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1959-02-25 第31回国会 参議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十五日(水曜日)    午前十時三十八分開議     —————————————  議事日程 第十三号   昭和三十四年二月二十五日    午前十時開議  第一 土地調整委員会委員任命に関する件  第二 通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件  第三 未帰還者に関する特別措置法案衆議院提出)  第四 地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 港域法の一部を改正する法律案内閣提出)  第六 首都圏既成市街地における工業等の制限に関する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。  議席第二百三十三番、全国選出議員上條愛一君。    〔上條愛一君起立拍手〕     —————————————
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 議長は、本院規則第三十条により、上條愛一君を建設委員に指名いたします。      ——————————
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、お諮りいたします。  一松定吉君から、病気のため、十九日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。      ——————————
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 内閣から、飼料需給安定審議会委員堀本宜実君の辞任に伴う後任者を指名されたいとの申し出がございました。  つきましては、この際、日程に追加して、飼料需給安定審議会委員選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
  9. 田中茂穂

    田中茂穂君 飼料需給安定審議会委員選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
  10. 阿部竹松

    阿部竹松君 私は、ただいまの田中茂穂君の動議賛成いたします。
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 田中君の動議にご異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、飼料需給安定審議会委員関根久藏君を指名いたします。      ——————————
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、土地調整委員会委員任命に関する件を議題といたします。  内閣から、土地調整委員会設置法第七条第一項の規定により、山崎丹照君を土地調整委員会委員任命することについて、本院の同意を得たいとの申し出がございました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。      ——————————
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 内閣総理大臣及び大蔵大臣から、過日保留いたしました答弁のため発言を求められました。この際、発言を許します。佐藤大蔵大臣。    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最初に、二月六日の当院本会議における矢嶋三義議員の自衛隊戦闘機問題に関する緊急質問に対してお答えいたします。  いわゆる植村構想についての所見はどうかというお尋ねでありますが、伝えられるところの植村構想とは、米国対外援助削減方針により、従来わが国に対して無償援助された防衛物資が漸減せられ、これが有償援助に切りかえられることに伴い、有償わが国米政府から購入する防衛器材の代金を円払いとし、米国政府は、この円を日本国内に積み立て、この積立円をもって日本兵器業者東南アジア向け兵器を発注することを骨子とするものであると思われます。これに対する財政当局としての考え方を申し上げますと、このような方式を採用するために米国無償援助をことさらに有償援助に切りかえるということは、予算上、防衛関係費相当の膨張を来たすこととなるので、にわかに賛成いたしかねるのであります。しかしながら、無償援助は逐次有償援助に切りかえられている現状でありますので、その有償援助に切りかえられた部分について、これを国内産業の育成のために活用するという考え方につきましては、十分考慮に値するものであると考えます。いずれにいたしましても、詳しい内容を承知いたしました上で、今後慎重に検討を続けて参りたいと存じます。  次に、ガリオア、イロアの問題につきましては、先般、外務大臣からお答えいたした通りでございます。     —————————————  次に、二月十三日に行われました国民年金法案に関する御質問お答えいたします。  まず小林英三議員の御質問についてお答え申し上げます。  御質問の第一点は、援護年金生活保護制度との関係についてでございましたが、無拠出援護年金は、生活保護の被保護者にも支給されますが、恩給等と同様に収入として認定されます。これは、生活保護法建前上やむを得ないものであります。しかし、援護年金実質的支給を望む被保護者の心情を考えますと、一律にすべて収入として認定することには問題があり、特に生活保護制度においては、障害母子については加算制度がありますのに対し、老齢については現在老齢加算制度がないので、今後老齢加算制度を新設し、幾分でも実質的に老齢援護年金が受給できるようにする必要があるのではないかとも考えられます。いずれにいたしましても、生活保護収入認定されますのは三十五年度に入ってからでありますので、三十五年度予算編成の際、老齢加算制度の創設につき、その全額等十分検討を加える所存であります。御質問の第二点は、積立金運用でございましたが、国民年金積立金は、国民の零細な拠出金とこれに伴う国庫負担との集積であります。従って、これが管理運用については、御指摘のように、一部を拠出者福祉のために還元することも必要であるし、また、資金大宗は有利かつ確実安全に運用することが必要であります。資金運用部資金は、申すまでもなく、近代的な基幹産業ばかりでなく、中小企業農林漁業、住宅、地方債等への運用を通じ、広く国民大衆の利益のために役立てられておりますので、一部還元融資を行うとともに、大宗資金運用部において運用すべきものと考えております。  御質問の第三点は、本制度施行後、将来、貨幣価値について著しい変動がありました場合、これに対してどのように対処していくかということについてでございましたが、政府は、長期にわたり通貨価値の安定を確保することを財政金融政策根本方針考えており、通貨価値の安定のため努力いたしております。しかし、万一、通貨価値変動がありました場合は、国民年金法案では、国民生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じたときは、変動後の諸事情に応ずるための調整を加えるべきものとしておりますので、この規定趣旨に照らして考慮されるものと考えております。なお、積立金運用は、安全、確実、有利を主眼として、国民経済基盤強化及び経済発展に資するよう配意いたすつもりでありますから、積立金運用それ自体貨幣価値の安定に寄与するものと考えております。  御質問の第四点は、積立金が将来日本経済に対しどのような影響を有するかということでございますが、国民年金積立金は、安全、確実、かつ有利に運用することにより、国民経済基盤強化及び経済発展に資するとともに、国民生活の安定、社会福祉の向上のために寄与することになるものと考えております。なお、積立金が巨額に達すると申しましても、厚生省の試案によりますと、当分、毎年の増加資金は三百億円ないし五百億円程度であり、国民経済成長をも考えれば、この程度の金額は民間の金融資本蓄積を圧迫するものではないと存じます。  御質問の第五点は、年金制度運営第一線機関である市町村に対してどのような配慮をするかということについてでございましたが、国民年金の被保険者被用者以外の一般国民であるので、事務取扱いの面では市町村長第一線機関として利用することが妥当であり、国民年金法案もこの趣旨で構成されているのであります。市町村事務取扱いに要する費用につきましては、法案に特に一条を設け、政府からその交付を行うことを規定し、この趣旨に基き、昭和三十四年度は無拠出援護年金関係分として一億五千五百万円を計上いたしております。     —————————————  次に、藤田進議員の御質問お答え申し上げます。  御質問の第一点は、国民年金国庫負担に対する長期財政計画の裏づけについてでございましたが、国民年金恒久的制度でありますので、国民年金実施する公約を掲げました際は、当然将来にわたる国家財政の受ける負担について十分の検討を加えたのでありまして、単に三十四年度財政状況のみを考えたものではありません。御指摘のごとく、国民年金実施により今後の財政負担相当なものとなりますが、社会保障の中核である国民年金制度の健全な発展をはかることは政府重点施策でありますので、財政上特段の考慮を払って参る所存であります。一面、国庫負担の急激な増加を防止することも必要でありますので、このため、経済成長をも考慮しつつ、三十四年度は無拠出年金四月分を支給し、次年度はその平年化を行い、三十六年度には拠出制実施するというように、順次財政負担増加させることとしているのであります。  御質問の第二点は、貨幣価値変動に対してどのように対処するかということについてでございましたが、これにつきましては、先ほど小林英三議員の御質問お答えした通りでございます。  御質問の第三点は、積立金運用についてでございましたが、これにつきましても、先ほど小林英三議員の御質問お答えした通りでございます。   —————————————  最後に、加賀山之雄議員の御質問お答えいたします。  御質問の第一点は、今回の国民年金法現行公的年金制度適用者を除外しているが、将来これらを統合して、画一的に国民年金一本でいくのかどうかという御趣旨であると思いますが、この点につきましては、厚生大臣よりお答えをした通りであると考えます。現行各種公的年金制度を解消して、画一的に一本の年金制度を創設することは、御指摘通り相当の困難があるのでありますが、各種公的年金制度間の通算調整措置につきましては、ぜひとも解決いたす必要があると考えられますので、それぞれの沿革や目的を勘案の上、慎重検討を加え、所要の法的措置をとることとし、その旨を今回提案しました国民年金法案にも明記している次第であります。  