運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-03-24 第31回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十四日(火曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    主査      小柳 牧衞君    副主査            山田 節男君    委員            石坂 豊一君            木暮武太夫君            堀木 鎌三君            高田なほ子君   国務大臣    法 務 大 臣 愛知 揆一君   政府委員    法務大臣官房経    理部長     大澤 一郎君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省保護局長 福原 忠男君   —————————————    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  横田 正俊君    最高裁判所長官    代理者    (人事局長)  守田  直君    最高裁判所長官    代理者    (経理局長)  栗本 一夫君   説明員    公安調査庁総務    部長      宮下 明義君    会計検査院事務    総長      小峰 保栄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  まず、本日以後の当分科会の日程についてお諮りいたします。本日は、午前に会計検査院所管の審査を行い、なお時間に余裕が生じましたら直ちに法務省所管を引き続いて審査し、午後法務省及び裁判所、二十五日は内閣、総理府、二十六日は皇室費保留部分質疑を行い、当日中に主査報告を終了することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  4. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) それでは、昭和三十四年度総予算会計検査院所管を議題といたします。  会計検査院当局より説明を願います。
  5. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 会計検査院事務総長でございます。会計検査院所管昭和三十四年度一般会計歳出予算要求額は五億七千四百六十三万九千円でございまして、これは会計検査院憲法第九十条の規定によりまして、国の収入支出決算検査確認するため、常時会計検査を行い、会計経理監督し、その適正を期し、かつ是正を図る等のため必要な経費でございます。  今要求額の主なものについて申し上げますと、第一に人件費でございますが、四億六千八百三十七万円を計上いたしましたが、これは職員千百七十八人分の給与、手当等でございまして、予算総額に対しまして八一%に当っております。  第二が検査旅費として六千八百十二万円を計上いたしましたが、これは各省各庁から提出されます書類検査と併行いたしまして職員現地に派遣し、実地について検査をするために必要な経費であります。  第三が外国旅費でございます。これは会計検査院といたしましては初めて予算に計上したものでございますが、二百四十三万二千円でございます。本年五月のブラジルで開催されます第三回国際最高会計検査機関会議に出席するほか、現地実地検査を執行するために計上したわけでございます。院長を派遣する予定になっております。  第四が物件費として三千三百九十六万九千円を計上いたしましたが、これは事務上必要な備品、消耗品印刷費及び各所修繕等に必要な経費でございます。  次に、ただいま申し上げました三十四年度歳出予算要求額五億七千四百六十三万九千円を、前年度予算額五億三千三百八十万九千円に比較いたしますと、四千八十三万円の増加となっておりますが、その増加のおもなものは、人件費で四千二十九万六千円、検査旅費で三百万円、外国旅費で二百四十三万二千円でありまして、減額となりましたものは、物件費その他で四百八十九万八千円でありまして、これを差し引きいたしますと、前申し上げましたように四千八十三万円の増加となる次第でございます。  以上、はなはだ簡単でありますが、会計検査院所管昭和三十四年度歳出予算要求額の概要の説明を終ります。  なお詳細につきましては、御質問がありましたらお答え申し上げますか、何とぞ御審議のほどをお願い申し上げます。
  6. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 山田節男

    山田節男君 この会計検査院の来年度の予算は、今年度に比較して約四千万円の増加でありますが、これは、一般各省の来年度の予算増加額等の比率からいって非常に少いわけです。非常に謙遜な予算だと思うのですが、これは前にも参議院決算委員会でしばしば問題にした点なんですけれども、これは、ことに農林省建設省は、検査官の数、旅費の制限というようなことで、検査件数が全体の一〇%か一五%というように聞いている。この予算で、ことに建設省農林省というような方面検査件数が十分に行われ得るものかどうか、その点をまずお伺いしたい。
  8. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 会計検査院は、実は相当予算要求でも、山田先生がおっしゃるように、毎年自粛して出してはおるわけでございます。実地検査旅費も毎年少しずつふえておりますが、一〇〇%やるというほどはいかないのであります。今御指摘がございました農林省建設省工事現場というようなものも、大体毎年一五%くらいでございます。八万から九万ございますが、そのうち検査の現在の能力でやり得ますものが一万足らず現場検査で大体農林建設、運輸、合せまして一万足らずというのが現状でございますしかしながら、問題のありそうな所をよって、長年の経験であまりから鉄砲を打たぬようなあれはできるわけでございます。問題のありそうな所をよってやっているつもりでおりますが、年々非常によくなって参りまして、これは昭和二十五、六年から現場検査にうんと力を注ぎ始めたのでございますが、年々非常によくなっております。昨年あたりも、一昨年、一昨昨年に比べますと、非常によくなってきておるのが現状でございます。もうこれ以上にそうむやみに現場検査をふやしましても、大したあれはないのじゃないだろうか、当局の自主的な監督に待っていいんじゃないだろうかという段階にきております。それで、大体毎年私どもとしては一万ぐらいの現場検査をやっているわけでございますが、現在のところ、これ以上にふやす必要もないんじゃないだろうか、こう考えておる次第でございます。
  9. 山田節男

    山田節男君 これはかつて参議院決算委員会で特にやかましく言って、監察機構各省ごとに整備しろということを言い、また、一方においては例の建設関係農林関係補助金に対する規正の法律ができて以来、何というか、会計上の批難事項が少くなったということは、これはわれわれも認めているわけです。しかし、会計検査院の本来の任務から言えば、くさい所ばかり行くというのじゃなくて、くさくなくても、とにかくインスペクション、これは、一つ国家行為として会計検査院が独立の立場でやるというのですから、これは各省の、ことに郵政省関係監察機構の実際をいろいろ調べてみると、どうもやはり各省別監察官というのは、やはり自分の所であり、わかるところは非常によくわかるけれども、しかし、それがうっかりしておって、とんでもないことをでかすということが今日もしばしばある。これは、会計検査院批難事項とならなくても、省内の問題として一種の民事、刑事の事件などが間々起きておるわけですね。ですから、これは各省の自主的な監察機構と同時に、やっぱり会計検査院のいわゆる検査というか、インスペクシヨンということは、これはやはりできれば一方的にやるべきだ。それによって一つの、何といいますか、確認というか、アプルーバルを受ければ、各省としては国会に対して決算を出す場合においても、一つ会計上における会計検査院確認があるということで、各省としても平素の監察機構というものに対して、非常に何といいますか、激励を与えるという結果になる。私はこう思うんですね。ですから、そういう点から見て、ここの来年度の予算を見ますと、調査官の数が四百八十三名ですか、これがだいたい主体になるだろうと思う。これだけの人員をもって、今、事務総長が言われたように農林省建設省関係の一割ぐらいしか、一万前後の件数しか検査できないという点に、各省が自粛しているということはこれは事実でしょうけれども、しかし、事前防止という点においたらば、もう少し農林省建設省関係のようなものは、やはり会計検査院が身を入れて、少なくともその五〇%ぐらいは、検査の精密あるいは簡単にやるという差はあっても、私は、会計検査院任務として当然そのぐらいのパーセンテージはやる必要があるのじゃないだろうかと思うんですが、この点どうでしょうね。会計検査院予算という問題を離れて、本来の任務から、そこまでぐらいは行くべきじゃないか。ことに、まだ日本検査官というものは、アメリカなんかのコントローラーなどとは違いまして、とにかく各省にもいわゆるアメリカ式コントローラーというシステムはないと思う。やはり金を出す所と使う所と純然たる別個にやるといういわゆる昔の非常に官僚主義的なやり方で来ておるのですからね。私はそういう方面においても会計検査院がもう少し大胆な予算を取って、それから調査官でも、かつて参議院が非常に激励して人員をふやせというので、若干ふやされたのだろうと思うのですが、わずか五百名足らずでもって、政府関係一般会計特別会計、その他会計検査院として当然会計検査しなければならない分野を見ると、やはり人員が少し少な過ぎる、こういうふうに私は思うのです。そういう点どうですか。
  10. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 今御指摘ございました点でございますが、昭和三十年に、御承知通り山田先生決算委員長のときに非常に御尽力下さいまして、補助金等適正法というものができたわけでございます。鳩山内閣のときでございます。これが非常に威力を発揮しまして、悪いことを平気でやるというような昔の風潮が、まあ現在ではほとんどなくなってしまったというふうに私ども見ております。ミスはございますが、意識的に悪いことをして国の税金をかっぱらおうというようなあれは、まず現在のところはなくなってきているのじゃないだろうか。それから会計検査院機構も、これは山田先生その他の方の御尽力によりまして、昭和三十年に一局増設いたしまして、それまで検査の局が四つだったのでございますが、これが五つになりました。現在はそれがフルに働いております。この会計検査院は一体どのくらいにしたらいいのかという点は、これは相当に大きければ大きいに越したことはないと思いますが、現に外国には万という人数を擁している会計監督機関もございます。先ほどお話がございましたアメリカあたりも一万五千くらいの人数を擁していた時代もございますが、現在のところでは六千人足らずに減らしております。そうしてこれは主として各省自治監督自体監督ということを強化して減らしているわけでございますが、日本でも各省の目ざめ方と申しますか、自体監査というのを逐次強化、充実されているように思うのであります。私どもとしては、そうむやみに大きな会計検査院というものを持つのがいいかどうかという点については、これは相当に疑問があるのじゃないだろうか、こう思っております。検査報告に掲げまして国会に毎年御報告しております不当事項、こういうふうなものはゼロになるのが当りまえなんでありまして、ゼロになっても決して会計検査院というものは要らないわけじゃないのでありまして、先ほどお話通りに、やはり会計検査院が目を光らせていることによって未然に防ぐという効果は非常に大きい。各国ともにそういうことをねらって会計監督機関というのは作っておるのでありますが、だんだん不当事項というようなものも減少して参ります現在、そうむやみに今の会計検査院を大きくするということが得策かどうかという点については、私どもとしては相当に実は疑問を持っておるわけであります。私ども一生懸命にやれば、今程度人数でも相当におもしとしての効果を発揮するのじゃないだろうかと、こう考えておる次第でございます。
  11. 山田節男

    山田節男君 これは御承知のように戦前旧憲法下では、会計検査院は天皇の直属機関であった。戦後はどちらかといえば、むしろ国会との関係が非常に密接になってきて、会計検査院のいわゆる民衆化というか、民主化というか、検査の態度というものがやはり昔と違って、検察庁的な部門も見なくちゃならぬだろうけれども、同時に指導ですね、これはやっぱり会計事項の、何といいますか、科学化といいますか、そういう点が、日本はまだ何といっても大福帳的な点があると思うのですね。そういう点が、やはり指導監督というようなことは、会計検査院としてはことに今日の会計検査院の性格からいえば、重要な任務だと思うのですね。ですから私ども機械化を目ざしてやるというのではなくして全般的に目を光らして、そうして検査を受けて確認されたものは、それでもう責任を解除されるというか、自分のやった正しいということを公けの機関によって証明されたという、これは私は非常に各省会計当局者にとっては一つの誇りと安心感を与えると思うのですね。そういう意味の会計検査院のファンクションといいますか、そういう職能をもう少し発揮するのが、今日の新しい憲法のもとにおいては、会計検査院として、かつてよりも重要視すべきものじゃないか。これは私の持論であり、また会計検査院としても大体そういう方向に向っておられるのじゃないか、こういうふうに私は見ておるわけであります。ですから、これは少数精鋭主義でいくということももちろん非常に重要なことでありまして、またそういう方針はきわめて現実的であっていいのですけれども、しかし、この検査という自体意義は、もう少し社会的な意義を持たせる、こういう点から、ちょっと私はどうも今の会計検査院が非常に保守的な——私は今小峰事務総長の言われるのはごもっともだけれども、われわれから言わせれば、会計検査院のそういう職能をもう少し強化する必要があるのではないか、それによって国家的ないわゆる財政上の非常な能率的な使用と、もちろん不正な使用をディスカバリーするということから見れば、たとえば十億円の会計予算になっても、国という立場から見れば、軽視しているのではないか、こういう私は見方をしているのであります。ですからそういう質問を申し上げたということを御了承願いたいと思います。  それからもう一つは、従来会計検査院は五百名足らず調査官主体になって現場に行って調べる。もちろんこれは現場へ行って調べなくちゃならぬことでありますけれども、大体の傾向からいうと、やはり会計検査院検査は足で検査をする、これは非常に尊いことであり、調査官にとっては大へんなことでありますけれども、これはどうしても必要なことでありますけれども、私はかつても申しましたように検査事項と言うのは、各省の簿記なりあるいはことに領収書、こういったようなものは、もう少し整理して、いわゆる会計検査の作業上においてもう少し機械化する、いわゆるパンチ・システム、今日のオートメーション化で、電子計算機が発達してきて、今日ワシントンの郵便局あたりはほとんどボタン・システムですね、郵便のスタンプから各地方に分けることは全部オートメーションでやっている。ですから、こういったような科学技術の進歩というものを、会計検査院のそういう検査という一つ職能に対して、私は応用できる部面が非常に多いのじゃないだろうか、これは私は部外者として、しろうとですけれども、そういうことを考えるわけですけれども、一体この会計検査院のそういったような方面会計検査を、迅速に、正確に、能率を上げるためには、各省会計制度、あるいはことに領収書をもう少し何とか均一化して、会計検査院として検査をやるのに能率を上げるということは考えられないかと思う。これはかつても私はそういうことを申し上げたことがあると思いますが、こういう点に関してのまあ関心を持たれている程度なり、あるいはこういうことについては、私は、会計検査院としてはむしろ海外のそういういわゆるオートメーション化というと語弊があるが、機械化するというような、実際それをやっている国があるのじゃないかと思いますが、そういう点どうですか。
  12. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 会計検査院の現在の機構が御不満という点は重々前から承わっているのでありますが、会計検査院機構を一体どのくらいにしたらいいかという点は、なかなかこれは問題があるかと思うのでありますが、今世界じゅうで一番大きな会計監督機関といいますと、一万二千人くらいを擁しているインドが一番大きいのであります。それから次が先ほど申し上げましたアメリカでございます。六千人ちょっとと現在は聞いております。その次がイタリアが千四百人くらいでございます。その次が日本の、今の千百数十名というのが日本でございます。あとはもうがたっと落ちまして、三、四百人になってしまう会計監督機関が多いのであります。一体どのくらいにしたらいいかという点は、なかなか問題があると思いますが、私どもとしては、いろいろ考えてみますと、やはり今の人数程度で、要するにわれわれが一生懸命やっていくということが主体じゃないかと思うのであります。ただ、会計監督機関というのは、これは一般の官庁のような純然たるピラミッド型ではこれはいかぬのでありまして、どうしても高級職員を多くしないといかぬ、こういうことで、ことしも実は先ほど五百人足らずというお話でございましたが、九十人余り調査官というものを増員いたしまして、四百九十人ばかりの調査官主体になって書面検査をし、実地検査をやっていくということを考えているわけであります。中級以上の職員を増員することによって、実質的な検査効果を上げていこうというのが、現在私たちの考えているところでございます。  それから会計経理あるいは検査機械化というお話でございますが、これは実は依然として大福帳式経理がかなり各省の間で行われておるわけであります。これはアメリカあたりを見ますと、実に画一的な、たとえば領収書にいたしましてもきちっと同じような大きさで、同じような紙を使いまして、どこの役所でも同じようなものを会計検査院に出しているというのが十年以上前からの現状でございます。日本ではなかなかそうならぬ。またこれをやるためには非常な経費も要るし、これはいろいろの問題が伴うわけであります。会計検査院といたしましても、計算書などは規格を統一しておりますが、領収書とか請求書とか、こういうのはある程度やっぱりどうも各省にまかせざるを得ない。そこで会計検査院には、やはり不ぞろいな証拠書類がたくさんに出ているのが現状でございます。何とか同じような型に統一してもらいたいのでありますが、簡単に一朝一夕のことではできないのであります。検査の方といたしましても、先ほどお話がございましたが、もうすでに外国では電子計算機を使っているような時代でございます。会計監督機関でも電気計算機——一昨年くらいからたしか電気計算機を全部アメリカ会計検査院ではそろえております。それで仕事をやっているのでありますが、日本機構と違いまして、政府小切手集計とか確認とかいうようなことを、最終的に会計検査院がやるというような機構になっております。日本ではまだそういうあれはとっておらぬのであります。日本銀行が全部やっておるわけでありますが、アメリカでは小切手集計計算、現在では電気計算機からさらに進んで電子計算機を使っているというような状態でありまして、従って、検査面における機械化という点も、日本とは比べものにならぬくらい進んでいるようであります。日本でも及ばずながら一つ何とかできるだけ手を省こうというので、現在では電気計算機も実は相当備えつけております。昭和二十五年に私はアメリカへ参りまして、そういう状況を見まして帰ってきましてから、逐次そういうものを日本で使うようにと、それまではそろばん一点張りだったのでありますが、なかなかそろばんというのが、大衆化しない。名人芸でないとミスを生ずる、こういうようなことで、電気計算機も現在では九台か十台適当の所に置いて使っておるような状況でございます。それから証拠書類も、これもアメリカではマイクロフィルムを使いまして、非常に少い状態で保存しておるというようなことをやっております。日本でもマイクロフィルムというものを数年前から実は考えておるのでありますが、新聞のようなものをぱっととるには非常に経済的なのであります。一枚のフィルムにたくさんのボリュームを仕込むというのに非常に経済的でございますけれども証拠書類のように一枚の紙とか領収書一つとか請求書一つとかいうような場合には、これのマイクロフィルムを使いますと非常に金がかかるのであります。そこでちゅうちょしていたのでありますが、ことしは幸いに予算通りまして、マイクロフィルム機械ワンセット、それを用意しました。これはむしろ相手方の手数を軽減するため、証拠書類の写しを検査上の必要で要求する機会が非常に多いのであります。これをみんな写してよこすというようなことを軽減するために、こちらでマイクロフィルムセットを持って参りまして、写して帰ってくる、こういうような方向に利用したいというので、ことしの予算の中にも百万円ばかりでございますけれども、そういうようなこともお願いしてございます。逐次検査機械化ということにつきましては、私どもとしてはとり入れたいということを考えておる次第でございます。
  13. 山田節男

    山田節男君 それからちょっと話が違いますけれども、たとえばフィリピンそれからインドネシアビルマ、こういったような国に対して、日本賠償を払うという義務があるのですが、会計検査院として、賠償に対するいろいろスキャンダルがあることが国会でも問題になった。これは相手方の問題は別問題として、こちらからの賠償の支払いといいますか、これは物にあるいは金に、いろいろなサービスに、いろいろな方法があるだろうと思うのですがね、ああいったようなものは会計検査院検査事項としては、これは現行法ではできないのか。それから何かこういう点を、会計検査院の権限につければできるというような点があれば、それを一つ知らしていただきたいと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  14. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 今のお話は、インドネシアフィリピンビルマあたり賠償の問題でございますが、これは実は向うのミッションとこちらの業者との直接契約というのが今までの建前であるようであります。それで、直接契約をしたものにつきまして、日本政府認証を与える。そうしてその一億ドルとかあるいは五千万ドルとかきまっているワクから逐次はずして金を払っていく、こういう建前になっております。政府としては、ただ、ミッション業者との間の契約が、賠償の本旨にかなっていればこれに認証を与える、こういう関係にあるわけであります。私どもとしましても、どうも契約内容まではちょっと立ち入れないというのが現状であります。合法的に結ばれました契約に従って、ワク外で金を払っていけば、その金を払うということに対してはもちろんこれは会計検査の対象になりますが、契約内容契約が妥当であるかあるいは値段が適当か、こういうような点にまでは、現在までの一これからどうなるかわかりませんが、現在までの賠償状況を見ますと、立ち入れないというのが現状でございます。いろいろ新聞にも出ますし、私どもとしては一体どの程度まで立ち入っていいのかということは、十分に検討はしているのでございますが、今までのところ、ビルマにいたしましてもインドネシアにいたしましても、フィリピンにしましても、どうも今の程度しか検査院としては立ち入れない。具体的に申しますと、内容が妥当であるかどうか、あるいは価格が高いか安いかというような点までは立ち入れない、こういうふうに考えている次第でございます。
  15. 山田節男

