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1959-03-04 第31回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月四日(水曜日)    午前十時四十二分開会   ―――――――――――――   委員の異動 三月三日委員井野碩哉君辞任につき、 その補欠として青木一男君を議長にお いて指名した。 本日委員松定吉君辞任につき、その 補欠として杉原荒太君を議長において 指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り    委員長     木暮武太夫君    理事            小柳 牧衞君            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            西田 信一君            堀木 鎌三君            片岡 文重君            鈴木  強君            矢嶋 三義君            森 八三一君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            伊能 芳雄君            植竹 春彦君            小幡 治和君            大沢 雄一君            古池 信三君            小山邦太郎君            紅露 みつ君            下條 康麿君            杉原 荒太君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            荒木正三郎君            北村  暢君            栗山 良夫君            坂本  昭君            戸叶  武君            中村 正雄君            羽生 三七君            平林  剛君            松浦 清一君            松永 忠二君            加賀山之雄君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    厚 生 大 臣 坂田 道太君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    郵 政 大 臣 寺尾  豊君    建 設 大 臣 遠藤 三郎君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   国 務 大 臣 山口喜久一郎君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 松本 俊一君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁刑事局長 中川 董治君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    大蔵省管財局長 賀屋 正雄君    水産庁長官   奧原日出男君    通商産業省繊維    局長      今井 善衞君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十三年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付)   ―――――――――――――
  2. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまより委員会を開会いたします。  まず委員の変更について報告いたしますが、三月三日井野碩哉君が辞任し、その補欠として青木一男君が、三月四日一松定吉君が辞任し、その補欠として杉原荒太君が選任せられました。
  3. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、並びに昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)を一括して議題に供します。これより総括質議に入ります。羽生三七君
  4. 羽生三七

    羽生三七君 三十四年度の一般会計予算審議会に際して、社会党を代表して、これから主として最初外交問題についてお尋ねいたしますが、その前に一百触れておきたいことは、最近の岸内閣並びに政府の基本的な方針及び岸総理態度等についてであります。最近における岸内閣あり方につきましては、私は若干の批判を持っておりますが、その基本的な路線はとにかくとして、当面の諸問題に限定して判断する場合にも、なお問題が相当あると思いますので、当面の問題に限定して、岸総理の見解をただしたいと思います。たとえば警職法改正案提出当時の無謀な会期の延長とか、あるいは最近においては最賃法強行採決、さらにまたは、非核武装宣言に同意を表されながら、これが議会においては成立を妨げていること、また日米安全保障条約相互防衛条約への改定を企図しておられますが、これは日本の安全というよりも、むしろそれをそこなう結果を招来しようとしております。それのみか、与党たる自民党内部においても、ことごとくに意見が対立して、その調整にすら困難をしているのが現状だろうと思います。さらに中華人民共和国との関係につきましても、基本的な路線を少しも改善しようとはせず、全く安易な取り組み方をし、党内池田氏あたりからも批判を浴びていることは周知の事実であります。このように岸内閣における総理統制力は、警職法改正案強行突破を企図した当時から急速に弱化し、さらにまた、賠償問題に関連する種々の批判もあって、最近の新聞の世論調査によると、自民党支持率には大きな変化はないようでありますが、岸総理個人に対する評価は著しく変化して、三十二年七月の朝日新聞の調査の四〇%から、本年二月には二八%と急激に低下しております。このような状態で完全な外交政治が行い得られるはずはないと思います。こういう状態でいいとお考えになりますのか。これについて何らかの政治的責任岸総理はお感じにならないのか。この機会に一言承わっておきたいと思います。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 申すまでもなく、今日の岸内閣というものは自民党内閣であり、政党内閣でありますから、党と政府との間におきまして、重要な政策等につきましては、十分な隔意ない話し合いをし、一本の考えにまとまって進んでいかなければならぬことは言うを待ちません。党内におきまして、今おあげになりましたような各種の問題についても、もちろんそれが最後的にきまりますところにおきまして、いろいろな論議が行われるということは、これまた民主的な党の性格からいって私は当然であると思います。しかし、それが究極において、もしもまとめ得ない、あるいはそれによって重要な政策を首班として行い得ないということになれば、もちろん政治的責任をとるべきことは、これもまた民主政治の当然のあり方であると思います。しかし、今日の状況につきまして、私は党内においてのいろいろな議論や、あるいは今おあげになりました各種の問題に関しての私どもの根本的な考えを遂行していく上におきまして、そうした政治的責任をとらなければならない事態がきておるとは私は考えておりません。もちろん私自身、足らざるところもあることは、これは十分反省していかなければならぬことでありますが、同時に、十分に自民党内閣として、自民党の根本的な政策の実現、遂行ということにつきましては、私は責任を持って今後ともこれを遂行する考えでおります。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 私は、先日ある人に会いましたところが、議会における外交についてはあまりにこの考え方に違いがあり過ぎるんではないか、こういう質問を受けましたが、実はその質問与党と野党との違いと考えて、この日本においては、アメリカに見られるようないわゆる超党派外交というものがなかなか困難である事実を話しましたところが、その人は、いやそうではないんだと、これは自民党内部におけるいわゆる二元外交、こんなことで日本の正しい外交ができますかと、そういう話で、それは筋違いの御質問で、それは自民党のことだからといって私答えましたが、それほどに党内における、自民党政府部内における不統一というものは、大衆の間に大きく問題化されております。従って、私はこの問題については、これ以上触れませんけれども党内統制力が十分に保持できない場合には、すみやかに責任をとるというお話でありましたが、私は少くとも総理がそういう点について十分なる責任をお感じになって、日本外交の誤まりない路線を確立されることを希望いたして次に進みます。  最初お尋ねしたいことは、主として日米安全保障条約の問題でありますが、最初に私は、この外交の基本的な問題で一つお尋ねをしたいと思います。日本外交は、長い間米国占領下にあったという関係もありまして、独立後も米国に対する依存度が強いことは、あらためて指摘するまでもなく明瞭であろうと存じます。政府はこれを自由国家群の一員として当然のこととしておりますが、私はイデオロギーと外交実態そのものとを混同すべきではないと思います。自主性の乏しい日本外交の中で、最近われわれとしても率直に政府の労を多とする問題としては、もちろん内容的にはまだ相当不満はありますが、それにもかかわらずその労を多とする問題には、在日朝鮮人の北鮮帰還問題があります。これは率直に敬意を表します。よく踏み切られたということに対しては、われわれも正しい評価をいたしております。  さて私は、日米安全保障条約改定問題の中で、主として安全保障の一般的な問題をお尋ねしたいと思うのでありますが、この安全保障をいう場合に、普通安全保障政策軍事力ということが中心になりがちであります。わが国においても、当然政府軍事力に依存しておりますが、その結果またみずからの自衛力の不足ということから、米国軍事力に強く依存する結果となっております。言うまでもないことでありますが、自国の防衛と安全について無関心な政党はないだろうと思います。抽象的、一般的には、この場合他国攻撃からみずからを守るための防衛力、こういうことで安全保障が一般的に概念づけられております。しかしこの場合、われわれは一般的抽象的にではなく、その国の置かれている国際的な環境、地理的な条件等の客観的諸条件のもとにおいて、具体的にその実態に即した安全処置を考慮すべきであると思います。そういう立場から問題を考慮するときに、軍事力が直ちに一国の安全の唯一の力を意味しない場合も存在いたします。われわれが自衛手段考える諸条件の中には、幅広い多くの要素を伴っておるのであります。その意味で、政府安全保障政策を検討いたしますときに、安全保障手段としては、軍事力のみが存在しておる、それ以外の手段はほとんど考慮されておらない。戦争の原因となる条件要素そのものを除去するための政策、いわば緊張緩和についての政策は見るべき何ものもないというのが、その実態であろうと思うのであります。言うまでもなく新しい時代の方面は、力による対決、武力による対決のこの時代から漸次経済競争時代へ移行しておるのではないかと思いますが、もちろん今すぐ完全な雪解け時代に入ったというのではありません。平和的共存か、あるいは緊張の中での共存かはいざ知らず、あるいはそれが重なり合ったり、あるいはからみ合った形の中で、なおそれはまだ続いていくでありましょう。しかし、それにもかかわらず、世界経済競争によって資本主義国間、社会主義国間の体制の優位を競う時代になっておると思います。また現にその時代に足を踏み入れておるのであります。しかも、この一とは驚くべき高度の発達を示した兵器の出現にもよるでありましょうが、とにかく世界が大きな転換の曲りかどに来ておる、これは間違いのない事実であります。こういう力の時代から経済競争時代への移行、あるいは平和的共存か、緊張の中での共存かは知らず、それがからみ合ってしばらくは進むでしょうが、とにかく世界が大きな転換を示そうとしている。こういう世界動き、最近の英・ソ会談を見ましても確かに難行しました。しかし、それにもかかわらず、とにかく核武装の制限や、場合によっては限定的ではあるが、不侵略協定すら話し合いの中に出たようでありますけれども、こういう一般的な世界情勢の移り変りについて、総理はどのように認識されておりますか。まず最初にこの問題からお尋ねをしたいと思います。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第二次世界大戦の後におきまして、この世界の大勢が、いわゆる東西陣営に分かれて対立する状況、またこれが緊張度合いが非常に高まってきたことは、一面において今お話しのように、これらの両方の陣営における軍備力の強化によるところの競争、いわゆるこれによって、力のバランスによって平和の維持が一時的にも行われるというふうな面が現われてきたのでありますが、同時にそれがこの軍事科学の非常な発達に伴いまして、その全面的な戦争ということがもしも行われた場合における人類の不幸、悲惨というものに対して、戦争を防止しようという動きが強く出てきたことも、これも当然のことでございます。お話しのように最近において東西陣営の間のいろいろな話し合いや、あるいは各国間におけるところの折衝が行われております。それはいずれもこうした軍事科学の発展に伴うところの軍事力競争というものの危険、並びにそれによって一時的な平和を維持するということが、一たびもしもバランスを失した場合の非常な事態というものに対して、すみやかにこれを防ごうという良識にほかならないと思います。こうした中において、一面においてそういう軍事力競争は依然として続いておりながら、これを一つの制約をしようという動き、また同時にこれにかわって、今おあげになりましたような経済競争と申しますか、経済力によるところのお互い優越性に向っての努力というものがまた各地に現われております。これが両陣営首脳部の間、国という狭い範囲内でなくして、お互いがその経済力を強化するために、両陣営が持っているところの一つ共同体といいますか、自由主義国の間におきましては自由主義国間において、あるいは共産圏においては共産圏の国々の間において、より一そうな経済的な緊密な関係を持とうという動きが出ております。いずれにいたしましても、今日の状況におきまして、直ちに東西陣営の間の緊張が非常に激化するというふうに見ることも、私は適当でないと思いますが、同時に非常に雪解け方向に相当に動いているというふうに見ることも、なお私は早いように思うのであります。しかし、われわれは常に恒久的な平和を念願する意味から申しまして、私どもがとっている国連中心のこの外交政策を進めて、そうして世界の平和に向って、あらゆる面においてお互いが努力する。それにはできるだけ話し合い機会を多くしていって、緊張緩和方向に努力するということが私どもの務めである。かように大体の情勢考え、またわれわれの今後進むべき道を考えている次第でございます。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 問題をより具体的にお尋ねしたいと思いますが、先ほど触れました日米安全保障条約改定問題に関してでありますが、この政府安保条約改定意図は、これは講和条約成立当時と一般的条件が変わってきたので、それを現状に即して合理化するというのがその意図のようであります。この政府方針は、私がさきに触れましたように、軍事力のみが一国の安全をささえる唯一の柱であるという立場に立つもので、厳密に他の条件が考慮されていないと思うのであります。すなわち私どもは、日本に対する理由のない他国からの不当な攻撃侵略が直ちに予想されるような客観的な条件はまず存在しないと思います。これは基本的な問題であります。神様ではないから、永久不変、絶対にないとは言いませんが、われわれが予見し得る近い将来に、まず理由のない不当な侵略攻撃は起らないだろう。しかし他方、日本日米安保条約米軍基地を提供して、日本基地から米軍他国との戦闘に出撃して行くことになれば、その結果は、日本意思いかんにかかわりなく、日本戦争渦中に巻き込まれることになります。この方は決定的であります。しかりとすれば、外国に対する軍事基地提供の方がかえって日本の安全をそこなうことになりはしないか。これはだれの目にも私は明瞭であると思います。総理は、近い将来に理由なく外国からの攻撃が予想されると考えられるのか。またそうでなくとも、この基地提供日米安全保障条約がかえって日本の安全を脅かすことになるとは考えないか。これは比較の問題であります。外交防衛の問題でも、社会党の言うことは百パーセント正しくて、自民党の言うことは百パーセント間違っておるとか、自民党の言うことは百パーセント正しくて、社会党の言うことは全部間違っておるとか、私はそんなことはないと思う。比較の問題であろうと思う。どちらの方式がより多く日本の安全に役立つか、これは比較の問題だと思う。さらに私は、不当な侵略攻撃による危険のウエートよりも、むしろ外国軍事基地を提供して日本防衛をやろうという考え方の方により危険のウエートが存在すると思う。こういう立場で、総理はどちらに危険の度合いが多いとお考えになりますか。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の安全を確保して、そうして国民安全感のもとに平和な民主的な社会を作り上げるという上から申しますと、もちろん軍事力だけが唯一日本を安全にする道でないことは仰せの通りでありまして、先ほど来申しておるように、日本外交政策というものはもちろん大きな働きをし、世界緊張緩和ということが根本的な問題であることは言うを待たないのであります。しかし、国が今日独立国として存在していく上におきまして、いつどういうことが起るか起らないということにつきましては、これはなかなか予想を許さない、予断を許さない状況であるというのが遺憾ながら今日の国際情勢であろうと思います。私は、今日他国から日本理由なく不当なる侵略を受ける危険が迫っておるというふうなことはもちろん考えておりません。しかしながら、一朝そういうことが起った場合において、われわれが急にそれに対処するような、いわゆるそれを排除するような実力を持つということは、これは急速にそれが起ってきてできるわけではございませんから、平素からこれに対する対策を持って自衛力を持たなければならぬことは、私は独立国安全保障の上からいうと当然のことであると思う。世界各国の事例を見ましても、そういう情勢にある。また極東における日本を取り巻いておるところの諸国の情勢というものを考えてみますると、日本が国力及び国情に応じて自衛力を増強して参りましたけれども、もしも万一ここに間違いが起ったという場合において、それだけの力でもって他からの侵略を排除することができるだけの実力でないこともまた事実であります。こういう際に、われわれが他の国との共同防衛によって日本の安全を保障していこうという考え方が起ってくることは当然でありまして、これが現在の日米安保条約のあるゆえんであると私は思う。  そこで、先ほどお話がありましたように、この安保条約改定という問題は、われわれとしては、成立当時と違った情勢になっておる。現在の情勢に適応するように合理的にしたいというのが根本の考えであります。今御説のように、アメリカ軍によって共同防衛するということに、よりある種の危険が加わるじゃないか、どっちが一体危険の度合いが強いかという御質問でありますが、われわれはやはり日本の安全ということを確保し、いかなることがあっても他から不当な侵略は受けないという安心感と、またそういう場合においてこれを排除するだけの実力を備えておるということが、やはりこれだけの独立国をなし、これだけの多数の国民の安全ということを考えるならば、当然やらなければならぬ。また、それが世界現状から言いますと、決して日本だけがそういうことをするという、そういうことじゃございませんで、また日本を取り巻くところのいろいろな他国軍事力情勢から見ましても、私は当然やらなければならぬことである。こう考えております。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 今のお話は、一般的抽象的にはわかるのです。これはだれでも、いつ不意にどういうことがあるかわからないから、そのときでは間に合わないから、不時に備えて準備するのだ、これはわからないわけではありませんが、しかし、その方の危険のウエートは非常に少い。米軍によって共同防衛日本の安全を守るといいますけれども、実際には、そのことがかえって戦争渦中に巻き込まれる。この危険性ということは、これはだれの目にも明白であります。従って、私は今のお話は、普通の通俗的論議としては通るかもしれませんが、少くとも私どもを納得せしめるものではない。こういうことを申し上げて、次の質問に移ります。  さき藤山外相は、試案として、在日米軍攻撃を受けたときは、これは日本に対する攻撃これを日本に対する攻撃とみなして共同防衛のための必要な措置をとる、こういう規定を設ける旨が伝えられております。日本外国から攻撃を受ける何らの理由もない、また外国日本攻撃する意思を全然持たない、そういう場合、たまたま米国第三国とが交戦状態となって、その結果として日本米軍基地攻撃を受け、さらにそれによって日本共同防衛態勢に入るということになれば、これこそ日本の安全にとって最大の脅威となるのではないか。これは安全保障とは似ても似つかぬものであります。相手国が直接日本攻撃するというならば別であります。相手国日本攻撃する意思もなく、また、日本攻撃を受ける理由もない。しかし、アメリカ基地があるために、アメリカ第三国との紛争の過程で日本が巻き込まれる、この場合です。先ほどの問題とこれは関連する。一体これで日本の安全が守れるとお考えになるのか。普通の国民は、日本攻撃されれば防衛するのは当然だろうと通俗的には思うでしょう。しかし、相手国日本攻撃するとは全然考えられない。米国第三国との紛争の間に日本がその渦中に巻き込まれる。だからアメリカ基地に対する攻撃日本に対する攻撃とみなすということは、通俗的には通るかもしれませんが、これは非常な危険で、安全保障とは似ても似つかぬものだろう。これは藤山試案といわれておりますが、総理外務大臣か、お答え願いたい。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 藤山試案という形のついたものはまだございませんから、その点だけは御了解をいただきたいと思います。  日本基地における米軍攻撃された場合というわけでありますが、御承知のように、今回安保条約改定するに当りましてわれわれの考えておりますことは、米軍基地に駐在することは日本を守るためだと思います。従いまして、日本以外の行動につきまするときには、協議事項にしてこれを制限して参りたいというのがわれわれの考え方であります。従って、日本基地におりまして、日本を守るためにおる米軍攻撃を受けるということ、そのこと自体は、やはり日本攻撃するということをはずしてあり得ないとわれわれは考えております。そういう場合、当然日本攻撃されたものとみなし得るのではないかと、こう思っております。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 それはどうもその答弁は納得いかないので、どうしても今のような形になれば、これは好むと好まざるにかかわらず、日本が最も危険な渦中に巻き込まれることは指摘するまでもなく明瞭だろうと思います。今の事前に協議をするという問題はあとからお尋ねいたします。  そこで、私ども米軍基地提供日本にとっては基本的にかえって危険だという立場にあることは言うを待ちません。かりに一応譲って、政府立場に立って問題を考えましても、これは非常に私は問題があると思う。もしそうであるならば、この事前協議というようなことでなしに、問題が起ったときに事前協議をやるということでなしに、日本の憲法の関係もありますから、むしろ目的を限定して、日本に対する直接の攻撃の場合、この場合には問題を限定して国連の処置なり、それから場合によったら米国の援助を求める、いい悪いは別ですよ、それは政府立場もあると思う。こういう限定すべき目的の範囲をこえて日本基地から米軍が出動する場合の問題、これをなぜ条約上明示してこれを拒否できないのか、そういうことが起ったら協議をするというのでなしに、日本に対する直接の攻撃ならこれは別です。しかし米軍に対する攻撃ですぐ日本共同防衛立場をとらなければならないことになるのですから、そういう場合には、むしろ目的を限定して、日本攻撃の場合にのみ、日本国そのものを直接攻撃の対象とした場合にのみ問題を制限する、これは政府立場に立った場合です。そうすべきでしょう。そんなときに米軍基地に対する攻撃の際に、日本に対する攻撃にしろ、全然攻撃意思を持たぬ場合に、それを事前協議してどうこうということはおかしいと思う。むしろ目的を限定して範囲を逸脱しないようにする方が私は安全だと思いますが、これはいかがでありますか。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本侵略を受けるというような状態が起りましたときには、当然事前協議をすることになると思います。そうした情勢を判断しなければならぬわけです。同時に侵略するものが、敵の軍隊が海岸線に上ってくるというようなことだけではなく、上る危険があるというような場合があり得ると思います。従って日本をほんとうに侵略禍から守るという意味では、事情によっては必ずしも兵力そのものが海岸線を越えない場合でも守らなきゃならぬ場合もあろうかと思います。そういうものはそのときの事情によりまして判断さるべきものだと、こう考えております。従って協議をする必要があろうかと思います。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 問題を取り違えられておるのです。そういうことを聞いておるのではないのでありまして、私は、今まで日本に対する直接攻撃の場合の話はされますが、米軍に対する攻撃日本に対しては相手国が全然攻撃意思を持っておらぬ場合です。その場合になぜ事前協議というようなことでなしに、その場合には当然日本共同防衛の態勢に入るんです。藤山さん、そういうことがあるかないかは別として、私はお考えになってると思う。それはむしろ問題を制限して考えるのが当然だと思う。それを言っているのです。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本を直接攻撃しないで、日本を守っておる米軍攻撃するということはちょっと考えられないわけであります。しかし、それは協議事項によって話をしていくということになろうと思います。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 それはとんでもない間違いです。私は近い将来に、日本が何も理由がない攻撃を直接受けるような客観的な条件はほとんど存在しておらない。米軍基地があるから、それが第三国と行動を起したときに、それに対する攻撃がある、そのときには協議をしますというようなことは、これは全然問題にならない。どうですか、もう少しはっきりしておっしゃって下さい。その答弁じゃ困ります。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本におります米軍日本侵略から守るわけでありまして、今お話のように日本を守ることのためにおる米軍攻撃をするということは、やはり日本攻撃することと同じであるというように考えられると思います。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 これは全然違うのです。日本を守っておる米軍だからそれを攻撃する、そんなことはあり得ないことです、全然。それはアメリカ第三国と戦いを起して、たまたまそれが日本基地があるから戦争が起るということを言っておるのです。だから全然問題の把握の仕方が違います。そんな考え方でこの安保条約をお考えになっておったら大へんだと思う。どうですかその点もう一度。どうも不明確です。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本におります米軍攻撃するということは、日本攻撃と同じだと、それは日本を守るためにおる米軍を、日本基地攻撃しないで、そうして米軍の飛行機だけをどうするというわけに参りません。日本基地攻撃することになるわけです。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 それはもう全然論理にならないのです。絶対にそんなことは起らないです。アメリカ日本基地として他国に出て行った場合、その結果報復的に日本基地に来るということを私は言っておるので、そんなお答えではもう全然問題にならぬ。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そういうときに協議して、そういうことの起らないように、われわれはノーと言うこともあり得ると思います。またノーと言わなければならぬ場合もあります。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 総理はどういうようにお考えになりますか。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本米軍基地を置いた場合に、その米軍基地攻撃するということは、私はとりもなおさず意思いかんにかかわらず、日本の領土及び日本の領空その他の日本の当然の権限を持っておるところのものを攻撃するわけでありますから、これは日本に対する侵略であることは言うを待たんと思います。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 これは、だから私は先ほど質問最初に、そういうことの方がかえって日本安全保障をそこなう、そう言ったのはそこにあるのです。そういうことがなければ、私は近い将来日本攻撃的脅威にさらされる危険のウエートは非常に少いと思う。だから日本政府自身が非常に事を好んでむしろ危険な状態に入ろうとしておる、これはもう全く私はとんでもない考え方だと思います。そこで総理は、昨年十一月この委員会で私の質問に、その質問というのは、政府意図する条約は共同防衛、相互援助条約の性格のものであるか、それとも日本の負う義務は、具体的には何かという質問でありますが、これに対して総理は、まず一番に考えられる問題は基地提供の義務だろうと、こう答えられております。しかし政府方針は、米軍基地に対する攻撃日本に対する攻撃とみなすのでありますから、今お話しのように当然共同防衛の措置をとるということになることはこれは明瞭でありましょう。ここからすぐ海外派兵ということは出てきませんが、しかし、共同防衛ということから基地提供以外の新たなる義務が付加されてくる、これはどう考えても憲法違反であります。これが違反でないというのはあまりに牽強付会であろうと思う。飛躍し過ぎておると思う。これはもうバンデンバーグ決議の精神からいいましても、これは明瞭だろうと思う。昨年基地提供が双務協定として求められる日本の義務であろうと述べられた。さらに今お話のように、基地に対する攻撃日本に対する攻撃とみなして共同防衛に入るのですから、これは当然憲法違反です。すぐここから海外派兵は出てきませんが、憲法違反であります。
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私質問の趣旨がよくわかりませんが、日本に対する侵略に対して日米が共同してその侵略を排除するという以上に私どもは何らの義務を負わない。また負うことは適当でない。従って基地を提供する、双務的というか、もちろんアメリカアメリカの兵隊を日本という外国に派兵して、そうして日本の安全を守るために戦争もする。実力行使する。しかし日本は海外に出てアメリカの領土やアメリカの領有しておる所に対してわれわれが出かけて行って、そうしてこれを守るという義務を負うことは、これは憲法上できないことは言うを待たない、従って、基地を提供するということによって、一方、日本を守る、われわれは基地を提供してそうして日本が侵害された場合には共同的に防衛する、こういうものが基本的な考え方であります。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 問題をもっと具体的に指摘していきましょう。この米国第三国との戦争に、日本基地から米軍が出動する場合、その場合には事前協議をすると言います。どんな場合にしろ、私は、事前協議で合意に達するような条件は存在しないと思う。先ほど外務大臣は、その場合にはできるだけ拒否されるということを言っておりましたが、これはそういう拒否されるといっても、合意に達する場合も、政府の主体性いかんによっては、ないとは言えないことは、あまりにも明白であります。そうであるとすれば、日本に対する直接攻撃以外の米軍の行動は、事前協議でなしに、条約そのものの制約においてこれは明示すべきではないかと思う。だから、一体合意か拒否かという選択の問題は別としまして、かりに合意に達することがあるとすれば、どんなケースが予想されますか。これは重大な問題です。私はそんなことはまずないと思いますが、ないなら、条約上その制限をはっきりすればいい、もし、かりに合意に達することがあるならば、どういうケースがあるのか、これは非常に重大な問題ですからお尋ねをしたい。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本基地から海外に出るというときに、われわれは協議したいということを考えております。協議の場合には、多くノーということが考えられると思いますけれども、かりに合意に達するという場合に、もしイエスという場合があり得るとすれば、それは日本が直接攻撃を受けるという段階に迫っておるような場合が考えられないことはないと思います。従って、そのときは起ってくる状況によって判断するより仕方がない、国民みずから判断すべきものだと私は思います。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 今のお答えの中に非常に危険な要素が含まれておるのです。日本攻撃を受けるかもしれない要素がある場合には出ていく、事前協議で合意することがあるかもしれぬ、これは自衛じゃないのです。もう予防戦争考え方です、攻撃かあるかもしれないからアメリカの出動に合意を与えるかもしれない、これは一種の予防戦争論です。それは非常に危険な考え方ですが、どうですか、外務大臣お尋ねをしたい。
  29. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんそれらの判断につきましては、国連憲章その他にもよるわけでありまして、たとえば第三国アメリカ戦争があったからといって、すぐにそのことだけで日本基地攻撃されると言うことは、国連の憲章にも違反すると思う、また、安保理事会の決定を待つ必要もありましょう。それらの判断は、非常に有力な材料になるのではないかと思っております。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 それは非常に簡単に要領のいい答弁を外務大臣はされておりますが、私は非常に不満であります。この安保条約の本来の目的は、日本国自身が安全である、それが安全であるということが、ひいては極東の平和と安全に役立つ、寄与する、そういうことでいいのじゃないですか。私はそれで基地を提供して、共同防衛とか何とかということなしに、日本の国が、日本国自身が安全であるという、それが極東の平和に寄与する道だ、そういうことであるならば、むしろ何か緊急にそういうことが起った場合に、緊急に国連の措置を待つなり、それがいいか悪いかは別ですが、そのときにアメリカに対して何らかの協議をする、常時不断にこの基地を提供して、しかも、その結果共同防衛体制に入るということなしに、他の措置が、つまり日本の安全それ自身が、極東の平和に結びつく、その考え方でいいじゃないかと思いますか、これでは不十分でありますか。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこの安保条約改定の精神というものは、日本他国から侵略されることを守るということが真意である、そうして同時に、日本侵略を受けないということは、当然極東の平和と安全に寄与するということであることはむろんであります。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 そのことが安保条約第一条における「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」云々とあることを私は言っておるのです。だから、日本自身の安全のためということならこれはわかりますが、極東における平和と安全の維持のためと、そういうことになると、これはもう日本自衛という問題を離れております、すでに。極東全般に対する何らかの問題が起つた場合、その場合の処置、米軍の出動等がこの中には含まれておるわけであります。でありますから、私はそんなことではなしに、それならば「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」ということを削って、直接日本に対する攻撃、これなら話はわかります。今度もやはり安保条約改定の中には、「極東における平和と安全の維持に寄与し」云々は残すのでありますから、それを言っておるのであります。
  33. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだそうした字句上の問題についてはあれでありますけれども、精神上の問題については、先ほど申し上げました通り考え方で今後も折衝を続けていきたい、こう考えております。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 いや、それはそんな答弁では困るので、まだそんなことは考えておられないといいますが、四月調印をやろうと言って急がれておる、私は国会で国民を代表してまじめに質疑をしておる。それなのに、まだ何にもわからないなんて、そんなことはないと思う。しかも一番重要な、ここから出てきておりますよ、問題は。「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」云々と、これが米軍日本から出動するかしないかの基本的な問題になる、これがきまらないということはどういうことですか、その御構想を承わりたい。
  35. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私がただいま申したのは、精神は、日本の国が外国から侵略を受けることを守り、そうしてそのこと自体は、極東の平和と安全の維持に寄与をするということだ、こういう考え方を貫いて参ります。ただ、表現上の問題につきましては、どういうふうにするかということは、まだ申し上げかねるということを申したのであります。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 それはどんな場合でも日本に対する直接攻撃ということなら、これは国民も人によっては納得をいたしますが、何人も納得するかもしれない。しかし、今申し上げたように、この日本にかかわりのない他の極東地域における米軍の出動も合理化されるような条文をそのまま残すということは、ここに危険が潜在しておるのですから、これをそのまま残すということは、私は断じてとるべきではない、こう考えます。  次に、日米安全保障条約は、この前文において、「日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段を持たない」とうたつて、従って「防衛のための暫定措置として」アメリカ軍隊に依存することとなっております。今回の条約の改定について政府意図するところは、平和条約の発効当時と同様に、今なお日本が固有の自衛権を行使する有効な手段を持たないと考えておるのか、あるいは今なおその力が不足するとして、その間の暫定措置を継続する意味米軍の駐留を求めるのか。あるいはまた、それとも、自衛力は平和条約発効当時に比べて有効なものとなったが、いわゆる相互援助の建前に立って、米国との条約取りきめを行うというのか、その重点はどちらにありますか、お伺いいたします。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん現行安保条約ができましたときには、自衛力は持っておりませんでしたが、その後、自衛力を持つことになりましたことは御承知の通りであります。ただ、今日おそらく世界のいずれの国々にいたしましても、近代的な自衛力というものを充実するということは、非常に困難なことではないか。それは、一面において国民生活を安定しながら、自衛力のの増強をやっていくということは、非常に困難だと思います。従って、いずれの国においても自分一国でもって今日のような、たとえば核兵器などは持たないといたしましても、機動力その他を持つ、それらを整備するのは膨大な金がかかりますから、従って、自衛のためには、やはり他国と一緒に防衛の措置を講ずるということが、多くの場合とられるという手段だと思うのであります。そういう意味において私ども考えております。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 この安保条約の第四条には、「国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国およびアメリカ合衆国が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」、こう規定しております。その意味で、今回の政府改定方向は、ここにいう集団の安全保障措置が、そうなれば、これはもう当然明瞭なことでありますが、これは条約の改正でなしに、新条約の締結で、米軍の駐留というものはかなり恒久化されると思いますが、これは暫定的ということはなくなって、全く新しい形になる。暫定的でないから、これは日本自衛力というものは、もう相当程度講和条約発効当時に比べて発達した、しかし、一国では足りないから相互防衛ということで、全く新しいことになるのか、その辺はどうか。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん現在の事態におきまして、国連の措置、もしくはその他が完全だとは思えないかと思います。従ってわれわれは、現行安保条約を、自主的な立場で改正していこうということを考えておるのであります。そういう意味において、今回の改正に手をつけておるわけであります。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 暫定という言葉もなくなるのですか。字句上からも実質上からも。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん今回期限等もつけて参りますので、つけられた期限の中では、それだけが遂行されていくということにはなろうと思います。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 今のように「固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない」から、暫定的に米軍の協力に待つ、こういうことでなくて、新しく新条約の形にこれがなった場合には、これは一種の攻守同盟的な性格を持ってくるのです。私はそう思うのです。これは日本自衛力が足りないからアメリカに依存をする、あるいは共同防衛をやる、それが進んで一種の相互援助条約となって、共同防衛の性格を持ってくる、これはもう全く新たなもので、これこそ完全な違憲だと思うのです。これは攻守同盟ですよ、一種の。そうでなかったら、アメリカだってこの基地提供だけで果して満足するかどうかわからない。一種の攻守同盟的な性格を持つから、完全に憲法違反だと思いますが、どう考えるか。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだ日本自衛力が、先ほど申し上げましたように現行安保条約を制定したときには、なかったと一応言えると思います。今日若干の自衛力を持ってきたということもまた事実だと思います。ただ、その自衛力が、先ほど申し上げましたように、必ずしも日本だけの自衛力他国からの侵略を守れないときには、友好国とともに条約をもって日本他国侵略から防ぐということをいたしますことは、私は、特に攻守同盟という意味とは解しないわけであります。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 ずっと前によく論争された問題でありますが、今日ではまあ一種の既成事実となりまして、等閑に付せられておる問題に、憲法と自衛力の限界の問題があるわけであります。それに関連をしてお尋ねをしたいのでありますが、日本自衛力はどの程度にまで持っていこうとしておるのか。兵器の発達に伴う装備の条件、または経済力、国力の関係等もあると思いますが、政府は、無制限的な増強を、これは自衛のためということで合理化していくわけでありますが、これをさらに際限のない発展をやっていくのか。この目標というものは、一体どの程度に置いておるのか。久しくこの問題には触れなかったのでありますが、この既成事実は、もうどんどん進んでおります。憲法あってなきがごときものでありまして、こういう状態で、一体いいのかどうか。この機会に、一体、日本自衛力はどの程度までふやすつもりなのか。しかも日本の憲法の制約の中で、どの程度まで伸ばすつもりなのか、これはいろいろの制約があると思いますが、これは伊能防衛長官一つ具体的にお伺いいたしたいと思います。
  45. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。  御承知のように、わが国の自衛力の基本的な問題については、一昨年の国防基本方針に基いて、防衛力の整備目標というものが定められまして、昭和三十五年度、一部は昭和三十七年度でありまするが、陸上自衛力十八万人、海上自衛力十二万四千トン、航空機の自衛力千三百機ということに相なっておりまして、現在それに向って努力をいたしておりまするが、もちろん、これは御指摘のごとく、あくまでも自衛の範囲を出ないのでございます。またさいぜん来、総理並びに外務大臣から御説明がございましたように、安保条約その他につきましても、また日本をめぐる国際情勢等から申しましても、国際の緊張緩和という問題が、必ずしも御指摘のような雪解け方向にないということで、さしあたり、昭和三十五年度までの目標が定められておる。その内容につきましては、今日、来年度の予算におきましても、国民所得の一・七%程度。もちろん、これは日本の国力を一応考慮した最小限度のものを私ども考えておりますが、外国等においては、アメリカ、イタリア、スイス、その他の国々においても、多きは一〇数%、少きも四%、五%程度の国民所得に対する防衛力を、軍備を持っておるのが常識かと存じます。日本につきましては、現在、戦後の国力の上からいって、そう急激な自衛力の増強ということは不可能でございますので、私ども、当面さような目標を立てておりまするが、次期の防衛目標につきましては、目下鋭意検討中でございます。ただいま指摘いたしましたような、陸海空の自衛力の質的な増強を、次期の防衛目標には主として考え、兵員の増備というようなことももちろんでございますが、それよりは、将来の武器の飛躍的な発展に即応した、たとえば、航空機のごときにつきましては、千三百機の先の問題につきましては、主としてガイデッド・ミサイルの研究の問題、装備の問題、あるいは艦船の装備等につきましては、潜水艦に対する対潜装備の問題というようなことを中心に、目下鋭意研究中でございまして、この問題について、御指摘のように具体的の数字というものについては、さしあたり昭和三十五年度までの目標を確定して、それに向って努力をいたしておる状態で、その次期の問題については、目下研究中で、いまだ発表の域に至っておりませんことを非常に残念に思っております。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、日本自衛力がある一定程度に達すれば、それで米軍徹退を可能ならしめる条件が起ると考えるのかどうか。というのは、Aの国とBの国が相互援助条約を結ぶ、それは必ずしも日本のように基地提供という形でなくて、相互が攻撃を受けたときに相互援助をやる。そういう形だろうと思うのです。ところが、日本の墓地提供というものは、一つの双務的な義務になっておる。従って、米軍の駐留というものがその裏づけとなっておるわけです。従って、この条約は期限は十年とかいっておるようでありますが、アメリカの半永久的な駐屯を意味しておるのか。だから、よその国に普通ある相互援助条約みたいに――基地提供がその条約の内容を性格づけておるのは非常に珍しいケースだろうと思う。――大てい、攻撃があったらお互いに助け合おうというこういうのが相互援助条約だろうと思う。ところが日本は、基地提供を双務的な一つの輪としております。そこで、もし日本自衛力がまだ足りないから、そういう考え方米軍の駐留をもし求めておるとするならば、米軍の徹退を可能ならしめる程度の日本自衛力の限界というものは、一体どの程度なのか。今の政府考え方でいけば、米軍の駐留というものは半永久的になるような感じがするのですが、その点はどう考えていますか。
  47. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 防衛上の見地からお答えを申し上げまするが、私どもが目下装備をせんとしておる目標並びに将来装備をせんとする目標につきましては、あくまで集団防衛もしくはある一国との共同防衛を前提として、自力だけで国を守る、防衛力を作るということは、これは日本の国力からいってきわめて困難と存じまするので、あくまでそういう考え方のもとに防衛考えておる次第でございます。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 総理にお伺いしますが、そうすると、半永久的なアメリカ軍の駐留ですね、日本の一国の自衛力では守れないから、アメリカ軍に依存する。しかも日本自衛隊の限界は、憲法の範囲内からいっても、どこまでいっていいのか少しも明確でない。だから、自衛隊がこの程度まで伸びれば、相互防衛協定であっても、少くとも基地提供とは別に、直接攻撃があった場合に相互に協力し合うという世間一般の、普通の条約となると思いますが、そうでなしに、基地提供というものが一番条約の重要なかなめになっておる。そこで、日本自衛力は足りないから米軍に依存をする、しかも、その日本自衛力がどれだけになったら米軍が徹退するかということに対して、何にも明白なお答えがない。それはアメリカ軍の半永久的な駐留でしょう。そういうことになりますが……。これは総理お尋ねします。
  49. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん軍事的な意味からいいますれば、今、防衛長官の言われた通りだと思います。しかし、国際政治の上で、世界的な軍縮が行われるとかいうようなそういういろいろな条件もあるわけでありまして、そういうことを考えてみますと、日本自衛力というものは、将来どの程度であるかということは、やはりそれらの国際情勢に応じて考えられるわけであります。現状において、防衛長官の言われることは、そうだと思います。政治的には軍縮が進行するだろうと私ども思います。また、そのことを希望しております。そうした相対的な米国との関係は、将来起ってくるだろうと考えております。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、軍縮などが進んで、国際情勢が変ってきて、極東における一般的な情勢が変化するまでは、この米国の駐留というものは続くわけですか。そういう解釈ですか。端的にお伺いします。
  51. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 端的に申し上げて、相対的な関係と、それに応ずる国内的な自衛力と、両方を勘案して問題は考えられるのだろうと思います。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 これは私は、日本の憲法の制約がありますから、ある一定の条件にまでこの自衛力が成長すれば、それが米軍の撤退を可能ならしめる。その上で、直接日本攻撃があった場合には、そういう意味での相互援助、相互に助け合うという意味の相互援助、そういうものがあると思うのです。もちろん私どもがそれに必ずしも賛成しておるわけじゃない。もちろん異なった立場をとっておりますが、政府立場考えても、今のような考え方でいけば、ほとんどもう際限のない米軍の駐留を合理化する、こういうことになると思います。私は、非常にこれは危険なことだと思います。それから、国民の多数も、ある一定程度に日本自衛力が伸びれば、アメリカ軍は帰って行くのじゃないかということを考えておるわけです。しかもそれが、国際情勢が、軍縮が進まなければというようなことでは、これはもうまことにおぼつかない話で、これは私は非常に重大なことだと思います。時間の関係もありますので、次に進みますが、これは他日機会を見て、もっと十分お尋ねしたいと思います。  そこで、防衛長官お尋ねしたいことは、先ほどのような考え方でいくと、結局は、きのうも衆議院で――きのうだかおとといですか――どなたかの質問総理が答えられておりますが、核兵器の持ち込み必ずしも――制限的な核兵器は必ずしも違憲ではないと、こういうように言っておられますが、そうなってくると、兵器の発達がどんどん進むにつれて、当然自衛の解釈というものはどこまででも広がっていく。従って、今はそういう御答弁をなさっていらっしゃいますが、やがてこの客観情勢が変化をして、兵器はさらにどんどん進んでいく。そういうことになれば、今のお考えが変って、核兵器の持ち込みというものを普通、平然として合理化されて、これは自衛のためなんだと、こういうようなことに発展的に解釈をされるようなことはないのでありますか。これは防衛長官に、この機会に明確に一つしてもらいたいと思います。
  53. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核兵器の問題につきましては、政府としては統一的見解をとっておりますので、総理が御答弁を申し上げておる通りでございます。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 それはもうわかり切っておりますが、必ず今のような政府考え方でいけば、もう限界というものはないのです。限界というものはもう少しもない。自衛という一つの合言葉があれば、自衛のためという合言葉があれば、際限のない防衛力の増強、それはみな合理化されていく、こういう結果になる。その結果、これは制限的な核兵器だとか、これは戦術核兵器だとか、いろいろな名前に隠れて、私は次々と際限のない発展をしていくことになると思いますので、その危険を指摘しておるわけであります。  次に、総理にお伺いしたいことは、そういうことからいって、極東における非核武装地帯、あるいは日本単独の非核武装宣言、これは衆議院で同意をされながら、結局決議案は成功しなかったのです。しかし、先日の英ソ会談においても、制限的ではあるが、そういう問題についてまじめな考慮が払われておる。欧州においても近くそういう問題がどんどん進んでいくでしょう。特に日本において、議会においてすら、この核兵器の、非核武装宣言というようなものが、日本議会でできないということ、総理があの当時お答えをしておるようなら、堂々と私は議会でやってしかるべきだと思う。それができない理由というものは、一体、将来の情勢発展を考えて、そういう配慮をされておるのか。自民党内の不統一で議をまとめることができないのか。この辺、総理はどうお考えになりますか。
  55. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核武装の問題につきましては、私、しばしば国会を通じて私の所信を明らかにいたしております。ただ、国会がそういう議決をされるかされないかということは、これは私は言うまでもなく国会でおきめになることであって、私行政府の長として、首班として、そのままこれを国会の議に付すべしということを申し上げることは――私は、国会の議決というものはそういうものじゃなかろうと思います。この間において、行政府たる内閣の首班が申しておりますことと、国会の議決との間に、それを取り上げるか取り上げないかという問題については、やはり国会がおきめになることである、そういう問題であろうと思います。で、この問題に関して衆議院ですでにしばしば宣言を国会の議決としてすべきかどうかということが両党の間に話し合いをされまして、その内容が一致しないということで、これが議決を見るに至っておりませんが、しかし、日本政府考えとして、私が責任をもって国会で言っておりますことは、内外に対してそれだけの責任をもって言っておることとして、私は意義は十分にある、かように考えております。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 そういう問題と関連してのことですが、先に問題を起した岸総理とブラウン記者との会見の際の談話でも明瞭なように、総理は憲法改正論者である。これはもう間違いないのであります。しかし、先ほど来のように、憲法あってなきがごとく、際限のないこの自衛隊の発展、再軍備が強行されているわけですが、しかし何といいましても、日本の現行憲法第九条は、ある意味において強い日本の私は安全保障の役割を果しておると思います。しかも、今考えられるような世界の核兵器の進展、あるいは極東におけるいろいろな動き、特に安保条約の中に極東における安全と平和の維持云々というような字句をなお残すというようなことが起った場合、こういう場合には、当然私はそういう問題に関する総理の憲法改正というような意図は、思いとどまっていただきたいと思う。たとえば参議院の全国区をどうするとかこうするとか、そういうような問題はあるでしょう。そのほかにあるかもしれません。私は、憲法なんというものは永久に変えて悪いとは言いません。憲法は、客観情勢の変化によって憲法は変えてもいい、変わることもある。それを言っているのではない。しかし、今何も変える必要は存在しない。憲法があった方が日本の安全に役立つ。総理は憲法改正論者でありますが、特に九条に関して憲法を改正するということは思いとどまっていただきたいと思うのでありますが、この機会に、これについての総理の見解をお聞かせ願いたい。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法九条の問題は、言うまでもなく日本が一切の、国際紛争を武力によって解決するような手段をとらないということでございます。しかし、それが反面において、国の独立国たる自衛権を持つということを否認するものではないということは、憲法解釈上明らかなことであります。自衛権を持っておるというならば、私はこれを裏づけるだけの実力というものを持たなければ、ただ観念上の自衛権があると言って、そうして他から不当に侵略された場合において、これを実力的に排除することができないということでは、自衛権というものは名前だけのものでありますから、これを裏づけるだけの実力を備えるということは、これは当然であります。ところが、その意味においてできておりますところの自衛隊というようなものが、やはり国内におきましては憲法違反であるという議論も行われていると思います。祖国が他から不当に侵略されない、また、侵略があった場合においては、生命を賭してもこの侵略を排除して民族を守り、祖国を守るということは、非常に私は尊いことであると思います。そういうことが憲法上はっきりしない。憲法違反であるかどうか、憲法違反だ、あるいはやみの力であるというふうに言われるということは、私は、これに当る人々にとって非常な士気に関する問題もあると思います。従って、そういうことは明瞭ならしめるような、憲法違反でないことが明瞭になるような憲法であることが私は望ましい。しかしながら、言うまでもなく、この憲法九条の精神である日本が国際紛争を武力の行使によって解決しようというような考えを持つものではない、あくまでも自衛意味において、祖国の安全を守る意味においてやり得ることは、それを裏づける実力としての自衛隊というようなものの存在は、これは憲法では合憲であるのみならず、それは祖国を守るための一つの尊いやはり任務であるというようなことが明瞭になるような憲法が望ましいというのが、私の考えであります。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 今、祖国に対する愛惜の問題がありましたが、私この際にはっきり申し上げておきますけれども、よく私ども社会党に対して、どろぼうに対する戸締り、火事が起れば消防が要る。軍隊がなくてどうして国家の安全が守れるかという素朴な戸締り論議社会党考え方を反撃する人がありますが、私は、通俗的にはそういう議論も通用するかもしれませんが、私どもが祖国を愛する熱情においては少しも変りはありません。おそらく人後に落ちない、社会党は。ただその方法が、先ほど来私が申し上げておりますように、武力だけが唯一の、一国の安全をささえる力であるというそういう考え方……。他にも幅広く安全をささえる柱というものは存在をしておる。しかも、日本の置かれた国際的な、客観的な諸情勢のもとで、私たちは論議をしておる。でありますから、祖国に対する祖国愛というような気持で云々というような今お話がありましたが、これは、私ども社会党も人後に落ちないというその確信を披瀝いたしておきますが、とにかく、今の自衛隊と憲法との関係が不明確であるから明らかにすると言われましたが、そんなものは少しばかり一もちろん不明確では困る、われわれは違憲と考えているのですから、そういう立場での私たちは明確化を求めておりますが、そうでない、政府立場にしても、私は今すぐそれを改正するなどという考え方は、決して日本の安全に役立たない。それから次には必ず海外派兵にまで……。第九条はそこに触れないということを総理は暗に言っておられますが、しかし、必ず次に要求されるものは、海外派兵の義務、それも自然にそこから出てくるというようなことになる。だから条約の改正なんか断じてやるべきではない。今差し迫った、早急な必要性はどこにも存在はしない、こう考えておりますから、これは強く私要望をいたしておきます。
  59. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと関連して。
  60. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連質問けなるべく簡単に一つお願いいたしたいと思いますが……。
  61. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 御注意されなくても簡単にやります。  ただいまの羽生委員非核武装宣言に関する答弁ですね、岸総理は首班の意向、内閣の意向と国会の意向とが相達してもいたし方がない、それもけっこうだ、こういう意味の答弁をされておりますが、これは重大な答弁だと思うのです。で、今の政党政治、議院内閣制から考えた場合に、あなたは総理である前に、まず自由民主党の党員です。それから衆議院に議席を置くところの一国会議員です。しかも自民党所属の国会議員です。さらにつけ加えて言うならば、自由民主党という政党を率いるところの党首です。あなたはね。今の政党政治並びに議院内閣制からいって、前提にそれがあるわけですね。だから、あなたが羽生委員に答えられていることは、次の二つのいずれかということを伺うわけです。それは、自由民主党の総裁であり、かかるがゆえに内閣の首班になっている。その自分が国会において具体的な、勝間田衆議院議員に対する答弁をした。社会党に、非核武装宣言は賛成だ、支持するという答弁を明確にされた。そのことが立法府においてあなたが所属する、あなたが率いる自由民主党で受けられなかった。そのために国会で決議とならなかった。このことは、あなたは遺憾だと考えているのか、自分の考え通りになってほしかったと、こういうふうにお考えになっているのか。それとも現在のわが国の国内情勢並びに国際情勢から、政府の見解と立法府のこれに対する見解がちょうどあのくらい食い違っておった方がよろしい、それでよろしいのだ、こういうあなたは見解なのか、そのいずれかお答えを願いたい。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は行政府の首班として、私の内閣政策は、私の所信を明らかにしております。しこうしてそれがその通りに現在行われているのです。すなわち、核武装はいたしておりませんし、核兵器の持ち込みも私の言う通りこれを行わしめておりません。これに対してわが自民党において反対であって、核兵器を武装しろ、もしくは核兵器を持ち込めという議論があって私の説と違っているというわけではございません。ただ、国会がこれをこの際国会の議決として取り上げるかという問題に関しては、二大政党の間におきまして、その案が一致するを見るに至らなくて、案の内容が一致を見るに至らなくて、これが提案をされておらない、決議案を提案されておらないというのが実情でございます。従って、私はそこの間に、私が申しておることが、党とし、あるいは党員として私の考え方と違った考え方になっておるとは思っておりません。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 次にお尋ねしたいことは、この安保条約の改正に当って、政府は行政協定を切り離して考えているようでありますが、この本条約の重要性にさして劣らない意味を持っておる、かつまた不可分の関係にある行政協定を別個に取り扱う、これは問題をあまりにも私は安易に考え過ぎる、またずさんな考え方であると思う。これは問題が非常にむずかしいには違いないが、これは不可分の関係にある。これは安保条約改定と行政協定は、この政府がもしやるならば、これは同時並行的にやるべき性質のものと思いますが、どうでありますか。  もう一つは、その場合に、行政協定の改定は国会の承認を求めますか。外務大臣にお願いします。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定が重要であることはむろんのことだと私は思っております。ただ、われわれが現行行政協定の改善という問題について、大きな観点から、重要な点についてはできるだけこれを改定して参りたいと思っておりますが、しかし問題は非常に事務的な問題もたくさんありますので、それらの問題については十分協議を尽した上でゆっくり改定することもできるわけでありますから、実際の調印に当りましては、どの程度まで改善し得るか、この機会に改善し得るかということは今直ちに申し上げかねると思うのですが、将来に残る部分もあろうかと思います。  もう一つ、その場合には議会にかけるつもりでおります。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 安保条約そのものの改正が私は差し迫ったものとは思わないのに、この行政協定もあとからゆっくり考えていくというお話でありますが、私は、それならこれは安保条約本条約そのものも行政協定も差し迫って何も改定する必要性は全然存在しない。またあるなら、その必要性がもし差し迫ったものならば、同時並行的にやるべきである。そんな行政協定だけはあとでゆっくり考えて、おもむろにという、そんなずさんな考え方は絶対にいけない。やるならばあくまで同時並行的だということを私はこの際申し上げておきます。  それから次に、日米相互援助条約ということになると、区域外は別ですが、この日本区域内においても日米間のこの相互防衛義務か発生することになりますが、そうなると自衛隊法の第三条は改正しなければならぬことになりはしませんか。それはどうでありますか。
  66. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私は必ずしもさようなことにならぬと存じております。
  67. 羽生三七

