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1959-02-13 第31回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十三日(金曜日)    午前十時三十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十一号   昭和三十四年二月十三日    午前十時開議  第一 国民年金法案閣法第一二三号)(趣旨説明)  第二 国民年金法案(衆第一七号)、一般国民年金税法案労働者年金税法案国民年金特別会計法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案趣旨説明)  第三 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 昭和三十三年分の所得税確定申告書提出期限等の特例に関する法律案内閣提出)  第六 科学技術会議設置法案内閣提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。林田正治君から、病気のため、十六日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議なしと認めます。よって許可することに決しました。      ——————————
  5. 亀田得治

    亀田得治君 私は、この際、警察による人権侵害に関する緊急質問動議を提出いたします。
  6. 田中茂穂

    田中茂穂君 私はただいまの亀田君の動議に賛成いたします。
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 亀田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。亀田得治君。    〔亀田得治登壇拍手
  9. 亀田得治

    亀田得治君 私は日本社会党を代表して、警察による人権侵害に関し、大阪府警スパイ工作事件を中心として質問いたします。  昨年末、大阪平野警察署警備係長辻井警部補は、忘年会の帰途、警備関係書類を紛失したのであるが、その書類大阪会議員三谷秀治君に届けられ、今年一月二十一日公表されました。それは、作業報告書綴等、合計十三点であるが、その中に書かれている警察スパイ活動は、明らかに憲法基本的人権侵害するものであり、しかも、かかる警察活動は、ひとり本件に特有な例外現象ではないのであり、昨年広島大学で起きた学生に対するスパイ強要事件等各地で見られるのであって、今後の警察のあり方としてきわめて重視しなければなりません。そこで、まず私は、これらの文書に直接記載されている重要な問題点四点を指摘して、関係大臣見解を承わりたい。  その第一点は、平野警察署は、スパイを使って、あらゆる革新的民主団体の内情を調べている点であります。この文書の中には、共産党社会党などの革新政党全逓、全電通、国鉄、教組金属等、総評、全労、中立を問わず、あらゆる労働組合、さらに農民組合、平和を守る会、原水協、日中友好協会学生団体のほか、農業青年会のような親睦的団体まで出てくるのであります。もちろん団体によって調査に濃淡の差はありますが、全逓労組の動きについては実にこまかく情報を集めております。しかも記録によりますれば、谷口警部は、警察官の打合会の席上でこう言っておる。「協力者すなわちスパイの獲得については、敵に察知されたら大へんである。」「革新勢力はわれわれのやっていることを不当弾圧として取り上げるだけでなく、摘発攻撃してくる。」と訓示したことが書かれているが、これでもわかるように、警察は広く革新勢力全体を調べており、しかも、革新勢力を目し、官庁において、敵という言葉を使うに至っては、言語道断と言わなければなりません。(拍手)  第二点は、警察は単に情報を収集しているだけでなく、警察が使用しているスパイ組合内における活動指示を与えることによって、事実上組合運営介入している点であります。たとえば、昨年十月二十日の記録によると、北村巡査は、全逓東住吉支部執行委員警察スパイとなっていた上田利男君に対して、「第二組合のことについては、南野同一歩調をとり、絶対反対すること。警職法反対については、指令がなくとも南野に対して、支部として反対するよう手を打とうと持ちかける」ように指示しているのであります。  次に、警察スパイたる上田君の人権をはなはだしく侵害している点であります。その一つは、上田君はいつまでもこのようなことをしていては同志に対し申しわけないと思い、再三、警察と手を切りたい旨述べているのに対し、警察上田君を執拗に手離さないばかりか、再三再四、共産党への入党をしつこく勧めていることであり、第二には、スパイ活動がにぶることをおそれて、上田君の結婚妨害した点であります。上田君の最初の結婚話は昨年五月ごろ始まったのであるが、昨年七月三日の、落されたこの警察記録によると、「結婚期日の十月までに共産党入党させる必要がある。結婚すると、将来のことを考えて多少心理的変化があるものと予想される。」とあるが、同月三十一日の記録によると、北村巡査上司辻井警部補は、「結婚問題については、種々相談に乗ってやることは必要であるが、作業遂行の面から考慮して、破談になる方がプラスとなるので、言動には特に注意すること」と指導しておる記事が書かれているのであります。この結婚話はその後間もなく破談になったのであるが、上田君は当時、何ゆえ相手の女が結納まで受けておりながら結婚に応じなかったのか不可解だったのであります。本件発生後、二月六日、私たち上田君に会い、聞いたのであるが、そのとき彼は、「何か自分に言えない理由があれば、仲人にでも話してくれと女に言ったが、それもないまま、だめになったのであるけれども、今から振り返ってみると思い当る」旨述べているのであります。警察がこの問題でいかなる行動をとったかは大体読みとれるのであります。このように、本人の知らぬ間に結婚妨害してまでしつこくスパイ工作強要するごときは、人権じゅうりんもはなはだしいと言わねばなりません。(拍手)  以上の四点に関する警察側行動は、明らかに憲法十九条(思想及び良心の自由)、二十一条(集会、結社等表現の自由)、二十四条(婚姻の自由)、二十八条(団結権団体行動権)等を直接間接に侵害するものであります。この点につき、まず当面の責任者たる青木国務大臣答弁を求めます。さらに本件については、人権擁護局も重大視して、すでに調査に乗り出しているので、愛知法務大臣より、その調査の結果に基く見解を承わりたい。最後寺尾郵政大臣より、自己の管轄組織内でこのような人権侵害スパイ活動が行われていることについて、いかように考えておるかを伺いたい。  次に、私は警察警備情報収集法的根拠について伺いたいと存じます。警察は、今日きわめて広範に、しかも各種の手段を弄して情報収集を行なっているが、しかし、警察がそのような行動をすることに関する具体的手続法一つもありません。もちろん私は、警察に限らず、あらゆる官公庁の活動が、一々細大漏らさず法規に基いて行動しなければならないというふうな偏狭なことは言いませんが、しかし、事いやしくも基本的人権侵害に結びつきやすい分野においては、その活動範囲活動方法は、あらかじめ法律によって明確にされていなければならぬと考えます。従って、今日警察が行なっている広範な警備情報収集は、明らかに越権行為であると言わなければなりません。青木国務大臣の明確な回答を求めます。  最後に、情報提供者に対する謝礼についてお尋ねいたします。まず、一般にいかなる標準でこの種の経費が支払われているのか、明らかにしていただきたい。本件で問題になった北村巡査は、スパイ上田君に対して、万一の場合は一生めんどうを見ると、たびたび言っているが、このような予算警察にあるのか、それとも、北村巡査の一時的放言にすぎぬのかを、特にはっきり答えてもらいたい。第二に、これらの費用は、警察予算のどの部分から出されているのか。第三に、昭和三十二年及び三十三年には、この種の費用をどのくらい支出したのか。昭和三十四年度予算にはどれくらい見積っているのか。  以上、青木国務大臣答弁をお願いしたい。  なお、全般については、一応答弁を聞いた上で、不満足であれば再質問することを申し上げておきます。(拍手)    〔国務大臣青木正登壇拍手
  10. 青木正

    国務大臣青木正君) お答え申し上げます。  大阪府の平野警察署における事件でありますが、警察が何かスパイを使って、そうしていろいろな革新団体内部情勢調査したのではないかという御質問でありますが、もちろん警察は、大衆団体等につきまして、その組織自体についてこれを視察する必要はありませんし、また、そういうことをすべきものでないと私ども考えております。ただ、それらの団体の中に共産党細胞等が存在いたしておりまして、必要によりましてはそれらの党組織調査する必要が起ってくることもあり得るのでありまして、(「そんなばかなことがあるか」と呼ぶ者あり)そういう場合には、基本的人権侵害することのないように、協力者の御協力を願って調査するということはあり得ると存じます。なおまた、大衆団体の中に、警察が、協力者を通じて、その組織に対しましていろいろの影響力を与えるというようなことがあるのではないかという御質問でありますが、お説のようなことは、私ども、さようなことは、協力者をして党なりあるいはその他の団体内部において影響を与えるようなことをさせるということはあってはなりませんし、また、さようなことはないものと考えております。ただ、協力者調査活動を効果的に行うという意味で、いろいろ警察として協力者に対して警察側考えを述べるということはあり得ると思うのでありますが、協力者をして団体内部組織介入せしめる、あるいはその中に影響を与えるというようなことは、私は、やるべきものでもありませんし、また、さようなことはないと考えております。また、協力者に対して入党を勧誘したり、あるいは結婚についての妨害をしたというようなお話でありますが、私ども聞いた範囲におきましては、警察の係の人たち内部的にいろいろ話し合いをしたことは聞いておりますが、協力者に対して結婚妨害する、あるいは入党強要するというようなことはなかったと、私ども聞いております。  それから、警察がこういうような調査をやることは越権行為ではないか、また、どういう法的根拠によるかという御質問でありますが、申し上げるまでもなく、警察は、警察法第二条によりまして、犯罪予防あるいは鎮圧、捜査その他公共の安全と秩序を維持するという責務を与えられておるのであります。従いまして、その責任を全うするために、いろいろ諸般社会事象調査する必要があるのでありまして、もちろん、この場合におきまして、憲法あるいは法律その他法令に触れないような範囲において、必要妥当な限度においていろいろな調査をいたすのでありまして、この点は、警察責務として、やはり犯罪予防のためにやらざるを得ないものと考えております。  それから、協力者に対する謝礼はどういう基準でやっているかというお話でありますが、これは、実費弁償的な考え方によりまして、協力者に対する支払いをいたしておるのであります。それから、警察予算のどこから出ているかというお話でありますが、これは、警察庁の捜査費のうちから出ておるのであります。捜査費は、刑事あるいは保安警備関係全体を含めまして、昭和三十二年度の支出額は七億二千万円、三十三年度の支出見込み額は約八億であります。それから、三十四年度の捜査費の総額は、八億四千万という要求をいたしております。これが刑事保安警備関係を含めた捜査費でありまして、その中から、こうした協力者に対する実費弁償支払いをいたしておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  11. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまお尋ねの件につきましては、先ほど御指摘がございましたように、一月三十日の各新聞等に報道せられ、その結果、大阪法務局においては、直ちにその調査に当ったわけでございますが、特に、二月四日に本省に指図を求めて参りましたので、私どもの方から、ただいまお話がございましたような、いわゆるスパイ強要とか、あるいは結婚妨害というような事実がどういうふうにあるかどうかという点に特に重点をおきまして、関係の者から広く事情を聴取し、また、詳細な資料を提出いたすように指示をいたしたわけでございますが、何分これが二月四日のことでございましたので、まだ詳細に御報告申し上げるような取りまとめができておりません。私は、人権擁護の大切なことは申すまでもないのでございますから、できる限り詳細に資料を調べまして、その上で所見を明らかにいたしたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣寺尾豊登壇拍手
  12. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) お答えいたします。  上田利男君は、昭和二十二年五月に東住吉郵便局に採用になっております。現在郵便課の外務の事務員として働いております。特に勤務を怠ったというような点もありませんし、現在続いて勤務をいたしております。お尋ねの、郵政職員を、いわゆる人権じゅうりんをしたということに対する私の考え方はどうかというお話でありますが、今、両大臣からもお答えいたしましたように、目下、事件について詳細に調査をいたしておりますから、それらの調査の結果を待ちまして見解を申し述べたいと、かように考えております。(拍手)    〔亀田得治発言許可を求む〕
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 亀田君。    〔亀田得治登壇
  14. 亀田得治

    亀田得治君 答弁がはなはだ不満であります。若干追加して、さらに答弁を求めますが、青大国務大臣は、私が申し上げた四つの事実関係について、いずれも否定されるような答弁をされておる。その中で、結婚の問題でありますが、もう一度お答え願いたい。それは、すでに警察側にもこの書類というものは返っておるはずですから、私はその書類を指摘して申し上げますが、上田君の第一回の結婚がだめになって、第二回目の結婚というものが昨年の秋に起きてきた。そのときの記事でありますが、こう書いてある。「今度の見合いについては女の印象がよほどよいらしく絶えずニコニコとしていたが」、そこで上田君に対して北村巡査が言うには、「君も男前だし、女も多数いるんだし、前回は急いで失敗と言ったところ徐々にしんみりとした表情になり」、云々と書いて、「不快な感じを与えないようにして結婚を見合わすような方向へ持ってゆくことが必要と思われた。結婚したら共産党入党作業障害となる」、こういうふうにはっきり書いてある。これは第二回目の結婚です。これもだめになっている。この書類はすでに返されているから、大阪府警からあなたの方にも連絡があるはずです。こういうふうに、何回も何回もこれは出て来るのですよ。ここまでやっていて、これが結婚妨害にどうしてならないか、はっきり答えてもらいたい。  それから、労働運動に対する介入の問題でありますが、先ほど私が読み上げた記事からも明らかなように、スパイに対して、組合会議でどういう態度をとるようにと、こういう指示を与えておるでしょう。スパイの一票によって、その役員会の決定がきまるという場合には、事実上組合運動介入になるじゃありませんか。それがならぬと言えますか。はっきりしてもらいたい。  それから、この法的根拠でありますが、あなたは、警察法第二条、これを引用された。しかし、あれは単なる警察の大まかな責務を書いたものです。そんなものから人権問題に関連するような行動が具体的に出てくるわけがありません。犯罪予防ということを、あなたはおっしゃる。それは大まかな責務にすぎない。具体的にこれが動くためには、実際に犯罪というものがある程度予想されてこなければだめでしょう。ところが、この書類に書いてあるのは、全然そういうことに関係のない団体です。また、全然およそ予想されないような団体、それまでがみな対象になっているじゃありませんか。ともかく今の警察は、何か手落ちがあれば共産党だ、共産党という言葉さえ出せば世間が納得するかと思って、盛んにそういう言葉を使われるわけでありますが、たとえ共産党であっても、警察法の第二条だけで、現在あなたのやっておるような情報収集活動をやる、こういうことは断じて間違いでしょう。共産党に対するあなたの偏見というものは、私はわかっておる。それは認めたとしたって、こんな二条だけで、こういう広範な秘密捜査活動というものをどうしてやりますか。ポポロ事件判決等もあなたは知っておるはずです。学校の中の事情調査する場合に、たとえ相手方に迷惑のかからぬような秘密方法でいろいろな学内の調査をやったとしても、調べること自体が学問の自由という基本的人権侵害である、こういう判決がおりておるでしょう。同じことなんです。そういう意味で、単に警察法の第二条、こんなものだけでこういう活動が許されるとは、私は断じて考えられない。もっとはっきりこの見解を承わっておきます。  以上三点について、もう一度青木国務大臣答弁を求めます。    〔国務大臣青木正登壇拍手
  15. 青木正

    国務大臣青木正君) 重ねての御質問でありますが、第一点の、結婚妨害したのではないかというお話であります。ただいま法務大臣からもお話がありましたように、人権擁護局で現在お調べになっておりますので、その結果判明すると思うのでありますが、現在までに私どもの方に参りました報告によりますると、結婚問題について、警察内部においていろいろ結婚についての話があったということは聞いております。それから、お話のような、「君は男前で」云々というお話でありますが、これはまあ軽くそういうことを言ったということも聞いておりますが、しかし、結婚妨害するというようなことでなしに、全く内輪同士で話したことが、自分考えとして、あるいは感想として、報告書の中に出ているということは聞いております。しかし、結婚妨害というようなことはないというふうに私どもの方は報告を聞いておるのでありますが、この点は、いずれ人権擁護局の方で、十分調査の上判明すると思うのであります。  それから次に、いろいろ組合内部について干渉したのではないかということでありますが、これは協力者に対しまして、効果的に調査をしていただくために、いろいろアドバイスすることはあり得ると思うのであります。しかし、そのことが直ちに警察として組合運動内部に関与するという意味では決してないのでありまして、警察立場において、調査を効果的ならしめるために、協力者に対してアドバイスしたというにとどまると私ども考えておるのであります。  それから第三の法的根拠の問題でありますが、御承知のように、即時強制にわたります場合等につきましては、言うまでもなく、やはりそういう法的なちゃんとした規定がなければなりませんので、警察官職務執行法においてそういう場合の規定はあるのでありますが、そうでない場合には、一般的の運営事項につきましては、諸外国の例等を見ましても、特別の法律ということでなしに、やはり警察官本来の責務として、諸般社会的事象をいろいろ調べる。言うまでもなく、これは強制にわたるべき問題ではないのでありまして、警察本来の立場において、法律その他の政令等に違反せぬように、そうしてまた人権を侵すことのないように、警察責務を果すために一般的な事項としてやると、かように私ども考えております。(拍手)    〔岩間正男発言許可を求む〕
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 岩間君、何ですか。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 議事進行について発言を求めます。お許しを願います。
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 岩間君。    〔岩間正男登壇拍手
  19. 岩間正男