第二点は、援護年金は過渡的といいながら、補完的なものとしては恒久的に残ると思われるが、これを認めることは、他力本願的傾向を助長するおそれはないかとの御趣旨であると思いますが、この点につきましては、政府といたしましても、かりにこのような懸念がありましては、国民年金制度の健全な発展は望み得ないこととなりますので、国民年金法案策定に当り慎重に検討を重ね、拠出制年金受給資格を満たすべき可能性がありながら、拠出を怠った者に対しては、援護年金支給対象からも排する建前をとっておりますので、御指摘のようなきらいはないと考えます。  第三点の、援護年金制度生活保護制度との関係につきましては、小林英三議員の御質問お答えした通りであります。なお、援護年金制度は、その性格上、生活保護制度と著しく類似しているが、こうした制度的重複関係は適当と考えるかとの御趣旨の御質問の点につきましては、厚生大臣からお答えしました通り政府といたしましては、援護年金制度国民年金制度の一環であり、生活保護制度とは別個のものと考えております。  第四点といたしましては、年金財政に関し、積立方式は、経理としては健全であるとしても、通貨価値生活水準の推移に即応しがたい短所があるが、この対策はどうするかとの御趣旨の御質問につきまして、お答えいたします。年金財政にとりまして通貨価値の安定が肝要でありますことは、全くお説の通りであると考えます。国民年金法案におきましては、国民生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じました場合には、年金額及び保険料額調整することといたしておりますが、経済の大きな変動がありますと、このような調整措置をとりましても、過去の積み立て不足分まで補てんすることはむずかしく、そのため将来の年金財政を危うくするおそれのあることは御指摘通りであり、諸外国年金制度においてもそのような例が見られるのであります。しかし、諸外国の例も、戦争等の大きな社会変革がおもな理由となっているのでありまして、このような事情を別にいたしますと、通貨価値にはそれほど極端な変動は見られないようであります。もとより、政府といたしましては、長期にわたる通貨価値の安定を確保することを財政運営根本方針考えており、そのために、今後とも不断の努力を続けて参る決意を新たにいたしております。  第五点といたしまして、保険料納付に関し、現金収入の乏しい農村においては徴収がきわめて困難ではないか、また農村については無拠出制原則とする考えはないかとの御趣旨の御質問につき、お答えをいたします。農村における徴収につきましては、厚生大臣からお答えいたしましたように、農村の実情に即して、特別の徴収方法検討することも必要かとも考えております。農村についてのみ無拠出制原則としますことは、中小商工業者等国民年金の他の被保険者との処遇上均衡を失するのみならず、現行被用者年金がいずれも拠出制建前としておりますので、これとの権衡上から申しましても採用は困難でありますし、財政拠出制建前とするのでなければ、今後の人口老齢化傾向に対処することはとうてい不可能であると考えております。  お尋ねの、非納税者について無拠出制にしたらどうか、また、こうした場合にどの程度一般財源が要るかという点についてでありますが、非納税者ということが、かりに所得税を納めない者ということになると、現在農村における所得税納付者がきわめて少い状態でありますから、結局、無拠出原則とするのと大差ないこととなり、財政上も同様に困難であります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 最初に、二月十二日の内閣委員会における矢嶋委員の御質問に対してお答え申し上げます。御質問憲法調査会に関する御質問でございます。(「内閣委員会ではない。本会だ」と呼ぶ者あり)
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 本会議における質問です。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、私の申し上げましたことは取り消して、本会議の御質問に対してお答え申し上げます。二月十三日の藤田議員の御質問お答え申し上げます。  この国民年金法案について、社会保障制度全体の総合調整が必要であるが、これに対する今後の具体的の日程及び内容はどうかという御質問でございます。国民年金制度実施されますと、社会保障制度体系も一応形を整えるのでありますが、今後は、その内容の充実と各種制度間の調整をはかって、均衡を得た形において発展せしめていくことが必要であることは申すまでもないのであります。今回、厚生年金保険法等の改正におきましても、この趣旨を取り入れて参るつもりでありますが、もともと、社会保障社会保険の各制度は、それぞれ特別の沿革事情に基いて発展してきたのでありますから、これを早急に総合調整することは相当むずかしい問題がありますので、この基本的な構想につきましては、社会保障制度審議会に諮問して、学識経験者等意見も徴して、妥当な結論を得たいと思います。  次に、本年金法案適用範囲は、現行制度のものは一切除外しているが、国民年金性格から言って、これらの国民年金たる意義を持たせる意味からいうと、すべての者に適用することが適当じゃないかという御質問でありますが、現行の公的の年金制度適用者を含めた単一の包括的な年金制度を創設するということも、一つの考えであることは言うを待ちませんけれども、そのためには、現在のこの各種制度を一応御破算にして考えなければならない。これは相当に困難を伴うことであり、また調査研究を要することでございますから、とりあえず、現行公的年金制度適用者を除いたのであります。しかしながら、御指摘のように、この通算調整の問題はぜひとも解決が必要でありますから、本案の中にもこれを明記して、十分にその解決について至急に検討するということになっております。  次に、本法にいう無拠出援護年金支給要件がきわめて厳格である、その支給開始年令が七十才である、これは生活扶助性格と同一であって、国民年金としてのものに条件を緩和すべきであるという御意見でございますが、老齢援護年金支給開始年令を七十才とし、支給額を月額千円としたことは、いずれも厳格に過ぎるということでありますが、これはやはり日本の現在の国力とにらみ合せて考えなければならぬことでありまして、今日の状況においては、これがわれわれは妥当であるという考えのもとに本案を提案いたしたわけでございます。  次に、本法によれば、原爆被害者障害年金から除外されていると同時に、本年度予算では原爆障害対策費が減額されておる。これら被害者に対して援護法を制定すべきではないかということの御質問でございます。この法案におきましては、原爆被害者でありましょうと、だれでしょうと、その人が、この法案に定めておる要件に該当する身体障害者であります限りは、すべて平等に支給するようになっております。なお、原爆障害対策費が大幅に減額されているとのお話でありますが、実質的には、本年度と同額が計上されておるのでありまして、原爆被害者に対する援護措置をゆるめる考えは毛頭持っておりません。また、原爆被害者に対する以上のほか、援護法等を制定し、その保護の徹底を期すべきであるとの御意見でありますが、この点につきましては、さらに被爆者生活実態等を調査した上、慎重に検討して参りたいと考えます。  最後に、現行行政機構は非常に複雑多岐で能率が悪い、社会保障体系に適合した社会保障省というものを設置したらどうだという御質問でございます。もちろん、行政機構の問題につきましては、これができるだけ簡素かつ能率的に機能が発揮されるように考えられなければなりません。この意味において、行政機構全般について私ども検討いたしておりますが、社会保障省設置につきましては、いろいろの問題がございまして、今日のところ、まだ私ども社会保障省設置するという意見にはなっておりません。   —————————————  次に、竹中議員の御質問お答えを申し上げます。  御質問の第一点は、過般の衆議院の総選挙の場合に公約したことと、今度実現している内容との間には、相当な食い違いがあり、公約を忠実にしておるのじゃないじゃないかという御質問でありますが、私は、過般の総選挙におきまして、現在年金を受けていない七十才以上の老人に対して月千円の年金支給する、次いで、この種の年金身体障害者及び母子世帯支給することから始めて、これを国民年金制度にまで発展せしめるということをはっきりと公約をいたしたのであります。今回提出いたしました政府案は、私どもの総選挙における公約を最も忠実に実現しておるものと確信をしております。もちろん、この内容というものについては、先ほど藤田議員の御質問にもお答えを申し上げましたように、あるいは厳格に過ぎ、もう少し緩和すべきではないかという御意見もあるかと思いますが、今日の国力から見ますというと、政府案規模が最も適当であり、国民も十分にその点は理解していただけるものであると確信をいたしております。  次に、国民生活に直結した法案であるから、競合の形で提出されておる社会党案についても虚心たんかいに検討して、長短比較取捨すべきではないかという御質問でございます。国民年金制度について、社会党は、かねて積極的に御研究になり、対案を提出されて、熱心にその成立を期待されておるという態度に対しましては、もとより私ども十分敬意を表しておるところであります。しかしながら、率直に申し上げまして、今提案されておる社会党の案では、現在の国力考えました場合、私は、社会党案のような規模国民年金制度実施することは、実際の問題としてとり得ないと考えております。しかしながら、仰せのごとく、この両案の審議に当りましては、私は十分に、虚心たんかいに両案を検討いたしまして、とるべきところがあるならば十分にこれを取り入れて、今後年金制度の完備を期していきたいというふうに考えております。   —————————————  次に、矢嶋議員の二月六日の本会議における御質問に対してお答え申し上げます。  第一は、MSA無償供与を受けた航空機の返還については政府は了承したかという御質問であります。米軍側との話し合いの結果について防衛庁長官から報告を聞きまして、閣議においてこれを了承した次第でありまして、昨年の十一月二十八日の閣議でこれを決定いたしております。  次に、この返還により、防衛五カ年計画に支障を来たさないかという御質問でありますが、全体として航空自衛隊整備計画実施がおくれているようでありますが、これについては、現在防衛庁で十分に検討中でございます。  第三は、F86Fを国内で生産しているが、国費の使途として無計画であり、乱費ではないかという御質問であります。わが国自主防衛の見地から、アメリカ援助を得てF86Fの国内生産実施中でございますが、国産化による装備を主体とし、不十分なものをMDAPにより充足する建前でやっております。  