○
政府委員(原田久君)
昭和三十四
年度科学技術庁予算について御
説明申し上げます。
ただいま
議題となっております
科学技術庁の
昭和三十四
年度予算案について御
説明を申し上げます。
わが国が
資源の貧困を克服しつつ、世界の先進
諸国に伍して、経済の発展と国民生活の
向上をはかるためには、科学
技術の
基盤をつちかい、その
振興をはかることが、最も大切であると確信いたしております。従いまして、
政府は重要政策の一環として、科学
技術の
振興を取り上げました。科学
技術の
振興をはかることをもっぱらその任務とする
科学技術庁におきましては、この
政府の方針に従いまして各般の施策を強力に推進するかたい決意のもとに、以下に申し述べます各種の事業を実施することにいたしました。このための
経費として、
昭和三十四
年度一般会計予算案に
歳出予算額九十八億九千二百八十四万五千円、国庫債務負担行為額三十五億六千七百万円を要求しました。これを前
年度予算歳出予算額九十五億三千七百五十九万七千円、国庫債務負担行為額五十一億四十万円に比べますと、
歳出予算額におきまして三億五千五百二十四万八千円の増額、国庫債務負担行為額におきまして十五億三千三百四十万円の減額になっております。以下
予定経費要求書の順を追って、その大綱を申し述べます。なお、便宜上
一般行政費
関係につきましては、最後に御
説明申し上げることといたします。
まず科学
振興費
関係として二億九百八十五万五千円を計上いたしました。
その内訳は、次の
通りであります。
(イ)科学
技術者の渡航、わが国の科学
技術の
振興をはかる基本的施策の
一つとして前
年度に引続き、各省庁
関係職員を海外先進
諸国に留学させ、そのすぐれた点を習得させることといたしました。このための渡航費として五千三百四十万円を計上いたしました。
(ロ)発明実施化試験の助成、優秀な発明考案であるにもかかわらず、経済的理由からその発明を実施化することが困難な個人または
中小企業者に対して、実施化試験のための費用を
補助して、その実用化をはかるとともに開放発明研究機関に対して、発明実施化のための
設備の整備に必要な費用の一部を
補助することといたしまして、二千百八十九万五千円を計上いたしました。
(ハ)科学
技術試験研究の助成でありますが、多数部門の協力を要する
試験研究及び各種研究に共通する
試験研究を、総合的に実施しようとするものに対し、
試験研究費を
補助しまたは委託研究費を交付してその
試験研究の
促進をはかるため四千六百五十六万円を計上し、明
年度は、水質汚濁防止研究等二、三の研究課題を取り上げる
予定にいたしております。
(ニ)日本科学
技術情報
センターの整備でありますが、内外における科学
技術情報の収集、分類、整理及び提供に関する
業務を行うことを任務として日本科学
技術情報
センターが一昨年八月発足いたしましたが、その
業務の
強化充実をはかって科学
技術水準の
向上に一層寄与させるため、
政府出資金及び
補助金を交付することとし、その
経費として八千八百万円を計上いたしました。
次に、原子力平和利用
関係として六十六億八千二百九十一万三千円と、別に国庫債務負担行為額三十四億二千七百万円を計上いたしました。その内訳は次の
通りとなっております。
(イ)といたしまして日本原子力研究所、原子炉の
開発につきましては、すでに第一号炉は運転中で、第二号炉につきましては近く完成し稼働する
予定であります。また、わが国最初の国産炉たる第三号炉につきましては、
昭和三十三
年度において発注した分の現地組み立てを開始し、
昭和三十五
年度完成を目標に着々工事を進めております。なお、前
年度国庫債務負担行為で発注を
予定していた動力試験炉につきましては、目下契約の手続を進めつつありますので、
昭和三十四
年度以降三カ
年度内に工事を完成させる
予定となっております。このほか原子力の基礎研究を初めとする各種
試験研究を一そう推進するとともに、
技術者の養成訓練の
業務等を
強化して日本原子力研究所が真にわが国原子力研究の中核的機関であるよう、その機能の拡充整備をはかることといたしております。このため四十四億円と、別に国庫債務負担行為額三十四億二千七百万円を計上いたしました。
(ロ)といたしまして原子燃料公社であります。原子燃料公社におきましては前
年度に引き続き、核原料物質の探鉱を積極的に行い、また前
年度完成いたしました精製還元中間試験
設備を運転して金属ウランの生産を行うほか、粗製錬試験
設備の運転を開始して製錬方式の確立をはかることといたしております。このため十一億三千万円を計上いたしました。
(ハ)といたしまして核燃料物質等の購入等でございますが、日本原子力研究所に据え付けられたもの及び今後据付
予定の研究用原子炉等に使用される核燃料物質等を購入及び借用する
経費として九千六百十万五千円を計上いたしました。
(ニ)原子力
技術者の海外派遣でございますが、原子力
関係技術者を海外先進国へ派遣して、これら
技術者の養成訓練を前
年度に引き続き行うこととして三千二十四万円を計上いたしました。
(ホ)
民間企業等の原子力平和利用の研究でございますが、原子炉及びこれに関連する
機械器具、材料等の国産化のための研究、核融合、原子力船の研究等を推進するため、
民間企業等に対する研究委託費及び
