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1959-03-06 第31回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月六日(金曜日)    午前十一時二十五分開会   —————————————   委員の異動 本日委員前田佳都男君、泉山三六君及 び千田正君辞任につき、その補欠とし て剱木亨弘君、後藤義隆君及び長谷部 ひろ君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木暮武太夫君    理事            小柳 牧衞君            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            西田 信一君            堀木 鎌三君            片岡 文重君            鈴木  強君            矢嶋 三義君            森口八三一君    委員            石坂 豊一君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            小幡 治和君            古池 信三君            紅露 みつ君            小山邦太郎君            下條 康麿君            杉原 荒太君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            横山 フク君            荒木正三郎君            北村  暢君            栗山 良夫君            坂本  昭君            高田なほ子君            戸叶  武君            中村 正雄君            羽生 三七君            平林  剛君            松浦 清一君            松永 忠二君            田村 文吉君            中山 福藏君            長谷部ひろ君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    厚 生 大 臣 坂田 道太君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    郵 政 大 臣 寺尾  豊君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    建 設 大 臣 遠藤 三郎君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   国 務 大 臣 山口喜久一郎君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 松本 俊一君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    経済企画庁総合    開発局長    淺村  廉君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    公安調査庁次長 關   之君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    大蔵省銀行局長 石田  正君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    通商産業省公益    事業局長    小室 恒夫君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省港湾局長 中道 峰夫君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十三年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出衆議院送  付)   —————————————
  2. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について報告をいたします。三月六日千田正君が辞任し、その補欠として長谷部ひろ君が選任せられました。
  3. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、去る二月二十五日の委員会におきまして委員長及び理事に御一任をいただきました公述人選定等につきまして、昨日の委員長及び理事打合会協議をいたしました結果、お手元に配付いたしました刷りものの通りに決定いたしましたので、御報告をいたします。
  4. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 昭和三十四年度一般会計予算同じく特別会計予算及び政府関係機関予算並びに昭和三十三年度一般会計予算補正第二号を一括して議題といたします。  前回に引き続いて、総括質疑を行います。中山福藏君。
  5. 中山福藏

    中山福藏君 まず第一に、私が総理及び外務大臣に対しましてお尋ねいたしたい事柄は、一九五一年の九月の八日にサンフランシスコ条約が締結されまして、その際にダレス国務長官潜在主権という言葉を使っている。ことに、その条約の第三条には、日本に対して、司法行政立法施政権というものを一応アメリカが預かるということになっておるわけでございます。ところが、この潜在主権というものの理念が、あるいは期待権の範囲に入る、外だけ形を整えておって、中身はからっぽであるというふうな、雑多な風説が流れておるわけであります。そこで、安保条約の改定、行政協定の改正ということになりますれば、一まず、何をおいても、この基礎観念の確立ということが非常に大事だと私は思うのです。それで、潜在主権というものが、結局自衛隊法の第七十六条の「国」というこの考え方のうちに入るかどうか。潜在主権というものは、いわゆるその概念から見ますというと、司法行政立法のまあ権利がないわけだと、こうなっておりますが、領土に対する支配権能というものは、領有利用処分、こうなっておる。一方においては、人に対する権能というものは、司法行政立法と、この六つの要素を備えておらなければ、これは完全に領土としての取り扱いができないわけです。そこで、司法行政立法のいわゆる権利はないが、領有利用処分ということは残されておるのじゃないかという気がいたすのです。そういう点について、自衛隊法の第七十六条及び第八十八条の条文のうちに使ってありまする「国」として、沖縄、あるいは小笠原というところを取り扱っていいかどうか。この点について総理並びに外務大臣のお考えを一応承わって、それから私のお尋ねする本問題に進みたいと、こう考えておるわけでございます。
  6. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 潜在主権という観念はいろいろの点において明確でない点があることはもちろんであります。領土、完全の領土というものが、その領土において完全に施政権を持つところであることは、言うを待たないのでありますが、しかし、いろいろな法律や、いろいろな言葉として領土というようなことも広義、広い意味に使われたり、あるいは狭い意味に使われたり、すなわち今御指摘になりました最後の処分権というようなものについては、潜在主権を有するところにおいて、日本意思を無視して一方的にアメリカが行い得ないということは、これは問題なかろうと思います。また奄美大島アメリカ日本との関係におきまして、日本に返して、サンフランシスコ条約に調印しておる国において少しも異議がなかったことを考えてみましても、施政権日本にある状態のもとに返すということは、やはり当然行われるものだと私ども考えております。こういうような意味におきまして、沖縄における潜在主権というものを見てみますと、かりに沖縄に対して不当なる侵略があったという場合においては、やはり日本に対する侵略として私は考うべきものである、こう思っておるし、ただこの場合において、自衛隊がすぐ出動し、実力をもって排除することができるかどうかという問題に関しましては、一切の施政権アメリカが持っております関係上、アメリカ意思いかんにかかわらず、日本が出て行ってこれを排除するということは、これはできない問題であろう、こういうように考えております。
  7. 中山福藏

    中山福藏君 外務大臣、何かお答えありますか。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 特に総理に補足することもございません。法律上の解釈につきましては、条約局長から御説明申し上げます。
  9. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ちょっと補足させていただきます。平和条約第三条の「行政立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」という規定がございます。ほかの規定に比較いたしますと、たとえば台湾、千島というものにつきましては、すべての権利権原及び請求権を放棄するということがございます。従いまして、これに対比いたしまして、われわれとしましては、この主権と申しますか、潜在主権、具体的に申しますというと領土処分権と申しますか、それは留保されておる、こういうふうに考えております。
  10. 中山福藏

    中山福藏君 自衛隊法の第七十六条及び第八十八条には、ただ「国」という言葉が使ってある。その日本という国が侵害された場合においては、武力を行使することを得と第八十八条に規定してありまして、第七十六条に基いて首相出動命令があった場合にはという条件つきですね。ところが施政権がなくとも、なくともですね、その「国」という観念のうちに入りますというと、安保条約の有無にかかわらずこれが適用するということに、これは法律上の解釈はなってこなくちやならない。ところが、施政権がなくとも、土地と人間というものは日本のものなんです、これは。そうすると、この「国」という解釈を突き詰めますると、安保条約がなくとも、結局侵犯が行われた場合においては、当然出動命令というものが発せられなければならぬと、こうなるのですが、その点についてはどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  11. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほどから総理並びに外務大臣からお答えがありました通りに、観念的に言えば、領土主権日本におるわけであります。観念的に言えば自衛権もあると言うべきだと思います。しかし、御承知のように平和条約の第三条がございまして、一切の立法司法行政上の施政権は、今アメリカが持っておるわけであります。現実の問題といたしましては、自衛隊法に基いて、その条約上の問題がございますから、直ちに日本側といたしまして、アメリカの意向に反して、あるいは無視して、これに対して自衛隊出動を命ずるということはできないと思います。
  12. 中山福藏

    中山福藏君 ただいまの法制局長官お答えでは、これは不十分だと私は思っている。もう少し筋を立てた法律論一つしていただかなければ、私どもは納得できないと考えておりますが、時間の関係上一応御考慮をわずらわしまして次の問題に移りたいと思います。  ただいま日本台湾政府とは、いわゆる条約が結ばれておりまして、日本国際連合自由諸国群とともに、台湾政府というものを中国における唯一の主権者として認めております。そこで一つお尋ねしたいのは、中国のいずれの土地に起った問題でも、その問題が日本被害を及ぼしたときには、損害賠償の問題が起ってくるわけであります。そうすると、いわゆる大陸で行われました日本に対する被害、問題を提訴する場合においては、相手国として台湾政府というのがその目標にならなければならぬのですね、法律上から言うと。そうすると、被害を及ぼしたものが、中共のいわゆる事実上の支配権が入っているところであって、責任を持つというのは結局台湾政府である、こういうことになるわけです。これが交戦団体として承認されている場合においては、権利義務の主体というものは中共になるわけですね。ところが、日本交戦団体としてもこれを承認していないわけです。台湾政府またしかりであります。ところが、現在のままでは被害の対象になりまするところの損害賠償目標としてねらいをつけられるものは、台湾政府であるということになりますが、そうすると事実上不可能です。これはすべての訴訟行為というものがなってくるわけなんです。そういう点についての便法を何かお考えになっておりますかどうですか。一つこの際お伺いしておきたいと思います。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 何か抽出された法律議論から言えば、お話しのようなことがあるかと思いますけれども、事実上今台湾中国に対して支配権を持っておりませんような現状でありますので、そういうことは考えられないと思います。
  14. 中山福藏

    中山福藏君 これは事実上と法律上の問題でありますれば、もう議会法律を作る必要はなくなるわけですね。事実はごうだから、法律を作っても何にもならぬということになりますれば、これは議会や何かで立法措置を講ずる必要はない、こういう結論になるわけでございますけれども、これは意見の相違でもございましょうから、しいて私は申し上げませんが、しかし外務省としては、一応こういうことは御考慮になっておく必要がある。今日対外的にすべての国家の交流をやります場合には、法律以外に国際法というものに準拠しなければ、すべての行動はできないはずなんです。それを事実上こうだからということで十把一からげに片づけられては、これはとても承服ができないということになりまするので、外務省としても十分一つこういう点は御研究になっておく必要があるのじゃないか、かように考えます。  それからもう一つお尋ねしておきたいのは、御承知のようにアメリカは豪州、ニュージランドとともに防衛同盟というものを、防衛条約というものを結んでおりますし、韓国に対してまた同様であります。台湾政府に対しても同様であるし、フィリピンに対しても同様の立場をとっているわけであります。そこで、これらの中共あるいはソ連に対する防衛基地として今沖縄が使用されているのでありますが、冒頭に私がお尋ねしたいわゆる日本領土であるということに沖縄がなりますれば、この領土を侵犯されたときには、好むと好まざるにかかわらず、ここが戦場の基地となってICBMというようなものが飛び出すというようなことになりますというと、日本というものも、おのずからそこに巻き込まれていかなければならぬのじゃないかと、こういう考えが起ってくるのでありますが、そういう憂いは持っておられませんでしょうか、政府の方はどうでしょうか。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この安保条約を作ります上におきまして、われわれとしては、むろんいたずらに紛争に巻き込まれるというような状況に陥らないために、日本以外の国に対しましては、協議事項をもって参りたい、こう思っております。現に沖縄につきましては、アメリカ立法司法行政主導権を持っておりまして、日本潜在主権を持っておるだけであります。従いまして、そういう点につきましては、われわれとしていたずらに巻き込まれるということはないと考えております。
  16. 中山福藏

    中山福藏君 この次のお尋ねする御答弁首相一つお願いしたいと思います。先般衆議院における黒田寿男君の問いに対しまして首相お答えは、いわゆる核兵器問題の事柄なんですが、核兵器というものを日本に持ち込むということは、法律上禁じていない、憲法もまたこれを禁じていないが、しかしこれを持ち込むということは、政策上の観点から自分は持ち込まないのだということをお答えになっておるのであります。そこで、私は核兵器を持ち込む、持ち込まぬということに対して、個人としての考えは、食われようとする場合においては、いかなる武器もこれを所有して、いわゆる侵略者をやっつけなければならぬというふだんから個人としては考えを持っております。そこで、そういう核兵器は持ち込まないのだということを今御言明になるということは、国防観点から、侵略者に対するところの日本人総体を守る意味におきましていかがなものであろうかと考えておりますが、これは一昨年の九月でありましたか、ダレス日本にも核兵器を持ち込むのだということを演説をしているようです。それから昭和三十三年の一月の二十日の米国の歳出予算委員会における国防長官の説明を読んでみますと、こういうことを書いておるのです。沖縄以外に核兵器を持ち込むということを言明しておるわけです。そこが日本であるということはさしておりませんが、しかもINS通信社報告によりますと、その持ち込む場所は日本であるということを言っておるわけです。そこで、いかがでございましょうか。首相はあくまでもこの核兵器は持ち込まない、どんな日本被害を受けても持ち込まないというお考えでいらっしゃるのでしょうか。どうでしょうか、その点は。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核兵器種類もいろいろあることは御承知通りであります。そのうちの原水爆のごときものが日本憲法自衛という意味から申しまして、そういうものを持ち込んだり、あるいはそれで装備するということは、これは憲法規定に私は抵触するものだと思います。しかし、核兵器種類によりまして、また今後の発達いかんによりまして、すべて核兵器が、いわゆる核兵器と名がつけばことごとく憲法規定はこれを禁じているのだと憲法解釈をすることは、私は憲法解釈としては適当でないということを従来も考えておりますし、そういう意味法律論としてはお答えをいたしておるのであります。ただ、政策の問題として考えますというと、日本はすでに国会の意思にも出ておりますように、この核爆発禁止に、実験禁止についての強い意思が述べられており、またわれわれの念願として、核兵器というものを一切製造、使用することを世界からなくしよう、こういう努力をいたしてきております。そうして原子力はもっぱら平和利用にのみ用いらるべきものであるという信念のもとに、あらゆる努力をいたしております。こういう観点から見まして、私は政策として日本自衛隊核武装することは適当でないというのが根本的の考えでございます。しからば、それによって日本の安全が非常におびやかされ、日本自体の安全というものがそれでは保てないのではないかという御議論が一部にあるようでありますが、私は現実にはそう考えておりません。日本を取り巻くところの諸種の状況、また、米ソの対立の現状から見まして、いろいろの戦略的な関係等考えまして、今日の状況のもとにおいて、核兵器をもって日本を装備しないことの方が、日本の安全のためにはいいという考えに立っておるわけであります。こういう意味において、私は従来とも核武装をしないし、また核武装の持ち込みは認めない。そうして現実日本核武装されてもおりませんし、いろいろなことが言われておりますけれども米軍日本において核武装しておるという事実はございません。    〔矢嶋三義君「委員長マイクマイクマイク故障」と述ぶ〕
  18. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 何ですか。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 マイク故障ですよ。総理答弁が聞えないですよ。
  20. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 今やっております。
  21. 中山福藏

    中山福藏君 その次に、これは総理大臣からでもけっこうですが、外務大臣からでもけっこうであります。お答えを願いたい。サンフランシスコ条約の第二条の(e)項でありますが、これはかねがね私がこの予算委員会で問題にいたしております南極に関する問題でありますが、その条項を読んでみますというと、日本人のいかなる活動によるにかかわらず、その他いかなる理由によるにかかわらず、南極のすべての地点に対してあらゆる権利権原、利益というものを全般的に放棄するということが書かれてあるのです。これはこの南極大陸というものはいろいろ考えてみますというと、今から四十一年後の西暦二〇〇〇年には世界の人口は七十億になると言われておるので、この南極が将来は原子力平和利用によって世界工業地帯に化するだろうと私は考えておる。そこで、この問題を私はお尋ねするのですが、これは法律家としての私の考えでは、戦勝国の気まま勝手な権利乱用だと私は認めるのです、こういう規定は。でありますから、いわゆる国際司法裁判所の第三十八条の第二項の規定によって、法の一般原則あるいは衡平あるいは善、こういうことによって判決一つもらわなくちゃならぬ。国際司法裁判所にこの問題を提訴して、このサンフランシスコ条約の一部無効の宣言を求めるということは、これは私は当然の事柄でなくちゃならぬと考えておるのです、日本としては。そういう心がまえでもって国際司法裁判所に提訴をなさる気持はないかどうか。これは非常な大問題だと私は考えておりますから、特に念を押してお尋ねをしておきたいと思います。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) サンフランシスコ条約におきまして、南極洋日本権利を放棄しておることはお説の通りでございます。南極大陸であって相当資源もあるようでありまして、各国が注目いたしておりますが、現在南極人類の共有のために考えようということで、国際管理の問題がすでに出ております。日本もその国際管理に賛成をいたしまして、アメリカソ連その他各国とともに現在ワシントンにおきまして十二カ国が寄って国際管理協議をいたしております。私どもはそうした南極が平和のために国際管理によって開発され、人類のために使用されることが一番適当だと考えておりますので、国際司法裁判所サンフランシスコ条約のこの条項の廃棄を提訴する考えはございません。
  23. 中山福藏

    中山福藏君 インドのパール判事という人が、憎悪というものが姿を消した場合においては、戦勝国戦敗国の地位が転倒するであろう、ということを判決結論に打ち出しております。私もそういう時期の来ることを望んでおります。しこうして正義というものは、一時は多数の力によって圧迫されておっても、決してこれは逼塞するものではないと私は考えておるのです。日本敗れたりといえども正義のために私は権利乱用をはねのけて、そうして国家の将来、あるいは日本人が負けても、決してその正義の前に屈するものでないという意気を、私どもは四十八カ国の戦勝国に対して示すということが、外務大臣としては私は当然の決意でなくちゃならぬと考えておるわけでございますから、外務大臣一ついろいろお考えもあるでしょうけれども、ただそういう問題を提訴する気持はないだけでは、この問題は私は済まされぬと思うのです。そこで、連合国国際司法裁判所判事であったパール氏も、外国人でありながらそういうまことに名文句を使っておるのです。それで私ども日本人として卑屈な態度でなく、まさに法律上の権利乱用であれば、これを排除するに断固たるところの私どもは覚悟を持って当るということが、日本を尊敬せしむるゆえんではないかと実は考えておるのです。いかがでございましょう。これはもう絶対に出さないお考えでございますか。もし何でしたら、もう少し堂々たる態度を示していただきたいと思うのですがね。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お説のように、日本が堂々たる態度をできるだけとって参りますことは、外交の基本的な方針であることは申すまでもないことであります。われわれもあらゆる機会にそういうことを考えて参りたい、またそうして参りたいと、こう考えております。ただ二の問題は放棄しておりますし、現にすでに南極の国際的な管理というものをしようじゃないかというので、国際連合におきましても多くの国がこれに賛成し、現在若干の異論を持っております国が一、二あるだけでありまして、世界各国がみなそういう考え方になっております。従って白瀬中尉南極に歩をとめられたということの事実は、サンフランシスコ条約南極日本が放棄したという事実と合せて考えますれば、国際管理に持って参りましても、やはり日本がそうした歴史的事実を持っておるという誇りと、それからそれによる過去の功績というものは、やはり国際管理の上にも認められることになろうかと思うのであります。われわれとしては、その方が適当な方法手段であろうかとこう考えております。
  25. 中山福藏

    中山福藏君 それでは次の問題をお尋ねしたいのです。首相は東南アジアをこの前歴遊されたのでありますが、これは日本の戦火をこうむった国々であります。マラヤでもインドネシアでもビルマでもそうでありますが、従って外交上向うの善意な態度日本に示してもらうことができないということは、これはやむを得ないのです。そこで、私がこの際お尋ねしたいのは、今世界の夜明けを迎えておるといわれておりますところのアフリカですね、このアフリカに対して、三年間くらいの期限を切った医療親善使節、お医者さんを派遣するということ、この使節を派遣していわゆるアフリカ土民の人々の救済に当らせるということは、日本との外交の将来というものを明るくするのじゃないかということを私は考えております。それでことに、ガーナという国はエンクルマ大統領がおりますが、これは野口英世博士が骨を埋めたところです。現在は銅像も立っておるそうでありますが、一昨年私はへーグで向うの大蔵大臣に会ってきたのですが、この国に医療親善使節をアフリカ各地に三年間くらいの期限を切って派遣すると同時に、ガーナというようなところには、合弁の医科大学を建てるということが非常に時宜に適したものと私は見ておるのです。なぜ私がそういうことを申し上げるかというと、一昨年エジプトに参りましたときに、アフリカ全体のこの医療はどうなっているかということを尋ねてみますというとですね、このアフリカ全土に対しては、英、仏の医薬品というものが全部販売されている、こう言うんです。なぜ日本の医薬品が入らないかということを聞きまするというと、アフリカの有名な医者というものは、ことごとく英、仏の学問を身につけて帰ったものだ、だから英、仏の教育を受けた医者がアフリカに帰って療治に当るという場合に、その使用する薬は、これは英、仏のものである、こう言うんです。だから現在、日本では今ダンピングが医薬品について行われておりますがですね。これはもったいない話いなんです。この医薬品というものを一つ大いに製造して、東南アジアのみならず、アフリカ全体に売り出すということは、その事前工作として医学校を建てるということ、いわゆるその学校によってりっぱなアフリカ向きの医者を育てるということが最も必要なことだと私は見ておるんです。だからとりあえず医療使節団というものを三年間くらい一つ期限を切って派遣すると同時に、一方においては将来の医薬品の販売路の拡張措置の確立ということからしまして、合弁の医科大学なんかを建ててみられるという御意図はないかどうか。ガーナには近く大使館が設置されるということを承わっているのでありますが、その大使館もけっこうでございましょう。しかしながら、アフリカ全体に対する政府の基本政策というものがなくちゃならぬと私は考えている。その第一歩としてこういう事柄をおやりになってはどうか、こういうことについてのお考えを承わっておきたい。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 東南アジアもしくはアフリカ等に対しまして医療関係の使節を出す、あるいは医者の交流をやる、また医学生を受け入れて教育する、そういうような面を取り入れて参りますことは、私も非常に東南アジアの親善あるいは中近東、アフリカとの親善という意味においてけっこうなことだと思っております。また、厚生大臣もそういう面について特に熱心に考えられておられるようでありますから、こういう面を外交の面に取り入れますことはけっこうだと思います。ただ、ただいまお話しのありましたガーナーにおきまして日・ガーナ合弁の医科大学を作るというお話しでありますが、実は、私は一昨昨年秋ガーナに参りまして、あすこでりっぱな医科大学の校庭に野口英世博士の記念碑がございますのを見て参りました。私は医者にしろうとでありますが、相当設備はいいように思います。内容はどうですか、私の判断じゃわかりません。野口英世博士を大へんに、私参りましたときも、各方面の人が思っておられました。ことに医科大学の校庭に参りましたときは、みな私が野口さんの碑をたずねてきたということで喜んで案内してくれたこともあります。そういう関係もありますので、御意見を承わっておきまして、日・ガーナ合弁の医科大学ということについては、将来研究いたしたいと思います。
  27. 中山福藏

