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1959-03-25 第31回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十五日(水曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    主査      矢嶋 三義君    副主査            塩見 俊二君    委員            紅露 みつ君            館  哲二君            横山 フク君            吉江 勝保君            坂本  昭君            平林  剛君            市川 房枝君   国務大臣    厚 生 大 臣 坂田 道太君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    行政管理政務次    官       濱野 清吾君    行政管理庁行政    管理局長    山口  酉君    行政管理庁行政    監察局長    犬丸  實君    厚生政務次官  池田 清志君    厚生大臣官房長 森本  潔君    厚生大臣官房審    議官      小山進次郎君    厚生大臣官房会    計課長     山本 正淑君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省薬務局長 高田 正巳君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 太宰 博邦君    厚生省引揚援護    局長      河野 鎭雄君    労働政務次官  生田 宏一君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働大臣官房会    計課長     松永 正男君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   説明員    大蔵省主計局主    計官      鳩山威一郎君    厚生省大臣官房    国立公園部長  大山  正君   —————————————     本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 矢嶋三義

    主査矢嶋三義君) ただいまから第四分科会を開会いたします。  本日は、厚生省所管並び労働省所管について審査を進めます。分科会初日に申し上げましたように、本日は両省関係を審査するわけですが、便宜上、おおむね午前中厚生省、午後労働省の審議をするというわけでありまして、厚生省午前中で終るわけでございませんで、午後の時間の都合では、再び御出席を願う場合もあるわけでありますから、そういうお気持で一つ居っていただきたいことを前もって申し上げておきます。  まず、厚生省所管を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います、
  3. 坂本昭

    坂本昭君 皆さんすでに御承知通り、特に大臣も十分に御関心を持っておられると思いますけれども、ビキニ水爆実験があってから、ことしは五年になっております。ところが最近あまりにも無関心であり過ぎはしないか、そういう気持を持っております。特に環境衛生の面で、最近は工場の廃液の問題など非常に取り上げられてきておりますけれども、放射能の問題について、厚生省当局がもっと科学的な調査と、また国民に対する忠告等発する義務があるのではないか。特に最近の新聞を見ますと、アメリカ発表が出ております。アメリカ原子力合同委員会アンダーソン委員長が、放射性物質が成層圏から地上に落ちてくる速度が、従来考えられておったよりもずっと早い。それからこの降下物質が、特にニューヨークに非常に落ちて、世界最大に落ちている、日本で言えば中部以北の方に非常に降下量が多い、そうしてその報告の中で、原子力委員会はあまりにも核兵器問題や理論的な方面に没頭しているので、公衆衛生に対する関心が薄い、放射能公衆衛生に及ぼす影響を監督する機能を、原子力委員会から公衆衛生局に移すべきだ、そういうような議論がアメリカで出ているのであります。私はこの問題は一番最初に日本でも取り上げたものであって、特にストロンチウム九〇の問題というものは非常に深刻な問題になっております。具体的な日本調査の結果についての大要は、あとで所管局長から説明をいただくとしまして、予算的にもまた研究的にも厚生省立場で非常に十分なものがあると思うのであります。  まず、大臣にはこういう放射能の問題について、今後厚生省当局としてどういう態度をとっていかれるか、かつてはマグロの問題で厚生省が先頭に立って国民が大騒ぎをしたことがある、今すっかり忘れている、現実の問題はあのときよりももっと深刻です。そういう点についての厚生大臣の御意見を伺い、しかる後所管局長から現状についての御説明をいただきたいと思います。
  4. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ビキニ実験の直後、閣議決定をもちまして厚生省に設置されました原爆被害対策に関する調査研究連絡協議会というものがありまして、これは米英ソの行います原爆実験影響に関しまして、各省研究機関の間で研究を分担し、研究内容等に関しまして連絡協議を行なっておるような次第でございます。御承知のように、この前の参議院の本会議におきまして、中山福藏さんからこの問題につきまして御質問を受けまして、私もこれにお答えを申し上げたのでございますけれども、これから先のいわゆる原水爆によるところの影響というもの、あるいはまた科学技術が非常に進歩いたしまして、各種のそういった空気汚染というものが、放射能物質によりまして行われてくるというわけで、われわれ環境衛生行政をやっていくものといたしまして、確かに歴史的に見るならば、この防疫関係から始まったわけでございまするが、あるいはまた水道、水でございますね。あるいは食品というような環境衛生の問題があったわけでございますけれども、さらに進みまして、人間を取り巻くところの、いわゆる空気というものの汚濁というものが、これから先の日本のみならず、世界の各国に関心を持たれなければならない問題となってきたことは御指摘通りだと私どもは考えまして、実はその際にも、御質問がございました際にも申し上げたわけでございますが、国際連合の中に科学委員会というものがあって、単に直接的な原爆あるいは水爆による空気汚染ではなくて、放射能一般についての影響及び調査というようなものを開始しておる。できるならば、われわれの国におきましては、とにかく世界で初めて原爆を落されて、その被害を受けておる国であるから、その委員会日本において開催をされ、そして広島や長崎等において行われた影響等についての資料等もあるから、これを一つ世界人類の福祉のために使う。そういうようなものを二度と再び起さないようなことにするためには、それがどういう影響を持つかというような研究をしていただきたい。あるいはその材料を提供したいという意味におきまして、われわれとしても、何とかその委員会開催日本においてやってもらったらどうだろうか。今まではジュネーヴであるとか、あるいはまたニューヨークであるとかいうところで行われているが、ことしは間に合わないにしても、来年ぐらいは、そのような委員会日本においてやってもらうというようなことを申し出てみようというような話も内々やっておるようなわけで、ございまして、この四月の初めでございますか、ニューヨークにおきまして、この委員会開催されるにつきまして、都築博士日本を立ちまして、向うの委員会に参ったようなわけでございまして、私都築さんにも、出発されます前にお会いをいたしまして、そういうような気持を伝えて、そうして委員会の方々にも御了解を得るようにということを実は申しておるようなわけでございます。またこまかい実情等につきましては、関係局長から御答弁を申し上げたいと思います。
  5. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 落下する放射能関係推移でございますが、これは大気中の煤塵とそれからこの煤塵を核としまして降下する雨水、それからさらにこの雨水が落下しましてから、川の水とかその他の水の流れになる、いわゆる降下水ということと、それから土壌、これが直接物理的にまず第一歩として測定を続けなければいかん、こういうことであります。さらにこれらの雨水あるいは地下水等をまた吸い上げる植物あるいは動物に移行する状況、これらを常に観測いたしておりますと、これが人間に与える被害状況がどう推移するか、こういうことがわかるものでございますので、現在のところ、大気関係につきましては、気象庁が全国で九カ所、手分けをいたしまして、これは常時観測を継続いたしております。それから落下いたしてからの水、それから食物、これらにつきましては九カ所の全国地方衛生研究所、このほかに、もちろん中央にありましては予防衛生研究所公衆衛生の一部、衛生試験所、こういうものが分担いたしてやっております。厚生省の担当以外の類似の研究所農林省関係各種研究所、これも並行いたしまして検討いたしておる。で、なお行政庁に附属した機関ではございませんが、大学の関連研究室が、先ほど大臣から申し上げました協議会連絡を通じまして、それぞれ実質的に分担をいたしまして研究を続行いたしております。  これらの結果を総合いたしますと、大気中の浮遊塵放射能推移は、これは雨水と同様にピークがときどきぱっと出ます。二日ないし三日ぐらい続くピークが出る。これは出てから逆に逆算をいたしますと、従来、後に発表されました実験というのと関連があることが、これが推測されますが、これが三十年以来現在に至るまで、大きなピークが十五、六回ございました。で、そのときには突如として常時の百倍というような量にはね上ります。それが直ちに二、三日でなくなる、こういうことがございまして、これは短期間のピークでございますので、これが人間への影響ということは、これは結びつけが非常にむずかしいのでございます。むしろこれが常時降っておるという量が、一番これが関連がございますが、それで見ますと、浮遊塵につきましては、昨年の九月以降はピークが全然、この半年間ございませんで、普通の量というものが浮遊塵では変動がございません。現在のところ三十年、三十一年、三十二年、この間一般的に変動がございません。それから雨水の中の放射能が、今申し上げましたピークを除きますと、昭和三十年十月までは大体一リットル当り、一分間、百カウント前後の測定値でございましたが、その後増加をいたしまして、三十一年、三十二年には十倍である千カウントを一月の間数えるという時期が相当ございます。ところが昨年の十月以降は、また三十年以前の当時に落ち着きまして、大体一分間一リットル、百カウント最高でございまして、大体それ以下になっております。  それから降水中のものでございますが、これは非常に実際には微量なものでございますので、バックグラウンドに含まれておる。すなわちカリウム、天然にありますカリウムその他に含まれておる自然の放射能を差し引きますと、非常な微量になりまして、これは数字的の変移が消えてしまうような量でございますので、この推移をなかなか証明することはむずかしいのでございますが、これも今まででは大体百カウント最高でございまして、大体十数カウント以下でございます。この天水の場合、これが一度ためたものを、ピークがありましてためたものを捨てない限り、またこれをずっとためて使用いたすために、川の水を利用したり何かするのと全然これは趣きが違いまして、これはかなり重要でございます。従いましてこれは量は増加いたしませんが、ピークもこれは大事にしなければいかぬということになるのでございます。これは今申し上げましたように、昨年の十月以降は大きい。ピークが出ておりません。  それから土の放射能でございますが、これも天水に類似しまして、たまったものが逐次蓄積していく、従って毎日の放射能の量はふえていない、むしろ減っておるにいたしましても、毎日蓄積したものが植物等影響いたしますので、これが一番重要でございますが、これのうちストロンチウム九〇につきましては三十二年、一昨年は大体一平方キロメートルあたり三から八ミリキューリーという量でございましたが、これがわずかずつ増加をいたしました。これが一番将来にわたって問題になります。蓄積した土壌から植物が吸い上げる、あるいは吸い上げた草を食べた牛等から入る量が若干ずつあるということでございますが、ただ、今まで国際的に認められております土壌許容量というものからは、まだはるかに差がございます。その点は現在許容量に達した、あるいは近く達するという非常な危険性はございませんが、増加しておることは、今後これがだんだんに上りまして、将来危険が起るということはこれは想定されるわけでございます。  以上のようなことでございまして、さらに各地区で農作物含有量を調べておりますが、これはここ半年間くらいでは、実際の農作物の量はふえたデータが出ておりませんが、昨年の夏以前のデータがかなり詳しいのがございますが、これによりますと、土から吸い上げたものよりも、たとえば米とかあるいは茶のような場合には、降下したものが外側からくっついた方の比率が多うございます。それから言いますと、たとえば米でありますと、玄米の方が精白してしまって、ぬか等をとった白米の十倍くらい比率的には多いというようなことでございまして、昨年までの実績では、土からの増加の吸い上、げの量よりも、やはり上から随時降ってきたものの付着を除去しないと、その方が量が多い、こういうことになっております。ただしこれも米について言いますと、大体一人一日の許容量が大体百七十六マイクロ・マイクロ・キューリーということになりますが、それと比較いたしますと、大体一とか二という量でございまして、大体その許容量との比率がおわかりと思いますが、大体そういうような量でございますが、しかしこれは急速に減少しておりませんで、著しい最近の増加量はありませんが、持続をしてきておるということでございますので、やっぱり人間に対する影響持続をしておれば、それだけつけ加わって生きている間に体に受ける量が、それだけ高まっていくわけでございますが、これは遺伝の問題等からの理論から言いますと、生まれてから一生の間に受ける総量というものが、やはり人間に対する影響ということになりますと、やはりこれは急激な上昇傾向というよりも、蓄積していく量がいつどうどの量に達するかというのが問題でございますので、これはやはり量を極力減らすということが最も大事である、かように存じます。  なお総合的に各省でやっておりますデータは、四月中旬に各省から提出いたしまして、ばらばらに出しては意味が少くなるものでありますから、これを科学技術庁におきまして、総合編さんをいたしまして放射能の白書というような、名前はまだ未定であろうかと思いますが、こういう形で四月中旬に全部編さんを終りまして発行し、日本にも外国にもこれは周知される、こういう見込みでお互いに協力しておるわけでございます。
  6. 矢嶋三義

    主査矢嶋三義君) ちょっと政府委員の方に申し上げます。答弁が詳細であることは誠意が認められて大へんけっこうなんですが、社労委員会と錯覚を起さないようにお願いいたしたいと思います。ここは予算委員会分科会でございまして、厚生省関係一般会計並びに特別会計あわせて数時間で審議しようというわけでございますから、しかも厚生省関係は相当内容がたくさんありますので、それをお含みの上御答弁をお願いしたいと思います。  ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  7. 矢嶋三義

    主査矢嶋三義君) 速記を起して下さい。
  8. 坂本昭

    坂本昭君 大臣、今この説明が長々とあったのですが、私はあらかじめ調査願ったのですけれども、今の説明ではきわめて不十分なんです。私はそういうこともあろうかと思って特に注意を喚起するために、あらかじめ日を置いて御調査願いました。私はこういうことでは、日本の一番大事な放射能に対する公衆衛生が確保されない。またこれに対して各省にいろいろと研究費調査費が出ているようですけれども、この責任は当然厚生省が持つべきである。そしてそのために、厚生省自体としては莫大な予算を要求してもいいと思う。ところが予算書の中にも一向出てきてないし、わずかに原爆被害者に対する予算だけは盛られているけれども、これも実情はどうかというと、生活援護ができないために余っている。結局一番世界原水爆被害を受けているわれわれ日本人が、これに対する的確な予算的措置さえもやっていないということなんです。特にはなはだ遺憾に思うのは去年の十月以降大した変化がないということ、こんなばかなことないですよ。去年の十月以降が一番世界の危機なんですね。そして実際に今調べられた鹿児島の気象台あたりで、この二月に発表した数字を見るというと、この十一月には天水に七万二千カンウトという非常なものが出ている。それからまた東大の檜山教授あたり大根についての調査あたり——すでにアメリカリビー博士、これは実験をやれという学説の博士ですが、このリビー博士自体ですらが、三十三マイクロ・マイクロ・キューリーがどうも許容量だといっている。その許容量をすでに越えた百十マイクロ・マイクロ・キューリーというものが、日本の四国の大根の中にあるのですね。こういうことを注意するのは一体誰かというと、厚生省なんです。厚生省が黙っておったら国民も安心するのだから——マグロの場合にはずいぶんやかましくいってやった。ところがその後は何もやらない。国民は安心しているけれども、あるいは間接には遺伝的な変化が起るかもしれない。私はそういう点で今回の予算の中にも、こういった考慮が全然なされていない。はなはだ遺憾であり、かつそれに対する調査を求めましても、調査内容から見るというと、全くお話にならないのんきなものであって、むしろ私はこのアメリカ新聞発表を見て、これはアメリカがああならば日本の場合はもっとひどいであろう。これは即刻に、場合によれば臨時の予算を組み直してでも、これは即刻に検討する必要がある。特に公衆衛生局の中には、環境衛生部というのがあります。環境衛生部では最近非常に煤塵の問題が研究され、いわゆる公害対策を練っている。ところが公害対策の中にも例のスモッグあたりに重点をおいて、一番日本世界人間が心配しなければならないところの放射能については研究を怠っている。たとえばあの東海村の原子力研究所の中から出る煙の中に相当危険なものが出ているといわれている。これは一体誰が調べて、そして危険だからこれをやめろうとか注意をする、監督をするのは公衆衛生立場では一体誰がなさるのです。今の東海村の研究所の煙について、これは一体どなたがなされ、いかなる行政措置をなさる責任がありますか、大臣に伺いたい。
  9. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 科学投術が非常に進歩いたしまして、こういった問題が、われわれ人類の生存に非常な影響を及ぼしてくるわけでございますので、これは関係各省、特に科学技術庁あるいは日本学術会議等の御協力を得なければなりませんけれども、しかしこれが、たとえば今御指摘になりましたように、天水であるとか、あるいはまた大根であるとか、あるいは稲作であるとか、そういうようなものを通じまして、われわれ国民のからだの中に入っていく、あるいは骨の中に蓄積されていく、これは非常に重大な問題をはらんでおる。この点に関しましては、われわれ厚生省がこれを調査研究し、これに対する対策というものを考えなければならない問題でございまして、冒頭に私が御答弁申し上げましたように、新しい世界のこのような影響につきましては、公衆衛生行政というものの中に、放射能によるところの各種の問題というものをわれわれは取り上げていかなければならない段階に入ったというふうに私は考えるわけでございまして、本年度予算等におきましては、いわばあまり予算に計上もされておりませんことは、私といたしましてもまことに残念に考えるわけでございますが、本年度中に、このような問題について十分私検討いたしまして、そうして昭和三十五年度等の予算におきましては、少しでも芽を出すようなことを考えていきたいというふうに考えておるような次第でございます。
  10. 矢嶋三義

    主査矢嶋三義君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止
  11. 矢嶋三義

    主査矢嶋三義君) 速記を起して下さい。
  12. 坂本昭

    坂本昭君 ただいまの大臣の御答弁に私たちは非常な期待を持ちますが、環境衛生対策費としては、今年三十四年度について、実はそういう放射能の問題については全然上っておりません。そうして確かに三十五年度について御努力願うということはけっこうであります。しかしこの問題は私は、かなり緊急な問題の要素があると思います。でありますから、これについて、まずどういうふうにして調査をするか、それからマグロ問題あたりもどういうふうに調べるか、そういう具体的な検討をされ、それに対してどういう予算が要るか、場合によれば、これは補正予算を組んでいただいても、あるいはほかから予算を繰り合せてでもやっていただきたい。そのことだけとりあえず大臣に要求し、大臣の決意を伺っておきたいと思います。
  13. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私もまだ厚生大臣になりまして間もないわけでございまするので、十分承知をいたしかねておるわけでございますが、しかしこの問題は、私就任いたしましてすぐ大きな問題だというふうに感じております。従いまして、御指摘のような点につきまして、早急に一つ庁内をとりまとめまして、できることならば、そういった方向に努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  14. 坂本昭

    坂本昭君 ただいま大臣から非常に明快な御回答をいただきましたから、私は所管の局におかれまして、十分これは早急に検討していただきたいと思うのです。相当な問題が私はあると思う。そうして特に環境衛生の面で最近公害として粉塵の問題が出て、四月の初めから開かれる日本医学会総会では鈴木博士宿題報告があります。しかし、これは全然放射能には触れてないのですね。この点で、私は早急に——どうも皆さん方の御研究が不十分だと思います。重大な問題でありますので、環境衛生の大事な目標として調査をしていただきたいと思います。  非常に大きい人類の問題を論じましたが、放射能関係して、もっと切実な、実はわれわれの身辺の問題がございますので、今度はその方のことについてお伺いしていきたいと思います。それは、放射能障害というものが、原水爆実験以外に一番身辺に多いのは、いわゆる治療上並びに診断上に行われるところの特にレントゲン、ラジウム、最近はコバルト六〇、こういったものの問題、こういういわゆる放射線障害に対してどういうふうな措置をとっておられるか、どういう方針をとっておられるか、これは医務局になりますので、それではその具体的なこととして医務局長さんから説明していただきますが、医務局所管の中の国立病院国立療養所、これは国の模範の施設として、こういうことについては率先してりっぱな整備をすべきだと思う。一体そういう国立病院療養所における放射線障害に対する防護の整備というものは十分できておるか、あるいは予算的にどういう整備費を使っておられるかをまず伺いたい。
  15. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 御指摘通りでございまして、放射線を取り扱う従事者並びに患者等放射線によるところの不測の障害があってはならないわけでございます。まずエックス線でございますが、これは数年前に省令を改正いたしまして、かなり厳重な改正規定を設けまして、国立病院といたしましては、病院療養所を通じまして、それぞれ所定の予算を計上いたしまして、昨年中に全部新しい省令に合致するように設備を改めました。なお、国立病院療養所だけではいけませんので、一般の病院につきましても、積極的に改善に向うようにせっかく努力中でございます。それから次に、エックス線以外の放射性物質の取扱いでございますが、これは、昨年来臨床放射線学会の方に御相談を申し上げまして、新しい放射線障害防止に関する法律を根拠といたしまして、それに合致するような新しい省令を制定することにいたしました。過般科学技術庁の方の御審議を終りまして、近くこれを公布する予定でございます。これが完全に設備その他の措置が守られたならば、放射線障害は相当に防止し得るものと考えております。
  16. 坂本昭

    坂本昭君 確かに昭和三十三年度で完成するように、その防護装置をおやりになったはずなんですけれども、最近の調査によりますと、まだ国立関係でも操作室に防護の完備していないもの、あるいはつい立の利用をしていないものが少数ございます。特にエックス線室の防護の面では、つい立よりは操作室自身を防護完備させる方がいいと思うのですが、これは、国立あるいは大学病院、保健所、それぞれによって若干の差があります。私の調査では、確かに保健所などは比較的よくできているように思います。しかしそれでも、保健所の一番大事な任務は、間接撮影をやる、その間接撮影をやるについて、全国百六十七の保健所について、防護箱を使用しているものが四四%、つい立を利用しているのが四五%であって、私は必ずしも全部保健所の場合もこれが完備しているとは言えないのではないか、一番大事なところの本家本元でさえやっていないじゃないか、なるほど昭和三十年、三十一年、三十二年と、国立病院療養所では九百万円、一千五百万円、九百九十万円というふうにやってきておりますが、まだ私は残っているのではないか、この点医務局長からは、いやしくも国立病院療養所にそういうことがあったんでは大へんではないか、私は特に去年の東京国立第二病院のあのラジウムの扱いなどの問題を通じて現場にも行ってみましたけれども、はなはだ不十分なところがあるのです。これは局長としては、何もかもうまくできたと言っていられるよりも、国立でさえもはなはだ不十分な点がある。だからこういうことについては、もっと世論の関心を高めて、大蔵省からも予算を十分とるようにしたいというふうな態度が望ましいと思うのです。で、特に保健所については、今のようなことで、実際に終了しておられるか、その点を医務局長公衆衛生局長から御返事をいただきたいと思います。
  17. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 実は私この問題について相当関心が深いつもりでございます。私が施設を見た場合、必ずエックス線の防護施設を見るようにしておるのでありますが、私の見る範囲におきましてはできておったのであります。また予算措置も三十三年度は終っております。私どもの方では完了したという報告を受けております。しかし人間のやることでありますから、どんなところで間違いをするかわかりません。今後御指摘通りさらに再調査いたしまして、もしも欠けるところがありますならば、十分に設備さしたいと思います。
  18. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 保健所も今年度中にはぜひ全部終らしたいということで、保健所の整備に要する補助の予算の使い方につきましても、それを最優先に指導しておりますので、三十三年度中には終っておると思いますけれども、ただ保健所が例の従来間に合せの建物だったので、今急速改築しておりますが、それと並行して少しおくれたところも全国わずかあるかと思いますが、これも督促いたしまして、この点については完備するようにいたしたいと思います。
  19. 坂本昭

