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1959-03-05 第31回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月五日(木曜日)    午前十時三十分開会   —————————————   委員の異動 本日委員剱木亨弘君、島村軍次君及び 市川房枝君辞任につき、その補欠とし て前田佳都男君、中山福藏君及び八木 幸吉君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木暮武太夫君    理事            小柳 牧衞君            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            西田 信一君            堀木 鎌三君            片岡 文重君            鈴木  強君            矢嶋 三義君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            小幡 治和君            紅露 みつ君            小山邦太郎君            下條 康麿君            杉原 荒太君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            前田佳都男君            横山 フク君            荒木正三郎君            北村  暢君            栗山 良夫君            坂本  昭君            高田なほ子君            戸叶  武君            中村 正雄君            羽生 三七君            平林  剛君            松浦 清一君            田村 文吉君            中山 福藏君            千田  正君            市川 房枝君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    厚 生 大 臣 坂田 道太君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    郵 政 大 臣 寺尾  豊君    建 設 大 臣 遠藤 三郎君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   国 務 大 臣 山口喜久一郎君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 松本 俊一君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    自治庁財政局長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    大蔵省銀行局長 石田  正君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    厚生省社会局長 安田  巖君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十三年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出衆議院送  付)   —————————————
  2. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会開会いたします。  委員の変更について御報告いたします。  三月五日島村軍次君が辞任し、その補欠として中山福藏君が選任せられました。   —————————————
  3. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算並びに昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)を一括して議題といたします。  昨日に引き続いて総括質疑を行います。
  4. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について。  私は、この際、本予算案審議態度について、政府と並びにその与党に対して反省を求めたいと思います。  昨日から総括質問審議に入ったのでありますが、実は私、昨日の冒頭に、政府に対しても注意を喚起したいと思っておったのでありますが、実は遠慮しておりました。御承知通り、昨日は十時半から開会をするという予定になっておりましたにかかわらず、総理以下政府の皆さんが出席ができないために、十五分間開会が延びております。なお、きのうの議事進行を見ておりましても、矢嶋委員からも御意見がありましたように、政府予算に対する態度が、もうすでに衆議院を通過している段階で、何かしら参議院軽視考え方が出ておるんじゃないかということを私は非常に心配するのであります。もちろん、衆議院段階でいろいろ御苦労なさっておりますから、お疲れのことと思います。しかしながら、国民衆参両院予算審議期待をかけておるわけでありますから、少くとも本予算案を提案している政府当局者が、予定された時間には必ず出ていただくということでなくちゃ困ると思うのです。少くとも私は、官房長官ぐらいは十時にはこの部屋に出てきて、そうしてたとえば、総理やその他の閣僚の御都合がこうなっているくらいのことは事前にわれわれに話をして、それが認められている理由であれば、われわれは了承します。しかし、何らそういう誠意を見せないということは、まことに私は遺憾だと思います。  さらにまた、与党諸君にしてもそうです。今やっとかり立ててきて、総理出席してからもう十分たちますが、にもかかわらず、予算案審議ができないというような、こういうばかげたことでは私は困ると思う。われわれも、もちろんその責任を感じますが、どうぞ一つ国民は非常に期待を持って参議院審議を見詰めておるわけですから、政府与党としても積極的に、もう少し肝っ玉を入れて、本格的にこの会議に出てくるように、委員長からも、一つこの問題については留意をしていただいて、あしたからこういうことのないようにやっていただきたいと思います。
  5. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) お答えいたしますが、ただいまの鈴木委員議事進行の御発言は、お聞きの通りでございます。官房長官もここに出席して聞いておりますので、昨日も、本予算の円滑な運営のために、政府誠心誠意御協力をしていただかなくちゃならぬということを申し上げてある通りでございます。特に委員長からも、今後の政府出席その他により、答弁正確等により、議事運営に協力するように、特に要望をいたします。
  6. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと待った。ただいま鈴木君から委員長に要請があったですが、それでケリをつけるわけにいかないと思います。昨日、あなたはちょうど中座されておりましたが、普通の状態だったら、委員会休憩になる状況だったわけです。五時十五分現在、昨日ここにおられた大臣は、岸総理以下六人です。それから、届け出て退席されたという人がお一人。十人の方は、事務当局に何らの了解もなくて午後五時以後不在になられた。で、五時五十五分になって運輸大臣が一人、恐縮したような格好でお帰りになりましたですがね。そういう状態で、普通だったら、これは休憩になる状況だが、われわれは審議に協力して、そしてきのう予定通り終ったわけです。それぞれ国務大臣も御都合ありまし、ようから、事務局を通じて各会派に了解を求めれば、われわれの判断で快く了解を与える場合もあるわけです。きょうは総括質問の第二日目ですが、依然として大臣のお顔が見えない。こういう点は遺憾だと思います。きのうは総理もごらんになった通りです。きょうもこの通り、きょうの開会も、あなたの率いる自民党さんがおいでにならなかったためにおくれておる。自民党総裁並びに岸内閣総理大臣として、一言ここでごあいさつがあってしかるべきだ。委員長岸総理発言を求めさせて下さい。一言あいさつがあってしかるべきだ。
  7. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) どうですか。今の鈴木さんのお話はごもっともで、出席しておる総理大臣以下よく承知しておりますが、委員長としても、特に今後、答弁の正確あるいは出席等によって予算のなめらかな運営に協力することを特に要望をいたしたわけでございます。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は、岸総理発言を求めておるのです。
  9. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) あなたの御発言は、まことにごもっともだと思うものですから、そういうふうに申し上げた。また与党出席も、与党理事の方が非常に心配をしてやられておるようで、今後遺憾のないように努めさせるようにいたしますから、どうぞそれで御了承願いたいと思います。
  10. 市川房枝

    市川房枝君 私は、岸総理に実は貸しがあるわけです。といいますのは、昨年秋の臨時国会予算委員会で、総理は、私の質問の直前に、御不浄に行くとて逃げ出しておしまいになりまして、とうとう私は質問ができなくなってしまいました。もっとも、その御不浄おいでになるということは、総理御自身がおっしゃったのではなくて、当時の与党理事の方がおっしゃったわけなんです。そういうわけで、きょうの私の質問に対しては、一つ明確にお答えを願いたいと思います。第一に、参議院あり方ということについて、総理のお考えを伺いたいと思います。昨年秋の臨時国会は、ただいま申しましたように、参議院予算審議中に、衆議院における会期延長の問題から、自社両党が対立いたしまして、ストップしてしまいました。参議院には、自社両党に所属していない緑風会無所属クラブと私どもと、中立議員が約三十名おります。両党の対立を手をこまぬいて見ておることはできないというので、三派の議員が全部会合をいたしまして、事態の収拾について相談をして、私も、代表の一人として、当時官邸に岸総理をおたずねしたことを御記憶いただいておると思います。あのあと社会党にも、衆参両院議長にもお目にかかりまして、いろいろ申し上げたのですが、とうとう私どもの希望はいれられずに、変則国会  に突入してしまったわけでございます。その後も、私どもは、微力でありますが、国会正常化のために、三派で幾分の努力をいたしました。こうした経験を通しまして、私は、もしあの際、参議院自民党が十名ぐらい少く、私ども中立議員が本名ぐらい多かったとしたら、すなわち、私どもがキャスチング・ボートを持っておったら、あるいはこの自社両方からもう少し私どもの主張に関心を払っていただけたのではなかったか、こう思うのです。いや、もしそうでありましたならば、あの変則国会の原因となりました警職法、これを総理はあんなに簡単にお出しにならなかったでありましょうし、また、あんなに強引に押し通そうともなさらなかったのではないかと思います。つまり参議院衆議院同様に政党化し、自民党が過半数を占めているという現実が、ああした変則国会を生んだのではないかとさえ思います。政府与党としては、参議院でじゃまされるのはいやでしょうから、党所属議員を多数送り込みたいとお考えになるのは無理もないと存じます。これは、社会党の場合も同様でありましょう。それはわかりますが、しかし、国民立場からいえば、数で衆議院を無理押しに通して参りましたような場合に、参議院で押えたり、あるいは修正したりする必要があると思います。参議院衆議院と同様に政党別になってしまったら、参議院は、もはや第二院としての意義をなくしてしまうのではないかと思います。私は、六年近くも参議院におりまして、実はいよいよその感を深くしておるわけでございます。総理は、参議院が現在のようにだんだん政党化していってもよいとお思いになっておいでになりましょうか。また、どうしたら参議院の権能を発揮できるとお考えになっておりますか。それについての御所見をまず伺いたいと思います。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国会両院制度、すなわち今、市川委員から御質問の、参議院両院制度としての、あり方はどうあるべきかという問題につきましては、これは大いに考えなければならぬ問題であると思います。御意見のように、参議院衆議院と同様な政党にすべてなってしまうということになるというと、両院制度としての意義が非常に失われはしないかという懸念につきましては、いろいろ、政治運営の上からも、そういう確かに弊害があると私は思います。ただ、選挙制度でこれを選出するということになりますというと、民主主義政治国会政治はやはり政党政治であるというのが、これまた現実民主政治国会政治運営していく上から申しますというと、当然そういう結果になると思います。また、それを離れて、全然選挙というものを個人的な、全然そういう組織やあるいは政党というものを離れて選挙を実現していくということは、実際問題としては、ほとんどこれは私は実現できないと思います。そこで、この両院制度意義を十分に発揮せしめるためには、参議院に、中正な立場においての参議院使命を果すという意味において、選挙についても現在の選挙制度とは違ったものを考える必要があるのじゃないか、あるいは選挙制度にかわるような議員をある程度持っておるということが必要なんじゃないかというような議論が、憲法学者やあるいは政治学者の間にも論議があることは、これまた御承知通りであろうと思います。ただ今日、自民党におきましても、あるいは社会党におきましても、やはりなるほど自由民主党であり、日本社会党として一つの政見ではございますが、参議院議事運営につきましては、両党も、ある程度参議院立場並びにその使命考えて、一つ自主性というものを議事運営につきましては認めておるのでございます。従って、私どもも、ある程度党というもので政策をきめ、また党のいろいろ国会対策運営もきめておりますが、しかし、本部もしくは衆議院が唯一にそれをきめるのじゃなくして、参議院には参議院自民党として政策審議の何が、あるいは議案の処理、国会運営というようなものは、本部考え方から独立して、独自性をある程度認めて運営して、そしてお話のような、これが完全な、衆議院と同様な政党化して、そうして二院制度意義を失うようなことのないような配慮が加えられております。しかしながら、先ほど申し上げますように、現行選挙制度をそのままと実行していく限りにおきましては、私は、特に参議院が何と、いっても衆議院と同様な政党化する傾向が強いと思います。これらにつきましては、今後憲法調査会一つの重要な審議題目一つとして今後研究して参りたい。しかし、現行法の上におきましても、自民党におきましても、社会党におきましても、先ほど申し上げるように、参議院の独自の立場、また両院制度意義考えて、議案の扱いや国会運営等については、やはり参議院独自性を認めて、両院制度意義を全然失うようなことのないように配慮はいたしております。
  12. 市川房枝

    市川房枝君 第二番目は、二大政党制の問題について、総理のお考えを伺いたいと思います。総理は、国会においてしばしば二大政党化二大政党化という言葉をお使いになります。なるほど、現在の日本には、自由民主党社会党二つ政党しかないと言っていいと思います。共産党もありますけれども、まだ少くて、勘定に入らないと言っていいでありましょう。しかし、私に言わしめれば、一つの大きな自民党という政党と、それから社会党というずっと小さい政党と、二つあるわけでありまして、厳密な意味では、私は、二大政党にはちょっと当らないのじゃないか、こう思います。民主政治において二大政党制がいい、理想だということも言われるのでありまして、私もそれは賛成でありますが、アメリカやイギリスのように、二つ政党勢力が伯仲しておる。選挙によって政権が交代し得る。従って、二大政党相互に自重し、あるいはそれを監視し合う、それだからいいのだ、こう思います。しかし、今申しましたように、日本では、その二つ政党の間の大きさが相当違うわけでございまして、現状では、選挙をしても、政権を移動することもよくできない。社会党がどのように反対しましても、数で押し切られてしまう。その結果が警職法あるいは変則国会ということになって、議会政治に対しての国民の信頼をなくしていくことになるのではないか。従って、現在のような二大政党では、やはり私は望ましくない。早く小さい方の社会党が大きくなってほしいと私は考えておりまするが、吉田元首相は、社会党を育成するとおっしゃったことがありました。岸総理は、社会党と対決すると始終おっしゃっておるようですが、二つ政党あり方が今のようにびっこで、自民党半永久政権が続くということが、日本政治のためにそれでいいとお考えになっておられますかどうか。その点を一つ伺いたい。  それからなお、私の言う二大政党の実現にはまだ多少時がかかる。それまでむしろ私は第三党があった方がいいのではないか。第三党というものがありますと、政治を腐敗せしめるとかいうことが言われるのでありますが、しかし現状よりはいいのではないか、そう私には思われる。実はこの間自民党総裁選挙で松村氏に投票された反主流派と申しますか、そういう方々が第三党を作ってほしかった。これからでも作ってほしいというような意見が相当私のところには参っております。総理はこの第三党というものについてどういうふうにお考えになっておりましょうか。この二点について伺いたいと思います。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二大政党は私は従来とも国会政治を民主的に運営し、民主政治を完成するためにはやはり政党を基礎とした政党内閣制によらなければならない。しこうしてその政党は二大政党が望ましい。この選挙国民がきわめて端的にその投票の際にいずれの政党政権を託すべきかという判断を直截簡明にする意味から申しましても、選挙の場合に多数の政党があり、同じような政策やあるいは意見等判断に迷うというようなことのないような明確な二大政党民主政治育成の上において適当である、かように私は考えておるのでございます。それで二大政党論を唱えております。ただ現状日本の二大政党がそれでは望ましい状態であるかという点に関しましては、私はそうは思わないことがたくさんあります。政策につきましても、国の根本的な外交あるいは防衛というような根本のなにについて、もちろん政党がある種の意見を異にすることもありますけれども、基本的な考え方が違っておるようでは、非常に国民としても選挙の場合に判断に苦しむようなことが多いだろうと思います。それからまた選挙制度そのものにつきましても。現在の中選挙区制というようなものがほんとうに二大政党を健全に育て上げる上において適当であるかどうかも私は非常に疑問を持っております。地方選挙等に見ましても、かりに一人の人を一選挙区から出すというような場合におきましては、あるいは自民党が勝つにしましても、社会党が勝つにしましても、両方勢力というものは、投票に現れた数は比較的近接するのが実際の実例でありまして、従って小選挙区にするというと、私はずいぶんこの前、社会党諸君から強い反対を受けたのでありますけれども、むしろ社会党勢力というものが私は伸びる。そうして二大政党が健全にある程度近寄った勢力になるというのが私の見通しでありまして、今のような制度ではやはりほとんど二対一に近いような選挙の結果が現われて非常な差が出てくるというふうになるのじゃないかと思います。従って選挙制度にもこれは関係があることであります。それから政策の点においても根本的に先ほどお話しましたような差異が出てくるのであります。こういう意味においてわれわれの方においても考えなければならない。また社会党におきましても大いに反省をして二大政党を健全に育てていく。お話通り今日直ちに私どもとして半永求的政権をわれわれの方において独占しようという考えを持っておるわけではございませんけれども、しかし結果がこういうふうに選挙ごとに現われてくるということにつきましては、これは両政党とも大いに反省して、そして二大政党を健全に発達せしめ、この間に民主政治を完成していくように今後も努力していかなければならない。そこで現状状態において二大政党がそういうふうな状態にあるということであれば第三党論があることが、これは永久のなにではないとしても、現状からいうとそれはむしろ日本国会政治というものをよくするゆえんじゃないという議論も、私も一部にあることは承知いたしております。しかし私はやはり民主政治選挙政治でございまして、過去の選挙にも例を見たのでありますが、政党がたくさんあるときにおける選挙というものの混乱は二大政党の場合よりも非常に複雑な様相を呈する。また政局が常に第三党の動向によって支配されるということによりましてきわめて不安定な形をとる。またその間にいろいろな弊害を生ずる面も、これは過去においてわれわれが経験したことでありますし、将来においてもやはり考えなければならぬ。要は民主政治というものは、なかなか独裁政治や何かと違って、お互いによくしていくための不断の努力をしんぼう強くやっていくことであって、そして弊害については常にわれわれが反省をし、そこに改善を加えていくという、たゆまざる努力をしていくことが必要なのであります。そのためには各方面からのやはり正しい、きびしい批判が行われ、そして選挙を通じて国民全体の民主政治に対する認識を深めていくように今後とも努力していかなければならぬ。なかなか戦後十数年日本民主政治の伸びていった影態につきましては、いろいろまだ弊害もたくさんあるし、足りないところもあるし、われわれとして反省しなければならぬ幾つかの問題もあるように思います。そういう不断の努力を私としては続けていきたいと思います。今日、二大政党がうまくいかないからすぐ第三党を作ろうというような考えには私としてはどうも賛成ができないのでございます。
  14. 市川房枝

    市川房枝君 次には、選挙に関連して幾つかの問題について総理、法務大臣自治庁長官にお伺いしたいと存じます。四月の地方選挙及び六月の参議院選挙を前にいたしまして、選挙事前運動なるものが盛んに行われております。特に東京都の知事候補者にあげられている方々のは、表に出ておりますのはポスターなのでありますが、そのほかいろいろなことが行われているようでありまして、従ってそのための費用も大したもので、東さんの方は何でも何億とかうわさを聞いております。選挙で金を使えば汚職事件が必ずついて回る。明るい都政が暗い都政になるというので、平生公明選挙運動関心を持っております婦人団体代表がせんだって両方候補者及び警察当局に申し入をいたしました。東さんは自民党の推薦でおられるようですが、選挙の総指揮は川島前幹事長がなすっておいでになると聞いておりますが、自民党総裁として総理はこの事前運動というものについて、ことに今度の事前運動についてどうお考えになっておりますか、伺いたいと思います。  それからまた警察当局は、今度はあまりひどいから告示前でも検挙をするというふうにおっしゃっておりましたが、今日までにどの程度の処置をなさいましたか、愛知法相からその点を伺いたいと思います。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 公明選挙を実現し、選挙違反というものをなくしていかなければなりません。特に事前運動につきましてその取締りを厳にすべきであるという声はいろいろ各方面からいわれております。特に選挙が近づくにつれまして、これが注意を喚起するということが非常に多いように私は思います。そこで今おあげになりました東京都知事の選挙につきましては、これは自民党は東隆太郎君を推薦候補として推薦をいたしております。日本社会党は有田君を公認して、この二人が戦うということになっております。もちろんこの選挙事前運動というものは、これが法規においても取り締ることになっておるものにつきましては取り締らなければならないことはいうをまちません。ただ、こういう大きな選挙区における選挙といたしましては、候補者とも事前にある程度自分の存在なり、あるいは将来選挙に立候補した場合における認識なりを高める意味において、事前におきましていろいろな行動に出る、しかしそれがことごとく事前運動として一切多少でも選挙関係あるものはいけない、こう厳格に言うことのできないことも、これまた実際問題としてはある。ここの限界をどこの点に置き、どの点を是正の線とするかということが結局問題であると思うのです。従って要は、結論として言えば、国民全体が公明選挙というものに徹して、そういう事前運動やその他のことは受けつけないということになれば、これは一番理想的なんですけれども、そうばかりは言っておられませんから、やはりわれわれとしては明確に線を引いて、それを越えた行動がないように取締りの何も厳格にやる必要がありますし、また党としても推薦母体としてそれを逸脱しないように十分に警戒していく必要があると思います。全体としまして事前運動の取締りにつきましては、過般法務大臣も検察当局等の会議におきまして特に注意を喚起いたしております。なお具体的の問題につきましては、それぞれ主管大臣の方からお答えいたします。
  16. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 本年はちょうど地方選挙、あるいは参議院の通常選挙の年でございまして、選挙の総件数から申しますと六千件を越すような選挙が全国で行われるわけです。従いましてただいま総理からもお話がございましたように、第一に選挙の公明運動について、政府といたしましては自治庁が中心になりまして、全国の選挙管理委員会その他に呼びかけ、また直接国民に対して呼びかけまして、大いに公明選挙運動を展開しておるわけでございますが、取締りに対する態度といたしましては、今年そういう状態でございますから、戦後、初めての試みといたしまして、特に一月の末に全国の検事部長会同を開催いたしまして、特に選挙の公明を期する、あるいは悪質なるものにつきましては不偏不覚に公正な立場で取締りをするということについて、特に指示をいたしました訓示をいたしたわけでございます。選挙の期日前におきましても悪質なもの、特に証拠隠滅あるいは逃亡というようなことが予想されまするようなものにつきましては検挙を行なっております。どのくらいの件数かというお尋ねでございましたが、本年の一月から二月末日現在までに公職選挙法違反といたしまして検察庁で受理しましたものは二千百九十三名に上っておるわけでございますが、これは検察庁で処理いたしましたものでございますから、第一線の警察関係で捜査をいたしておりますものは、これよりもはるかに件数は多いのではなかろうかと思うわけでございます。
  17. 市川房枝

    市川房枝君 次には、恩赦と選挙違反についてお伺いいたしたいと思います。  私どもはかねて皇太子様の御慶事に際して行われる恩赦の中に、この前のような選挙違反を含めてはならないと心配いたしまして、緑風会及び私どもの無所属議員の発議で、恩赦法の一部改正の法律案を提出して参りました。昨年の二十八国会参議院を満場一致通過いたしましたが、衆議院の解散で流れてしまったわけです。昨年暮皇太子様の御婚約が発表されましたから、恩赦の問題もいよいよ現実の問題となって参りました。また選挙を前にして事前運動が盛んなのは、再び選挙違反が恩赦の対象になることを期待しているからだとも言われて参りました。法務大臣は、婦人団体の陳情に参りましたときに、自分としては、選挙違反を含めないつもりだ、こうおっしゃいましたけれども、どうも少しはっきりしない点がございました。御婚儀をあと約一ケ月後に控えました現在、政府としてはすでに恩赦の範囲の腹案をお持ちになっているのではないかと思います。選挙違反を恩赦の中に含めては困るという考え国民の間にもずいぶん強くございます。その点一つ総理からはっきり伺わしていただきたいと思います。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 皇太子殿下の御成婚の際に、恩赦を行うということにつきましては、過去の先例もございますし、これらを十分今参酌して、最後の案をきめたいと思います。  御指摘の選挙違反をこれに含めるかどうかという問題、特に本年は御承知通り選挙が四月以降全国にわたって広く地方選挙参議院選挙が行われようとしている。これを含めるか含めないかということは、いろいろの関心を非常に高めております。しかし、過去の皇太子殿下御成婚の場合にもこれは含めておりません。私は十分に各方面の情勢等も勘案して、最後の決定をいたしたいと思っておりますが、しかし、選挙違反の問題を特にこれに含めるということはこの際として適当でないというのが私の考えでございます。
  19. 市川房枝