    中山福藏君 大体この東南アジアにおいても、通商航海条約によって日本の医者の開業というものは禁じられている。ところがですね、たまたま今度ガーナのように、野口英世の遺徳を慕う国においては、これは特別な外交措置を講ずれば、そういう措置は当然成り立つんじゃないかという私は気持を持っているんです。それで他の場所とこのガーナというようなところを一つ区別していただいて大いに日本の医術というものを海外に宣伝する、あるいは施療を施すということが、国際親善の上に非常に効果があるのじゃないということを考えますがゆえに、外務大臣にお尋ねした次第でございますが、その次に、なお、これは外務大臣に対してお尋ねしておくんです。それで、ただいまユネスコの本部がパリーにありまして、文化、教育、科学というような面あるいはテレビ、ラジオというような面について、各国の平和のための基礎工作としての文化の流通をやっていく、これはけっこうでございますが、このユネスコと連絡をとって、各国の青少年、中学生、小学生というものを、暑中休暇を利用して海外に相互に派遣して、そうして子供のときからインターナショナル・マインドというものを植えつけるということは、非常に私は大事だとみているのです。幸い今、南米航路なんかも、渡航費が一航海八千万ぐらい要るという話でございますが、これは船客は足らない、現在は、ことにブラジルは、御承知のように今インフレに見舞われておりますから、ことに貨物の積み込みなんか至難になっておるわけです。こういう際に、暑中休暇を利用して、学生寮といったようなところに泊めるようにして、中小学生というものが、その船を利用して、一つ毎年々々暑中休暇に派遣されるということは、これは大きな私は親善の種をまくものだ考えておりますが、そういう点について、一つ外務大臣お骨折り願うことはできぬでしょうか、一つお伺いしておきたいと思います。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私もかつてユネスコ国内委員としてまたユネスコの総会にも参りましたので、ユネスコが、そうした青少年活動に努力しておりまして、ヨーロッパでは、そういう若干の事業をしていることを存じております。ユネスコの東洋における活動は、多分ニューデリーのときでありましたか、東洋部会というようなものを作ってやろうじゃないかという決議もできております。従って今後のユネスコ活動、ことにアジアにおけるユネスコ活動と申しますが、そういうものに、今お話しのようなことをユネスコに要請しますことは、非常にけっこうなことだと思いまので、前田国内委員長等に申し上げまして、なお外務省努力して、そういうことの実現のできますようにやって参りたいと存じます。
  29. 中山福藏

    中山福藏君 それからこれは総理大臣一つ、お疲れでしょうけれどもお尋ねしたいと思います。私は教育問題には非常に興味を持っておる人間でございますが、現在世界が平和と人類の福祉を世界人権宣言でも、前文にうたっておる。日本憲法でもこれを移し植えて、平和と人類の福祉をうたっておる。教育基本法にもこれはうたっております。そこで、この平和と人類の福祉というものが大事だと言っておりますけれども、さらばこれをどういうふうにして実現するかということはすべての点においてこれは脱落の状態にあるわけです。そこで私は、各国の風俗、習慣、人情、宗教、言語、その異れるものと共通のものというものを、これをユネスコに一つ談判をして、その同一のものが、あるいは差異のあるものかということを、小学生のときから日本の子供の頭に植えつけておく方が、将来世界人としての日本人の立場というものに非常に寄与するのじゃないかと考えております。ユネスコなんかと一つ連絡を保たれて、世界共通共学読本というようなものを一つ作って、国連の援助を得て、世界が共通の点と違った点とを小学校の生徒に教え込むという措置を講ずるということは、これは日本の私は人類の福祉に貢献する偉大な力をもたらすのじゃないかと考えておりますが、どうでしょう、そういう点は。
  30. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話しの通り、この次の世代を背負う青少年、特に少年の時代から、国際的な知識を持ち、世界人類に対して近親感と同時にいろいろ風俗、習慣、ものの考え方の差異というようなものについて、正しい認識を持つということは、それが成人した後において、これらの人たちが国際的に活動する上においても、また、各国の同じような年代の人たちと、互いに友情をもって、結ばれて、世界の平和と福祉のために手をつないでいけるというためにも、今お話しになりましたような、国際的の目を子供のときから開き、それに対して親しむような方向に教育をしていくことは非常に望ましいことだと思います。その方法として、あるいは今一つのお考えとして、国際的に共通の一つ読本であるとか、あるいは教材というようなものを、ユネスコやあるいは国連の国際的機関によって考えて、そうして適当に選択して、各国がそれを採用するというようなことができるなら、私は非常にけっこうだと、こう思います。
  31. 中山福藏

    中山福藏君 最後に法務大臣に一つお尋ねしてみたいと思うのです。ちょうど先月でございましたか、私の職業が弁護士でありますから、裁判所に行ってみますと、正門と左右の両門が閉じてある。しかもその正門の前にピケを張って労働歌を盛んに裁判所の前で歌っている。それから空中には飛行機が飛んで、その審理中の人を激励しているという実情を見たわけであります。これは集会、結社とか憲法上のいわゆるいろいろな保障された権利の行使ということになりますと問題は別でありますが、しかし、公共の福祉あるいは三権分立の立場から、憲法上保障されたこの司法権の独立というものは、国民が安んじて裁判を受ける権利を保護されるゆえんであると私は考えている。いわゆる法律を、あるいは政令、あるいは省令の施行というようなことはもちろんでありまするが、裁判が公正に行われるということこそは、基本的人権の私は確立に最も必要であり、欠くべからざる重要な問題であるとふだんから見ているのであります。そこで近ごろは、この裁判官の公正というものを疑うようになっている。あれだけの迫害があり、あれだけの目に見えないところの圧力を加えられて、裁判官が、果して公正の判決ができるであろうかという疑惑を、国民は現在持ちつつある。戦前戦後を通じて、日本の外国から敬意を払われたものは、実に裁判所の不羅独立の態度ではなかったかと私は見ているのであります。その一つの誇りとする裁判所の権威すら、公正すら疑われるようになりましては、日本の法治国としての面目は喪失されるのじゃないかと私は考えるのであります。これらの問題について、いわゆる裁判所の権威と公正を保持する立場において、その周辺に対するところのいわゆる特別の措置が講ぜられなければならぬと考えているのでありますが、法務大臣はこれらの問題について、どういうお考えを持っておられますでしょうか、一つこの際所見をお伺いしておきたいと思います。
  32. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいま御指摘になりました具体的な大阪の問題は、中山委員が親しくごらんになりまして、その実情はお示しの通りでございまして、もちろんこれはお話しのごとく、遺憾千万に存じているわけであります。こういったような状況にございまするので、裁判所の何と申しますか、権威の保持のためにも、諸外国等においてどういうふうにやっているかということも、つぶさに検討いたしたのでありますが、ただいま、たとえば西ドイツ等においては特に裁判所の周辺に対するデモの取り締りというようなことが法律規定されているようでございますが、それ以外の国には、そういうことはないようでございます。しかし同時に、日本現状から見まして、まことに憂慮すべき事態でございますが、現在としてはこれらに対する取締りの根拠の法律としては、一応刑法百三十条の侵入罪が取締りの根拠になると考えております。そのほかに公安条例あるいは道路交通取締法というようなものもあるわけでございますが、ただいま私どものところですでに着手いたしたのは、特に東京都におきましては、警視庁と警察庁の間に十分緊密な連携をとりまして、少くとも現行の法規あるいは公安条例によって適切な措置がとれるようにするということで、常時十分な警備の態勢をとり得るような措置をいたしております。  それからいま一つ申し上げたいと思いますのは、何といってもこれは建物の管理者が管理権に基くところのきぜんたる態度で措置してもらわなければならぬわけでありまして、この面におきましては、申すまでもないことでありますが、裁判所は独立の機構でございますので、裁判所側におきましても、建物の管理者たる立場においてきぜんたる態度をとつてもらいたい。これと警備側との十分の緊密の連携をとる、こういうことで、さしあたり万全の措置を講じて参りたいと思うのであります。特にただいまのところ、先ほど申しましたように、新たに法律を制定をするということまでは考えておらないわけであります。
  33. 中山福藏

    中山福藏君 ただいま法務大臣がおっしゃいました刑法あるいは公安条例ですか、それからまあ道路取締りの関係法規、こういうものがあっても、なおかつ現在のありさまであります。だから現在のままで放置するとすれば、ただいま述べられた三つの法律があっても、これは何にも役に立たぬということになる。そういたしますというと、論理的に申しますれば、この法律の施行の任に当る官吏が職務を怠っている、こういう結論になるのであります。そういたしますると、それは減俸か首切りか何か持っていかなければならぬということになりまするけれども、そういうさたも承わっておりません。でありまするからして、そういうものが役に立たないとすれば、新たな立法措置というものは当然出なくちゃならぬと思うのです。これは特別立法でも差しつかえないと思うのですが、ただいまのままで放置されて、その法令あるいは刑法をですね、そのまま施行するという気持でお進めになるつもりでしょうか、どうですか。
  34. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほどちょっと言葉が足りなかったと思いますが、特に裁判所の周辺におけるデモの取締りというような取り上げ方で、特に特別立法が必要であるとはただいま考えておりませんが、しかし御承知のように、警察官等がその職務執行について、現状に即して万全の措置をとり得るような、一般的なもっと広い意味の警備の万全を期し得るような法律的な根拠は、私は必要であると思います。
  35. 中山福藏

    中山福藏君 最後にもう一点、法務大臣にお尋ねしておきたいと思います。ただいまこの日本の学生が、大体六十万人大学生がおる、短期大学と総合大学と両方なんでしょうが、あるということを承わっております。そのうちに革新的な考えを持った人が、六十万のうちの三十万、その三十万のうちの五、六万人というものが共産党に登録されておるということを、まあうわさですから、私は数字をあげて正確なことを申し上げかねますが、その五、六万人のうちのさらに三千五百名くらいが非常な先鋭分子だ、こう聞いておるのです。しかも、共産党がこれをおそれるくらいの先鋭分子だと聞いておるのですが、その実態をこの場合一つわれわれに知らしていただきたい。その三千五百人がどういうことを目標にして動いておるのか。せんだって私はある雑誌を読みましたところが、革命の時期至らばという言葉を使っておるんです。こういう言葉を聞きますと、私のような者はおい先短いからいつ死ぬかわからぬ、これはけっこうですが、若い者が首をちょん切られては困るだろうと思う。それでそういうことの一つ内容を一応承わっておきたい、こう考えます。
  36. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 中山委員から先般本会議でも本件に関連する御質問がございました。そのときに概略御説明申し上げましたが、この機会にいま少し詳しく申し上げてみたいと思います。  現在共産主義下にあると認められております青年、学生全般の団体といたしましては、日本民主青年同盟、全日本学生自治会総連合、日本社会主義学生同盟、このおおよそ三つの団体がございます。最初に申し上げました民主青年同盟というのは、いわゆる民青同と略称されておりますが、これは学生ではございませんで、経営内の青年労働者を中心として組織されておりますが、その現有勢力は約三千名と想像されます。そのうち日本共産党員が約千三百名と想像されます。特にこの組織の中央委員が二十二名ございますが、このほとんど全部が日本共産党員であるようでございます。それから次に先ほど申しました自治会総連合というのが、いわゆる全学連、それから社会主義学生同盟というのは、いわゆる社学同でございますが、この全学連と社学同は学生の組織体でございまして、全学連の場合は、各大学その他の学生自治会を構成体にいたしております。また、社学同の場合は学生の個人加盟団体でありますが、両者の関係は社学同が全学連に対して理論的行動的な推進勢力となりまして、常に一体となって学生運動を推進しておるわけであります。現在のところ、これら学生の日本共産党員は約二千名と想像せられます。彼らが学生運動の指導的役割を果しまして、特に全学連の中央執行委員三十名でございますが、これはほとんど日本共産党員によって占められておるようでございます。それから現在の全学連、社学同の主流派の学生党員は、ただいまもお示しがございましたが、日本共産党中央部の執行にあきたらず、この指導部のやり方を右翼ひより見主義的だと非難いたしまして、反党的な態度をとっておることは御承知通りでございます。これに対しまして日本共産党は、学生運動に対する指導を強化するために、社学同を学生組織から駆逐いたしまして、それにかわる組織化について、これを強化する方針を打ち出しておるようでございます。なお、これらの社学同等の綱領等を読んでみますと、一口に言えばいわゆるトロッキズムとでも申しましょうか、非常な革命、直接行動的革命理論と申しますか、あるいは実践の方針を打ち出しておるようでございまして、政府としては、公安調査庁を中心といたしまして、この方向に対しては至大なる関心を払い、またその動向に対しては、できるだけの注視を怠らない態勢を十分整えておるのでございます。
  37. 中山福藏

    中山福藏君 最後に文部大臣、お見えでございますかね。せっかくおいでになったからあなたにも一つ尋ねてみます。勤務評定の問題で、大阪で校長が今十三人入院しておる、ノイローゼになりましてね。そこでこの運営という面について、学校の運営、最もこれは重大な問題でありますから、一つ考慮を払っていただかなければならぬことは、今のまま対立の姿では、まことに寒心にたえないわけです。そこで父兄のある人数と、学校の先生と、それから校長さん、三位一体となって将来運営を決定して教育を行うという方向に持っていくということが賢明ではないかと考えておりますが、どうでしょうか、その点。
  38. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) この勤務評定書の提出を阻止いたしまするために、教職員組合などが過激な行動をして、校長さんがそういうような状態になっているというようなところが、大阪その他に若干ございまして、まことに遺憾に存じております。これは御承知のように、日本教職員組合が勤評絶対反対というようなことで、不当な手段に訴えて阻止をしようとしておるからでございます。勤務評定は、これはもうあくまでも人事管理の責任者が、その責任において実施をすべきものでございまして、全国四十六の都道府県の中でも、現にもう四十三まではそれでずっと進めて参っておるわけでございまして、若干の府県におきまして、ただいまお話しのございましたような状態の出ておるのは遺憾でございますが、私はやはりこの点はほかの教育方針全般にも通ずる問題でございまするけれども、国民の多数の方々の御理解、教職員自身の良識と自覚に訴えまして、ぜひこの筋を通して参らなければならないと考えております。本来の筋といたしまして、人事管理の責任者が責任をもってやって参るべきことでありまして、ただいまお話のございましたような委員会を設けますることは考えておりません。
  39. 中山福藏

    中山福藏君 これをもって私の質問を終ります。
  40. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 午後は一時二十分より再開することといたしまして、これにて暫時休憩いたします。    午後零時二十二分休憩    —————・—————    午後一時五十四分再開
  41. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これより委員会を再開いたします。
  42. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 委員長
  43. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 栗山君、何ですか。
  44. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 議事進行。
  45. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 発言を許します。
  46. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 昨日、岸首相の資産の内容を資料として当委員会提出されたいという矢嶋君の動議は理事会に預けられたことになっております。いずれ理事会におきましては、しかるべき相談があったことと思いますが、その結果はいかようになりましたか、委員長から御報告を願いたいと思います。
  47. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) お答え申し上げます。  昨日の矢嶋委員の資料要求につきましては、散会後、委員長及び理事打合会を開きまして、ここで協議いたしました結果、委員会としては資料の要求はしないということにこれを決定をいたしました。その際における理事会の空気を委員長から岸総理にお伝えするようにというお話し合いでございましたので、けさ岸総理にお会いして、そのように取り計らいをいたしました次第でございます。  右御了承をお願いいたしたいと思います。
  48. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 理事会の空気によって提出しないようになった、そのようにお聞きをいたしましたが、さようでございますか。理事会の空気というのは……。
  49. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) いや、それは別でございます。ちょっとお聞き下さいませ、もう二度申し上げますから。  昨日の、今、議事進行でお尋ねになりました矢嶋君の資料要求に対しましては、委員長及び理事打合会において協議をした結果、委員会として資料の要求はいたさないということに全会一致で決定をいたしましたので、そこでその際におきます理事会の空気を委員長から岸総理にお伝えするようにということでございましたので、けさそのように取り計らいをいたした、こういうことでございます。
  50. 片岡文重

    ○片岡文重君 委員長
  51. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 片岡君、何ですか。
  52. 片岡文重

    ○片岡文重君 議事進行。ただいまの栗山君の御質問に対する委員長の御答弁は若干、違うとは申し上げませんけれども、不徹底だと思うのです。欠けておるところがあると思います。私の記憶するところでは、岸総理大臣に対するわが党矢嶋委員並びに鈴木委員からの発言になる資料の要求について、そういう内容のものを明確にすることは必要であるということは理事会でも認めたわけです。ただしかし、こういうことを、委員会個人の私財にもわたると思われるような財産目録等を資料として委員会決議をもって要求することは前例もないことであるし、かつその内容が自発的になさるべき事柄であるから、そういう点で委員会決議としてはしない。言葉をかえていえば、むしろ総理の自発的な善処に待つということで、総理の体面をわれわれとしては十分に尊重いたした。はっきり申し上げますならば、多分に思いやりのある措置であったと思うのです。さらに委員長は、委員会における空気並びに理事会における空気を岸総理にお伝えしていただき、総理の自発的な善処を求めてほしい、こういうことであったと思うのです。従って総理の自発的善処の見られない場合には、あとの機会において再びこれは取り上げられるであろうことは、その際も重ねて発言があり、全理事の諸君がこれを了承しておったはずであります。私はかように記憶いたしておりますので、委員長からこれについて御確認をいただきたいと思います。
  53. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) それですから、ただいま申し上げましたように、委員会の資料としては、これは全会一致でもって要求いたさないことに決定をした。その際における理事会の空気は、今申し上げましたように、理事会の空気を総理にお伝えしまして、総理の自発的のお考えに待つわけで、別に理事会としては総理に要求するとか、何とかということをやろうという話ではなかった、こういう意味で、空気をお伝えしてくれるようにという皆さんのお話ですから、総理にけさ会いまして、そのように取り計らいをした、こういうことなのでございます。
  54. 矢嶋三義