    羽生三七君 これはヴァンデンバーグ決議の趣旨から見ましても、当然私はそういう制約を受けて必ずそこへ追い込まれていくと思う。もし、そういう重要な問題をそういうあいまいな考え方で処理されるのは非常にこれは不満であります。  次は、この安保条約を今すぐ無理に改正しなければならぬような条件は存在しておらぬと思います。これは先ほど来私が申し上げた通りであります。その意味ではアメリカにも私はそういう要素があるのではないかと思います。藤山外相が先年渡米をしてダレス国務長官に会い、若干の話し合いをされたのです。その結果何らかの自信を持たれたのではないかと思いますが、当時の情勢から判断して、これは発足当時の岸内閣に対する私はアメリカのいささかのサービスの意味があったのではないかと思う。これは新政権岸内閣に少しお手伝いしよう、それには藤山さんがせっかく来られたから、何か一つぐらい言うことを聞かなければいかぬということで、私はダレスさんが藤山さんと話されたのではないかと思う。しかしその後アメリカ情勢も相当変化しております。中間選挙における民主党の圧倒的な勝利、最近におけるダレスさんの病気、さらに明年は大統領選挙も行われて、しかもおそらくは特別の事情が起こらない限り民主党の勝利となることはこれはもう確定的であります。もう決定的であります。アメリカ外交はある程度の超党性を持っておりますから、民主党が勝ったからといって極端な変化が起るということを即断することはこれは危険でありますから、そういうわけではありませんが、しかし先日のアメリカの上院の外交委員会でマーシャル前国務長官が証言に立っている。その中で中華人民共和国、北京政権の即時承認を激しい言葉で論じております。前国務長官ですよ。民主党政権になればこの人がまた復活するかもわからない。そういう意味から、私は今後相当アメリカ自体においても変化が予想されると思う。そういう情勢を判断すると、よほど警戒をしないと世界の客観的な諸条件から私はむしろ日本が取り残されることになりはしないかと思う。しかもその当時は、アメリカの大統領選挙の行われる明年は、岸総理の総裁としての任期も終るころになります。もっともそれまで岸総理がもつかどうか、これは別の問題でありますが、とにかく日米ともに情勢変化が予想される。そういう条件の中でどうしても私は無理に安保条約の改正を急ぐ必要は全然ないと思う、情勢は変りますから。もう確実に変ります。何をお急ぎになりますか、ゆっくりお考えになった方がいいと思いますが、一つこれは総理大臣にお伺いをいたします。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在の安保条約成立当時と今日と非常に情勢が変っておる。またこの条文の、条約の内容を検討いたしてみますというと、きわめて日本独立性、自主性というものが認められておらない。ちょっと独立国家間の条約としては私はほかに例を見ない特殊のものであると思うのであります。これを独立回復後できるだけ対等的な、また日本自主性を認めた条約に改めたいということは、これは私どもがただ考えたということでなしに、国民の大多数の私は念願であると信じております。この意味において、過去におきましてもこれが今申したような趣旨で合理的に改正しようということは日本側からしばしばアメリカの方に交渉が行われたのであります。しかしそれが漸次日本の国力の充実と日米間の対等な関係、両国の真の理解に基くところの協力という基礎に立って、われわれの希望が認められて、そうして年年藤山外相がワシントンをたずねた際に具体的にその問題について日本の憲法の範囲内において日本自主性を認めた対等なものにこれを改めるということについて、両国の権限ある者の間に交渉しようという基礎が、話し合いがきまったわけであります。私どもは初めからこの問題については憲法の制約の範囲内におけるということを両国とも大前提といたしております。しかして今日あるところの安保条約というものの不合理性を改めて、そうして自主性をはっきりさせるという点に主眼がありますし、また現在の安保条約以上に日本立場を危険なものにし、あるいは戦争の危険を増大するというようなことは、絶対に私ども考えておらないのでありまして、こういう意味における条約の改定は、私はできるだけ早くやることが日本国民の多数の願望にかなうゆえんであると、かように信じて政府としてはできるだけその交渉をとり進めていきたい、こういう考えでございます。
  69. 羽生三七