    山田節男君 そうすると、大体賠償の物資、サービスは競争入札でやっていると私は思うのですね。ですからこれはやはり受け入れ側の方の政府の代表といいますか、これが大体その入札の本体といいますかね、だけれども、今あなたのおっしゃるのは、そうして日本の支払い義務が生じて金を支払いますね。何が幾らという程度のことは、会計検査院としてはわかり得るのですか。
  16. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 今お話の、何に、どこの業者に幾ら払った、これはわかります。ですが、それが先ほど申し上げましたように、合法的に結ばれている限り、一体高いとか安いとか、あるいはそういうものは払うのが不当だとか、こういうことは、ちょっと検査院としてはとやかく言えないような現状になっているわけです。
  17. 山田節男

    山田節男君 ですから、そういう場合は、むしろ賠償の受け入れ側の会計検査の対象になればなるべきものである。ただ私の言うのは、そうしますと、ミッションの方の要求によってこれこれのものについてこれだけの金を払えという支払い命令か支払い要求か知りませんけれども、そういうものに従って政府が金を出すと、こういうわけなんですね。それですから、もう一ぺん繰り返しますが、たとえば船何ばい、フィリピンで船何ばいのためにこれこれの金を日本政府が払ったということまではわかるわけですね。あらゆる場合に……。
  18. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 今おっしゃる程度はわかるわけであります。これは外務省の方から通告がございます。
  19. 山田節男

    山田節男君 それから今度の五月にブラジルで第三回の国際最高会計検査機関会議、これにかねて会計検査事項があるというので、海外移住振興会社、1これは私ちょっと関係があっていろいろ私も調べておるわけですが、これはブラジル、それからボリビア、パラグァイ等に関係しているわけですね。ブラジル政府、パラグァイ、それからボリビアにも海外移住振興会社のあれがあるように私は思うのです。ですからこういったような、ことに移住振興会社のように数カ国にわたっての政府の代行機関のような、これは向うでは法人組織であって、これはサンパウロでやっているようなものですが、こういったような検査は、移住振興会社ばかりではないだろう。たとえばアラスカ・パルプ、これは公社じゃありませんからしようがない。たとえば輸出入銀行であるとか、あるいは外資を導入しているいわゆる公社、たとえば国鉄であるとか、電源開発であるとか、こういったものに対する、何といいますか、これは国内における会計検査事項というよりも、国内の会計検査検査する前提としての海外検査というようなものが必要な事態があるのじゃないかと思うのですね。これはかつて病変米の問題で会計検査の方がビルマかタイに行かれたことも、これは初めての試みであったけれども、これは相当効果があったと思います。政治的な意味におきましてもわれわれが予期した効果も上げたと確信しているわけです。ですから、今回やはりこういうブラジル海外移住振興会社が国会で問題になった経緯の内容の問題ですが、非常にいい機会ですから、こういったものは初めて予算を計上されたといいますけれども、やはり年々ある程度の、数百万円の海外検査旅費というものは、これは慣行としていいのじゃないかと思いますね。ですから今回のブラジルに対する会議の出張旅費として二百何十万円ですか要求しておりますけれども、これはむしろ私としては大体翌年度の検査状況を予想されて、一つの慣行としてそういったような海外検査旅費というものは計上されてしかるべきものじゃないかと思いますね。この点についてはどうですか。
  20. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 会計検査院外国出張でございますが、外国で使っている国費というのは、相当実は大きいわけでございます。今までも、私ども毎年実は外国出張旅費を、たとえば在外公館の検査など要求しているのでありますが、なかなかこれは通らない。かつて通ったことはないのであります。この前山田先生がおっしゃるように、病変米のときには山田先生の御甚力に、叱咤激励というふうな印象さえ私ども実は受けているのでありますが、それによりまして、当時ビルマ、タイに出張いたしまして、非常な成果を上げたわけでございます。その後も毎年実は要求しているのでありますが、さっぱり通らない。それでことしは、会議なんといいますと割合に通りやすいのであります、第三回の国際最高会計検査機関会議がブラジルでございまして、これで検査の分を実はからみ合せまして、検査だけ出しますとカットされますから、カットされないようにからみ合せまして、実は旅費要求したわけであります。その結果、今御指摘のありました移民関係の会社の検査もできるような旅費を実はもらえたわけであります。全体としてばっさり削られまして、日数としては非常に不十分でございますが、ともかくもことしは会議に列席する以外に、今の移民会社関係現地状況も十分に見てくるというだけの旅費が、わずかでございますが、実はこの中に入っておるわけでございます。院長に行ってもらうつもりでおりますが、一応現地状況というのがわかるわけです。来年もまた外国の各地の検査というのは旅費要求するつもりでおりますが、なかなか外国検査旅費というのは通りにくい状況でございまして、今年を橋頭堡として、来年もぜひ強く要求したい、こう思っておる次第でございます。
  21. 山田節男

    山田節男君 最後に、今の海外の会計検査ですが、在外公館がこれほど多数に上っておりますね。それからインド初め在外公館の増営、増築——建築ですね、こういうものをやっておるわけです。この在外公館の予算の不当な支出というようなことは、これは私はきわめて少いんじゃないか。むしろ逆に私ども幾度も海外に行って、在外公館にやっかいになって感じることですが、非常に財政的に困っておる。全く身銭を切っている生活を外交官はやっておる、そういうことの実態。それから、これは在外公館の諸君が外務省に言っても、やはり本省における大蔵省との予算の折衝上増額してくれない。どうしても国会議員を通じて何とか政治的に増額してもらいたいということを、われわれ海外に行くたび要求を受けるわけです。ですから、そういう意味においてもやはり在外公館の検査というものは、私はいいと思うのです。ことにこれは定期ではありませんけれども、数年に一回くらい外務省から在外公館の査察使というものを出す。これは主として事務上の監察といいますか、査察という名義で、実際そういうことをやるかどうか、査察使の人柄から見て、実際そういうことをやるかどうかわかりませんが、実際今まで出しておるわけです。査察ということは、同時に会計検査というものに便乗すれば、査察使の一行に加わることも可能だ。ですから、そういうことは三年に一回とかやらないといけないと思うのです。最もいい例が芝のあれは何といいますか、アメリカがアパートを二軒作ったわけです。これが非常にぜいたくだというので、アメリカの、これはやはり上院だったと思いますけれども日本でいえば決算委員とか会計検査官とか、数名あそこに来て、一カ月にわたって日本の請負師とか何から詳細に調査したことがあるのです。ですから政府予算の支出に関する会計検査については、相当海外まで機動性を持つということが、やはり会計検査本来の一つ職能だというくらいにしていかなければいかぬと思うのです。ですから何かの機会にそれを一つの便法とし、慣行とするということが必要なんですね。これは大蔵省に折衝されてもきかないかもしれないけれども、衆参両院の決算委員会においては、少くとも私は了解すると思う。ですからそういう意味においては会計検査院側が国会に対して、そういう一つ陳情なり請願なり、あるいはPRを行なって、やはり海外までも会計検査の機動性を持ち得るということを一つの通念化するという努力が必要だと思うのです。これは要望ですけれども、この点を一つ今年度の予算では間に合いませんが、来年の予算は、事前において国会等に働きかけておく、そういったような会計検査院の海外検査というものを一つの慣行としてやるのだということを、利は確立されることを強く要望しておきます。  これで質問を終ります。
  22. 高田なほ子

    高田なほ子君 二間だけ。国政運営の中で占められる会計検査院の役割というものは非常に重要な役割で、またその成果も私どもいろいろの事実を通して高く評価している。三十四年の決算はまだ報告に至らないわけでありますが、最近に会計検査院の活動の中で特に私がお尋ねしたいのは、中央でも汚職、収賄、買収というようなことで、政治に対する不信感というものは必ずしも薄いとは言えないと思う。こういうような中央の傾向をそのまま地方に受け継いで、地方でもやはりこういう問題は必ずしも減っているとは限らない。従いまして、現在の政治不信の傾向から見て、会計検査院が見た最近の実績の中で、摘出されるような不正事項というものはどのように増減しているのか。これは概数でいいし、概略でいいし、御説明をいただきたいと思うのです。
  23. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 最近の会計検査の結果についてのお尋ねでございますが、これは毎年検査報告で御報告申し上げておりますように、非常に年年減ってきているということが言えるわけでありますが、数を千件とか千五百件とかいいますと、まあいわば鯨も一件ですし、イワシも一件というような集め方でございます。イワシも決してこれは軽視すべきものではございませんが、その大部分を占めるのは補助事業、補助の問題、それから税金の問題、こういうのは数では実は多いのでございます。この方面は、税金はあまり減りませんが、補助事業というようなものは非党な減り方をしております、これも、先ほども、高田先生おいでになる前でしたが、補助金適正化法、会計検査の浸透と当局者の自覚、こういう面で補助事業の方の不正が減ってきている、こういうような話が出たのでありますが、数の方では非常な減り方をしておりますが、ただ鯨級と申しますか、防衛庁のへんてこな問題とか、こういうようなものは実はあまり減らないのであります。数の面ではずっと減っておりますが、ときどきとんでもないひどいものが出るというのが現状である、非常に遺憾でございますが、まだ現状ではそういう傾向にあるわけであります。それから先ほど山田先生からもお話がございましたが、郵政省関係の不正事項というようなものは一向に減らない。これはなかなか会計検査院でも実は見つけられないのでありますが、郵政省当局もなかなかこれを未然に防止するというのは困難だ。郵便局が一万四千も全国にございまして、なかなか未然につかまえるというのはむずかしいわけでございますが、これなんか一向に減らないというのが現状でございます。何とかして私どもこういうものをゼロにしたいと思って努力はしているのでありますが、どうも一向に減ってこない。それから地方公共団体でありますが、これは補助事業については会計検査院検査しておりますが、公共団体プロパーの会計については、会計検査院検査権限が実はないのでございます。これは何とも申し上げかねるわけでございます。まあその辺で……。
  24. 高田なほ子

    高田なほ子君 税金の方の問題なんですが、これは直接会計検査院が触れられる問題かどうかわかりませんが、先般予算委員会で関西の方を視察しましたときに、税金の脱税不正でございますか、これはまた最近やはり大口なものがどんどん残っているというようなお話があったのですがね。これはまた大へん問題になるところで、こういうところはどんなふうにしたら一体防げるのか、従来こういうことは言われておるけれども、なかなか実際には行われないような傾向にあるわけなんですが、会計検査院立場として、今もお話しのように鯨級のものがやはりふえてきているということになれば、やはり税金の面でも鯨級のものが残っていくと言った方がいいと思うのですが、ふえるのじゃなくて、それが見のがされていくというような傾向にあるようにも思われますが、こういう点についてはどんなふうにお考えですか。
  25. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 私先ほど実は鯨級がふえているとは申し上げなかったのでありますが、なかなかこれがなくならないと、こう申し上げたつもりであります。それで、税金の点ですが、実は会計検査院は納税者の方までは調べられない。現在の権限では納税者の方は調べられないのであります。税務署については調べておりますが、税務署について調べた範囲で大きいものがあっても小さいものがあっても、悪いものはみんな検査報告に載せておるんですが、それからさらに進んで納税者の方を調べなければわからないというケースが、御指摘のようなものでは多いのではないかと思いますが、そこまでは実は会計検査院の方では調べかねているわけであります。
  26. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つお尋ねいたしたいことは、これは前回決算委員会でも問題になったところです。それは厚生省関係に不正が多いという問題で、その不正の内容をついていくと、まことに同情すべき不正がございました。これはたとえば生活保護法によって保護を受けている貧困階級の人たちが、ラジオを持っていたというようなことでこれを取り上げて、そしてまあラジオを持っているのに生活保護を受けている、これを見のがしたことは当局者の怠慢ではないかという会計検査院のおしかりが、結局不正という事実になって上ってきておるわけです。で、これは前年度の厚生省の中の不正問題で、会計検査院の方でも特に責任者がおいでになって、この種の不正というものは果して不正に該当するかどうかというようなことが論議になったんですが、結論としては、一応やはり事情というものを酌量しながら、非情にわたらざる範囲内において行政を正しく運営させるというような、ばくとした結論が出てきておる。私はこの結論はぱくとしているけれども、ある意味では正しいのではないかという気もするわけですね。従って、会計検査院が特に生活保護の行使の問題について、どういうような態度をとっていくかということは、相当むずかしい問題だろうと思いますが、この点については、検査院の方々に対して、どういうような御指導をなさっておるのか。ただ、私が言うのを取り違えないでいただきたいのは、どんなにルーズにしてもいいという意味で申し上げているわけではない。ただその限界がなかなかむずかしいので、相当やはりこれはデリケートな人情味も加味された検査というものも、時と場合には必要じゃないかというような意味合いをもっての質問です。
  27. 小峰保栄

    説明員小峰保栄君) 厚生省関係につきましては、実は毎年今の生活保護とかあるいは保育所、こういうようなものが問題になるわけであります。で、高田先生おっしゃる通りに、変な検査をいたしますと、首つりの足をひっぱるような結果になるわけであります。これは厳重に戒めまして、時には若い調査官なんかで、そういうような結果になることを平然と口にするような者もたまにはあるようでございますが、これはどうも何とも……。私どもとしてはもちろん取り上げないのであります。  最近、生活保護の関係で、医療給付を受けるというようなのが、数年前に問題になったことがございます。これなんかも調べてみますと実にひどいのであります。第三国人あたりでたくさんの収入があるのにかかわらず、平気で何かごまかしまして医療給付を受けておる。こういうようなのがヒントになって、東京都関係全部まとめたのでありますが、これも相当な刺激になったと見えまして、その後はだいぶよくなっているようであります。  それから昨年でございましたか、保育所の関係検査報告に載っております。これなんかも非常なあと反発を受けまして、検査院が無理なことを言うというような誤解を受けたのでありますが、これも実はちっとも無理ではなかったんであります。保育料というものを非常に厚生省がむずかしいグレードをつけまして、二十何階級か三十何階級にしておるわけであります。そのために、町村の保育所を運営しておる人は非常なてんてこ舞いをいたしまして、結局みんな貧民階級と同じような保育料を取っていたわけであります。それに調べてみますと、学校の校長さんだとか、あるいは収入役だとか助役だとか、こういうような人がみんな収入を過小申告しておりまして、そうして貧民階級と同じようなあれを受けている。中には料理屋の子供さんもいる。町の有力者がみんな細民級の保育料しか納めない。こういう結果が、実はわかったわけであります。それで会計検査院といたしましては、検査報告にまとめまして批難いたしたわけでありますが、これがかえって変な誤解を受けまして、会計検査院が保育料を高く取るように指導したというような、とんでもない誤解を実は受けたのであります。私どもとしましては一年これらをやりまして、厚生省に、今のこういうようなむずかしい保育料の取り方を改めろと、こういう方向に進んで、一年で批難をやめてしまいまして、現在ではたしか厚生省でそういうむずかしい取り方をやめるという通牒を出したはずであります。それで、これをうんとグレードを少くしまして、町村の係員が簡単に収入判定なんかできるようにして、相当な保育料を納めてもらうというような方向にいったはずでございます。私どもとしましては、決して首つりの足をひっぱるような検査をしている覚えはないのでありますが、とかく厚生省関係につきましては、そういう誤解を受けるという結果になっておるわけでございます。
  28. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは誤解であれば大へんけっこうなんですがね。また先ほどおっしゃったように、収入があるものをごまかして少く保育料を納めるということは、厳にこれはやはり戒めなければならないのです。一万二千円ぐらいの収入のある者が七百円ぐらいの保育料を払うということは、これはずいぶんきついことだと思います。で、まあ検査院とすればどっちの方が調べいいかといえば、一番やはり下の階級の方が調べいいわけですよね。調べいいというよりは、おろおろしちゃっている人の方からいろいろ聞き出すのが聞き出しやすいものですから、まあいろいろ聞いてくることが大へん圧力に感じられるような場合もあるのじゃないかと思うのです。まあ小峰さんのようなお人柄の方は、私の言うことを真に受けられないかもしれませんが、細民階級といっては大へん失礼な申し分でありますけれども、こういう家庭の方というのは、もう役所から調べられたということになると、非常に悲観したりしまして、大へん悲しみを感ずるものだと思うのです。そういうような特に下の階級の人たちに対する取扱いというものは、十分これからも御注意いただいて、単にまあ誤解ということではなくて、一そうこの点について御注意願いたいと思うのですね。それだけでございます。
  29. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) ほかに質疑はございませんか。別に質疑もないようですから、会計検査院質疑はこれをもって終了することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 御異議ないと認め、さように決定いたしました。   ——————————————
  31. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 次に、法務省所管を議題といたします。  法務大臣より説明を求めます。
  32. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 昭和三十四年度法務省所管予算内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。昭和三十四年度の予定経費要求額は、二百六十五億四千百三十一万一千円でございまして、これを前年度の予算額二百四十四億五千二百五十五万五千円に比較いたしますと、二十億八千八百七十五万六千円を増加いたしました。増減の詳細は、別途の資料により御承知願いたいのでございますが、増額分のおもなものは、第一に、人件費関係の十四億八千二百二十六万五千円でございます。これは人事院勧告に基く初任給の引き上げ改定及び昇給昇格等に要する職員俸給等の増加額のほか、期末手当〇・二五カ月分増額支給に要する職員特別手当か増加されたものであります。第二に、刑務所作業費の一億八千二万八千円でございます。これは刑務所収容者に対し作業を行わせるに必要な原材料、機械器具等購入及びその他作業実施に必要な経費でございますが、作業用原材料不足のため、手内職的低率作業に従事する者が多く、職業補導上及び所内の保安上支障を来たしている現状を考慮して、増類いたしたものでございます。  第三に、営繕施設費の一億三千九百二十万八千円でございます。  次に、昭和三十四年度において、新たに増額した経費内容と、おもなる事項の経費について御説明申し上げます。  第一に、外国人登録法に基き、昭和三十四年度は在日外国人の登録証明書の大量切りかえを行う年度に当りますので、それに要する経費として六千七百三十二万二千円を新たに計上いたしました。  第二に、現行不動産登記制度の制度的欠陥を除去し、登記、台帳の二元性に伴い、国及び国民の負担となる二重の手数及び経費を軽減するため、現行の不動産登記制度と土地台帳及び家屋台帳制度とを一元化するとともに、不動産登記簿、土地台帳及び家屋台帳の面積の表示を、昭和四十一年三月三十一日までに、計量法施行法の規定に基いて書きかえる必要がございます。よって、昭和三十四年度は、その第一段階として作業の一部を実施するに当り、これに要する経費として五千四百三十九万七千円を新たに計上いたしました。  第三に、本年四月、六月に実施を予定されておりまする参議院議員の通常選挙並びに都道府県及び市町村の首長及び議会の議員の選挙の公正を期するため、厳正、適切な検察を行う必要がございますので、これに要する経費として九千九百四十四万六千円を新たに計上いたしました。  第四に、有効適切な総合的刑事政策、特に、近代方式に沿った犯罪予防及び犯罪者の更生の施策々樹立するため、犯罪の原因、刑の量定、刑罰の効果、矯正及び保護の技術、犯罪者の社会復帰等に関し、総合的研究を行うに当り、それに要する経費として、研究官等十名を増員するための人件費九カ月分を計上いたしまして四百八十二万五千円を含め、一千二百八十二万五千円を新たに計上いたしました。  以上が、新たに計上いたしました経費の概要でございます。  次に、おもなる事項の経費について概略を御説明申し上げますると、第一に、外国人登録法に基き、在日外国人の登録及び指紋採取の通常事務を処理するために必要な経費といたしまして一億七十六万六千円を前年度に引き続き計上いたしました。  第二に、法務局、地方法務局等におきまして、法令に基く登記、台帳、供託、戸籍等の事務を処理するために必要な経費といたしまして四億四百十三万二千円を、前年度に引き続き計上いたしました。  第三に、検察庁におきまして処理する一般刑事事件その他各種犯罪事件の直接捜査活動に要する経費といたしまして四億八千四百六十五万八千円を、前年度に引き続き計上いたしました。  第四に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の昭和三十四年度の一日収容予定人員九万五千人に対する衣食、医療及び就労等に要する経費といたしまして四十九億六千五百二十一万九千円を、前年度に引き続き計上いたしました。  第五に、犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び執行猶予者保護観察法に基いて、刑余者並びに執行猶予者を補導監督し、これを更生せしめるための補導援護に要する経費といたしまして三億五千七百五十一万円を、前年度に引き続き計上いたしました。  第六に、出入国管理令に基き、不法入国者等の調査及び審査事務を処理し、被退去強制者につきましては護送、収容、送還する必要がございますので、これに要する衣食、医療及び送還のために必要な経費といたしまして一億一千六百七十九万一千円を、前年度に引き続き計上いたしました。  第七に、公安調査庁におきまして処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費といたしまして五億二千六百四十八万八千円を、前年度に引き続き計上いたしました。第八に、検察庁庁舎その他、及び刑務所、少年院等の収容施設の新営、整備等に要する経費といたしまして九億四千二百六十一万二千円を、前年度に引き続き計上いたしました。  なお、このほかに営繕費といたしましては、法務局等の庁舎その他新営に要する経費として二億五千七百三十八万八千円が建設省所管予算中に計上されております。  以上が、法務省所管歳出予算予定経費要求の大要でございます。  終りに、当省主管歳入予算について、一言御説明申し上げます。昭和三十四年度法務省主管歳入予算額は六十億四千百二十一万六千円でございまして、前年度予算額四十九億一千百四十一万八千円に比較いたしますると、十一億二千九百七十九万八千円の増額と相なっております。その増額のおもなものは、罰金及び没収金でございまして、過去の実績等を基礎として算出されたものでございます。  以上、法務省所管昭和三十四年度予算について、その概要を御説明申し上げました。よろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
  33. 小柳牧衞