    坂本昭君 保健所でさえもそういう状態であるということは、はなはだ残念でして、いわんや一般の診療所あたりもレントゲンはたくさん持っているのですね。それについては医療法の施行規則で医務局の方で監視しておられると思うのです。しかしこれは監視だけではなくして、こういう病院の診療に当るものだけじゃなくて、患者さんに対しても影響のある放射能でございますから、これを防護を充実するためには、国費をもって十分補助をしてやる、そういうことも私はこの御配慮の上、徹底的にこの放射線障害というものに対する対策を計画していただきたいと思います。  なおそれに関連して一番われわれが心配するのは、いわゆるエックス線技師の健康が守られているかどうかという問題でございます。特に保健所のような間接撮影をやる場合の実体を見るというと、きわめて不十分な点があって、エックス線技師が一般的にどういう健康状態を維持しているか、これはその所管はどこの局になるかわかりませんが、そういうような調査を十分しておられるか、承わりたい。
  20. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 私ども省令改正に伴いまして、エックス線の防護施設を国立施設においてこれを完備させるという方針を立てまして、着々やって参ったつもりでございますが、それと並行いたしまして従業員に対する健康障害の程度はどうであろうかということに関心を持ちまして、実は昨年厚生科学研究費をもちまして若干の施設について調査いたしたのでございますが、その結果ごく少数の施設におきましては、かなり被曝量の多いところもございましたが、大多数の施設におきましては許容量よりもはるかに低いのでございまして、この点安心したのでございます。被曝量の多いものは設備が悪い、あるいは設備以外に取扱いの上にまた間違いがあるんではないか、その点十分に実地を調べて指導するようにしてございます。昨年厚生科学研究費をもって一部の施設を抜き取り調査をいたしました事実もございます。
  21. 坂本昭

    坂本昭君 今局長から御説明がありましたが、実はエックス線障害は血液に一番障害を与えて、白血球赤血球の数で測定いたしますけれども、要注以上の障害者、これはことしになっての統計の一部ですけれども、要注以上の障害者が保健所でさえも六五%あります。つまり健康な人は三分の一しかおらない。この数は国立関係、大学関係、県立関係、大体六割から七割要注以上の障害者がある。個人の病院、診療所、こういうところでは七六%も障害者がある、つまり個人の方ではもっと守られていないという事実ですね。で、こういうことから厚生科学の調査でされるのもいいのですが、その一部じゃなくて、もっと大がかりな徹底的な調査を私はやっていただきたい。このことが職業病としてのエックス線技師の健康を守るだけでなくて、同時に人類の問題になっておる放射能に対する世論を喚起する上においても非常に重大なこれは関係があると思います。で、きょうは、このコバルトだとかあるいはこの放射性同位元素の発達によって診断治療上非常に進歩が行われて参りました。で、こういう重要な業務に携わるところの専門職として、私はその資格と地位とそれから待遇を十分に確保して、この新しい科学と医学の時代にふさわしいところの業務を、従来言われておるこのエックス線技師に対してさせなければならない。で、特に放射性同位元素というのは、この間のダレス長官の治療にも使われていまして、そうして急速に進歩をしていくと私は思います。この取扱者の資格を法をもって定める必要がある。この診療エックス線技師法の一部を改めなければならないのではないかというふうに私は考えて、で、次にこれに関連する質問を申し上げて行きますから、簡潔に答弁をいただきたいと思います。  まず、厚生省としては、その診療エックス線技師法を改正するおつもりがあるか、で、いっこの提案をされるつもりか、またその原案は持っておられるか、その三点を伺いたい。
  22. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 診療エックス線技師法は現に制定されてございますが、この技師の人たちが従事する業務は、最近はコバルト六〇の照射というものが相当数の病院で設備されましたので、その方面にも事実従事しておるわけでありますが、それから将来ますますこの需要が広がりますので、当然診療エックス線技師法では駄目であって、診療放射線技師法という名称のもとに新しい制度に組みかえなければならない、こういう考え方をしております。厚生省としては若干原案らしい考え方を持っておりまして、その意見をもとにいたしまして、また目下臨床放射学会の方々と相談中であります。
  23. 坂本昭

    坂本昭君 いつ。
  24. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) できるだけ早くこれを法制化したいと考えております。従いまして準備のでき次第、おそくとも来年の通常国会にはこれは提案、したいと考えております。
  25. 坂本昭

    坂本昭君 きわめて重要な専門職で、現在でも厚生大臣の試験を受けてその資格を受けておるのでありますけれども、私はこういう時代に臨みまして、従来の就業年限を一年延ばして三年に延長すべきであると思いますが、いかがでございますか。特に最近は栄養士の問題も出て来ております。今までは花嫁さんのアクセサリみたいな感じだったのが、やはりこれは専門職として特に医療専門職として栄養士を三年に延ばすという運動もあり、私たちもこれを支持しておりますが、特に診療放射線技師というのはもっと重要な、もっとというと言葉が悪いのですが、非常に重要なものでありますので、三年に延長されてはどうか。
  26. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 全く同感でございます。私どもも常識的には二年を三年に直すのが適当ではないかと考えております。新しい教科目の内容によりまして必ずしも三年を固執できないかもしれませんが、私どもは常識的に同様に考えております。
  27. 坂本昭

    坂本昭君 そうしますと、三年に延ばして国家試験をやって免許するとなれば、私は免許をつまり厚生大臣の免許として、今のように都道府県知事でないようにするのが正しいと思いますが、そのようにお考えになられますか。
  28. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 御指摘のような取扱いにいたしたいと目下考えております。
  29. 坂本昭

    坂本昭君 そうしますと、きわめて程度の高い専門職が生れてくることでございますが、私は従来のエックス線技師法によると、医師、歯科医師の指示によらなければ業務ができないようにされておりましたが、それだけの程度の高い教育を受けてくれば指示によらずに業務ができるように私はなり得ると思いますが、いかがですか。
  30. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) これは一つの問題点でございまして、臨床エックス線学会の学者の方々は、なおこの際いわゆる指示というものを省けるかどうかということを非常に問題視しているようでございます。この点一つのポイントといたしまして、今後とも慎重に検討していきたいと考えております。
  31. 坂本昭

    坂本昭君 同時に、従来の業務は医師または歯科医師の署名した指示せんによって行われる、そうしてあと照射録をたしか保存する義務があったと思います。しかし、そうなれば指示せんによって行なっても照射録は残さない、指示ぜんだけの扱いにすればいいと思いますが、いかがですか。それからまた保健所あたりでは集団検診の間接撮影をやるときに医師が立ち会わなければならないという規定になっておる。これも実際上の問題としていろいろの点があると思うのですが、そういう三年の資格、三年の修業にするような場合には、こういう立ち会わないでも私はでき得るのじゃないかと思いますが、先ほどの問題とも関連して参りますが、御意見を承わりたい。
  32. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 現在は医師の監督のもとに、指導のもとに、あるいは指示のもとにいろいろ業務を行うことになっておりますが、高度の教育を受けた者はそういった立ち入った指示はいらないではないか、ちょうど医者が処方せんを出して薬剤師に薬を処方させるように指示せんを出せばそれに基いて専門家が照射すればいいのであって、指示ぜんに書いたらどうであろうかという意見も実はございます。指示せんを出すということになれば、指示ぜんに内容が記載されておりますので照射録に書くことは二重の手間になりますので、これらの点が先ほど申し上げましたように大問題点の一つとなっておりますので、慎重に考慮して決定したいと考えております。
  33. 坂本昭

    坂本昭君 保健所の集団検診の場合は。
  34. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 集団検診の場合は一そうこれは能率をあげるという意味では同様に取扱いたいと、かように存じております。
  35. 坂本昭

    坂本昭君 そうしますと、新しい診療放射線技師というものが生れるのですね。当然診療用の放射線同位元素、この取扱いに関しては無条件に放射線取扱い主任者と指定することができると思いますが、いかがですか。
  36. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 結論は、新しい診療放射線技師法の中の中身がどうなるかによって全部きまってくると思います。相当充実した内容になれば、それは独立してやることになりますが、その程度が軽ければなかなか独立ということにはいかないと思います。すべてはこれからきまる技師法の内容いかんによって定まってくると思います。私どもの願いといたしましては、できるだけ十分な教育をして独立して業務につき得るような、そういったような新制度にしたいという願いを持っておりますが、これらの点いろいろむずかしい学問上の、技術上の問題もございますので、学会その他とも連絡をとって慎重に審議して参りたいと考えております。
  37. 坂本昭

    坂本昭君 この大事な放射線の扱い方について、私はその資格を高めると同時に教育の内容も高め、それだけに責任と権限を与えていきたい、また厚生当局もそういう御方針のようにほぼ私も推察いたしまして、われわれとしてもそういう面におきまして御協力を申し上げたいと、そう思っております。  次に、エックス線技師に関連してでございますが、保健所の問題になって参りますが、保健肝のエックス線技師の定員が二千六十六名でございましたか、たしか二千名以上だと思いますが、その充足の状態はどういうふうになっておりますか。
  38. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 充足の状況は、医師それから保健婦に次ぎまして五〇%現在割っております。非常に遺憾でございまして、この充足には極力努めておるのでございますが、なかなか技術者がいにくいので、現状ではさようになっております。
  39. 坂本昭

    坂本昭君 これは保健所は公衆衛生の第一線の一番大事な役割を果すのにもかかわらず、医師、看護婦、それから今のエックス線技師が足りないということは、はなはだ遺憾だと思います。これにはいろいろな理由もあると思いますが、もうその討論は省略して、やはり大事な点は待遇の問題だと思うのですね。保健所に医師が少いのもこれは待遇の問題で、まずこの医師の待遇の問題も後ほど論じたいと思いますが、エックス線技師、これは医療職の第二表で取り上げられておりますが、非常に私は低過ぎると思わざるを得ないのです。たとえば初任給、初任給において看護婦と学歴の差は一年ですね、学歴差は一年であるのにかかわらず千五百円の開きがある。ところが同じ看護婦でも、准看護婦との間には学歴の差が三年、つまりエックス線技師の方が先輩になるのにもかかわらず、わずかに五百円しか開かれていない。これはほかの職種をあげるのはあまり感心しませんけれども、例をあげると、薬剤師とは二年の学歴差が千八百円の開きになっておる。これはどうもはなはだ不合理な職階制を当てはめておるからではないかと思うのですが、まず保健所問題、保健所の運営について日夜苦労しておられる局長から意見を伺い、さらに人事院の給与局長からこの医療職第二表の特にエックス線技師の取扱いについてお伺いいたしたいと思います。
  40. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 保健所の各種の給与、これは実は地方公務員なものでございますので、国家公務員の、たとえば国立病院のごとく厚生省でぴたっときめまして、これは人事院と一緒でございますが、きめるわけにはいかないということで、どうしてもそれぞれの地方自治体の規定によるわけで、われわれの方はこの技術者がさようにとりにくいということは、やはり給与が低いためということがございますので、極力指導いたしておりますが、ただこれをぴたっとこういうふうに改正したらその通りになるということにいかないので非常に苦慮しておるわけでございますが、ただし人件費の補助額については、上げたところはむしろ歓迎いたしまして、そういう県については決して押えることなしに、むしろそれに右へならえしてやるようにこれは極力指導をいたしておるわけでございます。
  41. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 医療職俸給表の二の問題でございますが、この俸給表にはいろいろの種類の方々が入っておるわけでございます。で、まあこの給与の問題は絶対的にきめ得るという問題でないのでございまして、従来からの経緯等によりましてきまって参る、その状況によほどの理由がない限りはそのバランスを変えるということがむずかしいというような点がございます。しかし御指摘のように医療職俸給表の二というものが現在の状態でいいかどうかというような点になりますと、これは問題がないとわれわれは思っておらないのでございます。従いまして将来にわたりまして十分検討をいたしてみたい、このように考えております。  なお、エックス線技師につきましては、われわれの方といたしましては、特殊勤務手当というものを現在支給いたしておりまするが、これも金額が現在のところ非常に少いのであります。  もっとも特殊勤務手当のほかの種類のものにつきましても、大体現在のところ同程度に少いので、これをどのように今後考えていくかという問題はございまするし、またエックス線技師並びに助手に対して出しておりまするが、同様の放射線元素、そういうものを取り扱うものの範囲をどのように広げるかというような問題も、われわれは宿題として掲げておるのでございまして、今後研究をいたして参りたいと思っております。
  42. 坂本昭

    坂本昭君 どうも今後研究するというようなことは、はなはだ手おくれだと思うのですね。これはエックス線技師自体に関する問題と、それから後ほどだんだんに申し上げたいと思いますが、国立病院療養所の医師、保健所の医師、つまり日本のこれから大事な公衆衛生等、医療保健のいわば第一線に立つ人々に対する待遇というものが、人事院の無理解とは申しませんよ、無理解とは申しませんが、人事院のきわめて消極的な態度によって、非常にブレーキをかけられている。その結果どういうことかと申しますというと、医師の待遇が悪いために国立病院療養所に医師が来ない、保健所に医師が来ない、保健所にエックス線技師が来ない、従って、一方において結核対策を進めて、集団検診をどんどんやろうとしても、肝心のレントゲンのエックス線技師がいない、医者がいない。結局人事院のブレーキが、日本の結核対策や医療対策、厚生行政というものに全部ブレーキをかけていると言わざるを得ない。私はそういう点で、後ほどこれは厚生大臣にまた伺いますけれども、きわめて具体的な、かっこまかい数字の問題になりますから、厚生大臣はよくお聞きの上、最後に決意と、どこにその隘路があるかということを御判断になっていただきたいのです。さしあたっては、人事院の御当局で、たとえばエックス線技師に対する危険手当調整額の問題、これなど放射線というものは目に見えないものですから、そうして急に障害が見えてこないために、人事院としてはかなりこれに対して何といいますか、無関心とは申しませんが、消極的な態度をとっておらられるのではありませんか。ちょっとその点伺いたいと思います。
  43. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ただいまも申し上げましたように、われわれはエックス線技師並びに助手に対しましての特殊勤務手当を出しておるのでございます。なるほどおっしゃるように調整額は現在出しておりませんが、そういうことは、これはどういうとかうに御理解願えるか、われわれとしては無関心ではない、非常に積極的に関心がありますのでこういうものを出しておる。そして今後におきまして、この手当の内容をさらに検討して参りたい、われわれはそのように考えております。
  44. 坂本昭

    坂本昭君 人事院の方でも、そういうエックス線技師の身体的な障害のことなどは十分御調査になっておられますか。そうしてそれにふさわしいところの手当は理論的にどの程度であるべきかそういうような御検討はしておられますか。
  45. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 人事院におきましても、エックス線取扱い者の障害問題につきましては、ある程度の研究をいたしております。しかしそういう問題は、主としてこれはそういう取扱いをいたしまするについての防護装置というようなものに問題の重点があるのでありまして、そういうことがあるからこれを給与でみる——すべてみるというわけにはなかなか参らないのではなかろうか、われわれはこのように考えておる次第でございます。
  46. 坂本昭

    坂本昭君 確かに、この防護装置が完備すれば、そういう危険がなくなるから、何もそういうことを考えなくてもいいのではないかという理論も、確かにある面成立するかもしれませんですね。しかしこれは比較的な問題であって、量的に問題であって、完全に放射線障害から遮断されて安全に守られ得るということは、実際上の問題として私はきわめて困難ではないかと思うのです。そう点については、人事院当局におかれては、現場を見られて、現地について、見られて、どの程度まで可能性があるか、そうしてまたどの程度までは被曝というものの必然性にさらされる、その辺の検討を私はしていただきたいと思うのです。ただいま特にエックス線技師の問題について取り上げたので、むしろ私の申し上げたいことは基本的に、今日の厚生行政を進める上において、一般的に、今度は医療職の、第一表、第二表を通じて、特に第一表の問題についてこれから少しお伺いいたしたいと思います。で、まず医務局長、それから公衆衛生局長に伺いたいのでございますが、国立病院療養所の場合も私は医師の充足難というものがかなり切実なものになってきていると思います。たとえば東京のようなおひざもとの、しかも基幹病院として模範的な国立東京第一病院でも、すぐれた医師を得ることがきわめて困難な状態であります。そういう実情を認識しておられるでしょうか。
  47. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 具体的の例として、国立東京第一病院のお話がございました。国立東京第一病院は、従来とも無給でいいから病院の中に入れて助手として医業の修練をしたいという志望者が非常に多かったわけでございます。ところが、ただいまの御指摘は、おそらく正規の職員でなくて、それをさしていると思いますけれども、最近は、東京第一病院ですら、さような志望者がかなり減少して参ったのでございます。これは、東京第一病院におきましては、私どもの考え方は、従来、博士制度が、論文で博士が取れたわけでございます。それが大学におきまして、大学院制度が打ち立てられまして、いわゆる従来の論文博士というものがだんだんなくなっていくという傾向になりましたので、東京第一病院に無給で勤めながら、研究して大学に論文を提出して博士になることが非常に困難になってきた。博士を取れなければ東京第一病院に行っても効果がないという考え方が、無給助手の志望者の中に相当高まってきたのではないか、その結果、無給助手の志望者が減ってきたのではないかと思いますが、事実、東京第一におきましても、優秀な無給助手の志望者は、かつてと比べまして非常に減少していることは事実でございます。
  48. 坂本昭

    坂本昭君 どうも局長の御認識は違っているのではないかと思うのですね。確かに博士論文との関連もあるかもしれませんが、もっと深刻な問題は、やはり待遇問題だと思います。で、待遇のために、これはだんだんとそういう基幹病院からさえも出ていこうとする傾向が強い。これは私は、医師の待遇問題について非常にこのごろ心配しているものですから、東一におった幹部的な人たち等のいろいろな意見を開きました。そうすると、深刻な問題として、東一でさえも人が来ないぞということを率直に言われたのですね。そして最近、全国各種病院勤務医師給与の実態調査という、あなたの所管の京都病院の山田医師の非常に綿密な調査があります。この調査の結論的なことだけ申し上げますと、国立病院療養所の給与が、各種の勤務医師の中でも一番低い、これは群を抜いて低いのですが、次に低いのは都道府県立、日赤、それからもう一つおもしろいことは、いわゆる大都会——東京周辺、京阪神周辺、こういうところが低いということが明らかになってきている。これは東京周辺の大都会でも低いということは、博士論文との関連で、東一に人が来ないというふうに考えるのは、私はむしろ間違っておって、基本的に給与が低いという点で見ていかないというと、大都会周辺の基幹病院というのが成り立たないのじゃないかと思うのですね。で、これが一体どこからきたかというと、これは結局、人事院の方の公務員のワクからきているわけです。国家公務員のワクからきているわけです。で、国家公務員の医師の給与は、いわば他の規範とされておる。そのことのために、だんだんとその影響が今のようなこの論文の結果に見られるようになってきて、一流と考えられる病院ほど医師の給与が低い。国家公務員に右へならえしていけというので、施設のいい、設備の整ったところの一流病院の給与がどんどん下ってきている。結局どうなるかというと、非常にすぐれたりっぱな設備を使って医療活動のでき得る能力のある人が一流の病院にいかないということになっているのですよ。そうしてそういう人たちは、悪い設備の、小さい診療所で、細々と——しかしまあ収入は上げるかもしれませんが——やっていくという結果で、これは日本の医療対策の問題からいいますと、ゆゆしき大事ではないかと考えるのです。医務局長の御見解を承わりたい。
  49. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 先ほど坂本委員の御質問に対しまして、私は無給医員の実例をもってお答えを申し上げたのでございますが、おそらく坂本委員の御指摘は、先般あそこに岡本というきわめて優秀な放射線の医長がおったのでございますが、この人が東京医科大学の放射線の教授に招聘されまして、その後任をわれわれが求めた、その事項をさすのではないかと思うのであります。(坂本昭君「いや、そうじゃない」と述ぶ)御指摘のように、ほかの病院の相当な医長は、給与が高いものでございますから、東京第一病院ですら、放射線の医長は、あの当時は獲得に実は悩だのでございます。結果といたしましては、逓信病院の医長さんに、俸給が少し下りましたが、下って、きていただいて、事が落着いたしました。その事実を御指摘になったのじゃないかと思うのであります。確かに国立病院療養所を通じまして、国の医療機関の医師の報酬は、これは人事院の御調査にもございますし、先ほど御指摘の京都病院の私どもの職員の調査にもございますけれども、民間給与に比べまして少いということは事実でございます。少い、従って優秀な医者が得にくいということも事実でございます。そこで、私ども当局といたしましては、何とかして、どういう形ででもせよ、給与をふやしていただいて、できるだけ優秀な医者を獲得いたしたい、こういう念願であり、絶えずそういう趣旨をもって、人事院と、大蔵省とも折衝している次第でございます。
  50. 坂本昭

