○
天田勝正君 私は
日本社会党を代表、して、
岸内閣の
施政方針について、
岸総理並びに
関係閣僚に対し、若干の質疑を行いたいと思うのであります。
まず第一に指摘しなければなりませんことは、一昨日の
施政方針演説を待つまでもなく、
岸内閣成立以来の実績は、
わが国民主化の
方向をすべて逆転させるために力を注いで参つたという点であります。顧みれば、戦後
わが国の
民主化は三つの
方向から行われて参
つたのであります。すなわち、その第一は、
農村において
農地解放を断行することによって、
農村の
封建性の打破を目ざしたのであります。その第二は、
労働組合法等の制定によりまして、従来労使の関係は、あたかも大名と家来の関係に置かれておりましたものを、これを対等の立場に
引き上げたのであります。その第三は、
独占禁止法を軸といたしまして、いわゆる
経済の
民主化がはかられたのであります。以上三つの
民主化の
方向は、いずれも
社会主義以前の問題でありまして、今日、
資本主義下においてもこの
民主化は擁護されなければならないと思うのであります。しかるに、
岸内閣においては、これらが全く逆転せしめられつつあるのであります。すなわち、
農村に対しては、一昨年来、旧
地主勢力の圧力に屈して、
自民党内に
解放農地調査委員会が設けられ、いかにして
保守党のスポンサーを満足させるかを研究して参られたのであります。ついに
今期国会、
総理府に農地補償問題
審議会なるものを設けることによって、
農村民主化に挑戦して参つたと思われるのであります。名目は
審議会の設置でありまするが、要するに
農村民主化逆転の口火を切つたものにほかならないと思うのであります。(
拍手)さらに、
経済の
民主化については、
歴代保存党政府によって、
独占禁止法の
なしくずし改悪がなされて参
つたのでありますが、
岸内閣においては、その総仕上げとして、去る第三十
国会にその
改悪案を本院に提出して参りました。これは
警職法とともに流産いたしたことは、
お互い慶賀にたえないところであります。これまた、大
資本の
経済活動を援助する道にほかなりません。次に、
労働者に対しては、さすがに、真正面から
労働組合法の改悪を企図するならば、国内は、かりに押し切つたといたしましても、国際的にはILOからの非難や、ソシアル・ダンピングの悪名を着て、貿易に支障を来たすということをおそれたのでありましょう。側面からこれを圧迫するために、
言論、集会、
団体行動を規制するために、いわゆる
警職法の改悪をもくろんだのであると思うのであります。私は、以上の事実から、
わが国民主化の道をすべて逆転せしめる
内閣であると断ぜざるを得ないのであります。そこで、
総理にまず伺
つておきたいことは、かかる
反動化の道を依然として強行する意思であるかどうかをはっきりしていただきたいと思うのであります。(
拍手)
次に、
経済政策の
基本方針であります。このことは、すでに
政府は、その
施政方針演説によって明らかにしたと言われるでありましょう。ところが、
経済政策の基礎となるべき一昨日の
経済企画庁長官の
経済分析は、一体何を言っているか、さつぱりわからないのであります。さらに、昨日のわが
党佐多君の
質問に対する答弁に至っては、ますますわかりません。新聞は、満場失笑とこれを評したのであります。満場失笑の
経済分析では、今後の
質問にはなはだ迷惑を感ずるのでありまして、私は、きょうこれからの私の
質問に対しては、事、
経済に関しては、すべて要求されなくても
経済企画庁長官が答弁に立たれたいことをまず要求いたしておきます。また、
総理及び
国務大臣の
演説は、一応ソツのない言葉をつづ
つております。しかし、その具体的なことというならば、これまた一向変りばえのしない、従来
通りの
方針と聞き取れるのであります。また、きれいな言葉をつづりましても、それだけでは
国民は納得できないのであります。今日まで続いておりますこの
不況の事態に対しましても、今まで
政府は、これは
不況ではない、
経済の停滞であるなどという珍妙なる答弁によってごまかして参
つたのであります。およそ、人類の歴史は、
経済の
発展の歴史ともいえるのであり、
経済と
赤ん坊は、成長するのが当然であります。しかるに、三つになつた
赤ん坊が、歩けもしない、はうこともできないという
状態を見て、これは病気ではなくして、成長の停滞なりなどという医者があったならば、その医者は信用することができないのであります。そこで私が伺いたい点は、今回の