    ○一主査小柳牧衞君) 質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  34. 高田なほ子

    高田なほ子君 法務大臣に御出席いただきましたので、特に大臣に関するご質問だけ先に申し上げます。御質問だけ先に申し上げます。  監獄法の改正の問題は、従来、歴代法務大臣が御就任の際に、たびたび国会でも御質問を申し上げて、現代に沿わない条項が含まれておる部面がたくさんあるわけですので、何とか一つこの監獄法の改正という問題については本腰を入れて御研究をわずらわしたいということでございました。しかし、その後どうも、どういうふうな御研究が進んでおりますものか、一向私どもにもはっきりいたしませんし、政府の方針としてもどうもはっきりしないようです。特に先ごろ法務委員会の資料でちょうだいをしてあるのですが、罪人を拘禁して置く場所、この場所等は自由が全く拘束されておるわけなんですから、天災事変等の際にも、人命尊重の意味からも、いち早く耐火耐震等の設備というものはなおさらにされなければならない監獄法の二十二条では、なかなかきびしい条項もここに加わっておるわけですからね。どうしてもこれは現在の施設が完備するというようなテンポが非常におそいわけですよ。そうだとするならば、天災事変のときに、やむを得ない場合には全部罪人を釈放して野放しにするというような条項もあるのですから、こういうことになったら大へんなことになるので、問題は、やはり施設というものは、自由を拘禁されたものに対してもいち早く人命を安全ならしめるという措置をとらなければならないのに、両方ともちゃらんぽらんになっておるのです。こういう状態一つ取り上げて見ても、監獄法の改正という問題は十分に考究されなければならない問題と「私は思いますが、現在政府部内では、これに対してどういう御方針であるのか、また研究されておるとするならば、どういう点が御研究になっておるのか、お答えいただける範囲内でけっこうですから、お願いしたいと思います。
  35. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 監獄法の改正の問題につきましては、ただいまもお話がございましたように、前から政府としては熱心に研究をしておるわけでございますが、ことに御案内のように元検事総長をしておられた佐藤藤佐氏を法務省としてはただいま特別顧問にお願いをいたしまして、そうして内閣等の協力のもとに、実は数カ月にわたりまして最近の諸外国の監獄のあり方や、行刑、矯正の面を徹底的に専門的に調査をしていただきまして、帰られましてから、それらの所見をもとにし、また関係方面の協力を得まして、現に改正案の草案の作成を急いでおるような次第でございまして、これは御案内のように追って法制審議会の議に付しまして、成案を得ましたならば国会に御審議を願いたいというように考えて、促進をいたしておるわけでございます。  それからこれに関連して、施設等の点についてもお触れになりましたので、率直な意見を申し上げますと、だいぶ終戦後落ちついて参りましたので、監獄の施設は、一口に申しますと、かなり急速度に私は改善されてきておるように思うのでございます。ことに新しく最近営造されておりまするいわゆる刑務所等は、実際見てみましても、おそらく、率直に申しまして諸外国に比べても遜色のない非常にりっぱなものができつつあるわけでございます。これを相当長期の年次計画によって推進して参りたいと考えておるのでありますが、ただ古い所、その他と比較いたしますると、非常にアンバランスがある、この点を早く是正していかなければならぬと考えております。  それからもう一つの、私ども、監獄に対する行政の基本の考え方といたしまして、実は所内において適当な仕事がございませんために、教育的な目的を達することもできないし、また生理的にもどうかと思われるような面もないではない。そこで、必ずしも家内工業的なものだけではなくて、適当な仕事を、先般予算委員会でも御指摘がございましたが、いわゆる慣用主義というようなことをもう少し徹底をして、継続的な注文主に応ずるような、また監獄の在所者の現状から見てふさわしいような、よい仕事を探してやるということが、いろいろの面から非常な効果があると考えておりまして、この面におきましては、先ほど説明いたしました中にもございますが、刑務所の作業については、歳出の面におきましてもあるいは歳入の面にいたしましても、相当三十四年度は増額をいたしまして、今申しましたような目的に沿うように、在所者が刑を終った場合に、何がしかでも腕に職をつけて出てもらって、更生できるようにしたいというように考えておるわけでございます。  まあごく大ざっぱに申し上げたのでありますが、私の気持としては、さような気持で今後とも伸ばして参りたいと思っておるわけでございます。  ただもう一つの、これもお尋ねがなかった点で恐縮なんでありますが、困っておりますことは、各市街地が急速度に発展いたしておりますために、従来の刑務所の所在地が、町の方の工合あるいは住民の方の利便から申しまして、だんだん刑務所としては不適地になっておる所が非常に多く出て参りました。これの移転について非常に頭を悩ましておるわけでございまして、この点が監獄行政の一つの当面している大きな新しい問題である、またそれに対しても、いろいろと地元の方々の御協力を得、あるいは財政当局の配慮を、この上一段と求めて参らなければ、なかなかこの解決はむずかしいわけでございますが、こういう問題がありますことも、あわせて申し上げる次第でございます。
  36. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣は私の質問に対して、最後の部面を強調されました。強調されました部面について、これをさらにお尋ねしたいことは、具体的にどこそこの監獄というと当りさわりがありますから、ちょっと申し上げかねますが、もと建ったときには郊外であまり人家が密集していなかった、しかし今はもうとても人家が密集して、へいに近接するように民家が建っている。ところが死刑執行場がここにあるわけです。死刑執行はそうそう再々行われるわけではもちろんありませんけれども、時と場合では、死刑執行直前に、死刑に付される人が最後の断末魔の叫び声をあげるのが民家に聞えるという話を聞くのです。このことはまことに人道上大へんな問題であって、そういうような状態にあるこの死刑執行場で、死刑が執行されること自体が、これはどうかと思うのでありますが、法務大臣の判を一つおつきになれば、あすにでも命をとられる人が何人か今この世の中に生きているわけです。そういう不備な点も十分にこれは考えられまして、これに対する善後措置というものは、行政面から私は下されなければならないのじゃないか、こういう感を大へん強くするのです。もちろん私は死刑廃止の主張を持つ者でありますが、この席では死刑廃止の問題には触れませんけれども、たまたまこういうことを仄聞いたしますと、まことに心痛む一人であります。この点については、何か御留意なさるようなお気持をお持ちでございましょうか。
  37. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この死刑の問題は、非常にこれは何と申しますか、悲惨な問題でございまして、実は私も率直に言って、まことにいやな仕事なんでありますが、ただいま御心配がございましたが、現在この死刑の宣告を受けた在所者の処遇等については、ただいまの御心配のような点もございますので、世間からなるべく隔離され、そういう意味の施設において十分な、何と申しますか、要件に合致するような二、三の刑務所を選びまして、そこに拘置してあるわけでございますから、死刑執行の時の状況などが世間に御迷惑をかけるというようなことは、現在では万々ないかと思いますけれども、なお、ただいま御指摘の点については、十分に注意をしなければならぬ点と考えるわけでございます。
  38. 高田なほ子

    高田なほ子君 さらにこの監獄法改正に至るまでの、やはり行政面から指導されなければならない点がございますが、これもまた名前、場所を申し上げては当りさわりがありますから避けたいと思いますが、これは獄内の規則に服さない者は、獄内における罰則が第六十条で規定されておるわけです。某所を私たまたま参観いたしましたときに、暗室の中に閉じ込められて、幾日もそこで呻吟している人を見たわけなんですが、つまびらかに聞いてみると、どうも精神異常らしいという簡単な結論が話された。私の考えでは、精神異常である者が、果してこの第六十条の懲罰の対象に含まれるかどうか、獄内における懲罰の対象に含まれるかどうか、これははなはだ疑問だと思う。精神異常の者は、何日そのじめじめとした日の当らない真っ暗な部屋に押し込め、そうして食物を与えないでおっても、果してその獄内の規律というものを守る状態に返るかどうかということについては、実に私は大きな疑問を持ってきたのです。特に全く自由を拘束されている人たちの問題でありますから、獄内における規則の実施等については、十分な行政面での御注意というものが必要ではないか。たまたま私はあそこの拘置所に参りましてそのことを見まして、これは一度とくと大臣にもごらんをいただいて、こういう点は十分御指導にならなければいけないということを痛感してきたわけでありますが、こういう点はどうなっておりますか。獄内における精神異常等の傾向のある者の取扱いというものの現状はどうなっておりますか。もし大臣で御都合が悪ければ、他の方でもけっこうです。
  39. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) まことにごもっともな次第で、私もできるだけ注意はしているつもりでございますが、ただいま御指摘のございました具体的の処遇については、渡部政府委員からお答えいたします。
  40. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) ただいまの暗室に精神異常者を収容しておるということでございますが、少し言葉が、御説明申し上げるのがまずかったのではないかと思うわけであります。私らの方で精神に異常を来たした者につきましては、実は東京の方では八王子に医療刑務所を持っております。それから西の方では九州に、小倉の近くでありますが、城野刑務所というものを持っております。ここに送りまして、ここで精神医学上の処置をとるごとにいたしておるのでございます。ただ、まだその精神異常者というところにまで至らない、性格異常者で、いろいろ処遇困難な者ができるわけでございますが、さような場合にこの暗室を使ったのではなかろうかと思っております。しかしながら、実は懲罰の中で重屏禁というのはいたさないことにいたして行政の指導はいたしておったのでございます。さようなわけで懲罰としてこの暗室は現在では使わないことにいたしておるのでございまして、精神異常者につきましては、精神医学上の処置からさような医療刑務所におきまして医学上の措置をとっております。もっとも、かような医療刑務所では、精神異常のために相当喧騒にわたる場合もあるようでございます。さような者は、やはり特別な室を設けまして、外部にあまり聞えないような居房——特別室を作りまして、もっぱら沈静剤等を使用いたしまして、気持を落ちつけるような措置をとっておるのでございますから、やむを得ないさような医療刑務所には、やはり特別室を設けておるのでございます。これは精神病院等においても用いていると同じ趣旨から、実はさような特別な室を設けております。
  41. 高田なほ子

    高田なほ子君 御説明では十分わかるわけなんですが、現にこの目で見てきて、この耳で聞いてきて、はなはだしくふんまんを感じながら質問をしたことでありますから、こういう面についての御注意というものは、十分これはしていただかなければならない。しかも監獄法では、裁判官、判事等は絶えずごらんになればごらんになってしかるべきものを、伺ってみると、ほとんど行ってないようですね。だから罪人はあそこの中に入れられたら、全くものを訴える機会がないというような状態で、これは悪いことをしたのだからしようがないといえばそれまでの話ですが、だがしかし、法律に規定された範囲内の人権というものは、いかなる場合でもこれを守るというような建前から、十分にこれは御注意をいただきたいという点で質問をしているわけであります。  次にお尋ねをしたいことは、これは予算の面から法務大臣にお尋ねをしておきたいのです。ほかでもありませんが、この検察審査会の制度は、検察ファッショを防止するための民主的な一つの新しい制度で、私どもはこの検察審査会の制度が適正に運営されることが検察ファッショというような、かつての悪評を解消するためにも大へん大切な仕事であるように考えておるわけであります。これの予算をたどって参りますと、三十二年度が六千二百六十一万、それから三十三年度がぐっと減って五千五百九十四万、それから三十四年度はさらに減って五千五百八十三万というような漸減的な傾向を示してきている。私は予算の上からこう見ますと、検察審査会の制度というものに対して、法務大臣はあまり関心が深くされないのじゃないかと、そういうような気持がするわけなんです。しかも最近、ごく最近でありますが、ここに新聞の切り抜きを持ってきたのですが、これは毎日新聞の朝刊、都下版三十四年三月二十一日、これは詐欺事件がうやむやのうちに起訴処分になってしまった事件なんでありますが、検察審査会が、これをさらに取り上げて、検察陣の結論というものに対して、これはうまくないじゃないかということで再度これを取り上げましたところが、にせ契約書がずいぶん早く認定できちゃった事件なんですが、これを読み上げるのは、時間がありませんから省略しますが、こういうようなことで検察審査会が再度取り上げました事件は、遂に長谷見という男に有罪の判決を下させる結論になったわけでありますけれども、こういう意味でもこの検察審査会の使命というものは大へん大切な役割を果す制度だと思うのです。特にわが国の民主化制度の中で重視しなければならないのは、こうした検察行政そのものに対する審査制度、こういうようなものは、法務大臣の立場からすればあまりけっこうな制度じゃないかもしれませんが、しかし、全体の日本民主化という建前から考えますと、これは大切な仕事だと思います。どういうわけでこういう工合に予算が減らされていくのか。また検察審査会制度の重要性というものについてどれだけ法務大臣が御認識になっているかというところが問題だと思うのです。この点について、前に申し上げないで、はなはだ唐突でおそれ入りますが、御理解の範囲内において御答弁いただきたいと思います。
  42. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 検察審査会の問題につきましては、実は私もいろいろと意見のないわけではないのでございますが、この予算につきましては、御承知のようにやはりこの検察官と相対するという立場であるということに着目されたのかと思いますが、本制度施行以来、予算裁判所の方の予算ということに相なっておりますので、法務省といたしましては、この予算内容等についてちょっと御説明いたしかねるわけでございますが、これらのこまかい点につきましては、一つ裁判所側からお聞き取りをお願いいたしたいと思うのであります。私の理解いたしておりますところでは、年々取り上げる事件の数が相当激減しておるのではないかと思うのでございまして、そういうことに相関連いたしまして、現在こういったような制度を、どういうふうにしたらいいのであろうかという点については、いろいろと折あるごとに考えてはおるのでございますが、はっきりしたまだ私としても結論を申し上げる段階に至っておりません。
  43. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはもちろん予算裁判所の方になるわけなんですが、しかし裁判所というのは、直接には予算を請求する発言力というのは持たない。言うならば大へん弱いところだと思うのですが、これは制度的な問題なんでしょうが、結局予算関係は法務大臣のお手元でこれはいろいろと最後的な御決断がされることになるわけなので、単にこれは裁判所予算だというふうではなくって、この減っていくという傾向についても御研究いただいた方がいいじゃないかという気がするのですね。最近事件が激減していくというようなことを仰せになっておりますが、私は事件が激減しているのではないと思うのです。最近の刑事事件というものは、私は減っていると思わない。むしろふえていると思う。ふえていればいるほどこの検察審査会の使命というものは、私は重要になってくると思う。検察庁はやはりこの制度が強化されることはお好みにならないだろうと思いますけれども、指揮権さえ発動されるのですからね、これはよほど検察審査会というものは権限を持ち、検察ファッショというようなことは、もちろんこれは私はそうきめてかかっているわけじゃありませんが、この制度ができたそのこと自体意義というものが、この時代に再確認されなければいけないということを申し上げるわけです。でありますから、この激減というのは、ちょっと大臣穏当じゃないと思いますので、これは一つ御研究いただくようにしたらどうかと思いますが、もしあなたの方で刑事事件が激減したという何か数がおありになれば、ここで承わらしてもらいたいと思います。
  44. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私の申しましたのは、この検察審査会で取り上げて、たとえば検察庁のやったことが不当であるという、これは起訴すべきものであるというような結論になったものは、たしか最近もう非常に減っておるということを私申し上げたのでありまして、刑事事件が激増しておるにかかわらず、審査会で取り上げられて問題にせられておるようなことが非常に減って、きておるという傾向を申し上げたわけでございまして、その辺にもこの制度の何と申しますか、どういうふうに将来考えたらいいかということについては、いろいろと考えさせられることもあるわけでございます。
  45. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうもピントが合わないのですね、私とは。私は検察当局が一生懸命おやりになっておるので、公正な取扱いをされているということは認めるわけなんです。しかし件数というものがふえればふえるほど、それに従って検察陣が強化されていくかというと、必ずしもそうじゃないと思いますね。そうだとするならば、これを補うための審査機構というもの、そういうものがやはり強化されるということは当然のことではないか、そういうような気がするわけです。たとえば国の予算がふえて行政面が拡大された場合に、会計検査院の仕事というものはやはりふえていく、ふえてくるに従って人も増さなければならない、そしてまたその仕事も能率的にやるような方法が講じられなければならない、つまり国政の運営を妥当ならしめる機構というものは、行政面が広がってくればくるほど、ある意味では重要になってくる、こういうような論法から、この検察審査会というものも、最近の刑事事件の激増にかんがみて、これが有効適切に運営されるために重視しなければならない制度ではないかと、こういうふうに申し上げておるわけなので、私の言うことは検察陣がどうだこうだという批判的な言い方をしておるわけじゃないのです。でありますから、私のこの意見に対してどうかということです。
  46. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 今お述べになりましたような点については、まあ何と申しますか、検察の件数がふえればそれだけ審査会でも機構をふやしてよく監査しなければならぬじゃないか、これは一応そういうふうに考えられると思いますが、実は、私はこの制度には私自身としては非常に率直に申しまして疑問を持っておるわけでございまして、諸外国等の例から申しましても、検察の件数がふえるからといって、いたずらに審査会というようなものの機構を拡充すべきものではないと、まあ私は率直にこういうふうな意見を持っておるわけでございますが、なおこれは先ほど申しましたように、十二分に検討した練れた意見でもございませんし、法務省としてそういう意見を持っておるということも言いかねるわけで、私のまあ感じでございますので、これらの点については、とくと御意見がありまするところを十分伺いまして、慎重に検討いたしたいと存じます。
  47. 高田なほ子

