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1959-02-17 第31回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十七日(火曜日)    午後一時五十三分開会   ―――――――――――――   委員異動 二月十一日委員迫水久常君、山本利壽 君及び横川正市君辞任につき、その補 欠として鈴木万平君、野本品吉君及び 江田三郎君を議長において指名した。 二月十二日委員鈴木万平君及び大谷瑩 潤君辞任につき、その補欠として森田 義衞君及び田中啓一君を議長において 指名した。 二月十三日委員田中啓一辞任につ き、その補欠として大谷瑩潤君議長 において指名した。 本日委員江田三郎辞任につき、その 補欠として横川正市君を議長において 指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     古池 信三君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            高田なほ子君    委員            大谷 瑩潤君            森田 義衞君            吉野 信次君            横川 正市君            辻  武寿君   国務大臣    法 務 大 臣 愛知 揆一君   政府委員    警察庁刑事局長 中川 董治君    警察庁警備局長 江口 俊男君    法務大臣官房司   法法制調査部長  津田  實君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才藏君         ―――――    最高裁判所長官    代理者    (事務次長)  内藤 頼博君    最高裁判所長官    代理者    (総務局総務課    長)      海部 安昌君    最高裁判所長官    代理者    (人事局長)  守田  直君    最高裁判所長官    代理者    (刑事局長)  江里口清雄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付、予備  審査) ○検察官俸給等に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣送付、予  備審査) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (静岡県下における全逓労組員逮捕  問題に関する件)   ―――――――――――――
  2. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。本日江田三郎君が辞任され、横川正市君が選任されました。   ―――――――――――――
  3. 古池信三

    委員長(古池信三君) 本日は、まず最初に裁判所職員定員法の一部を改正する法律案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。これより質疑を行います。右三案について並びにその関連事項について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  なお政府からは、ただいま法務省司法法制調査部長津田實君、最高裁判所内藤事務次長江里口刑事局長守田人事局長が出席されております。愛知法務大臣も間もなく出席される予定であります。
  4. 大川光三

    大川光三君 私はただいま議題となりました法律案三案のうちまず裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について質問をいたします。  この裁判所職員定員法の一部を改正する法律案参考資料によって検討いたしてみますると、地方裁判所民刑事第一審訴訟事件状況昭和三十一年と昭和三十二年とで比較してみまするのに、全事件に対する合議事件比率並びに刑事平均審理期間は若干向上しておるようでありまするが、果してその原因はどこにあるか。昨年判事補定員を二十名増員いたしましたが、その効果はどの程度に認められておるかというのが第一の質問でございます。  すなわち、参考資料の表のうちで、第三表ですか、「昭和三十一年・三十二年における地方裁判所(本庁)民事刑事第一審訴訟事件合議単独別処理件数」というこの表によって見まするのに、昭和三十一年度の全事件数に対する合議事件数比率というものがこの表で、一番下の欄に一七・七%と相なっております。しかるに昭和三十二年度におけるこれに対応する比率は一八・九%でございまして、結局合議事件による処理件数昭和三十一年度より三十二年度の方がこれは上昇いたしております。また第四表の、「昭和三十一年・三十二年における地方裁判所民事刑事通常第一審訴訟既済事件平均審理期間」というこの表によって見まするのに、三十一年度刑事事件に費された平均期間というものが三十一年度では六・二カ月に相なっております。しかるに昭和三十二年度のこれに対応いたしまする期間は五・六カ月と相なっておりまして、すなわち刑事事件においては審理期間昭和三十一年度よりも三十二年度の方が短縮をされておる、これは非常に喜ぶべき数字であります。しかし同じ表によって民事の場合を考えてみますると、昭和三十一年度における民事に費した全国平均期間が十一・一カ月、昭和三十二年においては十二カ月ということになっておりまして民事の場合には、これは昭和三十二年の方が余計期間を費しておるというような、非常に興味ある表がついておりますが、この表に基きまして先ほど申しますようなその原因、また昨年度判事補定員を二十名増員いたしましたことに関する関連と申しますか、どういう効果が現われておるだろうかということを、まず御説明をわずらわしたいと思います。
  5. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) では、最高裁判所から、ただいま大川委員の御質問に対してお答えを申し上げます。参考資料の表の三にございますように、ただいま御指摘のございました通り昭和三十一年度、三十二年度を比べますと、第一審訴訟事件合議による審理比率があがっております。これは実は、昭和三十一年の七月でございますが、当時、最高裁判所におきまして、第一審強化方策というものを打ち出しまして強化方策要綱を定めたのでございます。それを実施に移しましたのが三十一年度の後半でございます。その第一審強化方策一つといたしまして、第一審においては合議体を活用するということがうたわれておりまして、その要綱に従いましてその後、合議体の活用が各裁判所において、はかられるようになったわけでございます。何分にも裁判官定員が限られておりますので、思うように合議体による審理がふえてはおりませんけれども、ややその方向だけは、この統計に示される通り現われているわけでございます。この第一審強化方策ということの現われが、この合議事件比率増加となって現われたものであると存じます。それから次に、平均審理期間。この参考資料の第四の表でございますが、平均審理期間が、民事におきましては、三十一年度と三十二年の比較におきまして、十一カ月から十二カ月に延びております。刑事におきましては、六・二カ月から五・六カ月に減っているわけでございます。これはまあいろんな原因もございましょうけれども統計の上で現われました上では、何と申しましても、事件数増減ということが一つの大きな原因になっていると存じます。すなわち、民事におきましては、昭和三十一年度におきまして、地方裁判所の一審の審理件数が、六万二千四百九十八件でございました。それが昭和三十二年になりますと、六万三千九百三十九件、ほとんどまあ六万四千件に近くなっているわけでございます。こういう事件がふえますとすぐにこの審理期間にも影響を及ぼすわけであります。これはすでに、昭和三十一年度におきまして、裁判官の数の割合事件負担が多いのでございますから、その上に若干事件審理件数がふえて参りますと、たちまちこれがこういうふうに現われてくるのだというふうに私ども考えているわけでございます。刑事の方におきましては、やはり事件の減少がございまして、そのために審理期間比較的短かくなって参ったものだというふうに見られるわけでございます。これは昭和三十年から刑事事件がだんだん減って参りまして、三十一年、三十二年と漸減の傾向をたどっているわけでございます。これもやはり事件が多少なり減って参りますると、審理期間というものは、すぐにこう比較的短かくなるというふうに現われるのでございます。私ども、この審理期間のふえたり減ったりという現象は、統計の上から見まして、事件増減に非常に直接の影響を受けるものだというふうに見ているわけでございます。  次に、昨年、判事補定員を二十名増員していただきまして、その効果でございますが、これは二十名の増員は、東京、横浜、その他、そういう大都会裁判所配置をいたしまして、そういう裁判所における合議体の増強の方に多く用いられているわけでございます。従って、この合議事件比率のふえておりますこと、これは明らかに判事補定員増員原因するわけでありまして、そういった点に増員効果が現われているわけでございます。従いまして、間接には、また審理期間短縮等にも役立っているかと存じますけれども、直接には、合議事件比率増加というように現われているというふうに考えているわけでございます。
  6. 大川光三

    大川光三君 今回の改正案では、さらに判事補を二十名増員するということでございますが、そこで、この改正案による増員が行われた場合には、民刑合議事件の全体に対する比率平均審理期間等をどの程度に向上させるというもくろみであるのかということをさらに伺います。  さらに、あわせて、根本的な方針といたしましては、今後、合議事件比率平均審理期間判事補定員をどの程度数字に持っていきたいという考えであるのか、率直に御意見を伺いたい。  なお、参考のために、戦争前と現在との対比につきましても、御説明をわずらわしたいと存じます。
  7. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君)  今回、定員法改正によりまして、判事補の二十名の増員をお願いいたしているわけでございますが、もし、二十名の増員が認められるようになりますれば、当面の措置といたしましては、やはり現在、民事事件比較的おくれている庁、これは大体東京大阪等の大都会裁判所になるわけでございますが、そこへ配置をいたしたいというふうに考えているわけでございます。それがすぐに、それでは審理期間なりなんなりにどう響くかということでございますが、何分にも判事補二十名の増員のことでございますので、すぐにそれが訴訟の上でどう響くかというふうには、お答え申し上げかねるかと存じます。  そこで一体合議比率なり審理期間をどう考えているかという御質問でございますが、私ども第一審の訴訟合議比率につきましては、戦前は、民事につきましては二〇%、刑事につきましては一〇%の合議による審理をしていたわけでございます。それが戦後になりますと、民事につきましては三%、刑事につきましては六%というふうに減っているわけでございます。もっとも、これは戦前は御承知のように、地方裁判所区裁判所でございましたし、戦後は地方裁判所簡易裁判所というふうになっておりまして、その間のいろいろ権限の相違や手続の相違がございますので、一概にすぐ比較だけでどうこうと申されませんけれども、そういうような戦後は著しく少ないというパーセンテージが現われているわけでございます。これは私どもの現在目標といたしておりますのは、民事につきましては一五%、今三%と申し上げましたのを一五%、刑事につきましては二五%、ただいま六%と申しましたのを二五%まで上げたいというのが、私ども目標でございます。これは民事につきまして申し上げますと、対席の判決を受ける事件の半分は合議体処理したいということが、ただいま申し上げました全体の一五%ということになるわけでございます。刑事につきましては、やはり複雑困難な事件というふうに考えまして、これが全体の二五%というふうに押えているわけでございます。こういった合議比率パーセンテージが上りますことを、私どもは現在目標としているわけでございます。  次に、第一審の平均審理期間でございますが、これは戦前におきましては民事は四・八カ月、刑事は一カ月でございました。それが戦後におきまして、昭和三十二年におきましては民事は七・三カ月、刑事は三・九カ月、これもふえているわけでございます。これもできれば戦前並み平均審理期間に持っていきたいわけでございますけれども事件数増加、その他現実の問題からなかなかそうは参りません。現在の目標といたしましては、できますれば民事は少くとも五カ月、刑事は三カ月という平均審理期間にいたしたいというのが私ども目標でございます。何分にも御承知のように、事件増加に伴います裁判官増員がなかなか困難でございます。ちょっと数字を申し上げますと、裁判官一人の負担昭和十三年――十五年当時におきましては、民事刑事事件合計いたしますと、一年間百二十五件の割合でございました。それが戦後は民事刑事合計して一人当りが一年二百件以上になっているのでございます。こういったことから相当数裁判官増員が認められませんと、ただいま申し上げましたような目標にも到達しかねるわけでございます。これは数字の上で申し上げるわけでございますけれども裁判官増員がやはり最小二百人は必要じゃなかろうかというのが、ただいまの計算から出ました裁判官増員数でございます。で、ただ二百人の裁判官増員ということが、現実の問題としては非常に困難でございます。御承知のように、いろいろな面から裁判官定員をふやすことがむずかしい、また実際定員がございましても、実際にそれを充員することが困難であるというのが現実でございます。ただ私どもといたしましては、できる限りその目標に近づけたいということを努力しているわけでございます。ひとり定員増加、あるいは欠員の充員ばかりではございません。訴訟処理合理化であるとか、まあいろいろな面において工夫しているわけでございます。東京地方裁判所あたりにおきましても、昨年あたりからいろいろ新しい工夫をしておりまして、まあややその訴訟の進行の合理化と申しますか、そういった線が出つつあるように聞いておりますが、まだ十分な効果をあげるには至っていないようでございます。
  8. 古池信三