    岩間正男君 ただいまの亀田議員質問に対する青木国務相答弁の中に、私たち共産党としましては聞き捨てにならない一言がありました。しかも、これは単に共産党だけの問題ではなくて、実に憲法に抵触するような重大な問題であると思うのであります。といいますのは、先ほどの答弁の中に、警察官大衆団体に対しては調査をしていない。しかし、その中には共産党細胞もあるのだから云々というような、共産党捜査するのは当然であるというような、何か憲法でも許されてあるような、法的根拠のあるような、そのような答弁をいたしました。しかし、これはまさに人権じゅうりんであり、そうして、まことに偏見に立つところの答弁であると言わざるを得ないのであります。一国の人権を守る国務大臣が、人権を守る公的な立場において、しかも国会の公然たるこの壇上において、このような答弁をされることは、日本の今後の国会運営、政治の運営の面において、人権擁護の面において、断じてこれは聞き捨てにすることはできない問題だと私は考えます。従って青木国務相は、以上のような憲法違反のこの偏見を、この壇上において取り消されんことを私は心から切望するものであります。
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 青木国務大臣からは、発言の意思はないそうであります。      ——————————
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、国民年金法案閣法第一二三号)(趣旨説明)。  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。坂田厚生大臣。    〔国務大臣坂田道太登壇拍手
  22. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 国民年金法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  御承知のように、わが国公的年金制度には、厚生年金保険制度を初め、恩給、各種共済組合による年金制度など、すでに幾つかの制度があるのでありますが、これらは、いずれも一定の条件を備えた被用者対象とするものでありまして、国民の大半を占める農民商工業者零細企業被用者などは、いまだに年金制度から取り残されたままになっておるのであります。翻って最近のわが国人口の趨勢を見まするに、国民死亡率は激減し、平均余命は、戦前に比べ飛躍的な伸びを見せ、その結果、老齢人口は、絶対数においても、また国民全体の中において占める比率においても、著しい増加の傾向を見せております。しかるに、一方これら老齢者の置かれております生活状態は、戦前に比べ、むしろきびしさを加えておるのであります。このことは、程度の差こそあれ、身体障害者母子世帯の場合においても同様と言えるのであります。このような事情からいたしまして、社会保障制度の一環として全国民年金制度を及ぼし、これを生活設計のよりどころとして、国民生活の安定をはかって参ります体制を確立いたしますことが、国民の一致した要望となってきたのであります。与党たる自由民主党におきましても、かねてからこの問題について研究しておったのでありますが、ついに昨年春の衆議院議員総選挙に際し、国民年金制度の創設を国民の前に公約いたしたのであります。社会党におかれましても、この問題を多年にわたって研究され、すでに数回にわたり国民年金法案国会に御提案になっておられるのであります。政府といたしましては、このような各方面の要望にこたえるため、昨年六月、内閣総理大臣の諮問に応じて行われました社会保障制度審議会国民年金制度に関する答申を参考とし、鋭意、国民年金制度企画立案を急いで参ったのでございまするが、ここに、これがわが国の現状に最も即応し、かつ実現性の強いものと考えまして、この法案を提出した次第でございます。  次に、国民年金法案基本的な立て方について申し上げます。  本法案におきましては、拠出制年金基本とし、無拠出制年金は経過的及び補完的に併用していく建前をとったのでございます。拠出制基本といたしましたのは、第一に、みずから掛金をし、その掛金に応じて年金を受けるという仕組みをとることによりまして、老齢のように予測できる事態に対しましては、すべての人が若いうちからみずからの力でできるだけの備えをするという原則を堅持して参りたいと考えたからでございます。年金制度におきましてこのような建前をとりますることは、制度が将来にわたって健全な発展を遂げて参りますための不可欠の前提と考えられるのでありまして、イギリス、アメリカ、西ドイツ等、諸外国における多年の経験も、このことを明らかに示しておるのであります。さらにまた、わが国のように老齢人口の急激に増加して参ります国におきましては、無拠出制基本とした場合、将来における国の財政負担が膨大になり、それだけ将来の国民に対しまして過度の負担を負わせる結果となるからであります。これを避けますためにも、拠出制基本とした積み立て方式をとり、積立金及びこれから生ずる利子収入を有力な財源として給付費をまかなっていく仕組みが必要となるのであります。しかしながら、拠出制のみでは現在の老齢者身体障害者または、母子世帯、あるいは将来にわたって保険料を拠出する能力の十分でない不幸な方々には、年金の支給が行われないこととなりますので、これらの方々にも年金を支給いたしますために、無拠出制年金を併用することといたしたのであります。  次に、本法案の内容についてその概略を御説明申し上げます。まず、基本的なものである拠出制について申し上げます。  第一に、その適用対象でありますが、これは二十才から五十九才までの全国民であります。現行公的年金制度の適用者及び受給者は適用除外とし、またその配偶者及び学生につきましては任意加入を認めることといたしました。しこうして、これらの者に対する将来にわたるこの法律の適用関係につきましては、国民年金制度と現行公的年金制度との関連を考慮いたしまして、引き続き検討をすることとしたのでございます。これは、国民年金制度から現行公的年金制度の適用者等を除外いたしますと、本制度と現行公的年金制度との通算調整、さらには現行公的年金制度相互間の通算調整を行わなければ、各制度の被保険者でありながら、その間を移動いたしますと、年金を受けることができないという者が多数生ずることになり、国民年金制度の意義が減ずるおそれがありますので、これについて具体的な方策を講ずべきことを法文に明記いたしたのであります。なお、本制度拠出制が発足いたしますときに、すでに五十五才をこえている者は、たとえ六十五才まで保険料を納付したとしても年金を受ける資格を得ることができませんので、適用を除外し、五十才から五十五才までの者は、希望すれば保険料を納付して拠出制年金を受けることができるよう、任意加入の道を開いたのであります。  第二に、保険料でありますが、これは二十才から三十四才まで月額百円、三十五才から五十九才までは百五十円としたのであります。この額は国民の大部分が負担できるものと考えてきめたものでありますが、生活保護を受けている者とか、その他この保険料を負担する能力の乏しいと認められる者につきましては、保険料免除の道を開く等、低所得階層に対する特別の措置を考慮いたした次第でございます。  第三に、年金給付についてでございますが、年金給付の種類は、老齢障害、母子、遺児及び寡婦の五種類といたしております。  まず、老齢年金でありますが、これは保険料を二十五年以上納付した者が六十五才になったときに支給するものであります。しかしながら、さきに申し上げました保険料を負担する能力が乏しい者につきましては、十年間だけ実際に保険料を納付していただきますならば、年金を支給することといたしました、また、拠出制が発足いたしましたときにすでに一定年令をこえていて、二十五年以上の保険料を納付する期間がない者につきましても、この者の年令に応じて、この期間を十年ないし二十四年に短縮いたすことといたしております。年金の額は、保険料納付の期間に応じまして、保険料を二十五年納付した者には年に二万四千円、二十才から五十九才まで四十年間納付した者には年に四万二千円を支給いたすことにしております。  次に、障害年金でありますが、これは、一定期間保険料を納付した者が、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度、すなわち片手とか片足を失った程度の障害になったときに支給し、その額は、保険料の納付期間に応じまして、二万四千円から四万二千円までといたしております。これより重い程度の障害、すなわち両手とか両足を失った程度の障害になった場合には、これに年額六千円を加算することといたしました。  次に、母子年金でありますが、これは、妻が一定期間保険料を納付した後、一家の働き手である夫に死に別れて、十八才未満の子供を扶養しているような場合に支給するものでありまして、年金額は、保険料の納付期間に応じて、一万九千二百円から二万五千二百円までであります。なお、子供が二人以上あるときは、これに第二子以降の子一人につき四千八百円が加算されることになります。  また、遺児年金は父母いずれにも死に別れた十八才未満の子供に支給し、年金額は、保険料納付期間に応じまして、七千二百円から一万五百円までとしております。この額も、子供が二人以上あるときは、これに第二子以降の子一人につき四千八百円が加算されることになります。  寡婦年金は、婚姻後十年以上経過した妻が老齢年金を受けるに必要な期間保険料を納付した夫と死別いたしましたときに、六十才から六十五才まで支給し、年金額は夫の受けるべきであった老齢年金額の半額としております。  次に、無拠出制年金について申し上げます。初めに申し上げました通り、本制度拠出制基本といたすものでありますが、制度発足のときにすでに七十才以上である者はもちろんのこと、このときすでに五十才以上である者も、原則として、拠出制年金を受けることができないのであります。制度発足のときにすでに身体障害とか母子世帯の状態にある者につきましても、同様であります。これらの者に対しましても年金を支給いたすことによりまして、文字通り国民年金の実をあげますために、無拠出制による老齢障害、母子の二つの援護年金を経過的に支給することといたしたのであります。  まず、老齢援護年金についてでありますが、これは、先ほど申し上げました通り、制度発足のときすでに五十五才以上である者、五十才以上五十五才未満で任意加入の道を選ばなかった者、または将来にわたって保険料の負担能力が乏しいため拠出制老齢年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得なかった者に対し、七十才から一万二千円を支給いたします。  障害援護年金は、制度発足のと二十才以上の者であって、すでに両足とか両手を失った程度の廃疾の状態にある者、または保険料の負担能力が乏しいか、または二十才未満でこれと同程度の廃疾になることにより拠出制障害年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得なかった者に対して、一万八千円を支給いたします。  また、母子援護年金は、制度発足時すでに夫と死別して十六才未満の子供を扶養している者、または保険料の負担能力が乏しいため拠出制の母子年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得ずして夫と死別し、十六才未満の子を扶養している者で、いずれも二十五才以上の子のない場合に一万二千円を支給いたします。なお、子が二人以上あるときは、第二子以降の子一人につき二千四百円を加算いたすことになっております。  これらの援護年金は、拠出制年金のように、自分であらかじめ拠出しておいた者に対して支給するものではなく、すべて一般財源から支出するものでありまするので、すでに現行公的年金制度による年金を受けておる者でありますとか、一定程度以上の所得のある者など、比較的恵まれた状態にある方々に対しましては、この支給を制限いたすことになっております。  次に、援護年金と生活保護制度との関係についてでございます。本制度による年金は、その建前上、生活保護法による被保護者に対しましても当然支給されるのでありますが、この年金を支給いたしましても、生活保護制度の運用におきまして特別の措置を講じませんと、その人の受けまする年金のすべてが収入認定の対象となり、従って、被保護者にとっては何ら実質的な意義がないという結果になりますので、この点、不合理のないよう措置いたす心算であります。  第四に、年金財政について申し上げます。本制度におきまする財政運営方式といたしましては、積立式をとることにいたしておりますが、これは財政運営方式を賦課式といたしました場合、わが国の現状におきましては、年金を無拠出制のみとした場合と同じように、将来の被保険者に対しまして、過度の負担を負わせる結果となるからでございます。なお、本制度の積立金は、制度の発足当初から次第に増加することになるのでありますが、これが運用は、きわめて重要な問題でありまして、今後とも慎重に研究いたして参りたいと考えております。  次に、国庫負担でございますが、これは毎年度の保険料収入総額の二分の一に相当する額を負担することにしております。このような国庫負担割合は、従来の社会保険、特に年金制度には見られないほど大きいものでありまして、これを見ましても、国民年金制度の維持育成に対する熱意を肯定していただけるものと考えております。  なお、援護年金の給付に要する費用は、当然のことながら全額国庫で負担をいたします。また、事務費につきましても、これを全額国庫が負担することといたしております。   最後に、実施の時期でありますが、援護年金の支給につきましては昭和三十四年十一月一日から、拠出制年金に  つきましては昭和三十六年四月一日から保険料の徴収を開始いたすことといたしております。  以上で国民年金法案趣旨の御説明を終りたいと思います。(拍手
  23. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。小林英三君。    〔小林英三君登壇拍手
  24. 小林英三

    ○小林英三君 私は、自民党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする国民年金法案につきまして、若干の質問を試みたいと思うのであります。  今回の国民年金制度の創設は、わが国社会保障制度の発展にかんがみまして、きわめて意義深いものがあるのでありまして、私も国民年金の創設につきましては、かねてより深い関心を持っておりました関係からいたしまして、今回、政府が各種の支障を克服いたされまして、本国会に提案いたされましたその努力と、その決断に対しましては、衷心より大なる敬意を表する次第であります。  私のお尋ねいたしたい第一の要点は、本制度は、いわゆる拠出制国民年金基本といたし、これに無拠出制を補足的に併用いたしておるのでありまして、この考え方には私どもも賛意を表するものであります。しかしながら、この拠出制国民年金基本とすることによりまして、もし低所得階層の方々に対する施策の点で、かりに欠くるところがありといたしまするならば、社会保障制度といたしましての意義がなくなると言わなければならぬのであります。しかるに、一般には、この拠出制によりまする保険料が高いのではないかという声もあり、そのため、国民のうち相当多数の者が保険料を負担することができないのではないかというような批判も聞かれるのでありまして、もしこのように、保険料を負担できないところの低所得階層に対しまして十分なる保障が行われないようなことが、かりにあるといたしまするならば、多年国民待望の趣旨にも沿わぬことと相なりまするので、この点につきましては、政府といたしましても、十分御確信のあることとは存じまするが、この際、率直に、この点について、厚生大臣の御所見を承わりたいと存ずのであります。  第二にお伺いいたしたいことは、いよいよ来年度から支給が行われまするところの無拠出制でありまする援護年金についてでございます。この年金は、全額国民の税金でまかなわれる関係からいたしまして、ただいまのところ、月千円程度を基準に考えざるを得なかったとは思うのでありまするが、それにいたしましても、その支給の対象及び額につきましては、ある程度国民の納得のいくものでなければならぬと思うのであります。政府は、本制度の策定に当りましては、各界の学識経験者からなる社会保障制度審議会の意見を基礎とされたものと承わっておるのでありますが、この御提案の政府案は、この社会保障制度審議会の答申に比べまして、どうなっておるのであるか。率直に申し上げますならば、この政府案は、答申案よりはよくなっておるのであるか、あるいは悪くなっておるのであるかということを、老齢障害、母子の各援護年金につきまして、厚生大臣から明らかにされたいと思うのであります。  次は、援護年金の支給制限についてでございます。  年金制度は、老齢、廃疾、死亡という事故によりまして、国民が貧困に陥るのを防止するための制度であり、その意味におきまして防貧的制度であるとも言えるのであります。しかしながら、もしこの種制度におきまして、受給資格の所得条件をあまりにきびしくいたしますと、生活保護制度とほとんど変らない、いわば救貧的な制度に近づいてしまうおそれが多分にあるのであります、従いまして、本制度の援護年金におきまする所得条件も、このようなお趣旨から十分慎重に検討されなければならないものと存ずるのでありまして、もとより援護年金は、前にも申し述べましたように、全額を一般財源すなわち国民の税金から支出されるものでありますから、私はもちろん、ある程度余裕のある生活をいたしておられます方々には御遠慮願うことは当然だと思われるのでありますけれども、また、むやみにこの制限をきびしくいたしますれば、これは救貧的制度に堕してしまうおそれがあるのでございます。社会保障制度審議会は、この点につきまして、政府案は所得条件が過酷に過ぎ、その結果、防貧的よりも、むしろ救貧的な色彩が濃厚であるという批判をいたしておるのでありまするが、政府は、この援護年金の所得条件について、十分な御検討をなさっておられることと存ずるのでありまするが、この点、厚生大臣に特にお伺いいたしたいのでございます。  次に、この援護年金と生活保護制度との関係についてでございます。援護年金は、生活保護を受けている者に対しましても、もちろん支給されるのでありますが、聞くところによりますれば、せっかくのこの支給額は収入とみなされて生活保護費から差し引かれ、被保護者は実質的には何らの恩恵にもならないというおそれもあるのであります。もし、かようなことに相なるといたしまするならば、最も保障を必要とするこれら一連の被保護者階層の人々に対しまして、国民年金がこれを見捨ててしまうという結果となり、社会保障制度といたしましての意義を半減いたすことと信ずるのであります。政府はかような不合理な点については十分御検討されておいでになるとは信ずるのでありますが、念のため、これらの点について、どのような御方針であるかということを、厚生大臣とあわせて大蔵大臣にもお伺いいたしたいと思うのであります。  第三にお伺いいたしたいことは、本制度の積立金運用についてであります。  まず、拠出制基本として積立式をおとりになりました結果、この積立金が将来膨大になり、最高時には優に三兆円をこえることが予定されておるようでありますが、私が承わりたいのは、この積立金の管理運用をいかようにせられるかということであります。これを、厚生年金保険の場合のごとく、大蔵省の資金運用部に全額預託されるつもりでおられるか。あるいはまた、今国会におきまして政府提出の中小企業退職共済制度法案におけるがごとく、積立金のうちの相当部分を自主的に運用されんとするのでありまするか。私は、本制度においても、積立金はできる限り被保険者の福利のために、できるだけ積極的な自主運用をなすべきであると考えるのでありますが、この点について、厚生、大蔵両大臣の御意向をただしたいと思うのであります。  第四は、本制度施行後、将来貨幣価値について著しき変動のありました場合、どのように対処されるかという点でございます。この場合、民間の保険会社のごとく、たとえ貨幣価値に大変動がありましても被保険者には何らの救済措置も講じないことになりますれば、私は、本制度強制的に、しかも四十年間にわたって政府において保険料を徴収するのでありますから、政府は、かくのごとき場合におきまして、被保険者に対し、しかるべき救済措置を十分考えておられるものと信ずるのでありますが、この点を承わっておきたいと存じます。同時にまた、積立金を資金運用部に預託したままで、いわゆる名目価値のみで運用いたした場合におきまして、将来貨幣価値の変動のため、積立金の価値が下落する場合もまた考えられるのでありまして、これを回避するために、政府は、ある程度積立金の実質価値を保っていくという、何らかの運用上の措置が必要ではなかろうかと思われるのでありまするが、これは先ほどの積立金運用の問題の一環ではありまするが、これにつきましても、あわせて厚生、大蔵両大臣見解お尋ねいたしたいのであります。  第五にお尋ねいたしたい点は、このように多額に上る積立金が、日本経済に対して将来どのような影響を与えるかということであります。この積立金が国家資金としてフルに日本経済に作用いたすことになりますと、当然民間資本を圧迫するおそれなきにしもあらずと考えられるのでありますが、そのような私の心配は単なる杞憂でありましょうか、杞憂であればけっこうでありまするが、これは大蔵大臣にお伺いいたしたいのであります。  第六は、政府はこの制度の施行に当りまして、市町村に対しましてどのような配慮で臨まれんとしておられるかということをお伺いいたしたいのであります。すなわち、政府は本制度を運用するに当りましては、市町村を第一線機関といたしまして各種の業務を行わしめるのでありますから、私は、少くとも市町村の協力いかんが、この制度を円滑に運営できるかいなかの重要なキー・ポイントとなるものと信ずるのであります。この市町村をして十分に協力してもらうためには、国みずからも相応の配慮を払う必要があると存ずるのでありまするが、政府はこのことをいかようにお考えであるか。この点は大蔵大臣と自治庁長官に率直に御答弁を願いたいと思うのであります。  次に私は、本制度の将来の発展のために、国民に対する周知徹底の件につきまして一言いたしておきたいと存ずるのであります。この制度基本でありまする拠出制年金は、先ほど厚生大臣からの御説明の中にもありましたように、二十才から五十九才までの国民に保険料を負担せしめるものであり、しかもその徴収方法につきましても、国民の自主的納入に待つ、いわゆるスタンプ方式をとっておりまする関係からいたしまして、国民の理解と認識がぜひとも必要であるのでございます。また、世上往々にいたしまして、国民年金制度は無拠出のみでありとする考え方も耳にいたすのでありまして、従いまして、この制度全般にわたっての国民に対する十分なる周知徹底をはかることがきわめて必要なりと考えるのでありまするが、厚生大臣はこの点に対しまして、いかような対策を立てておられるかを明らかにしていただきたいと思うものでございます。  最後に、私は政府に対しまして希望いたしたいことは、かような一つの大法案が創設いたされます場合におきましては、いつの世の、いかなる場合におきましても、必ずいろいろな批判がこれに伴いますことは論を待たないと思うのでありますが、しかしながら私は、政府が各種の支障を乗り越えて、国民への公約を果すために、誠意を持って本案を今国会に提出せられましたる努力に対しましては、大なる敬意を払うものでありまして、おそらく私は、今回の政府提案の国民年金制度が成立の上は、今後のわが国社会保障制度の上におきまして、輝かしき足跡を残すものと信ずるものでありまして、政府はよろしく、今後、本制度の創設を機会に、あらゆる艱難を乗り越え、将来本制度をさらに研究せられ、これに一そうの磨きをかけることに懸命の努力を払われまして、これによって、この国民年金法が福祉国家のいしずえの一つとなり、日本国民の子々孫々に至るまで大いに謳歌せられるであろうことを、切に期待いたしまして、私の質問を終る次第でございます。(拍手)    〔国務大臣坂田道太登壇拍手
  25. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 小林議員にお答えをいたします。  最初の御質問は、低所得階層に対する保障に欠くるところがないか、低所得階層に十分な保障が行われないのではないかという御質問でございますが、この保険料につきましては、すでに二、三の調査を行いまして、国民の大部分はこの程度のものは負担できるという結論に到達いたした結果きめましたものでございます。しかしながら、生活保護を受けておられる方や、その他の低所得者の方で、この保険料を納めかねるという階層もあると考えられますので、そのような方に対しましては、保険料免除の道を開きます一方、給付の面におきましてもかなりの優遇措置を講じておるのでございます。かようにいたしまして、低所得者階層に対しましても十分な考慮を払っておるものと確信いたしております。  第二のお尋ねは、援護年金の支給対象と額について、社会保障制度審議会の答申と比較して、これはどうなっておるか、あるいはまた救貧的制度ではないか、あるいは生活保護法との関係はどうかというようなお尋ねだったと思います。まず援護年金の支給対象とその額についてでございますが、老齢援護年金につきましては七十才から月千円でありまして、これは社会保障制度審議会の答申と全く同じでございます。それから障害援護年金につきましては、支給の対象となる廃疾の程度はほぼ答申と同様であります。また金額が月千五百円であることも答申と同じでございます。多少答申案よりも不利なところもございまするけれども、一方また母子援護年金につきましては、むしろ答申よりかなり有利になっておるのでございます。  次に、援護年金の支給制限についてでございますが、これは拠出制年金のように自分であらかじめ拠出をしておいた者に支給するものではなくて、お説のようにすべて一般財源から支出するものでありますので、ある程度恵まれた状態にある人たちに対しまして支給制限を行いますことは、これはまあやむを得ないものと考えられるのであります。本制度による支給制限につきましては、一般に言われますようにきびしいものではなくて、老齢援護年金について見ますれば、所得があることによって支給を受けられなくなる人は、七十才以上の老人のうち、すでに年金を受けておりますものを除いて、わずかに二割足らずでございます。これを見ましても、この制度は決して救貧的なものでないことが御理解いただけると確信をいたしております。  次に、生活保護制度との関係でございますが、これは生活保護制度の方に老齢加算を新設いたしますとか、身体障害者加算や母子加算を増額いたしますことによりまして、被保護者に対しましても実質的に年金が支給されますよう、特別な措置を講じて参る所存でございます。  それから積立金の管理運用について、これは零細な保険料を納付した金であるから、被保険者に還元すべきではなかろうかというようなお尋ねでございまして、これは全く私も同感だと考えておるような次第でございます。  それからまた、貨幣価値の変動に対してどのように考えておるか。—御承知のように、戦後のインフレーションのような貨幣価値の変動は、今後は起り得ないとは存じますけれども、貨幣価値に相当な変動が生じました場合には、政府が管掌するこの種社会保険におきましては、当然の措置として、年金額に必要な調整を加えるべきものでありまして、本法案の中にも第四条に明文をもってこれを規定いたしております。また年金財政につきまして五年ごとにこれを再計算し、保険料国庫負担と給付について合理的な手直しを行うことになっておるのでございまして、これによりましても貨幣価値の変動に対して一そう適切な措置が講ぜられるものと考えております。  次に、貨幣価値の変動に対して、積立金の運用をどのように工夫するかということでございますが、このような場合はできるだけ保険財政の中で問題を解決し、いたずらに国庫負担に頼ることを極力避けますためには、お説のように積立金の運用を工夫いたさなければならないと存じますので、これを単に名目価値のみでなく実質価値で運用いたすことなどの問題につきましても、今後とも慎重に検討して参る所存でございます。  それから拠出制年金を実施いたしますには、国民に対して制度趣旨を十分に周知徹底させなければならないが、これに対する具体的措置はどうかというようなお尋ねだったと思います。拠出制年金を実施するために、国民に対し制度趣旨を十分に周知徹底させなければならないということは、これまた同感でございまして、政府といたしましては、本年及び明年の二カ年間、市町村、報道機関、農業関係団体その他各関係団体協力を得まして、制度趣旨、概要等について、十分周知徹底に努めるつもりでございます。このため明年度予算におきまして、特に七百二十万円を計上いたしておるわけでございまして、今日、医療保障とともに二つの大きな柱といたしまして、この国民皆保険制度が打ち立てられ、さらに今回この所得保障の年金制度を打ち立てたわけでございますけれども、これは、一にかかって、国民全体の支持と御協力によって、私はこの年金制度が確立いたすというふうに思いますので、この点につきましては、十分今後とも国民の方々に御協力を願い、またこの趣旨を徹底いたすつもりでございます。(拍手)    〔国務大臣青木正登壇拍手
  26. 青木正

