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中曽根国務大臣 核融合の問題につきまして
原子力委員会に御激励をいただきましたので、善処いたしたいと思います。
それから、宇宙科学の問題は、
日本の現在のいろいろな
態勢を見ますと、ほとんどゼロという状態であります。ところが、最近の外国における動向を見ますと、非常なる進歩と、国家の力の入れ工合というものが顕著になっておるのでございます。そうして、世界の学界におきましてはコスパルというものがありますが、コスパルもなかなか問題があるようであります。しかもコスパルにくるものは学術的な情報等でありまして、割合におそく、薄い。ところが、それにいたしましても、
日本ば学界あるいは官界、あるいは民間研究所等におきまして何ら連絡もなく、その日暮らしをしておったというような状態になっておるのであります。これをそのまま放置しておきますと、最近のいろいろな情報によりますたとえば、アメリカのテレビ、会社等が
日本とか、あるいはアテネあたりに相当調査に来ておる。
学者の話を開いてみると、三万六千キロの上空に、
日本の上とアテネの上しとブェノスアイレスの上とに三つ人口衛星を飛ばしてやればテレビの世界中継がやれる。それをやりますと世界の独占権を握って――
日本の国内で今テレビのチャンネルを取るのにこれだけ騒動しておるくらいでありますから、世界の権利を取ると、えらいものになるわけであります。それをローマ大会に間に合わせるとか、東京大会に間に合わせるとか、いろいろ言っておりますが、必ずしも遠い将来ではないとわれわれは
考えております。もしそういうふうになりまして、
日本が何もしてないという状態でありますと、特許の網で
日本は張りめぐらされておるかもしれませんし、ちょうど明治の半ばごろ、海底電線を知らない間にみんな敷設されてしまって、知らない間に敷設された海底車線の使用料を払って
日本が使わなければならぬ、そういう危険性もあるわけであります。
原子力の初期とよく似ておるわけであります。放置しておくと、
日本はパテント・コロニーといいますか、そういうものになるおそれがありますので、この際
日本の国内にあります各機関の体制を整えて、そうしてにれらに対する
一つの順序と
方向をきめまして、
日本が宇宙科学技術の問題に取っ組んでいくという
態勢を作ることが非常に重要であると思ったのであります。ゼロかける百はゼロでありますが、一かける十は十になる。ゼロの状態が一番いけない。そういう気持がありまして、
関係権威者の御
意見を承わりまして宇宙科学技術振興準備
委員会というものを作って、その準備
委員会が今宇宙化学技術開発に関するコーオーディネーション、オリエンテーションをやって、来年度以降どういう体勢で進めるかということを審議しておるわけでありますしそういうことで、国内体制を一方において整備して、計画的にこれを進めていくと同時に、ある程度の年次的な目標も作ってみて、そうして行く
方向を国民の目の前に明らかにし、国民の支持を得るということが必要であると思いますので、現在そのような
考え方で当面の開発計画を策定している最中であります。この九千万の民族に夢を持つなといっても無理でありまして、やはり、なるだけ夢を実現する
方向へ持っていくのが政治家の責任であるように思います。しかし、これは一国だけの努力では今日ではなかなかなし得ない状態であります。現に、アメリカとイギリスは人工衛星打ち上げの協定をやったと新聞に発表されておりますが、非常に緊密な連絡をやりまして、イギリスが
自分で人工衛星を作ってアメリカのロケットで発射して上げるというプロジェクトで進んでおるようであります。フランスもアメリカと非常な協力をやりまして、特にドゴールになりましてからは、観側その他に対する周波数をアメリカと統一して今進めておる。カナダとアメリカはまた非常に緊密な連絡で、北極のオーロラ等を
中心にして協力
関係を展開しておる。中共とソ連はまった非常に緊密な連絡をやっておる。
日本だけは
一つの谷間になっている
感じがあるのであります。従って、太平洋をはさんでおるこの両国が協力するということは
一つの自然な姿でもありますしいろいろな諸般の政治、経済的な体制を
考えてみますと、一番進んでおると思われるアメリカとある程度協力
関係を
設定して、ちょうど
原子力の初期のときのように情報を相当こっちにもらう、向うとも協力してもらうというにとは、非常に
日本のこの学問、科学技術の
発展に有益であると私は思います。しかし、これには非常な注意を要するものでありまして、コスパルというものがありまして、とにかくユニバーサルな形でやっているという点も
考えてみますと、われわれとしては、やはりあくまで国連を
中心にして、この問題について国際機関が設立されることが望ましい。らょうど
原子力の場合の国際機関ができたと同じであります。それを念願し、それを推進していくということを前提にいたしまして、それに至るまでの当面の間は、二カ国あるいは多数国と協力
関係を
設定することを妨げない。かりに、二カ国と協力
関係を
設定した場合にも第三国との協力は排除しない。それから、われわれがやっておりまする宇宙科学技術という問題は、やはり平和目的、それから自主性を
中心にして運営していく、それから公開をやる、軍事的秘密等は盛らなりいでやる、こういう
考え方でわれわれは宇宙科学技術の当
平和利用へ乗り出していき、たいと思うのであります。そういう
考え方からいたしまして、アメリカ側に対して、もしわれわれの
考えを
受け入れるならば協力
関係を
設定した方がいい。現在の状態から見ますと、
日本の電離層とか宇宙線の研究に世界でも相当進んでおる。南極に対して
日本が観側に参りましたが、あれはやっぱり
日本の学問の背景があるからできた。国連で松平康東氏が大気圏外
平和利用特別
委員長をやっておるが、これもやはり学問の背景があるからやれた。ところが、いかに地球上でやっても、高くロケットを、発上げられたら、それで今までの学問がくずれるというような
状況になってきておりますので、新しい
方向で
日本の学問の元本を仕入れなければならぬ。今は利子で食っているようなものであります。そういう点から
考えまして、
日本の科学技術体制を進めていくためにも、アメリカと提携するという形で進んでいきたいと思っておるのであります。それで、アメリカ側に対してそういう協力
関係を
設定する意思があるかどうか、今開かしております。まだ正式な回答を聞いておりませんが、間接的な情報ではこちら側の態度を見まして、どういう具体的な提携をやるとか、そういう
内容を見て向うは
考えをきめたい、そういうようなものだと開いております。