    委員長(古池信三君) ちょっと大臣に伺いますが、きょうは時間はたっぷりございますか。
  9. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) はい、衆議院の本会議まで……。
  10. 大川光三

    大川光三君 ただいまの御説明によりますと、昨年度判事補増員二十名を主として都会裁判所配置した、こういうことでございます。また今回の場合においては、主として民事の方を強化していこうという御説明であったように伺いましたが、まあ民事事件が非常に遅延をいたしておるという点から考えまして、民事方面判事を多く増員するということは、これはまあ当然のことであろうと思いますが、今回のこの二十名の増員について地区的にはどういう配置を御考慮になっているか、まあ端的に申しますと、手薄いところ、あるいは特に訴訟が遅延するところは、都会とかいなかとかいうことにこだわらずに配置をすべきであるというように考えるのでありますが、その点の御見解をお尋ねしたいと思います。
  11. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君)  まことにごもっともな御意見でございます。私どもといたしましては、やはり事件が渋滞するところ、つまり新受件数の割合裁判官の少いところへ重点的に配置をすることになるわけでございます。それがおもに、主としては大都会にそういう現象が現われているということを申し上げたわけでございますが、もちろん大都会以外でも、そういう地区には当然重点的に配置されなければならないと考えております。
  12. 大川光三

    大川光三君 合議事件関連していま一つ伺っておきたいと存じますることは、結局合議事件比率を上げていこうというためには、必然的に十分な合議法廷という設備の問題が関連してくると存じますが、せっかく合議体ができたが、どうも単独判事と同じような法廷合議体をやるということ自身が、これはまあ裁判所権威にも関するかと思いますが、一体合議体をたくさん作るというのに伴いまして、そういう設備の面ではこれに対応するようにできておるのか、その点に関する現状、並びに一体この合議法廷増加に伴う予算処置というものはどうなっているか伺います。
  13. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君)  まことに御指摘のように営繕方面予算がなかなか窮屈でございますので、実際に合議体をふやしながら十分に法廷が得られませんため、何と申しますか、ずいぶん粗末な法廷合議法廷に使っているような現状があちこちで見られるわけでございます。最高裁判所といたしましては、そういった事情を改善するために年々予算の要求をいたしまして、まあ逐次認められつつあることはあるのでございます。たとえば大阪地方裁判所につきましては、法廷増設が実行に移されております。現在一部は完成いたしたのでございます。これは昭和三十二年、三十三年度の事業として増設をいたしたわけでございます。それから三十四年度の、今度御審議を願っております予算につきましても、名古屋の裁判所法廷増設をやはりお願いしておるわけでございます。なかなか全国一ぺんに、一律には参りませんので大へんまどろっこいようなことではございますけれども、はなはだしく法廷の足りないところをこうやって年々解決していくというふうな方針でやっておるわけでございます。  なお東京裁判所におきましては、御承知のように非常な法廷不足を来たしておるわけでございますが、これはこれといたしまして、刑事の新しい庁舎の改築ということで本年度から本格的な工事にかかることになっております。これもできますれば三年くらいの間に完成したいというのが私どもの今日の考えであるわけでございます。
  14. 大川光三

    大川光三君 ただいまの合議法廷の問題は非常に必要であると存じまするので予算処置につきましても当局の格別の御高配を希望いたします。  なお関連して、私は合議法廷を、りっぱな法廷を作るということが裁判所の威信、権威という面からと、いま一つ審理促進に非常に役立つということを常に考えておるのであります。卑近な例を申し上げますと、人と応接をする場合にわれわれは、たとえば三畳の間とか四畳半というような窮屈なところで応接をやりますると、どうも話がうまくまとまらない。少くも六畳ないしはそれ以上の応接室を使いますと妙に話がとんとん拍子でいくと、これはやはり狭い、窮屈なところじゃ、まあ息と息とが衝突いたしますから、意気が合わないので、やはりゆったりした場所で訴訟をやるということが、私は訴訟促進の上からも、真実発見の上からも必要であろうと存じております。そういう心的影響も強いのでございまするから、特にその点を留意せられまして、大いにがんばって予算措置をやっていただきたいことを希望いたしておきます。  なお、今度は、結局人の問題でありますが、判事補は現在ほとんど定員一ぱい確保されておりますけれども、今後判事補から判事へ進まれる方がございましょうし、また、司法修習生から判事補への異動があり得るわけでありまするが、増員後の判事補定数定員充足について、これらの動的な関係において数字的な御説明をいただきたい。定数増員いたしましても、現実人そのものを得ることについて、どういうような状況になっておるか、御説明をわずらわします。
  15. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) それでは私から御説明申し上げます。  本年の一月十五日現在での欠員を申し上げますと、判事で六十四名、判事補で二十名、簡易判事で四十五名、合計百二十九名となっております。で、その後及び今日以後の推定から、四月一日現在ではどういう欠員状況になるかということを、推定をまじえながら申し上げますというと、定年で退官する人、あるいは死亡、あるいは転退官任期終了、あるいは判事へとかわっていくといったような現象と、それから検事や弁護士から裁判官になる人、及び選考によって簡易判事になる人等を差し引きますというと、大体四月一日現在の欠員は、判事が七十九、判事補が三十九、簡易判事が四十五、合計百六十三名ぐらいになる予定であります。ただいまの御質問判事補の部面でございますが、判事補につきましては、三年以上の判事補を約三十名ほど簡易判事本官に切りかえますのと、それから判事になる人が二十三名名ほどありますので、本年四月一日から、御審議中の本改正法律案による判事補二十名が増員せられるものといたしまして、大体九十名ほどの判事補欠員があることになります。ところで本年度司法修習生から判事補を希望いたしておる者が約九十名ほどあるわけでありますので、四月初旬におきましては、大体、判事補欠員は、司法修習生を終えて判事補を希望しておる、この修習生判事補への採用によってまかない得るというふうに考えております。
  16. 大川光三

    大川光三君 よく事情はわかりましたが、なるほどことしは、そうして判事補不足を、司法修習生から判事補になるものでまあ一応のまかないはつくと思いますけれども、これは結局年々歳々繰り返していかなければならぬことでございまして、結論的には人的資源の確保という問題にかかってくると思うのであります。  そこで私は、前回司法試験法の一部を改正する法律案のときにも申したのでございまするが、あの司法試験法改正によって優秀な人材をたくさん採用し得るものであるというように私は考えておるのでございます。そこで、司法試験において、質的にも量的にも、よき人材をたくさんとるということになりますと、司法研修所の拡充ということが伴ってくると存じますが、昭和三十四年度予算に盛られた司法研修所に関する具体的な対策は、一体どうなっておるか。また、年々歳々人的資源を確保していくという面から考えまして、次年度以後のお考えは一体どうであろうか、それをお伺いいたしたいと思います。
  17. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 本年度昭和三十四年度予算におきましては、司法修習生採用人員が、定員でありますが五十名ほどふえまして、合計三百六十五名というふうになりました。それで従前の第二期生でありますが、昭和三十三年度採用した分と合わせますというと、五百六十六名になっております。この五十名昭和三十四年度においてふえるといたしますとして、それに伴う営繕費及び俸給給与予算その他すべて一応入っております。それから次年度、すなわち昭和三十五年度におきましても、同じく五十名ほど司法修習生採用人員増加することを要求する予定になっておりますし、増加いたしますというと、司法研修所の施設をやはり拡充いたします、あるいはそれに伴いまして給与予算その他も増加することになるわけでありますが、大体そういった程度考えております。
  18. 大川光三

    大川光三君 人の問題に関連して、今度は訴訟促進という面から考えまして、私は、一人で裁判し得る、いわゆる職権特例判事補をなるべく多数充実していかなければならぬ、それがためには、弁護士から人を得るということが望ましいのでありますが、法曹一元化が叫ばれてここに多年にわたりますが、最近における弁護士から判事補への任官の状況を、数字をもってお示しいただきたいと存じます。
  19. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 弁護士から裁判官に任命された者の実績を申し上げますというと、昭和三十二年には十四名、それから三十三年には十二名といったような状況であります。これを昭和二十二年五月からずっと計算いたしますというと、合計して四百六十九名に達しております。
  20. 大川光三

    大川光三君 ただいまの御説明でよくわかりましたが、それにしても、私は、将来弁護士から判事補または判事を補給してくるということははなはだ望みが薄いような気がいたします。従いまして、やはり司法修習生というものを多量に生み出していくということに根本的な問題が残っておると存じまするから、その点は特に御留意をいただきたいと、こう存じます。  次に、多少事務的になっておそれ入りまするが、従来判事補が簡裁判事を兼務しておる場合でも、これは形式的のものでありまして、実際に簡裁の仕事をすることはあまりなかったようでありまするが、最近は簡裁判事の大量欠員のために、相当数判事補が実際上簡裁判事の職務をとっているというように聞くのであります。これでは地方裁判所のまあ負担ともなるのでありまするから、早急に簡裁判事を充実して、補充して、判事補の資格者はなるべく地裁の職務に専念させるようにすることが望ましいと存じておりまするが、現在の状態はどうなっておりましょうか。
  21. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいま大川委員のお尋ねの点はごもっともでございます。実は先ほど実績といって御説明申し上げました弁護士から裁判官への任命された者の数四百六十九名と申し上げましたが、その一番多かったのは昭和二十四年の百二名でありまして、その後は順次ずっと平年の状況でございます。従いまして、弁護士から簡易判事を志望される方が年々少くなっておりまして、補充することが非常に困難になっておるわけであります。一方特任の簡易判事につきましては、これは弁護士連合会あたりの申し出によりまして、非常に厳重な試験をして採用しております関係上、非常にわずかな採用率になっておるわけでありまして、簡易判事につきましては非常に多くの欠員があります。これはどうしても在野法曹に御協力願って補充するほかはありませんが、弁護士の収入等の関係のために、なかなか思うように充員ができません。今後、一そう弁護士連合会、各弁護士会に働きかけまして、御協力を願って充員するように努めていきたいと思っております。
  22. 大川光三