経済の
基本方針が従来と
違つた点、どこがどう違
つているか、この点をば明示していただきたいと思うのであります。これは
総理、
経済企画庁長官、それぞれ答弁を願いたいと存じます。
次に、戦後
わが国の
経済の復興と成長は、西独と並んで世界の驚異の的となっております。かく相なりましたことは、
国民生活水準の
引き上げと、
中小企業、
農林漁業の
近代化を犠牲にして、大
企業の
設備投資に重点を置いたからにほかなりません。しかし、大多数を占める
勤労国民の
購買力の
引き上げ、つまり、
国内市場の拡大をなおざりにいたしまして、
生産設備の拡大を続行した結果、一昨年以来、設備過剰、生産過剰を来たしたのであります。これに加うるに、
佐多議員の指摘されました
通り、
経済外交の全面的な失敗が輸出の減退の大きな要因となりまして、
不況をさらに深刻化せしめたのであります。この
不況回復について、
政府の
経済見通しは、相変らずあなたまかせであり、
アメリカと西欧の
景気好転をよりどころにいたしております。ところが、われわれの見るところ、
政府の期待とは全く別でありまして、
アメリカは、
赤字財政下において
財政支出の
増加をてこといたしまして、辛うじて好転の兆が見えるだけであります。また、その回復は鈍く、不安定と思われます。
日本商品の
輸入制限が緩和される
見通しはどこにもないのであります。さらに、
西欧各国においては、
欧州経済圏貿易の拡大、ことに
共同市場加盟六カ国の
相互依存は強化されまして、
わが国の輸出困難の条件がますます加わると思うのであります。
後進地域に対しては、英、米、西独、中国、ソ連、これらの諸国は積極的に
経済援助に乗り出してきておるのでありますが、
わが国は、この
経済援助の立ちおくれによって、この面からの輸出の期待はできないと思うのであります。以上の結論として、
政府の
好転期待論は、まさに砂上の楼閣の運命にあると判断されるのでありますが、
総理並びに
世耕長官から、
政府の分析の
確実性をこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
次に、
総理並びに
大蔵大臣は、ともに
経済の成長と
体質改善を強調されました。このことは、
経済政策の
転換の
必要性だけでは認められたものと思うのであります。そこで
大蔵大臣に伺いたい点は、
政府提出の
予算案は、一昨日のあなたの説明にありますように、今年度に比べまして、
一般会計において九百八十億円の
増加、
財政投融資計画において一千二百三億円の
増加となるのでありまして、この
膨張予算案は、
経済成長と雇用の
増加のために膨張したのではなくて、大
企業を
不況から救い、さらに大
企業の
発展を擁護する
予算であると言っても過言でないのであります。この
方針は、一昨年、
岸内閣が成立以来、引き続いて貫かれたのであ
つて、何ら
経済政策の
転換、ひいては
政府の強調する
経済の
体質改善とは無縁のものであると思うのであります。
政府の期待する
不況克服は、
政府みずからが認めておりますように、
財政支出の
散布超過二千億円を唯一のよりどころとしていると見られるのであります。要するに、
大全業向けに
財政資金を大量供給することをもって
体質改善と称しているのではないか。
大蔵大臣の所見を承わ
つておきたいと思うのであります。
さらに、以上指摘したごとく、
設備投資偏重政策は、やがて再び投資過剰、輸入過剰を招き、
金融引き締めと
不況の再現なしとしないのでありますけれども、これに対する対策はいかにお考えでありますか。およそ国家が
企業に投資する場合、その効果として
生産力の
発展が予定され、また、それに対応する
購買力の培養が行われてこそ、初めて
経済の
発展が
一般大衆にも潤うのであります。このことは何も
社会主義の理論ではなくて、今日、
資本主義経済においても、このような
合理性を持たない限り
発展はあり得ないことを、この機会に指摘しておきたいと思うのであります。
次に、
金融政策についてでありますが、すでに申し述べたように、
明年度予算が
散布超過になると予測しているのでありますから、これに対する金融をいかに調整するかは重大な課題であります。
佐藤大蔵大臣は、金融の
正常化を強調され、適切な調整に遺憾なきを期すると言われたのでありますが、その手段として、投資の
適正化は
民間経済の
自主的調整にまかせるということでありますが、
民間経済の
