持ってこれが実現のために努力をすべきことに当然であります。それだけの私は決意でおります。  それにつきまして、今おあげになりました反対党の鈴木委員長との両党首の会見の問題や、あるいは最後の段階において、アメリカにおいて、大統領やその他の責任者と再度の交渉をするという段階を持つというような御趣旨につきましては、十分に各種の推移を見て私は考えていきたいと思います。今お話のような点は国民に納得し、国民の大多数がこれに協力してもらうことが絶対に必要でございますから、そのために必要である、また必要な時期におきまして、これらの問題についても十分善処して考えていきたい、かように思っております。
  60. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岩本信行君。
  61. 岩本信行

    ○岩本委員 私に与えられた時間がきわめて少いので、従って簡潔にお尋ねをいたします。安保条約というものが、現行条約がいわば無期限な年限のない状態にあることは事実でございますので、従ってここにある程度の期限を付して、その間に国内情勢を整え、あるいはまた世界情勢の変化等もあるので、ここに日本の自主性に合うような改正をしょう、こういうことはわれわれの立場からすればきわめて当然なことだと考えるわけであります。そこで従来のことを考えてみますと、たとえば警職法の改正、これらはかかってPRの不足、こういうことがはっきりわかるわけでございます。私どもがその後各地を歩きましても事情を説明すればよくわかる人のみの方が多い、こういう事実からいたしましてPRの必要がある。そこでこれに臨むところの総理としての信念、熱意、こういうことについては、ただいま佐々木君の質問において御答弁がございまして、私も了承したところでございますけれども、たとえば阻止しようとする側にいたしましても、成立を期する方の側にいたしましても、これは提出の時期においていろいろの覚悟が違って参ると存じます。たとえば安保条約の改正を国会に提案する。臨時国会であろう、あるいは通常国会冒頭であろう、いろいろに言われるわけでございます。しかし相手のあることで、条約が成案を見なければ提案にならぬことはこれはもとよりでございます。しかしながら今もお話に、またお答えになりましたように、最終段階にきている。従ってもすでに見通しは大体ついた、こういうことでございますので、この際総理としても、国会への提案の時期、こういうものについてはっきりされた方が、PRする角度——先ほど申し上げましたように、成立を期する方もあるいは阻止する方の側からいたしましても必要であろう、こういうふうに考えますので、まずこの点について、総理はいつごろこれを提案できるという考えに立っておられるか、この点をまずお尋ねいたします。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 この条約は言うまでもなく非常な重要な条約でございますから、国会における審議につきましても十分に審議を尽していただかなければならぬと思います。そういう関係から申しますと、臨時国会でこれを提案してほかのものと一緒に審議してもらうということは、審議期間の上からいっても私は適当でないように思います。通常国会におきましても、審議期間を十分に持つという意味におきまして、なるべく通常国会の冒頭に近い時期に提案して御審議を願うことが、こういう条約の性質上当然であろう、かように考えております。もちろんまだ両国の間に調印されたわけではございませんので、従ってその関係もございますけれども、私は通常国会の劈頭に提案できるように、この目途のもとに努力をしていきたい、かように思っております。
  63. 岩本信行