    大川光三君 次に、現在、最高裁判所のいわゆる調査官には相当数判事が充てられておりますが、その職務の程度、裁判の状況等から、調査官、これを第一線に活用して、判事補をもってかえてはどうかという意見もあるのでありますが、この点に関する当局の御所見を伺いたいと思います。
  23. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 最高裁判所調査官の制度につきましては、ただいま御指摘のような問題があるわけでございまして、まあ、私どももその点について、まことにその点ごもっともと存ずる次第でございます。何分にも、全国裁判官判事の数が十分でないところへ事件が多くなっております。そういったようなことから、判事をなるべく裁判の方に充てるという方針を立てなければならないわけでございます。そこで、最高裁判所調査官につきましても、なるべく若い判事補に切りかえるという考え方は常に持っておるわけでございます。ただ、実際の問題といたしまして、調査官の仕事も、相当の内容も持っておりますし、相当の経験も必要なものでございますから、なかなか一ぺんには参りませんけれども方針としては、まことに仰せのような方針をとるべきものと私ども考えておる次第でございます。
  24. 大川光三

    大川光三君 先ほども裁判所の方から御説明がございましたが、まあ一般裁判官の大量欠員を解消するためには、結局、裁判官の待遇改善、法曹一元等の施策を推進することが根本的な要請であると存じますが、この点について、一体、昭和三十四年度予算対策はどうなっておるのかということを伺っておきたいのであります。もちろん、日弁連等に協力を要請されるのはよいのでありまするが、やはり弁護士といえども、まあ経済的な面も考慮いたしましょうし、名誉的地位ということも考えるのでありまするから、根本的な問題は、やっぱし予算につながってくる、かように存じますが、その点に関して、どういう予算対策を立てておられるのか伺っておきたいと存じます。
  25. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 在野法曹から裁判官へ就任を誘致するのが困難な理由はいろいろ、任地等の事情もあるとは存じますが、どうしても報酬の面であると思います。すなわち、弁護士としての報酬と裁判官が支給される報酬との間に相当の開きがあるということが、この在野法曹の就任方を困難にしているものと思われるのでありますが、これに対しまして、まず最高裁判所といたしましては、昭和三十四年度には、調査研究費として裁判官のうち特に判事には月額一万円ぐらいの調査研究費を大学教授と同じように庁費として支給できるような方法はないものか、それからまた、裁判官のうち特殊な者、すなわち判事簡易判事のうち特殊な人たち、合計千百八十三名につきまして管理職手当を二五%ないし一二%の率で支給できるようにしたらどうかということを考えまして、三十四年度予算調査研究費、管理職手当の大幅な要求をいたしたわけでありますが、そのうち管理職手当につきまして、約百二十八名分の増をみましたのみで、調査研究費も、それから管理職手当のその他の要求も、全部要求が通らなかったという実情であります。こういう管理職手当、調査研究費などを合せまして、裁判官の報酬の少額なのを補いましてもって在野法曹を吸収しようといたしましたが、いまだ昭和三十四年度予算ではその目的を達し得ない状況にありますが、引き続いて次年度におきましても同様に要求するつもりでおります。
  26. 大川光三

    大川光三君 ちょっと大臣に伺いたいことが二つございます。  その一つは、先ほどから質疑応答を重ねておりまするように、なるべく裁判は合議制の方向へ持っていきたいというのが、在野法曹も、裁判所の方も、一致したこれは意見であるのであります。鋭意その方向に現在進んでおる。そこで、裁判官不足ということを一面補いまするために、二人合議制を採用してはどうかということを日弁連等からも強く要望をいたしております。一体二人合議制に関する大臣のお考え方はどうであるかということを伺いたい。  いま一つは、過般本委員会で問題になりました地方裁判所調査官制度というものについて、その後どういう御検討を重ねておられまするか。  以上の二点を伺いたいと存じます。
  27. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 裁判の遅延ということにつきましては、われわれといたしましてもかねがね非常に重大な関心を持っておるわけでありまして、ただいま裁判所側からもいろいろ御意見があったようでございますが、これはひとり裁判所裁判官の問題だけではなくて、検察官においても、あるいは弁護士側におきましても、大いに協力をいたさなければならない点であると思うのであります。第一審の促進の点につきましては、特にその必要性が大きいものと考えておるわけであります。よく御承知のように、促進協議会その他の機会を通じまして、大いに関心を高揚すると同時に、訴訟の手続でありますとか、あるいは私は最後には制度の問題にも大いに触れてくるのではないかと思いますが、こういった根本的な点についてもさらに関係方面の大いな関心をふるい起していただきまして、努力いたしたいと考えております。  ただいま二人合議制の採用に関するお尋ねがございましたが、まあにわかに、三人制合議体まで大幅に裁判官等の人員を増加するということができればこれは問題がないと思うのでございますが、なかなかそこまでいかないのでありまして、しかし、さりとて二人合議制というものがこの際本式に採用されていいかどうかということについては、まあ率直に申しまして私はにわかに踏み切ることはいかがかと考えておるわけでございます。なお、細部にわたっての関係につきましては、詳細にそういった踏み切れない理由等についても御説明を申し上げたいと思いますが、大体現在の心境としてはさように考えております。  それから、裁判所調査官の裁判前調査制度そのものにつきましては、これは今議会の初めでございましたかにも御質問が出ましたが、私も、最高裁判所長官の発表された御意見等については、別に事前に御相談はなかったわけでありますけれども、非常に注目して、私自身といたしましても勉強いたしておるわけであります。現在法務省といたしましては、刑事訴訟制度に重要なこれは関連を持つ問題であることは申すまでもございませんので、なおとくと検討をいたしたいと思うのでございますが、これについてもはっきりした私どもまだ意見を申し上げるところに至っておりません。
  28. 大川光三

    大川光三君 法務大臣の御所見をただいま伺いましたが、この点に関しまして、裁判所側の御意見を伺いたい。すなわち、二人合議制の採用の問題並びに地方裁判所調査官制度に関する問題、これを裁判所側としての御意見を伺いたい。
  29. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君)  私からお答えを申し上げます。  二人合議制の問題でございますが、これは最高裁判所といたしましては、現在の裁判官の足りない現状から申しまして、まあやむを得ない一つの制度ではないかと、今法務大臣も申されましたように、一ぺんに三人合議体にいかない場合に、二人合議制も考えてよいのではないかというような一応の結論は持っております。しかし、実施の面におきまして、法務大臣が御指摘になりましたようなまだいろいろな問題があることも、私ども十分承知いたしておるわけでございます。法務省の方でも十分に御研究になっておることと存じますが、私どもの方でもなお研究を進めたいというふうに存じております。  それから地方裁判所調査官の制度の問題でございますが、これはやはり、裁判の今後のあり方として、こういった制度がぜひ必要であるということ、これは私ども考え、また法務省の方でも十分に御研究いただいておることと存じております。ただ、これを現実の制度化する場合に、これは実は、御承知のように、最高裁判所は今まで法務省側とちょっと意見を異にしておるわけでございまして、これはまた双方におきまして、もう少し突っ込んだ研究討議の上結論を得たいと存じております。制度そのものにつきましては、法務大臣もおっしゃいましたように、今後のあり方としての心要性は十分に御理解いただいておることと存じております。
  30. 大川光三

    大川光三君 もう一つ、これは裁判所側に対するお尋ねでありますが、結局現在の訴訟法では、欠席裁判という制度がなくなりまして、その結果として、被告人の逃亡による未済事件数が昨年では約四千八百件もあるというやに伺っておりますが、どうもこれは何とか一つ処置しなければいかぬじゃないか、統計の上にいかにも未済事件が多いじゃないかと、一般常識論からそう見られる。しかし、それは被告人が逃亡しておるためにやむを得ず事件が解決しないというようなことではこれはいかぬと思いますから、何とかこれを始末するという一つの方法といたしまして、結局は判決、宣告だけでも欠席裁判制度を設けてはどうかという意見があるのでございますが、その点に対する当局の御所見を伺いたいと思います。
  31. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) ただいまの御意見全く同感でございまして、裁判所といたしましては判決の宣告だけでも欠席で言い渡すことができるように、ということの改正を希望いたしております。また裁判官の会同等におきましても刑事裁判官からそういう意見が常に出されるのでございます。この問題につきましては数年前に裁判所の方からもそういう改正意見法務省の方にお伝えいたしまして、法務省の方でもお取り上げいただいて法制審議会の議にかかったのでございます。このときに主として在野法曹側の委員がこれに対して反対の御意見がございまして、意見の一致を見ないままで結局改正に至らなかったのでございます。私たちの方でもその後の運用の結果を考えまして、やはり判決、宣告を欠席のままできるという裁判制度が望ましいので、いずれ機会を見てまたこの問題の改正を取り上げていただきたい、こういうふうに考えております。
  32. 大川光三