    市川房枝君 選挙に関連してちょっと伺いますが、せんだって行われました自民党総裁選挙についてでございます。総裁の選挙は、これは自民党の党内問題でありますが、しかし総裁におなりになった方が総理におなりになるのでありますから、これは一般国民にも非常に関係が深いのでありまして、従って、その選挙は公明でなくてはならないと思います。ところが、その総裁選挙には相当金が動いている。買収、供応等があったらしい。それでは困るから、総裁の選挙にも公職選挙法といいますか、別の法律でありますか、そういうものを作ったらいいじゃないか、これはある評論家が新聞にそういう意見を出しておられましたが、総理はどういうふうにお考えになりましょうか。  それからあの際総理と対立の松村候補がお立ちになりましたが、松村さんの方は、支持されました議員方々が、各自に五千円ずつお持ち寄りになって、そうして運動費とされた。その会計の報告も新聞に出ておりましたが、私は、これは大へんけっこうだったと思います。次の総裁選挙がいつになりますか、二年先になりますか、総理は、そういうときに選挙の方法をそんなふうにでもなすって下されば、大へん国民が喜ぶといいますか、安心するのでありますけれども、そんなことについての御感想、御意見をちょっと伺いたい。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 過般行われました自民党総裁選挙につきまして、今御質問の中にありましたように、何かこの際に供応であるとか、あるいは買収というようなことが行われたのじゃないかというふうなお話がございましたが、私は、全然これはなかったと確信をいたしております。私の対立候補であった松村君を支持する人々の間にも、そういうことはなかったことを私は確信すると同時に、私を支持した人々の間におきましても全然それはなかった。実はこれは党内のことでございますけれども、当時の事情から申しまして、私は選挙のときは、もちろん一応辞任してそして候補者として立候補したわけでありますが、それまで私が現職の総裁でありますがゆえに、党内の人々に対して私自身が特に運動し、私を支持する人々が運動して私を支持しようというような動きも、当時の事情から申しましてなかったわけであります。そういうことは全然私はなかったことを確信いたしております。ただ、この選挙について、公職選挙法を、もしくはそれに類したものを何か考える必要があるかということでございますが、これは今日は社会党の方はまだ大会等が延ばされているのでありますが、やはり社会党の方におきましても、公選して委員長をきめるというふうな党則になっているように承知いたしております。もちろん、将来社会党が多数党を取られれば、社会党委員長になられる人が総理となられるというようなことでございますから、お互いに非常に重大な選挙であることは、また、国民関心を持つことは、私も特に考えなければならぬと思います。しかし、両方ともそういうふうな党内の党員の間における総裁の選任でございますから、一般の公職選挙法等とはおのずから違っており、むしろ、党自身、党員自身が自粛し、また、その意義考えて、最も適当な人を総裁に選ぶというべきものであろうと実は考えております。
  21. 市川房枝

    市川房枝君 ついこの間、青木自治庁長官は、新聞で、選挙法をもっと自由なものにしたいというような御意見を発表しておられました。それは一体どういう意味で、ございましょうか、具体的に内容を伺いたいと思うのですが、自由にすることはけっこうだと思います。ただ、今のような選挙界の実情でありますると、自由にしたら、もっと選挙に金が要る、選挙に金を使えば必ず政治が腐敗する。金のかからない選挙、金がなくてもよい候補者が当選できるような選挙制度というものを考えていただきたいと思っておるわけであります。今お考えになっておりまする案の内容といいますか、少し具体的に伺いたいと思います。それからなお、自治庁長官は、先ほど法務大臣からちょっとお話がありましたが、公明選挙運動を主管をしておいでになっております。公明選挙運動のためには、相当の国費が支出されておりますが、その運動でどの程度効果が上っているとお考えになりますか、それもあわせて伺いたいと思います。
  22. 青木正

    国務大臣(青木正君) 選挙運動に関する私の考え方に対する御質問でありますが、これは政府の方針ということでなしに、実は正直に申し上げますと、私の個人的な見解を二、三話したことがあるのであります。それは、衆議院選挙委員会等におきましても若干そのことを申し上げたのでありますが、現行選挙法は、御承知のように、明治二十二年に大体イギリスの方式をまねて発足いたしたのでありますが、最近になりまして、各国の選挙法等を比較して参りました場合に、どの国の選挙法を見ても、日本ほどこまかく規定した法律はあまり見当らないように私は考えておるのであります。と申しますのは、たとえば一つの例をとって申し上げますと、選挙運動のために自動車を使う。その自動車は規制されておる。それに乗る人も規制されておる。使う拡声機も規制されておる。また、その上で連呼することがいかん。それに掲げる旗も寸法幾らでなければならん。こういうような形式的な問題について非常に繁雑な規定が設けられておりまするために、取締当局の意向を聞きましても、まことに取締りが非常に厄介であり、また、ややもすれば悪意なくしてつい形式的な犯罪に陥るおそれがある。こういうことでありますので、私は、もう今日になりまして国民の民度が高まって参りましたので、あまり形式犯にこまかい規定をすることはどうか、かえってこれは取締りも困難であり、また、選挙の明朗を欠くことになるので、むしろ、そういう点はもっと簡略にして、そうでなしに、実質犯つまり供応であるとか買収であるとか、そういう点に重点を置いて強く取り締る。そのかわり、形式的な犯罪につきましては、もっと自由な運動ができるようにしたほうがいいのじゃないか。その自由な運動にする結果として、御指のように、あるいはそのためにポスターをたくさん張ってみたり、そういう弊害はあるかもしれません。しかし、あまりそういうむちゃなことをやると、むしろ選挙民がこれを批判しまして、そういうことに対して選挙民が批判する結果として、あまりむちゃな運動も、かえっておのずから自制されていくのじゃないか、こういう考えもありますので、もうそろそろ日本選挙法というものも、もう形式犯にばかりこまかい規定をすることをやらない、また、実質犯を取り締るという方向にやっぱり変えていくことがいいのじゃないか。こういうことで、実は衆議院側におきましても、これは非公式でありますが、社会党自由民主党両党の選挙調査特別委員会方々のうちで小委員会を作りまして、いろいろそういう問題を検討していこうと、こういう空気が動いておるのであります。私自身といたしましても、もうこの程度で少し日本選挙運動のあり方考えてみる必要があるのじゃないか、こういうことを私申し上げたのであります。また、警察方面あるいは検察庁の方々意見を聞きましても、取締りのできないような、たとえば、連呼なんかという規定がありましても、なかなかこれを法規通りに取り締ることは、実際問題として困難でありますので、むしろそういう規定は簡略にしてほしいというのが、取締当局のお考え方であるようでもありますので、この機会に少しそういう問題を真剣に検討してみたいと、こういう気持を、私個人の考えでありますが、持っておるのであります。  それから、公明選挙についてのお話しであります。御承知のように、本年は参議院選挙もありますので、毎年の公明選挙についての委託費一億円のほかに、特に三千七百万円ほど予算を計上いたしまして、先般先月の二十一日に全国の都道府県の選挙管理委員長会議を開きまして、一そう強力に公明選挙運動を展開するようにお願いいたしたのであります。現在やっておりまする公明選挙運動は、市川先生御承知通り、主として話し合い運動を中心として、そのほか。パンフレット、ポスターとかやっておりますが、私ども今日までの実績を見まして、やはり話し合い運動が一番いいのじゃないか。というのは、結局、選挙民がみずから批判するという気持になりますれば、悪質なたとえば買収とか供応とかありましても、それを受け入れない。こういう気持を選挙民が持つためには、やはり話し合い運動というようなことで進めていくのがいいのではないかということで、話し合い運動を中心にして現在もやっておるのであります。実際にやっておりまする所を私二、三視察をいたした経験もあるのでありますが、やはり何を申しましても、話し合い運動の徹底したところは、私は具体的に選挙違反の数字まで調べてありませんが、相当効果があるんじゃないか。ただしかし、全般的に申し上げまして、まことに残念に思い、また遺憾に存じますことは、昨年の衆議院選挙における違反者の数というものが、その前の選挙の違反者の数と、ほとんど変っていないのであります。そういう点から見ますると、公明選挙運動もあまり効果がないんじゃないかという、あるいは御批判もあるかと思うのでありますが、しかし、選挙の公明という問題は、やっぱり絶えず努力しまして積み上げていって効果を期待するほかないのでありまして、こういうことをやったから、すぐ翌日からいいというものでは私はないと思うのであります。そこで、まことにしんぼう強い努力を要することと思うのでありますが、私どもはしんぼう強くそういう話し合い運動等を中心とする公明選挙運動を積み上げていって、そして、一日も早く明るい選挙ができるようなふうに持っていきたいと考えております。
  23. 市川房枝

    市川房枝君 次に、総理は、先ほどもちょっとお話しございましたけれども選挙制度については、熱心な小選挙区論者であることも承知しております。その法案といいますか、国会にいつごろお出しになるような御計画がおありになるかどうか、お伺いしたいと思うんですが、私は、小選挙区制というものに必ずしも反対ではございません。ただしかし、小選挙区制を実施するんであったら、選挙違反というものに対して、イギリスでやっておりますような強い連座制の規制を加えないと、日本現状では、もっと選挙は悪くなるんじゃないかという心配を持っておるのでありますが、その点をいかがお考えでしょうか。それから私は、選挙制度としては、西ドイツで実施しておりまする小選挙区制と、それから比例代表制を併用している、有権者一人で二票投票ができまして、一票は小選挙区で直接候補者に入れる、一票は政党投票するというやり方をやっておりまして、私、前に参りましたとき、これも実際調べて参ったのでありますが、このやり方は、両方の欠点を補っていると申しますか、ちょうど日本で生まれても大へんいいんじゃないかというようなふうに実は考えておりますが、総理は、この西ドイツの選挙制度を御研究になっておいでになりますか、あるいは、こういう問題については、どういうふうにお考えになっておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来お述べになりますように、選挙を、できるだけ公明選挙が実行できるように、いわゆる金のかからない選挙、しかも、十分国民政党を批判できるような選挙政党中心の選挙が行われるような形に持っていきたいと私も考えておりまして、この意味において、小選挙区制ということを従来も主張いたしておりますし、なお、これについては研究もいたしておるのでございます。ただ、この問題は、理論の根本的な考えは別として、実際問題として非常に困難な問題は、選挙区の別表をどういうふうに作るかということがむずかしいのでございます。あるいは、それの作り方いかんによっては、ゲリマンダーという批判も出ますし、また、現在とにかく地方的に出されておる定員というものがございまして、それを人を減すということも、これは非常にむずかしい。そうなるというと、これの人口の増加に関して全体の数をふやすというような問題も関連をしてきます。こういう実際に技術的な問題点について国民が納得し、公正なものであるというためには、やはり選挙に直接関係のない第三者にこういう問題を検討せしめ、その成案を得ることが、私は、一番適当であり、やはり政党であり、自分自身が選挙に直接関係しておりますというと、やはりその利害関係というものは人情で出てくるわけですから、やはりそういう第三者の公正な案によって、こういう技術的な問題はきめられることが適当であろう。こういうことを考えてみますると、現在あります選挙制度調査会にも、さらに適当な有識者を加えて、十分一つ審議をいたしてみたい、こう考えております。従って、今日まだ成案を得ておるわけでもございませんし、根本の考え方は、さっき申し上げた通りでありますけれども、具体的な問題については慎重に一つ検討して成案を得たいと、こう思っております。これに関連して、今、西ドイツの比例代表制を加味した、小選挙区を加味した制度はどうだというお話しでございますが、私も多少その点については検討もいたしておりますし、従来そういう説を支持しておる学者等も私は承知いたしております。ただ、これを日本に実行する場合には、なおやはり日本の特殊の事情もございますので、そういうことをあわせて十分に一つ、今申しましたような権威のある機関で検討してもらいたい、そうして結論を出したい、こう思っております。
  25. 市川房枝

    市川房枝君 次には、政党への政治献金の問題について、自民党総裁としての総理にお伺いしたいと思います。二月二十五日の各新聞によりますと、財界の政治献金グループであります経済再建懇談会の総会がありまして、過去一年間に自民党に対して毎月二千万円ずつ年に二億四千万円、衆議院選挙の費用として五億五、六千万円、勤評、警察法改正運動に九千万円、その他合計自民党に対して約九億円寄付をなすったように出ておりました。新聞の切り抜きを私はここに持っておりますが、どの新聞も、自民党へ月額二千万円とか、えらい見出しで実は書いておるわけでありますが、これは国民みな相当びっくりしたと思います。私もこれを見て、なるほどと思って、まあ、何といいますか、総評ひもつき社会党という言葉もあるのですが、このことを見ますと、財界ひもつき自民党ということになるのかなと実は思ったわけでありますが、政治資金規正法によって、その献金の内容をはっきり発表していることは、私は、内緒で、やみでするよりはけっこうだと思います。しかし、政治献金は政治を腐敗させる原因ともなるものだというので、アメリカでは御承知通りに、銀行、会社、労働組合というものからの政党への、あるいはまた、選挙費用としての寄付を禁止しております。それからまた、個人としての寄付はある程度いいのですけれども、それも、一年を通じて一人五千ドル以上寄付しはていけないというような規定があって、そういう違反に対しては、相当の厳罰を規定しておるようであります。また、政党に対しては、政党の一年間の費用というものは三百万ドル、すなわち十億円ぐらいになりますが、それをこしてはならないというようなことも規定しておるようであります。この新聞に現われたところで見ますと、自民党の場合、政党の費用、まあ、ほかに、これは政治資金規正法で届け出があるのでありますが、相当たくさん費用をお使いになっておるようでありますし、それも大部分が財界からの政治献金によってまかなわれておるということになりますのは、私は、政党の健全な姿とは言えないのではないか。そういう結果、いわゆる汚職だとか、利権だとかというような、政治の腐敗ということにやはりどうしてもつながりやすい、こう言えるのではないか。それから財界に対しては、私は、政治献金をほんとうはやめてほしい、まあ、少くしてほしい。それでないと、日本の財界が、むしろ日本選挙あるいは政治を腐敗させる責任を負うことにもなるのではないか。財界の方でお持ちになって寄付なすってもいいようなお金は、どうか気の毒な人たち、あるいは社会福祉の方に回わしてほしいと、私はこうお願いするのでありますが、総理は、自民党の総裁として、こういう政治献金というものをどういうふうにお考えになっておりますか。また、政治資金規制法を改正して、献金にある程度規制をするというようなお考えをお持ちになっておられますかどうか、お伺いしたいと思います。
  26. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 政治資金の問題につきましては、各政党とも、その寄金を受けましたこと、及びそれの使途等につきましては、政治資金規正法によって届出をすることになっております。これによって明確にわかると思います。今、財界における経済再建連盟といいましたか、再建同志会といいましたか、何か団体におきまして、財界からの自民党に対する寄金を取りまとめて自民党に献金するということが行われておることは事実でございます。現にこの政治資金規正法におきましても、いろいろ政府と特別の関係にあるものが、選挙に関して寄金をしていかぬというような取締り規定もございますし、私は個々の具体的の会社や、あるいは事業体から、直接に政党が寄附金を受けるということについては、従来いろいろなこれに関連して弊害も起っておることは御承知通りであります。そういう弊害や、あるいは疑惑を起さないためには、やはり政党に対して寄金する場合におきまして、一つの具体的な会社がどうするとか、事業をやっている人が政党にどうするということではなくして、やはり政治に要るところの金を、何らかの形において政党は集めなければならない。それをできるだけ弊害を生じないということから申しますというと、むしろああいう団体において一つに取りまとめて、個々に、どういうふうに何のだかれがしが出したとか、どの会社がどれだけ出たというようなことを、取りまとめることによって、明らかにしないという、すなわち、特殊の事業会社や事業と政党が特殊の関係に陥らないというためには、むしろああいう影の方が望ましいと私は実は考えておるのであります。ただお話しのように、政党が金が要り過ぎるんじゃないか、本来の政党の資金というものは、党員なり何かからこれを拠出して、それをもとにしてやるべきものではないか、これは私は根本はそうだと思うのです。これはずいぶん私も幹事長をしており、党の政治資金というものをどうして集めるかということについては、従来どの政党のその方面に関係している人も苦心するところであるが、なかなか党員が党費を分担してそれを出すんだと、こう申しましても、これはどの政党でもそれはできぬと思うのです。たとえば労働組合みたいに、チェック・オフの制度なんかで、俸給から差し引いて幾ら出すというようなことができるとすると、これは非常に容易でありますが、そういうことは不可能であります。従って、それぞれの支持するところの人々から受ける。しかし一人が非常に多くの金を出すとか、あるいは個々のなにから、事業とつながりがあるような形はなるべく避け、なるべく広い範囲から、なるべく一人の、もしくは一事業会社の負担する額が多くない、そうして多数の人から支持を受けるような形に私は持っていくことが望ましいと、こう思っております。しかし、今日の現況から言いますというと、まだその点においても、政党としての私はほんとうの状態になっておらぬ点がありますので、今後努力をしていきたい、こう思っております。
  27. 市川房枝

    市川房枝君 次は、文教関係について幾つかの問題を伺いたいと思います。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと関連して……。さっきの選挙違反の件ですが、この点について総理並びに国家公安委員長、それから法務大臣にお答え願いたいと思う。先ほど選挙違反が千九百九十三件あげられていると言いますけれども、内容が問題で、今後選挙はたくさん行われるわけですが、行政権に守られた方は、天下晴れて選挙違反をやっております。私ども選挙をやり、これからもやるわけですが、行政権を握っているあなた方には、ほんとうにかなわない。党利党略に行政権を使うべきじゃないと思う。私はここで具体的に申し上げることはちょっと遠慮しますけれども、良識をもって見た場合に、ははあ、この手入れは政治的な背景があってやっているなと、そのやり方、その時期から見て、明確にそういうふうに判断のつくのが最近よくあります。で、さらに特別職公務員はいいんですが、一般職の公務員が、たとえばある省に元おられた方が何かの選挙に出られる。そうすると、その省の現職の一般職の公務員の局長から課長級が、出張旅費でずっとその地域に出張して行きます。のみならず、元その官庁に勤めておった方まで、ひどい人は奥さんまで動員して行くという実情です。で、私はここにお答え願いたいと思う。行政権を絶対に党利党略に利用しないで、選挙はフェアーにやるということを各大臣から誓っていただきたい。各県の警察本部長が東京へ参りますと、その人が任地へ帰るというと、がらっと情勢が変る。また、検事正が中央に招致されて帰りますと、その取締状況ががらっと変って、行政権に守られている、庇護されている候補者陣営は、ひどい選挙運動をやっている。反対派にはきわめて厳しい。フェアーでないという点がありますので、本年は各地で選挙がたくさん行われるわけですが、あくまでフェアーであり、決して党利党略に行政権を乱用しない、個別的な指揮をやらないということをここで誓っていただきたい。お答え願います。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 選挙の取締り等は、フェアーにやらなければならぬことは言うを待ちませんし、行政権が党利党略に用いられてはならないことは当然のことであります。私は従来そういうことがあったとは思いませんが、そういう実例は知りませんが、特にそういう点については、従来も厳にやつておりますが、将来も厳にやっていくつもりであります。
  30. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お答えいたします。先ほど申しましたように、検察当局としては、不偏不党にやるということが何よりの大切なことであると存じます。それから、なお御承知のように、特に警察関係については、検察庁法の定めがございまして、個々の案件につきましては、法務大臣といえども、検事総長を通じてのみ指揮することになっておりますので、私といたしましても、一般的な指示、訓令等は常に心して出しますが、個々の案件につきましては、検察庁法の建前をあくまで順守して、御信頼をつなぐようにいたしたいと思います。
  31. 青木正

    国務大臣(青木正君) お話の点、警察があくまでも中立を確保せぬければならぬことは申し上げるまでもないことであります。御承知のように、建前として、公安委員会の管理のもとに警察は中立を確保する、こういうことで、また各地方の現実の問題につきましては、一切、東京は警視庁、各府県は本部長が責任を持っておるのでありまして、私どもの方から、もちろん指揮命令とかそういうことはできない建前になっております。しかしながら、御指摘のようなこともありますので、今後も一そう警察本来の立場に立って、あくまでも厳正に中立を確保するように、私どもも警察運営に当って注意いたすつもりでございます。
  32. 市川房枝

    市川房枝君 第五番目は、文教関係幾つかの問題について総理に伺いたいと思います。実は、ここ二、三年来のことでございますが、私にはどうも文部省というものは、すなわち自由民主党なんです。自由民主党すなわち文部省だというふうにどうも思われはじめまして、従来の文部省というものは一体どこへ行っちゃったのかというような感じがするのです。政党内閣でありますから、自民党議員の方が大臣に就任され、自民党の文教政策が文部省の施策になるということは、これは当然だと思います。しかし、自民党社会党政策について対立し、争うことは、これはけっこうだと思うのですが、その対立をうまくおさめる、そして児童や父兄、あるいは国民一般を安心させるのが、私は文部大臣の責任だと思います。ところが、前の灘尾文部大臣は、勤評問題、あるいは道徳教育の問題なんかでは、社会党、あるいは日教組とけんか相手におなりになっておいでになったようで、大臣として国民に対する責任を感じておいでにならなかったような印象を私受けております。総理は文部省の、というか文部大臣のこういうあり方というものをどういうふうにお考えになっておられますか、それをお伺いたいのでありますが、まあもっとも、私はそう言っても、総理はそうじゃないと、こうおっしゃるかもしれませんけれども、まあ中立の私には、あるいは国民の多数には、どうもそういう感じがしているということはこれは事実なんです。  それから、教育は国民に思想、あるいは考え方を教え、それから批判力を養うものでありますし、長い時を必要とするものでありますのに、自民党政策だからといって教育の制度、内容等を簡単に変えておしまいになる。これはずいぶん困ると思います。それで、もしこれ社会党政権をお取りになったらやっぱりこれみんなひっくり返しておしまいになるかもしれないのでありますが、政権がかわるたんびに簡単に教育、重要な教育の政策制度、内容等が変ったのでは、子供はもちろん、親たちも国民も非常に困るのであります。戦争前においては、教育に関する法案は、まず枢密院に諮問して賛成を得てからでなければ議会に提案できないというようになっていたと思うのでありますが、私は日本の将来のためにと申しますか、ほんとうの意味での教育の中立性というものを確保しなければならないと思うのでありまするが、その点総理はどういうふうにお考えになっておりますか、その点を一つまず伺います。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話しのように、教育の問題は、国の政治はどれをとっても大事でありますが、特に教育の問題については重要視しなければならぬ、将来の民族のこのあり方というものに非常な影響を持っておることでありますから、従って、教育の制度であるとか、教育の根本方針であるとかというようなものに関しましては、これが特別に慎重に扱わなければならぬことは言うを待たぬと思います。この上におきまして、どういうふうな制度にしたがいいか、どういうふうに考えたらいいか、ということにつきましては、私も実はいろいろと考えておる点でございます。今日の教育制度は、言うまでもなく教育基本法で根本が定まっておりまして、従って、教育はむしろ文部大臣の何は、ある意味から言うというとないような状況になっております。ただ、これに対して適当な助言や指導をするという間接的なことでございまして、しかし、それも私は根本としてはそう考えるべきであろうが、しかし文部大臣の指導や助言をどういうふうな形において中立性を持ってやるか、また、今申すような重大な教育制度の将来というようなことに関して、どういうふうに運用していくかというような問題に関しましては、今日におきましても、いろいろ文部大臣のもとに権威者を集めた審議会等がございますことは、御承知通りであります。こういうものを十分に活用して、そうして、ただ文部大臣一個の考えで事がなし得るということでなしに持っていくことが、国民も納得し安心するゆえんじゃないか、また、こういう大事な問題を扱っていくのに、そういう考慮をするのが適当じゃないかというふうにも考えております。また、文部大臣のこの選任につきまして、あるいは、今のお言葉には直接ございませんけれども、党人以外の学者等を用いた方がいいじゃないか、第三者を用いた方がいいじゃないかという議論も私聞いております。もちろん、過去において、そういう事例もあったわけであります。しかし、私は、やはり何としては、制度としてはやはり政党内閣であるから政党中において総理大臣が、もっとも文部大臣の選任については今言ったような方針でやり、そうして、その根本方針に関する点については、ただ単に、文部大臣一個の考えてもって左右されずして、広く識見があり、経験があり、また、りっぱな人々の協力を得るというような形を作り上げていくことが望ましいのじゃないかというふうに考えております。
  34. 市川房枝