    羽生三七君 その問題については、もう一度あとで触れますが、ちょっと質問が元へ戻りますけれども、この条約の中で前文かどこか知りませんが、この憲法の定むるところによるということをうたって、そして一般的に制約をされるのじゃないかと思いますが、そうでなしに、端的にこの日本の海外派兵の禁止、核兵器の禁止等を条約上明記するお考えはありませんか。一般的、抽象的じゃなしにこれを承わっておきます。
  70. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今の安保条約の改正に当りましては、むろん憲法の範囲内であることをしばしば繰り返してアメリカ側に言っております。私もそういう考え方でやっておりますので、どういう場合に全体を総括的に規律いたしますか、それらの問題については全体的にこの条約が憲法の範囲内で処理されるようにという意味において規律することが適当ではないかと考えておりますが、具体的にはまだ十分検討いたしておりません。検討中であります。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 非常にどの問題についても検討中ということでお答え不明確でありますが、もちろんこの提案権を持っておる政府が自分の腹の中にあることでありますから、今ここで一から十まで洗いざらい私たちが具体的な答弁を求めることはそれは無理と思いますけれども、しかし全体として非常に問題が不明確であります。従ってそうであればあるほど私たちは次のことを考えなければならぬと思います。それは想像を絶する今日の兵器の発達、自然その戦略体制にも重要な変革を促すことになってきております。この原水爆を初めあらゆる種類の核兵器はICBMを初め各種のミサイル、原子力潜水艦、これらが実用化と量産の段階に入っております。それは従来の戦略体制を根本的に変革する情勢を招来することは、もはや疑うことのできないこれは決定的な事実だろうと思います。そういう意味で将来を見ると、いわゆるこの軍事基地の持つ意義は、その価値評価の上に非常な大きな私は決定的な変化をもたらすと思うのです。従ってこの米国の戦略体制や基地政策も当然私は変らざるを得ないと思うのです。従ってこの際何も差し迫った理由条件もない、しかも与党内ですら意見の調整は困難である、こういう現状において安保条約改定はこれをストップして、そしておもむろに世界情勢の推移を見きわめることが賢明なあり方だと考えます。先ほど質問を繰り返すことになりますけれどもアメリカ自身も変ろうとしておる。世界情勢も変ってくるのです。これは戦略の体制が変るとともに私は基地政策というものは変ると思うのです。そういう条件のある中に、差し迫って安保条約を今すぐ改正しなければならないというような何も理由はないのです。ただ先ほど総理お話しになったように、ただ講和条約発効当時と条件が変ったから、それを合理的にするだけだ、それだけの理由なら、むしろ私はその点は若干不明確な点は残っても、むしろ私は交渉をストップすることの方が、そして世界情勢の変化をおもむろに見ることの方がよりよく日本の安全に役立つ。だから一般的抽象的に防衛力の増強、日本防衛力が足りないから米国依存、その条約は不明確であるから合理的に、こういうことじゃなしに、むしろこれはストップして国際情勢の変化に対応しておもむろに日本考えていく、この方が私は日本の安全に役立つ、かたく信ずるのでありますが、重ねて総理の御見解を承わります。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の安全を保障するためにどういう形、どういうことがいいかというようなことについては、先ほど羽生委員と私の考えとの間に根本的な違いがあるのでございますが、私は決して安保条約だけで日本の安全が絶対に確保されるとは思いませんけれども、しかしながら日本の取り残されておる国際情勢及び日本自衛力現状から見まして、日本の安全を確保するためには、日米が共同防衛の形において安全保障条約というものが必要である。しこうして、その安全保障条約の現行のものはきわめて不合理なところが多いからこれを合理的に改めるという考えは、われわれとして当然やらなければならぬことである、かように思っております。国際情勢の変遷やあるいはいろいろなことを頭におかなければならぬことは言うを待七ません。従って、新しく結ばれる条約については期限を付して、またこれらを廃棄するところの手続等も明定すべきことは当然でありますが、今の羽生委員のように、このままにして、不合理なままにしておいて、そうしておもむろに国際情勢の変遷を見て考えろという考えには、遺憾ながら私は同感するわけに参らないのであります。    〔矢嶋三義君「議事進行」と述ぶ〕
  73. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 何ですか、矢嶋さん。
  74. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと委員長を通じて行政府に注意を喚起していただきたいと思う。私どもの党は羽生委員を第一陣に立てて今質疑をし、私どもはこの席において、充実した参議院予算委員会の審議をしたいと思い、おとなしく聞いているわけなんですが、ところが羽生委員の主として安保条約の機微にふれる重要なポイントへ質問を持っていきますと答弁を逃げている。これは私は非常に遺憾に思います。今まで新聞で承知した程度を一歩も出ていないで、藤山試案として広く伝えられている点についても、党内調整にかかっている段階で、羽生委員にうっかり答弁して、党内調整がむずかしくなったら困るというようなおもんばかりがあるのだと私は推察をいたします。これはね、国会の審議よりは与党内を優先させる考え方で、立法府軽視という由々しき事態だと思う。先ほどからずいぶんと、羽生委員がずっと質問して、聞きたいというポイントにくるというと触れない。たとえば、ただいまの、核兵器を条約上どういうふうに表現するかというような点についてはぼかして、ごまかしのような答弁をしている。藤山さんらしくないと思う。総理大臣もそうだと思う。こういう態度で行政府が答弁するにおいては、今後の予算委員会の審議というものははかり知ることのできない事態が起らないとも限らない、委員長から行政府に誠意のある答弁を羽生委員にするように注意していただきたい。注意していただきたい。
  75. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 今矢嶋君がいろいろ発言されたことは、私からあらためて言うまでもなく、ここに御列席の政府は大体聞いていると思いますから、私から特に、矢嶋君の発言によって喚起されたわけでありますから、ただいまでも誠意がないというわけじゃないでしょうが、まあ条約の改正とか何とかいうようなことは、いろいろ相手のある仕事で、いろいろあるでしょうが、できるだけ一つ質問者を納得させるような御答弁をしていただく方が、その議事の運営の上から非常に都合がいいと思いますので、どうぞ御任意いただきたい。それじゃ羽生君、どうぞ。
  76. 羽生三七

    羽生三七君 要するに、今矢嶋さんの御指摘の点は、私は、ずっと先ほど来自分で考えてみると、これはもう全くビジネスなんです。雄渾な外交というものはないんです。それを貫く世界観というものはほとんどない、一種のビジネスで、事務的にちょっちょっと答弁しようというんです。そういうものじゃないかと思うんですね。非常に遺憾です。そこで、私はこの問題については、安保条約についての最後に申し上げたいことは、私は、日本政府米国と仲たがいをせよとか、そういうことを言うんじゃないんです。日米の親善が永続することを私ども心から希望しております。ただ、私は日本国のおかれた今日の地位、国際的な環境、地理的条件日本国憲法の規定、国民的願望、先ほど総理は、国民はそれを欲しているといいますが、日本の大多数の国民軍事基地提供を欲しておりません。だからそういう国民的願望、そういうものからして、日本が軍事的にいかなる国の陣営にも属さない、これは繰り返して申し上げますが、軍事的に日本政府アメリカと仲のいいのも自由、どこの国のイデオロギーを好むのも自由、全く自由であります。私の言うのは、それはそうであるが、軍事的にいかなる国の陣営にも属さない。そういうきぜんたる態度をとって、いわば中立政策を堅持して、国際緊張緩和と平和の維持のために、新しい外交路線を設定する、これを衷心から念願しております。この中立政策、今私の言ったような中立政策は、寝ころんでどっちにもつかぬという、そういう消極的な無責任意味のものではありません。岸総理アメリカ的な行き方を好むのも、またそのアイデアの、どこの国をおとりになるのも全く自由であります。われわれもまたその自由を持っておる。しかしアメリカと軍事的に結んで他国を敵とするとか、また逆に中ソと日本が軍事的に結んでアメリカを敵とするとか、そういう意味の特定の国との軍事的同盟をやって、他の特定の国を敵に回すような、こういう政策をおやめになって、確固として中立の政策を堅持されてはどうかと、こう思いますが、総理大臣の御見解を承わりたい。
  77. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は日本の、わが内閣外交路線として、従来三つのことをはっきりと申しております。自由主義の立場を堅持し、これらの国々と十分な協力提携の関係を維持していき、アジア諸国との関係をさらに緊密に維持して、国際連合を通じて世界の平和にあくまでも寄与すると、こういう考え方を述べております。しこうして今お話の、いわゆる中立政策というものを軍事的にはどことも特別の協力関係には立たない、思想的にいえば、その国がどういう政治思想をとるかは、これはその国の自由であるが、軍事的にはあくまでもどことも提携してこれを葬るという形はとらないのだと、こういう意味におけるところの中立政策をとるべきじゃないかというお考えであります。私は今日の国際情勢をみまして、日本を取り巻いておるこの情勢からみまして、日本がそういう中立政策をとってどことも軍事的な関係を持たないということが、日本の安全を保障する上からいって望ましい形とは私は考えておりません。従って日米共同防衛の形において、日本日本の安全を守ることが、現実に即して最も適当な方法であるという考えに立っております。こういう意味において、しかしながら特定の国を敵とするとか特定の国を仮想敵国として、そしてこれに対抗していくというような考えを持っておらないことは言うを待たないのでありまして、ただ日本立場考え日本の安全を考え意味からいい、日本自衛力の実情からいって、アメリカとの間の共同防衛という形は、やはりこれを存続すべきものである、従ってそういう意味において、今羽生委員お話のような、いわゆる中立政策日本立場としてとるべきじゃないという考えでございます。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 私どもは、最終的には安保条約の解消をその目標としておりますが、きょうはそういう基本的な問題よりも、むしろ条約交渉をストップするという非常な歩み寄った形で問題を述べたのでありますが、今の中立論議にいたしましても、私は少くとも岸内閣防衛政策基地政策よりも、社会党の中立政策の方がより安全であろう、これは断固たる私どもの確信でありますが、これは見解の相違でありますから、安保条約等の問題は一応これで打ち切りまして、次の問題に進みます。  次にお伺いいたしたいことは、対中国政策であります。私がここで中国と言うのは中華人民共和国のことでありますのでお含みをいただきます。台湾のことは台湾政権とやりますからお願いいたします。  この岸内閣は、今日中華人民共和国に対する従来の方針を再検討して、基本的な態度を確立すべき時期に立ち至っていると思います。昨年以来閉ざされておりました日中間の関係を打開するために、政府は最近大使級会談を開く用意があるとか、自民党の代表を送るとか、あるいはまた書簡を託するとかというように種々取りざたされておりますが、そうかと思えばそれに冷水を浴びせるような論議党内から、池田氏あたりからも出ております。全く混沌たる状況のもとで暗中摸索を続けておるのが現状であろうと思います。事実何らかの自信があるとも思われまんし、基本的な方針があるとも考えられません。しかし外交閣僚懇談会等で日中問題打開の方針を確認したということでありますから、この際政府方針一つお聞かせ願いたい、しかし中国は、この日本政府の基本的な態度が変らない限り、中国の従来の方針に何ら変更がないことを、重ねて強調しております。日本政府の若干の最近の動きにもかかわらず、何ら基本的な態度には変りないと言っております。最近総記の岩井君の持ち帰ったウルシ等の輸入の問題もありますが、これは基本的か問題とは全く別に、日本の当該中小企業者の現状を救うというきわめて限定された問題に過ぎないと考えます。だれの目にも明白だろうと思います。従ってこれは完全な意味の行き過ぎではありません。政府は中国に対し、従来のいわゆる静観的な態度を前進させ、何らかの局面打開を考えないのか、そういう基本的な問題に対する考慮なしに、ただ思いつきのようなことを言っても、絶対にこの局面打開は困難と考えます。外交閣僚懇談会等もあったようでありますから、一つ最近の対中国政策について、政府の基本的な考え方をお伺いいたします。
  79. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中国大陸と日本との関係は私がここに申し上げるまでもなく、地理的にも文化的にも歴史的にも、いろいろな意味において今まで深い関係があります。しかしてこの戦後中華人民共和国と、そうして中華民国と二つができたような格好になっておることは、これから生ずるいろいろな問題を惹起して、従来の長い伝統的な関係、もしくは文化的にも経済的にも深い関係にある中国大陸との交通が、思うようにいっておらない。それがさらに昨年の五月に、一切の交通その他が途絶しているという状況にあることは、私どもかねがね非常に遺憾に考えているところでありまして、これを打開しなければならぬということは、国民の要望でもございますし、われわれとしてもそれを常々考えてきたわけでありますが、あの五月当時の状況から申しますというと、私どもは急にそういう態度が激変――私どもの方の考えから言うならば、従来積み重ねて、私どもきておったそのいろいろな、不自由ではあったけれども友好関係を増進する方向にいろいろなことが積み上げられておったのが、一時に途絶して、そうしてその後におけるいろいろな言動等が私どもの真意とはなはだ違っているということから、こういう誤解も、あるいはそういうふうな理解の足りないことを、冷静に十分に理解を深めて、そうしてこれを打開しなければいかぬという意味において、私どもは静観ということを申してきたのでございます。これは決して何にもしないということでもなければ、あるいは今の状態をそのまま放置して、これがやむを得ないのだということを考えたわけではないのでありまして、これを打開していくためには、少くとも冷静にお互いお互い立場を十分に理解して、そうして今日の状況から申しますというと、あるいは両国の主張、立場というものからいって、完全に意見が一致するというわけにはいかないだろうけれども、しかしこういう状態は両国にとって不幸な状況であり、これを打開しようという熱意に立ってお互い考えていくならば、またそこに道が当然開けなければならぬ、そういう意味において、私どもは静観ということを言ってきたのであります。自来すでに一年近くたっておりまして、いろろ具体的に、あるいは貿易が途絶することによって、両国の国民や人民の間にいろいろな不便や不都合も生じておるし、またいろいろな人道的の意味から、海難救助の問題であるとか、あるいはお互いのいろいろな意味におけるところの福祉の意味から、郵便やあるいは気象等の問題についても、何らかのここに取りきめをしていく必要があるということがますます強く感ぜられてきておるような状況になっておりまして、これを何とか打開するのが必要であろうという考えを私どもも持って、いろいろな構想につきましても、外務大臣も国会を通じて申し上げておるのであります。しかし、言うまでもなく、これは相手のある問題でありますし、またいろいろなタイミングの問題もありますし、従いまして、またわれわれの方に十分この情勢なりあるいは事情のわからない点もございますから、一方的にこれをどうしようといってもできるものでないことは言うを待たないのであります。私は今回社会党の訪中使節団も本日は出かけていかれるとのことでございますし、あらゆる面において日本の正しい国民考え方が正しく中国側に理解され、そうしてわれわれが熱意を持って願望しておるこの状態の打開ということについて、その道が開けてくることをこういうふうな機会にも、そういうことが得られるように実は願っておるわけでございます。こういう意味において、今日具体的にいつどういう方法によってどうするということを申し上げる段階でないことは言うを待たないのでありますが、この状況に関して、従来よりも進んでこれを打開しなければならぬという考えに立って、今後十分にその機会をつかむように努力をしていきたい、こう思っております。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 今、総理のお答えの中に、国民の願望が正しく中国に伝わるようにというお話がありましたが、中国は日本国民の願望を理解しておるのです。岸内閣がどうかということが問題になっておるのですから、そこは一つよく御了解いただきたいと思います。政府はこの日米安保条約の相互援助条約の切りかえを企図しながら、他面中国との国交正常化について何も方策を持たずに、単純に貿易再開だけを考えておるのははなはだしい矛盾だと考えます。中国は日本政府に対して、少しも無理な要求を持っているのではないのであります。かたきをしいておるのではない。たとえば台湾政権との日華条約を今即時破棄せよとかあるいは今すぐに中国北京政権を承認せよとか、寸分動きのとれない要求を突きつけているわけでまないのであります。問題は中国との国交正常化を基本的な路線として従来のような敵視政策を改めて、あるいは国連における代表権の問題について考慮を払い、そうして今お話のありましたように、この積極的な友好関係を確立する中で、郵便協定や気象協定等、政府間協定を積み上げて、そういう条件の中で貿易協定に発展さしていく、私はそう考えればいいんじゃないかと思う。ですから、先ほどのところへ戻りますけれども、基本的な点で岸内閣考え方が変らないと、日本国民の要望は向うへ伝わっておりますけれども、先方としては岸内閣が一体何を考えておるか、どうしようというのか、しかもそれは即時こうせよという非常な抜き差しならぬものではない。一定の基本路線がわかれば、その後の取扱いは発展的に問題を切り開いていく、こういう向うは希望だと思う。従ってそういう両国間の基本的な路線、このものについてのある程度の岸内閣の態度が明白にならない限り、私は局面打開は非常に困難と考えますが、もう少しその点についてのお考えを承わりたいと思う。
  81. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもが貿易をやり、あるいは文化の交流をするとか、あるいは技術的な問題に関して、政府間における協定もこれを実現したいということを申しておりますことは、言うまでもなく長い伝統的な、この中国と日本との関係というものに立って、いわゆる友好、近隣の何として、また歴史的、文化的に深い関係にある中国との間の友好関係を増進していくという基礎に立っておることは言うを待たないのであります。友好関係を求めないで、ただそろばん勘定だけで貿易をしようとか、あるいはただ困っておるから気象協定をしようということでないことは言うを待たないのであります。私は今の日本の置かれておる立場、また中華人民共和国の国際的な立場から申しまして、こういうことが従来、昨年の五月以前に行われておったように、積み上げ方式によって積み上げていかれることが、両国の友好親善の関係を深めることでもあるし、将来におけるところの国際間の問題を解決するところの道であると従来も考えてきておったのであります。これが不幸にして昨年の五月にああいう事態になったわけでありますが、今後におきましても従来考えておるように、やはりこの両国の間の友好親善を深めていくと、それに対してはできるものから積み上げ方式によって積み上げていく、これが問題を解決する道である、こう今日も考えておるわけでございます。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 社会党がこの中華人民共和国との国交回復等についていろいろ言う場合に、世間にも、また政府党内部にも、これは中国の国内分断政策に乗るものであるとか、あるいは不当な内政干渉であるとか。いろいろな批評があるようでありますから、私はこの機会に明白にしておきたいと思いますが、社会党社会党自主性において独自の判断で問題を取り扱っております。そういう点については全く何らの不明確さもない明確な立場自主性であります。そこでそういう立場から私は考えておることは、この日華事変、太平洋戦争と、この中国にはかり知れない迷惑をかけました日本が、六億の人口を持つ中国本土との関係を何ら正常化しないところにそもそも問題の本質があると思うのです。だから社会党のような考え方は、お先棒をかつぐとか、分断政策に乗るものとか、こういう議論は私は本末転倒もはなはだしいと思う。今総理がそう言われたわけではないのですが、この機会に明らかにしておきたいと思いますが、これはやはり今申し上げたように、長い迷惑をかけた日本が少しもこれについての正常化をしないで、台湾と条約を結んでおれば、その主権が中国に及んでおるというような長い伝統的な解釈が、これが根本的に誤りなんです。従って、この問題の本質を私は明らかにする必要があると思うのであります。政府は今まで、特に相手国を敵視したことはない、こう言っておられますが、私はあえてここでその古傷にさわろうとは思いません。そういう事例を一々あげようとは思いませんが、しかし、何といいましても、これは多くの誤解を与えておる、誤解か正解か、それは知りませんけれども、とにかく非常に大きな向うに刺激を与えております。だから、そういう意味で、何といいましても、静観から一歩踏み出すことにするとすれば、まずこの辺の基本的な問題に対処する腹がまえを作らなければ、私は問題をレールに乗せることにはならぬと思う。これは問題を解決するための不可欠の前提条件だと思います。岸内閣にとっては、この問題は非常に苦しい、台湾との関係アメリカとの関係、いろいろあるでありましょう。苦しい問題でありましょう。しかし、この基本的な態度が明白にならない限り、私はその成功は期待できないと思う。だから私は、そういう意味でさらに問題を前進させることを希望するのであります。さきにも述べたように、六億の人口を持つ、しかも名実ともに今日の中国を代表しておる、経済的にも政治的にも非常な速度で発展をしておる、そういう段階にある中華人民共和国との正常な国交を持つようにすることは、これはもう当りまえの話だと思うのです。しかし、岸内閣が、対米関係や、あるいはその他のことで非常にむずかしい段階にあることはわかりますけれども、この際踏み切って、決断をもってこの新しい方向に向われることを希望するのであります。しかも、先ほどのことを繰り返しますけれども、即時日華条約を破棄せよ、即時国交回復をやれと難きを強いておるのではない。そういう方向意図しつつ、しかも敵視しないという態度、友好関係を明白にして、その中で政府間協定その他を積み上げて、問題の根本的な解釈をはかる、これが路線だろうと思うのです。  実にこの問題は、日本の当面する外交上の最大の課題であると思います。実は、これが一つは政局の転換にもつながる重要問題だと私は思います。岸内閣がこの問題でどういう困難な立場に立つかはわれわれのかかわりないことでありますが、しかし日本国民は迷惑するのでありますから、私は、極東の平和のため、緊張緩和のため、さらにひいては、長い間の日中関係を打開するために、政府が積極的に踏み切られることを希望いたします。しかも、私ども社会党は、前にもソ連との国交回復のときに、鳩山内閣当時、微力でありますが、社会党も野党の立場で若干の御協力をいたしました。もし日本社会党自民党立場与党と野党の立場が、外国外交に比べてあまりにも差があり過ぎる、隔たりがあり過ぎるということを言われるならば、――そういう批評もありますが、この場合、少くとも今の日中関係に関する問題に関しては、私は社会党立場こそ、発展的方向における唯一の正しい方針だと断言できると思います。時にはどうですか、政府も野党に協力をして、そうして外交の新しい路線に踏み切られてはどうかと思いますが、もう一度重ねて、つまり方向を確認し題、これをもう一度一つお答えいただきたい。
  83. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、先ほどお答え申し上げましたように、われわれが、貿易やその他のいろいろな問題に関して、中華人民共和国との間にいろいろな交渉を持とうということは、言うまでもなく、両者の間に友好親善の関係をこれによって深め、お互いの理解を深めるというために言いうことをわれわれは考えておるわけであります。全然これと、将来とも何ら友好関係を持たない、ただウルシがとまっておる、何がとまっておるから、そのものさえ満足すればいいのだというような考えでないことは言うを待たないのであります。ただ今日、今御指摘になりましたが、いろいろな政治的の関係をこれと持つということにつきましては、その前に、日本が置かれておる国際的な立場から整理しなければならないいろいろな関係があると思います。これらの整理が行われずして、政治的な、いわゆる狭義の政治的な意味における国交正常化を考えるということは、これは事実上できない問題であります。しかしながら、両国の理解を深め、友好親善の関係を深めていく、それの一環として経済、交通もやり、文化の交流もやり、あるいはいろいろな人道的な立場からの協定を結んでいく、こういうことを考えていくべきことは当然だろうと思いますが、それが直ちに両国の国交の正常化というものを、はっきり今日やるんだということを直ちに言うわけにはいかぬ。それは、今お話し申し上げたように、いろいろその前にわれわれとしては調整しなければならない関係が幾多あると、こういうように御了解いただきたいと思います。
  84. 羽生三七

    羽生三七君 衆議院の予算委員会で、どなたかの質問に対する答弁で、政府は、この問題は国際情勢の推移を見てというように答えられておりますが、今のお答えの中にも、そういうニュアンスがあったと思いますが、私は、この問題は国際情勢待ちでなしに、むしろ日本が進んで国際情勢を切り開いていく、そういう努力をなすべきであると思います。特に私は、日華事変の当面の責任者である日本というものが、国際情勢待ちで、他国動きに追随するというようなことでなしに、日本みずからの手で積極的に問題解決をはかることが、基本的に重要だと思う。そのためには、局面を打開するためにどういう施策があるか、こういうことだろうと思う。私は、まあ自分の意見を少し言い過ぎましたが、しかし私は、政府の中国に対する基本的な経論がないことに、そもそも問題があると思う。しかし、この問題の行き詰まりが打開できないというならば、実を言うならば、迷惑をこうむるのは、日本国民であります。近い将来の見通しがあればいいが、長く、もうかれこれ一年停頓しておる。閉ざされておる、この道が。これが近い将来に打開できる可能性がないというならば、そのことだけでも、私は岸内閣責任をとる必要があると思う。従って、私はそういう意味からいって、根本的に新たなる局面打開の方針をすみやかに確立すべきことを要求して、私のこの外交に対する質問を終ります。ちょうど持ち時間があと二、三分で終りますので、次に、私は経済問題についてお尋ねしようと思いましたが、遺憾ながら時間がないので、ここでやめますけれども、ただ一言だけ大蔵大臣に申し上げてみますと、それは、昭和三十四年度予算一般会計及び財政投融資におきまして二千二百七十四億円の散超となる結果、これを積極的な予算、場合によるならば、景気過熱を招来する予算という批判もありますが、私は必ずしもそうは思わない。積極的、意図的であることは認めますが、すぐ景気過熱とか何とかということが出てくるわけじゃないと思う。特に、三十三年度の予算審議の際に、私は当委員会において、当時は一萬田大蔵大臣でありましたが、あの神武以来の景気から、国際収支が赤字になり、そうしてデフレになり、過剰生産の様相が非常にはなはだしくなったときに、むしろ有効需要を起すための積極的な施策を望んだ一人でありますから、その意味で言うならば、政府の本年度の財政政策が、必ずしもこれは過熱を招来するものだとは思いません。ただ問題は、私はその構造的内容にあると思う。これは一口に言われるように、大企業偏重、中小企業や農業に対する施策が足りない、そういう問題。もう一つは、消費需要が高まって、いわゆる設備投資は減るけれども、しかし、住宅建築や個人消費がふえて、その結果として五・五%の成長率を見込んでおるようでありますけれども、私は何といいましても、国民階層間におけるアンバランスがいよいよはなはだしくなってくると思う。個人の消費は伸びておるといいますけれども、三十万円以下の低額所得者はかえってむしろ所得が減っておる、それは相当数あります。それで六千数百万人は所得税すら納めることができない段階である。そういう意味の内容を検討した場合の構造的内容からいうならば、非常に不満がある、それが一つであります。そういう立場で私たちが昭和三十四年度予算を見た場合には、政府は本年度予算がいわゆる長期経済計画にほぼマッチする、それは生産の面でも、外貨収支の面でもほぼマッチすると言って非常に誇っておられますが、私は今の日本経済の成長の力、余力はそれはもっとあると思うのです、実質的に。私はこの過熱というようなことは起らないにしても、実際上もっと鉱工業生産が伸びると思う。稼働率も多くなると思う。従って私は国全体としては供給過剰の基調になると思う。そうすると、いつでもとる政府政策は、必ず操業短縮、それから資金規制、そういう方面をコントロールする、その結果起るものは失業、破産、倒産です。これがずっと繰り返される今までの経過であります。これは資本主義の経済でありますから、当然不断に繰り返されることはわかるし、またそれに対しては、一定のコントロールが要る、それは当然でありますが、しかし、今の政府のとってきた政策は、無計画的な設備投資や思惑輸入を許しおいて、そしてそれが度をすごすというと、逆にそれをコントロールする形、そうでなしに今の国民の階層間のアンバランスを埋めて低額所得者の減税をやる、あるいは社会保障費を拡大し、場合によったらベース・アップもやる、あるいは中小企業についても単に運転資金だけでなしに、休質改善の積極的な施策をやる、農業につきましても単に土地改良というような問題だけでなしに、土地改良はある程度政府もやっておりますが、農道、利水事業、それから動力機械の導入、それから技術の改善、協同化の促進、そういう意味の体質改善をやる、そして一般的に、そういう大企業以外の残された部面の体質改善にも、相当に重点的に施行しながら、しかも、社会保障費をもっと積極的に増額をして、国民の個人の消費生活水準をもっと上げる、こういうふうに言うと、すぐそれは赤字になるとか、あるいはインフレを招来すると言いますが、日本の今の経済の基調は言うまでもなく黒字基調であります。私は昨年当委員会で四億ドル以上の黒字が可能だと言いましたが、一萬田さんは非常に、山際さんも消極的だった。それは羽生さん楽観的過ぎると言っていた。今暦年で五億三千万ドルの黒字を持っていることは、指摘するまでもなく明瞭であります。三十四年度も黒字だ、しかも、一億六千万ドルの基調ははるかに上回る三億ドル近い黒字の累積も予想されると思う。そういうときに政府がやるべき手段は、今私が述べたように、またそこに起ってくる積極政策というものが今までやってきたようなものでなしに、それももちろん重点的にいろいろやらんならぬでしょう、ときにはコントロールする、しかし同時に、取り残された今の国民のたくさんの階層、所得税すら納めることのできない六千数百万人の、これは家族含めての数ですが、この人たち、あるいは一千万人近い非常な貧困者あるいは一般労働階級のベース・アップ、それから今申し上げた農業、中小企業に体質改善、さらにもっと進んで言うなら、科学技術の振興、そういう問題についても、そういう点について積極的な配慮を払って、それで日本経済の体質改善や、それから国民の購買力をふやして、そして経済の一般的成長をはかっていく、私はそれは一つあり方だと思う、そういう意味の配慮が欠けているのです。だから一部言われておるように、私はこれが過熱的な積極政策とは思いません。問題は、むしろ積極政策の内容にある。従って今後私はそういう意味で、政府が十分なる配慮をすることを希望するわけです。一部には池田勇人さんの賃正金二倍論などもありますが、社会党のお株を奪うような勇ましいことを言っております。それが可能だとは思いませんけれども、私は方向としては、経済成長は、日本経済は今なおかつ余力を持っておる。これはタイミングを私ははずすべきでない。しかも、それをやる場合の積極政策としてわれわれが求めるものは、今申し上げたような今度の予算の中にあるアンバランス、特に弱い階層に対する重点的な施策こそ望ましい。こういうことを申し上げて、私の時間はこれで終っておりますから、御注意がありましたから、これでやめますが、どうか政府が、日本経済のことしの成長をどう見るのか、五ヵ年計画にマッチすればそれでよいとするのか、もっと余力があると思わないか、余力がある場合には、どういうことを今後お考えになるのか、供給超過基調にならないか、黒字はもっと予想よりもふえるのじゃないか、そういう中で何をおやりになるか、一つ承わって私の質問を終りたいと思います。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 大体三十四年、あるいは三十四年度以降の経済の動向についてのお考え方、私どもとあまり違わないと実は考えるのです。基本的に社会党の理念が違うと言われておるが、どこが違っておるか実は首をひねっていたのであります。御指摘のように三十四年度の経済は、私どもは順調に発展するものだと、かように考えております。これは順調に発展する内容を詳しく申し上げますと、御了承いただけると思いますが、これはもう結論だけを申して、そのお答えにかえたいと思います。そこで、いわゆる過熱論というものに対しては、私自身あまり心配もいたしておりません。また、生産過剰を招来するのじゃないかという点についても、実は私はあまり心配をいたしておりません。これは今回の予算編成に当りましても、まあ過熱を来たさず、生産過剰を来たさず、着実な安定した方向で、経済発展に寄与するという考え方をいたしておるのであります。これはたとえば生産の面からいいましても、事業の面から見ましても、また物価の面から見ましても、大体好ましい状況にあると思います。ただ、先ほどからのお話しで、私の一言申し上げてみたいと思いますのは、経済余力というものについて、非常に期待をかけておられるのじゃないか、また、その経済余力の使い方というものについての考え方が私どもとやや違っておるという印象を受けましたので、その点だけ触れてみたいと思います。なるほど三十四年度以降の経済成長率については、もう少し大きく見ることも可能だと思います。先ほど来言っておられるように需要に相応する生産だという意味考えて参りますれば、その需要は内需並びに輸出というものを含めての需要でございますが、そういうことを考えてみますと、もう少し経済に余力があるんじゃないか、国際収支の黒字等でも、もう少し大きく言えるのではないかという点だと思います。私どもが今見積っておる一億六千万ドルの黒字は、あるいは幸いにしてこれが大きくなればまことに仕合せだと思いますが、私はこの経済の発展について、伸ばすことについては賛成でありますが、もう少し力一ぱいにこれをフルに働かしていくことは、相当危険があるのじゃないか、積極政策にいたしましても、ある程度の余力を絶えず持つということが必要じゃないか。先ほど来冒頭に私、過熱論や生産過剰の議論をいたしましたが、非常に両極端の議論をすることは、経済の見方として私は賛成いたしかねるものであります。過熱というものについての警戒も必要だし、生産過剰についての警戒も必要だし、また経済を伸張さす場合においても、力一ぱいこれを伸ばしていくという場合、危険も同時に考えていかなければならない。そういう意味におきまして、着実な成長ということを実は念願いたしておるのであります。この経済を発展さす、成長さす、その気持においては、羽生さんの御指摘になったと同じような気持でおりますが、経済のあり方、また、これとタイアップする財政のあり方というものは、これにはある程度の余裕を持ってその経済を成長さすことが望ましい。かいつめて申せば、さように思うのでありますが、経済の成長率の見方があるいは五・五%が小さいということを言われるかもしれませんが、私どもはそういう意味で、まず余力のある経済の成長を念願して参りたいと思います。また、長期計画についても、大体の経済の成長の線を考えておりますが、それとこの三十四年度の財政計画等は、大体対応しておるものでございます。  御指摘のような諸点については、御意見にわたる点もございますから、十分私ども検討いたします。問題はただいま申し上げたように、経済は成長さして、それを非常な飛躍的な成長の方向に持っていかないで、その堅実性をそこなわないようにたえず注意し、その時期的な経済情勢というものに透徹した認識を持ちまして誤りなきを期したい、さように考えております。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 これは答弁は要りませんが、最後に一言言っておきたい。実は、こういう経済の重要な問題を、こんな時間で抽象的に言って引き下るのは、まことに遺憾でございますが、時間がないのでやむを得ませんが、私は極端なことを言っておるのではないのです。限度一ぱいの予算を組んだ政府、これももう極端だと言えば極端、公共事業費を重点に限度一ぱいの予算を組んだ、これも批判をすれば幾らでも問題がありますが、そうではなしに、私はあらゆる角度から考えて、積極的であるということが、すぐ直ちに過熱は招来しないが、むろんその積極政策の内容については、十分検討する余地がある。体質改善とは大企業だけではないという問題、それから国民各階層間におけるアンバランスの是正等々問題は、たくさんありますが、しかし残された時間がありませんから、これでやめますけれども、まあ国民経済の成長の中でそういう意味のアンバランスを埋めながら、しかも、安定した成長をはかっていく、そういうことでないと、前年度の繰り返しで、いつも操業短縮と失業と、それから金融難による破産、倒産、この繰り返しではいかぬのでありますから、そういう面におけるコントロールより前に、計画性とともに、そのまた計画の一面には、他の国民生活の水準を引き上げることによって、その穴をうめるやり方もあるということを、一般的抽象的に私は言っておるので、また具体的にただす機会を見てお尋ねしたい。私の質問はこれをもって終ります。
  87. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 羽生委員質問はこれで終了いたしましたから、午後二時まで休憩をいたします。  本日は午後四人の方々に質疑を予定しておるわけでございますので、午後二時の開会時刻を厳守を願いたいと思いますが、特に政府の方々に申し上げますが、午前中も政府の方のおいでがちょっとおくれたために、十分開会がおくれたようなわけでございますので、これは何か連絡が不十分であったことの責任もあるかもしれませんが、どうぞ午後は時間厳守に御協力を願うようにお願いいたします。  午後二時まで休憩をいたします。    午後一時四分休憩    午後二時十分開会
  88. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続いて質疑を続行いたします。
  89. 青木一男

