運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-03-09 第31回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月九日(月曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員横山フク君、重宗雄三君、剱 木亨弘君、岡田宗司君及び長谷部廣子 君辞任につき、その補欠として植竹春 彦君、小幡治和君、西田信一君、山田 節男君及び千田正君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木暮武太夫君    理事            小柳 牧衞君            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            堀木 鎌三君            片岡 文重君            鈴木  強君            矢嶋 三義君            森 八三一君    委員            秋山俊一郎君            石坂 豊一君            植竹 春彦君            小幡 治和君            勝俣  稔君            古池 信三君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            迫水 久常君            柴田  栄君            下條 康麿君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            仲原 善一君            西田 信一君            吉江 勝保君            荒木正三郎君            北村  暢君            坂本  昭君            高田なほ子君            戸叶  武君            中村 正雄君            平林  剛君            松浦 清一君            山田 節男君            加賀山之雄君            田村 文吉君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    厚 生 大 臣 坂田 道太君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    郵 政 大 臣 寺尾  豊君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    建 設 大 臣 遠藤 三郎君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   国 務 大 臣 山口喜久一郎君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 松本 俊一君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    調達庁長官   丸山  佶君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    国税庁長官   北島 武雄君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省管理局長 小林 行雄君    厚生大臣官房長 森本  潔君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省保険局長 太宰 博邦君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省企業    局長      松尾 金藏君    通商産業省重工    業局長     小出 榮一君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省船舶局長 山下 正雄君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十三年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。三月九日岡田宗町君が辞任し、その補欠として山田節劣君が、長谷部ひろ君が辞任し、その補欠として千田正君が選任せられました。
  3. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 本日は総括質疑の第五日でございますが、質疑通告者は四君、その持ち時間は百七十三分ばかりを残しております。委員長といたしましては、予定通り本日をもって総括質疑を終了するように努力をいたしたいと考えておりますが、この際、委員各位並びに政府側の一そうの御協力をお願いを申し上げます。特に政府側の御答弁は、簡潔、要領を得るよう、御協力をお願いいたしたいと思います。  昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算並びに昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)を一括して議題に供します。  前回に引き続きまして総括質疑を行います。荒木正三郎君。
  4. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、ILO条約八十七号、この批准関連をしてきょうは質問をいたしたいと考えております。  一番初めにお尋ねしたい点は、昨年の十一月二十日に、ILO理事会においては、結社自由委員会勧告を、全会一致採択をいたしております。この問題について総理大臣所見を伺いたいと考えておるわけですが、この理事会採択をいたしました勧告内容は数項目にわたっておりますが、その第一項は特に重要な問題であると考えられるわけであります。総理大臣も御承知通り、第一項の内容は、日本公労法結社の自由の本質的な権利に介入するものである、そこで、これを日本政府に伝える、こういう内容のものであります。日本にとっては非常に私は重要な内容を持った勧告であるというふうに考えるのであります。  日本ILO理事国であります。しかも、日本ILOに復帰するときに問題になったのは、やはり結社の自由を守るかどうかということが相当論議されて、日本政府代表は、この点については、結社の自由は十分守っていく考えである、こういう意思の表明をして、ILOに復帰すると、こういう経過をとつておることも総理大臣は御承知通りであります。そのILO理事会が、日本政府に対して、公労法結社の自由の本質的な権利に介入するものだ、そういうことを指摘しておることは、非常に私は重要な問題であるというふうに考えておるわけであります。この日本公労法結社の自由の権利に介入しておるということは、私は、公労法四条二項、あるいは地公労法五条三項、これを指しておるというふうに考えます。これは明白であると思うのですが、このILO理事会における日本政府への勧告に対して、総理大臣は率直にこのことをお認めになるかどうかという点であります。総理大臣として、ILO理事会勧告をした内容である公労法が、結社の自由の本質的な権利に介入しているということをお認めになるかどうか。これは、私は、今後のILO批准問題、あるいは政府がとっている労働政策、そういうものと非常に深い関係がある重要な問題であるというふうに考えますので、この点を、まず総理大臣お尋ねをして御意見を聞きたい、かように考えます。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ILO条約八十七号の批准の問題に関連をいたしまして、この条約日本にありますところの公労法の今おあげになりました四条三項、地公労法五条三項という規定が抵触するということは、労働問題懇談会におきましての答申においてもそういうことが明らかにされておりますし、われわれ、このILO八十七号を批准しようという決意をいたしました以上、これらの規定は抵触するものとして、これを改正しなきゃならぬ、かように考えております。
  6. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、私は、今、総理大臣が率直にお述べになったそれで、非常にけっこうであると思うのです。ただしかし、この際、それでは私の受け取り方が間違いでないかをただすためにお尋ねをしておきたいと思うのですが、従来四条三項の規定によって政府労働政策というものが私は進められてきたように思うのです。そういう点にかんがみて、四条三項の規定は、これはILO条約八十七号に抵触する、言いかえれば、ILOの憲章の精神にも反するのだ、こういうことを総理大臣はお認めになっておるというふうに私は思うのです、先ほど答弁から見てですね。まあそういうふうに考えてもいいかどうか、念を押して伺いたい。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ILO精神は、私が申し上げるまでもなく、自由にして民主的な労使団体のあり方について考えておるものでありまして、従って、労働政策基本としては、言うまでもなく自由にして民主的な労働運動というものを助長していくという基本方針をとらなきゃならぬ、また、政府がそういう意味において従来もこれをとってきておったものであると私は確信いたしております。そういう意味におきましては、このILO精神とわれわれがとっておる労働政策精神というものは、根本的には矛盾しているものではない、こう思っております。
  8. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、この問題はやはりもう少しすっきりする必要があると思うのです。公労法四条三項が八十七号の条約に抵触をしておる、これは総理大臣もお認めになったところであります。で、今日まで——今日もそうでありますが、政府は、公労法において四条三項を自発的にこれを削除して、そうして法の改正をしようという考えは、今まで私ども聞かなかった。ILO八十七号批准に関して、労働問題懇談会等答申があって、ようやく四条三項を削除して、そうして八十七号条約批准をしようと、こういうふうに踏み切ってこられた。少くともまだ今日までは公労法四条三項において八十七号条約に抵触する、あるいは違反する、そういう内容のものが生きておる。そういう公労法によって、公共企業体労働組合に対する対策を立ててこられた。ですから私は、この際、この四条三項を削除する、抵触するから削除するという政府のお考えであるならば、従来とってこられた公共企業体等における労働対策というものについても、私は若干の反省があってしかるべきだと、こういうふうに思うのですが、その点はどうでしょう。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 公労法、あるいは地公労法が制定されるときに、この四条三項や五条三項の規定が設けられたにつきましては、やはり相当な立法的な沿革があり、また、日本特殊性というものもあったと思うのであります。また、公共企業体自体根本的な考え方からいいますというと、公共福祉に非常に重大な影響がありますから、その事業運営というものの正常化並びにこれが確保されていくということは、事業性質上私は最も大前提として必要なことであると思います。そういうことからこれらの規定が設けられたことについては、当時の事情を聞きましても、相当理由があったわけでありますが、しかし、この規定ILO八十七号の規定に抵触するということは、私は明瞭であると信じますがゆえに、この八十七号を批准するということを決意する以上は、これらの規定は、そういうふうな理由がありましたけれども、これは廃止すべきものである。しかし、やはり根本であるところの公共事業性質からいうと、その運営正常化し、それを確保していくということは、事業性質上、当然考えなければならぬ、こう思っております。
  10. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は質問の第二点として、やはりこの際、日本国憲法結社の自由、この関係についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  言うまでもありませんが、憲法二十一条は、結社の自由は保障するという規定でございます。それから憲法二十八条は、勤労者団結権それから団体行動権、これを保障する、こういう条項であります。ところが政府は、従来今日まで、結社の自由についても制限をして参りました。それから団結権及び団体交渉その他の権利については、これは非常に大幅な制限、拘束を——制肘を加えてきた。これの理由として政府が常にあげてきたところは、憲法十二条の規定であります。それは公共福祉のためにはやむを得ないのだ、こういう理由結社の自由に対しても制限を加えてきた。それから団体行動権についても、これは大幅な制限をつけ加えてきておるわけです。こういう考え方が私は相当反省される必要があるというふうに考えるのです。こういう労働者基本的な権利ですね、これを公共福祉という名において次から次に制限をしていく、これは、とりもなおさず私は保守党内閣の一貫した政策としてとられてきた点であると思うのです。ところが先ほども述べましたように、この問題については国際的な常識として、結社の自由まで公共福祉の名において制限をするということはよろしくないということが明白に私はなったと思うのです。先ほど申しましたように、ILO理事会における勧告内容は、公労法というふうに限定をいたしておりますか、これは本質的な権利に介入するものだ、こういうことを言っておるわけです。しかも、これが理事会全会一致採択をされた、これは私は国際的な通念だと申してもよろしい。そういう点から考えて、従来政府がとってこられた、憲法に保障されておるいわゆる労働者基本的な権利、これを公共福祉の名において制限をしていくという考え方は、私は、少くとも八十七号を批准するのだ、そうして公労法四条三項は、これは抵触するから削除するのだ、こういう態度をおきめになった岸政府としては、こういう公共福祉の名において結社の自由の制限までするということは行き過ぎであったのだ、こういうふうに理解されなければならないと思うのです。これは、八十七号批准の問題も重要でありまするが、今後とられていく政府労働政策の私は基本に触れる考え方であるというふうに思いますので、こういう点について、この公共福祉という名においていろいろの制限を加えてきたということは、これは保守党のいわゆる岸政府行き過ぎ対策であるというふうに私は考えるのです。先ほど率直に四条三項は抵触するのだとおっしゃった総理としては、この点についてもやはり十分な答弁を私はしていただきたいというふうに考えております。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法上の労働者基本的な権利として認められておる団結権やあるいは団体交渉権というもの等につきましては、やはり日本憲法建前としては、憲法全体を貫いている十二条、十三条の規定があるわけでありますから、これらの労働者権利といえども、やはり憲法十二条、十三条の当然その範囲内にあるわけであります、こう解釈をしております。このことは、ただ政府が勝手に考えているだけじゃございませんで、日本の最高裁もその見解を採用しているのです。私はそういう意味において、別にこれが国際的の通念に反するとは考えておりません。なお、この公労法四条三項が置かれ、先ほど申し上げましたように地公労法五条三項が置かれたということにつきましては、立法上の沿革から見ましても、当時相当理由があり、また、公共企業体という特殊の立場から、こういう制限をする必要ありと認めて作られたわけでございます。私どもは、この根本としては、やはり自由にして民主的な労働運動を促進していくという基本政策に立たなければならぬわけでありますから、その後における労働運動の状況や、またこれらを廃止するにいたしましても、やはり公共企業体先ほど申しましたような正常な運営を確保するという道を講じて、抵触する規定を廃止してILO条約批准することが、日本基本的態度として適当である、こういう結論に達したわけであります。しかし、根本的に申しますというと、先ほど憲法論としての十二条、十三条の規定は、全部権利等関係かあり、労働者団結権やあるいはその他の基本的権利につきましても、やはりこの制限内にあるものと、かように考えております。
  12. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は今の答弁は十分理解できないのですが……。公労法四条三項を、これは抵触するものだと考え、これを削除するという考え方は、これは私は国際通念に従った考え方であると思う。理事会採択されたその精神をそのまま認める、こういう態度であろうと思う。そうすれば、今日まで四条三項は、これは公共福祉という名において、政府はしばしば答弁しております、説明しております。そういう名において作ってきた。それを削除するということは、公共福祉の名というのを私は行き過ぎ解釈をしてきたのじゃないか、この際、率直に私は反省せられる方がいいんじゃないかというふうに思うので、その点を端的にお尋ねしたい。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答えを申し上げました通り憲法上の公共福祉という観念は、十二条、士三条において、すべての権利または権利の行使に関係があるものであります。従って、これを制定した考え方は、言うまでもなく公共福祉公共企業体というものの特殊性から見て必要があると考えて立法されたのであります。その後における労働運動発展や、またこれらの抵触する規定を改正してILO条約八十七号を批准して、そしてしかも公共企業体運営正常化を期する道が講ぜられるならば、これらの規定を廃止してよろしい。しかし、公共福祉という観念が、すべての権利にやはりかかってくるということは、これは憲法根本考え方でありまして、間違いではない、かように考えております。
  14. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は十分満足するわけにはいかないわけですけれども質問を次に移します。  私はこの際、政府労働政策についてお尋ねをいたしますが、二大政党の対立とか、あるいは保守革新対立、こういうことが言われます。しかし政府のとっている労働政策と、われわれ日が考えている考え方とは、非常な相違があるわけです。いろいろの問題について、保守革新においてその考え方か違うということは、私は当然であると思います。しかし労働政策を見ると、まっ正面から対立しておる、こういりのが税状であると私は思います。私どもは、よくこういう言葉を使います、保守反動という言葉を使います。これは総理大臣はあるいは不愉快な言葉であるかもしれませんが、しかし政府のやっておられるいろいろの労働対策というものを考えると、そういうふうにひしひしと身をもって感ずるというのが私どもの実態であります。こういう状態では、ほんとうに日本の正常な労働運動というものが発展していくということは、非常にむずかしいのじゃないかというふうに私は考えておるわけです。まあいろいろの点について保守革新の間に共通広場がほしいということは、たびたびいわれる言葉であります。私は、労働問題についても、やはりこの点は、自社両方とも相当考えなければならない問題があるんじゃないかというふうに考えるわけであります。そういう点に立って私お伺いしたいのですが、やはり共通広場を求めて、この点はお互いに理解するという点がほしいということであります。その点については、私はやはり憲法等に保障されている労働者権利というものは率直に認めていく、そういう立場に立って、そういう立場の上で、いろいろの労働対策考えていくというふうにしなければ、共通広場というものをどこに求めるか、私は容易でないと思う。やはり根本結社の自由にいたしましても、団結する権利にいたしましても、あるいは団体交渉をする権利、あるいは団体行動をする権利、こういうものは、保守革新もこれは労働者認めていくんだ、こういう前提は、これはくずされない。そういう立場に立てば、その上に起ってくる問題は、私は処理し得る問題だと思うのです。ところが、こういう根本の問題が非常な食い違いをしておる、特に今日までとられてきておる政府政策というものは、ただ制限をすればよろしいということで、問題が実際に次から次に起ってきた、こういう点を考えると、私はILOの八十七号の批准を契機として、労働政策について相当な転換をはかってもらう必要があるのじゃないか、あるいはそういうふうに労働者にいろいろの権利を与えれば、これを乱用して、そしてますます困るのではないかと、こういう考え方出身を私は改める必要があるんじゃないか。そうしなければ、日本労働運動が正常に発展していくことがますます困難になり、ひいては労使関係が不安定になる。よく政府は、業務の正常な運営ということを言われますが、これは、結局労使関係が安定するということだと思います。労使関係を安定さすという労働政策というものは、基本的な問題は認めていく。その上に立って、行き過ぎがあれば是正するということが起ってくる。しかし、初めからいろいろの権利を与えれば困る、こういうことで次から次へ制肘を加えていくという考え方、これは、この際相当考え直してみる必要があるというふうに私は考えるのですが、総理大臣見解、あるいはこれについては労働大臣にも御所見を承わりたい。こう思うのです。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、やはり憲法その他法律に定められておる権利義務関係というものは、労使ともにこれは守っていかなきゃならぬと思います。もちろん社会経済発展とともに、法律制度が適当でないということになれば、民主的にこれを改正し、修正していくということは当然でありますが、お互いが、今、荒木委員のおあげになりましたよりに、もちろん労働者認められておるところの権利というものは、これは尊重していかなきゃならぬこと言うを待たないのでありますが、同時に、労働者の方におきましてもその権利に伴うところの義務であるとか、あるいはその法に定められておるところの秩序というものは、これはお互いに守っていくということが前提でなきゃならぬと、こう思います。この意味において、私どもは、労使とも法律制度やあるいはこれらの基本的な制度によって認められておるところの権利義務というものを、お互いに尊重しあっていくということが基本にならなきゃならぬと、こう思っております。  なお、労働政策については労働大臣よりお答え申し上げます。
  16. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府労働政策につきましては、若干の誤解があるのではないかと思うのでありまして、次から次に制限を加えていくというふうなことを別に考えておりません。ただ、御承知のように憲法十三条で言われる国民権利は、公共福祉というものを優先的に考慮しなければならないという建前であると理解いたしますので、いわゆる労働基本権一般市民権に優越するということはあり得ないことでありますから、国民権利というものも、やはり公共福祉が優先されて、皆がそれを尊重していくべきだという建前を堅持いたしておるのでありまして、労働運動について特に制限を加えていこうというふうなことを考えておるわけではありません。
  17. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の総理大臣並びに労働大臣答弁では、私も満足できないのですが、時間がないので次に進めていきたいと思います。  特に私は、きょうはILO条約批准の問題について、これは政府のしっかりした考えを聞きたいと実は思っておるわけです。その点に触れたいと思うのですが、政府ILO条約八十七号は批准をする、それから公労法四条三項は削除する、そこまではよいのです。ところが、これに関連をして国内法規を整備するんだ、その上に立って、それらの手続が終ってから八十七号の批准をしたい、こう言っているわけなのです。ところがその中味として私どもに伝えられておる点では、鉄道営業法とかあるいは郵便法とか、そういうものを改正して、そうして罰則を強化する、こういうことを前提考えて、さらに広範には労働法自体をも変えていごう、そうして四条三項を削除しても何ら差しつかえがない、従来と変りがないような制限を加えていく、そういうことをしたあとでなければ批准をしないのだ、こういうふうに言っておられるというふうに聞いているわけです。こういうことであれば、私は、批准はいつのことになるかわからないばかりでなしに、この問題をめぐってまた新たな問題が起ってくる、そして労使の間に非常な紛争が起ってくるということは明白であると思うのです。ですからこの際は、やはり先ほど総理大臣がおっしゃったように、四条三項を削除するにとどめ、そしてこの法改正をこの国会、今開かれている国会に提出をして、そして直ちに批准をすることが、今後の労働運動のあり方から見ても、私は非常に好ましいというふうに考えているわけです。それをいろいろ国内法の整備をするのだとか、いろいろのことを言って批准を次々に延ばす、こういう態度は、やはり国際的な信用を高めるゆえんでもないし、また、今日まで熱心にこのことを主張してきた労働組合の期待にこたえるゆえんでもないと思うのです。そういう点について、私はこの国会で批准ができるように準備を進めてもらいたいというふうに考えるので、この点は一つ労働大臣からお答えを願いたい。
  18. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 荒木さんのお話に若干の誤解があるようでございますが、政府は、もちろん一年半前に労働問題懇談会ILO条約の問題について答申を求めました。そこで、その結果が出ましたけれども、この答申に基いていろいろな施策を講じます行政上の責任は、懇談会にあるのではなくして、行政府である政府にございますから、これを尊重して批准をするという建前をとりましたのは、どこまでもこれは政府の責任でやつて参ることであります。そこで、この結論を得ますまでの間に、荒木さんも御承知のように前田小委員会あるいは石井小委員会というものが設けられまして、その小委員会において論議されました事柄がエキスとなって中山会長の答申となって現われて参っておるわけであります。その答申の第二項のところには、御承知のようにILO条約批准するにつきましては「労使関係を安定し、業務の正常な運営を確保することにあるので、特に事業公共性にかんがみて、関係労使が、国内法規を遵守し、よき労働慣行の確立に努めることが肝要である。」こういうことを申しております。この言葉のよって来たるところは、石井報告等にあるわけであります。そこで、さらに御指摘になりました第三項にあります「ILO条約の趣旨とする労使団体の自主運営並びにその相互不介入の原則がわが国の労使関係においても十分とり入れられるよう、別にしかるベき方法で、現行労使関係法全般についても、再検討することが望ましい。」これでありますが、政府といたしましては、まずILO条約批准につきましては第二項の問題を重視いたしておりまして、第三項は——この際にやはり労働三法について再検討すべき時期にきているという御意見でありますが——このことに着手いたしますというと、短時間ではできないことでございまして、ILO批准については、ここまでわれわれは直接関係あるとは考えておりませんが、今や大きな労働組合の連合体でも、それぞれ労働関係法について再検討の時期であると考えておることでありまして、これは、別途考えることであります。そこで、批准に先立ちましてもちろん地公労法五条三項、公労法四条三項は改正すべき必要がありますが、それによって来たるところの諸般の事情について、行政当局としては、期待いたしておる国民に対して万全の措置を考慮するということは、政府として当然な義務であります。従って、この公共性をいかにして維持して正常なる労使関係運営が行われるかということについて、ただいまは政府部内にそれぞれの機関を設けまして、鋭意調査検討いたしておるわけでありますから、これが成果を見次第、なるべく早く批准の手続をとりたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  19. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、私が質問をいたしました、この国会でそういうことを完了して批准の手続がとられるのかどうか、そういう点を伺いたい。
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 本国会の会期が五月二日までございますからして、できるだけ一生懸命努力をいたしますが、事務的作業が現在の状況でそれに間に合うかどうかということは、非常に私は実際問題として困難であると存じますが、政府は方針を決定した以上は、なるべく早くそういう手続が完了するように努力をいたして参りたいと思っております。
  21. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 先ほど労働大臣は、私が鉄道営業法等を改正して、そうして罰則を強化するんじゃないかということに対しては、若干誤解があるのじゃないか、こういうお話でありました。で、運輸大臣にお尋ねをいたしますが、運輸大臣は、八十七号批准関連をして鉄道営業法を変えると、あるいは罰則を強化すると、そういう考えを持っておられるのかどうか、聞いておきたいと思うのです。
  22. 永野護

    国務大臣(永野護君) 御承知通り、鉄道営業法は六十年前の法律であります。この間に非常な社会事情、経済事情の変化のありましたことは、御説明するまでもないと思います。従って、この鉄道常業法をこの社会情勢の変化に伴うように改正しなければならぬという議論は、もう数年前から出ておりまして、このILO条約の問題とは全く無関係に研究を続けて参っておるのであります。ただ、非常に今発達して参りましたハス事業、あるいは海運事業なんかが、鉄道営業法の改正で、事情に即応するような取締りができるかどうかというような関係もございまするので、そういう関連法規との調整をしきりに今考えておりますので、まだ結論に達しておりません。せっかく勉強中であります。
  23. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の質問は、ILO八十七号の批准関連をして鉄道営業法を変えようというお考えがあるのですかどうですかということを聞いておるわけなんです。
  24. 永野護

    国務大臣(永野護君) 先ほども申しましたように、鉄道営業法はどちらにしても変えなきゃならぬと、言う考えておるのであります。その後ILOの問題が起きたわけでありますが、私どもといたしましては、あくまでもこの改正の重点は鉄道の正常なる運転ということを目標として社会情勢の変化に伴う改正をしようというのでありまして、特に罰則の強化ということを考えることを目標とした改正を考えておるわけではございません。
  25. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、運輸大臣の答弁は、私は確かめておきたいと思うのですが、このILO八十七号に関連をして改正しようという考えを別に持っておるわけではない、六十年も前に作られたもので、いろいろ今日の事情に適合しないものがあるから、そういう点は前からそういうことを考えていたので、八十七号批准によってそういう改正を考えておるというわけではないと、こういうふうに了承してよろしいですか。
  26. 永野護

    国務大臣(永野護君) 大体その通りでございますが、しかし、形の上から言いますると、たとえば罰金五百円なんというような罰則があるのでございますけれども、今の貨幣価値の変化から申しましても、それは非常に非常識な点がございまするので、そういうような意味において、形が罰則の強化になる点が起るかもしれません。しかし、それはあくまでも鉄道の正常なる運転ということが目標でございまして、特にILO実施のために鉄道営業法を改正するという趣意は考えておりません。
  27. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 このことは、郵政大臣にもお尋ねをしておきたいと思うのですが一八十七号に関連をして郵便法を改正するお考えがあるかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  28. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) お答えいたします。さようなことは考えておりません。
  29. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは労働大臣に私はお尋ねをいたします。政府は国内の関連法規を調整するというお話をしておられます。今運輸大臣に聞いても、八十七号に関連をした鉄道営業法の改正を考えていないと、郵政大臣もその通りであります。そうすれば、関連法規として労働大臣考えておられる法規は何ですか。
  30. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は先ほど申し上げましたように、中山会長の答申というものは、一年半にわたる検討の結果、中間で行われました小委員会等の結論のエキスであると申し上げました。その石井委員長報告の第一項の公労法関係というものの第五行のところには、「公労法四条第三項の削除に伴い、公共企業体等の業務の正常な運営を確保するために必要な法的措置について検討すること。——」「公共企業体等の業務の適正な運営を確保するため、事業法中の諸規定についての不均衡等につき、その調整をはかることについて検討する必要がある。」と、こういうことを申しておるのでありまして、ただいま運輸大臣がお答えになりましたように、鉄道営業法というのは直接労働関係を目的とした法律ではないようでありますが、しかしながら、全然関係がないとは私は言えないと思います。運輸当局が考えておられますのは、先ほど運輸大臣の申し上げましたような趣旨において、先般来鉄道営業法の改正について研究はしておられる。そこで、私どもといたしましても、全体の行政の立場から、やはりどこまでもこのILO八十七号条約か期待いたしておりますのは、条約八十七号第八条一項に申しておるように、どこまでもその国の法律を厳守していくことがもちろん建前であるということを標榜いたしておる。そういう趣旨がILO憲章の精神でありますからして、その精神が守られるように、しかも公共企業体というものは、民間資本で行われるものではなくして、経営者は国民自身であります。その公共性というものをあずかっている政府立場からは、公労法四条三項を削除するということの結果どういうことが起き得るであろうかということについて、労働問題懇談会等において十分検討されましたことを資料にいたしまして、政府部内において検討を続けておると、こういうことでございまして、その意味において、私はやはり事業法等の不均衡を是正するということは、石井報告にありますように、大切なことであるとは存じますが、そういう点をいかにすべきであるかということを百下検討中でありますからして、結論が出るまでは何とも申し上げかねるのであります。
  31. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは労働大臣は、関係法規を調整してと、それを前提条件のように言われておるわけなんです。八十七号批准について、関係法規を調整してと、私はその調整しようとしておられる関係法規は何であるかということを聞いておるわけなんです。運輸大臣も、郵政大臣も、八十七号批准についてこの法律を変えようとは考えていないとはっきりおっしゃっておる。そうすれば、国内の関係法規を調整するといっても、八十七号批准のために調整するといっても、営業法あるいは郵便法というのは含まれていないと解釈するのが、これは運輸大臣の答弁なり、郵政大臣の答弁内容であります。そうすれば、ほかに何を調整しようとしておられるのか、その法規の名前をあげていただきたい、私はこう雷っておるのです。
  32. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど申し上げましたように、特に郵便法とか、鉄道営業法とかというものは、両大臣の申し上げましたように、直接ILO条約云々の問題で再検討をするということを考えておらない。運輸省の立場としては、古い法律であり、現代に合わないものであるからこれは改正しようということを前から考えておった、こういうことであります。ILO条約批准するということの結果、それに関連いたしておる業務の正常なる運営をはかるためにはどういうことをなすべきであるかということについて、専門家の労働問題懇談会の石井小委員長の報告に基いて、別途政府はそういう立場から再検討いたしておる、こういうことを申しておるわけでありまして、運輸大臣が運輸省の立場から、鉄道常業法というものはアウト・オブ・デートのものであるから、これは何とかしたいと考えられる。それは前から考えられておったことでありましょうが、政府ILO条約批准に伴って、この公共性、正常なる運営を保持するという立場から、そういうことも検討しなければならないであろう。今私どもがやっておりますのは、その他、この法律を改正し、そうしてまたILO条約批准に向うということになりますというと、公共企業体それ自身についてもいろいろな意見も出ておる最中でありますから、こういう際に、公共企業体等労働関係法ついて手直しをするところはないか。たとえば石井報告にも言っておりますように、当然職員外の者が組合に加入するということになれば、十七条の問題が起ってくることは当然であります。それから十八条がまたかぶって参ります。従ってそういう点についても検討をいたしておる、こういうわけであります。
  33. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 労働大臣は、石井報告というものを非常に重く見ておられる。しかしこれは経過の中において石井報告ということがあったことは私ども承知いたしております。しかし労働問題懇談会全体としてのまとまった意見でない、それは石井報告を報告として聞いた程度にとどまるものではないか。それをあたかも労働問題懇談会の総意であるがごとく重く見るという政府考え方に対しては、私は行き過ぎであるというふうに考えておるわけです。  それから郵政大臣になおお尋ねをいたしますが、全逓労組との間に、いわゆる団交拒否の問題があるわけです。この問題は、ILOの八十七号を批准しようという段階で、特に四条三項があの条約に抵触する、言ういうふうな解釈をとった政府としては、あの団交拒否の態度というものは緩和されてしかるべきだと私は思うのですが、そういう点を私は第一点に伺います。  それとともにもう一点は、これは事実かどうか確めたいと思うのですが、全逓労組が国際郵便電話連合に加入をいたしております。そこで全逓からその分担金を本部に送金——ところがこれが政府の指図によるのだろうと思いますが、この送金が差しとめをくらっておるということを聞いておるわけであります。それは非常に私は重大な問題であると思うので、そういう事実があるのかどうか。もしあればどういう理由で郵政大臣は差しとめをされておるのか、そういう点。前の点は団交拒否の態度はこの際改めるべき段階がきているのじゃないか、こういうふうに考える点と、その本部に対する分担金の納付を差しとめておる理由、そういうことをお尋ねいたしたい。
  34. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) お答えいたします。  ILOの八十七号条約批准をするということを政府がその方針をきめた。ただいま労働大臣もできるだけ早急に批准をしたいと、こういう段階であります。しかし、これを批准するということにはっきり決定いたしますならば、これはもちろんもう何にも問題はないのであります。しかしこの労働問題懇談会答申にもあるように、まず現段階においては、やはり国内法規というものはこれは順守しなければならないということを明らかに書いてある。従って私は、やはり現状においては公労法四条三項、こういうものを順守して、全逓労組としてもむしろ釈然としてこの際私は現状を改めて、正規の代表を選ぶということの方が、国民大多数もこれをむしろ非常に全逓労組に対する信頼感をさらに増すのじゃないか。最近の一流新聞の論調等もことごとくそのことを指摘しております。私はこのことは事実であろうと思います。従いまして、この際にやはり私は、先日も衆議院の予算委員会でもお答え申し上げましたが、ILO八十七号批准ということにこのことを結びつけては自分としては考えたくないし、またそういう立場にはないけれども、しかし全逓労組としては、すみやかに違法代表というものを改めて、正規の代表を選ぶべきだということは、私は依然としてそういう考えを変えておりません。  それから国際郵便連合に対する分担金のことは今、所管のものを呼びまして聞いてみましても、そういうことははっきりわからない、こう申しておりますから、このことは十分調査をいたしまして、後刻お答えを申し上げたいと思います。
  35. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は郵政大臣に考えてもらいたい点がある。大臣がおっしゃるように、国内法を順守しなければならないという建前は、私はあながち異議を差しはさんでいないが、今度のILOの八十七号批准に当って問題が起ってきた発端は、やはり団交拒否の問題です。なぜ団交を拒否するのかということになる。団交拒否がILOでも取り上げられて、そして問題が進展しておる。だんだん調べてみると、日本公労法自体がいけない、言ういうことになっている。団交拒否をしている公労法がいけない。これはILO精神に反するのだ。こういうことになって、四条三項は削除さるべきであるということになった。そういう経緯をもっている問題です。だから私は単に国内法を順守する建前というだけではこの問題については不十分だ。やはりこの法律自体が国際通念に照らして間違っておった。今度政府もそれを削除するのだとおっしゃる段階にきている以上は、実際問題としては団交問題を緩和するということが実際的ではないか、こういうふうに言っておる。  それからもう一つの問題は、これは御存じないということでありますが、これは労働大臣の方で差しとめられているのですか。
  36. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) これは報告を受けておりませんので存じません。
  37. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではこの問題は後刻調査の上、回答してもらいたいと私は思います。この問題は保留をして、できれば郵政大臣に、団交拒否の問題は大臣の英断をもって緩和すべきであるというふうに思いますので、先ほど理由は申し上げた通りです。御一考を願いたいと思います。
  38. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) 御意見としては、十分尊重して拝聴いたしたいと思いますが、私の考え方としては、先ほど申し上げた通りでございます。
  39. 鈴木強

    鈴木強君 関連して。ただいまの荒木委員質問に対して、総理並びに労働大臣から、ILO条約八十七号を批准すべきである。従って現在の公労法四条三項は、これは廃止しなければならない。こういう御意見を承わりました。そこまでは、私は非常に政府態度は明確だと思うのですが、しからば、先般緑風会の田村委員からも質問がありまして、労働大臣からお答えがあったので、私はちょっと納得できないのは、少くともILO八十七号の批准については、すでに一九四八年ですね、この条約が決定されて以来十年間というものは、日本政府批准をサボっておった。特に一年前から、この問題については非常に熾烈な要望になり、今日どうしても批准しなければならないところまで来たのですが、こういう経過を追ってわれわれが考える場合に、労働大臣は、批准はする。公労法四条三項と地公労法五条三項、これは改正する。しかし、今閣内でいろいろな国内法との関係で検討しているんだ、意見が分れているんだ、こういうことなんですが、私は、少くとももうすでに労働問題懇談会に移されてからも一年有余カ月たっております。ですから、当然来るべき結果をお考えになって、その対策を立てておるのがしかるべき措置であって、今になって、閣僚の間で意見が分れておるので、何か懇談会か調査会が作って、国内法との関連考えて慎重にやっていくと、そういうふうな無責任な答弁は、私たちは受取れないと思うのです。怠慢ですよ。もうすでにこれは、今度の報告としてわれわれは受取っておりますが、一項、二項の問題であって、三項以下の問題は、あの総会でも希望事項として申されている。この点は、国内法との関連労働大臣もお認めになっているようですから、この国会で批准をするということと、四条三項と五条三項を廃止するという法案を直ちに出して、そうしてこれを可決成立するということが政府の任務なんです。それを何かしらそういう意見の不統一とかなんとかいうことに問題を転嫁して、そうしてこの国会で批准をのがれようとするような、そういう態度があることを非常に私は残念に思う。もうすでに閣内において十分この問題は調整されて、直ちにこの国会批准公労法の改正ができるような措置をとるのが政府の親切なやり方だと思うのですが、そういう責任のがれを言われては非常に迷惑するのです。今まで非常に怠慢だった点を認めたらどうか。総理大臣労働大臣にこれは一つ聞きたい。
  40. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 鈴木さんのお話に、少し誤解があるようでありますが、私が申し上げましたことは、閣内に意見の不統一があるということを申しておるのではないのであります。政府としては、先ほども申し上げましたように、それぞれの専門家に研究は願っておりますけれども、それを実行に移すということについては、行政府たる政府の責任でありますから、国民の大切な財産を預かっておる公共企業体に対する重大な労働関係を律する場合には、この四条三項あるいは地公労法五条三項等を修正する場合において、どういうことを考えなければならないかということについて十分な検討をそれぞれの者に命じて作成させることは、政府として当然な義務であります。そういう事務的な行動を今鋭意続けておる、こういうことであります。御承知のように、第三国会でありますか、第四国会でありますか、ちょっと忘れましたけれども、私どもがあの法律を第一回に審議決定をいたしました当時は、四条三項というものはなかったのであります。当時レッド・パージで国鉄労組の中に排撃されておった共産党がおりまして、そこで、その当時の経営者も当時の労働組合側もわれわれに希望されて、英文で書いてきたものにはなかった四条三項という趣旨のものを入れてもらいたいという希望がありまして、われわれは委員として立法に携わっておる間にこういうものを入れたという、このことは沿革があるのであります。しかるに最近は、違法行為を行なったという理由をもって馘首された人々がやはり組合に残っていたいというような希望から、いろいろな御希望が出て参った。しかしながら、先ほど申し上げましたように、政府はやはりILO機構に全面的協力をするという基本労働政策に立って、幸い今度は、労働問題懇談会答申もありましたので、政府もその考え方に立って、ILO八十七号条約批准するという決意をいたしたんであります。従って、先ほど申し上げましたように、八十七号条約の八条一項に明確に言っておるように、やはり労使双方ともその国の法律を順守すべき義務があるんだということをいっておるのでありますから、同時にまた、答申の中に示しておりますように、すなわち私どもといたしましては、やはり公共企業体の正常なる運営が期せられるということに万全の準備をいたすことは、当然の政府としての義務でありまして、私どもは、少なくとも怠慢であるとは存じておりません。
  41. 鈴木強

