○
衆議院議員(八木一男君) 私は、
日本社会党を代表して、わが党提出の
国民年金法案、
国民年金法の施行及び
国民年金と他の
年金等との調整に関する
法律案、
一般国民年金税法案、
労働者年金税法案、
国民年金特別会計法案の互いに相関連する五
法案に関して、一括して、提案の
趣旨、理由並びに内容の大綱を御説明申し上げるものであります。
趣旨説明に当り、私は、わずか十九日前急逝されました故参議院議員竹中勝男氏に対し、衷心より哀悼の意を表するものであります。
社会保障学者として、一生涯その推進のため尽瘁してこられました竹中氏は、一昨年、
日本社会党国民年金要綱作成に当りまして、わが党
国民年金調査特別委員会委員長として、その取りまとめと推進に最も熱心に取り組んでこられたわけであります。労苦をともにいたしました私
たち同僚といたしましては、今、本
法案が参議院の御審議を受けまするときに同氏の姿が当院に見えないことは、まことに痛恨のきわみでございます。中道にして倒れられました故人の功績をしのびまして、その意中を汲みまして、同氏の霊魂とともに御説明を申し上げたいと存じます。(
拍手)
戦後、
わが国国民の平均寿命は大いに延び、六十才まで存命した人の寿命は、男子七十四才、女子七十七才に達しております。従って、人口の
老齢化現象が進み、総人口に対する比率も、絶対数も、ともに相当に増加し、さらに増加する趨勢にございます。大ぜいの人が長生きすることができるようになりましたことは、まことに喜ばしいことでございまするが、老後に安定した楽しい暮しができるのでなければ、その喜びは激減するわけであります。老後の生活については、従来、それに備えて、それぞれ貯蓄をするなり、あるいは子供の世話を受けるということが常識になっておりました。ところが、その二つともあまり頼りにできないというのが現在の状態であります。現在の老人が若いころに、老後に備えて、ししとしてたくわえられました貯蓄は、貨幣価値の変動によりまして、実際上ほとんど役に立たなくなり、お年寄りはまことに気の毒な状態にあります。このようなことが将来も絶対に起らないとは断定できませんし、もし幸い起らないとしても、老後の長さが予測できないとき、これを貯蓄のみで安心することは、ごく一部の階層のみにしかできない相談であります。さらに、毎日の生活に苦しんで貯蓄の見込みなどほとんどない大衆にとっては、この
方法は夢物語でございます。次に、子供に世話になる
方法でありますが、これも
戦前とは大きく
事情を異にいたしております。現行民法は扶養の義務を明確に
規定しているのでありますが、家族
制度改革によって、親に対する扶養の義務がないとする誤まった理解が行われて、老人を心細がらせておりますし、またさらに、
わが国の
国民生活の貧困は、親孝行な子供
たちにも、物質的には十分なる親孝行ができない状態に追いやっております。子供
たちの孝養のみに頼り切れず、みずから備える
方法としての貯蓄は、まことに不完全なる
制度、これでは、老後の生活を楽しいものにすることは、一部の特権階級を除いては至難と言わなければなりません。
一方、
母子世帯におきましては、年収十八万円未満の
人たちが全体の九〇%も占めており、まことに困難な状態のもとに子女の保育が行われております。
身体障害者に至っては、
障害のための特殊な失費があるにかかわらず、所得の機会にはほとんど恵まれないで、その大部分が最低生活の維持すら困難な状態であります。
このような事態を救い得る
制度が
年金制度でありますることは、申すまでもございません。ところが、
わが国の
年金制度は、一部勤労階級に適用されているのみでありまして、大部分の
国民は、そのらち外に放置されております。しかも、勤労者の場合も、恩給資格者と公共企業体共済
組合適用者のうちで高級者である者を除きましては、厚生
年金等すべてがはなはだ程度の低いものでございまして、また、通算がほとんどないという不備なものでございまして、老後を安心させるものではございません。この状態にかんがみまして、
昭和二十五年、
社会保障制度審議会の勧告が出たわけでございまするが、自後、歴代の保守党内閣が、何らの推進もしなかったことは、まことに怠慢きわまるものと言わなくてはならないと思います。(
拍手)
わが党は、以前より
年金制度の必要性を痛感し、その完成を主張して参りました。
昭和三十一年、呼び水の
意味で、慰老
年金法案、母子
年金法案を提出いたしたのでありまするが、一昨年、全
国民のための総合的、根本的な
年金制度を研究決定し、その
基本法として、
国民年金法案を、昨年の第二十八、第二十九、第三十
国会に提出いたしたのでありまして、さらに、幾分の修正を加えまして提出いたしましたのが、本