    国務大臣青木正君) お答え申し上げます。  国民年金の給付事務等を担当する市町村に対して、国はどういう配慮をしていくかという御質問であります。御承知のように第八十六条に、この市町村の事務に対しまして国は必要なる経費を交付しなければならないという規定がありますので、市町村の負担になることなしに、必要なる経費は国が支弁することになっておるのであります。しこうして明年度予算におきましては一億五千五百万円を計上いたしておるのでありますが、その積算の根拠といたしましては、国民保険、国保等の従来の実績等から勘案いたしまして、給付事務に必要なる経費を一件五十円と予定いたしまして、そうして三百十万人の対象に必要なる経費として一億五千五百万円を計上いたしておるのであります。しこうして、万一この経費で不足の場合はどうかという御心配もあろうと思うのでありますが、法律においてはっきりと、必要なる経費は国がこれを交付するという規定になっておりますので、市町村がそのために余分な負担をするということはないと、私どもはかように考えておる次第であります。(拍手
  27. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 大蔵大臣答弁は他日に保留いたします。    〔藤田進君発言許可を求む〕
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 何ですか。
  29. 藤田進

    ○藤田進君 議事進行について発言を求めます。
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 藤田君。
  31. 藤田進

    ○藤田進君 ただいま厚生大臣から提案理由の説明があり、与党である自由民主党の小林英三君から質疑がありましたが、与党の場合はともかくとして、政府の最重要法案として、ここに岸内閣総理大臣の名において提出され、ここにそれに対する野党の質疑が行われんとするときに当って、内閣総理大臣ないし要求している大蔵大臣の出席がいまだありません。かようなことは、わが国憲法国会法に定めるところに抵触をする。当然、内閣総理大臣その他の国務大臣は、要求があった際出席をする義務がある。ことに、本会議は、いずれの会議よりも優先するわけであります。内閣総理大臣並びに大蔵大臣は現在登院をしているとのことである。これらについて私は、議長におかれて、さっそくその出席を、特に、岸内閣総理大臣、佐藤大蔵大臣の出席を促していただきたい。岸内閣総理大臣ないし大蔵大臣答弁次第では再質問をする用意を持っているわけでありますから、先刻行われたような、あとから答弁をいつの日かやるというような、そういう重要法案の扱い、また本会議における運営の悪例を残すことは承知できません。
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) お答えいたします。内閣総理大臣及び大蔵大臣は衆議院に出席しておりますので、本議場に出席方重ねて連絡いたします。
  33. 藤田進

    ○藤田進君 お伺いしますが、質問中に少くとも出席をするように議長は努力されますか。
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 連絡いたします。藤田進君。    〔藤田進君登壇拍手〕     ━━━━━━━━━━━━━
  35. 藤田進

    ○藤田進君 質問中に、ぜひ議長におかれては、先ほど議事進行発言をいたしましたように御努力をお願いいたしまして、質疑に入りたいと存じます。  私は、ただいま提案されました国民年金法案につきまして、日本社会党を代表して、若干の質疑を行わんとするものであります。  日本社会党は、先ほど厚生大臣も触れられたように、つとに国民年金制度あるいは医療保障等については、具体的な案をもって世間にも訴え、議会にも提案をして参りました。ところが、これについて予想外の国民の反響、支持、協力を呼びまするや、昨年の衆議院総選挙における自由民主党の公約となって、いわば社会党のそういった一連の社会保障制度の確立ということが動機となって、昨年の総選挙で鳴りもの入りの公約となったと私は見ているのであります。ところが、当時自由民主党も踏み切ったということに、相当の期待を、また関心を国民も持ったのでありましたが、しかし、実際に今日ここに提案されたものの中身を検討してみますると、これが国民年金という体をなしているかどうか、こういうことについて多くの疑問を持つわけであります。私は、このような観点から岸内閣総理大臣に質疑をいたすものでありますが、出席がございませんから、まず厚生大臣にお伺いをいたします。  拠出年金の最低拠出期間が二十五年であるが、社会保障制度審議会においても五年を答申しております。二十五年の長期拠出は保険主義に基くものでありまして、生命保険と異なるところがありません。所得保障の精神に基いて、拠出期間を少くとも五年以下にすべきではなかったか。先ほど小林君の御質疑に対して答弁がございましたが、社会保障制度審議会の答申を、答弁の限りでは全部受け入れ、さらに上回ったような御答弁がありましたが、第二回目の、昭和三十四年一月二十二日の国民年金法の制定についての答申を見ますると、厚生大臣は御承知かと思いますが、第一から第十まで、それぞれ、当時の情勢下において注文がつけられております。社会保障制度審議会は十の注文をつけております。この中の一つに、今申し上げる、せめて五年程度にしたらどうか、拠出期間の短縮ということがあります。これについては、実際には受け入れられていないのでありますが、聞くところによると、厚生省はかなり国民年金保険としてふさわしいものを立案したが、大蔵省がだんだんと攻勢をかけて、厚生省は後退に後退を続けて、ここに当初の案よりも相当変ったものが提案されているように聞くのであります。この間の事情と同時に拠出期間の短縮に関する所見を伺いたいと思います。  第二、徴収の方法については、画一主義で、一律に印紙によって徴収をするということになっております。今日のように貧富の差が非常にはなはだしい、そうして低所得者は生活保護等によって十分まかなえないような現状において、この一律印紙による徴収というものが、果してうまくいくだろうか。ことに、今度のこの国民年金法案を読んでみると、私どものように専門的にこれに携わっている者にさえも、なかなかわかりにくい。こういう条文編さんの、技術からいってもまことに遺憾な点が多いのですが、ましてや、一般の国民の階層では理解しがたいでしょうが、そういう実態の中にあって、果して円満な徴収が行われ得るだろうか。この点については具体的にどういうことをおやりになろうとしているのか、お伺いをいたしたいと思います。  第三は、これと関連いたしまして、必ずしも自主的に期間内にこの拠出が行われないということが私は容易に考えられ得ると思います。いわゆる滞納者が出てくる。学生とか、あるいは寡婦というような方々を除いては強制加入ということになりますと、自然そこに無理がある。先ほどの答弁では、この程度のものは、これは十分拠出し得るということですが、その基礎が、説明があいまいです。その滞納者について督促その他の方法がとられるとしても、その上でさらに滞納があるという場合には、条文によると、国税滞納処分の例によってこれを処分するということが第九十六条の四項に、ここに書かれてある。そうなると、ここにまた関連して、差し押えというようなことが起きるわけであります。そういうことをやるということがやはり法の建前になっているが、それをやはり遂行せざるを得ない、差し押えによる押収ということにならざるを得ないと思うが、そのほかにいい方法があるとすれば一つお示しをいただきたい。  第四に、年金額が月二千円ないし三千五百円であることは、これは生活保護の扶助額を基準にして、これと同様な考え方で算出をされていると見るほかはありません。老後の生活安定に重点をもっと置くべきではなかったのか。ことに、七十才以上無拠出年金を当面十一月から実施するということだが、わが国平均余命等から考えても、平均余命以下の人には結局恩恵はないというようなことにもなっている。こう考えて参りますというと、この点は生活扶助的なものではなくて、老後生活の安定という点に重点を置くべきではなかったか。どうしてこういうことになったのか。詳しく御説明をいただきたい。  第五点は、無拠出年金の特別支給については、所得制限の認定は国民の納得の上に行われなければなりませんが、政府はこれについてどういう措置を講ぜんとしているのか。審議会の構成は法に示された審議会が発足するとしても、その構成については社会保障制度審議会の答申の中で注文をつけておる。この審議会に少くとも被保険者の代表を多数入れて、そうしてこれらの点が、所得制限等の点が円満に民主的に行われる必要があると思うが、この審議会委員の構成についてはどういう具体案を持っておるのか、お答えをいただきます。  第六点は、国民所得の成長に伴う年金額の引き上げ、これも当然で、先ほどの質疑に対する答弁の中にもありましたが、政府はどういう基準をもってこれをやるか。貨幣価値の変動とか、あるいは国民所得の成長とか、そういう場合に、保険料率を変えていくように、やはり国民年金法におきましても、これが拠出額の引き上げあるいはまた年金額の引き上げ、そういうことを行うとおっしゃるわけですが、その際には非常に問題となるのがその基準をどう考えていくかという点であります。この点は、法案を出される以上、今後検討するということではあまりにも不用意だと思う。その基準について大綱を示されたいと思います。  関連して、やはり今の案を検討いたしますと、いわゆる外部疾患、外見的障害ということに限られている。内部疾患についてはこれが除外されております。これは一例でありまして、これまた、社会保障制度審議会の不満とするところでありまして、私どもも、これでは実際の国民年金としての作用が非常に半減する。これについて、なぜ内部疾患については除外をしたのかという点をお伺いいたしたいと思います。  次に、自治庁長官にお伺いをいたします。この法律が成立施行いたしますと、地方自治団体の事務が非常に繁忙をきわめてくる。これに対しては、先ほどの御答弁にもあるように、当面一億五千五百万円の国庫負担をして、地方自治団体の負担を軽減するということでありますが、一件五十円では、とうていこの種の複雑な事務行政は不可能と思われる。こういうことで果して事務能率なりあるいはサービスなりが万全に行われ得るかどうかという点は、きわめて疑問であります。自治庁長官におかれて、先ほどの答弁ではきわめてあいまいでございますから、もう少し具体的に御答弁をいただきたい。と同時に、政府の胸中には、この制度実施の暁に、あるいは配置転換、各省庁を含む配置転換を考慮しておるということを聞くのでありまして、その所見をお伺いいたします。  次に、企画庁長官に対しまして質問をいたします。長期経済計画ということは、これはやはり、ここに提案されておる国民年金法案、いわゆる社会保障制度、一連の医療保障制度等を含めて経済長期計画というものが立てられなければならないし、また、それ自体も単なる行政指導だけではうまくいかないことは、なべ底不景気で、もうわれわれ経験したところであります。それはそれとして、この長期経済政策というものが、企画庁長官の本会議における方針演説中にもあったわけであります以上、この長期経済計画に見合ったやはり社会保障制度の確立がこれは必要であるし、不可欠の問題であると思われます。その財政負担においてもやはり大きな問題でありますから、そういう点から見ますというと、社会保障制度の長期計画というものがなくてはならない。現在それがあるのかないのか、おそらくないと私は思いますが、ないとすれば、それを立てる用意があるのか。長期経済計画の中に社会保障計画も見合って立てる用意があるのかどうか。あるとすれば、その構想をお伺いいたしたいと思います。  内閣総理大臣に対する質疑でございますが、この点は引き続き行うことといたしまして、質問を終るまでにはぜひ御出席をいただきたいと思いますが、今回の国民年金法案によって、失業保険あるいは健康保険など一連の保険料率は当然改訂されることになると思います。これは総合的な社会保障計画がないために起きる連鎖反応であって、従ってこの際、社会保障制度への総合調整が必要であります。これに関する今後の具体的日程やその内容をお伺いをいたします。  岸総理に対する第二点は、本年金法案の適用範囲は現行制度一切を除外しております。被用者保険については除外をすると条文は示しております。こうなりますと、国民年金の性格からいって非常に問題があるのであります。国民年金の意義を半減すると自由民主党の小林君も言われましたが、まさに半減というか、意義がきわめて薄くなって参ります。これらの調整を確固たる見通しのもとに早急に行われなければならないと思いますが、その計画があるかないかをお伺いをいたします。  第三点は、本法にいう無拠出援護年金は、その支給要件がきわめて厳格であります。しかもその支給開始年令が七十才である。これは生活扶助の性格と同一であることは先ほど指摘した通りでありますが、国民年金としてのものに条件を緩和すべきである。これはしばしば申し上げる社会保障制度審議会の強く指摘しておるところでもありますし、社会党の案と比較いたしまして、まことに大きな懸隔があるわけであります。これを漸次改正し、財政的裏づけをしての条件緩和をする用意を逐次今後なされようとするのかどうか、お伺いをいたします。  第四の点は、本法によれば、原爆被害者の障害者はこれは除外されております。これは特殊なやはり病歴を示しておりまして、しばしばそのために世を去りつつあるのが現状でありますが、この原爆被害者、障害者に対する外形的あるいは内部的疾患、これらが除外されているということは、きわめて遺憾なところであります。そうだとすれば、やはりここにあらためて原爆障害者対策というものが考え直されなければなりません。昨年来、原爆被害者に対する治療については、その窓口が非常に狭かったり限られていたり、あるいは患者の通勤その他の経済的事情で診療を受けがたく、その結果予算執行も十分でなかった。その事実を隠蔽して、大幅に今年度は原爆被害者の対策費を削っているのであります。この国民年金における障害者を、原爆に関しては除外する以上、被爆者に対する援護法としての新しい法を創設するということでなければ筋が通らないのでありまして、その原爆被害者援護法を制定するという用意があるのかどうか、所信をお伺いいたします。  第五点は、現行行政機構は複雑多岐であります。きわめて非能率にもなって参っております。国費の浪費というものは、この所産として非常に膨大なものがあると思われる。この際、国民年金法の発足に当って、引き続いて行政機構の改革をいたしまして、少くとも社会保障に関する体系的な、またこれに適合した社会保障省というような性格のものを設置する必要があると考えます。これについてはどういう考え方であるのか、そういうことをやはりお考えであるのかどうか、お伺いをいたします。  次に労働大臣にお伺いをいたします。老齢者人口が年々増大していることは、これは御承知の通りでありまして、今度の国民年金法によりましても、七十才以上という給付になりますと、ここに労働大臣としてもいろいろ問題が起きるのではないか。老齢者の稼働人口も相当なものでありますと同時に、その就職も非常に困難な状態であります。また母子家庭における子供の就職というものも困難をきわめているのでありますが、この国民年金法の七十才給付等の点との関連において、労働大臣とされてはいかに考えておられるか。すなわち老齢人口の増大に関連して、なお働き続けなければ、月に千円や千五百円や二千円もらったのでは、それのみで生活を維持することはできない。しかも大幅な制限規定のために、相当な人たちがふるい落されて、年金の恩恵を受けないのであります。これらについては、雇用条件なり開拓なり、その他の生活扶助なんという点について、いかなる所見をお持ちなのか、お伺いをいたします。  大蔵大臣につきましては三点をお伺いいたします。  国民年金法が一たん発足いたしますと、その変更はきわめて困難であります。ことに国庫負担については将来膨大な額に達することになります。そのような実態を見ますときに、長期財政計画による裏づけがここに必要となって参ります。その具体的構想を示されたい。  第二点は、貨幣価値は、過去の経済変動にも見ますように、相当に不安定な状態でありますからして、これらの変動に対処してスライドする場合に、大蔵大臣としての立場からどういうふうにお考えで、スライドする意思があるのかどうか。あるとすればどういうふうに財政上行い得るものか。またその意思をお伺いいたします。  第三点は、積立金の運用については先ほど質疑がありましたが、きわめて不明確な答弁で、厚生大臣におかれてもそうですが、大蔵大臣におかれても未だ確固たる見通しがないようであります。今後の検討にゆだねられておるように見受けるのでありますが、この膨大な、最高時には、私どもの計算では四兆円になるだろうと思われる積立金、これが運営管理についてはきわめて重大でありまして、私どもは、その自主的な運営ということが非常に大切であると思いますし、これについて、自主的運営管理をせしめるのか、あるいはそうでなくて、一般財政資金としてのお扱いをなさるのか。これらについて御答弁をお願いいたします。  以上をもちまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣坂田道太登壇拍手
  36. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) お答えをいたします。最初のお尋ねは、拠出年金の最低拠出期間が二十五年であるが、社会保障制度審議会においても五年を答申をしておる。所得保障の精神に基いて、拠出期間を少くとも五年以下にすべきではないかというようなお尋ねだと思います。保険料拠出期間が社会保障制度審議会の答申に比べまして長過ぎるとのことでございますが、一般に、二十才から五十九才までの年令の間にある者であるならば、この程度の保険料を拠出することができると考えられるのであります。すなわち、二十才に達しますならば、学生等を除きまして、何らかの所得活動に入りますことが通例でありますし、また六十才になりますまでは、被用者保険の場合と異なりまして、所得を得ている場合がむしろ通例であると考えられるからでございます。御承知の通りイギリスの国民保険の例を引きますならば、この制度におきましては、すでに十六才から六十五才まで五十年間にわたる保険料拠出が義務づけられておるのでございます。    〔議長退席、副議長着席〕  また老齢年金の必要拠出期間が、社会保障制度審議会の答申と比べて長過ぎるとの御意見でございますけれども、本法案におきましては、原則として二十五年以上の拠出を必要としておりますが、保険料負担能力の乏しい方々につきましては、十年間だけ拠出を行いますならば老齢年金を受けることができるようにいたしておるのでございます。  それからまた、社会保障制度審議会の答申と比べて非常に後退をしておるようなお話でございましたが、先ほどお答えいたしましたこともございますし、さらにまた、たとえば社会保障制度審議会の答申いたしました人員の総合計は二百十五万人でございますし、その無拠出年金の総額は二百七十五億円になっております。ところが、政府案を平年度にこれを換算いたしますると、対象人員は二百五十七万人でございますし、またその総額は三百五億から三百十億円ということになっておるのでございまして、そう答申におくれをとっておらないということを御了承いただけるだろうと思うのであります。  それからもう一つは徴収の方法についてのお尋ねでございますが、これは、保険料の徴収方法をスタンプ方式といたしましたのは、被保険者の側から見まして最も簡便であり、徴収の経費も比較的少くて済むという利便があるから  でございます。この方式をとることによりまして、むしろ国民の自主的納入を促進し、制度の健全な発展に資することができ得るものと考えておるからでございます。しかしながら、この方式をとって参りますには、本制度趣旨を十分に国民の方々に周知させることが必要でございまして、今後ともこの面に大いに力を注いで参りたいと考えております。  第三点は、必ずしも自主的に期間内拠出がなされるとは考えられない。滞納者については督促その他の方法がとられるとしても、なお納入せざる者については国税滞納処分の例によりこれを処分するとあるが、差し押え等によるのか、それでは本来の趣旨に反しはしないかというようなお尋ねでございますが、拠出能力がありながら故意に保険料を納めない方に対しましては、これはやはり重点的に国税滞納処分の例によりまして保険料の徴収を行うことができるようにいたしております。反面におきまして、少額の滞納者につきましては、運用上二年ごとに債権の整理を行い得る特別の規定も設けておるわけでございます。  第四番目は、年金額月二千円ないし三千五百円であることは生活保護の扶助額と同様の考え方であり、低額に過ぎ、防貧でなく救貧に陥っている。老後の生活安定に重点を置くべきではないか、こういうお尋ねでございますが、年金額を定めます場合、これによりまして生活の需要が完全に満たされ得る程度に高いものでなければならないという御意見もあるかと思いますが、この年金の額は、単に生活の必要だけをもととしてきめるわけには参らないのでありまして、この年金を受けるために必要とされる保険料の額、保険料の納入を義務づけられる被保険者期間の長さ及び国庫負担の額等をにらみ合わせましてきめなければならないと考えるのでございます。社会保障制度審議会も、これらの点を考慮いたしました結果、四十年先におきましてやはり三千五百円という額に達することをさしあたりの目標として答申いたしたのでございまして、この程度のものであれば、生活設計の上におきまして有力なよりどころとなり得るものであるというふうに私ども考えておる次第でございます。    〔副議長退席、議長着席〕  それから無拠出年金の特別支給については、所得制限の認定は国民の納得の上において行われなければならないが、政府はこれについていかなる処置を講ぜんとするのであるか、審議会の構成員に被保険者代表を入れる考えはあるかどうかというようなお尋ねでございます。無拠出年金の支給の場合に行われます所得制限は簡素な基準によって行われるものでなければならないことは、社会保障制度審議会の答申も特にそういうことを明らかにいたしておるのでございまして、政府におきましてもこの点全く同様な考えでございますので、所得制限の認定に当りましては、原則として現行税法に基いて行われるものをそのまま利用していく道を考えたいと思っております。国民年金審議会の構成員を考えるに当りましては、お説のように、被保険者たる国民各界各層の実情によく合った方々を選びたいと考えておるわけでございます。  第六番目の御質問は、国民所得の成長に伴う年金額の引き上げも当然行わなければならないが、政府はいかなる基準のもとにこれを行わんとするかというお尋ねでございますが、国民生活水準の上昇に伴いまして年金額の引き上げを考えていかなければならないという御意見につきましては、趣旨としては同感でございます。この点は、この法案の中におきましても特にその趣旨を明記いたしておる次第でございますが、年金額の引き上げは保険料額の引き上げを伴いまするとともに、複雑な各般の経過措置を伴うことにもなりますので、その措置がとられます場合に、相当著しい事情の変更が生じた場合に限られざるを得ないと考えております。なおこの場合、五年ごとに行われます保険財政に関する再計算の措置は、このような措置のとられる時期についての大まかな目途ともなり得るとも考えておるわけでございます。  さらに内部疾患を入れなかった理由についてでございますが、これは症状が固定するかいなかということがなかなか区別しがたい、判定しがたいということもございますし、これを対象の中に入れますと、非常に人員が激増するというようなことで、今度の場合はこの程度に考えたような次第でございます。  それから積立金の管理運用についてのお尋ねでございますが、本制度の積立金は、先ほど私が小林議員にお答えした通りでございまして、国民から集めました零細な保険料の蓄積でございますので、これをできるだけ被保険者の福祉に資するようにして参りたいと存じますが、何分にも、これは将来の年金給付の財源として、安全に、そしてまた確実に運用すべきものでございますので、これが管理運用の方法につきましては、今後とも慎重に研究をいたして参りたいと存じておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣青木正登壇拍手
  37. 青木正