    青木一男君 私は二つの経済問題について政府質問をいたします。  まず、中共との貿易について、外務大臣お尋ねいたします。わが国と中共との貿易関係が、昨年五月九日の陳外交部長の声明を契機として断絶し、今日に至ったことはまことに遺憾とするところであります。われわれは貿易再開の一日もすみやかならんことを望むものでありますが、それには貿易打ち切りを声明し、これを実行した中共側の態度が改まらない限り、問題進展の糸口はつかめないわけであると思います。中共は近時日本人の一部に対し招待外交を再開し、これに随伴して物の交流も再開されるような期待を一部の人々に与えておるのでありますが、一体中共は、貿易打ち切り声明当時の方針を変えたものと見るべきであるかどうか、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  90. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中共が昨年五月ああいう状態のもとに両国間の貿易が、中共との貿易が断絶したことは遺憾でありますが、その後中共といたしましても御承知の通り、今お話がございましたように、人的交流等一時全然断絶いたしておりましたけれども、若干ずつ再開をしてきているようなわけであります。日本側が持っておりました考え方が、必ずしも中共を敵視しているわけではございませんけれども、そうした誤解もあったことかと思います。むろん、中共と日本との貿易再開に当りましては、中共の国際的な情勢の中における立場もございましょうし、また、日本に対するいろいろか中共自身の考え方にもあることと思います。がしかし、われわれとしましては、こうして若干ずつでも人的交流もできましてきたわけでございますから、こうした機会に、今後とも貿易再開の道を、機会があればつかんで参りたい、こういうふうに存じております、
  91. 青木一男

    青木一男君 次に、この問題について岸首相にお尋ねいたします。伝えられるところによると、中共では岸内閲が中共敵視政策を改めない限り、百年でも日本との貿易をやらないと言っているようであります。そもそも、この岸内閣の敵視政策とは、具体的に何をさしたものでありましょうか。私は岸首相はもとより、岸内閣が中共に対し敵視政策などとっておると考えることはできません。現に岸内閣は、第二十八国会に、外国人登録法の一部を改正する法律案を提出して通過したのであるが、これは中共通商代表部の人々の入国に当り、指紋を取られることは困るというので強く反対した中共側の要望に沿うために、法律を改正したものであり、この一事をもってしても、岸内閣が中共との貿易促進に熱意あることをうかがうことができると思います。また、岸内閣は、昨年第二十九国会の衆議院予算委員会において委員質問に答え、いわゆる長崎国旗事件に対し、遺憾の意を表明したのであります。ああいう心なき若い工員のちょっとしたいたずらにすぎない偶発事件が、政府責任でないことは明瞭であるにかかわらず、首相が遺憾の意を表したということは、中共との友好関係を望み、貿易の促進を希望する誠意の発露であると見るべきであります。しかるにもかかわらず、中共側では、今もって岸内閣が敵視政策をとっていると非難しているようであるが、これに対する岸首相の御感想を伺いたいと思います。
  92. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は中共側から敵視政策をとっておるといって非難をされておりますが、決してさようなことを考えたこともございませんし、そういうことをとったことも全然ないのであります。むしろ、今おあげにかりました事例もそうでありますし、昨年、日中間のいわゆる第四次貿易協定におきまして、従来両国の間の主張の違う一つの点でありました通商代表部を国内に設置するという問題に関しまして、私どもは貿易を促進する意味から、貿易の仕事を取り扱うために、そういう使節団をお互いが交換するということは、貿易の促進の上からは、いろいろな政治的な問題も従来付加されておったけれども、しかし貿易を促進させるということを誠意をもって考える以上は、やはりそういう機関が必要であろうということで、この点に関しても、従来非常に議論のあったところであります。しかもこれを認めて、そうして両国の貿易を促進しようという態度をとったことから見ましても、私どもが決して敵視した政策をとっているわけでもなければ、そういうことを毛頭考えているものでもないということは、きわめて明瞭であると思います。
  93. 青木一男

    青木一男君 諸般の情報を総合いたしますと、岸内閣が今のところ、中共を承認する考えがないと言明したこと、また、台湾の中国政府と条約を結び友好関係を持続していること、また自由主義諸国との提携を外交の基調とし、米国安全保障条約を結んでいること、また、中共が日本に示唆した中立政策への転換に反対の意向を表明したという一連の政策をさして敵視政策と言っているもののごとくであります日本外交政策は、日本の独自の考えできめるべきものであって、外国の干渉を受くべきものでないことは、論を待たいのでありますが、わが国内にも中共と同じような考えのもとに、政府外交政策転換を迫っている勢力があり、今や国民はこの是非の判断に迷っているのであります。そこで、私は首相から今日とっている政府外交政策の根拠と、そうして中共側の要望に応じてその政策転換することのできかい理由を、首相から表明していただきたいと思います。まず、今のところ中共を承認することができないというのは、国連尊重というわが国外交の基本方針からくる当然の結論であると思うがどうであるか。すなわち台湾の国民政府が国連で常任理事国の地位を占めていること、中共は朝鮮事変の責任者として国連で侵略国という烙印を押されたまま、いまだ国連加入を認められていないという事実に基くものであると思うが、あるいはそれ以外の理由があるかどうか、首相の御所見を伺いたいと思います。
  94. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一国の外交政策を、その国が独立国である以上、自主的に独自にきめるということは、これは当然であることは言うを待ちません。しかし、わが国が、従来いわゆる外交の三原則としてわが内閣がとっておりますその一つである国連中心外交政策ということは、これは国連憲章の精神を尊重して世界の平和に寄与する、また、諸外国とこの場において協力して、世界の平和を作り上げるという崇高な目的に出ていることは、言うを待たないのであります。従って今おあげになりましたこの中華人民共和国の承認問題ということになりますというと、午前中にも議論をいたしましたように、いろいろな国際的な関係を調整せずして、これを直ちに行うわけにはいかない。今、青木委員の御指摘にありましたような国連の関係から申しましても、このことははっきりとわれわれは言えることでありまたそのことは、まことにやむを得ないところであって、決して敵視政策を画策していることではないと私は考えております。
  95. 青木一男

    青木一男君 また中共は、日本が台湾の中国政府と友好関係を持続しているのは、二つの中国を作る陰謀であると非難しており、わが国内にもこの中共側の意見に同調して、台湾抹殺論を国は中国政府と講和条約を結んで戦争状態を終結したものであり、また、戦時中、あれだけの損害と迷惑をかけたにもかかわらず、蒋総統は恨みに報いるに恩をもってすという政策を、文字通り実行し、わが国のあの大軍を少しの故障もなく帰還させ、また米国とともに進んで賠償の権利を放棄したのであります。米国と中国が賠償権を放棄しなかったならば、わが国の今日のような経済の復興も、国民生活の安定向上も、夢想すらすることのできなかったことを思うとき、台湾抹殺論のごときは、国際信義の上から口にすべきでないと思いますが、首相の御見解を伺います。
  96. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 過去において、日本と中国との間に、不幸にして戦争が、当時は蒋政権のもとのいわゆる国民政府との間にそういう戦争が行われ、そうして講和条約によって、今おあげになりましたような平和の事態が結ばれたのであります。これの際に、中国政府日本に示したところの行為というものは、日本国民の銘記して忘れないところである。私どもは、今日やはり中華民国との間の日華条約というものに対しては、常に誠実にこれを尊重し、この権利義務を履行するということが、国際信義上、当然の義務であると、こう考えます。
  97. 青木一男

    青木一男君 この点に関連して外務大臣にお伺いいたします。今日まで自由主義諸国にも、中共を承認せよという説は、しばしば唱えられてきたのでありますけれども侵略国という国連の決議が行われた後におきまして、現実に中共を承認した国は少数の小国があるのみであって、大国である自由主義国では、中共を承認した例が一つもないように思いますが、外務大臣お尋ねいたします。
  98. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 朝鮮事変以後、承認した国が二、三ございます。あながち小国と申すのはまたいかがかと思いますが、二、三の国があることは事実でございます。
  99. 青木一男

    青木一男君 次に、自由主義国との提携という外交方針の根拠について、岸首相にお伺いいたします。この点の首相のお考えは、人間の尊厳と自由を守り、志を同じうする自由主義諸国との提携によって、国家の安全をはかる点にあることは、今国会の施政演説によって承知したのでありますが、私はかくのごとき基本的正治理念のほかに、日本の特殊な経済事情にも大きな理由があると思うのであります。それは日本が人口に比べて資源が少いということである。食糧や原料が不足する、増加人口に対し職場と生活資料を与えるには、外国から原料を輸入してこれを製品とし、その一部を再輸出するという工業立国に待つほかはない。すなわち、外国貿易を前提にする経済拡大計画によらなければ、日本民族は生きていけない国情にある。ところが、日本の貿易の相手国は、輸出も輸入も圧倒的大部分を占めるものは、自由主義国であり、これを共産圏に求めることは不可能である。かりに一部の人々の主張するように、ソ連や中共に接近する政策をとったといたしましても、日本の欲する米、小麦、砂糖のごとき食糧品、綿花、羊毛、石油、ゴム、くず鉄のような主要な原料品を共産圏に求めることのできないことは、きわめて明白であります。この一事から見ましても、自由主義国との提携という外交方針は、日本の産業経済の存立、国民の生存保障という至上命令からもくるのであって、離脱することのできない方針であると思いますが、首相の御見解を伺いたいと思います。
  100. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自由主義国との提携ということにつきまして、特に日本の経済、また日本資源の問題や、あるいは日本の貿易に存在しなければならない問題、国民生活の基礎であるところのわれわれの経済的基盤に関して御意見がございましたが、全くその通りでありまして、私どもは、もちろん世界のあらゆる国と交易もし、経済交流もすることを念願しておりますが、日本の置かれておる現実の実勢を見まするというと、かりにこれは自由主義の立場を、かりに共産圏の方との貿易その他のことをやるからといって、自由主義国とのなにを全部捨てるということは、とうてい考えられないのでありますがしかしわれわれの経済的な関係の比重から申しまして、自由主義国に依存する度はきわめて大きいのであります。従って、その意味において、自由主義国との提携ということをより一そう緊密にすることは、日本の経済的繁栄の上から見ても必要であるということは、当然言えると思います。
  101. 青木一男

    青木一男君 次に、中共貿易の性格を将来の見通しについて、通商産業大臣にお伺いいたします。中共貿易の日本経済における重要度の認識については、国内に二つの相反した見解があります。一昨年の貿易統計に示された日本から中共への輸出六千万ドル、中共からの輸入八千万ドルという数字は、日本の貿易総額に比べて、輸出入約二%にすぎないから、重要性が少いという説もありますけれども、私は二%といえども、軽視できない数字であると思います。他方、中共、貿易の将来に多大の期待を置いて、日本の経済や景気を左右するものだという説がありますけれども、これは事実に反する誇張の表現、または期待であると思います。中共貿易の将来を論ずるには、まずその性格を明らかにすることが必要であります。共産国はどこでも国内自給自足を原則とし、外国貿易に重きを置いておりません。ソ連の貿易額が、その国内生産額に比べてきわめて少いことが、よくこれを証明しております。また、貿易をする場合にも、共産圏内の貿易に重点を置いており、中共の外国貿易の八割近くは、ソ連その他の共産圏との貿易であり、自由主義国との貿易は残りの二割程度を占めるにすぎません。中共が自由主義国と貿易をするのは、国防国家建設に必要な資材を手に入れることがおもな目的でありまして、国際間の、取引を拡大して、国民の生活を豊かにするというような考え方に基くものではありません。従って、日本がいかに中共貿易を増加しようとしても、そこに本質的の限界があるわけであります。また、中共は、近年非常な速度で工業国化しておると同時に、国民生活に高度の統制を加え、耐乏生活を強いて、おるのでありますから、雑貨その他の日用品を豊富に日本から輸入して国民に消費させるという政策をとるはずがありません。そこにも貿易発展上の大きな制約があります。さらに根本的には、中共からの輸入品には大豆を除いて大きな金額を期待し得るものがないという点でありますし過去の貿易統計の示す通り、中共は日本との貿易には常にバーター主義か、または輸出超過であることを要求しております。そこで、中共に日本品を売ろうと思えば、それ以上の中共品を買わなければならないことになります。鉄鉱石や粘結炭は日本としても最も希望する品目であるが、将来英国を凌駕する鉄鋼生産国たらんとしている中共が一番大事な製鉄原料をやすやすと日本に供給するものとは考えられません。大豆はソ連にも供給しているのであるから、日本への供給量にもおのずから限度がある日本側としましても、国際商品である大豆を品質と値段におかまいなしに中共から優先的に買うという約束をするわけにも参りません。要するに中共貿易に過大の期待をかけているのは、政治上の目的に出ているものは別として、変貌した今日の中共を知らず、戦前の対支貿易を夢想しておるものではないかと思います。これらの点を総合して、中共貿易が再開されたとして、その将来性について通商産業大臣はいかなる見通しを持っておられるかを伺いたいと思います。
  102. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 中共との貿易は、お説のごとく過去における実績は、輸出入合計いたしまして一億五千万ドル程度のものでありますが、将来、両国間の貿易が再開されたときにおいてこれはもう少しふえるということは私ども想像いたしておりますが、しかしながら、戦前のごとく、中共との間が戦前同様に日本の輸出貿易としての二〇%ないし三〇%を期待するというふうなことは断じて望むことはできないと存じております。それはお説のごとく、中共が国柄として貿易と政治とを結びつけておるという関係があり、もう一つは、自給自足の経済を立てるという方針をとっておる、こういうことから考えまして、そんなに大きな期待はできないと考えておりますが、しかしながら、両国の関係は一日も早く回復されて、そして正常になることを希望する次第であります。
  103. 青木一男

    青木一男君 以上の質疑応答を前提としてこの問題に対する政府の態度に  ついて岸首相にお尋ねいたします。  中共貿易の最大の難点は、日本政治と貿易は別だという建前で、外交の基本方針はくずさずに貿易は極力進めていきたいという考え方であるのに対し、中共はこの考え方に同調しないばかりでなく、ややもすれば、貿易を政治目的の手段に利用せんとする傾向のある点であります。中共は共産主義の拡大と国力の強化を目的、信条とする独裁政治の国でありますから、国営事業である貿易がその政治目的の手段として行われるということは、むしろ当然であるかもしれませんが、わが国としては最も警戒を要する点であると思います。中共は未承認国である他の自由主義国との貿易をするに当って、政治と貿易とを分離して実行しておるのに、日本についてだけは通商代表部や国旗条項を頑強に主張して、政治色を強く打ち出しているのであり、その真意について特に注意を払わねばなりません。近時、中共貿易問題が脚光を浴びて登場してきたのにつれ、バスに乗りおくれまいとして、その功をあせり、中共に接近しようとする風潮が流行しようとしております。中共は総評の岩井事務局長一行を優待しておみやげまで持ち帰らせたようであります。総評の窓口を通してウルシや甘栗の輸出を許すということの中共の真意は、ほんとうに日本のウルシ業者などの立場に同情したものか、それとも総評の窓口という形式に重点を置いた政治的ゼスチュアであるか十分研究してみる必要があります。某大新聞は「総評という幕府の御朱印船で貿易をすることになった。歴史が四百年も昔に戻った観がある」と書いておりますが、貿易のゆえに国の行政権の所在が、不明になるようなことがあってはならないことは当然であります。  総評幹部の中共訪問に次いで社会党首脳部は大挙して出発されるようであります。その顔ぶれから見ても、重大な使命を持つものと思われますが、それについて首相は何らかの相談または連絡を受けられたのであるかどうかを伺いたいと思います。今日、世界は二つの陣営に分れているけれども、それぞれの国内では国論が統一しているのが大勢であります。共産国は一党独裁であり、言論の自由もないから、国論の分裂ということの起るはずがありません。自由主義国においても内政は別として、国防及び外交という国家存立の基本については、与党と野党の間に大きな食い違いがなく、政変があっても国防や外交の基本政策には変更がないというのがその国の政治を安定し、対外信用をつないでいるゆえんであると思います。しかるに、わが国では、わが党は自由主義諸国との提携によって、国家の安全と民主主義の擁護と国民生活の保障をはかっているのに対し、反対党は中立主義の名のもとに、安全保障条約を破棄して日本を無防備の国とし、自由主義諸国と離れてソ連や中共に接近しようとしているのであります。反対党が国内で与党と異なった政策を主張し、国民に呼びかけるのは自由であります。ただ、日本立場を異にする外国の勢力と結び、その力を借り、またはそれに利用されて、日本の国策転換を企図するようなことがあるならば、思わざるのはなはだしきものと評せざるを得ません。しかし、事実としては、今後内外呼応しての外交攻勢の展開されることを予期しなければならないのであって、時局はまことに重大であると思います。この際、われわれの強く要望するのは、政府のきぜんたる態度であります。閣内の統一並びに与党との一致結束であります。もしそれ、貿易のゆえに外交の基本が動揺するようなことがあるならば、内、国論の分裂の勢いを助長し、外、国際間の信用を失墜し、貿易上においても中共貿易の何倍、何十倍という損失を招くおそれなしとしない。要するに政府は中共側の態度の明瞭となる前に軽々に動くことなく、閣内一致して既定の外交方針の基本を守りつつ、時期の至るを待って中共貿易の増進に当られんことを望みます。首相の御所見を伺いたいと思います。
  104. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 外交の根本方針について、与党と野党との考えが非常にかけ隔たっているという日本現状につきましては、私も同様に憂いを同じくするものでありますが、これはしかしながら、両党の現状から申しまして、今、直ちにこれを一致せしめることは、私は実際上できないと思います。しかし、できるだけあらゆる機会において両党が話し合っていき、また、この国際間の現実と日本の向うべき根本の道としての責任ある考え方というものにつきまして、両党の考えができるだけ現在のような開きを持たない状態が望ましいと常々考えております。  私は、今回社会党のいわゆる中国を訪問する使節団が本日出発されるということ、これにつきましては、先ほど羽生委員に対して私は申し上げたのでありますが、日本国民の多数の意見、国民考え方というものが正当に伝えられるようにしてもらいたいということを申したのであります。私は決して、国民がどう考えておるかということは、なかなかこれまた主観的にいろいろの判断があると思いますが、しかし、われわれがちょうど昨年のこの衆議院議員の総選挙のさなかにあって、あの日中関係が中国側の声明によって断絶した、そうしてこれに対して国論としても相当の批判があり、相当の議論があり、われわれもまた野党たる社会党も、その問題に対して国民に十分徹底するように、どちらの考え方を支持するかというようなことを求めた結果は、あの選挙に現われた結果であると思うのであります。私はその後における地方選挙を見ましても、やはりいろいろな議論はありますけれども、わが党に対する根本的な考え方に対しては、国民の大多数がやはり支持しておるということは、常識的に考えるべき私は問題である、こういう意味において、もちろん、社会党が、社会党のお考えというものを社会党考えとして伝えられることはもちろんでありましょうが、しかし、やはり国民の総意のあるところ、大多数の考えておるところの考え方というものは正当に伝えられ、これが両国の行き詰まっておるところを打開する上にやはり利益があると思うのであります。こういう意味において私どもは、従来ともわれわれが敵視政策をとっていないにかかわらず、敵視しているとか、あるいは二つの中国の陰謀に加担しておるとかいうふうな、これは全然事実に反しているのでありますから、誤解か、あるいは故意に何らかの意図のもとにそういうふうな宣伝がなされておるかもしれませんが、私は冷静に両国民考え、ことに中国側におきましても、われわれの態度や真意を善意をもって理解するならば、そういうものでないということが解けてくるであろうし、また、そういうふうに努めなければならぬということで静観ということを申しております。しかし、すでに一年もたって、最近におきましてはいろいろな情報もありますから、正確なことはあるいはなおつかめないところもありましょうが、中国側におきましても従来の、昨年五月前後の考え方とはやや幅を持った考え方が出てきているというふうにも見られますから、われわれはできるだけ適当な機会を見つけて、そうしてこの貿易再開に向って日中関係を打開するように努力をしていきたい。決して、このために、政府としての責任ある立場でありますから、全然見込みのないことにあわてていろいろなことをするということも適当じゃありません。しかし、先ほど青木委員お話しになっておるように、数量は少くても日本の貿易の上から見るというと無視できない日中貿易であり、またそれが両国の友好関係を増す上において、理解と友好を増す上において役立つというならば、われわれはできるだけ早くその機会を見出して、そうして貿易の再開に向って日中関係を打開するように今後とも努力していくべきものだと思います。しかし、根本において、今お話がありましたように、いわゆる政治と経済の不可分という議論がありますが、これはいろいろ中国が他の自由主義国との貿易の状況を見ましても、せんだってニュージーランドの首相が来てのお話を聞きましても、私はこれが今、日本に言われておるような、きつい意味において政治と経済の不可分論というものが、決して中共としては動かすべからさる、また、どの国に対しても一貫している原則とも考えられませんので、その辺のこともよくお互いお互い立場を理解しながら打開していくように今後とも努めていきたいと、こう思っております。
  105. 青木一男

    青木一男君 次に、対米貿易の問題について通商産業大臣お尋ねいたします。  わが国の産業経済と国民の生活自体が外国貿易に依存する程度の高いことは、今さら申し上げるまでもありません。その中で対米貿易は昨年の統計によれば、輸出の二四%、輸入の三五%を占め、それが比重は圧倒的に大であります。最近、中共当局は日本との貿易が一年途絶しても中共の建設には何ら支障がなかった、これに反して日本の中小企業者は非常な窮境に陥っているという趣旨のことを発表し、ウルシの輸入という話もその点に関連して出てきたもののようであります。私も関係業者の貿易途絶による打撃については深い同情を寄せるものであり、政府に対し外交の基本線を犠牲とせずして打開の道を講ぜられんことを強く要望するものであります。ただ、大局的に観察すると、中共からの輸入品、中共への輸出品は、むしろ大企業で使用する原料、大企業で生産するものが主要部分を占めておる。これに反して、アメリカに対する輸出は、何百という中小企業の製品がその主要部分を占めておるのであり、日本の中小企業保護育成の見地から見ても、対米貿易は中共貿易の何十倍という重要性を持つものと考えておりますが、通商産業大臣の御所見を伺いたいと思います。
  106. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 対米貿易の内容につきましては、仰せのごとく大多数が中小工業の製品でありまして、これの振興ということは、直接中小企業の振興に関係すること甚大なるものと存じます。
  107. 青木一男

    青木一男君 次に、アメリカに対する日本の輸出品の抑制問題について、外務大臣にお伺いいたします。  今、米国では日本品の輸入制限、関税引き上げなどの動きが非常に活発化してきております。これは米国内の業者が、安い日本品の圧迫に耐えかねて、議会に対し日本品防遏の立法措置に出るよう運動していることに原因しているのであって、現に問題となっている輸出品の品目も相当多いのであるが、この情勢を放任しておくと、日本の輸出品の三割から四割程度のものが同じような運命に陥るおそれがあるということであります。これはわが国の輸出の将来並びに多数の中小企業の盛衰に影響する重大問題でありますが、この問題の現状と見通しについて、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  108. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 対米貿易の問題につきましては、常時十分注意して参らなければならぬと思うのであります。ワシントン政府に対しましては、われわれも日本の中小企業の立場を十分説明いたしまして、そうしてドラスティックな方法をとらないように絶えず交渉し、注意を喚起しておるような次第であります。御承知のように、アメリカにおきましても、やはり日本とは若干比較は違うかもしれませんが、中小規模の工業家もあるわけであります。また、そうした製品と競合をするというような立場にもありますので、それらの業者から議会等に提案され、陳情され、運動によりまして、いろいろの問題がアメリカ議会開会中には取り上げられてくるわけでございます。そうした問題につきましては、やはり業者同士の理解を深めて参りますことも必要であり、また十分業者間に規制をしてもらって、そうして急速にアメリカの業者をそこなわないような規制的な輸出をやっていくことも、一つの方法だと思います。また同時に、アメリカの国会等にそうした問題が出ましたときに、十分日本品のそれらのものに対する影響、立法措置その他によって行われることによる日本の業者の影響等をも説明する必要があろうと思うのであります。そうした輸出の関係において、外務省といたしましても、通産省並びに民間の人と一緒になりまして、できるだけ努力を払っておるような現状なんでありまして、今後もこうした問題は時々起って参り、またアメリカ議会開会中には相当出てくる場合があり得ると思う。それらの問題に対して全般的に対処して参らなければならぬと、こう思っております。
  109. 青木一男