国民年金法案であり、即時実行でき得るよう手続上の具体的な内容を決定しているのが、
関係四
法案でございます。
本
国民年金法案等を作るに当りまして、私
どもは、
国民年金制度が完成までに長期間を要する性質のものであることにかんがみまして、創設当時より完全な目標に向って進まなければならないと
考えました。そして、この目標は、すべての
国民に
憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を維持できるようにすることに置いたわけであります。
以上の目標を達成するため、具体的には、第一に、
制度の完成した場合の
老齢給付の最低限度を、現在の貨幣価値の月七千円、すなわち年八万四千円と決定いたしました。第二に、この
年金を、すべての
国民が支給されるものとするため、拠出困難あるいは不可能な期間、
年金税を減額あるいは免除することとし、減免を何回受けたものでも、
年金額は完全に全額支給すべきだと
考えました。第三に、過渡期のものもできるだけ早く月七千円の線に近づくようにし、第四に、無拠出
年金については、必要の度の多い人に対する
年金に厚みをかけ、また、生活保護と併給することとして、その目的に沿うよういたすべきものと
考えた次第でございます。このような完全な
考え方で
国民年金制度を作ることによって、所得保障という本来の目的を果すとともに、他の重要な面に非常に大きなよい
影響を与えるものと
考えております。
国民年金制度を通じての所得再配分によりまして、
国民生活の不均衡が相当程度是正され、これによって継続的な有効需要が確保されることによって、諸産業の振興安定に資するところ大なるものがあると
考えられます。このことは、雇用の増大と安定を招来するものでありまするが、これによって、完全な所得保障によって不完全就労が減少し、労働力率化が低下するという好ましい効果の面を加えまして、完全雇用への道を進めるものと信じます。さらに、十分な
年金制度は、雇用労働力の新陳代謝を促進し、鉱工業生産力を増大せしめるとともに、農業、中小企業の経営権を若き世代に移すことによって、その近代化への原動力と相なります。以上のごとく、完全な
国民年金制度は、所得能力の少い
国民に完全な所得保障をすることによって、国家がその
責任を果すという本来の効果のほかに、現代
わが国における内政上の重要課題のほとんどすべてに解決の道を進める
制度であると断言しても、あえて過言ではあるまいと存じます。
以上の観点から、りっぱな
国民年金制度を作り上げることに決心したわけでありますが、現在の国家財政、個人経済の状態から、そのことの実現のため多大の工夫を必要といたしました。その結果、
国民年金には積立金方式のほかに賦課方式を取り入れることに踏み切ったわけであります。現在、
年金を必要とする人々に無拠出
年金を支給し、現在生産年令にある人々の
年金を完全積立金方式とすれば、現在のゼネレーションが二重負担になり、
年金のための負担は限界に達します。この障壁を乗り越えるだめに、われわれは、われわれの親
たちに親孝行をする、そのかわり、その分だけ子供
たちに親孝行をしてもらうという
考え方で、一部賦課方式を採用して、この困難を乗り越えることにいたしました。そのほか、収入の多い者に
年金税を多く負担させること、累進課税で徴収する分の多い一般財源からできるだけ多くの国庫支出をすること等に踏み切って、この
法案ができたわけであります。
以下、膨大な内容を、要点を抽出して御説明いたしたいと存じます。
本
法案は、大分けにいたしまして、特別
国民年金と普通
国民年金の二つの部分で構成されております。特別
国民年金は、現在直ちに
年金を必要とする老人、母子家庭、
身体障害者に対して、無拠出
年金、すなわち、一切の
掛金、負担金なしに
年金を支給して、これらの人々の生活を援助する
制度であります。普通
国民年金は、現在の青壮年、さらに以後続く
国民に対して、拠出、すなわち
国民が
年金税を納入して特別会計に積み立てる資金と、一般財政よりの賦課方式による大幅な国庫負担金とをもって、その
老齢、
障害あるいは遺族に対する完全な所得保障をする
制度であります。
まず最初に、特別
国民年金の方から御説明いたしますと、これは、さらに養老
年金、母子
年金、
身体障害者年金の三
制度に分れております。
養老
年金は、本人の年収十三万円以下の老人に支給されるものでありまして、六十才から支給を開始するものであり、六十五才から倍額にして、自後一生涯、毎年同額を支給いたすことにいたしております。年収十八万円未満の家庭の老人には、その金額は六十五才以後に、年二万四千円になり、従って、老夫婦の場合には、毎年四万八千円を支給することに相なります。年収十八万円から三十六万円の家庭は、右の半額が支給されるわけであります。母子
