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1959-03-24 第31回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十四日(火曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小幡治和君及び松浦清一君辞 任につき、その補欠として仲原善一君 及び阿具根登君を予算委員長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    主査      西田 信一君    副主査     栗山 良夫君    委員            笹森 順造君            下條 康麿君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            仲原 善一君            阿具根 登君            羽生 三七君   国務大臣    通商産業大臣  高碕達之助君   政府委員    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁長官    官房会計課長  杠  文吉君    科学技術庁企画    調整局長    鈴江 康平君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    通商産業大臣官    房長      齋藤 正年君    通商産業大臣官    房会計課長   阿部 久一君    通商産業省企業    局長      松尾 金藏君    通商産業省重工    業局長     小出 榮一君    通商産業省軽工    業局長     森  誓夫君    通商産業省繊維    局長      今井 善衞君    通商産業省鉱山    局長      福井 政男君    通商産業省石炭    局長      樋詰 誠明君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    中小企業庁長官 岩武 照彦君    中小企業庁振興    部長      川瀬 健治君    工業技術院長  黒川 眞武君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 西田信一

    主査西田信一君) ただいまから第二分科会を開会いたします。  まず、昭和三十四年度一般会計予算特別会計予算及び政府関係機関予算のうち、通商産業省所管議題といたします。政府から御説明願います。
  3. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) はなはだ勝手でありますが、きょう、のどを非常に痛めておりますから、官房長にかわってさせますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  4. 齋藤正年

    政府委員齋藤正年君) ただいま議題となっております通商産業省予算各案について御説明を申し上げます。  まず三十四年度通商産業省所管一般会計予定経費要求額は百二十九億七千七百三十四万七千円でありまして、これを三十三年度予算額百八億三千七百三十七万九千円に比較いたしますと、二十一億三千九百九十六万八千円増額することになるのであります。  三十四年度予算のうち政策事項につきましては、これを(一)貿易振興及び経済協力費、(ニ)中小企業対策費、(三)鉱工業技術振興費、(四)産業基盤強化費の四項目に分類いたしまして御説明申し上げます。  第一に、貿易振興及経済協力費といたしましては、世界的な輸出競争激化情勢に対処して海外市場維持拡大をはかるため、前年度に引続き各般の貿易振興事業充実強化するとともに、新たにプラント類輸出促進雑貨輸出振興のための施策を講ずることといたしまして、前年度対比三億二千百九十四万九千円増の二十億二千五百三十二万六千円を計上いたしております。  一、まず、貿易振興国家的中核団体として前年度設立されました特殊法人日本貿易振興会事業運営に必要な経費として前年度対比一億九千七百九十三万七千円増の十億八千三百三万七千円を計上いたしまして、従来に引続き海外市場調査国際見本市参加貿易斡旋所運営日本商品の海外宣伝等総合的に輸出振興事業を推進する所存であります。  なお、軽機械輸出振興につきまして、今国会法律案提出し、御審議いただいておりますが、これが対外宣伝は、本振興会が行うことといたしておりますので、新たに、これがために二千万円を計上いたしております。  二、プラント輸出振興につきましては、従来から日本プラント協会補助金を交付してプラント類輸出に関する技術相談業務を実施せしめて参りましたが、今国会プラント類輸出促進臨時措置法案提出いたしまして、本年度よりプラント輸出に伴いますコンサルティングの瑕疵に起因するリスク保証につき、国家補償制度を創設いたしまして積極的にプラント輸出振興をはかる所存であります。国が三十四年度補償契約を締結できる限度は予算総則第十一条により六十億円と定めまして、この補償契約により国が支払補償金は、三十四年度中にはいまだその支払を行うに至らない見込みでありますので一応、補償金百万円と事務委託費百万円を計上いたしております。また、プラント協会に対する補助金につきましては、前年度より事業規模を拡充することといたしまして一億五千九百九十四万九千円を計上いたしております。  三、なお貿易振興関係といたしましては生糸及び絹織物の海外宣伝費補助四千三百六十九万円、中共国際見本市開催費等補助六千二百九十一万一千円等海外市場開拓費として一億四千九百六十六万九千円、日本輸出雑貨センター仮称設置運営費補助五千二百八十九万円、輸出品検査改善強化費七千百三十二万八千円等輸出品品質意匠向上費として二億二千百三十四万三千円を計上いたしております。  右のうち輸出雑貨センター設置運営費補助につきましては、輸出雑貨デザイン盗用防止輸出検査の厳正をはかるため、新たに補助金五千二百八十九万円を計上いたしまして、これら業務に携わる業界の中核団体として本センターを設立し、デザインの登録、認証制度の確立、共同検査場設置運営等業務を行わしめることといたしております。  四、次に、経済協力対策費といたしましては、輸出市場の培養、輸入原材料安定的確保中小企業海外進出等をはかりますため、東南アジア諸国等に対し、その開発計画に協力いたしますことが、ますます重要性を加えつつありますので、これら諸国に対し、経済協力を積極的に推進する所存でございまして、前年度対比二億三千七百三十五万九千円増の四億九百三十二万八千円を計上いたしております。  おもなる経費といたしましては、前年度より継続のインドの西ベンガル及びマラヤにおける海外技術センター設置費二億四千十五万八千円、新たに設立いたします海外経済総合研究所調査事業費として一億円、ほかに投資等基礎調査費補助海外技術者受入研修費技術者及び中小企業者海外派遣斡旋事業費等であります。  第二に、中小企業対策費といたしましては、中小企業わが国経済に占める重要性にかんがみまして、前年度対比十億二千五百三十二万八千円増の二十一億七千九十万二千円を計上いたしております。  一、中小企業対策費として、特に重点をおいた事項といたしましては、中小企業設備近代化でございまして、前年度対比四億円増の十億円を計上し、中小企業設備合理化を一そう推進することといたしております。  二、次に、中小企業の第一線の指導機関強化をはかりますため、公設試験研究機関設備更新補助中小企業相談所運営費補助、都道府県の診断指導費補助等二億八千六百四十三万一千円を計上いたしております。  三、共同施設補助につきましては、ほぼ前年と同額の九千五百万円を計上いたしましたが、共同施設については新たに工場排水の規制に関する法律に基きまして、工場に対し必要な汚水処理施設設置せしめることとなりましたので、特に中小企業に対しては共同施設としてその設置を助成いたすこととし、従来の共同施設補助金新規に五千万円を増額計上いたしております。  四、なお、中小繊維工業設備調整補助金といたしましては、実質的には前年度同額の七億円を計上し、綿スフ及び絹、人絹、織機の買い上げを促進することといたしております。  第三に、鉱工業技術振興費でありますが、最近における先進各国の目ざましい技術の進歩に対処するため、前年度対比一億五千九百四十九万九千円増の十八億一千七百三十万一千円を計上いたしております。  一、おもなる事項といたしましては、まず、国立試験研究所重要研究費等に必要な経費として、前年度対比一億九千七百八十九万二千円増の十二億八千九十五万四千円を計上いたし、国立試験研究機関設備更新近代化をはかりまして、前年度に引き続き電子技術オートメーション技術生産加工技術エネルギー対策技術汚水処理技術等わが国経済にとって喫緊の重要研究を推進することといたしております。  なお、三十四年度におきましては、技術振興のための基本的問題である技術者待遇改善をはかるため、試験研究所研究員待遇改善費として所要の経費を新たに計上いたしました。  二、次に、民間における試験研究補助につきましては、四億三千万円を計上し、国家的見地より見て重要と思われる応用研究工業化試験機械設備試作等について助成を強化する所存であります。  なお、中型輸送機につきましては、六千万円を計上して前年度に引き続き設計研究を進めますが、三十四年度からいよいよ試作の段階に入りますので、経済援助資金特別会計から三億円出資し、これに民間出資を加えまして、特殊法人日本航空機製造株式会社仮称)を設立することといたしております。  三、なお、技術振興関係といたしましては、ほかに、原子力平和利用研究費として二億八千万円程度科学技術庁より当省所管試験研究機関に移替される予定であります。  第四に、産業基盤強化対策費でありますが、前年度対比三億四千七百四十六万一千円増の十四億九千四百五十三万八千円を計上いたしておりまして、その内容のおもなるものといたしましては、  一、まず、工業用水確保が今後における工業生産の伸長のため重要不可欠な基盤である点にかんがみ、工業用水道事業費といたしまして、北伊勢、横浜、北九州等地区継続事業のほかに、川崎、尼ヶ崎大阪等地区新規事業に対し補助を行うこととし、前年度対比三億八千六百五十万円増の八億八千六百五十万円を計上いたしております。  二、次にわが国産業生産性向上を推進するため日本生産性本部に対する補助として一億四千五百万円、天然ガス開発中小鉱山探鉱奨励炭田総合開発等資源開発費として一億一千六百六十八万七千円、石炭鉱害復旧事業費として九千二十五万八千円等の経費を計上いたしております。  以上をもちまして当省所管一般会計に関する御説明を終ります。  なお、当省の所管いたしております特別会計につき以下歳入歳出予算の大要を簡単に御説明申し上げます。  まずアルコール専売事業特別会計でございますが、三十四年度歳入予定額は三十三億一千四百三十三万一千円、歳出予定額は二十九億四千百八十四万四千円でありまして、資産、売掛金の関係を加減しますと、三十四年度益金予定額は三億六百二十三万八千円となります。  第二に、輸出保険特別会計でございますが、三十四年度歳入歳出予定額は、ともに六十七億九千二百九十一万六千円でありまして、歳入のおもなるものは保険料収入九億四千六百二十三万円、資金運用収入二億八千五十万円、雑収入二億五千四百三十九万二千円、前年度剰余金五十三億一千百七十九万四千円であり、歳出のおもなるものは支払保険金七億五千五百八万円、予備費五十九億九千百三十万六千円であります。  第三に、特定物資納付金処理特別会計でございますが、本会計特定物資輸入臨時措置法に基くもので、三十四年度歳入歳出予定額はおのおの二十八億九百三十四万円で、歳入のおもなるものは納付金二十八億八百三十三万円であり、歳出のおもなるものは産業投資特別会計へ繰入二十八億円であります。  以上をもちまして一般会計及び特別会計予算の概要につき御説明いたしましたが、この際、当省関係財政投融資計画について簡単に御説明したいと存じます。  昭和三十四年度における当省関係財政投融資総額は一千五百四十七億円でありまして、これに自己資金等を加えた運用総額は二千八百四億円となります。これを昭和三十三年度と比較いたしますと、運用総額につきましては三十三年度当初計画二千五百七十五億円に対しまして二百二十九億円増となります。  なお、本計画の前提といたしまして電力鉄鋼についての世界銀行借款二百六十八億円が織り込まれており、またさらに経済情勢及び民間金融情勢の推移に応じまして、財政投融資計画を弾力的に運用することによりまして、重要産業および中小企業ならびに貿易振興経済協力促進のための資金確保につき遺憾なきを期する所存であります。  一、まず、開発銀行でございますが、三十四年度における開発銀行融資重点は、わが国経済安定的成長を目標といたしまして、産業基盤強化産業構造高度化資源有効利用に直接的に貢献する産業に指向し、従来からの電力海運石炭鉄鋼特定機械合成ゴムと並び都市ガス化学肥料産業関連施設等重点的に採り上げることといたしました。  運用総額は三十三年度の六百二十億円に対し六十億円増の六百八十億円を確保するものとし、このため財政投融資といたしましては、三十三年度の三百二十五億円に対し百二十五億円増の四百五十億円を確保する計画であります。  なお、六百八十億円の配分計画電力二百五十億円、海運百八十億円、一般産業二百五十億円となっております。  二、次に、中小企業金融公庫でございますが、中小企業設備合理化近代化が大企業のそれに比較して著しく立遅れている現状にかんがみ、設備合理化近代化とその企業の経営の安定化に資するための融資中心として運用いたすものとし、運用総額は三十三年度改定計画六百十億円に比し、三十五億円増の六百四十五億円を確保するため、運用部及び簡保資金借り入れ二百七十五億円を行うこととした次第であります。  なお、三十四年度におきましては、前年度に引き続き直接貸に重点をおくものとし、三十三年度の九十億円に対し十億円増の百億円を確保する計画であり、また中小企業者金利負担を軽減する見地から三厘程度金利引き下げを行う予定であります。  三、次に、中小企業信用保険公庫につきましては、三十四年度においては保証協会保証規模を拡大し、保証料率を引下げることによって、中小企業金融充実をはかるために融資基金として産業投資特別会計からの出資十億円を行うことといたした次第であります。  四、次に、商工組合中央金庫につきましては、中小企業に対する組合金融充実をはかるために、三十四年度におきましては、三十三年度当初計画に対し二十億円増の百五十億円の貸出純増を行う計画であり、このため産投出資十二億円、運用部及び簡保資金による商中債引き受け二十億円、計三十二億円の財政資金投入を行うことといたしております。また財政資金投入の効果として懸案の金利引き下げを実現し得ることとなり、現在のところ平均三厘程度引き下げ予定しております。  五、次に、輸出入銀行でございますが、三十四年度におきましては、三十三年度に引き続きプラント輸出促進をはかるとともに、東南アジア等に対する経済協力の進展と賠償の本格化等に伴いまして、三十三年度当初計画に対し七十億円増の八百億円の貸付を行う計画でおります。このため三十四年度におきましては出資七十億円、融資二百九十億円、合計三百六十億円の財政資金投入することといたしております。  なお、出資融資額配分につきましては、年度末に若干の貸し倒れ準備金を積み立て、かつ現行の輸銀貸付金利を維持し得るようにいたしたものでございます。  六、次に、電源開発株式会社につきましては、三十四年度におきましては、前年度に引き続き田子倉、奥只見御母衣等の大規模貯水池式発電所の建設に重点を置き、ほぼ三十三年度並みの四百九十億円の工事規模確保する計画であります。このため四百億円の財政資金投入するほか、世界銀行からの借款の成立を期待し、これにより三十六億円をまかなう計画であります。  七、最後に、石油資源開発株式会社につきましては、海洋試掘中心に三十三年度に対しまして二億円増の二十九億円の事業規模予定し、とのため二十億円を産業投資特別会計より出資する計画であります。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計および特別会計予算の御説明を終りますが、なお、御質問に応じて詳細に御説明申し上げたいと存じます。何とぞよろしく御審議の上可決せられんことをお願いいたします。
  5. 西田信一

    主査西田信一君) この際、お諮りいたします。他の分科担当委員から質疑の御希望があります場合には、これを許可することにいたしたいと存じます。あらかじめ御了承得たいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 西田信一

    主査西田信一君) 御異議ないと認めます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  7. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまの説明の中にも、産業基盤強化対策等が相当組まれておりますが、なお、そのほかにも財政投融資額等から考えまして、あるいは石炭合理化法案改定等も出ておるようでございますから、この際、総合燃料対策について、大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。現在石炭関係を見てみますと、大体三年に一回大きな貯炭に悩まされておるようでございます。二十七年度を見てみますと、非常に貯炭が多くなりまして、約六百万トン程度貯炭ができまして、そして非常に問題を起した大きなストライキもございました。それから三十年は御承知のように石炭合理化法案まで作らなければならないようになったわけでございます。さらに三年経った昭和三十三年は、すでに一千万トンの貯炭をこえて、一千二百万トンに最近なっておる。そういたしますと、政府が考えておる総合エネルギー対策の五ヵ年計画で参りますと、実際は本年は五千六百万トンの石炭が要るはずでございます。三十三年度は五千四百万トンの石炭が要るはずでございます。その五千四百万トンを出せといって政府が指示をしておきながら、その出た石炭は四千九百万トンでございます。しかもそれが一千二百万トンも余った。政府のいう通りに五千四百万トン出しておったならば、すでに一千二百万トン貯炭になっておるほかに、五百万トン余の貯炭になるはずでございます。しかも昭和四十二年度は六千二百万トン、昭和五十年度は七千五百万トンと、こういう計画を立てられておる。何がゆえに石炭がこんなに余るようになってきたのか、総合エネルギー対策に大きなそごを来たしたのであるか、総合エネルギーとして見た場合、どうしてこういうたくさんの石炭が要らないようになったか、そういう点について一つ詳細に御説明を願いたいと思います。
  8. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御説のごとく三十三年度五千四百万トンを四千九百万トンにとどめても、なおかつ一千二百万トンの貯炭が出たということは、これはまことに遺憾しごくな点でございまして、かくのごとくそごを来たしたという原因につきましては、ただいま石炭局長から詳細の数字を御説明申し上げます。
  9. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 今、阿具根先生の御指摘のように、非常に大きな需給の見通しをやったわけでございますが、これは大きく分けまして二つになるわけでございます。一つ昭和三十三年度出水率が非常に異常に豊富であったということから、電力用炭消費が減ったということであり、もう一つ鉱工業活動が当初四、五%、三十二年度に比べてふえるであろうと考えておりましたのが、結果的には大体一%足らずの上昇にとどまるということになり、しかもエネルギーを多く消費いたしますところの鉄鋼業であるとか、あるいはガラスその他の窯業、セメントといったようなところの伸び予定通りいかなかったということでございまして、これをある程度部門別に申し上げますと、実は昭和三十三年度のいろいろな鉱工業計画を立て、電気あたり公益事業計画を立てますときには、大体一千三百万トン以上の電力用炭というものを見ておったわけでございますが、当初は一千三百七十万トンから見ておりました。それが現在では大体九百五十万トン程度にまで落ちるのじゃないかということで、この電力関係だけで四百万トン以上のそごが生じているのでございます。そのほか一般鉱工業関係におきまして非常に大きく食い違いましたのが、セメントで約五十万トン、鉄鋼関係で七十六万トン、約八十万トン、それから紙パルプ等で四十五万トン、ガラス関係で三十五万トンというふうに、全体で当初から比べますと、約四百万トン以上の食い違いが出たわけでございます。これは冒頭に申し上げましたように、鉱工業伸びが四、五%程度であると思っておりましたのが、実際には一%足らずになったということで、しかもその中でエネルギーをよく使う産業伸びがはかばかしくいかなかったということ、これが約半分の原因で、あとの半分の原因がことしの二月の一六五%といったような異常豊水を筆頭に、昭和三十三年度に非常に雨が降りまして、電力関係だけで四百万トン以上の見通しが食い違った、そういう二つ原因に起因いたしております。
  10. 阿具根登