    大川光三君 ただいまのこの問題で在野法曹の反対ということも一部にあるということを私は伺っております。しかしながらよく考えてみますと、逃亡したような被告に対して、それを在野法曹がその利益を弁護するというようなことはこれは在野法曹のやるべきことと違う。もちろん基本的人権という大きな問題から考えまして、本人の知らぬ間に判決が言い渡されるということにはゆゆしき問題がございましょうけれども、事務処理の上から言っても、また在野法曹の立場から言っても逃亡した被告は、言いかえますとこれは弁護人を裏切った被告でありますが、そういう者について弁護士がこめかみに力を入れて論議すべき筋合いはないと思いますから、むしろ当局の方でも積極的にこういう法案はお出し下さった方がいいのではないか。まあこれは私個人の意見でございまして、一松先生などもおられますが、先生はどういう御意見か知りませんけれども一つまあ一応私の私見を申し上げておきます。  それから最後に、やはり訴訟促進という面から、最も新しいケースといたしましていわゆる分業裁判と新聞などでは言っておるのでありますが、東京地方裁判所ではメーデー事件審理のスピード化をはかるために、六人の判事が、最初三人ずつ二組に分れて総論的審理を行い、次には六人の判事が単独に分れて各論的審理を行い、最後には全員の合議裁判で総仕上げをするという異例の方法をとることになったというように新聞は報道いたしたのでありますが、これは訴訟促進上まことに注目すべき方法であろうかと考えます。しかし詳細の点は私も不明瞭でありますが、特に裁判所法上合議、単独、合議への移行関係、六人の裁判官合議の関係等疑問の点はございまするけれども、本件の審理の仕方、法の規定とにらみ合せてこれでいいのか、またこうすることが合法的だというお考えの上に立っておられるか、私詳しい内容はわかりません、新聞で知った程度でございますけれども、この点を伺います。  なおこれに関連いたしまして、最高裁判所では、例の松川事件審理に忙殺され、それがために上告事件中で約千件の審理が停滞をいたしているというふうなことも新聞報道の上で見るのでございますが、実情果してどうであるかということを伺います。また今後もこの種の大きな事件があるたびごとに、他の事件審理が停滞することは現行制度では不可避でありまするし、現在でも最高裁判所裁判官の生活は、その地位からみてあまりにも訴訟に忙殺されすぎて余裕がないということが言い得ると存じます。従って最高裁判所機構改革という問題が痛切に考えられるのでありますが、一体最高裁判所機構改革の行方はどのようになったのか、行方不明になったのかどうか。そうではなしに、当局としては十分なる御検討を加えておられると存じまするが、この機会にその点に関する最高裁のお考え方を伺っておきたいと存じます。
  33. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君)  ただいまお尋ねのございました中で、メーデー事件審理のことにつきましては、後に刑事局長の方からお答えをいたします。  松川事件最高裁判所における審理でございますが、御承知のように昨年末に十回にわたる弁論を開きまして終結をいたしたわけでございます。新聞記事では、そのために約千件の審理が停滞しているというような記事が出ておりましたけれども、事実松川事件の弁論及びその合議のために、裁判官がそちらに時間を費しておりまして他の事件に十分に手が回らないことは事実でございます。しかしながら、といってそのために全部の事件がストップしているというわけでは決してございません。最高裁判所事件数統計の上から見ますと、昨年の十月が一番事件が減った、少くなった時期でございます。これは民事刑事合せまして三千四百七十件ばかりになっております。それがただいま、二月の初めで申し上げますと約四百五十件ばかりふえております。未済件数、係属件数の合計が四百五十件ばかりふえております。一割五分ばかり増加したわけでございます。この増加でございますが、大体係属事件が、刑事におきまして約三百件、それから民事におきまして約百五十件ぐらいの増加になっているのでございます。この数字は、ずっと前々からの数字を見て参りますと、民事のこういった漸増の傾向はこれは従来あるのでございまして、松川事件のために特にはなはだしい影響を受けているとは申せないのであります。刑事の方はこれはずっと減って参っております。漸減の傾向にございますので、この増加はたしかに松川事件審理影響を受けていると申せると存じます。最高裁判所全体の事件の動きを見ますと、御承知のように一時七千件に達したことがございます。それが昭和二十六年でございます。それをトップにいたしましてずっと事件が減って参りまして、昨年も年末におきましては三千八百件ばかり、四千件を割っているわけでございます。松川事件審理にかかわらず、年間件数としては前年度よりも減っているわけでございます。ですから最高裁判所の年々の事件の減っている傾向は、松川事件審理にかかわらず昨年末においても現われているわけでございます。こういう大きい事件がかかりますために、ほかの事件が多少なり影響を受けるということは、現在の機構ではまことにやむを得ないところでございます。ただ、ただいま御指摘がございましたように、一体最高裁判所が七千件が三千八百件に減ったとはいいながら、そういった多くの事件をかかえていていいのかという問題が根本的にあるわけです。私どもも日常最高裁判所で扱っております事件、それからその負担による裁判官の非常な多忙というのは実際御推察の通りでございまして一体これでいいのかということは私どももいつも考えさせられる問題でございます。それにつきまして最高裁判所の機構改革問題が先年来論ぜられているわけでございまして、各方面からいろいろな意見が出ているわけでございます。根本にはそういった問題が常に考えられなければならないわけでございまして、現状で決していいとは最高裁判所におきましても考えていないわけでございます。ただ何分にも非常に複雑な訴訟の上告事件を扱う機構でございますので、一体これをどういうふうに改革したならば最も合理的であり、最も国民一般の納得を得る改革であるかということが非常にむずかしいために、いろいろ検討を重ねているわけでございます。法務省におかれましても、先年法制審議会において一つの案を打ち出されたようでございますが、それにつきましても、なおまだ各方面にいろいろ意見がございまして、意見の一致をみるに至らないような状態のように承わっております。最高裁判所におきましても決してそれを放置しているわけではございません。常に基本的な問題としてはいつも考えて研究している問題でございます。ただ、今日、これで間違いないという具体的な案には到達し得ない現状であるわけでございます。
  34. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) ただいまメーデー事件審理方式についてお尋ねがございましたが、この事件東京地方裁判所の第十一部におきまして、昭和二十八年二月以来審理中の事件で、現在もなお審理継続中の事件でございます。従いまして当最高裁判所の方で将来この事件をいかに審理するつもりかというような点について調査したことはございません。当該担当裁判官法律に従って適法なりと信じておやりになって、できるだけ早く正しい裁判をということでおやりになっておることでございます。  ただ、聞くところによりますと、ただいま大川委員のお尋ねの通り、昨年の十月から六人の裁判官が二つの部に分かれて、被告も分離して証人調べを続けて総論段階について審理をしておるよしでございます。この総論段階の審理が終りまして、各論の段階の審理をする必要があるかどうか。これはまた当該裁判所でおきめになることでございますが、必要がありとした場合には、六つの単独体に分けて公判審理をするというように聞き及んでおります。そして最後にまた合議体審理をするという予定だということを昭和二十八年二月、審理が始まる当時そういうような話を聞いておるのでございます。で、ただいま御指摘の、一たん合議体の裁判をすることをきめた事件を単独体の裁判に直し、また合議体にするということは適法かどうかという御意見、お尋ねでございますが、この事件は騒擾罪の、被告人は騒擾罪の首魁として起訴されたものでなくて、騒擾の指揮あるいは率先して勢いを助けたということで起訴されて、みんな被告人別々に起訴されているのでございまして、この指揮罪、騒擾の率先助成というのは、法定刑は六月以上七年以下というところで、法定合議事件ではないのでございます。これを三人の裁判官合議で裁判した方がよいということで裁定合議として取り上げた事件でございまして、裁定合議をするかしないかということは、もともと裁判官の自由裁量のものでございまして、一たん裁定合議事件として取り上げて、三人の裁判官で裁判をするというふうにきめました事件を、さらに単独体で裁判をするということにいたしますこと、さらにそれを合議体で裁判をするというようなこともこれは法律的には自由裁量で差しつかえないことでございます。  この点につきましては、刑事について最高裁判所の判例はございませんが、東京高等裁判所及び高松高等裁判所におきましても、刑事で単独体の事件を裁定合議で取り上げ、さらに同じ事件をある審理の段階から単独で審理をするということは適法であるという判決が出ておりますので、そういう取扱いをすることは、これは適法であるというふうに考えております。
  35. 横川正市

    横川正市君 ちょっと、今答弁ができなければ、あとで資料をいただきたいのですが、検察当局の方と裁判所の方とに……。一つは三十一年の半数改選の参議院議員の、当時の選挙違反としての検挙数、それからそれが第一審で無罪になって控訴した数、これは検察当局で取り調べたもの。裁判所の方では、第一審で有罪になった数、第二審で無罪になった数、これは結審、審理中とあると思うのですが、その数を調べていただきたい。  それから、法務大臣にちょっとお伺いしたいのですが、今度のこの給与法の中で、暫定手当の繰り入れを行う方法が、この法案が通過後六カ月間そのままの形で据え置かれることになっているので、新しい形から予算を提出するとすれば、四月一日実施ということが本来の法案の性格でなければならないのに、どうしてそういうふうに実施期日をずらしたか、その点を一つ……。
  36. 津田實

    政府委員津田實君) その点ただいまお尋ねの点でございますが、昭和三十二年法律第百五十四号付則二十三項におきまして、「暫定手当は、昭和三十四年四月一日以降において、これを整理し、その一定の額を職員の俸給に繰り入れる措置をするようにするものとする。」こういう規定が附則にございます。それによりまして、昭和三十四年四月一日以降からこれを立法措置すべきであるということになるのであります。それを十月一日から実施することになりましたわけでありますが、暫定手当の繰り入れによりまして、俸給を基礎にして算定される給与及び退職手当の退職給付が増額されることになります反面、職員の負担する恩給の国庫納金、それから共済組合の掛金等も増額することになり、一般にこのような給与を受けない職員につきましては必ずしも有利とならないということから、これらの給与へのはね返り分のほか、共済組合、国庫負担金へのはね返りについて財政負担の面から必要な考慮をいたした、それを総合判断いたしまして、本年の十月一日に実施をする、こういうふうに一般の国家公務員について考え方をとられたということによりまして、裁判官並びに検察官の給与につきましても同様の方針をとった次第でございます。
  37. 横川正市

    横川正市君 暫定措置の四月一日以降という中で、恩給納金それから共済掛金等のはね返りをも考慮して、そうして財源的な問題だけにしばられて十月一日にしたということなのですか。
  38. 津田實

    政府委員津田實君) ただいまのところ、一般職の関係におきまして、私の方の政府部内において連絡を受けております限りにおきまして、そういう考え方のもとに、今回の裁判官検察官の給与は立案した次第でございます。
  39. 横川正市

    横川正市君 そうすると、検察官裁判官の場合の担当省として、これは独自の考え方というものはなかったわけですね。
  40. 津田實

    政府委員津田實君) これらの点につきましては、従来とも裁判官検察官の給与法におきましては、一般職の給与に準ずる形をとって参っておりますので、それに準ずる態度をこのたびもとった次第であります。
  41. 横川正市

    横川正市君 一般職の法律は、これは内閣委員会で審議をいたしておるわけです。在来この法務委員会検察官裁判官俸給給与については審議をしていると、こういうことなので、独自にあなたの方で裁判官検察官の給与についてはかくあるべきだというふうにお考えになって出し得る考え方といいますか、そういったものがあっていいんではないかと思うのでありますが、全然そういうことはお考えになっておらないのですか。
  42. 津田實

    政府委員津田實君) 従来裁判官の報酬並びに検察官俸給につきましては、「裁判官の受ける報酬については、別に法律でこれを定める。」ということが裁判所法に定められておりまして、検察官につきましても、検察庁法に、「検察官の受ける俸給については、別に法律でこれを定める。」ということになっております。そこでこれは、当初この俸給法ができまして以来当法務委員会の御審議をいただいておるわけでございまして、それは、とりもなおさず、これらの報酬並びに俸給に関する法律は、司法制度の一環として考えるべきものがあるということからであろうというふうに考えられるわけでございますが、現に、規則の面から申しましても、参議院規則におきましては、裁判官及び検察官に関する事項は法務委員会の所管になっているというようなことからもやはりそれは裏づけになっておるのじゃないかというふうに私ども考えておるわけであります。ただ、しかしながら、それは基本的な俸給の面でございまして、恩給制度あるいは共済年金等の関係におきましては、これは、裁判官なり検察官なり、独立した制度を設けるということはとうてい困難でございましてこれは、どうしても一般の国家公務員に準じて考えるべきものということになりますので、その面におきましては、できるだけ一般公務員に準ずるという形をとった次第でございます。
  43. 大川光三