    ○岩本委員 今度の改定で大体において十年間、もちろん交渉の過程において十二年になるのか八年になるのか、変化も若干ございましょうけれども、目ざすところは十年、こういうことでございますが、そういたしますと、かりにその通りきまったとすれば、十年たてば安保条約は解消することになる。そういたしますと、解消するということは、日本国自体が自分の力で自衛ができるときだ、こういうふうに解すべきであると思います。一体自己自身で自国が自衛できるとなれば、こうした安保条約というものは要らないはずであるわけであります。従って今回十年というものを目ざして、十年たてば解消するのだという建前に立つわけでございます。しからばその間において日本の自衛力というものを、人の世話にならずに自己自体でやっていけるのだ、もちろん原爆とか水爆とかいうような、そうした攻撃に耐え得る国は世界じゅうにない、いわんや日本は戦争をしないのだ、ほんとうの自衛だけだ、こうなっております。その自衛力につきまして、たとえばこの十年間に解消してもよろしいのだという建前まで持っていくわけでございますからして、この自衛力というものはこの間にどういう整え方をして、どういう方向にまで持っていって不安なからしめるということに、今日のところお考えになっておるかということと、及びいま一つは、すでに大勢の方から申されましたように、アイク・フルシチョフの会談ということで緊張緩和の方向にあることだけは間違いないわけでございますが、それによって一切が解決しないということもこれまた当然のことでございまするが、緊張緩和の方向にあることだけは間違いない。そこで十年は長いのだ、こういう議論があるわけでございますが、先ほど十年を選んだ考え方については私どもも了承するわけでございます。しかし緊張緩和世界じゅうができて不安はないの。たという時代がくれば、こんないいことがないことはたれも異論のないところでございます。そこで十年ときめて、途中においても話し合いの上でこれを変更できるのだ、こういう条項を一項差しはさむという考え方はないのか、この点についてまずお尋ねをいたします。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 期限を十年にするかどうかという問題につきましては、先ほど申しましたような理由で、われわれは大体十年が妥当であろうと考えております。しかし今岩本委員のお話のように十年たてば必ず解消するのだということではなくて、やはりほかの条約にもありますように十年たった後においては一年の期間を付して一方的にこれをやめることができるというような規定にするつもりでおります。この十年たてば必ずこの条約がなくたるのだということを前提としては実はわれわれ考えておらないのでありますけれども、その途中においても両国意見が一致すればこれを廃止することも、あるいは改定することももちろん可能でございます。そういう条項を特に入れる必要があるかないかにつきましては、なお研究を要すると思いますが、少くとも現在無期限な安保条約でございますけれども両国意見が一致してこれを廃棄して新しい安保条約を作ろう、こういうことに了解がいって今交渉しておるわけでございますからして、いかなる条約といえども両国意向が一致すれば、これを期間中といえども改正するとか廃棄するとかいうことはもちろん当然できることでありますけれども、それをさらに条文に念のために明らかにしておくかどうかということについてはなお研究をしたいと思っております。私ども一番望ましい形は、ラルシチョフやあるいはアイクの相互訪問、その他各国東西陣営首脳部の間の会談によりまして世界的の軍縮問題が解決される。さらに国際連合において国際警察軍というようなものが設けられて、世界の平和がこれによって維持されるという状態が出てきて、そうしてこの安保条約であるとかあるいは各国におけるところの自衛もしくは軍備というものが、リーゾナブルな点に制約されるという時代が来れば一番望ましいのでありまして、またそういうことを特に望むというような考えも込めて、この契約期間は十年に定め、その後一年の通告をもって一方的に廃棄できるというようにしましても、国際連合においてこれにかわる適当な処置が講ぜられた場合においては、本条約は廃棄されるものとするというふうな条項は特に入れて、そういう情勢を作り上げることには、国際連合を中心として、今後といえども日本としては努力をしていきたい。かように考えております。
  65. 岩本信行

    ○岩本委員 国際連合の強化によって、安保条約も要らない、集団安全保障も要らない、そういう時代のできることを何人も歓迎するわけでございますが、さしあたり日本としては、十年を目標にして安保条約の要らない時代の自衛体制を作る、こういうことが眼目であろうと存じます。この間における自衛力の強化の考え方、これについてお尋ねしておいたわけでありますが、お答えがないので、この点を重ねて一つお尋ねいたします。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 日本の自衛隊の強化の問題につきましては、すでに国防会議におきまして、日本の国情と国力に応じて漸増するという基本方針をきめております。それに基いてあるいは三年計画とかあるいは五年計画等で、陸上あるいは海上等の自衛力の増強に具体的の計画を定めて参っております。特にこの自衛力というものは、言うまでもなく相対的のものでございまして、ただ一国の中だけでこれがきまるわけの問題ではございません。その周囲におけるところのいろんな情勢が、やはりその国の防衛力の基礎として考えられなければならぬと思います。こういうような点から申しますと、それならば周囲の情勢を考えてみるというと、その情勢に対して果して自衛できるだけの自衛力を一国の力で持ち得るかどうかということに関しましては、先ほど申したように、やはり日本の国情と国力というものを無視して、ただ具体的に自衛力というものを増強するたけでは日本の安全というものは考えられないだろう。従いまして今お話がありましたが、十年間にわれわれは安保条約をたくする、日本一国たけで日本の完全なる防衛をするだけに自衛力を増強するの、たというふうな考えは、私どもは実は持っておらないのであります。あくまでも、一方においては十年たてば国際情勢を見て一方的に廃棄できるというふうな恨拠を作ると同時に、一方においては国際連合その他においてそういう集団的な防衛機構というようなものがなくなってもよろしいような情勢を作り上げていく。また一方においては軍縮その他の国際的な協力話し合いにおいて解決するという各種の方策と並んで、日本の自衛力の増強というものも岡力と国情において漸増していく、こういうほかなかろう、かように考えます。
  67. 岩本信行