  55. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ちょっと矢嶋さん、何ですか。
  56. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの件についてですが、昨日の委員長理事打合会の結果は、私どもの会派の所属の委員には一応内々伝えたわけです。しかし、委員長から、委員長理事打合会の結果というものを報告されるであろうということを期待しておりましたところ、ないものですから、うちの委員諸君からどうしたのだという反問が出たわけです。当然本委員会委員長理事打ち合せの結果というのは報告されなければならぬというので、お尋ねしたわけです。そうしましたところが、確かに委員長のただいまの報告は、片岡委員が指摘するように不徹底だと思うのです。それで片岡委員から、重ねて明確にしてほしいということを要望されているので、一番問題な点は空気を、と言うが、その空気とは何ぞやというのがはっきりしないわけです。総理御自身でそこにいらっしゃるわけなんですが、あなたがどういう空気を伝えたかというのが問題なわけで、一番ポイントは次の点を確認していただかなければならないと思うのです。片岡委員の申されたポイントは、あの委員長理事打合会では、明確にするということが大切であろうということはどなたも認められたわけです。しかし、前例の関係もあって委員会の決議として資料を要求することはいかがだろうかというので、委員会の決議として資料の要求はしないが、こういう問題は総理が自発的に善処して明確にされるべき筋合いのものである。それが委員会の空気であったわけです。これは緑風会の森委員から提案されて、われわれもまとまったわけです。そのときに、森委員の発言の中にも総理の自発的善処の仕方を見て、その結果によってはあらためて委員長理事打合会協議すればいいではないか、きょうのところはそういう決定にしたらどうかという御提案がありまして、われわれも同調いたしまして、そういう結果になっているわけですから、そういう空気だということを何しておかぬというと、委員長の言う空気はぼうっとした空気だということになり、委員諸君から質問がでるわけです。その点はっきり確認をしてもらいたいと思うのです。
  57. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) お答え申し上げますが、理事の方から委員の方にはお伝えになったと思うものですからつい報告をいたしませんでしたが、この空気——きのうも空気だというお話だったものですから一(「委員長ごまかさないで」と呼ぶ者あり)その場の空気ということだったものですから、要するに、その場の空気ということ、疑惑を払拭するようにやはり自主的に総理にお考えを願いたい、こういうような皆さんの希望だったわけですから、皆さん方のあの場におけるいろいろもやもやした空気をよくお話をしまして、それ以上は自主的にお考えを願うという話であったものですから、そういうふうに取り計らったわけなんでございまして、決して別のことを言うたわけでもないのです。どうぞそれで御了承を願います。
  58. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 休憩前に引き続きまして質疑を行います。
  59. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 まず、私は赤城官房長官にちょっとお尋ねをいたしますが、きのう長官は、この委員会で岸首相に対する身辺の批判が行われまして、ただいま委員長報告にございましたように動議の取り扱いが相談をせられましたが、その後に新聞記者会見をおやりになったことがありますかどうか、これを伺いたいと思います。
  60. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 会見いたしました。
  61. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そのときには、ただいま委員長報告されたような内容が理事会で取りきめになりましたことを御承知でありましたか。
  62. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 承知しておりません。
  63. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その新聞記者会見におきまして、新聞の報道するところによると、次のように述べられたと言っております。すなわち「個人生活に立ち入って私的な面までも資料として要求するのはおかしなことだと思う。首相に自発的な善処を求めることにきまったというが、やましいところがないのだから、いやがらせだ——としか思われないやり方に対しては進んで釈明するほどのこともあるまい。」こういう工合に述べられたと思いますが、事実でありますか。
  64. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) きのうの問題がありましたので、記者諸君から尋ねられたときに、国会法には私事に関することは議員は発言を遠慮するように、こういうこともあるから、私事に対し、委員会として資料の要求というのはちょっとおかしいのではないか。それから、岸総理の問題についてはいろいろ論議されておるけれども、その点においてやましいとかおかしな点はないはずだ、別にこれに対して総理としても私としても心配していることはない、こういう意味のことを申したわけでございます。
  65. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私のお尋ねしておるのはその後段の、いやがらせとしか思えないやり方に対しては釈明する必要はない、ごうおっしゃったかどうかということであります。
  66. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) これは、衆議院でも川崎委員から私に質問がありました。いやがらせだとか何とかいうことは申したことはありません。それは、私の発言に対する報道の聞き違いではないかと思います。
  67. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうでありますならば了承いたしますが、少くともわれわれ委員会において熱心に問題を審議し、その結論として正式あるいは非公式は別として、委員会の総意というものが盛られて意志表示をせられたことについて、いやがらせとか何とかいう表現が新聞に出るということは、私は赤城長官のために大へん惜しむものでありまして、今後記者会見における言辞については慎重を期せられたいということを要望いたします。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと関連、冷め官房長官の答えについて。
  69. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) どうですか、栗山君、許しますか。関連質問は、御本人の質疑中にやる場合には、御本人の承諾を受けてやるようになっていますが、関連質問だそうですから、許しますか。
  70. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 よろしいです。
  71. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 昨日、中村委員と岸総理並びに片岡委員とのやりとりは御承知通りですから繰り返しません。私がきわめて冷静に要求した資料というのは二つあったのです。その一つは、一流出版にはないが、二流どころが事実に反することを報道していると、報道陣に対して総理は反省を求めたわけです。と同時に、国会において質問した人に対しても批判をし、反省を求める発言をされたわけです。ですから、私は必ずしも二流の印刷物だけでない、一流の新聞も週刊紙等にも出ている。だから、それを否定するならば、あなたが事実と思われる点と、事実と思われない点の一覧表を作ってほしいというのが一つであった。もう一つの点については申しません。そうして委員長理事打合会では、私ども、与党の理事諸君も知っていると思いますが、きわめて紳士的にして慎重な態度をとって、先ほど委員長報告されたような結論になったわけです。私は昨日の資料の何が、全部私事とは断じて考えません。報道機関の報道に対して、反省を促す内容の発言を総理はされているわけです。で、その内容はあるいはグラマンとか、あるいは賠償とかに関連があるわけです。これはわれわれが、今審議の対象になっている予算の案件と関連があるわけであって、それは総理の私有財産だけをとれば、それは私事かもしれません。しかし、あの全般が私事だとは、私は断じて思わないのです。これを前提にあなたが発言されるから、いやがらせだと新聞記者諸君に印象づけられるような、そういう雰囲気に私はなったのじゃないかと思いますが、その私事の点についてだけは、一応釈明していただきたいと思います。
  72. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 今、お話しのように、新聞その他週刊紙等の記事と違った根拠に対する資料ということであれば、私は私事でないと思います。ただ、私は賠償に対していわれている疑惑とか、あるいはグラマンとかいう問題に対しては、何らその点に疑う理由がないので、そういう資料を出せといっても、これはその資料はないと私は考えます。ですから、問題はあの週刊朝日の記事などにもありましたように、総理の別荘等の問題で財産目録とかそういう問題になりますと、あの記事等においても、土地を買ったときに二百万とかいうような土地価格であったのですが、数千万というふうに書いてありますので、これは間違っておる、こういうふうに思ったのですが、そういうものに関連して総理の財産等の調べを出すというようなことであれば、これは私事にわたるのじゃないか、今、お話しのように、賠償とかグラマン問題とかいうことでなくて、実は私は別荘の問題などに頭を置いたものですから、そういうものについての財産目録あるいは収支計算書というようなことになれば、これは私事でない、そういうことになれば、国会法においても私事にわたることは議院としては遠慮すべきだというような規定もありますので、私事にわたっておかしいじゃないかということを申し上げたので、今の矢嶋委員のグラマンとかそういう問題については、これは私事でないと私も了承いたします。
  73. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 続いて赤城官房長官にお尋ねいたしますが、私は内閣官房からいただきました資料を見て、実は驚いております。内閣官房が使われるいわゆる総理身辺の報償費、交際費の合計を見まするというと、昭和三十年度から昭和三十三年度の四年間にわたりまして、約三・五倍の増額になっております。三十年度は六千二百四十二万五千円、三十一年度は九千七百七十八万六千円、三十二年度は一億四千三百二十八万五千円、三十三年度は二億一千七百四十二万五千円と相なっております。報償費、交際費がこれほどまでに大巾に増額をしなければならぬほどに、内閣官房の仕事というものが具体的にどうふえておりますか。この内容について御説明を願いたいと思います。
  74. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 今、御指摘の、お渡し申し上げました資料は、報償費だけではありません。これは今お話もありましたが、報償費、交際費の集計であります。その内容は報償費、交際費、それから調査室関係の報償費と、三つに分れております。報償費だけをとつてみますると、昭和三十年度には一千六百三十万、昭和三十一年度に四千百三十万、三十二年度に六千百三十万、三十三年度に一億六千百三十万、今度の予算で要求しているのは一億五千三百二十三万で、昨年よりは低いわけであります。そこで交際費でありますが、交際費は内閣を運営していく上に必要な儀礼的及び社交的な目的で使われております。また報償費は、総理として広く内政、外交の円滑な推進をはかることに関して寄与せられるものに報い、さらにそのような寄与を奨励することが必要だと思われるような場合に使用されておるのであります。  それからもう一つ内閣調査室関係の報償費でございます。これは主として内閣の重要施策に関する情報及び調査資料の提供者等に対しまする実費弁償として使用されておるものであります。そこで、報償費があるいは交際費等が増加しているじゃないか。今申し上げましたように、昭和三十年度から見ますると、漸次増加はいたしております。ただ、三十四年度で皆さんに御審議を願っておりまするのは、三十三年度よりは減っておりますけれども、三十年度から比較すると、漸次増しております。それで、報償費の増しておる理由につきましては、最近国際的に日本の地位が向上いたしたといいますか、世界各国から国賓その他の要人が来られる機会が非常にふえてきております。なお、その例などを申し上げれば長くなりますが、そこで総理あるいは総理の特使などが列国の首脳者と会見のために海外へ旅行する機会もありますので、そういうことも非常にひんぱんになっておることは御承知通りであります。これらの各国首脳等との交歓、または接待に要する経費が相当多額になっておりますので、三十二年度でありますか、三十二年度は国会の御了承を得まして、予備費を数回にわたって出していただいた、こういういきさつになっております。これは外交の推進上、あるいは国際関係の融和、儀礼的な問題からどうしても支出しなくてはならぬと、こう考えられる性質の金であります。そういうことで、この報償費がふえてきております。交際費の方はそれほどはふえてはおりませんが、これは先ほど申し上げました儀礼的、社交的な目的に使用されております。
  75. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 伺うところによりますと、岸総理大臣は、各国会のつど、総理大臣として自由民主党の国会議員諸君を首相官邸に御招待をなさっておるようでありまするが、私はごちそうにあずかりたいから申し上げるわけではありませんが、社会党の議員は一回もお招きを受けたことはございません。こういう事実がおありであるかどうか。私が調査したところによりますと、第三十国会三十三年の十一月、第二十九国会三十三年の七月、第二十八国会三十二年の五月、いずれもそれが催されておると伺っておりますが、事実でありますか。
  76. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 総理官邸から総理として国会議員をときどき御招待申し上げております。社会党の皆さんを一回も御招待いたさなかったということでありますが、国連加盟のときでしたか、一回(笑声)社会党の皆さんを御招待——最近においては、申し上げております。(「少い」と呼ぶ者あり)その後社会党の方々の招待はないというふうに記憶しています。これは今に始まった、岸内閣に始まったわけではなくて、吉田内閣から鳩山内閣等におきまして、与党、緑風会、無所属関係などの人をずっと呼んでおったのですから、それをまあ踏襲して、そういう格好にいったわけであります。
  77. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は岸首相にお尋ねをいたします。なぜこういう差別待遇をされるか。(笑声)私どもは国会議員として平等な権利と義務を持っておるはずであります。しかも、あなたがそういう工合に差別待遇をして、自民党の国会議員だけを首相として御招待になるということであれば、これは綱紀紊乱もはなはだしいのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)自由党の総裁として御招待を願うのであるならば党費をもっておやりを願いたいと思うのであります。こういうことでありますから、下これを見習うで、最近いろいろとうわさが飛び、しかも地方公共団体におけるいろいろの問題が起きております。まず、自分の政治的な行動というものについて、私は節をやはり立てていただきたい。これは金額的におそらく軽少なことでありましょうけれども、ものの考え方、運び方というものについては重大なる反省を促さなければならぬと私は思います。鳩山さんのときには、私もしばしば呼ばれたことがございます。そういう意味において、ほんとうならばこういうことをおやめになった方がよろしい。(「そうだ」と呼ぶ者あり)やめるべきであります。こういう儀礼的なことは国会に必要ございません。従って御所見を伺いたいと存ずるのであります。
  78. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、私もよく先例等を調べて一々何したわけではございませんけれども、従来の例に従って取り行なったところでありますが、なお将来の問題については御趣旨もございますから、十分一つ検討をいたしましていきたいと思います。
  79. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 続いて岸総理に対する御所信のほどを伺いたいと思います。  今国会を通じて行われました岸首相に対する批判に対しましては、首相みずから両院を通じて、あるいはときには昨日のごとく色をなして身の潔白を訴えられたのであります。しかしながら、依然として岸首相の身辺は日本晴れとはなっておりません。お口がうまい。御不潔で、御老獪で、御信頼申し上げることができない。(笑声)これが岸首相に対する今日ただいまの国民感情であります。岸首相のお気持はわからぬではありませんが、岸首相御自身の名誉のためにも、またさらに政権を担当する御意欲をお持ちでありますならば、この際、最小限に次の二つの点については、みずからの責任において処置せらるべきであると思うのであります。  第一は、あなたの党の辻代議士の著書「これでよいのか」これであります。もう黙ってはおられぬ、書名はこうで、金権政治、汚職政治の内幕をさらけだした問題の全国民必読の書というやつ。第二は、川崎代議士の、二月二十六日衆議院予算委員会第一分科会において行われました批判であります。この二つの批判に対して、岸首相みずからその責任をはっきりと解決する、その責任において解決をせらるべきであると思うのであります。双方ともに自由民主党の有名な国会議員でございます。しかも、ぜひごらんになる必要があると認めますが、その批判たるや実に痛烈をきわめております。いずれも岸首相の言われる世間の浮説ではございません。一方は、権威ある国会の発言として永久に速記録として保存されるものであります。他方は、責任ある執筆として、今日公刊されまして、書店を通じて盛んに国民の中へ侵透しつつあるのであります。もし、これらを岸首相が根拠なき誹謗だとせられるならば、御自身及び自民党の名誉のためにも、断固たる態度をもって除名等の責任ある処置が必要であろうかと思うのであります。私の属する社会党におきましては、もしわが党の党員が根拠なき誹謗を党の責任ある立場の者に加えたといたしまするならば、本人を除名等の処分に付しまして、必ず党の名誉を守るだろうと思うのであります。もし、岸首相が何らの処分をすることなく、黙認せられるということでありますならば、また除名されないということでありまするならば、結果は岸首相の言明いかんにかかわらず、根拠ある批判として認められたということになるのでありまするから、日本の政治を守るためにも、当然その責任をとられなければならぬと思うのであります。岸首相はいかなる方途を講ぜられようとするか、その御所信を伺いたいのであります。
  80. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 党員の間におけるところの言動にして、党の党員としての名誉を傷つけるとか、あるいは党員としてあるまじき行動であるというものに対しましては、わが党におきましては党紀委員会、その他の機関においてそれぞれ調査して、これに処置することになっております。私としては、この際、両君の問題について具体的なことを申し上げることは差し控えますが、私どもとしましては、やはり党の責任ある機関において本件の問題の処理につきまして調査をいたしたいと思っております。
  81. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 あなたは非常に御都合のいい人でありまして、都合のいいときには、自由党の意見を代表して堂々と独断専行せられる。工合の悪いときには、総裁のみのに隠れて党員に責任を転嫁せられる。これがまことにわれわれといたしまして遺憾に思う次第であります。ただいまのごとき問題は、党の有力なる機関の決定いかんは別といたしまして、総裁自身としていかなる決意をお持ちであるか、これを伺いたいと思うのであります。
  82. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、御質問の中にありましたように、党員を除名するとか、あるいは党員に対して制裁を加えるということになりますると、これは党紀及び党の機関にはからなければならぬことは言うを待たないことでございます。私自身は私自身として、事実にないことに対してあくまでも私は確信を持って自分の清廉と、そうして事実の間違いに対しては、その所信をあくまでも明らかにし、これを徹底するようにするつもりでおります。
  83. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 次に、私は中共との親善関係につきまして、根本的な問題で欠けている点があると思いますので、岸首相並びに藤山外相にお尋ねをいたしたいと思います。  あなた方の政治に対する批判が、あなた方の言葉だけでは国民の頭から消え去ることがないと同じ段階にありますると同様に、中国を敵視しないというあなた方の言葉だげでは中国を理解させ得ない段階にただいまあるのであります。要は、岸首相の心の中に何か欠けているものがありはしないかと、私は思うのであります。満州事変、支那事変から大東亜戦争を通じまして、大よそ十五年間の長い間、六億の中国の国民に加えました残虐の数々というものは、とうてい筆舌では尽せないものがございましょう。岸首相みずからも間接的にこれに関係をしておられるごと周知の通りであります。これを心より認識せられるならば、こちらもこちらだとならば、お前もお前だというような態度には出られないはずであります。今や中国政策を導き出しまするためには、心よりおわびをする、中国の六億の国民におわびをする、そういう気持から出発しなければならぬと思うのであります。日中の国交回復への具体的な道は、さような気持がありますれば、必ず開けて参ると私は信ずるのであります。もちろん、アメリカ等にも若干の気がねをなさるでありましょうが、アメリカは、御承知のように、キリスト教徒の国であります。そういう信念を吐露せられるならば、必ず理解を深めることができると、こう私は確信をいたします。戦時中、日本中国にとった行為につきまして、おわびをするお気持がありますかどうか。この気持をスタートにして、中国関係の友好善隣への道を開くお気持があるかどうか、この際伺いたいと思うのであります。
  84. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、一昨年、東南アジア諸国を歴訪いたしました際に、戦争中にこれらの民族に与えた迷惑なり、いろいろな心にもないしわざというものに対しては、非常な謙虚な気持で、これらの民族に日本国民を代表して、私の謙虚な気持を述べて参りました。それは、今日中国大陸へ行くことのできない状況にある私としては、同様なことが中国に対しては現実にはとれませんけれども気持としましては、全然同様であります。かるがゆえに、私どもは、一面においてこれらの国々との友好を進め、そうしてその繁栄なりあるいは回復に対して多少でも寄与できる意味において、経済交流やその他の交流をしていきたいという気持を、ほんとうに謙虚な気持で持っておるわけであります。今、栗山委員のお話しになるような気持は、私だけではなしに、日本国民が同時に持っておるはずであり、また、首相としては、それを代表して、適当な方法においてそれを表明するということも、これもふさわしいことであり、現に私は東南アジアにおいてそれを身をもって実行して参っております。
  85. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 前段はそれでよろしいわけでありますが、後段の答弁がいけないのであります。要するに、道徳教育の本山でありますあなたに道徳教育をいたしますことは、大へん失礼であると思うのでありますが、そういうお気持であられるならば、外交は外交、経済は経済、こういうような使い分けをなさらないで、一体的に、いかにしたら一刻も早く六億のあの大きな犠牲を与えましたところの中国の国民と手を握ることができるのか、こういうことについて具体的な構想をお披瀝になり、それを行動に移される、そういう御決意がなければならぬと私は思うのであります。この点は、重ねて藤山外相の御所信を伺っておきたいと思います。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第二次世界大戦に当りまして、日本各国に対して、国民に対して迷惑をかけましたことに対して、衷心から遺憾の気持を持っておりますことは、総理と同じであります。従いまして、今後ともわれわれは、それらの国民に対しましてできるだけ誠心誠意をもってやっていきますことももちろんのことでありまして、そういう精神に徹していく気持において変りはないと思います。  ただ、いろいろな国情の相違もございます。従って、すぐそのこと自体が国との関係においてどう具現するかというようなことは、一つの問題があろうかと思いますが、各国の民衆に対して与えた損害に対しては、心からわれわれは遺憾の意を表せざるを得ないのであります。
  87. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 次に、若干数字的なことにわたりまして恐縮でありますが、大蔵大臣にお尋ねいたします。日本銀行の資産勘定にありまするところの金地金の簿価につきまして、御説明を賜わりたいと思います。  昭和十二年に、当時の政府は金地金の評価がえをいたました。たしか一円につきまして二百九十ミリグラムの換算をもって評価がえをいたしましたが、その後、政府の発表せられました資料をずっと拝見いたしますと、今日までの間に年々おびただしい変化を生じております。終戦後はあまり変っておりませんが、変化をいたしております。従いまして、これについての詳細なる御説明を賜わりたいと思うのであります。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 日銀の保有金地金の問題並びに評価の基準についてのお話を、一通りしてみたいと思います。  昭和十二年末——今のお話は十二年末というように伺ったのですが、十二年末における日銀の保有の金は、当時二百三十二トンあったのでございます。この年に、金準備評価法による再評価後の金額になりますが、これは約八億百万円でございました。昭和十三年の下期に、外国為替基金の設置に伴いまして、これに約八十七トン、金額において三億円を移管をいたしました。これを外貨にかえましたために、十三年末に保有の金は約百四十五トン、五億円となったのでございます。その後、昭和十四年から戦時中数次にわたりまして変動があったのであります。金資金特別会計との間に売買が行われた。これがその変動でございます。それは省略さしていただきますが、終戦時におきましては、結局、昭和十三年末とほぼ同額の約五億円の金地金を持っていたのであります。  戦後、昭和二十七年国際通貨基金加入に伴いまして、その払い込みに充てるために約十五トン、五千三百万円を国に売却し、また、昨年の十二月及び本年の一月におきまして合計五千万ドル相当の金、約四十四トン余でございますが、これを米国において購入をいたしました。以上の結果、現在は日銀の帳簿上金地金勘定で計上しておるものは約百二十九トン、金額において約四億四千七百万円となっております。これ以外に、海外寄託金地金勘定で経理しておるものが約四十四トンございます。金額にしてこれは約百七十九億円になるわけであります。  そこで、この金地金勘定の保有分、これは昭和十二年の金準備評価法による評価の方法では、二百九十ミリグラムが一円、一グラムが三円四十四銭八厘という割合で現在も評価されております。で、ただいま申し上げました海外寄託金地金勘定分のこの簿価は、その性格にかんがみまして、米国における買入価格を円に換算したものでございます。すなわち、一グラム四百五円で評価をいたしております。
  89. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、この間五千万ドル買い上げられた分は別といたしまして、四億四千七百万円の地金の分、現品は百二十九トンということでございますか。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) さようでございます。
  91. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私どもしばしば、まあ数年にわたって、接収貴金属等の処理に関する法律案で説明を伺っておりますが、その説明によりますというと、終戦直後に占領軍が日本のあらゆる金を接収いたしました。地金を接収いたしました。その統計表がここにございます。これは政府からいただいた統計表でございますが、それによると、日本銀行の所有する金は七十五トンになっております。七十五トン。しかも、そのときの金額は、五百五億一百万円でございます。従いまして、金のその後の移動というのは、二十七年にIMFへ出資をいたしました以外に移動は行われていないのでありまするから、数字的に約四十五トンばかり現品が合わないということになりまするが、これはどういうことでありますか。
  92. 石田正

