○矢嶋三義君 第四
分科会の
審査の経過を御
報告申し上げます。
本
分科会に付託されました
案件は、
昭和三十四年度
予算三案中、
大蔵省、文部省、厚生省及び労働省所属に関するものであります。
分科会におきましては、去る二十三日より本二十六日まで四日間にわたり、それぞれ
所管予算の
説明を聴取し、慎重に
審査をいたしました。
審査の順序は、まず二十三日に橋本文部、坂田厚生、倉石労働の各大臣並びに佐野
大蔵政務次官より各
所管予算の
説明を聴取したあと、引き続き
大蔵省予算に対する
質疑に入り、二十四日は
大蔵省並びに文部省関係、二十五日は厚生省並びに労働省関係と
質疑を続行、二十六日はさらに以上四省に対する残余の
質疑を行なったのであります。以下それらの
質疑応答のうち主なるもの若干につきまして、その概要を御
報告申し上げます。
まず、
大蔵省所管予算につきましては、今次の税制
改正に伴う諸税の
あり方を中心に活発な
質疑がございました。
すなわち
政府が今回、
昭和三十四年度
予算において国税、
地方税を通じ、初年度五百三十三億円、平年度七百十七億円に及ぶ
減税を断行したことには一応敬意を払うが、
減税の結果、
国民所得に対する
租税負担率が一向に下らぬところにまだまだ問題がある。ことに
政府機関である
国民金融公庫並びに
中小企業金融公庫の一般貸出金利がそれぞれ年九分六厘から九分三厘に引き下げられるという時代に、
法人税法四十二条の利子税を、相変らず日歩三銭、年利一割九厘五毛のままに放置しておるのは、遅延利子の観念からいっても高率に過ぎるし、また
法人税の申告書
提出期限を一年としていることも、利子
負担をなるだけ軽くする意味において、この際六カ月ころに短縮すべきではないか。さらに重加算税の五〇%という点も、別に刑事罰が設けられている以上過酷に過ぎると評するのほかはない。重加算税はもとより、過少申告加算税にしろ、無申告加算税にしろ、
行政罰を伴う税の取扱いについては、全国統一に、よほど税務官吏の指導をうまくやらないと、税
負担の公平を欠くことになると思うが、その
対策が十分なされているのかという
質疑がありました。これに対し、佐藤大蔵大臣並びに
大蔵省、国税庁の
政府委員から、
租税負担率が下らないのは、
昭和三十二年以降
政府において
租税特別
措置の整理合理化を行なったことに加えて、各般の
財政需要が多々ますます多くなったことによるものと思う。
政府としては新たに国税徴収法案を今
国会に提案するとともに、一連の利子税及び各種加算税等の実体について検討しているが、今回は間に合わなかった。なお
法人税の申告期限を一年としているのは、申告納税制度を
建前とする限り、更生
決定までにおおむねその
程度の期間を見ておく必要があろうというわけだが、最近は税務行政も安定してきたので、あらためて検討してみたい。また五〇%の重加算税は、これは正直な納税者を擁護する意味から、現状やむを得ない
措置と
考えているが、なおこれも再検討したいとの
答弁がありました。
大蔵省関係としては、このほか専売
予算に関連して、近年タバコの売り上げが相当成果をあげておる半面、タバコ小売業者の販売手数料が、
昭和二十八年四月以来八%のまま据え置かれている事実について、三十四年度の
予算では、タバコ販売報償費二億九千四百九十万円として、対前年度比二億円の増を見込んでいるが、この際手数料の八%を
戦前並みの一〇%に引き上げる気はないか。また二億円の配分は売り上げの少い業者に厚くすべきだと思うがどうかとの
質疑がありました。これに対して佐藤大蔵大臣並びに専売当局から、専売
財政は元来国家の
歳入をあげることを第一の目的とするもので、タバコ事業においては三十三年度に比べ五十五億円の増収を見込んでいるが、塩事業においては逆に赤字になっており、三十四年度の専売納付金は、前年度に比べ三十億円の増にとどまっている。この際タバコ販売手数料の八%を一〇%に上げることは、年間五十億円の支出増になり、現在の国の収入面から見て困難であるので、とりあえず報償費に二億円を
増額計上した次第であるが、その使い方については、御趣旨のような方式で小売業者に配分したいと
考えておるとの
答弁がありました。
このほか
大蔵省関係では、
予算総則の第九条、第十七条及び第二十六条に出ている「特別の給与」というものの
財政法上の解釈及びその実体をめぐって、
大蔵省政府委員との間に
質疑応答が繰り返されたのでありますが、詳細は
会議録によって御承知願うことにいたしたいと存じます。
次に、文部省
予算につきましては、まずスポーツ
振興の問題に関連して、三十四年度
予算に
国民体育大会