第四点は、新主力戦闘機グラマン問題については、日進月歩の時代に、すでに一カ年経過したが、この際、新しい角度から再検討を加える考えはないかという御質問であります。次期主力戦闘機の問題については、なるべく早くきめたいとは思っておりますが、重要な問題でありますので、各方面の意見を聞き、また、御質問のように、いろいろな進歩等も十分に検討してきめたいと思います。  第五に、アメリカ世界戦略科学兵器進歩とともに変ってきておる、アメリカ追随国防政策を再検討し、是正する必要があるのではないかという御質問でありますが、科学兵器進歩に伴って、戦略の変ることはあり得ることと思います。わが国としては、わが国の平和と安全を維持することを基本として国防政策をきめるべきであり、一昨年きめました国防基本方針は今日これを改めるところの必要はないと思います。  無償供与された戦闘機を一度も使用することなく返還することは、国際慣行に反し、また、非礼ではないかという御質問でありますが、この返還に至った事情の詳細につきましては、防衛庁当局から説明したことと思いますが、無償供与された装備資材が必要でなくなった場合は、これを返還することあるべきことは、条約自体が予想しているところでありまして、これが別に非礼とは考えておりません。  次に、返還された戦闘機が、あらためて台湾韓国等に供与されることは、実質的にNEATOを構成することであり、中共に対する敵視政策ではないかという御質問でありますが、返還された装備資材日本政府の手を離れるものであって、その後の処分は日本政府の全然関知するところではありません。アメリカは、韓国台湾フィリピン等、極東の自由国とそれぞれ相互防衛援助協定を結んでおり、右に基いて装備資材が供与されていますが、右をもって多角的防衛義務を設定するいわゆるNEATOであるというのは誤まりであると思います。またわが国は、自衛力維持漸増基本方針にのっとって、MSA協定を運営しているものでありまして、これをもって中共敵視政策というのは当っておらないと思います。  本年度防衛分担金は三十億円減額されているが、いかなる理由に基くものか、また明年度もさらに減額する考えかという御質問でありますが、防衛分担金の年々の削減は、いわゆる一般方式によることになっておるが、わが方の財政事情にかんがみ、アメリカ側に対し、大局的見地に立って追加的減額に応ずるよう要請した結果、アメリカ側も本年度限りの例外的措置として三十億円の追加的減額に応じたものであります。右の追加的減額は本年度限りの措置として合意されたものと御了解を願いたいと思います。  沖縄、小笠原の返還要求はいかなる形で行なっておるか、また安保条約適用地域に沖縄、小笠原は含めるとの方針を貫く確信があるかどうかという御質問であります。沖縄、小笠原に関する国民的要望は、種々の機会にアメリカ側に表明し、要望しておりますが、極東の情勢がさらに安定を見るまで、その実現にはなお相当の時日を要するものと思われます。安保条約に沖縄、小笠原を含めるや否やについては、その適否を慎重に検討して、政府としての態度をきめる、きめたところに基いて、アメリカ側と正式に話をしておるのでありますが、アメリカ側はわが方の合理的な要望に対しましては、必ずこれに対して耳を傾けるものと考えております。  御質問の第五は、イロア、ガリオア援助は供与か債務かという点において不明確である、政府は外交交渉によって債務でないという旨を確認せしむべきではないかということでありますが、ガリオア等の対日援助は、日本政府としても、これを無償でもらったとは考えておらず、債務と心得ており、国会等においても、累次この趣旨を明らかにしており、従来の態度を変更する意向は持っておりません。しかしここで債務という趣旨は、何らかの形において処理解決を要する義務という意味であり、直ちに支払いを要する確定債務という意味ではございません。本件は日米両国間の懸案の一つであり、政府としても、いずれ本件解決をはからなければならないと考えております。  御質問の第六は、非核武装等と安保条約との関係について御質問でございます。安保条約はアメリカとの共同安全保障体制の基本をなすところであって、右の立場から米軍の日本駐留の権利を規定しております。条約上の権利義務の関係からいえば、米国は在日米軍の配備使用を一方的に決定し得ることとなっておりますが、一昨年の日米会談において、米軍の日本における配備使用を含め、条約から生ずる諸問題は、広く日米間において協議していくということになっております。軍事科学技術の発達から、今日では核兵器問題はすでに世界各国の防衛政策上ゆるがせにし得ざるところでありまして、右は実に不幸なる現実であるが、自分は、核兵器保有国が、すみやかに実行性のある合意に達して、全世界的規模において核兵器を放逐するに至ることを強く念願しておるものであります。しかしながら、かかる事態に至らざる間、部分的に非核武装を宣言することは、必ずしも安全保障の目的に沿うものとも考えられません。自分は、しばしば述べておる通りわが国民の世論を体し、自衛隊は核武装せず、また核兵器持ち込みはこれを認めないという方針を堅持して参っております。このゆえに、今般の安保条約の改定に当って、わが国に駐留する米軍の配備、装備については、これを両国間の協議事項とするよう特に留意しておるのであります。安保条約を改善し、日米共同安全保障関係を充実して行くことが、わが国安全保障を確保するゆえんであると信じております。  わが国の航空政策についての御質問であります。わが国の民間航空事業は、戦後、御承知の通り相当におくれて発足したものでありますが、今日におきましてはある程度のところまで発達して参っております。しかし世界の先進国の状態と比べてみますと、まだ非常におくれておりますので、世界先進各国はすでに航空事業の育成に対しましては非常に力を注いでおるところであります。わが国にも、アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、スイス、インド、豪州、カナダ等、十数カ国の飛行機が飛んで参っておるような次第であります。わが国としましても、これら諸国におくれないように、路線を拡張し、新鋭機の輸入等を行なって、内容を充実していきたいと考えております。国内航空におきましても、できるだけすみやかに空港の整備などを行いまして、安全な航空を確保して、その普及発達をはかりたいと、かように思っております。  最後に、民間航空と航空自衛隊とのアンバランスについてどう考えるかという御質問であります。民間航空と航空自衛隊とは、その目的の差異に従って使用する機種も自然異なることは当然でありますが、航空機の数も違っております。それぞれ、その目的にかなうような機種を選んでおることも当然でございますが、これに必要な乗員の訓練につきましても、また違った点があることも、これも当然と言わなければならぬと思います。民間航空に対する政府の育成はまだ十分とは言えませんが、今後におきましても、常にこれに留意して、十分発達をさせるように育成して参りたいと考えております。    〔矢嶋三義君発言の許可を求む〕
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 何ですか。
  21. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 要望があります。発言をちょっと許して下さい。議事進行について……。
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 議事進行ですか。
  23. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうです。自席で発言を許していただきます。
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 矢嶋君。
  25. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理大臣並びに大蔵大臣が長時間にわたって答弁されたその誠意は、一応多といたします。しかし、藤田君並びに不肖矢嶋が質問するときに—加賀山君、さらに小林君も同様でありまするが、その席上に総理並びに大蔵大臣がおられなかったがために、本日の答弁は非常にピントがはずれております。特に長い間御答弁いただきましたが、私が質問しなかった事項についても、詳しく御答弁になっておられる。どこかで読むところを間違えましてここで読まれたのじゃないか。これは冒頭に、二月十二日の内閣委員会における云々と読みかけられましたが、この点から明確だと思います。先般の私の本会議における質疑の速記録をごらんいただきたい。詳しく御答弁になりましたけれども、私が質問しない点についてお答えになっておるのはまことに奇怪千万である。私は議長に御要望申し上げたい点は、今後本会議の運営をかような形で運営していただきたくないことを御要望申し上げるとともに、総理は、かりに御出席になっておられないで後刻答弁される場合には、誠意と熱意をもって、間違いがないよう、質問者の質問に答弁する立場でやっていただきたい。本会議の権威の意味において、本日のこの事態はまことに遺憾であったことの意思を表明し、議長に、今後のことについて御要望申し上げる次第であります。      ——————————
  26. 松岡平市

    ○松岡平市君 私は、この際、国際労働条約第八十七号の批准に関する緊急質問動議を提出いたします。
  27. 阿部竹松

    阿部竹松君 私はただいまの松岡平市君の動議賛成いたします。
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 松岡君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。松岡平市君。    〔松岡平市君登壇拍手
  30. 松岡平市