    大川光三君 裁判官報酬等に関する法律及び検察官俸給等に関する法律の各一部を改正する法律案という問題につきましては、本日は時間の関係もございまするので、次会に詳しく伺いたいと考えております。ただ、一点だけ法務大臣に伺いたいと存じますることは、たまたま横川委員の御質問にも関連いたしまするので、根本的なことを私は伺いたい。と申しますのは、ただいまの津田さんの御説明によりますと、結局、両改正案というのが一般の政府職員の給与の改訂に伴うて、これに順応していくというようなお考えであるやに伺いました。また、横川委員の御質問の要旨を要約いたしますと、むしろ内閣委員会とか地方行政委員会とかいうものに重点を置いてお考えになる。しかし、それは私としては疑問があるのでございまして、一体憲法の第七十九条及び第八十条が定めておりまするところの裁判官に対する報酬という、その言葉の趣旨はどういうことであるかという根本問題であります。私は、この憲法が定める裁判官の報酬ということが相当であるべき点――ちょっと条文を申し上げますと、七十九条の一番末尾の項で、「最高裁判所裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」と、こういうように定められておる。そこで、相当額の報酬というものは何であるかという問題であります。いやしくも、新憲法下における裁判官の優位というところに重点を置いて考えまするのならば、その重要なる地位にふさわしい報酬でなければならないというように改正する点に大きな意義があろうかと存ずるのであります。しかるに、今回のこの改正案を見てみますると、この裁判官の優位という点が多少ぼやけて参りまして、従来一段差のあった判事検察官の報酬、俸給の立て方が全く平等化されてきた。従って、裁判官の優位を考慮した形跡が認められないというように考えられます。そこで、一体憲法のいう「相当額の報酬」とはいかなることであるかということについて、大臣の御所見を伺いたい。なお、それに関連いたしまするいろいろの具体的な事務的な質問は後日に譲ることにいたしまして、その一点だけを伺っておきたいと思います。
  44. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまのお尋ねの点でございますが、裁判官の報酬ということが特に明記せられておるという点の趣旨はどういうことかと、これは、何と申しましても、裁判官の職責の重大なこと、国民の信頼を十分保持し得るに足るような待遇を保障する、こういう私は趣旨であると考えるのであります。それから、同様に、検察官の場合におきましても、先ほど説明がありましたように、特に法律でもって定めるということになっておるわけでございますが、今日は、この報酬と俸給法律案の御審議は願えないそうでございますけれども、たまたま、ただいま御質疑がございましたから、ごく簡単に一言私の考えを明らかにしておきたいと思います。私は、裁判官にしても検察官にいたしましても、その職責の重大な点にかんがみまして、できるだけりっぱな待遇をしなければならぬということは私の信念でもあり、私の希望でもございます。ところが、ただいま御指摘のように、昭和二十三年でございますか、占領下ではございましたけれども、当時定められた裁判官等の報酬については、当時の一般国家公務員よりかなり格差があって、まあいわば優遇されておった。ところが、その間にだんだんだんだんといわゆるベース・アップが行われまして、ついに、正確な期日は覚えておりませんが、天井が同じになってしまった。今回また、一般の国家公務員についてのベース・アップが行われるについて、とりあえずそれよりも低くなるようなことがあっては、これは大へんであるという考え方から、この立案に急遽当ったわけでございます。その考え方としては、判検事について、今御審議を願っておりますような号俸のそれぞれの改正を行なっておるわけでありますが、これは、私としては、もう決して十分なものとは断じて思っておりません。それからその次に、判事と検事の関係についてお触れになりましたが、これも、実は非常に私としては苦労した点でございます。というのは、一般の今申しましたような国家公務員との関係について考慮しなければならぬと同時に、この判検事の関係を考慮しなければならないということで、率直に申しまして当初の政府の原案といいますか、法務省を除いての原案というものは、完全な判検事同格の原案が大蔵省当局を通じまして一応出ております。それを、特に一号俸上のものを閣議でも何回か問題にいたしまして、上げてもらいました。それについては、これを特別の法ということにいたしましたから、現在置かれておる環境の中においては、不十分ながら私は趣旨が通ったと思うのでありますが、第一の前提に申し上げましたように、私は、これで決して満足しておらぬのでございまして、今後いろいろと、さらに任用制度の問題にも私は触れてくると思います。それらの点ともにらみ合せまして、関係方面の関心を高揚いたしまして、さらに改善を続けて参りたいと、こういうふうに考えております。で、大体御指摘になりました御意見の線に沿うような措置が私は妥当であろうと思うのであります。ただ、そうかといって、いろいろそういったような環境の中に、非常に苦心をいたしまして、閣議としてもとりまとめたものでございますから、現在御審議を願っておりまする案は、現在の条件下においては、私はこれが一番よい案であると、こういうふうに考えて、さらに問題を将来に必ず新たなる努力によって改善を考えたい、こう思っておるのでございます。
  45. 大川光三

    大川光三君 法務大臣の御説明によりまして、本改正案が提案されました事情はよくわかりました。しかし、一体この憲法の「相当額」ということは、最高裁判所側では一体どういう御解釈になるのか。もちろんこれは、政府原案として出されたことでございまするから、案そのものに具体的にこれは反対だということではなかろうと思いまするけれども、厳格にやはり憲法の精神を考えてみたときに、裁判官の報酬と検察官俸給とが平等化されていくということで、法律的にはいいのかどうか。最高裁判所側の御所見を簡単に伺っておきたいと思います。ただ、つけ加えて申し上げますることは、裁判官検察官も、ともどもに優遇すべきだという常識論はあるのであります。ありまするけれども、憲法解釈としてどうきめていくことがわれわれ法務委員会としていいのかという法的な疑問がございまするので、この点も重ねて私は伺うのであります。
  46. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まことにごもっともな御意見でございまして、先ほど申し上げましたことで尽きておるかと思いますが、なお一言付言して申し上げますと、率直に申しまして、先ほどのような経緯でございましたから、それなら、検察官は一般公務員よりも低いものだというようなことになっては、これまた一大事でございます。これは、司法制度全体のためにゆゆしい問題でございます。その関係を一方において考慮しなければならぬ。そこで、あるいはいろいろの御意見はございましょうが、憲法の規定、あるいはその趣旨、沿革等にかんがみまして、先ほど申しましたような案を、特号俸というものを判事に作りまして、そこでこの趣旨を生かすということにいたしましたのですから、御趣旨の点は、先ほど申しましたように、私自身も、これはまだまだ改善の余地があると思っておりまするけれども、現在の状況下においては、これによってようやくそれらの点を何とかバランスをとった。こういう格好になっておりますので、この点は、御了承を願いたいと思います。
  47. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君)  私から一言意見を申し上げます。憲法に定めました裁判官の相当額の報酬という意味は、ただいま法務大臣がお述べになりましたように、裁判官の重要な職責と、それを果すのについて、国民の十分な信頼を得るという待遇を与えるべきである趣旨であるというお答えでございましたが、私も全くその通りであると存じます。  で、今回の裁判官報酬等法律改正案につきましては、法務大臣がるるお答えになりましたように、法務大臣の非常な御苦心のもとにできたものでございまして、私ども、法務大臣の御苦心に対して敬意を表するにやぶさかでございません。  ただ、一言申し上げたいのは、裁判官の報酬制度と申しますのは、先ほど法務省からもお話がありましたように、司法制度の一環というように私ども考えているわけでございます。そこで、司法制度のあり方について常に関心を、最も関心を持っております裁判所裁判官が、こういうことに対してもやはり関心を寄せるわけでございます。ことに、あの一般公務員と裁判官とのそういった点のあり方、あるいは裁判官検察官のあり方等につきましては、しばしば御承知のような問題にもなってきたわけでございます。私といたしましては、裁判官について、現状についてはまあできるだけのことをしたという法務大臣の御苦心が十分にわかるわけでございます。検察官につきましては、私もやはり、検察官裁判官に準じて待遇さるべきものだというふうに考えておるわけでございます。大川委員の御指摘になりました号俸の問題でございますが、これにつきましては、やはり司法制度のあり方として、裁判所の中には、今回の案に対するいろいろな批判ももちろんございます。しかしながら、ただいま法務大臣がお答えになりましたように、御苦心の結果、裁判官だけに特に特号というものを設けられまして、一般公務員にない一つの高いクラス、グレードを一つ作っていただきましたということは、私どもといたしましては、法務大臣のおっしゃいましたように、現状において最大の努力をしていただいたということは、十分に御了承を申し上げるわけでございます。
  48. 古池信三

    委員長(古池信三君) それでは、ただいま議題になっておりまする三つの法律案に関しまする本日の審査は、この程度にとどめてよろしゅうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 古池信三

    委員長(古池信三君) それでは、これらについての審査は、また次会以後にいたすことにいたします。   ―――――――――――――
  50. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査といたしまして、まず、逮捕状等の執行に関する諸問題のうちで、静岡県安西郵便局における全逓労組委員逮捕問題、右の調査を行います。  御質疑の方は、御発言を願います。
  51. 横川正市

    横川正市君 出席しているお方はどなたでしょうか。
  52. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいま出席されておる政府側の各位は、愛知法務大臣法務省竹内刑事局長、警察庁江口警備局長、大体以上が関係の当局と存じます。
  53. 高田なほ子

    高田なほ子君 質問の前に、資料について……。前回静岡県安西局事件について、二月六日に全逓労組の静岡地区本部の書記長の鈴木昭司さんから静岡地方検察内河野博さんに対して質問状が出ています。その質問状についての回答がまだ検察の方からされておらないように聞いておるので、この質問状に対する検察当局の回答があれば、資料として出していただきたいという資料の要求を前委員会にいたしましたが、まだその資料が私の手元に届いておりません。どうなっておりますか。
  54. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私の方で現地地方検察庁につきまして調査いたしましたところによりますと、質問状に対する回答は出していないということでありますので、その回答の写しを資料として提出することができませんでした。従いまして、その点に関する御質疑につきましては、私からお答え申し上げたいと存じます。
  55. 横川正市

    横川正市君 まず第一点でありますが、この事件は、当事者であります安西の郵便局長伊藤淳平さんから告訴されて、この事案が警察、検察当局でそれぞれ取調べになり、現在に至っておる事案でありますか。
  56. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この事件は、警察から送致を受けた事件でございますが、警察当局におきましては、確かめておりませんが、おそらくそのような申告に基いて、それを捜査の端緒として調べを始めたものと思います。
  57. 横川正市

    横川正市君 前回の委員会で、江口さんから、警察庁の側における事案に対する説明を受けたわけでありますが、その中で、前段の、「全逓の静岡地区本部の中闘指令によりまする年末闘争」云々、それから末尾に、「穏密裏に説得活動を進めていたところ、約十三局がこれに同調し、新組合が結成されようとしていた」までのこの調査は、どこで行われたのですか。
  58. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) あの事件が起りましてから、事件に着手したあとで、それに関連する情報をまとめたものであります。
  59. 横川正市

    横川正市君 たれがどういうふうにして取りまとめたのかということをお聞きしているのです。
  60. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お話がありましてから、われわれの方で調べたのでありまして、そこまでこちらの方ではわかっておりません。
  61. 横川正市