    坂本昭君 人事院の方でも十分な資料はお持ちになっておられると思いますが、今の国立病院療養所それから保健所の医師と、それから一般の医師との給与について、給与の実体について、どういうふうに御認識しておられますか。
  51. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) われわれの方も、これは民間のお医者さんの給与を調べておりまするし、また先ほどおあげになりました京都のお医者さんがお作りになりました統計資料等も拝見いたしておりまして、そのほかわれわれとしましてもいろいろ調べておりまして、現在国の場合の医師の給与の実体がどういうものであるということは、十分これは把握しておるつもりでございます。で、そういうことがございまするので、われわれといたしましては、昨年の勧告におきまして、従いまして、その勧告がただいま給与法改正として国会に提案されておるのでございまするが、その中にそっくりそのまま御採用願いまして、医師の初任給を千二百円上げるという措置をとり、これは一般の上級職試験を通りました者、新制大学を出まして上級職試験を通りました者を千円上げるのに対して千二百円上げるのでございますが、それではまだ非常に少いではないかということがございます。しかしながら、これはやはり項目内におきまして全体的にバランスをとる必要もある、これは一方にそういうことがあるのでありますから、現在お医者さんは極端に得にくいという事情がございます。しかし行政職の、たとえば法律、経済を通りました者におきましても、なおかつ現在は、この試験を通って各省に採用になりましても、抜けていくという状況があるのでございます。これは全般的に国家公務員につきましてそういう現状がございまするので、やはり全体の考慮をしなきゃならぬので、人事院といたしましては、このお医者さんの給与が、現在、端的に申しますると、公務員のお医者さんを一〇〇といたしますると、民間は一四一・二というような数字になっております。これの比較におきまして非常に低いという事実は知っておるのでありまするけれども、これはやっぱり全般の関連もございまするので、その関連を一方に考慮しつつお医者さんの給与をよくして参りたい。われわれとしましては、たとえば俸給表の金額をそっくりそのまま上げるという方法もございます。しかし、そういうドラスティックな方法はなかなかやりがたいのでございまして、たとえば初任給を今回は千二百円上げたのでございますけれども、なお本年の状況を見まして、必要があればこの点を再検討するとか、また現に等級別定数というものがございまして、その範囲で上っていくということになっておるのでありまするが、その等級別定数も、全体の数字は、全体では変らないのでありまするが、    〔主査退席、副主査着席〕 上の等級の数字が多くなるということが、見ようによっては待遇改善になるわけでございます。たとえば、上から四等級までとってみました場合に、三十三年度の定数に比べまして三十四年度定数——これはまだ案でございます、案でございまするが、この予算通りますれば、まあ大体そういうことでわれわれやるつもりでおりまするが、おおむね一七%ないし一八%の改善をいたすという措置もやろうと思っております。そのほか、お医者さんの場合におきましては、単に医長であるとか、あるいは医員であるということによってのみこの等級を厳守いたすということは、これは実情に即さない点がございまするので、これは特別医師と、特別研究員というものを一方に考えまして、そうして研究の非常によくできる方は、現在その人がおりまする階層がどういう階層であるにかかわらず、上の階層に上げて考えるという思想をわれわれ現在持っておりまして、そういうことをやっておるのであります。お医者さんにつきましても同様のことを現在やっております。そういう現状でございまするし、なおこれは国会並びに内閣に勧告いたしませんでも、人事院自身でできることが、給与法上まかされておることがあるのでございます。そういう点につきましても、たとえばお医者さんというものは、これは一方で診療されると同時に、絶えず研究されなければならぬ。学会にも出なきゃならぬという事情もございまして、そういう点でだいぶ出費もあるのでございます。そういう点に対して何か考えたい。これは地方の保健所あたりに勤務されておりまする地方公務員たるお医者さんには、そういう手当が出ておるようでございます。それとのバランスをとって、われわれこれを極力実現いたしたいというふうに考えまして、新年度予算の編成期に努力いたしたのでありますが、これはまあ厚生省と御一緒に努力いたしたのでありますが、まあ不幸にして今回はそれが結実いたさなかったのでありまするが、今後ともその問題も続けて努力いたしたい、このように考えております。
  52. 坂本昭

    坂本昭君 いろいろまあ人事院が努力しておられることは了解いたしましたが、そこで、去年診療単価の引き上げの問題が、おととし以来持ち上って参りました。八・五%というあの問題は、一昨年健康保険法の一部改正に伴って、衆参の両院におきまして、医師の待遇改善のために、今の単価は低過ぎるから、待遇改善をしなければならないという付帯決議をつけた。そのことに伴って、その後厚生当局が鋭意努力研究せられ、その間いろいろトラブルが起りましたが、八・五%引き上げるということに落ちついたのです。私は、この八・五%ということは、医師の待遇改善という立場で始まったのであって、これは開業の医師についてはもちろんのことですけれども、官公立病院についてもやはり当てはまる私は内容を持っておったところの政治的な一つの決議だと思うのです。ただこれについて人事院がどういうふうにこれを御尊重になるか、あるいは今までになったことがおありになるか、承わりたいと思います。
  53. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) そのことを端的に結びつけて人事院が考えておるというわけではございませんが、これは厚生省医務局の方とも御連絡を申し上げまして、絶えず国立のお医者さんの給与を上げるべく、これはあらゆる方法を通じましてやるということで、お互いに研究して参っておるという状況でございます。
  54. 坂本昭

    坂本昭君 大臣もいろいろと、短い討議でございましたけれども、だいぶおわかりになっていただいたと思うのです。実はこの問題はエックス線技師の個人的な待遇の改善、あるいは医師の個人的な待遇の改善ではなくて、日本の厚生行政の一番のガンです。険路です。そうして、この人事院の方が、まあ比較的理解もおありのように私は推察いたしましたが、もはや今日では、人事院としても、公務員としてのバランスを欠かすことはできないという一つの公務員としての立場からの見解もあるわけなのです。で、結局、私は問題はこれは政治の問題、政治的に日本の厚生行政を伸ばすにはどうしたらいいか、そういう純然たる私は政治問題として、今後厚生大臣に極力努力をしていただく以外に解決方法はないと思うのです。特に、この一点の単価の八・五%の問題に伴って予算的にもいろいろと変った措置をとられました。そうして、この八・五%という問題はきわめて政治的の含みの多かった問題であります。で、この八・五%を含めて人事院もいろいろと御検討されたようですが、しかし、この八・五%にこだわることなく、今の厚生行政の保健所の問題、国立病院療養所、あるいは基幹病院の問題、それらすべての行政の基盤になる医療従業員の待遇の問題、その点で、厚生大臣の相当大きな政治的な御決意を私は要望したいと思うのです。これを解決しないというと、今後国民皆保険、医療保障制度が完備されたとしても、その実をあげることはできない。ほぼ状態を御了解いただいたものと思いまして、厚生大臣のこれに対する御意見を一つ聞かしていただきたい。
  55. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ただいま非常に有益な御討議をいただいて、私聞いておりましたが、私御指摘になる点はよくわかるわけでございまして、実は私が就任いたしましてからこの問題を事務当局より聞きまして、自分の調べた結果によりましても、定員は確保しながら、そのお医者さんが、たとえば国立病院においても、療養所においても、あるいは保健所等においても確保されない、あるいはらい病院等においては六〇%くらいの充足率である、これでは一面において国民皆保険制度を打ち立てたといたしましても、これを受ける国民の側からいうならば、結局満たされないものを持っておるというわけで、制度はちゃんとできても実質的には何らの的確なる、適切なる医療を受けることができない、これは私は大きな問題だというように考えます。従いまして、その原因等を調べて参りますると、やはり今御指摘になりましたような、給与が非常に低いという点に実は私も思い至ったわけでございます。私が就任する前におきまして、私文教委員としていろいろ各大学教授等の給与等につきましても同様な考え方を持っておったわけでございますが、さらにそれよりもっと低いということは、この前の予算折衝の場合におきましても感じましたし、国立病院の院長さん方のお集まりからもそういう陳情を受けまして、私も実はそのことについて努力した一人でございまして、実はそれが所期の目的を達しなかったことを非常に残念だと考えておるわけでございますけれども、しかしこれは私が厚生大臣になりましてからは、このことを解決しなければ一体国民皆保険というような制度を打ち立てても意味がないではないか、あるいはこれと同時に、ある都市においては医療機関が集中しておる、そして、ひいてはそれが一般医、家庭医というものを圧迫しておる、そこにまたいわゆる政府管掌と申しますか、の医療機関とそれから医師会とのあつれきが当然出てきておる。ところが一面においては無医村地区がある。あるいは全然僻地において、そういう病院なりあるいはまた診療所がない、これで一体国民皆保険というものが口で言うように行なえるかと、私は私自身そういう悩みを持っておるわけです。でございますから、これは何とかして解決しなければならない問題だと思うのです。しかしながら、また一面において、それではらい療養所等におきまして、相当に特別な給与面における配慮がなされておるように聞いております。にもかかわらず、なおかつそれが行き得ない実情がある。ここにはやはり私は、ただ経済的な裏づけだけでなくて、お医者さん方は、各病院等に勤められておられる方々は一生懸命努力はしておられましょうけれども、しかしながら終戦後の人々の気持の上において、単にこれはお医者さんだけでなくて、国民全体についてそういうことが言えると思いますけれども、やはり医は仁術と申しますか、そういった救道的なあるいは奉仕的な気持、あるいは宗教的な気持、そういうものがなかったならばこれは解決することができないのではなかろうかという一面も私は考えておるわけでございます。でございまするが、またお医者さんは先ほど人事院からもお話ございましたように、たとえば単に公務員とのバランス等がありまして、これによって直ちにこれを引き上げることはなかなかドラスティックな方法であるというような御指摘がありましたが、私は基本的にはやはりこれを上げていかなければならないと思いますし、またそれを努力をしなければならないと思いますが、さらに別な形において、たとえばお医者さん方は、その診療をなさると同時に、やはり研究というものも積み重ねていかなければならない一つの面を持っている。従いまして、それらの研究費等につきまして特別の手当等ができまするならば、喜んでこれらの保健所なり、国立療養所なり、あるいは国立病院等に喜んで、進んで勤めていただくということも可能ではないかというようなことで、まあもろもろのそれらのことを実は私も考えておるようなわけでございまして、坂本委員のおっしゃいましたことは私も全く同感でございます。そういうようなつもりで私努力いたして参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  56. 坂本昭

    坂本昭君 大臣が今後特にこの待遇問題について努力されることを承わりまして、われわれとしては非常な期待を持つものでございます。国民年金の問題も当面に出て参りましたし、医療保障制度の問題はいよいよもう三十五年度で完成されなくちやいかぬというところまできているのであります。ただ形だけではいけない段階だと思うのです。私は今問題は、単なる行政的な扱いではなくて、もう政策として、これは政治の問題だと思うのです。従来の厚生大臣は、こう申し上げますと大へん失礼な点があるかもしれませんが、どうも厚生省の非常にすぐれたお役人の方たちに少し引き回された傾きがありましたが、厚生省のお役所でできたところの立案の上に立って、さらに与党としての一つの政策を打ち出して、この厚生行政をやらなければ私は伸びていかないと思う。そういう点では、たとえばこの健康保険の単価の問題、あるいはこの健康保険の保険医の扱いなど、大学を出たての人も診察をして五点もらう、あるいは二十年、三十年たった者も、一流の人でも五点もらう。こういう現在の保険医療の中にもいろいろと矛盾があると思う。そしてそれらの問題を、医療保障制度の完備されようとするときに政治的に、政策的に一大飛躍をもって解決していかなければならない私は時期に、もうきていると思うのです。でありますので、大臣が単に厚生行政の中で、役所の中から動かされるのではなくて、もっとも強い政策と意図をもって厚生行政全体を引っぱって行っていただきたい、私はそういうことを特に要望しまして、今の待遇問題について、なみなみならぬ御決意を持っておられることに私は一応敬意を表しておきまして、まだあといろいろ問題がありますので、次に移りたいと思います。  それは、今給与の問題が出ましたが、給与だけじゃないのです。さらに大事な問題は、国立病院療養所では定員の問題があります。人の数の問題があるのです。最近特に定員の改訂をして医療内容を低下させようというようなふうに思われる傾向がありまして、われわれとしては非常に遺憾に思っているのでございますが、まず、この基本的な国のモデルとすべきところの国立病院療養所に対して、内容を高めるために、もっと人を入れ、もっと金をこそ使え、これを引き下げていくようなことについては、皆保険が今制度化しようとしているときでございますから、よもや厚生大臣はそういうお考えはないと思いますが、一応念を押して大臣の御意図を伺っておきたいと思います。
  57. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 先ほどのお答えの中にも申し上げました通り、一面におきましては、医療機関というものが都市に集中をしてきておる。で、基幹病院ができる、あるいはそこには大学病院がある、あるいはその他の逓信病院がある、あるいは労災病院等があるというわけで、医療機関があまりにもアンバランスな状態において設置されておるというところにも、国民皆保険を進めていく場合におきまして一つの大きな問題になっておる。他方、無医村地区あるいは僻地等においては、それらの総合的な病院、つまりこれから先病気そのものの治療におきまして、科学技術が進歩するとともにそれに応じたところの総合的な治療というものが行われなければならないにかかわらず、あるいは制度としては国民階保険の制度ができておるにかかわらず、その無医村地区、あるいは病院のない地区等におきましては、何らそれらに対して総合的な治療を受けることができないということはこれは、やはり考えていかなければならない。そこで、やはりこれらの病院、診療所等がばらばらにあってはいけない。実情におきましては、やはりこれは何人といえどもこのアンバランスということを認めないわけにはいかないと思うのです。これに対しまして、やはりある程度バランスということは厚生省といたしまして当然考えていかなければならない一つの方向だと思います。しかしながら、既存の病院療養所等々につきましては、それぞれの沿革を持っておると思います。あるいはそれぞれのやはり逓信病院、あるいはまた労災病院等については目的を持っておると思うわけでございます。それらのものを考えました上におきまして、適当なる整理、統合というようなことは、やはりわれわれが今後考えていかなければならない問題ではないか。しかも、ある療養所等においては非常にその療養所がフルに動いておる。そしてまた一〇〇%の病床を確保しておる。ところがある療養所等においては、いろいろの事情はありましょうけれども、八〇%か七五%かのいわゆる空床、つまり二五%か三〇%の空床を生じておるというようなこともございますし、またそれらのいろいろ目的を持ち、あるいは沿革を持った病院等でございましても、今日の状況とそれが設立されましたところの社会的状況というものとではおのずと違ってきておるということも考えなければならない。あるいはまた現在建っておるところの療養所なり国立病院等につきましても、相当にその収容力において、果して理想的な総合的な治療が行われ得る状況にあるか、施設の面においても設備の点においても、あるいはそれらの地区において十分医師が得られるような状況にあるかというようなこともやはり私どもとしては考えていかなければならない。そういった場合に、看護婦さんにしましても、あるいはお医者さんにしましても、それらの方々がやはりアンバランスな状況にあって、非常に十分な治療というわけには参らなくとも、やはり少し片方の成績をあげて、かつ必要な人員を確保しなければならない状況にありながら、そちらの方々からお医者さんに二名か三名来ていただく、あるいは看護婦さんに、こちらの方があちらの地区へ行っていただくということは、大きな医療行政というものを考えました場合には、やはり考えてかなければならない問題だと考えるわけでございます。しかしながらまたそれらの人たちの異動をいたします場合におきましては、それらの方々の生活、あるいはそれらの従来今まで勤めておられましたところの病院の経営等々の意見も十分に聞いていかなければならないのであって、やはりそこには多少の摩擦等も起きないとも限らないと思うわけでございます。従いまして、それらの運営等については、十分やはりその病院等の事情も聞き、そしてまたある期間を置いて早急に、実際は首切りとかなんとかいうわけではございません。配置転換ではありますけれども、しかしながらそれをあまりにも一カ月のうちにやってしまえというようなことでは、いわば首切りと同じような状態が起る可能性もなきにしもあらずだと私は考えます。従いましてそれらの点につきましては、慎重に事務当局と連絡をとりまして、万遺憾のないようにしていただきたいということをかねがね言っておるわけでございます。従いまして三カ月の猶予を与えるとか、あるいは六カ月の猶予を与えるとか、どうしてもいかない場合には一年ぐらいかかってそれをやっていただくというようなことで参りたいというように考えておるような次第でございます。
  58. 坂本昭

    坂本昭君 ただいまの大臣の御答弁は、国立病院療養所というもののあり方、特に現況をある程度は理解しておられると思うのです。しかしきわめて表面的な理解だという私は今印象を受けたのであります。と申しますのは、今整理、統合の問題、さらに人員の改訂あるいは配置がえの問題に触れられて、その条件となるものが、一つにはその病院の歴史的な一つの経過、それからまた室床の事実、そういうことをあげられたのでありますが、確かに歴史的な経過は、国立病院療養所には陸軍病院あるいは傷痍軍人療養所としての経過はあります。しかしかつての陸軍病院というものはそれぞれ連隊のあったところにありまして、それらの立地条件というものが廃止しなければならないというふうな、そういう条件ではなかったと思うのです。いずれにしても、その当時も兵隊のために役立ったかもしれないが、やはりその地方における中心として、今日ある国立病院療養所というものは大きな役割を果してきておるのであります。例をあげますと、私は高知出身でありますが、高知の陸軍病院というのはこれは三等陸軍病院でして、非常に貧弱な明治以来の病院でしたが、今ある高知の陸軍病院というのは、地区におけるガン・センターとして非常に隆々たるところの名声とそれから存在意義を発揮しておるのであります。私は単純に歴史的に見てこれは整理統合してなくさなくちゃいかぬというふうには解決できないのじゃないか。これが一点と、それからもう一つは空床の問題です。なるほどあるところには満床の病院がある。あるところには空床の病院がある。それを一つうまくアンバランスを直さなければいかぬ。これは一つの考えですが、きわめて私はあさはかな表面的な見解だと思うのです、というのは、じゃ、なぜこの空床はできておるか。その空床というものがその病院のある地域の必然性に伴ったものか。それともほかに何か行政の面で、政策の面で悪い点があってできるのではないか。私はむしろ大臣としては、大蔵大臣が空床があるからつぶせと言うならまだ理屈が通りますが、厚生大臣がそう言われては、これはせっかく大臣の掲げておられるところの国民皆保険、結核対策というものが私は泣いてしまうと思う。今日の空床の一番大きいものは医療費の問題です。医療費のために病院へ入れない。そのために結局室床ができておるというのが事実であって、この前厚生省発表された結核の調査に基きましても、やはり入院を要する人がまだ八十数万おられたと思います。結核ベッドだけで二十五万ある。それも今日五万ぐらいあいておる。国立病院療養所でさえもあいておる。やはりその点をまず解決する。解決した後においてなおかつ地理的に便利が悪い、国民大衆に奉仕ができない。そういう場合にはこれを整理統合していくということは私は考えられる。それをあと先を誤まるというと、今度は大臣としての方針を疑わざるを得ないという私は結果になってくると思う。もちろん今大臣は縮小することによっていろいろな生活の問題を職員に対して与えるというようなことはしない、十分な期間を考慮する。しかし三カ月や六カ月ではおそらくだれも自分の一身上の身の振りを解決することができないと思うのです。私はそういうことよりも、もっと基本的にいかにして空床をなくするか、そうしてまたいかにして現在あるところの国立病院療養所というものの機能を発揮させるか、その点に積極的な施策をやっていただいて、そうしてしかる後、やはり地域的に便利の悪いところなどは考えを直すという態度が、私は必要ではないかと思います。
  59. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 先ほどの答弁の中に、あるいは言葉が足らなかったわけで、そのような御質問をいただくと思うわけでございますが、私が申しましたのは、現在あるところの療養所等につきましても、やはりその沿革等を見るならば、それらの点について、その当時としては必要なところだったのだろうけれども、今日の段階においては、今御指摘になりましたように、必要なところもあるかもしれないけれども、    〔副主査退席、主査着席〕 現在の段階においては、やはり国民皆保険をやるという一つの方針のもとにおいて、どういうふうにその療養所を残した方がいいのか悪いのかということを一応みていく必要がある、その観点でみるのが一つと、それから今御指摘になりましたように、確かに空床になっておるのは、これはたとえば国家経済の面もあるでしょうし、厚生省の努力が足りなかった点もございましょう。そのために、たとえばお医者が来なかった、いい先生が得られなかった、また施設が昔のままでございまして、もう非常にボロだというようなところもございましょう。あるいは近代的な設備というものもできておらない、そのために、地理的には、今日の状況において必要であるにかかわらず空床になっておるというところもあると思う。それは残すべきだ、そこには重点を置いていくべきだというふうに私は考えるわけでございまして、この点は坂本委員のお話の考えとはちっとも矛盾をしておらないというわけでございます。そのことが、空床になっておる、あるいは百パーセントのところというものが必ずしも必要でない必要であるということを私は申し上げておるわけじゃなくて、やはり空床になっておるところにおいては、必然的に、御指摘になりましたように、地理的にどうしてもここではやめた方がいいというところもあるかもしれませんけれども、空床になったところの原因は、やはりわれわれの厚生省としての努力の足りなかった点において空床になっておるということも、私は、これは頭の中に置いて考えていかなきゃならない一つの重要な問題である、こういう点御指摘になった通りに私は考えておるわけでございます。どうか御了承を願いたいと思います。
  60. 坂本昭

