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坂本昭君
大臣がほんとうにこの厚生行政を伸ばされるという強い決意のもとにいろいろなされていきます場合には、われわれとしてもよく理解できる点がふえると思うのです。ところが、現実の面でみますというと、たとえば今度の定員の改訂につきましても、看護基準の
問題あたり、非常に大事なこの問題が私は等閑に付せられているのではないかと思うのであります。で、
医務局長に、これはかなり専門的になりますから伺いますが、
大臣も一つよく聞いて理解をしていただきたいと思うのです。現在の医療法施行規則によるところの看護婦の定員というのは、入院患者四人に対して一人。これができたいきさつは、私も当時
療養所におりましたからよく知っておりますが、結局当時の看護婦の実員からさかのぼって、患者四人に看護婦一人ではとうてい足りぬけれども、理想の案を作ったところで看護婦がいないということで、四人に一人という格好で、一応この施行規則というものができていったのであります。ところが、当時
アメリカの方では、
日本の
病院というものはあまりに中世紀的だ、ホスピタルというのは、あれはホテルと大体同義語なんだそうですね。もっとホテル的な
病院にしなくちゃいけないということは、非常によい要求だと、非常によい示唆を与えてくれたと思います。その点は、私は
アメリカに対しては、その点だけは敬意を表しています。ところが、実際現在は、看護婦というものは三交代勤務なんです。だから四人に対して一人の看護婦の配置ではなくて、三交代ですから、十二ベットに一人の割合ということになるわけです。でありますので、これは
医務局長の
所管しておられる
病院の中、たとえばこの間衆議院でも見に行きました世田谷の
病院の
実情をみますと、総合病棟で二十九ベット、二十九ベットに対して看護婦が七名、婦長を含めて七名、七名の中から二名の夜勤者を除くと五名の日勤なります。その中から週休の者が一、二名いる、そうすると日勤は三、四名になる、それに婦長が含まれている、そうしてこれは病棟の管理業務に当る、従って二十九ベットに対して三名の看護婦しか看護の実際の仕事をしない。場合によると二人の看護婦で当るというようなことになって参るわけです。ですからここに大きな問題が起ってくるので、患者さんの側からすればこの世田谷
病院は完全看護です。いわゆる完全看護という言葉は
世界中でどこも使っているところはないのです。不完全だから完全看護という言葉を使っている、患者の側から言えば完全看護だけれども、付き添いをつけなければならぬ、それから完全看護だけれども九点加算される、つまりサービスは悪くて不完全な看護をしながら、国は九点のもうけを取っているわけです。世田谷ではたしか一日に一万円ぐらいもうかっているはずです。まことにけしからぬ。一方看護婦の側から言えば、二十九ベットに対して三名で働くということになると、休みをとることもできない、だから一カ月無休で働かなければならないという場合があるし、一年間の有給休暇の二十日間もとることはできない、私自身
療養所におって、二十日間の有給休暇を一日もとったことはなかったのです。そういうふうなまことに過重な労働をわれわれは負わされている、これを外国を私自身見聞したところを見ますと、たとえばヘルシンキ辺り五百ベットの産院がありますが、横山先生も御存じだと思いますが、五百ベッドの産院に五百人の看護婦がいる、あるいは
アメリカのコロムビア大学の付属
病院、
ニューヨークにあります。これは三十ベットを一病棟として、その一つの病棟に対する看護婦が十名、看護助手が十二名、合計二十二名、
日本の場合の三倍の看護力を持っている、さらにいろいろな薬を運んだりするのはメッセンヂャーボーイがおって運ぶ、注射などいうものは病棟看護婦以外のシステムで注射に当る。それからさらに病棟によってはパートタイムで雇われている人もある。結局
日本の四ないし五倍の看護力を持っているのです。去年北京の市立
病院を見ました。向うの定員は患者一に対して一・一、五百ベットに対して五百五十の職員、これに医師が百、それから看護婦が二百五十。