    横川正市君 これは、起訴された事件の少くとも警察側の、あるいは検察側の起訴までに至る事由のうちの非常に重要部分をなしている私は報告であったように思うのです。こういうような労組内の行動といいますか、そういったものがどういうふうにして検察当局あるいは警察当局で察知し、取りまとめ、しかもこの中には、説明によりますと、「穏密裏に説得活動」云々というようなことまで、相当詳細な事情を知っておられるのでありますが、この点を説明をされているのに、事実上その資料を聴取された経路といいますか、あるいはその資料を収集した人の、こういったことがわからないというのは、ちょっと私はおかしいのじゃないかと思いますが、重ねてこの点について御説明をいただきたいと思います。
  62. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) もちろん、警察でこれを調べる過程におきまして、だれだれがどういう方法でそういう情報を取ったかということは、現地におきましてはもちろんわかっていることであります。わからないというのは、私のことでございます。ただ、このことに関しましては、あるいは捜査上の技術に関することでございますから、だれだれがどうして取ったんだということをわれわれが求めましても、あるいは公表をはばかるような面もあるかと思いますけれども、現在におきまして私が存じないということは事実でございます。
  63. 横川正市

    横川正市君 大へん重要な問題だと思うんです。私が先ほど言いましたように、この起訴事件の大体その根本的な問題に触れる問題であり、しかも、これには、七名の人が家宅捜索を受けているのであります。そういう家宅捜索を受けたこの基本となっているのが、江口さんの報告によるところの前段に私はあるんだというふうに思うのであります。大体この起訴状からして推測できるわけでありまして、そうなって参りますと、こういうような労組内部の日常活動が、このような、警察当局において察知されているということは、ゆゆしき問題だと思うのでありますから、そういうことで、捜査上の技術上の問題とか、あるいは捜査上の問題で公表をはばかるかもわからぬというようなことでは、私は、ちょっとこれは答弁にならぬのじゃないかと思います。現在よくわからないのであれば、一つ後刻この問題について調査の上、報告を願いたい、かように存じます。  そこで、第二段でありますが、警察当局が事実上の調査を行いまして、そうして十二月の十八日に地検に書類を送検いたしているのでありますが、警察当局では、被害者及び参考人の供述で証拠が十分と認められて、そうして地検に書類が送検された。地検では、十九日に任意出頭のための慫慂のために組合本部を訪れまして、そうして任意出頭の期日について、被告と思われる側からはっきりした答弁があり、日にちの指定までされておったのに、二十日の午前七時逮捕状が執行された。こういう件について、これは捜査上のことでありますから言われないということならば仕方がないのでありますが、その事情について説明できる範囲内であれば、説明願いたいと思います。
  64. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 本件につきましては、御指摘のように、一月二十日検察庁の独自の捜査が始まりまして、これは強制捜査でございます。被疑者ら七名に対する逮捕及びその自宅等につきまして捜索、差し押え等の強制処分が行われたわけでございます。警察におきましては、任意捜査と申しますか、こういう強制捜査を使わないで、今おっしゃったように、任意に出てきてもらって供述を聞いて、そうして一応事件をまとめて検察庁に送ってきたわけでございます。それを検察庁の方では、あえて強制捜査にした点について御疑念が存すると思うのでございますが、この点につきましては、検察庁とも私の方でいろいろ事情を聞いてみました。まあ一般論として申しますと、検察官と申しますのは、自分で独自の捜査をします場合でも、また、警察から事件を送りつけられて、それを引き取って調べをする場合でも、これを慎重に、法律的な観点から検討を加えるわけでございますが、特に起訴をいたします場合には、将来これが裁判所においてどういうふうになっていくかということにつきましても、幾多の判例その他法律解釈上の疑点等につきましても、十分これは検討する職責を持っておるわけでございます。そこで、警察側の見解といたしましては、これで一応捜査できたというふうに思って送って参ります事件が、検察官の手に取ってみた場合に、その通りである場合もそれは少くないので、相当数あるわけでございますが、しかし、実際問題としてみますると、この種の事件だけでなく、窃盗や詐欺のような普通の一般の事件につきましても、その大部分は、検察官の手元においてやはり補充捜査というものをいたします。そうしてその上で起訴、不起訴をきめるというふうにいたしているのが実情でございます。本件につきましても、検察官は、この書類を見まして、今申しましたような立場からこの事件をいろいろと検討しました結果、なお補充捜査を必要とするというふうに判断をいたしたようでございます。それで、被疑者の出頭を求めたのでございますが、被疑者らが任意出頭に応じないというような態度を見せたばかりでなく、事案の内容あるいは態様等からいたしまして、証憑を隠滅するおそれがあるというふうに判断をいたしまして、実はかように強制捜査をするという結論になったということでございます。
  65. 横川正市

    横川正市君 これは、当事者の検事じゃないのですから、あなたにその不当性を言っても、おそらく、現地の検事の行なったことなので、責任のとりようがないという問題になるかもわからないのでありますが、十九日に、この任意出頭のための書類を事務官が持ってきて、そして十九日の日に全逓静岡地区の会議があるので、二十二日に出頭したい、それならばと言って、これは事務官が帰っているわけですね。翌日は土曜日で、その次が日曜であると、それで、それではというので、事務官の言い置いて行ったのは、もしも出頭ができないのならば、二十日の七時ですか、九時ですか、出頭ができないならば、係検事へ電話をしてくれないかと言うので、責任者から係検事に電話をいたしまして、二十二日の日に出頭をする、こういうふうに被疑者らから係検事に連絡をいたしております。そうすると、今のあなたの言うのからいくと、証拠隠滅、逃亡のおそれあり、だから強制捜査、同時の逮捕、こうしたのだというのでありますが、少し事実を知っている者から見ると、非常にこれはまあ検察当局のやり方というものは不当な、しかも非常に権力的なやり方である、こういうふうになるのじゃないか、この点は、どういうふうにお考えになりますか。
  66. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 呼び出しの点につきましては、一月の十六日に、被疑者全員に対しまして、一月十九日に静岡地方検察庁に出頭するように呼び出しをしたわけでございます。こまかく申しますれば、今おっしゃったように、鈴木書記長に対しましては、直接地検事務官を組合事務所におもむかしめまして呼出状を渡しており、その他の被疑者につきましては、県の警察本部を通じまして、警察本部から伝達をしていただいたということでございます。これに対しまして各関係被疑者の答えは、会議のために出頭できないというお答えが三名あったそうでございます。それからまた、当日にならないとわからないと言った方が一人、出頭できないが、なお組合と相談するというお答えをされた方が一人、会議があって二十二日までは出頭できないというお答えがあったのが二人、そういうことだったそうでございます。いずれも、十九日の出頭につきましてはお断わりするということにはなるわけでございます。この回答の内容からいたしまして、検察官は、近い将来に出頭が予想されなかったという判断をしたということでございます。この判断が適当であったかどうかということにつきましては、これは、横川委員にも御意見があろうと思いますし、私どもも、それは意見がないわけじゃございませんが、当の地検当局はそういうふうに判断をしたものだから強制捜査に移った、こういう意見を私どもの方へ申してきたのであります。
  67. 横川正市

    横川正市君 これは私は、担当者と答弁者との立場で、事案の内容について承知する度合いというものが報告程度だと思う。こういうような事案について、これは一つ法務大臣の見解をただしておきたいのでありますが、今言ったようなその時間的なズレで、任意出頭の意思ある者が強制捜査、逮捕という事実に遭遇しておる、しかもこれは、結果から言いますと、拘置請求も、それから準抗告も、裁判所においては却下をされているわけであります。おのずと事案の内容というものは、しろうとが見てもわかるような簡単な事案の内容である。ただ、先ほど江口さんの説明による前段の問題がくっついて、これが検察当局の最近の労働事案に対する非常にヒステリックなものの考え方というものがプラスされれば、これは、何を予防犯罪上計画したかわかりませんが、事案それ自体というものは非常に簡単な突発的な事件なんで、それがこういうような強制捜査、逮捕という形で行われたということに対して、あなたは、これは妥当だとお思いになりますか。それとも、このやり方は――これは、内田という主席検事ですかが、おれには逮捕権があるのだということを言っておる。起訴状には、このやろうとか何とか労働組合側が言ったとか、まあ検事と労働組合が言っておるのには、言い分からいえば、私はどっこいどっこいだと思っておりますが、逮捕権があるから逮捕したのだということで、果して検察当局のとった態度が第三者が見て納得ができるものかどうか。これは、あなたの見解を一つただしておきたいと思います。
  68. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまのお尋ねでございますが、逮捕状を請求いたしました理由として、検事正から報告してきておりますのは、今、竹内刑事局長が申しました通りなのでございます。私の立場としては、その通りであろうと、ただいま信じているわけでございます。  それから、行き過ぎのないようにというような点については、かねがね私もずいぶん注意いたしておるつもりでございますが、御承知のように、私としては、一般的な指揮権を原則的に持っておるわけでございますので、個々の案件について、事前にどうこうということはいたしておりませんから、現地側の検事正以下検察庁の良識に期待しておるわけでございます。でございますので、ただいまのところそういう状態でございますから、一般論として行き過ぎがあるということは、私は厳に慎しまなければならぬと思いますけれども、この具体的な事案についての検察庁のとりました措置は、私は、報告通りに、そのまま信用いたしておるわけでございます。
  69. 横川正市

    横川正市君 報告通り信用された上で、とられた処置については、あなたの方で妥当と、こうお考えになっておるわけでありますか。
  70. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、率直に申しますと、遺憾なのでありますけれども、ときどき検察庁側の勾留の請求と、これに対する裁判所の見解とが相違することがございますので、これは、御指摘のように、今回の場合にも、準抗告が、何といいますか、拒絶されて釈放になっておるわけであります。その点は、いろいろ意見もないではございませんけれども、これまた、その事実をそのまま素直に承知しておるよりほかにないと、これは非常に率直な言い方でございますが、そういうわけであります。
  71. 横川正市

    横川正市君 これは、準抗告は、検察庁のものの考え方から言えば、身柄を拘束しなければ取調べをできない、こういう見解で準抗告を行なったわけなんですね。それが却下された。そうしてそのあとは、この起訴状に出ております内容というものは、その後検察当局は一回も取調べを行わない、いわゆるこれは、警察からの送検された書類によって起訴状が書かれておるのです。この事実についてはどうお考えですか。
  72. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 一回も取調べをせずに起訴状を書いておるのではないかという御質疑でございますが、勾留請求が裁判所から却下になりましたので、検察官としては、やむなくその後は主として参考人の調べに重点を置かざるを得なくなった。その限りにおきましては、捜査の制約を受けたわけでございます。そうして多数の参考人の取調べをしたり、押収した物的証拠につきまして検討をいたしまして、さらにまた、本人たちの意見というものも逮捕した当時聞いておりますので、それらを総合考かくいたしまして、二月三日に至りまして事件を起訴した、こういうふうになっております。
  73. 横川正市