    坂本昭君 大臣がほんとうにこの厚生行政を伸ばされるという強い決意のもとにいろいろなされていきます場合には、われわれとしてもよく理解できる点がふえると思うのです。ところが、現実の面でみますというと、たとえば今度の定員の改訂につきましても、看護基準の問題あたり、非常に大事なこの問題が私は等閑に付せられているのではないかと思うのであります。で、医務局長に、これはかなり専門的になりますから伺いますが、大臣も一つよく聞いて理解をしていただきたいと思うのです。現在の医療法施行規則によるところの看護婦の定員というのは、入院患者四人に対して一人。これができたいきさつは、私も当時療養所におりましたからよく知っておりますが、結局当時の看護婦の実員からさかのぼって、患者四人に看護婦一人ではとうてい足りぬけれども、理想の案を作ったところで看護婦がいないということで、四人に一人という格好で、一応この施行規則というものができていったのであります。ところが、当時アメリカの方では、日本病院というものはあまりに中世紀的だ、ホスピタルというのは、あれはホテルと大体同義語なんだそうですね。もっとホテル的な病院にしなくちゃいけないということは、非常によい要求だと、非常によい示唆を与えてくれたと思います。その点は、私はアメリカに対しては、その点だけは敬意を表しています。ところが、実際現在は、看護婦というものは三交代勤務なんです。だから四人に対して一人の看護婦の配置ではなくて、三交代ですから、十二ベットに一人の割合ということになるわけです。でありますので、これは医務局長所管しておられる病院の中、たとえばこの間衆議院でも見に行きました世田谷の病院実情をみますと、総合病棟で二十九ベット、二十九ベットに対して看護婦が七名、婦長を含めて七名、七名の中から二名の夜勤者を除くと五名の日勤なります。その中から週休の者が一、二名いる、そうすると日勤は三、四名になる、それに婦長が含まれている、そうしてこれは病棟の管理業務に当る、従って二十九ベットに対して三名の看護婦しか看護の実際の仕事をしない。場合によると二人の看護婦で当るというようなことになって参るわけです。ですからここに大きな問題が起ってくるので、患者さんの側からすればこの世田谷病院は完全看護です。いわゆる完全看護という言葉は世界中でどこも使っているところはないのです。不完全だから完全看護という言葉を使っている、患者の側から言えば完全看護だけれども、付き添いをつけなければならぬ、それから完全看護だけれども九点加算される、つまりサービスは悪くて不完全な看護をしながら、国は九点のもうけを取っているわけです。世田谷ではたしか一日に一万円ぐらいもうかっているはずです。まことにけしからぬ。一方看護婦の側から言えば、二十九ベットに対して三名で働くということになると、休みをとることもできない、だから一カ月無休で働かなければならないという場合があるし、一年間の有給休暇の二十日間もとることはできない、私自身療養所におって、二十日間の有給休暇を一日もとったことはなかったのです。そういうふうなまことに過重な労働をわれわれは負わされている、これを外国を私自身見聞したところを見ますと、たとえばヘルシンキ辺り五百ベットの産院がありますが、横山先生も御存じだと思いますが、五百ベッドの産院に五百人の看護婦がいる、あるいはアメリカのコロムビア大学の付属病院ニューヨークにあります。これは三十ベットを一病棟として、その一つの病棟に対する看護婦が十名、看護助手が十二名、合計二十二名、日本の場合の三倍の看護力を持っている、さらにいろいろな薬を運んだりするのはメッセンヂャーボーイがおって運ぶ、注射などいうものは病棟看護婦以外のシステムで注射に当る。それからさらに病棟によってはパートタイムで雇われている人もある。結局日本の四ないし五倍の看護力を持っているのです。去年北京の市立病院を見ました。向うの定員は患者一に対して一・一、五百ベットに対して五百五十の職員、これに医師が百、それから看護婦が二百五十。日本の場合実にひどいところの看護婦の定員なんです。そうしてしかも今度看護の基準を作って、その基準をだれが作ったかというと、保険局が作って、点数加算のために作って医務局の方では、私から言わせれば関知しておらぬ、そういうことで日本の看護という問題が行われている。そうしてそういう中で今度の定員の改訂というようなことも行われている、で、これは非常に細かいようなことですけれども、日本の厚生行政の基本にこういうものがある、前に昭和二十九年に職員の定数配付について一回基準ができたことがあります。この基準というものは、もうこれは聞いておいていただくと、全く外国人が聞いたら吹き出すだろうと思います。たとえば医者の定員はどういうふうにしてきめるかというと、国立病院の場合ですが、各科ごとに外来患者数を二・五で割る、かりに五十人外来があれば二・五で割って二十になる、耳鼻科とか眼科ですと、外来を五で割ります。割って出た答えに入院の患者の数を加えて十七で割る。それが医者の定員なんです。こんなむずかしい計算をやっている国は全世界日本意外どこにもないです。結核の療養所については、入院患者四十人に対して一人という医者の定員を作りました。それから今度の看護婦については、国立の結核療養所については、患者六・六人に対して一人、そのほかこまかいいろいろなことがまだついておりますが、特にはなはだけしからんのは、看護婦の生徒、あるいは准看護婦養成所の生徒、これもまたとえば結核療養所の場合は、准看護生徒十人に対して一人を正看とみなして、看護婦の総数から控除する。こういうふうなことで、昭和二十九年に基準ができた。今度もやはりそういう基準で、大臣の言われるアンバランスを修正しようというのですね。ところが私はこのアンバランスを修正する前に、空床をなくするとか、病院内容をよくするとか、国民皆保険に沿ったところの実をあげるということが大事だと思う。今度の基準のこまかいことについて、私は申し上げませんが、いろいろと各院長さん、所長さんが言われることを私聞いてみましても、もっともだと思う点が数点あります。それはいろいろな手術の件数によって定数をきめていく。ところが手術にはピンからキリまであるのですよ。簡単に膿をはねる手術、骨をとる胸郭整形術もあれば、骨を取って中の肺を取る肺切除術というのもある。そういう簡単から複雑、いろいろなものをみんな十ぱ一からげに、同じような件数として勘定している。それから今度の改訂の基準でいきますと、事務の職員がふえている。看護婦が減っている。一体療養所で何をするか。療養所というのは事務をとるところではなくて、患者をなおすところです。そういう基本的な観念が欠けている。それから保清婦ですね。小使い、掃除やったりする保清婦、こういう人たちが看護要員、看護の数の中に入ってきている、看護というものは、ちゃんと資格を持った人がやるのが看護であって、お掃除をする人たちまで看護要員の中に入れたら困る。アメリカの場合だったらはっきり出してしまっている、というのはなぜこういうことをしたかというと、ほんとうに病院療養所が、いかに患者にサービスをしたらいいかという、下からの積み上げ積み重ねのもとに今度の計画ができていない、そういうこと。さらに重症というものについては、安静度一度だけしかとっていない。実際には安静度一度、二度、三度くらいまでは似たようなものです。それを安静度一度だけでやっている。それから今度は言葉にとらわれて、カリエス、カリエスになるというと、中には重いものもあれば軽いものもある。村山の療養所の場合は軽い人もあるけれども、ここなどはふえているのです、看護婦が。それからさらに問題は、今まで、この数年のところ、国立の病院療養所で、特に療養所では欠員が出ている。これは御承知通り結婚ブームで、なかなか最近看護婦さんが減ってくるらしい、欠員の補充をやっていない。今度の予算書を見ますと、これに数が出ておりますね。出ておりますが、一体この数は相当欠員があるのじゃないかと思う。一体欠員の補充をやらないで一体予算をどうしているか、以上この看護についての基本的な、今幾つか問題あげましたが、それについてできたら簡潔にその一つ一つについて医務局長から御返答していただきたいと思います。
  61. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 先ほど大臣からお答え申し上げた通り、施設々々によりましては、長い間には相当患者がふえてきておるところもありますし、減ってきておるところもあります。診療内容も若干ずつ変ってきておりますので、ときには定員の再配置をしませんと公平を欠くというおそれもありますので、何年にか一ぺん、たとえば今回は前回二十九年にやりましたので、ちょうど五年、まる五年でございますが、定員改訂をやろう、こう決意したのでございます。やり方にあたりましては、先ほど大臣からお答えがありました通り、私どもに強い御指示がございまして、決して数字だけにとらわれないで、よく施設の現状を見て、無理のないように、余裕をもってやるようにということをたびたび御注意を受けています。私どももそういう大臣の御趣旨に沿うて慎重にこれは運びたいと考えております。  ただいま看護要員の数の数え方につきましての御質疑がございましたが、昭和二十九年当時は看護婦生徒を一つの看護力として換算いたしてございます。これは不適当なので今回は換算してございません。これは別勘定としております。それから手術にもむずかしさがピンからキリまであるんだ、従ってどんな手術でも一つを一件として数えて、その数によって看護婦を配置することは非常に不公平が起るんじゃないか、これは事実その通りでございます。その通りでございますけれども、しかしたくさんの手術件数がございますので、これは平均的に見るというと、年間大体ならせるんじゃないかという前提のもとにこれを考慮したのでございます。と申しますのは、手術件数を考慮しませんと、手術を積極的にやる施設と、ほとんどやらない施設の間にまた実際的なアンバランスが出てくる。だからどうしても手術という要素を考慮しなければならない。ところがその手術の、何千件という手術の一ケース、一ケースにつきましてこれを評価するということは事実上でき得ませんので、平均値的な考え方でこれを数えたのでございます。  それから事務職員がふえたという御指摘でございますけれども、これは関東地区につきましては確かに事務職員がふえております。しかしながら日本全体の療養所につきましては絶対に事務職員はふえていないのでございます。いろいろな職種について新しい換算率を適用いたしますと、ある施設ではある数が減りますけれども、他の施設ではふえる、そのプラス、マイナスがございまして、日本全体としては変っていないのでございます。たまたま関東地区だけにつきまして見るというと、そういう現象が起きているというふうに御了解願いたいと思うのでございます。  それから重症度の取り方を一度だけ取ったのは不適当ではないか、むしろ一度、二度という判定も、お医者さんの主観的判断の中に入りますので、とかく一度、二度という高い——程度の高い方に評価しやすいお医者さんと、しからざるお医者さんがございます。こういう主観的な要素を採用するのは不適当ではないかということは御指摘通りでございます。しかしながら軽い患者さんもおる、重い患者さんもおりまするし、その片寄りが施設ごとにありますので、これを全然無視するのも私ども不公平ではないか、そういうことで私どもは一度ということだけを取り上げたのでございます。  カリエスにつきましては、前回は全然評価してございません。今回はカリエスとかあるいは子供の重症結核、これは非常に手がかかりますので、これらのものを評価に入れたのでございますが、この入れ方につきましては、ただいま御指摘のような欠陥はこれは事実あるのでございます。そこで私どもの最終結論といたしましては、厚生省が机の上で考えておるその評価を、そのまま無理やりに施設に当てはめるということはしないんだ、事実その患者の数とか、あるいは手術の数とか、あるいは小児結核の数というものは、これは客観的に数としてあがって参ります。しかしながらその施設が非常に便のいいところにできておるか、あるいは建物そのものが山坂の間に入って非常に不便な施設であるかということまでも、われわれ一々評価しようと思っても事実上評価できません。われわれが評価いたしましたのは数として、数えられる要素だけでございまして数として数えにくいものは全部目をつぶっております。従いまして厚生省の原案をそのまま施設に押しつけるということは、施設の実体を無視するということになるわけでございます。従いまして一応大まかな案を作りまして、出張所とも相談し、出張所の御意見も入れて施設にも相談し、施設からただいま坂本先生の御指摘のような数々の意見が出ております。その実体を考慮いたしまして、これはいかようにも変えまして、それで大体施設側の御納得いく線で新しく新定員というものを確定していきたい、かように考えております。従いましてこの作業は今後相当長く継続されるのではないか、一方的に押しつけるということはやりたくない。これは特に大臣からも強い御指示がございましたので、その御趣旨に沿ってやりたいと、かように考えておるわけでございます。
  62. 矢嶋三義

    主査矢嶋三義君) ちょっと御注意申し上げますが、僕は前回も御注意申し上げたんですが、われわれ一般会計と特別会計と、両方短時間で審議しようというのですが、厚生省政府委員の方の答弁を聞いておりますと、専門家同士の質疑だから、もう少し言葉短かに要点を尽すことができないかと思うわけでありますが、名答弁というのは、できるだけ言葉を少くして要を尽すということにあるので、社労委員会なら時間制限なく幾らでもやるのもいいんですが、もうちょっと政府委員答弁、僕は厚生行政はしろうとだけれども、僕が聞いておっても、もう少し短い文章にならぬかと思うんだが、一つ答弁、御注意願いたいと思うんです。
  63. 坂本昭

    坂本昭君 今大臣、話を聞いておられたと思いますが、定員のワクはふやさないで、ある中で操作をする、だから減らしはしないというのですけども、私が一番言いたいことは、減らすなどとはとんでもないことだと思う。この皆保険を完成するためには、ふやさなくてはいかぬじゃないか、私はその点を特に追及しているわけなんです。それでちょうど今行管の方も来ておられるから、国立病院療養所におけるところの医療従事者の定員というものを、あなた方どう見ておられますか。
  64. 濱野清吾

    政府委員(濱野清吾君) この問題につきましては、人の生命に関係することでありますし、この事業は全く重要視しておることには間違いはございません。今のお話でありますが、行管といたしましては、仕事の量と質というものを十分検討して、そうしてこの定員という問題を検討したい。ただいたずらに切ることが行政事務の効率化でもない、こういうふうに考えておるわけであります。
  65. 坂本昭

    坂本昭君 ところでちょうど今行管の方お急ぎのようでありますから……。行管の方で去年国立病院療養所について、行政監査をやっておられるはずであります。私はどういう目的をもって、どういう点をやられたか、そうしてそれを来年度国立病院療養所の運営について、どういのふうに勧告をされようとしておられるか、簡単に御説明いただきたい。
  66. 濱野清吾

    政府委員(濱野清吾君) 事務的なことでありますから、監察局長が来ていますから監察局長答弁させます。
  67. 犬丸實

    政府委員(犬丸實君) 私の方で国立病院と、それから国立療養所の監察を行なっておりますが、療養所の方は昨年の十月から十二月まで、それから国立病院の方は本年の一月から三月までの期間でございます。それで療養所の方は監察の実体調査を終ったところでございますが、この報告書が出そろいましたのが本年の二月でございますので、今それぞれ膨大な資料を各主査がとりまとめております。まだ監察官の手元までその資料が出ておりませんので、遺憾ながら現在中間的な御報告を申し上げます段階に至っておりませんでございますが、どういう点を監察したかということを申し上げますと、第一はこの国立結核療養所につきましては、私どもの方の八管区と二十一地方局で六十三カ所の結核療養所を見ました。  その内容は第一は、施設の状況でございます。これは療養所の内部組織がどうなっているか、定員と現在員との状況はどうなっているか、あるいは療養所の利用状況、病床の利用状況、患者の費用の負担区分、そういったものは施設の状況として見ました。  その第二点は、業務運営の状況でございますが、これは患者の入退所につきまして、たとえば入所の申請とその決定はどういうふうになっているか。退所の決定あるいは命令はどういうふうにして行われているかという状況。それから患者の処遇につきまして、今のお話に出ました看護の状況であるとか、あるいは給食の状況であるとか、そういった患者に対するサービス的な面を見ております。  それから第三点といたしましては、物品の調達、出納保管の関係、それから国有財産といたしましてのこれらの諸施設の維持管理の状況。  それから次の大きな項目といたしましは、予算経理の状況でございまして、これは収支の規模、それから経営の状況、そういったものは一般的に見ております。  そういたしましてこれがまとまりますのが大体今から約二、三カ月かかると思いますけれども、できるだけ早急にまとめまして改善を要すべき点につきましては厚生省の方に勧告申し上げることになっております。
  68. 坂本昭

    坂本昭君 行管の方では中間報告もしていただけないのですが、実は福島の地方監察局で監査をされたことの一部が地方の新聞に出ているのです。その地方の新聞に出た監査の結果は、これは国立の療養所に対して、まず見出しは運営ずさん、病舎おんぼろ、これはずいぶんひどい批判だと私は思いますよ。いやしくも地方監察局が監査された結果を、こういう格好で地方の新聞へ出すということは、私は厚生省としても重大な問題だと思う。ほんとうに行管としては運営がずさんで、病舎がおんぼろで、そして国立療養所で赤字が三千六百五十万円も出ている。患者が減って、経費がかかり過ぎている。こんな病院はないぞと、これはずいぶんひどい批判であると私は思う。あなたはその中間報告もできないというけれども、現実にこういうこの発表は、私は地方の監察局がしなければ出るはずないと思うのです。これを読んでおれば、たとえば独立採算ではないから赤字は国が補ってくれるという考えからずさんになっている。言いかえればもう行管はすでに独立採算にして、そうして特別会計にした方がいいのだということを、もう結論を出して、一般の人に呼びかけているふうにもとれるのですよ。これは私は重大な問題だと思いますので、今のこの福島の例は、一体これは全然あなたの方では責任をとらない事件なんでございますか。
  69. 犬丸實

    政府委員(犬丸實君) ただいまお話しを初めて実はお聞きしたわけでございますが、従来この監察の結果につきましては、お話のように非常に影響の大きい問題でございますので、監察結果は取りまとめまして、そうして行管といたしまして、結論を得てから上司の指示を仰いで発表しております。そういう関係で、地方局がわれわれの方の中央の計画につきまして、中間で発表するということはそういう例がないのでございまして、実はそれはまことに遺憾だと思います。ときには地方局限りの監察をいたします場合には、地方局がその取りまとめを終りまして、そうして結論が十分出ましたときには発表いたすこともございますけれども、この計画のように、中央の立てました計画を地方局が中間で発表するということは適当でございませんので、今後十分その点は注意いたしたいと思います。
  70. 坂本昭

    坂本昭君 今の監査を受けた当施設に対しては、特に指導する点がない。大体よくいっているというふうな講評があったそうです。しかし新聞に出たこの結果は、私はこれを読むと、特別会計にやって、独立採算制をとった方が能率があがるのだぞと、そういうふうな示唆を与えているように実は受け取れるのです。実はことしの三十四年度予算編成に当って一番われわれが心配したのは、国立療養所の特別会計制の問題なんです。これは厚生大臣としては御苦労なさらなかったと思うのです。幸いにして特別会計制にはならなかったけれども、これは結核対策の面と、それから国立結核療養所の面と二つの面において、特別会計制の問題は一番大きい問題で、われわれもだから政府がこういう挙に出るならば、われわれとしても相当なこれに対する反論をしたいと思っている。特にそのために行管あたりが何か材料を作るために監査をやっているとすれば、私ははなはだけしからぬと思うのです。行管はそういうふうな特別会計を前提として、そういう監査をやっておられるのでございますか。
  71. 犬丸實

    政府委員(犬丸實君) われわれの方の監察は、あらかじめ先入観を持つとか、あるいは何か方針を立てて監察をするというふうなことは絶対にいたしておりませんで、虚心たんかいに実情を見まして、そのほんとうの具体的な実情を総合いたしまして、その改善を考えているわけでございます。今お話しのございましたその特別会計制度というようなことも、これはその運営の状況を見まして、中央で全国的な情報を総合判断いたしまして、もし意見を立てるとすれば立て、厚生省の方にも御相談するということになると思うのでありまして、そういった中央で考えるべき方針を地方局が勝手に意見を述べたといたしますれば、その辺はまことに申しわけないととで、そういうことは十分注意いたしたいと思います。
  72. 坂本昭

    坂本昭君 それでは今の福島の地方監察局に対しては厳重に注意を発するとともに、これは取り消しをしていただきたい。そうしなければ、こういう世論が、国立療養所については特別会計の方がいいのだという世論が全国的に起ってくると、日本の結核対策を遂行する上において非常な私は妨げになると思います。ですから、誤りであるならば取り消しを正確にしていただきたい。
  73. 犬丸實

    政府委員(犬丸實君) 今の新聞記事が、どういう経路でそういう記事が出たのか十分わかりませんので、あるいは場合によりますと、こちらが発表いたしませんでも、新聞記者の方が役所へ来まして、いろんな話を聞いて、自分で総合的な結論を書くという例もないではございませんので、その問題につきましては、地方局の方をよく調べまして、もし地方局がそういう発表をしておるということでありますれば、それは行管としての意見でないということをはっきりさせるように処置いたします。
  74. 濱野清吾

    政府委員(濱野清吾君) 特別会計の問題はむしろ政治的な問題であり、行政面の問題といたしましても実に重大な問題だと思います。私の方といたしましては、そういう問題を取り扱う立場にありませんので、ただいまお説のようなことが、私の方の係官がおよそ、そういう間違いを犯したことはなかろうと思いますが、しばらく私の方でも調査に入りたいと存じますから、時をおかし願いたいと思います。
  75. 坂本昭

    坂本昭君 今の問題になっております行管の監察そのものを私は否定するのでなくて、どんどんやっていただきたいのです。しかし、特に発表が特別会計制のことに触れて、あたかもこれを推すがごときような発表であるので重大問題だと思うのです。もし三十四年度国立療養所が特別会計制がしかれておったら、これは大臣、私もあとに引き下らぬで。徹底的に戦うつもりをしておったのであります。これについて、大蔵省から来ておられますから、大蔵省の方に……。国立療養所については二割減という制度があり、さらに所長の権限によるところの減免の規定がありますが、それらのことを含めて、大蔵当局として、国立療養所の特別会計制に対して、特別会計制を推進したいようにお考えになっておられますが、その根拠と目的をお尋ねしたい。
  76. 鳩山威一郎