    ○岩本委員 安保改定と並んで行政協定の改定が行われると存じます。行政協定改定については全面改正論者もありますけれども、全面改正ということになれば新条約、新協定ということになりますから、私どもはそういうふうには考えない。ただし行政協定の不備な面はこの際自主的に改めていかなければならない、これは当然だろうと思うわけであります。その中で、たとえば基地の問題でございますが、御承知のようにまるで遊んでいる基地を解除しない。たとえば、もと一万人がやっておった、それが今日は千人以下だ。同じ何十万坪をそれで費しておる。こういうことで、これは日本としてもきわめて重大な損害であるし、当を得ない行き方だと思うのでありますが、今回の改定において、基地の整理をして絶対必要のところは必要、不必要なところは不必要ということで解除をする、こういう方向にぜひ持っていってもらいたいと思います。これは主として外務大臣だろうと存じまするけれども、こういう面についてどうなっておるかということと、及び労働力、技術力の問題でございますが、安保条約締結以来、延べ何千万人になるか、何億人になるか、相当多数の日本人労働者が、いわゆる駐留軍労務者ということで働いて参ったわけでございますが、この契約ほど不安定な契約はない。実に迷惑千万で、労働者の不安というものは限りなきものがあるわけでございます。先般も米軍直接雇用の者、あるいはまた政府の間接雇用になっております者をPDに切りかえる、こういうことで、これは全国的でございますが非常な混乱をしたわけでございまして、現にまだその問題は闘争中のものもある、そういう状態のときに、今度は逆にPDから直接雇用の方に回す、こういうような面もごく最近において現われてきておるわけでございます。こういうことでありますと、これに関係する労働者、勤労者というものは一日も安定しない。のみならず、退職金の場合におきましても、今までたとえばPDならPD限りできた者は、年数継続において最後にやめるときには格好がつくわけでございますけれども、途中で直接雇用にまた転換させられたという職種の転換、そういうことで、不安と同時に、あるいはまた労働賃金というものにおいても非常な影響がある、こういうことが現に行われておりますが、この労働問題の不安定を完全に解消する、こういうことがこの協定の中にはっきり組めないのか。いわんや、これからまだ十年は完全にやるんだ、こういうときに、きょう、この時間の現在においても、不安というものが顕著に現われておる、こういう事実についてどういう改定を行われようとしておるか、この点についてお尋ねを申し上げたい。
  68. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 不要の基地の返還については、現在でも調達庁を通じて行われていることでありまして、むろん行政協定そのものの字句上の問題ばかりでなく、技術上の運営の問題で、不要の土地をできるだけ向うから解除してもらうということは、われわれがやらなければならぬことだと思います。調達庁としては当然そういう点について絶えず折衝してやらなければならぬ。そういう点について協定文上何か特別な書き方をする必要があるかどうかという点急については、行政協定につきましては、今お話のまうに全面的と申しますか、各条にわたって検討をいたしておりますので、まだ残っておる問題が相当ございます。特に今御指摘の労働関係の問題等についてはまだ折衝中でございますから、それらの問題について十分各条にわたってわれわれとしては検討をいたしておるわけであります。今の労働関係の問題につきましても、基本的には日本の労働法規によることになっておりますので、その点の改正は必要ないと思いますけれども、今お話のありましたような運営上からくる欠陥というようなものがございます。これを協定文上どう書いて、そしてそれらの運営上からくる欠陥を除去し得るか、また協定文上はそういうものをこまかく書かない場合におきましても、実際の取扱いの上において十分な協議の上でそれらのものを改善していく、過去におきます行政協定の運営においては、そういう運用上の問題で相当に問題を起しておる点がございます。これらの点については当然政府としても十分な注意と戒慎とを持って、そうして運用上の問題について常時アメリカ側と折衝して参らなければならぬと思うのであります。協定文上におきまして今各条にわたって検討しておりますし、ことに御指摘のような労働関係等につきましては、まだ最終的に話し合いがついておりませんので、われれれとして一日も早く、できるだけ日本の労働者が不安のないように協定文上にも言い得るように努力しておる次第でございます。
  69. 岩本信行