    ○阿具根登君 肝心のものを落しておられるようでございますが、去年と今年の鉱工業伸びでそういうような説明をされておりますが、この総合エネルギー対策を考えられます際には、昭和三十年度を一〇〇とした場合に、昭和三十三年度は一四五・四%の伸びを見ておったのであります。そういたしますと、一応の数字は出てきておる。だから肝心のところを抜かしておられる、石炭にかかるエネルギーは何であるか、これは重油でございます。この重油昭和二十七年度は、石炭に換算して三百四十九万五千トン入れておったわけです。それが昭和二十八年度から七百十四万トン、七百万トン台をこえた。だからああいう問題になって、そうして古い炭坑は買いつぶす、こういうことで三百万トンの計画を立てられた、数字もちゃんとこれで合ってくるわけです。そして三百万トンの石炭の山を買いつぶすようにした。ところが現実は、現在はどうであるか、昭和三十二年度には石炭に換算して千二百四十八万七千トン、こういう数字が入っております。昭和三十三年度が千二百三十一万二千トン、そうなりますと、昭和三十年、三十一年に比べましても、四百万トンの石炭に換算した重油が入ってきておる。だから石炭もこれだけ圧迫しておるのです。火力発電所の問題を、非常に四百万トンも余っておるように言っておられますが、事実使っておるのは、昭和三十年から昭和三十三年度まで見てみましても、そう大きな開きが出ておらない。またかりに火力が四百万トンもの石炭が要らないような水量があったということになって参りますと、これは大臣の命令において、電力消費者に対しまして、これは料金を引き下げてもいいような事態になっておる、私はこう思うのです。渇水用準備金だけを見てみましても、すでに三百二十八億五百六千万円ですか、これだけの準備金があるわけです。今までの統計を見てみましても、ほとんどこの金を使ったということは、昭和三十一年の下期に五十六億使っただけのことです。あとほとんどこういう金は余っておる。そうするならば、これはもっと政治的に打つ手があるはずなんです。それを打てないということは、そこまで余裕がないということです。あれば石炭は余っておらないということなんです。実際は重油のしわ寄せがここにきておるのです。重油をこれだけ入れておいて、そうして石炭は、掘った石炭が山積みされておる。しかも貴重な石炭が、これは千二百万トンも積んでおけば、だんだん品質も悪くなって参ります。私は政府エネルギー対策が間違っておる。極端に申し上げますならば、石炭対策に対する手がないので、だからたくさん重油を入れておいて、それでうんと圧迫して、そこで石炭の対策を立てよう、こういう苦肉な策を立てておられる。五千四百万トン出せとかねや太鼓で騒いで、そうして資金までつぎ込んで、財政投融資までやって、そうして出した石炭は売れないということは、一体だれが責任をとればいいんです。業者が責任をとるのですか、労働者が責任をとるのですか、政府がちゃんとこれだけの計画をして、そうして計画を立てて奨励をした。それにまだ完全に満てるだけの石炭も出ておらないのに、千二百万トンも余しておいて、しかも五百万トンになんなんとする重油の増をやった、これはどういうことですか。必要なところだけ大臣は答えて下さい、身体が悪いようですから。あと局長でけっこうですから。
  11. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 長期エネルギー対策を講じます上におきまして、エネルギー資源としての石炭エネルギー資源としての重油、この二つをにらみ合せまして、国内で生産する石炭につきましては、できるだけ増減のないように予定通りに進んで、そうしてこれによって起る国内の消費の増減につきましては、輸入する重油によってこれを加減するというのが、根本的の原則でなければならないと、私は信じておるわけなんでございますが、しかるに昨年度におけるこの重油消費ということにつきましては、ボイラーを使います上におきましても、発電用のボイラーが、非常に近代化された、設備の発展しているボイラーが使用されつつあるということと、それは重油石炭とを併用するということをやっておりますが、ややともしますというと、重油が昨年は予定よりも非常に安くなったということは、運賃そのほかの関係で、重油が安くなった、こういうことのために、どうしても業者自身は重油を使いたがる、これをどういうふうにして規制するかということにつきまして、政府は十分の努力をいたしたのでありますが、ようやく昨年度下半期において、重油予定よりも五十万キロリットルを切るというくらいの程度にとどまったわけでございまして、最初私どもが予定いたしましたごとく、簡単にその重油石炭同様エネルギー資源として打ち切るということに困難性があるということがわかりましたことは、重油とともにできますところの揮発油そのほかの生産物の関係等がありまして、原油を打ち切るということだけで、簡単に……、この石炭と競合するという点が予定以上複雑であったということは事実でありまして、その点につきましては一応政府委員から詳細御説明を申し上げますが、とにかくもなかなか困難性があるということにつきましては、お聞き取り願いたいと存じます。
  12. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 重油の方が毎年需要量が伸びておりますが、これは企画庁で作りました五ヵ年計画からみまして、全体のエネルギーの需要の見通しとしてはそういう伸びになっておりますが、現実の石炭との調整の問題につきましては、ただいま大臣も御説明申し上げましたようなことで、私どももできるだけ重油の需要量は削減するという方向でやっておりますが、ただ御承知のように、ただいまのところでは法的規制ということになりますと、重油ボイラーの設置の制限が法的にございますほかは、法的な手段というものはないわけでございまして、行政指導でやつておりますが、重油の需要量の内容を見ますと、ボイラー用のものが大体石炭と競合するおもなものでございますが、このボイラー用の需要量と申しますのは、全体の中のせいぜい二割から三割程度のものでございます。その需要量の変化をみますと、三十年度重油消費量は百七十万キロでございます。これが三十一年度は二百万キロリットル、三十二年度は二百八十四万キロと、こういうふうに上って参っております。ただこの内容を見ますと、電力の方が、新鋭火力設置ということが非常に最近増加いたして参っておりまして、この方の増加が、電力の方の消費量が三十年度が二十九万キロで、約三十万キロ程度でございますが、三十一年度は六十六万キロになっております。三十二年度には百三十五万キロと、こういうふうにずっと上昇いたしておりまして、電力以外の方の消費量を見ますと、そう大きな変化はたどっておりません。大体電力関係消費量がずっと伸びてきておる、こういう状況に相なっております。そのほかでは御承知のように硫安の問題、肥料の関係でございますとか、あるいはまたセメント等でございますとか、鉄鋼でございますとか、炉用のものが大部分でございまして、これはまあ合理化見地から、各部門で使われておるわけでございますが、ボイラー関係ではただいま申し上げましたような状況に相なっております。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 法的にはボイラー規制法があるだけであります。それは私も知っておりますが、一番最初に申し上げましたように、昭和二十七年度に三百四十九万五千トン入ったのが、急にその倍の七百十四万二千トンになったから、石炭がたくさん貯炭になって、ああいう問題が起きたわけなんです。だから三十年にボイラーの規制とか、あるいは合理化法案、こういうのを出したわけなんですよ。ところが今度また三十一年度から一千二百万トンもの重油が入ってきた。そうなるならば、ちょうどそうなるはずです。暦年で出しておりますが、石炭に換算して四百万トンふえておるということなんですよ。そういうことになってくれば、こういうでこぼこがくることはわかっておる。政府がこういう経済を撹乱しているじゃありませんか。しかも重油ばかりでなくて、石炭局長重油が入ったのは認めるけれども、石炭のことはあまり言わないけれども、輸入炭だってそうですよ。昭和三十年度に二百八十一万八千トン入っておる。それが昭和三十三年度には四百四十七万四千トン、鉱工業部門の中で、特に鉄鋼の方が非常にふるわなかったから、石炭がはけなかったというけれども、鉄鋼部門で百万トンからふえておるじゃありませんか、百万トンふえておるでしょう、外国炭が。こういう実情を見る場合に、それは外炭の方が安いかもしれません。あるいは品質がいいかもしれません。あるいは重油がいいかもしれません。これは重油石炭の問題は世界的な問題です。それは政府の国内産業に対する、どういう考え方を持っておるかという問題で、一言これは大臣に御答弁してもらいたいのですが、ドイツに日本から百六十名からの日本の炭鉱労働者が行っておる、それだけ労働者が足らなかった、石炭が足らなかった。これがやはり世界のこういう重油の進出によって、ドイツでも石炭が余ってきた。ところがドイツでは石炭貯炭の山ができれば、無給の公休日を作らねばならない。労働者を一週間のうち、たくさん休ませなければならない、こういう問題があった場合に、政府は今までアメリカと契約をして入れておった輸入炭を違約金を出して打ち切ってしまった、これは外国との信義もあるけれども、違約金は政府が出しましょう。しかし国内の産業というものは、国内から労働者を締め出すということはできないのだ、こういう政策をとられたと聞いておるのです。それと日本と比べた場合は逆じゃありませんか。四百万トンも石炭をふやしておるから、石炭が余ることはわかっておる、それは原料炭だってそうですよ。もちろん外国から入れるのはほとんど原料炭ですよ。それにしても百万トン以上の原料炭を増加する必要はない。で、こういう点から見て、日本は逆を行っておるじゃありませんか。国内産業に対してやれ財政投融資をするだの、あるいは開発をするだのといって、金はつぎ込んでいるけれども、かえってこれを殺しておるのが政府の政策じゃありませんか。どういうお考えを持っておられるか。重油石炭の問題は、これは世界的の流れで、必ず重油が勝ちますよ、それは法律でとにかく規制するなら規制する、そうでなかったならば、エネルギー対策は根本的に間違っておるから、今後は石炭はどのくらいしか要らないという政策を立てなければ、全部財政投融資をして合理化機械化して全部を入れてしまったらどうなりますか、今から先は。はっきりした政策を立ててもらわなければ、労使は今でも紛争しておる、炭鉱労働者はストライキに入っておる。中山さんがおそらく事情を聞いておられると思うんですが、その原因を作っているのは政府ですよ。こういう結果について、政府としてもそれに対して明らかな態度を表明してもらわなければだめだ。今のままでゆくなら、重油はもっと入ってきます。だれでも重油を使いたい、また余っている重油だから安く来るでしょう、そのために安いのを入れる。そうして国内産業に対しては、保護政策をとらないなら、とらないということをはっきりしなければいけない。保護政策をとるならば、重油に対する何らかの規制をしなければならない、外国だってそういうことをやっているんだから。まして日本の実情では、そのような実態があるということはわかっておるんだから、これに対してどうお考えであるか。これは根本的な問題だから大臣から答えてもらいます。
  14. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この輸入炭のことにつきましては、昭和三十年が二百八十一万トン、それが三十三年には四百四十七万トンになっておるという御指摘でございますが、その間の事情は私は詳細はわかりませんが、三十一年度、三十二年度は非常に鉄のブームがありましたから、そのときには相当外国の燃料炭並びに原料炭を輸入しなければならぬということになった結果だと存じまして、もちろん三十三年は非常に不況でありましたから、これだけの原料炭は要らなかったかと存じますが、その間長期の計画をしておったというようなことのために、これは異常に三十三年度はふえておると思いますが、いずれにいたしましても、御指摘のごとく世界の状況は油が各方面に進出し、各国とも石炭消費は減退し貯炭がふえておる、それについてはその国々が輸入炭についての制限を加えるということは当然なことでありまして、わが国としてもその方針はぜひ持続いたしたい、こう考えております。ただここに大きな問題といたしまして、そうした場合に国際的の競争をするとかいうふうな上におきまして、エネルギーの原価といたしまして石炭が非常に高くつく、これに対して油が安いということになれば、これは全体から考えまして、そう単純にこの油を打ち切って石炭だけに依存するというわけに参りませんから、そういうことを考えますと、相当石炭の原価を下げなければならぬということは考えなければならないと思います。石炭の原価を下げるためにはやはり生産を合理化して、そうしてもっと生産能率を上げるということに持っていかなければならない、こう存ずるわけでありますから、それらの点を考え合せまして、同時にまた一方油というものが未来永久に今日のような値段を持ち得るかといえば、これはやはり運賃の変動、その他の状況によりまして、また変動を来たすということも考えますというと、根本的にはやはり日本の石炭鉱業というものはできるだけ合理化して生産原価を安くし、そうして一カロリー当りの燃料費を油に相当するぐらいに下げてゆくということは一応考えなければならぬと同時に、油の将来等も見通しをつけまして、それと並行的に考えなければならぬと存じますが、その政策につきましては価格の点を生産の点とを考慮いたしまして、今後の政策を立てたいと思うわけであります。
  15. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣の今の御答弁はは、これは大臣でなくとも、だれでもできる御答弁です。これはだれでもそういうことしか言わないのですね。では、そうするためにはどうしなければならぬかということはちっとも考えておらない。日本には今、埋蔵石炭というものは二百十一億トンあると発表されております。可採炭量がどのくらいあるかは別でありますけれども、今から先の問題だったならば、私はほとんど可採能力があると思う。二百十一億トンあるといわれている。そうすると、今のように五千万トン採掘するならば、四百年間まだ石炭は日本にあるということになるわけなんですよ。そうすると、今あなたがおっしゃるように、能率を上げねばいかぬ、コストを下げねばいかぬとおっしゃるけれども、そういうことができる炭鉱が幾つございますか。ほとんどこんな薄層を掘ったり、あるいは非常にカロリーの低い石炭を掘ったりしているようなわけなんですよ。そういうのに持ってきて、ただ能率を上げろとか合理化をしろとか言っても、それは言うだけのことで、できないわけなんです。ほんとうにやろうと思うなら、二百十一億トンからの埋蔵されている石炭は、だれが持っているかということなんですよ。一体、石炭はだれのものかという問題なんですよ。だれが持っているかですね。そうすると、そういうやつを、何十年も何百年も手をつけられずにじっとほうっておいて、そうしてもう掘りかすの、とんでもない所を掘っているところに、まあ能率を上げろのコストを下げろの、むちゃですよ。そんなことを言ってもできっこないんですよ。できないことをやられている。できるためには、そういうように手をつけられておらない、一番いい鉱区を開発すべきですよ。開坑すべきですよ。それも野放しでやってもだめ。政府が何らかの施策を講じなければだめだということが一点。  それから、今の炭鉱の状態を見てみて、炭鉱は毎年々々スケジュール闘争だといわれてストライキをやっている。それならば、炭鉱の労働者は一体なぜそんなにストライキをやるのだろうかということを考えた場合、一体、炭鉱労働者の生活はどの程度にあるかということを比べて見る場合、他の労働者よりも決して優遇されておらない。そうして地下で年々六百何十人から死んでおります。去年はたしか六百三十九名だったかと思いますが、それだけの人が死んでいる。そういう作業をしている人が、やはり普通の生活をしたいということは、これは必ずある。各国石炭産業労働者は一番賃金は高いんです。そうすると、これは今でさえももっとコストを下げろという政府の言い方と、そういう環境の実体からみても、もう私企業の限界にきているんじゃありませんか。私は私企業の限界にきていると思うのですよ。これはいつまでたっても繰り返していくものだと思っているんです。それならば、この際、抜本的な考え方を打ち出さぬことには、ただコストを下げなさい、能率を上げなさい、そういうことを言っておっても、油と競争ができるわけがないんですよ。私は、私企業の限界にきているというのが一点と、それから一つは、二百十一億トンもの埋蔵量があるのを、だれが一体握っているのか。しかも手もつけないでおって、何かと言えばコストを下げろとか、あるいは生産能率を上げろとか、そういうことがあるか。こういう問題について、一つはっきりとした大臣のお考え方をお聞きします。
  16. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私が先ほどお答え申し上げましたことは、石炭の将来につきましては、どうしてもコストを引き下げて能率を上げなければならぬ、これに目安を置いていかなければならぬということにつきましては、これは阿具根先生も同感だと思いますが、その方法といたしましてどうするかという、方法論でございますが、これは私は、阿具根委員と考えを同じゅうする一人でございまして、現在の二百億トンになんなんとする石炭というものが、広く一般にこれが配賦されているわけなんでありますが、そのうちで現在北九州のごとく、もうすでに老朽になってしまったところに、多数の人が寄り合って、それをさらに能率を上げろとか、コストを下げろとかと言ったって、これは無理な問題でありまして、現在手をつけずにある所、一部の人たちが、この日本の鉱業法の不完全なときに占領してしまったと、つばをつけてしまったと、それが未開発のままにおるというふうなことは許すべからざることでありまして、その問題をどういうふうに解決するかということは、私は鉱業法を根本的に改正いたしまして、これをどうかして早く利用し得る、こういう道を講ずるということが第一点だと思いますが、また炭鉱の労働者は、私自身も炭鉱において働いたこともあるのでありますから、この地下において働いて、そうして陸上におる人たちと違って、夜も昼もないような生活をしておる人たちが今日陸上でのほほんとして生活しているような人たちより、もっといい待遇を受けて、もっと楽な生活をしなければならないということは当然なことでありまして、それに対してもっと生活の向上を求めるということは当然でありまして、それには、もう少し一人当りの出炭量を高めていくよりほかに方法はないと、こう存じておるわけでありまして、それに対しては阿具根委員と考えを同じくするものでありますが、それにはどういう方法で今後進んでいくかという問題が、今後政府に課せられたる一番重大な問題であると存ずるのでありまして、それに取り組んでいきたいと考えておるわけなんであります。
  17. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 若干補足して、先ほどの阿具根先生の御質問に対してお答えさせていただきたいと思いますが、まずエネルギー政策で、石油と石炭との扱い方、あるいは輸入炭と国内炭との扱い方について政府が一貫した方針を欠いているのじゃないかといったようなお話でございますが、輸入エネルギーにつきましては、われわれは、国内でどうしても調達できない種類のもの、あるいは量というものに限定するという方針は、数年来一貫してとってきているつもりでございまして、これは毎年の輸入炭が、大部分国内でできない粘結炭、不足する粘結炭であり、あるいは品質的に国内ではまかないきれない良質の無煙炭である。で、一時一般的な鉱工業伸びに伴って、国内の一般炭の供給が伴わなかったときに、これはほんの短期間に一般炭が入りましたこと、これは先生も御存じの通りでございまして、これは非常に例外的なケースでございまして、われわれといたしましては、将来とも、国内でまかなえない優良炭、無煙炭に限るということをとってきたつもりでありますし、今後もとるつもりでございます。  それから油につきましても、先ほど鉱山局長からも申し上げましたが、油が伸びておりますのは、これはむしろ石油化学の振興、あるいはその他いろいろの特殊の利用といったものに使われる関係の油の伸びが激しいのでございまして、石炭とじかに競合いたしますところのいわゆるボイラー用に使われます石油というものは、先ほど鉱山局長の申し上げましたように、公益事業である電力を除いては、ほとんど変っておらないはずでございます。で、公益関係の、一番政府でコントロールがきくべき公益用がそんなに伸びているのはけしからぬというお話は、これはあるいはそういう御意見が出るのじゃないかと思いますが、御承知のように、先ほど大臣が冒頭にあるいは申し上げたかと思いますが、長期のエネルギー計画におきましても、石炭がわずか四割くらいしか伸びがないときに、全体のエネルギー伸びは二倍半以上にもなる。われわれといたしましては、もっと合理的に国内の石炭が供給できるのであれば、六千九百万とか七千二百万でなしに、もっとふやして、せめて全体のエネルギー伸びに相応するくらいに石炭生産の増というものを持っていきたい、こういうふうに考えているわけでございますが、残念ながら、現在の技術等をもってした場合に、経済的に石油と競争して勝てるといったような限度は一応この程度になるのじゃないかといったことで、六千九百万あるいは七千二百万という数字が置かれているわけでございますので、われわれといたしましては、たとえば、ただいま大臣からお話にありました鉱業法の改正の際に、最も中心議題として論ぜられるであろうと思われまする鉱区の調整問題というようなことが、何らかの解決を見て、もっと合理的な開発かできるということになれば、この石炭の七千二百万トンというような長期計画は多過ぎるのではなしに、もっとふやされるといった方向で解決されてもしかるべきではないかとすら考えておりますので、ただ、現実の問題といたしましては、とにかく財産権といった格好で、一応確立されている現在の制度において、一挙にそこまで進むことかできないということから、現在ではとりあえずそういう制度になっておりますが、しかし長い方針としては、今申し上げたように、われわれ石炭関係いたす者として、全体が二倍半以上になるのに四割しか伸びないというのは、はなはだ不満でございます。少くとも、われわれといたしましては、もっと伸ばしたいと思っておりますが、まず、せめて現在計画されているものだけでも確実に達成するようにということから、たとえば長期計画に伴います設備投資等につきましても、石炭企業の金詰りという面等もございまして、一割程度スピードがおくれておるのでございますが、大体、長期計画の線に沿って、とにかく五年、十年かかる縦坑等を今から掘ることにしようということで、国家資金の投入等も予定通り考えておりますので、われわれは、エネルギー政策自体といたしましては、あるいは石炭に偏重し、あるいは重油を優先させるというふうな方針は、今まで変えていないつもりでございます。  結局、しかし、経済問題でございますので、先ほど大臣も申し上げましたように、まずコンペティティブにするということが一番大切ではないか。一挙にできないとあれば、少くとも将来は必ず石油と競争できるところまでコストも下げ、従って値段も下げるということだから、競争的になるのであれば、国内のものをまず優先して使って下さい、それまでの期間は、長いことないから、せめてその間だけでも、割高でも一つ引き取って下さい、そういう方針を立てまして、野放しにすれば非常にとうとうたる勢いで石油等も入ってくると思います。しかしそれは、現在御承知のように外貨の割当という手段がありますので、それも利用さしていただきまして、石油の流入をある程度防ぐということをやっておりますので、こういう制度があります間に、できるだけ早く石炭を、せめて石油の価格に近いところまで引き下げるという努力をすべきじゃないか。何と申しましても、安定供給ということによってお客さんの信用を博し、それから、できるだけ安くするということによって、経済的な要求に合致させるという方向に向っていくのが不可欠ではないか、こういうふうに存じまして、せっかく業界の方にもそういう安定供給と廉価提供という二つを最終の目的として、石油に押しまけを食わないようにしっかりがんばってくれというように指導いたしておるのでありまして、われわれといたしましては、今後とも、現内閣のとっております炭主油従というのもそういう意味でありますので、そういう方針に沿ってやっていきたい、こう考えております。
  18. 阿具根登