日本の場合実にひどいところの看護婦の定員なんです。そうしてしかも今度看護の基準を作って、その基準をだれが作ったかというと、保険局が作って、点数加算のために作って
医務局の方では、私から言わせれば関知しておらぬ、そういうことで
日本の看護という問題が行われている。そうしてそういう中で今度の定員の改訂というようなことも行われている、で、これは非常に細かいようなことですけれども、
日本の厚生行政の基本にこういうものがある、前に
昭和二十九年に職員の定数配付について一回基準ができたことがあります。この基準というものは、もうこれは聞いておいていただくと、全く外国人が聞いたら吹き出すだろうと思います。たとえば医者の定員はどういうふうにしてきめるかというと、
国立病院の場合ですが、各科ごとに外来患者数を二・五で割る、かりに五十人外来があれば二・五で割って二十になる、耳鼻科とか眼科ですと、外来を五で割ります。割って出た答えに入院の患者の数を加えて十七で割る。それが医者の定員なんです。こんなむずかしい計算をやっている国は全
世界中
日本意外どこにもないです。結核の
療養所については、入院患者四十人に対して一人という医者の定員を作りました。それから今度の看護婦については、国立の結核
療養所については、患者六・六人に対して一人、そのほかこまかいいろいろなことがまだついておりますが、特にはなはだけしからんのは、看護婦の生徒、あるいは准看護婦養成所の生徒、これもまたとえば結核
療養所の場合は、准看護生徒十人に対して一人を正看とみなして、看護婦の総数から控除する。こういうふうなことで、
昭和二十九年に基準ができた。今度もやはりそういう基準で、
大臣の言われるアンバランスを修正しようというのですね。ところが私はこのアンバランスを修正する前に、空床をなくするとか、
病院の
内容をよくするとか、
国民皆保険に沿ったところの実をあげるということが大事だと思う。今度の基準のこまかいことについて、私は申し上げませんが、いろいろと各院長さん、所長さんが言われることを私聞いてみましても、もっともだと思う点が数点あります。それはいろいろな手術の件数によって定数をきめていく。ところが手術にはピンからキリまであるのですよ。簡単に膿をはねる手術、骨をとる胸郭整形術もあれば、骨を取って中の肺を取る肺切除術というのもある。そういう簡単から複雑、いろいろなものをみんな十ぱ一からげに、同じような件数として勘定している。それから今度の改訂の基準でいきますと、事務の職員がふえている。看護婦が減っている。一体
療養所で何をするか。
療養所というのは事務をとるところではなくて、患者をなおすところです。そういう基本的な観念が欠けている。それから保清婦ですね。小使い、掃除やったりする保清婦、こういう人たちが看護要員、看護の数の中に入ってきている、看護というものは、ちゃんと資格を持った人がやるのが看護であって、お掃除をする人たちまで看護要員の中に入れたら困る。
アメリカの場合だったらはっきり出してしまっている、というのはなぜこういうことをしたかというと、ほんとうに
病院療養所が、いかに患者にサービスをしたらいいかという、下からの積み上げ積み重ねのもとに今度の計画ができていない、そういうこと。さらに重症というものについては、安静度一度だけしかとっていない。実際には安静度一度、二度、三度くらいまでは似たようなものです。それを安静度一度だけでやっている。それから今度は言葉にとらわれて、カリエス、カリエスになるというと、中には重いものもあれば軽いものもある。村山の
療養所の場合は軽い人もあるけれども、ここなどはふえているのです、看護婦が。それからさらに問題は、今まで、この数年のところ、国立の
病院、
療養所で、特に
療養所では欠員が出ている。これは御
承知の
通り結婚ブームで、なかなか最近看護婦さんが減ってくるらしい、欠員の補充をやっていない。今度の
予算書を見ますと、これに数が出ておりますね。出ておりますが、一体この数は相当欠員があるのじゃないかと思う。一体欠員の補充をやらないで一体
予算をどうしているか、以上この看護についての基本的な、今幾つか問題あげましたが、それについてできたら簡潔にその一つ一つについて
医務局長から御返答していただきたいと思います。