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1959-01-29 第31回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年一月二十九日(木曜日)    午前十一時四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第九号   昭和三十四年一月二十九日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程に追加して、中央更生保護審査会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、犯罪者予防更生法第五条第一項の規定により、坂西志保君を中央更生保護審査会委員に任命することについて、本院の同意を得たいとの申し出がございました。本件に同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。      ——————————
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)。  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。天田勝正君。    〔小林孝平発言許可を求む〕
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 小林孝平君。    〔小林孝平登壇拍手
  8. 小林孝平

    小林孝平君 昨日、本院におきまして、わが党の佐多君から国務大臣施政方針演説に対する質問を行いました。この演説は、約四十分間にわたって行われたものであります。これに対しまして、自由民主党の田中茂穂君から、この演説中、不穏当とおぼしき点があるから、議長において善処されたい、との発言がございました。議長は、この田中君の発言を取り上げられまして、善処するの旨を答えられたのであります。私は、この田中君の発言はきわめて重要であると思うのでありまして、議会政治根本をゆるがす問題であろうと考えるのであります。(拍手国会における言論は自由でなければなりません。この言論に対しまして、四十分間にわたって行われた言論を、包括的に、不穏当とおぼしき個所があるということで、速記録の削除を行うがごときことが前例となりますれば、議会政治根本からゆるがされると私は考えるのであります。従いまして、私はこの際、議長から田中君に対しまして、佐多君の演説中いかなる個所不穏当であるかどうかということを、明確にされたいと存ずるものでございます。なお、国会議員言論の、ある個所不穏当であるとか、あるいは不穏当でないとかいう判断は、いかなる基準によってこれを行うかという重大なる問題があると存ずるのでございます。これらの問題については、いずれ機会をあらためて私は本院において慎重に論議をしなければならないのでございまするけれども、さしあたり田中君の発言に対しまして、具体的に、このいかなる点が不穏当であるという点を明示されたいと思うのでございまして、議長において田中君の発言を促されることをお願いいたす次第でございます。(拍手
  9. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 田中君に申し上げます。小林君の発言はお聞きの通りでありますが、田中君おいて御発言の希望があれば発言を許します。
  10. 田中茂穂

    田中茂穂君 昨日私が議事進行について発言いたしましたのは、佐多君の総理に対する質問最終後段におきまして、不穏当とおぼしき個所があるやに聞きとられましたので、後刻議長におかれて速記録調査の上善処されたい旨を議事進行について申し上げた次第であります。(拍手)    〔阿部竹松発言許可を求む〕
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 阿部竹松君。    〔阿部竹松登壇拍手
  12. 阿部竹松

    阿部竹松君 ただいまのわが社会党田中発言に対する小林議員議長を通じての質問に対しての答弁は、はなはだ明瞭を欠く点がほとんどでありますも議事進行についての小林発言は、不穏当個所とはいかなる個所か明示してほしい、ここに主眼点があるのでありまするから、議長よりもう一度田中君に発言を促して、不穏当個所を明示していただきたい。  以上、議長を通じてお願い申し上げます。(拍手、「明確にできなければ取り消せ」と呼ぶ者あり)
  13. 田中茂穂

    田中茂穂君 重ねて申し上げますが、私が申し上げましたのは、佐多君の質問最終後段の中において、不穏当とおぼしき個所があるやに聞き取られましたので、後刻速記録調査の上で善処されたいということであります。重ねて以上申し上げます。(「速記録を調べるため暫時休憩」「議事進行」と呼ぶ者あり)    〔佐多忠隆発言許可を求む〕
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 佐多忠隆君。    〔佐多忠隆登壇拍手
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 田中君はただいま、私の昨日の演説最終後段不穏当であると思うから、これを調べて善処されたい、という御提議をなされたと言明されました。最終後段は、すでに昨日申しましたように、私は政治家の心がまえを申し上げた。政治家責任を感ずることを最も大事に考えなければならない。この責任を感じないで政権を固執するところに政治家の堕落があるのだ、という言葉でございます。この言葉は少し政治を御存じの方は明瞭なことであると思います。そのとき明示いたしませんでしたが、これは皆さんもよく御承知の通り、有名なマツクス・ウエーバーの「職業としての政治」という本の中に書かれてある名言でございます。従って諸君は、そして総理大臣は、これを神の声として、民の声として、十分にお聞きされる用意はないかどうか、ということを申し上げたのであります。どこが不穏当であるか、これを不穏当と言うにおいては、政治家の心がけも何も全く解しない者の言葉と言わざるを得ません。あるいは政治学に対する全くの無知と言わざるを得ないと思うのであります。(拍手)どこが不穏当であるのか、あらためて明示をしていただきたいし、私はここでこの問題を追及いたそうと思いません。昨日の私の言論不穏当であったかどうかは、よろしく詳細にお調べを願つて私を懲罰委員会その他にかけてでも徹底的に追及をされることを、むしろ私から要求をいたしておきます。(拍手)      ——————————
  16. 松野鶴平