    政府委員(石田正君) 日本銀行が金の勘定として持っておりまするのは百二十九トンでございますが、そのうち日本銀行が現物として接収せられました数字は、先ほどお話がございました接収貴金属の中の数字として申し上げておる分でございます。そのほかに、大体約九トンばかり、これは金資金特別会計の方から、精製がまだ済んでおりません間におきまして、一時、金の必要がありまするので、その未精製の金を日本銀行に売りまして、そうして日本銀行の金と入れかえをしたところの分が九トンあるわけでございます。なお、百二十九トンと今の九トンばかりのものを入れましての差額が四十四トンばかりございまするが、これは戦時中におきまして、金資金特別会計との間、あるいは正金銀行との関係におきまして、金地金の操作がございましたので、その操作がまだ結了いたしておりません。その関係のものは、従って、日本銀行の帳簿には四十四トンになっておるということに相なっております。その点が違っておるわけでございます。
  93. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、四十四トン相当分というものは現品はない、そして日本銀行の資産勘定には帳簿上載っている。要するに、から債権であるということでありますか。
  94. 石田正

    政府委員(石田正君) 今の四十四トンの分につきましては、二口あるわけでございます。一口は、これは戦時中におきまして、中華民国政府の綿糸布の買付を援助するために金を現送いたしました場合におきまして、当時、金資金特別会計に保有現金がございませんでしたので、便宜、日本銀行の持っている金を正金銀行に預けまして、その預かり書は金預金証書という形になっております。これは、正金銀行が、金資金特別会計に金がたまりますれば、それを買って返すということになっておる分が一口あるのでございます。もう一つは、昭和十九年、二十年中におきまして、政府が、タイ国及び中国へ金の現送の必要が生じました場合に、日本銀行から金資金特別会計に売ったものでございまして、それも同会計が余裕ができ次第、日本に売り戻す形になっております。これがどういうふうな処置になりますかということは、金資金特別会計の金塊も、御承知のように、接収されておるわけでございまして……。
  95. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、そういうことを聞いているんじゃないんです。
  96. 石田正

    政府委員(石田正君) そういうことの関係に相なっておるわけでございます。
  97. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その四十四トンは、要するに現品はない。日銀の帳簿においては債権として載っておるだけで、から債権である。あるのか、ないのか、これを明白にしていただきたいということを申しているんです。
  98. 石田正

    政府委員(石田正君) 金地金証書あるいは日本政府からの買い戻し約款というものを証書にいたして取っておるわけでございまして、それに見合うところの現金は日本銀行にはございません。
  99. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますると、今証券を持っておるとおっしゃいましたが、その証券は金として日銀へ戻ってくる可能性のあるのでございますか。
  100. 石田正

    政府委員(石田正君) その点を先ほどちょっと申し上げかかったのでございまするが、これはいずれも金資金特別会計から正金銀行を通し、あるいは直接金資金特別会計と日本銀行との間の約束になっておるわけでございますので、金資金特別会計の所有金が接収されておるものもございますし、現に持っておるものもございますが、それらの関連におきまして、どう処置するかということが今後決定されるというように相なっておる次第でございます。
  101. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今お聞き及びの通りであります。四十四トンという巨額な金が、日銀の帳簿には、から債権として載っております。これに対するところの処置について、これから大蔵大臣に伺いたいと思います。  日本銀行法第一条によりますと、日銀は、国家政策に即し、通貨の調節、金融の調整及び信用制度の保持育成に任ずるをもって目的といたしております。従って、日銀がこのように金準備がからでありながら、金地金の四億四千七百五十八万円といたしましてバランスシートを公表しておるということは、金の準備量があるかのごとく装っておるわけでありまして、第一条に違反した行為を行なっておると考えられますが、いかがでありますか。
  102. 石田正

    政府委員(石田正君) 委員長
  103. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大臣、大臣ですよ。こんな重要なこと、だめですよ。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。別に違反いたしておりません。
  105. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その理由を問います。
  106. 石田正

    政府委員(石田正君) 委員長
  107. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 君に聞いているのじゃないですよ。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、ただいま金本位制をとっておるわけではございません。従いまして、この日銀法の読み方によるわけでございまして、ただいま指摘いたしておりますように、四十四トンというのは、なるほど金塊そのものではございませんが、金塊にかえ得るようなはっきりした証券を持っておるということでございまして、別に差しつかえないと、かように考えます。
  109. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますると、私は伺いますが、ただいまの証券なるものは、戦時中のことでありまするから、あるいは責任をさように追及申し上げるわけにはいかないかもしれません。しかし、日銀が、戦時中と違っておりまするから、正常な、当時の考えのようにこれを回収することができない状態にありますので、なぜ今日までこういう工合にして問題を放置しておられたか、もっと早く国民にこれは明白に発表せられるべきものではなかったのか、なぜこれを怠られたか、これをまず伺いたいと思います。
  110. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いろいろ過去のものにつきまして、栗山さんの御指摘になりますように、もっと明確にしたらということが、一つの意見としてはあると思います。しかしながら、この金の問題なり、また戦時中の債権債務の処理なり、なかなか容易に、簡単な期間のうちには、十分な処置がついておらないのであります。そういう意味でおくれておることは、御指摘のように、いろいろ誤解を受けておるかと思います。これは十分処理可能だという考え方でおります。
  111. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ここで一番問題は、日銀に対して、政府の方の債務でありますが、この債務を日銀に対して責任をとるということになれば、やはり政府の金で行わなければなりません。従って、政府はここまで重大な問題があることを隠しておきまして、そうしてここで初めて、問題になったからというので、しかるべき処置を今後されると思いますが、一体どういう処置をされようとしておるか。日銀の内部だけの操作でこれを何とか始末させようとなさるのか、あるいはまた、政府の方の財政資金によってこれをなさろうとするのか、この点が明白でありませんので、お聞きをいたしたいと思うのであります。  一番問題は、金地金で日銀へお返しになる予定であるのか。私どもの伺ったところによるというと、日本銀行は金では必要ない、金地金でもらいたい、こういうことであるようでありますが、金地金でお返しになる予定であるか。たまたま私は憶測をいたすのでありますが、過日、米国で買い付けられました五千万ドルの金の重量とこの重量とが遺憾ながら一致するのであります。四十五トンに対してこれは四十四トン、一致するのであります。従いまして、そういう憶測をせざるを得ないのであります。国民の犠牲において日銀へ地金をお返しになるのか、その点を伺いたいと思います。
  112. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まだ処理の方法がはっきり立っておりませんから、どうするかということをこの席で申し上げるわけには参りません。ただ、たまたま数量がよく似ておるから米国で買ったもので穴埋めをするのではないかという疑いがあるようでございますが、これは別でございます。これははっきり申しまして、米国で買い取ったもので穴埋めするつもりはございません。私ども、今後の処理といたしまして一応考えられますものに接収貴金属の処理、これがどういう結果になりますか、ただいま法案の御審議をいただいておりますが、この処理を明確にすることによりましても相当分が片づき得るものではないかと、かように考えております。
  113. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 接収貴金属の法案が幾ら解決をいたしましても、貴金属特別会計には十五トンしかありませんよ。造幣局の特別会計には八百二十一キログラムしかないのです。四十四トンにはとうてい及びません。従って、先ほど申し上げましたように、金の地金で日銀に今度お返しになるつもりであるのか、あるいはまた日銀が今日持っておりまするあの金の地金を再評価をして、そしてこの分だけ円でお返しになるつもりであるか、その点を明瞭に伺っておきたいと思うのであります。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたように、まだ具体的な案はございません。
  115. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 案がないということでありまするから、これ以上お尋ねいたしませんが、しからば、から債権を整理される御用意はありますかどうか、今日のまま依然としてから債権として残されるつもりであるか、もし整理されるというならば、いつごろこれをおやりになるか、その整理案をわれわれにお聞かせを願えるか、この点を伺いたいと思います。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま御指摘になりましたように、事態が明白——先ほどお答えいたしましたように、接収貴金属の処理もそのうちの一つであることを指摘いたしまして、私ども具体的な案を十分考えて参りたいと、かように考えております。ただ、具体的な案がただいまございませんし、また、時期もただいますぐ申し上げるわけにはいきません。
  117. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 接収貴金属の法案が長い間難航いたしておりますが、私も大蔵委員としてしばしば説明を聞きました。しかし、今、大蔵大臣が指摘されたような説明を一回も聞いたことはありません。これはどういうわけでありますか。
  118. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 栗山委員には接収貴金属で大へん御迷惑をかけており、関係者といたしまして御答弁いたします。ただいま大蔵大臣のお述べになりました御趣旨は、御承知のように、政府は金資金特別会計を管理いたしておりますが、この分も接収の中に一部入っておることは先ほどお述べの通りであります。もとより、これをもって全部を解決するという意味に大臣もお答えになったわけではありませんが、これをも含めまして、私どもの方の、この政府で買い上げました金等も合せまして、これはまた一つの解決の方法かと考えておる次第であります。接収貴金属の説明のとき触れなかったと申しまする点は、もっぱら法案を通していただくことにきゅうきゅうといたしまして、そのことにまで至らなかった次第でございます。あしからず御了承願います。
  119. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 正示さんも人のいい人だから、これ以上私言いませんが、とにかく事態がここまで明らかになってきたから、今のような答弁をされるということは、私は公人としてはけしからぬと思いますよ。やはり法案の説明をされるならば、正直にすべてを洗いざらいにして説明さるべきで、堂々と政府の印刷物を出しておいて日銀勘定を発表しておきながら——ちょっと、私はなぜこれを思いついたかというと、昭和三十四年度の国の予算を見ますと、ここに遺憾ながら、金額の方でなくて金地金の重量が書いてあるのですよ。これを突き合せてみて、これはおかしいというのでわかってきたので、国会議員にこんな苦労をさせながら、日銀のから債権をわからないような説明をされるということは私はけしからぬと思う。この点はよく理解をされて、一刻も早く国民の損害にならなないように整理をしてもらいたいと思います。この点は強く要望しておきます。  次に、話がちょっと前後いたしますが、過日わが党の羽生委員の質問に答えまして首相並びに藤山外相は、米国の基地が攻撃されたとき、日本が共同防衛の立場に立つことは自衛の限界を越えるのではないかという質問に対しまして、日本の国土が攻撃されるのだから自衛である、日本を守るための米基地が攻撃を受けるのは日本への攻撃である、こういう工合に述べられたのであります。私はこの言葉はあまりにも皮相的な見方ではないかと思います。局地戦的な考え方ではないかと思うのであります。近代戦におきましては、基地を粉砕するということが常識であることはもう疑う余地がございません。もし不幸にして世界の二大陣営の対立が悪化をいたしましたときには、自動的に、日本及び日本人意思関係なく、日本米軍基地は攻撃を受けるでありましょう。そういうおそれはないのかどうか、この点をお聞きをいたしたいと思うのであります。
  120. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今お尋ねのあれは、米ソが戦争をしたような場合というような前提があった、米ソでない場合でもさようかと思いますが、日本にいる米軍というものは、日本が他国から侵略を受けるのを防ぐのが第一の目的であって、そのために基地を提供しておるのだと思います。従って、日本に敵対行動をしない国が日本基地を爆撃し、あるいは日本を守るためにおる米軍を攻撃しようとは考えられないわけなんです。かりに攻撃をするとすれば、やはり何らかの形において日本もその一つだとういふうな想定で来るのではないかと思います。そういう意味ではやはり侵略行動があったというふうに見ざるを得ないじゃないかと、こう考えております。
  121. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この前の朝鮮戦争のときのように、米軍日本にある基地から朝鮮戦争への飛行機がどんどん飛び出しました。あるいは地上兵力の基地にも日本はなっておりました。これを世界の二大陣営の衝突のときを考えてみれば、日本には全然関係なしに、日本相手国基地があるということで他の方から攻撃を受けることは当然ではありませんか。今あなたが御説明になったことは、この前の御説明と同じでありますが、それでは足りないのではないかということを私はお尋ねを申し上げておるのであります。
  122. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、日本基地から朝鮮に行くというような事態に対しては、われわれは今回の安保条約の改定に当りまして、協議事項としてそれを条文に載せて参りたいと、こう思っております。従って、われわれとしては、それが日本を守る以外に特に使われるというような場合には、ノーと言える場合があるわけがありまして、そういうふうに考え安保条約は進めて参りたいと、こう思っております。
  123. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この問題は議論をいたしますれば時間が長くなるからあまりいたしませんが、協議事項の問題はもうすでに論議済みであります。あなたは今そういうことをやわらかくおっしゃいますが、もし日本側米軍基地が攻撃を受けた場合に、日本は自動的に参戦をするということがありますならば、世界規模の紛争が起きたというときには、米軍基地の攻撃から自動的に日本の全国土は戦火のちまたにさらされることになるのであります。私は、こういうおそるべき事態が起きるようなそういう条約の締結というものは、絶対に避けていただかなければならぬ、こう考えるのであります。私はもう一度あなたにはっきりと例をもって申し上げます。大東亜戦争の終りに、五百万の地上軍が日本におり、そうしてあの飛行機を用意して、一億玉砕の決意を持っておった当時の軍部の指導下において、当時の考えでいえば、屈辱的な無条件降伏をせざるを得なかった最大の理由の一つはどこにあったか。これは原爆の攻撃がおそろしくなったことが一つと、もう一つは、戦争状態のまま敵兵を迎えたときに、日本の六千万の当時の国民が、少なからざる犠牲を負わなければならぬということをおそれたことが一つ、この二つが大きな柱であったと思います。これが国民感情であったと思います。従って、こういう国民感情は経験済みでありますから、これを忘れて今あなた方が日本の防衛に対する政策をお進めになるということには重大なあやまちがあります。従って、こういう気持を絶対にお忘れなく、堅持してやられるかどうか。今あなたが最後におっしゃったことが真実であるかどうか、この点を明白にしておきたいと思います。
  124. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本が直接侵略を受けない場合に、できるだけ極東の戦火に巻き込まれないということ自体は、われわれはできると考えておるのであります。従って、そういう事態に対しては、協議事項を置いておこうという考え方で進んでおるわけでありまして、われわれとしては、できるだけ戦火に巻き込まれないことが必要だと、その点はそう考えます。
  125. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して……。
  126. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 羽生さん、何ですか。
  127. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。
  128. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 発言を許します。
  129. 羽生三七