    ○阿具根登君 おっしゃることはよくわかるのですけれども、ただ絵にかいたもちというだけではいけないので、世界的な事情で考えてみましても、日本よりもうんと容易にやるアメリカにしろ、ドイツにしろ、イギリスにしろ、りっぱな炭鉱を持っている。しかも個人能率も相当高く上っておるところでさえも、今重油に押しまくられておるわけなんであります。そうして各国が国内産業を守るために重油の輸入を制限しているわけです。そうしますと、そのしわ寄せは日本にくるということも考えられる。同じ炭鉱を見てみる場合に、それは日本の炭鉱の方がうんと条件が悪い。おそらく外国の石炭鉱業と太刀打ちできるということはあり得ないと思う。今だって日本では一人三十数トン出しておるところもあります。御承知のように九州の三菱古賀山あるいは明治佐賀炭鉱、こういうところでは三十何トン出しておる炭鉱もありますよ。しかし日本の炭鉱を見てみる場合に、そういう高能率の炭鉱があるかと見てみる場合に、ほとんどないわけです。そうすると、ここで何かの手を打たなければ、油と競争できるような態勢にといっても、世界の情勢を見てみても、とても日本では近々にこういうことは不可能だ、こういうことを考えなければならぬと私は思うのです。そうするならば何らかの規制をしなければ、日本の産業は乱れてしまう、こう考えるわけです。  もう一つは非常に場当りだ、政府のやり方は、こういう計画を立てておって、しかも、それがずっと狂っておる。石炭がちっとも安定していない。たとえば、おっしゃったように昭和三十二年度、一年度は、非常に鉱工業伸びがよかった。また、鉄鋼が非常なブームに乗った。そういうときに六百十六万トンから外炭が入ってきております。私は、三十三年度を言ったから四百四十万トンと言ったけれども、三十二年度は六百十六万一千トン入っているわけです。それが入ってくるころは、もう今度は下火になってしまって、余ってしまっているでしょう。こういうときに対して、これにどういう対策をとられるか。たとえば電力ならば、さっき言ったように渇水準備金として三百数十億の金をちゃんと積まれている。雨が降らなかった場合でもちゃんとすぐ金は右から左へ出るように、しかもそういう金が出たのは、今までに五十億しか出たことがない。私の持っている資料では、今まで一ぺん五十億出た。あとはいつも二百億からの金をずっと握っている。なぜ電力だけそんなにかわいがらにゃいかぬ。そのくらいあるなら、電力を下げたらいいでしょう。そんなに金は要らないでしょう。それもやらない。石炭はそういうふうにして、掘れとあなた方が言ったから、掘ったところが、一千二百万トンも余っておる。それに対して政府は何にも対策を考えてくれない。政府の施策によってこうなったのであるから、その余った分に対する責任は政府がとらなければならぬ。そうしなければ、これを業者が勝手に利用すれば、また、自分で持っておいて、石炭が足らなくなって、そうして石炭の値段のつり上げをやる。そういうことを自分たちがうまく利用していく、みんな企業の都合のいいように、業者の都合のいいようにしかなっていかない。しわ寄せは全部労働者に来る。首切りが出てくる。能率は上っておりません、コストを下げます、こういうことばかり言っておって、だれが一番損しておるか、いつまでたっても労使の紛争は絶えないと思う。これは政府の政策が悪いからです。こういう場合には、政府が思い切った政策をして、石炭を押えてもらう。そうしておいて、石炭が少し少くなった場合には、政府の方から流してやる。業者が勝手に値段をつり上げることができないようにしてやる、こういうような安定する考え方を持たなければ、私は、労使紛争も絶えないし、石炭の不安定も私は続くと思う。やっと少しよくなったかと思えば、いつも下り坂です。そうして失業対策、いや鉄道をやれ、いや地方産業に使ってくれ、いつもこのしわ寄せは労働省が受けている。いつも失業問題で、労働省ではわんさわんさやっておる。みんな通産省の政策が悪いからこういうことになってくるんじゃないですか。だから通産省の考え方のエネルギー対策が立てられて、それに応じた設備をし、それに応じた手段をやってきて、そうしてこういう不況になってきたとするならば、これは政府がこの際何かの手を打たなければならぬと私は思う。そうしてこれを安定させる、これが第一であると思うのです。そうしてそのあとは長期の対策を、鉱業法を変えるなら鉱業法を変える場合に、今おっしゃいましたように、鉱区の開放ということを言っておられますから、私もその線で大いに努力したいと思う。やってもらいたい。まず、当面の問題、これをどうするか、一千二百万トンの石炭を出してどうします。それに対する一つ対策をお聞かせ願いたい。
  19. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 石炭のような、非常に弾力性のない産業の商品に対して、何らかの需給調整の機構を作るべきじゃないかという御意見、これはまことにごもっともであろうかと存じます。しかし、われわれといたしましては、現在自由企業の形で、炭価の統制その他何も一切しないで、一応やるということを前提として進んでおります。これは、しかし、石炭のような特殊な問題として、最もわれわれとしても真剣に検討すべき重要課題であろうと存じますので、いろいろ検討はわれわれといたしまして真剣にしたい、こう存じておりますが、しかし、さしあたりの段階では、御存じのように来月早々に新昭和石炭というのが、大手十八社の共同出資のもとでできるわけでございます。そこで、大体扱いますものは、百万トン程度であろうかと考えられまして、これは確かに先生御指摘の千二百万トンからあるという中にほんの百万トンぐらいでは、焼け石に水ではないかというような御意見もあろうかと存じますが、しかし、われわれといたしましては、とにかく、昨年の五月の末に閣僚懇談会におきまして、相当貯炭がふえそうだということから、御承知のように九十三億円ばかりの貯炭金融をつけるということを一応閣僚懇談会でおきめいただきまして、大蔵省あるいは日銀当局の援助を受けて、円滑に今日までこうやってきたわけでございますが、われわれといたしまして、なるほど三十四年度は、これはいろいろな意味で非常に大きな需給の見通しが狂ったということから、今日のこういう石炭不況を招来いたしまして、その点、はなはだ申しわけないと、こう思っておるわけでありますが、しかし三十四年度の需給の見通しというようなものにつきましては、これはとにかく、できるだけ早く現在の過剰貯炭を解消するということが必要であろうかと、こう存じまして、石炭のように生産制限をすればコストが上るというのは当然でございますが、しかし、われわれ、コストが上ることによってある程度赤字がそこに生ずるというマイナスよりも、むしろこの貯炭が持ち切れなくなるということによって、ダンピング等が始まって非常に暴落するという、壊滅的な混乱の方がこわいと、こう存じますので、石炭鉱業合理化法に基きます生産制限の協定をやるようにという指示を近いうちにいたしたいと、そういうふうに存じております。まず、これはやはめ過剰を克服する、解消するということが、これは何と言っても一番大切なので、われわれの現在の考えでは、まだ最終的に、計数を目下あらゆる方面から検討いたしまして、整理中でございますが、来年の今ごろには大体貯炭を正常貯炭であるといわれる七百万トン台ぐらいにまで下げるということによって、少くとも三十五年度から生産と消費とがこうマッチする程度にまで持っていきたい、こう考えておりますので、大体生産制限、これは苦しいのですが、とにかくやっていただいて、とにかくこのピンチを切り抜けると同時に、それから生ずるその過渡期においては、しかし同時に各企業は経営が苦しくなって赤字になる。あるいは、どうしても、それでも夏場は、これから夏場に向いますが、消費が減りますので、今よりも若干貯炭がふえるということになろうかと存じますが、それは今度発足いたします新昭和石炭と、それから各企業に対する金融機関からの金融ということによって、大混乱のダンピングというようなことがないように、とにかく夏場を切り抜け、そして下期の実需期からぼつぼつ貯炭の過剰分を消していく、それと並行いたしまして、輸入エネルギーにつきましても、先ほど御指摘がありました点等、十分われわれ考えているつもりでございますが、目下、外貨予算の編成の作業をいたしておりますが、この外貨予算の中において、輸入炭あるいは石油というものは、現在の日本の実情から見て必要最小限度にとどめるということにいたしまして、これらの措置を互いに相関連させるということによって、とにかくこの急場を切り抜けるということにやっていきたい、そういうふうに考えているわけでございます。それからなお、先ほど能率を上げろというようなことだけれども、欧米と違って条件が悪いから、なかなか簡単に上らないのじゃないかという阿具根先生の御意見でございますが、確かにアメリカに比べますと、自然条件は劣っていると思いますが、しかし、たとえばヨーロッパの国に比べますと、私は必ずしも日本の石炭の自然条件は悪くないじゃないかと思います。これは、たとえば現在どのくらいの深さを掘っているかということを見ましても、御承知のように、日本のは大体平均三百二十メートルくらい掘っておりますが、これに対してイギリスは三百メートル、ルール地方は七百六十メートルというふうに非常に深いところを掘っております。それからフランスも平均五百メートル、日本より潔い。大体ヨーロッパの主要石炭国でありますところのイギリス、ドイツ、フランスというものと日本と比べまして、深さにおいてむしろ日本の場合は——それより以上の深さで掘っている。また炭の傾斜にいたしましても、これは阿具根先生は一番御存じのことと思いますが、日本は二十五度の傾斜というものが七割ばかりでございますが、フランスあたりでは二十度の傾斜のものがやはり五割をこえるということで、この傾斜の点だけは若干日本の方が少し強くなって、機械化に適しないという面等もございます。あと炭丈等にいたしましても、大体日本の一メートル三十というのは、西独の一メートル二十、イギリスの一メートル二十、フランスの一メートルで、これらより炭丈が大きいという格好になっておりますが、ヨーロッパにおいては二十五トンから三十トンぐらいで能率が上っているという現状を見ますと、われわれはもう少し坑内の合理化の投資等を思い切ってやるということをすれば、近い将来は必ず現在ヨーロッパでやっている程度に行き得るのではないか、行き得るはずだ、こういうふうに確信しているわけであります。われわれの現在の目標は、四十二年に二十三トン半ということで、現在ヨーロッパより若干低いところをねらっているわけでございますが、われわれといたしましては、必ずこの合理化の投資等が行われるということになれば、この長期計画に定めております程度の能率は上る、またそれだけの能率を上げるということができれば競争エネルギーに対しても十分に対抗できるということから、自分自身を安定させ得るのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。  なお、電力との関係におきましては、渇水準備金を非常に持っているというようなことも関連いたしまして、御承知のように現在四百万トン以上の貯炭電力会社に持ってもらっております。これは電力会社の方の当初の計画から見まして二倍半の貯炭を現在かかえてもらっているわけでありまして、これは一般企業等ではなかなかここまでかかえてくれないのではないか。やはり特殊の公益事業であるので、政府の特別監督下にありますので、石炭企業の現在の苦しさということを十分に考えて、一つ持てるだけ持ってくれというので、自分の置場に置けないときには山元に預け炭までしてやってもらっておりますので、われわれといたしましては、公益事業である電力を、単に安く国民に電気を売るという意味の公益のほかに広く日本産業全体のためにもプラスになるのだという意味での公益事業であるというふうに一つやっていただきたいという見地から、公益事業局とも十分の連絡をとりまして、今後とも電力部門における石炭の引き取り等については円滑にいくように努力していきたいと考えております。
  20. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまの局長のお話を聞いておりますと、いわゆる金力と権力が結びついてそうして計画された一つのこれは石炭の危機じゃなかろうかと、私はそう思うのです。これだけの貯炭をかかえておって、来年の春ごろにはこの貯炭は正常貯炭になる、こう言っておられる。そうすると来年の春ごろにその犠牲になるのはだれか、これが今日問題になっている。三井では六千人の首切りが出ている。各社はこれにならってずっと人員整理をやってきている。皆さんの政策にちゃんと歩調を合せて、そして首を切ってしまった。そして自分の経営がうまく立ち直ったころちょうど貯炭もなくなってきた。重油の問題も相当やかましくなってくる。そうするとおらが春で、炭鉱の業者はふくらむだけふくらんでくる。ここに計画がちゃんと一つの絵に描いたように出てくるじゃありませんか。そうすると今まで働いておった人たちは首を切られてどこに行くか。やはり通産省も、私は、労働者の問題は労働省がやるのだというようなやり方では私はいかぬと思うのです。一貫した政策の中でやっていくなら、もっとそういう点も考えなければ私はいかぬのじゃないかと思う。  これは外国の問題をお出しになりますが、西独にしても労働者が足らない、どこが足らないようになったか、足らないようになるのは炭鉱ですよ。日本だって人間がもう少しいなかったら、そういうことを会社が考えたり政府が考えたりしなくても、炭鉱に働こうとする者はいませんよ。ここに皆さんこれだけおられるが、これだけおって炭鉱で石炭掘ろうと、だれが掘りますか。自分に仕事がある人たちは掘りやしませんよ。そういうところに全部しわ寄せを持ってきておるでしょう。そんなら新昭和石炭株式会社というのは、あれはいいのですか。あれは集中排除にひっかかるカルテル行為じゃありませんか。そういうことをすれば、業者がまた勝手に値段をつり上げたりあるいはつり下げたり、あるいは中小炭鉱を買いつぶしたり、非常に都合のいいことになってくるのではないかと思うのです。百万トンぐらいでは何もならぬと思うのですけれども、しかしそれは百万トンでも大したもので、百万トンでも買い入れてもらえばけっこうです。自分たちの出したやつは自分たちで、そういうことをやっているということは、私は今後にも非常に問題が残るとこう思うのです。そういうことをしようといったら、なぜ政府がそれだけの手を打たないか。そのかわり石炭の値上げにしても政府が規制すればいいのですよ。配当でも何でも規制すればいいでしょう。そうして業者に対しても規制もする。そのかわりこういう場合には政治的な手も打つ、そういうこともしなければ、一方的によくなるばかりじゃありませんか。私はそう思うのですが、新昭和石炭株式会社についても、新聞で拝見しただけですから何も私は知りません。しかし、直感としては、これは法に触れるのじゃないかと私は思うのです。合理化法案のとき、当然また商工委員会でいろいろ御質問したいと思うのですが、それまでに勉強したいと思うのですが、そういう点について一つ御答弁をお願いしたい。
  21. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 石炭の労務問題、これは確かに非常に石炭にとっては一番大きな問題でございまして、われわれといたしましては、これは石炭問題というのは、単なる経済問題というよりも、やはり雇用の問題を解決するというところにはっきりした方針がなければ、経済問題としても解決し得ないのじゃないか、そういうふうに考えておりまして、雇用審議会におきましても、今後は特にこの石炭の雇用問題というのが、一時的な不況からくるところの問題ではなくて、むしろ今までよりも、先ほどから申し上げておりますように、相当能率を上げていくのだということを前提とし、競争エネルギーとの競争ということを考えますと、やはりそこには構造的な問題があるのじゃないかということから、特に雇用審議会におきましての最重点問題として取り上げて、内閣中心に各省が協力一致してこの問題を解決するということにしようじゃないかということが、今回合理化法を出す前にも、何回か各省集まりましたときの結論でございます。今後われわれといたしましても、各省の協力のもとに、雇用問題も含めた石炭全体の今後のあり方というようなものが真剣に討議されて、一つ支障になるものが取り除かれていくということを期待し、また、ぜひ通産省としてもそういうふうに持っていくように努力をしたい、そういうふうに考えておるわけでございまして、この点は、今後政府全体の施策というものにしばらく時間をおかしいただきたい、こういうふうに存ずるわけでございます。  それから、新昭和石炭が独禁法に触れやしないかというお話でございますが、これは、先ほど申し上げたように、大体百万トン程度、あるいは若干それがもう少しふえるかもわかりませんが、程度のものでございます。これは新昭和石炭ができる前に、われわれといたしましても公正取引委員会と十分に連絡をして、もし独禁法に触れるというようなことであるならば、これはまずいということで、いろいろ検討をし、現在の法律の建前というようなものも考えてやったのでございますが、大体今のわれわれの見解では、百万トン程度のものを扱うというのであれば、特にそのために価格をつり上げて、そうして消費者に迷惑をかけるといったような独占的な弊習というものは認められないということから、公正取引委員会の方でも——これはもちろん、正式にこういうことは公正取引委員会に事前に言って、よろしいというようなことを言ってくれる官庁ではございませんのであれでございますが、大体われわれといたしましては、いろいろ雰囲気、その他から察しまして、現在の程度の新昭和石炭である限り独禁法に触れることはないという確信を持っております。
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 その問題は合理化法案の場合に商工委員会で十分御質問申し上げたいと思うんです。  そこで、私は、ただいまの局長の御答弁でも、来年の春になったならば貯炭も正常な貯炭になる、こう言われるとするならば、今政府がそれじゃその一年間規制をするとか、あるいは政府がそれを買い取る、こういう方法はできないものか、これは一番無難だろうと思う。何もその金がなくなる金じゃない、必ず入ってくる金です。しかも、それでいて業者に対して強い規制もできるわけです。そうしなければ、これだけ皆さんが苦労してやられても、それじゃ正常貯炭になってきた、人間が減ってきたというあとには、必ずまた世の指弾を浴びるような業者がたくさん出てきますよ。炭鉱の業者は、皆さん今までも十分御承知のように、少し景気がよくなければ、ろくなことはしません。だから世の同情も何もないのです。少し悪くなれば首切りをやってゆく、そういう素地はあなた方が作ってやられる。で、そういうことになれば、けしからぬと言う。しかしそういう素地は皆さんが作ってやるんです。こういう場合に、損をする金じゃないんだから国民の税金で損をしろと私は言っているんじゃない。そういう手を打って、業者が勝手なまねをすることができないようにするのが私は今だと思うんです。そうしなければ、来年になったら、ふくれるだけふくれ上ってしまうんです。そういう独禁法に違反するような疑いのあるやつを業者に勝手に作らしてやっても、業者が決して損をするものじゃありません。必ず来春ごらんになって、そうして正常貯炭ということになってきたならば、これは石炭の値上げに必ず使います。だから業者を喜ばせるだけで、一時今業者は、苦しいから苦しいからと言っておるけれども、苦しいのは従業員を首切りさえすればいい、こういう苦しさですよ。そうとすれば、政府の施策と業者の考え方で、首切りを皆さんが一緒にやっておるようなものじゃございませんか。来年になったならば、またのうのうとしてふくれるだけふくれ上るでしょうが、これは今までもずっと毎年々々繰り返してきておることでしょうが。だから私はこの際、そういう手は打てぬものか、これをお尋ねします。
  23. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 先ほどの需給調整機構と結局本質的には同じ問題になろうかと存じますが、先ほど申し上げましたように、これは石炭鉱業のような、特殊の弾力性に乏しい産業に対する基本的な考え方ということで、これは確かに最も真剣に考えるべき問題であろうか、こう存じております。しかし、今の段階におきましては、私としてそうまあ国家管理的な部門を今すぐこの中に入れるというところまでゆき得るかどうかということにつきましては、お答えする自由を持たないのでございますが、さしあたりの段階としましては、新昭和石炭というような民間の自主機構でこの危機を切り抜ける、それから今後少しよくなると無責任な者がぼこぼこ出てきて、そうして景気が悪くなればすぐ労務者を首切って、あわのように消えてゆくといったような炭鉱を押えるということのためには、これは今度の鉱業法の改正の討議の際に当然何らかの意味で現在の先願主義というものを能力主義に変えるべきじゃないかという議論もなされるんじゃないか、そういうことにでもなれば、その際に、こういう地下資源、地上にもいろいろの損害を与え、あるいはそこに働く人間というものが、地上の産業よりもむしろ非常に条件の悪いところで働くような産業を、ただ無責任に先願主義で許すかどうかということでなしに、何らかの意味の規制方法というものが、これは先ほどの鉱区調整と並んで大きな問題にされる、こういうふうにわれわれ考えておりまするので、現在の自由企業の形態をとにかく変えるということになれば、何といっても大きな根本問題には触れますので、われわれとしては、明治三十八年以来の法律をこの際抜本的に改正しようということで審議会まで作られた機会に、今お話のありました点等につきましても本格的な検討を加えることによって、最も妥当な結論を出すように努力していきたいと、こういうふうに考えまして、さしあたりの段階は、先ほど申し上げましたような自主機構を、できるだけ政府でも金融という面で応援する格好で、破局を切り抜けるように努力を進めておる次第でございます。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 最後に御要望を申し上げておきますが、政府が立てられた総合エネルギー対策の建前からいきますれば、本年度は一千万トン下っておるわけであります。そうして炭鉱では二五%自粛する、出炭制限をやる、そのために相当数の首切りが出ておる、こういうことを考えます場合に、おそらく炭鉱の労使というものは、今後ますます先鋭化していくでしょうし、非常に憂慮すべき事態が私は起きてくると思うのです。そういたしますと、今までの惰性にばかりかじりついておらずに、日本の置かれておる立場、日本の産業の自主性あるいは国内産業の育成という問題に、もっと私は力を入れてもらいたい。政府が考えておるのに一千万トンも下るということになるならば、これは良心的な業者は泣くに泣けぬでしょう。政府がこういう計画を立てられたならば、その計画に進むのが業者としても良心的な業者ならば、当然な義務だと思うのですよ。それをやっていって一千万トンと下ってきた。五千数百万トンのやつが一千万トンも下っていったならば、一体だれを信用してやったらいいかということになると思うのですよ。私は、いつかの商工委員会でも申し上げましたが、政府の言うよりも逆をやっていけばよろしいのだということを業者は言っております。政府が出せと言ったら出さないで、出すなと言ったら出すというふうにしないと、政府の政策がいつも場当り主義で、それに乗ったら必ずあくる年は泣くような目にあうのだと、こういうことを言っておる。だから、もう少し責任を持ってもらいたいと思う。五千四百万トンも出しなさい、三十三年は五千六百万トンも出しなさい、五十年には七千二百万トンの石炭を使います、原子力で石炭二千万トンに当る発電所ができたとしても、これだけの石炭はまるまる要りますよとおだてておいて、五千万トンにも上らない数字で一千万トンも……昨年は一千二百万トンの貯炭がある。こういうことでは、労使間の紛争に油を注いでいるのは政府ですよ。そうして一番しわ寄せになっているのは労働者ですよ、こういうことを繰り返しておったのじゃ私は日本の産業伸びないと思う。だから重油の問題、電力の問題、外国炭の問題も十分にこれは考えてやってもらいたい。特に御要望申し上げまして、あとの問題は法律問題になりますから商工委員会でまた御質問申し上げます。これでやめます。
  25. 西田信一

    主査西田信一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  26. 西田信一

    主査西田信一君) 速記をつけて。
  27. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 小さいことですけれども、私この前現地を視察して来た関係があるのでちょっと伺っておきますが、工業用水関係はただいまの提案説明でもございましたが、工業用水の、ここの提案説明に掲げられてある事業費というのはどういう規模のものでございますか、——私の質問が非常に簡単でおわかりにくかったかと思いますが、通産省直轄か、建設省の関係はどうなっているのか、あるいは地方公共団体の関係はどうなっているのか、そういう点明らかにされぬとちょっとこれだけではわかりにくいですから。
  28. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 工業用水は御承知のように、最初、地盤沈下対策という意味で、特に地上くみあげ以外の工業用水の供給確保、という問題からスタートしたことは御承知の通りであります。現在通産省で工業用水は専管をいたしております。ここに掲げございますのは、そういう意味で年々工業用水道事業につきまして補助金を計上いたしておるのでありますが、先ほども申し上げました内容のものは、来年度工業用水道事業に対する事業費補助計画をここに計上いたしているのでございます。
  29. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この固有の名前が掲げられておりますが、実は今通産省の監督で日本合成ゴム工場建設が進められていますが、あれは操業開始はいつですか。
  30. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) あの会社は当初、今年の秋操業開始ということで計画を進めておりましたが、最近の見通しでは輸入機械の到着が少しおくれるということで、大体年末ごろの操業開始だということであります。
  31. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この日本合成ゴムが三重県の四日市に工場の敷地を決定されましたときには現地で伺いますとこの工場用水の確保ということが一つの重要な問題になったようです。ところが三重県が今やっている、北伊勢工業用水道というものがある、第三期の計画工事、これは長良川から直接取水をする工事ですね、この工事の計画を見ますと相当大きな計画です。総工費四十一億円ですか、膨大な計画ですが、その四十一億円の北伊勢工業用水道の第三期工事が完成しないと日本合成ゴム工業用水は得られない、こういうことを聞いて来たのです。ところがこの第三期の計画工事は給水を開始いたしますのは昭和三十六年四月ということになっている、若干おくれるだろうというようなことを聞いておるのであります。そうするとあれだけ大がかりな計画でしかも非常にむずかしい近代化学工業を工場建設の方は一生懸命に進められておるのですが、この工場北伊勢工業用水の第三期工事が完成をして給水開始をしないと運転し得ない、こういうような事情にあるやに私は聞いておるのですが、その関係はどういうことになっておるのですか。
  32. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 私きわめて具体的なことは存じておりませんけれども、工場計画を作るときに一応話をずっと前に聞いたことがございます。そのときのお話によりますと、ただいまの計画はこの工場がフル操業をしてそうして最も有利な条件で工業用水を取得するというために必要な施設であるということでございます。でこの合成ゴム工業会社がフル操業になりますのは、現在の需要の状態から見合いまして四、五年後になるというのでございます。四万五千トンの能力をフル操業するまでには若干の年月を経過した後でございます。でそれまでは多少臨時的に現在入手できるような工業用水で操業をやっていけると、そういうふうな一応暫定的な計画をあわせ持っておるように承知いたしております。
  33. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは普通の機械工業と違って化学工業ですから、フル操業まで四、五年かかるとおっしゃいますけれども、それはいろいろな事情でそうなるでしょうが、最初のこの運転の場合に、ほんのわずかな設備を動かすのみで製品化できるというものでは私はないと思う。そこで三重県のこれは土木部長だったと思いますが、第三期の計画を全部やってしまえば四十一億かかる。しかし日本合成ゴムの給水の関係があるので、これはパイピングを二本することになっておる。長良川から四日市まで、これは距離にしまして相当長いのです、総延長八十キロメーター。それを完成を同時にやるのが一番工事能率がいいのだけれども、日本合成ゴムの給水のために、その二本ハイプを施設するうちの一本だけをまず急速度にやりたいと、こういう説明がありました。それはごもっともなことなんですが、三十六年の四月ごろになる。工場の開始には間に合わない。それでこの特に資金関係が非常に窮屈で、資金が十分に得られなければさらにおくれるかもしれない、こういう話がありまして、いずれ国会で機会があったときにはよくそごを来たさないように善処してもらいたい、こういう依頼を三重県の当局から受けてきておるのです。それで今冒頭に小さい問題ですけれども、重要な問題なので伺っておるのです。
  34. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) ただいま御指摘のございました北伊勢工業用水道計画は、実はこれに対する補助金予算の折衝過程におきましては、必ずしも私どものベストな要求案にマッチしておりません。従いましてただいま御指摘のございましたように、私どもが最も理想とする計画よりは、やや落ちたところで計画を実施せざるを得なくなったということは事実でございます。ただあと問題になりますのは、これに対して起債をどの程度割り当てるかという問題に、若干そこに計画の余裕がございまして、その辺をよく運用することによりまして、ただいま御指摘のございました日本合成ゴムの操業開始の少くも当初の水の要求には、先ほど軽工業局長から御説明いたしました暫定措置とあわせて、そごを来たさないようにということで計画いたしておるわけでございますが、私実はその計画の詳細な具体的なことについて、今資料を持って参りませんでしたけれども、合成ゴムの操業には差しつかえないようにということは十分配慮して、またやっていけるというふうに私どもは承知いたしております。
  35. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 御承知のように、四日市は今、石油化学系の工場がずっと建設中です。もうすでに完成しておるのがあります。特に三菱油化のポリエチレンの工場は近々もうあれは運転に入るはずなんです。もう入ったかもしれません。これも相当膨大な水を使うわけです。ですから今いただいた答弁の程度の研究、あるいは計画を通産省の方としては出ないということであると、大へん私は不安に思うのですね。もう少し現地の合成ゴムの建設当局者、三重県等とよく打ち合せをせられて、工業用水のために操業が左右されることは、これは遺憾千万なことですからね、そういうことの絶対ないようにしてもらいたい、こう思います。  それからその次に、この通商産業省予算説明は、通商産業省として、特に省の方針として重点度の高いものを個別的に何個か並べて説明をされておるわけです。ところが一生懸命先ほどから私、見ているのですが、過日商工委員会で議決をし、本会議の議決を経て、ただいま衆議院に送っておりまする特許法四法が全面改正が行われて、新しい行政角度で進むことになっているのですが、このことについては一言も触れていないのですが、これは一体どういうわけでしょう。通商産業大臣が特許四法の提案理由をされたり、あるいはその質疑応答をいたしましたときには、通商産業省としては非常に重要な問題であるという御答弁がありましたのに、この説明書を見ますと書いてありませんから、重要だとはいえないわけです。
  36. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今回の説明では、予算関係のあるものについて取り上げて書いたわけでありますが、特許法の改正につきましては、これはさしあたり予算関係はないものでありますから、これを省いておるのであります。
  37. 齋藤正年

    政府委員齋藤正年君) これは特許庁の予算は御存じのように、ほとんど大部分が人件費と事務費でございまして、いわゆる政策予算という扱いを受ける費目ではございません。もちろん人員の増加ということは、特許庁の事務の上には非常に重要な問題でございますけれども、そういった性格のものでございますので、この大臣説明の中には通常入れないのであります。
  38. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは予算の措置を必要としなかったと、政策的な予算をつける必要がなかったので、この法律の改正はすることにしたけれども載せなかったと、こうおっしゃるのですがね。政策的な予算をつける必要がなかったと認められたところに問題があるのです。これは商工委員会の特許四法の審議の全速記録を一ぺん読んで下さい。大蔵大臣まで来てもらってそしてあなたと……、私ども委員会では通商産業省の足らざるところを、とにかく認識不足のところを補ったつもりでいるのです。特に予算関係ないとおっしゃるけれども、あの法案ができ上ると、四月一日から特許諸料金が二倍に上がるのです。で、約五億円近い増収があるのです。そういう増収があれば、こういう絶好の機会に特許行政の中で根本的に欠けた点があれば、それを政策的に改めよう、そういう構想があってしかるべきだ、私は今の齋藤官房長の答弁、きわめて不行届きだと思うが。
  39. 齋藤正年

    政府委員齋藤正年君) 私、説明の言葉がちょっと足りなかったと思いますが、これはこの予算の金額の問題ではございませんで、政策予算と申しますか、毎年々々その年の、その年のといいますか、翌年度政府のやります新しい事業でございますか、そういうようなものの関係予算と、それからそうでございませんで、大体人員、それに伴う事務費というものは標準予算という形で、実はもうほとんどある一定の算定基準で計算をして出す、それに若干、その年々の事務上の都合によりまして増減があるわけでございますが、そういうふうな予算と、予算の種類が二種類ある。これは金額の問題その他と全く無関係でございまして、予算の費目の性質からいって、そういう二種類がある。そこで特許庁の予算は、大部分が後者の標準予算的な性格を持っておるものでございますので、大臣説明のときに申し上げなかったと、こういうことでございます。法律改正もそういった政策的な予算関係のあるものについてだけ触れた、こういうわけでございますが、しかしそれじゃ特許庁の事務的の予算だから重要性がないかというと、決してそうじゃございませんで、これはおっしゃる通りに、従来の一般の標準での予算では足りない、従って人員の点につきましても、あるいは予算の点につきましても、今後われわれとしてももっと努力しなければならぬということがこれは当然でございまして、この点はおっしゃる通りでございます。
  40. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それはまだ答弁としては足りないですね。一ぺん通商産業大臣から聞きましょう、そういう答弁じゃだめですよ。もう少し申しますがね、人件費その他を主体にしている特許庁の予算だから特別にものを申す必要はないとおっしゃいましたが、そういう理由で御説明になれば、その通りだと私も思います。その通りだと思う。ところがそういう理由で特許庁のあり方を見ておってよろしいかどうかという問題なんです。商工委員会ではそれではいかぬということになった、そういうことでは。ですからあなた方のものの考え方の問題なんです。五億円近い料金の引き上げをやって、科学技術振興だとか、日本の革新技術の推進だとか、そういうことを唱えているでしょう。それの、あれはやっぱりある意味においては窓口ですよね、それの集約をする窓口です。その窓口の行政について今の説明を聞くと、去年おととしといささかも変っていないのだな、説明が。それでは足りないのではないかということを申しておる。そういうことです。
  41. 齋藤正年

