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国務大臣(坂田
道太君) お答えをいたします。
これは実は非常に大きな問題だと思いまして、あるいはむしろ大蔵大臣あたりから御
答弁いただいた方がいいのではないかと思うぐらいでございますけれ
ども、しかしながら、私たちの調べたところによりますと、低所得者層というものが、大体、
日本で二百四十万世帯あります。しかも、その中におきまして生活保護法の適用を受けておられる世帯が五十八万という数字になっておるようでございます。そこで、いろいろ経済
政策、あるいは減税
政策、あるいは失業
対策等々をやりますことにおきまして、このボーダー・ライン層に入り込む人たちを救っていかなければならないということが一つの大きな問題かと思います。また同時に、二百四十万世帯のボーダー・ライン層というものをだんだん更生をさせて、そうして生活水準の高いものにしていかなければならないということが第二段かと
考えるわけでございます。そういたしますと、そういうもろもろの減税
政策であるとか、あるいは完全雇用の一つの失業
対策であるとか、あるいはその下に流れるところの大きな経済基盤強化、いわゆる経済の
発展ということでやりましても、なおかつ、現在といたしましては、ただいま申し上げましたような低所得者層というものが
日本に存在をするこの事実というものは、われわれがきびしくこれを認識しなければならないということは、御指摘の
通りでございます。なお、また、アメリカにおきましても、御案内の
通りに一九五〇年に上下両院において、アメリカのような富裕な国においてこのボーダー・ラインの問題が取り上げられて、そうして大体、アメリカのような国においてすら一二%は低所得者層である、貧乏の階層である。こういう指摘をいたしておるわけでございます。同様に、
日本におきましても、
先ほど申しましたような数字というのは、全世帯における一二・六%にはなっておりますけれ
ども、
国民所得の比較におきまして
日本は九分の一か、十分の一、しかもまた生活保護基準におきましてはアメリカにおいては大体二千ドル、
日本におきまましてはこの保護基準というものが、
国民所得一人当りに対しまして二割か三割の低位にある。しかしながらアメリカにおいてはこれが六割である。こういうふうに
考えて参りまするならば、
日本の低所得者層、つまり貧乏というものの意識というものが格段にアメリカと開きがある。つまり十八分の一か、あるいは二十七分の一かである。こう
考えて参りますると、アメリカのような雇用の比較的いいところにおきまして、働く能力があって働かないところの人は、これは働く能力があって、どんどん機会に恵まれておって、なおかつ貧乏であるということは、これは怠け者だということが一応アメリカの社会においてはいえましても、
日本のような働くところの機会はないという状況におって、なおかつ働くところの意思があり、あるいは
相当の能力を持っておられる方があるということは、ここに大きな貧乏という問題に対する認識を、われわれ為政者としては
考えなければならない点があると思うわけでございまして、岸
内閣におきまして、貧乏
対策ということを打ち出されましたゆえんのものは実にこの点にある。むしろアメリカよりも
日本においてこれを積極的にやらなければならない社会的な背景がある。こういうことで実は今回も
国民皆保険の三十五年度におけるところの完成、並びにそのいわゆる医療保障と並び称せられますところの、あるいはそれに続いて起るべきであるところの所得保障、という
意味におきまして年金
制度を打ち出した。こういう二本の柱からこのボーダー・ライン層というものを漸次生活水準を高めて更生さしていく、あるいは貧乏というものをなくしていく。こういう
政策をわれわれはとっておるわけでございまして、まあその他いろいろ生活保護基準の
内容の強化であるとか、あるいは結核
対策であるとかいろいろございましょうけれ
ども、
基本的にはそのようなことによって
日本の貧乏というものを追放していこう、ということを私
どもは
考えておることを御了解をいただきたいと思う次第でございます。