    鈴木強君 もう一点だけ。労働大臣は、公労法四条三項の過去の歴史をおっしゃったんですが、私は、そういうことを聞いておるんじゃないんです。あなたは怠慢でないと言うんだが、少くとも労働問題懇談会にかかっておったことは事実でしょう。そうしてその懇談会でどういう結論が出るか、それはわからなかったでしょうが、しかし、いずれにしても、出る結論というのは二つなんです。ですから、その二つの結論に対してどういう措置をとるかということを今まで政府がやらなかったということに対して怠慢でないと言うのは、こういう反省のないことをこの委員会で言っておるんだが、もっと謙虚に、あなた方神様でないんだから、ときには間違いもあるでしょう、人間お互いに。私の言っていることは、批准をするということと四条三項を廃止するということは、総理大臣みずから認められておるんです。であれば、そのことはできるはずなんでしょう、やろうとすれば。それをあなたは、それをやるために事務的整備をさせるとか、閣内の不統一がないというならけっこうです。そういうことで意見がまとまっておられるならば、どうしてやらないんですか、この国会で。要するに、国内法との関連、いわゆる四条三項との問題に関連して、できるだけこの国会で、批准をやっても、公労法の改正だけは見送ろうというのがほんとうの政府考え方ではないですか。正しいということがはっきりしているならば、万難を排して、その正しいことを一日も早くやるという態度をとることが政府の責任ではないですか。それが今、この段階で、できないことに対して追及されて、ふてぶてしく反省しないという労働大臣態度が問題だと思うんです。正しいことは進んでやったらいいではないですか。今さら事務的な問題についてやる必要はない。運輸大臣や郵政大臣は、直接八十七号と関連して国鉄法や郵便法を直す必要はないということまで言われておるじゃないですか。あなた方は、ただこの国会を何とかのがれて、そうして全逓の方にも多少何か言っているらしいんですが、首切りの問題と関連して、そういうふうな態度は、私どもは実にけしからぬと思う。ですから、もう少しこの問題がスムーズにできるような態勢を固めておかなかったということに対して、責任を感じないということはないと思うんです。この点、総理大臣いかがですか。あなたも認めているように、批准もしようし、公労法四条三項は廃止しようと、こうおっしゃっておるでしょう。それを今直ちにおやりになったらどうなんですか。今それを、事務的な手続をやっているから、できるだけ今度の国会に出したいというようなことをにおわしておりますが、今この国会でやるべきでしょう。それをそういうところで責任のがれをしているんじゃありませんか。これは、総理大臣として私は非常に困ると思います。もう少し労働問題の正常化を期待するならば、世界に向って文句の言われないような措置を直ちにとるべきだと思います。そういう点について、総理大臣のお考えを聞きたいと思います。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、ILO八十七号批准の問題につきましては、労働問題懇談会という、労使また公益を代表している権威者が集まってこれを検討されておる。同時に、答申を得たならば、答申を尊重して処置したいということを申してきております。一貫して私はそう考えております。今回の答申を見ますると、今一項、二項、三項に分れておりますが、すべての何からいうならば、三項をどういうふうに扱うかということは、議論があると思います。私は、一項と二項は、これは不可分のものとして考えていきたい、こういう立場に立って、過般閣議で労働大臣から報告を得て、その問題は、これらの事業公共性を持っておるものであるからして、ILO条約批准をすると同時に、これに抵触する規定を改正することは当然である。同時に、この答申においても非常に重要にあげられておる二項のこの公共性を、公共事業労使関係を安定し、その運営を確保するに必要な処置は当然考えなければならない。そういう意味において、関係各大臣にそれぞれ検討を命じ、できるだけ早くその結論を得るように考えて、そういう検討を命じておるのでございます。
  43. 鈴木強

    鈴木強君 この国会でやりますか。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、まだ結論につきましてその見通しをはっきりと持っておりませんので、必ずやるかやらないかということは、まだ現在の段階において申し上げられないのです。私は、鋭意これをできるだけ早く検討をするように、関係各省に、各大臣に命じております。   —————————————
  45. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次は、高田なほ子君。
  46. 高田なほ子

    高田なほ子君 首相にお尋ねをいたします。まず第一に、岸内閣政策の中における教育のポジション、教育がどういう地位を占めるものか、こういう点についてお尋ねをしたいと思います。  世界の平和と人類の福祉に貢献せんとする理想の実現は、当然教育の力に待つべきものである。このことは、教育基本法にも明確になっています。そしてまた、教育の目的は、真理と平和を希求する人間の育成、真理に向って進んでいく、そしてまた、その真理は平和を目ざして進んでいかなければならぬ、こういうことに役立つ人間を育成していく、このことがわが国の文化の創造を目ざす教育の終局の目的である。従って、このことは、精神としては十分普及徹底させなければならない。こういうことが教育基本法の中に明確に示されております。従って、現場の教育者は、こうした教育基本法の目ざしている真理と平和を希求する人間の育成のために、日々教育という仕事を通じて理想の実現のために邁進をしているというのが今日の教育の現状であり、また教育の方針もその通りであろうと思う。しかしながら、現実はどうなっているか。現実は、しばしばここでも指摘している通り、現在平和憲法規定されておるのでありますが、政府は、憲法のワク内という独自の解釈の中で、本年度も、昨年から比べますと、防衛関係費は七十五億の増加を見ながら、特にミサイル時代に備えて、新しくロケット実験隊まで今度は編成されておるようです。名実ともにりっぱな軍隊が一そう装備化されるとともに、過般来論議になっております安保条約の改定で、わが国の負うべき軍事的な義務というものが強く増大されるという形になってきております。要約するならば、政府の平和に対する政策は、力による平和の解決であって、安保条約の改定によって、いざ来たりなば撃ちてしやまんというような力の解決の様相が強く示されてきておるわけであります。従いまして、国策では、平和を維持するために力による解決の方法、すなわち軍備という方向に行っておるにかかわらず、    〔委員長退席、理事堀木鎌三君着席〕 教育の方針は、真理を目ざして進んでいかなければならない、平和を目ざしていかなければならない、こういうような点が出てきておりますので、この点の矛盾は、しばしば教育界に思わざる摩擦を起す結果になっておるわけでございますが、この際、岸内閣の教育に対する見解、なかんずく今次の軍事政策増強の中における教育の占める地位並びに教育の方針というものを特に明確にしていただきたいと思うわけであります。一昨日の中山委員のこの種質問に対して、岸首相は、民族の将来に影響のある問題であるから、慎重に考えなければならないという御答弁がございました。しかし私は、この御答弁はきわめて抽象的であって、はなはだしく不満を覚えておりますので、明確な御答弁をわずらわしたいと思うのです。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 政治の目標が世界の平和と人類の福祉を増進することにあることは、言うを待たないのであります。今日の国際情勢から見まして、われわれが願っておるところの恒久的な平和とはまだまだおよそ遠い形にあることは、私ども遺憾とするのでありますけれども、われわれは、あらゆる意味において、この世界の恒久的平和に向って努力していくということが日本の外交の基本方針でもありますし、政府全体の理想でもあることは、これは言うを待たないのであります。そして日本の教育の根本が、この方向に向って次の世代を負うべき人々を養成していくということにあることも、御指摘の通りでございます。私は、こういう意味において、両方の究極の目的においては一致をしておることは、言うを待たないことであると思います。  今おあげになりました、この日本の自衛という意味でございます。私は、今日の国際の平和を維持していくために、また将来の理想を達する場合におきまして、各国々が自分が他から不当に侵略されないという態勢をとっておることは、御承知通りであります。日本憲法におきましても、他国の憲法にはないほどいわゆる戦争の放棄という高い理想を掲げておりますが、同時に、われわれがみずからを守るという、他から侵略されない、侵略された場合においては、これを実力をもっても排除するという態勢をとっておくことが、われわれの平和な生活を事実上確保し、また、安全な感を持つことが、今政治や教育の理想として考えられておる真理を追求し、そして国民福祉を増進し、平和を作り上げていこうということを確保する上からも、私は絶対に必要である。われわれが他から脅かされておって、いつどうなるかわからぬという不安な状態に置かれておって、教育の究極の理想や、あるいはまた、政治の理想を達するわけにはいかないのであります。そういう意味において、いろいろな国際情勢やその他等を見ながら、現実の自衛の力をどの程度に、どういう内容を持ってやることがいいかということを考えていくのが現実の政治であって、それは決して御指摘になりましたような教育の目的と相反するものでもなく、政治の目的に反するものでもない。これが現実に即して何されるものであり、また、日本憲法はその点を明確にしておると、私はかように考えております。
  48. 高田なほ子

    高田なほ子君 自衛の問題についてお触れになりましたが、これは政治論です。自衛の問題については、今首相がおっしゃったような岸内閣の自衛のあり方、これについてはわれわれも承知しております。社会党は、自衛の問題については、非武装は、非核武装、平和憲法を守る、共存共栄、このことがわが国の自衛であるというふうに考えておりますから、必然自衛問題は政治論争としてここに対立する場合はあり得ると思います。また、対立しておるのです。  しかしながら、教育は現実問題ではない。教育は、あくまでも世界の平和と人類の福祉に貢献せんとする人間の育成であります。従って、現実がどうありましょうとも、教育の理想というものを曲げるということは相ならないことであろうと私は考えます。ところが、岸首相は、ただいまの御答弁によると、武力による自衛は、これはやはり教育の理想であるかのような御発言があったのでございますが、私は、これはお間違いではないかと思います。教育は現実の問題、政治問題とは別個に、人類の理想に向って進むという理想の追求でなければならないところに憲法は学問の自由を保障しているのだと思います。私の把握が間違っておるのか、あるいは岸首相のお言葉があいまいなのか、この点もう一度正確におっしゃっていただきたい。
  49. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 教育の目的が理想の追求であるということは、高田委員のお話の通りでありまして、先ほども御質問のうちに、その理想を追求する上において、われわれがやっておる現実が矛盾するのじゃないかということを御指摘になりましたから、それは矛盾でないということを私は申し上げたのであります。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 端的に申しますと、教育基本法の精神というものは貫くべきものであるというお考えをお持ちになっている、こういうふうに受け取りたいと思いますが、それでよろしいのですか。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、教育基本法の精神は、これを貫くべきものであると思います。
  52. 高田なほ子

    高田なほ子君 教育基本法の精神を貫かなければならないということになって参りますと、教育は中央の政権に支配されないという態勢を作っていかなければならないのではないでしょうか。従って、これは申し上げるまでもなく、教育の中立という問題になってくると思うのです。私は、今日ほど教育の中立が大事な時代はないのではないか。先ほど申し上げたように、教育の理念と、そして現在のこの自衛という政治問題というものがこんがらがってくるような場合にこそ、一そうこの教育の中立ということを確立していかなければならないというふうに考えておるわけでございますが、教育の中立を確立するためには、どういう原則を一体打ち立てていったらいいのか。このことはきわめて重大な問題でありますから、あえて首相の答弁をわずらわしておきたいのです。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 教育の中立ということは、私どもも非常に大事なこととして常々考えております。このために、あるいは一部教員の偏向的な色彩の強いことについても非常に憂慮しております。また具体的に、政治的な団体その他がこれに介入していくとか、あるいは選挙等を通じてこの中立性が脅かされるというようなことにつきましては、厳に戒心をしていかなければならぬと考えております。
  54. 高田なほ子

    高田なほ子君 はなはだ本質問題を明確に把握されておらないのではないかと思います。あなたは、教員の偏向性を直し、選挙活動等々規制すれば、教育の中立が守られるというような考え方をお持ちになっているよりですが、これは私は本末転倒だと思う。教育の中立は制度的に確立されなければならない。かような教員がどうだこうだというようなことで教育の中立を確保なさろうなどということは、これは市井人の言うことで、首相の御答弁になっておらないと思う。制度的にどうしたらいいか、この点についてお尋ねをしたい。
  55. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、制度建前も大事であり、運用の面においても、この考え方を貫いて、いかなければならぬと思います。今日の各種の制度というものは、やはり教育に関する制度は、教育の中立性を確保しょうという目標のもとに立てられていると思います。これらのものが現実に、運営の面から、果して制度本来の目的であるところの中立性が確保されているかどうかというようなことにつきましては、十分に検討して、その本来の目的であるところの中立性を確保するように努めていかなければならぬ、こう思います。
  56. 高田なほ子

    高田なほ子君 努力に対する心境をお述べになったわけでありますから、私は、これを認めたいと思います。そこで、今日教育の中立を一番阻害する問題として、教育の中央集権を排除しなければならぬ、すなわち教育の中立を確立するためには、地方分権の制度を確立しなければならない、こういう制度的な重大な問題があるわけであります。この運営の面についても、いろいろな問題点が山積しているために、教育界の昨今のトラブルというものは、まことに私ども憂慮にたえない状態になってきたわけでありますが、どうしても教育の中立を確保するために、地方分権の制度というものを、また運営というものを十分に検討していかなければならないわけであります。    〔理事堀木鎌三君退席、委員長着席〕  従いまして、われわれ社会党は、今日の教育のいろいろな現状にかんがみまして、教育委員会制度の改変、これを中心とした法改正、すなわち教育委員会の公選制、これを中核といたしました法改正をすでに用意しているわけであります。しばしば首相は、法治国であるからには、法律の改正をもってこれに対抗すべきであると言っておられますが、教育の中立を守るごとにやぶさかでないと言われたからには、われわれのこの努力というものに対して、具体的には、法改正に対して、自民党の皆さん方と共通広場を設けて、教育中立に対する倒産的な研究というものが進められなければならないと考えますが、首相の御見解をわずらわしたいと思います。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 教育委員会制度につきましては、すでにこれが実施されましてから、その間改正が行われて今日に至っているわけであります。私は、その実情等につきましても、常々重大な関心を払って今日に来ております。私は、今日御趣旨のような教育委員会の公選制というものにまたあと帰りしていくことが適当であるかどうかということについては、私自身は、それが適当であるという結論は持っておりません。なお、しかし大事な問題でありますから、将来にわたっても、この問題については検討を続けて参りたいと思います。
  58. 高田なほ子

    高田なほ子君 教育の問題については、これは、共通広場としての問題として話し合うという態度が私は大切ではないかと思う。私は、今、教育委員会の公選制の問題にだけ触れましたが、教育委員会の設置の問題、教育長の資格の問題、こういうような重要な問題があるわけでありますから、ただいまの仰せのごとく、共通広場として研究をするという機会をお互いに持っていかなければならないと考えまして、ただいまの首相の御答弁を私は了としたいと思うのであります。  第二にお尋ねをしたいことは、勤評問題についてです。勤評問題は、しばしば本会議等において私どもの代表から質問されたところでありますから、くどくここに申し上げることを避けまして、二、三の点だけお尋ねをしたいと思うわけです。とにかくここ足かけ二年、陰惨な影を残しながら、ついに勤評は、実際問題としては規則を実施されております。しかし、岸首相は、われわれの当時の質問に対して、とにかく実施してからでも、悪い点があったならば、研究をして改めるにやぶさかではない、こういう心境を発表しておられるわけです。今日でも、こうした心境についてお変りはございませんか。お尋ねをします。
  59. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 勤評問題につきましては、従来私が国会を通じて申し上げておる通りに、今日におきましても考えております。
  60. 高田なほ子

    高田なほ子君 さらにお尋ねをいたしますが、今日の勤評実施は、不幸なことでありますが、理解と納得のいかなかったままに、四十三都道府県において実施、提出されておる、こういう現状であるわけであります。政府は、この現状を理解と納得、教員の良識と世論の支持のもとにこういう実施ができたのだという態度をわれわれにおっしゃっておられますが、果して今日の実施が理解と納得の上に基くものであるという、こういう把握をしていらっしゃるのでございましょうか。いかがでござましょう。
  61. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、今日までの聞いております報告から見ますというと、四十三都道府県においてこれが実施を見ておる。しこうしてその実施を見るまでには、いろいろないきさつもあったけれども、漸次この教職員諸君の理解を深めて、その良識によりこれが行われてきておる、こういうふうに報告を受けておりますし、大体の何としては、そう考えております。
  62. 高田なほ子

    高田なほ子君 現状は理解と納得の上に行われたのではなくて、文部省の強い指導——言葉をかえて言うならば、強い圧力、こういうようなもとに行われたということは、私は必ずしも政府の把握が正しくないという実は考え方を持っているわけです。従いまして、文部大臣に現状を実はお尋ねしたいわけでありますが、先般文部省は、この勤評を提出した府県について、各県の勤評内容を調査されたわけです。ところが、その結果いろいろのものが出てきたようでありますが、特に文部省が期待し、かつ、全国の教育長協議会議案、これは文部省がまあ作ったと同じようなものですが、こういうようないわゆる五段階の総評査定が行われたというのは、わずか数県にしかすぎない。その他の府県においては、各県の自主性においてそれぞれの内容を盛ったものが提出されていると聞いています。従いまして、大臣からこの勤評内容を調査した結果、どういう結果が現われているのか、実情について御報告をわずらわしたい。
  63. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 文部省といたしましては、勤評の実施に関しましては、これは、本来から言いまして、適正な人事管理をやるという建前から申しまして、教育長協議会の試案が必ずしも絶対だとは申しませんけれども、なるべくやはり一つの方式で全国的にいくのが望ましいと実は考えている次第でございます。そこで、教育長協議会の試案で行われることが望ましいと思っておりますが、ただいまお話のございましたように、各教育委員会は自主性をもって検討しておりますから、試案の通りに実施したのは、東京都と茨城県だけであります。あとはいろいろに違ってはおりまするけれども、長野がやや著しく違っている部分がございますだけで、あとはほとんど教育長協議会の試案を中心にしてやっているのであります。いろいろ意見はございますと思いますけれども、この通り絶対とは申しませんけれども、なるべくやはりこの標準に従ってやられるのが望ましいと考えております。
  64. 高田なほ子

    高田なほ子君 現在の文相は良識人であられますから、大へん御答弁もやわらかい。しかし、今日までの文部省の態度というものはそんなものじゃなかった。何でもかんでも全国画一的に、教育委員会に措置を講じてまでもやらせるというような鼻息であった。しかし、実際にやってみたところが、今のように五段階方式をとったものは東京と茨城の二県だけ、あとはみな違うというような状態が出てきた。私の調査するところによると、きわめて問題があった点、すなわち、これを実施する前に国会でも論議になり、現場の教育者が論議して、最低の線として中学校長会が出したこの五段階方式というものに対する意見というものは全然いれないで実施した。そうして無理にこれをやらせようと文部省は指導した。教唆扇動した。しかし、やった結果、実際にはこの試案は役に立たない試案だということが、今の大臣の答弁からかなり明確になってきている。すなわち、教員の品位というものを削った県か二十八県もある。また、教育愛というような、こんなべらぼうな、測定もできないような内容を含むものはけしからん、できないということで、これを削った県が二十四県もある。従って、文部省の教育長協議会の試案を押しつけようとした態度、全国中学校長会の意見等を全く抹殺したこの態度、こういうようなところにそもそも誤謬があったのではないかと私は考える。教育の混乱はこういうところから生じてきている。大臣は、この調査の結果にかんがみて、文部省の今日までの誤謬というものを率直にお認めになるべきだと思うが、いかがでございましょうか。
  65. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 私は、教育長協議会の試案がそれほど標準になっていないと考えておりません。具体的にずっと見ましても、個々の点で違っている点はございます。たとえば、五段階を三段階にいたしましたり、いろいろの点がございますけれども、やはりこれは、教育長協議会の試案というものを非常に考えたものでございまして、率直に申しまして、日教組の諸君の勤評絶対反対という、これはぜひ改めてもらわなければならぬ態度だと思いますが、そういった問題がございましたために、まあ各都道府県でいろいろに教育委員会が苦心をしておられるのであります。私も、もちろん教育長協議会の試案が絶対だとは申しませんので、その間に、総理も話がありましたように、適当の手が加えられても、それでいかんと思いませんけれども、やはり本来的に申しまして、人事管理を適正化いたしますれば、ただ都道府県の中だけでなしに、都道府県をこえても、やはり一つの標準で見るということは望ましい方向でございますので、私は、この教育長協議会の試案というものを中心にしながらものを考えてもらうということは、勤評の問題として私は正しいと考えている次第でございます。で、お話のございましたように、この試案が標準としての値打ちをくずしているとは考えておりません。
  66. 高田なほ子

    高田なほ子君 人事管理の問題としてこれを出しておるのですが、人事管理は、ただ人事管理の目的のために勤評というものがあるものではない、人事管理は何のために人事管理をするかということになれば、結局教育効果の問題と離すことができない。従って教育の効果を上げるために品位ということや、教育愛というものの、これが採点ができないという結論が今日各県の出した結果になってきている。従って文部大臣は全国教育長協議会の試案を中心としてもらいたいというけれども、当初これは文部省の錦の御旗であった、今中心として考えてもらいたいということになっておりますが、大臣はそのように考えておりますが、また首相は改める点は改めなければならないと先ほども言明されましたが、文部省の官僚諸君はそうでないようです。文部省の官僚の皆さん方は四月から各県に対して勤評内容をより厳重にするよう積極的な指導方針を決定したようであります。一体この積極的な指導方針というものはどういう指導方針であるか、私はこういう指導権が文部省に果してあるのか、このことによって各県の自主性というものが著しく押えられていくという結果を生むことをおそれるがゆえに、あらためて文部省の今時点における積極的な指導方針の内容を明確にしてもらいたい。
  67. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 勤務評定の問題に関しましては、昨年以来内閣のとっている方針を少しも変えておりません。今日におきましても、この勤務評定が真に教育効果の向上に役立ちまするように、これが適正に行われますることを従来と同じに尊重をいたしておる次第でございます。
  68. 高田なほ子

    高田なほ子君 積極的な指導方針というのは、従来と同じということと違うではありませんか。従来と同じということと、積極的な指導方針というのは、どういうこれは関係を持つのですか。もっとはっきり言ってもらいたい。
  69. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 従来と同じ方針を堅持して参るつもりでございます。いろいろな問題がございますけれども、この勤務評定を真に効果あらしめますようにみんなで骨を折って効果を上げて参ろうというつもりでおります。従来と同じ方針を堅持して、この効果のますます上るように、みんなで努力していこうということでございます。
  70. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は文部大臣のお人柄を実は非常に高く尊敬しているのですが、どうも文部官僚の皆さん方というものは、大臣の意思とは違うことをよくやる。かつて、お名前を避けたいのですが、前文部大臣はひそかに私に嘆かれた。文部省ほどひどい官僚のいるところはない、大臣の知らないうちに何でもやってしまう、こういうようなことがある。  この際総理にお伺いしますが、文部大臣の席というものは、これはどんどんどんどんすりかえるべきではないと私は思う。私が国会に登場してから九年ですが、この間にかわられた文部大臣が十一人です。朝令暮改、ここに文部官僚のばっこするすきがあるのだと思うが、文部大臣は少くとも席に落着かれて、派閥抗争の中になぞ巻き込まれないで、教育というものに深い識見、そうしてでき得べくんばこういう経歴をお持ちになるような大臣がその席にお坐りになるべきだと思いますが、たびたび派閥抗争の中で首のすげかえが行われておりますが、橋本文部大臣の、今おっしゃった事柄でも、どうも私はまた逆戻りしていくような気がしてならない。深く教育問題を把握して御答弁になられるという余裕を持つことができないということを私は全国民とともに悲しむものです。文部大臣の更迭という問題について、総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  71. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 内閣閣僚の地位はいずれも重大であることは言うを待ちませんが、特に文教の問題は先ほどから御議論がありましたように私も非常にこれを重視いたしております。そういう意味におきまして文部大臣の選任につきましては、特に私としては十分にこの文教政策の重大意義を頭に置いて選任いたしております。派閥抗争等のためにいろいろ取りかえるというようなことは毛頭考えておりません。
  72. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部大臣に強くこの際要請をしなければならないことは、積極的な指導方針ということは、今までと変らないように圧力をかけて、全国画一的にやるというような指導方針は、これは教育の中立に全く背反した文部行政になると思うのです。従って地方の自主性というものを十分に尊重し、文部省はこれに対して不当な干渉をすべからざるものだと私は考えておるのです。積極的な指導方針ということについて十分な御注意をわずらわしたいと思いますが、これについて最近日教組とも久しぶりで文部大臣が懇談の機会をお持ちになったことは大へんけっこうなことだと思うのです。日教組の態度を責めるばかりが能ではないのです。やはり政治論議として——政治論議を抜きにしても意のあるところを聞くというようなこの態度が教育問題を解決するきわめて重要な問題であると考えるのでありますが、これについて大臣の御所見を一応伺わしておいていただきたい。
  73. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) この間、日本教員組合の幹部の諸君と会いまして私の見解も率直に述べておいたのでありますが、私意見はだれの意見も率直に伺うつもりでありますが、ただ日本教員組合のことは高田委員も御承知通り、本来教員組合というのは都道府県以下において勤務条件について当局に意見を持ち出すための団体でございます。日教組はそれの連合体でございますので、勤務条件等についての日教組の意見はいろいろ配意しなければならぬと考えております。ただしかしながら日教組の諸君と話し合って、あるいはこれと協定をして文部行政をするというようなことは私考えておりません。本来から申しまして教育行政の問題は教育基本法、憲法精神に従いまして、そうして文部大臣が指導、助言、援助を行い、教育委員会がこれを実施するという建前で参るべきものでございまして、私は教員組合の諸君が教育方針の内容に立ち入って不賛成だとか、あるいは絶対反対だとかいうようなことをやっておられるのは、私ははなはだ遺憾だと思うのであります。この間も率直にその見解は述べておきました。私は話を聞くのはけっこうでありますが、その建前は私も堅持するつもりでございまするし、また日教組の諸君においても、教育者としての節度を十分に考えてもらいたいと思っております。
  74. 高田なほ子

    高田なほ子君 御所見は承わっております。しかし教員組合がいろいろの教育の問題に対してこれがいいとか、このことは反対だと、こういう意思表示をするのが遺憾だというのは、これはどういうことなんですか、これは自由じゃありませんか。私はこういう意思表示があってこそ日本の教育は前進するものだと思う。かって文部省は教員組合を指導してくれたのです。教員組合のいろいろな発言はわが国の教育の水準を高めるものだということを、はっきりこれは指導して下さったのですが、いつの間にかそれとは逆の方向にいっているのですが、余談はさておいて、こういう意見を持ち合うということについて遺憾だということは、あまりにも狭量ではないか、橋本文部大臣は自民党に大へん遠慮されているのではないか、教育は中立だというからには、あなたは自民党とも離れて、ほんとうに中立という立場に立って、現場の教員の意見を率直に聞き入れて話し合う、この態度こそが教育問題を解決に導き、前進させるものだというふうに私は意見として申し上げておきたいと思うわけであります。  処分問題等については後刻申し上げたいと思いますが、さらに岸首相についてお尋ねをしたいと思います。  私どもは母という立場に立って戦争を憎みます。私たち母親は、生命を生み、生命を育てる義務権利というものを持っているのです。従って、戦争というものに対しては本能的にこれを忌避しようとする考え方を持っています。で、むすこたちを殺したくない、人殺しをさせたくないと私たちは考えているのです。従いまして、私ども婦人という立場に立ちますと、一切のものを抜きにして、原水爆の禁止を中心とするいわゆる平和を進めていこう、戦争のない世界を作り上げていこうという国民世論を起していかなければならないという強い気持さえ実は持っているわけなんです。で、私は、これは人類の理想でありますから、よもやこうしたわれわれの考え方、いわゆる婦人運動、平和運動、こういうものに対して首相は御異論をはさむお考えはないとは思いますが、一応この婦人の立場における平和運動の推進、原水爆禁止運動の推進というものをどのようにごらんになっているかという点についてお尋ねをしたいのです。
  75. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いかなる意味においても、戦争に巻き込まれることのないように、また戦争をなくするためにわれわれが真の平和運動を続けていくということは、これはとうといことであると思います。私が過去におきましてもこの原水爆の実験禁止、また続いて、これの兵器に使用するということを禁止しようとする念願を持って、いろいろと微力を尽してきていることも、全然これに同じ考え方でございます。過般、私はいわゆる七人委員会といわれる、平和を促進する、科学者とか、あるいは婦人のかたがたの諸君とも親しくお目にかかって御意見を聞き、私の意見も述べたのであります。私はこの平和運動に関して、婦人のかたがた、特に今、高田委員のお話になるような、婦人としての本能的な気持も加わってこれを推進されるということは、これは大へんけっこうなことであり、またわれわれ政治の理想として、先ほど来申し上げているように、また現実の世界がそれから遠ざかっておりますから、あらゆる国際会議、その他国際的世論の高揚につきましても、私はあらゆる、この理想を同じくする人々と手をつないでこれを進めていきたいと、かねがね念願いたしております。
  76. 高田なほ子

    高田なほ子君 今日のアメリカの軍事政策は、その一つとして、原水爆の実験禁止に対しては、必ずしも肯定をした立場をとっておらない。しかし、現在、岸首相がお述べになりましたように、原水爆の実験禁止、そうしてまた平和運動というものは推し進めなければならないという見解に対して、私は心から敬意を表したい。すなわち、この安保条約改定に伴って、たびたび首相は、戦争に巻き込まれない、核兵器の持ち込みは許さない、こういうふうなことを言明されていますが、実際にこのことを成功させるためには、平和の維持というものが挙国一致に盛り上らなければ、こうした外交交渉というものは成功するものではないというふうに私は考えている。従いまして、今後この平和運動あるいは原水爆禁止の運動等については、一そう御努力なさるということでございますが、改めてここで青木国家公安委員長お尋ねをしなければならないことは、こうした平和運動を推し進めるためにたびたび婦人の地域グループが会合を持って話し合いをする場合がございます。先般も世田谷区の梅が丘において、地域の婦人団体が、母としてのいろいろの願いを盛り込むための会合を持とうといたしましたが、不幸にして私服のかたがたが出たり入ったりして婦人を脅かして、あまりのおそろしさに婦人たちは、これは悪い会合ではないだろうか、赤と言われるのではないだろうか、こういうような恐怖心からこの会合を成功させることはできなかった。今日こうした平和の問題に直面している重大時に際して、何のために私服刑事が、婦人の、そうした平和を語ろうとする集まりに出たり入ったりするのか、私は、首相の努力されている点と、はなはだ現実において違うと思う。この点いかがですか。
  77. 青木正

    国務大臣(青木正君) 申し上げるまでもなく、警察はあくまで中立性を堅持せなければなりませんし、また民間のそうした運動に対して介入すべきものでないことは言うまでもないことであります。従いまして、平和運動に対しまして、警察として介入するとか、あるいはそういう運動を妨害するとか、そういうことがあってはならないことでありますので、私どもは厳にそういうことのないように、またあってはならぬと、かように考えております。ただ世田谷における具体の問題につきまして、どういうことがありましたか、直接これを担当しておりまする当局の方からそれを聞きませんければわかりませんが、警察の運営の方針としては、平和運動に介入するというようなことは毛頭とるべきでなし、また、私どもは、そういうことがありましたらば、そういうことのないように十分注意したい。ただ具体の問題につきましては、私どもその報告を受けておりませんので、詳細には存じておりません。あるいはまた何か警察の当然の職務に立ちまして、犯罪の予防等の観点から何らかそういう必要があったかどうか。それは具体の問題でありますので、報告を聞かなければわかりませんが、方針としてはさようなことはいたしておりません。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 御方針はわかりました。ことしは公安調査庁の調査活動費に四億五千二百万円という大へんな巨額なものが組まれています。今日人権が非常に侵害されている事実もありますが、これに対する調査費用は千五百万円という、これはもう実に、人権擁護とこういう思想的な問題の調査活動というのは、大へんにアンバランスの形になっています。そこで、その調査費用の使い道がないのでこういうばかばかしいことに出たり入ったりするのじゃないかとすら思うのでございますが、今私が指摘したのは、これは氷山の一角で、茨城県にも栃木県にも埼玉県にも、これはもう各所でもってこういう問題が起っている。婦人の集まりに出入りをして、させないようにしている、こういう実情は大へん遺憾なことであると御答弁がありましたから、平和問題に関する婦人の集会等に警官の出過ぎた行為というものはなすべきではないという趣旨を徹底させるための対策を講じていただけますかどうですか。具体的にお答えをわずらわしておきたい。
  79. 青木正