    高田なほ子君 次に、これも最高裁の予算関係する問題でありますから、直接には法務大臣が御所管になる問題でありませんので、その観点からお答えいただければけっこうです。  最高裁は三十四年度の予算の概算要求の中で、裁判所書記官等の待遇改善二億九千八百十七万六千円を要求された。それで、内容は書記官等に対して号俸調整を行なってその待遇を改善する必要があるというような御意見が述べられておるようでありますが、どうもこの裁判所の待遇改善となると裁判所の方の、最高裁の発言権といいますか、要求権というものがはっきりしないですね。法務大臣のこの所管の中に入ってしまうので、質問する方もはなはだ質問しにくいのでございますが、これはどういうお考えだったのでしょうかね、この号俸調整、四号調整というのは。これは昭和二十九年にも一度、最高裁が全司法労働組合を解散するならば四号調整を行うと、しかし解散しないならば四号調整はしない、こういう態度で臨まれたようですが、私はこのことは大へんな間違った行き方じゃないかと思うのですね。待遇改善に条件をつけるということ——労働組合の行き過ぎを、全司法の行き過ぎを是正するということは、これは私何も異論ありません。組合はまだ初期の段階でありますから、行き過ぎもあるし、行き足らないところもあるわけなんです。だからといって、これを解散するということを条件にして待遇改善をされるというようなことは、これは私は正しからざる考えじゃないかと思うのでございますが、今度の二億九千八百十七万六千円のこの概算要求に、号俸の調整が説明されておるわけですが、そういうものとからんでいる問題かどうかということについて、大へん疑問を私持つわけなのです。これは裁判官の待遇と大へん密接な関係を持つ基本的な理念でありますから、この点についてお答えをいただきたい。
  48. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) まず前提といたしまして、ちょっと私も意見を言わしていただきたいのでありますが、裁判所予算は御案内のように、財政法第八条であったかと記憶いたしますが、何といいますか、半独立みたいな格好になっておりまして、大蔵省がといいますか、政府がこれを査定いたしました場合に、それに承服できないような場合には、直接国会にその意見を付して提出をするというようなことになっているわけでございまして、これらの点に、実は私も、個人の意見でございますが、将来の改善のために相当問題のある点であると思うのであります。  ただいまもお尋ねいただいておりますように、裁判所予算のことであるから法務大臣もこれに対して、どう考えるかというお尋ねでございました。これにお答えすることは、そういった組織上の問題がございますから、私としてはお答えができないわけでございまして、将来の大きな機構の改革等の場合につきましては、私も一つの意見といたしましては、こういった予算とか、あるいは営繕とかいうような点については、むしろもっと法務省が直接国会に対して御説明もでき、責任の持てるようになる方がかえって裁判所のためにもなるのじゃなかろうか。要するに現在の制度は、形式上は非常に裁判所としては優位性を政府に対して持っておられるけれども実がこれに伴わない。それはどこに欠陥があるかといえば、今申し上げましたような、言葉は練れませんが、予算とか営繕とかいったような、いわゆる裁判所のアドミニストレーションについてはむしろ政府に全面的な責任を持たしていただくようにする方が、いろいろの意味で経済的でもあり、能率も上るのじゃないか、こういうふうな考えを持つわけでございます。  それからその次に、書記官等の待遇の問題でございますが、これも御案内のように、たとえばいろいろとごたごたが起りましたような場合にも、裁判所職員、書記官以下の方々は、裁判所の公平委員会が、これが相手になるわけであって、政府側としての人事院あるいは内閣がこれに対しては責任を負えない、こういう点にも私は相当の問題があるのじゃないかと思うのでありまして、ただいまの団体を解散すれば号俸の調整をしてやると言われたかどうか、これは裁判所のことでありまして、私は現行の制度のもとにおいては何らの発言権がないわけであります。意見をこれに対して申し上げましても、一個人あるいは一議員としてのコメントにすぎないわけでありますから、法務大臣としてはこれに対して何らの意見を申し上げることができない。この点は私率直に申しまして遺憾に思っておる次第であります。
  49. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は三権分立というような建前からいえば全くその通りだと思うのです。またそういうふうでなければならぬと思うのでありますが、最高裁というのは、今まで予算の面で意見を具申したという例はないようですが、どういうわけで財政面での意見具申というのがされなかったのでしょうかね。どういう事情があるのでしょうか。私どもこれは了解に苦しむのです。だからといって今の大臣のように、裁判の財政上の問題も全部政府が権限を持つのが正しいという結論も、これもどうかという気持もするのです。この点は十分研究してみなければなりませんが、どうもしかし、実質的には政府が全面的な権限を持っているのじゃないかというような気持もするのです。たとえば今回の裁判官の待遇問題についても、かなり大蔵省やら、それから検察側、つまり法務省側の方の発言が大きくなって、それで三者協定というようなものが結ばれたというようなことになってくると、どうも裁判所の存在というものはかすんできてしまつて、そのかすんだ結果がみんな裁判所の方の運営にしわ寄せされるということになると、これは問題じゃないかという気がするのです。大臣が私の質問に対してそれ以上のお答えができないということであれば、これは三権分立の建前から当然なそういう意味での御答弁でありましょうから、これ以上お尋ねすることは避けたいと思います。御研究いただいた方がいいと思います。大臣にお伺いするところは大体そういう程度です。あと法務委員会で残余の部分はお尋ねいたします。  次に罰金、それから科料収入、こういうのが法務省の収入の中でどんどんふえてきておるようですね。三十二年度は九億九千万円、三十三年度が二十億一千万円、三十四年度が一躍二十九億六千万円という工合にふえてきているようです。この増額の根拠というのはどういうものかということを知りたい。もっと具体的に言えば、一件当りの罰金額がふえたのか、あるいはまた罰金あるいは科料の対象がふえて参ったのか、こういう質問になると思います。お願いします。
  50. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 罰金の増加いたしましたのは、事件数の伸びということに相なるかと存ずるのであります。本年度二十九億六千十七万一千円の歳入の予定になりましたが、その算出は過去三年間におきまする実績を基礎といたして算定されたものでございます。この予算算定のときは三十二年度の実績しかございませんので、三十二年度四月から八月までの実績から三十三年度を推定いたしまして、そして三十年度以来の増加額を算出いたし、その平均の増加実績額の〇・八を加算いたしまして、三十三年度の実績にしたのがこの二十九億六千十七万一千円という金額でございます。そこで、これは事件数で申しまして、最も罰金数でふえておりますのは、いわゆる道路交通自動車の取締り関係でございまして、その事件が昭和三十年度が百八十七万四千件が、三十一年度におきまして二百一万九千五百八十件、三十二年度におきましては二百四十万九千二百三十三件、こういうふうに昨年度におきましては、二、三割の増加を来たしたわけでございます。事件の伸びとそうして罰金額の年々の増加率というところをにらみ合せまして、この数額を算出したわけでございます。
  51. 高田なほ子

    高田なほ子君 交通違反の事件が今のお示しの通り大へん激増しております。こういう工合に事件がふえると、これに伴う事務がやはりふえてくるだろうと思うのです。でありますから、この事務を処理するための人員の増というものは、今度の予算面でどういうふうに組まれておるのですか。
  52. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 検察庁の事件捜査に要する経費といたしまして、いわゆる検察費の中で旅費、庁費という形で組まれておるわけでございます。ところが、その旅費、庁費は補充費系統でございますので、事件数が激増いたします場合には、予備費使用要求をいたしまして、年々必要な経費は予備費使用の承認をいただいておるわけでございます。従いまして、本年度も事件の趨勢によりまして一応の検察費といたしまして、旅費、庁費その他の事務費として入っておるわけでございます。
  53. 高田なほ子

    高田なほ子君 この予備費使用内容というものは、人員増加する場合についても、この予備費使用ということは内容として認められておるわけですか。
  54. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) お尋ねのような事件が激増いたしました場合におきましても、必要な経費は予備費使用の方の承認を得ておるわけでございます。
  55. 高田なほ子

    高田なほ子君 人員増というのもお認めになって、事件増に従って事務処理費の中に人員増というものが含まれておるのですか。私の考えでは、やはり定員というものがあるわけですね、人員は勝手にふやすわけにいかないので、今あなたの説明によると、定員はもう無視して、事件がふえれば自動的に人数もふえていく、それらの費用もごの予算使用の中に含まれているというような説明がおかしいから聞いておるのです。
  56. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) ただいま人員と申しましたのは、受理人員の意味です。人員と申しましたのは、職員定員ではございません。ところが職員定員につきましては、本年度検察官三十四名、事務官十七名が認められたわけでございます。これは主として予算要求の筋といたしましては、公判審理の促進という面で認められたわけでございますが、今まで検察庁の捜査事件がふえておりましたにもかかわりませず人員増加がほとんどなかった。それで捜査の方から——公判審理促進に、裁判所が昨年判事補の増員等がございまして法廷の開廷回数等も相当増加いたしまして、捜査の方から人員を回して公判の審理促進をはかって参りました。三十四年度はおそまきではございますが、公判審理促進のために検察官三十四名、事務官十七名というのが認められました。本年度からは今まで無理に公判部に回しておりましたものの一部が、捜査の方に回ってくるということになるわけであります。  なおまた、道路交通取締法の事件の激増等に対処いたしまして、交通事犯の簡易裁判の手続を今、東京、大阪等で実施いたしております。特に大阪、東京等におきまして事件のきわめて多い所では、事務の効率的な処理をいたしております。これによって激増する事件に対処しているわけであります。
  57. 高田なほ子

    高田なほ子君 大阪等の交通違反の審理というのは、相当迅速に行われているような評判も聞いておりますが、しかし、どうもこう交通違反がどんどん、どんどんふえてくれば、事務の効率とばかりもいっておられず、それに伴うやはり人員というものも見合わせなければならぬものだと思いますが、大阪あたりでは一件の審理に二十秒くらいでもう審理してしもうという実例を私は聞いているのですが、二十秒でそんなに審理できるものでしょうか、どうなんでしょう。
  58. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 今お話のような二十秒というようなことも私も聞くわけでございますが、二十秒の結論を出します前に、警察官、検察官の手元におきまして、これは特別簡易手続の方は、裁判を受ける権利を奪っておるのではございませんので、異議のない場合にのみそういう手続をやるわけです。そのときに異議があるかないかという点につきましては、警察官、検察官の手元において十分納得をしてもらっておりますので、そこで結論として裁判官の前に行くと、二十秒で済むというようなこともあるかと思いますが、それには、それの前提としてそういうような手続があるわけでございます。だから全体として一件を二十秒で片づけているのではございません。
  59. 高田なほ子

    高田なほ子君 それではみんな二十秒で片づくというわけじゃない。私は裏をひっくり返して言っているのです。それは交通取締りの警官が点数をかせぎたいばかりに、どうもこれは裁判所に持っていくような事件でもないものを、それを何じゃかんじゃとやかましく言って、それで行くわけです。行けば、これは警官が行き過ぎて持ってきたものだということになると、これは二十秒でもって解決つくのであって、私は裏を返した質問をしておる。警官がみな行き過ぎているというのではありませんが、何といったら自分の意思が通じるか、交通の関係のおまわりさんは大へん御苦労をしておられるし、また生命の危険にもさらされるようないろいろの状態も私どもは見聞をしているわけなんです。しかし、今日の警察制度の中で点数をあげるものがやはりよくなるわけでありますから、当然これは点数をあげたいという気持になられることは、これは人情としてわかるわけです。その事のあまりに、巷間行き過ぎがあるといううわさも耳に入らないわけではないだろうと思うのです。それで、裏をひっくり返してこういう質問が出てくるわけなんですが、これは私の考え方の誤まりでしょうか。
  60. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 高田委員の仰せの考え方に誤まりを私ども感じているわけではありません。私どももそういう面が保しがたいことは、かねがね反省をいたしておるわけでございます。これはまた警察官が点数かせぎのために検挙をあせっているというようなことではなくて、やはり車が年々歳々多くなって参っております。ことに高田委員もかねがね御心配をいただいていることだと思いますが、特にタクシー業者の方がノルマによるかせぎというようなことから、神風タクシーなどといわれて批判をされているわけでございますが、こういうものが列を作って走っております交通機関の中で、そういうものがひとり入りますと、それが波紋を描いて正しい運転をしようとする人までも違反の方へ追いやるというような状態も見られるわけでございます。そこで交通をどうやって整理していくかということは、警察、特に交通警察の面から重要なことだと思いますが、そういうようなことからして、一定の計画を立てて点数をかせぐというよりも、きびしい取締りが現に行われているのだということの状態を保持していくということも必要なわけなんで、そのために科学的な方法でスピード違反を検挙したり、その他いろいろな検挙を、かなり合理的に、科学的に私どもやっておるように思うのであります。で、この二十秒で裁判が済むほど事が争いがないということは、科学的な根拠をもって、たとえばスピード違反の点につきましても、証拠を突きつけられて承服するという面も私はたくさんあると思うのです。そういうわけで、この交通難をどうして緩和していくか、さらにまた、それに伴って発生する交通事件をどうやって処理していくかということ、今この道路交通違反は刑罰でもって処分をいたしております。これを刑罰の分野にとどめておくのがいいのか、あるいは行政罰というものでやっていくのがいいかというようなことも、私どもとしては真剣に考えておるところでございます。そういうわけで、高田委員のお考え、私ある面におきましては全くその通りで、反省もいたしておりますが、また他面、取締りの方面の必要、厳格に取締りをしていくということをこの際除きましていい方法がないということも、またこれは偽わらざる事実でございます。
  61. 高田なほ子

    高田なほ子君 厳格な取締りは私どもも望むところでございます。しかし、そのことがあまりに度が過ぎると、よく運転手が、あんなものは点数かせぎだよというような、そういう誹謗というものは、これは警察に対するやはり不信感を持つ結果になるので、必ずしも望ましいことではない。むしろ東京都内では、三年間事故を起さざる者に優のマークをつけさしておりますが、あれはヒットだと思います。乗る者にとっても、あれがついているときわめて安心して乗れるし、またこの運転する人も非常にプライデを感じて、親切に、何か丁寧に運転しておりますが、むしろ罰するよりはああいうような面をもう少し大きくおやりになった方が一面いいように私は考えるわけなんです。これは意見でありますから、別に御答弁の必要はございません。
  62. 山田節男

    山田節男君 この交通事故の防止ですが、従って、交通事故、違反に対する処罰の問題ですが、今手元に大体交通事故を起した者が酒に酔っておつたと、そのために交通事故を起したという何か計数がありますか。昨年度でもいいし、今年度の半期分でもいいし、きわめてラフなものでいいのですがね。
  63. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ちょっと酒に酔って、いわゆる酔っぱらい運転の件数が何件あるかということは、ちょっと統計ではわからないのでございますが、それは相当多数あることははっきり申し上げられるわけでございます。
  64. 山田節男

    山田節男君 これは私、外国で学生のとき、自分で自動車運転した経験があります。イギリスを主体としてヨーロッパ各国を回ったのですが、どうも日本の交通警察は、自動車をドライブしている者に酒を飲んでいる、酒を飲んでの事故を起したという者に対するその処罰が軽いと思うのです。これは道義的にも非常に重要視しなくちゃならぬ。具体的にいえばですよ、たとえばイギリス、ドイツ、フランスで事故を起しますと、たとえば私がドイツで自転車をこわしたことが前にある。そのときに警察へ行って、すぐ私の息を、酒色を帯びておるかどうかということをまず……、におうのです。第二はブレーキを見るのです。きくかどうかブレーキを見て、それで事故に対する責任者はどっちかということを見る。もし酒の気味があったり、かいでみて酒のにおいがしたら、これはどんなことがあっても交通事故の責任はその者にある。どうも日本は酒の国というか、酒を飲んでドライブした者に対する考え方が非常に寛大だと思う。こういう交通警察の取締りに対して、酒というものは、これは致命的な事故を起すこが多いのです。私自身、自分の体験から、酒をちょっと飲んでドライブすると非常に気持がいいのです。ハンドルはスムースだし、そうしてスピードも出せるし、これは非常に私は身の毛のよだつような経験が何度もあるのです。ですから日本全体からいって、酒をちょっとでも飲むと——これは酔っぱらうように酔わないような程度でもいい、ちょっと酔ってもいい——ドライバーの心理状態はルーズになる、これは私の体験上だれもそうであると思う。ですから酒を飲んだ者の交通事犯に対しては、きわめてシビアーな、体刑でもいいと思う。そういうことに、非常に日本の交通取締りは寛大過ぎる、酒を飲んだ者に対する……。  それからもう一つは、これはやはり自分で運転して考えることは、信号、交通規則が、実際自分で運転している者の気持というものが、ちっともくまれていないのです。たとえば信号等において非常に不親切だ、ことにまだ日本はその域まで達しませんけれども、言葉がわからない交通規則の違う外国へきてドライブしても、きわめて安全にできる。そういう点は、たとえば私がイギリスからフランス、ドイツに行けば、ちゃんとイギリスよりも交通規則の違う点を抜粋したものをみなくれるのです。そうしてその国に入ったら、これは右側通行になる、こういう場合には交通違反になるというようなことが、明瞭にわかるようになるまでしているのですね。日本ではどうも今までの交通警察取締りというものが、いろいろ努力しておられるけれども、実際にドライブしている者の気持というものが、ちっとも汲まれていないという点です。私は数年前に、ことに東京都のこの交通の信号なり規則、取締りというものが、非常に取締り本位であって、自動車を運転している者の気持というものがくまれていないというので、警視庁にやかましく言って、交通委員会ですか、その中に特に私の知っておる者で、自分でもう長くドライブしている人を入れてもらったことがある、それでもなかなかその意見を取り上げてくれないと、こういうのですね。ですから、私は酒の点と、それから交通規則、それからいろんなシグナルですね、こういったようなものも交通事犯を少くし、事故を少くするために再検討する必要があるのじゃないかと思うのです。これがためには、私はやはり一ぺん欧米諸国を回って見られて、ことに信号なんかカーブであるとか坂であるとか、そういう点についてありますけれども、どうもちゃちなものである、結果においては不親切なものなんです。こういう点については、私はぜひ再検討していただきたいと思いますが、こういう点についてどうですか、酒の問題と、今の規則の問題ですね。
  65. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 酔っぱらい運転につきましては、いわゆる取締りをしておりまして、今仰せのように、日本でも最近は酒を飲んでいるかどうかというふうなことを科学的に発見する方法で、もし酔っぱらっておりますれば、酔っぱらって運転したというだけで罰則にかかるわけでございます。これはそれだけの罰則の適用を見た例も相当多数あることは先ほど申し上げました。もし酔っぱらっておりますために交通事故を起したということになりますと、これは刑法の問題になるわけですから、刑法の業務上過失傷害致死というあの二百十一条の規定の適用を受けるわけであります。この場合には、酔っていたということは過失の尤たるものでございます。従って検察官におきましても、ほとんどそれを見逃すということはないのでございまして、これは酔っていたかどうかということの証拠の関係にもなりますけれども、大体日本におきましても、諸外国の例にあるいは追従しているという結果になるかもしれませんが、最近は酔っぱらいに基く運転で事故を起したものにつきましては、しばしば体刑をもって処断をいたしている状況でございます。  それから後段のシグナルその他の施設につきましては、これは警察当局の所管でございますが、私どももそういう罰則の適用の関係において常に関心を持っておりますけれども、逐次ドライバーを中心とした考え方の改正も行われておるように聞いております。特に信号の時間の関係などが、縦の道は交通量も多い、横の道は少いというときには縦も横も青信号が同じであるということは、かえって交通を閉塞いたしますので、多い方は時間が長い、少い方は早いといったふうにだんだん切りかえて、合理化がはかられておるように私どもは聞いております。
  66. 高田なほ子