    政府委員齋藤正年君) 来年度予算につきましては、実は今お話のように、従来の特許庁の予算というもののほかに、もっと特許行政全体の進展でありますとか、それから科学技術振興でありますとか、そういった政策的なものを盛り込むべきでなかったか、その点に予算当局として十分努力を尽しておらなかったのではなかろうか、というのが先生の御質問の趣旨かと拝察いたしますが、(栗山良夫君「そうです」と述ぶ)これは全くおっしゃる通りでございます。ただこれは全く事務的な……弁解みたいになりますけれども、発明奨励の関係は、科学技術庁ができましたとき科学技術庁の方に移管されました。それから技術関係のいろいろの補助金その他の予算は、大部分は工業技術関係に計上されております。そういうふうな関係で、従来特許庁の予算として政策的な予算が計上されておることは少なかった、しかしこの際特に来年度歳入が非常にふえるわけです。そういう点からして政策的なものをもっとやるべきではなかろうか、それからまた事務的なものだけで見ましても、職員の待遇改善なり人員の増加なり、庁舎の整備なり資料の整備なりということももっとやるべきだということは、われわれもその通り思っておりまして、今後、もっと努力していきたいと考えております。
  42. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が非常に不満に思いますのは、来年度予算からそういう特許庁に対して、特許行政の政策的な問題を予算化したいと、こういうことをおっしゃったのですが、これは少くとも私が商工委員会でこの法案を審議した中から、ある程度確信をもって申し上げることができるのは、決して通産省の意思ではなかったということです。それは、審議をしておる過程に、そういうふうに来年から予算化しなければならぬということがわかってきたということです。そこに問題がある。私はなぜあなた方を責めるかと、責めるというのはおかしいが、追及するかというと、四月一日から料金が上がるということはあなた方一番よく御存じです。四月一日から料金が上がるというなら、それと引きかえに大蔵省と強硬な交渉をやって、なぜことしそういうものが上がらなかったのか、法律の改正をしなければいいんですよ、とにかくキャッチフレーズとして特許四法の改正についてはずいぶん大きな看板、アドバルーンが上がったわけでしょう、そこまで上がったものならば、出願人あるいは特許権者、あるいはそれを利用する国民全般からいいまして、特許行政の非常にただいまスロモーな状態であり、欠点だらけのものを改正する絶好のチャンスは、四月一日出願料を上げるときです。上げる出願料金を全部国庫に入れないで、こういうものにとにかくすぐ還元して便り、そういうことでなければ出願料の言いわけというものはできないわけでしょう、私の言うのは無理でしょうか。
  43. 齋藤正年

    政府委員齋藤正年君) 全くごもっともでございます。ただ料金引き上げの経緯は先生もよく御存じでございますように、来年の一月から実は上げようということになって、新法施行と一諸に上げようということになっておりましたが、そういたしますと、新法施行までの間にどうも非常にアンバランスができるのではないか、それは非常におかしいということで、四月以降上げるべきだということになったわけでございますが、しかしそういういきさつとは別に、従来この特許庁の予算費目につきましては、大体先ほど申しましたような事務的な経費が多かったものでございますから、どうもまだ非常に力が足らぬ、特に毎年歳入の方は実は非常にふえて、毎年ふえております。こういう特別なことがなくても年年ふえておりますのに、歳出の方はどうも、こういうものは人件費、事務費と申しますか、一種の各省共通のようなものさしがございまして、ものさしの範囲をこえて増額するということは非常にこれは、もちろんわれわれの努力も足らないのでございますが、なかなか困難だというような点からも、毎年少しずつはふえておりますが、非常にこのふえ方が足りなくて常に後手後手になっておるわけであります。この点はこの前大蔵大臣からも来年度は十分考えるというお話がございましたが、われわれも一つ大いに努力をしてぜひもっと充実させていきたいと考えております。
  44. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それはたとえば国立試験研究所重要研究費としてあなた方のおあげになっている電気技術オートメーション技術生産加工技術エネルギー対策技術、汚水対策技術等々とあげられておりますが、こういう意味のあげ方で特許行政をやると幾らでもあります。それは一ぺん速記録を官房長読んでもらいたいのですがね、それですから私はその内容のことについてはあまり言いませんけれども、とにかくものの考え方としては非常に大きな私は手ぬかりがあったと思います。通産省として。とにかく外局であるし、ああいうじみな仕事だからはなばなしい通産行政の中心にはなかなかこないかもしれぬけれども、あまりまま子扱いをしないように、それは特許庁を大事にしてくれという意味ではありませんよ、科学技術振興とか、今の技術水準の向上だとか、そういうことを通産省が品にせられる限りにおいてはあすこがやはり一つの窓口ですよ、その窓口を充実強化するということは、これは堂々とやはり主張せらるべきことだと私は思うのですね。だからそういうことをしないでおいて、幾ら通商産業大臣が方々で産業の革新だとか近代化だとか科学技術水準の向上とか演説して回られても、およそ空疎なものだということになるのですよ。本年はやむを得ないと思いますが、来年度予算のときにはそういう意味で通商産業大臣を初め、通商産業省が一体になって、特許行政の強化のために努力していただきたい。こういうことを要請したい。そういうことができますか。
  45. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は特許庁の状況を本年の予算を編成します上において見たのでありますが、いかにも審理がおくれておる、こんなことではしようがないからもっと人をふやせ、予算を要求しようじゃないか、同時に料金が上がるということになればこんな料金を一々大蔵省に持っていくばかはないのだから、これはどうしてもこっちで金を使うという方針でやれ、こういうふうなことを一応特許庁長官にも注意しておいたのでございますが、その後いろいろ大蔵省と折衝した結果、三十四年度予算ができたわけで、多少人員をふやしてもらったとこういうふうな報告も聞いておったのでございますが、先般栗山委員から特に御注意がありまして、現状を視察して見るとあのままではいかぬと、どうしてもやはり設備から変えていかなければならぬ。こういうふうなことを痛感いたしまして、幸い今度料金が上がるということについて御承認を得て、この法律が通過いたしますれば、これを契機といたしまして十分特許庁の内容充実に努力いたしたいと思います。
  46. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから中小企業設備近代化と申しますか、合理化と申しますか、これのことがやはり一つの重要な題目にせられておりますが、そこで私は数字的なことをちょっと伺いたいと思います。まず大企業の今日までの設備投資の総額中小企業設備投資の総額とは、一体どのくらいの比率になっておりますか。これをお伺いいたします。
  47. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) お尋ねの点にぴったり当てはまる統計が実は得がたいのでありまして、ただいま持ち合わせております資料並びに今まであります資料を見ますと、大体わが国の産業界の設備投資の総額は三十二年度、三年度それぞれ一兆四千億程度かと思っております。このうちで中小企業関係が幾らになっておりまするか、実はそういうふうな統計のとり方がないものでございますので、はなはだわれわれも困っております。一応の目安といたしましては、中小企業金融公庫、この公庫は大体設備資金がその貸し出しの約八割程度を占めております。そういたしますと、大体五百億程度設備資金になるわけであります。そのほかに商工中金でございますが、これは御承知のように短期の運転資金が全体の七割五分かあるいは八割ぐらいを占めておりまして、残りの二割程度のものが設備資金かと思われます。さようでございますからせいぜい二百億程度のものではないかと思っております。残余のものの中で一番問題になりますのは、中小企業金融の専門機関といわれます相互銀行、信用組合、信用金庫でございますが、この辺のところは実は資料のよるべきものがございませんで、はなはだわれわれも困っております。なお地方銀行等もあるいは設備資金的なものを貸し出せると思いますが、これも実はそういうふうな統計の資料が得られませんので、一応まあわれわれつかんでおります資料では今申し上げた点が、数字的には一応言えるかと思っております。
  48. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 一兆四千億という設備投資の総額というのは、どういう意味のものですかね。
  49. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) これは内部留保によりますもの、それから企業外からの調達によりますもの、すべて含めているわけです。これは経済企画庁ので一部は推定も入っているかと思います。金融統計、あるいは税務統計、あるいは外資からの統計等から合算したものでございます。
  50. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは既往の設備投資の総額ですね。
  51. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) それは当該年度における新規投資の額でございます。既往の額といたしますれば、これはどういうふうにとったらいいかがちょっとわれわれも困るのでございますが、長期の固定資産等になっておりますので、評価の問題その他があると思います。
  52. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その個人企業は別にしましても、法人だけでも大企業中小企業に分ければ、大体の資産の総額なりあるいは大企業中小企業のパーセンテージというものはわかると思いますが、それを伺っているのです。それからその点でちょっとわかったら教えていただきたいことと、もう一つの大企業中小企業のウエートを見る方法としては鉱工業の生産高ですね。これが大企業中小企業とどういうふうになっているかということがわかれば、それでもある程度わかりますが、どっちでもいいのです。
  53. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 初めお尋ねの固定資産によります比較、これは法人企業統計等からして得られますと思いますが、ただいま持っておりませんので、もしかございましたら後刻お届けしたいと思います。  それから鉱工業の生産高におきましては、現在われわれ中小企業といっておりますものの生産額は五〇%ちょっとこした辺でございます。六〇%弱というところでございます。
  54. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると大企業が大体四〇%から五〇%ぐらい、中小企業が五〇%から、六〇%くらいのところだ、こういうことですね。
  55. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) さようでございますが、これは、いわゆるその企業が、外に販売しておりますものの額でございますから、付加価値その他の二重計算は、もちろんあると思っております。  それから、もう一つは、これは、もうすでに御承知のことと思いますが、中小企業関係というのは、比較的、何といいまするか、少い固定資産の投下額で大きい生産額をあげているという、つまり資本集約的といいますよりも、労働集約的な業態が多いのでございますので、固定資産の投下額は、必ずしも生産額の比率に比例しておるということには参らぬものと思っております。
  56. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 数字が、まだはっきりしませんから、ちょっと話を結論的には言えないわけですけれども、大づかみな模様だけはわかりました。わかりましたが、なぜそういうことを私が申すかというと、中小企業設備近代化に対して、「前年度対比三億円増の十億円を計上」いたしたと、こう書いてある。それから十億円という金額の私は妥当性について、少し伺いたいものだから、そういうことを申し上げたのであります。もっとも、あとの方には中小企業金融公庫から設備投資に対する百億かの資金が用意されていることは書いてあります。書いてありますが、問題は、今、大企業の方は、これは、もうどんどん近代化が進んでいる。大企業近代化というのは、そうは私は心配していないわけです、自力でやりますからね。政府も、また格別な融資態勢が整えられておりますので、これは問題ない。一番問題なのは、中小企業近代化、しかも輸出雑貨が、これは中心企業ですからね。中小企業というものを、どういうふうに近代化するか。また大企業の下請の中小企業ならば、大企業の製品の質を向上させるという面においても必要だ。どっちみち、中小企業近代化というのは、これは、実際におくれているという工合に書かれておりますが、全くその通りなんで、これを根本的に、どうして引き上げるかということ、引き上げようと思えば、中小企業に、ここは、本年度十億円計上したとおっしゃるが、大企業並みの近代化をやろうと思えば、中小企業近代化に要する設備資金というのは、総額幾ら要るのだと、その総額見通しがつかなければ、十億円が正しいのか正しくないのか、見当のつけようがない。こういうことになるわけです。  だから、中小企業近代化を大企業並みに、これは、すぐできるできないは別問題ですよ。中小企業近代化を徹底的にやって、ある水準まで引き上げてしまうのには、総額、幾ら要るのだ。それを私は、もし計算された資料があったら伺いたい。
  57. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 設備近代化の問題といたしまして、われわれ中小企業関係設備の、まあ経過年数等で一応調べたのでございます。この信頼度等につきましては、いろいろ問題があるかと思いますが、かりに十五年以上経過しておりまするもの、これは老朽設備として取りかえを必要とするということで調べたものが、たしか三十一年か三十年かに調べたのでございますが、これが約五百億ちょっと上回っております。これは、もうこの評価の基準等も、おそらくは、ネット・バリューでございまするか、あるいは時価でございまするか、はっきりいたしませんけれども、とにかく五百数億という数字が出ているわけでございます。  それで、その五百億をこす老朽設備を、計画的に近代化して参ろうということが……。それからもう一つ、その五百億云々という数字は、実は、全業種を網羅するようにといって調べたのでございますが、あとから、いろいろ考えてみますると、かなり漏れている業種もあるようでございます。従って、お尋ねのように、全体的にわたります中小企業の老朽設備にいたしますれば、この数字をかなり上回るのじゃないだろうかということをわれわれとしても考えたわけでございます。  そこで、これらの業種別にわかっております五百数億のものを近代化するということで、この設備近代化補助金というものを、長期にわたって運用して参りたいと、こう考えたのでございます。
  58. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは、用意をせられていない問題を、いきなり伺って回答を迫っても、無理なことも私は承知しておりますが、とにかく中小企業近代化を至上命令的にやらなければならぬということであれば、やはり、そういう総体的な一辺研究をしてもらわないと、だめではないかと思いますね。ただ、前年度に比較して幾らふやしたから、こうなるという説明だけでは、私どもは、ちょっと理解しにくいのですよ。それはこういうテンポで、何年やって行ったら、目的の通り中小企業近代化が完成するのかという見通しもつきません、これだけでは。
  59. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 今、ちょっとお答えするのを省略いたしましたので、ごもっともな御質問と思いまするが、昭和二十九年度から昭和三十三年度までに、この設備近代化の金を、政府並びに都道府県といたしまして三十五億八千九百万円ほど、これは補助として出しております。これは大体所要経費の三分の一でございますが、過去五ヵ年間におきまして、この三倍、つまり百六、七億に相当いたしまするものが近代化されておることになっておるというふうに一応御了承得たいと思っております。もちろん、先ほど申しましたように、設備の額——額という言葉は、何ですが、評価の差がございまするから、先ほど申しました五百億に相当するものの百七億になりますかどうか、これはちょっと、設備の額は、かなり上っておりますから、あるいは食い違うかもしれませんが、一応の目安としましては、その辺でございます。  それから、本年度十億円ということを申し上げておりますが、これは、政府の出しまする金が十億円でございます。これに同額を都道府県が出しますので、これが二十億、それから御承知のようにこの補助金は、都道府県で特別会計を設けまして、そこで償還して参りますものを加えまして運用しておりますが、その償還額の見込みが、約五億円ございますので、合計いたしまして、二十五億円。そういたしますと。この三倍になります七十五億円程度設備が、更新の運びに相なるということでございまするので、概要いたしまして、本年度末に至りますれば、約百八十億程度設備の入れかえが行われる格好になるかと思います。そういたしますと、残りが三百数億というふうになるだろうと思います。  そこで、実は、この予算がこれを許しますれば、われわれとしては、できればこの三十四年度、五年度、六年度あるいはもう一年度加えまして七年度あたりで、この設備、一応五百億をこえまするものを近代化して参りたいと思っておりましたが、今の予算状況でございますると、あるいはもう一年くらい延びるのじゃないかと思っております。
  60. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が、大企業でも、中小企業でもですが、産業近代化等の仕事に対しては、あまり国家財政に直接間接に依存するということは私はいいことではないと思います。ですから、政府が十億円出したことが妥当であるとか、妥当でないとか、そういうことを資金源を確保するという意味でいいかどうかということを申し上げている意味ではないのです。問題は、この前財政投融資の問題については、総括質問のときにも申し上げましたが、中小企業設備近代化の費用に対して、金融機関も、政府もあげて、とにかく非常に熱心に協力していくのだ、そういう態勢が出てこなければいけないということを申し上げているのです。  それで、今のところでは、どうも、そういう財政投融資をみましたところで、中小企業向けの融資源というものが、昨年に比較してふえてはおりますけれども、おそらく中小企業が、近代化を要求し、それに要する費用と、大企業が要求しておって、それが要求する費用の財政投融資の額の割合からいえば、これは、中小企業の率は問題にならないと思うのです。きわめて少額です。そういうところに、少し考え直す点がありはしないか。大企業の偏重ではないかという意味ですね、そういうことをただ、勘で言うだけではいけないものですから、何か、やはり数字的な根拠というものをもって、そうして生産の総量からいえば、大企業か四割ぐらいで、中小企業が六割くらいですかね、中小企業庁の統計で見るというと、そのくらいになっている。ですから、設備投資の総額が四割、六割、従って、近代化の費用も大企業総額の四割使えば、六割ぐらいが中小企業にいくのか、それが、ちょっとわからないのですがね。そういうことを旭商産業省としては、少し専門的に掘り下げてつかんでいただいて、その上で……。中小企業近代化ということを、口ではいっているけれども、今のような政策で果してやっていけるのか。あるいは頭を。もう少し切りかえて、特別な手を打たなければいけない。こういう点を分析して、初めて結論を出し得る。それが、一番元になると思うのです。そうしてほしいと思うのです。  なぜ、それを申し上げるかと申しますと、今国会で、最低賃金法が出ております。あれは、業種別ということになっておりますが、中小企業近代化をほんとうに徹底的にやらなければ、最低賃金法を作ったところで、ほんとうの意味の賃金水準というものは、引き上げにはなりませんね。やはり生産性向上のないところには、所得の向上がないわけですから、どんなにしても、これはやらなければいけない。特に質的な問題が要求されておる輸出品等については、何としても取り上げなければならない。ですから、きょうでなくても、けっこうですが、なるべく早い機会に、中小企業近代化を大企業との関連において、ほんとうにやるのには、どのくらいかかるのだ、これを一つ、推算でもなんでもいいのですが、見当を、一つつけてもらえないか、どうですか。
  61. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 大体、お話の趣旨はわかりましたので、われわれとしましても、そういう方向で、総括的な作業をしてみたいと思っております。  ただ、こういうふうな問題がございますので、今申し上げましたように、設備の評価額の相違という問題が、かなり大きく響くようでございます。おそらくこの前の昭和二十七、八年当時に比べますと、設備の新設価格は、おそらく三割か四割ぐらい上っておると思います。そういう点が一つございますのと、それから、もう一つは、先ほども申しました五百億とかというふうな数字は、これは要するに古い評価によるものだという点をのけましても、それだけ入れかえれば、近代化されるというものではないかと思います。それにかわりますもの、あるいはそれに付加いたしまして、端的に申しますれば、能力的にふえるものもございましょうし、あるいは質的に向上いたしますが、そういうことがございますので、あるいは設備といいますか、生産品の近代的方法による生産ということになりますれば、この五百億という数字は、実は比較するのが無理な数字ではないかとも思われますので、その辺は、御趣旨も体しまして、もう少し総合的な作業をしてみたいと思っております。
  62. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは、通商産業大臣に御所見があれば伺いたいのですが、私、どんなに考えても、今のような方法で、ただ題目だけの中小企業対策をやっていては、中小企業というものは、だんだん零細化して、そして、しまいにはなくなってしまう一というと、ちょっと語弊がありますが、大企業との関係において、非常にみじめな姿に、あらゆるものがなってしまいやしないか、こういうことが非常に懸念されてしようがないのです。  一、二例をあげますと、最近でも電気機器の業界で、相当に評判のいい地盤を持っている会社でありながら、より上にある大企業の傘下へ資本吸収をされたり、あるいは支配下に入ってしまったりしているものが相当ありましょう。これは、私は個別に名前をあげることはいたしませんけれども、現実にあるのです。こういうことは、電球でもそうです。電球だって、終戦後にあれだけたくさん町工場があったのが、もう今、おそらく町工場で電球だけで経営しているものはないといってもいいでしょう。完全に東芝とマツダの支配下に入ってしまった。近代化ができないのです。こういうものは、御専門が通産省の方だから、そういう例を、もし要求するなら、どんな資料でも、出されるだろうと思いますが、各所に、それが見られる。それですから、中小企業が、ほんとうに中小企業として特殊性を与えて、そして、その中小企業のよさというものを巧みに、日本の経済の成長のために貢献させていこうということであれば、今のままの中小企業政策では、私はいけないと思うのです。  それから、もう一つ、これは、大企業関係はありませんけれども、たとえば石炭関係である亜炭の鉱業にしても、たとえば岐阜県の東濃地区にある亜炭なんというものは、全く零細企業で、そして、もうどういう仕事をしておるのか知らぬけれども、年に数回は、大きな災害を出しますね。それで、あれをもう少し合理化をして、そして、ああいう原始的な採掘の方法でなくて、採掘方法を指導して、鉱区があまりにも多過ぎるのですが、こういうものも、命令でやるわけにもいかないでしょうけれども、若干、出炭能率を上げる意味で行政指導をして、そして、あの炭鉱を合理化すれば、もっと今の炭鉱が生産単価で業者も利益があり、勤労者も利益があるというような方法が、私はとれると思うのです。そういう指導というのは、全然ないですね。  従いまして、あらゆる業種に、ほとんど全部、今、私が申し上げたことは当ると思うのですけれども、そういう意味で中小企業の持つよさというものを、経済に貢献させていく、これをつぶす方向でなく、やはり守って育ててやる、こういう方向の政策のもとに通商産業省としては、やはり新しい道を講じられなければいけないじゃないか。ただいまの通産省の中小企業政策というものは、まず、なんですね、融資の面では、既存のこういう金融機関にどれだけつけてやりました、これで、まあ中小企業、何とかやるでしょう、近代化の面では特に必要だから、これだけつけてやりました、税金の面では、少しは減らすように努力をしている、こういうような、まあお題目を並べているだけで、ほんとうにガンの手術をするのに、ガンの摘出をするというような政策ではなくて、やはり放射能でも当てて、まあ何とか、そのうちよくなるだろうというくらいに、おそらく世耕弘一長官に批評さしてごらんなさい、そう言いますよ、あの人病気のことを例にとるのが得意だからね。そういう意味で大臣から、中小企業のために、一つ一はだ脱ごうという決意のほどを表明していただけば、——していただいて、それによって通産省動いていただきたい。
  63. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、現在の中小企業対策というものは、過去の前例にとらえられて、それの上に、ある程度の進歩をしつつあるということの数字が並べられておるということは、これは間違いないと、こう存ずるわけでありますが、これもやはり、ある方が、ないよりいいわけでありますけれども、しかし、この将来の日本の中小工業というものは、どうあるかということは、もう少し深く掘り下げていかなければならんと、こう存ずるのでありますが、しかし先ほどの政府委員説明いたしましたごとく、全体の企業投資が一兆四千億である。その中で、一年の中小工業に対する設備投資というのは、はっきりわからなくても、まあ一千億かそこらしかないというふうにもとられるわけでありますから、その辺の数字も、はっきりすること、それから設備近代化をやはりするということになりますというと、これは、中小工業が合同する、合併するということになり、それが大工業に変転するということも考えられなければならないわけでございますが、それから大工業に変転することによって、中小工業が近代化されるという場合には、そういう方法もとられなければならないと思いますけれども、私はやはり、日本の中小工業のほんとうのあり方というものは、中小工業の伝統なり、この仕事のやり工合なり、それによって特殊の持ち味を持っているというものにつきまして、それを生かしていく、これは日本の、やはり中小工業が海外輸出の大きな役割を果しているということは、そこにあるかと存ずるのでありますから、そういうようなものにつきましては、必ずしも経営を系統化するとか、あるいは合併するとかいうことではなくて、特殊のものには、特殊のやはり指導方針をもって、中小工業そのままで持ち味を発揮するというものにつきましては、十分指導し、それに対しては、助成策を立てるということは必要だとは存じますですが、いずれにいたしましても、この問題は、非常に重要な問題でありまして、もう少し掘り下げたる基礎的な数字等と、よくにらみ合せまして考慮いたしたいと思います。
  64. 西田信一