    市川房枝君 政党員外の大臣のことは、私は実はあとで伺おうと思っていたのですが、今総理がお答えになったのですが、国民からいえば、まだその方が安心なんでございますがね。これは、ことにせんだって新聞に出ておりましたが、文部大臣として道徳教育を提唱されました松永前文部大臣が、長崎県のどこかの暴力団の弁護においでになったということを、ある新聞が批判しておりました。また、先生たちの勤評をあんなに強引に押された灘尾前文部大臣が、いわゆる自民党内の派閥の人事の取引と申しますか、それで実にあっさり簡単に文部大臣をおやめになってしまったのですが、それを新聞なんかで批判をしておりまして、これはお二人には非常にお気の毒なんですけれども、やっぱりそれこそ道徳教育の本家本元にすわる方は、やっぱり人格高潔といいますか、学者のような方の方が、私は安心だといいましょうか、政府としてもその方がかえっておよろしいのじゃないか。ただ、党外の大臣は、どうも与党方々からだいぶいじめられるので、なり手がないのだというような話もちょっと聞くのですけれども、そういうふうな感じを実は持っておるわけです。これは、お答えをいただきませんでも、さっきお答えをいただきましたから、けっこうでございます。文教問題等幾つかありましたけれども、これは時間の関係で分科会で伺うことにいたします。  次は、総理の私生活の問題について、少し伺いたいと存じます。昨年のちょうど今ごろ、三十三年度の予算総括質問で、私は、ここから総理に新生活運動についてお伺いいたしました。まあその関係からと、それからまた、政治家のいわゆる私生活というものは、私は、これは公生活なんだと、こういうことを、私の平生の主張でございますので、こういう問題を取り上げることをお許しをいただきたいと思うのですが、昨年、私は、新生活運動には総理御自身及び官界、政党がまず率先垂範をすべきだと思いますがと言って伺いましたところ、総理はこういうふうな御返事を下さいました。「指導的立場にあるものが率先垂範すべきものであるというお考え、私は全くその通りだと思います。私ども至らぬところが多いので、いろいろな批判はあると思いますが、そういう心組みで進みたいと思います。」、こういうふうにお答えをいただきました。ところが、せんだっての衆議院予算委員会で、社会党の今澄さんから、総理はなんでも熱海に大へんりっぱな別荘をお買いになったということを披露されました。それから、同じく衆議院予算委員会の第一分科会で、自民党の川崎秀二さんから、岸総理大臣になってから、いわゆる機密費というものが非常にふえたのだ、それから総理はしばしば料亭においでになっているのだというようなことをおっしゃっておられました。そういう関係かどうですか、最近いわゆる待合政治というものが盛んになったようであります。これはテレビができたものですから、しょっちゅう映すものですから、じきに一般の国民に知られちゃうわけでございますが、私は多くの婦人の人たちから、待合でああいうことをする金は、一体だれがどこから払っているのですかと聞かれて、私もわからないので、実は返事に困ったのですが、週刊朝日に小汀利得さんの「天に代りて岸君よ人生観を直せ」という記事が出ておりました。総理お読みになりましたでしょうか。私は総理にこれは少しお気の毒な記事だと実は思ったのですが、小汀さんのおっしゃっている中に、この際総理の経済生活を公開なさってはどうかということを、小汀さんおっしゃっておりましたが、これはアメリカのニクソン副大統領が、そういう私生活についてのことが非難されましたときに、自分から進んでテレビで、アメリカの全国に向ってこまかく自分の生活を公開をされて、かえってその信任を得、そうしてとうとう副大統領に当選をされたというような経過もあるわけでありますが、総理、そのことについてどういうふうにお考えになっておりますか。もしそういうことをなされば、総理にかかっております、何といいますか、私はこんなことないと思いますけれども、しかし新聞なんかでは、総理も何だか汚職のにおいのあるようなことが出ておりますが、そんなのはすぐ吹き飛んでしまうと思うのです。あるいは世論調査で少し総理の人気が下ってきておるというようなことがありましたが、総理の人気もきっと上ってくるのじゃないかと思うのでありますが、そういう点についてのお考え一つ話していただきたいと思います。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年お答えした通り、やはり指導者たる者といたしましては、あらゆる面において、特に一般人よりも注意をしなければならんということは言うを待ちません。私の私生活についていろいろなことが新聞やあるいは雑誌等において言われておりますが、ずいぶん事実に反したこともございます。私は最近のそういう言論機関等のなんにおきまして、人の私生活に関する問題であるとか、あるいは人の人格に関する問題を論議する場合におきまして、ただ何だかくさいぞとか、何とかそれについて疑惑を書き立てればいいというような無責任な事柄を、私ははなはだ遺憾に思っております。しかし私自身としては至らぬ点もございますけれども、特に注意され、もしくは非難されるようなことについては、十分一つ反省していきたいと思いますが、私としては最近のああいうふうに論じられておる事柄が、ずいぶん事実に反しておる事柄をもって、いろいろ国民の前に疑惑を与えるというようなことにつきましては、はなはだ遺憾と思っております。ただ、私自身の至らないことについては、十分に一つ今後におても注意をしていきたい、こう思います。
  36. 市川房枝

    市川房枝君 売春対策の問題、あるいは青少年対策についても伺いたいと思っておりましたが、時間が参りましたので、分科会その他の機会にまた伺わせていただきたいと思っております。私の質問はこれをもって終ります。
  37. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 市川委員の質疑は終了いたしました。  次は、中村正雄委員にお願いいたします……。それでは中村君の質疑は、午後に譲りまして、午後一時まで休憩をいたします。    午前十一時五十五分休憩    —————・—————    午後一時十二分開会
  38. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これより委員会休憩前に引き続き再開いたします。  まず委員の変更について御報告いたします。三月五日、市川房枝君が辞任し、その補欠として八木幸吉君が選任せられました。   —————————————
  39. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 午前に引き続き、質疑を続行いたします。
  40. 八木幸吉

  41. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木君何ですか。
  42. 八木幸吉

    八木幸吉君 議事進行発言を求めます。
  43. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これを許します。八木幸吉君。
  44. 八木幸吉

    八木幸吉君 三十四年度の予算書の字に疑義がございますので、予算審議の前提となりますから、この点についての政府の所見を委員長を通じて伺いたいと思います。  ほかでもございませんが、この予算書には郵政省所管の予算が掲げてございませんで、すべて逓信省となっております。しかるに現在私の属しておりまする内閣委員会で、郵政省設置法の一部改正案が目下審議中でございまして、いまだこれが成立するかどうかということは未確定の事柄に属しておるわけであります。それにもかかわらず、予算書に郵政省の文字が消されて、逓信省となっておるということは、私の了解し得ざるところでございます。これに対する政府の方の用意としては、予算総則のうちに一般会計の方では二十三条の二項に一例を設けているわけです。また特別会計の方は二十一条に所管名称の特例という一項を設けて、万一この郵政省設置法の一部改正案が不成立に終った場合に、逓信省とは書いてあるが、これは郵政省と呼び違えるものである、こういうまず伏線が張ってあると私は予算総則を見たのでございます。しかし、従前の例を見てみますと、たとえば二十八国会におきまして、同じく郵政省を逓信省に名称を変更するという法案が提出されておりましたけれども、これが審議未了になりました。当時の三十三年度の予算書には、こういう一方で逓信省改名の法案が出ているにもかかわらず、郵政省という名前で予算が出ております。さらにもう一つさかのぼってみますと、昭和二十三年に逓信省が電気通信省と郵政省の二つに分れましたときの例を調べてみますと、昭和二十三年の十一月の十五日と十八日におのおの郵政、逓信両省に関連する法案が提出されまして、十二月の十五日に公布されておる。四月の一日から実施される予定になっておったのでありますけれども、他の各省設置法の関係から急に二十四年の三月三十一日に法案の一部改正がございまして、六月一日から実施されることになりました。このときの予算書を拝見いたしましても、すでに法律案というものは公布されておるにもかかわらず、予算書は依然としての旧名である逓信省という名前が使われておるのであります。にもかかわらず今回に限ってわざわざ予算総則に一例を設け、従来の慣例を無視して、かような異例な不当な取扱いをしたのはどういうわけであるか。この郵政省を逓信省に改めるためには、少くとも経費が数億円かかるだろう、ゴム印一つでも七十万も要るということがうわさされておるくらいでありまして、世論もこれには反対がありますにもかかわらず、政府提案であるがために、かような予算書の中に架空の文字を使っておられるということは、これは政府が多数を持っておられるから、数を頼んで議論の多い法案で、まだ審議の過程にあるにもかかわらず、かような予算書を作ったことは、国会軽視ではないかと私は考えたい。でありますから、なぜかようなことを前例な無視しておやりになったのかということを委員長を通じまして政府の所見を承わって、それが私たちを納得させますならば予算審議がこのままできますが、それが納得できないものであるならば、予算審議の上におきまして相当これは考慮すべきものではなかろうかと、かように存じまして、貴重な時間を拝借しまして議事進行発言をいたした次第であります。
  45. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木君の発言の内容はお聞きの通りでございます。政府側として発言ありますか。
  46. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) ただいまの御質問でございまするが、政府が行政機構の改正を考えまして、省あるいは部局の改廃あるいは名称の変更ということを考えておりますときに、それと提出をいたします予算書との関係はどうなっておるかというお尋ねだと思います。政府側の大体提案といたしましては、法律案の政府提案と提案をいたしております予算書の内容とは一致せしめるのが原則であります。従いましてただいまの三十四年度について申し上げますれば、政府としましては、郵政省の名称を逓信省ということに改正をいたすという法案を提出いたしまして、現に衆議院を通過いたしたわけであります。その予算の編成当時におきまして政府といたしましては、名称を変更することをきめておったのでありますから、それと提出法案と、はずを合せる意味におきまして三十四年度予算書におきまして、逓信省という名前で提案をいたしておるわけであります。なお昨年におきまして、郵政省が逓信省ということに名前を変えようかということに相なりました時期の関係から提案いたしました予算書は、郵政省、提案いたしました法律案は逓信省ということに相なりまするのは、予算書を編成いたしまする時期と、そのときにおきまする行政機構の改正につきましての政府の決定の時期の遅速によりまするので、先ほど八木委員が御指摘に相なりましたように、そういう場合に備えまして、予算総則の第二十三条にありまするような規定を設けまして、予算の編成をいたしました後におきまして、行政機構の改正につきましても成案を得まして提案をいたしました。そういたしますると政府の提案をいたしておりまする予算と、政府提案をしておりまするところの行政機構の改正の法案が食い違いますので、その食い違います場合のことを考えまして予算総則に、一般会計、特別会計、おのおの規定を置いてあります。従いまして御指摘のやや古い時期につきましてのお話は、これは取り調べまして申し上げますが、あるいは当時におきましては相当暫定予算が行われましたりいたしましたので、暫定予算の期間中は古い名前があって、新しい本予算になりまするときにあるいは新しい名前になったのじゃないかという工合になったろうと思いますが、そこら辺は取り調べましてお答えをいたしますが、原則といたしましては今申し上げましたようなことで、政府としては記載をいたしたような次第であります。
  47. 八木幸吉

    八木幸吉君 今の御答弁でございますけれども、逓信省が郵政省と電気通信省になりましたときにはすでに法律ができておる、前年の十二月の十五日に法律が公布されておるにもかかわらず、予算書は旧名である逓信省という名前で作成されておる。また今お話の……。
  48. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木君に申し上げますが、議事進行発言は一回で、こちらから御答弁があったので、またの何かの機会で御質問をするとか何とかいうのなら別ですが、先ほど申し上げました通り、まだ質疑者が多数ありますものですから、一つ御遠慮を願って、引き続き質疑の中へ入りたいと思いますが、どうでしょうか。
  49. 八木幸吉

    八木幸吉君 もうわずかですが。
  50. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 質疑でないのですから、政府としては今申し上げましたような見解を持しておるわけでございますから、あなたがこれに対して異論があるとするならば、他の適当の機会に御質疑をなすって政府態度を明確にするというような場合もあることと思いますが、この委員会としてはちょっと先ほど申し上げましたように、午前中に引き続いて質疑を継続をいたしたいと考えて、特にあなたから議事進行お話がありましたので理事諸君の御了解のもとに議事進行発言をお許しいたしましたが、議事進行の例によりますると、議事進行をいつまでも質疑に振りかえるというようなことは、ちょっと議事運営から混乱を生ずるおそれがありますものですから、その程度で一つおやめを願っておいて、別の機会におやりを願いたいと思います。   —————————————
  51. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) それでは引き続き質疑を続行いたします。中村正雄君にお願いを申し上げます。
  52. 中村正雄

    ○中村正雄君 私は昨日の羽生君の質問で言及しなかった外交関係につきまして、特に朝鮮、沖縄の問題について総理、外務大臣その他関係大臣にお伺いいたしたいと思います。  第一点は朝鮮問題でありまして、昨年四月十五日再開されました第四次日韓会談は七十数回の会議を重ねながら何らの成果をあげることもできなくなっておるわけでありますが、しかもほとんどの懸案事項は日本側の持ち出しでありまして、韓国側は都合の悪いものは全部と言っていいほどたな上げになっていることは、外務大臣も御承知通りであります。このことは政府自体に確固たる方針がなく、場当り的の交渉をやっていることに大きな原因があると考えます。従ってこの点に関しまして、二点伺いたいわけでありますが、その一つは、今後の日韓会談の見通しについて、どういうような見通しを持っているか、またこの会談に臨むにつきまして、基本的態度を伺いたいと思うのであります。  もう一点は、今回の朝鮮人の帰国問題に際して、会談は決裂の事態に至っておりますが、これに対して政府はどういうふうな考えを持っているか、まずこの二点についてお伺いいたします。
  53. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、日韓会談は昨年の五月以来長期にわたっております。日韓会談の主要点と申すと、むろん日本側から申しますと、李ラインの問題だと思うのです。で、この問題は、韓国の国内の何か政治上の事情がありましたために、代表日本に来ることがおくれまして、八月末ようやくこの委員会を開くことになったわけであります。他の委員会はそれ以前に開かれておったわけであります。ただ日本側といたしましては、李ラインの問題が非常に重要でありますので、他の委員会——文化財の委員会でありますとか、船舶の関係委員会でありますとか、そうした委員会でいろいろ韓国側が提案をいたしておりますけれども日本側はそれに対して返答をいたしておりません。留保をいたしております。で、運営委員会が開かれまして、数次会談をいたしました後に、日本側としては一つの提案をいたしたわけでありますけれども、韓国側はまだそれに対して応諾をいたしません。さらに、それでありますから、われわれはこの李ラインの中に、魚族保存のために一定の区域を作りまして、そうしてその中で漁業を、ある程度魚族保存の見地から考えていくというような立場に立ちまして、案を出したわけであります。それが十一月の末であったと記憶いたしております。それに対しまして、韓国側は考慮を約してはおりまするけれども、十二一月に入りましたので、一月二十六日まで年末年始の休会をしようということで休会をいたしております。従いまして今日までの段階におきましては、いずれの委員会におきましても、まだ日本側も格別に返事をいしたておりませんし、また運営委員会におきましても、韓国側は確定的な返事をいたしておりません。そういう状況で今日まで推移して参っております。  一月二十六日再開後、日本案に対して何か案を持ってくるような考え方を言っておりましたけれども、御承知のように今日まで再開はいたしておりません。で、われわれとして、日韓会談に臨みます態度は、当然李ラインの問題が中心でありまして、この問題の解決をみない限り、他の韓国側の文化財の要求でありますとか、船舶の問題でありますとかにつきましては、軽々に処置して参るわけには参らぬと思っておりますので、主としてわれわれはどういう態度でいくかと言われますれば、日韓会談は李ラインの問題を中心にしてできるだけやっていく、こういうふうに考えております。  また北鮮帰還問題後の、今日どういう状況にあるかということでありますが、閣議了解をいたします前に、相当強硬に、日韓会談は決裂させるのもまた仕方がないというようなことを、私的には言っておりましたが、その後の状況からみますと、まだ公的には何ら日韓会談を決裂させると、あるいはこれで打ち切るというようなことを韓国から言ってきておりません。われわれといたしましては、日韓会談と北鮮帰還の問題は、全然別個の問題であって、日韓会談はぜひとも再開してもらいたいということを希望いたしておるわけでありまして、そういう態度で臨んで参りたいと、こう思っております。
  54. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると、今の御答弁の重要な点で確認したい点があるわけですが、日韓会談について政府態度の基本的なものは、李ラインの問題を解決しない限りにおいてはいかなる韓国側からの要求にも応じない。これが政府態度だと、こう了解していいわけですか。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日までも応じておりませんし、今後も李ラインの解決と合せて考えていきたい、こういうふうに考えます。
  56. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に、現在朝鮮が二つにわかれておることはきわめて不幸な事態でありますが、これが平和的に統一ができるまで、北鮮との間におきまする国交回復はできないような状態に置かれておるわけです。しかしながら、わが国の自主性に基きまして、北鮮との間における人事なり経済なり文化の交流は特に促進しなければならないと、かように私たちは考えるわけですが、これに関連いたしまして、北鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国に対しまする政府の基本的態度はどうか。この点がお伺いいたしたいわけであります。  次に、最近北鮮から対日民間貿易の再開の動きが出ておりますが、この際政府はこれを促進し、保障する用意があるかどうか。  この点につきまして、特に最初の基本的態度については総理大臣から御答弁いただきたいと思います。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 北鮮との経済交流その他については、現在政府はまだその点を考えておりません。また現在日韓会談をやっておりますので、われわれとしては日韓会談を重点にして進めていくというのが基本的態度でございます。
  58. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中村委員の御指摘のありましたように、朝鮮半島が二つに、三十八度線でわかれておるという現状は、はなはだ望ましくない状況であると思います。これが統一されるということが望ましいのでありまして、国連におきましてもそういう提案がされております。私どもはこの統一ということを心から望んでおります。  今日の現状といたしましては、最も関係の深い、そしてまた従来交渉の相手として交渉を行なって参っておりまする韓国を相手に国交の正常化をはかっていくという立場を今日のところはとつていくべきであると、こう思っております。
  59. 中村正雄

    ○中村正雄君 ただいまの答弁によりますと、北鮮に対しては何らの対策がないと、こういう意味の御答弁だと思うわけでありますが、もちろん今の政府として、北鮮と国交回復ができておるわけではありませんし、また朝鮮が事実上二つにわかれておるわけでありますが、しかし韓国の支配権というものは北鮮には及んでおらないことは御承知通りです。従って、現実に北鮮という一つの国があって、しかも、一番近いわが国との地理的関係から見て、これに対して何らの方針がないということは理解できないわけですが、北朝鮮に対して、ではどういうふうな考え方をお持ちになっておられるか。統一が望ましいというだけでなくて、現実の問題として民間貿易その他の動きが出てきておる。これに対して無視されるのか、あるいは議するのか、何らかの政府としては態度の決定を迫まられておると思うのですが、それに対して重ねて外務大臣でも総理大臣でもいいわけですから御答弁願いたい。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在におきましてはいまだ北鮮と経済交流もしくはその他のことをやろうという考え方はございません。
  61. 中村正雄

    ○中村正雄君 では次の問題に移りますが、李ラインの存在に関連いたしまして、今回の朝鮮人帰国問題に対する韓国政府の報復的な措置として日本漁民の出漁はとみに妨害されておることは御承知通りです。これに関連いたしまして、このように出漁ができなくなっている人々に新しい漁場を保障する問題が、当面重要な課題となってきていると思うのですが、これに対してどういう対策を政府はお考えになっておるか、また不幸にして抑留されておりまする漁民とその家族は悲惨な状態に置かれておりますが、抑留漁民の現状が一体どうなっておるのか、またその家族に対しまして政府はどういう救援措置を講じておるか、また今後講じようと考えておるか、この点についてお伺いしたいと思います。  第三点としては、李ライン漁船に対しまして、不当な韓国側の拿捕や攻撃を防止するために、巡視船の増強とかあるいは防御施設その他について適切なる措置と、予算的措置を講ずべきであると考えておりますが、これに対して政府はどう考えておるが、以上三点についてお伺いいたします。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 抑留漁夫の問題は、重大な問題でありますので、今日までにおきましても韓国側と直接交渉もしましてやって参りましたけれども、現在の段階ではそうしたことでは解決いたしませんので、先般井上外事部長が北鮮帰還の問題につきましてジュネーヴに参りますときに、私からボアシェ国際赤十字委員長あての手紙を持ちまして、抑留漁夫の送還に関しまして、国際赤十字のあっせんを依頼する手紙を、国際赤十字に井上外事部長がそれを提出しまして、今国際赤十字があっせんの労をとることになろうかと、こう思っております。
  63. 中村正雄

    ○中村正雄君 私のお尋ねしているもう一点は、抑留されました漁民の家族の救援等について、政府はどう考えておるか、この御答弁をお願いいたしたい。
  64. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 抑留されました漁夫の留守家族援護の問題につきましては、水産庁が所管いたしておりますが、ただいま出席がないようでございますから、私からお答えをいたします。  抑留されておりまする漁夫の留守家族に対しましては、金額は私ちょっと覚えておりませんが、留守家族に対して、特は困窮者に対しまして生活援護を与えておりまするし、それから夫なり兄なり釜山におりまする者に対する差し入れその他の費用につきましても、政府が全額とはいきませんが、ある程度の援助をいたしております。で、今後釜山におきまする抑留が非常に長引くということになりますれば、この留守家族に対する援護についてもさらにこれを強化するという必要を私ども考えておりまして、この点につきましては、政府といたしましても検討をいたしております。  しかしながら、一面私どもといたしましては、御承知通り、国際赤十字を通じまして、できるだけ早く釜山におりまする抑留漁夫が帰るように、その方面に今努力を傾倒いたしておる次第でございます。
  65. 中村正雄