    国務大臣(青木正君) 警察といたしましては、言うまでもなく、あくまで中立的でなければなりませんし、また民主的でなければなりませんので、警察がそういうような運動に対しまして、憲法に保障された集会なりあるいは表現なりの自由を侵すというようなことがあってはならぬということは言うまでもないのであります。従いまして、私どもといたしましては、常に警察官の教養におきまして、そのことを強く指摘しており、また警察官の採用に当りましても、特に宣誓までいたさせておるのであります。ただ、警察といたしましては、言うまでもなく警察法の定めるところによりまして、犯罪予防の責任を負わされておりますので、犯罪を予防するという立場に立つ場合に、何らか犯罪を犯すおそれがあるというふうに思われますときは、やはり予防的な措置としていろいろ社会の事象を十分注意しなければなりませんので、そういう責務はやらなければいかぬと思うのであります。しかし、だからといって、そのことがいやしくもも集会の自由あるいは言論の自由、そういうことを侵すようなことになってはなりませんので、そこで国家公安委員会としては、全体の警察の運営に当りまして十分その点は常に注意をいたしておるのでありますが、さらに現実の責任を持っておりまする各府県の公安委員会におきましても、その方針をもって警察を管理いたしておるわけであります。しかし、御指摘のようなことがあるということでありますれば、私どもは警察管理の立場に立ちましていろいろ常に国家としては警察本部長とも会合をいたしておりますし、また、それぞれの公安委員会は管轄の警察署長の会合等にも出席いたしておりますので、そういうことのないように、これは厳重に私ども注意をいたして参りたい、かように存じております。
  80. 高田なほ子

    高田なほ子君 次に、首相にお尋ねをいたします。  憲法九十九条に基いて、総理大臣も、天皇も、摂政も、国家公務員も、みんなこの憲法を積極的に守らなければならないという規定があることは御承知通りであります。社会党は、この憲法九十九条の趣旨にのっとって、民間運動として護憲運動を展開しておるわけです。このことは大へん私はけっこうなことだと思いますが、できればこの護憲運動には岸総理大臣もわれわれと一緒になって、国民にこの憲法精神というものを普及徹底させ、そうしてほんとうに国民全体の中に平和精神を浸透させるという運動に協力されるべきだと私は考えますが、この点についてどのようにお考えになりますか。
  81. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法を順守するということは必要であると、憲法規定も明定をいたしておりますから、そういう国民運動が起ることは、もちろんその意味においてけっこうなことであると言わざるを得ません。しかし、現実の運動にどういうふうに参加し、どういうふうにやっていくかという問題につきましては、私はいろいろな点において現実の事実問題として考えていかなければならぬと思います。私自身が決して憲法を守り、憲法を擁護するということにおいて人後に落ちるものではありません。現実の運動としてこれが行われるという場合においては、いろいろの点を考慮すべきものである。国民運動としてそういうことが盛り上るということについては私も至当なことである、望ましいことである、かように思います。
  82. 高田なほ子

    高田なほ子君 国民運動としてこれが発展することが望ましいことであるという見解を述べられたわけです。従って、憲法の普及徹底には、教育の場を通してこれを行なっていく、また、教育の場に憲法問題ということが出てくる場合に、これを正確に伝えていく、こういうことは教育問題としてもきわめて現下の大切な問題であろうというふうに考えます。これに対して、文部大臣の見解は、どのような御見解をお持ちになりますか、首相の御答弁関連してお答えを願いたい。
  83. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 憲法はあらゆる施策の面を通じて尊重されなければならないことはもちろんでありますが、教育の面につきましてもことに非常に重要な問題でございまして、憲法を十分に尊重して参らなければならぬことは当然のことであります。
  84. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣の御答弁を了といたします。最近の社会科の改訂、これに伴う文部省の指導要綱の中では、教育面で憲法問題にあまり深くタッチしないようにという、こういうような経過がある。これは全くけったいなことだと思う。何のためにこの憲法に対する教育というものを文部省の指導要綱がこれを規制しなければならないか、私は解釈に苦しむ。首相、大臣の御答弁をわずらわして了としておりますが、現実にはこういうことがあるのです。教育は政治問題ではない。理想の追求、すなわち現在の憲法というものをほんとうに理解せしめるということは、やはりこの理想を貫くための一つの教育手段として当然なんです。しかし、現実にはそうじゃない、現場の校長先生は、あまり憲法のことに触れるとやかましくてしょうがないから、まあいいかげんにしておいてくれと言う校長さんも最近ふえてきておる。これは明らかに教育が政治の中に巻き込まれているという実証である、これであってはいけないと思う。どうか首相と大臣の御答弁をもとにして、憲法というものが教育問題としても正確に普及徹底して、積極的にされるような方途が講ぜらるべきではないかというふうに考えますので、特にこの点は御考慮をわずらわしておきたいと思う点でございます。御答弁をいただきましたから、重ねて御答弁を要求はいたしません。  次に、首相に対してお尋ねしたいことは、青少年問題についてでございます。首相は、今回の施政演説の中にも、青少年に対して強く呼びかけておられます。どうか希望を持って健康で明るく、こういうような呼びかけをしておられます。私はこの呼びかけについては実に共感を持つ者の一人なんです。しかし、本年度の予算を通しまして青少年に対する予算を若干抽出してみますと、必ずしも首相の演説とこの予算というものが並行して組まれておらないように思う。この点は後ほど指摘したいと思いますが、大綱として、青少年に健康で明るく希望を持たせるということは、これはなかなか容易ならざる問題でありますが、少くとも、今日の児童憲章が昭和二十六年に全国民の名において制定されているにかかわらず、これが一片の空文になって、現実には幼稚園の子供から大学の子供まで今や試験地獄で子供たちがみんなノイローゼである。そうして教育を受けているのではなくて、教育の規格品を詰め込み、詰め込まれている。実に私はこういう点を皆さんと一緒に考えなければならない問題だと思う。非行少年の激増、教育費の父兄負担はきわめて増大しています。長期欠席児童が質的に悪くなってきております。スラム街に子供たちがほうり出されています。二百五十万世帯のボーダー・ラインの子供たちがほうり出されております。百十七万世帯の母子家庭というものは惨たんたる生活をしています。こういうような中で、どうして子供たちに希望を持たしていくことができるか。私はこの思いをするときに、まくらを高くして寝ることもできないような気持が実はしておるわけです。政府はこの現状に対して、生活水準の引き上げ、あるいは完全雇用政策というものが、昨年来政策からこれは姿を消してきておるようです。私は健康な家庭を確立することによって、まず子供の仕合せは築かれていくんじゃないかと考えておりますし、社会環境を政治の手でもって作り上げていくということによってもこの青少年が希望を持つことができるんじゃないかというふうに考えるのでありますが、ただいまの現状において、どういうふうにしたならはほんとうに、キャッチフレーズではなくて、青少年に希望を持たせることができるかというきわめて素朴な質問でありますから、首相も素朴にかつ丁寧にお答えを願いたいと思う。
  85. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 青少年の問題につきましては、私常にこの問題を非常な重大な問題として頭に持っております。総理になりましてからも、青少年対策というような問題につきましては、いろいろと各方面の意見も聞き、そうしてこれが適当な対策を立てるということについては心がけてきております。お話にありましたように、この青少年にほんとうに希望を持たせ、明るくしかも将来の社会が現在よりもよくなっていくという、その中核をなすべき青少年に、そういう教養を身につけていくにはどうしたらいいか、学校教育の問題ももちろん考えていかなけぱならぬ。また、育つところの家庭そのものの生活の基礎も考えていかなければならない、社会全体にみなぎっておるところのいろいろなこの青少年の非行化をむしろ助長するような環境を是正していかなければならない、各方面のことがこれに関連することは、今御説明がありました通りであると思います。私は本年の予算におきましても、十分でないことはもちろんでございますが、しかし、昨年から、とにかく一つの願いとして、今もお触れになりましたか、教育の点に関して、非常な有能な才を持っており、そうしてしかも向学の心に燃えておる、それが家庭の経済的の事情のために志が遂げられないという青少年のことを考えてみまするというと、まずこれに一つ国が全額の負担をして、そういうりっぱな才能を持っており、また、向学心に燃えるような青少年には、十分にその志を遂げさせるようにしたいということで、全額保障の育英制度というものを昨年から、今年はそれをさらに増大をいたしております。また、本年は御承知通り、いろいろな青少年の、若い世代の人々の象徴ともいうべき皇太子殿下の御成婚もございますので、何かこの年を記念して、将来に青少年が明るい一つの希望を持てるようなことをしてみたいと考えまして、いろいろの人々の意見も聞き、いわゆる国立青年の家を建てて、ちょうどここに富士山麓のアメリカのキャンプが返されますので、これに施設を拡充して、夏休み等、あの環境のいいところで一つ全国の青少年の諸君か集まって、楽しくしかも意義ある何日かを送るということをしたいという意味において、国立青年の家も考えております。また、青少年の諸君に、国際的な目を開き、先ほど来お話がありましたように、真にこれらの若い人々の理想は世界の平和を作ることであり、世界の人類の福祉を増進するのだ、それかわれわれの責務だという気持をわき起させるためには、海外の事情をできるだけあの清新な頭で、また、目で見てもらいたいという意味において、青年を全国から選んで、今回海外に派遣するようなことも実は考えたのであります。私は、さらにこの青少年の問題に関して、どうもわれわれがおとなで考えて、こうもしたらどうか、ああもしたらどうかというようなことが、あるいは必ずしも青年、若い人々が要求しており、また、求めておるものと、ぴったりこない点もあるように考えますので、できるだけ一つ若い青年の男女の方から、どういうことをこれらの人々は希望し、要望し、またあるいは、政府等がしてくれることを望んでおるかという意見を率直に聞く意味における全国の青年団や女子青年団の諸君の代表を集めて、しばしば会議をし、また、青年運動をやっておる団体等の代表者を集めて、懇談会を作っておるわけであります。今後といえども、あらゆる面において、この問題に関しましては各方面の意見も聞き、われわれも特に一つ検討していきたい、そうして少しでも青年諸君の悩みを解決し、これらに希望を与えるということについて、役立て得るならばぜひこれを推進したいというように、心からそれを念願しておるわけでございます。
  86. 高田なほ子

    高田なほ子君 御答弁は一々、ごもっともで、私もまたこういうことをおやりになるということについては、決して賛意を表しないというわけではない。しかし、しみじみ伺っておりますと、何か欠けているものかあるのではないか。青少年対策の中で、青年の家を作ることもけっこうでしょう。記念事業として、国立中央青年の家を作ることも、これもけっこうでしょう。奨学資金もけっこうでしょう。けれども、忘れてはならないことは、この青年対策は、政治の中で殺し文句を使ってはいけないということです。希望を持たせるということは、青年の家を建てたり、富士山麓に青年の家を一ケ所建てることが、青年の希望を持たせるごとにはならないと思う。現実的には、現在の貧困なる家庭をどうするか、この試験地獄をどうするか、スラム街の子供たちをどうするか、この日の当らない面に住む青少年の問題を抜本的に、政治的に解決しなければ、ほんとうに青少年が希望を持つことができないと思うのです。失業問題にしてしかりです。失業問題のあるところの青少年は、希望を持つことはできないと思うのです。でありますから、今度の予算の性格を見ても、きわめて文教予算はキャッチフレーズ的なところが多い。これは選挙目当ての予算じゃないかというような、若干のそしりを免れない点もあるのです。例をとってみると、現在貧困保護児童が全国に七十三万人おります。ところが、この教科書に対する補助は一億九千万円で、七十三万のこれらの不幸な子供に対して、わずか二分の一の配給きりできない。大蔵大臣はよく聞いていて下さい。それから定時制高校——昼働いて夜学校に行く生徒たち、この生徒の施設は非常によくない、ごらんになったかどうかはわかりませんが、よくない。これに対して百十七校分に千二百万というものを出しておりますが、一校当りこれが十万円にしかならない、これではろくな施設はできないでしょう。並びに定時制高校の課程を指導する教員の給与費というものは、これは数年前問題になって、四十億というものが要求されなければ完璧な定時制高校の教科というものは進められませんが、大蔵省は今度もこれを全部削ってしまった、働ぐ青年の対策というものはこれを見てもゼロじゃありませんか。通信教育設備運営費は九百万で、これは一文もふえていません。希望は多いけれども、一文もふえていたい。また、僻地で電気のつかない学校は、今日千三百校ある。この千三百校のうち、ようやくことしの予算であかりかともる学校が四十校にすぎない、あとの学校はどうするのです。通学バスが必要です。僻地の子供たちにはどうしても必要です。ところが、今度の予算では、この通学バスというものは、全国で五台きりふえない。また、離れ島から本校に通わねばならないという、非常な不幸な子供たちがいますが、これに要する、通学に要するボートは、なんとことしのわが国の予算で、たった二隻のボートの予算きり組めない、しかも半分国庫負担ですよ。給食なしの学校が、まだ小中学校に九千三百八十校もある、しかし、これに対して施設をしてやるというのは、七百三十校にしかすぎない、十分の一にぎり満たない。また、日の見えない子供、足の不自由な子供、これらの子供を収容するためには、どうしても千四百学級が必要であります。ところが、今度はわずかその七分の一の予算きり組まない。千五百万円ですよ。これはもうロケット弾の一発の値段に該当するものです。理科教育、理科教育と言いなながら、文部省は十三億要求したが、大蔵省は削って、たった五億です。一部の科学振興に回すことよりも、中小学校におけるこうした科学の基礎的な部面に国が金を出すことになぜこれをし、ふりますか。産業教育にしてしかりです。そうして青年の家には五千万円、十三カ所、国立中央青年の家には一億二千万円、要求もしない校長の管理職手当には、なんとこれは四億も出している。教育長を待遇するために三億八千万という金を出しておる。  道徳教育を実施するために、これまた前年度の予算の八倍という巨額なものをここに組んでおる。私は、こうした文教予算の性格からみて、岸首相の言われる日の当らぬところの青少年たちをどうするか、ほんとうに青少年に希望を持たせるつもりでこの予算を組んだのかということを、私はここであらためてお考え直しいただきたいと思う。この点、私があげました予算について、なぜこの日陰のものに対して、この予算か組まれないかということ、これではほんとうの対策にならないんじゃないかということ、もう一度大へん失礼でありますけれども、筋が抜けている御答弁なんで、御答弁願いたいと思います。
  87. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 予算の点におきまして、われわれの文教予算につきまして、これが完全ですべてに行き届いているとは思っておりません。詳しい具体的の問題につきましては、なお文部大臣等からお答えさしてもいいと思いますが、全体として、今お話しのように、青少年の問題を考える場合に、日の当らない、また、恵まれない環境にあるこの青少年の諸君の生活の状態をよくし、生活環境をよくし、また、学校の授業についても十分に行き届くようにすることが、青少年に希望を持たすゆえんじゃないか、そういうものが抜けておっては、せっかくの対策意味をなさぬじゃないかという御意見であります。もちろんこの日の当らない、また、恵まれない環境にある青少年の諸君の環境をよくし、そうしていろいろそれらの人々に対する対策考えるということは、これは大事なことでありまして、十分考えていかなきゃならぬと思います。今おあげになりましたような点において、不十分な点につきましては、将来において十分考えるべき問題であろう、かように考えます。
  88. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう時間もございませんで、大へん中途半端で残念なのでありますが、とにもかくにもこの非行少年というものは、これは警職法を改正してこれを防げるなどということはとんでもないことで、これは首相がおひまがあったならば、きのうの読売新聞の人生案内の「古キズに触れられる」ということで戸川エマさんが回答されて、非行少年扱いされた少年がどうしても世の中から圧迫を受けちゃって、それでもってまっすぐに生きていけないという深刻な悩みを訴えておるのです。これは非行少年対策は警職法を改正しても解決できないという一つの大へん大きな問題を含んでいますから、これを一つ御研究いただきたい。  それから法務大臣に非行少年の問題について、現状それからこの対策等、これは時間がございませんから一括して一つ御答弁をわずらわしておきたいと思います。
  89. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 非行少年の問題につきましては、私どもとしても非常に頭を悩ましておるわけでございます。前に法務委員会で高田委員にもお答えしたことがあったかと思いますが、法務省の立場におきましては、今回の予算に実はその点について、金額は必ずしも大きくございませんが、まあ画期的と申しますか、措置を講じていただくことに相なったわけでございます。これは法務総合研究所を設立いたしまして、非行少年の犯罪の予測、予防それから矯正、それから保護観察いわゆるアフター・ケア、これに一貫した筋金を一つ入れたいと考えておるわけでございます。これは実は金の問題よりも、さしあたりのところはやり方について、愛情ということも必要でございますが、同時に、これに科学性を持たせた対策を講じていかなければならない。制度といたしましては、現在でもいろいろの制度があるわけでございますが、これに一貫した考え方対策というものがどうも欠けておったようにも思いますので、これを専門的に取り上げて参りたいと思っておるわけであります。ことに私自身といたしましても、御案内のようないわゆるグリュツク方式、グリュツク学説というようなものをこの施策の上に徹底的に取り上げてみたい。少くともその目的としては、再犯の防止ということを徹底してやってみたいと考えておるわけでございます。最近のいろいろの非行少年の凶悪な犯罪を見ましても、実はその犯罪を犯す前に、それらの少年の大部分というものはいろいろの問題を起しまして、警察あるいはその他のお世話になっておる者が相当あるわけでございます。一たんそういうところで対象になったような青少年について科学的な調査を行なって、そしてこれと保護観察制度を結びつけて参りますと、私は少くとも再犯の防止には非常に役立つのではなかろうかと思うのであります。これは申すまでもございませんか、第二次大戦後アメリカにおいてもあるいはソ連におきましても、この非行少年の問題には非常に悩んでおるようでございますが、それらの国々でやっておりますところにも相当参考に取り上げるべきところがあると思いますので、これに私どもとしては情熱を傾けて徹底して一つやって参りたいと考えておるわけであります。そのほかたとえばこの前も御指摘がございましたが、暗い環境を是正するというので話は小さいことかもしれませんが、街灯のあかりをつける問題、これなども料金の問題その他いろいろございますので、所管の通産省その他にお願いをいたしまして、電力会社にもすでに働きかけておるわけでございます。それからたとえば、いわゆる深夜喫茶の取締りにも今回法律が制定されたわけでございます。そういったようなものとあわせまして、今申しましたようなところに特に重点を置いてやって参りたいと考えております。
  90. 高田なほ子

    高田なほ子君 非行少年問題について情熱を傾けられることはわかります。この点についてお尋ねしたいのですが、昨年、中学校の卒業式に私服警官が来て卒業式を行なったというようなこと、これは行き過ぎだと思うのです。こういうことはあってはならないと思うのです。こういう点について、文部大臣とそれから国家公安委員長御両者の御答弁をわずらわしたい。
  91. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 東京都内におきまして、ただいまお話しのございましたような事例が昨年以来ございますのは、まことに遺憾千万なことでございます。教育の場におきまして、卒業式の際に高等学校の生徒等がやかましい先生方に危害を加えるというようなことはあってはならぬことでございまして、今後十分に留意をいたして参りたいと思っております。これに関しましては、これは一般的な風潮でございまするけれども、学校は学校といたしまして、平素教員が真に愛情を子供に持ちながら、また、きびしい態度をもって臨んで参りますが、また、生徒に対しましては徳性に関しまする教育を十分にやって参ります。それから同時に、やはりこれは何と申しましても社会全体の影響というものも相当ございましょうと思いまするので、それで社会におきまする暴力風潮の一掃という点に十分留意をして参らなければならぬと思っておる次第でございます。かまえて昨年以来のこうした風潮が年年少くなりますことを念願いたしておる次第でございます。
  92. 青木正

    国務大臣(青木正君) ただいま文部大臣御答弁申し上げた通りでありまして、警察が学校の卒業式に行くというようなことは、これはそういうことがあってはならぬことは言うまでもないのであります。特に青少年を教育する学校であり、また、場所も学校というところでございますので、そういうことがあってはならぬことは言うまでもないことであります。ただ昨年、大阪の生野区における中学何カ所かと川崎市におきまして、警察官の私服が行ったという事実がございますが、このことにつきましては、卒業式の当日、生徒間において、また教師に対して、何か暴行のようなことが起るおそれがあるということで、学校当局から警察側に対して派遣を要請されましたので、そこで私服を出したという事実があります。しかし、私どもは、本来はそういうような生徒間に多少の不和があり、あるいはまた、生徒が先生に対して何か不穏な考えを持っているというようなことがありましても、これは本来学校当局でまずそういう問題は処理すべき問題でありますので、警察としては、そういうおそれがあるからといって、直ちに出るべきものではないと考えております。ただ、学校当局からそういう要請がありましたので、そこで目立ちましてはいけませんので、私服の警察官を、学校当局の要請によって若干派遣したということがありますが、これは本来やるべきことではありませんので、私どもも十分そういうことのないようにいたしたいと思っております。
  93. 高田なほ子

    高田なほ子君 教育の場に警察官が出入りするということは、これはゆゆしい問題であって、これではほんとうの民主教育を守り抜くことはできない。しかしながら、最近の文部省は進んで警察官に仕事をさせるようなことをやらせる。これは勤評闘争に対して、文部省は通牒を出して、父兄の動向を調査せよという通達を出している。こういうようなことは思想調査にわたることなんです。この内容は時間がないから一々読みませんが、その機関、団体名、構成員は何人おる、規模はどうだ、勤評に対する態度はどうだ、賛否はどうだ、勤評の即時実施に対する態度はどうだ、教組の闘争に対する態度はどうだ、実際にとった団体の行動はどうだ、これはまるで大へんなものなんです。こういうような通達を指示するというのは、一体どういう考えなんですか。これは警察を導入する文部省の態度なんです。これについて釈明をわずらわしたい。
  94. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 勤務評定を実施いたしますについて、十分一般の意見等を参酌する必要もありまするので、文部省といたしましては、重大な関心を持っております父兄の意見が一体どういうことであるかということは、十分察知をいたしまするように、これは指示をいたしてございます。しかし、ただいまお話のございましたような指示をいたしたことはございません。ことに文部省の考えておりますることは、これは勤評実施についての父兄団体の意向等は十分調べるようにということでありまして、個人の思想調査のようなことは全然考えておらないのでございます。あるいはただいまお話のございましたのは、どこかの府県なり市町村なりでやったのかどうか存じませんけれども、文部省といたしましては、ただいま申し上げましたような趣旨で、一般的な父兄の意向を十分調べて察知するようにということを申したのでございます。
  95. 高田なほ子

    高田なほ子君 意見を求めるためには、こういうような調査を指示しなくたってできるわけです。こういうような行き過ぎに対して是正をしなければならないと考えておられますか。大臣の御答弁をわずらわしたいんです。けしからぬことです。
  96. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 具体的な問題につきまして、立ち入り過ぎたようなところがございますれば十分注意をいたしまするが、ただ、ただいまお話のございました点につきましても、どこかあるいは地方で非常に念入りに調査を指示したのだと思いますが、趣旨は、もうただいま私の申し上げました通りの趣旨を地方も十分了承しているはずだと考えております。
  97. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうもこの点明確を欠くのですが、再度これは十分に御調査下すって、思想調査にわたり、また、個々の団体を調査するがごとき行き過ぎがあってはいけないことでありますから、これについての十分なる御注意をしていただきたい。  次に時間もございませんが、この勤評闘争に関する行政処分について文相の見解を一応ただしておきたいと思う。今度の勤評闘争に対する刑事的な弾圧というものはかなり多く行われております。また、これと同時に、行政処分というものも大へんたくさん行われておるわけであります。刑事処分の場合には、本人が法的に主張なり反対なり述べるというような、対等の機会というものは与えられているわけでありますけれども、実際問題として行政処分が行われてくると、本人の意思とは全く無関係に任命権者の一方的な裁断によってこの行政処分が行われる、こういうような結果が出てくるわけでありますので、今回広範に行われている行政処分について、問題点は文部省が行政処分そのものに対して指導して、行政処分を行わせているという、こういうようなケースが現われてきておるんですが、一体文部省は、行政処分に対する法的な権限というものをどういうふうに考えているのか、この点について一応聞きたいんです。
  98. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 文部省は具体的な問題につきまして、行政処分の指導をしているような事実はございません。各県の教育委員会におきましては、慎重に調査検討の上、行政処分を行うように指導をいたしておりまして、そういうような方向でやっているものと考えております。
  99. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間が終了して大へん残念でありますが、この行政処分についていろいろ不当な事例が出てきています。質問の時間が切れましたので、この点に触れることを避けますが、不当なこの行政処分が、もしかりにあったという場合に、大臣はこの不当性というものについて是正するだけの熱意なり何かお持ちになっているのか。なかんずく、一方的な行政処分によって報復的な人事が行われている。このような人事、報復的人事は、これは新憲法のもとでは絶対許すベからざる私は暴挙だというくらいに考えておるわけです。行政処分に対して、文部省は十分な、これは法の厳正な解釈、そうしてこの実施状況というものを厳正に御調査なさるべきだと考えますが、この点について、大臣の御見解を承わって終りたいと思うのであります。
  100. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 不当処分といったようなことは、ことに報復といったようなことは考えておりません。それで、ただお話のございました点については、もちろん所管行政につきましてあやまちのないようにできるだけの調査はいたして参りますけれども、この行政処分の問題は、趣旨として厳正に行われまするようなことを指示いたしまするほかに、あとは教育委員会なり人事委員会なりの方面の仕事でございますが、実態につきましては十分把握をいたすように気をつけて参るつもりであります。かまえてさような不当人事が行われていないものと信じております。
  101. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 高田君の質疑はこれで終了いたしました。残りの質疑時間は九十二分ばかりを余しておりまするが、これにて約一時間休憩いたしまして、午後は二時二十分、時間厳守で再開いたしたいと存じます。委員各位並びに政府側の御協力を望みます。  それでは暫時休憩をいたします。    午後一時九分休憩    —————・—————    午後二時三十五分開会
  102. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これより委員会を再開いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  横山フク君が辞任し、その補欠として植竹春彦君が、重宗雄三君が辞任し、その補欠として小幡治和君が、剱木亨弘君が辞任し、その補欠として西田信一君が、それぞれ選任せられました。   —————————————
  103. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 休憩前に引き続いて総括質疑を続行いたします。坂本昭君。
  104. 坂本昭

    ○坂本昭君 総理が渡米して、いわゆる日米新体制を作ってこられましたのは、ちょうど一昨年のことでございました。あのとき以来、国際情勢というものは相当な変化をしてきていると私は思うのであります。たとえば、特に極東地区における台湾海峡の問題、あるいはまたアメリカの国内におきましては、中間選挙の結果、いろいろとアメリカの国内の体制も変化が起ってきております。従って、アメリカの国内の世論というものがいろいろな変化を受けて、特に来年——再来年になりますか、大統領の選挙を控えておりますが、アメリカの極東政策、特に対中国の政策、これにいろいろな変化が起り得る可能性もあるし、また現に起っている。そのことについての総理の分析と御判断とをまず承わりたいと思います。
  105. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国際情勢は御指摘のようにいろいろな変化が現在起りつつあり、また起ってもきておると思います。これらを正確に分析し、その情勢を把握することは言うを待たないのでありますが、アメリカの極東政策がどういうふうにあるいは変りつつあるか、あるいは変っておるとか、あるいは近く変るであろうというような意見もございますけれども、私どもの見るところによると、アメリカの極東政策というものは変っておらぬと思います。なお、御承知のように、アメリカが共和党とそれから民主党の間におきまして、もちろん政党が分れておるのでありますから、いろいろな点についての考えも違っておるわけであります。しかし、この前の大統領選挙のときに見ましても、ほとんどこの対中共の政策につきましては、共和党と民主党の両方の大統領候補者の選挙に対するアメリカ国民に向って述べている公約なり考えというものは、そう根本において違ってもおらなかった実情から見ましても、私は急激にアメリカの極東政策というようなものが変更するということは考えられないと思います。もちろんいろいろな事態が起ってき、またそれの処理につきまして、国際一般の情勢から、とるべき方針等について変化があることは、これはもちろん考えておかなければならぬ問題であり、私どもも常に注意をいたしておりますが、根本的には私はそう大きな変更があるというふうには見ておりません。
  106. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は、去年の十一月四日の中間選挙の結果というものは、もちろんこれを過大評価してもいけないけれども、過小評価することも誤まりであって、その中に微妙な変化が起っていることを当然総理としては分析をする必要があると思うのであります。なるほど、今ダレスさんは致命的なガン性の腹膜炎のために病床にあられるのでありまして、この方について病状を刺激するようなことを申し上げるのははなはだ失礼かもしれませんが、しかし、ダレスさんのせとぎわ政策というものに対しまして多くの批判が行われておるということは事実であります。このことを総理が無視せられる、あるいは関知しないということでは、今後の対中国問題に対する適切なる政策を実施することはできない、私はそういうことを心配するのであります。たとえば昨年十月に、国務省の中にある投書係の役人自身が世論の調査の投書を発表しました。その中に四対一でダレスに対する反対の批判投書、つまりこれは台湾海峡の問題、第七艦隊の行動に対する批判であったと思うのでありますが、そういう事実もありますし、それからまたダレスの戦略は非現実的である、そういう批判もアメリカのニューヨーク・タイムスあたりにも再三出ておるのであります。特に蒋介石あるいは李承晩、こういう人は別としても、自衛以外のことのために大戦争の大ばくちをやるような人は、少くともアジアにはそういう指導者は一人もいない、おそらく岸さんもこの意見については同感だろうと思うのでありますが、そういう意見も出ておる。しかし、いつもダレス政策に対する批判というものはだんだんと出てきておると思う。たとえばノーランドだとかスミスとかいったこういう上院における外交委員会の指導者であった人たちが、去年の十一月四日にはまくらを並べて討ち死にをしております。またこういうことはいわばダレスとアイクのやっておるところの中国政策に弱り抜いておるという一つのアメリカ人の気持を私は表明しておるのではないか、そういうふうに思うのです。ですからこの点を十分に分析して批判しないというと、アメリカの持っておる極東政策にもちろん大きな変化は私は期待できないと思います。大きな変化は期待できないけれども、これらの動向を通して、たとえば国連がどういう方向をとるか、特に総理は国連中心主義の立場をとっておられますから、国連の中国問題に対する動向をどういうふうに判断しておられるか、二年も前も、三年も前も今年もまた変りないということは、きわめて総理としては不適確なお考えではないかと思うのであります。特に国連の動向についての御意見を承わりたいと思います。
  107. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国連におきましては、毎年その総会において中国政府の代表権という問題が議論になっております。今日までまだこれを取り上げて正式の議題とするにまでいっておりませんか、これの情勢を見まするというと、わずかながら、従来よりも中共政府に対する支持か、わずかではありますけれども、増してきておることは、これは事実であります。しかし、これをもってまだ国連自体の全体としての動向を動かすような大きな変化には至っておらないというのが現状であると思います。私どもも十分国連の動向等につきましても、あらゆる面からそうした情報を集めて、正確な情勢の分析に当りたいと、こう思っております。
  108. 坂本昭

    ○坂本昭君 あらゆる方面から正確な情報ということでありますが、その点いかがでございましょうか。ほんとうに正確な情報ならばけっこうでありますか、たとえば今反主流派で皆さんとたもとを分った池田元大臣は、あの人は昭和二十八年の大蔵大臣の時以来、ロバートソン国務次官補ときわめて親交の間柄であります。昨年の十一月もロバートソンとアメリカで会っている。そのロバートソン国務次官補は、二月二十三日の上院外交委員会の軍縮分科委員会の証言をロバートソンが、やっております。かなりはっきりした、いわば中華人民共和国に対する攻撃的な証言であったと私は思うのです。私の見るところ、反主流派の池田さんはそういう筋からの情報によって一つの動向、アメリカの外交の動向というものを察知している。しかし、総理がどういう点から察知していられるかは私はわかりませんが、少くとも、藤山さんにこれはお伺いいたしたいと思うのです。外務大臣は去年の九月のたしか二十六日にアメリカから帰ってこられて、あの当時、ワシントンでありましたか、イギリスのロイド外相といろいろ懇談をした際に、金門、馬祖問題に対して意見言われたことであります。あとでそれを取り消されたのでございますけれども、あのときの真相を一体どういうことでございましたか。
  109. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨年ワシントンに参り、国連の総会に出席した機会に、当時、台湾海峡の問題も起っておりましたので、各方面の方に意見を聞いて参りますことは、私としても将来参考になると思いまして、お話のありましたようにイギリスのロイド外相とはニューヨークの国連会議場におきまして会って、意見を聞いたわけであります。で、むろんこれは指摘されたのでありますからあれでありますけれども、しかし、当時ロイド外相は、すでにイギリスではイーデン外相が議会で数年前に、金門、馬祖というものはシナの領土だというようなことを声明しておりますから、イギリスとしては、そういうふうに今日でも政策として考えている、なお、イギリスは中共を現に承認はしているけれども、しかし、現在の国際情勢を見ますにおいて、必ずしも今直ちに国連加盟問題等を論ずるというわけにはいかないのだ、というのがロイド外相の大体の考え方であります。そういう意味において、やはりアメリカの態度なり、あるいはその他国連内における各国の動向なりをロイド外相も見てきたのではないかと思うわけです。そういうことでありまして、われわれとしても、ロイド外相と話しましたことは、将来日本の施策の上に参考になる点が多々あったと、こう考えております。
  110. 坂本昭

    ○坂本昭君 相づちを打たれたのですか、そのときの真相は。
  111. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は特に相づちを打ったわけではございませんが、ロイド外相の意見を十分聞いてみたことだけは事実でありまして、その意見に対して賛成、反対の意見を申したことはないのであります。
  112. 坂本昭