    青木一男君 この問題の対策について通商産業大臣にお伺いいたします。  日本品の輸入制限問題は、要するに日本品が安過ぎて、米国の業者が商売がやっていけなくなるという点にあるようであります。輸出価格の統制ができないために、破格の、安売りをしたり、バイヤーにうんともうけられたりして、結局排撃されるということはまことにばかげたことであります。今、業者間には輸出数量の制限を基礎として話し合いが進められているものが多いようでありますが、機械的に数量の制限及び割当ということでやっていきますというと、既得権益思想が強くなり、よい品物を作るという努力が鈍り、日本の輸出振興を阻害する原因となるおそれがあります。日本側としては何とかして輸出価格の合理化と統制をはかり、輸出の数量制限を受けないようにすることができないものでございましょうか。この問題の具体的対策について通商産業大臣の御見解を伺いたいと思います。
  110. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 日本から輸出いたします輸出商品は、前刻申し上げました通りに、主として中小産業の製品が多いのであります。同時に、アメリカにおきましても大体そういうふうな製品は中小産業の製品が多いのでありまして、その結果、日本商品が、生産業者が非常に多いために、先方に参りまして、不当の競争をするという、価格の競争をするという結果、先方の同業者に打撃を与える点が多い、こういうふうな点を考えまして、まず価格の点につきましては、先般御制定願いました中小産業団体法の発動によりまして、できるだけこれを統一していく、同時にまた、輸出措置法筆によりまして、数量なり価格については、ある程度の制限をし得るということにして、先方の中小工業者になるべく打撃を来たさないように価格等も持続していきたいと存じておりますが、大体数量は一ぺんに非常にたくさんにふえると、たとえば一年間に倍になるとか、三倍になるとかというふうなことになりましても、先方の業者に与える打撃が多いわけでありますから、これはできるだけ漸次ふやしていくという方針をとっていきたい、そういうふうなことにつきまして、先方ともよく話し合って――先方と申しますのはアメリカの同業者、これとよく話し合いをつけて、アメリカの同業者に打撃を加えないようにして、逐次日本の製品の輸出を増加していきたい、こういう方針をもって進みたいと存じております。
  111. 青木一男

    青木一男君 この問題の対策の外交方面のことは、先ほど外務大臣から一応の御見解を伺ったのでございますが、今までも米国政府日本立場を理解して、関税引き上げや、輸入制限の立法化を防止することに尽力してくれたのであります。私は米国政府、いや議会、業界、一般大衆が日本立場に一段と理解を深めるように、外務当局のこの上の働きかけを切望するものであります。米国は国際共産主義の世界支配から自由世界を擁護するために共同防衛態勢をしいて自由主義諸国に対し軍事援助や経済援助を与えるために莫大なる予算を計上しております。わが国は今日米国の軍事援助を受けていますけれども、経済援助は受けていません。しかし、わが国の自力による経済拡大計画は、外国貿易の発展を前提とするものであり、なかんずく対米輸出の増大ということは、その中核をなすものであります。もし米国内に日本品輸入抑制の空気がさらに強くなるようなことがあると、日本の経済発展計画の実現に大きな支障となることは必然であります。わが方は、通商大臣のただいま述べられたように、鋭意輸出の自主的統制を促進するのであるから、米国も大局的に日本立場を理解し、他の自由主義国に対する経済援助にかわるものと見てわが国の貿易の伸張に協力されるよう強く要望するものであります。ただし、この運動を有効ならしめるには、日本外交方針がよろめくようなことがなく、日本は信頼できる国であるという信任を米国内に確立することがすべての前提であることは言うまでもありません。これらの点について外務大臣の御所見をもう一度伺いたいと思います。
  112. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカ政府は、日本の中小企業の立場あるいは貿易に依存している立場を十分理解してくれておりまして、今日まででも、議会等で通りましたいろいろな法律案に対して、ビトを大統領が使っておられるのです。私の今の記憶では、ゴム底たびでありますか、くつですか、そうしたもの以外は拒否権をふるっておられるようであります。従って、そういう十分な理解を得るように今後とも努めて参りたいと思います。むろんアメリカ日本を信頼して参るということ、また日本アメリカを信頼していくという友好な関係を打ち立てて参ることは当然なことだと思うのでありまして、そういう意味においてわれわれとしても信義を守った外交方針を展開していくのは当然なことだと思っております。
  113. 青木一男

    青木一男君 次に、道路政策について岸首相にお尋ねいたします。  道路整備五ヵ年計画は、岸首相の南方視察以来、急激に具体化してきたものであり、今や、わが党の天下に誇る一大政策となっているのであります。ところが、この一般道路計画が具体化される前に、国土開発縦貫自動車道建設法が衆参両院のほとんど全員の賛成によって成立しているのであります。この法律は全国にわたる国土の開発をはかるとともに、わが国の将来の自動車交通網の根幹をなすものとして立案され、新しい国作りの法律であるとして、当時全国民の賞賛と期待を浴びた法律であります。岸内閣のもとに道路政策が五ヵ年計画として大きく取り上げられることになった以上、国土開発縦貫自動車道の建設も一段と熱意をもって取り上げられるのが当然の成り行きでなくてはなりません。けだし、既存の国道や地方道の改良、舗装をやっただけで激増する自動車交通の要求に応じ得るものではなく、既存道路の改良と並行して、国土開発縦貫自動車道の建設を急がないと、新時代に適応するわが国の自動車交通網はでき上らないからであります。しかるに、今回の道路計画の予算の配分などを見ると、どうも国土開発縦貫自動車道の計画は、一般道路整備計画の影に隠れてしまったような感じもいたしますが、首相は道路整備計画における国土開発縦貫自動車道の使命と価値をどのように見ておられるかをお伺いしたいと思います。
  114. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の道路が非常に劣悪である、これが日本の産業経済の発展の上からも、あるいは国民生活の向上の上からも、こういう状態ではいかぬということは、これは久しくいわれていることでありますが、何分にも、すべての道路がほとんど全部いかぬという、一口にいえば状況が今日の日本の道路の状況だと思います。従って、これが整備につきまして、特に道路整備五ヵ年計画というものを立てて、総額において一兆円の計画のもとに本年度から五ヵ年でこれを整備することを考えております。しかし同時に、この中には既存の道路や、あるいはこのために、必要な所に有料道路を作ることもございますが、今おあげになりました国土開発縦貫自動車道路の問題は、すでに国会におきましてその基本法が成立をいたしておりまして、これが具体化につきましては、政府として関係省におきまして鋭意検討をいたしております。言うまでもなく、この縦貫道路は日本の経済の発展の上、また交通量の非常に増加している現状からいい、また未開発の地域における開発の意味からいい、あらゆる面から非常に重要な意義を持つものでございますが、同時に、非常に多額の資金も必要とするものでありますから、その具体的計画につきましては、権威者におきまして十分に一つ検討をして、できるだけ早く成案を得て国会に提案するようにいたしたいとせっかく検討中でございます。
  115. 青木一男

    青木一男君 次に、中央道の問題について建設大臣にお伺いいたします。  中央道のうち小牧―吹田間はすでに工事に着手しており、昭和三十六年度完成の予定であります。この中央道は東京まで貫通するのでなければ所期の効果をおさめることのできないことは明白であります。ところが、小牧以東につき今日まで計画がさっぱり具体化していないのは何ゆえであるかといえば、建設省事務当局が東海道案の執着から脱却し切れない点にあることは、今や世間公知の事実であります。国土開発縦貫自動車道は、法律第一条に示した目的からいって、未開発地帯の多い中央山岳地帯を通過するのは当然であり、東海道を通過することはすでに開発された農地や、工場地帯をつぶす結果になるのであります。また昨年の国会で根本建設大臣が私に答えている通り、国土開発縦貫自動車道は人体の背骨に比すべき幹線であるから国土の中央を通過すべきことは当然であります。また中央道は六大都市を結ぶ点においては山岳地帯を通るも、東海道を通るも同一でありますが、距離が五十キロも短縮される点において前者がまさっているわけであります。また東海道の短距離自動車輸送の輻湊は、現在の国道一号線の改良または第二の国道建設で対処すべきであり、そのために高速自動車道を東海道に回せという理屈にはならないわけであります。要するに東海道案に賛成するものは、道路の既定観念にとらわれ、国土開発縦貫自動車道建設法第一条の立法目的に故意に目をおおわんとするものであります。それよりも与党、野党の区別なく、衆参両院のほとんど全員の意思によって制定された国策道路の計画が事務官僚の反対で頓挫したり、あるいは実施を延ばされたりするようなことがあるならば、これは国会の権威のために許すことのできないことであります。去る二月十六日の国土開発縦貫自動車道建設審議会において、私が小牧―東京間の路線決定の法律案をいつ国会に提出するかと質問したのに対して、建設省当局は、調査完了次第という答弁を繰り返し、極力明言を避けたのであります。しかしながら、法律第十条には、路線決定の法律施行後すみやかに建設線の基本計画立案のため必要な基礎調査を行うべきことを命じており、該法律施行前に今行なっているような調査をすることは法律が命じておらないのであります。ことに昨年三月の予算委員会において、私の質問に対し、根本建設大臣は、小牧以東の調査は大体昭和三十三年度中に終了するから、昭和三十四年には路線決定の法案を提出することができると答弁したにもかかわらず、一年を経過した今日、かえって法案提出の時期をあいまいにするのは不誠意きわまる態度でありますので、私は同僚委員とともに三時間にわたって追及した結果、ようやく建設大臣から、本年十二月召集される通常国会に路線決定の法律案を提出するという言明を得たのであります。私はこの重大なる方針決定を公表して問題紛糾の禍根を一掃するため、この席上建設大臣からあらためて小牧以東の路線決定の法案提出の時期の言明を得たいと思うものであります。
  116. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) いわゆる中央道の問題につきましていろいろ御意見がありましたが、建設省としましては、これは決して軽視しておるわけではございません。昭和三十二年に法案が通りましたので、三十二年以来調査を進めております。三十二年に大体四千三百万円ばかりの予算を計上し、三十三年に約五千万円の予算を計上いたしておるのであります。しかし、何といたしましても、赤石山脈を通っての全然新しい路線でありますから、周到なる調査が必要でございます。少し横道にそれるかもしれませんが、日本の従来の建設事業が目の子勘定でやって、精細な調査に欠けておるという点が一番強く指摘されておったのでありまして、十分な調査をして、その調査の結果に基いて一挙に事業は早期に完成してしまう、こういう態度をとることが非常に大事だということを考えておるわけであります。従って、三十三年の調査で今やっておりますけれども、なお、これは十分とは思いません。そこで、昭和三十四年度におきましてもなお調査をいたしまして、そして工事費の積算等詳しいものを出しまして、そしてその調査の結果に基いて一挙に中央道の建設を進めて参りたい、こういう考えでおりますから、決して故意にこれをおくらしておるとか、あるいは建設省の事務官僚が政治を支配しておるとかいうようなことは全然ございませんから、一つその点は御了承いただきたいと思います。なお、路線決定の法律につきましては、だんだん調査の結果を見まして、そしてできる、だけ早くやり、来たるべき通常国会に間に合わせるようにやる考えであることをはっきりここで申し上げておきます。
  117. 青木一男

    青木一男君 結論である法案提出の時期を明言されたから、その前のことは追及いたしません。今、建設大臣の言われた調査ということは、法律の建前からいえば、この路線決定の法律ができてからやればいい調査でございます。その証拠には、小牧―吹田間につきましては、一つ調査もせずにあの通り着手したではございませんか。法律の建前はそうなっておるいうとことをあらためて申し上げておきます。  次に、この問題について首相にお尋ねをいたします。  首相は国土開発縦貫自動車道建設審議会の会長であられますが、去る十六日の審議会には欠席されました。そこで、内閣の首班であり、同時に、審議会の会長である岸首相から、国論の紛糾を一掃し、国会の権威を確立するために、ただいまの建設大臣の言明を裏書きし、内閣責任において該法案を来たるべき通常国会に提出するという言明を得たいと思うものであります。
  118. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいま建設大臣から申し上げましたように、政府としては、来たるべき通常国会に間に合うように諸般の準備を進めて法案の実現をするように極力努力をいたします。
  119. 青木一男

    青木一男君 私は今の総理のお答えの極力努力するということでは不満足であります。今も建設大臣に申し上げた通りに、その調査ということは、法律上の根拠に基かない勝手な調査です。あの法律の建前からいえば、その路線決定の法律ができて、基本調査をすることになっておるのです。それでありますから、もう三十三年度の調査すらも私は必要じゃないと思うぐらいです。しかし、根本建設大臣は、昨年三十三年度中に調査が終了するから三十四年には法案を出すと言われたのでございます。それでございますから、私は、そういう法律の根拠に基かない調査に籍口して延ばすことは容認することはできません。調査をそれまでに片づけて、そして来たるべき通常国会に提出するということをあらためて言明を得たいと思います。
  120. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私自身実はまだその具体的の調査並びに立案の程度につきまして、建設大臣から具体的の報告を得ておりませんから、先ほど申し上げましたように、極力努力するということを申し上げたのでございますが、それは決していいかげんな意味で申し上げておるわけではございません。政府としては……(「誠意をもって」と呼ぶ者あり)誠意をもって(笑声)実現するように今のところでは努力すると申し上げる以外にないと思います。が、必ず御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  121. 青木一男

    青木一男君 今の総理大臣の御言明によって意味はわかりました。事情を詳しくまだ聞いておらないので今のような答弁をしたのであるが、誠意をもってその実現をはかるというお言世がありましたから、私はそれで満足いたします。  次に、昭和三十四年度予算に計上している東海道路線調査費について建設大臣にお尋ねをいたします。衆議院の予算委員会の速記録によると、この予算は、高速自動車道の調査費ではかいと解してよろしいかという委員質問に対し、建設大臣は、それは一つの目的に限定しないで東海道の輻湊を緩和するための方策について調査するのである、と答え、高速自動車道調査を含むかもしれないという意味の答弁をされたのであります。しかしながら、中央道は法律によって山岳地帯を通ることに決定しており、さらに来たるべき国会に路線決定の法律案を提出することは、ただいま言明された通りであります。建設大臣は、規格のきわめて高く莫大な経費を要する高速自動車道を小牧―東京間に二本も作るということがあり得ると考えているのでありますかどうか。一地区にそんな二重投資をするくらいの余裕があるならば、東北道、中国道、九州道その他の高速自動車道を作れという声がわき起ることは当然であります。本年度の東海道調査費の中に高速自動車道の調査を含むかどうかについて、あらためて明言を得たいと思います。
  122. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) お示しのように、昭和三十四年度の予算に千八百万円の東海道関係調査費を計上してございます。これは、御承知のように、東海道の交通量が非常にひんぱんになって参りまして、私ども調査によりますと、昭和四十年にはほとんど自動車交通が麻痺状態になる、こういう結果が予想されております。従いまして、中央道につきましては、これはすでに法律できまっておりますから、これはやらなければなりません。また、やる考えで進めておりますが、日時に、東海道の輻湊を緩和する。四十年に行き詰まつちまうことをそのまま放置しておくわけには参りません。従って、東海道の自動車交通の輻湊を緩和する方策いかんということで、あいるは一本別に作るという案もあり、しょうし、あいるは一号国道を拡張し、あいるはさらに整備をしていくという案もありましょうし、その他いろいろの点を考えて、いかに昭和四十年の交通の危機に備えていくか、こういうことを幅広く調査をしようということが千八百万円の調査費の趣意でございます。
  123. 青木一男

    青木一男君 東海道の自動車交通の輻湊すること、四十年にどういうことになるかということは、私も承知しております。そこで、その対策として、今の国道一号線を改修するか、あいるはあらためてもう一本同じような道路をつけるか、そういうようなことは、十分研究され、着手されてけっこうだと思います。しかしながら、東海道のあの短距離輸送が込むからといってこの規格の高い高速自動車道をつけろというようなことは、東海道のあの短距離の区間が込むから特急を皆つけろというようなことと同じことになるのです。そういうことは予想することはできません。それになぜ衆議院がこの質問をあなたに特にし、私がいたすかというと、先ほどあなたは中央道の法案を出すと言っても、やはりあなたの部下の諸君は東海道へ高速自動車道をつけたいということを、やはり今でもつけたいという念願を捨てておらないことをこれは意味するのではないかと心配して質問しておるのであります。先ほど申した通り、こんな規格の高いそうしてうんと金のかかる高速自動車道をあの名古屋―東京間だけに二本をつけるなんということは予想することはできません、日本の国力としては。そんな金があるなら、東北道あるいは中国道、九州道をつけろということになるにきまっております。その点において衆議院の諸君も私も、あなた方の言っていることに非常な疑惑を持っておるのです。もう一度その調査というのは高速自動車道を含むのか含まないかということを明言を得たい。
  124. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) いろいろ御心配のようでありますけれども、決して変な考えを持っておるわけではございません。そこはすんなり、中央道についてはもう法律できまっておりますし、これはやらなきゃならぬことは、もう政府としては当然のことであります。ただ、東海道の輻湊をどうして緩和するかというこれはもう政府として一つ責任の問題でありますから、その対策についての調査をするにすぎないのでありますから、御了承いただきたいと思います。(「だいじょうぶか」「ごまかすなよ」と呼ぶ者あり)
  125. 青木一男

    青木一男君 私は、建設大臣の答弁は不誠意であると思うのです。衆議院の社会党委員質問も、私が申し上げたような疑惑があるからこのように念を押して聞いているのです。東海道に作るということになれば、二本作ることになるのです。そんなことはあり得ないのに、東海道へ高速自動車道路を作ろうというのは、結局、中央道、山岳道に何かやはり問題を残すことを前提として考えておるのではないかということを疑うから質問しておるのです。私は、中央道にあの高速自動車道をつけろときまった以上は、東海道のほかの道は幾らでもつけなさい。しかし、高速自動車道をあわせて作るというようなことは考える余地がないと私は思うから、あらためて聞くのです。(「はっきり言ったらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  126. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 特に東海道の方へ高速自動車道路を作るんだというふうには全然考えておりません。その点はあくまで中央道を作るという考えで進めておりますから、御了承いただきたいと思います。
  127. 青木一男

    青木一男君 ただいま建設大臣は、東海道には高速自動車道路を作る考えはないと明言されましたから、私はそれで満足いたします。(「来年は大将やめておらぬ」と呼ぶ者あり、笑声)  次に、道路公団の運営について建設大臣及び首相にお尋ねをいたします。  衆議院において、岸道路公団総裁が新聞紙上に中央道の小牧以東については、いわゆる中央道案と東海道案と松永案との三案があるが、三十五年くらいには一番経済的な路線はどれであるかを決定し工事にかかると発表したことが問題となり、政府機関の職員がかような法律を無視した越権の発言をしたことは不都合であるとして非難されたのであります。私は、昨年三月の当予算委員会において、政府に対し、公務員や国家機関の職員は法律を忠実に施行するのがその任務であるから、法律できまったことを無視したり、国策としてきまったことに反対すべきではないと警告を発しておいたのでありますのに、かようなことが今再び国会で論議されることは、まことに遺憾であります。官紀粛正の見地から、建設大臣並びに首相の御所見を伺いたいと思います。
  128. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) ただいまの新聞の記事について、私も見たのであります。しかし、その当時は、まだ五ヵ年計画も正式に政府として決定しておりませんし、いろいろの議論があったのでありますが、今日すでに五ヵ年計画も閣議で決定されまして、そうして政府方針ははっきり確定したのでございます。今後はそういう議論は私はないと思います。そういう意味で御了承いただきたいと思います。
  129. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御意見のように、公務員は、もちろん政府関係機関等におきましても、法律やあるいは国会の意思、それに反するような言動のあるべきことは許せないことは言うを待たないのであります。十分に方針がきまり、法律がきまりました以上は、一致してこれを支持するように務めることは当然であると思います。
  130. 青木一男

    青木一男君 両大臣の御言明によって了解いたしました。どうかそういうような間違いを再び起さないような部下に十分の御訓戒をいただきたいと思います。続いて建設大臣にお伺いいたします。岸道路公団総裁は、同じ新聞紙上で、さらに、中央道の三つの路線にはそれぞれ利害得失がある、国でやるときには幾ら金がかかってもいいんだが、私の方の有料道路でやる場合は償却ということを考えなければならないと述べています。この考え方は、中央道の建設は当然道路公団が担当するということを前提とするものであり、従って、不経済線は選ぶわけにはいかないということを言ったものであります。道路公団は有料道路の新設、維持を任務とする機関であるから、道路の採算ということを考えることは当然か幸しれません。しかし、国土開発縦貫自動車道の建設を道路公団にやらせるがために、国土開発縦貫自動車道が経済線を選ばなければならないということになりますれば、それこそ本末転倒もはなはだしきものとなるのであります。中央道は、どの路線を選ぶにしても経済線たることには間違いありませんけれども、東北道、中国道その他につきましては、同様には考えられません。しかし、これらの自動車道は、当初から経済線ということを前提として法律を制定したものではなく、国策として建設することをきめておるものにほかなりません。この見地よりすれば、道路公団をもって国土開発縦貫自動車道の建設担当者とすることは本来不適当ではないかと思いますが、建設大臣の御所見を伺いたいと思います。
  131. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 縦貫道路の建設につきましては、非常に膨大な費用がかかるのであります。そこで、一般会計からこれを捻出しますことはなかなか困難でありまして、計画はいたしましても、実際は実行が非常におくれていく結果になると思うのであります。一応、私どもは有料道路にいたしまして、そうして道路公団にこれを担当させる、こういう考え方をもちまして、すでに名古屋―神戸間の建設をやっておるのでありますが、これも道路公団が担当しておるのでございます。ただ道路公団が道路の建設をやります場合に、目の先の採算のみにとらわれていく必要はもちろんないんで、名古屋―神戸間の道路につきましても、これは十年間くらいは赤字が出ていくと思います。しかし、国策の意味を持った重要な根幹になる路線でありますから、これは道路公団としてやるべきである、こういう考えで道路公団にやらしておるのでありまして、そういう考えで中央道についてもやらせるという考えを持っております。
  132. 青木一男

    青木一男君 今の建設大臣の御答弁は、私まだ十分満足いたしませんが、時間の関係上、この問題はこの程度にいたします。  さらに建設大臣にお尋ねします。今回の政府の決定した道路五ヵ年計画によりますと、小牧―東京間の高速自動車道の新設にはわずかに百二億円を計上しておるのに対して、その他の有料道路に三百七十九億円を計上しておるのは、その配分において再検討を要するものと思われます。その他の有料道路というのは、温泉地その他の遊覧地を中心とする何十本という道路であって、多くはきわめて短距離のものであり、その価値の疑われるものが少くありません。建設省当局は私の審議会における質問に対し、外客誘致の手段であると説明しておるのでありますけれども外国人は日本人ほど温泉を好むものではないから、これらの自動車道はおそらく日本人のための観光路線になるものが多いかと思います。真の外客誘致の路線としては、かような断片的な短距離の道路よりも、東京から富士五湖を経て身延から赤石山系をたどり、天竜峽、木曽川流域を走る中央道、すなわち、日本のスイスともいうべき雄大なる高原地帯を走る中央道の完成を急いだ方が、外客誘致の目的から見てもはるかに有意義であることは論を待ちません。来たるべき通常国会に小牧―東京間の路線決定の法律案が提出されるときまった以上、その実現を促進するため有料道路の建設資金の配分について再検討すべきは当然であります。これは去る二月十六日の審議会において、一応建設大臣の言明を得ておるのでありますが、この席上あらためて建設大臣から御所見を承わりたいと思います。
  133. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 五ヵ年計画におきまして、いわゆる中央道の小牧―東京間の費用を大体百億円ばかり見積ってございまして、一兆億円の中で非常に少いではないかというお尋ねでございますが、三十四年度まで調査がかかって参ります。こまかな構造の調査、それから費用の積算等やって参りますと、どうしても三十四年までかかります。五ヵ年計画は三十五、三十六、三十七年になるのでありまして、実際問題といたしましては、用地の買収その他この百億でもなかなか消化し切れないのではないかというふうに考えておるくらいであります。決してこの百億が少いと私は思っておりません。従って、この五ヵ年計画を今改定することの必要もない。これをやっていって十分。その次の段階にこの中央道の建設は急速に進めるべきものである、こういうふうに思っております。
  134. 青木一男

    青木一男君 今、道路公団の計画しておる何十というある短距離の観光路線と、この中央道、山岳地帯を通る中央道の外客誘致の観光路線としての価値の点についてどう考えますか。
  135. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 中央道の観光路線としての価値は御説の通り非常に高いものと思われます。しかし、ただいま道路公団が計画しております各地方の有料道路もそれぞれ外客なり、国内の内地人のお客なりが非常にたくさん利用しておるのでありまして、大体今まで作ってきました道路は経済的に採算がとれて参っております。特に私は、中央道についても同じでありますが、一般の有料道路について申し上げたいのでありますけれども、もう少し外貨収入というものを獲得することを日本は力を入れたらどうか。世界的な観光地を持っておるのでありますから、道路がよくなりさえすれば外貨収入は非常に大きな期待ができると思う。そういう意味で道路公団がやっております小さな道路も非常に意義の深いものである、そういうふうに考えておるわけであります。
  136. 青木一男

    青木一男君 私はこの点の建設大臣の答弁には満足いたしません。審議会においては、資金の配分については研究すると答えられておるのに、今その必要がないと言われたのは、私はどういう理由でその言明を変えられたかわからないのでありますが、しかし、私は質問の時間に限りがあるから、またあらためて別の機会に御意見を伺うことにいたします。  次に、外債の問題について大蔵大臣にお尋ねをいたします。  先般、政府は米貨三千ドルの外債を発行されたのでありますが、その外債発行の目的について御説明を願いたいと思います。
  137. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 三千万ドルの外債は、御承知のように、御母衣ダムの建設の所要資金四千万ドルのうち、三千万ドルを外債、一千万ドルは世銀から融資を受けるということでございます。
  138. 青木一男

    青木一男君 特定のダムの建設資金として募集をされたということでありますか。私はそのダムの建設資金で間に合うものではないかと思うのでありますが、それを外債によられた理由をお伺いしたい。
  139. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 円資金で間に合うか、まあ外債でまかなうか、外資でまかなうか、いろいろ議論のあるところだと思います。電源開発の他の場所等につきまして、世銀から融資を受けておる前例もございますし、また電源開発のこの資金四千万ドルはすでに外資によるということで一応計画を立てたのでございます。その意味では円資金ではちょっとまかないかねるという立場にあったのでございます。
  140. 青木一男

    青木一男君 円資金で間に合わないという根拠はどういうことでしょうか。私はいわゆる財政資金のワク等を、ある限局された意味で自分でワクをはめておるから、あるいはそういう御結論になるのではないかと思いますが、本質的に円資金では調達できないという意味がわらないから、私は御説明を願いたい。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、わが国の資金は国内資金あるいは外国資金両方で日本経済を立てていくという考え方をいたしております。もともと円資金でまかなえないと申すわけではございません。資金量をふやすという観点に立ちまして、円資金だけに依存することが他の面を圧迫することもございますので、総体の資金量から見まして、私どもは適当な方法かと、かように考えて分配をいたしておるのでございます。
  142. 青木一男

    青木一男君 国内資金でまかない切れないというのは、おそらく蓄積資金の限度があるからという意味でございましょう。  それでは端的に御質問いたしますが、日本銀行からの借入金でそれをまかなった場合と、この外債発行によってまかなった場合と、どういうふうに違うのであるか。私は、国内金融あるいは通貨政策の見地からいえば、両者区別がないと思うのであります。そして外債を発行する場合は、外貨の必要であるということを前提として、初めて外債発行の意義があるのであり、国内金融問題とするならば、私は直接日本銀行から借入金をしたり、あるいは日本銀行引き受けで公債を発行した場合と区別がないと思うのでございますが、その点の御見解を伺いたい。
  143. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま御指摘になりますように、基本的な考え方ではいろいろの議論が立つと思いますし、ただいま御指摘になりましたように、国内円、国内資金調達という意味で公債発行論にまでそれが発展するものと思います。私がこの際に特に指摘いたしたいことは、一面日本自身が外資を必要としており、これはもうわかりがいくだろうと思います。で、それが世銀その他の融資というような方法や、外債という方法もあります。あるいは輸出を振興することによって外貨獲得という場合もあるわけでございます。そういう場合に、たとえば日銀から借り入れをする、あるいは公債を発行した場合と、通貨の面においては同じ結果じゃないかということを御指摘になろうとするのだろうと思いますが、このいわゆる赤字公債の発行ということは他の面においての影響は別といたしましても、通貨量がふえるということについては同じような結果を生じておる。これはもうその通りでございます。外債あるいは外資で導入いたしましょうとも、または輸出をうんと増強いたしまして、いわゆる外為会計において外貨を保有するという場合に、これはこういう結果になるだろうと思います。ただそれは一時的な問題でありまして、これが順次オーバー・ローン解消、あるいはその他日銀に引き揚げられる、その他の方法によりまして、金融は正常化して参るものであります。従いまして、一時的に通貨量がふえましてもその影響するところは比較的それを放任しておかない限り何らかの適当な処置をとることによりましてその影響は非常に軽いということが言えるのであります。しかし、ただいま御指摘になりますように、赤字公債を発行いたしました場合に、この収縮が、これは容易ではございませんし、通貨価値の安定をはかるというような意味から考えて参りますと、現状におきましては私どもは相当危険を感ずるのであります。その意味におきまして、いわゆる国内資金のみに頼らない、また貿易その他の決済の面から見ましてもやはり外資は必要だ。こういうようなことでございますので、産業資金はそういう意味の点をもあわせてこの外資にもよるということをいたしておるのであります。しかしながら、根本的におきまして青木さんの御指摘になりますように、外資によらないで、円資金によってまかなえ、こういう議論のあることは承知いたしております。経済の健全性なり、通貨価値を維持するという面から考えますと、私どもはその説には賛成いたしかねておるのであります。
  144. 青木一男