    国務大臣青木正君) 国民年金の実施に伴う地方の負担の問題、また、職員の配置転換の御質問であります。  第一の市町村の事務処理について、先ほど小林議員に対する私の答弁、あの程度で十分かという御懸念でございます。また算定の基礎の問題でありますが、一件五十円ときめました積算の根拠といたしましては、国保が御承知のように九十五円になっているわけでございます。今回の国民年金の場合は主として給付事務でございますので、国保の実績から考えまして、大体国保の一二%程度の費用ではないか、こういう一応の考えをいたしたのであります。しかし、初めてのことでもあり、また、給付事務もなかなか繁雑な点もありますので、一二%にさらに倍率の四をかけまして四十五円幾らという数字が出てくるのでありますが、それをラウンド・ナンバーにいたして五十円という数字が出てくるのでありまして、私ども、まずまずこの程度で差しつかえないのではないか、なお先ほど申し上げましたように、法律の建前は、一切国がその費用を支弁することになっておりますので、万一これによって不足の場合には、私どもは国においてこれはめんどうをみるものと考えておるわけであります。なお、都道府県の段階になりますと、職員を地方公務員でなしに国家公務員の身分として、職員を千七百四十人ほど配置することになっているのでありまして、御指摘のように、これが充足に当りましては、場合によりましては一部地方公務員その他の方からも若干の配置転換ということも起ってくると考えております。(拍手)    〔国務大臣世耕弘一君登壇拍手
  38. 世耕弘一