年金は、二十才未満の子女を有する
母子世帯に対するものでありまして、年収十二万円未満の母子家庭に年額三万六千円を支給し、子女が二名以上の場合は、第二子から一名につき年額七千二百円の加算をいたすことになっております。年収十二万円以上十八万円未満の母子家庭は、
基本額、加算額ともにそれぞれ半額を支給することに相なっております。なお、配偶者のない祖母、姉等が子女を保育する場合も支給することにいたしております。
身体障害者年金は、廃疾の程度によって支給金額が異なっており、年収十二万円未満の
身体障害者に対し、一級の場合は年額四万八千円、二級の場合は年額三万六千円、三級の場合は年額二万四千円を支給し、配偶者並びに子女に関しては、その加算は、等級にかかわらず家族一名につき年七千二百円ずつ支給することに相なっております。年収十二万円ないし十八万円の世帯の
身体障害者に対しては、
基本額、加算額ともに、おのおの半額を支給することにいたしております。
以上、養老、母子、
身体障害者の三
年金、すなわち特別
国民年金の
制度の全般を通じて申し上げておくべきことは、まず、三
年金とも、収入により給付を制限いたしておりまするが、最初に適用されなくても、後に本人または世帯の収入が不幸にして減少した場合は、その時から適用されるわけでありまして、その
意味で全
国民のものということができると
考えているわけであります。
次に、この三
年金は、全然税金の
対象にいたしておりませんので、以上の
年金が完全に全額
対象者の手に入ることになり、また生活保護と完全併給とすることにいたしておりまするので、生活保護を受ける方々は、扶助と
年金の両方とも全額支給されることに相なるのであります。
さらに、三
年金に関して世帯収入の境目において不均衡が起らないよう、細目の
規定をいたしております。すなわち、所得三十六万円の世帯の老人が一万二千円の
年金を受けた場合、その世帯は三十七万二千円の総収入に相なるわけでありまするが、それでは所得が三十六万円をわずかにこえる老人世帯の方が総所得が少くなることに相なりまするので、それを避けまするため、総所得三十七万二千円に達するまでは世帯所得三十六万円をこえても
年金を支給することにいたしております。三
年金のすべての境目に同様の配慮をいたしているわけでありまして、従って、言いかえれば、本
法案によれば、養老は所得三十七万二千円、母子は所得十九万八千円、
身体障害者年金は所得二十万四千円未満の世帯の
対象者まで支給されることに相なるわけであります。
以上で特別
国民年金の説明を終り、次に、将来に備える根本的な普通
国民年金について申し上げます。
この
制度は、一般
国民年金と労働者
年金に大別され、それぞれ
老齢年金、
障害年金、遺族
年金の給付があります。主として
老齢年金給付につき御説明申し上げることとし、まず一般
国民年金より御説明申し上げます。
この
制度は、農漁民、
商工業者、医師、弁護士等のすべての自営業者と、労働者の家庭も含めました全家庭の主婦等、すべての無職者に適用されるものであり、言いかえれば、労働者本人以外の全
国民が
対象となるのであります。
年金額は全部一律で、六十才から、一名につき、本
制度が完成された暁には、年八万四千円ずつ一生涯支給されます。従って、老夫婦の場合は十六万八千円に相なるわけであります。この場合、もし本人が六十才より早く、あるいはおそくから支給を受けたいと希望する場合は、五十五才から六十五才までの間において、希望の年からそれぞれ減額あるいは増額した
年金を支給できることにいたしております。
国は、この八万四千円の
年金給付の五割を一般財源より負担し、
支払いの年に特別会計に払い込みます。また別に、特別会計で積み立てておくため、
対象者の属する世帯より一般
国民年金税を徴収いたします。拠出期間は二十才より五十四才までの三十五年間であります。税率は、
一般国民年金税法案第十条に
規定してございまするが、大体一名平均月百六十六円に相なる計算でございます。
国民健康保険税の場合と似た
方法で、均等割五、所得割三、資産別二という割合で徴収することになっておりますので、収入の少い人はずいぶんと安くなる見込みであり、さらに納入困難あるいは不能の人については、減額あるいは免除をすることにいたしております。何回減免を受けた人にでも、
年金を支給すべき際には、無条件で、他の人と同じ
年金を支給するという、
社会保障に徹底した
考え方に立っておりますることを、重ねて明らかにいたしておきたいと存じます。
