○中村正雄君 もう時間も参りましたので、最後に
岸総理に対しまして、
政治の
あり方と心がまえについて
一言お聞きしたいと思います。
まあ
岸総理が三悪追放を宣言されてから二カ年に近い月日が流れておりますが、その間、果して
岸総理の理想とされました貧乏、汚職、暴力というものが追放できたかどうか。あとを振り返ってみますると、この三つの問題は、岸首相の
政治理念として、
政策を立案する場合の根本的な
態度として堅持されるものとして、当時
国民は共感を呼んだと思いますけれ
ども、しかし、二カ年間の実績を見て参りますると、この三つのものは減少しているということは
考えられないと思うわけなんです。一般
質問でも申し上げましたように、厚生白書によって見ましても、生活保護法に基いて公的扶助を受けている人とほとんど同程度の人が二百四十万世帯もいる、千百十三万人もいると、これが現在の
国民の分布の
状態であり、しかも近来の傾向としては、この所得の不均衡は、この数字をだんだんふやして参っていると思うのです。
岸総理の行なって参った
政策というものは、貧乏追放ではなくして、貧乏歓迎の
政策だ、こう言われても実際の数字の上から見ますると、返す言葉もないと思うわけなんです。汚職にしても暴力にしても、日々の新聞にどちらかの記事が載ってない日はないと言っても過言ではないと思います。歴代の
内閣の中で、岸
内閣ほど貧乏の問題、汚職の問題、暴力の問題、これがやかましく言われた
内閣は、私は記憶いたしておりません。
〔
理事堀木鎌三君退席、
委員長着席〕
特に極言する人は、
岸総理の歩いた足のあとには汚職のにおいがする、こういう極言をする人もいる
状態であります。しかし、私は
岸総理の私生活について云々しようとは思いません。しかし、
岸総理の
政治理念というものは、
政治は力である、金であると、こう言われております。金権
政治があなたの行動の指針だと今一般に言われております。このことは野党の私が指摘するまでもなく、あなたの党でありまする
自民党の大会ではっきりと言われた言葉であり、姿であります。金権
政治の岸総裁を打倒するんだということで、同じ党の松村さんが政界浄化を叫んで総裁公選に立候補されたことは、当時の新聞が報道しております。しかし、党の大会では松村氏が敗れまして、あなたが総裁の地位を再び確保されました。しかし
日本の政界のためにも、
自民党のためにも、金権
政治という大方針が
自民党の大会において是認されたものとは私は思いたくありません。私は
政治に必要なものは、金と力ではなくして、
政治に対する燃え上る情熱と、深い責任感と、
国民に対する愛情だと
考えております。
国民の
政治に対しまする信頼感を高めるためには、特に
総理の地位にある人に要求しなければならないのいのは、この深い責任感ではないかと
考えるわけであります。法律的な責任はもちろんでありますが、それ以上に必要なものは
政治的な責任であり、道義的な責任だと
考えるわけであります。
日本国憲法は、
総理大臣に対しまして世界に比を見ないほどの強力なる権限を与えております。アメリカ大統領に比べましてもまさるとも劣らない権限を、あなたはお持ちになっていると私は思います。しかし、憲法が施行されましてからわずかに十二年、この
総理大臣の強力な権限に対しまする裏づけとしての義務や責任についての法は、いまだ完備されておりません。慣習法とも言うべき不文法も成立はいたしておりません。先例も確立されておらないと思います。それでありますからこそ、なおさら
政治的責任と道義的責任の観念は、
総理大臣に要求されるものだと私は
考えます。
衆議院の
予算委員会におきまして、
社会党の同僚から、賠償に関する汚職の問題について、
政府を盛んに追及いたしました当時、
総理大臣、
運輸大臣、外務
大臣等は、汚職の事実はないという、この一点張りで
委員会は一応切り抜けたわけでありますが、われわれとしては賠償問題の経過や、
岸総理の現在までの行動や、私生活等から見まして、あなたの汚職の事実を私は確認いたしております。確信をいたしております。岸
内閣は汚職に汚れた
内閣だという確信を持っております。おそらく私は、
国民の大多数も、私と同じような確信を持っておると思います。証拠には、当時の国内の新聞雑誌で、岸
内閣には汚職の疑いなしと書いたものが、ただの
一つでもあったでありましょうか。あらゆる論説が汚職の疑惑のあることを肯定していることは、
岸総理もお認めにならなければならないと思います。しかし、現在の
議員の職権では、確実な証拠を握ることは困難であります。野党におる者としては不可能に近いものだと
考えております。しかし証拠さえなければ、法律上の問題にさえならなければ、いかに
国民が疑惑を持とうとも、責任をとる必要なしと、岸首相はお
考えになっているかどうか。道義的責任について私はお答え願いたいと思うわけであります。
歴代のアメリカ大統領が、常に最大の注意をもって警戒いたしておるのは、御
承知のファヴォリチズムという言葉であります。特殊の人に特殊な便益を与える、これを最も警戒いたしているわけであります。
政治家は、公務員は、十分この点は
考えなければならないものだと思います。それなるがゆえに、部下の過失に対しては、事このことに関してはきわめて峻厳なる
態度を持っていることは御
承知の
通りであります。あなたの尊敬されておりまするアイゼンハワー大統領も、かつて最も有能な、最も信頼いたしておりましたシャーマン・アダムスを、汚職の容疑ありといううわさだけで解職したことも御
承知の
通りであります。アメリカ大統領が最大の権力者としての地位にありながらも、今日まで
国民の尊敬と支持を受けて参りましたものは、右の心がまえを細心の注意をもって私は実践して参ったからだと思うわけであります。この
態度は、
日本の
総理大臣としても十分学ぶべきものでなければならないと
考えるわけであります。岸
内閣に対しまする汚職の疑惑というものは、国内に充ち溢れております。この際、
岸総理にお尋ねしたいのは、汚職の疑いある
大臣を罷免するだけの決意があるかどうかということであります。
政治に対しまする
国民の信頼を高めるために、
岸総理自身責任をとるお
考えがあるかどうか、この点をお伺いいたしまして、私の
質問を終りたいと思います。