    国務大臣(世耕弘一君) 国民年金の諸問題と経済長期計画の問題についてお尋ねがございましたので、簡単にお答えいたします。  長期計画の一環として長期社会保障計画が不可欠であるということは申し上げるまでもないのでありますが、政府がさきに策定いたしました長期計画は、経済の安定をはかりつつ民生の安定向上を期することをその主要目的としているのであります。従って、同計画の中におきましても、社会保障制度の拡充、すなわち生活保護制度の充実、医療皆保険の達成、国民年金制度の早期実現等をはかることが考えられるのであります。しかし同計画策定当時におきましては、なお国民年金制度自体の具体的な構想なども固まっていなかったような段階でありました事情から、自然、社会保障関係制度の全般にわたっての長期計画というものに対しまして詳しく策定するに至らなかったような次第であります。かような事情からいたしまして、ただいま御発言にありましたような具体的なお答えを、この計画を、今この機会に発表できない事情にあることを御了承願っておきたいと思うのであります。なお、国民の経済生活等をいろいろな調査資料によって調査いたしましても、まだ日本国民経済がいろいろな意味において大きな格差がある、かような実情が今日の日本国民生活の実情であります。ただ、この際、政府側としても考えなくちゃならぬことは、日本人口において特に老齢の生活が目立つ。そうして、戦後におきまして、家族制度の変革等の関係から、この万全を期する意味におきまして、諸般社会施設、社会保障が拡充されていかなくちゃならぬということがお説のごとく考えられるのでございます。ただ、この際、経済力の乏しい日本のこの現状をいかにして充実しながら福祉国家としての目的を達成するか、ということが今後に与えられた大きな問題であろうと、かように考えられます。  重ねて申し上げまするように、先ほど御指摘にありました長期計画の根本問題についての計画的数字を、まだ固まって発表するに至らない事情にあることを御了承願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  39. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 母子家庭の児童の就職につきましては、職業安定業務の中でも一番重点的に努力をいたしておるところでございます。政府は、従って、各種の報道機関や関係機関等との御協力を得まして、それの推進に努めております。藤田さんも御承知のように、ただいまは、各都道府県、市町村長が身元引受人になりまして、そういう孤児及び母子家庭の児童たちの就職あっせんに努めておりますが、中学校卒業生で、昨年の三月の数字を見ますと、孤児、母子家庭の子供の就職率は九九・五%であります。全体の中学校卒業生の就職率は九九・四と、孤児、母子家庭の児童の方が若干就職率がいい。高等学校では、やはり全体は九五・四でありますが、孤児、片親児は九六・二と、こういうふうに、その方面について各種の御協力を得て努力をいたして、成果をあげておりますことを御承知願います。  それから、ただいま企画庁長官からお話のありました老齢者の問題でありますが、最近だんだんと平均年令が延長されて参りまして、その結果、やはり老齢者で職を求める者が非常に多くなってきました。このことは、企画庁長官のお話にもありましたように、私ども雇用面の開拓を担当いたしておる者が一生懸命でやらなければならないことももちろんでありますけれども、やはり政府としても、社会保障制度の充実に力を入れていくということも、それと並行していかなければならない問題であると存じます。私どもは、この老齢者の就職を希望する人たちに対しまして、特にそういう方々の要求される職業あっせん、それからまた、職業補導というふうなことも、各府県にございます総合訓練所などで、できるだけそういう老齢者に向く仕事についての訓練をして、そういう職場の開拓をしていくと、こういうことに努めてはおりますが、やはり社会保障制度をできるだけ充実して、遺憾なきを期していきたい。こういうのが私ども考え方でございます。(拍手
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 内閣総理大臣及び大蔵大臣は、いまだ出席いたしておりませんので、内閣総理大臣、大蔵大臣答弁は保留いたします。加賀山之雄君。    〔加賀山之雄君登壇拍手
  41. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 私は、緑風会を代表して、政府提出の国民年金法案に対する若干の質疑をいたしたいと思います。  国民年金制度の普及と徹底とは、近代文化国家にとって重大な要素であり、それらの国家における政治上の一大核心であるというべきでございまして、今回政府がこれを取り上げて、今国会に提出するに至りましたことに対しましては、われわれといたしましても、敬意と賛意を惜しまぬものであります。  もともとこの制度は、理論と実際との調和が、国の財政や産業構造あるいは国民の生活水準や、他の関連諸制度の沿革などとの関係で、きわめてむずかしいものでありまして、一躍、完全理想的というような制度を求めることは無理であるということは申すまでもない。従って、法律全体を通じまして見まするならば、非常に不満なところ、また、とりあえずというような節々が随所にうかがわれまして、従って、重要な問題をあとに残した点が少くないのでありますが、これは、ある程度やむを得ないことではなかろうかと思うのであります。なお、この防貧を建前といたすということでありながら、ボーダー・ラインの層に対しますところの配慮が不足しているのではないか。まあ、いろいろさような不満な点もあるのでございますが、私は、この際、数点につきまして質問をいたしまして、それらの点の疑問を明らかにしておきたいと思うのであります。  第一の点は、被保険者の範囲についてであります。この法律案には、国民年金法という名前がつけられておりますが、被用者の大部分は現行の他の法律によることとしているので、国民年金被保険者は、事実上、主として自営者に限られているようでございます。将来、年金保障の法体系の問題といたしまして、全国民対象とする国民年金法一本で行くのかどうか。それとも、それぞれの階層の実情に即した年金制度を別に採用する建前をとるか。これは非常に重要な分れ道でございまして、私は、それぞれの階層の就業または生活状態に即応しない画一的制度は、大きい無理を伴うと思うのでありますが、これにつきまして、政府はいかに考えられるか、御方針を承わりたいと思うのであります。  第二の点は、援護年金の性格についてであります。法案は、保険料に対応して年金を給付する、いわゆる拠出年金を主としております。こういう保険原理を基礎といたしております。ただ、過渡的補完的に、保険料に対応しない、いわゆる援護年金制度を採用しておりますが、この援護年金制度は、過渡的とはいいながら、相当長期に残存するのでありましょうし、また補完的なものに恒久的にも残ると思われるのであります。で、年金制度の基礎を、保険料すなわち拠出主義に置くか、無拠出主義に置くかは、年金制度の性格並びに年金制度に対する基本理念に関する問題でございますが、本法案が拠出、無拠出の二本立をとったということは、国民年金というものの基本考え方に関する不明瞭さから来る誤解を、一般国民間に惹起させるのではないか、一般的に他力本願的傾向を助長する懸念が生ずるのではないか、かようなことを懸念いたすものでございますが、御見解を伺いたいと思います。  第三には、援護年金制度と生活保護制度との関係でございますが、援護年金は拠出金を前提とせず、一般租税を財源とする保障である点におきまして、著しく生活保護制度に似ております。実際上も、生活保護受給者は援護年金受給資格者に該当するものがきわめて多いでありましょう。その結果、援護年金は程度の高い生活保護というような格好となると思いますが、こうした重複関係制度として適当と言えるでございましょうか、また実際上も、建前の違う両制度をどのように調整されるおつもりか、御見解を伺いたいと思うのであります。  第四として伺いたいのは年金財政についてでございます。これは先ほどから各議員から御質問がございましたが、本法案は、拠出金を基礎としていわゆる積立方式によって財政を経理する建前をとっております。積立方式が経理の仕方としては健全であるということは言えるかもしれませんが、社会経済の変遷、特に通貨価値や生活水準の推移に即応しがたい短所もあることは明らかであります。で、これに関し法案は、拠出金に基く年金額に関し、将来調整が加えられるべきであること、並びに保険料も、その結果によって調整が加えられるべきであるということを規定しておりますから、一見差しつかえがないように見えますが、金額の調整を受ける年金について、その裏づけとなっている保険料を過去にさかのぼって調整することはできないことでありましょう。また、その結果として、費用と財源との間には、必ずや相当大きい食い違いが生じ、年金財政にゆゆしい危機を招く事態が起きやしないか。将来これが起らないとは言い得ないのではないか。すでに西欧諸国の先例にも見られるようでございますが、これに対し政府は、今日どのような対策を考慮しておられるか、大蔵大臣の見通しを承わりたいと思うのであります。  第五は、保険料の納付方法でございますが、政府案によりますと、被保険者に国民年金手帳を交付して、これに保険料額相当の印紙を貼付せしめて、これを三カ月日ごとに検認するというふうな方式をとっておるようでございます。しかし御承知のごとく、農村では、現金収入というものが時期的に限定されており、換物経済が柱となっているように思いますから、普通の農村では、百円、百五十円という現金も、なかなか自由にならないのが現状でございます。また、その上、役場等にこの事務のために行く交通費等を考えると、よほどこの制度を農村の方々がのみ込んで、進んでやるという気風が起らない限り、普及徹底について、あまり楽観できないのではないかと思うのでございますが、どうでございましょう。これらの事柄にかんがみまして、特に農村の家族生活の実情や農業経営の特質というものを考慮いたしますとき、この際、農村等は、非納税者について、いっそ無拠出制にしたらどうかということを考えるのでございますが、それについて政府はお考えになったかどうか。一般財源として、このようにしたら、一体どの程度見込まなければならないか。それらの点について厚生大臣並びに大蔵大臣の御答弁をわずらわしたいと思うのであります。(拍手と    〔国務大臣坂田道太登壇拍手
  42. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) お答えいたします。  第一は、国民年金の適用範囲の問題をお尋ねいただいたと思いますが、全国民対象といだしまして年金制度考えます場合に、現行の各種公的年金制度を全部御破算にしてしまいまして、一本の基本的な制度を創設するという考え方もあるのでございますが、この行き方をとりますとするならば、御趣旨のような結果になるのでありますけれども、現行の各種年金制度には、やはりそれぞれ独自の沿革や目的がございまして、簡単にこれを御破算にすることはできないのでございます。今直ちにこのような方法をとりますことには、相当の困難と混乱が予想されるのでございます。また、現行各種公的年金制度の適用を受けております方々や、すでにこれらの制度によりまして年金を受けている人々は、一応、国民年金制度考えられている以上の給付を保障されているのでございまして、さしあたりこれらの人々を除外した制度を創設いたしましても特に不合理はないものと考えましたために、このような建て方をとった次第でございます。  それから、第二番目のお尋ねは、この法案拠出制を原則として、無拠出制を補完的制度として、二本立にしているが、無拠出制は、政府の補助をもらうという思想である、拠出制は、老後や不時の障害のために、みずから備えるという観念であって、そこに根本的な思想が異なる。これを一本の法律で規制してはどうかというようなお尋ねと思います。年金制度が、みずからの力を元といたしまして、老後や不時の障害のためにみずから備えるという拠出制を原則とするものでなければならないという御意見につきましては、全く同感でございますが、この拠出制年金制度に対しましても、相当多額の国庫負担が行われるものがございます。この国庫からの援助は、この制度の施行されます際の被保険者の年令に応じて、年令の少い者にはより少く、年令の多い者にはより多くされるようになっておるのであります。これと同様の事情が、この制度を施行されますときに、すでに老齢、廃疾、または配偶者を失った母子の状態になっている方々にもあるわけでございまして、これらの方々には、どんなに努力をいたしましても、もはや拠出制年金制度による利益を受けさせることができないのでございます。そこで、拠出制年金制度における経過措置の延長といたしまして、これらの方々に援護年金を支給し、両者間の公平をはかることとしたわけでございまして、この意味におきまして一本の法律規定されることになった次第でございます。  それから、第三点の、援護年金と生活保護法との関係でございますが、生活保護制度との関係につきましては、同制度老齢加算を新設いたしますとか、あるいはまた身体障害者加算、あるいは母子加算等、既存の加算制度を増額いたしますことによりまして、生活保護法を受けております方々にも実質的に年金の支給がなされますよう特別な措置を講じて参る所存でございます。  それから、援護年金は生活保護とは同じじゃないかというようなふうに伺ったのでございますが、やはりこれは国民年金一つの種類だというふうに考えておりまして、生活保護とは考えておりません。  それから、農村については保険料の徴収が困難ではないか、農村にはむしろ無拠出制年金をやるつもりはないかというようなお尋ねだったと思いますが、農村におきましては、都市生活者の生活実態と比較いたしまして、お説の通り現金収入は非常に少いというような事情もございますので、必ずしも都市生活者と同様の画一的な保険料の徴収を行うことなく、農村の実情に即しました措置を講ずることによりまして、お尋ねのような問題を解決できるものと考えております。なお農村におきましては、その地域の全世帯こぞって信用事業を行う農業協同組合に加入しているなど、特殊事情にある場合には、収納率、被保険者の利便等も勘案いたしまして、例外的にスタンプ方式以外の徴収方法によることができるようにしたいと考えておる次第でございます。  以上、御答弁申し上げます。(拍手
  43. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 大蔵大臣答弁は保留いたします。竹中恒夫君。     ━━━━━━━━━━━━━    〔竹中恒夫君登壇拍手
  44. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 無所属クラブを代表いたしまして、ただいま御提案になりました国民年金法案について、二、三お尋ねいたします。  国民年金制度の創設は、過般の総選挙に際しまして、自民、社会両党の選挙公約であって、今日競合の形で本国会に上程されましたことは、国民にとってまことに喜びにたえないところでございます。そこで、総括的に総理にお尋ねを申し上げたいと思うわけでございますが、総理は平素から、社会保障制度の確立は、医療保障としての国民皆保険と所得保障としての国民年金であることを強く打ち出されまして、あなたの老後は保障しますと公約されて、総選挙にもお勝ちになったのでございまするが、果してここに示されました原案の内容で国民の期待に沿い得たであろうかということについて、率直に総理のお考えをまずお伺いいたしたい、かように存ずるわけでございます。  第二にお尋ねいたしたいことは、幸い本案件は両党が競合の形で提案されておりますので、一般の諸問題と異なりまして、超党派的立場に立って、かりそめにも政争の具に供するがごときことなく、国民生活に直結した問題でありまするので、きわめて厳粛に、虚心坦懐に検討し、審議を尽し、お互いに党の面目等にとらわれることなく、長短比較、取捨すべきであろうと思うわけでございますが、この審議に当っての心がまえについての総理のお考えを承わりたいと思うわけでございます。  次に、厚生大臣お尋ね申し上げま下るが、すでに私の質問は第四陣でございまするので、いささか二番せんじで、同様な趣旨のものがございますかり、適当にお聞きとり願いたいと存じます。  まず第一に、社会保障制度は相互における相関関係が非常に緊密であるわけでございまして、当然総合調整が必要でありますことは論を待ちません。ことにわが国老齢人口も、年金給付が本格化いたしまする昭和六十年、七十年ごろになりますというと、倍増いたして参るわけでございまして、この倍増いたしました老人層に対しましては、年金の支給以外に、医療保障にも相当な巨額の経費が要ることでございますし、同時に、老人に対しまする生活保護関係の経費も莫大なものがあろうと考えるわけでございまするが、特に従来の公的年金との通算調整等もあり、いろいろと各種社会保険諸施策に対しまする総合調整並びに一元化が必要であるわけでございまするが、そうした点につきまする御決意のほどをお伺いいたしたい、さように考えるわけでございます。  なお、無拠出年金を、いみじくも援護年金と名づけた当局の頭のよさには、驚嘆と敬服を覚えるものでございますが、財源の関係からして、給付金の過少なことと、所得制限を厳にして支給対象を極度にしぼった結果、世に、あめ玉年金などと悪口を言われる向きもあるわけでございますが、老後の保障を公約のニュアンスとしてまっ正直に受けている国民から言わしめますならば、いささか過少で、期待はずれと思うわけでございますが、厚生大臣としてどうお考えであられましょうか。  ことに、生活保護適用者への差額給付の問題は、先ほどの御答弁によりまして私は了承できたわけでございますが、どうか大臣は、保護階層に対します特別の配慮をしていただきまして、老齢加算あるいは身体障害者加算、母子加算等は、生活保護法その他関係法律の改正を、すみやかに必ずしていただきたいということを申し上げるわけでございます。  なお、拠出年金におきまする経過措置につきましても同様でございまして、今少しゆるやかな方法考えられなかったものでありましょうか。国民年金は長期的なものでございますので、当然長期的な考えが必要でございまするが、同時に、現在の国民に漏れなく、時間的にも一日も早く、また適用範囲も一人でも多く本法の恩典に浴さすためには、経過措置をゆるやかにお考え願いたいと思うわけでございます。  なお最後に、障害年金の支給条件でございますが、先ほど来、身体障害給付に対しましては、外部障害に限らなければ、内臓的なものについては非常に診断が困難であるということでございまするが、どうか固定されておりますところの内部障害疾患に対しましては、やはり片手片足がない以上に生活能力がない、あるいは生理的機能も、医学的に見ましても非常に支障を来たすわけでございますから、こうした面につきましても格別のお考え方をこの際おとり願いたいということを申し上げまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣坂田道太登壇拍手
  45. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) お答えをいたします。  まず第一に、本案と各種社会保障との将来における総合調整、一元化についてのお尋ねでございます。国民年金制度を創設いたします場合、この制度が既存の各種年金制度と相待ちまして国民年金の実をあげるに至りますことが、最も肝要な点でありますことは、御意見の通りでございます。従いまして、本法の制定を見ました暁におきましては、この制度及び各種年金制度に対する通算調整の措置を、できるだけ早い機会に講ずる考えでおります。しこうして、これら各種年金制度そのままを存置するか、あるいはより単純化された制度にまとめるかの問題はどうするか。—これは最も実情に即した国民年金の実があがるかどうかによって決せらるべき問題であると考えられますので、この問題に対する結論は、通算調整の問題の結論が出ますまで待たれるべきものであると考えておるわけでございます。  第二点は、無拠出年金はあめ玉年金と言われるほど給付金が過少であり、所得制限がきびしいと思うがどうか、所信を問うというようなお尋ねだと思います。今回提案いたしました援護年金の額及び支給人員が必ずしも十分なものでないということは、やはり私たち考えておりますが、これは先ほど私からお答えを申し上げましたように、さらにまた、先程答申せられました社会保障制度審議会国民年金制度に関する答申をもととして定めたものでございまして、その額におきましてはほとんど答申の通りでございます。その受給人員におきましては、答申の示す人員を約四十万上回るということを見ましても、この程度の規模が現在の国力からいえば精一ぱいのものであるということが、御了解願えるかと考えるわけでございます。  さらに、生活保護適用者への差額給付はどうか、冷酷ではないか、また老齢身体障害者、母子加算等についても補正すべきであると思うがどうか。この点につきましては、私も全く同感だと考えておるのでございます。  それから、本法の恩典を一日も早く、一人でも多く浴さすべきであると思うが、かかる見地から経過措置をゆるやかにしたらどうか、というようなお話でございました。御趣旨につきましては全く同感でございまして、本法案の作成に当りましては、できる限り、一日も早く、一人でも多く、制度の適用を受け得るよう配慮をいたしたい考えでございます。
  46. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 内閣総理大臣答弁は保留いたします。  これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  47. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、国民年金法案(衆第一七号)、一般国民年金税法案労働者年金税法案国民年金特別会計法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案趣旨説明)。  五案について、国会法第五十六条の二の規定により、衆議院の発議者からその趣旨説明を求めます。衆議院議員八木一男君。    〔衆議院議員八木一男君登壇拍手
  48. 八木一男