    説明員鳩山威一郎君) 今年度予算の折衝の過程におきまして、私ども事務的に検討いたしまして、国立療養所につきましては特別会計にしたらどうかという御意見を申し上げたことがございます。坂本先生よく御承知通りだと思いますが、私どもは、第一に日本の結核対策というものを、これは予算の重要事項として掲げてあるわけでございます。この結核対策というものが百五十八億掲げてございますが、実は、その中に、国立療養所の経費が百三十三億あるわけでございます。日本の財政上結核にどれだけの金をさくべきかということを考えましてその結核対策費というものを計上されるべきであるが、実はその中で、国立療養所の経費が全額入っておりまして、片や歳入の方に八十八億の歳入が計上されております。それで、こういうような結核対策費の計上というのはおかしいのではないか、国が財政的に結核にさくべき金というのは、その歳入と歳出の差額でございます。そういうようなことをはっきりと予算上出した方が、私はより親切な予算の計上ではないかというふうに第一点として考えた次第でございます。  第二点としては、歳入と歳出というものが、これは税収の歳入というものと療養所の収入というものは性格が違うのである、療養所の上った収入というものはこれは療養所の支出に充てられるべき財源でございます。そういったものをはっきり経理上出すということが——従来いろいろな特別会計制度がしかれておるものにありましては、これはまさしく特別に経理をすべきものである、ガソリン税の財源で道路を整備するとか、そういうような道路の特別会計その他言われておりますが、それよりももっと特別に経理すべきものとして療養所の収入という特定財源があるのでありまして、これは歳入と歳出とを一つの特別会計に経理をいたしまして、一般の税財源からは、その足りない部分を予算上計上いたしまして、はっきり結核対策の金であるということを示すのが、より会計技術として好ましい、私どもはそういった観点から特別会計を設けたい。第三点として、特別会計を設けまして、今の日本の結核療養所というもののあり方を、特別会計を設けることによって一段と充実いたしたい、そういうことを考えまして、特別会計を設け、収支を明確化するとともに、一般の税財源から入れるべき財源をできるだけふやしまして、結核対策に大いに力を注ぐということを予算上明らかにいたしたい、これが私どもの最初に考えた理由でございます。それに対しまして、いろいろと御批判がありまして、特別会計にいたしたならば、独立採算でやるということが非常に表面に出るではないか、結核療養所の運営として、そういう営利を目的としてはいけないのであって、かけた金はかけただけ金を使えという御主張があるわけでございます。もし私どもの、特別会計をやりまして結核対策を大いに推進したいということが、そういうふうな結核療養所の営利化と申しますか、そういうように誤解をされるのであれば、これははなはだ心外でございますし、そういうことであれば、何も進んで療養所の充実というようなことに一生懸命になることもあるまいというようなことで、本年度は、私どもとして特別会計は思いとどまった次第でございますが、趣旨としては、そういうようなところを考えまして、特別に経理をいたしたいというわけであります。ただいま療養所の収入といたしましては、二割の減免ということをやっております。直ちにこれが、私どもが特別会計ということを申しますと、二割の減免がなくなるのではないかということが、ある方面から流れましたのでございますが、私どもは決してそういうようなことは考えてございません。これは将来の問題としてあるいは大いに検討されなければならない問題かと存じます。これは一般会計であろうが特別会計であろうが、そういった問題とは直接関係のない問題でございまして、特別会計にするから二割減免をやめようということは考えてございません。ただ、将来の問題といたしまして、やはり結核の医療費の問題というものはなるべく統一して処理さるべきことが望ましいと思います。一部は療養所の側で減免の措置をとる、一部は社会福祉事務所でいろいろな医療費の手当をする、もう一つは、今度は保健所で結核予防法の医療費の手当をする、現在そういうような三本立の運営をされておりまして、これはやはり一本化したところで、はっきり結核の医療費の対策を講ずるということが将来としては望ましいと思いますが、当面の問題として、なかなか一本化はむずかしいと思いまして、私どもはこれは将来の問題に譲っております。そういうような観点で考えた次第でございまして、その点一言弁明さしていただきたいと思います。
  77. 坂本昭

    坂本昭君 今大へん明快な弁明をおっしゃいましたが、大蔵当局の御説明をいただきまして、私として非常に参考になった点があります。それは大蔵当局が結核対策に口を差しはさむとすれば、これははなはだけしからんことだと、実は私かねがね思っておったのです。しかし、今お聞きすると、三つの点をあげて、もっぱら財政上の理由として非常に明確な御返事をいただきました。これは要するところ、厚生大臣責任の問題になってくると思います。今おっしゃった通り国立療養所については歳入と歳出とあって、それから今の扱いについて、保健所や福祉事務所にいろいろな扱いがあって、きわめて複雑多岐、こんとんとしている。そしてまた、そのために結核対策が伸びていない。むしろ、私は今の大蔵省の見解をすっきりとした形にするためには、厚生省が今のままでやっておったら、大蔵省、もっと簡単にしてもらいたい、特別会計でやってくれという、私は正当な根拠を与えると思う。むしろ、それよりも結核対策費は、昭和三十一年のこまかい計算によると、六百二十七億の総医療費のうち、今の国立療養所に対するものも含めて、あるいは国立病院のやつは、これはちょっと含めにくいのですが、大体半分三百億一応国が負担している。あと三百億を負担すれば、全額国でやるのですよ、非常にすっきりした形で。社会保険と生活保護と結核予防、私は全部ひっくるめてその何百億も要らないのですよ。大体三百億ちょっとですよ。そしてこれをやれば、三百億は逃げたんじゃないのですよ。生活保護法の中の六割、四百十六億の六割方結核を含めて取っているのですね。そうすると生活保護費というものも減ってきますよ。それから社会保険も大体三割くらいは結核が取っている。そうすると社会保険の方も減ってくるのですよ。そうすると国民のふところがよくなって景気もよくなるかもしれません。だからあとの三百億という金は、私は決して多額だと思いません。むしろ、今大蔵省の御説明を聞いて、非常に私力を得たのは、この際厚生省が一つ踏み切りをつけて、結核医療費を全額国でもって見る、そういう態度に出ればこれは大蔵省としても非常に財政的に単一化されるだけじゃなくて、ほんとうに結核対策が私は完成され、推進されると思います。どうかこの特別会計制のことに関連して、この点明確な大臣の御見解を承わらしていただきたいと思います。
  78. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) やはりこの結核問題というのは、相当な費用がかかるわけでございまして、これを単に営利を目的としたような、いわゆる特別会計というものを直ちに持つとするならば、これは問題であるけれども、ただいま大蔵当局からお話しになりましたような趣旨のことが、たとえば歳入と歳出のその差額は十分見ていくと、こういうようなことであれば、われわれとしてもこれは考えてみる必要があるというふうに考えるわけでございますが、ただやはりここで答弁になりましても、現実の問題として特別会計にやりますと、えてして従来の経験からするならば、その定員でも、あるいはその治療でも引き締め等が行われることによって完全な治療が行わないというような実情も、実は一面にあったものでございまするから、厚生省としてはその点について不安を持ったのだろうと思うのでございます。従いまして、お説のように将来におきまして、このいろいろの部面において同じ結核問題というものを考えておる。これを一本にすっきりして、そうしてその治療費のかかる結核というものを押えて、そうしてこれに国が直接めんどうを見ていくというような体制ができまするならば、われわれとしては、これは十分研究の余地があるのじゃなかろうか、しかし、そこの見定めがつきません以上は、やはり現在のままいかざるを得ないわけです。しかし、この問題は非常に大きな問題でありますと同時に、われわれとしては諸般の事情を研究しなければなりませんので、よく検討をいたしました上で結論を出したいというふうに考えておるような次第でございます。
  79. 坂本昭

    坂本昭君 もっといろいろお聞きしたいことがありますが、だいぶ時間がたちましたので、一応この結核療養所の特別会計制の点もう少し質問を保留しまして、一応私の午前の質問を打ち切りたいと思います。    〔主査退席、副主査着席〕
  80. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間が短かくなりましたから、簡単に伺いますから、要を尽して簡単にお答え願います。私はこの厚生省予算総額は千三百五億円、これは各省庁に比べるならばA級ですね。ところが、こういう予算書を見たのは初めてです。比較増減のところも「△」ばかりですね。こんな予算書を僕は国会議員になって九カ年間見たのは初めてですが、一体どういうわけでこの「△」が並んだのか、お答え願いたい。
  81. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 会計課長から……
  82. 山本正淑

    政府委員(山本正淑君) 三十四年度予算編成に際しましては、一般的な旅費、庁費、施設費の節減がございまして、原則といたしまして五%、ものによりまして三%節減がございまして、厚生省予算は非常にこまかい項目に分れておりまして、それぞれの項目につきまして節減の金額が減となっております。その関係がございまして、非常に多くの項目が「△」になっておるのであります。
  83. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういう答弁では了承しません。厚生大臣に伺いますが、あなたは予算案ができ上った後に就任されたのかと存じますが、しかしながら、厚生大臣としこの予算案には責任を持たれることと存じますが、念のために伺います。
  84. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私、責任を持ちます。
  85. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 厚生大臣に伺います。これほど減の「△」の並んだ予算案というのは、いまだかつて見たことがない。厚生大臣としてどういう御所見を持っておられますか。
  86. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) これは全般的に見なくちゃなりませんし、また同時に個々についてやらなければならないわけでございまして、一例を申し上げまするならば、たとえば売春対策費というものが減になっておる。しかし、それは昨年施設費を出しまして、本年度においてはその施設費を出しておらないというような意味合いにおきましては、これが減になっておるわけでございます。
  87. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 蚊とハエはもういなくなったのですか。
  88. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 蚊とハエは漸次減少しておるところもありますし、あるいはまだこれからやらなければならない点もあるかと思います。しかしながら、環境衛生の事業といたしまして、どれを重点にするかというようなことは、やはりその年年においてきめらるべきものでございまして、そういう意味において、あるいは不十分な点があるかと思いますが、全般的といたしましては、環境衛生の費用は、私は一応最小限度のものは確保しておるというふうに思います。
  89. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私の質問にピントを合してお答え願います。坂田厚相としては、蚊とハエの撲滅は重点としていないということですか。
  90. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 蚊とハエとの問題は、そういう形においては出してはおりませんけれども、何もこれを無視しておるというわけではございません。詳しいことは一つ会計課長から一応御説明を申し上げます。
  91. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 必要ありません。昭和三十年度の要求額はゼロになっておるじゃないですか。前年度は二千五百万円それがゼロになっておる。これを見ると蚊とハエがいなくなったという認識になっておられるのですか。
  92. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) その点だけを見るならば、おそらく蚊とハエのことを考えていないということが言えるかと思いますが、環境衛生というものは、単にそれに金を出すからそれは重点を置いているというわけには私は参らんと思います。やはり環境衛生全般の費用というものをよく考えていただくならば、御了解がいただける、だろうと思います。
  93. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 じゃ性病予防は従来より必要なくなったのですかどうですか、これはどうお考えになっておりますか。
  94. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 性病予防等につきましては従来もやっておりまするが現在もやっております。また、やろうと思っております。
  95. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 約三割予算減になって二千二百八十一万円減額されておりますが、もう予防はあまりやる必要はないという認識に立たれておりますか。
  96. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) これは矢嶋君も御承知通り、非常に把握というものが困難になっております。従いましてこれに対してどういうふうな有効適切な金を出すかということは非常に問題があると思うわけでございます。ただ、金があるからないからというような問題ではないではないかというふうに心得ております。
  97. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 予算がなくては行政は推進できませんよ。  次に移ります。家族計画の普及は大臣は推進するつもりですか、どういう御見解ですか。
  98. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 家族計画の問題は、やはりわれわれとしては推進していきたいというふうに考えております。ただし、その質的な問題については私たちは重点に考えております。これは日本の人口政策の上から非常に大切な問題でございまして、量の問題も問題ではございまするが、今後やはり日本の民族というものをすこやかに伸ばしていくためにおきましては、ある程度の家族計画というものはこれはやはり必要ではなかろうのかというふうに考えておるわけでございますが、しかしながら、また一面においてはこの間矢嶋先生の御指摘にありましたように母体を保護していくということも考えられなければならない大きな問題であって、たとえば妊娠中絶というようなことを乱用したり、あるいは安易にこれを考えるならば、かえって母体を損うというような状況も出てくるかと思うのでございます。従いまして、その意味におきまして適切な指導というものをやっていくということが必要であって、そのためにやはりこの地域々々におきまする婦人の方々が、それらの指導をやっていただかなければ、真の意味の計画というものが実らないではなかろうかというふうに考えております。われわれといたしましては、やはりこれは日本の将来の人口計画という問題を考えます場合においては必要だというふうに考えております。
  99. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 閣僚の一人である経済企画庁長官は家族計画には反対だということを委員会で正式に言明しておりますが、これに対して閣僚の一人としての所管大臣としての坂田厚生大臣はどういう見解を持ちますか。
  100. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) あのときの答弁はそういう意味ではなくて、やはり一つの議論としては単に家族計画といっても、これをむちゃくちゃに制限するということはよくない、そういうことを申されたわけだと思うわけでございます。従いまして、ただ当面の問題としてやはり日本のいろいろの施策をやっていく場合において壁に突き当るのは人口問題である、従って人口を極端に制限さえするならば、たとえばお話がございましたようにフィンランドであるとかあるいはスェーデンであるとか、ニュージーランドであるとか、ああいうような人口の少いところにおいては相当に生活水準の高い、いわば天国ができ上る、そういうような意味から無制限に何といいますか、家族計画というものをただ縮小すればいいという議論が一面においてあるとすれば、それについては問題があります。やはり日本の民族あるいは国というものが発展をしていく過程においては、それはバランスのとれたところの人口構造でなければならない。ある時代においては非常に縮小され、ある時代においては非常に膨大になる、こういうような人口構造というものは決して健全なものではない。日本のように八千万、九千万の人口をかかえておるところにおいては、そういうようなアンバランスがあったならば、人口政策としてはやはり問題がある、こういうような考え方から、それらの意見に対しては一応の賛意を表されたというように私は解しておるわけでございまして、内閣の閣僚といたしましては矛盾はいたしておらないというふうに考えております。
  101. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 厚生大臣の認識は間違っております。速記録をよく読んでいただきたい。そういうことを世耕長官は二度にわたって言明しておりません。速記録をよく読んで下さい。家族計画普及はこれは大切だというので千八百三十六万三千円減額になっておる。約三分の一減額になっておる。予算案ではこれはもう十分徹底したから必要ないというのですか。おたくの厚生白書によりますと、生活困窮者はかなりふえてきて国民生活の較差というものは大きくなったという白書が出ておりますが、これが三分の一も減額されたのはどういうわけですか。
  102. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 御承知のようにこの家族計画というものは、そう簡単にいくものではないわけでございまして、これはやはり単に国でコントロールするというような問題じゃなくて、一人心々の御婦人の方々なり、あるいはまたその夫の方々というものの御協力を得ずして家族計画というものはできるものじゃないと私は思うのです。従いましてそういうような金があるからないからというような問題でなくて、そういうような国民の一人々々の御協力を得ずしてはこれはできないと、こういうわけで、今年度においてはただいまのところこれが適切だと考えて出したのでございます。
  103. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 すべて予算があった方が何じゃないですか、行政は推進されるのじゃないですか。やりいいんじゃないですか、予算がなくてやれますか。
  104. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) われわれといたしましては、無制限に予算があるということが適切だと考えておりません。やはり必要な限度においては確保いたさなければなりませんけれども、ただ多いばかりが能ではないというふうに私は考えております。
  105. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは昨年七千二百五十万七千円要求したのは、これは少し多過ぎたという見解に立つのでしょうか、三分の一も減額されておってそういうようにおっしゃるのが私は心外ですが、いかがですか。
  106. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私が申しましたのは、矢嶋委員のお尋ねが、無制限に予算をつけさえするならば直ちに効果が上るというようなお尋ねのように聞えましたので、そういう御答弁を申し上げたわけなんです。しかしながら、われわれの予算を立てます場合には、単にこの問題だけではなくて、その他の予算の執行についても考えなければなりませんので、ただいま提出をいたしておりまするこの予算のところにおいては、不十分ではあるいはあるかもしれませんけれども、本年度といたしましては、これでもってやり得るとこういう認識に立って御提出を申し上げ御審議をわずらわしているわけでございます。
  107. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 了解できません。  では次に移ります。母子福祉貸付金の約二割の減額、一億四千万円減額した理由はどうですか。
  108. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 私からお答えいたします。第一は、これは御承知のように国から三分の二、県から三分の一、それを合わして貸付資金にするわけでございます。県で計上いたしますものに対して国が補助をする、そういう体制になっております。従来の予算消化の実績を見ますと、相当額国の予算が余っておる状況でございます。それはすなわち地方の方で予算を計上しませんために、国の予算が余っておる状況でございます。従いましてその実績を勘案いたしまして、実害がないということが一つと、それからもう一つは御承知のように年々、これは二十八年から始めておりますが、年々償還額がふえております。その分は結局貸付財源に回るわけでございますので、貸付総財源は減らない、そういうような目途をもちまして、結局実害がないということと、貸付財源が減らないということを目途にしまして、予算上そういうふうにいたした次第でございます。
  109. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 国民公園の施設整備状況はいかがですか。
  110. 大山正

    説明員(大山正君) 国民公園についてのお尋ねでございますが、国民公園につきまして年々予算を計上いたしまして整備に努め、なお建設に関しましては、建設省におきましても予算を計上しまして両省相協力して整備いたしております。来年度予算におきまして、国民公園の整備費が若干減っておりますのは、新宿御苑の大温室が昨年度と本年度約三千万円ずつ計上されておりましたのが完成しましたので、来年度はその分の予算が落ちておりますために減っているような次第でございます。
  111. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 冗談言いなさんな。若干なんという言葉はそんなとき使うものじゃないですよ。日本の観光資源を生かすために観光施設整備を強力に進めているということを運輸大臣厚生大臣が常に言っているんだ。だから、国立公園施設だとか、国民公園施設なんというものは今の実態からはっきりしているでしょうが、近代的なものにされてしかるべきじゃないか。国民公園の施設費というものは、四千万円が一千万円に、四分の一になっているじゃないですか。それで若干減少しただけで差しつかえないなんか、どうしてそういうような答弁ができるのですか。
  112. 大山正

    説明員(大山正君) 国立公園等の施設費におきましては、……
  113. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはわかっている。私は国民公園のことを聞いている。
  114. 大山正

    説明員(大山正君) 国民公園につきましては、来年度におきまして、二千九百四十三万円ほど減額になっております。これは先ほど申し上げました温室の関係でございます。
  115. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 数え上げれば限りがないのですが、鳩山主計官に伺いますが、あなたはお父さんがなくなられた直後で大へんお気の毒なんですが、公けと私ごととは違いますからね。私は過去九カ年国会におってこんな予算書を見たことは初めてですよ。「△」だらけではないですか。これは公約である国民年金、これはけっこうですが、これに約百億円を捻出するために、他の項目を全部ぶった切っていったに違いないのです。これはけしからんことだと思うのです。これは国民年金は約百億円でスタートはします。これは岸総理にも伺うべきことだが、決して公約実現ではないのです。大体厚生省の業務というものは、これはサービス行政ですよ。どの省の仕事も大事だが、国民にとっては、貧富を問わず、老若男女を問わず、これは非常に密接な関係のある行政です、サービス行政のこれは。しかも補助金行政が多いわけなんです。だからわずかな減額でも、相当末端に響くわけなんです。ところが、年金で約百億はついたけれども、ごらんなさいませ。これに類似した予算書一があったら見せて下さい、ありませんよ、こんなもの。まああなたは大蔵大臣並びに主計局長等の指示のもとにこれをなさったのでしょうが、あなたは人道主義者ですかね。(笑声)どういう御見解を持っていらっしゃいますか。一つ御所見を承わりたいと思うのです。矢嶋の言っているのが暴言のように聞えるかどうか。どういう御感想を持っていらっしゃるか承わりたいと思います。
  116. 鳩山威一郎

