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1959-03-07 第31回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月七日(土曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員西田信一君、館哲二君、伊能 芳雄君、武藤常介君、青木一男君、小 幡治和君及び植竹春彦君辞任につき、 その補欠として仲原善一君、迫水久常 君、吉江勝保君、勝俣稔君、柴田栄 君、重宗雄三君及び秋山俊一郎君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木暮武太夫君    理事            小柳 牧衞君            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            堀木 鎌三君            片岡 文重君            鈴木  強君            矢嶋 三義君            森 八三一君    委員            秋山俊一郎君            石坂 豊一君            大沢 雄一君            勝俣  稔君            古池 信三君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            迫水 久常君            重宗 雄三君            柴田  栄君            下條 康麿君            苫米地英俊君            仲原 善一君            横山 フク君            吉江 勝保君            北村  暢君            栗山 良夫君            坂本  昭君            高田なほ子君            戸叶  武君            中村 正雄君            平林  剛君            松浦 清一君            松永 忠二君            加賀山之雄君            田村 文吉君            長谷部ひろ君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    厚 生 大 臣 坂田 道太君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    建 設 大 臣 遠藤 三郎君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    法制局長官   林  修三君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省銀行局長 石田  正君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    国税庁長官   北島 武雄君    農林省畜産局長 安田善一郎君    通商産業大臣官    房長      齋藤 正年君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十三年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を開会いたします。  昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算並びに昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)を一括して議題といたします。前回に引き続き総括質疑を行います。田村文吉君。
  3. 田村文吉

    田村文吉君 総理大臣労働大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、終戦後の占領政策によりまする反動的な労働者解放立法によりまして、組合運動行き過ぎが起り、そのために産業平和と社会の安寧が常に欄乱されまして、経営者及び第三者たる庶民ひいては労働者自身の幸福をも傷つけている例が必ずしも少しとしないのであります。春闘といい、秋闘と叫び、また年末闘争と呼んで、一年中ほとんど闘争のために明け暮れしているような状態でありまして、民心の不安が必ずしも平らかではない状態であると思うのであります。のみならず、従いまして労働攻勢の強いところは賃金は非常によく上る。そうでないところは賃金は上らないというようなことで、賃金格差が非常に大きくなっている、こういうような状態になっておりまするので、私はこの辺で見直してみて、労働立法改正をする必要が起っているんじゃないか、こんなふうに考えるのであります。一、二の例を申し上げてみまするというと、一体労働組合法は、労働者利益あるいは対等の立場というような点を守ることが、主として経済的の問題として取り上げられてきたのでありまするのに、昨今はきわめて政治的にこれが悪用されているような傾向があるのでございます。また労働委員会の法案にいたしましても、毎年毎年労働委員を改選いたしておりますし、しかも官公労に対しては、これは二年でありまするけれども、要するに非常に短い期間労働委員でありまするので、特に公益委員におきましては、期間の短いということで身分保証をしてもらえないというような情勢にありまするために、常に問題の解決をするためには、要求事項を足しまして二で割って答えを出すというような非常に月並み式な、抜本的でない解決が常にくだされているように考えますので、もっと労働委員の、特に公益委員に対する身分保証というようなものも、もっとはっきりしなければならないというような点もあるのじゃないか、また労働基準法にいたしましても、世界一に非常に革新的であるといわれているのでありまするが、これらが果して日本の、過去においてもそうであったのでありますが、今後の経済情勢によくマッチしているかどうか、こういうような点を考えるというと、非常に疑問があるのであります。そういうような意味からいたしまして、この辺で労働立法改正考えたらどうかというふうに考えております。  労働大臣見えになっておりますか。
  4. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 申し上げます。ただいま呼んでおりますから……
  5. 田村文吉

    田村文吉君 さようならば一応これで打ち切りまして、総理の大体の構想を伺いまして、労働大臣出席された上で、なおお伺いすることにいたします。
  6. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 労働運動の健全な発達を期することは、労働者生活向上、また労働条件改善によって、産業の健全な発達を企図するという意味からも望ましいのでありますが、しかし同時にこれが行き過ぎると、いろいろな弊害ができ、かえって産業経営を困難ならしめ、労働者自身生活向上労働条件改善ということも円滑に行われないという結果になるのでありまして、常に労働運動が正常なる形において行われるということをわれわれは心から念願しておるわけでありますが、実際の日本労働運動状況をみますというと、今御指摘のような点が行き過ぎ相当に各方面でみなぎっておるということも、いなむことのできない事実であると思うのであります。労働三法は御承知通り、戦後において画期的な日本立法が行われたその際のものでございまして、根本は今言ったような健全な労働運動を助け、また労使関係というものを正常な、対等な関係においてこれを処理して、そうして産業繁栄及び労働者利益に合致せしめるようにせしめる根本の理念からできていると思います。しかしながらこれが日本現実労働運動のもとにおいて、そういう行き過ぎがあるのみならず、これらの法制日本実情に合っているかどうかということにつきましても、いろいろ専門家の間にも議論があるところでございます。法律技術としても、また日本実情からみましても、適当であるかどうかということについては、いろいろ議論があるようでございます。しかしながら事はきわめて重要な問題でございますし、われわれとしてはこの問題に対しては、慎重に一つ検討をすべき問題であると思います。先般の労働問題懇談会答申のうちにも、そういう点に触れた意見が出ておりますので、政府としてはいろいろな方面から考えまして、慎重に一つ検討をいたしてみたい、かように思っております。
  7. 田村文吉

    田村文吉君 まだ労働大臣見えになりませんが、かえって都合がよろしいから、重ねて岸総理に申し上げたいのでございますが、この問題につきましては、すでに七年か八年くらい前から幾たびか改正という問題が問題になってくるのでありますけれども、いわゆるその政府の事なかれ主義と申しましょうか、非常に因循こそくな考え方によりまして、この問題が解決しておらぬ、私は別に経営者側に味方するわけでなく、労働者側に味方する意味でも何でもありませんが、今の倉石労働大臣は、その点についてエイブルなお人でございますので、私はこのときこそこういう問題について根本的にメスをお入れになるべき時期にきておるのではないか、こういうふうに考えておったのであります。ところがやはり昨年の警職法の問題のつまづき以来、きわめて問題は低調になりまして、こういう問題について低姿勢をおとりになるということは、ただその当時の当座の問題としてはそれでよろしいかしれませんけれども日本ほんとう経済発展というものを考えてくる場合においては非常に私は欠点があるのじゃないか、こう考えますので、特にただおざなりの、そのときそのときの、まあよく慎重審議の上で、考えてみた上でものをきめるということはけっこうでありまするけれども、あまりに問題が長いと思うのであります。ほんとうにそういうお気持がおありになるのかならぬのか、そういう点についてのお心持ちを伺いたいのであります。
  8. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私この内閣組閣以来、労働問題につきましては現実日本労働運動状況をにらみ合せて、非常にいろいろな点において深き憂いを持つものでございます。あくまでも政府としては正常なる、健全なる労働運動というものはこれを助長していって、そうして正常な労使関係を作り上げることは、これはあくまでも産業繁栄の上からいい、国民の全体の福祉増進の上から望ましいことであるけれども現実がこれとずいぶん行き過ぎがあると、しかもそれが法制上からきている点も少くないという点を考えますというと、これらの問題を一つ根本的に再検討して、もっと日本の、この真にわれわれが望んでいるような健全な労働運動発展と、労使関係の正常な関係を作り上げることに資するように考えなければならぬという考えを持ちまして、いろいろな労働問題に関する諸般の問題を検討をいたしてきております。ILO八十七号の条約批准の問題は、すでに労働問題懇談会権威者を集めて、また労使方面意見も入れて、一年有半にわたって検討をせしめたのもそういう考えでございまして、私はこの労働問題懇談会答申の趣旨、またそこにおけるところの論議、あの結論が出るに至りました間における各方面意見というものを、詳細に今検討をいたしておりますが、そういう点から考えてみましても、この労働三法の問題に関しましては、私今結論として、こうするのだということを申し上げる段階に達しておりませんが、真剣に一つ検討をいたしていきたい、こういうつもりでおります。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 労働大臣見えになりましたから、あるいは大体お聞き及びになっておるかしれませんが、今の労働立法が、終戦後の押しつけられたような形の労働立法でありましてその二、三の例をあげれば、たとえば労働組合の目的というものが、きわめて政治的なものに利用されるのは好ましくないように考えておられるが、非常に今日政治的に利用されている、こういう点、労働基準法行き過ぎ、あるいはまた労働委員会における公益委員の位置の保障、こういうような点について非常に欠点が多い、早く直すべきじゃないか、こういうことを実は岸首相に伺ったのであります。労働大臣の御所見を一つ伺っておきたい。
  10. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労働組合法につきましては、これは労使関係に非常に大きな影響をもたらすものでありますから、慎重にしなければならないと思っておりました。しかし御指摘のように特殊な事情のもとに制定されました法律であって、私どもは引き続いて検討いたしておったのでありますが、最近になりまして労働組合側経営者側もそれぞれ戦後十三年にわたる経験の結果、いわゆる労働三法については再検討すべき段階にきているという意見が出されるようになって参りました。大きな労働組合の連合体などでもそういう意見を私に申し入れてきておられる面もあります。ことに今般ILO八十七号条約批准について答申をもとめました労働問題懇談会におきましても、この際十三年間の経験によりて日本労働関係法について再検討を加えるべきであるという意見答申してきておりますので、政府はなるべく早い機会にどのようにいたしましてそういう調査機関を設けるかを決定いたしたい、根本的に労働三法につい  て再検討をいたして参りたいと思っております。その中で今お話のありました労働委員会制度につきましては、本年の労働委員会総会、中央、地方の総会におきまして、特にこれらの労働委員の、地労委、中労委の委員の方々の中で、労働委員会という制度について根本的に検討し直すべきであるという意見、これは去年から出ておりまして、経験にかんがみて労働側委員使用者側委員も、労働委員会制度のあり方について再検討すべきであるという意見が出されまして、委員会自体がそういうことの研究に着手しております。私ども委員会制度についていろいろ考えがあったのでありますが、こういうものも十分にその際取り入れて再検討いたしたいと思っております。また基準法お話がございましたが、私は労働関係法の再検討という場合には、当然労働基準法についても専門家検討をわずらわしたい、このように考えております。
  11. 田村文吉

    田村文吉君 今ILO八十七号の批准の問題にちょっとお話が触れて参りましたので伺いたいのでありまするが、この問題はひとり三公社五現業だけの問題ではありませんで、民間にもみな関係する問題で非常に重大な問題であると私は考えます。そういうわけで、いわゆる従業員にあらざる組合員を処罰するというような問題が起った場合に、一体どういう方法で処罰するのか、あるいは罰金のような方法考えるのか、何かそういうような方法がなければ——これを解雇するというようなことは、すでに解雇されている人間なりあるいは全然関係のない人間が役員となり指導者となっている場合にはどうするか、こういうような問題があると思う。いろいろ御検討中ではあると思うのでありまするが、すでに八十七号の批准について大体御決議になっているようでありまするから、それならば大体どういうような方途をこれに対して加えておやりになるか、こういうようなお考えはございませんか、伺いたい。
  12. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 八十七号条約について諮問いたしました労働問題懇談会結論が出ます前に、石井小委員会というものを設けられまして、そこでいろいろただいまお話になりましたような問題について結論を出しておられます。今お話のように、日本労働組合法によりましては、いかなるものがいかなる組合を結成しようとも自由でありますが、公労協関係はそれが制限されておった、このたびこれが撤廃をされるということについて、それならば法違反をいたしたものについてはどうするかというふうなことが公労法十七条、十八条の問題になってまいりますが、その場合にただいまお話のように部外者の解雇ということはあり得ない、そういったような根本的な問題について、ただいま政府部内にそれぞれの機関を設けまして、そこでそういうような事態について、しかも労働問題懇談会結論を尊重しながら、どういうふうにすべきであるかということについて、政府部内の調査意見調整等をいたしております。その上で政府のそういう問題に対する態度を決定いたしたい、こういうふうに考えております。
  13. 田村文吉

    田村文吉君 大体いつごろ批准をなさるお見込みで問題をお進めになっておりますか。
  14. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 世間には比較的気楽なものの考え方をする者がありまして、労働問題懇談会結論公労法四条三項、地公法五条三項におきまして修正すべきだというふうに言っておるから、それだけやったらすぐできるではないかという安直なことをいう人もありますけれども田村先生の御承知のようにそんな簡単には参りません。今のあなたの御指摘になりましたような問題だけ取り上げても、きわめて複雑な影響をもってきます。そこで政府は方針を決定いたしました以上は、なるべくすみやかに批准の手続をいたしたい、その準備にせいぜい努力をいたしたしておりますが、いつごろ完成いたしますか、まだこの国会中に、そういう研究が完成するということは、なかなか困難のように私は思っております。
  15. 田村文吉

    田村文吉君 経済企画庁長官にお伺いいたしたいのでありますが、今年の春から欧州経済共同体が出発いたしましたり、あるいは通貨交換性問題等が、解決ではないが順次進められてきておるような情勢から、ややもするとヨーロッパ欧州製品というものは、東洋市場において相当日本製品とかち合うような状態にあると思うのであります。いわゆる欧州品は原価がだんだん下るというような状況にあると私は思うのでありますが、それに反して日本における状態は、いわゆる労働賃金の値上りであるとか、あるいはまた小さな問題でありますけれども、私鉄の運賃が上るとか、あるいはまた予算にしても、逐次ながらインフレ的の傾向を持っておると、こういうような情勢で、日本物価というものの将来は、必ずしも安定している条件にはないと私は考えております。そういう点について企画庁長官は、今後の東南アジア及びアジア方面における貿易というものに対して、相当日本が後退しなければならぬようなおそれはないかというような点についての一つ御説明をいただきたい。
  16. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。ヨーロッパ通貨の安定、復活等問題等についても御指摘があり、かつ日本経済の見通し、貿易関係等のお尋ねのように拝聴いたしたのであります。御承知のように西ヨーロッパ経済状態は、おおむねアメリカ経済援助のもとにこれまで営んできたのが、最近は一本立ちになるという傾向にある。これで通貨の安定、復活という問題が世間に取り上げられるようになったと思うのであります。しかしこの問題も非常に複雑な経済状態が含まれておりますので、にわかに貿易市場で各国が活動するかということについては、なお相当の日数を要するのではないかとかように考えております。しかしながら、やがて東南アジア市場並びに西ヨーロッパに新たなる経済攻勢が起るであろうということは十分想像いたしております。かねがね政府におきましても、これに対して今後の日本経済対策をどうするか、産業計画をどうするか、またこれと太刀打ちするのには、日本産業経済の弱い面、いわゆる体質改善のために、どの点に重点をおくかということを一応予想いたしまして、本年度の予算等におきましても深く配慮して、その政策を立てているものと申し上げていいと思うのであります。  ただ物価問題に一言触れておきたいと思いますることは、御指摘の点もあったと思いますが、いわゆる物価インフレ、このことはヨーロッパはもちろんのこと、アメリカにおいても実際の業務に当っている実業家はもちろんのこと、学界でも問題になっているようであります。すなわちインフレを起すことは、雇用を増大することであると同時に、産業を隆盛にしなければ雇用の増大はかち得ないのではないか、こういうような問題が取り上げられて論議されております。しかしながら一つ矛盾がここに出てくることは、物は安く買いたい、ところが一方において生産者は高く売りたい、こういうことで、矛盾がここに一つ対立するのであります。労働賃金を上げることは、労働者階級の喜ぶことでありますけれども、同時にそれは物価高を誘発せしめる。その物価高をさせないで、そうして生産を上げながら、国民生活向上をはかるというところに政治のむずかしいところがあり、政策の非常に困難なところがあるのではないかと、かように考えるのでありますが、その点も政府といたしましては考慮いたしまして、この対策産業面労働面に分析いたしまして対処しているということを一応お答えいたしておきます。
  17. 田村文吉

