○
国務大臣(佐藤榮作君) 基本的な
結論だけ先に申しますと、法人企業課税のあり方等については、もう基本的な
検討の
段階までになっておるように思います。今年の減税に際しましても、国税は昨年法人税について二%の減をいたしましたので、地方税も法人事業税等について軽減をいろいろ工夫いたしたのでございましたが、いろいろの事情がございまして、所期の目的は十分達することができませんでした。しかし、この税制審議会における
答申等を見ましても、やはり企業課税のあり方というものを
根本的に
研究して、そうして建て直すべきじゃないか、こういう強い
答申が出ております。
政府は、今回基本的な問題としての税制審議会の設置を提案いたしまして、ただいま御審議をいただいております。この税制審議会で問題になりますものは企業課税のあり方であるとか、あるいは間接税のあり方であるとか、あるいは国の財源の分配の問題であるとか、こういう基本的な問題について取り組んで参るつもりであります。わずか半年やそこらでは、なかなか
結論は出ないだろうと思います。そこで
結論はそういうことに譲らしていただきたいと思いますが、ただいまお示しのございました
昭和九年ないし十一年時分の個人の負担割合であるとか、あるいは法人の割合であるとか、こういう数字は、御
指摘の
通り相当アンバランスのものが今日出ておるように思います。過去のものについて弁解がましいことを申し上げるわけではございませんが、
昭和九年
——十一年から
国民所得に対する税負担率は法人税といわず個人の所得税といわず
相当率が高くなって参っております。ことに、戦後におきましては、税の負担が非常に大きくなっておる。申すまでもないことですが、税そのものは財政需要の高によりまして、税負担のレベルがだんだんきまってくるわけでございます。戦後のような
情勢で、この財政需要に応ずるために
国民の負担が非常に高くなったことはやむを得なかったと思います。一時、
国民所得に対しまして二三、四%まで税の負担というものが上ったと思います。そこで、
政府におきましても、かような高率な負担は
国民のたえるところではないし、また、個人といわず事業体といわず、これにたえ得るものでないというので、しばしば減税を実施して参りました。最近におきましては、大体一四%ちょっとこす
程度、
国民総所得に対しては一四%一か二という
程度にこの税の負担は軽減されて参ったのであります。この
国民総所得に対する税負担は軽減の方向をたどって参りましたが、この場合に、一体税負担といっているが、どういう税目について特に意を用いてくるか、こういうことになって参りますと、それぞれの場合々々にそれぞれの方策を講じて参ったように思います。言いかえますならば、個人の所得に対する所得税の軽減、これが一番直接個人の負担を軽減さすゆえんでございますから、まず第一に、個人の所得税の軽減ということが大幅に取り上げられて参ったと思います。法人税についての減税もしばしば計画されましたが、
国民総所得に対する税負担が高いという声に、どうしても個人の方に力が入って、これは別に社会党さんの主張を支持するわけではございませんが、そういうような結果になって参ったと思います。また、今日の税制のあり方等を見ますと、各国ともですが、それぞれの国によって幾分か形は違っている。たとえば
欧州と
アメリカでは、直接税と間接税による歳入の割合というものは、大陸と
アメリカなどでは違っていますが、大体直接税というものが財政収入の上で重きをなしておる形でございます。
日本におきましても、
昭和九年時分から見ますと、直接税が大体半分
程度になっているということでございます。四九%
程度を占めるようになっている。この直接税の中の法人の負担というものは、そういう
意味でもやはり
相当多くの部分を占めるように、各国の法人税な
ども、そういう形をとっておるように私
ども見ておるのでございます。しかし、この税の伸び方そのものをしさいに
検討してみますと、個人に対する所得税は、先ほど四・四という数字をお示しになりましたが、当時個人で所得税を納めておりましたのは、きわめて少数であった。おそらく
昭和九年や八年時分でありましたら九十万人に足らない
程度ではないかと思います。しかしながら、最近におきましては、個人で所得税を納めておりますものが一千万以上になっておる。これは非常な増加であります。法人の場合におきましても、法人税を納めている法人の数も最近は飛躍的にふえて参っておりますが、個人の場合においても、ただいま申すように、九十万に足らないものが一千万をこしておる。こういうことを
考えてみますと、これなどはいわゆる低額所得者に対しても所得税を納めてもらっておる
状況でありまして、これは先ほど申すように、税負担としては一般に重いということを、実は示しておる
一つの例だと思います。従いまして、この一千万の全体についての率を
考えてみますと、いかにも伸び率が少いようにお
考えになりますが、個人所得の場合でも上の百万人
程度、一千万のうちの百万人
程度をとってごらんになりますと、これはもう三倍以上のやはり所得税の負担をしておるような
状況になっておるのでありまして、これは必ずしも軽々には申すことができないと思います。法人の方につきましても、数は
相当の数の伸びがあるし、また、個人
経営を法人
経営に移しておるものも
相当多数でございます。これを一律に申し上げて、法人が非常にきついとか、個人が非常に軽いとか、こういうことはなかなか言いにくいと思いますが、私
どもの見るところでは、法人についてやや時期がおくれておるが、総体といたしまして、特にはなはだしい処遇の低下だと、こうまでは言い得ないのじゃないか。かように私
ども思っております。しかし、先ほど来御
指摘になりますように、いろいろ税のあり方そのものから見まして、やはり自己資本の充実という
意味においては、
相当欠くるような税制になっております。ことに借入金の金利はみんな損金に落す。あるいはその配当の
利益については、個人の場合に、個人所得としての課税であるとか、いろいろ税そのものとして
考えていかなければならない点が多いのであります。こういう
意味において、冒頭に申しました税制審議会において、企業課税のあり方について十分考究して参る
考え方でございます。