    説明員鳩山威一郎君) ただいま減額になった理由をいろいろ厚生省の方から御答弁になりました。一般的節約の問題はございますが、ここに特に補助金等におきまして減少しております点が目立つわけでございますが、それぞれ個々につきまして、当然減らせてしかるべきものが減っておるのでございまして、社会保障関係全体におきましては、二百二十一億円の増加国民年金百億除きましても百十億円の増加をはかっておる次第でございまして、増加すべきものは思い切って増加してございます。目立つのは非常にこまかい点が、若干ずつ減っておりますが、これはいずれも理由のあるものでございまして、実際問題といたしまして、補助金等につきまして、府県その他におきまして、非常に響くというような点は全くないものと思っております。これは特に、先ほどまあ家族計画等のお話がございましたが、これは予算に七千二百万円計上いたしましても三千万円程度しか支出されないというようなことが従来ありまして、毎年不用になっておったり、そういうようなものが相当あったわけでございまして、これはただ予算に前年通り計上しておくことは、それはわけないことでございますが、これは計上してもむだでございますので、そういうものは減らしてございます。それから現場の行政に対しまして、家族計画普及費のごときは、普及員の、従来月千円を倍の二千円に伸ばしましたり、そういうような内容の充実はそれぞれはかつておりまして、ただ無用な金を計上することはやめた次第でございます。これは絶対に支障を来たすことはないと思っております。
  117. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 無用の金は予算に計上しない云々という、これはゆゆしき発言がありましたが、これは主計官としてはそう言わざるを得ないと思うのです。あなたは服喪中ですから、きょうは許しておきますがね。これは重大だと私は思うのですよ。しかしきょうはあなたはもう追及しません。  そこで厚生大臣、ピントを観光政策に合せますがね、この前あなたは本会議において阿蘇の入場料の問題については穏やかにやりたいが、どうしてもいけないという場合におきましては、やはり立法措置を考えなければならないのではないかというふうに考えておりますということを私に答弁しています。その後厚生省は、地元に対して勧告をしたようですが、依然として勧告を聞いていないようですね。で、これが全国立公園、国民公園に波及すればこれは国辱ものだと思うのです。一体わが国の観光資源活用の観光政策は、いずこに飛んでいくかということになると思うのですね。この一つの理由としては、国立公園施設費、国民公園施設費等は不十分である。観光資源は十分あるにかかわらず、国際的にも国内的にも、観光客に御満足いただくような施設ができていない、予算が不十分だというところに遠因があると思う。これは大きな政策として推し進めなければならぬと思う。観光ということは遊ぶことだと考えることは、国際的に考えても大きな誤まりであるし、わが国においてはなおさらだと思うのですね。だから施設費をふやすことも大事でありますが、当面の問題として、他の国立公園、国民公園に波及してはならない。阿蘇の問題については、厚生大臣として、これは早急に解決すべきですね。最後の断を下さざるを得ないのではないかと思います。国会でああいうことを答弁し、勧告をしておるが、その後いかように進んでおると見ているのか、また、今後どういうふうに処置しようとしているのかお答え願います。
  118. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 阿蘇国立公園におきます入園料の徴収の問題につきましては、これは厚生省といたしまして、数回にわたりその徴収を取りやめるよう警告をいたしまして、できるだけ円満な解決をはかるように努力をしたところでございますが、御承知通り、阿蘇町は入園料の徴収を依然として継続をしておるばかりでなくて、先般町の条例を改正して、その増額を企図しておる。ところが、去る三月二十日、阿蘇町長に対しまして、入園料の増額はもちろんのこと、その徴収をすみやかに撤廃するよう重ねて勧告を行いました。また、自治庁におきましても、同日、熊本県からの、本件にかかわる照会に対して、地方自治法の立場から、入園料を徴収すべきでない旨を回答しております。厚生省といたしましては、今後とも自治庁と密接な連絡をとりまして、行政指導に当って解決をはかる方針でありまするが、必要とありまするならば、お説の通りに、自然公園法の法の改正も考慮しなければならない段階に至るのではなかろうかというふうにも考えております。私は先ほど矢嶋委員の御質問もございましたので、しかも私の郷里でもございますので、知事に電話をいたしまして、そのような誤まった非常識なことをやめにしていただくように、そちらの方でも十分警告を発していただきたいという旨の電話をかけたわけでございます。お説の通りでございまして、観光行政というものは、これはイタリア、あるいはスイス等の例を引くまでもなく、やはり一つの、相当なその国における経済の観点から申しましても、たとえばイタリアのごときは、国際収支のバランスをこれによって調整をしておるというような事実から考えました場合において、日本は非常に恵まれた環境にあって、そういう自然公園等が多くございます。これを活用することがまた経済寄与にもなるわけでございますので、そのためにああいうような非常識なことをやったのでは、全くお説の通り、国辱ものだと私は考えておるわけでございます。その点につきましては、矢嶋委員と私全く同感でございまして、それもひいては来年度予算等において減額をされておるという御指摘に対しましては、私も遺憾ながらこれを認めざるを得ないと思うのでございまして、今後とも私一生懸命努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  119. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 医務局長に伺いますが、国立病院の特別会計は約九十六億円なんですが、国立病院は最もサービスが悪いと、さらに不親切だという声がありますが、あなたはそういう声を耳にしませんか。
  120. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 実は、ときたまそういう声を事実聞きます、ときたまです。また親切だという声を聞くこともございますが、大体病院が大きくなりますというと、行き届かない点がたくさん出てくるので、私どもはできるだけサービスに徹底するように指導しておるつもりでございますけれども、なおそういう点、十分注意して参りたいと思います。
  121. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 原因はどういうところにあるのでしょうか。
  122. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) やはり人間が大ぜいになりまして、取扱いの事項が大きくなりますというと、仕事が機械的に流れやすいということではないかというふうに考えます。従って、官僚的、機械的にならないように、患者さん一人々々について十分注意してサービスするようにという趣旨のもとに、絶えず指導しておるつもりでございます。
  123. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたの認識間違っていますよ。病院の規模が大きいからといって、それが大きな原因だとは言えないのです。それも一つの要素ではありましょう。しかし、それは要素としては微々たるものですよ。そんなら慶応病院とか慈恵医大病院に行ってごらんなさいまし。あれだけの大きな規模でも非常に親切にやっていますよ。その点反省するとともに、原因を究明しなければいかぬと思うのですよ。たとえば、私は名前は言いませんが、ある国立病院におると、夜発病すると命を取られるという声も聞くのです。宿直のお医者さんが十分いないわけです。だから、夜中に発病したら、国立病院に入っておったらまず危ないという。そういう点は、お医者さんが不十分なんじゃないですか。十分宿直していないのですよ。法規通りの宿直をやっていないのですよ、患者数に対して。看護婦も減少されている。そういうところにある。それからまた、公務員諸君のサービス精神にも、私は若干原因があると思っている。官僚的なところがあるしね。こういう点が、特別会計に九十六億も計上して、僕の記憶では、全国国立病院は七十四だったと思うのですが、それが十分国民にサービスしていないということになると思うのですね。いかがでしょうか。対策もあわせて述べて下さい。
  124. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 夜当直の問題を先ほど御指摘になりましたけれども、これは熊本県の菊池病院の事件ではないかと思うのでございますが、これは国立病院となっておりますが、実は国立療養所でございまして、ここに医員の数が少いので夜の手当が不十分だった点が私どもにわかりまして、十分手当するように、十分サービスするように、その当時注意したような次第でございます。確かにこのサービス精神につきましても、われわれは絶えず反省しなければならないと考えております。のみならず、それからまた人間の配置等についても重点配置をいたしまして、全般のサービス、能率の向上をはかりたいと考えております。十分その点は反省し究明をはかりたいと考えております。
  125. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた菊池病院と言ったが、菊池病院だけじゃないのですよ。私はそれは幾つも聞いています。これは十分反省すべき点は反省して、そうして、いかにしたら解決できるかという方策を持たなくちゃならぬのですよ。そして、それを大臣にお話しして、大臣の政治力と合せて早急に解決しなければならぬ問題だと思うのです。大臣いかがでしょうか。
  126. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) この点は全く私も同感でございまして、ともすると、国で経営いたしまするところの療養所なり、あるいはまた国立病院等が、そのサービス精神に欠ける点があるのではなかろうかということも、私は国民の側の一人として痛感をいたしております。で、これは大ぜいの人たちが当るわけでございますから、中にそういうような不心得な者がおるわけでございますが、御趣旨の点は、今後十分私も責任をもってそういうようなことがないように努力いたしたいと考えます。が同時にまた、その人たちの給与の問題であるとか、あるいはまた働かれる環境が悪いとか、施設、設備であるとか、そういったものもあわせてわれわれは考えていかなければ、そういったサービス精神にもむしろ問題があるのではなかろうかというふうに考えておるようなわけでございます。
  127. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、製薬会社で、研究所を持たないで製薬をしていよるうなところがありますね。従って私は、国内使用のものでも、また海外輸出の面でも、いかがわしいものが中にあるのではなかろうか。将来問題が起るのではないかという懸念をしているものですが、検査に要する予算なんかここに計上されておりますが、これは厳密にやっているかどうか、その点をお答え願います。
  128. 森本潔

    政府委員(森本潔君) 薬務局長がきょう病気でございますので、私かわってお答えいたします。医薬品の製造につきましては、必ず製造所に試験検査室を施設するようになっております。研究所と仰すられましたが、法律上必要としますのは、研究所でなしに、試験検査をするというのが最低の要求になっております。従いまして、それぞれのメーカーとしましては、許可申請に際しまして、きめられました試験法によって所定の試験検査をするということを励行をさせております。それから、予算に出ております検査料、国家検定料だと思いますが、これはメーカーだけの自家検査だけでは安全を期しがたいという特殊な薬がございます。それにつきましては、衛生試験所、あるいは予防衛生研究所におきまして、十分責任の持てるむずかしい検査をやっておるわけでございます。でございますので、その予算に出ておりますところの国家検定につきましては、ともかく最高の技術によって検査をして、保証したものでございまして、絶対に間違いないと言っていいと思います。
  129. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点は今後とも十分配慮していただくようお願いしておきます。  次に、医務局長に伺いますがね。全国十一カ所にある国立らい療養所、これが約十五億円予算に計上されておりますが、私は二カ所ほどこれを視察したことがあるのですがね。あの慰安費というのですね。これがどうも不十分で、働ける人と働けない人との間に差ができて思わしくないというようなこと、それから、恵楓園の場合ですね。らい患者は非常に高熱を発するというのですね。従って、治療するのには、患者によっては冷房室がなければ暑い室ではやり切れないというわけですね。ところが、そういう施設がいまだにできていない。こういう点はどうお考えになっているのか。いつされようとしているのか。  それとあわせて、これは厚生大臣に伺いたいのですが、私最近ちょっとうっかりしておったから、確認していないので伺うのですがね。ああいうらい療養所に老後を養っている人は、今度出る国民年金は支給されるのかどうか。若干国費で収容されているわけですが、それはそれとして、ああいう世界に終生を送られている方には、まあ千円程度のものは、僕は差し上げた方がいいんだと思う。おそらくそういうように措置されているのじゃないかと思うのだが、これもあわせてお答え願いたい。
  130. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) これはらい療養所におられる方々に対して、やはりその年金の支給対象になる方々に対しては上げるということになっております。
  131. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 患者慰安金は、入院患者一人当り月五百円ずつ出しております。その上身体不自由者の慰安金は、来年度に二百五十円支給することにいたしました。現在の会計年度は二百円でございます。その前の年は百五十円でございましたけれども、年々五十円ずつ上げまして、来年は二百五十円ずつ支給することにいたしました。それから冷房等の装置につきましては、御指摘の点ごもっともでございまして、やはり目下来年度整備計画をやっておる最中でございますので、十分検討いたしたいと思います。
  132. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 年金の点について詳しく言って下さい。若干僕は違うと思うのだ。
  133. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) ただいま大臣から申し上げた通りに、障害年金該当者には障害年金、老齢年金該当者には老齢年金をいずれも差し上げることになっております。
  134. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それとあわせて、岡山に国立らい療養所患者の高等学校がありますね。まあ小中学校は大がいこの十一カ所のらい療養所に付設してありますが、高等学校教育機関というのは岡山ですね。なかなかこれ入れぬらしいのですが、もう少し高等学校に進学希望の人は進学できるように窓口を広め、若干の教育補助等も僕はやるべきだと思うのだが、いかがですか。
  135. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 御指摘通りに、高等学校は岡山に一カ所だけございます。従いまして、全国のらい療養所の中で高等学校進学の希望者は努めて入れるようにいたしたいのでございます。今はその実情も調べておるわけでございますが、志望者が多ければ定員を増加いたしてでも、これは入れなければならないというふうに目下考えております。
  136. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは特別に努力して下さい。  学生のことが出たからついでに承わりますが、国立療養所看護婦養成所の生徒手当を約二千万円減額してあるのですが、これはどういう理由ですか。
  137. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) これはかねてからも問題になっておったのでございますが、いわゆる看護婦養成所の養成というのは、従来全部無料であったわけでございます。しかも、それに月々八百円の小づかいをくれておったのでありますが、とかく徒弟教育的な感覚に流れて教育の本旨にもとるのが多いのでございますので、来年度からはおこづかいはやめる。しかしそのかわりに、その財源をもってむしろ教材費を増すとか、あるいは講師の時間を延長るすとか、あるいは講師の席を増すとか、そういう方面に実は振りかえたわけでございます。今後とも教育は自力で教育を受けるというふうな風潮にしていきたいと、かような考え方からこういうように処置した次第でございます。
  138. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 災害救助法関係ですが、災害がたくさん起るであろうということを期待することは好ましくないと思いますが、若干予算を減額してあるようです。一つ聞きたい点は、私かっても厚生省に陳情したことがあるのですが、建設省では大破、中破、小破とか区別されるわけです、大きな柱が幾ら曲ったとかということで。おたくの災害救助法の場合に、たとえば生徒、児童へ教科書を供与すると、こういう場合は大破も中破も小破もないわけですよ。もう水につかってしまったら、床上浸水で水へつかってしまったらその本は使えないわけです。従って、実際地方の公共団体が災害救助法を発動されてやる場合に、その持ち出しが非常に多くなるのです。おたくからいただくのが足りないわけです。これは非常に僕は認識を誤まっておると思う。末端行政官でなければわからないところだと思う。だからこういう点は早急に善処してもらいたい。あなた方考えてごらんなさい、ノートや教科書がぬれたら、家はがっちりしておってもこれは使えやしません。全部取りかえなければならない。だからそんなのが全部自治体の持ち出しになるのです。これは私かって陳情したのですが、いまだに直っていない。いつから直してくれますか、お答え願いたい。
  139. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 災害救助法の救助の種類はいろいろございまして、今の教科書の給与等の救助もございますわけでございます。実情によりまして、床上浸水でそれがぬれて使えないという場合には、当然これはもう救助の対象になるわけでございます。ただ救助いたしますのは、御承知のように都道府県知事のこれは責任になっておるわけでございまして、国はそれに対して補助をするというようなことになっておりますから、私どもの方で定めました基準よりも、実は下回るような救助をするような例が今のところ多いようなことでございます。今後指導等につきまして、そういう点は十分気をつけて参りたいと思います。
  140. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ぞひ自治体の持ち出し予算が多くならないように配慮していただきたいと思うのです。これは行政運用の面でできると思いますので、これはお願いしておきます。  厚生大臣に伺いますが、僻地診療に対してはどういう見解を持っていますか。若干予算が計上されておりますが、無医村解消等が叫ばれてなお遅々として進まないようですが、厚生大臣はどういう見解を持っておりますか。
  141. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 実際それは先ほどから坂本先生の御質問にお答えをした通りでございまして、無医村地区におられる方々に、何らの医療機関もないということでは、国民皆保険が実は泣いてしまうわけでございまして、これらのことについては十分医療の機関が存在し、また、それによって完全な医療が行われるということでなければならないというわけでございますが、先ほどの医者の確保がその他の事情によりましても、なかなか困難な状況にございまして、それらの方々に特に無医村地区あるいは僻地等に行かれるためには、よほどのわれわれが考えていかなければならない問題があると思うので、それは給与の問題もさることながら、自分の子弟を教育をするという場合において、やはり一つの悩みがあるように思います。従いましてこれらの点も考慮いたしまして、たとえばある地区におきまして、それらにおもむかれるところのお医者さんの子弟の方々を収容するようなことも考えなければならないと思いますし、今たしか厚生省において考えておりますることは、その地区における厚生省所管病院から人を派遣をいたしまして、そうして診療をやるというようなことをいたしておるようでございまするけれども、まだまだ私は不十分であるというわけでございまして、これらの点については、今後ともよく研究をいたしまして、十分なお医者さんの確保をし、そうしてまた、それらの診療所等を僻地にも作るようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。もうちょっと詳しいことにつきましては医務局長から答弁いたさせます。
  142. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いいです、方針さえわかれば。御努力願いたい。  厚生大臣所管の各役所の関係予算に常勤職員給与というのが千万円をこえるほど計上されておりますが、こういう職員はどういう仕事をしておるのですか。これは厚生大臣はどういう認識を持っておられるのか、それを伺います。
  143. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) たとえば年金局でありまするとか、あるいは保健所等にもそれらの常勤職員が相当におるように聞いております。
  144. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の僕の数字、ちょっと間違えましたがね。本省関係だけで千万円近くで、国立療養所だけでも約三千万円という常勤職員給与というのが計上されております。国病関係で約三千六百万円。だからあなたの所管全部を合せると約一億近くになるのですね。それだけの常勤職員給与が計上されておるのですが、一体厚生行政を推進するのにこれは必要な職員なのか、必要な職員でないのか。それをお答え願いたい。
  145. 山本正淑

    政府委員(山本正淑君) 常勤職員として予算に入っておりまする人員は一般会計で大体二千六百人、それから特別会計が合計いたしまして千六百人ほど入っておりまして、これは経過的にいろいろ理由がございまして、本来定員職員としてあるべきものというような性質のものも多いのでございます。それからまた、ある年限を限った仕事というような業務についてのものもあるわけでございまして、性質としてはおおむね平常の定員職員と同じような仕事をしておる、こういうように御理解願います。
  146. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 なぜ定員へ入れないのですか。
  147. 山本正淑

    政府委員(山本正淑君) これは各省を通じまして常勤労務者の定員化というのは、予算編成のときにおきまする大きな課題でありまして、三十四年度予算編成に際しましても、常勤労務者全員定員化の要求をいたしましたが、やはり方針としてこれは予算編成の時期におきましては、それが決定しなかったという結果に相なっております。
  148. 坂本昭

    坂本昭君 関連。今の身分は、たとえば社会保険の各県の出張所、これのものも含めていると思いますが、これは地方事務官というたしか名称だと思う。こういうふうに厚生大臣、あるところには人がうんとおるのですよ。おそらく今度の年金の場合も地方事務官という格好でずっとふやすのではないか。そして一方では病院のサービス行政をぐっと切っておる。私こういうところにも厚生行政の苦しいところがあると同時に、非常に政治的な力でこれを押し切っていない一つの大きな欠陥があると思う。そういう点、たしか社会保険出張所の地方事務官も、何千人もおると思います。いかがですか。
  149. 山本正淑

    政府委員(山本正淑君) 現在社会保険につきましては、地方の部局職員は、地方事務官という名称で国家公務員でございます。そのほかに常勤労務者といたしまして、社会保険関係で約千四百人ほどのものがおるわけでございます。
  150. 坂本昭

    坂本昭君 今のあれは、出てくるところは、その人件費は保険業務費から出るのじゃないですか。
  151. 山本正淑

    政府委員(山本正淑君) 社会保険におきましての業務取扱費、いわゆる運営上の事務費は、全額一般会計負担に相なっております。
  152. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ともかく一億以上の常勤給与費というのが計上されている。職務内容は変らないということですね。答弁によると、当然これは定員に入れて遇すべきだと思うのだが、厚生大臣、どうお考えですか。
  153. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私どもといたしましても、そのような考え方に立ちまして、本年度予算要求いたしたわけでありますが、今年度切られたわけでございます。この点につきましては、私の所管いたしております厚生省のみならず、農林省あるいは建設省等にも同じ悩みを持っておるわけでございまして、何とかしてこれらの定員化をはかりたいというような考えを持っておりますが、山口大臣答弁といたしましては、三十五年度中までにこれを定員化をする。こういうような御答弁があったやに聞いておりますし、またわれわれといたしましても、今後努力をいたしたいというふうに考えております。
  154. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣は閣内で、矢嶋の意向に沿って強力なる発言をすることを胴約束していただけますか。
  155. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私は矢嶋さんの御指摘になられる前から、この点については努力をいたしております。
  156. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点は特にお願いしておきます。  なおあと一、二点。国民年金法案が衆議院を通過いたしましたが、附帯決議がありますが、これに対して厚生大臣はどういう見解を持っておられますか。
  157. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 十分それを尊重して、日本の経済が発展していく過程におきまして、所得制限等の緩和、あるいは開始年齢等の引き下げ、あるいは給付の内容の改善ということに努力をいたして参りたいというふうに考えております。
  158. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これ、いろいろ聞きたいのですが、時間がないから、今の答弁で今後の大臣の御善処をお願いしておいて、国民年金について触れません。  次に承わりますがね、環境衛生対策費というのがありますが、厚生省の建物自体、何ときたないことでしょうかね。建物が古いという関係もあろうが、厚生省の中に入ると、日本の厚生行政をやっている本部なんというにおいては、どこにもしませんよ。胸くそ悪くなる。どういうわけなのか、大臣どういうお考えを持っておるのか。
  159. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私といたしましても、国の財政が許しますならば、厚生省というものを、矢嶋委員等の御指摘になりましたようなりっぱなものにしていきたいというふうな考え方を持っております。しかしながら、私どもといたしましては、この窮屈な予算の中において、まず考えなければならないのは、国民生活をどうやって向上させていくかということが、当面のわれわれの問題でございまして、私といたしましては、現在の官庁で、もし耐え得るものであるならば、事務上やっていけるものであるならば、私はなるたけ差し控えまして、それらの金があるならば、ボーダー・ライン層等に私は持っていきたい、その人たちの、いわば民の喜びにおくれて、喜びというのが、私は政治要諦かと考えるわけでございまして、われわれ衝に当る者といたしましては、単に各官庁だけがりっぱに鉄筋コンクリートの、あるいはスチームの入った、あるいは採光の行き届いた、そういったことも、将来においては望ましいと思います。が、私はその前になすべきことは、国民生活全般にわたるところの施策が第一だというふうに考えております。
  160. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はそういうことを伺っているんではないんです。それはりっぱなものを建てればそれにこしたことはないが、建てよということを言っているんではない。あばら屋に住んでおっても、心がけ次第では、きれいで、来た人に好感を与えることができると思う。第一厚生省では掃除が不十分ですよ、環境衛生対策費なんか持っていて厚生行政をやっているなら、きれいに掃除もし、部屋の配置も心がけて、ところどころにはいけ花を置くとか鉢植をするとか、心がけてごらんなさい。あの建物で十分ですよ。心がけがいけないということを言っておる。
  161. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ただいまの御質問の趣旨を取り違えましたが、これは全く心すべきことでございます。しかし私が入りまして、階段を上って大臣室に行きます左のところ……。
  162. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣のところだけ用意しておる。
  163. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 大臣のところではございません。あそこの官房の何とかというところに花いけがしてありまして、その心づかいというものは、実に私は心打たれているのでございます。しかしながら、私まだ日なお浅くいたしまして、各局の各課を回ったことがございません。年金準備局には参りましたけれども、やはり年金準備局あたりは、いわゆる鉄筋コンクリートではなくて、バラックではありますけれども、その内容等については非常にりっぱであると思いまして、実はうれしくなったような次第ございます。御注意もございまするので、各局等回りまして掃除の行き届かないところ、あるいは非衛生的なところ、あるいは一般の国民の方々がおいでになって不愉快な感じを与えるようなことであってはならないというふうに考えまして、一そう私注意をして努力をいたしたいと考えております。
  164. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの話を了といたします。こういう発言があったということを、官房長よく聞いておいていただきたいと思います。  次に、大臣に基本的なことを伺いたいんですが、先ほど私冒頭触れたように、あなたのところの予算書を見ますと、補助行政が非常に多いわけですね。だからこの適正、効率ということは非常に影響が大きいと思うんですよ。従って監査、監督等も適正に進められなければならぬ。それからどの省でもそうですが、厚生省関係の人は特に僕はサービス精神に徹しなくちゃならぬと思うのですが、皆さんりっぱな人だからそうだと思うんですが、必ずしも十分でないと思うのですが、こういう基本的な態度は堅持されなければならぬと思うのですが、大臣の御所見を承わります。
  165. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) この点も全く同感でございまして、われわれの省はいわばこれから始めますところの社会保障の省で、少くともその内容においては国民生活の隅々まで及ぶことをねらいといたしました省でございます。従いましてほかの省に比べまして、こまかい補助金等がございます。そうしてそれが額は小さくても、その与える影響というものは非常に大きいというふうに考えます。この点は矢嶋委員も御承知通りに、文教関係においてもそのようなことが言われるわけでございまして、私の省も全くそれ以上の一つの意味を持っておると思うのでございまするから、私予算を執行し、あるいは予算を要求する場合におきましては、その点を十分考えて、そうして国民のためになる予算を組み、また、その使い方等につきましては、十分注意を払っていきたいというふうに考ております。
  166. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは最後ですが、事務次官お見えになっているでしょうか。
  167. 山本正淑