    ○羽生三七君 ただいまの栗山さんの御質問は、先日の私の質問に関連していることでありますが、先日もまた今も外務大臣の御答弁を承わっておりますと、こういうことであります。つまり、日本を守るための米軍基地に対して攻撃が加えられたときには、これは日本に対する攻撃とみなす。私は先日も申し上げたように、直接攻撃が日本にあったときには、これは今の説は成り立つと思うのです。私たちの基本的な立場と政府の立場は違いますが、政府の立場に立ってみても、日本に直接攻撃してこない場合、安保条約規定の中にある、極東における平和と安全の寄与のために、日本とかかわりのない第三国とアメリカとの戦闘の場合に、日本基地からアメリカ軍が飛び立っていく、それで攻撃を受ける、これは全然問題が違うのです。だから、その場合には事前協議でなしに、明白に、協議をしてイエスかノーかをきめるということでなしに、明白にこれを規制すべきであるというのが私の先日の論議です。これはあとに必ず問題を残します。これはもっと明白にしていただきたいと思います。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもは、事前協議でそれをやって参りたいと、こう思っております。
  131. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 次に、大蔵大臣に財政投融資の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。大蔵大臣の財政演説を伺いますというと、昭和三十四年度の経済の見通しはきわめて楽観的であります。過熱論を否定をされまして、わが国の経済の成長を楽しむがごとくに謳歌をせられておるのであります。従って、私はそういう工合に順調に事態が推移をいたしますることを日本国民としてこいねがいます。しかしながら、もし万一に不測の事態が起きましたとき、昭和三十二年度のような傾向——池田大蔵大臣は当時、今あなたがおっしゃったのと同じようなことをおっしゃった。そうしてああいう事態が起きましたが、そういう不測の事態が起きた場合には、一体これにどう対処していかれるか、これを伺いたいと思うのであります。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 不測の事態が起きるとは私どもはただいま考えておりませんが、もちろん、不測の事態が起きれば、不測の事態でございますから、これに対する対策をその情勢に応じて考えていくのは、これは当然でございます。
  133. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 政府の予算編成方針によりますというと、情勢の推移を見てと、こういう表現がございます。ですから、情勢の推移という言葉の中には、順調にいく場合といかない場合も私は含んでおると思います。いかない場合には、財政と金融の一体的運用をする、こういうことが書かれておりますが、この意味は一体どういう意味でありますか。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今回の予算編成に当りまして、一応予測できる事柄は、相当の規模の増大でございますから、人によりますと、これを積極予算という表現をされる方もございますが、私どもは積極予算とは思わないし、経済の成長に順応する予算だ、こういう表現をいたしております。表現はいかようにあろうとも、とにかく一般会計においても、財政投融資においても、相当の増額を見ております。従いまして、この予算の実行なり財政投融資の実行をやって参りますと、あるいは一部で心配しておるように、過熱論争がもうすでに展開されております。あるいはその過熱の状況を招来するかもわかりません。ことに通貨の交換性等を回復して、いろいろ為替等についての先物等についていろいろ心配などいたしますと、こういう変動が当然出てくるだろうと思います。そういうような場合におきましては、私どもが絶えず申しておるように、この持論でありますように、そういう場合には適当な引き締めをするということであります。あるいはまた経済の伸び方が、私どもが予想するように、順調にこれが伸びていかないというような場合でありますと、これまた財政投融資の使い方等においても。これがささえの役をするようにやはり使っていきたい、こういう場合におきましては、この予算なり財政投融資は、もう限度といいますか、ちゃんと限度があるものでございますから、そういう意味において金融情勢とよく勘案いたしまして、民間資金の協力なりも十分得ていく、または民間融資金の動き方自身につきましても、ときにブレーキもかけていかなければならぬ、こういうことを申しておるのでございます。
  135. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今の言葉の中にもありましたように、財政並びに経済界の動き等について調節を必要とするときには、投融資でもって相当なかげんをする、こういうことをおっしゃったのであります。これは今に始まったことでないのでありまして、昭和二十八年にもおやりになった、昭和三十二年にもおやりになったのであります。問題は、私はおやりになること自体を云々申し上げておるわけではありませんが、財政投融資の資金源の性格ということを、今少し思いを新たにすることが必要ではないかと思うのであります。それはどういうことかと申しますというと、あの財政投融資のただいま原資としているものは、資金運用部の資金が一兆二千九百八十億円でございますがその中は、申し上げるまでもなく、郵便貯金、簡易生命保険、郵便年金、厚生年金、こういうようなもの、それから失業保険も入っております。こういうものが入っております。まさに零細な国民の資本蓄積の集積であります。従って、これを景気調節の有力なる一方の力にたよっておられるわけであります。従って、最も確実な管理保全をせられるという意味においては、私はいささかも異議はございませんが、管理保全をするという意味なるがゆえに、この巨額な資金の運用につきまして、私は国民の期待に沿うようにせられることが必要ではないか。一部の巨大な産業だけにこれを流して、そうして一般大衆の利益については、いささかも関与しない、こういうようなことがあっては断じてならぬと思うであります。こういう私の思想に対して、大蔵大臣はいかがお考えでございましょうか。
  136. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの御意見にはしごく賛成でございます。
  137. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういうことでありますれば。ただいま私ども予算を審議いたしておりますが、これは歳入歳出予算を審議いたしておるのでありまして、財政投融資についてはただワクを示されて、そうしてその運用管理についての議決をするだけで、内容の運用についてはいささかの発言力も持ちません。完全に政府に全部の運用を一任しておるわけであります。こういう姿を改めて、財政投融資の運用についても国会における議決を必要とする、こういうような新しい道を開く御用意をお持ちになっておりませんか。これを伺いたいと思うのであります。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 結論から申しますと、遺憾ながらそういう結論を持っておりません。しかしその理由といたしますところは、もうすでに御承知のように、予算の審議に当りまして、財政投融資計画は、これは参考資料として出しておりますが、この内容をなします大部分のものは、それぞれの予算で御審議いただいておるように実は考えておるのでございます。財政投融資計画のうちには開銀その他機関、いわゆる予算に計上されない民間機関もございますから、そういう部分は、これは不適当だと考えておりますので、いわゆる今日まできめられておりますその特別会計を主体にしての御審議、これが大部分該当するように思います。問題はただいま御指摘になります運用の面も国会の議決をというお話のように思いますが、これは資金運用審議会の方で、先ほど冒頭に御指摘になりましたように、この資金の運用が国民大衆にも十分利用されるように、もっと具体的に申しますならば、中小企業であるとかあるいは農村であるとか、あるいは福祉事業等への還元であるとか、そういう方面へも大いに使われるように、この審議会を通じて十分それだけの働きをさすようにいたしたいと思うのであります。この点はすでに三十年に御審議いただき、国会の付帯決議も得ておりますので、そういう意味で民間の学識経験者の数もふやして、御指摘になりますような線で十分効果を上げるようにただいま運用しておるつもりでございます。
  139. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 審議会の運用によってあやまちなきを期すと、こういう工合におっしゃったのでありますが、私は、今度の財政投資の中で、今大蔵大臣に御賛成をいただいたような意味でこれを分析いたしますときに、非常な不満を持っております。それは何かと申しますと、明年度は非常に金融が緩慢になる、相当な膨張予算で緩慢になる、こういうことを述べておいでになられます。その反面財政投融資の総額は五千億円を越えた大へんな膨張であります。これは一千億以上の増でありますが、従ってなぜこれだけ財政投融資のワクをおふやしになったか。市場の金融がそれほど急迫しない……過熱はしないのだ、設備投資もそんなに大きくはならないのだ、こういう前提に立って物事をお進めになっておるときに、なぜこんなにおふやしになるのか、ふやす余裕があるならば、たとえの一つとして失業保険について申しますならば、給付期間を延長してもらいたい、給付率の引き上げをせめられたい、これが大衆の声であります。この声に応じてなぜその実現をはかられなかったか。または厚生年金につきましては、三十四年の三月末には二千九百六億と予想なのでありますが、基本年金給付額現行二千円を引き上げることを退け、従って保険料率の引き上げは四分の三十を三十五にせられた。また標準報酬を引き上げまして、最低限度一万八百円を三万六千円に引き上げられました。その結果月収三万六千円の所得者には保険料が三倍になるということになっております。こういう工合に、これほど零細な国民の資本蓄積の集積でありまするから、それを大衆に還元するという意味において、それほど巨額の金が要らぬということであるならば、そういうような料率の引き下げであるとか、こういうことに改善をいたすべきではないか。その要求をごとごとく退けて、そうして審議会の運営にすべて委ねられるということは、いま少し大蔵大臣としてその施策において反省し、善処せられる点があるべきではないかと思いますが、いかがでありますか。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 財政投融資の資金ワクについて、これは皆様方から御審議をいただいておりますので、その資金ワクが予算成立でまあ最終的な決定を見ることかと思います。先ほど来運用の点について、運用審議会ではこれは不十分だと、国会でさらに可決するというか、議決するような方法はどうかという御提案だったと思いますが、それは私結論として反対をいたしたのであります。それは一つには、いわゆる運用というその言葉自身でも意味しておりますように、これは時期的の問題も多分にあるのでございますから、ただその投資の対象の項目ばかりにあらずして、ときに運用の面からも必要な場合がございますし、従いまして、国会というような、時期を限られたものに限定されることは、その性格から見ましても不適当だと実は考えておるわけであります。  そこで、今回のように多額の財政投融資資金を擁していながら、どうして各種の社会保険についての給付内容などを引き上げないのか、こういう御意見でございますが、財政投融資の計画そのものは先ほど申しますように、特に国として資金を確保したいと思います産業部面、あるいは農林であるとか漁業であるとか中小企業であるとか、あるいは重要産業であるとか、そういうものについての資金の確保を特に強く要望いたしたその観点に立って、その資金計画は立てておるのであります。鉄道にしても電信電話にいたしましても、こういう点では御理解がいただけて、なるほど民間には資金はだぶついているから、民間にまかせればいいという御議論もあろうかと思いますが、これは金利その他の運用の面から申しまして、必要な事業面に対しては、国自身が積極的にその資金を確保するという考え方が望ましいと思います。もちろんこれだけで十分だとは申しませんが、やはり基幹をなすものとしては、財政投融資計画はそういう意味を持つものでございます。そこで一面社会保障の制度をもっと推進しろ、さらに給付内容を進めていけ、充実しろと、こういう御意見を伺ったのでございます。社会保険について、まあ今回御審議をいただいておりますのは、給付内容にまで触れておらない。この意味においていかにも不満足だ、こういうことのように伺うのでございますが、この給付内容を拡大いたします場合においては、これはもう当然その保険の何といいますか、まあ経理の実態に触れて、十分正確なデータに基いてその保険の給付をどこまで拡大し得るか、あるいはまた料率はこれで十分かということを考えていかなければならぬと思うのであります。そういう基本的な問題は、もちろん厚生省においても種々研究され、労働省においてもいろいろ研究は続けておることだと思います。今回は、今日までの給付そのものの内容で見まして、各社会保険間においていかにも不均衡がある。ある保険については国の補助が非常に高くて、そのため——まあそのためとは申しませんが、積立金も順次ふえてきておる。ある保険においては国の給付もあるが、なおかつ経理内容から見て不十分のように思う。だから、そういうものをまあさしあたっては各種保険間の国の負担の均衡を得せしめ、しかも現在の給付を維持していくのに適当な積立金というような観点から整理するというような実は処置をとったのであります。財政投融資の計画の際において、社会保険のあり方等についての考慮ももちろんいたさなければならないことでございますが、その方は、いわゆる社会保障制度の全般的な推進としての予算関係において、主としてその方についての目を光らしております。ただ私どもは、財政投融資の面で、予算の面だけで片づかない、たとえば中小企業に対する金融であるとか、あるいは住宅であるとか、こういうようなものについては、財政投融資においても見ておりますが、その骨子はどこまでも予算を骨子にして、これを計上しておるということでございます。御指摘になりましたような点について、今後の研究問題は、もちろん御意見によりましても提起をされておることだと思いますが、今回の財政投融資なり、またおそらく今後の財政投融資のあり方といたしましては、直ちに国内金融状況から財政投融資を減らして民間にこれをゆだねる、こういうような考え方には私は必ずしも賛成することができないのでございます。
  141. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいま大蔵大臣がおっしゃった通りに、趣旨、原則論では賛成されるが、実行論になると、常に反対のことをおっしゃるのであります。私は、従って、さらに伺いたいのでありますが、審議会にすべてをゆだねるとおっしゃいますが、審議会そのものが、今、私は問題だと思うのであります。あなたは、中小企業や勤労者のことを今おっしゃったのでありますが、今度、当初比較すれば一千二百億増額になっておる財政投融資の中で、あなた方は選挙に出るというと、中小企業を一生懸命に守るとおっしゃるが、その中小企業の融資は幾らふえておりますか。ふえても全部で二十七億円じゃありませんか。それから農林関係は百三十一億です。これっぼっちふやしておいて、あと千二百億のその他はどういうことになりますか。それだけでもわかるのであります。従って、こういうような割り振りになるから、私は国の議決を要するようにしなければならぬと申し上げましたが、それもいかぬということであれば、審議会そのものの中にメスを入れるというお考えはないか。ただいま審議会のメンバーを見ますと、各省の次官級がずらりとお並びになって、そうしてその中に発言力の弱い財界人が、日銀総裁と、それからさらに学識経験者として五人入っております、しかもこれは財界人であります。この中に中小企業者の代表であるとか、あるいは勤労者の代表を加えて、そしてほんとうに中小企業の必要とする財政投融資は、大企業と同じような率でふやすとか、労働者に対しましては、労働金庫への融資をふやすとか、そういうようなことを積極的におやりになる、委員会そのものの改組をおやりになる御意思はございませんか。この点について大蔵大臣にお伺いをいたしますとともに、これは歳入歳出予算と並んで、わが国の財政金融の一つの大きな柱でありまするから、従って、岸総理大臣からも御所信を承わっておきたいと思うのであります。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御指摘のような審議会の構成でございますが、御承知のように、今、学識経験者として入っておられます方々はもちろん一党一派に偏しない、公平な、またその道のほんとうの学識経験者でございまして、これらの方の御意見は十分私ども尊重して参る考え方でございます。もともと学識経験者はわずか三名ばかりの方だったようでございますが、国会の付帯決議によりましてこれを五名にしたわけでございまして、その意味では労働関係の方も、また中小企業にも理解のあるような方が出ておられます。そういう意味で、ただいまのところこの議会のメンバーで私どもは十分だとかように考えておるわけでございます。
  143. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この審議会の使命は、先ほど来お話のようにきわめて重要な意義を持っておるものでありまして、この事業は、行政の面からみましても各省に関係がありますから、関係省の方が入ることはもちろんでありましょうが、さらにそれに対して学識経験者としていろいろの人を網羅し、その意見も十分に反映するような仕組みになっております。具体的な人事につきましては、当該主管の大蔵省において、十分に責任をもって選任をしておると思います。
  144. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今、非常にいいとおっしゃったが、そのいいとおっしゃる人がおやりになった結果が、中小企業にも、農村にも、勤労者にもうまくいっていないから、それで委員会全部をおやりかえなさったらどうですかと申し上げておるのでありまして、そういうそっけない答弁をしないで、もう少しわれわれの意見を尊重する答弁を、一つ誠意をもってやってもらいたいと思います。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お話はよくわかりました。もちろん今後の審議会の運営については、一そう私ども気をつけて参りたいと思います。
  146. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから大蔵大臣にさらに、これはこまかいことでありますが、一言参考のために伺っておきます。  西ドイツにおきましては、ただいま六十億ドルの外貨を持って繁栄をきわめており、欧州の経済界を完全に席巻しておりますが、終戦後十数年の間にこれだけの経済力を培養したのは、資本蓄積が思うように行われたということがいわれておりますが、その一翼として、私が聞くところによりますと、生命保険料の控除を税制の面で大幅にやっておるようであります。たとえば独身者につきましては、千百マルク、九万四千円まで、夫婦者につきましては二千二百マルク、十八万八千円、扶養家族一人につきましては五百マルク、四万二千九百円、この程度まで税額から直接控除をしておるようであります。従って、勤労者は、日本のように年に三万円税金を納める人があれば、三万円の保険料を払う契約をすれば、税金を納めなくて、そうして自分の生命のための保険が保障せられ、そうして家族の将来を守っていく、こういう一挙両得の政策をとっているようであります。わが国のように一万五千円でチョンということではないようであります。こういう非常にいい方法でありますが、政府はこういうことを御研究になったことがあるか。また、御研究になったことがあるといたしますならば、これをわが国に適用される御用意があるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) もちろんわが国におきましても、程度の差こそございますが、それぞれの所得控除の方法をとっております。まあ一面所得控除の方法をとり貯蓄を奨励してもおりますが、やはりなんといたしましても、勤労階級の所得税の軽減ということが、税では、わが国においては特に実は中心をなしておるのであります。その点は、御承知のように、戦後のわが国の税のあり方から見まして、所得税に非常にたよっていた、そういう意味でなかなか高率でございます。そこでたびたび減税をいたしておるのでありますが、減税をいたしました場合に、貯蓄奨励のための特別措置はあわせて行なっておるわけでございます。ドイツにおきましても、ただいま御指摘になりましたような点は、ちょうど減税をいたしました際に、さらに明確にいたしたようでございますが、ドイツの経済力をもってしてのいわゆる減税は三百七十億、邦貨に換算して三百七十億程度の減税でございまして、もうドイツの勤労階級なり国民の所得は相当伸び、税もよほど整理されておるということで、うらやましい限りだと思います。わが国におきましては、ことしなど、やはり平年度七百億を上回る減税をなおするというような状況でございまして、しかも、それがまだ、所得税を中心にしてすることが望ましいような税のあり方でごいます。そういう意味からいいましても、貯蓄奨励には力を入れておりますものの、そういう方面の控除にまでなかなか手が回りかねておる。今、御指摘のような方向にこれは考えを進めていくべきものである。方針としては異存はございませんが、税のあり方から見ましても現状やむを得ないという状況でございます。
  148. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいまのドイツのようなことは、戦争前でも日本では行われていなかったことなんです。ですから勤労者を喜ばせ、しかも勤労者のためになり、一方資本蓄積の効果を上げるような、こういう方法を新しい試みとしてぜひ研究をされて、一刻も早く実行に移されるように、私は要望いたしたいと思います。  続いて、電力関係のことで二、三お尋ねをいたしたいと思います。  電源開発促進法によってできました電源開発会社が、ちょうだいいたしました資料によりますと、二十八年創業以来今日までに十六カ地点、合計七十四万八千一百キロの開発を行なったようでございますが、この開発を行われた施設というものの運用は今どうなっておるかということを伺いたいと思うのであります。  促進法の二十三条によりますと、事業の範囲というものがきめられておりまして、この施設を貸付または譲渡する、あるいはみずから電気供給卸売事業を行う、このいずれかの方法をとり得るということになっておりますが、しかし、当時法案を審議いたしましたときには、電気事業の供給をやることは例外的なことであって、貸付あるいは譲渡ということが原則である。こういう工合にいわれておったのでありますが、ただいま、この開発せられましたところの施設というものの中で、貸付、譲渡をせられたものがどれだけあるか、これを伺いたいと思うのであります。
  149. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在まで開発いたしました地点につきましては、まだ貸付、譲渡ということは一つも行なっておりませんで、全部卸売をやっておるわけであります。
  150. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 現在までのことはわかりましたが、提出された資料によりますと、昭和三十八年までの間に、二百四十万キロの開発を完了される計画になっておりますが、将来もやはり今日の方針をそのまま踏襲せられる予定であるか、堅持せられる予定であるか、あるいは変更せられる予定であるか、これを伺いたいと思います。
  151. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在は御承知のように、大体七十五万キロの開発を済んだのでありますが、今開発中のものは約百二十五万キロでありまして、これが完成いたしますと二百万キロであります。で、あと三十七年度までにこれは六十万になるか百万になるか、その点まで進んでいきたいと存じておりますが、ただいまのところ、まだその貸付、譲渡はやっておりませんが、今後この電源開発会社をどういうふうな性格に持っていくかという問題が、残された問題として当然研究すべき問題だと存じておりますが、現在御承知の電力会社は九電力会社ありまして、その間の較差が相当ひどくなってきておりまして、昨年来その較差を縮めるために、御承知の広域運営というものをやっておるわけなんです。広域運営をやりますにつきまして、電源開発会社が中に入ってそうして電力の調整をする、こういうふうな役割を進める上においては非常な便利な立場にあるわけでありますから、これなんかの点とよくにらみ合せまして、今後将来の問題として一つ検討はいたしますが、ただいま、さしあたって貸付あるいは払い下げということは考えておりませんが、将来の問題としては十分考慮いたしたいと考えております。
  152. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいまのお説によりますと、われわれがあの法案を審議い、たしましたときとは根本的に態度が変っております。今のお話をそのまま直訳いたしますならば、旧日本発送電会社の小規模なものを復活するということであります。しかし当時はそういうことは絶対にしませんという約束でありました。従って、それほどまでに考えが変っておるということでありますならば、電源開発促進法そのものを改むべきであると思いますが、そういう御予定があるかどうか。今日のままでは、今おやりになっているまま、あるいは今お聞きしましたような将来の構想では、電源開発法の改正を行わなければ私は相済まぬと思うのでありますが、これに対する構想はいかがでございましょうか。
  153. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま申し上げましたごとく、この出発当時とはだんだん経済の情勢も変ってきておりますから、現在のところは、まだ貸付、払下げはやっておりませんが、しかし、これはある時期においてはやらなくちゃだめだということの結論に達するかも存じませんから、そういう点を考えまして、今直ちにこの促進法を改正する必要はないと存じております。
  154. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 と同時に、ただいま広域運営その他でも問題になっておる、電気料金調査会等を通じて電気料金の引き上げ等においても、おそらく近い将来の問題になるでありましょう。この九電力会社ですね、既存の九電力会社を監督する基本法というものは旧公共事業令が失効いたしまして、暫定措置の法律として今日に及んでおります。非常に中途半端なものであります。これをやはり改編をする必要があると思います。しかもその改編をするときには、電源開発会社と比較対照の上において、その組織上の性格についても検討を加えなければならぬ。巷間いわれておる電気事業の再々編成といいますか、こういうものを加味して検討を加えなければならぬ、こういうふうにいわれておるのでありますが、通商産業大臣としては、電源開発法の改正とあわせて、旧公共事業令の臨時措置法、これの改正をどういう工合にお考えになっておるのでありましょうか。今の法文上の問題でなくて、事業の性格、そういうものから勘案いたしまして、どういう工合にお考えになっておるか、これを伺いたい。
  155. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 電力事業が公益事業であるという点から考えましても、また、一面、今日の九電力会社が、政府が融資する開発銀行あるいは外国から金を借りましたときにも、政府がこれを保証するというふうな点から考えましても、もう少し監督権を強化いたしたい、こういう私ども考えでおるわけでございますが、ただいまのところ、その経営上におきまして非常な内紛があるとかあるいは汚職があるという場合には、これは厳重な警告を発しておりますけれども、人事権につきましては何らないわけでありまして、人事の罷免権が現状ではないものでありますから、こういうふうな点を考えますと、将来私どもの希望といたしますれば電源開発会社の促進法が改正されると同時に、この法規も監督権をもう少し強化するようにいたしたいと存じております。
  156. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいま人事のことをおっしやいましたが、実は、昨年の暮に中川政務次官が九州電力の首脳部の更迭について勧告をせられたというので、いろいろと問題が起きました。ところが、そのまま済んでおりましたら、終るかと思っておりますというと、二月二十七日の読売朝刊は五段抜きで「電力経営陣の若返り」、「通産省の働きかけ」、こういう見出しで非常にセンセーショナルな記事を報道いたしました。ところが、同日の夕刊では、各紙がこぞって同日の閣議後の記者会見で、通産大臣は、閣議で通産省はこの問題に介入する気持はないと発言した、こういうふうにに報道いたしております。一体どちらがほんとうでありまするか、伺いたいと思うのであります。
  157. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま御指摘の読売新聞の記事につきましては、私どもは多少誤解があると存じましたわけでありますが、先ほど申しましたように、電力会社が公益事業であるという点から考えて、電力会社の中に内紛があるといった場合には、ある程度これについては忠告をいたしたい、また忠告いたしたわけなんでありますが、しかしながら、この人平につきましては、何ら権能がないわけでありますから、これは株主が持っておるわけでありますから、それについて通産大臣はあれをああしろ、これをこうしろとか言わぬ、いわんやあの記事の中には、あるいは派閥であるとか、あるいは何派であるということを言っておりますが、こういうふうなことは断じて考えない。政党政派を超越して、適当な人がその主幹になるわけでありますから、そういう点は何ら考えてないということを私は言明したわけでありますが、また、その方針で進みたいと存じております。
  158. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今、高碕さんから、派閥のことは問題でないとおっしゃいましたその意味は、私も実は奇妙に聞くのであります。一々その会社の首脳部のことについて自民党の派閥が出てくるというのは、一体どういうことなんですか。まだ私が出さぬ先にあなたが派閥のことを言われるのは、一体どういうわけですか。政党と間違っておいでになりませんか。ところが、読売新聞を見るとこう書いてある。参議院選挙を間近に控えて自民党の派閥争いとからみ重大な成り行きとなったとしておるのであります。旧吉田派と見られる数人の社長をあげて、通産大臣の意思で更迭の公算があるような、そういう含みを持った記事が載っておるのであります。  私はこういうことは、まことに、あなたが今おっしゃった通り遺憾なことであると思います。あってならぬことだと思いますが、しかし発送電会社の今までしばしば行われたあの人事を見ましても、いつまでももたもたしてきまらない。結局きまったところを見ると、どのように顕微鏡で見ても大体わからないように見えているが、おぼろげながらルートがわかる。こういう格好で、民間会社のことや派閥のことが想像されるのであります。従って、こういうことがあっては非常に残念なことだと思いますが、開発審議会の会長をしておられる岸総理大臣は、絶対にそういうことはないとここで断言なさるか、自民党内の派閥によって、そういう民間会社の人事を左右するということは断じて避けなければならぬことでありますが、新聞はこれを堂々と報じております。そういうことに対して御所信を承わっておきたいと思います。
  159. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御承知のように、これら公共事業を営んでおりますものの人事というものは、それぞれ厳正に詮議されていかなければならぬと思います。当然株主に与えられておる場合には、株主において公正に最も適当な人を選ぶべきである。政府に任命権を与えられております場合には、今御指摘のように、党内の派閥であるとか、あるいは政党政派の立場から、どういう者をするということ、一切考えない。公正にその事業を委託するのに最も適当な人を選ぶという考えで、厳正にやらなければならぬと思います。
  160. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その次に、さらに、電力のことばかりお聞きして恐縮でありますが、最近、原子力発電会社はコールダーホール型の十五万キロワットの発電機を内定いたしまして、四月には発注の契約をする、こういうことが新聞で報道せられておりますが、これは事実でありますかどうか、お伺いしたいと思います。
  161. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) コールダーホールの点につきましては、原子力発電会社におきまして、昨年の一月以来イギリスに参りまして研究いたしました結果、最近におきまして三社のうちのGECという会社のものが、価額の上においても、技術においてもいいというふうなことで、大体内定しているようでありますが、それは、近いうちにこれは仮契約するだろうと思いますが、そういうような状態で進んでおります。
  162. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 岸総理大臣初め岸内閣は、特に組閣以来、科学技術を尊重をするということを繰り返し言っておられます。特に世界の技術の最先端をいきまする原子力の問題につきましては、従って特に科学技術を尊重すると思います。そういう状態にあるときに、たまたま、日本で初めて輸入をする原子炉発電所の問題について、日本の科学者はまだ幾多の疑問を投げかけておるのであります。そういうときには、科学技術者の十分な意見の一致を見ないうちに、産業界の力に指導をせられて、そして政府がこれを許していくということは、将来の科学技術の発展の上からいきましても、非常に好ましいことではないと思うのでありますが、この真の技術者の意見というものを十分に尊重し、その意見に従ってこういう新らしい、多額の国費を使うことでありますから、仕事は進めていく、そういうお考えになれないものかどうか、この点を伺いたいと思います。  参考のために申し上げておきますが、イタリアの原子力発電会社は、世銀の借款によりまして、ことしの一月でございましたか、原子炉を置くことをいろいろ協議をいたしました。そのときに、アメリカの濃縮ウラン型とイギリスのコールダホール型とを比較いたしました結果、ついに、国際入札審査委員会というのがございます。これは世銀でありますからそういうのがあるわけであります。そういう委員会で、イギリスのコールダーホール型には幾多の欠点があり、また実際に運転をした経験がない、そういうような幾多の理由から、これが採択にならないで、アメリカの濃縮ウラン型が採用になっております。もうすでにイタリアにはこういう実績があるのであります。にもかかわらず、日本がどうしてそういう先例を開いていくか、ここに科学技術者の意見を十分に尊重していない行政のミスというものがあるのではないかと、私は考えるのであります。この点について、とくと理解のいくように御説明を願いたいと思います。
  163. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) イタリアが世界銀行に頼んで、いろいろ検討しておったということもよく聞いております。しかし、イタリアの方は、すでにもうコールダーホール第一基を使っております。これは第二基目をやっております。この問題につきましては、ひとり、原子力発電会社の当肝者だけの問題でなくて、政府といたしましても、原子力委員会、これは各界の学者全体を集めまして、各部会についてその安全性なり、その経済性なりにつきまして十分検討を加えました。その結論といたしまして、さしあたり、十五万キロのコールダホールを持ってくることは適当である、こういうふうな前提のもとに今進めておるわけであります。
  164. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 たまたま、大臣は、イタリアにおいてはもうすでにコールダーホールのものを入れて、次にアメリカの濃縮ウラン型を入れようとしているのだ、こうおつしつったのでありますが、私は、そのアィデァは賢明だと思うのであります。まだずいぶん研究もし、いろいろしなければならぬ問題でありまするから、そこで、研究をするという意味においては、そうであろうと思うのであります。で、私は今、日本原子力平和利用、特にエネルギー関係から見た原子力開発で重要なことは、原子力関係技術者の養成であるとか、あるいはまた放射能の災害防止であるとか、あるいはアイソトープの利用であるとか、汚染の防止であるとか、こういうような、わが国がまだ広く知っていないところの知識というものを早く吸収をし、なるべく多くの人がこれを知って、そうして将来に備えていくということが一番大事だと思うのであります。そういう意味でありますれば、十五万キロのあのでかい容量を持った、二百億を要するような発電所を今ここで無理して買わなくても、もう少し低容量の発電機を、アメリカの濃縮ウラン型と、イギリスのコールダーホール型がよろしいとすれば、その二台を置いて、そうして技術的にいろいろ研究のできるような、そういう措置をなぜおとりにならなかったか、私はここが非常に疑問なのであります。  産業界は、大きなものを輸入すれは金額も張ります。途中の商人が利益を得るであろう。しかし私は、そういうことでなくて、原子力関係で今、金もうけをするなどということは全く避くべきことで、日本原子力技術をどういう工合に早くものにするかということが虚妄でありまするから、政府原子力行政としては、そういう歩み方をしなければならぬのではないか、こう考えるのであります。通産大臣は、今までお持ちになっておった考え方というものを、私の意見のように再考をせられる御用意がないかどうか、御所見を承わっておきたいと思います。
  165. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの栗山委員の御指摘になりました点は、やはり一つの意見としては十分傾聴する必要があると存じておりますが、しかし、コールターホール型と並行いたしまして、小型の濃縮ウランの原子炉を並行的に輸入しようということを今計画しておるわけであります。いずれにいたしましても、この日本といたしましては、イギリスよりも、イタリアよりも、アメリカよりも、どの国よりも原子力というものに依存するところが非常に多いわけでございます、エネルギーの開発から申しましても。その意味から申しまして、十五万キロの発電力を持っておる原子炉は、多少大きいだろうというふうな感じはいたしますけれども、同じ研究をするなら、そこまで進んでいこうというのも、一つの見方でありますから、こういう点につきましては、すでに業界の人たちが率先してやろう、これだけの熱意を持っているわけでありますからこれは、やはり、やらせる時期だろうと私は信じておるわけであります。  しかし、人を養成するということは、各方面から絶対必要だと存じまして、できるだけの機会をもちまして、各種の原子力発電の実験炉等を取り寄せまして、検討いたし、人員の養成をいたしたいと、こう存じております。
  166. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この問題については、いろいろお尋ねしたいことがありますので、いずれ分科会に譲りたいと思いますが、今まで私がお尋ねしたうちで、答弁漏れになっております点は、実業界は一生懸命入れる入れると言っているのだけれども、肝心の科学技術者の方に異論があるではないか、こういう新しいものは科学技術者の意見というものがまとまって、それについて実業界が動くということでないというと、今の動き方はさかさまではないかということを指摘しておるのでありますが、これについて何ら御答弁がございませんが、どういうことでありますか。
  167. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 実業界がこれを入れたいというのは当然でありますが、技術関係においては、ある人たちはこれは反対しております、けれどもある人たちはやっぱり賛成しております。こういうふうなことで、この賛成と反対というものをよく両方考慮いたしました結果、やはり賛成も多いわけでありますから、これが実行に移されたわけでありますから、意見の相違は相当あるだろうと存じておりますが、そういうようなことからしんしゃくした結果、これはやはり現状において早くやった方がいいだろう、こういう結論に達したわけであります。
  168. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 最後に産業政策につきまして、首相あるいは大蔵大臣、通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。西欧の通貨の交換性の回復に伴いまして、一体どういう影響が日本にくるのか、その見通し、またこれに対処して岸政府がすでにとられた措置、また近くあるいは将来とられようとするところの方針、そういうものにつきまして、まず伺いたいと思うのであります。
  169. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 昨年末、西欧におきましてはまず為替の自由化、続いて貿易の自由化ということが叫ばれておるわけでありますが、その後の推移をおもむろにながめておるわでありますが、政府といたしましては、貿易及び為替を自由化するということは、自由貿易の原則からいえば当然のことでありまして、運動するのに裸になった方が楽だということは当然であります。まあ貿易を、これを自由化してないということは、着物を着ているような工合であります。その上に為替に制限を加えているということは、外套を着ているようなわけでありますから、外套を取り上着を取った方が仕事をしやすいのは当然でありますが、これはやはり外地の情勢によってきめなければならぬ、そういうふうな点から考えますというと、今、西欧がこれを実行したからといって、すぐに日本が同じように外套を取り、上着を取ってしまうということは、日本の体力がそれだけ適応されているかということを考えなければならぬわけでありますから、おもむろに西欧の状態がどういうふうに変化しつつあるかということを見つつ、原則といたしましては、やはり貿易にいたしましても為替にいたしましても、自由化の方針で進んでいきたい。それは、ただタイミングは、今すぐやるべきものでない、こういうふうに考えて、今せっかく西欧のその後の推移をよく見守っておるわけなのであります。そういう状態でございます。
  170. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 通産大臣の御答弁は禅寺の坊さんのお説教を聞いているようなものでありますが、そういうことでなくて、たとえ話でなくて、もう既に政府は施策を若干おとりになっているのですから、見通しと、今とっておられること、将来とろうとしていることについて、大蔵大臣からもう少し現実性のある御答弁を願いたい。
  171. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま通産大臣からお答えいたしましたので、大体かぜを引かないように着物を脱ぐにしても少しずつという点でございます。で、御承知のように欧州の通貨の交換性回復と申しましても、まだ完全な自由貿易をいたしておるわけではございません。しかし通貨が交換性を回復し、もう一つあわせて採用いたしております共同市場、コモン・マーケットの思想はこの現われでございます。この二つが必ず国際競争を激化さすものだということは、もう容易に予想ができるのであります。その意味において、わが国の貿易も国際の激甚な競争場裏に当面し、東南アジア諸地域、さらに中南米、あるいは近東地区等において、今後はそういうことを想定しなければならない状況になっております。そういうふうに考えて参りますと、わが国の経済を国際競争に耐え得るようなものにしていくことが、第一番に考えなければならないことであります。これはなかなか短期間の間にでき上ることではございますまいが、岸内閣におきましても、もう財政演説その他でも明らかにいたしておりますように、想定されるものに対して十分対処していきたい。ことしの財政投融資にしても、予算にいたしましても、そういう意味では規模の拡大と同時に、体質の改善に特に意を用いていくつもりでございます。これが基本問題でございますが、同時に、取扱い上の問題といたしまして、わが国の為替に関する諸規定は、まことにこうかんであり、なかなか手続規定を読むだけでも実は大へんでございますが、ただいまお話のありますように、為替貿易の自由化という方向に踏み出すためには、これはやはり内容的にも改正する事態に迫られておりますので、もちろんその準備ももうすでに始めております。しかしながら、なかなか関係の人の御意見を聞きましても、そう簡単にニカ月や三カ月ででき上るものでないように思います。これは手続の問題としてそういう方向をとるのであります。同時にまた、基本的な問題——話が前後してまことに恐縮ですが、基本的な問題としては、産業のあり方と同じに、通貨価値を安定さすという意味において、私どもも特段の留意をいたしていかなければならないと、かように考えておりますので、一面外貨の保有を拡大維持すると同時に、金そのものもやはり相当量保有することが望ましいのではないかという考え方もいたしておりますが、そういうことも考えておるのであります。また、当面する問題といたしまして、いろいろ差し迫った問題もございます。外国が通貨の交換性を回復いたします場合に、一番先に取り上げました非居住者のその国の貨幣勘定というもの、これの扱い方でございます。日本の場合で申しますならば、非居住者の円勘定の処理の問題でございます。これが外貨を十分保有いたしておりませんと、この非居住者の円勘定そのものを解除いたしましても、これが流通性を持つことは、わが国の通貨に直ちに影響して参るのでございますから、そういう用意をすることが必要だと思います。また、さしあたりの問題といたしましては、この上期の外貨予算等を計上いたします場合に、またその、取扱い等におきましても、いろいろ工夫していかなければならないものがあるのでございます。それぞれそういう方向で準備を進めておる。わが国の経済も、外国の経済におくれをとらないように強力なものにすると同時に、また円そのものも、国際決済の通貨と指定され得るようなものに、やはり実力を持たせるように今後工夫して参りたいと、かように考えております。
  172. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これもなかなか重要な幾つかのこまかい具体的な内容を持っておりますので、分科会でそういう点はお尋ねいたしたいと思いますが、今お話を伺っただけでも大よその見当はつきます、要するに世界的な規模において、悪い言葉で言えば弱肉強食の自由貿易というものに発展していく、従って、これにこたえるべくわが国の産業というものの立て直しをしなければならぬ、こういう意味のことをおっしゃったと思うのでありますが、そこで問題は、振り返って今わが国の産業をずっと一わたり見ますというとこれではいかぬということが直感されるのであります。なぜかと申しますと、終戦後今日まで発展して参りましたわが国の産業は、どちらかと申しまするというと、輸出を含めて、需給バランスを回復するということに一生懸命努力が払われた。需給バランスの回復が中心であります。従って、そういうことでありまするから、いろいろまあ無制限的に、あるいは奔放に設備投資が行われて参ったのでありますが、その結果どういう現象が起きているかというと、一例をエネルギー産業に例をとりまするならば、石炭はただいま千二百万トンの貯炭で悩み抜いております。大口の消費者であるところの電力会社も全国で四百万トンの貯炭を持っていて、もう貯炭場がなくて、六カ月の先物を買っても、これ以上貯炭の方法がないというところまできております。従って、一方で重油を購入して各産業がエネルギー源とすればコストも非常に安くできるというのに、重油は全然押えなければならぬという。石油と石炭と電力、この三つがこういう工合にからみ合って、そうして複雑な様相を呈しておる。こういうものを何とかして整理し、解決しなければ、産業の再建というものは絶対できないと思います。これと同じことは、過日問題となっておる造船と船主の間にもあるでありましょう。あるいは硫安においても、硫安会社の中にもあります。会社相互間において、一つの業態と他の業態との間にいろいろな問題がある。また、大企業と中小商工業の間にもこういうことがございます。その他いろいろな例をあげますというときりがないのでありますが、こういうことを考えてみると、今割合にのんきにおっしゃったのでありますが、じわりじわりとくるから、じわりじわりと対策を立てるのだと、こうおっしゃいましたが、少くとも産業の立て直しということについては、この辺で踏み切って、根本的な対策を立てなければならぬ、自民党の今持っておいでになります経済五ヵ年計画ではだめである、これに根本的なメスを入れて立て直しをしなければいけない、こういう工合に私は考えるのでありますが、具体的にそういうことをお考えになっておることがあるか。また、近くそういう構想のもとに着手される用意があるのかどうか。この点につきましては、事非常に重大なことであります。考え方としては、大切なことでありますので、岸総理大臣と、世耕経済企画庁長官に伺いたいと思います。
  173. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもは、将来の日本の経済の安定的発展と雇用の増大に応ずる意味における日本の経済拡大を、できるだけ計画的に持っていく、自由経済のいいところを存しながら、計画性を持たせるという意味において、経済五ヵ年計画を策定して、この線で大体進んできております。しかし同時に、こういう計画は、常にその実績を見、また経済の動向を考えつつ修正していくべきものであることは、その性格上当然でありますが、今日のところ、今、栗山委員の御指摘のように、根本的に立て直しをするとか、あるいは従来の考え方を変えなければならぬというふうな状態にあるとは、実は考えておらないのであります。
  174. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。  お説はごもっともだと思います。その問題につきまして、日本の産業経済が体質的に弱体な面があると、その弱体な面を掘り下げて、これを完全に成長、安定せしめるというのが、今御指摘のところだと思います。この点に関しましては、必ずしも日本だけではございませんで、アメリカの最近における経済産業の状態を見ましても、相当論議のあるところでございます。企画庁本来の使命といたしまして、この観点につきまして、各部面にわたりまして、その病患があれば、その病患、その弱体な点を一々分析いたしまして、御期待に沿うような方法を今せっかく研究いたしております。また、それについて対策を立てて、その研究をさらに進めて報告をしたいと、かように考えております。御趣旨はごもっともだと思います。
  175. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 最後にもう一点だけ。全然ほかのことでありますが、自治庁の長官に伺いたいと思います。  私、過日衆議院で公職選挙法の付表のことについて問題になったごとがありますので、同じような現象が参議院の地方区にもあるのではないかというので、ずっと調査をしてみました。そういたしますと、有権者の昭和二十二年から三十三年までの増加は、各都道府県によって実におびただしい変化をいたしております。たとえば、二七・〇八%増加をいたしておりますが、そのうちで平均以上の増加をしている県が九県、そうして増加有権者の五五%を占めております。最高は東京の八七・七%であります。それから標準の一〇%以下の県はわずか七県で、増加率は四・一%であります。こういう現象を呈しておりまするので、まことに奇態な現象が出ておりますのは、例をあげますというと、地方区の定員でただいま四名区を持っておりまする栃木県、群馬県、まあ栃木県がいいでしょう、栃木県が八十五万四千台の有権者であります。ところが、八十五万四千台の有権者よりも有権者の多い県で二名区の所がたくさんあります。たとえば、宮城、岐阜、三重、山口、愛媛、長崎等六県があります。これは非常に不合理であります。東京都のごときは、ただいま定員が八名でありますが、おそらくさらに六名増加して十四名くらいにしないと、国民の投ずる一票の価値が平均値に至らないのであります。ところが、衆議院の方は、公職選挙法の付表に、五年ごとに行われる国勢調査の結果に基いて、五年ごとに更正をすることが原則であるとかいうような意味のことが書かれてあります。しかし、付表の二の参議院地方区については何らうたってないのであります。そこで、参議院地方区についてはそういう更正を、将来長くこういう現象が続いておるにもかかわらず、行わなくてもいいとお考えになっているか、あるいはやはり衆議院の付表と同じように行うべきものとお考えになっているか、この点についての御所見を伺いたい。
  176. 青木正