    田村文吉君 次に外務大臣通産大臣にお伺いいたしたいのでありまするが、対共産圏貿易、特に中共貿易に対しましては、昨今きわめて問題が政治的になってきていると思います。私どもは多大な政治上の犠牲を払ってまで、対中共貿易が進められるということについては、賛意を表しがたいのでございます。  そこで問題はわれわれの最も親善関係にあり、終戦後に多大の援助をしてくれたアメリカ貿易であります。その貿易——承知のように米国民の所得は、日本人のちょうど十倍になっていると思います。でありまするから一億七千万の人口は、日本人が十七億の人がいると同様に考えてよろしい、こう私は言いたいのであります。またカナダにいたしましても、大体日本の五倍の生産能力を持っておりますので、でありまするので、私は在来親善関係にあり、今後とも親善関係の間にいかなければならないアメリカ貿易あるいはカナダ貿易、特にこの貿易がいわゆる片為替になっておりまして、アメリカのごときは十億ドルの輸入超過になっております。カナダ相当の、一億ドルくらいの輸入超過になっているようでありまするが、これを何とか外交的の折衝と国内法改正によりまして、日本品輸出アメリカ及びカナダにもっと多く入ってもらうということを考えるのは、当然の考え方でないかと考えるのであります。しかるところややもすればあるいは繊維品に対して、あるいはその他のものに対して日本品輸入をチェックするというようなことをせにゃならぬというようなことを聞くのでありますが、私どもは、さような消極的の問題どころじゃない、大いに積極的にこの対米輸出、対カナダ輸出を増進するように格段のおはからいをお願いできないものであろうか、ことに、外務大臣経済界御出身の方でありまして、こういう問題こそ、外務大臣の最も力を入れて解決をなさるべき問題ではなかろうか、かように考えるのでありまするが、この点につきましてどうお考えになりますか。あわせて、通産大臣に対しましては、文化の程度の高い米国及びカナダに品物を輸出するのでありますから、在来のようなお粗末な物を出して輸出ができるとはむろん考えられません。当然に、国内における産業構造、あるいは商品構造と申しましょうか、そういう点について格段の革新をする必要があるのではなかろうか。私は、岸総理東南アジア貿易、また一部の方のおっしゃる中共貿易に決して期待を持たぬわけではありません。ありませんけれども、残念ながら、生活程度日本の一に対してコンマ三であるとか、コンマの二であるとか、コンマの四であるとかというようなところは、なかなかいわゆる食うだけ、着るだけで一ぱいなんでありまして、容易に新しい購買力を期待することは困難である、こういうことを考えてくるときに、私どもは、目を東の方にひるがえして、そうして対米、対カナダ貿易に全力をあげることを考えるべきじゃないか、かように考えるのでありますが、外相並びに通産大臣の御意見を承わりたい。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本経済外交をやって参ります上において、輸出貿易の振興ということは、申すまでもなく非常に重大であります。特に、将来の関係考えましても、東南アジアなり、あるいは中近東なり、アフリカ方面との貿易を将来を見ながら拡大していくということは必要でありますが、ただ、御指摘のありましたように、生活水準の向上あるいは購買力の造成というものを待って参らなければならぬので、実質的にただいますぐに日本貿易を十分有利な立場をとるといたしますれば、今お話のような、財政的にもあるいは金融的にも充実しておりますヨーロッパでありますとか、あるいは豪州、ニュージーランドでありますとか、あるいはアメリカカナダ方面輸出を増大していくということは当面緊急の問題だと思います。御指摘のように、アメリカカナダに対する貿易を盛んにして参るということは、ただいまお話のありましたように、現に片貿易でありまして、相当程度日本輸入超過でありますから、なおさら、その面から言いましても、貿易バ ランスをとる上において、日本輸出を増大して参り、あるいは一方には輸入を減らしていくということをして参らなければならぬと思います。そういう意味において、われわれとしても、できるだけ両国政府に対しまして日本の立場を説明し、貿易の振興というものに対して何か妨害的な措置あるいは制限的な措置が取り行われないように、常時説明をしていくことが必要であります。特に、これらの点に対しまして、輸出品は日本の中小工業の主たる製品であること等を考えますと、そういう意味において、単に数量の問題ばかりでなく、質の上におきましても、また国内産業政策の上においても必要だと思いますので、そういう意味の理解を深めるように努力を続けておるのでありまして、ワシントンにおきましても、オタワにおきましても、相当好意的に政府の人も日本の位置を考えてくれているとは思いますが、一そうそれらについては努力して参らなければいかぬと思います。なお、輸出振興というような問題につきましては、特別に何か新法案とか、名案とかというものはなかなかないのでありまして、やはり従来やっておりますように、民間同士の業者間の接触を密にして、そうしてお互いに自制的に輸出をして、そうして数量を増大さしていく、あるいは品質等についての理解を深めていくという業者間の十分な連絡協調ということも必要でありますが、同時にまた、一般に対しまして、日本製品の品質なり、あるいは価格の問題等につきまして、十分それぞれの国の国民の方に理解を持っていただくような宣伝活動も必要だと思います。同時にまた、これらの国においては、議会等に業者が陳情をいたすというようなことで問題が取り上げられる機会が多いわけでありますから、できるだけその方面に論理的な活動をしていくということも必要なわけであります。そうした問題について、逐次充実をさせながらやって参ることが必要であろうかと思います。なお、通商関係のいろいろな条約の締結等というような問題につきましては、できるだけ骨を折りながらやって参るつもりであります。幸いにして、カナダとの間の関係も、そういう意味ではだんだん条約等もでき、改善されてきつつありますので、今後一そう通産行政とあわせて、われわれも努力をして参りたい、こういうふうに考えております。
  19. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) アメリカ及びカナダ日本の正常貿易の相手国といたしまして最も重要なる市場であるということはお説の通りでございます。今日、あの両国の消費力をもってすれば、日本貿易を振興する上におきまして一番重要なるマーケットであるわけでありますが、過去におきましては、どちらかというと、輸入超過になっておったことは事実でございますが、今後は、輸入する商品につきましても、市場を交換し得るところにおきましては買いますけれども、大体は必要品が輸入されておるわけでありますから、どうしても問題は輸出を増進するというところに重点を置いていきたいと存じておるわけであります。ところが、現在におきまして、アメリカ及びカナダに行っております大多数のものは消費財が多いのでありますから、今後は、カナダにつきましては、多少消費財ということから変えまして、生産資材をもカナダへ持っていきたい、こう思っておるわけであります。消費財の輸出につきまして起っておる問題は、アメリカ、及びカナダにおいても同様でありますが、特にアメリカにおきましては、消費財を生産する人たち、アメリカにおいて生産する人たちは、やはりアメリカの中小工業者が多いわけでありますから、この人たちとの連絡をよくとる必要があるということのために、外務省におきましても、すでにアメリカの大使館に輸出協議会というふうなものを開いてもらって、そこで、日本から行っております各業者等も金を出し合いまして、そうして国会対策とか、あるいは消費者に対する対策及びアメリカにおける生産者に対する対策等を講じまして、いろいろな手を打っておるわけなんであります。同時にまた、通産省といたしましては、ジェトロの機構をもっと拡大いたしまして、各地方にジェトロの支店を置いて、アメリカ人の嗜好に適するものはどういうものだろうか、どういうふうな将来性があるだろうかというふうなこともよく調査をし、アメリカの消費者との間の接触を保つという方針をとっておりますが、概括いたしまして申し上げたいことは、一ぺんに多数の品物を輸出するということはいけないということであります。不当な競争をして今までのルートを乱す、販売のルートを乱すというふうなことをしてはいけないということであります。品質はできるだけ改良して、いいものにして、値段をもっと高く売るという方法をとっていかなければならぬ、大体こういうような結論が出ておるわけでありますが、生産するのは、ほとんど日本内地におきましては中小工業者が多いわけでありますから、ここにおきまして、政府は中小工業者の設備を近代化せしむるということに今後の力を注ぎまして、中小工業者の結束を強くし、そうして不当競争をしないというふうな方針をとり、そうしてその製品の品質を向上するという方法をもって進んでいきたいと存じておる次第であります。こういうことによりまして、私は現在アメリカに対する輸出は、一昨年は御承知の五億四千万ドルだったと思いますが、昨年は六億になっております。本年は六億九千万ドルくらいになると思っておりますが、これは逐次もっとふやしていける、カナダは大体御承知のように六千万ドル近くになりますが、実はもっとふやせる、こういう方針で少くとも一年に一割ないし二割ずつくらいの程度には増加していきたいと、こういう方針で進みたいと存じておるわけであります。
  20. 田村文吉

    田村文吉君 今、通産大臣の御説明の中に、カナダに対しては生産財の輸出が芽ばえてきているというお話しでしたが、実例をちょっとあとでお話し願いたいと思います。  それから岸総理に特にお願いしたいんでありまするが、アメリカカナダというものに対しては現在十一億ドルの輸入超過、片貿易です。アメリカの国が過去に寄せられた、日本に対する親善的の行為に対して、われわれは非常に感謝している。同時に日本というものが今後生きていくためには、かりに東南アジア貿易にいたしましても、いわゆる欧州協同体ができ上ったりして、相当輸出は競争熾烈になっていく、中共であっても、今日の状況では、なかなかこういう共産圏国家と貿易をふやしていくことは困難だ、そうすると日本のふえていく人口を収容するためには、どうしても輸出をふやさなきゃいかぬ。輸出をふやすには、今言ったような、アメリカカナダと合計十一億ドルの輸入超過もあることだから、せめて対等に貿易をしてもらうというようなことは、総理としては深くお考え願わなきゃならぬと思うのであります。この点につきましては、外務大臣通産大臣お話もございましたが、特に私は総理からこの点についてのお考え一つ承わっておきたいと思います。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来、日本輸出貿易振興を中心として御質疑を行われました。特に対米、対ヵの貿易バランスをみると、十数億に上る日本側の輸入超過になっておる。しかも、これらの市場はいずれも生活水準が高く、市場として非常に実力のある市場で、しかも戦後特に親善関係、また経済協力の関係その他に深い、非常に密接な国であるから、特にその貿易を伸張して、できるだけこの輸出入がバランスするくらいまで輸出を拡大すべきではないかというお話につきまして、私どもも全然同様に考えております。先年アメリカに参りました際にも、その点を特に指摘して、アメリカの財界の人々や政治家のみならず、産業人等とも私、話をして、その点に関する注意を喚起したのでございますが、それに対しては、アメリカ側におきましても、そういう方向に日米両国で努力すべきものであるという根本については、全然異論ないのであります。ただアメリカとしては、いろいろなそれについての要望がありその二、三のことを言いますと、たとえば日本においては、われわれが知っておる日本の工業力の現在からみるというと、相当世界の水準の高い程度にある。しかるに日本品が売れるということになるというと、ずいぶん値段を安くし、粗悪なものがくる。われわれは相当購買力を持っておるのだから、品質のいいもので、十分ヨーロッパ諸国と日本が競争できるなにがあるのだから、品質のいいものをよこしてくれ。たとえばカメラであるとか、あるいは、ミシンの相当いいもの等においては、アメリカにおいては世界のどれよりも日本品というものに対して尊敬を払っておる。ところがそれが売れるということになると、だんだんと競争で値段を下げやすい。従って粗悪なものが来るようになるが、これは非常に注意してもらいたい。売れるというと、一つの商品に非常に急増してアメリカの方の産業相当影響を持つ、こういう問題もオーダリーに秩序のある何か貿易をしてもらいたいというような話がいろいろあったのでありまして、これに対しましても、帰りましていろいろな日本の財界とも話をして、日本貿易をできるだけ秩序のある、また良品をこれらの市場に出していくようにわれわれとしては努力をいたしておりますが、今後においてもそういう意味において、その方向に向ってやはり政府及び産業界とよく腹を合わして、今お話のように、この市場における日本品輸出というものを現在としては伸ばす、そして、バランスを合わすようにすることが、最も日本としては望ましいこと、であると、こう思っております。
  22. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) カナダに対しましては、最近に紡織機であるとか船舶、車両、目下引き合い中のものでは発電機等が相当ございますが、これには相当力を注いでいきたいと思います。
  23. 田村文吉

    田村文吉君 次に、最近になりまして、一カ年に七千万ドル、あるいは八千万ドルの外貨の獲得に役立っております観光事業でございまするが、これは民間にも観光協会というようなものもあり、大体何かいろいろのものもございますし、政府でもこの問題の重要さをお考えになりまして、内閣の中に審議会をお設けになっておられるようでございます。で、とにかく輸入原資材の何らの必要がなくて、七千万ドルか八千万ドルという外貨の獲得ができるということは、今日日本経済の非常な急迫した状態から考えまするというと、非常に大きなものであります。そこで、私はこの問題につきまして、実は現在でも運輸省が主管になっておられます。決して運輸省の主管が悪いと申すわけではございませんけれども、各省がほんとうに協力して、これをほんとうに強く推進するようなものがあられて、この観光事業というものをもっとやるべきじゃないか。承わるところによると、運輸大臣がかなり相当の計算を要求されたようでありまするが、これは切られたそうであります。私はこういう生産的と申しますか、経済にすぐに役に立つようなものについては、思い切って政府がやるべきじゃないか、一つこういう点を考えておりますが、この点につきましては、いわゆる総合的な大審議会を、もっとほんとうに活用する御意思があるかないか。それから運輸大臣は担当者としてどうお考えになっておるか、ちょっと伺いたい。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 観光事業の非常に日本としては特に力を入れるべき事柄であるという点につきましては、私も全然同感でありまして、従来これに対する日本の行政機構も、いろいろと各省にまたがっており、各省の協力がなければできないのでございますが、そういう意味において総合的な対策を強力に立てて、そして関係省をしてこれを推進する、また民間におきましても強力な団体ができて、そしてこれとタイアップして進んでいくというような仕組みを考えることが必要だと思います。この意味において、従来の観光事業審議会というものは総理のもとにありますが、内閣の中にあるのでありますが、これを一そう強化してその活発な活動と推進を実現するようにいたして参りたいと、こう思っております。
  25. 永野護

    国務大臣(永野護君) 御説の通り、鶴光事業がいわゆる見えざる輸出といたしまして国際収支のバランスを合せます上に重要な役割をになっていかなければならないものだと考えております。従いまして、私就任以後、観光事業の振興ということにつきましては、種々苦心して参つたのでございます。御説の通り、各省にまたがった点が非常に多いのでございまして、内閣に審議会もできておるのでございますけれども、審議会というような一種の相談にあずかるというような機関でなくて、もっと積極的な執行機関が要ると思いまして、本国会に日本観光協会法案という特殊法人を作る法案を提出いたしまして御審議を願っておる次第でございます。これも最初は非常に大規模に考えておったのでございますけれども、いろいろ予算折衝の上において、私の最初考えておりました案よりは非常に小さくなっております。私は見え貿易のジェトロに二十億お出しになるくらいならば、見えざる輸出のジェトロに十億くらいの予算は出していただいて、そうして年にただいま七、八千万ドルかせいでおります観光収入を二億ドルくらいに上げていきたい。そうして今日十五万人ばかりの観光客を三十万人くらいまでもっていきたい。これはそれぞれの専門家、これは日本ばかりではございません、外国の専門家に聞きましても、その程度の観光収入の目標は決して過大なものではなくして実現の可能性のあるものだと、みんなそう言ってくれておるのであります。そこで、それを目途といたしまして私ども十億円くらいの予算を持った動き方をしたいと思っておったのでございますが、本年度は御承知通り二億円の予算となっておるのでございます。これは御審議を願っておる途中でございますが、私はこれを伸ばしまして、今御指摘のありましたような点に焦点を合せまして、日本の観光事業を進めていきたい、こう考えております。
  26. 田村文吉

    田村文吉君 運輸大臣のあえて御答弁は要求いたしませんが、今の観光協会法案というようなものは、国内における観光事業と国際観光事業をある程度一つにしてなそうというようなふうでございますが、私は日本の観光事業というようなものは、もう今日はお忘れになってよろしいと思う。そんなものはもう法律を作らなくとも、どんどん国内の観光事業は伸びる、伸び過ぎて困っておる。そうではなくて、ほんとうに外国からの外客を誘致するようなものを一つ考え願いたい。それには一つ内閣が主導になって、一つほんとうに動けるようなものを考えてもらいたい、こういう意味で申し上げておるのであります。あえて御答弁には及びません。  次に、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思いますが、私は法人税の大幅な軽減の問題について伺いたいと思います。この問題につきましては、しばしば本院におきまして、私は岸総理大臣及びときの大蔵大臣に意見を申し上げて御意見をお伺いいたして参ったのでありまするが、私は端的に申しまして、日本経済の大きなガンはここにある、法人税の過大な課税にあるということを私は常に信じておるのであります。一番端的に簡単な例を申し上げまするというと、これまでは国内における産業の外部資本は非常に多過ぎてこれは困ったものだということを言っておる。それが六〇%、ところが最近の情勢は六七%、どんどん外部資金がふえて内部の資本というものはふえない、これはふえないようにできておる。何がしておるかというと、法人税というものが非常に過大である、法人税を払って資本金をふやしてやるよりは、借入金で経費を払ってまかなっていった方が得だ、これはもう簿記の初歩を習った者ならすぐわかる。そういうようなことでどんどん社外資本がふえておる。これは日本経済を非常に危殆ならしめる問題に相なっておるわけでございまするので、それで私は前にも申し上げたのでありまするが、一体戦前におきまして個人の所得税はどうなっておったかと申しまするというと、税率は総所得に対しまして四分四厘であったのが、現在は四分九厘に相なっております。これはそのくらいの程度で私はやむを得ないと考えておるのでありますが、法人税としましては戦前は九分二厘であったものが、現在のあれは二割八分二厘五毛だ、こういうように四倍からの高い税金を取って法人を痛めつけていたのでは、日本経済なんぞは伸びっこない。これがために経済産業というものの基盤が非常に危うい基盤に相なっておりまするし、一たん不景気が参りますると、すぐ倒産等の問題が起つてくる、すぐ失業者の問題が起ってくる。私はこの点で社会党の諸君もよく聞いてもらいたいと思うのでありますが、あまりおいでにならぬようでありますが、社会党の諸君は何か法人税を軽減するというようなことになりますと、何か特別に、近ごろよく言われる特別の資本家を擁護するようなことになるんじゃないかというふうに、非常に即断されて議論をお立てになるので、非常に困っておるのでありますが、そうじゃないので、産業が振わなくて倒産が起って失業者が出るということは、結局いわゆる労働階級の人が非常に困ることであります。そういうような非常に危ない基盤のもとに立っているのでありますので、私は大蔵大臣、しかもこの税制審議会あたりがこの問題をお取り上げにならなくてはならなかった。昨年ですか、四割のものが三割八分に下ったけれども、そんなものではない、どうしても四割のものは二割ぐらいに思い切って下げておしまいにならんければ、日本経済は末劫末代まで危ない橋の上に立っていきますよ。こういうことを申し上げなければならぬと思うのでありますが、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 基本的な結論だけ先に申しますと、法人企業課税のあり方等については、もう基本的な検討段階までになっておるように思います。今年の減税に際しましても、国税は昨年法人税について二%の減をいたしましたので、地方税も法人事業税等について軽減をいろいろ工夫いたしたのでございましたが、いろいろの事情がございまして、所期の目的は十分達することができませんでした。しかし、この税制審議会における答申等を見ましても、やはり企業課税のあり方というものを根本的に研究して、そうして建て直すべきじゃないか、こういう強い答申が出ております。政府は、今回基本的な問題としての税制審議会の設置を提案いたしまして、ただいま御審議をいただいております。この税制審議会で問題になりますものは企業課税のあり方であるとか、あるいは間接税のあり方であるとか、あるいは国の財源の分配の問題であるとか、こういう基本的な問題について取り組んで参るつもりであります。わずか半年やそこらでは、なかなか結論は出ないだろうと思います。そこで結論はそういうことに譲らしていただきたいと思いますが、ただいまお示しのございました昭和九年ないし十一年時分の個人の負担割合であるとか、あるいは法人の割合であるとか、こういう数字は、御指摘通り相当アンバランスのものが今日出ておるように思います。過去のものについて弁解がましいことを申し上げるわけではございませんが、昭和九年——十一年から国民所得に対する税負担率は法人税といわず個人の所得税といわず相当率が高くなって参っております。ことに、戦後におきましては、税の負担が非常に大きくなっておる。申すまでもないことですが、税そのものは財政需要の高によりまして、税負担のレベルがだんだんきまってくるわけでございます。戦後のような情勢で、この財政需要に応ずるために国民の負担が非常に高くなったことはやむを得なかったと思います。一時、国民所得に対しまして二三、四%まで税の負担というものが上ったと思います。そこで、政府におきましても、かような高率な負担は国民のたえるところではないし、また、個人といわず事業体といわず、これにたえ得るものでないというので、しばしば減税を実施して参りました。最近におきましては、大体一四%ちょっとこす程度国民総所得に対しては一四%一か二という程度にこの税の負担は軽減されて参ったのであります。この国民総所得に対する税負担は軽減の方向をたどって参りましたが、この場合に、一体税負担といっているが、どういう税目について特に意を用いてくるか、こういうことになって参りますと、それぞれの場合々々にそれぞれの方策を講じて参ったように思います。言いかえますならば、個人の所得に対する所得税の軽減、これが一番直接個人の負担を軽減さすゆえんでございますから、まず第一に、個人の所得税の軽減ということが大幅に取り上げられて参ったと思います。法人税についての減税もしばしば計画されましたが、国民総所得に対する税負担が高いという声に、どうしても個人の方に力が入って、これは別に社会党さんの主張を支持するわけではございませんが、そういうような結果になって参ったと思います。また、今日の税制のあり方等を見ますと、各国ともですが、それぞれの国によって幾分か形は違っている。たとえば欧州アメリカでは、直接税と間接税による歳入の割合というものは、大陸とアメリカなどでは違っていますが、大体直接税というものが財政収入の上で重きをなしておる形でございます。日本におきましても、昭和九年時分から見ますと、直接税が大体半分程度になっているということでございます。四九%程度を占めるようになっている。この直接税の中の法人の負担というものは、そういう意味でもやはり相当多くの部分を占めるように、各国の法人税なども、そういう形をとっておるように私ども見ておるのでございます。しかし、この税の伸び方そのものをしさいに検討してみますと、個人に対する所得税は、先ほど四・四という数字をお示しになりましたが、当時個人で所得税を納めておりましたのは、きわめて少数であった。おそらく昭和九年や八年時分でありましたら九十万人に足らない程度ではないかと思います。しかしながら、最近におきましては、個人で所得税を納めておりますものが一千万以上になっておる。これは非常な増加であります。法人の場合におきましても、法人税を納めている法人の数も最近は飛躍的にふえて参っておりますが、個人の場合においても、ただいま申すように、九十万に足らないものが一千万をこしておる。こういうことを考えてみますと、これなどはいわゆる低額所得者に対しても所得税を納めてもらっておる状況でありまして、これは先ほど申すように、税負担としては一般に重いということを、実は示しておる一つの例だと思います。従いまして、この一千万の全体についての率を考えてみますと、いかにも伸び率が少いようにお考えになりますが、個人所得の場合でも上の百万人程度、一千万のうちの百万人程度をとってごらんになりますと、これはもう三倍以上のやはり所得税の負担をしておるような状況になっておるのでありまして、これは必ずしも軽々には申すことができないと思います。法人の方につきましても、数は相当の数の伸びがあるし、また、個人経営を法人経営に移しておるものも相当多数でございます。これを一律に申し上げて、法人が非常にきついとか、個人が非常に軽いとか、こういうことはなかなか言いにくいと思いますが、私どもの見るところでは、法人についてやや時期がおくれておるが、総体といたしまして、特にはなはだしい処遇の低下だと、こうまでは言い得ないのじゃないか。かように私ども思っております。しかし、先ほど来御指摘になりますように、いろいろ税のあり方そのものから見まして、やはり自己資本の充実という意味においては、相当欠くるような税制になっております。ことに借入金の金利はみんな損金に落す。あるいはその配当の利益については、個人の場合に、個人所得としての課税であるとか、いろいろ税そのものとして考えていかなければならない点が多いのであります。こういう意味において、冒頭に申しました税制審議会において、企業課税のあり方について十分考究して参る考え方でございます。
  28. 田村文吉