  17. 天田勝正

    天田勝正君 私は日本社会党を代表、して、岸内閣施政方針について、岸総理並びに関係閣僚に対し、若干の質疑を行いたいと思うのであります。  まず第一に指摘しなければなりませんことは、一昨日の施政方針演説を待つまでもなく、岸内閣成立以来の実績は、わが国民主化方向をすべて逆転させるために力を注いで参つたという点であります。顧みれば、戦後わが国民主化三つ方向から行われて参つたのであります。すなわち、その第一は、農村において農地解放を断行することによって、農村封建性の打破を目ざしたのであります。その第二は、労働組合法等の制定によりまして、従来労使の関係は、あたかも大名と家来の関係に置かれておりましたものを、これを対等の立場に引き上げたのであります。その第三は、独占禁止法を軸といたしまして、いわゆる経済民主化がはかられたのであります。以上三つ民主化方向は、いずれも社会主義以前の問題でありまして、今日、資本主義下においてもこの民主化は擁護されなければならないと思うのであります。しかるに、岸内閣においては、これらが全く逆転せしめられつつあるのであります。すなわち、農村に対しては、一昨年来、旧地主勢力の圧力に屈して、自民党内に解放農地調査委員会が設けられ、いかにして保守党のスポンサーを満足させるかを研究して参られたのであります。ついに今期国会総理府に農地補償問題審議会なるものを設けることによって、農村民主化に挑戦して参つたと思われるのであります。名目は審議会設置でありまするが、要するに農村民主化逆転口火を切つたものにほかならないと思うのであります。(拍手)さらに、経済民主化については、歴代保存党政府によって、独占禁止法なしくずし改悪がなされて参つたのでありますが、岸内閣においては、その総仕上げとして、去る第三十国会にその改悪案を本院に提出して参りました。これは警職法とともに流産いたしたことは、お互い慶賀にたえないところであります。これまた、大資本経済活動を援助する道にほかなりません。次に、労働者に対しては、さすがに、真正面から労働組合法改悪を企図するならば、国内は、かりに押し切つたといたしましても、国際的にはILOからの非難や、ソシアル・ダンピングの悪名を着て、貿易に支障を来たすということをおそれたのでありましょう。側面からこれを圧迫するために、言論、集会、団体行動を規制するために、いわゆる警職法改悪をもくろんだのであると思うのであります。私は、以上の事実から、わが国民主化の道をすべて逆転せしめる内閣であると断ぜざるを得ないのであります。そこで、総理にまず伺つておきたいことは、かかる反動化の道を依然として強行する意思であるかどうかをはっきりしていただきたいと思うのであります。(拍手)  次に、経済政策基本方針であります。このことは、すでに政府は、その施政方針演説によって明らかにしたと言われるでありましょう。ところが、経済政策の基礎となるべき一昨日の経済企画庁長官経済分析は、一体何を言っているか、さつぱりわからないのであります。さらに、昨日のわが党佐多君の質問に対する答弁に至っては、ますますわかりません。新聞は、満場失笑とこれを評したのであります。満場失笑経済分析では、今後の質問にはなはだ迷惑を感ずるのでありまして、私は、きょうこれからの私の質問に対しては、事、経済に関しては、すべて要求されなくても経済企画庁長官答弁に立たれたいことをまず要求いたしておきます。また、総理及び国務大臣演説は、一応ソツのない言葉をつづつております。しかし、その具体的なことというならば、これまた一向変りばえのしない、従来通り方針と聞き取れるのであります。また、きれいな言葉をつづりましても、それだけでは国民は納得できないのであります。今日まで続いておりますこの不況事態に対しましても、今まで政府は、これは不況ではない、経済停滞であるなどという珍妙なる答弁によってごまかして参つたのであります。およそ、人類の歴史は、経済発展歴史ともいえるのであり、経済赤ん坊は、成長するのが当然であります。しかるに、三つになつた赤ん坊が、歩けもしない、はうこともできないという状態を見て、これは病気ではなくして、成長停滞なりなどという医者があったならば、その医者は信用することができないのであります。そこで私が伺いたい点は、今回の経済基本方針が従来と違つた点、どこがどう違つているか、この点をば明示していただきたいと思うのであります。これは総理経済企画庁長官、それぞれ答弁を願いたいと存じます。  次に、戦後わが国経済の復興と成長は、西独と並んで世界の驚異の的となっております。かく相なりましたことは、国民生活水準引き上げと、中小企業農林漁業近代化を犠牲にして、大企業設備投資に重点を置いたからにほかなりません。しかし、大多数を占める勤労国民購買力引き上げ、つまり、国内市場拡大をなおざりにいたしまして、生産設備拡大を続行した結果、一昨年以来、設備過剰、生産過剰を来たしたのであります。これに加うるに、佐多議員の指摘されました通り経済外交の全面的な失敗輸出の減退の大きな要因となりまして、不況をさらに深刻化せしめたのであります。この不況回復について、政府経済見通しは、相変らずあなたまかせであり、アメリカと西欧の景気好転をよりどころにいたしております。ところが、われわれの見るところ、政府期待とは全く別でありまして、アメリカは、赤字財政下において財政支出増加をてこといたしまして、辛うじて好転の兆が見えるだけであります。また、その回復は鈍く、不安定と思われます。日本商品輸入制限が緩和される見通しはどこにもないのであります。さらに、西欧各国においては、欧州経済圏貿易拡大、ことに共同市場加盟六カ国の相互依存は強化されまして、わが国輸出困難の条件がますます加わると思うのであります。後進地域に対しては、英、米、西独、中国、ソ連、これらの諸国は積極的に経済援助に乗り出してきておるのでありますが、わが国は、この経済援助の立ちおくれによって、この面からの輸出期待はできないと思うのであります。以上の結論として、政府好転期待論は、まさに砂上の楼閣の運命にあると判断されるのでありますが、総理並びに世耕長官から、政府の分析の確実性をこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。  次に、総理並びに大蔵大臣は、ともに経済成長体質改善を強調されました。このことは、経済政策転換必要性だけでは認められたものと思うのであります。そこで大蔵大臣に伺いたい点は、政府提出予算案は、一昨日のあなたの説明にありますように、今年度に比べまして、一般会計において九百八十億円の増加財政投融資計画において一千二百三億円の増加となるのでありまして、この膨張予算案は、経済成長と雇用の増加のために膨張したのではなくて、大企業不況から救い、さらに大企業発展を擁護する予算であると言っても過言でないのであります。この方針は、一昨年、岸内閣が成立以来、引き続いて貫かれたのであつて、何ら経済政策転換、ひいては政府の強調する経済体質改善とは無縁のものであると思うのであります。政府期待する不況克服は、政府みずからが認めておりますように、財政支出散布超過二千億円を唯一のよりどころとしていると見られるのであります。要するに、大全業向け財政資金を大量供給することをもって体質改善と称しているのではないか。大蔵大臣の所見を承わつておきたいと思うのであります。  さらに、以上指摘したごとく、設備投資偏重政策は、やがて再び投資過剰、輸入過剰を招き、金融引き締め不況の再現なしとしないのでありますけれども、これに対する対策はいかにお考えでありますか。およそ国家が企業投資する場合、その効果として生産力発展が予定され、また、それに対応する購買力の培養が行われてこそ、初めて経済発展一般大衆にも潤うのであります。このことは何も社会主義の理論ではなくて、今日、資本主義経済においても、このような合理性を持たない限り発展はあり得ないことを、この機会に指摘しておきたいと思うのであります。  次に、金融政策についてでありますが、すでに申し述べたように、明年度予算散布超過になると予測しているのでありますから、これに対する金融をいかに調整するかは重大な課題であります。佐藤大蔵大臣は、金融正常化を強調され、適切な調整に遺憾なきを期すると言われたのでありますが、その手段として、投資適正化民間経済自主的調整にまかせるということでありますが、民間経済自主的調整がすべて失敗の連続であり、貸付競争が設備過剰をもたらしたことは、経済白書がみずから認めておるのであります。政府は、昨年来、民間資金の活用というスローガンを掲げて参りましたが、政府みずからが責任を持って計画的規制を行うべきであると思うが、その見解を承わりたいと思うのであります。  次に蔵相並びに郵政相に伺いますが、経済質的改善の柱として、国民貯蓄の増強を強調されましたが、財政投融資の最大の原資である郵便貯金が、民間金融金利高との競争ができずして伸び悩みの状態に相なっております。この状態をどう打開するか、この機会に承わつておきたいと思います。また、企業資本の充実については、長期資金は増資または社債によって調達することを望んでおられますが、現在は市中大銀行が大企業に対して長期貸付を行い、この結びつきが、資本集中独占を進行せしめておるのでありますが、これをあなたの言う金融機関健全化とはいかなる具体策を持っておるか、承わりたいのであります。  次に、減税案について伺います。政府与党は、昨年の衆議院選挙に当って、二十四年から七百億円の減税を約束いたしたのであります。ところが、その内容を検討してみまするならば、国税にあつては、初年度減税が三百四十二億円に対して増税分が二百七十九億円あることは、ほおかぶりいたして説明されたのである。実質的には差引百五十二億円の減税にすぎないのであります。しかも、減税案の中心となっている所得税法の改正は、標準世帯において年収三十三万円まで免税したと誇るのでありますが、実際は納税者の半数が年収三十万円以下の低所得者でありますから、勤労所得者のうち一部は多少の減税恩典に浴するといたしましても、大部分は恩典に浴さないのみか、すでに実施しております私鉄運賃値上げ口火といたしまして、今年度は、電気、ガス、水道料金からNHKの聴取料新聞代国鉄定期代まで値上げされることは必至の状態でありますから、現在でも国民のうち七割の新得税を納めていない低所得層にありましては、減税恩典どころか、公共料金値上げと、これに刺激された消費物価の値上りという圧迫のみを受ける結果となるのであります。これでは、減税公約を信じて自民党に一票を投じた国民を欺瞞するもはなはだしいと言わねばなりません。(拍手)そこで、蔵相に伺いますが、減税対象にならない低所得層と、わずかに減税にひつかかる程度の人々にとつて、どれほど実質所得が向上すると言われるのか、この点を明らかにしていただきたいのであります。  これに関して経済企画庁長官にも伺つておきますが、企画庁は、昨年十二月、本年度経済見通しを発表して、個人消費水準は五・五%の上昇消費者物価は〇・五%の上昇という予測を出しております。しかし、私の計算では、可処分所得増加は、所得税減税分三百八十億円、個人事業税分が六十五億円、合計四百四十五億円が可処分所得の直接の増加になるわけであり、これは現在の可処分所得の総額に対して〇・七%の増加にすぎません。一方、ただいま申し述ベたように、相次いで公共料金値上げが行われれば、消費者物価は〇・五%以上上昇すると考えられるので、可処分所得増加効果数字土から見て相殺されるのであります。あなたの言う勤労者消費水準上昇を確保する見地に立てば、当然公共料金値上げに反対すべきであると思うが、あなたの見解を承わつておきたいのであります。  次に、農村問題について農林大臣にお尋ねいたします。第一に伺いたい点は、私が冒頭に指摘したように、政府与党農村民主化逆転手段として解放農地問題を研究した結果、今期国会農地補償問題審議会設置の法律を提出すると承わるが、審議会結論を得てこの問題を処理すると弁解するにしても、しょせん審議会などは例の通り政府代弁者によって構成されるものと思われるのであります。これはただ公平らしく装うために機関を設けるにすぎないと思うのであります。従って、すでに政府においては、その方向内容のあらましは決定されておると存ずるのでありますが、この際オブラートに包むようなことをせずに、その性格を明らかにしていただきたいと思うのであります。また、選挙目当てと思うのでありますが、農業基本法今期国会に成立せしむると宣伝しまして、いかにも何かその内容農民にプラスするがごとく宣伝いたし、農民の歓心を買ったのであります。仄聞するに、与党内において研究の結果、これがあらゆる面で壁に突き当つて、とうてい成案を得るに至らなかったために、やむを得ず調査会設置をもってお茶を濁したと聞きます。もともと保守党内閣によっては、とうてい根本的に農業を防衛する方策が打ち立てられるはずもなく、熱意もないことは、過去十数年間政権をとりながら、農村を窮乏へと追いやった実績に徴しても、私は明らかであると思うのであります。(拍手)そこで、もし農業防衛方策を持っておるならば、その骨格だけでもこの機会に明らかにしていただきたいと思うのであります。  次に、総理は、農林漁業生産力持続的向上経営の安定をはかることは、わが国農業の基調であると言われたのでありますが、その構想に基いて明年度農林予算は五十五億円を増額したと大蔵大臣は誇らかに説明いたしました。ところが、過去数年間の農林予算を検討するに、昭和二十八年度以来農林予算後退後退を続け、二十八年度一般会計総額のうち農林予算占むる割合は一六・四%でありましたものが、以後、総予算は膨張を続ける一方、農林予算のみは減少の一途をたどつたのでありまして、本年度におきましては、その割合が七・四%と後退し、三十四年度予算においては、実に総予算の七・一%にすぎないのでありまして、これでは、農家経済を安定向上させるという宣伝とは、全く矛盾するといわなければなりません。国民経済の中で特に立ちおくれておる農業及び農民の地位を向上させるためのきめ手が、この予算の一体どこにあるのか。農相は、自信を持ってこの予算の中で農民生活を向上させることができると言われるのか。この際、明確にお示しいただきたいと思うのであります。  次に、農家現金収入のよりどころである養蚕についてであります。経済五カ年計画によれば、その達成目標として、生糸三十八万俵、繭三千六百六十万貫とし、この方針に基いて、桑を植えろ、増産をしろと指導して参ったのでありますが、昨年の生産は三十一万俵余であります。この実績は、目標に対しはるかに及ばないにもかかわらず、昨年春繭から大暴落を来たしたのであります。この結果、繭糸価格安定法支持価格すら維持することができず、養蚕農家は大打撃を受けたのであります。政府計画の誤まりから起ったこの事態は、あげて政府責任があるのでありまして、これが損害並びに作付転換等に対する十分なる補償措置をすベきは当然の責務であると考えますが、政府は、三十四年度において一万四千町歩の抜根と、わずか反当り二千円の奨励金を出すというのでありますが、この額は、手間賃にも及ばない少額であります。また、繭の支持価格生産費の八五%から六〇%に引き下げて、貫当り千四百円から千円に改悪しようというのであります。何たる農民に対する不信行為でありましょう。農林大臣は、おそらくこれは海外市況の変動でやむを得ないと弁解するでありましょうが、これは日本の農業、特に養蚕業に対する基本方針が確立していないから起ったことでございます。これに対する農林大臣責任ある見解を承わりたいのであります。  さらに、これと同様な問題として酪農問題をあげなければなりません。これも五カ年計画において五十九万頭の乳用牛を百二十五万頭にふやすというのでありますが、これまた一昨年秋以来の乳価安で、農民酪農経営に困難を来たしておるのであります。元来わが国畜産奨励は、明治以来、需要の拡大をはからずして、頭数ばかりふやす奨励をする結果、わずか増産いたしますと、製品安になって、再び牛を手放さざるを得ない状態の繰り返しであつて奨励されたときは高い牛を買い、手放すときは二束三文で売るということで、結局、農民保護よりも牛馬商の利益をはかる状態であったのであります。政府は、口では酪農振興を唱えながら、政策の実態においては、価格支持並びに流通機構について、全く無為無策であるのであります。で、農政の焦点は、実に今後ここに合せなければならないと思うのでありますけれども、農相見解はいかがでありますか、伺っておきたいと思うのであります。  次に、農地改革自作農主義であったのでありますが、この原理は、今や転換期に来ていると思うのであります。その転換は、政府のもくろんでおります旧地主に対する補償方向ではなくて、生産共同化方向であると思うのであります。最近農村階級分化が進んで参りましてより、一部富農層には、農地法の制限さえなければ、経営規模拡大しようという動きが起つて参りました。また、重税の圧迫にたえかねて法人化しつつある向きも各地に見られるのであります。これはいずれも農業資本主義的発展方向であります。これとは全く別に、まじめな青年層の間から、農業経営生産まで共同化しようという運動が起つておるのであります。この第三の方向は、指導のいかんによっては、日本農業農民の地位を画期的に高める道であると考えられますが、これらに対する農相見解を承わりたいのであります。  次に、わが国農業のごとく零細経営にもかかわらず、近来、農機具購入競争のような状態に陥つて農業経費の負担を必要以上に膨張させておるのであります。これらの弊害を除くためにも、政府の手によって農業サービス・センターを設置することが、この際、必要であると考えられます。これに対する見解を承わりたいのであります。  次に、中小企業問題について通産大臣に簡単に伺いたいのであります。  三十三年度経済白書によれば、大企業中小企業との格差が拡大して、日本経済に二重構造という欠陥をもたらしておることを強調いたしておりますが、三十四年度予算では、さきに指摘したような状態でありますから、依然として中小企業は無視された関係にあります。従って、その格差はますます拡大されるものと思われるのでありますが、この状態を打開するために、中小企業に適正な産業分野を確保することが絶対に必要であると思うのでありまして、中小企業庁においては、その具体化を幾たびか準備されたと承わりました。しかし、大企業を擁護する通産省首脳部によって、いつもこれが押えられてきたと聞くのであります。事実だといたしますならば、通産省は大企業の利益に奉仕するものであると非難されてもやむを得ないと思うのであります。今期国会に、以上述ベた趣旨の法案を提出する意図があるかどうか、承わっておきたいと思うのであります。  時間の関係もありますので、以上によって政府の施策に対する質問を終りたいと存じますが、最後に一点申し上げたいことは、政府は、今期国会においては、いわゆる低姿勢で臨んで、野党を刺激するがごとき法案の提出は見合せて、来たるべき地方選挙、参議院選挙を有利に導こうとしていると漏れ聞いておるのであります。ところが、これに関連いたしまして注目しなければならないことは、最近行われ、また、行われようとしつつある選挙について、実に驚くべき物量を投じて事前運動が行われておるのであります。これは告示前なるがゆえに、すなわち立候補後でなければこれを事前運動として取り締ることができない法の盲点をついておることであります。さらに、立候補した以上は、選挙妨害になることをおそれて取締りを手控えるということで、みすみす悪どい不潔な選挙が見逃されておるのであります。過去の選挙違反の検挙の実績について見ても、政府与党の悪質違反が大多数を占めることは、総理も御承知のことと存じます。岸総理は、大体、政治の浄化刷新とか政党に対する国民的信頼の回復を考慮されたことがおありになるのかどうか。失礼ながら岸総理は、かつての翼賛選挙や、勝てば官軍式の旧政党時代の特権意識から、いまだ解放されておらないのではないかと疑うのでありますが、(拍手)いかがでありましょう。さらに最近、東京近県の知事選挙においては、事前動運のポスターが五十万枚も貼られたということは公知の事実であります。このように金のかかる選挙を行う以上は、清潔なる政治の確立は、ほど遠いといわなければなりません。政治に対する国民の不信は、実にここに始まると言っても過言ではないのであります。この状態では、四月、五月に迫る各種の選挙は、わが国選挙史上最大の汚れた選挙に立ち至ることがおそれられるのであります。この傾向について、わが党は公明選挙推進特別委員会を作つて、清潔なる選挙を通じて政治の浄化をはかろうといたしております。岸総理は、総理大臣として、また与党の総裁として、この事態をいかに粛正していく考えであるか、この機会に承わつておきたいのであります。また、自治庁長官は、すでに私があげたごとき実例があるにもかかわらず、これを放置する考えであるか、今後どうこれに処していく考えであるか、はっきり承わっておきたいと思うのであります。  以上をもって私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  18. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  第一の民主化について、農地改革、また労働問題、独占禁止法三つの問題についてお話がありましたが、日本民主化をはかる上におきましてこれらのことは基本的な問題であります。これの根本を変更するような考えは毛頭持っておりません。  第二点は、経済政策根本について従来とつてきたことを変える必要があるのじゃないかというお話でございますが、私どもは、経済政策根本としては、常に安定した基礎の上において日本経済発展成長を考えていく。もちろん経済の問題につきましては、国際的の事情やその他の事情から波のあることは言うを待たないのでありますが、これをできるだけ安定した基礎において絶えず日本経済成長発展せしめることが根本に考えられなければならない。その上から見まするというと、日本経済に伴っておるところのいろいろな質的な欠陥というものを改善していく、これはいろいろな問題があります。いわゆる体質改善という言葉で包括しておりますが、いろいろな具体的な問題はありますけれども、こういう質の改善をもって常に安定した基礎において経済発展を考えていく、これが経済根本問題と思います。  第三点の、経済見通しについて誤まつておるのじゃないかというお話でございますが、昨年特に経済が沈滞しておる状況に対して、社会党の側から、不況対策として、景気を刺激するような政策をとる必要があるという強い御主張があったのでありますが、私どもは、それは必要ない、すでに三十三年度予算においても総合緊急対策に基くところの事態を予想したことがあるし、一応この調整過程を終るならば経済は明るい見通しを持ち得るだろうという見通しのもとに、そういう特殊の政策をとる必要はないと言ってきたのでありますが、幸いに最近の状況は、私どもの申しているような状況に進んできておると私は思います。  最後に、選挙の問題でありますが、お話のように、選挙はあくまでも公明選挙が行われ、金のかからない選挙にしなければならぬ。従って事前運動等におきまして、そういう事態に反するような事態のあることに対しては、これは厳にわれわれは警戒をし、いやしくも法に違反するようなものについては取締りをすべきことは当然であります。しかし、今日まで私どもの聞いている法務当局からの資料によりますと、これは自民党だけがそうであるという事態ではない。これは私は大へん遺憾に思っております。(拍手)    〔国務大臣世耕弘一君登壇拍手
  19. 世耕弘一