    ○坂本昭君 私はおそらく賢明なる藤山外務大臣でも相づちを打って賛意を表したのではないかと思うのですね。そのことが、言いかえれば、日本の自民党の一部の人を非常にあわてさしたのではないか、そういうふりに思うのです。その時、去年の九月ごろに国連では台湾海峡問題をどういうふうに見通しておったか、そのころの状況をまず御説明いただきたい。
  113. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 台湾海峡の問題が起りました時、私はカナダにおりましてスミス外務大臣と話をしていたのでありますが、当時、おそらくこの問題は国連で取り上げられるのではないか、ただし、アメリカが反対をし寄るからどういうふうになるか、カナダとしては、国連で問題を取り上げられた場合には、自分は取り上げる方がいいのだという話になりまして、私はワシントンに着いてダレス長官に会います前日、ダレスさんは記者会見をテレビでやりまして、そうしてアメリカとしても、これが国連に取り上げられることは不賛成ではないという言明をいたしましたので、特に私が言うまでもなく、前の晩のラジオ、テレビ等で言われたわけであります。大体国連において取り上げられる可能性があるということを考えながら、私は国連に出席をいたしておったわけであります。そういう意味において各国の動向等も聞きながら考えておったわけでありますが、御承知のように、中共とアメリカとの間にワルシャワ会談が起ることになりまして、そして当時の全体の国連の空気としては、この二国間のワルシャワ会談において十分話し合いをした結果、結末が出ることを望んでおったような状況でありまして、まあワルシャワ会談の結果待ちというような状況であったと、こう思っております。
  114. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は、国連の人たちはもっと遠い将来のことを見て議論をしておると思うんですね。ワルシャワ会談の結果待ちという、そういう簡単なことではなくて、おそらくやはり三、四年のあとぐらいのことは考えていると思うんです。また、この間ソビエトを訪問したマクミランがモスクワに行くという話は、もう当時たしか出ておったと思いますし、外務大臣は御承知であったと思うんです。また、去年の夏だと思いますが、民主党のアドレー・スチーブンソン氏が長い旅行をして、それの旅行記というものは日本の新聞にも出されております。そういう状況にあって、私は、今ワルシャワ会談待ちというのは、私は何も政府の責任を問うて質問しておるのじゃありませんので、国連がどう考えておるか、少くとも三、四年後のことを考えて中国問題などはむろん苦心をしておると思う。で、これは外務大臣の責任を問うことじゃありませんので、国連が中国問題をどういうふうに見ているかということについての解説をですね、解説を一つしていただきたいんです。解説がうまかったら、そのスポンサーになってもいいと思うんです。
  115. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時の事情でありましたので、ワルシャワ会談待ちを、すぐに国連に取り上げられないということであったことを申し上げたのであります。むろん、この極東の問題、特に台湾海峡の問題というものは、世界のやはり一つの関心を集めておる問題でありますから、これが適当に解決されますことが、今後の国際情勢を平和に持っていく上においても非常に重要だという空気は、国連の中へみなぎっておることは事実でございます。ただ、これの解決方法等につきましては、それぞれの立場でいろいろな考え方があると思います。必ずしも一定の考え方ではない。ただ、最初この問題は当時予測されておりませんけれどもベルリン問題と同じように、今お話しのように、数年後にはやはり取り上げられる問題だろうと、また取り上げられなければならぬ問題だということ自体は、やはり国連の空気の中に起っておりますことは事実でありまして、ただ、それらの解決方法について、まだ決定的に、非常に困難な歴史的な問題がありますので、果してどういう解決方法等がいいのかということについては、それはいろいろな立場、またいろいろなその国の事情によりまして、必ずしも一致してはおらぬと思います。しかしながら、何かやはり将来こうした問題を片づけていかなければならぬという空気は、それは一致いたしておるのじゃないかと、こう思っております。
  116. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうも、岸総理の御説明を伺ってもそうですが、まあいやしくも外交の衝に当っておられる外務大臣として、状況の判断や分析が何か乏しいのではないかと思うのです。私は全く外交に関してはしろうとでありますが、しかし、私もやはりいろいろなことを考え、また分析してみたいのであります。そういうことについて、外務大臣としてわれわれの参考となる見解というもの、日本政府見解じゃなくて、イギリスのロイドはこう考えている、ダレスさんはどう考えているということくらいは漏らしていいと思うのです。たとえば、先ほど総理質問いたしましたあの中間選挙の問題についても、これは外務省でもいろいろのことをお調べになっておられるのを承知していますけれども、これについても、やはり深くこれを分析する必要があると思うんです。ちょうど昨年の衆議院選挙の結果についてお互いが分析すると同じように、これを分析する必要がある。なるほど、従来中間選挙では野党が勝つごとが常であって、それから大体地域的ないわゆる知名の氏か地方の問題を対象としてその選挙を戦うということは聞いてはおりますけれども、しかし、去年のあの時期というものは、アメリカの国民にとってもきわめて重大な時期であったし、そうして実際ニューヨークの町の中でも、金門、馬祖放棄論といいますか、そういう演説をして選挙を戦った人もあるというふうに実は新聞で承知をしているのであります。でありますから、さらに、アメリカの一般国民が、これは表立ったことではないけれども、一つのダレス外交に対する潜在的な世論の力として、この去年の選挙を民主党は非常に有利に戦った、私はそういうふうなことも十分考えられると思う。そういう点の分析がはなはだ日本の外務省としては不十分なのではないか。でありますから、あらためてこのアメリカの中間選挙に対する外務大臣としての一つの分析と御批判をいただきたい。
  117. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、アメリカの中間選挙においては民主党が圧倒的な勝利を得たわけであります。私ども先ほど総理も言われましたように、根本的にはアメリカの民主、共和両党が外交政策において非常に大きな懸隔があるとは思われません。ただしかし、外交というものもやはり人の関係相当まあ影響をしてくることは事実だと思います。国連等の総会に出ましても、やはり代表間の個人的接触というようなものがありまして、おのずからそれによってその性格が出てくるというようなことが起って参ります。従って、御承知のように、ダレス氏は非常に宗教心の深い、また法律出身の人でありまして、一般にいわれておりますように、その外交政策が扱いまする上において非常に固いというような感じを持たれておりますことは事実です。これはアメリカ国内ばかりでなく、おそらく国連内において、各国の間からもそういう感じを持たれていることは事実だと思います。そういう意味におきまして、やはり当事者が変化して参りますと、いろいろその扱いぶりというようなものが、おのずから柔軟性を持ってくると。同じような問題を処理いたしましても、柔軟性を持ってくるということは、これはまあ期待できるんじゃないかと思います。また、人によっては、かわった人によっては、それがさらにもっと硬直した形に現われてくるということも、まあ言えないことはないと思います。そういう意味において、やはり何分かの変化は外交折衝上、あるいは同じような目的を達するにいたしましても、変ってくるのじゃないかということは予想されております。  ことに、御承知のように、昨年の中間選挙が圧倒的だと同時に、やはり外交の関係の人たちとしては、今お話しのように、数年先の状態をやはり見ておりますので、二年後には大統領選挙も来る、必ずしもアイゼンハワー大統領がさらに三選するという健康状態でもない、あるいは引き続き三選するという状況にもないというようなことも、各国の間では考えられております。そうした場合に、民主党が取るか、共和党が取るか、それはどちらにいたしましても、若干は外交上変化が起ってくるのです。また、ことに中間選挙等を通じまして民主党が出てきた以上は、あるいは共和党の大統領でなくて、民主党の大統領になるかもしれぬ。そうしてみると、次の大統領候補者のいかんということも、これまた問題にはなるわけでありますが、そういうところから見て、現在よりももう少素になるでしょう。しかし、私が今申し上げているのは、そういう個人的なことよりも、もっと大きな対極東政策の微妙さというものが起りつつあるのではないかという点について、外務省の分析を私は求めているのであります。実際のところ、私は本職が医者でありますので、アイゼンハワーさんの心臓の病気もどの程度だということもわかりますし、ダレスさんも、これは率直に申し上げて、私はもう一ぺん国務長官になるとは思いません。これは藤山さんがどう思っているかわかりませんけれども、まず再び国務長官——今はついておりますけれども、ある時期に私はやめるだろう、花道を開いてやめていただくという格好になろうと思うのです。そういう準備が、だんだんとアメリカの国会の中にもできつつあるのではないか。その一つのステップとして、中間選挙の結果が大きな意義を持っているのではないか。外務省で調べられた新しく当選した人あたりの内容を見ても、リベラルというか、いわゆる穏健な進歩派的な人で、西部あるいは北部の人が出てきている。全体として中道から進歩的な傾向に重点が移るであろう。そういうような意見はほぼ圧倒的ではないかと思う。  そういうことは、世界の流れにアメリカの外交も抗することができなくて、いわゆる話し合いの方向へ向きつつあるのではないか。ソビエトとの話し合いの問題、さらに中国問題についても、やはりそういう一つのステップの時期に来ているのではないか。いわば皆さんのやつておられる静観一点張りというようなことよりも、すでに太平洋の向うでは静中動という、そういう底流が漂いつつあるのではないか。でありますから、肝心のわれわれが、この極東地区においてアメリカや国連の後塵を拝するということがあったのでは、これはもちろん岸内閣にとっても致命的なことでありますけれども、やはりそういうことのないためにも、準備と分析を怠らないようにしていただきたい。  ことに、一月三十日、グリーンという上院の外交委員長がフルブライト委員長にかわりました。このフルブライトは今まで、ダレスの外交についてきわめて積極的に反対を唱えてきた人でありますし、それから就任直後の記者団との会見では、すでに極東でも韓国、南ヴェトナム、台湾など、極東全体の解決について中国と話し合うべきだ、いつまでたっても中国を承認しないのだというようなことばかり繰り返すだけでは現実的ではないということを、一番最初の記者団に対する説明としてフルブライト委員長が述べられている。  私は、こういう状況を十分つかんでいただいて、先ほど外務大臣はふと漏らされましたが、二年先、三年先——その二年先、三年としまして、国連がたとえば中国を承認する、あるいは中国に対する政策を変えていく、そういう時期、並びにどういう条件のもとにそういうことが起るか、そのことについて外務大臣の御意見をお聞かせいただきたい。
  118. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話のありましたように、グリーン上院外交委員長がフルブライト氏にかわったのであります。グリーン氏は、御承知通り、九十をこえる老齢の大家でありますが、フルブライト氏は、今お話しのように、進歩的なと申しますか、若い人であります。そこから来るニュアンスも私はやはりあろうと思います。先般、フルブライト氏が日本に来られましたときに、私も面会をいたしまして、まだ外交委員長になる前でありましたが、いろいろお話を聞いたことがございます。そういう意味において、先ほど申し上げましたように、基本的にアメリカの政策が必ずしも変らないにしても、その人によって相当いろいろニュアンスが違ってくるということは、これはあり得るわけでございます。また、時代がだんだんいろいろ動いて参りまして、国際情勢もただいま申し上げましたように、ベルリン問題の解決というものがどういうふうにいくか、あるいは現在ジュネーブで行われております核実験禁止の問題がどういくかというような、そういった動き方からも、いろいろ変化が起きてくる、要素はむろん出てくると思います。  そうした中にありまして、われわれもできるだけ十分な材料をとり、今お話しのような情勢分析をして、そして誤まりなき日本態度考えて参らなければならぬ。それは、必ずしも当面の問題の処理ばかりでなく、やはり外交当事者としては数年の先も考えながら、十分に用意もして参らなければならぬと思うのであります。そういう意味において、今のように大きく世界が動き、問題がいろいろに投げ出され、またその投げ出された問題がいろいろな工合に解決され、あるいは解決されずに置いていくという、それらの原因なり、事情なり、情勢なりというものは、われわれも、お話のように、十分分析して考えて参らなければならぬと思うのであります。その中にあって日本がどういうふうにしていくかということを、日本みずからがいろいろとそういう情勢のもとで考えて参らなければならない。これは非常に大きな問題でありますけれども、当然日本としてもいろいろな状況判断のもとに日本自身の考えをきめて参る、そしてそれらによってまた他国に対しても、日本はこう考える、今の時期ではこう考えるのだということを申さなければならぬ時もあろうかと思います。そうしたことは軽卒にはできることではございませんけれども、しかし、やらなければならぬときには、やはり十分情勢判断、認識の上に立ってそういう意見を述べていく必要があろうか、こう存じております。
  119. 坂本昭

    ○坂本昭君 外務大臣はしばしば、人によってという、なかなか人中心的な御発言をされますが、アメリカの場合の人と日本の、特に自民党の場合の人と、ものの考え方がだいぶ違うと思うのです。皆さんの側では全く、その人と人の、親分子分のつながりで政治が動いているかもしれません。欧米人の場合の動き方というのは、その人の個人的なつながりとか、義理人情ではなくて、やはりその思想によって動いているのですね。ですから、そういう点を、人がかわったからどういうふうにというつかみ方をされたのでは、これは私は大へんなことになると思うのです。少くとも外務大臣は、われわれよりもはるかにアメリカ人の対中国感情というものはよく知っておられると思いますし、人によるとか、そういう個人の性格というものではなくて、その底に流れているところの一つの国際情勢の移り変りの中で、アメリカの極東政策、特に対日政策というものが今きわめて微妙な段階に来ているということは、これは外務大臣としてもおそらく認めておられると思うのです。ただ、その微妙な段階において、どういう動きをすればわれわれ日本民族にとって一番仕合せな道を選ぶことができるか。そこで、この委員会でもしばしば論じられましたけれども、どうも静観一点張りでは、まことに皆さんもしびれが切れますが、国民のわれわわもしびれがきれる。これはやはり、中国とアメリカについて言うならば、居中調停、あるいは新渡戸博士の言ではないが、太平洋に平和の大橋をかけるといった積極的な動きが日本の外務大臣としてはあるべきである。また、そのような気概がなければ、われわれも皆さんに日本の外交をおまかせするわけにはいかない。そうしますと、今のような心がまえは、私は、藤山外務大臣は持っておられると思うのです。また、そこで藤山さんがそれを持たないというと、自民党内における藤山さんの値打ちが上ってこないと思うのです。だから、そういう段階で、日米安保条約の改定に際して、今のような世界の移り変りの中で、変化の中で、具体的に何か安保条約の改定の中に織り込もうとするものが私はきっとあるだろうと思う。私は、その具体的なものについてこの間うちずいぶん質問しても、なかなか答えてくれませんけれども、若干説明していただかなければ、われわれ国民としても困るのです。その点の御説明をいただきたい。
  120. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約の改定に当って何か織り込むという御質問なんですが、何か織り込むということは、実はどういう意味の御質問ですか、わかりませんが、私どもとしましては、やはり日本とアメリカとが緊密な立場をとっていくという意味において、安保条約というものは一つのやはり日米関係の太い基底をなす線だと、こう思うのであります。ただ、現在のような線では、いわゆる岸・アイク会談における日米新時代という、対等と申しますか、単にこれは軍事的な意味でなしに、対等という自主性を持った形においての条約締結になっておりませんので、従って、これを自主性を入れたものにし、いわゆる対等というような立場お互い運営について協議していく、こういう形に直していきたいというのが根本観念であります。従って、そういうこと自体が私はむしろ、日本の極東におきますいろいろな誤解を解くのではないか。何か非常に一方的、従属的な立場から、日本が自主的な発言もし得るような、まあ協議事項その他を通じてできるような立場に持っていくということは、私は、決して極東の情勢に対して新しい何か脅威を与える問題ではなく、むしろ日本が国際社会の中に自立してきた意味を示すことになろうかと思います。ですから、そういう考え方から申して参れば、現在の安保条約というものをまずその形において改定するということが、日本の国際社会におけるいわゆる従属的といわれるような立場を払拭することにもなり、そのこと自体は、極東における問題を扱います上においても、何か日本の発言自体がアメリカの指図によるものあるいはアメリカからの意図によるものというような感じを払拭し得るのではないかという考え方でこれを扱っておるわけであります。  そういう意味において安保条約の改定をいたすわけでありまして、特に何か非常に大きな新らしい意義と申しますか、新らしいものを特に付加していくというふうには私ども実は考えておらぬのであります。今の御質問の趣旨がちょっとわかりかねますが、何か内容的と申しますか、あるいは精神的と申しますか、そういうものが付加されるということになりますと、今申し上げた説明で、実は何も付加されるものがないのだと申し上げることが一番適当ではないか、こう思うのであります。
  121. 坂本昭

    ○坂本昭君 私のお尋ねしたのは、極東における平和の確保という意味、しかもそれは、国連あたりが見ているところのこれから二、三年後の国際情勢の変化の中で、それにマッチしたようなものをも含めて、具体的に条項においてどうというよりも、外務大臣の心がまえの中でそういう意図をもってやっておられるのかどうか、それとも、ただ単にアメリカとの関係だけのことでおやりになっているか、そういう主として私は精神的な気持でただいまはお尋ねしたわけであります。
  122. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今の心がまえとしては、先ほど申し上げました通り、日米新時代に応ずる日本の自主性をこの中に織り込めていく。また、従って、国際的に何かこの条約を通じて日本が非常に従属的な立場だということが払拭されるということが願わしいと、それ自体がやはりそうした形になっておりますことは、今後の日本の発言というものが、かりにアメリカと同じ意見になった場合でも、あるいは違った場合でありましても、違った場合はむろんでありますが、同じ場合でも、やはり日本の一つの独自の考え方ということが、極東のいろいろな国においても理解されるのではないか。やはりこの際はそうした意味においても安保条約というものを、今やっておりますような気持で改善いたしていきますことが、将来の極東の問題を取り扱う上においても一番適当ではないか、こういう考え方のもとに私としては改定に従事をいたしておるわけであります。
  123. 坂本昭

    ○坂本昭君 次に、岸総理にお伺いいたしたいのでありますが、多分、この参議院の選挙が終ってからの後、夏のころだとか聞いておりますが、総理が海外へ出かけられるというふうに承わっております。いかなる目的でいかなる場所へ行かれるか、特に今日の国際情勢の中で、どういう意義のある御旅行をなされようとしておるか、御説明をいただきたい。
  124. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先年来——先年来と申しましたが、昨年来、イギリスから私に特に招請状が発せられております。これを受諾して、いつ行くかということにつきましては、いろいろ国内の情勢もありまして、検討をいたしたのでありますが、参議院の選挙が済んだ後において適当な時期を見て参りたい。同時に、南米の諸国からも以前、昨年来、数カ国から招請がありますし、これも同時にその目的を達したい、かように思っております。イギリスとの関係は、昨年、外務大臣がアメリカからの帰途たずねて、一応の話もいたしたのであります。アジア問題につきましては密接な関係ではございますし、日英間の意見の調整なり、あるいは将来の提携を固めることは、最も有意義であると考えております。また、南米諸国におきましては、御承知通り日本の移民の関係が非常に重要な関係にありますし、また、日本に対して多数の移民を受け入れ、これに対して十分な活動をせしめるように、それらの国々において取り計らわれておることに対して、日本人の感謝の意を表明し、同時に、将来のこの移民の関係を中心にし、貿易の面におきましてもこれを最も拡大していくべき地域でございますので、これらの地域に対しましても時間の許します限り訪問いたしまして、その目的を達したい、かように考えております。特に、中南米の諸国は、国際連合におきましても、従来密接な関係で動いておりますが、将来の問題もございますので、これらの国々と十分に親善友好を深めていくことは最も適当であると考えております。
  125. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうしますと、一番の目的のイギリスは、これはイギリスからインバイトされて行かれるわけであって、自発的に何らかの計画を持ってお出かけになるのではないのでございますね。
  126. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年来、イギリスから招請を受けております。しこうして、私は、先ほど申し上げましたように、日英の間におきまして十分な意見の交換をし、東南アジアあるいは中近東等の問題に関して十分理解を深めるということは必要であり、また大きく言えば、この国際情勢に関する意見の交換によりまして、国際緊張の緩和、その他、大問題についての意見の交換をしていくことはきわめて有意義である。私の方から進んで行くということは何でありますが、イギリス側からかねて招請状が来ておりますのを受諾して、今申しましたような意味をもって行きたい、こう思います。
  127. 坂本昭

    ○坂本昭君 ただいまから、今度は社会保障の一般の問題につきまして、いろいろと御意見を伺いたいと思うのであります。  その前に、最近、大学のある教授が世論調査をされまして、その結果、これは前の参議院の選挙の結果だと思いますが、学歴が高くて、知能的な職業につき、収入も少くない人が革新的な政党を支持するのが多く、社会的な地位が低くて、生活が貧しくなればなるほど自民党の支持者が増してくる。実際、政党の政策綱領からいいますならば、一番貧しい人が共産党で、次が社会党で、最後に、資本家や、いわゆるだんな衆が自民党を支持するのはわかるけれども、実は逆である。そして前の選挙のときに自民党が一千四百万票得たが、もしそのだんな衆だけであるならば四百万票にしかとどまらないだろう。つまり一千万票というのは、つまり一番低所得層の人たちが支持をしているのだ。まあそういうことを指摘されたのであります。これは、いわば、この間もちょっと問題になって、ここの委員会質問総理は受けられました。この低所得層の人たち、この一千万の、たまたま票も一千万ですが、厚生省の発表でも、二百四十六万世帯、千百十三万という数をあげています。この人たちの問題について少しお尋ねしていきたい。そして、まあこの人たちがいわばどちらに属するかということで、いわば岸総理の政治的な運命の岐路も私は出てくるのではないか、そう思うのであります。  昨年度の調査によりますと、高額の所得層ほど所得がふえてきております。ところが、逆に低所得層ほど所得が減少してきまして、生活困難が著明になってきておる。つまり神武景気のあとに続くこのような富裕層と、それから貧困層、この分離、隔たり、私は、こういうことをよもや総理が否定はされないと思うのでありますが、どういうようにお考えになっておられるか、承わりたい。
  128. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が施政演説の中にも、そういう現象に対しまして関心を持って、この国民の間の所得について相当に較差が拡大してきておるという事実を特に指摘しておりますのも、そういうような、今おあげになりますような現われている現象をとらえて、これに対する施策といいますか、政府としては当然これに注意を向けて、これに対する対策考えなければならぬという意味のことを申し述べたわけであります。
  129. 坂本昭

    ○坂本昭君 実際にこの二、三年の推移を見ますと、賃金水準の比較的低い、労働集約的な中小企業における雇用の増加が相対的に大きくなっていますが、やはり依然として家族労働者の就業人口というものが多いのであります。で、こうした低賃金の家内労働者が零細企業に密集しておるということが、これがわが国のいわば経済の二重構造の一つの徴候でありますが、そこで問題になることは、諸外国では、五百人以上の大きな企業、そういう企業の労働賃金と、十人未満の小さい零細企業との労働賃金を比べますと、大体一〇〇対八〇ないし九〇くらいであります。ところが日本の場合は一〇〇対四〇くらいで、非常に差があるというのが日本の実情であります。  そこで、厚生大臣にお伺いいたしたいのでありますが、正規の労働力を有しながら、この低い、低所得、低賃金のために、常に生活を脅かされておる世帯が、実は生活保護の中に二十四万四千もあるのであります。つまり労働力を持ちながら、そうして賃金をもらいながら、しかも生活保護を受けておる者がこんなにたくさんある。これは、私は、いわば日本の一つの恥じゃないかと思う。一体この原因と理由はどこにあるか、厚生大臣の御説明をいただきたい。
  130. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えをいたします。  これは実は非常に大きな問題だと思いまして、あるいはむしろ大蔵大臣あたりから御答弁いただいた方がいいのではないかと思うぐらいでございますけれども、しかしながら、私たちの調べたところによりますと、低所得者層というものが、大体、日本で二百四十万世帯あります。しかも、その中におきまして生活保護法の適用を受けておられる世帯が五十八万という数字になっておるようでございます。そこで、いろいろ経済政策、あるいは減税政策、あるいは失業対策等々をやりますことにおきまして、このボーダー・ライン層に入り込む人たちを救っていかなければならないということが一つの大きな問題かと思います。また同時に、二百四十万世帯のボーダー・ライン層というものをだんだん更生をさせて、そうして生活水準の高いものにしていかなければならないということが第二段かと考えるわけでございます。そういたしますと、そういうもろもろの減税政策であるとか、あるいは完全雇用の一つの失業対策であるとか、あるいはその下に流れるところの大きな経済基盤強化、いわゆる経済の発展ということでやりましても、なおかつ、現在といたしましては、ただいま申し上げましたような低所得者層というものが日本に存在をするこの事実というものは、われわれがきびしくこれを認識しなければならないということは、御指摘の通りでございます。なお、また、アメリカにおきましても、御案内の通りに一九五〇年に上下両院において、アメリカのような富裕な国においてこのボーダー・ラインの問題が取り上げられて、そうして大体、アメリカのような国においてすら一二%は低所得者層である、貧乏の階層である。こういう指摘をいたしておるわけでございます。同様に、日本におきましても、先ほど申しましたような数字というのは、全世帯における一二・六%にはなっておりますけれども国民所得の比較におきまして日本は九分の一か、十分の一、しかもまた生活保護基準におきましてはアメリカにおいては大体二千ドル、日本におきまましてはこの保護基準というものが、国民所得一人当りに対しまして二割か三割の低位にある。しかしながらアメリカにおいてはこれが六割である。こういうふうに考えて参りまするならば、日本の低所得者層、つまり貧乏というものの意識というものが格段にアメリカと開きがある。つまり十八分の一か、あるいは二十七分の一かである。こう考えて参りますると、アメリカのような雇用の比較的いいところにおきまして、働く能力があって働かないところの人は、これは働く能力があって、どんどん機会に恵まれておって、なおかつ貧乏であるということは、これは怠け者だということが一応アメリカの社会においてはいえましても、日本のような働くところの機会はないという状況におって、なおかつ働くところの意思があり、あるいは相当の能力を持っておられる方があるということは、ここに大きな貧乏という問題に対する認識を、われわれ為政者としては考えなければならない点があると思うわけでございまして、岸内閣におきまして、貧乏対策ということを打ち出されましたゆえんのものは実にこの点にある。むしろアメリカよりも日本においてこれを積極的にやらなければならない社会的な背景がある。こういうことで実は今回も国民皆保険の三十五年度におけるところの完成、並びにそのいわゆる医療保障と並び称せられますところの、あるいはそれに続いて起るべきであるところの所得保障、という意味におきまして年金制度を打ち出した。こういう二本の柱からこのボーダー・ライン層というものを漸次生活水準を高めて更生さしていく、あるいは貧乏というものをなくしていく。こういう政策をわれわれはとっておるわけでございまして、まあその他いろいろ生活保護基準の内容の強化であるとか、あるいは結核対策であるとかいろいろございましょうけれども基本的にはそのようなことによって日本の貧乏というものを追放していこう、ということを私ども考えておることを御了解をいただきたいと思う次第でございます。
  131. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうもそつのない答弁ですけれども大事な点が抜けているのです。私は働く能力がありながら生活保護を受けている、その理由が何かということを申し上げたのですが、まだあとでこれはもう一度御説明いただきたいと思います。  それから今国民年金問題をあげられました。これは確かにその通りで、実際老人の世帯が一五%、未亡人の世帯が一三%、非常にふえてきておる。この問題に対して年金制度を作るということは、これは私たちも賛成であります。内容につきましてはまたの委員会において議論したいと思います。  そこで今も皆保険という点をあげておられましたけれども、生活保護の第三の問題は生活扶助よりも医療扶助の方がはるかに多い、五五%ほども医療扶助がなっている。しかもその中に特にまあ今指摘された結核など非常に多いのですが、皆さんが御自慢になる皆保険、皆年金をやればやるほど、皆保険に進めば進むほど、一体なぜ生活保護の医療扶助に、この網にぽたぽた人がたくさん落ちてくるか、私はその点を厚生大臣に説明いただきたい。
  132. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 何と申しましても、現在国民皆保険というものを進めて参りまして、国民全体に対して医療を確立していくと申しましても、御承知のようにある都市におきましては相当にそういう医療制度というものが整っておるけれども、しかし、一面におきましては僻陬地であるとか、あるいはまた無医村地区であるとか、そういう所におきましては、まだ実はそういう診療所すらないという状況でございまして、一面においてそのような国民皆保険の制度はできましても、それを裏づけるところの診療所等に欠くるところがある。こういうようなことからやはり医療制度の整備ということを考えていかなければならないと思うわけでございますけれども、やはりその辺のところがまだ三十五年度に完成いたすとは申しながらも、あるいは実情にそわないというようなところもございましょうし、また同時に全体の日本の生活水準というものが非常に低い。そういうようなことから、この生活保護法の対象の中において、やはり落ち込んでくるという方々がふえてきておるのだろうと思います。
  133. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の問題の一番最初の点は、つまり労働力を持ちながら生活保護を受けている、働きながら保護を受けている、これは日本に最低賃金法がなかったからであります。これは、だから厚生大臣、自分の責任にしなくてよかったのです。大蔵大臣の責任でもないのです。これは労働大臣の責任ですよ。それでつまり零細企業の企業家に対して、生活保護法というものが下からささえておったわけですよ。だから厚生省も要らぬところへ私は予算を使っておったと思うのですね。だから、もしりっぱな最低賃金法ができたら、生活保護法の予算というのはだんだんと減っていってもいいと思うのです。でありますから、一つそういう点で労働大臣にお伺いいたしたいのです。労働大臣は今まで厚生大臣に対して謝意を表してこなければならなかった立場なんですね。それで今度のこの労働者と対等な話し合いをすることなしに、業者間協定で初任給を、今の最低賃金をきめよう、とこういうことでほんとうに最低賃金を確保することができますか。むしろ今度出された法案は外国から非難を受けておるソーシャル・ダンピングに対する隠れみのにしかすぎないのじゃないか、私はそう思うのですが、労働大臣の御意見を伺いたい。
  134. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 元来賃金というものは政府法律できめるというよりも、やはり働く人と使う人との間に自主的にきめられるのが原則でありますが、それではやっぱりそういうふうなことだけでも救済のできない人たちがある。そこで諸外国ではやはりそういう人たちのために政府が特に最低賃金制度というふうなものを考慮いたしまして、わが国でもやはりそういう意味で最低賃金というものは必要であるということを政府考えまして、そこで業者間協定のことでありますが、現在御承知のように一律に、たとえば十五才八千円とあるいは六千円ということにいたしますときに、それに合わないものがある、支払い能力を持たないものがある。そういうことをどうするかということを考慮いたしましたときに、われわれはやはります現在の段階においては実情に合うようにしてできるところから手をつけていこう。そこで各地で結ばれておりますような業者間協定を今度は法案の中に取り入れて、しかしこれだけじゃありません、そのほかにやっぱり審議会方式とか協約方式もありますからして、そこでまあ今度のようなやり方をとっていって順次理想に近づけていくようにしたい。こういうふうに思っているわけであります。
  135. 坂本昭

    ○坂本昭君 そういうことではおそらく従来と少しも変ってこなく、また生活保護の、保護される人たちの立場も少しもよくなってこないという私は見通しを持たざるを得ないのです。今言われたこの業者間協定は実際上使用者に法的な規制力というものがなくて、単に行政官庁の勧告を受けるだけで、そういうことだけで実際この生活するに足るだけの金額の最低限を少しも拘束していません。こういう具体的に最低規制のないような最低賃金というようなもの、最低賃金法というようなものは、これは私は意味がないのじゃないかと思うのです。いかがですか。
  136. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、この世の中というのはうまくできているものでありまして、やっぱり零細企業でも、それからある一つの業種、たとえば静岡にあります花ガツオの組合見ましても、類似の産業で近所に業者間協定というものがあって、その方が一日たとえば十円でも二十円でも高いとしますと、どうしてもそっちの方へいい人が集まる。そこで一地域にそういうものが行われますと、やはりそれに刺激されて結ばれてくる。政府が最低賃金法を出すということをやり出しましてからどんどんその数がふえてきております。それからまたその結ばれる協定の金額も上昇して、一割五分ないし二割ぐらいはだんだん上って協定が結ばれてきておるという工合であります。いわんやこの法律が通過いたしましたというときになれば、やはり今申し上げましたような諸般の情勢でどんどん結ばれて参りますから、私は、この最低賃金法というものが、そういう意味で非常にそういう業界に助けになる、とこういうふうに思っております。
  137. 坂本昭

    ○坂本昭君 労働大臣の今のような説明でほんとうにうまくいくものなら今までだってうまくいっているはずですよ。それがうまくいかないものだから一千万人以上のボーダー・ラインの低所得層というものが生まれてきているわけです。今度の法案を見ますと非常に抜け道が多いじゃないですか。たとえば異議の申し立てを認める一定期間の猶予あるいは額についての別段の定めをする余地、そういったものが残されておって、はっきりした最賃法という名前を私はつけるにふさわしくないという感じがする。特にILO条約には違反を防止するに足る罰則というものが決議されておりますけれども、今度の罰則はわずか一万円、こういうことで、何か法案ができるという声を聞いただけであちこちでうまくなりよる、というような話ですけれども、私はそんなことは考えられないと思います。今のようなことで、実際に罰則が一万円ぐらいのことでできますか。
  138. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように基準法で賃金の不払いのときに五千円の罰金を課しております。やはりそれ以上である、倍の一万円であります。  それからまた私どもは今申し上げましたようなことで、労働基準監督署それからまた通商産業省の出先の通商産業局の出先等で順次この業界をあらゆるときに指導いたして参る、私どもはまずこれから始めて、この業者間協定ですら御承知のように零細企業の方では非常に反対をなお今日も続けておるような状態でありまして、かれこれ勘案いたしますと、現在の政府提出いたしておる法律案がまず現状に則してスタートするにはきわめて妥当なところでないかと思う。従って労、使、三者、構成をもってやっております審議会の答申もとりあえずこういう方式をとれと、こういうことになっておるわけです。
  139. 坂本昭

    ○坂本昭君 いわゆるPW賃金というのが失対労務者の賃金を規制していますが、近い将来このPW賃金を廃止する、そういう意向はありませんか。
  140. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 一般職種別賃金は、政府の行います公共事業の賃金等のスタンダードをきめるときにこれをやっております。もちろん日雇い労務者の賃金等もこれでやっておるわけでありますが、そういう基準にいたしておりますものでありますからして、まあただいまのところはこのPWを基礎にしてそういう賃金をきめるという方式をとるわけであります。
  141. 坂本昭

    ○坂本昭君 それをやめる……。
  142. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ほかの方法も考慮してできないことはありませんが、これは御承知のように非常にいろんな角度から調査検討したものの集約でありまして、これを今やめる意思はございません。
  143. 坂本昭

    ○坂本昭君 私はこの低所得層の特に生活保護の実態の問題からしまして、今のような手ぬるいことではいつまでたっても低所得層の問題は解決されないと思う。たとえば静岡県では今のお話ではだんだんとその最低賃金がいいところにきまるというような話がありましたが、実際日本の至るところに、しかもあらゆる業種に存在しておるところのこの低賃金、これを排除しなければもう労働者というものは私は生きていくことができないと思う。で、フランスだとかアメリカこういうところでは全国一律の最低賃金法が施行されておる。それからまた施行されてない国においては統一された労働協約の中でそういうものがきめられておる。今、日本のこの低所得層問題を解決する一番の基礎は、やはり最低賃金をはっきりと明確にするということ。私は、これ以外に労働問題を解決し、低所得層問題を解決する方法はないと思うのです。私はまたほかにいろいろと触れていきますが、でありますから場合によれば、最低賃金を押しつけると企業がつぶれるという場合には国が補助してもいいと思うのです。どうせ生活保護の方で金を出しているんですから、それを回したっていいと思うのですよ。それほどしてもともかく、働く能力と働く意欲を持っている者に、生活保護というような名前じょなしに、自分の勤労の喜びによって自分の生活を支える、という生き方をさせるのが私は正しい政治だと思うのです。そういう点で最賃法というものは非常に大事なんであって、どうしてもこれを全国一律式な最低賃金法に持っていき、かつ金額を定める。特にあえて総理にそのことについてその考えを、私としては非常に心から要望するのでありますが、総理の御意見を聞きたいのであります。
  144. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 最低賃金法の制定の問題につきましては、私ども、この日本の産業の実情が非常に産業の規模の大小により、また地域的にもあるいは業種によっても非常に違っておるという実情がございまして、これを一律にきめるということには非常な困難があり、そのためにかえって産業上の支障をきたしている。勤労の機会をなくするということがあってはいかぬ。しかしながら同時に先ほどからおあげになっておりますように、働きながらその労働条件の一番おもであるところの賃金というものが、非常に低いために、それではとても生活できないというような事態のあることは、これまた放っておくことはできないという考えのもとに、この最低賃金法の制定をいかにすべきかということについて、専門家並びに労使両方面また第三者も入れました審議会におきまして、十分案を練っております。その答申を得てその線に沿うたものを今回提案をいたしたわけであります。初めての制度でありますのでいろいろな御議論もあると思います。しかし今坂本委員もお話のように、日本の低所得者のうちにおいて、働きながら労働条件の悪いために生活保護を受けなければならぬというような事態をなくする。また同時にこれらの主として零細企業が多いのでありますが、零細企業におけるところの労働条件を改善しその労働の質を向上していくことは、産業の繁栄にも資するゆえんでございますから、かたがた今回提案をいたしたのであります。ただこれを一律にやれというふうな御議論でございますが、これは委員会における御議論もそうなっておりませんし、のみならず日本の産業の実情を考えると、私は、現在直ちにそれをとることによってむしろかえって逆に労働の機会をなくするというような、産業そのものが立っていかないというような事態も招くおそれも多分にあると思いますので、この政府の提案しておる案が政府としては最も適当である、こういうふうに考えております。
  145. 坂本昭