    田村文吉君 私は、あえて個人所得が低いから法人の方が高過ぎるのだという意味で申し上げておるわけじゃない。個人課税に対しても私は高いと思っておる。いるのでありまするが、今の人口の増加は、なるほど昔は九十四万人のものが、今日は一千万人の課税人口になっておる。それから法人の方は、九万五千の法人であったものが、今日は五十万になっておる。こういう点のことも私は計算をむろんした、してみたのでありますが、片一方は、四分九厘の率であるということは、まあこの際、敗戦国日本としてお互いにしんぼうしようじゃないかということで、ある程度わかるが、今の九分二厘であったものが三割八分二厘五毛というような、四倍にもなっているような法人税を取っておるということは、あなたが何をおっしゃっても、取りやすいから取るだけの話だ。この方が票が集まるから、個人の方は減らしてやるというだけです。ほんとうに国を憂えて、国の経済を直そうという考えがあるならば、もっとまじめな私は御答弁があるべきだと思う。私ははなはだそういう点については心外に考えます、考えますが、そういう点については、一般質問の場合に譲ってもよろしいのでありますが、ただ、日本経済のガンがそこにあるということだけは、私は認めていただかないというと、今後の日本経済が直らぬ。こういうことを非常に心配するのであります。税制審議会自体も、できるだけ世間の評判のいいように答申されるというふうな傾きがある。そういう点は、十分に大蔵大臣としてはお考えになって、ただ属僚の方のお示しになる数字だけでなしに、ほんとうに眼光紙背に徹してこの数字を見ていただきたい、こう私は考えるのであります。まあいずれは、一般質問でその問題について触れて参りたいと思います。  次に、大蔵大臣にお尋ねいたしたいのでありまするが、本年度の予算のお手ぎわは、きわめて円滑でなめらかにでき上って参ったようでありますが、今年度の一般予算は、昨年度に比べまして八分二厘の増加になっております。財政投融資等では一割以上の増加になっております。予算の増加は必ずしもとがむべきではありません。非常な不景気で失業者が多い等の場合に、財政支出をふやして土木を興すとかいうような、道路を作るとかいうような問題もあり得ると私は考えます。また、国力がだんだん増加して参りまして、これに伴って、社会保障の制度を完備するというために予算がふえて参るのもよろしいと思うのでありますが、このニカ年間一割以上ずつ伸びてきて、ことしは八分四厘でありますか、ふえて参ったというようなこと、少しくお組み方が安易に考えられている点がありやせぬか。まあ簡単に申しますると、いわゆる総花式にお盛り上げになっているようなきらいがあるのではないか。この結果がよければ、私はけっこうだ。ただ、何かしら世間の声は、何かかんか言うけれども、汽車の値段は上るし、鉄道の運賃は上るし、物が上っていく、こういうふうに一般に言われておりまする際でありまするから、この財政規模をおきめになるときには、よほど慎重に御考察願わなければならぬと思うのでありまするが、大蔵大臣は、こういう点について十分の御確信をお持ちになりまして、本年度の予算をお作りになったことと思うのでありまするけれども、私の心配するのは、知らず知らずインフレが食い込んで進みつつあるという状態にあるのじゃないかということを心配するのでありまするが、その点についてのお考えはどうでございましょうか。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 三十四年度の予算を組みます場合に、三十四年の経済の成長率、詳細なデータによりまして、私ども一応見通しを立てたのであります。これによりますと、大体六・一%の成長率だということでございます。この成長率にふさわしい予算を組むということで、今回の予算並びに財政投融資計画を樹立いたしたつもりでございます。この予算を作ります際に、御指摘になりますように、予算そのものにおいても相当多額の増額でありますし、ことに財政投融資の面においては、一千億以上の増額を見ております。こういう意味で、相当積極性を持った予算ということがいわれております。この積極性の予算が当然もたらすであろうというような諸般の事象につきましては、十分事前に注意をいたしておるつもりでございます。ことにインフレ等についての問題、これは、予算が発表されました直後において、財界各界等においても、相当警戒気がまえの発言が出ております。これは、財界そのものに相当警戒気がまえがありますことは、私どもとしても非常に望ましい事柄だと思っておるのでありまして、私どもも、この実施に当っては、特にそれらの点について注意をしなければならないとかように考えておりました点について、財界の方からそういうような声が出ている。これなどは、私ども、非常に警戒気味であるということについて喜んでおるのであります。おそらく御指摘になろうとしておるものは、財政の規模そのものは、そういう意味で、一応成長に対応するものではございますが、最近の物価の動向等が、運賃値上りその他等から、相当増高の傾向にあるのではないかという点を御指摘ではないかと思います。先ほど企画庁長官からも指摘いたしましたが、この物価そのものが、少しといいますか、微騰の傾向を示しておることは、御指摘通り、私どもも認めております。しかし、私ども、今回の物価の動きそのものは、金属類やあるいは繊維関係物価が非常に強く響いて、今のような微騰の数字を示しておるのではないかと思います。金属関係においては、少し上げ過ぎたというので、最近はまたこれが安定の形になっております。繊維関係などは、先を少し下げ過ぎたという意味で、それが少し上向きになっているというようなことでありまして、まあ総体としては、大体物価そのものは、大勢としては、横ばいということが言えるのではないかと思います。問題は、国民消費の面において、大衆の負担が今回の予算でふえるというようなことになりますと、これは私どもの本来考えておるところとは違う結果を招来するものでございますが、今回の減税等につきましても、所得税の軽減や事業税の軽減等は別といたしまして、やはり物品税あるいは入場税等についても、軽減方式をとっておる。そうして、そういう意味で、ただいま御審議をいただいておりますこれなどは、大衆の負担という意味においては、さらに軽減の方向に役立つものではないかと思うのであります。で、そういう点は別といたしまして、問題は一に、御指摘になりますように、今回の予算の実施に当りましては、これが安易な膨張の方向に行かないように、財界各界の協力をお願いする。また、今後の動きによりまして、私どもは大体経済は順調に成長するものだと、かように期待をいたしておりますが、その点において、もしもわれわれの予想のようにいかないといたしますれば、今回の財政投融資の実行に当りまして、民間との協力によりまして、経済の成長に資して参りたいと、かように考えております。まあ、どこまでも実行に当っての注意を十分しろという御注意であろうと思いますので、その点についてはこの上とも心がけて参るつもりでございます。
  30. 田村文吉

    田村文吉君 日本の外貨の保有高は、最近に御発表になりまして、九億三千八百万ドルということを御発表になっておりますが、大蔵大臣は、大体日本経済の安定、あるいは貿易の安定というような点から考えていって、日本の保有すべき外貨は、大よそどのくらいをめどとすべきであるというふうにお考えになっておりますかを伺いたい。
  31. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 大へんむずかしいお尋ねでございます。実は私も大蔵大臣になりまして、日本の外貨は、適正は一体どのくらいだと、適正ということが不適当なら、一応安心のできる外貨保有額はどのくらいだろうと、実は各方面の人の意見も聞いておるのでございますが、なかなか明確な意見の開陳をただいままで得ておりません。私が非常に気にしてそういうことを申しますのは、一年のうちに三億ドルや四億ドルも減ったりふえたりするような外貨の状況というものは、これは私非常な動揺性というか、波動性のある点を見ておりますので、まあそういう点を考えて参りますと、九億三千万ドルになったからといって、どうもゆるめるわけにはいかないのではないかと、かように考えておるのでございます。
  32. 田村文吉

    田村文吉君 私は、ドイツが六十億ドル持っておるとか、あるいは日本の少いときには純計で四億五千万ドルに減ったとかというようなことで、私はドイツがよけい持っておるから、日本もそれにおならいなさいと、六十億までお持ちなさいと言うわけじゃない。ないが、大よそどのくらいの外貨というものは日本経済の正常運転として必要なんだと、ことにいわんや、今日は為替の正常化というようなことが叫ばれて参りますると、ますますそういう点についての不安が参りまして、現に為替の先買いが行われているというようなことが新聞にも出ておる。そこで、私は大蔵大臣に、そんないいかげんなことでなくて、大体どのくらいのめどを持つべきであるかということぐらいはおきめになるべきだ。そのものを、たとえば二十億ドルというか、あるいは三十億ドルというか、そういうものを持って、しかもそれを持つためにはどういう方法でこれは集めていくかというようなことがやはりできていかないということには、日本の長期計画なんということを考えたって意味をなさぬ、こういうふうに考えるのでありまするが、私は、重ねて、恐縮でございますが、あまりいいかげんで、わからない、わからないじゃ困るので、もうちょっと一つ
  33. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御指摘になりますように、実は非常にむずかしい問題なのでございます。で、私が今心配をいたしまして、いろいろ検討いたしておりますのも、ただいまの御意見のうちにありますように、まあ最近通貨交換性回復という問題がございますし、あるいは欧州共同市場というような問題が起きて、まあそれぞれ国際経済社会で活発な活動をしようとする、こういうことを前提として考えて参ります場合に、早晩、おそかれ早かれでございますが、まあできるだけ早くというのが私どもの願いでもございますが、わが国のこの円そのものについて、やはり国際決済通貨としての指定を受けるような十分の実力を備えたいというのが私どもの念願でございます。もちろん外貨は保有高それだけではございませんので、この国際経済社会の中でひけをとらない十分の力を持つ、こういう意味で外貨の保有、これが一体十億ドルやそこらではいかぬことはこれはだれも考えておるところと思います。しかし、今申す片一方の為替貿易の自由化という方向に踏み出すといたしますと、外貨の保有高が少いからと申しまして、わが国が国際経済の競争におくれをとるようなことがあってはならないと思いますから、そういう意味においていろいろの準備を進めて参るわけでございますが、お話しになりますように、円為替の導入ということになれば、もう直ちに国内の非居住者円勘定にいたしましても、これが交換されるようなことになれば、そういう場合に当然その金額だけの外貨保有で十分だとは言えないこともこれも御了承がつくだろうと思います。そういう意味から、私はドイツのような六十億ドルもある必要はないだろうと思いますが、ただ今現在のような状況では、これはまだまだ不安だということを実は申しておるのであります。その他の準備、たとえば国内における金保有そのものも一つの問題でございますが、御承知のように戦後わが国の金保有が非常に少い状況であります。そういうことを考えて参りますと、この外貨の保有量が九億三千八百万ドルというような数字が出たからといって、なかなかこれは油断はできないのじゃないかと思います。しかし、あるいはこれに関連する問題かと思いますが、三十四年度の国際収支の見方にしても、人によりましては、今政府が見ている一億六千万ドルの黒字ではこれは少い、三億ドルにも四億ドルにもなるだろう、そういう意味では政府の施策が少しきついのではないか、こういうような批判をする向きもございますが、今日の円の持つ状況と力等からいたしますと、私どもはなおこの点にはもう少しの慎重さが要るのではないか、その意味においても各方面の資料を十分そろえました上でただいまどの程度でいいだろうというようなことを申し上げるのが本筋だと、実はかように考えておるのでありまして、私がただせっかくのお尋ねであるにかかわず、中途半端なことを申してまことに恐縮のようですが、事実今の状況で足らないことははっきりわかっております。しかし、しからば十五、六億ドル保有すればいいか、二十億ドル保有すればいいか、こういう議論は今しばらく保留さしていただきたいというのが私のほんとうの気持でございます。
  34. 田村文吉

    田村文吉君 大蔵大臣が慎重にかまえてお立ちになるのはけっこうだと思うのでありますが、差しかかってきている円の指定であるとか、ドルの自由化というような問題がおいおいと出てくると思うのです。そういう場合において、日本はこのくらいのドルも持っていないのにそういう問題を論議すべきじゃないとかというようなことを言われぬためにも必要である。今後の日本貿易を進展させるためにも、一体どのくらいのめどをもってわれわれ一ついこうというようなことが起ってくると思う。今御調査中でありますということを、しいて今ここであなたの国をどうしても割ってみようといったって、てるいはお割りにならぬかもしれませんが、その辺のところでとめておきますが、そういう点を考えるときに、少くも近い将来においては、円の指定であるとかあるいはまたドルの交換というような問題等につきまして、お考えになっていないことはむろんないだろうと思うのですが、その点についてはどうですか。
  35. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 基本的な問題といたしましては、先ほど触れましたように、円そのものも国際決済の通貨に指定を受けるようにぜひとも扱いたいと思っております。しかしこれは時期的にいつまでにどうなるのかという問題になりますと、なお私どもは十分の準備をしなければならぬと思っております。しかし、これは外国の例におきましても、いわゆる通貨交換性と申しましても、まず取り上げましたものが非居住者のその国の通貨勘定からまず始めておるような次第でございますから、日本におきましても大体そういうような順序をとっていくものと、かようにお考えになってもいいかと思います。なお私ども政府といたしましては、絶えず申しておりますように、通貨価値の安定ということが、これはもう国際的にもまた国内的にも経済活動の基本をなすものであると、かように考えておりますので、これについては特に力をいたすつもりでございます。また将来の為替貿易の自由化の方向に関しましては、やはり基本の法規を整備していくことが必要のように思います。整備と申しますよりも、在来の手続が非常に煩瑣なものを簡素にするとか、あるいはまた実質的にあらゆる面において統制的なもの、規制的なものを力を抜いて、自由的な方向へ進めていきたい。差し当っての問題はただいままだ審議中でございますが、上期外貨予算の外貨割当などがそういう意味においての一つの現われとして出てくることになるのでございます。
  36. 田村文吉

