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政府委員(津田實君)
制度のことに
関係いたしますので、
法務省からお答え申し上げます。ただいま御
指摘のように、法曹一元が非常に理想的なものであるということについては、もはや今日におきましては異論がないわけであります。しかしながら、現実の問題におきましては、なぜ法曹一元が実現できないか。まあ非常に少部分で、一元と申していいかどうかわかりませんが、ごく少数の高級な
判事あるいは検事に在野法曹から人を選ぶ、あるいはごく経験年数の浅い弁護士から
判事補あるいは検事に任官するというようなことは、ただいまでもございますけれ
ども、大方の大勢が法曹一元になっていないことは御
指摘の
通りであります。しかしながらこれにつきましては、過去十数年にわたりまして、いろいろ
日本弁護士連合会等とも話し合いがなされたわけでありまするけれ
ども、あるいは
裁判所側、あるいは
法務省側から、切にこれらから適任者の推薦を求めたということもあるわけでありますけれ
ども、現実にはやはり弁護士から
判事あるいは検事になるものがない。非常に少いということになっておるわけであります。そこで、これはもはや現在の
制度のもとにおいては、とうてい困難であるということに考えざるを得ないわけでありまして、その困難な事情はどこにあるかと申しますると、これは
一つは待遇の面でございます。待遇の面につきまして、やはり現実に在野法曹すなわち弁護士の収入と、
判事あるいは検事の収入とに相当の差異があるという点、その次には、仕事の内容自体が複雑かつ責任が重大であって多忙であるというような事柄が
一つ。それからもう
一つは、何といいましても、任官いたしました以上は、任地等につきましてある一定の場所に固着することが許されないというような、そういうような三つの点がやはり在野法曹から任官する方がないという原因になっておると大体考えられるのであります。そこで、問題は
一つ一つ解決していかなければならぬ問題でありますが、まず第一に、待遇をよくするという問題でございますが、これは何にしても異論がないわけでありますが、待遇をよくしただけで、必ずしも
裁判官あるいは
検察官に志願者があるかというと、そうではない。やはり仕事の内容を改善しなければならぬと思う。今日のように
裁判事務、
検察事務が非常に多忙をきわめておりまして、非常に心労をしなければならぬという状態におきましては、とうてい好んでこの地位につく人はないだろうということも考えられるのでありまして、この面は手続法等の面におきまして、相当の変革をいたさなければならぬと思うのでありますが、必ずしも熟したわけではありませんけれ
ども、たとえば
裁判官につきましては、
ほんとうの
裁判事務に専念させるということにいたしまして、相当数の
調査官をこれに付するとか、あるいはその他それ以外の
裁判所職員を充実するとかという
方法もあります。
検察官につきましても、同様な
方法がある。そういうふうにいたしまして、やはり高度の
裁判事務についてそういう
判事を使う、あるいは高度の
検察事務について検事を使うというようなことがやはり必要になるかと思うのであります。そういう
意味におきまして、やはり
判事なり検事の手を、ある程度すかすような手続面における立法
措置を考えなければならぬ。それから第三の任地の問題でございますが、この点はやはり公務員として任官いたします以上、これはやむを得ないことだというので、この点は救済策というようなものはないかと思いますが、この点は待遇の面、たとえば子弟の
教育施設を東京その他主要
教育地に置くというようなこと等によってやはり解決していかなければならぬというふうに考える次第でございます。それらの全部の点を総合いたしまして、前提条件を
一つ一つ解決した暁でなければ、法曹一元は完全に実現しないというふうに考えておる次第でございます。
一方また、現在におきましては、ただいま御
指摘のように
裁判官の給源といたしましては、
判事補の
制度でありますが、
裁判官を各法曹の中の最優秀者、最適任者を求めるということになりますと、
判事補のゆくえということが非常に問題になる。
判事補を十年いたしましても、必ずしも
判事に補充されないというような事態が生じた場合に、果して
判事補になる者があるかというようなことが出てくると思うのであります。そういう
意味におきまして、やはり将来の理想の姿は弁護士、
検察官から
判事に選ぶ、あるいは
法律学者というようなもの、そういう法曹のうちの最優秀者、最適任者を
判事に選ぶという形にしなければならないというふうに考えられるわけでありまして、その際における
判事の報酬なり待遇をいかにすべきかということ、これは現実の問題として、非常に高額あるいは好遇を与えても何人もこれを怪しむ者がないということになろうかと思いますが、現実の
裁判官、
判事の報酬を画期的に上げることができない原因が、やはり
判事補から
判事の給源を求めておるという、いわば昇進
制度によって
判事が生まれてきておるというような現実にも、大きな
関連があるというふうに考えておる次第であります。