    主査西田信一君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  65. 西田信一

    主査西田信一君) 速記つけて。
  66. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 「共同施設補助につきましては」という書き出しで、工場汚水処理施設のことが書かれてありますね。汚水施設に、共同施設補助金を出されることは、大へんけっこうなことだと思います。思いますが、これでなくて、各工場工場単独に、汚水の処理施設を、今度法制化されたから、やらなければならんことになるでしょう。水質汚濁の調査が、だんだんまとまってくれば、やらなければならん。そのときに、大企業は相当なことをやりますよ。相当な費用を投入して、まあ本州製紙でも例にあるように、これは、問題なくできるでしょうが、一番困るのは、中小企業で汚水を盛んに出す工場ですね。これについて、補助金をつけるということも、私はどうかと思うのですがね、思うのですが、ともかくそういう法律的に汚水の処理をしなければならぬということをきめた以上は、その中小企業工場の汚水処理の施設については、長期低利の融資をしてやるというくらいの、やはり腹がまえがなければいけないんじゃないかと思いますがね。その点は、どういう工合にお考えになっておりましょうか。
  67. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 中小企業関係の問題のお話でございますが、産地企業等で、集団的にやっておりますのは、今お話のような、共同施設というようなことで参りたいと思っております。  ただ、これにいたしましても、この金——補助金と申しますが、償還の金でございますので、かなり施設者といたしましては、負担その他の問題もあるかと思いますが、一応そういうことで参りたいと思います。  単独でしております企業等におきまして、これは、金融の一体、対象になるかどうかという問題でございます。これは、いろいろ処理施設、ことにその処理いたしましたものから、副産物的にある程度の利潤といってはなんですが、収入を得るようでございますれば、あるいは政府機関の金融の対象になるかと思っております。われわれといたしましても、こういう指定されました暁には、中小企業関係の処理施設につきましては、金融のできます限りは、できる限り政府金融機関その他を督励いたしまして、措置いたしたいと思っております。  ただ、性質といたしましては、これはやはり収入のない場合も、かなりあるだろうと思います。そうなりますと、なかなかこの金融ということが、かなりむずかしい問題があるのじゃないかと思っております。
  68. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、おそらくその汚水処理の問題については、私も二、三見ましたけれども、その中にある物品を回収して、これを金銭的に評価し得るなんというのは、ごく微々たるものですね。  ですから、一方は法律において、そういう汚濁防止の施設を命令したわけですね。片方では、やろうと思っても融資がつかないということでは困るんで、これはやはり、原動力になって通産省が動いて、そうして大蔵省方面との話もつけて、そういうものに対する必要な資金というものは、長期低利の融資をする、これは、中金につけてもいいでしょうし、あるいはまた、開発銀行の何か別ワクを作るとかなんとか別途の方法を講じて、汚濁汚水処理の資金というものについては、ひもつきで長期低利の融資ができる、まあ六分五厘くらいの、開発銀行金利くらいのところでできると、こういうふうに考えていただかなければいけないじゃないかと思うのです。そのことが一つ。  それから、もう一つは、今まで問題なくずうっと操業してきて、あの法律ができて、水質の汚濁調査をして、改善をしなければならぬということになった場合には、中小企業に対しては、場合によっては相当な負担になります。で、固定資産が、それだけもちろんふえることになりますから、公租公課でも特別な処置を講じなければ、それだけふえていくわけです。ですから、そういうものについては、やはり税法上の特免処置というものを考えて上げなければいけないんじゃないか、私は、そう考えるのです。  この点は——ちょっと話が進みますけれども、雪国に参りますと、雪国の事業者からよく言われるのですが、九州とか、表日本の暖かい所と、同じ仕事をしておって、ただ、雪が降って寒いばかりに、余分な施設をしなければならぬ、その施設についての公租公課だけは、何とか免除してもらえる方法がとれないものか。天候の有利な所でやっている人は、ますます有利になって、そうして悪い所は、ますます悪くなる、そういうものだけは、何とか税法上見てもらえないか、こういうことをよく聞きますが、私は、その考えについては、やはりちょっと耳を傾ける価値があると思っているのですよ、思っているのですが、それよりも、もっと今の問題は痛切なんですよ、これは、処置しなければ罰せられるんですからね、命令でくるわけですから。そこで、この点はぜひ汚濁問題——いつ問題になるかもわからない問題ですし、もう現地では、あの法律ができたというので、利害相反する立場にある人が、相当神経質になっているのです。ですから、いつ方々で問題が起きてくるかわからないから、それに先手を打って備えられるような態勢というものを、通産省で作り上げていただきたいと思う。
  69. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 水質基準がきまりまして、それを守らなければならないという順守の義務が発生するわけでございますから、それに伴う負担が、特に中小企業の場合においては、何らかのそれに対する支援策をやらなければならぬことは、前の法律案審議のときにも、特に強調して聞かしていただいた通りなんです。  それに対しまして、来年度予算折衝では、お話しございました汚水処理の共同施設という形で予算が計上されておりますが、これは、まあ中小企業の汚水処理の従来の状況を見てみますと、実情として、ただいま御指摘のございましたように、中小企業が単独に、個々に汚水処理施設をやるということは、従来のように、あまりむずかしいことを要求されない状態でも、非常にむずかしかった。まして、今後水質基準がきまって、それを守らなければならないということになれば、さらにむずかしくなるわけでありますから、従いまして、やはりそういう場合には、原則的には、共同処理ということでやる形が一番いいだろう。さらに理想的に申しますと、やはり公共の下水道ができまして、その下水道に中小企業が合流できるという形がさらに望ましい。しかし下水道の施設計画というものは、そう理想通りには参りませんので、それに相次いでの手段としては共同処理、それでもなおいけない場合には、単独処理ということに順位がなっていくのじゃなかろうか。その単独処理の場合には、今、お話のございましたように、補助金なりまあ補助金というよりも融資、長期、低利の融資ということは、当然考えなければならないことでありますが、それは、今、中小企業庁長官から申し上げましたように、金融ベースに、一体どのくらい乗るのかという問題を同時に解決していかなければならない問題に相なると思いますが、もちろん中小企業には、そういう意味の配慮は、できるだけわれわれはやって参りたいと思っております。  それから税の点でございますが、これは、すでに法案御審議の際に、その付則の中で、固定資産税はもう免除ということに、付則ですでに確定いたしております。問題は、それ以外の税の問題でございますが、国税の方では、現在、大蔵省とこれの特別償却について、交渉いたしております。ただ特別償却という制度を、どういう形ではめるかという点の細部について、まだ大蔵省に聞いておりませんけれども、何らかの税の特別措置を講じていきたいということで折衝中でございます。
  70. 西田信一

    主査西田信一君) 私も、ちょっとお聞きしておきたいのですが、ただいま栗山委員から、引例されました積雪寒冷のために、特別な企業設備をしなければならない、これに対して、今、栗山委員御指摘になった通り、これが平等の扱いを受けているということは、非常に不合理で、不都合だという声が非常に高い。私、北海道ですが、特に北海道なんか、さらにその問題が多いのですね。それは、もうあらゆる産業にございます。炭鉱におきましても、いろいろな方面に……。これなんかについては、私は、当然の理由があるし、それに対しては、何らかの措置を講じられてしかるべきだと思うのですが、これは大蔵省の関係もございましゃうけれども、通産省としては、どう考えておられるか、この際、ちょっと伺っておきたいと思います。
  71. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 実は、これは通産省として、そういう角度から特別の検討を従来いたしたことがございませんので、あまり正式の意見をどうこう申し上げるわけには参りませんけれども、実際、事実問題として、積雪地帯で、農業その他には、いろいろな配慮がされておるようでございますが、いわゆる鉱工業についてという場合に、積雪地帯について、どういう特別の経済負担施設等があるかどうかということ自体も、実は私ども、まだ検討が進んでおりませんので、そういう占も、もう少し検討させていただいて、それによって今、両先生からお話がございましたような点も、今後検討をさせていただきたいと思います。
  72. 西田信一

    主査西田信一君) ちょっと私は、意外な御答弁で、びっくりしているのですが、これは、非常にそういう声が高いのです。あなたの方に、そういうことが耳に入っておらぬとすれば、これは非常に不思議なことに伺うわけですが、そういう、それに対する対策が考えられておらないばかりじゃなくて、積雪寒冷のために、どういう特別な設備が現に必要であるかという点についても、何らの検討もされておられぬということは、私は通産省としては、何言いますか、少し言葉が過ぎるが、怠慢じゃないか、ということじゃないかと思いますね。これは、非常に強い声があります。また、おそらく陳情等も、ひんぱんに従来行われておると実は思っておるのですが、私、具体的にこう、一々申し上げることは、時間的にやめますけれども、これは、もう各産業にわたって非常に多いのでございますけれども、今の問題もあわせて御検討になるということですが、ぜひ一つ、至急に取り上げて、十分検討をされて、そして、どういう、これがために、積雪寒冷のための特別な余計な設備があるか、これが産業に、どういうふうに影響しているかということを、十分考えられ、検討されて、それに対する対策を至急立てていただきたいということを希望——希望というより、強く要望しておきます。
  73. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今の何ですね、西田君が、特に発言せられた問題は、私が承、知している限りは、現地の方の事業主の人は、公租公課を、とにかく対象にはしないようにしてもらいたい、こういう意味の御意向が強いのですよ。それですから、大蔵関係へ陳情になったり、また働きかけがあったのだと思います。  事実私、大蔵委員を去年していたときに、北海道等を視察したときに、そういう意見を非常に強く伺って、議員派遣の報告として、この点は、大蔵委員会の速記録には、ちゃんと残っておるのです。ところが、やはり産業の、とですからね。通商産業省が、やはり理解をせられて、そういうようなふうに問題をまとめてもらわないと、なかなか実を結ばないというふうに考えるので、全く私、同感ですから、そういうことにしてもらいたいと思います。  それから、もう一つは、今度は、具体的な問題ですが、この汚水処理の問題で、もう日本一きたないことをやつているのが、一つありますがね、それは、焼きものの産地の瀬戸なんです。瀬戸は、町の中に川があります。そしてその川の水たるや、全くの泥水が年中流れておる。この泥水の出てくる原田は何かというと、この瀬戸物を作るためではないのです。それは、終戦後ガラスの原料の珪素が入らなかった、そこで国内の珪素を探して、どんどん使うようになったんですね。ところが瀬の奥に、とにかく実用になる珪素の山があるわけです。そこで日本板硝子とか旭硝子とか、こういうところに出荷する珪素を水洗いして洗鉱している、そのときに、粘土が泥水に流れてしまう。これは、その泥水を沈澱させて、工合よくいけば、耐火レンガの材料になったり、あるいはかわらの粘土の材料になるのですが、今、何ら手が加えられていない。そうして瀬戸市民は、年中その泥水を見て暮している。昔は、そうでなかったのです。  そこで、何とか汚水を始末する方法をしたい、こういうので運動がありますが、ガラス工場の方へいったって、全然問題にならないのですね。相手にしない。そうかといって、市役所当局も手に負えない、名古屋の通産局長も、これはちょっと手に負えないというようなことで、あまり見ていないのですね。この問題を、こういう、新しい共同施設のあれが出ましたから、価かいい方法はないか、一ぺん研究してもらいたいと思います。  汚濁、しかも下流の方では、現に農民の問題になっている。たんぼの中に、その泥水が入っていくものですから、入口の方は、さっぱり米がとれたい。毎年その問題が起きている。これはうまくやれば、今の粘土の材料になったり、耐火レンガの材料が回収できる。大体、水の中へ粘土の量が三割入っている。その泥水がどんどん流れてくる。これは名古屋の通産局へ、ちょっと聞いていただけば、それこそ即答がくると思います。そういうふうに、一つお願いしたいと思います。
  74. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 今、瀬戸の問題は、実は私の方も、あの川の水の問題につきまして、これは指定になれば、相当問題になると思います。幸い採掘業者といいますかあるいは何々業者といいますか、組合を結成しておるようでありますので、この、ちょうど共同施設に当るものでやれるのじゃないかということで、実は内々は、これは第一号の適用にしようというようなことを、いろいろ研究指導しております。お話のように、耐火レンガの材料になるまでのものが回収できますか、ちょっと問題があるようですが、いずれにしても、ある程度回収して、使用し得る方法もありますようですので、何とか、この線を出したいと思っております。  ただ、先ほど申しましたように、この補助金は、実は補助金でございますけれども、償還をする金になっております。五ヵ年ということで、法律できまっております。あるいは瀬戸あたりの除害施設でございますれば、五ヵ年ということでは、かなり困難じゃないかと思っております。できますれば、これは今後、もう少し検討をいたしまして、償還期限を延ばすことができれば非常にいいかと思っております。そういうことも、あわせ検討いたしまして、でき得れば、これは第一号のあれとして、やっていきたい、こういうふうに思っております。
  75. 西田信一

    主査西田信一君) ほかに御質疑がございませんか。——御質疑がないようですから、通商産業省所管についてはこの程度で終了いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 西田信一

    主査西田信一君) 御異議がないと認め、さように決定いたします。  それでは、午後二時二十分まで休憩いたします。    午後一時二十五分休憩    —————・—————    午後二時四十五分開会
  77. 西田信一

    主査西田信一君) 第二分科会を再開いたします。  科学技術庁所官を議題といたします。政府より御説明を願います。
  78. 原田久

    政府委員(原田久君) 昭和三十四年度科学技術庁予算について御説明申し上げます。  ただいま議題となっております科学技術庁昭和三十四年度予算案について御説明を申し上げます。  わが国が資源の貧困を克服しつつ、世界の先進諸国に伍して、経済の発展と国民生活の向上をはかるためには、科学技術基盤をつちかい、その振興をはかることが、最も大切であると確信いたしております。従いまして、政府は重要政策の一環として、科学技術振興を取り上げました。科学技術振興をはかることをもっぱらその任務とする科学技術庁におきましては、この政府の方針に従いまして各般の施策を強力に推進するかたい決意のもとに、以下に申し述べます各種の事業を実施することにいたしました。このための経費として、昭和三十四年度一般会計予算案に歳出予算額九十八億九千二百八十四万五千円、国庫債務負担行為額三十五億六千七百万円を要求しました。これを前年度予算歳出予算額九十五億三千七百五十九万七千円、国庫債務負担行為額五十一億四十万円に比べますと、歳出予算額におきまして三億五千五百二十四万八千円の増額、国庫債務負担行為額におきまして十五億三千三百四十万円の減額になっております。以下予定経費要求書の順を追って、その大綱を申し述べます。なお、便宜上一般行政費関係につきましては、最後に御説明申し上げることといたします。  まず科学振興関係として二億九百八十五万五千円を計上いたしました。  その内訳は、次の通りであります。  (イ)科学技術者の渡航、わが国の科学技術振興をはかる基本的施策の一つとして前年度に引続き、各省庁関係職員を海外先進諸国に留学させ、そのすぐれた点を習得させることといたしました。このための渡航費として五千三百四十万円を計上いたしました。  (ロ)発明実施化試験の助成、優秀な発明考案であるにもかかわらず、経済的理由からその発明を実施化することが困難な個人または中小企業者に対して、実施化試験のための費用を補助して、その実用化をはかるとともに開放発明研究機関に対して、発明実施化のための設備の整備に必要な費用の一部を補助することといたしまして、二千百八十九万五千円を計上いたしました。  (ハ)科学技術試験研究の助成でありますが、多数部門の協力を要する試験研究及び各種研究に共通する試験研究を、総合的に実施しようとするものに対し、試験研究費を補助しまたは委託研究費を交付してその試験研究促進をはかるため四千六百五十六万円を計上し、明年度は、水質汚濁防止研究等二、三の研究課題を取り上げる予定にいたしております。  (ニ)日本科学技術情報センターの整備でありますが、内外における科学技術情報の収集、分類、整理及び提供に関する業務を行うことを任務として日本科学技術情報センターが一昨年八月発足いたしましたが、その業務強化充実をはかって科学技術水準の向上に一層寄与させるため、政府出資金及び補助金を交付することとし、その経費として八千八百万円を計上いたしました。  次に、原子力平和利用関係として六十六億八千二百九十一万三千円と、別に国庫債務負担行為額三十四億二千七百万円を計上いたしました。その内訳は次の通りとなっております。  (イ)といたしまして日本原子力研究所、原子炉の開発につきましては、すでに第一号炉は運転中で、第二号炉につきましては近く完成し稼働する予定であります。また、わが国最初の国産炉たる第三号炉につきましては、昭和三十三年度において発注した分の現地組み立てを開始し、昭和三十五年度完成を目標に着々工事を進めております。なお、前年度国庫債務負担行為で発注を予定していた動力試験炉につきましては、目下契約の手続を進めつつありますので、昭和三十四年度以降三カ年度内に工事を完成させる予定となっております。このほか原子力の基礎研究を初めとする各種試験研究を一そう推進するとともに、技術者の養成訓練の業務等を強化して日本原子力研究所が真にわが国原子力研究の中核的機関であるよう、その機能の拡充整備をはかることといたしております。このため四十四億円と、別に国庫債務負担行為額三十四億二千七百万円を計上いたしました。  (ロ)といたしまして原子燃料公社であります。原子燃料公社におきましては前年度に引き続き、核原料物質の探鉱を積極的に行い、また前年度完成いたしました精製還元中間試験設備を運転して金属ウランの生産を行うほか、粗製錬試験設備の運転を開始して製錬方式の確立をはかることといたしております。このため十一億三千万円を計上いたしました。  (ハ)といたしまして核燃料物質等の購入等でございますが、日本原子力研究所に据え付けられたもの及び今後据付予定の研究用原子炉等に使用される核燃料物質等を購入及び借用する経費として九千六百十万五千円を計上いたしました。  (ニ)原子力技術者の海外派遣でございますが、原子力関係技術者を海外先進国へ派遣して、これら技術者の養成訓練を前年度に引き続き行うこととして三千二十四万円を計上いたしました。  (ホ)民間企業等の原子力平和利用の研究でございますが、原子炉及びこれに関連する機械器具、材料等の国産化のための研究、核融合、原子力船の研究等を推進するため、民間企業等に対する研究委託費及び補助金として、三億八千万円を計上いたしました。  (ヘ)放射性廃棄物の処理対策でございますが、放射性廃棄物の処理は、放射線障害防止上きわめて重要なことと考えられますので、新たに廃棄物処理事業を一元的に行う適当な機関に対しましてその事業費の一部を補助するため、一千四百十六万円を計上いたしました。  (ト)国立試験研究機関等の原子力試験研究でございますが、関係行政機関等の原子力平和利用研究につきましては、固有の研究分野に関連して核原料物質の調査、放射線の利用研究、核融合、原子力船の研究等、原子力の開発、利用等に直接関係する研究テーマに対して、それぞれの特色に応じた研究活動を期待することといたしまして五億五千三百一万八千円を計上いたしました。  (チ)放射能調査でございますが、前年度に引き続き、大気、海洋、地表、動植物等について人工放射能及び自然放射能の分布状況を組織的に測定調査して放射線障害防止対策等の資料とするため、国立機関及び公立衛生研究所等にその調査を実施させることといたしまして、五千九百三十九万円を計上いたしました。  (リ)核原料物質の探鉱奨励でございますが、核原料物質の開発を早急に実施できるよう核原料物質の賦存が予想される地域に存在する鉱山を積極的に探鉱させるため、補助金として二千万円を計上いたしました。  次に所管試験研究機関関係として二十七億五千四百十八万二千円と、別に国庫債務負担行為額一億四千万円を計上いたしました。  その第一といたしまして航空技術研究所でありますが、六カ年計画で鋭意整備を行なって参りました航空技術研究所は、新年度が第四年度目に当りますが、遷音速風洞設備を初めジェットエンジン要素試験設備、機体関係試験設備の大部分が完成できる見通しとなりましたので、一部は実用に供し得る状態にいたしたいと予定しております。このため十五億八千二百万一千円を計上いたしました。  第二に、金属材料技術研究所でございますが、金属材料技術研究所につきましては、金属材料の試作試験設備、材料試験設備等に重点を置いて整備を行って参りましたが、整備五ヵ年計画の第四年度目に当りますので、引き続きこれらの諸設備の整備充実に努め、すみやかに、わが国唯一の金属材料に関する総合的試験研究所としての機能を十分に発揮させたいと考えております。このため五億八千八百九十九万四千円を計上いたしました。  第三として、放射線医学総合研究所でございますが、昭和三十二年度以降研究所施設の建設を行なって参りました放射線医学総合研究所は、病院及び特殊実験室関係の建物を除いて工事が完成いたしますので、研究に必要な試験研究設備充実重点を置いて、すみやかに研究態勢を整えることといたしております。このため五億八千三百十八万七千円と別に国庫債務負担行為額一億四千万円を計上いたしました。  第四番目に、理化学研究所でございますが、昨年十月特殊法人として発足いたしました理化学研究所につきましては、新年度において研究施設整備に三億七千万円、新技術開発に一億三千万円、合計五億円の政府出資を行うこととして、大蔵省所管に計上いたしました。これにより特色ある研究活動を強化し、また民間企業では開発の困難な新技術開発する態勢を整えたいと考えております。  最後に一般行政費関係といたしまして二億四千五百八十九万五千円を計上いたしました。  その第一は、一般行政事務処理費でございますが、科学技術振興のための長期計画策定費、内外科学技術の調査公表費、技術士法の施行費、原子力関係行政費、及び各種審議会等の運営費並びに内部部局の人件費、事務費等に必要な経費として二億八百二十六が三千円を計上いたしました。  第二に科学技術会議でございますが、すでに今国会において成立を見ました科学技術会議設置法による科学技術会議の運営に必要な経費として六百二十七万二千円を計上いたしました。  第三に原子力委員関係でございますが、原子力委員会におきまして、委員等の人件費、会議運営費等に必要な経費として、一千一百九十二万五千円を計上いたしました。  第四に、資源の総合的利用方策の調査についてでございますが、資源調査会を中心に、前年度に引き続き、資源の総合的利用方策の調査、及び資源の利用に関する資料等の収集分析等を行う経費といたしまして、一千九百四十三万五千円を計上いたしました。  以上申し述べました経費を目的別に大別いたしますと、当庁の昭和三十四年度歳出予算要求額は、一般の部におきまして歳出予算額二十五億四千三百九十八万一千円、原子力の部におきまして、関係行政機関より別途行政費として要求いたしております七千二十二万八千円を除き、歳出予算額七十三億四千八百八十六万四千円、国庫債務負担行為額三十五億六千七百万円となります。  近時世界各国における科学技術の進度は、原子力、エレクトロニックス、合成化学を中心として、まことに驚くべきものがあり、その結果産業構造の一大変革がもたらされることが予想される状況にあります。従いまして科学技術庁の任務は益々重大さを加えて参ったことを痛感する次第であります。  つきましては、当庁の予算案につきまして、なにとぞ十分に御審議の上、すみやかに御賛成を賜わりますようにお願いいたします。
  79. 西田信一

    主査西田信一君) 御質疑を願います。
  80. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいま予算案につきまして説明をいただきましたが、その説明をずっと聞いておりますというと、大体科学技術庁として取り上げるべぎおもなる点がずっと述べられましたので、大体の意図しておられるところを知ることはできたわけであります。そこで、私はただいますとあげられたテーマについて、裏づけとなっている予算額を見ますというと、非常に小さいものから相当額に及ぶものまで種々雑多であります。従ってこういう必要経費を算出された基礎になっているものは一体どういうものなのか、それを伺いたいと思うわけです。で、あるいは既往の各年次における実績等をずっと延ばしてこられて、こういう工合になったものもありましょうし、また新しい視野から始められている原子力関係のようなものもありましょうし、いろいろ事情はあろうと思いますが、一応それをずっと伺ってみたいと思います。
  81. 原田久