    政府委員(山本正淑君) 来ておりません。
  168. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では官房長からその点お答え願います。最後に伺いたい点は、私と坂里厚生大臣は同じ熊本県ですが、現厚生大臣から一切開いたことでないのです。しかし、今まで私がずっと聞いたことで一般論として伺うわけですが、この厚生行政というのは非常に大事であるにかかわらず、大体厚生大臣は伴食大臣が多い。坂田さんがそうだといういうんではないんです。内閣として軽視する傾向がある。そうしてよく厚生大臣はかわる。そこで厚生省の公務員は、一般にその大臣を軽視する傾向がある。まあそのうちにはあの大臣はかわるのだというような考えで、厚生省の公務員は一般に大臣に協力しない。これはただ坂田さんからはつめの先も聞いてない。坂田さんだから言うのではないのです。今までの長きにわたって、そういう声を聞く。あるいは院内外でずっと聞いているのですが、私もちょいちょい厚生省にいろいろお願いやらあって参って、そういう印象は受けないのだけれども、新聞記者諸君もよくそういうことを言うのです。火のない所に煙は立たぬという言葉もありますから、どこかに私は原因があるのじゃないかと思う。のだが、かりそめにも私はそういうことがあってはならぬと思う。よその省についてはそういうことを聞かないのですけれども、ともかく厚生省のお役人さんは大へんむずかしくて御しにくいということを、(笑声)よく政治家から聞くのですが、笑いごとでないのですね。この点は一部誤解もあろうかと思うのだが、大体厚生大臣をしょっちゅうかえるということが問題だと思うのだ。予算の親委員会でも言いましたが、橋本さんが、この画期的な国民年金法案を出そうというときに、自分が立案者でありながら、そうしてこの国会で審議されようという途中で、はい、私は文部大臣になりましょうというふうにかわる政治的信念というものは問題だと言ったのですよ。社会保険のあの抜本的な、それも国会に出ている。政治家のセンスとして僕は尊敬している橋本さんであるけれども、僕が政治家であったならば、いや、この国民年金法案と社会保険法案は自分でやりとげたい、それをやらしていただけんならば、私は閣僚から去りましょうというのが、僕は政治家の信念でなければならないと思う。こういう立場から、非常に私は懇意で、尊敬している人だけれども、内閣改造も近く控えていることだし、親委員会で僕はそういう発言をしたわけです。それほど厚生大臣をちょいちょいかえるというところに、僕は内閣の首班の考え方として問題があると思うのだけれども、だからといって、世間で言われるように、大臣がしょっちゅうかわっている、いずれ一年たてばかわるんだから、僕らで適当にやっておこうやという気持がかりそめにもあってはならないと思う。まあ誤解だとは思うけれども、そういう声をちょいちょいと過去数カ年にわたって聞いておりますので、この際非常に失礼だと思うけれども申し上げたのですが、何らかの御発言があったら官房長から御発言を願いたい。
  169. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 今の矢嶋委員のお話しでございますが、少くとも私が就任いたしまして今日まで、実によく私を補佐いたしまして、今お話しのようなことでは全然ないというように私は考えております。ちょっと申し上げておきたいと思います。
  170. 森本潔

    政府委員(森本潔君) ただいま矢嶋先生の御質問でございますが、大臣の出所任免等につきましては、これは私たちの触れるべき問題ではないと思います。諸大臣に仕えまして、厚生省の役人のあり方が必ずしも適当でないというような印象を与えておるようでございますが、かりにそういうような印象を与えておりますならば、私たち十分反省をいたさなければならぬと思います。ただ、厚生省の役人としましては、従来から省内共同一致いたしまして、かつ上司につきましては誠心誠意仕える、また重要事項につきましては必ず指示を受けて処理をする、こういう省の気風を堅持して参っておるわけでございます。私たち一同そのつもりでおりますが、ただいま御指摘のように、かりそめにもそういうようなことが外部から指摘を受けるようでございますれば、これは私たちの気持と行なっておるところが一致しておらんのだと思います。十分戒心いたしますが、気持としましては、先ほど申したような気持で勤めておるような次第でございます。御了承願います。
  171. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 まあよろしく願います。
  172. 塩見俊二

    ○副主査(塩見俊二君) 午前中の厚生省所管に対する質疑は本日は、この程度にいたしまして、残余の質疑は明二十六日午前十時から続行することにいたし、休憩をいたします。    午後一時五十六分休憩    —————・—————    午後三時二十分開会
  173. 矢嶋三義