    高田なほ子君 交通問題だけもやっていられたいですが、最後にお尋ねしておきたいことは、きのう山田委員が宮内庁の瓜生次官と問答された中で、こういうことがあったわけです。あそこの祝田橋近郊の交通難は大へんに目にあまるものがある、このことについて何とか交通緩和をするという建前から、皇居の一部が開放されていいのじゃないかという趣旨の御発言があったわけです。それに対して宮内庁側としては、場所によってはそれは一部開放してもいい、しかし場所によっては困る場合があるというような意味の御返事がありました。当然、当局としてもこういう宮内庁の方の意見であるならば、積極的に交通緩和のために、皇居前の混乱緩和のために、皇居の一部をしかるべく処理されて開放されるというふうに、積極的に私進んでいった方がいいのじゃないかという気がするのですが、宮内庁自身が一部は開放してもいいと言っているのですから、何も遠慮しないで、どんどんと積極的に計画をお立てになって、交通緩和な計画を持ち込んでいって、当局としても、交通の緩和の努力というものを進めてしかるべきじゃないかと思うのですが、現在、何か宮内庁側に当局からそういうような御意向というものは具体的に申し込まれているでしょうか、いかがでございましょうか。どんなものでしょうか、おわかりでございましょうか。
  67. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私どもの方は、交通事件の刑罰効果という点の所管事務でございまして、それに関連しての範囲内で先ほど来御答弁申し上げているわけですか、ただいまお話のようなことは、私どもは伺ったこともありませんし、また私どもの方からそういうふうに申し上げるような立場でもございませんので、もしあるとすれば、警察あるいはパーキングの問題等は都の直接所管になっておりますので、あるいは都当局からそういうようなお話があるかもしれません。私どもは伺っておりません。
  68. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間もありませんから、もし資料としてちょうだいできたならばいただきたいと思いますが、最近の一番近い年間の交通事故でもって被害を受けた者、特に学童、それがどんなふうに被害を受けているかというような資料がございますれば、今でなくてけっこうでありますから、ちょうだいすることにしたいと思います。ございませんか。
  69. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それはちょっと……。
  70. 高田なほ子

    高田なほ子君 じゃ、当局ではちょっと御無理なようでありますから、この資料は別個に譲ります。
  71. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  72. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 速記を始めて。
  73. 山田節男

    山田節男君 この公安調査庁全体の予算としては、昨年度より一億ふえておるわけですが、その中で公安調査官の活動費ですね、この件について質問したいと思います。まず破壊活動防止のための公安調査官の活動の状況ですが、団体それから個人、まあこういう対象と、それから思想的にいえば共産主義、それから極右主義といいますか、いわゆる反動団体、そういったようなまあ大体四つに分けてあるんですね。きわめてこれはラフな数字ですが、最近半カ年か、あるいは昨年度の一年分でよろしゅうございますが、その調査された件数というのは、そこでちょっとお示し願えませんか。
  74. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) あるいは御質問の趣旨にはずれておるかもしれませんが、もしはずれておりましたら、さらに御質問いただきましてお答えして参りたいと思いますが、御案内のように、公安調査庁におきましては、破壊活動防止法に基く破壊容疑団体の調査をいたしておるわけであります。現在私どもの方で調査を進めております団体としての対象は、日本共産党と、朝鮮人の朝鮮総連、在日朝鮮人総連合会という団体と、それから右翼の二、三の団体の調査をいたしております。破防法に基く調査活動は、結局この破防法に基いて規制をする必要がある場合に、その団体を規制するための調査活動でございますので、本体は団体を対象にして調査をいたしておるわけであります。従って今お尋ねのように、ある特定の個人の人を調査するということではなくして、団体の構成員としてその特定の個人の人が団体員、正確に団体員であるかどうか、団体のどのような役職員についているかどうかという調査をいたすことはございますけれども、あくまで調査の対象はただいま申し上げました共産主義の団体と右翼の二、三の団体ということに相なるわけであります。それで、統計的に年間の調査活動を御説明申し上げるのが非常にむずかしいのでありますが、日本共産党につきましては、現在私どもが調査の結果つかんでおりますいわゆる活動党員というもの、四万五千を明らかにしているわけであります。御案内のように、一九五〇年、昭和二十五年当時におきましては、共産党活動が非常に活発でありまして、当時は届出党員を含めまして全党員が十万を越しまして、約十二万くらいに上ったと思うのでありますが、現在つかんでおります活動党員、動いております党員が大体四万五千でございます。私どもの方では、この活動党員の活動を追及いたしまして、これらの活動党員があるいは中央委員会、あるいは地方委員会、あるいは県の委員会、あるいは地区委員会、細胞の会議というような、いろいろの秘密の会議を随時開催いたすわけでありますので、これらの会議内容、秘密会議内容等をいろいろな手段を尽して調査をし、それから個々の活動党員の党員性、果して正しく党員であるかどうかというようなことの追及をいたしているわけであります。  それから在日朝鮮人総連合会につきましては、大体構成員の総数が十九万人くらいと考えております。この総連合会は、総連合会のほかに、その参加団体があるいは青年、婦人、いろいろな団体がございますが、これら全部を含めまして大体十九万、これが、日本共産党について申し上げましたと同じように、いろいろな諸会議を開きまするし、また対外的な政治活動等をいたすわけでありますが、これらの諸活動の日時を明らかにいたしているわけであります。  それから右翼関係につきましては、私どもが視野の中に入れております右翼団体は、約百団体で、その構成員が六万五千人くらいと見ております。この百団体六万五千、全部が破防法に基く破壊容疑団体とは考えておりません。その中の数個の団体が破壊活動の危険性があるというふうに考えておるわけでありますが、どの団体であるかという特定の名前をあげますことは、いろいろ差しさわりもございまして、従来国会委員会等においても申し上げておりませんので、御容赦願いたいと思いますが、いずれにいたしましても、約百の団体六万五千人ほどの右翼団体の所属員の動静、諸活動等を調査をいたしておるわけであります。これ以外に共産党活動につきましては、御案内のようにプロレタリア国際主義でソ連共産党を党首といたしまして、国際的な連係を持っておる活動でございますので、ソ連共産党あるいは中国共産党、あるいは国際共産主義のいろいろな前線団体があるわけでありますが、それらの団体が日本共産党に対して、あるいは在日朝鮮人総連合等に対しましていろいろな指導援助をいたして参りますので、これらの諸活動というものも明らかにいたすようにいろいろ苦心をいたしておるわけでございます。調査活動のごく荒筋と概要はただいま申し上げましたような状況でございます。
  75. 山田節男

    山田節男君 国際共産主義の活動は、これはまああなたの方も本職として、ことに西ヨーロッパ、西ドイツあるいはフランス、イタリア、こういうところにおける活動を調査すれば、日本においてどういう意図をもって、どういう組織でやるかということは大体私はわかると思うのですね。私は戦後一九四九年西ドイツのデュッセルドルフ、あの炭鉱、鉄鉱業を中心とした地帯、共産主義の破壊活動が最も激しかったときです。最初に行ったとき、これはドイツ共産主義を非合法化しなくちゃならんという最高裁判所の判決文の中にもあるが、その当時の国際共産主義の破壊活動のこれは代表的な表われだと思うのです。その国際共産主義の活動に関しては、とにかく日本でやってもそれは共産主義——ソ連その他共産主義の衛星国家を主体として緊密な国際的連係があるわけですね。そういうものに対する調査活動というものが、あるいは在外公館を通じ、あるいは公安調査庁でアタッシェを置くとか、在外公館ではそういう方面の調査は、これはとても手に及びません。だから重要な所にはアタッシェを置いて常時情報を確めるというようなネットワークを置きませんと、日本だけの末梢的な一部分だけを見ておったのでは、その本体と将来どういう手を打つのだというようなことが、見通しは非常に私は困難だと思う。私はこういうものの専門じゃないけれども、今日まで非常に西ヨーロッパ諸国がこれに対して苦労しておる。それからアメリカにおけるFBIの活動ですね一これらは私は文献等によるほか知りませんけれども。そういう点から見ると、これは今回予算として五億二千万円くらいのものを計上しておる。きわめて範囲の広い、対象も団体として数も多いし、人員とすれば両方合わせて十一万近くのものを相手にしているということになれば、五億二千万円ぐらいの金ではとうていちゃちな調査しかできない。これは数字の上から見た私の印象なんです。これは申すまでもなく、国際共産主義の活動については非常に背景には豊富な資金もあるわけです。ですからほんとうにこの破壊活動防止の一環としての公安調査官の活動ということになれば、これは何か調査の科学化に関する必要な経費として一千万円ばかり計上しておられますが、なかなかむずかしい問題だと思うのですね。ですからもとより現状では私十分でないと思う。十分でないということは、ある面においては非常に不徹底であるがゆえに国の治安というものの根本的な調査が十分でないということ、それから悪くいけば、これが不当に人権をじゅうりんするというような部面にもなって現われてくるわけですね。ですからそれにはやはりこういったような破壊活動を防止するというのは、これは右翼、左翼を問わず、もっと科学的な基礎というもの、それからもう一つはその要員の訓練ですね、なるほどこの訓練について若干の予算を計上しておられますが、調査官の数が何人おるか知りませんが、この訓練、これは会計検査院と同じだと思うのですね。やはり検査官そのものの質というものが非常に私は重要だと思うのです。そういう方面について一体どういう計画をお持ちなのか。現在において最も足らざる点はどういうようなところかというようなことが、もしあなたがお示し願えれば、こういう計画はあるのだけれども予算で制約されてこういうことができないのだという点があれば、お示しを願いたいと思います。
  76. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) ただいま御理解のある御質問をいただいて恐縮しておるわけでございますが、実はこの国際共産主義運動が国際的連係で推し進められるということは当然のことでございますが、ことに一昨年十一月のモスクワの十二カ国共同宣言、六十四カ国労働者党の平和宣言が出まして以来、国際共産主義の海外攻勢がきわだって激しくなってきている。従来の平和共存よりもさらに一歩進めてどんどん押してくる、闘争による平和の戦術として。従いまして日本に対しましても、ソ連共産党あるいは中国共産党、あるいはそれ以外のいろいろな国際共産主義の前線組織を通じまして、いろいろな援助あるいは指示等がなさっている状況でございまして、私ども国内における破壊活動、共産主義活動を明らかならしめるにつきましても、常に共産主義活動は内外一体で調査を進めなければ、その真髄はわからないということを部内で強調いたしまして、そのような考え方で調査を進めておるわけでありますが、それにつけまして、ことに海外調査網の充実ということが私ども年来の念願であり、また最も苦心をしておるところでございます。三十四年度予算におきましては、わずかな金額でございますが、四千八百万円、まあ五千万円に足らない金額でございますが、これを大蔵省に要求をいたしまして、要所々々に公安調査庁独自の海外駐在官、アタッシェを配置をいたしまして、なおただいまお示しのような諸外国におきましてもいろいろ優秀な調査機関、情報機関があるわけでありますので、これらの情報機関とも随時連絡をとるための情報連絡、旅費等を合せて四千八百万円ほど大蔵省に強く要求をしたわけでありますが、大蔵省側の方でどうしても認めてくれませんで、私どもが念願しておるような海外情報網を明年度敷くことができないような実情にあるわけであります。私ども非常に遺憾に思っておるわけでありますが、正式なアタッシェの配置が明年できませんけれども、お認めいただいた調査活動費の活用によりまして、いろいろな手段を尽して、海外からの指導、援助の実態を明らかにするように調査活動を進めて参りたいと思っておるわけであります。私どもの調査でこの面が一番欠陥で、ございまして、一体海外からどのような資金援助がなされておるのか、あるいはどのような指導がなされておるのか、なかなか実態がつかみ得ないことを申しわけなく思っておるわけでありますが、われわれの計画が計画通り進みませんけれども、できるだけいろいろな工夫をしてこの欠陥を補っていきたいというふうに覚悟をしておるわけであります。  なお、それに関連いたしましてただいま御質問がございましたように、私どもの方の定員は千六百四十人、ごくわずかな定員でございますが、私どもの考え方といたしましても、ただいまお尋ねがございましたように、そう多数の調査官ということは希望いたしておりません。もちろん現状においては足りませんので、三十四年度予算要求におきましても三百人の増員要求をしたわけでありますが、しかしながらそう多数の者を持つというよりも、むしろ一人々々が優秀な調査官になる、それぞれの能力を向上させ、それぞれが深い基礎知識を持った調査官になりまして、いろいろな人たちの協力を得て調査活動をすることが、より効果が上り、同時に人権侵害とか無理をする弊害をなくすゆえんだというふうに私どもも考えておるわけであります。従いまして、公安調査庁では調査庁発足以来独自の公安調査庁研修所を法務研修所以外に持っておりまして、常時研修に力を入れまして、人事院等から例年おほめをいただいておるわけでありますが、今後とも、御教示がありましたように、一人々々の調査官の能力を向上させて最大限の能力を発揮させる、効果を上げると同時に、弊害をなくしていきたいというふうに私どもも考えておるわけでございます。
  77. 山田節男

    山田節男君 現在の調査活動をする調査官の中で、技術関係ですね、たとえば無線通信というような技術系統の者は何名くらいおりますか。
  78. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) 遺憾ながらほとんど申し上げられないような数でございまして、本庁にごく初級の無線技師の資格をとった者が二人しかおりません。あとは持っておりません。
  79. 山田節男

    山田節男君 私それは非常に弱体だと思うのですね。たとえば西ドイツの一九四九年当時の実際私そこへ行っていろいろ見学した状況から判断します一と、そういう調査活動は、今日は交通通信が非常に発達した、ことにああいう西ドイツのすぐ隣は共産主義国家なんですから、交通通信というものに対して非常に神経過敏で、従ってそれに対する対策は非常な科学技術を持った、ことに電波通信に対して、人間の移動ということについてはある程度までキャッチできる、電波についてはなかなかむずかしいが、しかしそれでもある固定通信から発信するものについては、いわゆるジャミング、妨害する通信までローカルでそういうことを実施している。これはおそらく共産主義諸国においてもそういうことをやっておられるのだろうと思います。ですからこの調査活動の陣容というものは、やはりそういったような科学的な調査活動の研究が期せられ、そういう方面のスタッフを整えるということ、整備するということが、先ほどあなたもおっしゃるが、調査官の質を向上するこれは絶対の条件になってくるわけです。ですからこれはもう調査からいえば、西欧諸国でやっていること、在外公館を通じてでも調査されればこれは実質的にわかるわけですね。そういうものをやはり整備しないと、実際あなたが責任を持ってやられるという調査活動というものはなかなかむずかしい。これは共産主義ばかりじゃありません。右翼の団体に対してもしかりです。まだ日本はそういう問題について利用度は少いかもしれないけれども、しかし国際共産主義の活動というものに、これはもう西欧諸国においても他の諸国においても、相当そういうものを利用しているわけです。これに対する一つの対策としては、そういう面にも意を用いて質の向上をはかる、それが調査活動の能率化を来たすんだ、こういう根本的な一つの認識を深くおきませんと、調査活動がいつまでもかつての特高警察のようなことになってしまう。ある場合においては非常に無実の罪をきせて人権を侵害するというようなことになってくるわけですから、こういう調査活動というものはきわめて複雑であり、デリケートであり、しかも相手のあることですから、それの上をいくだけのやはりこちらの心がしまえがないと、いつまでもあとを追っていくというのではこれはいけないわけです。そこらあたりの、これは質問ともつかないし、要望ともつかないのですが、そういう点はもう少し私は意を用いられるべきだと思いますけれども、調査庁としてそういうようなことも実際もう認識して何とか策を立てなければならないというようなお考えがあるかどうか、これを承わりたい。
  80. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) 来年度の予算におきましても、この調査の科学化に必要な経費という非常に大上段な、おこがましい経費が組んであるわけでございますが、しかしながら内容ははなはだ貧弱でございまして、われわれ科学的調査ということを念願いたしているわけでありますが、来年とりあえず整備するものはそれならば何だということになりますと、あるいは小型自動車であるとか、オートバイであるとか、あるいは写真機であるとか、あるいは望遠レンズであるとか、まだごく初歩の科学器材、調査器材の整備段階でございまして、私ども地方に地方局を持っているわけでありますが、これの多くの職員は自転車で調査しておりまして、むしろ世間一般の方ではスクーターあるいはオートバイで飛び歩いておりますので、はなはだ貧弱な状況でございまして、ぜひともこの調査器材の科学化、科学的調査器材の整備ということをぜひ心がけて参りたいと思っている次第でございます。お示しのように私どももこの必要を痛感をしているわけでありますが、何と申しましても、発足の新しい役所ではいろいろなこの備品類、器材類の整備ということがなかなか間に合いませんで、大蔵省等に強く要求はしているのでありますが、だんだんに整えていくというようなことで、内情はなはだお恥かしい次第でございますが、私どもも今お示しのように、調査を科学的にし、合理的にし、効果を上げると同時に、弊害をなくしていくというふうに念願をして参りたいと思っております。
  81. 山田節男

    山田節男君 最後に、ユーゴスラビアですね。ユーゴスラビアはこれは御承知のようにやはり共産主義国なんです。ところがチトーが独裁するユーゴスラビアは、ソ連を中心とする国際共産主義と一応たもとを分っている形式にはなっているわけですね。けれどもユーゴスラビアはやはり共産主義国です。公安調査庁としてはユーゴスラビアに対してはどういったような態度をとる、と申しますのは、これはわれわれのところにもずいぶんユーゴスラビアの公館を通じていろいろな情報がくるわけですね。これはおそらく各議員にみんなくるわけだろうと思うのですけれども、これは別に共産主義の宣伝—宣伝とはいえないけれども、共産主義国には違いないわけです。公安調査庁としては、ユーゴスラビアは無害な共産主義と見ているかどうかというこの点を一つこれは御意見として承わりたい。
  82. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) まだ有害、無害というふうに言い切れるまでのところにはいっておらないと思っておりますが、しかしながらいずれにいたしましても、ソ連共産党あるいは中国共産党、大きく申せば国際共産主義、ソ連共産党を党首とする国際共産主義と違ったいき方をいたしておりまするし、これと思想的、イデオロギー的に争っている共産主義国家でありますので、私どももその現実のままにこの二つを対比いたしまして、いかなる点が争いにたつでいるのか、ユーゴを研究することによって、全体の国際共産主義の戦術戦略がどうなっているのか、この研究材料として、両方対比をしてみているというような状況であろうと考えております。
  83. 山田節男

    山田節男君 ということは、ユーゴスラビアは、やはり共産主義諸国の一つとして、まあ要注意国という取扱いをしているかどうか。
  84. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) 私ども基本的には岸総理も国会でお答えになっておられるのでありますが、ある国とその国の中の共産主義あるいは共産主義活動というものとを区別して考えるという建前をとっております。ソ連にいたしましても、ソ連共産党の諸活動、戦略戦術というものを中心にして、物事を考えているわけでございまして、ユーゴにとりましても、ユーゴの共産党あるいはユーゴの共産主義活動というものをみていきたい。ユーゴ国家というものはまた別のものだというふうに考えているわけでございます。
  85. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) それでは法務省所管の残余の質疑は、再開後に保留し、午後二時半に再開することとして、暫時休憩いたします。    午後一時二十四分休憩    —————・—————    午後三時五十四分開会
  86. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) これより予算委員会第一分科会を再開いたします。  休憩前に引き続き法務省所管を議題といたします。質疑のある方は御質疑を願います。
  87. 高田なほ子