    ○坂本昭君 労働大臣と厚生大臣に伺いたいのであります。  今問題になってきている最低賃金、それから生活保護の基準、それから年金、この三つの金額というものはどういうふうに定むべきか、算定の基準と三つの相互関係をどういうふうにお考えになっておられますか。
  146. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 年金その他につきましては、厚生大臣から申し上げられると思いますが、今お話のように私の方の関係であります失業対策事業、こういうものにつきましては、先ほど申し上げましたような賃金基準をPWからとっておりまするので、それを基礎にして計算をいたしておるわけであります。
  147. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えをいたします。私どもといたしましては、国民年金の基本的な考え方といたしましては、拠出制を基本といたそう。経過的に補完的には無拠出制を考えて御提案申し上げておるようなわけでございます。従いまして拠出制を基本として考えて参ります場合におきましては、低所得者層における人たちが、どれくらいまでは保険料を出し得るかということが、やはり大きな一つの問題かと思いますし、またかつそれの積み立てられた金の半額を国が国庫負担をしていくわけでございまするが、その給付の額というものが幾らかということが、まあこれは問題かと思いまするが、いろいろ勘案いたしました結果、老齢年金につきまして三千五百円というふうにきめたような次第でございます。先ほど御指摘がございましたように、国民年金制度を進めて、その所得保障をやって参りますためには、どうしても一方においてそのような最低賃金法等の確立が必要だと思うわけでございますが、それらの点につきましては、労働大臣並びに総理大臣からお答え申し上げましたわけであります。
  148. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の三つのうちでは、一番最初にきめなくちゃいかんのは、最低賃金だと思います。最低賃金がきまって次に年金がきまって、それから次に生活保護の基準がきまる。これはまた別の機会にあらためて議論をしてみたいと思います。  次に、大蔵大臣にお伺いしたいのですが、去年の予算折衝のときに、前の厚生大臣は、結核と保育所がずたずたに切られたと、ずいぶん恨んでおられましたから、前厚生大臣にかわっていささか苦情を申し上げたいと思うのです。で、わが国の社会保障の総費用というものは、分配国民所得に対する比率を見ますと、大体八%に近いのであります。過去約十年間の社会保障の伸びを見ますと、国民所得の伸びよりも実ははるかに上回っております。しかし、この点で大蔵大臣が、これだけ出していると言っていばるわけにはいかないのであります。というのは八%というのは、文明国では一番低い。たとえばイギリスでは一〇%、スエーデンが一二%、西ドイツが一三%、フランスは一七%ということになっています。特にこの社会保障予算に対する国庫負担、これを見ますというと、非常に劣悪であります。ことしの予算を計算してみると、一七・八%程度、つまり国庫負担です。ところが外国ではイギリスが八〇%、フランスが四〇%、スエーデンが五七%、フィンランドが四七%。国とそれから地方の負担を合わせて持つ場合には、ほとんどどの国でも七〇%以上は公費負担が行われておる。私は大蔵大臣は社会保障の先進諸国では日本の三倍も四倍も国庫負担をしているのだけれども、こういう事実をどういうふうにお考えになっているか。大蔵大臣としても十分予算を出したつもりでいるかもしれませんけれども、非常な見劣りがするわけであります。その点についての大蔵大臣の御所見を承わりたい。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 最初から結論を出していらっしゃいますが、これで十分だというわけではございません。御承知のように、三十年度は給付費に対する国庫負担の割合は一八・一%、それが毎年上って参りまして三十四年度は二五・九%……
  150. 坂本昭

    ○坂本昭君 いや、そんなにはなっていないですよ。私の計算は一七・八……。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは私の方のなんですが、これはいずれ資料で差し上げてもかまわないのですが、ただいま申し上げますような給付費に対する国庫負担の割合はただいま申し上げたような数字でございます。
  152. 坂本昭

    ○坂本昭君 それでこういう差を一体大蔵大臣としてはどういうふうに処理するか。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただ問題は幾らがいいというわけにはなかなか参りません。やはり財政支出といたしまして、各方面の緊急度なりあるいは必要度というものを十分勘案して、全体の予算を組んでいかなければならないのであります。ただいま申し上げますように、しかし社会保障に関して十分重点をおいて、それぞれ工面して金額をふやしている、その実績を御披露いたす次第であります。
  154. 坂本昭

    ○坂本昭君 それでは、大蔵大臣にお尋ねしますが、外国に金が多いから、日本には金が少いからということではないのですよ。アメリカのいわゆるニュー・ディールの問題あたりも私はそういう点で取り上げなくちゃいかんと思うのですが、高い率の所得の再分配というものの社会的効果、つまり所得再分配の社会的効果、これを、所得の再分配するということの効果を、経済的に大蔵大臣としては一体どういうふうにお考えになっておられますか。それを承わりたい。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま申し上げますように、金が多いからどうこうというわけでもありませんし、私ども考え方といたしましては、歳入、これを歳出に立てるわけでございます。それぞれの項目の緊急度に応じ、また時期的な問題等も勘案して、できるだけの工夫をいたしておる、こういうことでございます。ただいま御指摘になりますように、もちろん社会保障費の意義の非常に高いということも、よく承知いたしておりますが、そういう意味で工夫しておるという実情でございます。
  156. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうも大蔵大臣は、はっきりこの所得の再分配、社会保障の経済的効果を十分つかんでいないから、そんなに予算をぶち切るので、これは厚生大臣、一つ大蔵大臣にうんと勉強してもらいたいのですね。これは厚生白書の中にもはっきり書いてありますよ。これを持って読んでもらって下さい。少くともはっきりわかっているのは、所得の再分配が内需の増大によって健全な景気対策になるということですよ。これはだから大蔵大臣としても積極的に考えてもらわなければいかんのですよ。何も財布を締めることだけが大蔵大臣の能ではないのですよ。かえってそれによって景気がよくなるという点があること、それからもう一つは、社会保障には基金が非常に膨大なものがあります。これが景気を調節する機能を果しているということ、たとえば、厚生年金保険の積立金、これはごく最近の今年の二月末の積立金の総額が二千七百五十四億であります。そうして毎年六百六十億ないし六百七十億ぐらい入ってきます。だから今から二十年たったら一兆五千億にはなると思う。それから今度政府考えておられる国民年金、これは二十年後には一兆四千億になる。これは厚生省で出しております。合計三兆ですよ。こういうものが、これが社会保障の金なんですよ。大蔵大臣、社会保障に冷淡で、厚生省に対して冷淡だというのは、これはとんでもないことなんですね。厚生省のおかげで大蔵省は運営できているわけです。特にいろいろなことについては、厚生白書にありますから、厚生大臣から教育をしていただくとして、その中の結核の問題の扱い方などについては、これを解決した方が得だ、ずっと得になるということが書いてある。それで日本の場合、もう結核の理論的な対策の方針も何もかも全部できている。ところが結核の患者が減らんのは、これは一にもって大蔵大臣の責任ですよ。これははっきり言って、大蔵大臣さえ腰をきめてやれば、十年も要りません。数年で解決することが実はできるのです。特にこの零細な国民が集めた郵便貯金、それから簡易保険や郵便年金、それから一千万人の労働者の積み立てている厚生年金保険の積立金、こういったものが、いわゆる資金運用部資金の原資となって、ことしは五千百八億の財政投融資に変っているわけです。一体だれのおかげで大蔵大臣はこういう計画ができているか。私はそこを一つようく考えていただきたい。そして、その金を出したもとはと言えば、あの一千万人の低所得層の人で、しかも、その人たちは皆さんにもつばら票を入れているんですよ。ですから、こういう辺に、財政投融資がことしあたりはべらぼうに出たけれども、結核の患者だとか、あるいは保育所だとか、そういうものには、もうつめのあかほどしか出ない。私はこういうことでは非常な不満を持たざるを得ないんです。結核のことについて、こまかい正確な資料がありますから、大蔵大臣、ぜひ聞いていただきましょう。それは三十一年度の資料でありますが、結核に費したところの総医療費が、六百二十七億であります。この結核の総医療費は、患者負担分が百四十四億、保険者三百五億、公費百七十八億、これで全部で六百二十七億を使っている。ところが、これに対して、今までも国は相当金を出しているんです。たとえば、生活保護法の中の医療扶助で百十六億、それから結核予防法で十五億、それからあと、政府管掌の健康保険だとか、国保だとか、そういうもので五十五億八千万、それからさらに、国立の療養所だとか、国立の病院だとか、あるいは結核のあと保護、そういうものにも金を出している。そして、それを計算してみますというと、合計約三百十七億国庫負担しているんですよ。つまり、六百二十七億のうち、三百十七億は金を出している。あと残りは、だから三百十億。たったそれだけの金。これは住宅公団に対する出資、融資よりも少いですよ。住宅公団に出資、融資すると思って、これをやれば、これはもう問題は解決できるわけです。私は、ですから、そういう決意さえ持っていただいたならば——しかも、それは四年も五年も続ける必要はないんです。私は、三年間、今までよりも三百億ぐらいよけい出してもらったら、三年で解決できると思う。まず、厚生大臣にそういう決意があるかどうかを伺って、それから、大蔵大臣の、ことしはどうも非常にぶち切られましたが、あと、そのお考えを承わりたいと思います。
  157. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 結核対策は、確かに近年結核にかかられる方々がだんだん減って参りましたけれども、しかしながら、なおかつ、今後これを推進していくということについて、私は御指摘の通りだと考えております。
  158. 坂本昭

    ○坂本昭君 来年は一つ戦ってくれますか、これを。三百億です。
  159. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ことしは、御承知のように、濃厚感染源対策、これに特に力を入れまして、強制入所の方法だとか、あるいは、国庫負担も二分の一から三分の二に上げる、こういうことで、特に国も対策を講じております。この辺は、坂本さんもお医者さんですから、どうかよろしく御協力を願います。
  160. 坂本昭

    ○坂本昭君 いや、それはよろしく引き受けませんよ。それは逆ですよ、どっちがよろしくかは。  特に私の申し上げたいのは、先ほどの積立金の問題ですね。厚生年金保険の積立金は、これは昭和十七年から始まって、最初から大蔵省と厚生省が相当の議論をしているんです。そして、あとのいろんないきさつがありますが、これは詳細は省きます。結局、この積立金の還元融資という格好で、ことしは八十五億使われることになっていますが、資金運用部資金のこの法律には、公共の利益について、公共の利益を考えて運用するということが書いてある。ところが、少くとも労働者福祉のために、強制的に集めた金です。これは差し押えもやって集めることができる金。その金に対して、これを社会福祉的な内容に使う。そのために、私は、厚生年金積立金の運用に関して、別に立法措置をとるべきであると思うんです。大蔵大臣、いかがでございますか。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 財政投融資の資金の一部であることは、御指摘の通りであります。これ以外にいろいろ資金がございます。それを一緒にいたしますし、ことに年金等の積立金は有利、安全、さらにまた社会福祉、こういう三つの目的を備えるような意味において運用して参りたい、かように考えております。問題は、こういう種類の資金もございますし、国の国民からの税金、こういうものも使っておるわけであります。その間に十分調和をはかっていくという考え方でございます。
  162. 坂本昭

    ○坂本昭君 それは国民の税金もあるけれども、私は今資金運用部の資金のことを言っておるのです。これは九九%までが今の郵便貯金、郵便年金、厚生年金の積立金。それから最近は失業保険の積立が五百億出ておりますよ。こういうものをかかえて、あなた方はこれを全部独占企業に振り回している。だから、せめて、それを厚生年金保険の積立金ぐらいは、法的措置をもって、これを社会福祉の方に回したらどうか。現に簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律という法律があるのです。これは郵政省がやっておりますが、厚生省にやらしてもいいのじゃないのですか。私は別に、きょうは厚生省から頼まれてきたのじゃないですけれども、それをやらなければ、こんなめちゃくちゃな使い方をされては、なかなか国民は納得しないし、場合によっては、税金不納同盟ではないけれども、厚生年金を納めるな、国民年金を納めるな、佐藤大蔵大臣のいる間はだめだぞと、大きな声で宣伝しますよ。そういう法的な措置を改正する意図はありませんか。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまのところ、そういう意図はございません。ございませんが、この運用に当りましては、先ほど申し上げますように、大蔵省が単独で勝手には使っておりません。どこまでも有利、安全、しかも、社会福祉関連する、こういう点で十分皆様方の御意見を伺い、また、それぞれのいわゆる独占企業ばかりに運用部資金を投入しておるわけでもございませんので、そういう点も御了承願いたいと思います。
  164. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうも今の大蔵大臣の考えでは、われわれ、労働者も、厚生年金あるいは国民年金については、あまり協力しませんよ。これはもっと立法的な措置によって、現実に豊かに社会福祉の方に回すべきである。そうすれば、結核の三百億も出てきます。住宅公団なんかよりもっと必要です。私は、その点は今後のあとの議論の種として残しておきたい。  最後に、三点、総理に伺いたいと思います。第一は、きょうもいろいろと論議されたことでございますが、労働者と組合運動に対するところの総理態度であります。どのような社会でも、労働者を抜きにして考えることはできないということは、総理もおわかりのことと思います。私自身は一介のやぶ医者であります。先ほど大蔵大臣の指摘された通りでございます。一介のやぶ医者であって、労働組合の指導者でもなければ、闘士でもない。しかし、私の人生観の中では、労働者労働組合発展のみが社会をよくする、これは私の一つの確信であります。ですから、総理が、ともすれば、このごろの労働組合運動に対して、警官を連れていって弾圧したり、あるいは総評をまるで敵国呼ばわりみたいにされることについては、私は非常に不満を表せざるを得ない。特に、最近の労働組合運動に対する弾圧について、今のようなことに関連して、総理の御意見を承わりたい。
  165. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、労働問題に関しましては、これは重要視したければならぬことは、坂本委員と同様に考えております。そうして、その労働者の労働条件をよくし、その福祉を増進していくために、この労働組合運動というものが健全な発達をすることを、私は念願をいたしております。決して、弾圧ということをお話しになっておりますが、警官の力でもって弾圧しようとは考えておりません。ただ、これは坂本委員もお認めになると思いますが、戦後におけるところの日本労働運動というものは、こういう運動というものは、相当長い期間において、やはり民主主義と同様に、その間において行き過ぎがあったり、あるいはいろいろ指導者によって誤まられたりすることがあるけれども、そこをしんぼう強く、本来の目的を達するようにしていくことがあらゆる面から必要である。ことに、政府として政局を担当して、社会全体の安寧秩序を守り、また公共福祉を守っていくというこの任務から申しますというと、行き過ぎ労働運動等に対しまして、その行き過ぎを是正するために必要な処置を講ずると、これも私はやむを得ないことである。それがしかし、私は、あくまでも正しい労働運動は伸ばし、また労使関係においては原則としてわれわれは介入しない。法秩序をどちらかでこわすということのない限り、これに介入すべきでないという態度は、私ども一貫してとっておるわけでございます。決して、今お話しのように弾圧するというような考え方は毛頭持っておらないのでございます。
  166. 坂本昭

    ○坂本昭君 もちろん、私たちも至らざるところがあって、みずから洗練をしていくように努めます。しかしながら、総理並びに各皆さん方におかれても、みずから脱皮するところの決意が必要だと思うのです。先般来、この時間が足りませんので、生活保護あるいは結核の問題を通じて、特に最低賃金のことについて、徹底した論議はまた委員会に譲りますが、この労働者基本的な生活権を守るという、そのために具体的の措置をする、これが何ものにもまして、総理の言われる青年に対するアッピールよりも一番強い支持になる。これは先ほど高田委員の言われた通りであります。  最後に一言申し上げて、私の質問を終りたいと思いますが、きょうは高碕さんお見えになっておりませんが、一番最初に外交問題を申し上げましたが、バンドン精神と平和の五原則というこの考え方を私は常に……。
  167. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 坂本君に申し上げますが、高碕通産大臣はおります。
  168. 坂本昭

    ○坂本昭君 いや、質問じゃありません、高碕さんがバンドンに行かれて取りきめられたこのバンドン精神を、私はもっと総理初め皆さん方に実は持っていただきたいのであります。何も他国に干渉する必要はお互いにないのであります。内政は干渉しなくても、平和共存でわれわれは生きていくことができるのでありますから、まず中華人民共和国に対する私は正しい認識をぜひ総理に持っていただきたい。藤山さんにつきましても、絹のハンケチでまず何かふくならば、揚子江の水で手を洗って、それを自分のハンケチでふいていただきたい。私は、そうしたことの中で、私事にわたりますが、昨年秋、中国を一カ月ほど旅行いたしました。そのときにいろいろ人民公社などを見ましたが、一番強く印象を受けたのはいわゆる整風運動であります。風を整える、これはまことに皆さんが謙虚であります。下放というのは、軍隊では司令官が一兵卒になり、それから本省の各局長が、たとえば厚生省の児童局長ならば保育園の仕事をする。そういうような下放運動をやって、特に私たち四十才代の人たちがきわめて謙虚であって、かつての、民に先んじて憂い民におくれて楽しむ、乏しきを憂えずひとしからざるを憂うるという、われわれが古い論語を通じて習っておったそういうものが、何かぼつぼつあることを認めざるを得なかったのであります。私はこの謙虚なる気持で、理屈抜きにして、そのことを皆さんに申し上げて、特に中国に対する静観の態度を踏み切って、新しく静出動を求める行き方を総理に特に私は要望して、質問を終りたいと思います。
  169. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これで坂本君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  170. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、矢嶋三義君の御発言を願います。
  171. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 要求大臣全部来ているでしょうか、確かめて下さい。
  172. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 労働大臣だけ、御了承を得たといって衆議院に行っておりますが。
  173. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 工合悪いです。
  174. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 今すぐ呼びますから。それ以外のあなたの要求した政府側の方は全部おりますから。
  175. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、総括質問のしんがりを承わりまして、これから質問いたしますが、各大臣には、質問対象としてABC級に分けて通告しています。主としてA級の大臣に質問が参るわけでありますが、答弁次第でどなたに答弁をお願いするようになるかしれませんから、全部の閣僚御着席願います。私の指名する政府委員以外の政府委員答弁はお受けしません。しかし大臣の補佐はもちろん自由であります。  まず、防衛、安保条約憲法解釈関係から質疑に入りますが、まず、是なる点として、年内に予算案の編成が完了したことは、大蔵大臣の努力を多として敬意を表します。この点に関する限りは賢弟であったと存じます。(笑声)兄の点についてはこれからの質疑の過程において申し上げます。  まず、基本的事項を整理して質問を展開したいと思います。伊能防衛庁長官、藤山外務大臣の答弁を願うわけでありますが、自衛隊法第三条の「わが国」、日米安保条約の中にある「日本国内及びその附近」、行政協定第二十四条の「日本区域」に相違があるかどうか、その範囲いかん、小笠原、沖縄を含むか含まぬか、お答え願います。
  176. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私から私の範囲内でお答えいたします。  今の問題は、日本国という表現で出ておりますのは同じだと思います。日本の領域及びその周囲というのは、むろん施政権の及んでいる所及びその周囲と解釈いたしております。
  177. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。私も、ただいま外務大臣がお答えしたと同様な見解を持っております。
  178. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次は藤山外務大臣、現行安保条約における在日米駐留軍の行動範囲は、安保条約の改定によって変るのか変らないのか、現安保条約における米駐留軍の行動範囲いかん。
  179. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の安保条約では、極東の平和と安全というようなふうに書かれていると思います。われわれが今度改定しようと思いますことは、むろん第一義的には日本の防衛でありますが、もし日本以外の国に出ますというときには協議事項でやって参ろうということで、全然分れているわけであります。
  180. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 行動範囲が変るか変らぬかということを聞いているんです。ポイントを合せて答えて下さい。
  181. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の行動範囲というのはアメリカ側には自由なんでありまして、今回の改正しようと思いますことは協議をいたすというわけなんでありまして、そういう精神で交渉をしているわけでありますから、範囲も当然変ると思います。
  182. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次は伊能長官、安保条約の改定でわが自衛隊の行動の範囲は変るか変らないのかお答え願います。
  183. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答えを申し上げます。ただいま藤山外務大臣がお答え申し上げましたように、また自衛隊については憲法上の制約がございますので、日本領土内ということになっておりますが、特に条約上必要があってさような事態を免ずる場合においては、ただいま外務大臣がお答えのように協議をする場合が起るかと思います。
  184. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ということは、現在は沖縄、小笠原は入ってないわけでございますが、改定によって沖縄、小笠原が行動範囲に入るということがあり得るという意味でございます。
  185. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。防衛庁の考え方としては沖縄、小笠原については現在の防衛力をもってしては含めることは困難である、かように考えております。
  186. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ということは、防衛庁としては沖縄、小笠原を含めることに賛成しかねるということですね。
  187. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいま申し上げました通り、現在の自衛力の態勢では困難であるということでございます。
  188. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の質問の点について答えて下さい。委員長注意して下さい。
  189. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。困難であるという前提のもとに、政府部内において外交折衝をする場合においては、外務省なり外務大臣がこの点について終局的な取りきめをする。私はさように考えております。
  190. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次は総理大臣。わが国の持つ防衛力は自国の防衛のためだけでなくて、他国の防衛のためを目的として持てるか、また他国の防衛のため使用できるか、お答え願います。
  191. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の自衛隊は、憲法上、自国の自衛のために必要なる最少限度の実力を持つということでございますから、その範囲内に限るものであると思います。
  192. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 憲法上、他国の基地からわが国内を爆撃し、または爆撃しそうなことがあるときは、防衛力……自衛隊はその基地をたたくことが可能かどうか、総理にお答え願います。
  193. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自衛隊の行動の範囲は、これは日本の領土内に限る、というのが私は自衛隊の本旨であると思います。  ただわれわれはあくまでも祖国を守らなければならないのでございまして、われわれも座して滅亡を待つというようなことはできないのであります。他に方法が絶対にないということがあった場合において、われわれがどういう行動をとるかは、これはそのときの事情において考えなければなりませんから、自衛隊の本旨から申しますと、その行動範囲は自国内に限るというのが原則だと思います。
  194. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 情勢が緊迫してほかに方法がないという場合は、自衛隊の行為が、敵の侵略行為であるからとして、自衛手段として自衛隊は敵基地をたたくこともあり得る、こういう解釈だと聞えるのですが、そうですか。
  195. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その問題につきましては、かねて前内閣の鳩山内閣のときにも同様な国会会における論議がございまして、他に絶対に方法がないというそういう場合には、日本の領土内に対する侵略を防衛するのに、それ以外の方法には一切のあれがないという場合においては、それもやむを得ないだろうという解釈になっております。
  196. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理大臣並びに外務大臣にお伺いします。  まずここにこれが日本国、この中に米軍基地がある、これがアメリカの日本国以外の基地、これは第三国で、よろしいですか、その場合にこの国とこの米国との間に紛争が起って、そうして日本にある米基地からこれを攻撃しそうであるから、第三国がこの基地をたたく場合と、これを別にして、日本国を侵略する目的でこの国がこれに攻撃して来て、こちらもこれに応ずる場合と、前者と後者は差があるかないかお答え願います。
  197. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ライトのあれでちょっと見えないのですが、(笑声)ちょっともう一回説明して下さい。
  198. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは時間外ですよ……。
  199. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本を直接侵略いたす場合が後者だと思います。同時に日本が侵略されないために米軍がいるわけでありますから、共同に防衛をしております。従って日本を侵略する意図がなければおそらく米軍は攻撃しないと思うのであります。その意味においては同じだと思います。(「おかしいぞ」と呼ぶ者あり)
  200. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、現実に日本に対する侵略がある場合においては、その理由がどうあろうとも、日本に対する現実の侵略があるという場合においてはこれに対してこれを排除する、という関係においては同様な結果になるとこう思います。
  201. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 頭のいいあなた方がこのくらいわからないでどうするのですか。(笑声)この第三国とアメリカが争って、そうして日本に基地があるからこれから飛んで来そうだから、こっちは自衛手段としてここをたたくでしょう、これはさっきあなた方が答弁したでしょうが、わが国があって、その国からどうも攻撃が来そうだという場合には、非常に危険だという場合にはこっちは事前に敵の基地をたたくことができる、これは鳩山内閣以来の主張なんです。これは日本は、自衛としてたたけるのです。一の場合だって、ここが二つ争って、そうして、どうも日本にある米基地から来そうだからというので、これをたたくということは、この国にとって自衛ですよ。あなたがた、都合のいいときには、自衛と言い、都合の悪いときは、侵略と言っている。そういうことは許されませんよ。  だから、安保条約の改定は、これとこれが、直接日本に攻撃してきて、そのときに、事前協議する云々というのは、日本を守るためにいいでしょう。しかしそうでなくて、この間に、国際紛争が起って、その結果として、日本にある基地に攻撃がくる場合に、協議すると言っても、間に合わない。そういう場合、同じような行為をするということは、この二国間の国際紛争にわが国が巻き込まれることじゃないですか、国際紛争の解決手段として戦いが行われる、その中に日本国が参加するということは、憲法九条から——国際紛争解決のための手段として日本の自衛隊の防衛力というものを使うということになるから——明らかに憲法違反であるとともに、きわめて危険ではないですか。  この理論が、わからないことはないでしょう。ごまかしなさんな。
  202. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話のように、第三国が、日本の米軍の基地からたたかれやしないかという心配、それは、われわれはその前に事前協議をしまして、アメリカ軍がたたくことに対して、イエスかノーかを言うわけなんです。ですからノーと言った場合には、その心配はないので、それを押してくれば、当然、やはり侵略だと考えられるわけであります。
  203. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 藤山さん、今、五分間戦争という時代ですよ。何とセンスのぼけていることですか。そういうことでは、まかされませんよ。総理大臣、もう一ぺんお答えを願いたい。今、五分間戦争と言っているのですよ。小学校の生徒の討論会と違いますよ。十分一つ、検討してもらいたいと思うな。お答え願います。
  204. 岸信介

    国務大臣岸信介君) さっき、私がお答え申し上げました自衛隊が出て行く、領域外に出るという場合につきまして、原則としてそういうことはないと、ただ、何か向うから来そうだから、こっちから事前に行くということは、私は自衛の本質から許せないものだと思います。あくまでも現実に侵略があって、その侵略を防ぐのに、向うの基地をたたく以外には絶対に方法がないと、それ以外の方法は一切できないということが明瞭な場合に、できるかできないかという場合が、先ほどの問題であると思います。  今、設例としておあげになりましたB、Cの間に国際紛争から日本にある、日本を防衛するためにおる基地の米軍が来そうなおそれがあるから、これを事前に、第三国がたたくということ自体は、私はこれは第三国たるCという国が、そういうことが、いきなりできるかできないか、今、国際連合との関係で問題があると思いますが、かりに、そういうことをした場合においては、日本やアメリカが巻き込んだということでなくして、Cという第三国が、本来、われわれの当然の自衛として持っておる態勢に対して加えるところの侵略でありますから、これを排除するという問題が出てくるのだと思います。
  205. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今や科学兵器の発達によって、五分間戦争と言われている。過去の戦史をひもときましても、どちらが先に攻撃したとかあとだったとかいうようなことは、水かけ論なんですよ。従ってわが国内に基地あること自体、さらにあなた方が最近主張されているような形での安保条約の改定というのは、きわめて危険である。十分一つ、検討していただきたい。  次に伺いますが、アメリカが、わが国と相互防衛条約を結ぶということは、バンデンバーグ決議から、継続的かつ効果的な自助及び相互援助を基礎として締結することであるから、わが国の防衛力は、わが国の防衛のためだけでなく、さらに広い意味で防衛力を維持、強化することになる。従って現憲法の制約を前提にしては、アメリカと相互防衛的な条約の締結は許されないと思いますが、総理、いかがですか。
  206. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもが、今回の安保条約の改定は、あくまでも日本憲法の範囲内ということについて、それを大前提として両国の間に話し合いをいたしております。バンデンバーグ決議との関係につきましても、あくまでも日本憲法で許される範囲内における——われわれは、義務を負うものであって、それ以上のものを負う考えは持っておりません。
  207. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 相互防衛条約を結ぶことは、明らかに憲法違反になっているけれども、時間がないから言いませんが、さっきの私の説明で明瞭だと思いますが、重ねてお答え願います。
  208. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 相互防衛条約と申しましても、あるいはアメリカの、この領土に、日本の領土以上に出て、日本が防衛する義務を負うというようなことになれば、これは、憲法の違反になると思います。  しかしこれは、この日本の領土内に関する限りにおきましては、相互防衛と言おうが、あるいは日本の自衛と言おうが、実質においては、私は変らないものだと思います。
  209. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理の言う憲法の範囲内における相互援助協力の範囲いかん。
  210. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いかなる場合におきましても、自衛隊の、本来の憲法が許している自衛の域を脱して、アメリカに対して相互防衛の義務を負うものでない、この範囲で考えますというと、(矢嶋三義君「具体的に説明して下さい」と述ぶ)具体的な問題としては、一番の何は、基地の提供ということであろうと思います。これに関する問題以上に、日本の自衛隊が今、自衛隊として持っている活動範囲以上に出ていくというようなことは考えられないと思います。
  211. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 協議の結果、共同防衛行為をとることになったときは、航空自衛隊が、万やむを得ないとき敵基地をたたくことがあり得るというわけでありますが、そうなりますと、赤城官房長官か、先般参議院内閣委員会答弁されたことは、取り消さなければならぬと思いますか、お取り消し願います。
  212. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) その差異、ちょっとわかりませんので、もう一度、一つ御質疑願います。
  213. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは時間外ですよ。わからないですか、ちゃんと書いてある。あなたは、参議院の内閣委員会、二月十三日に、日本の自衛隊は外に対しては、絶対、行為ができぬということを答弁した、私の質問に対して。ところが、さっきの答弁では、鳩山内閣以来を踏襲して、情勢次第では、敵基地をたたくこともあり得るということを答弁した。そのときに、あなたは、総理は同じ考えかと言ったら、総理も同じ考えであります。と速記に残している。それは、きょうの答弁と違うわけでありますから、そこを釈明、訂正して下さい。
  214. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、先ほどもお答え申し上げましたように、(矢嶋三義君「官房長官に。あなたには言っていない」と述ぶ)——ちょっと誤解があるかと思いますから、念のために、私の答弁をはっきりさして、そうして官房長官の言ったことと差異があるならば、その差異を訂正することが適当だと思いますから、私の、今お話しについては、情勢いかんによっては、敵基地に行くんだ、こういう言葉をお用いになりましたが、私の言うのは、それは、情勢によるかもしれませんが、現実として、自衛隊の活動範囲というのは、領土内に限るのだと、しかし日本が侵略されて、座して日本の滅亡を待つわけにはいかない、この敵基地を攻撃する以外に方法がないと、それもしかも、自衛隊が行ってやる以外に方法ないという絶対の場合には、やむを得ざる場合として出ると、こういう例外的のことでございます、あくまでも、非常に厳格に。ただ矢嶋委員の言われるように、情勢いかんによってはということは、非常に広く……。そうでないということだけを言っておきます。
  215. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 明らかに違いますよ。官房長官、速記録を持っきていますから。
  216. 片岡文重

    ○片岡文重君 関連質問
  217. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 矢嶋君、ようございますか。
  218. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 けっこうです。
  219. 片岡文重

    ○片岡文重君 総理に伺いますが、矢嶋君との質疑を通して、私ども、さらに疑問を持つことは、結局第三国とアメリカとが紛争を起す、その場合に、日本の国土内にある日本の基地から、アメリカの飛行機が飛んでいく。これをたたかなければいかぬということで、第三国が、日本の領土内にある基地をたたきます。その場合に、日本は攻撃を受けるわけです。当然、日本の国土が受ける。この場合に、今までの答弁では、それは、日本がやはり侵略を受けるものとみなして、これにこたえる、こういう御答弁だったと思うのですが、そういたしますと、結局日本は、アメリカに基地さえ貸さなければ、座して滅亡を待つようなことはないはずなんです。ところが、アメリカに基地を貸しておるばかりに、第三国とアメリカとの間に紛争が起ったときには、第三国が、日本の国土内にある基地を攻撃する。その場合に、水素兵器等を使われれば、日本は、これは滅亡せざるを得ない。そういう場合にも、日本は自衛上の権利として、第三国に向って先制攻撃をかけるのかどうか、その点を明確にして、いただきたいと思います。
  220. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、いわゆる先制攻撃をかけるということは、私ども考えておりません。
  221. 片岡文重