    国務大臣(世耕弘一君) お答えいたします。  私の昨日の答弁が簡単であったので、もう少し詳しく説明をしろという御注文でございますから、本日は少し具体的な問題に触れて御説明を申し上げたいと思います。少し時間をとるかもわかりませんが、がまんをしてお聞き取り願いとうございます。私の感覚といたしましては、一を聞いて十を知るという方々の立場でございましたから、要点だけ申し上げたらよかろうと思ったことが、まことに申しわけなかった次第でございます。(笑声、拍手)  まず、経済政策基本方針はどうかということでありますが、来年度経済運営の基本方針は、経済の安定的成長と、あわせてわが国経済体質改善ということに主眼を置いているのであります。日本経済は昨年の秋ごろから好転のきざしがございまして、その機会をとらえて調整過程に入っているのであります。これは漸次順調な経過をたどりまして今日に至っているのでありますが、また最近の米国の経済の基調は御承知の通り上昇的過程にございます。西欧諸国及び後進諸国の経済情勢は今後好転するものと期待していいと思うのであります。このような内外の情勢を勘案すれば、日本経済はおのずから上昇的な条件が整ってくるのでありますが、従って、民間の経済力並びに財政の適度な働きを加えることによって、経済界は案外根強い経済発展成長をする、こういうふうに世論もおのずから認めているのであります。この意味におきまして、いかに岸内閣経済問題に主眼を置いてその効果が表われてきたかということを、世論が今日認め、むしろ景気の過程の上に過熱しやしないかと、逆の面から批評されているような状態であります。また、日本経済の構造上の弱点ということに、この機会にわれわれは十分の考慮を払わなくちゃならぬと考えるのであります。この点に関しまして今後の経済発展の制約となるおそれがあるのであって、長期的な観点から経済発展の基礎充実に資するために、経済体質改善ということがおのずからここに表われてくるのであります。このために、公共事業の投資の拡充、産業秩序の確立、企業資本の充実、金融正常化など逐次推進していきたいと思うのであります。このほかわが国産業の弱い面でありますが、御承知の通り中小企業の問題であります。特に農林水産面を強化いたしまして、経済の均衡、完全な発達をはかって、そして国民生活の向上と雇用の増大を着実に考慮しなくちゃならぬということを特に考慮しているのであります。  以上が今後の日本経済に対する基本的政策であるということを御了承願いたい。せっかく御希望でございましたから、具体的に申し上げて、重要な政策を申し上げておるのでありますから、どうぞお静かにお聞き取りを願いたいと思うのであります。  次に、経済見通しについての御質問がございました。三十三年度経済見通しは、当初経済成長率を実質で三%と見込んだのでありますが、最近においては二・五%と見込んでいるのであります。これは、主として最終需要の伸びなやみが現われて、その成長過程で若干の遅延をした結果と申し上げていいと思うのであります。また、国際収支の黒字の見込みは、当初は一億五千万ドルであったが、最近では四億六千万ドルと予想されるようなことになっておる。これは、主として生産の減退と価格の低落、あるいは輸入が減少した結果によるものでありまして、いろいろの観点から精密な調整をいたしました結果、個々の経済指数を厳密に調整いたしますと、若干の食い違いがございますが、経済の基本的な推移については、おおむね見通しと変りがないということを、ここにはっきり御報告申し上げておきます。一すなわち経済は、昨年秋口から好転のきざしを見せ始め、その後順調な回復過程をたどっておるのであります。来年度におきましても経済は引き続き上昇し、経済規模は、長期計画の予想する水準とほとんど隔たりのない程度をここに達することができる見込みを、はっきり言明することができると思うのであります。  次に、第三問といたしまして、景気回復について、政府見通しは、海外の好転だけに頼っておるではないか、それは少し心細いではないかというような、強い御叱責があったように思いますが、この点について少し触れておきます。  わが国経済は、昨年度後半期以来の調整過程を脱しまして、再編成の過程に入っておるのであります。政府としましても、三十四年度経済成長率を五%に見込んだことは、すでに発表した通りであります。しかしながら、このような昭和三十四年度経済成長、すなわち景気回復の見込みは、諸一般の経済事情を慎重に分析した結果行われたものでありまして、海外の景気好転だけによったのではないということを御了解願いたいのであります。すなわち、個人消費支出が過去からかなり安定的な伸びを示しておるのと、また、年々の人口増加のほか、消費の財源となる個人の可処分所得が、景気にあまり左右されずに着実な足取りで伸びておるということは喜ばしい現象だと思うのであります。昭和三十四年度においても、減税や一般的な経済活動上昇もあり、名目で五・五%程度、消費者物価上昇等で〇・五%調整して、五%程度の増加はおおむね確実であると申し上げていいと思うのであります。政府の消費支出も八%程度の増加となる見込みであり、次に、民間の設備投資は五%の減少が見込まれますが、住宅投資増加一二%増、政府投資増加一〇%増があるので、固定資産全体としては二%程度の上昇になるものと思われます。在庫投資については、昭和三十三年度が低かっただけに、昭和三十四年度においては、約二倍半に及ぶ増加と見込まれる次第であります。次に、輸出は、為替ベースで九%余り、三十億ドル、通関ベースではこれを上回る一二%増加の達成の可能を考えられるのであります。以上のような需要側の条件を総合して、五・五%程度の経済成長が可能のものと見込んだのでございまして、相当精密な計算の結果であるということを御報告申し上げておきます。単に、御指摘なさっておられるような、海外の景気好転だけを取り上げて、これに依存したというような軽挙な態度で、責任のある経済報告をしているのではないということを御了承願っておきたいと思うのであります。  なお、経済体質改善という問題について、同時に中小企業の問題、農民等の生活水準の引き上げ問題等に関しまして重要な質問がございました。それにお答えしなければならぬようになっておりますが、特にこの機会に、この答弁も必要でないと仰せられるならば、私は省略したいと思いますが、なるたけ、御要求がありますから、簡単に申し上げます。  日本経済をできるだけすみやかに拡大発展させ、国民生活の水準の均衡ある向上をはかることは、国民のすべての共通の念願であります。また、中小企業農業の強化育成をはかり、各産業部門の均衡ある発展を遂げしむるということも、政治の一番大切な問題であります。産業の構造の適正化をはかるためのみならず、これらがわが国経済に占める地位にかんがみまして、重要な問題として政府は取り上げているわけであります。このような見地から、長期経済計画におきましても、中小企業及び農業近代化、合理化及び生産性の向上等に関しましては、特に考慮を払っている次第であります。来年度予算においても、この点について特に考慮を払っていることは、大蔵大臣その他所管大臣からお述べ下さったことと思いますから、これ以上は申しませんが、どうぞ減税その他の問題に対しましても、この点を御了承願っておきたいと思うのであります。  最後に、公共料金値上げの問題について御質問がございました。これも、物価並びに国民生活と直結する大事な問題だから、皆さんが省略しろと申しましても、一応は触れておかなければならぬと思います。物価は、一昨年の引き締め政策実施以来約一割低下しております。国際水準から見ましても、おおむね適当な水準にあると思うのであります。今後この水準におきまして安定させることが望ましいと思うのであります。しかし、一方においては、一部公共料金について、低物価政策のもとに値上げを押えられていたものもあるので、円満な産業発展の上において若干の調整はいたし方がないと思うのであります。最近における私鉄運賃値上げのような見地から、この問題の御質問があったと思いますが、私鉄運賃は、昭和八年以来据え置きになったのが、(「二十八年だ」と呼ぶ者あり)そのために、電鉄会社の中には、所要の償却や施設の改善を行うことができず、ひいては公共事業としての使命を全うすることができないものがあったので、やむを得ず値上げを認めるという結果をここに生み出したということになるのであります。この点につきましては、なお詳しいことは、ここに統計の資料を持って参っておりますが、これ以上申し上げると時間が要りますので、この程度にいたしたいと思います。ただ、もっと御要求があれば、詳しいことは説明をする用意をいたしておりますが、今日はこの程度で御了承願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  20. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 経済の基本方策並びに経済見通し等につきましては、総理並びに企画庁長官から詳細な御説明がございましたので、省略さしていただきます。私は三十四年度予算を中心にいたしましていろいろ御質問いただきましたので、それらの点についてお答えしたいと思います。  まず第一は、経済体質改善の問題であります。この体質改善をめぐりまして、あるいは、予算の性格は大企業中心ではないか。農村中小企業に対して非常に冷淡ではないか。あるいは減税の場合においても、低所得者層というものがやはり下積みになって、何ら救済されていないのだ。あるいは二千四百億に上る散布超過の場合においても、やはり利益を受ける者は大企業であって、中小企業その他は依然として救済されないのじゃないか。あるいはまた、金融政策の面においても、どこまでも大資本中心に大口融資はされるが、中小企業はそういう面でも救済されない。いろいろの御意見はございましたが、要約いたしまして聞き取りました感じは、ただいま申し上げるように、経済政策の基本が大資本に集中されていて、低所得者階層なり、あるいは中小企業というものが何ら救済されておらない、こういう点を強く御指摘になったように思うのであります。しかし、申します体質改善、これはいろいろの見方がございます。いろいろの見方がある。これは過去の日本経済の変動の状態等から見まして、あるいは日本経済はその基礎が浅いというような表現をされておった。あるいは弱体だというようなことが言われておった。これは同時に、別の表現をいたしますれば、世界経済競争場裏において、いつもおくれをとる。こういうことに実はなるのであります。特に為替の自由なり、貿易の自由というような方向へ進むといたしますると、国際競争は一そう激化いたすのでございますので、これに耐え得るような体質を持つということを大方針として、いわゆる体質の改善をいたして参りたいと考えております。同時にまた、経済全般といたしまして、大企業中小企業との関連においても、あるいはまた機械産業とその他の産業との関連におきましても、均衡のとれることを私どもは主眼といたしまして、そういう意味においての注意を特にいたして参るつもりでおります。中小企業において、あるいは農林漁業対策等について考えてみましても、農林予算が非常に少い。わずかにふやしたのは五十五億じゃないか、こういうような表現をされましたが、これは必ずしも実態に合っていないのではないか。御承知のように、三十三年度農林予算におきまして六十五億という、いわゆる経済基盤強化。面から、小団地等の土地改良のための助成に使う、その基金として六十五億というものが昨年度も計上されておりますが、本年度もまたこれは基金としてやはりその働きをいたすのでございますから、合せてやはり考えていただきたい。五十五億にあらずして六十五億プラス百二十億の金は、やはりりっぱに働くものだということをお考えを願いたい。あるいはまた、中小企業に対しまして、その資金ワク自身は、昨日も申し上げましたように千五百五十五億に伸びております。さらにまた、国民金融公庫等の三公庫の金利も、わずかではございますが、これは四月になりましたなら引き下げを計画をいたしております。これも必ず喜ばれることでございましょう。また、減税にいたしましても、今回の事業税は、個人事業税において基礎控除十二万円を二十万円に引き上げた。これなどは確かに中小企業の方々からは歓迎されることでございます。このくらいの大幅な減税はないだろうと思います。これらの点、さらにまた金融金利、減税、あるいはまた機構そのものにいたしましても、産業系列等についての指導よろしきを得ますならば、これまた御期待に沿い得ることだ、かように確信をいたしております。  そうしてこの経済体質が、特に御指摘になりますことは、その国内消費を一つ進めるようにし、そうすることが国民生活向上を招来するのだということで、やはり国内消費に特に重点を置いての御意見であるかのように思うのでございますが、もちろん、国内消費もだんだん上げて参りまして、国民生活の向上をはからなければならないのでございますが、今回の体質改善は、どこまでも長期にわたっての健全な体質を招来するということでありまして、いわゆる刺激材料としての予算効果はできるだけ避けたいと思うのでございます。この点は昨年来機会あるごとに申し上げておりますので、政府の所信、いわゆる財政の面から財界に対して強い刺激を与えるということは避ける、同時にまた、経済上昇が非常に急激であるような場合におきましては、これにブレーキの役を政府は買って出るつもりでございます。  そこで、金融の問題について、千四百億の散布超過が一体どうなるのかというお尋ねでございましたが、昨日来、あるいは一昨日も詳細に申し上げておりますので、これは詳細の説明は省略させていただきますが、問題はこの散布超過、これは必ず一応民間金融機関等の手にかかるのでございますが、手にかかったその機会に、これをいわゆる金融等の正常化の方に役立たすように私どもは指導していくことが、われわれの責任だと思いますが、同時にまた、大口金融が多い、これについてどうするのだというお話であり、ひいては民間の機関の自主調整というものは、過去において失敗歴史ではないか。この点でございますが、確かにこの金融機関が大口の融資に、今日もまた過去におきましても非常に力が入っていた、こういう事実は私どもも認めます。このこと自身は、私どもも賛成するところではございません。従いまして、日常の指導なり、あるいは検査等におきまして、一金融機関が大口の貸し出しをしておる、こういうことは、その健全性を維持するゆえんではないといって、あらゆる機会に注意をいたしておるのでございます。しかしながら同時に、わが国経済資本構成の面から見まして、銀行融資に非常に依存しておる状況から見ますと、これが簡単に、非常に短期の間に大口金融というものは解消されるとはどうも考えられない、われわれも一そう努力を注いでいくつもりでございます。  次に、郵便貯金についてのお話がございました。三十三年の郵便貯金は思うように参りませんで、われわれの考えよりもだいぶん、二百五十億ないし三百億近い予想がはずれたように思います。しかし、三十三年度財政投融資計画といたしましては、郵便貯金その他の預託金、その他の財源にはりまして、三十三年度はまかなえるように思います。三十四年度財政投融資計画は、これを一千億に考えておりますが、この程度の貯金はもちろん達成し得るものだと、かように確信をいたしております。  次に、減税の問題につきまして、七百億減税を公約したが、その通りできていないじゃないかという御意見だったと思いますが、私どもは公約をいたしましたというが、税を負担する側から申しますならば、国税であろうが、地方税であろうが、その場合にあまり差はないので、払われる身になって考えまして、総額が七百億円になりました今日、これが公約事項については、忠実にこれを実施しているものだと、かように確信をいたしております。  最後に、低所得者について、その減税を受けない低所得者は、物価、いわゆる運賃その他の値上りによって非常に負担はふえるのじゃないか。ちっとも意を用いられていないじゃないか、こういう御指摘であったと思いますが、これらの点、全国にあるという、二百四十万世帯に上ると言われるいわゆるその低所得者層につきましては、それこそ社会保障の対象といたしまして、あらゆる面で工夫をいたしているのであります。申し上げるまでもなく、生活保護等の引き上げをするとか、あるいは失業対策の稼働日数をふやすとか、あるいは国民年金制度を設ける等々の、いわゆる社会保障制度の推進によって、これが生活向上に資していく、かような考え方でございます。(拍手)    〔国務大臣寺尾豊君登壇拍手
  21. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) 天田議員の御質問は、国家財政の資金源の相当部分を担当している郵便貯金が最近きわめて不振ではないかという御質問であったように思います。このことは、ただいま大蔵大臣からも一応の答弁があったようでありますが、本年四月ころから払い戻しが大幅に増加をいたしたというようなことから、特に第一・四半期に非常に伸びが鈍化いたしました。昨年度第一・四半期におきましては二百三十五億でありましたものが百一億、前年度に比して四三%という、きわめて悪い結果を見ましたので、これは大へんだというところから、九—十月におきましては、大蔵省、また自治庁、その他の関係省庁の協力を得まして、国土建設の郵便貯金の増強の運動を展開いたしますし、また十一月からは、年末始の郵便貯金増強運動を推進をいたしました。また、全国の特定無集配の郵便局等に、非常勤の貯金募集の専務の者を適時に採用する。まあこういう対策を講じたわけでございます。その結果と思いますが、十二月にはこれが回復の兆を見せまして、前年度の十二月に比較をいたしまして、三十億余計に貯金ができた。一月は二十七日までに同じく二十九億の増加を示しておりますから、現在、一月二十七日までに九百三十七億に達したわけでございます。で、これを今の三十三年度の募集予定額の一千百五十億に比較をいたしますと八二%、こういうことになっているわけでございます。従いまして、省といたしましては、今後さらに努力をいたしまして、予定額に達するように強力に推進をしていきたい。ことに三十四年度目標といたしましては、ただいま大蔵大臣も申し上げましたように、一千億になっておりますが、これは利子課税とか、あるいはだんだん一般金融関係の方も若干の利子も下っていくという傾向にありますから、来年度の一千億というものは、この予定には十分達し得るという見通しを持っております。なお大いに努力をいたしまして、郵便貯金というものを大きく成績をあげていきたい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣三浦一雄君登壇拍手
  22. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 農地問題調査会についてのお尋ねでございましたが、この調査会にカムフラージュして補償をやりはせんかというようなお尋ねででございましたが、この調査会は、農地解放に伴いますいろいろな社会問題等も生じておるような実情であります。従いまして、その事態を精細に究明いたしまして、これに対して何らかの措置を必要とするかどうか、これらを中心といたしますことを調査会の性格にいたしておると、御了承を得たいと存じます。  第二には、農業基本法の問題におふれになりましたが、この問題につきましては、世上いろいろ提唱する向きがございます。わが政府におきましては、いまだ農業基本法の制定を打ち出しているわけじゃございません。しかしながら、ここ数年来の農業生産等も非常に進んで参りまして、国民経済上寄与するところがありましたことは申すまでもございませんが、他面、他産業との間の所得の格差が生じて参る。これがつまり昨今非常な論議の対象になって参りました。しかしながら、この問題を解決するにつきましても、すでに皆様御了承の通り、各国もだんだん工夫をこらして、それぞれの措置を講じているのでございますが、日本農業上の地位は、各般の問題について非常な困難な問題があることも皆様御了承の通りであります。従いまして、私たちとしましては、農業生産あるいは水産漁業の生産の過程におきましても、いろいろ検討すべき事態に立ち至っていると考えるのであります。ことに農政の基本政策として、ただいまでは各種の政策をとっておるのでございますけれども、この面におきましても、でこぼこがあり、同時にまた、今後調整しなければならぬ点があるわけであります。これらの問題は、日本のただ単に農業のワク内じゃなくて、その他にも関連するところがございますので、これらの問題を根本的に洗い立てて、そうして生産性の向上さらにまた、他産業との間の均衡のとれた産業として育成したいという目標をもって、今後調査を進めて参りたいということで、農業に関する基本問題の調査会を提唱しているゆえんでございます。  第三につきましては、予算の問題でございますが、本年の予算は、先ほども大蔵大臣からお話がありましたが、生産基盤の強化拡充を中心といたしまして、相当の増額をいたして参りました。なお、諸多の問題につきましては今後とも十分に努力いたしまして、そうして施策の徹底を期したいと考えております。  農業農民との地位の向上につきましては、先ほどもふれました通り、われわれとしましては、農業生産の過程におきましてもこれを改善し、同時にまた、所得の格差を個々に均衡を得させるようにいたしたい、この目標をもって今後取り進めたいと考えます。  第四番目には、養蚕の対策でございましたが、ここしばらくの間、政府は高水準のもとに生糸並びに繭対策をとって参ったのでございます。しかるところ、一昨年来の需給の不均衡、同時にまた、内外の実際の種々の方面におきまして不利な立場になって参りました。さらにまた化学繊維の振興に伴いまして、その圧迫を非常に受けたために、この高水準の価格支持を置くことは、とうてい許されない事情になったのでございまして、これを改訂いたしたのでございます。今後は、養蚕の合理化等の過程におきましても、一貫した施策を講じて参りたい。同時にまた、価格支持政策は、新段階に応じましてこれまた持続するつもりでございまして、ただいま蚕糸業振興審議会等にもお諮りいたしておりまして、今後の対策をきめたい、こう考えております。  酪農の問題につきましては、昨年来需給の均衡を失し、一時乳価等の問題も生じたのでございましたが、昨年、臨機の措置といたしまして、学校給食の拡大、集団消費の増進等につきまして奨励いたした結果、ただいまではだんだん均衡を得て参りまして、一つの落ちつきを見ているような状況でございます。われわれは、この苦い経験に徴しまして、生産、消費並びに流通の過程におきましても、この経験を十分に生かしまして、今後は国、県、酪農地帯における三位一体の総合的な計画を打ち立てまして、同時にまた、過般成立しました酪農振興基金等を十分に活用いたしまして、そして酪農の進展を期したい考えであります。一応落ちつきを見たところの酪農は、この線に沿うならば、必ずや日本農業の改新上、はたまた畑作の改善の措置として、有効なものとなると信ずるのであります。  最後に、農業生産協同体の問題とサービス・センターについての御所見でございましたが、私たちの考えとしましては、やはり自作農を中心としておる建前から、自然発生的には団体等の法人的な組織のもとに営農する向きもございますけれども、私たちの考えとしましては、法人もしくはコルホーズの形態として農業を進めるということにつきましては、なお慎重な検討を加えたいと考えます。機械等のサービス・センターでございますが、現在におきましても、農機具あるいは病虫害防除の機具等の設置につきましては、多年これを奨励して参ったのでございまして、これらを合理化するということについてなお一そうの努力を重ねたいと存じます。かつまた、寒冷地帯、畑地帯につきましては、オイル・トラクターを設置いたしましたり、今後特に重点を置きますところの草地改良等につきましては、この面の施設を拡充するのでございますが、これらを彼此総合しまして、そして成果をあげるように努力いたしたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣高碕達之助君登壇拍手
  23. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 中小企業の産業分野の確立につきまして御回答いたします。  小工業者の分野に大工業者が進出いたしたということにつきましては、その圧迫を免れしめるために、現在のところ、両当事者間の話し合いをつけまして、行政指導によりまして調停あっせんをしておる次第でございますが、これではまだ足らぬと存じまして、十分この点につきましては検討いたしまして、何か法制化いたしたいと存じております。  また、小売店の百貨店の進出による圧迫につきましては、さきに制定いたしました百貨店法の適用によりまして、これは十分善処いたしております。今回提案いたしております小売商店の特別措置法によりまして、現在小売商店を卸売業者の圧迫あるいはメーカーが小売の市場に進出するというその圧迫から守りたい、こういう考えで提出いたしたわけでありまして、この法律の適用によりまして、御期待に沿うように十分進めていきたいと存じております。(拍手)    〔国務大臣青木正君登壇拍手
  24. 青木正