    ○松岡平市君 ILO第八十七号条約批准に関する労働大臣の諮問に対する労働問題懇談会の答申が、去る二月十八日に行われました。かねて本院においても、この答申を待って善処する旨を総理大臣も言明しておられましたが、政府はさっそく、二十日、本条約批准についての態度を表明せられました。自今、政府は本条約批准のために必要なる諸般の措置を急速に進められるものと信じますが、右答申においても述べておるような、公共企業体の労使関係を安定し、業務の正常なる運営を確保すること、ILO条約の趣旨とする労働団体の自主運営並びにその相互不介入の原則が、わが国の労使関係においても十分取り入れらるるようにする、そうした諸措置を講ずることは、現下のわが国の諸情勢にかんがみて、必ずしも容易であるとは考えられません。かつ、これらの諸措置は、いずれも直ちに日本の労働組合運動ないし労働関係基本的なあり方に触るる重要問題であると考えられますがゆえに、私は自由民主党を代表して、本条約批准をめぐる基本問題のうち、若干について、政府の所見を明らかにしていただこうと思います。  まず第一は、国際労働条約の批准に対する政府基本的態度いかんという点について、総理にお尋ねをいたします。  ILOに加盟し、特にその常任理事国としてILOのうちにおいても重要な地位を占めるわが国が、ILOの精神を尊重し、ILOに協力すべきことは、言を待ちません。それゆえにこそわが国は、従来からILOの諸活動に積極的に参加し、国際協力の実をあげることに努めて参っておるのであります。ところが、たまたま問題の八十七号条約の批准を今日までしなかったということをとらえて、いかにもわが国がILOに対し非協力的であるとの非難があると称して、ILOへの協力とは、とにかく条約を批准するということを第一義的に考えることだ、と広く理解されている傾きがあるやに見受けられます。言うまでもなくILO条約なるものはILO憲章の精神にのっとり、これを実現するために作られたもので、国際的視野に立って各種の労働基準のあるべき姿を明らかにしたものでありますから、一般的には、これをすみやかに批准し、その精神を国力に具現することが望ましいに相違ありません。しかしながら、国際条約当然の性格として、すべての条約が、加盟国全部のそれぞれの政治、社会、経済、労働等の諸事情を漏れなく考慮に入れて、いずれの国にも直ちに批准適用し得る性質のものとなり得ないことは、自明のことであります。国際的視野からは、いずれの加盟国においても批准さるることが望ましい内容を持っておるが、さて、その内容を果してそれぞれの国で実現し得るかどうかという点になれば、それぞれの国の諸事情によっておのずから相違が生ずることは当然でありましょう。国内の諸事情を勘案して実現可能と考えられるときは、もとよりすみやかに批准さるべきものであり、もし実現することを妨げる諸条件が存在している場合には、その障害を十分に除去する処置をとって、国内の受け入れ態勢を整備した後、初めて条約批准をなすべきもので、国内事情を無視していたずらに条約の批准を急ぎ、ためにその国の労働問題に紛糾混乱を巻き起すがごときことは、決して真にILOに協力するゆえんではないのであります。ILOが今日まで採択した条約は全部で百十一、これに対して主要加盟国の批准状況を見るに、フランスは七十三、イギリスは五十八、ソ連十八、アメリカはただの七。加盟一カ国当り平均批准は二三・一に過ぎないという事実は、実に端的に右の事情を物語るものであります。問題の八十七号条約にいたしましても、加盟国八十のうち、アメリカ、カナダ、インドを初め三十五カ国はいまだ批准をいたしておりません。わが国がすでに二十四の条約を批准していることは、わが国もでき得る限りの協力をしている事実を示しておる。たまたま、八十七号条約批准について、国内の諸事情から相当長期間の検討を加えざるを得なかったことをもってして、ILO非協力の非難を甘受する理由はないと考えますが、いかがでございましょうか。政府が八十七号条約批准の方針を決定せられたとすれば、国際労働条約批准についてのわが国基本的態度はどうであるかということと、その基本的態度にかんがみて、政府が八十七号条約批准を決意するに至ったのは、労働問題懇談会の答申もさることながら、政府としていかなる判断に基いているものであるかを、総理から御説明を願いたい。  次に、ILO第八十七号条約批准に伴う具体的問題について、二、三労働大臣にお尋ねいたします。  二月十八日の労働問題懇談会の答申は、ILO第八十七号条約は批准すべきものであるとの立場に立って、同条約を批准するに当っては、公労法四条三項、地公労法五条三項を廃止することが必要である旨を述べております。ILO八十七号条約の示す内容は、わが国においては、すでに憲法、労働組合法等によって基本的には十分に実現されておるところであります。そうして本条約を批准するやいなやに際しての問題は、もっぱら公労法四条三項、地公労法五条三項を廃止するかどうかの問題であったという点は、この際、特に注意されなければなりません。条約批准に際しては、廃止することが必要であると指摘されました公労法四条三項並びに地公労法五条三項の意義、並びにその果してきた役割についての判断、従ってその取扱いこそは、実に本条約批准の可否の判断の根底をなすものであります。政府が条約批准の態度を決定した今日、これについては確固不動の方針を明らかにせられる必要があると私は考えます。公労法四条三項は、組合員資格ないし役員資格を職員に限る旨を定めており、このことのゆえに八十七号条約に抵触するおそれが濃いとされたものであります。そもそも、この四条三項は、占領下、昭和二十三年十二月二十日、GHQの強力なる指導下に制定されたあの公労法の中で、当時共産党の全面支配下に置かれんとする労働組合運動を、民主主義的方向に転回させる必要上設けられた規定であることは周知の事実、当時は、関係組合においても、共産主義者外の民主的指導者たちは、いずれもこれを支持せられた規定であります。そうして、その後は引き続き、違法な争議行為を行い、そのために解雇せられて職員たる身分を喪失した組合幹部の役員資格を失わしめる、ということによって、違法争議を抑止する、チェックするという重要な役割を果してきておること、これは皆さま御承知の通りであります。四条三項は、職員にあらざる者の組合加入、役員就任を排除するということと同時に、公労法が規定する争議行為禁止の実効を確保するという機能を一面持つものであって、このことによって公共企業体等の業務の正常運営を確保するという役割を果してきたものであります。八十七号条約を批准することとした場合、四条三項の廃止によって、非職員が組合員あるいは役員になれないという制限を撤廃することは、本条約の精神からいっても、また労働問題懇談会の答申通り、これをかりに認むるといたしましても、争議行為禁止の実効確保機能をも失わしめるという点については、わが国の現状下において私どもはとうてい同意しがたいのであります。従って、四条三項廃止に際して、何らかのこの点に関する代替措置が当然とられなければならないと思うものであります。三公社五現業労組が加盟する総評が、法の禁止する争議行為をあえて行い、三公社五現業職員の争議権奪還を実力によって達成すると公言してはばからない現状においては、ただでさえ、私たちは、違法争議行為禁止の実効確保のための措置強化を必要と痛感しておるのでありまして、まして、条約批准のために四条三項を廃止する必要があるとするならば、これにかかわる適当な措置をあらかじめ講ずることは、絶対不可欠の条件であると確信するのであります。労働問題懇談会の答申が、関係諸法規についての必要な措置が当然考慮されることになるであろうといっておる。その当然考慮されることになるであろうという関係法規の必要な措置のそのうちには、当然このようなことが含まれておると考えるのでありますが、政府の所見をお伺いいたしたい。政府は、将来にわたって公共企業体等の業務の正常な運営を確保することについて、いかほどの確信を持っておられるか、あわせ御答弁をお願いいたします。  次に、総評等の労働組合や一部の評論家等の間に、三公社五現業職員の争議行為禁止もまた、ILO八十七号条約に抵触するものがあるとして、本条約批准促進運動の一環として、いわゆる争議権奪還運動なるものを正当づけようと試みております。が、しかし、私たちは、かようなことは全く何らの論拠も根拠もなく、単なる放言なりと考えるのでありますが、世上一般の理解を正しくするためにも、労働大臣の御見解を開陳していただきたい。  第三に、本批准問題と、全逓労組の公労法四条三項違反、法律無視の態度との関係についてお伺いいたしたい。(「逓信大臣いないじゃないか」と呼ぶ者あり)労働大臣にお尋ねしております。  周知の通り、全逓労組は、昨年の春季闘争なるものにおいて違法な争議行為を行い、国民の日常生活に多大な支障を与えたのであります。これを理由に解雇された組合役員を、公労法四条三項に違反して、事実上組合役員の地位にとどめ、ILO八十七号の条約が批准され、公労法四条三項が廃止されることになれば、現在の公労法違反も正当化されるとして、ILOに対しては、結社の自由と団結権についての申し立てを行うなどの手続をとり、本条約批准促進運動をやって参りました。条約批准の態度を政府は決定し、いずれ近くその準備として、公労法四条三項廃止も行われるでありましょう。四条三項廃止の暁においては、非職員である解雇者が役員となることも法の禁ずるところではなくなります。しかしながら、いやしくも現在において厳として公労法の四条三項が存在する限り、これが守られなければならぬことは当然のことであります。もし全逓の公労法四条三項違反の状態を黙過しながら、八十七号条約批准のために、四条三項を廃止するがごときことあらば、単に労働組合の法律無視の偏向を助長することの弊はもとより、法治国家としての威信は地を払うものと考えます。八十七号条約の批准も可でありましょう。公労法四条三項、地公労法五条三項の廃止もまた可でありましょう。しかしながら、法治国家の威信を泥土に委してまで条約の批准を行う必要は断じてないと考えます。すでに、政府が条約批准の態度を表明した以上、全逓労組も必ずや近くかような態度を改めて、条約批准の促進に協力せらるるものと私は確信いたすものでありますが、万一にも、すでに政府が廃止をやむなくされる法律など無視するのは当然だなどといって、かかる違法状態を正当化せんとするがごとき態度を持続されるならば、これは容易ならぬことであります。ILOが当然に期待しておる通りの、労使間互いに規律を守り、法に従って、よき労働慣行を築き上げようとする機運が醸成されたあとでなければ、本条約は、われわれの希望にもかかわらず、批准しがたいものと信ずるが、労働大臣のこの点についての御所見をお伺いいたします。  最後に、外務大臣お尋ねいたします。  従来とも、ILO条約批准に際しては、国内法が当該条約に抵触する等、条約批准の障害となる諸事情が存在する場合には、まず条約に抵触する法令の改正等を行い、条約の趣旨内容国内において完全に実現した後、初めて条約批准の手続をとることとしておるものと、私たちは承知しておりますが、八十七号条約を批准することとした場合においても、従来と同様の順序を踏んでなさるものと考えますが、そうであるかどうかをこの際お伺いいたします。  わが自由民主党は、すでに天下に声明せる通り、ILO条約の批准が一日もすみやかならんことを希求いたします。そして、それには、政府はもとより、関係者一同が冷静事に当って、批准のための必要措置の完了もまた一日もすみやかならんことを希求するものであることを付言して、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えいたします。  ILO条約に対する政府基本的な考えについての御質問であります。われわれがこれに復帰して以来、われわれとしては、あくまでもILOの精神を尊重し、これに協力するという一貫した方針で政府は進んでおりますが、言うまでもなく、ILO条約の批准に当りましては、御指摘もありましたように、その国々の国内事情、また、これの受け入れ態勢というものを十分に整備して、これを批准しなければならぬことは、言うを待ちません。