    ○中村正雄君 私の今質問した中の、いわゆる新しい漁場問題の点及び拿捕、攻撃等に対しまする政府予算措置なり予防措置についての答弁一つ関係大臣からお願いしたいと思う。
  66. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ちょっと中村さん、申し上げますけれども、農林大臣、今衆議院の方へ出ておりますものですから、官房長官がかわりまして御答弁いたします。
  67. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 今委員長からお話のように、農林大臣から詳しく御答弁申し上げたいと思います。  何でしたか……。
  68. 中村正雄

    ○中村正雄君 李ラインの漁船に対しまする不当な攻撃等に対しては、これは海上保安庁の問題だと思いますので、運輸大臣はおそらく列席していると思いますが、なぜ答弁できないのですか。
  69. 永野護

    国務大臣(永野護君) 李ラインの巡視艇は、今月三そう常時動いておるのでありますが、手薄でありますので、もう一そうふやしたいと思います。急場の間に合いませんので、燈台巡視船を、応急的な措置でありますが、三そうで一そうの常時配置になるわけでございますが、あと二隻もその対策を考究中でございますけれども、とりあえず燈台巡視船を一そうそっちに回して増強いたしたいと思います。
  70. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると、現在の巡視艇で大体安全は確保できるというお考えか、それで足りないのであれば、来年度予算に巡視艇の増強その他の予算を組んでおるかどうか、この点をお伺いしたい。
  71. 永野護

    国務大臣(永野護君) 国際情勢の推移が非常に大きな影響を与えますので、このままの状態が続きますと、今後北方漁業が起りますと、さらに手薄になりますので、今のような状態が続いております限り、ぜひ来年度には巡視艇の増強ということを具体的に考えなければならぬようになると観測しております。
  72. 中村正雄

    ○中村正雄君 在日朝鮮人の帰国につきましては、人道上の問題を解決することに踏み切った政府態度、これには一応敬意を表しますが、その後既定の方針に変更はないと思いますが、国際情勢の変化によってぐらぐらしている印象を受けるわけなんですが、決意のほどを外務大臣に伺いたいのと、この赤十字国際委員会におきまする今後の討議の見通しについて、御所見、見通しを承わりたいと思います。
  73. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 北鮮帰還の問題につきましては、政府は決してぐらぐらいたしておりませんで、既定方針で進んでおります。  国際赤十字におきます討議状況でございますが、井上渉外部長が行かれまして、二時間以上にわたって、委員の全体会議と申しますか、そういうところで日本側の主張というものを開陳いたしました。それに対して相当いろいろな質問があったようでございます。その後の状況はなおっまびらかにいたしておりませんし、国際赤十字もまだ最終的な決定はいたしておりませんけれども、決して悲観すべきものではないと私ども考えております。
  74. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に、沖縄の問題についてお聞きしたいわけですが、二月十三日付の沖縄タイムスによりますと、二月十一日に沖縄において約四百名の韓国兵が合同演習を行なった、こういうことを報じております。これを外務大臣は御承知かどうか、お伺いした  い。
  75. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は存じておりませんでした。
  76. 中村正雄

    ○中村正雄君 こういう事実につきましては、どういう取りきめによって行われておるのか、私も理解に苦しむわけですが、こういうことが行われておるとすれば、どういう取りきめによって行われておるのか、これをお伺いしたいわけであります。おそらく、これをやるとすれば、事前日本政府に通告がなければならないと思うわけでありますが、あったかどうか。あったとすれば、日本政府はこれに対してどういう態度をとつておるか。先ほどの外務大臣答弁によると、こういう事実は知らない、こういうわけでありますが、もしこういう事実があった場合、日本政府はどういう態度をとるのか、御答弁願いたい。
  77. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 沖縄はアメリカが施政権を持っておりますので、その範囲内においては関与することができないだろうと思っております。
  78. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると、外務大臣の御答弁は、沖縄においては施政権を米軍が持っておる、従って、沖縄においてどこの国が演習をやろうとも、これはわが国の関知すべき問題ではない、かようにお考えになるわけですか。
  79. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その通りでございます。
  80. 中村正雄

    ○中村正雄君 そういたしますると、重ねて基本問題についてお尋ねしたいわけですが、それでは、沖縄に対しまする日本の潜在主権というものはどういう範囲のものであるか、これをお伺いしたいと思います。
  81. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 潜在主権というものは、読んで字のごとく、潜在主権であるのでありまして、実質の点の主権はないと考えております。
  82. 中村正雄

    ○中村正雄君 そういたしますると、少くとも沖縄に関してはどういうことが行われようとも、日本政府は全然タッチできない、こういうふうに政府はお考えになっているわけですか。
  83. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの大臣の御答弁を補足さしていただきます。御承知通り、平和条約第三条におきまして、立法、司法、行政の一切の権限と申しますか、施政権をアメリカ側が持っておる次第でございます。従いまして、この権限の根拠に基きまして、この権限の範囲内のことは一切できるということになる次第であります。  ただ、潜在主権と申しますのは、法律的にそれではどういう具体的な内容の権利であるかということになりますと、最終的な処分権と申しますか、御承知通り、最終的な処分権はアメリカ側の勝手に左右してはいけないというのが、この具体的な内容になるかと考えております。
  84. 中村正雄

    ○中村正雄君 だいぶ前のことですが、五七年の一月に韓国政府が、外務省のスポークスマンの談話の形式で、沖縄の日本復帰運動に反対して、琉球の独立運動を支持する、こういう声明をしたことは御承知通りであります。また、これより少し前の五六年の九月に、台湾政府の行政院長談話の形式で、琉球から米軍が撤退したあとは、国民政府は琉球に対して自治を許す、こういう談話を発表いたしております。あたかも自国の領土権を主張しているような発言でありますが、この二つ発言はその後取り消された様子もなく、日本政府から抗議したということも私は聞いておりません。このことは日本の潜在主権を否認するものであって、このような態度を放置しておく限りにおきましては、両国から来る沖縄の共同防衛の義務の要求はすなわち日、韓、台の軍事的な結びつきを目途として進められているということが予想されるわけであります。こういう両国のスポークスマンの談話の形式に現われました態度について、日本の潜在主権を確保する意味において、政府はどう考えているか、またどういう措置を講じようと考えているか、お尋ねしたいわけです。
  85. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の沖縄における潜在主権につきましては、サンフランシスコ条約締結の際にアメリカ側がまず言明しております。さらに、一昨年の岸総理大臣とアイゼンハワー大統領との共同コミュニケの中にも、はっきりと潜在主権を確認いたしております。いろいろな国の人がいろいろな議論をするかもしれませんけれども、われわれはそれをもって確信をいたしております。
  86. 中村正雄

    ○中村正雄君 それぞれの国が勝手な放言をするのだといって黙認しておるというような御答弁ですが、ただ、今沖縄の住民の問題を考えた場合に、沖縄の住民は日本復帰ということの願望に燃えているわけです。そういうものに対して、日本政府が、韓国政府が何を言おうと黙殺するのだという態度で、果して住民の心理的影響がどういうふうになるか、それをやはり考慮されなければ、政府としての役目は果されないと思うわけですが、ちょうど沖縄が本土と行政分離はされておるといっても、やはり国土の保全なりあるいは資源の開発は、当然日本政府考えなければいけないと思うわけです。戦災と年々の災害によって荒廃いたしておりまする現状に対しまして、政府は一体どういう救援措置、援助措置を考えておるか、それに対しまする一つ答弁を伺いたいわけでありますが、その一例として、来年度の予算案におきまして特連局から要求したものは約十一億円であります。これは御承知通りでありますが、その内容のおもなるものを見ますると、産業開発費、沖縄復興特別措置費、専門技術家の派遣費、技術者の訓練招請費、教師指導費、こういったものを含めまして十一億円の予算要求を特連局から政府に出しております。このどれをとって見ましても、やはり最低限の援助であり、戦後十数年間沖縄代表日本政府に何度ともなく要請した内容であることは、御承知通りであります。ところが、大蔵省の査定によれば、この特連局の要求は、わずか全体の二%でありまする二千万円を認めただけで、九八%の十億八千万円は削られておる状態でございます。まことに驚くべき事実だと私は考えます。このことによって沖縄住民の受けた絶望感というものは、まことに深刻なものがあると思います。日本政府はほんとうに沖縄八十万住民のことを考えているのか、見捨ててしまっておるのじゃないかと、こういうのが偽わりのない叫び声ではないかと考えております。この点に関しまして、政府自民党は、表の看板としては、沖縄の祖国復帰の促進、経済援助という看板を掲げておることは、御承知通りです。ところが、私たちが現実を見れば、この表に掲げておる看板と内容とは全然逆なことをやっておるのじゃないか。また、もっと憶測しますならば、故意に沖縄援助をおくらしておると、こういう印象さえ受けるわけでありますが、沖縄に対しまする援助の基本方針及び政府なり自民党の看板でありまする沖縄の祖国復帰の促進、経済援助というものは、一体どういう方針か、具体的に一つ御説明願いたいと思います。
  87. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の関係において御答弁申し上げます。この沖縄のただいまのような問題につきまして、各国の人たちが、いろいろ言うというような場合が今後ありましたならば、その内容なりその声明者の立場等を考えまして、むろん、今後そういう事態が起って参りましたときには、われわれとしても、政府としても、日本意見を言うべき必要がある場合には必ず言うことにいたして参ることは当然だと思っております。  それから、沖縄の援助につきましては、先般私が九月にダレス長官と会いましたときに、経済開発の問題、もしくは文教関係の問題、あるいは戸籍の問題等については、日本側の十分手を差し伸べる余地を認めてもらいたいし、また、それが必要であるということを力説いたしまして、ダレス長官は、そうした問題は自分もよくわかるから、外交ルートを通じて一元的に話をしてもらいたい、こういうことがあったわけであります。それに基きまして、帰朝後、この問題を主として主管しております総理府総務長官の方にお話をいたしまして、今の予算その他の点は総理府総務長官の方でやっておられますので、その方から御答弁を願うことにいたします。
  88. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 沖縄関係の援助費につきましてのお尋ねでございまするが、まず第一は、南方同胞援護会に対しまする補助でございまするが、これは三十四年度は前年度より若干ふえまして一千四百万円、これが一つでございます。それから総理府の関係におきまして、技術者の交流のための援助の費用が一千十六万六千円、戸籍事務従事者の内地招致の費用及び戸籍関係のこちらの熟練者を向うに送ります関係、その金が二百十三万円、それが第二点。文部省所管におきまして、教育の関係の交流と申しまするか、沖縄の学生をこちらに呼びまする関係、それが千六百八十万円、沖縄の教員を内地に呼びまして研究させまする経費が二百三十八万円、こちらの指導主事を沖縄へ派遣いたします金、これが千百三十万円、合せまして三千二百四十万円を文部省所管の予算に計上しておるわけであります。   —————————————
  89. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいま委員の変更がありましたので、ちょっと御報告いたしますが、剱木亨弘君が辞任され、その補欠として前田佳都男君が送任せられました。   —————————————
  90. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 中村君に申し上げますが、農林大臣が今出席しておりますから……。
  91. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 先ほどお尋ねの問題につきましてお答え申し上げます。  第一点は、韓国抑留漁民の現状と留守家族に対しての援護措置をどうしておるかということでございますが、なお百数人の者が抑留をされておりまして、栄養等も非常に悪いということで、心配しておるわけでございますが、これに対しまする従来の措置といたしましては、保険に入っております者につきましては、大体一万八千円程度の保険給付をいたしておる。保険に入っておりませんもっと零細の者に対しましては、見舞金として大体一万円、それから家族が抑留されております者に差し入れを許されておるわけでございますが、これが年額五万四千円程度の給付をいたしております。  それから第二の点でございますが、安全操業にどういう措置をとっておるかということでございますが、これは向うに拿捕されないように、早くその予防措置をとるということが必要なのでございますが、海上保安庁の方からは巡視船が大体十三隻、常時四隻程度海上におりまして、そうして指揮をしておるということであります。それから水産庁の監視船は六隻配置しておりまして、これも常時四隻海上に出しております。同時に、大型の船舶はラジオ等を持っておるのでございますけれども、五トン、十トンの小型船舶は持っておりませんので、今度はこれに対しましてラジオ装置をつけさせるということにいたしまして、大体これは約二万数千円かかるわけでございますが、半額の助成を国家でする。そうしてこの装備をさせまして、ラジオによって抑留の危険がないように、そうして操業の安全をはかりたいと、かように考えております。  なお、この転換の問題についてもお触れだそうでございますが、現在水産庁といたしましては、海外漁業協会等を作りまして、主として民間側の船舶等を調査船として出しまして、国の助成をもって、南方方面につきましても、新しい漁場をだんだん調査、開拓の準備をいたしております。逐次その漁業価値を探求しまして、その方面にも出動するようにさせたいと考えております。臨機的には、カツオ、マグロ等の臨時許可等もいたしておるわけでございますが、以上の通りでございます。
  92. 中村正雄

    ○中村正雄君 私は岸総理にお尋ねをしておるわけなんですが、この沖縄の問題についての祖国復帰の促進と経済援助に関しまする政府の基本的な方針、私がなぜこれを質問するかといいますと、どうも私が、故意に政府は沖縄の援助政策をしないでおるのじゃないかと、こういう印象を受けます一つの問題は、御承知の一月の米国議会では、アイクが、沖縄に対しましての援助費六百三十万ドルを要求いたしております。また、火力発電所の建設費として一千万ドルを要求しておると、こういううわさも聞いておるわけでありますが、このようにどんどん沖縄に対するいわゆる米国の永久地化が進められておる。しかも、昨年数十年来まれに見るという旱害のために住民は非常に困っておる。従って、米国側の援助がどんどん進められてきますると、でなくても基地経済に依存しております沖縄住民が、日本頼むに足らずと、こういうような感じを抱いて、祖国復帰の熱望がだんだんさめていくと、こういうことに政府自体が仕向けておるのではないかというような印象も受けるわけなんです。ほんとうに政府が、沖縄の祖国復帰を真剣に考えているのであれば、なぜこういう事態に対しましての具体的な経済援助なり、救援の手を差し伸べないか、これに対しまする政府の根本的な方針をお伺いしたいと思います。
  93. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 沖縄の住民の祖国復帰の熱望、また、これが日本国民全体の非常な念願であるということに基きまして、私どもアメリカとのいろいろな折衝の際に施政権日本への返還という問題について、必ずこれを話し合っおるのでございます。全部が一ぺんに返還するということが困難であるならば、少くとも教育権なりその他一部でも返して、漸次返ってくるというような方向に進めていきたいという意味におきまして、過去においてもいろいろと交渉をいたして参っておりますが、達せられておらないことははなはだ遺憾と思うわけであります。私が一昨年アイゼンハウァー大統領と会ったときに、沖縄問題についての私の主張、これは日本国民のすべての念願である。それを代表しての主張というものは、アメリカ側の意見とは一致することができなかったということが共同コミュニケにも明らかでありますが、その際に、しかし沖縄の経済開発については——繁栄及び生活の向上、経済の開発ということについては、なお一そう努力すべきものであるということについての意見の一致は、あの共同声明の中に盛られております。そこで、われわれは施政権を持ちませんから、施政権の範囲内において行うべきことは、アメリカが当然それの裏づけとしてただ形式的に施政権を持つということじゃなしに、経済の繁栄なり、国民生活の、住民の生活の向上のために努力すべきものであり、もしそれが不十分であるならば、私はあの声明に基いてアメリカ側に注意を喚起し、また、声明の筋のようにやるべきことを求めるということをしていかなければならぬと思います。しかし、予算を離れて、民間の経済開発というような問題につきましては、あるいは資本が、民間資本が向うにいくことであるとか、あるいは経済、技術の協力の問題等については、従来も政府はできるだけあっせんして、この沖縄と本土との間の経済関係を密接にし、また、開発に資するように努力をいたして参っております。本年度の予算に一部分計上したと、先ほど主計局長が申しましたが、もちろん十分なことではございませんが、先ほど申しましたように、今日のところ施政権を持っているその施政権の内容として、国民生活の向上や、あるいは産業経済の繁栄ということに対する施設は、アメリカが当然私は第一段の義務を負うべきものである。しかしながら、これを十分に達せないということであるならば、日本がアメリカにそれを要望し、それでもなお足りないということがあれば、われわれとして当然考えなければならぬということを考えていくべきである。しかし、できるだけいろいろのことにおいて、この住民の心持を察して、何らかの理屈がつけば、あるいはわれわれの方からやかましく言うと、アメリカ側はおれの方が施政権を持っているのだから日本がそういうことをするのはよけいなことだというようなことであっても、できるだけ日本予算等に、できる限りのものを盛るということが、住民の心持についてもある種の希望を失わしめないゆえんである。またその他、たとえば土地問題についてアメリカ側と住民が交渉するという場合におきましては、日本の大使館初め外務省も非常にこれをバックし、その主張をアメリカ側に貫徹せしめるように協力をするというふうに、あらゆる面において希望を失わしめないように努めていかなければならぬことは言うを待ちません。私どもは、決して今御質問のありましたような趣旨において沖繩を見捨てるとか、あるいはこれに対して冷淡な態度をとるというような考えは毛頭持っておりません。
  94. 中村正雄

    ○中村正雄君 それでは次に、税制、財政一般につきまして、総理、大蔵、企画庁長官、その他の関係大臣にお伺いいたします。  衆議院におきまする予算委員会の井手君の質問によりまして、源泉所得税と法人税の見積りの査定時期に食い違いがあるということが明らかにされております。すなわち源泉所得税や間接諸税は、政府の経済予測の指標に基いて収入見積りをいたしますが、法人税についてはこれらの要件のほかに、決算期の実績を大きく見積りの要件とされておるわけであります。しかも法人税関係には租税特別措置法による減免措置があって、景気変動にかかわりませず税収の伸びは平均的に制約されておるわけであります。こうした基礎の上に立って税収見込みがつけられまするならば、政府政策的に財源の増加を必要とすれば、財源の水増しは経済成長率の予測自体で源泉所得税と間接諸税によって主としてはかられる結果になって参るわけであります。すなわち財源のクッションは常に大衆課税だということができるわけであります。岸内閣の経済予測が常に狂っておる実情から考えまするならば、このような税収見積りのあり方は勤労国民にとっては課税公平の原則に反するのではないかと、こういうふうに考えるのですが、これに対して、大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  95. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今回の三十四年度の税収見積りがいろいろの点において当を得ていないじゃないか、ことに法人課税については相当軽減——租税特別措置なりその他の点で軽減しょう、ことにそれが経済成長率、それを基準にしてとありますが、しかして大衆課税の方は相当高額に見積っておる、こういうところに不均衡があるのではないか、こういうお尋ねの要旨であったかと思います。三十四年度の税収を見積ります場合におきまして、総括的に申しますならば、これはどこまでも国民所得、これを基準にいたしまして税収の算定をいたすわけでございますが、その場合におきまして、ただ経済の成長率が六・一だから幾らだとか、あるいは五・五だから幾らだとか、こういうような大まかな計算ではもちろんないのでございまして、勤労所得あるいは法人所得その他各税の伸びをそれぞれの税の特質によりまして詳細に検討した上で、最終的に歳入の総額を決定いたしておるのでございます。  勤労所得、個人の所得と、それから法人税の伸び等に相違が。ございますのは、それぞれの理由のあるところでございます。ことに勤労者のいわゆる所得税の伸び率、これを各年度比べてみましてそれぞれの理由があるわけでございますが、この方の伸びが比較的大きいと言われますのは、主として高額所得に対する課税の率が、金額が多くなればなるほど、累進課税である、そういうことでございますから、いわゆる所得の伸び率だけ、税が平均してふえるというものでもございません。そういう点が一点ございますし、また、法人の問題につきましても、ただいま御指摘になりますように、この決算期と、所得のズレが大体半年ぐらいでございますから、いわゆる三十四年三月に納めます税は、これは三十三年の所得といいますか、国民所得の方で計算されるべきものでございましょう。そういうような幾分かの違いがあると思います。それからもう一つは、何と申しましてもこれは勤労所得にもあるわけですが、いわゆる減税をいたしましたものの平年度化、そういうこともございます。それでこの伸び率が一四%になっているとか、あるいは二三%になっているとかというだけでは実は実態がつかめないのであります。私どもといたしましては、それぞれの税の決算の実情、言いかえますならば三十二年、三十三年が当時の予算よりも決算の状況では予算を上回っております。三十二年の所得税の決算額は相当予算よりもふえる。三十三年度の大体の決算見込みというものも立てているわけでございますが、そういうものをそれぞれ基準にいたしまして今回の税の見積りをいたしておるのでございます。ことに御指摘になりますように、課税の公平ということはこれは最も大事なことでございますから、特に注意いたしておるつもりでございます。
  96. 中村正雄

    ○中村正雄君 明年度の税制改正について見ましても、なるほど所得税は免税点の引き上げが行われておりますけれども、徴税が徹底化されると思いますので、税収は増加して、これで一応財源の心配はなくされておると思います。政府予算説明書によりましても、所得税の増加が二百七十億と、こういうふうに予定されているわけでございますが、一方公共企業体——公共企業料金等の値上げによりましてこの減税措置の効果は相当削減されておる。これでは国民の租税負担の軽減ということは、当然に実質的な所得水準の向上ということと結びつかなければ意味がなくなるわけでありますが、こういう点の効果が削減していることは争えない事実だろうと思うのですが、また政府は、明年度の消費者物価が〇・五%上昇を見込んでおりますが、そういう見通しを立てておりますけれども、すでに政府が許可いたしました私鉄運賃の値上げや、あるいは明年度予算案に計上されておりまする厚生年金保険等の料金の引き上げ、こういうものを全部見込んだ上でこの〇・五%の上昇という見通しをつけておるのかどうか、この見通しについてお伺いしたいと思います。
  97. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) もちろんあらゆる資料をとりまして、ただいま御指摘になりますような見通しを立てておるわけでございます。
  98. 中村正雄

    ○中村正雄君 そういたしますと、政府の明年度経済見通しによりますと、国民所得におきまする個人消費支出の伸びを五・五%と見、また、源泉所得者におきまする一人当り給与額の伸びを五・六%と政府は発表いたしております。そういたしますると、納税対象にならない個人所得者というものを何人ぐらいとお考えになっておるのか、また、これらの納税対象にならない人人の個人消費支出の伸びをどの程度に見込んでおられるのか、この点をお聞きしたいと思います。
  99. 原純夫