    国務大臣(青木正君) 衆議院関係の問題につきましては、過日も衆議院で問題になりましたような次第でありますので、私ども別表のああいう規定もありますので、当然適当な機会に改正しなければいかぬと思うのであります。それが今のままでありますと、一つの区に非常に多くなりましたり、あるいは二人区が十幾つかできるというようなことになりますので、これはいろいろ別表との関係がありますので、掘り下げてみなければいかぬと考えておるわけであります。  また、ただいまの参議院のお話でありますが、御承知のように、参議院の選挙制度等につきまして、そういうような問題等も含めまして、根本的にやはり検討すべき点があるのではないかと、こういうことで、選挙制度調査会に実は昨年から諮問いたしたのであります。しかし、参議院選挙を前にいたしまして、ここでいろいろそういう問題について論議することも適当ではないと考えられますので、参議院選挙が済んだあと、再び選挙制度調査会を開きまして、そうして検討いたしたいと、かように考えておる次第であります。お話のように、衆議院の方の選挙区制度の問題と関連いたしまして、やはり参議院の場合におきましても、人口の移動に伴う不均衡と申しますか、こういう問題は当然私は考えなければならぬ問題だと、かように考えておる次第でありますので、選挙制度調査会等に諮りまして、十分検討して参りたいと考えております。
  177. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これで質問を終ります。   —————————————
  178. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいま委員の変更がございましたので報告いたします。泉山三六君が辞任し、後藤義隆君がその補欠として選任せられました。   —————————————
  179. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に西田信一君。
  180. 西田信一

    ○西田信一君 私は、主として内政上の諸問題について、総理並びに関係大臣に質問をいたしたいと思います。  まず第一にお聞きしたいことは、人口政策について首相はどういう方針を持っておられるかということを伺いたいのでありますが、その前提といたしまして、所管をされておる厚生大臣から、日本の人口の現況はどうであるか、特に私はこの機会に明らかにしてもらいたいことは、人口は非常に年々ふえて参っており、また、雇用人口は非常にふえて参っておることは、これはよく承知をいたしておりまするが、国内におけるところの人口の流れがどうなっておるか、このことは割合に軽く見られておるのでありますが、一方において非常に人口が集中する地域があり、また一方におきましては異常に人口が減って参るという地域が多い。人口の自然増加に比べまして、かえって流失の方が多いというような地方が相当ある。むしろその方が多いというふうに考えるのでありますが、その実態はどうなっておるかということを明らかにしていただきたい。同時に、その原因はどこにあるか、また、かかる現象は好ましいか、また、このまま放置をしてよろしいかどうかということについて、厚生大臣の所見を伺いたいのであります。
  181. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答え申し上げます。  まず第一に日本の人口の現状についてお答え申し上げたいと思います。わが国の最近の人口は九千二百万人をわずかにこえておるものと推計されますが、御承知のように終戦直後の人口が七千二百二十万人でありまするから、この十三年間に二千万人の増加でございまして、これは年平均でいいますると約一・七%の増加率でございます。しかし、最近では出生率、死亡率ともに著しい低水準にありますばかりでなく、出生率の低下速度が死亡率よりも激しいために、その差でございまするいわゆる自然増加率は、昭和三十二年にはついに一%を割りまして〇・九%となったわけでございます。それでも昭和三十二の自然増加数は八十万人をこえておるのでありますが、これは大体山梨県の人口に当るわけでございます。しかし、一口に日本の人口問題と申しましても、戦前と戦後とではその大きな違いが出て参っておるかと思うのでございます。と申しまするのは、戦前の人口の問題は、その人。増加率、言いかえまするならば、総人口の増加ということが問題の中心であったわけでございますが、倉並びに将来の問題というものは、むしろ総人口の量的な増加というよりも、その総入口の年令構造の変化、つまり質的な問題が大きな問題になってくると考えられるのでございます。それは生産年令人口の激増という変化でございまして、われわれの予想といたしましては、昭和三十年から四十年まで総人口は七百万人くらいしか増加しませんのに、同じ期間、総人口の内部では十五才から六十四才までの人口は、実に千三百万近い増加が起きる可能性があるわけでございます。これらの働く年令の人口に十分な働く機会を作り出さなければならない問題が大きな問題となってくるわけでございまして、これらの増加する総人口の大きさももちろん大きい問題ではございまするけれども、この人口の内部構造上の変化、質的変化ということが、今日からの重大な問題だと考えておるような次第でございます。  それから最近の人口の地域的な変化について申し上げますると、人口の大都市におけるところの集中化と申しますか、人口配置のアンバランスの傾向があることは、西田委員も御了承のことだと思うのでございますが、昭和二十五年から同三十年に至ります間に、全国で増加いたしました人口のうち、約三分の二は、六大市を含む都道府県に福岡を加えました七つの都府県におきまして増加しておりますし、一方、山梨県を初めといたしまして七県におきまして、人口の絶対数が減少しておりまする事実からも、この傾向がうかがわれるのでございます。近い将来におきまして総人口が一億に達するものと見込まれておりまする現在、このような人口の地域的アンバランスがありますることは、将来も好ましいことではございませんので、このような人口収容力の不均衡につきましては、十分配慮する必要があると存ずる次第でございます。この問題は、根本的には国土の総合開発の推進と、各地域における人口を養うべき経済力の培養というような、適正な地域配分によって解決されなければならないものでございますが、厚生省といたしましては、これに関連して常々人口の地域的な適正配分につきまして主張をいたしてきたのでございますが、今後もそのような人口政策的な立場から国土の総合的な開発計画とこれが実現に努力をいたしたいというふうに考えておるようなわけでございます。
  182. 西田信一