    政府委員(原田久君) ただいま御説明申し上げました昭和三十四年度予算が、大きな予算規模のものと、小さな予算規模のものと、いろいろ、いわば玉石混淆になっているが、その間、何か経過的な根拠ありやいかん、ありやなしや、あるとすればどういう理由でそういうふうになっているかという御質問だと思いますので、詳しくは御説明申し上げる資料をただいま持ち合せておりませんが、わかつている範囲でお答えさせていただきたいと思います。  御承知のように、科学技術庁昭和三十一年に発足いたしまして、発足当時におきましては、関係各行政機関が集合いたしまして、それぞれ過去において実施して参った仕事を受け継いで発足をするというような形をとりました関係上、発足の当時におきまして、当時原子力関係が最も多うございまして、十五億円程度の大部分を占めておりまして、あと資源調査会関係の数千万円の予算、それから特許庁の発明奨励関係で移管されました金額がやはり二千数百万円というような金額、それからSTACと俗称しております科学技術行政協議会というのがございましたが、その関係経費がやはり数千万円あったと記憶しておりますが、発足当時はそのような、いわば原子力関係が十五億くらいが、主力を占めて、あとは微々たる予算を集合して発足したという状況でございます。  その後、原子力関係につきましては、十五億円を基礎といたしまして、第二年度には——正確に申し上げますと、三十一年度は現金予算で二十億——私ただいま十五億円と申しましたのは記憶の間違いでございますので、御修正いただきますが、原子力関係が二十億でございます。それからその予算が、三十二年度には六十億と、まあ約三倍に増額をされました。それから三十三年度には七十七億と相なりました。三十四年度は七十四億と、三十四年度には若干減少いたしましたが、ともかく世界の原子力の進運を圧縮して反映させたと言っても過言ではないと思いますが、わが国としましては原子力関係が非常な勢いで増加をいたしましたのが、予算の大きくふくらんだゆえんのものでございます。  このほかに原子力関係では、債務負担行為が三十一年に十六億、三十二年に三十億、三十三年に三十三億八千万円、それから三十四年に三十五億六千七百万円というような増加を示しております。これが予算の一番大きく増加をした主因でございます。  で、その他の予算につきましては、従来踏襲しておりました仕事が、漸次事務量の拡大とともに、増大をしたと申し上げたら一番適当かと思いますが、原子力のようなはなやかな、と申しますか、急激な増加を示しておりません。で、そのうち特にまあ比較的大きな増をしたと見受けられますのは、航究技術研究所でございます。航空技術研究所は科学技術庁発足以前から六カ年計画でスタートをしておりましたが、逐年これは膨大な施設が要るというので、増額になって参りましたような次第で、三十四年度には十五億八千万円——先刻御説明申しましたような金額になったわけでございます。それから金属材料技術研究所が三十一年に発足したわけでございまして、発足当時は一億円程度予算でございましたが、これも設備がだんだんと拡充して参りまして、三十四年度には五億八千万円、それから放射線医学総合研究所は、三十二年度から発足をいたしたものでございますが、これも最初は比較的小規模な状態でございましたが、逐年施設の増大、施設整備の予算が増大いたしまして、来年度は六億五千万円というふうに増加をいたしました。で、そのほかの経費は、先刻御説明いたしましたように、大体言いまして従来の踏襲という形をとっておりますので、そう大きく増加をしておりません。ただ、理化学研究所は昭和三十三年から特殊法人の機関ということになりまして、予算も増額、前年度の三億三千万円から五億に増額をいたしております。それから情報センターという機関が昭和三十二年度から発足をいたしておりますが、これも大体金額といたしましてはそう変化がなく、発足の状態を若干上回る程度予算の増でスタートをしておる状況でございます。それから新しく新規な、昭和三十三年度ないし三十四年度といたしましては、科学技術会議が発足いたしますというので、これに必要な諸経費が三十三年度からつきました。それからその他調査費などがそれぞれ若干ずつ増加をしておりますが、大体従来の実績を踏襲し、それが若干ずつ増加したという関係で、飛躍的な増加を示しているものはおもにございません。  要約いたしますれば、原子力関係が時代の脚光を浴びて急激な増加をした。それから研究施設関係がやはり相当経費投入しなければならないというのでこれが増加しておる。その他の事務費その他はそう増額をいたしておりません。簡単でございますが御説明申し上げます。
  82. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私の質問を申し上げたのとは、ちょっと意味が違うのですがね。抽象的に申し上げておってもあれですから、説明書の初めの方からお伺いしてきますからお答えを願いたいと思います。  三ページの科学振興関係のところですがね、「科学技術者の渡航」というのがあります。各省庁関係職員を海外先進諸国に留学させると、こういうことでございますが、五千三百四十万円で、一人当りどのくらいの期間何名ぐらい派遣をする予定でありますか。
  83. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) これは大体の計画といたしまして、来年度におきましては、まあ長期の留学生と、それから短期の留学生と二つに大きく分けると、そういうことになるのでございますが、そのほかにも国連関係の留学生もおります。それについて申し上げたいのでございますが、第一の長期の留学生と申しますのは、一カ年間の予定で外国の大学とか、あるいは研究所に参りまして研究をするということでございまして、一人当り百五十万円を限度といたしまして支給するわけでございます。それから短期の方は大体三カ月の予定でございまして、金額といたしましては大体百万円から百十万円の間ということになっておるわけでございます。その行きまする方々も、長期の方は比較的若い方でございまして、向うで研究所に入り込んで研究する。それから短期の方は、大体研究所でございますれば部長クラスあるいは所長といったような方々が、一応研究の指導をするという立場の方々が、海外の研究がどういう動向であるかということを調査、比較研究に行かれるというのが大体の目的でございます。それで、長期の方は人数といたしまして一応来年度は十五名、それから短期の方は五名程度ということを考えているわけでございますが、そのほかに国連の方で滞在費を見るけれども旅費を日本側で出せというような制度がございます。これは国連の方でご採択いたしますので、人数ははっきりしたことは申し上げかねるのでございますが、今までの実績から参りまして、大体まあ年間四、五十名の方が行っておるわけでございます。これに対しましては、片道の旅費だけで済むわけでございますので、大体一人当り二十五万程度で、そういった方々が研究に行ける。そのほかに外国の大学、あるいは研究所等から滞在費を見てやるから旅費だけを出せば入れてやろうというのもございます。そういったような方々に対しましても、これも所とか、あるいはまた往復の旅費が必要か、あるいは片道の旅費が必要か、その点はっきり申し上げかねる点でございますが、そういった方々が十名ないし十五名の方が出かけられるということでございます。以上でございます。
  84. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいま各省庁関係職員で、今おっしゃったような、三通り、四通りばかりの留学の方法がありますが、そのいずれかに当てはめて、海外で勉強をさせた方がいい、勉強させる必要がある、そういう工合に思われる人数はどれくらいの予想でありますか。
  85. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) これは、私ども見ておりますところ、一応研究所——日本の大学を出まして四、五年たちまして、いろいろ研究テーマを持つ者が、海外の研究を十分見たいという方が非常に多いのでございます。多いのでございますが、しかし、私どもの方としましても、まあ学問的な能力がありましても、語学の方でうまくいきませんと、行っても何にもならぬものでございますから、そういったような語学の勉強もすることを非常に奨めております。で、私の方は、各省から推薦を得まして、その中からテーマとか、あるいは学問のバラエティ等を考えまして選抜するわけでございますが、大体そういった人数の二倍ないし三倍程度の推薦を受けておるわけでございます。そんな状況でございます。
  86. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、それは毎年のことでしょう。前のことではなくて、公務員が、おおむね数がきまっておるのだろうから、その数のうちで総員の何%はぜひとも海外に留学をさせたい、そうするためにはこれくらいの人数になるのだ、そのうちで今までにもう行った者はこれだけ、あと残りはこれだけ、こういうようなふうの計画は、計画というか、調査はできておりませんか。
  87. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 今御質問のような的確な資料はただいま手元にないのでございますが、研究機関におきまする研究公務員と申しますか、そういった人たちが現在大体八千人程度になっております。しかしながら、これは大学出でない人も相当おりますものですから、そのうち大学出が何割になるかわかりませんが、二割程度でないかと思うのでございます。今私はっきりお答え申し上げかねますけれども、そういった方々、——これは毎年また、何といいますか、新陳代謝もございますので、まあおそらく二、三百人の人が新しく入って参ると思います。そのうちで海外に出した方がいいかどうかということ、これはなるべく多く出した方がいいということは間違いないのでございますが、しかし、何人出さなければならぬかという線が引きにくいわけでございますので、的確にお答え申し上げかねることは、はなはだ残念でございますけれども、まあ各省といたしましても、おそらく出したいという人々の四分の一ないし五分の一程度が行けるという状態ではなかろうかと観測しております。
  88. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私がお尋ねしている目的が十分わかっていただけないものですから、答弁が私の質問にぴたっと合わないと思うのですがね。僕が考えているのは、これは三十四年度で長期十五名、短期五名でしょう。これには大学の教授は入っておりますか。
  89. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 入っておりませんです。もちろん教官は、これは文部省の方におきまして、別途予算措置を講じているわけでございます。
  90. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私がなぜそういうつまらない質問をしているかと申しますと、今すでに文部省のこういうお話があったのですが、少なくとも科学技術庁というものを新しく設けて、日本の科学技術振興について総合的なめんどうを見ようという、大きな看板を掲げた役所ができたわけです。そうすれば、今まで自然発生的に何名かぼつぼつ出てきたものを、それを土台にしてことしは去年より何人ふやしてやろうとか、来年は何人ふやしてやろうという、そういう無計画的なことでなくて、今、日本で一番必要なのは原子力の理論的な学者とかあるいは応用的な技術者である、そういう者が大量にほしいことだけは事実ですね。早く作らなきゃならぬ。大量にといっても一度に作るわけにいきませんから、五ヵ年計画なら五ヵ年計画をもって、五ヵ年の終末には何名、こういうふうな想定ができれば、それについて、国内で、もちろん一人前に技術を修得する、理論を修得する人もあるでしょうけれども、百聞一見にしかずだから外国で勉強した方が手っ取り早い、欧米先進国の精髄に触れることができる、こういう意味でいけば少なくとも半分は五ヵ年計画で出してやる、こういうようなやはり総がらみの計画というものが立つでしょう。そういう意味の計画を新しい役所である科学技術庁はすべきではないか。各省にある古い伝統を持った部局とは違って、とにかく斬新な思想のもとに斬新なテーマでできた役所ですからね、そういう一段と踏み越えた計画が必要ではないか。そういうことが私の頭の中にあるからお尋ねをしておる。ところがどうも答弁者の方は、そういう私の考えというものが徹底してないものだから、答弁がくっつかないと思うのです。
  91. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 私申し上げましたのは、研究者の海外渡航に関しまする一部分について申し上げたわけでございますが、お話のように、研究者といたしましては大学が非常に大きな数をかかえているわけでございます。ただ当庁の設置法からいきまして、当庁の対象といたしますのは大学の研究に関するものは除く、というふりになっておりますものですから、大学の研究者の海外派遣ということについては、当庁といたしましては権限外の事項ということにかんがみまして、別途文部省が計画をしているわけでございます。ただ文部省の方において出しまする人数は、大学の教授、助教授といったような階層から何人出すかという割合と、それから科学技術庁が所管しておりまする、国立研究機関の職員の人数から派遣いたします人数の割合は大体同じでございます。  それからなお、御指摘のありましたように、原子力等におきまして急速に多くの人を要する留学に関しましては、科学技術庁といたしましては一般の研究者と別個にいたしまして、別徐原子力局におきまして予算を計上いたし、派遣をしているわけでございますので、その点原子力局長から一つ……、
  92. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、いいです。それはちょっと待って下さい。それは実はあとで出てきますけれども、問題は特に原子力が今クローズアップされているわけですが、科学技術庁が各省の実質的には統括機関のような立場に立って、そして日本の行政庁の原子力に関係するいろいろなものを集約して、大局的な観点から日本の原子力というものが科学技術庁の窓口を通じて一目瞭然になる、そういうような格好に私はすべきではないかと思っているんですよ。ところが、これはいずれあとで原子力局長にも伺いますが、どうもそういうふうになっていないものだから、それで今度は科学技術庁としてのあり方をお伺いしたいのですが、今たとえば出てきた、大学の教授はどうですかといえば、設置法の権限外だからおれは知らぬということになる。それじゃ何も統括性はないわけです。しからば私は文部大臣にこれを伺おうと思ってこの間調べたのです。文部省の方で、各大学の自然科学の研究の卒業生と社会科学の系統の学生と、どういうような割合で卒業していくのか、それに対して国内の需要、といってはおかしいですがこれらの大学卒業生を必要とする数と、実際に充足されておる数の比率はどの程度になるか、そういうこと。それから大学の教授は果して足りておるのか、足りていないのか、そういうことを資料で求めたところが、的確な資料はないのですよ、文部省には。そういう観点に立って作ったものはありませんというのです。それじゃ科学技術庁が、文部省の方は文部省の方でうまくやってくれるといっておられても、文部省ではちっともこういうことはやっていないのです。そうなれば科学技術振興だといってできた科学技術庁としては、本来の行政責任を果していくということにはならない。だからそこまで思いを及ぼせば、設置法を改めて、科学技術に関する限りは、各省は少なくとも科学技術庁と協議をしなければならないとか何とか、干渉はできないでしょうからね、そういうところまで各省の横の連絡をとって、科学技術庁の推進をしていくということでなければいかぬと思うのですがね。だからあなた方の頭の置き方の問題ですよ。これはあとずっと全部そうなんですがね、そういう見方をしていけば。だからこれは最後に大臣に所信をちょっと伺いますけれども、まずあなた自身が、そういう考え方で物事を進めていくことの妥当性について、どう理解されるかということです、聞賭は。
  93. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) お話のように科学技術振興と申しますると、大学の基礎研究から国立研究機関の応用研究、あるいは産業研究まで、全部一貫した目で見る必要があると思います。しかしながら先ほど申し上げましたように、当庁といたしまして、設置法の建前から基礎研究の方には入っていけないような格好になっております。この点を私どもも従来痛感をしておったわけでございますが、このたびそういった欠陥を補うという意味におきまして、新しく科学技術会議設置法を今国会において御承認を願ったわけでございます。これによりますると、これは総理大臣の諮問機関でございますが、これにおきましては大学の研究に関する責任大臣でございます文部大臣も出ますし、またそれ以外でも、科学技術振興の責任大臣科学技術庁長官も出まして、そこで十分話し合いをする。もちろんその下には下部機関はございますので、両省の役人も学識経験者も入りまして十分審議を行うわけでございますので、こういった機関が動き出しますならば、かなりその点は改善されるというふうに考えております。
  94. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ある意味において形式的な…たいていこういった質問をすると、形式的な役所の組織論を持ち出してきて、こういう工合にいくから大体うまくいくだろうという答弁なんですよ。ところが、確かにそういう組織があればないよりはいいでしょう。いいけれども、問題は科学技術庁としての本来の任務というものはどういうものであるか、新時代に処していく、そういう科学技術庁の中の責任あるあなた方の腹がぴたっときまらないと、逃げ口上になってしまうのですよ、問題は。私はそうだと思う。たとえば今の留学生の問題だって、私が考えておるようなことをあなた方が念頭に置いて、そうして立案されたというのなら即座に統計なり数字なりはぱっと出なければならぬ。それが出ないということは、そういう考え方というのがないということです。そうでしょう。原子力局長どうですか。あなたはそれに関係ないのですか。
  95. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 原子力の方は御承知のように予算配分と申しますか、査定ばかりでなしに、一括して予算を、各省関係予算並びに自分で監督している研究所、公社等の予算を一括して計上いたしまして、そうして各省の方には移しかえするという建前になっておりますので、この点に関しましてはただいま栗山委員から御指摘ありました通り、非常に強力に行なっているものと思っております。ただ先ほど来問題になっておりました文部省との関係は、学問の自由という建前から、文部省の予算関係はこれは除いてもらいたいということでございまして、原子力委員会の方には事前に御連絡は参りますけれども、一括計上のワク内からは外れるのでございます。それからただいまの人員養成の問題でございますが、これに関しましても、おそらく歴史始まって以来これほど強力な、何と申しますか人員養成というものは私はなかろうと思いますぐらい、非常に膨大なものでございまして、外国に出しておりますのは、三十四年度では公務員あるいは、原子力研究所、燃料公社を合わせまして三十五名、その他民間の機関から出しますのが五十五名、約九十名を今年度派遣いたしたいというふうに考えておるわけでございます。毎年大体七、八十名程度今まで留学しておりまして、非常にこの面から申しますと海外の知識を吸収するという点に関しましては、特に留学制度に関しましては非常にまあ画期的な措置をとっておるのではなかろうかというふうに考えております。
  96. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私どももそこまで突っ込んで研究をしたり、資料を持ってはいないのですが、純物理と、要するに原子力工学とでもいうのですか、そちらの方の系統とに分けて、大体現在どれぐらいの人がいるのか、そのうちで海外で研究したのはどのくらいいるのか、これからそのうちでどのくらいを出さなければならぬのか、そういうようなことなどのやはり数字的なものぐらいは提出を私は願いたいと思います。今述べられなければですね。それから大学の教授にしても文部省だから干渉はできないとおっしやいますが、干渉はもちろんできないけれども、横の連絡ぐらいはもちろんとれるわけだから、実際に今原子力関係の講座がどれぐらいある、将来はどういうふうにふやしていく、それに対して優秀な教授というものは足りているのか足りていないのか、こういうことについてもやはり研究をされて、資料を一つもらいたいと思うのです。それぐらいのとりまとめがなければ科学技術庁としては義務を尽していることにはなりません。
  97. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 人員の養成問題は、原子力局におきましても最も重要な問題でございますので、二年前から文部省あるいは原子力産業会議等を通じまして詳細な現状調査、言いかえますとアンケートをとってそれをただいま集計が終ったのでございます。それによりますと概略現段階で原子力関係に従事している技術者、科学者もしくは、もちろん大学関係を合わせまして約六千名ございます。近く四年後くらいにはどれくらいの希望者がいるか、また何人ぐらいの人が必要かという点もアンケートで調べたのでございますが、大体四年間にさらに倍以上必要になるというふうな集計になってございます。  ただいま大学のお話がございましたが、大学の方では講座等は既設の分が三十、三十四年度に新設するのが十九、合わせて四十九の講座が設けられることになっております。その他大学院あるいは学部等の中でそれぞれ教育をしているわけでございますが、その現在員等も実は資料を持って参りませんで、はなはだ恐縮でございますが、あとで詳しい資料をお届けいたしたいと思います。
  98. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大臣は、どうも運が悪くて、肝心なときになるとほかの用事ができて困るのだが、衆議院の本会議が始まるそうですから、終りましたら御足労ですけれどももう一ぺんおいで下さい。
  99. 西田信一

    主査西田信一君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  100. 西田信一

    主査西田信一君) 速記を始めて。
  101. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは原子力局長、あれですね、私がなぜそういうことをくどく言うかと申しますと、人事院の任用局から私が資料を求めたのですが、そうすると三十二年、三十三年度の要するに六級職の公務員の応募者数、合格者数、採用者数、そういう表をずっと試験区分別にもらったのです。ところが遺憾ながら原子力の原の字も入っていない、その試験区分の中には、物理、それから地質、電気というような今までの試験区分だけしかない。原子力専攻の、物理専攻なり力学専攻、工学専攻の人がどんどん出ている、あるいは近く出るでしょうが、それに対応するものがないわけです。それで一体どういうことになっているのかという疑問を持ったからお尋ねしたのだけれども、お尋ねしてもまだよくわからぬ、こういうことですね。
  102. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) たいへんどうも説明が疎漏でございまして何でございますが、ただいまの段階では、原子力学部というふうなまとまったもの、名前じゃなくして、たとえば理学部の中には各般の物理学とか、あるいは工学部の中には原子炉材料関係の講座とかいうふうに分けて、実は講座をやっておりまして、従いまして人事院の試験等を受けます際には、おそらく原子力云々という出し方じゃなくして、やはり従来の理学部、工学部というふうな出し方で出しているのじゃなかろうかというふうに考えております。
  103. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこで結局原子力局がこれだけの予算を持ち、将来の原子力の平和利用に国民の期待している面も多いわけで、それであるからこそ国も相当の国費をさいているわけです。従ってこういう試験区分を一ぺんに変えることがいいか惑いかは別としても、原子力をとにかく専攻したというか、原子力をマスターした物理の専攻者なりあるいは工学の専攻者が表へ出てくるように、これは人事院もやはり改めていかなければならぬと思うのです、もうこの辺で。そういうことが必要だということを申し上げているわけですよ。これはいずれ資料がありましたら一つお願いしたいと思うのです。  その次に発明実施化試験の助成というのがありますが、これが二千一百八十九万何がしか載っています。優秀な発明考案で経済的理由から実施することが困難な個人、中小企業者に対して補助、助成をする、こういうテーマになっておる。ところが金額が非常に少いのですが、実際に優秀な発明考案で、こういう趣旨に該当するものが毎年どれくらい補助を期待しているか、その期待している補助に対してこの金額は何。パーセントぐらいに当るか。こういうことがおわかりになっているかどうか。その(ロ)も(ハ)も同じ性質のものですね。
  104. 原田久

    政府委員(原田久君) 発明実施化試験補助金の実績でお答えさしていただきたいと思いますが、昭和三十三年度の発明実施化試験費補助金の交付につきましては、応募者総数が三百三十五件でございます。それに対しまして、実際に交付いたしました件数は四十三件になっております。それから金額で申しますと、応募者の補助希望金額が二億四千四百八十五万円で、実際交付をいたしましたのは、個人の交付が二千百二十九万三千円、それから開放研究室と呼んでおりますが、発明者がおのおの施設をもって研究をするよりは、相互に利用し得るような施設を数カ所に設けて、それを共同して利用するというような施設を開放研究室と呼んでおりますが、三カ所、新潟と京都と兵庫にございますが、三カ所で百七十五万四千円。計二千三百四万七千円。こういうような金額の補助金を交付しております。御指摘の点は、おそらくそういう非常にたくさんな応募がありながら補助額が少いじゃないか。こういうことではないかと思いますが、これは科学技術庁発足以来、発明奨励の仕事を特許庁でやっていたのを、科学技術庁が受け継ぎまして、その実績に基いてやっておりますものでございまして、いわば踏襲してやっておる関係で、飛躍的な増額をみておりませんし、毎年旅費だとか補助金だとかの整理を、何パーセント減をしてくれというような大蔵省御当局の御要請で、閣議でそういう線がきまりまして、そういう線で整理して若干づつ減額をいたしておりますので、そういうのがありまして伸びていないという実情でございます。
  105. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その(ロ)の科学技術試験研究の助成というものも全く同じ性質のものと私は考えますが、そういう今御答弁があったような考え方が、科学技術庁という新しい行政庁の取られる方針としては少し退嬰的ではないか、こういうことなんです。なぜこれは申し上げたかと申しますと、特許庁から受け継いだと言われるが、特許庁は、午前中に通産大臣に私は迫ったのですが、ことしの四月一日から特許四法が改正になりまして、大体五億近い増収になるのです。今でも特許庁は特別会計的な経理をすると黒字なのです。出願料金収入が多いのです。今の特許庁は全然なってないから、その金を投入して官庁設備の改善から、技術官の大幅な増員からあらゆるものをやって、審査速度をうんと早めて国民の期待に沿うようにしなければいけない、海外の資料整備をふんだんにやらなければならないということを力説してきた。ところが午前中通産省の政府委員に聞いても、特許庁に対する重要性というものの認識がきわめて乏しくて、予算説明書の中にも特許庁の特の字も入っていない。そこで私は怠慢ではないかとこう言ったのです。それと同じように科学技術庁も特許庁から引き継いだことはよいけれども、科学技術庁が引き継いだということは、特許庁が今までやってきたことをさらに何倍か拡張して、そうしてほんとうの意味の科学の進展に寄与するということでなければならない。特許庁と同じことをやっているなら科学技術庁に持っていくことはない。そういう意味で少し消極的ではないかということなんですよ。三百三十三件実績があって、おそらく予算関係で四十三件しかできなかったのだろうと思うのですが、三百三十三件の中で実際に助成の資格のありそうだと思われたものが何件くらいあったのか。三百三十三件の中で、少くともそれくらいのものにはこの金額をふやして行うべきじゃないか。商工委員会でこの前議論をしたときには、とにかく五億近い増収があるから、そういうものは国庫に入れる必要がないから、特許庁の行政力の拡充、それからこういう特許庁の仕事で科学技術庁にいっているような、科学技術振興のための仕事に、あげてこれは使うようにしなければ、諸料金引き上げの負担をしている国民に申しわけがないではないか、そういうことになったのですよ。これは付帯決議にもなっている。
  106. 原田久