廃疾
年金の場合は、一級は
老齢年金と同額、二級はその四分の三、三級は二分の一に相当する額を支給することにいたしております。
遺族
年金は、
老齢年金の半額、子供一名につき年一万四千四百円の加給をつけることにいたしております。
以上で特に申し上げておかなければならないことは、
年金については課税の
対象としないこと、並びに
年金額がスライド、すなわち物価変動に応じて改定されることであります。この場合、一般
国民年金税もスライドされることは当然であります。
次に、労働者
年金について申し上げます。
本
制度は、あらゆる職種の労働者本人に適用されるものであって、五人未満の事業所の労働者、日雇い労働者、山林労働者等にも適用されます。
老齢年金は六十才から支給されることが原則でございますが、炭鉱労働者、船員、機関車労働者等は五十五才開始といたしておりますことは、現行厚生
年金保険と同様でございます。
老齢年金額は、
制度が完成した場合、一般
国民年金と同額の八万四千円を
基本額とし、それに標準報酬額に比例した金額が付加されます。その金額は、現在の賃金水準で平均年六万三千円になる計算でありまして、合計平均年十四万七千円に相なります。従って、将来賃金水準が上った場合には、この平均額は上昇をいたします。
労働者年金税法案に
規定されている労働者
年金税は、もちろん標準報酬の高低に従って定められております。一般
国民年金の場合より
年金額が多いのでありまするから、
年金税は当然高額に相なりまするが、この場合、使用者が半分以上負担することに相なっておりますので、労働者負担はあまり多くなく、平均して月額二百円程度であります。低賃金労働者の負担は、標準報酬が少いため、右の平均額よりはるかに少額になることは当然であります。拠出期間は一般
国民年金と同様、二十才より五十四才までの三十五年間であります。
この労働者
年金の特徴は、異なる事業所間はもちろん、農林漁業、商工業、家庭婦人等、一般
国民との間にも完全通算をすることでありまして、
基本額の八万四千円は、何回職業が変っても完全に確保され、平均六万三千円の標準報酬比例部分は、二十才から五十四才までの間に労働者であった期間だけの割合で、それがたとえ一年であっても加算されるわけであります。
労働者
年金への国庫負担率は二割であります。これは十四万七千円に対する二割でありまするので、八万四千円に対する割合に換算いたしますと三割五分になり、将来、賃金水準上昇を
考えますると、完成時には大体五割程度となり、一般
国民年金と実質上同程度のものと相なるわけであります。その他、繰り上げ減額
年金、繰り下げ増額
年金制度、非課税
年金及び
年金税のスライド、免税、また廃疾、遺族給付については、一般
国民年金と同様の内容あるいは仕組みに相なっております。
以上、一般
国民、労働者、両
制度について申し上げましたが、その
年金額は完成時のことを申し上げたわけでありまして、拠出期間が三十五年に満たない人は、その期間に応じて
年金額が定められていることは申すまでもございません。御参考に途中の
年金額を申し上げますると、施行時三十五才の人の
年金額は、一般
国民年金では年四万八千円、労働者
年金では年八万四千円になる計算であります。
以上が本
国民年金制度の内容の大綱であります。
実施に当っての既存
年金との
関係は、
国民年金法の施行及び
国民年金と他の
年金等との調整に関する
法律案に
規定いたしておるわけでありまするが、既得権、期待権の尊重に十分な配慮を払うとともに、完全なる持ち分移管方式を採用して、途中で
制度が変る人、あるいは途中転職者の利益を完全に保護することにいたしました。
制度の上では、厚生
年金保険、船員保険の
年金部分、農協役職員共済
年金等は、直ちに労働者
年金へ統合、恩給、国家公務員、地方公務員、公共企業体等共済
組合等は、新規採用者より労働者
年金を適用することに相なっております。
施行期日は
昭和三十四年四月一日、
年金の
支払い開始及び
年金税の徴収開始は同年十月一日からであります。
国民年金法施行に要する一般会計よりの経費は、平年計算にいたしまして、その第一年度約一千二百十三億円であり、そのうち養老
年金約七百九十八億円、母子
年金約三百十六億円、
身体障害者年金約四十五億円、
国民年金税減免補てん分約四十四億円、労働者
年金の国家公務員並びに地方公務員に対する国の直接間接の負担額、これは二十才以上の新規採用者分のみでありますが約一億円、
年金支払いに要する事務費約八億円と相なっております。
別に、労働者
年金税法、一般
国民年金税法施行に要する経費、すなわち
年金税徴収事務費は、それぞれ約八億七千万円、約四十二億四千万円、計約五十二億一千万円でございます。