補助金として一千万円が計上されているが、少くとも二千万円を見込むべきではないか。また赤字
地方団体には大会の主催をやらせないという閣議
決定は、ただいまでもその
通り守る
方針かどうか、またこの際
政府においてスポーツ
振興法を提案する
考えはないかとの
質疑がありました。これに対し橋本文部大臣は、
国民体育大会は、一般
国民の文化水準を高める意味からもきわめて適切なものと
考えるが、これに対する
補助金が、発足当初から低く押えられて、その後少しずつ
増額されてきたように聞いている。自分としては、もう少し
予算をつけてもいいものと思う。なお大会の開催については、順次各地でやれるように、先年の閣議
決定を
考えなおすつもりであり。またスポーツ
振興法については、なるたけ早い
機会に
国会に提案する
考えで目下
研究中であるとの
答弁があり、さらに
大蔵省主計官からは、
国民体育大会の
補助金について、三十三年度は六百六十五万円で、三十四年度分については、当初文部省から二千万円の
要求があったが、別に
国民体育
施設費補助金として、新たに三千万円を計上したので、国体の
補助金の方は一千万円にとどまった次第だとの
答弁があり、佐藤大蔵大臣からは、今後
補助金の
増額を
考慮するとの
答弁がありました。また、
自治庁当局からは、赤字再建に支障のない限り、そういう国体の各地持ち回りに異存はないとの
答弁がございました。
また、
政府の公立文教
施設整備五ヵ年
計画について、先般の
予算委員会における総括質問の際に、大蔵大臣から、総額四百十九億円の
予算を見込んでいるとの言明があったが、初年度である三十四年度の公立文教
施設費は約七十七億円を計上されているにすぎない。そこで五ヵ年
計画と七十七億の関係はどうか。また義務教育におけるいわゆるすし詰学級の解消と並行して、高等学校についても、この際学級編成と教員定数の基準を定め、必要教員数を確保し、高等学校教育の向上をはかる
考えはないかどうか。さらに、昨年の
国会で、当時の松永文相は、一クラスしかない単級の中学校でも教員は最小限五名が必要だと
答弁したが、現実には教員が一人しかいない学校がたくさんある、この点文部当局はどう
考えているかとの質問がありました。これに対し文部省の
政府委員からは、初年度七十七億円の積算基礎は、五ヵ年
計画で
考えている
施設の整備等を全部五分の一ずつ
実施するというのではなく、中には四割
程度あるいは十分の一
程度実施するものもあるわけで、七十七億円そのものも毎年同じ
金額でいいとは
考えていない、あくまで初年度分として必要な坪数等を見込んで計上したもので、今後五ヵ年間に、すし詰教室の解消その他所定
計画の全部を実現する
予定でいるとの
答弁があり、高等学校の学級編成と教員定数の基準の法定化については、橋本文部大臣から、将来の問題としてぜひそれはきめたいとの
答弁があり、
政府委員からは、単級学校については本来変則と思うから、学校統合によって、最小限六学級
程度にしたい
考えである、もちろん統合できないところには教員数を
考慮するわけで、その際の定数基準は、分校の場合、中学校については本校並みとし、小学校については三分校一名の割で定員をふやす
考えで、これによって
僻地教育の弊害をなくしたいとの
答弁がなされたのでありますが、これに対し、重ねて、それなら、三十四年度中には単級学校の教員数は最小限三名となる、なお生徒数については、小学校一クラス五十九人以上のクラスは存在しない。また中学校の場合は、五十五人以上のクラスは存在しない。もしそれ以上の生徒が一クラスにおるような学校が存在する場合、文部省はよろしく指導助言することによってこれを改めさせる、そう
考えて差しつかえないかどうかとの
質疑がありました。これに対し、
政府委員は、ただいまは定数基準方式を申し上げたわけで、具体的にはやむを得ない事情で、それ以上のものがないとは言い切れないと
答弁したのでありますが、橋本文部大臣からは、
法律も
予算もその
通りになっている以上、ぜひそうなるように努力したいとの
答弁がございました。さらに戦後外地から引き揚げた教
職員で、引き揚げ後、その翌年五月三十一日まで就職した教育公務員につきましては、退職金の給与に際し、外地における在職期間を通算する
措置を至急にとる旨の
答弁がありました。
なお文部省
予算につきましては、このほか科学
振興費、国立文教
施設整備費、育英資金貸付金、社会教育助成費並びに社会教育特別助成費等について
質疑が行われたほか、幼児教育及び女子教育の問題や、国立劇場その他闇入学等の問題についても活発な
質疑応答がなされたのでありますが、省略いたしたいと存じます。
次に、厚生省関係でありますが、ここでは主として環境衛生