    青木一男君 私は、今大蔵大臣の言われたこの外債募集でやった場合は、円資金の回収が自然にスムーズにいくと言われましたが、どうしてその外債の場合はそれが円滑に、スムーズにいくのか、その根拠を伺いたい。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 外債の場合にいたしましても、これが直ちにこちらへ送金されまして、そのままの金額が直ちに内部に使われるという場合もございましょうし、金自身につきましては甲乙はないのでございますから、それは融通といいますか、使い方はいろいろあるだろうと思います。金額的にはもちろんこれは外為会計にこれが入ってくる。またこれが歳入の形になるということは、これは当然でございます。一般に散超になりました場合の結果をごらんになればおわかりになるのであります。散超そのものが直ちにインフレを作るわけのものでもない、別な例で申せば、輸出インフレという言葉がございますが、輸出インフレにならない状況というものが一体どこからであるか。これはもう青木委員の方が私より専門家だからこの点はよくおわかりがいくだろうと思います。私どもはそういうような意味におきまして外資によるということと、それから、公債発行とは基本的に相当相違があるということを申し上げたいのでございます。
  146. 青木一男

    青木一男君 私は公債発行がいいからやれと言ったのじゃございません。むしろそうでなしに、この通貨に及ぼす影響は、外債を発行した場合は、日本銀行から借り入れたり、あるいは日本銀行引き受けで公債発行した場合と同じになるではないかと、その意味で言ったので、私は公債発行賛成論者であるという意味ではございません。この外債の募集金は、ダムの建設に使う場合は、いずれにしてもやはり国内送金の形で円資金にしなければ役に立たないはずでございます。それで結局、私は外債発行した場合は、日本銀行から借入金をしたよりもさらに自然的にその通貨が回収される経路というものは、その外貨資金を使って輸入をして、物の形で国内へ入れて、その物を国内に売った場合は当然通貨の回収ができるという点に私は違う点があるかと思います。それ以外においては、国内金融政策の上からいえば、両者全然区別がないわけでございます。それから、今大蔵大臣がちょっと言及されたが、一体これは外貨も必要であるしとおっしゃったわけですが、その外貨の補充の必要があわせてあったからやったのか、あるいは外貨補充の必要がない場合でも将来おやりになるのか、その外債発行と外貨政策との関係を伺いたいと思うのです。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 別に積極放漫というような意味で申すわけではございませんが、やはり国内産業育成のためには国内資金並びは国際資金、外国資金もやはり協力し得るものは協力さしたい考え方でございます。こういう意味におきまして、過去において外債こそ発行はいたしておりませんが、外国資金の導入はもう相当多額に上っております。この点は御承知の通りでございます。で、私ども考えますのに、ただいま申すように、国内資金並びに外国資金、これをともに合して、日本産業の強化をはかっていくという考え方をいたしておるのであります。そこで、先ほどの日銀の借り入れなり、公債に実はこだわるわけはございませんが、日本の経済が非常に強力になって参りますればおそらくそういう時期も来るかもわかりません。しかし、私ども今一番心配いたしておりますのは、通貨価値の維持ということに特に留意をいたしておるのでありまして、そういう観点に立ちますと、いわゆるこの公債論にはそう容易に賛成はできないということでございます。また、先ほど来御指摘になっておりますように、在来の外資の導入の形等を見ましても、これは必ずしも全部が全部外国からの機械や原料の買い入ればかりではございませんし、また、やはり国内ではこれが円にかわりまして国内資金として使われている面もあることは、これはもう私が御指摘しなくても御了承のことだと思います。
  148. 青木一男

    青木一男君 まあ今まで日本の外債の歴史は二つあると思うのです。一つは、日露戦争の場合の軍費調達の場合とか、あるいは関東大震災の場合の復興の外債とか、こういうものは軍需品あるいは復興資材の輸入資金を調達するために募集したので、外貨でなければいかぬという事情が起きたので、その意義はこれはきわめて明瞭である。他の電力債その他の民間の外貨債を発行されたのは、自由経済時代で金融面においても自由経済の国内における金融調達と外国における金融調達というものが共通に見えることができたような時代のあれは現象でございます。今のような国内の金融面において、いろいろの資金統制が行われている場合に、外債を募集するということは、私、あまり例がないように思うのです。資金統制を自分でやっておるからしてワクができてしまう、こういうことが私は言えると思うのです。それならば外債を発行するということまで決心するならば、そのワクの例外を政府みずから作れば、外債を発行せずとも円資金の調達はできるのではないか、こういう点が私が御質問申し上げたい要点なんです。もう一ぺんお伺いしたい。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま、御承知のように世界的な資金機構といたしましてIMFもあれば世界銀行というものもございます。従いまして、そういうものに対していろいろ私どもも出資もいたしております。また、その意味において、過去においては世銀からの融資を次々に受けておるのでございます。このように世銀その他から相当多額の資金を導入しており、その金額ももうすでに七億ドル近くなっているのじゃないかと思いますが、ただいま御指摘になりますように、今日は政府自身が勝手に規制をしているのではないかと言われますが、今の資金事情は、IMFや世界銀行ができておる、あるいは基金制度が生まれておる、そういうところから見ますと非常に拡大されておる、こういうことをむしろ考うべきじゃないかと私ども考えておりまして、こういう際に引き受けができる、そういう国力というか、経済力を持っておる、そういう際には、私どもは進んで借りるべきだと思います。しかし、ただいま引き続いて外債発行の計画があるわけではございません。この点は誤解のないように願っておきますが、これはやはり国内資金あるいは外国資金、これを動員して、産業の活発な発展に資していく、こういう考え方でございます。
  150. 青木一男

    青木一男君 国際投資機関というか、国際金融機関ができたから日本もその借り手に回らなければ損だと、こういうようなお考えのようでございます。それならば私は、この企画庁の長期経済計画を立てる場合に、私はこの外資導入計画というものをあの計画の中に入れておかなければ筋が通らないと思うのです。ところが、あの経済企画庁の長期経済計画によりますれば、日本の国際収支は、この貿易と経常的貿易外収支でバランスを得ると、その国際収支均衡の上に経済を拡大していくという計画を立てておるのでございまして、外資の力によって産業の振興をはかるという計画は、私はどうも今までの計画にはちょっと見当らないように思うのですが、その点はどうでございますか。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いわゆる資金計画そのもの、長期計画そのものといたしましては、外資幾ら、国内資金幾ら、こういった分け方はいたしておりません。所要資金そのものを計画をたいしております。それは同時に、国内資金あるいは外国資金、これをそのときどきの情勢で私どもが区分いたしておるのでございます。全体の長期計画そのもので二つにきっちり分けた計画ではございません。御指摘の通りであります。
  152. 青木一男

    青木一男君 まあこの問題は本日はその程度にいたします。  次に、国土開発縦貫自動車道の建設と外資との関係について、建設大臣にお尋ねします。  私はこの問題について、政府の計画樹立前に、国土開発縦貫自動車道建設審議会で、関係大臣に詳しく質問をする予定であったところが、政府は法律の規定を無視して、さっぱり審議会の資金部会を開かなかったのであります。昨年三月二十八日の予算委員会で、根本建設大臣はこの点の怠慢を陳謝し、資金部会を至急に開きますと答えたのに、その後一年を経過いたしましても、まだ資金部会を開いておらないのは何ゆえでありますか。私はこの点、事務当局にも催促しておったのでありますが、建設大臣の御見解を伺いたいと思います。
  153. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 資金計画を資金委員会にすみやかにかけるはずでございましたが、五ヵ年計画が御承知ようにだんだんおくれておりまして、当初九千億計画をしておったのでありますが、さらに検討の結果一兆億円計画に改訂し、しかも、その一兆億円計画のうち、地方と国との負担割合等についてもいろいろ問題がありまして、そういう問題を検討しておりました結果、資金計画の詳細な結論が出て参らなかった。しかし、ようやく最近その見通しがつきましたので、なるべく早い機会に資金委員会を開きまして、皆さん方の御意見を伺っていきたい。こういう考えでございます。
  154. 青木一男

    青木一男君 建設大臣にお尋ねいたします。昨年三月の予算委員会で根本建設大臣は中央道の小牧―吹田線の建設費の一部に外資を予定していると答えられたのであります。政府は今でもその方針を継続しておられるのかどうかを伺います。
  155. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) その方針は依然引き続いております。ただ外資の導入の交渉がだんだんおくれております。しかし、ようやく近いうちに結論が出るようになって参りましたので、三十四年度の計画にもさらにまた五ヵ年計画にも外資を入れるという計画で進めております。
  156. 青木一男

    青木一男君 私は岸首相にお尋ねをいたします。国土開発縦貫自動車道の建設は、近時与党、野党間争いの多い時代におきまして、珍しく共通の広場を作った見本であります。しかも、この大事業こそは、われわれの子孫に残す最大の遺産ではないかと思います。あたかもヒトラーがなくなった後において、アウトバーンの残っておった事例に匹敵すべきものとなるであろうと思います。われわれはこの現代の偉業をなすに当りまして、外債という他力本願の考えを捨てて、われわれの汗と貯蓄によって必ずこれをなし遂げるというところの決意を私は望むものであります。わが国の今日の経済力は、もし決意をするならば、このくらいな事業には耐えると思うのでありますが、首相の御決意のほどを伺いたいと思います。
  157. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国土開発縦貫道路の建設は、先ほどお話し出ました通り、きわめて重要な政策一つとして、政府におきましても極力やらなきゃならぬことは、言うを待たぬところであります。そして、建設に必要な資金をどういうふうに調達するかという問題については、あらゆる面から考えるべきであると思います。また、外債によって、外資によった場合におきましても、これはもちろん支払わなきゃならぬことでありますから、国民がやはり汗を流してこれを払うべきものである。ただ、一時作るのにどうするかということでありまして、全体の予算の編成に当る資金の調達の方法として考えるだけでございますから、もちろん、われわれが当る場合におきましては、強い決意でもってこれが完成を期し、その上におき、そのことが国の繁栄に資するようにりっぱにやり遂げなきゃならぬと思います。ただ、資金の調達の面は、今申しましたように、各般の事情を勘案いたしまして、適当にこれが調達については考えていきたいと、こう思っております。
  158. 青木一男

    青木一男君 質問を終りました。
  159. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 青木君の質疑は終了いたしました。
  160. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次は、加賀山之雄君。
  161. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 まず、総理大臣、外務大臣にお伺いいたしたいのでありますが、日米安保条約は、占領中に締結されたもので、暫定的性格を免れないものである。また、条文中にも、かなり不明確な個所がありますので、たとえば基地問題などで、現下の国民感情として割り切れない、あるいはトラブルが起きるというような面が相当あるのでありますから、いずれはこれは改定しなくてはならないものであるということは、われわれもさように考えるのであります。従って、この際、政府がこれに非常な熱意を示され、努力をやっておられるごとに対しましては、もちろん異存のあるはずがないのでありますが、今度のこの安保条約改定交渉について、政府が進んでこられた状態を外からうがっておって、そのやり方と申しますか、やり口には、少々納得ができないところがあるのであります。安保条約の精神は、言うまでもなく、わが国の安全保障、言葉をかえて申すならば、わが国を防衛するための条約であります。従って、日本防衛方針を抜きにいたしてこれを論ずるわけには参らない。ところが、今回、政府の態度を拝見いたしておりますと、あまりにも外交技術的と申しますか、非常にテクニックに偏しておるんじゃないか。そして、その反面、一番大事な本筋というか、国の防衛というものを閑却されていはしないか、かようなことを、何と言いますか、不安を持つのでございまして、総理外務大臣におかれましては、果して国の防衛という基本観念に立って交渉に当っておられるかどうか。これはもうさようだと思いますが、一つ明確に御所見を伺いたいと思う次第であります。
  162. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、この安保条約の精神は、日本の安全を保障する、すなわち、他から不当に侵略をされない、国民が安心して、そして平和な社会を建設できるようなこの状態を作るために設けられたものであることは、言うを待たないところであります。国の安全を確保するということは、言うまでもなく、独立国がまずみずからこれを決定し、みずからこれに当るべきものであることは、言うを待たないのであります。ただ、現在の国際情勢から見て、また、日本自衛力から見まして、そういう一国の力だけではできない。ここに、日米共同防衛の体制をとって、日本の安全を保障するというのが、安全保障条約の基本観念になっておることは、言うを待たないのであります。しかるに、現在の安保条約を見まするというと、日本に全然自衛力がなくて、一に米軍日本の安全を託するという形になっております。従って、この防衛に関するいろいろな行動であるとか、あるいは処置というようなものは、米軍が一存できめ、これによって米軍日本の安全を保障するというような形になっておりますが、これは私は、独立国安全保障の体制からいって、こういう形が望ましくないことは言うを待たないし、また、真に一国が自己の安全を確保するためにやるということは、国民全体が祖国を守り、祖国が不当に侵略されることのないような体制をまず自主的にきめて、そうして、その足らざるところを、他の国の協力を得てやるという体制にすることが、国の安全をはかり、独立国としての安全保障体制としては、私は基本的の考え方でなきゃならぬと思います。そういう意味において、現在の安保条約の建前が、成立の当時の事情からやむを得なかったと思いますけれども、今日においては、はなはだしく、われわれの願っておる形とは遠ざかっておるという点を合理的に改めることは、日本の真の安全保障の目的を達する上から、ぜひ必要である、これが私どもの基本的な考えでございます。
  163. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 外務大臣――直接衝に当っておられる外務大臣に……。
  164. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約改定、あるいは安保条約存在の根本方針というものは、総理が述べられた通りであります。私どももその方針に従っておる。ただ、私の受け持っております部分が、やや、防衛というよりも、外交折衝と申しますか、そういう点にありますので、若干技術的に見える点があろうかと思います。
  165. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 総理大臣が、国の防衛ということに主力を置いて、双務的な立場に立ってやっておられる、これは非常にけっこうなんでありますが、ただ、片務、双務、こういう言葉でありますが、政府が少し双務的という言葉にとらわれておられやしないかと申しますか、あるいは、どうも平板的に考え過ぎておられるきらいがあるのじゃないかというように私は考えるのでございますが、現在のところでは、常識的に考えてみまして、日米両国が軍事上、質、量ともに対等で双務条約を結ぶというようなことは、これは考えられないことであります。両国が分担する相互防衛条件考えてみますと、これは軍事的、あるいは軍事目的だけのものばかりではなくて、中には、あるいは輸送でありますとか、あるいは病院、あるいは基地もその中に入るかもしれませんが、役務の提供とか、こういったいわゆる非戦闘的な要素がたくさんあるのであって、この双務的、あるいは両方で均分に分担するというようなものは、そういうものについて考えればいいのでありまして、軍事的にすべてこれ双務的な対等な条約を締結するということは、これはちょっと成り立たないんじゃなかろうか。かように考えるのでございますが、これについての御見解をお伺いしたいと思います。
  166. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お説のごとく、この日本の憲法、私ども日米安保条約改定に当りましても、日本の憲法の制約という大前提をおいてこの問題を扱うことについて、アメリカ軍との間に基本的な了解が成り立つと思います。今お話のように、双務という、普通の双務契約とか双務的と申しますというと、向うが負うているところの義務と、こちらの負うている義務とがちょうど同じ内容を持っておる義務であるというのが一番完全な双務であろうと思います。しかし、そういうことが日本憲法の何で許さないことは言うを待たないところでありまして、アメリカ日本に来て、日本という外国へその兵力を出して、そうして日本の侵害された場合にこれを安全を保障する。日本が同様に、アメリカの領土に行ってこれをやるというような義務を負うことのできないことは言うを待たないのであります。従って、双務契約ということ、いわゆる双務性ということを強く言うことは意味をなさないのじゃないかというふうな議論が当然出てくると思います。私は一番大事なことは、やはり日本防衛というものについて、日本が自主的な立場日本防衛というものを考え、そうしてこれを完全なものにするために日米が独立国として対等な協力関係においてそれをすると――実際の現実に提供する義務、もしくは条約上負う義務というものの内容においてはこれは違うことはありましょうけれども、両国が独立国として、日本が自主的にきめた日本防衛に対してアメリカの協力を求る意味からいいまして、日本独立国として当然一つの義務を負うて、そうして両国の協力関係を作ると、こういう立場が基本的に考えられなければならない。こういうふうに考えておりますから、今お話のように、いわゆる双務性と申しましても、その義務の内容については非常に違っているということは当然であろうと思います。
  167. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 わが国は、自主的に自衛というものをしなければならないし、また、できることは憲法の解釈として、総理もたびたびこれはそういう解釈をとっておられます。ただ、いろいろの、国内で防衛に対する観念が混乱というか、非常にいろいろの考え方がありますので、今言われたようなことが不徹底であったり紛淆がありますと、ただ抽象的に、双務的にするんだ、こういう言葉の魔衛にかかって、国民は一体防衛でどういうことが大事なのか、また、今度の安保改定の主たる点がどういうところにあるのか見失う私はおそれがないでもないと思うのでありますが、この点については、政府としてそういった紛淆、不徹底のないように、十分はっきりとした観念のもとに国民を理解させるような御努力を願いたいと思うわけであります。  次に、非核武装化の問題について伺いたいのでございますが、この問題につきましては、総理大臣、外務大臣また防衛長官にも御答弁をわずらわしたいと思います。岸総理はかねてから憲法第九条は先ほど申しましたように、自衛権を否定するものでないという立場をとっておられる。これはただいまのところでは、世論とでも言うべきものではなかろうかと思うのであります。ところで、この自衛という問題について考えた場合に、いわゆる核兵器という関係を見て参りますと、最近における世界の軍事事情、私も詳しくは存じませんが、核兵器というものは非常に小型化しておる。従来の砲弾とさして変らぬくらいになっておる。でいわゆる通常兵器との限界はますます狭まっておるというように考えられております。純粋にこれは防衛だけを目的にした、戦術的な核兵器というものも実現しておるようであります。これらの核兵器が自国の領土、領海を防衛する、また、対空戦闘にも欠くべからざるもの、こういうふうなことになっておる。これが世界の趨勢であるというふうに思うのでありますが、ほかの国の事情を見ましても、フランス、中共あるいは中立を標榜しておる中立国でありますスイスまでが核武装をするということを言っておる。これらのことは、時代が、核武装をしなければもはや自国の防衛が完全にできなくなるからというような意味になるのじゃないかと思うのでございますが、ともかくこれが、今日世界の一般的趨勢であるということは否定できないと思うであります。でありますのにかかわらず、政府並びに野党はこぞって非核武装論を強く打ち出しておられる。われわれももちろん核武装がいいともけっこうだとも思うものではございません。もちろんこういうものがないことは万々いいのでありますけれども、結局国の防衛というものは相対的なもの、相手を考えてやらなければ防衛というものは成り立たないということは、これは自明の理であります。日本さえ核武装しなければ、それで戦争は起らない、あるいは世界の平和は保てるのだ、日本の国土はいかなる戦禍からも守ることができるのだということはとうてい言えないと思うのでございますが、この政府並びに社会党で打ち出しておられる非核武装論はそういうように私は受け取れる。一体これは、日本が非核武装を唱えておれば自国の防衛は万全である、平和は維持できるという工合に受け取れるのでございますが、これにつきましての総理大臣あるいは外務大臣なり防衛長官の御目解を承わたいと思います。
  168. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、すでに原子力の新しいエネルギーがすべて平和的利用に用いられるべきものであって、これが破壊兵器に用いられてそして人類の滅亡をも来たすごとき恐怖を与えており、また、現実に核兵器の発達がそういう方向に行っておるということは、これは文明の敵である。従って、これを兵器に使う事柄を禁止すべきものである。まずこの意味において、核実験の禁止を世界に強く唱え、また、あらゆる機会において、そのことは核兵器の製造の禁止、貯蔵もしくは使用の禁止までこれを含めて、もつばら平和的利用にこれを用いていかなければいかぬということを世界に強く訴えております。また、その方向であらゆる努力を続けてきておりますし、また、良識ある各国政治家のうちにもその必要を認めて、漸次そういう動向に動いておることは御承知の通りであります。今日なるほど核兵器というものの発達は、非常に軍事科学の最も先端をいっている一つのものとして日々新しい形の兵器が出ております。従って、核兵器といいましても、いろいろなものがあることは言うを待ちませんけれども、私は、この原水爆の洗礼を受けた日本が、世界に向って核兵器をやめて、そうしてそれは同時に世界の軍縮にもつながる問題でありますが、努力をしていくということは、日本の使命の一つであると実は固く信じておるのであります。この意味におきまして、私は、日本他国侵略から防ぐいうと意味において、われわれが持っておる自衛力の装備につきましても、私自身が念願しておるこの理想に到達する意味から言えば、核武装はすべきものにあらずという考え、これはまた、日本国民の大多数が支持しておるところの考えであるという信念に立って、私は、核武装はしないし、また、核兵器の持ち込みを日本においては許さないと、こういうことを申しております。もちろんわれわれは、あらゆる面においてこの軍事科学発達におくれないように、日本防衛力というものを質的に向上せしめる研究開発はわれわれとしても努力をしていくべきものでありますけれども、核兵器の問題につきましては、今、世界はこういう情勢になってきつつあるということのお話がありましたが、そういう一面において、私ども世界の良識に訴えておる核兵器の禁止という問題もまた一方取り上げられて、いろいろな会議が行われつつある方向に進みつつあります。従って、今日の立場からいって、私は、日本が核兵器で核武装するというのでなければ日本が守れない、日本の安全が保障できないというふうに考えてもおりませんし、また、その問題については、先ほど来言っておりまするような考え方から、あくまでも世界に訴えて、核兵器というものをやめて、もっぱらこの原子力を平和的利用の方面に用いるようにすることが、私は、世界の人々がこれから努力していかなければならない目標であると、こういうように信じております。
  169. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私も、総理の言われたと同じ考えを持っております。
  170. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核兵器の基本的な問題については、ただいま政府の見解を総理から詳細申し上げましたので、私として特につけ加えるものはございませんが、御承知のように、現在の日本自衛隊は、その使命の示す通り日本の国力、国情に応じた最小限度の自衛力を持っておる次第でございまして、その実態は、おそらく加賀山委員御承知かと存じまするが、いわゆる防衛力として、なおきわめて弱いということを私申し上げ得ると思います。従って、核の問題につきましては、総理から申し上げましたが、これにかわるべき自衛上の問題としては、わわれれが当面研究いたしておりまするのは、ガイデッド・ミサイルの研究、あるいは対潜装備の研究、さらに無人機等のいろいろの研究もなされておりまするが、現在の日本の装備の段階としては、なお有人機等についても今後十分装備をしていかなければならぬという状態でありまして、いわゆる兵器についても、装備、兵員等、段階的に、現在の日本の力と国情並びに現在の日本自衛隊の装備と相待って、段階的に逐次新しい近代的な装備に進まなければならぬ現在の日本においては、まだ最新式の近代的装備の段階にすら至っておらないという状況でございまするので、一応の段階として、私ども、核装備についての基本的な方針は別として、できる得る限り最新式の装備段階をまず整備するということが当面の目的であり、核兵器については、総理政府方針として言明した通りでございます。
  171. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 総理大臣の言われたことは、一般的また道義的意味と伺えばこれは当然過ぎるごとで、非常にりっぱな信念だろうと存じますが、しかし、総理の信念にかかわらず、先ほど申しました刻下の防衛現状は、これは現に伊能防衛長官が言われたごとく、今ですら非常にひ弱い、いわんやほかの国には、防衛には欠くべからざるものとして核武装というものは考えられてきておる。私は、二つの世界が早く解消して、そういう世界が生まれるという前提に立つならばけっこうでございますし、また、諸国がすべて核兵器を全廃するというようなことまでいくならば、これは何をかいわんやでありますが、現在のところの姿として、国際間の道義は御承知のような状態であるし、また、各国防衛に対する考え方、進め方が如上のごとくであるならば、伊能長官の言葉の節のごとく、長官は、核武装は別としてと言われたが、私は、別じゃなくて、この問題を伺っておるのであって、それについての見解をもう一度長官から伺わしていただきたい。
  172. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 世界の趨勢についてのお話がございましたが、御指摘のごとく、スイス、スエーデン、西独等においては、核武装の国会における決議もしくは政府方針を決定はいたしておりますが、まだ現に、持つ段階には至っておらないように私は承知いたしております。また、東亜におきましても、ソビエトは申すまでもないところでありますが、中共については、核武装がすでにあるやのお話がございましたが、私ども調査をいたしておりますところでは、詳細は不明ではございますが、まだ中共には核武装がされておるという確実な情報は接取をいたしておりません。また、韓国、中華民国、フィリピン等におきましても核武装が行われておるという事実も情報に接しておりませんので、この状況においてわが国が核武装をするかどうかという点につきましては、総理が大きな理想を掲げて、国際平和の推進、軍縮の推進、さらに核非武装の推進ということを、現在東洋における現状からも日本はしないということで、東洋における核武装をしない方向へ一歩でも前進させることが世界平和のためとかように考えて、日本政府としては現在核武装をすべきでない、しない、こういう方針かと存ずる次第であります。
  173. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 この核武装について自衛という一面と同時に、もう一つこれは区別して考えなければならぬ問題は、放射能の被害防御という問題があると思うのでありますが、これはやはり一応区別して考えなければいかぬのじゃないか。日本が幾ら核武装をしようがしまいが、自由陣営に立とうが立つまいが、とにかくこういった、今のアメリカ、ソ連あいるは英国等のいずれがこの実験をやったといたしましても、これは気象上の条件から日本に当然死の灰というものは降って参る、これは今日、世界人類が当面する一番重大な問題であると思うのでございまして、これについてアメリカ等は原爆実験というものを地下でやるというようなことを言って、よごれない原子爆弾というようなことを言っておるようでありますが、この放射能の被害防御ということについて政府としてはどういうふうに考えておられるか。これについて対策と申しますか、この準備をされているかどうか、あいるはこれから対策を立てようとしておられるかどうか。これは私も、どこでこれを担当されるか――あいるは警察庁がやられるのか、科学技術庁がやられるのか、防衛庁がやられるのか、それらの点についても私はつまびらかにしておりませんので、それらの点をあわせて御答弁いただきたいと思う次第でございます。
  174. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この問題は科学技術庁の方の何でやっておりますが、核実験に伴うところの放射能の汚染状態につきましては、これは原子力委員会の中に放射能調査専門部会がございまして、その部会におきまして、厚生省、農林省、運輸省等の関係をもちましてその科学的な調査をいたしているわけでございます。で、放射能の人体に及ぼす影響につきましては、これは同じく科学技術庁の関係の放射線医学総合研究所におきまして、これに検討を加えているわけでございます。ただいまのお話の、核実験によって、これを平和利用の方に核爆発の実験をやるということは、アメリカでやっているというふうなことをときどき聞きますけれども、これは私はまだ事実でないと信じております。特に日本におきましては、原子力平和利用のために核爆発の実験をするというふうな考えはわれわれ毛頭持っておりませんです。
  175. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 防衛庁に関する問題についてお答え申し上げます。ただいま科学技術庁長官から申し上げましたように、総合的には、放射能の問題については科学技術庁が中心で、諸般の対策、準備をいたしておりますが、防衛庁といたしましては、来年度――昭和三十四年度におきまして防衛庁の中央技術研究本部におきまして、五千メートル以上の高々度における放射能の問題について、航空機をもってこれが状況をつぶさに調査、研究をいたして、その結果を科学技術庁において総合的に研究の上、対策を立てる、こういう措置をとらんといたしております。
  176. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 次に、この核装備の問題と関連しまして原水爆の問題でございますが、まあこの問題につきましては、岸総理もしばしば施政方針演説で、原水爆の製造、貯蔵、実験、使用、この禁止を全世界に呼びかけ、訴えておられるわけでございます。これは私は当然のことであり、非常に趣旨はけっこうであると思うのでございますが、反面、原水爆が、皮肉にもこの存在がいわゆる全面戦争というものへの突入を防いでいるような面もあるんじゃないか、あるいはそうでなければ大へん幸いでありますが、そういう皮肉な考え方をする人もあるわけであります。そこで実験の禁止でありますが、この問題については、先ほどの放射能の研究と、これを防御する方法というものを特段に早く実現してこれを実用化するようになりませんと、これこそ心配でならない。国連において外務大臣はいろいろの方策をとって、何とかいい結論を出そうと努力しておられることはわかるのでありますが、なかなかこれも急には実現しそうもない。のみならず、私は、今後万一の場合に局地戦争が起きて、そうしてこれがまた相当広がっていく、こういったような場合に、現に平和利用面における原水爆の利用は非常に進歩してきておりますから、これは禁止しておっても、もし戦争に突入すれば、いわばこれは早い方が勝ちだということで、早くそれを作り上げてこれを使った方が先制攻撃に勝つ、これは戦争心理から言って、どの国でもそういう気持になりゃせぬか。もしこの技術自体がもう死滅してしまえばよろしいのですけれども、今日まできたこの経験と技術、知識は、これは二大陣営に必ず残っておるわけでありますから、そういった場合に、結局現在はこういうものがあるから戦争に突入しにくい、片方がやればすぐ報復を受けるということで、突入しにくいが、これがなくなったと仮定した場合に、今度はより安易な気持になって、逆に戦争が起きやすくなる一とは言えないかもしれませんが、そういう危険がないではない。そういった場合に、じゃどっちも使わないでいるかといったら、戦争になったら、これは使いたくなるのがもう戦争心理で、しかも他の国より先だってこれを使おう、こうするだろうと思うのでございますが、そういった場合に、私どもとしては、この禁止は非常にけっこうだ、これが根本的にできれば一番いいが、そうでなければ、むしろ一方においては放射能を防御する方法を完全ならしめると同時に、一方においてはむしろそういった原子力の――何と申しますか、利用についての監視、管理機構というか――というものをきわめて整備して、どこがどういうものを持っているということがむしろはっきりしておった方がいいのじゃないか、というような考えを持つものでございますが、これにつきまして、総理並びに外務大臣のお考えを、お持ちでございましたら、御見解を承わりたいと思います。
  177. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、この核爆発の問題というものは、いろいろな過程を経てきておりますが、現在核実験の禁止については、昨年一月の終りまでかかりまして、ジュネーブにおいて、その監視方法について、技術的な結論がソ連、アメリカ等の間に一応定まりまして、その結果として、昨年の十一月一日からジュネーブでもって、今日核実験の禁止問題に関する国際会議が開かれております。いろいろ時間もかかっておりますし、経緯もございますが、ソ連も若干譲歩し、また、アメリカも先般一般の軍縮と関連させないというふうに譲歩いたしております。時間はかかりますけれども、やはり核実験禁止というような問題については、そうしたことで進みつつあることは事実でございます。最終的にどういう結論が出ますかは、私どもまだ会議の進行中でありまして、十分了知は、予想はいたすことができませんが。しかし、それと同時に、監視機構という問題についても、今のお話のような点、あるいは管理機構という問題についても論議が並行されているようでありますから、将来この核実験の禁止等が行われますれば、続いてやはり製造、保有、あるいは使用というような問題にも、国際的に協議が行われることを希望し、また、そういう趨勢にはなりつつあるということだけは御報告申し上げられると思います。
  178. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと委員長、関連……。
  179. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連質問ですか。
  180. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ええ。
  181. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 加賀山君、よろしゅうございますか。……それじゃ許します。
  182. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さっきの加賀山委員の非核武装質問は、午前中の羽生委員質問と関連するわけでありまして、私は、岸総理に関連質問したわけなんですが、羽生委員並びに加賀山委員、並びに関連質問しました矢嶋に対する答弁を聞いてみますと、総理はそつなくごまかしの答弁をしています。で、私はここではっきり一つお答え願いたい。それと、伊能防衛長官も答弁が不明確ですから、非常にこれは重要な問題ですから、はっきりお答え願いたい。  その質問は、総理は午前中、羽生委員並びに私の関連質問に対して、岸総理の非核武装に対する考え方とあなたが率いる自由民主党の意見とは食い違っていないと、私の追及に対してそういうふうに答弁したわけですね。ところが、きょう私の尊敬する加賀山委員はいかなる意図をもって質問されているかははかり知れない点がありますけれども、しかし、加賀山委員の発言すなおに聞きますと、次のことなんですよ。それは今の世界情勢からいって、戦術的な小型核兵器くらいは持たなければ国の防衛が果せないのではないか、それで、はっきりと速記を見ればわかりますが、政府と野党とは非核武装を主張しているが云々と、こう言われている。与党というのは入れてない。だから質問者の加賀山委員員自身、政府と野党である社会党だけが非核武装を唱えて、与党の方は見解が違うということを加賀山委員自身認められている。だから加賀山委員の発言も表面的に聞けば、今の情勢から戦術的な小型核兵器くらいは、ごく近い将来か現在持たなければならぬのじゃないかという含みを持って私は聞かれていると、日本語として聴取したわけ外す。だから、その点を、岸総理は、あなたの見解とあなたが率いる自由民主党が衆議院段階にとったあの態度と正相違しているという点を御確認いただきたい。  それから次のもう一つは、岸総理伊能防衛長官にはっきりお答え願いたい点は、核兵器は別としてとごまかした、さらに加賀山委員から追及されたが、なお不明確な答弁をしている。ここで明確にお二人からお答え願いたい点は、現在たとえ小型の戦術的な核兵器といえども装備する考えはないし、また、国の防衛上もその必要を認めない――自由民主党の一部の諸君は必要を認めているのです。だから、舟議院においてああいう態度をとっている。そこにあなたと非常に食い違いがあるので、これをそつなくごまかされてはいけませんので、意思もなければ、その必要を認めないということを明確に御二人からお答え願いたい。まず総理から。
  183. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 決してこの問題をそつなく答弁しているわけではないのでありまして、これは私の政治的信念で従来も非常に明確に申し上げたものであります。(矢嶋三義君「違っておりますよ、自民党と」と述ぶ)自民党と違っているとお話になっておりますが、私がこの核兵器でもって核武装しない、また、核兵器の持ち込みは認めないということを申し述べたのは今度の国会が始めてじゃございませんし、従来からずっとそのことは私が認めております。(矢嶋三義君「自民党の諸君は違うことを言っている」と述ぶ)しかし、自民党から総理がそういうことを言うのはけしからぬという議論は一度も出ておりません。また、私も二回目の総裁に選ばれておりますし、私はそういう点においても重要な問題として、決して根本において変っておらない。(矢嶋三義君「第二点は」と述ぶ)  私は現在のもとにおきまして、日本が小型の核兵器を持たなければならぬという必要を認めておりません。
  184. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答えを申し上げます。核兵器についての見解一は、政府として統一した見解であることを私はしばしば申し上げました。従って、核兵器に関する答弁としては、総理の答弁が政府の代表的答弁であるというとこを私はしばしば申し上げました。しかしながら、今お話がありますからお答えを申し上げますが、総理も、先般衆議院における予算委員会、その他の委員会におきまして、攻撃目的を持つような大きな原水爆についてはこれは自衛上当然持つべきではない、しかし、小型の核兵器等については、自衛の目的であれば持ってはならぬ、自衛上持つべきではないということではないが、今……(「違うぞ」と呼ぶ者あり)いや、違いません。わが政府としては、今日その必要を認めず、核攻撃に対してはアメリカの抑制力に期待をしておるので、核兵器は持たない、かように政府として御答弁申し上げておきます。
  185. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いずれ他日やりましょう、大きな問題があるな。私、関連ですから、きょうはやめておきます。
  186. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 大体今の御答弁で、(矢嶋三義君(「了解できません」と述ぶ)そうですか。  それではあと……。
  187. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 次に、別の問題に移りますが、憲法第六十五条は、「行政権は、内閣に属する。」こういうふうに規定しております。また、七十三条、内閣外交関係を処理し、条約を締結する。こういうふうに規定している。で、これによりまして、外交というものが行政権の範囲に属して、行政権が内閣に属しているということは明らかであると思うのであります。そうでありますにかかわらず、この憲法擁護ということに非常に強く主張を打ち出しておられる社会党では、この憲法第七十三条の趣旨は一向に守っておられないように私は見受けるのです。これは私の邪推であれば幸いでありますが、たとえば、社会党の訪中使節団がこの三月の上旬に出発せられる、こういうように承わっておりますが、これについてその同党の中央執行委員会で決定されていることがある。これは二月の十六日でございますが、訪中使節の交換すべき意見に関する方針というものをきめておられます。これを見ますと、前文と三項目に分れている。で、積極的中立外交というのが一つ日米安保条約の解消というのが一つ、それから中共との平和条約の締結というのが一つ、現行の日華平和条約の破棄が一つ、こういうふうにしるされております。おそらく淺沼書記長以下のこの同党訪中使節団は北京におもむかれて、この方針通りの意見交換をしてこられるだろう。その結果は、北京政府とのこれが共同コミュニケにでもなるのではなかろうかと思うのでございます、これは予想でございますが。しかし、私は、これは非常に問題ではなかろうかと思うのであります。先ほど述べましたように、外交権というものは明らかに行政権の一つの表われであって、これは明らかに行政府にあるものだと思う。で、憲法七十三条のこれは明記するところであります。政府以外のものが、外国との条約を締結してもこれは結局不渡り手形といいますか、いかなる協定をしてもこれは無意味ではなかろうか、これは国民外交というものだと言われるかもしれませんが、やはり外交には違いない。で、わが国会でも批准するわけには参りますまい。で、こういうことを続けておりますと――いつもわれわれの会派では超党派外交というものを心から望む。国として、やはり外交は一本に打ち出していかなければ、外国をとても説得することもできない。しかもこのような複雑な国際情勢のもとにおいて、国内で意見が与党野党まっ二つに分れておったり、党内でもまちまちの意見があったりしてはとても外交どころでけあるまいと思うのでございまして、これが、外交が信を外に失うようなもとにならなければいいが、かように和は危惧するものであります。で、われわれは、憲法第六十七条によりまして内閣総理大臣を指名している。これに内閣を組織してもらって行政権の執行を一任しているわけでありますから、政府はこの行政権の発動ということについては最も慎重にやっていただかなければならないと思うのでありますが、最近こういうことが起きましても一向政府はこれに対して抗議される様子も見えない。で、これは一体もうこれでいいのだと思っておられるのか、困ったものだと思っておられるのか、それらの点について、一体岸総理大臣はどういうふうに考えておられ、外務大臣はどういうふうに考えておられるか、その点を一つ伺いたいと思います。
  188. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 外交問題に関して、与党野党の間に非常な考え方に隔たりのあることは私は遺憾であることを、午前中の羽生委員の御質問にも答えたのでございます。しかし、現状におきまして、これを超党派外交という名において、この非常に食い違っている考え方一つの何にまとめるということは私は事実上現在の状況では不可能である、かように考えて、非常に遺憾に考えておるのであります。ただ、お話通り外交そのものが行政権の範囲であり、また、その意味において、政府国民の信託を受けてこれを唯一に行うべきものであることは、これは憲法の規定に明記しておる通りであります。私は先ほども、午前中にも羽生委員に申し上げたのでありますが、本日出発する社会党の訪中団の向う行っての行動についても、よく日本国民の大多数の意見を正当に向うに理解せしめ、われわれがこういう国会においてしばしば論議しており、岸内閣は決して敵視政策をとっているものではないという考え方についても十分向うが正当に理解をし、誤解を解くように努めてもらいたいということを申したわけでございます。しかし、社会党社会党の党議できまっておる考え方を、これを向うへ行って自分たちはこう考えておるのだ、社会党としてはこう考えておるということを述べられることは、これは私はやはり社会党として、すでにある程度は世間にわかっておることでもありますから、これをもって外交というわけにはいくまいと思っております。ただお話のように、いろいろな意見の交換等の場合またはそれのとりまとめの場合等におきまして逸脱のないように、ぜひ社会党の今度の訪中団一行におきましても特に留意をしてもらいたいと、かように考えております。
  189. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 外務大臣から御答弁を願います。
  190. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外交に関しまして、われわれ自由主義の国においていろいろ論議がありますことは、これは当然のことだと思います。また、今回社会党が日中親善使節団を送られることになったわけでありますが、淺沼団長以下の良識をわれわれは信頼しておりますので、今お話のように、外交権を侵害するというような行動をとられることはないと私は信じております。(「名答だ」と呼ぶ者あり)
  191. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 総理大臣並びに外務大臣の御答弁はまことに外交辞令を伺っているように思うので、まあ外交とは言えない。それから淺沼団長は良識があるからそんなことはなさるまいというような何でございましたが、これは使節団が向うへ行きまして、共同コミュニケというような形のものが万一発表されたようなときは、これはどうも外交でないと言えるのかどうか。これは私は非常にどうも頭が悪くてよくわからないのでございますが、その点について、もう一度総理大臣の御答弁をわずらわしたいと思います。
  192. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 共同コミュニケというようなものは、これはいろいろな会談をした場合に、個人ということもありますまいが、いろいろな今までにおきましても、団体が、使節団が行った場合において、会談したところのことを取りまとめて発表するというようなことは従来あったと思います。ただ問題は、それの内容であり、その扱っておるところの、共同コミュニケそのものが出たといたしましても、そのものの内容ということについてはこれは非常に問題があろうと思います。そういうことについて先ほど外務大臣も、淺沼団長の良識を信頼するということを言っておられるし、私が先ほどやはり外交権というものの侵害にならないような配慮をしてもらいたいと申しておるゆえんもそこにあるのであります。
  193. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 次に、別の問題に入りますが、過般の第三十国会におきまして、その跡始末と申しますか、さようなことで、岸自民党総裁と鈴木社会党委員長が会談をされた。この会談によって、国会正常化のために正副議長は党籍を離脱すべきであるということが決定されたのであります。で、私どもは、これは実を申しますと、ずっと以前から両院議長、副議長は党籍を離脱するのが筋ではあるまいかというように考えまして、絶えずそれを主張して参ったのであります。今回、衆議院においては、この正副議長が党籍を離脱されるということが実現を見た。私はこの点に関しまする限りは、国会正常化にこれは一歩踏み出したものであると考えまして欣快に思うのでございますが、参議院におきましては御承知のように、まだこれが実現しておらない。これがどうしたわけでそうなのか。両党首の会談によりますと、簡単に申して、参議院は参議院の自主性にまかせる、こういうふうになっておるようであります。しかしながら、これは、国会というものは申すまでもなく、二つがそろって一つであるわけなんで、片方の衆議院は正副議長の党籍離脱が正常への道であり、参議院はそういったことがなく、参議院は党籍を離脱せざる方が正常化であるように受けとれるのでありますが、これは自民党総裁とされまして、一体どういうふうにお考えでございますか。その点について承わっておきたい。
  194. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この前の臨時国会が御承知のような不正常な形で終ったことに対しまして、その問題の中心でありました衆議院における状態を正常化し、将来における問題を正常に返すという意図のもとに、実は鈴木委員長と私とが会談をして申し合せをいたしたのでございます。三十国会のあの不正常な形がもっぱら衆議院段階において行われたという現状から、実はそれを早く正常化し、将来に問題を起さないようにするということが当時の第一の目的であったわけであります。もちろん加賀山委員お話のように、参議院も衆議院と同様の議会の構成で、同じ二つがそろって国会が成り立つわけでありますから、衆議院だけが正常化して、そうして参議院は正常化しなくてもよろしというような考え方は、毛頭私ども持っておるわけではございません。しかし、あのときの事態が、ちょうど炭議院の段階におけるいろいろな混乱から生じておるという事態にかんがみまして、第一段にそれを考えたわけであります。そこでこの議長、副議長の党籍離脱の問題につきましても、問題は、自民党社会党の対立関係から生じておる衆議院における事態を、将来に不正常な事態を繰り返さないという意味で、直接には衆議院の議長、副議長が党籍を離脱するということが申し合せの主体になっておるわけでありまして、次に参議院につきましても、われわれとしては、もちろん将来に不正常な状態が起ってはなりませんし、また議長、副議長の問題につきましても、われわれは、なるべくこの衆議院についての申し合せの趣旨の線に沿うて参議院も考えてもらいたいが、しかし、参議院には参議院の自主性というものがあるわけであり、また今回における事態は直接参議院に関係なかったというような点、また参議院におきましては衆議院のようにはっきりした二大政党というような形にもなっておりませんし、特殊事情もございますので、参議院の自主性におまかせをするという結論になったわけでございます。
  195. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 今総理大臣が述べられましたことは、実は、過日の総理大臣の施政方針演説に対しまして、わが会派の同僚前田議員から御質問を申し上げたそのときの御答弁と全く一致しているようであります。今総理は、しかしあの第一段として衆議院をやったというお言葉でございましたが、本国会は、つまり第三十国会を第一段とすれば、まさしく本国会は第二段である。第二の次の国会に臨んでおるわけでございまして、もちろん、今いう正常には進んでいる国会ではございますが、しかし国会の将来を考えますときに、どう考えたって、衆議院でああいうことが起ったために、あらかじめ、あとからとった措置であるならば、参議院においても事前からこれをとるべき方策であると、ことに両党首はそういう線で話し合っておられるように私どもは解釈をしておるのでございますが、これは参議院の自主性と、こう言われる。ところが、参議院の自主性は、参議院には社会党もおられますし、無所属、また、われわれの会派の緑風会という会派があるわけであります。数こそ少うございますが、会派の数からいったら圧倒的にわれわれの見解は一致して、これは党籍離脱すべきものであるという考えを持っておるのであります。それで参議院の自主性と言われるのは、あたかも自民党自主性、極端にいえば松野議長自主性(「その通り」と呼ぶ者あり)というような感じを受けて、はなはだ私は了解に苦しむのでありますが、もう一度総理大臣から御答弁をわずらわしたい。
  196. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げ、したように、私どもの話は、あの申し合せの文書にあるように、参議院においてもこの趣旨になるべく同調してもらいたいが、しかし結局は参議院の自主性にまかせるということになっております。従って、参議院において十分話し合いをされた上においてこの問題は決定されるべきものであると、こう考えております。
  197. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 じゃ時間がきたようでありますから……。   ―――――――――――――
  198. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次は千田正君の質疑に入ります。
  199. 千田正