補助金として、三億八千万円を計上いたしました。
(ヘ)放射性廃棄物の処理対策でございますが、放射性廃棄物の処理は、放射線障害防止上きわめて重要なことと考えられますので、新たに廃棄物処理事業を一元的に行う適当な機関に対しましてその
事業費の一部を
補助するため、一千四百十六万円を計上いたしました。
(ト)
国立試験研究機関等の原子力
試験研究でございますが、
関係行政機関等の原子力平和利用研究につきましては、固有の研究分野に関連して核原料物質の調査、放射線の利用研究、核融合、原子力船の研究等、原子力の
開発、利用等に直接
関係する研究テーマに対して、それぞれの特色に応じた研究活動を期待することといたしまして五億五千三百一万八千円を計上いたしました。
(チ)放射能調査でございますが、前
年度に引き続き、大気、海洋、地表、動植物等について人工放射能及び自然放射能の分布状況を組織的に測定調査して放射線障害防止対策等の資料とするため、国立機関及び公立衛生研究所等にその調査を実施させることといたしまして、五千九百三十九万円を計上いたしました。
(リ)核原料物質の
探鉱奨励でございますが、核原料物質の
開発を早急に実施できるよう核原料物質の賦存が予想される地域に存在する鉱山を積極的に探鉱させるため、
補助金として二千万円を計上いたしました。
次に所管
試験研究機関関係として二十七億五千四百十八万二千円と、別に国庫債務負担行為額一億四千万円を計上いたしました。
その第一といたしまして航空
技術研究所でありますが、六カ年
計画で鋭意整備を行なって参りました航空
技術研究所は、新
年度が第四
年度目に当りますが、遷音速風洞
設備を初めジェットエンジン要素試験
設備、機体
関係試験
設備の大部分が完成できる
見通しとなりましたので、一部は実用に供し得る状態にいたしたいと
予定しております。このため十五億八千二百万一千円を計上いたしました。
第二に、金属材料
技術研究所でございますが、金属材料
技術研究所につきましては、金属材料の
試作試験
設備、材料試験
設備等に
重点を置いて整備を行って参りましたが、整備五ヵ年
計画の第四
年度目に当りますので、引き続きこれらの諸
設備の整備
充実に努め、すみやかに、わが国唯一の金属材料に関する総合的
試験研究所としての機能を十分に発揮させたいと考えております。このため五億八千八百九十九万四千円を計上いたしました。
第三として、放射線医学総合研究所でございますが、
昭和三十二
年度以降研究所施設の建設を行なって参りました放射線医学総合研究所は、病院及び特殊実験室
関係の建物を除いて工事が完成いたしますので、研究に必要な
試験研究用
設備の
充実に
重点を置いて、すみやかに研究態勢を整えることといたしております。このため五億八千三百十八万七千円と別に国庫債務負担行為額一億四千万円を計上いたしました。
第四番目に、理化学研究所でございますが、昨年十月特殊法人として発足いたしました理化学研究所につきましては、新
年度において研究施設整備に三億七千万円、新
技術の
開発に一億三千万円、合計五億円の
政府出資を行うこととして、大蔵
省所管に計上いたしました。これにより特色ある研究活動を
強化し、また
民間企業では
開発の困難な新
技術を
開発する態勢を整えたいと考えております。
最後に
一般行政費
関係といたしまして二億四千五百八十九万五千円を計上いたしました。
その第一は、
一般行政事務処理費でございますが、科学
技術振興のための長期
計画策定費、内外科学
技術の調査公表費、
技術士法の施行費、原子力
関係行政費、及び各種審議会等の
運営費並びに内部部局の人件費、事務費等に必要な
経費として二億八百二十六が三千円を計上いたしました。
第二に科学
技術会議でございますが、すでに今
国会において成立を見ました科学
技術会議
設置法による科学
技術会議の
運営に必要な
経費として六百二十七万二千円を計上いたしました。
第三に原子力
委員会
関係でございますが、原子力
委員会におきまして、
委員等の人件費、会議
運営費等に必要な
経費として、一千一百九十二万五千円を計上いたしました。
第四に、
資源の総合的利用方策の調査についてでございますが、
資源調査会を
中心に、前
年度に引き続き、
資源の総合的利用方策の調査、及び
資源の利用に関する資料等の収集分析等を行う
経費といたしまして、一千九百四十三万五千円を計上いたしました。
以上申し述べました
経費を目的別に大別いたしますと、当庁の
昭和三十四
年度歳出予算要求額は、
一般の部におきまして
歳出予算額二十五億四千三百九十八万一千円、原子力の部におきまして、
関係行政機関より別途行政費として要求いたしております七千二十二万八千円を除き、
歳出予算額七十三億四千八百八十六万四千円、国庫債務負担行為額三十五億六千七百万円となります。
近時世界各国における科学
技術の進度は、原子力、エレクトロニックス、合成化学を
中心として、まことに驚くべきものがあり、その結果
産業構造の一大変革がもたらされることが予想される状況にあります。従いまして
科学技術庁の任務は益々重大さを加えて参ったことを痛感する次第であります。
つきましては、当庁の
予算案につきまして、なにとぞ十分に御審議の上、すみやかに御賛成を賜わりますようにお願いいたします。