    ○岩本委員 安保条約締結以来、行政協定締結以来、今の問題は十年一日のごとく雇用の一貫性がないというところに不安が続いておるわけでございますから、今お話もありましたが、今度の改定につきましては、今後十年もあることでございますから、できるならはっきりと協定の文章の上に不安のないような行き方をとっていただくことを、この点希望を申し上げておきます。  次にいま一つ、最後にお伺いいたしますが、北鮮帰還の問題は、これは政府の御尽力、また国民協力ということで今日の段階になりまして、きわめてこれは御同慶にたえないと思います。これは岸政府、藤山外交——この問題は超党派で殊勲甲に値する成績だと思うわけてございます。人道上の問題について確固不動の信念で推進したというところに、こういう成果をおさめたわけでございますから、こういう正しいことに向っては、若干どういう異論があっても断固遂行するという、その結果は必ずいい結果になるのでございますから、今後そういう方向で臨んでいただくわけでございますが、一体北鮮帰還という問題は今日赤十字がやっておる。しかしながらこれは国の事務なのか、赤十字の事業なのか、扱ってもらう上において赤十字が仕事をする、こういうことはきわめて当を得ておりまして、いわんや国際委員会もこれに関与してくれるということで、きわめてけっこうなことでございます。しかしながら今度の帰還者の中には人数はいろいろ議論がございますけれども、戦時中に国家総動員法で日本で徴用した人も含まれておる、あるいは徴兵にとった人もおる。こういう面から考えますと、これは日本の国といたしまして重大な関心を払って、いわんや平穏なる民族の集団移動という事件でございますので、赤十字が扱うということはきわめて当を得ておりまするけれども、国というものが、この問題は自己自身の仕事であるという見地に立つべきであると私は考えるのであり、もしそうだとすれば、今後の実際行動の上においていろいろの援助その他、手伝わなければならない、こういうふうに考える次第でございますが、この件に関しまして岸総理はどういう見地に立っておられるかということをお尋ね申し上げたい。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 この北鮮帰還の問題は、事務としてはこれを日本赤十字社にまかして行わしめておりますし、また赤十字国際委員会がこれに同意を与えてこれをやるということになっております。しこうしてそれに関する費用等につきましては国が支出して、この仕事が円滑にいくように国としましても助力をいたして、十分その目的を達するように今後ともやっていくつもりであります。
  71. 小澤佐重喜

    小澤委員長 菊池義郎君。
  72. 菊池義郎

    ○菊池委員 総理ももうお疲れのようでございますから、簡単に具体的に申し上げます。長たらしい質問をするようなやぼではございませんので御安心を願いたいと存じますが、まず期限の問題では、先ほど岩本委員もおっしゃいましたが、十年たてば国連が強化されて安保条約の必要がなくなるとか、あるいは国際緊張がなくなって安保の必要がなくなるとか、そういう考え方だけで、さらに続けて米国と安全保障条約を結ぼうというお考えはございませんでしょうか。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、条約には期限を付しますけれども、その期限がたてば、十年なら十年がたてば当然廃棄されるということではなく、解消されるということではなくして、その後十年たてば一年というような予告期間を置いて一方的にこれが廃棄できるというふうな、これはこの種の条約の従来の慣例から見ましても、そういうふうな形に持っていきたい、こう思っております。従いまして十年たてばその時の情勢によって日本がこれを続ける必要がないという状態があるならば、日本から一年の予告をしてこれを解消する。しかし依然としてやはり続けていっていることが適当であるという見地に立ちますならば、そういう予告期間を置いて解消の意思を表示するということをしなければ、そのまま続いていくわけでありますから、それはその時の情勢によって判断して、時の政府がこれを決定する、かように考えております。
  74. 菊池義郎