    政府委員(原田久君) 栗山委員の御指摘の通り、私どもといたしましても、発明奨励の関係補助金というものは、対象といたしまして個人または中小企業というような資金的に恵まれない方が多くて、アイデアとしては相当いわば画期的な着想が出ているわけです。それが資金的な理由で実施されないということは非常に遺憾だと私どもは考えております。そういう意味で、逐年発明実施の補助金の増額に努力をしているのでございますが、ここに大蔵省の方も来ておられますが、なかなか御理解をいただくにはまことに私ども力が及ばないと思いますが、しかしただいまそういう特許関係四法の改正に伴ってそういう料金の増額もある、どうしてもそういうような発明奨励の仕事をこの際大いにやらなければいかぬ、という立法府の御意思を体しまして、来年度、三十四年度は大体予算はもう原案を政府として作ったあとでございますので、御趣旨の線に沿いまして、三十五年度を目途といたしまして、大いに努力さしていただきたいと考えております。  まことに恐縮でございますが、私どもの決意のほどを御披露さしていただきますが、あわせて私どもといたしまして、それじゃ全然そういう点で力を入れてないかと申しますと、科学技術試験の助成といたしまして、四千六百五十六万円ほど総合的な試験研究をやる費用といたしまして補助金、委託費といたしまして三十四年度には計上しております。それは水質汚濁の研究だとかクロレラの研究、水温利用の研究を対象に考えておりますが、それは一つの考え方の表われであろうかと御理解いただければ幸いだと思いますが、なお最初申し上げましたように、発明奨励という点につきましては私どもまだ十分力をいたしておりませんので、来年度からは大いに一つ御趣旨を体して予算面におきましてもそれを反映するように努力したい、こういうふうに考えております。
  107. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはあと大臣来られたらほんとうにもう少し真剣に伺おうと思っていますがね。とにかく特許庁の増収が五億近くあるので、特許庁内部で留保する、行政力の強化に幾ら使っても、私は大体この間推算してもらったのですが、一時的に要る金は別として、年の経常費として二億もあれば十分なんですよ。そうするとあと三億ぐらいはこういうようなところへ流し込んでいく。そうすれば初めて、科学技術庁がなるほど見違えるように活発に科学技術のためにやってくれているのだ、という国民の信頼が沸いてくるのだと思う。これでは役所ばかりあっちへくっつけたりこっちへくっつけたり寄せ集めたりして、原子力という新しい部門がありますから、そのひさしの下にちょっと入れたのだという印象しか出ないのです。これではいけないので、とにかく来年度は大いにがんばって大幅な増額をせられるように一つ努力をせられたい。  それからこの原子力の関係はちょっとあとにしまして、理化学研究所の趣旨としては、これは特殊法人を審議したときおおよそのことはわかっているわけですが、要するに民間企業では開発の困難なる新技術開発する体制を整えたいと考えますと、こういうことですね。これにはもちろん発明も入っているのだと思います。理化学研究所としては。僕は、これは私の考えなんですけれども、今、日本の産業界で一番困った現象は海外技術の模倣に専念しているということだな、だれもかれも。高額なロイアルティを払ってそして海外で成功したものはすぐ争って日本へ持ってきて、そしてデザインであろうが商標であろうが本体そのものであろうが、とにかくまねしてこさえてしまう。そしてすぐ売り出す、こういうことなんですよ、業界の意欲の中心というのは。これを何とかして脱却してやらなければ、日本の技術というものを世界の水準の上に持っていくということはおそらく困難だ。これが科学技術庁の私は任務の一番大事な点だと思うのですよ。ところがそういう意欲に満ちた計画というものはこの説明書の中にどこにもないですね。ただこの理化学研究所の中にちょっとそういうことが、まあよほどこうあれだね、裏の裏まで読むとその精神が少し入っているかなと思うくらいのところだ。で、民間企業にしても役所のいろんな研究機関にしても、とにかく若干のことはやっているわけですし、やろうと思えばできないことはないと思うのです。たとえば日立製作所が、まあ最近はちょっとくずれているようだけれども、もう完全に日本の独創技術でいく、海外技術は依存しない。こういう日立の伝統的な精神があって、そしてあらゆる総合重工業メーカーとして伸びていますがね。決して外国に立ちおくれているわけではないのです。やろうと思えばできるわけだ。だからそういう意味でああいうように徹した企業というものを日本にたくさんほしいのですけれども、といってそうなかなかにわかに望むわけにはいかない。そこで科学技術庁はそういう行政指導の方針というものを立てて、実際に行政をやらなければならないと思うのです。私はしばしば言っているのですが、日本人がせっかくいい発明をしたにもかかわらず、国内の実業家が受け取らないというので、やむを得ずその実施権を海外へ売ってしまって海外で工業化されて、日本はそれを買わなければならないという例がたくさんあるのです。フェライトという金属もそうですし、それから八木アンテナもそうですし、今のテレビに使うブラウン管だって、これは戦争中のことだからしようがないとしても、日本人の発明の方がちょっと早かったのですが、それがごまかされているし、こういうことです。従ってそういうことについて、今政府がもし……。民間企業が何年か先にはものになるかもしれませんけれども、あるいはものにならないかもしれない。しかし確かに理論的には成立する貴重なものだというものについては、政府がその権利を保障して、発明者を保障して、保存して上げるというようなそういう心がまえも必要だと思うのですね。若干の保障をしてそうして日本が持っていることが必要だ。そういう構想というものがここのところにはうたわれていない、項目として。  それから第二には世界中の先進国の各研究所では、今はだれも考えてもいないようなことを一生懸命になって研究しているんですよ。もう世の中に出た時分には、まねする以外に道はないと、こういうことになるわけだ。一つの例をあげますと、私は必ず近い将来に実現すると思っているのは、こういう工合にしゃべっているのは、今は速記をつけて反訳して、印刷に回すんですが、しゃべっていることがいきなりタイプになる時代が来ると思うのです。そういう研究が日本で今どこでやっているか。おそらくまだどこもやってない。  それからこれは私の説としてはしょっちゅうあっちこっちで言っているからおかしいことだけれども、蛋白質とか炭水化物とかああいう光合成に類するもの。そういうものの研究をだれがやっているかというと、この間クロレラの研究をやっているというんですね。クロレラというのは合成化学ではないですね。太陽光線を利用して作るのですから。工場の中で人間の食べられる蛋白質を合成する。こういう研究をやっているんですね、世界では。ところが日本ではやってないと私は思いますよ。そういう工合に考えていけば、夢のようなことなんですね。テーマとして一生懸命研究してもあるいはものにならないかもしれない。あるいはなるかもしれない。そういうようなものを国が惜しみなく学者等に費用を出して特命として研究をさせる。そういうような、発明奨励でもちょっと形の変った、何かによっては日本は外国から一歩先んじていけるのだという、そういう構想のもとに予算措置を講じていくということが、私は必要ではないかと思う。  最近の技術はもう皆さんが御承知のように一つ方針を間違っておくれると、もうその会社が成りいかなくなるだけではなくて、その業界全部がだめになってしまうような、おそろしい発明が出てくるのですよ。たとえば今真空管でも小さいミニアチュア・バルブというのがありまして、これはずいぶん戦争後は多かったんですね。ところが五年ほど前、日本ではまだトランジスターということを言った人は数人しかいなかった。そのトランジスターが今完全に市場を席巻してしまって、今あの小さい、バルブというものは市場から姿を消すようになっておる。こういうような変革をしておる。これは電気だけではありませんよ。あらゆる部門にわたってそうなんです。これはわれわれが全然気がつかぬうちに外国では何年も何年もかかって、特定な会社がものになるかならないかわからないようなものを研究していた結果、これができるのです。そういうことを科学技術庁でおやりになることが、科学技術庁の置かれたほんとうの意味だろうと思う。そういうことについてはどういうお考えを持っておいでになるかを一つ伺いたい。
  108. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 栗山委員のお話一々私ども非常にもっともであり、また同感をさしていただきたいのでございますが、科学技術庁といたしましても、外国の技術をいつまでもまねているという、こういった状態を一刻も早く脱却したいということはかねがね考えておるところでございますが、まあ、いろいろ各省の予算を調整いたしまして、これを大蔵省に勧告するというような場合にも、日本は欧米と違いまして、国防ということを目的にするのではなくて、日本の産業経済あるいは国民福祉という見地から日本の科学技術を高め、しかも外国の技術を入れずに、これをむしろこちらから売るくらいのものにしたいということで、いろいろ予算面についても申し上げた次第でありますが、先ほどお話のございました理研の中に新技術開発事業というものを今度やらせることになっておるわけでございますが、それもまさにお話の通りのことでございまして、わが国におきましていろいろな技術ができましても、研究ができましても、事業家というのは、外国の技術に頼った方が安全であるという見地から、なかなか引き受けないというのが現状でございます。従いまして、これに対しましては、理化学研究所の方から、そういった新しい研究を事業化する場合の資金を出しまして、それで失敗するということもあるかと思いますが、しかし失敗があるからこそ、そういうことを懸念すればこそ、企業家が引き受けないわけでありますから、そういう場合には損失——結局は国の負担になるわけでありますが、損失をした場合には国がかぶる。そのかわり、成功いたしますれば、その技術から上ってくる収益から、ロイアリティを外国に払うと同じような意味におきまして、技術料を理研がもらい、かつその一部分は技術提供者に分けるというような制度を一つの新しい方式として三十三年度から実は始めたわけでございます。  で、予算額といたしましては、三十三年度は八千万円、来年度は一億三千万円の予算を理研の中でやるように予算政府案として作っておるわけでございますが、金額は当初の段階といたしましては十分でございませんけれども、こういうことによって、まず二つでも三つでもそういうものを拾い上げて、国家的な非常に重要な研究が育つということをまずやっていきたい、こういった事業を漸次拡張いたしまして、多くの研究を取り上げていきたいと思うわけでございます。現在の段階におきまして、やはり外国に対して肩を並べ得るというような研究は、何といいましても、基礎研究の方から深く根ざした研究でございませんと、ほんとうの独創的なものがなかなか生じにくいわけでございます。そういったような研究は、現在のところ、何といいましても、大学関係が非常に主力でございまして、たとえば東北大学の金属材料研究所とかあるいは各大学のいろいろの研究所がございます。そういったところの研究成果が現在のところやはり非常に深く学問的なまた独創的な研究がございますので、そういったものを対象にいたしまして、現在理化学研究所におきましてそれに対する投資ということもやりつつある段階でございます。現在のところ、まだ理研の発足がおくれましたために、十分のテーマを持っておりませんけれども、しかし一応調査いたしました中でもすでに十四件のそういったものを見出しまして、そのうち最初二件くらいそういうものを実施していきたいというふうに考えておる次第でございます。  この制度はわが国におきましては初めてのことでございますけれども、これは長年学術会議等においても希望されたことでありますし、また、経済界においても要望されたことでございます。外国におきましても、アメリカあるいはイギリス等においても同様なことが行われておる次第でございますので、この点につきましては、すでに大蔵省と科学技術庁と共同で調査をいたしまして、そういったいろいろな実績を見まして、そういった仕事を始めさしていただいておるわけであります。  それから、先ほどお話がございました蛋白質の合成とかいろいろお話もございましたのですが、蛋白質の合成ということは、確かに今後の日本の研究においても大きな問題であろうかと思います。しかしながら、蛋白質を現在すぐ産業的に作り出す技術があるかと申しますと、日本にもございませんし、外国にもないわけでございますが、これはやはり基礎的な研究から進めていかなければならぬという段階でございます。これに対しましては科学技術庁の科学審議会というのがかつてございましたが、そこでいろいろ話しましたところ、やはり基礎研究にもう少し重点を置くべきだろうということで、文部省と協力いたしまして、大阪大学の中に蛋白質研究所というものを設置することになっておるわけでございます。おそらく、こういったものが発展し、さらにまた東大の応用微生物研究所が、微生物の関係からそういった合成技術を編み出すということもおそらく可能ではないだろうかということを期待いたしているわけでございます。なお、光合成、まあ現在のところ、蛋白質の合成につきましては、クロレラによります光合成、これは自然的なものでございまして、人工的な合成ではございませんけれども、しかし、その光合成の植物的な原理と申しますのは、基礎科学をやっております徳川微生物研究所において、御承知のように、田宮博士が相当世界的にすぐれた業績を持っておりますので、それを産業的な段階、技術にまで持っていきたいというので、クロレラに対しまして今まで補助金も交付しておりますし、また、来年度も重ねて交付したい。現在の段階におきまして、クロレラの大量培養の中で非常におもしろい成分も発見いたしまして、これが単に蛋白質としての栄養のみならず、人体に対して非常に大きな栄養のあるものが見出されたようでございます。詳細は私専門家でございませんので、わかりませんけれども、いま少しいたしますれば、りっぱな成果が出るのではないかというふうに期待しているのでございます。  まあ、いろいろ申し上げたいこともございますのですが、簡単に思いついたままを述べさせていただいたわけでございます。
  109. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が二、三具体的な例としてあげたのは、私の考えている考えがよくわかっていただくための材料としてあげただけで、そんなことは大した問題ではないのですよ。そういう意味の構想のもとに、技術行政をあなた方がおやりになるかどうかということを確かめているだけのことであります。で、この理化学研究所は大学の学者には開放されているんですか。
  110. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) さようでございます。理化学研究所の目的といたしますところは、大学の基礎研究と産業界の研究の結びつきと申しますか、そういう点に重点を置いているわけでございまして、従いまして、現在、研究員の中で、多分二割程度と思いますが、その程度の方々が大学の教授が兼務して入っておられる、そういう段階でございます。
  111. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでけっこうですが、とにかく、どうも役所の仕事というのは、国費を使って失敗すれば責任を問われるからというのでどうも優柔不断になる傾向があるのですがね。こういう問題はですね、百あって一つ成功すればいいのですよ。だから、当然失敗の方が多いと見なければならない。そういう考えであなた方も指導すべきだ。あまり学者に、戦争の末期に東条内閣が学者をいじめたような工合に、ああすればいい発明はできませんよ、それは絶対できない。私、何かの本で読んだことがありますが、欧州大戦でドイツがイギリスにどうして負けたかという話を見て、私非常に参考に成ったんですがね。ドイツは、ドイツの科学者が例のV何号というやつ、あれに兵器を切りかえるべきだ、こうすれば勝てるというので建言した。ところがヒットラーの率いる軍部独裁勢力というのは、装備の変更をきらって絶対に受けつけなかった。試作程度のもので打ち込んだだけだ。イギリスの方は、もうドイツの爆撃におそれをなしてしまって、何としてでもこれを防がなければならないということで、当時の軍と政府民間とが一体になって、命令的なことは全部やめて、あの戦時中に英国をドイツの飛行機からいかにして守るかという民主的な研究をするコミッティをこしらえた。そうしてやった結果、あのものすごい極超短波の発信機を発明して、それでまたたく間にイギリスの全海岸線に敷いて、四百キロぐらい向う敵が来たら全部探知してしまう。そうして全部落してしまう。こういう新鋭装備を作って、それでドイツが手をあげて、とうとうあきらめたという、これなんかまことにいい例で、やはり、そういう熱情と研究指導の方向がなければ、とても私は日本の科学技術を欧米の上に越させるなんということは、今の状態では不可能だと思います。そういうふうに一つ研究をしていただきたい。
  112. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 ちょっとついでに関連して。私長い間関係してきたことをお伺いしたいんですが、これは半分は科学技術庁で、半分は文部省の所管だと思いますが、日本では基礎的な研究、これは自然科学だけでなく、人文科学も、同じことを大ぜいの人がやっておられるんです。ドイツの大学では、同じ研究をしている人はいないそうです。人文科学でも、漢文なら漢文のどこをだれが研究するかというふうに専門の研究者は一人しかいない。アメリカあたりの大学でも、国内的に統制がだいぶとれているようです。イギリスでも同じことです。科学技術なんというむずかしい研究を、日本中の三人、五人の人が、別々のところでやっておいでになるのでは、非常にむだが多い。それをどこかで調整しなければいけないだろうと思うんです。これは、科学技術庁だけではおできにならぬと思いますけれども、文部省と共同でおやりになるような計画がおありでしょうか、どうでございましょうか。
  113. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 現在のところそういう計画は持っておりませんけれども、大学の基礎研究につきましては、お話のように相当程度の重複もあると私ども見ておりますけれども、基礎研究というのは、そういったように重複があってはまずいかどうかという点になりますと、非常に問題があるのでございまして、ある程度重複をして、別の意見が出るということもあっていいのじゃないかという説もあるわけでございます。しかもこの点は、文部省の問題でございますので、私ども何とも申し上げかねるわけでございますが、しかし文部省の研究といたしましても、多額の経費を要するような施設と申しますものは、これは大学のみならず、その他の研究機関においても使える施設がございますものですから、そういうものにつきましては、国の経費を節約するという意味におきまして、文部省とも協力いたしまして、抜本的なものを作るということに話し合いを進めております。たとえば、当庁の航空技術研究所というようなものも、大学の研究者にも使わせる、民間の研究者にも使わせる。国立研究機関の人にも使わせるというような考え方で作っているわけでございます。で、基礎研究の段階におきましては、そういった重複の点が非常に問題でございますので、私どもも、実はこれをなるべく統合するというような考えも、現在持っておりませんけれども、しかし応用段階になりますれば、目的もはっきりいたしますし、また施設も相当金のかかわるものが多いわけでございますので、これはできるだけ統合いたしまして、むだのないようにいたしたい。そういうことで、私どもといたしましては、各省の毎年の予算要求を大蔵省に出します前に、各省の案を持ち寄りまして、そこでむだな重複がないか、あるいは分担はこうしたらいいじゃないかということを非常にディスカッションしておりまして、たとえば金属材料の研究につきましても、当庁の金属材料技術研究所のほかに、通産省でもやっておりますし、運輸省でもやっております。これらにつきましては、分担をはっきりいたしまして、重複のないようにいたしております。かつまた、そういった各省の要求を見まして、抜けている点があるのではないかという点も調査いたしまして、抜けている点であって、各省が独立ではやれないというようなものにきしては、当庁が、直接、補助金あるいは委託費等を出すようなことも考えているわけでございまして、先ほど申しましたクロレラの研究とか、あるいは水質汚濁の研究というものは、当庁が各省の研究の穴を埋めまして、全体として一本の完全な研究ができるような体制をとりつつあるような次第でございます。
  114. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今申し上げましたことは、これはほんとうは大臣に聞いていてもらいたかったのだけれども、おられないから、この時間中に来られなかった場合には、大臣によく話をしていただきたい。ぜひ一つそういうふうに強力に推進をされるように要請をしておきます。  それからあと、原子力行政のことについてお伺いします。  日本の原子力行政の歩みを今までずっと振り返ってみますと、相当強引に正力原子力行政が引っぱってきたと見て私はいいと思います。その間にはいろんな批判もあり、いろいろと問題になった点もあることは、あなた方御承知の通りです。とにかく、それはそれとして、今日のところまできたわけだが、この原子力行政は、このままずっと伸ばしていいのか、あるいはまた、もう少し根本的な何か策を考えなければいけないのか、そういうところに、私は問題があると思います。それで、細部のことは別といたしまして、一番問題は、私は、原子力委員会と科学技術庁関係だと思います。原子力委員会は、どうも科学技術庁長官の諮問機関のようでもあるし、また、直接、行政執行機関のようでもあるし、その性格がきわめてあいまいです。同時に、原子力局長であるあなた自身の権限が、原子力委員会の事務局長であるような印象も受けるし、また、科学技術庁の原子力局長であるような印象も受けるし、全く原子力がわからない程度にわからないのだ。それで、これは一体どういうことなのか。アメリカでも、やはり原子力委員会というものは権威を持っています。イギリスでもそうです。フランスでもそうです。ですから、そういうふうにりっぱな学者を入れて、そうして構成しているわけだから、やはりその時々の内閣の影響を受けない、こういう委員会にすべての権限を持たして、そうして各省にばらばらに散っている原子力行政というものを統轄して強力に進めていくということでなければ、ほんとうの意味の実効は上らないのじゃないかというふうに考えますが、二つの手で工合よく原子力行政を操作しておる佐々木原子力局長に所信を伺いたいと思うのです。
  115. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ただいまの日本の原子力委員会は、御承知のように各国の原子力委員会と違いまして、各国の原子力委員会は、完全な意味の行政委員会で、非常に強力なものでございますが、日本の原子力委員会は、国家行政組織法の第八条に基きました機関でございますので、形式的にはあくまでも諮問機関という性質かと思います。ただ、普通の諮問機関と違いまして、諮問を待たないでみずから自発的に原子力政策を立案したり、審議したり、決定するという権限を持っておるところが、非常に普通の諮問機関とは違うわけでございまして、この原子力委員会をしからば御説のように各国並みに強力な原子力委員会にしたらどうだというような議論が、当初からずいぶん深刻に論じられた問題でございまして、いろいろその際の論点等を回顧してみますと、いろいろな長所はもちろんお説の通り非常にあるわけでございますが、一面短所も考えられまして——短所といっては少し語弊があるかもしれませんが、解釈上非常にむずかしい点が一つございます。  それはどういうことかと申しますと、現在の委員会組織は、いわゆる行政組織法の三条に基きまして、行政委員会というものは、司法的な意味を持った審判行政というだけに限られまして、本来の意味のいわゆる行政委員会というものは、日本では廃止されたわけでございます。これは御承知の通りと思いますが、しからばその際どういう議論が中心になったかと申しますと、最も主なる点と考えられますのは、御承知のように、日本は責任内閣制をとっておるのでございまして、この責任内閣制という建前から考えますと、行政委員会というものは非常に疑義がある。と申します意味は、どういうことかと申しますと、委員会でございますので、どうしても委員の表決権と申しますか、それはみなそれぞれ一票持っておるわけでございますので、わが国の原子力委員会でも、設置法の十一条に、委員が可否同数の場合のみ委員長である国務大臣が、その成否を定めますけれども、委員の大多数が反対の場合には、委員長といえどもいかんともしがたいというふうな合議制になっております。そこでもし、完全な意味の行政委員会でございますと、その委員会で、かりにただいまのように委員長が国務大臣で、閣議で発言権は持ってはおりますけれども、委員会で大臣の意思に反して議決がなされたという問題がかりに発生した場合、そのこと自体がすぐ、本来の行政府でありますれば、各省を拘束し、みずからも執行権限を持って行政執行するわけでございますけれども、そうなりますと、閣議では、閣議の意思と完全に一致した問題であれば問題ないわけでありますが、そうでない場合を仮定いたしますと、みずからが、内閣としては反対のものであるにもかかわらず、行政府に執行されて、そしてその自後の責任を内閣が負うというふうな建前にもなりかねない。まあ法理論的な根拠になりますが、日本のような責任内閣制の場合には非常に行政委員会というものはむずかしい、解釈上むずかしいということで、そこで非常な、先ほどお話ありましたように奇妙な存在ではありますが、しかし、形式上は諮問機関でありまして、決定した事項は重要な事項でありますと、内閣にこれを報告、あるいは勧告いたしまして、そして総理大臣はこれを尊重し、要すれば閣議決定をして各省に行政をしてもらうというふうな現在の建前になっておりますけれども、実際上は、形式上は諮問機関であっても、実際上の運営は非常に強力なと申しますか、権威を持った機関として、日本の最高スタッフを網羅して、そして従来のいわゆる官僚行政と申しますか、そういうまあはなはだ妙な表現でありますけれども、浅い経験だけで判断せずに、もっと総合的な高い視野からこういう問題を、事柄の成否を判断して、そしてそれを実際に行政府に移行した方が妥当でなかろうかというのでただいまのような制度になっておりまして、あるいは御質問の行政委員会にした方がいいのじゃないかという御質問に対しましては、まだ言葉が足らぬかもしれませんけれども、おもな理由はそういう意味だと解釈しております。
  116. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今の制度でいけばね、法理論的にあなたのおっしゃる通りなんですよ。しかしそれではほんとうの意味の原子力行政をやるのには不向きではないか。時の政治権力が常に原子力行政を動かしていくということになるのです。逆な言い方をすれば、それではよくないのではないか。たとえば一例をあげれば、この前、原子力委員である藤岡博士と湯川博士がやめられたでしょう。これのやめられたということは、学者の信念と良識においてぜひともやりたいということが、時の内閣の意見と合わなかったのですよ、これは。だからいろいろいわれているけれど、結局そうなんです。それで、あの優秀な世界的な原子力学者が原子力委員会から抜けるということになる。そういうことが好ましくないのではないか。アメリカの原子力委員会のあれですか、最高責任者は閣僚ですか、そうでないでしょう。
  117. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) アメリカのAEC——原子力委員会は、完全な意味の官庁でございまして、決定した事項はどんどん執行しておるようです。
  118. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、閣僚でないでしょう。
  119. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 閣僚でございません。
  120. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうでしょう。それで何事によらず外国のまねの好きな日本人が、どうしてこういうことになるとまねができないのかね。アメリカのようなあんなやかましいデモクラティックなところでも、原子力行政というものは非常に重要視しているものだから、今のあまり動揺しない、安定で、しかも積極的な原子力行政ができるように特別な配慮をしているわけですね。そのアメリカの長所を取り入れてなぜできないかということ、これはほんとうは大臣に聞かなければならない一番私は中心の問題にしていたのですけれども、大臣がいないものだから、佐々木原子力局長より聞くといっても困るだろうと思うのだけれども、これは困ったものだね。
  121. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 現在の原子力委員会制度で、非常に原子力行政を執行する際に、無力、あるいは何と申しますか、卓越した意見が出ないということの過去の欠点、事実がありますと、私ただいま仰せられましたような点もさらにためていかなければならぬと思っておりますけれども、ただいまの段階でございますと、大体まあ原子力に関しては、ただいまの四人の委員の方、並びに大臣委員長になっておるわけでございますけれども、このメンバーが日本ではおそらく最高じゃなかろうかというふうにも考えておりますし、実際に行政の判断等も、非常に事務局長と申しますか1二重人格になって恐縮なんですけれども、私自体から考えますと、非常に高度な行政を運行しているのじゃなかろうかというふうに考えておりますので、むしろこの際は、事務局であります原子力局のスタッフを充実するという点に重点を指向して、そうして委員の皆さんから命ぜられた立案事務あるいは調査事務等完全に遂行できますような組織にした方がいいのじゃなかろうかという点が一つと、昨年度やはり行政——原子力委員会の改組の問題が非常に衆議院でも問題になりまして、結局まあ落ちついたのは、昨年やりました措置は、参与といって委員会の下に学界、財界等非常に多方面の方たちに参加願っておりますのに、これをふやしまして、関係行政機関の責任者の方に参与になっていただくという措置をとったことが一つ。もう一つは、専門部会、これは、アメリカなどは非常に多岐にわたるのでございます。非常に膨大な専門委員をかかえて立案業務に携わっておるわけでございますが、日本でも昨年度から、その前まで五十名だった専門委員を一躍百五十名に増加いたしまして、そうして今十幾つかの専門部会を作って、広く日本の識者の方たちに御協力いただいて運行しておりますので、この面からいたしますと、相当、委員はたった四人でございますが、すその広い行政組織じゃなかろうかというふうにも考えておりますので、ただいまの段階でありますれば、一応今のままでしばらくやった方がいいのじゃなかろうかというふうな感じを持っておるわけでございます。
  122. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は、日本の原子力行政を取り上げてみれば、できてから今日まではまだゼロからスタートして、やっとあるかたまりができただけで、原子力行政のほんとうの姿というものはこれから先のことなんですよ。だから、これから先の行政を強力に間違いなく、原子力の平和利用、エネルギー利用ということで進めていくためには、こういうことでは中途半端ではないかということを申し上げているので、従って、できてから今日までの間に具体的な欠点がなかったからということよりは、将来これでいいのかどうかということに思いをいたして考えてもらわなくちゃいけないと思うのです。  それからもう一つ、今までのことで一番はっきり欠点の出ているのは、やっぱり仕事をするのは人ですからね。人の問題でまず最初に問題にぶつかったじゃないですか。湯川博士と藤岡博士は、別に問題がなければこういう重要な仕事を通じてうんちくを傾けて国家にサービスしようという気持は、私いささかも薄れていなかったと思うのです。ただ、学者ですから、自分の信念が通らないということになれば、やはり何ですよ、いさぎよく委員をやめるということになるわけなんです。この点は、佐々木局長からこの人事の問題でお聞きすることはあれだから、答弁要りませんけれども、また答弁されても、そういうことではなかったと言われるに違いないのだから、それはいいのだけれども、そう受け取り方をしているということなんです。
  123. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) お言葉を返すようで、はなはだ恐縮でございますが、私、事務局長をやっておりまして、その間の事情をよく承知しておりますので、少し弁明さしていただきたいと思いますが、湯川博士の場合は、実は胃腸が非常に弱りまして、神経性胃腸炎と申しますか、どうしても御飯も食べられぬような状況になりまして、衰弱がとてもはなはだしくて、東京まではなかなか出れないというお話で、むしろ湯川博士自体よりも、湯川さんを見守っておる方たちから、この際、本人の健康のためを思えばやあさした方がいいのではなかろうかという話が強くございまして、やめたのでございます。それから藤岡さんの場合は、藤岡先生は、実はウィーンに国際原子力の機関ができまして、そうして部長の席を一つ日本に割り当られたわけでございます。国際機関の部長でございまして、各国から非常に奪い合いと申しますか、そう言っては非常に外交的にはまずい表現でございますが、競争が激しゅうございまして、わが国からもだれかりっぱな人を出したいという議が出まして、幸い藤岡先生は非常に語学も達者でございますし、御承知のような人柄でもございますので、一番適任ではなかろうかというので、先生みずから選んで参った次第でございますので、決して今の原子力行政が意思に反してという趣旨ではなかったように、はなはだどうもお言葉を返すようで恐縮ですが、これが真相だというように私は承わっております。
  124. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 佐々木局長の今の御発言は、そのまま承わっておきますよ。それはそのまま承わっておきます。  そこで、さらに問題は、今、原子力委員会の性格なり、行政の力というものは、こういうことで大体おおむねの見当はついたわけですが、現に、たとえば原子力船ということになると、運輸省が全力をあげてこれをやっておる。原子力発電所ということになると、通商産業省が一生懸命やっておる。こういう工合に、労働省で言えば放射能の災害の問題、それぞれ自分の使命がありますから、努力しておる。厚生省はアイソトープの問題を一生懸命やっておる。いろいろありますが、私は、今ですら、対抗意識があってああいう状態になっているのだが、もうしこの原子力の問題が具体化し、進んでくると、とうてい原子力局、科学技術庁の手には負えなくなると思いますが、それに対してあなたは、対抗意識の上からどうこうするということではないが、原子力行政を日本として一体として進めていくという、そういう高度の見地から見て、憂えなしとされておりますか、あるいは若干心配があると考えているか、ここがやはり一つの問題なんです。
  125. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) お説のように、原子力行政は、応用面に入りますと、各省との行政と非常に競合と申しますか、摩擦を生じやすい行政でございます。しかし、原子力行政の本体というものはどこにあるかという点に関しまして、これはもちろん、私だけの私見でございますけれども、私は二つにしぼられるのではなかろうかと存じます。一つは、障害の防止、安全の確保という点が、最も原子力行政に付帯した、従来の行政に見られない面でありまして、これだけはどうしても一本にして強力に国民を守っていくという点が一つの原子力行政の使命だと思います。第二点は、燃料の問題でありまして、燃料の方は、御承知のように、ほうっておきますと、燃料体そのものが武器等にも転化するおそれのあるものでございますので、国際的にも厳重な監視規定がございますし、日本といたしましても、これは当然平和の確保と申しますか、あるいは情報等の管理等いろいろでございますので、こういう燃料面の一元的な管理という点がやはり原子力行政の一つの基本ではなかろうか。これは何も国内法でそうなっているばかりでなしに、国際的にもやはりこの二つの面が一番中心問題になっているようでございます。従いまして、この面だけでも非常に実は業務がふえて参りまして、普通の総合調整任務ばかりでなしに、設置の許認可、あるいは安全の確保のための検査等の事務が、客観的な開発がふえればふえるほど、行政事務がふえていくというふうな因果関係になっておりますので、まあ応用面になって、電気でございますれば、電気の炉、原子炉、発電炉、炉そのものに関しましては通産大臣と協議の上これを認可いたして、その設置を許可いたしますけれども、実際の原子力行政から見ましたサイド、言いかえますと、電力の需給の面とか、あるいは料金の面とか、あるいは資金の問題とか、あるいは設置の個所における需給状況と申しますか、そういったような本来電気行政に付帯する事項は、もちろん通産省の主管事務でございまして、私どもといたしまして主として力点を置いて行政をとる点は、ただいま申しましたような二つの点が、いつまでも原子力の開発というものが行われる限りは、一カ所で強力に一元的に進めるべきではないかという、ふうに心得ております。
  126. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでなくてはいかぬと思いますが、そうだけれども、今の制度を強化しない限り、だんだんだんだん末広がりになってばらばらになっていくおそれが多分にありはしないかということを私は指摘しているわけです。それですから、先ほど、あなたは一つの案として、原子力委員会の事務局を強化したい、こういうお話がありましたが、私は今の組織のままでいくとしても、当然そうすべきだと思います。ところが、そういう予算化ができているかどうかということですね。どの程度予算化ができているか、口と実行とがどういうふうに合っているかということが一つ問題になるわけです。
  127. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 原子力局のまず何と申しましても人員の充実の問題が一番その際に必要になってくるわけでございますが、今年度は八十七名で行政事務をとっておりますけれども、来年度は一躍二十九名増加いたしまして百十六名にいたす予定にしてございます。なお、内容の充実の一端といたしまして、ただいままで次長が一人だったのを、さらに一名ふやしまして、次長二名にし、課も二つ増課し、同時に原子力研究所あるいは燃料公社の常時監査をするための監理官を置くというふうな、機構の拡充を考えております。
  128. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が一番おそれますのは、この間のイギリスのコールダーホールを買うときにも、二、三その影響が現われておりましたが、こういう新しい理論物理学を背景にして伸びようとする産業については、各国とも非常に真剣でありますよ。しかも、放射能という危険な物質も取り扱わなければならぬという意味で、非常に真剣なわけです。純学問的に見れば、私も全くのしろうとですから、あまりえばった批判はできないのだが、まあイギリスは別ですけれども、アメリカにおいては、数ある原子炉の中でどれが一番実用的で、一番効率が高くて、一番安全であるかというようなことに専念した研究が今進められていっておるわけです。ですから、そういうときに、日本の産業界を見渡してみるというと、原子力の産業を扱えば金額もすばらしい、固まったものである。従って利潤追求には打ってつけの商売だというようなことから、各系列が幾つかありますけれども、原子力産業の連中はやっきになって注文取りをやっているわけですね。だから、そういう動きそのものは否定はしませんけれども、少くともそういう動きを大きくコントロールして、ほんとうに国家目的に沿うように実現していくという機関がなければいけないと思うのですね。原子力産業界にしょっちゅうあおられちゃって、そうして内閣が動揺をし、行政機関が動揺するというようなことは、断じてあってはいかぬと思うのです。ところが、若干私はその弊害が今日においてあるような気がするのですね。それだから、そういう弊害を除くためにも、先ほど言いましたように、原子力委員会というものは時の政治権力にも干渉をあまり受けない、しっかりした、安定した行政を行なっていかれるようなものにぜひともしなければいかぬ、こう私は考えているのです。  それで、産業界のそういう利潤追求を中心とした突き上げというものは、これは否定されようとされまいと、現実に動いているのだからしようがないわけですよ。これは産業界の商売の中心が全部ここに持ってきている、これは否定すべくもない事実なんです。そういう意味で、私は悪意にばかり解釈する必要はない。やはり原子力産業は、それくらいの熱意を持ってやってくれなければ、国産化にもならないでしょうしね。幾ら学者ばかりたくさん作ったところで、プランというものはできないのだから、その限りにおいては私は了承するけれども、それが度を越して利潤追求の方が先頭に立つということにもしなかったときには、これは大へんなことです。そういう意味のおそれは私は持っておりますから、それで先ほどから原子力委員会の権威というものを非常に私は問題にしているわけです。こういう一番大事なところは、通産大臣に一ぺんも聞いてもらったことがないんだけれども、どうですか。
  129. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 御説のように、原子力産業界では、ただいま五系列、また最近一つふえておりますが、六系列、その各系列ごとに非常にたくさんの会社が加盟いたしまして系列ができております。なぜこういうふうに系列ができたのだろうかという点を、私どもも疑問を持ちまして考えてみたのでありますが、やはり一つの大きい原因は、一つの業種をもってしてはいかんともしがたい。あらゆる産業の総合体であるばかりでなしに、非常にまた精密度の高い、今までの科学ではどうにもならないような精度のものを要求されまして、純度と申しましても、ものによっては九九・九の何十乗というくらい非常に精密なものを要求されます。そういたしますと、それを作ることが大へんなばかりでなく、その精密度をはかる計器等が非常に従来の計器では役立たぬ、精密度がなくちゃならぬというような関係から、非常に広範囲な、しかも程度の高い科学が結集されませんと、この事業が成り立ちませんので、おのずから、従来から関連を決して不公平な補助金配分等もいたしませんし、それぞれちゃんと行くように補助金等をおまかせいたしまして育成をしていくという態度で進めております。
  130. 西田信一