    ○西田信一君 ただいま御答弁通り非常な人口の偏在があるということが明らかにされましたが、私はこの人口の問題と非常に関係が深いと考えまするゆえに、国民所得の配分について、経済企画庁長官からお答えを願いたいのであります。  新長期経済計画では、国民生産所得が三十七年度において三十一年度に比べて四六%、すなわち平均六・五%ずつ伸びる。三十四年度におきましては前年度の輸出五・五%の伸びであるということを説明されております。そうして三十四年度の予算説明によりますると、三十四年度におきまする国民所得の総額は八兆九千二百八十億である、こういう説明をされておるわけであります。そこで私が特にお聞きをいたしたいのは、国民総所得の総額ないしは国民一人当りの所得の額が伸びるということだけで、ただ単純に国民の所得全体が伸びるということだけで、これはそのことだけで国民全体が幸福であるということは言い得ないと思うのでありまして、その国民所得が国民全体にどのように配分されておるかという点に目を注がなければならないと考えるわけであります。そこで、私はこの配分の問題について、特に地域的な考慮を払ってみたいと思うのでありますが、私の調べたところによりますと、これが非常な地域的な格差が生じておる。東京におきましては全国平均を一〇〇といたしまして一七三・八、大阪におきましては一五九、神奈川においては一二五、愛知、兵庫、京都、福岡等が非常に大きな一人当りの国民所得を受けておるが、その反面に九州等において、あるいは東北等において——鹿児島のごときは五九・四、そういたしますというと、東京と鹿児島との割合を比べるならば、東京の国民一人当りの所得に比べて、鹿児島県ではわずか三割五分しか収入がない、所得がない。宮崎県では三割八分しかない。岩手県では四割しかない、こういうことが、私は政府が出されておる資料の中から見出せるのでありますが、一体こういうことでよろしいのであるか。かかる現状をどのように考えられておるか。また、これに対する対策をお持ちになっておるならば、国民所得の平均化という問題について、経済企画庁長官はどのように考えられておるか。長期経済計画との関連においてお答えを願いたいのであります。
  183. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答いいたします。  お説の通り非常に国民生活の間に格差があるということは御指摘の通りであります。三十一年度において各県で算定した資料によりますと、一人当りの所得が全国平均が約八万円であります。これを一〇〇として見た場合に、平均より高い県が今御指摘がございました東京、大阪、愛知、神奈川、兵庫、京都、福岡等でございまして、他の府県は相当格差が生じておるということは御指摘の通りであります。この格差をどういうふうにして是正していくかという御指摘でございましたと思いますが、日本の産業全体から見まして、農業並びに鉱工業、中小企業並びに漁業、こういうように、ごく大ざっぱでありますが大別いたしますと、職業的にあるいは企業的に日本の各分野において分散されております。そういう関係から、自然に経済産業発展の状況が変ってきておるのであります。自然そういう関係から産業経済の中心点に人口の移動があり、そこに競争が起っておるというのが日本の今日の現状ではないかと思うのであります。先般も国会で日本の都市計画について、将来長期的にどういうふうに考えるかという御指摘があったようでありますが、そのときもお答えいたしておきましたのですが、このままではいけない。少くとも大都市を取り囲む周辺に衛星都市というものを将来計画して、人口の稠密を産業的面から見ましても、またその他の都市の人口計画から見ても、新たに緩和をしなくちゃならぬということを申し上げておいたのでありますが、産業計画を立つる上におきまして、この点が非常に重要の点であると思いまして、せっかく企画庁はこれに対して対策研究を続けておるということを申し上げておきたいと思うのであります。  なお、重要なことで一つ申し上げたいことは、地方の産業が中央に集中されるきらいがある。それはむろん地方産業の完全なる発達が遂げられない結果である。こういう観点から国会の熱心な御要求もございましたので、政府の方針も並行いたしまして、今日国土開発という問題が強く取り上げられて、九州地区、東北地区、北海道地区、各地区々々ごとにそれぞれの新しい計画を持ちまして、産業の分布、経済計画の確立、人口の配分等も考慮いたしておるという実情でございます。
  184. 西田信一

    ○西田信一君 経済企画庁長官お答えがございましたが、はなはだ抽象的で納得がいかないのでありますが、後ほどまた長期経済計画との関連についてお尋ねいたしますが、この場合、岸総理にお尋ねいたしたいと思います。  総理は、政治の理想として三悪の追放を掲げられました。その中に当然貧乏の追放を叫んでおられるわけであります。国土の広さあるいはその資源の量、そしてこれに見合う人口の調和、こういうものが保たれてこそ初めて国民生活水準の維持ができる、こういうふうに考えるわけでございまして、先ほど来厚生大臣からお話がございましたように、非常に現在人口が片寄っている。また国民の所得が一方に非常に偏しておって、一方はその数分の一の国民所得しかないという現状である。東京などは八百九十万をこえまして、その周辺を入れると一千万をこえている。そしてもう飽和点の、限界を越えていると私は思う。まさに雑踏と混乱の都で、世界例がない私は状態と思います。人口の問題などは、はなはだじみな問題でありまするが、このことは言いかえるならば、すべての政治の問題の根本であるということが言えると思います。こういう問題が比較的に閑却されているきらいがあると実は考えるのでございまして、これを放置いたしますならば、ますますそういう傾向が強くなって参るというふうに存じますが、この場合、こういうじみではありますけれども、政治の根本をなすような問題について、岸総理としてこの人口政策についてどのような具体的な方針を持っておられるか、明らかにせられたいのであります。
  185. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 人口問題は、御指摘のように、いわば国の政治の根本の問題といってももちろん過言ではございません。そしてその人口問題を扱っていく上におきまして、いろいろな点において考えなければならぬ問題があると思います。たとえば先ほども話が出ておりましたが、人口の増加率の問題、ことに労働人口の急激な増加に対しての雇用対策をどうするか、また、今御指摘になりましたように都市に集中する傾向が非常に激甚なことから生ずるところのいろいろな社会上の問題を解決する上におきましても、都市集中の傾向に対してどういう処置をとるへきかというような問題もあります。また、先ほど来御議論になっておりますように、地域的に見まして人口の分布、配分に非常に格差があり、またその間においての国民所得に非常に格差がある。これをどういうふうに調和していくかというような問題ももちろん重大な問題として考えなければならぬ。私は、これらの問題すべてにわたってということはなかなか一朝にして言い尽せないかもしれませんけれども、ことに日本の状態から見まして、地域的の人口の増加率や配分の状況、それからこれがひいて国民所得の上に非常な格差をつけているという問題、これは一つの重要な問題として解決することを考えなければならない。これは、なぜこういうことが起ってくるかということを考えてみますというと、やはり集中する何におきましては、あるいはいろいろな理由があろうと思います。特に大きな理由は、何といっても産業経済がその集中する傾向においては、一般の人々の注目を引き、その人々を引きつけるような魅力があり、その他の地域においてはその魅力がないということであろうと思います。ところが、これは天然においてどうしても乗り越すことのできない、あるいは地域的の差で、産業の復興というような事柄が同様に考えられないということもありましょうが、産業の興るについての必要な基礎的な問題、たとえば交通の問題であるとか、あるいは電力の問題であるとか、あるいは港湾その他の問題であるとか、あるいは小さな問題になりますと、そういう基本的なものに比べてみると小さい問題でありますが、政治的な、税制の問題であるとか、あるいは行政の扱いの問題とかというような問題に触れまして、そういう人口の配分の少い、また産業の興らないような地域に向って産業を興すに必要な基礎的なことをできるだけ早く整えてやる、そうして、産業の開発なり、その方面における産業の振興ということを考えるならば、あるいはそういうことが魅力となって、人口の配分も相当緩和されるであろうし、またそうなれば、必然的に国民所得も大いにそういう地域がだんだん悪かったものが是正される。ここで考えなければならぬのは、要するに、国土開発についての総合開発の計画を全国的に実行する。また、特におくれておる地域であって政策的に考えましても、また、すでに調査せられた資料から見ましても、将来性の約束されるような地域に向って、特に地域を指定しての総合開発の仕事を進める、こういうことが今の問題を解決する上におきまして、人口の配分、所得の配分の隔差を緩和する上において必要である、かように考えます。
  186. 西田信一

    ○西田信一君 総理お答え通りに私も考えておりまして、そこで私は、先ほど人口が激減の地域と、人口が急増する地域と、それの国民所得との関係を調べてみますと、これが全く一致している。今の御答弁でもそうでありますが、これは要するに、水は低いところから高いところには決して流れるものではない、水が高いところから低いところに流れるのと同じように、これはやはり、諸般の事情がありましょうが、主として私は経済の問題にこれは引かれるという結果に一言にして尽きるのではないかと思うのであります。そこで、総理からもお話かございましたが、国内の国土開発、ことに地方開発計画を通じて、これらの問題を解決する必要があるということのお話がありましたが、そこで私は、もちろん、国土開発は単なる人口問題のみでもって開発の必要を認めるものではありませんんけれども、しかしながら、ただいま申し上げましたような状態であるといたしまするならば、その面からも相当これはウエイトを置いて考えていく必要があると思うのであります。そこで、一体人口問題等が比較的すみっこに置かれておって顧みられないということは、非常に残念に思うのでございますが、閣内においてこの問題がどのように論議されておるか知りませんけれども、ぜひとも総理にお願いし、また希望いたすのでありますが、少くとも国内の適正人口の配分といいますか、地域別に人口配分計画というものを立てまして、この人口が平均化し、あるいはまた、均衡適正化いたしますためには、いかなる開発を行うべきかという、それから割り出したところの開発計画というものが立てられるというくらいの積極性があっていいのではないかというふうに考えますが、総理はどのようにお考えになりますか。
  187. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本全体の国土の総合的開発につきましては、その総合調査並びに計画の樹立に現在進んでおることは御承知通りであります。また、すでに東北、北海道地域における特別の開発計画を立てており、また最近におきましては、九州、四国等の問題が、取り上げられております。すでにこの国会で通過しております国土縦貫高速度自動車道路というものも、これが開通することによって、現在非常に人口の希薄な地域におけるところの資源の開発や、あるいは産業の開発に資して、人口の配分が考えられていくだろう。こういう点を従来におきましても特に人口の配分という題目で取り上げてはおりませんけれども、御趣旨のような線に沿うような諸計画を進めております。今後も、これは日本として進めていくべきものである、こう思っております。
  188. 西田信一

    ○西田信一君 私はもちろん、地方開発、または縦貫道路の建設等は、人口問題に寄与することが大きいことは認めますけれども、願わくば、私は、もっと積極的に、国内における人口の将来についても一つの案を立てるというくらいのところから、この問題の解決に乗り出すべきではないかということを考えるわけでございまして、むしろこの点は御要望として申し上げておきますが、そこで、総理にお尋ねいたしたいのでありますが、この人口問題を扱っておる行政機構というと、これは、厚生省の中に人口問題研究所というものがあって、これはほんの研究をする資料を集めるという程度しか機能を発揮しておらないわけです。そのほかに、人口問題審議会等もございますけれども、これは全く、何といいますか、産児制限などを中心とした人口問題研究という程度にすぎないと思うのでありまして、できれば総理に直属する総理府とか、あるいはまた経済企画庁に、ほんとうの人口政策を樹立するための行政機関を設置して、そうして積極的にこの問題に乗り出すというような御意思がおありになるかどうか、お伺いいたします。
  189. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のように、今人口問題研究所というような特別の機構が設けられております。しかしこれは、特殊の目的を持っておるものでありまして、今、西田委員の御指摘になるような、日本の人口問題全体を扱って、これに対して政策的にどうするというような問題をきめておるわけではございません。この問題は、きわめて重要な問題であり、また関係するところが広いものでありますから、御趣旨の点は、十分今後におきまして検討をいたしまして、御趣旨のような実効を上げることに努力をして参りたい。今直ちにこういう行政機構を作るのだということを申し上げるまだ段階まで行っておりませんが、十分検討してみたいと思います。
  190. 西田信一

    ○西田信一君 この問題について、経済企画庁長官にお尋ねをいたしますが、いわゆる新長期経済計画というものがございます。この新長期経済計画の中に、人口政策というのがどのように織り込まれているのかという点が、私はちょっとわからないのでありますが、その点をお伺いいたしたいのと同時に、先ほど総理にもお尋ねいたしましたが、長期経済計画を基礎にして作られているところの地方開発計画の策定については、少くとも人口の地域配分ということを一つ十分に織り入れた計画を立てていただきたいというふうに考えるわけでありますが、経済企画庁長官の御所見をお伺いいたします。
  191. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。  人口配分並びに人口の今後の長期計画というものを今具体的に立てておりませんが、御指摘のような問題は、当然研究対象とすべきであるということを了承いたしております。ただ、この際申し上げてみたいと思いますることは、人間はどこが一番楽に住めるか、どこが住みよいかということが問題だろうと思うのであります。今日、御承知のように、交通が発達し、テレビが発達し、ラジオが発達して参りまして、そうして都市生活を必ずしなくても、幸福な生活が得られるという時代が出てくれば、私は、必ずしもこの煙の多い、ちりの多い都心に生活をする必要はないのではないか。これは、文化的面から見てそう考えられる。それと、もう一つは、これは飛び離れたことになるかもしれませんけれども、人間が本当に生活を楽しむというのは、むしろ自然に親しむということである。それで、その自然に親しむかたわら経済が恵まれていれば、私はそれは理想的だと思う。そうすると、都市の近くにむしろ新しい生活を営むということになれば、おのずから人口配分等もいろいろ考えられるのではないか。これは、非常に遠い将来にあるいはなるかもわかりませんが、私は、そういう意味から見まして、自然を尊ぶというようなことからいいのではないか。(「もう少し手近な答弁をして下さい。」「雲やかすみじゃ困る。」と呼ぶ者あり)  それからもう一つ申し上げたいことは……雲やかすみじゃない、これは人口問題に直結する問題ですから、お聞き取りを願いたいと思います。人口問題で今、産児制限のお話がございましたが、私は、むしろ日本に人口が多い、労働力が豊富だということは、新しい産業を生み出す力だと思います。そういう意味において、健全なる労働運動、健全なる労働者、健全なる企業を興そうとするのには、どうしても人口というものもことに重要視しなければならぬと私は考えております。こういう意味におきまして、私は、今御指摘のような問題も深く取り入れて長期計画に当りたいと、かように考えております。
  192. 西田信一

    ○西田信一君 いろいろ申し上げたいことがありますが、時間の関係もありますから、人口政策につきましてはこの程度にいたしまして、また次の機会にいたしたいと思います。  次に、金利政策について大蔵大臣に御所見を伺いたいと思います。大蔵大臣の財政演説の中にも、来年度は、金利水準の低下と金融機関の日銀依存を是正して金融の正常化をはかるいい機会である、こういうふうに御説明がございました。日銀の公定歩合の引き下げは、昨年二回と、また本年の二月を加えまして、三回の引き下げが実施されました。市中銀行の標準金利等も一銭九厘になったようであります。しかしながら、日本の金利水準はなお、下っておるとは申しながら、世界水準に比べまして相当高いことは、これは御承知通りでございます。そこで、今後さらに引き下げを行う必要があると考えるのでありますが、今後の金利政策について、蔵相の御所見を一つお伺いいたしたいのであります。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 日本の金利は非常に高い、そういう事柄が国際競争の面においても非常にひけをとるゆえんであるし、また、国内においても、国民生活向上の面に支障のあることは、これはもう御指摘になる通りでございます。そこで、次々に金利を引き下げていく、いわゆる国際金利水準を目標にいたしまして、これにさや寄せしていく政策をとっているわけでございます。過去におきまして、最近といいますか、岸内閣におきまして、公定歩合を三度にわたって引き下げております。今回の引き下げで、ようやく引き締め前に、引き上げましたものよりも安い金利になっておるということであります。しかし、これをもって私ども満足をいたしておるわけではございませんし、国際金利の動向等も十分注意し、国内の金融情勢と勘案の上、さらに金利を低下していく努力を続けて参りたい、かように考えております。
  194. 西田信一

    ○西田信一君 ただいまの御答弁で明らかになりましたように、将来にわたって、なお金利の引き下げ政策をとって参りたいという御方針のように伺いましたが、そこで、私はこの機会にお伺いいたしたいのは、政府の金融機関の金利につきまして、その金利の引き下げ等を含めまして、貸付条件の再検討をする、こういう実は時期ではないか。このことは、各政府の金融機関相互間のいろいろな均衡の是正という問題もございましょうし、あるいはまた、金利ばかりでなくて、償還年限の問題等もございましょうが、これらを含めまして、全面的に再検討の時期に来ておると、実は私は考えるのでありますが、大蔵大臣はどういう御所見をお持ちでございましょうか。お伺いをいたします。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 基本的な目標とするところは、先ほどお答えいたした通りでございます。引き続いての各金融機関間のバランスをどう考えるかというお尋ねでございます。最もはっきりいたしておりますものは、政府関係機関と民間金融のあり方でございます。政府関係金融機関につきましては、それぞれの政策的な意図のもとに、大へん低い水準で金利を定めております。民間金融機関との間には相当の隔たりがあるのであります。そこで、今回のように、公定歩合を三回引き下げました場合におきまして、政府関係機関の金利を下げるかどうかという問題でございますが、国民金融公庫や中小企業金融公庫であるとか、あるいは商工中金というような、いわゆる政府三機関につきましては、すでにお示しておりますように、今回、四月以降におきまして、三厘引き下げる計画をいたしておるのでございます。今までの公定歩合の引き下げをごらんになっておわかりのように、市中金融といたしましては、一厘の引き下げあるいは五毛の動きという、これは非常に大きな価値、意義を持つのでございます。政府の金融機関におきましては、しばしば政策的な意味におきまして、大幅な金利の引き下げ等が採用されておるようでございますが、これなどは、民間金融機関との関係におきましては、必ずしも望ましい姿だとは言い得ないように思っておるのであります。今日でも、政府関係の先ほどあげましたような三機関を初め、農林漁業金融公庫であるとか、その他の金融機関等におきましては、融資対象によりましてまたそれぞれの金利が変っておるということで、政策的な目標は十分達しておるように思っておるのであります。しかし、これらの公庫等は、資金を一部政府資金にも仰がなければなりませんし、同時にまた、還元融資といったようなこともいろいろあるわけでございますが、そういう意味で、採算制を度外視するわけにも参りません。ただいまのところ、私は民間金融機関の金利のあり方等から見ますと、特にこの際さらに突き進んで検討をしなければならない、そういう状況ではないのではないかというような考え方をいたしております。しかしながら、問題は産業に最も影響のある問題でございますから、量と質のいわゆる金利のあり方なり、先ほどの償還期限の問題であるとかあるいはその他の諸点を勘案いたしまして、なお量と質が適正であるようには、政府としても絶えず検討して参るつもりでございます。
  196. 西田信一