    衆議院議員(八木一男君) 私は、日本社会党を代表して、わが党提出の国民年金法案国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案一般国民年金税法案労働者年金税法案国民年金特別会計法案の互いに相関連する五法案に関して、一括して、提案の趣旨、理由並びに内容の大綱を御説明申し上げるものであります。  趣旨説明に当り、私は、わずか十九日前急逝されました故参議院議員竹中勝男氏に対し、衷心より哀悼の意を表するものであります。社会保障学者として、一生涯その推進のため尽瘁してこられました竹中氏は、一昨年、日本社会党国民年金要綱作成に当りまして、わが党国民年金調査特別委員会委員長として、その取りまとめと推進に最も熱心に取り組んでこられたわけであります。労苦をともにいたしました私たち同僚といたしましては、今、本法案が参議院の御審議を受けまするときに同氏の姿が当院に見えないことは、まことに痛恨のきわみでございます。中道にして倒れられました故人の功績をしのびまして、その意中を汲みまして、同氏の霊魂とともに御説明を申し上げたいと存じます。(拍手)  戦後、わが国国民の平均寿命は大いに延び、六十才まで存命した人の寿命は、男子七十四才、女子七十七才に達しております。従って、人口の老齢化現象が進み、総人口に対する比率も、絶対数も、ともに相当に増加し、さらに増加する趨勢にございます。大ぜいの人が長生きすることができるようになりましたことは、まことに喜ばしいことでございまするが、老後に安定した楽しい暮しができるのでなければ、その喜びは激減するわけであります。老後の生活については、従来、それに備えて、それぞれ貯蓄をするなり、あるいは子供の世話を受けるということが常識になっておりました。ところが、その二つともあまり頼りにできないというのが現在の状態であります。現在の老人が若いころに、老後に備えて、ししとしてたくわえられました貯蓄は、貨幣価値の変動によりまして、実際上ほとんど役に立たなくなり、お年寄りはまことに気の毒な状態にあります。このようなことが将来も絶対に起らないとは断定できませんし、もし幸い起らないとしても、老後の長さが予測できないとき、これを貯蓄のみで安心することは、ごく一部の階層のみにしかできない相談であります。さらに、毎日の生活に苦しんで貯蓄の見込みなどほとんどない大衆にとっては、この方法は夢物語でございます。次に、子供に世話になる方法でありますが、これも戦前とは大きく事情を異にいたしております。現行民法は扶養の義務を明確に規定しているのでありますが、家族制度改革によって、親に対する扶養の義務がないとする誤まった理解が行われて、老人を心細がらせておりますし、またさらに、わが国国民生活の貧困は、親孝行な子供たちにも、物質的には十分なる親孝行ができない状態に追いやっております。子供たちの孝養のみに頼り切れず、みずから備える方法としての貯蓄は、まことに不完全なる制度、これでは、老後の生活を楽しいものにすることは、一部の特権階級を除いては至難と言わなければなりません。  一方、母子世帯におきましては、年収十八万円未満の人たちが全体の九〇%も占めており、まことに困難な状態のもとに子女の保育が行われております。身体障害者に至っては、障害のための特殊な失費があるにかかわらず、所得の機会にはほとんど恵まれないで、その大部分が最低生活の維持すら困難な状態であります。  このような事態を救い得る制度年金制度でありますることは、申すまでもございません。ところが、わが国年金制度は、一部勤労階級に適用されているのみでありまして、大部分の国民は、そのらち外に放置されております。しかも、勤労者の場合も、恩給資格者と公共企業体共済組合適用者のうちで高級者である者を除きましては、厚生年金等すべてがはなはだ程度の低いものでございまして、また、通算がほとんどないという不備なものでございまして、老後を安心させるものではございません。この状態にかんがみまして、昭和二十五年、社会保障制度審議会の勧告が出たわけでございまするが、自後、歴代の保守党内閣が、何らの推進もしなかったことは、まことに怠慢きわまるものと言わなくてはならないと思います。(拍手)  わが党は、以前より年金制度の必要性を痛感し、その完成を主張して参りました。昭和三十一年、呼び水の意味で、慰老年金法案、母子年金法案を提出いたしたのでありまするが、一昨年、全国民のための総合的、根本的な年金制度を研究決定し、その基本法として、国民年金法案を、昨年の第二十八、第二十九、第三十国会に提出いたしたのでありまして、さらに、幾分の修正を加えまして提出いたしましたのが、本国民年金法案であり、即時実行でき得るよう手続上の具体的な内容を決定しているのが、関係法案でございます。  本国民年金法案等を作るに当りまして、私どもは、国民年金制度が完成までに長期間を要する性質のものであることにかんがみまして、創設当時より完全な目標に向って進まなければならないと考えました。そして、この目標は、すべての国民憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を維持できるようにすることに置いたわけであります。  以上の目標を達成するため、具体的には、第一に、制度の完成した場合の老齢給付の最低限度を、現在の貨幣価値の月七千円、すなわち年八万四千円と決定いたしました。第二に、この年金を、すべての国民が支給されるものとするため、拠出困難あるいは不可能な期間、年金税を減額あるいは免除することとし、減免を何回受けたものでも、年金額は完全に全額支給すべきだと考えました。第三に、過渡期のものもできるだけ早く月七千円の線に近づくようにし、第四に、無拠出年金については、必要の度の多い人に対する年金に厚みをかけ、また、生活保護と併給することとして、その目的に沿うよういたすべきものと考えた次第でございます。このような完全な考え方国民年金制度を作ることによって、所得保障という本来の目的を果すとともに、他の重要な面に非常に大きなよい影響を与えるものと考えております。  国民年金制度を通じての所得再配分によりまして、国民生活の不均衡が相当程度是正され、これによって継続的な有効需要が確保されることによって、諸産業の振興安定に資するところ大なるものがあると考えられます。このことは、雇用の増大と安定を招来するものでありまするが、これによって、完全な所得保障によって不完全就労が減少し、労働力率化が低下するという好ましい効果の面を加えまして、完全雇用への道を進めるものと信じます。さらに、十分な年金制度は、雇用労働力の新陳代謝を促進し、鉱工業生産力を増大せしめるとともに、農業、中小企業の経営権を若き世代に移すことによって、その近代化への原動力と相なります。以上のごとく、完全な国民年金制度は、所得能力の少い国民に完全な所得保障をすることによって、国家がその責任を果すという本来の効果のほかに、現代わが国における内政上の重要課題のほとんどすべてに解決の道を進める制度であると断言しても、あえて過言ではあるまいと存じます。  以上の観点から、りっぱな国民年金制度を作り上げることに決心したわけでありますが、現在の国家財政、個人経済の状態から、そのことの実現のため多大の工夫を必要といたしました。その結果、国民年金には積立金方式のほかに賦課方式を取り入れることに踏み切ったわけであります。現在、年金を必要とする人々に無拠出年金を支給し、現在生産年令にある人々の年金を完全積立金方式とすれば、現在のゼネレーションが二重負担になり、年金のための負担は限界に達します。この障壁を乗り越えるだめに、われわれは、われわれの親たちに親孝行をする、そのかわり、その分だけ子供たちに親孝行をしてもらうという考え方で、一部賦課方式を採用して、この困難を乗り越えることにいたしました。そのほか、収入の多い者に年金税を多く負担させること、累進課税で徴収する分の多い一般財源からできるだけ多くの国庫支出をすること等に踏み切って、この法案ができたわけであります。  以下、膨大な内容を、要点を抽出して御説明いたしたいと存じます。  本法案は、大分けにいたしまして、特別国民年金と普通国民年金の二つの部分で構成されております。特別国民年金は、現在直ちに年金を必要とする老人、母子家庭、身体障害者に対して、無拠出年金、すなわち、一切の掛金、負担金なしに年金を支給して、これらの人々の生活を援助する制度であります。普通国民年金は、現在の青壮年、さらに以後続く国民に対して、拠出、すなわち国民年金税を納入して特別会計に積み立てる資金と、一般財政よりの賦課方式による大幅な国庫負担金とをもって、その老齢障害あるいは遺族に対する完全な所得保障をする制度であります。  まず最初に、特別国民年金の方から御説明いたしますと、これは、さらに養老年金、母子年金身体障害者年金の三制度に分れております。  養老年金は、本人の年収十三万円以下の老人に支給されるものでありまして、六十才から支給を開始するものであり、六十五才から倍額にして、自後一生涯、毎年同額を支給いたすことにいたしております。年収十八万円未満の家庭の老人には、その金額は六十五才以後に、年二万四千円になり、従って、老夫婦の場合には、毎年四万八千円を支給することに相なります。年収十八万円から三十六万円の家庭は、右の半額が支給されるわけであります。母子年金は、二十才未満の子女を有する母子世帯に対するものでありまして、年収十二万円未満の母子家庭に年額三万六千円を支給し、子女が二名以上の場合は、第二子から一名につき年額七千二百円の加算をいたすことになっております。年収十二万円以上十八万円未満の母子家庭は、基本額、加算額ともにそれぞれ半額を支給することに相なっております。なお、配偶者のない祖母、姉等が子女を保育する場合も支給することにいたしております。身体障害者年金は、廃疾の程度によって支給金額が異なっており、年収十二万円未満の身体障害者に対し、一級の場合は年額四万八千円、二級の場合は年額三万六千円、三級の場合は年額二万四千円を支給し、配偶者並びに子女に関しては、その加算は、等級にかかわらず家族一名につき年七千二百円ずつ支給することに相なっております。年収十二万円ないし十八万円の世帯の身体障害者に対しては、基本額、加算額ともに、おのおの半額を支給することにいたしております。  以上、養老、母子、身体障害者の三年金、すなわち特別国民年金制度の全般を通じて申し上げておくべきことは、まず、三年金とも、収入により給付を制限いたしておりまするが、最初に適用されなくても、後に本人または世帯の収入が不幸にして減少した場合は、その時から適用されるわけでありまして、その意味で全国民のものということができると考えているわけであります。  次に、この三年金は、全然税金の対象にいたしておりませんので、以上の年金が完全に全額対象者の手に入ることになり、また生活保護と完全併給とすることにいたしておりまするので、生活保護を受ける方々は、扶助と年金の両方とも全額支給されることに相なるのであります。  さらに、三年金に関して世帯収入の境目において不均衡が起らないよう、細目の規定をいたしております。すなわち、所得三十六万円の世帯の老人が一万二千円の年金を受けた場合、その世帯は三十七万二千円の総収入に相なるわけでありまするが、それでは所得が三十六万円をわずかにこえる老人世帯の方が総所得が少くなることに相なりまするので、それを避けまするため、総所得三十七万二千円に達するまでは世帯所得三十六万円をこえても年金を支給することにいたしております。三年金のすべての境目に同様の配慮をいたしているわけでありまして、従って、言いかえれば、本法案によれば、養老は所得三十七万二千円、母子は所得十九万八千円、身体障害者年金は所得二十万四千円未満の世帯の対象者まで支給されることに相なるわけであります。  以上で特別国民年金の説明を終り、次に、将来に備える根本的な普通国民年金について申し上げます。  この制度は、一般国民年金と労働者年金に大別され、それぞれ老齢年金障害年金、遺族年金の給付があります。主として老齢年金給付につき御説明申し上げることとし、まず一般国民年金より御説明申し上げます。  この制度は、農漁民、商工業者、医師、弁護士等のすべての自営業者と、労働者の家庭も含めました全家庭の主婦等、すべての無職者に適用されるものであり、言いかえれば、労働者本人以外の全国民対象となるのであります。年金額は全部一律で、六十才から、一名につき、本制度が完成された暁には、年八万四千円ずつ一生涯支給されます。従って、老夫婦の場合は十六万八千円に相なるわけであります。この場合、もし本人が六十才より早く、あるいはおそくから支給を受けたいと希望する場合は、五十五才から六十五才までの間において、希望の年からそれぞれ減額あるいは増額した年金を支給できることにいたしております。  国は、この八万四千円の年金給付の五割を一般財源より負担し、支払いの年に特別会計に払い込みます。また別に、特別会計で積み立てておくため、対象者の属する世帯より一般国民年金税を徴収いたします。拠出期間は二十才より五十四才までの三十五年間であります。税率は、一般国民年金税法案第十条に規定してございまするが、大体一名平均月百六十六円に相なる計算でございます。国民健康保険税の場合と似た方法で、均等割五、所得割三、資産別二という割合で徴収することになっておりますので、収入の少い人はずいぶんと安くなる見込みであり、さらに納入困難あるいは不能の人については、減額あるいは免除をすることにいたしております。何回減免を受けた人にでも、年金を支給すべき際には、無条件で、他の人と同じ年金を支給するという、社会保障に徹底した考え方に立っておりますることを、重ねて明らかにいたしておきたいと存じます。  廃疾年金の場合は、一級は老齢年金と同額、二級はその四分の三、三級は二分の一に相当する額を支給することにいたしております。  遺族年金は、老齢年金の半額、子供一名につき年一万四千四百円の加給をつけることにいたしております。  以上で特に申し上げておかなければならないことは、年金については課税の対象としないこと、並びに年金額がスライド、すなわち物価変動に応じて改定されることであります。この場合、一般国民年金税もスライドされることは当然であります。  次に、労働者年金について申し上げます。  本制度は、あらゆる職種の労働者本人に適用されるものであって、五人未満の事業所の労働者、日雇い労働者、山林労働者等にも適用されます。老齢年金は六十才から支給されることが原則でございますが、炭鉱労働者、船員、機関車労働者等は五十五才開始といたしておりますことは、現行厚生年金保険と同様でございます。老齢年金額は、制度が完成した場合、一般国民年金と同額の八万四千円を基本額とし、それに標準報酬額に比例した金額が付加されます。その金額は、現在の賃金水準で平均年六万三千円になる計算でありまして、合計平均年十四万七千円に相なります。従って、将来賃金水準が上った場合には、この平均額は上昇をいたします。  労働者年金税法案規定されている労働者年金税は、もちろん標準報酬の高低に従って定められております。一般国民年金の場合より年金額が多いのでありまするから、年金税は当然高額に相なりまするが、この場合、使用者が半分以上負担することに相なっておりますので、労働者負担はあまり多くなく、平均して月額二百円程度であります。低賃金労働者の負担は、標準報酬が少いため、右の平均額よりはるかに少額になることは当然であります。拠出期間は一般国民年金と同様、二十才より五十四才までの三十五年間であります。  この労働者年金の特徴は、異なる事業所間はもちろん、農林漁業、商工業、家庭婦人等、一般国民との間にも完全通算をすることでありまして、基本額の八万四千円は、何回職業が変っても完全に確保され、平均六万三千円の標準報酬比例部分は、二十才から五十四才までの間に労働者であった期間だけの割合で、それがたとえ一年であっても加算されるわけであります。  労働者年金への国庫負担率は二割であります。これは十四万七千円に対する二割でありまするので、八万四千円に対する割合に換算いたしますと三割五分になり、将来、賃金水準上昇を考えますると、完成時には大体五割程度となり、一般国民年金と実質上同程度のものと相なるわけであります。その他、繰り上げ減額年金、繰り下げ増額年金制度、非課税年金及び年金税のスライド、免税、また廃疾、遺族給付については、一般国民年金と同様の内容あるいは仕組みに相なっております。  以上、一般国民、労働者、両制度について申し上げましたが、その年金額は完成時のことを申し上げたわけでありまして、拠出期間が三十五年に満たない人は、その期間に応じて年金額が定められていることは申すまでもございません。御参考に途中の年金額を申し上げますると、施行時三十五才の人の年金額は、一般国民年金では年四万八千円、労働者年金では年八万四千円になる計算であります。  以上が本国民年金制度の内容の大綱であります。  実施に当っての既存年金との関係は、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案規定いたしておるわけでありまするが、既得権、期待権の尊重に十分な配慮を払うとともに、完全なる持ち分移管方式を採用して、途中で制度が変る人、あるいは途中転職者の利益を完全に保護することにいたしました。  制度の上では、厚生年金保険、船員保険の年金部分、農協役職員共済年金等は、直ちに労働者年金へ統合、恩給、国家公務員、地方公務員、公共企業体等共済組合等は、新規採用者より労働者年金を適用することに相なっております。  施行期日は昭和三十四年四月一日、年金支払い開始及び年金税の徴収開始は同年十月一日からであります。  国民年金法施行に要する一般会計よりの経費は、平年計算にいたしまして、その第一年度約一千二百十三億円であり、そのうち養老年金約七百九十八億円、母子年金約三百十六億円、身体障害者年金約四十五億円、国民年金税減免補てん分約四十四億円、労働者年金の国家公務員並びに地方公務員に対する国の直接間接の負担額、これは二十才以上の新規採用者分のみでありますが約一億円、年金支払いに要する事務費約八億円と相なっております。  別に、労働者年金税法、一般国民年金税法施行に要する経費、すなわち年金税徴収事務費は、それぞれ約八億七千万円、約四十二億四千万円、計約五十二億一千万円でございます。  以上のごとく、国庫支出は相当の金額に達しまするが、国民年金制度に対する全国民の非常なる期待、前段に申し述べましたように、完全な国民年金制度のきわめて大きな意義より見まして、断固として踏み切るべき金額であると信ずるものであります。  国庫支出は賦課方式でありまするので自後漸増いたしまして、本制度完成時、すなわち三十五年度には年約四千二百億円に相なるものと推定せられまするが、それ以上は増加を停止し、平準化するものと推定されます。このことに対しても、私たちは心配はないものと考えております。その理由は、わが国の経済が逐年拡大し、国家財政もまたそれに従って拡大するからであります。かりに、最も控え目に考えまして、明治以後のわが国の平均経済成長率である四%と同率をもって今後の経済が拡大するものとすれば、三十四年後には日本経済は四倍に相なります。同じ率以上で財政が拡大し得るものであることは当然でありまするが、これも少な目に見て同率と見まして、五兆六千億という仮定が成り立つわけであります。そのうち、実際には四割が減税に回されたといたしましても、なお、三兆三千億以上の財政規模に相なるわけでありまして、そのうち四千二百億程度の支出は、この制度が全国民に対する完全なものでありまする以上は、国民も双手をあげて賛意を表されるものであると固く信ずるものでございます。(拍手)  以上で本法案の説明を終るわけでありまするが、社会保障並びに国民年金に対する政府の態度について一言言及しておきたいと存じます。当然もっと早く取り上げられなければならない年金制度について、政府が本年からやっと取り組み始めたことはまずまずといたしましても、医療保障、失業対策、生活保護、諸福祉対策等、他の社会保障部分は、停頓あるいは実質上後退をいたしており、失業保険法の改悪まで行おうとしている現状は、強く指弾されなければならないと存じます。政府が宣伝これ努めておりまする年金制度について見ても、その内容はきわめて不十分であり、また、社会保障の理念が貫かれておりません。基本的な拠出制度において労働者が放置され、厚生年金の改正案においても国庫負担が据え置きになっていることは、年金を特に必要とする労働者の立場を全く無視したものであり、労働者の配偶者に国民年金強制適用しないことは、男女同権の立場を忘れ去った態度であります。完成時の年金が月三千五百円以下、しかも、物価変動によるスライドの明確な保証がないものでは、憲法第二十五条に規定する、健康で文化的な最低生活とはほど遠いものであります。さらに、九年以下しか拠出できなかった者には減額年金の適用すらないという内容は、年金を最も必要とする階層を年金から締め出すものであります。これを要約いたしますると、制度統合の熱意は全く見られず、内容も範囲国民年金法の名に値しない不十分なものであり、組み立ては社会保険主義に堕し切って、社会保障とはおよそ縁遠い制度であります。三種類の援護年金は、無拠出年金とは言い切ることのできないあいまいな制度であり、その内容は、拠出年金以上に魅力の少いものであります。養老援護年金七十才開始では、六十九才までに死亡される老人にとっては、この制度は絵にかいた「もち」であります。母子世帯に月一千円、一級障害者に月一千五百円の援護年金では、全く涙金にひとしいものであります。二級、三級の障害者、さらに内科障害の場合には、一級の人にさえも一文も支給しないなどということは、全くあきれ返って話になりません。さらに、その制度の最大の欠点は、生活保護と併給の制度がとられていないことであります。これでは、最も気の毒な老人、未亡人、身体障害者には、実際上援護年金制度は何らの役にも立たないことに相なるわけであります。  以上のように、政府案の内容は、よく検討をして見ますると、これでも国民年金のつもりか、(「討論じゃないぞ」、「趣旨説明をやれ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)これが社会保障かと、声を大にして批判しないわけに参らないのであります。討論ではございませんので、これ以上の論評を避けることにいたしまするが、このような態度の政府に対して国民が真相を理解したならば、当然手きびしい批判が起るものと信ずるものでございます。(拍手)政府がこの点を猛省されて、わが党のごとく、社会保障に徹底した態度をとられることを強く要求するとともに、参議院の皆様方が、広やかなお気持をもって、わが党提出の五法案を建設的に御審議の上、衆議院より回付の暁には、すみやかに御可決賜わりますよう、心から御要望申し上げまして、御説明を終ります。(拍手
  49. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。小柳勇君。    〔小柳勇君登壇拍手
  50. 小柳勇

    ○小柳勇君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案になりました社会党国民年金法案、同施行法及び調整に関する法律案、一般、労働者両年金法案及び年金特別会計法案、以上五つの法案について、若干の質問をいたしたいと存ずる次第でございます。  社会党国民年金に関する法律案は、昭和三十一年六月、本院において慰老年金法案が提案され、さらに第二十八国会以来、国民年金法案と銘打って、今日まで引き続き提案されてきたのでありますが、今回政府案が提案されるに及び、ここに政府与党と社会党国民年金法案とが対決するに至ったのであります。社会保障の中核である医療保障制度と並び、その一大支柱をなす国民年金法案が提案されたことは、まことに意義深いものがあると思うのであります。この重要法案について、私は政府案と社会党案とを比較しながら、社会党案の基本的な考え方についてお伺いいたしたいと存ずる次第でございます。  今日、国民年金制度創設に当りまして、最も重要な課題は、全国民をその適用対象とすることであります。政府案によりますれば、現行公的年金制度を適用いたしておりますものを除外しておるのでありますが、社会党案ではどのように考えておられるか、お伺いいたしたいのであります。現行公的年金制度の欠陥は、いろいろあげることができるのでありますが、その中でも、各制度がばらばらに併立して、制度間に通算あるいは調整が行われていないことであります。たとえば、同じ公務員であっても、雇の場合は国家公務員共済組合法が適用になり、公務員になれば恩給法が適用される。全く別個の制度が同一の人に対して適用されるという、ばかげたことが行われております。こうした現行制度の不合理な点は、国民年金制度が創設されるこの契機に清算されなければならないと考えるのでございます。また同時に、本法案と現行制度との通算調整がはかられなければならないと考えるのでございます。しかるに政府案は、一般国民だけを対象とし、しかも現行制度との通算調整が考えられていないということは、国民年金制度の意義が半減したというだけではなく、現行制度の欠陥をもう一つ付け加えたということすら言えると思うのでありますが、この点について社会党案はいかように考えられているか、まずお伺いいたしたいのでございます。  第二点は、賦課方式と積立金方式についてでございます。政府案が完全積立金方式を採用しておるのに対しまして、社会党案は賦課方式と積立金方式との混合方式を採用いたしておりますが、これは両案の基本的に異なっているところであると思うのであります。両制度にはいろいろの欠陥があり長所があるわけでありますが、特にわが国においてこれを見る場合には、底の浅い日本経済のもとにおいて、変動のあらしは常に起るものと想定しなければなりません。このような特殊な条件のもとに、所得を保障するだけの年金が支給されるためには、積立金方式と賦課方式との併用方式がとられる必要があると思うのであります。特に、完全積立金方式が、今日の保守党政権下においては、大資本のための資本蓄積を有効にするだけであって、この結果は所得の格差がますます拡大し、国民生活の窮乏化をもたらすものというべきであります。この点、賦課方式と積立金方式との混合方式をとられた提案者の意図をお伺いしておきたいと考えるのでございます。  第三点は、拠出年金制度と無拠出年金制度についてであります。政府案によりますれば、拠出年金制度基本として、過渡的、補完的なものとして無拠出制度を考えているのであります。これは社会党案も同じように見えるのでありますが、基本的には政府案とは全く異なった建て方になっておるのに気づくのであります。国民の間には、年金はほしいが別に掛金は出したくない、という素朴な意見が少くないのであります。国民の負担能力の関係から見て、これは当然なことであると思うのでありますが、ビバリッジも強調したように、社会保障の発展のためには個人の責任もある程度重視されねばならないと思うのであります。このことは社会保障制度審議会の答申にも見られるのでありますが、政府案は、拠出制度の中に無拠出制度いわゆる援護年金を含んでいるのでありまして、ある一定の保険料の納入あるいは被保険者としての期間を条件としなければ、無拠出年金が支払われないという制度になっておるのであります。これは無拠出制度の意義を全く逸脱したものと言わねばなりません。こうした点について、社会党案は、拠出制度の補完的、過渡的なものとして、無拠出制度が考えられていると思うのでありますが、提案者の所見をお伺いいたしたいと思います。  第四点は、こうした拠出制、無拠出制度に関する政府案と社会党案との相違は、当然、社会保険主義と社会保障主義との問題にも関連すると思うのであります。政府案は、四十年拠出してわずかに月三千五百円の年金が支給されるが、条件を満たさなかった者に対しては、わずかに千円であるということは、憲法規定されている、健康で文化的な生活を保障するという精神は、全く無視されたものであって、保険主義の観点から作られた制度であると思うのであります。これに対し社会党案は社会保障主義であると言われるのでありますが、一体いかなる点が社会保障主義であるのか、具体的にお示し願いたいのであります。  第五点は、拠出年金制度において、政府案が六十五才から月三千五百円を支給するのに対して、社会党案は六十才から月七千円が支給されることになっているのであります。三千五百円が生活保護の扶助額と大して変らない金額であるのに対して、社会党案は七千円というように二倍の金額になっておるのであります。なぜ七千円にしたのか、その理論的根拠を伺っておきたいのでございます。同時に、政府案の六十五才支給と社会党案の六十才支給とは、いかなる理由で違っているのか、あわせてお答え願いたいのであります。  以上、社会党案の基本的な問題についてお伺いしたわけでありますが、国民年金制度の創設は、わが国社会保障制度の体系を左右する画期的な問題であると思うのであります。従って、本制度の提案によって、医療保障制度国民福祉制度の体系化も進み、社会保障制度が前進発展するということでなければならないのでございます。この意味におきまして、社会保障制度における国民年金制度の位置づけをどのように考えておられるか。今回の国民年金制度の創設は、わが国社会保障制度においてどういうふうな意義を有するものであるか、提案者の意図をお伺いいたしまして、私の質問を終る次第でございます。(拍手)    〔衆議院議員八木一男君登壇拍手
  51. 八木一男