    ○菊池委員 たとえば中ソ同盟条約のごときは三十年になっておりますが、この三十年というのはソ連の方から望んできめたことでなくて、弱体国家であった方の中共からねだりにねだってこの三十年という長い期間をきめたということをわれわれは専門家から聞いておる。そういうことを聞くにつけても、十年なんという短かい期間は、われわれにとっては実に心もとないことで、もっともっと長期間——いくらでも途中でもってその条約を解消することはできるわけなんだから、双方の合意によりまして、もっともっと長い期間、二十年でも三十年でもこの大米国を日本に縛りつけるというその手ぎわがどうしてないか。これをわれわれは情なく思う。その十年というのはどっちから言い出したのか。米国から日本に言い出したことか、日本の方から米国へ言い出したことか、それを伺いたい。
  75. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 十年たちますと、ただいま総理が言われましたように、どちらかの国においてこれを解消すべき事態が発生したと考えますれば、通告によってやれることになろうと思います。もちろん、われわれ交渉の過程において、本問題、期限の問題を取り扱う上にいろいろの御議論のあることは当然でございまして、各人各様の御意見をわれわれも伺っております。また交渉そのものにおきましても、われわれとしては各種の条約その他を検討しながら、そうした問題について一般的に考えをきめて参るということで、どちらが十年と主張したというようなことはございません。おのずから、それらの情勢の判断の上に話し合いを詰めて参りました結果が、そういうことになって参ったわけであります。
  76. 菊池義郎

    ○菊池委員 私は二週間ばかり前にマッカーサー大使に会いまして、この安保条約の問題についていろいろ話しましたが、彼は、今度の新しい安保条約の案は日本に対しては非常な福音であるということを主張し、また、みずからもそういうふうに考えておる。でありますからして、日本といたしましては、この条約の期限はなるべく——今からでもちっともおそくはないのでありますから、もっと二十年とかあるいは三十年とかいうふうに、こちらの方から持ち込んでみたらどうかと考えるのでありますが、いかがでありましょうか。
  77. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 期限の問題につきましてはいろいろな御意見がございます。むろんわれわれは、それらのものを全部頭に置きながら交渉に当っておるのであります。そういう状況のもとに話し合いをして、大体十年が適当であろうというふうに現在考えております。
  78. 菊池義郎

    ○菊池委員 総理大臣にお伺いいたしますが、先ほど、極東の平和安全云々という条項は残すという所信を承わりまして、安心いたしましたが、そうなりますと、行政協定の方はNATO並みに改定した方がいいという議論も党内にありますが、この点について総理の御見解はいかがでありますか。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 行政協定の内容につきましては、日本の自衛隊というものは各国の軍隊とはおのずから違った地位を持っておりますので、必ずしもすべてをNATO並みに、同じようなことにいくというわけにもいかない点があるように考える点もあります。しかし、私は、現在の行政協定の運営その他を見ておりますと、占領時代の考え方がいろいろな点においてまた残っておる点も少くないように思うのであります。自主的な独立国として、できるだけ対等な立場において安保条約改定するという以上は、この行政協定もやはり全面的に検討して、NATOやその他各国の事例等もできるだけ参酌して、対等な形において、合理的な形において改正することが必要であるという見解のもとに、NATOの問題も、あるいはドイツアメリカが結んでおりますボンの協定の条項も、いろいろなものを参酌して、日米の間で今折衝をいたしておるのでございます。ただ、その場合において、先ほど申し上げましたように、日本の自衛隊というものは、一種特別な、他国にない、軍隊と違っておる立場にありますので、そういう点においてはやはりこれらの例にそのままよるということができない点もあるように聞いておりますが、いずれにしても、精神の上からいうと、できるだけそういう各国の事例を参酌して、それに近いものにしたい、かように考えております。
  80. 菊池義郎