    田村文吉君 日韓会談の問題についてちょっとお伺いいたしたいのでございます。外務大臣はどう考えられるか、日韓会談の予想される推移からいたしまして、今後の方針を承わっておきたい。  日韓会談は昨年来、承わりますと七十四回も会議をお進めになったということでありまするが、今日に至るも何らの曙光も認めることができない状態でございます。同じ自由主義連係のもとにありまする両国でございまするから、あくまでも事を平和的に両国間において妥結することが望ましいことは申し上げるまでもありませんが、しかし人間のがまん、かんにんも程度がある。勝手に百九十海里も陸を離れたところに一本の線を引いて李承番ラインであるというようなことを言い、竹島というのはもう当然に韓国の領土であるというようなことを主張されて一歩も譲らないというような相手方では、実は話にも何にもならないのであります。日本はわずか一隻ぐらいの巡視船を出しまして、もし韓国船が襲いかかってきた場合にはすぐ逃げろというような、まことにみじめな漁携状態をやっておるのでありますので、こういう点についてはまことに国民として、国民の自主性、国民の誇りというものは踏みにじられたような考えがいたすのでありますので、これ以上に会談をお続けになってもほとんど無益ではないか、かようにさえ考えるのであります。そこで、あるいは米国の仲介をお頼みになるなり、あるいは国連に提訴するなり、何とかこういう問題を一日も早く解決して、明朗な国際関係にすることが必要ではないかと思います。万一それができないという場合には、日本の自衛隊の軍艦が守って漁携をやる、出漁をやるというようなことも必要になってくるのではなかろうか、こういうことまで私は考えておるのでありますが、はなはだそういうことを想像することは不快な、また不安なことでございまするけれども、そこまでも追いつめられてきておるのではないか、こういうことを考えておるのでありますが、外務大臣のお考えを承わりたい。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日韓会談は、御承知のように昨年五月以来非常に多くの回数を重ねて会議を継続いたしております。ただ御承知のように日韓会談の主要点は李ラインの問題にあることはもちろんでございまして、この問題の解決なくしては、日韓会談の全面的な妥結を見るわけには参らぬと、こうわれわれの方は考えております。また日本がその根本的に日韓会談に臨みます態度として、そういう態度をとっておりますことは申すまでもございません。その後いろいろ折衝をいたしておりまして、昨年最終的には漁業委員会に対しまして一つ日本の案を提示いたしております。それを審議するいとまなくして、まて年末年始の休会になったわけでありますが、一月二十六日に再開する事情が延びております。従いまして、とにかくこうした案を出しておりますし、またこれに対する韓国側の意向もわかっておりませんので、その点についてはできるだけ一つ粘り強く会談を続行させて参りたい。そうして妥結すべきものならば、二国間の問題でありますので、できるだけ妥結の道を進めて参りたいと考えております。  ただ、その間に李ライン侵犯等のゆえをもって漁船を抑留し、あるいは漁夫を抑留し、そうして刑罰をかけるという問題に対しましては、これはわれわれは正当に認めるわけに参らぬわけであります。これらの解決については、会議の進行とともにやはり手を打って参りませんければならないわけであります。先般の抑留漁夫の釈放問題につきましては、日赤の井上外事部長がジュネーヴに参りましたときに、私からボワイエ委員長に対しまして、この問題を正式に国際赤十字に提出いたしております。それらの推移を見ました上で、今後の方針を考えて参りたい、こう考えております。
  38. 田村文吉

    田村文吉君 まて問題について、強くはっきり御答弁を得ることは困難だとは私は思っておったのでありまするけれども、ただもうそのがまんにも程度がありますので、日本の建国以来の歴史を見て参りますと、常にこの韓国の問題というものは、かつて韓国の譲歩によって問題が妥結した話がないのですね、そういうようなことを考えていくと、非常に私は不幸な立場にてると思うのでありますので、こういう問題についてはもっと政府としては強硬にお進めになるべきではないか、こういうことを私は要望したいのであります。  ついでに聞いてははなはだ失礼でございますが、きょうの新聞を見ますると、例の漁夫帰還の問題につきまして、ジュネーヴにおいて井上外事部長が非常にあっせんをされております。また国際赤十字も何とかあっせんされるのではないかと私どもは思っておった。ところが、それに対して朝鮮側、北鮮側では声明を発して、日本と直接の交渉によって解決すべきものだ、こういうようなことを言っているということを新聞に発表せられております。こういう問題につきましては、外務大臣はどうお考えになっておりますか。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま井上外事部長がジュネーヴに行って日本の立場を十分説明し、特に帰国確認の問題につきましては、いろいろ日本の立場を誤解を受けると困りますので、従って国際赤十字のあっせんを依頼いたしておるわけであります。それらの点につきまして、いろいろの報道が参っておりますけれども、まだ外事部長からの報道というものは、今申し上げたような段階で、国際赤十字がいろいろ考慮をしている、慎重に考慮しているというところでありますので、われわれとしては国際赤十字の決定を待って考えて参りたいと、こう思っております。
  40. 田村文吉

    田村文吉君 朝鮮、北鮮から直接その問題について日本と話し合いたいというようなことを国際赤十字を通じて話し合いがきておりませんのですね。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国際赤十字を通じては、まだきておりません。
  42. 田村文吉

    田村文吉君 その他の方法ででもありますか。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その他の方法でもまだ公式にはきておりませんけれども、何かそういう話は聞いております。
  44. 田村文吉

    田村文吉君 最後に、総理大臣に対しまして、最近の政局に対する御心境のほどを承わりたいと存じますが……何かお取り込みがございますか。何かざわざわしておりますが、……よろしいですか。(国務大臣佐藤榮作君「けっこうです」と述ぶ)この間フランスのドゴール氏は国民に訴える第一声といたしまして、過去のフランスの政治はあまりにも場当り、でたらめが多過ぎた、今後われわれは真に真実性を持った誠の具現こそ今や最も願わしい時代である、これが一つ。次に、国民に対しまして、ただ勤検力行を求めると強調して結んでおるのであります。この二つの言葉は、何かしら岸総理の心の琴線に触れてくるものがあるのではないかと考えるのでございます。明治天皇の御即位に際しまして、五カ条の御誓文の中に、「人心ヲシテ倦マサラシメン事ヲ要ス」ということを言っておられるのでありますが、残念ながら今日の時代は、昨年のことに警職法の問題がああいうような状態になりましてから以来であると思うのでありますが、非常に民心がたるんできておりますると同時に、政治を信頼せぬ、議会を信頼しないというような気風が幾らかずつ出てきておるのではないかということを私は心配しておるのであります。この間隙に乗じまして、また国内相当多数のいわゆる徒党は、力を外国にかりまして、国内政治の変革を志しておる者があるように聞いております。少くも外国の勢力に利用されておる者が相当に多いと考えます。昔は、兄弟かきにせめいでも外侮りを防ぐということがあったのでございますが、これがほんとうの祖国を愛する真の心情であると私は思います。ところが今は全くその反対でございまして、一昨日もある委員の方から、自民党は経済界から九億円に余る献金を受けておられるというような発表があったのでありますが、私はこれを聞きましたときに、万一これが反対に外国から、日本の今の非常に気抜けをしたようなこういう時代に、秘密に十億円の金でも送ってそうしてやるならば、日本の社会革命というものはいわゆる平和裏にこれを遂行することができる、こういうことを考えられるようなことがあるほど、日本の現在の状況岸総理のいわゆる指導者の立場が三角点の一点にお立ちになっておるような気がしてならぬのであります。かような世の中の時代を、私は非常にあえて慷慨悲憤の言葉で申すわけではありませんけれども国民が議会を信ぜず、議員を信じないようなことになりまするならば、非常に私は残念なことであると思うのでありますので、このときこそ、総理大臣からほんとうにふんばって、一つ力強くやってもらわなければならないときである、いわゆる大死一番を要求したいと考えるのであります。そこで私は総理としてはなるべく早い機会に閣僚を一新されまして、そうして総理の私生活に対しては私はとやかく申すわけではありませんけれども、常に庶民の先頭に立って指導していかれる総理の立場といたしましたならば、決してそのこと自体はとがむべきことではありませんけれども、庶民とはきわめてかけ離れたゴルフをおやりになるとか、あるいはまた政治が待合において行われるというような点は一つお慎しみになりまして、おれが一つ皆さんと一緒にいくのだというような大勇猛心を出してお進みになるということが今日の三角点の一点に立った内閣としてのおとりになるべきことではないかと思うのであります。これはまあ岸さんが総理をおやめになるというなら別です。かりそめにもこの大政を担当して、あくまでもこの国難を切り抜けておいでになるというこの大勇猛心がある限りにおいては、ぜひそういう点についての、いわゆる庶民と離れたそういうようなものはしばらく御遠慮になりまして、お進みになるということが必要じゃないかと考えております。  なお、さらに私はそこにちようど総理と大蔵大臣がお並びになっておられますので申し上げるわけではありませんけれども、私は別に物知りらしいことを申すわけではありませんが、春秋の時代督の平公の宰相に祁奚という総理大臣がおりまして、それに対して平公が最も司法大臣に適当した人を指さしてもらいたいということを尋ねたのに対しまして、祁奚はみずからの子供である祁午を推挙いたしたのであります。この例は日本の徳川時代にも、かつて京都の所司代の板倉勝重が自分の子をもって後任に推薦した例もあります。さようなこともありまするが、祁奚の場合には、その次に地方長官の最も重要な地位にだれを推すべきであるかということを平王から尋ねられたときに、一番自分と仲の悪い解狐と申す人を推挙して、平王はお前が一番きらいな、一番仲の悪い人間を推挙してよいのであるか、おかしいではないかということを尋ねたのでありまするが、それに対しまして、私の交わりは私の交わりでありまするが、国家のために人を推挙する場合において、何らの私心を差しはさむべきではありませんということを答えたということを聞いておるのであります。私は、総明な岸総理がそういう行動については少しの誤まりもお犯しになるとは思いません。また、佐藤大蔵大臣をお用いになったことも私は非常に敬意を表しております。表しておりますが、ともに今申しました解狐を用いて地方長官にしたというこの心境が、やはり総理大臣としての最も大切な心がまえではなかろうかと、こんなふうに考えておりますので、私は質問を終るに当りまして、総理の御心境を承わっておきたいと存ずる次第であります。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いかなる時代におきましても、政局を担当して参るということは非常な決意を要し、また各種の困難を伴う問題であると思います。現在の状況につきまして、私もいろいろと内外の情勢を、国会、政治の現状並びに将来を考えますときに、自分自身の責任のいかにも重大であることを痛切に感ずるものであります。おあげになりましたように、昨年の秋のこの警職法問題以来のいろいろな特に国内情勢国内おける私に対する非難等につきましても、私は時局の重大を思うと同時に、私みずからも非常に反省をいたしておる点も少くないのであります。しかし、今日において、いつでもそうでありますが、特にこういう情勢のもとに政局を安定して、そうして強くこの国の進むべき道を定めて、これに対して強力に進んでいくということは最も必要であり、また、私に課せられている一番大きな重大な責任であると考えております。この意味においていろいろと御指摘になりましたこと等につきましても、私自身の大いに反省をしておることの少くない点にも触れられたのでございます。特にそういう決意で当りますについて、私みずからが大いに反省すると同時に、政治の要諦として常に人心をうまざらしめず、清新はつらつとしてこの政治が行われていき、国民がそういう考え政府に協力するという態勢をとっていく上におきましては、いろいろな点を考えなければならぬ、政策の点はもちろんあります、また、さらにそれを実行するについての人事の問題も御指摘のように関連があると思います。特に人事の点について私心をもって、あるいはその人への憎悪とか、ただ好ききらいというような点に支配されて大事な国家の綱紀なりあるいは大事な要職というものを動かすべきでないということも、御指摘通りでございます。これらの点につきましては、私としても十分この難局に当る私の決意として、御注意の点につきましては十分に一つ考えて所信を全うするように、今後とも精進さしていただきたいと、かように考えております。
  46. 田村文吉

    田村文吉君 時間が終りましたから……。
  47. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 田村君の質疑はこれで終了をいたしました。
  48. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) お手元にお届けいたしました刷り物の通り委員の異動がございましたので御報告いたします。御了承を願いたいと思います。
  49. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 質疑を継続いたします。戸叶武君。
  50. 戸叶武

    戸叶武君 私は社会党を代表し、三十四年度の一般会計予算の総括質問をいたします。しかし、今、鳩山さんがなくなられたとの悲しい知らせが伝っておりますので、皆さんとともに心から哀悼の意を表し、つつしんで黙祷をささげてから質問に入りたいと思います。  私個人としては、かつて鳩山さんと政治的な見解を異にし、国会の議場でもって鳩山首相を非難攻撃したことがありまして、そのときに、余命幾ばくもないという言葉を使いましたところ、ラジオかテレビでこのことを聞かれたお嬢さんの石橋輸出入銀行総裁夫人が、私の友人である相馬雪香さんを通じて、肉身としては体の弱いお父さんのことを余命幾ばくもないというような言葉を使われるのは非常に悲しいと訴えられたので、これは政治的な用語が違った意味に取り上げられたのだと思いましたが、あやまらなければならないと感じましたので一萬田大蔵大臣の公邸でお会いしたときに、率直に私はあやまったことがありますが、いずれにしても、鳩山さんは私たちと政治的な立場は異にいたしておりましても、りっぱな議会政治の生んだ政治家でありました。それは見識を生命とした政治家として、戦後自由主義者として反動勢力の弾圧に抗して戦い、戦後におきましても困難な日ソ関係の国交調整のために身を挺してソ連にも使いをなされたのであります。このことは、歴史の上に必ず私は大きな足跡として残ると思うのでありまして、やはり政治家の生命はその見識と経綸であって、総理大臣を長く続けることが名誉でないということを感じさせられるのであります。私は、総理大臣が鳩山邸を訪れるべく、心矢のようになっておられると思うのでありますが、国事のために、使いを派遣せられたということなのでありまして、質問をこれから行います。  まず岸総理大臣に対して、政治経済政策に対する基本的な見解を承わりたいと思います。岸首相は、施政方針演説において、多年にわたる貴重な試練の結果、ようやく樹立された二大政党制こそ憲政の常道を確立するものとかたく信ずると述べております。二大政党下における責任内閣制のあり方は、第一に政権交代のルール確立であります。このことに対して、岸総理はいかような御見解をお持ちでありますか。また、岸首相はこの問題に関連して、一党が責任をとれば反対党が政権をとるのが常識だが、そのためには両党とも国民政党でなければならないと答弁しておりますが、それは何を意味するものか、これを承わりたいと思います。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二大政党を、私は特に国会政治を完成していく上において二大政党論を従来からも考えており、また、これを実現しようとして努力をいたしておるものであります。形は現在二大政党になっておるけれども、実質的に言って、せんだってもここで御議論がございましたが、現実の数の勢力から申しましても、今日の状況でこれが完全な二大政党で、これでいいのだと、こう簡単に言い得ない状態にあると思います。もちろん二大政党のこの政権移動のルールというものは、国民から信任を受けた多数党が政局を担当して、そしてそれが責任を、政治責任を負わなければならない事態ができて、そしてその政権の座から去る場合においては、他の政党がかわってこれを担当し、これに対してあるいは国民のさらに判断を仰ぐというふうなことが公正に行われるということが、私は二大政党のあり方として、また、民主政治を公明ならしめるものとして、そういう姿が望ましいと思うのであります。いわゆる多数政党であるとか、あるいは第三党論等の議論が出ますというと、その政権移動についてのフェアなルールというものが、いろんな政治的かけ引きやその他の行動によって毒せられる、災いせられるということが、いろいろなわれわれの過去の経験においても、また外国の例を見ましてもそういうことがございますので、そういう考えを私はいたしておるのであります。しこうして、この政党というものは国民の代表者をもって、この全国民のために政局を担当し、政策を行なっていくべきものであることは、私はこれは言うを待たないと思います。言うまでもなく、その政党の主義、綱領や、政策の点について政党が分れるということは、やむを得ないことと思いますけれども、しかしながら、私はそういう場合において、この場合において、いわゆる世の中で言っております一つの階級的支配なり階級的な性格というものを本体とするような政党では、やはり全国民のために政局を担当し、また政治を行なっていく一ということは、私はふさわしくない。従って、いかなる場合においても、政策は違っておりましても、両党とも国民のために全国民に基盤を置くところの国民政党であることが望ましいのだ、こういうことを申し上げたわけです。
  52. 戸叶武

    戸叶武君 岸首相は、私は両党が諸政策の是非を論ずる前に、反議会政治思想の動きに明確に対決する基本的立場を堅持すると述べられておりますが、首相のおそれられる反議会思想なるものは、議会政治国民の信頼を失ったときにおける思想であります。国会が権威を保持している限り、議会否認の思想は生まれません。生まれたとしても、国民影響を及ぼす強力な力とはならないのであります。  岸首相は、反議会思想に異常な恐怖感を抱いておりますが、そうして機会あるごとに国際共産主義あるいは暴力革命について攻撃を怠りませんが、何がゆえにさようにこの暴力革命の幻影に脅かされているのか、その心境を承わりたいのであります。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この政治の理想として民主主義政治、さらにそれを具現するものとして国会政治によるべきであるということは、これは日本国憲法の明らかにしておるところであり、また、良識ある国民のひとしくそう考えておるところであると思います。このためには、国会が真に国民の代表としての信頼を受けるような姿であり、行動その他内容を持つべきことは当然であります。もしも国民が国会に信頼を置かず、これに対して何らの期待を持たぬで、これは国民のためのものでないというふうな、もしもことになったとするならば、ここにお説のように革命が起ってき、われわれの民主政治というものの根本が破壊される結果になる。この意味において、国会に国民の信を保つように考えていかなければならぬことは言うを待たないのであります。ただ、最近においていろいろの思想、これはもちろん思想は自由であり、民主主義の根底でありますから、いろいろな思想もあることでありますが、暴力革命をもってやるべしとか、自分たちは国会の制度を利用してなにするけれども、しかしながら、国会というものではなくして、実力行使によって自分たちの理想を実現すべきだという議論があることは、戸叶委員も御承知通りであります。私は、こういう思想が国民の間にびまんしていくところの各種の環境についても、現在のこの日本の社会情勢から見まするというと、懸念すべきものがある。こういう意味におきましても、あくまでも民主主義を貫き守り、国会政治を完成するという見地で、国会を無視するがごとき思想やあるいは暴力革命によって理想を達成しようというような考え方に対しては、民主主義を守る意味において、私は断固反対しておるものでございます。
  54. 戸叶武