    衆議院議員(八木一男君) 国民年余制度の根幹に触れました御質問をしていただきました小柳議員に、心から敬意を表したいと思います。  まず第一の御質問は、公的年金制度、既存の被用者年金制度を統合するがいいかどうか、それからもう一つは、それとの通算調整の問題についての御質問であったかと思います。私ども考え方では、年金制度は全部一本に将来は統合すべきものだと考えておりまして、それは非常に高い金額に達したときにできるわけであります。もちろん、現在、一つ年金制度が発達する場において、一ぺんに同じものにすることはいけませんけれども一つ制度にして、そして将来は高い位置で統合されるような方法考えていかなければならないと存じますし、当然そういう点で、これから作られる国民年金制度一つの基盤で労働者の場合も農民の場合も、同じ基盤を持ったもので通算調整がつくような制度を作っていかなければならないと考えているわけであります。社会党の案は、御承知の通り、農民や中小企業者や漁業者に適用される一般年金が八万四千円ということで、労働者年金の方はきまつた定額の部分が八万四千円と、そういうふうに、そこを同じにしてございます。そういうことでこの制度ができましたときに、労働者とほかの国民との通算が完全にきくように、最初から工夫をしてあるわけでございます。社会党の方では、今までの被用者年金をこの労働者年金に、最初非常にめんどうはありまするけれども、努力いたしまして一本にしてしまえば、あとは農民と労働者の間の通算は完全にいけると考えておるわけであります。しかしながら一ぺんにやるわけではございませんで、現在の年金制度の中で、恩給であるとか国家公務員の共済組合、公共企業体の共済組合というものは相当高い程度でございます、ハイ・レベルにございまするので、もちろんこの既得権、期待権を尊重しなければならないと私ども考えております。社会党の労働者年金にそういう制度を一ぺんに統合しても、平均いたしましたならばレベル・アップになるわけでございますけれども対象者にとっては、勤めた期間が長いとか、月給の単位が非常に高いとかいう人にとってみれば、部分的にマイナスになる部分もございますので、そういう部分はやはり既得権を尊重しなければいけませんので、このような官公労関係に勤めた方については、現行制度を今まで通り適用しておいて、新しくその制度にお入りになる人から、社会党の労働者年金法律、これを適用して参れば、その間にごたごたが起らない、その間に非常に不利をこうむる人も起らないと考えているわけであります。そういうところに、社会党の方では、労働者の配偶者が一般国民年金の適用を受けまして八万四千円、それだけふえますので、これを加えましたならば、ほんとうは全部一緒にしても一つも損はないわけでありますが、これは別にいたしまして、労働者本人の方の既得権もそういうことで擁護をいたしておるわけでございます。そういうことでございますが、現在恩給や、公共企業体におられる方が、もし勤めをやめられまして、一般国民になられましたときには、その途中でやめられても損がないように、その方の完全な持ち分を計算いたしまして、その原資をもって一般国民年金に入る。だから、そのときから入っても、すでに何年間か一般国民年金に入ったものとして計算されて、たくさんの年金がそこから入ってくるというふうに調整するようになってくるわけでございます。それから恩給や公共企業体の間でしばらく残っておる、その間に職場を転換された場合も、そのように完全な御自分の持ち分を持って他の制度にいく、それで途中で変ったが損はないというような通算方式を考えておるわけであります。  次に、積立金方式と賦課方式の点についてお尋ねがございまして、三番目に拠出と無拠出の点についてお尋ねがございましたので、大へん恐縮でございますが、関連がございますので、一括してお答えをさせていただきたいと思います。  拠出、無拠出の点でございますが、私の考えでは、年金制度というものは、でき得れば完全に全部無拠出であることが理想であろうかと思います。ほんとうに、でき得れば完全に全部無拠出で、その金額は高額であることが、こういうような国民年金制度としては第一に考えられる点であろうと思います。ところが、そういうことが前から行われておらなかったので、現在としては非常にむずかしいという状態にあります。ですから、無拠出にするとなりますると、一般財源から全部出さなければならないので、減税をやめるなり、一部増税をするなりということをしませんと、何千億という金が出て参りません。そうなれば、今税金を負けてほしいという考え方の多い国民の方々の状態を考えると、やってもいいが、それじゃ少しにしておけということでもって、うまく参らないということになるわけでございます。そういう状態で、今度よい年金を作るには、自分の年取った後のことを用意するのだからという概念を入れますと、そういうことは、いそいそとして、ほかの貯金のかわりにそれを積み立てておく、それを払い込んでおくという気持が国民の方々にございます。そういう状態において、国民拠出制度という、本人自体責任を持つという要素を入れますと、年金制度が高い十分なものができるということになって参ります。そういうことで、現在の段階において、私どもも、あるいは政府といたされても、あるいは審議会においても、現在の段階においては拠出制が一番いいという結論が出ておるわけでございます。ところが、拠出制が一番いいと考えましても、現在まで拠出制度に入らなかった人のために無拠出年金が絶対に必要であるということは、だれも否定ができないわけでございます。ですから、過渡的な無拠出年金制度は、年金考える以上は絶対に必要だということになるわけであります。で、私どもは、無拠出制度は過渡的だけでいい。それで国民年金制度拠出制の方をとっているので、それを完全にすれば、ある一定の年限を経れば無拠出年金制度は要らなくなると私ども考えております。これは私ども考えている拠出年金制度が完全であるからであります。全部の国民対象になり、そうして保険税がかけられなくとも保険年金がもらえるという態勢を作ってありますので、無拠出年金は、拠出年金が完成したら要らないわけであります。ところが、政府の方は、拠出年金の方はそこの程度まで達しておられませんし、そうして払い込んでない人はもらえないという要件の場所もあり、九年以下の場合にはもらえない、五年以下の場合には保険料も返ってこないという場所がありますから、こういうものを補てんするために、無拠出年金は、過渡的なだけでなしに、その拠出年金の穴埋めのための永続的な無拠出年金が必要になります。そういう考え方社会保障制度審議会考え方でございます。ところが、その穴を埋めるための過渡的な無拠出年金以外に、拠出年金の足らない部分を埋めるための無拠出年金社会保障制度審議会は答申をいたしておられる。ところが、その無拠出年金部分を援護年金として、完全な無拠出ではない、ちょっとでもかけなければもらえないというふうにしてしまったために、非常にそういう問題がうまくいっていないと私ども考えます。そういう意味で私どもは、完全な拠出制を私どもの案のようにこれをきめていただきましたならば、無拠出というものは過渡的だけでよろしいという観点に立っているわけであります。  次に、賦課方式と積立金方式でございまするが、これは一般の賦課方式と積立金方式でございまするが、積立金方式の方がいいのではないかという考え方が一般にございます。それは、保険会社とか、そういうところの数理、経理を担当しておられた方が、責任準備金というようなものをちゃんと置いておかないと、あとで困ったことになるという、非常に素朴、端的な考え方から発展されたものではないかと思うわけであります。ところが、普通の保険会社であれば、その保険会社があとで、途中で閉鎖をするというような場合に、積立金がないと、とんでもない困ることになりまするけれども日本という社会日本という国、これが将来、国際連合か、あるいは世界連邦に発展することはあり得ても、とにかく日本というこの共同体が途中でなくなるということはないので、積立金をきちんとしておかないと、途中で閉鎖したときに困るというような考え方とは違った考え方をしなければならないと考えております。で、実は私どもが賦課方式を半分取り入れましたことは、年金制度をりっぱなものにしたいからであります。というのは、年金というものが、私どもの無拠出年金というものが必要である、今の時代に必要である人のために、私ども年金を一般財源から払わなければならない。そうして、私どもが将来のために私どもの金だけで積み立てておいて準備をしなければならなかったら、今の生産年令人口の人が両方とも用意をしなければならないということで、非常に無理が起って、お年寄りに親孝行をしますと、私どもも用意はしますけれども、なかなかむずかしいから、それは半分にしておきましょうというようなことになって、年金が小さくなります。ですから、そういうことではなしに、完全に踏み切って、私どもは親たちに完全に全部親孝行をする。税金からいったものを全部差し上げる。私どもは全部子供たちに親孝行をしてもらう、という完全な踏み切り方をすれば、年金額は、社会党案よりももっと多くなるわけでありまするが、そこまでは今の状態から一ぺんにはね飛べませんので、結局、半分だけ賦課方式をとり、半分だけ積立金方式をとったわけであります。半分とった分は、五割の方の国庫負担の方を賦課方式で、年金支払いの必要が起ったときに、その金額を  一般財源から調達する。それから年金税の方のものは積み立てておいて半分用意する、というような考え方に立っているわけであります。  次に、社会保障か社会保険かという考え方でございまするが、(「簡単に」と呼ぶ者あり)できるだけ簡単に御答弁いたします。社会保障か社会保険かという考え方、私どもとしては、社会保障の考え方というのは、所得が少い、所得能力が少い人は、所得がないのであるから、所得保障をしなければならない。そういう人には、年金税であろうが、保険料であろうが、そういう負担がかけておるまいが、かけておろうが、そういうことにかかわりなしに、必要な人に必要な所得保障をするということが、社会保障に徹底した考え方であろうと思います。社会保険の方は、払ったものに見合ったものをたくさんもらうとか、そういう形式になっております。そういう社会保険的な形式であれば、これは保険会社を幾分合理的にして、幾分の国庫負担を入れて国家保障にしたというにすぎないのであって、ほんとうの社会保障ではないと考えます。  その問題をもっと、簡単ではございまするが、具体的に申し上げますと、私どもの国庫負担の方は一般財政からとりまするので、これは累進課税であります。ですから、貧しい人の場合にはそうとられないで、非常に余裕のある人からたくさんいただいた金が一般財政に回って、これが半分の国庫負担になるというのが第一点。それから、その次の年金税の点でありまするが、労働者年金税の方は賃金比例でありまするから、非常に日の当る産業の、高給の賃金の人に少しよけい出してもらい、低賃金労働者は少しでもいいということになります。それから、一般国民の方は均等割、所得割、資産割でございまするから、資産も少い、収入も少い人は、所得割だけになって、平均百六十六円と申しましたけれども、そういう方々の場合には九十円にしかならないということになるわけであります。それが税金の組み立て方でありますが、そのほかに減額をする。減額は、一割減額から二割、三割と続いて、九割まで減額するわけであります。一番の減額を受けた人は保険税が月にたったの九円になるわけであります。そこまで下る人がある。それから先は完全に免除になる。そういう形態ができております。そういうような完全に免除された人、それが三十五年間完全に一回も払わない、全部免除されても、六十才になりましたならば、日本国民である以上は八万四千円を完全にもらえる、こういうことが社会保障であります。保険税を払わなければ年金をもらえないならば、生命保険会社を合理化しただけで、社会保険株式会社を政府が作ったようになるわけであります。  次に七千円の根拠であります。七千円の根拠は、私どもは完全な根拠とは言い得ません。健康で文化的な最低生活というものについては、文化が進んで参りますのでだんだんと異同があります。そういう点で、ほんとうはこれが一万円でも二万円でも三万円でもいいわけであります。そういうふうにしたいわけでございまするが、やはり一般財源から、国民年金税負担があれだけの工夫をこらしてもあの限度しかいけませんので、それと合せた金額にしたわけであります。また一方、日本社会党の主張いたしております最低賃金八千円に見合ったものであります。最低賃金八千円というものは若い労働者でございまするから、この労働者が労働力の再生産をする必要がありまするけれども老齢者身体障害者の場合にはその程度が少し減りますので、そういうことで七千円ということにいたしましたわけであります。  次に六十才、六十五才、どっちがいいかという問題であります。私どもは断じて六十才がいいと考えております。六十五才を政府はとられた。あるいはいろいろの答弁にも、たとえば外国の例で六十五才もあるではないかという御意見もあり、そういうような学者の方の御意見もないことはありません。しかしながら、それはそういうことは考えずに、ほんとうに考え抜くと、六十がいいのではないか。というのは、たとえば諸外国の制度で六十五才ということをとりましても、その諸外国の社会保障制度を始めたのはすでに十年も二十年も前であります。現在の産業構造は諸外国は知っておりませんでした。そういうことで、六十五才ということも一つの要素になっております。ところが現在の産業の状態を見ますると、日本の産業も、世界じゅうもそうでございまするが、オートメーション化があらゆるところで進んでおります。工業部門だけでなしに、農業部門でも進んでおる。そうなれば、生産は上るけれども、そういうことでお年寄りの人が早く楽隠居をしていただかなければ、若い生産年令人口が就職しにくい。また若い人が少し働くだけで国民全部が十分に食べていけるという時代がくるわけであります。そういう要素も考えますると、三十五年後の目標に今から六十五というようなことでは、とんでもない手直しを途中からしなければならない。六十にすべきであろうと考えております。なお六十でもいけないという考え方がある。というのは、今の年金制度で厚生年金保険では五十五才の支給を受けておられる方もありますし、また公共企業体の年金でも五十五才の退職年金の開始であります。そういうことを考えまして、私どもとしては六十才開始が原則でございますけれども、しかしながら、本人の希望によって五十五才からでも開始し得る。あるいは六十五才までも延期し得る。五十五才から始まった者は、数理計算をいたしまして、もちろん五年早くもらうための金利計算による減額、あるいはその間、長年たくさんもらえるための減額、そういうことをいたしましたものをやるわけでございまするが、そういうことで、こういうことを調整しておるわけでございます。  最後国民年金社会保障に対する位置についての小柳先生からの御質問がございました。社会保障は、簡単に申し上げますれば、救貧部門と防貧部門がございまするけれども、結局将来の目標は、防貧対策を完全にして、救貧対策が必要のない状態にまでいかなければならない。そのためには完全な国民年金をしておきませんと、そういう意味はなさないで、いつまでも救貧対策が必要になると思います。そういう意味で、完全な国民年金を作る必要がございまするけれども、しかし、現在の完全な国民年金ではなしに、不完全な国民年金をちょろちょろっと発足をしておいて、現在必要な非常に貧困な人の救貧対策を置き去りにするというようなことは、断じてしてはならないと思います。日本社会党では救貧対策をやる。それから医療保障対策をやる。失業対策をやる。全部やるのです。全部やるのに並行して、国民年金は三十五年もかかるものであるから、今からスタートを切っておこうというようなわけで、順序といたしましたならば、はっきり言いましたならば、救貧対策が一番先行すべき順序である。医療保障対策が次に来るべき順序であろうと思いますけれども、わが党はそんなにのろのろしておりませんので、全部を同時にスタートさせて、全部の社会保障制度を完成して、国民の方々に健康で文化的な生活を楽しんでいただきたいと考えております。     ━━━━━━━━━━━━━
  52. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 竹中恒夫君。    〔竹中恒夫君登壇拍手
  53. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 無所属クラブを代表いたしまして、以下二、三点についてお伺いいたしたいと存じます。  総括的に申しまして、政府案が社会保険的な考え方に立脚しているのに対して、一歩突き進んで社会保障的な見地から立案され、従って福祉国家実現の理想へ一歩前進されたものであり、国民の期待にも沿い得る程度のものである点は、大いに敬意を表するものであり、原案のごとき程度のものであることに異論があるわけではありませんが、反面、現在の国力からして、また国家財政のあり方を根本的に大変革を見ざる限り、これが実施に幾多の不安を感じるものであって、まず第一に御解明願いたいことは、年金給付が軌道に乗って千万人程度の受給者への支給が始まりまするというと、当然年額にして八、九千億円必要であり、その半額を国庫負担として四、五千億円を国が負担することになってくる。もとより経済の成長率、財政の大幅の成長等も詳細に検討されての上でのことであろうと思いまするが、三十年後の国力の評価に希望的な観測が多分にあるとすれば、はなはだ危険なことであり、野党の立場からして気楽な気持で理想案を考えればいいのだということでは、はなはだ困ると存ずるのでございます。以上の見地からして、財政的に見て実現可能の自信と計数的の根拠があれば、大まかでけっこうでございますが、御説明を願いたいと思うわけでございます。  第二の質問は、無拠出年金についての所得制限が政府案よりもきびしいことでございます。社会党案としては、同一世帯に三十六万円の収入があれば支給しないことになっており、政府案は五十万円になっております。国民年金の本質から言っても、また一世帯の所得が三十六万円で足れりとしての所得制限がなされたことについても、私は、はなはだ疑問を抱くものであります。国民の標準的な所得は五十万円程度であるべきだとの建前がいいのではないでしょうか。この点、所得制限と年金の意義についてのお考えを承わりたい。  第三は、労働者と、一般自営者、自由業者並びに家族従事者との二本建になって、労働者年金と一般年金とに分けられておりまするが、もとより保険税額に両者の間には相違はございまするので、必然的な受給額にも高低ができて参りまするが、率直に言って、国民年金という土俵場で労働者と一般国民との間に相違した考え方をすることは、いささか年金の意義を忘却したものでありはしないか。階級政党としての感覚が強く打ち出されておるように考えられるわけでございます。大企業傘下にある労働者の諸条件に比しまして、低所得の多い農民、漁民を初め、自営業者こそ、より一そう老後が不安定であり、年金の必要度が強いと思われます。社会党としては、いろいろ理論的に、あるいは計数的に、合理的な理由があって、原案が作成されたことと思うので、御説明を承わりたいのでございますが、皮相な観測での国民の受ける感じは、率直に申しまして、何か労働者優先と感じられ、何だか特殊な立場に労働者を置いて立案された感じがいたされるのでございまして、この点、誤解があれば別でございまするが、社会党のために惜しむところであると存ずるわけでございます。  なお、労働諸条件の改善方につきましては、年金とは別個に考えるべきであり、そうしたにおいがこの原案にあるということにつきましても、はなはだ残念に思うわけでございまして、こうした点につきましても御解明をいただき、誤解があれば誤解の払拭することを私は希望いたす次第でございます。  以上をもちまして私の質問を終ります。(拍手)    〔衆議院議員八木一男君登壇拍手
  54. 八木一男