    ○千田正君 私は、まず第一に、岸総理大臣が内閣を組織しましてからすでに足かけ三年になりまして、もろもろの政策に対してはいろいろ声明されておりますが、その中で、ただいまほど外交問題に集中して国民のすべてが関心を持っておるときはないと思うのであります。振り返ってみまして、岸内閣外交政策としましてやらなくてはならない問題として国民が要望しておる問題は、ただいま日米問題の条約の改定の問題等もあげてありますし、あるいは日ソ平和条約の問題、日韓問題、日中の国交回復、こういうような日本にとっては重大な問題が山積しているのであります。  それで、岸さんにお尋ねするのは、これほど大きな問題が四つも、あるいは五つも出ておる。それで、あなたとしましては、まず第一段階にどれを中心にしてこの問題の解決に当られるのか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  200. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、外交上の問題としておあげになりました安保条約の問題、日韓の問題、日ソの問題、日中の問題の四つがあるわけでありますが、そのうちどれをやるかというようなお尋ねであります。これはいずれも日本が直面している、解決しなければならない問題でございますが、今日まで解決されておらないというのにはそれぞれの理由があるわけであります。私はすでに安保条約の問題につきましては、基本的な考え方において、日米の間において昨年来話し合いが進んでおりますし、さらに、これを具体的にするための努力をいたしております。日ソの問題については、基本的な問題について日ソの考えは依然として解決をされておりません。従ってこの領土問題というものはまだ今日のところ、当分これの解決ができる見込みが立っておりません。日韓の問題につきましては、現に交渉中でありますが、これまた御承知の通り、すでに最初の日韓会談を始めましてから七年か八年になると思いますが、会談を始めて数回行きつかえたというようなことから見ましても、相当困難な問題でございますが、これまた私どもは辛抱強く進めて、最も近い、近隣の韓国との問題が解決されるようにいかなければならぬと思います。日中問題につきましては、午前中来お話がありましたような点に関しましては、私ども考えを申し述べた通りでありまして、私はこれらの問題については、それぞれ相手方の出方、もしくは情勢の変化等にかんがみて、いずれも解決をしなければならぬ問題であると、こう思っております。
  201. 千田正

    ○千田正君 今、総理の御答弁は、いずれも大切であるが、相手方の出方によって方針をきめていかなければならない、こういう御答弁でありますが、国民も、またわれわれも、この問題はいずれも早く解決したい、そうして明確な線を出してもらいたい、これがひとしく望んでいるところであります。ところが、本日午前中から社会党羽生委員、あるいはただいま加賀山委員等からのお尋ねに対しましても、明確な線が出ておらない。昨年、総理大臣並びに外務大臣アメリカに行かれまして、そうして持ち帰った問題は、日米条約の改定という新しい事実に対して日本が対処しなければならないという、一つの日米外交転換という大きな問題をひっさげて帰られたはずであります。しかるに、今日に至るまでこの問題の中核を明瞭にしておらない。早くいえば、先ほども加賀山委員も申され、また午前中も羽生委員が申しておりましたが、私は他党のことを批判するのはあまりかんばしくないから、申し上げたくないのでありますが、現実においては、現在の岸内閣の母体であるところの自由民主党の中においてさえも、お互いにその方向に対しては違ったことを世間に発表しておる。    〔委員長退席、理事堀木鎌三君着席〕 私は、新聞が正しく報道しておると思うから、新聞紙上あるいはラジオ等以外においてそれを聴取あるいは見ることができませんけれども、その中においても、たとえば河野君のこれに対する批判であるとか、池田さんのこれに対する批判であるとか、それに対して外務大臣のこれに対する答えといわなくても、声明に近いような問題が新聞やラジオで報道されている。そのいずれをとっても、いずれが一体岸内閣の、しかも自由民主党を母体とするところのはっきりした今度のいわゆる政府の明快な対外方針であるかということが、まとまってきておらない。ある人は、今度の三十一国会の終りごろまでには何とかなるだろう、いや、このように党内において異論があるのでは、先に延びるんじゃないだろうか、こういうような区々まちまちの論争を繰り返していたんでは、岸さんがただいまおっしゃったような、対外政策を担当して、しかも国民に安定を与えるような政治責任を持ってやるというところまでいっていないのではないか。一体いつごろになったらこの問題の解決の緒を見出す、あるいは緒につくという見通しは一体いつごろなんですか、その点をお答え願いたいと思います。
  202. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、こういう問題でございますから、十分国民の支持を得てやらなければならぬということは言うを待ちません。昨年来いろいろその意味において、この安保条約改定問題について各方面の意見を聞き、そうして国民に理解してもらう、その必要なり大体の方向というようなものについて、誤解のないように理解してもらう努力を続けてきております。従いまして、党内におきましても、御指摘のように、まだ意見の完全に一致を見ない点もございます。これらにつきましては、もちろん責任を持って党の意見をまとめ、そうして相手方のアメリカ側との折衝につきましても、事務的のみならず、さらに政治的な折衝もしなければならぬと思います。従いまして、私はそれらのことをいつまでもこういう状態に置くことについては、またいろいろな誤解も生じ、またいろいろな疑惑も起ってくることでありますから、できるだけ早い機会に結論を得て、そうして国民の意向なり、あるいは世論の動向等につきましても、大体の見通しというものもつき得る状態になってきておりますから、これらを取りまとめて、できるだけ早く結論に達したいと、こう思っておりますが、今申しましたように、相手方もあることでありますから、いつまでにどうするんだというようなことは、この際申し上げることは適当でなかろう、こう思っております。
  203. 千田正

    ○千田正君 この日米安保条約改定に先だちまして、昭和二十六年に吉田・ダレス書簡の交換によって、日米条約の準備行動をなされた。その当時のいわゆる日米間における諸条約に先だって先行された準備行動のこの書簡というものは、現在においても生きておるのかどうか。この点私は、はなはだ不敏にして十分わかりませんが、一体、吉田・ダレス書簡というものは、今日においてもその効力が存在しているのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  204. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御指摘の吉田・ダレス書簡というものは、必ずしも今日効力を有しておるとは思っておりません。
  205. 千田正

    ○千田正君 そうだとするならば、吉田・ダレス書簡によって講ぜられたところの、国内的において日本にとっては不利な問題、あるいは今後起き得るであろうという国際問題について、改定すべき問題の根底をなすそうした準備の書簡というものは、この際あらためて声明する必要があるんではないか。そういうものはわれわれは関知しないんだ、今後はあるいはそれに準拠しないという意味のことを考える必要はないか。と申しまするのは、吉田・ダレス書簡によって、今日まで非常な産業界に影響を及ぼしている問題は、まず北洋漁業問題、あの問題におきましては、吉田。ダレス書簡によって、日本側の漁船はアメリカの沿岸等に行かないというような取りかわしが行われた後に日・米・カナダの漁業条約が締結されて、そのために今日に至っては、米国、カナダの方面においては、日本の漁船というものは行けない。行けないどころか、最近のいわゆる日・米・カナダ条約においては、むしろ逆に、西方に向って、そうしてその規制の海域を延ばそうという魂胆さえもうかがわれておる現状であります。こういう問題は、日米条約の改定に先だちまして、こういう問題の解決が先行すべき問題ではないか。さらに、吉田・ダレス書簡において、現在の中共政府は認めないという話し合いができているはずであります。これが今日も尾を引いて、今もって日中間の国交が再開もできなければ、また貿易さえもできないという根底をなしているやにもわれわれは考えざるを得ない。こういう問題に対しては、どういうふうにお考えになりますか。
  206. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時の書簡は、当時の政府の態度を表明したもので、お話のように、日・米・加漁業条約というものもできました。いろいろな情勢も変っておりますので、必ずしもあの書簡が、そのまま今日その書簡通りに順奉されていくという必要はないんじゃないかと、こう思っております。
  207. 千田正

    ○千田正君 そのうちで、私は、ただいま非常に力強いお答えをいただいたので、私は今日最も悲惨な状況に置かれているところの漁業者の問題、たとえば先般来論争になっておりますところの韓国との間のラインの問題、あるいは中共との間は、昨年の六月十三日をもって民間の漁業協定は放棄されている。さらに今の日・米・カナダ条約等によって日本が行けない、あるいは太平洋におけるところの原水爆弾の実験等によって、これまた太平洋で十分にできない。そうするならば、この漁業というような国際的な産業というものは、どこかに新しい漁場を見つけてやらなかったならば、国内の産業の調整がとれないんじゃないか、こういう大きな問題になってきておると思うのでありますが、それで、私はさらに話を一歩進めまして、日ソ間の漁業条約というものは、今日に至っても、約五十日を経ても、今もって結論が出ていない。この点につきまして、四月の末になりますというと、出漁の準備をしなければならない。どうもソ連側の出方を見ますというと、そのころまでゆっくりと待っていて、最後に政治折衝に持っていって、自分らの計画通りに主張を通そうというふうにも見える。これと同時に、アメリカ側やカナダ側が規制しているところの日・米・加漁業条約というものは、ソ連にのみ重大な要求をして、向うには要求しないじゃないかというようなことも彼らは批判的に言うている。そこで私は、北洋漁業の中核をなすところの日ソ漁業の問題に対しては、政府はどういう観点に立ってこの問題を処理しようとしているのか。この点は外務大臣からお伺いしたい。
  208. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、日ソ漁業委員会は、一月以来継続されておりまして、今日までの段階におきましては、いろいろ学術的な双方の研究の立場、種族保存と申しますか、そうした立場の細部にわたっての相当の討論をいたしております。回数は相当重ねておりますので、最近それらの問題について討議が終りに近づきまして、やがて規制の問題等に入っていくことになろうと思います。ソ連側が故意にこれを引き延ばしておるというふうには考えませんが、なかなか専門家の寄り集まりでありますから、相当議論が細部にわたっておるので、長引いておるように思っておりますが、なお詳しい内容等につきましては、農林大臣の方が御承知だと思います。
  209. 千田正

    ○千田正君 農林大臣に同時にお尋ねいたしますから、お答えをいただきたいのは、先般、農林大臣は、衆議院だったと思いますが、オホーツク海に対しては本年も日本側が行かない、オホーツク海の漁業はやらないのだと、こういうようなことをお話しになったということでありますが、これは非常に私は重大な発言であると思うのであります。なぜならば、昨年のいわゆる漁獲量の規制をする際に当りまして、日本側としましては政治的に、どうしても十万トン以上とらなくちゃならないのでありますから、そのためにはやむを得ないからオホーツク海に出漁することは見合せよう、ただし十分なる調査の上でこの問題は解決しよう。というのは、おそらく私もこの委員会において聞きましたが、そのようなお答えがあったはずであります。しかし今日に至りまして三浦農林大臣は、オホーツク海には今年は漁業をやらないのだということになりますると、これはある意味においてオホーツク海における日本の漁業権益というものを放棄したにもひとしいところの発言であると思いますので、あわせてこの問題に対してのお答えをいただきたいと思うのであります。
  210. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) お答え申し上げます。サケ・マスの資源を保存するという見地から、これは先年来ソ連側で強くオホーツク海の禁漁を主張せられて参ったのでございます。昨年、最後にこの問題につきましてソ連側の意向を入れまして、そして魚族保存のために母船式の漁業はしない、こういうことに相なりまして、本年は従いまして、これらの海域にはサケ・マスの魚族保存のためにさような取りきめをいたしたものでございますから、わが方としては出漁いたさない、こういうふうにいたしたいと考えるのであります。しかしサケ・マス以外のものにつきましては、タラであるとかその他の魚族がありますが、これは別でありますことは申すまでもございません。
  211. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 議事進行。委員長にお願いしたいのですが、ただいま千田委員が総括質問を熱心にやられておるわけです。総括質問総理中心にやるわけですが、総括質問ですから各国務大臣は、まあ互いに各会派の了解を得て、本院なり他院の委員会に出席するとか、あるいは本会議に出席するとかは差しつかえないと思いますが、五時過ぎたところがちょろちょろと抜けて出ていきましたが、これは私芳ばしくないと思うのですよ。衆参に会議があってやむを得なくて退席する人は、それぞれの会派に了解を得て行くのが、これは慣例になっておるわけですから、そうでない大臣は、総括質問ですから、たとえ質問通告がなくても、いつ質問が飛ぶかもわからぬわけだから、全員国務大臣は出席しておるベきだと思うのです。千田さんは小会派出身なのだからといってなめるならば、わわれわだって考えがありますよ。印刻各大臣の出席を求めていただきたい
  212. 堀木鎌三