    横川正市君 参考人として呼ばれたのは、だれとだれでございますか。
  74. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その名前をここで一々申し上げますことは、本件が今公判中でございまして、別に私申上げるのをことさら隠すのではございませんが、御承知のように、ただいまの訴訟手続は、起訴状一本主義と申しまして、起訴状だけで、裁判官は予断を抱かない態勢で審理に入るということになっておりますので、今後の審理に信頼をいたしていただきたいと思うのでございますが、なお、そういう証拠説明等につきましては、証拠申請が終って、そういう適当な時期を見まして御質問がありましたらお答えすることにいたしたいと思います。
  75. 横川正市

    横川正市君 それじゃ一つ、他の問題ですが、起訴状と、それから捜査の段階で警察庁から出された点について、二、三御質問したいと思うのですが、前回私は、局長が公労法上の団体交渉の当事者じゃないかというのに対して、そういう地位にはないと聞いておると、こういうふうに報告されておるのでありますが、これは、郵政当局の大体下部の局長に対する指示の中に、公労法施行によって労働基準法が職員に適用された。そうすると、労働基準法が適用されますと、二十四条協定とか三十六条協定というのは、それぞれまあ事業場ごとに締結をするか、あるいはこの組織された団体の長と、それからその郵政当局の間でそれを交渉して妥結した内容を下部の事業場におろすか、この二つの方式がとられているわけです。ところが、現地の事業場に対しては、昨年末の郵政当局の方針というのは全部変ってしまいまして、事業場ごとに適用をするという方針に変っているわけです。そうなりますと、この局長というのは、公労法上基準法の適用を職場に受けますので、当然この交渉を受ける相手として職員団体との間に話し合いをしなければならないのは、これは、事業場の長は全部これは持つわけなんです。単に中央の団体交渉をする相手とか相手でないとかいうことでなしに、事業場の長というのは、そういうふうに身分上変ってくるのだということは、これは警察当局でお調べになったか、それをまずお聞きしたい。
  76. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) ただいま横川委員指摘になりましたような詳しい点については、ただいま私から回答できないのであります。現地におきましては、ここに書いてあるような考えをもって措置していることは、この報告によって承知しておるわけであります。
  77. 横川正市

    横川正市君 それからもう一つは、この事案の非常にまあ中心問題になると思うのでありますが、休憩時間か休憩時間でないかということの判断の中で、先般の委員会で私は、大体十二時十五分以降にこの事件がかかっておるので、現地の取調べについてどうなっているかということを申し上げましたところが、十二時三十分となっており―これは土曜日だからですね、十二時三十分となっていて、右の行為時間は正規の勤務時間中であるという答弁がなされておるのですが、これは、警察庁の調書を少し調査するのを疎漏にしているのじゃないかと思うのであります。この事件の起訴状の最初にありますように、最初全銭等が局長の机の上に置いてあるから、今すぐ会見をすることは困るという小さなトラブルがあったことだけは、これは認めております。それで、金銭の始末をしてから、それでは話し合いをしようということになって、一たんこれはその場で小休止みたいな格好になっているわけですね。それから、局長が金銭を全部片づけてしまってから交渉に入っております。こういう事実についてこの調書は非常にどうもあまり詳しく調べられておらないようでありますが、そういう事実については、調べられなかったのですか。
  78. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 横川委員は、警察から送検した書類のあるいは写しをお持ちで御質問のようでございますので、率直に申し上げまして、私の方では、その詳しい書類を取り寄せておりません。ただ、こういう事件があるから、こういう点についてはいかがであるかという項目を示して回答を取ったところが、ただいま私の方で刷りものでお渡し申し上げておるような内容の返答があったことを伝えておるだけでございます。
  79. 横川正市

    横川正市君 同時に、この問題について調査依頼をした件で、非常に不備だと思われるわけでありますが、事実が、これはまあ、担当検事ないしは警察当局がこう言ったから書いたのだろうと思うのでありますけれども、この文書の中で、手首を押える等の暴行を加えたという文章表現があったのでありますが、手首を押えたのが暴行行為なのか、それとも、このときに、十分ないし十五分間ぐらいの間で、出勤簿を持って逃げようとして立った局長を押えるのに手首を持った――これは「恐怖」の使い方で、あなたたちは専門なんだと思うのですけれども、十分か十五分の間に、相手側が立って逃げようとするのを押えたと言っておるのが、何か暴行行為になるような起訴状の内容になっておりますが、その点は、どういうふうにお調べになっておるでしょう。
  80. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えいたします。  十分か十五分ということでなしに、先ほどの横川委員のお話では、十二時十五分に入ろうとしたのが断わられて、一応小休止に入ったというお話でありまするから、あるいは、現実に暴行というようなことが行われたのは、御指摘のように、十分か十五分かもしれませんけれども、われわれの承知いたしておりますのは、初め入ろうとして断わられ、それを押しのけて入ったという時期から事件の終りました間は、三十分ないし四十分の間、こういう状態であったというふうに、私たちの連絡文の中からは、そういうふうに判断をいたしております。
  81. 横川正市

    横川正市君 もう一つお聞きしたいのでありますが、郵便局の局長の伊藤淳平さんと、妻になる伊藤君枝さんが、大体九件の事案を基礎にいたしまして告発をいたしておるのでありますが、このことについて御承知でしょうか。それからまた、承知であって、その後の告発についての取扱いはどのようにされておられるか。
  82. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 伊藤郵便局長及びその妻の伊藤君枝さんに関する告発は、私の承知いたしておりまする限りにおきましては、警察には告発はないようでございます。
  83. 横川正市

    横川正市君 そうすると、この案件が発生したときに、警察当局は、何のために労組の代表が現地におもむいてこの事件が起ったかということについても、全然取調べになっておらないわけですか。
  84. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 静岡からの報告によりますれば、とにかくそういう事件が起って、この伊藤君枝さんから所轄中央署に対して急訴の電話があって、そういう乱暴をされておる状態があるということで、警察官は現場におもむき、初めて調査に着手したということでありまするから、今のようなことは前提になっておりません。
  85. 横川正市

    横川正市君 前提条件として事実を云々するのでなしに、この事件の中心になっておりますのは、局備え付けの出勤簿を局長が持って逃げるか、それとも、その局長を押えようかという問題であります。ですから、事件の中心になるのは、出勤簿をなぜ見なければならなかったかというところに当然着目されるのが当りまえじゃないかと思います。同時に、そういうふうに、事件というものに着手した結果から原因というものを追及して参りますと、自然とここに、この公文書偽造であるとか、あるいは印鑑不当所持であるとか、いわゆる微罪であっても刑事事件になる案件が相当あるわけであります、相手側に。そういう事実については、全然取り調べておらないようでありますけれども、これは、伊藤さんの妻の電話申告だけを中心として、その他の案件については全然調べておらない、こういうふうになるわけでありますか。そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  86. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) この事案を処理したという限りにおきましては、そのようにお考えになってけっこうだと思いまするが、ただいま申されました、局長にそういう不正があるかどうかということは、警察としては、告発を受けていませんけれども、そういうものを調べる筋に対しましては、今言われたようなこともあったやに聞いておりまするので、事案の進展上どういうふうになりますか、われわれとしては想像もできませんし、また刑事事案として取り上げなければならぬという状態になりますれば、もちろん警察としても、そのことはまた別個に考えるべき性格と考えておる上げであります。
  87. 横川正市

    横川正市君 以上のまあ大体警察当局のお考え方については、私の方では、大分不備な答弁でありまして、不満足でありますけれども、概略事件の内容は、法務大臣御承知になったのじゃないかと思うのであります。そこで、先ほど法務大臣の所見をお伺いいたしたのでありますが、大臣としては、下部の、あなたの部下のとった行動に対しては、信頼を持っておられる、これは当然のことだろうと思います。しかし、今私の方が指摘いたしましたような事実が、これが裁判の結果としては事実になってくるか、あるいはこれが私の方が正当か、あなたの方の起訴した事実が正当か、いろいろ裁判所でもって論議されることだと思うのでありますが、こういうような案件が、検察当局の行き過ぎであるというふうな格好で処理をされたような場合、これは、単に衆目検察当局に対する非難だけで終らせるものなのか、それとも、検察当局としてはどういうふうにこれは処理されるおつもりなのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  88. 大川光三

    大川光三君 関連して……。  ちょっと私、事件の全貌がわかりにくいのでありますが、この事件は、もう現在検察の手に人って起訴されておるか、あるいは捜査中の事件ですか、もう片付いた事件ですか、ちょっとその点伺いたい。
  89. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 本件は、起訴をいたしましたわけでございます。ですから、まあ裁判中といいますか、裁判にただいま本件はかかっておるわけでございますので、ただいま横川さんも御指摘のように、裁判の結果、公正な結論が下るものと考えておるわけでございます。  それから、もしかりに、これは一般論でございますが、行き過ぎがあったというようなこと、あるいは、裁判の結果によりましては、警察官に対しましても、内部的な服務規律、行政的な措置ということは当然あるわけでございます。それから、さらに進んでは、検察官適格審査委員会の議に付される、こういうことになるわけでございます。いずれにいたしましても、これらはただいま裁判中の問題でございまするから、裁判の公正な結果を一般論として待つべきものと思います。
  90. 横川正市