    政府委員(原純夫君) お話通り、所得をあげます人の中で所得税を納めますのは約千万人でありまして、所得税を納めない給与所得者というのが相当あるわけでございます。雇用者を経済見通しでは約二千万人見込んでおります。ですから半分ぐらいが所得税を納める、あとの半分ぐらいは所得税を納めないということになります。従いまして、われわれのこの税収見込みにおいては、その所得税を納める人たちの数がどの程度ふえるか、それから給与のレベルは何%ふえるかということを見込むわけであります。それは国民経済計算の全般の雇用増、それから全般の賃金増とは若干違って参ります。概して申しましてこの雇用増がありましても、雇用差の増が今回は三・七%増加するように見ておりますけれども、なかなか新しい仕事というのは所得税の課税範囲には入ってこないというようなことで、雇用者の増加がはるかに少いのであります。大体一%程度に見込んでおるということになっております。ところが、賃金の伸びの方は、企画庁関係の方よりも課税者の伸びの方は大きいということです。これは毎年の民間給与調べ、階級別の調べをいたします、そういうものとあるいは毎勤の計数というようなものを検討いたしまして、今回は企画庁は全賃金の伸びを二・六%と見ておられますが、私どもは、課税者の方では五・六%の伸びがあるというふうに見ております。
  100. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると、重ねてお尋ねしますが、いわゆる源泉所得者におきます一人当りの給与額の伸びは五・六%と見ておる、この説明は十分わかりますが、国民所得におきます個人消費支出の伸びを五・五%と見ているわけですが、これは納税者も、納税の資格のない人も含めて全国民の一人当りの平均を五・五と見ていると思うわけです。そうすればいわゆる納税対象にならない人、この人の所得の伸びをどの程度見ているか、これをお尋ねしているわけです。
  101. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 私ただいま企画庁の総平均を二・六%になるというもののうち、所得税の納税者の五・六%を引いたら、残りの納税しない人は何%になるかというのは私数字をただいま持ち合せておりませんので、後ほど申し上げます。  なお、こまかい点でありますが、話がきわめて正確な話になりますので、お断わりしておきますが、企画庁の方は、これはことしの四月から来年の三月までの賃金の全一年に対する比率を言っておられる。私どもはことしの三月から来年の二月まで、これが三十四年度の税収に響いて参ります。なおこまかく言うと、それでも若干の例外がありますが、一カ月ずれているということであります。  なお、消費支出の五・五%の方は、これは私どもの方としては、大体間接諸税の税収の伸びを見る場合に、これがあるいは参考になる、間接税の中でも税目によりましてかなり忠実にカーブに従うものと、それから若干このカーブを修正して見るというようなものもありますけれども、間接税の方は参考にするが、間接税はかなり間接になりますので直接の参考にはしておらぬということであります。
  102. 中村正雄

    ○中村正雄君 総理にお尋ねしたいのですが、総理は施政方針演説におきまして、消費水準が上昇して、国民生活が年とともに安定した方向をたどっているが、その半面、低所得階層の生活は一般水準との開きが大きくなってきておると、こう演説をされております。あなたがおっしゃいますところの低所得階層とはどういう所得水準の人を言われているのか、一つ具体的に説明してほしいと思います。
  103. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは私があの演説に申しておることは、いわば経済の全体を大観しての結論で、ございまして、具体的にあるいは数字的にこれをあげることについては今ここで申し上げることはできぬと思いますが、言うまでもなく、あの言っておる一般の何は、社会保障制度の一面においてわれわれが充実をはかっていかなければならないそういう対象になる人々のことももちろん大きな何であります。また、産業的に見ましても、一般工業とあるいは農林水産業との状況、零細工業やそういうものの状況とか、あるいは賃金をもらっておりましても、勤労者のうち低賃金の労働者の状況とそうでない組織労働者や何かにおいて相当給与の改善されておる部門と、こういうものとの開きが相当現在の状態においてひどくなっておる。従って、社会保障制度やあるいは中小企業対策やあるいは中小企業に従事しておるところの労務者やあるいは零細農業等に対する施策というものを強化しなければならぬという私の結論を出す意味において申し述べておるわけでございます。
  104. 中村正雄

    ○中村正雄君 三十二年度の厚生白書によりますと、低所得者階層が約二百四十六万世帯、千百十三万人と政府は報告しておるわけです。総人口の一二・四%になっておるわけでありますが、政府の来年度の予算を一瞥しますと、それぞれの階層なりそれぞれの事業分野に対しまして、それぞれやはり相当政府支出がされておりますが、このいわゆる減税の恩典にも浴せず、いわゆるボーダー・ライン層をさまよっております千百十三万人といういわゆる総理考えておられる低所得者層、これに対して来年度予算でどういう政策考えておられるか、具体的に御説明願いたいと思います。
  105. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 大きく申しまして、私ども国民年金の問題に三十四年度から踏み出しておること、あるいはまた、国民皆保険の実施のための本年度の必要な施設、三十五年までにこれを完成するという最初の計画に基いての本年度分の計画であるとか、あるいは結核対策であるとかいうような、社会保障制度について、私は本年度の予算編成に当りましては特に意を用いたわけであります。あるいは失業対策の問題や生活保護費等の点におきましても、それぞれ考慮はされておると考えております。
  106. 中村正雄

    ○中村正雄君 今の御説明になった政策の内容は、これは低所得者階層に向けてやられる政策ではなくして、全般のものでありまして、一番問題になるのは、これら千百十三万人といわれておりまする低所得者のいわゆる所得の引き上げ、これを考えなければ、いつまでたっても貧富の差は直って参らないと思います。従って、政策として重点を置かなくちゃならないのは、救済的な意味の措置じゃなくして、これらの層の人の所得の引き上げをねらう政策をやらなくてはならぬと思うわけであります。そういう点についてどういう総合政策をお持ちか、承わりたいわけです。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 基本的には、いわゆる経済政策そのものになるわけでございます。御承知のように、長期経済計画を立てておりまして、そうしてまず五ヵ年計画を立て、その五ヵ年計画の基本線といたしましては、年々経済を成長さしていって、国民所得を増加さし、いわゆる国民の所得がふえている、こういう政策をとっておるのであります。基本的な考え方の線に沿って今日の経済のあり方を見ますと、私ども大体順調に経済は成長いたしておると思います。この経済を成長さす場合の表現がいろいろあり、最近は池田君が新聞をにぎわしておりますように給与の二倍なんということを申しておりますが、社会党さんもそういうことを言われる方がございます。私どもは、経済を成長さし、生産向上をもたらす、そこに当然個人の所得も増加して参ると思います。経済の成長こそは、給与の引き上げばかりでなく、同時に国民雇用の増大をはかるということも私どものねらいであります。この点は御了承がいくかと思います。今回の予算は、そういう線に対応する予算といたしまして財政投融資をも含めて工夫をこらしたつもりでございます。
  108. 中村正雄

    ○中村正雄君 現在の総理府に家計調査という統計がありますが、これによります実収規模と、労働者毎月勤労賃金統計によりまする実収規模、これは大体前は合っておったわけですが、このごろの両方の統計を見ますると、前者が三万円台、後者が二万円台と、相当開きが出てきておるわけです。両者はこまかい数字が一致するわけじゃありませんが、大体合わなければならないのに、こういう開きが出てきておる。しかも、政府の財政の基礎に使っておるのは、ほとんど前者であろうと思うのです。ただ後者は、労働者がわずかに利用しておるにすぎない。このようなずさんな資料に基いて財政の計画を立ったり見通しをつけたりするところに狂いができてくる大きな原因があるのじゃないか。従って、政府は、家計の動向と物価の関係についてもっと的確な具体的な統計資料を用意して国民に示す用意があるかどうか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御指摘になられます点はまことに大事なポイントでございます。過去の資料等におきまして、まあ大体取り上げております資料で、経済の動向なりあるいは国民生活の動向なり、物価の動向なり、そう大した狂いはなかったように実は思っておりますが、事柄の性質上、非常に正確を期さなきゃならないと同時に迅速でなければならない。この二つの観点に立ちまして、いろいろ機械を整備したり、また、関係方面、資料の収集等についても格段の努力をいたしておるところでございますがただ、ただいま御指摘にありますように、相当違っておるじゃないかという数字が出ておりますが、統計をとりました基礎になりますデータがそれぞれ期間が違っていたりあるいは範囲が違ったりいたしておりまして、不統一であった点もございます。これらの点も、政府としては、ぜひとも統一さし、より正確に、より迅速に、こういうことを念願いたしております。
  110. 中村正雄

    ○中村正雄君 財政関係の最後に大蔵大臣にお伺いしたいのですが、私、予算書を一読しまして奇異な感じを受けた点が一点あるわけなんです。それはどこかと申しますと、予算総則の第七条です。これを見ますると、大蔵省証券の発行額または日銀の一時借入金のワクが今度は五百億と大幅に増大されておるわけなんです。本年のような経済の見通しの困難なしかも景気の沈滞期においてさえたしか私二百億であったと記憶しておる。経済が安定しておる、景気は上昇過程にあると、こう述べておられまする来年度に、なぜこういうふうに大幅に五百億とワクを広げなければならないか。この点についてその理由をお聞きしたいと思う。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いずれ詳しくは政府委員から説明いたさせますが、年度全体といたしましては、私ども見ておりまするように、数字的にはもちろん無理がなしに、つずめが合うようになっておりますが、期間的な問題といたしまして期間の途中における変動、それに対処するためにただいまのようにワクを広げておるのでございます。詳細は事務当局から説明いたさせます。
  112. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ただいまの大蔵省証券の発行限度の御質問でございますが、御承知のように、またすでにたびたび御説明申し上げました通り、来年度は相当の散超になることと思います。  そこで、政府のいわゆる当座預金の残高をにらんでみますると、三十三年度末は大体千四百億程度見ておるわけであります。これが三十四年度中のいわゆる一般会計における散超要因、これは御説明いたしましたように八百数十億円というわけでありますが、こういうものを見ますると三十四年度末におきましては、政府の当座預金が大体六百億ぐらい減ずる、こういうことでございます。ただいま中村委員御指摘のように、例年まあ二百億ぐらいということで参りまして、最近はほとんど実際には発行いたしておらないのでありますが、今申し上げましたような当座預金の減少を見ますると、大体、例年の二百億に三百億ぐらいプラスいたしまして五百億ぐらいを見ておくことが安全であろう、こういうことで見込んだわけであります。大体の数字的根拠はそういうことであります。
  113. 中村正雄

    ○中村正雄君 こういう不時のワクというのは、大臣、これは予算自身に自信のない場合に必要な僕は項目だろうと思います。予備費にいたしましても、こういうものでも去年のように財政の見通しもつきにくい、しかも経済は沈滞期にあると、こういうときでも二百億は全然使っていないと思うのです。ところが、来年度の予算は、佐藤さんの言葉によれば、戦後最大の優秀な予算だと言われておりますが、そういういい予算のときに最も不安定でなければ使わないような、こういう費目も一挙に二倍半にふやして五百億置くと、予算総則の片すみに載っておるわけですから、あるいは見のがすかもわかりませんが、私はこういうことはちょっと数字的には不時の場合に困るのだ、だから使うのだというかもしれませんが、しかも今まで二百億はほとんど使っておられないと思うのです。それを五百億にふやして用意しなければならないというところに私は来年度の予算に対して一種の不安を感ずるわけなんですが、これに対して大臣どうお考えになりますか。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは御承知のように、いわゆる経費ではございませんから、財源のやりくりの問題でございます。先ほど来申し上げておりますように、残高といたしましてはその意味においてはこれは十分でございますが、その期間の中途にいろいろの事態を予想いたしますと、その程度のものを用意することが必要だということでございます。  それから、ただいま非常にずさんな考え方じゃないかと言われるが、非常に正確にも正確を期した結果、これだけ必要ということでございます。
  115. 中村正雄

    ○中村正雄君 正確な予算かどうか一つ一カ年間の実績を見てまた質問するといたしまして、次に防衛関係について御質問申し上げたいと思います。  防衛庁の経費は千三百六十億と、こう計上されまして、本年度よりも約百六十億増額になっておりますが、このほかに国庫債務負担行為として航空機の購入三百十八億、器材整備百三十二億、施設整備十四億、艦船建造二十億計上して、しかも継続費として艦船建造のために約六十八億が計上されております。従って明年度の防衛庁の経費の規模はこれをもって見れば約千八百四十億と、こういう数字になると想定されるわけです。このほかに繰り越し明許費が計上されておりますが、この金額は一体どのくらいを予定されておるか、金額をお教え願いたいと思います。また、これに加えて、米国よりの供与、貸与があって、防衛庁の運営が行われるわけでありますが、その本年度の見込み、あるいは明年度の予定額はどの程度お考えになっておるか、これも数字をお知らせ願いたいと思います。
  116. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいま御指摘の総額で千八百四十億という数字について、私どもさようには考えておらないのでありますが、ことに航空機の購入費については三百十八億というのはお間違いではないかと思います。三十一億八千万円、かように考えておりますが、お尋ねの繰り越し明許の額でございますが、これにつきましては御承知のように、事業の継続性——事業と申しますか、装備の継続性という性質から、人件費以外は大部分繰り越し明許を常に与えられておりまして、器材費の大部分、艦船建造費の大部分、施設整備費の一部、合計大体五百五十億見当かと存じます。さらに本年度の米国よりの供与の額でございまするが、本年十二月末で大体四百億、さらに本年度末におきましては三十億ほど増加いたしまして、四百三十億程度になるのではないか、かように見込んでおります。また、来年度の供与の軍事供与その他の供与の総額についてどの程度を見込んでおるかというお尋ねでございまするが、現在の計画といたしましては四百六十五億程度の供与を得たい、かような計画で折衝いたしております。
  117. 中村正雄

    ○中村正雄君 米国からの供与が昭和二十九年を頂点として漸減いたしておりますが、これに比例して国庫債務負担行為が一挙に四百八十四億円となっておりますが、このうち装備品購入関係の国庫債務負担行為の額は本年度約四十二億であったのが一挙に百三十二億に増額されておりますが、このおもなる理由はどこにあるのかお伺いしたいと思います。
  118. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。さいぜんのお尋ねのうち、私、繰り越し明許額が五百五十億程度と申しましたが、何か百五十億程度のように聞えたとか申しておりまするから、その点五百五十億程度と御了承願いたいと思います。  御指摘の国庫債務負担行為の本年度と来年度との関係が異常に増加しておるというようなお尋ねでございまするが、予算書をごらんいただきましてもわかるかと存ずるのでありまするが、特に増加をいたしました航空自衛隊関係の器材整備の九十億、この点について百三十二億——四十二億であったものが百三十一億にふえておるのはどういうことかと、こういうお尋ねでありますが、全体といたしましては、三十三年度は国庫債務負担行為といたしまして二百八十億四千四百万円が来年度は百九十八億八千七百万円と八十一億五千七百万円ほど減少いたしております。そのおもなる原因は航空機の購入関係におきまして、御承知のようにP2V等の完成その他次期戦闘機等の関係から約百四十七億ほど国庫債務としては減少している。これが一番大きな原因で、それに対応して御指摘の百三十二億に対する四十二億ということで、約九十億航空自衛隊関係については御指摘の通り増額になっておりますが、この内容は米国からの援助による航空器材補給が、御承知のように初度分のものは航空機とともに必ずマツダによって援助されるわけでございますが、次年度以降については、最近の軍事援助の減少の傾向等によりまして逐次減少して参っておりますることと、御承知のようにT33の練習機F86Fの現在日米共同生産によって作っておりまするものの部品、この方が二十六億、それから米国からの援助の減少が約四十四億、合計七十億等が主たる国庫債務による増額で。ございまして、その他航空関係の器材の、御承知のごとく航空機等は、ことにF86Fにつきましては、将来三十五年度末で次期戦闘機の関係上生産をしないということになりますものですから、三十五年度、六年度というような先々までも現在発注いたしておきますことが装備経済上非常に望ましいことでございまするし、また仕事がなくなった暁において部品だけを生産するということは非常に不経済でもありまするし、同時にまた何と申しますか、その型の機械全部が新しいものに乗り移る際には、全部解体して、ジグ、工具その他がなくなってしまうという関係上、大体F86FあるいはT33等の将来の寿命等を考え、寿命の持続する限りのものについては事前に安い値段で、今作っておるうちに部品の発注をいたしておこうと、こういうような事情から九十億程度、特に航空自衛隊について、航空機の部品購入の関係から国庫負担債務の関係が増加いたしておる、こういう状況でございます。
  119. 中村正雄

    ○中村正雄君 今御説明のありましたいわゆる航空自衛隊関係のうち、いわゆる修理品、部品の調達費が七十二億円ほど計上されておるわけですが、ところが、この七十二億円が一挙に国内の航空機生産関係の産業に発注される、こういう態勢になると、今後のわが国の航空機産業に重大な影響を持つと考えるわけなんです。明年度は航空自衛隊関係で米国より供与される装備品というものは一体どの程度防衛庁は予定しておるのか。これを一応お聞きしたいわけです。
  120. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。明年度予想されますアメリカからの供与総額につきましては百六十四億程度と予想いたしておりますが、そのうち航空自衛隊関係のものが百二十億程度でございます。
  121. 中村正雄

    ○中村正雄君 昭和三十二年の八月に航空自衛隊が作成した航空機装備計画によって自衛隊の航空機装備機数の予定表があるはずだと思います。政府予算案によりますと、明年度は特に航空自衛隊の人員増加に努めておりまして、一航空団の増設を行う予定とされておりますが、現在の航空機整備はいつを基準にして毎年度機数及び人員をどの程度増加するように考えておるか。今後の航空自衛隊の増加についての一つの企画があれば御答弁願いたいと思います。
  122. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。御指摘の三十一年八月に航空自衛隊が作成した航空整備計画というものを私ども承知いたしておりませんが、御承知のように、三十二年六月にわが国国防の基本方針に基いた各陸上、海上、航空等を総合した昭和三十五年度までの防衛整備目標というものがございまして、それによって航空機は昭和三十五年度——一部三十七年度まで航空機についてはかかりますが、千三百機を整備するということで、それを基準に毎年日本の国力、国情、ことに財政上の関係からこの三カ年間に所定の目標に到達をしようと、こういうことで、当初の基本の目標が千三百機と定められておりまするので、それに基く年度計画をそのつど立っておりまするが、御承知のように、国会において指摘をせられましたF86Fの四十五機が使用できない程度の乗員の養成の不足、あるいはジェット飛行場の整備の計画におくれておったというような関係からそういうような事態になっておりまするので、来年度といたしましては、御承知のように、航空自衛隊関係の増員は、航空自衛官において六千六百人、部隊職員一千人、計七千六百人を増員する。これは主としてジェット機用の乗員養成、その他レーダー・サイトあるいは補給関係、後方関係の航空自衛隊全般の装備の充実のためにこの程度の人員を要求いたしておる次第でございます。
  123. 中村正雄

    ○中村正雄君 政府予算案の説明書によりましても航空自衛隊の増勢費は七十億円、国庫債務負担行為のうちで航空自衛隊関係だけでも九十億円計上されております。自衛隊経費増額のうちでも最大の部分を占めておりますが、われわれは一般会計予算のうちで、今後もこのような増加率を持つ防衛庁費の内容については、重大な関心を持たなければならないと思っておりますが、この点について方針としてお聞きしたいのは、防衛庁はアメリカの供与、貸与の減じた分だけ国家財政をもって今後も補てんされていくお考えかどうか。この方針をお聞きしたいと思います。
  124. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) ただいまお尋ねの件につきましては、御承知のように、先般アメリカから米国と特殊な関係にある締約国に対する軍事援助、経済援助の実情の調査並びに将来の方針等について決定するための大統領の特別諾問委員会ドレーパー・コミッションが日本に来訪しまして、日本の今日までの軍事援助その他の実情について、私どもつぶさに話し合いをすると同時に、将来の問題についてもいろいろと率直な要求をいたしまして、で、われわれ将来軍事援助が逐次経済援助に切りかえられるということはやむを得ないと考えておりまするが、しかし、ここに当分少くとも五年間程度は現状を継続していただきたい、と同時にアメリカから軍事援助供与を得ている品物の使用の状況等につきましても一つつぶさに見てもらいたいということで、習志野、浜松、横須賀等も十分な視察をしてもらった結果、われわれとしては、われわれの要求について相当十分な理解を得た、かように考えておりまするが、これは大勢としてはやはり逐次軍事援助から経済援助、さらに軍事援助自体も漸減するということは、これは否定できないことではなかろうかと存じますので、一方当面の昭和三十五年度末を目標といたします兵員、陸上自衛隊十八万、海上自衛隊十二万四千トン、航空機千三百機という目標について、現在さいぜん申し上げましたように、日本の主として財政事情を考慮してその方向に充実をはかっておりますが、これらの点についても、将来は主として質的な整備増強、装備の質的改善増強に全力をあげたいと考えておりまするので、御指摘のように、おそらく減った分についての経費は当然と申しますか、必然的に国内の国家財政をもって補充していただくと同時に、また目標の、さしあたりの防衛整備目標でありますただいま申し上げた陸上自衛隊十八万、海上自衛隊十二万四千トン、航空機千三百機に対する維持、交代の費用だけでもやはり現在よりある程度の増額を必要とするという状況にありますので、これらの点等を考えまして、当面のアメリカからの軍事援助は極力現状を維持したいというつもりで考えております。
  125. 中村正雄

