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国務大臣(
倉石忠雄君) 大体
政府の
考えております雇用拡大の
方針というものは先ほど申し上げました
通りでありますが、私は失業というものはやはり有効需要の不足ということが失業の大きな原因であると思います。学者が、たとえばケインズが一般理論で有効需要の不足ということを強調し、第二には、労働の供給と労働の需要とが不結合の場合に失業というものは起る。そういうことを
考えてみますと、わが国においてもまことに適切な言葉であると思うのでありますが、第一の有効需要の問題につきましてはただいまの
お話の中にもありましたように、わが国ではやはりどうしても国内の有効需要がある
程度保持されることが第一に必要でありますが、さらに日本の置かれたる
経済状態というものを見ますというと、やはり輸出ということに大きな重点を置かなくちゃならない。そういう二つが両々相待って雇用の拡大が行われることは片岡さんのよくおわかりの
通りであります。そこで問題になりますのは今御指摘の中にありましたように、たとえば
一つの企業がオートメーション・システムを取り入れると、過渡的にはそういうところで労力が余剰労力として余ってくる場合があります。しかしながら、日本が国際
経済競争の立場に立って、やはりオートメーションというものを取り入れていかなければ国際競争力を維持していくことはできないという立場で、いろんな産業の方面で新しい近代的な機械を導入をいたします。しかしそのことの結果、その場所で大きな失業問題が発生したという事例を私
どもは報告を受けておりません。そのことは片岡さんも御承知の
通り、それはどのように救済されておるかと申しますというと、オートメーション・システムを取り入れてコスト・ダウンすることによって生産が伸びた。従ってそこで余った余剰労働力というものを国際
経済力の伸びたそれを拡大いたしていく方面に配置転換が行われておるという実情を多くわれわれは発見するのであります。
それからもう
一つは労働の需要と供給が不結合の場合、これは今申し上げましたような場合に起きると思うのでありますが、いわゆる摩擦失業と申しますか、その摩擦失業というのは大味労働力の三%ぐらいというものが普通であるというふうにベバアリッジなどが言っておられますが、アメリカでは五%ぐらいということを言っております。しかし摩擦失業と、もう
一つは今申し上げました有効需要の不足によって生ずる失業、この二つは大体計算づけて、それに対しては一応の措置を
考えられます。摩擦失業は失業保険で暫定的にこれを救済していく。しかしその後に出てそのほかのワクにはみ出すと
考えられる失業問題をどのように処理するかということは、日本においては大きな問題だと思います。これがいわゆる不完全就業とか潜在失業とか言っておられる問題でございますが、このことにつきましては、私
どもは今申し上げましたようなことを総合して
政府部内でも相談をいたしますと、やはり新
長期経済計画に申しておりますような雇用を増大して参る場合には、第一にまず輸出を振興しなくちゃならぬ。第二には国内の有効需要を振起しなければならぬ。私は日本のような国柄ではやはりどうしても輸出を重点的に見て、同時にまた国際競争力から得た日本の実力で日本の一般労働者の購買力を増強していくということ等によって国内の有効需要を向上さしていく。しかも日本は御承知のように産業構造は二重構造とか三重構造とか言われておりますが、日本で言われる賃金はやはりその三重構造と言われるような中小企業、なかんずく零細企業と大産業の労働者との賃金較差に問題があるのでございますから、私
ども政府としましては、やはり最低賃金制度を初めとして、この零細企業のもとにおける労働者、しかも零細企業の
従業員全労働者の六六・七%を占めているでありますから、それが有効需要を振起さすことによって購買力が増強するということは、相当日本の
経済に対して大きな力を持ち得るのでございますから、これはどうしても賃金較差を縮めていくということに
努力しなければならぬ、そういうようなことと相待って、やはり国内の有効需要の振起と同時に輸出産業に重点を置く、これがやはりわれわれは雇用増大の本筋のではないか、こういうことを
政府部内下も話し合っているし、そういう
計画のもとに雇用、失業の問題をやっております。そこで具体的に先ほど申し上げましたように、三十四
年度予算で七十四万人増ということは、昨
年度六十七万人増というものの
実績から見まして私
どもは不安はない。しかしながら問題はさっき申しましたような潜在失業といわれるような不完全就労、先ほど最初に御指摘がありましたようなお気の毒な人たち、たとえば今度石炭合理化法の発動によって百万トンの買い上げの結果、北九州に離職者が出てくる、こういう方面につきましては
政府部内においても地元の県庁等とも打ち合せまして、ここで出てくるべき失業者をどのようにして公共事業あるいは一般失業対策等に吸収するかという
計画を十分に立てまして、そしてこれならばよかろうということで、百万トンよけい買い上げの法律案の一部
改正を提案いたしたようなわけでありますが、そのほかに私
ども労働省として特に力を入れておりますのは、御承知のように昨年に比べて本
年度の学校卒業者は大体十五万人増であります。これは上級学校にいく者を除きまして、就職を希望する者が約十五万人、そこ一現実に人を使ってくれる人たちと、もう少し役所の
仕事を有機的に結合させようということで、私
ども労働省味は、たとえば電気産業あるいは石炭鉱業、綿紡、その他大きな業界のおもな々を集めまして雇用問題の懇談会というようなものを設けまして、今度は実際的にやってくれる人事部長クラスの幹事役を設けまして、そして、たとえば三十四年の三月卒業についてはどのような技術者を業界においてどのくらい必要とするか、こういうような具体的な
計画を立って、新規学卒者をどういう方向にどの
程度振り向けるかという
計画的の
仕事に着手いたしたわけでございますが、私
どもは現実に行われております、
政府のやっております諸施策について、それは抜けたところもあるかも存じませんが、私
どもとして今申し上げましたようなことで全力をあげて、この新規労働力需要七十四万人というものは、ぜひこれを満たすようにということで
努力をいたしているわけであります。