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羽生三七君 衆議院の予算
委員会で、どなたかの
質問に対する答弁で、
政府は、この問題は
国際情勢の推移を見てというように答えられておりますが、今のお答えの中にも、そういうニュアンスがあったと思いますが、私は、この問題は
国際情勢待ちでなしに、むしろ
日本が進んで
国際情勢を切り開いていく、そういう努力をなすべきであると思います。特に私は、日華事変の当面の
責任者である
日本というものが、
国際情勢待ちで、
他国の
動きに追随するというようなことでなしに、
日本みずからの手で積極的に問題解決をはかることが、基本的に重要だと思う。そのためには、局面を打開するためにどういう施策があるか、こういうことだろうと思う。私は、まあ自分の意見を少し言い過ぎましたが、しかし私は、
政府の中国に対する基本的な経論がないことに、そもそも問題があると思う。しかし、この問題の行き詰まりが打開できないというならば、実を言うならば、迷惑をこうむるのは、
日本国民であります。近い将来の見通しがあればいいが、長く、もうかれこれ一年停頓しておる。閉ざされておる、この道が。これが近い将来に打開できる可能性がないというならば、そのことだけでも、私は
岸内閣は
責任をとる必要があると思う。従って、私はそういう
意味からいって、根本的に新たなる局面打開の
方針をすみやかに確立すべきことを要求して、私のこの
外交に対する
質問を終ります。ちょうど持ち時間があと二、三分で終りますので、次に、私は経済問題について
お尋ねしようと思いましたが、遺憾ながら時間がないので、ここでやめますけれ
ども、ただ一言だけ大蔵大臣に申し上げてみますと、それは、
昭和三十四年度予算一般会計及び財政投融資におきまして二千二百七十四億円の散超となる結果、これを積極的な予算、場合によるならば、景気過熱を招来する予算という
批判もありますが、私は必ずしもそうは思わない。積極的、
意図的であることは認めますが、すぐ景気過熱とか何とかということが出てくるわけじゃないと思う。特に、三十三年度の予算審議の際に、私は当
委員会において、当時は一萬田大蔵大臣でありましたが、あの神武以来の景気から、国際収支が赤字になり、そうしてデフレになり、過剰生産の様相が非常にはなはだしくなったときに、むしろ有効需要を起すための積極的な施策を望んだ一人でありますから、その
意味で言うならば、
政府の本年度の財政
政策が、必ずしもこれは過熱を招来するものだとは思いません。ただ問題は、私はその構造的内容にあると思う。これは一口に言われるように、大企業偏重、中小企業や農業に対する施策が足りない、そういう問題。もう
一つは、消費需要が高まって、いわゆる設備投資は減るけれ
ども、しかし、住宅建築や個人消費がふえて、その結果として五・五%の成長率を見込んでおるようでありますけれ
ども、私は何といいましても、
国民階層間におけるアン
バランスがいよいよはなはだしくなってくると思う。個人の消費は伸びておるといいますけれ
ども、三十万円以下の低額所得者はかえってむしろ所得が減っておる、それは相当数あります。それで六千数百万人は所得税すら納めることができない段階である。そういう
意味の内容を検討した場合の構造的内容からいうならば、非常に不満がある、それが
一つであります。そういう
立場で私たちが
昭和三十四年度予算を見た場合には、
政府は本年度予算がいわゆる長期経済計画にほぼマッチする、それは生産の面でも、外貨収支の面でもほぼマッチすると言って非常に誇っておられますが、私は今の
日本経済の成長の力、余力はそれはもっとあると思うのです、実質的に。私はこの過熱というようなことは起らないにしても、実際上もっと鉱工業生産が伸びると思う。稼働率も多くなると思う。従って私は国全体としては供給過剰の基調になると思う。そうすると、いつでもとる
政府の
政策は、必ず操業短縮、それから資金規制、そういう方面をコントロールする、その結果起るものは失業、破産、倒産です。これがずっと繰り返される今までの経過であります。これは資本主義の経済でありますから、当然不断に繰り返されることはわかるし、またそれに対しては、一定のコントロールが要る、それは当然でありますが、しかし、今の
政府のとってきた
政策は、無計画的な設備投資や思惑輸入を許しおいて、そしてそれが度をすごすというと、逆にそれをコントロールする形、そうでなしに今の
国民の階層間のアン
バランスを埋めて低額所得者の減税をやる、あるいは
社会保障費を拡大し、場合によったらベース・アップもやる、あるいは中小企業についても単に運転資金だけでなしに、休質改善の積極的な施策をやる、農業につきましても単に土地改良というような問題だけでなしに、土地改良はある程度
政府もやっておりますが、農道、利水事業、それから動力機械の導入、それから技術の改善、協同化の促進、そういう
意味の体質改善をやる、そして一般的に、そういう大企業以外の残された部面の体質改善にも、相当に重点的に施行しながら、しかも、
社会保障費をもっと積極的に増額をして、
国民の個人の消費生活水準をもっと上げる、こういうふうに言うと、すぐそれは赤字になるとか、あるいはインフレを招来すると言いますが、
日本の今の経済の基調は言うまでもなく黒字基調であります。私は昨年当
委員会で四億ドル以上の黒字が可能だと言いましたが、一萬田さんは非常に、山際さんも消極的だった。それは
羽生さん楽観的過ぎると言っていた。今暦年で五億三千万ドルの黒字を持っていることは、指摘するまでもなく明瞭であります。三十四年度も黒字だ、しかも、一億六千万ドルの基調ははるかに上回る三億ドル近い黒字の累積も予想されると思う。そういうときに
政府がやるべき
手段は、今私が述べたように、またそこに起ってくる積極
政策というものが今までやってきたようなものでなしに、それももちろん重点的にいろいろやらんならぬでしょう、ときにはコントロールする、しかし同時に、取り残された今の
国民のたくさんの階層、所得税すら納めることのできない六千数百万人の、これは家族含めての数ですが、この人たち、あるいは一千万人近い非常な貧困者あるいは一般労働階級のベース・アップ、それから今申し上げた農業、中小企業に体質改善、さらにもっと進んで言うなら、科学技術の振興、そういう問題についても、そういう点について積極的な配慮を払って、それで
日本経済の体質改善や、それから
国民の購買力をふやして、そして経済の一般的成長をはかっていく、私はそれは
一つの
あり方だと思う、そういう
意味の配慮が欠けているのです。だから一部言われておるように、私はこれが過熱的な積極
政策とは思いません。問題は、むしろ積極
政策の内容にある。従って今後私はそういう
意味で、
政府が十分なる配慮をすることを希望するわけです。一部には池田勇人さんの賃正金二倍論な
どもありますが、
社会党のお株を奪うような勇ましいことを言っております。それが可能だとは思いませんけれ
ども、私は
方向としては、経済成長は、
日本経済は今なおかつ余力を持っておる。これはタイミングを私ははずすべきでない。しかも、それをやる場合の積極
政策としてわれわれが求めるものは、今申し上げたような今度の予算の中にあるアン
バランス、特に弱い階層に対する重点的な施策こそ望ましい。こういうことを申し上げて、私の時間はこれで終っておりますから、御注意がありましたから、これでやめますが、どうか
政府が、
日本経済のことしの成長をどう見るのか、五ヵ年計画にマッチすればそれでよいとするのか、もっと余力があると思わないか、余力がある場合には、どういうことを今後お
考えになるのか、供給超過基調にならないか、黒字はもっと予想よりもふえるのじゃないか、そういう中で何をおやりになるか、
一つ承わって私の
質問を終りたいと思います。