    戸叶武君 岸首相は、最近社会党との対決ということを叫び、施設方針演説においても社会党の性格や外交政策を激しい口調で攻撃しております。社会党は、みずからの政治性格は自党の責任において決定いたしますし、社会党が政権担当の資格ありやいなやは、岸総理大臣が判定するのでなく、総選挙を通じて国の主権者たる国民みずからが決定するのでありまして、自党のいまだ内紛、派閥解消せざる今日、他見のことに対してあまり無用ないらだちはよされた方がよいと私は思うのであります。特に、その国民政党、階級政党論の単純な主張でありまするが、側をか階級政党といい、何をか国民政見というか。今日における自民党の姿は、少数独占資本に奉仕するところの最も先鋭化された露骨な階級政党でありまして、国民政党の名は衣をかぶつ、いるのでありまして、国民政党の名によって、少数の利益に奉仕している悲しい姿であります。社会党も、いまだ完成の領域に発展したとは考えておりませんが、われわれは、この少数の利益を代表するところの国民政党の竹によるところの階級政党に対して、国民の九割五分を占める勤労大衆を背景にして、国民に奉仕する政党を作り上げようとしておるのであります。こういうこの政治性格の異なった二つの兄が、今日政策で対決するのはよろしいのですが、権力や金力の力で、力で押しまくろうという態度は、これは私は改めてもらいたいと思うのであります。特に、岸首相の施政方針演説の最像の部分に、気になる点があるのでありますが、それは、国会軽視の革命論や暴力行動制圧のためと称して、警職法について引き続き検討中であるというような言及がなされておりますが、私は、政府が社会の矛盾と不合理を是正する絶えざる努力を続ける限り、警職法を再提出する必要はないと考えているものでありますが、岸首相といたしまして、いかように考えておられるか。
  55. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、二大政党のもう一面のいいことは、民主政治を完成する意味においていいことは、民主政治は言うまでもなく、選挙がしばしば行われるのでありますが、その際に、党が掲げておる政策、あるいは党の主張の基本であるところの政綱であるとか、あるいは綱領というようなものに対して、お互いに批判し合い、お互いがこの問題に対してはっきりと国民の前に論議を戦わして、国民がいずれの政党を支持するかという基本について、深い理解を求めることが可能であり、また、適当であると思う。従来の選挙を見まするというと、たとえば、社会党が二つに分れているとき、社会党の諸君もそう感ぜられたろうと思いますが、われわれ保守党が二つに分れていたときに考えるときにおいては、選挙の場合において、比較的支持者層を同じくしておるところの候補者の間の争いというものは、現実においてそれが最も熾烈である。従って、そういう政策の、政党としての本質についての批判ではなくして、あるいは個人攻撃にわたるとか、あるいは、いろいろ選挙運動として好ましからぬ事態が起ってくるということは、過去において私どもが実際に経験したところであります。こういう意味において、私は、社会党と対決すると言ったということに対して、いろいろな批判がありますが、二大政党が対立している以上は、その主張であり信条であるというものに対しては、あくまでも信念を持って、あらゆる面において対決することが適当であると私は信じております。これは、ただ、けんかをするとか、互いに話し合いを一切しないとかというような態度ではないのでありますけれども、そういう意味で申しておるのであります。それで、こういう考えで私は従来ともおりますし、今、戸叶委員から、自民党に対して、自民党の本質に対しての御批判がございました。私はお互いに批判については自由であり、また、お互いにそれについて反省すべき点は反省し合うということが、両党の完成していく道である。十分、自民党に対する今の御批判に対しましては、私も先ほど来謙虚に聞いておったわけであります。  最後に、警職法の問題でありますが、施政演説で申し上げました通り、私ども検討をいたしております。と申しますのは、御承知のように、あの警職法の内容として二つの大きな眼目があったわけであります。それは一つは、集団的な暴力等の行動によって、大衆の平和な生活が脅かされておるというような事態が、最近の社会事相に見られるがゆえに、そういう場合において、警察官としてはそれを阻止して、そうして多数の平和な大衆の生活を保護すべきである、こういう点が一つ。もう一つは、最近、青少年の非行化が非常に目立っておる。これに対しての犯罪の防止、非行化の防止をするための、警察官の職務執行についての従来の規定の不備を補っていく、こういう二つのことでございます。しかし、二つとも、もしもそれが乱用されるならば、憲法のいわゆる自由権の侵害になるということのおそれがあるということは、当時論議されたところであります。社会的にその必要があるということにつきましては、私は、日本の良識ある人々の間においても、なお、その必要があるということを認めておられるというのが、私ども実情であると思う。しかしながら、これが今言うような非常に重大な問題を含んでおりますがゆえに、それの提案について、あるいは、われわれのとった手段は十分の慎重を欠いておったという批判に対しましては、私ども謙虚に考えております。また、これが国会運営の上におきまして、いろいろな行きがかりとはいえ、国会運営が正常的に行われなかった、これについて、与党であり政局を担当しておる政府としては、反省すべきものにつきましては、われわれ反省をすべきである。しかしながら、今言った社会の二つの、この法案を必要とした理由は、現在、われわれは全然なくなって、その心配は要らぬというふうな情勢には、まだ必ずしもなっておらぬと思います。こういう意味において、内容等についても、当時論議のありました点について十分一つ考える。同時に、これを提案する時期、方法等につきましても、十分に慎重に考慮すべきものであるという意味において、検討はいたしておりますが、これをもう全然必要ないからやらない、こういうふうには考えておらないということを施政方針で申し上げたわけでございます。
  56. 戸叶武

    戸叶武君 私は、昨年の通常国会において、たしか、昨年のきょう、この予算委員会の席上だと思いますが、内  て、岸首相の答弁を求めました。その問題点は、予算案は、財政法の建前からすると、十二月中に作られ、一月二十日に国会に提出されなけばれならない。それは、行政府立法府の予算審議権を侵すべからずとの原則確立に努めたものであります。政府もこの警告を率直に了承し、今年は旧来の悪習慣を打破してくれましたことは、まことに感謝です。ところが、政府は、事、参議院に関しては、予算案を昨年と同様に、再び三月三日に、おくれて送り込んできたのであります。この日は桃の節句で縁起がよいからとでも思っているのかもしれませんが、これは審議期間が最低三十日といたしますと、今後四月一日までしかないのでありますが、国会の生命というものが審議権にありますにもかかわらず、予算審議が衆議院の方面においては時間的にたっぷり持たれ、参議院の方においてはぎりぎりに三十日以内に不動金しばりにしてしまうというやり方は、二院制度のもとにおけるところの国会運営について、私は問題点があると思うのであります。政府は、このようにして参議院の予算審議の期間というものを最低線にまで毎年押しつけようというような態度でもって臨んでいるのかどうか。このことをあらためて承わりたいと思います。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 予算案の編成及びその提出について、十分な国会における審議の期間を与えるように早くこれをやらなければいかぬということは、私どももそういうふうに考えております。本年は、今おほめをいただいたのでありまするけれども、従来の例よりは非常に改めまして、年内に予算を編成し、二十三日に国会に提案をいたしております。ただ、衆議院における審議のいろいろな情勢から、衆議院における予算審議の終了が三月三日までかかりました関係上、実はこの日が桃の節句であるから云々というのではなしに、われわれとしては、もう少し早く衆議院を通したいと思って、参議院における御審議を十分にしていただくために努力をいたしたのでありますが、そういうようなわけでございまして、決して国会を軽視するとか、あるいは参議院に御迷惑をかけるというような意図を持っていないことは言うを待たないのであります。
  58. 戸叶武

    戸叶武君 岸首相は、その経済政策において、政府は安定した経済の成立とその体質改善をはかり、もっと雇用の増大を期し、福祉国家を実現する方針であると述べておりますが、岸内閣経済政策インフレを警戒しながら漸進的に経済の成長をはかろうとしているのだと言われておりますが、その体質改善経済の二重構造を是正していくというねらいを持っているのかどうか。二年前に岸首相に政権を譲った石橋首相は、五つの誓いの中心に、完全雇用のスローガンを高く掲げておったのであります。岸首相雇用の拡大は、かつて石橋首相が公約した完全雇用の約束を果さんとする意図を持っているかどうか。わが国の緊急対策は、働かんとする者に職を与えて完全雇用の態勢を作ることでなければならないのであります。救貧対策としての失業対策でなく、増大する労働人口を西ドイツや西欧諸国のごとく完全雇用に導くことが政治の至上命令でなければならないのであります。社会保障の面においては漸次前進して参りましたが、母子家族、老いたる人々、病める人々に対して愛情の手を差し伸べると同時に、働かんとして働くことのできない国民に対して政府はどういう意欲をもって経済政策を進めるか、その基本理念を承わりたいと思います。
  59. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 予算の編成に当って、私は雇用問題ということは、特に日本の現状から見て重大な意義を持っておるものと考えます。われわれの理想は言うまでもなく、完全雇用でありまして、働く意思を持ち、働かんとする者に対してはそれぞれその職場が与えられるような完全雇用状態を作っていかなければならぬ。そのためにはどうしても経済全体の規模を拡大し、繁栄に導いていかなければその目的が達せられぬことは言うを待たないのであります。ただ一時的に、何か一時的な仕事を作って、そうして一時的な雇用の具体策をしただけではいけないのでありまして、どうしても経済が安定した基礎の上に成長と繁栄の道をたどっていくようにしなければならない、ここに私どもはいわゆる経済に関する新しい五ヵ年計画を定めて、一つの上昇線を基盤に置いてその線に沿うて経済の拡大をはかっていきたい、こう考えております。これが根本であることは言うを待ちません。しかし同時に、いろんな一時的に現われるそのときの情勢を見てこれに対処すべきことも言うを待たないのでありまして、あるいは特に公共事業に重点を置いて、そうして雇用を吸収していくというようなことも事情によっては考えたいし、また、それが同時に、経済根本的な基盤を強固にし、経済繁栄に処するゆえんであるというような点も考慮して、本年度においては、道路、港湾等の公共事業費の増大やあるいはまた、財政投融資の面等も考えて、さらに一般金融と財政等を一体的に運用して、これらの情勢に応じていきたいというのが基本のわれわれの施策の考えであります。失業者に対しても、そうしてもなお起ってくる失業者に対する失業対策の問題であるとか、あるいはさらに、そういう経済繁栄しても日の当り得ないような立場にある、働こうとしても働くことのできない老齢の人やあるいは身体に障害を持っている人や、あるいは不幸にして一家の支柱を失ったような母子家族というものに対する社会保障制度考えることは当然でありまして、こういうものと相総合して全体の雇用問題というものを解決していかなければならない、こう考えておる次第であります。
  60. 戸叶武

    戸叶武君 私は昨年十一月初旬、エアハルト氏が来朝の折、ちょうど国会の本会議におきまして、エアハルトさんが日本経済に対する警告を行なった、その言葉を引用して総理大臣に答弁を求めたのですが、あのときにはデリケートな段階で、政府も慎重な態度を持して、どうも回答がなされなかったようでありますが、私は日本が招いたお客さんの中でエアハルトさんほど大胆率直に、歯に衣を着せないで、自分の体験を基礎として日本に親切な忠告を与えた人はないと思うのであります。エアハルトさんの警告の内容は、日本の商品は安過ぎる、西欧市場で五%ないし一〇%程度安いのならばよろしいが、実情は四〇%ないし六〇%も安い。これは日本賃金が不当に安過ぎてソーシャル・ダンピングをしているのではないか。それとも為替レートが低過ぎるのかどうか、そういう問題に対して問題点を取り上げていったと思うのであります。そうして結論的に、西独は戦後日本と同じ状態に直面したが、まず国内の有効需要を高めることに力を入れ、経済発展には国内購買力を高めるため、まず労賃を上げることだ。私は、日本の価格水準や労賃が上ることは決して危険でなぐ、むしろ上ることによって構造的変化が起ることが自然な行き方だと思う、というような発言をしております。私は、日本の為政家として耳を傾けなければならない問題点をこの中に含んでいると思うのでありますが、岸さんから御見解を承わりたいと思います。
  61. 岸信介

    国務大臣岸信介君) エァハルト氏のいろいろな、日本経済に対する警告やあるいは批判等につきまして、当時におきましてもいろいろな論議があったわけであります。一面において私どもも傾聴すべき考えがありますが、あるいはまた一面において、本質的に日本経済産業についての一面的な観察であって、全面的な観察としてはどうかと思うような点もあったように思う。たとえば、日本製品が国際的に安いということに対しまして、なるほど繊維品については、エァハルト氏の言われるところにおいて相当にそういう事実が出ております。しかし、機械製品等におきましては、むしろ違っておる。また、化学製品等につきましても、違っておる。現に、ドイツの化学肥料等が東洋市場に来ております。この値段等を考えてみまするというと、われわれとしてはとうてい考えられないような値段が付せられておるという実例もあるのでございます。従って、これをもって直ちに、ドイツの化学製品、肥料の東洋市場におけるあの値段をもって、ドイツ製品がダンピングしておるとか、あるいはその原因がドイツの低賃金にあるというようなことをかりに言ったとすると、これは非常にドイツ全体の経済の批判としては間違っておるだろうと思います。と同様に、日本繊維品欧州市場においてこういうふうな状況にあるということから、日本の全体の産業がダンピングしているとか、あるいはソーシャル・ダンピングというふうに言うことも、私はずいぶん一面的な見方だと思うのであります。  この賃金についての比較を見まするというと、各国、御承知通り、数字的に非常に違っております。ドイツに対して日本はまだ低賃金であることは言うを待ちませんが、しかし、ドイツをアメリカと比べてみるというと、ドイツの賃金アメリカ賃金に対しては相当な低位にある。しかし、こういうことは、いろんなその国における社会情勢物価水準やあるいは生活水準等を頭に置かないというと、ただ現われた賃金だけでもって比較することは、これも適当でないところがあるだろうと思います。いわんや、為替レートの問題につきましては、これは日本の置かれておる立場から見まして、私は、エアハルト氏の日本為替レートについての意見につきましては、当時もそう思ったのでありまするが、特に最近の為替自由化のこの情勢等から考えまして、こういう問題を軽々に論断をなすということは非常に危険であるというように現在も考えております。しかし、われわれが、産業全体、経済全体として、このエアハルト氏の批判のようになお改善を要し、また、たとえば繊維品につきましても、そういう安い値段で欧州市場等に出ておる実態から見まして、これが改善を要する点につきましては大いにわれわれとしても考えなければならぬ点があるように思っております。
  62. 戸叶武

    戸叶武君 エアハルト氏の警告の中で、私が最も関心を持った点は、日本工業と農業との問題に触れた点であります。「日本の工業は技術も発達し近代化も進んでいるが、農業はまだかなりおくれている。このために、全体としての生産性は十分高いとはいえない。これは賃金が低いからである。そのことが政治的緊張の原因になっている。日本の工業化を促進して企業の収入がふえ、労賃が相当程度上っても、果して農業分野の労賃収入がその程度まで上げられるであろうか」という問題を投げつけているのであります。今、岸首相は、具体的な例を引いて、ドイツの賃金日本より高い。なるほど二倍ないし四倍というようなことをいわれている。しかしながら、日本よりも九倍も高いというアメリカ、またドイツよりも高いアメリカ、それと比べると低いのじゃないかというようなことを問題にしておりますが、そういうことも確に問題ですが、エアハルトさんの言おうとしたところは、やはり日本の国自体として考えてみても、設備投資や何かには相当の金が投げ込まれているのにもかかわらず、労賃に流れる金というものは少いのでありまして、このことはエアハルトさんだけでなく、ソ連のピクレスカヤ女史も、具体的な数字をあげて日本経済の実態を批判しております。このことはやはり、日本政治家というものが正確に日本の病根というものを観察し認識して、そうして政策を立てなければ私はだめだと思うのであります。  そうした意味において、西ドイツは日本と同じような戦敗国であり、日本よりひどく国土を破壊され、二回目の敗戦であるにもかかわらず、この国を盛んにしたのは、日本のやったようにインフレを戦後やらないで、ワイマール時代の苦い経験を清算して、そうして国内の有効需要を高めることに力を入れて経済発展させていったのであります。労働者なり農民なりに、相当の所得が増大し、購買力が持たれ、その国内購買力というものが生産を刺激して、そうして前進していく態勢の中に、恐慌なき、不安定なきところの経済があるのだというのがエアハルトさんの考え方でありますが、この問題に関しましては、総理大臣よりむしろ佐藤大蔵大臣並びに倉石労働大臣からお聞きしたいと思うのであります。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど総理から詳細にお話がございましたエアハルトさんの所論を、一々批評することを必要ないと思いますが、ただいまの賃金の問題でありますが、なるほど賃金の問題は、国際的比較の問題もありましょうし、国内におきましても、非常に生産性の高い工業に従事する賃金生産性の低い産業に従事する賃金と、大から中小それぞれ非常にまちまちだと思います。一面に、内需を喚起することが可能だという意味で、賃金を高くしろ、そうすれば内需を刺激し、そうして生産はそれに相応するのだという言い方をする向きもございますが、私どもの採用しております考え方は、どこまでも生産に相応する賃金という考え方でございます。賃金を高くする、そのためにはやはり生産向上していき経済発展させるという考え方に落ちるのであります。エアハルトさんの考え方等も、この意味においては私は十分その点を裏書きしているように思います。  この意味においては、同じ戦敗国であるドイツ、日本、これはもうしばしば二つの代表的な国家として比較されるのであります。いずれの場合におきましても、このドイツ国民なり日本国民くらい勤労の高い国民はないと思います。同時に、非常に貯蓄性にも富んでおるということがいわれております。戦後におけるドイツ国民生産に従事した姿、またわが国内においての勤労と、その真剣に取り組んだ姿が、戦後の敗戦国のドイツと日本を今日のような経済に盛り上げた力そのものだと私考えるのであります。ただ、両国におきましても、幾分か生活環境なり経済環境等の相違がございまして、幾分かの差があることはこれは認めざるを得ない。しかし、それはどこまでも生産向上され、そして高賃金が保たれていく、こういうふうに私は理解いたしております。
  64. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 勤労所得のお尋ねがございました。設備投資のお話は別といたしまして、戦前の時代と今日の国民分配所得の中における勤労所得の配分を見ますというと、企画庁の調査によりまして、たとえば、昭和九年ないし十一・年に個人の財産及び利子、そういう個人財産の財産所得は全体の所得の二二・一%、勤労所得は三六・八%、それが昭和三十二年度になりますと、財産所得の二二二がずっと減って六・二に減っております。しかるに、勤労所得の方は四四・九と大幅な上昇をいたしているのでありまして、総合的には勤労所得が、分配国民所得の中に占める勤労所得の方がはるかに多くなっているということが証明されるわけであります。  そこで、先ほどエアハルト氏のお話もございましたが、私ども賃金のことに携わっているものから見まして、きわめてエアハルト氏の御意見は参考になると思いますが、エアハルト氏のお話も、日本に到着されました当時から、だんだん日本の事情をお調べになって、帰りがけのころ、上智大学の学生を集めて講演をされましたその講演の記録やら、それから最終に日本経済へ寄稿されたのか、聞き取ったのか、あの記事を読んでみますと、だいぶ初期に申されたお話が修正されてきておりまして、いたずらに刺激的なことをやるということは慣しむべきことであるというふうなことも言っておりますし、また、日本の分配所得の中の勤労所得の面についても、相当認識を持たれたような意見が述べられて参っております。  私どもの立場から、お話しの日本の低賃金によると、そういったソーシャル・ダンピングというお話がございましたが、私ども為替換算率だけで賃金の比較をするということは大した意味はないと思っております。これはやはりその国の生産力、すなわち国民所得と賃金のべース、平均率がどういう比率になるかということが大切な問題であると思うのでありますが、そういう立場に立って見ますというと、日本のいわゆるソーシャル・ダンピングというのが、昔ILO本部で問題になりまして、かつて一九三四年には事務次長のモーレットが日本を視察いたしましたその報告を提出いたしております。それからアメリカの対外経済政策委員会、これは議会の中に設けられた一九五四年度のモーレット委員会の報告等も提出されておりますが、これらの報告の中に、総合いたしますと、こういうことを言っております。単なる賃金水準の国際的相違だけでは不公正の指摘にはならない、すなわちソーシャル・ダンピングだという指摘にはならないのだ、賃金が不公正かどうかはその国の一般経済状態生産性等の関連において判断さるべきである、こういうことを申しておるのでありまして、従って、私は、諸外国との賃金比較というものは、その国の総生産国民所得の比例に応じて比較検討すべきである。そういう立場から申しましたならば、日本賃金べースというものはあながちそう低い方ではありませんし、また戦後の状態を、上昇率を比較いたしますと、たとえば一九五一年日本を一〇〇としますと、五七年には一四七・五に上昇しております。アメリカは一三〇・二、英国は一五〇・三というふうになっております。そういう立場から考えまして、総賃金の平均ベースというものについては、私はそれほど問題ではないと思います。  ただ、日本の低賃金が、論ぜられる場合においては、やはり零細企業の面の方、すなわち規模別の賃金格差が非常に多いということが大きな問題だと思います。従って、私どもが最低賃金制等に情熱をこめておりますのは、そういう規模別格差をできるだけ縮めていく、こういうことに力を注ぐべきではないか、こういうふうに思っております。
  65. 戸叶武