    主査矢嶋三義君) ただいまから第四分科会を再開いたします。  午後は、労働省所管について御審議願うことにいたします。  これより直ちに質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言を願います。    〔主査退席、吉江勝保君着席〕
  174. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 労働省所管事項は、分科会で審議する案件は最も少いようです。労働省関係について質疑応答のされるのは、親委員会に属するものが大部分で、分科会でやる案件は少いようでありますから、簡単に若干伺っておきます。  まず、大臣に伺いたいのですが、それは、各省予算書を見て、労働省というのは、ずいぶん日本の産業経済並びに国民生活に至大な影響のある行政官庁であるにかかわらず、予算額を見ると、びっくりするほど少額なんですね。わずかに三百九十一億円程度でありますが、諸外国と比較した場合、この予算規模というものはいかがなものなんでしょうか。労働大臣、どういう御見解を持っているか、承わりたいと思います。
  175. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、この労働省予算の中で一番大きなものを占めておるのは、失業対策関係であります。ことに、地方に出先機関を持ちまして、それが有機的に、しかも国民の御期待に沿うようにいたしますためには、安定所の業務というものを拡充強化しなければならないというふうなことで、労働省が主として資金を要しております大きなものは、職業安定局関係でございまして、それからもう一つは、基準局を地方に持っておりますが、昭和三十四年度予算では、特に産業災害防止五ヵ年計画というふうなものを策定いたしまして、これに要する予算というものを若干前年度より増額いたしておる。まあ私どもも、労働省のやるべき仕事はその質においても量においても、さらになさねばならないと思われることがありますけれども、今お話のような諸外国との予算比率というふうなことについて、今手元に資料がございませんので、調査をいたしまして御報告申し上げたいと思います。
  176. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 まあその国の置かれたいろいろな条件によって、その国の予算の性格並びに規模というものはまちまちだと思いますがね。しかし、この日本国の経済力とか、あるいは領土、人口、雇用等々の問題を考えるとき、国の予算の性格という立場から、労働省所管予算規模というものは、もう少し大きくてしかるべきじゃないか。やるべき仕事を十分やらないために、こういう少さな規模に終っているのではないか。他の省庁のそれと比較するときに、全予算の中における労働省所管予算を見た場合に、そういう感じを持つのですがね。いかがでしょうかね。
  177. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 非常にこの労働行政に対して理解のあるお言葉をいただいて、ありがたいのでありますが、私ども、先ほど申し上げましたような仕事のほかに、なおなすべきことが相当ございますが、伝統的に労働省は、住まっております建物も一番質素倹約でありますし、行政全体について非常に緊縮しておりますが、そのために、労働政策あるいはその中の労働者保護に欠けるところのないように、全力をあげて働いておるわけでありますが、ただいま御指摘のようなことにつきましては、なお研究いたしまして、御相談を申し上げたいと存じます。
  178. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょうどあとでお伺いしたいと思っておったのですが、大臣から今御発言がありましたから、ここで触れますが、庁舎の問題ですがね。確かに労働省は御不便だと思うのです。まあ国家財政の関係でありますから、私は、今すぐ新築云々ということを申し上げるわけじゃありませんけれどもね。お宅と厚生省ですね。これはどうも、伺ったときに、さわやかな感じがしないのですね。何か、不潔と言っちゃ失礼ですけれどもね。これは、官房長に特に申し上げておきたいと思うのですが、厚生省にも私はきょう申し上げたのですが、どこか不十分なところがあるのじゃないか。分散もしておるし、建物自体も、採光、通風等よくありませんけれども、労働省という名前がついておるだけに、いけ花とか、植木鉢くらいところどころ置いて、勤めている人も、また来訪者にもさわやかな好感を与えるような雰囲気にすることが大事じゃないか。ともかく厚生省労働省が一番その点不十分なようなんで、この点は、特に官房長聞いておいていただきたいのですが、どういう御見解を持たれておるか。官房長、一つお答えおき願いたいと思うのです。
  179. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま労働省の庁舎につまして、矢嶋委員から御指摘いただきました点はその通りでございまして、わが省の庁舎が、省開設以来二カ所に分散をいたしておりまして、しかもそれが旧軍の庁舎を利用いたしております関係上、きわめて狭隘で、かつ老朽の建物でございまして、労働省においでになります方にもあまり愉快な感じは与えないかと思うのでございます。われわれといたしましては、数年来省をあげまして、できるだけ早い機会に一本になりたい、同時に新営をいたしたいということで努力をいたして参りましたのでございますが、三十三年度予算におきまして、本省庁舎の建築費が五千万円計上されました。引き続いて三十四年度予算におきまして二億二千四百六十七万円の予算を計上されたわけでございます。予定地といたしましては、現在あります大手町庁舎の裏の方に鉄筋の八階建を建てるという計画でございますが、やはりもう二、三年はかかりますので、それまでの間は、やはりおっしゃいましたような庁舎の現状でございます。  ただ、われわれといたしましては、できるだけおいでいただく方も愉快になっていただきたいということから、各種の修繕等は、予算の範囲内で一生懸命でやっておりますし、また、照明等につきましても、逐次改善をいたしておるわけでございますが、何さま古い建物でございますので、それほど見るべき成果は上っていないわけでございます。できるだけ庁舎の新宮を急ぎまして、特に労使関係者の方々の出入りも多いわけでございますので、清潔な庁舎を早く建設をいたしたいと考えておるわけでございます。  なお、第一線の機関につきましては、今年度におきましては特に重点を置きまして、公共職業安定所につきましては、一般会計並びに特別会計合せまして約二億一千万円の経費を計上いたしまして、総計三十カ所の安定所を新営いたす計画をいたしております。また、基準監督署につきましては、一般会計並びに特別会計を合せまして約八千六百万円の予算を計上いたしまして、二十六の監督署を新築するという計画をいたしております。今後とも引き続きまして、第一線の庁舎につきましては重点を置きまして、整備に努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  180. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 よろしく一つその点はお願いしておきたいと思います。  次に、大臣に伺いますが、米駐留軍が日本の国内労働関係法規を十分守ってくれないために、ちょいちょいトラブルが起っているようですが、もう少しこの国内法規を守っていただく必要があるのじゃないですか。守らなければならないように義務づける必要が僕はあるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。    〔主査代理吉江勝保君退席、副主査着席〕
  181. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お説の通りでありまして、米軍との交換文書にも、日本の労働関係法は守るということになっているのであります。先年私が調達庁担当大臣をいたしておりました当時にも、今お話しのような問題について二、三の事件がありました。そういうときにも、例の日米合同委員会というもので相談をするのでありますが、そういう場合にも、しばしばこっちからそのことを、約束通りに守ってもらいたいということを強く要望いたしております。その当時から見ますというと、最近は非常に相互で理解を持つようになって、それにまた、相手方の軍の当局者のいかんによっても非常に違うようであります。何さまやはり軍関係のことでありまして、こちらの意のままにならない場合もありますが、御趣意のように、われわれとしては、契約通り労働関係法を遵守してもらうことについては、機会あるごとに努めておるわけであります。
  182. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 安保条約を改正し、行政協定に手を入れる場合には、私はそういう角度から行政協定を変える必要があるのではないかと思うのですが、労働大臣はどういう御見解を持っておられますか。
  183. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、ただいまお話のありましたような事柄は、条約自体よりも、むしろ行政協定に関する事案でございます。そこで、われわれといたしましては、今、安保条約改定も論議されておるようでありますから、やはりただいまお話しのような、対米軍の労務関係等については、そういう機会によりよい処置がとれるように、政府部内で努力をして参りたいと思っております。
  184. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういう角度からの行政協定の改定を僕はやったらいいと思うのですがね。いかがですか。
  185. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いろいろ私どもの立場として考えておることもございますが、行政協定の改定につきましては、政府全体のことでございますから、私から申し上げることを遠慮いたす方がいいと思います。
  186. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 労働行政を担当しておる労働大臣としては、希望なさるでしょう。
  187. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは、先ほど申し上げましたように、私の経験で、やはり日米合同委員会等において労働関係を処理する場合のことを、なるべくわれわれの要望にこたえるようにしてもらいたいということを考えておりますから、そういう機会がありましたならば、われわれも強く私どもの要望を実現できるように、政府部内で努力をして参りたいと思っております。
  188. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 お宅の出先機関で工場、事業場の監督行政をされておるわけですが、これは、実際やる場合には、なかなか法の通りいかないで、末端の行政官は苦労なすっておると思うのですが、そのせいか、僕らが若干感じておるところでは、不十分な点がある。それから、出先機関によっての差が、相当アンバランスがあるのですがね。一体本省においては、どの程度の指示を与え、末端行政機関にやらしておられるのか、方針を一つ承わりたいと思います。
  189. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 労働基準法に基く工場、事業場の監督につきましては、特に中小事業場におきまして問題が多々あるように見受けております。そこで、ただいまのわれわれの監督の重点といたしましては、三つの点を考えておるわけでございます。すなわち第一は、工場、事業場、商店等におきまする週休制の確立をはかるという点が第一点でございます。それから第二は、最近産業災害が非常に発生しておりまするので、安全、衛生関係の規定の順守をはかりまして、重大災害を防止するという点を第二点に置いております。それから第三点には、女子の深夜業等をなるべく排除していく。この方向で進んでおります。  この三つの点に重点を置きまして、地方の労働基準監督署における監督官が、労働基準法に照らしまして重点的に違反を是正さしていく。この方向で進んでおる次第でございます。
  190. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは、現実問題としてなかなか私はむずかしい点があり、末端の行政官は苦労されると思うのですが、もう少し僕はきびしくやる必要があるのじゃないかと思うのですが、局長さん、どういうふうな見解を持っておられますか。
  191. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 労働基準法の施行当時におきましては、相当悪質の違反事件が見受けられましたが、今日では、その当時に比べますと、だいぶ減ってはおりますが、御指摘のように、特に大事業場においては、大体基準法も順守されておるように思いますが、中小事業場におきましては、基準法違反がまだまだ率直に申しまして跡を断たない実情でございます。この点におきまして、一面においては、この中小企業の経営基盤の育成をはかるという点につきまして、経済各省連絡いたしまして、その方面からの助成を仰ぐと同時に、われわれといたしましては、やはり人を使っておる以上は、労働基準法の原則的な規定は、これはぜひ守ってもらわなければならないと考えますので、特にこの点につきまして、違反の多いような業種を選定して、監督官が監督いたします監督計画を重点的に立てて、その中で特に問題がありますようなただいまの三つの点につきまして、これは、われわれとしてもできるだけのことをやっておりますが、お話のように、まだまだ十分でない点がございまするので、今後においても十分努力いたしたいと考えます。
  192. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この婦人労働者の保護福祉に必要な経費、それから年少労働者の保護福祉に必要な経費、ここの説明を見ますと、「強力なる啓蒙」という、「強力なる」という言葉が入れてあるが、この「強力なる」という言葉は、他の省庁の表現にはめったに出てこないのですがね。ここだけは「強力なる」ということを入れてあるが、よほど予算が強力かと思ったら、二百六十万円程度なんですがね。これは何か意味があるのですか。おそらくこれを作った人は、ほんとうに強力なる啓蒙教育をやらなければならぬが、予算額があまり少いので、なぐさみとしてこういう表現をされたのではないかと思うのですがね。確かに私は、強力なる啓蒙教育を行わなければならぬと思うが、表現だけ強くしで、予算額はまことに微々たるものですが、所管局長さんから一つお答え願いたいと思います。あまり強力なるというのはないのですよ、ほかのところには。
  193. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま御指摘の表現につきましては、別に特別な意味はないのでございますが、啓蒙教育を努力するという意味でございます。予算につきましては、確かに御指摘のように、そう巨額なものではございませんが、内容といたしましては、年少労働者につきましては、特に最低年齢未満の年少者につきまして、まだこれを就労させるような実態がございますので、こういうものの防御並びに指導等を中心にいたしました年少者保護のための経費でございます。それから、年少労働者の福祉施設の設置に必要な経費につきましては、昭和三十二年度におきましては、名古屋に青少年ホームを設置いたしたのでございますが、これが先ごろ完成をいたしまして、相当各方面から好評でございますので、三十四年度におきましても、同趣旨の年少労働者のための福祉施設である青少年ホームを一カ所設置をするという経費でございます。
  194. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点、あなたのお気持わかりました。今、青少年の話が出たのですが、これは、労働大臣にお答え願いたいと思うのです。それは、青少年対策費がだんだんふえつつあることは、私けっこうだと思うのですけれども、行政機構は今のままでいいのでしょうかね。総理府がやっていますわね。それから法務省にある、それから警察庁にある、お宅には、中小企業に働く年少労働者に今度五百万円、青少年ホーム設置というのが新しく出ているのですが、文部省は申すに及ばず、文部省は今度中央青年の家を設置するというし、この青年対策予算が非常にばらばらになっているんですが、横の連絡というものはどういうようにとられているのか、こういう状況でいいのかどうかと私は思うんですが、労働大臣、どういうふうにお考えになっておられますか。
  195. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お説の通りでございまして、政府は、昭和三十四年度予算の編成大綱をきめますときに、やはり将来の日本を考えたときに、青少年対策というものは最も必要なものである、こういうことで、各省にまたがっておる仕事はそれぞれ、たとえば働らく青少年については労働省というふうなことでありますが、それを総合的に調整するために、むしろ総理府に置くことがいいんではなかろうか。こういうことで、総理府に青少年対策本部というものを設けまして、そうしてそこで大体財政当局との予算の折衝をやりまして、それを各省で、その省が特になすべきようなことに予算を配分をいたしてやっておる。こういうのが現在の状況であります。この対策本部につきましては、将来ともさらに拡充強化して、青少年対策をますます充実してやっていこうというのが政府の希望でありまして、その一つ一つの一翼をになって各省がやっておる。こういうのが今日の実情であります。
  196. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 各省庁のは、総理府の方でコントロールしているということになっているんですか。
  197. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) コントロールという言葉が適切にはまるかどうか、ちょっと疑問でありますが、今申し上げましたように、青少年対策本部には、各省関係者が参加いたしまして、そうして一定の方向づけをして、そうして労働省が分担すべき事柄については労働省予算としてそれを取っておる。そうして実行に移していく。こういうやり方をいたしておるわけであります。
  198. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、項目別に伺って参りますが、お宅は、超過勤務手当は法律通り支給しておりますか。どうですか。
  199. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 超過勤務予算につきましては、労働省におきまして、きわめて業務量が多いわけでございますが、同時に、定員等もそう大幅にはふえておりませんので、相当に超過勤務がございます。しかし、われわれの方針といたしましては、できるだけ時間に能率をあげまして、超過勤務をなるべくしないように、能率をあげて仕事をさばくということで努力をいたしておるわけでございます。で、起動予算は三十四年度におきましては、三十三年度に比較いたしまして、約一千数百万円の増額をいたしまして、労働行政の実態に合せまして、超勤予算等につきまして、適正な支払ができるようにいたしております。こういうことで予算を計上してございます。
  200. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた頭がいいものだから、要領のいいことを言っているんですけれどもね。労働本省で千八百三十三万一千円しか計上されていないんですよ。これは法律通りには支給していないでしょう。法律通りに支給していますか。そこを伺っているんですよ。
  201. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 本省につきましては、千八百三十三万円でございますが、各支分部局等合せまして総計は今ちょっとわかりませんですが、計算を……。
  202. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 法律の規定通りに支給しているか支給していないかということです、お伺いしたいのは。
  203. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 総額におきまして、三億一千二百三十二万六千円の超勤手当を三十四年度におきまして計上をいたしております。前年度は二億八千百九十六万三千円でございますので、先ほど一千万円と申し上げましたが、人件費の昇給等の増加がございますので、これに伴いました増を合せまして、約三千万円の増額になっております。で、先生御指摘の、法律通り支給するかどうかという点でございますが、われわれといたしましては、公務員法並びに給与法の規定に基きまして、法律通り確実に支給をすることに、毎々努力をいたしてきておるわけでございます。
  204. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 努力ということでないんですよ。法律規則通りに支給しているかしてないかという、その事実だけ私は答弁を求めているわけです。やってないでしょう。労働省の公務員はそう言いましたよ、私、念のため聞いたところが。
  205. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 起動手当の支給につきましては、これは仕事のやり方につきまして、非常に幅のある事柄になるかと思うのでございますが、われわれといたしましては、各部局の長の事前承認を得まして、超勤命令を事前に出しましたものについて、毎日事前承認をいたしまして、超勤を支給するというやり方をいたしております。で、超勤の事前の命令が出ました分については、満額支給をいたしております。
  206. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた、職掌柄なかなか強情なところがあるですね。日本の公務員で、法律通りに超勤を受けているのは国会の運転手さんだけですよ。それ以外ないです。国会の運転手さんだけは、これは法律通りに正確に支給を受けておる。あとはないのです。あなた、せめて労働省関係だけでも法律通りやらなけりゃ、指導監督行政をやる本山ですからね、労働省というのは。まず隗より始めよで、せめて労働省だけでもそうされてはいかがですか、労働大臣
  207. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御趣意はまこと賛成であります。
  208. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 来年度予算を私は注目して見ておりますから、御記憶願いたいと思います。  次に、労働本省だけでも、常勤職員給与というのが三百二十三万五千円計上され、昨年に比べますと、十三万円増額されておりますが、こういう常勤職員は、どういう仕事をなさっておるんでしょうか。
  209. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 常勤職員は、労働省全体といたしまして、昭和三十三年度におきましては千八百五十九人の者が在籍しております。これは、一般会計並びに労災保険特別会計及び失業保険特別会計に所属しておるわけでございますが、最も数が多いのは両特別会計でございます。両特別会計におきましては、本省並びに第一線の機関におきまして、保険金の給付並びに保険料の徴収等の事務並びに調査事務等の事務に従事をしております。
  210. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 定員内職員と定員外職員で、同じ業務をやっておって、一方は定員外であるような方が労働省にもいますね。これ、認めるでしょう、あなた。
  211. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 仕事の性質から申しますと、ただいま御指摘のように、身分は一般職員と常勤職員になっておりますが、仕事の実質において、たとえば責任的な仕事、それの補佐的な仕事というような区別はあるかと思いますけれども、たとえば、単なる集計事務というようなことでなしに、行政の根幹になります仕事に従事し、またはそれを補佐しておるという職員、常勤職員に相当おる現状でございます。
  212. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 労働大臣に伺いますが、常勤職員給与というのは、各省庁の予算書に出ておるのですがね。漸減どころじゃなくして、増加してくるのですね。労働省関係にもあるわけですが、業務内容からいって、定員内職員と差等をつけられない職員も相当数おるわけですがね。これは、当然僕は、定員化すべきであり、閣内においては、まず労働大臣からそういう見解を強力に表明されて、定員化に努力させらるべきだと思うのですが、労働大臣は、どういう御見解を持っていらっしゃいますか。
  213. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 行政管理庁でも、その点についていろいろ意見がございましたが、国家公務員法の改正に迫られておると思われるので、そういう時期に定員のことについても同時に処理をしていきたいというふうな政府全体の考え方のようであります。先年の国会でも、私が今申し上げましたような趣旨で、臨時職員のことについて話があったようでありますが、今申し上げましたような趣旨で、政府は検討に着手しておる最中であります。
  214. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 よく、行政管理庁並びに大蔵省においては、公務員法との関係で云々と言われるのですが、ことに大蔵省が非常におもしを加えておるわけです。やっぱり閣内では、私は労働大臣が特にこういう点については理解を持ち、筋を通して、閣内をリードしていただかなければ問題は解決しないと思うのですが、御努力いただけますか。    〔副主査退席、館哲二君着席〕
  215. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府部内でただいまのようなことについて意見をまとめるときには、私どもの趣旨も十分に主張いたしたいと思っております。
  216. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点は、特にお願いいたしておきます。  大臣に伺いますが、大臣は、この報償費と、交際費とどういうふうに区別してお考えになっておられますか。報償費は、内閣官房とか、あるいは外務省とか、こういう方面には非常に多額に計上されておりますし、文部省あるいは厚生省というようなところは、報償費というのは計上されておらないわけです。計上されているところといないところがあるわけですが、お宅の方には、わずかですけれども、約三百七十万円ほどの報償費が計上きれておるわけですが、報償費と交際費と、どういうふうに区別してお考えになっておられますか。
  217. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) よく私もわきまえておりませんけれども、労政局等では、地方の労政課に、いわゆる報償費を出して実情調査等をいたしておる模様でありますが、会計課長から申し上げる方がいいと思います。
  218. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 四百三万六千円の報償費が労働省関係でございます。労働本省並びに中央労働委員会にあるわけでございますが、報償費の予算上の性格といたしましては、労働行政を推進するための部外者に対する報償金、あるいは報償物品等の購入、あるいは会議用の諸経費、それから日雇労働者等により傷害を受けた場合、被服その他に被害を受けた場合、職員等に対する報償費、それから、労働争議の調停あっぜん等につきまして、解決を促進するための会議用の諸経費といったような予算の性格になっております。交際費につきましては、労働行政に関連いたしまして、大臣、次官、労働委員会の会長等の交際に要する経費ということであります。
  219. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 労働組合等の情報を持って来た人に対する謝礼というのは、どの項目から出ていますか。
  220. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 労働組合から情報を持って来たということで特別に謝金を出すという建前は、予算上とっておりません。先ほど会計課長から御説明がありました報償費の中で、必要な場合におきましては会合費、そういうようなものに支出をいたしております。
  221. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この予算書ではなかなか看破できないのですね。報償費が三百六十九万八千円計上されている。これは、労働省予算の総額からいえば、三百六十九万八千円という報償費は相当なものだと思います。厚生省とか文部省なんかはゼロですからね。一体この報償費が計上されているのは、内閣官房、それから外務省、公安調査庁、警察庁、こういう関係に多いのですよ。労働省は、予算総額が、先ほど私が申し上げましたように、わずか三百九十一億、それに対して報償費が三百七十万程度組まれているのは、他の省に比べれば、非常に特徴がある予算の編成なんですね。これ以外に、何か私は労働省は機密費を持っていると思うのですが、これは、今の大臣がそうだとは言いませんがね。前石田労働大臣は非常に有能な、ある角度から僕は私淑もし、敬服している政治家ですけれどもね。相当機密費を使っておったことは事実ですよ。労働組合から情報をキャッチする、それによって手を打つ、場合によれば饗応もやる、そうして石田労政を推進したことは間違いないことだ。そういう費用は、大臣のポケット・マネーから出た面もありましょうが、この報償費並びにそれ以外のどこからか出ているに違いない、私はそういうふうににらんでいるのだが、こういう行政は芳ばしくないと思うのだな。今の倉石労働大臣は、まさかそういうことは、僕はあなたの人柄からやられないと思うのだが、かりにやっておるとすれば、そういうことはやめてもらいたいと思うのだ。  これは、組合にもいろいろありますよ。それはいろいろあります。しかし、いずれも労働者であり、同じ日本人ですよ。そういう手でくさびをぶち込んで、労働者同士が仲間割れしてけんかするのを喜んで、そうして自分の政策を進めていこうというのは、これは私は、正攻法でないということだ。そういうやり方というものはあってはならない。しかし、石田労政時代にそういうことをやったかやらなかったかということは、これは、目のある人が見れば、はっきりしていることだと思うのです。一体そういう費用は、報償費の三百七十万円から出ているんでしょう。いかがですか。労働大臣から御答弁をいただき、さらに事務局から御答弁をいただきます。
  222. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 前大臣がどういうふうにおやりになったかは存じませんが、ただいまの労働大臣は、今矢嶋さんの御指摘になりましたような考えで、そういうようなことを少しもいたしておりません。そこで、予算面に出ております報償費の内容についても、私よく存じませんので、事務当局から申し上げる方がいいと思います。
  223. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 報償費の使途につきましては、先ほど労政局長から御説明申し上げましたように、大部分のものが、各種の労働行政推進上の各種の会合のための経費に使われております。特に職業安定局におきましては、日雇い関係の目的がございますので、そのために職員がけがをしたというような場合に、これに対します被服その他の支給、あるいはその損害の補てんといったような面に使われておりますが、労政関係におきましては、使途といたしましては、ただいま申し上げましたようなことでございます。
  224. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この予算の執行については十分配慮していただくように、特に要望申し上げておきます。  次に、駐留軍離職者職業訓練費補助金というのが、約二千五百万円計上されているわけですが、その後の駐留軍離職者状況はいかようになっているか、お答え願いたいと思います。
  225. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 駐留軍の離職者につきましては、御承知の駐留軍関係離職者等臨時措置法に基きまして、政府におきましては、中央駐留軍関係離職者等対策協議会というものを総理府に設けまして、総務長官を会長といたしまして、関係各省がこれに委員として、その対策をやっているわけでございます。特に駐留軍の離職者対策というものは、各省がそれぞれの対策を総合的にやっていく必要があるということからいたしましてこの協議会を中心としてやっておるわけでございます。労働省におきましては、特に職業絡介の面、それから職業訓練、これに重点を置いてやっているわけでございます。そこで、大体昨年度実施いたしたことといたしましては、職業訓練につきましては、臨時施設を通じまして約四千三百八十人、その他の夜間職業訓練等を通じまして約一万人を訓練できる予算措置を講じたのでございますが、本年度においても同様な措置を講じてあるわけでございます。なお、職業紹介につきましては、非常に困難な面もございましたけれども、昨年の四月以来安定所を督励いたしまして、職業紹介に努めました結果、本年の一月まで、約一万二千六百五十五名を就職せしめたということになっているわけでございます。そのほか、特に対策協議会として問題にしておりますのは、過去の返還された基地等をすみやかに解除してもらって、そこに企業を誘致するということで、総理府が中心となって、現在特に各地においてそれを進めつつある現状でございます。
  226. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この問題は、大体私は峠を越えたかと思うのですが、今後もよろしくお願いをいたしておきたいと思います。  次は、さっきの報償費に関連してですが、中央労働委員会の方は、報償費が、わずかですが、十三万七千円ある。ところが、公共企業体労働委員会の方にはないですね。交際費の方を見ると、中労委の方と、それから公共企業体労委の方は、いずれも六万二千円、交際費が同じように組まれておる。一方は報償費があって、一方は報償費がない、これはどういうわけでこういう予算の組み方をするのですか。お答え願いたい。
  227. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 御指摘のように、公労委関係には報償費が組んでございませんが、これは、この労働委員会ができましたときのあとさきによりまして、中労委には、最初から報償費並びに交際費が組んであったわけでございますが、公労委につきましては、交際費六万二千円と、その他諸会議のためには特殊会議費を組みまして、それによってまかなっていくということで、特に中労委と公労委を区別いたした趣旨ではないのでございますが、予算編成のいきさつからいたしまして、公労委には報償費がないという結果になっておるようなわけでございます。
  228. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと僕は納得しかねるのですが、この予算書を見て……。あなたの方で公労委の報償費を要求したが、大蔵省の査定のときに削除されたということなんですか。
  229. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 要求といたしましては、公労委につきましても、報償費の要求をいたしたわけでございますが、結果において入らなかったわけでございます。ただし、実質におきましては、先ほど申し上げましたように、活動には支障のないような予算措置は講じてあるわけでございます。
  230. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 おかしいですよ、予算書の組み立て方が、あなた要求しなかったのでしょうが。要求していないのですよ。うそを言いなさんな。要求を本気にやっておったら、予算書を組むときに、いかに大蔵主計官といえども、主張さえすれば負けますよ。要求定員八十五人、五十一人で、すべてが似通っているのだもの。これは、一方には報償費という項目があって、一方にはないというのはおかしい。本気で、これはなくちゃならぬと主張したら、主計官といえどもシャッポを脱ぐでしょう。惰性で来ているのでしょう、きっと。これは答弁求めません。間違いない。だから来年度は、入れるなら両方入れる、落すなら両方落す、もう少し予算書の体裁のとれるように善処していただくことを要望しておきます。  次に伺いますが、労働省は出先機関があるのですが、私の見ておるところでは、各都道府県の婦人少年室というのは、定員は少いのですが、非常によく仕事をしておる。これは、もう少し僕は充実していいんじゃないかと思うのですがね。一人か二人程度、大きいところで二人、普通はわずか一人ですが、なかなかよく仕事をしていると思うのですがね。労働大臣はどういうまなこで見ておられるか。もう少し充実してしかるべきじゃないか。特にこの予算定員及び俸給額表という、この分を見ますと、婦人少年室長等級別内訳を見ると五等級が十七人いる。これは僕は穏やかでない。三等級二人、四等級二十七人、五等級十七人というから、一県一人しかいないのですがね。五等級の人一人でやっていると思うのですがね。これは遇するに適当でないと思うのですよ。二人おるところに、三等級と五等級の人がコンビというのならよろしいでしょう。しかし、一都道府県に一人の婦人少年室長がおって、あれだけの仕事をなさっておったら、五等級で遇するというのでは僕は適当でないと思うのですがね。大臣のお考えを一つ承わりたいと思います。
  231. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 非常にいいところを御指摘下さったと思うのでありまして、私どもも、地方に出ますときに、婦人少年室の話を聞きまして、なかなか涙ぐましい活動をしておっていただくのでありまして、そういうときにはいつも、今度は一つ、予算編成のときには、婦人少年室の予算をできるだけ増額しようというふうな考えで帰ってくるのでありますが、いよいよ予算編成になりますというと、なかなかわれわれの力及ばずして、思うように参りませんが、地方の婦人少年室も、やはり非常に大事な仕事をしているのでありまして、御指摘のように、将来ともこの内容を充実し、待遇もよくするように努力を続けていきたいとこう思っております。
  232. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 婦人の経済的、社会的、地位の向上から、また、婦人労働者の保健、労働条件の整備等から申しても、非常にこの仕事の内容は広範で、大事なことなんで、しかも影響力は大きいし、ずいぶん成果を上げているわけですから、十分一つ配慮をしていただきたいということを特に要望申し上げておきます。  続いては、職業安定行政の件ですが、これは、先般親委員会でもちょっと伺ったのですが、私自身、自分に直接関係のあるところが現実にあるものだから、少し身にこたえているのであります。職業安定所から末端は分室になると、分室に一人か二人しかいなくて、実際は庁舎から人件費まで自治体が持って、にもかかわらず、失業保険なんか受け取るときには、汽車、バス賃を払って隣町に行かなければならぬということでは困ると思うのですね。いつか私は労働省に行って、大臣の部下の人に承わったら、全国にそんなのが百人あるということですね。だから、これを末端のサービス行政機関として形を整えるのには、定員もふやしてもらわなければならぬ。今のままではなかなかやれないのだ、やる必要はあると認めながら、なかなかやれないのだということをお宅の公務員の方から承わったのですがね。この前、親委員会でああいう御答弁があったわけですが、所管局長から、具体的にどうされるのか、やや詳細に承わっておきたいと思います。
  233. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 現在、今先生のお話のように、安定所の本所というのは四百二十六、出張所は、労働出張所を入れまして百四十四、分庁舎が百四であります。ところで、その分庁舎を最初置きましたのは、日雇失業保険を施行いたしましたときに、その安定所の所在地の町村でなければ日雇健康保険の適用にならないということがございました。当時すでに失業対策事業が始まっておりまして、失業対策事業がこういうところで行われる場合に、日雇失業保険を受けられないのじゃ気の毒だというようなことで、地元の非常な要望もございまして、分室、分庁舎という形で置いなのが初まりでございます。その後の事情を見ますと、失業対策事業も非常に方々で施行されるようになり、一方学生の問題、これの就職あっせんの問題、あるいは非常に地理的に不便だということで、そういう分庁舎の設置の要望が非常に強くございました。しかしながら、これを作りますと、どうしても人が第一必要でございます。特に失業保険その他の金を扱うということになりますと、どうしても人をここに常駐させなければならないというような形で、われわれとしては、人間を急速にふやすということもなかなか困難になりましたので、失業保険その他の関係におきましては、いわゆる巡回相談所ということでやっておったわけでございます。ただ、地元の非常に要望の強い所で、とにかく庁舎も何とか自分の所を使ってもらっていいからというような所で、現在非常に要望もだしがたく、作っていったというのが現在の分庁舎でございます。われわれは、そういう必要性があるのでございますからして、できるだけ早い機会に、こういうのが正式の出張所なりその他になっていくように期待はいたしておるのでございますが、今後もできるだけ努力していきたい、こういうふうに考えております。
  234. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に承わりたいのは、労働省地方官署の一般職の職員の中で、例の地方自治法附則第八条による定員ですね。これが七百三十九人地方官署にあるということがこの予算書に出ているわけですが、これは大臣、地方公務員として地方自治体の方に移譲するわけには参りませんか。ということは、身分はこうなっておって、指導監督を自治体の首長がやっておるわけで、おそらく私は、あの自治体側も引き受けるのじゃないかと思うのですがね。むしろ地方自治法附則第八条による定員というのは、お宅から手放して、地方公共団体の方に移譲したらいかがかと思うのですが、どういう御見解でしょうか。
  235. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 現在労働省関係で、附則八条の定員がございますのは、職業安定関係の、地方でいえば職業安定課、失業保険課でございますが、第一線の職業安定所の職員、これは全部労働事務官ということになっておるわけでございます。そこで、職業安定行政につきましては、ILOの条約にもありますように、わが国も批准いたしておりますが、職業安定制度に関する条約、これに基きましてやっておる関係上、国家の一本の機関としてやるのだと、こういうことになっておるわけであります。ただ、現状で、これを別の機関を中間に作るということは、いたずらに複雑にするということで、職業安定法におきまして、都道府県知事に安定所に対する指導監督ということを委任してございます。しかしながら、人事権は、全部国家公務員でございますために、国家公務員としてやると、こういうことになっておる関係もございまして、現在地方の職業安定課の職員、失業保険課の職員は、国家事務といたしまして、国家公務員となっておるわけでございます。先生のお話のようないろいろな議論も聞きますけれども、現在のとろでは、やむを得ないと考えております。
  236. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 安定業務について、国際条約等のことは今申し上げた通りでありますが、そういうことで、現実に地方自治体とのつながりがきわめて密接でありますので、私ども、地方に行きましても、よくただいまのようなお話を承わるのでありますが、一辺よく政府部内で相談をしてみたいと思っております。
  237. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長さんの言われたこともわからぬではないけれども、僕は、今の実情がベストだと思いませんね。これは、労働省と地方と十分意見の交換をして、検討していただきたいと思う。  最後にお伺いするのは、冒頭に触れた点に返るのですが、労働省所管予算規模というものは、もう少し変ってしかるべきだと思うのですがね。それは、日本の国家予算の性格にも影響を及ぼしてくると思うのですが、そういう角度から、来年あたり少し抜本的な、一つ規模の拡大へと性格がえしていただかなければならぬ。その一つの問題点について取り上げられることは、そのときの経済状態にもよりますけれども、いわゆる失業対策事業費の補助ですね。この失業対策事業というのはだんだんと改善されて、特別失業対策事業というものも行われるようになって、事業効果の高い方面に向けられるようになった。これは非常に進歩だと思うのですがね。さらに今度、揮発油税財源による特別失業対策、道路事業費という項目もあるわけでして、こういう方面も少し飛躍的に増額してしかるべきじゃないか必要じゃないか、と思うのですね。それを増額することによって、労働省所管予算規模というものも、現在よりは私はもう少し適正なものになってくるのじゃないかと思うのですがね。若干押えられ過ぎているのではないかという感じを持つのですが、労働大臣、どういうお考えでいらっしゃるでしょうか。今後いかように推進して参られようとするのか。最後に御所見を賜わりたいと思います。
  238. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 失対事業につきましては、事業の性質は、やはり私どもとしては、どこまでもこれは臨時的なものである方が望ましいことである、こう考えております。そうしていかにも日雇い業というふうなものがあたかも職業化するようなことは不健全な状態だ、これをなるべく早く解消することが望ましいのでありますが、現実の姿は、矢嶋さん御承知のようなところであります。そこで、一般失対その他経済効果を上げるものに分けまして、その方に重点的に仕事をやっていく。しかしながら、ここしばらく生産年令人口も増加いたして参り、それに従って、われわれの期待いたしておる雇用政策が成功するにいたしましても、やはり失対事業というものは姿を消すわけにいかない。従って、そういう角度から考えますというと、やはりその面に相当金額の予算が増額されるということは、経済効果を上げる仕事をよけいにやるということを期待する以上は、やはり当然望ましいことに、なると思います。従って、その他につきましても、労働行政というものは政策の中の大きなウエートを占めるのでありますから、われわれも、お説のように、労働省予算がもっと増額され、そうして労働行政に遺漏なきを期するようにだんだんと努めて参りたい。この点は全く御同感であります。    〔主査代理館哲二君退席、主査着席〕
  239. 矢嶋三義

    主査矢嶋三義君) 本日の労働省所管関係の審議はこの程度にとどめ、残余は明日審議をいたします。  本分科会第一日に申し上げましたように、二十六日は、大蔵、文部、厚生、労働関係で質疑漏れのあった点並びに委員の御都合で質問の機会がなかった人のために備えて、審議することになっております。しかし、過去三日間に審議した件との重複した質問は許しません。明日四省の大臣並びに政府委員に御出席いただいて、午前中に審議を終りたいと主査は考えております。残余の質問がなかったならばそれで終りますし、ありまするならば、午前中で終了いたしたい。そうして午後親委員会主査報告に臨みたいと思っておりますので、各委員並びに政府委員の皆様方は、さように御了承おき願いたいと思います。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時三十一分散会