自主的調整がすべて失敗の連続であり、
貸付競争が設備過剰をもたらしたことは、
経済白書がみずから認めておるのであります。
政府は、昨年来、
民間資金の活用というスローガンを掲げて参りましたが、
政府みずからが責任を持って
計画的規制を行うべきであると思うが、その見解を承わりたいと思うのであります。
次に蔵相並びに
郵政相に伺いますが、
経済の
質的改善の柱として、
国民貯蓄の増強を強調されましたが、
財政投融資の最大の原資である
郵便貯金が、
民間金融と
金利高との競争ができずして伸び悩みの
状態に相なっております。この
状態をどう打開するか、この機会に承わ
つておきたいと思います。また、
企業資本の充実については、
長期資金は増資または社債によって調達することを望んでおられますが、現在は市中大銀行が大
企業に対して
長期貸付を行い、この
結びつきが、
資本の
集中独占を進行せしめておるのでありますが、これをあなたの言う
金融機関の
健全化とはいかなる
具体策を持っておるか、承わりたいのであります。
次に、
減税案について伺います。
政府与党は、昨年の
衆議院選挙に当って、二十四年から七百億円の
減税を約束いたしたのであります。ところが、その内容を検討してみまするならば、国税にあ
つては、初年度の
減税が三百四十二億円に対して
増税分が二百七十九億円あることは、ほおかぶりいたして説明されたのである。実質的には差引百五十二億円の
減税にすぎないのであります。しかも、
減税案の中心となっている
所得税法の改正は、
標準世帯において年収三十三万円まで免税したと誇るのでありますが、実際は
納税者の半数が年収三十万円以下の低
所得者でありますから、
勤労所得者のうち一部は多少の
減税の恩典に浴するといたしましても、大部分は恩典に浴さないのみか、すでに実施しております
私鉄運賃の
値上げを口火といたしまして、今年度は、電気、ガス、
水道料金からNHKの
聴取料、
新聞代、
国鉄定期代まで
値上げされることは必至の
状態でありますから、現在でも
国民のうち七割の
新得税を納めていない低
所得層にありましては、
減税の恩典どころか、
公共料金の
値上げと、これに刺激された
消費物価の値上りという圧迫のみを受ける結果となるのであります。これでは、
減税公約を信じて
自民党に一票を投じた
国民を欺瞞するもはなはだしいと言わねばなりません。(
拍手)そこで、蔵相に伺いますが、
減税対象にならない低
所得層と、わずかに
減税にひつかかる程度の人々にと
つて、どれほど
実質所得が向上すると言われるのか、この点を明らかにしていただきたいのであります。
これに関して
経済企画庁長官にも伺
つておきますが、企画庁は、昨年十二月、本年度の
経済の
見通しを発表して、
個人消費水準は五・五%の上昇、
消費者物価は〇・五%の上昇という予測を出しております。しかし、私の計算では、可
処分所得の
増加は、
所得税の
減税分三百八十億円、
個人事業税分が六十五億円、合計四百四十五億円が可
処分所得の直接の
増加になるわけであり、これは現在の可
処分所得の総額に対して〇・七%の
増加にすぎません。一方、ただいま申し述ベたように、相次いで
公共料金の
値上げが行われれば、
消費者物価は〇・五%以上上昇すると考えられるので、可
処分所得の
増加の効果は
数字土から見て相殺されるのであります。あなたの言う
勤労者の
消費水準の上昇を確保する見地に立てば、当然
公共料金の
値上げに反対すべきであると思うが、あなたの見解を承わ
つておきたいのであります。
次に、
農村問題について
農林大臣にお尋ねいたします。第一に伺いたい点は、私が冒頭に指摘したように、
政府与党は
農村民主化逆転の手段として解放農地問題を研究した結果、
今期国会に
農地補償問題審議会設置の法律を提出すると承わるが、
審議会の結論を得てこの問題を処理すると弁解するにしても、しょせん
審議会などは例の
通り政府の
代弁者によって構成されるものと思われるのであります。これはただ公平らしく装うために機関を設けるにすぎないと思うのであります。従って、すでに
政府においては、その
方向と内容のあらましは決定されておると存ずるのでありますが、この際オブラートに包むようなことをせずに、その性格を明らかにしていただきたいと思うのであります。また、
選挙目当てと思うのでありますが、
農業基本法を
今期国会に成立せしむると宣伝しまして、いかにも何かその内容が
農民にプラスするがごとく宣伝いたし、