    ○片岡文重君 関連質問。  今、あなたは、座して滅亡を待つことはできないから、そういう場合には、日本から出ていかなければならぬと、そういうこともあり得るとおっしゃっておる。  ところが、今の兵器では先制攻撃をかけられれば、しかもそれは、日本を攻撃する意図はなくとも、アメリカの基地が、日本の国土内にあり、その国土丙にあるアメリカの基地を攻撃するのに原子爆弾、水素兵器を使われれば、日本のごとき狭小なる国土は、一へんにふっ飛んでしまうじゃ、ありませんか。少くとも全部がやられないとしても、その基地を中心とする相当広範な範囲がやられる。しかも、これは東京都がその被害を受ければ、まさに日本の中心がやられるのですから、座して滅亡を待つような事態にならぬとは限らない。そういう場合には、当然、あなたの御所見で言えば、出ていくことになると私は思うのですが、いかがですか、明確にしていただきたい。
  222. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、自衛隊の活動条件としては、日本が、侵略をされて、その侵略を排除するということであって、(「侵略の原因が問題です。」と呼ぶ者あり)その問題は、今のように、侵略されるおそれかあるというから、まず向うへ行って、これをたたいて侵略の事実をなくしようというようなことは、私は自衛隊の本質からいってできないんじゃないか、こう思うのです。  先ほど来、やむを得ない、座して云々という話は、日本が現実に侵略されて、その侵略を排除する方法として、他に方法がない、これが絶対の場合だという限られた場合に、領土外に出て活動できるのだということを申し上げたわけでございます。
  223. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうも不満だけれども、仕方がない。
  224. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 官房長官の答弁を求めます、明らかに違いますから。
  225. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 今の現状から、海外派兵はできないのであります。しかし、日本が滅亡するかどうかいう場合においては、戦略上の問題で、総理答弁されたような場合もあり得るかと思いますが、そういうこうに予期してもいませんし、考えてもおらないのであります。
  226. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういうあいまいな解釈であってはいけないのです。憲法を改正する必要があります、そういう解釈をとるならば。ごまかしだ。  次を伺います。総理は、わが国の防衛力の維持増強は、あくまでも憲法の命じている自衛力の範囲内に限られるというが、憲法九条の戦力とは、いかに解釈しているか、お答え願います。
  227. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法九条の一項の規定は、いわゆる国が独立国として自衛権を持っておるということは、当然、これを認めておるものと、私ども解釈しておる。自衛権という考え方は、言うまでもなく、ただ観念的のものではなくして、それを裏づけるに必要なやはり実力を持たなければ、現実に、実力をもって侵害された場合は、これを排除することはできないと思います。その自衛の限度において、これを目的を達するに必要な実力は、これは自衛隊が、当然持たなければならない、それを越えたものは持つことができないと、こういうふうに解釈するのであります。
  228. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理考えは、自衛力の範囲内の戦力は持てる、持てるが、自衛力の範囲外の戦力は持てない、こう解釈ですか。
  229. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういうふうに、自衛のために必要な限度における実力は持ってよろしい、こう思います。
  230. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 外は持てないのですね。
  231. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それ以上のことはいけない。
  232. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 赤城官房長官は、自衛のためには戦力を持てるという答弁をしております。この表現は、自衛のためと称して無制限の戦力を持てるとも解釈されるから、適当な表現でない。岸総理見解とは違います。ところが、先般、岸総理もそう考えておる、ということを参議院内閣委員会で、速記に残しております。釈明並びに訂正をしていただきたい。
  233. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 自衛のための実力が、戦力と言われる場合があると思います。そういう意味における自衛のための最小限度の実力は、戦力として持てる、総理大臣答弁と私と、違っておらない、こう考えております。
  234. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 違いますよ。自衛のためには、戦力を持てるということと、自衛力の範囲内の戦力は持てるが、自衛力の範囲外の戦力は持てないということは、明らかに違いますよ。御訂正を願います。
  235. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 自衛の範囲内の戦力、それが実力でありますので、自衛の範囲外の戦力という考え方でありませんから、違っておらないと思います。
  236. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 速記録を見て下さい、官房長官、これは大事なことですよ。自衛のためならば、戦力は持てると書いてある。これを見れば、はっきり違いますよ。今後の自衛隊の増強について非常に違ってくるのですよ。
  237. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 自衛のためならば、戦力は持てると、こういう答弁をしておきましたが、自衛のためならば、というのは、自衛の範囲内における実力、その実力を戦力と称することができる、その戦力は、持つことができる。
  238. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 赤城官房長官は、非常にりっぱな人で、岸内閣は、赤城さんでもっておるようなものです。従って、実質的に訂正しましたから、もう追及しません。  次に伊能長官。自衛のためには、核兵器も持てる。しかし、政策上は持てない、持つ必要を認めないというが、憲法上、現在持てる核兵器と、持てない核兵器とを例示されたい。
  239. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核兵器につきましては、先般来、総理政府を代表して、そうした見解をもってお答えを申し上げておる通りでありまして、自衛のため持てる兵器持てない兵器という問題については、総理からも、水爆、原爆のようなものと明らかに自衛のために、小型の必要なもの等も、考えられないことはないが——それでも、現在の岸内閣においては、持てないということを明確に申し上げておきます。
  240. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 持てないものはわかるから、持てるものを——憲法上、持てるやつを言って下さい。
  241. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私どもは小型の核兵器、これは攻撃を目的としない、敵の侵略に対してこれを防御する核兵器が最近各地で研究されておりまするが、目下日本においてはさようなものは参っておりませんので、当方としては……。
  242. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いや、アメリカにあるんですよ、たとえばそれを特定して下さい。
  243. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) たとえばオネスト・ジョンのごときは核弾頭をつけますと、これは自衛のために、攻撃的なものではなくして、防御的なものとして使用し得ると思います。
  244. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 とんでもないことを言う、オネスト・ジョンに核弾頭をつけて、これを自衛のため持てるのですか、総理、お答え願います。憲法上差しつかえないですか、それ。
  245. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法上われわれは、さっきから憲法論義ありますように、自衛権というものは認められる、自衛のための必要な限度のものしか持てない、こういうことであります。この自衛ということは、さっき片岡さんも何か大東亜戦争と自衛と同じだと、こういわれるけれども、私は非常にこの憲法の自衛というものは限られておるので、そういう意味じゃないと思います。現実に日本が侵略された場合に、私は実はオネスト・ジョンが持てるか持てないかということは、オネスト・ジョンの性能や何もまだよく私は研究しておりません。原水爆のごときものは持てないことは事実です。
  246. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 長官は持てるというのですよ。
  247. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それはオネスト・ジョンの性能のことを私はよく知りませんから、オネスト・ジョンがどうであるかということは、ちょっと私今ここでお答えできませんが、ほんとうに純粋に、今のかりに鉄砲にかわるところのものが核兵器でできたという場合において、これは私は憲法上禁止されちゃおらぬと思います。しかし憲法上禁止されておらないからといって、それじゃ持つ意思があるかといえば、持つ意思はない。
  248. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) ただいまお尋ねになりましたオネスト・ジョンの弾着距離につきましては、約四十キロ程度でございます。
  249. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 持てるというわけですね。とんでもない答弁です。いずれさらに他日の機会に追及いたします。  次、総理、お答え願います。非核武装宣言の問題について、あなたと自民党の考えは相違ないということを四日に答弁しました。相違ないなら、何ゆえ社会党提案に賛成しないのですか。
  250. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はこの問題に関してはしばしば声明をしておる通り、また、自民党におきましても私の政策を支持して今日まで参っておることは御承知通りであります。私のやつておることはいかぬと、その声明はいかぬということは申しておりません。その意味において私は党と私との問の意見の相違はないと思います。ただ問題は、この国会の議決としていかに扱うかという問題になりますというと、これは私は国会の問題として、行政府の取扱いや、行政府考えをすぐそのまま、国会の意見が同じだから議決とするかどうか。それがいいか悪いかということは私は別に考えらるべき問題であって、そういう意味においてこの決議案の取扱いを異にしたのです。現に御承知であろうと思いますが、昨年の四月にも同様な趣旨の核兵器の問題について衆議院は議決をいたしております。これはまだ一年たたない前のことでありまして、その当時におきましても、私自身は核装備をしない、核兵器を入れられないということをはっきりと言っておるときに、国会としては、それに対しての決議は多少ゆとりのあるような意味において決議がされております。そういう意味において、私は国会の議決としてどういうふうに扱われるかということは、いろいろな点において、これは党としても、また議院としても考えていかなければならぬ問題であろう、こう思っておるのでございます。
  251. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ポイントをはずしては困ります。あなたは二月四日、本委員会で私に、あなたと党の意見は相違したい、違っていないということを答弁した。ところが、二月二日、衆議院で勝間田氏には、「そういう内容を持ったことが決議されることについては一、全然私は同感でございます。」と答弁している。党とあなたと意見が違わなければ、同感であると答えられておるなら、なぜ賛成しないのですか。
  252. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 勝間田君の質問に対しまして、私は、大前提として議会のことは議会でお扱いになるのが適当であり、国会としての自主性があるのだということを前提として申し上げております。従って私は国会として議案をどういうふうにお扱いになるかということは、国会におまかせすることが適当であると、こう思っております。
  253. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  254. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 速記をつけて。
  255. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理の勝間田氏のときの答弁、これは私失言だと思うのです。総理としてはそれに逃げておるが、時間がほしいからこれ以上追及しませんが、どうしても納得できないのです。おかしいですよ。  では次、伊能長官。何年か先に核武装を必要とする時代がくると予想されておられるのか。
  256. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。科学兵器の進歩については全く予断を許さぬ状態でございますので、将来のことについては何とも申し上げられません。
  257. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 官房長官は、十年も二十年も先は科学兵器の進歩した結果によって何とも言えないから、それを制約するような決議はいけないからと、暗に将来核兵器を必要とするときがくるということを言われていますが、御訂正願います。
  258. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) そういうことがあり得るという見通しは持っていますが、防衛庁長官答弁のように、将来のことを私まだ予測するまで勉強しておりません。
  259. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 答弁の食い違いがあります。長官もう一ぺんお答え願います。明らかに答弁の食い違いがあります。
  260. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 重ねてお答えを申し上げます。御承知のように、核兵器その他原子兵器についての進歩は飛躍的なもので、将来のことについては現在のところ何とも申し上げられません。
  261. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 藤山外務大臣。潜在主権はあるが、自衛権が全面的にない地域に対する防衛義務法律上ないと思うか、いかが。
  262. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 潜在主権があるところでありましても、日本の防衛地区に入れる必要はないと思います。
  263. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いや、私の尋ねたことを答えなければ……。防衛義務法律上ないと思うが、いかんと、こう聞いたのですが、それに対して答えて下さい。
  264. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 普通の場合にはないと思いますが、領土主権を失うような場合には、あるいは防衛する必要があろうかと思います。
  265. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 岸総理大臣は昨年十一月四日、次のように答弁をしている。この潜在主権を持っておるところにおいては、防衛する権利義務を持っておるという法律解釈に立っておるわけでございます、相違がありますから、意識統一をはかって下さい。
  266. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、答えましたように、観念的には、やはり潜在主権を持っておるところは領土でありますから、国土を防衛する権利義務があると解釈すべきものだと思います。ただ現実の問題として、施政権を一切他国が持っている場合において、これに現実の防衛の権利義務を施行するのは施政権を持っているところである、こういうことになると思います。今、外務大臣がお答え申し上げましたように、かりに施政権を持っているものがそれを放棄したと、こうするならば、われわれとしては、当然潜在主権を持っておるところは、領土としてこれを防衛し、また、防衛する権利義務があるというのでありまして、そういう意味において私はさように答えたわけでございます。現実の何としての今の外務大臣の、実際はそこを防衛する権利義務も行使できないじゃないかという意味においてそれを持たない、しかし領土がなくなるというような場合においては、また別だということを申しておるのも、同様な考えであろうと、こう思います。
  267. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 結論として、小笠原や沖縄は行政権がないのですが、防衛区域に入れるのですか、入れないのですか。争いが起った場合に、領土権に関する問題まで発展することはあり得ぬわけです。従ってそれを明確に両者から御答弁願います。
  268. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の防衛区域に入れるか入れないかということは、最後的には今いろいろの意見を聞いて、最後に決定をいたしたいと思います。しかし、いずれにいたしましても、かりに入れた場合におきましても、これは潜在主権を持っておる日本の領土であるという立場に立って考えるべき問題であろうと思います。また、入れない場合におきましても、これは現実にわれわれが防衛をしようとしても、一切の行政権施政権をアメリカが持っていることでありますから、実際上できないことを考えて、みますというと、これを入れないといいましても、いわゆる施政権の返還の問題、あるいは潜在主権の問題には関係なく、これを考えていきたい。いずれが適当であるかということについては、なお研究をいたしたいと思います。
  269. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 国民生活に直接関係ある行政協定を、何ゆえ安保条約と同時に本格的改定をやらないのか、理解に苦しみます。これは米側が応じないのではないですか。特に行政協定においては、刑事裁判権、調達方式、あるいは労働法規の尊重と租税、損害補償等、きわめて国民生活に密接な関連を持つものが多々あるわけでございます。昨年起りましたジョンソン基地における武蔵野音楽大学生宮村君の射殺事件、この補償がいまだに片づいていない。いかなる政治的折衝をやっておられるのか、あわせてお答え願います。
  270. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定は、当然私ども現在検討をいたしております。各省にまたがります相当広範なものであります。これを今後交渉いたして参ります上において、どういうふうに扱いますかは今後の問題として、全面的改定をいたして同時に持っていきますか、あるいは一応改定の問題を将来に残して、改定の道を開きますか、そこいらは今後の折衝のいかんによろうかと思います。
  271. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 後段の問題について私からお答え申し上げます。宮村君の御不幸の問題については、私どもも鋭意米側と折衝を継続いたしておりまして、すでに遺族から賠償金額等の問題も提出せられましたので、私どもこれをもって米側と折衝いたしておりますが、当初、米側の方においても、相当厳格な意向のようでありましたが、だんだん折衝の結果、かなりその間意見の懸隔も逐次近接して参りましたので、この上ともに、できるだけ御期待に沿うように賠償額を折衝いたしたい。まだ最終的な段階に至っておりませんが、われわれの方は、もっぱら希望を捨てずに、できるだけ遺族のために、御希望に沿うような方向に進みたい、かようなことで努力をいたしておる次第であります。
  272. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 困難な状況下、よく終戦処理業務を遂行して参りました調達庁を、今後いかようにするつもりか。新しい調達行政をもった恒久的官庁としてはいかがかと思いますが、総理並びに担当国務大臣答弁を求めます。
  273. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。調達庁については、ただいま御指摘のように、長い間の沿革をたどりまして、逐次縮小の一途でございまするが、昨年八月から、防衛庁の一外局としてこれを統轄することに相なりまして、御承知のように、米軍関係のことが逐次減少いたしておりますので、来年度においても若干の減少等もありまするが、これらはすべて助衛庁もしくは他の国家機関の中において処理することとして、当面の処理は解決をいたしておりまするが、根本の問題といたしましては、御承知のように、防衛庁内における地方建設部の仕事、あるいは防衛庁内における調達木部の仕事、あるいはさらに政府部内における同種の仕事等とも関連を持ちますので、この際われわれとしては、防衛庁当局、さらに職員組合等の意見を十分聴取して、目下何とか適当な恒久対策を立てたいと、せっかく考究中であります。
  274. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に伺いますが、今の防衛庁長官の方針を強力に推進する考えであるかどうか。と同時に、占領軍によって被災を受けた方々の補償というものが十分行われていない。未支給のものがあり、支給されても非常にアンバランスであります。この際、正当な補償が行われるよう、被害補償立法等、具体的対策を講ずべきと思いますが、総理のお答えを願います。
  275. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 調達庁の問題につきましては、先ほど防衛庁長官がお答えをいたしました線に沿うて、政府としても十分に検討していきたいと、こう思っております。なお、被害者に対する補償につきましては、それぞれ行政協定や何かによりまして、両者の間において折衝をして、満足な補償を実現するように努力をしております。先ほどこの点についてもお答えを申し上げた通りであります。今直ちにこれに関する特別立法をするという考えは持っておりませんが、しかし被害者に対して、十分均衡のとれた公正な補償が渡りますように努力すべきことは当然であると思います。
  276. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 防衛庁は多額は研究開発費を、昭和三十三年だけで約二十二億六千万円を予算に計上しているわけでありますが、いかようにこれを使っているか、研究委託費ともあわせてお答え願います。
  277. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 調査委託の問題につきましては、すでに国会の御要求によりまして、当方において資料として御提出を申し上げておると思います。三十二年度におきましては、海外軍事情報一般等について、内外情勢調査会あるいはラジオプレス社等、一つは主として海外の軍事情勢等の毎旬間ごとの調査を資料として印刷を求めて、それの費用を出しておりますることと、ラジオプレス社に対しましては、御承知のように週刊でもって、世界のラジオ、テレビ等のニュースによる軍事情報を、これまた週刊で印刷をさせまして、当方で適当な部数を購入し、その調査を委託しておりますのが、昭和三十二年度において三百八十八万八千五百九十円、また、戦略戦術関係の調査を委託いたしましたものが九件、大陸問題研究所その他で三十三万円、また、核装備兵器関係等の調査委託をいたしましたものが五件で、これはGM協議会その他に委託をいたしましたが、八十五万六千五百円、また、産業経済関係等につきまして調査委託をいたしましたものが、大陸問題研究所その他で九十二万五千円、また、科学技術関係の調査委託をいたしましたものが、日本兵器工業会等に二十五万円、その他二件三十四万三千円、これは日本外政学会その他に調査委託をいたしたものでありまするが、合計で約六百六十万円、三十三年度におきましては、同様の海外軍事情報一般、内外情勢調査会、ラジオプレス社等三百二万五千三百八十円、また、同様の戦略戦術関係の調査委託が日本外政学会へ一件で三十万円、核装備兵器その他の関係で調査委託をいたしましたものが三件、七十二万五千円、これは日本航空工業会その他でございます。また、産業経済関係の調査委託につきまして、金融財政事情研究会等へ調査委託をいたしましたものが八十万円、その他四件は大陸問題研究所その他へ委託しました八十一万七千一百五十円、合計五百四十六万七千六百、二十円でございまして、研究開発費の内容等につきましては、武器関係に関する研究といたしまして、昭和三十二年度に四十三万八千円、日本製鋼、神戸製鋼、日立、富士精密、川崎航空機、三菱電機、日本電気、三井造船等に昭和三十二年度が四億喜一方八百万円、三十三年度には七億四千三百万円、車両、特車等に関する研究につきまして、三菱日本重工、小松製作所等に研究開発費を供与いたしましたものが、三十二年度で三千七百万円、三十三年度、一千九百七十万円、施設、機材等に関する研究開発費、三菱日本重工、小松製作所に研究開発を依頼いたしまして、昭和三十二年度に二千万円、三十三年度におきまして千九百万円、通信機材に関する研究が三菱電機、東芝、日本電気、日本無線、富士通信、日立等に対しまして、昭和三十二年度におきまして六億二千五百万円、三一三年度におきまして七千六百万円、航空機関係に関する研究開発が、新三菱、川崎航空、富士重工、日本ジェット・エンジン等に対しまして、昭和三十二年度が八億二千二百万円、昭和三十三年度におきまして十億一千二百万円、戦略に関する研究開発につきましては、川崎重工、日立造船、三井造船、日本電気、湯浅電池等に対しまして、昭和三十二年度一億二千二百万円、三十三年度一億二千八百万円、その他の関係といたしまして、三十二年度一千百万円、三十三年度一千五百万円、合計三十二年度におきましては二十億七千五百万円、三十三年度におきましては二十三億九千五円、かように相なっております。
  278. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 非常にこれは問題を含んでいると思うのです。大学は研究費が不足で困っているのに、防衛庁は研究開発費約二十三億円、技術調査委託研究費の六千五百万円を持って、これを消化しきれないでいる。しかもその配付を見ますと、たとえば大陸問題研究所は、国防会議から十万円もらい、防衛庁からももらっている。しかも大陸問題研究所の個人もまたもらっている。こういう例がたくさんあるわけです。まことにでたらめだと思うのですね。そこで伺いますが、今団体だけやったが、団体に支給した金額並びに個人に渡した金額を発表し得る自信があるかどうか。原子力の研究をやっているものと私は推察いたしますが、いかがですか。
  279. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。原子力の研究につきましては、来年度全体として、科学技術庁がこれを所管いたしておりまして、われわれは本委員会においても、私から御報告申し上げましたように、高々度における放射能性能あるいは放射害等につきまして、航空機によって調査をいたしますもの約四百万円、これを来年度計上いたしております。また、ただいまお尋ねのありました研究開発費は、いずれも試作品の製作を伴うものでございまするので、いたずらに研究開発だけのためにやったものではないという点も、御了承願う次第であります。
  280. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 資料は……。勇気ありますか、ありませんか。
  281. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 個人に対する資料については、私、承知いたしておりません。
  282. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 資料として出す勇気があるかないかということを聞いている。
  283. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 調査をいたしました上で、お答え申し上げます。
  284. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと関連して。ただいまの防衛庁の科学技術研究費ですが、この中に日本電気あるいは日本無線等の会社の名前が出て参りましたが、相当な膨大な費用を使って研究をされているようであります。私のこの際お聞きしたいのは、磁電管を使い、要するに電波を使って人を殺すいわゆる殺人電波ですね。こういったような研究を防衛庁でやっているのじゃないかというように私は思うのですが、いずれ詳細は別の機会に私質問いたしますが、この機会に、そういうものをやっているかいないか、一応お尋ねしておきたいと思います。
  285. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいま御指摘の日本電気、日本無線等に対する関係のものは、御承知のようにガイデッド・ミサイルの中の電気装置関係に対する試作研究でございまして、御指摘のような点については研究はいたしておりません。
  286. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この開発費を新三菱に航空機関係で十億円出している。そうして天川勇という民間人に国防会議から十万円、それから講演料としてそれ以外に十万八千円、防衛庁から講演研究依頼として九万一千円支出している。一体、技術研究本部でできないのですか、こういう支出はおかしいと思う。お答え願います。
  287. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。技術研究本部等におきましては、主として技術研究をやつておりますが、天川某に対する問題につきましては、先般の内閣委員会におきまして私から御説明を申し上げたのでありまするが、(矢嶋二義君「不十分です。お答え願います」と述ぶ)御承知のように、当時の資料を持ちませんので詳細は申し上げませんが、軍事科学、軍事情報等、また欧米における軍事情勢等につきまして調査を委託したものが十万円、その他講演を数回にわたってお願いをしたものが三万数千円でございまするが、これは卑近な例でございまするが、ラジオ、テレビ等にちょっと出ましても一万円、七千五百円等の報酬を受けております関係上、私は数時間にわたる調査に基く講演等を依頼した際に、三万教千円、あるいは膨大な調査を依頼した際に十万円等の報酬は決して過当ではなかろう、かように考えております、
  288. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 何ということですか。それじゃ国会の参考人並びに証人は幾ら手当を受けるか承知しておりますか、お答え願います。
  289. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。国会等においては、きわめて低額であることは私も承知いたしておりまするが、資料の収集その他に多額の金を要するという点も、われわれとして承知をいたしておりますので、その程度のものは決して多額でないということを私は申し上げておるわけであります。
  290. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 岸総理にお伺いします。天川勇という人は、これはグラマン決定に登場した人物です。各メーカーは天川氏を手中に入れれば飛行機がとれるというので争奪戦をしたものです。また、天川氏は、この赤坂を中心に百回余にわたって豪遊をされています。そうしてあなたの部下である吉村主計官あるいは田中補佐等々、飲まされているわけです。それで田中補佐のごときは、啓蒙をした上に、ただで飲ましてくれる人とは、けっこうな人があるものだということを週刊朝日に談話を発表している。そうして天川氏は行政権を侵犯して、天川氏の考え一つでグラマンにきまってしまったというわけですね。こういう天川氏は人物なんです。それにこういう金が防衛庁から、国防会議から流れておるということは、いかにグラマン問題の背景に好ましからざるものがあったかということは明確です。あのグラマンを採用したからといって、果して日本の国防に役立つかどうかということは疑問である。従って新主力戦闘機種の問題は白紙に返して、新たな角度から再検討すべきであると考えるが、お答え願います。
  291. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 次期戦闘機の問題につきましては、昨年の四月、一応グラマン機を国産化するということを内定をいたしたのであります、国防会議において。その後における飛行機の発達や、あるいは財政諸般の事情等も変ってきている事情がございますので、目下これらのあらゆる面から再検討をいたしておるのでありまして、その結果によって最後的決定をいたしたいと思います。
  292. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういう事務的答弁では終りませんよ。このグラマンの問題は防衛庁内の海軍と陸軍の対立です。名前は言いませんが、国会議員の中でも海軍と陸軍に分れて争っているのです。それからまた財界がそのうしろについているのです、それぞれ。右翼もついているのです。御承知でしょう。四月十二日に内定して、八月の二十五日に最終決定するはずだったのです。ところが八月の二十二日に、時の河野国務大臣が自分の腹心である田中衆議院決算委員長を動かして、八月二十二日に衆議院決算委員会で火をふいたのです。ところが河野さん自身国防会議の一議員だったのです。一議員だった人が火をつけて、八月二十二日に燃え上らして、八月二十五日の決定をおくらしたのです。どうしても理解できません。総理、総裁として私は責任を感ずべきだと思う。四月十二日に内定したことは大きな責任ですよ。御所見を承わります。
  293. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この昨年の四月にこれを内定いたしましたのは、防衛庁及び国防会議におきまして、各種のデータを集めて、これを慎重慎議した結果、一応内定をいたしたのであります。しかしながら、なおそのときにおきましても未確定の問題があり、その他これを最後的決定をするためには、なお調査を要すべき点がございましたので、内定ということになって、最後的決定を延ばしておったのでございます。今御指摘になりましたような、国会においてこの問題を決算委員会で取り上げて審議するということも起ったことは事実でございます。また、その間においていろいろな風説等が行われたことも、これは事実でございます。問題はきわめて重大な問題であり、特に非常に多額を要する問題であり、また防衛上もきわめて重要な次期戦闘機の機種の問題でございますから、私は国防会議の議長とし、総理として、最後的決定をなすためには、その後におけるあらゆる飛行機の発達なり、あるいは機種の改良等の事情につきましても、十分な最もアップ・ツー・デートな資料を集めまして、最後の決定につきましては、国民が納得し、また防衛の見地から十分にその目的を完遂できるように、慎重に目下検討いたしておる次第でございます。
  294. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 自衛隊は憲法上いろいろ問題がありますし、多額の国費を使っているわけです。私といえども、国の、安全と平和を守るためにいかにすべきかということは、ほんとうに真剣に考えております。しかしこの防衛庁の運営を見ると、燃えない、使えないガソリンを買ったり、無用の帽子を買い、あるいはガーゼ、薬品を無用に買い、不急なトラックや火器を購入して、何でも買います防衛庁、しかも価格は高く買って、何でもお高く買います防衛庁、F86F、四十五機を計画ずさんのために返したり、委託費とか、研究費を、さっき私が一部指摘したように、非常に不合理にこれを支出しております。で、最近は自衛隊を見学に行くと何でも食べさせます。絵葉書までくれると、こういうやり方をしている。まさに何でもあげます防衛庁、しかもメーカーが作った不良な低性能な武器も引き受けている。こういう点については、もし、安保条約が変に改定をなされれば、国際紛争まで引き受けることになる。何でも引き受けます防衛庁、こういうことでは困るので、厳に反省して今後の対策を講じてもらいたいと思うが、責任ある総理答弁を伺います。
  295. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 防衛庁費が多額に上っており、その使用につきまして、従来も会計検査院等から指摘されたこともございますので、これが厳正にその予算を執行し、十分にその本来の趣旨に沿うて効果を上げますように考えていかなければならぬことは、政府として当然の責務でございます。特に伊能防衛庁長官が新任されるに当りましても、そういう点に関しまして注意を喚起し、防衛庁長百もそういう意味において、懸命にこれらの点についての疑惑を一掃し、同時に、行き過ぎや、その他不当なことのないように、厳に注意をしておる次第でございます。これらの点につきましては、なおいろいろな点からわれわれとして十分戒心をし、考慮を加えていかなければならぬ点があると思いますから、十分に注意をいたして参るつもりでおります。
  296. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 行政管理庁の行政監察局が非常によく行政を監察して各省庁に勧告を出しますが、おおむねこれが無視をされておることはまことに遺憾だと思います。  山口行政管理庁長官に承わりますが、最近どういう監察報告をなし、また、あなたのまなこから、各省庁はこれをいかに処理されておるとお考えになっておられるか、お答えを願います。
  297. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) 行政管理庁の勧告に対しましては、各省庁ともごく一部の例外を除いては、勧告通り改善する旨の回答を得ておる次第であります。しかし、当庁では、その改善の効果を確保するために、さらに自後の改善実施状況につきましても報告を求めて必要に応じて推進のための監察を実施して、改善の実をあげるごとに努力しておる次第でありまして、三十二年十二月に実施した文書による改善実施状況報告によって見ますると、三十年度及び三十一年度に実施した監察中、回答があった十三の監察についての改善状況は、勧告通り改善されたものが百二十一件、これが勧告に対して七六%一を占めております。また、一部改善を含めると百四十七件、パーセンテージにして九二・五%になっておるのであります。また、管区及び地方行政監察局が現地で行なった改善諸件のうち、個々の不当事例に対する改善状況を見ますと、三十、三十一年度における個々の不当事例指摘件数が六千八十三件、うち改善せられたものが五千四百四十五件、これが八九%五に当っております。近くまた改善せられる見込みのもの四百二十件を加えると、合せて九六・四%となっております。改善状況は良好であり、実績は十分上っておると私は考えております。  なお、三十三年十二月末現在における改善状況については、目下調査中でありまして、近くまとまる予定でございます。
  298. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、この行政監察業務というものは非常に大切だと思っておるのです。これは行政の能率が上るし、不正、汚職を防ぎますし、あなたの方では部下が研究されて非常にいい勧告をされる。ところが、書面で適当な回答をもらって、あなたはごまかされているのです。そんなに実施されていない。各省庁の国務大臣は、行政管理庁の監察報告をいかように受け取り、これをいかに処理したか、また、今後いかように処理しようとされているか、各国務大臣からお答え願います。
  299. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 行政管理庁から、特別失業対策事業、臨時就労対策事業につきまして、昭和三十二年七月に、就労者の選定、それから実施地等についての勧告が、ございまして、特別失業対策事業昭和三十年の六月、臨時就労対策事業昭和三十一年四月より、それぞれ実施して参っておるのでありますが、実施当初におきましては、御承知のように、公共事業の実施計画、特に道路関係事業等につきましては、道路整備五ヵ年計画等の制約を受けます等、実施上問題点も少くなかったのでありますが、その後、事業の実施主管省の協力によりまして逐次改善を加えて参っておりますが、なお、次のような諸点を、基本とすることによって、失業者の効率的吸収と、事業の経済的効果の向上を期することといたしております。  第一に、就労者の選定でございますが、特失、臨就は一般失対事業に比べまして、いわゆる高度の事業でございますので、体力検定合格者のうち、特に技能、体力の優秀な者を特別適格者として指定する等の方法によりまして、適格者紹介に努力することといたしております。  それから第二は、失業者発生地域と事業実施地域との乖離の調整をしなければいけない。特失、臨就は、前に申し上げましたように、公共事業計画、道路整備五ヵ年計画等の制約を受けるために、失業者の発生地域と事業実施地域との間に若干の開きがございます。こういう場合も最近はときどきあるのでございますが、関係各省の協力による実施計画の変更、または労務者のトラック輸送等の措置を講ずることによりまして、これらの調整をはかって、行政管理庁の勧告の趣旨に沿うようにだんだんと努力いたしておる最中であります。  事業の早期着工につきましても申されておりますが、その点につきましては、特失、臨就事業の創設時におきましては、事業運営のふなれがございまして、事業の着工がおくれ、その結果、事業が後年度に集中し、あるいはまた、次年度に繰り延ばすなど、失業者の効率的吸収に支障を来たす例がございましたけれども、その後、事業の早期着工に努力して参りましたので、実施時期につきましては、年々改善しつつある状態でございます。  このようにいたしまして、労働省に勧告されました行政管理庁の勧告の趣旨に沿うように、鋭意努力を続けておる最中であります。
  300. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 矢嶋さんにちょっと申し上げますが、どうでしょう、書類で答弁を願うというわけにいきませんか。
  301. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いや、骨子だけ述べていただきます。
  302. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 何か必要なものだけをやって、あとの閣僚のは……。
  303. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それを聞くのが目的ですから。骨子だけ述べて、委員長がお許しになれば、あと詳しいことは、委員会承知すれば速記に載せていただいてもいいんですが、骨子だけを……。
  304. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 農林省といたしましては、昭和三十年度来、数度の御監察を受けております。  まず、二十年におきます事項といたしましては、食糧管理行政に関する件、それから次には多目的ダム事業の監察、三番目には、農業災害補償制度の行政監察、さらにまた、地方公共団体における国の補助金行政の監察。  三十一年におきましては、国有林野事業の機械施設運営監察、それから海岸保全事業監察。  三十三年におきましては、公共補助事業の現地視察の現地監察。それから三十二年にはさらに、農林漁業金融公庫の融資業務の監察。それからさらに、国有林野特別会計の経営監察。第四次の食糧管理行政監察。  三十三年におきましては、畜産局関係の実態調査に関する監察。水系別公共事業の監察。行政官庁保有機械の運営状況に関する監察等でございます。  いずれもこの問題につきましては、多岐にわたる広範な事項でございますが、いずれもこれを尊重いたしまして、周密なる調査の結果を行政監察方面に報告すると同時に、指摘されました事項につきまして改善の道を講じております。  最近におきましては、認許可の行政監察を受けて、これまた多岐浩瀚にわたる指示を受けたのでございますが、認許可は幸いにしておおむね妥当なことをしているけれども、なお、次の点を特に改善するようにという監察の何がありました。すなわち認許可の業務はおおむね妥当であるけれども、認許可事項を整理するように、そうして行政の簡素化、同時にまた、関係の人々に便益を供するようにということでございまして、農林省といたしましては、行政監察によって指示された事項を周密たる検討を加え、すでに改善の方途につきましても、ただいま官房の考査室を中心としまして検討中でございまして、いずれも行政監察局の御意向を尊重して、事務の改善に努めている次第でございます。
  305. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) この際、各省大臣の御答弁なさる方に申し上げますが、矢嶋君の御趣旨に沿いまして、各省大臣はその骨子だけを報告するようにして、詳細は会議録に掲載するようにいたしますから、簡潔にお願いを申し上げます。
  306. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 監察報告に反駁するところがあったらそれは言って下さいね。
  307. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 最近における建設省に対する行政監察勧告は次の通りでございます。  昭和三十二年三月の公共補助事業現地監察結果についての勧告、都市計画事業運営監察結果についての昭和三十二年十二月の勧告、それから昭和三十三年五月に日本道路公団の業務についての調査結果についての勧告昭和三十三年九月、水系別公共事業監察の結果についての勧告がございました。これらの勧告によりまして指摘を受けました当省関係の改善事項につきましては、直ちに改善できる点につきましては、部内はもちろん、関係事業主体に命じまして、改善措置をとらせました。指摘事項のうち検討を要すべき点につきましては、十分に検討を加え、改むべき点は改め、今後さらに適正を期して参りたいと存じます。
  308. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えいたします。  まず、御指摘になりました事項は、一つが国民健康保険の普及計画の実施について一段の努力を要すること。二一つが国民健康保険の事業内容について改善を要すること。三つは国民健康保険における機構実施態勢について厚生省及び都道府県の指導態勢の強化を要すること。四番目は直営診療施設について再検討を要すること等についての指摘がございました。  第一の普及計画につきましては、昭和三十二年第一次国民皆保険四カ年計画におきまして、健康保健被保険者の増加見込が不十分でありましたため、四カ年計画の一部修正を行い、昭和三十二年度増加被保険者数二百七十万を計画とし、その普及及び実績三百六十万人とおおむね計画達成を見、また、昭和三十三年度につきましても四百万人の被保険者増加を計画し、十二月末において四百八万人の新規増加被保険者数となりました。本年度も計画達成は確実と見られるに至っております。  その他詳細にわたりましては、文書でもって報告を申し上げます。  結核予防についての行政監察結果につきましては、結核予防行政監核の要旨は、第一に健康診断につきその総合的運営をはかること。第二は、対象者の把握が不十分であること。三番は検診能力の向上及び保健所の強化に努めるべきこと。  第二に、医療費の公費負担につき、その国庫補助率を引き上げるべきである等でありますが、当省におきましては、この結果に基き、昭和三十四年度の予算におきまして、健康診断及び医療費について改善措置を講じております。これも詳細にわたりましては文書で御報告申し上げます。  次は、機械の稼働実績を把握するために科学的稼働管理体制を確立する必要があるという、統計調査部の統計事務についての御指摘でございました。統計機械の科学的管理体制の確立につきましては、今後留意をして参って、かねて留意して参ったところでございますが、今回行監の御指摘にかかわります稼働時間及び故障時間の管理方法の若干の不備な点につきましては、各機械ごとに作業日報を作成いたしまして、これを管理する等、所要の改善措置を講じておる次第でございます。以上。
  309. 永野護