    主査西田信一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  131. 西田信一

    主査西田信一君) 速記をつけて。
  132. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 もう少し僕が局長に伺っておりますから、その間に、重要な点を大臣に伺っておきたいから、一ぺん退席してもらってまた来てもらうかして……。原子力局長、私が原子力産業のことをただ悪い意味で批判したというふうに取ってもらいたくないんですよ。私は、ただそういう弊害が起り得るであろうということを頭に描きながら行政をしないと間違いを起しますよということを申し上げておる。現にそれならば、産業界の動きというものを見てごらんなさい。あの機種問題はどうですか。衆議院の国会でずっと明らかにしたところによれば、一目瞭然でしょう。やはり金をもうけるためには相当裏面的な暗躍というものが歴然として行われたということを示しているでしょう。だからそういうことが、先ほど言ったように原子力委員会が内閣の影響をあまり受けない組織ならいいんですよ。ところが、財界と内閣とはどうしても通じやすい。そのときに機種問題と同じような動きになっては困るのだ。機種問題だって、じゃ内閣は自信を持ってやればよさそうなものですけれども、いまだに決定しないでしょう、内定はしているけれども。政治問題になって、どうもはっきりしない点があるというので、もう一ぺん調査し直すことになっている。きのう防衛庁長官もはっきり言った通りですからね。そういうことが行政を執行していく上において十分注意されていないというと、産業界からの突き上げにあって好ましくない方向へ進む危険がある。こう私は判断している。
  133. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ただいまの点は肝に銘じまして、そういうことのないようにいろいろ研究していきたいと思います。
  134. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 原子力に関するいろいろなさらに細部にわたっての問題は、いずれまた商工委員会等でもお聞きしたいと思うので、きょうはこういう原則論だけにとどめておきます。  それから、先ほどの説明の中で一点だけわからないのは、九ページの「原子力技術者の海外派遣」というのがありますがね。この原子力技術者の海外派遣のところは「技術者」と書いてあるだけで、一番最初の科学技術者のところのときに書いてあるような工合に役人とかそういうようなものは区別していないのですね。これは民間人も含めての意味ですか。
  135. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 原子力予算に計上されております海外留学生の問題は、公務員の分と、それから原子力研究所並びに原子燃料公社の三つでございまして、民間の分は含まれておりません。民間の方は自分の金で参ります。
  136. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 一つちょっとさっきのやつ、もう十分しかないから大臣と相談してみて……。
  137. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大へん留守しまして……。留守中に御質問願った点につきまして、まず第一に、発明実施の試験の助成に対する問題でございますが、これは御指摘のごとく、持許庁の発明奨励に使っております費用をこちらへ移管したものでありますが、今回特許料金等も大幅に増額されるわけでありますから、来年度予算におきましては、その分を発明実施化の試験の助成に十分振り向けるように努力いたしたいと、こう存じております。  第二に、科学技術者の養成の問題でございますが、これはどうもやっぱり結局はその研究者の需要の長期見通しというものを持って、そしてこれは大学の機関とも、それから一般の研究機関ともよくこれを一本にして考えて総合的にやっていかなきゃならぬ。従いまして、今度科学技術会議というものを御承認を願ったわけでありますから、これは科学技術の行政分野の調整ということだけでなく、研究員の養成等のいわゆる長期の見通し等もつけまして、それにおいて根本的の調査をしていただいて、それで実行に移していきたいと、こういうふうに考えて進めたいというふうに思うわけでございます。  第三に、原子力委員会をもっと強化しないかと、こういうお話でございますが、これは原子力委員会が発足いたしましたときに、私どもも全く栗山さんと同じ考えでありまして、これには単純なる諮問機関ということでなくて、諮問を待たずに、自分から原子力政策を企画、審議、決定する機能を持たせよう、こういうことで発足したわけでありますが、従いまして、さしあたり、これを今改正してどうこうということは考えておりませんが、この下部機構として、委員会事務機構といたしまして科学技術庁の原子力局を十分活用するということで進んでいきたい。しかし、他日、必要に応じまして、先ほど原子力に従事する人は利潤追求にのみ走るというようなことになれば、これは大へんでございますから、そのときにはまたさらに十分検討を加えて、原子力委員会をもっと力の強いものにしていく必要があればそういうふうにする。さしあたりの方針としては現状のままで進んでいきたいと、こう存じておるわけでございます。
  138. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私がアメリカ等の例をとって、原子力委員会は政治からの独立的な行政機関であるべしということを、先ほど佐々木原子力局長とそういう意見のもとに質疑応答を重ねたわけですがね。まあ大臣の御答弁は御答弁として承わりますが、必ず私は、そういうやり方をするというと、新興産業といいますか、これ、今のような国内の動きを見ているというと問題を起す。だから、あなたを私は不信任しているわけじゃありませんよ。ありませんが、やはり政治権力からは遠ざかって、自主性を持たせた方が国のためになると、こういう気持でおるので、今すぐどうこうという問題ではありませんが、原子力の問題は将来の問題ですからね。だから常にそういうことに留意されつつ——そういう弊害が私はあると、こういうふうに考えているのですが、予見せられたときは、勇断をもって善処されたいと私は思います。先ほど機種問題のことを例にあげて少し申し上げたんですがね。機種といっただけであなたおわかりになると思うけれども、(笑声)そういう工合に一つ願いたい。  それから、もう一つ、これで大体私の質問を終るわけですけれども、今いただいた資料を見ると、私立大学の方の何が全然出ておりませんけれども、私立大学はこういうことをやつておりませんか。
  139. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) その中には、実は私立大学も、大学院も含んでアンケートを出したのでございまして、お手元の小さい表……。講座でございますか、これは講座の方は、実は私立大学の方でもいろいろ研究しておるところがございます。たとえば立教大学とか、ああいうところでは非常な優秀なスタッフを持ちまして、あるいは日本大学の核融合関係といったような、非常な優秀なスタッフを擁しまして研究してございますが、今度予定されております、立教大学から原子炉を設置いたしたい、それから武蔵工業大学からも原子炉を設置して研究したい、御承知のように東海大学でも原子炉を設置して研究したいというので、いろい私立大学の方面からも原子炉を設置し、同時にその原子炉を中心にして今後の教育あるいは研究を進めたいという動きが活発になって参っております。
  140. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 原子力の問題は官学だけでなければできないというわけのものではないので、やはり私立大学の方もしかるべく助成措置を講じて適当な講座を置き、適当に学生を指導できるようにやはり配慮を私は願いたいと思うのです。そういうと文部省の所管だとおっしゃるかもしれないけれども、そこで、私が文部省と原子力委員会というものが、もう少し強くならなければならないということを何回となく言っておるのです。設置法にとらわれて、文部省にちょっと足が入れられぬというのでは困る。特に技術庁として、一つ聞いておいていただきたいのですが、文部省からもらった資料で、実に困るのは、理科系と文科系、自然科学と人文科学といいますか、それを分けてもらったところが、国立、公立の方は、大体総員に対して四一%ですね、理科系の方が。大体、一時よりはふえてきておりますが四一%。ところが私立の方は、理科系というのは二一%、で、いずれ文部関係分科会に行って尋ねようと思っておりますが、科学産業振興というテーマを推進していく上に、また就職等を考えたとき、一体、どういうことになっておるかということ、学生の理科と文科の分け方、しかも理科の中でも、どういう科が、将来、日本の産業界のために拡充しなければならぬかどうか、そういう問題の調査あるいは分析、結論を出すまでの作業について、文部省だけが権限をもってやるということになれば、これまた、あやまちを犯すことになると思うのです。文部省が、大学を通じて世の中に出してくれる学生は、官庁機構から官庁の外郭機構並びに民間の会社へ、どんどん入ってくるわけです。  そこらの方の趨勢を、よく見ないで、直接きめたのでは困ってしまう、明らかに統計表をとって見ると、そういう意味で勉強されたことがないのですね、これは、文部省が出席をしておられぬので、そういう批判をするのは僭越ですけれども、私のいただいた資料を見ると、そうです。私の注文した通りになっていない、今までで一番奇怪なことは、昭和三十一年、三十二年、三十三年にわたりまして、就職率というものを出してもらいたいと、私の言ったのは、そうすると、文科系が大体、三十二年度で六八・九%、これは官公私立全部入れて。理科系は七九・六%ということになっておる、こんな怪しげな数字はない、どんなにしても怪しげだ、それでよく伺ってみると、この数字はさることながら、文科系の、要するに求人数がどれだけあって、理科系の求人数がどれだけあったかということがわからないのです、それがわからぬというのです。そうすれば、理科系の方も、なるほどもっと学生をよく教育しなければならぬかどうかということはわからぬわけです。求人数がわからないから、ただ率が出たのは、就職希望者と、家事に従事する人は別ですけれども、就職希望者と、それから就職者との比率をとったと、こう言うのです。これまた私、ぴんとこないものですから、もう少しよくただしてみたいと思っております。数字が非常に怪しげなんです。理科系が七九%になっていることはない、足りないですからね。  それの証拠に、国家公務員の方を調べてもらったところが、国家公務員は、要するに理科系の中で、物理、電気通信、機械、土木、建築、化学、造船、金属、鉱山、これだけの専攻した学生をとってみますと、官庁の昭和三十三年度の採用予定数が三百六十一名、これだけなければならぬという意味ですね、それに対して、実際に採用に応じたのは二百六十九名、二五%足りない、官庁において。三十二年は三百三十八名に対して二百六十九名の採用内定ですから二二%、こういうことで、おそらく民間でも、これは同じことだと思うのです。  ですから、そういう意味の科学技術者の養成の問題だけについても、まだ各省の間で、十分連絡ができていないという証拠です。そういうことを私立大学のことも含めて、科学技術庁でやっていただきたい。  私立大学は、おそらく工科系の学部を置くということになれば、それは、国家の支援がなければできない。できないけれども、文科系の学生の大量生産だけをやるというのも任務ではないのですから、この辺のことについて、十分留意してやってもらいたい、こういうことです。  これは、一番関係のあるのは科学技術庁と通産省、それから文部省、建設省、農林省、それから電電公社ですか、こういうようなところですがね、こういうようなところが、相談をなすって、文部省と、きちんとしてやっていく。科学技術会議で、これを取り上げるということだったらけっこうだと思いますが、そういう意味で、将来の学生教育についても、あやまちないように一つ、方向をきめていただきたい、こういうことです。
  141. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま御指摘の点は、全く同感でございまして、まず、どうしても研究者の需給の長期見通しというものをつける必要がある。各官庁はもちろん、民間の団体等に呼びかけまして、それによって、やはり根本の問題は、大学、学校等におけるその技術者を養成するという問題でございまして、今、栗山さんから詳細の数字を拝見したのでありますが、私どもは、やはり日本の文科が七に対して理工科が三しかない。ソ連は、理工科七に対して文科三だと思います。これはどうも、われわれはもっと研究しなければならぬ点だと思っておりますが、根本的にやはり教育の方に、入っていくということでありまして、それには、今度出発いたします科学技術会議を中心といたしまして、十分、検討を加えていきたいと思っております。
  142. 西田信一

    主査西田信一君) 他に御質疑がございませんか。——御質疑がないようでございますから、科学技術庁所管に対する質疑は、この程度で終了したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 西田信一

    主査西田信一君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。  本日は、この程度にいたしまして、明日外務省所管、経済企画庁所管及び防衛庁所管の残余の分について審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時九分散会