    国務大臣(青木正君) 公明選挙の問題でありますが、言うまでもなく、常にこの問題は不断の努力をせなければならぬことであります。特に今回のごとき選挙期日が予定されておる場合、特に事前運動、あるいはまた事前運動にまぎらわしい事態が起りますことは、従来の例でもありますので、特に私どもこの点について最善の努力をいたしておる次第であります。言うまでもなく、事前運動の取締りにつきましては、取締りの面と同時に、また啓発宣伝の面と、両面から推進しなければなりませんので、昨年の暮に選挙公明化協議会、こういう名前のもとに、最高検と法務省と、それから警察と自治庁と、連絡の協議会を作りまして、自来不断の連絡をとっておるのでありますが、二月の二日にもさらにこの会合を開きまして、各方面に連絡をして取締りに当っていきたい。なお、警察といたしましては、昨年の十一月十五日に管区局長会議を開きまして、また、今年になりまして、一月二十一日にも管区局長会議を開きまして、取締りの遺憾なきを期しておる次第であります。現在までに警告をいたしましたのが四百十六件ほどに達しております。  なおまた、自治庁といたしましては、選挙管理の面からいたしまして、各方面の御協力を願って公明選挙運動を推進するために、二月の二十一日に全国の選挙管理委員長会議を開催いたしまして、詳細に打ち合せをいたして、各方面の連絡をとって十分徹底を期していきたいと、かように考えておる次第であります。(拍手)     —————————————
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 中山福藏君。    〔中山福藏君登壇拍手
  26. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は緑風会を代表いたしまして、十数点にしぼって、関係閣僚の方に質問をしたいと思いますから、簡明率直なる御答弁をわずらわしたいと存じます。  一国が思想的に相対立し、イデオロギー的に平行線的な立場をとりまするときには、国家の不幸、国民の悲劇というものは、これより大なるものはない。御承知の通りに、現在わが国においては二大政党が相対立しておる。しかも、根本的にあくまでも平行線的な過程にあるのであります。この場合において、岸首相は、いかなる手段方法によって、俗にいわゆる公共の広場というものを確立する所存でありますか、これを明確にせられたい。  第二点に関して申し上げますが、現在の日本の革新的行動というものは、人間の価値と尊厳に対する自覚に基いておると私は考えております。明治維新の革命というものは、日本歴史に対する日本人の自覚でありました。ゆえに、明治、大正の過程的な政治行動を現在の社会に当てはめるということは非常に至難の事柄であります。でありますから、ある場合には社会主義の特徴を取り入れて、いわゆる大和の精神にのっとり、そうして斬新にして独創的な政府形態を樹立することが必要ではないかと私は考えております。岸首相はこれを実現する勇気はありませんか。こういう点につきまして政府の御所見を伺っておきたい。  なお、この対立する思想の調和を打ち出すためには、どうしても、百年の大計として、政府自身が教育の最高方針を確定する必要があると存じます。この観点から、勤務評定、道徳教育講習を、従来の方針に基き、あくまでこれを遂行せらるる決意があるかどうか、これを伺っておきたい。  次に、法務大臣にお尋ねいたします。日本にコムソモール式の青年団体があるのではないか。なお、昭和二十六年以来、約十億ドルになんなんとする金が、ソ連、中共、北鮮から革新団体に対して投入されたというが、果してこれが真実でありとすれば、この青年団体に対してその一部が交付されているかどうか、これを伺っておきたい。  次に、運輸大臣に対してお尋ねいたしますが、政府はかねてから、減税を行なって国民生活の安定をはかると言っておる。しかるに、先般来、二、三の私鉄運賃値上げがあったのでありますが、御承知の通りに、日本国民中税金を納めておる者は国民の約三割にすぎない。従って、政府減税は要するにこれら国民中の三割の人を潤おすだけである。この点から推究すると、私鉄運賃値上げは、結果的に見て一般大衆に対する課税ということになるのではないか、こういう点を運輸大臣はどうお考えになるか。  なお、観光行政に対してお尋ねしたいと思いますが、昨年の日本見物に来た外客の数は約十五万二千人、この人々によって日本に落された外貨は二百四十七億円に及んでおる。しかるに、昭和三十四年度予算中における観光行政に関する予算額は、観光補助費として約二億円が計上されておるのであります。これぐらいの金で当方が満足するくらいの外客を誘致しようとするのは、あまりに虫がよすぎはしないか。試みに、イタリアが一昨年外国観光客から獲得した外貨をながめて見ましょう。驚くなかれ、年間約一兆四千四百億円に達しておるのであります。なおまた、フランスは一兆五千四百八十億円を稼いでおる。国家財政の見地からいっても、これはまことに喫緊な問題だと思われる。しかるに、わずか二円ぐらいの補助金を計上しておるということは、はなはだ遺憾にたえないのであります。政府は緊褌一番、歴史的にも、あるいは地理的にも、宗教的にも、あらゆる観光資源を開発して、そうして徹底した宣伝工作を海外に行なって外客を誘致すべきである。この観点よりしても、非常に重なる問題であると思考せられるのであります。よってこの際、政府の観光問題処理に対する所見をただしておきます。  その次に、航空路の開発の問題でありますが、先般ロスに対して一つの日航の航空路が開設せられました。しかるに、デンマークのコペンハーゲン、あるいはモスクワその他の地域に対して、政府はいかなる想定のもとに、いかなる交渉を進捗せしめつつあるか、これを伺っておきたい。  次に外務大臣に対する質問であります。外相御存じの通り、ただいま国連には約八十二カ国がこれに加盟しております。そうして中国の主権者として国民政府を承認しておる。しかるがゆえに、国民政府は五大国の一つとして拒否権を行使する立場にあるのであります。しかるに、この国連に加入しております国の約二十八というものが中共政府を法律的に承認しておる。そういたしますると、赤城官房長官がかつて二つの中国という言葉を用いて中共及び国府から非常な非難を受けましたが、これもすでに国連に入っております二十八カ国というものは二つの中国を認めております。わが日本におきましては、道義的に、政治道徳の上から、また、蒋総統の非常な寛大な戦後の措置に対して感謝の念を払いつつ、国民政府を中国の主権者として認めております。しかしながら、実際に貿易の点から、文化の交流の点から、どういうふうに中共に対すべきかということは、大なる問題になっておる。この道徳と法律の板ばさみになってジレンマに陥って苦しんでいるのは日本であります。この問題をみずからの努力によっていかに脱却せんとするのか。これが明確にせられない限り、沖縄問題などは絶対に解決できない。この点に関して外相並びに首相の御意見を承わっておきたいと存じます。  その次には移民問題でありますが、これはもう詳しいことを申し上げません。明治三十四年に移民法が制定せられて、明治四十年に一部の改正が行われております。しかしながら、これは、ならず者を保護する移民法であったのです。これはそのまま今日まで放置をせられております。承わりますれば、政府はすでに移民法改正について相当の準備をしておられるということでありますが、早急にこれを実施せられなければ立ちおくれになるのではないかと思うのです。ことに、戦後すでに十四年たっている。この間に、南米十カ国中、移民条約を締結せられたのはわずかにボリビア一カ国である、南米の中において。そういうふうなことでは外交上の怠慢であると私は考える。どうか速急にこの問題の解決に当っていただきたい。  次に、朝鮮人の引き揚げ問題であるが、日本在留の朝鮮人で朝鮮に帰りたい者が約七万人いる。南鮮希望者約五千人、北鮮希望者は約六万五千人おります。かつて私どもの同胞は、中共から、外交上の関係なきにかかわらず、赤十字の手を通じて日本に帰って参りました。これらの七万人の念願をかなえるために、赤十字の手を通じ、あるいは他の方法を講じて、できるだけ早目に人道的立場に立って希望地に帰還せしめるということが妥当ではないかと考えるのであります。政府の所見いかがでございますか。  その次に、日本の原爆被災国としての特異的な地理的条件に顧みて、原爆被災問題に対する研究機関日本に設けられることが必要ではありますまいか。御承知の通りに、気象に関する国連機関はジュネーブにあります。ユネスコ関係機関はパリにある。また、民間航空に関する国連機関は、国連の一部としてモントリオールにあるのでありますが、ただいまのところ、世界中で原爆に見舞われたものは日本だけであります。この点において、こういう問題の国連の研究機関日本に設けることを国連本部に申し込んではどうか、これをお伺いする。  それから一九四八年に、世界に対し、アメリカは南極を国際管理のもとに置いてはどうかということを提案しております。この際、日本も南極の地理的条件にかんがみて、国連にこれを提案してはどうか。  次に大蔵大臣にお伺いしますが、国有財産を処分して、社会保障費の一部に充てて、減額分だけの減税を行なったらどんなものか。今、国有財産の量を見てみますと、これは国有財産法第二条に基いているのですが、昭和三十二年末の調べでは、動産、不動産、無体財産権、物権、準物権、あるいは有価証券等の国有財産は二兆二百九十億円ですから、減税をやるやるというかけ声よりも、ほんとうにこういうふうな国有財産の一部を処分して、その処分額に相当する減税を行うということが賢明ではあるまいかと私は考える。こういう点はいかがでございましょうか。  それから高碕通産大臣にお尋ねします。大体、政府は移動大使とかなんとかいうものを海外に派遣してたくさんの旅費を使わせておる。こんなことは愚の骨頂だとかねがね私は考えております。なぜならば、将来の外貨を獲得するには、外国にできない品物を売り出すということ以外にはないと思う。たとえば、スイスの時計をごらんなさい。あるいはドイツの機械器具をごらんなさい。これは外国人がドイツに行きスイスに行って、自分の国にないから買う。日本の移動大使は一体何を見ておいでになったか私は知りませんが、何らの効果はあがっていない。だから将来の日本において商取引の面で外貨を獲得しようとするならば、外国にない品物を売り出さなければだめなんです。それには竹材製品—竹というものが一番いいと思っておる。これはヨーロッパにはないのです、竹というものは。また、南洋、シナにはありますが、質が悪い。日本の竹細工というものは、昨年度において二十二億四千六百七十八万円出しておる。一昨年度は十八億円なんです。(笑声)こういう点でお笑いになる諸君は先見の明がないからです。でありますから、外国にない品物を生産して売り出すという処置を講じなければならないと信ずる。  それからアルキレーションの完成はできておるかどうか、こういう問題をお尋ねしておきます。これは時間がありませんから項目だけ申し上げておきます。  厚生大臣に対してお尋ねしますが、原水爆その他、核兵器の研究によって被害を受けた者に対する社会保障制度の確立、あるいはこれに関する法律というものの規定がない。外国にもほとんどない模様でありますが、これに対して政府はいかなる考えを持っておられるか。  次に労働大臣に対してお尋ねします。産業上オートメーション・システムから生まれ出るところの失業者の救済対策をどうするか。これを明らかにせられたい。  なお、科学技術庁長官に対してお尋ねしますが、原子力平和利用の研究、たとえば原子炉の設置に対して、無批判的に国民の一部で反対しておる。これは研究の結果というものに危険がないということを政府が明らかにせないからではないか。政府が十分に広報活動をやらなければ、どちらに原子炉を設置しようと思っても平和利用をやろうとしてもだめだ。こういう広報活動が少しもないと私は見ている。これを政府に伺いたい。  次に農林大臣に対してお伺いしますが、政府は米の統制撤廃をする気持があるかどうか。今日やみ値というものは公定価格より、やみの方が安い。こういうことでは、私は、四年も豊作が続いたのに、米の統制をべんべんだらりとやっておられるということは不都合じゃないかと思う。今、食管特別会計の職員の数は二万七千二百七十二人、これに対して月給というものは年間五十二億円余も払われておる。これらの人々に遠慮していつまでも米の統制があるということは、どう考えても納得ができないことである。この点について政府の御所見を伺いたい。    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  27. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 二大政党対立下において共通の広場をどういうところに求むべきかという点でありますが、私は、やはり二大政党とも、国会政治を守り、真の民主政治を確立するということにおいては、共通の信念の上に立っておるわけでありまして、他の外交政策やあるいは個々の具体的の政策について意見を異にするというのが今日の状況であると思います。従って、あくまでもこの基礎的な見地に立って、われわれは、国会政治を守る上にどういう態度をとるべきかということは、二大政党の間に隔意なく話し合っていきたいと考えております。  この勤務評定と道徳教育の問題に関してでありますが、すでにこの問題については、われわれが方針を明らかにしておるように、勤務評定の問題は、現在相当に各府県において理解され、行われておりまして、この方針は、これを貫いていくつもりであります。また、教育の場において道徳教育が必要であることは、これは言うを待たないものでありまして、従って、これまた日本の文教政策の基礎としてこれを行なっていく方針でございます。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  28. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) コムソモール式の青年同盟のお尋ねでございましたが、現在共産主義を信奉しておると認められる青年学生団体といたしましては、三つあるようでございます。一つは、日本民主青年同盟、略称して民青同と申します。それから全日本学生自治会総連合、いわゆる全学連でございます。最後に日本社会主義学生同盟、いわゆる社学同でございます。このうちの民青同は、いろいろの組織に勤務しております労働者諸君が組織しておるものであり、あとの二つは学生の組織体でございます。この学生の組織体である全学連と社学同の現在の主流派の党員は、日本共産党中央部の指導にあきたらず、日本共産党を目して、右翼ひより見主義的と非難して、反党的な活動をいたしておるわけでございます。民青同、全学連、社学同に対しまして、共産圏から財政援助が行われているかどうかということにつきましては、遺憾ながら、現在のところ、これを明らかにする資料がないので、遺憾でございますが、御了承願いたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣永野護君登壇拍手
  29. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。私鉄運賃値上げの問題についての御質問でございました。私は、私鉄運賃値上げしなければならないような事情の生じましたことを非常に遺憾に存じております。できれば、何とかして運賃の値上げはしないで、その対策を講じたいと苦慮したのであります。しかし、遺憾ながら、今日の都市交通の実情を見ますると、このままで放任して置けない程度の混雑を招来しておるのであります。なお、その上に、最近の都市集中、これは人口移動の態勢から申しまして、これ以上混雑を来たしますと、ほとんど婦女子なんぞは、ひとり歩きができないような悲惨な状態ができはしないかと思いましたので、    〔議長退席、副議長着席〕 とりあえず、それの対策を実現しなければならぬと感じましたのと、もう一つには、その会社の内容をしさいに検討いたしますると、当然しなければならない保安施設が非常に不十分でありまして、こまかいことは他日また機会があると思いますから、そのときに譲りますが、少くも保安施設が非常に不十分になっておるという事実を発見いたしまして、監督官庁といたしましては、それに対する何らかの措置を指示しなければならぬような状態になったのであります。しかるところ、各会社の内容は、このサービスの向上と安全運転の確保をするに必要とする施設を行う資力がないのであります。従いまして、私は非常に遺憾なこととは思いましたけれども、ある程度の、最小限度の値上げを認めまして、そのかわり、その値上げしたものは、今の二つの点、すなわち混雑の緩和と安全運転の確保に集中してその値上げ率を使いますると、大衆に対して御迷惑はかけまするけれども、その大衆の御迷惑のかかった部分はすぐ大衆にお返しができるような運営ができる、こう確信いたしましたので、値上げを許しますとともに、その値上げから生じました増収分の使途につきましては十分監督をいたすように、具体的にその対策を今考えておるのであります。非常に遺憾な事実でございますけれども、やむを得ずこれを了承いたしましたことを御了承願いたいのであります。  次に、観光行政についてどういうふうな基本方針を持っておるかという御質問でございましたが、この観光行政は、御指摘になるまでもなく、実は私が運輸省に入りましてから、最も重要なる施策といたしまして研究を続けて参ったのであります。従いまして、具体的にかなりいろいろ研究も続けておりますけれども、今日くだくだしくそのこまかい内容を御説明申し上げる適当な機会じゃないと存じまするから、他日に譲りますけれども、ごく大ざっぱに申しますと、今日十三万人の観光客が大体参っており、六千五百万ドルくらいの収入をあげておるのでありまして、これは人数から申しましても、また収益の率から申しましても、非常に少いのであります。この点は御指摘の通りであります。少くも私は、人数を三十万人にふやし、収入を二億ドルぐらいを目標にして、その対策を立てたいと考えております。決して、二億円の補助金をもらって、それで晏如としておるわけではございません。国際観光振興のための特殊法人を作りたいと存じておりまして、他日皆様にその御審議をお願いする運びになると考えております。  それから航空路線の開設についてどういうふうな考えを持っているかというような御質問でございました。これもごく簡単に申しますると、私は世界一周航路を開くことを終局の目標といたしております。で、そのために、まず第一に、太平洋線を拡充強化したいと思います。その次に、東南アジアの路線の整備をはかりまして、南回りのヨーロッパ線を早期開発したいと考えております。その次は、北極経由のヨーロッパ路線を計画しておりまして、これらをつなぎ合せまして世界一周航路を開設するのが私の目標であります。実は、この世界一周航路を開設いたします一番いい方法は、ソ連と相互乗り入れ協定をすることなのであります。従いまして、昨年来、ソ連とその交渉を継続しておりますけれども、その乗り入れ条件が、ソ連の方は、東京に入るということを希望しておりまするのに、日本の飛行機はハバロフスクまでしか入れないと申しまするので、これを相互その首都の乗り入れを認めてくれるようにという交渉をしておりますけれども、まだその目的を達しておりません。従いまして、ただいま申し上げました世界一周航路を開きますために一番いい方法の実現の見通しは今日のところ立っておりません。従いまして、太平洋航路と、東南アジア南回りの線と、北極ルートと、この三つを漸次完備して参りたいと、こう思っております。そのためにジェット機は四機をすでに契約いたしまして、明年の五月以降入手ができると思います。またその実務に当っておりまする日航会社に対しましては、明年後も引き続き五億円の政府出資を行うほか、二十三億円の社債の政府保証の措置を講ずることにしております。なお、羽田及び伊丹の国際空港の整備につきましても専心努力を続けておりまして、遠からざるうちに世界的の空港として恥かしくない設備にこれを仕上げるつもりでございます。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) お答えをいたします。  中共との貿易関係につきましては、私が一昨日外交方針演説の際に申しましたように、今後貿易の増進につきましては、できるだけ政府におきましても十分な努力を払って参りたい、こう存じております。  移民法の改正につきましては、ただいま御指摘のありましたように古い法律でありまして、現状に必ずしも適しておりません。従いまして、戦後移民開始後六年経っておりまして、戦後の事情等によりまして、移民送出等の方法につきましても若干いろいろの変化がございます。それに対応して移民の監督と助成というようなものを十分確立する上において検討をいたした上で、移民法の改正をいたしたいと思いまして、ただいま検討中でございます。  在日朝鮮人の北鮮への送還の問題は、居住権の自由の問題でもあり、また人道上の問題でもありますので、政府はただいま適当な公正妥当な方法によって、これを処置いたして参りたいと考えておりますので、最近の機会に発表をいたすことができるかと思っております。  日本に国連の機構としての風水害、地震、原水爆障害に関する調査研究所を常置するような提案をしたらというような御質問であったかと思いますが、現在地震につきましては国連の世界気象機関、原水爆につきましては保健機構並びに国連科学委員会等において、これが研究調査をやっております。ただいま直ちに日本としてこれが中心機関日本に置くような提案をする考え方は持っておりません。  南極を国際管理にすることは、ただいま御指摘のありましたように、アメリカが提案しまして、その後、イギリス、ソ連、フランス、日本を含めました十二カ国で、ただいま南極を国際管理にする会議を開きますための予備交渉をいたしております。    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  31. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 国有財産の随分は、国が行政運用上必要なもの以外の財産をただいま処分いたしております。三十四年度予算では六十五億円、これが一般会計の財源になっておるのでございまして、この種の財源を特定の経費の財源に充ててはどうかという御意見でございますが、今日の実情から私ども賛成いたしかねます。(拍手)    〔国務大臣高碕達之助君登壇拍手
  32. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 日本の特産品を輸出に向けるということは、まことにごもっともでございまして、特に竹の製品等につきましては、これはすでに本年二十五億円の輸出をいたしたいと思います。その八〇%はアメリカに参っておりますが、これをさらにヨーロッパに拡張いたしまして、それがために十分の海外の調査員を派遣いたしたいと思っております。  原子力の平和利用、これは科学技術庁の長官としてお答えいたしますが、原子力の平和利用の必要なことにつきまして、これは日本原子力研究所及び国立の試験研究機関等を今田におきまして開放いたして、できるだけ多数の方々に利用してもらい、見てもらう、それで知識の普及をはかる以外に、原子力委員会におきましては、いろいろな種類の刊行物を発行いたしまして、それ以外に原子力平和利用につきまして国民を啓発いたしたいと存じております。(拍手)    〔国務大臣伊能繁次郎君登壇拍手
  33. 伊能繁次郎