    国務大臣(永野護君) きわめて簡単に大筋だけ申しますと、運輸省における仕事は、事務処理が大へんおくれているじゃないか。何年も何年も書類を握りつぶして、数代の大臣の間、送っているのはけしからぬじゃないかと……。
  310. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 特に許可承認のところについて。
  311. 永野護

    国務大臣(永野護君) そうでございます。それが一番大きい問題であったのでございます。これは私、就任いたしますと同時に、これに重点を置きまして、あらかたほとんど片づけましたので、行政管理庁の御勧告はまず御趣意に応じたかと、こう考えております。大きな問題だけを片づけました。  それから残りの問題で最も大きいのは港湾行政の統一化。これについてもいろんな案があって、行政機構の改革というようなことがそれに伴いますのでありますけれども、とりあえずその港湾行政の統一化の実をあげますために総合ビルの建築、それで港湾に働いております者が各省の出先に出ていかなければならないのと、それから書類が非常にフォームが違いますので、それが非常に迷惑をこうむっておりますので、総合ビルによって一カ所に行けばどの役所の仕事もみんな済むということ。それから書類を、どの役所の書類もみんな統一化しまして、そうして必要な省の答申の欄にだけ記入するというような方法で、機構をいじらなくとも、とりあえずその勧告ができるというようなことに目標を置きまして、今、目下研究中でございます。  そのほか、今の事務処理体制の整備、権限委任の範囲の調整と責任の明確化、自主的処理体制の確立というふうに三項目についての御勧告がありますが、これにつきましてはおって書類で各項目ごとに御報告いたします。
  312. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部省は特に育英資金に重点を置いて。
  313. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 近年におきまする行政管理庁の勧告のおもなものといたしましては、危険校舎の耐力度についての客観的基準の作成の問題であります。義務教育職員の定数の基準の設定についての問題であります。またお話にありました育英資金の問題についての勧告がございました。これは誠意をもって今日まで改善をはかって参ったのでございます。今後も改善に十分留意をして参るつもりであります。
  314. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 育英資金の方あるでしょう。それを述べてもらわぬと、育英資金に関する勧告、大事な勧告がある。それについて述べて下さい。あれは非常に大事な、最近出た……。
  315. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) この育英資金につきましては、勧告がございまして、あと中央教育審議会にも諮問をいたしまして、ごく最近答申を得たところでございます。この行政管理庁の勧告内容をくみ、また中央教育審議会からつい最近答申のありましたことを参酌をいたしまして、これについては早い機会に改善の具体案を作成したいと考えております。
  316. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 防衛庁は主として人員配置について重点を置く……。
  317. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 防衛庁におきましては、行政管理庁から駐とん地業務部隊、海上自衛隊総監部、病院、陸上自衛隊補給所等の業務内容について監察を受け、さらにまたF86Fの四十五機返還の問題、等について、いろいろと指摘を受けておりまするが、前者につきましては、管理定員が多過ぎはしないか、適正を欠いていはしないか、また補給所等における資材の補給の整備の基準が不明確ではないかというような問題、また部隊における職員の職務内容が明確を欠いておるもの等があるという点等について御指摘を受けましたが、御承知のように管理定員の問題につきましては、自衛隊創設以来まだ日必ずしも長くないものでありますから、若干非能率の点もあるやに見受けられますので、それらの点につきましては、隊員を訓練してできるだけ人員を合理化したい、かように考えております。また補給資材の整備の基準につきましても、管理庁指摘の通り、できるだけ基準を明確にして処理をしたい。また補給所における人員等につきましては、部隊職員をしてこれに当てておるので、部隊職員の演習回数等が比較的ひんぱんであるために能率が上らないということで、来年度の予算におきましては、制服職員千名を非制服職員にかえるということで、部隊職員はあくまで部隊の本来の任務に服するということで、予算上も改正措置をお願いいたしております。またF86Fの問題につきましては、先般の国会においても御指摘を受けたのでありまするが、アメリカの一カ月における乗員練習基準が十八日であるものが、日本におきましては、御承知のように天候その他の関係上、とうてい十八日も演習することが、訓練することが困難であるというような点から、十三日程度以上には日本では天候の関係上乗員訓練をすることが困難であるということが一点と、さらに浜松における射撃場の整備が不十分であったという点、また飛行場の職員の維持の問題等によりまして、訓練上当初の計画通り参らぬために、F86F、三十二年度の四月から六月までにもらったものを返さなければならぬという状態になったことにつきましては、まことに遺憾でありますので、日本の天候その他訓練の実情に沿った訓練基準を作りまして、今後さような遺憾なことのないようにということで、行政管理庁への答申案をせっかく作成中でございます。  その他こまかい問題につきましては書面をもって報告したいと思います。
  318. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) お答え申し上げます。郵政省に対しまする行政監察は、昭和三十一年十月から三十二年の三月まで六カ月間にわたりまして実施されました。その実施に基きまして、三十二年の十月七日に長官からの勧告がございました。その項目は組織、機構の運営について、要員並びに給与処理について、会計制度及びその運用について、業務の合理化について、郵政監察業務の運営について、右のような勧告がありましたので、直ちに各関係の部局の者をして検討いたさしめて、直ちに改善できますものはこれを改善をすることに実施をいたさしめましたし、また今後研究を要するものにつきましては、可能な限り早期に研究を終了することにいたしまして、三十三年三月二十四日にこの旨行政管理庁長官に報告をいたしました。その後三十三年十二月十八日にその後の具体的処置状況について、同庁から照会がございましたので、これにつきましては目下その回答案を取りまとめておりますが、数日中にこの回答ができる、かような事態でございまして、今後十分研究をいたしまして勧告に対しまする成果を上げたい、こういうように考えております。  詳細につきましてはまた書面をもって御報告申し上げます。
  319. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 終りましたね。念を押して下さい。
  320. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまの質疑に対する政府側答弁は、これで終りましたか。
  321. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 大蔵省は二十九年に国有財産の処理について監査を受けまして、いろいろ御注意をいただいた国有財産法の改正と国有財産審議会を設置することになりまして、その後の結果は、成績はまことに良好だと言われております。  また最近は許認可事項並びに国民金融公庫等の監査を受けておりますが、まだ監査の処置についての連絡を受けておりません。受けましたら十分誠意と熱意を持って尽すつもりでございます。
  322. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 最近における勧告を受けましたものは、工業権の所有権制度運営と、それから工業標準化法の運用について、どうものろい、こういうお話でございました。これは私どもも同感しておる次第でございまして、さっそく改善いたしたいと思っております。  なお、科学技術庁の方はきわめて新しい官庁でございますから、まだ勧告を受けておりません。
  323. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省は勧告を受けている件はありません。
  324. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 法務省は勧告を受けておりません。
  325. 青木正

    国務大臣(青木正君) 自治庁並びに警察庁も勧告を受けておりません。
  326. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 山口長官お聞きの通り、あなたの監察報告に反駁できる大臣は一人もなかったわけです。お聞きの通りですから、あなたよく監視しておいていただきたいと思います。大へんお気の毒でしたけれども、どうもこの監察報告が非常に部下が骨を折って出されるのに、軽視されるおそれがある。はなはだ失礼ながら大臣を教育する意味においてお答えいただいたわけであります。  総理大臣に伺いますが、私は、会計検査院報告というものは、国会でつつかれるものだから、相当法的裏づけもある関係もありましょう、重視されますが、この行政監察報告というものは軽視されるおそれがあるのです。これを的確にやれば行政事務が能率が上るとともに、不正、汚職も予防できると思うのです。何らか各大臣に義務づけられるような方法を考える必要があるのじゃないかと思うのですが、総理の御見解いかがでしょう。
  327. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 会計検査院の問題は、御承知のように国会に報告し、国会でいろいろこれを審議されて、これに対する処置を政府として義務的に考慮していかなければならぬのであります。行政監察の問題は、むしろ行政府が進んで、会計検査院等によって指摘され、もしくは批難されることのないように、事前にこういうことを自戒自粛する意味において行政府が作っておるものでございます。私は、矢嶋委員のお話のように、汚職をなくし、綱紀を粛正し、その他事務能率を上げて国民に奉仕する目的を達する意味において、行政監察というものには非常に期待をいたしておりますし、また、先ほど来申し上げます通り、各省大臣も決してこれを軽視なんかいたしておりませんで、十分それが達せられるように、目的が達せられるように努力しておりますが、この上とも十分に注意いたします。
  328. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に、一月二十二日、行政審議会から、行政機構の改善並びに行政運営の改善について答申がなされております。これを総理並びに自治庁長官はいかようにとられているかというお答えを願います。長くなると気の毒ですから、問題をしぼって、すなわち、この答申は、私は首肯できる点もあるが、賛成いたしかねる点があります。問題をしぼって、内政、中央機構の点については中央集権になってはならない、かりに自治省を設けるにしても、国家の地方自治に対する権力的関与を防止するために、地方自治委員会を作ってはどうかということが言われておりますが、この点。それから審議会等を整理すべきである、特に審議会の会長に大臣はなってはならないというようなことが答申されておりますが、前半についてはごく簡単にお答えを願うとともに、この二点に特にピントを合せて両大臣からお答えを願います。
  329. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 行政審議会の答申につきましては、政府部内におきましてそれぞれ検討をいたしております。  今御指摘になりました自治省の問題につきましては、これもずいぶん長らく各方面で論議された問題でございます。しかし、同時に、やはり地方自治というものの本質を曲げてはなりませんし、しかも、最近の地方自治の状況を見まするというと、ずいぶん野放図な事態も地方自治体等においてはございます。これらについては適当な指示や助言を与えていくことも必要であると思います。これらの運営を誤まってはいけないことでありますから、なおこの問題についても検討を続けております。  それから、審議会等をできるだけ整理するということにつきましては、私も同様に考えております。必要なものはもちろん置いて、むしろ法に明定して、その権限等を明らかにするとともに、目的を達したものもしくはその後事情の変ったもの等につきましては、これを整理するということは適当であると考えます。行政庁の各大臣を審議会の会長にすることがいいか悪いかにつきましては、ことごとくこれを排除するということもいかがかと思います。しかし、審議会の性質によりましては、原則としてはその審議委員の間から適当な人を選ぶことがいいかと思いますから、十分各種の審議会等をなお検討して最後の結論を出したい、こう思います。
  330. 青木正

    国務大臣(青木正君) 行政審議会の答申に基いて、自治省の設置の問題でありますが、ただいま総理から御答弁申し上げましたように、目下政府内部において検討中でございます。  ただ、この機会に、私、一言申し上げたいと存じますことは、私ども考え方は、お話のように、中央集権強化と全然逆な考え方でありまして、現在地方自治体というものは非常に大きな仕事をやっておるわけであります。従って、地方の意向を中央に正しく反映させるためには、私は、現在の機構でなしに、やはり責任を明確にすべきではないか、こういう考え方に立って、むしろ中央集権と逆な考え方、地方の意向を正しく中央に反映するために責任を明確化する。そのためには、やはり閣議の請議権等を持つ自治省にすべきではないか、かような考え方に立っておるわけであります。なおまた、かりに自治省を設置いたしましても、現行の地方自治法を改正するかどうか、少くとも憲法ではっきり打ち出されております自治の本旨をくつがえすようなことがないように、私どもはその点は全く矢嶋委員と同じような考え方に立って、中央集権というようなことでなしに、純粋な責任の明確化、そうしてまた地方自治を守っていく、こういう考え方に立って改正するならば改正して処理すべきものと、かように考えておるわけであります。
  331. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 機構改革法案をこの国会に提出されるのかどうか。提出されるとすると、その内容の概略いかん。
  332. 青木正

    国務大臣(青木正君) この問題は、私の方というよりは、直接には行政管理庁の問題であります。私の方といたしましては、いろいろ検討はいたしておりますが、所管は、行政管理庁でその最終的な決定はなすべきものかと思っております。
  333. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 山口長官答弁を求めます。
  334. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) 行政機構の改革につきましては、岸内閣の選挙中に公約した問題でもありますので、自来、私の方で熱意を持って審議検討中であります。  ただいま青木自治庁長官から答弁された自治省設置の問題、それと公安行政の一元化、こういった問題は、なお公安行政の一元化につきましては、地方自治体の管理権の問題等多少まだ検討すべき問題が残されておりまするが、これらを調整いたしまして、可能な範囲において今期国会に提出するよう、総理から慫慂されておるようなわけでございます。
  335. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 自治省設置法は……。
  336. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) 自治省設置法も提出する予定でございます。
  337. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 内閣はこの国会に栄典法案を提出する意図があるやに承わっておりますが、国の栄典制度はあくまでも平和と民主主義への貢献ということをもととし、人の上に人を作らぬという立場で、新しい時代に即応する栄典制度を設けるべきだと思います。わが日本社会党はその主張を公表しているわけでありますが、その主張を取り入れて提案されるお考えはないか。率直にいって、今まで政府与党で考えられたいわゆる栄典法案というものは、民主主義、平和主義のわが日本国に即応するものとは考えられない。その点、総理見解を承わります。
  338. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 栄典制度につきましては、御承知通り憲法にもその規定があるのでございまして、現在日本におきましても栄典の制度はあるわけでございます。ただ、生存者にはこれを原則として与えないという立場で今日に至っておりますが、今お話しの通り、国家のいろいろな面において特別の功労があり、また善行のあった者に対して、これを表彰する意味における栄典制度というものを設けるということにつきましては、かねて内閣に栄典制度審議会というものを置きまして、いろいろと審議調査をいたしましたその結果得られた案に基いて、大体その線に沿うてこの栄典制度を制定したいということで、政府としては案を国会に提案いたそうとしております。  こういう点につきましては、こういう栄典制度のようなものにつきましては、もちろん、社会党と自民党におきまして、できるだけ事前に調整できる点については意見の調整をし、また、審議の途中におきましても、こういう問題につきましては十分隔意なく話をして、今お話しになりました日本の平和国家として、また民主主義の国家として、その理想の線にかなうような栄典制度を設けることが必要だと、そういう意味において、社会党との間にも話し合いをある程度いたしております。しかし、まだ両党の意見が完全に一致いたしておりませんし、また、その中には、国会における審議を通じて両党の意見の調整をはかる必要のある点も、また、それが適当であると思われるような点もあるように思います。こういう点におきまして、政府、与党、社会党との間に話をいたし、この法案の扱い等につきましても、十分意見を調整するように努めております。その結果として、できるだけ国会に早く提案していきたいと、こう思うのであります。
  339. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今、内閣で閣議決定した案は、鳩山内閣の当時出されたものよりはずうっと後退している。昔の制度に変っております。特に問題は、勲章を一等から六等までつけて、さらに勲等を一等から六等までつける。たとえば、矢嶋であったならば、勲四等瑞宝四等章、四、四というナンバーを二重につけるというようなことは、やや、私、非常識だと思うんです。あなたは、勲一等岸信介という名刺を作らにゃいけませんか。そういう僕は郷愁にかられてはならないと思う。鳩山内閣から出された案というものは、勲等なんかなかった。さらに、勲章をもらえない者には功労章をやる、勲章も功労章ももらえない者には褒賞をやり、さらに賞状、賞盃、賞件をやる。しかも、個人並びに団体にやる。ことに団体に対して、内閣総理大臣の委任事項として、賞件を与える。賞件とは何ぞやといえば、旗だという。栄典制度で、そこらの婦人団体や青年団体やらに、賞状、賞盃、賞件まで与えるという行き方というものは、私はどうしても納得できない。これらの点は抜本的に再検討を要すると思うんですが、いかがですか。
  340. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 内容につきましては、先ほど申し上げましたように、なお国会の審議を通じて十分に一つ審議すべきものであると思います。ただ、栄典制度を、決して過去の何か郷愁にとらわれておるということではございませんけれども、やはり栄典制度というものが、国民に親しまれ、国民からやはり一種の、これをもらった者に対して尊敬をするというような気持が出ることが、これは必要であると思う。そういう意味から申し上げますというと、やはりどの国におきましても、沿革的な歴史的な事柄や、それから国民の間に親しまれるような、比較的親しみ深いというような関係を尊重するということは、どこの栄典制度においても行われております。こういう意味におきまして、私どもは、在来の栄典制度で用いておる勲章等のことにつきましては、これをできるだけ尊重していくということが、むしろ、こういう制度としては適当なんじゃないかという考えに立っておるわけであります。しかし、その種類であるとか、あるいはその呼称であるとか、もしくはそれの扱いというようなものにつきましては、十分に一つ御審議の過程において議論を尽して、適当なものを作るように努めていきたい。
  341. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 旗なんかどうですか。
  342. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 旗なんというものは、そういうことになっておったんですか。私、よくその点はなにしておりませんけれども……。
  343. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まだ知らぬのですか。
  344. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 功労章とか、褒賞とか、あるいは木盃というような例はあると思いますが、旗というのは……。
  345. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あるんですよ。優勝旗を与える。おかしいでしょう。
  346. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 栄典制度としても、どうも私よく承知いたしておりませんが、なお検討いたしまして……。
  347. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理並びに科学技術庁長官並びに通産大臣に……。わが国は、エネルギー消費量が多く、エネルギー供給拡大策を講ずる必要があるといわれているが、具体策いかん。  原子力発電は、ある程度の経済性を検討して発足すると思うも、人口稠密なわが国では、その安全性には格別の意を払うべきである。そうして災害国家補償体制を確立した上で導入すべきだと考える。英国のコールダーホール型、並びに米国のRWR型のいずれが可なりやということは、大いに論のあるところであると思われるが、いかに考えているか。さらに、これを東海村に設置するといわれているのであるが、その安全性は確保されるのかどうか、各担当大臣からお答え願います。
  348. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 将来のエネルギー対策といたしまして、政府は、昭和五十年度におきまして、どうしても石炭換算、二億七千万トンの石炭に換算するエネルギーが必要だということに相なっておりますが、それに対しましては、だんだん石油の輸入率が多くなりまして、少くとも五十年度には、四八%は輸入品をもって充てなければならない。それから考えますというと、日本の国内の資源から考えまして、石炭は、そのときに七千二百万トンの石炭を買わなければならぬということになっておりますから、どうしても、外貨を節約する上におきましては、その増加するエネルギーは原子力によって得る。ただいまのところ、五十年度におきましては、七百万キロワットの原子力を使う。これを石炭換算にいたしますと、二千万トンの石炭になるわけです。その方針で進んでいきたいと存じておるわけであります。  なお、原子力の問題につきましては、そういうようなわけで、日本といたしましては、天然の資源、エネルギー資源が少いから、ほかの国よりも、まず原子力の利用ということに重点を置いていかなければならぬ。そういう事柄を考えておりますが、コールダーホールのような式につきましては、いろいろ検討いたしましたが、ただいまのところ、原子力発電会社の方ではGECという会社の分を採用するというふうなことで、内々検討を加えておりますが、これにつきましては、仮契約ができますれば、それをもって科学技術庁に対しては原子力発電、また通産省に対しましては発電という意味から、両方に出願されるわけでありますが、その出願が出たときに、さらに十分科学的に検討を加えたいと思っておりますが、ただいまのところでは、これは学者側では、相当議論がある、危険性があるという意見が相当ありますが、しかし、大多数の意見では、耐震性においても、また熱係数におきましても、大体これをコントロールすることは不可能でないという結論が出ておるものでありますから、それによりまして、さらに出願されたときに十分検討を加えた上でこれを決定したいと思っております。  なお、東海村の点につきましては、これは、ただいまのところ、上層気流について相当の問題があること、また、海流の問題、地盤等の関係があるものですから、こういうような点も、いよいよというときには、十分検討を加えてからこれを実行に移したい、こう存ずるわけであります。  なお、イギリスのコールダーホール型と相対応して、アメリカの濃縮ウランを使いますウェスティングハウス型、ゼネラル・エレクトリック会社の、この二つの問題につきまして、ただいま、せっかく技術的に、また経済的に検討を加えておるわけであります。ただいまのところ、採算的に見まして、今度のコールダーホールでは、一キロワットが約五円であがる、こういうことを言っておりますが、五円の内容を見ますと、燃料費が一円五十銭、それから固定資産に対する利息等が三円、大体四円五十銭、さらに、そのほかの費用が要るわけでありますが、これが将来になりましたならば、燃料費は一円以下であげたい。それから固定資産の方はこれは少くとも二円そこそこであげて、合計三円以下で、あげたい。こういうふうな考えでおりますわけでありますから、三円になれば火力発電よりも水力発電よりも安くいく。これが現在の計算の基礎でありますが、なお、この点につきましては、よほど重大な問題でありますから、日本全国の科学技術者、それから関係者と協議いたしまして、検討を加えたいと存じております。
  349. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 国家補償は……。
  350. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それから国家補償の問題につきましては、この問題はやはり国家において責任を感ずるわけなのでありますけれども、差し当る問題は、これを設置する設置者の責任において保険にかけしめて、これを保険プールを作って、外国の保険会社にもこれをかけると、こういうふうなことにしてやっていきたいと思っておりまするが、原子力発電における災害というものは、ただいまのところ、なかなか予測し得ざるものでありまして、非常な大きな災害が起るというふうなことを考えましたときには、これは少くとも国家はある程度の責任を感じておるわけなのでありますから、その点は、将来十分検討いたしたいと存じております。
  351. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に原子力発電に対する考えを聞きます。
  352. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいま高碕君からお答えを申し上げましたことに尽きると思いますが、日本としては、やはり将来のエネルギーの資源について、石油にたよる部分がだんだんふえていっておりますが、これは日本の外貨の関係からも考えなければならぬ点がある。そういう意味において原子力発電の問題は、これを日本としてはできるだけ早く実現をしたいという考えであります。しかし、それを実現するにつきましては、先ほど来言われておるいろいろな方式のいずれをとるかという問題、また、これから生ずる危険に対してどういう災害防止、もしくはその補償をどうするか、あるいはその場所をどこにするかというふうな問題については、慎重に一つ研究すべきものであると、こう考えております。    〔委員長退席、理事堀木鎌三君着席〕
  353. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 先日科学技術庁は、経済発展と科学技術なる印刷物を発表して、青写真とも申すべき目標設計を指示した。科学技術会議議長は、これをいかに国策として推進せんとするか、御所見を承わりたい。  それから世耕長官に承わることは、この印刷物において、政府の長期経済計画を批判しているが、これに対する経済企画庁長官の御所見いかん。
  354. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 科学技術会議は、まだこれは発足いたしておりませんが、発足いたしました上におきましては、十分今の意見を検討いたしまして、適当と思うものについては、これを推進することに努力をしたいと思います。
  355. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。  先ほど科学技術庁長官からエネルギー問題について御説明した内容については、私も同様であります。ただ、この際つけ加えて申し上げたいことは、エネルギー源の日本の現在の状況は、石炭、石油とだんだん発展してきまして、電力関係も飽和点に達しているということは御承知通りであります。結局それがために原子力をいかに活用するかということが問題になってきたと思います。原子力の活用問題については、まだ幾多の難点が残されておるということは御指摘があったように記憶いたしております。しかしながら、日本で取り組まなくちゃならぬ今後のエネルギーの問題は、原子力をいかに活用するかという問題であり、同時に、いかにすみやかにこれを平和利用にとり入れるかということが大きな問題だと思います。御承知通り今月初めでございましたか、すでにニューヨークのある銀行では、セシウム一三七の小粒子を利用して、二百年間巻かないで運転できる時計が、もうすでに取りつけられたという報告がきたのでございます。そういうふうに物理関係、科学関係は長足の進歩をいたしておりまするから、これに対応するような対策を講じなければならぬということを、われわれ企画庁としても痛切に感じております。  もう一つエネルギー問題について諸外国が研究していることは、太陽熱の利用です。これはぜひとも具体化されなければならぬと、かように考えておりますが、これをいかに技術的に平和産業にとり入れるかということが、長期計画において重大な問題であると、せっかく研究していることを申し上げます。
  356. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 科学技術庁長官答弁を求めます。それから経済企画庁長官には、エネルギーのことだけを伺ったのではないのです。科学技術庁が出した経済発展と科学技術という印刷物で、あなたのところの長期経済計画を批判されているのです。それに対してどういう反論を持っているかということを伺ったのです。
  357. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 非常に進歩的であり変化の多い今日のエネルギー問題を……
  358. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 エネルギーだけじゃないのです。
  359. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) いや、それを端的に批判することはどうかと思います。それは観点の相違であると私は考えます。    〔理事堀木鎌三君退席、委員長着席〕
  360. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 最近の科学技術の進歩ということは、実に驚くベきものでありまして、それによって政府といたしましても、これは将来産業構造がある程度変化しなければならぬ、こういう言葉で私ども考えていかなければならぬと存じておるわけなんであります。従いまして、今後の科学技術の進歩につきましては、科学技術会議を中心といたしまして、主として基礎的研究をいうものを主体に置き、そうしてどういう程度の研究が必要であるかということも、科学技術会議においてはきめなければならぬ。同時に、その技術者をどういうふうにして養成するか、同時に、これが産業上どういうふうな影響を来たすか、こういう点も十分検討を加えたいと思っております。今これは結論が出ていないときでありますから、今すぐにこれを長期計画に繰り入れるというのは、あまりに早くないだろうか、そういう点、十分検討を加えたい、こういうふうに考えております。
  361. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理並びに科学技術庁長官、相次ぐ人工衛星、人工惑星の打ち上げによって、いよいよ宇宙世紀の開幕は告げられたが、この宇宙の研究開発に積極的国策を樹立する考えはないか。わが国の宇宙科学技術の理論的水準は高いと聞いているが、平和的利用を目的として推進すべきと考えるがいかん。
  362. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 宇宙についての研究及びこれが利用の問題というのは、これからの世界の科学上の大きな課額であると思います。私は、理論的な研究については、日本において今のところいろいろな点からの研究が相当進んでおる。ただ、日本として現在の技術及び国力をもってして、大きな人工衛星や、あるいは宇宙自体の実態をああいう方法によって把握するということは、まだ日本としてはその状態に達していないと思います。将来の問題として十分考究していかなければならない問題でありますが、現在のところはそうだと思います。
  363. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、近来宇宙科学の研究は非常に進んできたものでありますから、政府といたしましては、差しあたり航空技術審議会の中に宇宙科学研究部会という一部会を設けまして、各省との間の意見の調節をいたしまして、主として基礎的研究に重点を置いて進んでいきたいと考えております。
  364. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 公立文教施設の整備五ヵ年計画、すし詰め学級解消というのは、岸内閣の大きな政策の一つでありますが、本年度七十七億三千万円予算化されております。これで確実に五年後に各学級は学級編成五十人以下、それから施設は整備される、また大蔵大臣はそういう予算化をやる考えであるかどうか、蔵相並びに文相の答弁を求めます。
  365. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 三十四年度から三十八年度までにかまえて、教員定数の標準化及びそれに必要な施設の整備等を五ヵ年計画で完成をいたすつもりでございます。
  366. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これまた大蔵省も五ヵ年計画を強力に推進するつもりでございます。
  367. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなた方はそういうことを言って、昨年の五月、票をかせいだわけです。本年は小学校五十八人、中学校五十四人で七十七億予算化しているのですが、これでは、このぺースでいけば、五年では絶対に終りません。私は、昨年の予算委員会で繰り返し繰り返し伺ったところでは、岸総理大臣並びに松永文部大臣は、昭和三十四年度は五十人になるのだ。中学校は五十人編成になるのだということを、明確に速記に残している、公約違反ではないですか、説明してお答え願いたいのです。五十人どころか、五十四人じゃないですか。
  368. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年の衆議院の総選挙に当りまして、このすし詰め教室を五ヵ年計画をもって解消するということを明らかに公約をいたしまして、その線に沿うて、政府としてはこれが実現に邁進したいと考えているわけです。
  369. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 公約違反の件は。
  370. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 公約は五ヵ年計画でもってこれをなくするということを公約いたしております。
  371. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 昨年の答弁と違うわけです、陳謝しなさい。昨年繰り返し繰り返し言ったところでは、一学級は五十人以下ということになりますということを、繰り返し繰り返し答弁しております。
  372. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは五ヵ年後にそうするということではありますまいか、そういうつもりであります。
  373. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 五ヵ年計画でそうなるんじゃないんです。来年度で五十人になりますと答えているんです。訂正か、何か釈明しなさいよ。
  374. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げました通りに、わが党としては考え、そういう意味において公約をいたしているのでありまして、あるいは私その前の速記をよく承知いたしておりませんが、われわれとしては、あくまで五ヵ年でもってこれをなくし、五十人以下にするというつもりで、ずっといるわけであります。言葉の足りないところがありましたら訂正いたします。
  375. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点は、五ヵ年で完全に行なえるようなぺースで一つ大蔵大臣もやっていただきたい、要望しておきます。お答えになりますか。
  376. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 少し具体的に申し上げないとまずいかと思います。公立学校の施設整備について、今日までの得られた資料に基きまして、慎重に私ども取りまとめたところでは、国庫の補助額としては四百十九億というものが一応想定されるのであります。これも五ヵ年で計画をするということを、先ほど申し上げた次第でございます。もっとも、この金額そのものは学童、生徒の自然増や人口の都市集中だとか、建物の老朽化の進行、あるいは学校統合計画の具体化等、いろいろ不確定な要素を持っておりますから、さらに、その実際のやり方につきましては、そのときどきにおいてこれを改定していく必要があるかと思います。ことに、先ほども言っておられましたように、地方団体の自力による建築の数量というものも、これも一応の見込みだけでございますから、これらの点を考慮いたしますと、今後の時日の経過とともに改定を必要とするということも考えられるのでございますが、いずれにいたしましても、公立学校施設整備五ヵ年計画というものを、予定通りこれは推進して参る考えでございます。
  377. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に話をかえまして、青木国務大臣並びに橋本文部大臣。それは、過去一年間における火災の件数、損害、原因、特に最近、国立学校、市町村立学校の火災が多いが、その件数、原因。そうして起債等の際に、起債のワクが不足のために建築ができないでいる、今、自治庁当局は六億の起債のワクの拡大の要求を大蔵省にしているが、大蔵大臣はこれを許す考えかどうか、各大臣より答弁を願います。
  378. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 火災はまことに遺憾で、申しわけない次第であります。従来からしばしば関係の者に注意は喚起いたしております。国立学校におきます火災は、昭和三十二年には十三件二千九百四十四坪、損害額は六千三百万円、昭和三十三年には十三件、四千二百五十五坪で、損害額は約四千九百万円でございます。この火災被害坪数のうち約三〇%は応急補修をして使用できております。焼失坪数は国立文教施設整備坪数の約六%に当っているのであります。で、この火災の原因につきましては、放火、漏電等いろいろ推定されるものがあるわけでありまして、あまりはっきりいたしておりません。国立学校の施設には明治年間の木造の建物が約二十万坪もございまして、ただいままで火災の出ておりますものは、こうしたものを含んでございます。従いまして、出火等につきまして、その防火について十分の設備を——注意をすると同時に、改築の際に不燃性構造のものに整備するように、せいぜい骨を折って参りたいと、このように考えております。
  379. 青木正