    ○中村正雄君 最後に、総理と通産大臣に航空機産業について御質問したいと思います。  国内の航空機の産業振興といっても、国内市場というものはこれは防衛庁及び日本航空室、全日本空輸と限られた範囲であることは御承知通りであります。特に防衛庁航空機の戦闘機種が決定していない現在におきましては、防衛庁が明年度の国庫債務負担行為で航空機修理関係で七十二億の予算を計上していることは確かに航空機産業にとりましては起死回生のてこ入れとなっていると思います。しかし、これではわが国の航空機産業というものは、要するに軍需産業であって、市場の拡大というものは財政の需要拡大を待つということよりほかにないと思うわけなんです。今後の航空機産業の振興のあり方について、総理はどう考えておるか、担当の通産大臣はどう考えておるか、所見を伺いたいと思います。
  126. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 航空機産業は工業上いろんな一つの総合的な工業でありまして、これが振興することは関連の幾多の工業技術水準を高め、関連産業の繁栄にも資する問題です。同時に、またこの交通の発達を見ますというと、航空機の用途の前途は非常に大きいのでございますから、この航空機工業が日本国内において確立されるということは非常に望ましいことであることは言うを待たないと思います。ただ問題は、今お上げになりましたように、その市場性が問題になるわけでありますから、今までは主として航空機というものが日本においては、もっぱら軍需産業の重要なるものの一つとしてこれが育成されてきたことは事実であります。また、各国における航空機につきましても、反面そういう面が非常に大きいこともこれもまた見のがすことはできないと思います。日本としては、私はやはり日本自体の航空機の事業の発達の前途を考え、さらにアジア諸国におけるところのこのことを考え、海外の需要というものもにらみ合せて、日本の一般航空機事業というものを成立せしめるような方策を一つ講じてみたいという考えを持っております。本年度の予算のうちにも中型の輸送機についての一つの計画を盛った予算ができ上っておりますが、しかし、なかなか日本に航空機事業を成立せしめ、またせしめるということが望ましいことでありますけれども、これについては相当に政府が助成をする必要があると思います。私としては将来の航空機産業としては単に防衛産業としてだけでなしに、広い見地からこれが確立のために政府が適当な助成方策を立てていくことが望ましい、こう思っております。
  127. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 航空機工業が日本の産業として非常な将来性のあるものということは、私ども考えているわけであります。戦前における日本の航空機はほとんど軍用によって限られて、これが指導方針をとったわけであります。戦後におきましては、戦前においたあの技術者というものを相当数今かかえておるわけであります。これをもって日本の将来における航空機工業の基礎を作っていくという、それには十分の人があるわけであります。ただ、戦争中における空白状態がありましたことと、それからこれに要する消費がないということのために行き詰まっているような状態でありますが、防衛庁の予算において、ある程度の予算を組んでいただき、これによってぽつぽつ従前の航空機によって養成されておったところの技術陣営をただいま集中しているわけでございますから、この技術陣営をもって、新しく設計いたしますと、決して現在の世界の水準に対して、そう劣っていないという技術的な大体の見当はついたわけでありますから、昨年来通産省といたしましては、わずかばかりの予算を及って、総理がお答え申し上げました中型輸送機、これを設計いたしたのでありますが、この設計によりますと、現在日本が使っておりますあの輸送機よりも、重量においてはかれこれ五割減じまして、乗客の数においてはまだ五割ふやせるというりっぱな設計ができたのでありますから、これを中型輸送機といたしましてすぐ試作にかかりたい。こういうことで、今回三十四年度の予算におきましても、特に新しく予算を追加していただきまして、民間と協力して中型輸送機製造会社を作ってやっていって、三年目四年目にこれはようやくものになると、こう存じております。そうした場合に、私は必ず将来においては日本の航空機工業は、世界の全体の飛行機の輸送力に寄与することができると、こういう確信を持っているわけなんでございまして、将来に非常に私は望みを託しているわけであります。
  128. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に、地方財政計画について総理、大蔵、自治庁長官にお尋ねしたいと思います。  三十四年度の地方財政計画の規模は、歳入歳出ともに一兆三千三百四十一億となっておりますが、このうち最も著しい特徴は、国の公共事業費が本年度に比べまして、四百六十九億円という異例の伸び方であります。これに伴なって公共事業費の地方負担分のうちの補助事業は二百十八億、直轄事業は六十一億となっておりますが、この地方負担分のために、たとえば私たちのところにも陳情が参っておりますが、秋田であるとか福島、鳥取などの県が、軒並み公共事業費の消化に悩んでいるという現実でございます。特に地方の予算編成に悩むの余り、公共事業を返上せざるを得ないところが続出るのではないか、こういうことを懸念いたしております。これは地方財政計画のずさんなやり方を示すものにほかならないと思いますが、地方の実情を無視したのではないかと、この点について、総理一つ考えを聞きたいし、大蔵大臣なり自治庁長官の具体的な一つ実情の御説明を願いたいと思います。
  129. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 具体的のことは、大蔵大臣自治庁長官から申し述べることにいたします。御指摘のように、この地方財政と国の財政とは、やはり相にらみ合せて考えていかなければならないことは言うを待たないのであります。いろいろ根本的な配分等についても、十分考えなければならぬ点が大きくあろうと思います。さらに地方の実情を十分に考えて、これが一体的な予算の編成並びに運営考えていかなければならない、かように考えております。今、公共事業費等についての地方の実情から、これを実行することのできないような立場にあるというような県等があるようなお話でございましたが、これらにつきましては、十分また予算運営の面において考慮あんばいしていく必要があろう、かように思います。
  130. 青木正

    国務大臣(青木正君) ただいまの御質問でありますが、御指摘のように、明年度の地方財政計画を大観いたしますと、一方において減税があり、一方におきまして消費的経費において、給与費の非常に大幅の四百億からの増額があるわけであります。特に減税も明年度におきましては、市町村民税関係よりも、都道府県関係が多いのであります。さらにまた消費的経費の増高も、府県に多いのであります。そこへ持ってきて御指摘のように、公共事業費のワクが非常に大幅に広がっております。そういうことからいたしまして、明年度の財政計画、特に府県において非常に窮屈になるのではないか。御指摘のように、場合によってはせっかくの公共事業費を返上せざるを得ないのではないか、こういうことを私どもも明年度財政計画編成に当って最も憂慮し、その点に重点をおいたつもりでございます。そこで、道路五ヵ年計画に伴う事業については、明年度におきましても今年度同様に、高率の国庫負担の道路譲与税、さらに揮発油税の増率を考えておるわけであります。そのほかに、御指摘のように、後進県、こう申すと失礼でございますが、財政の比較的貧弱な県につきましては、特段の考慮をする必要があるのではないか。  特に、三十三年度の交付税の配分に当りましては、特別態容補正のあり方を変えたのでありますが、その結果後進県に財政上の影響を与えましたので、今年度はこういう点を特に考慮いたしまして、交付税、三十二年度の精算分と新しく一%の増加と合せて二百四十六億になりますが、これの増額等もありますので、その配分に当りまして、明年度交付税法を改正いたしまして、そうして特に後進県について特別の配慮を加え、あるいはまた、農業県について耕地面積等を対象として特別な配慮を加える、また、いわゆる既存の設備と申しますか、道路等につきまして、現在ある道路だけを対象としての交付税という考え方でなしに、面積とか人口とか、そういうものを測定単位に加えまして、そして全般的に従来のいわゆる特別態容補正の考え方を取り入れたあり方として、公共事業費の消化に支障のないように、できるだけの配慮をいたしたつもりであります。  しかしながら、現実の問題といたしましては、いろいろ苦心しなければならないと存じますが、公共事業の配分に当りましても、各省庁と十分連絡をとりまして、そういうことのないようにしたい。また、先ほど総理も申しましたように、予算の実際の執行に当りまして、その過程においていろいろまた私どもとして配慮すべき点があれば配慮を加えて参りたい、かように考えております。
  131. 中村正雄

    ○中村正雄君 御承知のように、二月の五日、六日開かれました全国の知事会議でも、一部の知事から公共事業の返還決議をしようという動きもあったことも、御承知通りであります。従って、これら公共事業の増大に伴いまする赤字を補てんするための具体策をどういうふうにお考えになっているか。知事会議では起債補てんの決議をいたしておると思うのですが、これに対して大蔵大臣自治庁長官から、一つお答え願いたいと思います。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど来、自治庁長官が詳細にお答えいたしましたので、私、特に立たなかったのであります。今回の公共事業費の、国の道路その他の公共事業費と、それから県でやります県の単独事業、その総体を合計いたしてみますと、地方財政の規模といたしましては、私ども非常に過大だとは思いません。今回は単独事業が相当減額を見ております。  そこで、財源の問題は後にお話しいたしますが、財源以外の点において、自治体としてみずからが行いたいものが、こういうような公共事業費の配分では、国の方の事業を主としてやることになって、地方の事業がおくれるという、こういう問題が一つございます。これなどは、財源の問題でなしに、事業の分配の問題だと思います。しかし、これについて私ども考えるところでは、最近の公共事業のあり方から見ますと、地方自治体だけが、中央につながりなしに、独自の立場で計画するものは比較的範囲が狭められておる。言いかえますと、国の公共事業、これと関連してやるというような形にだんだんなってきておると思いますから、今回の事業量の分配は、まず一応了承のできることではないかと思います。この意味においての単独事業のあり方について非常な不平を述べられておることについては、私どもも十分説得いたしたいと思います。  ただ、公共事業総体は、総ワクとしてはよろしいということを申しますが、自治体の実情によりまして、富裕県があり、あるいは後進県がある。そういうところでいろいろ消化の面で苦労のあることは一応想定がつくのであります。これについては、一面、交付税の配分に際し、あるいはまた、ただいま自治庁長官からも詳細お話しになりました態容補正等についても考慮を払う。また、国自身から見ますと、国の負担につきましての臨時特例の措置はだんだん整理して参りましたが、道路については依然としてこれを残しておくとかいうようなことをいたしておりますので、相当の工夫はこらしているつもりでございます。しかし、ただいま自治庁長官から御説明いたしましたように、実施に当りましては、なお私どもも工夫を要するものがあるのではないかと、今日から思っております。しかし、これは実施に当って特に考うべきことでございましょうし、また、事前におきましての公共事業費の各地方への配分に際しましても、十分自治庁が各府県の納得するような方法でこの配分を進めていきたい、かように実は考えております。ただいま御指摘になりますような、公共事業の返還とでも申しますか、お返しするというようなことのないように措置をとって参りたい、かように考えております。  それから、総体といたしましては、交付税率、今回は一%交付税率をふやしておりますので、財源そのものといたしましては、私ども配分がつくのではないかと、かように考えております。
  133. 青木正

    国務大臣(青木正君) ただいま大蔵大臣が御答弁申し上げた通りでありまして、私どもも、財政計画の編成に当りまして、できるだけの配慮はいたしたつもりであります。しかし、実際問題となりまして、具体的に公共事業費が配分になって、その結果、府県によりまして、心ならずも返上せざるを得ないというような事態になりましては、まことに遺憾に存じますので、そういうことのないように、また、そういう予算執行の過程においてそういう事態が起りそうでありましたらば、それに対処いたしまして善処いたしたい、かように考えておる次第であります。
  134. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に、交通政策について総理、運輸、大蔵の三大臣にお聞きしたいと思います。まず最初に、海運問題についてお聞きいたします。  政府のたびたびの経済白書、長期にわたりまする経済計画を見ましても、その中心は常に、国際収支の赤字を警戒して、これを黒字に転ずることを念願といたしておることは明らかであります。その点、海運によります運賃収入は、貿易外収入として純粋の外貨獲得の手段であり、現在世界各国が、あらゆる国内産業に優先して海運を助成し、その成長発展のために全力を集中いたしておるゆえんだと考えます。日本現状を見ますると、わが国の輸出入物資の輸送量のうち、日本船舶において輸送しているものはまだその半数にも達しておりません。従って、外国船に依存している部分がまだ多いと私は思います。戦前の、六割以上自国船で輸送していたことに比べますると、戦前の水準に達するには相当時間がかかるような感じを受けるわけであります。このように外国船に対する依存度が高いということは、わが国の船舶増強の速度が、戦前における船腹の対外比に追いつけないことだと思います。  世界の各国が、新船の建造によりまして急速に船腹を増強しつつありまする動向と、わが国の輸出入規模の拡大方針に即応して、かつ対外国船との積み取り比率の改善のために、われわれ社会党は外航適船の保有目標を九百万総トンに置いて、計画造船を推進して参ったことは御承知通りであります。ところが、最近におきますと、国際競争の激化のために、競争に耐え得ないような不適格船の係船数量等より誤解されておるのが、この計画造船に対する政府の方針がぐらつき出しておるのではないかという印象を受けるのであります。政府の長期計画の見通しから現在の船腹量で十分であると考えておられるのか、あるいはまたほかの事情によってぐらついておるのか、この点についてお伺いしたいと思うのであります。  もし、政府も計画造船は十分推進しなければならぬという意思であれば、十五次以下の計画についての方針を承わりたいと思います。
  135. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答え申し上げます。日本の海運業が終戦直後ほとんど壊滅状態になりまして、今日までにやっと四百五十万トンまで回復して参ったのでございますけれども、なお、経済の伸びを見通しますと、昭和三十七年までには、私どもの計算だと、先ほどお話しになりました社会党の計算よりは少し低いのですけれども、六百九十万トン、こう予想しておるのであります。従いまして、どうしても毎年五十万トンくらいの船は新しく作っていきませんと、日本の経済の伸びに追いついていけないこと、お説の通りであります。従いまして、私ども昭和三十四年度の予算に百八十億円の資金の支出を盛っておりますわけでありますが、ただ、船を作りますことの必要であることは、これはもう一点疑いをいれませんけれども、御承知通り日本の海運業にはかなりいろいろな欠陥があるのであります。それ自体の内容についても自粛自戒しなければならない点が多々ありますし、それから業者同士の関係、あるいは不当な競争というようなことがございまするので、業界自体の自粛と、業者間の調整というようなことを十分に勘案いたしました後に、そのはっきりしたものを立てなければならぬと思っておるのであります。  従いまして、海運造船合理化審議会の答申案に基きまして、    〔委員長退席、理事堀木鎌三君着席〕 昨年の夏以来各業者に、自粛自戒の方針を具体化いたしますために、非常に経費の節約を求めておりまして、大体計算では年間八十億円の節約をすることを立案さしておるのでありまして、その実行を運輸省としては監視しておりまするが、今日までの経過では大体その数字に近づきつつあるのであります。業者間の調整につきましても、地域別、あるいは品種別の系列化などということに尽力しておりまして、以前に比べますと、だいぶん運営状態はよろしくなっております。しかし、何と申しましても、根本に、全くなくなったところを借金でやって参ったのでありますから、御承知通り、非常な莫大なる金利負担を背負って、二千億に近い借金の金利を払っていかなければなりませんので、日本の海運界の弱体化という基本問題は、まだ改善せられるのにはほど遠いと思うのであります。従いまして、日本の海運の重要性を考えますると、どうしても海運の基本国策を再検討しなければならないところにもう追い込まれておると存じまするので、最近に合理化審議会の中のさらに少数の専門家を委嘱いたしまして、どうすれば日本の海運が世界の海運界に伍して対等に太刀打ちができるかという基本国策を検討中でございます。
  136. 中村正雄

    ○中村正雄君 今、運輸大臣答弁を聞きますと、計画造船の必要は認めておられるわけでありますが、しかし、これを推進していくためには、どうしても積極的な助成策を講じなければならぬと思わうけなのです。  日本海運の現状を見て参りますと、いわゆる六分五厘の開銀融資、九分五厘の市中銀行の融資、これで大体現在二千億近い借入金を持っておると思います。従って、年間二百億に近い利子を海運業界は負っておるわけでございますが、一流会社の決算を見ましても、償却割にすでに赤字という会社も相当ある状態で、この原因は結局、船舶建造のための借入金の利子というものが大きな部分を占めておると思います。アメリカを初め、フランスにしても、イタリアにしても、海運に対しましては強力な助成策を講じておることは御承知通りでありますし、しかも、外国におきまする利子は大体三分五厘が水準だと聞いております。また、しかも、融資期間も日本よりも相当長期にわたっておるというのが現状であろうと思います。わが国の海運は、これらの国々と比較にならない悪条件でまともに競争しなければならないと、こういう状態に置かれているわけであります。利子の高いのは造船だけでなく、日本の国内におきましては全般的な問題だと、こういうふうに考えられるかもわかりませんけれども、しかし国内産業であればすべて同じ利息において競争するわけでありますが、そこにコスト高の問題はあっても、競争に不公平ということは出てこないと思います。これは少くとも利子の問題が競争に影響を与えないわけでありますけれども、運賃は御承知のように、国際価格でありまして、そこには特異性があるので、どうしても海運の助成策の中心は、利子の問題に落ちついてくるのじゃないかと、こう思うわけですが、大蔵大臣の佐藤さんは、この造船の利子補給の問題では苦い経験をお持ちでありますが、しかし、少くとも真に日本経済の基盤の強化を熱望し、そのために外貨獲得の、外貨の保有の必要なわが国だけに、海運をこのままに放置するわけに参らないと思いますので、従って、海運成長のガンでありまする利子の問題をどういうふうに解決する用意があるか、一つ大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  137. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 計画造船といいますか、もっと船舶保有トン数を上げることの必要なことは、長期経済計画からも要請されているところでございます。私どもも、この基本的政策については、心から政府として推進をいたしておるのであります。  しこうして、ただいまの海運事情から見まして、大へん金利負担、そういう意味で困るのではないかという御指摘であるように思います。いろいろこの海運造船、保有トン数という意味から、各国ともいろいろ工夫をいたし、補助をいたしておることは御指摘の通りであります。ことに最近、造船業界で、外国船の発注等を受けて参りますと、この外国船の発注に対しては輸出入銀行が融資取扱いをいたしますと、非常に輸銀は金利が安い。従って、国内で作ります船と輸銀との関係で非常な差がある。しかも、輸出した船舶と高い金利で作った邦船とが競争しなければならない、こういうことで、最近のような運賃の安い際には、業界としても非常に苦心し、苦労しておるところであります。  そこで、ただいま御指摘になりますような金利の問題についての、かつてやったよううな利子補給という問題がやはり今議論になっておることは、私ども承知いたしております。先ほど運輸大臣が申しましたように、海運業界も、最近のような運賃の軟調に対処するために、一そうの合理化をはかって、そして事業の拡大を計画しておるというお話でございましたが、まず第一は、やはり事業自体が事業の経営の合理化をはかって、そうして健全な方向でまずやるだけのことをやるというのが第一の仕事のように思います。ことに利子補給の法律は、御承知のようにもうすでに打ち切りまして、ことしで三年目になるわけでございますが、その打ち切りをいたしましたその当時は、比較的海運界も好況であったと思います。そこで打ち切ったのでございますが、その際に特に今後の問題といたしまして、政府あるいは金融機関の間で大体の基本的な考え方としてきめましたものは、海運市況が堅調を持続して、海運業が約定利息を支払い得ると認める期間に応ずる利子の補給はしない、こういう申し合せを実はいたしておるのであります。今日の海運界の実情は御指摘の通りでございますが、ただいまの経営の合理化がどういう成績をおさめますか、また今後の海運界のあり方等も十分考えて善処していかなければならないことだと思います。現在の状況そのものから直ちにこの利子補給を開始すると、こういう段階にまでは実はなっておらないのでありまして、私自身が過去においてにがい経験があるから、特に憶病になっておるのじゃないかという御理解のあるお尋ねのようにも伺いますが、事柄は基本的国策でございますから、私ども政府といたしまして、過去にどういういきさつがあろうとも、業界のあり方について十分納得のいく方法のもとにおいてこの問題を処理していく、かように実は考えております。ただいまのところ利子補給を開始するような考え方は持っておりません。
  138. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に特にまた大蔵大臣にお尋ねしたいわけなんですが、国鉄の財政のあり方について一つお尋ねしたいと思います。御承知のように国鉄の予算は毎年々々予算の編成期に際しては、そのときの政府の方針に従って変っておるわけなんです。もし一貫して国鉄の財政に方針がありとすれば、できるだけ国の事業を国鉄に押しつけて、そうして国鉄が困るまでやらせていこうというのが方針だとしか受け取れないような国鉄の財政状態になっておると私は見ておるわけなんです。従って他面国家的任務によります事業のしわ寄せの結果起きまする赤字であるとか、資金不足、これはすべて運営面に現われてくるわけなんですが、ここではいわゆる企業性が強く主張されておる。従って国鉄の生命線でありまする安全性さえもやっぱりおびやかされるような修理費の繰り延べがここ数年来続いておることは、大蔵大臣は御承知だと思います。他方経費の切り詰めによりましては、従業員の労働強化が目立ってきておる。こういう現状でありますと、私はここらあたりで国鉄の財政のあり方について根本的に考え直す時期にきているのじゃないかと、かように考えるわけなんです。公共企業体という異なる二面性を持っておる国鉄について、公共性と企業性の限界をどこに置くか、この調和をどこに置くか、財政面について一つ大蔵大臣どうお考えになっておるか、所見を承わりたと思います。
  139. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この点は大蔵大臣がお答えするより、運輸大臣の方の考えを聞かれる方が本筋かと思いますが、しかし、あるいは私過去において鉄道に関係し、また大蔵省を今担当いたしておりますので、予算の面からどういうふうにしておるかというようなこういう意味でのお尋ねかと伺って、そういう意味でお答えをいたしたいと思います。御承知のようにこの鉄道公社自身が二面の性格を持っておるということでございますが、その通りであります。しかして私は、その二つをりっぱにまかない得て、初めて国鉄公社のあり方というものは国民からも親しまれることだと思います。いわゆる公共性、利便供与という意味において採算を度外視することは、これはいかにも一時的には幸いするかのように見えますが、これは長続きのしないことでありまして、結局国民の負担に返ってくることでございます。どこまでも企業体としての十分の採算をとり、しかもその経営は利潤を上げることだけが目的ではなくて、これを直ちに国民、利用者に還元していく、こういうような経営が行われるべきだと、かように感じておるのであります。こういう観点に立って公社の予算などを見まして、最近特に中村さんから御指摘になりますようなことで、この点は工夫しなければならないのかなと思いますことは、最近国鉄が計画し、ただいま実施中の五ヵ年計画そのものでございます。五ヵ年計画は、当初計画といたしまして、将来の輸送に備え、かつまた現状に即応するような設備の整備計画を立てたものだと思いますが、この計画が、計画樹立当時に予想しなかったような事情のもとにおいて、やや内容を変更せざるを得なくなっている、こういう点をただいま御指摘になったのではないかと思います。確かにそういう点もあったと思うのでございます。しかしこの点は、計画樹立の際に予想しなかった事情が起きたのでございますので、この点から一応御了承賜わりたいとお願いいたす次第であります。私は冒頭に申しますように、やはり企業体として十分の採算がとれ、もし利益があるならば、それを利用者に還元していく、こういう方向を経営者もまた従業員も、また同時にこれの利用者も三位一体となって、国鉄という公器を一つ盛り立てていくようにいたしたいものだと、かように念願をいたしております。こういう意味において、政府自体も国鉄の諸計画については十分内容を検討いたしまして、できるだけの支援を惜しまない、この点をつけ加えさしていただいて、お答えといたします。
  140. 中村正雄