    高田なほ子君 法務委員会で採決の都合上大へん時間をお待たせいたしまして、皆さんに御迷惑をおかけいたしまして恐縮でございます。  法務省関係の今度の予算を拝見いたしますと、少年刑務所並びに少年院、これに対する予算は若干めんどうが見られておるように拝見いたしますが、最近の少年犯罪の激増等にかんがみまして、これらの予算の中で激増する案件に対して処理する能力というものが、施設の面においてまた人的な資源において、果して適応であるかどうかという問題について、今お尋ねをしたいという考えからこの質問をしておるわけであります。従いまして、答弁者は私の質問の意を了解されて、詳しくかつ両度御質問しなくても済むように御答弁いただきたいと思うのです。お願いします。
  88. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 少年刑務所並びに少年院における矯正教育の内容でございますが、これは来年度におきましては、職業補導の面を十二分に充実したいというふうな考え方から、この方面予算を増額して予算に組んであるのでございます。少年院の方を申し上げますと、少年院の方の職業補導のために、従来年間原材料費といたしまして、三百時間の予算であったのでありますが、これを五百三十時間の原材料費に増額をして組んである次第でございます。かような面から少年院における矯正教育の中心を、再来の更生の基本となるべき職業訓練を中心として行いたいと思っております。  なおこれに関連いたしまして、職業訓練規程を設けまして、それに基きまして実施いたしたいと思っております。この訓練規程によりまして訓練をいたしました暁には、いろいろな各資格の取得ということにつきましても、労働省関係とも連絡をとりまして、その方面の資格の取得のできるような方向に持っていきたいと考えております。  なお少年刑務所におきましても、来年度はこの職業訓練をさらに充実させまして、同じくこの資格の取得等の訓練科目を充実させたいと考えている次第でございます。
  89. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へんけっこうな御答弁をいただいたわけでありますが、三百時間から五百三十時間にこの増額の基礎をおかれているようでありますが、要するに職業補導の実を上げるのには、時間並びにまたこれをお世話する補導員の増員、また補導員の質の向上、こういうような血もあわせてこの予算の中で考慮されなければならない問題だというふうに考えているのですが、この点の説明をお願いしたいと思います。
  90. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 実はただいま仰せのごとく、これを指導して行きます職員の問題があるわけでございまして、実は人員の点で要求いたしましたが、なかなか人員増は獲得ができなかったのでございます。しかしながら謝金を得まして、外部の技能者に臨時協力していただくということでその欠陥を補うことにいたしまして、この謝金の増額、これは大したものじゃございません。三百万円ばかり増額を得ておる次第でございます。
  91. 高田なほ子

    高田なほ子君 次に、今日まで職業補導という面については、かねがね御心配になっていたように承わっておりますが、この職業補導を受けて更生をいたしまして社会に出向いた場合に、なお今日必ずしも社会があたたかい手で受け入れるということが、まだ困難な状態であるように思います。従いまして、この受入態勢等については、従来かちかねがね御心配になっていることも私ども承知いたしておりますが、この点については、本年度の予算面で受入態勢を強化するための措置、そういうものが予算の面でどんなふうに講ぜられておるか、ちょっと拝見いたしましても、そういう点がございませんようですが、御説明いただければ仕合せだと思います。
  92. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) これは少年院から出ました者も、刑務所から出ました者も同様でございますが、刑務所から出ますと仮釈放で出るわけでございますし、少年院でございますと仮退院で出るわけでございます。そういたしますと、これは保護関係の組織によりましてこれを補導いたします。で、これは全国に保護司がおられる、この保護司の実費弁償その他の手当が来年度において増額をされておりますので、かような面は、これは全般的の保護司の手当ではございまするが、増額されることによりまして、少年関係のかような面の補導の面におきましても、非常に効果的に尽されるのではなかろうかと思っております。
  93. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 今の点補足させていただきます。保護局所管でありますが、私かわりまして、御説明いたしたいと思います。  保護関係におきましては、ただいま矯正局長から御説明申し上げましたように、仮退院者等につきましては、特に青少年事件の重要性に鑑みまして、保護司の実費弁償金一人当り一カ月百六十円を本年より百九十円に増額いたしました。これに要する経費は約三千万円、なおまた少年事件等の増加に伴いまして、保護司の実費弁償金の増額は六百万、なおまたかような青少年の保護のために委託を受けた更生保護団体等に対しまする更生保護委託費の面で約三百万という増額を認められまして、これによりまして、少年院を退院し、あるいはまた保護観察を受けた少年の教化を行なって行きたい、かように存じておるわけであります。
  94. 高田なほ子

    高田なほ子君 次の質問は意見にわたりますが、この意見に対してお答えいただければ仕合せだと思います。私の意見をこれから言います。  保護司の手当増額はけっこうな話でありますが、まあ私に言わせれば、この増額というものは、実際の御苦労に比べては必ずしも適当なものじゃないというふうに考えられるわけです。第二点は、保護司とそれから児童福祉司、こういう方々が協力をして、一緒に社会に放されたいわゆるいわくつきだと言われる少年を守るという社会の中の一つの地域的な機構、そういうものが必要じゃないかという気が私はするのです。しかし御承知のように児童福祉司も人口十三万に対して一人というような、これはもうまことに悲しむべき現状でありますから、これにまた地域的な活動の中に保護司と協力してやつてもらいたいということは言いがたいような気持ちもいたしますけれども、しかし現状の少年犯罪の激増から見まして、そういう有機的な活動というものが当局の御指導に待ちながらされなければならないという考え方を持っておるのでございます。私の意見に対して当局の御意見があれば聞かしていただきたいということが一つと、それからこの保護司はお一人に当って通常何人くらいのお子さんをめんどうを見るということになりますものか、具体的にこんな点もお知らせいただければ仕合せであります。
  95. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 保護司の担当しております仕事の内容等につきましては、保護局長から申し上げる筋でございますが、係の者がどの程度答えられますかわかりませんけれども、とりあえず前段の有機的な連携という点につきまして、私もこれは所管ではございませんけれども、私ども平生その点を考えておりますので、その点をお答え申し上げたいと思いますが、まあ児童福祉司の問題は、これは取り扱います対象が、十四才未満の非行少年あるいは虞犯少年というものを対象にいたしております。それから保護司の方はそれ以上のもの、成人をも含めまして扱っておりますので、その対象も一応異にしておりますけれども、ケース・ワーカーであるという点におきましては両者共通しておるわけであります。しかも少年を法律的に、年令的に区割りいたしましても、そういうものでなくて、成年の犯罪を見ます場合には、少年にさかのぼらなければなりませんし、それから少年犯罪の対策を考えます場合には、さらにさかのぼって極端なことを申しますと、私どもは五、六才の幼児までさかのぼれという科学的な根拠を持っておるわけであります。そういうふうで相互に連携すべきものがございますので、できるだけ法務省所管の各出先機関等が中心になりまして、その間の調整をはかりながら相互に知識を交換してよい成績をおさめるよりに努めておる実情でございます。
  96. 高田なほ子

    高田なほ子君 この、私が意見を申したその底意というのはこういうところにあるわけなんです。少年犯罪、つまり性的な犯罪が最近多いということを言われておるわけで、実際その通りなんです。それは犯した者を見守って行くだけのもので、しかし犯された者に対する調査というのは、今どの機関でも手がつかないわけです。このことは大へん大切な仕事であって、犯罪者を更生させることも必要だが、しかし被害を受けた立場の者はどういうケースでもって被害を受けておるかというような調査、こういうようなことをやはり児童福祉司あたりと十分連携をとれますと、こういう点がはっきりしてくる面もあるだろうと思うのです。あるいはまたところによっては、学校当局等とも話し合いをしているようなところもございます。なかなか保護司の仕事も多いのでありますから、これにああせい、こうせいという希望を持つことはあまりにも酷かと思いますが、特に最近の少年犯罪の根を断つためには、被害状況というものが手にとるごとくにわかり、その被害状況がもとになった対策というものが講じられませんと、せっかく社会に出たとは言いながら、誘惑に負けて再び転落するというケースも多いのでありますので、以上のような意見をつけての質問を申し上げたわけであります。あくまでもこれは研究課題でございますから、どうかこういう点についても研究をせられ、そうしてこの保護司の手当の増額とともに保護司の人員、これらについても分今後御研究をいただきたい、こういう意味で質問をいたしましたから、御了解いただきたいと思います。  それから第二番目にお尋ねをしたいことは、せっかく矯正教育を受けましても、最近暴力団というものがいろいろの形ではびこっておるのですが、暴力団の中に必ずしもこれが入るというふうには考えてはおりませんけれども、仮釈放せられた者がいわゆる町の愚連隊というようなものの中で、また転落の方向に行ってしまうようなケースも見られるのではないか、つまり愚連隊の中に占められる矯正教育を受けた者の割合、こういうものについて御調査になっておりましたら伺っておきたいと思うのです。
  97. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 前段の点でございますが、この被害状況に関しましての調査その他の対策の点でございますが、これは今後も法務省におきまして、来年度総合研究所を設置せられることになるわけでございますが、そういうふうな問題も青少年の対策といたしまして総合的にいろいろの角度から検討を加えられ、これらの対策の樹立に役立つような資料も、こういうふうなところでも研究の対象になるのではなかろうかと考えております。なお、この保護司の充実の点でございますが、これも詳細の点は保護局の所管でございましてわかりませんが、そちらの方でさらに調査せられた上でお答えを願うことといたしまして、私の存じているところでは、年々この保護司の充実につきましては、保護局におきましても相当力を尽してその手当の点でも考えておるようでございます。一人当りの担当件数というものは、私の記憶しているところでは二、三人程度ではなかったかと思っております。しかし、各自によりまして担当事件が違うのでございまして、忙しい方は十人も持っておられる方もあるかと思いますし、また、なるべく地域的に保護司の分布を考えておられますので、地域におきましては一人の対象者もお持ちにならない保護司もおられると思っております。平均いたしまして大体二、三人見当ではなかろうかと私は考えておる次第でございます。  次に、矯正教育を受けた者が暴力団等の愚連隊の中にどのくらい占めておるかという点でございますが、この点はちょっと現在われわれの手元ではその資料を持ち合しておりません。しかしながら、検挙されました者の中で、少年刑務所に収容されました者の中で少年院を卒業した者がどのくらい占めておるか、これは概括のことでございまして、愚連隊ということにはならないと思うのでございますが、全般的な数でございますけれども、大体二七%ということになっておるのでございます。われわれといたしましても、矯正教育をいたしました者が再び犯罪に陥ることのないよう十二分に協力いたしたいと思っておりますけれども、なかなか期間等の関係から十二分に参りませんので、これは出ましてから後の保護の関係で十分裏づけしてもらうように考えまして、両者の連携を緊密にはかるようにいたしておる次第でございます。
  98. 高田なほ子

    高田なほ子君 仮釈放という問題はかなりむずかしい問題じゃないかと思うのですが、これは一般成人の場合もそうかもしれませんが、せっかく仮釈放されて出てぐる、また転落する、またつかまるという循環が繰り返されておる場面がかなりあるように思うのです。これは最近のラジオとかテレビあたりでも、なかなか仮釈放というそのままの文字では出てきておりませんけれども、少年犯罪に関連して、仮釈放の問題というのがちょいちょい話題にも出てきているようです。これは予算委員会でもちょっと一般質問のときに質問申し上げたことなんですが、仮釈放を決定する機関というようなものは、もちろん今一つの制度の中にあるわけでありますけれども、もっともっとこの仮釈放に関する制度的なもの、こんなものは研究していいんじゃないかなという気がするわけなんです。私はまあしろうとで、こういう点については十二分の研究をしておるわけではありませんが、どうもここらあたりが研究の余地がありそうな気がするわけです。幸い今度総合研究所ができることについて、私は双手をあげて賛成をしておる一人でありますが、これが実際の運営の上に役立つというまでにはなかなか時日も必要であろうと思うのです。でありますから、総合研究所の実際の運営効果を待つまでもなく、どんどんとやはり少年の保護、補導、ある方面における取締り、大へん御苦労なことでありますが、なかなか陽の目を見ない問題でありながら、社会問題としては大きな問題でありますから、御当局の一そうの御奮闘を期待するわけです。  次に時間もありませんから、婦人補導の問題について若干お伺いをしておきたいと思います。まあ婦人補導院と関連するのは、結局広げていくと売春対策になるのですが、どうも今年の予算は全面的にみな後退しておるのですね、どういうわけで後退をしたか、この点についても一つ一つただしていきたい実は気持も持ったのですが、時間もおそくなりますので、それはまた後日の機会に譲るとして、ただ一つこの補導院の中でいろいろなこの段階があるわけですね、補導の段階が。その段階というものを今どんなふうな形で類別されて、収容されておるのか、また類別できないということであれば、この類別という問題について当局はどういうふうに考えておられるのか。こうなってくると、また要員の増員という問題も起ってくるだろうと思いますので、本日は現況からこういうふうにありたいというような意見を主としておっしゃっていただければけっこうです。
  99. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 最初の御質問の仮釈放の審査の問題でございますが、これは御承知のごとく、犯罪者予防更生法によりまして、八地区に更生保護委員会がございまして、この委員会が審査をいたしているのでございます。これは刑務所からの仮釈放と同時に、少年院からの仮退院の審査もすべてこの機関がいたしております。これにつきましてはもちろん各施設、刑務所、あるいは少年院での本人の矯正教育をあげた段階、成績というものを十分考慮いたしまして、各施設から上申いたすのでございますが、その成績と同時に釈放後あるいは仮退院後、本人たちが居住いたしまするその社会環境の調査を保護司の手によりまして十二分に調査いたしまして、その保護環境と、本人の矯正の成績とを両方勘案いたしまして、この審査機関が決定をいたすことに相なっておるのでございます。従いまして、まあこの少年院あるいは刑務所内におけるばかりの成績じゃなくして、本人が社会に帰ってからの予後もよく勘案した結果審査されることに相なっておるのでございます。従いまして、この審査を決定されました後は、さらにこの委員会のもとにありまする観察所が、引き続きその対象者を補導していくごとに相なりますので、この施設から帰って後の保護がずっと一貫性をもって指導されるような仕組みに相なっておるのでございます。で、仰せのごとく、こういうふうな人たちが悪循環を重ねるような事態が起って参っております。これは事実として私たちの矯正教育が至らなかった結果ということに相なりますので、この点、はなはだわれわれといたしましても責任を痛感しておる次第でございますけれども、これは一つの言いのがれかもわかりませんが、社会へ帰りましてからの全般的ないろいろな原因がさらに加わりまして、再び犯罪に陥るようなことが往々にして起るのでございます。あるいは就職をいたそうと思いましても、何か就職が思うようにいかない、あるいは交友関係、すべての面でいろいろな支障が起って参りまして、かようなものが集まって再び犯罪に陥るというような結果に相なるのでございますが、われわれといたしましては、さような原因を除去いたしまして、再び犯罪に陥らないように、今後とも相互の連繋を強め、社会の協力を得まして、本人たちの更生を期したいというふうに考えておる次第でございます。  次に、婦人補導院の問題でございますが、予算が全体的に後退しておるというおしかりでございますが、これは来年度の予算は、実は本年度の予算に比べますと非常に少くなっておりますが、その大部分は施設の建設の費用が約七千万あったのでございますが、これが来年度は計上されておりませんので、さような面で全体の予算が非常に減って参っております。なお御承知のごとく、補導院の建設につきましてまだ本院が実はできていないのでございます。これは現地でのいろいろな地元の関係等から建設が思うように参らなかったのでございまして、さような関係から、現在本院ではなくして、仮の暫定的な分院で今仕事をいたしておるのでございます。かようなところから、分院に収容されておりまする対象者が非常に少いのでございます。現在東京、大阪、福岡各分院で収容しておりますものは、全体で六十数名になっております。さような関係から、来年度の収容予定人員といたしまして、収容定員は二百九十名でございますけれども、まだ本院が完成していないために収容人員を多少減らして予算が計上されておるのでございます。一日平均が二百人ということで計算されております。かような関係から、全体的に予算も減ってきたようなことに相なっております。なおこの設備に関連いたしまして、それと設備費、被服費、あるいは机とか、いすとか、そういうふうな諸設備の費用も本年度は多少補充的に計上されたにすぎないので、さような面からも予算が減って参っております。しかしながら、その他の面におきましては、婦人補導院の方でも割合考慮がされて予算は組まれたことに相なっております。それからこの婦人補導院でいかようにしてこれを補導していくかということでございますが、これは現在では、ただいま申し上げました通り、三施設で六十数名でございまして、一番多いのが和歌山で三十名、それから東京が二十名、それから福岡の方がたしか十四名だったと思います。さようなことで割合収院者が少いのであります。従いまして、これらを類別いたしまして指導するというのもなかなか困難なような状況でございまして、現在では大体最初に入って参りましたときに、新入教育と申しましょうか、それとそれから中間の指導、それから最後に、退院まぎわになりました者を、退院後の社会教育というか、大体三段階に分けておるのでございます。なおそのほか、中に入って参ります者の身体的な障害、あるいは性病とか、その他そういうふうないろいろな疾病を持って入ってくる者が相当あるのであります。こういうふうな者は、医療を中心として、これをまず身体的な欠陥をなおしてやるということに主眼点を置いております。それから中に入って参ります者は、相当知能の低い者が入って参ります。従いまして、いわゆる義務教育をも履修していないような者も入って参るのでございます。従いまして、かような者には、少くとも読み書きの程度のものはできるような、手紙くらいは書ける程度の教育、不就学の教育をいたしております。それからただいま申しました職業指導の教育、これは婦人としてのとりあえずの何と申しましょうか、縫いものでございましたならば、ひとえものくらいは縫えるような程度の縫いものの教育もいたしております。そのほか炊事の方の指導、そのほか一応の婦人としての家庭生活をいたすにつきましての必要な限度の生活指導をやりますると同時に、基本的な職業的なものをあわせいたしておるような次第でございます。
  100. 高田なほ子