今日まで、われわれとしては、できるだけ多くの条約を批准するという方針のもとに、すでに二十余のものを批准をいたしております。今回問題になっておりまするILO八十七号の批准の問題につきましては、これが国内においての、いろいろな日本の労働情勢から見まして、われわれは慎重な態度で、労働問題懇談会という権威のある所で審議を重ねて参っております。その答申が出ましたので、かねて公約いたしておりますように、その答申を尊重して、その線に従って政府としては処置を進めていきたい。すなわち、これを批准するという前提に立って、各種の法制の整備に、われわれは今、懸命に検討に入っております。言うまでもなく、このILO八十七号の条約を批准するということは、自由にして民主的な労働組合の発展を願うという、この労働政策基本に立って、政府としてはこれを批准したい。ただし、これにつきましては、いろいろ国内の法制を検討して、十分に受け入れ態勢を整備いたして参りたい。かように思っております。(拍手)    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  32. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。  労働問題懇談会の答申が出まして、それに基きまして、かねがね政府が表明いたしておりましたように、原則としては、ILO条約をなるべく多く批准したいというのが政府建前でございますから、この批准をやるという原則を決定いたしました。そこで、この批准をいたすについては、やはり答申案というものもできるだけ尊重をいたしたい、こういう建前でございますが、御承知のように答申案は、第一には、「ILO第八十七号条約は、批准すべきものである。」、これは原則を示しております。第二には、「右条約を批准するためには、公労法第四条第三項、地公労法第五条第三項を廃止しなければならない。この廃止にあたっては、関係諸法規等についての必要な措置が当然考慮されることになるであろうが、要は、労使関係を安定し、業務の正常な運営を確保することにあるので、特に事業の公共性にかんがみて、関係労使が、国内法規を順守し、よき労働慣行の確立に努めることが肝要である。」、こういうことになっております。そこで、こういう答申案というものは、一年半にわたって御研究を願いました小委員会等の意見を総合して集約されたものでありますが、ただいま松岡さんのお話の中にございましたように、法律改正等も一つの手段でございますが、もちろん、政府といたしましては、法律を改正する場合に当りましては、それの影響等諸般の関係検討いたさなければなりませんので、政府部内に、それぞれのそういう機関を設けておりますので、それに付議をいたしまして、検討を開始いたした次第でありますが、石井小委員の報告の中にもございますように、この公労法、地公労法等の改正につけ加えて、「公共企業体等の業務の適正な運営を確保するため、事業法中の諸規定についての不均衡等についても、その調整をはかることについて検討する必要がある。」というふうなことを示しておられます。こういうことが集約されて、「業務の正常な運営」という言葉で表現されておるのでございまして、公共企業体は、申すまでもなく、民間産業とは若干その性格を異にいたしておるのでありまして、公共企業体それ自身の経営者はすなわち国民であります。国民に負託されたる義務をもって、行政府がこれを監督いたしておる立場でありますからして、そこの労使関係というものは、おのずから、やはり全国民を対象としてわれわれは考えなければなりません。その国民を対象として考えた公共性というものを尊重するという意味において、きわめて公労法というものの重要性をわれわれは考えるわけであります。(拍手)  そこで、この公共企業体の従業員の労働運動等についてもお話がございました。現在の状況につきましては、まことに私も同感でございますが、私は、しかしながら、現在の公共企業体の労働組合の諸君が、非常に公共性を無視する人たちばかりであるなどということを決して考えておりません。大部分の従業員というものは、この公企体の企業の公共性を十分に自覚され、そうしてそれを尊重しようとする建前のものであります。一部特に職業的に、こういう人々を利用して、おのれの偏向した目的に利用せんとするような者があるかもしれませんけれども、今日は、だんだんと組織大衆が一歩前進いたしておりまして、むしろそういう職業的煽動家などというものは、徐々に組合組織から排撃を受けつつあるという、よき傾向があるということも、われわれは見のがしてはならないのであります。従って、いたずらに法律等に頼るということではなくて、その組織内部の善良なる労働者諸君が、この答申に盛られた趣旨、すなわち正常なる運営を努めていかれるというこの中山会長の答申の趣旨というものは、すなわちILO憲章に盛られておる労使双方の一番大事に尊重しなければならない趣旨でありますからして、その趣旨を尊重するという精神がILO条約の批准ということに現われてくるわけでありますから、そのILO条約の批准を希望しておられる大ぜいの堅実なる労働組合員諸君を相手にして、たとえば先ほど全逓のお話がございましたけれども、私は全逓労組の多くの良識を持たれた人々が、政府が正々堂々とILO八十七号条約を批准するという態度を打ち出した以上は、この組織労働者の諸君が、必ずや良識に従って、われわれの期待する方向に向っていくものであるということを信じ、またそのように努力をして、ILO条約の批准の準備を整備いたして参りたいと、このように考えておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  33. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま松岡議員の御質問のありましたように、われわれといたしましては、国内諸般の法令の改廃の手続を終りまして、批准することが適当だと考えております。(拍手)      ——————————
  34. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、この際、ILO条約批准に関する緊急質問動議を提出いたします。
  35. 田中茂穂

    田中茂穂君 私は、ただいまの阿具根君の動議賛成いたします。
  36. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 阿具根君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。阿具根登君。    〔阿具根登君登壇拍手
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ILO条約第八十七号の批准問題について、岸総理を初め関係各大臣に若干の質問をいたさんとするものであります。  まず最初に、第一次世界大戦後、平和と自由を求めて締結されたヴェルサイユ条約の第十三編、すなわちILO旧憲章は、その前文において、「結社の自由という原則の承認」をうたい、またその附属文書の一般原則において、特別かつ緊急の必要あるものの一つとして、「使用者または被用者が一切の適法な目的のために結社する自由」を掲げました。さらに一九四四年のフィラデルフィア宣言は、「表現及び結社の自由は不断の進歩のため欠くことはできない」とうたい、ILOの進むべき道を明示いたしました。こういう歴史的な背景をもって、本八十七号条約は一九四八年に採択されたものであり、国際的労働憲章に具現化せられたものであります。よってこの条約は、労働者の基本的な権利を宣明したものであって、他の一般的労働条件の基準に関する条約などとは、おのずからその比重を異にするものであります。ゆえに、ILOにおいても、結社の自由事実調査調停委員会を設置し、また理事会においても結社の自由委員会を設置し、加盟国における結社の自由及び団結権の侵害について提訴を受け、調査をすることにしております。そこで、本条約は、国際労働条約中最大の基本的条約と言わなければなりません。よって、この一条約の批准いかんは、労働者に対するその国の基本的態度を端的に表わすものであると考えるが、総理は一体この条約に対して基本的にいかなる考えを持っておられるか、まずお尋ねしたいと思います。  第二の問題といたしまして、この条約の批准に関連して、労働問題懇談会は、公労法第四条三項、地公労法第五条三項削除の答申を出しておりますが、一体、政府は、この公労法、地公労法にいう「職員でなければ、その組合の組合員またはその役員になることができない。」という規定を、本来いかなる意義のものと考えておられるか。この規定は逆締めつけ条項といわれるものであって、団結権の自由を侵害し、使用者の組合支配介入と考えられております。そこで政府は、民間労組に対して「労働組合は、労働者が主体となって自主的に組織する団体であって、だれが労働組合員となり、だれが労働組合の役員になるかは、その労働組合が自主的に決定すべきものであるから、使用者が労働組合に対し、組合員または役員は従業員のみでなければならないと強要し、それを承認しない限り労働協約の締結に応じないというがごときは、労働組合法第七条第三項の支配または介入に該当し、不当労働行為になる」という労政局長名の通牒で組合を指導しておるのでございます。しかるに、同じ組合において、民間であれば「その職場に働く従業員であろうとなかろうと、労働者がみずから自由に組合を組織し、その役員になることができ、もしそれに反すれば不当労働行為になる」と言いながら、一方、公共企業体の組合においては「その従業員でなければ組合員または役員になることができないばかりか、それに反すれば不法組合になる」と言うがごときは、全く相反した取扱いであって、われわれのどうしても納得できないところであります。先ほどの松岡議員質問は、全く私の質問と反対の立場から質問をされておりました。それにお答えがあっておるようでございますが、私は全く逆な立場から質問を申し上げておるのでございます。このような法律運用は断じて許さるべきものではありません。この点、特に岸総理及び倉石労働大臣の答弁を求めます。  第三に、私は公労法第四条三項の運用について、次の事実を述べ、政府の見解を承わりたいと思います。  すなわち昭和二十八年末の仲裁裁定完全実施と期末手当増額要求の国鉄労組に対し、翌二十九年、中央、地方を含む役員十八名の藤雇がなされ、当局は団交に応じないため、組合は、団体交渉義務確認の訴えを東京地裁に提訴いたしました。千種裁判長は和解に入り、暫定措置として「被解雇者三役の話し合い出席は自主的に遠慮する」という案を提示し、被解雇者に対しては組合役員としての活動を認めました。また昭和三十二年春の国鉄労組、機関車労組の賃上げ要求に対する紛争に際し、藤林公労委会長は「労使関係の正常化のためには、被解雇者以外の者を、委員長、副委員長すなわち組合代表者とすべきこと」というあっせん案を出し、書記長以下の役員の留任を認めました。