    ○中村正雄君 私の質問とはちょっと見当が違った答弁だと思われます。私の質問しました要点は、いわゆる国鉄の財政のあり方について、根本的にどう考えておるかということをお聞きしたわけで、一応大蔵大臣運輸大臣とで御答弁願いたいわけですが、たとえば国鉄の財政についても、国がめんどうを見る面と、国鉄自身がやっていかなければならない面、この二つの面があると思うのです。それが混同されて国鉄自体でやっていっておる。そこに私は大きな矛盾ができてきているのじゃないか。たとえば民間企業におきましては、増資によってまかなう面と、借入金によってまかなう面と、収益によってまかなう面とおのずから限界があると思うのです。それと同じように国鉄につきましても、株主の出資によって当然まかなうべきものが、これもすべて収益と借入金によってまかなっておるのが現在の情勢ではないかと思うのです。従って国鉄自体の借入金自体を見ましても、すでに本年度で二千五百億、来年度は約六百億を見込まれておりますが、しかも今後の情勢を見ますると、五ヵ年計画の推進やら、あるいは来年度ちょっと予算に頭を出しております東海道線の新幹線、これとを見て参りますと、ここ数年はおそらく一カ年間六百億から九百億程度の借入金をやっていかなければ、国鉄の事業は推進できない。こうなって参りますると、借入金の利子の増加だけでもまた毎年々々三十億から四十億ふえていくと思うのです。そうなって参りますると、結局、元金の返還どころか、ふえる利子と、もう一つの諸経費のふえるのと合算した合計分だけも、私は運輸収入の増加を確保することがむずかしくなってくるのではないか、行き詰ってしまってから手を打ったのではおそいのであって、少くともやつぱり今の時期において国がめんどうを見る面と、国鉄自身がめんどうを見る面と、はっきり方針を立てて、今後の国鉄の運営をやっていく、そういうふうにする時期にきているのではないかというのが、私の質問の要旨であるわけです。  たとえば、計画的な国の事業であるとか、あるいは国の要請によりまする事業、たとえば新線の開発等、こういうものは当然国の出資によってやるべきものじゃないかと思うのです。借入金によってやるべきものではなくして、国の出資によってやるべきものだ。また、運営面におきましても、国の政策によって国鉄に犠牲をこうむらせる面も相当あると思うのです。たとえば傷痍軍人の特殊輸送であるとか学生の大幅な割引であるとか、あるいはまた特定の貨物の割安な運賃であるとか、こういうものは国の物価政策なりあるいは社会政策によって起っておるものであって、こういうものは国鉄自身が十分な運営ができるならば別でありますけれども、今のように借入金借入金でやっておる場合には、当然一般会計でめんどうを見るべきではないか。こういう私は国鉄の財政の根本について、国がめんどうを見る面と、国鉄自身がめんどうを見る面と、はっきり分野を分けなければ、すべて独立採算制だ、公共企業だと言ってみたって、足を引っ張ってむちを振るのと一緒であって、国鉄の財政は健全化しないと思う。これについて一つ大蔵大臣運輸大臣の忌憚のない御意見を承わりたいと思います。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほどの話、必ずしも調子がはずれていなかったと思います。具体的にお話しになれば、なおさら私が先ほどお話をいたしたことを繰り返してみたいような気がいたすのであります。  御承知のように国鉄自身が持ちます使命というものは、これは言われるごとく、国の公器あるいは非常に公益性の高い企業である。公益性の高い企業というものが、国家国民の要請にこたえるような施設をすることは、これはまあ大体納得がいくことだと思います。たとえば新線の建設しかり、あるいはまあ特別な運賃割引等の問題について、これはまあ一がいに——傷痍軍人などはちょっとわき道にそれますが、これは国の要請でございますから、この割引に対しましては、一般会計から繰り入れをいたしております。しかし学生などの割引は、これは政策と申しますよりも営業的政策意味も多分にあるのではないか、まあかように考えますし、いわゆる団体割引等は、これはもう国鉄自身が営業方針としても採用されておるものでございますから、どの程度までが国の政策かということになると、これは非常にこまかな議論になりますので、私はしばらく省きますが、非常に公益性の高い企業というものが国家国民の要請にこたえる施設をすること、いわゆる私企業とはおのずから性質の違うこと、これは当然だと思います。こういう意味で公社自身の負担の重いことは、これは一つ御了承をいただかなければならな恥と思います。そういう意味で国自身も鉄道債の発行等について便宜を見たり、あるいは出資等についても便宜を見たりする、こういうことが行われるのでございます。こういう点で国自身も援助をいたしておると思います。しかしながら、問題はやはり企業体としての採算はとれるように経営をしてもらわなければならない。この経営は、先ほど来申しますように、ひとり経営者だけの立場でなく、従業員もまた利用者もやはり国鉄自身を盛り立てていくごとに御協力を願いたいというのは、そういう意味でございまして、政府自身ももちろんこれについて力をいたさなければならない。だからこの公益性と企業性とその二つを結びつけて、そうして国民に迷惑のかからないような方法を一つ講じてもらいたい。国の補助、国の補助と言われますけれども、国自身の補助こそは国民の負担そのものなのでございますから、むしろ企業体としてりっぱな成績を上げて、そうしてその収益によってさらに国民に利便を還元していく、こういうことであってほしいと思うのであります。そこで、割引についてはただいま申し上げましたから御了承がいただけたと思いますが、傷痍軍人に対しては全額国庫がこれは負担いたしております。国鉄にちゃんとそれだけのものを払っております。まあ払わないのは国会議員その他等の無賃乗車に相当あるかと思いますが、これはしばらくおきまして、そこで、新線そのものについての問題でございます。今鉄道の線区についていろいろ考えて参りますと、全体のうちでおそらく収益の上っておる黒字線区というのは全体の二割程度じゃないかと思います。そういたしますと、残りの線区は赤字である。ことに今の新線そのものになりますと、当分これは収益が上っていくまでには、建設資金のいろいろな利子のかかることももちろんでありまして、これが成熟いたしますまでには、開通後五年程度はどんなにしてもかかるだろう、五年あるいは十年くらいかかるだろうということになると思います。しかし、ただいま申すように全体の線区としての黒字か赤字かということを見るべきなんで、それぞれの線区がこれは赤だからどうしてくれとか、またこの新線は政府の要求じゃないかということは、私は鉄道公社本来の使命から見まして、やや議論がこまか過ぎ、少し無理な議論ではないかと思います。ただ、総体として受け取り得ることは、今日の鉄道の経営者なり従業員なりが非常に成績を上げることに協力をしていながらも、なお十分の成績を上げることができない、あるいはその保守なりあるいは車両の手入れなり、そういう点でどうも不安な面がある、こういうことでは国民に対しても相済まない、こういう意味で、何らかの工夫をしろ、こういうような意味にも実はとれるのであります。ただいまの、ことしまでの成績から、まだ私どもそこまで非常にきつい感じは受け取っておりません。しかし、今の五ヵ年計画の整備計画を推進し、あわせて新線建設を計画する。おそらく輸送力強化、保守の整備等の強い要請の出ておる際でありますから、資金獲得の面でいろいろ御苦心もあろうかと思います。そういう意味において政府も国鉄当局と十分話し合って、万遺憾なきを期して参りたい、かように考えております。
  142. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。国鉄の公共性と企業性の調和をどこでとるかということは、私、運輸省に参りまして最も痛感した点はその点であるのであります。一見、今の運営を見ますと、私ども多少民間の仕事の経験をしておった者から見ますと、私企業の弱点と公企業の、国家事業の弱点と、両方だけ兼ね持っておるような感じを受けたことが多いのであります。これはかりの考え方でありますけれども、これを全然、かりに民間企業的に経営いたしましたら、今度は別の方法で公共性に対する制約を加えましても、私はりっぱにペイしていく仕事だと、こう考えております。その建設を借入金でやって、だんだん借入金が多くなったら、おしまいには借金の利息でどうにもならなくなりはしないかというような御心配は要らないでやっていける企業の本体だと思っております。しかし、であるからといって今のままで何もしなくてもいいとは私考えておりません。何か考えなければならぬなとは考えております。しかし、先ほどのお説のように、こう借入金ばかりが多いと、借金でどうにもならなくなりはしないかという御心配は要らないと、こういうふうに考えております。
  143. 中村正雄

    ○中村正雄君 もう時間も参りましたので、最後に岸総理に対しまして、政治あり方と心がまえについて一言お聞きしたいと思います。  まあ岸総理が三悪追放を宣言されてから二カ年に近い月日が流れておりますが、その間、果して岸総理の理想とされました貧乏、汚職、暴力というものが追放できたかどうか。あとを振り返ってみますると、この三つの問題は、岸首相の政治理念として、政策を立案する場合の根本的な態度として堅持されるものとして、当時国民は共感を呼んだと思いますけれども、しかし、二カ年間の実績を見て参りますると、この三つのものは減少しているということは考えられないと思うわけなんです。一般質問でも申し上げましたように、厚生白書によって見ましても、生活保護法に基いて公的扶助を受けている人とほとんど同程度の人が二百四十万世帯もいる、千百十三万人もいると、これが現在の国民の分布の状態であり、しかも近来の傾向としては、この所得の不均衡は、この数字をだんだんふやして参っていると思うのです。岸総理の行なって参った政策というものは、貧乏追放ではなくして、貧乏歓迎の政策だ、こう言われても実際の数字の上から見ますると、返す言葉もないと思うわけなんです。汚職にしても暴力にしても、日々の新聞にどちらかの記事が載ってない日はないと言っても過言ではないと思います。歴代の内閣の中で、岸内閣ほど貧乏の問題、汚職の問題、暴力の問題、これがやかましく言われた内閣は、私は記憶いたしておりません。    〔理事堀木鎌三君退席、委員長着席〕  特に極言する人は、岸総理の歩いた足のあとには汚職のにおいがする、こういう極言をする人もいる状態であります。しかし、私は岸総理の私生活について云々しようとは思いません。しかし、岸総理政治理念というものは、政治は力である、金であると、こう言われております。金権政治があなたの行動の指針だと今一般に言われております。このことは野党の私が指摘するまでもなく、あなたの党でありまする自民党の大会ではっきりと言われた言葉であり、姿であります。金権政治の岸総裁を打倒するんだということで、同じ党の松村さんが政界浄化を叫んで総裁公選に立候補されたことは、当時の新聞が報道しております。しかし、党の大会では松村氏が敗れまして、あなたが総裁の地位を再び確保されました。しかし日本の政界のためにも、自民党のためにも、金権政治という大方針が自民党の大会において是認されたものとは私は思いたくありません。私は政治に必要なものは、金と力ではなくして、政治に対する燃え上る情熱と、深い責任感と、国民に対する愛情だと考えております。国民政治に対しまする信頼感を高めるためには、特に総理の地位にある人に要求しなければならないのいのは、この深い責任感ではないかと考えるわけであります。法律的な責任はもちろんでありますが、それ以上に必要なものは政治的な責任であり、道義的な責任だと考えるわけであります。  日本国憲法は、総理大臣に対しまして世界に比を見ないほどの強力なる権限を与えております。アメリカ大統領に比べましてもまさるとも劣らない権限を、あなたはお持ちになっていると私は思います。しかし、憲法が施行されましてからわずかに十二年、この総理大臣の強力な権限に対しまする裏づけとしての義務や責任についての法は、いまだ完備されておりません。慣習法とも言うべき不文法も成立はいたしておりません。先例も確立されておらないと思います。それでありますからこそ、なおさら政治的責任と道義的責任の観念は、総理大臣に要求されるものだと私は考えます。衆議院予算委員会におきまして、社会党の同僚から、賠償に関する汚職の問題について、政府を盛んに追及いたしました当時、総理大臣運輸大臣、外務大臣等は、汚職の事実はないという、この一点張りで委員会は一応切り抜けたわけでありますが、われわれとしては賠償問題の経過や、岸総理の現在までの行動や、私生活等から見まして、あなたの汚職の事実を私は確認いたしております。確信をいたしております。岸内閣は汚職に汚れた内閣だという確信を持っております。おそらく私は、国民の大多数も、私と同じような確信を持っておると思います。証拠には、当時の国内の新聞雑誌で、岸内閣には汚職の疑いなしと書いたものが、ただの一つでもあったでありましょうか。あらゆる論説が汚職の疑惑のあることを肯定していることは、岸総理もお認めにならなければならないと思います。しかし、現在の議員の職権では、確実な証拠を握ることは困難であります。野党におる者としては不可能に近いものだと考えております。しかし証拠さえなければ、法律上の問題にさえならなければ、いかに国民が疑惑を持とうとも、責任をとる必要なしと、岸首相はお考えになっているかどうか。道義的責任について私はお答え願いたいと思うわけであります。  歴代のアメリカ大統領が、常に最大の注意をもって警戒いたしておるのは、御承知のファヴォリチズムという言葉であります。特殊の人に特殊な便益を与える、これを最も警戒いたしているわけであります。政治家は、公務員は、十分この点は考えなければならないものだと思います。それなるがゆえに、部下の過失に対しては、事このことに関してはきわめて峻厳なる態度を持っていることは御承知通りであります。あなたの尊敬されておりまするアイゼンハワー大統領も、かつて最も有能な、最も信頼いたしておりましたシャーマン・アダムスを、汚職の容疑ありといううわさだけで解職したことも御承知通りであります。アメリカ大統領が最大の権力者としての地位にありながらも、今日まで国民の尊敬と支持を受けて参りましたものは、右の心がまえを細心の注意をもって私は実践して参ったからだと思うわけであります。この態度は、日本総理大臣としても十分学ぶべきものでなければならないと考えるわけであります。岸内閣に対しまする汚職の疑惑というものは、国内に充ち溢れております。この際、岸総理にお尋ねしたいのは、汚職の疑いある大臣を罷免するだけの決意があるかどうかということであります。政治に対しまする国民の信頼を高めるために、岸総理自身責任をとるお考えがあるかどうか、この点をお伺いいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  144. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 政治について道義的な責任を明確にすべきことは御指摘までもないことであろうと私は思います。一国の政治の首班として、私が政治に当っており、内閣の閣僚を任命いたしております限り、私についてはもちろんのこと、閣僚につきましても、そういうことの事実があるならば、これはもちろんそれが法律に触れるかどうかという問題ではなくして、責任をとるべきことは言うを待たぬことであります。私は衆議院において、賠償に関して汚職の疑惑があるというような意味におきまして質問があったことに対して、明確に、私並びに私が任命しておる閣僚はその事実を否定し、これを明確に私ども所信を明らかにいたしました。ただ問題は、きわめて薄弱なる根拠でもって私は言われておることについては、はなはだ遺憾とするところでありまして、現に衆議院におきましても、こういううわさがあるが、それはどうであるかというような、あるいは何々の雑誌にこう出ておるがどうかというふうな御質問があったのであります。私はもちろん政治の清浄を望み、私自身今おあげになりましたように、政治の理念として三悪の追放を国民に誓っております。それが、事実として二年の実績においてどうあがっておるかという点に関しましては、決して私が念願しているようにいっているとも考えておりません。しかしながら、これを一貫して常に考えいてることは、私の信念であり、また、私の足らざるところがあるかもしれませんが、少くともその根本においては、私は常に私の政治信念として今日まで行動してきております。もちろんいやしくもそういう疑惑がある、いやしくもそういうようなことに関して質問をし、これを糾弾するという場合におきましては、あくまでももちろんこれは検察庁ではございませんが、検察庁の問題とは違いますけれども、しかし少くとも質問する人がそれについて確信を持ち——少くともそれについてはただ単なる一片のうわさや、あるいは責任をとらないようなはなはだ無責任な新聞、それも一流の新聞でなしに、そういうことを掲げておいて事実に反しているというような事実があげられれば、私はきわめて遺憾とするところであります。私はそういうことであるならば、この問題に関しては、(「証拠がなければいいと言うのか」と呼ぶ者あり)証拠がなければいい、そんなことは言いません。私は証拠がないことをしないということを申しております。証拠がないことを何がゆえにあなたはしたと言われるのか、その点を私は明確にしてもらわなければ、こういうことはきわめて真剣な問題であり、今、中村委員お話のように、私はこれは政治の基本の問題であり、また政治家としての基本の問題である。ただ政見が違うとか、意見がどうであるとか、施策がまずいとか、いいとかということでなしに、政治の本体であります。政治家としての生命に関する問題であると思いますがゆえに、私は明確にそういうことを申し上げておるわけであります。私は、もちろん何の証拠も突きつけられないということであって、それならしないのだというような、ふてぶてしいことは申しておりません。しかしながら、こういう単なる事実に反するような、現にあげられた事実が間違っておることが数点あることについては、私はそれには明確に間違いであるという事実を、私の方からも明らかにしておきます。しかしながら、疑感というものに対して、それじゃお前はないと言っているが、それに対してどういう証拠があるのか、ないということの証拠を示せと言われたって、これはまたできないことであります。要は、私は政治信念の問題であるのと、道義の問題である。最近における私は私自体に関するいろいろな問題に関しましても、もちろん反省すべきことは反省いたしております。しかしながら、いやしくも事実に反し、また私の政治的信念に反し、私の政治的行動に反している事柄につきましては、断固としてこれに対して私は抗議を申し込むものでございます。    〔鈴木強君「ちょっと関連」と述ぶ〕
  145. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 何ですか、鈴木さん。
  146. 鈴木強

    鈴木強君 関連。
  147. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連質問ですか。中村さんいいですか……。じゃどうぞ鈴木さん。
  148. 鈴木強