    国務大臣(伊能繁次郎君) 航空機用の燃料のアルキレーションについてのお尋ねでありますが、昭和三十二年四月に、東亜燃料の和歌山の工場でアルキレーションの生産施設が一基完成いたしまして、現在では日産二百キロを生産いたしております。そしてこれによりまして、防衛庁の航空機用の燃料の自給自足はもちろんのこと、なお一般の航空機用の燃料にも使用される状態でございます。(拍手)    〔国務大臣坂田道太君登壇拍手
  34. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えいたします。  原水爆の被害による放射能障害の予防及び治療の研究につきましては、広島、長崎両市に、昭和二十三年以来、国立予防衛生研究所の支所でございます原子爆弾影響研究所を設置して、ABCCとともに、現地における調査研究に当っているほか、閣議決定によりまして、厚生省に原爆被害対策に関する調査研究連絡協議会を設けまして、わが国における本問題に関する調査研究の総合的連絡並びにその能率的促進をはかっております。さらに、本研究は原子力の平和利用に伴う被害対策とも共通するところでございますので、科学技術庁所管の放射線医学総合研究所も、ともどもに研究に当っているところであります。また放射能問題は、わが国のみならず、世界各国が大いに関心を寄せておるところでございまして、さきに国連におきまして特に科学委員会を設置し、世界の権威者を集めまして研究調査の連絡を行い、昨年この問題につきまして一応の結論を見たのでございます。さらに国連におきまして、この委員会を継続する意図を持っておると聞いておりまするので、御質問の趣旨のように、この委員会の本部を唯一の原爆被害国たる日本に置くことは、大いに意義あることと存じますので、外務当局とも連絡をいたしまして、将来検討いたして参りたいと存じておる次第でございます。  なお原子爆弾被害者のうち、被爆に起因する疾病または負傷により医療を必要とする方々につきましては、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律により、全額国費による医療を行なっておるところでございます。しかしながら、いわゆる原爆病が他の一般疾病と異なり治療に長期間を要する等の事情によりまして、経済的理由によって医療を受けることが困難な方々があることは承知しております。これにつきましては、被爆者の方々の生活の実態になお不明の点がありますので、実態調査を行いました上、補償制度の検討に着手いたしたいと考えております。さしあたりの対策といたしましては、世帯更生資金貸付制度の活用等をはかっております。またお年玉付郵便はがき制度による寄付金の配分を受けることができる団体のうちに、被爆者の援護を行う団体も含まれることとなり、広島、長崎県の被爆者対策協議会は配分を受ける団体として指定されておりまするので、これらの団体を通じまして同寄付金が被爆者の生活援護等に充てられることになっております。(拍手)    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  35. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 科学技術の進歩に伴いまして、産業界にオートメーション・システムがだんだん取り入れられて参りまして、やはり世界のどこかでそういう進歩的なことを取り入れますと、経済の国際競争力を維持いたしますためには、どこの国でもそういうふうにやって参らなければならないと思いますが、そこで、わが国でもオートメーション・システムを取り入れております工場等を労働省においても調査いたしておりますが、一時的には確かにそういうことによって、その職場を離れる者が出て参ります。しかし、全体として見ますと、そのオートメーション・システムを運営していくために、他の産業が他の機械設備等を増設いたして参っております。それは、そういうふうにして、だんだん国際競争力を増してコスト・ダウンが行われますと、その生産を増強して参る。そういうことで補充的にそういうものが配置転換をされているというのが今日の実情のようであります。しかし、私どもといたしましては、やはり今申しましたように、一時的には、どうしてもそこで職場を離れる者が出て参ります。そういうことで、昨日もここで申し上げました雇用懇話会の、実際に人を雇用する面の人々及び公企体等の経営者等も集めまして、そういう場合の職場における人員の配置転換、あるはそいの転換をするための職業補導、そういうようなことに努めているのでありまして、オートメーション・システムを採用することによって特に失業問題が激化いたさないように努めておりますが、今後もそのようにいたして参るつもりでおります。(拍手)    〔国務大臣三浦一雄君登壇拍手
  36. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 現行の食糧管理制度によりまして、消費者に対しましては安定した価格をもって一定量の食糧を確保することとし、他面、生産者に対しましては、これまた価格支持政策によりまして、その安定的な面に寄与しているわけでございまして、現在の国民生活の安定の面からも、国民経済全般の運営上から見ましても、現行の食管制度はなお存続すべきものと考えております。もっとも、制度の運営につきましては、改善をいたして参りたいと、かように存じております。(拍手)     —————————————
  37. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 柴谷要君。    〔柴谷要君登壇拍手
  38. 柴谷要