    ○理事(堀木鎌三君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  213. 堀木鎌三

    ○理事(堀木鎌三君) 速記をつけて。
  214. 千田正

    ○千田正君 もう一つ、これは総理大臣、大蔵大臣、外務大臣もおられますからお伺いいたしますが、先般来この吉田・ダレス書簡に基きまして、先ほど申しました日・米・カナダの問題のほかに、ラッコ、オットセイ等の海獣を捕獲してはいけないという話し合いがついて、そうして国内においてこれを法律をもって規制した。しかしながら、この規制に際しましては、国際条約に基いて、日本側がかっての領土であったところのこうした海獣の生息する土地を失ったのだから、そのかわり一五%の賠償として金をやろうじゃないか、こういう話し合いになってきた。それで大蔵省としましては、昨年の予算委員会におきまして発表しました通り、五億円という一つのこうした業に従事しておったものの転換の費用として予算を組んで提示したわけであります。これはもちろん、日本国民の税金から取ったところの金ではなくて、むしろ外国から、この国際条約に基いて国内の産業を規制する、そういう意味において、この条約を守るようにという意味で、外国から、相手国からよこされた金でありますが、この五億円の処置をめぐって、完全にしからば国内におけるところのそうした違反船あるいは密猟等を取り締るところの方法がとられておるかどうか、私は今日はなはだ疑問だと思うのであります。先般来農林省、水産庁のわれわれに対する報告によりますというと、百七十三隻のうちにおいてわずかに過半数しかこれの適格船を見出せなかったから、それに対してはそういう金を出してやる、あとのものは何もしない、こうなりまするというと、適格じゃなかったけれども、それを業としておった者たちは何をやるか、生活に困る上必ず密猟をやります。その責任をだれが負うか、農林省が負うわけじゃありません、外務省が負うわけでもない。いわゆる岸内閣それ自体の政府が負わなくちゃならない。それにもかかわらず、国内のそうした転換等に対する処置が十分じゃない。しかも、最近に至っては農林省は省令をもって罰則をきめて、これを発表しております。こういうことは私どもは非常にふに落ちない。第一条には「日本海を除く北緯三十六度以北の太平洋においては、毎年二月二十日から六月二十日までの間は、もりづつ以外の銃砲を使用しているかを猟獲してはならない。」、第二条は「前条の規定に違反した者は、一年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」、このようなことを農林省令第四号で二月十二日に発令しております。即日これは実行する。もし、こういう厳罰に処すというような省令が行われたために、適格船ならざるところの貧弱な漁師たちが農林省の処置から漏れたために。彼らは生活をしなければならないから、海上においてラッコ、オットセイの海獣を捕獲した場合に、一方においては五万円以下の罰金あるいは懲役に処せられる、こんなばかなことを国内で一体やられておって、果して国際問題が起きた場合にだれが責任を負うか。これは総理大臣が責任を負われますか、この点を一応明確にしていだきたい。
  215. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) お答え申し上げます。  今のラッコ、オットセイの関係でございますが、これは従来の実績を精査いたしまして、そうしてだんだんの取り進めをいたしたのでございますが、その実績の調査に当りましては細心の注意を払い、各般の条件等を精査したのでございますけれども、それを立証し得ないようなことがあったわけであります。従いまして、事実さえはっきりしますならば今の適用いたしたのでございますが、事実これらの事情を判明し得ないものは、遺憾ながらその措置をとれなかったのでございます。しかし他面、これらは国際条約等の関係がありますので、これを的確に守りますためにとりました措置でございますから、この点を御了承いただきたいと存じます。
  216. 千田正

    ○千田正君 当初において大蔵省に要求した予算が五億円近い、四億九千八百四十四万一千円と昨年は発表しております。決定額としましては四億七千八百四十二万四千三百二十円、こうして一応のいわゆる適格であると認めたものに対しては、それぞれの方法をとって、あるいは漁業転換等によって持っていった残りの二千万――約二千二、三百万でしょうが、これが残っておる。こういうような金は少くとも将来密猟をするおそれのある、あるいは国際条約を破るおそれのあるような、そうした貧しいところの漁師の転換に向けるべきではないか。そうしない限り、再びこれは国際問題として現われてきた場合において、また海獣漁獲を中心とした国際条約会議があった場合に、紛争する以外の何ものもないと私は思うのであります。しかも、この海獣なるものは一体アメリカではどれだけやっているか。一頭の毛皮は今の日本の金で七十万円でやっています。ニューヨークの市場においては七十万円――二千ドル、しかもアメリカの会社しかこの皮は売らないようにしておる。それらのために、日本の国内においては三百人以上の人たちが国内の処置から落されて、そして食えないから再びあるいは密猟をしなくちゃならないというような方向に追い込まれることがあったとするならば、アメリカの一毛皮会社のために、日本の国内のこうした漁民が罰金五万円であるとか、あるいは懲役であるとか、そういうことに処せられるということは、はなはだ私は矛盾したところの政策だと思う。こういうものは是正すべき問題じゃないか。私は農林省の省令なるものを撤回すべきであると思います。大臣はどう思いますか。
  217. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 当時の条件と合わぬものにつきましては、事実これを立証すべきものがございませんから、遺憾ながらそれらの問題につきましては、実績のはっきりしているものをつかまえて、そしてこれを対象にして保護の措置を講じたのでございます。同時に国際間の条約によって保護すべきことと定められておりますから、これは国際信義の上からも措置をとるのは当然だと考えるのでございまして、御指摘のようにわからないもの、その実績をはっきりさせないものにつきましては、遺憾ながら措置のしようがないものでございますから、この点はある程度まで行政的措置をとる上にやむを得ざる実情でもあったと思うのでございます。
  218. 千田正

    ○千田正君 今、三浦農林大臣からそういう御答弁がありましたが、私どもは詳細な情報並びに調べておるところによると、いろいろな問題があります。これはあとから一般の質問あるいは農林委員会において十分に討議いたしますけれども、いずれにしましても、現在、一九五〇年においてアメリカ側が認めた、一つの島に三百万頭というこのラッコ、オットセイが、毎年毎年日本の三陸沿岸から北海道にかけてこれが群をなしてきた場合に、日本の漁業資源というものは食い荒される。海獣三百万頭が遊泳してきた場合においては一日三百万貫という――一貫ずつ食われても三百万貫という日本の漁業資源というものは失われる。しかもその根本を追及していくというと、アメリカのブロード・ウエイに毛皮一着分七十万円で売られるというような、アメリカの一会社を守るために、日本国民がそういう影響を受けなくちゃならないということはあり得ないじゃないですか。これこそわれわれは真剣に日本政策として考えなくちゃならない問題じゃないか。そういう意味からいいまして、私は、先ほどいわゆる吉田・ダレス書簡に基いてこの問題が一つの条約として作られている。当時参院は反対いたしました、これに対して。にもかかわらず、一応の泣き寝入りをせざるを得ないような情勢のもとに圧迫された国辱的な法律である。条約である。こういう問題は、すべからく外務大臣から十分に、先ほどのお答えであるとするならば、まず改正すべきものは改正すべきであると私は主張したいのであります。一応その点を研究していただきたい。  次に、私は、この日韓問題でありまするが、現在日韓間の問題は一応中絶している。先般来政府側も声明しておりますからわかっておりますが、しかし、このラインというものは、国際公法上から見ても、日本としては認めないし、また認め得られないところのラインである。そこで日本側が公海自由の原則あるいは操業自由の原則からいきまして、そこですなどりしていた善良なる日本の漁民が、ゆえなくして拉致されて、今百五十三名という者は韓国の牢獄につながれている。この釈放という問題はいろいろな問題を含んでおりますが、この間、外務大臣がおっしゃった、北鮮に行きたい者は帰すのだ、人道的立場日本がそういう政策をとる。こういうまことにりっぱな行動であると賞讃さるべき問題でありますが、これと日本側の漁夫を抑留された件とはおのずから性質が異なると私は思うのであります。それで、この問題の解決につきましては、外務大臣はどういうふうなお考えを持っておられるかということをお伺いしたいと思います。
  219. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日までも拿捕の不合理であること、また李ラインも、われわれ認めておらぬことははっきり今日までも言っていることであります。そこで、今回日赤の井上外事部長が、北鮮帰還の問題につきましてジュネーブに参ります際に、釜山におきまする抑留漁夫百五十三名の帰還の問題について、国際赤十字にあっせんをするようにお願いを私からボアシエ委員長に対して手紙を持たして、井上外事部長は北鮮帰還の問題とあわせてこの問題を国際赤十字に伝えているわけであります。いずれ国際赤十字と協議の上で何らかの措置をとって参りたい、こう思うのであります。
  220. 千田正

    ○千田正君 今の問題は、韓国側はこれを犯罪者として取り扱っている。で、日本側としましては、われわれとしては犯罪者とは認めがたい、こういう観点に立っておりますが、日韓問題が再開した場合におきまして、おそらくこれは不幸にして私の推定が当ればですが、かりに北鮮への帰還問題とそれから抑留、拿捕したこの百五十三名の日本への釈放との間の交換条件が、必ず私は日韓問題再開と同時に韓国側の要求として出てくるだろう、議題に上るおそれがある。そういう問題が起きた場合に、今からどうということは言えないだろうけれども、かりにそういう問題が起きた場合に、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  221. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本におられます朝鮮の人が、日本から国外に出られまして、自由に自分の居住地を選択するというようなことは、これは国際通念に従ってわれわれ処理してきているのであります。釜山の抑留漁夫の問題とは全然別個の問題だと思います。従って、われわれとしては、釜山の抑留漁夫の帰還の問題については、その問題として取り扱っていく、両者関連はないと考えております。
  222. 千田正

    ○千田正君 外交問題でもう一つお伺いしたいことは、今までの問題は相当はなやかな外交問題でありますけれども、もう一つじっくり考えるというと、日本の経済外交、これが一つ岸内閣の、あるいは岸・藤山ラインにおけるところの、外交政策の裏づけとしての経済外交というものは、はっきりしなくちゃならないのじゃないか。そこでお尋ねいたしますが、先般来、あるいはこの二、三日前に、アメリカの上院、議院におきましては、日本の繊維品に対して従来は日本の自主的の規制に待っておったけれども、どうも日本側がそういう反省もありそうがないので、アメリカ側においては防衛上、かつまた自国の経済の確立を保護する上から、日本その他から輸入してくるところの繊維品に対しては、規格を当てはめてワクをきめなければならない、こういうことをアメリカの上院は主張しております。こういうことになりますると、相当日本の繊維業界の輸出というものはストップしてくる。あるいは相当難渋してくる。この面に対するところの打開の方法としては一体外務省はどういうことを考えておるのか。  それからもう一つは、先般来岸総理大臣は東南アジアあるいはその他の東洋の国々に対しては、国連を通じて、国連の外交主義を通じて日本も東南アジアの開発には一役買ってやるのだと、こう言って堂々と声明されましたけれども、その実際やった仕事はどれだけか、インドに対して百八十億、その他五十億と、きわめてわずかな問題しか取り上げておらない。しかもその他においてはどしどしイギリスあるいはドイツ、その他の国々は東南アジアに殺倒してきておる。共産主義の国々もまたこれ殺倒してきておる。こういう状況下において、日本の経済外交はどこに目安を置いて進んでおるのか、この点であります。たとえば最近、時間がありませんので簡単に言いますが、カナダにおきましてもドイツにおきましても、フランスにおきましても、英国におきましても、中共に対するところの貿易高は昨年よりも倍もふえておる。日本側は中共との貿易は先般来のお話通り、積極的静観という立場をとって、進んでいない。東南アジアにおきましても、インドネシアに御承知の通りソビエト側あるいは中共側においてはクレジットを組んで、そうしてどしどし素質の悪いところの、番手の低い綿製品が入ってきて、日本の綿糸布というものは東南アジアの市場からノック・アウトをくらいつつある。一体経済外交はどこに主眼を置いていくのかこの点をはっきりしていただきたいと思うのであります。
  223. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 綿製品の対米輸出の問題は御承知のようにここ数年来自主規制をいたしまして、数量等の話し合いをいたして、漸次その数量を増加するという立場をとって、アメリカの業者との摩擦を避けてきていることは御承知の通りであります。本年もその意味においてただいま会議が持たれております。総数量につきましては必ずしもアメリカ日本とそう違わないところに現在来ておりますけれども、内容別に見ますと、たとえば別珍であるとかギンガムであるとか、そういう種類の日本が要求するものの数量がどちらかといえばふえないで、日本の輸出しておりましても、別珍であるとか、ギンガムほど非常に輸出されているものでないようなものの数量がふえておるというような、総数量においては必ずしもそう大きな開きのないところまで来ておりますが、それの内容別によって若干まだ交渉が停滞しております。しかも相当困難な交渉だと思います。従ってこれらのものが円滑に参りますれば、上院等におきますそれらの反対論も一応解消して参るのではないかと思いますが、それらのことは今後の情勢に従って見て参るよりほか方法はないと思いまして、われわれも最大な努力をいたしまして、困難ではありますけれども交渉を継続いたしております。  東南アジア方面の経済外交、あるいは日本の経済外交事態はどういうふうに考えるかということであります。御承知の通り、経済外交には貿易の振興と経済協力という二つの面があろうと思います。東南アジアに対する経済協力の面というものは、われわれできるだけこれを推進して参りたいと、こう考えておりますことむろんでありますが、ただ御承知のように日本の財政事情等もございます。従って必ずしも先ほどお話のございましたように、インド等に対する五千万ドルのクレジット、あるいはそれから追加して千万ドルできましたけれども、そうした面が必ずしも十分に利用できないことは御推察いただけると思います。従ってわれわれとしては技術的な方面の協力、それによりましてできるだけ現地の経済の開発発展ということをはかって参るわけであります。来年度の予算にも、若干ではありますけれども、技術センター等の予算を盛りまして、そうしてそういう経済協力につきましては、できるだけのまあ貢献をしていきますように考えておるわけであります。  なお中共との貿易に関しましては、先ほど申しておりますように、機会が参りますればわれわれはこれをつかまえて、そうして中共との貿易もできるだけスムースに開始して参りたいと思います。また同時に東南アジアに対する貿易等につきましても、それぞれの国が必ずしも今日財政金融上十分な健全な立場にもございませんけれども、われわれとしてはできるだけ貿易の振興という面から見ますれば、貿易の打つ手と、またそれらに対する品物等の選択等を考えまして、十分な市場開発をやって参りたい、こう考えております。
  224. 千田正

    ○千田正君 これはこの際総理大臣及び青木地方自治庁長官にお伺いするのでありますが、あわせて警察関係のどなたかお見えになっていたら、お答えいただきたいと思います。  それは最近非常に自治体の長が犯罪を犯して、そうして逮捕されている。先般も二月十七日の新聞等によりまするというと、相当な人たちがつかまっちゃって、そうしてはなはだしいのに至っては刑務所に拘置されながら、拘置所の中から議会の解散等を指令しておる。大へんなこれは国内におけるところの綱紀の弛緩であると私は思います。いやしくも民主政治といいながら、その中から選ばれてきた長なる者は、少くともその自治体の運営なり、またそこの地域住民の幸福、安定をはかるべく選ばれた人間である。にもかかわらず、ある者は公金を私用し、あるいは詐欺罪をやり、いろいろな犯罪を重ねて、そうして司直の手につかまって、はなはだしきは刑務所の中からでも立候補したり、あるいは議会の解散を要求したりしておる。このようなことは近来見ることのできなかったところの、いわゆる地方自治体の腐敗であると私は思います。これに対して総理大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。あなたは今まで幾たびとなく清潔な政治をやるのだ、暴力や汚職は追放しなくちゃならないと、声をからして幾たびも私たちにあなたは声明をされた。しかしそのような実態日本の各方面に現われてきたということは、どういうことか。あるいは政治において何か欠けている点があるのじゃないか、こういう点をわれわれは疑わざるを得ませんので、総理大臣からこの際こうした問題を防ぐ方法、あるいは処罰する方法、幾多の問題があると思いますが、解決の方針はどういうふうに持っていくかという点をお伺いいたしたいと思います。
  225. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 最近地方公共団体の首脳者等におきまして、あるいは汚職の疑い、その他犯罪の嫌疑を受けて検挙されたり、あるいは起訴されたりしておるところの者が相当数に上っておるということは、私も千田委員と同様に、綱紀の粛正及び汚職追放という点から、はなはだ遺憾と考えております。しかしこれらの事態、そういう疑いのあるものにつきましては、これはあくまでもその事実を鮮明し、そうしてこれに対して法によって処断し、もって他を戒しめていかなければならないことは言うを待たないのでありまして、いやしくもそういうことの事実をうやむやに葬るようなことのないように、出てきたものに対しましては、峻厳な法の制裁を加えると同時に、全体のこういうことに関しまして、地方公共団体の首長、その他公務に当るところの人々の執務心がまえ、もしくはその仕事の監査なり、監督なりという点につきましては、特に自治庁をして十分これに対して将来そういうことを繰り返さないような方法につきまして、特に注意を促しております。いずれにいたしましても、これらの事態に関しましては遺憾ではありますが、現在出ておる者に対しましては、先ほど申しましたように、厳に法の命ずるところによってこれを処断して、そして一般を戒めると同時に、将来そういうことのできないように、地方公共団体のやる仕事につきましても、地方自治庁において十分一つ注意して、そしてこれに対する処置を講ずるように、私としては自治庁長官に対してそういうことを将来絶滅する方途についても十分一つ考えるようにということを要請しておる次第でございます。
  226. 千田正

    ○千田正君 青木長官一つ
  227. 青木正

    国務大臣青木正君) お話の点につきましては、私ども全く御同様遺憾に存じ、また憂慮にたえないのでございます。特に私として考えますことは、新しい憲法によりまして、日本の新しい自治制度がしかれ、いわゆる住民自治、団体自治によりまして、自治の本旨にのっとりまして発足いたし、今日まで日本の自治制度に相当の発展を来たして参ったのであります。たまたま二、三の者といえども、そういうことがあるために、日本の自治制度が、せっかく新しい自治制度が、こういうことのために、日本には自治制度が適当しないのじゃないかというような、万一非難等が起ることになりますと、これは日本の自治にとって非常に重大問題でありますので、こういう事態を何とかしてないように心がけなければならんということはいうまでもないのであります。しこうして最近起りました、昨年の十二月から最近まで起りました自治体におけるそうした事件、大体十二、三あるかと思うのでありますが、共通した原因というものがどこにかないかということもいろいろ検討したのでありますが、必ずしも共通した原因があるわけではないようであります。またこれに対して対策としてどうすべきか、私自身も考え、また事務当局としていろいろ検討もいたしておるのでありますが、私ども考え方といたしましては、要は現行制度そのものについて欠陥があるのじゃないか、この点もちろん考えて参らなければなりません。また運用の面において欠点があるかどうか、これも考えなければならないと思うのであります。また私ども自治庁の立場に立って指導あるいは助言の点において欠くる点があるかどうか、これも反省しなければならんと思うのであります。また自治体自体として現行制度の運用において誤まった点があるかどうか、こういうことに対してもやはり自治体自体にも考えていかなければならんと思うのであります。さかのぼってさらに根本を申し上げますならば、あるいはまた長というものの選挙に非常に金がかかるという問題も問題かと思うのでありまして、そういう点も掘り下げて考える必要もあると思うのであります。あるいはまた住民が自治体を監視するに当りましてのいわゆる直接請求の制度、こういう問題も乱用に陥ってはもちろん非常に弊害がありますので、それは避けなければなりません。しかしせっかくの直接請求の制度というものが新しく運用されておるかどうか、また運用する上において無理があるかどうか、こういう問題も検討しなければならんと思うのであります。そこで当面の問題といたしまして、ただいま総理も申しましたように、いろいろ私も苦慮いたしまして、先月の二十七日に閣議の了解を得まして、自治庁から都道府県知事あてに通牒をいたしたのであります。その通牒の骨子は、もちろん従来から地方自治体の長としてそういうことのないように十分の戒心をいたし、注意をいたしおることとは考えられるが、さらに一そう一つ注意していただきたい。それからまた第二点として現行制度のもとにおけるいろいろな監査制度がありますので、この監査制度を十分に活用して注意していただきたいという点。それから第三点といたしまして、近く議会の改選が行われますので、    〔理事堀木鎌三君退席、委員長着席〕 改選に当りまして自治法で定められた以外のいわゆる退職金というようなものを出すことによって問題を起すというようなこと等につきましても、十分注意していただきたいということを、指導助言の意味において通牒をいたしたのであります。なおまた自治庁といたしましては、前々からのことでありますが、特に会計制度の問題や、直接請求制度の問題等につきまして、すでに検討もいたして、おりますが、さらに一そう検討いたしまして、誤りなきを期するように、私どもとしても努めて参りたい。また自治庁自体の方々にも、一つ日本の自治制度の健全なる発展のために十分戒心していただきたい、と同時にまた住民の方々にも自治の本旨にのっとりまして、地方自治体の健全なる運営のために御協力をお願いいたしたい、かように考えております。
  228. 千田正

    ○千田正君 それに関連しまして、私はこれは自治庁長官もある程度考えなければならない問題であると思いますが、最近全国の各都市、主として都市においての青少年の犯罪が非常に多い。先般東京都内に起きました通り魔事件などは、いまもって検挙されていない。こうした問題が最近世間の人たちの非常に不安をかっておるわけであります。これは何が原因か、こういう点についてもはっきりした考えを持っていただきたいと私は思いますので、特に警察庁からお見えになっておるとするならば、一体こうした青少年の犯罪についての現状並びに検挙数あるいは今後におけるところのそれに対する対処方針等について一応述べてもらいたい。
  229. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) お答えいたします。青少年の犯罪が数におきましては昭和二十六年を山として一時漸減の方向をたどっておったのでありますが、数年前からまた非常にふえてきて、現在ここ一、二年というものは、数においては大体横ばいの状態であります。しかしながらその罪質と申しますか、犯罪の様相が非常に凶悪化し、あるいは粗暴化しておる、特に性的犯罪が非常に多くなっておるということは、第二の国民についての問題でありますだけに、国家の将来のため非常に憂慮すべき問題と思うのであります警察といたしましては、これらの青少年の非行化防止につきまして、警察の立場において努力をいたしておるわけでございますが、やはり根本は社会全体の何と申しますか、風潮が善美な方向に向っていくということが、やはり基本ではなかろうかと思います。と申しますのは、終戦直後におきましては、主として貧困な家庭あるいはいわゆる浮浪児とか、そういうふうな戦災で非常な苦しみを受けた生活苦からきた犯罪というものが非常に目立っておったわけでございますが、最近になりますると、もちろんそうした家庭の状況等の原因はあると思いますけれども、必ずしもそうした生活に困る家庭のみでなくて、中流または上流の家庭において非行を犯す少年が相当多く出ているということが顕著になっておるわけでございます。また年齢層にいたしましても、少年の十八から二十というような層において、従来は非常に凶悪化あるいは数においても増加の傾向にあったのでありますが、最近はむしろ十六から十八というように低年層に増加の傾向、悪化の傾向が強くなっておるというような状況から見ましても、これはいろいろ深い原因があるのではないかというふうに考える。従いましてこれの抜本的な方策というものは、決して警察のみにおいて考えらるべきものではなくて、たとえば内閣にございます青少年問題協議会、これは御承知と思いますが、民間の有識者、さらに関係各省の次官をもって構成いたしておりますが、こういうような総合的な検討をいたすところにおいて、根本的な方策を樹立し、これと並行して、あるいはこれに随順して警察の活動というものも、少年の非行化防止、保護補導というところに力を注いでいかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  230. 千田正

    ○千田正君 一点だけ伺います。この問題は私は相当日本国民にとっては重大な問題であるし、その予防あるいは環境の整備等に対しては、あらゆる処置をして、そういうことが少くとも減少するような方向に特段の注意をしていただきたいということを要請します。  最後に大蔵大臣並びに外務大臣、農林大臣にお伺いするのですが、もちろん岸総理から短かくてもいいからはっきりした御答弁をいただきたいのは、日本の人口の増大につれまして国土が狭い。そこで一つは国内から外へ行く移民政策、これも日本の現在としては当然やらなくちゃならない一つ政策であると私は思うのであります。従来は外務省、農林省ともにいろいろな機関を通じてやっておりますけれども、まだその緒についたばかりで、相当のところまで進んでおらない。もう一つはそれをバックすべきところの経済面の援助がほかの外国の移民政策比較しますと少いのじゃないか。たとえば今まででも、戦前でもブラジルなりあるいはアメリカなりその他に日本の銀行の支店を置いていろいろ外地におけるところの働いた者のいわゆる祖国へ向うところの為替送金等の事務をやらせておったけれども、実際インベストメントの面は非常に欠けておった。今日中南米にしろあるいはアメリカにしろ、各外国から来ておるところの移民が成功しまた着実なる歩みを続けておるというのは、祖国であるところの母国のそうした経済的な面の応援があるからである。早い話がバンク・オブ・イタリアンなどの国立銀行が、自分の方の移民をやると同時に、為替送金の取扱いの銀行であるのみならず、立ち上ってきた移民の諸君に対しては、また暖い経済的な応援の手を伸べておる。そういうような面でどんどん着実な地歩を占めておるのが現状であるとするならば、日本の農業移民にしろ、技術移民にしろ、もっと力強いそういうような応援をすべきところの機関が必要ではないか。そうしてこそ初めて日本の移民政策は軌道に乗ると思いますが、その点について何らかの機関を設置するだけの考えをもっておられるかどうか。総理大臣からも特にその方向についてのお答えをいただきたいと思うのであります。
  231. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 海外に移民を奨励するということにつきまして、私も千田委員と同様にきわめて熱心にその必要を認めておる者でございます。従いまして従来といえども特殊の会社である海外移住会社というものを作っておりますのは、同時に今御指摘になりましたように、日本からの移民の送り出しの仕事のみならず、向うに定着した後における移民の産業について援助をする点についても、もちろん考えているのでございます。しかし現在の移住会社の活動だけをもって十分であるかと言えば、私はこれでもって十分であるとは決して考えておりません。しかし今お話のように今の日本の移民政策として海外移住会社というものの内容をもう少し充実し、その活動を十分にやらしめることが必要であろうと思いますが、特に今千田委員お話のように特殊の金融機関等の特殊機関をこのほかに置く必要があるかどうかという問題につきましては、なお、私は考究してみなければならぬと思うが、第一段としては海外移住会社を整備充実し、その活動をもう少し活発ならしめるということが第一段であろうと、こう思います。
  232. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在移住会社でもって、移住地において約六億、渡航前三千万円、計六億三千万円のそうした移住者に対する貸し出しをやっていると思います。移民政策全般については、やはりお説のように再検討して、そして十分今後の移民政策というものを充実して参らなければなりません。移民関係の仕事というものはいろいろ送出事務もございます。また輸送関係もございます。あるいは現地における土地の、取得、整備というような問題もございます。今お話のような移住者に対する金融の問題も大きい問題と思います。これらのものが並行して参りませんと、やはり相当数の者を送り出し、また相当数の者が十分安心して定着することができないのでありまして、今日移民問題は決して軽々に扱うべき問題でなくして、再検討しながら総合的に案を立っていくというような時代にだんだんん来つつあると思うのでありまして、われわれとしてもそういう点に注意しながら今後お説のようなことも考えて参りたいと思っております。
  233. 千田正

    ○千田正君 最後に要望だけ申し上げます。ただいま海外移住会社一本で一応そうした窓口を考える、こういうお答えがありましたが、従来の海外移住会社は、悪口を言えば、外務省の官僚のいわゆるうば捨て山だ、こういうような定評まであった。最近においてはだいぶ変ってきたようでありますが、やはり外務省あるいは農林省等の所管の官庁の職員が熱意をもってこういう問題を考えない限りは、この問題は解決できないじゃないか。セクショナリズムで、わずかばかりの金の運営を誤るということは、日本の移民政策に大きなひびを生ずることで、むしろ協力態勢で、日本の国内の人口の調整等に基いて、日本の国外発展ということを基準として参らなければならぬことであるから、私は移住会社一本なら一本でもいいのですけれども、今までのようなお役人の人たちのセクショナリズムで、けんかばかりやっているのだったら、ない方がいい、やるならばもっと真剣にわれわれの民族が海外発展するような、あとのあとまで見てやるような政策をはっきり立っていただきたい、これだけ強く要望します。
  234. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 千田君の質疑はこれで終了いたしました。市川房枝君の質疑は都合によりまして明日に繰り延べることにいたします。  明日は午前十時より委員会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十九分散会