    鈴木強君 ただいま中村委員質問に対して岸総理が相当激高されて御答弁に立っておるのでありますが、あなたのおっしゃるように、それではいつ何月何日にどこでどういうことをしたという具体的な事実がないかもしれません。しかし、最近の紙上その他の国民の世論というものは、少くともそういう疑惑を持っておることは、私は事実だと思います。あなたも確かにそういうことを立証する方法はむずかしいと、こうおっしゃるのですが、それでは大へん私事にわたって恐縮でありますが、先般の熱海の別荘等につきましても、お互い国会議員として十数万の歳費をもらってやっておるわれわれは非常に苦しいと思うわけです。ですから、その別荘が二千万円かかったか、三千万円かかったかわかりませんが、そのこと一つも、その周囲の事情からして、何か疑惑を持たれるということは、これはまた当然のことであると思います。ですから、あなたがもし清廉潔白であると言うならば、衆議院のわが党委員質問に対しても、もし必要があれば自分の家計の収支についても発表してよろしい、こういうことをあなたは言われておるようにわれわれは聞いておるわけであります。ですから、進んであなたがこの際清廉潔白であると言うならば、国民の疑惑を解こうとするならば、最近あなたは二年なり三年なりの収支の点を国民の前に明らかにして、これはこういうところからの支出であって、絶対に汚職でないということを明らかにすることが、私は一番大事ではないかと思うのです。ですから、そういう点について、今直ちにできないかもしれませんが、あなたはやる意思がありますか。そうすれば、ある程度の疑惑は晴れると思います。
  149. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は衆議院におきましてもそういう質問に対して、私自身のことをそういう財産の関係について明らかにせよと申されれば、明らかにするということを申しております。ただ、私の方から進んでやるということが適当であるかどうか、この問題については衆議院の方でそういう要求があればやるということを、私は衆議院のなにの方に申しております。そういうことはちっともやぶさかではございません。    〔矢嶋三義君「資料要求」と呼ぶ〕
  150. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連質問ですか。ああそうですか。矢嶋君。
  151. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理政治的責任追及については、午前中市川委員から、先刻中村委員から、若干質疑されたのは御承知通りです。総理答弁に、態度に、若干物足りないものがあったので、わが党委員からも若干やじりました。それに対して、行政府の長としていまだかつてないほどの防御的、攻撃的態度をもって応ぜられた。(笑声)これはいたし方がないかもしれませんが、私は資料として委員長を通じて要求したいことは、ただいまの中村委員への答弁の骨子は、事実無根である、そうして一流新聞というのを訂正しまして、一流でない新聞あるいは雑誌等に掲げられておるということを指摘しております。市川委員に対しましても事実無根ということを非常に強力に答弁され、事実に反することだということを速記に残されております。従って、私はあの日刊新聞、いずれの新聞も書いてあるわけですがね、それから週刊誌にしましても、私が今記憶しておるだけの週刊朝日、週刊サンケイ、週刊東京等々、これを掲載していない週刊誌はないと思います。これは国民の相当の階層の人が購読しておる記事でありまして、私は一流に入ると思うのです。従って、総理におかれてああいう記事の中で、この項目は事実に反する、これは認めて反省するという一覧表を(笑声)笑いごとではないです。ここまで来たら、これを明確にすることは総理のためであると思います。日本政治のためでもあると思う。その資料を早急に総括質問が終了する前に、委員長に出していただきたい。  それからこれは私事にわたって大へん恐縮ですが、ここまで来ますと、やはり日本政治のためにも、岸総理自身のためにも、やぶさかでないと言われるわけですから、衆議院で要求があったわけですが、私は参議院社会党委員として、アメリカのニクソンの例もありますから、一つ大へん恐縮でございますが、あなたの身の潔白を証明する意味において、衆議院でも出ましたのですが、お宅の財産目録を資料として一つ出していただきたい。これは委員長に要求いたします。
  152. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 中村君の質疑は終了いたしましたから、次に杉原……
  153. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長、私は議事進行発言を求め、成規の手続をもって発言しておる。委員長を通じて資料の提出を要求いたしましたので、了承しましたということを委員長は言わなければなりませんよ。
  154. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 理事会に一つ……。資料の提供ですから、一つ理事会で後刻いろいろ御相談をしたらどうでしょうか。
  155. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 理事会に持っていくまでもないことだと思いますが……。大衆の前ではっきりきめたらどうですか。
  156. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 私は、別にあなたの言うことに反対するわけではありません。あなたの言うことは、ここに御列席になっておる岸内閣総理大臣も聞いておるわけですから、それから従来の資料の請求等につきましては、理事会で前もっていろいろ御相談をしておるわけですから、あなたの御発言がありましたから、きょうこの本委員会終了後、委員長理事の打合会がございますから、そこで一つ相談してみたらどうだろう、こう思いますが、どうでしょう。よろしゅうございますか。
  157. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 理事打合会に出していただいてもやむを得ません。
  158. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 打合会で一つ相談して……。いろいろ資料を皆さんが御請求になるのは、やはり必要があってやるのですから、今までの慣例のように、理事会でそれを取り上げて一つ御相談して下さる方がいいんじゃないか、また、非常に権威のあることになりますから、そういうふうにいたしたいと思いますが、どうぞ一つ御了承願いたいと思います。   —————————————
  159. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) それでは、引き続き質疑を行うことにいたしまして、杉原荒太君。
  160. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外交と防衛に関する問題を中心として、主として岸総理大臣に対し質問をいたします。  まず第一は、ベルリン問題を中心とする国際情勢についてであります。東西対立の全般情勢の中にあって、東ヨーロッパと中東と極東とが世界政治の三つの危険地帯と目されていることは、あえて指摘するまでもないところであります。これを事実について見まするに、ここ数年来、特に極東及び中東方面において危険性をはらむ事件が起りました。これら両地域の事態は、今日なお不安定の状態にあるのでありまするが、これに加えて、昨年未来、現にわれわれの最も重大なる関心を払わざるを得ない問題が、世界政治における危険度の最も高い東ヨーロッパ方面において表面化してきておるのであります。すなわちベルリン問題を中心とするものでありまして、ベルリン問題の成り行き如何は、決して局地的な問題ではなくして、ソ連側としては東ドイツのみならず、ひいては他の東欧衛星諸国の内部情勢と相待って、それら衛星国に対する今後の掌握の難易にも響いてくる問題である。深刻なる問題である。そうしてまた一方西欧側としては、ベルリン問題こそは各種複雑なる要素を含んだものであって、いわば対ソ対決のイッシューをなす重大問題と見られるのであります。このベルリン問題はその根の深いこと、その影響するところの広くして重大なること、長期の遷延を許さない、その緊迫性等におきまして、今日までの他の国際事件に比べて比較を絶するものがあると見られるのであります。それであればこそ。ダレス長官が病躯を押してヨーロッパに使いし、またマクミラン首相みずからがクレムリンに乗り込んでおるのであります。しこうして時期的に見ますれば、本年の四、五月ないし六、七月ごろが、問題の推移を決する上から見まして、重大なる時ではないかと推測されるのであります。そこで私のお尋ねいたしたい点は、この重大なるベルリン問題を中心とする国際情勢に対して、政府はいかなる心がまえと見通しとをもって対処をせんとしておられるのであるか。特に第一には、大局判断においてベルリン問題の危険度をどう評価しておられるのであるか。場合によっては最悪の事態まで引き起す危険性ありと見ておられるのであるか、またそれだけにかえってよくいくならば、東西両陣営間の全般関係の打開の契機ともなり得ると見ておられるのであるか、またベルリン問題に呼応して中欧または極東方面において、たとえば台湾海峡問題の再燃のごとき事件が起る危険ないし徴候はないか。総理は七月ごろから中南米及び欧州方面の親善旅行に出かけられる御計画があるやに報道せられているのでありますが、総理が各国の指導者たちとパーソナル・コンタクトを密にされるという意味合いにおきましても、それ自体は、はなはだけっこうなことでありまして、私は、そのことについて今ここに触れるつもりはごうもないのでありまするが、そのような計画の時期的の選定は、ただいま申しました国際情勢についてのある種の判断が前提をなしているものであるかどうか。  第二に、この種重大問題に関する直接関係国間の話し合いの成り行き等については、わが国も絶えず関係友好国政府から、外交経路を通じてインフォームされた状態にあることと思うのでありますが、その点、実際上円滑にいっているかどうか。  第三に、わが国の対外施策のうち、あるもの、たとえば中共に対し何らかの措置をとるとしても、そのタイミングの選択は、ベルリン問題を中心とする東西両陣営間の全般関係の推移とにらみ合せてやることが適当ではないかと思われるのでありまするが、この点に関する政府の所見はいかがでありましょうか。  まず、以上三点についてお尋ねいたします。
  161. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ベルリン問題で国際情勢の上から見まして非常に重大な意義を持っていることは御指摘の通りであろうと思います。重大でありますがゆえに、関係各国におきましても、この問題についてあらゆる面からこれが合理的な解決に向って努力をいたしているのであります。私は、今日の状況において最悪の事態を予想したくないのでございます。というのは、現にマクミラン英首相がソ連に行ってこの問題についてソ連首脳部との話し合いをする、すなわち何とかとし話し合いによってこれを解決しようとする真剣な動きが、関係各国の首脳部の間に非常に動いている。また、これをして最悪の事態に達せしめることは、世界の、言うまでもなく、一つの危機でございますがゆえに、これを話し合いによる解決によって、東西両陣営の対立を緩和する方向に、あらゆる努力が払われるものであり、また、その払われることによっての成功を私どもは希望し、期待するわけでありますが、今日の状況から直ちにこれを楽観的に見ることは、もちろん情勢がそういうふうにまで進展はいたしておりません。また、これが非常にいい場合におきましても悪い場合におきましても、ともにただ単にベルリンの問題だけではなくして、東西両陣営の対立の国際情勢の上に非常な大きな意義を持っておるものとして、私どもも常に重大な関心を寄せて、その成り行きを十分に注視するとともに、できるだけこれが成功にいくように、あらゆる面から今後といえども努力できるものであれば努力をし、また国際連合等におきましても、そういう方向に動いていかなければならぬと思います。  なお、国際間の問題におきまして、いろいろな重要な事態につきましては、友好国との間にできるだけ緊密な連絡をとり、当方からもいろいろ重大な問題につきましては、友好国に適当な時期に通報し、その理解と協力を求めております。たとえば北鮮に、日本に在住しておる朝鮮人を帰すというような問題につきましても、あらゆる外交のルートを通じて、友好国との間には十分な理解を求めるように努力をいたしております。また反対に、英米等間におきましても、その他友好国におきましても、重要な問題については、また外交ルートを通じて連絡のあることと私は信じております。  さらに対中共の問題に関して、ベルリン問題の成り行きを見ていろいろ考えるべきじゃないかというお話がございましたが、先にも一言触れましたようにベルリン問題の解決いかんということは、ただ単にベルリンの問題だけではなくして、国際的に東西両陣営の対立の全面において非常な意義の大きいことでありますから、その解決いかんによって、中共との関係の打開につきましても、あるいはこれを容易ならしめ、あるいは困難ならしめるような事態が起らないとは言えないと思います。しかし、ただそれまでは、情勢を見るというだけではなくして、かねて私どもが声明しておるように、経済、貿易の関係においては、何とか打開の道があるならば打開の道を目っけて、これの打開に進んでいきたいという考えは、依然としてわが政府としては考えておるわけであります。しかし、こういうことがベルリン問題の成り行きいかんによって非常に困難にもなり、また容易にもなるという事態に関連性を持つことは、これはいなむことはできないだろうと、こう思っております。
  162. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、核兵器に関連する問題についてお尋ねいたします。  今日の国際政治の世界は、核時代に入っておるということが一つの大きな特色であることは申すまでありません。核の問題こそは、好むと好まないとにかかわらず回避することができない国防、外交の重大問題となってきておるのであります。しこうして今日においては、核兵器の範囲は広くて、原爆は広島型の爆発力の二十分の一のものから五十倍に至るまで、水爆に至っては威力に限度がなく、いかなる所望の爆発力の兵器でも作れるようになってきているのであります。そうしてこの事実は、単に軍事政策考えていく場合だけでなくて、外交政策考えるに当っても、新しい課題を提供してきておるのであります。その中の一つとして最近特に注目されることは、アメリカの軍事、外交の有力なる専門家たちの間において、いわゆる核限定戦争政策なるものが取り上げられて、ことに今年一月アメリカ政府提出されたロックフェラー報告が、この政策を全面的に支持していることであります。つまり核兵器の全面的使用に至る全面戦争の結果の重大性にかんがみて、なるべくこれを避くるために、相手方が最初に使用しない以上、核兵器の使用を一定の範囲に限定する意図をあらかじめ相手国に知らして、核戦争を限定する政策が、核武装をしている大国間にとられるに至ることを提唱するものであります。この政策は、核全面戦争を決意をしている国に対しては有効でないわけでありますけれども、相手方の意図を誤算することによって、誤解することによってひき起されるこの誤算による核全面戦争を防止して、核全面戦争の機会を減少せしめる意味において、核時代の現実に対処する一つの建設的提案たるを失わないと考えられるのであります。核兵器の実験禁止に対しては、初めから非常な熱意を示してきておられる岸総理は、世界に向って提唱する平和政策の一環として、そのような意味における核限定政策の構想を織り込む考えはないか、少くともまじめにこれを検討する意思はないか、この点についての総理のお考えをお尋ねいたします。  なおこの機会に、総理が今日までたびたび言明しておられます日本は核武装はしない、またアメリカの核兵器持ち込みは、お断わりするとの方針について、その防衛政策及び対外政策上の根拠をお示し願いたいのであります。
  163. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核兵器の発達は御意見にもありましたように、非常に急速度に、しかもその性能の上におきましても非常なおそるべき威力を持つようになってきております。今後の発達の前途につきましても、ほとんどはかり知るべからざるものがあるといっても過言ではなかろうと思うのであります。しこうしてこれが全面的に用いられるというようなことになりますというと、言うまでもなく、それは当該国の破滅だけではなくして、全人類の、極端に言えば、破滅を意味するというような状況でございますがゆえに、これが破壊兵器として使用されるということは、何とか世界の良識に訴えて、これをやめなければいかぬということが、世界のいろいろな方面において漸次声が高まってきた、現に科学者自身がこの威力を知るとともに、科学者自身がそのおそるべきことを考え、これが破壊兵器として核戦争が行われるということに対する科学的見地からの考慮、また世界人道の立場からの議論等がいろいろと高まってきております。私は、すでに日本が体験したところの核兵器、原水爆——原爆及び水爆の実験に伴うところの被害等を考えまして、核爆発の実験禁止の問題、それは日本国民の一致した意見として、国会におきましても満場一致採択されておる。これを実現するために、過去におきましていろいろと国際連合等においてもわが代表をして努力さして参っております。あるいはまた、これはただ単に実験禁止ということが最後の目的でないことは言うを待たないのでありまして、核兵器の製造や使用や貯蔵というようなものをやめて、原子力というものをもっぱら平和的利用の方向に用いるということに向って、世界が努力しなければならぬという理想に向っての一段階であったことは言うを待たないのであります。さらに、しかしながら、このことは、言うまでもなく、これを持っておる大国間において一つの協定ができない限りにおいて、一国だけが他に先んじてやめるというようなことがなし得ないことは、現在の国際情勢から当然であります。そこで話し合いが行われなければならぬ。その話し合いがあるいは監視機構の問題や、あるいは管理機構の問題等々、いろいろ国際的な動きが出てきておることも御承知通りであります。しかし前途はまだ予測がつかない、そのうち核兵器がだんだん大国だけでなく、小国も用いるようになりますというと、その実際に使われる危険というものがなお加わってくるおそれが多分にあるのであります。こういうことを考えますというと、私はなお今後従来にも増して、一日も早くそういう危険がない時代を作り上げることに日本としては率先して努力をし、世界に訴えなければならぬと考えております。今おあげになりました核限定戦争に関する一つの提案のごときも、根本的な私どもの最後の理想から見まするというと、一切の核兵器を持たぬし、また核兵器を使わぬし、核戦争というものをなくしようという意味でありますが、しかしそれに向っての現実的なある種の段階としては、やはり一つ考え方として真剣に検討してみる問題であると考えております。私はこの原水爆に対し、核兵器の問題に対する日本考え、また私自身が日本の自衛隊は核武装をしないし、核兵器を持ち込まさないという私の言明、また私の政治一つの方針というものは、私は根本的には先ほど来申しておるところの一つの理想に立っておるものであります。また日本現状から見まして、われわれがこの今日の状況において、核武装をし、あるいは核兵器を持ち込むということが、さらにいろいろな危険を伴うおそれのあるものであるということを考えまして、日本の安全保障の上からいっても、今日の状況においては武装しないことが望ましいというのが私の考えの基礎になっておるのであります。
  164. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、安保条約改定と防衛問題について若干お尋ねいたします。戦争を防止し、平和と安全を維持することを目標とする平和外交の柱は、わが国対外政策の基本であることは岸総理もしばしば言明しておるところであります。また昨年中東問題の危機に当りまして、国連において藤山外相のとられた積極的の活動は、これを実例をもって示したものであります。およそ平和の目標を見失った安全保障のみの強調が誤りであるとともに、安全保障の手段を持たない単なる平和の呼号は現実的ではなくして、いずれもわれわれのとらないところであります。わが国の現実的平和政策の一環として、日米安全保障の原則はこれを認めつつ、わが国の自主的立場を明らかにすることを主眼として、その方式の合理化をはからんとする政府の安保条約改定の基本方針には、われわれは趣旨として賛成するものであります。その前提に立ってお尋ねするのでありまするが、第一点は新条約が共同防衛、相互防衛ないし集団自衛の性格を持つに至るものとして、それが直ちに憲法違反であるというような論に対して、政府の見解はどうであるか、また、バンデンバーグ決議の趣旨が、そのまま新条約に織り込まれたならば、憲法との関係はどういうことになるか、政府の見解を明白にしていただきたいのであります。
  165. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本を守りますために、日本の力の不足しております今日、アメリカの援助を求めますこと、これが今回の安保条約の趣旨だと思います。ごく平たく言った趣旨だと思います。そうして、その条約締結に当りましては、むろん憲法上の制限の中で条約を締結することでありまして、そのこと自体は憲法違反にはならぬと思います。またバンデンバーグ決議の精神というものは、自助及び相互援助にあると思います。その精神を憲法の範囲内において書き表わしますことは、憲法違反にはならぬと思います。
  166. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、日米安保条約においてそのねらいとする政治的効果として、戦争抑制の作用をなす主たる力は在日米軍であるよりは、むしろ背後に控えておるアメリカの戦略空軍や第七艦隊の威力が主体をなすものではないかと思う。万一新条約に基く共同防衛義務が発動するような事態が現実に起った場合に、それの実施としてそれらアメリカの戦略空軍や第七艦隊が行動をとるとして、その行動と新条約との関係はどうなるか、それらのアメリカ軍の行動に対しても適用があり得るような一般的の協議条項を構想しておられるかどうか、その点は戦略空軍等の性質にかんがみまして、さきに触れました核限定政策の適用の余地を存する等の関係もありまするので、実際上重要なる意味を持つのであるから、特にこの点をお尋ねするのであります。
  167. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約締結に当りまして、われわれの持っております基本的態度は、日本国以外の紛争にできるだけ巻き込まれたくない、それを抑止することが必要である、そういう意味におきまして、われわれは日本の基地を使用して作戦するという場合に、それが日本をほんとうに守る意味における行動であるのかどうかということで、協議事項においてわれわれは協議いたして参りたい、こういう精神をもって貫いていきたいと思います。
  168. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、安全保障と経済安定とは不可分の関係にあることは申すまでもありません。従って、安全保障に関する条約の中に経済協力条項を織り込むことはあえて不自然ではない。また実例もあることでありますが、この点について政府はいかなる構想を持っておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  169. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安全保障に関するこういう条約を二国間で作りますその基調には、両国の経済、文化、あらゆる関係が親善の上に立っているという基盤の上に立って初めてできることだと思います。従って、そういう意味の表現が取り入れられることは御指摘のように必要だと思います。
  170. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、今後のわが国防衛力の整備の基本構想に関することについてお尋ねいたします。  今日では現代兵器の系統の複雑さと、防衛力造成及び維持費の負担等と国力との関係に思いをいたしますと、どういうカテゴリーの防衛力に重点を置こうとするのかについて、まず思い切った取捨選択を下す必要に迫られていると思うのであります。どんな不測の事態に対しても備えるというようなやり方が、かえって浅薄なものになってしまう、二兎を追うて一兎も得ないというような結果になることは必至ではないかと思うのであります。イギリスがスエズ作戦に失敗したのは、一方においてその戦略打撃力がソ連のロケット攻撃の威嚇を抑制することができない、さればと言って限定戦争に対して対処する力も圧倒的でなかったという防衛計画のこれは欠陥を示しておるのでありまして、イギリス政府の国防白書においても、反省がなされているところであります。イギリスほどの国力のあるところですらしかり、わが国はもとよりみずから全面的戦争に対する戦略的抑制力を持つような考えはなく、またイギリスの例などを比較にとるのが必ずしも適当ではないのでありまするけれども、とにかく防衛力整備計画の対象となる脅威、危険を思い切って限定的に選択して、その限定目的に向って装備、編成、訓練等を集中的に行う方針をとるということが肝要ではないかと思う。そしてまた、今日までもそういった考慮は十分に施されておると思うのでありまするけれども、次期防衛力整備に当りまして、さらにそういった考慮を徹底せしむる余地がないか。次期防衛力整備構想については、昨日防衛長官からお話がありました質的増強ということは、それはそれとしてけっこうでありまするけれども、それに加えて右の点についての政府の御所見をお伺いしたいと思うのであります。  なお、この機会に次期主力戦闘機の選定をどう進めていかれるつもりであるか、この点もあわせてお尋ねいたします。
  171. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) わが国防衛力整備の基本的な方針につきましては、御承知のように一昨年の国防の基本方針に基きまして、天下に明示してあるところでありますが、御指摘のようにイギリスの国防白書等におきましても、いろいろな反省と批判がみずから加えられておるわけでございますが、わが国の置かれた地位にかんがみまして、御指摘のごとく局限せられた地域戦争ということに重点を置くことは当然かと存じまするが、御承知のごとく世界の情勢、なかんずく日本をめぐる東アの情勢の変転につきましても、またいろいろと将来予測すべからざるもの等もございまするので、われわれは地域的な限定戦争を中心としつつ、なお日米共同防衛方針、共同防衛の基本的な精神にのっとって、諸般の情勢を考慮しつつ、防衛力の整備に当りたい。従って御指摘の点につきましては、次期の防衛力整備の根本目標は、質的な整備と私は申し上げましたが、なかんずく航空機関係等につきましては、GMの飛躍的な整備をはかりたいということと、艦船等につきましては、対潜水作戦の整備、アメリカ等におきましては、すでは二千五百トン程度の水中のみを走る潜水艦等もできているとか申しますが、わが国におきましては、さような大型な潜水艦よりも、比較的小さい潜水艦によって武力攻撃を受けた際の対潜作戦の整備を期したい。かように考えている次第で。ございます。  なお、次期戦闘機種の選定の問題につきましては、すでに昨年国防会議において内定を見ておりまするが、その後の各般の状況、新しい各機種等の状況も目下鋭意検討中でございまするので、できるだけ早い機会にこれが決定を見るべくあらゆる努力をいたしている次第でございます。
  172. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、対外経済政策に関する問題について質問いたします。  国民の経済生活をよくすることを目標とする経済外交の柱は、平和外交の柱と並んで、わが対外政策の根幹であることは申すまでもありません。この見地からここには二、三の点について簡単にお尋ねいたしたいと思います。第一は、世界銀行及び国際通貨基金の強化についてであります。昨年来これら両機関におきましてとられた一連の措置によって、世界銀行の出資額及び国際通貨基金の割当額の増加が実現の運びに至り、またわが国については特別増額が認められるに至ったことは、われわれの歓迎するところであります。世界経済の将来、ひいては結果において国際政治との関連の上から見ましても、世界銀行及び国際通貨基金の果す役割は、ますます重きを加えてきていることは申すまでもありません。わが国としては、今回の増資に満足することなく、今後ともますます関係各国と協力して、この両機関の強化をはかることを、対外経済政策一つの大きな柱としていくことが必要であると思うのでありまするが、この点について政府の基本的なお考えをお伺いいたしたいのであります。なお、今回の増額措置が効力を発効するのは、両機関ともそれぞれ大体いつごろになる見込みであるか、もしおわりでありますならばお聞かせ願いたいのであります。  次に、東南アジア経済開発の問題について一点だけお尋ねいたします。岸総理が初め東南アジア経済開発基金の構想を発表されました当時と比べて、今日ではアメリカ側の低開発国に対する援助政策も強化されてきている。新年度のアメリカの予算計画を見ましても、開発借款基金その他関係予算の相当大幅の増額が見込まれてきているのであります。これらに対応してわが方においても、今後一段とあのルールケラー鉄鉱開発計画のような多角的な国際協力が具体化していくことを希望してやみません。ただ、それにつけても、わが国現在の東南アジア開発協力基金の使途は、法律によって、東南アジア開発協力のための国際的機構に対する出資のほかには、当該機構が設置されるに至るまでの間において、将来当該機構の出資に振りかえることができる性質の国際的協力による投資と限定されているわけであります。このあとの方の投資に該当するものについては、その認定基準も問題でありますけれども、今日の実情からすれば、この規定はいささか弾力性を欠くきらいはないか、この点、資金量の点などともあわせて、政府においてはさらに再検討するお考えはないか、その点をお尋ねいたします。  なおこの機会に、ルールケラー鉄鉱開発計画に関する日印間覚書の中に予想されております、バイラディラ及びスキンダ地区鉄鉱山の開発に関する調査等の措置は、その後どうなっておるかをお尋ねいたします。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私から、世銀並びにIMFについての増資の問題についてお答えいたします。世銀、IMF両機関の資本をこのたび増額することにいたしておりますが、これは、日本経済に対して御指摘のように大へんプラスになると思います。今回の増資に当りまして、世銀においては、在来日本の持ち分は二億五千万ドルでございましたが、今回特別割当を受けまして、合計して六億六千六百万ドルということになりまして、倍額以上の増資を受けておるわけであります。またIMFにおきましては、日本は従来二億五千万ドルでございましたが、これが倍額になりまして、今回で五億ドルになるわけであります。そのようにして、日本は加盟国のうちで、大体世銀、IMFとも第八位くらいになっておるかと思います。そこで、今後におきましても、両機関の持つ機能から見まして、私どももやはり協力を惜しまないものでございますが、しかし、今回の増資でなお十分とは申せませんけれども、世銀におきましては、今回の増資で授権資本が百億ドルから二百十億ドルという増額をみたのでありますし、IMFは九十二億二千八百万ドルから百四十九億九千九百万ドルということに増額をいたしております。またIMFにおきましては、今までの協定の上から、割当額の調整は毎五年ごとに検討するということでございますので、当分の間新たな増資の機会はないものと実は考えております。また機会が到来いたしますれば、もちろん協力を惜しむものではありません。この点は御指摘の通りであります。そこで、払い込み完了の期限でございますが、IMFは今年の十月十五日、これが払い込み期限になっております。また世銀の方は十二月三十一日が期限でございます。従いまして、本年末までには新しい資本のもとに活動を開始する。世銀の方は年が改まってということになるわけでございます。
  174. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アジア経済開発基金につきましては、われわれも同種のものに出資をする、また、そうした出資の機会のない場合におきましては、適当な同種機関に委譲できるような種類のものには、そうしたものができない間でも出資をするということなんであります。これらの問題につきましては、現在対外経済協力懇談会という会を作りまして、そこの意見によりまして十分活用して参りたいというふうに考えております。また、バイラディラの開発につきましては、現在鉄鋼関係方々代表者を送っております。実施打ち合せ等について現地でいろいろと協議されております。
  175. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 最後に、特に岸総理大臣に対し、外交運営のやり方についてお尋ねいたします。  外交の運営民主主義どの関係については、本質的に困難な問題を含んでおることは、あえて指摘するまでもありません。しかし、それだけに、民主主義政治のもとにおいて、外交運営の方法が乱れるならば、収拾すべからざる混乱に陥り、その結果は、国家の利益と信用とはみすみすそこなわれていくのであります。聰明なる岸総理に対し、私は多くの言葉を申し上ぐる必要を認めません。ただ、特に外交の運営については、総理大臣としての指導力を遠慮なく発揮していただいて、外交運営のよき慣行を作っていただきたいのであります。質問というよりも、むしろ希望として申し上ぐる次第でありますが、総理大臣の率直な御所信の開陳を願えれば幸いと存じます。
  176. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 外交の問題、特に国際情勢がこういうふうな複雑な中にあって、日本の運命を開いていくという外交の基本につきましては、言うまでもなく、内治、外交全体について、総理として、首班として責任を持っていかなければならぬことでありますが、特に最近の国際外交の情勢を見ましても、外交というものについて、総理みずからが非常な責任を持って、そして国の根本的な考えや外交方針を実現するように努力しなければならぬということは、これは特に私の痛感しておるところでございます。こういう意味におきまして、もちろん外交のいろいろな技術の面もございます。また、外交について国民の支持を得るために、内においてあらゆる努力をしなければならぬことはもちろんでございますが、特に御趣旨のような意味において、総理としての責任を尽していかなければならぬ、かように考えます。
  177. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これをもって私の質問を終ります。ありがとうございました。
  178. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 杉原君の質疑はこれで終了いたしました。
  179. 片岡文重

    ○片岡文重君 議事進行について。
  180. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 何ですか。
  181. 片岡文重

    ○片岡文重君 議事進行について発言いたします。当委員会運営については、昨日来しばしば政府並びに与党側に対して注意を促してきたところであります。委員長ごらんの通り与党側の御質問であるせいもあるかもしれませんが、与党、野党を問わず、重要なる予算審議段階において、このような皆様の出席状態では、私どもとしては、はなはだ不満にたえないわけです。これ以上与党側の御反省が得られないならば、私どもとしてもやはり重大な考えをしなければならぬ。同僚諸君とも意見が一致しておるところでありますから、その点を付言いたしまして、委員長からの御忠告を願いたいと思います。なお、議事の進行については、その上で私ども考えたいと思います。
  182. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) さっきよりだいぶ熱心に——後の方をごらんになると、だいぶ出ておるようでありますか……。
  183. 片岡文重

    ○片岡文重君 定足数ははるかに欠いておるわけです。(「こんなことで審議ができますか」と呼ぶ者あり)杉原君の質問が終るまぎわになって二、三出席されただけです。
  184. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  185. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 速記つけて。  本日は本委員会は、この程度で散会いたします。    午後四時五十二分散会