    横川正市君 私は、大川さんの疑問も多分におありになるだろうと思うのでありまして、国会が現在係争中の裁判に対してとやかく介入したくないわけであります。ただ、委員会の開会は、実際現地で事案が処理されていくスピードと、こっちのスピードがだいぶ合わなかったわけでありまして、相当国会での質問がおくれてしまったという、こういう事情もあるわけでありまして、その点も私は十分考慮して、この事件を不当逮捕事件等と言って究明することをやめて、事実について、私は、事案の全貌を果して正確に把握しているのかどうか、その点だけを質問し、事後処理は、今大臣のお話したような格好になるのじゃないかということでだいぶししの歯を抜いたような質問になっておるわけで、ただ、法務大臣に、これはぜひ一つ善処を御要望申し上げたいのは、この起訴状を見ますと、相当乱暴な言葉が使われていることが事件の大体中心になる。ところが、検察庁側は、これに対して起った行為は、先ほど私が指摘したような、任意出頭に応ずるものを、それを強制逮捕している、こういう事実、それからそのあとで、この事件というのは、事件が起ったその直後から、警察当局と、それから検察庁には、組合側からそれぞれ事件の内容について報告をしている事件なのです。そして事実上こうなんだから、取調べについてはこうしてもらいたい、その案件の中には、先ほど申しましたように、告発に類する事案が相当多数に入っている、こういう案件なのに、会見その他の段階で、検事のとった態度というのは――一度は担当検事がかわっております。あとから沖永検事になっております。かわっておりますけれども、その担当検事を指示をいたしております。内田次席検事等が逮捕について何と言っているかというと、おれは逮捕権を持っているのだから、とやかく言うなというような応待をいたしております。私は、警察署長にも検事正にも裁判長にも、全部会いまして、事件の態様を全部つまびらかにして参ったのでありますから、その点については、非常に事案内容がきわめて遺憾な点が多いのじゃないか、こういうことで、委員会で皆さんの御意見をお聞きした、こういう事案なんであります。ですから、そういう点はお調べになると思いますから、その結果について私は、検察当局の威信の問題にも関係するのですから、ぜひ善処していただきたい、こういうふうに御要望申し上げたいと思います。
  91. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して……。今、横川委員質問の要点は、司法権がフェア・プレーでないというところに問題の焦点が行っておると思うのです。私が前回に資料を要求いたしましたね。この資料の要求についての回答については、刑事局長の方から御答弁いただくことになっているので、その点についてだけ私は御答弁をわずらわしたいと思うわけです。この質問事件というのは、概略言うと、七人の全逓の幹部が逮捕され、その逮捕されたものに対して抗議集会を持ち、その抗議集会は、検察庁当局に抗議に行ったときのことです。昭和三十四年の二月四日午後四時三十分ごろ、鈴木昭司書記長が先頭に立って抗議に行ったときのことであると思いますが、そのとき全逓労働組合の組合旗を持って行きましたところ、深谷勇吉なる者が、この組合旗を組合員の目の前でもって引きちぎった、この引きちぎった不当な行為に対して、怒りを発した鈴木書記長が、この暴行に対して措置しなければならないということで、そこにおられた静岡地検の飯塚事務官ほか二、三の者に対して、この不当な事実を処理するように受付方を強硬に申し入れた、ところが、飯塚事務官は、上官の命令だから、こういうことは受け付けることはできないと言って、受付を拒否した。そこで、こういう不当な現行犯について、われわれがこれを逮捕すべきであるというような受付を拒否するということは、だれの命令だと質問したところ、上官の命令であるから、そのような受付をすることはできないと言って拒否した。そこで、上官がどういう命令を発したのか、上官はだれなんだ、その上官がそのような命令を発することは正しいことであるかどうかということについて、鈴木昭司書記長が当の責任者である河野博検事に対して発した質問状です。従って、河野博検事は、その質問に対しては当然私はお答えになる責任があると思う。なぜならば、検察当局は、われわれが申し上げるまでもなく、目の前で行われたこのような不当な暴力的な行為を、みすみす上官の命であるからと言ってこれの受付を拒否するがごときは、私は正しくない行為ではないかと思う。従って、静岡地検はこの質問状に対してなぜ回答を避けられたのか、今日なおもって回答されないというのはどういうわけであるか。そうしてこの事件の真相はどうか。これは、検察官のフェア・プレーでない一面でありますので、真相並びにこの質問状に対して回答を避けられた理由、これについて御答弁を願いたい。
  92. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいま御指摘のように、本件の被告人の一人であります鈴木書記長から、二月六日付質問状の書面が静岡地検の太田検事あてに、書留内容証明郵便をもって郵送されました。その書面が同月七日受け付けられておることは事実でございます。その内容の要点は、今も御説明がございましたように、二月四日地検の玄関前において発生した、全逓静岡地方本部の旗一流が通行人の一般人によって破損せしめられた事件につきまして、鈴木氏が右の一般人を現行犯人として逮捕し、地検の検察官に引き渡そうとしたところ、同庁の事務官においてこれを拒否し、しかもその拒否は、太田検事の指揮命令によるものであるということであるが、これらの事実関係について回答を求めるという趣旨のものでございました。それで、二月四日の状況につきまして、検察庁の報告によりますと、大体次のような状況であったようでございます。  その目は、約二百名の組合員等が、抗議と称して、地検の玄関前に押し寄せて参りましたので、地検の職員がその侵入を阻止しておりましたところ、たまたまその際、一般人による全逓の旗の破損事件が発生いたしたのでございます。そこで、労組員側は、右の犯人を直ちに静岡中央警察署に引き渡したようでございます。その後に、右事件の申告を検察官に申し立てるためであるというふうにして、入庁を要求したのでございます。しかし、当時玄関において役所の警備に当っておりました職員は、そのような申し出に対しまして、それを口実にして大挙して入庁をはかろうとするものであろうという判断をいたしたようでございまして、しばらく待ってくれと言って制止して、その検察官の指揮を受けたのでございますが、その間約五分であります。その後に、検察官鈴木書記長らを入室させまして、検察官において、この全逓旗を、提供されました証拠品として、これを領置する。それから、被害調書の作成等成規の手続による調べをいたしたものでございます。全逓旗の破損事件につきましては、被疑者は深谷勇吉という者でございますが、これは、御指摘通りです。その身柄は、その場で静岡の中央警察署に引き渡されておりますので、当署において取調べの上、一応釈放しているようでございますが、なお、現在その者について捜査中のようでございます。証拠品は検察側に出すのだということでありましたので、証拠品の領置、被害の申告は、検察庁において今申しましたように被害調書を作っておる。この間鈴木書記長らの現行犯逮捕を妨害するとか、あるいは現行犯人の引き渡しを受けることを拒否するといったような意思や行動がなかったことは、今申し上げましたところによっておわかりいただけると思います。しこうしてこの状況は、まことにみんなのいる前で行われたことでございますし、明白でありまして、地検では、あらためて回答をする必要はないという判断をいたしておるようでございます。  なお、二月十日に、全逓の静岡地本執行委員中島二郎さんほか一名の方が、右質問状に対する回答を要求して検察庁に参られましたので、太田検事が中島さん等に面談をいたしまして、当日の状況を、私が今申しましたような趣旨の状況説明をいたしまして、質問状についてのお答えをする必要を認めないから、あらためて回答はしないというふうにお伝えをしてあるそうでございます。右のような事情でございまして、明々白々の事柄であり、かつ、検察庁としましては、そのような現行犯人について特殊な扱いをしたわけでも何でもないということは、これは明白なことだという立場に立ちまして、あえて質問状に対する回答はしなかった。また、する意思もないということでございます。
  93. 高田なほ子

    高田なほ子君 大体気持はよくわかりましたですが、結論とすると、それではあれですか、全逓労組の方々は、検察当局のその態度を了としたということになるわけですか。私はね、今の御答弁を聞いていますとね、検察当局は、明々白々のことだから、何も回答をする必要はないと検察当局は思っていらっしゃるかもしれませんが、二月十日にあらためて労組側から回答を要求してきたということは、私は、労組側としては、はなはだしく不満な点があったのではないかというふうに受け取れるわけなんです。できるだけこういうことは摩擦を避けるように、検察側でも回答する必要がないとかみしもを着ないで、やはり回答する必要である、こういうふうな判断を持たれたならば、回答する方がいいんじゃないかというふうに私は思うのです。なぜ私がこういう点を強く申し上げるかというと、その後にもこういう問題が静岡地検で起っています。これは、局長は御存じかと思いますが、日にちの前後のほどはわかりませんが、やはり七人の幹部が逮捕されてからあと、抗議集会に参加した三百人の組合員がこの不当逮捕の釈放要求をして、静岡地検に参りましたときに、代表者と、それから検察当局側とぜひ会って、そして組合側の意向も十分に伝えるべきであるというようなことから、静岡地検に行ったところが、勤務時間中の四時半であるにもかかわらず、表の門も裏の門もかぎをかけて人を入れない。用事のある人も入れない。新聞記者も入れない。こういうような状態で、かなり摩擦があったように報告を受けている。静岡の神成何がしという県会議員がその間に調停に立って、せめて代表者側くらいの抗議を十分聞くべきじゃないかというようなあっせんがあったようですが、なかなか検察側はがんとして、この労組側の言い分を聞いてやらないという事件があった。しかし、最終的には、どなたか、かなり気のきいた検事さんがおられて、一応抗議団の言い分も聞いて、円満裏にこの抗議団が引き揚げたということで、当時地方の新聞が、この検事さんのきわめて民主的な行動をかなり高く評価した新聞記事を載せている。私は、何でもかんでも会ったり回答したりしろというのではなくて、横川さんの質問の中にも見られるように、かなりわれわれとしては合点のいかない問題の中でこういう事件が起っており、民衆が検察当局に対してかなりな不信と不満を抱いておる折柄、できるならばこうした代表団等にも会って、その間の了解をお互いに求め合うという態度が必要なのではないか。いわゆる司法のフェア・プレーという建前から見て、あまり事ごとによろいを着て、回答をする必要がないから回答しない、検察当局はそう思うかもしれぬ、そう思ったって、相手の方が不満だったら、これは決して円満な解決の方法ではないと思うのです。回答する必要がないから回答しないというさっきの結論的な御答弁であったけれども、それでは、労組側としては検察側に対して必ずしも信頼の念を抱いておらないのではないかという懸念があるのです。それで質問を長々としたわけですから、この点について答えていただきたい。
  94. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいま御質問の御趣旨は、まことにごもっともでございます。労組側に対する場合だけでなく、検察という職務から申しまして、不偏不党でなければなりませんし、公正に扱うという信頼感の上に立った処理でございませんと、権力的な処理でございますので、そういう信頼関係ということを前提といたしませんと、疑い出せばきりのないような仕事の内容になっております。そういう意味から申しまして、ただいま高田委員のおっしゃる通り、信頼の上に立つ、そういう検察を進めていかなければならぬことは、これは申すまでもないことでございます、その点におきましては全く同感でございまして、全国の検察庁におきまして抗議団体が来たとか何とかいうことは、これは随所に起っておるわけでございますが、これらの方々に会っちゃいかぬとか、会うなとかいうような指令などが出されておるはずもございませんし、大体取扱いといたしましては、少数の方でなるべく平和のうちに趣旨が、お互いの意のあるところが徹底し合うような方法で、できるだけそういう場合には検察長官が直接会って事態を平和におさめるようにするようなむしろ指導をいたしておる状況でございます。その点は、どうか御了承願いたいと思います。ただ、問題の質問状でございます。これは、書面で郵送を受けて、書面で回答しろということになるのか、あるいは口頭でいいから回答しろということになるのか、そこのところはつまびらかにいたしませんが、おそらく書面でということになるのでございましょうが、この点については、質問状に答えるというようなことは、これは非常に異例なことでございます。おそらくそういう質問状に答えたという例は、私は存じておりませんが、ないんじゃなかろうかというようなことでございます。それで、まあ担当の検事が、それでは質問状に答えるかわりに、お目にかかって事情を話しますというようなこと、そういうような態度が望ましかったのではなかろうかと私も思います。いずれにいたしましても、検察官がフェア・プレーでないという感じを与えます行動は、これは慎しまなければなりません。そういうふうに私ども考えておりますし、検事等を東京へ会同いたします際には、常にそういうような趣旨で指導いたしておるつもりでございます。
  95. 古池信三

    委員長(古池信三君) それでは、本件につきましては、大体調査は本日はこの程度にとどめることにいたしまして、次に、高知県下における集団暴行事件に関する件の調査を……。
  96. 古池信三

    委員長(古池信三君) 速記とめて。    〔速記中止〕
  97. 古池信三

    委員長(古池信三君) 速記を始めて。  それでは、本日はこの程度において散会いたします。    午後四時三十二分散会