一方、機関車労組は東京地裁に提訴いたしましたが、東京地裁の判決は「被解雇者を含む組合は憲法上の組合ではあるが、公労法上の組合ではない」という、まことに理解しがたい判決を出しました。  かように労働法上の原則を無視した性格の条文は、いかに労働組合を苦しめ、労働省、国鉄及び郵政省当局を悩まし、裁判所まで困惑せしめたか、よくおわかりになったと思います。現在政府は、役員が解雇された場合、委員長、副委員長ならば悪いけれども、書記長ならばとどまってもよろしいという取扱いをしておられるが、かかる法律解釈は、一体どこから出てくるのか。かようにこの法律は、現実には遵守できないところの法律であり、当然削除さるべきものでありますが、従来の条項に対する運用の所見について、運輸大臣並びに郵政大臣に承わりたいと思います。  次に、わが国昭和二十六年正式にILO復帰を許された当時の状態を振り返ってみたいと思います。この復帰に際して、各国の労働代表及び使用者代表から非常に強い反対がありました。労働代表の多くは、戦前の日本における労働者弾圧の歴史を想起し、労働者の基本的人権を守らない日本政府は、現在でも労働者の団結権、団体交渉権を全般的に認めていないではないかという不満でありました。一方、使用者代表の反対は、戦前の低賃金と労働強化に輸出の源泉を求めたソシアル・ダンピングに思いをいたし、国際条約勧告を決議しても、日本政府がこれを遵守することの誠意に対する疑問でありました。以上のような事情があって、日本復帰に関し審査委員会が開催された席上、わが国政府代表は、次のことを約束したのであります。わが国政府代表は、日本復帰を審議するために任命された選考委員会に出席して、日本は、本機関脱退前に批准した条約より生ずる義務は、引き続き拘束力を有することを承認するとともに、脱退の全期間中にわたる条約勧告決議を尊重し、この趣旨に沿うべく努力する旨の確約をいたしたのであります。しかるに、ILO復帰以来八カ年間を経過するも、いまだにこの重要なる八十七号条約すなわち「結社の自由と団結権擁護」の批准を見ないばかりか、第百四十回理事会において「結社の自由に関し日本政府の注意を喚起する」という勧告を受けるがごときは、まさに国際信義を失墜するもはなはだしいといわなければなりません。さらにまた、わが国の川崎公使がILO理事会の議長に立候補することになっておると聞きますが、労働者グループがこの前に集まったとき、イギリスの労働組合代表から、「日本が八十七号条約を批准せざる限り、川崎公使の立候補について反対しょう」という提案がなされ、労働者委員はこれに賛成したやに仄聞しております。もしこのことが事実となって現われるならば、世界にその醜をさらすことになるでありましょう。一体、政府は、この事実をいかに考えるか、これらに対する総理と外務大臣の答弁をお願いいたしたいのでございます。  さらに本年六月に開催される予定のILO総会には、政府代表として倉石労働大臣が出席ざれると聞くが、もしそれまでに批准の手続をとらない場合、総会においていかなる申し開きをするつもりであるか、倉石労働大臣にお尋ねいたします。これは衆議院予算委員会において質問のありました場合に、出席するか出席しないかわからないという答弁があったようでございますが、所管大臣としての責任を明らかにしていただきたいと私は質問しているのでございます。  第五点は、石田前労働大臣は、昭和三十三年四月二十三日、すなわち第二十八回国会の参議院社会労働委員会の席上、同僚藤田議員質問に対し、「労働問題懇談会の結論に従う」と明確に答弁いたしております。さらにまた倉石労働大臣は、昭和三十三年六月二十六日、第二十九回国会において、同じく参議院社会労働委員会で、「前労働大臣のお答えと私の方針はちっとも変っておりません」と言明いたしております。それからまた岸総理大臣は、同年十二月十九日、衆議院の社会労働委員会において、「労働問題懇談会の結論が出ますならば、十分それを尊重して、政府としては処置したいと思います。」と答えております。その労働問題懇談会の結論は二月十八日に答申されましたが、批准に際し必要なる国内法の整備は、公労法第四条三項、地公労法第五条三項を削除すべきであると述べており、これが唯一絶対の条件であります。しかるに政府は、答申案中の「望ましい」という、いわば道義的注意規定を強調し、法案の整備の遷延を企図せんとしておるが、これは許さるべきではない。当然本国会において削除の法案を提出すべきであると思います。もし政府は、その手続が時間的に困難であるとするならば、幸いにして、わが党から、四条三項、五条三項削除の、それぞれ公労法並びに地公労法改正案が本院に提出されておりますが、それに賛成する意思がないのかどうか。与党の総裁であり政府の責任者である岸総理の答弁を求めるものであります。  最後に、前述しましたごとく、公労法第四条三項、地公労法第五条三項は、すでに守り得ない悪法になっております。しかるに全逓の役員改選を公労法改正の前提条件とすると閣議決定をするがごときは、ILO理事会が日本政府に対して勧告した趣旨に全く違反するものであり、国際機関を軽視するもはなはだしいと言わなければなりません。さらに政府は、刑事罰などによる罰則の強化をもくろむ鉄道営業法その他の事業法改正を企図しておると言われるが、争議行為を行うに刑事罰をもって報いるというがごときは、いわゆる報復手段というべく、二十世紀後半の労働法としては断じて許し得ないところであり、岸内閣の権力政治と労働者弾圧政策の端的な現われと言っても過言ではないと思います。  さきにわが国が批准したILO条約九十八号が、団結権及び団体交渉権の原則をうたい、それに基く相互不干渉と平等の精神にも違反する結果を招来し、せっかく八十七号を批准するに九十八号条約の違反をあえてするがごときは、国際労働場裡の批判の的となることは火を見るよりも明らかであります。  政府の猛省を促し、これに対する岸総理大臣及び倉石労働大臣の率直なる答弁を求めまして、私の緊急質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  39. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  第一点のILO八十七号条約批准についての政府基本的な態度についての御質問であります。  このことは、先ほども松岡君の質問に答えた通りでありますが、われわれは従来、御指摘のように、労働問題懇談会の答申を待って、これを尊重して処置したいということを申しております。われわれは、ILO八十七号の、自由にして民主的な労働組合の発展ということを願う、この労働政策基本にかんがみまして、これを批准する、そしてそれを批准するに必要な各種の条件を整備するために政府としては真剣に検討を始めております。  第二の、公労法四条三項、地公労法五条三項の規定が、このILO条約を批准することになりますならば、これと抵触するがゆえに、これが廃止をしなければならぬことは御指摘通りであります。しかして、この規定が設けられましたことにつきましては、相当沿革がございまして、今日までこれが存続してきておるのでありますが、同時に、これらの規定を廃止するということに当りましては、関係諸法令の整備を必要とするのでありまして、その点も労働問題懇談会の答申に明らかにしておる通りでありまして、政府はそれらの問題を十分に準備をして廃止をいたしたいと思っております。  次に、社会党が御提案になっておるこの公労法及び地公労法の規定の削除に賛成したらいいじゃないかというお話でございますが、それは今お答え申し上げました通り、これに関連しての諸種の法令の整備を必要とするのでありまして、それらを全然考慮せずに、これらだけを単に廃止するということは、私どもとしては賛成できないのであります。  最後に、事業法の改正についての御質問でございますが、これは現在のこの事業法を見まするというと、この間に非常に不均衡な点もございますし、また立法の当時が非常に古いために、現在の事情に適応していないものもたくさんあると思います。私どもは、公共的事業の性質にかんがみて、その事業の運営の正常化を確保するために必要な規定を整備することは当然であると思うのでありまして、それらは十分に一つ各種の点から検討をいたして参りたいと、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  40. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 公労法と民間労組のお話がございましたけれども、御承知のように労組法では公労法のような特別な制限は与えておりません。しかし先ほど松岡氏がここでお述べになりましたような沿革がありまして、当時の国鉄労組の争議のときに四条三項というものが設けられましたいきさつは、くどく申し上げずとも御存じの通りであります。私どもが当時の国会で公労法の立法に携わりましたときに、御承知のようにGHQから英文で書いて来たものにはああいうものはなかった。ところが、あの当時の国鉄当局者及び労組の両方とも、ああいうものが必要であるという見解でありました。そこでわれわれはそれに挿入をいたした、こういう経過をたどって来ておる今日でありますが、先ほど申し上げましたように、自由にして民主的なる労働組合運動が行われることを期待いたすという立場から、政府はILO条約八十七号を批准することが望ましいという立場をとるに至ったのでありますから、今まで特に公共性ということでああいうものを置きましたことを、やはり今度は排除した方がいいと、こういうふうに考えておるわけであります。藤林あっせん、千種裁判長のなさいましたことについて、これは厳密なる法律的議論から申せばいろいろあることでありますが、御承知のように当時の国労の争議の終結をいたすために、藤林委員長はああいうあっせんをおやりになりまして、両方とも今日の段階においては、やはり不満足ながら、こういうふうに従って一歩一歩正常にする方がいいではないかという現実的立場に立たれたものでありまして、それをわれわれは尊重いたしておる。従って、このことについては、やはりそれぞれの当該労組の良識ある行動として、一応私どもは尊重いたしておるわけでございます。  川崎公使が理事会議長に立候補いたしたことにつきましてお話がありました。川崎君は、特に必要があって、別に特段の立候補というわけではございませんけれども、御承知のように、今度あの理事会の議長は、やはりこちらの方の地域の方に割り当てられるような時期になっております。しかし、英国においては、それぞれの関係の思惑もあるようでありまして、とかくそういうことを私どもが申し上げることを遠慮いたしますが、要するに、ILO八十七号条約批准の問題と川崎公使を議長にする問題とは関連がないのであります。  第四に、労働大臣がILOの総会に出席をするかどうかということでありますが、これは、今年はちょうどILO機構創立四十年でありまして、特に日本は、重要なる産業国として、理事国でありますから、理事国の労働大臣に出席してもらいたいという、モース事務局長からの特別の招請状が来ておるようでありますけれども、出席するかどうかはきまっておりませんが、たとえだれが政府代表として出席いたすといたしましても、政府は、八十七号条約の問題に関する限りは、私どもは批准するという態度をとっておるわけでありますから、正々堂々と行ったらよろしいと思います。  