対策と、結核
対策の問題について熱心な
質疑がかわされました。特に放射能の公衆衛生に及ぼす影響について、厚生省当局の
対策は
予算的にも
研究的にもきわめて不十分である。ビキニ問題の発生当時、あれほど騒がれた放射能障害について、今日その危険はいよいよ加重されているのに、これに対する治療上、診断上の
研究成果に何ら見るべきものがないのみか、公衆衛生行政をつかさどる厚生省にしかるべき
予算措置も講ぜられていない。この際放射能の障害から
国民を守るために、厚生省で思い切った
予算を組むべきではないかとの
質疑がありました。これに対して坂田厚生大臣並びに
政府委員は、ビキニ以後原爆被害
対策委員会を設けて、関係各界、各方面の協力を得て、放射能障害の
調査を進めているが、もちろん十分とは言えない、厚生省としては全く新しい公衆衛生行政の
段階にきたものとして今後大いに
対策を進めるつもりであるが、三十四年度
予算において十分な
予算措置ができなかったことは遺憾に思うとの
答弁がございました。
結核
対策の問題については、保健所並びに国立病院、療養所における医師の定員をいかにして充足するか、またその
対策としていかなることが
考えられるかという点が
質疑の中心でありました。すなわち現在保健所並びに国立病院、療養所に働く医師の数は、保健婦、看護婦の場合もほぼ同様であるが、大体定員の六〇%を割る状況にある、これは国の医師の給与その他の待遇が公務員たるのゆえをもって、一般民間医師のそれに比し三、四割方低く押えられているからである。このことは単に医師
個人の
待遇改善の問題ではなく、厚生行政上の一大問題であってこの点の是正がなされない限り、結核撲滅の理想はもとより、幾ら
国民皆保険ができ、
国民年金制度がしかれても、その
効果が削減されることにかるが、大臣並びに関係当局者の見解けどうかとの
質疑がありました。これに対し坂田厚生大臣は、せっ
かく定員確保の
予算措置ができていながら、定日の五割
程度の医師しか充足できないという現状は、福祉国家を目ざす
わが国にとってゆゆしき問題であること、全く同感である。結局給与等が低いということがおそらく原因であると思うが、その点が
改善されるだけで解決しない面もあろうかと思う。要は
一般職公務員との関連性もさることながら、医師自体の基本給を引き上げることに努力したいとの
答弁があり、なお人事院当局者からは、民間医師の給与とのアンバランス是正に努めている旨の、また
大蔵省の担当主計官からは結核
対策の確立を期する上からも、現在三本建になっている結核医療費の
管理運営を統一する必要があり、そのためにも結核療養の
特別会計制度を設けたい旨の
答弁がありました。厚生省関係
予算が、
予算書によれば実に三百十六費目にわたって対前年度に比し減額されている事実が指摘され、この問題をめぐる
質疑応答が行われたのを初め、エックス線技師の健康保持の問題、国立病院、療養所におけるいわゆる完全看護の実体について、また家族
計画、国立公園の問題等々、厚生行政の各般にわたり
質疑が行われたのでありますが、詳しいことは
会議録に譲りたいと存じます。
最後に、労働省
予算についてでありますが、歳出
予算の総額三百九十一億五千余万円という、その
予算規模の他省に比べて少なすぎるということが、まず
質疑の
対象となりました。これに対しては倉石労働大臣から、
勤労者のサービス省としての使命と、現に行なっている重点施策について抱負と希望が述べられたほか、
質疑に対する直接の
答弁はなかったのでありますが、この大臣の発言をめぐって、労働省
所管の重要
事項について率直な
質疑応答が行われたのであります。すなわち駐留軍労務者離職
対策の現況及び今後の見通しいかんという、
質疑の中では、米軍といえども国内労働法規を順守すべきことがあらためて確認され、中小事業場、商店における週休制並びに女子深夜業廃止の状況、婦人並びに年少労働者の保護育成の問題、一般並びに特別失対事業の実体、職業訓練の実情とその成果等、労政、基準、職安、婦人少年各局にわたる問題点について、
予算の立場からの
審査が行われ、その間婦人少年室が貧弱な
予算と、ごく少数の人員をもって随時有効適切な
活動を展開している事実に対し、労働大臣もこれを認めて今後婦人少年室の拡充につき、しかるべき
予算措置をとる旨、労働大臣から言明がなされるなど、各面からの
審査が終始熱心に行われたのでありますが、その詳細については、すべて
会議録によってごらん願うことにいたしたいと存じます。
以上をもちまして、第四
分科会に付託されました
案件全部の
審査を終了いたした次第であります。右御
報告申し上げます。(拍手)