    ○柴谷要君 私は日本社会党を代表して、総理の施政演説に関し、労働問題を主として、ほか二、三の問題につき、総理及び関係大臣に質問をいたすものであります。  今日、国民の間には深刻な将来への不安がみなぎっております。その原因は、第一に、低賃金で高い利潤の蓄積を行なってきた日本経済が、昨年以来の不況で行き詰まりを示したことにあるのであります。第二に、国民の不満を押えつけるため、民主政治を弊履のごとく捨て、反動政治を進めていることにあります。その象徴は、警職法であり、また、勤務評定に見られるごとく、権力による教育への不当な干渉であります。第三には、政府の労働組合弾圧対策であります。その現われは、ILO条約を依然として批准しない態度に明確に現われているのであります。第四に、私鉄運賃値上げに見られるごとく、消費物価値上げによる国民生活の不安であります。第五に、膨大な低額所得者生活困窮者に対する、政府の依然たる無為無策であります。すなわち、戦後における医療と公衆衛生の進歩が、死亡率の激減と平均寿命の伸長をもたらし、他面において生産年令人口の急増と老齢人口の漸増を招来しておるのであります。低所得層の増大と雇用の依然たる停滞と相待って、まさに民族の危機が迫っていると申しても決して過言ではないのであります。しかも、この傾向がとりわけ若い世代に著しくおおいかぶさっているところに、問題の深刻さがはっきりと浮び上っていると思うのであります。青少年の自殺率が世界第一位を占めている事実を顧みますときに、日本のあすの姿の困難をしみじみと予感させるものがあります。もし、政府が無為にしてこのまま過ごすならば、われわれ民族の将来はまことに暗たんたるものがあるのであります。わが国土には、わが民族の長い世代をかけた生命の流れが脈々と続いております。われわれは、その民族の理性と英知を結集し、この困難を打開しなければならないと思うのであります。今日の不況下における、日本の、暗い、じめじめした進路を転換する必要に迫られているのであります。岸総理は、果して、かかる問題の根本的解決への意欲があるのかどうか、国民の不安を解消する政見があるのか、お伺いをいたしたいのであります。  独占資本保守党政府は、今日まで資本の蓄積と合理化を進め、経済成長させることによって、そのうちに雇用がふえ、国民生活が向上すると約束したのであります。しかしながら、保守党政府の約束は一片のほごとして葬り去られ、実現したことがないのであります。先日、労働者と対立的立場にある日経連から発表された、わが国労働経済の、現況の賃金問題の中でさえも、このことをはっきりと示しておるのであります。すなわち、三十二年五月の金融引き締めを転機に、賃金の上昇かげんは三%と弱り、特に定期給与は七月をピークとして横ばいとなっているのであります。さらに、実質賃金指数で見ますならば、三十三年一月より八月までの平均は、三十一年度平均あるいは三十二年度平均よりも下っているということを明らかにいたしておるのであります。他方では生産性は七割上昇したということであります。また、投資過剰のため、日本経済は三割の操短を実施している現状であります。このことは、労働者の搾取が進み、利潤の蓄積が労働者の犠牲においてなされていることは明らかであります。(拍手)  大資本は、不況下においてさえも三千億の利潤をあげたといわれておるのであります。これに対し、鐘紡や日東紡は、賃下げや定期昇給のストップがなされ、日本水素で賃下げが行われ、石原産業で下請労働者の賃下げが行われ、日産化学では福利厚生関係費の引き下げなど、たくさんの賃金低下が起っているのであります。不況のしわ寄せは、特に弱い層にひどく現われているのでありまして、三十三年度経済白書ですら、名目賃金が上昇しなかった労働者も多数あったことと推定しているのであります。そのうち、低賃金層においては、食糧、光熱費等の生活必需品の価格が一そう大きく騰貴したことにより、実質賃金も低下したと述べざるを得なかったのであります。このように、不況のしわ寄せを労働者に押しつける一方、資本家は、賃上げの定期昇給へのすりかえ、職務給の導入などによって、賃金闘争を排除し、賃金決定の一切の権利を資本の手中におさめ、資本経営権を固め、職制による労働者支配を一そう強めようとしているのであります。かかる日本経済の現状と労働者の低賃金という状態の中で、日経連は、輸出第一主義をその基本方針として発表したのであります。この道は、かつて日本資本主義がいつか来た道ではなかったでありましょうか。日本においては、国民生活の安定と向上は、憲法に規定された、健康で明るい文化生活を作り上げることこそ第一のものであり、今日直ちに取りかからなければならぬ仕事であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)今日、資本主義は、全体的に技術革新の時代に入っております。これは、過剰投資と過剰生産から抜け出す道は、雇用の増大と購買力の増強によるほかはないと思うのであります。従いまして、政府は、日本経済発展させる見地からも、また、労働者に健康で明るい生活を享受させる見地からも、今春一斉に行われる労働者の賃上げ要求を認め、それを援助し、国民生活に対する不安を除き、明るい希望を持たせるお考えをお持ちになっておられるか、総理にお伺いをいたしたいのであります。  第二に、政府の反動的な政治に反省を求めたいのであります。地方教育委員会が公選制から任命制へと移り、文部大臣の承認を得た教育長が置かれ、教育に対する政府統制の一里塚が築かれて以来、教育における逆コースは、あらしのように日本全土をおおっております。さらに政府は、教員に対し勤務評定を実施することによって、教育の中央集権化をはかり、戦前、日本が苦杯をなめた、国家権力による、国家目的としての教育支配をたくらんだのであります。われわれは、このような勤務評定を実施することは、教師の自発的創造的な教育の熱意を冷却せしめ、はたまた、反動教育を助長し、戦後日本に育った民主教育を根底から破壊するという見地に立って、勤務評定に反対をし、その撤廃を政府に要求してきたのであります。頑迷な政府は、われらの言に耳を傾けず、全国各地において警官隊を動員し、その強行をはかったのであります。警官に囲まれ、権力に包囲された中において実施された勤務評定が、果して民主的教育の根幹でありましょうか。権力に裏打ちされた今日の岸内閣の教育行政は、まさに大東亜共栄圏、すなわち戦前の教育行政の姿であります。このときに当り、神奈川県教育委員会と教員組合が自主的に勤務評定について話し合い、一つの結論を出したことは、高く評価されなければならないと思うのであります。にもかかわらず、文部省が神奈川県にみられる勤評の方式を認めず、あくまで勤務評定を中央集権の道具にすべく圧力を加えていることは、教育に対する政治干渉であり、直ちに手を引いて、教育に従事する神奈川住民の自主的決定にまかすべきであると考えるが、これに対する見解を伺いたいのであります。  さらに、今回の文教予算をとってみれば、日教組弾圧対策のための予算だけは思い切り増額されていることが特徴的であります。すなわち、日教組と第一線で折衝する地方教育委員会の教育長の待遇を改善するための給与費補助金が今年より新たに計上され、教育長を完全に政府の手に握ろうとしていることは、見のがすことのできない事実であります。また、教職員の勤務評定の強行に伴い、論功行賞として校長に対する管理職手当の増額を行なったり、さらに、小中学校長を海外旅行させるための補助金制度などを新設していることも、政府の狡猾な日教組弾圧対策であります。加えて、戦前の視学を拡充し、あるいは修身科復活を意味する道徳教育の実施などのために、三十三年度予算の数倍の費用を考えていることは、政府の反動的な意図を明らかに物語っているものであります。民主的な教育が行われているといわれるイギリスでは、教育は、本来、民間の、あるいは自発的な仕事であると考え、そのため長い間、国家は教育には一ペニーの金も出さず、一方何らの干渉も加えないで来ておるのでありまして、一九四四年の教育法によって初めて文部大臣ができ、確かに中央集権の色彩を強めたけれども、中央集権の意味と度合いは、とうていわが国と同日に論ずべきものではないのであります。集権は主として教育財政とか教育施設とかに行われ、教育内容とか方法とかには全くの無干渉なのであります。この際、政府の猛省を促したいと思うのであります。  第三に、政府の労働組合運動に対する認識の程度を問題にしたいのであります。労働組合の諸君政府機関に対する陳情請願に参りますと、必らずといってよいほど警察官の動員があるのであります。労働組合と経営者との正当な争議にさえも警察官がかけつける。組合運動のあるところ警察官ありというのが、日本の労働組合運動の常識となっているのであります。これこそ、政府の労働運動に対する認識の程度を示すものでありまして、労働組合運動に対する弾圧政策の赤裸々な表現であります。(拍手)このような政府の態度がいかに国際的な不信を買っているか、深く反省する必要があるのであります。  世界に醜態をさらけ出したのはILO条約批准に対する政府方針であります。ジュネーブにおいて開かれたILO条約理事会並びに結社の自由委員会は、日本に関する件を審議し、全逓、国鉄等の団体交渉再開等をめぐる係争中の公共企業体及び国営企業における労働組合役員の解雇問題について、「解雇された役員を再選した労働組合は違法であるとする日本政府の態度は、結社の自由の、最も必要な、本質的な権利そのものに介入するものである」と勧告したのであります。このことは、労働関係に幾多の不評と糾弾を受けてきた日本政府が、今日再び国際社会で重大な警告を与えられたことを意味するものであります。    〔副議長退席、議長着席〕  このような世界注視の中で、政府与党の一部には、現在の方針を変える必要はないと言明してみたり、あるいはまた、全逓労働組合の解雇三役を代えない限り、ILO第八十七号条約は批准できないという態度を堅持していることは、世界の侮べつの的になることは明らかでありましょう。政府は、労働問題懇談会の結論を尊重し、それを待って、ということを、再三にわたり披瀝してきたのでありまするが、去る一月十九日提案された石井照久委員の草案によれば、形式的にILO条約条文に違反する公労法四条三項を削除することを草案に盛ったのみで、内容的には四条三項の内容も保持し、刑罰規定、関係法親の強化を行わせるような提案を行っているのであります。批准後も実質的に批准前と同様な状態に置くという毒素が含まれているのであります。このようなごまかしの態度は、すなわち、条約批准を国際的な不評判の中で行わざるを得なくなり、そして実質上は批准前の状態と何ら変りのない状態に置こうとするものであり。条約批准に対する冒涜ではないでありましょうか。この態度は、同じくILOの強制労働禁止の条約が提示されました際に、日本政府が、「非合法の争議行為に従事した者に刑事罰を加えてよい」という、強制労働禁止の除外例の修正案を提案して、国際的な不興を買い、全員の反対にあって否決されるという醜態を思い出させるのであります。わが国の国際信用を高める上にも、ぜひとも必要な批准の手続を政府は直ちにとり、その精神に沿った国内法規の改正を正しく行うべきであると思うが、労働大臣の御所見を伺いたいのであります。  第四に、われわれの生活と密接な関係にある私鉄運賃値上げについてお伺いをいたしたいのであります。各社の営業報告書を調べますと、いずれも総収入は毎年五%—一〇%程度増加していることが明らかであります。この間、卸売物価はおおむね横ばいの状態を示しているのでありまして、各社の利益は逐年増加しているところであります。こうした利益は、減価償却費、退職給与引当金、価格変動準備金、修繕費などの中に操作をされ、社内蓄積となっているのであります。また、経済活動の必然的な運命である独占への強化と、利潤をより一そう求める資本活動の要求によって、百貨店その他の傍系投資は年々拡大し、ほぼ資本金と同額程度にまで発展しているのであります。こう見て参りますと、設備投資拡張改善のための設備資金は、現に毎期、社内から大幅に発生をしているのであります。また、融資信用力も大きいと考えられますので、運賃値上げを行わなくとも、このように、資金調達は十分なはずでありまして、私鉄大手各社とも、高い収入と社内蓄積の手前、運賃値上げの理由に赤字といういわゆる殺し文句を使用することができなかったのは、その値上げ申請のための理由書にも明らかなところであります。それを、あえて私鉄運賃値上げに踏み切った政府見解を明らかにしていただきたいのであります。また、輸送力増強という設備改善理由を、値上げの理由にいたしておりまするが、設備費を一般利用者に負担させることは、きわめて不当なことといわなければなりません。運賃のみならず、電気料金、ガス料金等は、国民大衆の生活に直接重大な影響を与えるものであります。そもそも今日の経済政策こそ低物価政策が緊要と思考いたしますのに、その基幹ともいうべき私鉄運賃値上げは、われわれの絶対に承認しがたいところであります。今後、運賃を初め独占的公共事業における料金の最終的決定こそ、国民の代表機関である国会の議決を要するよう、制度的改正の措置をとるよう要求するとともに、政府見解を伺いたいのであります。  最後に、生活の日蔭に埋もれた人々への政府の救済対策を要求するものであります。昨年二月、総理府が行なった国民生活に関する世論調査によれば、自分の生活の現状について大体満足しているという者は、全体のわずか一六%で、満足といえない者は八二%を占めているのであります。この八二%は、全部経済的貧困によると言っては言い過ぎであろうが、少くともその相当部分は該当するはずであります。厚生白書によれば、低い消費階層世帯は二百四十万世帯、そのうち被保護人員は百六十五万人と述べられているのであります。これらの生活困窮者に対して、政府はいかなる救済措置をとっているのか。生活保護制度は、これらの人々に対し、最低限度の生活を保障するものであるが、その保護基準は、実に情ないスズメの涙ほどの援助額であります。保護基準について、生活保護法第三条には、「健康で文化的な生活水準を維持することができる」保護額と規定されているのであります。
  39. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間でございます。
  40. 柴谷要

    ○柴谷要君(続) この法律は、現在単なる空文となっているのであります。実際に支給されている保護費の基準は、東京都の場合、標準五人世帯で九千七十一円にすぎないのであります。わずか三・一%ぐらいの基準引き上げでは、全くお話にならないのであります。貧乏追放は総理の別荘建築ではありません。下積みに泣くこれら国民に、あたたかい思いやりこそが真の政治であると思うのであります。また、失業対策費を見ますならば、失業対策の吸収人員は、前年並みの二十五万人であります。
  41. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間でございます。
  42. 柴谷要

    ○柴谷要君(続) 失業情勢の悪化に対し、政府は希望の飯を与えず、絶望の飯を押しつけているのであります。さらに、失業保険特別会計が五百四十億円の黒字を出している折、国庫負担率を三分の一から四分の一に引き下げをはかるという、社会福祉政策に明らかに逆行する対策を示し、失業保険制度の未適用者三百三十五万人に、何らあたたかい手を差し伸べないのであります。これらの未適用者の強制加入を促進する措置を直ちに講ずべきでありましょう。低所得者層に対する社会政策の明らかなサボタージュであると考えるが、駐留軍労務者の離職対策とあわせて、これに対する政府見解を問うものであります。
  43. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) すでに時間を超過いたしております。
  44. 柴谷要

    ○柴谷要君(続) また、去る衆議院選挙には、岸内閣並びに自民党の一枚看板は国民年金制度であったはずであります。ところが、注目の国民年金費は、厚生省原案の半額に削り、老齢、母子、身体障害の無醵出三年金だけが、本年七月より発足することになったのでありますが、年金額は、七十歳以上の老齢者に対し月額千円、十六歳未満の児童を有する母子世帯に月額千円という、全くの涙金程度であります。国民待望の公約を破棄した岸総理国民大衆に率直に詫びるべきでありましょう。
  45. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間を超過しております。
  46. 柴谷要

    ○柴谷要君(続) 今後、無醵出年金は年々増額していくでありましょう。さすれば、年金制度本来の姿である醵出制度の発足はいつになるのか、政府見解を伺いたいのであります。(拍手)  以上、私が述べました五項目にわたる国民不安を取り除くため、政府の方途を示していただきたいのであります。
  47. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間が超過しております。
  48. 柴谷要