第五には、答申案は、唯一の絶対条件としては、公労法、地公労法を改正するということだけだとおっしゃいましたが、私はさようには思いません。あそこに盛られておるすべての文句は、これを尊重して検討しなければならない。しかも、その中山会長の答申案の中に盛られておるものは、一年半にわたって小委員会等が設けられて、その審議の記録も全部添付してきておるのでありまして、こういう事柄を尊重すべきものである、こういうふうに了解いたしております。簡単にただその一部分を修正するというようなことは、行政府の責任ある立場としては、そういう無責任なことはできません。  全逓の問題もお話がございましたけれども、このことは、先ほど申し上げましたように、やはり組織大衆というものは、一般の方々が非常に良識的になっておられますから、私は、そのことを期待いたしておる次第であります。  それから、営業法等の改正のお話がございましたが、この点も、やはり御承知の石井報告というものについて私どもは十分に尊重をいたし、従って、正常なる運営が行われるということのために諸般の研究をいたして、そしてその研究の成果を待って、法律の改正すべきものは改正し、そうしてまた、われわれ労政当局がとるべきことがあったならばとっていく、その研究を始めたということでありますから、その結論が出ましてから批准の手続をいたして参りたいと、こういうふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣永野護君登壇拍手
  41. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。  昭和二十九年の千種裁判長の提案は、問題となっております三役を組合代表として認めたというわけではございませんので、労使間の運営が正常化するまでの暫定的方法として話し合いをすることをきめたものでございまするから、正式の法律的解決に到達いたしませんでしたことは、まことに遺憾でありましたけれども、あの現状では、これを認める以外には方法がないと考えた次第でございます。この点は、あとの藤林あっせんとともに、ただいま労働大臣がお答えした通りであります。  次に、鉄道営業法の改正の問題につきましては、総括的に総理大臣がお答えいたしました、あの方針に沿うて運用していくつもりでございます。(拍手)    〔国務大臣寺尾豊君登壇拍手
  42. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) お答えいたします。  公労法第四条第三項に対する私の考え方、これに関連をして、過去にいろいろ問題があったんだが、現在どういうふうな考え方であるかという御質問であったと思いますが、やはり私は、現行の国の法律として、この第四条第三項があります限りにおいては、やはりこれを守っていくべきであり、そういう関係におきまして、全逓労組に対しましては、昨年四月二十八日に役員が解雇された、その解雇役員を依然として代表として全逓労組が持っている、これを正式代表に改組をしない、こういうことに対しては、政府といたしましては、非適法の組合として取り扱わざるを得ない。従いまして、私は、その後におきましても、正規の代表を選ぶことをしばしば全逓労組に対しましても要望をいたしているわけでございます。今回政府といたしまして、ILO八十七号条約は批准をする、こういうことになったのでありまするから、私といたしましては、全逓労組も、この際は、今までのこの現状を改めて、正規の代表を選んで、進んで法秩序を守るという範を示すべきである。それがILO憲章の根本精神にも適合するものだ、かように考えているわけであります。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 日本政府は、ILO復帰以来、ILOの諸般の活動につきまして十分協力をいたしております。今回の場合におきましても、すでに政府が批准の方針を決定いたしているのでありますから、従って、国際信義にもとるとは考えておりません。議長の問題は、先ほど労働大臣からもお話のありましたように、大体この種の国際会議は、地域的に回り持ちで議長を選出することになっている。昨年も、アジア・グループもしくは南米グループ、いずれかからということでありました。昨年は、南米グループからブラジルが出たわけであります。本年は、当然その帰結としてアジア・グループからということでありまして、この問題はそうした地域的な持ち回り的割当とあわせて、議長としての運営能力その他等に個人的な要素が加味されまして議長が選出されることになるのでありまして、川崎代表が議長に立候補いたしましたのは、適当なことだと考えております。      ——————————
  44. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。外務委員長杉原荒太君。    〔杉原荒太君登壇拍手
  45. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ただいま議題となりました通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につき、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  政府の説明によりますと、ハイティは、戦前わが国繊維製品のよき市場であり、わが国から年間平均八十万ドル程度の輸出が行われた時期がありましたが、一九三五年、ハイティは貿易上の求償主義に基いて、日本産品に最高税率を適用し、戦後においても、ガット第三十五条を援用して、最高税率の適用を継続して参りました。これらり事情のため、戦後におけるハイティとの貿易は、わが国が輸入する砂糖などの輸入額に比較して、わが国からの輸出はきわめて低調であり、わが方の著しい入超状況でありました。わが政府におきましては、このような状態を是正するため、ハイティに対し、両国間の通商関係発展が双方にとり有利かつ緊要であること、またその前提として、ガット第三十五条の援用撤回が要望される旨強調するところがありました。しかるに、昨年十一月、ハイティ上院財政委員長が、政府代表として、通商協定締結交渉のため来日いたしまして、自来、両国間に本件交渉が進められました結果、十二月十七日、東京において本協定の署名が行われたのであります。  この協定は、関税上の最恵国待遇、輸出入制限に関する無差別待遇、船舶事項に関する内国民及び最恵国待遇の相互許与並びに科学技術に関する知識の交換等を骨子とするものでありまして、この協定の効果として、今後わが国の対ハイティ輸出は、相当増進するものと期待され、また、ガット第三十五条の援用撤回にもひとしい実質的効果を期待し得るとの政府の見解でありました。  委員会の審議におきましては、ハイティ国の政情、経済事情等、同国の一般概況につき説明を聴取した後、ハイティに対する輸出増加の見通し、ハィティヘの移民、企業進出及びプラント輸出の可能性、この協定の効果とハイティのガット第三十五条援用との関係等の諸点につき質疑が行われましたが、詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。    〔議長退席、副議長着席〕  委員会は、二月十九日質疑を終え、採決を行いましたところ、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  右御報告申し上げます。(拍手
  46. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決趣いたします。本件を問題に供します。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  47. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって承認することに決しました。      ——————————
  48. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 日程第三、未帰還者に関する特別措置法案衆議院提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。社会労働委員長久保等君。    〔久保等君登壇拍手
  49. 久保等

    ○久保等君 ただいま議題となりました未帰還者に関する特別措置法案につきまして、社会労働委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、衆議院提出のものでありまして、その趣旨とするところは、終戦後すでに十四年を経過する今日、なお三方三千余名に上る未帰還者があり、しかも、その大部分が消息を明らかにし得ない状況にありますことは、まことに痛恨にたえないところであるが、今日まで国が調査究明をしても、なおその状況を明らかにすることができない未帰還者に関し、この際、民法第三十条の宣告の請求について特例を設け、またその遺族に対し弔慰料を支給する等の特別措置を講じようとするものであります。次に、本法案内容について大要を御説明申し上げます。  まず第一に、厚生大臣が、調査の結果に基いて、未帰還者が終戦直後の混乱期及びこれに引き続く時期において死亡したのではないかと認められる場合には、厚生大臣もまた民法第三十条の宣告の請求を行い得ることとしたことであります。なお、この請求をする場合には、厚生大臣は留守家族の意向を尊重して行わなければならないことにし、また、この厚生大臣の請求に基く民法第三十号の宣告を、本法案では戦時死亡宣告と呼ぶこととしております。  第二に、未帰還者が戦時死亡宣告を受けたときは、その遺族に対し弔慰料を支給することとし、その額は三万円とする。ただし、その未帰還者に関し恩給法による公務扶助料、戦傷病者戦没者遺族等援護法による遺族年金、遺族給与金等を受ける権利を取得した者に対しては二万円としたことであります。  第三に、未帰還者が戦時死亡宣告を受けたときは、その者に対する恩給法、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の適用については、原則として公務によって死亡したものとみなして、それぞれの法律の規定による処遇を与えることとしたことであります。  第四に、未帰還者留守家族等援護法による留守家族手当または特別手当は、過去七年以内に生存資料のない未帰還者の留守家族には、本年八月一日以後支給されないこととなっておりますが、この支給期間をさらに三年延長することとしたこと等であります。以上がこの法案の概要であります。  