    ○菊池委員 河野一郎氏はしきりに藤山外相の独走々々ということを言っております。われわれは決して独走しておられるとは絶対に考えておりませんが、それでも、そういう言葉が出るということは、何らか総理と外務大臣との間の意見がまだまだ完全に一致しておらないのではないかというような印象を世間に与えていかぬと思うのでありますが、総理と外務大臣は安保条約改定についてよく話し合い、そうして十二分にお互いの了解がいっておるのでありましょうか、どうでしょうか。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 岸内閣として、この問題をずっと一貫してやらなければならないという、先ほど経緯についてもお話を申し上げましたような沿革を持っております。従いまして、私自身この問題につきましては全責任を持って当らなければならぬことは言うを待ちませんが、同時に、外交交渉の問題でございますから、外務大臣が、向う側の代表であるマッカーサー大使といろいろ交渉することは当然でございます。しこうして、重要な問題に関しましては、外務大臣と私との間には常に話し合いをいたしておりまして、私と外務大臣との間に、意見相違であるとか、あるいは了解の違っておるというような点は一点といえどもないということを私は明確に申し上げる。党内の問題に関しましては、なお調整を要するような点については先ほど申したような決意でもって当るつもりであります。
  82. 菊池義郎

    ○菊池委員 党内がまとまるといたしましても、なお反対党が執拗に反対することはもう見えすいておるのでありますが、そういう場合において、われわれは、それに対して不退転の決意を要求する次第であります。前に警職法の改正のときに、せっかくわれわれの同志の椎熊君が知能をしぼってああいううまい手を打ったにかかわらず、とうとうこれを途中てやめてしまった。まことにわれわれ残念でたまらなかったのでございますが、今日の党内のごたごたも、やはりあのときに端を発しておるのです。朝鮮の李承晩、これは頑迷なおやじですが、国家保安法を通すときには、警察を動員して、反対党を議会から締め出してやっておる。なかなか話せるおやじだと私は思っておる。私は、警職法の改正のときも、総理に対して、あなたの先輩の長州の高杉晋作のことを考えてもらいたい、彼は一人でもって俗論党を制して、一人の力で藩論を一変してとうとう倒幕、維新の大業を成就した、こういう高杉晋作の事績をちっとばかり参考にしてもらいたいということを申し上げたことがあったのでございますが、今度こそは、どうか絶対に、いかなることがあってもこの問題を完遂するようにしていただきたい。それでなければ、われわれはまことに寒心にたえない次第でありますが、もしいよいよの場合におきましては、単独審議でもこれを遂行するだけの決意を持っておられるかどうか、この点についてもちょっとお伺いしたいと思います。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 民主政治の運営は、言うまでもなく、国会において、反対の意見を持っており反対の立場をとっておる人も十分に意見を尽して、そうして最後に多数決でこれをきめるというところに、私はその真髄があると思います。私は、一部において、あるいは審議に応じないというような議論があることを間々耳にするのでありますが、これは、私は、反対党といえども、そういういやしくも国民から選ばれて、そして重要なる、ことに国民が最も関心を持っておるこの安保条約のごときものを、審議権を放棄してしまうというようなことは、民主政治のもとにおいてはあり得べからざることだと思います。従いまして、単独審議というようなことは私は今考えておりません。そういう事態を起さないように、この安保条約日本にとってぜひとも改定をしなければならぬということを国民も十分に了承し、反対党の方も、意見としては内容的には反対であても、私は今申しますような態度をとってもらってあくまでも審議を尽してこれを完全に成立せしめる、そのために私自身の全力をあげることはもちろん、党内の結束をはかって進んで参りたい、かように考えております。
  84. 菊池義郎

    ○菊池委員 社会党の諸君が審議に応じないということはもう大体見えすいておるのであります。今までの例によって大体察することができるのであります。ところで、総理は議会は解散しないということを言い切っておられます。解散もせず、単独審議もやらないというようなことになりますと、この目的を達するには、あとはどういう道を選ばれるのであるか。
  85. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、民主主義の原則をあくまでも貫いて、そしてこれが成立をはかるために全力をあげるということを申し上げておりますが、今菊池委員はいろいろなことを御想像になっておりますが、そういう事柄の起らないように万全を尽して、そしてこれを民主的に成立せしむるという決意でおります。
  86. 菊池義郎