    高田なほ子君 詳細な御説明をいただいたわけでありますが、とにもかくにも、この婦人保護の面を担当していらっしゃる要員の方々の御苦労というのは、実際頭の下る思いで、だれも安月給であんなに献身的にやるという職場はあまりないくらいに、私尊敬しているんですが、今だんだんの御説明はいただいたにいたしましても、これが婦人保護の面が十分にいかないからけしからぬというような気持で私はおりません。ただ国自体として、これらの更生させなければならない婦人をいかにするかというような、総合的な施策というものが再検討される段階にきているので、保護施設の中におられる方々、またそれに責任を持たれるお役所だけがさか立ちしてもこの問題は解決しないという、そういう面から、非常にこれは同情をしておるわけなんです。総合的な問題をここでお尋ねすることはちょっと場はずれかと思いますから、これは避けますけれども、できるならば、この実績を上げるためにはいかにすべきかというような問題の再検討を、できるならば、総理府内に中央青少年問題協議会というものがあるごとくに、対婦人の問題、特にこういう問題に重点を置くようなものが一本必要ではないかというような気が実はしておるわけです。その理由は、先ほど申し上げたように、婦人相談所、婦人相談員施設、そうして厚生省に分れ、法務省に分れ、そしてまた労働省に分れ、これではこれは一分野だけが幾らがんばってもがんばり切れるものじゃないので、どうか今後とも一つ、十分に総合的な施策という面については一番発言権を持たれるのはあなたなのでありますから、どうかこういう建設的な総合的な意見というものがいろいろの機会に反映されて、この婦人保護施設の要員の皆さん方の御労苦というものが陽の目を浴びるよう、一そう御健闘願いたいということで、一応私の矯正関係に対する質問は終らしていただきたいと思います。  それからもう一つ、せっかく刑事局長さんがお見えになっておるわけでありますから、ちょっと二、三点だけ、これは事務的な問題でおそれ入りますが、刑務所に収容されている者の食費は、若干今度の予算では増額になっております。しかし一面被服費が減になっているのですがね。どうも私はこの関係がふに落ちないのです。どういうわけでこういうことになったのでしょうか。
  101. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 婦人補導院の問題で、ただいま仰せのごとく総合的な対策を立てなければならないということ、ごもっともでございまして、実は中央の方には、御承知のごとく売春対策審議会が引き続き存続されまして、この問題の連絡なり、今後の対策を立てていただくことになっております。なお地方の方でも、これに対応いたしまして、できることになりまして、私どもの方では補導院で、また厚生省関係の婦人相談員の方々、それから各地にできております婦人寮にだいぶ収容していただいております。この点は、われわれの方ではたった六カ月しか収容いたしませんので、なかなかこれだけではできませんので、厚生省なり労働省の方にも御厄介にならないとどうしてもできませんので、この点は、われわれとしても十分気をつけております。今後ともこの点は、仰せのごとく十分緊密な連絡をとりまして、成果が上るように今後とも努力いたしたいと思っております。  なお刑務所内における給与の点でございますが、食費の方は、実は菜代の増額をお願いいたしましたが、なかなかむずかしかったのでございます。そのかわり、これは全般でございますけれども、特別の菜代を計上していただきまして、これは、正月に五十円の菜代をちょうだいしたのでございます。それと、もう一つは、結核患者には今まで特別な病菜の代金をいただいておりましたが、そのほかにはなかったのでございます。ところが、それを一般の病人にもやはり特別の菜代を計上していただきまして、これが一日十円の病菜を計上してもらったわけでございます。かような面で、全般的には給与はこれで相当向上されていくのじゃなかろうかというふうに考えております。  なお、刑務所における栄養は、主として主食に取っておりますので、どうしても動物蛋白が不足になりがちでございます。この点は、今後とも献立その他に気をつけまして、その点を補って参りたいと考えております。  被服費の方でございますが、これは全般的に収容費三%減を全部にひっかぶせて参りましたので、さような点から少し減って参ったと思っております。その点は、今後ともわれわれとしては十分気をつけていきたいと思っております。
  102. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはまあ大蔵省のやり方というのは、一方をふくらませれば一方を減らすということになって、まるで物理の原則みたいなそういうふうになっているのですが、刑務所の被服費を削るなんということは、私はもう常識でおかしいと思うのですよ。これはまああなたに言っても始まらないから申し上げませんが、あの被服だって、もう減らされない限界じゃないかと思うぐらいに私実は拝見してきておるわけですが、どうか一つ、囹圄の人たちは全く自由を拘束されているのでありますから、せめて予算内に許す費用については、十分注意していただきたいということを重ねて申し上げて、以上で法務省に対する質問は終らしていただきます。
  103. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 他に質疑はございませんか。——別に質疑もないようでありますから、法務省所管質疑はこれをもって終了することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。
  105. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 次に、裁判所所管を議題といたします。  まず、裁判所より説明を求めます。
  106. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 昭和三十四年度裁判所所管予定経費要求額につきまして、私からごくあらましのことを御説明申し上げます。  昭和三十四年度の要求額の総額は百二十四億三千三百九十三万三千円でございます。これを前年度予算総額百十一億二千九百三万三千円に比較いたしますと、差引十三億四百九十万円の増加になっております。この増加額の内訳を大別いたしますと、第一に人件費におきまして十億五百五十八万三千円、次に裁判所庁舎の新営補修等の経費におきまして一億九千九百六十四万四千円、第三に裁判に直接必要な経費いわゆる裁判費におきまして八千六百七十五万九千円、第四番目にその他の一般司法行政事務を行うために必要な旅費、庁費等におきまして千二百九十一万四千円となっているのでございます。この合計が先ほど申し上げました額となるのであります。  次に、昭和三十四年度要求額のうちでもおもな項目について御説明申し上げます。第一に営繕費でございますが、これは裁判所庁舎の継続工事二十庁でございます。この二十庁の継続工事、新規工事十九庁の新営工事費といたしまして九億二千二百八十七万四千円が計上されておりますが、このうちの最も目ぼしいものといたしましては、東京地方裁判所刑事部庁舎の問題がございます。これは前年度からの引き継ぎになっておりますが、三十四年度といたしましては二億八千九百万円が認められたので、前年度からの繰越分を加えますと、実質上の第一年度の工事費といたしまして、約三億九千万円が東京の地方裁判所刑事部庁舎のために計上されておることになるわけでございます。その他、裁判所庁舎等の施設等整備費といたしまして三千万円、訴訟の迅速適正な処理のための法廷増築費といたしまして二千七百六十八万八千円、営繕事務費といたしまして千九百四十三万八千円、以上合計でちょうど十億円が計上されておるわけでございます。  第二番目に、訴訟の迅速適正な処理に必要な経費、これは第一審の裁判を強化いたしまして裁判の適正と事務能率の向上をはかるための経費でございますが、このために、まず第一に判事補二十人を増員するために必要な人件費といたしまして千二百十五万円、次に第一審強化方策協議会出席旅費といたしまして三百三十九万八千円、次に書記官等の超過勤務手当といたしまして九百二十万円、次に自動車十五台の購入費といたしまして千二百十五万五千円、最後に事務能率を高めまするいろんな器具等の予算といたしまして三千七百六十六万九千円、以上合計七千四百五十七万二千円が計上いたされておるのでございます。  なお、この関係経費といたしましては、今述べましたもののほかに、先ほど申し上げました法廷増築費二千七百六十八万八千円もこの方面経費ということが言えると思うのでございます。  次に裁判費でございますが、これは裁判に直接必要な経費でありまして、国選弁護人の報酬、証人、鑑定人、調停委員等の旅費、日当、その他裁判に直接必要な旅費、庁費等でございまして、このために十四億六千七百六十四万九千円が計上いたされております。  次に裁判官の待遇改善のための費用といたしまして、裁判官の管理職手当が前年度二百五十四人のほかに新たに百二十八人分が増加いたされまして、合計三百八十二人分が認められました。その経費は三千九百七十三万五千円でございます。  最後に、調停協会連合会補助金、これは調停制度及びその運営に関する研究、調停委員の知識の向上、調停制度の普及徹底等を目的とする日本調停協会連合会の事業を助成奨励するための補助金でございます。この金額は七百万円ということになっておりまして、これは前年度の五百万円に比べまして二百万円増加いたしておるわけでございます。  以上が昭和三十四年度裁判所所管予定経費要求額の大要でございます。
  107. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  108. 山田節男

    山田節男君 まず第一に、裁判所の造営と言いますか、新築の問題ですが、この予算面に三十四年度の要求額並びに査定の額が出ておりますが、これは五ヵ年計画とか何とかいう年度計画でやっておられるのですか。
  109. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 裁判所の庁舎の予算につきまして、本年度請求いたしました金額は、合計四十億九千四百十一万円という大きな数字になっておりますが、これにつきまして、結局ただいま事務総長から御説明申し上げましたように、新営庁舎及び継続いたしております庁舎の建築でございますが、それらにつきまして合計十億円の予算が一応査定された次第でございます。それで何年計画というような御質問がございましたが、結局大きく申し上げますと、裁判所の庁舎につきましては、まだ相当数の新営をしなければならない庁舎があるとわれわれの方では考えておる次第でございまして、簡単にその点を御説明申し上げますと、結局裁判所庁舎の整備につきましては、現在木造で非常に老朽の庁舎が、庁の数といたしますと百三十六カ所庁もございます。それからこれが坪数にいたしますと五万八千坪くらいございまして、なお前後いたしましたが、裁判所の庁舎の総坪数は現在二十二万九千余坪になっておりますが、このうち木造庁舎で老朽いたしまして新築を要すると考えられるものが五万八千余坪もございます。それから戦後応急的にいわゆるバラック式のものを建てましたが、それが庁数にいたしますと二十一カ所ございまして、坪数にいたしますれば一万四千余坪になっております。それから他から借り入れて、いわゆる借入れ庁舎でございますが、これがまだ七十一カ所ございまして、坪数にいたしますと七千余坪ということになっております。かように相当数の、まだわれわれといたしますと新営をしなければならない庁舎がございますので、結局それを全部金額に計算して参りますれば、われわれの計算で参りますと、約百五十億円というような膨大な数字に達する次第でございまして、結局国の財政とにらみ合せながら裁判所の庁舎も整備しなければならないと考えられますので、このうちわれわれの方で特に急を要すると考えられるようなものを、毎年改築の必要、新築の必要の一番程度の高いというようなものを選びまして大蔵省に予算の請求をしておるわけでございます。それが先ほど申し上げましたように今年度は約四十億というような請求を一応いたしました次第でございます。
  110. 山田節男

    山田節男君 これは過日予算委員会でも裁判所の造営費について質問があったのでありますが、戦災都市が次第に復興してきて、いろいろ総合庁舎であるとか、あるいはその他の公共建物もどんどん新築されて、木造でなくて次第に鉄筋コンクリート化してくる。こういう情勢で、私部分的にしか知りませんけれども、やはり高等裁判所あるいは地方裁判所の舎屋、庁舎が非常にひどい。一例をあげれば、たとえば広島の高等裁判所とか地方裁判所を見ても、もう雨漏りがするというようになっておる。これは大蔵省との予算関係で何も手がつけられないというようなことも言いましょうけれども、しかし少くとも民主主義の行われる国家におきましては、何といっても裁判所というものはこれはいわゆる正義が行われるところなんでありまして、たから少くともこういう高等裁判所あるいは地方裁判所の所在する地域は、これは中小都市なんであって、しかも先ほど申し上げたように、もう復興はどんどんしておるわけです。立ちおくれておるのはむしろこの裁判所関係の庁舎がそのままになっておる。他の一般行政庁舎というのは総合庁舎というので非常にモダンな明るい建物をあちこちに建てておるわけです。ですから、やはり裁判所というものは役柄から見ても、特に民主国家として裁判所の建物がりっぱであるということは、これは民主主義に反しない。むしろそうあるべきなんだ。だからたとえば今年度四十億予算要求しても四分の一に削られてしまった。これはいろいろ大蔵省の認識の程度、また他の予算との振り合いということからこうなるのかもしれませんが、私はこういう点において非常にこういう現状はいかぬと思うのですね。非常にこういう状態をあくまで続けることはいけないと思うのです。それからもう一つ、そういう状況でありながら、次第に新庁舎を増築されるについて、全国一律のモデルでやるとか、同じような建築様式でおやりになるのかどうか、この点一つお伺いしておきたい。
  111. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 裁判所の庁舎を新営いたします際に、型とかあるいはいわゆる外観とかいうようなものをまだ画一的にするというようなことは現在いたしておりません。しかしながら大体におきましての規格というのがございまして、それは大きさでございますが、結局現在の大体の基準は、地方裁判所あるいは家庭裁判所の本庁舎というような場合には、鉄筋コンクリートの三階建てで、大体坪数が千五百坪ないし二千二、三百坪と、かようなことになっておりまして、甲号支部、乙号支部、この辺までは鉄筋コンクリートでいずれも建てる。坪数は多少本庁に比べまして減って参りますが、この大きさは、大体その職員の数から割り出してきておるのでございまして、大体今までとつております基準はその程度でございます。先ほども申し上げましたように、形とか外観とかいうようなことについては、必ずしも基準というものをきめておるわけではございません。
  112. 山田節男

    山田節男君 これは先ほど申し上げたように、中小都市、少くとも人口が十万以上ぐらいな都市に高等裁判所、地方裁判所が所在しておるのであります。おそらく都市計画それから都市美ということは、今後ますます都市環境をよくするために、非常な注意を払ってやっておるわけですね。そういう中にあって、建てられる裁判所というものが、これは非常にモダンでいいということも、これは衛生上からは言えるかもしれませんけれども先ほど申し上げましたように、裁判所という本来の職能からいえば、あまりうわすべったようなモダンな総ガラスの建物がいいか悪いか、一つ例を申し上げますと、ブラジルの新しい首府ブラジリアの国会とかあるいは裁判所その他全然新しいモダンなのを今作っておりますのですが、これは環境が全然……、新しく作っていくのでありますから、それはそれとしての一つの行き方があると思うのですけれども裁判所はあくまで正義の裁断を下すところであって、国民の人権あるいは物質的精神的そういう損害といいますか、そういうものをリカバーしてもらう神聖な場所なんですから、どうも今日の最高裁判所なりあるいは東京の高等裁判所を見ましても、そういう意味における一つの荘厳さというものが欠けているのじゃないか。これは非常にこまかいことのようですけれども、しかし裁判ということの意味からいうと、これは精神的にも心理的にも非常に重要な建築上のファクターになると思うのですね。ですから、こうして、計画としては全国に何十カ所、百五十億円余の金が要ると、逐次そういうものを実現しなければならないということになるならば、基本的な裁判所の造営のプランというものは、私は中央で持つべきだと思うのですね。そういうことについては、何ら今日まで調査もされないし、またそういう規格というものもお考えになっていないのですか。
  113. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 規格の問題でございますが、裁判所といたしましては、御指摘のように裁判所の建物の形というものが、一応国民から見ましても恥かしくないような形に建てたいという熱意は強く持っているのでございますが、しかしながら全国一律の規格と申しますと、まあ場所柄もそれぞれのいろいろなニュアンスもございますし、また建てます土地も必ずしも一定しているわけでもございませんので、やはり相当その一つ一つ裁判所になりますと具体性をもって参りますので、われわれの方といたしましても、抽象的に大体かような形というようにはまだきめているわけではございませんが、しかしやはり相当数今後建てていかなければならないということになりますと、御指摘のように大体の形というようなものをきめることも、一つの構想だと考えられます。現にすでにここ二、三年来はたとえば法廷棟と申しますか、法廷の棟と、それからいわゆる裁判官室、書記官室等の事務棟と申しておりますが、さようなものと分けて建てるというような、分けましてその間を廊下でつなぐことになる、廊下と申しますか、橋でつなぐことになるのでございますが、そういうようなことをやったところもすでに二、三あるのでございまして、御指摘のような点は、十分今後検討して参りたいと思っております。
  114. 山田節男

    山田節男君 この現在の最高裁判所が、これは戦災をこうむった建物の改増築であれば無理からぬことと思いますか、少くとも日本の国の最高裁判所としてのあの建物は粗末であるということは、これはだれでも認めていることだと思う。そこで最高裁判所の造営ということについては、かつて新聞で見たのですが、パレスハイツの駐留軍の撤去した跡に何か建てられるというようなことを聞いたのですが、そういう具体的なプランはできているのですか。
  115. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 最高裁判所の庁舎の建築の点でございますが、これは今御質問がございましたように、まず最高裁の庁舎を、現在の庁舎といたしまして決して満足しているわけではございませんので、なるべく早い時期におきまして、しかるべき建物を建てたいということは、最高裁自体の念願なんでございますが、とりあえずそれにつきまして、敷地の問題といたしまして、今御指摘がございましたようにパレスハイツ、三宅坂寄りの所でございますが、パレスハイツの敷地が昨年の暮に米軍から日本政府に返還されました。その際に裁判所といたしまして、関係方面に折衝いたしました結果、一応パレスハイツの敷地の大体半分、約八千八百坪ございますが、それを最高裁判所の将来の建設の予定地とするというようなことに、国有財産中央審議会において大体きまった、大体と申しますと、まあ最高裁を建てるということがまだ予算的にきまっているわけでございませんので、国有財産中央審議会におきましても、結局将来パレスハイツの敷地の半分を最高裁の敷地に予定するというような決議1と申しますとまた強いかもわかりませんが、大体さような意向できまったわけでございまして、それが新聞等に出たわけでございますが、敷地の点は大体以上のような状況でございますが、結局具体的の建築ということになりますと、今後大蔵省とも折衝いたしまして建てなければならないということになりますが、しかしまだ、大体どの程度のものを建てるかということは、大体の構想は持っておりますけれども、はっきりまだ設計等は具体化しているというような段階ではございません。
  116. 山田節男

    山田節男君 結論的に言いますと、今裁判所の造営についての予算の計上でありますが、最低限度四十億来年度要る、こういう予算要求されて十億円に減らされたと、こういうのでありますが、どうでしょう、今のようなテンポでずっといきますと、重点的にもう新らしく建てるのと、それから何といいますか、増築、補修というような部面、こういうものは新築する部面がむしろ圧迫されて、補修的なものに現在もらっておる予算が流用されるという、そういう実態じゃないですか、予算に制約されてですね。そういう結果になりませんか。
  117. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) これは予算の技術的な点でございますが、先ほど申し上げました十億円という金は、すべて新営庁舎の建築費でございまして、補修、いわゆる修繕式の金はまた別にわずかな金額でございますが、大蔵省の査定を受けております。十億円の金を修繕の方へ使うということは、現在のところ技術的に困難でございます。
  118. 山田節男

    山田節男君 次に、訴訟の迅速な処理に必要な経費としての数字かあるわけですけれども、この中で事務能率器具等の費用として約三千八百万円、この内容はどういうようなものですか。
  119. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 事務能率器具の点でございますが、まあ非常にこまかいことになりますが、結局コピーフレックスとか、モンロー計算機とか、あるいは備付帳簿の整備の関係の物品とか、あるいは訴訟記録のファイル化とか、さようなものでございます。
  120. 山田節男

    山田節男君 これは特に横田事務総長あたりにお伺いしたいんですけれども、訴訟が非常に日本がスピードがのろいということは、これはいろいろ隘路があるに違いないと思うんです。事務的な処理というものは、ことに日本においては非常に制約を受けておるところが多いんじゃないですか。第一に文字、それから何といいますか、いわゆる裁判所の文書といいますか、これは当用漢字をなるべく利用されておると思いますけれども、それで訴訟のいろいろな文書を見ますと、当用漢字を逸脱している文書が相当あるわけですね。ですから文字、あるいは書類の整備という非常に技術的なんですけれども、そういう事務的ないろいろなハンデキャップがある中で、そういうものをもう少しオートメーション化するとか、機械化するとか、こういうことを考えればもっと私は訴訟の事務が迅速に行われるんじゃないか。たとえば登記にいたしましても、それから今度裁判の事務が上級裁判へ行くためにも、膨大な書類を作成しなければならぬ、こういうことはもう少し簡素化する必要があるんですから、最高裁判所あたりで訴訟を迅速にやるということについては、そういう方面についての一つの根本的な研究といいますか、そうしていいものはどんどんこれを実際化していく、こういう努力は私は必要じゃないかと思うんです。こういう事務のマネージメントについて——裁判所のマネージメントについて、かつてそういう基本的な科学検討を加えられたことがあるかどうか、ないとすれば将来そういうことについてどういうようにしてやるというお考えがあれば承わりたい。
  121. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 訴訟の合理化と申しますか、これにつきましては、かなり裁判所といたしましても、今までにもいろいろ検討はいたしております。私は詳しいことは存じませんが、たとえば速記という制度を比較的最近に取り入れまして、これによりまして訴訟記録を正確に、かつ早く作るということにいたしたいということで、速記官の制度を設けまして、この数もたしか最近におきましては四百人、今度の予算ではもう少したしか多くの数が盛られておると思いますが、五百以上だったと思いますが、そういう速記官の養成所がございまして、裁判所書記官研修所の中で特に速記官の研修ということをいたしまして、その速記官がだんだん巣立ちまして、各地の裁判所に配置されることになっております。昭和三十四年度からたしか地方裁判所のほかに、高等裁判所にも配置されるようなことになっておりまして、この速記官制度によりまして、先ほど申しましたように、非常に正確にとれますることと、それから割合に早く調書ができる。もちろんこれは速記自体にもいろいろ問題がございまして、その速記いたしましたものをまた文字に直すのに相当時間がかかりますが、その時間をいかに短かくするかというようなことを、今鋭意研究いたしているような次第でございます。  さらに先ほどお話の中に、この日本の言葉というものが、文字も言葉もいろいろなかなかめんどうな点がございますが、ことに裁判所におきましては、これを記録にするということがかなり重要な仕事になっております。この記録をどういうふうに作るかということは、これはまあ裁判制度ができてから今日までずっと引き続き検討されていることでございますが、特に最近におきましては、記録の作り方につきましては、毎年々々いろんな研究をいたしておりまして、その作りましたものを実地にやつて見て、またそれを改良していくというような努力は絶えず怠らずにやっているのでございます。なおいろいろな新しい機械を使いまして、文書の写しを作るというようなことも、だんだんにそういう機械をふやしましてやつている次第でございます。
  122. 山田節男

