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中曽根国務大臣 東海村の
原子力研究所の正面玄関の前に行きますと、みやげもの屋が並んでおりまして「
原子力せんべい」とか「
原子力ようかん」というものを売っております。
世界の
研究所を見ましても、
科学研究所の前にそういうみやげもの屋が並んでいるというところは、あまりないようであります。これを
考えてみますと、
日本の
原子力というものは、初めは広島、長崎のエレジーから出発した。次に観光のセンターになりつつある。これを
産業と
学問の
原動力にまで持ち込まなければいけない。一般
国民の認識も、そこまで持っていかなければならない。そういう点で、
国民の認識
水準というものは、
外国と比べるとまだまだ低いように思います。広島、長崎の悲劇は大きな
国民の悲劇で、われわれの心からは消え去らないものでありますが、それを乗り越えてもっとたくましい前進をする
体制に
国民全体の常識を持っていく必要があるように、私は非常に痛感いたしました。そういうふうに持っていくためにも、
国民に安心を与えるということが非常に大事であります。原子炉を置く場合に、たとえば関西の
研究炉のような場合も、いろいろいざこざがあったりいたしましたが、これはどこに
欠陥があるかということをいろいろ
考えてみますと、やはり、政治の面において、
国民が安心できるような
体制を作ってやるという点に、われわれ反省しなければならぬ点があるように思いました。そういういろいろな点を
考えてみまして、いずれ、
日本には発電やその他いろいろなことも起って参りましょうし、今のままに野放図にこれをやりますと、将来取り返しのつかないような乱雑な、非能率な、不
経済なものになるおそれがあるように思います。たとえば、今の東京都を見ておりますと、自動車の混雑で困っている。これを終戦直後雄大な知事が出て、雄大な
仕事をしていたら、私はこんなことになっていなかったと思う。現在の東海村の辺を見てみましても、あの立地
条件その他を
考えますと、あるいは将来二十年、三十年後には、北九州の重工業地帯みたいな
原子力工業地帯に成長していくかもしれません。そういういろいろな点を
考えてみますと、やはり、将来そういうふうに
発展する
可能性のある地帯、あるいは
原子力を中心に育てていくという地帯につきましては、今からその土地のデザインをよく
考えて、立地
条件に合ったような
計画的な都市の造成をしていく必要があるように思うのです。たとえば、
原子力研究所から出た水を処理するにしても、それを無害なものに、たとい廃棄物処理でやったにしても、そこから出てくる下水というものがいいかげんな下水では、市民は困るということになる。そうすると、
原子力というものを
考えた下水の
一つの構造というものをわれわれは
考えなければならぬということも
考えられます。あるいは交通にしましても、あるいは保安にいたしましても、あるいは衛生にいたしましても、あるいは厚生の問題にいたしましても、あるいは教育の問題にいたしましても同様であります。私は、この間東海村へ参りまして前から
考えておったことでありますが、おそらく、あの辺は将来
原子力の大きなセンターに成長していくだろう、もし、ある人が構想を加えるならば、北の方の日立の工業地帯、それから久慈港を中心とするあの港湾地帯、それから南の方の
研究地帯、それに、おそらく農業のセンターみたいなものもガンマー・フィールドを作るとか、そういうものが出てくるかもしれない。そういう二、三十年後の将来のことを頭に置いて中央がある
程度の考慮をしてやった都市
計画というものを
考える必要がある。中央がある
程度そういうふうに
考えてある
程度助成をしてやるとか、あるいは安全保障を確保してやるとか、そういうことをやらないと県知事も動けない、あるいは地元の町村長にしても動けないわけであります。そういうことを
考えてみまして、これは国が率先して地方に安心を与えるような
措置を
考えてやる必要がある、そういうふうに
考えまして、
原子力都市
計画法というような構想を実は持ったのであります。これは、先般の
科学技術特別
委員会におきまして
委員の中からそういう御発言もありまして、
委員会においても、いずれ小
委員会をお作りになってお取り上げになるということも拝聴いたしておりましたので、われわれ
政府側といたしましても、それに即応いたしまして、そのような準備態勢に入ろう、そういう
考えでおるわけであります。大体どういう法律を作るかということは、これからみんなで集まって構想を練っていくわけでありますが、たとえば、地域を指定するというようなこと、それから、その地域内に
原子力の
研究施設あるいは関連
産業施設の総合基本
計画を立てるというようなこと、それから、
原子力の
研究施設及び関連
産業施設の
運営に必要な交通、輸送、住宅、衛生、厚生、教育等の
施設の基本
計画を大きく立てるということ、あるいは指定地域内における土地の
使用や取得についてある
程度の
措置を講ずる必要がありはしないかということ、あるいは指定地域内における建物の建築や、そのほかの
産業の
施設の建設についても、やはりある
程度の考慮をする必要がありはしないか、たとえば、こういうようなことを総合的に
考えまして
原子力都市
計画法という構想を練っていきたいと思います。
原子力委員会の中に、できましたら、そういう専門部会か何かを作りましてその構想を練って、
外国の例を調べまして立法の準備をしていくという態度で進みたいと思います。これが半年後に議会に出るとかなんとかということは、今のところは申し上げかねますけれども、そういう
考えを持って、一日も早くそういう法案を作るべく
努力をして参りたいと思います。
国会におきまする御議論等も拝聴いたしまして、われわれの方もそれに負けないように
整備して参りたいと思う次第であります。