    ○菊池委員 もう一つ。改正案によりますと、この防衛の地域は日本の施政権の及んでいる地域だけで、あとからもしこの施政権が返還され、あるいはまた領土として入ってくるような地域は、あとから防衛の区域に入るというような御説明でありますが、これに対しまして、こういう意見もまたあるのです。たとえば択捉、国後あるいは歯舞、色丹のごときは、日米間にそういう取りきめをするとその防衛の区域に入るということをおそれてソ連が日本に返さないであろう、結局領土返還を妨害することになるのじゃないかという意見もあるのでありますが、これに対してどういう見解を持たれますか。
  87. 岸信介

    岸国務大臣 北方における領土問題につきましては、これはおそらく党派を越えて全国民の要望であり、確信であるあるところの領土の地域が、今日ソ連によって占拠されておるという事態が解決されておらないというために、実は平和条約もできない状況にあることは、菊池委員も御承知通りであります。しかし私どもは終始一貫日本人の確信であり、また歴史的の事実から見ましても、当然日本の領土であると考えておるところの地域の領土問題が解決しない限りにおいては、平和条約が結び得ない状態にあることも御承知通りであります。従いまして、この問題については、安保条約改定であるとか、安保条約のいかんであるとかいうことでなくして、日ソの間にもう長い間の交渉を通じての見解対立があり、相違があるわけでございますから、今御指摘になりましたようなこの安保条約の規定いかんによってこの問題の解決が容易であるとか、むずかしいとかいう結果になるとは、私は考えておらないのであります。
  88. 小澤佐重喜

    小澤委員長 菊池君、申し合せの時間が過ぎましたから、もう一点だけにして下さい。
  89. 菊池義郎

    ○菊池委員 もう一点。安保条約の改正に関しまして、今日ソ連や中共は全力をあげてこれを阻止すべく日本の左翼団体その他に呼びかけておるということははっきりしておる。それには莫大な金も使われておるということでありますが、政府当局では公安調査庁あたりの情報をよく聞かれて、善処していただきたいと思うのであります。聞くところによりますと、保守党の中にももう何名か向うの手先に使われておる者があるといううわさすら聞いておるのでありますが、実に残念でたまりません。そういうことは万あろうとは思わないのであります、そういう点十分御留意願いたいと思うのでございます。  一言申し上げて、これでもって私の質問を終ります。
  90. 小澤佐重喜

    小澤委員長 答弁は要りませんね。
  91. 菊池義郎

    ○菊池委員 答弁は要りません。
  92. 松本七郎

    松本(七)委員 今岩本委員から出された北鮮帰還問題でちょっと急を要する問題がありますので、政府の方針を伺っておきたい。それは岩本さんは、これは日本外交の殊勲甲だと言われましたけれども、私どもの判断では、まだほめる時期じゃないと思う。というのは、日韓会談で、在日朝鮮人の法的地位に関する委員会で、この問題が必ず持ち出されてくるだろう。それは韓国側から、在日朝鮮人の法的地位が確定するまて北鮮帰還は延期すべきである、こういう意見が必ず出てくることを私どもは予想しておりますが、そういう事態になっても政府としては、北鮮帰還は日韓会談と切り離して断行されるのかどうか、また法的地位が確立しないという前提に立つならば、出国の手続等にも当然影響してくるだろうと思うのですが、そういう場合でも出国手続をして、便宜的にどんどん帰還だけは促進する方針なのかどうか、またそれが可能かどうか、その点だけこの際伺っておきたいと思います。
  93. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日韓会談再開に当りまして、北鮮帰還の問題についての従来の日本の方針というものをわれわれは述べて、それを確認したわけで、韓国側は今の問題について日本の従来の態度というものを了承しております。従いまして、法的地位の委員会等におきまして、北鮮帰還の問題について何か問題が起りますことは、私はあり得ないと考えております。従って、日本としても既定の方針を遂行する、国際赤十字の監督のもとに、既定の方針を遂行するということでございます。
  94. 小澤佐重喜

    小澤委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十九分散会