    ○西田信一君 市中銀行に比して政府金融機関の貸出条件はかなり有利であるからして、今直ちに引き下げを行う考えはないが、なお検討する、こういう御答弁のようでございました。私は、十分これは一つ御検討を願いたいと思うのでありますが、特に私がこの機会に貸出条件の緩和を必要とする諸点について、大蔵大臣並びに農林、企画、通産あるいは北海道開発等の関係大臣からも御意見を伺いたいのでありますが、まず農業、林業、水産業等に対する金融であります。これは非常に収益率の低いことは御承知通りでございまして、こういうような産業に対する政府の金融機関の金利というものが、果して現在妥当であるかどうかということにつきましては、大いに検討の余地が残されておるというふうに考えるわけでございまして、率直に申し上げますならば、これらの産業の実態から考えまして、これらの金利はなお高きに失するというふうに実は考えるわけでございますが、農林漁業金融公庫その他これらの産業に対するところの政府の金融機関の貸出条件、特に金利等について御検討のお気持がないかどうか。さらにもう一つ取り上げたいのは、ただいまお話がございました中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫、こういうような国民大衆あるいは中小企業を対象とする金融については、今回若干の起債が行われたことは事実で、お話の通りであります。しかしながら、九分六厘からわずか三厘程度の引き下げでございまして、なおこういうような弱い産業に対する金融といたしましては、さらにこれらについて考慮を要するのではないか、こういうふうに実は私は考えておるのでございます。  さらにもう一点申し上げたいのは、後進地域開発のための特に設けられた金融機関、ただいまも総理が特に地方開発等のために、人口問題その他からお話がございましたが、こういうような後進地域開発のための特別に設けられた金融機関、これは例をあげますというと現在北海道東北開発公庫、こういうものがございますが、これは年九分であります。これは必ずしも安くないと思います。一方開銀等がありますが、開銀は同じように九分でありますけれども、重要産業については、電気とか海運とかあるいはまた特定機械、こういうようなものについては政策金利というものが設けられておって、もちろんこれはその地域のものも後進地域も、その産業について恩恵に浴しましょうけれども、しかしながらこれを平均金利で見ますと、開銀等ははるかに安い金利でこれは有利に行われておる、こういうことでございまして、これらの後進地域開発のための政府の金融機関等についても十分考える必要があるのではないか、全体の金利を下げることがいいか、あるいはまたその後進地域における、開発における特別の事業について、仕事については政策金利を設けるとか、いろいろな方法がございましょうが、こういうような農林あるいは漁業中小企業あるいは後進地域開発、こういうような特別な金融機関における貸出条件の緩和といいますか金利の引き下げ、こういうことについて特に御考慮を願いたいと思いますし、その御意思があるかどうか、大蔵大臣並びに関係大臣からお答えをお願いをいたします。通産大臣も……。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 金利全般の問題は、先ほど来お答えいたした通りでございます。金利は借りる方の立場と申しますか、ただ借りるというだけでなくて、その産業の育成その他の立場等を考えてみますと、低いことが望ましいことはもうお説の通りだと思います。実行に当りましては、十分一般金利とのつり合いの問題もやはり考えていかなければならないので、ただ単に政策金利だけで押しまくるというわけにも参らないと思いますが、しかし先ほど御指摘になりますように、できるだけ安い金利で地方開発なりあるいは産業の育成に協力すべきで、これは当然のことだと思います。
  198. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 輸出産業につきましては、これを奨励する意味から輸出入銀行の金利は特に低金利をもって適用してきておりますが、また重要産業の中でも、これは大体開発銀行の融資に待ちます場合にも、重要産業につきましては特定金利を設けておる。ひとり中小企業につきましては、これは今日まで非常に高い金利でありました。これはようやくある程度引き下げられたことは事実でございますが、私どもはこれをもって満足いたしておりませんが、現在中小企業は、一番のやはり問題とする点は、信用が欠けておる点でございますから、その意味におきまして、前臨時国会におきましても金融保険制度を強化いたしました。これをさらに強化していって、安心して金融し得るようにしていきたいと、こう存じておるわけであります。
  199. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。  両大臣からお答えした通りでございますが、私はたとえごとを申し上げてあるいはどうかと思いますが、私は金融というのはちょうど人間の体温と同じことだ、体質によっておのずから変化があるのだ、低すぎても悪い場合があるし高すぎても悪い場合がある。結局日本の産業に応じた、体質に応じた金利というものが考えられるのであろう、大蔵大臣並びに通産大臣は、そういう点でお答え下さったものと思います。
  200. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 西田君に申し上げますが、農林大臣は衆議院本会議に出席中でございますから後ほど……。
  201. 西田信一

    ○西田信一君 農林並びに北海道開発はお留守のようでありますから、当然保留いたしまして、次の問題に移ります。  総理並びに文部大臣にお聞きをいたしますが、これは第十八回の国際オリンピックを東京に招致するという問題について、政府の所見を伺いたいのであります。これはすでに東京招致に関しましては衆議院において、また参議院においておのおの決議を行いまして、その決議の内容は、御承知通り促進運動を強力に推進せよと、こういうこと。もう一つは、準備体制を整備するようにと、こういう内容の決議であったわけであります。この国会の両院の決議がなされた後において、政府はその後いかなる措置を講ぜられましたか、総理並びに文部大臣からお答えをいただきたい。
  202. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 東京オリンピックの招致の問題につきましては、昨年の春、両院の御決議がありましたが、その前に、もう国内で非常に強い要望がございましたので、昨年の一月の二十二日に岸総理が会長になりまして、各界の代表者をもって組織する東京オリンピック準備委員会を設けて、いろいろな計画をしておったのであります。そこへ加えて両院の御決議がごさいましたので、いよいよ実現に対します決意を固めて、積極的にこの準備対策の推進をやって参りました。文部省といたしましても、昭和三十三年度の予算にも三十四年度の予算に東京オリンピック準備のための経費を計上いたしまして、国際的にも働きかけをやっておるわけであります。国際オリンピック委員会に対しましては、正式に立候補に対する関係文書、これは御承知のように主催地の都市が責任者になるということになっておるのでありまするので、東京都知事の名で昨年の五月十三日に申し入れをいたしまして、それからさらに経費等に関しまする国際オリンピック委員会のいろいろ質問等がございましたので、都の方から回答書に岸総理が裏書き署名をいたしましたものを、十一月の十八日に発送いたしておるのでございます。その内容につきましては、東京オリンピック準備委員会の計画を全面的に織り込んでやつておる次第でございます。その後もなおいろいろな面を通じまして、この一九六四年のオリンピック大会の招致に努力をいたしております。
  203. 西田信一

    ○西田信一君 御答弁通り、岸総理みずからがオリンピック準備委員長を引き受けられまして、非常な御努力をなさったことに対しまして、敬意を表しますが、そこで東京招致につきまして、相当の運営費もかかりましょうが、直接の運営費以外に、こういうような世界的な行事を招致いたすのでありまするからして、競技施設を整備するほかに、いろいろな施設、道路であるとか宿泊施設であるとか、その他外国人の認識に対して十分な用意をしなければならぬと思います。その準備計画はどのようになっておるか、またこれが招致された場合に、一体予算は全体を通して、これを含めてどのくらいを要するというふうに考えておられますか、文部大臣からお伺いいたしたい。
  204. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 東京招致に関しましては、ただいまお話のございましたように、いろいろな競技場の施設、そのほか道路等の設備が必要なのでございますが、これに関しましては、昨年の五月、東京で行われました第三回アジア大会の際の経験等に照らしまして、東京都におきまする幹線道路の整備計画の一環として道路の準備を進めておりますほか、また選手団、役員の宿舎、一般観光客のための宿泊施設、駐車場等につきましても、オリンピック準備委員会におきまして種々、具体的な候補地も選び、それに対する設計等の検討も進めておるのでございます。政府におきましても、同委員会の立てまする計画に十分の考慮を加えまして、整備に遺憾なきを期して参りたいと考えておる次第でございます。  なお経費についてお話がございましたが、この国際オリンピック委員会への回答書によりますれば、東京におきまするいろいろな大会の施設費というのは、ただいまお話をしました宿泊所でありまするとか、いろいろな道路等も考えられるのでありますが、そうした特別の施設を除きました大会の運営費というのは、約六十億円かかる予定でございます。開催地が正式に決定いたしますれば、組織委員会が正式に結成されまして、ここで具体的計画が作られるわけでありますが、この具体的計画ができますれば、そこで全体の予算を組み、東京都と政府との負担区分も検討されるわけであります。いずれにいたしましても、政府としてできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  205. 西田信一

    ○西田信一君 私もかつて国際競技を日本に招致するために国際会議に臨んだ体験を持っておりますが、この東京招致の一番難点になるものと考えられるものは、何分にもアジアにおいて初めて開かれるわけでありますけれども、非常に遠距離であるということで、あろうと思いますが、これに対しまして、何か参加者に対するところの適当な便宜を与えるというような対策をお持ちになっておられるかどうか。この点が一番私は招致のかぎだと思いますのでお尋ねいたします。文部大臣からお答え願います。
  206. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) ちょっと…。
  207. 西田信一

    ○西田信一君 日本が非常に遠いために、日本に招致する難点がそこにあるのではないかと考えますが、これに対して、それを打開する何か対策があるかということです。
  208. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) ただいまお話のございました点は非常に重大な点でございます。御存じだと思いますが、この一九六四年の大会につきましては、ブラッセル、デトロイトと東京とウィーン等が立候補いたしているのでありますが、気候の問題等いろいろありますけれども、やはり距離の問題が一番の問題なのでありまして、この点につきましては、いろいろな問題がございまするので、この五月にも向うに人を派したりいたしまするが、ただいまお話のございました点、具体的にどうということは申し上げかねますけれども、十分各国に対して働きかけをするようにいたしまして、その点も配慮を適当にいたして参りたいと思います。
  209. 西田信一

    ○西田信一君 この五月の末にドイツの、ミュンヘンで開かれるIOC会議において、この会場が最終決定を見るわけであります。もう目腱に迫っているわけでございます。国民全体の気持から申しましても、また国会の意思から申しましても、ぜひこの場合日本に招致をいたしたい。私自身もそのように希望いたしているわけでございますが、そこで、メルボルン大会の例もございまして、せっかく招致しても十分なる態勢ができ上らないと問題になるわけでございまして、この招致の成功するかどうかというかぎは政府の、都はもちろんこれは表面の招致者でありますけれども政府、つまり国をあげての協力態勢ができ上っているかどうかという点にかかる、国の熱意がどの程度あるかという点に私はかかると実は思うわけでございます。そこで総理にお尋ねをいたしますが、東京招致に対するただいま文部大臣のいろいろ対策等のお話もございましたが、この見通しは、総理としてはどのように考えておられるか。また政府としてはこの招致に対してどのような総理自身対策を持っておられるか。またもっと具体的にお尋ねをいたしますが、このようなわが国日本に招致の熱意があるならば、この熱意を世界各国に十分知らせまして、認識さして、そうしてその理解のもとにその招致に成功いたすべきであるというふうに考えるわけでありますが、適当な人を向うに派するとか何とかいうようなお考えがないかどうか、一つ総理の御決心を伺いたい。
  210. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先刻文部大臣から、従来の政府のやっております措置等につきましてお話を申し上げたのでありますが、私みずから東京へのオリンピック招致委員会の会長をいたしております。すべて向うへ出しました書面等におきましても、みずからこれに署名をいたしまして、政府の熱意というものをそれによって示し、またいろいろな向うに対しての宣伝等につきましても、そういう気持を示すような措置を従来とってきております。また招致のために出かけていきまする者に対しましても、日本政府の意気込み、ないし熱意の点につきましては、十分に関係各国に了承せしめるように努力をいたしております。いよいよ最後の決定を見まする、五月末でありましたが、ミュンヘンで行われるべき会議に対して、政府からも適当な人を出し、そうして政府の熱意を十分に関係国に示す必要があるじゃないかという御意見につきましては、なお十分検討いたしまして、いずれにいたしましても政府の意図が十分に徹底するようにいたしたいと、研究をしてみたいと思います。
  211. 西田信一

    ○西田信一君 総理から非常に熱意のある御答弁がございましたので、ぜひ私はこの成功を祈りますがゆえに申し上げるわけでありますが、オリンピック大会は、かつて一九四〇年に東京で開催することに一度きまったのであります。ところが戦争のためにやむなくこれを返上するというような結果になったのでございまして、来たるべき東京大会招致はスポーツ関係者だけではありません。国民がひとしくその実現を要望しておるところでありまするし、また国会両院の決議も、その意味においてなされたのでありまするからして、来たるべき最終決定を見る国際オリンピック委員会に対しましては、十分一つ政府におかれましても日本国民の意思が十分に伝わって、そしてこの理解のもとにこれが招致に成功し、かつまた、この大会をりっぱに進められるためには、十分な準備をされるように、世界的な行事でありまするがゆえに、特にこのように希望を申し上げておく次第でございます。  次に通産大臣にお伺いをいたします。先ほど実はお留守でございましたけれども、いろいろ人口問題、人口政策についてお伺いをいたしたわけでありますが、政府もこの問題について関心を持っておられることはよくわかります。そこでこの国会におきましても、首都圏整備の一環として工場等の制限の法律考えまして、この国会ですでにその法律が成立いたしました。これは人口対策のもちろん一環ではありましょうけれども、私は人口対策としてははなはだ微温的であり、非常に片手落ちであるというふうに考えるわけであります。百キロ圏内にこの首都圏は、要するに一口に言えば二千六百万の人口をどうして分散するかという、きわめて消極的なことであって、しかもこの制限を先にやつている、実はまた新たな別な法律を出しておりまして、工場立地調査の法律というものが出されておる。これも大へんけっこうでありますけれども、この制限をするということをやる前に、なぜもう一歩進んで工業開発、あるいは工場配置というような、こういうような根本施策がなされないかということでございまして、私は打つべき手を打っておかないと、必ずこれは手おくれになると思う。先ほどの人口の問題も、いかに理想をかかげまして口先で申しましても、このような具体的な施策というものが行われなければ、これは結局は何にもならないと思うのでありまして、こういう点について、ことにこれは人口問題だけではありません。日本はやはり貿易で立っていかなければならない。そういう面から申しまして、どうしてもやはり工業開発、あるいは現在の工業地帯状況から見ましても、新たなる工業地帯の建設ということが非常に大事であるが、これに対する積極的なお気持がないかどうか、通産大臣のお気持をお伺いいたします。
  212. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとくこのままで捨てておけば、どうも工場がやはり都市の付近に集中するという傾向は各国とも同様でございますが、これをどうして分散するかという問題につきましては、もちろん政府としては人口問題の上から、またそのほか工場そのものの経営上からいっても考えていかなければならぬ。特に東京付近におきましては、東北地帯におきまして相当原料を生産するにもかかわらず、その原料を再び都市に持ってくるというふうな傾向もあるでありまするから、今後人口の希薄なる地方において、できるだけ地方に適合したる工業を立てていきたいということは、根本的に考えておりますと同時に、現在の工場の立地につきましても、どうも農地をたくさんつぶすというふうな形勢もあるものでありますから、これもいけないと思います。また工場が無統制に集中する結果、工業用水が足りなくなってしまって、将来どうもこうもならぬ、こういうふうなことが現に北九州において行われている。こういう実情等も考えまして、今後の工場というものはどうしても埋立地をもって、海岸地帯に持っていく。これは輸出貿易の上から考えましても、またその府県に対する港湾の設備ということの点から考えまして、今国会におきましても、工場地帯というものの建設公団を作りたい、こういうふうな考えで進んでおったようなわけなんであります。しかし、そこに至りますまでに、まず最初、一応この工場地帯の調査をするということ、そのために今回この工場地帯の調査機関を作るということについての法律を提案したわけなんでありますから、さよう一つ承知願いたいと思います。
  213. 西田信一

    ○西田信一君 運輸大臣見えませんか……。  それでは自治庁長官に簡潔にお尋ねをいたしますが、他の委員からも御質問がございましたので、ごく簡単に申し上げます。  地方財政の立場から、地方財源の涵養ということがきわめて大切である。しかも地方財源は非常に府県間において偏在の傾向がございます。これらをどうするかという問題、さらにまた国の重要施策に伴うところの地方の負担、ことに地方開発、先ほど申し上げた地方開発の問題に関連いたしまして、非常に地方負担がふえて参っておりますが、これらに対しまして、少くとも財源付与の立場から、これらの条件を財源付与の一つの条件の中に取り上げて見てやるのでなければ、先ほど総理が申されているけれども、実際に地方の開発というようなものはその面から困難であると思いますが、地方財政の立場から、このような地方開発等に対する条件を、財源付与の一つの条件として取り上げるという将来御方針をお持ちになるかどうか、この点をお伺いいたします。
  214. 青木正

    国務大臣(青木正君) 財源調整の問題、また、あわせて後進地域に対する特段の配慮をすべきではないかという御質問であります。お話しのように各府県の税収の比較をいたしますときに、非常にアンバランスがあり、特に開発を必要とする後進地域におきまして収入が少いということでありますので、これに対しましては、当然に何らかの配意を加えなければならぬと考えるのでありまして、しこうして、現在のいわゆる基準財政需要というものは、基準的な行政水準を維持するということで、それだけを確保するという考えに立っているのでありますが、しかし基準的な財政、行政水準を維持するというだけでは、後進県にとりましては申し上げるまでもなく、きわめて不十分になってくるわけであります。そういうことでありますので、従来も後進地域に対して相当の配慮をいたして参ったのでありますが、さらに私どもといたしましては、その考え方に立ちまして、後進地域に対して、もっと考えなくちゃいかんのじゃないかということで、順を追うてできるだけそういう方向に進みたいという考え方に立ちまして、今回の交付税法の改正に当りましても、従来のように既存の施設を対象とした測定単位ということでなしに、面積の広いところであるとか、あるいは人口が希薄のところであるとか、そういうふうなところを取り入れまして、そうしていわゆる態容補正という形において後進地域に対する財源付与ということに特段の配慮をいたしておるわけであります。ただしかし、何と申しましても、どういう税源をきめましても、ややともすれば一部に片寄る問題がありますので、やはり財源調整という問題は全体として考えていかなければならぬのではないか。財源調整の場合に、御指摘のような考え方に立って、交付税の問題につきましても、あるいはその他の税の配分につきましても、国からいく譲与税の問題等につきましても、そういう考え方に立って後進県に特段の配慮をしておる。現在の入場譲与税なんかもそういう考え方に立って、御承知のように東京、大阪、神奈川などは制限をしておるというような配慮をしているわけであります。さらにこういうような考えを進めて参りたい、かように考えております。
  215. 西田信一

    ○西田信一君 農林大臣、北海道開発庁長官がおみえになりましたようでありますから、先ほどの私の金融政策に対する答弁を求めます。
  216. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) お尋ねの趣旨は、現在農林金融公庫のとっております金利につきましてお尋ねだそうでございますが、これにお答えを申し上げます。  御承知通り、現在最高七分五厘から三分五厘の範囲におきまして金利を定めておるわけであります。この対象は、御承知通り主として零細な農山漁村民を対象にいたしておりますのでございますから、もとより安い方はこれはいいのでございますけれども、現在他の一般の金融機関から得られない資金をこの方面に回しておるという実情にもあるわけであります。将来におきましても、貸付条件その他区々にわたっておりますので、公庫の資金の構造等につきましても改善をすべき問題があろうと思います。つきましては、今後ともこの資金の構造等につきましても、一段の考究を加え、かつまた金利引き下げ等につきましても、十分検討して漸次改善して参りたい、かように考えております。
  217. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) 北海道東北開発公庫の投融資の条件を緩和する問題でございますが、だんだん先ほど来人口問題等を承わっておるにつきましても、何としても北海道の開発は、現在のような原始的な農業を中心とする人口の誘致というようなことは、ほとんど私は飽和点に達しておるかと思っておるようなわけでありまして、その点につきましては、例の稲葉理論に非常に教えられるものがあるのであります。そういった面につきましても、今後北海道の開発につきましては、基本産業の誘致であるとか、あるいは低金利の問題、また新しい農業経営形態を取り入れる、こういった問題も必要かと思っておるようなわけであります。特に金利につきましては、現在のところは一般の市中の長期金利の水準と比較いたしまして、また北海道東北開発公庫以外の警察金融機関の貸出金利とのバランスから見ましても、現在これを引き下げることは相当困難な問題ではありますが、しかし将来、特に明年度は大蔵当局ともよく御懇談を申し上げて、西田委員の御希望に沿うように私も一そう努力をいたしたいと考えておるようなわけでございます。
  218. 西田信一

    ○西田信一君 ごく簡単に質問いたします。  運輸大臣にお尋ねをいたしますが、最近国鉄当局が経営収支の悪化を理由にと思いますが、貨物運賃の改定をいろいろ検討しておる、こういうことを聞いております。これは、ことしの国鉄の予算には貨物運賃は相当減収を見込んでおりまして、貨物の量も減るということになっておりますが、しかしながら、国鉄当局はそういう検討をしておって、これは国民の間に心配されておるのでありますが、果してそういうような運賃改定をなさるというお考えがおありになるのかどうか。またなさるとすれば予算との関係はどうなるのか。またその改定をするとすれば、どういう内容の改定をしようとするのか、この点をお伺いいたします。
  219. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。  国鉄の中に運賃改正に関する調査会を設けまして研究しておることは事実でございます。しかし、それは値上げを目途としておるものではございませんので、全体としてはふえもしない、減りもしないというワクの中で非常な不合理を是正するということを目途としておるものでございまして、決して値上げを考えておるための調査ではございません。
  220. 西田信一

    ○西田信一君 実はまだ若干お尋ねしたいことがあるのでありますが、いろいろ時間の関係もあるようごございますから、他日の機会にいたしまして、私の質問は本日はこれをもって終了いたします。
  221. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 明日は午前十時より委員会を開くことといたしまして、本日はこれで散会いたします。    午後五時二十八分散会