    山田節男君 この戦後の中学校、高等学校の課程を終えた者が、戦前に出版されたいろいろな本を読んでもさっぱりわからない。読めない。理解できないというのですね。それは当用漢字というものに制約された教育を受けておりますそういう者が、今日の裁判所関係の文書を見ますと、やはり読めない、わからない、これは高等学校の生徒の例ですけれども。ですからこの裁判所の用語に話し言葉を使うということは、これは私は限度があると思うのです。欧米各国の例を見ましても、やはり裁判所の文書というものは、どっちかといえば古典的な文章を使うというのが、これは一つの慣行というか、通例になっている。これは私はやむを得ないという線もあるだろうと思います。しかし使用の文字ということを注意すれば——少くとも戦後の中学、高等学校の卒業者程度の者では、現在の裁判所がこのままで文書作成ということをやられるとわからないというこの現実ですね、これはやはり裁判所としても考えなくちゃいかぬと思うのですね。ですからこういう点をむしろ文部省とタイアップするなり、あるいは国語研究所もあるのですから、裁判所の訴訟によって受ける権利義務、物質上の利害得失、こういう点をやはり私ははっきりのみこませるためには、今日の裁判所の文書に関しましては、非常に私は改革する余地が多くあるのではないか、かように考えるわけです。それから申すまでもなく、こうして非常にたくさん文需を作成しなくてはならないところでは、これはやはり漢字使用では——今日すでにヨーロッパでは実用化しているいわゆる翻訳機械であるとか、あるいは話せばすぐそれが文字に転化して出てくる、こういったような機械もある。これは漢字では使えない。これは中央が非常に漢字を簡素化し、さらにそれをローマ字化するというところまでいっているのはそこを見ているわけですね。ですからわれわれ裁判所だけくらいは、一般の国民の意思の伝達文書というものも、こういう科学技術の異常な急テンポで進歩発達している今日、裁判所といえども、やはりそういう点も勘案した一つの計画実施ということを考えなければならぬと思う。来年度の予算事務能率経費として三千八百万円計上されておりますが、そういう内容を聞きますと、せいぜい電気計算器、あるいは電話の交換施設という程度のものです。もう少しそういう事務のマネージメントについて、裁判所では再来年でよろしゅうございますから、事務総長の手で根本的な検討をするという、一つ企画委員会みたいなものを設けられて検討される必要があると私は思うのです。これは要望になりますけれども、もしできれば、そういう一つの企画を持たれるということを切にお願いしておきます。  それからこれは、もうすでに衆参両議院の法務委員会、あるいは内閣委員会、その他の委員会で問題になっていることですが、例の裁判官と検察官との待遇の差異、いわゆる格差の問題、これはいろいろ論議されているから、ここでは繰り返して私は質問しませんが、裁判所としての言い分のエッセンスはどこにあるのですかということですね。検察官の待遇が何といいますか、検察官と同じレベルでは不満だというようにわれわれは理解するのですが、不満だという理由を簡単に言えばどういう点にあるのか、これを一つ政治的な意味を抜いて、率直な御意見を参考のために承わりたいと思います。
  123. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) これは理屈っぽく申しますと、いろいろ申し上げなければなりませんが、お言葉の通り、ごく率直な気持を申し上げますれば、要するに、新憲法のもとにおきまする裁判所の地位というものが特に非常に重要性を持って参りましたごとにかんがみまして、新憲法後の第二国会におきまして、いろいろ論議をされました結果、わずかな格差ではございますが、そこにやはり裁判官の方が優位に置かるべきであるということが国会の論議を通じて決定されまして、それは昭和二十三年でございますが、それ以来ずっと現在までその格差を保って参りましたわけでございます。今回の一般行政職の方の改正に関連いたしまして、裁判官の報酬、検察官の俸給につきましても改正を加えられるに当りまして、この十何年間の格差を一挙になくして、全然平等にするというような案が出ましたものでございますから、まあ非常に裁判官側ではそれを不満といたしまして、いろいろお耳にも触れたような事態が出ましたのでございます。これは、何も裁判所が特にわれのみ高しというような気持からそういうことになったわけではございません。やはり裁判というものは非常に大事なものであるという気持からいたしまして、昭和二十三年に国会できめていただきましたこの格というものは、あくまでも維持さるべきだという、そういう気持から今回のような問題になったと思います。
  124. 山田節男

    山田節男君 まあ今の事務総長の御意見だと、具体的に言えば、面子の問題、プレスティージの問題だと、こういうふうに解してよろしゅうございますか。
  125. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) さようでございます。
  126. 山田節男

    山田節男君 終ります。
  127. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間もおそくなりましたので、ほんの三点ほど伺わしていただきたいと思います。  最近の政治がかなり腐敗しているということは、世論にきびしく批判されている点であります。こういうことになって参りますと、検察陣の活動もいよいよ活発ならざるを得ない。しかし、時によっては、日本の歴史の中で示されておることははなはだ悲しいことでありますが、検察陣の活発な活動を押えようとする力が時に働く場合があり得る、こういうようなときに、裁判官の地位、こういうものが風前のともしびのような状態になり得ることもあるわけです。従って、憲法はこの裁判官の地位というものを保障しておるので、裁判官の優位というのは、単なる面子の問題ではなくして、三権分立の基礎になるところは、社会秩序というものが厳正に保たれなければならない、この趣旨におけるこの裁判官の優位である、こういうふうに私どもは実は解釈をしておるわけであります。しかしながら裁判所は、最高裁の方は、政治の中では法律の提案権もない、ただ意見を具申するだけの権限をお持ちになっておるにしかすぎないというならば、ある意味においては弱い部面もあるわけです。そこで、先ほど法務大臣に私はこの点について、裁判所の方の意見というものは必ずしも正しく立法府に反映されない部面もあるがというようなことで質問をいたしたのでありますが、意見具申権があるからというようなお答えにとどまっておったわけです。この意見具申権というのは、ある意味においては強くなることもあるでしょうし、ある意味においては弱くなることもあるだろうと思うのです。私の意見では、最高裁の意見具申権というものは、もう少し強く国会の中へ発動されてもいいじゃないかという意見を持つわけです。このことに対してどういう考えをお持ちになっていらっしゃるか、お尋ねをしておきたいと思います。
  128. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 裁判所が独立でございますために、かえって独立が孤立に陥るおそれがないでもないのでございます。御指摘のように、現在裁判所政府あるいは国会に向いまして、いろいろ考えましたことの実現をはかるべく働きかけをするという方面につきましては、あまり法律上はっきりした制度がございません。わずかに、最高裁判所長官またはその代理者国会に出まして意見を述べるというような規定があるだけでございます。現在まで実のところ、あまりこの意味の活動をいたしておりませんのでございます。これはまあいろいろ十年ほどたちましたが、今までの何と申しますか、やり方といたしまして、正式に意見を申し上げるということをあまりしないで、いろいろいわば非公式に各方面にお願いするというような線がむしろ今までのやり方であったように思われるのでございます。それもある意味では必要ではございまするが、やはり場合によりましては、もう少し責任者が国会に出まして、その所見をはっきり堂々と申し上げるというふうな扱いにすべきではないかと私は考えておるのでございます。なお、政府に対しまして、いろいろ最高裁から申すということにつきましては、御承知のように正式にそういう点について何ら道が開かれておりません。まあ実際問題としまして、たとえば法律に関することでございますれば、法務省に提案権が、立案権がございますので、実際問題としまして、法務省にいろいろ働きかけをいたしまして、できるだけ裁判所のためにこちらの意見の入った法案を作ってもらいたいというようなふうにいろいろやってきてはおりますが、今度の報酬法で現実にお気づきになったと思いますが、ああいうふうな場合になりますると、その道が全く閉ざされてしまうというふうなことになります。内閣自体、あるいは閣議、あるいはもう一つ下って次官会議というようなところに出まして、正式に意見を述べる道が開かれていないというようなことでございまして、これは制度としても将来大いに考えなくてはならぬ点もあると思うのでございます。しかし、現在認められておりますものとして、先ほど申しました国会に出出ましていろいろこちらの意見を申し上げるという道が開かれておりますが、それをもう少し活用するという必要はあるのではないか、これは私個人の気持でございますが、そういうように考えております。
  129. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいまの御意見は、私はまことに傾聴すべき御意見であって、少くとも公正な裁判をした者が、ときの政治権力の作用で配所の月を見なければならぬというような過去の裁判の地位というものについては、私は心の底から憤りを覚えるとともに、社会秩序を維持するために公正な裁判が行われなければならない、そのためには三権分立の建前が制度的に明確にならなければならない、こういうふうな意見を持っておりますので、今後とも、この最高裁は大へんお上品な謙虚な方ばかりおそろいになっていらっしゃるので、少しその辺はお弱いような感じを持つのですが、しっかりがんばっていただきたいと思います。  次に、お尋ねをしたいことは、今度職員手当の中に裁判官の管理職手当が予算書の中に盛られております。三千九百七十二万五千円、これによって裁判官の管理職手当を受ける方が百二十八人分増加された、この御説明であります。私は裁判官の待遇改善については何ら異議を持つ者ではありませんし、むしろ積極的な立場をとっておるのでありますが、ただ裁判官の待遇改善というのは、もっと根本的に報酬の引き上げという角度にいかなければならないものではないか、そうして仕事の量を減らして落着いて裁判をやつてもらうということが非常に大切ではないか、管理職手当というのは、裁判官の職務の性質上、こういう待遇改善の方法というのは一面私は邪道じゃないかという見方をしておるのです。これは本質的に間違いじゃないか、この点については最高裁としても御研究になっておる面があるのではないだろうかという気も実はするわけです。この点に対する御意見を伺わしていただきたいと思います。
  130. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 非常に適切な御質問でございまして、私どもも今高田委員のおっしゃったような気持を実は持っております。御承知のように新憲法下裁判所が発足いたしましたときは、裁判官の今の報酬は、一般行政職のそれに比しましてかなり高いランクで発足いたしたのでございますが、昭和二十六年ごろになりまして、ほとんどそれが一緒になりまして、しかも行政官につきましては、その後間もなく管理職手当、多くは俸給月額の二五%、少くも十二%というような相当な額の管理職手当が行政官のいわゆる管理職にはつくことになりました結果、裁判官も検察官もその待遇が実質的に非常に相対的に下ってしまったのでございます。その当時裁判所といたしましても、裁判官にも検察官にも管理職手当を、もしそういうものがつくならこちらもつけてほしいという気持があったのでございまするが、これは裁判官の俸給の中にはそういう趣旨のものが含まれておるというようなことで、なかなか大蔵省の了解が得られなかったようでございますが、やっと昨年になりまして、たしか裁判官につきましては約百名だったと思いますが、これは一昨年でございますか、三十二年度でございます。三十三年度になりまして先ほど申しましたようにそれが二百五十四人にふえまして、本年度また百二十八名ふえまして、三百八十二人の人に十二%、一番最低率の管理職手当がつくことになったわけでございます。しかし、これは実は裁判官というのはその一人々々が管理職なんでございまして、まあ、いわば。いわゆる所長であるとか、あるいは部長であるとかいう、そういう人たちだけにこういうものがつくということはどうも非常におかしいように思うのでございます。しかしながら、この道でいきますのが一番何と申しますか、大蔵省との折衝におきましては話が通りやすいというようなことからいたしまして、三十二年度に初めて大蔵省の方が了承いたしました結果、一二%の管理職手当がある範囲の裁判官にもつくというようなことになって、その方式が人数がだんだんふえながら今回の予算にも載っておるわけでございますが、しかし、これは実は非常に考えてみますとおかしいのでございまして、今高田委員がおっしゃいますように、これはむしろ裁判官なり検察官の報酬、つまり給与そのものをもう少し全面的に昔の形に変えていく、そういうように持っていくべきことを、管理職手当というようなものをつけて行政官のあとを追っかけているというような形でございまして、これはまさに御指摘通りな気持が私もいたすわけでございます。これは裁判官並びに検察官の報酬体系を今後どういうふうな形に持っていくかということは非常に重要な問題でございまして、これは管理職手当などをふやすよりも、むしろその根本的な給与体系というものを考え直すべきではないかというふうに考えております。
  131. 高田なほ子

    高田なほ子君 私も全く同意見で、暫定的にやむを得ざる措置としてこれは認めなければなりませんが、こういうことが一日も早くなくなるように、抜本的な待遇改善というところに私もともども研究さしていただきたいと思っております。  次にお尋ねをしたいことは、公平審査などに必要な経費というのはどういうふうになっているかという問題であります。人事院では、一般職公務員三十万人の中から出されてくる審査に必要な経費として、約四百五万八千円が今回計上されています。ところが最高裁判所の方は裁判所職員臨時措置法によって、裁判所職員二万人の中から出される審査というものには、これは経費というものがどうも予算書の中に見えていない。人事院の方の計算から計算してきますと、当然やはり二十七万ほどの必要経費というものが組まれなければならないのじゃないかという感じが私はするのです。私の聞かんとするところは、少くともこの一般裁判所にお勤めになっておる方々の不利益処分に対して、これを守る道は公平審査委員会しかないので、その機関が正確に、適正に運営されないという場合に、一般職員の身分保障というものは完璧であり得ないということは論を待たないところだと思うのです。従ってこの必要経費というものはどういうふうになっているのか、この点についてお尋ねしておきたい。
  132. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 公平委員関係経費の点でございますが、結局合計いたしますと、百万五千円だけ査定を受けておりまして、内訳を申しますと、委員の手当が二十一万円、職員旅費が六十五万円、委員旅費が十二万三千円、証人等旅費が一万五千円、その他庁費関係——文具費、さようなものでございます。結局合計いたしまして百万五千円だけ査定を受けました。これは本年度十七万三千円に比べますと、相当多額の増額を得たということになるわけでございます。
  133. 高田なほ子

    高田なほ子君 わかりました。  次に、この給与の問題に関係することですが、最高裁は三十四年度予算の概算要求の中で、裁判所書記官等の待遇改善として二億九千八百十七万六千円を要求し、その要求は書記官等に対し四号調整を行い、その待遇を改善する必要があると、こういうわけなんですが、これはこれでいいわけです。ただ私が尋ねたいことは、昭和二十九年にも一度最高裁は全司法労働組合を解散するならば、四号調整を行うというような条件みたいな話を持ち出して全司法に断わられた事実があるようです。一体この待遇改善にこのような条件をつけたりするということは、私の納得のいかない点であります。待遇改善はあくまで待遇改善、そしてまた全司法労組の行き過ぎは行き過ぎ、これはもう別個の問題として切り離してこれは処理しなければならないものだというふうに私は考える。従いまして、今回の待遇改善に対するこの号俸調整、それから全司法労組の解散という条件、これはどういう一体関連をもつものか、これは事務的のことでありませんので、責任のある御答弁をお伺いしておきたい。
  134. 守田直

    最高裁判所長官代理者(守田直君) まず昭和二十九年のときのことから申し上げます。御承知のように警察職員は、一般職員よりは大体四号ほど加えた額の俸給をもらっているわけでありますが、で、昭和二十九年度予算を大蔵省と折衝する際におきまして、法務省の検察事務官につきまして四号俸調整の要求が出たわけでありまして、そういうことになりますというと、従来同じように進んで参りました裁判所の書記官及びその他の職員の俸給と、検察事務官との間に四号ほどの差ができてくるわけであります。そういう関係で、もし検察事務官が四号俸調整されるならば、やはり裁判所職員についても四号俸の調整をしてもらいたい、で、しかしその四号俸の調整をするに当りましては、これは警察職員と同じような勤務条件というものを満たさなければならない。そういう次第でありまして、裁判所職員が警察職員と同じような勤務条件に従うかどうか、すなわち従うことを承諾するかどうか、そういったことは全然わからないので、非常に急なことでありましたので、まず四号俸調整の予算を検察事務官並みに入れてもらいまして、そして裁判所職員に対して警察職員と同じような、すなわち検察事務官と同じような勤務条件をのむかのまないか、のまなければこれはどうも仕方がないけれども、のむというならばいつでも支給し得るようなふうに一応入れてもらったからということで話をした次第でありますが、御承知のように、警察職員はこれは勤務時間が非常に長い、それからまあ国家公務員法上団体の結成が禁止または加入が禁止されているような事情などもありますので、その点は、結局裁判所職員の自由意思で決定すべきことでありますので、その点を諮り、もし職員がこれを欲した場合におきまして、すでに国会開会中でない、予算の編成時期でないというようなことで、予算が入らないために、裁判所職員だけ四号調整を受けられないということになれば、それは裁判所として思いやりのないやり方でありますので、一応予算だけは獲得したがどうかといって意見を尋ねた結果、それはどうも至当でないということで、結局それは職員として受けなかった、その結果、その予算は補正予算の方に回ったということになったわけであります。今回の分は、これはすでに検察事務官は昭和二十九年以来から四号俸調整がずっとついております。裁判所職員との関係におきましては、下の方はまあ大体二千円から、上になりますと四千円くらい毎月額が違ってくることは非常に気の毒でありますので、そういう団体の結社の禁止とか何とかいうことではなしに、勤務時間をある程度長くするというようなことで、その点四号調整をどうしてもつけてほしいというようなことを交渉いたしましたけれども、それはやはり警察職員との関係で権衡を失し、警察職員の方でおさまらないからというようなこともありまして、これは裁判所としては、放棄せざるを得なかったというのが実情であります。
  135. 高田なほ子

    高田なほ子君 聞けば聞くほど、しゃくにさわることですね。警察と同じ勤務にしなければ待遇改善しないというようなこの言い分に対して、職員の方がこれでは承服できないということですね。この気持は私は筋が通ると思う。あの薄給で、生活にあえいでいられるこの職員の方々がこれをお断わりする気持は、実際私にはもうよくわかります。警察と同じ勤務条件にしなければこれを調整しないということは、何としてもこれは納得できないので、こういうことにこそ最高裁はやっぱりきぜんとして、誤まれる主張を押し返していくという態勢をおとりになることこそ、大切な能率向上への道ではないかというようにも考えられる。死んだ子の年を数えるわけではありませんけれども、待遇改善と職員の団結する権利の自由というものをこんがらかしている。このやり方には、やっぱり私は正当な行為としてこれは抵抗することは当然だし、一つこういう不正が、正しかりざる主張が今後通らないように、ぜひ最高裁の方でもがんばっていただきたい。私たちもこの点については、しみじみ事情を伺えば伺うほど、胸のいたむような問題でありますから、うんと応援するつもりであります。ぜひこれはがんばっていただきたいということを申し上げて、あと二、三事務的な問題も残っておりますが、大へん時間もおそくなりましたので、これで質問を終ります。
  136. 小柳牧衞

    ○一主査小柳牧衞君) 他に質疑はございませんか。——別に質疑もないようでありますから、裁判所所管の質疑はこれをもって終了することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 小柳牧衞

    主査小柳牧衞君) 御異議ないと認め、さように決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十三分散会