    衆議院議員(八木一男君) 社会党国民年金法案につきまして、おそらく国民の方々が一番疑問としておられる点を端的にお聞きいただきまして、非常にありがたいと存じます。私といたしましてその点についてお答えをして、解明をさしていただきたいと思います。  まず最初の御質問は財源の点でございます。財源につきましては、先ほど竹中恒夫先生もおっしゃいましたけれども、さっきのピークのときに四千二百億要ることになっております。四千二百億という計数は、これは一千万くらいの人数といたしまして、八万四千円の半額ということが、計算したら出て参るわけでございますが、三兆三千億の財政規模であれば、四千二百億程度は、全国民のものでございまするから、これは問題にならないと思います。竹中先生の御心配は、三兆三千億ということはできるかという点の方におありになると存じます。私、先ほど趣旨説明のときに申し上げましたように、まあその点について非常に大まかに見ておるのじゃなくて、ごくしぼって一番安全度をはかって計算をいたしております。というのは、明治以後の経済伸長率四%で計算いたしておりまするけれども、現在の政府の五カ年計画というのは、六・五%の経済成長率を見込んでおります。昨年度は少し伸長率が悪かったわけでございますが、もう今度はそれ以上に回復しておるということは、政府当局も言明しておる通りでございます。社会党がもしそのうちに政権をとらしていただく場合には、社会党は計画経済で、現在の自民党の計画よりももっと急速度の拡大計画を持っておるわけでございます。そういうことで四%という—六%で計算してもいいところでございますが、六と四とは大いなる相違がございます。六%で計算しますと、三十五年後におそらく八倍くらいになると思います。八倍ということは結局十兆ということになるわけでございます。そういうことをやるにいたしましても最小限度で見ておりますので、先生の御心配は確かに私どもも十分拝聴しなければいかぬと思うのでございまするが、この程度でできるのじゃないかと思います。今度は、しまいがそうでございますから、スタートの方の財源について申し上げますると、千二百十二億円、事務費を入れまして千二百数十億円になりますが、その金額がどうかという御疑問があろうと存じます。それについては、現在租税特別措置法のように、いろいろの特別免税の規定もございます。その中でごく一部の、たとえばお医者様に対する免税であるとか、青色申告の免税であるとか、早場米に対する免税というような、勤労階層の免税は別にいたしまして、非常にまあ大資本だけが特別免税を受けておる部分が大へん多いわけでございますが、その大資本の特別免税の方を、これをやめるということをいたしますると、年間に七百億くらいは出て参ると考えております。この七百億のほかに、年間のこれから後の自然増収分をつぎ込めば大体見合うわけでございまするし、また政府の方でも数年後の六百億の国庫負担を用意しておられますので、どこで政府が財源をお探しになるか存じませんが、それにこれを足せば完全にいくわけでございます。財源がダブるというお話があると思いますので、独自の財源を申し上げますると、防衛支出金をやめれば百七十六億円になる。それから自衛隊の幾分の削減をいたしましたならば、それに当然に見合うということになるわけでございます。最初の千二百億円でスタートすることによって、終点は—間はカーブは少し狂いますけれども、大体において年金の支出の金額とカーブとは、少しは狂いますが大体見合っております。そういう点で一つ竹中先生も了解を願いたいと思います。  その次には給付制限の点でございますが、政府案の方が老齢給付について五十万円の所得まで出す、社会党が三十六万円で、この点、社会党案の方が少い。給付の制限がきついのではないか、政府の方が、この点、配慮がいいのではないかという御質問であったかと思います。一般的にもそういう御意見があるようでございます。あるようでございまするが、私どもはそうは考えておらないのでございます。まず無拠出年金というものが全然国民の税金から出ております以上は、どこかに制限を作らなければならないと思います。制限を作るところに、たとえば所得で制限をつける場所もございますけれども、年令で制限をつけるという要件もございます。また障害の等級等で制限をつける、いろいろなところで要件を作らなければならないわけでございます。要件のきついか、鈍いかは、すべての要件で考えてみる必要があると思うわけでございますが、今、竹中先生のお聞きになりました所得制限だけで見ましても、私どもの案は、そうきびしくはないのでございます。対照上、政府案に触れさしていただきますと、政府案の方は、本人の所得が十三万くらいであるというときにはもちろんだめですが、配偶者が十八万から十九万所得があってもこれをもらえないということになっております。三十万足らず、二十二万くらいしか世帯所得がなくても、配偶者の所得があれば、二十二万の世帯までやらないということに政府案はできている。五十万の世帯に、老人だけにやるということが、いろいろ報道されて、十八万くらいの世帯のときでももらえないという部分が政府案でもあることが、一般的に抜けているわけであります。それから母子世帯の方でございますが、政府案は十二万未満しかやっておりません。十五万くらいの母子世帯は、社会党案はもらえるけれども、政府案はもらえない。このような世帯所得の面から見ても、政府案と社会党案は、作り方は違いますけれども、方々で態様は違いますが、社会党案の方が給付制限が少い。一つの点だけをあげると多い点もございますが、全体的に見ますと、とんでもないことになります。社会党案は六十才からもらえる。政府案の方は七十才以上でございます。その数だけ御比較申し上げますと、三十六万から五十万までの世帯で、政府案の方が出し、社会党案が出さない部分の対象は二十五万九千人と私どもは計算しております。ところが、政府の方のくれない方、六十才から六十九才までの三十六万未満の収入の世帯、その収入の世帯で、本人の所得の分は、これは要素には入っておりませんけれども、概算でございますが、四百十一万でございます。政府案でよけいもらえる分は対象者が二十五万、社会党老齢だけでもらえる分が四百十一万、これだけの差がございますので、この点で、社会党案の方がいいように私どもは思っておりますけれども、竹中先生の御意見を拝聴いたしますと、なお、私どもこの点についても検討して参りたいと考えております。  次に、労働者年金と一般国民年金を分けたということについて、階級政党的ではないかという御質問でございました。労働者を特に擁護し過ぎるのじゃないかという御質問でございました。この点については、私どもの作った考え方がそうではないのであります。私どもは、全国に同じものを作りたい、同じもので十分なものを作りたい。でございますけれども、月に三万くらいの年金を全国民に六十才から差し上げるような状態であれば、これは農漁民、無収入者、労働者、関係なしに、一切そこに、制度に、すべての人に入ってもらって、そういうふうにしたいと思っております。ところが、財政負担力の関係で、月に三万円ぐらいまで一ぺんに持っていかなかったわけで、そこで七千円ぐらいのところにめどを置いたわけで、そうすると、七千円で一応健康で文化的な最低生活、これは、社会党案は物価でスライドしますから、現在の貨幣価値での七千円なら一応最低限度は維持できると思いますけれども、発展がなければつまりません。健康で文化的の日本国民の状態がもっとずっとよくなって、最低限度というところも上らなければ、つまりませんので、これを高めていきたい。ところが財政の関係で七千円でストップした。そうしたら、高めさせる状態にあるところは、国家の負担を出すのじゃなしに、その人たち考え方で高めてもらおうではないか。一般的には、任意年金たとえば保険会社の年金であろうが、簡易保険局の年金であろうが、そこに入られて、七千円以外の、ベース以外にもっと自分年金がもらえると、そういう配慮が必要であると思います。もし保険会社の方が利回りが悪いということであれば、政府がそれに見合ったような年金を生み出していくことも考えなければならぬと思います。政府がそういうことを考えるとともに、ほかの方でもできることはしたい。ところが労働者というものは賃金生活者でございますから、毎月現金収入が入るわけで、ほんとうは計算して一年ぐらい固まると、こんな金はほかで使うということになりますので、毎月差し引かれるとそう苦にならないものでございます。それが少し多く差し引かれる場合には労働者の年金を上げたらどうかと、こういうことを考えたわけでございます。国庫負担をよけいにしたわけではないのであります。もう一つ、そういうふうによけいにした要件は、私どもは、労働者の方が年金が必要な度合いは、農漁民の方よりは多いと考えております。というのは、農地を持っておられる方ならば、一人が老齢になられても、ほかの方が農地を耕作されることによって、幾分農産物の収穫をあげられる要素がある。またお店を持っておられる方ならば、ほかの方がお店の経営をされることによって収入をあげられる。労働者は職場がなくなったならば、賃金だけでありますから、全然収入はなくなるということで、労働者の方が年金の必要度が多いということを私ども考えております。ところが、度が多かろうとも、国庫負担を労働者に特別にたくさんやろうという考えはございません。度が多い点を、労働者の現金収入があるという点でからみ合せまして、その人たちの努力によって高い年金がもらえるようにしようということに考えてございます。国庫負担は、国民年金が五割、労働者年金をこれに換算すると三割五分で、将来五割になるという点でございます。その点がむしろ労働階級から私どもはおしかりを受けることをこわがっているわけでございまして、先生のおっしゃる点と、全然そういう意味と違いますということを、どうか御理解を願いたいと思います。(拍手
  55. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  56. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第三、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。法務委員長古池信三君。    〔古池信三君登壇拍手
  57. 古池信三

    ○古池信三君 ただいま議題となりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。  本法律案趣旨は、最近における市町村の廃置分合等に伴い、簡易裁判所の名称及び管轄区域等を変更しようとするものであります。  以下簡単に今回の改正の要点を申し上げますと、第一は、市町村の廃置分合等に伴い、二俣簡易裁判所ほか二簡易裁判所の名称を変更すること、第二は、土地の状況、交通の利便等にかんがみ、竹原簡易裁判所ほか三簡易裁判所の管轄区域を変更すること、第三は、市町村の廃置分合等に伴い、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表について、所要の整理を行うこと等であります。  委員会の審議に当りましては、まず二月三日、政府当局から提案理由の説明を聴取した後、大川、高田の各委員から、地元民の利便と裁判所の管轄区域との関係、簡易裁判所の整理統合等について、熱心な質疑が行われましたが、これが詳細は会議録に譲ることといたします。  討論に入りまして、自由民主党を代表して大川委員より、簡易裁判所の整理統合をすみやかに実現することを要望して、本法律案に賛成するとの意見が述べられ、次いで採決に入りましたところ、全会一致をもって政府原案通り可決すべきものと決定いたしました。以上御報告申し上げます。(拍手
  58. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  59. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました、      ——————————
  60. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第四、市町町村職員共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。まず委員長の報告を求めます。地方行政委員長館哲二君。    〔館哲二君登壇拍手
  61. 館哲二

    ○館哲二君 ただいま議題となりました市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案について、委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  現行市町村職員共済組合法規定によれば、市町村職員共済組合発足の際、健康保険組合の権利義務を承継した組合は、昭和三十四年十二月三十一日までの間は、当該健康保険組合が行なっていた付加給付を引き続いて行うことができるのであります。また健康保険組合組織していた市町村で、職員である被保険者の負担する保険料よりも多額の保険料を負担していたものについては、昭和三十四年十二月三十一日までの間は、引き続き組合の短期給付に要する費用は、市町村と職員との折半負担の建前にかかわらず、市町村において組合員よりも多額の負担をすることができるのであります。そこで、本法案は目下地方公務員を通ずる統一的な共済制度について検討が進められている情勢とも見合いまして、この際これら二つの特例期間をいずれも一年間延長して、昭和三十五年十二月三十一日までこれを認めようとするものであります。  地方行政委員会におきましては、二月五日政府側より本法案の提出理由を聞いた後、慎重審査に努めましたが、その詳細については会議録によって御承知願いたいと存じます。  二月十二日質疑を終り、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  以上御報告いたします。(拍手
  62. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  63. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  64. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第五、昭和三十三年分の所得税確定申告書提出期限等の特例に関する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長加藤正人君。    〔加藤正人君登壇拍手
  65. 加藤正人

    ○加藤正人君 ただいま議題となりました昭和三十三年分の所得税確定申告書提出期限等の特例に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、本年においては、所得税確定申告書等の提出期限及び第三期分の納期限、再評価の申告書の提出期限並びに再評価税の納期限等である三月十五日が休日に当るため、これらの期限をその翌日の三月十六日に延期しようとするものであります。  委員会における審議の詳細は、会議録によって御承知を願います。質疑を終り、討論採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右御報告いたします。(拍手
  66. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  67. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  68. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 参事に報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  憲法調査会法の一部を改正する法律  案可決報告書      ——————————
  69. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、憲法調査会法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を日程に追加し、日程第六、科学技術会議設置法案内閣提出衆議院送付)と一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。内閣委員会理事千葉信君。    〔千葉信君登壇拍手
  71. 千葉信

    ○千葉信君 ただいま議題となりました科学技術会議設置法案外一件につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず科学技術会議設置法案について申し上げます。  政府が科学技術会議を設置する理由として説明するところによりますと、最近における世界の科学技術は著しい進歩を来たしているが、このようなときに際し、天賦の資源に恵まれないわが国が文化と経済の発展を期するがためには、科学技術の画期的な振興をはかるほかに方法がないことは明らかであるので、政府は、科学技術振興の国家的重要性を深く認識し、従来、科学技術振興の諸般の施策を推進し来たったが、従来の施策が、総合性という面において必ずしも十分でなかった点に思いをいたし、政府の施策に一そうの総合性を持たせるため、今回科学技術会議を設置せんとするものであるとのことであります。  次に、この法案の概要を申し上げますと、科学技術会議は、内閣総理大臣の諮問機関として総理府に置かれるものでありまして、内閣総理大臣は、科学技術に関するきわめて重要な事項に関して関係行政機関の施策の総合調整を行う必要があるときには、その事項について科学技術会議に諮問しなければならないこととなっております。この重要な事項と申しますのは、第一は、科学技術一般に関する基本的かつ総合的な政策の樹立であり、第二は、科学技術に関する長期的かつ総合的な研究目標の設定であり、第三は、これらの研究目標を達成するために必要な研究のうち一特に重要なものの推進方策の基本の策定であり、第四は、日本学術会議への諮問及び同会議の答申または勧告に関することのうち重要なもの、以上の四つの事項であります。  科学技術会議のこのような任務の重大性にかんがみまして、その組織には、他の一般の諮問機関と異なった大きな特色を持たせております。すなわち、議長内閣総理大臣を充て、議員には、大蔵、文部の両大臣、経済企画庁、科学技術庁の両長官並びに日本学術会議会長が充てられるほか、関係国務大臣が必要に応じて議員として臨時に会議に参加できることとなっておりまして、なお、これら議員のほか、科学技術に関してすぐれた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が三人の議員を任命することができることとなっております。  内閣委員会は、高碕科学技術庁長官、橋本文部大臣、兼重日本学術会議会長その他関係政府委員の出席を求めまして、本法案の審議に当りましたが、その審議において明らかになった点を申し上げますと、その第一点は、科学技術会議の設置のねらいとするところは、現在の科学技術庁の付属機関である科学技術審議会の機能が十分でなかったため、従来各関係行政庁間の科学技術に関する諸施策の総合調整の機能が十分発揮されなかった点を考慮し、今後関係行政庁間の総合調整の点に重点を置き、もって今後の科学技術の振興に資せんとする点にあること、その第二点は、科学技術会議運営に当っては、目先の利害に拘泥せず、基礎研究を尊重し、また会議は、多数決によらず、全会一致の採決方針をとり、日本学術会議立場を尊重すること、その第三点は、科学技術会議の庶務は、別途審議中の科学技術庁設置法の一部改正法律案によって設けられる計画局で取り扱い、その運営に当っては、文部省との間に十分緊密な連絡をとること等の諸点でありまして、その他、科学技術会議の性格の点、この法案において日本学術会議の意見がいかに取り入れられたかの点、科学技術振興の目途いかんの点、科学技術に関する日本学術会議の存在価値いかんの点等につきまして、政府との間に質疑応答が重ねられました。  昨日の委員会におきまして、質疑を終了いたしましたので、討論に入りましたところ、まず、各会派共同提案による次の附帯決議案が提出されました。この附帯決議案を朗読いたします。     附帯決議案   科学技術会議運営に当つては   第一、基礎研究を重視すること。   第二、学問研究の自由を確保すること。  附帯決議案は以上の通りであります。  次いで、八木委員より本法案及び附帯決議案に反対の旨の発言があり、また、自由民主党を代表して山本委員、日本社会党を代表して矢嶋委員、緑風会を代表して田村委員より、それぞれ本法案及び附帯決議案に賛成の旨の発言がありました。  討論を終り、直ちに本法案の採決に入りましたところ、多数をもって、原案通り可決すべきものと議決せられました。次に、先の附帯決議案につきまして採決いたしましたところ、多数をもって当委員会の決議とすることに決定せられました。  なお、右附帯決議に対し、高碕科学技術庁長官より、本附帯決議の主旨は、今後科学技術会議運営に当って十分尊重する旨の発言がありました。     ━━━━━━━━━━━━━  次に、憲法調査会法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  政府が、この法律案の提案の理由として説明するところによりますと、憲法調査会は、一昨年八月発足し、その後、その調査審議は、広範な事項について、細部にわたって行われ、また、会議もひんぱんに開催されるに至り、今後ますますその回数の増加することが見込まれる。これに伴い、憲法調査会事務局における諸般の事務も増大しておるので、これらの事務を円滑に処理するため、現在、局長のほか七人である事務局職員の定員を改め、新たに事務官五人を増員することといたしたいというのであります。  内閣委員会は、昨日と本日の二日間にわたり、赤城内閣官房長官、高柳憲法調査会長その他政府委員の出席を求めましで、本法律案の審議に当り、赤城官房長官、高柳会長等と委員との間に、憲法調査会の調査の現状、高柳会長ほか二名の海外調査の概況、憲法第九条の規定を中心として、この規定の解釈、この規定の制定当時の事情憲法調査会の今後の調査の見通し等の諸点につきまして、質疑応答が重ねられましたが、その詳細は委員会会議録に譲りたいと思います。  本日の委員会におきまして質疑を終り、討論もなく、よって直ちに本法律案を採決いたしましたところ、多数をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  72. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  まず、科学技術会議設置法案全部を問題に供します。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  73. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  74. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、憲法調査会法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  75. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十三分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、警察による人権侵害に関する緊急質問  一、日程第一 国民年金法案閣法第一二三号)(趣旨説明)  一、日程第二 国民年金法案(衆第一七号)、一般国民年金税法案労働者年金税法案国民年金特別会計法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案趣旨説明)  一、日程第三 下級裁判所の設立及び管軸区域に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第四 市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案  一、日程第五 昭和三十三年分の所得税確定申告書提出期限等の特例に関する法律案  一、日程第六 科学技術会議設置法案  一、憲法調査会法の一部を改正する法律案