    戸叶武君 この問題で議論すると、いろいろな数字にもわたりますし、まあ一般質問のときか何か十分掘り下げていくことにしますが、比較的自民党の考え方に対して、私たちが真正面から意見を展開するというよりは、近い方の人の議論の違いをやはりあげていった方が、議論を進めるのに都合がよいのではないかと思いますが、今自民党における内紛というような、内部対立は、総裁選挙を争って後からは、私は外交よりもむしろ経済政策で対立が深くなってきたかと思うのであります。自民党の反主流派のリーダーと目せられる池田勇人氏は、最近公然と政府の不当に経済成長を押える経済政策を非難して参っております。彼の立論はややエアハルト氏の見解に近く、国民所得を多くすることによって国内の有効需要を高めようという主張であります。彼は、日本の勤労者の賃金アメリカの九分の一、イギリスの四分の一だから、国民所得をふやしていく、これが限られた輸出の伸びとそれより大きい生産の伸びの差を埋める唯一のかぎだと言っております。そして彼は、総評の賃金白書もこうした理論に基づいて賃金値上げの要求を出しているというな理解すら示してきているようであります。そして企業家としても、将来の雇用人口の増加を考え、投資した資本を十分活用する道は内需しかないことを考えれば、歩み寄ることができるではないかとも提言しております。勤労者層には生産向上で設備を操短で休むことなしに十分に生かすことを望み、企業家にも生産向上によってそうした利潤を賃金の引き上げに充てることを望み、両者間のみぞを政府の手で政策的に埋める、そういう点で最低賃金制などもこの一つの柱になるだろうとすら述べております。佐藤大蔵大臣は、かつて吉田内閣の時分、池田さんとは水魚の交わりをした仲のようでありますが、今日は両方とも水も魚も別々になっているようでありますが、(笑声)御見解の方はどうでございますか。池田さんの見解に近いか、また安定派を代表してもっと違うものであるか、その御見解を承わりたい。
  66. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 池田君の経済所論を引き合いに出されて、私の考えと違うかというお尋ねであります6私もときどき池田君とは会っておりますし、いろいろ話も聞いておりますが、どうも取り上げ方が、表現の仕方なり言い回し方で、相当受けられる方が違うんじゃないかと思いますが、基本的な考え方の相違は実はないように思っております。非常に池田君は積極論者だ、経済拡大論だ、こういう印象を持っておられるようですが、私も同じように、経済は成長さすべきである、停滞や、あるいはこれを縮小させるような考え方のないことはこれはもちろんでございます。そう考えてみますと、それは程度の問題じゃないかというように実は考えているのであります。で、私の説明いたしておりますところは、どこまでも経済が順調に成長さるべきだ、こういうことを言っているのであります。堅実に、そうしてそれが順調に成長すべきであるということを強く主張いたしております。いわゆる安定成長とでも申しますか、そういう表現でございます。池田君の考え方も、賃金二倍論が出たり、あるいは消費の拡大の議論が出たり、生産の非常な拡大の方式の議論が出たり、あるいは国際収支の面においても、一ぱいに経済を成長さすべきだとか、こういう議論が出ているように、そういう点を取り上げられて、もっと積極性を持つべきじゃないか、積極性を持つならば池田君の考え方と私の考え方が一緒だ、こういう御指摘だろうと思うのでありますが、池田君の賃金二倍論にいたしましても、あるいは生産の倍増論にいたしましても、時間的の問題としては今まではっきり言われておりません。これはおそらく私どもも、この成長の度合いから見ましても、これは必ず賃金は二倍になり、あるいは長い目で見ますならば三倍にもなるのでございます。問題はそういう表現の仕方が果してどうなるか。こういうように考えて参りますと、基本的に間違っているという御指摘はどうも当らないように思います。ことに社会党の皆さん方が御指摘になります場合にも、しばしば言われますことは、この内需の喚起ということに非常な力を入れておられる。賃金の、高賃金を特に強く要望しておられます。それから先ほどのお尋ねに対しましても答えましたように、賃金は一朝一夕にしてでき上るものではございません。これは過去の生産の蓄積、それが賃金の形において返されて参るでございましょう。今後においてもそういう意味では生産性が向上されるという、それに似通っての、それとマッチしての賃金が望ましいと私は思います。そこに経済の堅実性というものがあると思います。今日まで、日本経済においては、特に外国貿易の拡大ということに力をいたして参りました。この点は日本経済の持つ力の弱さという面から、そういう点が強く主張されたのでございますが、外国貿易を特に主張いたしましても、これに対応しての内需の喚起というものは、それぞれ皆手が打たれておるのであります。さようなことを考えて参りますと、表現の方法が違っておるということで、基本的な考え方の相違はないと私は確信をいたしております。ことに、その基本的な考え方の相違がないという点は、池田君の所論の中にも、三十四年度の予算並びに財政投融資の規模は適当だという一言があるはずでございます。この一言が今後の経済の伸びなり、成長なりについて、三十四年度は少なくともさような考え方をしておるということでございますので、基本的な考えの相違という言い方は当らないと、私はかように考えておる次第でございます。
  67. 戸叶武

    戸叶武君 時間的なことを池田さんは言っていないというような形でうまく佐藤さんは逃げましたが、あなたの大蔵省の中において、大蔵省の財務調査官の下村治君は、池田君の理論的な背景をしているとまで言われているほど池田さんの見解に近いのであって、その日本経済の基調と、その成長率に関する論文の中では、経済成長あるいは経済成長を実現するための政策的な考え方にとって重要なことは、一方では実質的な生産力の拡充強化を進めると同時に、他方ではこのような生産能力に適合した有効需要の圧力を加えるということがなされなければならないと断言しております。かつて彼はタイミングということを、あなたが言うような形で重視しましたが、今日においてはタイミングじゃない、チャンスという言葉を使っております。われわれはなぜ現に実現可能となっている成長の機会を見のがして、いたずらに低い経済活動の水準に甘んずべきであろうかと、悩んでおります。そして彼は、われわれはなぜもっと積極的に経済の基盤を拡充し、国民の福祉を向上し得る条件があるのに、これを見のがしておくのであろうかと嘆いております。佐藤大蔵大臣のもとにおいて、有能な大蔵官僚の頭脳が苦脳していることかくのごときであります。だいぶ近いところに問題がひそんでおりますから、これと、こういう今のチャンスを逃してはいけない、そういうことに関しましては、作六日、矢野日銀外国為替局長の説明を見ましても、三月末の外貨準備高は九億五千万ドル前後に産しております。政府が昨年考えた三倍にもなっているような点において、黒字の方が伸びてきているのじゃないでしょうか。外貨準備高は三十一年末の九億四千万ドルを上回り、神武景気によって失われた外貨というものは完全に取り戻されてきたのであります。しかも三月にかけて、税金の吸い上げを中心に、財政資金は千五百億円くらいの引き揚げ超過を予想される状態であります。この状態のもとにおいて、大蔵大臣は依然として、今の積極でも安定でもない、その中間の折衷だという形の議論でもってとどまっておられるかどうか。もっと具体的にその経済政策の筋を話してもらいたい。
  68. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 経済成長の問題は、私どもが各資料を精査いたしました結果、三十四年度は六・一%の成長率を見込んでおります。この見方が、あるいは予算編成の当初におきましては、五・五だろうかというような考え方もあったと思います。あるいはもっと大きいという見方をする人もあると思います。もちろんいろいろの説をなす人があると思いますが、私どもは六・一%が最も適当なる、堅実なる経済成長、それに対応する成長率だと実は考えておるのであります。これは昨年来の経過から見まして、そういうような結論を得たのであります。で、基本的な考え方といたしましては、昨年もしばしばお話を申し上げた次第でございますが、経済が上向くというそういう場合に、これにもちろん協力をいたしまして、経済を成長させなきゃならないのでございますが、この成長さすという場合でも、非常に急激な膨張ということは、経済のあり方としては私は好ましいことではないと思います。そういう意味で、これが堅実な成長を心から望むという意味では、これを非常に過大に考えることは果して——私はどうも賛成しかねる。過去の日本経済の成長の度合いをお考えになれば、これはすぐおわかりになることでございまして、非常に過度の膨張を来たした後においては、今度は過度の縮小をしていくということになる。ふくれたり、あるいは縮んだりしていく、こういうことは必ずしも経済の成長が健全だとは言い得ない。やはり事業計画をいたします上から申しましても、長期計画の線に沿って、着実な歩みをしていくということが最も望ましいものだと思うのでございます。こういう意味で、大蔵省内においてもいろいろの議論がございますが、私はこの過度の経済の成長に対しては十分の警戒をしたい、そういう意味でときにブレーキの役も引き受けていかなければならない。しかしながら、いつまでもこれが沈滞しておることは望ましいことではございませんから、財政の面からこの成長に適当な力を与える、こういう政策をとって参りたいと思っておるのであります。昨年も社会党の皆さん方は長いなべ底状態だから何とかして景気回復というか、刺激を与えるような、補正予算を組んでくれという強い御要望がございましたが、三十三年度の経済のあり方から見ると、三十三年度予算で一応想定した状態に推移しておるから、さような格別な刺激方策は採用しないということを言明いたしまして、ただ三十三年度予算の完全実施、これによって経済のあり方を十分検討するということを申し上げたのでありますが、幸いにして、三十三年度は私どもが三十三年度予算を完全に実施することにより、また時期的にこれを実施することにより、三十三年の経済は上昇の方向に向ったと私は確信いたしておるのであります。今後の問題といたしまして、三十四年度の予算を編成いたします際においては、一部においては、かような予算を組むことは経済を過熱さすのじゃないか、また一部の方においては、そういう意味からインフレを助長するのではないか、こういうような御懸念すら開陳されておるような次第でございますが、私どもは三十四年予算編成に当っては、この経済成長に対応し、着実な進展を期し得る予算だと私は確信をいたしておるのであります。こういう点を十分御説明申し上げますならば、先ほど来の御議論についての私のとっておる立場については御理解がいただけるかと思います。
  69. 戸叶武

    戸叶武君 池田君は現実的には自分と考え方は同じだというふうに、さっき佐藤さんは逃げておりますが、その池田さんは、政府は新長期経済計画において、今後三十七年までの設備投資を五兆円と見込みながら、国民生産の増加を二兆五千億に押えている、これでは実力のついた日本経済をまたも不当に抑圧することになると言っており、また下村君はこれを裏づけるような理論において、設備投資の年額が一兆五千億円前後であれば、供給能力は年年一兆数千億円の国民生産を実現することになり、年額一兆円の増加は約一〇%の増加率となり、五ヵ年計画の六・五%より大きいというように言っております。いずれにしても、これは池田さんとか下村さんの言葉をいたずらに引用するまでもなく、政府の今日におけるところの低迷した状態ということに対して、自民党の内部からも正しい意見が出、大蔵省の中からも正しい見解が披瀝されてきたということは、これは岸内閣をゆすぶっていく上において非常な私は喜ばしい空気が生まれてきたんだと思います。先ほども委員長が空気のことを非常に気にしておりましたが、こういう空気は今後どうしても助成していかなければならぬと思います。そこで佐藤大蔵大臣に承わるのでありますが、一体景気はいつ回復するかでなく、景気をいつ回復させるか。そうして今日の景気というか、経済界のできごとというものは異常であります。不況で、なべ底景気という不景気の横ばいをしていながら株価は異常な暴騰を続けております。これは明らかに一部の者は笑いがとまらないほどもうかり、全体には不景気の風が吹きすさんでいるというこの矛盾を表わしておるのでありまして、これこそやはり政府の私は政策の反映だと思うのであります。景気観測にいたしましても、第一次岸内閣の大蔵大臣の一萬田さんは、一昨年の私の質問に答えましては、去年の六月にはアメリカの景気がよくなるから、日本は九月ころから景気がよくなると言っておりました。なりませんでした。佐藤さんは昨年の質問におきまして、ことしの三月からは景気がよくなると言っておりますが、よくなったところもありますが、依然として悪い部分が多いのであります。こういうでこぼこが非常に目立ってきておるのでありますが、こういう点はやはり先般市川房枝さんが指摘したように、年に十億からの政治献金を独占資本家と軍事産業からいただいて政治を行なっている自民党の施策というものが日の当るところと日の当らないところを作り上げ過ぎているのではないかと思うのでありますが、それについて佐藤さんの御意見を承わりたいと思います。
  70. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほどのお尋ねに引き続いてのお話でございますが、先ほどのお話で三十七年あるいは三十六年そういうところを予想してのお話がございました。まだ政府自身はそこまでのお話をいたしておりません。そこで、将来のことについてのいろいろの御計画はおありですが、三十四年度の予算について、池田君自身がどう考えているかということを先ほど御披露いたしました。三十四年度の予算の規模なり財政投融資計画は適当だということを申しました。この一事を披露いたしまして、この景気というか、この経済成長についてのまあ意見の対立というその点はまあそれで打ちどめにさしていただきたいと思います。  そこで、ただいまの一体その政府の見るところが、九月といい、あるいは三月といい、大体なおってきたというが、まだまだ各方面にいろいろ問題が残っているのじゃないか、株価やなにかが一体あれで適当なものと考えるかどうかというような各般にわたっての御議論、御意見でございます。いろいろの問題がございますが、昨年は前、一萬田蔵相にいたしましても、大体昨年の秋ぐらいまでには調整過程を終るだろうということを申したのであります。それが九月というようなことでございますし、またその調整過程の効果がおそらくこの春になれば出てくるだろうというのが私どもの見方でもあったのであります。景気が好転すると申しましても、たなごころを返すように右から左に九月を境にして急に暖かくなるというものでないことはこれは私が申し上げるまでもないだろうと思いますから、この九月だとか三月だとかいうことは、経済全般の動向を一つごらん願えば、大体経済はそのなべ底を脱して上昇の形になっている、これからが本格的な経済成長だ、かように御理解をいただきたいと思うのであります。いわゆるその三月あるいは九月、これで経済界がまるきり夜が明けたように変るというものでない、これだけは御了承をいただきたいと思います。従いまして、一万田君の表現にいたしましても、私の表現にいたしましても、大した違いはないといえば違いはない、この意味では二人とも間違っていると言われれば間違っているという解釈も成り立つかもわかりませんが、少くともその特殊の産業部門においてなお非常に苦しい状況にあるということは、私どももちろん認めますが、総体といたしましては、息吹きを取り返したとでも申しますか、明るい気持を持ちつつあること、これだけは見のがせない現実だと思うのであります。  そこで、株の問題でございますが、実は私もいろいろ工夫はいたしておりますが、株はどうも自由にはなりません。もしこれが自由になりますならば、先ほど来、政治献金が云々されておりますが、政治献金などは受けなくても済むかと思いますが、なかなか株価は思うようになりません。まあ冗談を申して大へん恐縮ですが、その株の問題について私どもが今まで苦心をいたして参りましたのは、まあ証券取引のあり方から、そこらに欠陥はないかというのでいろいろ工夫をいたし、漸次これにも手当をいたして参りましたが、それにいたしましても、特殊株がなかなか値段が高くなる、こういうことでございますので、最近は非常に厳重な規制を加えるというか、株価の暴騰については特に手配をいたしておるのでございます。特に非常に品薄株というものが値段が高くなっておるということでございますので、そういうものについては即日現金決済というような方法で銘柄を指定することによって、いわゆる投機的な扱い方のないようにというような注意を実はいたしております。しかし、私はこの株価が総体的に強含みであるということは、おそらく経済の将来の発展に対する相当先物というか、先の期待をこの株価でも表現しておるのではないかと思いますので、特殊な投機的な動きについては十分の警戒をいたしますけれども、その先物についての見通しの株価が生まれてくることについては、私どもこれを押えようがないというのが今の現状のように実は思っております。しかし、今日は証券は一般大衆にも非常に親しまれ、そういう意味では顧客の範囲が非常に拡大されておるのでございますから、この株価の変動で大衆に非常に迷惑のかからないよう、また株のあり方が堅実であるように、大蔵省といたしましては当然十分の注意を怠らないように日常の指導もいたしておるような次第でございます。
  71. 戸叶武