    国務大臣(青木正君) 火災の発生件数を申し上げますと、三十三年度における火災の発生件数は、合計いたしまして三万五千八百六十七件でございます。損害額は二百十五億ほどになっております。なお、御参考までに、三十二年度は三万四千六百五十件、損害額は二百六十六億、三十一年度は三万三千三百十二件、損害額は三百七十一億という数字になっております。  それから先ほどお話の学校等における火災復旧と、官庁の出火によるそれに対する起債の問題であります。お話のように三十三年度の一応の災害復旧の火災のための予定されておりましたのは十五億であります。ところが、昨年御承知のように秋田県庁あるいは島根県庁というような大きい建物が焼失いたしておりますし、さらにまた、復旧に当りまして、最近は耐火構造の建築物を作る傾向になっておりまして、私どもとしてもなるべくそういうふうに耐火構造にすべきものであるという考えに立って、できるだけその要望に沿うようにいたしております。従いまして、起債も従来の予定されました十五億では不足を来たしておりまして、現在のところ約四億六千万円ほど不足するということで、先般来大蔵省と折衝いたして話ができまして、昨年の十二月末までに起債したものにつきましては、各方面の御要望に沿うように起債をつけるということで話ができたわけであります。充当率は大体八八%程度の起債の充当率であります。それ以外は自己財源等で、大体昨年十二月までの分につきましては、これによって大体処理できるめどがついたわけでございます。
  380. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま自治庁長官から御説明いたした通りでございます。
  381. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 観光資源豊富なわが国は、国立公園の施設整備を行うべきだと思いますが、現状いかん。  国立公園で入場税を徴収したり、あるいは国立公園の地域内に市町村立公園を設けて入場税をとっているような例があればあげなさい。これは好ましいことか、そうでないことか、厚生省当局の見解を承わりたい。
  382. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 国立公園等の整備につきまして、昭和三十三年度におきまして、これが管理の定員化もいたしましたし、施設といたしましては、三十三年度におきまして一億四千五百万円、三十四年度におきまして一億五千五百万円を投じまして、これが整備をいたしまして、その景観の保持と、そうしてまたその健全な利用をはかっているような次第でございます。しかし遺憾ながらその中に、たとえば阿蘇等におきまして、入場料をとっている遺憾な例がございまして、この点はまことに好ましくないものでございまして、国立公園に指定になったという以上は、健全な利用ということが望ましいというふうに私ども考えております。この入場料値上げ等が最近また行われるやに聞いておりまして、この点世論の指導と、世論の動向等も非常な反対の機運にございまするので、私どもといたしましては、この値上げをやめさせるべく目下努力をいたしているところでございます。
  383. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がないからこの点は繰り返しませんが、昨年の予算委員会でも私伺い、時の堀木厚生大臣は、場合によれば自然公園法を改正してでもこれを改めさせたい、こういうことを述べられたのですが、厚生大臣の具体的解決策いかん。
  384. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 全国を見てみますると、こういう非常識なことはあまり行われておりません。ほとんどございません。従いまして、こういうことにつきまして、私はできるだけ話し合いによって、単に権力的にこれをやるということでなくて、話し合いによってこれを禁止させるというような方向で目下努力をいたしておるわけでございますが、どうしてもこれがいけないという場合におきましては、やはり立法措置を考えなければならないのではないかというふうに考えております。
  385. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと一分ばかり待って下さい。これから、最近よく巷間に伝えられております総理の身辺の問題について、日本の政治のため、総理のために若干伺います。  まず総理は、就任当時国電で箱根、あるいは熱海に行かれておりました。また乗用車は国産車を使われておりましたが、これをおやめになったのはどういうわけでございますか。
  386. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 乗用車としては国産車を使っております。また熱海や箱根に行く場合におきましても、そのときに応じまして、あるいは国電を使用することもございますし、自動車によることもあると、こういうことでございます。決してこれを廃止したというわけではございません。
  387. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理は各種審議会の意向、並びに審議会の委員諸君の意見は尊重いたしますか、どうですか。
  388. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん尊重いたします。
  389. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 小汀氏は政府の諮問機関を十一勤められております。国家公安委員会委員ほか十一件を勤められております。ところが週刊朝日に、「岸君よ人生観を直せ」と、ものすごい文章を書かれておりますが、これに対するあなたの所見はいかがでございますか。
  390. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 審議会の意向は私尊重すると言っております。審議会内における個々の意見というものはこれはまた別でありますし、いわんや審議会の委員の個人たる意見につきましては、先ほど申したところとは別でございます。
  391. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その中で小汀氏は、あなたが総理にいることは世道人心の上に及ぼす悪影響がある、また「岸君が表立った金もうけ仕事で成功した歴史は、これを見ることが出来ない」、あなたの経済生活を社会に公表すべきだ——まあ他にありますが、この三点に対するあなたの御所見はいかがですか。
  392. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の総理であることが世道人心に害があるというのは小汀君の意見であろうと思いますが、私はもちろん足らざるところもたくさんある人間でありますが、私としては、自分の全力をあげて政局を担当しておるのでありまして、私自身みずからは、世道人心に、私がこの総理におることが害があるとは考えておりません。  経済的な仕事において私がかつて成功したことがないということでありますが、私はそうたくさんの経済的仕事もやっておりませんけれども、戦後二、三の会社に関係したことはございます。しかし別にそれについて非難を受けるようなことは私としてはいたした覚えはございません。
  393. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それから経済生活について……。
  394. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の私生活についていろいろな論議が国会においても行われておりますが、私自身みずから顧みて、決してやましいということは考えておりません。
  395. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その経済生活を社会に公表するお考えはないというわけですか。
  396. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この前の当委員会においても、自発的にそういうものを、財産目録等を明らかにしたらどうだという御意見のあったことも委員長から承わっております。今日のところにおきまして、私は直ちにそれをするという結論にまでは達しておりません。
  397. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 小汀氏は先ほど申し上げましたように、国家公安委員会委員以外十一にわたってあなたから審議会の委員を任命されている。そういう人物からこういう批判があるということをあなたは厳に反省しなければならぬと思う。さらに矢部貞治氏は、後継者があればやめてよいとあなたが言ったと言うのですが、事実かどうか。そうして矢部氏は、岸総理は引責辞職すべきだということを雑誌に書いておりますが、それに対する所見いかん。
  398. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、私が在任をいたしております限りにおきましては、私の全力をあげてその職責を尽して参りたいと思います。もちろん公職の立場でありますから、私自身がそう考えましても、もし責任を負わなければならない事態が起ればこれは責任を負うことは当然でありますが、今日のところ私は引責辞職するという考えは持っておりません。
  399. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 後継者があればやめてよいということをお答えしたのですか。
  400. 岸信介

    国務大臣岸信介君) どういう根拠でそういうことを言われておるのか知りませんが、もちろんわれわれこういう立場におります以上は、常に適当な後継者があるということはこれは必要なことであり、生き身の人間でありますから、いつどういう不慮のことがないとも限りませんから、適当な後継者があることは私は心から願っておりますが、そういうことはずっと一貫して思っておりますが、今御指摘になったようなことを特に私が言った覚えはございません。
  401. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今の二人は閣外の人ですが、十二月まであなたの内閣の閣僚の一人であった池田さんは、岸さんの心がまえが違っている、政策がいけないのじゃない、政治家としての心がまえが違っている、権力主義であり、金権政治をやっておる、また専制政治的なところがあるということをるる述べられております。そうして池田さんはあなたに対して、岸さんあなたは主流派の総裁だという反省を促したと述べておりますが、いかがですか。
  402. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、私の行動に対していろいろな人がいろいろな批評をすることはもちろん自由でありますが、私自身金権政治であるとか権力政治であるとかいうものを信条としたり、あるいはこれを行なっておるとは考えておりません。従ってそういう意見に対しましては、もちろん私自身、常にいろいろな批評に対しましては謙虚な気持で反省をしていかなければならぬこと言うを待ちませんけれども、私はそういう私に対する批評は当っているものとは考えておりません。  なお、私が主流派だけを代表している総理であるとか総裁であるとかいうことにつきましては、もちろんわが党におきましては公選制度をとっておりますから、私を総裁として適当であるとして私に投票した人もありましょう、またそうでない反対の人に投票した人もありましょうが、いやしくも党として分裂することなく、選挙が終ったならば、新しい総裁のもとに結束してやるということであるのが私は政党のあり方だと思います。こういう意味におきましては、私は決して党内における私を支持した人々だけを代表する総裁だとは考えておりません。
  403. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さらに、あなたの党員である辻君並びに川崎君はものすごい演説を公開の席上でなされている。党紀委員会で一応の線が出たが、次に総務会はそれをたな上げにすることになったというのですが、あなたの主張が負けたわけですか。
  404. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の党におきましては、党員の言行等において党員としてふさわしいか、あるいは党員としてははなはだ不都合であるかとかいうようなことを党紀委員会及び最後の決定を総務会において決定することになっております。両君の問題につきましては、お話の通りかつて党紀委員会におきましてある結論を出したのでございます。しかし総務会におきましては、それが留保されてきております。総裁選挙が行われまして、総裁選挙前の行為については一応これを白紙に還元して、その後の問題については、別にあらためて党の機関において検討をいたしているというのが現状でございます。
  405. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 問題が起るときは大がい内部に問題があるものです。燈台もと暗しという言葉がございます。あなたは十分反省されなくちゃならぬと思います。正副議長は引責辞職したじゃないですか。六役は全部やめたじゃないですか。あなただけが残っていらっしゃる。それから石原党紀委員長は辻、川崎君の処分のためにあなたの命を受けて一生懸命努力されて、ああいう結論を出そうとしたところが、総務会でたな上げされて、石原君は防衛庁長官になるといったが、どたんばになってなれなくなっちゃった。それからまた警職法のときは、青木さんは自治庁長官をやめて、国家公安委員長に専念してまっしぐらに進んで行った。ところがあなたがまっ先に後退した。当時横山泰三氏がうまい漫画を書いておられます。安保条約にしても、藤山さんをどんどん走らせて、藤山さんはたな上げされた形になってしまう。非常にこれは総裁として私は考えなければならぬ点があると思うんです。しかも戦闘機の問題が起ったでしょう。これは児玉氏が義憤にかられて、そうして河野総務会長に話を持ち込んで、河野さんが八月二十二日田中決算委員長をして取り上げさした。その後別荘の問題が起ってきて国民に疑惑を持たれている。中共の問題、日韓の問題も一向進まない。川崎君の言葉をかりてするならば、岸内閣は何もやれない。二月二十六日の衆議院予算委員会分科会の速記録というものは、ものすごい表現でやっておられる。あなたは一体総理なり総裁としてこれで責任が果せると思うのですか。こういう中央政情が地方政界に影響を及ぼすのです。それと同時に最近伝えるように、地方自治体に汚職事件が次々と起るわけです。あなたはまずもって範をたれなければならぬと思いますが、その御所見を承わりたい。
  406. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 党内における党員の統制の問題等につきましては、もちろん非常に党員の数も多いことでございますから、いろいろの問題があることもやむを得ないと思います。十分党の機関も、それぞれこれらの点につきましては真剣に検討いたし、党の統制をとるように努めております。ただ多少事実と違っておりますから申し上げますが、この前の川崎、辻両君の党紀委員会において取り上げました問題は、私がそれを命じてそれを大いに推進したにもかかわらず、意思に反して云々というようなお話でありましたが、これは全然そういう事実はないのでありまして、党の幹事長なりその他執行部においてこの問題を取り上げて、そうして党紀委員会に付し、党紀委員会で審議したということでございます。私自身といたしましては、具体的の党員の行動につきまして、総裁としていろいろと批判し、もしくはこれに対する意見を言うことは差し控えておりますが、しかし党としていやしくも党制を乱り、今お話にもありましたように、それが各界にいろいろな影響を及ぼすということは、これは政局を担当している与党の姿としてははなはだ望ましくない形であるから、十分党紀の振粛をはかり、そうして党の統制について外部から疑いを生ずるようなことのないように要望はいたしております。
  407. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなたは先般栗山委員質問に対して、川崎君の件については、党の機関で検討しているから、自分の主張は十分徹底するように努力するとお答えになったのじゃないですか。
  408. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はこの前栗山委員の何に対して、総裁として一体どう考えるかというお話がありました。党員の除名とか、あるいは党員に対して制裁を課するということは、私の方の党では、党規、党則の上から、党紀委員会においてこれを審議し、裁務会において最後の決定をするという建前になっておって、現在この問題については党紀委員会において審議中であるということを申し上げたわけでございます。
  409. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうして、あなたの主張がいれられなくて棚上げになったということが新聞、ラジオで報じられているのです。それで一体総裁は勤まりますか。あなた、川崎君はかつては国務大臣をやった人ですよ。相当のあなたと対決する決意がなければ、ああいうことを速記に残さないと思うのです。のみならず、小坂君、大橋君、塚田君、古井君、こういう方々はそうそうたるあなたの党員です。この前の議員総会における発言を御記憶だろうと思うのです。しかも岸内閣の閣僚であった池田、三木、灘尾という有力閣僚からそむかれたじゃないですか。これは昔ならば当然閣内不統一で総辞職ものですよ。しかるにあなただけが恋々と政権に未練を残されているということは世道人心に影響が大きいという点、私はこの評論家の論というものは正しいと思うのです。あなたは考えられなくちゃいけないと思うのですが、いかがですか。
  410. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど申し上げましたように、新聞の報道は事実に間違っているようであります。川崎君なんかの問題は、いわゆる総裁公選前に取り上げた問題は一応白紙に返し、その後の問題については目下党紀委員会において検討中であるというのが事実でございます。私はもちろん政府の首班として政局に当ります以上、単にその地位に恋々として責任をのがれようとするような考え方はもちろん私は持っておりません。十分に私に対する忠言であるとか、あるいは批判であるとかいうものに対しては謙虚に反省すべきものは反省しておりますが、この時局に対して自由民主党というものを代表して政局を担当していくべきものであるという考え方の上に立って政治の掌に当っておる次第でございます。
  411. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はあなたのために、さらに国の政治のために忍びがたきを忍んでこういう発言をしているのであります。あなたはかつて派閥の解消は天の声だということを演説されております。今の内閣、これは派閥解消のベストの強力な内閣とお考えになっておられますか、どうですか。あなたは総辞職しないとなれば、内閣改造を考えられているのじゃないか。それならば内閣改造はどの程度に、いつやられるのか。かつては左藤前防衛庁長官は大阪府知事に立候補するという前提のもとに、その箔をつけるために防衛庁長官に任命したといってわずか六カ月で退職をされました。党利党略に走ることこれに過ぎるものはないと思うのです。かように偉大なる国家権力を掌握した総理大臣が、かようなセンスで政局を担当されてはとんでもないことだと私は思う次第です。いかがでございますか。
  412. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はいわゆる派閥をなくすということは、これはわが党の国民に対する信頼をかち得る上からいっても、ぜひやらなければならぬものだと、こう思って努力をいたしております。内閣のこの閣員の任命ということにつきましては、言うまでもなく私は最も慎重に、また最も適材を適所に置くという立場で選考をいたしてきております。左藤君のお話がありましたが、これは世間でそういうことを言う向きもございますが、決して私か同君を防衛庁長官に任命したのはそういう大阪府知事に出るということの条件で云々したというような事実はございません。その後において地元における大阪のいろいろな世論なり、あるいは支持者等が同君の大阪府知事候補に出馬することを強く要請した結果でありまして、同君も最初はこれを拒否しておったわけでございますが、最後に地元の人々、自分を支援する人々の熱望にこたえざるを得なくなって辞任をしたというのが事実でございます。
  413. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 戦争によって約二百万の同胞が命を失っておるのです。国土は四三%失われておるのです。あなたは開戦当時閣僚の一人です。そうして今や国民の血税によって賠償行為が行われているわけですが、御承知のごとく賠償総額は三千六百三億円、昭和三十四年度の賠償額は国民一人当りにいたしますと、赤ん坊まで入れて約三百六十円ですよ。この賠償行為というものは厳粛な問題であり、誠実を持って国際信義を確保されるように行われなければならぬと思いますのに、最近いろいろ伝えられておる点について、あなたはどういう見解を持っておられますか。
  414. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この賠償問題につきましては、矢嶋委員のお話しになったような性格を持っておるものでありますから、これが賠償の協定を結ぶに際しましても、いろいろな点を十分に考え、慎重に考慮されたことは当然でございますが、さらにその実施の面において公正に、しかも本来の賠償の趣旨に適合するようにこれを実施せしめなければならぬことは言うまでもありません。従来の例にまちまして、あるいはその点に関して遺憾の点が全然ないとは私は断言できません。いろいろな賠償の問題は、初めての日本として行なったものでございますから、また協定の内容等にもよる点もございまして、ことごとくこれを是正するわけにも参りませんが、十分に一つ本来の趣旨に沿うようにこれを実行していくように今後も努めていかなければならぬと、こう思います。
  415. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 外務大臣に伺います。インドネシア並びにフィリピンにおいて賠償問題が論じられているということですが、どういう情報が入っておりますか。
  416. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お答え申し上げます。インドネシアの問題につきましては、先般、加藤勘十議員からも御質問がありましたので、公電を出しましてとりました。いろいろこれらの問題について日本で議論されておるが、インドネシア側としてはそういう事実はインドネシア政府としてはないように思われるというような論評が多いわけでありますが、またそういうことがあってはならんというような論評が主として論じられておるようであります。フィリピンにおきましても同様だと思います。
  417. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 賠償は現物賠償で、直接契約だということですが、今日本国とフィリピン、インドネシア、こういう国があって、ここにある人物がおって、この人物がこちらにもよくこちらにもいい人がもしおったとするならば、ある船を高く評価して、そして両政府の了解を得て、そして引き渡しをして、上をピンはねするということはあり得るじゃないですかね。そういうこの直接契約の場合は当然私は入札制度をするなり、認証というものを厳重にやらなければ国際的な汚職事件が起る可能性がある。今度のフィリピンなりインドネシア等の賠償問題で疑惑を受けるのは当然だと思う。この点について外務大臣並びに通商産業大臣はどう考えられますか。
  418. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 賠償の方式につきましては、御承知のように直接賠償と間接賠償というものがあるわけです。で、賠償協定を締結しますときに、インドネシアもしくはフィリピン、ビルマ等がこの間接賠償方式では何か日本の業者が高いものを売るんじゃないか、従って直接賠償でもって自分たちが直接入札も扱う、あるいは直接契約してやるというようなことで、直接賠償をとりましたのはそれぞれの被賠償国の国が要求してきたわけであります。で、われわれとしては今日こういう方式をとることにいたしておるのは、そういう今の理由からきておるわけであります。
  419. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今僕が言った危険性があるでしよう、通産大臣答弁
  420. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま外務大臣がお答えいたしました通りに、先方の希望によりまして直接賠償方式による、こういうことでありますから、日本政府といたしましてはこれに対して関与することはできないので、先方の代表者が来て日本の業者と直接取引するわけでありますから、これはこちらの方から政府がこれをどうこうするということはできない現在の状態になっておるわけであります。
  421. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理は木下さんといつから懇意になられましたか、また木下商店の内容はどの程度御存じになっておられますか。
  422. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が商工省におりました時代、あるいは戦争の前であったと思いますが、知り合ったわけでありまして、自来友人としてはつき合っております。木下商店の内容等につきましては、私詳しく承知いたしておりません。
  423. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういう人と、商社の内容もよく知らないで二月十四日料亭「賀寿老」で国民としてのスカルノと三人で会うのは不謹慎ではないですか、どういう話をしたのですか。
  424. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは当時木下君からスカルノ大統領に面会を申し込んでおったらしいのでありますが、その時間がスカルノの方において、なかなかとることがむずかしいような、非常に日程が詰まっておったのであります。たまたま同日は私がまたこの関係者その他の方々を呼んで、いわば公式の招待を一度したわけでありますけれども、この一行の労をねぎらう意味における席を「賀寿老」に設けておりました。これに対してスカルノはその前の十分か二十分ぐらい、その宴会の前の時間ならば「賀寿老」で木下君に会おうということを木下の方へ返事がしてあったようでございます。たまたまその家で私が今いったような席を設けておりました関係上、三人だけじゃなしに、インドネシアの当時の総領事等二、三の人も立ち会って話をしたわけでありますが、別に具体的の話ではなくして、従来木下君が鉄鉱石その他の問題について東南アジアについてはいろいろな事業上の関係を持っており、インドネシアの経済開発の問題に対しては関心を持っておると、従って将来において十分調査やその他適当なものがあるならば自分も協力したいということを申しておりました。それ以上具体的の問題には、当日は私の知っております限り、入ったことはございません。
  425. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 木下商店は他の業者があっという間に十隻中九隻を調達したわけですが、そのうち五隻は中古であります。これらの船はどこから木下は買い、幾らの価格で買い、幾らで納めたか、関係大臣からお答え願います。
  426. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答え申し上げます。第一は新造貨客船でございますが、こちらでは名前が造船所の番号になっておりましてS一〇一〇番というのであります。これは林兼から買っております。そうして二億六千七百四十八万円で渡しております。二番目はS一五〇というのであります。これは佐野安造船所で作っておりますが、値段はただいま申し上げました値段と同様であります。それから三番目はS一六七、これは大洋汽船です。値段も同じ値段です。それから四番目はS九二七、これは臼杵造船所で作っております。値段は同様であります。以上は新造しました貨客船であります。  次に貨物船の貨客船への改造でございますが、若福丸というのが五千六百五十万七千七百六十円であります。これは佐世保造船所であります。もう一そう佐世保造船所がございます。これは成豊丸、五千三百十九万二千八百八十円であります。その次は日立で作っておりますが玉宝丸、四千五百九十七万二千。その次は飯野造船所であります。これは柏山丸、値段はやはり同様四千五百九十七万二千円。それから最後に呉の造船所で作っております。これは雲仙獄丸、値段は同様でございます。以上でございます。
  427. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 買上高を言わなければならぬ。買い上げた値段。
  428. 永野護

    国務大臣(永野護君) それは一番最初の二億六千七百四十八万円のやつは二億五千九百四十五万五千六百円で、その差額は八百二万四千余円でありまして、これは三%であります。あと四そうは同様であります。それから五はい目の若福丸と申しますのは五千六百五十万七千七百六十円でありますが、買いました値段及び改造したのでありますが、その費用は五千二百七十六万七千百二十円であります。差額は三百七十四万六百四十円、六%余りであります。それからその次の成豊丸は五千三百十九万二千八百八十円でありますが、それは五千百三十一万七千七百円でありまして、差額は百八十七万五千百八十円、三%半になります。それからその次は玉宝丸であります。これは四千五百九十七万二千円でありますが、これは四千三百万円でありまして、差額は二百九十七万二千円であります。それから柏山丸は、納めました値段は同じでありますが、改造値段が四千二百万円でありまして、差額は三百九十七万二千円でございます。雲仙獄丸はやはり同様で四千二百万円であります。それでこの一切の費用を含めましたものが平均して三%七になっております。
  429. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ここに木下という人がおって、この人はスカルノにも非常にいいわけで、木下さんは岸さんとも永野さんとも非常にいいわけで、そうして直接契約といえば価格の点は適当にいってしまうじゃないですか。だから今の価格は非常に問題がある。一体カラワツ号なんという船は動いているのですか、どうですか。
  430. 永野護

    国務大臣(永野護君) ただいま動いておりますかどうかは私詳しく存じませんので、船舶局長から御答弁申し上げます。
  431. 山下正雄

    政府委員(山下正雄君) 現在動いておると思います。
  432. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 故障を起したでしょう。
  433. 山下正雄

    政府委員(山下正雄君) 故障の記事につきましては週間誌等に伝えておりますが、あの事実は間違っておりまして、いろいろのいきさつに誤りがあったのでございますが、完全に直して動いております。
  434. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 価格の決定をどうするかということはポイントなんですよ。両政府に非常に取り入っているうまい人があったら、価格はでたらめにきめられてしまうだろう。これと、それから藤山外務大臣にお伺いしますが、さらに二十一隻を調達するというのですが、それは事実かどうか。その大部分はまた木下が請負うというのですが、その点も承わりたい。
  435. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、矢嶋委員の御質問の前段でありますが、この賠償の問題は、いわゆる直接方式をとっておりまして、日本政府はこれに関与いたしておりません。私は、個人的に木下君は知っておりますけれども、もちろん、総理としても個人としても、この問題について、何らタッチしておりませんから、その点だけは明瞭にいたしておきます。
  436. 永野護

    国務大臣(永野護君) その値段の点でございますが、これとほとんど同じときに、ソ連からやはり十そう買っております。それはこの船よりは、その値段に比べますと、トン五十ドルこの方が安いのでございます。それからもう一つ、私は賠償に関係した一員でございまするので、直接方式と間接方式になりましたときのいきさつを御参考にちょっと申し上げておきたいのでありますが、実は、理論から申しますと、間接方式がほんとうであって、国が国に対して債務を払うのでありますから、日本国が責任を持った船を、日本国の責任の持てる造船所で作って、それを渡すのが本筋であります。従いまして、賠償交渉のときは、私は強くそれを主張したのであります。ところが、向う側が、それは絶対困る。日本政府は関与してくれては困る。(「日本政府は信用がないからだ」と呼ぶ者あり)いや、信用がないかどうか知りませんけれども、とにかく日本政府が関与してくれては困る。それがいやならば、現金で払ってくれ。古今東西の歴史で、負けた国が勝った国に罰金を払うのに、負けた国の都合のいいようにするという賠償の払い方をした国はないんじゃないか。日清戦争でこういう例がある。シナから一億テールの罰金を取った。それをシナの産業に都合のいいように使いはしなかったじゃないか。日本が勝手に使ったじゃないか。だから、そこに文句があれば、日本の国に都合のいいようにやりなさい。そんなことは一切言わないから、現金で払ってくれ。ゴールドで払ってくれ。そうすれば、フィリピン政府は適当なところへ注文するから、こういうことを主張したのであります。そういうふうなことで、われわれはゴールドで払いたくない。なるべく日本の物で払いたいという弱みがありましたので、不本意でありましたけれども日本政府はいかなる意味においても関係しないと、泣き泣き承諾したのであります。御了承願います。
  437. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 二十一隻の船というのは、何も聞いておりません。一月の十七日に、二十一隻の巡視艇が、三百五十万ドル限度で、木下商店とインドネシア政府との間に契約ができたのではないかという情報が来ておりますけれども、その後何も確実なものは来ておりません。
  438. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総裁としての岸さんに伺いますが、党献金はどのくらいあるか。それから、岸個人に対しての政治献金が一年間どのくらいあるか。また、派閥解消のために箕山会を解消したのですが、箕山会に当時六千万円の金があったのですが、それをいかように処置されたか。
  439. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 党として、党の資金につきましては、これは、それぞれ政治資金規正法の規定によりまして、正式に届出をいたしております。私、現在の金額は承知いたしておりません。これは、幹事長が扱っておりますので、私は承知いたしておりません。なお、従来私の政治資金につきましては、私は政治資金規正法の規制を受ける団体を作っておりまして、それで得ておりまして、それをしかし派閥解消の意味におきまして、解散をいたしました。それ以後においては、私としては、総裁として必要なものは党から、党資金の中からこれを受けるという建前にしてきておりまして、これは、金額を正確に今覚えておりませんが、これは、党のすべて政治資金規正法において届出をしておる範囲内でございます。
  440. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その党から出る金ですね。それから、あなた個人として正式に受けるのは、確定申告をされているかどうか。また、総裁手当はどのくらい党から出るか、承わります。
  441. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 総裁のこの手当という意味において特にきまった手当を取ってはおりません。いろいろな問題がありまして、必要とする場合に、党からこれを出しておるわけでございます。
  442. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなたの現金は申告しておりますか。
  443. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私自身、この問題に関しましては、これは適当に申告をいたしております。
  444. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その箕山会解散のときに六千万円、それをいかに処分されたか。それから、申告は幾らされているか、お答え願いたいと思います。
  445. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、私今ここで記憶をいたしておりませんから、取り調べて、あとで申し上げます。
  446. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなたは、熱海に建設された建物、別荘の土地は御令息の信和氏の名前になっておりますが、建物はだれの名前で登記されましたか。
  447. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の名前で登記したはずでございます。
  448. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 世人が、政治家は金を持っている、政治家になると金持ちになるという考えを持つことに大きな問題があると思う。そこに政治、選挙というものが腐敗して参ると思うんです。私はここで公言しませんが、あなたの収入というものをキャッチいたしております。どこからあなたはああいう熱海に別荘を建てるような金が出てくるのか。伊東にも土地を買われておられる。国民が疑惑を持つのは当然だと思うんです。どうしてそういうそろばんをはじかれたのか、お答え願います。
  449. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 矢嶋さんにちょっと申し上げますが、持時間を超過しましたから、御注意を願いたいと思います。
  450. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、伊豆の土地云々の問題につきましては、すでに委員会でもお答えをしておりますが、これは、金額的に見て、そんなに大きなものではもちろんございません。たまたま私の満州時代の友人が、土地の開発会社に関係しておるという意味におきまして、私にも一口持つようにということから持ったものでありまして、財産的な価値から申しますというと、きわめて少いものでございます。なお、熱海の別荘の資金の問題につきましては、私は、現にある程度の、これも正当な金融機関から金を借りておりまして、これで建設をいたしております。別に私自身、非常に金を持って云々というような御議論もございますが、そういう事態ではないことを明瞭にいたしておきます。
  451. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 伊藤忠の姉妹会社である岸本不動産から、三十一年の三月に、二百万円であの土地が譲渡をされている。これは、当時の価格からいって非常に安いわけですが、あなた二百万円払われたか、お答え願いたいと思います。
  452. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 矢嶋さんにちょっと申し上げますが、御承知通り、国会法百十九条の規定によりまして、言論は私生活にわたらないように御注意を願いたいと思います。
  453. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そのことは、私は研究いたしましたが、その「私生活」というものは、純然たる私生活という、こういうことなんです。だから、何か国民が疑惑を持ち、関係ある場合は、それは差しつかえないわけでありまして、純然たる私生活のことであります。私も良識をもって伺います。
  454. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 私生活にわたらないようにということが百十九条にございますから、どうか……。
  455. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは十分心してやっています。
  456. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 持ち時間が経過いたしましたことを一つ……。
  457. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もうすぐ済みますから。
  458. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この土地の問題につきましては、今おあげになりました通りの事情で、岸本不動産から私は買い入れたものでございます。当時の値段につきましても御指摘の通りであります。その金は私及びせがれのあらゆるものをもって買ったわけでございます。
  459. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に……。
  460. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 最後ですか。
  461. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後です。これは総理、そういうことだけでは国民は納得できないと思うのです。この土地は九百六十七坪あります。それが昭和三十一年に坪二千円ということは考えられないと思うのです。現在の価格にすれば相当なものです。それからあの建物は八十五坪ですから、少くとも千万円はかかっているということが考えられます。それで政治家になれば金が入るということが間違いであって、あなたの収入からいってそういう金がどこから出るかということを、国民が疑惑を持つのは当然ですよ、これは。スカルノ氏が木下さんとよろしい。木下さんは八幡の稲山さん、それから永野——富士製鉄の方と非常に懇意だ。永野さんは御兄弟である。永野さんと岸本不動産は非常によくて、永野さんは、岸本ビルに事務所を持っておられるはずです。この岸本不動産は伊藤忠の姉妹会社です。この岸本不動産から坪二千円約千坪を分譲していただいているわけです。そしてあのあなたの別荘の近くは伊藤忠さんの土地が非常に多いわけです。類をもって集まっているわけですね。この伊藤忠さんはこれはグラマン問題で非常にクローズ・アップされている人です。あなたとも熱知の間柄です。こういうことを総合して考えるときに、国民は疑惑を持つことは、それは当然だと思うのです。あなたの確定申告を見ますと、昭和三十二年より昭和三十三年はずいぶん下っていますね。私はここで、私事にわたってはいけませんから数字は言いません。しかし、少なくとも三分の二に確定申告は下っております。おそらく株やらそれから貯金もおありで、利子等があると思う。また政治献金があれば、これは俸給的な所得の中に入れなくちゃならない。断片的にいただいたものは雑所得として申告しなくちゃならぬわけです。そういう点にも私は疑点があると思うのです。こういう疑点をあなたのために、さらに日本の政治のためにはっきりするために、先般私は財産目録を公開して、みずから自発的に公開されてはどうか。委員長理事打合会においても、これは委員会としては要求すべきものではない、必要ではある、明確にするために必要ではある、しかし、岸総理の自発的善処に待つと、こういうふうに結論づけられたわけであります。あなたは政治的責任を考えられなくてはならないと思うのです。民主政治家として、道義的、政治的責任を自覚することがあなたのためにも、日本国並びに日本民族のためにも私は大切である。そういう立場から、この国民の多数の方々が抱いているところの疑惑を解明するべくあなたは善処をしていただきたい。私はその一部を持って参りましたけれども、こういうふうに特集してありますよ。これらの週刊誌というものは国民はよく読んでいるわけです。あなたが言われるように決して二流誌ではございません。これは一流誌です。国民の多数が読んでいるわけですね。だからその点十分一つ解明するとともに、政治家になれば金をもうけるのだというようなことは言えないと思う。こういう風潮が中央政界にある間、これは、下、上にならうので、地方政界というものはそういう風潮に浸ってしまう。その結果というものは地方の選挙は濁り、地方自治行政というものは混乱をし、最近伝えられるように、汚職事件というものが勃発すると思うのですね。あなたの責任たるやきわめて私は重大だと思うわけです。私は今度の質問で、時間を節約するために、敬称を略して何々大臣、何々大臣と申したわけで、別に他意があるわけではございませんので、その点は御了承いただくとともに、最後に一つ総理から納得のできるような答弁を求めたいと存じます。
  462. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は常々民主一政治家として、私の残っている生涯を捧げ尽そうという信念の上に立って、今日政局に当っております。もちろん足らざる点についての各般の批判につきましては、私自身謙虚な気持で反省するという考えできております。しかし、最近における私の身辺についてのいろいろな論議は、はなはだ私としては遺憾であり、また、それがいろいろな方面に与えている影響等を考えまして、私としては実に残念でたまらないのでございます。しかしこれに対して私自身の信念なり、あるいは気持というものについては、幸い国会のこういう御審議の際に、私は率直に申し述べてきております。なお、これらの疑惑を解くことについて、いろいろ善処しろというお話もございますから、私としては十分考えていくつもりでおりますが、今日私自身がこれについて政治的責任をとるという考えではなくして、進んで私の政治責任を尽すために、あるいは自分自身としても反省をして、そうして国民の信頼にこたえる努力をしたい、かように考えております。
  463. 鈴木強

    鈴木強君 関連して……。今の問題とは別ですが、憲法第九条の自衛権の問題をめぐって、先ほど矢嶋委員総理との間に質疑がございました。その際に日本が、直接自衛隊が第三国のある基地を爆撃するということはない、しかし、日本が先に爆撃をされて、またやられる、そういう危険性のあったときに、ほかに防ぐ方法がない場合には向うへ出撃していくと、こういうことを総理と防衛庁長官はおっしゃったわけです。そういうこともあり得ると、ところが官房長官は、依然として、総理はそういうことを言われているのだか、私は考えてみたこともない、こういうふうに、先ほど意見の食い違いがあるわけです。これは非常に重要な問題ですから、総理のおっしゃったことが現在の政府考え方なのか、官房長官のおっしゃったことがそうなのか、それは食い違いがありますよ。この際明確にどちらが正しいのか、はっきりしていただいて、もし総理のおっしゃることが正しいとするならば、官房長官の御発言というのは、これは取り消してもらいたいと思います。
  464. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その問題に関しては、先ほどお答え申し上げましたように、すでに前内閣の鳩山内閣のときに、やはり同じような質問がございまして、明確にお答えを申し上げたように、この内閣におきましても、前内閣が国会において答弁しているような解釈をとっている、こう御了承願いたいと思います。
  465. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、官房長官は先ほど矢嶋委員の御発言に対して御答弁なさいましたが、明らかにこれは、速記録をあとで調べてもわかりますが、総理のおっしゃるようなことはあるかもしらぬが、私は考えてみたこともない、こういうふうに結ばれておりますから、明らかに違います。従ってあなたもその点を一つはっきりしてもらいたい。
  466. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) そういうこともあり得るかもしれませんが、現実の問題としてそういうことはあり得ないと考えております。こういう考え方を申し述べた次第でございます。
  467. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これにて昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算並びに昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)に対する総括質疑通告者の発言は、全部終了をいたしました。総括質疑は終局したものと認めます。  委員会は明十日及び明後十一日に、三十四年度総予算についての公聴会を、また十二日は三十三年度一般会計予算補正(第2号)の一般質疑、討論、採決を行う予定でございます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十一分散会