農民の歓心を買ったのであります。仄聞するに、与党内において研究の結果、これがあらゆる面で壁に突き当
つて、とうてい成案を得るに至らなかったために、やむを得ず
調査会設置をもってお茶を濁したと聞きます。もともと
保守党内閣によっては、とうてい根本的に
農業を防衛する方策が打ち立てられるはずもなく、熱意もないことは、過去十数年間政権をとりながら、
農村を窮乏へと追いやった実績に徴しても、私は明らかであると思うのであります。(
拍手)そこで、もし
農業防衛の方策を持っておるならば、その骨格だけでもこの機会に明らかにしていただきたいと思うのであります。
次に、
総理は、
農林漁業の
生産力の
持続的向上と経営の安定をはかることは、
わが国農業の基調であると言われたのでありますが、その構想に基いて
明年度の
農林予算は五十五億円を増額したと
大蔵大臣は誇らかに説明いたしました。ところが、過去数年間の
農林予算を検討するに、昭和二十八年度以来
農林予算は後退に後退を続け、二十八年度に
一般会計総額のうち
農林予算の
占むる割合は一六・四%でありましたものが、以後、総
予算は膨張を続ける一方、
農林予算のみは減少の一途をたど
つたのでありまして、本年度におきましては、その割合が七・四%と後退し、三十四年度
予算においては、実に総
予算の七・一%にすぎないのでありまして、これでは、
農家経済を安定向上させるという宣伝とは、全く矛盾するといわなければなりません。
国民経済の中で特に立ちおくれておる
農業及び
農民の地位を向上させるためのきめ手が、この
予算の一体どこにあるのか。農相は、自信を持ってこの
予算の中で
農民の生活を向上させることができると言われるのか。この際、明確にお示しいただきたいと思うのであります。
次に、農家の
現金収入のよりどころである養蚕についてであります。
経済五カ年
計画によれば、その
達成目標として、生糸三十八万俵、繭三千六百六十万貫とし、この
方針に基いて、桑を植えろ、増産をしろと指導して参ったのでありますが、昨年の生産は三十一万俵余であります。この実績は、目標に対しはるかに及ばないにもかかわらず、昨年春繭から大暴落を来たしたのであります。この結果、
繭糸価格安定法の
支持価格すら維持することができず、
養蚕農家は大打撃を受けたのであります。
政府の
計画の誤まりから起ったこの事態は、あげて
政府に責任があるのでありまして、これが損害並びに
作付転換等に対する十分なる
補償措置をすベきは当然の責務であると考えますが、
政府は、三十四年度において一万四千町歩の抜根と、わずか反当り二千円の
奨励金を出すというのでありますが、この額は、手間賃にも及ばない少額であります。また、繭の
支持価格を
生産費の八五%から六〇%に引き下げて、
貫当り千四百円から千円に改悪しようというのであります。何たる
農民に対する
不信行為でありましょう。
農林大臣は、おそらくこれは
海外市況の変動でやむを得ないと弁解するでありましょうが、これは日本の
農業、特に
養蚕業に対する
基本方針が確立していないから起ったことでございます。これに対する
農林大臣の責任ある見解を承わりたいのであります。
さらに、これと同様な問題として酪農問題をあげなければなりません。これも五カ年
計画において五十九万頭の
乳用牛を百二十五万頭にふやすというのでありますが、これまた一昨年秋以来の
乳価安で、
農民は
酪農経営に困難を来たしておるのであります。元来
わが国の
畜産奨励は、明治以来、需要の拡大をはからずして、頭数ばかりふやす奨励をする結果、わずか増産いたしますと、
製品安になって、再び牛を手放さざるを得ない
状態の繰り返しであ
つて、奨励されたときは高い牛を買い、手放すときは二束三文で売るということで、結局、
農民の保護よりも
牛馬商の利益をはかる
状態であったのであります。
政府は、口では
酪農振興を唱えながら、政策の実態においては、
価格支持並びに
流通機構について、全く
無為無策であるのであります。で、農政の焦点は、実に今後ここに合せなければならないと思うのでありますけれども、農相の見解はいかがでありますか、伺っておきたいと思うのであります。
次に、
農地改革は
自作農主義であったのでありますが、この原理は、今や
転換期に来ていると思うのであります。その
転換は、
政府のもくろんでおります旧地主に対する補償の
方向ではなくて、
生産共同化の
方向であると思うのであります。最近
農村の
階級分化が進んで参りましてより、一部