    戸叶武君 今、佐藤大蔵大臣は冗談を申して申しわけないというが、冗談からこまということもありますけれども、この株価の暴騰はまことに困ったことであります。これはアメリカの株界、イギリスの株界の上りとはだいぶ違います。しかし、この問題に私は深く今入ると時間がありませんから、次の二点を総理大臣並びに大蔵大臣並びに運輸大臣に承わりたい。  それは、日本での株価の暴騰は昨年の十一月四日から爆発したのです。そのきっかけを作ったのは、当時、岸内閣の閣僚であった池田勇人氏が遊説先の金沢で第三次公定歩合の引き下げを言明したことから発しております。その影響の大であったことは、その直後に佐藤大蔵大臣と河野総務会長が大わらわになってこの打ち消しに努めたことでも明らかであります。そして佐藤さんは明春三月以前にはやらないとの声明まで発したはずでありますが、今佐藤さんが言ったように、先物の見通しについては押えようとしても押えられないという状態かどうか知りませんが、このように株界はダウ六百円どころか七百円台も突破して神武以来の高値を呼んでおります。  もう一つは、その後、河野総務会長が私鉄運賃一割五分値上げを言明されたことであります。何の資格でやったのか知りませんが、この河野さんにしても池田さんにしても自民党の実力者と言われる双壁です。政府はしかもこれを実施したのです。この間の事情の微妙な点は、永野運輸大臣が今国会に私鉄運賃の値上げはできれば認めたくなかったが、どうしても値上げしなければならない事情が出てきたのは遺憾であると答弁しております。担当大臣が遺憾であると言って答弁しているようなことが事実上においては起きた。私は国鉄運賃傾上げの際に参議院の運輸委員長でありましたが、当時の政府はこぞって国鉄運賃の値上げはやむを得ないが、私鉄運賃の値上げはしないということを弁明これ努めたのでありますが、今日においては情勢が変ったのかどうか知りませんが、そういうふうに君子豹変してしまったのであります。これら二つをあげると、何か両方とも自民党内部における実力者と言われる主流派と反主流派の代表が、雑誌等では政治献金の荒かせぎをやったのではないかとまで言っておるところがあります。世間は、一つの疑惑を生じておると思うのでありますが、これに関して私は御答弁を願いたいと思います。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私から公定歩合、金利についてお答えをいたしたい。私は池田君が金沢でそういう話をしたか存じませんが、今言われたようなことがあったかもわかりません。そのあったことの事実は別といたしまして、この公定歩合の点につきましては、政府はできるだけ金利を安くしたい、いわゆる国際金利水準にさや寄せするという方針のもとに、引き締め政策のために特に引き上げましたものについては政府も意欲的にこの引き下げをいたしました。これが一次、二次の公定歩合の引き下げで、これが完了いたしたのであります。今回実施いたしましたものがその第三次計画になっております。もともと公定歩合の問題は、これは日本銀行で扱うべき筋のものであります。もちろん政府自身が私責任ないというわけではございませんが、これはやはり金融機関の自主的なものにまかすといいますか、金融の実情に相応してあるべき姿でございますので、金融機関の、日銀の考え方を第一に取り上げておるのであります。もちろん政府経済全般についての責任がございますから、日銀にしてその時期を失するようなことがありますならば、もちろんそれについて政府から日銀に対して警告も発し、日銀とも話し合ってきており、国民の金融機関が間違いのないように十分の努力をいたすつもりであります。こういうような考え方は、どこから出ておるかと申しますと、金融のあり方はどこまでも中立性を保ちたいという強い希望のあること、この点からこれを政治的に関与することは望ましくないという考え方でございます。外国等の例を見ましても、わが国ぐらい公定歩合について論議のやかましい国はあまり実はない。こういう点は、金融のあり方から見て果していいか悪いか、これは議論のあるごとと思います。そういう議論は別として、現実においては過去の二回、最初の二回は相当政策的な意欲的なものがあった。引き締めを元に返すという意味において、政府自身も特に強く働いて参りました。これは引き締め前の状態に返った金利でありますから、その後の金融の趨勢とにらみ合せて、そして金利の適正化をはかっていくということで、絶えず日銀とも連絡をとりつつ、ようやくせんだって第三次改訂をいたしたのであります。これによりまして、引き締め前よりもさらに一厘下り、今回は全般的に諸金利についてもこの金利引き下げを実施させて、市中金融、市中銀行の協力も得ておるような次第でございます。  今後の問題につきましては、これはどこまでも金融の実勢力、これと十分にらみ合せて考えていかなければならないと思います。最近、昨日でしたか、夕刊の報ずるところでは、アメリカは思い切って金利を引き上げたと、こういうような状況であります。これはもともと低いアメリカではございますが、これによりまして、今回の引き上げで三分になるわけでございます。日本の金利に比べればまだまだ引き上げたと申しましても非常に低いところにあります。その新聞の伝えるところは、ごらんになりましたように、インフレに対する警戒があり、しかも非常に抜き打ちにこれが行われたという記事が出ております。同時に、それがニューヨーク株式にも影響しておるということを報道いたしております。私どもはこの金利のあり方、公定歩合のあり方については、どこまでも金融の実際とにらみ合せてやるべきではないかと思います。しかして個人的な発言というものは、これは今日の時代でございますから、できるだけこれは自由であってほしいと思いますが、経済界その他に特に影響がある人は、これはみずからもよくお考えでございましょうから、そういう点は十分慎んでいただきたいとは思います。
  73. 永野護

    国務大臣(永野護君) 私鉄運賃の値上げは非常に遺憾だと申したことは、その通りでございます。非常に多数の家庭に直接影響を与えます私鉄の運賃は、できるだけ値上げをしたくないと念願いたしまして、各社の経理の実態にわたって非常に綿密な調査をいたしたのでございます。ところが、御承知通り昭和二十八年一月以来ストツプしておりますために、その後都市の人口の増加に伴います交通機関の込み方は非常に激しくなって参りまして、応急手当的の設備の増設に伴います固定資金の増加というものは、非常に大きな数字に上っております。これが金利負担及び償却費の増額を招来いたしたのであります。その後、電力費の急激な値上りと、それから相次ぐベース・アップに基きます人件費の増加というようなことが伴いました結果、やむを得ずなすべき補修を怠った点が非常に出て参って参りました。車両なんかの実情について調べてみましても、耐用年数を過ぎたものが半数以上もあるというような状態になっておりますので、このまま放擲しておきますと、いわゆる安全運転の確保ということについても確信が持てないような状態であります上に、とどまることを知らない都市に人口が集中して参りまして、それをどうしてさばくかという具体的の方策が立たないのであります。そこで最初申しましたように、遺憾ながらある程度の値上げを認めまして、資金調達を可能ならしめて、安全運転の確保とサービスの向上、つまり無制限にふえて参りますような都市の人口に対する対応策をさせる、こういうことにいたした次第でございます。従いましてこれを放擲しておきまして、大衆の犠牲によって払われたるこの値上げ部分が他の方に流用されることはまことに遺憾なことでありますから、それがその二つの目的、つまり安全運転の確保とサービスの向上以外のことに使われないように厳に監督いたしておりまして、具体的の指示もいたしておるのであります。新聞にも一部発表いたしましたからすでに御承知だろうと思いますから、こまごましいことは申し上げませんが、その増収分をどういうふうに使うことによってその二つの目的……すなわち安全運転の確保とサービスの向上にどういうふうに使うかという各社別の具体的の報告が来て参っております。手元に、ここにございますけれども、あまり長々しくなりますからそれを朗読するのは省略いたしますけれども、具体的にそうしまして、大衆から吸い上げた資金を大衆に返すように努めておる次第でございます。
  74. 戸叶武

    戸叶武君 その公定歩合の引き上げとか引き下げとかいうことは、金利の問題に関連し、経済界に非常な影響を及ぼすので、うそをつくことは不名誉とされているイギリスにおいてすら、大蔵大臣がうそを言って、他を欺いてもこういうことの秘密は保っておるのであり、アメリカにおいてすら非常にフリーな空気の中にありながらも抜き打ち的にやっているというのを見ればわかるように、これは政治家の私は常識だと思うのです。綱紀の弛緩というものはこういうところから起るのですが、当時の池田さんは岸内閣におけるところの閣僚でした。経済閣僚ではなかったかもしれませんが、前の大蔵大臣としての声望をになっておる閣僚であったのです。こういうことが今日なされていいのかどうか。また、河野さんの問題もそうでありますが、綱紀粛正の問題が問題になっているときに岸総理大臣からこの問題に対して御所見を承わりたい。
  75. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 実は私、今御質疑を聞いておりまして、十一月とかいう日にちをあげて、当時の池田国務相が公定歩合の引き上げについて何か談話を発表しているという事実を聞くのが初めてでありまして、その事実のことにつきましては私は承知をいたしておりません。しかし、いずれにしても、今御指摘になりましたように、この公定歩合の引き上げ、引き下げというような問題は、経済界に及ぼす影響の非常に大きな問題でございます。従いまして各国とも、また日本におきましても従来このことに対しては発表まで極秘を守るということになっております。ただ、今日の制度では、日銀に政策委員会がありまして、ここでやはり付議されるような扱いになっているようであります。自然そういうことからその会議の開かれることを予想し、その前後におきましてはいろいろな新聞記事等が出ますことは、非常に私は従来とも関心を持っておることでございます。特に閣僚であるとか、あるいは関係の公務員等におきますとそういう点につきましては綱紀の意味から申しましても、厳粛に極秘を守らなければならない。また、軽々しい言動をすべきでないことは言うを待たないのでございます。従いまして特にそういう点につきましては、従来も注意はいたしておりますが、今後においても厳に注意すべきものであると思います。
  76. 戸叶武

    戸叶武君 次に、農政の問題に関して質問いたします。  わが国の国民総人口の四割を農民が占めており、しかも国民を養う食糧が二割不足しており、二千億円からの輸入食糧を仰いでいる現状のもとにおいて農民の所得というものが国民総所得の二割にすぎず、都市と農村との比較において三対一です。こういうような低位にある農業をもっと高めなければならない段階に、岸内閣における農林関係予算というものが予算総額の七・四%しか振り向けられない、一割をわずかに割った状態にある、こういうことは何を基礎としてなされておるのか、それを承わりたい。
  77. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) お答えを申し上げます。農業生産国民生産の一八%程度でございます。同時に、農業生産は戦後だんだん上昇して参りまして、その生産額におきましては絶対量は年々歳々ふえて参りました。同時にまた、終戦後のきびしい食糧事情等も緩和せられまして現状に至りましたことは御了承の通りであります。しかしながら、これを他産業、すなわち第二次産業、第三次産業との比較の面を見まするならば、その較差が非常にアンバランスになっており、これがつまり今の農政の最も憂慮すべき焦点であろうと思うのでございます。申すまでもございませんけれども、農業政策の基本点は国民経済の面から見まして、国民の食糧を確保する。同時に、また農家の経済を安定させるということが最大の目標であるわけでございますが、今後の農政の重点は、やはり今申し上げました通り、他産業との問にバランスのとれた政策をとることが大切だと考えるのでございまして、御指摘通り、今年度の予算等についてはいろいろ御批判がございますが、昨年よりは約五十五億程度の増額になっております。これを最も農業生産に役立ち、かつ、また農業経営の上にも、安定に役立つところの土地改良その他に重点を指向して編成いたしております。  かようなことでございますので、私たちとしましては、今申し上げましたような基本線で今後とも強く農業政策を推進して参りたいと、かように存じておる次第であります。
  78. 戸叶武

    戸叶武君 岸首相は、農山漁村の実情を見ると、近代的工業の発達に比較して、その収入所得が伸びていないことを認めております。今日の日本の農民に対しての農政というものは、農民所得を増大させることである。それには農業生産性を高めると同時に、農産物価格の安定のための農産物価格支持政策というものを確立しなければならないのでありますが、そういう国際的な機運に影響されてか、政府は農林漁業基本問題調査会というものを今回設置することになりましたが、これは農業基本法制定の準備機関としての役割を遂げさせようとしているのかどうか、それを総理大臣から承わりたい。
  79. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 私から一応お答え申し上げます。  農林漁業の基本問題の調査会を設置いたしたい、こういうことで関係の法案も提出いたしておりますが、先ほど申し上げました通り、農業の面と他の産業との較差がだんだん出て参っております。そこでバランスのとれた産業に育成いたしたいと、こう考えるわけでございます。しかしながら、かりに農業が成立しますところの条件といたしましても、土地だけ考えましても、日本の総耕地は五百十万ヘクタールにすぎません。同時に、これに包容する人口は四千四百万、かようなことで、世界に類のないほど人口の過多な状況でございます。さようでございますから、これらの面におきましてすら重大な問題があるわけでございます。しこうして、他産業との間に較差をだんだん減じて、バランスのとれるようなことにいたしますにつきましても、貿易の面、さらにまた金融の問題、さらにまた、人口等をいかにして調整していくか、同時に、農業経営のワク内ではとうてい解決し得ざる問題がありますので、広く国民経済の拡大した面でこれを慎重に検討する必要があると考えるのであります。従いまして、これらの問題等を十分に研究を願い、検討を加えました上に、必要があれば立法等の措置も講じたい考えでございますが、ただいまのところ、いわゆる、ただ単に農業基本法の制定だけを目ざしているわけではございません。
  80. 戸叶武

    戸叶武君 私は一九五七年の八月に西ドイツのボンをたずねて、連邦の農林大臣のリュプケ博士にお会いしました。その前年に、ドイツでは農業基本法といわれる農業法を成立させたのでありますが、その中には、農業を合理化し、その生産性を向上させ、農業構造を変え、他の諸産業との不均衡を是正すると同時に、農業労働者には適当な賃金を、経営者には適正な報酬を、また、農業資本には公正な利子を支払うような経営を実現させ、健全農家の育成を目的とするということがうたわれております。三浦さんの今の説明は、ややこれから見ると調子が低いものになっているのじゃないかと思うのです。特に、土地が狭い、人口が多過ぎるというようなことをあげておりまするが、日本の土地が狭いといいますけれども日本より山国のスイスでは日本の三倍の耕地面積を持っているのです。政府がやればできないことはないのです。アルプスの山の方が高いのです。そこで山岳夏期酪農をやっております。そういう努力がされていない。  それは農業関係に対して、食糧を増産せしむるように仕向ける資本投資が行われていないのです。昭和三十二年度の食糧輸入は五億六千七百八十九万ドル、すなわち二千四十四億円に上っておるのであります。こういう金が外国に流れていきながら、日本では、土地が狭いとか、あるいは人口が多過ぎるとかという形で、いじけた農政が行われているのは、やはり予算政府が出さないからです。選挙のときだけ農民の投票をもらって、予算を出すときには少ししか出さない。こういうやり方は、私はやはり間違いだと思いますが、これは意見といたしまして、もっとしっかりとした私は農業基本法を作り上げるための取っ組み方を政府に望むものであります。  そこで、今度は米価の問題に入りますが、何といっても、農作物価格支持政策の中で、三浦さんは七一%行なっているといいますが、農民が満足するような価格が支持されているのは米くらいのものです。米は農家収入の約半分を占めるのでありまして、このことは農家経済にとって重要なことでありまするが、米価審議会では、今まで農民の所得を補償するためには、従来のハリティ計算を改めて、米の生産に投ぜられた農民の労働力を正確に評価する生産費所得補償方式をとるべしと主張しておりますが、もうはっきりとした態度を政府は示すべきです。三浦農林大臣は、衆議院の予算委員会において、六月ごろ開かるべき米価審議会までに何らかの前進した結論を得たいと答弁しておりますが、その前進した結論の具体的内容はどういうものか、承わりたい。
  81. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 米価の問題でございますが、このたび提案しております予算に当りましては、従来の通り、いわゆる。パリティ方式によって計算しております。同時に、くだくだしく申し上げるまでもなく、これは六月ごろ開かるべき米価審議会で御審議の上に米価が最終的にきめられるものでございまするから、さような手続をとっております。しかして、これは御承知のような形式でもって、従来パリティ方式でやっておるのでございますが、生産費補償方式を採用する、こういうことは、一面要望の強かった問題でございます。しかしながら、この方式は、実は非常に未熟な点がたくさんありますので、研究を重ねなければならない。同時に、また、ただいまもこの生産費補償方式そのものを採用しまして、そうして参考案としては出しておりまして、これを見合って米価を決定しておりますけれども、今申し上げました通り、なおたくさんの未熟な、理論的にも実際的にも非常に困難な問題がありますので、採用いたしかねておったのであります。しかし昨年以来、この問題をさらに実行的にするということで、検討を命じて参つたのでございますが、非常に困難な問題がございますので、今はっきりした結論は、生産費補償方式につきましても得られておりません。しかし、依然今検討を重ねておりますから、六月までには、この有力なる参考資料として、生産費補償方式の計算方式等も打ち出したい、かような考え方でございます。
  82. 戸叶武

    戸叶武君 次に、麦価の問題でありますが、最近は内妻の政府買い入れ価格に対して政府売り渡し価格は低いという、いわゆる逆ザや現象が生じております。これに対して政府は今後どうこれを処理していくか。それと関連あることは、輸入麦の圧迫によって、昭和三十三年の大麦は一七%、平均二四、裸麦は二三%、それほど輸入麦の方が安くなっております。そういう結果からして、大麦、裸麦が約六〇%、小麦で七八%が輸入麦に占められるようになってきました。この外麦の圧迫というものが、日本の麦の作付面積を年々減少させておりますが、これに対して、砂糖においてはビート糖保護ということを名として関税を高くしたりして関税障壁を設けておりますが、何か政府考えておりますか。
  83. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 麦の問題でございますが、これはまあ米に次ぐ主要食糧でございまして、この輸入は確保して、食生活の安定を期さなければならぬことは申すまでもございません。しかし大麦、裸麦の生産、あるいは小麦を合わせまして、三菱におきまして、遺憾ながら日本生産力は日本の需要を満たし得ない現状であるわけでございます。私たちの考え方としましては、特に大麦と裸麦は農家の食糧のみならず、粒食として日本で用いるものでございますから、これは極力増産をはかりたい考えでございます。  御指摘通り、麦の生産が一時減退して参りましたけれども、大体まあ安定の域に達して参りました。しかし、従来とても麦作の面積が減って参っておりますから、これを生産面におきましても特に増強をはかって参りたい考えであります。同時に価格の面でございますが、遺憾ながらこれは外麦の方が安い。そこで、食糧管理法上の運用として、これを調整しつつやっておるのでございますが、ただ単に外麦でもって圧迫するという面だけ見まする場合には、これは国内の食糧の需給を確保し得ない点がありますので、これらの問題を調整しつつ、現在のような価格政策をとっておるわけでございます。  今後といたしましては、生産面におきまして、特に畑作としての麦に重点を置きまして、その改善の方途を講じて参るし、価格等につきましても、率直に申しまするならば、もう少しこの面についても改善の道を講じたいと考えております。
  84. 戸叶武