以上のごとく、国庫支出は相当の金額に達しまするが、
国民年金制度に対する全
国民の非常なる期待、前段に申し述べましたように、完全な
国民年金制度のきわめて大きな意義より見まして、断固として踏み切るべき金額であると信ずるものであります。
国庫支出は賦課方式でありまするので自後漸増いたしまして、本
制度完成時、すなわち三十五年度には年約四千二百億円に相なるものと推定せられまするが、それ以上は増加を停止し、平準化するものと推定されます。このことに対しても、私
たちは心配はないものと
考えております。その理由は、
わが国の経済が逐年拡大し、国家財政もまたそれに従って拡大するからであります。かりに、最も控え目に
考えまして、明治以後の
わが国の平均経済成長率である四%と同率をもって今後の経済が拡大するものとすれば、三十四年後には
日本経済は四倍に相なります。同じ率以上で財政が拡大し得るものであることは当然でありまするが、これも少な目に見て同率と見まして、五兆六千億という仮定が成り立つわけであります。そのうち、実際には四割が減税に回されたといたしましても、なお、三兆三千億以上の財政規模に相なるわけでありまして、そのうち四千二百億程度の支出は、この
制度が全
国民に対する完全なものでありまする以上は、
国民も双手をあげて賛意を表されるものであると固く信ずるものでございます。(
拍手)
以上で本
法案の説明を終るわけでありまするが、
社会保障並びに
国民年金に対する政府の態度について一言言及しておきたいと存じます。当然もっと早く取り上げられなければならない
年金制度について、政府が本年からやっと取り組み始めたことはまずまずといたしましても、医療保障、失業対策、生活保護、諸福祉対策等、他の
社会保障部分は、停頓あるいは実質上後退をいたしており、失業保険法の改悪まで行おうとしている現状は、強く指弾されなければならないと存じます。政府が宣伝これ努めておりまする
年金制度について見ても、その内容はきわめて不十分であり、また、
社会保障の理念が貫かれておりません。
基本的な
拠出制度において労働者が放置され、厚生
年金の改正案においても国庫負担が据え置きになっていることは、
年金を特に必要とする労働者の
立場を全く無視したものであり、労働者の配偶者に
国民年金を
強制適用しないことは、男女同権の
立場を忘れ去った態度であります。完成時の
年金が月三千五百円以下、しかも、物価変動によるスライドの明確な保証がないものでは、
憲法第二十五条に
規定する、健康で文化的な最低生活とはほど遠いものであります。さらに、九年以下しか拠出できなかった者には減額
年金の適用すらないという内容は、
年金を最も必要とする階層を
年金から締め出すものであります。これを要約いたしますると、
制度統合の熱意は全く見られず、内容も
範囲も
国民年金法の名に値しない不十分なものであり、組み立ては
社会保険主義に堕し切って、
社会保障とはおよそ縁遠い
制度であります。三種類の援護
年金は、無拠出
年金とは言い切ることのできないあいまいな
制度であり、その内容は、拠出
年金以上に魅力の少いものであります。養老援護
年金七十才開始では、六十九才までに死亡される老人にとっては、この
制度は絵にかいた「もち」であります。
母子世帯に月一千円、一級
障害者に月一千五百円の援護
年金では、全く涙金にひとしいものであります。二級、三級の
障害者、さらに内科
障害の場合には、一級の人にさえも一文も支給しないなどということは、全くあきれ返って話になりません。さらに、その
制度の最大の欠点は、生活保護と併給の
制度がとられていないことであります。これでは、最も気の毒な老人、未亡人、
身体障害者には、実際上援護
年金の
制度は何らの役にも立たないことに相なるわけであります。
以上のように、政府案の内容は、よく検討をして見ますると、これでも
国民年金のつもりか、(「討論じゃないぞ」、「
趣旨説明をやれ」と呼ぶ者あり、その他
発言する者多し)これが
社会保障かと、声を大にして批判しないわけに参らないのであります。討論ではございませんので、これ以上の論評を避けることにいたしまするが、このような態度の政府に対して
国民が真相を理解したならば、当然手きびしい批判が起るものと信ずるものでございます。(
拍手)政府がこの点を猛省されて、わが党のごとく、
社会保障に徹底した態度をとられることを強く要求するとともに、参議院の皆様方が、広やかなお気持をもって、わが党提出の五
法案を建設的に御審議の上、衆議院より回付の暁には、すみやかに御可決賜わりますよう、心から御
要望申し上げまして、御説明を終ります。(
拍手)