富農層には、
農地法の制限さえなければ、
経営規模を拡大しようという動きが起
つて参りました。また、重税の圧迫にたえかねて法人化しつつある向きも各地に見られるのであります。これはいずれも
農業の
資本主義的発展の
方向であります。これとは全く別に、まじめな青年層の間から、
農業経営を生産まで共同化しようという運動が起
つておるのであります。この第三の
方向は、指導のいかんによっては、日本
農業と
農民の地位を画期的に高める道であると考えられますが、これらに対する農相の見解を承わりたいのであります。
次に、
わが国の
農業のごとく零細経営にもかかわらず、近来、農機具購入競争のような
状態に陥
つて、
農業経費の負担を必要以上に膨張させておるのであります。これらの弊害を除くためにも、
政府の手によって
農業サービス・センターを設置することが、この際、必要であると考えられます。これに対する見解を承わりたいのであります。
次に、
中小企業問題について通産大臣に簡単に伺いたいのであります。
三十三年度
経済白書によれば、大
企業と
中小企業との格差が拡大して、日本
経済に二重構造という欠陥をもたらしておることを強調いたしておりますが、三十四年度
予算では、さきに指摘したような
状態でありますから、依然として
中小企業は無視された関係にあります。従って、その格差はますます拡大されるものと思われるのでありますが、この
状態を打開するために、
中小企業に適正な産業分野を確保することが絶対に必要であると思うのでありまして、
中小企業庁においては、その具体化を幾たびか準備されたと承わりました。しかし、大
企業を擁護する通産省首脳部によって、いつもこれが押えられてきたと聞くのであります。事実だといたしますならば、通産省は大
企業の利益に奉仕するものであると非難されてもやむを得ないと思うのであります。
今期国会に、以上述ベた趣旨の法案を提出する意図があるかどうか、承わっておきたいと思うのであります。
時間の関係もありますので、以上によって
政府の施策に対する
質問を終りたいと存じますが、最後に一点申し上げたいことは、
政府は、
今期国会においては、いわゆる低姿勢で臨んで、野党を刺激するがごとき法案の提出は見合せて、来たるべき地方選挙、参議院選挙を有利に導こうとしていると漏れ聞いておるのであります。ところが、これに関連いたしまして注目しなければならないことは、最近行われ、また、行われようとしつつある選挙について、実に驚くべき物量を投じて事前運動が行われておるのであります。これは告示前なるがゆえに、すなわち立候補後でなければこれを事前運動として取り締ることができない法の盲点をついておることであります。さらに、立候補した以上は、選挙妨害になることをおそれて取締りを手控えるということで、みすみす悪どい不潔な選挙が見逃されておるのであります。過去の選挙違反の検挙の実績について見ても、
政府与党の悪質違反が大多数を占めることは、
総理も御承知のことと存じます。
岸総理は、大体、
政治の浄化刷新とか政党に対する
国民的信頼の回復を考慮されたことがおありになるのかどうか。失礼ながら
岸総理は、か
つての翼賛選挙や、勝てば官軍式の旧政党時代の特権意識から、いまだ解放されておらないのではないかと疑うのでありますが、(
拍手)いかがでありましょう。さらに最近、東京近県の知事選挙においては、事前動運のポスターが五十万枚も貼られたということは公知の事実であります。このように金のかかる選挙を行う以上は、清潔なる
政治の確立は、ほど遠いといわなければなりません。
政治に対する
国民の不信は、実にここに始まると言っても過言ではないのであります。この
状態では、四月、五月に迫る各種の選挙は、
わが国選挙史上最大の汚れた選挙に立ち至ることがおそれられるのであります。この傾向について、わが党は公明選挙推進特別委員会を作
つて、清潔なる選挙を通じて
政治の浄化をはかろうといたしております。
岸総理は、
総理大臣として、また与党の総裁として、この事態をいかに粛正していく考えであるか、この機会に承わ
つておきたいのであります。また、自治庁長官は、すでに私があげたごとき実例があるにもかかわらず、これを放置する考えであるか、今後どうこれに処していく考えであるか、はっきり承わっておきたいと思うのであります。
以上をもって私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君登壇、
拍手〕