委員会におきましては、まず提案者側より、本法案の提案理由並びにその内容について詳細な説明を聴取した後、慎重に審議をいたし、種々熱心な質疑が行われたのであります。そのおもなるものにつき要点を申し上げますと、戦時死亡宣告を受けた者の遺族に支給する弔慰料は、何ゆえに弔慰金という名称にしなかったのか。しかも、弔慰料の額を三万円と二万円の二本建としたことは、死者の取扱いに差別を設けることとなり、不当ではないかという点。また、消息不明者に対する調査究明は、今日までにどの程度実施したか、そして今後いかなる方法でこれを推進するか。次に、今回の特別措置の対象とならない広義の未帰還者に対しては、今後いかなる措置を行う方針なりや。その他、戦時中日本において強制雇用された華人労働者中、消息不明者の実情調査状況並びに犠牲者の遺骨送還問題等についてでありましたが、その詳細は会議録により御了承願いたいと存じます。  かくて、質疑を終り、討論に移りましたところ、格別の発言もなく、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  50. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  51. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本案全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  52. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 日程第四、地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。地方行政委員長館哲二君。    〔館哲二君登壇拍手
  53. 館哲二

    ○館哲二君 ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案について、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。  現行地方自治法規定によりますと、市町村立の義務教育諸学校の教職員などについては、国と都道府県の間及び都道府県相互間は在職期間が通算されることになっておりますが、一方、同じく市町村立の学校でありながら、市町村の退職年金条例の適用を受ける市町村立の全日制の高等学校の教員並びに市町村の教育事務に従事する職員などについては、都道府県と市町村との間及び市町村相互間は在職期間の通算措置をするように努めなければならないというだけであって、通算措置をするかどうかは都道府県及び市町村の自主的な判断にゆだねられているのであります。そこで、本法案は、その間の不均衡や不都合を是正するために、今回、地方自治法の一部を改正して、市町村立の全日制高等学校の教員などについて、その市町村の教職員に適用される退職年金条例の規定が、恩給法に準ずるような基準に従って定められている場合には、義務教育職員の場合と同様に、その在職期間を通算する措置を講じなければならないことにしようとするものであります。  地方行政委員会におきましては、二月十日、青木国務大臣から提案理由の説明を聞いた後、当局との間に質疑応答を重ね、慎重審査を行いましたが、その詳細につきましては、会議録によって御承知を願いたいと存じます。二月十八日、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法案全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  54. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  55. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本案全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  56. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 日程第五、港域法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。運輸委員会理事相澤重明君。    〔相澤重明登壇拍手
  57. 相澤重明

    ○相澤重明君 ただいま議題となりました港域法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、この法案の要旨について申し上げます。ここに政府が一部改正を提案いたしております港域法は、港の区域を定めたものでありまして、その区域は別表で規定されているものであります。政府の提案理由によりますと、本法制定後の事情の変化、すなわち、後背地の経済活動の発展によって得る港内における船舶交通量の増加等、港湾利用事情の変化に伴い、伊達港ほか八港について港則法を施行する等のために、新たに港域を定め、また、港湾工事の進展等に伴い、釧路港ほか三十八港について港域を実情に沿うよう改め、金石港ほか四港について港の名称を変更する必要が生じましたため、別表を改正しようとするものであります。  本委員会におきましては、質疑、討論を省略いたし、直ちに裁決に入りましたところ、本法案は、原案通り可決すべきものと全会一致をもって決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  58. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  59. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本案全会一致をもって可決せられました。      ─────・─────
  60. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 日程第六、首都圏既成市街地における工業等の制限に関する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。建設委員会理事稲浦鹿藏君。    〔稲浦鹿藏君登壇拍手
  61. 稲浦鹿藏

    ○稲浦鹿藏君 ただいま議題となりました首都圏既成市街地における工業等の制限に関する法律案について、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、首都圏既成市街地への産業及び人口の過度な集中を防止するため、大規模な工場、大学及び各種学校の新設を制限しようとするもので、首都圏整備法第二十七条の条項に基いて提案されたものであります。  その内容を概略申し上げますと、第一に、規制市街地を形成する東京都区部、武蔵野市、三鷹市、横浜市、川崎市及び川口市のうち、東京都区部、武蔵野市及び三鷹市を工業等制限区域と指定し、この区域においては、東京都知事の許可を受けた場合のほか、大規模な製造工場、大学等の新設はできないことにいたしております。第二に、制限の対象となる施設は、一団地内にある作業場の床面積の合計が千六百平方メートル以上の製造工場、一団地内にある教室の床面積の合計が千平方メートル以上の各種学校とされておりますが、なお、製造業につきましては、向上の種類により、政令で制限床面積が明示されることになっております。第三に、これらの制限施設の新設について、東京都知事の許可基準を定めております。すなわち、その制限施設の新設が人口増大をもたらすことがないと認められるとき、及び制限区域内の住民または既存の事業者にとって必要やむを得ないものと認められるとき、または制限区域外で事業を経営することが著しく困難であると認められるときにのみ許可するのでありますが、この処分をする場合には、知事が関係行政機関の長の承認を受けることといたしております。第四に、既存の工場、学校等については、その団地内の増設は一切制限しないこととし、新設に準ずるような増設、すなわち、団地外において一定規模以上の建物を新増設する場合のみを規制いたしております。  本法案は前国会に提案され、公聴会を開会するなど、慎重な審議を進めて参ったのでありますが、審議未了となり、本国会にあらためて提案されたものであります。  委員における質疑のおもな点を申し上げますと、「本案実施による人口抑制の効果は、年間人口増の一割にすぎず、かつ、新設許可の基準について、都知事の裁量の余地が多く、実効はきわめて少いのではないか」との質問に対しては、「抜本的方策は今後研究を続けてゆくが、当面実施できる可能な措置としては、数歩の全身をなすものであり、これを拠点として人口抑制の行政指導ができることの意義は大きい」との答弁があり、また「都心における商業、事務所用ビルなど、人口を集中させる施設の建設を放置しておいて、工場、大学のみを制限する方策では、都市機能の混乱は緩和されないのではないか」との質問に対しては、「都心への集中化については、今後、副都心部の整備育成に努めていきたい」との答弁がありました。その他、首都県整備委員会の権限、整備委員会と建設省との関係、制限施設を市街地開発区域へ誘致する助成策等について質疑がありましたが、詳細は会議録で御承知願いたいと存じます。  かくて質疑を終了、討論に入り、社会党を代表して重盛委員から、「本案趣旨には基本的に賛成するが、なお、きわめて不十分であるので、今後、首都の整備については、国の施策として抜本的方策を立てるよう希望する」旨の発言があり、採決の結果、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  62. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者挙手〕
  63. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本案全会一致をもって可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。      午後零時四十三分散会      ─────・───── ○本日の会議に付した案件  一、新議員の紹介  一、請暇の件  一、飼料需給安定審議会委員選挙  一、日程第一 土地調整委員会委員任命に関する件  一、緊急質問及び国民年金法案(閣第一二三号)の質疑に対する国務大臣の答弁  一、国際労働条約第八十七号の批准に関する緊急質問  一、ILO条約批准に関する緊急質問  一、日程第二 通称に関する日本国ハイティ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件  一、日程第三 未帰還者に関する特別措置法案  一、日程第四 地方自治法の一部を改正する法律案  一、日程第五 港域法の一部を改正する法律案  一、日程第六 首都圏既成市街地における工業等の制限に関する法律案