    ○柴谷要君(続) 岸総理は勇断をもって国民に対し信を問うことこそ、民主政治の本道であると考えます。以上をもって私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  49. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  現在いろいろ社会的に不安があり、これを除くことが政治目標であることは言うを待ちません。言うまでもなく、一面において民主政治をわれわれは確立し、これを完成していく、これに対して、反民主的な動きや、あるいは国民の多数の平和的な生活をいろいろな暴力その他のことでもって脅かすというような事態をなくして、真の明るい民主政治を作り上げるということが、政治の本体であることは言うをまちません。と同時に、われわれの生活を安定し、その内容を向上していかなければならぬ。これには、先ほど来申し上げておるように、常に安定した基礎における経済成長と繁栄を考えると同時に、いろいろ御指摘になりました低所得層生活をいかにして維持し、いかにしてこれに対する施策をやるか、いわゆる社会政策の実施がこれに伴っていかなければならぬことは言うを待ちません。  物価問題については、言うまでもなく、経済の安定した状況における成長発展を考え、また、国民生活の安定と向上を考える上において、われわれが低物価政策を堅持すべきことも、これは当然であると思います。  以下、詳しいことにつきましては各関係大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  50. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ILO条約八十七号につきましては、お話のように、結社の自由委員会から十一月に意見が出されました。あれを読んでみますと、昨年の九月の、労働大臣の諮問機関である労働問題懇談会の説とほとんど同じものでありまして、別に変ったことはありません。そこで、労使及び学識経験者の権威ある方々に集まっていただいております労働問題懇談会の結論をまって政府の態度を決定するという方針は、従来しばしば申し上げておった通りであります。今日もその答申をまって善処いたしたい。よそから騒がれて政府が批准をするとかしないとかいうことではございませんで、権威ある懇談会の意見を尊重して、そうして岸内閣の独自の見解に立った労働政策から割り出して、われわれは態度を決定いたすつもりでおります。(拍手)  失業対策につきましてただいまお話がございました。しばしば私は申し上げておりますように、決して雇用、失業を楽観しておるわけではありませんが、政府もしばしば申し上げておりますように、来年度予算におきましては、財政投資及び公共事業等も大幅に拡大いたしておりますので、その方面への吸収も考えられますし、本年は昨年度に比べて約八千人の雇用量をふやしておるような次第でありますし、また、事務費それから資材費等も大幅に増額をいたしまして、自治体に失対事業をやっていただくのにできるだけ都合のいいようにというおもんぱかりでやっておりますので、失業対策事業については大体この辺で御心配をかけないで済むではないか、こういうふうに考えております。(拍手)   国務大臣橋本龍伍君登壇拍手
  51. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) お答えをいたします。  御承知のように、現行の地方教育行政は、府県、市町村の教育委員会が責任をもって行う建前になっておりまして、これに対して文部省は指導助言を行うこととされておるのでありまして、戦前のような中央集権の教育行政をやっておるわけではないのであります。今後も、心いたしまして、現行制度の趣旨を生かして参りたいと考えております。  なお、勤務評定の問題につきましては、教員の良識と国民の理解とによりまして、大部分の府県においては実施されつつあるのでありまして、政府といたしましては、既定の方針を堅持いたしまして円満に実施されるようにいたしたいと考えております。なお、先般来問題になっておりまするいわゆる神奈川方式というものにつきましては、その文面によりますると、単なる教師の自己反省と、不平、不満、希望、要求等の集録でありまして、人事管理の責任者が職員の勤務実績について評価するという勤務評定の建前から申しますると、これを勤務評定とは申しがたいのでありまして、既定方針に従ってやって参りたいと考えております。  なお、予算についてのお話がございましたが、これは、明年度の文教予算は、すし詰め教室解消などの義務教育の充実、科学技術教育の振興、また、貧困な児童生徒に対する就学助成等に、ごらんになってもわかりまするように、特に力を入れて予算を盛っておるわけでありまして、国民のひとしく要望しておりまする事項を重点として、今年度に比して約百七十億円くらいの増額をいたしておる次第でございまして、日教組弾圧といったような予算とはおよそ縁遠いのでございます。どうか内容についてなお十分御検討を願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣永野護君登壇拍手
  52. 永野護

    国務大臣(永野護君) 私鉄運賃値上げ問題につきましてお答え申し上げます。  さきほども申しましたように、私鉄運賃値上げしなければならんということは、非常に不本意なことでございまして、何とかしてこれを食い止めたいと思ったのでありますけれども、先ほども申しましたように、今日の都市交通の実情は、とうてい放任することを得ない状態になっておりまするので、その対策といたしてこれを許可したのでございます。ただいま柴谷議員のお説の中に、各私鉄会社は年々五%ないし一〇%の利益をあげておるじゃないか、だから、十分、自分の独力で、自力でその対策ができるはずだ、その証拠には、各私鉄会社が運賃の値上げの申請書の中に、赤字という殺し文句を使っておらないではないかというお説があったのでありますが、これは柴谷さんの何か誤解があるのじゃないかと思います。と申しますることは、各私鉄会社は、結論的に申しまして、残らず赤字であります。そうしてその申請書の中にも、赤字だからということを全部うたっております。従いまして、申請書の中に赤字ということをうたっておらないではないかということは、何かの誤解だと思います。現に、各私鉄は、昭和二十八年以来、乗客の混雑することに対する対策といたしましていろいろな設備を拡充いたしました結果、固定資産が約倍にふえております。これに対する利息の負担が非常なものであります。また、人件費が非常に上って参っております。そのほか、電力費の増額なんかもありまして、収入は上っておりますが、しかしながら支出のほうがその収入よりはもっと多いのであります。従いまして、私鉄は、各私鉄ともみんな赤字であります。この点は、私ども運輸当局の主張ばかりではございません。いわゆる学識経験者を網羅しておりまする運輸審議会の答申案に詳しく出ております。私は、この運賃値上げの問題は、まことに遺憾なことだけれども、それを認めざるを得ない。これからの問題は、その大衆の負担においてできた運賃の値上げの結果得た収入を、大衆の利益のためにどうして使わせるかということにわれわれの努力の中心を置かなければならぬと、こう考えておるのであります。従いまして、その点につきましては、運賃の値上げを認めますとともに、各私鉄会社に厳重な通告を出しております。そうして、そのあげました増収部分を、先ほど申しましたサービスの向上と安全運転の確保ということにのみ限定して使うように指導して参りたいと存じております。  なお、こういう私鉄の運賃のようなものは、国会の決議によってきめることが適当ではないかというようなお説がございましたが、御承知の通り、私鉄は非常にたくさんありまして、大小さまざまでございます。従いまして、そのローカルな小さいところまで、一々国会にその運賃の問題をかけるということは、実情に即しないと思いまするし、また、諸外国いずれの国でも、これを国会の議決事項にしたところはないのございまして、今のところ、私は、この私鉄運賃の問題を国会にかけるようなことを考えてはおりません。(拍手)    〔国務大臣坂田道太君登壇拍手
  53. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えいたします。  第一の御質問は、二百四十万世帯と発表されておる生活困窮者に対する政府の救済策はどうかというような御質問でございますが、昭和三十一年に実施いたしました厚生行政基礎調査によりますと、低所得水準世帯は、生活保護を受けておる世帯を含めまして二百四十万世帯と推定されております。従いまして、生活保護を受けておる約五十八万世帯を除きますと、一応約百八十二万世帯の低所得層が存在すると考えられるのでございます。これらの方に対しましては、それぞれの必要により、失業対策事業その他の労働政策及び身体障害者福祉法、児童福祉法、世帯更生資金の貸付、母子福祉資金の貸付等、各種の社会福祉政策によりまして、これらの階層に対する施策が行われておるほか、来年度より実施いたします国民年金制度及び先般改正されました新国民健康保険制度等によりまして、総合的に低所得者対策を講じておるわけでございます。もしこれらの世帯が生活保護法の基準により測定した最低生活を営めないときは、理由のいかんを問わず、生活保護法を適用する所存でございます。  それから、第二点といたしましては、生活保護制度における保護基準の引き上げ三・一%では、いまだ最低生活の保障も不可能ではないかという御質問でございます。現行保護基準は、御承知の通り昭和三十二年四月に改訂実施されまして、その後、米価の補正、児童加算の増額等を行なって、現在に至っているものでございますが、その後におきます消費物価の変動等によりまして、現行基準の内容となっております各品目の価格が相当高騰を示しておりますので、これを最近の物価により補正することといたしまして、その結果、生活扶助一級地標準五人世帯の基準額も、現行八千八百七十一円を九千一百四十六円と、三・一%引き上げることといたした次第でございます。なお、保護基準の内容を改善し、その充実をはかりますことは望ましいことでございますし、努力しなければならないものと考えられるのでございますが、一般国民生活の水準とも関係がございますので、あわせて検討を進めていく所存でございます。元来、生活保護基準は、国民の最低生活を保障するものでございますので、国民の一般生活水準等を十分勘案いたしまして、飲食物費につきましては、日本人標準栄養要求量による必要カロリーが充足できるよう確保いたし、その他の経費につきましても、最低必要な品目を見込んでおりますので、最低限の生活は営めるものと考えられます。  最後に、国民年金制度についてのお尋ねだったと思いますが、御承知のように、国民年金制度のうちの無醵出制年金すなわち援護年金は、昭和三十四年十一月分から四カ月分を翌年の昭和三十五年三月に支給が開始されるのでありますが、醵出年金は、昭和三十五年十月一日から被保険者の届出の受付を開始いたしまして、翌三十六年四月一日から保険料の徴収を開始する所存でございます。醵出制年金の実施時期をこのようにいたしましたのは、あらかじめ国民に対しまして十分制度の趣旨の周知徹底をはかりまして、保険料の徴収機構その他必要な事務機構を整備するなどの期間を見込まなければならず、また、昭和三十五年度中に国民皆保険計画が達成されますので、その段階におきまして醵出制の事務を開始することが、第一線機関でありまする市町村におきまして好都合であると考えられるのでございますが、昭和三十六年四月一日における保険料の徴収開始とともに、国民年金制度が全面的に実施されることになるわけでございます。  以上御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  54. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたしますが、特に私に対するお尋ねはなかったかと思います。先ほど来、総理あるいは文部大臣、労働大臣、厚生大臣等がお答えいたしました諸政策予算につきまして、十分考慮いたしておることをお答えいたします。(拍手
  55. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 倉石労働大臣から答弁の補足を求められましたので、これを許します。    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  56. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 駐留軍関係が落ちておりました。駐留軍関係労務者につきましては、昭和三十四年度においても引き続いて相当数の離職者が出る見込みであります。そこで、政府といたしましては、駐留軍関係離職者等臨時措置法に基きまして、総理府が中心になりまして、中央駐留軍関係離職者等対策協議会というものがありまして、これを中心に、御承知のように、離職者の企業組合などを特に保護育成をいたす、あるいはまた、職業訓練の実施、それから職業紹介活動の強化、御承知のように、追浜等におきましても、現場にこの紹介所を設けまして、特にわざわざ出て来られないで、そこでお世話するような施設をいたしましたり、また、返還施設を、民間と話し合って、民間にこれを譲り受けるようにいたしまして、引き続いてそこの離職者をその同じ業に服せしめるように仕事を誘致いたす、そういうことも今やっております。その他、なお、公共事業及び失業対策事業の実施等の諸施策を総合的にいたしまして、駐留軍という特別な業務に服しておりました人たちの離職者に万遺憾ないように善処いたして参りたいと思っております。(拍手)     —————————————
  57. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 辻武寿君。    〔辻武寿君登壇拍手
  58. 辻武寿