    戸叶武君 麦作地帯が米作地帯よりも非常に貧しい状況にあるときに、この転換作物のことが今日においては重視されてきているのであります。私の県の栃木県とすれば、麻の将来がない、桑の将来がない、タバコの方もずいぶんいじめられている。そういうような状態のときに、やはり何か安定された畑作を必要とする、こういう空気は、これは私のところだけでなく、全国に広がっておると思います。そこで、今日いわゆるビート・ブームというものが湧いてきておるのでありますが、私は今日における砂糖の問題は、甘く考えていてはいけない。やはりこれは塩を専売にしているように、だれでも砂糖をなめない者はないのだから、これは税金以上の広い取り上げられ方を製糖業者からされているので、どうしてもこれをやはり国策として取り上げなければならないと考えているのです。砂糖の九〇%までは海外から輸入されているのでありまして、昭和三十二年度における砂糖類の輸入額は一億六千九百四十三万九千ドル、すなわち六百十億円に達しておるのであります。社会党は、砂糖については、まず原料糖の輸入を国で管理し、これを競争入札で製糖会社に払い下げ、その際生ずる砂糖の輸入差益を国庫に納める。すなわち、砂糖の国際価格と国内価格との差より生ずる超過利益、これをテンサイ糖や澱粉の振興に振り向けようと考えておるのであります。政府は、三十四年度から国産テンサイ糖育成のためと称し、テンサイ糖業の自立態勢確立のために、輸入原糖の関税引き上げ及び砂糖消費税の引き下げの振りかえ処置を行なっておりますが、これによってどのような成果が上げられるか、この二点を承わりたい。
  85. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) ただいま戸叶さんのお考えでは、砂糖の政策につきまして国家的管理のもとに統制経済をおとりになる、こういうお考えでございますが、基本的には、これはわれわれの方といたしましては、その方式をとらない考えでございます。現在のところ、テンサイ糖につきましては、北海道地帯において奨励をいたしておりますことは御承知通りであります。しかし、これが同時にまた東北方面におきましても、試験研究の結果、良好な成績を上げておりますので、来年度の予算等におきましても、とりあえず、その生産したものを製糖工場に輸送する面に助成の道をはかりまして、その順調な発達を期待しております。同時に暖地におきましても、この砂糖の問題がだんだん成果を上げて参りまして、なかんずく、岡山であるとか、あるいは大分であるとか、こういう方面での試験研究もだんだん進んで参りました。それから特に、これをいかに処理するかという中間的な一つの応用試験等の経費も計上しておりますから、これもテンサイ糖の栽培に伴いまして、そうして小規模な粗糖の処理をする、また拡大しましたならば、製糖工場によってこれを処理するというように、テンサイ糖の奨励をだんだん進めて参りました。  同時にまた畑作の転換作物としてのテンサイ糖の問題でございますか、これはその立地条件の熟しますところにつきましては、特にこれを取り進めて参りたいと思います。ただいま御指摘にございましたような桑園等の転換等につきましても、条件の許しますものは、ぜひともそういうような指導を加えて参りたい。同時に、テンサイ糖につきまして支持価格制度をとり、また生産しました砂糖等につきましても、適正価格をもってこれを保障するの道を開いておりますから、この方策をとりましても、順調な歩みをもって発展するものと考えております。かように存ずる次第でございます。
  86. 戸叶武

    戸叶武君 繭糸価格の安定のためにとった政府の措置というものが生糸業者その他に私はほんろうされているのじゃないかと思われる点が多々あるので、特に今日、一割五分からの桑園の整理ということに対して助成措置を行なっているが、現実においては、表面づらは整理したように見せかけておりますが、改植という程度で逃げているところが大部分なんです。なぜそういうことをしているのかというと、製糸業者の方でもって、いや、よすな、今に高くなるのだから、政府のいうことだけ聞いていてもだめだといわれて、そうしてやっている。こういう工合にゆすぶられて、私は金だけを使って、そうして政府の施策がふいになっていくということを悲しいことだと考えますが、これに対して……。
  87. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 昨年来の繭糸価格の安定につきましては、もはや申し上げるまでもございませんが、この間にありまして、私たちの最も苦慮いたしました点は、養蚕家の経済的組織、団結力の欠如しているということにあると考えるのでございます。すなわち、御承知通り夏秋蚕にありましても、三百万貫のたな上げをして、そうして繭価の支持をしていきたい、こういうふうにしてやって参ったのでございますが、農民の方の、生産者の方では、組織機構を持たないために、どうしても売り急ぐ。もし、それほんとうにこれに相応しまして、そうして繭価協定なり、あるいはたな上げ等に弾力を持った操作をしていくならば、決してこれは農民の方におきましても、不慮の損害は受けなかっただろうと思うのでございます。ここに着眼しまして、繭糸価の安定施策はとりますけれども、同時にまた、この養蚕の団体等がそれだけの操作をし得るような機構を設けたいということで法律案を出しているわけでございますが、これらもあわせて今度の繭価維持の対策にも資して参りたい。こういうようなことを組織的にいたしますにつきまして、今後養蚕の前途必ずしも暗くない。同時にまたただ単に製糸家のみを保護するゆえんじゃございません。
  88. 戸叶武

    戸叶武君 タバコの問題でありますが、タバコ耕作農民というものは今耕地面積の八%、三千六百万町歩ほど減反を要請されております。これは余剰農作物の形でタバコの葉をアメリカから買い過ぎて、そのストックが二年半もあるということでありますが、そのためにこのごろは品質低下を名として、生産農民からタバコは叩かれて買われております。東北、関東では昨年平均三割減収したといわれておりますが、この減収加算の問題あるいは共済金支払の問題はどうなっているか。また農民が適正価格を要望して抵抗をしておりますが、これに対して政府はどういうふうに考えているか。私は栃木県のタバコ生産地の鳥山、茂木、馬頭、田沼というような所を調べてみましたが、大体反収五万二千円から八万五千円ぐらいでこれから肥料代一万八千円前後を引くと、農民の労賃というものは一日八十五円ぐらいにしかならないということであります。最低賃金の問題が問題になっているときに、農民の所得というものがこのように少い状態ですが、この専売事業のもとにおけるところのタバコ耕作者の奴隷労働に対してどういうふうに政府考えているか。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 政府委員から説明いたさせます。
  90. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) タバコの減収加算でございまするが、減収加算につきましては、昭和二十八年度に八九%という作況指数を示したときがございまして、そのときに減収加算をいたしておりますが、それ以後におきましては、減収加算はいたしておりません。減収加算はいたしていないのでございます。なお現在の生産者価格がどういうような程度であるかというお尋ねであったと思いまするが、これにつきましては現在は毎年度のパリテイに基きまして米、麦、カンショ、繭、そういうようなほかの農産物の価格との均衡を調整係数によって算定いたしまして、それによりまして価格をきめておるわけであります。なおこれによりまする労働報酬を現在の三十二年に出ました実績で算定をいたしてみますると、全体のタバコといたしましては二百五十三円、黄色種だけについてみますと二百九十六円というような数字に相なっておりまするので、大体麦の労働報酬をやや上回るか同じくらいということを考えております。
  91. 戸叶武

    戸叶武君 農林大臣に農業法人のことを承わります。これは三月十五日の確定申告の期日を前にして、政府から何らかの回答がなされなければならない問題であります。国税庁は農地法違反であるから法人として認められない、農林省は法人としていくことを認められるなら法人税を課すべきが当然である、というような見解を今まで示しておりますが、この問題は今後にも非常に関係のある問題ですから、大蔵省と農林省の両方から承わりたい。
  92. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) いわゆる農業法人問題につきましては、実は二つの重要問題があると思うのです。一つは法人をして農地を所有せしめるの制度をここに確立すべきかどうかということが一点であります。この問題は各種委員会におきまして、私が説明申し上げた通り、これらは農政を貫く重要な農地制度の問題でございますので、今法人をして直ちにこれを所有せしむることの制度を今後恒久的なものにするかどうか、ということにつきましては十分に検討をさせていただきたい。従ってただいまのところ農林省は直ちにこの制度をとりがたい、こういう態度をとっております。  第二点の課税の問題でございますが、これは主として大蔵省の関係でございますが、今のところ御承知通り有限会社法という商法に基く法人でございます。これが農地の所有を認めるかどうかということで、その成立要件があるかどうかということにかかっているようでございますが、税法の関係でございますので、この点は大蔵当局からお答えすることが適当かと思いますから、私はこれは避けたいと思っております。
  93. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 農業法人の問題ですが、ただいま農林大臣からお答えいたしておりますように、農地法での問題が一つございまして、農地法のたしか三条の四項ですかによる許可を得て、正式に法人が成立いたしますれば、法人としての課税をいたすわけでございます。今まで問題を引き起しております地域のものをいろいろ調べてみますと、この許可なしの法人としての設立だとか、こういうような基本的な問題に触れているのであります。そういうものは私どもとしては法人としては認めがたい、特に徳島県下にそういう事例が多かったのであります。いろいろ法人を作りました農家と話し合った結果、大部分の方は個人所得として、その法人の設立を強く要望されているところのきわめて少数の方が、いろいろ法人の成立を強く主張しておられる、こういうような実情でございます。
  94. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ちょっと事務的に補足さしていただきたいと存じますが、実は一口に農業法人を認めないというお話でございますが、私どもも農業法人の設立を否認するものではないわけであります。法律的に申しますと、法人の設立登記をしてございますれば、これは法人は有効に成立しているわけでございます。ただ所得税の問題として考えますと、所得税は実質的に所得の帰属する者に所得税を課すると、これがまあ建前でございまして、そうしてだれが一体実質的に所得を持っているか、すなわちだれに実質的な所得が帰属しているかと、こういうことの判定につきましては、一応法律上その所得の帰属する者に実質的にも帰属するのだと、こう考えるのが私ども常識ではないかと考えておりまして、まあ税務の実際でもそういうように取り扱っているわけであります。ただ法律上所得が帰属すると認められる者であっても、明らかにその人の所得でなくて、そうして他の人が実質的に所得を持っている、こういう場合には、その法律上の権利の帰属者と認められる者以外の方にも所得税を課する、こういう理論になるわけであります。そこで問題のいわゆる農業法人でございますが、農地法によりまして、土地の所有権なりあるいは賃借権その他収益を目的とする権利の設定変更等につきましては、御承知のように都道府県知事または農業委員会の許可が必要であるわけでございまして、その許可がございませんと、農地法上その行為は法律上の効力を生じない、こういうことになっております。そこで一応問題となりましたいわゆる農業法人につきましては、私どもその法人の設立を否認するものではございませんが、ただいま申し上げましたような経緯から、農地法による許可を得ていない場合には、やはり法律上権利者は個人である。個人にその所得が帰属する、こういうように考えるのでございまして、いわゆる農地法人の実体も考えあわせまして、このような場合におきましてはやはり個人として課税するのが建前ではないか、こういうふうに考えております。
  95. 戸叶武

    戸叶武君 どうもこの問題には問題がずいぶんありますが、時間がないのでまた一般質問か何かのときに伺うことにします。  次に私は農林大臣に対して、小さい問題と農林大臣は思っているかもしれないが、影響の大きい学童給食用の牛乳に対する政府の補助金が、一合に対して今までの四円から三十銭引き下げられて三円七十銭になってしまったのでありますがこれでは父兄の負担が重くなるわけです。まあ牛乳が下ってきておるからという認定の上に立っておるのかもしれませんが、PTAの会合なりあるいは学校給食の集会なりに出てみればわかりますように、いずれの父兄も父兄の負担の軽減を叫んでおるのであります。学校給食用のいろいろな施設も不完備でありますし、それから給食婦の手当の問題等いろいろ問題がある際に、しかも牛乳の消費を拡大し、児童の栄養をよくしようという目的でなされた一石二鳥といわれた良案が、こういうところでくずれてしまっては困ると思うのです。政治の愛情というものはこういうこまかいところに愛情の手がほんとうは伸びていかなければならないので、政府考えるよりこの問題は影響することが大でありまするから、私は単なる答弁ではなくてそんなばかげたことはやはりよしてもらいたいということを望む、この答弁と。  もう一つは今開拓農民が借金に苦しんでおるのです。私たちは率直に言えば、昭和初期におけるあの農業恐慌のときにおけるモラトリアムのように、十万人からの開拓農民というものは戦争犠牲者であるから、これをそういうような手段ででも救わなければだめなんじゃないかと思いますが、いずれにしてもこの開拓の農民というものは、十数年を経ておりますが、農政の棄て子のような状態に置かれておるのであります。それでありますから、これをどうやって救うかということを、やはり政府で真剣に考えてもらいたいのです。政府は全国の開拓農への貸付総額が、この三十三年度の災害基金の予算も十二億円が計上されてありまするが、約一年を経過してもわずか一億七千万円の貸付しかできていないという事態を知っておられるかどうか。これは農林中金が貸さないのです。貸さないのには理由があるのです。で、これだと開拓農は春肥の準備もできないのであります。三月まで待ってもおそらくは五割も貸付とならないでしょう。政府は三月の期限を延ばすかどうか。それから農林中金が目下貸し出しをしていないのはどういう理由によるのか。また残額はどうする気か。農林中金が貸し出さない理由としては、政府資金の方の開拓者資金融通法適用者には債権管理法を適用してどしどし取り立てているが、農林中金の方にはそういう適用がないので貸しつけられないというのが理由のようであります。この点を明らかにしてもらいたい。また政府は開拓者資金融通法によって開拓者に資金を貸し付けたが、目下その返済期に入っておる。これは五年据え置きで十五年払いとなっているが、今の開拓農で返済できる人は非常に少い。私たちはかって開拓営農振興臨時措置法を作ったときに、開拓融通資金を返せない場合は待つという条項を入れようとしたが、政府は債権管理法を適用させるから入れる必要なしと逃げたのであります。ところがこの債権管理法は大蔵省管轄の会社債権が主であって、農家には適用できないような状況であります。目下政府は大蔵省とこの法を利用して開拓農の開拓資金融通で金を借り、返済できない者に適用されます腹のようでありますが、この方法によっては北海道では三億円のうち一億円しか返済できず、そのあとの二億円は強制取り立てによって開拓農が泣いておるのであります。政府は開拓融通資金を借りた開拓農で、目下返済期に入っても返せない農民に対していかなる救済の手を打つつもりか。そのために開拓営農振興臨時措置法を、開拓農の要望を入れて改正する意図はあるか。また開拓者資金融通法の返済期限を延ばすように改正する意図があるか、そういうことを承わりたいと思います。
  96. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) まず学校給食の問題でございますが、実は従来は四円助成いたすとこういうことになっておりました。従いまして、父兄の負担も二円ないしまあ三円ということであったのでございますが、四円を来年度におきましては三十銭方減らしたのでございます。これはただいまのところ、乳価も五、六円方下り気味でございますのと、それからまた今後酪農の問題につきましては、生産の過程から流通の過程まで一貫して一つの計画的な進め方をいたしまして、そうして生産費の低減はかをるつもりであります。ことに共同施設、輸送の面におきましても、共同加工の面におきましても、その方面を進めて参る考えであります。さようでございますから、三十銭助成金は減らしましたけれども父兄の負担は多くさせないと、こういう意図のもとに取り進めて参りたい所存でございます。かつまた子供たちに食べさせます学校給食につきましては、生産者団体では非常に理解を持っておりますので、それらの協力を待ちまして、今の共同施設の施行と相待って、そうして乳価を安定さして父兄の負担を多くしないと、こういうことで取り進めたい考えであります。  次に開拓関係の融資の関係でございますが、第一に開拓者資金融通特別会計の貸付金でございますが、これにつきましては、国の債権の管理等に関する法律の適用によりまして、実情に応じて履行の延期を行なっております。  第二段には、いわゆる天災融資法による災害営農資金等につきましては、開拓営農振興臨時措置法によりまして、営農資金を借りかえさしてやるということでございます。これは年利率三分五厘または五分五厘というものになっておりますが、これにつきましては、金融機関等に対しましては利子補給の道を開いておりまして、この制度によって借りかえ等をいたして緩和をして参るということでございます。  第三番目には個人の高利債の負債につきましては、来年度等におきましては、自作農創設資金も相当増額になりましたので、これを融通いたしまして、そうしてその整理に充てさせたい考えであります。  なお御指摘の今の中金の関係でございますが、今度は災害開拓者の補償制度を拡大いたしまして、八千万円の投資も拡大しましたので、補償の限度も拡大して参ります。同時にまた中金等に対しましても指導を加えまして、そうして、春肥等に事欠かぬようにいたしたいと考えます。同時に先ほど北海道の問題に触れましたのでございますが、北海道は比年冷害等によって打ちひしがれておったのでございますが、昨年はまれに見る豊作だったために負債等も相当減って参っております。所得も相当増加した結果資本の蓄積等もふえておる現状でございますが、まだこれは残っておりますので、今の制度を活用しまして対処して参りたいと、かよう考えております。
  97. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 学校給食用の牛乳の補給金を三十銭下げましたことについては、ただいま農林大臣から話のございましたように、三十三年度の予算編成の当時に見ました乳価に比して、最近五十銭ないし六十銭下っておりますので、安全率を見て三十銭下げることによりまして、父兄の負担はおよそ同じにいけるということで、予算を組んだものでございます。ただ戸叶委員からお話のございましたように、学校給食の問題は、むしろ積極的に父兄負担の軽減をはかるということを考えたらどうだというお話の筋でございますが、なるべく父兄負担の減少をはかりたいと思いますが、今日ではまだ学校給食の普及率も十分でございませんで、小学校で見ましても、都道府県の中で一番いい所が九割をちょっとこしている所、普及の悪い所では一割以下という所が今日でもあるわけでございます。従いまして、父兄負担というものは将来できるだけ減少したいと思いますけれども、当面の問題としては、むしろ父兄負担の上るのを防ぎながら、できるだけ予算の余裕がある限り給食の普及をはかって参りたいと考えております。
  98. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 以上をもちまして戸叶君の質疑は終了いたしました。  次回は明後九日午前十時より委員会を開くことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十一分散会