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国務大臣(永野護君) 山田
委員のお説はまことにごもっともでございます。天然資源の少い
日本が、どうしてこの小さい領土で九千万という莫大な人口を養っていくかという問題の中で、いわゆるインビジブル・エキスボートの中の最も今おくれておるのが、国際観光事業であると思います。他の国の例を試にあげてみますと、
アメリカはこの観光収入を一年に七億八千万ドルあけております。フランスが四億八千九百万ドル、約五億ドルであります。ドイツが四億四千万、ドル、イタリアが三億八千万ドル、カナダが三億六千万ドル、スイスは二億三千万ドル、オーストリアが一億四千六百万ドル、こういうふうに、特に観光地帯という特殊なそういう扱いを受けない国でも、こんな大きな数字をあげておりますのに、この風光明媚な
日本がわずか六千五百万ドルというみじめな数字でございます。フランス、イタリア、スイス、オーストリアの観光収入は、それらの国々の外貨収入の第一位を占めているのであります。ところが
日本の方は、
昭和十一年時代で観光収入は貿易収入の四%でありました。それが今日では、三十三年はそれが二・六%に下っているのであります。従いまして、
日本の国際収支のバランスを合わせますために、これからやらなければならない部門の最も多い産業だと、こう
考えているのであります。
それにつきまして、一体運輸省がどういうことを
考えているかという
お尋ねでございますが、まずそれには、第一に海外の宣伝が必要じゃないかという御
指摘でございました。これもまことにごもっともでございまして、
日本の宣伝は、諸外国の宣伝に比べますと、非常に貧弱でございまして、今二億円足らずの程度で
日本はまかなっているのでありますが、フランス、イギリス、イタリア等は、わが国の四倍から五倍ぐらいの宣伝費を使っているのであります。
日本は戦前よりも少い海外宣伝事務費なのでございます。きわめて卑近な例でありますけれ
ども、あの宣伝文書でも、
日本の今作っております印刷物は、一年に百万部ぐらいでありますが、イギリスは七百五十万部ぐらいの印刷物を海外にばらまいているのでございます。そこでこのおくれを取り戻しますために、本
国会に
日本観光協会という特殊法人を作ることにいたしまして、ただいま申しましたように、海外の宣伝と国内の受け入れ態勢の整備に力をそそぐことにいたしております。これは私
どもの最初
考えておりました理想に比べますと、実は非常に小さいのでありまして、実に遺憾に存じて、おりますけれ
ども、私
ども、少くも目に見える貿易のシエトロに二十億円出すのならば、少くもその半分の十億円ぐらいは出してもらいたいと思ったのでありますけれ
ども、国の全般の財政計画の上から、二億円という、実に最初
考えました数字から比べますと非常に小さいところへ予算を押えられまして、仕方がありませんから、とりあえずはその予算の範囲内で、
日本観光協会という特殊法人を作る法案を今
国会に
提出いたしている次第であります。でありますから、その働きも、山田
委員がお
考えになります程度のものには、よほどほど遠いのでありまして、非常に不十分だと思っておりますけれ
ども、それを一粒の種といたしまして、これを育てて、諸外国に劣らない程度の観光収入をあげたい。少くもイギリスの程度まで持っていくことができましたならば、山田
委員もすでに御承知の
通り、この観光収入は、ほとんど百分の百、売り上げが即利益というような国際収支の
関係になるのでありまして、他の貿易を一億伸ばしましても、手取りはその半分になるかその三分の一になるかでありますけれ
ども、観光収入だけは、まるまる
日本の所得になって、それが国際貿易の収支に貢献いたすのでございますから、ぜひともこの点には重点を置いた施策をしていただきたい。またわれわれは、それに従事する決心でございます。
だんだん一般の世間の観光事業に対する認識も深まりまして、御承知の
通り、観光事業は一種の水商売的扱いを受けておりましたのが、今日ではりっぱな産業としての扱いを受けるようになりましたので、山田
委員の御期待になりますような時期の到来も必ずあると、こう楽観しておるのでございます。