    ○辻武寿君 私は、一昨日行われました岸総理施政方針に対して、他の問題はおいて、特に政府の移民政策及び文教政策について質問いたしたいと思います。  最初に、移民政策について外務大臣にお尋ねします。わが国が海外発展に力を入れなければならないことは、人口問題解決の上からも、経済の向上の上からも、かつまた、諸外国より日本民族の信用を回復する上からも、必要欠くべからざることであって、今さら私の言を待たないところであります。特に、第二次大戦に敗れて、朝鮮、台湾、樺太等を失った日本において、この狭隘な国土に九千万の同胞がひしめき合って生活していることを考えますときに、重要なる国策として、今こそ政府が積極的な移民政策を推進しなければならないときでありますが、さっぱり熱が入っておらないように見受けられることは、遺憾しごくと言わなければなりません。  戦後、占領期間中しばらく海外移住が中断されたのはやむを得ないことでありますが、昭和二十七年より再開された政府の移民政策を見ると、まことに寒心にたえません。政府の海外移民に対する怠慢については、先ほど中山議員から、また昨日も高野議員から指摘されたのでありますが、今、国家予算に対する移住予算の比率について、戦前と戦後を比較するならば、昭和六年から七、八年の緊縮予算のときにおいてすら、拓務省が取った国家予算に占める移住予算割合は平均〇・五%であり、軍事費を除けば一%に近いのであります。昭和十五、六年には〇・七%から〇・九%の移住予算を支出しているのであります。しかるに、最も移民政策に力を入れなければならない現在はどうかといえば、昭和三十一年には〇・〇七%、三十二年度が〇・〇七三%、三十三年度が〇・〇七八%、三十四年度は〇・〇八%であります。わずかにスズメの涙程度の上昇線をたどってはいるが、戦前の移住予算と比較すれば、たった十分の一にすぎないのであります。イタリアの年間移住予算は四十三億リラであって、これはイタリアの商工省の年間予算四十六億リラにほぼ匹敵する予算であります。日本でも外務省に移住局があるが、移住に関しては、農林省も関係すれば労働省も関係するというように、六つの省が関係しており、はなはだ有機的関連を欠いた機構になっているのであります。外務大臣は、安保条約問題、日中貿易問題でお忙しいことはお察しいたしますが、移民省でも設けるくらいの熱意をもって、移民政策の立案に努力すべきであると思うが、お考えをはっきりさしていただきたいと思います。  また、戦前は海外移住者に対して、国家より渡航費の補助があったのに、戦後は貸付制に変っている。また、現在は戦前と比べて、在外小学校費、教育施設費、医療補助費、産業施設費等の各種の補助が非常に少いのでありますが、外相はもっと大幅に予算を獲得して、海外移住に本腰を入れるべきであると思うが、これに対する外相の率直なる見解をお伺いいたします。  従来、日本の移民政策は、主として農村の次男坊、三男坊対策として取り扱われてきておりますが、これは大きな誤まりであります。日本民族が諸外国から信頼を得るためには、単なる二、三男対策の移民であってはならないのであります。少くとも高等学校以上の教養と優秀な技術を身につけた青年を選抜して、中南米に限らず、東南アジア諸国の開発に向けて、新たな移民の道を開いていく技術移民こそ、政府に課せられた目下の急務であるはずであります。このようにするならば、日本人は指導者として尊敬と信頼を受け、外貨獲得にも役立ち、あわせて人口過剰も緩和して、一挙三得にもなるのであるが、藤山外相は、移民政策根本方針をどこに置かれるのか、明快かつ具体的に御答弁をお願いいたします。  次に、教育及び青少年の問題について総理並びに文部大臣にお尋ねいたします。  まず、教職員の勤務評定問題について岸総理にお聞きいたします。今や、日本国内は、この勤評問題をめぐって、まさにまっ二つに両断され、単に教育界のみならず、おとなは言うまでもなく、いたいけな児童までもその渦中に巻き込まれて、いつ果てるとも知れない血みどろな闘争が、政府と日教組との間に続けられているのであります。まことに、日本の教育の危機、今日ほど大なるときはないと、心ある国民の異口同音に嘆いているところであります。御承知の通り、勤務評定は、愛媛県における教員給与の問題に端を発し、その後にわかに、政府が道徳教育と並んで重要な文教政策の一つとして取り上げたものでありますが、日教組はこれに対して、勤評は日教組の分断作戦であり、究極的に、教育の中央集権化、逆コースをねらう反動的文教政策の一環なりとして、全国五十万の組織の全力をあげて反対しているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この陰惨な勤評反対闘争の副産物として、昨年来、数限りないいまわしい事件が、全国の至るところに起きていることは御承知の通りであります。教育委員にも、教員にも、このために一命を落した者もいる。高知や沼田市における不祥事件は、いまだに国民の耳新しいことである。私の友人の子供が言うのに、私たちの先生が、近ごろまるでヒステリーである、ときどき留守にしては帰ってきて怒ってばかりいると、両親に向って話したという。政府と日教組の対立のみにとどまらず、父兄と教員、父兄対父兄、教職員同士を対立せしめ、あまつさえ罪なき児童をして教員に対する信頼を失わしめ、日本の教育界を泥沼のごとき混乱に陥れたその根本原因は、政府側の、全く価値のない勤務評定を無理に強行したからであります。それが、日教組対策であるにせよ、またないにせよ、政府が勤務評定の強行によってもたらした教育上のマイナスは、筆舌に尽せぬほど大きいのであり、最高の行政責任者たる岸総理の失政であり、その責任総理にあると考えるものであります。(拍手、「神の声だぞ」と呼ぶ者あり)私は勤務評定そのものが何でもかでも間違いだというのではない。あのようなときに、あれほど強い反対があるのを押し切ってまで強行するのは、総理としてなすべきことでないし、この点の反省が欠けているとしか思えないのでありますが、この点、総理の御見解を明快に承わりたいと存じます。  次に、文相にお尋ねしたいのでありますが、かりに、勤務評定を実施するとするならば、現行の方式を中止して、校長や教育委員の主観によって左右されない、客観的事実を基礎にした条件のみで行われるべきではないかということであります。私もかつて教職に経験を持った一人でありますが、はたから見れば、りっぱな先生でありながら、校長と意見が対立したために、不意転をさせられたり、昇給を延期させられたりした事例を、たくさんこの目で見、このからだでも体験してきました。またその反対に、将棋を指したり、囲碁を囲んだり、親しい関係であったりすれば、自然に評価も甘くなりがちになるのは、人情のしからしむるところであります。勤評を実施するとすれば、出勤簿による出欠状況とか、特技の有無であるとか、客観的条件のみで行われるべきでありますが、これに対する文相の御見解をお聞きしたいと思います。また、ここに不思議なことは、さきに自民党文教政策機関車とうたわれ、勤務評定強行に絶大なる確信を表明して、まっこうから日教組と対立した灘尾前文相が、一たび自民党内に派閥抗争が起るやいなや、世論を二分したほどの大事な勤評問題を、さっさと放り出して、実に簡単に文部大臣を辞職してしまったことであります。あれほど勤評に情熱を傾け、あれほど教育の中立性を主張した前文相の無責任な行動に対して、国民は心の底から怒りに燃えているのである。「大衆は愚にして賢なり」という言葉がありますが、勤務評定というワクを作って、帳面にはつけなくても、今、国民から最もきびしい勤務評定を受けているのは、前文相の灘尾さんと、その辞職を認めた総理であります。(「その通りだ」と呼ぶ者もあり)日教組の幹部も同じであります。一体、文部大臣の地位ということについて、岸総理はいかにお考えになっておられるか。今、国民の間では、文部大臣はただ総理の伴食大臣で、教育に対する何らの抱負も主張もないが、困ったものである、という歎声を漏らしている者がたくさんいることを、総理は御存じなのでしょうか。いやしくも文部大臣ともなれば、国家の教育行政の総元締めであるから、教育に対する相当なる深いうんちくと確信を持たなければならないはずであります。文相が一たび大確信をもって、その教育理想を推進していこうとすれば、他の大臣はかわることはあっても、文部大臣だけは簡単にかわれるわけがないのであります。しかるに岸内閣になってから、他の大臣はもちろんのこと、文部大臣も目まぐるしくかわっている。しかも、やれアメリカ式だ、やれ英国式だと、教育の方法に変化はあっても、文相がかわったために新しい線が出てきたということは、ほとんど聞かないのであります。そして登場してくる大臣は、きのうまで、ほとんど教育に無関係であったような方が平気で出てくる。それだから伴食大臣などという言葉国民の間から出てくるのであります。橋本文相は、つい、この間まで厚生大臣であられた方であるが、文相に就任される以上は、教育に対する深い見識と抱負とをお持ちになっておられたからだと思いますが、特に教育及び教育行政の中立性の確保についての抱負と見識を明らかにされなければ、国民は納得しないと思うのであります。岸総理は、しばしば教育の重要性を口にしながら、このように重大な一文部大臣を簡単に更迭し、平気でおられるのは、その主張するところと大いに矛盾すると思われるのでありますが、いかなる考えのもとに更迭されるのか、明快に御見解を披瀝していただきたいと思います。  最後に、青少年問題について首相並びに橋本文相にお尋ねいたします。岸内閣は、施政方針、また所信表明を行うたびごとに、青少年問題にふれて、次代を背負う若人に期待と激励を寄せておられるのであるが、これらの青少年をはぐくむ具体的な政策が足りないのではないか。それが証拠には、青少年の犯罪が近年増加してきている事実によっても明らかであります。しかも、一般青少年よりも学生層に比較的に犯罪が多いということは何を物語るか。一つには、これは青少年に希望を持たせる力強い指導理念が欠けているからにほかならないのであります。また一方、巷には、エログロ映画や、いまわしい雑誌が横行して、絶えず青年を誘惑し、犯罪に誘い込む条件がそろい過ぎているのであります。国会においても、非行少年の凶悪犯罪が激増する折から、少年法の適用年令を満二十才から十八才に繰り下げることの可否が論議されつつある状態でありますが、首相には、このエログロ文化を追放するための方策を持っておられるか、その点を一つお伺いいたします。次に、文相にお尋ねいたしますが、現在、これら青少年対策の一つとして、道徳教育が声高らかに推進されつつありますが、道徳教育は、道徳を知らない者には必要でありますが、もし文相が、青少年の犯罪を道徳教育によって減少させ得ると考えられるならば、それは、あたかも胃ガンや肺結核を、ばんそうこうで治そうとするにひとしいものであります。(拍手)文相は、今の道徳教育の効果をどのように考えておられますか。よいか悪いかということくらいは一年生でも知っております。今の世の中は末法といいまして、知らないで犯罪を犯しているのではない。知っていながら犯罪を犯す、つまり無智ではなくて邪智が多いのである。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)それゆえに、道徳を知らしめて青少年の犯罪をなくしていこうなどという考えでは、百年河清を待つにひとしいと断ぜざるを得ないのであります。しからば、いかなる方法をとるべきであるか。「礼学先にはせて真道後に開く」と、昔から聖人が示されている通り、礼学、すなわち道徳を知って、かつ、どうにもならない時代に、真実の力を持つ指導理念でもって導けいうことなのでのる。フランスに、ある高官が行かれましたときに、あなたの国でも道徳教育を推進しておりますかと聞かれたら、フランスの方が、私の国ではそんなものは必要ありませんと答えられたそうです。私の友達は、フランスには宗教があるからだと、こういうふうに言っておられました。日本には昔からすぐれた仏教があります。今や一方には、仏教によって立つ青少年の力によって、仏教の正邪勝劣さえもはっきりされつつあります。一方において青少年による犯罪が増加して、国民や為政者を苦しめている折から、一方には、真実の仏教の極意によって、世間の鼻つまみ者であった大悪人が極善人に一変する仏教の力によって、落ちぶれた国家の再建に営々と努力しつつある二十万の男女青年の団結の姿を、お望みならば、いつでも文相にお見せすることができます。宗教とは根本の教えということであります。真の力ある宗教によって初めて道徳が生きてくるのでありますが、教育基本法第九条第一項にある宗教の社会的地位の尊重ということにかんがみて、文相の御所見を承わりたいと存じます。  以上、質問は簡単にいたしましたから、御答弁の方は、どうぞごゆっくり御明快にお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  59. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  移民政策の重要性につきましては私も全然同感であります。なお、移民政策についての具体的の問題につきましては、外務大臣よりお答えを申し上げます。  次に、勤評問題及び文教政策に対する根本の御質問であります。私は、一国の政治におきまして、いろいろのものがもちろん大事でありますが、特に文教政策については最も重要なものと考えております。従いまして、この勤評問題の昨年来の経過につきましても、非常な強い関心をもってこの問題に取り組んでおるわけでありますが、勤評問題そのものは、私はやはり、この教員諸君の教育に関する熱意と、そうして子供に対する一切の努力というものが、できるだけ正しく判定されて、それが教員の人事行政の上に表わされることが、教育能率をあげることであり、教育を振興する上に望ましいことだと思っております。こういう意味において、勤評はぜひこれを実施したい。しかし、実施するにつきましては、この問題はもちろん、今日の教育の根本から申しまして、市町村や地方の教育委員会においてきめる問題でありますから、この方針によって地方の教育委員会がそれぞれ勤評の問題を実施することを、われわれは要望して参っておるのであります。しかして、この問題に関しましては、いろいろな問題—不祥事件もありますし、また御指摘のように遺憾の点もずいぶんあったと思いますが、漸次、教員諸君の良識と国民の協力によりまして、大部分の府県においてはこれが実施を現在見ております。私は、さらにこれがよく理解されて、残りの府県におきましても実行されることを望んでおります。もちろん、勤評制度の内容等につきましては、私は、実施した上におけるところの実績にかんがみて、これを一つきめたらその通りのものを永久に行うということじゃありませんが、勤評の内容等につきましては、実績にかんがみてさらに善処していきたいと思います。こういう意味に考えておりますが、さらに、文相の更迭の問題のお話がありました。私は、前文相は御承知のような事情でやめましたことにつきましては、きわめて遺憾に考え、私も、文部大臣の辞表の提出につきましても極力慰留したのでありますけれども、ついに私の力及ばずやめたことは、大へん残念でございます。しかし、後任の文相を選任するに当りましては、私としては、文教政策の非常な重要性にかんがみて、最も適材適所であると考えるところの橋本文相を任命したわけであります。  最後に、青年問題についてのお話でありましたが、言うまでもなく、この青年のいろいろな犯罪その他の非行の事実が多いということはきわめて重大な問題でありまして、私は、こういうふうな事態が生じていることは、青少年の生活環境というものを明朗化し、それの犯罪の温床になるような事態をなくしていかなければいかぬと思います。いろいろ今おあげになりましたような青少年の犯罪等を刺激するような生活環境をなくする。ただ単に、学校教育だけでこれが救えるものでもなければ、あるいは家庭の教育だけでもいけない。社会全体がやはりそういう環境におけることに全力をあげる必要がある。そうして青年に明るい希望と将来に対する一つの自分の運命を開いていこうという自覚と考えを持つような環境を作っていくということが、何よりも必要であると、かように思います。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 第一に、移民政策に対する基本的な考えについてのことだと思いますが、日本外交におきまして、過剰な人口に悩んでおるという国、また人口過少のためにその経済発展期待し得ない国が、相互に融通をし合う、移住をして参りますことは、いわゆる世界の平和にも貢献することでありまして、その意味におきまして、移住問題等につきましても、かねて国連の総会等において、日本代表部では移住の問題について発言をいたしているようなわけでございます。そうした根本的な平和外交の趣旨に立ちまして、日本の移民問題政策についてわれわれは策を進めておるわけであります。  しこうして、国内の問題につきましては、終戦後六年たっております。終戦後の諸般の事情のために、必ずしも戦前と同じような状態で移民送出ということをやるわけにも参らぬ点も多々ございますし、また財政上の理由のためにその予算等も必ずしも十分でないことは、私どもも認めております。従って、移住の国内における機構等の整備に伴いまして、移民法等の制定もいたし、なお十分これが予算措置等もして参りまして、海外移民の数においても質においても改善をして参りたいと考えております。同時に、ただいまお話のありましたように、今日、移民問題というものは、単にわが国人口の問題を解決するばかりでなく、東南アジアあるいは南米等におきます開発計画に順応いたしまして、経済、技術協力をやりますときに、技術移民という問題がやはり考えられるのでありまして、お話のありましたように、高等学校以上の程度の方々の、将来かの地に移りまして、永住の上で、それらの方がその地の経済開発等に協力していくという立場は、私どもも十分奨励して参らなければならぬと考えております。従やまして、そういう点についても、今後移民政策内容の一つとして、十分に取り上げて研究をして参りたいと思っております。ただいまのところ、むろん、予算措置等が必ずしも十分でございませんけれども、われわれとしては、今申し上げましたような方針のもとに、今後逐年予算増加をはかりまして、できるだけ移民政策を充実をして参りたいと、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣橋本龍伍君登壇拍手
  61. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) お答え申し上げます。  青少年教育の目標につきましては、先ほども申し上げました通り、新しい時代を理解しつつ、わが国歴史と伝統とを正しく認識して、日本人たるの自覚と誇りとを持つ国民の育成を期することにあるということを、かたく信じておるものであります。この青少年教育の問題につきましては、社会教育の問題でありまするとか、いろいろな面があると存じまするけれども、一番大事なのは、何と申しましても、やはり小学校、中学校の義務教育の課程を通じまして、先生もこういうつもりで教育をし、子供もこういうつもりで教育を受けるということが、非常に大切なことだと考えておるのであります。諸般のいろいろな面について力を用いなければなりませんけれども、やはり義務教育の内容という点を一番重視をいたしまして、今回も新しい教科課程の改革を考えておる次第であります。  お話のございましたエログロ文化の取締りといったような問題、これはもう、もちろん出版物、映画等は、それに現われて参りまするエログロ的傾向を取り締るというようなことは厳重にやってもらいたいと思うのでありますが、文部省といたしましても、青少年に有益なすぐれた図書であるとか映画であるとか等が提供せられまして、それによって自然に不良有害なものが駆逐されるように積極的な方策を進めて参りたいと考えております。なお、現在のいろいろ青少年犯罪等に関連をいたしまして、道徳教育の問題についてお話がございましたが、もちろん、国民の道義心の向上をはかって犯罪の横行を防止するためには、取締り自身も大切でございまするし、また教育、民生その他各般の施策を講ぜなければならぬのでございまして、ただ、私は、今日の道徳教育という問題を、当面の青少年犯罪の防止というような見地からだけ判断するのは間違いじゃないかと、実は考えております。教育自体は本来道徳的なものでなければなりませんので、算術を教わるにも読み方を教わるにも、やはりその間において道徳を心がけながら教育は行われるわけでありますが、それと同時に、道徳それ自身についての教育というものの必要なことは当然でございまして、これは単に当面の犯罪防止というようなことだけでなしに、教育の基本といたしまして、教育の全般について、道徳的な見地を考慮し、また、道徳的な課程を設けまして、幼少の時から道徳的な情操を高めますることは、やはり今日におきまする青少年犯罪の防止というような点についても根本になるべきものだと考えております。  なお、勤務評定の方式についてのお話がございました。勤務評定自体の問題については、総理からもすでにお話がございましたから申しませんが、方式の問題について、出欠といったような客観的な標準だけでやったらどうだというお話がございましたけれども、教員のみならず、公務員の人事は、教職員の能力、勤務実績に基いて行われるべきものでございまするので、やはり勤務評定を行うに当りましても、ただ機械的に、出欠状態がいいとか悪いとかということだけでなしに、やはりその能力、勤務実績というものが、できるだけ公正に評価のできるような内容のものであることが必要でございまして、この見地からいたしまして、現在各都府県で実施をいたしておりまするものは、こういう趣旨で練っておられるのでありますが、大体これがやはり実情に即した妥当なものであると考えております。(拍手
  62. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十二分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、中央厚生保険審査会委員の任命に関する件  一、日程第一国務大臣演説に関する件(第三日)